1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年六月十七日(水曜日)
午前十時五十六分開議
出席委員
委員長 井出一太郎君
理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君
理事 平野 三郎君 理事 金子與重郎君
理事 足鹿 覺君 理事 佐竹 新市君
理事 安藤 覺君
木村 文男君 小枝 一雄君
佐々木盛雄君 佐藤善一郎君
佐藤洋之助君 松岡 俊三君
松野 頼三君 松山 義雄君
加藤 高藏君 吉川 久衛君
芳賀 貢君 古屋 貞雄君
山本 幸一君 稲富 稜人君
川俣 清音君 根本龍太郎君
出席政府委員
農林政務次官 篠田 弘作君
農林事務官
(農林経済局
長) 小倉 武一君
農林事務官
(農地局長) 平川 守君
農林事務官
(農業改良局
長) 塩見友之助君
林野庁長官 柴田 栄君
委員外の出席者
農林事務官
(農林経済局統
計調査部長) 安田善一郎君
専 門 員 難波 理平君
専 門 員 岩隅 博君
専 門 員 藤井 信君
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五月三十日
新村星川原野返還に関する請願(伊東岩男君紹
介)(第三六号)
農業協同組合の育成強化等に関する請願(山口
丈太郎君紹介)(第九〇号)
六月一日
凍霜害対策確立に関する請願(佐瀬昌三君紹
介)(第二一八号)
急傾斜地帯農業振興対策予算の増額に関する請
願(今村忠助君紹介)(第二一九号)
硫安肥料の国内価格引下げに関する請願(今村
忠助君紹介)(第二二六号)
頓別及び仁達内両原野開発促進の請願(松浦周
太郎君紹介)(第二三三号)
北海道の農業事業費を暫定予算に計上等の請願
(椎熊三郎君紹介)(第二四八号)
下尾井国有林の立木を北山村に払下げの請願(
世耕弘一君紹介)(第二四九号)
同月四日
硫安肥料の国内価格引下げ等に関する請願(佐
藤善一郎君外十一名紹介)(第三〇九号)
大樹町に営林署設置の請願(伊藤郷一君紹介)
(第三一〇号)
大樹町を高度集約酪農地区に指定の請願(伊藤
郷一君紹介)(第三一一号)
石坂地区に国直轄排水工事施行の請願(伊藤郷
一君紹介)(第三一六号)
同月八日
県村地内に道路開設の請願(足鹿覺君紹介)(
第四八二号)
北海道の農業事業費を暫定予算に計上等の請願
(松浦周太郎君紹介)(第四八六号)
同月九日
肥料価格の適正化に関する請願(渡邊良夫君紹
介)(第五六〇号)
トムラウシ地帯生産木材を十勝清水駅に搬出の
請願(伊藤郷一君紹介)(第五六一号)
同月十三日
国内産砂糖の政府買上げ及び消費税撤廃に関す
る請願(山中貞則君紹介)(第七一九号)
農業団体再編成に伴う農業改良補助職員の増員
に関する請願(山中貞則君紹介)(第七二四
号)
開拓地の酸性土じよう改良事業に関する請願(
山中貞則君紹介)(第七二五号)
急傾斜地帯農業振興臨時措置法適用の請願(山
中貞則君紹介)(第七二六号)
畑地かんがい特殊法制定の請願(山中貞則君紹
介)(第七二七号)
農業共済掛金の農家負担率軽減に関する請願(
山中貞則君紹介)(第七二八号)
農業政策確立に関する請願(大石ヨシエ君紹
介)(第七二九号)
東襲山村農業共済組合を農家単位共済実施指定
組合に認定の請願(池田清志君紹介)(第七三
〇号)
同月十五日
福島県に集約酪農地区設定の請願(鈴木義男君
紹介)(第七九〇号)
熊毛糖業育成に関する請願(岩川與助君紹介)
(第七九一号)
凍霜害対策に関する請願(渡邊良夫君外一名紹
介)(第七九二号)
積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法に基く予算増
額に関する請願(渡邊良夫君外一名紹介)(第
七九三号)
米価対策等に関する請願(中村時雄君紹介)(第七九四号)
荒川及び駒込川の毒水排除事業に関する請願(
山崎岩男君紹介)(第八〇六号)
蚕糸座繰製糸を機械座繰に変更許可に関する請
願(長野長廣君紹介)(第八四八号)
の審査を本委員会に付託された。
六月二日
農村振興助成法の制定実施に関する陳情書
(第五五
号)
農業協同組合再建に関する陳情書
(
第五六号)
甘しよ育苗用温床紙に対する国庫補助金交付の
陳情書(第五七
号)
急傾斜地帯における土地改良費予算の増額に関
する陳情書
(第五八号)
水田かんがい用電力設備費軽減に関する陳情書
(第
五九号)
はぜ実生産農家救済に関する陳情書
(第六〇号)
桑園の凍霜害対策に関する陳情書
(第六一
号)
四国地方に国立園芸農業試験場設置に関する陳
情書(第六二
号)
国有林野払下げ促進に関する陳情書
(第六三号)
国有林払下げに関する陳情書
(第六四号)
愛知県下の豚コレラ予防注射禍対策の陳情書
(第六六号)
有害鳥獣の駆除に対する国庫補助金計上の陳情
書(第六七号)
家畜共済一元化の試験実施に関する陳情書
(第六八号)
同月八日
農作物凍霜害対策に関する陳情書
(第一一三号)
昭和二十八年産茶樹に対する霜害対策に関する
陳情書(
第一一四号)
雲仙別所ダムの建設促進に関する陳情書
(第一一五
号)
長崎大干拓事業促進に関する陳情書
(第一一六号)
土地改良事業に対する国庫補助強化に関する陳
情書(第一
五一号)
霜害対策に関する陳情書
(第一五二号)
農林漁業協同組合の整備強化を図るための政府
の財政援助に関する陳情書
(第一五三号)
凍霜害対策に関する陳情書
(第一七九号)
同(第一八〇号)
同(第一八一
号)
農業協同組合の整備強化に関する陳情書
(第一八二号)
防災ダム建設に関する災害防止施設事業促進助
成の陳情書(第一
八三号)
同月十日
土地改良に関する陳情書
(第二一三号)
凍霜害対策に関する陳情書
(第二一六号)
凍霜害対策に関する陳情書
(第二六四号)
繭糸価格安定法改正に関する陳情書
(第
二六五号)
農林漁業金融公庫法に基く伐採調整資金の融資
方法改訂に関する陳情書
(第二六六号)
同(第二六七号)
桑園の凍霜害対策に関する陳情書
(第三〇八号)
麦価格引上げに関する陳情書
(第三〇九号)
芋作維持の一環としての製あめ工業の振興に関
する陳情書
(第三一〇号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣
提出第九号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/0
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001・井出一太郎
○井出委員長 これより会議を開きます。
農業災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。本委員会といたしましては、先般議長の承認を得まして、本案の審査及び農業災害補償制度の基本的問題についての調査の一手段といたしまして委員を派遣して、今春の凍霜による農業被害の実情を現地について視察いたしましたので、この際派遣委員よりその調査報告を承ることにいたします。佐藤善一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/1
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002・佐藤善一郎
○佐藤(善)委員 では御報告を申し上げます。
第三班は、茨城、福島両県を対象とし、井出一太郎、芳賀貢、佐藤一郎の三委員が調査に当りました。
まず茨城県は県庁において農林部長より被害一般の状況と県の対策並びに共済連、養蚕連、農業委員会、開拓連、県議会等の代表者より仮払再保険金の増額、対策補助金の公平なる配分、融資、土壌改良事業の拡大化、課税の減免、種子の無償交付、信用基金の償還延期等の陳情を聞き、次いで新治郡上大津村、土浦市及び土浦市都和開拓地、新治郡斗利出村及び東茨城郡鯉渕村等の桑園、麦畑、果樹園等を順次視察いたしました。
同県においては四月二十四、五両日及び五月三日の氷点を下る数十年来の異常気象のため、降霜氷結により発芽期にあつた桑を初め、麦類、果樹、茶、蔬菜、タバコ等、全作付面積の約三一、四万七千町歩にわたつて甚大なる被害をこうむりました、なかんずく火山灰の軽鬆土で地方の低劣なる地域は、特に被害が著しく、生産物を目途に肥料、農薬等の生産資材を購入した農家はその代金の返済にも困却し、再曲屋の確保も期しがたく、開拓地においては保有米さえなく、即時救護を要するもの全開拓地の二割、一千戸を数うる悲境にある由であります。
同県において特筆すべき主要問題点は二点でありまして、その一つは被害調査に関する統計調査部の調査と、県の調査との間に相当の差異があり、統計調査部のその後の調査による修正によりほぼ接近して参りましたが、これが調整をはかること。
