1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月九日(木曜日)
午前十時四十九分開議
出席委員
委員長 辻 寛一君
理事 天野 公義君 理事 坂田 道太君
理事 原田 憲君 理事 辻原 弘市君
理事 前田榮之助君 理事 世耕 弘一君
尾関 義一君 岸田 正記君
小西 寅松君 竹尾 弌君
山崎 猛君 高津 正道君
野原 覺君 山崎 始男君
大西 正道君 松平 忠久君
北 れい吉君 小林 信一君
出席国務大臣
文 部 大 臣 大達 茂雄君
出席政府委員
法制局次長 林 修三君
法務事務官
(刑事局長) 岡原 昌男君
文部政務次官 福井 勇君
文部事務官
(大臣官房会計
課長) 小林 行雄君
文部事務官
(初等中等教育
局長) 田中 義男君
文部事務官
(大学学術局
長) 稻田 清助君
委員外の出席者
法務事務官
(刑事局公安局
長) 桃澤 全司君
文部事務官
(大臣官房総務
課長) 福田 繁君
専 門 員 石井つとむ君
専 門 員 横田重左衞門君
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七月八日
戦争犠牲者慰霊日制定の請願(三木武夫君紹
介)(第二八七九号)
理科教育振興に関する請願(三輪壽壯君紹
介)(第二八九三号)
同(藤枝泉介君紹介)(第二九六三号)
同(島上善五郎君紹介)(第二九六四号)
同(鈴木茂三郎君紹介)(第二九六五号)
一條村小学校校舎改築費国庫補助等に関する請
願(池田正之輔君紹介)(第二九六六号)
同月八日
理科教育振興に関する請願(花村四郎君紹介)
(第二九九九号)
同(島上善五郎君紹介)(第三〇〇〇号)
同(灘尾弘吉君紹介)(第三〇〇一号)
高等学校の定時制教育及び通信教育振興法制定
に関する請願(尾関義一君紹介)(第三〇〇二
号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する
法律案(内閣提出第一一二号)
文部行政に関する説明聴取
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/0
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001・辻寛一
○辻委員長 これより会議を開きます。
議事日程の順序を変更して、まず市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案を議題とし質疑を行います。質議はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/1
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002・辻原弘市
○辻原委員 ちよつと関連いたしまして、市町村立学校職員給与負担法の第一條の負担の対象にする学校の問題でありますが、ただいまの幼稚園の現状を見てみますと、財政難のために非常に幼稚園の経費が因つておると同時に、幼稚園と小、中学校その他の義務教育諸学校の給与の均衡の状態を見ますと、公務員のベースに達しておらないという幼稚園の職員の給与ベースの実態がわかる資料も現われておると思うのですが、この問題の解決方法として、もちろん義務教育ではございませんので、ただちに義務教育と同じ取扱いにすることには、根本的に考えるべき点が残されておるかと思います。しかし幼児教育の重要性もわれわれとしては十分考えてみなければなりませんし、ただいまの幼稚図の経営が必ずしも一般的に普及されているのではなしに、比較的裕福な家庭、恵まれた環境の中にある子供たちがより恵まれた状態において幼稚園に進学して行くということになつておる点も、教育上考えなくてはならぬ点があると思います。そういう点から、やはり幼稚園も義務教育の一環として、その前身として、もう少し普及、徹底させる方法を講じる必要があるのではないか。そのために何とかただいまの幼稚園の財政難を助けてやる、こういうことを至急に考える必要があるのではないかと思いますが、その点についてやはり大きな問題は、給与負担の問題でございまするので、市町村立の幼稚園なんかについてはやはり国庫負担によつて救済して行くという考え方を持つことが、当を得ているのではないかと思います。それらの点について文部省は検討されているかどうか、これをちよつとお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/2
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003・福井勇
○福井政府委員 お答えいたします。ごもつともな御質問でございまして、幼児教育の方面につきましても、幼稚園などに対して文部省としては十分検討し、また対処しなければならぬということを考えておりますが、なおそれより重く義務教育の方面に現在対処しておりまするので、ないがしろにするという意味ではございませんが、義務教育の方を今先に一生懸命になつておる段階でございます。御指摘の面につきましても、今後十分考慮し、善処したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/3
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004・辻原弘市
○辻原委員 その程度のお答えを私聞いているのではなしに、もう少し具体的に、第一條では「市町村立の小学校、中学校、盲学校及びろう学校」のこれこれに対して給与の内容を列記して、これを負担すると書いてあるのですが、その対象の中に幼稚園も加えるわけに行かぬか。さきに私が申しましたように、義務教育ではないという観点では問題がありますが、その他の理由ではここから除く理由はないと私は存じております。かりに義務教育ではない場合においても、この種の取扱いをした例がある。これはかつて定時制高等学校にその給与の負担をやはり国がした例がありまして、しかもその振興をはかつて行くということを非常に推奨されたことがあつたと思うのでありますが、それと同じように、現在幼稚園教育というものをこのままほつておけば、ただ金のある者が相当の金を出して、場合によれば、義務教育の学校に行くよりも非常に金がかかる。全国で幼稚園の普及しているあの徳島県あたりを見てますと、われわれが今考えているような、東京あたりで見るような幼稚園ではない。ほんとうにお百姓さんの子供も、また町の勤労者の子供も全部幼稚園に通つているほど普及徹底している。それはその町村が非常に力を入れて、いわゆる義務教育の前身という形で一般教育と同じ取扱いで普及さしているから、幼稚園というものは非常に価値があるということで、ほんとうに幼児教育の価値を認めたからです。このままほつておくと、さきに申し上げましたように、行ける子供だけが行くということになつて、ぜいたくな教育機関だという印象を重大な幼稚園教育にますます植えつけて行く、いうことなつて行く、私はこう申し上そうげておるのであります。だからその点をカバーする意味において、義務教育とある程度同じ取扱いをする、こういうことをこの第一條の中において御考慮願えませんかということを具体的に御質問申し上げておりますので、その点いま少しお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/4
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005・田中義男
○田中(義)政府委員 私からお答え申し上げます。お話のように、現在幼稚園教育は非常に重要性を持つて参りまして、少くとも義務教育に準ずる取扱いをしなければならぬという実情に相なつておるのでございまして、当局といたしましてもでき得るだけその実をあげますように努力を払つておるのでございますが、お示しの給与の負担について、これを義務教育国庫負担法の対象にするわけに行かないか、こういうお話でございますが、御承知のように、ともかく幼稚園におきまする一つの重要な問題は、教員給与が非常に不安定あるいは低率にあるということでございます。従つてこれを国庫負担の対象として、その給与の確保、安定をはかるということが最も大切なことと私どもも考えておるのでございます。従つてその線に沿つてできるだけこの国庫負担法の対象を広げたいとは考えておりますし、また幼稚園についてはさような方向に向つて進めたい、かように考えておりますし、ただいまただちにこれをこの中に入れるという具体化の段階にまでは、私ども事務当局の折衝の範囲にはまだ参つておりませんが、しかしこれは早晩解決すべき重要な問題として私ども検討を続けておる問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/5
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006・辻原弘市
○辻原委員 私今局長からお伺いした話で、私はそういう答弁がいただけないものと思つて、ちよつとあきらめつつ質問しておつたのでありますが、非常にいいお答えをいただきまして、ありがたく存じます。と申しますのは、この点を確かめた意味でありますが、私さきに申しましたように、義務教育小学校にこれを入れる可能性があるかという観点からお話をしておるのでありますが、今までちよいよいお聞きしたところでは、やはり義務教育ではないので、この中に含む考え方は無理だというお説のもとにこの点は考慮されておらなかつたように私は記憶しているのですが、ただいまのお答えによりますると、やはり将来にわたつてそういうふうに考慮して行きたい、こういう御答弁であつたと私は聞きました。そういたしますると、入れるか入れないかということの主たる問題は財源関係であつて、この中に入れるということについての法律的な問題は残されておらないし、またこの幼稚園に対する取扱い上、ここに入れることは不適当だというようなことは解消されておるように聞いたのでありますが、そういうふうに受取つてよろしゆうございますか。この点を確かめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/6
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007・田中義男
○田中(義)政府委員 当局の努力目標としては、お話の通りに御了解願つてけつこうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/7
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008・辻寛一
○辻委員長 ほかに質疑はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/8
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009・野原覺
○野原委員 ただいまの幼稚園の問題でございますが、実は今局長さんから御答弁を聞いて、私も意を強くしておるわけでございますけれども、この具体化のためにあなたは努力をされるという考え方を述べられたのでございますが、一体いつごろこの具体的なものをお出しになられるのか、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/9
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010・田中義男
○田中(義)政府委員 この問題は予算を中心とする問題でございますから、予算編成をいろいろ具体的にどうするかという時期になると思うのでございます。従つてさしあたり当面の問題としては、二十九年度予算編成等の場合に一応努力を確実にいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/10
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011・野原覺
○野原委員 そういたしますと、二十九年度の予算から考えるということでございますから、二十九年度からは文部省としては幼稚園は小、中並の方針で行くと考えてよろしいわけでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/11
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012・田中義男
○田中(義)政府委員 そういう目標で当局としては努力したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/12
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013・辻寛一
○辻委員長 ほかにございませんか——。ほかに質疑がなければこれにて終了いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/13
