1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月十三日(月曜日)
午前十時四十五分開議
出席委員
内閣委員
委員長 稻村 順三君
理事 大村 清一君 理事 高橋 等君
理事 早稻田柳右エ門君 理事 上林與市郎君
理事 鈴木 義男君
江藤 夏雄君 永田 良吉君
長野 長廣君 平井 義一君
船田 中君 牧野 寛索君
高瀬 傳君 粟山 博君
神近 市子君 島上善五郎君
冨吉 榮二君 中村 高一君
辻 政信君
厚生委員
理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君
理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君
理事 堤 ツルヨ君 理事 中川 俊思君
越智 茂君 加藤鐐五郎君
助川 良平君 田中 元君
山口六郎次君 山下 春江君
萩元たけ子君 柳田 秀一君
杉山元治郎君 亘 四郎君
有田 八郎君
海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別
委員
委員長 山下 春江君
理事 青柳 一郎君 理事 臼井 莊一君
理事 柳田 秀一君 理事 亘 四郎君
逢澤 寛君 小平 久雄君
佐藤洋之助君 中川源一郎君
長谷川 峻君 受田 新吉君
辻 文雄君 堤 ツルヨ君
有田 八郎君
出席国務大臣
国 務 大 臣 緒方 竹虎君
出席政府委員
総理府事務官
(恩給局長) 三橋 則雄君
文部政務次官 福井 勇君
文部事務官
(大学学術局
長) 稲田 清助君
厚生政務次官 中山 マサ君
引揚援護庁次長 田辺 繁雄君
運輸事務官
(鉄道監督局
長) 植田 純一君
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委員外の出席者
文部事務官
(大臣官房人事
課長) 平野 出見君
内閣委員会専門
員 龜卦川 浩君
内閣委員会専門
員 小關 紹夫君
厚生委員会専門
員 川井 章知君
厚生委員会専門
員 引地亮太郎君
厚生委員会専門
員 山本 正世君
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本日の会議に付した事件
恩給法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
三三号)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/0
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001・稻村順三
○稻村委員長 これより恩給法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会、厚生委員会及び海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会の連合審査会を開会いたします。
慣例によりまして私が委員長の職務を行います。
恩給法の一部を改正する法律案につきまして質疑を行います。質疑の通告があります。高橋等君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/1
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002・高橋等
○高橋(等)委員 私は恩給局長に対してまず質問をいたしたいと考えます。この恩給法一部改正法律案にはいろいろな改正が行われております。たとえば若年停止であるとか、あるいは加給の廃止であるとか、あるいは高額所得者の控除であるとか、特殊公務、普通公務の差をなくするとかいろいろな点が改正になつておりますが、それらをやりますために、一体予算的に見ましてどの程度の節約になり、どの程度の増加になるか。個別的に承りたいと思うのであります。もしそれがただいまお答えができませんようでしたら、後刻文書ででもお願いをいたしたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/2
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003・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 ただいまの御質問承知いたしました。文書でもつて書きましてお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/3
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004・高橋等
○高橋(等)委員 次に増加恩給あるいは傷病年金につきまして、七項症以下四款症以上のものが、従来一時年金を与えたままで本法にも何ら措置がいたされておりません。それでこの点につきましては、文官に対しましてはやはり増加恩給として、七項症に当るものを認められ、四款症までのものが認められておる。そこでどういうわけでこの旧軍人について四款症以上のものに恩給ななり傷痍年金を与えることを躊躇なさるのか、その出されておらない理由をひとつ承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/4
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005・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 増加恩給の七項症、それから傷病年金の第一款症から第四款症までの症状の人々について考えてみますと、現在国家公務員災害補償法あるいは厚生年金保険法その他の恩給類似の給与制度におきましては、年金制度をやめまして一時金の制度をとつておるのでございます。そういう一時金制度をとつておりまするということと、それからまた第七項症以下の症状のものに対しまして、年金制度がしかれましたのはたしか昭和八年だつたと思いますが、その前におきましては、やはり一時金の制度がとられておつたのでございます。そういうことを考えまして、終戦後今日まで一時金の制度をとつて来ておりますので、一般の恩給類似のほかの制度のことも考えつつ、このたびはこういうような措置をすることになつたのであります。なお文官につきましてのお尋ねでございましたが、文官につきましては、今度の改正法におきましては年金制度を改めまして、一時金の制度をとることにいたしております。ただ経過的な措置といたしまして、現に年金を給されておる文官につきましてだけは、やむなく今、年金をすぐ取上げてしまうということもいかがかと思いますから、そのまま認めることにいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/5
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006・高橋等
○高橋(等)委員 恩給法の一部改正法律案の制定をせられまして、このたび旧軍人にも恩給が復活をいたすことになつております。まずその性格につきましては、過去においてこれらの人々が与えられていたものが、ポツダム政令のいわゆる六八勅令によりまして禁止になつた。そこでそれを何らかの形でこの際復活する方が妥当だ。はつきり復活とは言えないかもしれませんか、その方が妥当だ、こういう考えのもとに、この一部改正法律案が上程になつたものと私は理解いたします。何と言われても私はその点は譲らない。ところが、ポツダム政令によりまして四款症以上七項症以下というものに一時金をそのときに支給したのも、その政令の結果である、こう考える。そこでその政令の結果によつて出たものを、この際もとの形に何とか直してやるということの方が私は妥当じやないかと思う。ことに完全なからだを持つて生れた者が、国の戦争に従事して、この人人は相当な不自由なからだで、しかも生活をせねばならぬ人々なんです。これは十分に考えなければならぬ。私はこの点については、どうも今のあなたの御答弁が非常に形式的であり、実際に国民が何を求めておるかということについて、あなた方の認識が足らないのじやないかということを非常に憂えるのであります。
そこでお伺いいたしたいのは、七項症につきまして、これの増加恩給を復活する場合、及び一款症から四款症までに傷病年金を出すという場合に、それぞれ予算的に一体どれくらいかかる見当であるか、その点ちよつとお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/6
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007・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 第七項症以下傷病年金の第一款症から第四款症までの金額をいかような金額にきめるかということがまず第一の問題になるわけであります。従いましてその金額のきめ方いかんによりまして、予算の金額もまたいろいろ違つて来るかと思います。従つてその金額のきめ方につきましては、委員の方々においてもいろいろ御意見があるかと思いますが、一応私なんかが事務的に、これならいかがかと思われるようなものを考えたところによりますと、どうしても十九億円内外の金がいるのではなかろうか、こういうふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/7
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008・高橋等
○高橋(等)委員 その十九億の内容の中で、七項症についてやる場合は幾らかかる、その他は幾らかかるか、もしわけられて御答弁ができればお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/8
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009・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 それは今申し上げましたように、増加恩給の七項症の金額を幾らの金額にきめるかということから説明をしてかからなければならない問題でございますので、たいへん恐縮でございますが、もしも書面できちつとしたものを出すことでもよろしければ、御参考までに差上げてけつこうであります。大体御参考までに申し上げますと、七項症だけで六億円内外の金がいるのではないだろうかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/9
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010・高橋等
○高橋(等)委員 併給を含んでですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/10
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011・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 さようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/11
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012・高橋等
○高橋(等)委員 次に戦地加算の問題について伺いたいのでありますが、戦地加算をお認めにならない理由は、どういう理由ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/12
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013・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 加算の制度は、これはこの前私申し上げましたごとく、実際に在職していなかつたにもかかわらず、在職したものとして取扱う、いわば想像上の在職年を実際の在職年に加えて計算する制度でございます。従いまして短期の、三、四年在職した人、また年も二十二、三というような人にも恩給を給するような結果になる。またひいては恩給の金額も非常に大きくなるような結果になる制度でございます。従いまして今日のごとき脆弱な国家財政のもとにおきまして、かかる制度を維持しつ旧軍人に恩給を給するということは、とうてい不可能なことではなかろうか。一方において遺族の方々に対しまして十分な恩給が給せられないということを考えてみますると、こういうような制度をとりつ、旧軍人及び旧軍人の遺族の方々に今のような恩給を給することは困難ではなかろうかということが一点。もう一つは、この加算制度を認めることによりまして、一体どういう影響を恩給受給者に与えられるか、こう考えてみますると、増加恩給の受給者のような負傷された方あるいは戦死された方につきましては、割合に短期在職者の方が多いのでございます。そういうような方々は在職年が実際に普通恩給の年限すなわち下士官以下の人でありますと十二年未満であり、また准士官以上の方でありますと十三年未満の方でも、十二年ないし十三年在職されたものとして恩給を給するのであります。従いましてさような方々はすなわち戦傷病者とか戦死者の遺族の方々は一般的にはこの加算制度を認める認めないによつて、その受ける恩給は大した影響は受けられない。影響を受けられる方は結局、生還して帰られた方であります。遺族と傷病者の方々に十分なる金額を出せない今日の状況におきましては情としては非常に気の毒なことではございますけれども、このところはごしんぼう願わなければならぬ、こういうような心持が主になつて実は加算制度をやめた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/13
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014・高橋等
○高橋(等)委員 そこでこれは非常にむずかしい問題ですが、旧規定によつて加算を認めた場合に、一体どの程度の経費がかかるのか、また若年停止というような問題を考慮に入れて、将来この程度の経費がかかるということは非常にむずかしい問題だと思いますので、おそらくきよう御答弁はいただけないと考えますが、いただければけつこうです。いただけなければ、これも非常に仮定的な数字になるかと思いますけれども、何とかおまとめになつて拝見させていただきたいと思います。いかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/14
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015・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 終戦の際におきまして当時の陸海軍の人事局長などと打合せまして、私が報告を受けました受給人員は、大体五百万前後だというふうなことでありました。その後いろいろと関係当局で調査しました結果、一時は七百万という数が出たこともあります。最近におきましてなお検討し直しました結果、先般御説明しましたように、三百数十万という受給者の数になつて来たわけであります。そういうふうに調査のたびに人数がかわり、関係受給者の数を押えるということはなかなか困難であります。実際の在職年で押えるということも困難でございますが、この加算を受ける者は一体どのくらいであろうかということを推計することはさらに非常に困難でございますが、大まかに申し上げますと、先ほど申し上げましたように、もしも受給者の数が五百万人からあるということになりますれば、おそらく年間二千数百億円の額の金がいることと私は思つております。現在のこの案にいたしましても千数百億の金がいるようでございますので、現下の脆弱な財政におきましては、とうていまかなえないことだろうと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/15
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016・高橋等
○高橋(等)委員 次に恩給の通算につきまして、引続き七年以上のものでなければ通算をやらない、こういうように改正はなつておりますが、これはどういう理由ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/16
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017・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 在職年によつて一定の期間在職したことによつて給せられるところの恩給、すなわち普通恩給、普通扶助料というのがございますが、そういうような恩給を給する場合におきましては、どうしても一定期間、確実に在職したという証明が必要なわけでございます。従来は陸軍でありますならば兵籍簿とか戦地名簿、また海軍におきましても、これに相当する軍人の履歴簿がございまして、それに恩給の請求に必要な履歴というものはすべてこまこましく記載されておつたのでございます。ところがこういうような書類は御承知のように終戦のときにおきます混乱のために今日必ずしも完全に残つておりません。従いまして在職年につきまして、何らの条件をつけずに何もかにも恩給の在職年に算入するということは、事実困難な情勢であります。これにつきましては、可能なことでございますればこれを認めなければならぬと思つておるのでございますが、事実困難なことであります。
それから引続きという条件を置きましたことはどういうことかといいますと、軍におきまして御承知の通り、あるいは徴集される、あるいは臨時召集を受ける、あるいは教育召集を受けるというような場合におきましては、その召集の期間がすなわち在職の期間として取扱われて来たのであります。従いましてそういうような召集の期間、すなわち何月何日から何月何日まである召集を受けた、また何月何日から何月何日まである召集を受けたという切れ切れとした在職年を一々はつきりと把握しまして、在職年に関する恩給が給せられるかと申しますと、今申したような事情から給せられない、こういうように考えられるのです。そこでこれから履歴に関する書類を整理して恩給に関する事務を始めます場合に、在職年を無制限、野放図にして、恩給を給するということは、とうてい公平なる給与を期する上からは不可能なことだろうと思いますので、どうしても引続くと条件をつけ、かつ在職年を一定以上に限る必要がある、こういうふうに考えて来たのが第一点であります。もう一つは、この問題を考える場合におきましては、やはり恩給全体を見なければいかぬ。傷病者の恩給と、遺族の扶助料というものを考えなければならぬと思います。この在職年のこういう取扱いを受けるか受けないかによつて一番影響を受けるのは生存者です。死没者においては、それから傷病者に対しましてはほとんど影響はございません。この影響があるのは生存者の方々です。そこで生存者の方々にごしんぼうをしてもらつて、その浮いた金は死亡者の遺族なり、あるいは傷病者の方にまわすというようなふうに考えねばならぬ、こう考えたわけであります。
その次に、引続き在職七年を考えまするときに当然考えなければならないことは、一時恩給に関することであります。すなわち七年に限つておりますのは、一時恩給の在職年数と歩調を合わしているわけであります。これをかりに六年に短かくいたしますと、金額にして百億以上の金がふえます。これは海軍の方の人員は実際の人員から推計した人員、陸軍におきましては、先ほど申し上げまするように、人事記録に関する帳簿の整備が不十分でございますために、正確にその人員を把握することは困難でございますから、一定の推定のもとに人員を把握し、その把握した人員を根拠として推計いたしました金額が、七年の場合の金額よりも百億以上ふえ、倍近くの金になると思われます。そういうようなことを考えまして、どうしても遺族、傷病者のために、生還された方にごしんぼうを願おう、こういうような心持ちでかかる措置をいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/17
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018・高橋等
○高橋(等)委員 そうすると引続き七年以上の者は調査がしやすいというのですかどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/18
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019・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 その通りでございます。この引続き七年につきましては、履歴の整理のことを考えてみました場合、どういうことになるかといいますと、一番困難なものは兵だろうと思います。その次に困難なものは下士官だと思います。下士官の中でも容易なのはいわゆる職業軍人と言われる者の調査で、徴集者は調査が比較的困難であると思われます。その次は将校であつて、将校の中でも微集された方の調査はなかなか困難で、士官学校を出られた方の調査は、比較的やさしくありはしないかと思います。そういうぐあいに兵よりも下士官、下士官よりも将校、将校の中でも今申し上げるような順序に調査が容易なのではないかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/19
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020・高橋等
○高橋(等)委員 そうすると、たとえば外地へ行つておりました司政官等は、通算の問題では救済ができないことになる、こういうような問題についても御研究を願わなければならぬと思いますが、特に承つておきたいことは、一時恩給について六年で切つた場合には百億からふえるということでありますが、三年以上で切つた場合はどのくらいふえるか、それを御計算になつておられるならば承らしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/20
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021・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今の司政官の方方につきましては、非常に気の毒だと思います。ほんとうに情においては気の毒だと思いますが、遺族とか傷病軍人の方々のことをお考え願つてごしんぼう願わなければいけないのではないかと思つておる次第でございます。
次にお尋ねの三年ということでございますが、実は三年のところではつきりと計算をしたものを今ここに持つておりません。今計算すればすぐ大体の推計はできますから、またあとで計算しまして御答弁いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/21
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022・高橋等
○高橋(等)委員 これはぜひ後ほどお知らせ願いたい。
次に戦死者の戦死後父母のどちらかが婚姻するという場合に、恩給法によれば権利が喪失するようになつておる。これはどういう立法理由なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/22
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023・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 新憲法が施行せられまして、民法が改正になりました。そのいわゆる新民法が施行せられることになりまして、恩給法が改正されたのでございます。その改正は新憲法のもとにおいて、男女は平等でなければいけない、性別によつて区別を受けてはいけないというようなことになりましたので、従来は父が婚姻した場合におきましては扶助料を失うことはなかつたのでございますが、男女平等の原則が立てられましてから、父が結婚した場合におきましても扶助料を失わしめる措置がとられることになつた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/23
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024・高橋等
○高橋(等)委員 次に、妻が内縁関係にあつたという場合においては恩給法の適用は受けないという建前だと思いますが、これは厚生省の方に伺うのですが、援護法によつて、これを救済するような措置ができておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/24
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025・田辺繁雄
○田辺政府委員 戦傷病者戦没者遺族等援護法におきましては、遺族の中に内縁の妻を包含しております。従つて内縁の妻にも一万円の金が支給されることになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/25
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026・高橋等
○高橋(等)委員 次に家族加給といいますか、そうした問題についてですが、これは退職当時の扶養家族が頂点になつておるように見ます。そこでこの傷痍者が妻帯をいたしたような場合、これは非常に若くてけがをした人が多いのですが、前から妻帯しておつた人に出るなら、今度妻帯した人にも出すというのでなければならぬと思う。それがどこにも出ておらないのですが、これはどういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/26
