1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十七年十二月六日(土曜日)
午前十時五十六分開議
出席委員
委員長 奧村又十郎君
理事 淺香 忠雄君 理事 川野 芳滿君
理事 松尾トシ子君 理事 佐藤觀次郎君
大泉 寛三君 大村 清一君
佐治 誠吉君 中田 政美君
西村 直己君 西村 茂生君
宮幡 靖君 荒木萬壽夫君
小川 半次君 笹山茂太郎君
中崎 敏君 吉田 正君
坊 秀男君
出席国務大臣
外 務 大 臣 岡崎 勝男君
出席政府委員
大蔵政務次官 愛知 揆一君
大蔵事務官
(主計局法規課
長) 白石 正雄君
大蔵事務官
(主税局税制第
一課長) 泉 美之松君
水産庁長官 塩見友之助君
委員外の出席者
農 林 技 官
(水産庁漁政部
漁船保険課長) 伊藤 茂君
専 門 員 椎木 文也君
専 門 員 黒田 久太君
―――――――――――――
十二月四日
食糧管理特別会計の歳入不足を補てんするため
の一般会計からする繰入金に関する法律案(内
閣提出第一三号)
食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案(
内閣提出第一四号)
同日
元海軍文官に退職賞与金復活に関する請願(北
村徳太郎君紹介)(第三八一号)
滋養食品の製造と酒税法に関する請願(大石武
一君紹介)(第三九六号)
揮発油税軽減に関する請願(早川崇君紹介)(
第四〇四号)
同(佐伯宗義君紹介)(第四〇五号)
同(平野三郎君紹介)(第四〇六号)
同(石橋湛山君紹介)(第四〇七号)
同(吉川大介君紹介)(第四〇八号)
同外一件(楯兼次郎君紹介)(第四〇九号)
同(平塚常次郎君紹介)(第四一〇号)
同(坪川信三君紹介)(第四一一号)
同(佐藤善一郎君紹介)(第四一二号)
同外四件(相川勝六君紹介)(第四一三号)
同(長野長廣君紹介)(第四八六号)
同(甲斐中文治郎君紹介)(第五二〇号)
旧陸軍共済組合員に年金交付に関する請願(山
花秀雄君紹介)(第四一四号)
政府資金の統一運用に関する請願(河原田稼吉
君紹介)(第四四三号)
同(平澤長吉君紹介)(第四八七号)
現行会計年度を暦年制に変更の請願(山崎岩男
君紹介)(第四五〇号)
酒税引下げに関する請願外二十九件(山村新治
郎君紹介)(第四五一号)
煙火類に対する物品税撤廃の請願(小林かなえ
君紹介)(第四八八号)
貴石、半貴石及びその製品に対する物品税免税
点設定等に関する請願(内田常雄君紹介)(第
四八九号)
弁護士の所得に対する源泉徴収制度廃止に関す
る請願(明禮輝三郎君外十四名紹介)(第四九
二号)
の審査を本委員会に付託された。
同日
弁護士の所得に対する源泉徴収制度廃止等の陳
情書(第六
二八号)
揮発油税収入を道路整備事業費に充当の陳情書
(第六二九
号)
本年産米の超過供出分等に対する免税措置の陳
情書(第六
三〇号)
国民金融公庫に対する政府出資金増額の陳情書
(第六三一号)
年末融資促進に関する陳情書
(第六三二号)
政府資金の統一運用に関する陳情書
(第六三
三号)
を本委員会に送付された。
―――――――――――――
本日の会議に付した事件
昭和二十八年分所得税の臨時特例等に関する法
律案(内閣提出第四号)
漁船再保険特別会計における漁船再保険事業に
ついて生じた損失を補てんするための一般会計
からする繰入金に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣提出第九号)
漁船再保険特別会計法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一一号)
食糧管理特別会計の歳入不足を補てんするため
の一般会計からする繰入金に関する法律案(内
閣提出第一三号)
食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案(
内閣提出第一四号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/0
-
001・奧村又十郎
○奧村委員長 これより会議を開きます。
一昨四日本委員会に付託に相なりました食糧管理特別会計の歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案及び食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案の両法律案を一括議題といたしまして、まず政府当局より提案趣旨の説明を聴取いたします。大蔵政務次官愛知揆一君。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/1
-
002・愛知揆一
○愛知政府委員 ただいま議題となりました食糧管理特別会計の歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案外一件につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
