1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月九日(木曜日)
午前十一時十六分開議
出席委員
委員長 久野 忠治君
理事 内海 安吉君 理事 瀬戸山三男君
理事 田中 角榮君 理事 中島 茂喜君
理事 安平 鹿一君 理事 山下 榮二君
逢澤 寛君 岡村利右衞門君
仲川房次郎君 堀川 恭平君
松崎 朝治君 五十嵐吉藏君
三鍋 義三君 中井徳次郎君
高木 松吉君
出席政府委員
建設政務次官 南 好雄君
建設事務官
(大臣官房長) 石破 二朗君
建 設 技 官
(河川局長) 米田 正文君
委員外の出席者
専 門 員 西畑 正倫君
専 門 員 田中 義一君
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七月七日
喬木村地内天龍川沿岸堤防築設に関する請願(
今村忠助君紹介)(第二九〇二号)
小倉口大滝山上高地観光還状自動車道路開設の
請願(大村清一君紹介)(第二九七二号)
県道野村近永停車場線改修工事促進の請願(井
谷正吉君外二名紹介)(第二九七七号)
三間川改修工事施行の請願(井谷正吉君外二名
紹介)(第二九七八号)
同月八日
三陸沿岸路線等を一級国道に指定の請願(山崎
岩男君紹介)(第三〇二〇号)
国道四号線中浅虫、青岩橋間道路改修工事施行
の請願(山崎岩男君紹介)(第三〇二一号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
小委員の補欠選任
土地收用法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一四一号)
九州地方における豪雨災害状況に関する説明聴
取の件
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001・久野忠治
○久野委員長 これより会議を開きます。
この際小委員の補欠選任についてお諮りいたします。すなわち去る二日及び六日に高田弥市君及び三鍋義三君がそれぞれ委員を辞任され、四日及び七日それぞれ再び本委員になられたのでありますが、高田君及び三鍋君は、それぞれ小委員となつておりましたので、道路に関する小委員及び河川に関する小委員が、それぞれ一名欠員になつております。これらの小委員の補欠選任につきましては、先例によりまして、それぞれ委員長において指名することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/1
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002・久野忠治
○久野委員長 御異議なしと認めます。それでは道路に関する小委員に三鍋義三君、河川に関する小委員に高田弥市君、以上の両君をそれぞれ指名いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/2
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003・久野忠治
○久野委員長 次に土地收用法の一部を改正する法律案を議題といたします。本案に関しまして何か御質疑はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/3
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004・中井徳次郎
○中井(徳)委員 非常に簡単なことでありますが、一点だけちよつとお尋ねいたします。あつ旋委員会ができて、こういう問題についてあつせんなさつていることについては、非常にけつこうだと思いますが、この条文によりますと、あつ旋委員会は、問題が起りました都度、都道府県知事が任命してあつせんするという形になつておるのであります。臨時的なものでありながら、十五条の三におきましては、その構成において非常に簡単に「学識経験を有する者」となつております。この点について具体的な場合を想定してみますと、非常に利害関係が輻輳しておる場合が非常に多かろうと思いますが、こういう簡単な学識経験というふうなものだけでいいかどうか、ちよつとお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/4
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005・南好雄
○南政府委員 御質問のように、元来あつせん制度というものが、法律改正の目的が、土地収用の強制段階に入つて参りますと、感情的になりがちになるので、その感情を取去るために、土地収用に入る前に、もう一つあつせん制度を設けまして、適宜にいい案を考え出してもらう、こういうためにこのあつせん制度の法律を整備したわけであります。御承知の通り、これは随時に設けられるものであり、その範囲を学識経験者と書いてありますが、非常に問題がこんがらがつて参つたあとのあつせんになりますと、それは非常にむずかしいと考えます。ただこれは、こんがらがらない前に、いろいろあつせん制度によつて有終の美を出して行こうと申すのでありますから、学識経験者という抽象的な言葉ではありますが、利害関係を持つた人以外の人たちがら、あつせんをすることに適当と思われる人を選定するというような見地に立つて参りますと、やはり学識経験有というような、普通の法令で用いられておるような選考範囲を書く以外には適切な言葉がないのであります。具体的に書けば書くほど、あらゆる場合に適応するようにも参りかねるのでありまして、そこはあらゆる法令に使つておりますような学識経験者という抽象的な言葉におきまして、利害関係人と離れた立場で、客観的に妥当なあつせんをなし得られる人たちを選んでいただくという目的のために、学識経験者という言葉を使つてあるのでありまして、御質問はございましたけれども、大体こういう言葉によつて一応所期の目的を達し得られるのではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/5
