1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年二月五日(木曜日)
午前十一時二十二分開議
出席委員
委員長 坂田 英一君
理事 野原 正勝君 理事 原 健三郎君
理事 井上 良二君
秋山 利恭君 大島 秀一君
小笠原八十美君 木村 文男君
高見 三郎君 中馬 辰猪君
寺島隆太郎君 松野 頼三君
村松 久義君 高倉 定助君
川俣 清音君 芳賀 貢君
山本 幸一君 中村 英男君
出席政府委員
農林事務官
(大臣官房長) 渡部 伍良君
建 設 技 官
(河川局長) 米田 正文君
委員外の出席者
専 門 員 難波 理平君
専 門 員 岩隈 博君
専 門 員 藤井 信君
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本日の会議に付した事件
海岸砂地地帯農業振興臨時措置法案
(野原正勝君外九十九名提出、衆法第三一号)
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001・坂田英一
○坂田委員長 これより会議を開きます。
海岸砂地地帯農業振興臨時措置法案を議題といたし、昨日に引続き審査を進めます。質疑または意見があれば発言を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/1
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002・井上良二
○井上委員 海岸砂地農業振興に必要なる経費は、大体推定量百七十億ほど使う計画のようであります。ところが、この海岸砂地の農業振興に一番重要な施設は、まず潮風による被害を防止するということであろうと思います。そこでそれに必要なる防災林の施設が行われるだろうと思いますが、この防災林の施設をいたしました場合と、施設をしない場合との経済的効果を各作物別に調べてみると、水稲で約一〇%、麦で約一〇%、そこらが大体米麦でもつて防災林の施設がありますことによつて増産ができる。ところが逆にさつまいも、大豆等に至りますと、防災林をしたからということで一向経済的な効果は期待できません。そういう実情にあるように考えられます。そうしますと、一体この百七十億の厖大な経費を使つて、完成後の経済的効果というのはどういうことになるのか。政府は、この法案がかりに成立して予算化されて、計画的な事業を施行した後においてどういう経済的効果が具体的にあがることになつておりますか、それをひとつ説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/2
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003・渡部伍良
○渡部政府委員 この法律が施行されまして海岸砂防林ができますると、今までは落花生でありますとか、かんしよ等のように、耐久力の強い作物だけしかできなかつたものが、麦だとか、その他もつと上等の作物ができる。そういう見地から増産効果は相当ある。こう思います。今までそこに麦をつくつておつたのに対して砂防林をつくつたところの実験的効果は、ただいま御指摘になつたように、二割あるいは三割というような統計も出ておりますが、今までの各地の実験の結果を見ると、多いところは三割近くまでも行つておりますし、少くとも一割以上は効果的だ、こういう結果になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/3
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004・井上良二
○井上委員 すでに現在防風林のある地帯とない地帯と経済的効果を比較対照したものによりますと、今申す通り米麦だけで一割くらいしか増産になつていないという大体の統計が出ておるわけであります。単にこれは防風林の場合だけでありますから、そこに畑地灌漑をし、あるいはまた客土を入れるというような新しい農地造成の結果の経済的効果については期待するところがあろうと思いますが、事実上われわれはどうもこの事業にそう大きな経済的効果の期待がかけられぬのじやないかと思います。ついては政府はこの事業は一体どのくらいの年度計画でやろうといたしますか。そうして本法案がかりに国会を通過いたしました場合に、これに必要な二十八年度予算の計上はどういうぐあいになつておりますか、その点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/4
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005・渡部伍良
○渡部政府委員 増産の効果は、防風林ができまして、そのほんとうの効果を出すのには二十年もかかるわけでございます。その間、いろいろな土地の事情で低度の効果から高度の効果になるわけであります。なおその上にこの法案によりますと、たとえば畑地の灌漑施設等も、その土地の事情によつて総合計画の中に織込んで入れるということを大いに推進しようということになつておりますので、そうしますれば五割以上の増産は容易に得られるのではないか、こういうふうに期待をしております。
