1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年十二月十九日(金曜日)
午後二時二十六分開会
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委員の異動
十二月十五日委員大野幸一君辞任につ
き、その補欠として齋武雄君を議長に
おいて指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 岡部 常君
理事
長谷山行毅君
伊藤 修君
鬼丸 義齊君
委員
小野 義夫君
加藤 武徳君
郡 祐一君
国務大臣
法 務 大 臣 犬養 健君
政府委員
国家地方警察本
部長官 斎藤 昇君
法務大臣官房調
査課長 位野木益雄君
法務省刑事局長 岡原 昌男君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 堀 眞道君
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本日の会議に付した事件
○裁判官の報酬等に関する法律の一部
を改正する法律案(内閣送付)
○検察官の俸給等に関する法律の一部
を改正する法律案(内閣送付)
○検察裁判及び行刑の運営等に関する
調査の件
(衆議院議員選挙における違反事件
の処理状況に関する件)
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001・岡部常
○委員長(岡部常君) 只今より委員会を開きます。
本日は先ず裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案並びに検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、二案を一括して議題に供します。なお両案については予備審査でございます。先ず両案につきまして、政府より提案理由の御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/1
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002・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 只今議題になりました裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由を便宜一括して御説明申上げます。
政府は、最近における生計費及び民間の賃金の変動その他の事情に鑑みまして、国家公務員の給与を改善する等の必要を認め、今国会に一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出し、現に御審議を仰いでおりますことは御承知の通りであります。そこで、裁判官及び検察官についても、一般職の職員等の例に倣いましてその給与を改善する必要がありますので、この両法律案を提出いたしました次第であります。
この両法律案においては、右の趣旨に従いまして、裁判官及び検察官の報酬又は俸給の額を増加するために、両法律の各別表を改正するとともに、裁判官の報酬等に関する法律第十五条と検察官の俸給等に関する法律第九条に定める報酬又は俸給の各月額を改正することといたしましたが、改正後の別表及び右各条に定めまする報酬又は俸給の各月額を、現行のそれに比較いたしますと、その増加比率は、一般の政府職員の俸給月額の増加比率と同様であります。
次に、この両法律案におきましては、新たに一般職の職員に支給されることとなつた宿日直手当を従来の夜勤手当等と同様裁判官及び検察官に対し支給しないことを定めるほか、他の法律の改正に伴う法文の整理のための規定を設けております。
なお、附則におきましては、一般の政府職員の例に倣いまして、この法律案中報酬又は俸給月額の改正に関する規定を本年十一月一日に遡つて適用すること等の必要な経過規定を定めました。
以上がこの両法律案の提案の理由であります。何とぞよろしく御審議をお願い申上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/2
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003・岡部常
○委員長(岡部常君) 只今御説明のありました両法案につきましては、次回より質疑をいたしたいと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/3
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004・岡部常
○委員長(岡部常君) 次に法務大臣に対しまして、質疑の御通告が伊藤委員よりございましたので、この際許可いたします。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/4
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005・岡部常
○委員長(岡部常君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/5
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006・伊藤修
○伊藤修君 この際、法務大臣にお尋ねしておきたい点が五、六点あるのですが、先ず第一に過般行われました衆議院選挙の結果についてお尋ねいたしたいと思います。
申すまでもなく、このたび行われたところの衆議院選挙は、いわゆる朝野挙げて公明選挙を打ち出されておつたので、選挙最中におけるところのこうした考え方は当然取締方面においても強化されておつたことは皆さん御承知の通りであろと思います。従つて、従来の選挙に見ない夥しい選挙違反の数が挙げられたことは、或いはそうした一つのあり方からの結果からかもわかりませんが、いわゆる公明選挙というものがとたんに抹殺されたような形になつたことは誠に遺憾に堪えないのですが、私のお尋ねせんとすることは、その結果現われた受理件数が四万百六十と数えられている。うち起訴されたものが三千四百六十五、略式によつて処理されたものが四千八百二十二、不起訴のものが九千二百七十、中止若しくは移送が四千六百二十一、未済が一万七千九百八十二、これが本年十一月十五日現在のトータルのように承知いたしておりますが、これを拝見しますと、この受理件数と起訴された件数とを比較すると約一割に過ぎないのです。略式が約一割、不起訴が二割、それから休止若しくは移送が一割というような微々たる数字に過ぎないのですが、一体この結果から見ますというと、若しこれが犯罪が成立しないというあり方ならば、徒らに政府は国家警察の手を以て選挙を弾圧したという誇りを免れないと思いますが、先ずこの点を一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/6
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007・犬養健
○国務大臣(犬養健君) お答えを申上げます。伊藤さんの御質疑は一応御尤もだと存じます。公明選挙ということを打ち出されまして、大体国民も世を挙げて選挙は公明になつてもらいたいというのが一般の輿論であつたろうと存じます。前法務大臣も言葉を励まして公明選挙の遂行ということをたびたび訓辞せられ、演説もされておられたようであります。一般の国民も公明選挙ということに大変関心を持つておりますんで、これは褒めたことかどうかはわかりませんが、従つて公明選挙に反する行為としていわゆる選挙違反的な事件の投書などが非常にたくさん従来に例を見ないくらいあつたわけであります。又公明選挙を遂行する第一線の務めを激励せられた国警なども従来の例に見ないほど活溌に活動した、これはまあ極く率直に申上げて真相であろうと存じます。検察庁のほうも、当時の政府の激励によりまして、しばしば検事長会同、検事正会同、更に次席検事の会同というものが、これは私の就任前でございますが行われております。そういう国民の、選挙は一つ今度限りで一つ公明に行われるような国になつてもらいたいという輿論、この輿論に激励をされた検察庁、国警方面の、元気づけられたと言いますか、そういう活動で以て非常に従来の例に見ない検事の数に上つたわけでございます。併しこれはその人の一生にも関係がありますし、人権尊重という立場から非常に慎重にやつている。