1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十八年三月二十日(金曜日)午後
一時二十一分開議
————————————
議事日程 第三号
昭和二十八年三月二十日
午前十時開議
第一 期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律案(内閣提出)(委員長報告)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/0
-
001・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
昨十九日議長において、左の常任委員の辞任を許可した。
文部委員 都 祐一君
運輸委員 岡田 信次君
同日議長において、常任委員の補欠を左の通り指名した。
文部委員 岡田 信次君
運輸委員 都 祐一君
同日左の法律の公布を奏上した。
不正競争防止法の一部を改正する法律
国立学校設置法の一部を改正する法律
国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律
一昨十八日内閣総理大臣から、自治庁選挙部長金丸三郎君を参議院緊急集会政府委員に任命した旨の通知を受領した。
本日委員長から左の報告書を提出した。
期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律案可決報告書
本日議長は本日の議事日程を左の通り定めた。
議事日程 第三号
昭和二十八年三月二十日(金曜日)
午前十時開議
第一 期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための
法律案(内閣提出)(委員長報告)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/1
-
002・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律案(内閣提出)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律案特別委員長河井彌八君。
〔河井彌八君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/2
-
003・河井彌八
○河井彌八君 只今上程せられました期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律案につきまして、特別委員会の審査の経過並びに結果を御報告申上げます。
特別委員会は去る十八日本案の審査のために設置せられたものでありまして、委員会におきましては当日直ちに委員長及び理事の互選を行い、本日まで三日間に亘りまして慎重審議をいたしたのであります。
先ず法律案の内容につきまして、簡単に御説明を申上げます。この法律案は、先般の衆議院の解散に伴いまして有効期限等の定のある法律中、次期特別国会の開会までの間にその期限等の到来するものが生ずるのでありますが、これら関税定率法ほか十五件の法律につきまして、その定めてありまする期限等の延長等のために必要な改正措置を講じようとするものであります。即ち憲法第五十四条の二項及び三項に基きまして、国が緊急の必要があると認めたものに限りまして、この緊急集会に提出せられました議案であります。この法案の内容をなすところの各法律案につきまして概略申上げます。
第一に、法律そのものが効力を失するものといたしましては、国家公務員等に対する退職手当の臨時措置に関する法律、国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律、及び恩給法の特例に関する件の措置に関する法律、この三件があるのでございます。これらの法律の失効によりまして法の空白が生ずることを避けるため、その有効期限を先ず似てそれぞれ二カ月間延長することとなつておるのであります。
次に関税定率法におきましては、学校給食用の乾燥脱脂ミルクの輸入税の免除、租税特別措置法におきましては、航空機の燃料用ガソリンの揮発油税の免除につきまして、又関税定率法の一部を改正する法律につきましては、「こうりやん」、「とうもろこし」、大豆等農産物、重油、航空機、建染染料及び産業用の重要機械類等の輸入税の免除又は軽減につきまして、更に又昭和二十八年分所得税の臨時特例等に関する法律におきましては、給与所得及び退職手当に対する減税につきまして、おのおのその措置が、本年三月三十一日限りで以て効力を失することとなりますので、いずれもこれらの期限を二カ月間延長いたすことになつておるのであります。次に金管理法におきましては、試錐機、パイン油等の輸入税を本年四月末まで免除いたすことになつておりまするのを、これを五月末まで一カ月間延長しようとするのであります。
