1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月二十一日(火曜日)
午前十時三十七分開議
出席委員
委員長 小島 徹三君
理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君
理事 松永 佛骨君 理事 古屋 菊男君
理事 長谷川 保君
越智 茂君 加藤鐐五郎君
助川 良平君 田中 元君
寺島隆太郎君 山口六郎次君
中野 四郎君 山下 春江君
萩元たけ子君 柳田 秀一君
杉山元治郎君 堤 ツルヨ君
有田 八郎君
出席政府委員
外務省参事官
(大臣官房審議
室付) 広瀬 節男君
厚生事務官
(社会局長) 安田 巖君
厚生事務官
(保険局長) 久下 勝次君
厚生事務官
(引揚援護庁次
長) 田辺 繁雄君
委員外の出席者
議 員 八木 一男君
厚生事務官
(社会局庶務課
長) 熊崎 正夫君
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 山本 正世君
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七月十八日
社会福祉事業金融公庫法制定に関する陳情書
(第九四三号)
戦傷病者戦没者遺族等援護法改正に関する陳情
書
(第九四四号)
社会福祉事業金融公庫法制定に関する陳情書
(第九八一号)
同
(第九八二号)
同
(第九八三号)
同
(第九八四
号)
同
(第一〇一七号)
同
(第一〇一八号)
を本委員会に送付された。
―――――――――――――
本日の会議に付した事件
日雇労働者健康保険法案(八木一男君外十名提
出、衆法第六号)
日雇労働者健康保険法案(内閣提出第六〇号)
財団法人日本遺族会に対する国有財産の無償貸
付に関する法律案(内閣提出第一四四号)
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する
法律案(内閣提出第一一八号)
未帰還者留守家族等援護法案(内閣提出第一一
九号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/0
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001・小島徹三
○小島委員長 これより会議を開きます。
まず八木一男君外本名提出、日雇労働者健康保険法案を議題とし、質疑に入ります。青柳一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/1
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002・青柳一郎
○青柳委員 提案者に伺いたい点が二点ほどあるのであります。第一点は、この日雇労働者健康保険法を実施せられた場合に、その総予算はどの程度になるかという問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/2
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003・八木一男
○八木一男君 現在の私どもの提出いたしましたこの案によりますと、年間で事務費は政府案の場合とほぼ同じでありますが、給付負担は年間で三十八億四千万円必要となります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/3
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004・青柳一郎
○青柳委員 この三十八億四千万円の給付費の半額を国庫の助成においてやつておいでになりますが、その理由について伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/4
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005・八木一男
○八木一男君 国庫負担の理由について青柳委員から御質問でございますが、実は現在この日雇労働者健康保険の適用の対象と目されている労働者諸君は、政府案の提出理由にもありますように、非常に賃金が低くて、就労日数が非常に不安定で、経済的に逼迫している方々が多いわけであります。その関係上この健康保険の恩典を受ける必要度は、一般の労働者よりはその度が高いわけであります。ところがこの方々は、この保険を均霑されなければならないわけでありますが、反面保険料の負担に非常にたえがたいという経済状態にあるわけであります。これは政府案の方の御提出になつた理由も、保険料を八円に食いとめ、それからまた百六十円以下の第二級の人は五円というふうにしておられるのも、厚生省でもそういう点を考えて、一日八円以上の負担は無理であろうという観点に立つたわけでありまして、私どももその点についてはまつたく同感であります。しかしながら保険料をそれだけに食いとめますと、保険給付の内容が非常に悪くなるわけであります。それで現在政府案では、療養給付を三箇月で打切つておりますが、このように三箇月で打切つた場合には、長い重い病気にかかつた場合に、なおり切らないうちに給付を打切られることになつて、この保険給付のほんとうの目的に反します。また特別傷病手当金というものがございますが、これは御承知の通り、療養してその間労働ができない場合に、医療手当を健康保険でも六割、これでも六割で計算いたしまして百五十円になつておりますが、それを支給することになつておるわけでございます。これがありませんと、薬をもらつても、また注射してもらつても、子供を養うために患者が医者の注意に反しまして日雇い労働に出まして、重労働をして、結局病気が全然なおらない、悪化するというようなことになりますので、どうしてもこの傷病手当金を入れる必要があると思うのでございます。どころが傷病手当金を入れますと、八円の保険料、また事業者の八円、合計十六円の保険料では、この給付の内容を全部果すわけに行かなくなりまして、その関係上国庫負担の必要があるわけでございます。別な観点から申しますと、また生活保護法によつて医療給付を受けられる方は、私の負担が全然なしに医療給付を受けておられますので、それとほぽ近い経済状態にあると見られます日雇い労働者諸君に、半分の国庫負担を見るのは妥当なものであると私どもは考えておるわけであります。そうして半額の国庫負担をすることによつて、自分たちが病気になつたときに全部公の補助を仰ぐのではなしに、自分たちも保険料を一部でも負担して相互扶助をする、そういう方向に持つて行こうということが、大きな意味で健保の建設的な考え方ではないかと考えまして、国庫負担二分の一が現状において総合的に最も適当な線であると考えているわけでございます。ただ給付だけの点におきますと、この案でも療養給付が六箇月で打切られておりまして、これは非常に遺憾であります。ですからさらに国庫負担を七割、八割にして健康保険と同じようにしたいのでありますが、五割以上の国庫負担ということになりますと、保険の性格を逸脱いたしまして、全部国家でめんどうを見るということになりますので、国庫負担は二分の一に、残念ながら食いとめた、こういう給付内容にいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/5
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006・青柳一郎
○青柳委員 社会保険の今までの例を見まするに、日本におきましては半額の国庫負担という例は今までないの下ありますが、ただいまのような御事情もあると思うのであります。これを無理にも半額にするということにつきましては、国庫の財政の状態などもなお考えてみなくちやならぬと思うのでありますが、それは別といたしまして、三十八億四千万円の内容の簡単なものを御説明願いたい、こう存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/6
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007・八木一男
○八木一男君 三十八億四千万円といいますと、実は政府の一人当りの負担が十六円といたしまして、それで一月に二十日払うといたしまして、それから対象人員を百万人といたしまして——これは政府案の場合五十万人でありますが、対象がふえております。それで十六かける二十かける十二、これに百万をかけますと三十八億四千万円が出て来ることになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/7
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008・青柳一郎
○青柳委員 傷病率などはどの程度に見ておりますか、伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/8
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009・八木一男
○八木一男君 受診率は今までの健康保険の受診率をもとにいたしまして、それよりも二割程度ふえるというような計算のもとに立つておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/9
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010・小島徹三
○小島委員長 他に本案についての質疑はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/10
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011・八木一男
○八木一男君 特に発言を許していただきまして、実は日雇労働者健康保険法案を出しますについて急速にやりましたので、非常に印刷の間違いがございます。正誤表が正しい手続によつて届いているわけでございまするが、届いた日付が少し食い違つておりますので、委員の方々には正誤表ときつちり合つておらない方があるのじやないかと思いますので、特に重要な点だけ申し上げさせていただきたいと思うわけであります。六月二十二日の正誤表はほとんど字句の誤りで、字句のちよつとしたかなづかいで大したことはございませんが、六月二十四日の正誤表の方はかなり重大な誤りがございます。十六ページの七行目、十八条の2の三行目の「第一項中「六月」とあるのは「二月」と、同条」までを削除していただきたいのであります。その次に三十九ページの五行目、附則施行期日1「この法律は、昭和二十八年九月十五日から施行する。」とあるのは、十月一日からの誤りであります。次に三十九ページの十行目、第十三条の「ヲ使用スル左ノ各号ノ一二該当スル事業」の下に、「(事業主が国又ハ法人タルモノヲ除ク)」というのを挿入していただきまして、その次の行の「但シ国又ハ法人タル事業主ノ事業所ニ使用セラルル者ハ此ノ限二在ラズ」まで削除していただきます。その次の一、二は生きるわけであります。あとはほとんど問題はありませんが、御審議上間違いが起るといけませんから、これだけ申し上げておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/11
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012・小島徹三
○小島委員長 本案に関する残余の質疑は次会に譲ることといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/12
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013・小島徹三
○小島委員長 次に内閣提出の日雇労働者健康保険法案を議題とし、質疑を続行いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/13
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014・青柳一郎
