1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月十三日(月曜日)
午前十時五十六分開議
出席委員
委員長 小林かなえ君
理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
理事 吉田 安君 理事 猪俣 浩三君
理事 花村 四郎君
寺島隆太郎君 林 信雄君
本多 市郎君 三木 武夫君
古屋 貞雄君 細迫 兼光君
岡田 春雄君
出席国務大臣
法 務 大 臣 犬養 健君
出席政府委員
法務政務次官 三浦寅之助君
検 事
(刑事局長) 岡原 昌男君
法務事務官
(保護局長) 斎藤 三郎君
委員外の出席者
専 門 員 村 教三君
専 門 員 小木 貞一君
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七月十三日
委員木村文男君辞任につき、その補欠として寺
島隆太郎君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
参考人招致に関する件
刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九
〇号)
刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一四六号)
姫路少年刑務所の騒じように関する件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/0
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001・小林錡
○小林委員長 これより会議を開きます。
刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑に入る前に本案の内容について説明を聴取することにいたします。斎藤政府委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/1
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002・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 本法案について逐条的に御説明申し上げます。
この法案は、刑の執行猶予の要件を緩和いたしますと同時に執行猶予者に対する保護観察の制度を始めようとするものでございます。第一条は、刑法に関する所要部分の改正でございます。その第一点は執行猶予の要件を緩和することでございまして、まず現行法第二十五条第二号において、前に禁錮以上の刑に処せられた者はその執行が終つてから七年以内無事故であることを要求しておりますのを、五年といたしたのでございます。五年といたしましたのは、いろいろな点から考慮いたしたのでございますが、統計的に見まして五年以上経過した場合に再犯の率が少くなつておるというようなこと、それから累犯の規定において五年を基準といたしておるこういうような点を考慮して五年といたしたのでございます。次に執行猶予の要件を緩和する第二点といたしまして、現行法においては執行猶予中の者に対しては執行猶予ができないことになつておりますのを改めまして、執行猶予中の者がさらに一年以下の懲役または禁錮に処せられたというような場合には、再度執行猶予ができるようにいたしたのでございます。この一年以上の懲役または禁錮の言渡しは、執行猶予中の犯罪にかかわらず、執行猶予の言い渡し前の犯罪について刑に処せられた場合をも含むものと解しておるのでございます。この一年ということにいたしたのは、言い渡し刑を申しておるのでございまして、一年以上の言い渡し刑を受ける場合は、その犯罪の性質が比較的悪いというようなことを考えて一年以下ということにいたしたのでございます。
次に第二十五条ノ二というものを新設いたしまして、執行猶予中のものに対して保護観察し得ることにいたしたのでございます。第一項の前段は、初度目の執行猶予を言い渡す場合でございまして、この場合には裁判所が事案の性質に応じまして必要ありと認める場合に保護観察をつけ得ることにいたしたのでございます。この適用を受ける事案中には、従来被告人の環境が悪いとかあるいはまた保護者、監督者がない等のために、執行猶予の言い渡しを受け得なかつた者も救済される場合が多くあろうかと予想いたしております。これに関連いたしまして、附則の関係でございまするが、今回の改正により、第一回目の執行猶予について、この条文によりまして保護観察をつけ得ることにいたしたのでございますが、従来の無条件の執行猶予に比しまして、新たに遵守事項違反を理由として執行猶予が取消されることに相なりまするので、附則の第二項におきまして、この規定は改正法律施行前に化された罪については適用しないということにいたしております。第一項の後段目の執行猶予の場合について保護観察を行うことを明らかにいたしたのとございます。この場合は必要的保護観察をいたすことにいたし、裁判所は一度目の執行猶予の場合は必ず保護観衆をつけるという言い渡しをしなければならないということに規定いたしております。そしてこの関係は附則におきまして、この改正法律施行前の犯罪についても適用があるようにいたしております。従来は二度目の場合には、執行猶予中の犯罪については必ず実刑を言い渡す規定になつておりますのを改めまして、再度の執行猶予を可能といたしておりますので、この場合は被告人に不利益になる場合が考えられませんので、改正法律施行前の犯罪についても適用があるようにいたしております。第二十五条第二項は、この保護観察の内容を別に法律で定めることにいたしたのでございます。これに伴いまして、この改正法律案の一部といたしまして、犯罪者予防更生法を改正いたしまして、保護観察が犯罪者予防更生法の規定によつて行われることを明らかにいたしております。
次に第二十六条は、執行猶予の取消しに関する規定を改正いたしたのでございます。そうして従来、現行刑法第二十六条は、第一項において必要的に取消す場合を規定し、第二項においては裁量的に取消すことができる場合を規定いたしておりまするのを改めまして、新たな第二十六条は、必ず取消さなければならない場合を規定いたし、第二十六条ノ二を新設いたしまして、新設規定による条文におきまして裁量的取消しの場合を規定いたしたのでございます。新しい第二十六条の第一号及び第二号は、従来の規定と同趣旨でありまするが、新たに今回の改正によりますると、二度目の禁錮以上の刑に処せられた場合も、執行猶予が可能でございますので、その場合を除外いたしております。第三号も同様の趣旨の改正でございまして、実刑に処せられたということが、発覚した場合に必ず取消す、こういうふうにいたし、二度目の執行猶予がついた場合を除外いたしておるのでございます。
次に第二十六条ノ二は、裁量的取消しの場合を規定いたしております。第一号は従来の場合と同様でございまして、執行猶予の期間内にさらに罪を犯し、罰金刑に処せられた場合には、必要に応じ取消すことができる、こういうふうにいたしております。第号は新たな制度であります。保護観察付せられた者が犯罪者予防更生法よりまして遵守しなければならない項が法律上明定されております。その遵守すべき事項を遵守しなかつたという場合に取消すことができる、こううことにいたしております。この遵守すべき事項は犯罪者予防更生法三十条の第二項におきまして規定せられておりまして、それを申し上げますると、第一号は「一定の住居に居住し、正業に従事すること。」第二号は「善行を保持すること。」第三号は「犯罪性のある者又は素行不良の者と交際しないこと。」第四号は「住居を転じ、又は長期の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察を行う者の許可を求めること。」この四号が遵守すべき事項と相なつておりますので、明らかに遵守しなかつたという場合に取消すことができる、こういうことにいたしたのでございます。次に第三号は、執行猶予の言渡し前に他の罪による禁錮以上の刑に処せられて、その刑が執行猶予になつておるということが発覚した場合に、必要に応じ取消すことができる、こういうふうにいたしたのでございます。次に第二十六条の三を新設いたしましたのは、必要的取消または裁量的取消しに関する前二条の規定によりまして、禁錮以上の刑の執行猶予言い渡しを取消された場合には、同時に自分が執行猶予中になつておるその禁錮以上の刑についても猶予の言い渡しを取消すべし、こういうふうにいたしたのでございます。その趣旨は、今回の改正によりまして、執行猶予が二つあるいは場合によりましては三つ以上の執行猶予を持つておる場合が想定されるのでございます。その場合に一つの刑についてはその執行猶予が取消された、他の刑は執行猶予中であるというようなことがあるとしますと、制度の趣旨からいつて妥当でないというふうに考えられますので、二つ以上の執行猶予の言い渡しを受けておる者が一つの執行猶予の言い渡しの取消しを受けた場合には同時に他の猶予の言い渡しを取消す、かようにいたしたわけでございます。実際上の例として考えられまする一つの例は、無条件の執行猶予、最初に執行猶予になつて、それが保護観察のつかない執行猶予であるとか、その執行猶予の期間中に犯罪をして再度の執行猶予になつた、同時に保護観察に付せられた者が遵守事項に違反したという場合には、二度目の執行猶予が取消されるのでございますが、さような場合には前の執行猶予についてもこの規定によつて取消される、こういうことに相なるわけでございます。
次に第二十九条の第一項第四号を改正いたしましたのは、ただ表現を改めたのに過ぎません。すなわち従来はこの二十九条は仮出獄の取消し事由でございまして、第四号は従来は「仮出獄取取締規則ニ違背シタルトキ」こういうふうに表現されておつたのでございまするが、犯罪者予防更生法の施行によりまして、実際にはこの改正法案にいう遵守すべき事項、すなわち犯罪者予防更生法第三十四条第二項が遵守すべき事項に、この仮出獄の取締り規則に該当するように解釈いたしておるのでございますが、今回はそれを明らかに遵守すべき事項とこの改正法案の今まで申し上げたところで改めておりますので、同一内容のことを二様に表現するということはまことにおかしいのでございまして、この二十九条第一項第四号をかように改正いたそうとするものでございます。
次に第二条は刑事訴訟法の改正でございます。一項は、最初の部分は、三百三十三条第二項の改正でございまして、現在の三百三十三条は、第一項におきまして、「被告事件について犯罪の証明があつたときは、第三百三十四条の場合を除いては、判決で刑の言渡をしなければならない。」第二項として「刑の執行猶予は、刑の言渡と同時に、判決でその言渡をしなければならない。」こうありますのに加えまして、第三項としまして、「刑法第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付する場合も、同様である。」こういうふうに第三項を附加いたしたのでございまして、これによりまして今回の保護観察の言い渡しも、裁判所が判決の主文で宣告することに相なるのであります。第三百四十九条は、執行猶予の言い渡しの取消しに関する規定でございまして、現行法は、第一項におきまして、検察官からの裁判所に請求する手続を規定し、第二項におきまして、その検察官からの請求があつた場合に、裁判所が言い渡しの取消しについて決定をする、その決定についての規定でございますが、その第二項を次の新設三百四十九条の二に譲りまして、新たに第二項といたしまして、検察官が執行猶予の言い渡しを取消すために請求する場合に、遵守すべき事項の違反を理由とする場合には、その保護観察を担当しておつた保護観察所の長の申出に基いて、取消しを請求するようにいたしたのでございます。
次に三百四十九条の二を新設いたしまして、これに執行猶予の言い渡しの取消しについての手続を規定いたしたのでございます。第一項は従来の三百四十九条の第二項をそのまま持つて来たのでございまして、検察官からの取消しの請求があつた場合に一「裁判所は、猶予の言渡を受けた者又はその代理人の意見を聴いて決定をしなければならない。」こういう第一項を置きまして、次に遵守事項違反の取消しという場合は、従来の執行猶予の取消しと若干趣を異にする場合でございますので、新たにその手続を従来に比して詳細に規定いたしたものでございます。それは従来の執行猶予の取消しは罰金あるいは体刑についての判決を受けて後、それを理由として取消すのでございまして、その事実自体について疑問がないという場合でございましたが今回新設いたしました遵守事項違反による取消しは、さような場合と趣を異にいたしますので、第二項、第三項、第四項におきまして、さような場合において詳細な手続を規定いたしたのでございます。すなわち第二項におきましては、刑法第二十六条の二第二号、すなわち遵守すべき事項を遵守しなかつたという理由によつて、執行猶予の言い渡しの取消しを求めるという場合には、本人の請求があつた場合には口頭弁論を経なければならない、かようにいたし、さらにさような口頭弁論を経る場合においては、執行猶予の言い渡しを受けた者は弁護人を選任することができる。第三項におきまして、「口頭弁論を経る場合には、検察官は、裁判所の許可を得て、保護観察官に意見を述べさせることができる。」かようにいたしたのであります。末項におきまして、その執行猶予の言い渡しの取消しの決定に対しては、即時抗告することができる、かようにいたしたのでございます。
次に三百五十条は、従来の刑法罪の一部について大赦があつた場合に、大赦にならなかつた残余の分について分離して刑を定める、決定を求める場合の規定でございまして、この改正は三百五十条の前に位する三百四十九条の改正により字句を改めたのにすぎないのでございます。
次に第三条は犯罪者予防更生法に関する改正の規定でございます。第三十三条第一項の改正は、第三十三条は犯罪者予防更生法によつて、保護観察を行う対象者を掲げておるのでございまして、すなわち一号から四号までございまして、第一号が家庭裁判所から保護観察の決定を受けた少年、第二号が仮退院中の少年、第三号が仮出獄中の者、そして第四号といたしまして、十八歳未満で懲役または禁錮の執行猶予の言い渡しを受けた者、こういうふうに相なつておつたのでございます。それを今回は刑法及び刑事訴訟法等の改正に応じまして、刑法第二十五条ノ二第一項、すなわち執行猶予により保護観察に付された者、こういうのをここに掲げまして、その法律によつて保護観察を行う趣旨を明らかにいたしたのでございます。
次に第四十一条は呼出しまたは引致に関する規定でございます。すなわち現在の保護観察所が、家庭裁判所の保護処分になつた少年、あるいは仮退院中の少年、あるいは仮出獄中の者、あるいは現行法によれば、十八歳未満の執行猶予中の者を集めて保護観察を行い、保護観察の必要上あるいは呼び出しを行い、呼び出しに応じない、しかも遵守事項違反の疑いがあるという場合に引致ができる。その引致の手続は、あらかじめ裁判官の交付した引致状によつて引致ができる、こういうふうに四十一条は規定いたしております。その中に、現在ではその引致のできるものは地方委員会、すなわち全国に高等裁判所ごとに八つの地方委員会がございまして、これが受刑中の者についての仮出獄、あるいは少年院の仮退院等を決定し、そして保護観察を行つておつたのでございますが、従来はこの地方委員会だけが引致をなし得るようにいたしておつたのを、今回の改正によりまして、保護観察所の長が執行猶予のものについて保護観察に付せられた場合、保護観察をいたすということになりましたので、地方委員会と並んで保護観察所の長が裁判所の発する引致状によつて引致がなし得るというように改正いたしたのでございます。
