1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年十二月十九日(金曜日)
午前十一時三十六分開会
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出席者は左の通り。
委員長 藤森 眞治君
理事
大谷 瑩潤君
堂森 芳夫君
委員
小杉 繁安君
長島 銀藏君
中山 壽彦君
井上なつゑ君
河崎 ナツ君
山下 義信君
谷口弥三郎君
深川タマヱ君
衆議院議員
明禮輝三郎君
政府委員
厚生政務次官 越智 茂君
厚生省保険局長 久下 勝次君
引揚援護庁長官 木村忠二郎君
事務局側
常任委員会専門
員 草間 弘司君
常任委員会専門
員 多田 仁己君
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本日の会議に付した事件
○船員保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出、参議院送付)
○戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部
を改正する法律案(衆議院提出)
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001・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) これより厚生委員会を開きます。
昨日に引続きまして船員保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/1
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002・井上なつゑ
○井上なつゑ君 この法律案でございますが、この法律の附則の二項、この法律による改正の問題でございますが、「失業保険金の最高日額を定めるまでの間は、失業保険金の額は、一日につき三百七十円をこえることができない。」と書いてございますが、その期間はどのくらいでございますか。一月一日までの期間でございましようか。それとも最高日額を定めるにはほかに日にちがいるのでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/2
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003・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) 大体お話の通りでございまして、私どもといたしましては、この法律が御決定を頂きましたならば、早速この法律の規定に基きまして、社会保険審議会を開催する予定でございます。只今のところでは、この月末までには是非開きまして、そうして一月一日から最高日額を上げたいと思つております。従いまして私どものほうの予定通りで参るといたしますれば、この附則二項の適用は十二月三十一日までとなるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/3
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004・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 他に御質問ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/4
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005・山下義信
○山下義信君 私はこの船員保険法に限つてどういうわけでこういう方法をとることにしましたのか、その真意を一つ聞いておきたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/5
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006・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) 船員保険法は御承知の通り失業保険もございまするし、或いは年金等の長期給付の法律もございます。総合的な社会保険制度でございまするので、そういう意味合いにおきまして陸上の労働者につきましては、労働省の所管をしておりまする失業保険法があるのであります。失業保険のほうは同法十七条の三によりまして、労働者の賃金は一定限度上りまするか、或いは下りますると、それに応じて失業保険金額を変えるように自動的に、行政的に措置ができるようになつているのでございます。従来船員保険法は主としてこの制度が船員保険法に取入れられましたときの状況では、船員の賃金につきまして正確な信頼すべき統計がございませんでしたので、陸上の失業保険法にならうことができなかつた事情があるようであります。そこで失業保険の最高日額を法律の中に具体的に全額を規定して、陸上の失業保険の保員金額が変りますると、その都度改正をして参るというような行き方をとつておつたのでございます。提案理由の御説明にも申上げましたように、政府の法律を以て一々金額を改訂するということはどうしてもこの間相当な期間を要しまして、労働者の保護にも欠ける虞れがございますので、今後は陸上の失業保険と同じように厚生大臣のきめるところによつて、陸上並にその都度変えて行けるようにいたしたいということでございまして、船員保険だけ、特有、特別だというわけではございませんので、今度の改正は実質的には陸上の労働者の失業保険と同じようにいたそうという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/6
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007・山下義信
○山下義信君 御趣旨はよくわかるのでありますが、それではここに資料がありませんから念のために伺うのですが、今局長の御説明になりました、お答えになりました失業保険法の第十七条の三ですか。その失業保険法の規定と、今回改正されようとするこの条項とを対比して、こういう場合におけるところの最高日額の定め方は同様の規定になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/7
