1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年十二月二十日(土曜日)
午前十時四十五分開会
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出席者は左の通り。
委員長 藤森 眞治君
理事
大谷 瑩潤君
藤原 道子君
堂森 芳夫君
委員
長島 銀藏君
中山 壽彦君
河崎 ナツ君
山下 義信君
谷口弥三郎君
衆議院議員
明禮輝三郎君
永山 忠則君
政府委員
厚生省保険局長 久下 勝次君
引揚援護庁長官 木村忠二郎君
事務局側
常任委員会専門
員 草間 弘司君
常任委員会専門
員 多田 仁己君
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本日の会議に付した事件
○船員保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部
を改正する法律案(衆議院提出)
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001・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) それでは只今から厚生委員会を開きます。
昨日の委員会に引続きまして船員保険法の一部を改正する法律案並びに戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案、この二つを議題にいたします。先ず船員保険法の一部を改正する法律案から始めまして質疑をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/1
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002・堂森芳夫
○堂森芳夫君 私はこの保険金を上げるということには勿論賛成なんですが、この船員保険法の一部を改正する法律案の提案理由の説明を見てみますと、国会の会期などの都合で早急に改正する措置を講ずることができない虞れがあるから、それで社会保険審議会の意見を聞いて厚生大臣が定めるように変えたいと、まあこういうふうな説明がしてございます。私はやはりこの国会の審議によつて、法律案によつて改正して行くということが本当の建前でありまして、これは本来の意味から言つたら、非常に何と申しますか、国会の審議を無視して行くというふうな、まあ軽視と言いますか、そういうふうな匂いが非常に強いということは、これは或る意味では重大な問題であると、こういうふうに考えるわけであります。この出す意味合はよくわかりますけれども、この法を改正する意味はよくわかるのですが、そういう考え方がやはり厚生当局にあるということは、一つのまあ警告ですけれども、我々は議員として考えるべきことである、こういうふうに考えます。これに対して一応御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/2
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003・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) 只今のお尋ねの問題につきましては、私どもは昨日もちよつと申上げたのでございまするが、陸上の労働者を対象といたします失業保険法におきましても、賃金の変動に応じまして労働大臣が失業保険金の日額表の改正をなし得るようになつておるのでございます。その先例を考えますことが一つと、もう一つは、従来とも或いは今後とも私どもの考え方は、陸上の失業保険金の最高日額が変りました場合には法律の改正をお願いをして、その最高額に合わせるという方針をとつて参りましたし、又今後もとつて参りたいという考え方の下にこの条文を作つておりますので、むしろ私どもとしては、さようなこの法案そのものに対しまして、国会のほうで御了承を頂かないということであれば止むを得ないのでございますが、実際問題といたしますると、過去の例を見ましても、陸上の失業保険におきましては、昨年の六月に三百七十円に最高日額を上げた例があるのでございます。これに做う措置がいろいろな関係から遅れまして、ただひとり国会の関係だけでもございませんが、本年の三月に失業保険法の改正を議決をして頂きまして、四月一日から約九ヵ月遅れて三百七十円に上つたような前例もあるのでございます。今回の問題にいたしましても、私どもは労働省において、失業保険金の日額の最高額を四百六十円に法律に基いてきめましたのを耳にいたしたのは十一月の下旬でございました。そこで早速これに做つて上げなければならないと思つたのでありまするが、それには先ず財政の見通しを明確にいたしませんと、簡単に日額を変えるわけにも参りませんので、若干の日時を費しまして、四百六十円に最高額を上げた場合に、失業保険の財政がどうなるかということを検討いたしたのでございます。その結果先般申上げましたように、財政的に特別な予算措置を講ぜずして最高額を上げることができるという見通しが立ちましたので、急遽法案を作成いたしまして、所定の手続きを経て御審議をお願いするようにいたした次第であります。それにいたしましても、結局陸上の労働者は十一月一日から四百六十円に上りますが、こちらのほうでは幾ら急ぎましても、只今の見通しでは一月一日以降になる見込みでございまして、少くともそこに一ヵ月という期間が遅れることになります。これは労働者の保護のためから申しますれば、私どもとしては必ずしも適当な方法ではないと考えまして、その意味合いにおきまして、具体的な金額を明白にこの条文の中に現わすことはいたしませんでしたが、併し実質的には失業保険、陸上の失業保険金の最高日額を基準とするという表現によりまして、これに做うという精神を現わした次第でありまして、行政官庁が自由勝手にこの法律に基いて最高日額をきめるということに対しては、相当きつい枠が嵌められておる条文であると考えておるのでございます。さような意味合いにおきまして、只今御質問の点は御了承頂けるのではないかと考えまして、御提案を申上げた次第でございます。決して私どもの考え方の中には、さような意味合いにおきまして、国会の審議権を軽視するというような考え方は毛頭ございませんと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/3
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004・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 他に御発言ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/4