第四十五条の改正は、非常に条文の表現が複雑になつて御理解を願うのにたいへん不便だと存じますが、現在の四十五条は、仮出獄中の者、または仮退院中の者が成績が不良であつて、仮出獄を取消す、あるいは少年院から仮退院になつた者をもう一度少年院にもどして収容する必要があるという場合に、身柄を留置する必要のある場合がございます。さような場合に、留置をなし得るような規定を四十五条がいたしておつたのでございます。今回執行猶予中の者について、遵守事項違反による取消しというものを認めようとするものであります。従来の執行猶予の場合は、確定判決を受け、ほとんど全部が刑務所に第二の刑によつて入つておる場合に、執行猶予の取消しということが問題になつておりまして、身柄をとめ置くという必要の場合がなかつたのでございますが、今回の改正案では、遵守事項違反によつて取消すという場合がございますので、さような場合には身柄を拘束する必要が考えられます。さような関係から、現在他の事由によつて保護観察中の者について身柄を拘束する必要のある場合、この四十五条の規定によつて留置いたしておつたのでございますが、その規定を改正して、今回新たに執行猶予なり保護観察に付された者について、身柄を拘束する場合に、この四十五条を改正して、その場合をまかなおうとする趣旨でございます。従来の四十五条の要旨は、仮退院または仮出獄中で、社会において保護観察を受けておつた者が、遵守しなければならない事項を遵守しない、しかも相当重要な違反があるという場合に、場合によつては少年院にもどし収容するか、あるいは仮出獄を取消すことを考慮しなければならないという場合には、地方委員会は十日間留置ができることになつておる。さらに仮出獄の場合は十日でよろしいのでございますが、もどし収容は、家庭裁判所に申請をいたしまして、家庭裁判所が審理の上、さらにもどし収容を決定する、こういう手続になつておりますのでもどし収容の場合に限つて、二十日を越えない範囲で留置ができることに相なつておつたのでございます。今回執行猶予中に、遵守事項違反で取消すという場合は、このもどし収容と同様に考えまして、一応二十日だけ留置ができる。観察所側で検察官に取消しの請求の申出をするかしないかということを、事情を調査し、審理するために十日、さらに裁判所がそれについて決定のため十日までというふうにいたしたのでございます。また本人の請求があつて口頭弁論を経るというためには、若干日数を要することが考慮されますので、さような場合にはさらに十日間留置が継続できる。もちろん裁判所の決定でさようになるのでございますが、そういうふうにいたしたのでございます。さらに刑事訴訟法三百四十九条の二の末項において、裁判所の執行猶予の言い渡し取消しの決定に対して、即時抗告を認めておりますので、さような場合をまかなうために、その裁判所の決定が抗告され、抗告裁判所の決定があるまでは、留置ができる、こういうふうに第五項を改めたのでございます。しかしながら抗告裁判所の決定まで留置ができるという場合は、当初の裁判所の決定が被告人に不利益であつて、取消すという決定があつて本人が抗告したという場合には、その抗告裁判所の決定があつて確定するまで留置ができるというということにいたしたのでございますが、同時に取消さないという決定をした場合に、検察庁側から抗告したという場合には、留置ができないこういうふうにいたす趣旨で、第五項において、第三項の決定が刑の執行猶予の言い渡しを取消すものであるときは、その決定が確定するまで継続して留置することができる、かようにいたしたのでございます。四十五条の説明は非常にややこしくて申訳ないと存じております。
次に四十六条の改正は、これは先ほど申し上げましたように、遵守事項違反による取消しを観察所から検察庁に申し出る場合に、書面によらなければならないという規定でございます。
次に第四条は、更生緊急保護法の一部を改正するものでございます。更生緊急保護法は満期で刑務所を出た人、あるいは執行猶予等によつて刑務所を出た人が、ほんとうに行く先がないというような場合に、本人の申出によつて国が保護を加える、その保護に関する法律でございますが、今回の改正法案によりまして、執行猶予になつて保護観察に付された場合には、国が保護観察の内容として保護と指導を加えますが、保護観察に付せられなかつた場合には、野放しといいますか、そのまま社会に帰される。そうしてその場合に、本人がほんとうに行くところがないというような場合も考えられますので、さような場合に、更生緊急保護法をかように改正いたしまして、本人の申出によつて保護をなし得るようにしようとするものでございます。
次に附則でございますが、附則の第一項は施行期日に関するものでございます。
第二項は、前に申し上げました第一回目の保護観察は、改正法律施行前に及ばない、こういう規定でございます。但し、その施行前の犯罪とその法律施行後の犯罪が、併合罪である場合には適用がある、こういうふうにいたしております。
次に第三項は、この法律施行の際に、犯罪者予防更生法第三十三条第一項第四号の規定によつて、保護観察に付せられておつた者は、従来通り保護観察に付するという規定であります。すなわち従来十八歳未満で禁錮以上の刑に処せられ、刑の執行を猶予せられた者は、この三十三条第一項第四号の規定によりまして、保護観察に付せられておつたのでございました。その者は従来通り保護観察に付せられる、こういう規定でございます。ただこの中で、刑法第二十五条の二という文字を入れておらないのでございまして、その趣旨は、二度目の執行猶予が不可能であるという場合には、刑法第二十五条の二の規定による保護観察でございまして、この場合は、刑法第二十五条の二による保護観察は、従来の規定によつて保護観察をするだけでございますから、従来この法律改正前に、十八歳未満で執行猶予になつて保護観察になつておる者は、この法律施行後犯罪を犯しても、再び執行猶予に付し得る、こういう解釈に相なるものと考えております。はなはだ説明があちこちいたしまして恐縮に存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/2
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003・小林錡
○小林委員長 これにて説明は終りました。
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004・小林錡
○小林委員長 次に刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします、本案の内容について説明を聴取いたします。岡原政府委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/4
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005・岡原昌男
○岡原政府委員 今回御審議を煩わすことになりました刑事訴訟法中の一部を改正する法律案につきましては、先般そのおもだつた提案理由の際に御説明いたしたのでございますが、さらに逐条的に重要な点だけを中心にお話いたしたいと思います。なお全文六十数箇条にわたりまして、中には技術的にたいへん細かい面もございますが、政治的に大した意味もないような簡単な条文がございますので、そういうものは除きまして申し上げます。なお御審議の便宜にと思いましてお手元にこの法案の逐条解説書をお配りいたしてございますが、これを基本にいたしまして順次申し上げたいと思います。
最初は第六十条関係でございます。六十条二項但書中の改正は、後に八十九条の関係で御説明申し上げたいと思いますが、要するに勾留期間更新制限の除外事由についての若干の改正をしよう、こういうような趣旨でございます。後に細かいところは八十九条で触れて参ります。
次は二ページの七十一条、第三ページの七十二条、第四ページの七十三条、これはいずれも勾引状、勾留状等の執行手続等に関するものでございまして、これも技術的に従来非常に不便であつた点並びに立法上のミスとされておつた点を修正したにとどまるのでございます。
第四ページの末行に八十三条、それから引続きまして八十四条、五条、六条中の改正がございますが、これはいわゆる、勾留理由開示手続の改正でございます。その主要なる点は、勾留理由の開示の際における意見の陳述というものを書面によらしめるということに改正しようという点でございます。現行法では御承知の通り、被告人、弁護人及びこれらの者以外の開示の請求者には、勾留理由開示の法廷で、口頭で意見を述べる権利が与えられているのでございます。ところが運用の実際においてこれを見ますと、口頭による意見の陳述の権利がいわゆる。法廷闘争の具に供せられているこのために法廷が極度に混乱して、刑事手続の円滑な運用が阻害されているという実情にかんがみまして、今回権利としては書面でこれを提出するというような改正をいたしたわけでございます。いわゆる勾留理由開示の手続の根拠といたしましては憲法第三十四条との関係がいろいろ問題にはされておりますが、その憲法問題には触れずにとりあえず問題の重点だけを直そうというのでございます。
第六ページの(四)のところに、勾留理由開示の機会に関係者に意見陳述の機会を与えることはそれ自体は憲法の要請ではない。それは条文にきわめて簡単に書いてあるのでございます。従つてこれは憲法では当然その陳述の機会を与えなければならぬ、かようにはならぬわけでございます。憲法三十四条に不法拘禁に対する保障の規定があります。「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留、又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、」ここからですが「要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」これだけにとどまつているのでございます。従つて今回の改正は憲法の趣旨にはちつとも反しておらない、かようなことでございます。
次は八十九条の第一号中の改正その他若干の改正でございます。この八十九条はいわゆる権利保釈の除外事由を規定したものでございます。現行法は第一号から第五号までございまして、この要件に該当するものについては保釈の請求があつた場合には許さなければならない。いわゆる権利保釈と申されているのでごいます。ところが運用の実際についてこれを見ましたところが、たとえば第一号の「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮にあたる罪」を犯した者以外は権利保釈があるということですが、そうするとたとえば強盗、強姦、営利誘拐、人身売買というような重い犯罪が権利保釈になつてしまう。また保釈中に類似の犯罪を敢行するという事例が多々ございます。そんな点にかんがみまして今般八十九条を全般的に再検討したのでございます。それで改正の第一号の点はただいま申した通りでございますが、そのほかに第五号のものは被告人の「氏名及び住居」がわからないとき、これは「及び」ということで氏名もわからなけば住居もわからないという場合だけを除いているのでございますが、これはたいへんおかしな話で、少くとも氏名または住居といふことでなければ結局公判の審理を不必要に無効にしてしまうということがわかりましたので、この際これを「又は」ということに改正しました。
次はこの条文の中に二号を入れまして、一つは「被告人が多衆共同して罪を犯したものであるとき。」いわゆる多衆犯罪。それから六号として「被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる充分な理由があるとき。」いわゆる恐喝等でお礼まわりをする恐喝事件になりました際に、その被害者のところに、おかげさまで身柄が留置されましたがやつと出て参りましたというようないやみを言つて、あとで証人として出る際に真相を吐露すると何か逆にやられるというようないやがらせをやる場合が非常に多いのでございます。これらが当然保釈になるというのはいかがなものであろうかというので権利保釈の除外事由に加える、こういうような趣旨でございます。これは八十九条の改正にさらに、先ほどのちよつともどりますが六十条第二項の但書の際、いわゆる勾留期間更新制限の除外事由にこれを加える。これは事の性質上当然であろうというので加えたものでございます。
九ページの(三)のところに、なお権利保釈の除外事由といたしましても、裁量保釈を否定する趣旨ではない。つまり当然保釈になる権利があることでなくても裁判所の裁量で保釈することはできるわけでございます。現に保釈人員のうち簡易裁判所では二二%前後、地方裁判所では三一%前後が裁量保釈で現在も運行されているのでございます。
次は九ページの九十二条関係。これは勾留取消しの決定の際に、急速を要する場合以外は検事の意見を聞くという規定でございます。これは勾留執行停止の際あるいは保釈の許否に関する決定の際、現在検察官の意見を聞くという規定と平仄を合せたものでありまして、従来これはどうもおかしいと言われておつた規定であります。この際これの平氏を合せたというにとどまるものであります。
次は十ページの九十六条関係でございます。これは保釈または勾留の執行停止を取消す場合の規定であります。従来九十六条はだらだらと書きつばなしにしてありまして、非常に読みにくいというので、これを「二、三、四、五と五号までにわけると同時に、その際取消しの一つの原因として、検察官の請求によつてやる場合、または職権でやる場合があるということを明らかにしたのであります。従来は「検察官の請求により、」というところがなかつたわけであります。一号、二号はそのままでございますが、三号は「被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」これは従来「罪証を隠滅し」という文字がございませんでした。しかしこれは前項の「被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」とまつたく同じであろうというので、すでに罪証を隠滅するようなものは取消さなければならぬというふうな趣旨で前号と合せたものであります。四号は先ほど申しましたいわゆるお礼まわりというものを現実に出てやつた場合、保釈して現にやつた場合、これを取消し事由に加える、かような趣旨でございます。
次は十二ページに移りまして、九十八条に次の二項を加える。これは保釈取消しの際の収監の手続に関する規定でございます。御承知の通り現行法におきましては、「保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定があつたとき、又は勾留の執行停止の期間が満了したときは、検察事務官、司法警察職員又は監獄官吏は、検察官の指揮により、勾留状の謄本及び保釈若しくは勾留の執行停止を取り消す決定の謄本又は期間を指定した勾留停止の決定の謄本を被告人に示してこれを収監しなければならない。」かような規定になつおりまして、その謄本を持つておらなければ収監の手続ができません。しかるにすでに現実に保釈の取消しがあつたことが明らかであります場合には、いわゆる緊急の手続といたしまして、本人にこれを告げて入れるということは、通常逮捕による逮捕、これは二百一条の第二項にありますし、勾引状もしくは勾留状の執行、七十三条の三項にも類似の規定がありますが、それとまつたく同じではないかというのでそれと考え方を一致させたものであります。
次は十三ページの終りの方に百五十三条の二というのがございます。これは証人に対しまして勾引状が出て、これを護送する場合の留置の規定でございます。御承知の通り現在の刑事訴訟法におきましては、証人を護送する場合においては、もよりのどこかに留置する規定がございません。被告人の場合はございますが、証人の場合はございません。そこで実際にどうなるかと申しますと、たとえば汽車の都合で、午前十時の開廷に間に合わすということになると、真夜中に向うを立つて、ちようど九時ごろに東京に着くようにするというようなことになりまして、これは証人の人権を尊重するゆえんでない場合が多いのであります。実際かような不便な点を多々経験いたしました結果、さような場合には本人の便宜の点もおもんばかりまして、もよりの適当の場所にこれを留置する。もとより勾引状が出ておりますから、野放しにはできないのであります。たとえば、警察署の保護室だとかあるいは適当の場所を選んで、見張りのできる程度において本人に休んでもらうという趣旨であります。被告人の場合と違つて――被告人でございますと、もよりの監獄ということになるのでありますが、監獄は妥当ではないというふうなことで、「適当な場所」ということにいたしたのであります。
次は百六十四条、十四ページの終りの方でございますが、これに次の一項を加える。これは従来証人に対して費用の前払いができるかできないかということが若干問題になつておりました。これは現行法の建前では、会計法第二十二条、それから予算決算及び会計令第五十八条に関係の規定がございまして、これによつて前払いの支給ができるとわれわれは解釈しおりますが、ところによつて取扱いがまちまちであります。そこで「あらかじめ」云々「支給を受けた」というような表現をもつて、それは当然のことであるというふうにいたしました。ただその前払いを受けた場合に、「正当な理由がなく、出頭せず又は宣誓若しくは証言を拒んだときは、」これを返さなければいかぬということの明文を置いたわけであります。この費用の返納というのは会計法上の返納でございまして、別に裁判その他の手続はいらない、かような趣旨であります。