但しあの党、どの党派だから丁重にやれとか、あれはちよつと工合の悪い党だからいい加減にやれというようなことは、私の在任中は誓つていたさない方針でやつておりました。これは極めて公平な態度をとつて、どうせお隠ししてもあとでわかることでありますから、極めて公平にやつておるつもりでございます。併し伊藤さんの御質問の重点であるたくさん挙げておいて、その割に起訴件数が少いというのは、初めの挙げ方が乱暴だつたのではないか、こういう御質問でありますから、これは極く飾らずに申上げて、若いまだ人生の経験の浅い第一線というものは、職務に熱中の余り行き過ぎもあつたでありましよう。私はそういう個々のケースはできるだけ具体的に衆議院の法務委員会においても伺いまして、これを現地に移牒して、そうして現地の個々のケースにおける修養と経験とに資して、こういう場合よほど職務熱心であつても、中庸を得たものでなければいかんということでやつておるわけでございます。率直に申上げて、非常に輿論の激励と同時に選挙違反捜査の活動が活撥になつたことは、今申上げたように事実でありまして、その結果この検挙件数が従来よりも遥かに多かつた、これも認めるところであります。さて受取つたものをできるだけ慎重にやるというところに伊藤さんの御不審が起つたろうと思います。当局ではそういう気持でやつておりますので、御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/7
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008・伊藤修
○伊藤修君 お答えによつてはちよつと了承しかねるのですね。何となれば、御承知の通り私が申上げるまでもなく、選挙をやるものといたしましては、その選挙最中、若しくは事前事後において自己の運動員、若しくは関係者が検挙されるということは、延いてはその人の当落に影響することになる、個人の当落ということを度外視しましても、少くとも約九〇%というものは、徒らにこの基本人権を毀損されている。その結果国の政治の基礎を作り上げるところのこの国会組織に重大な影響を及ぼして来るということを考えてみれば、こうした第一線の人々が未熟であつて、且つこの人たちの熱心の余りそういつた行動に出たということだけでは了承できないと思うのです。これを如何にするか。こういうあり方としては、今後選挙をやる者としても、又将来の日本の選挙界のあり方としても、これは寒心に堪えないと思うのです。これは検挙された人が、大多数が有罪になるというならば、判決の結果がそうなると、少くとも起訴されるという証拠を与えられておるものを検挙されたならともかくとして、起訴するに至らないような事件をむやみやたらに検挙するということは、それから及ぼすところの弊害というものは甚大なものだと思いますね。それはあなた御自身が御体験になつたかどうかはよく存じませんが、思うだに漂然たるものです。これに対してましてどういう責任を負われるか、又将来どうされるつもりか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/8
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009・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 私は只今のお心持よくわかります。これが一段落つきましたら、総合的にこの次の選挙に対するあり方というものを極めて冷静公平に分析研究いたしまして、何分の相当はつきりした通達をしたいと思つております。熱心の余り行き過ぎた点もあるでありましよう。そういう点は再びこの次の総選挙のときは、衆参両院の法務委員会で同じお叱りの出ないように十分分析研究して、その上然るべき私は通達をいたしたい。これは御質問がなくても考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/9
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010・伊藤修
○伊藤修君 まあその一例といたしまして、たくさんありますが、私らも耳にするうちにたくさんありますが、一例として取りわけあなたに御留意願つておかなければならんことは、およそ政党において候補者を事前に決定する、いわゆる各県連において候補者を選考することは、自由党であれ、社会党であろうが、いずれもされるはずですが、その決定する際において、それが事前運動になると言うて、その執行委員会に集まつた者をことごとく留置するなどということは以てのほかだと思いますが、政党の活動は全くそれでは活動できなくなる。この事例は鳥取県ですかの中崎君の選挙に関して、中崎君はすでに五月にもう執行委員会において決定しておる。いま一人立てるかどうか、中村氏を立てるかどうかという執行委員会を開いた。その執行委員会においてたまたま集まつて来た人間が夕食をとつたからと言うてそれを検挙するということは、私はどこから考えてもそれが選挙違反になると考えられない。それを殊更に検挙して、而も可愛らしい夫人を中心にして、この事例は拷問もしております。その結果は不起訴になつています。不起訴になることは当然のことでありますが、そういうようなやり方をしてまでやられる公明選挙に踊らされて、多数の国民に迷惑をかける、延いて以て選挙に対して干渉がましい、我々から言えば干渉と申上げてもいいかもわからん。干渉がましい行動に出られたということは、政府の意図でなされたのか、或いはそういうような御方針が通達されておつたのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/10
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011・犬養健
○国務大臣(犬養健君) どうも政府がそういうことを是非やれと言つたようには思いませんが、私の方針を率直に申上げます。それはこの次も勿論公明選挙をやらなければならん。金持だけに出られてはかなわない。併し公明選挙ということになると、第一線は地方の経験の浅い若い人たちがやつている。偉い人なんかは巡査なんかやつていませんから、それでどうしても経験が浅い。ですからどうしても、今お小言を受けたような具体的なケースをうんと列記した覚書を私は配りたいと思う。この次の選挙に配るというのじや又様子が変るかも知れませんから、一段落どうせつきますから……。今のお話は衆議院の法務委員会でも大分受けまして、中には私も、成るほどお怒りになるのは無理もないと思うこともあります。又但し現地が一方どういう気持でやつたかも、これも聞かなければならない。聞いたあげく、いろいろな個々の、例えばあなたのお話にあります、候補者をきめる場合は、これは事前運動と違うから、よほど気をつけろ、具体的なケースをたくさん書く以外に、若い人への実際の学問として与える注意というものは、どうも抽象的になりがちなので、具体的な今度起りましたケースについて列記したものを配つて、そうして又監督者にも、十分これは東京へ呼びまして、よく話をしたい、そういう私は決心でいるわけでございます。ですから具体的な問題は、喜んで私は虚心坦懐伺いたいと思つております。又人権蹂躪、拷問というようなことも、率直に伺いたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/11
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012・伊藤修
○伊藤修君 この問題は改めて私は齋藤さんに具体的にこれは指摘してお尋ねします。今日は折角皆さん見えたのですから、細かい問題には入らずにおきます。
では次に、今、最近これを片付けるとおつしやつたのですが、この検挙された事件について一体いつまでに片付けるつもりでいらつしやいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/12
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013・犬養健
○国務大臣(犬養健君) これはまあ余り延びてもいけませんので、大体年内には主だつたものは片付けたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/13
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014・伊藤修