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005・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 只今局長のお話によりまして、国会の審議権をどうこうするなんという考え方は毛頭ないというお話でございますので、大いに安心いたしました。この程度で質疑を打切つたら如何でしようか、提案いたします。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/5
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006・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) それでは只今の谷口君の動議は御異議ないものと認めます。
それでは直ちに討論に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/6
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007・長島銀藏
○長島銀藏君 討論は省略されたら如何でしようか。(「賛成」と呼ぶ者あり)そうして直ちに採決に入つて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/7
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008・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 只今の長島君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/8
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009・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 御異議ないものと認めます。それでは採決いたします。
船員保険法の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成のかたの御挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/9
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010・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 全会一致でございます。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。委員長が議院に提出する報告書には多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を可とされましたかたは順次御署名を願います。
多数意見者署名
大谷 瑩潤 堂森 芳夫
藤原 道子 長島 銀藏
中山 壽彦 河崎 ナツ
山下 義信 谷口弥三郎発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/10
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011・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 署名漏れはございませんか……。署名漏れないと認めます。
なお本会議における委員長の口頭報告については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/11
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012・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/12
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013・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 次いで戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案の質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/13
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014・大谷瑩潤
○大谷瑩潤君 第十東予丸でなくなられたかたがたに対しては誠に同情に堪えない。このほかにこれと同じようなケースがまだありますかどうかをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/14
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015・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) ないとも申せませんし、あるとも申せないのですが、あれだけ大きなものはほかにはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/15
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016・堂森芳夫
○堂森芳夫君 戦傷病者戦没者遺族等援護法が審議されますときに、こういうような問題はいろいろと議論が出た点がたくさんあると思います。例えばこういうふうな事故のために一旦現地で解除になつて、復員して、そうして帰り途の船で亡くなつたというかたが、こういうふうな法律で今度の改正で戦傷病者戦没者遺族としてその遺族が扱われる、こういうふうになるならば、勿論こういうかたがたが非常にお気の毒なかたがた、であるということはよくわかるのですが、然らば復員して結核が発病した人たち、或いはその他の病気で、不治の病気で今日何ら援護の手がないというふうな人たちも或る場合には私は同じケースになり得ると思います。これは非常にたくさんある。こういう人たちは一体どうなるのか、提案者に一つ御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/16
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017・明禮輝三郎
○衆議院議員(明禮輝三郎君) 只今の御質問のような場合には、この規定から考えますると、疾病にかかつたとき或いは負傷したときに入つて来るケースだと思うのでありますが、ただその病気又は怪我が自己の責に帰することができないものであつたかどうかということ、それから公務上の怪我或いは公務上としての病気にかかつたかというようなこととの関連性がございましようと思うのであります。抽象的に申上げても、只今申しましたように、その不可抗力という言葉が果していいかどうかわかりませんが、まあ不可抗力といつたような公務上のことに関連してその人が病気になつたり、怪我をしてその人の責に帰することができない場合に入つて来る、こう考えるのでありますが、具体的な問題については現在この援護法の規定の取扱いにおきましても、自分の家に帰つて病気になつた場合或いは軍隊に籍があつても、病院におりましても、病院で病気になつても、それが果して援護法の適用があるかどうかと言いますると、ないものもあるように考えるのでございますが、法律上の建前から行きますと、具体的にならないと実際はお答えがしにくいものであろうと思いますが、抽象的に申しますると、今のようなお答えをするよりぽかないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/17