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014・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認めます。
これより討論に入ります。討論の通告もないようでございますから、討論は省略いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/14
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015・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認めます。よつて討論は省略せられました。
採決を行います。市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/15
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016・辻寛一
○辻委員長 起立総員。よつて本案は原案通り可決せられました。
なお報告書の提出等につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/16
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017・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認め、さように決します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/17
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018・辻寛一
○辻委員長 次に文部行政に関する件を議題といたします。文部大臣に対する質疑を行います。天野公義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/18
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019・天野公義
○天野委員 先般来、文部大臣の文部行政に対する基本方針について、いろいろな観点からの論議が闘わされておつたわけでございますが、その中でまず第一に文部大臣があげておられる道義の高揚という面からいたしまして、教育勅語をめぐる論争が盛んに行われたのでございます。この点に関しまして、私は、さらに文部大臣に一、二点お伺いをしたいと思うのでございます。なるほど教育勅語は君主主権下において発表せられたものでございまして、その表現は「朕惟フニ」という点から始まつておるのでございまして、現下の日本の状況には根本的に合わないということは当然でございます。そこで大臣が教育勅語に関していろいろと御意見を述べられたのでございますが、私はこの教育勅語というものは民主政治化の現在の日本にはあてはまらないものである、しかしながら長い目でわが国の道徳また民族の精神のあり方というものを考えた場合においては、明治時代においてはこういう形をとり、また新憲法下には教育基本法という形をとつて現われておるのだ、このように考えるわけでございます。この点について文部大臣の御所見をまず承ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/19
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020・大達茂雄
○大達国務大臣 ただいま天野委員がお話になりましたように、教育勅語は君主主権制度のもとに発布せられたものでありまして、その形式におきましても、またその内容とする徳目の形におきましても、今日の新憲法下の時勢には合わない点がある、かように考えております。ただその徳用の形式はともかくといたしまして、その底に流れておるところの道徳的精神、これはやはりわが国の伝統的な道徳精神を基調にしておるのでありまして、わが民族が民族として続く限り、明治の時代においてはあのような形をとり、また今回の時勢におきましては、やはりこの精神が民族をつくつておるその基礎になつて、そうして今日の時勢の要求する徳目の形として現わるべきものである、かように考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/20
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021・天野公義
○天野委員 教育基本法の前文にあります「日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しよう」云々というこの基本的な考え方は、現在のわが民主日本におきましては、まず第一に高く掲げなければならない教育上のスローガンでございます。この基本的な考え方というものは、やはりこの教育勅語にも現われておるところでございまして、表現の仕方は異なつておりすするが、帰するところこの教育勅語に現われておるところのものは、やはり人間を磨き、社会公共のために奉仕をして、わが国の発展興隆をはかつて行かなければならぬということであつて、これが教育勅語の基本的な精神だと考えるわけでございます。そこでこういうような基本的な共通点がありながら、教育勅語に対する大臣の御答弁は、辻原君その他がおつしやられるような誤解を招くおそれがあると思いますので、その点誤解のないように、この際教育勅語はすでに死んだものである、しかしながらその精神というものは教育基本法にも教育勅語にも一貫して、日本の民族精神として、日本民族のほんとうの理想として流れておるのである、こういう点をひとつ明確に再確認していただきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/21
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022・大達茂雄
○大達国務大臣 教育勅語がわが国の道徳教育の基本であるという公式的な地位はすでに失つておるのでありまして、この点は明瞭であると思うのであります。言いかえますると、教育勅語は一つの道徳訓と申しますか、そういう文献として、いわばバイブルあるいは論語、そういう種類の道徳的な文献としてその地位を今日認める、こういうふうに考えるのが当然であろうと思います。そこで教育勅語の道徳的基調とするところは、わが国の伝統的な民族の道徳精神を盛り込んでおる、こういうことはしばしば私申し上げておるのでありますが、教育基本法にうたわれております教育の目的として、教育は人格の完成を目ざす。教育勅語におきましても「父母二孝二兄弟二友二」以下に示された徳目は、これは人格の完成を具体的にかくあるべきものであるということをうたわれたものと私は考えるのであります。「平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期し」云々こういう基本法に掲げられた教育目的というものは、やはり教育勅語のうちにおきましても、「交母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦祖和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ」と言われ、わが国民の個性の個人的な人格の完成と社会生活をするための必要な徳目を掲げられておるものだと思うのでありまして、また「学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就シ」これまた人格の完成と、そうして真理、正義を愛好する個人の育成をうたわれておるものと思います。またあるいは「国憲ヲ重ンジ国法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ」以下の文句は、これはわが国民として、国憲、国法に従い、そうして国を愛し国のために、つまり祖国愛と言いますか、国民としての心構えをうたわれたものと思うのであります。一々申し上げるのもどうかと思うのでありますが、しかし大体教育勅語の基本的な道徳精神は、今日教育基本法の第一條に教育の目的として掲げられておる目的というものと背馳するものではなく、やはり同じ精神的な基調に立つておるものである、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/22
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023・天野公義
○天野委員 教育勅語に対する大臣の御見解は大体わかるのでございますが、教育勅語においても、社会道徳に対する見解というものが非常に薄いというような欠点もあるわけでございます。いろいろな道徳の観点が、徳目その他見方がございますが、君主主権下のこの教育勅語におきまして、社会道徳というものが一つの欠陥になつておるということも、これは見のがすことのできない点だろうと思うのでございます。こういう点はしばらくおくといたしまして、それならばこの教育勅語なりまた教育基本法なりに見ればわかりますような、わが国の伝統的な道徳のあり方、これはやはり国民に知らせ、そしてある程度守る基準を示す必要があるのではないか、単なる徳目の羅列ではなくして、それならばどうしてこういうことをしなければならないのか、こういうような点も明確に一つの基準として教育上さして行く必要があるごとと思うのでございますが、そういう点について大臣の御見解を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/23
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024・大達茂雄
○大達国務大臣 なるほど教育勅語に掲げられてありますことは、どこに一番重点が置かれておるか、あるいはどの点が特に強調せられておるか、これは読む人の考え方で違う点があるかもしれぬと思うのであります。むろんそのときの時代の要求といいますか、その時世の線に沿つて出されたものでありますから、今日から見て、あるいはこの点が最も強調されるべきであるということはもちろんあり得ると思うのであります。教育勅語におきまして、いわゆる社会道徳といいますか、お互いに社会的生活を営む上における必要な道徳、これも欠けておるということは私はないと思いますが、たとえば「恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ」と言われ、「公益ヲ広メ世務ヲ開キ」こういうことはやはり社会道徳というものをうたわれておる、こういうふうに思うのであります。ただ表現の形等において、今日の時世から見るとぴつたり来ないという感じはするかもしれませんが、さらに掘り下げて、その底に流れる精神というものは、やはりそういう点を含んでおると私は思うのであります。しからば今日の時世に合うような徳目を連ね、そうしてこれを国民道徳の中心としてさし示すということが必要ではないかというような意味の御意見を持つておられたのでありますが、これはさような意味において必要な場合もありましよう。しかしながらこれも繰返し申し上げまするごとく、私はいわゆる文教当局、文教行政の方面から、わが国民はかくなければならぬ、かくあれということは、ごく大綱の精神といたしまして、わが国の憲法また新時代におけるわが国の形体から申しまして、教育基本法第一條に掲げるようなことは、これは抽象的には言えることであると思うのであります。しかし個々の徳目につきまして、国民はかくのごとくしなければならぬ、かくあらねばならぬということを中央からきめて、そうして右へならえと申しますか、そういう形をとることがいいことか悪いことか、また徳目というものは、役所と申しましても結局だれかが頭で考えてきめることであります。さようなことでわれわれがりつばな社会をつくり、そうして日々変化して行くその情勢に応じて身を慎み、身を守つて行く、それをそういうことで、こうである、ああであるということがそう簡単にきめられるかどうか、前にも申し上げました通り、大綱の精神はおのずから厳然としてあるのであります。個々の徳目につきましては、これは国民の良識によつておのずから定められるものである、取捨選択せられるものである、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/24
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025・天野公義
