1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年十二月二十三日(火曜日)
午後三時五十五分開議
出席委員
委員長 大上 司君
理事 飯塚 定輔君 理事 赤城 宗徳君
理事 木原津與志君
小澤佐重喜君 大野 市郎君
大橋 武夫君 大村 清一君
川島正次郎君 中田 政美君
中峠 國夫君 永山 忠則君
村上 勇君 山崎 巖君
岡田 勢一君 椎熊 三郎君
園田 直君 松浦周太郎君
井伊 誠一君 受田 新吉君
冨吉 榮二君 井手 以誠君
上林與市郎君 原 茂君
岡田 春夫君
出席政府委員
郵政政務次官 平井 義一君
委員外の出席者
専 門 員 稲田 穰君
専 門 員 山戸 利生君
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十二月十九日
委員椎熊三郎君辞任につき、その補欠として愛
野時一郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十日
委員大橋武夫君、川島正次郎君、小山長規君、
佐藤善一郎君、鈴木直人君、高木松吉君、田中
角榮君、中田政美君、前尾繁三郎君、春日一幸
君、松井政吉君及び楯兼次郎君辞任につき、そ
の補欠として岩本信行君、田中萬逸君、三木武
吉君、永野護君、前田米藏君、小平久雄君、大
野市郎君、犬養健君、岡野清豪君、土井直作君、
井伊誠一君及び伊藤好道君が議長の指名で委員
に選任された。
同月二十二日
委員田中萬逸君、山崎巖君及び井手以誠君辞任
につき、その補欠として川島正次郎君、保利茂
君及び鈴木茂三郎君が議長の指名で委員に選任
された。
同日
委員保利茂君辞任につき、その補欠として山崎
巖君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十三日
委員犬養健君、岩本信行君、岡野清豪君、小平
久雄君、永野護君、前田米藏君、三木武吉君、
愛野時一郎君、川崎秀二君、廣瀬正雄君、土井
直作君、伊藤好道君及び鈴木茂三郎君辞任につ
き、その補欠として永山忠則君、小澤佐重喜君、
中田政美君、大村清一君、中峠國夫君、村上勇
君、大橋武夫君、椎熊三郎君、岡田勢一君、松
浦周太郎君、受田新吉君、原茂君及び井手以誠
君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関
する法律の一部を改正する法律案(参議院提出、参法第五号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/0
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001・大上司
○大上委員長 これより開会いたします。
簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
ただいま委員長の手元に、大橋君より本案に対する修正案が提出されておりますので、提出理由の説明を求めます。大橋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/1
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002・大橋武夫
○大橋(武)委員 私は自由党を代表いたしまして、本案に対しまして修正案を提出いたしたいと存じます。修正案を朗読いたします。
簡易生命保険及び郵便年金の積
立金の運用に関する法律の一部
を改正する法律案に対する修正
案
簡易生命保険及び郵便年金の積立
金の運用に関する法律の一部を改正
する法律案の一部を次のように修正
する。
第四条第二項の改正規定の次に次
のように加える。
附則第三項を第四項とし、第二項
の次に次の一項を加える。
3 昭和二十八年度において新たに
積み立てられた積立金について
は、第三条第一項の規定にかかわ
らず、当該年度に限り、その二分
の一は資金運用部に預託するもの
とする。
附則の改正規定中「4」を「5」に、
「5」を「6」に改める。
本修正案を提出いたしました理由は、原案において想定せられておりますところの資金の運用権の移管ということにつきましては、わが党といたしましても、大局的には賛成をいたす次第でございます。しかしながらこれが切りかえにつきましては、行政上その他の面におきましていろいろ問題も生じやすいと存じますので、とりあえず初年度におきましては、二分の一を資金運用部に預託することによりまして、逐次所期の目的を達成せしむることが適当である、かように存じてこの修正案を提出いたした次第でございます。どうぞ御賛成を願いたく存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/2
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003・大上司
○大上委員長 これより本案及び大橋君提出の修正案を一括して討論に入ります。討論の通告がありますので、これを許します。椎熊君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/3