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018・堂森芳夫
○堂森芳夫君 さつきの御説明によりますると、この船でなくなつたかたがたは不可抗力での事件でなくなられた。一然らば復員後結核にかかつた人の原因は、不可抗力でなかつたということになると、これは非常にむずかしいと思う。例えばあの無理な戦争を長い間やつて、国民の殆んどは非常な栄養が悪い状態におかれて、これは誰も好んでおかれておつたんじやない、それから特に戦地或いは内地、内地も戦地でありますが、或いは軍務に服しておつた人たちは、不可抗力で栄養の悪い状態に置かれておつた。そうしてたまたま発病が終戦後に起つた、これはみな不可抗力であります。そういう人たちも当然救われるということが、いろいろこの前法案を審議したときに主張されたのでありますが、それは省かれておる、この人たちは勿論救われることを妨害するわけではないのですが、こういう人たちが救われるとするならば、それは傷病しておつた人たちが結核になつて死ぬという人も当然救われなければならないということが起きて来ると思うのです。我々は長期の戦争による犠牲者をできるだけ多く救いたいということは、これは当然反対はしないのでありますが、然らばそういう人たちは一体どうして行くか、そういう人たちの遺族に申訳ない、或いはそういう人たちは現在まだたくさん苦しんで寝ているわけです。一体これをどうして処置するかということは大きな社会問題だと思う。ですから不可抗力な原因でそうなつた、こうなつたということになると、病気で寝ている人は皆不可抗力なんです。好んで栄養の悪い状態におかれて亡くなつたんではないということは言えると思うのでありますが、如何でございますか、問題を含んで来ると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/18
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019・明禮輝三郎
○衆議院議員(明禮輝三郎君) 御尤もであります。私どもは平たく申しますと、軍籍にあつたいわゆる在職期間中或いは在職期間後でも、そういうような立場になつて病気になつたのは、平たく申しますと、全部多少金額に差異を付けましても、やるべきだと思うのでありますが、現在の援護法の規定の建前から行きますと、やはり栄養失調というようなものにかかつて、それが原因となつて病気になつた。そういうような場合には、これで救えるという考えを持つておりますが、不可抗力という言葉は、それだからどうかと思うのですが、自己の責に帰すべき事由という言葉を使つたのでありますが、好んで病気にかかるものはないのであります。仮に通らんでもいいところを通つて怪我をした、呑まんでもいい酒を呑み過ぎて、それがもとで体を悪くしてしまつて、その結果肋膜が出たというような、仮にそういつたようなことを考えていきますと、なかなかこれは解決の付きにくい問題でございます。私どもは平たく言いますれば、広く救いたいというお話でございますが、厚生省としては、どうもそこに相当きびしい絆が打たれておるように存じますので、提案者といたしましては、これをどこまでどういうようにという言葉でお答えすることに苦しむ次第であります。どうぞ、今来ておられますから、厚生省のほうの御意見も聞いて頂きましよう。併し私どものお答えはこういつたふうで……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/19
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020・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 私からお答えする筋ではなかろうかと思うのでありますが、提案者じやないのでありますが、政府としてのこれについての見解を申せというお話でございましようと思いますので、見解を申上げまするが、只今堂森委員のおつしやいました気の毒な事情にあるかたがたが、気の毒でありますことは言うまでもないのであります。御承知の通り戦争中におきまして非常な過労で以つて戦後に病気が発病したという者に対しましてどうするかというのは、恩給法その他一般的な大きな問題として検討しなければならん問題じやなかろうかと考えております。これについて我々といたしまして検討いたしておるのでありますが、これをどの程度までに因果関係が認められるかということについての判定がなかなか困難ではないかというふうに考えられます。目下その点につきましては研究はいたしておりますが、何ら結論を得ていない。只今御提案になりました趣旨は、恐らく復員の時期を事務の都合上或る時期を以て復員の時期といたしておる。そういうふうな関係で、若しその復員の時期が動いておつたならば、当然もらえるはずのものが、単に時期を事務的に或るところに切つたために援護法の適用を受けられないというような者を、一応この際救いたいというような趣旨でおやりになつたのだろうと一応推定いたすのであります。復員の時期につきましては、本来復員と申しますと、部隊の復員でございまするが、部隊全体が復員したというようなことがあるので、個人々々の復員という画は本来はなかつたもののようでございます。個人個人につきましては、除隊であるとか、或いは召集されて召集解除といつたようなことが行われる、それに相当するものを復員という言葉で以て兵役法がなくなりましたのちは使われたものというふうに考えるのでありますが、その時期をどこでとるか、元でございますれば、一応現地の日本の部隊に帰りまして除墜をする、これをいろいろな終戦後の事情によりまして、上陸しました際に、そういう手続をするというようなことにいたしまして、そのうちにほかの事情によりまして帰郷するまで復員させない、帰郷して復員させるという時期をとつたこともあるのであります。そういうことでありまして、復員の時期をいつにとるかということは、一応事務上の便宜によつてやつておりましたので、たまたま復員を或る時期に切りまして、その後の帰郷するまでの間に事故にお会いになる者につきましては、そういうような面で非常に気の毒な点があるというようなところから、この立案をされたのではなかろうかというふうに私は考えるのであります。そういうふうな趣旨でございますので、この法は私どもとしては、そういう面で一つの筋を引かれるものだ、今お説のございました点は、非常に気の毒な点が多々あると思いますが一これをどういうふうに処理するかというような点については、まだ問題があるのではなかろうか、非常に気の毒な人、これにつきましては何らかの措置を講ずるのが妥当ではなかろうかということは考えるのでありますが、今我々としては結論が出ていない状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/20