○天野委員 国民の良識で取捨選択されるということもよろしいと思うのでございますが、国民の良識をつくるところの基本的なものは教育にあるわけでございます。たとえば自由という問題をとらえて見ましても、ただ自由主義になつたのだといえば放埒に流れるおそれがあります。自由主義を厳格に考えるならば、自由ほど責任と自覚を要求される考え方はないと思うのでございます。カントの精神を引出すまでもなく、自由というものは最もおのれを律して行かなければならない精神であります。自由とは、ただ文字通りの自由である、こういうような解釈は非常に多いし、おそらく自由というものは、たとえば学校の生徒であれば学校から解放され、ぶらぶら遊んで歩くのがあるいは自由であるのではないかというような考え方を持つておる人も上るでしようし、束縛を離れるということが自由であるという考え方を持つておる人もたくさんあるでありましよう。こういうような自由に対する無自覚な考え方というものは、戦後の思想の混乱、風教上の混乱というものを非常に私は大切であると思うのでございます。現在の義務教育上の一つの大きな欠陥というものは、この自由に対する基本的な考え方というものが教員にも欠けておれば生徒にも欠けておる、家庭にも欠けておる、こういう点にあると思うのでございます。そこで自由とは何ぞや、やはり私はこれを明確に教えて行く必要があると思うのでございます。時勢がかわれば自由も動く面がございます。従つてそれはそのときどきの時勢に従つて動かして行くのがよい。しこうして自由というものは、責任と自覚を最も要請される貴重な精神であり、自己自身にとつて最も厳重な制限が加えられる精神である。しこうしてこれを守つて行くということは、人類が近代史になつてから、血を流しつつ守つて来た最も貴重なものであるというような、自由一つをとりましても、歴史的な背景、また横の問題もここに明確に出て来る問題でございまして、こういうような問題をやはりある程度は教えて行く必要があるのではないかと思うのでございます。一例をあげれば、自由の問題においてもこの通りでございますが、こういうような問題についての御見解はいかがでございましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/25
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026・大達茂雄
○大達国務大臣 天野君の仰せられたことは、私は同感でありまして、もちろん自由というものは人間の根本的な権利であり、人間の存在、一口に言うと個々の存在価値を表わしておるものであると思うのであります。しかしながらとにかく人間が一人々々で暮らしておるのではなくて、集団的な生活をして、いわゆる社会というものをつくつて、そうしてその社会が平和な、幸福な社会を建設するということが目標でありますから、自由というものは、放縦というものとはまつたく厳重に区別せらるべきものである、観念的にはそういうことはきわめて明瞭であると思うのであります。ただ実行面におきまして、どこにその限界が引かれるか、これはおのずから国民だれもが考える妥当な線があると思うのであります。戦後わが国が一挙に、国家としても社会としても新しい体制に切りかわつたことでありまして、社会的混乱が生じた。その結果往々にして、自由自由といつて、はき違えた自由が、もし放縦ということまで発展すれば、これは集団的生活である社会というものは成り立たない、根本的な致命的なものであると思うのであります。さような点で、これは遺憾な点がなかつたかといえば、私見を申し上げれば、そういううらみもあつたかと思うのであります。これは世の中の秩序が整い、国の経済がだんだんと形をなして行き、いわゆるおちつきによる国民の良識のとりもどされる程度に応じまして、同時にまたわが民族のいわゆる民族愛というものが高揚せられるに従いまして、自然に健全な社会ができ上る、こういうことを私は期待しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/26
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027・天野公義
○天野委員 そうすると具体的に道徳教育上についてどうしたらよいか、どうしたら、もつとりつぱな人間をつくることができるかという、この道徳教育上の文部大臣の抱負、具体的な方法をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/27
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028・大達茂雄
○大達国務大臣 私はいわゆる文部行政というか、文教行政というか、これを担当しておるのでありまして、私自身が非常に人格も高い、道徳も高い人間でもありません。また教育者でもないのであります。要するに教育行政を担当しておる者であります。そこでわが国の少くとも学校の範囲において学校教育ということにかりに局限をして考えますと、先刻も申し上げましたように、その知性を啓発し、また一番大切な点である道徳というものを身につけさせるというか体験させる、こういうことは、これはいろいろ人によつて考えが違うことでありましようし、要するに教育の方法論になるかと思うのであります。私見を申し上げれば小学校低学年、まだ知能程度の発育の十の分でない低学年児童に対しては、目々の習慣なりいわゆるしつけと申しますか、個々の行動の実行の面におきましていい習慣をつける、いいしつけを与えるよう値する。その点から自然に社会生活を営んでおるという、いわゆる社会人としての人格をつくり上げて行く基礎をつくるようにしたい。また長じて知能の程度が発達いたしますれば、その段階々々に応じてやはり道徳的な知識を与えて行く、それですることと頭で考えることが一つになつて、その人格が陶冶される、こういうふうに行くのがほんとうじやないか、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/28
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029・天野公義
○天野委員 わが国では宗教教育というものが、非常に失われておるように考えられます。ヨーロツパあたりはキリスト教教育が非常に行われて、これが教育に及ぼす影響も非常にプラスになつておる面があると思うのであります。わが国におきまして、いわゆる教育というものを考えた場合においては、多くの場合宗教教育というものも行われない、家庭教育というものも行われない。教育の場は大体において学校であるといつても過言ではないと思うのであります。従つてこの学校における教育の問題におきまして、今大臣が言われました低学年の生徒にしつけを十分にやつて行く。しつけを通じて一つの事の善悪、これをはつきりさせて行くという考え方は、これは私は非常によいことであると思うのであります。このしつけという面に十分御留意くださるようにお願いをしたいと思うのであります。なお長じて参りますと、たとえば高等学校等におきましては、これはどうしてもある程度学問的な方面にも片足をつつ込むような年齢にもなつて参るのでありまして、ぜひとも私は倫理学なりまた思想史というようなものも取上げて、学問的に研究をして行かなければならない、このように考えるのでありますが、こういうような分野を取上げるお考えがございますかどうか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/29
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030・大達茂雄
○大達国務大臣 お述べになりましたこと、私まつたく同感でありまして、そういうふうな方針で進んで行きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/30
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031・天野公義
○天野委員 次に、大臣は愛国心その他のことを言われておりますが、この、国を愛する精神を植えつけるためには、わが国の歴史が一体どういうものであるか、わが国の風土がどういうものであるかということを、国民自身が明確に知つて行かなければとうてい愛国心の高揚もまた日本の国土の発展に努力しようという気概も生れて来ないと思うのでございます。そこで現在行われておりまする社会科の教育内容を二、三最近に当つてみたのでございまするが、どこにも歴史はございません。歴史というのはどこにもない、あるのはたとえばちよこつと断片的に引出した産業発達史だとか、また生活史のほんの一部分であるとか、断片的な、ちようど大学の卒業論文の概要を寄せ集めたようなものが、社会科として行われているように考えられるのでございます。こういうような教育のあり方というものは、私はこの際根本的に考えて行かなければならないと思うのでございます。ちようど占領下にあつて教育は百八十度転換をして現在のような形になつたと思うのでございまするが、占領下を脱した今日におきましては、現在の日本のこの立場におきまして、新しく歴史また地理というものを考え直して行かなければならない、再編成して行かなければならないと考えておりますが、大臣の御見解いかがでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/31
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032・大達茂雄
○大達国務大臣 歴史、地理教育の重要である点につきましては、まつたく御同感でございます。今日の社会科の内容が、社会生活におけるある事象をとらえ、その事柄を中心として、あるいはそれの歴史的な面あるいは地理的な面を、その事柄を中心として教え込んで行く、こういうやり方のように私は思うのでありますが、なるほどこれは非常に優れた、いわば秀才といいますか、非常に頭のいい子供、あるいはもつとずつと進んだ人、そういう人々にとつては、縦横に社会の事象とあわせて歴史、地理というものがこなされるということであれば、これもけつこうかと思いますが、一般の生徒児童を対象とする限り、そういう段階に入る前に、歴史、地理についての系統的な知識を与えるということが、どうしても欠けているのではないかと私は思うのであります。先般申し上げました意味も、私は今日社会教育において歴史、地理という要素がないとは思わぬが、ともかく系統的に歴史の知識、地理の教育をするということが大切だというふうに考えておりまして、せつかくその方向に、学校における教育課程の是正をいたして参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/32
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033・天野公義
○天野委員 ちようど今の社会科を見て参りますると、部分だけがずつと並んでおつて、骨が抜けておるというふうに感ずるわけでございます。たとえば数学なら数学を教える場合に、応用問題だけ教えて、公式はちよつとも教えない、木を見るにしても、葉つばだけ教えて木の幹は探す者は探してみろ、こういうような行き方ではないかと思うのでございます。そこでどうしてもいろいろな社会的な事象の基本的な心棒をなしておりまする歴史と地理というものを、ぜひ早急に義務教育の甲に織り入れて、そうして社会科の今の各部面にも非常に優れたところもご戸いましよう、それがなお一層生きるようにしていただきたいと思うのでございます。現在のようなやり方でございますと、部分だけ覚えてしまつて、関連制がないのでございますから、その覚えた部分もすぐあとで忘れてしまつて、何も残らないというような現象を呈しておると思うのでございます。この点についての大臣の御見解をもう一度お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/33
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034・大達茂雄
○大達国務大臣 大体私は同様に感じておるのであります。ただいま申し上げましたように、まず基礎的な知識を与える、系統的な知識を与える、それが十分会得されて、初めて現われて来る個々の現象に対する解剖もでき、観察もできるものであると思います。従つてこれは歴史、地理の問題に限定して申し上げますと、ただいま申し上げましたように、系統的な知識として歴史を教えて行きたい、かよう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/34
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035・天野公義