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027・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 恩給を給するのは恩給を給すべき原因が起つたときを押えるのが至当ではなかろうか、こういうような考え方に基きまして、恩給を給する原因の起つたときを押え、家族加給の範囲をきめることになつておると考えられます。お話のように傷病者の方でからだの下自由な方が結婚をされたというような場合家族がふえ、生活に困られることに対しては、御同情申し上げますが、しかしそういう方が生活上お困りになるという場合に、恩給の面で救うか、あるいは一般の社会保障制度の上において救うかということは、一つの大きな政策の問題として考えらるべきことと思います。その点につきましては、実は、いろいろ検討いたしたのでありますが、この案を出しますまでは、結局給与事由の生じた時をもつて、一応押えるということになつたような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/27
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028・高橋等
○高橋(等)委員 その場合に、もしそうした方が、退職当時でなしに、退職後妻帯をされた場合、一体どの程度の経費を家族加給として見込まねばいかぬか、これはごくわずかなものだろうと思うのですが、一応それも御計算を願つてお示しを願いたいと思います。
それから、連合国最高司令官によつて抑留されて、現に拘禁中の者、これには恩給の支給を停止せられておりますが、その家族は、非常に困つた方が多いのであります。何とかして、われわれは、こうした気の毒な方々の生活が、少しでもゆとりがあるようにいたしたいと考えております。支給を停止せられておりまする。理由は、どういう理由になつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/28
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029・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今のお話の問題につきましては、いろいろと政府部内におきまして検討に検討を加えたのでございますが、諸般の情勢にかんがみまして、恩給を停止するのがこの際としては妥当ではないか、こういうような結論に帰着いたしたような次第であります。今お話の拘禁中の方々の家族の方が非常にお困りになつているということにつきましては、まことにごもつともなことでございまして、現にそういうような家族の方に対しましては、厚生省の方におきまして留守家族の援護に準じた取扱いをして、援護をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/29
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030・高橋等
○高橋(等)委員 厚生省の方で援護されておる者は、金額として非常に現在少いのです。これはこんな考えがあるのではないですか。恩給法にはきつと禁錮以上の刑に処せられた者については恩給を一時停止するというような規定があるのでしようか。そうするとやはりそれと同じようなことを考えられているのか、それはどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/30
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031・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今は私はそういうことは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/31
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032・高橋等
○高橋(等)委員 非常にその御答弁に、私は満足いたします。それから戦犯によりまして、死刑に処せられた人の遺族、これに対してはどういう考えをお持ちになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/32
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033・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 この提出いたしております法案におきましては、刑死せられたりあるいは獄死せられた方が、戦犯として逮捕抑留せられるときに、すでに今度の法案にありますところの恩給を給せられるような条件を備えておられる方でございますれば、その遺族の方には、その恩給に相当するところの扶助料を給するようにいたしております。問題は、おそらく刑死、獄死された方を特別な、すなわち戦死されたと同じような取扱いができないかということと、もう一つは、ごく短期間、一年あるいは半年ぐらい軍務に服した方で、刑死あるいは獄死された方がおられる。そういうような方は恩給は全然もらえないような方でございます。そういうような方の遺族の方に相当の扶助料を給するようにしたらどうか、こういうような御質問だろうと思うのでありますが、これにつきましては、実は現行の恩給法の建前を、たいへん説明がましくなりますけれども、申し上げますと、戦死したと同じような取扱いをしますがためには、在職中における公務のための傷痍疾病が原因になつてなくなられた方に限るのであります。ところで刑死あるいは獄死された方は、在職中における公務による傷痍疾病のためになくなられたとは申し上げかねるのであります。従つて、こういう方に対しまして、戦死された方と同じような恩給を給しますがためには、どうしても特別な立法が必要である、こう考えている次第であります。特別立法をするということになりますと、恩給を給せられるような資格のある人であるといなとを問わず、いやしくも戦犯として逮捕抑留されて、そうして刑死された方、あるいは獄死された方に対しましては、一応全般的に考え、そうしてその次に、その中から恩給を給し得るものは給する、こういうようなことも、考えられるところでございますが、今そういうような処置をするのがいいかどうかにつきまして、慎重に検討しなければならないものがあるということで、今日に至つておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/33
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034・高橋等
○高橋(等)委員 次に恩給が支給されますと、この恩給を担保にして金融の必要を感じて参る人も出て参ると思います。恩給金融金庫のようなものが過去においてあつたのでありますが、今政府の方では、そうしたことを準備されているかどうか、この点をお伺いしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/34
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035・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 まだはつきりした結論は得ておりませんが、今高橋委員の仰せられましたような心持をもつて具体的に構想を練つているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/35
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036・高橋等
○高橋(等)委員 次に、遺族あるいは傷痍軍人あたりの問題を考えてみますときに、こうした給与だけでは、とうていその保護を全うすることができない、結局この金額だけではどうにもならないものがあると思います。たとえて申しますれば、傷痍者に対しましての就職の問題、これなどは職業安定所を督励いたして、できるだけこうした傷痍軍人の方々の就職を世話をするということになつておつたのであります。ところがそれが実際面におきましてあまりうまく行つておらないように私は見ております。これらに対しましても、あるいは立法上の措置を将来考究しなければならぬようになるのではないかとも考えられます。
また遺児育英の問題、こうした問題につきましては特にこれは大きな問題としてお考えを願わなければならぬと思います。昨年度たしか六千万円でしたかの予算で、育英資金を組まれたのでありますが、その当時お伺いいたしましたところによると、相当多数の遺児が特別にこの育英資金の恩典に浴されるように承つたのでありますけれども、これがなかなか実際問題としては不平が多いのであります。そこで二点ほど育英資金の問題について伺いたいのですが、昨年度遺児に与えられましん育英資金において、何人の遺児が就学したか。これを高等学校、大学あるいはその他の別にわけて御説明をお願いいたしたい。それとともに本年度におきます育英資金に関する予算及びそれによつて就学するところの遺児の数を高等学校、大世川にひとつお示しを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/36
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037・稲田清助
○稲田政府委員 ただいま日本育英会の奨学金によつて就学している学校別の、また昨年度、今年度別の人員についてのお尋ねでございます。たいへん恐縮でございますが、昨年の数字は私、今ここに持つておりませんので、これは後刻調製いたしましてお目にかけたいと思います。本年の予算におきまして予定しております数から先に申し上げたいと存じております。本年の予算におきまして、この遺家族に関しまする奨学金の総額でございますが、これは総計一億二千九百二十九万四千円でございます。これを大学、高等学校別に申し上げますると、一十八年度におきましては高等学校の全日制が七千五百三十八人、高等学校の定時制が四百七十五人、大学が一千三百二十九人、教育奨学生、これか教員養成学部に入つておりますが、特別扱いをいたします者が九十人、合計いたしまして一万四百三十二人、この予算に積算いたしておりまする数字と、それから指定統計によりまする推計による実際の遺家族関係の学生の数との比率を御参考までに申し上げます。高等学校につきましては一五%、これは全日制でございます。それから定時制が二・五%、それから大学が半分の五〇%、教育獎学生が八〇%になつております。大体こういう計数でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/37
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038・高橋等
○高橋(等)委員 この五〇%、一五%は遺児が学校へ入るであろうと推定される数に対するパーセンテージですが、昨年もやはりこれと同じパーセンテージを実は出されておるのです。昨年の予算ではやはり一五%、五〇%です。それから奨学生が八〇%、しかし実際やつてみますと、運営の面ではそう行つてもらたい次第であります。その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/38
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039・稲田清助
○稲田政府委員 指定統計によつて推計せられました学生あるいは生徒数に対するパーセンテージ、育英会奨学生の計画のパーセンテージは、大学は半分出そう、これは昨年も今年も同じでございます。そういうふうになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/39
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040・高橋等
○高橋(等)委員 文部当局にお願いしておきますが、遺児の育英問題は非常に大切な今後の国策になつて参ります。十分この点に御留意をお願いいたしたいと思います。それで最後に厚生当局の方へちよつとお伺いなり、お願いしておきたいのです。この援護法による弔慰金、年金の支給状況、これは相当急いでおやりになつたように思いますが、あの法律ができてからもうずいぶん日にちが立つている。しかしまだ末支給のものが相当多数あるようで、われわれのところヘも方々から照会が参つております。これを一日も早く支払うことを要望せられておるのでありますが、その状況はどういうふうになつておりますか。また見通しはどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/40
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041・田辺繁雄
○田辺政府委員 遺族年金及び弔慰金の裁定状況について御説明いたします。七月四日現在で厚生省として受けつけました総数が柱数にして百八十六万でございます。裁定をいたしました総数が百七十五万余となつております。従つて未裁定のものが約十万残つておりますが、この半数程度は目下作業を走行中でございます。あとの半数につきましては、資料が不備のために資料を調整するのにいろいろ調査中のものでございます。それからあとの大まかに言つて約半分くらいは、死亡原因が公務に起因するかどうかという点について相当慎重に調査を要するということで、いろいろ審議中のものでございます。御承知の通り自分のうちへお帰りになつてから死亡された方々等につきましては、死亡の原因と公務傷病との関係につきましてはいろいろむずかしい点がございます。従つてできるだけ早く裁定を了したいという気持で大いに勉強いたしておりまするが、最後には恩給局と打合せをして最後の結論を出さなければならぬというものもあるのではないかと考えておりますので、時日は正確なことを申し上げることはできませんが、厚生省といたしましてはできるだけ早く十分審議を遂げまして、遺族の方へ一日も早く御通知できるようにいたしたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/41
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042・高橋等
○高橋(等)委員 厚生当局へ一言お願いしておきたいのですが、未裁定は十万程度と今おつしやつた。そこでこの連中は隣近所へ年金が来ておるのに自分には来ないというので非常にあせるのでございます。また困つておるのであります。そこでこれははがき一本でもよろしゆうございますから、今われわれのところでやつておるから、いつごろまで待つてくれというような程度のことを大臣の名でもよいから通知をしてもらいたい。その程度の親切な扱いをぜひしてやつてもらいたいと思う。そうすればそれで安心をするのです。これはぜひひとつお願いしておきたいと思います。
それからなおきのうも官房長官にお願いしておいたのですが、こういう裁定にあたりましても相当な時日がかかり、人員を要しております。そこで今度恩給の裁定となりますとたいへんな日にちがかかる。まだ非常に遅れるのではないかということを非常に心配をいたすのであります。それらについて受入れ態勢をどういうふうにされておるか。ひとつ恩給局長大いにがんばつてもらわなければならぬのですが、承らしていただいて、なおそれを早く今後やつていただくように、何か特別の簡単にやれるような方法を考えてもらいたい。従来の内規の通りやつておつたらたいへんだと思うのです。それはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/42
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043・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今のお話は、できるだけ簡単に、そうして手早く措置せよという御要望でございますが、そういうような観点に立ちましていろいろ検討いたしております。その検討の材料は、すでに恩給扶助料を給されたことのある人につきましては、私の方に書類が全部ございます。従つて私の手元におきまして、これをまず整理してしまいまして、そうしてもしもここに提出しておりまする法案がそのまま通るといたしまするならば、すぐにも準備ができるように印刷物その他の準備もすつかり整えております。そうして本人から請求がありまする場合におきましては、私の方におきまして金額の計算をすつかりしてしまつておいて、ただ私の方にある原簿の名前と請求者の名前とをつき合せさえすればすぐ金額が出せるようにして行きたい、こういうふうに今考えておるところであります。これは普通恩給の受給者にいたしましても、また増加恩給の受給者でありましても、扶助料の受給者でありましても、かつて恩給を給された方に対しましては、そういうような考えで進めるようにいたしております。ただ問題は一度も恩給を給されたことのない人についてでございますが、そういうような人につきましては、これは全然新しく今度スタートしなければならない次第でありますので、そこでこういうような方々の書類につきましては、今お話のごとく、できる限り簡単に、そうして御要望に沿うようなふうに手続を進むべく、今具体案を練つておるところでございます。これにつきましては、今田辺局長からもお話がございましたごとく、私の方と田辺局長の方とよく連絡をとりまして、齟齬のないようにして行きたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/43
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044・高橋等
○高橋(等)委員 ちようど運輸次官が見えておりますからお伺いいたしますが、遺族たちが靖国神社へお参りのために上京いたすにつきまして、鉄道運賃の割引について前々から要望があります。あるいは団体列車を出すことにつきましても、要望があるのであります。団体列車等はことしは非常にうまく行つたのではないかと考えておりますが、この運賃割引についてその後おとりになりましたところの措置と、今後これをどういうようにやつて行こうとされるのか、その点を承つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/44
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045・植田純一
○植田政府委員 私からお答え申し上げます。靖国神社に参拝される遺族の方々に対する運賃割引につきましては、先の国会におきましても運輸委員会におきまして決議がありました。爾来その手続等につきまして国鉄当局において研究を進めておつたわけであります。最近におきまして関係方面との打合せができまして、その取扱い方針を決定いたしました。大体の概要を申し上げますと、靖国神社に合祀されます遺族の方に一回に限つて運賃の割引をする。方法は五割の割引でございます。戦死者一人につきまして遺族二名、これは方法としましては、靖国神社から合祀の通知を各遺族に整理のでき次第発送することになつております。その場合に国鉄におきまして発行いたしますところの運賃割引に関する証票を厚生省を通じまして各関係の市町村長の手を通じまして、合祀の通知と一緒に遺族の手え渡す、こういう建前にしおります。それでいろいろと合祀の手続上の段取り等もございますが、さしあたり整理ができまして通知を発します約六万名の方々に対しまして、さつき申し上げました割引の関係証票をお送りする、こういうことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/45
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046・稻村順三
○稻村委員長 神近市子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/46
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047・神近市子
○神近委員 私は今の高橋委員の質問に関連した問題で二、三お願いしてみます。最初恩給局長にお伺いいたしますが、第七項症以下が一時金になるということでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/47
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048・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 お言葉の通り第七項症は従来年金でありましたが、今度、今後は一時金の制度に改めたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/48
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049・神近市子
○神近委員 これがポツダム政令によつて停止される前には第四款症まではやはり年金になつておつたのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/49
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050・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/50
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051・神近市子
○神近委員 それは金高がかさむために一時金になさろうとおつしやるのでございますか。それともその方が事務上の手続が簡単に済むから、そういうふうになさろうというのでございましようか。私どもが承つておりますのでは、少くともこのうちの第七項症によつて指定されておりますけれども、この症外のほかに内症を起した。たとえば肋骨を七本ばかり取除いたというふうに、第四あるいは第五に入れても適当ではないかというふうな、かなりの症状の人があるのでございます。そうするとその七項症のうちの重症の人を繰上げるというようなことは考えられないのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/51
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052・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今の七項症の年金制度をやめて一時金制度にしましたのを、事務上の都合からか、あるいは財政上の都合からか、こういうような御趣旨の質問だと思いますが、これは決して事務上の関係ではありません。これは今度の旧軍人及びその遺族に給しまする措置を講ずるにあたりましては、恩給にはいろいろな種類があるのでございます。すなわち遺族に給せられる恩給、すなわち扶助料があります。その扶助料には、戦死者の遺族に給せられる扶助料とそうでない、公務傷病者でもない普遍恩給受給者が死亡した場合、その遺族に給せられる扶助料とがあります。それから傷病者に給せられる増加恩給というように恩給にはいろいろの種類があるのでございますが、これらの恩給については恩給全体としてのつり合いのとれたものになるように考えて、これを給するようにしなければいけないのじやないか、こういうこともまず第一に考えたのであります。限られたる国家の予算の範囲内において給ずることでございますので、受給関係者の方々に十分な御満足の得られないことはまことに残念に思うところでございます。そこで遺族に給せられるところの扶助料の金額が今の程度では——これについてはいろいろ批評をされる方もございまして、ある方におきましては、遺族の扶助料が非常に少な過ぎるという意見を持つておられることも耳にするところでございます。そういうようなことを考えてみますと、この遺族の扶助料と傷病者に給せられるところの恩給との間においては、つり合いというものを考えて行かなければならない、こういうことを考えたのでございます。そこで傷病者の方々の中で、今お話の第七項症の傷病の方々に対しまして、できるならば年金を給したいと私も思つておりますが、しかしながら一両において、遺族の方々に対し、今の扶助料の金額の程度しか出さないでおいて、年金を第七項症の傷病者の方々に給することがはたして妥当であるかどうかにつきまして、いろいろとかんがえたのであります。と申しますのは、第七項症の増加恩給の制度が設けられましたのは昭和十三年でございます。その昭和十三年に戦死者等の遺族に給せられる扶助料が増額改正されました。その当時の金額は今法案に出ておる金額よりかなり多いものでございました。そこで、この程度の金額では私どもは大体昭和十三年以前における、増加恩給第七項症がまだ認められる前、——認められなかつたころのことを考えて、傷病恩給との均衡をとらなければいけないのじやないかという結論になつたのであります。恩給のつり合いの面からいいますと、もう少し扶助料の金額が増額されておりますれば、今神近きんのおつしやつたように、増加恩給の第七項症は当然考えられるべきものじやないか、こう思つておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/52
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053・神近市子
○神近委員 遺族の年金のことにつきましては、私またあとでお伺いいたします。それで今関連質問の中でございますけれども、さつき拘禁者の家族に対する扶助をやめるという点で高橋さんが御質問になりましたね、その理由の中で旧来の犯罪者に対する恩給停止というようなものは考えないとおつしやつたので、高橋さんたいへん満足してお帰りになつた次第でありますけれども、あの件のことでございますが、恩給停止のときにこういう文句がございましたね。ポツダム政令の場合のときに、これらの者の場合にはその抑留または逮捕期間中、または後日有罪に決したときは永続的に停止する、あれにやはりこだわるわけでございますか。ちよつとそれを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/53