次に、この施設に対する二十八年度の予算の組み方でありますが、御承知のように予算を組むときには、この法律案の提案の話がありましたけれども、一応われわれのところで従来から調べておるところに基きまして、防風林約八千万円弱、畑地灌漑等を三千万円弱予算を組んでおります。これは従来もこういう地帯に対してある程度の施設を講じておりますので、それの引継ぎということになるのであります。この法律案ができますと、この法律に基きまして各地の振興計画ができますので、それに基きまして、具体的にどういう計画で造林をやり、また畑地灌漑等の施設をやるということがはつきりしますので、それに基きまして予算を組み直しまして、できるだけ早い機会に——と申しますのは、ただいままでのお話だと、二十八年度の補正予算は組まないという政府の方針のように承知しておりますが、そうしますれば、この振興計画は、この法律案が通つて、やはり夏ごろまでかかりますから、それをだんだん予算化する、あるいは予備金なりあるいは補正予算の機会があれば補正予算、さらに来年度の予算、こういうふうに実現して行きたいと思います。この法律案の附則にありますように、三十五年までの七年計画で実施する、こういうふうになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/5
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006・野原正勝
○野原委員 井上委員の御質問で、この海岸防災林の効果なるものが、せいぜい一割ぐらいではないかというような、非常に効果が少いのではないかというような御質問であつたのであります。これは過大に見ることも危険でありますが、あえて過小に評価する必要はない。私は、井上委員の一割というのはどうも非常に過小ではないかと思います。まだ十分調査ができておりませんけれども、今まで調査してみましたものによりますと、たとえば陸稲のごときものは、大体二倍になつておる。また作物の種類にもよりますが、一番少いものでも二割は増産されておる。大体平均いたしまして三割以上というところは間違いないところだと思う。この辺は資料がまだ十分でありませんけれども、いろいろ調べました結果から見ましても、十分その点は言えると思うのであります。でありますから、海岸砂地の防災林の造成によつての効果という点から見ますと、相当防災林が成長した後でなければ、それが十分な効果を発揮できないとしましても、防災林の効果は、少くも一割やそんなものではない。非常に過大なものに評価するのもどうかと思いますが、井上君の御質問のように非常に過小に見積られておる点、提案者といたしまして、はなはだ遺憾に考えております。やはり正当に評価いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/6
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007・井上良二
○井上委員 私、昨日休んでおりましたからわかりませんが、この法案による事業の場合、海岸線の防潮堤といいますが、干拓の場合は干拓堤防といわれておりますが、この防潮堤防は、背後地の海岸砂地地帯の農業を振興する上に絶対に必要なものでありますが、これはつくる予定でありますか。そういうものはつくらないで、単に海岸に松の木を植えるとか、あるいはその他必要な防風施設を施して、もう海岸は波に洗われようと風に吹かれようとそれはほつて置く、それではせつかく背後地に対し、農地造成に必要な資金を投じましても何もならないことになりはしないか、当然ここに海岸堤防のことが問題になつて来ると思うのですが、これはどういうことになつておりますか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/7
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008・野原正勝
○野原委員 きのう同じような趣旨の御質問がございましたときに、私は見解を披瀝しておいたのでありますが、この海岸砂地地帯農業振興臨時措置法案は、海岸線と申しましても、特に直接潮に洗われている地帯の護岸ということは考えていないのであります。砂丘地に対しまして植林を行う、防災林をつくる、そうしてその背後の農耕可能な地帯に対して農耕地を造成する、あるいは現在農耕地になつているところの畑地灌漑を行う、あるいは客土その他の土地改良事業を行いまして、総合的に土地の生産力を高めて行こうという考え方でありまして、直接には海岸の潮に洗われている地帯に対する土木的な工事は考えていないのであります。それは海岸保全法案等によりまして、それらの問題が十分に解決をされることを期待しているのでありますが、ただ万一海岸保全法案が成立しないで、海岸保全に対する措置が適切でない、どうしても海岸の直接潮に洗われる地帯に対して何らかの措置をしなければ、その背後の農耕地が侵されるというような場合には、審議会の方で十分検討して、何らかの措置をとる必要が起つて参ると思いますが、ただいまのところでは、造林するのに必要な最小限度の一時的な工作、つまり、小さいくいを打つて、そこにわらを敷くとか、直接造林木を守つて飛び砂を防ぐというように、一時的な造林に伴う工作というか、そういつたものは当然必要であろうと思いますけれども、それ以外に永久的な施設をする護岸工事をやるとかいうようなことは、全然実は考えてなかつたのであります。でありますから、海岸保全法案が成立をされることは大いに望ましいことであり、われわれとしましては、海岸保全法案の成立により、海岸が十分に保全されることと併行いたしまして、海岸の背後地帯の造林、そしてまた農業の土地改良、こういつた問題を考えて行きたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/8