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021・山下義信
○山下義信君 大変御迷惑をかけまして、かれこれ申して恐縮なのですが、私も一、二伺つておきたいと思うのですが、結論的に申上げますと、私は対象者がこの援護の法に包含されることば、私は基本的に賛成なんです。洩れないように少しでも合法的に国の援護が欠くるところなく届くことを私は欲するのであります。従つて今回もそういう趣旨でこの法律案が出たことであろうと推測いたしますし、提案理由にもその通りお示しでありまして、全く同感であります。ただ注意をいたしまして、この改正案のために実際将来に支障が起きたりいたしますることだけは研究をしておかなきやならん、私はかように考える。そこで一、二の点を伺うのでありますが、これは先ほど伺いましたら、大谷委員からも御質問があつたということでございますが、具体的には第十東予丸の遭難者ということになるのでありますが、この改正によりまして、波及するところ、影響するところというものが私どもにはわかりません、不案内でございますから……。軍人、軍属のことの建前やいろいろなことが不案内でありますからわからん。どの程度影響があるものかということがわからん。東予丸と同じような事件があるかないかということは、それはわかるでありましようが、本法の改正によりまして影響するところが奈辺までに及ぶかということがわからん。これはその道の専門である行政部の説明を聞かなければならん。この法を改正して及ぶものは東予丸だけであるということならば問題が簡単だ。併しながら、この改正によつて復員後の負傷、疾病も取扱うということになると、堂森君の御質疑のあつたごとく、その他万般、旧軍人軍属の取扱上どの程度まで影響するものであるかということだけを明白に御説明を願いたい。これは政府から願いたい。政府の証言を求めたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/21
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022・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) ちよつと私今ほかの話をしておりまして聞いておらなかつたので誠に申訳なかつたのですが、この改正によりまして、軍人軍属の身分につきましては別に影響はないと思います。ただこの法律で以てみなすだけでございまして、他に影響はなかろうかと思つておりますが、或いはお答えが間違つておるかも知れませんが、そういう大体見解を持つております。ほかにこれと同じようなのが第十東予丸以外にあるかどうかということでございまするが、他にははつきりこれに該当するという事例かあるということは聞いておりません。ただ調べますれば、或いはそれ以外にも若干出て来るのではないか。ただ問題になつておりますのは今のところ聞いておらないのであります。ただ全然ないということは申上げられなかろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/22
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023・山下義信
○山下義信君 わかりました。影響するところがないということならば結構であります。でありますが、私はお尋ねしておきたいのですが、海外から帰還し、復員後遅滞なく帰郷する場合のその扱い方に、何が故に昭和二十年九月二日以後と限定したか。若し「海外から帰還し復員後遅滞なく帰郷する場合に、その帰郷のための旅行中において、自己の責に帰することができない」ものを、これを包含して行こうというならば、年次、月日を問わないのが私は筋だと思うのです、何が故に昭和二十年九月二日以後のものだけに適用いたして十九年、十八年、十七年のものに適用しないのかということについて提案者に筋を問いたい。それだから私は影響しないか、片手落ちじやないか、昭和二十年九月二日以後は事例は東予丸だけであろうが、もろもろの戦役中に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/23
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024・明禮輝三郎
○衆議院議員(明禮輝三郎君) この点は私は山下委員のお話の通りに考えておつたのでありまして、この九月二日という日を政府のほうの御希望によつて入れたのでございますが、このとき以前には軍人というものがあつて、それから後は軍人がないというので、公務ということで引つかけなければならんような立場だということでありますが、詳しくは今長官がおられますから、長官のほうから申述べて頂きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/24
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025・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 先ほど申上げましたように、復員の時期をいつにするかというような問題が出て参りましたのは終戦後の問題でございまして、これは大体召集解除をしまするには、軍隊に帰りまして兵隊が引揚げて来まして、そうしてそこで召集を解除する、その後解除されたあと自宅に帰る場合と、今回言つております場合とは場合が違います。この場合におきましては、大体昭和二十年九月二日以後に引揚げによりまして帰つて参りました者は、引揚の港におきまして復員準備手続をするという建前をとりました。そういう建前をとりましたために影響を受けまするものについて適法の処置をするという必要があるという御趣旨であると考えますので、この日を限つたわけでございます。この日を限りましたのは、そういうこの日以後のものにつきまして、そういう不利な点があるという点について是正したいというふうなお気持のようでございますので、こういうふうになつておるのであろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/25
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026・山下義信
