1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年三月二十日(金曜日)
午前十時五十三分開会
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出席者は左の通り。
委員長 河井 彌八君
理事
中川 幸平君
小林 政夫君
山田 節男君
菊川 孝夫君
委員
石村 幸作君
上原 正吉君
草葉 隆圓君
長谷山行毅君
宮本 邦彦君
安井 謙君
高橋 道男君
館 哲二君
溝口 三郎君
相馬 助治君
小笠原二三男君
成瀬 幡治君
一松 定吉君
松浦 定義君
谷口弥三郎君
千田 正君
須藤 五郎君
国務大臣
国 務 大 臣 緒方 竹虎君
政府委員
内閣官房副長宮 江口見登留君
法制局長官 佐藤 達夫君
法制局第一部長 高辻 正巳君
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本日の会議に付した事件
○期限等の定のある法律につき当該期
限等を変更するための法律案(内閣
提出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514018X00319530320/0
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001・河井彌八
○委員長(河井彌八君) これより期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律案特別委員会を開会いたします。
昨日までに本法案につきましての質疑応答は尽きたものと認めまして、これより討論に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514018X00319530320/1
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002・須藤五郎
○須藤五郎君 私はこの法案に対しまして反対の意思を表明したいと存じます。
なぜならば、この法案は吉田政府四年に亘るところの悪政の結集の断末魔におきまして、なお二カ月間の延長を意図するものでありまして、これは許すべからざることだと存じます。その点から私は反対をいたしたいと思います。なお、この法案の出し方が、いろいろ種類の違つたものが一括一つの法案として出されている。こういう出し方に対しましても私は異議を申立てるものであります。余り時間を取りましては、皆さんに御迷惑だと思いますので、共産党は黙つていても、共産党の言うことはもう皆さん赤いりんごの黙つていてもという歌がある通りですから、もう喋らなくてもおわかりだと思いますので、極く要点だけを申述べたいと思います。
先ず少年院法でありますが、これは昨日の質問におきましても述べました通り、過去三年に亘つて当局の怠慢と熱意の足りないために予算措置ができないということで、どんどん延びておりますが、昨日伺いますと、航空用ガソリンなどに減税をやろうとしておる。そういう面に減税をやつて、折角入つて来る金を会社のほうにやる、こういうことに対して非常に熱意を持ちながら、少年院の設備のためには少しも金を出そうとしない。これが即ち吉田政府の本質だと思います。こういう点から私は強く反対をするものであります。
又国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置法、これも即ち軍需物資であるマンガンとかモリブデンとか、タングステンとか、こういうようなものを、アメリカの戦力に片棒担ぐために、もともとこういう法案ができているものでありますが、こういうことに関しましては異常の熱意を以て僅か二カ月でも空白を残さないために戦争準備の法案としてこれが出されて来ておる。こういうことに関しましては、我々平和を欲する者は賛成をすることができないのであります。
又外国人登録法におきましても、昨日も申しましたから、申上げる必要はありませんが、こういうことはもう二カ月延ばす必要がないので、即刻廃止すべき性質のものです。それを二カ月延ばそうというところにやはり吉田政府の性格が現われております。ですから私はこういうものは即刻廃棄すべきものだということを強く主張いたしまして、簡単でありますが、今回の法案に対しましては、反対をするものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514018X00319530320/2
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003・中川幸平
○中川幸平君 自由党を代表いたしまして、この法律案に賛成の意を表明いたしたいと存じます。