○天野委員 歴史の教育をして行く場合には、必ず古代史が問題になつて来るわけでございます。史実としての歴史と神話との問題が出て来るわけでございます。戦争中わが国の神話というものが平田神道の影響を受けた方面の狂信的な一部の右翼学者から非常に歪曲されて、これが軍部勢力と結託をして日本の神話の本来のあり方、精神というものが没却され、そうして今日神話というものが非常に忘れ去られたような感を呈しておるのでございますが、虚心に日本の神話というものを考えてみた場合においては、たとえば八紘一宇という文字にいたしましても、これは日本書紀に出ておりまするように、わが日本の国内を統一して行くのだということを示しておるにすぎないのでございます。また古事記をひもといてみましても、日本の国というものは国生みのときに生れたと言われておあの島々だけでございまして、これを基盤としていろいろなことが行われておるのでございまして、どこにも世界征服であるとか、また日本の神々が、世界をすべるような神になるといるうようなことはどうしても考えられいのでございます。日本の神話はもつとおおらかな、豊かな、そして神々がほかのギリシャ神話におけると同様に人間として行動しておる、その中から天皇も八間として行動しておる、いろいろ今日とつて行かなければならない問題も多々ございますし、わが国の発生の民族的な感情というものもそこに現われておる。史実というか、たとえば考古学的にだんだんと発展して来た歴史ということも必要でございますが、やはり歴史教育を行う上におきましては、わが国の民族精神の最初の現われである神話、民族性の最も原始的な立場に立つた神話というものを、新しい目で考え、新しい目で研究して、これを教えて行く必要がぜひあると思うのでございますが、その点いかがでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/35
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036・大達茂雄
○大達国務大臣 私は歴史の教育において取上げられるべき内容は、あくまでも何人が見ても今日までの研究において確かな史実である、こういうことに歴史教育の内容としては限定せらるべきものであると思うのであります。しかしながら御指摘の通り、古事記にいたしましても、日本書紀にいたしましても、史実としての価値は別といたしまして、わが国の古代の民族がいかなる社会的生活をし、またいかなる社会的生活の理想を掲げておるか、また民族の思想、習慣、そういうものを知る上において、きわめて貴重な資料であると思うのであります。従つてこれを学校教育の上においてどう取上げて参りますか、私はやはり今日に生を受けた若い人々が、われわれの祖先がどういう考え方をしておるか、どういう社会生活、習慣を持つておるかということを、いいことか悪いことかは別といたしましても、知るということは大切である。ただ歴史教育というわくの中におきましては、今日まで研究されたところ、確かな史実である、こういうことに限定せられるべきものであると思う。私は教材として、さような古代のわが民族のあり方を知る意味において、これが取扱われるということはさしつかえないものと思つております。ただこれがいわゆる世界征服の考え方であるとか、軍国主義とか、そういう一つの片寄つた思想に結びつけられて、それが児童、生徒に影響を及ぼす、こういうことは厳に気をつけて行かなければならぬ。純粋に学問と申しますか、研究として、かようなことが教材のうちに取上げられてもこれはさしつかえないものと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/36
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037・天野公義
○天野委員 ただいま歴史教育、地理教育について概要をお伺しておるわけでございますが、一番大切なことは、物事を系統的に考えて行くことだろうと思うのでございます。ところが現在の社会科のいろいろな内容を見て参りますと、ちようど現象を横にすぱつと切つて、その現象の表と裏だけをちよこつと研究するというような感じがいたすのでございまして、物事を縦にずつと見て、その縦に見た目で今度は横に見て行くという目を養う点が足りないと思うのでございます。こういう点をぜひとも今後教育上留意していただきたいと思うのでございますが、教育課程審議会は一体どの程度まで日本の教科内容を再検討する作業が進んでおるのでございますか。往々にして審議会というのは、審議をしない、時間をかせぐ審議会になつておるのが非常に多いように考えておるのでございますが、この審議会は一体どういうところまで進んでおるのでございますか、概要をお話願えれば、お話願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/37
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038・田中義男
○田中(義)政府委員 私からお答え申し上げます。教育課程審議会は、昨年の暮に第一回の総会を開きまして、文部大臣からの諮問事項を受取つたのでございます。それは高等学校における教育課程の問題、それからただいまお話になつております社会科の問題、特に地理、歴史並びに道徳教育を中心としての具体的な答申案を求めるべく諮問されたのございますが、爾来それぞれの標題について分科会を持ちまして、特に社会科並びにそれに関連して道徳教育の問題につきましては、特別委員をも設置して、関係者は毎週一回ずつ非常に熱心に審議、討議を続けて参つておるのでございます。ことに最近においては週二回もそれぞれの委員会を開いて、非常な進捗を見ておるのでございます。ただいまは社会科に関しましてほぼ答申案をまとめようかというところまで参つておるようでございます。従つてこの月末を一応の目標として、具体的に決定するような運びになつておると私承知いたしておりますので、かなり具体的な答申が遠からず出て来るものと期待いたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/38
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039・天野公義
○天野委員 社会科教育に関することは、私もいろいろ研究して、また時期を見てお伺いしたいのでございます。昨日大臣も御一緒に理科教育の設備について、都内の二、三の学校を見て参つたわけでございますが、その設備が非常に貧弱であつたわけでございます。今後わが国を非常に発展させて行くためには、どうしても科学を振興して行かなければならない。この科学の基礎である理科教育の設備が非常に貧弱であるということと、今後日本の文化的な、また経済的な発展の基礎となるところの科学の振興について、大臣はどういう御見解をお持ちであるか、この際承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/39
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040・福井勇
○福井政府委員 御指摘の日本の科学教育につきましては、非常にごもつともなお話でございまして、特に日本の産業振興の基礎となる科学教育、特に初等、中等、大学あたり、この教育の徹底をはからなければ、とうてい産業の振興も、貿易の飛躍も期せられないと考えております。今日文部省におきましては、各学校において理科教育の徹底を期するために、現在いろいろ考究しておるところでございますが、文部省の所管の科学研究に関する予算額は、本年度の要求が大体八億三千万円ばかりになつております。しかしこの程度ではとてもわが国の科学研究の基礎というような重大問題を満足させるわけには行きませんので、今後各委員諸公の御協力を得て、この予算増額を期して行きたいという念願であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/40
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041・天野公義
○天野委員 科学振興について、従来通産省やその他役所間の技術課のなわ張り争いがあつたように考えるのでございます。これが科学振興についての一つのがんであつたようにも考えられるのでございますが、文部省はこの点もつと種極的に科学振興について推進をして行くべきではないかと考えるのでございますが、その点いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/41
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042・福井勇
○福井政府委員 御指摘の点につきましては、従来、特に戦前を例にとりましても、軍需省、陸軍省あるいは海軍省というような中における抜術課系統の相剋、こういうものが相当ございまして、当時の技術の飛躍に非常なインターフエアをしたということは御存じの通りでございますが、今日におきましても、科学研究に関する窓口は、内閣にスタッフがございまして、各省には——文部省は文部省所管の通産省は工業技術院を中心としたところの窓口農林省は農業関係の研究、運輸省は主として車輌に関するところの研究所というようなものを、それぞれ持つており、最近はまた保安庁におきましてはこれが担当すべき科学研究の窓口が相当開けそうになつておるのでございます。どうしても今後はこの研究については官庁の技術は統合さるべき筋合いのものは統合して行かなければならない。たとえば戦争目標では決してなく、平和産業に関するところの技術の飛躍というようなもので、理想とすれば中央科学研究所というようなもの、戦前ありました理科学研究所のようなものを活用して行くというような構想、そういうようなことが私たちは理想だと考えておりますが、目下これらの点につきましてはせつかく検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/42
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043・天野公義
○天野委員 最近の世界の進歩は、原子力をすでに平和産業に使わんとする状況にあると外電はしばしば報じております。文部省はこれらをどう考えておるのであるか。いずれも何も国内でこういう問題について聞いていないかどうか、この点をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/43
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044・福井勇
○福井政府委員 御指摘の点は非常にむずかしい問題でありまして、原子力は現在世界の最も重大なる関心を寄せられておるところでございますが、特に文部省としてこれを種極的に取上げるというようになりますと、これを戦争科学というようなことに結ばれやすい懸念がございます。そこで今日においては日本学術会議におきまして、特に原子力の問題あるいはこれに関連いたしました原子核分裂に関する研究ということになつておりますが、これらの問題については、今学術会議の方に委嘱して、これを検討してもらつております。しかしこれを放擲しておいてはとんでもないことでございます。と申しますのは、今日原子力の飛躍的な発展に伴いまして、平和産業の面にすでに原子力の発電所の問題が取上げられておりますし、原子力発電所のモデル・プラントが相当進んでおります。また医学の方面に放射性同位元素の活用がありますし、また農業方面においても、アイソトープをすでに日本においても向うから好意的に輸入を受けて活用しております。そういう関係を考慮いたしますと、原子力イコール戦争というような考え方から、これを嫌忌し続けて行くというようなことは文部当局としても考えておりません。そこで今後は平和産業の面に及ぼす原子力の問題、特にこれらにつきましては、すでに文部省関係といたしましては、学者をバークレー大学の方へやつておるとか、あるいはこれに関連しております湯川博士などは、これらの一人でありますが、この秋に国際物理学会議も日本に開催されまして、この会議にはヨーロツパ方面から——イギリスからはラザフオードを中心としました学者、アメリカではオツペンハイマーを主体とした学者、スエーデンはニールスボアあたりがそれぞれ参りまして、これらの問題を相当熱心に物理学会議において検討される予想を持つております。もちろん湯川博士も帰つて参りますので、これらとよく私たちは、文部省が所管になつておりますので、連絡をとりまして、今後の原子力の問題については、平和産業に関する限り、あらゆる検討を加えて過失のないようにしたいと存じておりますが、現在世界の情勢では、アメリカはすでに知られておる通り、イギリスはハーウエル原子力研究所において飛躍的な研究が平和的にも遂げられ、また敗戦イタリアにおいても、ミラノの原子力研究所、あるいはドイツのハンブルグの研究所、あるいはまた南米のアルゼンチンにおいてすら、これらの研究が平和的に相当進んでおる実情でございます。それらの点をかれこれ勘案いたしまして、文部当局の担当の面におきましては、遺憾なきを期する所存であることを御了承を願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/44
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045・天野公義
○天野委員 最後に一点お伺いしたいと思いますが、日本学術会議は現在内閣に直属していると思いますが、これを文部省所管として行く御意思はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/45
