1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月二十五日(土曜日)
午前十一時二分開議
出席委員
委員長 辻 寛一君
理事 天野 公義君 理事 伊藤 郷一君
理事 原田 憲君 理事 田中 久雄君
理事 前田榮之助君 理事 中村 梅吉君
相川 勝六君 尾関 義一君
岸田 正記君 小西 寅松君
竹尾 弌君 安井 大吉君
町村 金五君 高津 正道君
野原 覺君 山崎 始男君
松平 忠久君 北 れい吉君
小林 信一君
出席国務大臣
文 部 大 臣 大達 茂雄君
出席政府委員
文部事務官
(初等中等教育
局長) 田中 義男君
文部事務官
(社会教育局
長) 寺中 作雄君
委員外の出席者
議 員 庄司 一郎君
議 員 中川源一郎君
文部事務官
(大臣官房総務
課長) 福田 繁君
専 門 員 石井つとむ君
専 門 員 横田重左衞門君
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七月二十四日
勤労青年教育振興法案(荒木正三郎君外十七名
提出、参法第六号)(予)
の審査を本委員会に付託された。
同日
中学校教育振興に関する陳情書
(第一一九五号)
産業教育振興法に基く国庫補助の増額に関する
陳情書
(第一一九六号)
へき地教育の振興に関する陳情書
(第一一九七号)
義務教育費国庫負担に関する陳情書
(第一二四〇号)
同(
第一二四一号)
義務教育費国庫負担法の完全実施等に関する陳
情書
(第一二四二号)
同
(第一二四三号)
義務教育費国庫負担法改正に関する陳情書
(第一二四四号)
理科教育振興に関する陳情書
(第一二四五
号)
教科書の無償給与制度拡充に関する陳情書
(第一二四六号)
学校給食法制定促進に関する陳情書
(第一
二四七号)
高等学校の定時制教育及び通信教育振興法制定
に関する陳情書
(第一二六九号)
定時制高等学校の整備拡充に関する陳情書
(第一二七
〇号)
義務教育費国庫負担法の完全実施等に関する陳
情書
(第一二七一号)
同
(第一二七二号)
同
(第一二七三号)
同外六件
(第一二七四号)
学校給食法の即時制定に関する陳情書
(第一二九七
号)
義務教育費国庫負担に関する陳情書
(第一二九八号)
義務教育費国庫負担法の完全実施等に関する陳
情書
(第一二九九号)
教員給与三本建反対等に関する陳情書
(第一三〇〇号)
を本委員会に送付された。
―――――――――――――
本日の会議に付した事件
青年学級振興法案(内閣提出第一三〇号)
高等学校の定時制教育及び通信教育振興法案(
中川源一郎君外十七名提出、衆法第三九号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/0
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001・辻寛一
○辻委員長 これより会議を聞きます。
青年学級振興法案を議題とし、審査を続行いたします。この際本案に対する修正案が前田榮之助君より提出せられておりますので、その趣旨説明を求めます。前田榮之助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/1
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002・前田榮之助
○前田(榮)委員 ただいま議題になつております青年学級振興法に対し、日本社会党を代表して提出した修正案について簡単に説明を申し上げたいと思います。
まず案文を読み上げます。
青年学級振興法案の一部を次のよ
うに修正する。
第十七条を削り、第十六条中「第
十一条」を「第十二条」に改め、同条
を第十七条とし、第九条から第十五
条までを順次一条ずつ繰り下げ、第
八条の次に次の一条を加える。
(青年学級運営委員会)
第九条市町村の教育委員会は、青
年学級の開設を決定したときは、
当該実施機関に青年学級運営委員
会(以下「運営委員会」という。)を
置かなければならない。
2 運営委員会は、青年学級ごとに、
実施機関を代表する者、学級生を
代表する者及び青年学級に関し学
識経験を有する者で組織する。
3 運営委員会は、実施機関たる公
民館又は学校の長の諮問に応じ
て、青年学級の実施について調査
審議するものとする。
4 前三項に規定するもののほか、
運営委員会の委員の定数及び任期
その他運営委員会に関し必要な事
項は、市町村の条例で定める。
5 前項の条例については、第五条
第二項後段の規定を準用する。
第二十二条第二項中「第十三条第
一項」を「第十四条第一項」に改める。
附則第七項中社会教育法第二十二
条第一号の改正規定の次に次の改正
規定を加える。
第二十九条第二項中「企画実施」
の下に「(青年学級の実施を除く。)
を加える。
以上でありまして、その理由とするところは、第十七条の罰則であります。この十七条の罰則は「一年以下の懲役若しくは禁こ又は三万円以下の罰金に処する。」としてあるのでありますが、われわれは、この青年学級のごときは、自主的な立場で青年の教養を高め、ひいては国家産業に貢献するという建前でやるべきものであつて、これを罰則等によつて規定して、この青年の特質ともいうべき、溌剌たるところの、発展的状態にある青年を、一面威嚇というと語弊があるかもわかりませんが、威嚇するような態度で、こういう規定を設けるごときは、もつてのほかだと思う。われわれはかようなことには絶対反対しなければならないという立場から、この罰則の削除をしなければならぬという修正意見であります。
それから、その次の第九条の、今読み上げました列挙されたる問題でありますが、この原案によりますると、第三条において「青年学級は、勤労青年の自主性を尊重し、且つ、勤労青年の生活の実態及び地方の実情に即応して、開設し、及び運営しなければならない。」と、一応規定されておるので、当局の説明によりますると、こういうように実際に運営するのであるから、いまさら審議会あるいは運営委員会等は不必要である。こういうことを説明されておるのでありますが、しかしこの条文全体を見まして、ほんとうに第三条に示してあるような、自主性を尊重して運営ができるような運営規定というものは、見当らないのであります。このことは、実際に今実施されておるところの青年学級制度が、自主的に運営されておるから、規定は設けなくても、その通りを実施させるのだと、こういう説明もあつたのでありまするが、そうであるならば、なおさらこの際こういう新しく振興法として設けるものに、明確に、自主的に、しかも民主的に運営される規定を設ける必要がある。ことに、この青年の自主性をたつとぶ点から、青年の代表者、受講者もしくはそれに関連した代表者というものに、十分納得の行く相談の上に、これの運営をすべきものであるということを、強く主張しなければならぬと思うのであります。ただ、こういうことは最も必要ではあるけれども、実際の運営について、他の法規の関係や、いろんなものに支障があるごとく申されるのでありますが、しかしながら、現代の青年が危惧いたしておる点は多々あると思うのであります。すなわち今の社会組織、あるいは農村における実態というものは、ややともすると保守的な、いわゆる頑迷固陋な考えから、本人は正しいと思つておつても、時代の進運の目から見ますると、きわめて逆コース的な考えをもつて青年に臨もうとする空気なしとはしないのであります。そういうようなことがあつた場合においても、青年はこの運営について公式な発言権がないなどということは、現代の民主主義社会において許すべきものでないという考えから、実際に運営されておると称されるものを、われわれは法文化して、正しく青年を指導し、正しく青年が、あらゆる面で社会に貢献されるところの精神の涵養を、みずからの手で、みずからの方向をきめながら進めて行くことが、最も正しいと考えまして、実施の点において多少の支障がないとは、私も考えませんけれども、そういう点を克服しながら、時代の事情等を関係者らに十分に納得させて、青年の意思を尊重することを公式に認めながら、青年学級の振興をはかりたいと考えるのであります。
そういう事由によつて、われわれの修正点は、すなわち大きいところは二つの点であります。一つは罰則を削除する。それから青年がみずから参画したところの運営委員会を設けて、民主的な、自主的な運営をさせるという点なのでありまして、何とぞ各位の御賛成を仰ぎたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/2
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003・辻寛一
○辻委員長 本案並びに前田榮之助君提出の修正案に対して、質疑があればこれを許します。相川勝六君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/3
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004・相川勝六
○相川委員 私どもの意見は、修正を要するかどうかを考える前に、御提出になつた法案の運用において、実行できやしないかと思うのであります。修正に多少関係がありますので、質問いたします。