この法律案は、今国会において、別途御審議をお願いいたしております補正予算案に伴うものでありまして、食糧管理特別会計において昭和二十七年度に生ずることが予定される歳入不足百十四億六千万円を補填するため、その不足額を一般会計から同会計に繰り入れることができることとしようとするものであります。すなわち昭和二十七年産米の消費者価格及び生産者価格の改定措置等に伴つて生ずる不足金七十八億円余、昭和二十七年産麦の売買差損二十一億円余、昭和二十六年産米につき、昭和二十七年度において奨励金等を支払つたことによる不足金十億円余、その他学校給食用輸入小麦の売却に伴つて生ずる不足金十四億円余等の合計額から、加工米等の売払いに伴う歳入増加見込分約九億円を差引いた差額百十四億六千万円を昭和二十七年度において一般会計から本会計に繰入れることができることとしようとするものであります。
何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。
次に食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
現在、食糧管理特別会計法において食糧の買入れ代金の財源に充てるため、食糧証券を発行し、及び借入金等をすることのできる額は、通じて最高千七百億円となつておりますが、過般昭和二十七年産米の政府買入れ価格が七千五百円に引上げられたこと等の理由によりまして、食糧買入れ代金の増加が予想され、その結果、昭和二十八年一月末において、本会計の負担に属する食糧証券の発行等は、約二千二百億円程度に達するものと見込まれるのであります。従いましてこの会計の運営を円滑にするため、食糧証券を発行し、及び借入金等をすることのできる限度額千七百億円を二千二百億円まで引き上げることとしようとするものであります。
何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/2
-
003・奧村又十郎
○奧村委員長 次に、昭和二十八年分所得税の臨時特例等に関する法律案、漁船再保険特別会計における漁船再保険事業について生じた損失を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律の一部を改正する法律案及び漁船再保険特別会計法の一部を改正する法律案の三法律案を一括議題といたしまして、前会に引続き質疑を継続いたします。水産庁長官に対する質疑がありましたらば、できれば先にお願いしたいと思います。宮幡靖君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/3
-
004・宮幡靖
○宮幡委員 漁船再保険の件で、水産庁の御意見を伺いますが、水産庁側で見ておりまする李承晩ラインと、朝鮮の防衛水域の問題、これと公海自由の原則、この三点に対しましての見解を一通り御説明いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/4
-
005・塩見友之助
○塩見政府委員 お答えいたします。あるいはすでに外務省の方からも説明があつたかと思いまするが、李承晩ラインにつきましては、今年向うの方で声明を出しました直後に、日本政府の方から抗議を申し入れております。それは、あの種の宣言というものは、国際的に一方的に宣言した例はあるけれども、相手国がそれをのまなければならないということは現在までないわけでありまして、今般の場合も、日本としてはそういう一方的宣言によつて、公海自由の原則の制限を受ける理由はない、こういう抗議を申し入れておりまするし、その趣旨にのつとりまして、その後の漁業というものをずつと継続してやつておるわけであります。
また防衛水域につきましては、詳細の話は外務省において交渉しておるので、あちらから聞いていただいた方がはつきりいたしまするが、たしか九月二十八日ぐらいであつたと思います。大体新聞に載りましたような宣言がございまして、それで日本政府といたしましては、米国大使館を通じて、その内容の詳細と、どういうふうな趣旨のものか、特に日本の漁船の営むあの水域での漁業に対してどういうふうな影響があるかという点を、詳細に大使館を通じまして国連軍に対して照会するとともに、日本側のこうむる影響というものにつきまして、通報をいたしたわけでございます。その後二週間ばかりたちまして、大使館の方から回答がございまして、あの防衛水域というものは軍事上の必要によつて行うものであるというふうなことと、また友好的で統制のある航行を妨げる意思はないというふうなこと、またしかしながら作戦上必要がある場合には、あの水域に入りましたものについては退去してもらうこともあるというふうな趣旨の回答を得ておるわけであります。その後はつきりと、漁船があの水域において漁業を安全に営めるようなことにはどういうふうにやつて行けばよいかという点について、事務的な折衝をやつておる、こういう状態でございます。できるだけ日本政府において、日本の漁船が操業するのに不便のないような処置をとりたいと思つて、できれば近日中に日本政府において間違いのない漁船に証明書を発給しまして、それで国連軍側の方の海上における臨検であるとか、その他の漁業者にとつては時間的にいろいろ障害になるような部分を排除して、安全に営めるように進めたい、こういうふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/5