○山下義信君 そうしますと、復員ということは、昭和二十年九月二日以前にはない、復員という専門語は、これは戦争をやめて兵隊が丸腰になつたときだけを復員と称するのだ、その前は復員というふうには称せんのだということは、それならば本員の質問はこれは言葉を換えて、このような場合、つまり軍人がいわゆる任務を解かれて自分の家庭に帰るということは、あにただに復員のみならんや、除隊ということもあるし、召集解除ということもあるし、要するに軍の任務を終つて帰郷の途中だ、だから軍人というものがなくなつて、軍隊が廃止されて軍人がやめになつたことを、そのとき帰郷するから復員という用語だと限定するならば、そうなれば問題は簡単で、それならば昭和二十年九月二日という言葉も要らんのだ。復員という言葉は従来使われておつて初めて昭和二十年九月二日以後と線を引く必要があるのだから、復員ということは、その昭和二十年九月二日以前にはないのだという現象ならば、その日に線を引く必要はない。でありますから、前から軍隊の用語として、兵隊が帰郷するとき、召集解除とか、或いは動員をやめたとか、平時の状態に返したということを復員という言葉を使つておるならば、昭和二十年九月二日以前においても使つておるならば、これは昭和二十年九月二日に適用するということは筋が立たないのではあるまいか、こういうのです。その復員というような用語はどうですか。昭和二十年以後に使われる、いわゆる軍隊が廃止されて兵隊がやめになつたときに帰郷する言葉を復員と称しておるのですか、どうですか。その点……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/26
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027・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) この復員という言葉は戦傷病者戦没者遺族等援護法に使つております復員という言葉は、従来から使つておりました本来の復員という言葉とは違いまして、召集解除等に当るものを復員という言葉で以て一応現わしておるわけでございます。そこで只今申上げましたように、この復員という言葉に該当するような事態というものは、九月二日以後に生ずるものであろうと一応考えるのでありますが、ただそういうような意味で広く召集解除に相当するものを使つておりますので、誤解を招く虞れがありはしないかというふうに考えますので、この日を入れたほうがはつきりいたすのではなかろうかというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/27
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028・山下義信
○山下義信君 ですから、私はその誤解を解きたいというのです。私の質問は誤解を解きたい。それならばこの文字に拘泥しないで……。それならば質問を変えますが、なぜ復員後のこの人たちに適用いたして、それ以前のいわゆる何と言いますか、軍務終了者と言いますか、召集解除というか、復員と同じような状態の昭和二十年以前の該当者には適用しませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/28
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029・永山忠則
○衆議院議員(永山忠則君) この点につきましては、衆議院でもいろいろ研究いたしましたわけでありますが、応召を受けまして、入隊するまでの関係の事故も、いわゆる応召途上の自己の責に帰せないことで起きた者も救つてやらなければならん、同時に先刻お話のように、帰つてからあとの病気の問題についても考える余地のものがあるといつたような広範囲の問題については、いずれ恩給法の改正の節がございますので、その際に現在対象から漏れておる気の毒な者を総合的に研究して根本的な取扱いをいたそう、ただ九月二日に絞りましたことは、これは海外から帰るということと、遅滞なくということと、旅行中ということと、九月二日ということで非常に狭く絞つたのでありますが、九月二日、終戦後の関係は政令三百号で一応港で復員手続はしますが、政府の責任において家まで送り届けるということで、マツカーサー命令で、旅行中を一切政府の責任において輸送いたしておつた当時の関係、輸送困難な状態等もありましたので、そういうような取扱いの状態もあつたので、それらを考慮して、終戦後の関係は一時郷里まで政府輸送でやつておつたときもあるようなことを勘案しまして、終戦後の旅行中という範囲で一応この問題を処理して行さたいという政府側の強い要望がございましたので、政府の意見を取入れまして、こういうようにいたしました次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/29
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030・山下義信
○山下義信君 御趣旨はよくわかるのであります。殊に提案者は皆錚々たる法曹家でありますから、その点は十分信頼いたしますが、私は絞れば絞るほどむしろ私は疑義が生ずる。それで、結局絞つて絞つて絞るということは、特定の場合の特定の対象に適用しようとするから絞るのである、煎じ詰めると……。ですからそういうことは、実際の筋と言えば、私はこの援護法は原則がずつと皆各条とも出してあるのであつて、特定の場合に適用するような原則というものは、従来の援護法の中にはなかつた。これは戦傷病者戦没者遺族等援護法の特例、特例なんです。従つて端的に言うならば、東予丸の遭難者の人たちに適用したいというならば、別個に第十東予丸遭難者に対する援護法に関する特例法というものを別に出すというようなことが私は筋が通ると思う。そこで私は対象者に適用するように入れようとするから、原則のように書いておつて、而して他に波及のしないような、混乱の生じないような御配慮があつて、絞りに絞るようなことをなさることによつて、むしろ適正な適用を企図されながらも疑義が生じて来る。それで私は質疑いたしておつて、この速記録が後に適用される場合の証拠になると思いますから、提案者との間に質疑を交すのでありますが、又当院といたしましても、その点を検討して置かなければならん。それで今おつしやつた絞られた三点、それがまあ検討して置かなければならん中心になるわけでありますが、海外から帰還するというのですね。そうすると内地の部隊から復員する途中は何故適用しないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/30
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031・永山忠則
○衆議院議員(永山忠則君) 九月二日から後の分は、内地からの帰還関係は政府のほうではもう終りをしておつたと言つておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/31