次は十五ページの百六十七条二項、十六ページの百六十七条の一項の追加、十七ページの百六十七条の二、これら一連の改正でございます。御承知の通り、精神鑑定等、長期にわたつて身柄を拘束して鑑定をしなければいかぬという場合が出て参ります。その際に現行法では「被告人の心神又は身体に関する鑑定をさせるについて必要があるときは、裁判所は、期間を定め、病院その他の相当な場所に被告人を留置することができる。」「前項の留置は、置状を発してこれをしなければならない。」「勾留に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、第一項の留置についてこれを準用する。」云々と規定するにとどまりまして、とかく実際の運用上問題が出て参りました。それらを解決すべく、これらの改正をいたした趣旨でございます。その一つは、十六ページの括弧の二のどころにございます戒護の関係でございます。病院に入れておきまして、さてこれをどういうふうに見張つて自殺、逃亡等を予防したらよかろうかというようなことにつきまして、現在は別に規定がございませんので、実は裁判所も困り、病院側も困つておるというような実情でございます。そこで被告人を入れておる病院その他の場所の管理者の申出によつて、あるいは裁判所の職権で司法警察職員に身柄の監視を命ずることができる。かようなことを明らかにしたのでございます。
次にその鑑定留置の期間でございますが、これも勾留の規定をただ準用するだけではすこぶるはつきりしませんので、「裁判所は、必要があるときは、その期間を延長し又は短縮することができる。」お医者さんの都合で、鑑定の期間が短かくて済んだという場合には、当然もうすぐ鑑定留置をやめにする、あるいはもう一週間かかるという場合にはこれを延長する。かようなことが裁判所の判断でできることにいたしたものでございます。
次に百六十七条の二の関係でございますが、先ほど申した通り、鑑定留置に関する現行法の不備が、いわゆる勾留中の被告人について鑑定留置があつた場合これが非常に問題になつたわけでございます。つまり身柄の拘束が観念上二重にあるようなことになつて参るのでございます。これを一体どういうふうに取扱うべきかというので、実務上いろいろ疑義が生じまして、大体この期間は勾留の執行を停止したものかように見ておるのでございますが、この点を明文上明らかにするのがこの趣旨でございます。
百八十一条第一項の但書は、現在の百八十一条におきましては「刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。」ということになりまして、全部または一部を必ず負担させなければならない、かようになつておるのでございます。それでは被告人が貧困のため訴訟費用を納付することができない場合にはどうするかと申しますと、これは現行法の五百条に訴訟費用免除の手続が規定してございます。これはあとから出て参りますが刑の言い渡しが確定した後において、被告人の方から申立てをすれば免除される場合がある、かような規定でございますが、言い渡し当時からすでに払えないことが予見される、当然わかるというふうな場合に何も確定してから十日以内にその手続きをさせるという必要はなかろう、初めから免除していいのではないかというのがこの考え方でございまして、貧困のために訴訟費用等の納付ができないことが初めから明らかである場合には、これは負担を命じないということでございます。
次は十九ページの末行に百八十四条の関係がございます。これ訴訟費用の負担に関する従来の法の不備、いわゆる正式裁判を申し立てた場合の費用負担についての規定がございませんでした。これは理論的におかしいので、この不備をここで直した、かような趣旨でございます。
次は二十ページの百九十三条第一項後段の改正でございますが、「この場合における指示は、捜査を適正にし、その他公訴の遂行を全うするために必要な事項に関する一般的な準則を定めることによつて行うものとする。」かように百九十三条第一項後段を改めようとするものでございます。これは百九十三条の前段におきまして、いわゆる検察官の一般的指示権というものを明らかにしてございます。現行法によりますと、百九十三条は「検察官は、その管轄区により、司法警察職員に対し、その捜査に関し、必要な一般的指示をすることができる。この場合における一般的指示は、公訴を実行するため必要な犯罪捜査の重要な事項に関する準則を定めるものに限られる。」この別段はそのままにしておくわけでございます。つまり検察官は、その管轄区域内で、その捜査に関する必要な一般出指示をすることができるという前段はそのままにしておきまして、ただ後快の従来やや語義不明であるといわれ、おる点を明らかならしめようとするにとどまるものでございます。この現打法の「一般的指示は、公訴を実行するため必要な犯罪捜査の重要な事項に関する準則」というふうな言葉を使つてありますために、中には捜査と公訴というものを概念的に区別いたしまし、それで捜査は司法警察職員、公訴か検察官というふうに観念的にわける向きもありまして、その結果司法警察職員の捜査が適正に行われるように検察官が指示をするということは本条の範囲外であるというふうな疑問が提起されております。しかし考えまするに、この捜査と公訴というものは、密接不可分の関係にあるものでございまして捜査が適正に行われて、初めて公訴が適正に行われるということになるのでございますから、本条の改正によつてこの一般的指示権の及ぶ範囲を明確にいたし、捜査の適正ひいては公訴の適正を期そうとするものでございます。この点についてはいろいろと議論があるようでございますが、いずれ御質疑等に応じましてさらにお答えいたしたいと存じます。
次は二十一ページの百九十八条第二項中のいわゆる供述拒否権告知の制度に関する改正でございます。現行法の百九十八条の第一項には、捜査官の捜査をする云々の規定がございまして、第二項には「前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、供述を拒むことができる旨を告げなければならない。」かようになつておるのであります。ところであらかじめ供述を拒むことができる旨を告げるという制度の運用の実績を見ますると、被疑者たちは犯罪事実の内容、そのものの供述をしないのはともかく、犯罪事実と全然関係ない氏名、住居、年齢等のいわゆる人別事項、人定事項の供述すら拒否しておる、結局何も一言も発しない、これを一種の独立した権利であるかのように考える風潮がかなり広まつておるのでございます。これは決して正しい傾向ではないと考えますので、この風潮をこの条文でただちに直すということはもちろんできないことでございますが、少くとも告知の内容について、憲法第三十八条の一項の規定と同じ程度に告げればいいということにいたしたいのでございます。憲法第三十八条第一項におきましては「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」かようにあるのみでございます。つまり無理に言わされるものではない、憲法にこういう規定があるので、そのことを取調べに先だちまして本人に告げる、かようなことになりますれば、一方において権利としてあるのではないということが、言葉の上からうすぼんやりとわかつて来るでありましよう。また何よりも捜査機関が、お前は供述拒否権があるのだ、何もしやべらなくてもいいのだという、舌の根のかわかぬ先から、ときに聞くがといつて、まるでしやベらぬでもいい、ときに聞くがというような、何か矛盾したことを前後に言つておるようで、非常に心理的な矛盾を感ずる、そういう矛盾もなくなるだろう、そういうふうな趣旨も入れまして、この程度に告げることにいたしたわけでございます。もつともこの改正をいたしたからといつて、被疑者の立場というものは法律上はちつともかわつて来ないわけでございます。のみならず憲法上保障されておる地位というものは、もとより微動だにしないものでございます。何も答えないからといつて特に不利益が来る、かような趣旨ではございません。
なお関連して申し上げますと、二十二ページの(四)でございますが、被告人に対する刑事訴訟法第二百九十一条第二項の黙秘権告知の規定には手を触れておりません。
次は百九十九条第二項の改正でございます。二十三ページの三行にございますが「司法警察員は、第一項の逮捕状を請求するには、検察官の同意を得なければならない。但し、」云々とございます。これはいわゆる通常逮捕状の請求の際に、司法警察員が検事の同意を得て初めて手続ができるということを明らかにしようとするものでございます。この現行法で身柄を拘束する場合は三つございます。一つは現行犯の逮捕、二百十三条関係、一つは緊急逮捕二百十条関係、残る一つは通常逮捕百九十九条関係でございます。現行犯逮捕並びに緊急逮捕の点にはとりあえず触れません。百九十九条のいわゆる通常逮捕の際だけかような慎重な手続をしよう、かような趣旨でございます。現行法の建前は御承知の通り直接裁判官に対して司法警察員から逮捕状の請求をすることができることになつております。運用の実際においてはある地方によつては、これを検察官に話をし、あるいは連絡して了解を得ておる、あるいは全然連絡もないという区区にわかれております。しかるに一方逮捕状の濫用の非難がきわめて高いのでございまして、今回この逮捕状請求の手続の際には、原則として事前に検察官の同意を要することといたしたわけでございます。
二十四ページの(三)に移ります。今度の改正で検察官事務取扱いの検察事務官は、これから除外いたしております。この制度は検察官が足りないために、やむを得ずに検察官の事務の一部を検察事務官にやらしておるということでございますが、かような逮捕状の執行という重大な人身拘束に関しては、検察事務官に判断させるのは妥当ではないという趣旨からいたしまして、検察官の同意を得なければならない、かようにしたのでございます。しかるに一方においては在野法曹からは、副検事もこの同意から除いてくれというお話もございますが一現在の定員配置の関係その他から申しますと、副検事まで除外いたしますと、運用上ほとんど困難になつて参りますので、一方において副検事の質的向上をはかると同時に、とりあえずはこの副検事に同意を与える権限を与えよう、かような趣旨でございます。(四)の検察官があらかじめ一般的に同意を与えた事件を除くといたしましたのは、ただいま申した通り事件についてすべて全部同意を与えるということにいたしますと、これはかなり検察官の負担が過重になつて参ります。結局それが高じまして、盲判になつては困る、この際ほんとうに目を通す必要のあるような事件、そのような事件について、一般的にあらかじめ同意を与えておく、たとえば大体予想されるのでありますが、簡単な窃盗の事件、賭博の事件というふうな通常の刑法事件などがそれであろうと思います。これに反しましてたとえば公職選挙法違反の事件、あるいは贈収賄の事件、あるいは破防法の事件あるいは告訴事件等につきましては、通常個々に同意を要する、つまりこの但書ではずさないということになろうかと存じます。検察官が一般的に同意を与えた事件は、裁判所に通知が参つて、裁判所はそれによつて、この事件は同意を要するのだな、これはいらないということがわかるようになります。裁判所はその請求手続に法令の違反があるものとして、この同意がないものについては、これをはねるということになるだろうと思います。これが第三項に今度入る規定の趣旨でございます。
次は、二百八条の二の関係でございます。二十五ページの四行目、「裁判官は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる事件につき、犯罪の証明に欠くことのできない共犯その他の関係人又は証拠物が多数であるため検察官が前条の期間内にその取調を終ることができないと認めるときは、その取調が被疑者の釈放後では甚しく困難になると認められる場合に限り、検察官の請求により、同条第二項の規定により延長された期間を更に延長することができる。この期間の延長は、通じて五日を超えることができない。」これは御承知の通り現行法二百八条におきましては、検事の勾留期間は最初十日、あとでまた十日で切れるわけでございます。しかるに非常に特殊な重大な事犯でございまして、二十日たつても起訴、不起訴の資料が十分に完備しない、いずれと判断していいものかわからない、これをこのまま身柄を放つとあるいは、証拠隠滅あるいは逃亡等のことにもなろうし、あるいはこのままの程度で、この程度で大体よろしかろうというので、起訴いたしますと、後日それが取調べ不十分というので、結局人権尊重に欠くるところができる、さようなところもあろうかと思いまして、さような点を種々考慮いたしました結果、何分にもかような身柄の拘束というものは重大問題でございますので、いろいろな条件をしぼることによつて、この調和をとろう、かようなことで、まずこの再延長の条件といたしましては、二十六ページの(三)以下にあるのでございますが、事件の種類によつて制限いたしてございます。すなわち死刑または無期もしくは長期三年以上の刑か、あ合いは禁錮にあたる罪の事件につき、捜査をする場合でなければならない、こいうことでございます。次に(四)では、場合を具体的に限定いたしております。第一には、犯罪の証明に欠くことのできない共犯その他の関係人または証拠物が多数であること、第二には、そのために検察官の起訴前の勾留期間が二十日でもなお調べが完了しないということ、第三に、身柄を釈放したのではその後の取調べが困難になるというふうな、すべての要件が満足されなければならない、かような場合でございます。
次は二十八ページ(一〇)のところの、通じて五日でございますが、小刻みの延長はできる、しかし五日以上はできない、かような趣旨ですから、最初から計算いたしますと、二十五日、かようになるわけでございます。最大限二十五日の間に調べをしなければいけない、かようなことでございます。
次は二百十九条の二、これは押収捜索等をなす場合に、その場所に臨んでその物件を探したところが、その該当の場所にはないけれども、たとえば隣の家に持つて行つてちようど隠したところで隠す最中のことがよくわかつた、はつきりしておる、ところが場所が違うので、それに手がつかぬという場合があるわけでございます。かような場合に、何か証拠物の保全をするような手はないだろうか、どうせ証拠物は特定いたしております。ですからそれを令状をもらい直せば、もちろん差押えができるのでございますが、令状をもらい直すために裁判所にかけつける間に、さらに他の場所に持つて行つてわからなくなつてしまうということもあろうかというので、かりにこれをその場所において看守するというふうな手続を新たに設けようとするものでございます。すなわち「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、令状に差し押えるべき物の所在すべき場所が記載されており、且つ、その場所においてこれを発見することができない場合において、その物の所在する場所が明らかとなつたときは、急速を要する場合に限り、処分を受けるべき者にその事由及び被疑事件を告げてその場所を看守することができる。」かような趣旨に直そうということでございます。
次は、三十ページの二百二十四条の規定でございます。これは先ほど申しました百六十七条の鑑定留置の関係で規定が新設修正されておりますので、それに伴いまして二百二十四条の捜査機関の鑑定漏れの際の鑑定留置の規定が、すべてその際に準用になつて来る、かようなことを明らかにしたにとどまるのであります。
次は、三十一ページの二百五十四条の関係でございます。現行法の二百五十四条は公訴の提起と時効の停止との関係を規定いたしております。つまり「時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。但し、第二百七十一条第二項の規定により」これは起訴状謄本の不送達の場合の規定でございます。この規定によつて「公訴の提起がその効力を失つたときは、この限りでない」かようなことに書いてございます。ところでこの但書を削ろうというのは、二百七十一条第二項の規定によつて、起訴状謄本不送達の場合の新たな改正を今度いたしたわけでございまして、その趣旨でいらなくなる、つまり二百七十一条第二項の場合には、今度の法律案の第三百三十九条の関係で触れて参りますが、裁判所の決定で公訴を棄却すべきものとはつきりいたさせました。従つてこの但書はいくらなくなる、かような趣旨でございます。