-
006・宮幡靖
○宮幡委員 外務大臣もお見えになりましたので、ごく簡単に関連的に伺いますが、その前に、今の水産庁長官のお答えによりますと、大体それぞれの手配はしておるということで、善意に解釈いたしますれば、現下の実情から見まして適当なる処置がとられておると私どもは認めたいのであります。ただ、ただいま審議されておりますのは保険事故に対する問題で、たとえばただいま御説明になりました李承晩ラインは一方的のものであつて、効力はない、こつちは承諾する必要はないのだ、これもわかります。しかしそういうところへ入つて行つたらば拿捕されるという実情でありまして、私があえて数字を申し上げるまでもなく、現在船舶及び人間その他に関しまして、死亡、未帰還、行方不明というような事故もたくさん起つておるわけであります。それらの場合におきまして、今審議中の法律案と比較して検討しなければならないのは、たとえば李ラインを侵して入つて行つた、これは侵したということによりまして保険給付の事故となり得るかどうか。入つてはいけないのだということになれば、そこを侵した場合には保険給付の事故の対象となるものかどうか、この見解をひとつ水産庁としてお示しを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/6
-
007・塩見友之助
○塩見政府委員 李ラインの中に入つて事故を起したからといつて、保険給付の対象から除くというふうなことは全然考えておりません。今までの取扱いでもそういうことをやつておりません。また御参考のために申し上げておきますけれども、今までの韓国側のやり方としましては、李ラインを侵したという意味で漁船を拘束したりすることは、公式にはやつておりません。理由はすべて領海侵犯というふうな説明をやつておりますし、領海内に入つたという口述書を無理やりに漁船からとつて、それでそういう向うの処置を正当づけるというふうな状態でございまして、まだ李ラインを侵したからという理由で、これは形式的な問題ですけけれども、処罰をするというふうな形はとつておらないように考えます。御参考までに申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/7
-
008・奧村又十郎
○奧村委員長 外務大臣は外務委員会からも要求されておりますので、そちらの方の御質疑がありますれば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/8
-
009・宮幡靖
○宮幡委員 大体外務大臣にお聞きしようということもそれらの問題に関連したことで、深く掘り下げなくても大体もう事情はわかつて来たわけでありますが、ただ防衛水域の問題について一つ外務大臣に伺います。どうも国連軍の意向をここで申すとあるいは言い過ぎになるかもしれませんが、これらの李ラインの問題につきましては、日韓双方でお互いに会談すればよろしかろう、こういう意見があつたように、外務大臣のいつかの談話のような形式にも出ておる。またいずれの情報を見ましてもそういう線が強いのでありますが、われわれの知つておる範囲におきましては、日韓会談というものは、予備交渉なり再開される見込みは現下どうも期待ができない、こういうような実状にありますが、こういうふうな国連の意向に対しまして、外務大臣としてはどういう外交交渉手段によりましてこれらの問題をお片づけになるのか、ごく簡単でよろしゆうございますから、総括的に意図を——あるいはできないことは現状やむを得ない、と認めざるを得ないそこでできますことについての御努力の経過がどういう程度のものであるか、これさえ伺つたならば、現状が現状でありますので、あえて当委員会におきましては、これを問題にして取上ぐベきでなかろうと思います。その点だけ許されました時間で外務大臣に総括的に、私の質問の要点からはずれてもけつこうでありますから、当面防衛水域ということに関連いたしました相当の事実を御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/9
-