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006・中井徳次郎
○中井(徳)委員 今のお答えで半分ば託りわかつたのでありますが、私さらにお尋ねいたしたいのは、このあつ旋欠員会の構成が非常に心配であります。御返事の中にも多少ありましたが、私はこの十五条の三で、もう少し強く但書か何か入れていただいて、利害関係者を強力こ排除してもらいたいと思うのであります。それも直接間接を問わず排除する。こういう問題が起りますときは、たとえば相手方は国だとか地方公共団体とか、そういうものになります。従いまして、この点よほど親切に法案をつくつておきませんと、あつ旋委員会はできたが、かえつて複雑なことにまき込まれてしまうというようなことを私はおそれるのであります。厳正公平な建前から行きまして、学識経験者を削るという意味では決してないのでありますが、さらにこれにつけ加えて、利害関係者は厳重に除くような但書か何か、ぜひともこれはつけていただきたい、かように考えるわけであります。その点は、細則か何かでやるというふうなお考えであるかもしれませんが、その辺のことにつきまして、このままでいいとお考えになつておるかどうか、承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/6
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007・南好雄
○南政府委員 お答え申し上げます。あつせん制度の当然の結論といたしまして、利害関係人がその五人の中に入るべきでないと私たちは考えております。しかも、各都道府県知事がかつてにやるのでございませんで、土地収用委員会の推薦する学識経験者を任命するのでありますから、当然ある程度の人たちが集まつて、ある一つの紛争に解決を与えるためにあつせん委員を推薦することになりますと、これはおそらく悪意で利害関係人が入つて来るわけはないと思われるのであります。かりにそういう規定がありましても、調ベてみると利害関係を多少持つている人間があるかもしれぬということになるのでありまして、要は、法律の規定でなくて、この制度の持つている本質上、利害関係人が入つて来るわけはない、こういうふうに考えましたので、わざわざそこにそういう規定を設けなかつたのであります。当然収用委員会が推薦する学識経験者のあつ旋委員でやることになりますから、利害関係人が入つて来るわけがない。またこういう性質上入るべきではないのであつて、その点はわざわざ法律に規定しなくても目的を達する、こういうふうに立法の際においては考えておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/7
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008・中井徳次郎
○中井(徳)委員 一応そういう御返事なんですが、しかし現実の全国における土地収用委員の構成とか、あるいは利害関係があるかないかというような問題も、これは直接的である場合と間接的である場合と非常に多いのでありまして、現実の問題として都道府県知事が任命するという場合には、どうしても一応名のある人たちが指名をされまして、その人たちが、たまたま県会議員であつたとか、あるいは市町村議会議員であつたとか、あるいはそうでなくても県の何らかの公職についている者であるとかいうふうな場合が、実は非常に多いのであります。それをおそれまして、私はお尋ねいたしたわけであります。政府は、そういうお考えならばよろしいのでございますが、しかし現実はよほど警戒をいたしませんと、あつせん委員会をつくつたが、さらに紛糾をしたというふうな形が出て来る場合を私はおそれるのであります。従つて、但書の必要がないということになりますと、それは政府その他の行政措置でけつこうだと思いますが、この点は強く言つていただきませんと、南政務次官のような良心的な考えを持つた人間ばかりとは限らないと私は考えております。どうぞその点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/8
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009・久野忠治
○久野委員長 ほかに御質疑はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/9
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010・安平鹿一