次は二百五十五条中の改正でございます。これは「起訴状の謄本の送達」の下に「若しくは略式命令の告知」ということを入れようという趣旨でございます。現行法の二百五十五条はいわゆる時効の停止の場合の規定でございますが、「犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達ができなかつた場合には、時効は、その国外にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止する。」となつております。略式命令の手続につきましてはあとで触れて参りますけれども、略式命令の告知というものをもつて外部的に力を持たせる基準といたしまして、それから四箇月の間に見つからなければそれきりということになりますので、それと合せて二百五十五条を直して参るという趣旨でございます。
次は二百八十六条の二の関係でございますが、「被告人が出頭しなければ開廷することができない場合において、勾留されている被告人が、公判期日に召喚を受け、正当な理由がなく出頭を拒否し、監獄官吏による引致を著しく困難にしたときは、裁判所は、被告人が出頭しないでも、その期日の公判手続を行うことができる。」という条文を追加しようとするものでございます。これは最近特殊な集団事件、ことにメーデー事件等におきまして、裁判所の定めた審理方式に反対する被告人たちが、期日になりますと、監獄官吏に対して、たとえばぶつ、ける、なぐるというような乱暴をしたり、あるいは裸になつて監房の中に横たわる、裁判所に出廷させようと思つてもこれに応じないというようなことで、結局その期日の公判手続ができなくなる場合がしばしばあつたのであります。それでさようなことでは審理がいつまでもできませんし、また一人でも被告人が不出頭のまま残りの者について裁判を進行させるということになると、たとえば証拠調べにおいて、その本人につきもう一回初めからやり直さなければならないということになりまして、これはたいへん不便なことでございます。一人でも出廷いたさないと、証拠調べ等がいつまでたつても完了しないというようなことにもなろうと思いますので、少くともその期日の公判手続は、本人の不出頭のままでもできる、証拠調べの結果等は本人にも及ぶ、かようなことでこの間の調和をはかろうというのでありまして、これはその日限りのことで、その次の日に黙つて出て来ればそれはそれでよいわけであります。ただ一回だだをこねたからといつて、あとあとまで不出頭のままでよろしいという趣旨のものではないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/5
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006・小林錡
○小林委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時より再開し、両案に対する政府の説明を続行し、さらに両案に対する質疑を行うことといたします。
これにて休憩いたします。
午後零時十五分休憩
――――◇―――――
午後二時四十四分開議小林委員長
休憩前に引続き会議を開きます。
刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際お諮りいたします。刑事訴訟法の一部を改正する法律案につきましては、広く各界の意見を聴取するため参考人を招致することにいたしたいと思いますが、御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/6
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007・小林錡
○小林委員長 御異議なしと認めさよう決定いたします。
なお参考人の人選、その招致の日時につきましては、本日午前中に一応理事会でお諮りをいたしたのでありますか、委員長に御一任願うこととし、委員各位の御意見、御希望は各派の理事と通じて御申出を願うことにいたしたいと存じますが、御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/7
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008・小林錡
○小林委員長 御異議なしと認めさようとりはからうことにいたします。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/8
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009・小林錡
○小林委員長 それでは午前中に引続き政府より本案の内容説明を聴取することにいたします。岡原政府委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/9
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010・岡原昌男
○岡原政府委員 午前中に二百八十六条の二までの御説明をいたしましたので、午後は簡易公判手続に関する二百九十一条の二以降の御説明をいたします。
簡易公判手続につきましては、いわゆる英米法のアレインメントという制度がございます。これは非常に簡略な手続でありまして、自白いたしまするとただちに有罪の判決ができるような程度に簡単なものでございます。しかしながら日本においてさような制度を採用するということは、非常に憲法上も問題がありますので、わが国の憲法においてどの程度まで公判手続が簡易化され得るであろうかという点を考慮に入れつつ立案したものでございます。御承知の通り現在裁判官の手不足によりまして、簡単な事件でありましても審理が長引いたり、事件の核心をなかなかつかめないというふうなこともございまするが、今度はこの簡易公判手続を採用することによつて、被告人たちに異存のない事件については、これを比較的に簡単な手続で処理し、割合に問題のある大きな事件に念を入れてこれを調べて行こう、かような趣旨からこれが立案されたものでございます。
次に簡易公判手続がどういう点に特徴があるかということを先ほどの解説書の三十六ページを元にして御説明いたします。(二)のところにございますが、この簡易公判手続が一般の手続とどういう点において違うかといいますと、その第一は、伝聞証拠に関する証拠能力が緩和されておる点でございます。つまり三百二十条にございます伝聞法則の制限が一部緩和されておるという点が一つでございます。第二は、証拠調べの手続を簡略にしたことでございます。御承知の通り証拠調べには非常に厳密な順序、方法、方式等がございまして、その順序で事を処理しなければいかぬのでございますが、しかしながら有罪答弁のありました事件については、裁判所が適当と思われる方法によつて調べをしてよろしい。これによつて時間の節約も出て参るわけでございます。
次に有罪の陳述があつた事件について簡易な公判手続を行うことになりますと、ひよつとすると間違つた裁判をしやしないかということが問題になるわけでございます。そこでその点についての配慮といたしまして、三十七ページの目のところに、二、三とあるのでございますが、その第一は、被告人が有罪である旨を陳述いたしましても、ただちに簡易公判手続に移るので汁ないのでありまして、あらかじめ検察官及び弁護人、被告人の意見を聞きまして、その陳述が被告人の真意に合するものである、虚偽の陳述ではないということを十分に検討した上で初めてこの手続に移る決定をするわけでございます。従つて一人でもいやだと言えば一般の普通の手続によるわけでございます。
第二に、このように慎重な手続をとつて決定をいたしましても、その後だんだん調べて行つたところが、どうも事案が相当複雑である。被告人が簡単に自白したといつても、これはうのみにはできぬのじやないかというような場合には、その決定を取消しまして手続を更新し、普通の手続に直す、かようなことになるわけでございます。
次に第三には、いわゆる重要な事件につきましては初めから簡易公判手続にはより得ないということにいたしまして、さようなものについては一般の手続に従つてやる、かような点がそれぞれ保障されているわけでございます。
最後に、簡易公判手続によつて審判する事件においても、一般の公判手続による場合と同様に、公判廷で刑の量定に関する証拠調べはもちろんやるのでありまして、また簡易公判手続によつて審判を受けた後においても、一般の場合と同様に事実誤認を理由として控訴の申立てができるようになつているわけであります。
条文を申しますと、三十八ページに第二百九十一条の二とございますが、「被告人が、前条第二項の手続に際し、起訴状に記載された訴因について有罪である旨を陳述したときは、裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、有罪である旨の陳述のあつた訴因に限り、簡易公判手続によつて審判をする旨の決定をすることができる。但し、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮にあたる事件については、この限りでない。」、つまり二百九十一条第二項の冒頭の手続に際しまして、起訴状に記載された訴因について被告人が有罪であることを陳述いたします。そうしますと、さらに検察官及び被告人、弁護人の意見を聞きまして、その訴因だけについて簡易公判に移す決定をするわけでございます。その際に異存があればもちろん移れません。それから死刑または無期もしくは短期一年以上の懲役もしくは禁錮に当る事件、比較的重い、いわゆる重罪事件につきましてはこの手続によらない、かようなわけであります。要するに、審判の当初からまつたく一点の疑いもないといつたような事件に限定しようというわけでございます。
なお四十ページの(二)のところに「起訴状に記載された訴因」とあります。これは起訴状に記載された訴因はもちろんのこと、被告人が冒頭陳述を行う機会までに文書まだは口頭で変更された訴因も含むという趣旨でございます。つまりそれまでに提起された訴因につきまして、そのことが論ぜられるというわけでございます。
その際に(三)でございますが、「被告人……有罪である旨を陳述したとき」有罪であるという陳述は被告人でなければこれを行うことができない。もちろん法人の場合はその代表者ということになろうかと思うのであります。もし被告人の出頭を要しない場合は、被告人が冒頭陳述の機会に出頭しなかつたときには簡易公判手続によることはできないことになるわけであります。
次に(四)で、共同被告人がある場合にはどうなるか。この場合には被告人ごとに簡易公判手続による旨の決定ということになるわけであります。つまり甲という者と乙という者が共犯である。甲が簡易公判によることを承諾したという場合には、甲だけを簡易公判にいたすことになるのでございます。
それから(五)の「有罪である旨の陳述」というのは、単なる事実の告白ではないのでありまして、それと同時に、起訴状に記載された訴因について自己が有罪である、つまり犯罪が成立するのみならず、承服的な条件、たとえば緊急避難とか、違法阻却とかいつたような点について問題がない。結局犯罪が成立して、本人が有罪になるということまで述べることを必要とするわけでございます。
次に(六)でございますが、「検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き」、これは本人たちあるいは検察官に、どうもこの事件は簡単な手続でやつてはあぶない、あるいは本人が、どうも私は一応有罪だとは思いますけれども、調べだけは丁重にやつていただきたいといつたような場合には普通の手続によつて参る、かような趣旨であります。
それから(七)のその訴因に限るというのは、訴因が幾つかあつた場合に、その問題を有罪とした、そして異存のない訴因だけを簡易公判手続に移して、あとは一般の手続によるという趣旨でございます。
但書はもちろん重罪事件のみに限るという趣旨でございます。
それから四十三ページの第二百九十一条の三は、先ほど申しました通り、一旦簡易公判手続の決定がありましても、あとで、どうもそれはできなかつたのだ。たとえば重罪事件が含まれておつた、あるいはこれによることが相当でない、たとえば訴因の変更、追加等があつて、なかなか事件は簡易ではないぞという場合には、何どきでも決定の取消しをすることができるという趣旨でございます。
そしてこの点の証拠調べにつきまして、先ほど申したような順序方法あるいは手続等に簡易な手続を入れるというのは、四十五ページの第三百七条の二でございます。つまり二百九十一条の二の決定があつた事件については、二百九十六条、これは検察官の冒頭陳述の規定、それから二百九十七条、これは証拠調べの点で順序方法を定める手続、それから次の三百条ないし三百二条及び三百四条ないし前条の規定、これは検察官の面前調書の取調べ請求の義務、あるいは自白の取調べ請求の制限、あるいは証拠能力のある書面が捜査記録の一部であるときの証拠調べ請求の方法といつたようなこまかい規定につきまして、その手続を簡素化するという趣旨のものでございます。
それから(四)の「証拠調は、……適当と認める方法でこれを行うことができる」というのは、何でもいいというわけではございませんが、裁判所において、たとえば刑事訴訟規則の第二百三条の二に朗読にかえて要旨を告げるというふうな規則がございますが、そういうふうなことをやつてもいい、あるいは順序その他も変更してもいいというふうに、いろいろと適当と認める方法でやることができるわけでございます。これが三百七条の二の関係でございます。
次は四十七ページの第三百十五条の二、これは簡易公判手続に移す決定の取消された場合の公判手続更新に関する規定であります。これも大して問題はございません。
それから四十九ページの第三百二十条の伝聞証言の関係の次に一項を加えまして、「第二百九十一条の二の決定があつた事件の証拠については、前項の規定は、これを適用しない。但し、検察官、被告人又は弁護人が証拠とすることに異議を述べたものについては、この限りでない。」つまり異議がありますと、普通の証拠能力の関係になりますので、この点も被告人の証拠能力に対する関係がそう著しく阻害されるわけでもない、かような趣旨になつているわけであります。
次は問題がかわりまして五十ページの第三百三十九条第一項中の改正でございます。これは先ほども申し上げました通り、現行法の二百七十一条第二項によりますと、起訴状の謄本が公訴の提起があつた日から二箇月以内に被告人に送達されない場合には公訴の提起はさかのぼつてその效力を失うことになつております。ところが、このさかのぼつてその効力を失うというのは一体どういう法律関係になるのか。裁判を要せずして裁判所の係属を離れるということに普通は考えられておりますが、一体それはいつそういうことがはつきりするのかという点について、実務上たいへん疑義が生じて参つたわけであります。そこでこの点をはつきりさせるために、二百七十一条二項の規定によつて公訴の提起がその効力を失つたときに三百三十九条に現在すでに数項目この公訴棄却決定の場合がございますが、その一に加えまして、公訴棄却をする、これによつて最終的な裁判所の係属を離れる判断をはつきりさせようという趣旨でございます。この関係で二百五十四条一項の但書が削除されたことは、午前中に御説明申し上げた通りであります。
次は三百四十四条中の改正であります。現行法三百四十四条は、禁錮以上の刑に処する判決の宣告のあつた後には、八十九条の権利保釈の規定を適用しない旨の規定がございます。ところが勾留期間の更新の制限については依然として存在するわけであります。そこで六十条の二項、つまり勾留期間更新の制限に関する規定をこれに入れて置きませんと、せつかく判決をいたしましても、この期限の方からはずれて行く。権利保釈にはならぬでも、結局期限の方ではずれて行く。実際の事件を見ておりますと裁判所もあとの審議ができなくて困るというようなことになるのでございます。そこでこの点を六十条二項に入れましてその辺の不便をなくそうというのがこの規定であります。
次は三百四十五条中の改正、これは現行法の三百四十五条におきましては「無罪、免訴、刑の免除、刑の執行猶予、公訴棄却、管轄違、罰金又は科料の判決の宣告があつたときは、勾留状は、その効力を失う。」と規定されておりまして、つまり身柄を離すことになるわけであります。ところが同じ公訴棄却でありましても、手続を是正して再起訴ができるような場合には、これは当然検察官としては起訴するでありましようし、また管轄違い等の場合におきましても、正当に管轄を有するところに移送してこれを処理するというようなことになろうと思います。旧刑事訴訟法にはその間の手当があつたのでありますが、新刑事訴訟法にそれが欠けておりますので非常に不便があつたわけで、その点を是正しようというのがこの改正であります。でありますから、従来公訴棄却、管轄違いと一口に言つておりましたのを、公訴棄却のうち、三百三十八条の、公訴の提起がその手続違反のために無効であるという場合はこれを除きまして、その他の公訴棄却の場合に身柄を離す、こういうようなことに規定をしたわけであります。なお判決の宣告というのを裁判の告知に改めましたのは、公訴棄却の決定の場合、判決の宣告ではどうも読みづらい。しかし事実はこの決定の場合も実質的には入れなければなりませんので、それで裁判の告知ということで両方を含める、かような趣旨であります。