なお国家政府組織法の一部を改正する法律、行政機関職員定員法の一部を改正する法律、及び厚生省設置法の一部を改正する法律におきましては、これは引揚援護庁が本年三月末日を限りといたしまして、外局から内局、即ち引揚援護局となることとなつておりますのを、五月まで外局として存置するように所要の改正をいたしておるのであります。
又地方税法におきましては、昭和二十八年度分につきましても従来通り附加価値税の実施を一年間延期するのでありまして、これに代えまして事業税及び特別所得税を賦課徴収することといたしておるのでございます。
更に少年院法におきましては、代用少年鑑別所及び代用特別少年院の制度を、それから次に保安庁職員給与法におきましては、同庁保安隊と警備隊の職員の一部の者の退職手当支給該当期間を、それぞれ三月三十一日から二カ月間延長いたすというものであります。
最後に、昭和二十一年度における一般会計、帝国鉄道会計及び通信事業特会計の借入金の償還期限の延期に関する法律におきましては、当該借入金の償還期限を三月末日より六月一日まで、又外国人登録法におきましては、外国人の指紋押捺の規定の施行を四月二十八日より六月一月まで、それぞれ延長いたすべく所要の改正をいたしておるのであります。以上が本法律案の内容であります。
委員会におきましては、先ず政府から提案の理由及びその逐条につきまして説明を聴取いたしましたのちに、委員諸君から熱心な御質問があつたのであります。
先ず総括的な質問といたしましては、第一に、「期限の定めある関係諸法律について、その期限延長を原則として二カ月としたのはどういうわけであるか、法律によりましては二カ月ということは短いであろう、或いは次の内閣がこの問題を処理するにおいて困難を感じはしないか」というような点であります。即ちそれに対しましては、政府は、「二カ月という短期間の延長は、次の内閣をして更に期限延長という同様の措置を強制する結果となつて、そういう二カ月という短期間の延長は、次の内閣をして更に期限の延長という同種の措置を強制する結果となつて、妥当を欠くのではないか」という質問でありました。又「内容によつてそれぞれ期限延長は異なつて然るべきではないか」という質問、これに対しまして政府からの答弁は、「次期特別国会における新内閣の自主性を尊重すると共に、参議院緊急集会の本質に鑑みまして、必要の最小限度にとどめるべく一律に二カ月とした」という趣旨の答弁があつたのであります。第二点は、この法律案の緊急性の問題であります。「この緊急牲を具体的に説明されたい」との委員側の質問に対しまして、政府側からは、「時間的関係において緊急である点は別段問題ではないけれども、その必要性について問題がある」と前置きをいたしまして、一、二の例を挙げて、具体的な必要性について説明があつたのであります。第三は、この法律案の可分、不可分の問題であります。この点につきましては種々議論が闘わされたのでありますが、質疑応答によつて明確になりましたことは、この法律案は十数件に上つておりますが、別個の法律でありまして、それぞれの期限等を延長しようとするものでありますから、各法律については可分であり、又一つの法律中にあつても、内容的に可分なものであり得るのであるが、その基準は、すべて客観的におのずから定まるものであつて、仮に衆議院において適正を欠くと認められるところの個条について、一部同意、不同意等の議決が行われました場合に、どう取扱うかと言えば、むしろ違憲立法として訴訟を提起することもできるであろし、更に又衆議院におきまして、こういう問題の発生を防ぐ方法といたしましては、「別途に新らしい法律案を発議する方法もあると考えられる」ということでありました。大体これらの点が総括的な質問として重要なものであると考えました。 そこで総括質問を終りまして、逐条審議に入つたのでありますが、先ず、その各条項につきまして、それぞれ当課の政府当局からの細かい説明を聴取いたしました。これに対しまして、主として緊急の必要ありやという点と関連いたしまして、各種の立場から種々の具体的な論議が交わされたのであります。その内容の主なものだけを申上げておきます。