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054・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 いいえ、それにこだわつておるわけではございません。それは占領下の向うからの命令でございますので、占領終結後の今日におきましては、それのみにこだわつておるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/54
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055・神近市子
○神近委員 そうすると非常に多くはないはずでございますし、そうして実は拘留中の人の方がかえつて、たとえば処刑された人たちの家族よりも、社会的にも、心理的にも苦境にあ管と考えられるのでございます。これだけを私は除外する根底というものが非常に弱いのではないかと思うのでございますけれども、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/55
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056・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 確かにお話のごとく拘禁中の人にも恩給を給付してもよいじやないかという意見は耳にするところであります。またそれと反対に、いろいろと考慮をめぐらさなければいけないという意見も聞くところでございます。実はどちらにするかにつきまして、政府部内においていろいろと検討をされました結果、諸般の情勢にかんがみまして、拘禁中はさしとめる。しかし恩給そのものの権利を否定するわけではない、こういうような方針をとることになつたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/56
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057・稻村順三
○稻村委員長 辻政信君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/57
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058・辻政信
○辻(政)委員 ただいまの神近さんの御意見に対しましては、まことに私も心から敬意を表するものであります。実は戦犯の留守家族をまわつて見ましたが、いずれもさんたんたる状態でございまして、前会の国会で在監者のいわゆる自由行動と申しますか、休暇日取りを増加された旨を承つたことがございます。五日のものを十五日でございますか、それでさぞかし留守家族がお喜びになるだろうと思つてそのことを申しましたところが、ある方はいわく、どうか主人を十五日も帰さないでおいてもらいたい。もし十五日も帰つてただ飯を食われたなら、あと子供の弁当をどうするか考えなければいけない。そこまで窮迫しておるのであります。在監者に対しましては、国内法を適用しないとはつきり言つておられるのであつて、また選挙権を持つておる。衆議院選挙にもあの人たちは一票入れて、おるのであります。そういうことを認めておきながら、諸般の情勢から戦犯の留守家族に支給しない、最もみじめな状態に放置されておる人たちに対してこういう制限を加えるという政府の態度が私はふに落ちないのであります。諸般の情勢とは何か、外国の聞えを遠慮されるのか、内地の輿論を遠慮されるのか、はつきり承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/58
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059・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 拘禁中の方々の留守家族の方の生活にお困りになつておる苦境を政府といたしまして放任するというような考えではないのでございまして、(「放任しているじやないか」と呼ぶ者あり)先ほど御説明申し上げましたごとくに、留守家族の援護に準じまして、今援護の措置がとられておるわけでございます。問題は恩給を給するか給しないかという問題です。そこで今現実にとられておりますところの援護を継続することにいたしまして、恩給の給与は差控え置く、こういうことになつたわけでございます。今のつ込んだ御質問でございますが、諸般の情勢ということはほんとうに諸般の情勢でございまして、その中からある一つの理由だけを取上げてかれこれ申し上げるというわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/59
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060・神近市子
○神近委員 今度の恩給法につきましては、まだいろいろ文句がございますけれども、これは大体どのくらいの予算を何年間ぐらい必要とする法律でございますか。大体四百五十億と承つておりますが、この法律によつて支給されるものは、何年くらい支給しなければならないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/60
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061・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 年金恩給といたしましては、今年予算に計上いたしておりますのは九箇月分の経費として計上いたしましたのでありまして、四百五十億円、これを十二箇月の経費として計上いたしますと、年金恩給だけで五百七十八億ぐらいになるのでございます。そのほかに、もちろん一時金たる恩給もございます。これは金額は少うございます。そこで今の主たるお尋ねは、この年金恩給がどうなるかというお尋ねだろうと思うのでございます。実はこの年金恩給につきましては、数年の間の見込みは大体つくつたのでございますが、先の先までの見通しということになりますと、はつきり申し上げると、今具体的なものはつくつておりません。私のところで数年間の推定をつくつてみますと、この間申し上げましたごとくに、大体十億円から二十億円ぐらい所要額が毎年少くなつて行くのじやないか、こういうように推計を立てておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/61
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062・神近市子
○神近委員 審議会の答申は、各方面からたいへんよく検討してあつたように思いますけれども、あの中にこういうことがあるのです。国民感情の帰趨と日本の財政の情勢からいつて、単純な旧来の恩給法では困る、これは社会保障制度に切りかえるべきであるというような意味のことを——私今ちよつと書類が見つからないのですが、そういうことがあるのでございます。それでさつき局長は、第七項症を考える場合に、旧来の恩給の場合のことを勘案してというふうなことをおつしやいましたけれど、大体この恩給法は特殊の事情が日本に起つたあとでできたものであり、もう恩給という名前すら民主主義でないというような考え方もあるのでございます。それに動機としては旧恩給法を考えられたか、あるいは社会保障制度の一部としてこれを考えられたか、古い国家補償制度を中心にしてお考えになつたか、社会保障制度的な新しい時代を勘案してその形をそのまま残すという動機によつてなさつたか、そこらの考え方を伺いたい。そのあとでまた伺いたいことができて来ますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/62
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063・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 この法案はあくまでも恩給ということに立脚して考えられる法案でありまして、社会保障制度として考えている法案ではございません。もちろん社会保障制度というものがどういうことを意味するかということは、その人によつていろいろと概念がはつきりしていないことでもございますから、あるいは人によりましては、これも社会保障制度だといわれるかもわかりません。しかし今私の考えるところでは、これは恩給という点に立つての制度でございます。そこでほんとうは社会保障制度云々のお話がございましたが、私審議会の委員としまして審議に参画し、またこの法案の立案を命ぜられて参りましたが、昔の言葉でいいますれば、社会政策的な考え方、今の言葉でいえば、社会保障制度的な考え方というものは、相当取入れられているつもりであります。先ほど私が説明申し上げましたごとくに、遺族と傷病者、こういうような方を重点的に考えて行かなければいけない、そうしなければ国家の現在の脆弱な財政のもとにおいては、とても旧軍人に恩給を給することはできないということを申し上げておきましたが、これはそういう考え方でございます。従いまして広く大きな目で見ていただきますならば、社会政策的といいますか、社会保障制度的といいますか、そういうような見地に立つてこの案は考えられていると申しても過言ではなかろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/63
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064・神近市子
○神近委員 それでよくお立場がわかります。社会政策的なものを加味しているというふうにおつしやつたのでございますね。そうすればこの旧恩給制度の一番背骨ともいうべきものはその職階制だと思うのです。これは職階制を大分打破してございますけれども、まだたいへん考え落しがあるんじやないかということが思われます。第一、加算制度でございます。この加算制度の全廃は、私たいへんけつこうだと思うのでございます。非常に合理的でもあると思うのですけれども、これが旧職業軍人と一般応召軍人との場合にどちらに有利であり、どちらに不利であるとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/64
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065・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今、加算制度を撤廃いたしました場合におきまして、応召者に対してどういう影響を与えるか、あるいはまた応召者以外にどういう影響を与えるか、その有利、不利の御質問だと思います。私は一定の条件のもとに勤務した者に対しましては、同じだと思つております。すなわち在職年数の短かかつた者は、実際に短かいように取扱われております。加算については根本的に恩給制度というものの本旨から、掘り下げて行かなければならないこともあるかと思います。ところで今日の国家の財政が許しますならば、昔認められましたごとくに、加算制度を認めていいんじやないかと思います。これは国家の財政に余裕があつて、国民もゆたかである場合に許さるべきことであつて、今日のごとき脆弱なる国家財政のもとにおいては、わずか二十一、二才でも恩給をもらえるような制度をつくつて、そうして旧軍人なりその遺族の方に恩給を支給するということは、とうてい不可能なことであると思います。ですから私はそういう短期の在職者に対して恩給を給するという制度は、改めるべきものじやないかと思います。このことは恩給制度の本旨から考えても言い得ることじやないかと思います。もちろん戦争に行かれた者に対しましては、ほんとうに何かしなければいけないという心持ちは、国民の中のたれもが持つておることだと思います。それだからといつて、何でも全部恩給制度にしわ寄せしてしまつて、そうして恩給を給するということはできません。そんなことになると、恩給制度が恩給亡国の原因になるような非難を受けなければならぬことになつて来る、こう私は考えております。今のお話のように、実際に在職した年数でもつて押えて行きますからして、有利、不利の問題はないと思います。ただ問題はかつて三年、四年でもつて恩給がつくようになつていた、すなわち実際に在職年四年くらいで第一線の戦地に行きますと、在職年数十二年となつて恩給をもらえるようになつていた。そういう人は兵隊に多かつた。そういう兵隊がもらえなくなつた。今度はそういうことから言えば、兵隊の方は確かにこの加算制度の廃止によつて恩給を失う人が多くなります。そういう見地から言えば、確かに加算制度の廃止によつてわずか四年でもらえた人がもらえなくなるということは、確かに気の毒だと思いますが、しかし同一条件について考えますならば、幸、不幸というものはないと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/65
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066・神近市子
○神近委員 私はそこを申し上げているのです。職業軍人の方は職務におありになつたときも、まず十分な尊敬を社会的に払われて、そして十分ではなかつたにしても俸給をもらつていらした。だけれども一般応召者はどうかと申しますと、自分の妻子を置いて職業を中絶して、そうして一家の生活というものをほとんど放棄して出て行つているのでございます。そうして何年か働いて荒廃した家に帰つて来る。そういう場合に職業軍人の御家庭と応召軍人の家庭とを想像してみますと、どちらをより多く保護してあげなければならないか。だから私は今までの恩給局長の恩給法の考え方が少し困ると思いますのは、そういう細分にわたつての考え方を割切ることがおできにならない。あまり自己の中に突入しておいでになるものですから、新しい風をその考け方の中に盛り込むことができない。この場合はだれが考えても、これが軍人恩給を復活する法律だといつて、社会的にはみんな非難しているのでございます。それを国民感情にマツチするところの妥当な法案でやつていただきたいというのが、私どもの願いでございまして、その点なるべく不利、有利という対立のないようにこれを改められないものでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/66
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067・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 私は恩給を考える場合には、恩給という一つの制度はどういう考えに立つてつくられているものであろうか、こういう一つの理念というものを考えなければならないと思います。今お話の問題は普通恩給、すなわち一定の期間在職したことによつて受けられる恩給の問題だと思います。すなわち老朽者に恩給を給するかどうかという問題だと思います。一定期間在職した者に給する恩給は、そもそも老朽者に給する、すなわち軍隊に勤務して老朽になつて、その職をしりぞいて行く人に国家が使用者として恩給を給する、こういうところに恩給理念の根本があると思います。その二年、三年、四年のわずかの期間在職した人にも恩給を給するということは、これは恩給制度そのものの趣旨からいつて、今日のような国家財政の状況のもとにおいては考え直さなければならない。従来そういうようなわずか四年、五年の者に対しても恩給を給されたということについては、恩給制度の本旨からいいまして、国家財政の許す特殊な場合に限らるべきものであつて、恩給制度そのものの本旨に立ち返つて考えますと、そういう方々に恩給を給することは今日では考え直さねばならないと思います。これこそ私は新しい時代に応じて考えらるべき恩給制度のあるべき姿だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/67
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068・神近市子
○神近委員 老朽者に対する生活保護という点では、私はちつとも文句はないのでございます。しかし結局この恩給をもらうのが、昔の職業軍人さんが大多数ということになつてはまずいのではないかというように考えるのであります。そうして大体そういうものであろうかということがみんなの頭にしみ込んでおつて、何かそこに新しい考え方、理念を加えなければ納得できないものがあるのでございます。これは希望でありまして、なお御考慮の余地があれば考えておいていただきたい。
それからもう一つございます。高額収入者の恩給停止でございますけれども、さつき軍人家族の恩給のお金によつて傷痍軍人の給与が非常に詰まるということをおつしやつておりましたが、軍人家族、遺家族の中でもこれは等級があると思うのです。大臣とかあるいは高級官吏だとか、あるいは会社の社長だとかいう方々のような高給の収入所得者、そういう方々にはやはり何か名誉を差上げて、そして実際的なお金を引くというようなことは考えられないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/68
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069・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 いわゆる多額所得者の恩給停止に関する規定は、旧軍人の方々にも適用するのでございます。今の神近委員のお話は、相当の収入のある旧軍人の方々には初めから恩給を給さないようにしたらどうかというような御質問だと思うのでございますが、そういう意見も確かにあるのです。あることはあるのでございますが、収入があるから恩給を給さないということは、はたして妥当だろうかどうだろうかにつきましては検討してみなければならぬと思います。それは結局突き詰めて考えてみますと、恩給制度そのものを否認してかかるならば別ですが、それでなければとうてい困難ではないかというような気がします。と申しますのは、サラリーをもらつておるわれわれが、もしも収入があればサラリーを返納していいんじやないかということと五十歩百歩の議論じやないか、こういうことを言う人さえもあります。それでそういうことを考えてみますと、この多額所得のある方につきまして、それに応じて減額するということがいいんじやないかと思います。全部とめるということは、はたして理論的にいいかどうかということがまず問題として考えられる、それが問題の一つです。もう一つは、今神近委員の仰せられるような方は、数多い受給者の中で何人かということが問題である。非常に少いことだと思います。その調査をするのには、非常な手数がかかる。そこで手数をかけてとめる恩給の金額と手数によつて費やすところの経費と比較いたしました場合におきましては、結局失うところが多くて得るところは少ない。理論ばかりに陥つたことになりはしないか、こういうようなことが考えられるのであります。そういうような観点からいたしまして、われわれの同僚の間におきましても、この多額所得に対する恩給停止の制度はかえつてやめたらいいんじやないかというような議論をする人さえもあるくらいであります。要するにこれにつきましては、いわゆる官吏の古手といいますか、そういうような官吏をやめた人の中で多額の所得を有する人はあることはありますけれども、何十万という中でごくわずかなものでございますので、そういうものを調査するというのは非常な手数と経費がかかる。ところでその手数と経費をかけて停止する金額はごくわずかでありますから、やめたらいいじやないかというような議論もあるわけでございます。今の神近委員の御意見は研究はいたしますけれども、私たちの研究いたしましたところでは、まだ今の御意見に沿うような措置をするところまでは至つていないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/69
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070・高瀬傳
○高瀬委員 委員長。議事進行について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/70
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071・稻村順三
○稻村委員長 議事進行の発言を許します。高瀬傳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/71
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072・高瀬傳
○高瀬委員 先ほどから各委員の討論を聞いておりますと、いろいろと各委員会でお聞きになつてもいいような問題に多分に触れておられるようであります。しかもこの連合審査会は相当重大でありますので、総理大臣なりあるいは副総理なり、政府の相当の責任者が来てわれわれのいわゆる総括質問に対して答えてもらわなければ意味をなさぬと思うのであります。私は三橋恩給局長に対して別に敬意を失しておるわけではありませんが、この重大なる法案の改正に対する政府の心構えがはつきりしていない。昨日内閣委員会においてもその一端を質問いたしましたが、いまだ意を尽さないのであります。従つてかくのごとき連合審査委員会に政府の総理大臣なり当面の責任者が来ないということは、われわれのはなはだ遺憾とするところでありますから、先ほどから私は吉田総理がだめならば、少くとも副総理の出席を要求して質問をいたさんとしておりますが、一向出て来ないということははなはだ了解に苦しむ点であります。この点はひとつ委員長において善処されんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/72
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073・稻村順三
○稻村委員長 御意見ごもつともと存じますので、善処いたしたいと存じます。
午前の審議はこの程度にいたし、午後一時より再開いたします。暫時休憩いたします。
午後零時三分休憩
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午後一時四十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/73
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074・稻村順三
○稻村委員長 再開いたします。
午前に引続き、質疑を行います。逢澤寛君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/74
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075・逢澤寛
○逢澤委員 緒方副総理に一、二お伺いいたしたいと思います。午前中の委員会におきまして、高橋委員から詳細な質問がありましたので、重複を避けまして、一、二だけ簡単に質問いたしたいと思います。恩給法の一部改正法律案の提案理由の説明の中に、文官恩給とこの恩給法とは、できるだけ接近して、文官恩給に近いようにやりたい、こういう説明が加えられております。ところが実際におきましては、文官恩給をはるかに下まわつておるのであります。これは国家財政の現況にかんがみて、どうも今ただちに文官恩給に即することができない、こういう説明を加えられてあるようであります。そこで私ども一番聞きたいことは、できるだけ早い機会に文官恩給と同列にしたいという政府の気持はよくわかります。国家財政がどういうような点まで上昇して来た場合には、文官恩給と平等にすべきか、こういうようなことにつきまして、一応お尋ねをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/75
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076・緒方竹虎
○緒方国務大臣 旧軍人の恩給を復活するに際しまして、一つの基本的な考え方として、文武均衡を得たいという希望を持つておるのではありまするか、これはほとんど一に財政上の理由と申し上げてよくないかと思うのであります。本年の実施を四月からいたしましたのも、四百五十億という財源が光であつたと言うこともできるぐらいに、財政の関係が非常に強いのでありまして、実際問題としては、文武の均衡をとる意味におきましては、文官恩給の若年停止を五年遅らしたということ以外にはできておりません。それならば将来どうするかということにつきましては、できるだけ均衡をとりたいという気持はありますけれども、御承知のような財政の現状でありますので、いつになつたらそれができるということは、ちよつとただいま申し上げかねるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/76
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077・逢澤寛
○逢澤委員 前途は財政の好転のいかんによつて、今から予言ができないというお答えでありまするが、これは私どもも了承いたします。しかしながら考えておかなければならぬことは、もしそれ文官恩給と同等までに支給するとすれば、どのくらいの金額になるでしようか、お答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/77
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078・緒方竹虎
○緒方国務大臣 かりに現在の一般文官の恩給額と同列のものといたしますと、年間として千三百六十七億という数字が出て参ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/78
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079・逢澤寛
○逢澤委員 次にお尋ね申し上げたいことは、同じ太平洋戦争に召集されながら、この恩給法から除外される者がある。これはほんの紙一重ということになつておるのです。私ども院内の遺族議員連盟の方々の気持も、紙一重だと思う。支給を受ける者と受けない者とが紙一重で、同じ戦病死でも隣の人は受けておるのに、こつちの人は受けられないというようなものができておるのであります。これらに対する処置でありますが、案として十五国会に提案されておりますこの法案では除外されておるのであります。そこでこれらの具体的な問題については幾つもの事例があるのでありますが、数にしてはそう大したことはない。大体百分の四ないし百分の五ということを承つておるのであります。それらの紙一重の処理に対しまして何かお考えがあるかどうか。もしお考えがあるとしますれば、この機会にお聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/79