期限等の定のある法律を数項目期限等を変更せんとして盛り込んである法律でありますが、この中に参議院の緊急集会として相応しくない項目があるやの御意見もあり、又先般の特別国会と何らの関係がないという御意見も伺つておるのであります。一応御尤もでありまするが、この解散に伴うところの暫定措置として出される以上、先般の特別国会の審議の過程も検討せんければならんと考えるのであります。例えば厚生省の設置法の一部改正を例にとつて見ます。先般の第十三国会におきまして、機構改革によつて引揚援護庁は内局に決定いたしたのであります。ときたまたま遺家族援護の事務が輻湊した。これを早急に処理するためには時期的に相応しくないから一カ年延期しようと、従つて昭和二十八年四月一日まで施行期日を延期いたしたのであります。この施行期日を前にいたしまして、中共への引揚者の受入態勢を整えんければならん時期に至つたので、これの万全を期するためになお一カ年延期をしようというのが、厚生省の設置法の一部改正であつたのでありました。これは衆議院も通過いたし、参議院の内閣委員会も満場一致を以て決定をいたしたのでありまして、十四日の土曜日に本会議が若し開かれるならばこれは成立いたしたのであります。さようにいたしまして実情を勘案し、又国会の意思も尊重して、取りあえず二カ月延長する。従つてかような項目が、ただ地方税法は事務的に一カ月、その他は次の内閣の成立するまで、又国会の機能の発揮する即ち立法府の審議権を尊重して、二カ月間延長しようという法案でありまして、いずれも適切なる処置と存じまして、賛成の意を表する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514018X00319530320/3
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004・山田節男
○山田節男君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、只今議題となつておりまする期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律案に対して賛成の意を表するものであります。
昨日質疑におきまして、各委員からの御意見等を総合して見ましても、この法案の出し方、又法案の内容等におきましては遺憾なものが非常に多いのであります。御承知のように本案はこの憲法第五十四条第二項によりまする緊急集会の本質は、飽くまで国のために緊急の要がある場合、而してこの緊急集会でとるべき措置は飽くまでこれは臨時的なものであります。かような憲法の解釈からいたしましても、この議題となつておる法案に対しましては、幾多の疑義があるのであります。私どもが殊に遺憾に存じましたことは、かような法律案、いろいろな内容を含みまするものを一括して出す、こういう一つの方法に対しまする一つの意見であります。又先に政府が撤回いたしました、この法案の一つの項目を成しておりまする第一条の、第二項の第三号の義務教育費国庫負担法の附則第一項の撤回問題であります。これらを見ましても、この法案を参議院の緊急集会に提出するに当りましては、その総合審査の任に当りまする法制当局におきまして、この緊急集会の本質に対しまして忠実でなかつたのではないかという疑念も生ぜざるを得ないのでございます。かような点からいたしまして、この参議院の第二回の緊急集会におきまして、今後の参議院の緊急集会のよりよい護憲的前例を作る意味におきましても、私は今回の政府のとりましたこの議案の提出方法並びに内容につきましては、極めて遺憾に感ずるのであります。今後参議院の緊急集会に提出される議題につきましては、政府はもとよりでありますが、殊に法制局におきましては、この憲法の第五十四条の規定をこれを守るためにも極めて厳格な緊急集会に符合、即応すべき議案の内容を十分厳重に審査されて提出されるように取計られんことを強く希望いたしまして、この法案に対しまして賛成する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514018X00319530320/4
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005・菊川孝夫
○菊川孝夫君 私は社会党の第四控室を代表いたしまして、期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律案に対しまして、極めて不本意でございますが、賛成の意見を述べたいと思います。と申しますのは、丁度衆議院の選挙、参議院の通常選挙も目前に迫つておりまして、日限等の関係もございまして、十分これを審議し、又修正を加え、或いは政府に撤回を求めたりして十分なる審議をする余裕がございません。