○青柳委員 一点承つておきたいのでございますが、最近衆議院において可決せられました三十八年度の予算におきまして、国民健康保険については医療給付費の二割の国庫助成を仰ぐことになつているのでありますが、こういうふうな政策がどんどん進みますると、国民健康保険も次第々々にその実施区域を増大いたしまして、各都市にも施行せられるに至ることは必然であると思うのであります。ところでこの日雇い労務者を対象としての健康保険ができました際に、日雇い労務者多数を擁しておる都市にもこの国民健康保険が実施されるに至りますことは必然であるのでございます。かかる際には国民健康保険を与えることこそ日雇い労務者のためになることであると存ずるのでございますが、その点につきまして政府当局はお考えになつておられるのであるかどうか、その辺の御意見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/14
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015・久下勝次
○久下政府委員 日雇い労働者健康保険制度と国民健康保険制度との関係でございますが、この点につきましては法案の第七条にその調整の規定を設けておいたのでございます。その根本的な考え方といたしまして、結局国民健康保険という地域保険がありまする場合には、被保険者の判断によりまして選択的な建前をとるようなことにいたしておるのでございます。と申しますのは、日雇い労働者健康保険制度というのは申すまでもなく被用者保険の範疇に入るものでございます。現在の政府案ではそれにいたしましても健康保険と違ういろいろな給付制限はございますけれども、また反面、国民健康保険等の多くの場合と比較いたしますると、国民健康保険制度より給付の内容がいい場合がございます。そういう面が一つと、もう一つは、日雇い健康保険の場合には給付制限がございまして、二箇月に二十八日という就労を必要としているわけであります。そういうような関係から、日雇い労働者それ自身の中には、その労働の実態から考えまして、とうてい受給条件を満すことができないと初めから予想される者があるわけであります。そういう人が住んでおりますところに地域保険であります国民健康保険があります場合には、この方は給付内容は悪いにしても、受給条件というやかましいものはありません。従いまして再々考え合せまして、国民健康保険をやつております地域に住んでおります日雇い労働者につきましては、その自己の判断によりましていずれかを選択できるというような考えであります。ただ制度の建前から考えますと、日雇い労働者は、この制度が強制適用になつております。従いましてその具体的な人が、国民健康保険を自分は選びたいということでありますれば、第七条の規定に基きまして、厚生大臣の承認を得て被保険者とならないことができる、こういうふうにして強制適用を除外する、これは国民健康保険が逐次その実施地域を拡げて参ります場合にも、やはり同様の取扱いでよいものと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/15
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016・柳田秀一
○柳田委員 直接日雇労働者健康保険法案に関連してはおらぬのですが、この機会にお尋ねしておきませんと、社会保険についてあとで質問する機会がないように思いますので、保険局長にお尋ねいたしますが、聞くところによりますと、先般北海道におきまして、保険医に対して大量の不当処分をなされたそうであります。私たちはこういう問題を聞くたびにはなはだにがにがしく思うのであります。社会保険が最近政府当局の努力により、また各政党間におきましても、この社会保障制度の確立という点を大きく取上げまして、ようやくにしてわが国の社会保障制度の中核として漸次伸びて参らんとする傾向であるやさき、何としても社会保険というものは、保険者と、被保険者と保険医と政府当局の緊密な連絡と十分な意思の疏通がなければ、所期の目的は達せられないのでありますが、それに逆行せられるような、こういう大量の処分が出ることは私ははなはだ遺憾である、先国会におきましても高橋委員から広島県における保険監査の不当問題を質問されて、久下局長は平身低頭再びかようなことはいたしませんという御答弁であつたのであります。さらに長崎、岐阜におきましてもこういう問題があつた、今回の北海道の処分を見ますと、四十四名の大量が処分されておる。しかも聞くところによれば、その前に北海道の道医師会においては、冬季暖房手当を要求しておつたのでありますが、それに対して道の保険課長と道医師会との間に多少の確執があつて、道医師会は保険課長に不信任案を出した。それに対してあとで北海道の知事の方から暖房手当を出して問題を解決しておりますが、その腹いせのしつぺ返しと受取れる節があるそうであります。しかも昭和二十六年に監査されてから、一年半の間何ら注意もせずほつて置いて、一挙に大量の処分をなされた。あるいは従来一回の注意も受けておらぬようなそういう保険医に対して、指定取消しのような最も高度の制裁を加えておられる。あるいは調査書というのですか、処分する際の基礎資料でありますが、それには当該保険医の承認を要するものであるにもかかわらず、承認を求めたものであるかのように擬装して、社会保険医療協議会に出しておられるというような問題が出ておりまして、一昨日でありましたか、朝日新聞の夕刊においてもこれを取上げておつたようでおります。こういうような問題がひんぴんとして起ることは、私らもこれは社会保険の将来の発達のために大いに憂えるのでありますが、いかにしてこういう問題が起つたか、またこれに対して保険局としてはどういうようにお考えになつているか。将来またこれに対してどういうふうにするつもりであろうか、そういう点を局長から御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/16
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017・久下勝次
○久下政府委員 お話のように保険医の監査の問題につきましては、この春の国会におきまして衆参両院でそれぞれ問題になりました。特に参議院におきましては参考人の召喚等のことが行われたのでありますが、結果におきましては厚生大臣から保険医監査の問題に関する今後の根本的な考え方、方針につきまして御説明をいたし、御了承を得まして、その結果に基きまして医師会その他の関係団体とも緊密に連絡をいたしました。中央社会保険医療協議会にも付議いたしまして、今後の監査に関する基本的な方針は、各方面の御了解の上で確定をいたしているのであります。今回の北海道の問題というのはこの春の今申し上げましたような問題とはやや性格を異にしている点もあろうかと考えるのであります。それともう一つはこの春の問題の跡始末をいたしております経過的な期間の間に処分が決定されましたような関係もありますので、その辺時間的な関係で、この春問題になりましたような点についての私たちの考え方が、出先に十分徹底をいたさなかつた時期でありましたことは、はなはだ遺憾に思つている次第であります。お話の中にありました一時に大量の処分をしたということも確かに事実であります。この点私どもの方も一応すぐ手元でわかります関係だけは取調べを今いたしているのでありますが、少くとも一昨年あたり監査をいたしましたものがその処置が放置されておりまして、今回一括して処分の対象にあげられたというようなことは、行政上の措置として考えなければならない節があろうかとも思つているのであります。
それから暖房料の問題についてのお話がありましたが、これはお話の中にありましたように、これもこの春の監査問題よりやや時期的には少し早いのでありますが、北海道知事にこの問題の解決に乗り出していただきまして、円満に話合いがついているものと了解いたしております。従いまして私どもとしては、この問題に対する腹いせというようなことは、この関係においては毛頭なかつたものと理解しているものであります。
それから調査書の点も今お話になりましたが、この点につきましては、もう少し具体的に事情の調査をしてみたいと考えております。今主務課長に命じまして調査を進めさせている次第であります。私はただいまのところとしてはつきりした結論をここで申し上げるまで調査をいたしておりませんので、従つて結果の措置につきましても自信を持つたお答えはいたしかねるのでありますけれども、少くとも問題になつているような非常に処分の経過におきまして、手続上の瑕疵があるというようなことでございますれば、私どもとしても厳重に注意をいたさなければならないものと思つておりまするし、また瑕疵の程度が非常に高いものでありまして、処分の効果に影響のあるようなものでありますならば、また処分そのものについても善後の措置を講じなければならぬと思つておる次第であります。いずれにいたしましても、この問題は、監査それ自身の時期が、先ほど申しましたように若干さかのぼつておるような問題もありますし、また指摘されておりますような、手続上の不備等につきましては、私の方としてもごく最近耳にいたしただけでありまして、現在まだ調査の段階にございますので、調査の結果によりまして、先ほど申し上げたような方針で善処いたしたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/17
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018・柳田秀一
○柳田委員 この問題を、道知事が保険医に対して処分の通告をしたのが五月二十三日であります。これが二月にもなんなんとしているのに、まだ調査ができていないということは、明らかに職務怠慢である。ことにこの問題に関連してのことでありますが、社会保険医療指導講習会というものを、厚生省の方では、日本医師会と共催で、六月十六日から三日間にわたつてやつておられ、この三日間の済んだ大月十九日には、厚生省においては、地方技官会議をやつておられる。この問題に関連してこういうような会議をやつておられるのであつて、この地方技官会議には、当然北海道からも出て来ておるはずであるし、また六月の厚生省と日本医師会の共催の社会保険医療指導講習会にはこの問題が出ておるはずである。それが、それから一月たつたのに、まだ調査の段階とか、十分な資料が来ていないというようなことは、初めて聞くことで、そういうばかなことはあり得ない。国会開会中だけうまく切り抜けておけばいい、あとはどうにでもなるというようなこととも考えられる。そういうようなことは常識上考えられない。いつの場合でも、地方に出ておるこういう技官が絶えず問題を起こすことは、根本精神が違うからだ。保険医を初めから罪人扱いにした考え方が出ておるから、こういうことになつておる。たとえばこの場合でも、社会保険医療協議会に提出した基礎資料の監査調査書は、この処分を受けた医師が申しておる、われわれはそれに署名捺印しただけであつて、その内容に対しては全然知らないということを言つている。あるいはまた凡百の保険医の中に絶対に不正はないとは言いません。かりに百歩譲つてあつたにしても、一応戒告を与え、そうして二度目には厳罰に処するぞというようなことでもいい。しかるに何らの戒告も与えずに、一番最初から極刑であるところの指定取消しというようなことは、普通の裁判にもあり得ないことである。あるいはまたどの裁判でも、その本人を呼んで、本人に釈明の余地を与えるようにできておる。あるいは弁護士がついて、弁護人が弁護をするようなことになつておるが、これは全然そういうふうになつておらぬ。明らかに初めから、社会保険を担当する担当医療者は何らかの作為をもつてごまかすものである、という前提のもとに立つておらなければ、こういうような処置はできるはずはないのでありますが、これに対して当局はどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/18
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019・久下勝次