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046・福井勇
○福井政府委員 ただいまこれを検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/46
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047・坂田道太
○坂田(道)委員 関連して。日本学術会議のメンバーの改組、改選の時期が来ておるように伺つておりますが、この点につきまして、改選の時期なり、あるいはその他そのメンバーなり、哲格なり、そういつたものがもしわかりましたらお知らせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/47
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048・稻田清助
○稻田政府委員 お話の点内閣所管でございますので、連絡いたしまして、調整して別の機会に御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/48
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049・山崎始男
○山崎(始)委員 大臣が見えられてから一般的なお尋ねをしたいと思うのですが、その間一点事務当局にお聞きしたいことなんですが、時間の関係で発言してよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/49
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050・辻寛一
○辻委員長 よろしゆうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/50
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051・山崎始男
○山崎(始)委員 稻田政府委員にお尋ねしたいと思うのです。国立大学の授業料が、昨年度三千六百円から六千円に値上げされた。そのときに医学部の生徒の授業料の点で、一応値上げをしておいたのが、一部分の人が三千六百円に、元の相場にもどつた。公立学校、私立学校からの出身の医学部の生徒だけが厳然として六千円でそのままおるという問題がある。それが災いをして、日本全国の医学部の学生の授業料の滞納問題が起つておる、あるいは不払い問題が起つておるということを聞くのでありますが、事案でございますか。もし事実でありましたら、その御説明を願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/51
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052・稻田清助
○稻田政府委員 ただいまのお話でございますが、お話の通りに、昨年度一般に新しく大学に入学いたします者から、六千円にいたしたわけでございます。ただ従来三千六百円であるという考えのもとに、大学に在学いたしておりますものは、卒業するまでその金額にすえ置いたわけでございます。御指摘の医学部についてであります。医学部と申しますと、これはほかとちよつと違つておりまして、プリメデイカル・コース二年おえて、医学部四年でございますから、解釈の立てようによりますと、医学部に入りますときが、初めて大学の学部に入るようにも考えられるのでございます。その辺について多少疑義がございますが、しかしながら私どものとりました方針が、三千六百円ですでに大学へ入つて、卒業できると考えた人が、途中で六千円になりますと、気の毒だから、その人に三千六百円をすえ置くという精神を当てはめるといたしますれば、医学部を将来志願いたしまして、国立大学の理学部あるいは文理学部、その他プリメデイカル、コースにすでに入つて、三千六百円を納めている人は、そのままでいいんじやないかというような取扱にいたしたわけでございます。かくのごとき取扱いは、従来とも授業料値上げの場合にとつて参つた方針でございます。この方針から見ますると、公立学校あるいは私立学校から途中で入つて来た人たちは、すでに新しく国立大学に入学あるいは編入する人は、六千円であるということを表示いたしました後に入つて来られたわけですから、六千円であるということを了解のもとに入つて来られる方ですから、その方々からは六千円いただくことにいたしたわけでございます。これについて公私立の方で六千円納めた人もありますが、ただ同学年に——学年制はとつておりませんけれども、同時に入学するというか、席を並べて、同じ講義を聞きつつある人たちの間に差別があるのはおかしいじやないかという話はありますけれども、われわれといたしましては、今の方針をよく説明いたして、今日に至つている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/52
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053・山崎始男
○山崎(始)委員 その人数はどれくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/53
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054・稻田清助
○稻田政府委員 国立学校におきましても、「継続して」という言葉を使つております。従いましてそれをまつたく対応いたします人を公私立に求めますれば、約八十人であります。そのほか従来大学にすぐ入らなかつたとか、あるいは旧制の予科から入つて来たとか、そういう人たちを全部包含すれば二百名余りになつております。しかしその程度までもし国立で探すとなれば、すでに国立において六千円を納めている人たちから、また同様に扱う人は相当出て来るだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/54
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055・山崎始男
○山崎(始)委員 今お聞きいたしますと、全国の医学部の学生のうちで、わずかに二百人ばかりの私立並びに公立学校から入つている学生だけが六千円払つて、今局長のおつしやるように同じクラスの中で六千円の生徒と三千六百円の生徒とが机を並べているという現実に対しては、私は理由のいかんにかかわらず、あまりいい制度じやないと思うのです。特に一応六千円に上げておきながら、陳情その他があつて三千六百円に下げたという。今お話をお聞きすれば、従来の慣例によつて下げなんだと一応了解いたしますが、法の解釈上そういう弾力性がある解釈がされるのならば、わずか全国で二百人そこそこの学生が私立学校並びに公立学校から来たがゆえに六千円払つているという現実は、だれが考えても納得が行かないじやないか、かように思うのであります。同時にわずか二百人やそこらの生徒のことが原因で全国の医学部の授業料の不払い同盟、あるいは滞納というような問題に広がりつつあるということを聞くに至つては、これは小さい問題のようでありますが、私はかなり考えてやらなければいけないじやないかと思うのでありますが、局長の御見解を伺つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/55
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056・稻田清助
○稻田政府委員 この建前をかえますと、単に医学部ばかりではないのであります。農学部あるいはその他工学部にもずいぶん途中から編入する学生があります。従来多年とつて参りました編入制と、あるいは既得権と申しますか、国立学校に在学している途中から値上げに出つくわした者との建前は、かわつて参ります。単に八十人、二百人の問題でなくなるわけであります。この建前を私どもとして将来かえるといたしますれば、予算編成の問題その他と関連いたしまして、これを根本的に考え直さなければならぬ。ことに国立学校におきましても、今宥除いたしておりますのは、知らぬうちに入つて来た人たちでございます。その二百名に対応いたします部分を国立学校の内部にいる人たちにさかのぼつて、あらためて金額を返すとかなんとかいうことになりますれば、相当の数——これはそういう方針をとつておりませんからまだ調べておりませんが、相当数国立学校に在籍する者から出て参ると思うております。お話のごとく全国に滞納の状態があるというような事実は、私どもまだ聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/56
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057・山崎始男
○山崎(始)委員 今国立学校全体とすると相当の数に上るだろう。だから特定の医学部だけにそういう措置はできがたいというふうに聞いたわけであります。昨年六千円の値上げを発表されて、一応既得権益者という人たちも全部六千円になつたものが、医学部の特殊性を認めて三千六百円にまた下げられたと聞いているのでありますが、そうじやありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/57
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058・福田繁
○福田政府委員 大学学部に新たに編入した者から六千円ということを一応標榜いたしました。ただ医学部は御承知のようにプリメデイカル・コースをあらかじめやつて医学部に入るのでありますから、ほかとは本質上別であるので、その点疑義があつたわけであります。疑義を関係者とよく相談をいたしまして、最初からの既得権尊重というか、途中でだしぬけに値上げにあつた人たちを助けるという精神におきまして、その意味を明かにした。方針を変換したのではなくて、その点を明かに念のために通知いたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/58
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059・山崎始男
○山崎(始)委員 そうすると、いずれにしたところで一応六千円にした授業料を三千六百円に下げたということは、今あなたの御説明によると、医学部の特殊性を認めたという解釈をされたのでありますが、その解釈ができるのならば、他の学部で二百人やそこらの現在六千円払つているものを三千六百円に同じようにしたところで、他の学部へ及ぼさないと思うのでありますが、どうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/59
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060・福田繁
○福田政府委員 どうも言葉がまずいのでございますが、同じことを申し上げてたいへん恐縮でございます。要するに国立学校の医学部に入ると志しまして国立学校に入る人、これは最初は医学部に入るのじやないのですけれども、とにかく国立学校に入つて三千六百円という授業料を納めて来ているわけです。その人が途中で六千円になるのが気の毒だと考えますことと、国立学校に入学しようと途中編入しようと今後は六千円であるんだということを公示して、それを大体承知の上で編入試験なり入学試験を受け入てつて来た人と、扱いをかえるのは、従来の建前からいえば当然のことだと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/60
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061・山崎始男
○山崎(始)委員 最後に一点だけお聞きしておきますが、私も詳しいことを知りませんから申し上げるのであります。結論を申し上げますと、今私が最初に申し上げましたように、同一クラスの中のそういうわずかな者だけが差別待遇的な現実を呈しているということは、私は非常に遺憾だと思うのでありますが、これに対して事務当局の立場として、これを改正するためには抜本的に法の改正をやらなければ、これは改正できないんだ、こうおつしやるのでありましたならば、こういう不合理をなくするような努力並びに措置をやつてみようという御意思があるかないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/61
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062・福田繁
