1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十八年七月十一日(土曜日)
午前十一時三分開議
出席委員
委員長 稻村 順三君
理事 大村 清一君 理事 高橋 等君
理事 八木 一郎君 理事 早稻田柳右エ門君
理事 上林與市郎君 理事 鈴木 義男君
理事 松田竹千代君
津雲 國利君 永田 良吉君
長野 長廣君 平井 義一君
船田 中君 高瀬 傳君
粟山 博君 神近 市子君
冨吉 榮二君 中村 高一君
辻 政信君
出席国務大臣
国 務 大 臣 緒方 竹虎君
出席政府委員
総理府事務官
(恩給局長) 三橋 則雄君
委員外の出席者
専 門 員 亀卦川 浩君
専 門 員 小関 紹夫君
—————————————
七月十一日
委員中居英太郎君辞任につき、その補欠として
冨吉榮二君が議長の指名で委員に選任された。
—————————————
本日の会議に付した事件
恩給法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
三三号)
昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生
じた恩給等の年額の改定に関する法律案(内閣
提出第一三五号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/0
-
001・稻村順三
○稻村委員長 これより開会いたします。
恩給法の一部を改正する法律案及び昭和二十七年十月三十一日前に給与事由の生じた恩給等の年額の改定に関する法律案を一括議題とし、質疑を行います。質疑は通告順に従つてこれを許します。高橋等君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/1
-
002・高橋等
○高橋(等)委員 私は緒方副総理に対しまして、大きな問題について御質問申し上げ、その他の点は政府委員の方から御説明を承りたいと思います。
戦傷病者戦没者遺族等援護法が第三次吉田内閣当時の国会において審議せられました際、国会におきましてもこれが暫定法であるということを要望いたし、また政府も将来遺家族並びに傷痍者に対しまして恩給を支給するということをお約束になつたのであります。このたび長らく顧みられなかつた旧軍人とあわせまして、恩給法一部改正法案が上程になりまして、これらの人々に恩給制度を確立なさるということに対しましてはへまことに意義深いものを感ずるのでありまして、全国数百万の、極端でありますが、従来日の目を見なかつたというか、むしろ不当に待遇せられた人々が、ようやくここに曙光を見出した喜びを私も深く感ずるのであります。そこでまず御質問申し上げたいことは、このたび出ております軍人、傷痍者、遺族に対しまする恩給は、これらの人々の過去の既得権を復活するという考えのもとに、この法案をおつくりになつておるかどうか。この点をまずお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/2
-
003・緒方竹虎
○緒方国務大臣 政府といたしましては軍人恩給が占領下とはいいながら廃止または制限されましたことに対しましては、これは不当であるという考えを前から持つておつたのでございます。ただ、今の御質問のような、これが既得権であるかどうかということにつきましては、ポツダム政令によりまして、ともかく恩給法が一度廃止になつておりますし、また既発の恩給証書までも無効とすべき指令が出ておりますので、これを厳密な意味において既得権ということはどうかと思つております。ただ最初に申し上げましたような基本的な考えから、一種潜在的な権利がそこにあるという意味で、さきに法律の制定を願いまして、恩給法特例審議会というものをつくりまして、主として軍人恩給の実質的復活を考えておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/3
-
004・高橋等
○高橋(等)委員 軍人の恩給、あるいは増加恩給、公務扶助料等を見ますと、恩給法特例審議会で建議をしました仮定俸給よりも四号俸も下まわつております。また文官恩給とも非常な権衡を失しているのであります。文官の恩給とこれらの恩給とが権衡を失しているということは、どうも私たちは納得が行かないのでありますが、厖大な経費を要することで国家財政の現状としてはやむを得なかつたのではないかと考えるのであります。政府といたしまして将来文官恩給と権衡のとれた額を支給して行くということにつきまして、そういうお考えをお持ちになつているかどうかということをお伺いいたしたいと思います。
〔委員長退席、上林委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/4
-
005・緒方竹虎
