1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年十一月二十七日(木曜日)
午前十時四十一分開議
出席委員
委員長 奧村又十郎君
理事 淺香 忠雄君 理事 川野 芳滿君
理事 内藤 友明君 理事 松尾トシ子君
理事 佐藤觀次郎君
上塚 司君 大村 清一君
佐治 誠吉君 中田 政美君
西村 直己君 宮幡 靖君
三和 精一君 加藤 高藏君
笹山茂太郎君 中崎 敏君
吉田 正君 小川 豊明君
久保田鶴松君 坊 秀男君
出席政府委員
大蔵事務官
(主税局長) 平田敬一郎君
委員外の出席者
大蔵事務官
(主税局税制第
一課長) 泉 美之松君
専 門 員 椎木 文也君
専 門 員 黒田 久太君
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十一月二十七日
委員西川貞一君辞任につき、その補欠として西
村茂生君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
昭和二十八年分所得税の臨時特例等に関する法
律案(内閣提出第四号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/0
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001・奧村又十郎
○奧村委員長 これより会議を開きます。
昭和二十八年分所得税の臨時特例等に関する法律案を議題として質疑を続行いたします。吉田正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/1
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002・吉田正
○吉田(正)委員 きのうの租税の収入についての御説明について、質疑をいたしたいと思うのでありまするが、自然増収につきまして、間接税と一般勤労者の自然増収、これはよくわかる。ところが中小企業者と農民の自然増収の問題なんですけれども、これはいわゆる水増しとかなんとかいろいろ問題にされているのですが、中小企業の立場からいいますと、青色申告をしろといつてもなかなかできませんし、ことに農業者の立場からいいますと、一箇村でもつて、青色申告なんかしているところは一軒か二軒しかないのです。そういうような現状におきまして、大体それを自然増収と見ていいかどうかという問題なんですが、その点につきまして御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/2
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003・平田敬一郎
○平田政府委員 中小企業者と農民の方々に納めていただいておりますのは申告所得税でございます。申告所得税は、反対に二百三十億の赤字を見ざるを得ない。自然減収と申しますか、当初予算よりも見積りをそれだけ引下げております。その点御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/3
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004・吉田正
○吉田(正)委員 青色申告に関する問題なんですけれども、今申し上げたように、一箇村で農家におきましては一軒か二軒しかないということ、これに対しましては控除をするということになつておりますが、事実上控除をしていないのと同じなんであります。この点につきまして、どのように青色申告を取扱つて行くか、それにつきまして御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/4
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005・平田敬一郎
○平田政府委員 青色申告の制度は昭和二十五年度の改正で新しく設けた次第でございまして、私どもはやはり所得税 法人税をしつかりした土台の上に立ちまして適正なものにするためには、どうしても納税者が帳面をつけておられまして、その記録に基きましてしつかりした所得の計算ができる、これはやはり所得税、法人税の土台であるべきだ、それなくしてはなかなかしつかりした適正な課税はできない、こういう考え方のもとに青色申告の制度を起したわけでございます。そういたしまして青色申告をした方々にはその他の納税者の方々に比較いたしましていろいろな優遇を講じております。たとえば損になつた場合の繰りもどし控除、それから三箇年間の繰越し控除、それからたなおろし資産の計算等につきましても、一般の納税者の方方と比べましていろいろな違つた行き方をやることを認めておる。それからまた今年度からでございますが、家族専従者、すなわち家族の従業員であつて、世帯主のために一緒に仕事している人、こういう人々は別に月給をはつきり払つていわけではなかつたわけですが、今度は五万円、つまり基礎控除額を限度といたしまして、払つた場合におきましてはそれは経費として控除する、但しそういうことにつきまして記帳をしつかりつけておかなければならないと思いますが、そういうふうに他の納税者に比較いたしまして、いろいろな優遇と申しますか、措置を講じておる次第でございます。そういうことをやりまして、将来できるだけこの制度を伸ばす方向に持つて行きたい。ただ実際問題といたしまして、従業員等の少い場合におきましては、なかなかこれは困難がございますので、そうめんどうなことを要求するのもどうかと思うのでございますが、帳面の記載事項等につきましても、できるだけ必要最小限度にとどめまして普及をはかりたい。しかしこれが一年や二年で理想状態に達し得ないことは、おそらく御承知のことと存じますが、相当長い目で見まして、徐々に育てて行きまして目的を達成するようにして行きたい。これは現在でも、最初に起しましたときの考え方を少しもかえておりません。将来とも育成をはかつて行きたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/5
