1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年十二月十八日(木曜日)
午前十時十九分開会
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出席者は左の通り。
委員長 藤森 眞治君
理事
大谷 瑩潤君
藤原 道子君
堂森 芳夫君
委員
草葉 隆圓君
小杉 繁安君
長島 銀藏君
井上なつゑ君
常岡 一郎君
河崎 ナツ君
山下 義信君
谷口弥三郎君
深川タマヱ君
衆議院議員
地方行政委員長 青柳 一郎君
野澤 清人君
政府委員
厚生政務次官 越智 茂君
厚生省児童局長 高田 正巳君
厚生省保険局長 久下 勝次君
事務局側
常任委員会専門
員 草間 弘司君
常任委員会専門
員 多田 仁己君
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本日の会議に付した事件
○小委員長の報告
○未帰還者留守家族の国家補償に関す
る請願(第五九九号)(第六三〇
号)(第六三一号)(第六三二号)
(第六三三号)(第六六二号)(第
六六三号)(第六六七号)(第六七
九号)(第六九二号)(第七二六
号)(第八一三号)(第八四三号)
(第六七八号)
○元満洲開拓者遺族等援護に関する請
願(第七二四号)(第七二七号)
○戦傷病者戦没者遺族等援護法中一部
改正に関する請願(第三一〇号)
○戦犯刑死音遣族の援護に関する請願
(第二七一号)
○遺族補償に関する請願(第三〇五
号)(第三五五号)
○未復員者給与法適用患者に対する生
活扶助料支給の請願(第三九三号)
(第四六六号)
○傷い軍人の国家補償に関する請願
(第六四五号)
○戦没者遺族の年金支給等に関する請
願(第九五一号)
○戦傷病者援護に関する請願(第七七
八号)
○生活保護法適用者に対する遺族年金
等の取扱に関する請願(第九二五
号)
○戦没者遺族の年金等支給促進に関す
る請願(第八九七号)
○元満洲等の開拓団員犠牲者遺族援護
に関する陳情(第一七四号)
○戦傷病者戦没者遺族等援護法改正等
に関する陳情(第九五号)
○第十東予丸の死没復員軍人遺族援護
に関する陳情(第一二六号)
○戦傷病者戦没者遺家族等援護年金お
よび弔慰金に関する陳情(第二〇八
号)
○戦傷病者の更生援護に関する陳情
(第二一二号)
○戦争犠牲者遺族の援護強化に関する
陳情(第二五四号)
○戦犯刑死者遺族の援護強化に関する
陳情(第二五五号)
○元満洲開拓者遺族等援護に関する陳
情(第二五六号)
○元軍人老齢者等に年末特別給付増額
の請願(第五九〇号)
○遺族補償に関する陳情(第六六号)
(第一二五号)
○母子福祉資金の貸付等に関する法律
案(衆議院提出)
○船員保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/0
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001・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 只今から委員会を開きます。先ず遺族援護に関する小委員長の報告をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/1
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002・草葉隆圓
○草葉隆圓君 遺族援護に関します小委員会における請願陳情の審査の結果について御報告申上げます。
小委員会に付議されました請願二十九件及び陳情十件のうち、請願五百九十九、六百三十、六百三十一、六百三十二、六百三十三、六百六十二、六百六十三、六百六十七、六百七十九、六百九十二、七百二十六、七百二十四、七百二十七、三百十、二百七十一、三百九十三、四百六十六、六百四十五、九百五十一、八百十三、八百四十三、七百七十八、九百二十五、八百九十七、六百七十八、以上二十五件及び陳情百七十四、九十五、百二十六、二百八、二百十二、二百五十四、二百五十五、二百五十六、百七十一、以上九件は願意妥当なものと認めまして採択いたし、内閣に送付を要すべきものと決定いたしました。又請願三百五、三百五十五、九百九十、以上の三件と陳情六十六、百二十五、以上二件につきましては、内容が研究を要する点がありまするので、一応保留をいたすことに決定いたした次第でございます。
以上御報告を申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/2
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003・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 只今の遺族援護に関する小委員長報告通り決定することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/3
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004・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 御異議ないものと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/4
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005・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 次に母子福祉資金の貸付等に関する法律案、衆議院提出を議題といたします。先ず提案理由の説明を提案者のほうからお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/5
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006・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 只今提案になりました母子福祉資金の貸付等に関する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
御承知のように、配偶者のない女子、なかんずく子供を抱えた母親が独力で生活して参りますには、経済的にも精神的にも、幾多の困難が伴いがちであることは申すまでもないのでございます。これらの母子世帯に温かい保護の手を差し延べることは、その母親の自立の上からも、又その家庭に育てられている児童の福祉の上からも緊急な問題でございまして、国や地方公共団体はその責任上一日もゆるがせにすることのできない事項であると存ずる次第であります。
然るに、これらの母子世帯に対する従来の施策といたしましては、戦前は、母子保護法によつて十三歳未満の子を有する母子世帯に対する生活費の支給等の保護がなされて来たのでありますが、昭和二十二年生活保護法の制定に伴い、母子保護法も同法に引き継がれて、国民平等の原則の下に、母子に対する福祉の諸施策等も又主として、この生活保護法の見地に基いて行われることとなり、その及ばざる部分は児童福祉法による母子寮、保育所等の活用、軍人、軍属の遺家族である母子に対する戦傷病者戦展者遺家族等援護法による措置、その他税制上の配慮等々によつて僅かに糊塗されておる実情なのであります。第二次大戦に直接、間接に起因して激増した母子世帯は、戦後の特異な社会経済事情に影響されて、一般的にその生活はますます困難を極めておるのでありますが、折角、独立独歩の生活意欲に燃えながらも、事業の開始、児童の就学等について資金融通の途がないため、生活内容の改善、向上を図るにすべなく、やがては生活保護の該当者に顛落の一歩手前と申すような不安な境遇にさらされているものは頗る多い実情でございまして、最近の調査によりましても母が生計の中心となつている母子世帯のうち、生活保護法による保護を受けているものは全体の二八%を占め、その他の世帯につきましても、生活に余裕ありと認められるものは総数の僅かに四%に過ぎず、その他はすべて生活に余裕がないとか、或は辛うじて生活しているといつた窮状を訴えているのでございます。
これらの母子世帯に対し、国と地方公共団体との責任において、生業資金、修学資金その他の必要な資金を極めて低利に、その実情に即して貸し付けること等の施策によつて母子世帯の経済的自立の助成と生活意欲の助長を図り、母子の福祉の増進を期することは正に喫緊の要務と申さなければならんと存ずるのでございます。
以上が本法律案提出の理由でございます。
次にこの法律案の大要につきまして御説明申し上げます。
第一に対象の点でありますが、この法律による援護を受ける対象は配偶者と死別した女子で現に婚姻をしていない者及びこれに準ずる事情にある女子であつて、しかも現に二十歳未満の児童を扶養している者であります。
第二に資金貸付制度の内容につきまして申上げますれば、次の七種類の資金をそれぞれ一定の限度をもつて貸付けようとするものであります。即ち、事業を開始するに必要な生業資金の貸付は五万円以内、就職に際し必要な支度資金の貸付は一万五千円以内、事業を開始するために知識技能を習得するのに必要な技能習得資金の貸付は月額千五百円以内、右の技能習得資金の貸付を受けている期間中の生活を維持するのに必要な生活資金の貸付は、その期間中本人につき月額千円以内及びその児童一人につき月額五百円以内、事業を継続するのに必要な事業継続資金の貸付は一回につき三万円以内といたし、又児童を就学させるのに必要な修学資金の貸付は高等学校月額五百円以内、大学又は医師実施修練月額二千円以内、児童が事業を開始するために知識技能を習得させるのに必要な修業資金の貸付は月額千五百円以内といたしておるのであります。これらの貸付金は、それぞれ一定の据置期間中は無利子とし、その後は年三分の利息を附し、所定の期間内に貸付金の償還をさせることにいたしておるのであります。
第三に、貸付業務の実施機関は都道府県とし、都道府県が貸付金の貸付を行うについては、特別会計を設けることといたしておるのでありますが、これら貸付金に対する財源措置としては、国は、都道府県がこの特別会計に繰り入れる金額と同額の金額を、無利子で、都道府県に貸し付けることといたしたのであります。
第四に、都道府県に母子相談員を置くことといたしたのでありますが、貸付金制度の利用その他母子世帯に派生するもろもろの問題について身上相談に応じ、その精神的支柱となつてその自立に必要な指導等に当らせることといたそうとするものであります。国は、この母子相談員に要する経費の二分の一を負担することにいたしております。
第五に、母子世帯の職場開拓を促進いたすこととし、国、地方公共団体の設けた公共的施設の管理者に対しては、母子世帯からの申請があつた場合、その更生の場として物品販売のための売店又は理容所、美容所等の提供に努力させるようにいたしておるのであります。又日本専売公社に対しては、これらの母子世帯を製造たばこの小売人に指定するについて、特に努力するように規定を設けておる次第であります。
以上がこの法律案の大要でありますが、何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことを切望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/6
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007・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 本案につきましての御質疑をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/7
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008・山下義信
○山下義信君 本案は衆議院の回付案でありまして、当院からも又同様の議員提出案が出ているわけでありますが、本日は衆議院回付案につきまして御審議相成るようでございますので、大体同一の内容のものが両院から出ておりまして、すでに同知のごとく、事前におきまして両院で御相談を申上げましたことでございますから、御質疑を申上げるということも実は異なることでございますが、事前におきまする打合会は一部のかたがたの打合会でもございましたし、又この機会におきまして、いろいろ法律の上に勢いないこと等につきましても、十分立法意思を明らかにいたしておきたいと存じますので、そういう趣旨におきまして、提案者と若干の質疑応答を試みておきたいと存ずるのであります。