○緒方国務大臣 御意見のようにこれは一に国家財政の上からやむを得なかつたのでありまして、本来恩給法特例審議会合で審議の間におきましては、これが軍人恩給の実質的の復活であるということと、それから文官との均衡をできるだけ失わないようにして行くというのが二つの原則であつたようでありますが、それにいたしましても御承知のような脆弱な財政の状態で、ただちにそういうことはできません。ただ年齢の点におきまして、文官の四十才を四十五才に繰上げて、今回の軍人恩給と均等にするというところまでは行つておりますが、そういう事情で、原則としてはそういう形をとりたい意向でありながら、実際の恩給額においては均衡を得ていない点があると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/5
-
006・高橋等
○高橋(等)委員 将来均衡をとるお考えがあるかどうかということをお答えをお願いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/6
-
007・緒方竹虎
○緒方国務大臣 できるだけそういうふうに進めたいと思いまするが、今度の予算は、年間にいたしまして五百七十七億でありましたか——でありますところ、戦前の何によりますと千三、四百億というようなもので、文官との間の均衡をとつて行くということは容易でなかろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/7
-
008・高橋等
○高橋(等)委員 将来国家財政が許すときが参りましたら、必ず文官と権衡をとるというような考え方でお進みを願いたいと思います。
次に旧軍人の傷痍者の問題についてお伺いをいたしたいのでありますが、この法律によりますと、七項症以下四款症までには何ら恩給を支給しないという建前になつております。元来がこの法案の提案理由にもありますように、ポツダム宣言を受けた六八勅令によつて、軍人、傷痍者、遺族の給与がとめられておつたのを、このたび復活いたすのでありまして、従つて七項症以下四款症までに従来一時金を支給いたしておりますが、あれは六八勅令によつていたされたのであるというような考え方から行きまして、また神から完全なからだを与えられた者が、国のために不具者となつて不自由なからだをもつて生活を維持しておる。これらの方に対して幾分でもその生活を暮しよく待遇して行くということは私は必要であると考えるのであります。しかるに七項症以下四款症までには、この法案によりましては何ら手段が講じられておりません。これに対しまして、どういうわけでこれが七項症以下四款症までそのままになつておるか。またこれらについてどういう対策をお考えくださつておるか、この点をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/8
-
009・緒方竹虎
○緒方国務大臣 七項症の問題につきましては、財政が許しますれば、そこにまで及びたいと考えるのでありまするが、これは御承知のように、昭和八年までは一時金になつておりましたし、現在でも厚生年金保険法あるいは国家公務員共済組合法等におきましては、七項症程度の者には一時金を支給することになつておりますので、そういうつり合いも考えまして増加恩給の方には入れなかつたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/9
-
010・高橋等
○高橋(等)委員 文官におきましても七項症以下四款症までには恩給が支給いたされておりますので、十分将来のお考えをお願いしたいと思います。
次に昔の軍人恩給法によりますと、戦地加算というものを認めております。今度は一切戦地加算を認めないことになつておりますが、それはどういうわけでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/10
-
011・緒方竹虎
○緒方国務大臣 これも財政的な理由が根本になつて、こういうことになつたのでありますが、在職年に対する加算年の制度は、職務その他の特殊な勤務に服した場合におきまして、実際に在職していなかつたにもかかわらず、在職したものとして取扱い、その結果として実際にはそれほど長く在職していなかつた者にも長く在職した者と同じように恩給を給することになる制度でありまして、言いかえますると、短期在勤、若年退職者に恩給を給して、一般に恩給拡大を来す結果となる制度でありますので、この際の財政状態としてはここまで及びかねたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/11
-
012・高橋等
○高橋(等)委員 このたびの恩給法がつくられます結果としまして、従来戦傷病者戦没者遺族等援護法の適用を受けておりました者で、この恩給法の適用を受ける人が非常に多くなると考えます。しかし一面援護法の適用を受けた人で、恩給法の適用を受けない人もまたたくさんできると考えるのであります。すでに援護法の適用を受けてある程度の給付、補償がなされておりますところの遺族等に対しまして、本法に漏れた場合におきましても、援護法でこれを救済する、援護法に吸収をするというような措置をいたしてあると考えまするが、その点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/12