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006・吉田正
○吉田(正)委員 この青色申告の趣旨はわかるのでありますけれども、実際問題として、一箇村に二軒しかないという農村におきましては、それを奨励するといいましても、一箇村で千人も二千人もいるところで二野くらいしかないという現状におきまして、少し現実に合わないのじやないかと思う。だから記載をもつと簡略にするという方法につきまして、具体的にどういう点を簡略にするかという点と、できればこういうことでなしに、もつと簡略な、青色申告の趣旨に合うような何か方法がないかどうかという点、そういう点はございませんか。五万円控除という話であつて、実際やつていない、農家は投げている。奨励するというならば、もう少し現状に近い奨励の方法をしませんと、奨励したところが二軒しかないということで、それを徐々に進めて行くという考え方では実際に合わないじやないか、その点につきまして御意見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/6
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007・平田敬一郎
○平田政府委員 農家の場合におきましては、ことに青色申告制度の普及発達をはかる上におきまして、非常に困難があるということは御指摘の通りだと思います。従いまして帳面の記帳の仕方としましても、たとえば複式簿記のようなむずかしいやり方は全然要求しない。ごく単式の昔からの収入と支出、家計費の関係、そういう関係の記録をはつきりつけていただきますれば、大体におきまして条件に適合し得るような方向に——現在もほとんどそれに近いのでありますが、なお必要があれば、そういう方向に持つて行くのはさしつかえないと考えております。五万円控除の問題は、ことしから認めたのでございます。従いまして今までの青色申告者が比較的少なかつた、この制度をつくりましてから、おそらく農村方面でも来年からは相当ふえて来るのではないか、それを私どもできるだけふやす方向で指導をして行きたい。といいましても、一挙に今の農家の現状からいいまして、相当多くの部分ができるかということになりますと、これは私はそこまで望むのは無理であろう。やはり徐々にふやして行きまして適正化をはかるようにいたしたい、かように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/7
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008・吉田正
○吉田(正)委員 それではくどいようですけれども、具体的にも少しうんと簡略にする方法、たとえば収入において、卵を幾つ産んで、飼料を幾ら買つたという問題、そういうようなことまで書かせると、これは全然できないのです。だから青色申告の趣旨がそういう趣旨であるならば、農家に全部やらせるのにやりやすいようにしないと、農家経済の現状において不適当のことを、いくら理想論を振りまわしても意味をなさないのではないか。それにつきまして、もつと簡略にできる方法はないかどうかということ、そういう点につきまして、さらに希望として申し上げておくわけなのですが、他日この問題につきましては、青色申告に関連しまして五万円の基礎控除の問題につきましても、五万円基礎控除というものが単に奨励の意味でもつてやるのか、ほんとうに農業者の勤労控除の線において考えたものであるかということについても、私は疑問を持つているのです。そういう点につきましても、もつとつつ込んだことにつきまして他日御説明を願いたいと思うのですが、きようは大体その問題につきまして、もつと簡略にお願いしたいということの希望を申しげた次第であります。
それから今度の補正予算の税制改正の要綱の二万円以下の金額を納めているところの人口といいますか、人数、それはどのぐらいあるかということと、それから所得税を納めない階級の人たちが何人あるかということをお尋ねしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/8
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009・平田敬一郎
○平田政府委員 今の二万円以下の人と、それから所得税の納税者が幾らあるか、この資料は別途資料にしまして御提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/9
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010・吉田正
○吉田(正)委員 それではそれをこの次までひとつ出していただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/10
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011・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 主税局長に御質問いたしますが、昨日も大泉議員からも質問がありましたが、実は今度税率の問題につきまして、二万円以下の金額には百分の十五ということになつておつて、七万円以上のものについては前の通りになつておりますが、実際は二十万円、三十万円ぐらいのところが今の税法では相当痛い。それで今度下の方だけは楽になりましたが、中以下のところは今まで通りではやれないのじやないか、この基準について、どういうわけでこういう方を全然下げられなかつたかという意味を御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/11