第二は開拓地の問題で、元来経営形態が単純で、経済力薄弱、弾力性に乏しい開拓民が、入植後営々の苦心、努力によつてようやく生産態勢に入つたところで罹災し、しかも資力薄弱のため共済組合にも加入できません。中には呆然自失せるか、種苗にも事欠くがごとき結果でございまして、結実の見込みなき被害作物を放置したままにて、後作の処置さえ十分にその仕事が手につかないような事情に見えたような次第でございます。なお同県におきましては、最近新たに富士山麓、山形県等より数十の移住入植者を迎えたとのことでありました。
思うに被害調査は対策の基準となりますので、最も重要なことであり、しかして炭作物は被害当初より後、漸次日を経るに従いまして被害の様相がかわつて来ておるのであります。調査の時期、方法等によつておのずから差異を生ずる結果となりますから、調査方法を検討してその適正を期すべきであります。また開拓地については平地林を伐採して開墾し、何らの防風障害物なきところは被害が顕著であり、無家畜農家で地方瘠薄の所もまた被害が多いのであります。これによつて見れば、将来開拓地に関しては特段の考慮を払い、一層融資の道を強化して、町生産を促すとともに、土地改良施設、農業経営指導の上にも新たに検討を加え、災害の防止、軽減をはかり、開拓の実をあげ、有終の美を収むるよう、なすべきであると存じます。
次に福島県の状況を申し上げます。現地としては出村郡守山町、高瀬村、安達郡荒井村の桑園を巡視、次いで二本松町、会陽製糸会社内の稚蚕共同飼育所を経て福島市に至り、副知事ほか関係係官、県議会、養蚕、蚕種共済等の各種団体代表者より被害状況の説明及び陳情を聴取いたしました。
同県においては、五月三日県下一帯にわたり襲来せる寒波のため、強烈なる凍霜害をこうむり、掃立直前の桑園の約八〇%は黒変、これがため春蚕繭の減収見込みは四十万貫を越え、加うるに一般農作物、果樹、麦類、菜種、ばれいしよ、紫雲英、水稲苗しろ等の被害も収穫皆無、二千九百四十五町歩に及び、被害見込み総額は十二億五千万円の巨額に達し、さなきだに積雪寒冷低位生産地帯としてこれら作物の現金収入源に依存する地方として、現金収入の道をふさがれ、被害農家は大打撃をこうむつたのであります。
陳情のおもなるものは
一、恒久的対策の樹立
一、蚕種代補助
一、共済に対する農民負担の軽減
一、蚕業指導員の拡充
一、防霜の試験研究及び地方における防霜施設費の助成
一、凍霜害対策費は従来の一般農業施策費と別個に考慮増額せられたい。
一、掃立不能となつた四千万円にも達する莫大な蚕種は代金未収となり、しかも何らの措置がとられておらぬため、夏秋蚕種の準備に支障を来すゆえ、低利融資の方途を講ぜられたい。
なお知事より農村振興について左記各項の実現方に関し要望書が提出されました。
一、五月二十六日の降雹による農作物被害対策につき政府の助成
二、海洋砂地々帯農業振興対策についての本年度以降の予算確保
三、積雪寒冷単作地帯農業振興対策について
本年度以降土地改良事業費とともに営農施設改善総合助成関係の経費の増額
四、有畜農家創設事業について
(イ)特に乳牛及び役牛の導入希望が大きいので家畜導入資金割当の増額
(ロ)弱小農協に対しても損失補償等の制度を確立し融資による家畜導入の道を開かれたい
五、農林漁業組合整備促進措置について
すみやかに農林漁業組合連合会整備促進法を制定せられたい
六、農業倉庫整備資金わくの増大について
農林生産物の統制が撤廃されるに従い農業倉庫の存在は重大さを増して来るのでこれが整備のため農林漁業資金融通法に基く農業倉庫関係資金わくを増大せられたい
七、農業改良普及事業の整備強化について
(1)農業(生活)改良普及員の活動費助成
(2)専門技術員及び改良普及員の指導旅費の増額
八、中地区制による普及事務所の整備費助成
九、農業試験研究について
従来地方試験研究機関に対しては主要食糧を重点とした研究にのみ国電補助があつたが農家経済の安定合理化のためにはそれぞれの立地条件に適合した陶芸特用作物、畜産、農畜産加工等をも経営に取入れる要があるのでこれらの試験研究にも助成せられたい
また農村振興について東北地方には積寒法によつて土地改良等基本的施設に対し助成の道が開かれているが試験研究事業にも助成の方途を講ぜられたい
現地に臨んで特に感ぜられましたことは、地勢、気流の関係が、被害地と無被害地と淡きわめて接近して存在すること、また桑園においては被害後の回復を期待して伐採を見合せたものもあるが、発育予期に反し、やむなく応急に準備せる予備蚕児をも放棄したものさえあり、五割以上被害をこうむつたものは春蚕を断念して伐採したものの方が、他作物との労力の調節、蚕作の安定、夏秋以後の養蚕のため、新梢の回復等の上からも結果が良好であります。なお桑園を伴う稚蚕共同飼育所は適切な施設であつて、小面積の桑園ならば十分なる予防処置も実行可能で、今回も福島市近郊の畑にて燻煙を十分にして被害を免れた実例もある由であります。
これを要するに、この種不慮の災害に対し急速に救助の手を差延ベ、すみやかに再生産の方策を講ずべきはもちろんでありますが、将来かかる天災が繰返されることが予想されますので、これが防除に関し十分なる調査研究を遂げ、恒久対策を樹立すべきであると信じます。なお詳細なる被害状況等は時間の関係上、専門員室に整理してありまする資料によつてごらんを願うこととし、省略させていただきます。
以上簡単でございますが御報告といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/2
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003・井出一太郎
○井出委員長 次に足鹿覺君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/3
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004・足鹿覺
○足鹿委員 第二班の凍霜害被害調査の御報告を申し上げます。私ども第二班は金子、加藤、松山、川俣、足鹿の五委員でありまして、事務局からは藤井専門員が、また原林省蚕糸局から桜井技官が随行いたし、六月二日、三日、四日の三日間にわたり、埼玉、栃木、群馬三県下の主要被害地帯を現地につき調査をいたして参つたのでありますが、ここにその概要を御報告申し上げたいと存じます。
最初に被害状況について申し上げます。詳細はお手元におくばりいたしました資料についてごらんを願うことにいたしまして、概略だけを申し上げたいと思います。
埼玉県は桑が十三億六千万円、麦類三億八千万円、茶、果樹、蔬菜等約六億円余、計二十三億五千万円に達し、また栃木県は桑二億円余、麦類五億二千万円、タバコ、蔬菜、大麻等二億九千万円計十億一千余万円になつております。群馬県は被害が特に激甚でありまして、桑二十億六千余万円、麦類十一億三千万円に上り、果樹、蔬菜等の一億円余を加えると、その合計は三十三億円余の巨額に上るのであります。これら三県の被害額総計は実に六十七億円を上まわるという厖大な額に達しておるのであります。以上の数字はいずれも県庁側の調査に基くものでありますが、農林省統計調査事務所の調査数字との間には食い違いが見られ、特に麦類につきましては、かなりの開きが見られたのであります。農林省側の数字は県庁側のそれに比しまして、被害が少くなつておるのであります。もつとも麦類は当時調査中でありましたので、その被害数字はその後増加することが予想されており、この点農林省側も認めておつたのでございますが、農林省側のその後六月八日現在の全国調査によりますと、麦類は五月十五日現在に比し、被害面積において約二万二千町歩余増加いたしておりますので、この両者の数字はかなり接近したものと考えられます。しかしながらかくのごとく県庁側と農林省とで調査の数字に相当な開きのありますことは、調査統計に対する信憑性に疑念を抱かせることともなりますので、今後はその方法等に関し検討を加え、統一する必要があるのではないかと考えるものであります。
次に各県の被害の特徴を申し上げますと、埼玉県は桑、茶が中心でありまして、特に桑につきましては、被害桑を刈り取りましたあとに病虫害が発生いたし、刈取り跡の台木が枯死いたしておる状況が見られました。また茶につきましても同様病虫害のため、被害後の発育が阻害されておりますので、病虫害の防除を速急に施す必要がございます。
栃木県におきましては、冬季降雨不足のため、すでに一部地帯は旱魃の害を受けておりましたところ、さらに凍霜害を受け、二重の災害となり、それだけ被害は激甚となり、収穫皆無と思われまする麦作を多数見受けたのであります。またこれらの被害地帯には開拓地が相当ございますが、開拓農民はいまだ生産力が低く、経済力も脆弱であり、かつその耕地が旱魃を受けやすい台地山間寄り等にあります関係上、凍霜害の被害もまた一段と激烈でありまして、その打撃の深刻さは想像にかたくないのであります。なお本県は、これら凍霜害のほかに雹害をも受けており、その特産物でありまする大麻が被害をこうむつております。私どもの調査をいたしました下都賀郡皆川村のごときは、大麻の損害に加えまして、この大麻を織糸として皆川むしろを生産をいたし、冬季間の副業収入のもとにしておつたのでありますが、その材料となる大麻が全滅いたしまして、皆川村の唯一の副業とされておりました冬季間の副業ができないことになり、ひいて農家の現金収入に非常な支障を来しますので、これらに対する対策の悲痛な要望があつたことを特に申し上げておきたいと思います。