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004・椎熊三郎
○椎熊委員 本案の内容については、もはや御説明申し上げる必要はないと思います。簡易生命保険及び郵便年金等の積立金は、戦争中国家資金の一元化を理由として郵政省から大蔵省に移管されたことは、諸君御承知の通りであります。しかもその際も、これはまつたく戦時中の臨時措置であつて、適当な時期、すなわち平和回復後においてはすみやかにこれを復元せしめるといことが閣議の間で決定して、文書としても残つておるのであります。終戦後はこの趣旨に従つてただちに郵政省に復元されたのであります。しかるにての後占領軍の日本占領政策というか、その方針によつて再びこれが大蔵官に移管せられるに至りました。しかしながら本事業に対しましては、三十数年間やつて来た郵政省が旧来通り運用することに、だれもが異存はなかつたのであります。
そこで、ここに驚くべき文書が残つておりますから、参考に供したいと思います。これは吉田内閣の元大蔵大臣池田勇人君と当時の郵政大臣小澤佐重喜君——ただいまそこにおられるが、連合軍最高司令部経済科学局長に対して、簡易生命保険及び郵便年金積立金運用再開懇請書というものを両大臣の名前で出しておる。この懇請書を一読しますと——この内容というものは一見してもう説明を要しない。当時の内閣としては、大蔵大臣と郵政大臣の間で完全なる了解を遂げておるのであつて、日本の平和後における経済復興のために当然なさなければならぬと感ぜられて、これほどの文書を出しておると思うのです。ところが、これがGHQと当時の内閣あるいは国会との間に、非常な大問題になりました。わずかの期間でありましたが、はからずも私が郵政省の政務次官を勤めたころ、この問題の処理について、大蔵事務当局と郵政事務当局との間に非常なる論争が続けられました。けれどもその結論に達しない。私の在任中、経済科学局のこの方面の担当者の前で、両省の役人が討論をするという場面まであつた。結局その討論においては、郵政省の主張が勝を占めた。しかしながら当時の占領車は、それを許そうとしませんでした。その結果として、後に小澤君が郵政大臣になられ、池田さんが大蔵大臣になられましたが、両省の役人の論争は解決しない。国家の大きな方針として、政治力をもつて解決すべきであるということで、私が手元に持つておるこの懇請書となつて現われた。ここには今までのいきさつを十分に書き尽してある。この通りでけつこうなんです。天下何人といえども異議をさしはさむすきのないものである。そういうことから端を発して、遂に天下の与論ともなり、最近第三次吉田内閣においては閣議の決定を見ております。その当時閣議決定の前後における両省の役人の交渉はどうであつたか。もはや大蔵当局は郵政官僚に対して対抗できなくなつた。そこで閣議の決定さえあれば、今日まで闘つて来たが、いさぎよく郵政省に移すだろうということで、表面上は役人も理論的には屈服せしめられた。残つたものは感情問題です。閣議においてもこれを決定して、第十三国会に郵政省に復元するという法律案が、内閣提出として出て参りました。当時の官房長官は保利君でありましたが、私は保利君にもこの内容について詳しく説明し、またいきさつについてとくと懇談を遂げましたが、同意見でありました。しかしながら保利君の考え方には相当割切れないものがありまして、われわれがあれほど懇請したにもかかわらず、第十三回国会に政府案として出ます当時は、これに関連した法案は一切をひつくるめて当郵政委員会が審議すべきところを、どういう都合か、施行法のみは大蔵委員会にまわす手続をとつたのであります。それでも私どもは、すでに両三回にわたり参衆両院の満場一致の決議等もあつた問題ですから、たとい施行法が大蔵委員会に行きましても、院の再三にわたる決定を無視するがごときことは、大蔵委員会といえどもやるはずはないと深く信じておりました。しかるに意外にもその後の経過を見ますと、私どもの考えとはまつたく別個に、大蔵委員会においては、大蔵省事務当局の希望するがごとき考え方にかわりつつあり、本案が第十三国会に提出されたとき、すでに大蔵委員会では修正案なるものを持つておりました。その当時は修正案といわずに妥協案といつたが、それと本日出て参りました修正案とはまつたく内容を一にしておる。われわれは十三回国会でこの法案を通過せしめる際、すでにこのことを知りましたから、本案が取上げられた際に、大蔵委員会から連合審査を申し込まれたが、時間的にはすでに本案が委員会で上つた後で、それは不可能のことでありましたし、時間的に不可能でなくとも私どもはそれを拒絶しようと思つた。というのは、連合審査をして後に、悪いところがあるならば修正するというさつぱりした態度なら、われわれは連合審査に応ずる用意があつたけれども、大蔵官僚に作文してもらつた案なるものを懐中にして連合審査に臨むということでしたから、それでは連合審査にならないではないかという理由で、拒絶した形でもあつたのであります。