先ず質疑をいたしまする前に、衆議院側におかれましては、この母子世帯に対しまするこの種立法につきまして従来から非常に御尽力を頂きましたことにつきましては、私どもその御苦労に対しまして多とするのでございまして、特に本日提案理由の説明に御出席になりました青柳委員に対しましては特段の敬意を表するものであります。
第一に伺いたいと思いますることは、この法律案の性格でありますが、これはどういう法律案の性格と心得てよろしいのでありましようか。これは即ち一つの社会福祉法であると見るべきでありましようか。或いは又単にとは申しませんが、一つの庶民金融の一種を立法したものである、こういうふうに見るべきでありましようか。大体この法律案のすわりというものが、性格が、どこに本来の面目があるか。従来御承知のごとく社会福祉立法といたしましては、現在ありまするもの、生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法、これが社会福祉法といたしましてはまあ三大法律でありますが、それと類を同じくする福祉立法であるという考え方を持つべきであるか。ややそ、れとは性格を異にいたしまして、期する目的は同じであるが、当面この法律の持つておる性格は一つの金融、特殊の人々に対する金融措置の法律である、こう見るべきであるかという点につきまして提案者の見解を一つ明らかにしておいて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/8
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009・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 御質問にお答えいたしまする前に、母子福祉についての法律につきまして、参議院におかれましても当厚生委員会におきまして長い期間に亘つて非常に慎重なる御検討を頂きまして、而も立派な御成案を得られました点につきましては、我々この法律の立案者といたしましても多大なる敬意を表する次第でございます。
只今御質問の点でございますが、私どもの気持といたしましては、これもでき得るだけ速やかに母子福祉対策、いわゆるまあ山下先生の言われた母子福祉に関する社会福祉立法を持ちたいという存念に燃えておるものでございます。従いまして我々としても、この法律を出しまするまでには、全般の母子福祉に関する社会福祉立法をいたしたいつもりでおつたのでございます。ところが時日が切迫いたし、来年度の予算におきましてでき得るだけ具体的にこの母子福祉対策の一歩と申しますか、巨歩を進めてみたいという気持でありまして、御指摘のように貸付金の制度を主としたような法案に相成つてしまつたのでありますが、これは今も申上げましたように、母子福祉対策に関する社会福祉立法の一環として、先ずこれから始めようという考えでございます。御了承をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/9
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010・山下義信
○山下義信君 私はこの福祉立法といたしましては、提案者が只今仰せになりましたように非常に不完全なものである、福祉法とは言い得られないと思うのであります。将来を期するということでございますから多くは申上げません。それで一つのまあ貸付法になつているわけでありますが、そこでそういう目的で貸付をするといたしましても、その貸付の機関に都道府県を貸付機関に選びましたということは、何らかの意図がなくてはならんのであります。それで私が伺いたいと思いまするのは、この種の貸付をいたしまするために、従来ありまするところの貸付機関、例えば国民金融公庫というがごとき機関を使うということにおいてどういう弊害があるか。それから第二点といたしましては、特にこの目的にのみ限つた特別の貸付機関をなぜ作らなかつたかという点、それから第三点といたしましては即ち前提に申上げました、なぜ都道府県を貸付機関に使つたかということ、これには目的がなくてはならん。普通の金融機関を使わないで或いは民間のそういつたものを或いは特別のものを作らないで、地方の行政機関を使うということには何かそこに考えがなくてはならん、私はそう思いますので、この都道府県を貸付機関にされました意図が奈辺にあるか、又そうすることによつてどういう特徴があるかということにつきまして承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/10
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011・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 只今山下先生御指摘の点も十分論議の点になると存ずることでございます。資金を貸付けまして、その回収を確実にするというようなことになりますると、それぞれその専門もございます。国民金融公庫を使うのも立派な方法であろうと存ずるのでございます。ただ率直に私どもの考え方を申上げますと、未亡人という弱い引け目を感ずる……当然ではないのでありますが、引け目を感ずるかたがたが国民金融公庫の門をくぐりまして、計数的にいろいろ細かい問題にぶつかつて、その一つ一つにおどおどするようなことがあつてはならんと思います。又私どもいろいろ承わりまするところによりますと、金融公庫に行くと実際に計数的に非常に細かいことをやらされるので非常に困るというようなことも聞いておるのでございます。この法律を作りまする際に、全国におけるかかる母子福祉に関する貸付の制度を検討いたしました際にも、現在全国におきまして三十九府県がこれを行なつておるということも承知いたしておるのでございます。従いまして府県におきましてすでにこういう問題を取上げておりますので、相当慣れてもおるし、府県でやるといたしますれば、福祉事務所を通ずることであろうと存ずるのでございまして、福祉事務所におきましては未亡人の問題をもう扱い慣れておるというふうにも考えられるのであります。そういう実際的の面、或いは都道府県におきまする実際の経験の面から、やはり現在やつておるような仕事をなお続けさせたいという気持で、都道府県においてかかる事業をやつてもらいたいと存じたのでございます。なお国民金融公庫を用いまする際には利子が八分か九分になる、これをなお引いてもらうということも絶対不可能ではございますまい。併しながらそれには相当な時日も要しまするし、府県に貸付けるごとによつて利子を安くしようというような気持も手伝いまして、かかる規定をいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/11
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012・山下義信
○山下義信君 お説御尤もでございます。ただ私どもが憂慮いたしますることは、この種の福祉対策というものがとかく事務的なことに流れまして、本当に温い実際の運用ができるかどうかということについては、各種の福祉行政につきましても、いつもそういうことを心配いたしておるのでありますが、都道府県が貸付機関になりますることにつきましては、お説のような御理由をお考えであつたことは了承いたすのでありますが、私はそれが府県の、何と申しますか、単なる行政的な取扱い方に堕することを非常に憂慮するのでありますが、第二段といたしまして、この都道府県を貸付機関にさせる、従つてこの仕事というものが主として都道府県の責任においてやられるということに自然なるのであります。私思うのに、国の責任ということがこの法律立法の上にはつきりと見えていない。元来この母子世帯に対しまする方策が、一つには生活保護法、二つには児童福祉法との関連があつて、間に挟まれるというか、上下の関係があるというか、そこらのボーダーラインを目指すといいますか、ともかくもこの生活保護法、児童福祉法等が提案者御承知のように、国の責任ということが非常に強調されておる。元来又その方向に進むべきである。又進みつつあるのであります。先般児童福祉法補助金制度に目指した……これが即ち端的にそれを証明しておる。国の責任において相当やるということの性格が見えて来なければならん、然るにこの法律によりますと、ただ単にその資金を予算措置として出すということ、或いは母子福祉相談員の給与について半額を持つという以外に、国がこの種の母子世帯の福祉に力こぶを入れるということが、この法律の上に見えていない。国は責任を非常にとらないで、そうして運営を皆府県の行政当局に委して転嫁しておるような傾向があると私は思う。そういう点につきまして国が非常に卑怯というか、消極的というか、そういう意図が見えないように思うのでありますが、その辺を提案者はどういうふうにお考えでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/12
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013・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 御指摘の通り母子福祉対策は国の責任においてやつてもらいたいということを私どもも考えておる次第でございます。従いまして最初に御質問がございましたように、この法律がだんだんと成長いたし、本当に立派な母子福祉対策を規定するごとになりました際には、例えば施設を設けるとか或いは年金を給与するとか、そういうふうになりました際に、はつきりと国の責任であるということを明示いたしたいという気持でおります。ただこの法律だけを見ますと、御指摘の通り府県をしてやらしめておるような感がいたしまして、この法律だけではその精神が盛込んでおらないという点につきましては、御指摘の通り私どもといたしましても、十分その点は将来考えなければならない点であると存じております。併しながら国の責任において行うにいたしましても、府県の負担、府県の或る程度の責任をそれに付加するということも、こういう制度につきましては考えてもいいのではなかろうかという気持で、貸付のことを主とした現在過程にありますので、かかることに相成つたのでございます。併しながら法文におきましては、成る程度国にこの事業の状況を報告することによつて、国の監督を受けさせるという半面から、国の責任を或る程度できるだけ明らかにしたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/13
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014・山下義信
○山下義信君 それに関連いたしましてですが、この法律を伺いますと、こういう趣旨で都道府県が貸付けようとする場合には、その資金の半分を国が予算措置をして出してやるというのでありますが、若し府県の財政上でその府県が積極的にやらないということになりますと、自然と施策がその府県については不十分に相成る虞れがある。極端な例で申しますというと、県費を出すことを惜しみますということになると、これは都道府県がやろうとやるまいと、この法律が必ずしも義務付けられていないように考えられるのでありまするが、その辺はどういうふうにして完璧を期せられるお考えでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/14
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015・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 御指摘の通り、この法律におきましては府県がこの事業を行うも行わないのも自由であるというふうに相成つておるのであります。ただ私どもといたしましては、かかる制度ができた以上、あらゆる府県がこの事業を行うことを期待いたしております。従いましてこの法律がいよいよ実施に移されました場合に、只今先生御指摘のような不工合な点がありました際には、十分なる修正を施す必要があろうと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/15
