1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年十一月二十六日(水曜日)
午前十時三十二分開議
出席委員
委員長 奧村又十郎君
理事 淺香 忠雄君 理事 川野 芳滿君
理事 内藤 友明君 理事 松尾トシ子君
理事 佐藤觀次郎君
上塚 司君 大泉 寛三君
佐治 誠吉君 島村 一郎君
西川 貞一君 西村 直己君
宮幡 靖君 三和 精一君
小川 半次君 加藤 高藏君
笹山茂太郎君 吉田 正君
小川 豊明君 坊 秀男君
出席政府委員
大蔵政務次官 愛知 揆一君
大蔵事務官
(主税局長) 平田敬一郎君
委員外の出席者
大蔵事務官
(主計局法規課
長) 白石 正雄君
大蔵事務官
(主税局税制第
一課長) 泉 美之松君
農 林 技 官
(水産庁漁政部
漁船保険課長) 伊藤 茂君
専 門 員 椎木 文也君
専 門 員 黒田 久太君
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本日の会議に付した事件
昭和二十八年分所得税の臨時特例等に関する法
律案(内閣提出第四号)
漁船再保険特別会計における漁船再保険事業に
ついて生じた損失を補てんするための一般会計
からする繰入金に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣提出第九号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/0
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001・奧村又十郎
○奧村委員長 これより会議を開きます。
本日は昨日説明を聴取いたしました、昭和二十八年分所得税の臨時特例等に関する法律案を議題といたします。この際租税及び印紙収入補正予算の説明について、政府委員の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/1
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002・平田敬一郎
○平田政府委員 今回の税制改正の要綱につきましては、先般泉税制課長から概略御説明を申し上げましたので、重ねて私から補足して説明する必要はないかと思います。ただこの租税及び印紙収入補正予算の説明といたしましてお配りいたしておりまするこの書類は、各種の税に関する統計を含んでおりまするし、相当複雑になつておりますので、これにつきまして私からも若干御説明申し上げた方がよかろうかと思いますから、それを御説明申し上げたいと思います。
最初の第一ページ総説のところをお開き願いまして、それに基きまして大体の御説明を申し上げたいと思いますが、最初に数字をちよつと申し上げますと、ここに書いておりますように、昭和二十七年度の租税及び印紙収入の当初予算額は六千三百八十余億円、それに対しまして、今回自然増収を見込みましたのが七百一億八千一百万円、それから先般説明しました改正による減収額が二百三十億三千二百万円、差引六千八百五十三億二千六百万円、これが今度の補正予算におきまして、租税及び印紙収入の予算といたしまして計上している額でございます。減税額におきましても、従いまして四百七十一億四千九百万円の財源がございまして、これが、その他の財源と合せまして今回の追加歳出の財源に充てられている次第でございます。このように自然増収が出ました点につきまして若干申し上げておきますが、二十六年度は、二十五年度に比べて御承知の通り法人税の自然増収が約一千億円ほど一年の間にふえました。これは主として朝鮮動乱後におきまする生産の非常に急激な上昇に伴いまして、法人の企業収益が一躍増加した。ことに大きな会社の利益が非常によくなつて来たということに基くものであつたのでございますが、その影響が、実は本年度になりましてからは大分違つて参りまして、法人の方は昨年度で一服いたしまして、最近はむしろ大法人は若干減りぎみ、ただ納税の成績等もよくなつておりますので、予算の補正の必要は認めなかつたのでありますが、景気の状況から見ますと、大きな会社の方は若干下りぎみでございます。全体としましてはそれほどではありませんが、それでも若干下りぎみでございます。従つて本年度は、法人税につきましては自然増収を計上いたしておりません。これに対しまして、本年度になりましてから賃金が遅れて上つて来た。昨年は必ずしも景気の上昇に伴つて、若干は上つておりますが、賃金が上つていなかつた。ところが昨年の暮れから今年のずつと最近までにかけまして、賃金給与が大分上りまして、その結果、源泉所得税が私ども予想したところよりも著しく増加したということになつております。少し詳しく申し上げますと、当初予算では大体昨年の九月ごろの実績を基にしまして、十一月ごろに見積つたのでございますが、今年三月の一月当りの毎月きまつている支給する賃金、毎勤統計の賃金でございすまが、それを一万一千二百八十一円程度と見ておりましたのが、実績は一万二千百九十二円となり、さらに九月には一万二千八百五十五円というふうに増加いたしておる。上期の臨時賞与等も、前年同期に比べますと相当ふえている。このような事情を反映いたしまして、給与所得の源泉課税は相当な自然増を計上することができることになつた。それからもう一つは、やはりそのような給与所得の増大に伴いまして、本年になりましてから消費水準が相当向上して来た。ことに間接税がかかつております物件は、どちらかと申しますと、いわゆる中間的消費と申しますか、絶対的な必需品を除きまして、嗜好品的なものが多いのでありますが、そういう消費が、所得の増加に伴いまして大分ふえて来た。物品税等の課税水準を前年同期に比較いたしますと、相当増加いたしております。そのような関係からいたしまして、本年度になりましてから間接税の方がこれまた相当な増収をすでに生じておりますし、今後は手がなく見積りましても、この予算に計上しましたような自然増収を計上し得る、こういう状態になつたのでございます。この点が、昨年度と本年度と自然増収の面におきまする著しい違いでございまして、各般の資料に基きまして本年度の予算を見積つたわけでありますが、私どもこの程度見積りますことは、妥当であるというふうに考えておる次第でございます。これに対しまして、実は申告所得税は逆に二百三十億ほど減つたのでございますが、これはここの説期にも書いてありますように、当初予算を見積つたときには、その当時二十五年の課税実績しか出ておりませんでしたので、それを基にしまして二十六年分と二十七年分を推計して見積つたのでありますが、二十六年の課税実績が、最初見ておりました通り行かなかつた。二十六年の課税実績で私ども当初一千四十七億円ほどの決定を見込んでおつたのでありますが、結果におきまして八百五十八億六千万円程度の課税にとどまつた。これはいろいろな事情があるかと思いますが、事実そういうことにならざるを得なかつたということでございまして、今度の補正予算は、それをもとにいたしまして、それに対して、最近の状況から見ました各種の所得の増加指数をもちまして算定いたしております。大体どの程度の所得の増加を見ているかは、説明の九ページの方に掲げておりますが、全体で申告所得税の課税所得が一割七分という増加を見込んでおります。昨年に対しまして、本年は農業所得が一割二分四厘、営業所得が二割七厘程度の増加を見ております。もつともだんだん申告の成績もよくなつているようでございますし、それから税務署の能率も漸次向上いたしておりますので、若干の把握増と申しますか、能率増による増加も見込んでおりますが、そういう点を考慮に入れまして、結果におきまして一割七分程度の増加を見ておりまして、二十七年度の申告所得税の収入を見込んでおります。その結果納税人員なり、営業、農業その他の課税所得、税額等がどの程度になるかは、この説明に詳しく掲上いたしておりまするので、それによつてごらん願いたいと思う次第でございます。