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008・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) その点はお話の通り陸上の失業保険とは実質的には違つた結果になると思います。言葉を変えて具体的に申上げますると、陸上の失業保険につきましてはいろいろな各種類の労働者がございまするけれども、そのうち工場労働者の賃金日額の変更に応じまして、失業保険金額を変えるということになつておりましてこれにも実質的に同じようにならわせますためには、船員の失業保険金額につきましても船員の実賃金の変更に応じて変えるというようなことになるべきであろう、こういう御質問であろうかと思うのでありますが、その点につきましてはいろいろ検討もいたしまして、又かねてから海員組合なり、或いは船主団体等の御要望もございまして、もう一つは船員保険法は、御承知の通り保険金額を定めまする根拠に賃金実額を取つておらないのでございます。標準報酬制度でやつております。さような関係もございまして、必ずしも陸上と同じような扱いのできない事情もございまするので、従来から先ほどちよつと申上げましたように、陸上の失業保険金額の最高日額が変りました場合には、それと調子を合せて行くような行き方をずつと今日まで取つて参つて来ておるのでございます。船員の賃金実額の変更に応じて、失業保険金額を変えるということが、本来の筋であるとは思うのでありますが、これにつきましては、標準報酬制度を取つておる関係等もありまして、私どもとしては、もう少し将来の問題として検討をいたして見たいと思つておるのでございます。この規定はそういう意味におきまして、法律が決定になりました暁、具体的に私どもの考えておりますのは、この間から申上げておるように、従来の例にならつて、陸上の失業保険の金額に合せたいという考え方でございます。将来の問題といたしましては、標準報酬制度と賃金実額との絡み合い等の関係もありますので、もう少し検討をさして頂きたい、こういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/8
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009・山下義信
○山下義信君 それで今度の改正の条文によりますと、とにかく最高日額の基準は、失業保険法により失業保険金の最高日額を基準とするのですが、このきめ方はどのようにでもきめられるのですね。例えば失業保険金は、失業保険法に定むるところの規定によつて、最高が抑えてあつて、それでまあ最高までは出せる、同様の措置をせなければならん場合が生じても、これは私は法律を曲解するのではないのですよ。曲解するのではないけれども、改正前の法律によると、大体同じ措置を今局長が御説明のように、従来の事務は同じようにやつて来たわけですから、同じような措置を取るという御趣旨であるけれども、それ以下の措置も取れるのですね、この法律によると。で、そういうふうに解釈をされますが、それはどうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/9
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010・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) 言葉を厳密に申しますればおつしやるような結論になるかとも思いますが、私どもとしては運用上は、さような考え方は持つておらないのでありまして、従来の通り陸上の失業保険金額の最高日額に合せるという取扱いをするようにいたしたいと思つておりまするし、この規定は実は法律の規定に基きまして、この法律案要綱を社会保険審議会に提案をして、審議をして頂きました険にも、はつきりとそういう方針であるということを説明をいたしまして、御了解を頂いたような次第でございます。従いまして基準という言葉がありまするので、お言葉の通り多少の率は上げたり、下げたりできのじやないかというようなこともあり得るかと思いますが、併し運用としては原則といたしまして、そういうことはいたさないというつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/10
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011・山下義信
○山下義信君 それでは私は政府当局の運用上のお考えは今はつきりいたしました。これは大筋を曲解すると多少幅が持てるように或る場合においては被保険者に不利な決定がなされることも法律の条文から言えばやれるような形になつておるのでありますけれども、これは絶対そういうことはしないということでありますから、その点は安心するのでありますが、私が一番最初にこういう条文を改正した政府の真意がどこにあるかということをお尋ねしたのは、船員保険法の運用について失業保険と相並んで迅速にその処置をしたい、現行の法律によるとそれが一一国会に改正をお願いしなくちやならんから、そういうふうにして迅速に足並みを揃えたい、こう言われる。その目的はそうでしよう、その目的は諒とするのですが、よくわかるのですが、私はこれは重大だと思うのです。そこで当委員会はどうお考えになるか知りませんが、これは一つ政府はどういう考えでこういう改正を出したかということについて、これは端的に申しますと、国会が従来持つておつた決定権を政府に任す、委譲するわけです。、而も実質上から言えば社会保険審議会という諮問機関に任せるのです。ということは国会が保険について重大な保険について持つているところの決定権を今回の改正によりまして委譲するのです。私はこういう方針が一たび国会で立てられたならばもろもろの社会保険において従来持つておる国会の決定権をこの行政府に委譲するというよりは、むしろ実質的には院外の、政府部内にあるところの単なる諮問機関に実質的に委譲するということの、一つのそういう前例を開くということは、私は社会保険が、将来社会保障の実質である社会保険について、国会が如何なる方針を持つかという私は重大なる考えのきめ方に影響すると思うのです。我々は例えばもろもろの保険法において料率の決定も千分の六十を五十五にするとか、或いは千分の一上げるとか、三下げるとかということにおいて、その料率について非常にこれは重大に考える。それでその段階において我々が国会において必死になつ社会保障制度の強化推進をやろうと考えておるそういう過程において、この保険法において有しておるところの国会の決権を私はそういうふうに委譲してしまうことが、目的は当局が考えられるような御趣旨であるが、それで果していいのであるかどうかということについては十分考慮をしなければならんという気持がするのです。そこで政府はこういうことについて国会からその点はまあ委譲されても、譲り受けても、政府はこういう方針でこう行くのだという確固たるお考えがあつてなされたのか、一々国会に御相談するのが面倒だから、こうしてもらつておきさえすれば一々その都度改正法律案を出すところの面倒さが省けるという考え方がだけでは国会としては了承しがたい。従来国会に相談するよりは、決して国会の決定権を奪うのではなくして、こうしてもらつたほうが保険法の上において遥かにそれよりはこうだということを政府が考えられたのかどうか、その辺の、法律事項であることを、いわゆる行政府にこれを委任して、而も実質においては社会保険審議会に国会が任せるというえとについては政府はその辺をどう考えておられるかということを、私は政府の方針としてこう出られたのであるかということについて一つ聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/11