○伊藤修君 少くとも今日まで私が二、三の事例を拝見しておりますと、ことさらに時効にかけてしまうような形があるのですね。殊に事前運動のようなものはみな時効にかけてしまつているのですね。時効との関係をどういうふうにお考えになつていらつしやいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/14
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015・犬養健
○国務大臣(犬養健君) これは詳しくは政府委員からも申上げさせたいと思うのですが、六月中旬以前のものは初めから時効にかかつているので、それは着手しないというのが大体の方針のように聞いております。詳しくは政府委員からお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/15
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016・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) 時効との関係につきましては、実は今度の選挙が大分事前運動が激しいということで、事前運動の検挙についても注意するようにという指令が出してございます。この際問題になりますのは、御承知の講和恩赦で四月二十八日以前のものは外れております。結局四月二十九日以後のものが問題になる。これを六ヵ月逆算いたしますと、十月の二十九日、八日ですか、まあその辺から、十月二十六日を境いにしまして、その以前のものは恩赦や時効にかかつてしまう。そういうふうな関係で、それ以後に着手するものにつきましては問題があり得るわけであります。その以前から時効を覚悟で検挙するということは勿論いたしません。それで恩赦と時効との関係がダブつておりますので、結局恩赦にもかからず、時効にもならないといものは極めて僅かな事例になるわけであります。従いまして実際問題としては時効だけの理由ではずした、不起訴にしたという事例は少いのじやないか、これは統計をまだとつておりませんけれども、かように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/16
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017・伊藤修
○伊藤修君 今度検挙せられた事犯は徒らに遷延されておりますと、私は時効にかかつてしまう虞れがあると思うのですが、これはいつまでに片付けるという考え方を持たないと、全部時効にかかつてしまうのですよ。折角おやりになつたことが締めくくりができないような形になつてしまう……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/17
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018・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 仰せの通りの心持を持つております。一方ではこれがどんどん起訴をするのはけしからんじやないかというお叱りも実は受けておるような次第であります。どうもそのほうからいいますと、そうのろのろやつているのを見るとどうか……、それから両様のお叱りをこういう問題は始終受けるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/18
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019・伊藤修
○伊藤修君 およそ国家がそれが犯罪と考えて検挙した以上は、それに対して時効を完成せざる以前において処理するという義務があるのじやないかと思うのです。そうのろのろも早くもないと思うのです。おのずからそれらの制約、時効を少しも考えずに事件処理を図つておられるという考え方は納得できないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/19
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020・犬養健
○国務大臣(犬養健君) お言葉ではありますが、時効にかかつては大変だというのが偽わらざる検察当局の心理状態でございます。それから叱られたから変えるというようなことは私はやつておりません。そんな心臓の弱いことなら初めからならないほうがいいのでありまして、なつた以上は叱られるくらいのことは覚悟でやつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/20
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021・伊藤修
○伊藤修君 そうすると、現在受理されている事件は、少くとも時効にかからん間において処理さるべきものと考えてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/21
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022・犬養健
○国務大臣(犬養健君) さよう御承知願つて結構だと思います。又附加えて申上げますが、検察庁の心理状態というものは、その時効にかかるまで放つておいたということは、のちのちまでどうも非常に職務怠慢になるという心理状態が非常に強烈でございます。毎日役所にいて心理状態をよく知つているつもりであります。これは率直に申上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/22
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023・伊藤修
○伊藤修君 私の知る範囲におきましては、検挙は二ヵ月も前に検挙して、その事件をすでに取調べして、時効のかかるのを待つておつたような形の事件があります。これらのことはこれは擴職の誇りを免れないと思います。だからその問題に対しましても、自由党のかたがたの名前を指してもよろしいが、検察庁へたくさん運ばれている。そうすると巷間伝うるところによれば廣川氏の一筆が行つたからそうなつたのだというデマが飛んでいるのです。というのは、それらのかたがたに属する人が三、四人お百度を踏んでいらつしやるとか、廣川氏の手紙を持つて行つたからそういうことになつたと言つて大言壮語している人があるのです。これも事件を指摘したつて差支えありませんが、そういうのは少くともデマであろうと思うのです。私はデマであつて欲しいと思うのですが、そういうようなことが伝えられるということは延いて以つて検察の威信を害するのです。だから私はこの点はあなたに念を押しておきたいと思うのです。少くとも中央におられる検察官諸君が時効を心待ちに待つているというようなあり方はとられんとは考えておりますが、この点ははつきりしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/23
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024・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 御趣旨はよく了承いたします。不幸にして私には手紙が来ませんけれども、来たからどうというような立場にもございません。御承知の検察庁法を御覧願えば、私はこれはどうせあとでわかることでありますから、できるだけ公平にやりたいと思います。時効の問題も一、二病人の場合があつたようであります。それを時効にみすみすかけるという方針は検察庁でもとつておりません。ただおれが奔走してやつたとか何とかいう話はこれは今度に限らずたくさんある話です。これと検察庁の立場とは別だというふうにお考え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/24
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025・伊藤修
○伊藤修君 そうすると、そういう時効にかかる真際になお事件について取調べをしようとする人が出て来ない、取調べることができないというような場合はどうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/25
