1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十八年七月十五日(水曜日)
午前十一時十一分開議
出席委員
委員長 小林かなえ君
理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
理事 田嶋 好文君 理事 吉田 安君
理事 猪俣 浩三君 理事 井伊 誠一君
大橋 武夫君 押谷 富三君
林 信雄君 本多 市郎君
中村三之丞君 鈴木 幹雄君
古屋 貞雄君 細迫 兼光君
木下 郁君 佐竹 晴記君
岡田 春夫君
出席国務大臣
法 務 大 臣 犬養 健君
出席政府委員
国家地方警察本
部長官 斎藤 昇君
国家地方警察本
部刑事部長 中川 董治君
法務政務次官 三浦寅之助君
検 事
(刑事局長) 岡原 昌男君
委員外の出席者
検 事 総 長 佐藤 藤佐君
専 門 員 村 教三君
専 門 員 小木 貞一君
―――――――――――――
本日の会議に付した事件
刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一四六号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/0
-
001・小林錡
○小林委員長 これより会議を開きます。
刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を続行いたします。質疑の通告がありますから、順次これを許します。猪俣浩三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/1
-
002・猪俣浩三
○猪俣委員 大臣がお見えにならぬようでありますので、こまかい規定につきましてお尋ねしたいと思うのであります。改正案の二百十九条の二「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、令状に差し押えるべき物の所在すべき場所が記載されており、且つ、その場所においてこれを発見することができない場合において、その物の所在する場所が明らかとなつたときは、急速を要する場合に限り、処分を受けるべき者にその事由及び被疑事件を告げてその場所を看守することができる。」この規定は一見何でもないようでありまするが、これを濫用いたされますと、たいへんなことが起ると思う規定であります。緊急差押えに関する規定ということになりまするが、基本的人権擁護の立場から見まして、容易ならざる意味が含まれておるやにわれわれは解釈できるのであります。そこでこの看守する方法でありますが、たとえば、あるうちの奥座敷のどこかにそのねらう物件があるというふうに認定した場合において、その個人の私室の一室に入り込んで看守することができるのであるかどうか、その点を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/2
-
003・岡原昌男
○岡原政府委員 この二百十九条の二は、押収捜索のいわば例外的な特殊な場合だけの規定でありまして、ただいまの場合も、遠巻きにこれを見ておるというだけの看守、かように解しておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/3
-
004・猪俣浩三
○猪俣委員 私の質問は、あるうちの、たとえば五つ部屋がある、その部屋のどこかにそのものがあると思つた際には、その部屋の中か、あるいは部屋の周囲の家の中へ入り込んで看守することができるかどうかというお尋ねであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/4
-
005・岡原昌男
○岡原政府委員 よくわかりました。その点につきましては、その部屋にはもちろん入ることはできない、そのうちに入ることもできない、ただこれを外から看取しておる、かような趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/5
-
006・猪俣浩三
○猪俣委員 今御答弁のようなことは、この法文にちつとも現われておらぬじやありませんか。「被疑事件を告げてその場所を看守することができる。」とある。その場所を看守することができるとなれば、奥座敷を看守するために、奥座敷に入ることもその場所を看守することになりましよう。あるいはその奥座敷の周囲の部屋で、奥座敷の出入りを看守することも、その場所を看守することになりましよう。あなた方は委員会なんかに来ると、たいへん都合のいい、われわれの気に入つた答弁をなさるけれども、一旦それが法律としてできますと、前線に活躍しておる勇敢なるあなた方の支配せられる人たちは、法文をなるたけ自分に有利に解釈して、つまり物を差押えたり犯人をつかまえたりするに便宜に解釈することは、今までの事例で山ほどわれわれは知らされておる。破壊活動防止法につきまして、あれだけの反対が起りましたゆえんのものも、法案それ自体よりも、その活用せられた場合を心配しての反対が大部分であつた。そこでもし今御答弁のような趣旨であるならば、法それ自体におきまして、それを明らかにしていただいておかぬと、これは容易ならざることが起る。しからはそのうちの中に入るのじやないというなら、どこで看守なさるのか、屋敷のうち、裏の出入口、台所品、庭先、ここで看守するのですか。そこに刑事が何人も入り込んで看守せられたらたまつたものじやない。どこで看守なさるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/6
-
007・岡原昌男
○岡原政府委員 その家の構造その他出口、入口等の関係で、具体的の場合は若干違つて来るかと思いますが、屋内の立入り等につきましては、もちろん別個の令状が必要になつて来るわけでございます。これは訴訟法の全体の建前から当然でございますが、これは立つ入りはできない。従つてたとえばそのよく見える門前であるとか、あるいは隣の横町とかいうところで遠巻きにこれを看守しておる、かような趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/7
-
008・猪俣浩三
○猪俣委員 そこははつきりしませんが、その場所を看守する方法ですが、そうすると、その庭先なり、出入りロなり、裏門なり、あるいは台所口なり、そういうところで看守するという意味ですか。その屋敷のうち、つまりある個人の支配権の及びまする、占有権の及びまするその地域内に入つて看守するという意味ですか。あるいは隣の家、その個人の占有権の及ばざる隣の家、あるいはその近辺で看守するという意味ですか。それをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/8
-
009・岡原昌男
○岡原政府委員 先ほども申し上げました通り、その部屋の中に入る、あるいはその家に入るということは、これはもちろん令状なくしてはできませんので、外においてこれを看守するという建前でございます。もつともその事品を告げまして、こうこういうわけでこれをしばらく見張つておるということを告げるわけでございまするけれども、その際に、ではしばらくここへおつてくださいというように、たとえば玄関先を指定されたら、そこにおつてももちろんよろしい。それを向うが承諾した場合はもちろん問題になりませんが、それは困ります、ここに来ては困りますという場合は令状がなければならない、こういうことになつて来るわけであります。さような場合には、外で遠巻きにこれを看守する、かようなことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/9
-
010・猪俣浩三
○猪俣委員 それだから、外でと申すのは、今私が申しましたように、看守しなければならぬ物件を保有しておると思われる家のその家屋敷、その占有権の及ぶ管理の及ぶ範囲外であるという意味であるか。その屋敷のうちへ入り込んでの話であるか、あるいは家の中まで入り込むのであるか。今あなたの答弁によると、家の中まで入り込むのは別に令状がいる、こういうことでございますが、それを明らかにしないというと間違える者が出て来ると思うのであります。第一線の刑事なんというものは、深いことを考えておらぬ。みな看守することができるというならば、どこ看守するか、どんどん家の中へ入つて来ると思うのです。そうして家人は警察といいますと、こわがつておりますから、出てくれなどと押し出す者はなかなかない。錠前をつくりながらもそれを認容するということを一般民間人はやるだろうと思う。そうすると刑事がどんどん家の中に入つて来ます。こんな法文をつくりつぱなしにしておくと必ずそれは起る。だからそれをやつてはいかぬならば、やはり注意規定なり、訓示規定なり置かなければなりません。家の中へ入るには、もう一度令状がいるなんということは、刑事訴訟法学者が条文を研究した上でなければ出て来ない。そこで、第一に、家へ入るおそれが出て来るのではないか。第二には、しからば家の中へ入るには令状がいるとしても、庭先や屋敷の中に入るにはどうだ。あなたは外で看守するというならば、外でという意味は、その物を支配する家の支配権以外のところであるという意味であるか。それは、同意があつた場合は別問題でありますが、その屋敷の中まで入り込む意味であるか。これは人権の立場から考えてたいへんな物議を起す条文であると思いますから、私は念には念を入れてお尋ねするのであります。どこで一体看守なさるのか、その区域をはつきりしていただかないと、これは容易ならざる規定であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/10
-
011・岡原昌男
○岡原政府委員 先ほど申し上げました通り、憲法の精神、この憲法で申しますと第三十五条、それから押収捜索に関する刑事訴訟法の二百十八条、二百十九条、二百二十条、これらの全趣旨から見まして、押収捜索令状がなければ、その家にも、また屋敷にも立入りができない、これは当然のことでございます。従いまして、ただいまのような場合においても、看守という言葉だけでございますから、これについては、屋敷の外でこれを見張る、かような趣旨になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/11
-
012・猪俣浩三
○猪俣委員 そういう趣旨であるならば、こんな二百十九条の二なんてどうしているのです。その家に何も関係のないところの外で見張りするのは、今みなやつているではありませんか。鹿地事件のときには、私の家のまわりにも刑事らしい者が何人もいて、看守しておりました。こんなことは今やつているではありませんか。何ゆえこれを法文化しなければならぬか。それを法文化する理由は、その家に入り込む権利を与えようとしているからだということは明らかではありませんか。あなたのおつしやるように、その支配権外で遠巻きに看守するなんということは、法文をまたないでも自由にやつている。また、甲の家を看守するために乙の家に入り込むという意味であるならば、同じ問題が起つて来る。その乙の者が拒否したらどういうことになりますか。だから、もしその物の所在があると思われるその甲の家を看守するということが、私人の住宅、あるいは屋敷内、その外で看守するということになるならば、およそ道路とかなんとかいう公道でありましよう。そこで看守するという問題であるならば、二百十九条の二なんという条文が何がゆえに必要だ。こんなものは何も必要はないと思う。どういう理由で、あなたのおつしやるように、そういう個人の支配権外の場所で看守することについてこの条文が必要であるのか、その御説明を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/12
-
013・岡原昌男