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009・井上良二
○井上委員 この際建設省の政府当局に伺うのですが、この法案の施行にあたりまして、建設省が所管しようとする海岸保全の事業と、すでに成立しております砂防法等の関係において、本法律との競合すべき点、また競合しない点等について、何かはつきりした説明がまだされておりませんので、それらの点について専門家である建設省の米田河川局長から説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/9
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010・米田正文
○米田政府委員 この法案の中にあります農業振興計画の内容とからんで、建設省の所管いたしております砂防の指定地とこれが重複をするような場合においては、今御質問のような問題が起きるかと思います。そこでこの法案の農業振興計画の中には砂防を含まないということを明らかにしておいていただけば、両者の競合はないと思います。同じく海岸保全の問題でありますが、これは現在法案がまだ提出されておりませんので、今後の問題でありますが、この問題も同様の趣旨でこの計画の中に入らないということを明らかにしておけば、今後の海岸保全の方の進捗に伴いまして、その中で善処いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/10
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011・井上良二
○井上委員 なるほど建設省の立場とすれば、かりに砂防法によつて砂防指定地を管轄して行く、それから海岸保全法が成立した場合は、海岸保全の管轄を建設省が所管して行く、だからそれとまぎらわしき法文を規定されることは困るから、そういう関係面に対しては、明確な法的規定を本法の中にしておいてくれ、こういう御希望はごもつともであります。ところが建設省がやろうとする海岸保全並びに砂防をせなければならない砂防指定地というのは、その背後地が人家が密集しておるとか、あるいはまた農耕地として非常に適当な地帯であるとか、あるいはまた森林その他の重要な地帯であつて、ここに海岸保全堤防なり、砂防施設を必要とするということになつて、そういう経済的効果の重要な地点が先に取上げられて、必要な施設が行われるのではないかとわれわれは推定するのであります。そうなつて参りますと、背後地は人家の密集しております場合は、当該都市、市町村において建設省との間に必要な施設についての計画実施が行われると思いますが、農地の場合になつて参りますと、農地保全の見地からかくのごとき砂防が必要である、かくのごとき堤防がこの地先には必要である、こういう農地保全の必要から砂防なり、堤防なりについての意見が当然起つて来ようと思います。そこで両者が背後地の経済的効果や、また背後地の経営、運営等について十分な理解と協力があります場合は、問題はありません。ところが農林省の考え方と、建設省の考え方が、予算と地元のいろいろな要求等に支配されまして、両者の意見が一致しない場合が起り得る危険性が出て参ると思います。その場合、一体どういう方法によつてこの問題を解決しようとするか、つまり海岸堤防に対する共管です。農林大臣または建設大臣が共管をするという一つの方法もありましよう。しかし堤防をつくつたのはおれの方であり、堤防の維持管理はおれの方であるから、建設省の所管である。ところが農林大臣としては、背後地の農地の維持、造成、管理の上から、当然その砂防海岸堤防に対して必要な施設を要求する。しかしそれは予算や計画等の関係から、農林省の言う通りには行かぬ。こういう問題が起つて来ようと思うのです。そこでそういうことになりますから、背後地が農業地帯の場合は、農林省並びに建設省において十分に連絡協調でき得る法的基礎を明らかにしておきませんと、問題は後日に紛争の種をまき起す結果になろうと思います。そういう点に対してどうお考えになつておりますか、建設省の意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/11
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012・米田正文
○米田政府委員 ただいまのような問題は予想され得るのでありますが、これはこの必要な地帯の振興の問題のみでなく、一般にもそういう問題が予想されますので、海岸保全法の今後の立案に関しましては、両省で十分協議をした上で今のような問題を明らかにして、法案を提出いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/12
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013・井上良二