そういういきさつで、施行法の方は第十三国会では審議未了に終つております。その後の大蔵官僚のなすところは、実に国会の決議を蹂躙し、軽蔑し、無視しておる。これほど長きにわたつて歴代の内閣が苦心し、自由党の内閣で小澤さんと池田さんが連合軍に懇請までした問題、しかも第三次吉田内閣では閣議の決定を経て、内閣提出で法案を出したといういわくつきのものを、今日の官僚はなおさらに陰険な手段をもつて、この実現を阻止せんとした。これを政治上の陰謀と言わずして何ぞや。官僚の国会に対する陰険きわまる行動である。私は民主政治のためにこの行動を嘆きます。しかも大橋君のごとき、かつては閣僚であつた人が、この修正案の説明をするということは実に遺憾に思います。郵政省に復元せしめることがいいか悪いかの問題なのです。郵政省に復元せしめることが悪いならば断じてこれに反対しなさい。半分だけやるというのはどういうことだ。ものの本質を誤つておる。これを復元せしめることは、ただ単に郵政官僚の希望を満たすなどということではないのです。三十数年にわたる日本の社会保障制度的な政策の中で、最初にやつて最初に成功した唯一の簡易保険制度、世界にまれなる成功を遂げておるのです。そしてこれが発展拡充を地方はどのくらい要求しておるか。一昨年までは全国の市町村長、知事は会議を持つて、この復元を要求して参りました。しかるに去年から突如として市町村長の間に、これに反対する者が出て参りました。詳しく調べてみますると、大蔵省の出店であるところの地方の大蔵官僚が地方庁を訪問して、この郵政省復元に賛成するなら、地方起債に応ずることができないという脅迫をしたのです。それですから郵政省に復元してもらつて、簡単に便利に適法に運用してもらおうと思つておつた者も、この大蔵官僚の迫害によつて、どうしても郵政省移管に反対陳情を出さざるを得ないはめになつております。これらの事実はもはや説明を要しない。自由党の諸君もみんなそれを知つておる。そこで新憲法になりまして後の国会法のあり方に非常な疑問が持たれるのは、各委員会の行動がいかにもそれに密着しておる当該役所の出先のようなことをやつておることです。これは将来国会法の改正等の大きな課題の一つだと思う。院議が三回までも満場一致で決議されて、そのために内閣が提出したこの法案、そして通過した法案を、さらに大蔵官僚の運動によつて、来年一年だけ半分だけ返すなどという、まるで筋道の通らないことを大蔵委員の方々が主張しなければならぬというに至つては、まつたく議会の自主性を失つております。まるで官僚に隷属した委員会のごときであります。われわれ当委員会は、何も郵政官僚の要請等によつてやつたのではなくして、戦争当時これを大蔵省にやつたときから、記録の上に明らかにこれは臨時的措置であつて、平常の場合には必ず早急に返すということを、ちやんと文書の上に歴代の内閣が残しておるのです。そうして国会はまたこの行為を認めて、断じて平和の後には郵政省に復元しなければならぬということを決議しておるのです。それを大蔵省の出店のような形に見える大蔵委員会の一部の者——残念ながらその一部の者の中にはわが党の者もおるようでございます。しかしわが党は党の統制上、これらの問題は党議に服せしめることによつて押えました。自由党のような大政党、しかも自由党は吉田内閣の与党であります。この与党たる自由党が、政府の出したこの案をはばむがごとき、まるで換骨奪胎せしめるがごとき修正案を、みずからつくり出して来なければならぬということは、それは最近の自由党の党内事情にもよりましようけれども、あまりに理不尽すぎる。しかもこの中心となつて活動せられておる者は、連合軍に池田君とともに懇請書を出しておる小澤君であるというに至りましては、言語道断だと私は思う。(拍手)何ということです。こういうことは議会政治の運用上実に不明瞭な問題であつて、われわれの時代においてこそ、ほんとうにこういう政治上の問題の明朗化を身をもつてやらなければならぬ。それは政党政派の問題ではないと私は思います。そういう点で、本日は自由党の委員の諸君は、自由党内部におきましても政治力の強い大物ばかり出て来られておるのですから、それらのことは釈迦に説法でございましよう。どうかこの際は委員会の独自の見解におまかせくださいまして、大橋君におかれては、この修正案を撤回すべし。原案によつて行こうではないか。現に委員長は、本日午前中の各派の理事会におきまして、党はどうあろうとも、自分の決意は原案を通すことにあるのだ。そうして野党、与党の委員の数が同数だから、委員長の採決という場合には、自分は原案を支持するということを、本日の午前中われわれの前で言明しておるのです。それを党議をもつてこの人の政治家としての自由意思を束縛してしまうようなことをきめる。これは党議の行き過ぎだと思う。それがいいことであるならばいいが、間違つたことをやろうとしておる。悪いことをやろうとしておるのですから、吉田内閣の面子はどこにあるでありましようか。党内に一部そういう強硬な者があつても、そこは多数の意思を尊重して党をまとめるところに、天下に責任を負うところの与党たるの立場があると思う。