青年学級の目的は、この振興法によつてよくわかりますように、産業の振興に寄与L、国家社会の有為な形成者の育成に寄与するということが載つております。そこで今地方においては、父兄も青年も、いわゆる自主的にこういう希望を持つております。それは現在の学校教育が、きわめて観念的であつて、地方の産業に寄与することが非常に少い。ゆえに何か地方の実態に即するような産業教育をやりたい、こういう気持がある。そこで私は考えまするに、この青年学級の運用においてそういうことができる。たとえば山村地帯になりますると、しいたけの栽培をもう少し研究をしたい、あるいは木炭の製造をもつと研究したい、あるいは畜産の方について、もつと進んだ、実際生活に即した教育を受けたい、そういう要望が大分あるのです。そういうところでは、数箇村連合して、何かそういう常設的な、自治的な教育施設を置きたいというような気持が大分ある。われわれも大分その希望を受けております。従つて、この青年教育の学級の運用によりまして、一村だけではできないことを、まつたく同じ産業生活に属しておる地方の連中が、何か青年学級の連合というようなもの、各町村が実施主体になりますけれども、しかし実際運用するのは連合してやる。そうして総合して講師を雇つて、農閑期あたりにやる、こういうことができれば、非常に地方民は喜ぶ。産業教育、青年教育の眼目もそこにあるのではないか。要するに問題は、一村でやれないのを、数箇村が連合して、青年学級の運用をやつて行く、こういうことを御提出になつた法案の運用においてできはしないか。修正までしなくても済むのではないか。この点をちよつと伺いたい。もし運用で、できないならば、修正まで行つてもらいたいという熱望を持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/4
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005・寺中作雄
○寺中政府委員 ただいまのお話は、実情に即したやり方といたしまして、まことに適切なる方法であると思うのでありまして、それには地方自治法二百八十四条によりまして、町村は、その事務の一部を共同処理するための一部事務組合をつくりまして、これによりまして、その組合の行います青年学級という形でやります方法が一つ。それからもう一つは、かりに三つの青年学級が、各町村ごとにあるとすれば、これを事実上の合同授業として実施するという、二つの方法のいずれでもやれると思うのでありまして、その際は、これが本法の第十八条の条件にかなうようなものであれば、これは国庫補助の対象になり得ると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/5
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006・相川勝六
○相川委員 政府のお考えよくわかりました。今の法律による町村の組合までつくつてやるべきか。あるいは場合によつては、組合でやらないで、連合体でやる。その場合には、文部省では、これを相当重要視して、助成することをお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/6
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007・寺中作雄
○寺中政府委員 そういう計画がありました際には、補助ができるようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/7
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008・野原覺
○野原委員 ただいま社会党の右派から修正せられました点について、いささか文部省に関連がございますので、御質問申し上げたいと思うのであります。それは第一は、青年学級の教科書についてでございますが、この点はどのようにお考えになつておられますか、お尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/8
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009・寺中作雄
○寺中政府委員 青年学級の教科書につきましては、別に政府において、それに適するものを編集頒布するというようなことも考えておりません。各青年学級ごとに、その青年学級に即して関係者が編集をするなり、あるいは編集されて売り出されておるものを採択して、これを使うなりするような方法で、教科書を使うことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/9
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010・野原覺
○野原委員 関係者が編集をするなり、採択をすると申されましたが、その関係者とは、どういうようなものをさすのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/10
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011・寺中作雄
○寺中政府委員 これは第三条の精神によりまして、青年の自主性に基いて運営がなされるのでありまして、そういう意味で、やはり法律的に規定するのはどうかと思いますが、事実上の青年学級運営委員会を持つておるのでありますから、そういうところで、これが編集あるいは採択について相談をいたしまして、その結果、これを使用するという形になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/11
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012・野原覺
○野原委員 そういたしますと、青年学級運営委員会が編集し採択したものであれば、文部省としては、どのようなことがあつても文句を言わない、こういうように受取つてよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/12
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013・寺中作雄
○寺中政府委員 大体の方針はそうでありますが、ただ第十一条にあります禁止行為に触れないような意味で採択される限りは、文部省としては何ら異見はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/13
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014・野原覺
○野原委員 私は、実はあるところから承つたのでございますが、本年の三月、文部省は、青年学級予算として十三億四千万円を計上したというのだそうでございますが、これは事実でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/14
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015・寺中作雄
○寺中政府委員 予算要求の資料といたしまして、そういう点を研究したことはございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/15
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016・野原覺
○野原委員 その際、十三億四千万円の内訳でございますが、その半額はテキスト代として考えておられたと承つておりますが、ほんとうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/16
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017・寺中作雄
○寺中政府委員 そういうことについて、研究をいたしておつたことはございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/17
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018・野原覺
○野原委員 なぜ私はこういうことをお尋ねするかと申しますと、先般、学校教育法の一部改正の際に、私は、学校教育の面において、大臣は教科書を国定にする意思があるのではないかという疑念があるから、お尋ねをするということを申したのであります。その際大臣としては、そのようなことは毛頭考えていないということで、了解いたしたのでございますが、ただいま寺中局長の答弁を聞いてみますと、今日青年学級の教科書が、国定として出されてはおりませんけれども、すでに本年の三月、十三億四千万円の予算を計上した際、その半額はテキスト代として充てられたというところから考えてみるならば、学校教育の面においては、国定教科書にすることは、大きな抵抗があるので、これを社会教育の面から、ぼつぼつ統制して行こうという意図がないとは申されない。このことに対する局長の御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/18
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019・寺中作雄