群馬県におきましては、桑、麦とも被害がきわめて大きいのでありますが、養蚕農家の中には何とかして多少なりとも養蚕を続けたい考えから、被害桑は剪定することがよいと知つておりながら、剪定をやらず、このためかえつてその後の発芽及び成育が悪く、春蚕の飼育がほとんど大部分不可能となり、三齢になつた蚕を捨てたという事例も随所に見られました。またこの剪定をしなかつた桑は夏秋蚕にも悪影響を及ぼすおそれが多大であります。かような傾向はひとり群馬県のみではなく、栃木、埼玉にも見られまして、われわれもひどく考えさせられたのであります。これに対しましては速急に肥料の増施による発育の促進をはかる必要があります。各県当局もそれぞれ鋭意対策の樹立と指導に御尽力になつておるのでありますが、また麦につきましては、勢多郡、利根郡方面は水田に裏作として大麦をたくさん作付けをしておりますが、田植えの時期が眼前に来ておるにもかかわりませず、被害のため麦の登熟が遅れておりまするので、やむなく青刈りをもしなければならないという状態にあります。しかもこれらの地帯は、麦を従来から主要な食糧としております関係上、飯用麦の不足を憂慮いたし、飯用麦の供給につき特別の措置を要望しておる状況もあつたのであります。また来年度の、今年の秋まきつける麦の種子にも困るというような状態もこの地方においては見られたのでありまして、これらに対するところの対策も必要ではないかと考えられたわけであります。
次に現地側からの要望事項について申し上げますると、今般政府において速急に救済対策を講じ、五億八千余万円の対策費を計上するに至りましたことは、国会並びに政府が今般の災害対策に対し強い熱意を示されたものとして、現地側におきましても大いに感銘をいたしておるところでありますが、この経費算出の基礎は、五月十五日現在の調査数字によるものと理解されております。しかるにその後の調査により被害は増加傾向を示しており、特に麦類においてこれは顕著であります。従いまして、その後の増加被害分に対しても同様な救済対策を講じてほしいということ、また今般の対策は蚕繭関係に重点が置かれ過ぎた感があるので、その他の作物は被害を軽視しないようにしてほしい。特に麦の被害が予想以上に甚大である点を考慮してほしい。また麦類の検査につきましては、五等麦を浸けて政府買入れの対象としてもらいたいということであります。
次に各地とも被害農家に対する低利の営農資金の融通を強く要望いたしております。特に開拓農家は農業手形の利用もほとんど行われておらず、また農業共済にも加入しておりませず、かつ経済力も一般農家に比し貧弱でありまするので、これら開拓農民に対しては償還期限三年程度の特別融資を考慮してほしいとの強い要望がございました。なおこれら開拓農民に対する特別融資額は、全国で大体二億五千万円程度を必要とするものと推定されております。
次に群馬県利根郡のごとく麦類を主食用として作付いたしている地帯では、主食用の麦の特別価格による払下げ、または先刻も述べましたが、明年の麦収穫期までの麦の貸与を希望しておりました。さらに被害各地とも、各種種子の無償交付、または桑と同様麦に対する肥料代の助成を要望いたしております。また麦類の不作は当然二十八年産米の供出にも甚大に影響して参りまするので、供出割当等についても実情に即するよう配慮すべきであるとの意見が強くありました。
栃木県下の被虫農村の中には、村費百万円——これは栃木県のみでもございません、群馬県でもありましたが、村費百万円を支出して村自体として救済策を講じておる村を見ました。しかしこれらは、相当村の財政がゆたかであるか、あるいは相当力のある村においてはこういうことができまするが、大部分の被害農村は、財源の不足のため村独自の対策を立て得ないような状態にあるのであります。従いましてこれらの大部分の災害県あるいは町村等に対して、地方財政平衡交付金の増額をすること、及び被害農家に対する所得税の減免措置を適正に行うようにとの要望が強くありましたが、これは当然なことだと私どもは感じた次第であります。
次に今般の災害と関連いたしまして、農業災害補償制度につきましても、各地で批判的意見が相当ございました。そのおもなる点は、(イ)概算払いを迅速に行うこと。(ロ)被害のつどただちに救済手段をとり得るような制度を確立すること、特に常習的災害地帯に対しては、何らか別途に恒久的対策を講ずること。(ハ)無事もどし等の制度を確立すること等々でございました。
最後に、私たちが現地を見まして特に痛感いたしました点について、申し上げたいと存じます。
今回三県下をまわりまして第一番に感じましたことは、各村の災害対策が平面的でありました。立体的に掘り下げた対策がいまだ十分に立てられておらないということであります。具体的に申し上げますならば、村の被害調査を見ましても、被害面積や被害金額は出しておりますが、これを農家個々について被害額、経営面積、収支の状況、自家の能力で補填できる限界等については、まだほとんど調査ができておりませんでした。従いまして今後低利融資の融通を受けるにつきましても、その償還能力の脆弱な零細農家に対する対策等は、特に考慮されていないような状態でありました。
この災害を契機として、われわれが見ました村々において一般的に感じましたことは、各村とも一丸となつて村づくりをしようという気魄が非常に乏しいのではないかという印象を受けたことを申しておきたいと思います。しかしながら農民がかかる建設的な意欲をまつたく欠除しておるかと申しますと、必ずしもそうではありません。その証拠には、私どもがこの点に話を向けて、その意向をただしますると、異口同音にぜひこの際健全なる農村建設をいたしたいのだと申しております。このことによつてもうかがわれるのでございますが、要は適切な指導と助成が与えられまするならば、おそらく大部分の農村は、この災害を契機といたしまして、それぞれの環境に適応した生産の増強、経営の安定を中心とする再建計画を立て、これを強力に推進することになるのではないかと推察されたのでございます。今後の災害にあたりましては、これらの点に留意いたし、この被害状況については、個々の農家を対象とした立体的調査を行うようにいたしますとともに、農民自身の自主的、主体的な建設意欲の喚起に努め、国の助成、指導をこれとマッチさせることが肝要であろうと存じます。
次に今後凍霜害の予防対策として考慮すべき点について申し上げますならば、畑地に対する灌漑施設の強化であろうと痛感をいたしました。凍霜害は水分の少い台地、丘陵等に主として起つております。また今年の冬は雨の量が少く、また四月に長い間乾燥が続きましたために、そのあとに来た凍霜害は一段と激甚をきわめた状況であります。これらの事態から考えまして、まず灌漑施設を完備いたし、水分を補給し、また必要に応じまして灌水等をいたしまするならば、凍霜害は著しく緩和できるのみならず、畑作の振興を促進いたし、農業生産力の高揚、農家経済の向上、安定にも大きな寄与がなされるのではないかと考えられた次第であります。従来の日本の農地政策は水田に偏重したきらいもなしといたしません。おそらく今度の凍霜害を契機に、水田を中心とする農地政策と並行して、畑地に対する農地政策も取上げる必要を痛感いたしたものと思うであります。また桑につきましては、なるべく高がりにすること、一の瀬等のような耐寒性の強い品種の普及をはかることも一方法であろうと思われます。麦につきましては、各県とも最近著しく普及されました農林六十号が特に被害を受けておりますので、特に旱魃を受けやすい地帯、または凍霜害に常時襲われる地帯は、少くともその一部を他の耐寒性の強い品類に置きかえる必要があろうと存じた次第でございます。
以上と関連いたしまして、生産意欲の高揚には、経営と密接した科学的知識の普及を必要とするということでございます。前にも申し上げましたごとく、被害を受けた桑は思い切つて剪定をし、増肥を行つて夏秋蚕に備え、夏秋蚕て十分収益を上げることか有利であり、各県当局もそれぞれ熱心な指導を行つたにもかかわらず、農民は容易にこれを実行いたしませんので夏秋蚕の減産をもまた招くに至つておるのであります。この際農民の生産意欲が科学的知識に裏づけられ、経営に対する合理的運営を目ざしておりましたならば、損害をある程度食いとめ得たのではないかとも考えられた次第でございます。
最後に、凍霜害は地勢、気流等の関係から大体の通路を想定することができると言われておりますので、気象、作物、土壌、地質等、関係諸科学を総合した総合的試験研究を行い、科学的な基本対策の樹立をはかるべきものと存じた次第でございます。
以上をもちまして私の報告を終る次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/4
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005・井出一太郎
○井出委員長 稲富稜人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/5