その一は、関税定率法等の一部を改正する法律に関しまして、「建染染料の減税については、関係者間においても、賛否相対立しており、その一方に与するような措置を緊急集会においてやることは適正を欠くのではないか」という質問でありました。これに対しまして政府からは、「先の国会において減税の措置をとつたいきさつに鑑みまして、一応現状通りとするための措置である」という旨の説明がありました。第二は、租税特別措置法に関するものでありますが、これにつきましては、二、三の委員より、「航空機燃料用ガソリンの揮発油税の免税は、一般国民には何ら影響はない。特定の航空事業に対してのみ関係するものであつて、免税の措置としての存続は、占領の残りの滓ではないか」。又「緊急のものとして免税措置をする必要はないのではないか」という質疑がありました。これに対しまして政府からは、「航空輸送の健全なる発達という国家的な要請に基きまして、その経営状態よりして、免税措置をとる必要がある。そうして緊急性のあるという結論に達した」との答弁であります。その三は、少年院法に関する点であります。「本改正は、少年院等の設備に対する当局の不熱心を回避するための措置ではないか」という質問でありました。これに対しまして政府側からは、予算の都合上止むを得ずこの必要な措置が十分に急速にとられていないという実情を詳しく述べました。「従つてこの改正は、暫定的の措置に過ぎない」ということを申したのであります。その四は、引揚援護庁を外局として存置しなければならん緊急性如何という問題でありました。この点につきましては政府から、「今回多数の中共引揚者が帰つて来るのでありまするから、これに対しまして万全を期するためには、内局にすることによるところの、実務上の繁雑を除去することが必要であるということが主な理由である」という答弁でありました。その五は、国際的供給不足物資等の需給調整に関する点であります。これは数種の特殊の金属に関するものでありますが、「それらはすべて戦争に必要な物資であつて、何故に緊急集会を求めてまでもこの特殊の措置を維持しなければならんか」という質問でありました。これに対しまして政府は、「必ずしもこれは軍需物資ではない。他に広い用途があるのみならず、国際的関係からしても、是非ともこれは持続して行く必要がある」という答弁でありました。その六は、昭和二十一年度における一般会計、帝国鉄道会計及び通信事業特別会計の借入金の問題でありまするが、「国際電信電話株式会社の株について大蔵省が売捌いた代金をば、電信電話公社の借入金の引当にするという噂があるがどうか」という質問に対しまして、大蔵政務次官から、「かようなことはない」とはつきり答弁があつたのであります。最後に、国家公務員等に対する退職手当に関する質問がありました。これに対しまして政府からは、予算は俸給予算に一・五%を乗じたものの二カ月分を計上することになつているのでありまして、「整理を対象とした退職手当については暫定予算には計上してない」という答弁があつたのであります。
それから全体に関連いたしましての質問といたしましては、「国際情勢の変化、或いは又法技術的の不備等のために、再び参議院の緊急集会を求めるようなことはないのか」という質問がありました。これに対しまして政府の責任者からは、「現在のところさようなことは考えていない」というはつきりした答弁があつたのであります。
かようにいたしまして質疑を終了いたし討論に入つたのであります。先ず、共産党の須藤委員から党を代表いたしまして、「本改正の措置は、吉田政府四カ年に亘る失政の結果であり、少年院法の期限延長は政府の怠慢に基くものである。一方においては航空用燃料の免税、軍需物資の需給調整等、不必要な部分に金を使うための措置には絶対反対である」という意見の開陳がありました。続いて自由党を代表いたしまして中川委員から、「引揚援護庁を外局のままに存置する点などについて議論があつたようであるけれども、これは現状を維持することにとどむるというこの改正案の趣旨は極めて適切なものである。而して全体においてこの法律案は最も必要なものであるから、これに賛成する」という意見でありました。次に、社会党第二控室を代表せられまして山田委員から、「本法律案は、その出し方及び内容において相当疑義を蔵しており、極めて遺憾ではあるけれども、単なる臨時的な措置と認めてこれに賛成する」という意見が述べられたのであります。更に引続きまして社会党第四控室を代表いたしまして、菊川委員から、「今回の緊急集会は、憲法第六十九条の濫用に基くものであつて、根本において妥当を欠くばかりでなく、この法律案は、その形式内容共に幾多の疑義もある。併しながら臨時的な措置であるという点及び選挙を目前に控えて国民に無用の疑惑を生ずるというようなことがあつてはいけないから、慎重にこの問題を考慮すべきであるという観点から、不本意ながらこれには賛成する」という意見が開陳せられました。最後に、改進党を代表せられまして一松委員から、「緊急集会に提案さるべきものは、法律の施行の停止又はその失効が、国民の福利増進に重大な悪影響を及ぼす場合のみに限らるべきであるにかかわらず、この法律案については、その第一条第五号、恩給法の特例に関する件等、緊急の必要なきものが包含されているのは極めて遺憾である。この点につきましては、早急に適切な処置を将来の政府に要望する」と、そういう発言をせられまして、不満足ながら本案に賛成するという御意見でありました。