○福田政府委員 一般納税者負担で国立大学を維持して、また受益者負担の趣意で授業を徴収するわけでございます。いろいろ国会の予算審議の御方針で授業料が値上げになるということになりますれば、その値上げということを建前として私ども考えたい。その場合に例外の必要なる点は、やはり事の自然といたしまして、少しずつその例外のりくつの立ち得る限度において立てて行くのが順序であろうと考えております。そういう点でまず第一に私ども考えますのは、既得権尊重と申しますか、途中で予期もしない値上げにあつた人を救う、これが私どもとして考え得られるとこうであろうと思います。あらかじめ値上げをされた、幾らの授業料だということを知つて入つて来る人と、知らずにそれに逢着した人と、その扱いを別にするということに、私どもとして予算の運営に当る上から見れば避くべからざる差別であろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/62
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063・世耕弘一
○世耕委員 関連して。大体月謝が私学と官立とは非常に相違があるのですが、国費多端なときに、もう少し官学は一般に月謝を上げていいんじやないか。そうして上げた費用をむしろ研究費等にまわす方が合理的じやないか。私学の月謝と比較してほとんど三分の一くらいである。いい先生に教えてもらつて、いい設備を受けて、月謝が安いということは、教育の機会均等とは私は言えないと思う。そんなことを言つたつて秀才だからしかたがないじやないか。私学に行くのは金持ばかりで、頭が悪いんだ、こういうふうに十ぱ一からげで判断はできぬことはない。ところが秀才ばかり官学へ入つておるかというとそうではない。たいがい白線で三年くらいかかつて入つておる。三年くらいかかつて入つておるのはいわゆるブルジヨアの子弟だということが言える。これが結局憲法のいう機会均等を与えておらぬということになります。私は今機会均等をかれこれ言うのじやないけれども、文部省の費用をある意味において活用する意味で、そういう特権を得た人たちの、もう少し月謝をよけい上げて、待遇改善なり研究費に充てるということはきわめて合理的だと考えておるが、こういう点についてお考えはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/63
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064・稻田清助
○稻田政府委員 受益者負担と一般国費の負担の程度をどうするかという点はむずかしい問題でございますけれども、とにかく国が一般納税者の負担に依存いたしまして、国立学校を設けておるという点と、大学程度の教育に一般教育の機会均等を与えたいという趣旨であろうと思いますが、もちろんこの点は私学といえども授業料の低いことはけつこうなことでありまして、その点につきましては国の努力といたしまして十分私学の情勢というような点から見て、私学に対しましても一般の学生に入学させやすくするというふうにいたすべき石はないかと考えられるのでございます。これらの均衡をどうするかという問題で、過般御指摘がありましたように、国立学校におきましても一段と授業料を値上げいたしまして——ただこの点につきましてはよほど慎重に漸次に上げて参りませんと非常に問題が多いのでございまして、それらの点につきましてただいまの御質問の御趣旨もとくと勘案いたしまして善処いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/64
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065・野原覺
○野原委員 先ほど稻田局長に医学部の授業料の問題を山崎委員が質問したのでありますが、この問題は同じ教室で同じ先生から同じ授業を受けて、ある者は三千六百円、ある者は六千円、このことは規則がどうありましようとも、そういう規則を知つて入つたとあなたは仰せられますけれども、純真な学生諸君にとつてはこのことは割切れない。しかも数から申し上げますとあなたの御答弁では二百名そこそこだということでもございますので、この点はもう一度大学局において十分御検討をお願いしたいと思うのでございますが、その御考慮の余地があるかないか、この点について御意見をお聞かせ願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/65
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066・稻田清助
○稻田政府委員 同じ講義を聞くから同じ対価を払うというような考え方をもつて私どもこの授業料を定めたくないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/66
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067・野原覺
○野原委員 そういたしますと、考慮の余地はないという御見解でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/67
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068・稻田清助
○稻田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、従来とり来りました問題、及びこの問題だけでなく、全般的に各学部に関連いたす問題でございますので、考慮をいたしますということは非常に困難だと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/68
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069・野原覺
○野原委員 二十七年度からそれが実施されておるのでございますが、学生諸君はどうしても納得できないというので、聞くところによりますと授業料を納めていないということでございます。しかも一般世人の意見は、学生諸君の見解は必ずしもむちやな要求ではないということも聞いておるのでありますが、もし授業料が納められないで問題がこじれた場合の責任は考慮してくれ、私どもこうした要望的な質問に対して、考慮をしないということが大学当局にあると判断してもさしつかえないと思うのですが、もう一度念のためにお聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/69
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070・稻田清助
○稻田政府委員 授業料の納付は、納付しつつあることと思いますけれども、中にそういう考えをもつて納付しない者がありますれば、大学当局から十分説諭していただきたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/70
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071・坂田道太
○坂田(道)委員 この問題は野原委員なり山崎委員から御質問がございましたが、われわれといたしましてもまつたく同感でございまして、同じ席にありながら授業料が違うということは、私は教育の立場からよくないと思うのでございまして、これは給田局長自身といたしましては、あるいは考慮の余地がないかもしれませんが、文部当局、大臣初め政務次官はどういうお考えであるか、全然考慮の余地がないか、この点を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/71
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072・福井勇
○福井政府委員 この点につきましては、考慮しないということを、今局長はそういう表現で使つておりません。従つてこちらにおきましては研究することにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/72
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073・辻寛一
○辻委員長 世耕君から要求のありました法制局から林次長が出ておりますから質問を許します。世耕委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/73
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074・世耕弘一
○世耕委員 私は過般日教組の幹部と称する連中が、文部大臣室を占拠した事件について責任ある当局の御意見を承つておきたいと思うのであります。私の調査した範囲において申し上げますなれば、あのときの騒動は、家宅侵入、公務執行妨害、器物毀棄、こういうことがまず考えられるのでありますが、御当局はこれについて御研究になつておりますか、あるいは御報告を受けたのかどうかお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/74
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075・林修三
○林政府委員 そういう点につきましては、法務省の刑事局長が、あるいは検察当局から報告を受けておると存じますが、私どもの方は実は法制局でございまして、法律問題として意見を聞かれたことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/75
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076・世耕弘一
○世耕委員 公安委員の方でどなたか来ていただくように交渉しておいたのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/76
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077・辻寛一
○辻委員長 法務省刑事局長が出て参ることになつておりますが、今大臣室に入つておりますので、すぐ来ると思います。法制局関係で何かお尋ねすることはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/77
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078・世耕弘一
○世耕委員 それではお尋ねいたしますが、日教組は、労働組合として発足しているのであるか、それとも団体等規正令に基いて発足しているのであるかどうか。もし団体等規正令にも基かざる組合であるとするなれば、政治行動をした場合の罰則規定はどういうふうに適用されるか。たとえば事実を申し上げますと、大会を開いて内灘の基地問題に対して運動に出かける、基金を送る、あるいは応援をする、政党資金をかき集めて、そして候補者を指定してこれに投票を勧誘する。私の研究した範囲によると、りつぱな政治団体の規定が適用されると思うのであるが、この点どうですか。もしそれに違反した場合に法制当局はどういうふうにこれを解釈するか、こういう点をお聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/78
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079・林修三
○林政府委員 御承知のように団体等規正令は昨年廃止になりましたので、現在は団体等規正令はないのでございますが、日教組が政治団体かどうかということは、普通われわれの承知いたしておりまする日教組は、いわゆる教員の団体であろうと存じます。御承知のように国家公務員である教員は団体を結成できます。あるいは地方公務員である教員につきましても、地方公務員法に基きまして団体が結成できるわけでございます。日教組合全体としての連合組織は、国家公務員法あるいは地方公務員漢そのものの規定によつているわけではないと存じます。これはいわゆる職員団体であろうと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/79
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080・世耕弘一
○世耕委員 職員団体が組合活動や特殊な政治活動をしていいかどうか、法制上はどう、いう御見解になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/80
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081・林修三
○林政府委員 法律上の問題といたしましては、御承知のように、国家公務員につきましては国家公務員法に政治活動に関する規定がございます。それから地方公務員につきましては地方公務員法に政治活動の制限の規定がございます。それ以外の点につきましては、別に政治活動をして悪いという規定はないのじやないかと存じます。本来そういうことをすべき団体かどうかということは問題がございますけれども、そういう国家公務員法の規定、地方公務員法の規定に当らないことには、別に禁止規定はないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/81