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080・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今の御質問は、現在行われております援護法に基く遺族年金の実情についての御質問じやないかと思うのでございます。私は遺族年金の実際に支給されている状況は詳しく存じないのでありますが、令お話のようなこともあるいはあるかと思います。それにつきましては、私まだ具体的にはつきりしたものを聞いておりませんので、確たるところを御返事申し上げるような資料を持つていないのでございますが、確たることがわかりました上におきましては、適切なる措置を講ずるようにいたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/80
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081・逢澤寛
○逢澤委員 これはむしろ援護局の方の関係になるようなお話でありますが、たとえていいますと、召集されて外地へ行つておつた、しかし病気をしてこちらへもどつて、そうして病院で療養した、その後宅に帰つてなくなつたというような種類のものなんですが、援護法においては一応援護の対象になつておるようでありますが、恩給法ではそれが除外されるような形になる。そういうようなものに対しては恩給法と援護法とを並行して、恩給法に漏れたものは援護法によつてこの救済をやつて行くことになるかどうかということについて、もしおわかりであつたらお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/81
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082・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 けさ田辺局長からは、今お話のように外地で病気になつて内地に帰つて来た、あるいは内地で召集されて部隊に勤務して病気になつた、そして自宅に帰つて、そして自宅でもつてなくなつた、そういうような方について、はたして公務のためになくなられたものか、あるいは公務以外の原因によつてなくなられたものであるか、こういうことは非常にむずかしい問題であつて、その点についていろいろ検討を加えておるために書類の審査が遅れているものがある、こういうようなことを田辺局長からお伺いしたのでありますが、私も田辺局長の説明を聞いておりまして、なるほどそういうこともあるだろうということを察したのであります。今のお話の自宅でなくなられたことがはたして公務のためになくなられたのであるか、あるい公務以外の原因のためになくなられたものであるかということは、具体的な処理に当つて考えるべきことでございまして、今一般的にここでお答えすることはちよつといたしかねるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/82
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083・逢澤寛
○逢澤委員 幸いきようは緒方副総理が見えておりますのでお伺いしますが、ただいまの問題は大きな政治問題であると考えるのでございます。公務であるかないかというその原因が鮮明でないから対象にしない、こういうことだろうと思います。しかしながら一応召集令状によつて召集されて、そうして家庭の者等の立場から言いますと、召集さえ受けなければこういうような病気にかからなかつた、召集されるものはおそらく相当の健康なものである、その健康な者が召集されて、その召集によるいろいろな過労の結果そこに病気を生じた、その結果死んだ、こういうところに原因がある。私の申し上げる紙一重というのはそこなんであります。それでこれは事務的にお考えになるとやはり今のような問題が出て来る。いやしくも召集によつた戦死者ないし戦病死者に対して恩給法を適用して、国家がその労に報いようとするこの法律を考える以上は、これから残された者——いやしくも召集令状によつて召集されて、そして病気をしてその病気が原因となつてなくなつた者に対しては、私は何か考え方をしなければ相済まぬと思う。これは事務的にはなかなか処理しにくい問題だと思いますので、それらに対してはもつと政治的に、たとえていえば戦死者ないし戦病者に対して十を与えるとすれば、それらに対しては何がしかの減額をしても、国家として労に報ゆるということをしなければならぬと思うのですが、緒方副総理はこれに対してどういうような見解を有しておられるか、一応お尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/83
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084・緒方竹虎
○緒方国務大臣 そういうような問題につきましては恩給特例審議会でもいろいろな角度から検討されまして、結局やむを得ず今御提案をしておるような形になつておるのでありますが、今御指摘のような不満は必ずあると思います。こういうことにつきましてはさらに検討してみたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/84
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085・逢澤寛
○逢澤委員 この恩給特例審議会の答申のいろいろなことを拝見いたしましても、あの構想の中には前の軍人恩給法を中心とした、そしてそれを中心として改善したそこの雰囲気がよくわかるのであります。そこで前の軍人恩給法から考えると、あの文章の中には今私が指摘いたしたようなことがやはり漏れておるということなんです。私どもがこれら多数の関係者からの意見を聞きましたときには、従来の恩給法は——従来の日本の戦争の範囲というものがきわめて狭い範囲で行われていた。たとえていえば支那大陸の半分を中心にしておる。こういうような狭い範囲で行われておつたから、そういうようなことでよかつた。ところが今度の戦争は御承知のようなきわめて広い範囲において行われたのであつて、そこで前の軍人恩給法では予想のつかなかつたような場合がたくさんできて来ておるというのがこの罹災者の考え方であろう。一般の考え方もまたそこにあるだろうと思います。そこでまず一応の了解があるといえども、ここに恩給法が制定されまして、そうしていよいよこれが給付になるということになりますと、ほんの紙一重でこの選から漏れる者の気持というものは、まことに同情に値するものがあるのでありますが、ただいま副総理からよく研究して善処しようという御回答を得ましたので、私どもはこれはぜひ筋の立つことをひとつお考えを願いたいと思います。
それからこれは恩給局長に質問をいたしたいのでありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/85
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086・稻村順三
○稻村委員長 逢澤委員に申し上げますが、緒方副総理がお急ぎとのことでありますので、緒方国務大臣に対する質疑を先にお願いしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/86
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087・逢澤寛
○逢澤委員 それでは私の笠間は一応これで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/87
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088・稻村順三
○稻村委員長 それでは緒方副総理に対する質疑をしていただきます。堤ツルヨ君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/88
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089・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 副総理に率直にお尋ねをいたしますから、副総理もごくはつきりと答えていただきたいのでございます。
恩給法の一部を改正する法律案につきましては、国民の輿論もいろいろでございまして、なかなか重要な法案であると私どもは考えておりますが、政府のこの法案に対する根本理念を承りたいのでございます。今日の日本の憲法のもとでは、はつきりと軍隊はございません。あるいは吉田内閣だけのやみ軍隊があるかもしれませんけれども、それは筋が通らないと考えます。今日日本の国家的見地から見るときに軍隊はないことになつておりますが、その軍隊のない今日、軍人恩給を復活されるにあたりまして、元の大将から一兵卒までの十七階級というものをこの中に織り込んで出して来られておるのでございますが、今日軍隊がないものとして、あるいは軍隊があるものとしてこうした法律を打出されたことについての政府のしかとした御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/89
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090・緒方竹虎
○緒方国務大臣 今日日本に軍隊がないことはただいま御指摘の通りでありますので、軍人恩給という言葉を使つておりますのはお耳にさからうかもしれませんが、政府といたしましては、この軍人恩給を復活いたしましたのは、厳格な意味では既得権とは申されないかもしれませんが、占領中に総司令部の覚書によつて軍人恩給を廃止または制限されておつたのでありますけれども、しかしこれは廃止または制限されておりましても、そういう一つの既得の位置があつたということは認めざるを得ないのでありまして、その既得の位置といいますか、権利といいますか、そういうものまでもなくしてしまいますことは、はなはだ社会的にも穏当でないし、一面また軍人恩給を廃止または制限いたしましたことで、太平洋戦争の責任を軍人のみに負わせておるかのような感じを与えますことも、政府の見解としてはよくないという考えから、先般特に恩給特例審議会というものを国会の御承認によつて設けまして、いわゆる旧軍人の恩給制度をいろいろな角度から検討してもらつたその結果、建議として出て参つたのであります。政府といたしましても、その建議の趣旨はもつともであるという見解に立ちまして、今回の法案を出したような次第でございます。
それから階級制度はおかしいという議論も一つの御意見でありますが、軍人恩給をつくります以上、やはりできるならばその受給者が現役を去りましたときの事情に近寄らせたいという考えから、そのままの階級を存置しておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/90
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091・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 ただいまの旧軍人に対する恩給は一つの既得権であるという見方は、確かに既得権であることは私も否定いたさないものでございますが、しかし戦争によつて、打つておつた既得権を侵されたという例は、単に軍人のみではない。軍人は恩給法という形において既得権を侵害されておるということは主張し得ますけれども、農民や中小企業者、あらゆる給与生活者、国民全般が既得権を失つたということは、私ははつきりした事実だと思います。一般の者が持つておつたところの財産であるとか、いろいろな面におけるところの既得権を何ら補償することなくして、軍人だけに恩給法の改正というような名前で既得権をお認めになるということは、旧軍人だけを優遇する考え方であると思いますが、これらの均衡をどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/91
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092・緒方竹虎
○緒方国務大臣 お話の通りでございますが、政府といたしましては、恩給に何と申しましても公務員に対する一つの義務になつておるのでございまして、潜在的にせよ既得権に近いものが認められます以上、それを考えないわけには参らないのであります。ただ今お話になりましたような社会的事情が明らかにありますので、政府はきわめて慎重な態度をとりまして、軍人恩給に関する恩給特令審議会を設けて、こういうことで構想を練つてみようということについてまず国会の承認を求め、国会の御承認の結果できました審議会で、各方面の良識を集めて慎重に検討した結果この建議となつて現われたような次第でありまして、ほかに既得権が失われたものがたくさんあるのではないかということは明らかな事実でありますが、政府としてはそういう見解の上からまずもつてこの軍人恩給に関する恩給法案を提出いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/92
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093・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 御質問をしておりますと、ますます政府の信念がなくなつて来るような気がするのでございますが、職業軍人、軍属をも含めて一般召集の方々が第一線に放つた、従つて戦傷者、戦没者の遺族等はたくさんおるのですから、その方々の一般国民よりもさらに大きい犠牲に対して政府が何とか補償するというのならばわかるのでございますか、旧軍人だけの既得権の復活を認め、他の一般国民の既得権を顧みないという行き方に対しては、根本的に間違つておるということを指摘いたしおきます。
次に、戦傷者、戦没者遺族等が戦争の結果たくさん出ましたが、この人たちに対しては十分国家の償いをしなければならぬことは常識でわかります。従つてこれらの人たちに対する償いはいかなる方法ですべきか。またがつての既得権であるところの恩給権を持つた人たちがこれと同様にあるということをひつくるめて考えましたときに、この人たちの損害を補償する意味において、何も第一線で戦つた人たちだけが戦争の責任を負うのではないという考えを持ちたいならば、この人たちの既得権をある程度認めるとか、かつての軍人恩給復活店のための恩給法の一部改正という表現の仕方にあらずして、もつとぴつたりする表現の仕方があるのではないか。たとえて申しますれば、今回政府がお出しになつておりますところの恩給法の一部改正の裹づけである予算の総額は八箇月分で四百五十億でありますが、この四百五十億を私たちが検討いたしますときに、九〇%近くのものが一般の戦傷者、戦没者遺族等の援護法の対象になつておつた人々でございます。そういうことになつて参りますと、世間に疑問を持たれながら、再軍備の伏線とまで極論されながら、何も恩給法の一部改正法律案という名目で政府がこれを出されなくとも、戦争犠牲者の補償法案であるとか、あるいは戦傷者、戦没者遺族等の年金法案であるとかいうような、名前と内容とがはつきりと合致したものにおいて出されるならば、国民の誤解を招かないと思うのでありますが、こうした点は、政府は御提出になる前にお考えになつたでしようか、これを一応お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/93
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094・緒方竹虎
○緒方国務大臣 そういう点も特例審議会においてはいろいろな角度から研究をされたのであります。政府といたしましても研究の結果、文官恩給が引続き支給されておりまする以上武官の軍人の恩給というものを、占領下におきましてはやむを得なかつたにしても、それを復活することが適当であるという考えのもとに、その趣旨に立つてこの提案をいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/94
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095・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 私と副総理との見解は合わないようでございますが、疑問のままにいたしまして、次に先ほどお触れになりましたかつての軍人の十七階級の問題でございますが、当時の方々の俸給を基礎にして、今日のものにスライドして加算しなければ見当がつかないから、それを参考にしたといつて、これを法案の表に打出さないのならばわかるけれども、法案の表に大将から一兵卒まで出されるということは、何だか下心があるように私たちには思えるのです。かつ先ほど恩給局長の答弁を用いておりますと、この恩給法の一部改正は数年先のことは考えておらないということをお答えになつております。とすれば、あるいはただいまできておりますところの保安隊の年金法というものがやがて必要になつて来ると思いますが、現在の保安隊というようなものに横すべりさせて、旧軍人恩給が保安隊の将来の年金か恩給的なものと一つになつて、かつての軍国時代そのままの制度に生き返つて来るのではないかというような考えを持つのでありふす。二、三年先の案など考えておらないとすれば、多分にそういう疑問を持つのでありますが、副総理の方ではそういうお考えがあるのではないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/95
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096・緒方竹虎
○緒方国務大臣 事実の問題といたしまして、再軍備あるいは保安隊の恩給というようなものに関連して考えたことはございません。ただ先ほど申し上げましたように、廃止または制限されました旧軍人の恩給を復活する意味で立案いたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/96
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097・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 それではここでひとつしつかりと政府はうそをおつしやらないようにわが党は承つておくのでございますが、後日この法案を保安隊の方に横すべりさせて何とかいうようなお考えがない証拠に、保安隊のこうした処遇に関する法律はどういうふうに具体的にできておるか、それがありましたならば参考資料として御提出されて、今日の保安隊とかつての旧軍人恩給との法律は一つにならないものであるという証拠をお出し願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/97
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098・緒方竹虎
○緒方国務大臣 政府委員から答弁いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/98
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099・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今保安隊職員の恩給の問題のお尋ねでございますが、保安隊の職員につきましては、上の方の職員は私たちと同じような恩給法の取扱いを受けております。下の方の職員は警察監獄職員と同じような取扱いを受けて恩給を受けることになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/99
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100・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 それでは一応それで了承いたしまして、次に副総理にお尋ねをいたしますが、この恩給法の一部改正にあたりましていろいろと内容を検討いたしますと、非常に現行の文官恩給との違いが出て来る点が多いのでございますが、この際かつての軍人恩給法の一部を改正するにあたつて、現行の文官恩給の改正についてはどういう考えを政府としてお持ちになつておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/100
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101・緒方竹虎
○緒方国務大臣 恩給法の根本的な改正につきましては、現在国家公務員全般の問題といたしまして、人事院で研究いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/101
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102・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 目下研究中と言われますけれども、御存じの通り、今日国民全般には何らの社会保障的な制度がなくて、文官とかつての武官とこの二つに特別の恩給がある。しかもこれが復活されるにあたつて、この二つの恩給にさらに落差が生じて来るということは、私は国民全体から言わしめるならば、非常に大きな政治問題であると思うのであります。従つて目下研究中とおつしやいましたけれども、前々国会解散以前にも、すでに人事院の万において文官の恩給の改正については案ができておつたように仄聞いたしておりますが、それらの点で、これは同時に国会に公正妥当なものをお考えになつてお出しになるのではないかと存じておつたのでありますが、一向出されて参りませんので、こういう質問を申し上げたのでございます。目下研究中にあらずして、同時にこれが並行して改められなければならないものであるということを政府はお考えになつて、ひとつ本国会に善処されたいと思うのでございます。
もう一つお尋ねいたしたいのは、昨年実施されました戦傷病者戦没者遺族等援護法という法律によりまして、百八十万の英霊を対象といたしました方方に援護的な暫定処置がとられたのでございますが、この援護的な暫定処置は、遺族から言わしめてもまた国民感情から申しましても非常に妥当性を欠き、こんなことではいけない、何とか政府の言質をとろうというので政府を難詰いたしましたところ、政府は特別審議会を設けて、その結論をまつて善処するとお答えになつて国会を通過し、そうしてこのたび恩給特例の審議会で結論が出て、その審議に基いてやつたというところの恩給法の一部改正を出して来られたのでございますけれども、この恩給法の一部改正を拝見いたしておりましても、右は自由党から社会党の左派に至るまで各党これを拝見しまして、ほんとうに戦傷病者戦没者遺族等が、恩給権を持つ者がこの中で救われ、持たない者がこのスライドするところの援護法の一部改正によつて、同時に満足の行く処置をとられて、これをがえんじるかと申しますならば、そうでないのでございます。国民の声を無視して、非常にたくさんの落伍者をこしらえて恩給法の一部改正をなさり、援護法の一部改正を政府は並行して出されているのでございますが、政府は国会の陳情、請願などにもかんがみまして、一度ここで面子を捨てて、この二つの法案については徹底的な審議をなさらなければ、通過が困難ではないか。なぜならば、われわれの厚生委員会におきましても、戦傷病者戦没者遺族等援護法の改正にあたりましては超党派的に非常に不満だという声がございますし、また恩給法の一部を改正する法律案につきましても、恩給局長などの説明ではどうもがえんじがたい点がございます。たとえば私が指摘いたしました十七階級などにつきましても、保守党の議員の中にさえも今日かくのごとき階級差はけしからぬから、ひとつ超党派的に手を握つて行つてこの恩給法の一部改正は修正しようじやないか、こういう意見もあることをお考えになつて、政府はここで虚心坦懐に予算を改進党と妥協になりましたごとく、保守反動的な五大法案の一つであるといわれているこの法案を一応撤回されて、修正に応じなさる御意思がごく最近にあるかないか。ないのならば、これはまことにけしからぬことでありますから、考えさしていただきたい。これはもう考えないといけないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/102
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103・緒方竹虎
○緒方国務大臣 御意見は承りましたが、政府は軍人遺家族の生活状態にかんがみまして、この提案をごく最近の機会に撤回するというつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/103
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104・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 一度御提案になつたものでございますから、そうあつさりと副総理ともあろう人がこれを撤回するなんて、それは一議員の前に言えないかもしれないけれども、私は率直に申し上げておきますが、こんな恩給法の一部改正、こんな援護法の一部改正で、政府は遺族にこたえ、軍人にこたえたつもりかもしれませんが、多数の戦争遺児や、未亡人や、遺家族や英霊にこたえて、真に戦争犠牲者に国が償つて返すという精神は盛られておらないのであります。また自由党の中にもずいぶん異議をお持ちの方があるのでございますから、これをひとつしつかりと耳に入れておかれまして、どうか緒方副総理は修正に応じられるように特にお勧めしておきたいと存じます。