実にこの問題に関しては、終戦後数年にわたつて衆議院も参議院も毎年々々苦労して参つた。この現実を回顧してみれば、本日このせとぎわに至つて、他の会派ならともかくも、自由党から修正案を出されるに至つては、何とも偶然たらざるを得ない。驚き入つたる話です。私は感情で言うのではない。きようここに至つて諸君と論争し、けんかまでしてどうしようというのではないのです。今までの当委員会のこの問題に対する苦労を考えるとき、私は議員たるものがこんな行動にまで出なければならぬかということを、日本の民主主義政治のために泣きたい。残念に思うのです。それでもあなた方は議員たるの職責を全うしたと言えるでしようか。満場一致で決議を通過せしめて、本案は十三国会では共産党のみの反対であつたのです。その共産党の反対も、本案の内容に対する反対ではないのです。委員会の記録を見ればことごとくわかります。案の内容については共産党も賛成した問題なのです。それをあなた方自由党が、今日になつてこの修正案を出すということは、いかにも政党の威信を傷つけ、政党内のいざこざ、あるいは官僚と政党の結託が世間に暴露せられ、ひとり自由党の不名誉ではない、民主主義日本の国会のために残念に思うのです。どうかそういうことで大橋君の今説明せられました修正案は、本案の数年にわたる歴史的事実、この案の内容に盛られたる本質をよく御理解になつて、院議尊重のために、国会の名誉尊重のために、どうか自由党におかれましてはこの修正案を撤回してもらいたい。どうしても撤回できないというなら、私どもは遺憾ながらこれに反対せざるを得ないのであります。委員の数においては同数でありますが、この際委員長は、今朝来の言明から、私どもは政治家としてのりつぱな態度をとつてくださるだろうと思う。若き委員長たる大上君をして、あなた方の理不尽なる党議によつて、この政治家の芽をつむようなことは、どうか先輩たる小澤君はしてもらつては困る。どうかこの人の御苦心をも察して、そうして当委員会がそうきめれば、あなた方の党内だつて、そこはさつぱりした政党でありますから、委員会は原案で行つたということになれば、それであなたの顔も立つ。あなたのこの数日来の苦心というものは、私は実にお気の毒だと思うくらいです。案の本質をほんとうに知りつつ、党内事情のためにやむなくまとめて行かなければならぬあなたの苦心のほどは、察するにあまりある。党内事情をほんとうに明確に解決するためには、この委員会が原案を通すことによつて、自由党はぴつたり治まると私は確信いたします。そうなれば私ども大きな声を出して争う必要も何もないのです。当委員会には、私どもの昔から崇拝しておる川島先生のごとき練達の政治家もおられます。川島先生も、先般来の状況で案の内容等はよくおわかりになつたことと存じます。党議もさることながら、私は党議よりも日本の民主主義政治の基礎を守ることが大事であると確信するものであります。先輩たる川島先生のごときは、われわれ委員の心中をお察しくださいまして、明朗なる態度をもつて原案通過のために、われわれ戦後のアプレゲール的政治家ではありまするが、かつては先生方の御指導も受けたのです。われわれの行動の誤りなからんように、どうか先生方の御指導によつて、議会政治家らしい行動を貫きたいというのが私どもの念願でありますから、特に先輩川島先生にお願いする次第であります。
私は反対論としては、はなはだ感情に走つた言葉を連ね過ぎておるようですが、この案の歴史的過程を見るとき、私はまさに涙をもつてこの案の審議に当つておるのです。小澤さん、どうかその点を御了承くださいまして、修正案の撤回を要求し、もしどうしても撤回できないときは、私どもは反対をするものであります。はなはだ簡単ではありますが、これで終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/4
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005・大上司
○大上委員長 小澤佐重喜君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/5
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006・小澤佐重喜
○小澤委員 大体この問題につきましては、ただいま椎熊さんからるる述べられたのと趣旨において同じであります。ただ自由党攻撃の点だけは違いますから、はつきり申し上げておきます。従つて五年来、この問題に対して熱意を持つて参つた私といたしましては、今指摘された書類を示されてほんとうに感慨無量であります。従つて椎熊君の気分と、私はほとんど違つておらぬと思うのです。ただその結論において違う点だけを申し上げれば、御承知の通りGHQにおいてこの問題の資金を大蔵省に一元化したというのは、戦後の日本経済の現状からして、資金の統制を一元化するという趣旨に基いてやつたものであります。そこで資金の一元化ということがどの程度まで、日本のどの段階まで必要かということは、結局見方の相違になつて来ると思うのでありますが、今大橋君が出されました理由の一つは、つまり一元化を今すぐやるのは少し早いという議論である。