次は五十四ページの三百五十九条、六十条の二、三、この一連の関係は、いわゆる上訴権放棄の制度でございまして、いわゆる上訴の放棄の制度は旧刑訴にはございましたけれども、今回これを廃止したのでございます。その趣旨は、軽々しく上訴権の放棄をしてみたが、あとで考え直すというものも相当あろう、これは相当大きな被告人の権利であるから、これを簡単に認めるわけに行かないというのが改正の趣旨であつたようであります。しかしながら実際に今までの例を見ますと、判決に不服のない者が相当ございまして、即日執行を願いますというようなことを被告人側から申しましても、十四日間の上訴期間を経なければ執行が開始しない。その間未決の関係のままで身柄が拘束される、かようなことになつてしまうわけであります。では、現行法で即日執行する場合には一体どうするかと申しますと、これは被告人の方から上訴を申し立てて、すぐ取下げるわけであります。そうすると確定いたしまして、そこで執行ということになるのでございますが、さような小細工を弄するよりは、正面から上訴権放棄ということで行つた方が正しいではないか。そこでこれを軽々しくやつては困るという点をどうするか、これは必ず書面でやるということにいたしてこれをはつきりさせたのであります。またたとえば死刑の言い渡しがあつたような事件については、ちよつと困る、これはやはりゆつくりと考えさせた方がよいというのでこれを除いた、かような関係になつているわけであります。
次は三百八十二条の二以下の、いわゆる控訴審の事実取調べ範囲の拡張についてでございます。改正の要点は二つございます。第一点は、第一審裁判所の審判の過程に現われなかつた資料であつても、一定の条件のもとにこれを控訴趣意書の中に援用することができる、さようなことによりまして裁判所の調査義務、事実取調べの範囲を拡張しようというのが三百八十二条の二でございます。第二点は、控訴審が第一審判決後に生じた刑の量定に影響を及ぼすべき情状を考慮し、原判決の量刑の当否を判断することができることとしたのであります。これが三百九十三条の二項及び三百九十七条の二項の関係であります。条文はちよつと読みにくいのでございますが、読んでみますと「やむを得ない事由によつて第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかつた証拠によつて証明することのできる事実であつて前二条に規定する控訴申立の理由があることを信ずるに足りるものは、訴訟記録及び原裁判所において取調べた証拠に現われれている事実以外の事実であつても、控訴趣意書にこれを援用することができる。」第二項は「第一審の弁論終結後判決前に生じた事実であつて前二条に規定する控訴申立の理由があることを信ずるに足るものについても、前項と同様である。」「前二項の場合には、控訴趣意書に、その事実を疎明する資料を添付しなければならない。第一項の場合には、やむを得ない事由によつてその証拠の取調を請求することができなかつた旨を疎明する資料をも添付しなければならない。」というのが、新しく加えた三百八十二条の二でございます。つまり第一審の弁論終結前に、たとえば事実が現に存在した。ところが、やむを得ない事情によつて取調べの請求をすることができなかつた。しかしその証拠を調べてもらつてその事実があるということになりますと、第一審の判決は内容的に動いて来なければいかぬというものがあり得るわけであります。そういうものを従来の事後審の建前を貫きますと、まつ正面から取上げにくくなる。そこでこれを控訴趣意書の中に援用する。すでに原審の書類にも記録にも何にもないのでありますが、しかしこれを控訴趣意書の中に取入れまして、ただそれはこうこういう資料を調べれば確かにその事実がわかりますよということの疎明資料をつけて出すわけであります。そうしますと裁判所は、ははあそれはありそうなことだということで、控訴趣意書を読みまして、それに基いて事実の取調べが開始される、かようになるわけであります。つまり控訴趣意書の中にまつこうからその事実を取上げて参る関係上、俗な言葉で言いますと控訴における調べの間口が広がつて来る、かようなことでございます。
それから五十八ページの、「第三百九十三条第一項但書を次のように改める。
但し第三百八十二条の二の疎明があつたものについては、刑の量定の不当又は判決に影響を及ぼすべき事実の誤認を証明するために欠くことのできない場合に限り、これを取り調べなければならない。」つまり三百八十二条の改正に伴いまして、一項但書を前みたいにごたごた書く必要がなくなつたわけでございます。「第三百九十三条第二項中」云々は前二項にわたるもので、これは条文の整理でございますが、そのあとに「控訴裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、第一審判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状につき取調をすることができる。」ということを明らかにしたわけでございます。これはたとえばあとで弁償ができた、あるいは示談ができたということで、これは刑の量定に影響すべき重要な情状でございますから、これを調べる。かようなことになるわけでございます。
次は五十九ページのまん中辺に、「第三百九十三条に第四項として次の一項を加える。
第一項又は第二項の規定による取調をしたときは、検察官及び弁護人は、その結果に基いて弁論をすることができる。「これは当然のことでございますが、この中へ入れたわけでございます。
次に「第三百九十七条に次の一項を加える。
第三百九十三条第二項の規定による取調の結果、原判決を破棄しなければ明らかに正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。」いよいよそういうふうにして調べが進行いたしまして、その結果原判決を破棄しなければ明らかに正義に反するという判定が参りましたときは、原判決破棄の判決をするわけでございます。これが控訴審における事実取調べの範囲の拡張に関する規定の改正でございます。
次は略式手続の改正についてでございますが、現在略式命令によつて処罰される者は、全部の有罪人員の約七割前後でございます。従つて略式手続を合理化して事件の迅速な処理をはかることは、全部の刑事事件の審理の促進にも寄与するところが多大でございます。現行法のこの手続の欠陥とされる点は次の二つでございます。その一つは、検察官が被疑者に対し略式命令の請求をすることを告げた後、被疑者に異議がない場合にも一週間の猶予期間を置かなければ略式命令を出すことができないということでございます。その第二点は、被告人の所在不明のため略式命令の告知ができない場合の事件の処理に関する規定が不備であつて、その間の法律関係がはつきりしないということでございます。そこで現在の四百六十一条の一項を読みますと、「簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、五千円以下の罰金又は科料を科することができる。この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他附随の処分をすることができる。」第二項は、「略式命令は、被疑者が検察官から略式命令の請求をすることを告げられた日から七日を経過した後であつて、且つ、略式手続によることについて被疑者に異議がないときに限り、これをすることができる。」つまり七日の猶予期間が置いてあるわけでございます。ところが運用の実際を見ますると、今まで何十万件と事件が処理されたわけでございますが、それによつて異議のあつたのは全然ないという結果になつたわけでございます。これはまつたく意味がないというのでこれを削ることにしたわけでございます。次は、さようにいたしまして略式命令を出す際に、七日の猶予期間を置かないのはまあわかるといたしまして、その手続が粗略に過ぎて間違いが起つてはいかぬということから、四百六十一条の二というものを加えたわけでございます。「検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対し、あらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確めなければならない。」かようにしたわけでございます。その異議がないときには、書面でその旨を明らかにしなければならない。かような丁重な手続をとつたわけでございます。なおこの手続は「検察官は」とございますから、必ず検察官がこれを行うということになるわけでございます。警察などがさようなことはできないという趣旨でございます。
次は「第四百六十二条に次の一項を加える。
前項の書面には、前条第二項の書面を添付しなければならない。」つまり起訴の際に異議がないという書面を添付してもらうわけでございます。
次は「第四百六十三条に次の三項を加える。検察官が、第四百六十一条の二に定める手続をせず、又は前条第二項に違反して略式命令を請求したときも前項と同様である。」つまりこれは略式不相当のものであるとして通常の審判に譲るというわけでございます。次は「裁判所は、前二項の規定により通常の規定に従い審判をするときは、直ちに検察官にその旨を通知しなければならない。」これはその次の項を引出すためのものでございまして、「第一項及び第二項の場合には、第二百七十一条の規定の適用があるものとする。但し同条第二項に定める期間は、前項の通知があつた日から二箇月とする。」というふうに二百七十一条の規定の適用についでの期間の起算点がはつきりして参つたわけでございます。
次は六十六ページの「第四百六十三条の二前条の場合を除いて、略式命令の請求があつた日から四箇月以内に略式命令が被告人に告知されないときは、公訴の提起は、さかのぼつてその効力を失う。
前項の場合には、裁判所は、決定で、公訴を棄却しなければならない。略式命令が既に検察官に告知されているときは、略式命令を取り消した上、その決定をしなければならない。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。」略式命令の手続のうち略式手続が本人に到達しない場合に、一体どういうふうにその事件が消えて行くものかという点をはつきりさしたのがこの規定でございます。四箇月の間に略式命令が被告人に告知されないときは、公訴の提起はさかのぼつてその効力を失うということにいたしたわけでございます。
次は六十七ページの「第四百六十四条及び第四百六十五条第一項中「七日以内」を「十四日以内」に改める。」これは異議申立て期間でありまして、先ほど申し上げました通り、略式命令を出す前に七日の猶予期間がございましたが、これを取上げたわけでございます。そのかわり今度は異議を申し立てる期間を七日間延長する、この方がむしろ本人の利益になるわけでございます。
それから六十八ページの、四百七十四条但書の改正、これは刑の執行順序に関する規定でございますが、「検察官は、重い刑の執行を停止して、他の刑の執行をさせることができる。」ということに改正しようというわけであります。これは従来は非常にむずかしい手続を要することになつておりまして刑の執行順序を変更する際には、検事総長あるいは検事長の許可を得てしなければならぬということになつておるわけでございます。ところが、たとえば本人を何かの事情で急に仮釈放をさせなければいかぬ、手続をとらなければいかぬというような場合が出るわけでございますが、これを一々その順序変更というので最高検察庁まで書面を出しておつたのではとても間に合いません。さような場合に、本人の利益のために現場の検察官がこれを処理することができる、かような趣旨を取入れたものでございます。
次は六十九ページの、四百九十九条の改正。これは還付不能の改正。これは還付不能の証拠品がありました場合に、その還付を受ける者の所在がわからぬために証拠品の処分に困る、その際には官報に公告してやることに現行法ではなつております。ところが実際の運用を見ますると、この公告のために要する費用が年間一千万円にも上つております。ところが、たとえば二、三の官報をごらんになればわかりますが中にはふろしき一枚とか、げた一足とかはまだいい方で、こわれたナイフといつたようなものまで官報公告しているのでございますがこれは四百九十九条が非常に厳密に書いてございますので、やむを得ないことでございますが事実無意味でございます。このためにこの公告を見て本人がこれはおれの物だ、返してくれといつて出て来たのは、まだほとんど聞いたことがございません。さようなことで手続が煩瑣であるのみならず、費用ばかり食うということで、かような公告手続をするのは、重要な証拠品のみに限るような手続にしたらよいではないか、たとえば一定価格を区切りまして、それ以上のものについてはこれを官報に公告する。しかし今言つたようなつまらぬものについてはたとえば帳簿を備えておいて、その帳簿の閲覧をたれにでも許すといつたようなことを取扱つたらどうであろうか、これは政令に譲つた方がいいのではないかというのがこの趣旨でございます。
次は第五百条中の改正でございますが、これは判決で訴訟費用の負担の免除を許可し得るという、あの際に申し上げた通りでございまして、現在は訴訟費用の負担を命ずる裁判を言い渡した裁判所に対して十日以内に手続をしなければならぬ、かようになつております。ところがたとえば一、二、三審とも証人を調べたというふうな場合には、それぞれの訴訟費用をそれぞれの裁判所に免除の申請をしなければならぬ、しかもそれを十日以内にしなければいかぬということで、非常に当事者に不便、不都合でございます。そこでこれを裁判所の規則で、たとえばもよりの一箇所、どういうふうにきめますか、そういうふうなことになるだろうと思うのであります。そこで一つ手続をしますと、全部の訴訟費用の免除の手続ができる、かようなことにした方が便利ではないか、それが一つと、それから十日以内というのはいかにも忙し過ぎるというので、これを二十日に延長したのであります。
これが本法の改正でございまして、附則といたしましては、第一項は公布の日から起算して九十日、これはその間にいろいろと準備をいたそうというわけでございます。それから二項、三項以下すべてそれらに関する経過的な規定でございます。大体お読み願うとおわかりになると思いますが、大体以上をもつてあとは具体的な御質問に応じて詳しくお答えいたしたい、かように存ずるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/10
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011・小林錡
○小林委員長 これにて説明は終りました。なお本案に対する質疑は次会よりこれを行うことといたしますから、さよう御承知を願います。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/11
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012・小林錡
○小林委員長 この際姫路少年刑務所における騒擾事件について、発言の通告がありますから、これを許します。古屋貞雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/12
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013・古屋貞雄
○古屋(貞)委員 今朝の新聞を拝見いたしますと、昨日の姫路少年刑務所におきまする暴動事件の記事がございます。かような事実があつたかどうか、あつたとするならば、その原因はどういうところから起つたのか。その点を大臣に承りたいと思います。本件は重大な関係がございますので、御報告を大臣からいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/13
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014・犬養健