○安平委員 これは直接収用法の一部を改正する法律案に関係はないのですが、この際次官にお尋ねしておきたいと思います。
これは元来合衆国の軍用施設問題ですから、調達庁関係だと思いますけれども、事道路の問題ですから、関係があるかどうか、お聞きしておきたいのです。佐渡郡の新穂村というところでございますが、そこで合衆国の佐渡ケ島の無線電信局をつくるために、必要に基いて道路をつくつておる。ところが、村長さんも村議会の議長も全然知らぬというのです。そうして最近五月の十二日になつてわかつて、あわてて行つて見たところが、もうすでにその道路は完結に近づいておる。それで、すぐに特別調達庁長官及び仙台調達局長、これらの所管に異議を申し立てたけれども、今日に至るも何らの処置をとつていない。こういうことで実は私の方に佐渡郡の新穂村の村長さん及び議長さんから、調べてほしいということで依頼があつたのでありますが、こういう事例がほかにございますか。何らの相談も了解もなくて、知らぬ間に道路をつくつてしまつたというようなことがあり得るかどうか、またこういうことができるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/10
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011・南好雄
○南政府委員 御質問の具体的事情につきましては、私まだ調査しておりませんので、的確に御返事申し上げ、またお答え申し上げることはできないということを、はなはだ遺憾といたしますが、私たち聞いております範囲内におきましては、府県知事または当該市町村長が知らずにしてそういうことのあつたという例を、全然聞かないのであります。ときどき問題が起きますのは、府県知事を相手にして、府県知事がよろしい、やつてくれということでやつたところが、府県知事と市町村との連絡が非常に悪かつたために、市町村長の方で異議が出て来たというような場合もございます。それから府県知事があまり乗り気にならないで逃げておるために、やむを得ず政府は当該市町村長と話をしてやつた。あとで問題が大きくなつて、府県知事の方から、わしに話をしなかつた、また特に頼まれなかつたということでつむじを曲げて、問題をことさら紛糾させたという実例は聞いておりますけれども、都道府県知事にも市町村長にも全然断らずに、そうして気がついてみたときに道路ができておつたというような事例は、私今まで聞いたことがないのであります。もしそういうことがあつたといたしますならば、それは非常に遺憾なことでありますので、あとで書類をいただきまして、外務省及び調達庁あたりとよく調べまして、正式にまた機会を見て御返事申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/11
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012・安平鹿一
○安平委員 それではあとで書類を差上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/12
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013・逢澤寛
○逢澤委員 私は大体においてこれは賛成いたします。が、今日の改正はきわめて微温的で、真に核心に触れていないと思うのです。そこで適当の機会にさらに核心に触れるような改正をせねばならぬと存じております。しかしながら、今日の場合では多数の方々が御賛成のようでありますから、一応賛成いたしまして、私どもよく研究をして、適当な機会にさらに核心に触れた改正をいたすことにいたして賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/13
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014・久野忠治
○久野委員長 ほかに御質疑はございませんか。——御質疑がなければ、本案に関する質疑は全部終了いたしました。
本案に関しましては、討論を省略いたし、ただちに採決に入りたいと存じますが、御里(議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/14
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015・久野忠治
○久野委員長 御異議なければ、討論はこれを省略し、ただちに採決に入ります。本案を原案の通り決定するに賛成の方の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/15
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016・久野忠治
○久野委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決すべきものと決しました。
なお、お諮りいたします。本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/16
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017・久野忠治