010・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 朝鮮との間の会談につきましては、これは水域の問題のみならず、いろいろの問題がありまして、複雑な形をとつております。そこで水域の問題につきましては、私の方の目的としては、いろいろ向うの立場もありましようから、そう主義上の問題をあまり議論しても益がないであろうと思いますが、とにかく日本の船が漁業ができるようなことにすれば、かりに李ラインがあつてもなくても、あるいは防衛水域というものがあつてもなくても、漁業ができさえすればそれでまずとりあえず満足しようという目的で話合いをいたすわけであります。これにつきましては、私もたとえば司令官、あるいはその他の国連軍関係の人にもしばしば会いましたし、また朝鮮側の代表者にも会いました。あるいはアメリカの朝鮮における大使にも面会をいたしまして、いろいろこちらの事情を説明して来ております。その結果、多分塩見君からもすでに御説明があつたと存じますが、国連軍側としましては、防衛水域の問題についてはできるだけこれを一時的のものにして、早く解除するような努力をしようということになつておりまするし、また解除するに至らないまでも、日本側業者の損害をできるだけ少くするように、不便であつても努力しようという気持にはなつております。そこでさらに防衛水域というものは、いわゆる李承晩ラインとは関係のないものであるということも言明を受けております。それでは防衛水域を何ゆえに設定しなければならないかということについては、いろいろの理由があるようでありまして、これは多少軍事上の機密に属することもありましようし、全部ここで申し上げるのはどうかと思いますが、たとえば北鮮側の捕虜をたくさん収容しておる、その捕虜を、御承知のように集団的に一ところに置いたためにいろいろの問題が起つたので、その捕虜を分散していろいろの小さな島に置いてある。その場所等も祕密にしておるんだけれども、とかく北鮮側からの密入船によつていろいろ連絡されたり、情報を受けたり、あるいは脱走を企てたりする形跡があるし、またその者たちはある場合には日本の船なりといつて、日本の鑑札等を偽造して、その水域に入つて来た例もしばしばある。こういうようなことも一つの理由で、これはほんとうに軍事的な必要な迫られて防衛水域というのを設定せざるを得なくなつたようであります。従いましてわれわれとしては、国連側に協力するという意味から、この軍事上の必要を妨げるまでにがんばることも差控えなければならない。しかし軍事上の必要の許す範囲では、日本の漁船もそこに入つて漁業してもよかろうじやないかというふうないろいろな説明をいたしておるわけであります。そこであまり問題がむずかしくなりますと、今度は軍事上の必要で全部漁船に対する退去あるいは禁止区域ということになりかねない勢いでもありますので、ただいまのところは、入つてもよいけれども、退去を命ずることはあるべし、退去を命じた場合には、おとなしくその地域から退去してもらわなければ困る、こういうことでとどめておるわけであります。そこでただその中でむずかしいのは、御承知のように、韓国側の空気がありますものですから、国連側の海軍と申しますものは、その防衛水域の中ではアメリカの船もあり、あるいはそのほかの国の船もあり、韓国の船もあるわけでありまして、韓国の船が監視に当つた場合には勢い監視が非常に厳重になつて、日本の漁船に思わない困難を与える例がしばしばあつたわけであります。こういうようなこともありますけれども、われわれとしては絶えず国連側と連絡をとりまして、われわれの方も大いに協力して不便のないように努力するのだから、先方においてもわれわれの方にできるだけ不必要な不便を与えないようにしてもらいたいということで、先方もその主義上の点においては了解いたしておるのであります。実際上において往々にして手違い等もあり、漁船に困難を与えることはありましても、国連側としては決して拿捕をしない、あるいは決して攻撃をしないという点についてははつきりした言明を得ておるものでありますから、実際上の手違いはありましても、さしあたりはこの程度で行きまして、だんだんに空気の改善するに従つて緩和を考えたい、ただいまこういうような状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/10
-
011・宮幡靖
○宮幡委員 それではもう一点お伺いいたします。これは少し具体的なこまかい問題ですが、ただいまの御説明を根拠として考えますと、九月十二日でありますか、日本の漁船が二隻済州島の東方三十海里の地点で韓国軍艦に拿捕されたということがありました。これはおそらく外務省でありましようが、その理由はどういうわけか。向うは李承晩ラインを侵したというが、そういうことはわれわれの方で認むべきものではない、国際法に根拠がない以上は拿捕は不法である、こういうことを韓国政府に厳重抗議したということが伝わつておるのですが、それに対しまして韓国政府は今日までのところどういうふうな回答をして参りましたか、これを伺えば諸般の事情がわかると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/11
-