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012・平田敬一郎
○平田政府委員 課税所二万円、それから十万円、二十万円といつたふうな数字はいずれも控除をしたあとでございます。それは御承知かと思います。従いまして二万円と申しましても、実際の納税者の所得は独身であれば七、八万円、家族持ちでございますと十二、三万円ぐらい、あるいは十四、五万円ぐらいの所得者の適用を受ける税率でございます。それから二十万ぐらいになりますと、三十四、五万ぐらいの人の適用を受ける税率になる、こういうことになるわけでございますから、この辺につきましてもつと緩和したらどうかという議論は、確かに一つの議論であろうかと思う次第でございますけれども、この辺を大幅に軽減いたしますと、それこそ所得税の収入が大幅に減る。それから今の負担といたしましても、なるほど税率はちよつと高いのでございますが、いろいろ控除をいたしました結果の所得金額に対する税がどれくらいになるかという表をごらん願いますと、総合して計算しますと、表面の税率が示すほど実は負担が高くない。先般お配りしました税制改正の要綱という表につきまして、もう一度重ねて御説明申し上げますが、これをごらん願いますと、たとえば月収三万円、年収三十六万円、この辺が、課税所得から申しますと二十万円ぐらいのところになるのですが、控除後の所得金額から申しますと、つまり税率の適用階級区分の所得金額に対応するものは、人によつて違いますけれども、主として二十万前後になるのであります。二十万前後としますと税率はなるほど高いのでありますが、税の負担はここに書いてありますように、月収三万円で夫婦及び子供二人、つまり四人所帯の月収三万円の勤労所帯でございますと、現在の収入金額に対しましては控除税率を適用しました結果が一五八三%の税金の負担になる。それが今度の改正案によりますと一一・〇八%、約一割一分くらい所得税がかかるということになるわけでございまして、この程度でございますれば、今の財政事情その他から行きましてまずやむを得ないのじやないか。もちろんこの辺が軽くなることは私も希望するわけでございますけれども、やはりまず低額所得者の減税が先じやないかという考え方で、このようにいたしておる次第でございます。なおそう申しましても、ことに勤労者につきましては、大分今まで無理がございますので、勤労控除は今まで二十万円までで打ちとめておりましたのを、三十万円まで引上げまして、三万円を四万五千円のところに改めました。この辺は勤労者の中から中よりちよつと下ぐらいのところの所得階層にとつては、従来に比較しまして相当な負担の緩和になります。こういうこともあわせ考慮していただきますことをお願いいたしたいと思います。こういうふうに全体を見ますと、それほど高率でもないということを御考慮願いたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/12
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013・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 大体それで了承しましたが、昨日も議論になつておりましたように、今度富裕税がなくなる。これはいつも資本蓄積という名においてこういうものがいわれるのでありますが、シヤープ勧告のときには、富裕税があるから最高百分の五十五でよいということで、百万円から二百万円以上収入の方は非常に楽になつたのであります。われわれの立場からすれば、実際の高額所得者はもつと大きな税金を——シヤープ勧告の前には百分の八十五とつたこともありますので、われわれは社会政策的にも、高額所得者の税率が比較的楽だということは、社会上非常におもしろくないという見地に立つものであります。しかしそれは、税法上の改正の場合にどうして富裕税を廃止して外部的にも——昨日も主税局長から説明がありましたが、高額所得者からは相当莫大な税金をとつておると言われる。しかるに日本では、富裕税をなくしても百分の六十か百分の六十五くらいにとどめるという。それは何か主税局では、たくさんないから少くてもよいという趣旨か、どういう意味でそういう軽いものをお考えになるかということを御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/13
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014・平田敬一郎
○平田政府委員 昨日も申し上げましたように、富裕税を廃止する場合におきましては、所得税の最高税率を百分の六十五くらいにする、但し日本では、そのほかに市町村民税というものが別にございまして、標準税率で一割八分、最高二割までを課税額にして、六割五分に二割加えますと一割三分追加されまして、実は七割八分程度の税率になるのであります。市町村民税を加えました最高の税率は——事業者の場合でありますと、そのほかに事業税があるわけでありますが、この事業税は、所得の計算上経費で差引きますから、単純にプラスするわけに行かないのでありますが、とにかく市町村の所得税であります市町村民税を加えまして、七八%程度になるわけでございます。まあそこまで行きますれば、どうも大分貧乏になりましたわが国といたしましては、ほぼ最高税率として妥当なところではあるまいか。昨日も申し上げましたように、先進諸国はいづれも九〇%以上でございますが、それほどでもないところは、どつちかと申しますと七〇%前後くらいのところが多い。そういう点を比較いたしましても、まず日本としましてはその辺が適当ではないかというふうに考えます。しかしなおこの問題は、税の理論から行きましたならばむずかしい問題でございますので、富裕税の廃止に関しまして、まく検討いたしました上でこの次の国会に提案いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/14