○岡原政府委員 これはおそらくこういう場合でございます。つまり、ある家にかくかくの証品があるというので、令状をもらつて行つたところが、それが隣のうちにあることが明瞭になつた。たとえば、持つて行つたのが現認されるというような場合が考えられるわけであります。すでに隣の家に行つた以上は、物は特定いたしましても、場所としての指定がございませんから、その令状を動かすわけに行かない、そこでその令状をさらにさしかえると申しますか、新たなる令状をもらつて来なければならぬ、かようになるわけでございましよう。その間、すでに特定されているものがよそに移動するようなことがありましたら、これは証拠としての証拠物をとるわけに行かなくなりますので、これを遠巻きに看守する。それでしからば、外で見張るだけであつたらいらないではないかという御議論、まことにごもつともでございます。ところが、たとえば五人、三人あるいは十人くらいの者がいろいろな用意をして行つて、結局何もなくなつたわけでありますから、それが他に持ち出されないように見張るわけでございますが、門の前に人がぞろぞろとおるというのは、これは一つの住居権の侵害でありまして、さようにある人の家の前に、立ちふさがるというような行為は、これは本来ならばなすべからざるものでございます。かような場合においても、なおかつこれを見張つておることができる。普通、この規定がございませんと、あんたじやまだからあまり家の中をのぞかんでくれ、あるいは前をうろうろしないでくれということが、大体住居権の当然の効果として言い得るのであろうと思いますけれども、この規定が置かれるということになりますと、これは一つの訴訟法上の権利としてそれを見張つておるのだということで、おることができる。そのような趣旨に考えまして、その必要性もある、これが立案の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/13
-
014・猪俣浩三
○猪俣委員 そうすると結局、あるねらいを定めた家の門の外か何かで、家の中をじろじろ見る。見ても、それが権利として主張できる意味においてこれを置いたということになるのでありますか。ぼくは、そんなことでこんな条項はいらぬと思う。今でもしよつちゆう見ていらつしやる。のぞいてもいらつしやるし家のまわりをぐるぐる通つてもいらつしやる。こんなものを特別に設けなければならぬ理由なんて一つもないと思う。そうしてまた、その家の者が、そう見ちや困ると迷惑を感ずる程度にやるとするならば、それは一つの基本的人権の侵害であります。さようなことを一体規定なさるのかどうか。なおまた、実際そういう迷惑をこうむらない程度でおるとするならば、正当な業務で、刑事として上司の命令に従つて、それを看守するのに、何も法律の規定を必要としない。それなら何も人権の侵害にはならぬと思う、正当の業務である。また人権の侵害になる程度に、その家の者が迷惑をこおむる程度にやるとするならばそれは行き過ぎであります。さようなこと仏軽々に許さるべきものではない。これはやはり正当な令状を持つて来てやるべきことである。憲法を守り、人権を擁護するのには、そう逮捕したい、捜索したいという人たちの便宜にばかり行かぬのが鉄則であります。そういう捜索官吏に、はなはだ便宜に人を逮捕し、物を押えることのできるように完全にいたしますのは、それは憲法政治じやありません。多少そこにギヤツプがある、それをどこまで認容しなければならぬかは、国家刑罰権の実行との調和の上から考えることであろうと思うのでありますが、これは非常な重大な規定だと思うのであります。この法文自体に、今政府委員から説明されたような趣旨は片鱗だも現われておらぬ。おそらくは実際上としては、屋敷の中に同意のもとに入り、警視庁に引致することさえ同意のもとに同行したと称して脱法行為が行われておる今日、同意を得た上で入つたのだと称して、奥座敷、玄関口、台所、どこへでも自由に入るに違いない。これはゆゆしき人権蹂躪の法条に相なると思う。こういうことを簡単にお考えになつておつくりになるというようなことそれ日体にわれわれは問題があると思う。そこで今看守する場所は、結局において戸外から家の中をのぞかれるようなところでのぞいておることだ、それなりこんな立法はいりません。これは削除してしかるべきだ。今でもやつていられることであるし、これをつくるならば非常な問題を起す重大な条文であります。われわれは地方におきまして、地方の実情を知るがゆえに、そうしてまた警察官等の第一線に働く者の活動ぶりを知るがゆえに、この条文は容易ならざる弊害を持つ条文だと思うのであります。そこまで十二分にお考えになつて立案されたとは思われない。そこでなおお尋ねいたしたいのですが、さつきの約束で、法務大臣がいらつしやつたので、この条文でちよつと一点だけお尋ねいたします。それからなおその際、この看守する緊急差押えの一つの条件になつておる「その物の所在する場所が明らかとなつたときは、」という規定がございますが、これは何人が認定するのですか。甲の家から乙の家に運ばれたということは、何人が認定するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/14
-
015・岡原昌男
○岡原政府委員 これは検察官、検察事務官または司法警察職員がその場所に参りまして、そうしてその場所には現にない。ところが隣の家なら隣の家にあるということを明らかに認定した場合、かような趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/15
-
016・猪俣浩三
○猪俣委員 これははなはだ危険であります。第一線の刑事諸君が、彼らの主観において認定するならば、ただちにこの条文の対象に相なる。これは実に危険千万なことであつて、いなかの刑事なんというものは相当悪性の者がおりまして、自分の職権を、その人間に私憤をはらすために使う場合もあり得る。明らかに判事からもらつた令状ならばやむを得ない。しかるに出先の連中がかつてに隣の家だと解釈して、そうしてそこがこの二百十九条の対象になる。かようなことになれば判事の令状なんて意味ありません。隣の家じやなくて、今度はすぐそのまた隣ということでそれがまた対象になる。彼ら自身が物の所在する場所が明らかとなつたという主観条件だけで、この条文が発動されるということは危険千万なことであります。ことに労働組合運動弾圧などにも容易にこれは使われる、ここまであなた方がお考えになつておるかどうかはわからぬのでございまして、非常な危険性がある、一応何かの文書をもつて組合の捜索に来た、これが事務所に必ずなければならないものが、ないならば、三人の役員のうちのだれかを持つて行くに違いない、それは明らかだ、その物の所在する場所は、この三人のところに違いないと認定されればこの二百十九条の二が発動する。そうすると役員のところがみな看守される、出入りもみんな看守される。ある一群の人たち、あるいはある集団を、容易に警視庁の刑事の看守のもとに置くことのできる条文にこれは転化するのであります。そのおそれが十分あります。「その物の所在する場所が明らかとなつた」判事の令状もなしに、出先機関だけの主観で決定するということは危険きわまりないことであります。これは何かもう少し「その物の所在する場所が明らかとなつたとき」ということを、具体的に限定する必要がありはしませんか。漠とした何も基準がない、結局出先の刑事がそういうふうに感ずれば、それでいいということになつてしまう。結局はそうなります。それに対してあなた方はどうお考えになるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/16
-
017・岡原昌男
○岡原政府委員 この規定は、いわゆる押収捜索に参りまして、その現物がその場所にはなかつたけれども、すぐそのそばあるいはどこか近所に持ち出されたということが明らかになつたとき、つまりその事実がきわめて明らかになつた場合に、暫定的な措置として、これを看守するという趣旨でございまして、いつまでも看守するわけではないのでございますが、その期間にそれではどうするかと申しますと、今度場所が動いて、指定の場所以外の、たとえば従来甲という場所にあるという令状の表示を、乙という場所に移つたという令状に直してもらつて参りまして、それによつて執行するわけでございますが、その期間のつなぎに暫時これを看守するというわけでございまして、結局は正式の令状に乗るわけでございます。その間事実上物が特定いたしておりますので、令状には記載された場所にないのでありますが、確かにその隣にあるという場合のみを予想しておるのでございまして、たとえばどこかにあるだろう、三人のうちのこれだろうとかいうふうな、何も資料もなくしてそれを認定ができないような場合に、推測だけでこれをやるということはもちろん違法の措置なのでございまして、この条文はそういうふうには運用すべからざるものという点についても、強く訓令を出したいと思つておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/17
-
018・猪俣浩三
○猪俣委員 この条文は至るところに訓令通牒を出していただかぬと、実に危険な活動をする条文になる。そういう条文であるので、私はあまりいい条文じやないと思うのです。読んだままですなおに受取れる範囲において、何人でも活用できる条文じやない。たくさんの解釈をつけたり、たくさんの訓令をしたりしないと誤りがちな条文というものは、刑罰法令においてはなるべく慎んでいただきたい。「その物の所在する場所が明らかとなつた」というのは、何の標準もありません。結局刑事の主観だということになつてしまう。
それからなおお尋ねしますが、捜査令状で甲のうちに行つて、その品物が乙のうちに行つたことが明らかになる。ところがそのうちに乙じやない丙であるということが明らかになつたら、結局そういうふうに移るのですか、一箇所だけなんですか。ねらいを定めたところにない場合、ほかにあるということが明らかになつたとすれば、一箇所だけなんですか、転々として何箇所もそれをやれることになりますか。なお言いますが、これは正式な差押え令状が来るまでの間だと申しますけれども、これを長くしようと思えばいくらでもできる。判事のところに行つて差押え令状を申請しませんなら、判事は知らぬから出さない。そうすると警察官の手でいくらも伸縮ができる。私どもは相当その裏の裏までわかつている。そうすると、こういう規定を置いて実はある家を看守したいためなんです。なるべく長い間看守したい。そうすると、その家に対する差押え令状というものなどはいくらでも延ばすことができる。いつまでなどという期限が一つも書いてない。この文章上から出て来ます。結局改めた差押え令状が来るまでの間ということになるならば、これはまたいくらでも延ばせることになります。一体さようなはなはだしい状態がありますか。ただいま私が申しましたような甲の家の差押え令状を持つて行つたところが、その品物が乙の家へ移つたというだけであるか、なお刑事の主観によつて、乙から丙、丁へ移つたと彼らが考えたなら、丙、丁の家がみなこの対象になるのであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/18
-
019・岡原昌男
○岡原政府委員 甲の家にあるというので令状をもらつて行つてみたところが、乙に移つた。それでそこをこの規定によつて看守するということになるわけでございますが、大体この看守をいたしておりますれば、物の移動はあまりあるまい、そのために看守するわけでございますが、しかし万が一それがさらに丙のうちに移つたというような場合は想像はいたされるのであります。ただいまお話の通りに丙の家に移つたということになりますと、丙の家に移つたということが明らかである、いろいろな点現認したという場合には、丙のうちのその物を看守する、かようなことになろうかと思います。しかし実際問題といたしましては、すでに乙の家にあるわけでありますから、めつたにさような場合は起り得ないだろう、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/19
-
020・猪俣浩三