○久下政府委員 処分をされた時期が二月も前であるということと、私どもが、その問題について不平があり、問題があるというようなことについて知りましたときのずれるのは、当然だと私どもは考えております。普通の場合でございますと、ひとり北海道のみならず、あちこちの監査の結果の処分があります。最初からそういう瑕疵に気がつき、医療協議会等で問題となつたことでありますれば、もつと早く知るのは当然でありますが、これは、処分が行われまして、その結果に対して、処分を受けた保険医の方に不服があつて問題になつたような次第でありまして、現実に私どもがそういうことを知りましたのは、先週の中ごろで、北海道の医師会長からの書面をいただいて知りましたような次第であります。このことは、ただいまお話がありました処分の行われた時期、あるいは講習会のありました際には、私どもとしては何ら話題に上つたことを聞いておらなかつたのであります。それから処分につきましては、今度の監査要綱でもはつきりいたしておりますように、これはやはり保険医の行いました行為の軽重によりまして、処分をなすべきであると考えておるものでございます。いかなる行為でありましても、一応は戒告をしておくというようなことだけでは、私は事柄は済まないと思つておるのでございます。もちろん私どもとしても、いたずらにこういう問題について、指定の取消しなどをして、保険医の方々のせつかくの御協力に対する気持を害するような措置をとりたいとは思つておらないのでありまして、十分指導的な立場に立ちまして監査もし、あるいは処分もするということは当然でございますけれども、また事案の程度によりましては、最初から指定取消し処分が行われるということも、ある程度やむを得ないことと考えております。なお処分につきましては、申すまでもなく、事前に地方の医療協議会の議を経て、意見を聞いて処分をすることにもなつておりますので、その辺のことにつきまして問題がありますとすれば、すでにその時期において問題になつてしかるべきであろうかと考えておるのであります。
それから保険医に弁明の機会を与えるという問題でありますが、この辺は先ほど私が申し上げましたように、時間的なずれがありました点が、今度の新しい方式と食い違つておりまして、私どもその点は非常に遺憾に思つております。ただ少くとも前の監査方針で参りますと、弁明の機会を与えるということは、監査要綱にも上つておりませんでしたし、事実上の指導でやつておつたにすぎません関係で、これ自身が必ずしも処分を違法のものとする根拠にはならないと考えておるのであります。ただ少くとも現在におきましては、この春の国会の御意見もございまして、明白に監査要綱の中に、弁明の機会を与えるということにいたしてございますので、今後としてはその点は確保されるものと思つておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/19
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020・柳田秀一
○柳田委員 処分理由に上げられておる中に、事実と相違しておるのがあるのです。たとえば診療カルテを二重に記載して整理しているというふうに調査書に出ておる。しかし実際は、監査の際カルテを全然検印しておらぬ。あるいは喉頭炎にビタミン・プルカノンを三箇月間連用している、そんなものを三箇月間連用するのはけしからぬじやないかというような調査書でありますが、実際はわずかに三回しか注射しておらぬ。しかもその誤つた調査書に基いて処分しておる。それに対して、自分はそういうような二重カルテのことはいたしません、三箇月も連用したということはありませんという一回の弁明の機会も与えられない。こういうような今回の処分に対して、今後さらによく調べて、不当であるというものに対しては取消される用意があるかどうか、その点をはつきりお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/20
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021・久下勝次
○久下政府委員 処分の内容あるいは前提になつております行為の判断につきまして、さような事実が全然なかつたということが立証されますれば、当然処分は取消さるべきものと考えております。その辺のことにつきましては、私ども先ほど申しましたように、処分を受けた保険医の方のお申出だけで事柄を判断できませんので、その監査に当りました私どもの方の技官なり、あるいは北海道庁の関係官なりに対しまして、厳重に調査をいたさせる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/21
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022・柳田秀一
○柳田委員 何らか機会があつて、十分にそれが不正事実でなかつたとわかつた場合には、何らか善処したいということならば、そういう機会をおつくりになる意思があると解釈いたしますが、それでけつこうでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/22
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023・久下勝次
○久下政府委員 もちろんそのつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/23
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024・柳田秀一
○柳田委員 なお私はその調査書のことを局長にお尋ねしたいのですが、地方に行つておる保険関係の技官なり事務官は、保険費をどういうふうな立場で見ておられるかということが根本問題だ。しかしこれはいくら問いましても、保険局長お上手に逃げられますから、水かけ論で問いませんが、こういうふうな調査書を見ると、学歴、職歴の概要、何某、何歳として判でも押すのでしようね。私は〇〇年に〇〇医大を卒業、どこどこに残り研究に従事しましたが、どこどこに勤務し、今日に至ります、こんなことを一々とらなくたつて、各保険課にはちやんと医師の履歴書があるはずだ。まるで裁判の調書みたいなものがはやつている。この精神が間違つておる。こんなものを書かなくたつてちやんと保険課には資料が行つているわけだ。それから家庭の状況、家族は母と妻と何とかと書いてある。ちやんとみな行つているはずだ。医師が医療に従事する場合には、こういうような一件書類を全部出してあるのです。こういうように初めからいわゆる裁判所の調書と同じような形式で、医者なんてものはこういうものを書かされるだけで精神的に参つてしまつている。医者なんてものは治療にかけてはなるほどその道の達人であつても、社会にかけてはまことにうといものなんです。よくよくかわり種のようなものがときどき国会に出て来ておりますが、実際にこんな調査書を書かされただけでふるえ上つておる。そうして判を押せ、はい押します。こういう態度だ。こういうような調査書の内容からかえなければ、まるでこれは初めから罪人をつくるような書類ができております。先般も保険医師の講習会で、局長は医師会の方に来られてははなはだ調子のいいことを言つておられる。越えて地方の技官を寄せ集められたときには、あれは表現をかえただけで、内容は同じだから、従来と同じにびしびしやれということを言つておるれる。そういうような気持がみな地方の技官に反映しておる。まずやつつけるという観念で、初めからその観念で見ておるのです。はなはだこまかいことを言うようですが、これは直接協議会に関係ありませんが、現在医師が保険をやりましたら、あの事務の広汎さには非常に悩んでいるのです。私の方でも一日から十日までというものはほとんど徹夜で家内と二人で書いたものです。ところがこの横のところに私の名前を書いて判を押すのですが、判がなかつたといつてぱつと返つて来る、あるいはこつちの方には共済保険、船員保険あるいは政府管掌、そういうところにわくをつける、そのわくが誤つて政府管掌と共済保険が間違つた、向うで直してくれればよさそうなものだが返つて来る実に不親切なんです。こういう点に、こういう間違いがありましたから、このことはこういうふうに御注意くださいという親切があつて、そのままどんどん通したらいいのだけれども、請求用紙はちやんともどして来る。初めから事務そのものが非常に不誠意きわまるやり方をやつておる。だからこういう問題が起つて来るのです。私はこういう起つたものを一一言うのじやありません。これから起らぬようにし、社会保険をもつと発展せしめるためには、この社会保険に関する事務にしても、あるいはこういう監査にしても、あるいは調査にしても、もつと医師と保険者と被保険者と政府がお互いに協力できるような態勢にあなたの方でお考えがなければ、いつまでだつたつてできないと思う。そうして事が起るとまだ調査ができておらぬとか、そういうことばかりなんだ。しかも四十四名からの大量処分するなんということは、一年半の間ほつたらかしておいて固めてする、こういうことは常識上考えられない。それがあなたの部下の北海道に行つた人間にいる。こういう非常識な男が、これが問題にならないということは大間違いで、これはまつたく人権蹂躙である。生活権も初めから問題にしておらぬ。こういう点に対して局長は、どういうふうにこれを改善して社会保険をもつと確立せんとするか、その根本的な理想なりお考えをひとつ承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/24
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025・久下勝次
○久下政府委員 今一々おあげになりました問題につきましては、私といたしましては若干弁明をさしていただきたい点がありますけれども、言い訳がましくなりますから省略いたしますが、社会保険というものは、今日いろいろ部分的な問題はあるにいたしましても、被保険者からも喜ばれ、社会的にはなくてはならない制度の一つになつております。このことは、関係者の当面の方々が、ほんとうにこの制度に対して御理解を持ち御協力をいただいておる結果と、常々感謝をいたしておるのであります。特に医療保険につきましては、何と申しましても療養の給付が本体でありまして、これに対しましては大多数の皆さんから積極的な御功力をいただいております、このことは私はやはり同じような意味において、またそれ以上に感謝をいたしておるものでございます。ただそれだからといつて、中にはやはりこれもお話の中にありましたように故意に不正の請求をし、あるいは不当の診療をするというよな方もあるものでありますから、従つて監査というような制度を設けて、やむを得ず指定の取消しというような処分をいたさなければならないような場合があるわけでございます。しかしこのことは、私どもが今根本的に考えておりますようなことと決して矛盾することではないと思うのでございます。これらの点につきましては、具体的のやり方において、御引例のようなことが私どもの調査の結果でも事実とすれば、はなはだ申訳ない次第であります。先ほど来申し上げておりますように、何もないことを事実として処分が行われたということでありますれば、これはもうゆるがせにできないことでありますので、処分の取消し等厳重な処置に出る所存でございます。いずれにいたしましてもさような考え方でやつてもおりますし、またやらしておるつもりなのでございますが、たまたま出先におきまして時折問題が起きますことはたいへん申訳なく存じております。十分御注意の点を考えまして今後善処いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/25
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026・柳田秀一
○柳田委員 ただいまの局長の御答弁を私はその額面通り受取りまして、これ以上追究いたしませんが、ただ、今のお言葉の中に、保険医が協力されている、こういうお言葉がありましたが、私も一保険医でありまして、私自身としては、京都府の保険課長にも、おれのやつをモデルにしろと言うぐらい自信を持つて言つておるつもりでありますが、決して私は心からは協力はできません。しかしながらこれをやらぬことには飯が食えないから、ぶつぶつ言いながらやつておるのであつて、全国の保険医が協力しているなんて思われたら大きな間違いである。このことだけははつきり申しておきます。ただこれをやらざる限り、今の開業医というものは飯が食えないからやつておる。その点だけははつきり申しておきますから、どうぞ局長も十分心の底にとめておくようにお願いいたします。