○久野委員長 御異議なしと認めて、さようとりはからいます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/17
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018・久野忠治
○久野委員長 次に、九州地方における豪雨災害状況につきまして、政府より説明を聴取いたします。米田河川局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/18
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019・米田正文
○米田政府委員 私は先月の二十七日から今月の七日に至るまで、今回の九州特に北九州を中心とする災害の措置のために現地に参りました。その間、おおむね西日本災害対策本部の中の要員として仕事をして参りました。そこでできるだけ現地を見たのでございますけれども、すべて見て参るわけにも行きませんでしたので、その概要を申し上げたいと思います。
今回の災害は、すでに御承知のことだと存じますが、非常な豪雨でありまして、従前例がなかつた、記録のなかつた雨を降らしたのでございます。この梅雨どきの雨が災害を起すというのが、九州の特徴でございまして、関東地方は台風による災害であり、九州地方はこの梅雨による災害が特に大きい被害をもたらすのでありますが、今度も大体二十五日から二十八日に至る間梅雨前線、いわゆる不連続線が筑後川の線に沿つて停滞をいたしたのであります。雨を降らす線がちようど筑後川の真上にあつて、大分に抜けておつたのであります。しかも、普通ならその梅雨前線は移動するのですけれども、移動しないで停滞をしておつた。そして雨を連続降らしたということが、今度の雨が非常に多かつた原因であります。一番多かつたのは、筑後川上流の熊本側になりますけれども、小国という町であります。小国の町では四日間の雨量で九百四十二ミリという雨を降らしたのであります。それが最高でありまして、平地に来ても大体五百ミリ程度のものを降らしております。従前の災害に比べてみますと、終戦後今まで一番大きかつたのは二十三年九月のアイオン台風でございます。アイオン古風では関東、東北がひどくやられたのでありますが、その当時の雨量は、箱根で五百三十ミリというのが最高でありまして、日光が五百十五ミリというような雨でした。その他終戦後いろいろ災害がありましたけれども、その当時の雨量は大体五百ミリ足らず、四百何ミリが最高だというのが普通であります。今回のは、今申し上げましたように、九百四十ミリというような非常な大雨が来たという特徴を持つております。
被害額は、今回はまだ想定でありまして一全部済まないと出ませんけれども、各県からの報告をとりまとめて、現在の段階においては二百五億程度になつております。きようの新聞によりますと、またふえているようですが、二百五億程度に今日集計されております。被害の額から申しますと、今申しましたアイオン台風のときは三百九十五億でありまして——これは建設省だけを対象にして申し上げておりますが、それから見ますと、大体半分程度の被害額です。これはアイオン台風当時は、関東から東北にかけて非常な災害を広い地域に対して受けたのに対して、今回のは北九州を中心とする地区で、特に福岡、佐賀、熊本、大分の四県がほとんどその中心をなしており、被害の範囲が、アイオン台風等に比べると非常に狭かつた、しかし局地的な被害は非常に強いというのが、今回の特徴であります。特に筑後川の氾濫による被害がその中心をなしております。
筑後川は、これもまだ調査中で、はつきり申し上げられませんけれども、大体の推定では、夜明のダムで大体七千立方メートル毎秒という水が流れたようでございます。これは現在施工いたしております筑後川の計画が五千立方メートル毎秒というものを標準にしておりましたために、計画洪水量をはるかに突破いたしたのであります。そのために筑後川は至るところ温水、氾濫を起しまして、被害箇所が四十箇所以上に達したのでございます。筑後川だけで五万町歩からの浸水を生じますし、これに佐賀側及び福岡の南部地区を合せますと八万町歩程度になつて、筑後川水系で、広く見まして八万町歩からの被害面積を生じたのであります。
私のおりました当時の各県の状況は、福岡が一番ひどくて公共土木関係だけで百十六億に達し、熊本はその次で六十五億、佐賀が二十五億、大分が二十五億、長崎は二十六億、山口が七億、合計二百六十四億という土木関係被害の報告を受けたのであります。これは県の被害でありますが、内容をいろいろ検討いたしましたところが、長崎の被害には将来計画が入つておつたので、これが大体山口程度に五、六億に被害だけはなるということがわかりましたので、二十億以上のものは福岡、熊本、佐賀、大分の四県であります。非常に被害があつた農林関係、商工関係、民生関係、教育関係その他を合せまして、私のおりました当時は千六百十四億という損害数字が集計されたのでありますが、きようの新聞によりますと、またその後ふえて約二千億になつたといわれております。当時は千六百億程度でありました。これらの数字も、各県のものもいろいろな数字があがりますけれども、実際に測量した数字ではない。雨の降つた直後に数字が発表されますけれども、これは爾後において測量調査をした上でないと、正確な数字とは申せないと思うのです。これから正確な数字がだんだん集まつて来ると思います。しかし死者等はだんだん多くなつて、その当時大体はつきりした数字は、六百五十三人の死者、行方不明が七百十五人という数字でありました。全壊半壊の家屋も、全壊が二千五百、半壊が九千三百という数字があげられております。