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006・稲富稜人
○稲富委員 私は今次凍霜害調査に関し山梨、長野方面の事情を御報告いたしたいと思います。
調査班は吉川久衛君、芳賀貢君、古屋貞雄君の各委員と不肖稻富をもちまして編成し、事務局より専門員岩隈博君、農林省より川合技官を帯同いたしました。
調査の日程としましては、短期間にできるだけ多数の被害筒所を視察し、また現地の意見を聴取いたしたいとの趣旨よりしまして相当の強行軍を敢行したような次第であります。すなわち去る二日東京を出発しまして、中央線により山梨県甲府市に至り、県側より総括的な説明を聞きました後、東八代郡一宮村に参りました。ここは桃を主とする果樹の被害の著しい所であります。次いで同郡日川村に至り、桑園の被害を視察いたしました。それより八ケ岳山麓北巨摩郡熱見村に参りました。本村は高度六百メートルないし八百五十メートルの地点に位置して、今次凍霜害にはまつたくあつらえ向きの条件を備えておりました関係上、麦の奨励品種はことごとくと申しても通言のないほどに被害を受けて、被害面積は植付総面積のおおむね七五・五%にも達する情状に接しておつたのであります。
翌三日は、山梨県より長野県に入り、辰野町にて下車しまして、それより伊那町に至り、その周辺のなし、麦、桑などの被害を調査しますると同時に、総被害額一億七千万円に上ると言われまする上伊那郡並びに総被害額三億と称せられまする下伊那郡の事情につきまして、詳細を現地側より聴取いたしたのであります。
伊那谷の調査を終り、それより北上し、松本平方面の調査を行いました。まず東筑摩郡笹賀村に参りまして、麦、果樹の被害を視察し、標本を採取する等いたしまして、南安曇郡豊科町に入りました。ここは早場米の産地で、裏作麦の大被害により、特に家畜飼料の欠乏に基いて有畜営農の遂行に支障を来すことと相なつた次第を見聞したのであります。この地より長駆いたしまして小県郡に入り、麦の被害地として代表的な中塩田村を調査し、本日の日程を終りました。
翌四日は、長野市に参ります途中、更科郡の中津、真島の二筒村を訪れ、麦、果樹の被害の実況を見、川中島平におきまして、麦についてはおおむね五分作以下、りんごについて稀有の大被害たることを承知したのであります。それより県庁におきまして県側の関係者より県下一円の凍霜害の実情並びに要望について説明を聴取し、意見を交換し、今後の対策についてもいろいろと有益なる示唆を受け、わが調査班の全行事を終つて解散することとなつた次第であります。
今次凍霜害の発生の経過につきまして簡単に述べますると、御存じのごとく、四月までは気象状態は大体順調でございまして、麦のごときはやや徒長気味でさえまつたようでありますが、四月中旬以降おおむね三群の寒波が波状的に襲つたのであります。すなわち四月十四日ごろ以降、さらに四月二十四日ごろ以降並びに五月三日ごろ以降それぞれ急激なる気温の低下に見舞われまして、数日にわたつて零度以下の温度が継続し、しかも旱害が加わり、あまつさえ長野では五月二十六日には雹害さえあつて、ますます被害を拡大するに至つたのであります。時あたかも麦類は幼穂の形成期に当りまして、果樹は開花の前後、桑は脱苞期に相当しており、しかも冷気の停滞する低地に沿い、麦、桑の多収穫地帯、果樹の中心地方が広範囲にわたつてやられましたために、今回の大事に立ち至つたものと想像いたされるのであります。
両県における今次災害の概況を県側並びに統計調査事務所双方の数字を比較対照しつ申し述べまするならば、まず桑につきしましては、山梨の場合、五月二十三日現在をもつて集計した県の数字によれば、収穫皆無面積に換算して千百十三町歩、繭の減収量は十二万六千九百五十五貫、六月一日をもつて集計した統計調査事務所の数字によりましてもそれぞれ六百三十九町歩、七万五千二百十三貫と相なつております。これを全国の被害より見れば、必ずしも多い方ではありませんが、しかし山梨県の農民の立場よりすれば、桑園の経営面積が狭少でありますために、高度の集約経営が行われ、反当収繭量は全国一とも言われておりますだけに、個々の被害農民にとりましては相当の痛手であつたと想像され、政府の災害対策がこの点に留意するよう熱心に要望せられたのであります。
次に麦でありますが、五月十五日現在の数字で、山梨については、県の発表は被害面積が二千三十二町歩、減収量七千四百五十一石、統計調査事務所の発表は被害面積八百六十三町歩、減収量二千七百十石、長野については、県の発表被土面積が一万九千八百八十二町歩、減収量十七万五千二百四十六石、統計調査事務所の発表で、被害面積は一万五千四百四十六町歩、減収量は七万三十四百四十石となつております。特に長野は麦については全国で最大の被害を受けており、しかも当初の予想に反して被害の程度は次第に拡大しているようであります。すなわち一般に親穂がやられ、あとから出穂したものにつきましては、一見判然しないが、これをしさいに点検しまするならば、無効分蘗による不稔雲粒が非常に多いという事情によるものであります。長野において採取しました見本について、ごらんを願いたいと存じまして持つて参つております。特に二毛作田におきしましては、水稲の植付期が近づいておりますために、麦の刈取り時期を遅らすわけに参らないというような事情もありまして、麦の減収は相当の程度に達するであろうと思われたのであります。
次に果樹であります。まず数字について見ますと、山梨は五月二十三日現在の県側の数字で、収穫皆無面積二千六百二十五町歩、減収見込み九十七万貫、統計調査事務所の数字では、五月十五日現在、被害面積六十六町歩と著しい差異が見られ、また長野については、県の発表では、五月十五日現在、被害面積三千二百四十八町歩、減収量五百四十七万貫といわれ、統計調査事務所の報告では、六月一日現在、被害面積二千五百四十八町歩、減収量不明と相なつております。山梨のぶどうはやや回復の徴が見えましたが、桃、りんご、なし、かきについては被害甚大というほかはないありさまでございました。被害の実況については、標本によつて御想像願いたいと思いますが、花並びにつぼみの枯死、特に雌しべ、雄しべの欠除、褐変、枯死または発育不良、花弁の欠除、萎縮、果梗の発育不良、裂傷による果実の屈曲、果面の裂傷、葉の捲縮、さび病、害虫の集中的発生等によりまして、単に本年度の被害が大であるのみならず、明年、明後年にわたつて花及び芽の着生が不良に陥り、零細なる果樹園芸農家にはかり知れない損害を与えるものと思われます。
時間の関係もあり、以上ごく簡単に被害の大要を御説明いたしましたが、これが対策につきまして、現地側の要望を中心に述べておきたいと思います。
過般政府は、対策費として約五億九千万円を計上されましたことは御承知のごとくでありますが、対策費の算定の基礎になつた数字が六月八日ごろのものでありますが、ただいま申し述べましたように、その後被害は次第に拡大の傾向を見せておりまするので、政府はその状況に応じて当然再検討すべきものと思われまするし、かつさきに述べましたように、県側の数字と統計調査事務所の数字があまりにも開き過ぎるきらいがあるのであります。正確なる数字の把握は、言うべくしてなかなか容易ではありますまいが、今後の災害対策の上から見ましても、調査方法の統一をはかり、行政の完璧を期することが今後の災害対策上からも最も急務と思われるのであります。
また過般の予算措置は、桑に集中し過ぎて、その他のものを軽視した傾向があるように見られますので、山梨、長野のごとく麦、果樹の被害の大きいところについては、その後の被害拡大状況より見ても、再考慮すべき点があるように思われるのであります。
また税の減免措置につきましても、特別措置法の適用に関して、税務署側と農民との間に摩擦があるように聞いたのでありますが、税務当局としてもいたずらに農民の言い分を疑つてかかることなく、内容をよく吟味して善処すべきであります。
また麦、桑等の県共済連の概算払いについて、利子負担に困惑しておる様子が見られたのでありますが、農民は共済金の早期支払いを熱望しておることを考えて、政府は当然利子補給の措置を講ずべきものと思うのであります。
また麦の被害により、食糧、飼料の不足を来す地方が相当あるようでありますから、政府は現品貸与、または原価払下げ等の方法をすみやかに研究せられんことをお願いする次第であります。
また水稲の被害については、保温折衷帯代の効果が如実に証明されておりまするので、その普及については、今後一段の努力を要請いたします。また災害予報の制度を充実することが急務であります。
以上を要するに、わが調査班は災害発生後相当時日を経過しましてから派遣せられ、従つて災害対策費もすでにわくが決定した後でありましたため、調査の目的に関して、当面の応急対策に関連しましては、いささか明瞭を欠くところなしとしないうらみがあつたようであります。各調査班の調査結果が報告せられました後、それらを総合勘案せられ、本間輝について、委員会として今後とるべき措置に開して何分の御決定をせられますよう、委員長に特にお願いして、私の報告を終る次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/6