○井上委員 そこで今度は野原さんの方に伺うのですが、あなたの今の御説明を聞いておると、別に海岸地帯に対して護岸工事はしない、単なる防災林あるいは防災施設を行うということでございます。そうしますと、この防災林並びに防災施設をやる海岸地帯というものは、やはり海岸線から相当内面へ入り込んだ地帯にやることになろうと思います。でないと、せつかく施設をいたしたものが、強力な潮風の侵害によつてその施設が被害を受けるということはあり得ることでありますから、そういう被害をなくするためには、海岸線から相当後退をした地帯に防災林がつくられる、こういうことになりはせぬかと考えられます。そうなりますと、単なる防災林施設のための農業振興ということなら問題はないのですけれども、もしそういうように海岸からはるかに後退をして、そういう施設をやろうということになり、それに伴つて畑地灌漑とか客土の導入でありますとか、区画整理であるとか、農道であるとか、そういう施設をあわせて行うということになるならば、それは砂丘地帯であつて、ことさらに海岸という言葉は使わなくともいいではないか。また海岸以外の地点に対しても、やはり砂丘地帯はあるのでありますから、従つてその海岸という言葉をとつてしまつたらどうだ、こう考えますが、提案者の御意見はいかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/13
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014・野原正勝
○野原委員 海岸の地帯からはるかに後退したところに対して、防災林を造成するというようなことに極限してお考えになる必要はない。われわれとしましては、一応海岸線から引下つておりまして——直接常に潮に洗われておるとかあるいは高潮がかぶるというような所に、多少の施設をいたしまして造林をいたしましても、これは育ちません。ですから、おのずから海岸の波打ちぎわからある程度一歩後退した所に、植林をすれば十分それが成育し得るという所に、海岸の防災林をつくるわけであります。それではその距離はどのくらいかということになりますが、これは地勢によつてそれぞれ違いますけれども、そうはるかに後退するというようなことは当らないと思うのです。五十メートルのところもあろうし、あるいは潮の関係では三十メートル、二十メートルでもよろしいじやないかというふうにも考えております。しかしまた場所によつては、百メートル以上も後退しなければ、技術上植林しても活着できないというような場所もあろうかと思います。それぞれの場所によつてあえて海岸に護岸工事等の特別な土木施設を行わなくとも、そこに多少の海岸砂地造林を行う最小必要限度の施設を行うことによつて、防災林が造成可能であるという見通しの上に立つて、防災林を必要な幅に造成する。その背後に対しては、これは食糧増産の可能な部分として、あらゆる施設を行つて、客土を行う、あるいは土地改良を行うというようなことによつて、農業生産を高めて行くということに相なるわけであります。その辺はそれぞれの立地の条件に即応した、最も現地に立脚した施設として考えて行きたい。あえて何メートルまでがどうというようなことは、この場所では即断はできないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/14
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015・井上良二
○井上委員 今の防災林の問題ですが、防災林並びに防災施設——この防災施設というのには、一つはやはり砂防施設が入ると思います。砂防施設は全然しないのですか。その場合建設省が申す砂防指定地という問題とどう一体区分しようといたしますか、これを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/15
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016・野原正勝
○野原委員 いわゆる防災林造成のための施設でありますから、それがときに一時的には砂防の施設と見なされるような場合も多少起きて来ると思います。しかしながらこれはあくまでも砂防林が造成されるまでの間の一時的施設というふうに考えてやつて行きたい、永久的な施設として特別に考える必要はないというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/16
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017・井上良二
○井上委員 そこが非常に提案者の方でも問題であろうと思いますが、この防災林を維持育成する、つまり防災林としての効果が発揮されますまでは、十五年二十年を要すると思います。そうなりますと、その間の防災林の維持育成に必要な砂防というものは当然やらなければ、投下した施設が何の役にも立たぬことになつてしまいます。そこで問題はその砂防指定地との建設省との競合がそこに起つて来はせぬか、こういう問題が起つて来ます。だから砂防法による砂防指定地という問題と、防災施設を維持育成して行く場合の砂防という問題との間の区分けを、どこでどうするか、建設省の事務当局というか、政府当局の意見を聞くと、本法に砂防指定地は除くということを規定してもらいたい、こういうことを言明しておる。そうなると、砂防指定地というのは、建設省の方では、おそらくこの海岸の砂地地帯を指定しておるだろうと思う。そうなつて来ると、この法案において海岸砂地農業振興に一番重要な役割を果さなければならぬ防災林の造成について、その防災林を維持育成するための砂防施設というものが、砂防法との関係において競合して来る。片つ方は片つ方で、国の予算をとつて砂防施設をやろうとすると、こちらはこちらでまた予算をとつてやろうとする。そうすると同じ目的に二つの省から金がつぎ込まれるということになつて来るのじやないかと思う。地元としてはいいかしらぬけれども、国としてはそんな無計画なことはできません。