012・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 これは先ほど宮幡委員もおつしやいましたように、先方とこちらとの——とにかく海の上でありますから、そこにいたと言つても、あとあとまで証拠が残らないわけであります。従つて先方は漁夫、漁船をそのまま持つて行つてしまいまして、いろいろな方法はありましようが、沿岸を侵したというように供述書に署名させるというようなことをやりますものですから、先方の公式の返事はやはり沿岸を侵した。決してほかのことを言つているのではないのであります。しかしながら実際上の事情は、ある程度先方にもわかつているようであります。そのために、裁判がある場合には、裁判が終らないものにも、救恤品を送つてやりたいと言えば、そう反対するわけでもないし、また実際上の事情から、だんだん罰金を科するものもあり、科さないでそのまま帰して来るというような処置をとるものもありますので、事実上こういうものは両方とも主張は、こちらは不法に拿捕されたと言い、先方は沿岸を侵したからとは言いますけれども、その間の取扱いが、沿岸に近ければ近いほど取扱いがむずかしい、遠ければ遠いほど実際上は取扱いがゆるくなつているというような点がある程度認められるようであります。われわれとしては、そういう点で実際上の解決をいたしたい。こう思つて努力をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/12
-
013・宮幡靖
○宮幡委員 なおもう一点だけ外務省の見解を伺いたいのでありますが、先ほどお話の中にもありました臨検ということは、国際慣行によつて行われるべきだということですが、現在行われております臨検の程度といいますか、あるいは方法といいますか、これは実際がどうであつて、それが国際慣行に一致しているものであるかどうか。この点についてお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/13
-
014・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 私の報告を受けました範囲で見ますと、米国の艦船等によつて受けている臨検は、大体普通の国際法の慣行によつているようであります。韓国側の船舶が行いますものは、往々にしてその範囲を逸脱しているように思われるのでありますが、しかしそうかといつて結局議論になりますと、向う側は自分はそんなことをしていない、こちら側はしていると言つて、水かけ論になる場合が多いようであります。しかし事実はそういうふうにわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/14
-
015・宮幡靖
○宮幡委員 朝鮮の問題は、これはまつたく水がけ論で、従いまして時間もありませんので、集約して結論的に御意見を伺いたいと思います。いわゆる防衛水域になるものは、出入禁止区域ではなく、危険区域であると解釈してよいのかどうか。それから防衛水域の範囲はどの程度のものであるか、あるいは李ラインと同一のものであるか、この点をひとつ明確にしていただくと同時に、外務大臣として、防衛水域の問題でラジオや新聞等に発表されたことは、必ずしも正しいとは思いませんが、それらによつて伝わつておりまする十一月初めごろの外務大臣の意向は、まあ出漁は情勢に応じてやるべきである、最終的な黒白はつけない方がいいというような、これは今の御説明の中で大体判断ができるのでありますが、つけようと思つても水かけ論になつてしまう。それ以上国際関係が悪化するということもよくないので、最終的な結論は時が賢明に解決する、あまり黒白をつけない方がいいんじやないか。これは私は個人といたしましては大体御意見の通りだと思う。しかもこれをつけようとしましても、日韓会談というものが行き悩みになつておりまして、いつ開くという見通しもない。単にこの出漁の問題だけではないのでありますから、さようなことになるのはやむを得ないと思います。しかしながら航海自由の原則というようなものを振りかざすと、防衛水域ができましても、必ず生業の保障ということはしなければならない。でありますから出漁が禁止的になつたということに対しては、私は国連軍に対しても十分なる抗議を申し込む余地がある。お話の中におきましても、ずいぶんこの点にお骨折りをいただいていることは察知せられるのであります。しかして最後に国連軍が申しましたことは、これは私はラジオで聴取いたしましたことをちよつとノートしておいたのでありますが、出漁を黙認するという言葉を使つている。これは英語では何と言つて発音したかわかりませんが、日本の言葉では黙認するのだ、出ていい時期には入つてもいいんだと私は解釈しているのでありますが、そういう段階に今なつているのかどうか。この三点だけを明らかにしておきたい。委員長に申し上げますが、あとの質問は、外務大臣に対しては時間の関係もありますから差控えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/15
-