-
013・緒方竹虎
○緒方国務大臣 そういう措置ができておると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/13
-
014・高橋等
○高橋(等)委員 最後に遺家族等援護法の実情を見ましても、もうすでに法案が通りましてから相当な年月がたつておるのでありまするが、非常に手続が遅れております。現在当然支払わねばならないもので、なお一割五分程度のものが遅れて残つておるのであります。どうしても手続を簡易化いたしまして、恩給の裁定にあたりましては急いで裁定をする。非常に数が多いのでありますから、人数をふやしただけでは——法律がむずかしいのでありますから、どうぞ手続の簡易化の便法を考えられまして、至急に裁定がなされますよう希望を申し上げて、私の質問を終らしていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/14
-
015・緒方竹虎
○緒方国務大臣 できるだけ早く御要望に沿うようにいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/15
-
016・上林與市郎
○上林委員長代理 高瀬傳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/16
-
017・高瀬傳
○高瀬委員 私は改進党の立場から一言緒方副総理に御質問申し上げたいと思います。
先ほど高橋議員からこの恩給に対する政府の根本的考え方について質疑があつたようでありますが、私もこの問題について、まず政府が今回の恩給法の一部を改正して、軍人あるいはその遺家族に恩給を与えるという政府の根本的な考え方について一応ただしておきませんと、この法案の内容に入ることはできないと思うのであります。
まず第一に、完全に恩給を旧軍人に対して復活するとすれば約千三百六十八億かかる、それから恩給法特別審議会の答申には約六百五十二億を与えるのが妥当であるという答申があるようであります。しかも政府は今回予算案に四百五十億という案を出されておりますが、これを一年間に通算しますと五百七十七億になる。一体どういう標準で政府はこういうふうな恩給の査定をされたのか、その点をひとつ伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/17
-
018・緒方竹虎
○緒方国務大臣 それは二十八年度の予算を編成するにあたりまして財源等にらみ合せてやつたのでありまして、審議会の構想と金額につきましてもできるだけ尊重いたしたいと考えながら、財源等のにらみ合せてこういうふうになつたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/18
-
019・高瀬傳
○高瀬委員 そうしますと、一方文官に対しては根本的な恩給権を認め、物価が上るに従つて、私の了解するところではおそらく文官の方は昭和二十三年の七月、二十五年、二十六年の一月と十月、二度上つて、結局全部で文官の方は四回以上に上つていて、調整されて、物価と比例して恩給権が認められておりますが、軍人の方も平和條約が回復すると同時に恩給権が復活するのが私は当然であろうと思うのです。それもしかも今年の三月三十一日まで延ばされ、また国会の解散によつて今日に至るまで恩給の問題が解決しない、こういう状態にありますが、これは根本的に政府が軍人に関する限りは恩給権を認めるつもりでこの改正をやつているのか、あるいはただやかましいからひとつ幾らか予算を盛つてというような程度のものであるか、一体そういう点がはつきりしないと、私は根本的にこの問題を論議して行けないと思う。しかも恩給をもらう権利というものはおそらく軍人に対して何も否定する根拠がないのではないか。軍人なるがゆえに恩給をもらう権利が全然否定される——私ははつきり申し上げますれば、かつての軍閥というものと軍人というものをはつきり区別してこの際論議したい。しかも今度の恩給を受けるによつて受益する人は、多くは非常に下級の将校であるとか下士官であるとか兵であるとかそういう人たちでありますから、これらに対してはつきりした根拠の上に立つてこの恩給問題を解決しないと、私は将来に禍根を残すと思いますので、この恩給法の改正に対して一体政府は根本的に軍人に対して恩給権を認めるのかどうか。あるいは恩給権の復活を意図してこの改正をやり、国家の財政等にらみ合せて現在ではこれだけしかできないが、将来は文官の方の恩給と比例してこれらの人に恩給権の復活を与える、受益を与えるのだというのか、そういう点をはつきりしないと、これは将来政府にとつてもあるいはこの恩給を受ける人にとつても非常に大きな問題になろうと思うのです。この点私はぜひともはつきりしておかないと、この論議を進めるわけには行かないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/19