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082・世耕弘一
○世耕委員 そうしますると、わけのわからぬもぐりの組合をつくつて政治活動をしても取締る方法がない、こういう結論が出て来ると解釈してよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/82
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083・林修三
○林政府委員 政治資金規正法というのがあることは御承知と存じますが、政治資金規正法に該当いたします団体につきましては、政治資金規正法に基く規正があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/83
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084・世耕弘一
○世耕委員 そうすると今度の日教組の活動はそういうのに当てはまらぬという意味ですか。私は組合が政治活動をしたなれば、それは政治団体として当然取締られ、同時に資金に対しては報告しなくちやならぬ義務があると思うんだが、法制局の人はそういう方の御勉強をなさいませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/84
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085・林修三
○林政府委員 現案の問題といたしまして、私どもの当局といたしましては、現実にある団体がどうであるこうであるということにつきましては、実は調査する権限もなければ、調査をいたすわけでもございません。実際問題といたしましてそういう団体がはたして政治資金規正法に触れておるかどうか、具体的な問題につきまして法律的な意見の質問が関係当局よりあれば、私たちといたしましては研究いたしますけれども、現実には一般の行政事務を担当しているわけではないのでありまして、ある団体がどうこうということに対して、ただちに意見を発表する立場にはないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/85
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086・世耕弘一
○世耕委員 私は法律問題をあなたに聞いているのです。事例を示しているのです。あなたは法制局の役人としてあれだけの大きな問題を知らないということはないでしよう。ことに立法するのには必ず現実の問題に触れなければ判断できぬはずではありませんか。私は意見を聞いているので、今ここで結論を出せと言うのじやない。こういう事例があるが、こういうことにはどういう法律が適用されるかということを聞いているのです。あなたの責任を問うておるのじやないのです。こういう問題があるが、これは法律に触れるのではないか、あるいは触れないのか、こういうことを聞いているのじやありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/86
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087・林修三
○林政府委員 先ほどからもお尋ねのございます日教組の具体的な活動がいかなる法律に触れるかというお話でございまして、これは先ほど申しました通りに、こういう職員あるいは職員団体の政治活動につきまして、それを規制にいたしております法律は、国家公務員法あるいは地方公務員法があるだけであります。政治団体について収支の届出等を規正しておりますのが政治資金規正法、この三つの法律があるだけでありまして、それに触れない限りにおいては別に問題はないのじやないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/87
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088・坂田道太
○坂田(道)委員 関連して、たとえば日本教職員組合が、五百万円なり六百万円という金を、日本教職員政治連盟に政治資金として提供したという場合はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/88
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089・林修三
○林政府委員 具体的な事例につきまして今お話がございましたが、はたして政治資金規正法に当るものかどうか、もう少し研究いたしまして、お答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/89
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090・坂田道太
○坂田(道)委員 研究してお答えを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/90
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091・辻寛一
○辻委員長 刑事局長が出て参りました。世耕君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/91
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092・世耕弘一
○世耕委員 それではあらためてお尋ねいたしますが、この間大臣室あるいは秘書室へ乱入した面々の行動について、私はあれは家宅侵入であり、公務執行妨害であり、器物毀棄であるという前提のもとに研究をしておりますが、あなたは専門家だから、この点についてどういうふうに御判断なさつておるか、なお当時の模様等について説明を願えれば、けつこうだと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/92
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093・岡原昌男
○岡原政府委員 実はあの事件に関しましては、検察庁といたしまして今のところどの程度に進行していますか、きよう突然のむ話で、私も資料は新聞によつてちよつと拝見しただけで、詳しいことを今確定的に御返事いたすことはできないのでございますが、たがお尋ねの法律的な判断だけは、一応いろいろな場合を想定いたしましてお答えすることができるのではないか、かように存ずるのでございます。
それで刑法第百三十條の住居侵入につきまして、御承知の通り、まず種極的に侵入して来た場合の罪と、それから最初は何か合法的な理由があつて入つて行つて、あとで退去を要求されて、出なかつた、いわゆる不退去罪と申しておりますが、この場合と、二つございます。あの場合このいずれに該当するかと申しますと、最初陳情するという意思のもとに入つたということがはつきりしておれば、大体陳情は各官庁とも一応受ける建前になつておりますので、守衛その他が管理者の意思であるとしてこれを排除してやつた場合は、格別、第一項の侵入罪の成立は困難であろうと思います。ただ今度は、陳情のために入りましても、途中で少し模様がおかしくなつて、管理者の方で出て行つてくれというふうな場合があるのでございますが、その場合に管理者が正当な権限に基いて退去要求をしまして、本人たちがそれを承知していて、なおすわり込みを続けるという場合には、一応不退去罪というものが成立する余地が出て来るわけであります。ただこの場合におきましても、本人たちは、せつかく来たんだから、ぜひ一目会いたいという切実な希望に燃えまして、それが刑法にいわれますいわゆる期待可能性という面からいたしまして、本人たちにどうしても出なければいかぬということを強要するのが酷であるというふうな状況がありますれば、これはまた格別御——承知の通り、一応外形的犯罪が成立するようなことがございましても、それが個々の場合に違法性を阻却するかしないかということが結局問題になるのでございますから、それによつて具体的な判断が違つて来るということでございます。
それから器物毀棄等の問題は、私ども新聞で拝見しましたところでははつきりいたしませんが、ただ器物毀棄、たとえば机をこわすとか、いすを振り上げて壁にぶつけてこわれたといつたようなことがございますれば、これはどちらの面から見ましても正当な行為とは認められませんので、その点は違法性を阻却することはなかろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/93
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094・世耕弘一
○世耕委員 器物毀棄の問題についてお尋ねいたします。文部省の省内へ一夜に三千枚のビラを無断で至るところに張つた。これは非常に不体装なものである。これは器物毀棄になりませんか。これはよほど大事な問題ですから、もし御回答ができなかつたら御研究の後でもけつこうですから御答弁をいただきたい。そういうことができるならば、相当影響するところが大きいのです。私は器物毀棄なりという判断のもとにお尋ねをしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/94
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095・岡原昌男
○岡原政府委員 結論をお与えくだすつてから答弁いたすのもちよつとどうかと思うのでございますが、ただ器物毀棄と申しますのは、その器物本来の効用を害する程度にこわす、たとえばふすまに小便をかけてしみが出たとか、あるいは金びようぶににわとりの絵を描いて料理屋へ飾つておくことができなくなつたような場合には、器物毀棄になるといつたような判例がありまして、その程度においてものの効用が害せられる場合に初めて成立するのでございまして、しからざる段階において、たとえばビラ張りがどの程度にビラを張りましたか、私も見ておりませんけれども、大体さような程度にはビラを張ることはできないんじやないかと思いますが、たとえば大臣室のりつぱな額の上の方にビラを張つたというふうなことになりますと、これは完全に成立して来るんじやないか、かように存ずるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/95
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096・世耕弘一
○世耕委員 三千枚はつておる。ここに写真が出ておるのです。もしあなたの家に入つて来て、至るところの壁にはつたら、それは器物毀棄にならぬかというわけなのです。近ごろの組合運動は、品のいい人はそういうことをしないけれども、下品になつて来ると法の裏をくぐる、もぐりをやるのです。これがすなわち社会の秩序を害するから、それで私は常識的に申し上げる。意地の悪い質問じやないのです。これがいいということならば、全国的に波及するのです。秩序の根本、そこを私はあなたにお聞きしたいという意味で申し上げておるので、偏狭な気持でお尋ねしているのじやない。
それから資料がおありにならぬようだから私の質問を省略する意味において、私が相当信用すべき筋から調査した資料をここに読み上げますことをお許しください。
日教組との交渉経過六月二十二日、月曜日、日教組の小室部長より電話にて大臣会見申入れあり(地方課へ)、時間 午後三時、要件 要望害の回答、夏期手当の件。
文部省側 都合により会見出来ない。
日教組側 事務次官でもよい、三時と時刻を限定しない。
文部省側 お会い出来ない、夏期手当については会計課長より南氏に回答済み、要望書の回答については、各局課にわたるのでとりまとめ中につき追つて連絡する。
日教組側 もう一度何んとかとりはからつてもらえないか。
六月二十三日 火曜日日教組側 午前十時電話にて小室氏より次官に会見の申入れあり(地方課)。
文部省側 会見は出来ない。理由は昨日の通り。
午前十時過ぎ前週十九日、金曜日、会計課長と南氏との会見の回答、夏期手当の件が不満のため、大学、高専部、大臣室前廊下に座り込みを開始する。南氏より次官に会見したいと申入れあり、午後一時三十分ごろ日教組今村外数名秘書官室に入つて来た、それに続いて大学、高専部連中が入る。
日教組側 午後一時三十分頃今村、大原両氏より地方課に大臣会見申入れあり。
一、夏期手当一、給与三本建一、大学管理法(省令)
一、国庫負担法(政令)。
文部省側 国会政府委員室で委員長他一名と大臣が会見する。
日教組側 執行部全員本省にて会見したい、待つている、岡本、槇枝両見氏、国会に会いに行く意志は毛頭ない。
文部省側 大臣、次官はそれではお会いできない。
日教組側 大鹿氏、今後日教組に会わないつもりか。