それから間接法の方におきましては、これまた今申し上げましたように全体として増加いたしたのでございますが、酒税も最近までの実績によりまして見積りました結果、総課税石数で五百七万二千石程度の見込みをいたして起ります。十二ページにその各酒類ごとの庫出し見込み石数を計上いたしておりますが、やはり当初予算よりもそれぞれ若干の増加を来しまして、税収入におきまして約七十億円程度の増加を見込むことができることになつております。
それから砂糖消費税、揮発油税、物品税、関税等、それぞれ今申し上げました消費の増加に伴いまして、当初予想したよりもより以上に最近までの課税実績がよろしいということで、ここに見積り増をいたした次第でございます。このうち砂糖消費税と物品税につきましては、実は前国会で修正になりまして、物品税のうち水あめ等の課税を廃止して、そのかわり砂糖の税を引上げてもらつたのでございまするが、その点が当初予算は修正になつておりませんので、増減の点におきましても、それだけ考慮に入れてからごらん願う必要があるかと思います。しかし、それは別といたしまして、全体として相当な増収になつているのでございます。
それから取引所税の方は、これは最初は予算に計上してなかつたのでございますが、商品の取引所が再開されまして、清算取引が最近大分行われるようになりましたので、その実績等に基きまして予算に計上いたしたのであります。印紙税の収入も、不動産の値上り、あるいは増資払込み等の増加によりまして、最近の実績が増加いたしておりますので、それによつてそれぞれ見積り増をいたした次第でございます。各税のさらに詳細な内容につきましては、この説明に相当詳しく出しておりますので、詳しく説明することは省略させていただきたいと思います。
それから減税額の説明でございますが、第五ページに減収見込み額の数字を計上いたしております。二百三十億三千二百万円の内訳でございますが、この内訳といたしましては二十七年度分の、つまり本年分の社会保険料の控除によりまして百二十一億百万円、これは今年の一月からさかのぼりまして、一年分を年末調整と来年の申告の際に控除します結果、響きが相当大きく出ている。しかしこれはもう一年分になります。その他の分はいずれも一月から三月までの分に対する分でございまして、さらに詳しく申し上げますと、先般もちよつと申し上げましたが、実際は一般の民間の場合は一月と二月分だけが今年の予算に影響がある。三月分からは来年度予算に響いて来る。ただ政府関係の職員の分だけは、給与を払いますと、すぐ税金は振りかえて国庫に納めることになつておりますので、三月分影響する。従いまして大体二月分をごらん願えばいいのでございます。その二月分で減る額が、基礎控除の引上げによりまして二十九億五千六百万円、扶養控除の引上げによつて三十億二千四百万円、税率の改正によつて十二億四千六百万円、それから勤労控除の引上げによりまして十四億五千四百万円、社会保険料の控除によつて二十二億五千百万円、合せまして百九億三千百万円、こういうことになる次第でございます。これらの減税額は二箇月分でございますのとで、来年度におきましておよそこれを六倍いたしますと、源泉所得税におきましては約六百億円程度の減税になるということは、前回にも御説明申し上げた通りでございます。そのほかに来年度におきましては、申告所得税につきまして同じような改正をいたします。その方がおそらく二百億前後になるかと思います。所得税の改正は、この改正をおおむね来年度一ぱいに引延ばすことによつて約八百億円程度の減税になるのでございます。概数でございますが、そのようになる次第でございます。それから今回の減税は、従いまして大部分が源泉所得税の分でございます。二百三十億三千二百万円のうち源泉分が二百二十九億一千百万円、申告分が社会保険料の来年の確定申告の場合の減税だけでございまして一億二千百万円、こういうことに相なつている次第でございます。来年度は、本改正によりまして申告所得税につきましても控除引上げ改正その他を行いますので、先ほど申し上げたような減税になるかと思う次第でございます。
それから最後に、すでにおもな統計を若干載せておきましたが、それをちよつと申し上げてみます。十八ページをごらん願いたいと思います。十八ページに直接税、間接税、その他と申しますのは、いわゆる流通税と称されるような税の分でございます。それにわけました表を掲げてございます。これによりますと、二十七年度の補正予算の改正後は、直接税の比率は、ちようどまん中ごろの下の方でございますが、五六・六%、間接税が四一・五%、その他が一・九%、こういう比率になる次第でございます。それほどふえておりませんが、二十六年度におきましては、直接税五八・八%、これは、主として法人税が非常に、ふえましたために、直接税の比重が重くなつたのが、今年度におきましては、さらに間接税がふえて来たために、少し比率がかわつて来た。戦前は大体直接税が三十四、五パーセント程度でございましたが、戦前の基準に比較しますと、最近は直接税がなお非常にふえているという状況でございます。
それからその次は十九ページで、国民所得に対しまする租税の負担率の表を掲げたのでございます。税の自然増収も大分ございまするが、一方におきまして、国民所得も増加いたした結果といたしまして、大体この一、二年は二〇%台にとまつている。昭和二十四年がいわゆるドツジ・ラインに基きます超均衡財政と称せられております、非常なきびしい予算を組んだ年でございますが、このときが税が一番重くて、やはり二七%という数字を来しております。その後減税等に伴いまして、相当な自然増収があつたにもかかわらず、この比率は二〇%台になつているというのが実情でございます。しかし、まだ現在の二〇%は、戦前の一番上の一二・七%に比べますと、相当重いものであるということは疑問の余地のないところと存じます。その表を十九ページに掲げてあります。
それからあとは、租税及び印紙収入の今年の最近までの月別実績をその次の二十ページに掲げてあります。
その次は予算額と決算額との差額、自然増収に関する各税別の数字を二十二ページに掲げてあります。
最後に、最近までの各種の租税に関係の深い経済指標の動きを、一括いたしまして二十四ページに掲げてありますので、御参考にお願いいたしたいと思う次第でございます。
なお細目はいろいろございますが、一応これたけ申し上げまして、なお今後お尋ねによりましてお答え申し上げたいと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/2
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003・奧村又十郎
○奧村委員長 愛知政務次官が出席されましたので、税法の質疑に入ります前に、二十四日本委員会に付託されました漁船再保険特別会計における漁船再保険事業について生じた損失を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律の一部を改正する法律案を議題として、政府当局より提案理由の説明を聴取いたします。愛知政務次官。
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004・愛知揆一
○愛知政府委員 ただいま議題となりました漁船再保険特別会計における漁船再保険事業について生じた損失を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
旧漁船保険法の規定によりまして、拿捕、抑留等の事故を保険の目的として特約いたしました特殊保険につきましては、昭和二十六年度に保険事故が異常に発生いたしましたために、漁船再保険特別会計における再保険金の支払いが著しく増加いたしまして、多大の損失を生じたのであります。この損失は、その事故の性質にかんがみまして、一般会計から繰入金をもつて補填することが適当であると考え、第十三回国会の議決を経まして、とりあえず昭和二十六年四月一日から同年十一月末までに確定いたしました損失に充てるため、一般会計から八千万円をこの会計の特殊保険勘定に繰入れることとしたのでありますが、さらに同年十二月以降発生した損失が一億百八十一万六千円と相なりますので、その損失につきましても、前回と同様にこの会計の特殊保険勘定に繰入れることができることとしようとするものであります。