○猪俣委員 この規定についてはいろいろもつと聞かなければなりませんが、もう一点で私は切上げたいと存じます。この看守することができるという看守の内容でありますが、いわゆる二百十九条の二によつて看守せられた対象物、そこへ出入りする人々に対してはいかなる権限があることになるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/20
-
021・岡原昌男
○岡原政府委員 この家に出入りする人に対するという関係は、直接はないわけでございます。但し看守という言葉から出る当然の一つの力といたしまして、持ち出すというふうな場合には、ちよつとやめてくれというふうなことは言い得る、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/21
-
022・猪俣浩三
○猪俣委員 たとえばこれが重要な書類であるような場合に、ポケツトヘちよつと入れて出られるような場合にはどうするのですか。大きな品物でわんさとかついで出るならば、ちよつと待てと言えますが、書類や何かをカバンの中へ入れたり、ポケツトへ入れて出るものをどうするか。それは身体検査でもしないと出て来ないのじやないか、それでは看守にならぬじやないですか、それはどういうふうに看守するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/22
-
023・岡原昌男
○岡原政府委員 これは結局事実問題になるわけでございますが、なるほど大きなふろしきをしよつて出るというような場合には、これはきわめて明瞭でございまして、ちよつと待つてくれ。それから、そうではなくて、人がぞろぞろ出入りする、それでどうやら書類なんかをポケツトに忍ばして出て行つているんじやないかというような疑いのある場合も中には出て来るかと思います。それはその場の実際の職務尋問その他がなされる場合もあるのでございましようし、あるいはその証拠物も令状に書いてあるからわかつておりますから、それを看守をして、だれかが持つて逃げ出すというような場合には、証拠隠滅の現行犯というような手配もできるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/23
-
024・猪俣浩三
○猪俣委員 そうなりますと、いよいよもつてこれは重大なことです。刑事の主観によつて、令状に書いてある場所でないところを看守をして、そこのうちに出入りする者を、おそらくは実際問題としては、一々誰何をし、場合によつては働きのいい刑事はポケツトや何かをきつとさぐるでしよう――看守をするのだから。そんなことはけしからんというても、看守を命ぜられたのだ。今あなたが答えられたように証拠隠滅の現行犯だ。言えばりくつはいくらでもつく。そうすると、出入りをする人を一々誰何をし、身体検査までやらぬとも限らぬ。一体そういうことをどこで防ぐことができますか。みんなこれが証拠隠滅の現行犯だ、その嫌疑だというようなことになれば全部できる。そういうような証拠隠滅の現行犯のような頭でもつてやられるんでは、これはたまつたものじやないのです。それじやたいへんな問題になります。さればといつて、それはやらんならぬ。そうして看守すれば、ふところに書類を入れて出る者をどうするか。必ずこれは誰何し、身体検査までやるに違いない。彼らは看守を命ぜられたら、その上司の命令に忠実に服してやるに違いない。そういうことになりますと、たいへんな人権蹂躪を起すことになる。しかもそこにあるのかないのかということは、刑事の頭で判定できる。判事の令状があるわけでも何でもない。これはかような容易ならざる規定を含んでおるのでありますが、一体身体検査もせず、誰何もせず、どうして看守をすることができるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/24
-
025・岡原昌男
○岡原政府委員 ただいまも申し上げました通り、さような場所を看守いたしますと、その物がそこにあることが明らかであるという前提のもとでございますからして、確かにそこに現にあるということに間違いありません。そこでこれを見ているうちに、たとえばある者が入つて行つて、出て来た。ところがその物が現にその場所になかつた、おそらくその人が持つて行つたんだろう、あるいはポケットに入れて逃げ出すところを現認したという場合には、これは当然証拠隠滅の現行犯として逮捕できるものと考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/25
-
026・猪俣浩三
○猪俣委員 私はまだこの二百十九条の二にはいろいろ疑義がありますが、先ほどお約束した通り、大臣がお見えになりましたから私の質問は一旦これで打切ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/26
-
027・小林錡
○小林委員長 吉田安君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/27
-
028・吉田安
○吉田(安)委員 私はごく簡単に、総括的な点につきまして二、三大臣にお尋ねいたしたいと思うのであります。逐条的なことは後日に譲ることといたします。私は何も政府のあげ足をとるとかあるいは困らせを言うとか、そういう気持はいささかもありません。ほんとうに虚心坦懐にこの刑事訴訟法の改正をながめて、総括的に一、二の点をお尋ねいたしたいと思うのであります。
御承知の通りに日本は占領されまして、あのきびしい占領政策が行われたのであります。その中でわれわれ考えましたことの大きな一つとしては、結局日本のあらゆる権力ないしは勢力の分散をさせられた。わけても当時の司法部あるいは内務省、特に内務省の解体は当時の私どもとしましては相当痛手を覚えたのであります。ところが今度いよいよ民主憲法となり、そしてあらゆる民主的制度がしかれてみますると、警察制度のごときものも、やはりこれがよかつたというような気持がひしひしと今感ぜられております。これも間違いのないことだと存じます。ただ内務省の解体によりまして警察力が分断されて、そして国警となり自治警となり、一方横の面で公安委員会制度というものが起つたのであります。同時に一面には非常に治安の方がむずかしくなつて来た。それで今日は破防法のごときものもつくらなければならないというかつこうになつた。一方民主的な世の中になると同時に、一面においては治安関係では破防法までもつくらなければならないというほんとうにやつかいな世の中になりつつあるのであります。それでこれは私の想像でありまするが、政府当局は、何か昔の国家警察と申しまするか、ありし当時の内務省のあのかつこうの味わいが忘れられないで、ややもするとそういう面にできるならば権力を統一したいというようなお気持が流れておりはしないか、こういうことがまず考えられるのであります。今回の刑事訴訟法の改正を見ましても、何か検事一体というのですか、さように一本建の権力を統一したいというような思想なり、動きがあるように考えられまするが、そういうことはまずまずないとは存じまするが、刑事訴訟法の改正に関しましての今言つたようなお考えが、政府部内あるいは大臣自身にないならば幸いと思いますが、この点をまずお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/28
-
029・犬養健
○犬養国務大臣 お答えいたします。吉田君の御心配はごもつともでありますし、私ども警察組織及び検察庁の機構というようなものを考えますときに、吉田君と同じような心配が胸にあつてやつておる部分もあります。これは率直に申し上げます。大体現在国警の主流の考え、及び検察庁の主流の考え方は、そういう点がほとんどございませんが、人さまざまでありまして、昔の旧刑訴時代の検事対警察官の関係なとをあこがれている人が、昔検察庁にいて今民間などにいる人などになきにしもあらずで、人さまざまであります。また国警関係でも、吉田君も体験がおありと思いますが、昔の警察に任官された方で、昔の方がよかつたというようなことを率直に国会で言い、世間でも私などに言われる方もあります。そういうことがお耳に入ると、これは担当大臣に警告しておかなければならぬというお気持になると思います。人さまざまでありますが、思想というものはそう拘束できないのでありますが、主流の考え方はどうかというと、その御心配がない、また心配がないように担当大臣としては指導して行かなければならぬ、こう考えております。私もその点では相当腹をすえて一つの思想を堅持して行くつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/29
-
030・吉田安
○吉田(安)委員 大臣としてはさような御答弁をいたされることと存じまするし、また大臣の御性格から申しましても、それはその通りに間違いないことだと存じます。どうかそうありたいものでありまするが、しかしながめてみますと、私は事柄自体を明確には申しません、その点は避けまするが、かつてやはり吉田内閣当時に、吉田内閣とある機関とに一つのいさかいが起つた、いさかいが起つたという程度に申し上げておきます。名前を申し上げることも差控えまするが、その権限を自分の輩下に収めようというような現われがちよつと出たのであります。当時のいろいろの情勢から考えて、それが立消えになつて今日になつております。私どもはそれが当然のことではないか、こう考えるのであります。ところがそれはそのままになりましたが、やはり根強くその考えと申しますか、思想と申しますか、それが今度は警察法の改正となつて現われて来たような感じもするのであります。ところが前国会でありましたか、警察法の改正は野党側あるいは一般国民から集中攻撃の的になつて、元の警察に還元するんだ、そういうことではならぬという国民の輿論もありまして、そのうちに解散になつて立消えになつてしまつたということも、大臣その他の関係の方々は御承知の通りであります。ところが今度の国会になつてその警察法が再び出ることだと存じておりましたが、その理由のどこにあるかは存じませんが、その警察法はそのまま提案はなかつたわけであります。提案はなかつたが、今度この刑事訴訟法の一部改正というもので現われて来たのです。その一部改正案の内容を見ますと、やはり私どもが心配しますような一貫したるものが今度は現われて来たのではないか、こういうことを思いもされますし、またそういうことを遠慮なく言う声も聞くのであります。さような点について法務大臣の率直なお考えをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/30
-
031・犬養健
○犬養国務大臣 これもごもつともな御心配だと思うのであります。警察法の改正につきましては、昨日予算委員会で社会党の今澄君から質問がありまして、私はどうも飾つた答弁が下手でありますので、ごく率直な本音をお答えしたのでありますが、今度出さなかつたのは国内、国際情勢がかわつたのでもないのであります。その意味からいいますと、いいことは早くしなければならぬということになるのでございますが、しかし一方から考えまして、これはごく率直なお話でありますが、今度の総選挙以後政界の分野もかわつた。これは国民がかえたことでありまして、われわれ民主政治に献身しておる者は、国民がかえた政界分野というものには敬意を表さなければならぬ。騒擾事件などの起る国内事情からして、よい警察組織をつくらなければなりませんが、これも与党以外の警察についての考え方というものを虚心坦懐再検討する必要がある。また先般の一箇月にわたる非常に詳細にわたつたいろいろの意見交換の間において、野党の方も政府の考え方のある部分はなるほどと思われたところもあると思います。それは急がずに十分慎重に検討して、与党以外の考え方にもいいところがあつたら虚心坦懐に取入れる、国民がつくつた与党数の変動に対しては敬意を表するのが議会政治でありますので、こういうことをごくあけすけに御答弁いたしたのであります。今吉田さんにも同じことを申し上げるわけでございますが、しかし私ども考えておりまして、この社会が一応平穏に見えますその底に流れているものは、私がたまたま地方を視察に行きましても、しばしばきのう軍事訓練が山の中にあつた、おとといあつたとかいうような話を聞くのでありまして、これに対して何か従来の警察組織よりも、同時多発的な騒擾事件について処置するということは一貫しておるのであります。ただしばしば前国会でも申し上げましたように、それに急なるあまりいわゆる御心配の警察国家をつくつてしまうということは大問題であります。十分気をつけて、そうでないがしかし同時にしつかりした警察をつくる、この二つの命題はなかなか融和できない命題であります。警察というのは国民にやさしいしかし腰の抜けたものでは困る、しつかりした強いものでなければならない、しかし強いものでは国民は警察をこわがる、この二つの命題の融和はなかなかむずかしいのでおりますが、これをしなければよい警察法ができませんので、私どもは全力を上げてやつて見たいと思つております。また現在御審議願つているつもりであります。
