1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月三十一日(金曜日)
午後零時三十七分開議
出席委員
委員長 辻 寛一君
理事 天野 公義君 理事 伊藤 郷一君
理事 原田 憲君 理事 田中 久雄君
小西 寅松君 竹尾 弌君
安井 大吉君 中嶋 太郎君
高津 正道君 野原 覺君
山崎 始男君 前田榮之助君
松平 忠久君 小林 信一君
出席政府委員
文部事務官
(大学学術局
長) 稻田 清助君
委員外の出席者
議 員 橋本 龍伍君
専 門 員 石井つとむ君
専 門 員 横田重左衞門君
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七月二十九日
委員芦田均君、辻原弘市君、前田榮之助君及び
北れい吉君辞任につき、その補欠として町村金
五君、下川儀太郎君、山口シヅエ君及び石田博
英君が議長の指名で委員に選任された。
同月三十日
委員山口シヅエ君辞任につき、その補欠として
前田榮之助君が議長の指名で委員に選任された。
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七月二十九日
財団法人労働科学研究所に対する国有財産の譲
与に関する法律案(橋本龍伍君外七名提出、衆
法第五二号)
同月三十日
学校給食法案(田中久雄君外十三名提出、衆法
第五四号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
小委員及び小委員長選任
閉会中審査に関する件
委員派遣承認申請に関する件
財団法人労働科学研究所に対する国有財産の譲
与に関する法律案(橋本龍伍君外七名提出、衆
法第五二号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/0
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001・辻寛一
○辻委員長 これより会議を開きます。
財団法人労働科学研究所に対する国有財産の譲与に関する法律案を議題といたします。提出者より礎案理由の説明を聴取いたします。橋本龍伍君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/1
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002・橋本龍伍
○橋本龍伍君 ただいま議題となりました財団法人労働科学研究所に対する国有財産の譲与に関する法律案の提案の理由を御説明申し上げます。
財団法人労働科学研究所というものがそもそも発案をせられましたのは大正十年でありまして、当時社会問題が続発いたしておつたのでありますが、いまだ政府においても十分な対策もありませんでした時分に、この方面の非常な先覚者でありました大原孫三郎氏が創設をいたしまして、当時純粋な社会問題研究所としての大原社会問題研究所がつくられ、これはまた純粋な労働医学、心理学的な科学研究の研究所といたしまして、大原氏の仕事でありました倉敷紡績株式会社の一工場を研究実験所に開放して出発をいたしたものであります。当時は企業経営者が自分のところの工場を一般の検討にゆだねるようなことはほとんどなかつたのでありますが、大原氏はあえて始めたのでありまして、十四年間にわたつて日本で唯一の労働医学並びに心理学を中心とする労働上の諸条件、労働者の生活の諸条件に関する科学的な究明をいたしまして、改善の方途を講じつつ、各方面にわたつていろいろな功績をあげて参りました。次第にその研究が国家的な規模に発展して参りましたために、昭和十二年になりましてから日本学術振興会の方で、これをもう少し国家的に発展させた方がよかろうというお話がございましたので、大原氏は欣然これを承諾されて、従来の資金に加えて、さらに寄付をされまして、これを日本学術振興会に提供いたしました。そこで昭和十二年に学術振興会においていろいろ検討の上、財団法人日本労働科学研究所というものを東京に創設をいたしました。祖師ケ谷大倉に今日の研究所を立てたわけであります。その後研究所は施設、設備の充実と研究業績の集積並びにその実際への応用宣伝に努めて参りました。当時は今日の労働省はもちろん、厚生省の設置もまだございませんで、労働行政が主として監督行政という面から内務省、農商務省その他の各庁に分散されておつて、はなはだ不完全でありましたが、その時代からわが国唯一の先駆的な存在といたしまして、労働行政並びに労働現場の条件の改善等に関する中心、指導的役割を果して参りました。厚生省の設置後も、その労働監督指導の行政に関する科学的資料のほとんど唯一の提供者でありまして、その著しい例は、女子の深夜業の撤廃、義務教育年限の延長、また労働最低年齢の引上げ等の科学的根拠は、一に本研究所の研究の結果であつたのであります。このように労働条件の規制に関しまする科学的資料作成についての国家の代行機関的な役割を果しておりましたために、大東亜戦争が始まるに及び、政府の強い勧めによりまして、この財団法人日本労働科学研究所なるものは、大日本産業報国会に合併をしろということに相なつたのであります。当時の実情やむを得ざるところがありまして、財団法人日本労働科学研究所は、この戦争中の政府の勧めというより半ば命令によりまして、所有財産は無償で大日本産業報国会に譲渡をいたしまして、この両団体は昭和十七年の一月十日に正式に統合せられたのであります。一渡りこの研究所は、財団法人としては解消したような形をとりました。但しその際に大日本産業報国会は、特殊法人でありましたために、この研究所の物的財産は、新たに財団法人産業報国会財団というものを設立いたしまして、この所有に帰しました。その際の附帯条件といたしまして、産業報国会解散の際は、この無償譲渡された全財産は、労働科学の研究の目的のために、再度労働科学研究所を設立いたしまして、その方に使用できることの了解ができておつたのであります。
そこで昭和二十年九月三十日に産報が解散をいたしましてから、労働科学研究所は、財団法人として新設されることになりました。昭和二十年十一月三十日に新設された財団法人労働科学研究所に対しまして、産業報国会解散並に残務処理要領に基きまして、統合当時の財産がそのままもどつて参つたのであります。ところが御承知のように、産業報国会は解散団体になりまして、従いまして解散団体の財産の管理及び処分等に関するポツダム政令の適用を受けることに相なつたのであります。このポツダム政令の第三条には、解散団体の動産、不動産、債権その他の財産は国庫に帰属し、これを目的とする留置権、先取特権、質権及び抵当権は消滅するということに相なりまして、没収されることに相なりました。そして原則としてこの財産は、一般に売払われることに規定がなつておるのであります。