それから最後にもう一度私は緒方副総理に念を押しておきますが、大体戦争犠牲者の英霊だとか、遺族だとか、遺児とかいうもに対しては、慈善憐憫的な立場から援護するのが国の義務とお考えになつておるか。それからいやそうではなしに、この人たちに大きな犠牲を背負わせたのであるから、生活を保障する意味において国家が償わなければならないというお考えをお持ちになつておるのか、戦争犠牲者に対する根本的な政府のお考えをひとつ承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/104
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105・緒方竹虎
○緒方国務大臣 戦争犠牲者に対する救済の意味ももちろんございますけれども、政府が立案いたしました趣旨は、恩給法の復活というところにあるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/105
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106・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 緒方副総理は、恩給法の一部改正やら遺族援護法については、問題がこまかいとお考えになつております関係か知りませんが、あまりピンと行かないようでございますが、もう一度お尋ねをいたしますのは、戦争のために犠牲になつた人たちに、ある程度の弔慰金を出したり、年金を出したり、補償をしたりすることは、助けるという意味であるのか、また国家が当然償わなければならないとお考えになつているのか、それについてお答えを願いたい、こう申すのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/106
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107・緒方竹虎
○緒方国務大臣 これは国家の公務員に対する課せられたる義務としてやつておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/107
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108・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 さすれば閣内の大臣の間において違いがあるのであります。厚生委員会において厚生大臣はあくまでも戦傷病者、戦没者、遺族等は援護するものであるという考えを持つておるとお答えになつた。副総理は国家の義務として補償しなければならないとお考えになつておつても、当の厚生大臣が援護するものであるという建前をとつて、堂々とこれを国会で正式に答弁しておいでになるのでありますから、閣内の思想統一が行われておらないことは確実だと思う。閣内の思想統一ができておらないからこそ恩給法の一部改正と、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正をここに持ち出してみても、援護やら補償やら、一体軍人に重きを置くのやら普通一般戦争犠牲者に重きを置いているのやら、ピントをどこに置いて、何に向つて進んでいるかという政府に一貫した考えが流れておらない。そこで、あるところでは援護となり、あるところでは補償となり、あるところではその補償が、いわゆる補う補償と、社会保障の保障とありますが、この三つが入りまじつて何ら思想の一貫しないものになつておる。政府は恩給法の一部改正をお出しになつておりますけれども、要するに地下の英霊を慰め、その国家的犠牲に対して謙虚な気持で、この方々の家庭に対して国が何とかしなければならない、少くとも国家が償わなければならない、あくまでもそれは社会保障的な見地からこれをなさなければならないという考えを持つて対処しておるのでございますけれども、政府は、あるときには援護と称し、あるときには補償と称し、またあるときには保障と称して、何ら戦争犠牲者に対する一貫した研究ができていないところに、去る二十七年度の援護法の審議のときにもつかれ、この二つの法案の改正にあたつても、大臣の答弁が違う、支離滅裂的な状態になつたと思うのでございます。(「恩給法の審議をやつているんだ」と呼ぶ者あり)今恩給法の審議であるという声がございましたけれども、恩給法の審議どころか、内容の九十何パーセントは戦傷病者戦没者遺族等の援護でございますから、これは自由党のように切り離して考えることはできないのでございます。もう一度虚心坦懐に閣議にお持ち出しになつて、この二つの法案を検討されてから、もう一度顔を洗つて国会にお出直しを願いたいということを申し上げ、副総理がしばらく御勉強になりますまで私は質問を保留いたしまして、これで一応他の方に譲ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/108
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109・稻村順三
○稻村委員長 鈴木義男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/109
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110・鈴木義男
○鈴木(義)委員 緒方副総理がせつかく出て来られましたが、あまりよくわかつておられないようでありますから、わからなければ率直にわからないと仰せられて、恩給局長の方に答弁を譲られるように希望いたします。
第一の質問は、恩給を今年の予算に組んでおりますのが四百五十億ということでありますが、九箇月分であるから、実際は五百七十七億である。それはどういう根拠から出て来た数字であるか、恩給制度をお考えになるについて、それらを合計すると、こういう数字になるのか、大体四百五十億くらいしか出せないので、それに合うような制度をお考えになつたのであるか、そこをお尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/110
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111・緒方竹虎
○緒方国務大臣 政府委員からお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/111
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112・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今の御質問は、四百五十億円に押えたのは、一体金を先にきめてしたものかどうかというような御質問じやなかつたかと思うのでございますが、実は政府部内におきましては、昨年秋建議されたところもございますので、でき得るならば、あの建議されましたように恩給を給するような措置を講じたいということで実は予算の検討をいたしたのでございます。しかしその建議された通りに恩給を給しますことが財政当局の財政上の見解からいたしまして困難ということになりましたので、そうしてその支給し得る限度は、どうしてもこの限度しかないということになりましたので、実はこういうことになつたのでございます。しこうしてこの四百五十億円として、内容は、計数的に整理いたしまして一応こういうところにまとめたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/112
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113・鈴木義男
○鈴木(義)委員 私はこれからいろいろと聞きたいのでありますが、おそらく数字にわたることが多いので、緒方国務大臣は答えないのじやないか。ほんとうは答えなければならない程度の数字でございますが、そうだとすると、大臣に対する質問だけにしてくれ、局長が答えるのなら質問をやめてくれというお言葉がありますので、それなら留保するほかないのであります。ひとつ聞いてみてそうであればやめることにいたします。文官の恩給の額及びその総数はどういうことになるか、文武官を合せたものかどういうことになるか、それの予算の金額に対する。パーセンテージをお伺いいたします。副総理がお答えになれなければ、ここで質問を留保して中止いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/113
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114・緒方竹虎
○緒方国務大臣 政府委員からお答えをします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/114
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115・鈴木義男
○鈴木(義)委員 それではぼくの質問は後に譲ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/115
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116・稻村順三
○稻村委員長 それでは副総理に対する質疑を続けます。長谷川保君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/116
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117・長谷川保
○長谷川(保)委員 先ほどからの応答を伺つておりますと、副総理のお答えでは、一応今回の恩給法一部改正は、潜在しているという形であるけれども、軍人としての既得権の復活ということ、それから太平洋戦争の責任を軍人にのみ負わせるということはよくないというお考えのもとに、今回の改正をせられるというように伺つたのでございますが、そうすると今回の恩給法の一部改正の主たる目的は、職業軍人の既得権の復活、その恩給の復活ということを中心としていると考えてよろしいわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/117
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118・緒方竹虎
○緒方国務大臣 厳格な意味で既得権の復活ということは私はできないと思いまして、その点について特に注意をして申しておるのでありまするが、旧軍人の恩給を支給する法案であるということには間違いはございません。これが特に軍人に重きを置いたと仰せられまするけれども、これは政府の恩給法に文官の恩給がありまする限り、軍人のみ恩給を廃止したままにしておくことは国として義務を欠くことになりますので、その点をある形で復活いたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/118
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119・長谷川保
○長谷川(保)委員 私は今回の恩給法の改正の根本的な観念に対して、非常な疑問があるのであります。この点は堤委員もちよつと伺つたようでありますけれども、今回の恩給法の改正は、御承知のように七年以上引続いて軍務にあつた者のみが一般の原則的にいえば恩給を受け、そうでない短かい者には一時恩給というようなものがわずかに与えられるというようになつていると思います。私は、太平洋戦争において召集されました軍人諸君のうちで、応召軍人の損害は非常にはなはだしかつた、一家を捨てて軍に従つて、その損害は非常にはなはだしかつた、なくなつた方はもちろんでありますが、負傷した人にいたしましてもずいぶんひどい損害を受けられたと思うのでありますが、この応召軍人の受けられました損害と、職業軍人の受けられました損害というものと、一般論ではございますけれども、その損害の程度につきまして副総理はどういうようにお考えになつておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/119
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120・緒方竹虎
○緒方国務大臣 この恩給法の一部改正法案の考え方は、職業軍人と応召軍人に対しての区別は全然持つていないのでありまして、七年という年数が妥当であるかどうかということにつきましてはいろんな議論があろうと思いまするけれども、職業軍人も応召軍人もおしなべてその恩給年限に達した者には支給するのでありまして、こういう法案の制定にあたりましては、それ以上にやりようがないと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/120
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121・長谷川保
○長谷川(保)委員 七年という期限が妥当であるかどうかおわかりにならないかというようにおつしやいますけれども、これは妥当だというお考えでつくつたに違いない。さてそうなりますると、実際において七年以上引続いて軍務にあつた者というのはほとんど応召軍人ではないと思うが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/121
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122・緒方竹虎
○緒方国務大臣 政府委員から答弁いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/122
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123・長谷川保
○長谷川(保)委員 緒方さんでわからなければあとでいいです。
この点はすでに世間であらゆる点でずいぶんとつかれている点であります。私は七年以上というこのことが、旧職業軍人のみを一般の応召軍人よりも非常に重んじていることになると思う。そこで客観的に非常に不公平になるということを指摘しておかなければならないのであります。
次に、国家総動員法によりまして動員せられました諸君、あるいは被徴用者、学徒あるいは女子挺身隊の諸君、こういう諸君で、みずからの意思によらず徴用せられ、遂に爆死したというような諸君や、その遺族あるいは負傷いたしました諸君に対しまして、御承知のようにわずかに三万円というような弔慰金が贈られたのみであります。それ以外の者は年金や、こういろ遺族扶助料というようなものは与えられておりません。こういうことは、今の職業軍人に対する国家の義務とおつしやいまする立場から申しまして、不合理と思いませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/123
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124・緒方竹虎
○緒方国務大臣 国家総動員法により動員された者の負傷につきましては、たしか援護法でやつておるのでございまして、この恩給は先ほど申し上げましたような観点から立案をいたしましたので、この中には入つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/124
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125・長谷川保
○長谷川(保)委員 今申しましたように、総動員法で徴用されまして死んだ者には弔慰金がわずか三万円だけであります。この恩給法の一部改正では、先ほど申しましたように、そういう者に何ら触れておらない。同じ国家のために徴用されて犠牲になつた者でありますならば、——私どもは職業軍人で戦没いたしました方々あるいはまた傷痍者、こういう人たちを捨てようというのではありません。こういう人たちに対してもわれわれは当然補償すべきだという立場をとりますけれども、同時にこの総動員法によつて徴用されました諸君に対しまして、年金もなければ遺族扶助料もないということでよろしいかと聞くのであります。副総理の御意見を聞きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/125
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126・緒方竹虎
○緒方国務大臣 国家の財政が許さなくてやむを得ない措置になつておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/126
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127・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 ちよつと議事進行について……。先ほどから私は緒方副総理の御答弁をこうして横から承つておりますが、はなはだ無責任きわまる。私は大臣は紳士でいらつしやいますから、あまり野人めいたことを言わないでと思つて、私のときは遠慮しておりましたけれども、しかしはたの委員の質問に対しても、大臣はこの恩給法一部改正を提出された提案者の一人として、責任を持つてお答えになるような御研究もなさつておらなければ、その気概もない。私はけしからぬと思うのであります。従つて委員が質問をいたしましても、もつとしつかりと答弁ができるこしらえをして、大臣はここにお出ましになることが、当然だろうと思うのでございます。どうしても緒方副総理がいつまでものらりくらりとした御返事しかできないならば、この委員会へ出て来てもらつているかいがありませんから、ひとつ勉強をしていただく時間を差上げてはいかがと思うのでございます。ひとつお諮りを願います。
〔「何を言うか」と呼び、その他発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/127
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128・稻村順三
○稻村委員長 柳田君、関連質問はたくさんありますので、一言だけ簡単にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/128
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129・柳田秀一
○柳田委員 ただいまの同僚長谷川委員の質問に関連してお伺いいたします。従来の恩給の観念は、これは天皇から恩恵としていただく、さように解釈しておりました。もとよりこの恩給ができましたのは、西南の役の後のことでありまして、文官恩給はそれからずつと遅れております。ところが主権在民の今日では、この恩給という字句そのものがおかしいのですが、少くとも国民の血税から出た金ですから、結局恩給の概念というものは、そういう点においてはかわつておると思いますが、その点に関してひとつ副総理のお答えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/129
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130・緒方竹虎
○緒方国務大臣 天皇陛下からやるにしろ、何にしろ、今日の恩給の概念は、恩恵的なものではございません。国家の公務に対して、義務として出しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/130
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131・柳田秀一
○柳田委員 それではお尋ねいたします。旧軍人恩給の復活ということを言つておられますが、この恩給法というものは、元々文官にはなかつた。この恩給法というものは、軍人に対する恩給法で、そのうち文官がこの軍人の恩給にくついて行つたのです。従つて恩給法というものの考え方は、元々軍人に対する国家というよりは、天皇の恩恵ということで成立したのです。そこで、その当時恩給法が成立したときの社会背景と、現在の社会背景とは、全然違つておる。すなわち西南戦役、日清戦役、日露戦役のころには、別に国家総動員法もなければ、空襲によつてあるいは原子爆弾によつて、国土が戦場にもなつておらない。あるいは在外資産を喪失したというような海外移住者の問題もなければ、あるいは学徒動員もなければ、勤労隊もない。あるいは強制疎開もなければ、戦争によつて家を焼かれた者もない。そういうふうに、全然戦争というものの概念がかわつておる。同時にまた、そういう戦争によつて被害を受けたところの背後社会というものは、様子が全然かわつておる。その社会背景がかわつておるにもかかわらず、錦の御旗を持つて行つた西南戦役の後の軍人恩給と同じように、復活させた意図はどこにありますか。この点をひとつ承つておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/131
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132・緒方竹虎
○緒方国務大臣 恩給法の由来は、今お話のような事情もあろうかと考えますが、今回のものは、先ほど申し上げましたように、戦争中に恩給法が廃止になつた、あるいは制限された、そこから出発いたしまして、文官恩給がある限りは、それと並行して、旧軍人に対する恩給も、できるだけのまかないをしなければならない、そういう観点に立つたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/132
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133・柳田秀一
○柳田委員 どうもはつきりしません。それならば、先ほどの御答弁のように、そういうような国家総動員法によつて犠牲を受けられた方々に対しては、戦傷病者戦没者遺族等援護法によつて補つておるというふうに言つておられますが、この援護法を見ましても、この法律は、軍人軍属等が公務によつて云々という者に対しては、国家補償の精神に基き援護するとあります。従つてこの点は、緒方副総理はお認めになるわけですね。そういうような国家総動員法に基いて、戦争によつて犠牲を受けた者に対しては、国家補償の精神に基いて援護する。厚生大臣は援護法をそういう精神で出しておられる。恩給法についても、緒方副総理は、そういう精神的統一はないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/133
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134・緒方竹虎
○緒方国務大臣 それは軍人恩給について厚生大臣が説明したことではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/134
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135・中川俊思
○中川(俊)委員 副総理は時間がないようですから、私は関連して一言だけ……。これは関連というと、関連じやないと諸君はおつしやるかもしれませんが、重大な関連があると思つて、お聞きするのです。副総理といえども、そうこまかいことは御存じないでしよう。われわれもあまりこまかいことは知らない。そこでこの問題は、恩給局長なり恩給局と、われわれも十分に話し合いたいのです。そこで副総理にお尋ねすると同時に、これはわれわれの希望ですが、恩給局を小田原に置いておるというのは、一体何ごとですか。恩給局の方は、一週間に一ぺんか二へんしか出て来られない。いろいろな問題をいろいろ研究しようと思つても、小田原にある。そういうようなことで、小田原に行つたり大磯に行つたりしている。ことに恩給といえば、今重大な連合委員会を開いておる状態なんですから、緊密な連絡をなす上において、恩給局を東京にお移しになる御意思があるかどうか。あるかどうかというのでなく、ぜひこれは移していただきたい。希望を申し上げる。これは関連ないとおつしやれば、関連がないのですが、これは重大な関連がある。その点を、副総理からひとつ明確に御意思を承つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/135
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136・緒方竹虎
○緒方国務大臣 早急に移すようにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/136
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137・稻村順三
○稻村委員長 それでは長谷川君、あと一問だけに願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/137
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138・長谷川保
○長谷川(保)委員 非常にお急ぎのようでありますから、少し端折ります。今動員法で徴用されました者のうちで、結核が発病いたしまして、帰郷いたしまして、死にました方や、あるいはまた、総動員法で徴用されておる間に、そういうようになつた方もあります。あるいは召集されまして、結核にかかりまして、うちに帰つて死んだ者もあります。そういう君たちが、今度全然顧みられないのであります。軍人恩給の線でも、あるいは援護法の線でも、顧みてもらつておりません。こういうような者が、少くとも五万人ぐらいあろうと私は思うのでありますけれども、何ら弔慰金ももらえなければ、扶助料ももらえない。あるいは今日長い間病気をしておりますけれども、何ら国家から見てもらえない。こういうようなことを、副総理は不合理と思いませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/138
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139・緒方竹虎