016・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 防衛水域の性格につきましては、必ずしも戦闘が行われているから危険区域だという意味ではありませんが、軍事上の機密保持のための必要なる区域、こういうふうに考えております。たとえば武器を持つて北鮮側に陸揚げしようというような者を防ぐということもありましよう。それから北鮮側からの連絡者その他密航者を取締るということもありましよう。それから捕虜に対する監視というようなこともあります。いろいろの意味で、軍事上の機密保持及び軍事上の防衛の必要上ということであります。従つてその区域の中も、全然禁止されている区域で船が通つちやいかぬというものではないのでありまして、その中に一定の航路をあけまして、たとえば日本と韓国の釜山なら釜山との間のいろいろな物資輸送の船は、これは通れるのであります。そのかわり一定の標識をつけ、一定の時間にどこを通るというような連絡があつてそこは通つて行くわけであります。ただそれは、韓国との間に特殊の必要がある船が通るのでありまして、これは身元もはつきりしているから通る。漁船の方につきましては、先ほども申しましたように、日本の漁船と称して、実はそうでないものも現われて来るようなわけでありますから、これは一々臨検をする。またその間にいろいろ機密保持上必要があれば退去を命ずる。こういうような性質のものになつております。この点はなはだあいまいで申訳がないようなこともありますが、往々にしてこういう事情を御了承願わなければならぬ場合があるのであります。漁船としては行つていいのか悪いのかというようなことがあると思います。広い水域でありまするから、漁業に従事してもさしつかえない場合もあり、また同じ場所でさしつかえのあるようなことができる事情もあるのでありまして、この点は、黙認というのも少し私は言葉が過ぎるのじやないかと思いますが、要するに退去を求められたならば退去すべき水域、どうもこう御了解願うよりいたし方ないと思うのであります。
なお日韓会談につきましては、それほど私は再開が困難だとは思つておりませんけれども、ただいまの韓国側のいろいろな空気、たとえばもし日本の人間が国連軍に参加して来るような場合には、共産軍とは戦わずして日本軍と戦うとかいうようなことを伝えられたり、あるいは日本の新聞の代表者が京城から退去を命ぜられるというようなことがあつたりするような状況で、この空気を緩和することが第一に必要だと思つて、その方に努力をいたしておりまするが、私としては、本会議の外交演説で申しましたように、いろいろ準備を整えまして会談を再開したい。そして根本的にこういう問題を解決したい。また実際にこういう水域が設定されておりましても、韓国側との間の関係がもつとよくなれば、従つて韓国の鑑船が日本側に対して特に不必要な干渉をすることもなくなるわけでありますので、その方面からの空気の緩和ということも努力いたすつもりでいるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/16
-
017・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 漁船の拿捕についての国家的の損害は毎年出ると思うのですが、岡崎外務大臣に——実際今台湾政権と中共政権とが御承知のようにああいうようなことになつておりますが、その点について、いつまでもこういうようなことを続けて行かれるのかどうか。また外務省はこれに対してどういうような方法でやつて行かれるかという問題が第一点。
それから台湾政権と中共政権とあつて、今は御承知のように日本は台湾政権を認めているのでありますが、中共の現実の実力というものは、これは無視しがたい事実でありまして、それはイギリスが認めておるように、実際は中共の力が強いのでありますが、こういう点について一体政府は——こういうような漁船の拿捕というような問題は、無条約のために出て来る問題でありまして、いつまでもこれが続くようであれば、漁民は非常に大きな犠牲を受ける。ソ連の方の状況も同じてありますけれども、一番困るのは、こつちの方は中共と台湾の政権が非常に複雑になつていることであります。こういう点についての外務大臣の簡単なる御見解をひとつ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/17
-
018・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 まず中共との間の問題でありますが、中共関係につきましては、漁船の問題ももちろん重要でありますから、われわれもいろいろ苦心をいたしておりまするけれども、これにはいろいろ国と国との間の信義上の点がありまして、漁船の問題のために国としての外交方針というようなものをそのまますぐにひつくり返すということもできませんような事情でありますから、われわれの主張をまげない範囲において解決しようとして、第三国を通じて交渉等をいたして来たのでありますが、どうしてもこれは隔靴掻痒といいますか、直接の交渉ができませんために、十分な結果を得ておりません。これは私も認めるところでありまして、まことにどうも残念でありますが、今その十分な結果は出ておりません。国民政府、つまり台湾政府との間におきましては、日華条約交渉の最中にすでに話をいたしておりまして、その後だんだん話が進んで来ております。ただ、今まだ多少の議論の余地がありますのは、われわれの方では終戦以来台湾、国府側において抑留等をされた船は、抑留が二十九隻、撃沈が二隻、没収一隻、こういうふうでありまして、その他にも損害を受けながら脱出して来た船もある、その損害もあるのだというふうに話しておりまするが、この隻数については、たとえば撃沈した二隻というものは、そんなものはないんだというような向うの主張もありまして、まだ結果を申し上げるまでに行つておりませんが、この方は相当程度解決する見込みであります。