で各法案につきまして一応昨日質疑いたしましたところ、本緊急集会に提案するにはどうか、審議の対象とするには疑義がある面が多々あるのでございますが、併しそういつた期限の関係等を考えまして、一応臨時の処置として止むを得ざるものとして賛成するわけでございますが、この緊急集会に当りまして、特に我々として最も遺憾とし、且つ不満に存じますのは、憲法六十九条の解釈でございますが、成るほどこの六十九条は素直に読みますと、法制局長官が説明しましたように、衆議院の内閣弾劾権と、内閣の衆議院解散権と二つを併列させて国民の輿論に問うことになつておるという点については、我々も決して疑義を挾むものではございません。併し今回の解散が何と申しましても与党の自由党内の党内事情によつて解散になる段階へ来たということを先ず振り返つて見なければならんことが第一であります。而も特別国会におきまして解散するのが果して憲法上許されておるかどうかということも考えて見なければならん点だと思います。而も二十八年度の総予算案の審議中であり、且つ、二十八年にいろいろ国として国際情勢と睨み合して施策しなければならん点が多々あつたわけでありまして、いろいろ重要法案が出ておる際におきまして、而も成立当時の党内情勢が変つたというところからこういう解散という事態まで持つて来たのは、憲法六十九条の濫用であり暴用であるとさえ言わなければならんと思うのですが、当然これは内閣は総辞職をして、そうしてあとの事態の収拾を反対党に委ねるへきか正しかつたと私は考えるのでありますが、こういう見地からいたしましても、この緊急集会にこのような法案を出して来ることは、今の内閣の責任において出すということは誠に当を得てない。これは先般の緊急集会におきまして、我々参議院が一致いたしまして教育委員の選挙期日と、たまたま解散された衆議院議員の選挙期日とが非常に切迫すると申しますか、近いために、いろいろと混乱を生ずるであろう。従つて衆議院議員の総選挙が終つて、それからゆつくり論議をしてから、この教育委員制度を検討して、そうして選挙をすべきものなら選挙をするようにしたらどうかというような助言を実は政府に非公式ではございましたがいたしたのでございますが、併しながら政府としては飽くまでも現行の法律をそのまま運用して、これを直すというようなことは政府としてはやるべきではない、こういう考えで以て緊急集会に臨んで止むを得ざる処置だけをするのだというこういう御見解であつたわけであります。その政府が今回はそれら生きておる法律が、とにかく良い悪いは別といたしましても、生かして行くという原則を崩しまして、今度はその法律を少しの間効力の発生を延ばそう、或いは逃がしておこう、こういう法律案を出して来るということは、矛盾撞著しておると私は思うのでございますが、この前の経緯から考えても、これは政府として出す義理合ではない、出せた義理合ではないと私は考えるのでございますが、こういう点からいたしましても、極めて我々は遺憾とするものでございます。併しながら(「反対せい反対せい」と呼ぶ者あり)今須藤君が反対せいと言われますが、例えば勤労所得税の源泉徴収を、若しもこれを生かすということになりましたならば、反対してこれが否決されるということになりましたら、四月一日からこれは増税になる、今よりは少くとも増税になる。こういうのも一括して提案されておりまするし、いろいろ混乱する面もある。従いまして止むを得ずこれらの点は何とか処置しなければならん。而もこれらの法律は、今出して来ておりまする諸法律の改正につきましては、十五国会に恒久的な処置として法律改正案として出して来ておるもので、而もこれが衆議院において論議の中心になつておつたり、審議の真最中であつたり、或いは衆議院において可決されて参議院に回付されて来ておつたような法案がたくさんあるわけであります。それらを今の効力を二月間延すというだけであつて、打切るということについてもこれは大きな疑問を持つものであります。特に第一条の租税特別措置法の第二十六条第一項のごときは、日本航空の援助をするような法律であります。而もこれを期限を定めてやるということは、昨日も申上げましたように、これは政権を担当したものが、ややもいたしますると、その当該会社と結んで利権関係が生じる慮れが極めて多い、こういうような性質を持つておる法律案であり、又少年院法は、これは早くからもつと少年院を拡充して、そうして少年の善導補導に当らなければならんにもかかわらず、街には新興ビルデイングはどんどんと建つて行くにもかかわらず、一番大事な少年の保護ということについては殆んど顧みられずに、破れた硝子、或いは汚い寝床で寝かしておくために、少年の集団脱走というものがほうぼうにときどき起るわけでありますが、そういうような事態に放置しておくということからも、これは吉田内閣の四年間のやはり悪い面の現われた極端な点だということを指摘しなければならんと思うのです。(「裁判所、検察丁は立派にできてるぞ」と呼ぶ者あり)なお引揚援護庁の外局としてそのまま残すという点につきましては、これは我々もあの行政組織を変更の際の法案審議に当りましても、これは今やるのは適当ではないではないか、内局に変えるというふうに法律を改正するのは適当ではないのではないか、まだ中共にもたくさん残つておる。