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012・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) 先ほどの御質問にちよつと的外れのお答えを申上げたかと思いますが、私どもの考え方は決して国会の権限を私どもの勝手にしようというような考え方は毛頭ございません。もともとこういうふうに改正をいたしますことにつきましては、社会保険審議会を構成いたしております海員組合の代表者からかねて強い要望もあつた次第であります。一つにはその要望に応えて迅速に海上労働者の保護できるようにしたいういうのが第一の考え方でございまして、もう一つは現実に、実は陸上の失業保険につきましては労働大臣の決定によつて十二月一日からすでに四百六十円に上つておる実情もございまして、幸い国会が開かれております今日でございますけれども、どうしても一月だけは海上労働者の最高日額の決定は遅れるという結果になりますので、さような点も考慮してお願いしておるわけでございます。
それからもう一つは申すまでもなく陸上の失業保険につきましては同様のことが多少内容的には変つておるにいたしましても労働大臣の決定に任されておる前例もございますので、御了承願えるのではないかと思つたのであります。
それから第三に法律の規定といたしまして、ここに明白に「失業保険金ノ最高日額ヲ基準トシ」という文句を入れておるのでございます。私どもが、行政庁が何も勝手な金額をきめられるということはございませんで、ここに相当はつきりした決定をいたしますにつきましても、相当きつい枠がはめられておるのでございます。運用上は更にこの枠を日額に合せて運用をいたしたいという方針でございますので、その辺は御了承願いたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/12
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013・深川タマヱ
○深川タマヱ君 今ちよつと私の聞き違いだつたかも存じませんけれども、労働大臣に任されておりますので、すでに十二月の一日から最高四百六十円に上つておるとおつしやつたのでしようか、法律が通過しない前に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/13
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014・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) ちよつと御説明申上げます。実は私が申上げましたのは陸上労働者の失業保険法について例を申上げたのでございます。陸上の労働者の失業保険は労働省の所管になつておりまして、その中の規定によりますると、労働者の賃金が二割以上上るか下るかいたしますると、その上り下りをした率に応じまして失業保険金額を変えて行く、労働大臣は変えて行くという規定があるのでございます。それで昨年の二月現在で三百七十円という決定が昨年六月にいたされたのであります。昨年の二月の賃金については今年の八月末現在工場労働者の賃金と比較いたしますと二割五分くらい上つておるのであります。平均金額は、そこで労働省としては今申上げたような失業保険法十七条の三の規定によりまして十二月一日から二割五分上げまして四百六十円にいたしたのであります。
海上の労働者の失業保険につきましては船員保険法で規定しておりまして、私どもの所管になつております。従来の扱いが陸上並みの扱いをするという先例もございますので、十二月一日に上つておりますので、それに合せてこちらも上げたいという、こういう意味で御説明いたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/14
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015・深川タマヱ
○深川タマヱ君 従来の先例が陸上労働者並みに上げるということになつておるから、法律は通過していないけれどもすでに十二月一日から上つておるとおつしやるのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/15
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016・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) そうではございまいませんで、陸上の労働者につきましては失業保険法の規定に基いて労働大臣がすでに十二月一日に四百六十円に上げておるのでございます。そこで海上の労働者につきましてはこの法律の審議を頂きまして後通過いたしましたならば、この規定に基きましてこれから社会保険審議会を開いて、それから上げるようにしたい、この法律の実施の時期は順調に参りますれば一月一日からいたしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/16
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017・井上なつゑ
○井上なつゑ君 ちよつとお伺いしたいのですが、この船員保険法の適用者は確か船のトン数は五十トン以上だと思いますが、それ以下の人の失業の問題は労働省で所管しておりますか、どうなつておりますか。船員保険に入つていない船に乗つている人たちはどうなつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/17
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018・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) お話の通り船員保険につきましては三十トン以上の船舶の乗組員で、それ以下の者については全部が陸上失業保険に入つておるとは思われません。失業保険法には特定の事業には適用はないことになつておりまして、失礼いたしました、具体的には私も正確に区別して申上げられませんけれども、失業保険法の規定によりますと、健康保険と同じように五人以上の使用人を使つておる事業所だけに適用になつております。但しいろいろな事業が適用除外になつておりまして、そのうちに水産動植物の採取というのがございます。そこで漁業のうちこういうふうなものが適用除外になつております関係上、入つておるものもあると思いまするけれども、全部が全部失業保険でカバーしておるとは考えられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/18