以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/4
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005・奧村又十郎
○奧村委員長 この法律案に関して資料を御要求の方はお申出願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/5
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006・宮幡靖
○宮幡委員 法律案自体としましては簡明なものなものでありまして、これ以外に方法はないと思いますので、御賛成申し上げます。ただ御承知の朝鮮防衛水域の問題につきまして、外務省、水産庁、あるいはその他の関係の役所と関係方面との交渉がいまだ明確になつておりません。これは、大蔵省側の政府委員から御説明を聞くのはあるいは無理かもしれませんが、まず関係の外務省、水産庁、海上保安庁、こういう方々に出ていただきまして、朝鮮防衛水城の問題の現況、あるいは将来の見通し、あるいは過去の経過ということにつきまして、こういう再保険事業を国家の会計において行うべきかどうかの見通しを承りたい。法律案そのものは簡単で、先ほど申し上げましたように、できた事故を再保険する、その資金がないから繰入れる、これは異議のないことであります。しかしその根本の問題がどうも明確になつておりません。あるいはこの委員会でいろいろ質疑することは行き過ぎであるかもしれませんが、一応一般会計の税からなります資金を繰入れて再保険を給付するという立場から見ますと、関係の方方——だれでも総括的な代表でけつこうであります。決してむずかしい意味でなく、率直にこの間の事情を説明していただいてから、この法律案に対する問題を審議すべきだと思います。理事会等にもお諮りくださいまして、当委員会の運営上適切なる御説明をいただきたい、これを提案いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/6
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007・奧村又十郎
○奧村委員長 次回以後の委員会の適当な機会に、御要求の政府委員を要求して審議していただくことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/7
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008・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 漁船の拿捕の状況の資料がありましたら、せひひとつ出してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/8
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009・奧村又十郎
○奧村委員長 ほかにありませんか……。
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010・奧村又十郎
○奧村委員長 では本案に対する質疑は次会に譲ることとして、昭和二十八年分所得税の臨時特例等に関する法律案に対する質疑に入ります。質疑は通告順によつてこれを許します。御質疑の方はあらかじめ御通告を願います。なお審議の都合上、質疑される相手方の政府委員もともにお示し願います。佐藤觀次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/10
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011・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 平田主税局長に質問いたします。先ほどの説明の中で、法人税の自然増収が一千億という話でありまして、大きな企業家が非常に収入が多かつたという御説明がございましたが、最近税金が高いので、個人の常業者が会社を法人にするという傾向が非常に多いのでありますけれども、そういう点についての増収はどんなことになつておりますか、御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/11
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012・平田敬一郎
○平田政府委員 先ほど申し上げました点をもう少しはつきり重ねて申し上げておきますが、法人税の自然増収が生じましたのは、昭和二十六年度におきまして生じたということを申し上げたのでございます。二十五年度と比べまして、二十六年度におきまして法人税が約一千億円ほど一年間に増加したのであります。なお自然増収は、当初予算に対する見方とか、予算に対する決算の見方とか、その他いろいろございますが、二十五年度対二十六年度では、法人税がそのように増加したという意味であることを承ねて申し上げておきます。それからお尋ねの個人から法人になることが累年多いことは事実でございます。大体最近は毎年二方ないし三万くらい事業者が個人から法人にかわつております。しかも、これはどつちかと申しますと、中以上の事業が多うございまして、歳入にも響くところ多いのでございます。ただいま手元に正確な数字を持ち合せておりませんが、私どもの大体の見当から行きますと、年々四、二五千億くらいの程度の税額が、申告所得税が減りまして、法人税と源泉所得税の二つの増になつてわかれて現われて来るという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/12
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013・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 なお非常に一般的な質問になりますが、国家がどうも水増しの税金をとつているのじやないか。一方においては非常に苦しいと言つているけれども、いつも自然増収、自然増収というようなことで、たくさんの税金を取上げているというようなことが一般的な問題になるわけでありますが、こういう点について、主税局はどういうような考えでそういう計算をしておられるのか。ただ自然増収、自然増収というようなことでなくて、どういうように……。今年度も七百一億以上の増収ということになつておりますが、この点について根本的な御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/13
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014・平田敬一郎