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016・山下義信
○山下義信君 先ほど提案者が提案理由の御説明のときに仰せになりましたように、現在都道府県では先年の閣議決定の通知によります母子世帯対策要綱に基いて、母子世帯に対する生業資金の貸付を各都道府県がやつておる。本法が制定されますと、私どもの意思としては、更にその上にこれがプラスするものでなくちやならんと私は考える。然るに若しこれをこの方法ができましたことによつて、或いは中には奇貨置くべしといたしまして、従来全額県費負担であつたものが、半分は国費の資金が借りられるのだということになりまして、現在やつておるところのこの種の貸付けを半分だけ国庫にその資金を肩替りをさせるといつたのでは、私はこれが現在のデーターの上のプラスにはならん。その辺につきましてこれはまあ運用になるわけでありますが、十分御配慮を願つて、この法律によるところの貸付けが、今現に都道府県でやつておるところのその仕事の上に新規に積み重ねてプラスになつて行くということについては、十分に御配慮が願えるか、これは行政当局のほうからでも承わつておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/16
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017・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 御指摘の通りに、この仕事をやることが、只今提案者の青柳先生からお答えがありましたのでございますが、御指摘のような問題が理論的には起り得ることでございます。それを防ぎまするには、行政上の監督と申しまするか、それと更に都道府県のこの問題に対する考え方と申しまするか、今日の公選の下における都道府県の実際の府県制の運用というものと、二つが一緒になりました只今のような点を避けて参らなければならないと思うのでございます。私どもの分担いたしまする行政上の指導といたしましては、只今御指摘になりましたことはありませんように、極力これは膝詰めの談判をいたしましても、さようなことのないように行政の運営をいたして参りたい、かように考えます。なおそれと合せまして、今日の都道府県制というものの実情を見まする場合には、私の想像では、国が一銭も援助しなくても、自分の身銭を切つても、御指摘のような貸付の制度を運用いたしておるのでございまするが、それはことほどさように母子家庭の福祉というものが、都道府県の政治の上におきましても重大問題であるということの証左にも相成るかと思いますので、さような、行政におきましては、都道府県自体といたしましても御指摘のようなことのないように、何と申しまするか、都道府県の政治というものが運用されて行かれるのではないだろうかという期待を、私は合せて持つておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/17
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018・山下義信
○山下義信君 私は大体のことを承わつておきたいと思うのでありますが、細かいことはもうお尋ねいたしませんが、どうも見ましてですね。全体から受取る感じというものが、何となしに、或いは就職支度資金、まあ生業資金というものが従来からあるのでありますが、就職支度資金或いは事業継続のための資金、或いは技能習得資金或いは教育費のための貸与ということは、誠にこれは新例を開いて頂いて、従来この種に対しましての貸付というものが余り公けには行われていなかつた点について、新たなる途を開いて頂くということの苦心は私は高く評価するのであります。併しながら、その種目を殖やされたというだけであつて、この貸付法の全体を眺めるというと、何となしに受ける感じが苛酷なような感じがするのです。きつ過ぎるというような感じがするのです。それは、例えば第六条に、保証人を立てさせる、或いは第七条において貸付の決定については仰々しく審議会の審議を経させるようにしてある。或いは貸付の金の使い方が少しでも約束と違うというと、すぐ戻させるようにやる。或いは又第十条等におきましては、少しでも支払いが遅れるというと、約束が違うというと、すぐに延滞利子がとれるようにしてある。これは除外例の規定もあるが。それから保証人を立てさせる。又第十一条におきましては、貸付の目的を達する見込がないというときには、誰がそれを認定するのか知らんが、回収をする見込みがないと思つたら、一遍に返させるというようなことが、いろいろ規定を見て行くと苛酷なような気持がするのです。何となしに受ける印象が……。而も私が恐れるのは、それらのいろいろ手続やその他この法の施行はことごとく省令に譲つてあるのです。施行細則は政府が勝手にきめるのです。この種の貸付法案、この種のことをやるときに、我々がしばしば経験することは、恐らく微に入り細を穿つた施行細則を作るに相違ない。これは厳しいものを作る。或いは書式から、極端なことを言えば、この貸付の願い書の紙の性質から、寸法から、書き方から、というようなことを昔はよくやつたものです。或いは墨で書かなければならんとか、鉛筆ではいけないというようなことで、その申請書の出し方、その生業資金を借りようとすれば、その事業の収支の見込みの予想から、いろいろなことをそこに書類を添付することを要求いたして、なかなか近附きがたいような厳しい規則を作る。法律は大体のことをきめるのであるが、その大体のことをきめた法律の上を見ましても、非常に厳格に苛酷に言つておるようでありますが、なおその上に私はそういうふうなきめ方如何によりましては、貸すぞと言つて、実は借りられないような枠が縦横無尽に張りめぐらされるということになるというと、甚だ名前は結構であるし、目的はよろしいけれども、真にこの対象増が満足をするような運用の効果が挙げられるのであるかどうかという点について、非常に危惧を感ずるものであります。そういう印象を受けるのでありますが、それにつきましては、提案者はどうお考えになりましようか。又施行細則につきましては、この省令に譲つてありますることにつきましては、当委員会に、内容等につきましても大体御案を持つておりますれば、あとからでもよろしうございます。お示しに相成りましようか。十分その辺を御検討に相成りましたでしようか。伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/18
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019・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) この法律によりまして、お金を借りるために、役所の門を潜る未亡人の心情を察する必要が私はあろうと存ずるのであります。従いまして、今先生御指摘のように、厳重な細則をきめて、それを一々金を借りに来る未亡人に押付けるというようなことは、これは私はやめてもらいたいと、そう思つております。役所におきまして、いろいろ話を聞いて、必要な書類であるならば、できるだけ少数のことを望みまするが、書類は役所で書いて上げるというような気持で以てやつて頂かなければならん、こう思つております。従い永して、細則につきましても、又厚生委員会におきまして、厚生委員会の御意向を盛つた細則を作るように、厚生御当局におきましてもとり計らわれることを私は望んでおる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/19
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020・山下義信
○山下義信君 今一つ私は承わりたいと思いますのは、この母子世帯の、この種の貸付をいたす、この恩恵を受けるものは、およそ母子世帯中如何なる種類の母子世帯であると考えておられましようか。私どもは、およそ一つの法律を作りますと、それがその対象者の全般に亘つて、公平に身体障害者福祉法を作れば、身体障害者にそれが全般に、平等に、身体障害者手帳というものを作れば、その手帳に何らかの恩典が与えられておれば、全般に及ぶということがあつてこそ、私は対象に対する福祉立法の幾分かの目的が達せられると思う。これは母子世帯に対する必要な資金の貸付法である。然らば誰でもこの資金がこの要件に合すれば借りられるものでなくちやならんと思うのです。ところが、私どもの見るところでは、心配いたしますことは、借りられる力のあるものが借りられる。借りられる力のないものは、表現が或いは不十分であるかもわからんが、力のないものが借りられない。言い換えるというと、最も借入れの必要度の高いものが借入れができなくて、というようなことになりますと、私は甚だ法の目的が幾分か減損する虞れがあると思うのです。そこで、具体的にお尋ねいたしますと、生活保護法の適用者はどうする、生活保護法の適用を受けております者が、これが一番金が欲しい階層である。一番金が要る階層なんです。そうして一番救い上げて、一番目立をさせなければならん。第一番に手をつけるものは何かと言つたら、明日がしのぎがたい生活保護の適用者に先ず金を貸して、そして、法的扶助を与えておるというよりは、貸してやつて立上らさにやならん。然るに実情は不幸にしてその生活保護法の適用者、被保護世帯は、経済自立をいたしまする諸条件の一上に、その条件にかぶるものはかなり多い。我々が望むところとそれらの人の持つておりまするその当該御本人たちの条件或いは環境の条件というようなものが、例えば果してそういう人たちが保証人を得られるか、或いは果してそういう人たちが一つの生業を営むことができるか、果して実際の今日生活保護法の適用を受けておる人たちが技能習得を受けるだけの着物でも服でも持つておるか、持つていない。そういうような一番必要度の高い世帯にこの法が適用されてこそ、この法の目的の一部が達成せられると思うのですが、生活保護法の適用者の場合をとりますと、この法の適用が果して全幅になし得る見通しというものがどういうところにございましようか、その辺を明らかにしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/20
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021・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 先ずこの法律の適用を受けまする第一順位者といたしましては、生活保護階級を目指しております。そして大蔵当局におきましては、それに限れと、こういうのでありますが、それでは相成らんのでありまして、その上に位すると申しまするか、いわゆるボーダーにある人も対象にいたそうと存ずるのであります。なお保証の問題につきましてもお話を触れられましたが、これにつきましては相互保証の道を開くことを実は考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/21
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022・山下義信