だから法律をつくるわれわれとしましては、やはりそういう点にもつとこまかい事務的打合せをしていただいて、そういう防災林をつくる場合の砂防施設は、砂防指定地から除外するということにしますか、それともこちらが防災林設営の指定をいたしました場合は、当然それによつて砂防もやつてもらう、こういうことに建設省の方を譲つてもろうか、どつちかしませんと、ここでけんかのもとです。だからそれを提案者の方で、建設省の方とこの問題についてもつと明らかにしておいてやらぬと、地元が張り合つてしまつて、仕事ができぬということになつてしまいますから、上ではそれはうまく政治的に話をしても、それが下におりて行きました場合に、おのおのなわ張りがあり、予算関係があり、計画があつて、なかなかこつちの思うように仕事をしてくれぬ。やろうとすれば、そこはおれの方の指定地だ、指定地じやないということでもめて、それの許可をとり、それの了解を得るために、むだな日にちがかかつて、一向仕事が進まないというのが今日の各局の対立した現状であります。だから法文にそういうことの混雑を生じない明らかな規定をやはりつくる必要があります。だからあなたのおつしやるような防災林造成に必要な砂防をやらなければならぬ、防災林がりつぱになりますまでの間の維持育成に必要な砂防というものは当然しなければなりませんから、そうなりますと、その砂防法による砂防指定地との混雑が生じますから、その点を明確にひとつ打出しておいてもらわなければいけません。これは今ただちにここで答弁を求めることは困難でありましようから、建設当局との間で、事務的にそのなわ張りを明らかにするようにお話を願つて、そうしてそれを法文の上に明記しておくということが、当然必要でないかと私は考えますから、これは提案者の方で、そういうようにおとりはからいを願いたい。
それから私が非常におかしく思いますのは、ただいま参考にいただきました海岸砂地分布概要図、これを見ておりますと、これは急いでこんなことをしたのだろうと思いますが、おそらくずさんきわまる分布図でありまして、たとえて申しますと、高知県の太平洋岸の、高知を中心とする以東の方は、海岸線が相当ございます。ところが北西に至りますと、まつたくこれは絶壁でありまして、ほとんど海岸線はございません。そういうことや、あるいはまた瀬戸内海の各沿岸を見ましても、相当砂丘地帯があるのに、一向その点は放任してしまつてある。こういうわけで、一体ここに出ておる推定事業量というのは、これはどこの数字を持つて来てこんなものをこしらえたのですか。いつこれは測量したのですか、これだけあるなんていうことは。それは法案が出たから、参考資料をつくらなければならぬということによつて、あわてて、そこをつじつまを合わしておけ、こういうことでやられたのではないかというようなにおいが、はなはだ多いのであります。御承知の通り、先般急傾斜地帯の農業振興法を成立させます場合においても、急傾斜地帯に該当する農地が、全国にわたつてどれだけあるかというおよその推定はされても、具体的な該当面積というものは、やはり一、二年調査しませんとはつきりした数字が出て来ない、こういうことであつたのです。私はそれがほんとうに正直なことであろうと思うのです。一体この法案の対象となる砂丘地の農業振興をやらなければならぬ地帯は、どこから、どういう方法で出されたのですか。これをはつきりしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/17
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018・渡部伍良
○渡部政府委員 お話の通りでありまして、この砂丘地の振興法のそもそもの発端は、主として日本海側、太平洋側でいえば静岡、そういう非常に砂丘地の多い所から、どうしても特別法によつて総合的な計画を必要とする、こういう声が出て来たのであります。そういう所の調査は相当正確に出ております。それに乗り遅れては困るというので、県からわれもわれもと資料が出て来たのであります。お話のように、この法律が通りますと、県から振興計画をとります。その振興計画に基いて、お話がありましたように、おかしいではないかというところは、結局必要に応じて現地調査までやりまして、そうして指定する。県がかりに指定したいと言つて来ても、一目瞭然、常識上おかしいではないかというようなところがありますしたら、県と食い違えば、それでは現地調査、立会い調査をやろうじやないかということで指定されますから、この図面は一応概括的な概念だけ、どの地方にいわゆる問題の箇所があるかという程度の意味でごらん願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/18
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019・井上良二
○井上委員 まことにずさんきわまることで、これ以上掘り下げて質問すると困るだろうと思うから、これ以上基礎的な資料については質問いたしませんが、次に建設省の河川局長に確かめておきたい。あなたの方から本農林委員会の委員長に対して、本案審議の過程において、海岸保全法や砂防法に関係するきわめて重要な事態があるから、特別に考慮を願いたいという、意見書か申入書か知らぬが、出ておるが、一体そういうことは、何の権限でやつておるのですか。どういう権限で、そういうことができるのですか。立法府に対して行政庁の一政府委員が、どういうわけでそういうことができるのですか。そこを明らかにしておかぬと、今後国会の審議の上に、これは非常に問題になつて来ますから、はなはだあなたには済まぬけれども、これは明らかにしておかなければならぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/19