第二の御質問の点でありますが、警察法の改正がそういうようで延びているが、埋め合せに刑事訴訟法でうんと強くして、せめてりゆういんを下げるというようなことではたいへんだと思います。御承知のように刑事訴訟法の改正は、警察法が国会審議の大問題になる前から実はあるのであります。これは世襲財産みたいなことになつておりますが、私の就任以来直してよいところは私の判断で直した点のあることは御承知の通りでございます。検察側から言えば旧刑訴の昔のように、検察官が全部指揮監督するというようなことに今の検察庁をしようなどとは少くとも考えておりません。ただ公訴の遂行を全からしむるためには、捜査の適正ということがスタートの大事なことであります。その点については検察側の一般の準則という形において警察にこういうふうにしてくださいという一般的指示をする、この指示は個々の警察の捜査のケースについて一々くちばしを入れるというわけではない、何となれば何といつても警察は捜査の第一責任者である、しかし一般準則によつて一般的な指示をする、こういうことによつて公訴の遂行を全からしむるという最終目的に有終の美をなす意味で、捜査のスタートの適正をはかる、この程度のことしか考えていないのであります。従つてこの点は警察担当の大臣でもありますし、法務大臣でもありますから、双方の意思疎通融和には相当実は陰になりひなたになり苦心しているわけであります。これを要するに検事万能の時代、検事が警察の上に乗つかつて指揮をするというような時代を招来しようと思つていろいろ条文にかこつけて何といいますか失地回復というようなことは考えていないのであります。この点は御了解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/31
-
032・吉田安
○吉田(安)委員 あえて御追従申し上げるわけではないけれども、法務大臣があなただからわれわれはその点非常に意を強うします。がんこ頭の法務大臣がやつておられては、今日の警察法の改正においてはまつたく憂慮にたえません。今捜査の点についていろいろお話がありましたが、それは先に譲るといたしまして、私は現状の問題を考えます場合に、今の総理大臣は少し権限が強過ぎると思う。これはどうお考えになつておるかわかりませんが、憲法上あまりにも総理大臣に権限が強く、そのために――今総理大臣が吉田さんだから吉田さんが例に出るのはやむを得ませんが、ワン・マンワン・マンと言うけれどもあれではやはりワン・マンにならざるを得ない。あの閣僚に対する任免黜陟というのですか、そういう権限は自由自在で、そういうものを持たしておくから勢いワン・マンになる。それがあらゆる方面に反映してああした非難を受けておりますけれども、それはそういうところに欠陥があるのであつて、吉田さん自身はワンマンを決しておすきな方じやない、憲法がしからしめているものではないかと思うのです。あまり総理大臣の権限が強いと、りつぱな総理大臣のときはいいけれども時がかわつて妙な人が妙な政党の背景に立つて、そして今のような権力を振りまわすというときを私どもは実際今から憂慮しなければならぬと思う。でありますから、そういうことを言つて総理大臣の権限を何とかもう少しどうかする法はないかということを言つたり考えたりしているのでありますが、国家百年のことを考えますときに今のあのあり方はどうか。現に今の総理大臣は御承知の保安庁長官の初代長官をやられた、今は木村さんがかわつておられますけれども、結局自己の閣僚の一人が保安庁長官である、名前は保安庁でありまするけれども実際はよく言われる軍隊の一種だと思う。その権限も握つておられる。いわゆる兵馬の権も握つておる、こういうかつこうである。それを持つて、一方は司法権――検事総長、検事、警察関係職員というふうに、縦の一本となつてその上に総理大臣がおる、そうしてこれを掌握する、なるほど国家治安の建前から考えるとこれはまつたく必要でありましよう。しかし一面人権擁護の建前、民主主義の今日のあり方から考えると、今度の刑事訴訟法の改正ということはよほど慎重に考えねばならぬことではないかと思うのであります。かつて検事フアツシヨというようなああした時代もあつたことを考えますると、よほどこれは注意をしなければならぬと、さように思うのであります。
そこで私は大臣にさらにお尋ねをいたしまするが、いつの時代にも制度の改廃ということは、これは非常に慎重にすべきものである、朝令暮改のそしりがあつてはならぬと思います。御承知の通りにこの刑事訴訟法というものはまだ実施されてからそう長くなつておりません。四年とそこそこではないかとかように考えます。二十四年の一月一日にこれが実施されておりまして、そうして一面刑事訴訟規則と同時に実施されていることも御案内の通りであります。それでこの刑事訴訟法の一部改正、口には一部改正というて提案されてはおりまするものの、しさいに見まするとどうして大改正です。だから刑事訴訟法は刑法の手続法にすぎないとは申しまするもののこれは一つの大きな法典の改正でありまするが、この改正法というものを朝令暮改の態度であつてはならぬと私は考えます。少くともこれでよろしいと思うてそれをつくり、これを確立し実施しましたならば、あの念願はやはりこれはこいつをやつて行くのだ、そうして不便の点あるいは不都合の点はいろいろ是正し、改正せずしても他の制度と相まつてそれを補つて行くというような方法で行くことが、私は大事ではないかと思うのでありまするが、わずか四年半でこの刑事訴訟法を――これもりつぱな改正であるならば、改善であるならばまだでありまするが、内容によりましては相当に改悪と言われる点もなきにしもあらずであります。かようのことを考えまするとき、やはりこれはどうしても改正をなさるという断固たる大臣は御意思でありまするかどうか、国会に出されました以上はこれは改正するために出したのじやないかとおつしやればそれまででありまするが、その点に関して大臣はぜひとも改正しなければならぬというのか、この点大臣御自身の気持を率直に承りたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/32
-
033・犬養健
○犬養国務大臣 お答え申し上げます。今御指摘のような事務的な答弁で逃げるというようなことは私も好みませんので、ごくあからさまにこのいきさつを申し上げてみたいと思います。四年ばかり前にこの刑事訴訟法ができましたが、そのいきさつを私も就任以来在野の人にもいろいろ聞いてみたのであります。占領当時のことでありまして、どうも国情に合わないところがある。しかし、合わないところがあるといつて、占領時代の是正という声に隠れて逆コースをやるということではたいへんなことになる。また国会でもそういう批判が時折ほかの法律案にあることを私も拝聴しておる一人でありましたから、十分気をつけたわけであります。そこで法務省だけでこういう刑事手続の基本法をかえるようなことがあつてはたいへんでありますので、在野法曹、裁判官、国警、法学者などにおいでを願つて、法制審議会を幾たびか開いて練つてみたのであります。その最後の結論としては、制度の基本的な構想に大きな影響を与えるきりな変更はよほど慎重にやろう。それこそ吉田さん御指摘のような朝令暮改ということになるので、それは他日のことにしよう。とにかく四年ばかり運用してみて、どうもまずいじやないか、また日本の国情に合わないじやないかと思うところだけをとりあえず急いで手当する、急ぐというのは気持の上であつて、そうあわててやつてはいかぬというわけで、法制審議会にたびたびかけた結果がこういう結論になつたわけでございます。吉田さんの御指摘の改悪じやないかというのは、おそらくこの刑事訴訟法改正の中で、控訴審の事実調べの範囲を広げる、これは人権拡大の方ですが、あとはたいがいのことは人権を拘束する方に一歩近づいておるのではないか、こういう御指摘だろうと思う。これは私も率直に認めておるのでありますページを開いてみても、やむを得ないとはいえ人権をちよつと締める方の改正が多い。これは最小限度にしたいというのが私の偽らざる気持でございます。しかし私もしろうとであもますから、目こぼしもずいぶんあるでしよう。それは私は政治責任をもつて反省すべきところは反省し、さつき猪俣さんお話のような条文は、私は相当長い訓令や通牒でもつて運用の指示をしたいと思つております。そういうふうにして、あなたのように専門家でないから、私も目こぼしというような点は虚心坦懐にお話を伺つて、運用の上において弊害を防止したい、あるいは間違つておるものはよく直して行く、そのくらいの気持でおるわけであります。しかし提出するまでにいろいろ意見も聞き、参考の書類もよく見て、この程度の改正はまあやむを得ない。一、二の字句などでまだ生のところがある、もつといい字句が見つからないのでそのまま出したのが一、二箇所ありますけれども、これはやむを得ないのではないか、最小限度必要であるというところで出したものでございますから、そのように御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/33
-
034・吉田安
○吉田(安)委員 大臣は口を開けば至るところでしろうとだ、こうおつしやるけれども、一体法務大臣なんかしろうとでいいのですよ。こせこせ重箱のすみをつつくようなことまでされる人が大臣になられたらたまつたものではありません。やはり常識の円満に発達した人が私は法務大臣にはよろしいと思う。そのほかの点は下僚におまかせになればたくさんです。その大綱さえがつちりお握りになつておれば私はりつぱな法務大臣である、かように考えるのであります。ところで、おつしやることはよくわかります、控訴審のあの点はわれわれも異議ありません。けれども、その他の面については被告側の人権という面から考慮を加えられたことはいささかもない。今度の改正はやはり捜査がどうでござるの、指揮がどうでござるのという運営面からの改正になつておると存ずるのであります。この点われわれとしてはいささか遺憾に思います。たとえば、この改正案でも問題になつております起訴前の勾留、これを五日延長された。大臣は五日くらいで法曹界の方も賛成しておるからとおつしやるが、五日延長したところで、それでははたしてどれだけ助かるかという問題であります。これは結果論からひとつ考えて行く必要がある。よくわれわれが経験した例の学生時代の試験勉強と同じことだ。期日が一週間長くなつたからといつてゆつくりしても、またあとでねじりはち巻でやつてももう間に合わないと同じことだ。起訴前の勾留期間を五日延長したからといつてどれだけ助かるかということになると、思い半ばに過ぎるものがあると考えます。といつて、私は検察局のあの忙しい姿にはまつたく同倍しています。司法部の方のこの仕事というものは、他の行政官庁と比べればお話になりません。私は不幸にして十月選挙に失敗し、また元にもどつて弁護士を始めた。やつてみると、国選弁のあの制度なんかもどうかと思う。検察庁のこの忙しい際に、どうしても国選弁はつけなければならない。弁護士がつくとまた検事もそれだけ張り切つて来る。小さい事件までつける。ちよつとした事件でも、起訴されたあとまでもつける、これはうるさくてしようがない。