-
020・緒方竹虎
○緒方国務大臣 お話になりましたようなやかましいからどうするというようなことではなくて、われわれの考えといたしましては、文官、武官の恩給の制度があつたにかかわらず、この敗戦の後を受けて武官の恩給のみが廃止または制限されておる。これは何だか戦争責任を旧軍人にのみしわ寄せしているような感じがありまして、これは社会正義というような考えからもはなはだ穏当でない。ただ初めに申し上げましたように軍人恩給がポツダム政令とは申しながら一時廃止されておりましたので、そういう意味から多少文官との均衡がとりにくい点もありまして、現在のところ趣旨は均衡をとるつもりでありながら、均衡のとれていない事実があるわけでございますが、政府としての考えは今申し上げた通りで、これは厳密な意味の既得権とは言われないかもしれませんが、軍人恩給として、復活してできるだけ文官との均衡を保つて行きたい、そういうつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/20
-
021・高瀬傳
○高瀬委員 先ほど潜在的既得権というようなことを申され、あるいは厳密な意味の既得権とは思わないというようなお話もございましたが、私はこれは厳密な意味で既得権じやないか、かように考えているのです。なぜかといいますと、恩給を受けるのは権利であるか恩恵であるかというような点を考えると、私は明らかにアメリカ側の干渉がなかつたら当然あのときに何かの形で軍人の恩給権は復活しておつたと思うのです。従つて文官の恩給も軍人の恩給とにらみ合せてこれほど上つてはいなかつた、ですからこれはやはり厳密な意味で、法律的に考えましても当然平和條約復活と同時に三人の恩給権というものを復活している、こういうふうに思うのです。この点がはつきりしないと、いろいろな点で論議が進められないし、将来たとえば、わが改進党の方ではまだ案はきまつておりませんけれども、これを社会保障的に考えるか、あるいは恩給権の復活に考えるかということについて非常に議論がある。私は明らかにこれは過去の恩給権の復活だという建前から議論しなければどうも話の筋道が通らぬと思う。それから元の恩給局長の高木三郎氏のごときはこの点についてははつきりした見解を発表しております。しかも私の考えでは、片方で社会保障制度というものをはつきりと確立しておかないで、これを一種のその場限りの問題として取扱うということになると、身命を賭して戦場で戦つた軍人の諸君だけがえらい犠牲をこうむり、一方たまたま恩給権を継続し、物価に比例して上つた文官の方が国家からえらい恩典にあずかる、非常に跛行的状態になる。私は先ほど申し上げました通り軍人とかつての軍閥とをはつきりと区分いたしておりますが、どうもこの点政府の考え方が非常にあいまいである。将来もしわが国に自衛軍でもできるという場合は、その自衛軍に対する恩給の制度も考えなければなりませんから、どうしてもこれを単なる一時しのぎの問題として解決して、中に多少社会保障制度式な観念を入れたことでごまかして行こう、あるいは今度の恩給の審議て大将、中将に対して差をつけてある程度の恩給法の一部を改正して恩給権を与える、そういうことになると、それが必ず将来元の恩給にもどせあるいは物価に比例した恩給を渡せということで、永久にまとまりがつかなくなる。だからはつきりとこの問題は政府において対処されておるかどうか、その見通しを伺わないとえらい社会問題になる、私はこう思うものですから、政府の所見を伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/21
-
022・緒方竹虎
○緒方国務大臣 ちよつと伺いますが、見通しといいますと、これは政府がどうこれを取扱つて行くかということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/22
-
023・高瀬傳
○高瀬委員 はつきり申し上げれば、これは恩給法の復活だということを政府が言明されれば、おそらくその線に従つてこの恩給を受ける旧軍人の諸君も対処されるでしようし、あるいはこれが一時的の便法であつて、将来日本に自衛軍でもできれば、それとにらみ合せて根本的な立案をするつもりならつもりであるという点がはつきりしないと私は問題であると思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/23
-
024・緒方竹虎
○緒方国務大臣 軍人恩給権という潜在的な観念がなければ、今度のこういう措置も出て来なかつたのでありますが、ただ先ほど申し上げましたように一時廃止されましたので特別のケースになつておるために、国会の審議を願つて恩給特例審議会というものをつくりまして、そこでいわば潜在的な考えはありますが、新たな構想のもとに旧軍人の恩給をどう扱うべきかということを、社会的の良識を集めましてあの結論を出してもらつたのでありまして、これを法理的にどういうふうに見るかということは、私よりも専門の政府委員からお答えいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/24