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026・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 逃走中の者はまだ一年ありますから、この間の御質問で六ヵ月じやないかという御質問がありましたが、これは一年ありますので、まだ前途遼遠でございます。逃走したからすぐにどうするという気持は持つておりません。時間の問題は御質問頂くまでもなく、検察当局は非常に実は鋭敏なんです。この問題は自分のやはり過失になりますから、伊藤さんの御予想より極めて鋭敏にこの問題に触れておるということを申上げられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/26
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027・伊藤修
○伊藤修君 中央のほうはそういう考え方をお持ちになつておることは確かと思います。併し地方においてはそうした考えが徹底していないようです。これだけは私も指摘しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/27
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028・犬養健
○国務大臣(犬養健君) よくそれは調べておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/28
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029・伊藤修
○伊藤修君 次に岡崎氏の問題はどうなつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/29
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030・犬養健
○国務大臣(犬養健君) これは御承知のように、詳しくは政府委員から申上げますが、出納責任者が今姿を消しているわけであります。出納責任者が姿を消している関係を別にいたしますれば、今のところ直ちに起訴とまでは行つておりません。これは私が自由党だからこう言うわけでなく、私は何もわかりませんから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/30
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031・伊藤修
○伊藤修君 あなたを自由党のかたとして聞いていないのです。法務大臣として聞いているのですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/31
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032・犬養健
○国務大臣(犬養健君) まあ党籍はあるので一応弁解しなければならんと思うのですが、この問題はここにおられる政府委員のどなたかに極く公平に私は聞いておる。今のところでは起訴に至るまでになつていない。それではなぜ起訴保留にしたかということになりますと、失跡している人が出て来て、実はかくかくだという内容がどつちだと言うかわからん、その前に起訴とか不起訴とかいうのは早計である、こういう考えで起訴保留にいたしておるように私は聞き及んでおります。詳しくは若し必要があるようにお考えでしたら、政府委員から御説明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/32
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033・伊藤修
○伊藤修君 金子某が逃走しておつて捉まらないということは、あちらの方面の人に聞きますと、そんなものは別に捉まえようともしていないんだ、こういうような極端な話もしておりますが、相当有名な男らしいんですが、その一人がどうして捉まらないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/33
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034・犬養健
○国務大臣(犬養健君) そこまでになると、私もどうも素人ですから詳しく申上げられませんが、私の聞いている範囲では、なかなか第一線は意地になつて草の根を分けても探すというふうに言つていると聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/34
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035・伊藤修
○伊藤修君 ところが本人は蔭で笑つているようなふうに聞いておりますがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/35
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036・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 蔭で笑つているか、震えているか、それはわかりませんが、これは私の素人考えです、素人考えで間違つていれば勿論率直にお叱りを受けたいのですが、つまり左翼運動の人なんかが捉まる率と違いますのは、大体国民の選挙に対する道徳観念が低いというのかどうかわかりませんが、みんなやつていることなんだ、草の根を分けても捜索するほどのことはないんだ、おれのほうの親友もやつているんだというふうなことで、本当に草の根を分けて探すのは当局であつて、一般の人があそこにいるらしいというようなことを言わないんじやないかと、こう私は思うんです。そうかといつてそういうふうにするように私は仕向けているわけでは決してないんですが、どうもそういうふうに私の常識では……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/36
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037・伊藤修
○伊藤修君 お説のごとく一般国民といたしましては、選挙違反に対しまする道徳観というものは非常に低い、それを犯罪視するという考え方に程度において差がある。併し当局のほうにもやはりそういう考え方はあるんじやないですかね。警察のほうでは重要犯人とか或いは共産党だというと、いわゆる草の根を分けても瓦を起しても探すというけれども、そういう犯罪に対してはそういう行動に出ないんではないですか。それは一般の場合においてはそれもよかろう、併しこう問題になつた金子何某というものぐらい挙げられん国警警察では私は頼りないと思いますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/37
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038・犬養健
○国務大臣(犬養健君) とにかく当人が捉まらないんですから、これは現実ですから、幾らお叱りを受けても実は反駁の資格はないんでありますが、併し私の聞き及んでいるところでは、なかなか第一線は意地になつているということを却つて私は耳にしております。詳しいことは政府委員のほうから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/38
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039・伊藤修
○伊藤修君 簡単に一つどういうふうになつていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/39