かようにいたしまして討論を終りまして、採決を行いました緒果、多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/3
-
004・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/4
-
005・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
議事の都合により、これにて暫時休憩いたします。
午後一時四十三分休憩
—————・—————
午後五時二十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/5
-
006・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。
参事に報告させます。
〔参事朗読〕
本日委員長から左の報告書を提出した。
昭和二十八年度一般会計暫定予算可決報告書
昭和二十八年度特別会計暫定予算可決報告書
昭和二十八年度政府関係機関暫定予算可決報告書
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/6
-
007・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) この際、日程に追加して、
昭和二十八年度一般会計暫定予算
昭和二十八年度特別会計暫定予算
昭和二十八年度政府関係機関暫定予算
以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/7
-
008・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。予算委員長岩沢忠恭君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/8
-
009・岩沢忠恭
○岩沢忠恭君 只今議題となりました昭和二十八年度一般会計暫定予算、同特別会計暫定予算及び同政府関係機関暫定予算の予算委員会における審査の経過並びに結果を御報告申上げます。
本件は、昭和二十八年度一般会計、特別会計及び政府関係機関の各予算が、三月十四日衆議院が解散せられました結果、不成立となりましたので財政法第三十条等により、昭和二十八年度のうち、四月及び五月分にかかる暫定予算であります。年間予算が成立するまでの暫定的なものでありますので新たに成立した法律の実施に伴うもののほか、新規計画に伴う経費はこれを避けることとし、国政の運営上如何にしても必要なもののみでありまして、いわば骨格予算であります。
以下その内容を簡単に勧御説明申上げますと、
一般会計の暫定予算は、歳入一千百四十五億円余、歳出一千四百十七億円余でありまして、差引二百七十二億円余の歳出超過となつております。この不足額は、国庫余裕金及び大蔵省証券の発行により支弁いたす予定であります。
歳入におきましては、税制の改正案が、酒税法の改正を除き、審議未了となりましたので、所得税につき本年一月乃至三月にとられた臨時措置を二カ月間延長することと、そのほかは原則として現行法によることといたしまして、四月及び五月における収入額を見積り、租税及び印紙収入一千三十四億円余、官業益金その他百十一億円余、計一千百四十五億円余を計上したのであります。専売納付金及び前年度剰余金は、歳入の時期的関係から計上いたしておりません。
次に歳出につきまして、先ず第一に防衛支出金の百五十億円は、駐留米軍に対する交付金が行政協定に基く取極により四半期ごとに交付する必要がありますので、年間所要額の四分の一とし、施設提供等の諸費は二カ月分を計上しております。保安庁の経費は五十八億円で、施設、装備の強化に要する経費は一切計上せず、最小限の維持費のみにとどめております。なお平和回復善後処理及び連合国財産の補償に関する経費は、差当り必要がありませんので計上いたしておりません。又恩給法の一部を改正する法律案は不成立に終りましたので、戦没者遺家族、戦傷病者留守家族に対する従前の援護措置を続行することとなるのでありますが、この暫定予算では、支出時期の関係上、留守家族の分のみを計上いたしております。第二に、地方財政に関しましては、四月一日より実施せられる現行の義務教育費国庫負担法の規定により、義務教育費国庫負担金の二カ月分の所要額八十九億円を計上いたし、地方財政平衡交付金はニカ月分の所要額八十七億円を計上いたしております。