○寺中政府委員 ただいまも申し上げますように、青年のためのテキストを配付することについて、研究をいたしたのでありますが、その際といえども、青年学級の教育につきまして、統制的な国定教科書を出して、すべて一律の教育でこれをやろうという意味であつたのではないのでありまして、ただ勤労青年は、経済の点においては、非常に気の毒な環境にあるのでありますから、テキスト代も払えないというようなことであれば、気の毒だから、それを無料で領布するというような意味で、そういうものを考えたらどうかということを研究したのでありまして、その領布をいたす方法といたしましても、非常に種類の限定されたものを、統制的に全国へ出すというのではなくして、非常に広い範囲におきまして、自由に選択ができるという形において、ただその代金だけを国の方で負担するならば、勤労青年にとつて、相当の福音であろうというふうな意味で考えたのであります。しかしこの点は、今日の措置としては成立していないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/19
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020・野原覺
○野原委員 経済的な面からお考えになられたということは、私も了解いたします。しかしながら、国定教科書の問題は、これを合法的に国定教科書にしようという場合に、このことに対する非難としては、思想統制ということをよく言うのでございます。それに対する反駁として出て来るものは、先日も討論の際に、自由党の中からすでにこれは出ておりますが、子供の経済的な負担、父兄の負担というものを考えてやらなければならないという反駁が出ておるのです。あなたも、ただいまそういうことを仰せになられたのでございますけれども、経済的な問題は、別途考慮をされたらいいのであつて、そのことからただちに教科書を国定にしようというようなお考え方を、一時的にせよお持ちになられたところに、私どもが、青年学級というものは、これは何らかの役に立たせる統制的なものに打立てようとする意図があるのではないかと、つくところの一つの理由にもなるのであります。従つてこのことは、今後とも大いに反省なり、お考えをされるように、私は要望いたしておきます。
そこで、時間がないので、委員長からもたいへんせき立てられておりますから、大臣に二、三御質問申します。というのは、昨日あるいはその前の文部委員会で、大臣は、日本の憲法と教育の中立性との関連について、御見解を示されたのであります。高津委員の質問に対する御答弁がありまして、私が、数日前確認を求めたその中で、このようなことを申されております。再軍備の問題は、政治的論争の中心題目になつているから、再軍備反対を教育することはいけない。こう仰せられているのでございますが、そういたしますと、結局、政治的論争の中心題目になつているものは、一切教育してはいけない。このように受取つてよろしゆうございますか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/20
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021・大達茂雄
○大達国務大臣 これは具体的の場合について、その個々の場合に判断しなければならぬものであると思うのであります。政治問題であるから、それを取上げてはいけない、こう一口にも言えないと思うのであります。たとえば国民の生活を安定しなければならぬ。これは政治的にもやかましく言われておる。しかしそれを主として、具体的に各党が主張を別にして争つているというわけではない。でありますから、そういうことを言つてもさしつかえないと思うのでありますが、ある一つの重要な政治問題をめぐつて、各党各派がおのおのの主張のもとに論争しておる。こういう場合に、そのいずれかの政党の主張を教える。いずれかの政党に片寄つた教育が行われる。これが、この十一条の趣旨に沿わない。こういう意味を申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/21
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022・野原覺
○野原委員 その辺が実は非常にデリケートでございまして、先日も文部次官から、教育の中立性についてという通牒が、教育委員会に出されております。従つてただいま大臣は、具体的な問題について考えなければ、何とも言えないと仰せられますけれども、しかしながらあるときにはあなたは、政治的論争の中心題目はいけないのだ、ところが国民生活の安定をやれというようなことはかまわないということで、実は非常に全国の教師諸君が、その基準について迷うと思うのであります。そこで、私は事のついでに、大臣に対して具体的な例を申し上げて、御意見を承りたいと思います。
まず第一は、今日政治的論争の中心題目となつておりまするMSAについて、教師が、MSAの援助を受けることは、これはわが国にとつては問題がある。こういうような教育をしたとします。これはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/22
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023・大達茂雄
○大達国務大臣 MSAの援助を受けるということは、わが国にとつては一つの問題である。またこれについては各党の間に議論がある。こういうことを言うことは、さしつかえないと思うのであります。その程度であれば、さしつかえないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/23
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024・野原覺
○野原委員 それでは保安隊について、保安隊は軍隊であるかないかが問題になつておりますね。ある者は軍隊であると言い、そうして自由党は軍隊でないと申されておるのでございますが、保安隊は軍隊でない、こういう教育を教師がしたらどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/24
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025・大達茂雄
○大達国務大臣 保安隊が軍隊であるかないか、これはまあ認識の問題だろうと思うのでありますが、それが軍隊である、あるいはないという判断の問題が、すぐ政治の問題に直結をしておるのでありますから、やはりそういうことを言うことは、片寄つた教育になる、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/25
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026・野原覺
○野原委員 非常に困るのですがね。実は生徒から質問を受けるのです。このごろの生徒というものは、高等学校あるいは中学校以上くらいでも、相当政治については関心を持つておりまするから、先生、保安隊は軍隊であるのですか、ないのですか、という質問を受けたときに、先生は口をつぐめと大臣はおつしやるのでございますか。お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/26
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027・大達茂雄
○大達国務大臣 私の申し上げたのは、そう一々の言葉の言い方というようなことに拘泥している意味ではないのであります。そういう場合でも、先生に意見を聞かれれば、これについては問題がある。軍隊であるという人もおるし、軍隊でないという人もおる。こういう紹介をすることは、もちろんさしつかえありません。また先生が、その質問に対する限り、自分は軍隊であると思う、あるいはないと思うという程度のことを言つたつて、私はさしつかえないと思うのであります。ただ昨日も申し上げましたように、これがある党派の主張を、客観的に見て、青年学級がある党派の道具になつているような感じがする、あるいはまた、まるで政談演説会のような観を呈する、これが困るというだけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/27
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028・野原覺
○野原委員 そういたしますと、保安隊は軍隊であります、あるいは保安隊は軍隊だと思う、このように教師が断定してもさしつかえないと、こう受取つてよろしいのでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/28
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029・大達茂雄
○大達国務大臣 それを一言言うくらいはさしつかえないのであります。つまりその空気が政談演説式になつては困ると、こういうのです。つまりこれを軍隊なりとして、はなはだ不都合である、こういう党派の主張を青年学級において徹底させるという客観情勢であれば、これは困る、こう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/29
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030・野原覺
○野原委員 教師は、少くとも子供に話したことについては責任を負わねばならぬのであります。いやしくも保安隊は軍隊である、このように断定をした以上は、軍隊であるところの証拠を子供に対して与えなければならないのが教師の役目であります。ところが今大臣の御答弁を承つておりますると、保安隊は軍隊であると思うとか、ないと思うとかいうことはさしつかえないが、それ以上つつ込んでは困ると、こう言われまするが、あなたは文部大臣として、一体教師は結論的なものだけを与えて、その理由を示すな、こう仰せられるのですか。もう一度あなたの御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/30