なおこの北海道の件につきましては、今の局長の弁明を信じまするが、さらにそれに基きますところの何らかの処置がとられることを期待して、これで私は質問を保留いたしておきます。さらにその後の補償金等に関して、なおこちらでも釈然たらざるものがある場合には、あらためてこの問題に関してお尋ねし、また釈明を求める機会を十分得たいということを留保しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/26
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027・田中元
○田中(元)委員 関連して……。今質疑がありましたが、これは人体に関する医療給付の問題でございますから、相当きつい監査をして処罰することは私は当然のことだと思う。しかしながら私は前々の安田さんの局長の時代から、特に今の久下局長は、医療関係者として医務局におられて、お医者さんの立場はよく考慮していらつしやると思うのです。あなたは保険局長になられて、医療の本質をどこに置くか。一体今日の保険制度の中において、一番貧乏くじを引いて、そして医療給付をやつておるのは医者だと思う。この問題がなお厚生省で今日解決されていないということが一つだと思います。
同時にまた監査の問題でありますが、医師会の人にしても、歯科医師会の人にしてもそうだと思うが、私はいつか安田さんが局長のときに質問した。厚生省は一体いつ検察庁になつたのだ。私はるる聞いてみました。全国の医師会、ことに歯科医師会あたりに聞いてみますと、ほんとうに意地の悪い質問から入つておるやに聞いておる。一体保険局の医療課というものは、保険医療に対する指導機関だと思う。それが四十四名の処分者を出したということは、保険局の責任でございます。一生懸命指導して、特にお医者様方にそういう点がないようにやつて行くのが保険局の医療課の務めだと思う。四十四名の処分者を出して、悪かつたから処分したんだというのでは、保険の指導というものは満たされないと思う。ややもすればどこかの健康保険局医療課の技官あたりが、全国の監査だといつて他の府県に参りまして、あたかも大臣や次官や局長以上の歓迎を受けて、堂々と、おれは医師会を指導するのだ、歯科医師会を指導するのだとほらを吹いて、そうして監査する内容をるる聞いて参りますと、あたかも検事か何かがやるようなことをしておる。先ほど申しましたように、実際医師にしても歯科医師にしても、あの書類を書くのには、五十人、三十人の患者をみて、疲た切つたあとで看護婦を指導して書いて行く、これはたいへんなことだと思う。そうして監査することは、監査自体のやり方が、実に私は聞いておつて——私は与党の代議士でこういうことを申し上げることは申上訳ないと思うのだけれども、厚生委員だからしようがない、私自身が義憤を感ずるところがある。少くとも国民の生命を担当しております医療に対する監査を厳重にすることは、もとよりよろしいと思うけれども、その監査の方法について、少し保険局において、医療課あたりの技官等について再訓練をしてもらいたいと思う。ほんとうに保険局医療課というものは、検察制度の中にあるものではございません。どこまでも健康保険の医療というものは、ほんとにその本質にのつとつてうまくやつて行く指導機関であらねばならぬと思う。四十四名の処分者を出したやられたお医者さんは、中にはりくつがあつても、まずいことだと思う。しかしそうした処分者を出したということは、これは断じて厚生当局にその責任があるということを御認識していただきたいと思います。今後さようなものが出ないように、さらにまた監査をやつておる連中も、魂の入れかえをやつていただく、そして久下さんが医療課におつて、少くとも医療行政においては神様だといわれておるあなたが、お医者さんの本質をよく考えて、そうしてその中にほんとうの魂を生かして行くような監査に切りかえて行つてこそ、保険の中における久下行政というものの本質があるのじやなかろうかと思うわけです。この点については、大家でありまする保険局長に、十二分に私は御説明をしていただきまして、今行われました質問に対する厚生委員全般の気持を解消していただきた、いこういうふうに思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/27
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028・久下勝次
○久下政府委員 田中先生のおつしやつたことは、私としては非常に責任を感ずる問題で、逐一同感をいたすものであります。監査の結果、処分せられた者が出るということは、保険局の責任であるということは、私ども考えなければならぬと思いまするし、その通りと考えます。しかしながらそのことは、処分をやめるということにはならないと思うのであります。この春も問題になりましたように、監査に当ります私ども関係者、職員が、今お話のような態度に出た、不必要に権力を行使すると申しますか、そういうような態度に出ましたことは、当時私も責任を感じ、おわびを申し上げたような次第でございました。爾来そのことにつきましては、私も実は職員に厳重に警告をしておるのでございます。先ほど柳田先生のお話の中に、私が技官会議の席上で述べたことについて触れてお話がございました。私が何か二枚舌を使つておるようなお話がありましたが、私がそのとき申した気持は、実はあまりにやかましく警告をやつておりましたために、むしろ監査という問題について、必要以上に関係官が意識した傾向が現われておるという話でありましたので、その点を戒めますために、私はお話したつもりであります。従いましてこの点はくだくだ申し上げることは省略いたしますけれども、私初め保険関係の職員は、何分にも至らぬ者ばかりでございますので、全然今田中先生がおつしやつたと同様に考えておりまがら、実際に現われます行動、言動は、必ずしも御期待に沿わないようになることは、まことに申し訳ないのでありますが、今後ともお互いに戒め合いまして、御趣旨のように善処いたして参りたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/28
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029・田中元
○田中(元)委員 それでは私希望条件を申し上げますが、ともかく私先にも申し上げております通り、医療の本質とお医者さんの単価の問題や加療日数の問題が非常に大きな問題である。あなたが保険局長になられて、医療行政に、あなた方に対する医者の期待が今日なくなつておるわけであります。いわば鳴りを沈めておるわけなんです。どうかその意味において、私はこういう問題の起らぬように、保険の中にはほんとうに医療の本質が発揮できるように、御努力あらんことをお願い申し上げまして、私は関連質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/29
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030・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 ただいま左派の柳田委員並びに自由党の、与党であるところの田中さんから御発言がありましたから、私は具体的の例をあげて、局長にこれ以上追い討ちをかけることを避けようと思いますけれども、あなた、一体厚生省は、保険医の声というものを御存じですか。もう私ら、これはほんとうに憂うべきことだと思つておりますが、局長、よろしいか、街頭で自動車の運転手と巡査ぐらい犬猿の仲のものはないのです。このごろ見ておりますと、保険医と厚生省がまことに犬猿の仲であります。ですから一般の国民が一たび家族に病人を出したときには——もはやどうにもならないところの、生活苦のはてに追い込まれておりますこの一般大衆の身体を守る、保健を受持つてくれるところの保険医というものを、かくも厚生省が硬化させてしまつては困る、こういう点が多々見受けられるのであります。お役人根性で、保険医に対して君臨するがごとき態度というものは、何とかやめてもらえないだろうか、これは正直に申しまして、あなたがおつしやつた保険医は協力してくれるというおめでたい言葉を、柳田さんが御指摘になりましたが、その通りです。これをやめたら食つて行けないからやつておる、しかしみな腹の底では、厚生省の役人が机の上でばかなことを考えておるといつて、ばかにしておる、そうして怒つておる。これがだんだん進んで医療放棄になり、保険制度の崩壊になるときに、そのしわよせはどこに来るかといえば、八千万国民大衆の上であります。私はこの厚生委員会にはかつて保険医諸公の声を、一度この厚生委員会に喚問して聞きたいと思つておりまして、まだ委員長に持出してはおりませんけれども、私はこういう質問が委員からあつた際に、謙虚な気持になつて厚生省は御反省にならないと危機を来すと思うのであります。非常にお役人根性でお医者様を上から見下して、そしてあなた方がいろいろなしうちをなされておるのでありまして、私はそれをあげるのを控えておきますけれども、あらゆる会合で保険医の声というものは、一にかかつて厚生省を恨む声にかわつておる、こういう事態を続けておりますと、国の医療体系自体が非常にかんばしくない今日、国家、公共の医療機関と私立の開業医というものが対立して、はなはだしく感情的にも尖鋭化して参ります。非常に不安な状態にあるところの私設開業医というもののほとんどが保険医であるということを考えますときに、厚生省の役人はその態度について、ここで慎んで謙虚な気持で御反省にならないと、しわよせは国民の上に来るということを、特に申し上げておきたいのであります。でありますから、この北海道の例のごときも各委員から声がありましたが、一点単価にいたしましても、医者などにしますれば、国が補助もしないで、かつてな注文を机の上で役人がきめておられるということはうなづけない点があるのであります。そういう例をあげますれば時間がありませんから、私は失礼しておきますが、あなたは先ほどからの声をお聞きになつても、保険医のやつがまたうるさいことを言つているぐらいに思つているかもしれませんけれども、重要な問題でありますから、私は重ねてここに特に御注意と希望を申し上げておく次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/30
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031・小島徹三
○小島委員長 長谷川保君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/31
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032・長谷川保
○長谷川(保)委員 御承知のように、今回国民健康保険に対しまして療養費給付の二割国庫補助が行われるようになつたことは、私ども喜びにたえないことでありますが、さて国保に対しましてかように二割の療養費の国庫補助が行われるというようになりました今日、まだ衆議院を通つただけでありますけれども、こういう場合に今政府御提出のこの日雇い健保におきまして、事務費のほかはほとんど——施設を二箇所かつくるようでありますか、そのほかには何らの国庫補助も国庫負担もない、こういうようなことは不均衡だと思うのでありますけれども、当局の御意見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/32
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033・久下勝次