第三に、公共事業、食糧増産対策事業、その他の建設事業につきましては、原則として、継続費として年度割の確定しておるものについてはその四分の一を計上し、その他は前年度より継続するものについて最小限の事業を実施することとし、おおむね前年度の四分の一を目途として、公共事業費二百四億八千万円、食糧増産費九十九億七千万円、住宅対策費十四億九千六百万円が計上されております。第四に、一般会計よりの出資獲資としては、先の国会において成立した農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律によつて同公庫の資本金が増額されましたので、これに対する出資二十億円を計上するにとどめております。第五に、その他一般経費は、原則として、政府機構を維持運営するための人件費、事務費、及び前年度からの引続きの事業についてニカ月分を計上しております。但し、今次の衆参両院の選挙に必要な経費は全額二十八億八千万円を計上いたし、中共地区引揚げに要する経費は、四、五、二カ月間の引揚者を二万名と予想し、五億九千七百万円を計上しております。
次に、特別会計の暫定予算は、歳入として四千二百二十二億五千七百万円、歳出四千百十七億二百万円、又政府関係諸機関の暫定予算は、歳入一千百五十九億八百万円、歳出九百四十五億二千七百万円でありますが、これ又一般会計における基本方針に準じ、四、五月分に必要な最低限度の経費であります。ただ特別会計につきましては、先に提出された年間予算と異なりました点は、産業投資特別会計法案その他の法律案が審議未了となりましたために、廃止さるる予定の米国対日援助見返資金特別会計及び米国対日援助物資等処理特別会計が存続されることとなり、又新設される予定であつた産業投資特別会計等の設置、中小企業金融公庫の設立が取りやめとなつた等の点であります。
以上が昭和二十八年度の暫定予算の概要の骨子であります。
これに対し当委員会といたしましては、三月十九、二十日、両日審議を重ねたのでありますが、御承知の遣通り、参議院の緊急集会において.暫定予算を審議いたしますことは、新憲法下最初の事例であります関係上、緊急集会の性質、これに付議せらるるところの暫定予算の性格について論議の集中されましたことはもとより当然であります。この詳細につきましては速記録に譲りますが、主なる論点を御紹介いたしますと、先ず「緊急集会に付せられる暫定予算は、憲法第五十四条、財政法第三十条の精神に照らし、否決できないものと考えらるるが、否決することができるかどうか」という問に対し、政府は、「この暫定予算は新規の政策を含まず、国の機構の運営維持に最小限必要のもののみ計上しておるから、条理上否決はあり得ない」という答弁がありましたが、重ねて「新規の政策事項なりや否やの認定の権限は国会にあり、従つて提出されておる暫定予算を検討した上これを修正することも、更に、原案を否決し、政府に組替要求をなすこともできるのではないか」という質疑がありました。これに対しては、「法規上は別段の規定がないから修正も組替要求も可能であるが、新年度において全然予算のない状態というものは条理上予想されないこと、新規の政策事項であるか否かは国会の認定に待つとしても、政府が既成の秩序や事業を継続するに必要な最小限の経費を暫定予算に組むことは当然であつて、例えば防衛関係費を全然削るがごときは別な意味での既定秩序の変更である」という見解をとつております。又、暫定予算を四、五の二カ月としたことに対し、六月以降も暫定予算となるのではないかといちう質問もありましたが、「五月十九日までに新国会が召集される関係上、六月以降も暫定予算となる可能性が予想せられるも、この際の政府としては暫定予算は最少期間につき組むことが妥当と信ずる」とのことでありました。予算の内容につきましても、義務教育費国庫負担金の算定基準はどうかというに対しまして、最近の資料に基く現員現給の二カ月分を計上したものであるとの答弁があり、そのほか公共事業、食糧増産対策費、食管経費、中共地区引揚援護費等につき質疑と答弁がありました。三月十四日の衆議院解散手続及び暫定予算提出の政治責任につき、特に吉田総理大臣の出席を求め、「政府は第七条の三項による解散となしておるが、今回の場合は第六十九条の不信任決議が成立したための解散であること、第六十九条は政府は解散か総辞職かのいずれかを選ばなければならぬとしてあるので、即日解散の挙に出た結果生ずることあるべき国務の渋滞、経済界の混乱については、政府の責任ではないか」との質凝に対し、政府は「速かに国民の審判を仰ぐことが即ち民主主義政治の常道である」との見解をとつておるのであります。
今回の緊急集会は三月十八日に召集されたのでありますが、暫定予算の政府提出が遅れましたため、審議時間は僅かに二日に過ぎず、決して十分審議を尽したとは申されません。