いわんや、雑多な何千何百とやつて来るものをみな調べ上げて、起訴、不起訴を決定する、それまでのことを考えると、他の行政官庁に比較してまだまだ優遇その他の改善をやらなければいかぬと思つておるのでありまして、こういう人権を侵害するような面から手を打たれないでも、その方面から五日や十日延長したと同じような効果の生ずるがごとき方法をお考えになることがまだよいことではないか、かように考えるのであります。予算面がどうのこうのとおつしやいますけれども、つまらないところにはつまらない金をうんと使つておる。こういう大事な点についてはもう少し本腰を入れてやる必要がありはしないかと思います。たとえば検事の住宅とか裁判所の判事の住宅とかいうものももう少しくふやしてやる、人員もふやす。検事の人も一生懸命やつておりますけれども、今の制度のもとにおいては、今のますます犯罪の多くなる際に、あの程度ではまだまだ不十分だと思う。その点からくわを入れて改革をなさるということが必要であつて、忙しくてやり切れないから検事勾留でも五日間延ばしたらどうだろうといわれても、五日間延ばしたところでさつき言つた試験勉強の場合と同じことだと思う。一体勾留期間の延長ということは、十四国会であつたか、あの時分に提案されて、法制審議会の委員の小野清一郎さんだつたかここにやつて来られて、非常に憤慨された。あのときは今の大臣ではなかつたですが、司法当局はわれわれに食言をしたのだという激越な言葉を私ども聞いたのであります。あれは十日といい、一週間といい、五日というようなことになつておつて、とうとうあれはお流れになりましたが、今度これが五日になつて来た。五日になつて来ましたから、それはあの時分からの関係を考えますと、在野法曹も、それならやむを得ぬということで、賛成するのはあたりまえであります。あたりまえでありますけれども、これはやつぱり私は今言うようなことで、人権尊重、人権擁護の建前から申しますと、大きな問題である、しかも検事の面から考えると、大した効果がないのではないか、かように考えるのであります。拘束される方の身になつてみますると、まつたくたいへんなことになるのでありますが、大臣どうでしようか、今私が言いましたこと、さような他の面からひとつお考えをくださつて、予算も一生懸命になつてとられればいい。ほんとうに、これは日本が大事だ、思想的にどうだというようなときには、この裁判所なり、あるいは検察官の優遇といい、既存設備の不十分なことは十分改善して、そうして今のような不都合な面はその点で調整して行くようにお考えくださることがいいことではないか、こう考えます。大臣の率直なお考えをひとつ承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/34
-
035・犬養健
○犬養国務大臣 一々ごもつともでございます。科学的な鑑識設備の発達ということで、身柄拘束の期間などを大分省けることも確かにございます。また検事の人員をふやすということでも、これに資するところが大きいと思うのでありますが、今御指摘の点は、大体大がかりな騒擾事件のようなもので公安事件、そればかりではないのでありまして、実は非常に大きな多人数の詐欺事件とか、手形偽造事件、こんなものを念頭に置いておりまして、昨日も御質問がありましたように、選挙違反などに使つてはたいへんでありますから、これは、大臣通牒や検事総長訓令できびしく通達したいと思つております。
御指摘の点でありますが、大体初めの十日間で問題が済むのが全体の事案の八〇%、次の十五日以内に八%済んでしまう。ですから、五日延長という場合のケースというものは、全体の何分の一に足りないのじやないか、これも一人や二人の検事の手が忙しいから、とにかく五日延ばしてぶち込んでおけということは断じてないのでありまして、多衆犯罪を目標として、多衆犯罪でも選挙違反などは目標としていない、こういうわけであります。被疑者がたくさんいて、どうにもこうにも手に負えない。そうして、いろいろ共犯の関係なんかがあつて、やむを得ず五日延ばすという、特殊の事案に限る、その限ることを明示したい。この点はきのう鍛冶委員からおしかりがありまして、大臣や検事総長がその気になつても、第一線がなかなかそうじやないだろう――第一線がそうじやないようなことをすれば、これは昇進にも関係する。われわれは、はつきり覚えておいて、人事異動のときに始末をしたいと思います。また極端な場合は、これは公務員として職をむなしゆうするものであると考えるわけであります。少くとも私の大臣中は、手きびしく処したいと考えております。これを要するに、ごく特殊な多衆犯罪の事件、それから選挙違反を除く公安事件、詐欺事件等についてやるのであつて、全体の事案の一割内外と考えております。
前々回の国会の勾留期間延長の議論も私は承つたわけでありまして、十日といい、七日といい、五日といい、いろいろ議論がわかれております。最高検のほんとうに責任を全うしたいという気持から言えば、それは十日と当時主張した論拠は無理もないと思うのでありますが、今仰せになりましたように、お互い学生生活で試験の体験もありますので、十日といえば、初めの二、三日は、悪い気ではないが、夜十時まで働くものなら七時まででやめるということに、人間は神様でないからなる。そこは非常につらいだろうが検察庁の方にも勉強してもらつて、五日で、夜おそくまで詰めてもらう。こういうことは、私は当時部内において試験勉強の例を引いて申したわけであります。吉田委員のお話とは符節を合するわけであります。そういうわけで、最小限度の必要性ということを考えておるわけであります。この点をひとつ山をかけて身柄拘束をして、そうして当つたらもともとというような考えでやつたらたいへんだという気持は、私も十分持つておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/35
-
036・猪俣浩三
○猪俣委員 もしここに、逮捕状、勾留状の濫発ありとするならば、その最高の責任者は何人であるか。私の見解をもつてすれば判事じやないかと思う。ところが、判事に言わせますと、その勾留、あるいは逮捕の要否について、あるいは必要性について、どうも判断ができない。そこで検事なり警察官なりの請求に、盲判を押すのがほとんど大部分である。ここに私は非常に問題があると思う。さればといつて、判事にその実際上の責任を負わすということになりますならば、その必要性なり要否なりについて調査をすべき用意がなければならぬが、どうも現行制度においてはあまりない。そこで、はなはだ無責任に判事は判こを押していはせぬか、これは実例が私どもにあるのであります。そこで判事にさような責任を負わせるとすれば、結局これは判事の数をふやし、予算をふやし、判事自身がある程度の調査権を持つようにしないと、これは実際はできない。そこで捜査権を検事の方になるべく統一する、あるいは警察と検事と両方に持たせると、いろいろ議論がありますか、私は判事の権限にふさわしいだけの実力を判事に持たせる一つの制度を――結局それは予算になると思うのですが、それをして、名実ともに判事が最高の責任者として、人権擁護の立場から慎重なる行動をしてるというここが、憲法の趣旨に沿うたほんとうの形じやないか。憲法では判事にそういりような権限を持たしておきながら、実際はまつたく検事なり警察の言いなりほうだいになつているというような表情、そうして、それがまた判事をどこまでも責められないような制度になつていることは、どうも私は矛盾だと思う。そこで法務大臣は、一体さようなお考えがあるかないか。つまり判事の職責を全うすることのできるだけの制度をつくり上げる。それには予算もありましようが、予算も考えて、さような制度をつくり上げるというような考えがあるのかないのか、これを一点承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/36
-
037・犬養健
○犬養国務大臣 これは私率直にお答えいたします。この問題は、昨日鍛冶さんからでしたか、この条文の文章の表現の問題から、一体判事が要否の判断をする能力があるか、どうか、またその立場にあるかどうか、それで問題か起りましたが、これは非常に考慮を表す余地のある問題だと思うのであります。今御指摘のように、予算もふやすとか、いろいろな方法もありましようが、調査権を持たせるかどうかという問題は大問題でありまして、今は私、結論を持つておりません。私、この問題は大きい問題だと昨日から思つておりますので、いろいろ協議をして、またこの次この委員会に御出席のときに意見を表明させていただきたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/37
-
038・小林錡
○小林委員長 それでは午前中の質疑はこの程度にとどめまして、午後一時半から開きます。
それではこれにて休憩いたします。
午後零時三十一分休憩
――――◇―――――
午後二時七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/38
-
039・小林錡
○小林委員長 午前中に引続き会議を聞きます。
刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を続行いたします。吉田安君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/39
-
040・吉田安
○吉田(安)委員 大臣が見えますまでに政府委員の岡原さんに一言お尋ねいたしておきたいことは、毎年行われております例の司法試補の試験でありますが、どれくらい受験者があつて、どれくらい採用なさつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/40
-
041・岡原昌男
○岡原政府委員 司法試験の受験人員は昨年が四千八百、ことしは五千百名の希望者でございます。このうち合格者は、昨年が二百五十名くらいでございます。おととしはもうちよつと多かつたように記憶いたしております。ことしは受験者がややふえております。そのうち若干の棄権者がやはり例年ございますので、実際に試験を受けますのは四千何百という程度じやないかと思つております。合格者のうち最高裁判所の司法修習生に採用いたされますのは、大体例年二百五十名前後と相なつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/41
-
042・吉田安
○吉田(安)委員 五千名からの受手があつて、大分競争激甚な試験のようでありますが、二百五十名も採用なさつておるのですけれども、もり少し採用するということはできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/42
-
043・岡原昌男
○岡原政府委員 毎年受験いたしますほとんど大半は最高裁判所の司法修習生になりたい、要するに試験だけ受けても何もなりませんので修習生になりたいという希望があるのでございます。しかし最高裁判所でも、二年間の修習に耐え、その後の判検事あるいは弁護士の劇務に耐えるようなからだの者でなければいかぬということで、ことに胸部疾患等の厳密な検査をいたします。それで約二百五十名から二百六十名前後の採用人員ということに今までずつとなつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/43
-
044・吉田安
○吉田(安)委員 そうすると大体それが限度ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/44
-
045・岡原昌男
○岡原政府委員 大体おつしやる通りほぼ限界ではないかと思います。もうちよつと質を落しまして合格者を多くして、その中からまた少し採用の範囲を広げるということも考えられるのでありまして、例の司法試験の最後の委員会の際に決定するわけでありますが、その際も、ここでこういうことを申してどうかと思いますが、六十点をちよつと切れましても、一定の線を引きまして、今年はどうも全般的に点数が低いから五十九、六分まで認めようとか、そういうことで合格者を少しふやしておる、こういうようなかげんもいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/45