○山下義信君 そこで私は生活保護法の対象者になりますというと、現に生活扶助を受けておる。そしてここには生活資金の貸与というものがある。その貸与というものと扶助というものとの調節、これは一つ運用の上におきまして相当問題があり、相当研究をいたしましていたさなきやならん点が私はあると思いますので、十分当局に私は御検討をお願いしておく程度にいたします。それでこの法の運用につきまして児童福祉審議会の意見を聞くことにしておりますが、このことは両院の協議会のときにも申上げましたから、本日は繰返しませんが、ただお願いしておきますことは、児童福祉行政はいつの場合においても大切なんです。如何なる場合でもこれがその重要度を減ずるということはない。そしてその児童福祉行政のまあ推進力になる、民間人をブレーンとする機関というものは、児童福祉審議会なんです。これが開店休業の状態にあるか、これが十分機能を発揮しているかいないかは別といたしまして、これが今日の児童福祉行政の上のまあ諮問機関としては唯一無二のものである。これを私はどうか十分尊重して、この児童福祉審議会の意見というものを権威あらしめるように当局は考えて行かなきやならん。その児童福祉審議会の仕事やら権威というものが、なんとなしにいろいろな批判の対象になるがごときことは余ほど厳として慎しまにやあならん。私はそう考える。それをみずからその児童福祉審議会の権威を失墜し、或いは児童福祉審議会のあり方というものがとかく世上の批判の的になり、その委員になる人たちがいろいろな制約を受け、或いはそのなすところによつて一部の非難、攻撃を受けるがごとき立場に置かしむるというがごときは、児童福祉行政を重んずるものといたしては厳に注意をいたさなきやあならん。貸付けを審査する責任を免れるとか、不公平のそしりを免れるために、或いは依怙贔負を避けるために、それは趣旨はいいけれども、手頃な傍にあるものをちよいとそれを利用するのだという、あんな考え方は、私はみずからが我が国の児童福祉行政を軽視しておると言わなきやあならんと思う。我々は児童福祉法を作つたときに、児童福祉審議会というものに十分な期待を持つた。今日こそ審議会がたくさんできましたから問題が多いのでありますが、あの児童福祉法を作りましたときには児童福祉審議会に非常な期待を持つた。どうかそういう点について御考慮を煩わしたいのでありますが、なお将来とも私はこの貸付け法の運用について、現在の未亡人会等をどういうふうに活用されますか、或る場合におきましては、その資金の貸付けにつきまして未亡人会という団体に貸付けて、その団体が更に責任を持つてその会員に手軽に斡旋といいますか、この未亡人会という折角ありますその団体が、その団体の責任において、この法の十分な効果を収め得るために何らか活用といいますか、介在させるという運用上のお考えがありますかどうか、この点を承わつておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/22
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023・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 只今の段階におきましては、未亡人団体を全面的にこの仕事に関与させるということになつておらんのでございます。ただ併しながら実際上の問題といたしまして、相当しつかりした未亡人会におかれましては、県の当局と連絡の上に各種の申請がありました際に、それについて順位などにつきまして意見を述べられるというようなことは、実際上の面においてあり得ると私は存じておるのでございます。先生のお話のように未亡人団体が関与するということにつきましても、十分考えてみたのでございまするが、現在の段階におきましては衆議院の厚生委員会といたしましては、そこの結論がまだ出ておらない次第でございます。併しながら実際の実施の面におきましては、相当実際的に未亡人団体の関与する部面が出て来るだろうと、私はこう存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/23
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024・山下義信
○山下義信君 これで私の質疑は終るのでございますが、最後に伺つておきたいと思いますることは、今日の母子世帯の当面の福祉上の重点は、今回御立案になりましたこの生業資金の問題、これが最もパーセンテージが多く、重点でありますことは自他周知の通りであります。大変、この点だけでも一歩前進せられましたことは、私どもといたしまして心から賛意を表します。併しながら、私は思いまするのに、成るほど未亡人、母子世帯の諸君が生業資金を望まれること、旱天に雨露を求められるがごとく熱烈の要望であり、必要である。併しながらその必要であるということと、そのことが成功するかしないかということは別問題で、恐らく今日の社会情勢を見ましたときに、資金、信用、事業等々において相当欠くるところなき有力なる人たちですらも、容易に企業利潤を上げ得ざる今日の情勢です。いわんや零細なる金を以てこの困難なる社会で事業を営んで生活し得る、利潤を上げ得ることは、実に容易でありません。これは恐らく多少私は時代の、時間のズレがあると思うのでありますが、意見は述べません。僅かな生業資金を得たならば、一家の口を濡らすことができたということは、二、三年前の話なんです。本当に申上げたら私はそう考える。その僅かの金を得たならばすぐ食えるという経済情勢にありましたのは二、三年前であります。今日では、僅かの金を以てしては、相当な資本を持つており相当な地盤を持つておる事業家すらも赤字を出しておる経営難の今日に、果して僅かな金を以て仕事を営んで、利潤を挙げて生活し得られるような一体仕事が存在し得るかどうか、全般の社会情勢を見渡しまするというと、つい二、三年前までは一万円か二万円あつたらすぐに食えるだけの仕事に取り付ける、いろいろ諸条件がありましたが、私はその点時代が違つて来ておると思う。そこでまあ意見は申しませんが、併しながら、なお今日生業資金を必要といたしますることは、依然としてその実情にあると思いまするが、私はこれ以外に問題は、この種の人たちの医療の問題、病気の問題、これは私は重大な問題だと思う。どれだけ生業資金を与えて、技能を何年習得させるか、子供に学費を渡して高等学校、大学に進めさせても、これが健康を害して病気になつて、その病気の治療に全部を奪われたら何にもならないことです。その人たちの医療の問題ということも、これも相当な問題だと思う。
今一つはこの対象者の人たちに対しまして、いわゆる国がこぞつて十分なるサービスをしてくれる、福祉サービスをしてくれる、端的に申しましたならば、十分いろいろ各種の身上相談に応じてくれる、私はこれは非常に必要なことだろうと思うのであります。それでいろいろよき相談に応じて親切に世話をするということが、金以上にその者にとつて利益になり得る場合がある。そういう点につきまして本法におきましては母子相談員が置かれましたことは非常に結構でありますが、母子相談員が只今本員が申上げましたような諸点につきまして十分な活動を願わなければならん。これは母子相談員は貸付の決定は只今この法律によりますと児童福祉審議会の意見を聞いて行くことになつておりますが、この法の施行につきまして母子相談員というものは殆んど専従者といつたような性格を持つて世話をするのでござましようか。この母子世帯に対しまする一般の法律に定めてありますような身上相談ということにつきまして十分尽力いたすでありましようが、そういつた場合に社会福祉主事との関係はどういうふうに調節されて行きましようか。母子世帯に対しまする相談事項やいろいろのことにつきましては、全部母子相談員がやることにいたしますか。その社会福祉主事との関係はどういうふうに考えられますかということだけを承わつておきたいと思うのであります。
それからもう一つ、これでおしまいでありますが、この貸付の金額が非常に低いように思いますが如何でしようか。そういうことだけ申しておきます。それで多分提案者もこれで十分とはお考えにならんでしようから、将来は増額しなければならんと思う。殊に私の少いと指摘いたしますることは、教育の金でも高等学校で五百円、大学で二千円ですが、これは少な過ぎる、実際の実情に副いません。高等学校でも一ヵ月千円以上要る。大学に参りますれば少くとも一ヵ月三千円、五千円は実際に要ります。これでは教育費の足りないものに幾らか足すという程度ですから、対象者が本当に困つた階層でなくして、幾らかは出せるが、ちよつと足せばいいという程度になります。同じ教育費を出すならば、本当に要るだけの教育費を出さなければならん。それから技能を習得するというようなことの間の生活資金、これも本当にこれでその間に生活できるか。僅か千円か、二千円では、私はこれも足しになる程度である。そういうことでありまして、将来これは財政との関係もございましようが、本員はこの貸付金額の限度、この頭打ちが低過ぎる。これが最低くらいで最高はもつとなければならんということを指摘しておきたいと思います。それらの諸点につきまして意見を残しておきたいと思います。御答弁を煩したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/24
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025・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 貸付の金額の低きに失しておるという点は、私どもといたしましても十分存じておる点でございます。ただほかにある制度との均衡を保つために止むを得ず、現在ではこういうことに相成つておるのでございまして、その点につきましては山下先生の御所見と全然同感でございまして、衆議院におきましても参議院のお力をなお拝借いたしまして、この金額の増額に努力いたしたいと存じます。
なお最初の母子相談員と福祉主事との関係につきましては、十分これは連絡を密にいたさなければ相成らんのでございますが、この点につきましては政府当局のほうから答弁をさせたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/25
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026・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 母子相談員はこの法律が通りますれば、十五条に書いてありまするように、母子世帯の身上相談全般に応じる職員に相成ると存じます。従いましてこの貸付のことにも勿論お世話を申上げることに相成ると思います。社会福祉主事との関係でございますが、社会福祉主事は御承知のように生活保護法、児童福祉法、身体傷害者福祉法、この場合には保護法と児童福祉法の関連がございますが、この三法のケース・ワーカーということに相成りますので、従いまして生活保護法の適用なり、児童福祉法の適用なりということを通じまして、母子世帯の御世話を申上げるということに相成るわけでございます。母子相談員という新規のものができましたならば、これが生活全般の御世話を申上げる第一番の職員ということに相成りまして、それらが生活保護法の適用を必要とするようなことになりますれば、この母子相談員が福祉主事等に連絡いたしまして、その適用ということに相成りますると、福祉主事のほうに移る、こういうようなことに相成るかと存じます。なお母子相談員は生活全般の身上相談でございますので、或いは職業安定所或いは補導所その他税金の問題でございますれば税務署の関係でありますとか、いろいろと関係方面ができて参ると思います。いろいろ数限りない身上相談につきまして本当に心を打割つていろいろ聞いて上げて万事の御世話をいたす、かような性格のものであると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/26
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027・藤原道子
○藤原道子君 長い間の要望であつた母子福祉法の一環として本法案が上程されるまでに御努力頂きましたことに対して私も感謝いたします。只今山下委員から十分御質問があつたのでございますが、なお重復を避けまして二、三の点についてお伺いしておきたいと思います。
現在地方自治体の財政の困窮の中に相当厚生行政関係のものが食行つておるということで、絶えず私どもは不平を聞かされておるわけでございます。従いまして非常に本法の施行に当つても私は危惧を持つものでございますが、こはれ結核予防法などにおいて苦い例がたくさんございますので、殊更に危惧を持つております。従いましてこの法案は全額国庫負担というふうに私は是非したいという強い希望を持つておるわけでございます。それでこういうことに対しての御見解を今一応明らかにしておいて頂きたいということが一点。
今一点は先ほど御答弁の中に三十九の都道府県が貸付をすでにやつておるから、その点は心配ないというようなお言葉がございましたが、その金額は全体といたしましてどの程度今まで貸付けられておるかということをこの際お聞かせ願いたい。私実は時間を急いでおりますので、箇条的に続けて御質問申上げておきたいと思います。
それからこの法案で見まして、貸付を受ける希望者がどの程度あるかというお見通しを伺いたい。
それから今一つは、国庫で支出する金額の規定がないようでございますが、まあ九億と聞いてはおりますが、そのほうの折衝はすでにでき上つておるかどうか。一部難色があるようにも聞いておりますが、この九億はもう確保できたかどうかということと、それだけで足りるかどうかということ、それからその規定がなければ、大蔵省でこれは今年は一億で我慢しろと言われても止むを得ない、これらについてのお見通しをこの際はつきり伺つておきたい。