併し諸般の情勢上、質疑を終了し、討論に入りましたところ、内村委員は日本社会党第四控室を代表して、この暫定予算が吉田内閣の不当なる解散の結果であること、この暫定予算に引続き第二の暫定予算が必至であり、長期間に亘つて空白状態が続くこと、地方財政を圧迫すること、防衛支出金、保安庁経費のごとき政策的な再軍備費を含んでおることの四つの理由を挙げて反対、高橋委員は自由党を代表して、本予算案の内容が国家生活維持運営上真に必要不可欠なものであるとして賛成、永井委員は日本社会党第二控室を代表して、この暫定予算は、憲法、財政法に違反するものであること、又暫澄予算に盛られている防衛費等政策を含むものとして反対、森委員は緑風会を代表しで、原案に賛成なるも、予算使用上不当支払等の懸念なきよう政府の厳重なる注意を促し、木村委員は労働者農民党を代表して、この暫定予算は憲法上の疑点のあること、防衛支出金、保安庁経費のごとき我が党と対立する政策的経費を含んでいるとして反対、堀木委員は改進党を代表して、細目については論議すべきものもあるが、全体として国政運営上最少不可欠のものであるとして賛成、岩間委員は日本共産党を代表して、憲法違反の疑いが濃厚であること、この予算には政策が織込んであること、この暫定予算に続いて再び吉田内閣の手によつて暫定予算が提出されるごとき懸念がある等の理由を挙げて反対されました。
かくて討論を終局し、採決の結果、本委員会に付託せられました昭和二十八年度暫定予算三案は、多数を以て可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/9
-
010・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 三案に対し討論の通告がございます。発言時間は十分問に制限いたします。これより発言を許します。岩間正男君。
〔岩間正男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/10
-
011・岩間正男
○岩間正男君 今次提出されました暫定予算は、未だ新憲法下初めての事例であります。それに、而も本緊急集会におきますところの最重要案件であります。而も、規模から言いましても千五百億になんなんとするところのものであつて、非常に重要な案件でありますので、これを本会議において討論で明らかにすることを我々は要求したのであります。然るにこれに対しまして、只今議長から時間の制限がございました。(「不都合だ」と呼ぶ者あり)我我がこれを委員会であげましたのは三時二十分でございます。現在は五時半を過ぎております。二時間の時間が実は空費されておる。なぜ空費されたかというと、これは議院運営委員会におきまして、この案件をどうするか、討論をどうするかという問題もあつたのであります。一方におきましては、小会派閉め出しの陰謀が企てられておつたというような、こういうことによつて、緊急集会の案件とはおよそ反対、何ら関係のない案件によつて、このようにこの本会議が延ぼされたということは、重要な問題である。我々はこの重要な案件についてこそ審議を尽すべきであるということを先ず申上げたいと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
そこで、私は先ずこの暫定予算に対しまして、日本共産党を代表しまして反対し、更に組替えを要求するものであります。
その理由といたしまして、先ず第一に、この暫定予算が誠に止むを得ない、仕方がないというような、実に追い詰められたこのような形によつて、この法案を、この予算案を適さなければならない、こういう恰好で、のつぴきならない態勢の下にこの通過が策せられておる。こういうようなことでは誠にこれは我々は責任を持ち得ないのであります。言うまでもなく今次の暫定予算は、自由党の内紛解散によるところの不始末に結果したものでありまして、この結果は憲法違反、財政法違反までもやりまして、而も審議期間が甚だ短かく、而もこういう中で十分な審議を尽すことなく、これが通される。これが先例となることがあつたならば、非常に今後の国会運営上に私は一大汚点を残すと考えるのでありまして、このような形で通る暫定予算に対しましては、我々は絶対に賛成することができないのであります。これが反対の第一点でございます。