○平田政府委員 これは先ほども申し上げました通り、徴税の方針を別にきびしくしたとかなんとかいうわけではないのでありまして、むしろ徴税につきましては、なるべく申告尊重、それから納得ずくの徴税ということを、国税庁を中心に大いに勉強しておるところでございます。本年度におきまして自然増収が出ましたのは、今申しましたように、昨年の十一月ごろまでの実績に基きまして、ことしの給与水準を大体予想しておつたわけでございますが、その予想より以上に賃金が高くなりまして、その結果といたしまして自然に増収になる、これが率直に申し上げまして、源泉所得税の増収でございます。それと、先ほどちよつと申し遅れましたが、二割のベース・アツプによりまして、いわゆるはね返りと称します分が、約九十五億円ほど別にその中に含まつております。そういうのがこの源泉所得税のほんとうの自然増収の内容でございます。これは先ほど申し上げましたように、朝鮮動乱の影響を少し遅れて受けて給与が上つて来ておるのだ、私はこう見ておるのでございます。そういう見方を最初から十分見込めはいいじやないかという議論もございますが、しかしその当時といたしましては、それほどになるだろうということは、ちよつと私どもは見込むことは困難であつた。経済審議庁その他の見方からいたしましても、それほど上ることは、その当時実は私どもも思つていなかつた。むしろ昨年の暮れごろになりますと悪い状況があつて、はたしていいかどうか議論になつたくらいでございますが、そういう点からいたしまして、給与所得税が自然増収になつておる。それともう一つは間接税の増収でございますが、酒税、物品税、砂糖消費税、揮発油税、いずれもやはりことしになりましてから実績が非常にふえておりまして、物品税のごときは、ことしの上期の売上高が、前年の上期に対しまして約四割程度実は増加いたしておる。もう大体軒並にふえております。そういう状況でございますので、これらはいずれも最近の状況に基きまして、経済情勢の変化に対応しまして、自然増収が出て来たという筋合いのものでございまして、別段無理するところはないことを御了承願いたいと思う次第でございます。なお昨年度は、法人が非常に急激に多くなつた。これとても、当初予算をつくるころにおきましては、なかなか予想できなかつたのでございますが、生産が一躍五割増加しまして、経済審議庁あたりでつくつておりました安定計画の五箇年後の分を、一年ではるかに突破してしまつた。それと同時に物価が上りましたので、企業の利潤が一躍ふえた。これが主として昨年の自然増収の重要なフアクターであつたのでありますが、その経営、事業のしりが給与所得税、あるいは間接税の増となつて現われて来ているのじやないか、私はそのように観測いたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/14
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015・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 なおもう一つお尋ねしたいのですが、こういうような自然増収がある一方において、まだ徴収されない分がかなりあると思うのです。こういう点について、未徴収のものがどれくらいの額に上つておるのですか。それからこういうものの整理の問題はどういうふうにしておられるのか、これをお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/15
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016・平田敬一郎
○平田政府委員 どうも滞納が多くて非常に私どもも困つておるのでございますが、昨年の九月現在で、滞納額が一千四十億円ほどございましたが、本年の九月におきましては、六百七十九億円程度に減少いたしております。もつともこれは先般の国会で御審議願いまして通過させてもらいました国税徴収法の改正の結果、滞納につきましていろいろな分類をしまして、適切な処理をはかることにいたしたのでございますが、御承知の通り、どうしても徴収の見込みのないものは一定年間たな上げにする、執行を停止するという措置もとることにいたしております。それからそれほどでないものにつきましては、一定の余裕期間を与えまして、整理計画を立てさせて徐々に納めてもらう、こういうこともできることにいたしたのでございます。そのようなことにつきまして、運用上も相当努力いたしました結果、ほんとうの意味の滞納額は、今申し上げましたように、芸干の減少を来しておる次第でございますが、なかなか事態は簡単じやございません。たとえば申告所得税のごときも、それほど予定申告の税額は高い額ではないのでございますが、それがなかなか期限通りには納まらない。それを督促し、督励して納めてもらうのに、第一線の官庁は非常な骨を折つている次第でございます。この辺は結局におきましては、やはり政府におきましても、調査の適正ということに一段の勉強を必要とすると同時に、全体としまして、やはり納税思想と申しますか、納税に対する国民の方々の考え方をますますよい方向に向けて行くということに一生懸命にならなければ、なかなか簡単に行かないむずかしい問題ではないか。そういうことにつきまして、私どもといたしましてもあらゆる対策を考えまして、成績の向上に努めたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/16
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017・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 末端の税務署を調べて参りますと、税務署の機構の中で、たとえば徴収課の人は永久に非常につらい仕事をやつておる。なかなか機構がわからないために、非常に税務署内の人事交流がまずい関係で、ただ直税の方は自分の方で割当さえすればいい、徴収課の方はそれが非常に苦しいことはわかつていても、自分の方ではどうにもならぬというように、税務署の末端では機構の上で不満があるらしいのですが、こういう点について、どういうふうに主税局長は考えておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/17
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018・平田敬一郎
○平田政府委員 お話の点、よく税務官庁の内情を御承知のようでございます。実際問題としまして、税務署のいろいろな仕事がございますが、きまつた税額を徴収する、ことに滞納を片づけるという仕事は、何といいますか一番日かげの仕事になりがちであります。従いまして、どつちかと申しますとむしろ調査、賦課の方の仕事をしたがる、こういう傾向はあるのでございます。この点につきましては、人事その他につきましても始終苦心をいたしておりまするが、しかしあまり入れかえますると、また能率が上らないということがございますので、やはりそれぞれ専門に応じましてわけて行くという行き方をとらざるを得ない。その結果いろいろ志気が上らないという点もございますが、そういうことにつきましては、いろいろ実際問題に照しまして、勤勉手当とか旅費だとかいつたようなことにつきましても、できるだけ配慮を加えまして、志気が上るようにいたしまして、努力せしめるように努めておる次第でございます。これは実情論でございまして、なかなかりくつの上で解決のできない一つの問題であるかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/18
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019・奧村又十郎
○奧村委員長 ただいまの佐藤君の御質疑に関連して、委員長から資料を要求しておきます。この滞納の実態を調査することに関連して、これは今年度の補正予算の税収見積りにもかかわる問題と思いますので、明確な資料がいただきたい。それで今年度当初の繰越し滞納額、これを税目別にお出し願つて、今年度内における滞納の整理状況、現金収入、その他の収入、それからその他の処分、その明細を資料としてお出し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/19
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020・平田敬一郎
○平田政府委員 承知しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/20
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021・奧村又十郎