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040・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 只今大臣からいろいろお答えになられましたように、警察側といたしましては最善の努力をして捜査をいたしております。ただ、今おつしやいました金子何某のみならず、今捜査しているものは相当ありますが、併しこれもむずかしいのは、今お話に出ておりましたように、一般国民のかたがたに協力がなかなか得られないこと、それからは私の僻みかも知れませんが、兇悪犯人とかいうような場合は、他の管轄区域の警察、いわゆる犯罪をやつた区域でない区域の全体の警察も、これは非常に協力をいたしますが、こういつた選挙違反のようなものはどうもその点に関する関心が事実上薄い。横浜でやつた、或いは国警の神奈川の一部でやつたものが、九州の或る自警へ行つてるとか、北海道に行つてるとかいうような場合に、全国の今の警察制度で、前の警察制度であつてもそうだと思うのでありますが、自分の主管でないところの犯罪であつて、而も選挙犯罪ということになりますと、これは草の根を分けてもというように我々非常に望んでおりますけれども、実際はむずかしいという点は御了承頂きたいと思います。御承知のように共産党の幹部にいたしましても、それはもう二年半もかかつてやつておりますが、非常にむずかしい。これとはわけが違いますが、そういつたようなむずかしさがあるわけです。併しそれにもかかわらず、私どもとしましては、先般からも逃亡しておられる選挙違反容疑の人たちの一斉捜査を指令いたしました、よく今活動させているわけです。その点を一つ御了承頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/40
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041・伊藤修
○伊藤修君 それはあれですか、近く捉まる見込はあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/41
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042・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) とにかく全国手配をいたしました。そうして一斉に強力に捜査を進めるようにということを先般も通牒いたしました。私は恐らくそう遠からず逃走しておられるかたも捉まると言いますか、或いは出て来られざるを得ないような状況になる、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/42
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043・伊藤修
○伊藤修君 話は元へ戻りますが、そうすると岡崎氏の問題は、その人が捉まるまでは起訴、不起訴を決定しないという御趣旨か、或いはすでにその人以外の傍証はすべて取調済であるから、その程度においてこれを決定するというお考えか、これは決定するとすればそれはいつ決定するか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/43
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044・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 詳しくは政府委員からお答えをさせますが、起訴保留にいたしましたのは、今申上げましたように、出納責任者が逃亡しております、それを除いて起訴をすることは早計である、それ以外の点ですでに起訴に値するものがあるのかないのか、あるんじやないかという御質問じやないかと思いますが、私の聞き及んでいる点では、今判明している点については直ちに起訴と断定するに至らない、こういうふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/44
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045・伊藤修
○伊藤修君 そうするというと、岡崎氏に関する疑惑というものは、これは近い中に決定されるというお考えでありますか、それともこのあと疑惑のまま金子某という者が出て来るまで保留して置くというお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/45
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046・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 結論としてはそうなりますが、念のためにお答え申上げますならば、逆に申して金子某が出て来ないうちは起訴保留のままの状態になるのだから、成るべく金子某が出て来ないことを政府として切望しておるという心理状態では断じてございません。これだけはもうはつきり申上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/46
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047・伊藤修
○伊藤修君 私のお尋ねいたしたいのは、ああした一国の大臣の席にある人の事犯というものが、あいまい模糊としていつまでも係属することは好ましくない。ないならない、あるならあるとしてはつきりしてもらいたい。それはいつなさるつもりであるか、こう聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/47
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048・犬養健
○国務大臣(犬養健君) これは繰返して申上げますようですが、事件の重点が恐らく出納責任者の金子という人にあると思いますが、これを探すということが重点になると思います。それから私は率直なことが好きなんでありますが、閣議の席上、どうもあれは逃げていたほうがいいというお話は一度も出ておりません。雑談でこれはもう率直に申上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/48
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049・伊藤修
○伊藤修君 そうすると結局はどうなるのですか、金子某が出て来るまでは事件を処理しない……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/49
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050・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 起訴保留のまま放つて置く……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/50
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051・伊藤修
○伊藤修君 置くという結論になるのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/51
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052・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 又不起訴にもいたさない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/52
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053・伊藤修
○伊藤修君 不起訴になさることを検察審査委員会から異議が出るはずだそうですから、結局問題が又かもし出されるでしよう。そうすると繰返してお尋ねするが、金子が出て来るまではそのままの状態で置かれる、こういうことになるわけでまね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/53
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054・犬養健
○国務大臣(犬養健君) さよう御承知願いたいと思います。念のために申上げるのですが、今国警長官から話がありましたが、大体人を追つかける金が全然足りないのです。重要人物を追つかけるにしましても、極く卑近な例を申上げますと、タクシー代が二百円で、そこで切れれば今度は電車に乗るというふうな貧弱な経費では、幾ら追つかけてもなかなか仕事が捗りませんので、この際お願いするのは如何かと思いますが、捜査費をもう少し国会でも認めて頂きませんと、金なしでも十分働きますが、そういう乗物の費用というようなことが実に不自由でありますので、これは御審議の際に御注意願うと、或いは非常にびつくりなさるような感じがいたすと思いますので、この際特別の御同情を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/54