○久下政府委員 国保に対する国庫の補助とその他の社会保険に対する国庫の補助というような意味の比較においては、これは見方の問題、あるいはこういう補助という制度の考え方の問題によつて、不均衡という結論になろうかと思うのであります。ただ国保と日雇いだけを比較して、他の制度のことを考えない場合には、またいろいろの結論が出て来ると思うのであります。もともと社会保障であるから、国庫の負担をなすべきであるというようなことは、私ども自身もそのように考えてはおりまするし、またそうなることを望んでおるのでありますが、各保険ごとにそれぞれ歴史とまた実体とを持つておりまする関係もありまして、そういうようなことに目をつけました場合には、一様にこれは国庫補助を出すということにならないのでございます。国民健康保険がともかく二千五百万の国民を被保険者として、崩壊の寸前にあるというような、そういう現実の事実が国庫の補助が実現を見たゆえんであると思うのでございます。それに対しまして日雇い健康保険の問題は、とにかくまだこれから発足しようという問題でありまして実績も前に申し上げておりますように見込みの予算を立てておるだけでありまして、これから実績を見て行かなければならないような実情もございまして、出発早々からこれに対する国庫の補助を獲得するということができなかつたのでございます。要するにこれは不均衡といえば不均衡だと思いまするし、またいろいろなそうした実情も加味して考えまする場合には、またやむを得ない措置ではないかというふうにも考えられるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/33
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034・長谷川保
○長谷川(保)委員 国保に対しまする国庫の補助が行われる、それは国保がまさに崩壊に瀕しておるからというお話でございますが、国保の対象となつておりまする一般国民よりも、日雇い健保の対象となつておりまする者の方が一般的に申しまして経済的な力も弱いし、社会的な立場におきましても非常に弱いから、国家といたしましては保険をかけるといたしますれば、国保に劣らないところの十分なる施策をすべきであると私は考えますが、当局は、この日雇い健保の対象を、国保の対象に比べまして、そういうような意味で十分な施策をせぬでもいい、そういうようにお考えになるのでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/34
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035・久下勝次
○久下政府委員 私どもとしては、少くとも厚生省の立場におきましては、前にも申し上げましたように日雇い労働者に対する健康保険を新設いたします以上、この給付はできるだけよいものにして財源の得られます限り内容を豊富にするということは当然考えなければならないことであるし、またよく考えもいたしたのであります。しかしながら問題は財源をどこに求めるかということは、先ほどの御質疑にもございましたように、保険料でまかなうか国庫負担に持つて行くか、それ以外に道はないわけでございます。保険料にはおのずから限界がございますし、国庫の負担にもまた全体の国の財政の状態から限界がございましたので、やむを得ずこの制度のもとで発足することにいたしたのであります。これはいろいろ申し上げて恐縮でありますが、現在私どもが制度化しようと考えておりますこの問題の程度にいたしましても、はたしてそれではこれだけの給付をして、しかも赤字のない保険財政が保てるかということは実は自信がないのであります。これから実際に実施してみまして、受診率がどうなるであろうかということ、あるいは保険料の徴収の実績がどうなるであろうかというようなこと、それらのことは直接保険財政に響いて参ることでありまして、予想のような結果になりません場合には、給付について国庫の補助にその財源を求めろ方法を講じなければならないということになります。いずれにいたしましても、私どもとしては初年度実施期間も短いことでもありますし、とにかくその期間において十分実績を得まして将来に備えたいという考えであります。従いまして御質問に対しては肯定もできませんが否定もいたさないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/35
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036・長谷川保
○長谷川(保)委員 日雇い健保の対象であります日雇い労働者が日本の社会の階層におきましてどういうところにあるかは説明せぬでもわかることでありまして、従いましてただいまお話のように、日雇い健保をこれから始めるのだからということになりますれば、当然少くとも国保に対しますよりはより多くの国家の負担もしくは補助をいたしまして、この階層に対しまする社会保障の線を進めて行く、この階層こそ社会保障をまずかけられなければならない階層であるのでありますから、その点を伸ばして行くのは当然のことだと思いますけれども、その点政府御提案の法案を拝見いたしまして、実に情ない法案だと言わざるを得ない。これが今お話の通り一にかかつて財源の問題だというのが正直なところであろうと思いますけれども、弱い人々の声が小さいから、結局財源の割当を獲得することができない、こういう事実になつておると思いますが、そうであつてはならないのであつて、厚生省こそその点であくまで経済的社会的、あらゆる意味で弱い階層に対しまして、十分なる手を延べなければならないと思うのであります。今国民健保に対する二割の国庫補助という線が出て来たのでありますから、これは日雇い健保に対しましてもつと十分な援護の手を差延べなければならぬ、国庫負担の手を差延べなければならぬのは当然のことだと思うのであります。今日政府の提出いたしました法案を拝見いたしまして、傷病手当もない、療養給付もわずか三箇月である。埋葬料もなければ、配偶者の分娩手当もなく、保育手当もない、こういうようなことでありまして、しかも法案を見ますと、その適用いたします事業所は健保の適用の事業所であると考えられるわけでありますが、同じ事業所に働いております人々の健保に、日雇いと一般の隔たりがあまりにあり過ぎるじやないか、確かにこれは社会保障制度審議会から、このようなものは健保ということはできないと言われるのはあたりまえでありまして、私は政府のこの法案に対しましては、まことに不十分きわまりないとだれでも言わざるを得ぬと思うのであります。単なる財源がないということだけでこうなさつたということは非常に残念なことであります。この際むしろ私は撤回するなり、あるいは修正をするなり、道を十分つくりまして、このような不十分なものでないものにしなければならぬと思うのでありますが、ただいま今後そういうことを考えておくという御答弁がございましたけれども、政府はこれに対しまして十分な考慮を払われるように希望いたしまして、次の質問者があるようでありますから、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/36
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037・小島徹三
○小島委員長 田中元君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/37
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038・田中元
○田中(元)委員 ちよつと保険局長に伺いたいのですが、日雇い労働者の日給は大体どの程度に考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/38
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039・久下勝次
○久下政府委員 お答え申し上げます。全国平均の日雇い労働者の日給は、日額二百五十円程度であると思つております。ただ大都市関係の日雇い労働者はやや上まわりまして二百六十円くらいが平均になつておるようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/39
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040・田中元
○田中(元)委員 二百五十円と計算して一箇月に七千五百円に相なる。そうするとこれによりますと大体一日十六円が保険になりますから、一箇月四百八十円となるわけであります。そういたしますと健康保険の保険料率は六〇%でありますから、健康保険の料率よりも少し高めになつておるわけであります。そういうふうに私は解釈するのでありますが、とりあえず日雇い労働者の健康保険のこの問題ができ上りつつあるわけでありまして、これから育成強化して行かなければなりませんが、そういう点からいたしまして、将来は今日の国民健康保険と一緒にしてやるというところまで発展させる気持があるかないかということについて、先ほど青柳委員の質問に対しては、国民健康保険と一緒にはならない、事業体があつて、こうだからという局長の答弁でありましたが、そうでなくて、将来育成強化したあかつきには国民健康保険と一緒にやるようなお考えがあるかないかということだけを伺つておきたいと思います。、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/40
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041・久下勝次
○久下政府委員 まず最初の保険料の問題でありますが、私どもは保険料額をきめますのに、日額を基礎にしてやつておるのであります。日額に対して大体健康保険被保険者の負担をしております程度の保険料を負担していただく。具体的に申しますれば千分の三十程度のものを被保険者として負担していただこう、こういうふうに考えたものであります。就労日数は私どもの調べた資料で、大体二十一日くらいになつておりますが、保険の基礎としては、これを二十日に見ております。そういうふうに御了承いただきたいと思います。これを健康保険と一緒にやるかという問題でありますが、この点は実はこの制度の基本的な問題になるのでありまして、少く見積つて五十万という対象を今予定いたしておるのでありますが、五十万の被保険者が、かりに政府管掌健康保険に入つて参るといたしますと他の現行の健康保険被保険者に対して非常な負担をかけるという結果にならざるを得ないのであります。同じ制度の中で特別のもののみに国庫の補助等を行うことはできない関係もありまして、これが健康保険制度の中に入つて参りますと、標準報酬が月額にして他に比して非常に低いという関係もありまして、保険財政の面から申しますと、料率変更をどうしてもやらなければならないような結果になるわけであります。そこで私どもとしては、この日雇い労働者健康保険制度というものが、健康保険とは別個の制度といたしまして、日雇い労働者の特殊性のゆえに、これに対して国庫その他から特別の措置がとれることを必要とするためにも別につくつた方がいいという考え方で、別個の制度にいたした次第でございます。このような実情がかわりません限りは、健康保険と一本にするということはただいまのところ無理があると考えております。
それから国民健康保険というお話がありましたが、青柳委員の質問にもお答え申し上げました通り被保険者の選択によりまして認可を受けて、この法律の適用を免れる——免れるという言葉は適当でありませんが、適用は受けないでいいという制度にいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/41
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042・小島徹三
○小島委員長 次に委員外の八木一男君より本案について発言を求められておりますが、これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/42
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043・小島徹三
○小島委員長 御異議なしと認めます。よつてこれを許可いたします。八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/43
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044・八木一男