-
046・吉田安
○吉田(安)委員 私があえてこういうことを聞きますことは、午前中大臣にお尋ねしたような点に関係しておるわけです。もう少しく司法部内のそうした人をふやしたらどうか、そうして検察官の仕事をあまりに夜おそくまで、まるで重労働のようなことをさせないで済むような方法をとれないものであろうか、こういう点にあるのであります。しかし今聞きますと、大体それが限度であつて、もう少しとろうとすれば今の質を落すとか、これは聞きたくない言葉ではあります。しかしこの前にも質問になつておりました通り、また試験官の採点の方法も考えなければならぬことだと思うのです。それでこういうことは急激にはできないかもしれませんが、やはりそうした方向にこうした試験を持つて行かれるように私どもは希望いたしたいと思うのであります。
引続き私は大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、第二の点は権利保釈の問題であります。刑訴の法律案要綱を見ますと、今回は「権利保釈の除外事由を若干拡張」云々、若干という文字を使つてあります。また大臣の提案理由の説明を聞きましても、今回この除外事由を一部拡張することにしました、こういうふうに言うておられます。若干拡張、一部拡張ということになつておるのでありますが、短期一年以上でしたか、これを見ますと、私は一部どころの騒ぎではなくて非常なる大拡張ではないか、かように考えるのでありますが、この点どうお考えになつておりますか、一応お尋ねをいたしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/46
-
047・犬養健
○犬養国務大臣 お答えいたします。この問題も私就任して間もなく自分にもよく納得したいと思つて刑事局の専門家と話したこともあります。今回も同じ問題を討議したこともありますが、私の認定では一部拡張というふうに考えて、実は提案の理由にも、私の承知の上でこういう文章を書いたのであります。なお御意見があれば十分虚心坦懐に伺います。
それから第二の点ですが、お礼まわりの弊害というものは吉田さんも御承知の通りでありますが、これはやつておかないと一般の人が困るのではないかという考えで、先ほど申し上げましたように、やむを得ざる最小限度のことを認めたわけであります。なお十分に御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/47
-
048・吉田安
○吉田(安)委員 例のお礼まわりは困つた問題と私も考えます。しかし「短期一年以上の懲役又は禁錮にあたる罪の一覧表」が法務省から出されておりますが、この参考資料を見ましても、こうなるとほとんどすべてのものに及ぶような気がいたしました。そういう点から観察いたしますと、またぐちかもしれませんが、午前中のような言葉が出て来るのであります。どうも改正案は人権という立場からはお考えがなくて、ただ運用の点からのみされたのではないか、こういう気がいたすのであります。言葉をかえて言うならば、人権を担保にしてその方面の仕事の都合をおはかりになつておる、こういう感じもいたすのであります。まことにこの点は私遺憾に思うのでありますが、大臣はこれをやはり維持して行かれるお考えでありますか、重ねてお尋ねをいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/48
-
049・犬養健
○犬養国務大臣 これは少し専門的になりますので、刑事局長より十分に御説明をいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/49
-
050・岡原昌男
○岡原政府委員 今回この八十九条の関係で第一号を動かしましたゆえんのものは、主として従来法廷等で問題になつた強盗その他が問題でございます。これはその当時、去年からおととしにかけましてしばしば新聞紙上にも出たのであるいは御承知かと思いますが、現に東京の裁判所で権利保釈になりまして出た者が二度目の強盗をやつた、中にはたしか一件だけだつたと思いますが、三回やつたというのを私確かに記憶しております。その当時新聞でも、これはどうも困るじやないか、かんじんな強盗について、いくら権利保釈とはいえそれを防止する方法は何にもないのかということがやはり問題にされまして、現行法としてはどうにもやむを得ない、本人が保釈中は保釈の条件をよく守つて、さようなことをしないようにということを保釈で出すときによく訓戒するほかはしようがないということでお茶を濁しておつたのでありますが、これではどうも収まりがつかない。そこでこれをどの程度のものに限つたらよかろうかということでいろいろ研究いたしたわけであります。考え方といたしましては二年、一年、三年、いろいろあるわけでございますが、いわゆる重罪という観念が短期一年以上で従来もずつと通つておつたわけでありまして、短期一年と申しますと、少くとも一年以上という法定期でございますから、長期はもちろんずつと多いのがございますが、さようなものについては当然権利保釈から除外した方がいいではないか、そうしてわれわれが最も問題としておるただいまの強盗とか営利誘拐とかあるいは人身売買、強姦というようなものも全部権利保釈の除外基準に入つて来るわけでございます。大体その辺のねらいが一番いいのではないか、これが一年ときめた理由なのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/50
-
051・吉田安
○吉田(安)委員 次にお尋ねいたしますことは、今回の刑事訴訟法の改正の山とでも申しますか、百九十三条の問題でありますが、公判手続では、その主宰者はもちろん裁判所でありますが、その前提となる捜査の点であります。これは今までの旧刑訴法時代からの観念から申しますと、検審官であつ、司法警察職員、警察官はその補助機関であつた、こういう建前であつたことはもちろん御承知の通りでありますが、今日のこの新憲法下におきます。刑事訴訟法の建前になりましても、やはり捜査から公訴になる、この観念は以前の観念がどうしても払拭ができないのでありまして、また実際これを分離すべきものではないと私どもも考えるのではありまするけれども、今回の検察官の捜査に関する権限を百九十三条の改正のように、これを適正に公訴の遂行を全うするために云々というところまで持つて行くということは、ここに非常な問題があるように考えられまして、朝野の間におきましても相当問題を起しておるやに聞いておるのであります。当局といたしましてはやはりどうしても適正云々という文字をお使いにならねばいかぬのであるかどうか、従来の程度ではなぜ悪いか、この点をひとつはつきりお示しを願いたい、かように思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/51
-
052・犬養健
○犬養国務大臣 この問題は、今度の刑事訴訟法の改正において一番社会でも注目して見ていますので、できるだけ誠意を尽して丁重に御説明申し上げたいと思います。検察官の本来の職務が公訴官である、それから第一次的責任者は何といつてもこれは司法警察官である、これはかえることのできない原則でありまして、本条もこの精神のわくから出てはならぬ、そこで公訴官たる検察官の職務を全うするためには、公訴の遂行を全からしめるということになりますが、それはどうしても捜査が適正であつてもらわなければならない、そこで捜査の適正を望む検察官の司法警察官に対する態度は、一体無制限でいいかどうか、無制限だと旧刑訴になる、それでは制限のわくをはめるのにどうやつてはめたらいいかそれは一般的準則というものを検察官が示すことによつて、その程度で――一般的準則のほんとうの精神はどこにあるかと申しますと、個々の事件を直接の目的として一々司法警察官にさしでがましく干渉する意味ではない、大体こういう事件はこういうふうな捜査方針をとつてもらいたい、そういう一般的準則であります。それで全然個々の事件に影響がないかといいますと、準則でありますから影響がなければ書かない方がいいのでありまして、影響を予想しての準則でありますから、間接的な影響はあります。しかし一々くつで踏み込んで、この事件をああしろ、こうしろという考えは全然ないという意味において、一般的準則によつて指示をする、こういうふうに一つの検察官の指示にも抑制を与えておるわけです。従つてこの意味において旧刑訴の検察官が万事の指揮をするというような考えは毛頭持つておりません。こういうふうにお考えいただきたい。ではなぜこういう字をわざわざ入れたかといいますと、ちようど今度ほかの委員会で御審議を願つておりますスト規制法と同じでありまして、ストライキの違法のわくというものに一部いろいろ学説などがありまして、疑義がある、違法性のわくを今度のスト規制法で再確認するというあれは解釈規定のつもりでございます。少くとも法務省の立場はそういう立場をとつております。これも従来捜査というものと公訴の遂行というものは、何か電車の乗りかえみたいに別のものになつておるという一部の考え方がありますので、そうではない、これは一連のものであるが、しかしそうかといつて一連だというりくつに便乗して、個々の犯罪の事案まで一々検察官が警察官を指揮命令するという意味ではない。それは準則というところから解釈がわかれて来る、こういうふうにわけたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/52
-
053・吉田安
○吉田(安)委員 問題はそこですよ。今までのように「一般的指示は、公訴を実行するため必要な犯罪捜査の重要な事項に関する準則を定めるものに限られる。」ということ、実際そういうことに携つておるのではないのでありますから、ぴんと来ないかもしれませんが、これだけでたくさんではないか。「捜査を適正にし」という文句が今大臣のおつしやるような建前、またはそういう御意見を聞くと、適正にやるのだからということでまことにりつぱです。ところがこの適正にやるというこの文字が実はくせものです。ですからときによりますと、そこに何か人にもよりますが、それをいかようにでも解釈の方法はやはりつき得るのです。そこに非常なる危険を感ずる。でありますから、ここまで入り込んでしまうことがどうであるか。よほどこれは要心しなければ、結局元の旧刑訴時代のような建前にもどつてしまつて、検察官のもとに司法職員までもとりまとめてしまうというような結果になつてしまいはしないかということを非常に懸念する次第であります。総括的な質問ですから、詳しく掘り下げたことは逐条審議のときにまたお尋ねしたい、かように思うのであります。いずれにしましても、今回のこの適正という文字の字づらだけを見ますと、まことにけつこうでありますが、これが運用ということになりますと、今申したように危険を伴うということを憂うる次第であります。元来私ども長年政界に関係しておりまして、実を申しますと、検事局の方には理解があるのです。警察にも理解がある。またさつき司法試験の話も出ましたが、そういうものを私ども受けて来て、司法修習もしていささかでも司法部内のことがわかつておるような気がしますから、非常な親しみを持つておる。そういう建前から長年選挙などに関係しておりますと、警察のやり方に対しては実にこぶしを固めて憤慨した時代もあるのでありますが、それは以前のことでありまして、今日この民主主義の時代になつております以上は、せつかく現行刑事訴訟法がこうやつてありまする以上は、なるほどお説にあるように、この刑事訴訟法のすべてがいわゆる当事者主義的云々、私どもはそこまでは考えません。当事者主義だから捜査の方面で云々というようなことは言いたくないし、またそう思うてもおらぬのであります。やはり公訴と捜査は、これは観念的にも分離してしまうということは、いかがかということは私どもも十分承知しておるのであります。何も現行犯としてただ公訴をするだけだ、そしてそれについては予審も開かせないのだ、そうして裁判の方に持つて行くのだ、こういう狭い打切つた捜査の面と、打切つた考えは私どもないのであります。ないのでありまするけれども、現行法の建前から行きまして、これをわざわざここまでお考えになつて改正なさるという必要が絶対にあるかどうかを疑つておるような次第であります。しかしこれはまた後日に譲つて、時間の関係もありまするからさらに次に進みたいと思うのであります。