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020・米田正文
○米田政府委員 これは、おしかりを受けましたが、実は予算審議をされるということを承りまして、建設省としての意見を申し上げまして、御参考に供し、お願いを申し上げるという程度の意味でございますから、御了承願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/20
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021・井上良二
○井上委員 もし事務当局で、われわれが立法上いろいろ疑義が起り、かつ自分の責任をもつて所管をしておる所管内に、新しくつくられる法律がきわめて重大な影響を持ち、その所管事項を遂行する上にその責任が持てないというような事態が起ります場合は、当然それは建設大臣なり、またはその手配を通してやるべきであり、一局長がそういう申入れをしたことは、古今東西、あなた一人である。なかなかえらいと思うておりますが。そこで問題は、さつきから私がこの関係についての質問を展開いたしておりますが、どうです、あなたの申入れの趣旨が大体わかつて参りまして、掘り下げて今質問をいたしたのでありますが、どうです、両方で話の妥協がつく見込みがありますか。砂防はおれの方や、農地の造成は農林省や、そこで両方が対立してけんかをやられたのでは、迷惑するのは末端の国民ですから、その話がつくような見込みがありますか、これをまず明らかにしておかぬといかぬと思いますが、その点どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/21
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022・米田正文
○米田政府委員 問題は砂防法と、それから今後提案になるであろう海岸保全法との問題でありますが、これは私ども実は率直に申し上げますと、この農業振興計画の中に、この二つの問題は切り離して、それはそれぞれの所管省において協議しながら運営をして行くという方式をとるならば、その実施も不完全にならない、こう考えております。この問題については、先ほど御指摘もありましたが、農林省とまだ協議を十分いたしておりませんので、私どもとしては、そういう趣旨で話合いをまとめたいと考えております。なお実施の運用に関しましては、そういう協議をいたしましても、なお問題が完全無欠に解決されるというわけには参らぬかもしれません。最後に参りますと、まだ問題が残るかもしれませんが、これらの問題は審議会がこの法案ではできるようになつておるようでありますので、その審議会を通じて、計画の内容に至つては協議をいたすこともできるだろうと思います。そういうふうな考え方からいたしますと、建設、農林の両者でこの法案を運用する今後の方針は、お互いに定め得る、協議ができる、私はこう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/22
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023・川俣清音
○川俣委員 ちよつと関連して。今のような御説明であれば、あえて委員会に申入れ等をされる必要はなかつたのではないですか。また次官会議というものは、どういう意味で開かれるのかといいますと、各省間にまたがるそういう渉外事項を整理するために開かれている次官会議であります。その次官会議を利用されないで、あるいは事務当局の間において打合せもされないで、突然この委員会に対する申入れ等が行われましたということについて、これは次官などと打合せされてやつたのですか、それともあなた独断の考えでやつたのですか、この点を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/23
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024・米田正文
○米田政府委員 この申入れは、先ほど御了承をお願いいたしましたように、軽い意味で、口頭でお話申し上げるのが適当であつたかもしれませんが、一応議員提案として本委員会で取上げられるということを急にお聞きいたしたので、建設省としての内部では話はいたしましたが、次官会議等を通じての処置でなくて、河川局だけとしての意見を申し上げたのでありまして、こういう意見をわれわれは持つておるということだけをお知らせして、善処をお願い申し上げたという程度で、あまり重要な問題としてお考えになつていただくよりも、むしろ先ほど申し上げましたように、軽くおとりを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/24
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025・川俣清音
○川俣委員 これは委員長にお尋ねするのですが、これは公文書として取扱われるおつもりですか。あるいは今説明されたように、ごく非公式なものとして取扱われるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/25
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026・坂田英一