○八木一男君 保険局長にお伺いいたします。先ほど左派社会党の長谷川委員から言われました件については、私ども全面的に賛成なんでございます。この問題についていろいろと御答案があつたわけでございますが、第十五特別国会の厚生委員会におきましても今の案と同じ案が審議されて、この討論中におきまして与党の委員永山さんでございましたか、与党の委員ですら、この案は非常に内容が乏しい。それで両社会党の出しました修正案の内容まで可及的すみやかに引上げることを要望意見の中に言われまして、そして一応衆議院の予算委員会、厚生委員会を通り、衆議院を通つて解散になつたわけでございます。ところがその後その案の内容が少しもかわつておらないわけでございます。十六特別国会の予算委員会におきまして、私は厚生大臣にも質問申し上げ、また大蔵大臣にもこのキー・ポイントであります予算の問題についての配慮について質問して、極力配慮するという答弁を得たわけでございますが、厚生省はこの案を提出されますについて、どれだけの内容をよくするための御努力がされたか、一応伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/44
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045・久下勝次
○久下政府委員 解散後の国会に提案をいたします諸制度あるいは予算案につきましては、すでに御案内の通り、全般の方針として解散前に提案をいたしましたものをそのまま出すというのが政府の根本的な方針でございまして、私どももその線に沿つて処置をいたしたものであります。日雇労働者健康保険法につきましても解散後本国会に提案をいたしますまで、そういうようなことも一応は考えもし、交渉もしてみましたけれども、全般の方針の前に、とりあえず根本方針としては前の案そのままを出さざるを得なかつた、いうのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/45
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046・八木一男
○八木一男君 私どもはこの日雇労働者健康保険法の成案を出された厚生当局の熱意には十分敬意を払うものでございますが、大蔵省に対する態度が、非常に腰が弱いと思うわけでございます。と申しますのは、今度出された案によりますと、施行期日が一月の十五日になつている。給付が始まるのは三月の十五日でございますから、本年度はわずかに十五日しか給付が始まつておらない。ですから来年度以降において大蔵省を説得する自信があれば、この給付の国庫負担をやりましても、本年度における予算負担はほとんどないはずでございます。わずか数千万円くらいの予算を通せないということは、これは大蔵省の無理解に対して私は大蔵省の方々をつくつもりでございますけれども、厚生省としても御努力が足りないのじやないかというふうに考えるわけでございます。それは一応それにいたしまして、もし非常に不十分ながら政府案が通つた場合を仮定いたしまして、来年度においてこの内容を飛躍的に増大さす、従つて国庫負担をさすという意思をお持ちであるかどうか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/46
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047・久下勝次
○久下政府委員 まず最初の点は御質問でございませんでしたが、実は金額の問題ではないと私は考えております。むしろ社会保険に対する国庫の負担を出すということに関する方針の問題になつて来ると思うのでございます。国民健康保険だけが本年度は通りましたが、その他の保険に対しても、ひとり日雇労働者健康保険のみならず要望が強かつたのでありまして、現に私どももその要求を提出しておりましたような次第でございます。従いまして方針の問題として、本年度はここまでは参らなかつたのでございます。
来年度の問題についてお尋ねがございましたが、私は政府委員としてここに出まして、お約束を申し上げる立場にはございません。ただ私ども厚生省の職員の立場で申し上げますれば、厚生省としては御要望に沿うよう全幅の努力をいたすつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/47
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048・八木一男
○八木一男君 今の御答弁の中に政府委員としての苦しさがこもつていると思いますので、それ以上追究はいたしませんけれども、とにかく予算の問題ではなしに、国庫負担をすべきかどうかという問題になるという御答弁は、幾分立場に縛られた御答弁であると私は思つております。厚生省の各位もこの日雇労働者健康保険に国庫負担が必要であるということの確固たる腹を構えて、こういうところでも、すると言い切るくらいの元気で、政府の方に当つていただきたいと思います。
なお厚生大臣がおいでにならないので非常に残念でございますが、来年度におきましても、今年度の実績を見てというような御答弁のないようにお願いしたい。この法案が実施されました場合には、今年度は十五日間しか実施されておらないので、来年度の御答弁には、必ず厚生大臣から、十五日だからわからないので、再来年にするという逃げ口上が出るおそれがございます。そういうことは絶対にわれわれは承服できませんので、本年度中にさらに調査を重ねて、わずか十五日にしても、そういうことを予想して、来年度にすぐこの内容をよくするように、準備を今から完全にやられることを要望しておくわけでございます。
さらに保険料の問題でございますが、保険料の方に制約がございまして、第一種、第二種に八円と五円の区別をつけておられます。これは再度申し上げましたからさらに重ねて詳しくは申しませんが、第二種において事業主八円、被保険者五円という差額をつけておられるその勇気には感心するわけでございますが、その勇敢な態度をさらに進めて、日雇い労働者が保険料を負担しがたいという経済状態を勘案した以上、第一種の保険に対しても、被保険者が八円であれば、事業主は十円とか十三円の負担をするというような立法も、国庫負担の増大とあわせ考えていただいて、内容をふやしていただく必要があると思うわけでございます。これについては御答弁はいりませんが、十分な御配慮をお願いしたいと思うわけでございます。
さらにこの保険料の算定について、先ほど自由党の委員の方から御質問がございましたが、この算定で非常に保険度を高く見積り過ぎて、保険給付内容が少くなり過ぎているように私は感じるわけでございます。療養の給付三箇月というのはいかにも短かいのでありまして、これをわれわれは六箇月に急速にしなければならぬと思いますが、厚生省の立場として、もし大蔵省がとやかく言いましても、それを四箇月、五箇月にするくらいのことは、現在の場合でも可能であると私は思うわけでございますが、この点について御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/48
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049・久下勝次
○久下政府委員 日雇い労働者という特殊な勤労階級にあります人たちの医療につきましては、実は毎々申し上げておりますように、その罹病率等、はつきりした数字がございません。そこで私どもとしては一般の健康保険のデータを使いまして、積算をいたしたのであります。その際に危険率を多く見過ぎているのじやないかというお話でございますが、実はさようなことにいたしましたのは、この案ができますまでに日雇い労働者の代表の人たちがずいぶんだびだび私どもの方に見えまして、われわれは傷病率が非常に高いぞというようなことも言われておつたのであります。そこで新しい制度でもありまするし、健康保険のデータによる一割の危険率を見たというわけでありまして、これはこれを全然見ないでもいいという結論にならなかつたものでありますから、こういうふうにいたしたのであります。なお危険率の一割程度でもつて、これをやめることによつて期間を延ばせるかどうかということは、あまり詳しく計算をしておりませんが、一月も二月もそれをやめることによつて延ばすという余裕はないと考えます。この辺は今後の問題として検討さしていただきたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/49
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050・八木一男
○八木一男君 次に適用範囲の問題でございますが、これもこの前の厚生委員会の結論では、適用範囲を広げる点について各党の委員の各位が御賛成であつたように私は思つているわけでございます。国庫負担の問題については、今の御答弁は不十分で、不満足であり、しかもほんとうの御意思でないと思いますけれども、国庫負担を本年度はしないのでございますから、それでしたら本年度においても適用範囲をふやすということは、予算に関係がないから考えられるわけでございます。また将来の問題として、国庫負担の額が増大しても、特にこの対象にならないような人の方がこういう必要度が多いということを考えましたならば、必ず適用範囲をふやさなければならないと思いますが、現在厚生省の御説明でも、日雇い労働者というものは百万くらいいる。但し今度の保険の対象になるのは五十万というふうに考えておられるようでございますが、あと五十万の人に対してどうしてこれを適用させるような方法をお考えにならないか。たとえばわれわれの提出している案のように、事業所の規模を常雇い五名以上の事業主に雇われる日雇い労働者二いうふうに押え、あるいは職種の制限を拡大すること、あるいはまた付添い看護婦というような人のように、どうしても、患者一人に雇われるような、事業所の制限にひつかかつた場合にどうしても入れない人のために、特別の労働組合をつくつて、その人たちが事務をやつて、この適用を受けられる、いうようなことを、どうして今度の案でお考えにならなかつたか。その理由を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/50
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051・久下勝次
○久下政府委員 ただいまのお話はいわゆる適用範囲の問題と、適用の対象となる人員の積算の問題と、二つの問題を一緒におつしやつたようでございますが、私どもとしては、五十万という積算をいたしましたのは、新しい制度でもありまするし、九十九万人でありますか、国勢調査に載つておる日雇い労働者の広い範疇に入つておられる方々が、全部ただちにこの制度の被保険者になるとは考えられなかつたからであります。それをどの程度まで入れるかということは、もちろん議論のあるところでございます。この点は、もしもこの五十万人が七十万人になるということでございますれば、それだけ保険料収入もあるわけでありますので、適当な機会に予算の補正等の措置を講じまして、その点には対処できると思うのであります。ただいま派出看護婦の例に触れておつしやつたようでございますが、この点は実は私どもも問題として十分検討してみたのであります。ただ問題は、最初から私ども申す通り、また八木先生もおつしやつておられますように、何分にも日々就学場所が違うような労働の実態にある人人であります。こういう人々を的確に把握して、保険料の徴収の面においても療養給付の面においてもはつきりして行くということは、今日の段階におきましてはあまり多くを期待できない面があるのです。そこで私どもがまず取上げました考え方は、健康保険の適用事業所でありますれば、すでにその料金の課率について健康保険の適用を受けておりますから、保険に対する理解もあります。そういうところに働いておられる方々を対象にするということにすれば、厳密な把握も比較的容易であろうという考え方で、この程度にとどめたわけであります。これをさらに広く広げることにつきましては、実は社会保険全般の問題に触れて来ることでもありまして、この制度として考えた方がいいのか、あるいは国民健康保険というような制度で考えた方がよろしいのか、これはいろいろ見方によつて考え方の相違があると思いますけれども、そういう全般の問題として考えることにしていただきまして、私どもこれから除いたことはそれで万事終れりというつもりではないのでありまして、これから除かれておる方々に対する社会保障の適用という問題につきましては、今後の問題として十分検討して、漸次拡張をするようにいたしたいという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/51