もう一つは、六年も七年も、戦後郵政省では直接に運用をいたしておりません。従つてこの法律が通れば、初めて明年の四月一日から実施することになるのでありまして、その間六、七年の運用に関する経験を欠いております。この点から言うならば、一時に三百七十億を運用するよりは、むしろ最初の一年だけは半分くらいでよく事務の研究をしながら、そして一年間熟練したところで全額をやるということも、これで少しも変でないと思う。こういう二つの点、また資金の一元化の問題も——日本経済も、わが党の努力によりましてだんだん安定しております。しかし今ほんとうに安定したかどうかということについてはいろいろ御意見がありますから、ほんとうに安定すると見られます一年くらいの間を置いてこれをやれば、今までのいろいろなこれに対する反対理論の人も納得するのではないかと思う。こういう点から大橋君の修正案に賛成するものでありまして、考え方においては、椎熊さんの考え方と少しも違いません。従つて椎熊さんの長い長い詳細な討論を、むしろこの修正案に賛成する理由に私は援用いたしたいと考えております。こういう趣旨において修正案に賛成をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/6
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007・大上司
○大上委員長 冨吉榮二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/7
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008・冨吉榮二
○冨吉委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま御提出になりました修正案に反対をし、でき得べくんば椎熊君のお述べの通り、これを撤回してもらいたいと考えておるものであります。と申しまするのは、りくつはもう皆さんおわかりのことであるし、わけても椎熊氏からるるお述べになりましたことで尽きておりまするので、私は重複を避けるために申し上げません。
大体この修正案をお出しになることが、今小澤さんがお述べになつたように本質においては賛成だ、またそういうことをおつしやつておるのでありまするから、反対ではないのです。それに来年一年だけ半分ずつということの理由として、今小澤君は、郵政当局のこの運用の事務に危惧の念を抱くというようなことをおつしやるけれども、これは詭弁もはなはだしいものだと思つております。元来この生命保険は、その金をかき集めることとその運用とを別にいたして、よりよき成績が上がるはずはないのでございまして、これはどうしてもただちに復元せしめることが必要であつたのであります。実は私も在任中この問題ととつ組んだのでありますが、私の前任者たる三木大臣から引継ぎを受けました事項が数々ありました。その中で最も大きなものとして三つをあげられたのであります。その第一は、いわゆる野戦郵便局の郵便貯金を払いもどすという案と、いま一つは郵便貯金の第二封鎖の解除の問題、第三にこの簡易保険の運用の問題と、この三つであつた。前二者、またこの三者とも大蔵当局が反対をいたしまして、しかも御承知のごとくGHQの方のESSは、実は郵政省が直轄の役所でないために、郵政省との間には意思の疏通を欠く点が非常にあつて、一方的に大蔵官僚の宣伝のみが入つておつたわけでありますが、私はそういう点を察知して、直接マーケットに会いましてその大蔵当局の理不尽なる理由を述べて、そうして前に述べた二つの問題は、きわめて簡単にその場でサインをとつてしまつたのであります。オーケーを得たのであります。ところがこの問題が、在任七箇月の間には、期間が短くて解決いたさなかつたことはまことに残念なことであります。その後におきまして私は議席を失つておりましたので、この問題くらいはすでに解決したものと思つておつたのであります。というのは、昭和二十四年の第五国会におきましても全員一致の決議があるし、先ほど椎熊さんがお述べの通り、小澤さんと池田さんの間でGHQに対する申請等も出ておりますし、かたがたもつてこの問題はもう解決しておるものだと思つておつた。ところが今に至るまでそれが解決しておらなんだ。今度国会にカム・バツクいたしまして、そのことに私は驚いておる始末でございますが、郵政委員会においてこの問題が提起されて以来、ほとんど完全に委員会は開かれない。これはまつたく自由党の党内の事情によることでございまして、私どもまことに遺憾に考えておる次第であります。従つてこの問題に対する半分を大蔵省にまかせるという案は、これは要するに大蔵委員会の顔を立てるという以外の何ものでもないと私は考える。一体顔を立てるなどというようなことが、この民議会においてまだまだはやつているとするならば、これはまことに嘆かわしい次第であるといわなければならないのであります。りくつはもう言わなくても、私どもの尊敬する委員各位である自由党の皆様方は、常に官僚政治に対して反対をして来ておる。