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032・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) これはここで問題になりましたのは、結局本来ならば部隊で除隊すべきものを部隊で除隊せずして、港で除隊したという点が大きな問題でございますので、港で除隊して、本来部隊のある所に帰るまでの間、大体郷里の近くである場合もありましようし、そうでない場合もありましよう。部隊に帰つて召集解除するのが従来軍隊のあつた時代には普通の例であつたわけであります。ところがこの九月二日以後におきまして、港で全部除隊してしまう、港で復員をしてしまうという措置を講じましたので、それから帰郷するまでの間におきましては、軍隊が編成されたままと申しまするか、皆が一緒になりまして帰るというようなことが非常に多いわけであります。その間に起りました事故につきまして、そのままにいたして置きますることは、従来との均衡上の問題もございまするので、何らかの措置をとらなければならんというのが第十東予丸の問題になつた点じやないかと考えるのであります。そこで内地におきましては、内地の部隊で解除いたしまするからして、これは問題ないのでありまして、海外から帰つた場合にのみ港で除隊して家へ帰つつて来るというような特別の場合を生じて来るというところから、こういうふうにしたほうがいいということに相成つたのであります、さように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/32
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033・明禮輝三郎
○衆議院議員(明禮輝三郎君) 実はこの問題はこれを第二条でやろうか、或いは第七条に持つて行くか、いろいろなところで考えたのでございますが、結局第四条にこれを持つて行こうということになつて、第四条の二にこれを入れたのでありますが、援護法の四条の第二項に、やはり援護法の規定を御覧下さるとわかるのですが、こういうことがあるのです。「軍人軍属が昭和二十年九月二日以後、」、こうなつております。「引き続き海外にあつて復員するまでの間に、自己の責に帰することができない事由により負傷し、又は疾病にかかつたときは、公務上負傷し、又は疾病にかかつたものとみなす。」という二項がございます。それを受けて四条の第二の項目を起しまして、今度は今提案申上げたようなものになつておるわけでございます。大体私どももこの年限は入れなかつたのでございますけれども、やはりこれを入れてもらつたほうがいいというので四条の第二項を受けた形で、やはりそれを加えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/33
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034・山下義信
○山下義信君 今の明澄さんの第四条第二項の御引例は、これは今回御改正なさろうとするのとは反対なんです。ですから、それを引例するわけには行かない。第四条の第二項は復員するまでの間ですからね。今度こちらは復員後の対象者の措置をするのですから、ですからやや似たような字句が使つてあうて、似てはおりますけれども、同様の場合ではないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/34
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035・明禮輝三郎
○衆議院議員(明禮輝三郎君) 今言うのは同様じやないのですが、二十年九月二日の点です。ここで絞つたという点は二項でも絞つてあるから、やはりここでも絞つてあると申上げたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/35
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036・山下義信
○山下義信君 先ほど援護庁長官の御説明を聞いておつたのですが、港で復員することも、部隊で召集解除することも同じことなんです。今ここに問題になつておることは……。ですから要はその港から帰る途中、つまり復員ということが港で行われる、その復員後の帰る途中も、召集解除後から自分の宅まで帰る途中、この途中を入れて行こうということにおいては同じことなんですね。それで私が言うのは、港で復員ということのその手続をする場合の帰郷中を考えていられるならば、部隊の召集解除から帰る途中も入れるということが筋が通るんじやなかろうかということを言つたのですが、どうでしようか、違いましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/36
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037・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) これは確かに仰せの通りでありまして、そこまでもやるということが悪いという意味じやないのでございますけれども、なぜこのものに限つてやつたかと申しますれば、若し終戦という事実がなければ、部隊は大体原隊まで帰りまして、原隊で以て召集解除をすべきものであつたのでございます。それが戦争に負けた結果といたしまして、港で以て召集解除をしなきやならんという特別事態ができている。それでその爾後の問題については、そういう特殊事情で非常に不利をこうむつた者に対して何らの措置を講じないから、解除になつた者が困つたというような御趣旨であろうと考えましたので、こういうようなことにいたしたのじやなかろうかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/37
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038・山下義信
○山下義信君 ですから、私が復員後帰郷中ということをカバーして行くならば、召集解除後帰郷中ということも必然的に私は問題になつて来る、数字の上から言えば、ということだけ指摘しておいて、これは問題を残しておきましよう。それで私は、この例が開かれたならば、今度は内地であろうと、港であろうと、港でない所であろうと、召集解除後から帰郷中にも、同様に自己の責めに帰することのできない事由によつて負傷し、又は疾病にかかつた者は皆包含しなければ筋が通らないことになつて来るということだけを申上げて、私はあなたがたの提案に賛成して、やはり内地であろうと、外地であろうと、部隊の召集解除後からの帰郷も私は本法がそれに及ばんことを希望するのです。そうぜんというと非常に不公平なんです。不公平ということは如何なる場合でも容認しがたいので、私は問題にしなきやならんことだけは申上げておかなくちやならん。それからいま一つ、将来恐らく問題になることは、遅滞なく帰郷する場合と、こういうことです。これはまあ文字通り解釈すればよいでしようが、一直線、真直ぐでありましようが、廻り道しなかつたということでありましようが、同様のことを私が連想いたしまするのは、国家公務員の災害補償法などによりまして、公務員が公務上災害を受けたときの補償をいたすときに、公務で出張旅行中にその旅行の道筋が真直ぐであつたか、廻り道であつたかということを非常に問題にするのですね。それで少しでもこの道順が迂回しておつたならば公務員には災害補償法の適用をいたしません。これは提案者がよく御承知でありましよう。それでありますから、非常にそれは問題になるのであります。それで南線を通つて行けば岡山に行けるのに、若し山陰線を廻つておつたならば、これは山陰上線の松江で負傷しても公務上の負傷になるかならんかが非常に問題になりまして、公務上の負傷に扱わないのです。国家公務員の場合はここのところ、遅滞なくということは、そういうことを考慮なさつたでしようが、それでどの程度を遅滞なくと認定されますか、この範囲を一つお示しおき願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/38