この災害について、今申し上げましたのは府県でありますが、そのほかに直轄河川区域としては、筑後川を中心としまして、筑後川、遠賀川、大野川、川内川、球磨川、菊池川、大分川、山国川、五ケ瀬川という各河川に、筑後川を最大としてそれぞれ被害を生じたのであります。これらの数字についても、今正確な数字を出しておるのでありますが、今建計省として内閣に御報告しておるのは、直轄河川で四十八億という被害額を報告いたしております。
そこで一番ひどかつた筑後川の分について申しますと、筑後川の復旧状況は、二十八日に雨が小やみになりましたので、すぐ復旧にかかりました。四十箇所の被害箇所がありましたものを、それぞれ区域を一括しまして、近くにあるものは一つにまとめまして、それぞれ復旧にかかつたわけであります。大部分は久留米の町から上流であります。このうち早急に復旧をする必要のありますのは、筑後川の右岸筋の大福村地区、宮の陣地区、安良川地区、左岸の江南村地区、柴刈村地区、善導寺地区、久留米地区、坂口地区の八地区にわけまして、これらに復旧工事を進めております。本川の水が外に流れておりますものは、大体十日間でとめるというのを目標で進めたのであります。一応外に流れておる水をとめましてから、さらに次には計画洪水位よりも一メートル下までの堤防を一応つくる。それは普通の百ミリ程度の降雨であれば、一応持てるという程度の高さのものありますが、次の段階としてはそういうところに持つて行く。初めは七月一ぱいでそこまで行こうという予定でありましたが、これは現地の事情で多少遅れるようであります。そういう方針で進んでおります。遠賀川地区も大体そんな方針で七月一ぱいには計画洪水位以下一メートルの堤防をつくるという方針で進んでおります。これには各地建からの応援を求めたり、あるいは保安隊に応援を求めたりという処置をいたしております。それぞれの応援隊も現地に来て現在盛んに活動をいたしております。
話がちよつと飛び飛びになりましたが、先ほどの各府県の災害については、これも緊急に直轄と同じような程度に復旧工事を進めております。そのためには、さしあたり金がいる。国のは国の予算としてすぐ流してやつたのでありますけれども、府県の方には金がないということで、将来出す災害復旧費の補助を見返りにしてつなぎ資金を出したのであります。これは土木災害を基準にして、一応二十億というつなぎ資金を各県に割振りました。これは災害対策本部できめたのであります。この二十億の金で、各県はそれぞれ支出をいたして、そして緊急のところから順次工事を進めております。大体交通網は現在復旧をいたし、鉄道も復旧いたしました。道路も、一部を除いてはほとんど通ずるようになりました。一部と申しますのは一筑後川に沿う、久留米から北に抜ける線等は、まだ復旧をいたしておりませんが、他の地区は大体復旧いたしました。
今後の問題としては、こういう災害の復旧と、さらにそれに伴う恒久対策を同時に進める必要がありますので、筑後川の恒久対策の研究及び熊本の白川の問題、その他各県からの要望が非常にたくさん出ておりますが、それぞれについて河川計画を検討いたすことにしております。大体の方針としては、今年度内は災害復旧に重点を置く。来年から長期計画に属する分を、今年内に十分調査をしておいて、来年から着手をする。こういう方針で行きたいと思います。
現地では、いろいろな問題がたくさんございましたが、そのうちの一つとして、夜明のダムが今度の災害に非常に影響があつたということをいわれております。新聞等にも書いてあります。それは日田の連中に言わせますと、夜明のダムがあつたために、しかもダムの開閉が十分できておらなかつたために、ダムアツプされた。従つて水位が従来にないほど高くなつた。こういうために日田の町がほとんど駅まで全部水びたしになつた、これは夜明のダムの影響だと非常に強く主張いたしております。下流に原鶴という温泉がありますが、その付近に私ども参りましたときにも、今度の水害は大正十年の水よりも一メートル以上高い。大正十年の水は従来ない大水だつたが、それよりさらに一メートル高い。これは雨にもよるだろうが、夜明のダムができたためだ。しかも工事中であつたためだ。それは夜明のダムが工事半ばであつたために、とびらをとじたままになつておつた。そうしてダムアツプして水位がずつと上つたために両岸が決壊した。両岸が決壊したために、ためておつた水がどつと一時に出た。水が一時に出たために洪水が大きかつた、こういうことを言つております。両方とも一応そういう言い分もできると思います。けれども、私どもとしては、まだそれらに対する正確な数字をもつて説明する資料がないので、何とも申し上げられません。現在九州電力に資料の提出方を求めておりますが、われわれの方で待つております今度の出水の水位の資料、それから九州電力の夜明のダムにおける水位の資料とあわせて見れば、どの程度影響があつたかということが判定できると思います。二、三日中に九州電力の方からその資料を持つて来ることになつておりますから、その資料を見て判定をいたしたいと思います。非常にむずかしい問題でありますが、地元では非常にこれを主張いたしております。