文部省側 本日はお会いしないという意味。
会計課用度係長が秘書官室より退去方をお願いする。
六月二十四日 水曜日日教組側 午前中、岡本氏、昨日に引続き同條件にて会見したい旨の申入れが地方課にあり。
文部省側 委員長他数名と昨日の條件ならお会いする、なお秘書官室より退去せられたい。
日教組側 もう一度大臣に交渉してもらいたい、また部屋を提供してくれ。
次官と日教組大鹿氏との交渉午後二時
次官 明日二十五日、本省にて午後一時に十分間部長以上とお会いする。
大鹿 それでは困る。
三時五十分頃日教組に正式回答するため地方課長を政府委員室に呼び打合せ中、日教組、大臣室に入り込んだと連絡があつた。
文部省 明日(二十五日)本省にて執行部全員と二十分間お会いする。
但し大臣室、秘書官室より退去する事を前提條件とする。
日教組 それは受入れられない。今夜にも会つてもらいたい。
文部省 それでは打切る。大臣室、秘書官室より退去してもらいたい。
午後四時日教組大臣室に入る。数日前よりベル修理中のところ、大臣不在中に修理いたし本日修理完了したい旨、修理工より申出あり、大臣室に入れ、修理完了して大臣室を出た後、施錠を忘れ、棒田氏手洗に立つた折、秘書官室に佐々木嬢一人おる。宮之原氏他秘書官室より入り込む。佐々木嬢大臣室廊下入口を細目にあけ樫田氏の帰りを確めようと見た折、ちようど清澤給仕が通りかかりたるので、向うより帰り来る横田氏に連絡してもらいたい旨依頼した、うしろより日教組の連中は、佐々木嬢を押しのけて入口をあけ、廊下の連中を導き入れた。樋田氏はそれに気ずき、あわてて帰り、入口を閉めようとしたが入つている者が阻止し、もみあつたため樫田氏はめがねをこわされた。
午後四時二十分会計課より大臣室、秘書官室より出てもらいたい旨通告した。
午後五時会計課より麹町警察署に対し通知、大臣室、秘書官室内の日教組の退去方を要請。
午後六時二十分、麹町警察署渡邊次席外二名乗省、ただちに組合側に対し事情聴取、説得のため、代表者との会談申込みをしたるも食事どきとのことで代表者が来ない。
午後七時三十分警察側と組合側と会談。
午後七時四十分警察側と本省側との会談。
午後七時五十分本省、組合の言い分の食い違いがあり、三者会談、文部省交渉を打切つた旨確認。
午後九時十五分文部省より退去通年及び通告文掲示庁舎の管理しただちに十分以内に室外に出てください。
午後九時四十五分警察より退去通告及び通告文掲示文部省庁舎管理責任者より要請がありましたから、ただちに室外に出てください、二十四日、午後九時四十五分麹町警察署長名でこれを掲示午後九時五十分予備隊到着、ただちに署長、組合の説得を行う。午後十一時十八分予備隊次官室入口まで配置。
午後十一時四十分、組合より在庁官房課長との会見申入れあり拒否。
午前零時二十分、予備隊大臣室に配置、署長説得を続ける。
午前零時五十分予備隊退去、組合側に自主的に活動するよう勧告。
午前一時組合より警察力撤回の交渉しようとの申入れあり、応ぜず。
午前一時四十分、署長説得打切りについて文部省と話合い。
午前二時、署長組合の説得を打切り五時まで帰署。
午前五時二十分、文部省より退去再通告及び掲示。
日教組の皆様に重ねて申し上げます。庁舎の管理しただちに室外に出てください。文部省会計課長午前五時三十分、警察より退去再通告及び掲示、署長より自発的退去説得。
重ねて日教組の皆様に申し上げます。文部省当局より要請がありましたので、すみやかに室外に退去してください。退去しないと警察は実力をもつて室外に退去いたさせます。
二十五日午前五時三十分麹町警察警察署長。
午前六時二十分警察は実力をもつて退去開始。
午前六時四十分退去完了。
午後五時、地方課、財務課、人事課に日教組陳情のため入る。
日教組 午後六時五十分地方課長に対して会うよう大臣に話してもらいたいと連絡をとつてくれ。
地方課長 連絡をとつて返事する。
午後九時四十分連絡の上、地方課長よりきようお会いできない旨通告する。
午後十時三十分ごろ、日教組今村氏他、大臣私邸に押しかく。
以上の通りであります。この文面を基礎にして、法律的に御判断を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/96
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097・岡原昌男
○岡原政府委員 ただいま長文にわたりましてお読みいただきました文章でございますが、私どもといたしましては、初めの方のいろいろのごたごたは、これはもう何も法律的な判断を下す余地がないのであります。最後に文部省の会計課長の名前で、つまり責任ある会計課長、建物の管理者から退去を要請した。このときに初めて退去の正式な要求があつたのではないかというふうに、ずつと読んでいただいたのを聞いておつたわけです。そのあとで、いろいろごたごたしましたが、結局つり出された。法律的には、ただいまの文面がすつかりそのまま信用し得る、しかも証拠上証明し得るという前提で申し上げれば、かなり不退去罪の成立する余地があり得るということでございます。ただ先ほども申し上げました通り、不退去罪というものは、要するに両方の言分が相当激した士で、たいてい成立する犯罪でございますが、その犯罪の成立するに至つた状況は、十分具体的な事案に応じて参酌する要がある。さようなことだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/97
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098・世耕弘一
○世耕委員 実情をまだ十分御調査にならぬから、結論を承ることはできないだろうと思いますが、ああいう事件をただ単なる一些事とごらんになりますか、それとも治安上重大な先例となるとあなたは御判断になるか、この点をひとつ承つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/98
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099・岡原昌男
○岡原政府委員 かような形において紛争を惹起するということは、私どはやはり望ましくないことだと思つております。かような問題は、広く当事者間において円満に妥結し得る道があり得るものではないだろうか、何とかみんなで話し合つて、こういうふうな事態を改善する余地がないだろうかというのが私どもの気持でございますが、ただ法律的に、何といいますか、しかつめらしく事を律するということになりますると、ただいま私が申し上げたようなことになるわけでございます。それでかような問題が各地に頻発するということは、要するに国内治安という問題にも関連して来るのでございまして、私どもとしてはさような事態の起らざらんことを、心から希望しておる次第でございます。
なお先ほどビラが三千枚という話がございまして、三千枚ということを基準にして一応考えてみましたけれども、やはり三千枚張つたからといつて文部省の建物の効用を害するということはなかろうと考えますので、建物に関する限りは、御承知のように器物毀棄でございませんで、建造物損壊になりますが、建物自体についてはそういうことにはならないと思います。さようなことはおそらくあるまい。だが軽犯罪法がありますから、さようなことに当るだろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/99
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100・世耕弘一
○世耕委員 私はこの問題について特に神経を過敏にして申し上げるのは、最近法政大学で理事者と総長をカン詰にしてやつた。これはきわめて巧妙な脅迫行為だと私は思う。大連文部大臣は割合にその点は心臓が強い方だつたから何ともなかつたろうが、少し弱い人だつたら脳貧血ぐらい起す、しかもこれは徹宵多数の者にとり囲まれてこれをやられたらどうにもならぬ。もしこういうことが、取締りの方で、あれくらいのことならいいのだというなら、私もそろそろ始めてみようと思う。けれどもかようなことは、少くとも平和憲法であるとみずから銘打つて振りまわす人たちが、しかも平和の教育、新教育をみずからとなえている連中が、陣頭に立つてこの騒動を起したということに私は不安がある。もうすでどん底まで行つているということになる。あの連中があのくらいのことをやつたら、おれの方はこれくらいやつたつていいだろうということは、もつと手ひどいことをやつてもいい、こういうことになつて現われて来るのであります。これはひとつ至急に御調査を願いたい。その結論をこの委員会で報告を得るように、委員長ひとつおとりはからい願いたい、決して軽々に取扱うべきでない。
なおもう一つ最後に、他の委員からもお尋ねがあつたようでありますが、いわゆる政治資金規正法で、そうういうなもぐりの団体が政治行動をしたときに、その資金の届出をしなかつた場合にどういう罰則を受けるか、こういうことであります。そういうことはかまわぬのだ、もう近ごろはその遵法精神もいいのだ、たいていのことは話合いで行けということがおありになれば、それでもよろしい。
それからもう一つ、これも念のために申し上げます。あそこに旗立ててたくさんすわつておる。あれは地所をだれから借りたのか、あれはだれの許可を得たのかわしは知らぬ。しかしあれもいいのなら、われわれもこれから始める。しかも板を張つて、雨が降つてもかまわずやつておる。ああいうことで公安の秩序をはたして維持し得ると言えるのか、あるいはそういうことは公安を害するという結論にならぬのか、軽犯罪法にも適用されないのかということが一つ。それからいろいろなことを申し上げて済まぬけれども、癩病患者が何十名か飛び出してずいぶんさわぎまわつた。医学上から言えば、伝染の憂いのない者を出したのだと言うかも知らぬけれども、もし万一その中に伝染病者があつたらどうする。むちやじやないか、どこに政治があると言えるかと私は言いたい。これは御研究の上、御回答を願えるならばまとめて御返答願いたい。それをぜひやつてもらわぬと、もう現実の問題も出て来ている。あそこで旗を振つている、あれがいいというなら、われわれはもつと気のき、いたことをやる。倒閣運動に、あれがいいというならやりますよ。それは取締り当局に聞くのだから、安心してやれる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/100
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101・野原覺
○野原委員 ずつと私は拝聴いたしておりましたが、世耕委員は、昔から情報を出すことがなかなか専門家でございます。ただいま刑事局長に対していろいろ日教組と文部省との間に問題を起した過般の交渉の日誌なんかも、どこから入手されたか知りませんが、お読み上げになりましたけれども、刑事局長は、法の厳正な立場に立つて御見解を述べられたと思うのであります。そこで今世耕委員が委員長に要望をなさいましたが、その要望というものは、日教組のあのすわり込みに関して、この委員会に、あの自分で出された情報の上に立つた実態調査をして報告をしてもらいたい、こういう御要望であつたと私は思いますが、その要望に沿つて委員長がこの委員会に報告書を出すようにされるならば、私から要望を出したい。ということは、何がゆえにあの三日ないしは五日の行動になつたかということの情勢の分析は、あの三日ないし四日、五日間における交渉の当の相手であるところの大達大臣の行動についても詳細なる報告を出してもらわなければ、一方的な日教組の方の報告のみでは、私は納得できません。大臣はどのような行動を朝、昼、晩にわたつてされたのかという調査の報告がない以上は、私は一方的な、片一方のみのあのような情報の上に立つた報告というものは受取れないということを申し上げておきます。と同時に、日教組は最後に、文部大臣といろいろいざこざはございましたけれども、大臣も遂に了解をされて、半時間にわたる団体交渉を持つておるのであります。この団体交渉を持つようにその中に立つて橋渡しをしたところの西崎次官の見解、考え方、言動というようなものも、一切総括して出すならば出していただきたいということを私は申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/101
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102・辻寛一
○辻委員長 それではよく実情を調査して——実情調査ということは、やはり両者の立場、言い分というものを十分御調査いただくことと承知いたします。実情を調査して、的確なるこれに対する御答弁を当委員会にいただくようにお願いしたいと思います。
本日はこの程度で散会し、次会は公報をもつてお知らせいたします。
午後零時五十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X00919530709/102
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