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055・伊藤修
○伊藤修君 そうすると今度補正予算に五千二百四十八万六千円というのを計上なさつているのは、それに引き充てられるわけではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/55
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056・犬養健
○国務大臣(犬養健君) そういう趣旨の下にやつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/56
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057・伊藤修
○伊藤修君 それだけの、最初二万件という予想のものが四万件ほど出て参つたのですが、それからこれだけの補正予算というものが要求されたものと思うのですが、併し実際は冒頭にお尋ねしたごとく起訴されたものは僅か三千件だということになると、補正予算を要求なさる御趣旨も私は了解しかねるのですね。実質は……、多いほど好むわけではありませんよ。とにかく今後実際扱われる数、ものになる数は少いのじやないか。にもかかわらず国家の費用を、補正予算を組まざるを得ないということは、そこに何らかの捜査方法について欠点があるのじやないか。これはまあ冒頭であなたが御釈明になつたのですが、こういうことに捜査費用を御要求になると共に、そういう点に対してあなたのほうもお考えにならなければ……、捜査技術というか、そういう方面について相当御研究になる必要があるのじやないかと思うのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/57
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058・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) 今回の選挙の起訴率につきましては只今割合に低いのではないかという御質疑でございますので、私のほうで十一月の十五日現在で締切りました表をもとにいたしまして計算いたしますと、受理人員四万百六十名のうち、公判請求が三千四百六十五、略式請求が四千八百二十二名、合計起訴の分が八千二百八十七名となつております。これに対しまして未済が一万七千九百八十二名ございますから、受理との差の数字、つまり処理人員を合せまして、八千二百八十七名を割りますと大数三〇数%になるわけであります。これは従来の選挙違反の起訴件数二〇数%というのに比べますとやや高いというふうに出ておるわけでございます。なお併し未済が大分ございますので、これを最後まで片付けて見ませんと、お尋ねの点が実は不明確でございます。一応ちよつと御紹介申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/58
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059・伊藤修
○伊藤修君 これは岡原さんでもよろしいが、候補者の検挙数というものはもつと……八十名はあつたように聞いておるのですが、四十三名というのはどういうのですか。私のお尋ねしたいことは、要するに候補者で検挙された人が何名、そのうち起訴された人が何名、処分保留の人が何名ということをお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/59
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060・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) 本日まとめました統計によりますと、候補者関係の事件の数は次のようになつております。受理人員百九十八名、うち起訴人員四十七名、不起訴人員八十名、未済七十一名。内訳を当選と落選に分けますと受理百九十八名のうち当選が五十五名、落選が百四十三名。それから起訴人員の四十七名のうち当選が六名、落選が四十一名。それから不起訴人員の八十名のうち当選が二十八名、落選五十二名。未済七十一名のうち当選が二十一名、落選五十名であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/60
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061・伊藤修
○伊藤修君 私は今度の選挙を通じて著しい姿は、候補者を多く検挙したことですね、これも止むを得ないと思うのです。併しその候補者が、今お伺いいたしましても、起訴された者は僅かに六名ですね。まだ未済がありますけれども、その余の大部分の人は皆嫌疑なしというような形になつておるのですが、まだ未処理の分もありますから、そうは言い切れませんけれども、今四十七名ですか、もつと百名近くの候補者というものが不当に検挙されておるということになりはしませんか。未済はまだわかりませんが、これは非常に又影響を持つものだと思いますね。こういう点は私は十分今後は考うべきことだと思いますね。殊にこれが選挙間際にこれをやられたら、その人はもう落選にきまつてしまうのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/61
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062・犬養健
○国務大臣(犬養健君) この大部分は起訴猶予になつておるのでありますが、それは別としまして、先ほど申上げましたように、これは全部一段落つきましたら、検挙の数と起訴の数とを比べまして、真剣に一つ分析して、この次の選挙に第一線の心得書を書いて渡したいと思つております。御指摘のようなそういうこともあるでしよう。又非常に慎重に人の人権を尊重して調べている結果、未済が意外に多いとか、まあ考うべき分子の点もあると思うのですが、これを極く公平に、私は分析研究を責任を持つてしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/62
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063・伊藤修
○伊藤修君 これは一面にこういう関係から出るものと思います。いわゆる捜査機能というものは警察が全的に担任し、起訴のほうは検察庁が証拠関係を厳密に取上げて行くという、そういう二つの建前がたまたまこうした結果に現われたと思うのです。それだけ我々の危惧するところのものは、第一線の捜査陣営の訓練というものをですね、もつと徹底してないと、徒に基本人権というものが侵害されるのみならず、候補者がこれによつて不当に、当選すべかりし人が落選する運命を担わざるを得ない。延いてはそれが政府の選挙干渉だというところにまで打出されれば、将来の日本の民主政治というものはそういう点から破壊して行くと思うのです。これを憂うるわけです。だからこれは従来見ない事例ですから、この点はあなたとしていやしくも政党人でもあられるのだからお考え願いたいと思います。
何も罪を犯して免れようという我々の申し様をするわけでも要求するわけでもない。本来罪のなかりし者を、ただ嫌疑の下に軽はずみに検挙されると、その人の一生の政治的生命というものを失わしめるということは由々しいあり方だと思う。この点を御指摘して、あなたも重大なる関心を持つて頂きたいと、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/63
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064・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 今のお話しを十分体得いたしまして、選挙の結果を分析し、次の選挙にできるだけ人権蹂躪のないように、又政治的な選挙干渉というような影だにないようにいたしたいと思つております。それはお言葉がなくても私はしたいと思つております。いろいろの御質疑中の重要問題については、私も深く期するところでありますから、これを御了承願いたいと思います。なお未済のものが多くて、どうもどういうことになつておるかという御気分もあると思いますが、病気なぞで取調べのできない人に関しては警察医を附けております。その人の主治医でなく、警察医のほかに又大学の教授のような臨床の人をお願いして、又警察医と別の角度から診察をしておるというふうにいたしまして、主治医の意見だけで事件を扱わないようにしております。それだけの周到な態度をとつておることを御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/64