九州電力の方に言わせると、さほどの影響があつたとは思えないということを主張いたしております。当時のゲートの状況は、ここに写真がありますが、工事半ばで、ちようどダムができ上つて、その上に八門の水門のとびらがつくのであります。ちよつとおわかりにくいと思いますか、これがダムでして、この上に柱があつて、ここに八門のとびらをつけることになつております。そのとびらをつける工事中でありました。八門のうち三門のゲートは、六メートルだけダムから上の方に引揚げておる。それから二門は組立て中で、一番下にダムにくついておる。それから一門は一メートル五〇くらい引揚げておつて、ちようど中途半ぱなところに引揚げておる。あと二門はまだ全然入れてなかつた。こういう状態でありました。そこでその通水能力は大体計算できまずから、あとは流れ落ちた水と水位との関連で大体の見当がつくわけでありまして、そういう資料を集めた上で考えたいと思います。
以上簡単でございますが、私の見て参りました現状を御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/19
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020・久野忠治
○久野委員長 ただいまの政府委員の説明につきまして、御質疑はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/20
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021・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 場質疑というほどのことではないのですが、今の夜明のダムのことは、あとでよく調査されたいと思いますが、今のお話だけでは、私は現地を見ておりませんからわかりません。ダムアツプされて両側に水が氾濫するような地点に、なぜダムが築造されておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/21
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022・米田正文
○米田政府委員 両側は道路になつておりまして、大体は護岸もあつたので、会社としては決壊しないつもりでおつたと思うのですが、水位が今まで全然上らなかつたところに上つて来たので護岸が決壊して、護岸の決壊と同時に道路が決壊した、それで両岸がやられたというようなわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/22
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023・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 現場を見ておりませんからわかりませんが、上流に人家があるように写真に見えております。そういうようなところにダムをつくつて、当然ダムアツプされるわけですが、その水が両方に氾濫する。しかも人家があつたら災害が起るような所に、なぜダムをつくつておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/23
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024・米田正文
○米田政府委員 これは買収が進んでおりまして、私の知つておる限りでは、交渉がまとまらないでまだ多少残つておつたと思います。そのためにそういう浸水被害はあつたと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/24
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025・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 さつきの臼田の駅までつかるようにこれが関係しているというのは、どういうところから来たのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/25
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026・米田正文
○米田政府委員 それは私どもまだ水位図でよく調べておりませんからわかりませんが、日田ではこれをつくるときに、白田に水が影響を及ぼすということを、かねてから主張しておつたのであつて、もちろんこういうダムができれば、ある程度河川の水位が上るということは考えられるので、日田の住民としては、すでにそれが実現したじやないか、こういう非常に強いことを言つておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/26
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027・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 いつごろ、そこにダムをつくることが認可されて、建設省はそれを研究されておつたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/27