ところが労働科学研究所の仕事はぜひ進めなければなりませんので、この点については連合軍の総司令部も、政府の方も意見が全然かわつておりませんので、その処置に苦心をいたしました結果、こういう解決方法をとることにいたしました。この政令の第十一条にこういうことが書いてあるのであります。「法務総裁は、第三条の財産のうちに国又は地方公共団体が連合国最高司令官又は政府の許可を得て昭和二十三年三月一日において公共用又は公用に供していたもので現にその使用を継続しているものがあるときは、各省各庁の長にこれを所管換することができる。国又は地方公共団体において公共用又は公用に供すべきものとして連合国最高司令官から指定されたものについても、また、同様とする。」という規定がありますので、これを利用いたしまして、総司令部の側で昭和二十五年の一月十日に、向う側から積極的に解散団体産業報国会の特定財産についてという指令をよこしました。その指令によりますれば、法務総裁は労研関係の財産を一般の処分財産からはずして、文部大臣に移管をしなさいということ。文部大臣は当該移管財産の大部分は、財団法人労働医学心理学研究所、それは一時ちよつと名前をかえたことがありました。労働医学心理学研究所に有償をもつて使用せしめる。二、文部省所管統計数理研究所に一部を使用せしめる。三、労働省の衛生課に一部使用せしめる。四、国立国会図書館に書籍、什器及び備品を使用せしむるということでありました。しかるにこれは労働科学研究所が昔と同じように仕事をして行くのでありますが、何か政令によつてかつこうをつけなければなりませんので、文部省の所管の行政財産で、文部省が何か労働科学の研究をやつておるようなかつこうをつくりまして、ただし国がやらないで、労働医学心理学研究所に使わせる。ノミナルに、年二十万円ばかりの借賃をたしか払うのであります。それからたまたま焼けたか何かして、建物がありませんでした統計数理研究所に、一部を使わせる。それから労働省の衛生課に一部を使用させるということは、労働省の委託を受けて、いろいろ検定をやつたりしておりますもので、かつこうだけの話であります。それから四は、国会図書館のものだということで、一応この政令上公用に供すべきものとして連合国最高司令官から指定したから、そのまま置いておいてよろしいという形をとつて今日までに至りました。その後も労働科学研究所としては、戦後労働省の設置、労働三法の制定実施等のいろいろな事情のもとにおきまして、旧に倍した科学資料の提供を続けて参つておるのであります。戦後やりました仕事の中でも、職業別の食糧需給の基準をきめましたり、農家の保有米の限度を農林省の委託を受けてきめる資料を提供いたしましたり、あるいは最低生活費の問題であるとか、あるいは電通省その他の労働基準の設定等の問題にいろいろ資料を提供をいたして参りました。今日もとにかくそうして仕事は一応やつておりますが、非常に困りますのは、何分にも国有財産ということに相なつておりますが、文部省自身の仕事ではありませんので、文部省の方で予算を出して内容の設備改善をやるようなこともできないのであります。ところが、研究所といたしましては、また設備を改善する場合にも労働科学研究所の資金でやりましても改造した部分は附加して一体となつて国有となつてしまうというような形でありまして、その後この研究所の改善をはかりますのに非常に苦心をいたして参りました。文部省等においても、こういう変態的な仕事が文部省自身の行政の一部であるという形をとつておるのは非常に困りますので、いろいろ相談の結果、今日この法律を通して御審議をお願いすることにしたのであります。内容はきわめて簡単でありまして、もちろん労働科学の面におきましては、この労働科学研究所が、唯一の機関でありますので、経営及び労働諸条件の改善のための労働科学に関する研究調査の事業を発達させるためには、どうしても労働科学研究所がスムーズに動くようにしなければならないので、この形式的に国のものになつておりまする財産を労働科学研究所のものにして、そうしてめんどうな文部省の擬制的な行政の一部ということをやめまして、今後研究がうまく行くようにいたしたいというわけでございます。これが趣旨でありまして、どうかよろしく御審議をお願いいたします。
なおごく簡単にこの研究所の仕事の内容を申しますと、予算といたしましては大体このごろ年間三千万円くらいでありまして、そのうち約六、七百万円が文部省その他政府から出る資金であります。なおそのほかの千二百万円くらいが船員協会とか、化学繊維協会とか各種の会社等からの委託調査費でありまして、残りが維持会員の経費でありますとか雑収入というようなことに相なつておるのであります。
なおこの研究所は、文部大臣の監督を受けております財団法人それ自体としての監督を受けておりますのと、また今申しましたような政府の研究費をもらつて仕事をしておるという面からも監督を受けておるのであります。
役員は今日理事長が松岡駒吉氏でありまして、理事に野田信夫、桐原葆見、諸井貫一、永野重雄、大原総一郎、東畑精一、森戸辰男、塚田公太というような人たちがやつておりまして私も理事の一員をけがしておる次第でございます。御審議の上よろしく御賛成を賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/2
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003・辻寛一
○辻委員長 これより質疑に入ります。原田憲君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/3
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004・原田憲
○原田委員 提案者に御質問いたしますが、この労働科学研究所の払下げを受けようとされておる建物の中に、私詳しいことは知らないのですけれども、間借りの形で現在何か入つておるそうですが、それとの関係はどういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/4
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005・橋本龍伍
○橋本龍伍君 ただいまお話を申し上げました通り、文部省の統計数理研究所というものが建物の一部に入つておるのでございます。これは不便でありますので、いずれはよそへ移りたいと言つておられるようでありますが、今日はずつとおられますので、この法律の附則の第二号に「第二条に規定する施設及び動産で同条の規定による譲与の際現に国が使用しているものについて、当該譲与後もなお引き続き国が使用することを必要とするときは、国は、当分の間、引き続き当該財産を無償で使用することができる。」お入り用でありますればそのまま御利用願うという法律になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/5
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006・高津正道
○高津委員 各省やいろいろな方面から大分補助金をとつておりますが、今並べられた松岡氏以下の理事、監事、その他の諸君の俸給などはどういうようになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/6
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007・橋本龍伍