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007・井出一太郎
○井出委員長 平野三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/7
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008・平野三郎
○平野(三)委員 凍霜害現地視察第四班は、足立、佐藤洋之助、山本、久保田及び私の五委員からなり、六月三日及び四日の両日にわたり、静岡、愛知及び岐阜の三県を視察いたしました。
各県においては、まず県から災害の状況、その対策等について説明を受け、被害の激甚な現地をそれぞれ数箇所にわたり詳細視察をいたし、なお直接被害者、関係団体等からの陳情を聴取いたしました。ここにその概況を申し上げます。
静岡県においては、四月十三日からの連続的降霜のため各種農作物に被害がありましたが、特に茶に対して甚大な被害があり、作付総面積一万三千町歩中、三割以上の被害のもの、県調査によると七千二百八十六町に達し、被害激甚な地方では生葉の収獲ができないのみでなく、樹勢を根本的に弱めた結果になつております。
愛知県におきましては、桑及び園芸作物に対する被害が特にはなはだしかつたのでありますが、桑葉減収三割以上の桑園面積は、県調査によれば四千七十四町でありまして、新梢は多くは基部まで凍死し、また災害後の天候不良は再発芽を著しく遅延せしめたのでありまして、現場において見ますると、多くは基部から刈り取つているのであります。桃等の果樹の被害も大きく、このため被害見積り額は蚕糸関係において約五億八千万円、園芸その他の作物関係において七億四千万円に達するということでありました。
岐阜県におきましては、被害の最も大きかつたと認められる桑園の被害は、減収三割以上のもの、県調査によりますと三千四百六十六町歩でありまして、これらの被害のはなはだしい所では、桑葉は凍死黒変し、春蚕繭の大減収のみでなく、桑条の伐採期の遅延により、夏秋蚕又び翌年の春蚕の減収も予想せられるのであります。またかきれ桃等の果樹、特用作物の被害も甚大でありまして、果樹の樹勢の回復には両三年を要するものを多く見受ける次第であります。麦の被害については、当初比較的軽く見られていたのでありますが、時日の経過につれてその激甚であつたことが明らかとなつて来ておるのでありまして、被害当時主稈中にあつた幼穂はあるいは凍死し、あるいは白穂となり、これがため特に遅発分蘗の現象が現われ、これらの遅発分蘗は出穂開花中でありましたが、これらはもちろん結実不能であり、収穫は皆無であります。被害面積も県調査によりますと一万九千町歩を越えておるのであります。特にこの麦の被害につきましてのみでなく、ただいま申し上げました数字はいずれも県の調査の報告の数字でありますが、統計調査事務所の報告はいずれもこれとははなはだしく食い違つておりますことは、先ほど各県視察の委員の報告と同様でございます。しかしながら特にこの麦の被害については、当初の統計調査事務所の報告は、わずか九千町歩でありまして、県の報告と一万町歩以上も、食い違つておるという実情であります。これは今回の麦に対する凍霜害はまつたく稀有の事例でありまして、岐阜県の統計調査事務所としては、その後精密なる調査を行い、特に植物学的見地からこの被害がまつたく類例を見ない特殊の事態であることを分析いたしまして、その後きわめて熱心な作業を続けました結果、先ほど申し上げました九千町歩の報告は四月二十五日現在のものであつて、その後さらに第二次の報告が行われる場合におきましては、県の数字とほぼ近い数字になるように申しておつたのであります。この麦の被害は、まつたく農民自身もいまだかつて経験しなかつたような特殊の事態であるということを十分に認識する必要があることを痛感いたした次第であります。
被害対策として災害直後各党の協議によつて決せられました補助金、融資、利子補給、損失補償等一連の対策を含む五億八千万円の国庫の対策費支出の決定は各地とも喜ばれており、これらの施設は現地において災害対策として要望されたことと一致するのであります。ここに現地において国の実施すべき対策として要望せられましたことをとりまとめてみますと、次の通りであります。
一、肥料購入費、病虫害防除費等に対する国庫補助金を支出すること、二、凍霜害による税収その他の収入減を支出増加に対する特別平衡交付金の交付及び起債のわくを増加すること、三、被災農家に対し所得税、地方税を減免すること、四、樹皮資金の低利融資及びこれが利子補給の措置をとること、開拓農家に対しては、特別な措置をとる必要があること、
以上視察の大要を申し上げますが、今次の災害が稀有のものであつたことにかんがみ、過般決定せられました応急対策に引続いて、適当な災害対策を講じ、農家の損失の軽減と生産の増強に資するの要があることを認める次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/8
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009・井出一太郎
○井出委員長 ただいまの調査報告に関しまして、派遣委員または政府に対し御質疑または御意見があれば発言を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/9
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010・松岡俊三
○松岡委員 ただいまの御報告を承りまして、私どもその被害の激甚なるに実に驚いておるのでございますが、これに関連して要望したいのは、単に山形県内に起つた特殊なるかいがら虫の被害であります。これは当委員会の諸君の実害御視察後に起つた問題であります。私どもは他府県の養蚕家の方々は霜害のために非常にお気の毒だと思つて、これに反して山形県は何らの被害がないので喜んでおつたところでございましたが、突然として最上川及び松川沿岸に集団的に十四箇町村にかいがら虫の被害が起つたのであります。これがこのたびの調査には入つておりません。かような関係で、ある一村のごときは全村三百万貫の桑がことごとく収穫皆無であるというようなありさまである。この実情は本省においては係官が実地御調査のはずであります。もはやお帰りかとも思つております。
この被害の状況は、山形県として調べたところだけを申し上げますると、被害の町村が十四箇町村、被害の養蚕農家が千七百七戸、被害の桑園面積が四百四十四町三反歩、収穫皆無換算面積が二百三十五町五反歩、繭の減収の量は二万八千二百六十貫、損害見込みが五千万円でありまして、山形県だけで起つた一種独特のかいがら虫の被害であります。これは、この御報告には漏れておりまするけれども、その後に起つた独特なる点を御考慮いただき、当委員会において何分の御考慮をいただきたく、山形県の養蚕家を代表して切にお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/10
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011・稲富稜人
○稲富委員 それではただいま報告いたしましたことについて農林大臣に聞きたいのですけれども、農林大臣が来ていないようですから、政務次官でもけつこうですから、適当に責任ある御答弁を願いたいと思います。ただいま各地の御報告にもありましたごとく、凍霜害の被害は相当に大きくなつたというふうな状態があると思うのでございますが、大体五億八千万円を決定されるときの基礎数字というものがいつごろのものであつたかということを、一応承りたいと思うのであります。それから五億八千万円出されまして、その後被害が相当に大きくなつておるという状態が各地に見えておりますが、これに対しては政府はいかなる処置をとるつもりか、当然増額してやらなければならないと思いますが、これに対する政府の考え方を承りたい。
さらに先刻私の報告の中に申し上げましたように、統計事務所と県側の統計が非常に違つておる点があるのであります。これに対して政府はいかなる考えを持つておられるか。地方へ行きますと、非常に経費等が不十分で十分なる統計の収集にも困難だ、こういうような話もあります。不十分なる点もあると思いますが、これに対していかなる統一した考えを持つておられるか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/11
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012・篠田弘作
○篠田政府委員 御報告はよく承りました。私も埼玉県と群馬県を視察に行きましたが、まつたく御報告の通りでありまして、またその救済に対するいろいろな農民側の案も、われわれに対してされたものと同じであります。そういう意味におきまして、委員会の報告には私はまつたく同感いたしているわけであります。