-
025・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今高瀬委員から既得権があるという前提のもとに御質問がございましたが、これは昭和二十一年の勅令第六十八号の恩給法の特例、あの特例の性格の問題に発展して行くのではないかと思うのであります。昭和二十一年の勅令第六十八号といいますのは、御承知の通り連合国最高司令官から発せられました覚書に基いて制定されたものでございます。その覚書は、私が御説明するまでもなく御承知のことと思いますが、既発の恩給証書までも無効にせよ、そして恩給を給すべからずという向うからの命令であつたのでございます。そこでそれを法文に表わしますのに、第一條におきましてはつきりと恩給を給せず、こういうように書いたわけでございます。そこで恩給を給せずということは、恩給権そのものはあつて、そして恩給の支払いすなわち郵便局に行つてもらわれるその金の支払いを一時とめておる、こういうように見るか、あるいは恩給権そのものも否認したことになるか、そのことにその次の問題はなると思います。政府といたしましては当時総司令部からのさしずを受けまして、私たちが法案をつくりましたときの趣旨としては、はつきりと恩給権そのものを否認するということでもつて恩給を給せずという言葉を使つたのであります。また恩給法全体の用語といたしましても、恩給を給せずという言葉を使います場合には、やはり恩給権そのものもないような意味に使つておるのでございます。
そこで今度は、先ほどからのお話の潜在的な地位と申しますか、特殊な地位の問題になつて来るわけでございますが、昭和二十一年の二月一日に恩給法の特例が制定されました後に、また昭和二十一年法律第三十一号によつて恩給法の一部が改正されて、その改正されました附則の第二條に、その当時の恩給法の中から軍人、準軍人及びその遺族等の恩給に関する規定を削除します際に、削除するけれどもなお従前の取扱いにするとの規定を置いたのであります。それが今日まで残つて来ているわけであります。そこでそういうことを考えますと、ポツダム政令に基きますところの恩給法の特例に関する件が失効しました場合においては、旧軍人及びその遺族の方々に対しましても、法律的な既得権ということはできないにいたしましても、一種の潜在的なある地位があるものと認むべきではなかろうか、こういうような観点に立ちまして新しく恩給を給するようにしよう、しかしながらその恩給の内容は昔の恩給と違つたものでも一向さしつかえないのではないか、それは時代に応じてかえられてもさしつかえないではないか、こういう観点に立つて考えて来た次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/25
-
026・高瀬傳
○高瀬委員 それでは緒方副総理に伺いますが、ただいまの三橋恩給局長の言明によりましても、昭和二十年の十一月二十四日の総司令部の覚書に基いて一応軍人のかつての恩給権というものは全然なくなつた、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/26
-
027・緒方竹虎
○緒方国務大臣 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/27
-
028・高瀬傳
○高瀬委員 わかりました。私の質問はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/28
-
029・上林與市郎
○上林委員長代理 次は鈴木義男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/29
-
030・鈴木義男
○鈴木(義)委員 この問題は前国会において相当論議されたのでありますから、なるたけ私は重複を避けてお尋ねしたいと思つております。軍人恩給の復活々々といつて騒いでおりますが、実体を見ると九五%までは戦傷病者、遺族の保護であつて、軍人はほんのわずかしか恩恵に浴していないのでありますから大体名前だけであります。
とにかくそれは別論といたしまして、緒方国務大臣はお急ぎになるそうでありますから、こまかいことは計数に基いて検討しなければこういう問題は議論にならないのでありますけれども、ごく大綱だけをお尋ねいたしておきたいと思います。軍人恩給復活というような問題は、やや消極的に片がついておるようでありますが、しかしこれは再軍備とやはり関係を持つのではないかということを私どもは心配をしておる。むろん再軍備と関係なく過去の軍人に対して一定の恩給またはそれに類似するものを給すべきことはわれわれも認めておりますが、しかし一旦消滅したと称しておりながらまた恩給を出すというのは、将来のことをおもんぱかつてやつておるのではないか。その点をまず答えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/30