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031・大達茂雄
○大達国務大臣 これは先ほど申し上げたように、具体的な客観情勢に基いて判断をしなければならぬので、そう、一口こう言つたことがいいか悪いかというような設例に対しては、お答えがなかなかむずかしい思うのであります。さらに言い方をかえて、青年学級において、ある特定の政党の主張を鼓吹する意味において、もしくはそういう政治的な意図、意思をもつて教育が行われる、こういうことはいけない、かように御了解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/31
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032・野原覺
○野原委員 これは大事なことでありまして、実は大臣がこの教育の中立性についての御意思が表明せられてから、全国の教師諸君は悩んでおるのです。少くともあなたの責任で教育委員会に通牒を出された以上は、私どもはこれを究明しなければならない。この点はどれだけ時間をかけても、私は納得が行かない以上は、本日の委員会でできなければ、また次の委員会で申し上げますが、重ねてお尋ねをいたしましよう。(「それは一般行政だ」「質問はきのう済んでいる」と呼ぶ者あり)特定政党の主張だというような、政治的意図云々と大臣は仰せられまするが、一体この教師の発言した言葉というものは、政治的意図があつたかなかつたかということは、これは主観の問題であつて、非常にむずかしい。教師に言わせれば、政治的意図はなかつたと言うし、あるいは政府に言わせると、それは政治的意図を言つたのではないかという断定が下される。そういうところから、私どもは基準を客観的に求める必要があるというので、少くとも日本の憲法に規定し、日本の憲法が肯定し、指示しておるところのものは、これは妥当である、憲法に抵触するものはいけないというところから、再軍備反対に対する大臣の御見解をただしたのであります。ところが、依然として進展をしていない。そこで大臣のようなお考えでございますると、今日の教師は時事問題についての公民教育ということは不可能になることを、あなたはお知り願いたい。何となれば、教師は何らの所見も、信念も開陳できないのです。時事問題について生徒から質問された場合、たとえばMSAについて、MSAは日本の経済の復興に貢献すると内閣は言つておる、反対側はそうでないと言つておるが、先生どうなんですかと、こういう問題が出されたら、これは大きな、政治的な公民を育成する立場から、教師はこれをテーマとして討論をさせ、指導して行かなければなりませんが、うつかり指導すると、政治的論争の中心題目に触れたというので首になつたり、戒告をされたりしたら、これはたまつたものじやない。ここのところの限界を、はつきりお示し願わない以上は、事教育の中立性についての云々を私はやつてもらいたくない。この点に対する御信念がいまだに私はできていないように思うのであります。そこで時事問題についての教師の指導の限界というものを、ただいま私の申し上げたような立場から、どのようにお考えなのか承りまして、時間がないようですから、一応質問は打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/32
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033・大達茂雄
○大達国務大臣 御承知の通り、教育基本法第八条には、わが国の教育の根本の問題として、教育の中立性というものを書いてあるのです。従つて、この間通牒を出したということによつて、教職員に非常に不安を与えるとか、あるいは萎縮させるとかいう意味のお言葉でありましたが、これはあの通牒によつて新しいことを言い出したのではないのでありまして、わが国の教育の基本として、すでに教育基本法に書いてあるその重大な原則を示して、注意を喚越したにすぎないのであります。あの通牒は、あれ自身が新しく始まつたものでも何でもない。そこで教育基本法の解釈として、どういう教育は一党一派に片寄つたことになるか、これは解釈の問題としては残りましよう。しかしながら、そういう中立性という基本的な原則が打立てられておることは間違いないのであります。私は政治問題に関するある特定政党の政治的主張を鼓吹するという事実が客観的に見て、あれば、これは片寄つた教育であり、学校教育においては教育基本法に触れるものである。かように考えておるのであります。先ほど私は、さような意思をもつて云々と申しましたが、これはなるほど主観的な問題であつて、本人がそういう意思はなかつたと言えばそれまでという、これもごもつともでありますが、しかし各種の刑罰法令等におきましても、一定の目的を持ち、一定の意思を持つてやつたということが犯罪構成の前提になつておる場合がきわめて多いのであります。(「その判断がむずかしい」と呼ぶ者あり)これは結局その情勢によつて認定する以外にないのであります。最後のところに来れば、裁判官の認定にまつよりほかない、こういうことになると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/33
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034・辻寛一
○辻委員長 これにて本案並びに前田榮之助君提出の修正案に対しましての質疑を打切りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/34
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035・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認めます。よつて質疑は打切ることに決しました。
これより本案並びに前田榮之助君提出の修正案を一括して討論に付します。天野公義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/35
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036・天野公義
○天野委員 私は政府提案の青年学級振興法案に賛成をし、前田榮之助君提出の修正案に反対をして、自由党の意思をここに表明するものでございます。
本法案の骨子とするところは、全国の勤労青年の向学心の要望にこたえたものであると考えるものでございまして、その賛成の第一点は、現在各地に自主的に、自然発生的に行われておりまするこの青年学級を法制化いたしまして、そしてこれについて国庫の補助を受けるようにいたした。これによつて勤労青年の要望を大幅に満たすと同時に、地方の財政負担を援助するということにもなるわけでございます。
第二の賛成の点は、非常に自由な形においてこの青年学級が開設され、市町村が開設する場合のみならず、その他の団体においてもこれが自由に開設できるというようなぐあいになつておるのでございまして、職場におきましても、また僻村におきましても、また山の中におきましても、この要望によつて青年の向学心が満たされる。これによつて勤労青年の教養の向上、またさらには産業教育の面にも、大いに資することができると考えるのでございます。
第三点は、教育の中立性という点を堅持いたしておる点でございます。今日ややともすれば、教育がある特定の政党の意思によつて左右されるがごとき現象を呈したり、誤解を招くような事態があるように見受けられるのでございまするが、この青年学級におきましては、このような危険性も相当にあるのではないかと考えられるのでございます。従つてこの教育の中立性を堅持するということはきわめて重大で、しかも慎重な態度をとらなければならないと思うのでございますが、この点につきましては、第十一条においてその概括的な点を指摘し、さらに第十六条ないし第十七条の二段構えによつて、この教育の中立性を堅持いたしておるという点でございます。こういうような点につきまして、教育の中立性を保ちつつ、その土地の状況に応じて産業教育、勤労教育を主体としつつ、青年諸君の教養の向上に資するこの法案は、まことに時宜を得たものであるとして、私はここに自由党を代表いたしまして、原案に賛成の意を表明するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/36
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037・辻寛一
○辻委員長 次に田中久雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/37
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038・田中久雄
○田中(久)委員 私は改進党を代表いたしまして、政府原案に賛成をするものであります。(拍手)