ことにわれわれ社会党などに対しては、いわゆる官僚の手先のごときことをおつしやつて来たように、官僚政治に反対であります。それが院議をもつてしばしば全会一致でやり、そしてまた自分たちの内閣で絶対多数のときに御決定になつた事件が今日において解決せず、またその半分をというような、しかもそれがすぐはまとまらないで、議会の幕切れのぎりぎりまでこれが来なかつたということは、議会政治のために、自由党のために、また日本の民主議会のために、私はまことに悲しむ一人であります。従つて私はこの修正案にどうしても賛成する理由を発見いたさないのであります。もともとこの問題は、十数年間にわたつて郵政当局が身をもつてこの仕事に当り、その成績を大いに上げて拡大して参つた問題を、外部の圧力によつてこのような結果になつたのでございますから、これを本然の姿に返す。本然の姿に返してみて、それで悪かつたら国会としてはこれに対してまた規正をするということが、私は当然の道行きであろうと思うのであります。しかもこれをやらしてもみないうちに、一ぺんにやらしては間違いを起すという。大体あなた方の内閣であり、政務次官にも堪能な人がおられるのだから、わずか三百六十億か七十億の運用において間違いがあろうなどということは、いささかもつて詭弁に過ぎるものである。失礼なことを申し上げるようですが、私どもとしてはそうとしか受け取れない。くどいことは申しません。私どもは絶対この修正案に、賛成する理論的根拠を持ち得ません。納得し得る根拠がありません。これを何か夫婦げんかの仲裁みたいに、まあまあひとつ半分わけにしようじやないか、どつちも悪いのだというような判定しか国会がくだされないというのでは、国会の権威のために私は嘆かざるを得ないのであります。でありますから私は絶対反対でありまして、もしできますならば御撤回を願いたいと考えます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/8
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009・大上司
○大上委員長 木原君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/9
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010・木原津與志
○木原委員 ただいま御提案になりました修正案に対しまして、日本社会党を代表して撤回を要求するものであります。
先ほど椎熊さんから経過については詳しく申し述べたところでございまするが、この積立金の運用につきましては、すでに基本法が第十三国会において可決いたしております。またこの運用についての細則も、郵政省令をもつて本年の十一月二十二日に融通規則が公布されておるのであります。もはや基本法及びその手続法の両方とも、万般遺憾なく運用の運びに徹しているところでございまして、ただいま小澤さんは郵政省においてこれを一時に運用するについては危惧があるというようなことを申されましたが、すでに郵政省においては融通規則その他関係規則も制定済みでございまして、もう融通についての万般の措置ができているような次第でございます。かような状態であるに加えまして、本法の本委員会における審議は、参議院から回付された法律についての審議でございますが、この法案たるや、元来基本法は成立しているが、整理法ともいうべきこの資金法の字句の訂正がまだ残つている。そのために字句の訂正をしなければならぬというので、参議院においてその字句の訂正の立法を議員立法としてなしたのが、本案の審議過程でございます。そういたしますればわれわれの審議といたしましては、基本法そのものについての改正あるいは運用の停止ということを審議すべきではなく、整理法の字句の修正ということに根本の問題がある。にもかかわらずこの整理法の審議の過程において、基本法である運用に関する法律そのものの効力を云云する修正案の動議を本日自由党から出されるということは、物事の本質を転倒した行き方である、かように存ずるのであります。先ほど椎熊氏から経過については詳細にお話になりましたが、要するに自由党から本日のような修正の議案が出されたのは、これは大蔵当局の意向に基いて、その意向がこういつた修正案となつたものとわれわれは仄聞する。もしそうであるならば、椎熊氏も御指摘のように、二回、三回にわたつて国会においてその運用を定めた最高の意思決定を、行政官庁である官僚の意向によつて左右するという結果になるのでありまして、これは憲政の運用上における議会政治の重大な問題だと考えるのであります。過去における議会の意思決定を、今後とも一行政官庁の意思によつて左右されるということになれば、議会政治の前途まことに暗澹たるものがあると考えるのであります。さような意味において、官僚がまさに議会を冒涜しようとしておる意思に対して、われわれは鉄槌をくださざるを得ないのであります。またこの法案の審議にあたりまして、一番最初の郵政委員会においては自由党の出身の郵政委員の方も、これは超党派的に郵政省に無条件で移管するということについて、やぶさかではないということを申されたのであります。もしそうでありますならば、たとい党議がいかようでございましようとも、委員長並びに自由党の委員の方々は本案の採決にあたり、自己の良心に従い、政治家としての大道に従われるであろうことを確信してやまないのであります。さような意味において修正案に対しては撤回を要求する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/10