-
031・緒方竹虎
○緒方国務大臣 再軍備との関連において今回の軍人恩給の措置をするという考えはございません。それならばそれをどうしてやるかということは、昨年平和條約が効力を発生いたしまして日本が独立を回復いたしましたので、同時にポツダム政令が効力を失いまして、先ほど申し上げましたような考えから、軍人の恩給に類するものを復活することが正しいというように考えてこの措置をとつたのでありまして、再軍備の考えと全然関係ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/31
-
032・鈴木義男
○鈴木(義)委員 それならば今度はこの恩給制度そのものの見方として、ものの考え方としてお尋ねするわけですが、政府の提案理由によりましても、非常に貧弱な恩給を給するのも国家財政の現況にかんがみてやむを得ない、一節ごとにそう書いてある。そういう説明をされたわけであります。そういうことになるとほんのちよつぴりの申訳的な給与をするというのでありますが、恩給制度というものは明治時代に成立をして、これはある意味では世界的なものでありますけれども、わが国にはわが国独自の考え方があり得ると思うのであります。文官も武官もまだ数が非常に少く、国家財政もゆとりのあつた時代につくられたる制度を今度また復活し、維持して行こうということは適当なことであるかどうか。私はイギオロギーとしてお聞きしておるのでありますが、もつと根本的に文官、武官を通じて、あるいはもつと広く公務員全体を通じて、何らかの社会保障的な制度としてこの制度は考え直すべきでないか、そういうことについて政府はどう考えておられるかということをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/32
-
033・緒方竹虎
○緒方国務大臣 恩給制度の根本的の改正につきましては、国家公務員法の規定によりまして、目下人事院におきまして検討を加えておるのでありまするが、国が独立を回復いたしました際におきまして、旧軍人の生活の実情から考えましても、また社会的の要請から見ましても、この措置を急ぐ必要があると考えましたので、今回この恩給特例の方法を考えたような次第でございます。根本的のものは、今人事院で研究をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/33
-
034・鈴木義男
○鈴木(義)委員 人事院が研究しておるというのはけつこうなことでありますが、政府として、こういう明治からの恩給制度というものがこのままでよろしいか。政府としても、ひとつこの際改革を考えなければならぬとお考えになつておるかどうか、こういうことをお尋ねしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/34
-
035・緒方竹虎
○緒方国務大臣 今の制度といたしましては、国家公務員に関するものは、人事院でこれを取扱い、立案することになつておりますので、今人事院におきまして検討をしておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/35
-
036・鈴木義男
○鈴木(義)委員 どうもお答えが的に当らないのであります。つまり政府に一つの方針がなければならぬ。その方針に暴いて、人事院の研究、調査は、参考として政策御決定の上に御利用になることは、自由でありますが、政府には、吉田総理には、やはりこの問題について一つの見識がおありにならなければならぬと思うのであります。総理が出て来られないというので、副総理にお願いしたのです。よくわからないということであれば、やむを得ませんから、留保しておきます。
それからもう一つ、国家財政の現況にかんがみて、軍人に十分の恩給をやることができないというならば、文官の方を逆にお考えになる意思があるかどうか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/36
-
037・緒方竹虎
○緒方国務大臣 文官と武官の扱いを均衡にしたいという根本の考えはありますが、それが一度にはできませんので、先ほど申し上げましたように、文官の場合、年齢を五才引上げまして、今回の旧軍人に対する恩給措置と合せたような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/37
-
038・鈴木義男
○鈴木(義)委員 文官、武官を通じての問題になりますが、だんだん人間の平均生存年齢というものがふえて参つております。それはまだ長生きをするというだけではなく、活動の年齢も延長される。すでに最近の日本では、十年ぐらい平均年齢が延長したと言われておる。そういうふうな点も考慮に入れて、恩給の年限、つまり若年停止というようなことについて考えるべきであると思いますが、そういう点はどういうふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/38