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028・米田正文
○米田政府委員 それは一応われわれの方でも研究をいたしておりましたけれども、このダムが完全にできたという計算においては一日田においてさほどの影響はないという結論であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/28
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029・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 この問題は、どうせあとで専門的に御研究になると思います。私どももできれば現地を見たいと思つておりますが、今河川法の改正をしようということが議題に上つておるのでありましてどういう事情でそういうところに電力会社の発電所をつくられたかということは、重大な問題だと思います。全国至るところにそういう問題があると思いますが、今の御説明だけでは、私も現場を見ておりませんからよくわかりませんが、これは非常に重要な問題だと思います。ひとつよく御研究なさつて御報告願います。河川法の改正に非常に大きな問題点を残しておると思いますが、これ以上はきようはお尋ねしません。ひとつよろしく御研究のほどをお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/29
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030・逢澤寛
○逢澤委員 米田局長は親しく災害の現地を視察されて、ただいま詳細な報告を受けたのでありますが、御報告の中に、筑後川は毎秒五千立方メートルの水量を流す予定で計画ができている。しかるに七千もの水が出たのであるから、そこで至るところて堤防上を温水したというお話でありますが、それはそれだけ出たのであるからやむを得ぬと思う。そこで、問題は将来に及ぼすのでありますが、将来、計画については、これからいろいろあると思いますが、ただいまのところとしては、将来の筑後川ないしあの流域に対し、どういう考え方を持つておられるか、一応あなたの御所見を伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/30
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031・米田正文
○米田政府委員 この問題については、実は直轄河川として、かほどにやられたことは初めてでございまして、今まで非常に自信を持つてやつておつたのでありますが、これほどの雨があるということになると、これはどうしても再検討をしなければならぬと思つておりますが、流量は五千を七千にしてよいか、あるいはまだ多少ふえると見なければいかぬかというような点は検討いたすつもりであります。しかし、この対策をどうするかという点について、おもなる研究問題としては、上流でできるだけ洪水を貯溜したいというつもりでおります。下流については、堤防を今から全面的に広めるというようなことは、とうてい困難である。現地の状況が、これ以上広く用地をとるというようなことは非常に困難で、極力上流で洪水を貯溜したい、一面また貯溜した水の利用という面も考えて行きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/31
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032・逢澤寛
○逢澤委員 私ども建設委員として、それから特に建設省の公務員としては、非常な責任がある。良心的にも、また職務の上においても、非常な責任があると思う。そこで一口に言えば、財政の都合で云々と言うが、すでに今日七千というものが出ておる。その七千に対する施策は、これは良心的にもやらなければいかぬ。もしそれを考えると、非常にむずかしいことになつて来ると思うのですが、七千のかつての流水があるのに、これを五千にしておけばまた再びこんなことがいつ繰返されるかわからぬ。そうすると、その地方におる住民としては、安んじて生業につくことができないというようなことになつて来る。そこでそれを七千ないし八千、九千にもやりたいが、それには財政上の云々という問題が出て来るのですが、そこで私は根本的に、これはひとり筑後川だけの問題ではない、各河川に対しての恒久的基本的の考え方をもつて善処しなければいかぬ。そこで政府全体の責任として、特に大蔵省といたしましても、今までの考え方でなしに、これを契機として今後の対策をぜひ樹立しなければいけない。それにはやはりわれわれにも責任がある。この委員会としても、大きな責任があると思う。同時に、一部その立案の衝に当るあなた方としても、この際は断固とした考え方を樹立してもらつて、そうして将来の歴史に残さなければならぬ。こういうような立案をし、こういうような計画をしたのだけれども、当時は日本の財政が許さずにこういうようになつたのだ。こういうところまで、ぜひやらなければいかぬ。おそらくあなた方もごらんになつて、今その一部の説明がありましたのを聞きましても、下流の方は残念ながら七千を通すために川幅を広げるということは非常に困難だろうという一応の見通しがある。それに対しては、上流で貯水をして、そうして一時に放流をしないような一応の考え方もあるようなことを今拝聴したのでありますが、よく御研究を賜わつて、沿岸の多数の住民が安んじて生業ができるような基本的のことを考えてもらつて、そしてこれを出していただく責任がある。しかしながら、これが財政の都合でどうしてもできぬということになれば、また別の考えだと思う。けれども、技術的にこうしなければならぬということだけは、この機会にぜひ確立をする要がある。これに対して、あなた方の方ではどういうようなお考えを持つておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/32