○犬養国務大臣 古屋委員にお答え申し上げます。いかにも御指摘のようなことがありまして、昨夜矯正局の保安課長を至急現地におもむかせて、目下原因等を調査さしておるのでありますが、とりあえず大阪矯正管区長から報告がございました。十三日付で報告がございましたので、それを御説明申し上げたいと思いますが、問題が起りまして世間を騒がせたことはまことに遺憾に存じ、当局として恐縮しておる次第でございます。
事柄は、去る十二日の八時三十分ごろ、姫路少年刑務所におきまして、電文によりますと、配食上の問題等から、舎房の中で三工場と四工場の全員の対立を生じ――こういうことでございますが、配食上の問題というのはどういうことかと調べておりますが、それについての説明はまだ到着しておりません。舎房の中で、三工場と四工場全員の対立を生じまして、約三百名の収容者が舎房を破壊して騒ぎ立てましたので、ただちに関係官庁の応援を受けて、管内の施設からも戒護応援約八十名を派遣して、説得鎮撫に努めました結果、十四時ごろ一応平静に立ち返つたというのでありますが、舎房の半分くらいが破壊されました関係上、分散、移送その他適宜の処置を目下講じつつある、こういう程度の報告でございます。おつて職員の方が四名負傷いたしまして、収容者の方が五名負傷した、こういうことでございます。また逃亡者はない、この程度しかわかつておらないのでありまして、まことに政府の答弁としては詳細を欠いておりまして、恐縮に存じておりますが、わかり次第さらに追加して御報告いたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/14
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015・古屋貞雄
○古屋(貞)委員 ただいま大臣から御答弁をいただきましたが、本件は非常に重要な案件でございまするから、御答弁のように詳細をすみやかに御調査を願つて、当委員会に御報告願いたいことを御希望申し上げまして終ります。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/15
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016・小林錡
○小林委員長 次に刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより本案に対する質疑に入ります。質疑の通告があります。順次これを許します。林信雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/16
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017・林信雄
○林(信)委員 先刻来るる御説明のありました刑法等の一部を改正する法律案のうち、刑法関係について二、三の質疑を試みて見たいと思うのであります。提案せられました刑法二十五条、すなわちこの執行猶予関係の規定に関しましてその範囲が拡張せられ、なかんずく執行猶予の言い渡しをせられて、その期間満了しないうちに、さらに重ねて犯罪を犯した者に対するいわば再度の執行猶予の規定のごとき、まつたく画期的なものではないかと思う。この執行猶予の制度の英断的なそのことに対しましては、一応私としましては賛意を表するものであります。もつとも一、二の点については疑問も残しておりまするので、あとで質問を試みたいと思うのでありますが、かようにいたしまして、執行猶予制度の緩和と申しますか、拡張せられたその心持を推察いたしまするに、実際において、それが刑事政策上まことに必要であると、こうお考えになつたことであろうと思うのであります。そうであるといたしますれば、過去においてかなり論議も尽されて、刑事政策上取上げられんとして残されておりまするいわゆる有罪判決の宣告猶予の制度、これはかような改正をなされまする場合において、当然お考えはなさつておつたであろうことは疑いませんが、もはやこれを取上げるべき時期ではないか、実際問題として、実用価値においても十分見るべきものがあるのだと、こう思うのであります。かような関係から、この宣告猶予の制度について、どの程度にお考えになつておりまするか、あるいは今後この実施についてすでにきまつたものがありますれば、それも伺いたいと思うのであります。一般的にこの宣告猶予の制度に対する御提案者の御意見を伺つてみたい、こう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/17
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018・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 お答えを申し上げます。犯罪をした人の改善更生をはかるという意味から申し上げますると、たとい執行猶予でありましても、刑期何年ということを言い渡すことは、一種の烙印を押すようなことになりまして、改善更生の上から申しますると、有罪判決の宣告猶予に伴う保護観察ということが最も望ましいのでございます。この法案の元になりましたと申しますか、法制審議会にこの制度につきまして一昨年諮問をせられましたその際に、法制審議会でいろいろと論議をされ、この宣告猶予につきましても、専門家からいろいろと検討なされたのでございます。もちろんその際におきましても、こういつた制度を考えるならば、宣告猶予まで行くべきがほんとうではないかということについては、ほとんど大部分の人がこれに異論はなかつたのでございます。但し現在の刑事訴訟法のもとにおいて、宣告猶予を実施するということが非常に困難である。また実際の問題としましても判決をつくつて、宣告を猶予するのか。その場合にあつても、二年とか三年とか、数年後にもし本人の成績が悪くて、実際の刑を言い渡さなければならぬという場合に、いかにしてこれを言い渡すかというような、いろいろな訴訟法上の手続等を考えますると、相当大幅な刑事訴訟法の改正を行わなければ、宣告猶予に伴う保護観察という制度がとりにくいという点から、法制審議会におきましても、答申の後、附記といたしまして「有罪判決の宣告猶予に伴う保護観察の制度は、現行の刑事法制の下で直ちにこれを採用することに種々の難点を伴うが、本人の改善更生を図るに極めて有効適切であると考えられるので、これを将来採用することについて十分に研究を重ねること、」という意見がつけてありました。私どもまつたく同感でございまして、この制度を発足させ、そうして十分な結果を上げるように努力して、将来この制度が宣告猶予にまで進展することを願つておるようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/18
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019・林信雄
○林(信)委員 明快な御答弁でお心持はよくわかるのであります。言いかえますならば、それはいい制度である、こうお考えになつておられる。はつきり御意思はわかつておる。問題は実際の運営面について種々の問題がある、こう言われるのでありますけれども、執行猶予の言い渡しを、場合によつて取消すという場合のありますることは、これはもう古い法制の沿革になつております。今回御提案の趣旨から参りますると、場合によつて保護観察に付するという制度が根本に考えられておる。在来宣告猶予の制度についてしばしば保護観察のことがない合されて考えられて参つたのであります。そういうことから考えますると、ほとんど同じことがこの制度で今提案されておるのであります。従いまして、このようにして保護観察制度を充実して参りまして、両々相まつてその刑事政策の目的を達して行こうということでありまするならば、これは大体同じようなことで行けるのだから、そうたくさんな問題があるようには思えないのであります。むしろやはり問題は先刻ちよつと触れられました有罪判決で、ある一定の刑期の者に限るといつたような問題、これは大した問題でないにしましても、事実の認定をするかしないか、そのいずれにするかはかなり大きな問題であろうと思うのでありますが、そういう問題をともかく一応けじめをつけ得るとしまするならば、これはお話のような御趣旨で御採用にならないという必要はないのではないか、もうその段階まで来ておるのではないか、こう私は考えておるのであります。加えて申しますが、実際問題として、御承知のように起訴猶予になるかならないかといつたような程度のものが表に現われました場合、在野法曹等におきましては、かなりやかましく検察御当局を攻撃する例があるのであります。まつたく聞きづらい場合すらあるのであります。こういう場合にも検察当局としてはかなり御苦心をされた起訴であろうと思う。そういう場合に宣告猶予の制度がありまして、執行猶予でなくて、その中間的な制度があつて、それでけりがつくことになりますと、関係者においても納得の行くことになろうかと思います。従いまして検察事務を取扱います者もあまりかたくならずに、起訴猶予あるいは起訴の関係もそこに甄別することができるじやないか、実際問題の価値も十分あるのではないかと思う。これを含んでおつて、その価値を認めておられるのかもしれませんが、あれこれ考え合せまして、それから先の諸問題についてのお考えは、これはもう一挙一手一投足の問題じやないか、切にそのお取上げある時期の早からんことを希望するのでありますが、お話のような趣旨で、もうこれはある時期には取上げるということに御方針がきまつておるのでありましようか、それともそれは漠然たる時期だ、こういうことなのでございましようか、そこのところだけを伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/19
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020・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 私ども保護観察ということを担当いたしておる者からいいますと、保護観察の内容的な充実整備をはかり、そうしてすみやかに宣告猶予まで進歩させたい、かように存じておりますが、いつからというふうなことは今申し上げることはできません。この書つきましては、いろいろな意味におきまして、画期的といいますか、一つの新しい面があると存じますが、同時にさような犯罪をした人に対しても、ちようど少年に対すると同じように、保護観察というものをある程度考えて、そうしてそれがだめな場合に初めて刑罰に行くという考え方に立つておるのでございます。そういう意味からいいまして、いろいろな意味においてまだまだ足らぬ点をこの法案は含んでおります。一つの例といたしましては、裁判所が事前に調査するということもこの案は持つておらないのでございます。これらのことを法制審議会におきまして十分検討いたしまして、新しい制度に対するまず橋頭堡をつくつて行く方針で、それが今の段階においてはいいのではないか。たとえばただいま申し上げました裁判所が事前に調査することにつきましても、現在の刑事訴訟法の建前で、裁判所自体に調査官を置く、攻撃、防禦両方でやるというのであつて、裁判所が調査官を持つということは、刑事訴訟法のいろいろな変革がなくてはできないじやないかという点、あれこれ考えまして、宣告猶予につきましても、かような制度の本来の理想からいいますならば、宣告猶予まで行くべきであるということには、私どももまつたく同感でございますが、さような現実の面を考え合せまして、とりあえずこの程度で発足して、そうしてこの制度の発展を期したい、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/20
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021・林信雄
○林(信)委員 法制審議会の経過並びに結果の話が出るのでありますが、在来審議会あたりで意見を徴せられたものの中には、もう刑の執行猶予の制度があるのだから、宣告猶予の制度は必要ないじやないか、ある一定の年限が来て、判決言い渡しの効力がなくなつてしまつたと同じじやないか、従つて宣告猶予制度の無用論があるようなことを聞いておるのであります。法制審議会等の最近の動向といいますか、どういうのでしようか。私らをして言わしめますと、なるほど経過におきまして、ある一つの事象の効力をなくするということにおいては一致するかもしれませんが、少くともその期間中における当該関係者としましては、いわゆる犯罪を犯した者といたしましては、そこで裁判所が十分寛大ないわゆる法の涙ですか、しばらくお前の行方を見てやるんだという形と、もうすでにお別は悪いからこれだけの刑に一応処するんだ、しかしただその執行猶予ということとは、これは心理的な影響が非常に違うことは申すまでもないのであります。これはただちに関係本人だけでなくて、社会的な客観的な観察よりいたしましても、さように見ることも自然の勢いだろうと思う。従いまして、それだけの差は持つておる。そういうことがはつきり区別されて考えられておりますか、あるいは同じようなものだ、こういうふうに考えられておりますか、法制審議会の動向をお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/21
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022・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 確かに執行猶予でも、期間が満了すれば結局なかつたことになるのだ、従つて一向同じじやないかというふうに考えられまするが、仰せの通りに、刑期何年というふうに言い渡されて、しかもそれが場合によつては新聞紙等に出る、関係者にもわかるというようなことが、非常に心理的に大きなことでございまして、犯罪をした人の改善更生上に非常に遺憾な点が多い。そういう点から、この案を法務総裁から諮問されました在朝在野の代表の方々の法制審議会においても、やはりこういつた制度を考えるならば、宣告猶予が最も望ましいという御意見でございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/22
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023・林信雄
○林(信)委員 宣告猶予制度にもからんでおりますし、現に提案されておりまする改正点にも関係するのでありまするが、ことに二十五条の二として、執行猶予期間中の者を保護観察に付する、この関係なんですが、私は、宣告猶予の場合におきましても、執行猶予期間中におきましても、成人しました者、いわゆる未成年でない、現在の法制関係から参りますれば、少年にあらざる相当年齢の者に対しまして、この保護観察制度というものは、どれだけ効果を上げておるかということについて、実は非常な疑惧を持つておる。現にかような改正も取上げられておるのでありますから、その実効関係について、当局はどれほどの御自信をお持ちでございましようか。これをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/23
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024・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 現在保護観察は、犯罪者予防更生法の規定するところによりまして、家庭裁判所が保護処分として決定をされた少年、保護観察に付するという決定をされた少年、それから少年院から仮退院になつておる少年、及び仮出獄中の少年及び十八歳未満で、禁錮以上の刑に処せられて執行猶予中の少年が、現在保護観察の対象に相なつております。これにつきましては、保護観察所に配属してありまする保護観察官及び民間の篤志者で、保護司法によつて法務大臣が選考会等を開き、それで推薦された者につきまして保護司を委嘱いたしておりまするが、この民間協力者が、法律上の定員五万二千五百でありまして、実際上は四万三、四千人かと存じます。これは全国の各市町村等にも一名以上大体おられまするが、それらの人々が保護観察に従事しておられるわけでございます。その成績につきましては、もちろんこういつた精神的なものでございまして、尺度をもつて出せるようなものでもございませんが、ただ仮出獄中の者などにつきまして、この制度、犯罪者予防更正法が施行されました昭和二十四年の七月当時から、仮出獄者の再犯による取消し率がだんだんと減つて参りました。昨年は恩赦等により、政令による減刑がございました関係も、若干影響いたしておると存じますが、昭和二十四年当時、その年間に仮出獄になつた人と、それからその年間に仮出獄中再犯によつて取消しになつた人の比率は、約一〇%でございましたのが、昨昭和二十七年は、恩赦による政令減刑によつて仮釈放期間が短縮されたという点も影響いたしておると存じますが、二・幾らというような数字に相なつておりまして、さような数字から見れば、相当成績が上つておるのじやないかと言い得るのではないかと思つております。もちろん予算その他、まだまだ不十分な点が多うございまして私どもといたしましては、必要な予算は獲得することに努め、同時に保護司の教養、訓練といいますか、観察官、保護司の内容の充実、整備に、今後ますます努力いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/24