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039・明禮輝三郎
○衆議院議員(明禮輝三郎君) 御尤もなことでございますが、この点は実は御承知でもございましようが、復員をいたしまする人或いは解除と申しますか、海岸或いは港で解除をしまして一番多かつたのは、御承知の共産党的な人と言いますか、ソ連から帰りましたような人々が、駅に帰ると赤い旗を振つて、自分の身寄の者が迎えに来てもそれに挨拶もせずに赤い旗を振つておつた、そういうようなことが非常に悪い影響を及ぼしまして、御承知の二十四年八月十一日の政令第三百号ができまして、そういうことではいけないから、自分の郷里へ帰る、留守家族の居住する地又は引揚者の申告する地の市町村に到着するまで、その指揮に従えというような政令が出たのでございますが、こういうような、まあこれは著しい例でございますが、解除になつても盛んに旗を振つておる、何ヵ月も後に帰るというような、こういつたようなものは極端な例でございますが、まあ私どもこれは常識で考えまして、解除になつたらば解除になつた跡始末を、例えばそこで解除になつたあとの整理をするとか、或いは解除になりまして、おみやげを買うとか、或いは解除になつた土地に親戚の者があるから、その親戚の者に挨拶をして行くというようなことを、こういつたような社交的な簡単なことをする、自分の帰郷の遂につくというようなものを指すのであつて、二年も三年もあつち廻り、こつち廻りして、そして帰ることは帰つたが、その途中で、怪我をしたというようなものは含まないのだという意味で、これは遅滞なくという言葉は法律語でよく使うのでありますが、これは常識で大体その機を逸せずに帰つたというようなものに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/39
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040・山下義信
○山下義信君 私の質問は大体終りましたのですが、今一つ念を押して置きたいことは、大体これはまあ言うまでもなく一応復員ということになりますと、あとは普通の地方人いわゆる軍人ではない。それが遡つて適用いたしますということですね。それでこの援護法におきましては、この軍人軍属に準ずるものの第三十四条と記憶いたしておりまするが、対象者をこの本法に入れまして、弔慰金三万円、年金はないのです。それでいわゆる国民の場合におきましては、弔慰金は三万円で年金はない。然るに第四条二の本改正案によりますと、まあ身分におきましては同じ国民でなつたのでありますが、元軍人、軍属であつたために、その復員後の身分を更にこの軍人、軍属が戦闘中の戦死者と同様に扱うのであります。私はこの改正案に該当する人たちに対しましては、もとより満腔の同情を表するのでございますが、この扱い方はまさに正規の軍人、軍属と同様の待遇にあるのであります。そこで待遇はよければよいほどいいわけでありまして、こういうお扱いが国会において認められるということになり、政府も又異議なしということになりまする以上は、我々が考慮いたさなければなりませんことは、一般国民の同様立場に置かれたものに対して冷々淡々であつてはならんということを殊更に我々は痛感するのであります。でありまするから、私は本案がただ単に一つの特段の対象者に適用するというだけのことでなくいたしまして、このことが国会の両院において御異議がないということになりますれば、本法に認められました軍人軍属以外のものが弾に当つて死し、軍人と同様の立場において戦死同様の扱いを受けたものに三万円という差額を付け、年金を支給せざる本法のほうの扱い方につきましても、将来国会は考えなければならんことと私は思うのであります。恐らく提案者も、もうすでに賢明な提案者は御承知でございまするが、この種の取扱い方は飽くまで公平でなくちやならん。公平を失しますれば、私は不測の災いを非常に憂慮するのでありまして、飽くまで公平を期さなければならない。而してその取扱い方は漸次これは高めて厚くして行かなければならんと思いまするので、私はこの本案が不公平とは申しませんが、忌憚なく申上げまして、この種の事例も多々あるでありましようし、他の委員諸氏からも御質疑があり、胸中お考えのところは同様であろうと思いますが、やはり私は逐次一波万波でありまして、公平という原則を飽くまでその線に沿つて将来も考えて行かなくちやならんということを痛感するのであります。そういう場合におきましては、幸い提案者は他の一院である衆議院に属せられるのでありますが、どうかそういう場合におきましては、又御協力賜わらんことを私は希望を申上げまして、提案者の御所見を承わつておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/40
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041・明禮輝三郎
○衆議院議員(明禮輝三郎君) 誠に山下委員のお説の通りでございまして、私どももでき得る限り軍人軍属すべての遺族に対する待遇を考え、なお援護法或いま恩給法においても、その通りに行くべきものだと信じて疑いません。又不肖みずから微力を投ずることはやぶさかでないものでございます。ただ、今御指摘になりました三十四条の第二項は、これは国家総動員法その他の徴用に類するものでございまして、本件の東予丸の水没者は軍人軍属そのものでありまして、多少この点は御指摘のとは違うかと存じまするが、もとより徴用工におきましても、余り区別を付けるべきものでないということは私も同様に考えております。さような意味で、このたびの東予丸は、復員が港に着いたときできたか、実際自分の家に着いたときに復員が終つたのかということが法律上の解釈が異なるだけに、こういう厄介なお願いをすることになつたのでありまして、実際恐らく死んだもの、軍人軍属は復員完了していない姿でおつたということを申上げて、この案の成立をお願いいたしたい次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/41
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042・山下義信