○坂田委員長 委員長からお答えいたします。これは口頭で私のところへお話に相なるはずであつたと思うのでございまして、私は公文としては取扱いません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/26
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027・高倉定助
○高倉委員 ちよつと関連して。この配付になりました海岸砂地地帯農業振興臨時措置法案の審査資料としてここにあるのと、それからこの図面と合致しないところがある。北海道の図面がここには相当あるのですが、こちらの方にはない。これはいいかげんなものだと思つていいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/27
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028・野原正勝
○野原委員 図面の方がいいかげんなものです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/28
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029・坂田英一
○坂田委員長 ちよつと申し上げますが、建設省の米田河川局長に御質問の点だけを固めてされるよう、皆さんにもさように御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/29
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030・川俣清音
○川俣委員 海岸保全法を用意されておるという説明ですが、これは政府提出法律案になる予定ですか。それともその他に考えられておりますかという点が一点、もう一点は、砂防法の指定地域の面積並びに二十八年度砂防法に関する予算、また計画されております砂防法に基く予算、こういうものについての御説明を願いたい。と申しますのは、砂防法という法律の所管をされておりますが、指定地域を持つていながら、指定だけされても予算の裏づけがなければ、権益を人に侵すなということだけに相なります。その付近の国民の利益にはならないと考えますので、その予算の裏づけをどのくらい持つて砂防法を施行されておりますか、この点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/30
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031・米田正文
○米田政府委員 ただいまの御質問の第一点の、海岸保全法の提案の問題でありますが、これは議員提出として提案をされるものと存じます。政府としては、政府提案では行かないつもりでございます。
次の砂防法の予算の問題でありますが、これは実は今海岸だけの問題についての資料を持つておりませんので、御質問に対して的確なお答えにならぬのでありますが、砂防事業全体といたしましては、二十八年度に四十七億五千八百万円の予算で大蔵省と折衝を終りまして、今予算提出をいたしているのでございます。もし内容を詳細に御必要があれば、次の機会にお話申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/31
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032・川俣清音
○川俣委員 海岸保全法を議員提出法律案にする予定だということでありますが、今あなたからの申入れ等から見ましても、この法案の本質から見ましても、各省にまたがる点が非常に多い、しかも農林省設置法あるいは土地調整委員会設置法の改正、あるいは水産資源保護法の一部改正等、法律の改正が相当広汎に付属する問題であります。こういう各省にまたがるような法案は、議員提出法律案とするよりも、今あなたが御指摘になりましたように、十分事務的な連絡をとつて出さなければならない法律案だと思いますので、これはそういう観点から政府の責任においてなすべきものだと思うのですが、この点についてのお答えを願いたい。それから第二の点については、わざわざ御出席に及びませんから、この委員会に資料をお出し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/32
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033・米田正文
○米田政府委員 ただいまの海岸保全法提案の方法でありますが、実はもう大分前から参議院で取上げられて御研究を進められておるようであります。われわれとしては、むしろ建設省、農林省並べて意見を聴取されておる状況にございますので、現在のまま進む方が早く上程の運びになるのではないかと存じますので、私の方としては、ただいまのところ今のまま進められることを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/33
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034・井上良二
○井上委員 ちよつと関連して……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/34
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035・坂田英一