それから保証人というものを、私はこの際、山下さんの言われたように、非常にこの法案が冷たいように考えられてならないのでございますが、保証人は極く相互的なものにもしたいという御答弁もございましたけれども、今までほかの法案の例を見ましても、保証人となりますと、なかなか政府は次から次へうるさいことをきめますので、私はこれは削除してもらいたい。
それから今一点お伺いしておきたいことは、延滞利子などは非常に苛酷であると思いますが、これはどうしても削除することはできないかどうか。これについての今までの折衝の過程等についてお聞かせを願いたい。
それから今一つは、就学中に、大学へ行つているといたしまして、若し不幸にしてその間に母が死亡する等のことがございました場合にどうなるかという点についてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/27
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028・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) 只今の藤原委員の御質問に対しまして簡単にお答え申上げます。
第一の地方自治体の負担が大きくなることと同時に、今後果して各府県が貸出をするかどうかという問題でありますが、只今までの検討の結果は、大体全府県共貸出を実施するだろうという想定の下に審議を続けて参りました。現在の問題としても必ず借りられるだろうという想定の下にやつております。
それから第二番目の全額国庫負担についてでございますけれども、これは全く御同感であります。その通りに実施を要請したいと思つておるのですが、とにかく母子福祉に対する理論的な裏付としましてはどなたも異論のないところでありますが、窮乏しておりまする現在の国家財政から見て形の上において多額の金が供出できない、こういう心配がありますために、半額を国庫のほうで持つということにしまして、大体九億ばかりの金に対して倍額貸出せるように工夫しよう。要は実質上県なり国なりで支出しますものが総額十八億なら十八億に到達するといたしましても、予算を構成する上においての技術的な面、又実際の予算の割振り等から非常に全額国庫負担にするというと、枠が小さくなる。こういう考え方からこの点も半額で止むを得ないじやないかということに結論がなりました。
第三番目の各府県の現在実施しておりますものがどのくらいあるかということでありますが、現在までわかつておりますのは三十九県でございます。三億三千百三十五万円、これだけ実際に貸出をしております。それから修学資金の面等につきましても、或いは技能習得の資金等の問題にしましても、これは全くこの法律としては新らしい独特な解釈で出発しておるものですから、この貸出金以外にこうした面が相当各府県とも要求されると思うのであります。そういうことで現在までの実績から判断しまして、この貸出金というものは、第一項に申上げましたように各府県とも必ず要求して来るのではないか。
それから予算に対する裏付として見通しはどうかという点でありますが、今までの折衝の結果では、大体予定ぐらいの金は頂戴できるという見通しの下に今日まで折衝しております。それは必ず出してやるというのではなく、どなたのお考えも当然母子福祉は実施しなければならんということだけは皆さんが御承知しておる。従つて金が多い少いという問題は全然出ておりません。
ただこの法律で難点になります点は、修学資金といいますか、この点について育英資金と重複するのではないか、こういう御質問を受けましたことと、特別に母子に対する職業補導をする、而もその間の生活の保障までする、仕度金まで出すということは行過ぎでないか。男の場合を勘案した場合に、平等の権利義務を持つておる男と女の立場からして、こういうふうな建前のものはどうかと思うという質問は相当ありましたけれども、育英資金にしましても、普通の育英資金は学校に入つてからでなければ権利が発生しない。但しこの母子福祉の建前はお母さんが子供を高等学校に入れよう、大学に入れようという、その入れる事柄の事前において学資金が借りられるのだということであれば入学を志望することができる。入れてしまつてから発生するところの権利でなしに、入れる前に権利を獲得したい、こういう筋合のものだとよく説明を申上げておるわけです。この点も大体御納得が願えたと思う。
第五番目の保証人の件でありますが、これを削除することについては過般来山下先生からもお話があり、相当この点については論争もいたしましたのですが、どうしても大蔵省のほうとしまして、少くとも貸金に対しては政府が貸そうと個人が貸そうと保証人を立てるのは当り前のことである、而も母子の立場ということを考えれば、当然正しく法律を運営する上において保証人を立ててほしいのだ、こういう御要求がありまして、それ以上恵むという考え方から保証人なしということで行くと、法律の通過もむずかしいし、又実際大蔵省としても予算を組む上に技術上非常に困難がある。こういうことから結論としまして、それでは保証人の件に関しましては、借ります母子のかた、母親のかたが相互で保証のできるように、相互保証のできるまで何とか持つて行つてもらえないかというお話もしたのですが、この相互保証という件に関しては特例でありますので、法律の上にそれを現わすことはできない。但し児童局長のほうでこの件に関しては適当な方法で緩和策を講じて行きたい、こういう御声明がありますので、何らかの形においてこれが緩和でき得るのではないか、こういう感じを持つております。
それから第六番目の延滞利子の件でありますが、これも苛酷に過ぎはしないかというお話合もありましたけれども、この点に関しましても、実際に派生して来ます問題は、現在の社会情勢から勘案しまして、一番早いので四年、五年後にこの延滞利子のつくようなかつこうの出発点が起きて来ますわけで、どんな貸金につきましても延滞利子というものはやはり建前上つきものだ。それを特に母子に関してこうした罰則めいたことを削除するわけに行かない。建前は建前として、やはりこうしたものを残して行かなければいかんということで、一つこれは延滞利子というものも苛酷に過ぎるという点はありますけれども、止むを得ず御承認をしたという形でございます。但しこれも運営面において各府県が実際にやられ或いは児童福祉審議会又母子相談員等が活躍しておるのでありますから、この点についても十分運用上好転でき得ると確信を持つております。
第七番目の就学中に死亡した場合にどうするか、母親が死亡した場合に中絶するではないかという御質問だと承知いたしましたが、これは就学中に死亡しましても、卒業するまでは当然続け得られるように解釈をいたしております。さように又当局のほうでも御説明になつておりますので、御心配ないと存じます。
以上簡単でありますがお答え申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/28
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029・藤原道子
○藤原道子君 私非常に時間を急いでおりますので……、只今各府県から出しておる金が三億三千余万円ということでございますが、そうしますと、やはりプラス五億ばかり又余計に出さなければならないことになりますので、この点についての財政的裏付け等について十分国で考えるべきであるということを要望いたしておきます。
それから母子相談員のことでございますが、この前の合同打合会のときにも、是非我々としては女子ということを一つ限るようにして頂きたいということを要望いたしましたが、それは法の建前でというような反対意見が相当ございました。それは私もいたし方ないと存じますが、それならば、この際是非とも私希望いたしたいことは、山下さんからも繰返し御指摘のございましたように、法律はこれだけのものができる。ところがどの法律も全部政令或いは施行細則等で非常に固く縛られて、立法当時の精神が殆んど歪められてしまいますのが従来の例でございます。従いましてこの母子福祉法は母子福祉と銘打つております以上は、福祉ということを前提として考えなければならないと思います。従いまして政令等をお出しになる、施行細則等をおきめになるときには、我々と一つ打合せてもらいたい。そしてやはり私どもの立案するときの気持を相当活かして頂くということを一つここでお考え願わなければ、私はどうもこのまま納得するわけに行かない。従いまして政令等の場合にでも、この母子相談員は私たちの主張したことの精神が生きるような方向に御決定を願うということができるかどうか。私はそうしてもらいたいと思います。それについてのお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/29
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030・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 政令、省令の問題でありますので、私からお答えいたします。この法律の精神は飽くまでも母子家庭の福祉を図るということでございますので、政令、省令を定めますにつきまして、がんじがらめにして立法措置とからむようなことになつてしまうというようなことにいたすつもりは勿論毛頭ございません。又この法律が政令、省令に譲つておりまする点も非常に少うございまして、例えば第二条の六号で「前各号に掲げる者に準ずる女子であつて政令で定める者」これは借りられる資格のある人を拡げるほうでございまして、これは別に締めつけるというものでもございませんので、問題にはならんと思います。それから十一条に「貸付の手続、貸付金の償還その他貸付金に関して必要な事項は、政令で定める、」これが若干の御心配の条項かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/30
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031・藤原道子
○藤原道子君 それから保証人のことも……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/31
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032・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) この点につきましてもさつき申上げましたように、この法律が福祉の立法であるということを十分考えておりますので、私どもさようなつもりは毛頭持つておりません。それから厚生省令に譲りますのは十三条かと思いますが、これは国と都道府県との関係でございます。これは国が都道府県に貸した金をどういうふうにして返すかということでございまするが、これは直接母子家庭に影響がない問題でございます。さようなことで譲つております点が非常に少うございまするので、御心配のようなことはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/32
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033・藤原道子
○藤原道子君 なんというのですか、とにかく施行細則だの何だので、それは固くするつもりはございますなんて答弁する人はないけれども、とかくそうなるのです。この前看護婦法制定のときにも、やはりそういうことを御相談いたしまして、最初にこれは発令する前に一つ我々に内示して欲しいというようなことを申上げて、今でもそういうふうな方向で進んでおる点があるので、その精神を尊重して欲しいということを希望したいのです。
それから相互保証ですか、そういう建前だというようなこともあつたので、そういう点も十分活かして欲しいということ。
それから母子相談員を特に女子を優先して採用するというのですか、任命するという精神をも含めてすべてを御決定願いたいということを私は要望する。
それからいま一つ委員長に……、この法案ができたので母子福祉はそれでいい、済んだというような気持に若しなられると困りますので、私はこの法案に附帯条件と申しましようか、希望条件と申しましようか、こういうものをつけたいのです。私たちはこの法案が全国の未亡人の要望でございますので、不満ではございますけれども、一歩前進のつもりで是非これの通過を図つて、併せて衆議院側とも相談いたしまして、これで終つたのではない、是非とも一日も早く真の母子福祉法を作るということに努力するというような希望を私は付けておいて欲しいと思うのです。そのことを御相談願うことを委員長にお願いいたしまして、甚だ残念でございますが、私はこれで質問を打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/33