第二点は、この予算案は政策を盛り込まないところの事務経費である、これだけに限定して組んだものであるということが、政府からしばしば説明されたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)果してその内容を見ると然るかどうか、この中には、例えば防衛分担金、保安庁経費のごときものがこれは盛り込まれております。防衛分担金のごときは非常に大きな問題がある。(「そんなことは委員会でやつたじやないか」と呼ぶ者あり)この防衛分担金については、当然これは岡崎・ラスク交換文書によりまして、この減額ということが条約によりましてもこれは当然に予想されなければならないのでありますが、それが何ら処置がとられなくしまして、既定条約によるところの義務行為であるということで、これがこのまま提出されている。これは明らかに、政策はないと言いながら、この点におきまして、はつきり政策を遂行していることになるのであります。若しこういろことを許すならば、同時に、一番目下大きな問題になつておりますところの金融、中小企業の金融の問題を解決するところの中小企業時別会計という、これが法案の中止によつて十分にできないとするならば、これに対して現実に当面したところのこれは案件に対する適当な処置が同時になされなければならないのであります。又或いは中共地区の引揚援護費、これらも甚だこれは要件を満たすことのできない雀の涙ほどの対策でしかない。こういうものに対しても十分に措置をなされなければならない。或いは又、今度この案を最初に政府が組みますときに問題になりましたところの義務教育費半額負担法、これを六月一日まで延期して、そうして予算を、今までの従来の慣例によつてこれを組んで出したのでありますが、この問題は参議院の反対一によりまして、これは出さない。これについては参議院の反対がありまして、組替えをしたのでありますが、さて義務教育費半額負担法によりまして出されました予算を見ましても、先ほど文部省の政府委員の答弁によりますというと、これは僅かに年間の職員の給与が一千百六十五億、こういうような総額で組まれております。ところが、先ほどから問題になりましたよぅに、この前の本予算におきましても、これは大体自治庁の見当におきまして一千百五十五億、これだけのものがどうしてもこれは教員費として必要である、こういう建前であつたのであります。従いまして今度の予算におきましては、僅か十億余これが増額されているに過ぎない。而もそれに対するところの文部省の説明を聞きますというと、現在の教員給の現員現給によるところの実際の支出が何ほどになつているかという問題につきまして、これは十分な基礎資料を持つていない。こういう形で、実は何ら確実な統計の上に立つていないで、この案が組まれている。又この前、義務教育費負担法が通りますときに、教材費のごときは三十億組むということが、これは殆んど確定約に、大蔵省を入れましてこの問題が決定されているにもかかわらず、この予算によりましては、十九億を前提としまして、この二カ月分を組んでおるのであります。こういうような、誠にこれは政策の修正をやつておりまして、一方におきまして、事務的な経費であり、政策は全然入れないと言いながら、このような点におきましていろいろな政策面の変更がなされておるのであります。この点で政府のやり方というものは全く首尾一貫しない。このような法案の結果、これは教職員の今後の給与面のうちで、どうしてもこれは首切りというような事態が起る心配が十分あるのであります。で、こういう点から私はこのような予算案に対して賛成することができない。
第三の反対の理由は、この予算案が通されても、これによつて恐らく今後大きな混乱が予想されると思うのでありますが、(「時間超過だ」「まだ五分あるよ、ゆつくりやれ」と呼ぶ者あり)例えば今宮の衆議院の総選挙は四月十九日にこれはなされます。それから国会法によりまして、一カ月後にこれは国会を召集しなければならない。一カ月としますと、五月十九日までにこれは召集しなければならないことになり、五月十九日からこの予算のきりになりますところの五月の末日までには、僅か十二、三日しか残さない。国会が仮にこれを召集されましても、そのあとは、果して一体現在の政治情勢から考えるときに、新らしい首班の指名が可能であるかどうかといつた問題が当然起つて来る。こういうことになりますと、最悪の事態におきましては、現在の現存吉田内閣によりまして再び暫定予算を組まなければならないというような、そういう実にこれは政治的には問題にならない事態も発生しかねないところの危険性を十分に学んでおるところの予算なのであります。現在の政治の現状を見ますときに、これらの、困難を避けるために十全なる措置が、如何に暫定的な内閣とは言いながら、その点を見通し、責任を持つてこれらのものに対処するというのが、当然私はこれは政府の責任であろうと思うのであります。(「賛成」と呼ぶ者あり)然るに、この点については、何ら責任を負うことなく実に、あとは野となれ山となれというような態度をとつておる。そういう点におきまして、この予算案というものは、誠に国民に対するところの責任を完全に現内閣は、暫定内閣は、果そうとする意図の下に立つていないということを私は指摘せざるを得ないのであります。