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065・伊藤修
○伊藤修君 遺憾に堪えないところは、どうも我々の党派のほうは余り金は使わないのですけれども、あなたのほうの党派のかたは金をたくさんお使いになる。その人が多く免れておるというあり方は、これはどうも国民ひとしく言うておることですが、そういう人が多く不起訴になつておりますね。これは証拠関係で不起訴になることは結構なことだと思いますが、併し私はこういう点に対して、やはり検察能力の点においても多少欠くるところがあるのじやないかとも思うのです。何も検察としてたくさんの人を一々挙げろという意味じやないが、そういうそしりを受けないように、やはり検察陣営の態勢を整えて頂きたいと、こう思うのです。
もう一つ伺つておきたいことは、まだ幾つかたくさんお伺いしたいことがあなたにたまつておるのですがね。今日はもう一つだけ伺つておきたいことは、最近まあ衆議院において鹿地亘氏の失踪事件についてお取調べになつたのですが、それと関連するようでありますかもわかり近せんが、鹿地氏のことを聞こうというのじやないのです。私のお聞きしたいことは、国警のほうへお問合せをしたところが、統計が出てないと、こういうのですが、取りあえず警視庁へ問合せて見ましたところが、二十年から二十七年に亘つていわゆる失踪した人が四万九千七百五名あるわけです。これは東京警視庁管内だけです。こういうような多数の失跡者というものがわからないと、いわゆる行政警察の上においてわからないというあり方、これは基本人権をお互いに憲法の精神に従つて尊重すると言いながら、他面においては闇から闇へ人命がかくされている、失つて行くというこの日本の社会状況でございますね、これは法務総裁としてどういうふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/65
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066・犬養健
○国務大臣(犬養健君) これは私、このまだ真相を知りませんから、責任を以て至急調べますけれども、どうも基本人権というものがすべての民主主義の根本になつておる。四万以上が消えて、原因も何もわからないということは誠に残念に思いますけれども、これは至急調べたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/66
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067・伊藤修
○伊藤修君 とりわけ御承知の通りお互いの基本人権の些々たることにも非常にやかましく言われるゆえんのものは、憲法の基本的人権に基いて民主主義というものが確立する、こうした観点からして重要視されておる。それにもかかわらず、白昼公然としてこうした四万に近い人命というものがこの社会から消えてなくなつている。それはどこかに実在しているかも知れません。併しその人の所在があいまい模糊としてわからないというあり方は、日本の社会組織の大きな欠点だと思います。それを担任される法務大臣若しくは国警あたりは、職責上からしてこれらの問題に対してどう今後処置されるか。現に私のところに寄留しておつた早大の学生が、白昼誘拐されて、今日に至るもまだ行方がわからない。而もその中途においてリンチを受けたというような事実もある。沓としてわからない。かようなあり方というのは、私どもとして不安なあり方ではないかと思うのです。こうしたことから考えても、今日共産党の地下運動がわからないとか、共産党の各指導者たちのあり方がわからないとか、例えば先ほどの金子何某がわからないとかいうことは、全部がわからないのです。一体警察は何のために置いてあるのか、法務大臣は何のためにいらつしやるのかと、こう言いたくなる。これに対して法務大臣は一体どうするか、齋藤長官等のお考えをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/67
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068・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 二十年から二十七年、これは勿論十分取調べますが、初めの二、三年というのは特殊な状態であつて、或いは確固たる御報告ができない場合もありはしないかと思つて心配しておるのですが、その後日本国というものが平常状態に復して参つたときになお且つ失踪者が多いということになると由々しいことだと思いますから、早速取調べたいと思います。実は八幹部の問題で昨日私たちも真剣に研究をいたしたわけであります。勿論能力の足りない点もございましよう。併しそれと同時に如何にも費用が足らないということも、これは責任回避ではございませんが、まさに現実なんです。金だけあれば必ず捕まるというほど組織が完備していないということは、私は率直に認めますが、併し先立つ経費というものが如何にも乏しいという分析を昨日やつたわけであります。これらの点を総合しまして、予算の面でもいろいろ新らしい構想と企画を持ちたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/68
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069・伊藤修
○伊藤修君 私の意外に思つたことは、お説のごとく終戦当時が多くて今日は少いと、こう思つたのです。ところが統計はそうではなくして、終戦当時、ちよつと参考までに申上げますが、二十年だと四千八百八十四人、二十一年が五千七百四十二人、二十二年が五千六百三十七人、二十三年が七千六百四十四人、二十四年が七千七百三人、二十五年が九千三百七十八人、二十六年が八千七百十七人、二十七年がまだついこの間十月までで八千九百三人と、だんだん殖えて来る、我々の常識から考えると逆なんですね。秩序が維持されて余計人がいなくなつて行くというあり方ですね。これは何か社会的に欠陥があるのじやないか。又捜査機能の上においても大きな研究課題が残されているのじやないか。勿論経費が足らんことは我々も承知しておりますが、併し日本が民主国家として再建しようというのならば、その基本的な人権というものを先ず守ることにすべての費用を惜しみなく使つてこそ、民主国家を再建できるということが確約できると思うのです。これをないがしろにして、民主主義を確立するとか民主国家を確立するとか言つたつて、それは空念仏で、吉田さんのお考え方も、飽くまで民主国家を確立するというのならば、先ず以て基本人権の確保を図るべき筋合のものであろうと思うのです。そうした点に費用を惜しむというあり方は、すでに基本人権を無視するというあり方ではないかと思うのです。この点は私は閣議におかれても十分強く御主張になつて差支えないと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/69
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070・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 実は閣議でも二、三度発言したことがあるのでありますが、今の大蔵大臣はなかなかこういうことは理解の多いかたでありまして、ただ問題は警察の捜査費、検察庁の報賞費とかいうものを殖やすというのは、この間もちよつと参議院の本会議でそれに触れましたら、伊藤さんのお仲間から忽ち野次られまして、感じの悪い費用だと思つておられるような印象を受けるのでありますが、その費用の中には今御指摘になつたような失踪者を少なからしめる、民主主義の非常に大事な問題も含まれておるのでありますから、どうぞ余りお叱りのないように御理解を願いたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/70
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071・伊藤修