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034・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) この際ちよつと藤原委員の御質問に関連して、私ちよつとお尋ねしたいのですが、二十八頁の予算説明に只今九億と言われましたが、児童局長どうですか、九億と解釈してよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/34
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035・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 只今要求をいたしておりますのは九億何がしの金でございます。実はこの予算は前の実態調査をもとにいたしまして要求をいたした数字でございます。それで最近未亡人家庭の実態調査をいたしました資料が只今まだ集計中でございまして、全部の府県の分が手許に届いておりませんで、三十数府県が届いておりますが、大体それに基きまして予算の組替をいたしておるところでございます。新らしい資料によりますると、実は金額はもう少し殖えるようなことに相成ると思うのでございますが、正確な数字は只今のところまだ出しておりません、さようないきさつでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/35
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036・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 他に御発言ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/36
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037・河崎ナツ
○河崎ナツ君 いろいろ母子福祉の問題につきまして、先ず入口としての生業資金貸付の問題からつつかい棒の一本ができ上つて来ましたことを大変愉快に思うのでございますが、このことにつきまして先ほどから山下委員、それから藤原委員が根本の重要な問題及びこまごまと又それに附加えて御質問になりましたので、殆んど尽きておると思うのでございますが、今伺いました問題のうちで少し脇に落ちんことがございますので、二つばかり伺わせて頂きたいと思います。山下委員もおつしやつていらつしやいましたが、この貸付の資格の決定をいたします第七条に関係いたしますが、今までの生業資金など引揚者或いは母子にもございましたが、母子の場合にはその資格と申しましようか、決定するに何か足らんところがあるようで、なかなか決定にはならなかつたということがたびたびございますのですが、今度は先ほどの説明で成るべく生活保護の階級、或いはボーダー・ラインの人たちのほうに行くようにというお考えのようでございますが、それにしましても、その審議会のかたの意見を聞き、その意見を聞いて、次の物指と申しましようか、そういうふうなものが多少あるのでございましようか。まあそういうかたが大体申出れば、どういうふうなときに、どういうことで決定するのでございましようか。そこのところがもう少し何か心配で仕方がないのでございますが、お考えがございましたら伺いたいのでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/37
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038・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 便宜私からお答え申上げたいと思いますが、法律できめられた、この何と申しますか、資格の基準というようなものは、ここに書いてありまする以上には設けられないわけでございます。併しながら、どういう人を重点に貸付けるかというようなことにつきましては、この制度ができました場合の運用の問題もありまするので、その運用につきまして、厚生省が一定の指示をいたしますることは、これは当然私どもの権限でできる、法律の範囲内でできることであります。その指示をいたしまするにつきましては、先ほど来いろいろ御意見のありましたように、この制度が金融を主として狙つておるものよりも、むしろその家庭の更生、転落防止というようなところを狙つておる福祉の制度であるということを十分に尊重いたしまして、さように本当に必要なところに金が廻るような意味の指示をいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/38
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039・河崎ナツ
○河崎ナツ君 ではまあその言葉を信じまして多少安心することにいたします。
もう一つ伺いたいことは、これはまあ願い出ると、するとその人に貸す、或いは同じそういう建前になつておりますが、先ほど山下先生がおつしやいましたように、今日の情勢ではこれだけの資本でどれだけの生業に役立つて、それから、それによつて立上つて行けるかというと、情勢が随分変つておる。これは非常に大事なことだと思うのでありますが、前の引揚者なんかの貸付金でも、多少、五人なら五人、十人なら十人組んで、一人で五万円、組んで幾らと、そういうふうにして仕事をして、割合に強く協力をしながら立ち上つて行くという例を随分私どもほうぼうに行つて見たのでありますが、婦人のほうもそういうふうにできると、お互いに協力してそういうふうにやつておる、そういうように、未亡人が立ち上つてよくやつておる例を徳島県の池田で見たのでございますが、今度の場合もそういうふうな取扱い方は、願いますれば取扱い方はするお考えはあるのでございましようか。或いは別々にそれを借りて、そつちで協力してやつたらよかろうというふうなところでございましようか。女の人は大変うまく行つてはおりますけれども、一人ではなかなか弱いものですから、そういうところも考えてあげなければいかんじやないかと思うのでございますけれども、如何でございましよう、そこを伺わさして頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/39
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040・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 衆議院のほうの小委員会の御審議の状況を私も拝聴いたしておつたのでありますが、その点も非常に慎重な御審議があつたようでございます。それで、この法律の建前は、今連帯貸付ということを法の上に現わしておりません。従いまして、貸付をいたすのは個人でございます。併しながら個人でそれぞれの責任において借りましたものを皆が出資し合つて共同の事業をいたすということは、これは勿論法律上差支えないことに相成つております。御指摘のような場合が衆議院でいろいろ御審議になりましたときの模様では、非常にいい場合もあるけれども、又同時にそういう連帯貸付というようなことを認めて行くと、非常に弊害が出て来る。と申しまするのは、本当に金を借りた母子世帯のかたがたは名義人だけであつて、実際にその金を利用して仕事をやつているのはほかの人がやつておるというようなことになる場合も実例が相当に前にあつた。殊に未亡人世帯の場合におきましては、この人たちが寄合つて相当な金になりますると、いろいろな好ましくないようなかたがたがそれにくつついて、いろいろ踏台になつてしまうような虞れもなきにしもあらずたと、そういうふうな懸念から、建前といたしましては、今申しましたように、個人々々に貸付けるということに相成つたのであります。なお貸付金の限度の問題でございまするが、これは先ほど青柳議員からお答えがございましたように、御審議の経過におきましても、もう少し高くしたいというお気持もございましたですが、いろいろな諸般の情勢からかようなことに御決定になつたようでございます。今日ありまする引揚者の更生資金は、御承知のように、一応の限度は一万五千円、特別の場合に三万円以内ということになつておる。それらを比較いたしますると、このほうが五万円でございますので、なお事業継続資金といたしまして三万円でございましたか、続けて貸出しも受けられるということになつておりまするので、今日ありまする制度から比較いたしますれば、かような資金といたしましては、限度額を私ども比較いたしますると、相当高いように思つております。併しながら、先ほど来御審議がありましたように、今の情勢でこれだけの金でなかなかうまく参るものではございませんので、私どもといたしましても、将来適当な機会にこの限度額を国会の皆様方の力で増額して頂くことは希望いたすところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/40
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041・井上なつゑ
○井上なつゑ君 ちよつとこの際小さいことを二三伺わさして頂きますが、この法律は非常に急ぐというので衆議院で採択されて、決定されてこちらに提出されたわけでございますが、これは急ぐので施行期日が一月一日ぐらいかと思つておりましたら、四月一日に施行期日がなつておる。勿論これは予算の問題もございましようが、その方面と睨み合せてやらなければならんのでございますが、そういたしますと、これは三月末に卒業する生徒と申しましようか、そういう子供を持つた人たちは、一月二月三月と大分費用が要りましようし、お金を貸してもらいたいという人も四月にならなければ借りられない、本年度は借りられないということでございますが、三十数県ではすでにこうした資金がおありになるというのですが、残りの七、八県に若しもそうした該当者があるということになつたらどういうことになりましようか。そういうことについて何かお考えがあるかどうか、伺わして頂きたいと思うのでございます。
それから県に幸いにそうした資金があります所は、都道府県が貸出します責任舌になつておられますが、実は私ども仕事をいたしておりまする中でも、この間も福祉助産婦の話では、福祉事務所に行くと乞食のような扱いをされる。乞食みたいに言われるので、そんなら金は要らないからと怒つて帰つて来られたというような例も聞いております。勿論福祉事務所に母子相談員を置いて下さることは結構だと思いますが、母子相談員の資格につきましては、こうした資格に該当する人がおられて、希望者がたくさんおられるということは結構であるのかも知れませんが、母子相談員の仕事というものは非常に大事だと思うのでございます。いろいろ法律知らなければならないということを先ほどもおつしやつておられるのでございますが、こうした人は何か報酬とか、何と申しますか、仕事の準備というようなことについては考えておられましようか。この2点お伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/41
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042・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 第一点でございますが、これは御指摘の通り、この法律が四月一日からということに相成つておりまするので、而も今日さような制度のないところにおきましては、府県におきましては、大日本育英会等を利用する以外には何ともならなという結論にまあ相成るわけであります。四月一日ということに相成つておりますいきさつ等につきましては、私どももいろいろし仄聞いたしておるのでございまするが、本年度といたしましては、御承知のごとく国民金融公庫のほうの出資金のうちの五億が母子家庭に対する紐付の融資ということに相成つておる次第であります。この五億を私どものつもりでは、本年度一杯までに貸出を終了したい、かように公庫と相談をいたしておるわけであります。先ず本年度はあのほうでやりまして、来年度はこちらのほうに移つて行く、こういうことにまあこの法律が成立いたしますればいたして参りたいというつもりでおるわけであります。