以上挙げました三点の理由によりまして、我々日本共産党は、この暫定予算に対しまして反対し、組替を要求するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/11
-
012・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
これより三案の採決をいたします。三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/12
-
013・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて三案は可決せられました。(拍手)
これにて緊急案件はすべて議了いたしました。よつて緊急集会は終了いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/13
-
014・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) この際、私から特に一言御挨拶を申上げたいと存じます。
議員諸君のうち半数のかたは、来たる五月二日を以て任期を終えられるわけでございます。私も又そのうちの一人でございますが、不肖私が議長の職を汚しまして以来、今日まで、参議院といたしまして、幾多困難な場面を経て来たのでありまするが、その間、辛うじて私としての職責を果すことを得ましたのは、ひとえに皆様の御厚情と御協力のたまものでございまして、先ず以てここに深く感謝の意を表する次第でございます。
顧みますれば、日本国憲法に基いて、第一回国会が召集されましてから今日までの約六年間、国会は十五回の会期を重ね、又参議院の緊急集会も二回に亘り集会を求められたのであります。この間国会は、国権の最高機関として国民の信託に応え、我が国再建の基礎となるべき幾多の法律案、予算その他重要案件を審議するなど、その使命の達成に尽瘁し、でき得る限りの成果を挙ぐべく努力して参りましたことは、諸君と共に欣快に堪えないところでございます。
ここに来たる五月二日を似て任期を終えられます諸君が本院議員として残されました御功績に対し、深甚の敬意を捧げる次第でございます。
終りに、内外多事多端の折柄、今後一層独立日本確立のため御健闘あらんことを期待し、切に御自愛御自重をお祈り申上げまして、御挨拶といたします。
〔拍手起る〕
〔伊達源一郎君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/14
-
015・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 伊達源一郎君。
〔伊達源一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/15
-
016・伊達源一郎
○伊達源一郎君 私は、僭越でございますが、来たる五月二日を以て任期が満了する議員を代表いたしまして、只今の議長の御挨拶に対しまして一言御礼を申述べたいと存じます。
只今、議長から我々に対し過分のお言葉を頂きましたことは、感謝に堪えないところでございます。幸いにして我々が無事任期を終えんといたしますることは、議長を初め同僚諸君の懇切なる御指導と御援助のたまものと、深く感銘しておる次第であります。
平和条約発効後、早くも一年になろうとしておりますが、独立日本の前途は決して容易なものではありません。どうか同僚諸君におかれましては、十分に御自愛の上、国家のため更に御健闘あらんことをお願い申上げます。
ここに、近く任期を満了せんとするに当りまして、深甚の謝意を表する次第でございます。
〔拍手起る〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/16
-
017・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これにて散会いたします。
午後五時五十二分散会
—————・—————
○本日の会議に付した事件
一、日程第一期限等の定のある法 律につき当該期限等を変更するた めの法律案
一、昭和二十八年度一般会計暫定予算
一、昭和二十八年度特別会計暫定予算
一、昭和二十八年度政府関係機関暫定予算
一、議長の挨拶発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X00319530320/17
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。