次の第三点の問題は、今の問題と譲らない警察官の逮捕状の濫用防止の問題でありまするが、これはどちらにもりくつはある。私ただいまこうでなくてはならぬということをきめて、そしてお尋ねをするのでも何でもありません。総括的に結論に達しまする過程においていろいろお尋ねをしておる程度であります。私の知る範囲では、十三国会まではこの警察官の逮捕状云々ということについては、そうやかましく云々されておらなかつたのじやないか、かように考えられるのであります。同時にまた刑事訴訟法の改正ということが叫ばれておりましても、午前甲に申しましたように、起訴前の勾留の延長ということは非常にやかましく言われておつたのでありまするが、この警察官の逮捕状の濫用という点については、さほど問題はなかつたやに思つておるのであります。十四国会でこれがちよつと出たようでありますが、それは時のああした関係でお流れになつてしまつた。十五国会から突如としてこの問題が大幅に強く取上げられて、そして今度の国会にはつきりと正面切つて出て参つたのでありまするが、問題は、制度も大事でありますが、要は人であります。その人を得なかつた場官には、検事の方に全然一任しておつてもやはり大きな問題を起すこともあるし、またかつて事実起されておつたことが雄弁に物語つておるのであります。それでどうしても同意を得ねばなりないだけの必要性がはたしてあるのであるかどうか、言いかえまするならば、そうはせぬでも他に適当な方法はないのであるかどうか、またそのことについて十分御研究なさつておると思いまするが、適当な方法がありまするならばお示しを願つて審議の資料にいたしたいと思うのであります。ただないからこういうのを出したのだとおつしやるならそれまででありますけれども、あるいは思うのに、こうした方法もあるがなあというところで、遂にそれが表に出ないでおるようなこともありはしないかと考えるのであります。そういうような点について率直なる御意見を承りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/53
-
054・犬養健
○犬養国務大臣 この問題も、本改正案の一番社会的の注目の的になつておる点だと思うのであります。私ども約数箇月、ある時期はほとんど毎日この問題ととつくんで苦慮したわけでございます。どうしてこういう問題が起つたか、私の就任前の前々大臣のときにも、刑事訴訟法の改正の御審議をお願いしたときにこの条項の改正が載つたわけであります。そのときには、「承認」という字を使つて、逮捕状の請求の場合は検察官の承認がいる。世に伝えられます大部分の警察官はそうでありませんが、一部の警察官の逮捕状の請求の行き過ぎ、これは人間でありますから、ぴんからきりまでありまして、ときたまそういうことが事実ある。しかしその場合でも、検察官の承認という字は、私考えまして言葉の感じ、主観でありますが、旧刑訴のにおいがあると思いましたので、私の政治責任において「同意」という字にかえて、警察官と検察官は同等の立場のような感じを社会に与えたい、こう思つたわけでございます。しかしこの「同意」という字も世界一適当な字かどうかと言われると、どうもそうだと私は言い切る自信は率直に言つてありません。表現のことですから、もつといい字があればお示しを願いたいと思いますが、政府当局としてはまあとにかく事柄を二字の漢字に縮めることでありますから、なかなかむずかしい。「同意」というのが今考えられる一番適当な字ではないかと考えたわけでございます。そこでどうしてこういうことをしなければならぬのかということになりますと、結局これは大部分のりつぱな、今ことに向上しつつある警察官にはお気の毒なんでありますが、一部刑事事件でも、民事事件でも、逮捕状の請求に当を得ない場合があるという声が、実は吉田委員のお仲間の在野法曹など非常にやかましいのでありまして、これもやはり国民の意思の反映だと思つて私どもは敬意を表して、その事実の有無を研究、調査したわけでございます。それで私は国警担当の大臣でもありますので、この辺なかなか言いにくいのでありますが、検察官の同意、何かの形で検察官の意思の反映が逮捕状を出す裁判官にも反映する必要があるだろうという認定のもとに、しかしその言葉は特に意を用いて旧刑訴的なにおいの薄い字を選びまして「同意」といたしたわけでございます。
もう一つは、先ほど猪俣委員の御質問に触れるわけなんでありますが、大体裁判官というものが、そういう認定にどのくらい能力があると一体社会が認めているか、適法かいなかということは、裁判官は商売ですから、これはすぐわかる。しかしこのくらいの事件なら逮捕状を出さないでもいいのじやないか、少し小さ過ぎやしないか、違法にしても小さ過ぎはしないか、あるいは違法にしても今逮捕状を出すのが適当であるかどうかという妥当性の問題になりますと、これは学説に、御承知のようにいろいろありまして、妥当性を判断するに裁判官が適するという説もありますが、そこまでは適しないという説も相当多い。逮捕状の請求を受取つた受身の裁判官としましては、できるだけ角度の多い方面から意見を聞く必要がある。従つて第一次的捜査の責任者である司法警察官の書いて来たことは、よくよくだから逮捕状を請求したのでしようが、念には念を入れということで、今度は公訴官たる検察官の意見も反映させてみる方が、人民の人権擁護からいうと大分手が混んでいいのじやないか、こういう考え方なんであります。別にあらゆるすき間をねらつて検察官が旧刑訴的に司法警察官の上へ行く、階段を一段々々上つて行こうというような考えはないのでありまして、数の多い若い検察官なんかにはときたまああと聞いておりますが、それは私の意思に反する検察官でありまして、私はそういうことを認めませんし、そういう者があれば厳重に訓戒をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/54
-
055・吉田安
○吉田(安)委員 検事総長の御意見をあわせて伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/55
-
056・佐藤藤佐
○佐藤説明員 ただいま法務大臣から申されました御趣旨とまつたく同意見でありまして、私から何も補足することはないと思いますが、検察庁といたしましても、この逮捕状の請求手続に関する百九十九条の改正につきましては、現行刑事訴訟法ができました当時は、第一次的な捜査の責任者である警察官が逮捕状を請求して、裁判所がそれに許可認可をすればそれで十分事足りるように私どもも考えておつたのであります。ところがその後四年半余りの実績に顧みますと、方々から逮捕状の請求について濫用があるのではないかというような非難の声をしばしば聞いておつたのであります。最初のうちは、警察官が独立して捜査をするということが初めての制度であるから、だんだんなれたらそういう非難も少くなるだろうというふうなことをわれわれは期待いたしておつたのでありまするが、最近に至りましても、どうも逮捕状の請求について濫用のおそれがある、逮捕状を発するについてはもつと慎重な手続をして、人権を擁護すべきではないかという声が依然として消えないのであります。かような状態のもとにおきまして、法制審議会においては法律家ばかりでなく実業家の方も見えておりますし、また学者も見えておりまして、法制審議会においてたびたび論議を重ねて、そしてこの程度の改正をしなければならぬという結論に達し、その結論に基いて法務省の方でかような改正案を立案されたのでありまするから、私どもといたしましては、最初に刑事訴訟法を立案する当時のような気持がそのままこの実行の面においても行われ、何ら非難すべきことがないことを望んでおるのでありまするが、今申し上げましたように、実績の経過にかんがみて何らかの慎重な手続に改正する必要があるという声に応じまして、私どももかような改正案に対しては賛成いたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/56
-
057・吉田安
○吉田(安)委員 大臣がこの刑事訴訟法改正については数箇月の間取組んで研究をなさつたことを大いに多といたします。当時は同意ということでなくて、承認だつた、承認ではどうも表現が悪いから、いろいろ研究なさつた結果同意ということにしたのだというそのお言葉も、そうであつたかもしれません。しかしこの問題が急に起つたということは――私はあえて急と旨いたいのですが、おそらくこれは在野法曹あたりでも、昨年の十月選挙この方拍車をかけてかような問題が取上げられたように私は感じまするが、この私の考えは間違つているでしようかどうでしようか、その点お尋ねいたしたいと思います。昨年のあの選挙以来、非常な検挙をやつたわけです。それでこれではいかんぞということでそういうことになつたのではないか、お尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/57
-
058・犬養健
○犬養国務大臣 詳しい事実については刑事局長から答弁させます。選挙も一つの拍車をかけた原因だと思います。何しろ全国各県選挙しない人はないのであつて、それが一々逮捕状に関係がありますから、いろいろ自分の刑訴についての苦しい体験を述べられて、これが社会に反映するということは確かにあつたでありましよう。しかしこの問題は私は選挙前からいろいろ聞いており、かつ吉田さん御承知のように一部の民事事件などでどうもおもしろくない問題があるやに聞いておりました。これも全般の警察官から見ればほんのわずかなものだろうと思うのでありますが、しかしやはり社会に反映するところが大きいのでございまして、選挙以前から私はいろいろの方面から耳にしておつたと思います。私のように当時この世界から遠い者でさえそのくらい聞くのでありますから、法律問題に関心を持つておる人は、もつとこの問題に触れておられたことと思うのであります。選挙も確かに一つの要因ではありましたが、その前からだんだん法曹関係では問題になつておつたように思います。但しこれはここに専門家がおりますから、私より詳しい答弁ができると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/58
-
059・岡原昌男
○岡原政府委員 経過を申し上げますと、刑事訴訟法の改正に関しまして法制審議会が動き出しましたのは、二十六年春でございます。その際に一応いろいろな問題を取上げたのでございますが、いろいろ準備期間がございまして、本格的に動き出したのは九月ごろになつてでございます。その際問題として取上げたものは、たしか全部で、大きくわけまして約三十前後、細別いたしますと、六十幾つかあつたと思います。その中に逮捕状の検察官経由という今の問題が入つておつたわけであります。当時いろいろないきさつで、それをとりあえずの問題に取上げずに、第一回目の法制審議会の答申はそれに触れておらなかつたわけでございます。昭和二十七年三月に答申がありました分について、それがないものでございますから、最初の国会に御審議を仰いだ法案には入つていなかつたわけでございます。その法案が国会に出されました。昨年の春でございますが、当時御審議を仰ぎました最初の質問を、実は私はつきり覚えているのでございますが、今回の改正の中には百九十九条の改正は入つておるかということの、どなたでございましたか、御質問を受けました。いや実はそれは入つておりません、それはいかぬ、これは重大な問題であるから早急に準備して入れろというようなお話がございましたので、それがまあきつかけになりましたが、その後にまた法制審議会のときに問題を幾つか拾つた中にそれを入れて、その次の法案としてつくつた、かような順序になるわけでございます。従いまして昨年の十月の選挙のあとにその問題が具体的には出て参りましたが、――問題というか、法案としてつくるのはそのあとでございましたけれども、話の出ましたのは、一昨年の春から夏にかけてすでに出ておつたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/59