それから第二点の母子相談員の問題でございまするが、これは御意見の通り、私どもも同感でございます。先ずこれらの人に本当にいい人を得る。殊に私どもこれは婦人を原則に考えておる次第であります。御婦人で本当にこの資格にぴつたりするようなかたがたを得るように努力をいたしたいと思つております。なお又その可能性も相当あるように私は存じております。今婦人民生委員とか或いは未亡人会の役員とかをやつて頂いておりまするかたがたで、日夜母子家庭のために奔走をして頂いておりますかたも現実に相当多数あると思うのであります。さようなかたがたから広く求めまするならば、いい人が得られると思います。なおさような選任に努力をいたしますると同時に、なおトレーニングの問題でございますが、これは来年度の予算に私どももそのつもりで要求をいたしております。その予算が成立いたしまするならば、トレーニングを大いに力を入れてやりたいとかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/42
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043・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 只今の御質問の御意図の中に、何故この法律を急ぐのかということにつきましての御疑問があつたかと私は思うのでございます。その点につきまして、提案者といたしまして、御質問に答えると申しまするか、私どもの考えを申述べる義務があると思いまするので、私から話さして頂きたいと思います。その点は只今局長さんがお話になりましたように、本年度は国民用金融公庫に特別に、未亡人に対する枠として五億円があります。これによつて未亡人の福祉のために必要な貸付、大体この法律の線に副つての貸付が行われる次第でございます。そういたしまして、これをどうして急ぐかと申しますのは、丁度今、来年度の予算の編成期になつておりまして、これを来年度の編成期の前に作り上げますことによつて、政府をして来年度からはどうしてもこの母子福祉資金貸付のために金を出さなければならないというところに追い込むことを目指して、本年の暮、或いに来年の初めになりましようが、それまでの間にこれを作るという意味で急いでおる次第でございます。その点の御了承を得たいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/43
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044・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 他に御発言はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/44
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045・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) 先ほど河崎委員から御質問がありましたこの事業資金の貸付について、共同事業ができるかできないかという御質問については、局長のほうからお答えをしておりましたようですが、この席でちよつと気がついたものですから、これは私から局長のほうにお願いをこの席からして置きたいと思うのです。これは各個人が五万円ずつ借合つて、例えば五人なら五人が共同出資で仕事をした、それは可能なんでありますが、その後事業継続資金を得たいという場合に、借入れの対象が飽くまでも個人である。而も最初に投資された事業資金というものは、投資をしてしまつた、こういうふうな事態が必ず起きて来ると思うのでありますが、これらについて、政府のほうでは、十分御検討願つて、何らかの形で特例が設け得るならば、事業継続資金が簡単に借りられるようにお取計らいを願いたい。 この席から児童局長にお願いを申上げて置きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/45
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046・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 他に御発言はございませんか。……別に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/46
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047・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 御異議ないものと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見がおありのかたは、それぞれ賛否を明らかにしてお述ベを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/47
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048・大谷瑩潤
○大谷瑩潤君 自由党の態度を明らかにしたいと思いまして、一言申上げます。
本法案は参議院といたしましては、前々国会より非常に慎重審議を重ねて参つておりまして、只今議題になつておりまする母子福祉の点で貸付をするということばかりでなく、その範囲をもつと広く考えまして、母子福祉審議会の設置の如何、或いは相談所の設置方法、或いは又療養補助の点の、広範囲に及ぼす点、又母子の栄養扶助に対しまする点、或いは母子住宅の建設に対しまする点、子女の奨学に対しまする扶助の点、又只今議題となつておりまするこの貸付金庫の問題等、その上にまあ税金も免除して頂きたいというぐらいに広範囲な構想を持ちまして、立法に当るべく準備をいたしておつたのでありましたが、今度の国会のうちに是非この法律を成立さしたいという衆議院の厚生委員のかたがたの御主張によりまして、我々参議院のほうもその御趣旨に替同をいたしまして、遂に完全というような法律にならないのを遺憾に思いまするけれども、この際政府が急いだために、只今皆さんから御説明を承わつた程度の母子貸付の範囲でとどめるようなことに相成つたのであります。最前より諸委員の御質問なり又衆議院のかたがたの御説明を承わつておりますると、非常にこれは福祉法であるがために母子のかたがたの幸福なり、生活の向上をはかるべく、一日も早くこれを実現したいという御熱意と御誠意の段を我々も了承する次第でありまするが、併しこの貸付に使われまするところのお金と申しまするものは、言うて見ますれば、我々国民の租税の中から削除されまして、そのほうへ廻されることを考えますると、余り何と申しまするか、ルーズに取扱われまして、そうして権利義務の点に正確を期することができないような取扱いになりましても、国民一般に対して私どもは申訳ないという点に心配を持つわけでありまして、やはり法律でありまするから、貸付等の場合には正しい手続と正確な方法を以てこれを実行されるように念願をいたすものであります。
つきましては、私どもといたしましては、将来参議院の委員会におきまして、深く検討いたされましたこの福祉法の完璧を期するように修正と申しまするか、改善を加えられるということを衆議院のかたがたも御了承を願いまして、そうしてその御了承の上において、今度の貸付法に対しまする法案を通過させて頂くというようなことになれば、誠に結構だろうと存ずる次第であります。
我々自由党といたしましては、この法案に対しまして、速かなる成立を希望いたしまして、私の討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/48
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049・河崎ナツ
○河崎ナツ君 社会党を代表いたしまして、この法案に賛成いたすものでございます。いろいろ衆議院のほうで御心配頂きまして、参議院のほうでも考えておつたことでございますが、このたびは衆議院の御心配の成果としてできましたこの法案について満腔の賛成をするものでございます。特に日本では今日この法案が非常に必要である。それは二つの面におきまして、婦人が何にも生活能力も持たされていない。それから又保護のいろいろな手も差延べられていない。この二つの面におきまして、日本の婦人の、殊に母子、子供を抱えた未亡人の人たちが全く生活苦にさらされておる。その面におきましての今日の法案は、その保護の中で先ず目立して起ち上つて行きますように、又能力をもつけて行く準備のように生業貸付資金を主にして、保護の支柱をお立てになつたことでありまして、まだまだたくさん母子の生活画に立てなければならん支柱はございますが、先ず一本の大きな支柱が今日立てられたことでありまして、その意味におきまして大事な法案で、私どもは賛成をするものでございます。けれども今日の法案は、これで完璧ではありませんで、二、三希望の条件を申上げたいと思うのでございます。
この法案を実施いたしますのに一番影になり日向になつて実現することにいろいろ力になりますのは、母子相談員と存じますが、母子相談員は、先ほどからの説明を伺つておりますと、法律には現わしていないが、識見、人格の高い適切な婦人を選びたいという御精神が当局にはあるかのようでございますが、是非それを実行して頂きたいと思います。それから又この貸与の金額は、先ほどから皆さんのお話がありましたが、これは適当な機会に上げて頂くように、及びこの貸与の準備金、これはどうしても将来全額国庫負担でやつて頂かなければ、本当に心配なく、地方の情勢で動かされることなくやつて行くという意味におきまして、これは是非考えてもらわなければならぬと思います。それにいたしましても、これを基礎にいたしまして、なお一層完全な母子福祉の法をこの次には考えて行つて欲しいという希望を附けまして、以上今日のこの法案につきましては、賛成するものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/49
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050・井上なつゑ
○井上なつゑ君 私は緑風会を代表いたしまして、本法案に賛成をするものでございます。将来一日も早くこの法案が私どもの希望いたしておりますような完全な母子福祉法になることを望みまして、それまでは、この法案の施行になりましたときには、この運用面においてその不完全さを補つて頂きたいということを附加えて賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/50
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051・深川タマヱ
○深川タマヱ君 改進党を代表いたしまして賛意を表します。御提案者並びに全国未亡人団体のかたがたの異常なる御熱心が効を奏しまして、まさにこの法案が実を結ぼうといたしておりますことは、誠に御同慶の至りでございます。拝見いたしますと、まだ多々是正をなさなければなりませんけれども、来年度の予算案との関係も非常にお急ぎになつていらつしやる御様子でございますので、私はこのたびはこの趣旨に副いたいと存じます。今後毎年できるだけこれに要します予算の増額を私たちも要求いたしたいと存じております。これが施行に当りましては、できるだけ公平を旨となさいまして、最も必要とされている未亡人にできるだけ優先的に行き亘りますように、政府を初めといたしまして、行政官庁の格別なる御配慮を頂きたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/51
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052・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) ほかに御意見ございませんか、……別に御意見もないようでございますから、討論は終結したものと認めて差支えございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/52