戦後放任せられておりました勤労青年に対しまして、ここに新しく国が若干の助成をして、この青年学級を軌道に乗せて行くということは、地域において活動しております青年団の活動と相まつて、非常に国家として喜ぶべきことであると考えるのであります。ただ問題は、青年学級の発生過程に見ましても、青年団が中心となつてこれが運営をせられて来た。あるいは、いろいろなその他のリクリエーシヨン及びあらゆるものが、青年団活動としてとられた。そのときに、これが特に取上げられて、そうして法的な裏づけを持つて、補助を国家が出してやるということは、まことに意義のあることでありますけれども、このために一方において青年の自主性がそこなわれるということがあれば、これはまことに恐るべき失態と言わなければならぬと考えます。この意味におきまして、運営にあたりましても、特に政府はこの点に留意をせられて、あくまでも青年の自主性をそこなわないということに、深い配慮をもつて当られたいと存ずるのであります。現に日本青年団協議会において、本案に非常にきつい反対の意を表明いたしておりますのは、戦前におきまする青年学校のような形態に進められて行くのではないかという一つの危惧を抱いておるからであつて、この点、やむを得ぬこともあろうと思いますけれども、実際地域において青年学級に当つて参りました青年団の諸君は、やはり政府原案のごときものがあつて、初めて勤労青年が一人でも多くこの機会に参加することができるという点で、本案の成立を熱望しておるという事実がありまして、ここに若干食い違いがあるようでありますけれども、どうぞ政府は執行にあたつてこの点を特に留意せられて、自主性をそこなわないようにお願いいたしたいと存じます。
なお罰則の規定につきましては、改進党といたしましても必ずしもその必要を認めてはおりません。しかしながら何と申しましても、現在の日本は独立をしたと申しましても、非常な思想的動揺期にありますので、必ずしもすベての青年学級が私どもの考えるがごとき順調な道をたどるものとも保証しきれないものがあります。そこで万一に備えてこういうものを置くことも、またやむを得ないという観点に立ちまして、原案を支持することにいたしました。
時事問題の取扱いにつきましては、先ほど野原委員からも非常に熱心な御質問が展開せられましたが、青年学級におきましては、当然時事問題が取上げられて、青年の自由なる立場から論議が繰返されることは当然なことであり、そこにまた青年学級の存在価値があると考えますが、この場合にその局に当る者が、ある一党一派の利益をはからんとして、執拗に繰返し繰返しそういうことを意識してやつた場合においては、これは処罰を見るべきものであつて、単に二回や三回、あるいはMSAの問題であるとか、あるいは駐留軍の問題であるとか、保安隊の問題について、少くとも常識の程度において論議するくらいの点にまで、とやかく言うようなことが万一あるならば、これは私どもの望まざる点でございます。もとよりそういうことは政府において十分御考慮のことと思いますが、どうぞ実施にあたりましては、正しい時事問題の批判については、どうぞあまり萎縮させるようなことのないように、御配慮を願いたいと思います。
以上の二点について私どもの希望を申し述べて、原案に賛成をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/38
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039・辻寛一
○辻委員長 野原覺君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/39
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040・野原覺
○野原委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま審議せられておりまする青年学級振興法案に反対、日本社会党前田委員の修正案に対しましても、遺憾ながら反対の討論を展開せんとするものであります。
御承知のように青年学級は、敗戦後の混乱の中で、東北地方のまじめな青年諸君の手によつてつくられました小さな学習グループから発展したものでございます。すなわち地方の青年たちが自己の向学心を燃やして、各町村に自主的につくり上げた社会教育の場でございまして、絶対的に画一的なものであつてはなりません。同時にまた、それぞれの地域の実情に即した学習をする機関でなければならないと思うのであります。
申すまでもなく、今回ここに審議せられておりまする青年学級振興法案は、働きつつ学ぼうとするまじめな青年たちこそ日本の将来をになう産業人であるという考え方から、これらの青年諸君に教育の機会を与えねばならぬという御趣旨は、もとより当然のことでございまするけれども、はたして今回提出せられておりまするこの法案によつて、真に勤労青年の教育の正しい意味での振興が可能であるかは、疑いなきを得ないのであります。以下私は具体的な箇所を指摘いたしまして、反対の理由を明確にしたいと思うのであります。
第一、法案第三条の基本方針には、「勤労青年の自主性を尊重し」とうたつているのでありまするが、それは第十八条による財政援助を理由として、地方教育委員会が開設の許可権、廃正権を持ち、地方自治体が議会の議決を条件として開設権を持つように規定づけていることは、青年学級の研究サークルとしての自主性を踏みにじるものであり、教育委員会、地方議会による外部的拘束力を加えることによつて、地方権力の青年運動に対する統制、あるいは一部のボス等による不当なる介入、弾圧の危険性をはらみ、発生当初の青年学級の趣旨に反し、青年の自主性を踏みにじり、自主的研究の意欲を喪失させる結果を来すことになると思うのであります。
第二、しかも国庫補助の条件といたしまして、第十八条には六つの項目にわたつて規定しているのであります。このことは実質的には、自主的な小さな研究サークルの開催、ないしはそれに対する国庫補助を不可能ならしめております。さらに第二十二条の方に補助金の返還規定を設けておるのでございまするが、その内容及び運営自体にも大きな制約を加えているのでございます。寺中局長は、口を開けば自主性は阻害しないと言つておられるのでございまするけれども、法案の実体はかくのごとく明確に自主性を阻害しておるのであります。
第三、申すまでもなく、社会教育としての青年学級は、青年の自主的意思の決定に基いて、青年自体が行うべきでございまして、外部的拘束を加えるべきではありません。しかるに青年学級を統制化し、財政的援助を与える代償として、組織、教科内容、講師の選定、指導などを法的に束縛しようとする意図は、明らかにその自主性を蹂躙しておるのであります。このことは今日の逆コースの一途をたどる客観情勢の上に立つて見ますとき、青年をして国家主義的、官制的利用の具に供する危険性があると私どもは考えるのであります。
第四、次に今回の法案による青年学級の法制化は、全国一千三百万人に及ぶ勤労青年教育の本質的な、しかも根本的な解決策になつていないのであります。すなわち勤労青年の教育というものは、学校教育と社会教育との両面から総合的に検討すべきであるとの考えを私どもは持つておるのでございまして、この法案が、これを単に社会教育のわく内のみに固定して、不完全な貧困な施策をことさらに体系づけようとすることが大きな不満の一つでございます。
第五、最後に、もつと大きな問題がございます。それは青年学級を統制化することによつて、自主的青年運動の上に強大な圧力と拘束が加えられ、その発展が阻害されるということでございましよう。このことは過去の歴史を見ましても、明治のころ自主的な夜学会が設けられたのでございます。しこうしてこの自主的夜学会なるものが実業補修学校になり、青年訓練所と合体いたしまして、青年学校となつたことは御承知の通りであります。青年学校となつたその当時の青年団はどうでございましたか。明らかに官制化された青年団であつたことから申し上げましても、今回の青年学級なるものが、行く行くはこういうような運命をたどるであろうことは、歴史の大きな教訓として私どもに示しておるのでございます。
なお私は、前田委員から御提示になりました修正案について、この際一言いたしておきまするが、前田委員の修正案は、原案の官制的な御用法案を修正しようという、その御熱意はよくわかるのでございます。しかしてこの点については、慎重に検討いたしたのでございまするけれども、御提出になられましたあの程度の修正では、以上申し上げました根本的な欠陥の是正になお不足すると思いまするので、遺憾ながら賛成できないのであります。
以上をもつて反対の討論といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/40
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041・前田榮之助
○前田(榮)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、わが党が提出いたしました修正案に賛成し、その修正案を含まざるすべての原案等については反対するものであります。