○奧村委員長 いま一つ佐藤委員の御質疑になつた法人成れ、これが一箇年にどの程度あるかということの御答弁ですが、この申告所得税の不振について、法人成れが一番問題になると思うので、先ほどの御答弁では不満足でありますので、もう少し明細な資料をお出し願えないものかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/21
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022・平田敬一郎
○平田政府委員 この次もう少し明細なものを出します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/22
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023・奧村又十郎
○奧村委員長 出せたらひとつお出し願いたいと思います。大泉寛三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/23
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024・大泉寛三
○大泉委員 この補正予算のことについては、あまりお尋ねするわけじやないのですが、きのう局長が、来年度の予算編成にあたつて、富裕税を廃止すれば高額所得者の税率を引上げるのが妥当だろうというような言明をされたのでありますが、それについて政府の考え方を二、三点伺つておきたいと思います。またその意味において自分の意見も申し上げておきたいと、こう思うのであります。
高額所得者の大体二百万円以上のわくですが、こういう高額所得者はきわめて私は少いと思う。そういう少い者に対して国民感情からいつて、高額所得者に多く負担させる、税率の高いのは当然だというような考え方で、はたして税制政策にほんとうの成果が上げられるかどうか、私はむしろ逆な結果を生むのではないか、こういうふうに考えられます。二百万円というと、たいへん大きな額のようでありますが、戦前に比べてみますと、まつたく一万円以下の通貨価値しか考えられない。そういうものに税率があまりに高過ぎるのではないか、かように私は考えるのです。これに対してあまりにも大衆に迎合する、いわゆる国民の感情にただ迎合することは、実情に沿わないように考えるのです。それからまた高額所得者と低額所得者の何か比率をとられた資料があるならば、それを研究されておるかどうかということを、できるだけ簡単に御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/24
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025・平田敬一郎
○平田政府委員 所得税の最高税率をどうするかというのは、実はなかなか大きな問題でございます。人が少いから、願が少いからというだけでは済まされない非常に大きな問題でございますが、大体この前所得税の最高税率が、二十四年以前は八五%でございました。これを、シヤウプ勧告は富裕税を課税して、所得税の最高税率は引下げた方がいいのではないか、こういう勧告をいたしたわけであります。それで富裕税を——富裕税というのは、本来の意味の財産税ではなくて、年々課税します財産所得に対する特別な課税、所得課税の一種だと考えておりますが、それをやつて、所得税の最高税率は引下げた方がよい。そこで私どもの方も、大体勧告に即することにいたしまして、富裕税を起しまして、最高税率の八五を五五に引下げたのでございます。しかしその後富裕税を実施いたしました結果、いろいろ問題がありまして、実際問題としましても、評価がむずかしいとか、あるいは所得がなくて財産だけ持つているような人が相当な負担をしなくちやならない。これもりくつはあるのでありますが、どうも今までの実情においては少し無理がありはしないか、そういうことにいたしますと、富裕税をやめたらどうか、そうなりますと、やめつばなしで所得税の最高高税率を五五でよいかということになりますと、これはどうもいくら考えましても妥当を欠く。そこで私どもといたしましては、あまり高くするのはこれまた好ましくありませんので、現在のところ六五を最高程度に持つて行つたらどうか。そうすると市町村民税がそのほかに加わりますので、七十五、六パーセントになるかと思いますが、そのくらいの負担は、国民の負担が一般に重い際でありますから、高額所得者が負担してもらうものといたしましては必要であり、かつやむを得なかろう、こういうふうに考えておる次第でございます。富裕税を存置するといたしますれば、所得税は高くしなくてもよいのではないかと考えておりますが、そのようなことに関連いたしまして、一つの見解を申し上げた次第でございます。
なお資料その他につきましては、適当な機会によく正確に御説明申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/25
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026・大泉寛三
○大泉委員 なるほどシヤワプ勧告によつて五五%まで引下げられたということでありますが、しかし二十二、三年のあのインフレ時代には、実質的な税というものは高額所得者にはそれほど影響はなかつた。それは何だというと、なるほど八〇%、九〇%という高い税率であるけれども、大体高額所得者はいわゆる勤労所得ではない、物件所得であるから、物件の価値が上つて来るのであるから、その評価の額から見ると、税そのものは高いけれども財産の価値が膨脹して来る。こういう建前から行くと大した負担ではない。こういうことは言える。今日、どうもドツジ・ライン以来というものはほとんどインフレが終息した。こういう時代に、いわゆる実質の所得に高率な課税をするということは、これは耐えられないことである。また先ほども申し上げました通り、きわめて少数なものに税率を高くすれば、国民感情はよいようだけれども、税制政策からいつたならば、結局政府の期待を裏切る結果になりはしないかと私は思う。先ほども申し上げました通り、富裕税を廃止すると言われるが、富裕税と高額所得とはまた性質が違うのであります。それに対して合理的な、納得の行く方針であつたならばよろしいけれども、私は、どうも富裕税を廃止して税率を高くするということは納得しがたいのであります。これに対して前は高かつた、いわゆるインフレ時代のあの税率が高かつたから安くしたというだけではやはり財産所得を持つている高額所得者が負担をするということについては、もう少し深い研究を要するのではなかろうかと私は思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/26
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027・平田敬一郎