それから五億八千九百万円の決定の時期いかんという問題でありますが、これは五月十五日現在の報告をもつて調査したものであります。それからその後にふえましたのは、御承知の通りお茶あるいは桑のように、霜が降つて、すぐ一日か二日で被害の現われるものがありますし、麦のようになかなか出て来ないものもあります。それから同じ穂を出しておりまして外から見てこれなら犬丈夫だと思つても、実際に収穫してみると中がさつぱり実が入つてないというようなもので、収穫してみないとわからないというようなこともありまして、その当時麦の被害についてはどうするかという問題がありました。そこで麦の被害はただちに現われないのであるから、その後順次現われた状態によつて、桑あるいはその他のただちに現われたものと同様に、これに準じて処置するということに大体意見はまとまつておるわけでありまして、その後農林省においても、その方針で大蔵省その他政府筋にも——同じ政府の中でありますけれども交渉しているわけであります。
それから県と農林省の統計が違つておる原因はどこにあるか、これはもちろんいろいろ違つた要素はあると思いますが、大体私が見た実感でありますが、県の統計は、もちろん農家の被害者の直接の報告に基いて統計が行つております。被害は最初に見たときは非常に大きく見えて、あとで見たら小さく見えるときもありますし、最初に見たとき小さく見えて、あとで大きく見えるというようなこともありますが、結局身近な被害は大きく見えるということが——身近と申しますと、桑なら桑をつくつておる人が、これはたいへんだというようなものが一番先に出されるので、やはり県のは最初大きく出ておる。また実際の被害者が調べたのは幾分大きく出るということは当然であると同時に、また割合に大勢で調べますから正確だろうというように考えております。農林省の方は調査員の数もおそらく一般の県に集まつたほど多くないと思いますので、あとから出て来るということもあり得るし、被害の変化というものが徐々に起つて来るために農林省の統計は遅れて来ているのじやないかというように考えます。そのほか、ただいま五等麦の設置であるとか、食糧麦の貸付、あるいはこの買上げを停止するとか、いろいろあなた方と同じ要求を受けて来ましたが、農林省も農民と一体であります。別に違つた機関ではなく、農民のための機関でありますから、農林委員会同様な考えでわれわれは対策を一生懸命にやつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/12
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013・芳賀貢
○芳賀委員 私は農林次官に質問しますが、第一の緊急対策として五億八千九百万円が計上されたわけでありますが、これは五月二十七日の委員会において、次官は、五月三日までの災害に対して確認された被害量に対して緊急の措置を講じたのである。爾後に判明された被害に対しては、それと同様な取扱いの上に立つて予算的、財政的の措置も極力講じたいというような意味の答弁をされておるわけであります。具体的にお伺いしたいことは、五月三日以降において増大された被害の実量というものが、はたして金額においてどのくらいの程度に上つておるかというような問題、それからそれらの増大された被害に対して、今後政府はどのような積極的な熱意をもつて第二次緊急対策の用意をしておるかという点について、詳しく御説明を願いたいのであります。
さらにもう一点お伺いしたいことは、開拓農民が麦等を耕作している場合において、農業共済に加入していないのがほとんどであります。これらの農家に対しては、当然農業共済金の暫定払いとか、そういうような措置によつてこれを救済するということはできないのでありますが、しかしながら実際に開拓農民が劣悪な条件の中において耕作しておることによつて生じた実害に対しては、やはりあたたかい手を差延べてやるというのが、当然とらるべき措置であると思うのでありますが、これらの人たちに対してはどのような対策をもつて当られるかという点をお伺いしたい。
もう一点は、一応二十億の融資を行つて、それに対して国が利子補給を行うような予算になつておりますけれども、これらの融資額に対しても、はたして二十億の限度で足りるということは言い得ないと思うのであります。前例といたしましては、たとえば十勝沖の震災の場合、あるいはまたオホーツク海の暴風雨による画家融資に対する措置法を国が設けて、これに利子補給を行つたというような前例があるわけですが、これらの前例等に準じて、もう少し積極的な災害農家に対する融資を行うと同時に、措置法等によつて強力な利子補給等をやる考えがあるかどうか。以上三点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/13
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014・篠田弘作
○篠田政府委員 五月三日までの被害と言つたことについて、多少私の言葉が足らなかつたために誤解があるようでありますから、ちよつと申し上げておきます。五月三日までと言つたことは、霜の降つた時期を私は言つたのであります。なぜそういうことを言つたかと申しますと、その後北海道に霜害があつたわけです。そういうものは含まない、五月三日までの凍霜害という意味で私は申し上げたのでありまして、被害の統計を五月二百までと申し上げたわけではありませんから、その点私の言葉が足らなかつたことをここで釈明いたしておきます。実際は、五月三日までに降つた霜の被害を五月十五日まで集計して、五億八千九百万円を出したことになつているわけです。
それから災害補償に入つておらない農民の救済をどうするかという問題につきましては、これは補償に入つておらないのですから、もちろん共済金をもらうということはできませんが、先ほど申しましたように、また委員の方から申されましたように、融資によりまして、穂麦の問題、あるいは食糧麦の問題、あるいはまた五等麦を設定してこの買上げをする、そういうような方法で、主として融資による救済をしたいと考えております。
二十億の融資は、足りなくなつた場合というお話のようでありますから、われわれの方では二十億で足りるだろう、こういうような考え方でおりますから、足りなくなつた場合に研究いたしましてお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/14
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015・芳賀貢
○芳賀委員 次官の御答弁は非常に表面的でありまして、五月三日までといたしましても、それが妥当な損害の実量であつたかどうか、それよりも増大しているかどうかということであつて、一線をたとえば五月十五日に画しても、それは同じことでございます。私は今度の災害の調査に山梨県と長野県と福島県へ参つたわけですが、先ほどの報告にもありましたけれども、非常に平面的な被害に対する対策が行われておる。特に日本の零細農に対して与えた被害の深さというものに対しての測定がなされておらないところに大きな欠点があると思うのであります。たとえば一地区の中においても、地勢の関係、あるいは気流等の関係によつて、被害の度合いが非常に違うわけでありますけれども、非常に零細な経営の中において、たとえば五割あるいは七割というような被害を受けた場合に、その農家の経営というものは根底から破壊されるような場合が非常に多いわけであります。こういう立ち行かないような農業経営、しかも宿命的な零細農の中に立つた農家の今後の再建に対して、もう少し具体的な対策というものがこれに付随して——緊急対策はもちろん拙速主義でもよいわけですが、それに続いてそういう根本的な対策というものが樹立さるべきであるというふうに私は考えておるわけであります。そういうような点について、実は内田農林大臣から直接お伺いしたいわけでありますが、農林大臣は就任以降まだ本委員会に現われて所信を表明しておらないわけであります。どういうような考え方で農業政策を担当してやつて行くかということに対しても、まつたくわれわれは未知数であります。健康もぼつぼつ回復したとするならば、こういう場合にはぜひ現われて、もう少し熱意のほどを表明してもらわないと、農林大臣に対する信頼というものをわれわれは持つことができないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/15
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016・吉川久衛
○吉川委員 芳賀委員と私は一緒に調査に歩いた者であります。関連がございますので、あわせて政務次官に伺つておきたいと思います。