修正の点につきましては提案の理由で説明申し上げました通りでありまるが、われわれはこの修正についても、ただこの二点だけの修正で事足れりと実は考えたのではございません。なおほかにも数箇所の修正すべきものがありとは考えましたが、できるだけ各党間の調整をも考えて、現代の青年教育について真に自主性を尊重し、現代の青年のはつらつたる元気を萎縮させないようにしなければならぬという点に重点を置いて、この二点に集約して参つたのであります。従つて、この二点を含んだ修正案によつての全体の法案が成立いたすことに相なりまするならば、義足ながらわれわれは賛成をするという意思表示をしなければならぬのであります。しかしながら賛成論の中にもありましたように、ある人人の中には、教育の中立性について危険性があるから罰則が必要であるというような論議をなされたのであります。かようなことが堂々と論議をされること自体が、私はこの第三条を法文のまま正しく運用されるかどうかという点にきわめて疑義があるのであります。そういうことを、完全にということには行かないにいたしましても、そういう逆コースの方向へ持つて行こうとされることは、まあまあこの二つの点で、どうにか防げるのではないかという点で、われわれは修正案を提出いたしたのであります。いろいろ各党間から要望もありましたように、原案に賛成する方にいたしましても、今の当局の態度についていろいろ注文をつけなければならぬほど、現在の当局が青年の現代の思想において合致するかどうかということについては、相当私は疑義を抱くのが当然だと思うのであります。日青協の諸君が猛烈に反対をいたしておりまするが、この反対をされておる諸君に、少しでもこういう点で私らは納得いたしてもらいたい。もらえるか、もらえぬかは別といたしましてできるだけかように修正をすべきものだと考えて参つておるので、従つてこの修正案を含んだものが成立することを希望し、修正案を含まない原案については反対をすることを表明するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/41
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042・辻寛一
○辻委員長 北れい吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/42
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043・北昤吉
○北委員 私は、国民道徳の根本は、吉田総理の言われたごとく、新憲法を基礎にしておる。私は新憲法は占領下にできたもので、この憲法は改正すべしという論者です。新憲法を基礎にする教育は、私はまだほんとうの教育にはならぬと考えております。今の新憲法を基礎にすれば、再軍備問題について、社会党の左派に有利になる教育になるようにできておるということは、私は認めなければならぬ。(笑声)しかし教育の中立性という立場から、憲法の行き過ぎは是正し得る。その意味において、中立性を極端に押し進めるこの青年学級振興法案に賛成いたします。ただ十七条の刑罰規定でありますが、私は教育者の刑罰は、ほんとうは好みません。これは抜かざる宝刀と心得まして、あくまでも適用しないで、万やむを得ざる場合にのみ適用するという条件において、賛成の意を表します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/43
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044・辻寛一
○辻委員長 小林信一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/44
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045・小林信一
○小林(信)委員 最近出される教育法案の中に、振興法がたくさん出るのでございますが、これがたくさん出ることは、決して喜ぶべきことではない。もつと基本的な教育政策が確立しておれば、こういうものは出す必要はないのじやないか、こう思うのであります。確かに青年教育に対する国家としての配慮は、目下におきましては非常に重要でございますが、こういう形で出されることを非常に遺憾に思うものでございます。公民館制度、あるいは定時制高校が設けられておる。こういうようなときに、何ゆえにかかる措置をしなければならぬか。これは結局、できておるものに対しまして、政府が適当な措置をしない、だからこそ青年諸君が自発的に青年学級というものをつくつて、みずからの教養を高め、みずからの責任を遂行しようとするものでございます。これを簡単に、自然発生的なものであるから取上げなければいけないというようなことは、みずからの責任を回避しておるものであると言わなければならぬのでございます。こういう点からして、根本的に私は異議があるのでございます。
さらに経費の問題でございますが、これに該当する青年の何百万という数を考えますときに、しかもその青年の前途に持つておる重大な使命を考え、青年の持つておる意欲を考えますときに、わずか七千万円を計上して事足れりというような考えを持つに至つては、私はやはりこれに対しても不満を起さなければならぬ。一つには地方財政を苦しめて、地方財政の犠牲によつて青年教育をしようとする考えではないかと言わざるを得ないのでございます。決して地方財政を苦しめるものではなく、地方と国家とが協力し合つて、青年を教育するものであるという御答弁を私は受けたのでございますが、それでは青年の教育に対してどの程度の、どういう理想を持つて考えられておるのか。ここにまた疑点があるのでございます。結局教室と先生だけで、抽象的な議論を闘わして、青年に観念的なものを注入する以外にない。勤労青年に日本の産業を進展させるというような目的を考える以上は、先ほどもどなたからか御意見がありましたように、もつと勤労青年の必要とする、勤労青年に与えなければならない施設を完備して、この法案が実施されなければならないのでございます。それには少くとも、当初文部省が考えた十何億というような経費が計上されなければうそでございます。こういう点からいたしまして、私はやはり不満足でございます。
さらに、この法案は非常に青年の自主性を考えておるという御意見があるのでございますが、法案の中には全然ありません。ただ三十人の青年がより合つて、青年学級を設置してもらおうじやないかという意図があつた場合には、これが設置されるというだけのことであつて、これが一ぺん開設された以上は、どういうふうに運営されるか。すべて青年の意見というものは用いられずに、一方的に理事者側、あるいは文部省等の意向によつて、これがいかようにもされる点が考えられるのでございます。もつと私は質問をして、文部当局の御意向を承ろうと思つたのでございますが、時間がなかつたために許されなかつたのでございます。この学校を廃止する場合は、学生が著しく減少した場合と、その他の事情によつて教育委員会がこれを閉鎖することができるという規定があるのでございますが、われわれの考えるような青年教育が行われないというようなことがあれば、その事情によつて、この規定により閉鎖することができるという点を考えますときに、決して青年の自主性を強力にこの法案が考えておるとは言えないのでございます。時の権力の見解が、これはおもしろくないというような場合には、いかようにもこれが処置できるというような点を考えますときに、決して青年の考えておるような希望や要望に沿うことはできない内容だと考えるのでございます。
それから、いつでも私は申し上げるのですが、この法案の中に、今度は文部大臣の権限として、地方教育委員会に対しまして、この青年学級のことに関しては指導助言ができるという規定ができておるのでございます。これはいよいよ文部省の意欲を漸次こういう部分から実現しようとする計画であることがうかがわれるのであります。私は先日、教育委員会法にはこの規定がないかどうかと言つたら、そちらの方から文部大臣の方に何か言われて、文部省設置法を詳しく調べられまして、その中に、はつきり書いてある、文部大臣はこれによつて文部大臣の権限が明白であるということを言われておる。それかある以上は、あえてこの規定を盛る必要はないのでございますが、漸次各法案の中にこういうものが盛られることになりますと、これは結局教育委員会法の精神を無視して、いよいよ文部大臣の権限というものが、地方教育委員会にも及び、青年学級にも及んで来るという点が明らかになつておるのでございます。こういう点からしても、結局青年の自主性を主にしてこれを運営しようとするものでなく、ある意図に基いて、なるべく経費は少くして、何らかの意図によつて、政府が思うように教育しようということに将来ならぬとも限らぬのであります。こういう意味からいたしまして、私は反対するものでございます。
さらに修正案に対しましては、私たちの最も問題にしたところを摘出されての修正でございますが、やはりこの修正もほんとうに形式的なものになつてしまつて、かえつて自主性を失うようなおそれがあるのでございまして、これに対しても私は賛成できないのでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/45
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046・辻寛一
○辻委員長 これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。まず前田榮之助君提出の修正案について採決いたします。右修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/46
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047・辻寛一
○辻委員長 起立少数。よつて前田榮之助君提出の修正案は否決せられました。
次に本案について採決いたします。本案を政府原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/47
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048・辻寛一
○辻委員長 起立多数。よつて本案は、原案の通り可決いたしました。(拍手)
なお報告及び報告書の提出については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/48