○緒方国務大臣 国家としては、何とかしなければならぬことだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/139
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140・長谷川保
○長谷川(保)委員 つまり不合理であると今お認めになつたというふうに拝聴するわけでありますが、これに対しまして何とかするということを、ごく近い将来にこれを改正するというふうに考えてよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/140
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141・緒方竹虎
○緒方国務大臣 ちよつとお尋ねしますが、この恩給の改正でございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/141
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142・長谷川保
○長谷川(保)委員 恩給法の改正と考えてもよろしいし、どちらでもよろしい。どこでこれをお救いになるかということは別問題ですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/142
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143・緒方竹虎
○緒方国務大臣 恩給法の改正案といたしましては、この法案はこのまま通していただきたいと思います。これを御審議途中で修正するつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/143
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144・長谷川保
○長谷川(保)委員 同じように国家のために徴用されまして、そうしてこういうようなひどい目にあつている。それに対しては何ら補償をしない。職業軍人だけは補償する。これは私は間違いだと思う。それだからこの恩給法の一部改正に一緒にこの問題を入れなければならぬ。これが入れられないということはおそらく財政の問題という、ことでありましようが、ここまで手を伸ばすならば、なぜそこまで手を伸ばさないか。政府は軍人恩給だけを尊重して、一般の国民の大きな犠牲者をあとまわしにするのは根本的に間違いだと思う。これに対してどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/144
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145・緒方竹虎
○緒方国務大臣 それが公務であるかどうかということに問題があつて、そこまで今日まだはつきりしていないのだと思います。さらに研究して慎重に決定すべきものであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/145
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146・長谷川保
○長谷川(保)委員 徴用されて犠牲になつた、これを公務と言わずして何と言うか。徴用されておつてそれで発病した、あの当時のあの過労と栄養の失調、こういうものを考えれば、結核になつた人も公務と見るのが当然だと思う。しかるに政府は単なる財政の問題からこれらの人をオミツトしておる。しかるに今日遺族についてはもちろん異議はありませんけれども、この恩給法改正の中に健康な旧職業軍人が入つていることは断じて承服できません。これをするならば、なぜここまでしないかと私は言うのであります。この点すみやかに改正なさる意思があるかどうか。たとい今国会でなくても次の国会に出すというような腹が政府にあるのかどうか、はつきりと承つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/146
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147・緒方竹虎
○緒方国務大臣 この恩給法につきましてもまだ不備な点も相当あろうかと思います。今の点だけをこの次の国会で改正するということは必ずしもここで言いかねますけれども、恩給法の指摘されます点につきましては、なおよく検討するつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/147
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148・稻村順三
○稻村委員長 高瀬傳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/148
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149・高瀬傳
○高瀬委員 私が一昨日でしたか内閣委員会において政府の所見を緒方副総理を通してただしました点は、根本的にこの恩給法の一部を改正する法律案の内容についてでありますが、私どもは改進党の立場といたしまして、先ほどから政府とわれわれ委員の間でとりかわしておる問答を見ましても、一体これがほんとうの恩給権の復活であるか、あるいは一昨日緒方副総理は潜在的恩給権の復活とかいう言葉を使われましたが、とにかくこの問題についてはつきりした政府の見解をただしておきませんと、改進党といたしましては詳細の内容の論議に入ることはできないのであります。従つて一昨日これは恩給権の復活ではないという緒方副総理の言明がありましたが、私はこれについて疑義を持つておりますので、最初から今回この席上においてはつきりした言明を伺うまで問答を続けたいと思います。従つてまず第一に、一体政府はこの恩給というものを権利として認めておるかどうか、この点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/149
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150・緒方竹虎
○緒方国務大臣 一昨日私が申し上げましたのは、厳密な意味でこれを既得権の復活とは認めておりませんと申し上げたのでありまして、潜在的という言葉が適切であるかどうかしりませんが、潜在的という言葉が出たのでありますが、一種の位置が認められているというふうに感ずるので、それに基いて旧軍人に対する恩給をここで措置をするという意味を申し上げたつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/150
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151・高瀬傳
○高瀬委員 それでは、国家が官公吏に対して恩給を与えるということは法律によつて認められていると私は解釈いたしておりますが、そうではないのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/151
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152・緒方竹虎
○緒方国務大臣 それはその通りでございます。その通りでありますが、軍人恩給の場合には、占領下ではありまするけれども、政令といたしましてこれを一度廃止または制限いたしました。その事実がありますので、既得権の復活ということは厳密な意味でいうとできない、そういう解釈をとつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/152
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153・高瀬傳
○高瀬委員 しかし昭和二十年十一月二十四日の総司令部の覚書に基いて政府は同年勅令六十八号かを出し、それに引続いて講和条約が発効したとほとんど時を同じくいたして、五月二十一日でありますか、恩給法を二十八年の三月三十一日まで延期するという特例法を出した、こういうことになりますと、一体この特例法は何に基いて出されたのでありますか、これは非常に疑問とせざるを得ない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/153
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154・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 講和条約の効力の発生に伴いまして、講和条約の効力発生後何らの法律的措置が講ぜられない場合には、六箇月立つた場合においては失効する、こういう法律が制定されたのでございます。その間に何らかの法律的な措置が講ぜられた場合におきましては別といたしまして、講ぜられぬときはそういうようなことになることになつたのでございます。そこでその法律に基きまして、六箇月以内に今高瀬委員も仰せられますような措置が講ぜられたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/154
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155・高瀬傳
○高瀬委員 そういたしますと、この特例法は、国家の持つている法律でちやんと義務づけられているところの恩給を支払うという義務を全然認めずに、ただ形式的にこれを出したのでありますか。この点私は非常に疑問に思う。恩給権というものを認めておらなければ、こんな特例法を出す必要はないと私は考える。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/155
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156・緒方竹虎
○緒方国務大臣 私十分心得ておりませんので、政府委員から御返答申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/156
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157・高瀬傳
○高瀬委員 それでは一体政府は、日本が独立国になつた今日、かつての武官の恩給に対する既得権を尊重しないおつもりなんでありますか、つまり文官と武官と差別をつけて恩給を支給する、あるいは文官には、たとえば追放になつても、追放が解除になれば恩給に対する既得権を与える。しかし武官についてはポツダム勅令で総司令部の覚書があつたから恩給権が全然ない。内在的なそれらしいものを基礎にして、恩給法の一部を改正する法律案を提出した。これでは根本理念が明らかでないのでありまして、一体文官と武官と何がゆえにそういうふうに恩給権というかつての権利に対して相違をつけるのか、あるいはつけていないのかもしれませんが、その点がはつきりしないと、われわれ改進党としてはこの内容の審議ができないのであります。これは改進党の総意でありますから、政府はこの点についてはつきりとした見解を披瀝していただきますことを私は切望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/157
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158・緒方竹虎
○緒方国務大臣 政府といたしましては、軍人恩給に関する限り、一時廃止されたという見解をとつておるのであります。既裁決の恩給証書のようなもので、廃止されたのでありますが、しかしながら国といたしまして、旧軍人の位置を何とか認めて、その恩給に当る措置をしなければならないということから、今度の恩給法案を出したのであります。従つて、今何か区別があるかというお話でありまするが、観念として区別はありませんけれども、一応廃止されて、一面におきまして恩給がないところから出発いたしたために、数字の点において非常な不均等なものが現われた事実が存在するのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/158
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159・高瀬傳
○高瀬委員 どうも緒方副総理の答弁ははつきりしないのでありますが、それでは、文官が追放になつた、それが解除になつた、そうすると自然に自動的に恩給権ができた。それと同じように、かつての軍人全体に対して、総括的に総司令部の覚書で廃止されたけれども、講和条約と同時にこの勅令六十八号は当然効力を失う、これは法理的に見て当然だろうと思います。講和条約の発効と同時に、このアメリカの覚書なんというものは当然効力を失うのでありまして、講和条約の発効と同時にこの勅令六十八号は効力を失うというのは、法律的に解釈して当然なのであります。従いまして、この思給法の改正というものは、軍人の既得権の復活の上に立つて論議されなければならない。ただ金額の点について、四百五十五億、あるいは十二月まで五百七十七億という点は、国家財政の見地から見てやむを得ない。この点を追究するものではありませんが、たとい戦争に負けても、明らかに軍人には恩給権がある、ただそれが完全に復活することができないから、国家の現状に応じて、四百五十五億の範囲でわれわれは審議を進める。これならば話がわかるのでありますが、一体恩給権があるのかないのか政府もわからないし、審議する方もわからない、うやむやのうちにこの恩給法を審議すると、将来日本再建にとつて大きな禍根を残すと思いますので、緒方副総理にはお忙しいところを恐縮とは思いますけれども、この点政府としてもはつきりと見解を披瀝して、その上に立つて堂々とわれわれは審議を進めて行きたい。私は決して恩給法の一部改正に反対するものではないのでありますが、その点がはつきりいたしませんと正確なる基礎の上に立つてこの問題を論議することができない。これは当然政府としての義務であろうと思いますので申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/159
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160・緒方竹虎
○緒方国務大臣 先ほどの私の答弁を繰返すようでありますが、政府といたしましては、ポツダム政令によつて一度廃止されたものでありますだけに、その恩給を復活する場合に、多少の不均等があつたことはやむを得ないという解釈に立つておるのであります。これは先ほど申し上げた通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/160
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161・高瀬傳
○高瀬委員 ただいま副総理の言われた多少の不均衡という不均衡を私どもは問題にしているのではないのであります。恩給というものは、明らかに経済上の獲得能力喪失に対する損害の補償であるということを高木三郎氏も言つております。それからまた、この制度の特質というもうは、退職または死亡のときの条件に応じて、その後において適当な生活を維持するに必要なる所得を与えることを目的とする。こういうことに大体通念はなつておりますから、これが恩給であるかないかによつて、将来物価の変動その他に従つてベース・アップをする場合、たとえば文官においては、すでに二十三年、二十五年、二十六年には二回、計四回にわたつてベース・アップをしているのであります。従つてこの恩給法の一部を改正して、将官、佐官あるいは兵、十四階級にわけるにいたしましても、十七階級にいたしましても、恩給を与えた場合に、これが、恩給権の復活であるかどうかということによつて、将来これらの受益者が、物価が上つたからこれを上げてくれ、あるいは上げてくれるなということの、ほんとうの根本的な基礎になるものであります。これは政府にとつても非常に重大であるし、この改正を取扱うわれわれにとつても非常に重大な問題でありますので、これはどうしても恩給権の復活だという建前をはつきりしておきませんと、政府にとつて大問題だと思います。われわれも責任は重大であります。従つて、私は今まで内閣委員会で伺い、また今日拝聴した緒方副総理によつて代表される政府の見解によつては、改進党としてはとうてい内容の審議に立ち至ることができないだろうと思いますので、この点について十分御考慮願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/161
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162・緒方竹虎
○緒方国務大臣 今仰せになりました意味の恩給権の復活ということは言えると思いますけれども、既得権そのままのものが復活するということは、どうも私は言えないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/162
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163・高瀬傳
○高瀬委員 確かに既得権そのままの復活ということは、恩給権の内容については、いわゆる国家財政によつて規制されておりますから、その点は私も率直に認めます。恩給権の復活といつても、実際、対象が今まで通りの恩給権をそのまま復活して恩給をもらおうとすれば、相当な金がいります。しかしながら国家財政の内容によつて規制されておりますからその点を私はかれこれ申すのではありません。しかし根本的の概既念からいえば、これは恩給権の復活である。しかし国家財政の内容から見て、この程度の問題——それから敗戦後のいわゆる日本の社会状態に応じて、必ずしも上に厚く下に薄いという考えはよろしくないから、こういうふうに是正する、そういうことをやりましても、これは決して恩給権の復活そのものでないとは言えないと私は思うのであります。日本の置かれた経済的立場、国際的立場あるいは社会情勢ということから勘案して、いろいろな内容的の変化は、おそらく恩給を受ける方々も容認されると思う。そして根本的にこれが恩給権の復活であるという政府の正しい見解を披瀝されても、ある一部の人が主張しているように、再軍備の前兆であるとか、あるいは保安隊の関係があるとか、私どもはそんなけちなことを考えておるものではありません。それから職業軍人に対してこの恩給をやるというふうに言いますけれども、そんなことも全然ない。一体将官級というものはこの総数の一割にも当らない。大体この恩給を受ける者は下級の将校であり、下士であり、応召兵であつて、いわゆる将軍連とか中堅幹部などは総数の一割くらいにしか当らない。先ほど長谷川君が盛んに職業軍人、職業軍人と言われましたが、私はそんな誤つた観念でこの恩給法の改正を論議したくない。大体将官級というものは、全部の恩給を受ける者の総額の一割にも満たない。だからこの点は政府も自信をもつて、恩給権の復活なり、但し財政に規制されるから、いろいろな異動あるいはいろいろな変化はやむを得ない、こういうふうに答弁しておかれたらどうです。私は別に政府に教えるわけではありませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/163
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164・緒方竹虎
○緒方国務大臣 厳密な意味で既得権の復活ということはどうしても言えないと考えますが、観念としての恩給権、それは文官の恩給の場合と少しもかわりないというこは言えると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/164
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165・高瀬傳
○高瀬委員 どうも副総理の言うことははつきりしない。もしそんなはつきりしない概念でやりますと、将来必ず大きな問題が起きる。大きな問題ということは、これを受ける人によつて、非常な不平も起れば不満も起きる。政府も非常に重大な責任を負うことになります。私はどうしてもこれはやはり、はつきりと恩給権の復活という立場からこれを審議することを政府は国会に求められた方がいいと思うので、一度その点をはつきり緒方副総理に反省を促します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/165
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166・緒方竹虎
○緒方国務大臣 私ははつきりしておると思うのですが、既得権そのままの復活ではないけれども、観念としての恩給権は、今の高瀬委員の仰せられる恩給権と少しもかわりがない。それは文官の持つておる恩給権と同じものであるということははつきり申し上げ得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/166
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167・高瀬傳
○高瀬委員 緒方副総理が言われるように、これは特例法なんですが、恩給法の改正ではなくして、かつての軍人の恩給権に関連する一つの特例法としてこれを審議してくれというのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/167
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168・緒方竹虎
○緒方国務大臣 法案としては恩給法の改正案になつて出ておることは申し上げるまでもないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/168
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169・高瀬傳
○高瀬委員 講和条約の発効と同時に軍人の恩給権は復活した、従つて国家が当然法律でその義務を負つておる。文官、武官を問わず恩給を与える、もらう方では権利、与える方では国家の義務、この上に立つていわゆる軍人に関する限りの恩給の権利について一部を改正する法律案である、かように解釈してこの論議を進めてよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/169
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170・緒方竹虎
○緒方国務大臣 言葉があまり適当でないかもしれませんが、潜在したその位置は恩給法が廃止されました後にもあつた、それに基いて軍人の恩給というものをここに新たに考えて、それを恩給法の改正として提案いたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/170
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171・高瀬傳
○高瀬委員 将来恩給法をどういうふうに改正するにしても、これは別問題である。一般のこの恩給を受ける軍人、軍属あるいは多くの諸君は、これを既得権の復活なりという考えを持つておる。われわれも、法律的に見ても、どう見たつてそれが当然だと思う。これはただ戦争に負けたという事実と、また軍備反対論などという風潮がいろいろからみ合つているから政府も勇気が出ないのですが、恩給権に基く復活の問題として恩給法の一部改正を審議するのだという建前で論議してよろしゆうございますかと伺つておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/171
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172・緒方竹虎
○緒方国務大臣 今の言葉通りならばさしつかえございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/172
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173・高瀬傳
○高瀬委員 それではもう一言、はつきりしておきます。最初から言います。いわゆる旧軍人については恩給支払いの義務は当然ある。すなわち国家においては法律によつて明らかに義務を負い、この恩給を受ける軍人諸君は、将官といわず佐官といわず尉官といわず兵といわず、その資格のある者は当然恩給を受ける権利がある。その上に立つてこの軍人に関する恩給法の一部を改正する法律案を政府は提出したものである。かように私は解釈して緒方副総理の確認を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/173
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174・緒方竹虎
○緒方国務大臣 恩給局長からはつきり申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/174
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175・高瀬傳
○高瀬委員 政府委員ではだめだ、副総理に答弁していただきたい。私の今解釈したようでよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/175
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176・緒方竹虎
○緒方国務大臣 恩給法改正の一つの問題として討議を進めてよいかという先ほどの御質問でございましたから、それでけつこうでございますと申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/176
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177・高瀬傳
○高瀬委員 それならば、恩給法の今のこの問題は、講和条約によつて軍人の恩給をもらう権利が復活した、つまり軍人には恩給権があるということでありますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/177