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052・八木一男
○八木一男君 今の御答弁では不満足でありますが、そういう御意思があるようでありますから、今後そういうものの改正について最善の努力をお願いしておきます。それで、ただいまその捕捉がしにくいという御意見がありましたが、その被保険者になる方々は健康保険の必要性を感じておられますので、これはその方々のほんとうに切実な問題でありますから、そういうぼやぼやつとしたことと違つて、その意味において捕捉しがたいという問題もこれまた十分に解決し得ると思うわけであります。たとえば今の労働組合などをつくるという場合には、むしろその人たちがこの問題にほんとうに真剣になつておりますので、ほかの事業所に連絡をつけるよりも、その労働組合から厚生省関係の出先機関に積極的に連絡をとるので、むしろずつとその事務のやり方が楽になるのではないかと私どもも確信しているわけです。ですから厚生省も今までのわくをはずして勇敢にやつていただきたい。ただ今まで就労浮動というような考え方がございますが、私の心配するのは、ことしやつてみてからだんだん広げるということになると、ことしは十五日しか実行できないから、これは来年に拡張されるのではなくて、再来年になるおそれがある。ですからことしから研究し尽されて、来年の一月にはこの修正案を出すようにしていただきたい。今申し上げたようなわれわれの要望するところを十分考えてい ただきたいのであります。
次に給付要件のことであります。給付要件につきましては、この間予算委員会の分科会でも厚生大臣にお伺いしたわけですが、どう考えも私納得できない。現在日雇い労働者の失業保険で給付要件が二月に二十八日になつておりますので、非常に気の毒な人が出て来ておる。あの乏しい賃金の中から一日にあれだけの保険料を払つていて、偶然に保険事故が発生した、そのとき二十七日分しか払つていないために保険がもらえないで、保険料を損してしまつたというような現象が続々起つて、あの失業保険については非常に非難が高まつている。今度の健康保険でも二十八日になつておりますが、こんなおざなりなことではいけないと思う。すでに失業保険で改正しなければならない時期に達していたんだから、新しい健康保険のときには、そのことも加味して保険給付要件を下げる必要がある。これは組織団体から、一月に十日平均くらいに下げてくれということを言つております。そうなるとこれは逆選択のおそれがあるから、そこまでは下げられないことはわかります。しかしながら、両社会党で出しているように、二月に二十四日平均、つまり一月に十二日になります。また長いこと六箇月引続き登録をしている人たちだつたらそういう逆選択のおそれはありませんので、六箇月六十日、一月十日平均ということは当然考えられてしかるべきではないかと思うわけであります。第十五特別国会において政府の試案が出されたときに申し上げましたが、こういう問題について大蔵省などにそんなに遠慮する必要はない。どんどん厚生省で直されて、こういう点もほんとうに通す腹がおありになつたら通るだろうと思うのです。こういう問題については十分お考えいただきまして、次の第十七国会一月に出されるときには、こういう問題を修正される御意思があるかどうか、伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/52
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053・久下勝次
○久下政府委員 受給要件をどう考えるかという問題は、この制度としては一番基本的な問題の一つであります。このことは、これをどう定めるかということがただちに保険財政に響いて来るわけでございます。そういう意味合いにおいて給付の内容とも直接関連を持つて来ることになるわけであります。従つてこの制度としては一応これで首尾一貫して、この程度の保険料が納められるということを期待して給付に必要な支出の予算も予定いたしておる関係がありますので、この条件を緩和するならばそれだけまた給付の方でしぼつて行かなければならない結果になると思うのであります。その点実は私どもとしても検討いたしておるのであります。失業保険にのみこだわる必要はないので、健康保険でありますために別途の考え方をしようかと考えたのでございます。たとえば今仰せになつたような六月六十日というようなことにつきましては、実は何らよるべき資料がございません。そこでそれらの点につきましては、いずれにしても新しい制度の出発でありますので、とりあえず過去にはつきりした数字のある失業保険の例をとつたというのが実情でありまして、将来ともこれを絶対に変更しないという意思でやつておるのではありませんで、これを基礎にして収入支出の関係をはじきまして、つじつまを合せております関係上、ちよつとこれだけで一角をくずすわけには参らない事情にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/53
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054・小島徹三
○小島委員長 八木君、あなたの御質問はまだ長いのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/54
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055・八木一男
○八木一男君 あと簡単です。今の給付要件についての御答弁ははなはだ不満足です。私はこれを承服することができない。二十八日を二十四日に下げたところで、これは強制保険ですから、保険料が全部二十四日になるということはないわけです。政府原案だけと二十八日入る。それを二十四日に下げたらみんな二十四日になつてしまうような印象を与えがちでありますけれども、決してそんなものではなくて、偶然の事故によつて、二十八日しか与えられないため、保険給付を受けておる人はごくわずかだろうと思います。ですから強制保険で、保険の問題は別といたしましても、日雇いの諸君は一日でも働かなければ食べられないわけでありまして、できるだけ職を見つけて一生懸命働いているわけであります。二十四日で保険料が受けられるのだからということで、三月。二十四日で仕事をやめてしまうというようなおそれは毛頭ないのであります。職業につくために必死になつておるわけであります。京都のように就労日数十七日間というような場合があります。運の悪い人は十五、六日、自分の子供の看病をして十四日切れる人がある。そういうような特に気の毒な人が、政府案によれば給付をはずされることになる。保険財政にはほとんど影響がないと思う。この問題についてはもつと掘り下げて考えていただいて、至急この点について政府として改正していただくように要望するわけであります。
その次に大蔵省の方に伺いたいと思つて、先ほど出席を要求しておいたのですけれども、来られませんでしたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/55
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056・小島徹三
○小島委員長 大蔵省のだれですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/56
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057・八木一男
○八木一男君 大臣は参議院に行つておるそうですから、主計局関係ならだれでもけつこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/57
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058・小島徹三
○小島委員長 来ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/58
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059・八木一男
○八木一男君 この問題について大蔵省に対して厳重に抗議する予定であつたのですが、関係の方がいなくて非常に残念です。大蔵省はほとんどこの日雇い健康保険の内容を知らないに違いない。給付内容が非常に乏しくて、その目的を十分に果し得ないものであるということを、おそらく大蔵大臣も主計局長も十分に知らないで、知らないくせに国家財政という大なたでばさつと切つてしまう。知つていてやるのならいいが、そういう傾向が大分ありますので、この間労働大臣にこの問題について協力を求めておきましたけれども、労働省も厚生省と腕を組んで、大蔵省に対して猛烈にやつていただきたい。先ほど申し上げた国庫負担の点、保険料の二分割で上げ下げする点、今の給付要件の点、それからそれによつて保険の診療内容はもちろん、診療を三箇月よりもつと延ばす、また傷病年金がなければ仏つくつて魂を入れないということになるわけでございますが、それを入れるという点についてほんとうに真剣に考えていただいて、実施の経過を見て再来年出すということではなくて、次の十七国会の初頭においてその練つた案をお出しいただきたい。厚生大臣がおられないので、保険局長としては責任をもつて言えないと言われますけれども、厚生大臣を決意させるように十分努力されるよう強く要望して、残念ながら質疑を打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/59
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060・小島徹三
○小島委員長 他に本案についての御質疑はありませんか。——他に御質疑もないようでありますから、本案の質疑は終了したものと認めるに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/60
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061・小島徹三
○小島委員長 御異議ないようでありますから、本案の質疑は終了したものと認めます。なお本案の討論及び採決は次会に譲ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/61
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062・小島徹三
○小島委員 長次に財団法人日本遺族会に対する国有財産の無償貸付に関する法律案を議題とし、前会において諸君が要求しました資料が本日提出されたようでございますから、まずその説明を聴取することにいたします。安田社会局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/62
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063・安田巖
○安田政府委員 この前の委員会で旧軍人会館を日本遺族会に貸し付けます場合に、いかなる事業計画書があるかというお話でございましたので、お手元に案を差出して置いた次第でございます。最初の方に事業計画書というのがございます。それからそのあとに予算案がつけてございますが、詳しく書いてございますし、時間もないようでありますので、簡単に申し上げたいと思います。
大体職員といたしましては理事十五名、監事三名の役員、それに七十二名の職員によつて組織されることになろうかと思います。
なお仕事といたしましては第一が学生寮の経営、これは上京いたしました遺族学生の宿所を提供するために、定員三百名の学生寮を経営する。これは四階の二十七室を充当いたしまして、一箇月五百円くらいの低廉な経費でもつて貸し与えるということでございます。
第二は生活相談所の経営。生活相談は毎日専任の相談員が担当し、法律相談は毎週月、水、金の三日間開設する。