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049・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認め、さように決します。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/49
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050・辻寛一
○辻委員長 次に、高等学校の定時制教育及び通信教育振興法案を議題とし、質疑に入ります。天野公義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/50
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051・天野公義
○天野委員 定時制のことに関しまして、二、三政府及び提案者に質問したいと思います。
現在、勤労青年教育の重要性は、ただいま御提出になつておりますこの法案にも掲げられておるのであり、私もまつたく同感でございます。年々全国中学校の卒業生百六、七十万人のうち、百余万名はそのまま実社会に出てしまうのでございますが、この複雑な社会情勢を考えますとき、これら青年が長い社会生活をよりよく行うためには、どうしても働きつつ学ぶ制度をできるだけ完備してやることが、国家公共団体の義務であることは申すまでもございません。この見地からして、本法案の定時制教育、通信教育の振興策は、ただいま本委員会で議決を見ました青年学級振興法案の精神とともに、まことに時宜に適したものと考えるわけでございます。これについて、まず文部省に先にお伺いしたいのでございますが、政府はなぜ青年学級についてのみ振興法案を提出し、定時制、通信教育についてその振興法案を同時に提出しなかつたか、これをまずお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/51
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052・田中義男
○田中(義)政府委員 御承知のように、定時制高校の教育は、学校教育法によりまして、学校教育の一環としてこれを施行いたしております。従つてただいまでもその根拠となる法律ははつきりいたしておるのでございます。なお、これに伴いまして、本年度も、不十分ではございますけれども、その設備の補助等について、一部予算の決定をも見ようとしておる際でございます。従つてなおその振興のために、それを法制化することが望ましいとは考えましたけれども、他にも解決を要するいろいろな問題もありましたので、この際は、一応政府としてはこれを見合せて参つた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/52
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053・天野公義
○天野委員 政府では、諸般の事情で、一応定時制をあとまわしにしようとお考えになつていたけれども、われわれ議員提出によつて、文部省は非常に助かつたということになると思うのでございますが、それはさておきまして、この青年学級と定時制高校との関係は、いかにあるべきものとお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/53
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054・田中義男
○田中(義)政府委員 ただいま申しましたように、定時制高校は、学校教育の領域において、学校教育として勤労青年の教育を行つておるものでございます。青年学級は、社会教育の立場から、働きつつ学ぶような制度を主眼とするものでございます。従いまして、学校教育と社会教育と両々相まちまして、勤労青少年の教育を十分にいたして行きたい。かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/54
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055・天野公義
○天野委員 勤労青年教育については、この青年学級と定時制のほかに考慮を要するいろいろな案件があると思われるのでございますが、もしありとするならば、どういう方法でこれをやつて行きたいとお考えになるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/55
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056・田中義男
○田中(義)政府委員 勤労青少年教育につきましては、ただいまも申し上げましたように、学校教育の面で定時制高校並びに通信教育の拡充の問題もございます。また社会教育の面から、青年学級の教育の問題もございますが、なお内容的に考えますときに、視聴覚による教育、特に教育放送によるもの――スクール・エクステンシヨンと申しておりますもので、学校拡張講座にあたるものでございますが、そういうふうなもの、あるいはまた大学における夜間教育というふうなものも相当重要な関連を持つものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/56
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057・天野公義
○天野委員 次にお伺いしたい点は、先年来、内閣に青少年問題協議会というものができておるということでございますが、青少年の下良化防止をその仕事としていると承知いたしております。この協議会と文部省との関係はどのようになつておるのでございますか。またこれが最近法制化の話もあるように思うのでございますが、文教行政機関の一種と目される点はないのかどうか、それらの点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/57
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058・田中義男
○田中(義)政府委員 青少年問題協議会は、御承知のように、現在総理府関係において設置されておりまして、青少年の不良化防止等の問題を中心に、青少年に関する各種の問題を、官庁間において相互連絡協議して、その対策を進める。かようなことで設置をされ、運営をされておりまして、文部省もその関係官庁の一つとしてこれに係官を加え、そうして常時連絡をとつて、その討議に参加をし、進め七おる次第でございます。なおその法制化につきましては、ただいま本国会に提案され、審議されておると承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/58
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059・天野公義
○天野委員 青少年不良化の問題は、後日時間がありましたら、ゆつくりとひとつ文部当局にいろいろとお伺いしたいと思つておるのでございますが、次に質問を進めまして、定時制のこの法案の第五条の国の補助を、設備についてのみとした理由を提案者に御質問したいと思います。地方財政の窮乏の実情を見、また勤労青年の勉学である以上、通学の便をはかつて、各町村ごとにも設置する必要があると考えられるときにおきまして、最低限度の建物をも補助の対象にすべきではないのであるか。この見地に立つて、提案者の御答弁と、それについての政府の御所見も伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/59
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060・中川源一郎
○中川源一郎君 第五条の設備でございますが、御承知の通り定時制教育は府県立が多うございます。しかしながら町村の経費でもつて施設、設備を行つておるものが多うございます。町村の方では義務教育に非常に今日まで没頭して参りまして、地方財政が枯渇しておりまする折から、設備、施設を十分に施すことができないというような状態でございます。先日も提案の理由で申し上げましたように、はなはだしきものに至りましては、黒板と白墨だけしかない。あるいはミシン一台に家庭科の数十名の女生徒が寄つて実習をしておるというような、設備のできていないというものがたくさんあるわけでございますので、早く最低の高等学校としての設備を整えなければならないと思うのでございます。それが地方財政の枯渇の関係上できないという状態でございますので、設備をするものに対しまして、応分の国家補助をいただきたいと思うのでございます。また施設につきましても、何分中学校、あるいは小学校を併用しておる定時制の高等学校が多うございますので、中学校の学級増というようなものによりまして、その教室を中学にとりもどしたいというような向きを持つ地方が多うございます。また、はなはだしく腐朽したるものに対しまして、改造及び修理を要するというようなものもたくさんあるわけでございますが、これらに対しまして、せめ七幾分の国家補助を支出していただくということが適当な措置であろうと私は深く存ずるのでございます。何分国家財政の困難な折からでございますので、今回は施設の分に対しましては、御遠慮申し上げるということにいたしたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/60
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061・田中義男