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178・緒方竹虎
○緒方国務大臣 既得権の復活ではありませんが、旧軍人に恩給権を認めたということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/178
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179・高瀬傳
○高瀬委員 それはすなわち私に申させるならば既得権の復活であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/179
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180・稻村順三
○稻村委員長 青柳一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/180
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181・青柳一郎
○青柳委員 ただいまの論議には深く触れたくはないのでありますが、ここで一つ恩給局長に承つておきたいことがあります。本日配付になりました恩給法関係法令集二十六ページの附則、これは昭和二十一年法律第三十一号の附則でありますが、この第二条に、「従前の規定による公務員又は公務員に準ずべき者については」、これはすなわち軍人または準軍人であると思うのでありますが、これについては「なほ従前の例による。」という規定があります。この規定はいかなることを物語るものであるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/181
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182・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 二十一年の法律第三十一号は、その当時恩給法の中に軍人、準軍人または戦争を前提とするような規定がありましたが、そういう規定を削除いたしました際に軍人、準軍人、ほかにもありますが、そういうものに関する恩給法中の規定を削除いたしましたが、その際における経過的規定として置いたわけでございます。この規定を置く必要があつたかどうかということが次に問題になると思いますが、先ほどから問題になつております昭和二十一年勅令第六十八号が、昭和二十一年二月一日に制定されました。これは恩給法の規定の中に軍人、準軍人に恩給を給するという規定が存在していることを前提として制定されたのでございます。そこで、その後昭和二十一年法律三十一号で改正をする際に、経過的な規定としてこういうものを置いて六十八号とのつながりをつけたというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/182
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183・青柳一郎
○青柳委員 ただいまの御解釈によりますと、軍人、準軍人については恩給権が存在するということを示すものである、そういうことになると思うのでありますがいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/183
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184・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 形式的には恩給法の中におきましては一応そういうふうになつているわけでございます。しかしながらそれは、一面において勅令第六十八号というものがあるからそういうことになつているわけでございます。言いかえれば六十八号の規定によりまして、恩給法の中には軍人及び準軍人に恩給を給するという規定はあつても、それは殺されたような、活動しない押えられたような形になつていると考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/184
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185・青柳一郎
○青柳委員 押えられた形になつておりまするが、将来復活することがあり得ることを考えての規定ではないかと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/185
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186・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 私はその当時この法案の立案に当つたのでありますが、これを復活するようなことを考えてやつたわけではございません。その当時におきましては昭和二十一年制定の勅令第六十八号——ポツ政であります。恩給法は法律でありますが、当時法律を改正することができませんでした。そこでポツ政でもつて一応恩給法はそのままにしておいて、御承知のような規定を設けたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/186
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187・青柳一郎
○青柳委員 重ねて伺いますが、ポ勅六八を置くのに必要な規定というふうに解釈されておるわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/187
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188・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 お話の附則第二条は、六八号とのつながりの意味において置かれた規定だというふうに考えております。もしも昭和二十一年勅令六十八号がなかつたとしますならば、おそらく私はその当時の恩給法に大きな改正を加えなければ、軍人に対して昔のように恩給を給するというようなことはできなかつたと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/188
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189・青柳一郎
○青柳委員 そうしますと、六八が出まして引続いて今回の恩給法の改正と相なつた、一連のつながりを持つて今日の軍人恩給と相なつたと解釈せざるを得ないのでありますが、それでよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/189
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190・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 大まかに申し上げますればその通りでよろしいと思いますが、しかしこまごましく申しますと、少し註釈を加えなければならぬ点があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/190
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191・青柳一郎
○青柳委員 それではこの問題につきましては、これで一応打切つておきます。
次に承りたい問題は、公務の範囲であります。先ほど大体の問題につきましては、高橋君から質問がありまして尽きておると思いまするが、公務で一番問題になりまするのは、病気でもつて死んだ人、すなわち公務死の範囲が大きい問題と現在なつておると思うのであります。午前中の会議におきまして田辺次長も答えておりましたが、現在未処理の案件のうち、相当多数のものが戦地あるいは内地において病気のために死んだ人である。この遺族に対して援護法を適用するかどうかという問題が、未処理になつておる部分が相当あると思うのであります。恩給局におきましては、病気の場合公務死、非公務死のけじめをどこでつけられますか、それにつきまして承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/191
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192・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 それは具体的な、個別的のケースによつて判断するよりほかないと思います。終戦以前に処理されたものにつきましては、一応の基準が設けられて、これによつてやつたわけであります。終戦に伴いまして御承知の通りたくさんの気の毒な方ができ、それが未処理のままで今日になつて来ているわけです。私もそういうような方々の実情を知りたいと思い、そうして実情に合うような法律的措置をしたいと思つています。ところが私のところに実情のわかる資料がそろつていません。その資料の収集に骨を折つているところです。今回はこういうような法案で出ておりまするけれども、あるいは場合によりましては、次かその次の国会では法案の改正をして、今のお話のような点につきまして妥当なる解決をつける道を開かなければならぬのじやないかと思つています。これが今の私の心持です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/192
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193・青柳一郎
○青柳委員 戦争にひつぱり出されて病気で死んだ人につきまして、引揚援護庁におきまして公務による死亡者でないと現在認められておりまする方々につきましても、当時はりつぱに軍から公報が来ております。一般の遺族は、いわゆる非公務死の遺族も公務死の遺族と同様に自分も考え、世間も考えておるのであります。しからばここに問題として残るのは、公務死の範囲を広むべきであるという問題でございます。もちろんその人自身の重大なる過失によつて病気にかかつた者は別でございましよう。しかしながらそうでない場合、それが相当大きい問題になると思うのであります。これらの問題につきまして、公務死の場合を相当広げて考えていただかない場合には、戦争中くだされた公報というものが何であつたかということにもなりますし、また遺族さんの中にも、現在相当大きい問題を巻き起しておるのであります。ただいまの御答弁の中には、公務死の範囲を広めようという御意図があるように思いまするが、そう考えてよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/193
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194・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 現行恩給法の中におきましても、こういう規定があるのであります。伝染病の流行しておるところを公務をもつて旅行する場合におきまして、伝染病にかかつた場合は公務としての取扱いをしている。厳格に考えますならば、伝染病の流行しておるところを公務で旅行して伝染病にかかつた場合、それがはたして公務のためにかかつたかどうかということは、事実問題としてなかなか判定がむずかしいのです。しかしながらそういうようなところを通り伝染病にかかつたような場合におきましては、全部公務のために伝染病にかかつたものとして取扱うということに法定しているわけです。そこで初めて事務が簡単に、スムーズに行くようになつているのです。私は今の青柳委員の仰せられますることは具体的にどういうケースかまだはつきりわかつておりませんが、そのケースによりましては、法定することもあるいは考えなければいかぬのじやないか、こういうことを考えているわけです。そして事が簡単に運べるようなことを考えて行くべきじやないかと思つております。しかしそれは今後の研究にまつべきだと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/194
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195・青柳一郎
○青柳委員 私のしろうと考えから申しますれば、公務死の範囲の問題にいたしましても、厚生省で考えておるよりも、どうも恩給局はかたい方であります。これは昔からそうで、しかたがないのかもしれませんが、ますますかたく公務死の範囲を狭めらられるおそれがあると私は思う。それが非常に心配なのであります。死亡公報も受け、靖国神社にもまつられておる。さていよいよ恩給をもらおうということになると、これは公務死ではないんだ、だから恩給は出ない。それではどうも一般の人もなかなか納得しないのであります。ここで承りたいのは、現在は厚生省におきまして病気を指定して——大体それは伝染病だそうでありますが、それにかかつた人は病気による公務死としておるようでありますが、現在の厚生省の規範というか、規約というか、そういうものよりもつと広める御意思はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/195
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196・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 厚生省の方でどういうふうにしておりまするか、具体的にはまだ検討しておりません。従いましてそれを広めるとか狭めるとかいうことは考えておりません。しかしながら向うの方で非常にかたく考えても、私どもの方がやわらかくものを考える場合もありましようし、あるいは私どもがかたく考えても、向うでやわらかく考える場合もありましようし、一概にどうということは言えないと思います。今私が申しましたように、終戦前後における実情に関する資料は、私のところにはまだ厚生省から来ておりません。恩給法改正案についてこうしてもらいたいということについての資料は出て来ていないのです。ですからこれは今後話し合つて行く問題と思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/196
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197・青柳一郎
○青柳委員 厚生省で病気の場合の公務死の範囲をきめられました際には、当然将来この援護法は恩給法に移るべきものでありますから、恩給局と相当相談の上にやつたものであると思うのであります。現に一つ一つの問題を取上げて、厚生省におきましては将来恩給の対象になるかどうかということについて、恩給局に問合せをしたのじやないかと私は思うのであります。そういうことが事実であるとすると、局長の今のお話は詭弁でございます。重ねて申し上げますが、一般の観念から申しましても公務死の範囲をできるだけ広目に解釈する御意図はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/197
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198・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 私は広めるとか広めないとかいうのじやなくて、理論と情実の両方から考えつ、感情に流れず、理性をもつて判断したいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/198
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199・青柳一郎
○青柳委員 恩給局のお立場は大体わかるのでありますが、感情と理論も、その人々の持つておる気持によつてかわる場合もあるのであります。それをあたたかい気持を持つて解釈せられんことを切に恩給局にお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/199
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200・稻村順三
○稻村委員長 逢澤寛君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/200
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201・逢澤寛
○逢澤委員 重大なことはすでにそれぞれの委員によりまして質問が完了しておりますが、私は二、三恩給局長にお尋ねしておきたいと思います。ちようどきようのこの委員会は内閣、厚生、海外同胞特別委員会のこの三者の委員会になつておるのであります。午前中の会議におきましても、昨年の援護法による給付が非常に遅れておる、一年もかかつておる、そこで今度恩給法に対しては一層その懸念が深いということを仰せになつた議員があつたのでありますが、私もそれは憂慮しておる。ただいまも青柳委員からお話がありました援護法に対しては、相当つ込んだ質問と調査が行われて現在給付中である。そこで今度の恩給法に対しても、その大部分は援護法の適用によつて給付された方に恩給法が適用されるということになるのです。従つて厚生省において調査されたものを資料として、そうしてあるいは戸籍謄本その他の資料は、ちようど同じような資料によつて調査されることができるのだと思うのでありますが、こういうことについて両者の間でそれぞれの交流をして調査を行う、あるいは厚生省が調査したものを利用してこれをやつておる、将来やる、こういうようなお考え方はないでありましようか。その点をひとつ伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/201
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202・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 厚生省と恩給局との間におきまして書類を流用し得るものがありますならば、もちろん今逢澤委員の仰せられるようにいたしたいと思つております。しかしながら厚生省は厚生省としての立場がございますから、あるいはできないものがあるかわかりませんが、でき得る限りそれは今お話のようなことに、事情が許すものはいたしたい、こう思つておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/202
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203・逢澤寛
○逢澤委員 これは百七十万ないし百八十万に上るところの多数の受給者の立場から言いますと、一日もすみやかに転換を望んでおるのであります。せつかく給付されることが予定されておりましても、実際現なまが入らなければ役に立たない。そこでこれが一年もかかるということになれば、その間に死んでしまう、幾万人のものがなくなつてしまうということになりますので、いろいろ役所は役所の建前もありましよう、いろいろのことがありましようけれども、そんなことは超越して、迅速にこれをとりはかろうという意味合いで、ぜひそういうことをやつてもらいたいと存じます、
いま一つは内縁関係の問題なのでありますが、内縁関係のことについては、援護法ではこれを大体承認しております。ところが恩給法では、これはむずかしいというようなことになつておるのでありまするが、これらに対しましてどういうようなお考えを持つておりまするか。もしそれ内縁であるという、はつきりした証拠がそこに出て来た場合に対するお考えを一応承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/203
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204・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 内縁関係の問題につきましては、従来から恩給法におきましては、今逢澤委員の仰せられるようなふうに認めてはいないのであります。それはいろいろ理由があるのでございまするが、その理由は、突き詰めて考えますと結局二つの理由になつておるんじやないかと思います。一つは、実際において事実夫婦関係があつたか、婚姻関係があつたかどうかという認定が非常に困難である、こういうことが一つと、それからもう一つは、法律をもつて夫婦、婚姻の関係はこれこれの手続を経て、こういうようにすべきであるということをきめておる。これは国家の公序良俗を維持するためにきめられておる。それが恩給法において、それを乱るようなことをしていいかどうかというような根本的な問題があつたのじやないかと思うのであります。今度の旧軍人及びその遺族に恩給を給するにあたりまして、この内縁関係の問題を考える場合に考えなくちやいけないことが別に一つあるのであります。それはどういうことかと申しますると、昭和二十一年の二月一日までに御両親なら御両親が扶助料をもらつておられた。そうしてなくなられたところのお子さんと事実婚姻関係があつたところの者がおられた、そういたしますと、そういう人には扶助料は行つておらなかつたのでありますが、お父さんかお母さんかには扶助料が行つておつたのです。それで今度事実上の夫婦関係といいますか、婚姻関係を認めるということになりますると、その両親の方をあとまわしにして、そして事実婚姻関係のあつた方に扶助料を差上げるかどうか、こういうような問題が起つて来るわけであります。そこで今度の恩給法におきましては、従来通りの取扱いをしつ、今逢澤委員の仰せられた通りに援護の方において事実婚姻関係のあつた方について援護をしておりますから、その援護は継続する、こういうような取扱いをすることにしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/204
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205・逢澤寛
○逢澤委員 私は、しばしば問題になつております、特に青柳委員からもさきに御指摘になりました恩給法により除外される者に対する処置が、今後に残されておるのであります、これと同時に、内縁関係の者につきましても、ひとつその際までに研究をしていただいて、その際正当のといいますか、内縁ではあつたがその証明がつく者、こういうようなある限定を加えて、これの実施を要望しておきます。
次に、これはむしろ恩給局と厚生省の両方にまたがる問題だと思うのでありまするが、生活困難な——おそらく遺族の方々は全部がそうであろうと思う、全部とは申しませんが、大部分がそうであろうと思うのですが、生活困難な人に対しましてこのたび恩給法を適用するということになると、生活保護の適用が除外されるという段階に突入する。そうすると恩給法の適用を受けるより、生活保護法の適用を受けた方が、金額の面においてはむしろ有利である。その方がいいのだという者が出て来るおそれがある。先ほどいろいろな御説明の中にも、この恩給法は、援護という精神から出ておるのではない、国家の功労者に対して、国家が礼をもつて報いるのだという性格が含まれておるのだという趣旨のお話も拝聴したのでありますが、受ける者の立場から言いましても、むしろ精神的の面が非常に重要だと思います。しかしながらその日の生活に困る者の立場から言いますと、やはり一円と二円といえば、やはり二円の方がいいと言う人も相当多数が見受けられるのであります。そこでこれを救済する方法といたしまして、私は全部とは申しませんが、その生活の困難な人、あるいは生活保護の適用でも受けるというような人に対しましては、恩給法の適用以外にこの生活保護の適用といいますか、援護法の適用といいますか、これはあわせて適用をするようなことについて、何か御研究をなすつたことがありますかどうかという点をお聞きをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/205
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206・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今の問題は、恩給受給者に対する生活保護法 適用をどうするかという問題だと思うのであります。これは実は私の所管ではございませんので、所管の関係者に今お話のありましたことはよく伝えまして、そして場合によりましたら、その所管の局長からでもお答えするようにとりはからいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/206
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207・受田新吉
○受田委員 附則第二十七条の未帰還公務員についてお尋ねしたいのであります。この法案によると、未帰還の公務員は、昭和二十八年七月三十一日において、普通恩給についての最短恩給年限に達している場合は、その日から普通恩給を給することになつておりますが、この未帰還公務員の恩給金額の算定基礎はどこへ置くか。国家公務員は未帰還公務員給与規定によりまして、三七ベース以上に上つておりません。その低い線の俸給をどういうふうに是正するのか。これは非常に重大な問題で、不公平を来してはいけませんので、政府が意図しておられる恩給金額の算定基礎をお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/207