○平田政府委員 この問題は税制の上における一つの大きな問題で、私どもは常に研究いたしている問題であります。シヤウプ勧告をお読みになればよくわかりますが、勧告の中におきましても、富裕税と所得税の最高税率との関係を相当詳細に論じておりますことも御存じの通りかと思います。まつたくシヤウプ勧告は、あらためて申し上げるまでもないのでございますが、所得自体にはあまり高く課税しないで、それが蓄積されて財産となつて、それから所得を生んだ場合に、高率課税をする、これがよいという考え方をとつている。従いまして所得税は、最高税率はあまり高くしないで、富裕税はそのかわり課税する。富裕税は課税しないで、所得税の最高税率を下げるなんということは毛頭考えていない。これは非常に緊密な相関連した問題として考えている。その点が、実はあれを提案しました際には、社会にも必ずしもそう理解されないで、逆に少し進歩的な方々から、所得税は下げ過ぎるのではないかという御批評があつたのですが、その当時から私は今申し上げたような意味で、富裕税が一方においてある、これを前提にして考えているということを申し上げておいたのですが、その両者の関係は切り離して考えることはやはり不適当ではないか、前は五五%であつたと申し上げたのですが、その当時におきましても、営業所得者等の場合におきましては、税率が高くて問題がございました。一〇〇%とられて赤字だというような非難も大分あつたような状態であつたのでございますが、その点も考えますと、やはり所得税の最高裁税率は、ある程度のところに持つて行くということを考えざるを得ない。外国の例をいつも申し上げて恐縮ですが、先進国ではもつと高い。イギリスは九七・五%、アメリカも九二%、それからドイツも九五%、フランス、イタリア等におきましても大体七〇%以上、一流国ではないその他の二流、三流の国におきましても、最近は所得税を合せますと大体七〇%前後に来ている例が多いのであります。日本も税は軽くするのに越したことはないので、できるだけ軽くいたしたい。軽くすることが希望でございます。所得税全体としまして相当広く納税してもらつておる状況のもとにおきましては、やはり高額所得者は、それに応じまして応分の負担は必要だということでないと、税制全体としていかがであろうか、こういう考え方を持つている次第でございます。これはなかなか理論的に議論されますと、いろいろな見方もありますし、意見もあろうかと思いますが、一応私どもはそのように考えておることを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/27
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028・大泉寛三
○大泉委員 お話は大体わかりましたが、ただ私どもは国民総貧乏にしない、そういう一つの政策をとつて行くならば、少数の高額所得者をして、もう少しそれに国民全般が、やはり希望を持たした方がいいじやないか。今日のスポーツのように、特に優勝者に向つて突進することが全般の希望に合致するから、結局全般の体位が向上するというような結果を生せしむると同じように、やはり国民全体が少数の優勝者に向つて努力するということが、私は全体をよくする手段であると思う。また税制の上においても、そういうことを考えて行くべきだと思うのであります。イギリスあるいはその他外国の例をとられておりますけれども、日本の現在の課税は、なるほど大きな所得者はそういう高率でもいいでありましようけれども、現在の日本のような、まつたく戦前の負担からいつたならば、イギリスその他から比較してみたならば、低額所得者並ではなかろうかと思う。そういうものに現在より以上また増額するということは、税制政策からいつて当を得ないと思う。深く研究した結果、われわれが納得行くような合理的なものであるならば、私どもとしても決して反対するものではないのであります。深い研究と、われわれが承服するような手段において案を練つていただきたい、かように私は希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/28
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029・奧村又十郎
○奧村委員長 ほかに御質疑はありませんか。——なければ委員長から資料を要求しておきます。今提案の所得税臨時特例法はほとんどすべて現行所得税法の一時前改正の規定です。それでわれわれ委員としてこれを審議するのに、現行所得税法、それからそれに関する施行規則、それから国税庁の通達、こういうものがわからなければ審議ができない。特にここには新たに委員として出て来られた方も多数おられるから、この所得税関係の諸規定、所得税法は先日いただいたが、その他の諸規則、それから通達、これはこちらから要求するまでもなく、お出し願つた方が審議促進のために非常にけつこうかと思いますので、各委員の方へ至急御配付をと願います。
なお委員長から二、三お尋ねしたいと思います。この法案は来年の一—三月の間の臨時特例でありますけれども、これは来年度を通じての税法改正の一環としての規定でありますから、一応来年度の税法改正を見通さなければ、十分の審議はできないと思います。そこで所得税に関する昭和二十八年度の政府の税法改正の基本方針について、今までお述べになつた以外の改正の意思があれば、その点をひとつお述べ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/29
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030・平田敬一郎
○平田政府委員 来年度の問題は、なおよく検討いたしました上で、結論を下すようにいたしたいと考えておりますが、昨日も大蔵大臣から若干御説明申し上げましたし、また本日私からもお尋ねに応じていろいろお答えいたしている次第でございますが、いずれもまだ最終確定というわけには参らないわけでございます。しかし大体の方向はつけて考えていることは事実でございまして、その点を申し上げますと、何らかの御参考になるかと思いますので、そのような意味において若干申し上げてみたいと思います。
所得税におきましては、まず第一は、今回提案しております控除税率、これを所得税法の基本法に織り込むというのが、やはり一番重要な改正点であるかと思います。その際におきまして、税率につきまして、今申し上げましたように、富裕税を廃止するとすれば、所得税の最高税率につきまして、高い方の税率につきまして若干の補正をして提案するということに相なるかと思います。それから有価証券の譲渡所得に対しましては、これも課税の実績等に顧みましてやめまして、有価証券移転税を起すということがいいのではあるまいかという方向でございます。そうしますと、それに関連いたしまして、山林所得とか不動産の譲渡所得等につきましても、やはりある程度の軽減措置を講ずる必要があるのではないか。それをどのように、どの程度においてやるかということは、なおよく検討してみたいと考えております。こういう広い意味の譲渡所得的なものにつきましては、有価証券以外の場合におきましても緩和措置を講じたい、こういう考えでございます。そのほかは資本蓄積の問題に関連いたしまして、生命保険料は今四千円の控除でございますが、これをある程度引上げたい。それから源泉選択の税率につきまして、昨日大臣からお答え申しましたが、これはやはり現在五〇%になつておるが、少し高過ぎるようでございますので、引下げたい。どの程度引下げるかは、まだ検討中でございます。そのほかにこまかな問題は多数あるかと思いますが、おもな点は、所得税といたしましてはそのような点ではなかろうかと存じます。
そのほかに富裕税は、今の考え方として、できればやめる方向へ持つて行きたい。相続税につきましては、まだ少し税率が高過ぎるので引下げたい。法人税については、昨日大分議論があつたところでございますが、税率としてはなかなか動かないのじやないかと思つておりますが、資本蓄積に資する意味におきまして、特別償却の範囲を拡大するとか、あるいは準備金の制度を最近設けましたが、あの程度なり幅を拡張するといつたようなことについては、できるだけ考えまして、資本蓄積に資するような方向に持つて行きたい。ただそれとともに、一部では法人の消費の面につきましても、押えたらいいじやないかという議論が、前国会からもございましたが、交際費等については一定の制限を設けるか設けないか、これも検討中でございます。
それから間接税については、これも今後いろいろ問題があろうと思いますが、酒税は非常に高くて、密造において事実破られておりますので、これは収入を減らす意味でなく、税率だけは下げまして、収入はむしろことしよりもふえるといつたような方向に持つて行くような改正をいたしたい。その他の間接税については、いろいろ問題がございますので、今後よく検討して、方針をきめたいと思つておりますが、今までのような減税方針はなかなかとりにくいのじやないかと考えております。