○山下義信君 ちよつと私の申上げることが徹底していなかつたかもわかりませんが、私はもう多くは申上げませんがただ提案者に対して希望を申上げるだけでありまして、折角賛成するならば余りかれこれ申上げないで賛成したほうがいいのでありますが、要するところ軍人軍属といえども、軍人軍属であつて而も正規の服役期間中の軍人軍属といえども、戦死者であらざれば、病気で死せる者に対しましては差別待遇をいたしておるのであります。たとえそれが復員直後であろうと、如何なる事情でありましようと、そうなるということは、この本法並びに恩給法等におきまするそのいわゆる戦時における戦闘行為による負傷でもなければ戦死でもないことは明白であります。それは同情という点におきましては、もうかれこれ差等はございません。併しながら一応の筋を申上げますと、そういう区別をいたしておるのであります。然るに本法におきまして、その点について特例を開かれるということになれば、私は同じような特例を徴用工その他にも及ぼして頂きたいということを言うたのではなく、そこまで広く国家援護を、言葉は悪いのですが、恩恵を及ぼそうとするならば、軍人軍属ではないけれども、第三十四条第二項は戦闘行為で倒れた考しか認めないのであります。而もそれには三万円という差額が附してある、年金もないのであります。一段低い取扱いである。何故ならばというと、軍人軍属という身分でなかつたがためであります。その死亡の状態が軍人と同様な戦闘行為による死亡でなければ第三十四条第二項は認めないのであります。ただ身分が軍人軍属でなかつたために弔慰金に差額があり、年金がないのであります。今回は死亡の状態は普通の国民の死亡或いは遭難にしばしばある状態でありまするが、ただ軍人軍属であるということによりまして特段の扱いをなさるのであります。でありますから、一つの汽船に乗つて一緒に遭難するということは、そういう不幸なことは我々しばしば耳にします。そういう不幸な事例は軍人軍属のみでありません。そういう遭難事件はしばしばあるのであります、今回はそれが軍人軍属なるが故に、而も情においては復員直後であり、又復員に今提案者の言われるような疑義があるわけであります。要するところ戦地からお帰りになる途中なるが故に情において誠に深いものがありまして、かような途を恐らく開かれるのでありまして、理窟から申しますると、こういう御遭難は一般の国民にもいろいろあるのであります。そこで私はただ提案者に御留意願い、将来そういう点につきまして特段の御考察を仰ぎたいことは、第三十四条第二項、一般国民中軍人と同様の戦死等を遂げました者については軍人軍属よりは一段低い待遇が与えられたままであることを御記憶願つておきまして、将来とも機会がありましたらよろしく一つお含み願いたい、かように申上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/42
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043・永山忠則
○衆議院議員(永山忠則君) 只今の点は衆議院の厚生委員会でも非常に真剣に考えておりますし、将来十分考えて取扱いたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/43
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044・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 他の御発言ございませんか……。別に御発言もないようでございますから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/44
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045・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/45
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046・堂森芳夫
○堂森芳夫君 討論は省略したらどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/46
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047・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 只今の堂森君の討論省略の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/47
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048・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 御異議ないと認めます。それでは討論は省略いたしまして採決いたします。戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案、衆議院送付、原案通り可決することに御賛成のかたの御挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/48
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049・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 全会一致であります。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお委員長が議院に提出する報告書には多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を可とせられましたかたは順次御署名をお願いいたします。
多数意見者署名
大谷 瑩潤 堂森 芳夫
藤原 道子 長島 銀藏
中山 壽彦 河崎 ナツ
山下 義信 谷口弥三郎発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/49
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050・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 御署名漏れはございませんか……。御署名漏れはないものと認めます。
なお本会議における委員長の口頭報告については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514237X01319521220/50
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051・藤森眞治
○委員長(藤森眞治君) 御異議ないものと認めます。
本日はこれを以て散会いたします。
午前十一時四十九分散会
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