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033・米田正文
○米田政府委員 実はカザリン、アイオン台風というようなことで、昭和二十二年、二十三年に大洪水があつて、そのときに各河川の再検討という問題が起きて、治水臨時調査会というものをこさえて、そこで各河川の検討を始めたのであります。そのときに、まず利根川始め十大河川を取上げまして、筑後川もそのときに取上げられた川の一つでありますが、その検討の結果、二十四年には一応答申書を出したのであります。この答申書では五千の計画になつておるが、七千にしなければならないという結論が出ておるのであります。それでそれに着手するのが当然でありましたが、実はその五千の計画すらまだできておらない。その五千の計画を達成するにも四十億以上もかかるという実情でありましたので、七千という数字は一応は出ておりながらも、五千の完成をまずやらなければいかぬというので、実は今日までやつておつた途中でございます。そういうわけで、財政との関係で、実際の問題になりますと非常にむずかしい問題になりますけれども、実はわれわれとしては、断固としてその計画は確立しなければいかぬ。金が幾らかかろうとも、これが計画というものは先に立てるべきものである。それについては、各河川のそういう計画を立てますには、時間と人とを要するのであります。しかし、現在の人員をもつてできるだけやつて参りたい。筑後川のみならず、各河川についても再検討をぜひやりたい。今後の河川計画は、従来河道改修計画といわれておつたものを、河道から離れて、川全体として計画を立てる。上流の水源の砂防から、あるいは植林から、河口に至るまでの間を総合的に計画立案をするという点で行きたい。そうして治水のみならず、利水の面もこの計画の中に全部取上げて行くというような方針で参つておるのであります。今後もそういう方針でやりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/33
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034・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 一つだけ……。今逢澤委員からお話になつたこと、また局長からお答えこなつたことは、非常に重大な問題でございます。そこで建設省、特にあなた方専門の地位におられる方は、もちろん専門的な考え方で、河川についてはこうすればまず現在の技術水準では大丈夫という計画はあると思うのです。ところが、世間ではそれがわからない。この委員会にもわかつておりません。この間も私は建設大臣に、答えをする必要はないということで申しておきました。今度のは非常な災いでありましたが、事筑後川だけの問題ではありません。そこで財政ということが常に言われておる。もちろん財政を考えないで仕事はできないのでありますけれども、今度のような大事件が起きて、かりに四十億あれば、今の計画による河川工事が完成する。四十億あつても、一年や二年ではできませんけれども、それを四十億の金の問題で、先ほどお話があつたように、これは筑後川だけの問題ではありませんが、少くとも二千億の損害を受けて大騒ぎをしておる。これは政治の貧困であります。そういうことでありますから、これはあなたに申し上げるのではありませんが、あなた方のようにその局に当られる専門の方々は、こうしなければならないのだという計画を立てて、ひとつこの委員会にでも、国会にでも強く示していただきたい。そうしてこれを解決しなければならない。この間もちよつと触れておきましたが、私は自由党だから、防衛費云々は言いたくないけれども、そういうものでも削つて、そして民生の安定をしなければだめじやないか、実際だめだ。そういうことまで申し上げておる次第でありますから、どうかこうしなければならないのだというあなた方の計画を、国会に強く資料として出していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01019530709/34
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035・久野忠治
○久野委員長 ほかに御質問はございませんか。——なければ本日はこの程度とし、次会は公報をもつてお知らせいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時九分散会
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