概略大きな問題の点はそのような点でございます。なお所得税について、いろいろ技術的な細目もあろうかと思いますが、これはまたもう少し研究が進んだ上で申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/30
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031・坊秀男
○坊委員 関連して………。ただいま平田局長から、来年度の税制改正の方針について概要承りました。先ほどからの平田局長の御説明によりますれば、今回提案されておりますこの特例による減税は、平年からいたしますと八百億円ぐらいになる、こういうお話でございますし、今年度のこの特例を基本法に織り込むことを含めて、相当全面的に改正を加えることになるようであります。そういたしますと、まあ今日はつきりとした数字は出て参りますまいと思いますが、来年度は改正によつて減税の額が一体どれぐらい見込まれるのか、その点についてちよつとお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/31
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032・平田敬一郎
○平田政府委員 今申し上げましたように、主たる減税の中心は所得税でございます。その他は若干増減があろうかと思いますが、酒税のこの税率引下げを減税と考えるか考えないかいろいろ議論があるのでございますが、これもやはり消費者としましては、それによつて負担が下るので、減税と見つることができるのじやないか。そういうことをいろいろ計算しますと、まあ前大蔵大臣がいろいろ選挙前にお話になつておられましたように、千億前後の減税にはなるのではないかと見ております。詳細な計算は、いずれもう少し精密な計画ができた上でございませんと、ちよつと申し上げがたいと思う次第でございます。しかし中心は所得税でございまして、これをやりますと八百億円前後の減税になる。これはもう確実でございますし、その点をはつきり申し上げておけば、問題はほとんど尽きるのではないか。そのほかに地方税の入場税、遊興飲食税の減税をこの一月から実行することにいたしまして、これを一年間にならしますと、やはり百五十億円ぐらいの減税になる。そういうことをいろいろあわせ考えますと、もちろん千億程度の減税にはなると思います。これは非常に大まかな説明で恐縮でございますが、現在のところそのように私ども理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/32
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033・川野芳滿
○川野委員 ただいま御説明を聞いておりますと、自然増収が大分出ておる。その中に間接税の自然増収が大分ある、こういう御説明であります。このうち物品税の問題でございますが、先般のシヤウプ勧告においては、間接税をできるならば廃止しろ、直接税だけにしろ、こういう勧告が実はあつておつたにかかわらず、日本の国情に従つて間接税というものをさらに置いておる、こういう結果に相なつておるのであります。従いましてシヤウプ勧告におきましても、できるならば間接税というものは廃止しろ、ところが日本の財政上これが廃止できない。こういう点によつて、間接税というものは現在も行われておると考えております。ところが非常に物品税の収入がふえておる。こういう点から考えますると、物品税を廃止するというわけにも参りませんが、品物によつてはある程度物品税の軽減をする、こういう方向に進んでも、財源の関係等から考えましてよいのではなかろうか、こういうふうに考えまするが、来年度において、物品税の軽減という問題についてこれを実行される御意思はないのでありまするか、この点を伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/33
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034・平田敬一郎
○平田政府委員 物品税をどうするか、大分各方面から要望がありまして、私ども頭を悩ましておるのでございます。どうも将来は、私ども何と申しましても、所得税はできるだけ高い方より軽減したいと思つておりますが、間接税の方はどつちかというと、絶対必需品に対しては間接税はやるべきではないと思います。中間的消費というか、必ずしも奢侈的ではないが、必ずしも必要ではないといつたような種類の商品に対しまする間接税は、財政の事情から申しまして、ある程度やむを得ないのではないか。その点財政の事情がよくなつて参りますれば、間接税はできるだけ減すということはよいと思いますが、日本の実情から申しますと、とうもやはりそのようなわけには参らないのではないか。さればといつて、この際間接説を大幅に増税するという必要も私はないかと思います。しかし今ある間接税につきましては、なるべく減さないという方針の万がこの際妥当ではないか。物品税についても大分改正を加えて参りまして、ほんとうの必需的性質の強いものは、二、三回の改正で大分落して参りました。なお現在でもそのようなものが若干あるかないか、議論の存するところでありますが、しかし最低五%、最高五〇%の税率で課税するというシステムは、今の状況から申しますと、一つの考え方だろうと思うのであります。これも外国の例を申し上げて恐縮ですが、イギリスでもちようど日本の物品税と同じようなことをやつております。最高一〇〇%、最低一六・五%、四段階にわけまして、商品の性質に応じましてそれぞれ課税をいたしております。それに比べますと、日本の物品税はまだ低い。今後財政の事情が許しますれば、やはり物品税についても整備した方がよいと考えますが、にわかになかなかそう行きがたい事情もだんだん出ておるのではないか。これは慎重に考えまして、政府の方針をきめたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/34
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035・川野芳滿
○川野委員 私も物品税を廃止するという考え方については、日本の国情から考えても反対であります。現状においては、ある程度の物品官は徴収するということが当然であると考えております。しかし物品によつては、あるいは廃止したり、軽減したりしてよろしい品物もまだまだあろうと思いますので、この点についてはさらに御研究を願つておきたいと存じます。さらに酒税の引下げでございますが、酒税を引下げるという話がございましたが、業界方面におきましてはできるだけ早く引下げをしてもらいたい、こういう要望があるわけでございます。大体の引下げの時期等のお考えがございますならば、承つておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/35
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036・平田敬一郎
○平田政府委員 非常に具体的な問題になりますと、またきめ得る段階に実は参つておりませんので、方向等につきましては、今申し上げました通りで、ぜひそのようなふうに実現したいと思つております。時期と程度につきましては、いま少しお待ち願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/36
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037・奧村又十郎