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025・林信雄
○林(信)委員 御当局のお気持はわかりますが、今あげられた数字等がすべて保護観察制度の効果だとお考えになるのは少し無理じやないかと思つております。幸いにして社会情勢が、経済状態その他次第に治まつて参りました、さような関係からのいい影響が大きなものになつておるのではないかと思うのであります。もちろん保護観察制度の一切を否定するものではないのでありますが、少年関係につきましては、これは一つの教育をする時代でありますから、教育的にその効果の上ることも思われるわけです。そう言つてはどうかと思いますけれども、成年に達しまして事件を起します比較的社会から嫌悪せられるような性格の所有者というもの、あるいはそうでないものにおきましても犯罪を犯すというのはよくよくなのでありますから、それは一片の指導監督や説得によつてこれはなくなるものではない。気をつけてやるというようなことはやはり親心でいいと思うのでありますが、それにたより過ぎることはどうか。これをしておるから若干は食いとめるかもしれませんが、起きたところの事件は、やはり生活苦に災いされる、あるいは生来持つております習癖あるいは一時的な興奮性というようなことで、思わざるときに起る。観察制度それ自体を考える間もなく、事件になつてしまつた、ふつと保護司や観察官の言葉を思い出す間もなく、事件になつてしまつた、こういうのが実際ではないかと思う。あまりにこれに大きな期待を持つことはどうか。うつかりしますと、この制度の運営を誤りますと、これらの諸君はむしろ、そこに条件の違反がないではないか、むしろ執行猶予を取消すべき事態が起つておるのではないか、それをうの目たかの目で見ておるのではないかという、こういうふうな一つの弊害も考えられる。まして執行猶予にされております者が、保護観察にされておりますと、何か目に見えない一つのものにらみつけられておる、あるいは追われておるという心の桎梏というものが、せつかく許していただいた半面に、何かいやなものをくつつけられたという感じになる。大した効果のないものならば、私は刑事政策上おもしろくないのじやないかという懸念を持つのであります。そこでこの点について、御当局の御意見を承つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/25
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026・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 ただいま仰せの通りに、単なる数字をもつて全般を推すということは、私どももやはり十分注意いたさなければならないところと思つております。またさらに保護観察を実施する者の心構えについて、監視というような気持であつてはならないということについても、仰せの通りに存じております。また従来警察監視のもとにありました仮出獄者を、犯罪者予防更生法によりまして、保護観察に移したという大きなねらいからも、単なる形式的に欠点をうの目たかの目で見るというふうなことがかりにもあつてはならないと存じておりまして、その点につきましても、保護司の選考なり、観察官の心構えなり、観察所の保護観察の考え方なりについて、十二分に注意いたして行かなければならない、また今後ますますさよう注意いたさねばならないと存じております。ただこの保護司をおやりになつておる方々は宗教的な方、あるいは教育方面の方、あるいは前に裁判長をしていらつしやつた方、あるいは弁護士会長をしておられた方が相当数おられますが、私どもいつでもいろいろな会合でしかられておるのでありますが、現在きわめて非薄な手当でほとんど手弁当で保護観察をしておられるという例もございまして、民間の保護司の方は非常に熱心であられまして、私ども感謝しておるのでありますが、ますます保護観察の内容の充実を期して行かなければならぬ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/26
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027・林信雄
○林(信)委員 熱意のほどはよくわかるのでありますが、私ちよつと古いことを思い出したのですが、古いころ執行猶予あるいは執行猶予でなくても判決を受けた者は相当、往年の官憲の監視のもとに置かれた時代があつたと思うのでありますが、何が御当局ではその当時の資料をお持ち合せじやないかと思います。執行猶予の言い渡しを受けましてその監視があつたかどうか。これは新刑法になつた以後でありますとどうかと思うが、その以前にも似た制度か、あるいは執行猶予の言い渡しのない、一般の刑を言い渡した者に対する監視制度、そういうようなものは一応このねらいとしては必ずしも否定すべきではないと思うのでありますが、過去にあつてそれが一つの失敗であつた、少くともそれが無用に帰したということであるものが、今日この時代においてまた現われて来た、こういう感じもするのであります。古いその時代の事績の何かお持ち合せがございましたら、あるいは知識の上において御存じでありましたら御教示を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/27
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028・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 執行猶予につきましては確たることを記憶いたしておりません。ただ仮出獄者につきましては、犯罪者予防更生法ができますまでは仮出獄者取締規則というようなもの、すなわちそういう名前でなくして監獄法の一部にそれに関する規則の規定がございましたが、それによつて律せられておつて、その内容には警察の監視を受けるとか、警察に出頭するというような規定があつたように記憶いたしております。それが犯罪者予防更生法によりましてこの保護観察制度を採用する際に廃止をいたしまして、現在ではさようなことはないようにいたしております。また今度の保護観察が過去のそういつたものの再現であつてはならないと存じまして、そういうことは絶対ないようにいたしたい、かように思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/28
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029・林信雄
○林(信)委員 一日、三日の問題でないのとでありますが、何か参考になると思われるものがありましたらお教えを願いたいと思います。
保護観察関係はその程度にしまして、提案の二十五条の第二項に相なりますが、「前ニ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコトアルモ其執行ヲ猶予セラレタル者一年以下ノ懲役又ハ禁錮ノ言渡ヲ受ケ情状」云々、この規定に関しまして、言い渡される刑を一年に限定せられました心持はわかる気もしますけれども、一応承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/29
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030・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 最後の執行猶予は、言い渡し刑が一年以下、こういうふうにいたしたのでございますが、簡単に申し上げますと一年以上というのは相当犯罪の質が悪いのではないかというふうに一般的に考えられるのであります。また裁判所が情状酌量して、そして一年以下にならないという刑は、強盗傷人であるというような、そのほかにも幾つかございますが、そういう刑でございまして、その他の大部分のものは一年以下の刑に処することができる。従いましで、現在の治安の状況等を考慮いたしまして、一応一年以下ということで発足してみよう、それがいいのではないか、こういうふうに考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/30
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031・林信雄
○林(信)委員 およそそういうお気持だろうと思うのでありまして、考え方、意見の相違だということになつてしまうかもしれませんが、せつかくここまでの親心的な法の涙としての規定の改正でありますならば、いわゆる基本的になつておりまする三年以下の有期の懲役までよろしいと思うのであります。三年がいかぬというならせめて二年とでも考えますけれども、私はまあ三年でもいいじやないか。再度だから制裁的な気持、お話のあつたような質が悪い、これも一応うなずけるのでありますが、犯罪というものは申すまでもなく千差万別でありまして、そのときどきのものであります。存外前回言い渡しを受けて執行猶予中の事件の方がたちが悪くて、あとの方の刑期がいま少し重く盛られるにいたしましても、たちのよろしいもの、同じとは言えない。犯罪の態様いろいろでありますところから、かようにしておりますと、せつかくその思いやりが制度化されておるにかかわらず、実際の問題になつて隔靴掻痒の感を持つ場合がありはしないか。しからばといつてあまりに幅を広くしておくと弊害があるというなら格別でありますけれども、少くともわれわれは、いな国民の大部分、全部がと言つていいと思うくらいに、日本の裁判官というものは信頼を得ておるのであります。これらの信頼を得ておりますということは、そこに老練であり、練達堪能であるということが一応考えられる。これら信頼を得ておられます裁判官の諸君が、その範囲において取扱いを誤らなかつたならば、それはむしろかように限定せられたものよりも、いま少し長期の者もその恩典に浴することの方が、一層この規定の趣旨を生かして行く、こう思うのでございまして、この場合に第一回の一年とこの三年と、その開きが、先刻言われます社会通念といいますか常識から行きましても、少し開きがあり過ぎるような気がするので、重ねていま一度お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/31
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032・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 ただいまの仰せの言葉の中には傾聴すべき点があり敬服いたしたのでありますが、ただかように考えまして立案をいたしました趣旨は、裁判所を信頼するとかしないとか、そういう問題でありませんで、同じような条件にありますと、現在執行猶予中に執行猶予の取消しになる人がだんだん率がふえて来るとは申しながら、大部分の人は無条件の保護観察じやなしに執行猶予で再犯をしないで無事に期間を満了するという人が過半数でございます。それは今度罪を犯して裁判所に行けば、今度は執行猶予にならないのだという一つの何といいますか、心理的な影響があるからでないか。そういう点を考慮いたしますれば、これを三年以上とかあるいは無制限とかいうようなことも考えられますし、またそういつた法制をとつておられるところもございまするが、発足以来まだ四年しかたたない保護観察陣営の力といいますか、そういう点も考慮いたしまして、やはり一年くらい――一年以下でまかなえないというものはそう数はない、またそういつたものの大部分は、いろいろな社会の一般警戒といいますか、そういう点からも執行猶予にするというようなことは少いのではないかというような点あれこれと考えまして――こういう制度を始めまする理想からいいますると、さような制限があるということは理想に遠いということも存じておりまするが、現状においてはやはり一年程度から発足して行くのがいいのではないかというようなところからこういう立案の形になつた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/32
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033・林信雄
○林(信)委員 たいていでおしまいにしますが、最後にあらためてやはりそこのところを申し上げてみたいと思うのです。再考の余地があるのではないか。最初から言つておるように、どうも意見の相違や考え方の違いになつてしまいそうな問題ではありますけれども、どうも私考え方がしみつたれておるような気がするのであります。一つの例を考えましても、再度の犯罪だとたちが悪いということも一応考えられますけれども、有罪判決を受けて、それが三年以下のもので五年なら五年の執行猶予の言い渡しを受けた。そしてもうわずか一、二箇月にして、あるいは極端な場合は数日にして執行猶予の期間が満了するという場合も考えられるわけですが、長期の執行猶予の期間として、五年を余すところ数日にして、数日というのが極端ならば数箇月にして事件を起す。これが数箇月経過して再犯をいたしましたものならば、三年以下の刑、二年何箇月、三年の刑でも執行猶予の恩典に浴することができる。わずかの日にち早かつたために、一年以下の者しか執行猶予の恩典に浴しない。きわどいところで借しかつたということになるのでありますが、高い所から見ますると、何だか不公平の感じがする。そういう場合には、やはり裁判官の自由裁量によりまして、ここまで来ていたのだから、これは二年くらいの刑であるけれども、憎むべきであるけれども、一面また犯罪の情状その他から一どうせ情状がなければ品執行猶予にならぬのですから、まあ執行猶予にした方がいいだろうという場合が生れ得ると思う。これらの実際面を考えましても、そこに余裕を残しておいて、それが非常に弊害になるというならば別ですが――繰返すようですが、われわれは信頼すべき裁判官を持つているわけですから、そこにもう少し幅を置いた方が規定が生きるではないか、こう思うので、重ねて伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/33
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034・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 御意見ごもつともと思われるところもございます。確かに私どもも、将来保護観察の制度が内容的にも充実し、相当むずかしい事件でも保護観察である程度まかなえるようになり、またそういうことが世間一般から認められるという事態に早くなつて、そうしてかような制限をできるだけ大幅に取除く事態を招来いたしたい、こう存じております。ただこの一年を二年にするがよいか三年にするがよいか一これについてはいろいろの見方があると存じます。仰せのような点もいろいろと考慮いたしまして、現状においてはやはり言い渡し刑一年以下ということでまず発足し、今後の制度の進歩によつてまた改めるべきは改めて行こう、こういうような考えで立案いたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/34
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035・林信雄
○林(信)委員 先刻から言つておりますように、どうも考え方の相違があるようでありまして、ただいまのお言葉によつても、観察制度を非常に重視されておりますところにわれわれの考え方と違いがある。制度それ自体の本質的な問題として考えていただきましたならば大分近寄つて来るではないかと思いますが、質疑はこの程度で終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/35