又ソヴイエトにもたくさん残つておるということを言われておる。これらの人々を一日も早く国内に迎え入れるようにするために援護庁は率先してやるべきじやないか、共産党はおらんと頑張つておりますが、果して中共にはおつたわけでありまして、(「中共におらんということをいいやしないよ」「まだおるじやないか」「やかましい」と呼ぶ者あり)その点から考えましても、このまま残しておいて、而も外局として残しておいて引揚援護に当るべきではなかろうかという主張をしたのでありますが、政府は強引に内局にしておいて、今又、今度は中共の引揚が始まつたので、それ大変だというので二カ月間内局にするのを延すというような法律案を出して来るということから考えましても、計画性がない、而も見通しをちつとも持たない、それから国際的な情報等を収拾する面においても、緒方さんは曾つて情報局総裁であつて、非常に情報をうまく収拾される人が官房長官になられたので、それらの情報を集めに集めて計画性を持つたことをやられるということを期待しておつたのでありますが、何らその期待に副うことがなくて、その場限りのやり方をしておる。その点からいたしましても我々は極めて不満足であります。併しながら冒頭に申上げましたように、総選挙と参議院の通常選挙を目前に控えておりまするし、先ず今これで以て緊急集会が混乱するということになりますると、ややもいたしますると、前回の解散においてすでに国民が国会に対しまして非常な不満と疑惑と、それからこれに対する不信の声さえ巷に起きておるわけであります。この際にこれらの法案審議に当りまして、若しも参議院が緊急集会において混乱するというようなことがあつたならば、これに更に拍車を加えまして、そうして国会不信、議会政治否認へさえも走りかねないと思うのであります。そういたしますると、その虚に付け込んでのし上つて来るのは、フアツシヨとそれから共産主義者の策動たと思うのです。こういう性質から考えましても、止むを得ずここに我々はこの法案に極めて遺憾でありますけれども、賛成することにいたしたいと思います。(「次期政権を担当するものは又違うのだよ」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514018X00319530320/5
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006・一松定吉
○一松定吉君 緊急集会において我々が審議しなければならないものは、憲法の五十四条の二項に規定してありまする、国に緊急の必要ある場合に限られておることはこれはもう言うまでもありません。そこでこの緊急集会を開くに至る動機、原因等につきましては、なぜこの予算の通る見込のある前に解散したかというような問題がありますが、これはもう既定の事実でありますから、彼これ論議しても、死んだ子の年を数えるようだからそれは私は申しません。そこで出されたこの法案につきまして、一体緊急の必要があるのかどうかということが、皆様の慎重なる御論議になつたことでありますが、或る法律が消滅することによつて国家民生のために不利益になるというような法案を一時消滅せしめないようにして二カ月でも存置せしむるということの必要であることは、これは論議の余地はありません。又この法律を出さなければ、当然に今まで効力を停止せられておつたものが復活することによつて国民に不利益があるというような法律は、この緊急集会の問題となるべきものではない、かように私は考えている。そういうことによつて例の教職員のあの問題に関しましても、いわゆる半額国庫負担という問題が二カ月延期せられることによつて国民は非常に困る、教育にも悪影響を及ぼすということで、我々は多数の人が反対をして政府に撤回を要求しておつたが、政府は我々の要求を容れて撤回せられたことは、これはこの緊急総会をスムースに進むる上においても、又教育界の向上発展の上においても私はいいと、これは喜んでおります。ところがここに一つ私の納得の行かない問題がある。私、昨日は午後から止むを得ない用事のために出なかつたために、今聞けば、すでにそれはもう論議は尽されているのだということで、止むを得ないのでありまするが、第一条の五項であります。いわゆる恩給法の特例に関する件の措置に関する法律を、これを二カ月延期しようというこの問題であります。この恩給法は御承知の通りに、いわゆる六十八号でありますか、勅令六十八号によつてこれが延期せられておつた法律であります。すでに旧軍人で恩給をもらうことのできる立場にあつた者がこの勅令の六十八号によつて延期される。そうして、それがこの法律の二百五号、昭和二十七年の六月二十日にこの平和条約が発効することによつて二十七年四月二十八日からこの恩給法が復活して、旧軍人が恩給がもらえることになつた。然るに法律第二百五号によつて恩給法の特例に関する件の措置に関する件というもの、いわゆる昭和二十七年の二百五号によりまして、それが昭和二十八年の三月三十一日まで延期せられた。