○橋本龍伍君 全然無給であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/7
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008・高津正道
○高津委員 それからいろいろ委託調査などをやつておられるが、それは外へ出しておられるのですか。ここの所員だけでやつておられるものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/8
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009・橋本龍伍
○橋本龍伍君 全部この労働科学研究所内部におきまして研究をいたしておる次第でございます。祖師谷大蔵に約千何百坪かの研究所がございまして、主として労働医学、それから労働心理学の面からの研究が多いのでございますか、賃金その他の問題に関する純粋な社会科学的な研究もございます。この内部で処理をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/9
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010・辻寛一
○辻委員長 他にございませんか。——なければ本案に対する質疑はこの程度で打切りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議な上」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/10
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011・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認め、質疑は打切ることに決しました。本案に対する討論は省略いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/11
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012・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認めます。よつて討論を省略してただちに採決いたします。
本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/12
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013・辻寛一
○辻委員長 起立総員。よつて本案は原案通り可決いたしました。
なお報告書の提出等につきましては委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/13
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014・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認め、さようにとりはからうことに決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/14
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015・辻寛一
○辻委員長 次に当委員会は請願の審査をなすため委員十一名よりなる小委員会を設置いたしたいと存じますが、小委員会を設置することに決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/15
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016・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認めます。よつて小委員会を設置することに決しました。
なお小委員長に
伊藤郷一君
小委員に
天野 公義君 原田 憲君
田中 久雄君 中嶋 太郎君
高津 正道君 野原 覺君
前田 榮之助君 松平 忠久君
中村 梅吉君 小林 信一君以上十一名を指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/16
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017・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認め、さように決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/17
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018・辻寛一
○辻委員長 この際お諮りいたします。当委員会は閉会中もなお審査を行いたいと存じます。ただいまその審査申出書を朗読いたします。
閉会中の審査申出書
一、閉会中審査すべき事件
一、学校教育、社会教育及び教育委員会制度に関する件
一、文化財保護に関する件
一、宗教情操教育に関する件
一、教育施設の復旧及び接収解除に関する件
一、僻地教育に関する件
一、閉会中審査の目的
文部行政及び教育制度の調査を行い、その対策の樹立に資するため右により閉会中もなお審査をいたしたいから、しかるべく取計い願いたい。
昭和二十八年七月三十一日
文部委員長 辻 寛一
衆議院議長 堤 康次郎殿
ただいま朗読いたしました閉会中審査申出書を議長に提出することに決するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/18
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019・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認め、さように決しました。なお承認を得ましたならば、委員を派遣して調査の必要ができました場合、委員派遣承認申請書の提出等については理事と御相談してきめたいと存じますので、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/19
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020・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認め、さように決しました。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時一分散会
発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605115X02219530731/20
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