韓国側につきましては、もう御承知のようにいろいろありまして、今ずつとその交渉をいたしておりますが、これは直接の交渉の方法もありまするし、国連軍が向うで戦闘に従事しておる関係上、国連軍側に対しても話合いをでき得る立場にありますので、時間は多少かかりましようが、これは一括でなく、その都度だんだん古いものから解決して行くと私は考えております。いずれも系統立つたやり方をいたしておるわけじやありませんけれども、やはりこの際は実際的に早く解決する方がいいと思いますので、そのときどきに応じたやり方で、早くこつちへ船も漁夫ももどつて来るような措置をできるだけ講じよう、こういうので、その都度いろいろの方法でやつておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/18
-
019・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 時間を急がれるようですから、もう一点。ソ連の方の樺太からこちらの方の水域はどういうふうに処置されるお考えであるか。北海道の方でこのごろ大分拿捕されておる状況を聞きましたが、その点の処置です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/19
-
020・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 これの方は実は措置の方法がなくて困つておるのでありますが、これにつきましては、一番問題になりますのは、根室の先のところでありまして、これは海域が狭く、その間に元のマツカーサー・ラインがあるわけであります。ところがソ連の方はまだ講和になつておりませんから、マツカーサー・ラインが生きておるという建前をとつております。ところがそのマツカーサー・ラインの陸地側のところが、潮流やら浅瀬やらの関係上なかなかうまく通れませんで、うつかり通ると向う側に出て行く可能性が出て来ます。そのために抑留されたりいろいろされたりする船が出て来る、これが一番多いわけであります。これにつきましては、いろいろ妙なことでありますが、そのたびに新聞に出て、ことに東京の新聞は少くても、北海道の新聞に盛んに出たり、あるいはそこの住民が非常に心配して騒いだりしますると、いつの間にかそれが先方の耳に入るようでありまして、その結果ソ連側としても、日本の国民の、ことに北海道方面の国民の反感をつのらせるということは得策でないと考えておるのじやないかと思いますが、何となく帰つて来るのが多いのであります。これ1は、はなはだたよりのないやり方でありますけれども、まあ世論を動員してということが、一番ただいまのところは有効なような気がいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/20
-
021・奧村又十郎
○奧村委員長 宮幡靖君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/21
-
022・宮幡靖
○宮幡委員 外務大臣は次会に保留しまして、水産庁の長官に二、三続けて伺います。今度は法律案を主題として、外交問題は避けて、法律案について直接の関係のあるところを伺いたい。今年の十月下旬でありましたか、新聞紙上に発表されたところによりますと、韓国海軍の一方的措置によりまして拿捕された船が百四十二隻、乗組員が千三百九十二人、現在行方不明が二十隻、沈没八隻、死者六名、行方不明四名、未帰還が十隻で未帰還者が七十二名、こういう数字を発表しておりますが、これに対しまして今外務大臣も言われ、あるいは水産庁長官も言われましたが、韓国との交渉によりまして今どういうふうな解決に進んでおるか。さらには、ただいまの法案は、二十六年度の損害に対しまする再保険の給付の特別会計基金の足りないのを繰入れる法律案でありますが、二十七年度は、将来は別でありますが、今日現在きわめて近い時期におきまして発生しました損害が、今年度から見ました来年度の予算措置としまして、どの程度のものが繰入れ等の必要があるか、このお見通しをお話をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/22
-
023・塩見友之助
○塩見政府委員 今年度は大体一億五千万円ぐらいの繰入れでまかなえると見通しておるのでございます。来年度は現在の見込みといたしましては、五千万円程度の繰入れでやつて行けるのではないか、こういうふうに判断いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/23
-
024・宮幡靖