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011・大上司
○大上委員長 岡田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/11
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012・岡田春夫
○岡田(春)委員 私も実は反対をするものでありますが、その理由はあらためて申し上げるまでもないと思います。それはすでに改進党の椎熊君、社会党左右の諸君からも詳細に理由の説明がありました。特に先ほどの説明の中にもありました通りに、簡易生命保険並びに郵便年金というような働く者の零細な預金を、戦争中とか戦争準備を進めるような場合に、大蔵省の資金運用部に持つて来るということは、大資本蓄積のために少しでもこういう零細な預金を利用しようという、一つの支配階級のねらいである。こういう意味においても資金運用部における一括した流用については、われわれは極力反対をしなければならないと考えております。特にこの資金運用部に使われているこれらの積立金を、すみやかに郵政省関係に移管すべきであるという決議が国会において再三行われ、こういう点についてはわれわれは全面的に支持して賛成しなければならないと考えておつた。ところが今も再三皆さんから話があつたように、今まで大臣をやり、この政府法律案を提出するにあたつて、閣僚としての責任を持つている大橋君あたりから、このような修正案を出すことによつて、その場のがれをしようというような魂胆は、私はまことに卑劣であると考えざるを得ない。こういう意味においても、このような修正案はすみやかに撤回されて、自由党が前国会までとられたような態度において、原案を支持されることをわれわれは特に希望いたしたい思います。簡単でありますが、私の反対の趣旨といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/12
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013・大上司
○大上委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより採決いたします。まず大橋君提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/13
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014・大上司
○大上委員長 起立十二名。念のため、反対の諸君の起立を求めます。
〔反対者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/14
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015・大上司
○大上委員長 起立十二名。可否同数であります。よつて国会法第五十条により委員長は可といたします。よつて大橋君提出の修正案は可決いたしました。
次に、ただいま議決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/15
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016・大上司
○大上委員長 起立総員。よつて修正部分を除く原案は可決いたしました。従つて簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案は、修正議決すべきものと決しました。
この際お諮りいたします。衆議院規則第八十六条による報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/16
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017・大上司
○大上委員長 御異議なしと認めます。よつてさよう決定いたしました。
次会は公報をもつてお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。
午後四時四十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505256X00619521223/17
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