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053・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 異議ないものと認めます。それでは採決に入ります。母子福祉資金の貸付等に関する法律案(衆議院提出)を原案通り可決することに賛成のかたの御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/53
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054・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 全会一致でございます。よつて本法案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。
それから委員長が議院に提出する報告書には、多数意見者の署名を付することになつておりますから、本案を可とされたかたは順次御署名を願います。
多数意見者署名
大谷 瑩潤 藤原 道子
堂森 芳夫 長島 銀藏
小杉 繁安 草葉 隆圓
常岡 一郎 井上なつゑ
河崎 ナツ 山下 義信
深川タマヱ 谷口弥三郎発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/54
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055・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 署名漏れはありませんか……、署名漏れはないものと認めます。
なお本会議における委員長の口頭報告については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/55
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056・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 異議ないものと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/56
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057・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) それから、船員保険法の一部を改正する法律案、(政府提出、衆議院送付)を議題といたします。提案理由の説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/57
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058・越智茂
○政府委員(越智茂君) 只今議題となりました船員保険法の一部を改正する法律案を御審議せられるに当りまして、本法案の提案理由を御説明申上げます。
今回の改正は、船員保険の失業保険金の日額の最高額を、失業保険法の規定による失業保険金額表における保険金日額の最高額を基準といたしまして、厚生大臣が社会保険審議会の意見を聞いて定めることにしようとすることであります。現行法では、失業保険金の日額は、被保険者の資格喪失前二ヵ月間の標準報酬日額を平均して得た額の六割とし、その額の最高は三百七十円を超えることを得ないことと規定されております。然るに最近の経済情勢の推移に鑑みまするのに、その最高限を三百七十円とすることは実情に副わなくなつたものと思われまして、これを引き上げる必要が認められるに至りましたが、最高額を直接に法律によつてのみ改正する建前によりますと、国会の会期等の都合により早急に改正する措置を講ずることができない虞れがございます。そこで、陸上の労働者を対象とする失業保険におきましては、毎月勤労統計を基礎として労働大臣が失業保険金額表を改正し、平均給与額の上昇又は低下に応じて保険金日額を定めることとされておりますので、この際、船員保険におきましては、失業保険金の日額の最高額につきまして、陸上の失業保険の失業保険金額表が改正されました場合はその表における保険金日額の最高額を基準として、厚生大臣が社会保険審議会の意見を聞いて定めることとし、以て、被保険者の保護に遺憾なからしめることといたしたのであります。
以上が、船員保険法の一部を改正する法律案を今国会に提出いたしました理由でございますが、何事、速かに、御審議の上、可決せられんことをお願い申上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/58
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059・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) この際保険局長からこの内容の御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/59
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060・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) お手許に法案がお配りしてあると存じますが、これに基きまして御説明を申上げたいと思います。
先ず最初に従来のこの制度の取扱い方について申上げておきたいのでございますが、提案理由の御説明にありましたように、従来陸上の失業保険におきまする保険金日額が変りますと、それに基きまして船員保険法の第三十三条の九第二項但書に書いてある、陸上並みに保険日額を引上げるというような措置がとられておつたのであります。本年の春に御審議を頂き御決定を頂きました船員保険法の改正におきましても、昨年六月に失業保険法の最高日額が三百七十円になりましたので、これにならいまして本年の春船員保険におきましても最高額を三百七十円にして頂いたのでございます。ところがかように前例にも示しまするように、船員保険の被保険者は失業いたしました場合に最高額が抑えられておりますると、それが陸上の場合が上つてもこちらは上らないということで、甚だ労働者の保護にも欠ける点があつたのでございます。そこで今度は具体的な金額をこの法律の中に規定をすることなく、行政庁の法律に基いて厚生大臣が決定をすることによつて保険金日額の最高額が変るようにいたしたいというのがこの法律の改正でございます一即ち条文としては従来「但シ三百七十円ヲ超ユルコトヲ得ズ」となつておりましたのを「但シ厚生大臣が失業保険法二依ル失業保険金ノ最高日額ヲ基準トシ社会保険審議会ノ意見ヲ聴キテ定ムル額ヲ超ユルコトヲ得ズ」、かようにしたいというのでございます。この場合の「失業保険金ノ最高日額ヲ基準卜シ」という点につきましては、先ほども申上げましたように、従来の慣例から推しても、船員の失業保険金の日額の最高額は陸上のものに一致させるという慣例であつたのでございます。一つには失業保険法と船員保険法という法律の体系が異なる事情もございまするし、又実態的には陸上労働者と海上労働者との実情に差もないことはございませんので、それらの点を考慮いたしまして、失業保険金の最高額が変りました場合には、それを基準として変えるという言葉にいたしたのでございます。併しながら私どもの現在考えておりまする運用の方針は、実質的に陸上の失業保険金の最高日額に合せるようにきめたいという考えでございます。この点につきましては本法律案を御提案申上げる前に、失業保険法の規定に基いて社会保険審議会に附議いたしました際にも、満場一致で御了承を得たのでございます。もとより今申上げました通り、陸上と海上とは労働情勢も違う点も間々ございますので、さような場合に或いは若干の考慮を加える場合もあり得るということを考えまして「基準」という言葉を使いました次第でございます。
なお申遅れましたが、この法律は陸上のほうは労働大臣の行政措置によりまして、工場労働者の平均賃金が二割以上上り、又は二割以上下りました場合には、その上つたか下つたかの率に応じまして保険金月額を変えて行くというような規定が法律にあるのでございます。その法律に基きまして、本年の八月現在の工場労働者の賃金の統計を元といたしまして、丁度昨年の二月に比較しまして、即ち二月と申しますのはこの前の三百七十円に上げましたときでございますが、この二月の現在の状況に比較いたしまして、本年の八月が二五・八%に相成りましたので、陸上の失業保険におきましては、八月現在を基いといたしまして、この十二月一日から最高額を四百六十円にいたしたのでございます。私どもの考えといたしましては、この法案の御決定を頂きましたならば、早急にこの規定に基きまして社会保険審議会を開催をし、一月一日から海上の労働者につきましても失業保険金日額の最高額を四百六十円にきめまするように、社会保険審議会に諮問をする予定でございます。その間におきまして、附則に「公布の日から施行する。」ということになつておりますが、さような行政措置がとられますまでの間の最高日額の決定につきましては、附則第二項に基きまして従来通り三百七十円を最高とするというふうにいたしたのでございます。
かような措置をとりますことによりまする船員保険財政に及ぼす影響につきまして若干御説明を申上げておきたいと思うのでございます。船員保険法の中に御承知の通り疾病給付、或いは年金給付等の各種の保険給付があるのでございますが、そのうち失業保険関係についてのみ申上げますると、この改正によりまして、つまり四百六十円に最高日額を上げることによつて保険財政に及ぼします影響は五百三十四万円ほどの予定であります。失業保険の現在給付しておりまする総額に対しましては八・七%の増額に相成るのでございます。併しながらこれを収支の面で申上げますると、保険料として本年度中に二億六千三百万円殖える予定でございます。それに対しまして三分の一の国庫負担、八千三百七十五万円でございますので、合計して失業保険部門の収入は三億四千七百三十六万円になる見込でございます。これに対しまして失業保険金の支給額は、現在の見通しでは本年度中に二億五千百二十五万円で済む予定でございますので、従いまして失業保険部門におきまして九千六百十一万円の剰余が生ずる予定でございます。この剰余金は予算的にも殆んど同額が予備費として予算に組まれておりますので、かような引上をいたしましても、船員保険財政に及ぼす影響は心配がないものと考えておるのでございます。
なお御参考に申上げますが、船員保険の船員の失業状態ごございますが、昭和二十五年頃は非常に失業の状態が高うございまして、失業保険部門の赤字が生じて心配をいたしたのでございますが、二十六年も若干失業率が高く、併しだんだん二十六年の夏頃から非常に低下の状況を示しておりまして、現在では御承知のようにここ一ヵ年ほどは大体千人に対しまして四十一人から五十四人くらいの只今失業率になつておるのでございまして、ここ一ヵ年間くらい大体失業率が安定して参つておるように考える次第でございます。かような情勢から見ましても、最高日額の引上によりまして、将来とも船員保険財政に及します影響は心配はないという見通しでございます。
甚だ簡単でございましたけれども本案の内容について関連をいたしましたことを御説明申上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/60
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061・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 速記をやめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/61
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062・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 速記をつけて。それでは本日はこの程度で散会いたします。
午後零時二十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01119521218/62
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