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015・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 今度の特例の方法は、二十八年度のこの次の予算のときにもやはりこのまま新しい税法でずつとやつて行かれるかどうか、ちよつと御質問したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/15
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016・平田敬一郎
○平田政府委員 所得税に関する限りにおきましては、基礎控除、扶養控除、勤労控除、これは大体この案で来年度平年度化する考えでございます。税率につきましては、今申し上げましたように最高税率につきまして、富裕税の廃止と関連しまして上の方を改訂いたしたい。もちろん来年度にさらに財源に余裕がありますれば、先ほど佐藤さんもお話になりましたような、もう少しまん中のところまで下げたいというのが私どもの眼目でございますが、今の情勢から行きますと、そう申し上げるのはなかなか無理ではあるまいかという見通しを立てておるわけでございまして、大体大筋はこのラインで参つたらどうであろうか。そうしますと、先ほども申し上げましたように、約八百億円程度の所得税の減税になる、こういう次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/16
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017・奧村又十郎
○奧村委員長 松尾トシ子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/17
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018・松尾トシ子
○松尾委員 簡単に一点だけお尋ねいたします。議会が開かれるごとに減税をされることは、国民の非常に喜んでいることだろうと思うのですけれども、減税といつても単なる減税でなく、私はその意義は、担税力の最も弱いところに減税をすることがほんとうの意味ではないかと思うのです。特に今日給与ベースも二〇%くらい上るので、このごろ問題になつている米価の消費価格、あるいはその他運賃、光熱費の引上げということがあつても、今回の減税によつて、これは働く者の実収入のふえることになるというふうに政府は御説明をしていられるように思いますけれども、私はこの点疑義を抱いているものです。それと同時に、今回の補正の面を見ますと、この財源に充てているものが、まことに遺憾なのはほとんどが、所得税の中の源泉課税によつてされているということであります。私は先ほど申しましたような事情からすれば、自然増収が源泉課税からたくさん上つて来るところを見れば、もつとこれらの階層に該当するものたちに向つて、課税の免除を行つていいんじやないか。これがわが党としては、月二万円あるいは年収二十四万円くらいまでは、無税にしたいということを主張している理由なのであります。試みに二万円の生活をしている人をながめてみると、公務員だつたら大体係長、あるいは課長級じやないかと思います。しかもその人は、一年を通じての衣食住を最低に見積つても、二万円でもその課長あるいは係長の生活をするならば、決して十分じやないと思います。こういう点から思つても、月二万円、年収二十四万円ぐらいまでを控除あるいはその他の方法によつて免税の措置をとることがいいと思うのです。今回の自然増収も、源泉課税から大いにこれが上つて来ているという事実に徴しましても、そういう方法で行くのがいいんじやないか。先ほどの御説明によりますと、来年度二十八年度もこの率によつてやつて行くんだという御説明ではございますけれども、大体計算すると、年額十二万五千円ぐらいの人でしたらば課税対象にならないかもわからぬけれども、二十四万となると相当の税金をとられるということになる。そういうことは、実収入が減税によつてふえたということにならぬと思うので、この点ひとつどういう御意見かお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/18
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019・平田敬一郎