-
039・緒方竹虎
○緒方国務大臣 人間の年齢がだんだん高くなる、それに関連して若年停止を考えてはどうかという御質問のようでありまするが、若年停止の問題等につきましては、かなりいろいろ意見があるのであります。昨年この法案の立案にあたりましても、いろいろな角度から検討いたしましたが、今日の場合その影響が非常に大きいので、今法案に提出しておりまする程度にとどめるほかはなかつたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/39
-
040・鈴木義男
○鈴木(義)委員 実は十分に時間をいただいて、根本的な問題について大いに御質問したかつた。わが国の人口と文武官の人口のパーセンテージ、国家財政の何パーセントを恩給が占めておるか、いろいろそういうことをお聞きしながら、議論を進めなければならないので、大蔵大臣と恩給局長、政府委員というものにちやんぽんにお尋ねをしたいつもりでありましたが、予算委員会でお呼びになつておるそうでありますから、私は多少の留保をいたしまして、一応国務大臣に対する質問は打切つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/40
-
041・上林與市郎
○上林委員長代理 栗山委員より関連質問の通告があります。関連質問でありますから、鈴木委員の質問に関連してお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/41
-
042・粟山博
○粟山委員 ただいま緒方さん並びに恩給局長からの答弁によりますと、どうも政府の答弁に矛盾があるから、常に国民を惑わし、委員の審議を非常に困難ならしめておると思うのです。これはひとりただいまここに現われたことばかりでなく、予算委員会においても、あるいは外務委員会においても、至るところにおいて世の中を混迷に陥らしめるので、はなはだ遺憾に思う。ただいま三橋恩給局長の言を借りれば、この恩給というものは、軍人に関する限り、昭和二十二年司令部の厳固たる命令によつて、影はなくなつてしまつておる。しかるに緒方さんから聞けば、潜在的権利と言う。また他の場合においては、厳密なる意味においてと言う。何かもやもや影があるようにも考えられる。それでありますから、鈴木委員の質問のごとくに、こういう恩給を今審議するということは、再軍備に備えるんじやないかというようなことまで言われておるのであります。もとより憲法に即したる人権擁護の立場からいいますれば、もうすべての人に対して生活保障をしなければならぬことは言うまでもない。現在独立国家としての憲法の存する限りにおいては——過去に戦争に負けたために、その絶対権力を持つた者にどういうような結論を出されても、独立国家となつた以上は独立国家の議会として、人権擁護の上から正々堂々と恩給というものは置かるべきものであると私は思う。これは人権擁護です。それでかつて戦争に負けたときに、司令部というものがあつて、司令部がこういう命令を出して削つたものだからというようなことを、今この議場において繰返すということだけでも、私ははなはだ不愉快に聞えます。それで、保障制度においてやるか、あるいは権利の復活においてやるかというような問題よりも、まずここに現われた以上は、冠人に対する恩給は、その気の毒な犠牲者に対して、特に人権擁護とともに、過去の誤れる統治者の指導によつて、国の悩みを持つた結論がここに来ておるのだから、政府ははつきり生活保障のために恩給制度を設けるのだと言つても、私はさしつかえないと思う。すべてのことが論理の矛盾なしに、はつきり正々堂々とすることが、民主主義の政治だと思う。惜しいかな、吉田総理始め副総理、その他現内閣の諸公のやるところを見ると、論理に矛盾し、事実に反したる行動によつて終始しておる。これが国を誤るのであります。戦争に負けた後の国民の復興に対する熱意というものは、実に深刻なものがある。この点について、幸いに副総理緒方君がここに御出席になる限りにおいては、十分に私はお考え願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/42
-
043・緒方竹虎
○緒方国務大臣 お気持は了承いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/43
-
044・上林與市郎
○上林委員長代理 各理事の了解を得ておりますので、午前中の審議はこれまでとし、暫時休憩とし、午後一時より再開いたします。
午前十一時五十一分休憩
—————————————
〔休憩後は開会に至らなかつた〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604889X01419530711/44
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。