五月三日までの凍霜害は、目の前に現われたところの、たとえば桑とか茶とかいうようなものは、具体的にその被害の状況が把握できると思うのです。ところが幾日か経過をしてから、われわれが調査に歩いて感じたことは、五月三日までの凍霜害のそれまでにわかつたもの以外においても、相当の被害の状況でそれまでに把握できなかつたものが、はつきりと現われて来ているところの現象を見たのです。たとえば山梨、長野のような果樹の被害については、この程度のものはものになるのではないかということで、紙の袋をかけたのがあるのです。それを一々とつてみると、紙の袋の中でみな発育がとまつているのです。こういうものはもう腐つて、はつきりとものにならないものが大部分なんです。こういつたようなものは、五月三日までの状況では把握できなかつた事実なんです。そういう点から考えますと、五億八千九百万円のこのわくでは、とうていこれを見ることはできないので、これを増額し、ければならないと思います。そういう点について、私は他の委員会がございましたので、あるいは御答弁があつたかと思いますが、いま一応明らかにしていただきたい。
それから果樹のごときは、本年はこのようにして果実がほとんどだめになれば、すでに施してあるところの肥料が枝や葉に影響しまして、実を結ぶところの枝ができないで、ほとんど徒長枝になつて、来年度の収穫にも影響するのであるということが、われわれしろうとにも予想できるのです。こういうことから考えますと、ただいまのような融資の方法では、この問題は私は解決できないのじやないかと思う。従つて融資の期間をもつと長期にするお考えがあるかないか、ないならば、ひとつ特別の考慮をしてもらいたいというように私は考えるのでございますが、このこともあわせて御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/16
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017・篠田弘作
○篠田政府委員 五月三日までの被害の問題は、五月三日までに降つた霜の被害を、五月十五日現在で調査した結果をやつたということは、先ほど申し上げた通りであります。被害の深さというものに対して、農家の経営までを考えて測定しているかどうか、あるいはまたその深刻の度合いというものを、あまりに表面的に見過ぎていはしないか、こういう御質問でありますが、私自身、やはり開拓農民としまして、三箇年間開拓地でくわを振つて開拓した経験がありまして、決して私自身は、ただ表面的に視察に行つたり、あるいは農林省の人のやつたことを表面的に聞いて救済を考えているわけではありません。食うや食わずの開拓生活を私もずつとやりましたので、こういう被害にもまた実際あつております。そこで私は、陳情されたときに陳信者にも言いましたが、陳情するとかされるとかいう立場でなくして、これは一体の立場じやないのかということを申したくらいでありまして、実際その被害の深刻さ、あるいはそれから受ける農民の迷惑というものを、十分に考えてやつております。ただ御承知の通り、予算措置がありますので、五億八千九百万円というものも、何も農林政務次官や大臣や政府だけがかつてにきめたのではなくて、五派の連合の会議にいてそれでいいということで、結局きめたわけでありまして、これはもしそれで足りないということであるならば、五派連絡の会議でもう一ぺんやり直してもいいわけでありますが、これはわれわれのかつてにきめたものではもちろんありません。
それからその次は、五月十五日以後に現われた被害、たとえば紙をむいてみたところが、中でもつてくだものが腐つておつた、こうい、りようなことは、もちろんあり得ると思います。私は実は六月の八日に群馬県の、先ほど報告で申されました地方を麦の被害調査に歩きました。なるほど穂はずつと実つておるのです。ただ、わきから見ると実つておりますが、それを引抜いてみると、実の入つておる麦はわずかに七%、それから実るか実らないかわからない、どうしてもあと一週間か十日見なければならぬというものもあり、全然なつていないものもあるということでありまして、これはもちろんその地方々々にもよることでありましようけれども、当然そういう被害があとで現われるということはわかつておる。でありますから、あとで現われた被害については、あらためてそれに準じた措置を講ずるということを、先ほど申したのであります。これをただ従来のように、農林省だけが大蔵省とかけ合つてやるというような考え方では、こういう大きな凍霜害の次にまた風水害が来るというような被害に対しては、なかなかできないのではないか。そこでやはり今日は国会の政治でありますから、国会がこの前のように、やはり各派が集まつて、一つの意思を決定して、それによつて政府なり大蔵省を動かすというようなやり方が一番有効であつて、われわれだけの責任であるというような考え方は、もはや古いというように考えております。それから果樹の融資は、もつと長期にしたらどうかという考え方でありますが、これは法律でもつて二箇年ときまつておるそうでありますから、長期にするためには、法律を改正する必要があるというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/17
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018・芳賀貢
○芳賀委員 今次官は非常に責任回避のようなことを言われましたが、五億九千万円の支出を政府が必要と認めて立案したのではなく、五派連絡協議会において、これだけあればいいということから出してやつたんだ、今後も必要とあれば、五派連絡協議会で要請すればいいではないかということでありますが、それでは政府というものは、はたして付のために所在しておるかということになるわけです。何ら責任のない、そういう所在の上に立つて漫然と、超党派的にものを持込んで来れば、その上は乗つかつてやつてやるというような姿が、これからの新しい政治の姿があるというような誤謬の上に立つておるとすれば、これはあまりにもおそまつなやり方であるといわなければならないと思うのであります。五億九千万としても、政府としてはそういうものが必要であつたかなかつたかという点にまでさかのぼつてお伺いしなければならない問題であると思うのです。もう少し真劍な御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/18
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019・篠田弘作
○篠田政府委員 私は別に漫然とお答えしたわけではありません。私は事実を申し上げたのです。それでこの問題は、もちろん全国的な、何十年ぶりという大きな問題であるから、そこでわれわれももちろんそれは一生懸命になりましたが、国会もまた一生懸命になつて、災害対策特別委員会のようなものをつくつて、一生懸命に各党がおやりになつた。その結論として、当時の被害では五派連絡協議会でもこのくらいあればいいだろうということであつた。政府はもちろん責任を感じたから当然それをやつたのでありまして、私は農林省の責任を回避するためにやつたのでもなく、事実そのものが、各党各派がこの被害について超党派的な立場で一生懸命やつた。その結論として現われた数字がそういう数字であつたということを申しただけであります。もちろん政府は政府の責任においてこれを支出したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/19
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020・芳賀貢
○芳賀委員 結論的に一つお伺いしますが、それでは政府当局として今後凍霜害対策に対する支出の増額を行う意思が、政府みずからの発意においてあるかないかということを明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/20
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021・篠田弘作
○篠田政府委員 先ほど申しましたように、五月十五日までの損害は五億八千九百万円で出してありますが、そのときに被害のわからなかつたものがあるわけなんです。でありますから、その後できました被害につきましては、これに準じてやるということは、先ほどお答えした通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/21
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022・佐竹新市
○佐竹(新)委員 議事進行について。凍霜害の対策、また今回の風水害の対策、いろいろあると思うのです。そこで国会としては、今後どういうように考えるかということは、いろいろ各党派で話合いをしなければならぬと思いますので、風水害対策もあり、また凍霜害の問題もありますので、本日は本会議もありますから、一応この程度でやめられて、それで風水害の懇談に移られたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/22
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023・古屋貞雄