すでに平和回復によつて旧軍人が恩給をもらうことのできるように皆期待を持つて非常に喜んでおつた。それがこの法律第二百五号によつて丁度昭和二十八年三月三十一日まで延ばされた。そこでこの二十八年三月三十一日が来れば、当然停止せられておつた恩給が復活して、自分らももらえるということに考えており、又政府もそれに対していわゆる全国の旧軍人の八百万人に対して六百五十一億余円というものを予算を組んで、そうしてそれが四月から十二月まで合計五百億円の予算を組んで、それによつて旧軍人がまあまあこれで我々も国家のために犠牲を払うたという貢献を認められたのだなあというように安心しようとしている直前にこれが解散になつて、遂にこれが実現を見なかつた。そこで実現を見なかつたことによつてどうなつているかというと、結局のところ昭和二十八年三月三十一日から当然この権利が復活するのでありますから、それだけの恩給がもらえる、もらえるのです。もらえるのが、二十八年五月三十一日まで二カ月延期されるということによつてもらえないことになる。即ち停止しているということが又二カ月長く停止されるということになる。そうしてみると、今度新国会が召集せられまして、この法案がいよいよ五月三十一日に施行になつたらば、それで復活して、いわゆる権利が発動することになりますが、その二カ月停止されている間もらえない、これは私は甚だよくないと思う。効力が失効することによつて国民の福利が侵害されるということであれば、失効するのではいかんから二カ月延ばそうじやないかというので延ばすことはよろしい。又即ちいろんな税金等が免除されている、免除されているのに、この法律が通過しなければ免除されないようなことになる。税金を免除されているのに、この法律が通過しなければその免除ということができないことになつて、復活して免除されんことになるのだ。それでは国民が困るということならば、その国民の福利を増進するために、その免除されることを二カ月なら二カ月延ばして、そうして次の国会において免除することがいいのか悪いのかということを慎重審議して新たな法律を出すという趣旨に出たのだから、それは私は賛成だ。ところが丁度教育費の半額国庫負担が或いは二カ月延ばされるということによつて、結局国民の期待しておつた教育のこれだけの費用というものがもらえんということになる、例えば東京、大阪などの平衡交付金をもらつていないものが今度はもらえることになつた。ところがそれが二カ月延ばされるということは不都合ではないかというので、我々が努力した結果撤回した。同じように恩給が当然もらえることになつておつたのが、いわゆる勅令六十八号によつてずつと昭和二十八年の三月三十一日までやはり停止された。だから軍人はもらえるのに停止されたといつて困つた話だなと思つていたが、今度は二十八年の三月三十一日が来れば、当然我々が恩給がもらえることを復活できるからと楽しんでいるのに、今度又二カ月延期するということになると、これらの軍人はどうなるのですか。だから私はこの点についてはよほど政府の意見を聞いて、そうして半額国庫負担と同じように、これはこのままに延期しないで、効力を三月三十一日に発生せしむるようにして、軍人恩給というものを支給したい。これによつて全国の八百万人の旧軍人若しくはその家族等が、僅かに自分らが国家のために尽したことを心から慰めることができようと思つている矢先に又二カ月延期された。二カ月延期された結果はどうなるかというと、恩給の支給は七月、十月、一月、四月ですが、結局七月でなければ、この五月三十一日が済んで七月でないと恩給がもらえないことになる。のみならずこれが三月三十一日に効力発生ができ上れば、この恩給証書というものを担保にして金を融通することもできるが、それもできない。これは甚だ私は残酷だと思う。だからこの点につきまして、ただ私がこれに一人だけ反対して云々というようなことで、この法律の緊急の必要のあるという点についてこれが傷がつくということは、私は好みませんから、どうか政府もこの五月三十一日に、言い換えるならば恩給を受けるのは七月の十一日ですから、それまでの間に軍人の人人の困つているようなことについて、何らかの一つ措置を考えてもらいたいということだけを是非お願いをしておいて、そうしてこの法案の全部には不満足ながら賛成をいたしまして、そうして円満に行くことをお願いいたします。