○平田政府委員 まず、ことしになりましてから勤労の税収入がふえた理由、これは先般も申し上げましたが、重ねて統計の数字を念のためちよつと申し上げておきます。オリジナルな数字は、いずれもお手元に配りました参考資料の一番後にくつつけてありますが、それをもう少し計算いたしまして、二十六年、昨年一年の平均の数字を一〇〇といたしまして、経済指数がどのように動いているか調べたのでありますが、それによりますと、本年九月の定期的給与、すなわち毎月労働省で調べております毎勤統計の給与の額は一二二で二割二分ふえている。これに対しまして例の消費者物価指数は、これは生計費に重大な関係があるのですが、昨年一箇年を一〇〇といたしますと、一〇五・七で、五・七%だけ騰貴しております。従いまして実質賃金は、ことしになりましてから非常によくなつております。生産の方もいろいろ分折してみますと、全体の鉱工業の生産は昨年を一〇〇といたしますと、ことしの九月は一〇九・二で、九・二%しかふえていない。さらにその中をいろいろ分折してみますと、消費財、すなわち生活資材の方は、一二三というふうに二割三分ほどふえている。安本で調べている基礎物資と投資財は、それほどふえていないで、投資財の方は一〇三・三、基礎物資の方は一一四・四でありますので、主として消費財の生産がふえている。給与が上りまして、物価がそれほど上らないで、消費財の生産がふえている。これがことしになりましてからの顯著な傾向であります。昨年はそれと少し状況が違いまして、まつ先にふえましたのが、鉱工業生産では基礎物資と投資財で、賃金が比較的生産の増加に追いつかないで物価が上つて来た、こういう状態でございましたが、ことしになつてからその修正運動が行われまして、今申し上げましたような数字になつている。卸売物価の方は昨年の平均を一〇〇といたしまして、九月は一〇一・七で一・七%だけの騰貴、それから東京の小売物価指数でございますが、これ咋は年を一〇〇といたしまして、ことしの九月は九六・八でかえつて若干下つております。こういう経済指標の最近の動きになつておるのでございます。これは実は、税収入にも的確に反映しておるように私どもは思うのであります。ことしになりましてから、給与の増加に伴いまして勤労所得税が非常にふえて来た。それから消費財の生産増加——購買力、買気だけは、少なくとも堅実な購買力の増加に伴いまして、消費財の生産がふえておる。物価はそれほど上らないで、大体バランスがとれておる。こういうのが最近までの傾向ではないかと私ども見ておるのであります。このような状態でございますので、勤労者の世帯におきましても、今度は減税をやりますと、比較的減税の効果がぴつたりと現われるのではないか。従来から物価と減税との関係をたびたび御議論申し上げたことがございますが、ことしこそは条件がよく備わつておりまして、減税の効果がうまく発揮できるときではないかと考えておるのであります。そういうことを前提としてひとつ申し上げておきたいと思います。
それにしても、もつと免税点を上げたらどうか。これは私ども、上げたらどうかという御意見に対しまして、上げない方がいいという考えは全然持つておりません。できれば上げた方がいいとは考えておるのでありますが、ただ今回の改正によりまして、先般もちよつと申し上げましたように、実は相当の引上げになつている。奥さんと子供三人の所帯、すなわち本人を入れて五人の所帯で、年収十八万三千五百九十九円、つまり月収一万五千円のところまでは、税がかからなくなつて来るのであります。同様に月収二万円の人でございますと、一万五千円を引いた残りだけに税がかかるわけであります。従いまして、私ども率直に申し上げまして、いろいろ財政重要もふえる一途の情勢でございますが、こういうときに所得税をここまで勉強したということは、少し買つていただいてもいいんじやないかと考えておるのでございます。これは、実際所得税としましては、できる限りほかの方はしんぼうしましても引下げたい、こういう考え方で私どもおりますことを、特に申し上げておきたいと思います。これは決して宙な説明ではなくて、数字に基く説明でありますことを申し上げておきたいと思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/19
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020・松尾トシ子
○松尾委員 数字を元にして御説明されますと、これに対して反駁の方法はないのでありますが、現実の生活と照してみますと、源泉課税というものは月給袋から引かれてしまいまして、事実生活する場合にはしかたがないからやつている——しかたがないでできる人はいいのですけれども、姉やあるいは親から毎月支給されて、不足分を補損しているという人もたくさん聞くのです。どうしたわけか局長の接する人と違いまして、私の接する範囲の人は、違つた生活で違つた空気を吸つているらしく、どうしても足りないという人が多いのです。こういう面も非常にありまして、代表者として、絶えず税金は国会がやるのだからと言われていじめられるこの苦しみも、ひとつ御承知おき願いたいと思います。
それからもう一つお聞きしたいのは、中小企業者、特に小売をやつている人とか、ごく小さい企業をやつている人なんですけれども、この人たちは、極端に申しますと、みそ、しようゆから米にまで税金がかかるというので恐怖している。局長もおつしやつたように、申告課税の徴収が悪いというのもこういうところにある。いいかえると、これが非常に過重だとも言える。前に、自分のところの企業に専従している者には一人当り五万円の控除をするという改正を行つたことを覚えているのですけれども、さてそれが徴収された場合には、月給と同じように取扱われて、源泉課税をかけられておるという状態なんだそうです。してみると、同じ同族の着たちが寄り合いまして朝から晩まで働いておるものになりますと、もうけは一本で家計をまかなつているにもかかわらず、別途の給料として扱われたのではあまり芳ばしくないし、非常に感情的にも負けてもらつたとか、特定な恩典があるとかいうような考えは毛頭受けないと思うのであります。