○宮幡委員 今の拿捕されました船、乗組員の措置についての交渉経過、どういうふうになりましたか、それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/24
-
025・塩見友之助
○塩見政府委員 拿捕されました船につきましては、外務省を通じまして相手国の方と交渉をしております。大体今までの経緯といたしましては、長いのも短かいのもございますが、船の方は帰つて参ります。大体漁獲物とか漁具とかいうふうなものは、とられる場合が往々にしてあるわけでございまして、船の方は大体において帰つて来るこういうことになつております。見通しとしましては、従来通りの交渉によつてそれを確保したいと思つております。また乗組員につきましては、これは乗組員の給与の保険をやりまする法律が先般の国会で通つておりまして、予算的な裏打ちが今度の補正予算においてなされているわけでありまして、それによつて一応一時的な救済はやつて参りたいと思つておりますが、この乗組員の方も、韓国側において抑留されました場合には、大体において従来の例によりますれば、外交交渉によつて帰つて参つておる、こういう状態になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/25
-
026・宮幡靖
○宮幡委員 大体わかるのですが、少しその点はつきりしないのです。十月の下旬に発表された、私が読み上げました数字が必ずしも正しいとは言いませんが、それらについて直接解決したものがあるかないか、それによつて今後起るべき事故——起るべきということはきわめて遺憾でありますが、どうも外務大臣の説明を聞いてみても、その他の関係の方々の説明を聞いてみても、また起ると思わなければならない状況にある。それがどういうふうに解決して行くのであるかということを見きわめなければ、これは単に保険でもつて補填するくらいの程度で日本の漁業が守られるとは私は考えていない。御承知のようにマツカーサー・ラインの中にとじ込められ、しかも近海漁業に専念いたしました日本の精鋭なる漁業は、すでにその近海の漁族をとり尽したと申してよろしい。もつと広漠なる地域にわれわれの漁船の活動を展開しなかつたならば、漁業振興などでむやみに金を出しまして、むやみに助成いたしましても、実際において水産資源の確保というものはできない。それはせつかくの国民の税金からなりまする金をむやみに助成という美名のもとに散布するだけであつて、抜本的な漁業対策にはならないと思う。そこでこれらの交渉は外務省を通じてというお話でありますが、具体的にどれだけ片づいて、今後こういう事故が起きましても早期解決ができる、漁民もある程度安心してこの海域に出漁できる、国連軍も黙認するといつております。そしてわれわれの、ともすれば転落して行こうといたしまする漁村の経済の発展をはかるということが緊要な問題なんだ。そこでこれらの問題がどういうふうに一つ一つ解決しおるか、このことを私は伺いたいのであります。この問題がなければ、保険制度なんというものでは、これはカバーできるものじやありません。その点について、もし必要があれば、資料も提供され、何という船がどういうところでとらえられて、どういうふうにして帰つて来た、こういう具体的なことを水産庁としては、われわれのこの国会へ報告していただきたい。われわれもこれらの事実を知らなかつたならば、漁村を代表いたします議員といたしましてその職責を全うすることはできない、これはもう真剣な問題であります。どうぞ具体的にその点をこの委員会において明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/26
-
027・塩見友之助
○塩見政府委員 十月下旬に発表されました数字というのは、私今手元に数字を持つておりませんけれども、韓国だけではそんな数には上つておらない、こう考えます。それからまた韓国関係につきましてのただいま御要求のありましたところの具体的な事例等について、どういうふうに解決されておるかという点につきましては、ただいま資料を持つて来ておりませんので、詳細な資料を整理いたして、あらためて御提出いたしたい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/27
-
028・宮幡靖
○宮幡委員 それでは、ただいまの水産庁長官の御説明によりまして、資料の提供を得まして、さらにもう一回質問を継続することにいたしたいと思います。本日はこれでやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/28
-
029・奧村又十郎
○奧村委員長 ほかに御質疑はございませんか。——質疑はないようでありますから、本日はこれをもつて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。
午前十一時四十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504629X01019521206/29
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。