○奧村委員長 それではいま一つ委員長からお尋ねしておきます。ただいまの政府委員の御答弁によりますと、来年度の税制改正におきましても、勤労控除については、控除率はそのままで、一五%のままですえ置いて行く。ただ控除の限度が現行三万円を四万五千円に引上げる、こういうことでございます。この限度を引上げるのであるならば、一年の給与所得二十万円以上所得を受ける人が、三十万円までの十万円のその給与所得に対する一万五千円、この限度引上げによつてそれだけが助かる。従つて年間二十万円までの給与所得者は、この限度引上げには恩典に浴さないということになる。一部に一五%の勤労控除を二〇%に引上げるべきだ、こういう意見が強い。自由党においてもそういう政策を発表しておる。それでこの控除率一五%を二〇%に引上げるか、あるいは控除限度三万円を四万五千円に、今回の政府のようになさるか、どちらをとるかということは、これは大きな問題である。なぜ税率引上げに向わずして控除限度の引上げにとどめられたか。その理由をひとつお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/37
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038・平田敬一郎
○平田政府委員 勤労控除の最高額三万円を四万五千円に引上げましたのは、実はこれは二十五年度の改正のまま今まですえ置いて来ております。前国会においてすえ置くのは無理ではないか、ふやすわけに行かぬかという委員の御腰間もたび重ねて伺つておる。私どもいろいろ考えてみたのでありますが、若干無理があつたのではないかと思います。所得が大体二十五年当時二十万円の人は、最近は三十方円程度になつております。五割程度給与所得がふえております。それをすえ置いたのは若干無理があつたのではないか。それをやはりこの際減税できるとすれば、直しまして三十万円のところまで控除する。そういう意味合いにおきまして四万五千円に引上げた方がよいのではないか、こういう考えであります。これは財政学者、参議院等においても一番実は熱烈なる御意見のあつた点でございまして、それをまつ先に解決いたしたい。
それからもう一つ、勤労控除の一割五分を引上げるか、引上げないか。これもたびたびこの委員会におきましても私もお尋ねを受けました点でございまして、確かに問題の点であるかと思うのでございます。ただいつも申し上げておりますように、この問題になりますと、ひとり給与所得者だけでなくして、農民に対する勤労控除を認めるか、認めないか、それから中小の事業者に対しましても同じように勤労控除を認めるか、認めないか、ここに問題がある。それを認めますと、また勤労者とそういう人との負担の幅が実はかえつて縮小してしまうという結果になつて来る。それは今の実際の徴税の状況からしまして、皆様はたして妥当とお考えになるかどうか。これは私ども若干反省せざるを得ない。そうなりますと、この一五%の控除率は、現況のもとにおいてはそのままにして起きまして、そのかわりというわけではございませんが、実際上勤労者、給与所得者が利益を受けることの大きいところの社会保険料の控除をやりますれば、間接的にその関係は非常によくなる。社会保険料は、給与に引直しますと、大体三・四%ぐらいの控除率を引上げたと同じ結果になる。しかしもちろん社公保険料は農民の方、営業者の方も国民健康保険に御加入なされは、その分は当然引くのでございますが、事実上給与所得者が多いということを考えますと、やはりこの際としましては、このような幅が適当ではないか、こういう意味におきまして、実は今回提案しましたような案にいたしている次第でございます。いろいろ考えをめぐらした上でありますこともひとつ御了承願いたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/38
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039・奧村又十郎
○奧村委員長 重ねてお尋ねしますが、ただいまの御答弁によると、勤労控除を二〇%に引上げるならば、農民の勤労所得とのつり合いがとれぬというお言葉でありますが、農民の勤労控除は技術上困難な点がある。たとえば農業所得に事実上関与しておる勤労者を調査する方法もなかなか至難である。これはいろいろ別に問題があると思う。そこで農業所得とのつり合いをとるということであるならば、別に、たとえば超過供出奨励金に対しては無税にするとかいうふうなことが、もしこの国会で実現するとするならば、主税局長の議論から行くと、これはつり合い上勤労控除を引上げることにはまつて行くことになるのだが、ただ農業の勤労所得とのつり合いのためにこれを引上げることができないのかどうか。その点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/39
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040・平田敬一郎
○平田政府委員 私は現在の負担の状況から見て、給与所得者と農民、中小企業者との負担の幅が拡大するような結果になるようであつては、どうもおもしろくないのではないかということを申し上げておるのであります。ところで、理論的に考えますと、勤労控除をその他の控除に認めるかどうかという問題になつて来ますと、第二次シヤウプ勧告は、すでに農民についてだけは勤労控除を認めつるべきだということを勧告いたしておるのでございますが、これは理論的には、率直に申し上げまして、相当な考え方であろうと思う。しかしそれをこの際やりますと、今申し上げましたように、実際におきましておもしろくない結果になるおそれがある。そこでこの問題は、やはり一割五分という控除をこの際は動かさない。そうしまして、できる限り将来におきましてはむしろ調査を徹底し、申告成績の向上をはかりまして、実質的な所得の把握と申しますか、それをでき得る限り近づけまして、その上でこういう問題の解決をはかるというのが正しいのではないか。もちろんそのほかにそういうことをやつた上でありますと、相当な歳入の減になりまして、所得税その他の改正を見合すか、あるいは歳出がそれだけ少くて済むかという問題にもなつて来るのでございます。そのような点をいろいろ考えますと、今としましては、一五%を動かさない方がいい、こういう考え方に立つておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/40
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041・奧村又十郎
○奧村委員長 それでは重ねてお尋ねしますが、一部には勤労控除の限度を三万円から四万五千円に引上げるよりも、むしろ勤労控除の率を一五%から二〇%に引上げて、最高限度は現行のままですえ置いた方がいいという意見もある。そこで今回の措置のように、三万円から四万五千円に最高限度を引上げた場合は、一年を通じて約九十億円の減税になるが、最高限度はすえ置いて、控除率を一五%から二〇%に引上げるとしたならば、減税はどの程度になるかお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/41
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042・平田敬一郎
○平田政府委員 大体年間で百五、六十億円程度と思います。正確な計算は別途提出いたしてけつこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/42
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043・奧村又十郎
○奧村委員長 これはひとつ正確な計算をお出し願いたいと思います。
ほかに御質疑ございませんか。——では明日は午前十時から開会することにいたしまして、本日はこの程度で散会いたします。
午前十一時四十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00419521126/43
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