○坂田委員長 河川局長に対する質疑を一応先にしていただきたいと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/35
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036・井上良二
○井上委員 河川局長はよろしい。この際特に政府及び提案者にも伺つておきたいのは、せつかくこの海岸砂丘地の農業振興の法案を上程して、必要な予算的措置も考慮されつつ、本案が審議されておりますときに、この海岸地帯が最近国連軍または駐留軍等の飛行場、射撃地等に使われる場合が非常に多く、せつかく潮風の防災林としてつくつてありましたものが、どんどん伐採をされております。そういうことに対して、一体政府はどういう対策を講じ、またこれらの処置に対して、抗議なりあるいは反対意思なりを示して来たかどうか。これは最近福岡県に起つております。これらの点について、政府の見解を伺いたい。なおまた提案者におきましても、かくのごとき事態が部分的に起つておるという事実を認識されて、せつかくこういう法案をつくる場合に、それが非常に逆影響を及ぼしますから、そういう点についてのお考えもこの際承つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/36
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037・渡部伍良
○渡部政府委員 防風林等が駐留軍その他の演習等によつて損害をこうむつておるという事実は、所々に見受けられるのであります。これに対しましては、農林省としましては、その防風林あるいは保安林等の建前を主張して、そういう被害の起らないようにそれぞれの方面と交渉しております。なおそれらの被害をこうむつた場合の処置につきましては、ただいまそれに対する特別損害補償の法律が国会に提出になつておりますので、それが成立しますれば、農地等の損害補償に準じて補償が確保される、こういうことになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/37
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038・井上良二
○井上委員 時間がありませんから、簡単にもう二点だけ伺つておきます。それは一つは防災林の造成に関する政府の対策であります。御承知の通り海岸防災林は、その樹種が特殊なものに限られております。たとえば黒松でありますとか、あるいはニセアカシヤでありますとか、ねむというような非常に造林技術を要します樹種に限られております。従つて造林に関する特殊な技術を必要といたしますので、それに対する対策はどうか。それから一つは、計画が相当大きな計画ですから、広範囲にわたる造林をせなければなりません。そうなりますと、ここに苗木の問題が起つて参りますが、そういう特殊の樹種の苗木に対して、一体どういう対策を立てられておるか。またせつかく造林をいたしましても、そこが荒される、あるいは伐採をされるという危険も起りますが、そういう防災保安林に対して、一体どうこれを監督して行こうとするか、また防災林に対する管轄、監督権はたれが持つてそれをやるのかという問題がここに起つて参ります。
それからいま一つは、これら農地の振興をしようとする海岸地帯は、どつちかといいますと、半漁半農といいますか、漁業を半分やつておりまして、農業を片手間にやるという地帯が多いじやないかと考えます。従つて耕地が零細でございますし、これが農業収入を増大して行きますまでの間には、相当長い農業指導というものが必要になつて来ようと思いますが、そういう農地の造成に伴つて砂丘地に対する新しい特別の農業指導というものに対して、一体どういう考え方をお持ちになつておるか、これがはつきりして参りませんと、せつかく国費を投じた農地の造成が役に立たないことになつてしまいますので、営農に対する改善、指導という問題について、どういう対策を考えられておるか。これらの点についてお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/38
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039・渡部伍良
○渡部政府委員 防災林の造成に関しまする技術とか苗木の点、管理の点等については、それぞれの予算的な施設も考えております。大きいものは国営、県営、それからそれぞれの村で防風林の造成をやつて行く、こうなると思います。
それから砂丘地帯の営農指導の問題でありますが、お話のような点がありますので、この特別法によりまして農業振興計画を立てて、その計画に盛られた各部面を改良普及員、あるいは農業団体等の技術者その他の部面を動員して、集中的に指導して行きたい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/39
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040・坂田英一
○坂田委員長 本案に対する質疑は引続き次会に続行することとし、本日はこれにて散会いたします。
次会は公報にてお知らせいたします。
午後零時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101504988X01819530205/40
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