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208・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 未帰還公務員と一口に申しましても、この未帰還公務員というものは、大体大まかに申して三つにわけられると思います。その一つは、旧軍人及び準軍人、それから軍属という軍関係の方です。その次は関東局あるいは樺太庁に勤務されておつた方々で、そのまままだ外地におられる方。その次は、内地の官庁の職員であつて、たまたま満州あるいは樺太に出張中に、そのまま外地に残つておられる方、こういうふうにわけられると思います。第一にあげました旧軍人、軍属、準軍人の恩給につきましては、この恩給法の中において御了解願えると思います。それから、今問題とされましたのは、あとの二つの場合の問題だろうと思います。そこでその二つの中の前者に関する問題につきましては、すなわち関東局、樺太庁の関係におきましては、残務整理事務所がございまして、そこで内地の職員で出張しておつた者につきましては、内地の官庁の事務当局におきまして、それぞれの職員の格付を行つているはずです。その格付に応じまして、退職したものとみなして、恩給を給するようにいたしたいと思つているところでございますが、今の御質問で御懸念されているところは、おそらく格付が非常に低いところがありはしないか。そういうところから矛盾といいますか、不合理のないように気をつけよというような御質問ではないかと思いますが、その格付の点につきましては、今いる職員と均衡のとれるような格付にされるように努力するつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/208
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209・受田新吉
○受田委員 これは現にベース・アップがされていないいとう、きわめて気の毒な立場にある公務員であります。従つて格付が非常に低いところにされていることもはつきりしております。従つて、これはできるだけ、努力するということでなくして、引続き国内で勤務しておれば、ここまで来たはずであるという線でこれを裁定するかどうか。その点について、努力するのでなくして、そうするというような意思表示をしていただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/209
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210・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 死没者なんかに関する退職金につきましては、今受田委員の仰せられるようにとりはからつて来ておると思いますが、この問題につきましても、今のお話のようにするつもりにしております。関係省との話をつけて、大体そのようにする予定にいたしておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/210
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211・受田新吉
○受田委員 それから、例の陸海軍の学校の教授であつたような人とか、その他のいわゆる文官であつて軍部関係に勤めていた人、この人々の恩給金額の算定基礎は、どういうふうにしておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/211
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212・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 恩給法上におきましては、今御指摘になりましたような方は、恩給法上文官としての取扱いを受けておつたのでございます。そこで、その方々が退職または死亡されましたときに、同時に退職または死亡された方と同じような恩給年額計算を基礎として、恩給の年額を計算するようにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/212
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213・受田新吉
○受田委員 そうしますと、陸海軍教授、あるいは海軍に理事官というものがありましたが、そういう人々の恩給金額は、これに規定されている同官等の武官と比較して、高い地位にあることは確定的です。つまり海軍教授であるならば、当時の少将相当官であつた人々は、この政府原案では、少将の武官としての恩給金額よりも、基準は高い線にあるのかあるいは低い線にあるのか、その点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/213
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214・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 文官と同じでございます。従いまして旧軍人よりも高くなつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/214
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215・受田新吉
○受田委員 これは政府としては、今までそうした陸海軍に勤務していたけれども、事実は軍務に従事しなかつた文官、それを長らく恩給の適用から除外されておつたわけですが、この人々を武官と同じ基準でながめることはできないのである。従つて長らくそうした不幸な運命で恩給をいただいていなかつた人々に対しての支給は、現在完全に徹底しているかどうか、その扶助料も完全に交付されているかどうか、これをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/215
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216・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 先ほど例をあげられました、陸軍の理事官でございますが、こういう人たちは、恩給は廃止されておりませんが、恩給法の特例から除外されております。ところが陸軍教授、海軍教授、こういうような方々は、その恩給は廃止されております。そこで今お話のような扶助料なんかは、現在給されておりません。今度この法案が通過いたしますると給されることになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/216
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217・受田新吉
○受田委員 私たちの考え方は、いわゆる武官というものに対する特権的な待遇に対して、全面的な拒否をしておるのでありますから、その点についてはこれ以上申し上げませんが、もう一つ、公平な国家の保護を与えるという意味から、先ほど長谷川さんからも言われた、例の徴用によつて強制徴用された人々に対するこの法律の適用、並びに内地で戦病死した人々までもその適用の中に入れるということ、こういう点について政府の提案の理由の説明によると、予算の範囲内でできるだけ恩典に浴させようという意図があるのですが、予算がなかつたからそういうものを除外したのか、あるいは予算は何とかなるのであるが、法の精神から除外すべきものであると認めたから除外したのか、そのいずれであるかをお伺いしたいと思います。これは副総理に聞くべきであつたのですが、恩給局長にお伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/217
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218・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今のお尋ねは、徴用工の問題とそれから内地戦病死の問題とこの二つの問題であつたかと思います。徴用工の人々を恩給法の中に入れなかつたのはなぜであるか、こういうお話であります。確かにそういうような徴用工の方々に対しまして、年金制度というものをつくるかつくらないかということについても、一つの大きな議論がありますし、つくるということも一つの見識だと思います。ところで何と申しましても、今度のこの恩給というものは、かつて給されておつた者を前提としてその範囲内においてとりあえずの処置をしようということで出発しておるところでございますので、従来の恩給法の範疇に全然入れられていなかつた人までも、入れるということは、いろんな点からできなかつたのであります。また徴用工の方々について年金制度をつくる、こういたしました場合におきまして、はたして現在のような恩給制度でよいかどうか、私は疑問じやないかと思います。私は全然別な見地から考えて行かなければならない問題じやないかと思つております。そういうような関係からいたしまして、今の恩給制度の中に取入れることは困難であつたのでございます。
それから内地戦病死者の問題でありますが、これにつきましては、予算がないから、私たちは内地戦病死者の方を公務としての取扱いをしないというのではありません。内地において戦病死された方におきましても、これは公務に起因するということが認められる場合におきましては、これはもちろん、公務戦病死として取扱いをすべきが当然であり、そういう取扱いをいたします。ただ問題は、内地戦病死の方につきまして、はたしてそれが公務に起因するか起因しないかが、具体的なケースの場合において、いろいろ論議のあるために問題が起つておるのじやないかと思います。そこで先ほど私は、いろいろむずかしいケースが出てくるかわかりませんが、そういうような場合におきましてはよく検討いたしまして、場合によりましてはこの法案を修正するようなこともあるいはお願いするようなことになるかと思います。こういうことをはつきりと申し上げたつもりでありまして、どういうむずかしい、具体的な問題があるかについては、まだ事実を把握しておりません。従つてはつきりとここでどういうような改正の法案を出すかということは明言いたしかねておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/218
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219・受田新吉
○受田委員 あわせて文官恩給についてお尋ねしたいのでありまするが、昭和二十二年以前の退職公務員の恩給金額がきわめて低率であることは御承知の通りです。これの不均衡是正ということがしばしば叫ばれておつたのですが、現行恩給法がある以上は、非常に低率にある終戦直後までの退職公務員が現在まで在任しておるとしたならば、現行給与基準で恩給をもらう人々が、その低率にあまんじている現状をどういうふうに打開するかということについて、恩給局長としても十分お心得であろうと思うのですが、今回の予算でもわずかに六億程度を計上されておるにすぎないのでありまして、これは恩給が文官の特権であるという意味とは違つて、ずつと前にやめた人をうんと低い、現在の給与の半額以下に押しやつているという現状を打開するのに、政府の努力の足りなかつたことを示すものだと思うのです。これに対して恩給局長としての、でこぼこ是正に対する、以前にやめた人々の不均衡を是正するに対する心構えをお伺いしておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/219
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220・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 昭和二十三年六月三十日前に退職または死亡された公務員の恩給につきましてのいろいろの御質問でございますが、ことしの一月からこういうような方々の恩給はかなり増額の措置を講じております。これは御承知の通りでございます。従いましてその結果私が今申し上げましたような方々の恩給は相当増額されたと思つておりまするが、それでもなお、今お話のごとく、いろいろな問題が出て来ました場合におきましては、そのときにおいてとくと十分慎重に考慮して、できるだけのことはするように努力いたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/220
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221・稻村順三
○稻村委員長 中川源一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/221
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222・中川源一郎
○中川(源)委員 恩給法の問題につきまして若干お伺いいたしたいと存じます。私先輩各位が御質問になりましたのを拝聴いたしませんでしたので、重複をしないように二、三伺いたいと思います。恩給局長の御答弁がいただけますなら、たいへんけつこうでございます。未亡人が生活ができないために、やむを得ず正式に結婚する。ところが最初の話と違つていたというので、ただちに結婚を解消した。連れて参りました子供もその養子縁組をただちに解消したというような者も相当あるわけでございます。これらに対しましては恩給法を適用されるのであろうか。パンパンとかで、だれかれなしに浮気をしているような者に対しては恩給がもらえるのであります。親と一緒に暮さずに、どこに暮しているかわからないというような未亡人が恩給を受くることができる。そうしてあやまつて結婚して、ただちに解消した者はもらえない。一旦籍がよそに行つた者はもらえないというようなことでは、あまりに気の毒であると思う点があるのでございますが、これらの未亡人の結婚解消並びに養子縁組を解消したというような者に対しましては、さらに考えてもらう余地があるかどうかということをお伺いいたします。
それからこれは厚生省関係になるかもしれませんが、公務扶助料をもらいまして、生活保護法の所得から差引きされる……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/222
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223・稻村順三
○稻村委員長 質問の途中ですが、それは厚生の関係者に対する御質問のようですが、厚生省の当該政府委員の出席を要求しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/223
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224・中川源一郎
○中川(源)委員 それではお呼びしていただいて、いたしましよう。
それから台湾の人で現在台湾に国籍があつて、戦争当時は日本人であつた、朝鮮の国籍があつても、戦争当時は日本に国籍があつて、そうして日本の国のために戦死した者、傷ついた者、あるいは千島とか沖繩にもあるけれども、これらに対しまして、明確に戦死したということのわかつておる者に対しまして、恩給が出せるものであるかどうかということの御答弁をひとつ。
それから先ほど恩給局長から、内地死亡者であつても、公務であるということがはつきりすれば、それは恩給を渡そうということのように承つたのでありますが、援護法では、内地とかあるいは朝鮮、満州方面で死没いたしました者に対して年金、弔慰金を支給されていない向きがあるのでございます。長い間満州以外の地で転戦して、苦労して来た兵隊が満州に行つて、そうして寒いところで凍死したというような者に対しましては、援護法では該当しないというふうになつておるのでありますが、こういう者は当然該当させるべきだと私は思います。また自殺した者、自殺と申しましても、戦争に負けて自分らの力が足りなかつたのであるという責任感から腹をかき切つて男らしく死んで行つた者、また敵が目の前に出て来て、どうせ敵に殺されるよりも自分らで先に死のうじやないかと刺し違えて双方とも死んだ者、こういう者があるわけでございます。これらの人は、逃げまどつて無事に帰つて来た人よりも、精神的にも実際的にももつとりつぱであると思うのでありますが、これらの人が恩給法の恩典に浴することができるかどうか、こういう点をお尋ねいたします。他の問題は高橋先生初め皆さんからたいへん詳しく御質問があつたようでありますのでこういう二、三の点についてお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/224
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225・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 第一に未亡人が婚姻されてその婚姻を解消された場合において、その婚姻によつて失われたところの扶助料権を復活してもらえないかというようなお話でございましたが、一旦失つた権利を復活するということは困難ではないかと私は思つております。
それから台湾、朝鮮人で戦傷病死した人の取扱いについてお話がございましたが、今の恩給法の現状からは給し得ないようなことになつておりますので、もしも給するということになりますれば、特別な法律的な措置がいることと思つております。
それから最後に自殺者の問題についての御質問がございました。これノモンハン事件といいますか、私はつきり覚えておりませんけれども、ああいう大東亜戦争以前におきましても、戦線におきまして敵と相対峙中において自殺した者に恩給を給した例もあるのでございます。ただ単に自殺をしたから恩給を給さない、こういうふうに単純に考えているわけではないのであります。これはその場合々々のケースによつて考えて行くべきものと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/225
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226・稻村順三
○稻村委員長 臼井莊一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/226
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227・臼井莊一
○臼井委員 先ほどの副総理の御答弁において大体恩給法の復活であるというふうに承認されたようでありますが、ただ厳密な意味でないということは、その内容において相当かわるからだと私は解釈するのであります。そういたしますと、当然加算という問題もここに大きくクロース・アップされて来るのです。この加算の問題については、局長の先ほど来の御説明によると、若年短期であるからそういう余裕のある部分はむしろできるだけ遺家族の方にまわしたい、これは現在の限られた予算においては無理からぬことと思います。しかし若年といいましても、若年停止が過ぎておりますから、当時において若くても、現在相当年輩になつて来て、これを非常に残念に思うという人も出て来ると思うのですが、どうして若年なるがゆえにほかにまわそうと局長はお考えになるのか、その点についてちよつと伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/227
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228・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 私は恩給制度というものの本質から考えまして、短期の、わずか四年前後在職したような人に恩給の行くような制度というものはこの際考え直すべきではないか、こういうようなことを前提にして申し上げたのであります。ドイツにおいてもこういうような加算の制度はやつておりません。イタリアにおいてもやつておりません。戦勝国のアメリカでもやつておりません。今日敗戦のわが国の現状において、こういうような恩給制度を維持することは不可能ではないと思います。従来のように恩給は給するが、しかし恩給の中に盛られるものは従来と、内容の変つたものとし、これを給するようにすべきでしよう、それが私は時代の進運に沿うゆえんではないか、こういうふうに考えているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/228
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229・臼井莊一
○臼井委員 もう一つやはり強く要望されております点で引続き在職七年以上ということになつております。ところが前後在職年限を通算してほしいという要望が非常に強いのでありますが、この点ではあるいは調査がむずかしいというお考えがあるかもしれませんけれども、やはり今の加算と同じようなお考えなのでございましようか。その点をちよつと伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/229
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230・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 その点につきましては、午前中の御質問に対してお答えいたしたのでございますが、でき得ればそれはもちろん加算も認め、また引続きというような条件も廃し、七年というような条件も廃して、無制限に通算し得るようにすることが望ましいと思います。しかしながら現在の状況から考えてみますと、何と申しましても限られたる、脆弱なる国家財政の予算の範囲内におきまして遺族なり傷病者の方に相当の金を出すようにしなければいかぬ、恩給制度のわく内で考えましても、そういうふうにするためにはどうしても四百五十億円前後の金が九箇月にしてもいります。また先ほどから御質問もあり、政府に対する御非難もありましたように、徴用工とかその他いろいろな方面の方々に対する措置も要望されております。そういうようなことを考えて参りますと、この大東亜戦争に幸いにして命を全うして帰られたいうな方々につきましては、この数年間の在職は恩給法上においてもしもがまんしてもらえるならばがまんしてもらうようにしたらばどうであろうかという、考え方もそこに一応の考え方として出て来るのであります。社会保障的、社会政策的な考え方というのが生ずるのは、こういう点にあるのではないかと思つております。それから今度恩給を給するといたしますれば、何と申しましても終戦後の混乱のために軍人の経歴に関する書類というものは必ずしも完備されていないのであります。これはだれの罪でもありません。戦争の終末期における混乱のためにそうなつたことでございます。そこで在職年を全部調べるということになりますと、そういう書類が完備しておりませんからして、非常な経費もかかり労力も費すことでございます。そういう多額の経費なり労力を費して、そうしてこれをやることによつて傷病者、遺族の方に一体どういう影響を与えるかということも考えなければいかぬ。こういうことを考えて参り、それからまたそういう事情でございますから、事務上の困難を克服して公平なる給与ができるか、こういうことを考えてみますと、公平な給与はなかなか困難ではないだろうか、こういうことになつて来るわけでございます。情といたしましてはほんとうに引続きの制限もとり、七年の制限もとりたいと思います。しかし情におぼれてしまうと、不公平なことをするような措置にならないとも限りません。従つて制度を立てる上におきましては心を冷やかにいたしまして、そうして一つの線を引かなければいかぬ、その線を引いたものがすなわち引続き七年という線であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/230
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231・臼井莊一
○臼井委員 今の局長の御答弁で大体ごもつとものようにも思うのでありますが、ただ私たち考えますと、せめて本人たちの軍隊手帳等によつて証明のつく人だけでもやれるようにしていただけたらと思うのです。もちろん公平ということになると、これは証明のない者あるいは書類を焼いたためにわからなかつたというような者は非常にお気の毒でありますが、できるだけ恩給の恩典に広く浴させるという方針においては、証明のつく者だけにでも出せるようにしたいと考えておるのであります。
それからもう一つ重要な点は、第七項症、第一款症とか第四款症の問題が先般来問題になつております。これも先ほどの御答弁によつて、これが恩給に加えられた当時においては遺家族の手当も相当多額であつたからだ、こういうことで、現在はこの遺家族の手当も不十分だと考えております。将来それがある程度の比率に近くなつたらこれはやつてもよろしいというお考えでございましようか。ただいまの七年引続いてでなければ出されないということもやはり予算の範囲内ということでありますが、将来日本の経済状態はどうなるかわかりませんけれども、しかしそうあながち悲観したことばかりが続くとも考えられない。将来よくならなくてはならぬわけでありますが、そのときは当然お考えになり、また法律的にできると思いますが、その点をちよつと伺つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/231
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232・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今回法案に盛られておりますところの恩給の内容を、今後国家の財政経済の好転に応じて改善するような意図はあるか、こういう御質問だと思いますが、これはもちろん私どもは考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/232
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233・稻村順三
○稻村委員長 本日の質疑はこれで終了いたしました。
この際私より申し上げますが、明日の内閣委員会の公聴会は、内閣委員会、厚生委員会及び海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会連合審査会公聴会にいたしまして、三委員会連合して公述人より意見を聞くことにいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604915X00119530713/233
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