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036・小林錡
○小林委員長 ちよつと関連して伺いますが、今の一年というふうにきめられたのは何か根拠があるのですか。あてずつぽと言つては悪いが、二回目は大体この辺でというのですか。私思うのは、たとえば選挙法違反で禁錮か何かで執行猶予になる。それから殺人というのはずいぶん情状酌量すべき事件が多い。今ですら執行猶予がつく。選挙違反の今の執行猶予の前科があつて、今度は殺人で一家名を汚し、兄弟に迷惑を及ぼすような不良少年を思い余つて親が殺すというような場合も執行猶予になるようですが、これがもし既遂になればいかに情状酌量してみても一年半以上にすることはできない。とすると、たつた半年くらいのことで殺人は二回目の執行猶予がつけられないことになるので、こういうような標準から見ると、せめて一年半でもあれば殺人にもつけやすい。殺人というのは情状酌量すべき事件が多い。事犯が突発事件であるのですが、今の一年というのは、法務省で調べられた従来の刑期などの根拠があつてきめられたのか、二回目だからまあこの辺でという目分量できめられたのか、その点をちよつと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/36
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037・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 結局一年以下でなければならないというような理由はございませんですが、やはり現状においては言い渡し刑一年、再度の執行猶予の場合でございます。もちろんこの場合問題になつておりますのは二度目の場合でございますので、三年というのと同じであつてはぐあいが悪いではないか。それでは第一回目に執行猶予になつても、全然同じように執行猶予になれるというようなことでは、第一回目の執行猶予がもぬけのからになる。これは何かしぼらなければならぬ。しぼつて第一回目が無条件で執行猶予であつても、一つの心理的な効果をあげ得る。そうするとこれをしぼらなければならぬ。しぼつた場合にどの程度がよろしいかという点についてはやはり一年以下がいいのではないか。目分量と仰せになれば目分量と言わざるを得ないかもしれませんが、そういつたことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/37
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038・小林錡
○小林委員長 そうすると結局法律的な標準があるのではなくして、二回目は一年以下くらいがよかろう、こういう意味でおきめになつたのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/38
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039・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/39
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040・小林錡
○小林委員長 そうすると、刑期の最低限が三年以上の場合は、既遂の場合二回目の執行猶予は全然つけられないことになると思うのです。そうなると、詐欺で懲役三年で執行猶予のついた者が、今度は窃盗で、次の窃盗は一年以下八箇月程度の刑だが執行猶予がついて、それから政治犯、たとえば選挙違反というようなものはそんな破廉恥罪でも何でもない行政犯といつたような人がきめたから犯罪になるような事案で執行猶予になり、その次に殺人といつたような、名は悪いけれども、非常に動機が情状酌量すべきものがある場合に、二回目の執行猶予がつけられないということになると、どうも平衡を失するように思うのですがはそういう点はどういうふうに説明されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/40
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041・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 この制度を考えました一つのねらいといたしましては現在全国の刑務所に、初犯で短期で入つておる人が相当多いのでございます。大体刑務所に入つている人の刑期を調べて見ますると、半数くらいは一年以下の刑期でございます。それから二年以下ということになると、三分の二を突破しておる、ということでございまして、しかも半数は初犯者であり、約半数が累犯者というようなことでございまして短期自由刑ということが弊害が多いというふうにいわれながら、現在いろいろな事情から、刑務所の現状は短期自由刑の人が非常に多い、しかも初犯の人が多い。そういうことを救うことも、さしあたつてはこの制度の一つのねらいでございまして、そういう点を考えて参りますと、殺人というようなものについてまで、二度目の執行猶予中に殺人をしたというようなものまで執行猶予にするということが、はたして妥当かという点も考えまして、ここに書いてありまするような、一年以下というふうにいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/41
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042・林信雄
○林(信)委員 同じようなことを申し上げるようですけれども、今聞いておりましても、一向どうも納得しないのですがね。初め執行猶予にしてもらつていて、また執行猶予になりそうになるから事件を起すというふうに言われるのですけれども、これは犯罪の実際を考えますとなるほどそういうたちの悪い者も一部あるかもしれません。そうでなくて、やむにやまれずして起る事件が大部分であろうと思う。むしろそういう再犯をなさないという手当は別なものでやらなければいかぬ。もちろんこれだけではどうにもならぬと思う。かりにそんなふうに不逞な考えを持つ者があるといたしましても、それはもう規定自体がはつきりしておりまするように、必ずしも執行猶予にはならないのですから、むしろ執行猶予になる率はおそらく少いのだろうと思う。なした方がよろしいもの、なり得るものだけをなすというのでありますから、これは規定自体を見てもわかりまするが、実際の運営をしばらく見ておりますれば、これは常識としてみな知つて来るだろうと思う。それによつて安易な気持で事件を起す、こういうことは今考えられない、こう思うのであります。さらに短期自由刑の弊害を言つておられましたが、御説の通りでございまして、しかるがゆえに、二十五条の基本的な規定はあるし、過去において二年以下の刑期のものも三年までは広げて行つた。これはわれわれも戦時中の議会で、議員提出でやつてみたのですけれども、その当時の司法省の方は、頑迷といいますか、固ろうといいますか、刑法の広汎なとりまとめた改正をするまでというようなことで、御賛成にならなかつた。終戦後に発議されて、これはその通りになつているのです。これはいい傾向なんです。そういう傾向に向つておりまするときに、せつかく短期自由刑の弊害を認めながら、この場合のみ非常に圧縮しておるといふことは、それだけでは私は納得行かない。せつかくこの制度をつくられまするならば、もつと生きたものにしたいという気持から私は言つておるのでありまして、決していやみで申し上げるわけではありませんが、これは御再考を願う余地があるのだ、こう思つておるのであります。なお御意見があれば承りますが、一応反ばく的ですけれども、意見を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/42
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043・小林錡
○小林委員長 鍛冶良作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/43
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044・鍛冶良作
○鍛冶委員 犯罪者は一年以下の者が多い、それは当然だろうと思うが、再犯で一年以下の者は相当あるのですか。それから再犯で執行猶予中であつたがゆえに、執行猶予をつけられないで、刑を受けている者、それでも一年以下の者が多いか、その点はお調べになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/44
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045・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 ただいまの点は、今資料もございませんので、調査いをたしまして御報告いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/45
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046・小林錡
○小林委員長 ちよつと私伺いますが前には連続犯でたくさんの犯罪が一罪として処罰されましたから、非常に始末がよくついたのですが、最近は連続犯の規定がとれましたから、前に判決をした以外の、かつては連続犯として扱われた部分が出て来るですね。そういうものはこれでずいぶん救えるように思うのですが、これは連続犯の適用で行つても執行猶予になるものが、今度あとでまた裁判残りのものが出て来て、やつたというような場合は、これで救つてやるということはいいことだが、あまり実利のないものだと思うのですね。二回目の執行猶予をつけるというのは……。私はやはり二回目の相当重いものでも、まあ殺人みたいなものでも、執行猶予をつけられるようにするところまで行かなければほんとうじやないと思うので、どうしても最小限度一年半ぐらいのところまで行かないと、非常に効果、うま味がないと思うのですが、これは法制審議会などでは、そういう方面についても議論は出なかつたように思うが、この点をちよつと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/46
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047・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 法制審議会には、私の記憶で間違つておるかもしれませんが、たしか一年以下という案で、参考までに出したことはございまするが、それについて法制審議会としての確たる意見はございませんでした。ただ結論としては、適当に執行猶予の要件を緩和したということで、いろいろ立場々々がございまして、もつと無制限に執行猶予をやるべきじやあないかという御意見もございまするし、またあまりにそういつた寛大にし過ぎては、現在の情勢のもとにおいて、不適当じやないかという意見、両方の意見がございまして、結局法制審議会におきましては、適当に緩和したということで、結論が出たのでございます。
それから、現在刑務所に入つている人、今ここに資料を持ち合せておりませんので、あとでまた御報告いたすことにいたしたいと思つておりますが、殺人等でどのくらい刑務所に入つておるかというようなことも、現在手持ちの資料がございませんので、今のような点がどの程度になつておるかということは、後ほど申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/47
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048・鍛冶良作
○鍛冶委員 この今の執行猶予の中の軽罪の中に罰金が入つておらぬのは、これはどういうのですか。当然に入るのですか。懲役、禁錮だけで、罰金は入るのですか、入らぬのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/48
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049・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 罰金につきましは、二度目の場合には、この案では入つておりません。それは罰金の執行猶予が、従来第一回の執行猶予につきましても事例が非常に少いという点、それからこの案で考えましたのは、先ほど申し上げましたように、執行猶予中の犯罪なるがゆえに刑務所に入れなければならない。それが短期自由刑の弊を招いているので、何とかしてこれを避けたいという理由でありまして、罰金は自由刑と執行の態様が違う。あるいは理論だけからいえば、罰金を入れるべきだとも考えられますが、この案では一年以下の懲役または禁錮ということにいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/49
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050・鍛冶良作
○鍛冶委員 どうも初犯の罰金の執行猶予があるので、この場合私は当然じやないかと思つて聞いたのですが、罰金はそういうことはないからと言う。前に執行猶予中の者が、簡単な選挙違反をやつて略式で罰金を食つた、そういう場合はやはり執行猶予にはならないのですか。罰金の執行猶予はあるでしよう、ないのですか、どうもおかしいように思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/50
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051・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 執行猶予中に罰金の言い渡しを受けるという場合には、先ほど申し上げましたように、実際問題としても罰金で執行猶予しなければならぬという問題も、従来の統計等から見ても非常に数が少いのです。それから執行の態様も違うし、あるいはまた罰金の徴収の方法等においていろいろと考えれば、実際上間に合う場合もあるのではないかというような点も考慮いたしまして二度目の罰金については執行猶予がないというふうに相なつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/51
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052・鍛冶良作
○鍛冶委員 そうすると、前に罰金で執行猶予になつておつて、その間にまた罰金を食わされたらどういうことになりますか。今の罰金も払うし、前の執行猶予も取消されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/52
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053・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 その場合は、二十六条の二によりまして、必要に応じ、あるいは取消した方がいいという場合は取消すことができるというようにいたしております。必ずしも取消さなりればならないというふうにはいたしてございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/53
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054・小林錡
○小林委員長 それでは本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめまして、明日午前十時三十分より会議を開くこととし、本日はこれで散会いたします。
午後四時三十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01219530713/54
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