それから朝鮮人の指紋をとる問題等も、これは私は三月三十一日ということについて、延ばす理由を昨日厚生省の課長かにお願いしましたが、これは成るほど朝鮮人の人たちの意見を聞いて見ると、我々と台湾人とだけが指紋をとられるのだ、あとの諸外国の人は指紋をとられない。指紋をとるということによつて如何にも我々が犯罪人であるかのごとき待遇を受けるということは甚だ面白くないから、でき得べくんば指紋をとるということはやめて、その他の措置によつてやつてもらいたいのだ、それらのことについては各方面に目下陳情している、だからしてその陳情によつて国会議員諸君が成るほど朝鮮人のこの主張は正しいのだな、わざわざこれに対して指紋をとるということは一つしないでもいいじやないか。これがとれるまで何とかして延ばしてもらいたいということも、聞いて見れば尤もです。こういうことについて延期するということに反対しませんが、何にしても半額国庫負担の問題と恩給効力発生の停止ということは一つ考えなければなりませんから、先のやつは撤回されたからいいですが、この恩給の問題だけは何とかして……。こういうことが通過いたしますれば、五月三十一日までは恩給はもらえない、のみならず五月三十一日が通過しても、今度は証書というものを手に入れてもそれは七月十一日以後でなければ恩給はもらえない、これが延期されなければすぐに恩給証書も手に入り、すぐにその恩給証書を担保にして金を借りるということもできるのですから、これは甚だ軍人諸君に対してお気の毒に思つておりますから、是非一つこの点については何らかの措置を考えて頂きたい。そうして次の法案の成立するまでの問の、これこそ本当に緊急措置を一つ考えてもらいたいということを条件にして、私は本法案には賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514018X00319530320/6
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007・河井彌八
○委員長(河井彌八君) これを以ちまして討論の通告者の御発言は終りました。他に御発言のかたはありますか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514018X00319530320/7
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008・河井彌八
○委員長(河井彌八君) もはやないと認めます。
それではこれより採決をいたします。期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律案全部を議題といたしますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514018X00319530320/8
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009・河井彌八
○委員長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。それではこの法律案全部につきまして賛成の諸君の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514018X00319530320/9
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010・河井彌八
○委員長(河井彌八君) 多数であります。よつて本案は可決せられました。つきましては、本案に賛成の諸君の御署名を願います。
多数意見者署名
館 哲二 成瀬 幡治
小笠原二三男 菊川 孝夫
上原 正吉 宮本 邦彦
石村 幸作 中川 幸平
安井 謙 草葉 隆圓
長谷山行毅 小林 政夫
高橋 道男 山田 節男
相馬 助治 谷口弥三郎
一松 定吉 松浦 定吉
千田 正 溝口 三郎発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514018X00319530320/10
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011・河井彌八
○委員長(河井彌八君) なお本日本議場におきまして、委員長が報告をいたさなければなりませんが、その報告は委員長にお任せ願いたいと思います。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514018X00319530320/11
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012・河井彌八
○委員長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。さように取計らいます。
甚だ不慣れな委員長でありましたが、(「ノーノー」「名委員長」と呼ぶ者あり)皆様の御協力を得まして、無事に済みましたことを、ここにお礼申上げます。(拍手)
それではこれを以て散会いたします。
午前十一時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514018X00319530320/12
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