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019・井上なつゑ
○井上なつゑ君 ちよつとお伺いしたいのでございますけれども、いつも海岸漁業地帯に参りますと、それが大きな問題でございます。北海道あたりに参りましてもいつもそれが言われるのです。その人たちは国民健康保険も作れない、そうして船員保険の適用も受けられない、そうして大時化になつたら大変だから、これを何とかしなければならんということを聞くのですけれども、厚生省の保険の関係のほうとしては、これはどういうふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/19
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020・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) お話の通りこの問題は実は社会保障の問題として相当大きな問題と考えておるのでございます。船員保険は船員法の適用がある、船員だけ保険制度をやつておりますので、今お話のような小漁業につきましては全然適用がございません。これを拡げることにつきましてはいろいろ実は船員保険法の上からも事務上の問題もございますし、財政の問題もございますし、今直ちにその適用範囲を拡げるということは考えられませんけれども、方針としては何らかの方法で、いわゆる社会保障制度の建前からカバーをするように考えて行かなければならんと折角研究をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/20
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021・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 船員保険法の研究は本日はこの程度にて次に廻しまして、そうして戦傷病者戦没者遺族援護法の提案説明というのを承わるということを提案いたします。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/21
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022・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 只今谷口委員から議事進行について出ましたが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/22
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023・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) それでは船員保険法の一部を改正する法律案はこの程度にいたします。
それでは次に移ります、明確さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/23
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024・明禮輝三郎
○衆議院議員(明禮輝三郎君) 只今提案になりました戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案につきまして提案の理由を御説明申上げます。終戦後軍人、軍属が内地に帰つて参りまするのには、その上陸地において復員手続を終りましたのち帰郷せしめておつたのでございます。然るにその後その帰郷の途次、自己の責に帰すべからざる事故によりまして死にましたり又は傷を受けたり、若しくは病気に罹かるような事柄が起つておるのでございます。例えて申しまするならば、済州島第五十八軍隷下を離れまして、昭和二十年の十月の二十五日佐世保港に上陸いたしました復員部隊のうち、四国方面へ帰りまする二百数十名の軍人軍属が、同年の十一月の五日に佐世保を出発いたしまして、同六日の朝七時十分頃尾道に帰つて、尾道から第十東予丸に乗船いたしたのであります。たまたま天候が不良となりまして、愛媛県越智郡の六ツ瀬灘というところに差しかかつた際、猛烈な突風に襲われまして、該船舶は午前九時二十五分頃転覆いたしたのであります。遂に乗客三百九十六名が、遭難溺死するに至りました事件がございます。これらの人々は、形式的にはすでに復員が完了しておりますために、戦傷病者戦没者遺族等援護法第二条にいいまするところの未復員の状態を離れておるのでありまして、同法の適用外に置かれて何らの援護を受けることができません。誠に遺族のかたがたに対して気の毒なる事情にございます。内地に帰還いたしましたとはいえ、未だ郷里に帰着していない以上は、実質的に見まして未復員の状態にあるといつて差支えがないと考えるのであります。殊に全然自己の責に帰すべからざる事由に基きまして、それが原因で死亡、傷病等の災害を受けたこれらの人々及びその遺族等が、復員手続完了という単なる形式的の理由によりまして、他の一般戦傷病者戦没者遺族と差別的取扱いを受けますることは、全く理解に苦しむところでございます。本件のごとき場合におきまして、戦病者戦没者遺族等援護法を拡張いたしまして、援護の手を差し延ばせられるよう本改正法案を提出することが、最も急務と信ずる次第でございます。
何とぞ本委員会におかせられましても慎重御審議の上、速かに御可決あらんことを切望する次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/24
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025・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) それでは本日は提案理由を承わつて、この程度にいたしまして厚生委員会は散会いたします。
午後零時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01219521219/25
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