○田中(義)政府委員 ただいま提案者から御説明がございましたが、文部当局といたしましても、現在定時制教育について最も急を要する問題の一つは、施設あるいは設備の点でございます。で、設備、施設どちらを先にというふうに考えることも困難なほど、両方ともまことに非常に貧弱な困つた状態にあるのでございますが、結局は財政の関係から国庫が補助いたすといたしますなら、両方ともこの際それらについての措置を考えるということは非常に困難でございますので、とりあえずともかく設備ということを取上げましたわけでございまして、これは将来施設等についても、その充実をはかるべき現状にあると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/61
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062・天野公義
○天野委員 もう一点お伺いします。私立学校についてはどうお考えでございましようが、提案者のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/62
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063・中川源一郎
○中川源一郎君 実は私どもの提案いたしましたこの案には、十三回ほど修正をいたしました。一番当初の私どもの成案は相当大規模なものでございましたが、だんだん削除いたしまして、一番遠慮をいたしました法案がこれになつておるわけでございます。ついただいままで、私立学校も必要なものがあると考えまして――御承知の定時制には分校を合せまして三千百四十六校ございますが、そのうちの二百余りが私立学校になつております。私立学校の方でもなかなか経営困難で、施設、設置に対しましてぜひ補助をもらいたいという希望が強いのでありますが、まず公立学校を充実させて、そうしてさらにまた私立学校というふうに考えまして、財政の都合で、今回は遺憾ながら私立学校を削つておるわけでございます。
それといま一つは、私学振興会法がございまするので、昨年は三億九千万円の補助でありましたが、本年は十億にして、さらに五億増額されまして十五億ということになつておりますので、その六分五厘の利息等が私学補助のために使われておるわけでございます。そういうようなものとにらみ合せまして、今回は私立学校を遠慮していただくということにいたしました次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/63
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064・天野公義
○天野委員 議員提案で、定時制の法案がここまで出て参りました。その提案者各位の御労苦、御苦心のほどに深く敬意を表しまして、質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/64
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065・相川勝六
○相川委員 ただいまの御質問に関連いたしまして、一点だけ、私のきわめて重要と思いますることをお伺いしたいと思います。定時制の振興法案については私も根本的には賛成でございまするが、せつかくここまで皆様方が御苦労なすつたのに、何ゆえ私学を除外したかという問題であります。これは勤労学徒の立場から申しましても、また国家の教育の大本から申しましても、公私を何ゆえに区別をしたかということは、国策としても、良心的にも私は納得できない。大体教育において、国家の学校基準法にのつとつて設けられた学校に、公私の区別をするという、一とはどういう考えであるか。私、これは根本的に間違つておると思う。そういう考えを持つておられることは、あるいは過去においては、そういう頑迷な考えを持つたかもしれぬが、現在においてまでそういう考えを持つておるということは、民主主義の日本においてまことに了解できないことであります。いわんや定時制教育で、今お伺いすれば、私立の方はわずか二百で一ある。公立の方は三千もある。わずか二百くらいのものを、何ゆえに除外するか。私は国家の財政の苦しいことはかわりないと思う。この一割にも足りないものをなぜ削つたか、私はどうしても納得できない。これは根本問題において、どうしても反対せざるを得ない。ことに勤労学徒というものは燃ゆるような向学心はあるが、まことに貧乏な学生であります。金もない、時間もない、こういう人たちが、ただ燃ゆるがごとき向学心のために、何とかして教育を受けておるのです。ですからこの連中は、昼は働いて、夜間のわずかな時間を利用して自分の勉学をやつております。十分でも五分でも、その間の時間は大切です。遠いところにはなかなか行けない。できるだけ近い学校に行きたいと思う。そうすれば、一番近いところに私立の学校がありますれば、私立の学校に学びたいと思うのはあたりまえであります。そういうものをどうして除外されるか。私はかくのごとき考えは絶対に賛成ができかねる。また勤労学徒の立場からいつても、最も思想の健全な、まじめな学徒であります。こういう者を一人でも救つてやることはわれわれの任務である。それを私立の学校に行けば見てやらないということはどうしても納得できません。あのわずか一千万円くらいの助成金でございますが、どうせこれは、こわれた机やいすを直すとか、そのくらいのところでございますから、それなら、やはり私学にも出すべきものだと思います。私はその点、少くともそういうお心がけに対しては納得できません。提案者の明らかなる御答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/65
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066・原田憲
○原田委員 お答えをいたします。相川君の御質問の趣旨は、われわれもまつたく同感でございまして、われわれもできることなら、この法案に私立の高等学校も入れたいと思つております。またそういたすのが本筋であると考えております。先ほど中川さんも御答弁になりましたように、現在私立の高等学校で定時制を行つておりますのが二百十一校、生徒が約六万人であります。それで、わずかなものであるから、これを入れることがいいと考えておつたのでございますけれども、現在私立の高等学校に補助ないし助成の道を国家が今日まで講じておらない。ただ私立学校振興会法に基いて私立学校の振興と助成をはかつておる、これが現在の状態でございますが、今日われわれは、この定時制の働きつつ学ぶということ、これがほんとうの教育の行き方であると考えております。これに今まで国家が力を注がなかつた。これを獲得するために、まず振興法を出そう、法律を出そうと考えまして、最低限度の確保をいたしたのでございまして、私たち提案者の意図も、今相川先生の言われた御趣旨にまつたく同感であるということを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/66
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067・相川勝六
○相川委員 提案者のお気持は大体わかつたようでございますが、どうかひとつ定時制の教育については――大体基本的な法律も、公私を問わず一緒になつて出ておるのですから、私学も入れるようにお考え直しを願いたいと思う。どうせ一千万くらいの金では、思うようなこともできないのは当然であります。ただいまも申しまするように、根本論としてもおかしいのです。どうせみな貧乏な、苦しい連中のやつておることでございまするから、わずかな金をお互いにひとつわけ合つて、みんなで少しずつでもやつて行く。将来はまたできるだけこの予算を出してもらうように、みんなで努力をするということで、この際は、わずかな金をみんなでわけ合つて行く気持が必要だと思う。どうかひとつ、その点お考え直しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/67
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068・竹尾弌
○竹尾委員 相川委員のただいま申されたことは、いかにもごもつともであるし、また原田委員の御答弁もよくわかりましたが、これは提案する前に私学を入れるということにきまつておつたはずだが、これはどうなつたのですか。文部当局に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/68
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069・田中義男
○田中(義)政府委員 お話のように、当初の案としては私立学校も入つておつたわけです。ところが、先ほど中川委員からも御答弁になりましたような事情で、最後の提案されましたものからは落ちた、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/69
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070・辻寛一
○辻委員長 本日はこの程度で散会いたします。
午後零時三十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X01919530725/70
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