○伊藤修君 だから私はもつと費用を取るべきであると思うのです。取つて十分我々の基本人権の保障の全きを得せしむべきである、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/71
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072・犬養健
○国務大臣(犬養健君) もう一つは、やつぱり警察の組織の関係があると思います。自分のところから範囲が出てしまえば、さつきの齋藤長官のお話ではないが、草の根を分けても探す熱意というものを喪失する。統一された一つの警察機能というようなものがもつと強化されなくてはならん。これを言いますと、あなたがたのお仲間に非常にやはりどうも反響が大きいのであります。つまり警察国家にしないで、今言われたような基本人権を守る警察機能の一つの統一された機能強化というようなものを実は考えておつたのです。いろいろのことで遅れておりますが、早晩御審議を願う時期が来ると思います。そのときには遠慮なく御叱正と御批判の上、最後には御激励を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/72
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073・伊藤修
○伊藤修君 それは警察国家を再現するということは我々は好ましくないので、あなたがたとしてもそういうことはお考えにならんと思うのです。併し今日警察国家を作らなくてもできる方法があると思うのです。警察法によるところの指揮権というものを活用することもあり得るし。又国警と自治警との機構連絡についての指示権というものがあるはずですから、そういうような面を活用すれば十分それは賄い得ると思うのです。それは何も犯罪捜査に対して云々せずして、私はそうした面を活用することによつて行政警察というものは行われると思うのです。そういうことは随分研究の余地がある問題だと思うのです。それから、改正されるとすれば、そういう面において改正されれば十分齋藤長官の御趣旨も達成されると思います。徒に中央集権的なものを作つて、一朝事ある場合においては中央の法務大臣の手によつて全警察が把握されて、これが運用されるというあり方は、他日必らずクーデターを予想される。だから今度の警察法の六十一条の二の改正というものは私は改悪だと思うのです。あれが若ししばしば使われるようなことがありましたら、それは由々しい問題だと思うのです。幸いにして使われておりませんからいいけれども、これは齋藤長官が大いに心して作られた法律だと思いますが、ああいう法律を作るよりは、もつと事務機構、捜査機構についての指示権について特別な連絡規定を設けることによつて私は十分賄えると思います。徒に機構を統合的なものにせずしてもできると、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/73
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074・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 大体の御趣旨は、私もそういう考え方を持つておるわけであります。指示権とか指揮権とかという連絡の機能を十分活かし、フアツシヨ警察というようなものを作りたくないと思つております。ただ今のままではどうもやつぱり依然としてお叱りを受けるケースがたくさん出るのではないかと思います。それをどう機能化するかということで非常に苦心しております。いずれ御審議を願いたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/74
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075・伊藤修
○伊藤修君 どうかそういう点について十分御留意下さつて、今私が指摘しました点についても、確固たる国民に安心を与えるような社会生活が営めるような形に持つて行くように一つ努力して頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/75
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076・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 只今の失踪者の発見のことにつきましてちよつと私補足をさして頂きます。
只今の御指摘の数字は、恐らく発見された者の数字が差引かれていないのじやないかと私は思つております発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/76
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077・伊藤修
○伊藤修君 勿論そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/77
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078・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 従いまして毎年そのくらいの人間が行方不明になつて、全然わからずに消されておるのかという印象ではちよと社会不安になると思うのです。私只今数字を持つておりませんからよくわかりませんし、又統計も極めて不完全でありまするから、現状ははつきり御説明申上げるわけには参らんかも知れませんが、一つの例を挙げて申上げますると、先般田無の近くでありますか、マンホールの中で死後約三ケ月ぐらいたつた死体が発見されまして、これを探すにつきまして、やはり失跡者の中にそういう者はないかというので大分探したのであります。東京都本部では本部に届けられておりまする行方不明者の家族に対して全部通知を出したのであります。そういたしますると、そのうち六割がすでに帰つておりますと、或いは警察の世話になつて帰つておりましたと、で、或いはこれは中央までの報告が不行届であつたものもありましようし、家族のかたもそのままにしておられたのもありましようし、いろいろ捜査上のあれがあると思いまするが、そういうわけで相当に発見をされておるわけであります。私のほうといたしましては、行方不明者がありました場合には、その行方不明になつたときの人相とか或いは着物であるとか、いろいろな参考資料の報告を受けまして、そうしてこれを全国手配することにいたしております。で又身許不明の変死者が出たという場合には、それとつき合して、そうして曾つて届出のあつた行方不明者のそれではないかということもやつておるのであります。これらにつきましては非常に詳細な技術的な方法を考えまして、自治体警察とも打合せて、自治体警察の了解の下に両方協力してやろうというので、いわゆる行方不明者の捜査手配の仕方というものを一両年前に樹立をいたしまして、只今やつておるのであります。今後とも十分それについて努力をいたしたいと思つております。
只今伊藤さんのお尋ねになられた早大のかたの行方不明というようなそういつた行方不明の者は、これは特に関心を持つて調べなければならん問題だと思います。行方不明の中には、或いは厭世のためにどこかへ行つたとか、或いは失恋のためにどこかへ行つてしまつた、捜してもらいたい、そういうものもたくさんありますが、只今御指摘のようなものは何らか裏に犯罪があるということを思わせる事件であります。こういうものにつきましてはなお更特に第一線を督励いたし、又第一線においてもやつておるわけであります。併しまだ十分何が挙つておりませんから、そういう意味で努力はいたしておるということだけは一つ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/78
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079・岡部常
○委員長(岡部常君) 他に御質疑がありませんければ、この程度にいたしまして、次回は本日上程されました二法案に対する質疑及び付託請願、陳情の審査をいたしたいと思います。
本日はこれを以て散会いたします。
午後三時三十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515206X00619521219/79
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