第三、結婚相談及び結婚式場の貸付。結婚に関する相談を行い、必要に応じて結婚式場、披露会場の提供及び結婚衣裳の貸付を実施し、毎月平均十五組程度で、挙式は式料一千円より、披露宴一人五百円より一千円に応ずるものとする。
第四は劇場及び集会所の提供。これは劇場と申しますか講堂と言つた方が適当かもしれません。定員千六百名の劇場の貸付一日一万五千円より二万円、会議及びクラブ活動のため集会室十五箇所を設けまして、これが貸付の業務を実施する、この方は大体一日五百円から二千円くらいを考えておるようでございます。
第五は実費販売所の経営。生活必需品その他を実費で販売するため、一階に二箇所の売店を経営する。
六が簡易洗濯所及び理髪室の経営。宿泊者その他の者の利便のため簡易な洗濯所を開設する。なお地階に理髪室二箇所を設け、七台の理髪台を設備し利用に供する。
七、簡易宿泊所の経営。地階に食堂二箇所を設け、低額な料金、朝夕二食で百五十円で宿泊者その他の利用に食事を提供し、あわせて簡単な喫茶の設備を設ける。
八、遺族学生に対する育英資金の貸付。新制高校及び大学に在学する学生に対して一箇月平均千円より千五百円の育英資金を、本年度においてとりあえず対象三百二十人、総額四百二十九万円を貸し付ける。
九、遺族の福祉に関する事業の指導及び連絡調整の実施。中央地方、及び地方相互間の連絡を密にし、その調整をはかり事業の推進をはかる。
十、遺族の表彰及び遺族大会の実施。遺族の福祉に関する重要事項を協議するために、年一回二日間の全国大会を実施する。なお特別の功労のあつだ者に対して記念品を贈呈し表彰を行う。
十一、その他バッジの発行、暦の委託販売等を実施する。
大体こういうことでありまして、そのあとの方に財団法人日本遺族会組織構成概要がつけてございます。その次に二十八年度予算書、これはもちろん一箇年の予算でございますので、もし貸付けられましたならばこの程度の予算でやつて行きたいということでございます。なお御質問によりまして御答弁申し上げ、たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/63
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064・小島徹三
○小島委員長 次に、前会に引続き質疑を続行いたしたいと存じます。御質疑はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/64
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065・中野四郎
○中野委員 質疑はあるのですけれども、私の方はこの事業計画の内容を見なければならぬし、きようはあいにく行政監察委員会でたくさんの証人を喚問しておりますために、資料をもつてここでお聞きする時間がないのです。従つてきようは質疑は延期していただいて、ほかの問題に移つて質疑を進めていただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/65
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066・小島徹三
○小島委員長 中野君の動議によりまして、質疑を次会に続行することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/66
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067・小島徹三
○小島委員長 御異議なしと認め、本案に関する質疑は次会に続行いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/67
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068・小島徹三
○小島委員長 次に戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案及び未帰還者留守家族等援護法案の両案を一括議題とし質疑を続けます。山下春江君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/68
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069・山下春江
○山下(春)委員 戦犯で処刑されました方々を公務死にいたしたいというのは、大体国会における全部の意見のように考えるのでありますが、政府はそれを公務死に扱うことは、いろいろ国際関係その他の情勢を勘案して、ただちに行うことはどうかというような答弁をかつてなさつたのでありますが、外務省はどういうお考えをお持ちになりますか。すでにあすはモソテンルパで死刑を宣告された人々までが非常に大きな恩典によつて母国に帰つて来るというような事実の前に、私どもが、すでに獄死あるいは処刑されて仏になられた方々に対してもいろいろな条件で扱えないということは、はなはだ残念だと思うのでありますが、外務省の御見解はいかがでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/69
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070・広瀬節男
○広瀬政府委員 私まだ不幸にしてこの問題に版組みましてから日が浅いものでございますから、詳しいことは存じません。ただ聞きましたところでは、今山下さんのおつしやいましたような見解をこの前の国会で答弁したように聞きました。大体同じようなことを上司から聞きました。あらためてどういう見解を持つておるか、私はなはだふつつかでございますが、ここで申し上げる段階にまだないのでございます。これは答弁にはなりませんけれども、私はまだ何とも申し上げられないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/70
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071・小島徹三
○小島委員長 政府委員に申し上げますが、この問題につきましては、相当重要な決定をしなければならぬ段階になつておると思いますから、外務省において的確に返答をしてもらうように至急聞き合せた上でしつかりした御返答を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/71
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072・山下春江
○山下(春)委員 そういう問題が、今委員長からお申出がありました通り非常に重要段階に来ておりますのに、外務省の方の考え方がまとまつていないということは非常に困る問題であります。私どもはこの問題をきめるかきめないかということは法案の進行上非常に重大な関係がありますので、本日おいでになつていただくについては、実はそういう問題の外務省側の御見解を——援護庁あるいは厚生省の方の見解はかねかね聞いております。厚生省も援護庁もこれに対しては実は的確な答弁をしてくれないのであります。しかしながらそれのよつて来るところはどうも外務省で、国際的にいろいろなむしろ逆効果になつてはいけないという配慮があつたというようなことをそんたくしての答弁でございました。そこで外務省としてはこれに対しては非常に責任を持つて、的確な御答弁を願うことを希望して実はきよう室長においでをいただいたわけでございますか、この問題につきましては非常にすみやかな機会に外務省の態度を御決定願いたいということを私からも強く要望いたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/72
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073・広瀬節男
○広瀬政府委員 ただいま私ほんとうに突然呼び出されたのですが、どの法律なんですか。はなはだうかつなんでございますが、未帰還者留守家族等援護法なんでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/73
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074・山下春江
○山下(春)委員 そうではございませんで、処刑考及び獄死者が合計九百九名ございますが、その人たちが公務死没となりますれば、恩給に該当する方がこの中に三百二十人あるのでございます。それから一時金に該当する方が四百人ございます。その恩給をきめますにも非常に困難でありますが、この人たちに恩給を差上げられるものかどうかということは、この遺家族援護にも関係して来るわけであります。恩給をあげることが私ども当然だと思うのでありますけれども、それの扱い方について、これを公務死とみなすかどうかということによつて——今日まで八年間この方々は、実は何らの手を施されないで捨ててあつたのでありまして、まことに国民としても当委員会としても申訳ない限りでございます。この機会にこれを明確にいたしたいと、かねがね私どもは何回か政府の意図をたたいておつたのであります。国民としては、当然すでになくなられた方には上も下もなく同一に国家のために公務で死没されたものと扱いたいのでありますが、そういうことに対する政府の見解をただしたいのであります。実は突然ではないのでございまして、この問題は当委員会におきましても、恩給を審議している内閣委員会におきましても、再三問題にいたしておつたところでございます。外務省の意見がまとまつておりませんでしたらばどうかと思いますが、戦犯室長としては、こういう問題に対してはどう扱うべきかという御意見があろうと思います。それでもけつこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/74
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075・広瀬節男
○広瀬政府委員 ただいまのは恩給法の方が主たる関係でございますね。実ははなはだふつつかでございますが、未帰還者援護法というのを土曜日にいただきまして、これの二十九条に異議がないかということだけを言つていらつしやつたものですから、そういう関係かと思つて失礼いたしました。
ただいまの公務死に準ずる者云々というのは、私として個人的見解を述べることはどうかと思われますので、またその資格もただいまございませんし、これは帰りまして相談いたしましてから、御答弁させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/75
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076・小島徹三
○小島委員長 委員長から重ねて申し上げます。刑死者、獄死者を公務死として認めるか認めないかということは、かりに日本の国会で公務死としてこれを認めた場合に、それが国際関係に影響があつて、そのために現在拘禁されている者に影響する。その釈放に関係して、国際交渉上非常に不利になるということがあるかないかということを知りたいのでありますから、その点、はつきり外務省の見解を聞かせていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/76
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077・広瀬節男
○広瀬政府委員 私の個人の意見は申し上げられませんので、よく上司や同僚と相談いたしましてから御返事させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/77
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078・小島徹三
○小島委員長 それでは本案に関する質疑は次会に続行することといたしまして、本日はこれをもつて散会いたします。次会は明日午後一時より開会いたします。
午後零時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02219530721/78
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