○古屋(貞)委員 報告は、各調査の報告もあるし、また次官からその後の損害については、特に考慮して金を出すというようなことを言つておりますが、いずれにいたしましても、本問題は重要な問題でございまして、百億になんなんとするような損害に対して、六億ぐらいの金で処置がつくかつかぬかはおのずからわかるのでありまして、政府も相当お考えになるらしい。しかし六月の暫定予算にも、七月の暫定予算にも、これに対する対策費の計上はないようでありますが、いずれにいたしましても、根本的な農業政策を大臣から明日冒頭に聞きたいということをわれわれは要望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/23
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024・井出一太郎
○井出委員長 本日は午後一時から本会議も予定されておりまして、時間の制約がありますること、御承知の通りであります。ただいま佐竹君並びに古屋君からの動議がございましたが、本問題はいまだ論議すべき点が多分に残されておるわけでありまして、農林当局は、本日の御報告に対しまして善処方を約束せられましたけれども、大臣の出席を求めまして、さらにただいま来の諸問題を、責任あるお立場から答弁を得ておきたい、かように考える次第であります。従いまして、各般の御報告の趣旨は、今後の本案の審査に十分反映せしめることにいたしまして、本日のこの法律案に関する議事は、この程度にいたしたいと思います。
続いてもう少し御勉強を願いまして、先ほどの理事会の申合せがございますので、先般西日本を襲いました台風による農林関係の被害状況につきまして、政府から説明を求めることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/24
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025・篠田弘作
○篠田政府委員 実はここに十五日現在で各府県の被害状況を集計したものが来ておりますが、実はぎよう知事会議で新しく出されたのが、たつた二日間で五十億ぐらい同じ県の統計で狂つておるわけです。農林省の統計の方は十三日現在の統計でありまして、もちろんその後にこれはふえております。こういうふうになつておりますから、この集計ができましてから御報告するか、あるいは十五日現在の各県の被害の統計によつて御報告いたしますか、十五日現在でもよろしければ、ここに刷りものがありますから、御報告してよろしいと思いますが、どういうふうにしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/25
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026・井出一太郎
○井出委員長 ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/26
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027・井出一太郎
○井出委員長 速記を始めてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/27
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028・川俣清音
○川俣委員 ごく簡単なことを伺いたいのですが、今度の凍霜害といい、風水害といい、降雹害といい、全国的に非常な異常な災害を起しておるわけですが、農林省が持つております統計調査部は、これらのものに当る直接の機関でありながら、とかく被害農民から不評を買つておるわけであります。この不評の中には、もちろん被害農民の感情と統計とが一致しないこともあるであろうと思いますが、出先機関の様子を見ますと、限られたる旅費予算及び事業予算においては、とうてい完全な把握ができないような状態であるようであります。これらに対してどのような対策を持つておられますか、伺いたいと思います。
もう一点は、ただいまの凍霜害に関係することでありますが、林野庁で持つております苗圃がどの程度に凍霜害の被害を受け、将来の造林計画の上にどのような支障があるか、この二点をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/28
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029・柴田栄
○柴田政府委員 凍霜害に関しましては、実は東北地方のごときは、さようなことがあるという考え方で、凍霜害の防除をすでにいたしておりましたので、現状におきましては、造林に支障を生ずるような被害は生じておりませんので、造林計画には現在のところ支障はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/29
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030・篠田弘作
○篠田政府委員 手の足りないことは確かに御説の通りでありまして、これは調査費の増額要求をする以外に方法はないかと考えております。実際手が足りないわけなんです。これははつきりしているのです。ところがいろいろ行政機構とのバランスがありまして、そういうふうに調査員の数も減らしたというような実情はあります。ふだんはそれでも間に合うでありましようが、こういう突発的な、だれも予期しないような問題に対して手が足らないということは事実であります。でありますから、こういう問題につきましては他の融通できる経費で……。しかしこういう被害を予想して、火事があるだろうということを予想して、どうも普通の日にポンプを置くというわけにも行かない。これは簡単に言えば消火器のようなもので、普通の日は消火器を一本置いておけば間に合うが、大火事があつたら消火器では間に合わないというふうに私は考えるのであります。こういう突発的な事件には、よその費目から人員を応援でもしまして、そしてその穴埋めをあとでするという方法でもとる以外にない、現在ではそう考えております。しかし予算の許す範囲において、調査員の数というものはふやして行かなければならないというふうに考えております。(「セクト主義の強い官庁の中でそういうことができますか」と呼ぶ者あり)
私が申し上げたのは農林省の中での話です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/30
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031・川俣清音
○川俣委員 そういう政府次官の御答弁では……。私は将来こういう事態があるので、これに対してどういう対策を講じておられるかという質問をいたしたので、対策がなければないでまた別問題ですが、どういう対策をとられるかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/31
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032・安田善一郎
○安田説明員 実は川俣委員のおつしやいました通り、予算経費が非常に少くて、特に突発事故による大被害では、労力、予算、交通機関、特にその機動力で非常に難渋いたしておりますが、作柄と被害の関係では十箇町村単位に約一人の職員しか実は持つておりませんので、ほかの面積調査職員とか農業統計その他の専門知識のある者を動員して、労力の許す範囲で最大限度やつております。またその旅費とかその他のことにつきましては、他の経費を総体の事務所の経費の中へ繰込んで、万全を期せよ。そのあとは大蔵省にも予備金要求をして埋めて行きたいと思つておりますが、十分できないのた遺憾といたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/32
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033・川俣清音
○川俣委員 時間がないから、これ以上の質問は後日に譲りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/33
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034・井出一太郎
○井出委員長 それでは明日は大臣の出席を求めましてさらに責任ある答弁を求めることにいたしたいと思います。
本日はこの程度をもつて散会いたします。
午後零時三十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604988X00419530617/34
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