それからもう一つは、中小企業にいたしましても、これは厳密な青色申告をやつたものだけだというふうに規定されていると思うのですけれど巻、そうでなく、一般の源泉課税で、勤め人と同じようにみなして、みんなにこれを適用されるようには行かぬものでしようか。農村の場合でも、青色申告をやつたものだけが五万円の控除というようなことを考えているのですけれども、現実に青色申告はむずかし過ぎて、ひまもないし、また小さな企業は、税金でごたごたされていると、企業の方の回転を阻止するというふうになつて、売上げにも影響が大きいそうですから、やはり青色申告でなくしても毎月順調な報告をしている以上は、青色申告と同じような条件に基いて恩典にあずかれるようにしてもらいたい、こういう意見なんですが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/20
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021・平田敬一郎
○平田政府委員 今青色申告者につきまして、給与五万円を限度にして経費を控除することを認めておりますことは、御指摘の通りでございますが、これは基礎控除額より低い額でございますので、税金がかかることはございません。免税点以下になるわけでございます。合算課税もいたしておりませんので、分離課税でございますから、給与を受けるということにいたしましても、税はかからない。主人の所得からそれだけ経費として引かれる、こういうことに相なる次第でございます。それから青色申告でなければ認められないんじやないか、これは先ほどからもお尋ねがございましたわけでございまして、できるだけ青色申告制度を簡略化いたしまして普及をはかるごとによりまして——一挙にはできないと思いますが、徐々にできる限り早急に拡大して行くような方向に持つて行きたい、こういう考えでございます。
それからちよつと先ほどの御説明に補足して申し上げておきますが、今回の勤労所得税の改正で、来年の一——三月におきまして、現行法の場合の納税者を約八百九十二万一千人と見ておるのでございますが、改正後におきましては、それが七百十四万人に減りまして、百七十八万一千人程度がこの改正によりまして免税になる。現在の勤労所得者の納税者の約二割程度が、今度の改正によりまして所得税の納税者から失格する、免税になる、こういうことになつております。この資料は予算の説明の中に詳しく書いてございますが、先般それを指摘することを申し遅れましたので、この機会に追加して補足いたしておきたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/21
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022・松尾トシ子
○松尾委員 話が違うことになつてなんですけれども、私は税金は民主安定の一助としてやつて行くべきものであると思うので、これからお尋ねをすることはばかに小さいことですけれども、ひとつ御意見を伺わしていただきたいと思います。
実は中小企本とか、あるいはかなり大きな民間の会社に至りましても、今年の産業政策が悪かつたために非常に赤字がたくさん出ておる。けれども雇われている人たちは、やはり時並の正月を迎えたいというので、会社は赤字にもかかわらず、借入金を立ててまで、一応ボーナスとかあるいは越年資金の形で出すというふうにならざるを得ない。その場合に、ふだんは月給あるいはその他請負でやつておる場合には相当の収入があるけれども、来月の一万円より今月の一千円というように、年末の金は使用価値がございますのに、二、三千円ないし四、五千円の越年資金をもらつた者に対し税金を課せられたのでは、少い金がもち代にもならない、子供のげたにもならないというかつこうなので、今年に限つて、特例をもつて年内に支給されたそれらの者に対しては、その支給された金額を全部使用できるようなかつこうにするという意味から、免税にしてもらいたいという意見が相当多いのです。官公庁にはこれに該当する者はないと思いますけれども、民間の工場あるいは商店には、この特例がしかれればたいへん喜ばれるのではないかと思うのですけれども、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/22
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023・平田敬一郎
○平田政府委員 今回の改正によりまして、実はことしの一月からさかのぼりまして、今まで社会保険料として払つた分を年末調整の際に一ぺんに引いてしまう、こういうことにいたしておるのでございますが、中以上の所得者になりますと、その恩恵は比較的少いのでございますが、中以下の、ことに低額所得者になりますと、これによりまして私は相当な減税になると思います。役所の方も、ほんとうに下の方の人の場合におきましては、かえつて赤字になりまして、返さなきやならぬというのが若干出て来るのではないかと見ておりますが、低額所得者の人は、社会保険料の控除を一月にさかのぼることによりまして、相当もち代が出ましても、それに対する税金は非常に少くなる、あるいは場合によりましたら返さなきやならない人が出て来るかしれない、こういうことに大体なると見ておるのでございますが、その点もあわせ御考慮願いますことを、お願い申し上げておきたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/23
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024・奧村又十郎
○奧村委員長 ほかに御質疑はございませんか。ほかに御質疑もないようでございますから、本日はこれをもつて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせ申し上げます。
午前十一時二十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X00519521127/24
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