-
060・吉田安
○吉田(安)委員 突如として出たのではなくて、二十六年の春から云々という政府の御答弁でありまするが、実は私どもも痛しかゆしの感じを持つておりますのは、以前はどうも犯罪捜査あるいは逮捕するのに、警察にもある程度のそうした権限を与えぬと間に合わぬのじやないかということを言うておつた時代もあるのであります。それが結局、現行刑事訴訟法ではこういう形になつて現われて来て、さてやつてみると、どうもめちやくちやなかつこうであります。めちやくちやというのは、――斎藤国警長官もおられるのですが、どうも日本人というものにはそういうところがあつて、私は嘆かわしいと思うのでありますが、そのことを特に警察官に見るのであります。占領されておる間選挙はやりつぱなし、マツカーサーはほかのことをやかましく言うが、選挙だけはやりちらかしで、どういうことをやろうが一向におかまいなし、飲ませようが、食わせようが、そのことについてはあまりやかましく言わなかつた。そういうかつこうで、政府自身もまたその取締りをあまりしようとしなかつた。政府がその通りだし、占領者の方でもそういうふうだから、従つて警察あたり、ひどいのになりますと選挙のときには、選挙民と一緒にあぐらをかいて酒を飲んでいる。こういうかつこうもあつた。われわれも選挙をしながらこういうことではいかぬじやないかと思つて、私は白石の二世で私の懇意なやつとうちへ呼んで、外をながめなさい、外ではこういう選挙をやつているがこれでいいかと言つたら、これでけつこうでしようと言う。あきれ返つてしまつた。私は占領政策をちよつと疑つてみたのです。選挙ほど大事なものはない。買収、饗応、そういうことばかりやつて愚にもつかないやつが、金力に物を言わして出て来る。それが国会であぐらをかいているようなかつこうになつたら日本はどうなるかということを考えて、私は実は心配をしたような経験を持つております。ところがいよいよそうでなくして、今度は独立になつた。さあ選挙も厳粛にやらなければならぬぞということになると、驚いたことにきのうまでは選挙民と一緒にあぐらをかいておた警察官が、今度は候補者が手弁当でちよつと行つて、有志のところでお茶一ぱい飲んでおつても饗応したろう、酒を飲んでおつたんじやないか、何かやつていたんじやないかということで、ありとあらゆるそういうことまでもやつた。それが十月選挙の現状である。そうして検挙が非常に多かつた。今度の選挙でも検挙が非常に多かつた。これでは困るのじやないかというようなことも、私はこの改正案が現われた一つの大きな原因じやないかと思うのであります。この点については、警察、特に国警の総元締めであられる斎藤国警長官はどういうお考えであるか。私が今言いましたようなことで、思い当られることがありますか。そういう事実は十分御承知でありますか。御承知であるとすれば、将来もあることであります。制度ばかりいくら考えてもだめなんです。要は人間なんです。その点をお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/60
-
061・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 率直に私お答えを申し上げますが、吉田委員のおつしやいますることは、私の胸にひしひしと思い当るものがございます。もちろん令状の濫用があるという声は、ただいま吉田委員からもお話がございましたように前から問題になつておりました。昨年の十月選挙の結果、当時朝野をあげての声だつたと私は感じております。さもあつたであろうと思うのであります。選挙は占領中まつたく放任状態であつた、しかし独立したが最後、非常にひどいやり方をしたというお話でございましたが、外部からごらんになれば、さもあつたであろうと思うのであります。私現在の職を拝しまして以来、選挙取締りのたびに非常に心を砕いております。選挙の取締りの公正、それから民主政治、ことに議会政治を維持するためには、選挙がきれいでなければならない。これを放置しておけば、議会制度の否認の声があるいは他から起つて来るという考えのもとに、私は相当意を用いておつたのであります。しかしただいまお述べになるような状況が、前から若干あつたと私は思います。十月選挙の前、昨年の一月ごろからでございましたろうか、事前運動が非常にはげしい、これを何とかせいという声が議会の中でも非常に強くなつておつた。また野の方におきましても、公明選挙運動が強く起つて参りました。議会の内部でも、世論も公明選挙がここまで言われるようになつた。警察もこれにおこたえすべく格段の努力をしなければならないということで、私は十月選挙には今までにない考えを持つて、公明に、良心に恥じない選挙の取締りをやつて行こう、そして警察法が施行されてもはや四年余りにもなりまするし、警察官も相当教養を積んで来た、一党一派に偏したりあるいは不当な取締りをするということはおそらくないであろう。ここまで来たら、この国民の声に応じて選挙の取締りを厳正にやつても、非難をされるような事柄はまずなくてやれるのではないか。実際私の腹の中を申しますとそういう決心で、良心的な、心に恥じない警察官として何者をも恐れない、何者をも憎まない、何者にもとらわれない、そして取締りを受ける者にも納得されるような良心的な取締りをせいということを強く申したのであります。結果は非常にたくさん被疑者を出しまして、私の予想しておつた以上の数になりました。しかし私はまだ警察官の教養が不十分な点があつたことは当時認めましたが、故意に令状を濫用したり、あるいは一党一派のためにやつた者は比較的少かつたと思うのであります。今般の選挙に際しましては、前回の選挙にかんがみさらに捜査の段階において反省すべき点は反省し、行く、これは大臣の御指示もありました。各省、県、管区あるいは本部においても、前のやり方についてさらに一段とその結果を反省して、納得の行、取締りということに重点を置いてこのたびの選挙に当らしたわけであります。ことに令状の濫用という点が最も注意されるべきでありまするので、今回の選挙におきましては――これは一般の令状請求の際にも、原則として事前に検事と連絡、打合せをしてからとるようにという指導はいたしておりましたが、今回の選挙におきましては、令状の請求は原則として必ず警部補以上にして、それから検事に連絡をし、協議の上でとるように、これを全部帳面をつくつてそこにつけておいて、そうして捜査規範にある通り、隊長の指示を仰いで、隊長の判断によつて、さらに検事と連絡して、そして令状を請求するように、いつわれわれが行つても、いつ幾日何検事とどういうことをしたということを帳面に書いておくようにということを指示いたしまして、これを実行させたのであります。自警におかれても、私の方の方針とほとんど同じ方針で臨んでくれたと考えております。自警、国警を通じまして六千八百人ほど令状の請求をいたしましたが、私のただいままでの調査の結果では、その六千八百余りの令状の中で、特に緊急を要するとかいう件と思いますが、令状をとるについて検察官と事前に連絡をしないで令状をとつて逮捕したというのが、国警、自警を通じて三件ということになつております。この三件につきましては、国警の管内のものにつきましては、私はその責任を追究するつもりでおるのであります。令状を請求いたします際に検事側と意見が違つたけれども、令状を執行したというのが、私は一、二件はあろうかと思いますが、ほかにはないと考えております。また警察側では、御承知のように選挙違反においては、たとえば、捜査が進んで参りまして令状を請求し逮捕いたしますと、四十八時間たてば検事の手に渡りますから、あとの事件は実際検事と相談の上でやるということになつておりますが、検事側からこれを逮捕してはどうかと言われた場合に、警察においてそれはすべきではないじやないか、任意取調べがよろしい、そうかというわけでそうなつたものもありますし、あるいは検事側だけでとられた例もないとは申せないと私は思つております。しかし今申しました数字は、あるいは検察側からそうではなかつた 国警においては連絡なしにこういうことがあつたということがまたわかつて参りましたら、私はその責任を追究して、そして何らかの懲戒をいたすつもりでおります。
令状の濫用について他によい方法はなかつたかというお話でありますが、われわれの側といたしましては、先般もちよつと申しましたように、令状の請求権者を、司法警察吏員の中から特に警部あるいは警部以上というふうに制限のできるような規定をこの刑事訴訟法に置いていただいたらもつといいのではないかということと、それからどうせ事件はすぐ検事の手に渡るわけでありまして、原則として検事と意見が合つて、そして調べに進むというのが普通でありますから、検察側と事前に連絡をし、お互いに意見を交換する機会をなるべく設けることを遵守する必要があるので、刑事訴訟法においてこのことを明記しておくことが必要ではなかろうか、しかし検察側がいかぬと言つた場合に、検事が同意をしなければ絶対に逮捕ができないのだという制度になることはよくないだろう、今の法律上はその場合は判事が令状を出し得るごとになつておりますが、そこまでする必要はないのじやないか、かように考えておりますが、なおこの同意ということによつて起る弊害の点はまだありますけれども、それはお尋ねの点ではございませんから、申し上げません。
なお判事が令状を出される際に、いま少し疎明の事項等をよく見ていただく、そうして単に請求者のみならず、その監督者が責任をもつて承認を与えたものについても、判事側におかれまして、ただ形式だけというのではなしに、疎明事項が完全であるかどうかということについても、もつとよく判断していただくように、あるいは道徳的規定でも置いてもらえばもう少しよくなるのじやないかと思います。民事事件というようなものを、警察官が自己の悪意のためにだれかから頼まれて、あるいは恩怨のためにこれを用いるというような場合の防止に至りましては、警察官そのものの監督によるよりほかないのでありまして、かくかくの事件でございますといつて書面にその犯罪事実を明記し、検事に相談いたした場合は、検事でもこれを拒否することは困難じやないか、むしろ本人の日ごろの性格なり交友関係なり、そういうものから判断し、事件の全貌を警察の監督上司が聞いて、その令状の請求の当否を決定することの方がなお効果的ではないか。検事の同意を得るというということであれば、警察の監督者はまず検事の意見を聞いてみ、検事が同意して初めてそれではよかろうということになるので、かえつて令状の濫用の防止はできないのじやないか。検事側は検事側で、警察から持つて来た、そんなものを逮捕したら、これはけしからぬと言つて、あとでしかられるというようなことで、すぐ釈放されるということであれば、警察にとつては最も痛いのであります。やはり検事は検事の立場から監督して行くと申しますか、検事の手に入ると同時にゆだんなくやつて行く、警察は警察の責任において努めて行くということが望ましいのじやないか、私らはそういうふうな見解を持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/61
-
062・吉田安
○吉田(安)委員 あと一点で私は打切りますが、ただいま齋藤国警長官が、この席上で、真摯に率直にいろいろお答えくださつたことを非常に多といたします。こういう点はどうかと思うようなことが多々ありますためにいろいろな角度からお尋ねしたいと思つたのでありますが、明日はまた齋藤長官が当委員会においでになるので、その席上でいろいろ質問が出ることと存じておりましたが、ただいま率直な、こうしたならばよかろうと思うというような点に触れて遠慮なくお話されたことは私非常に多といたします。私ども審議をします上にたいへん裨益するところがあつたと存じます。
最後に法務大臣に伺いたいのですが、先刻も申しましたように、警察法は前国会で御承知の通りの状態になつて、いずれこれはまた出るべきはずのものだと存じておりましたが、しかるに今回それが出ずして、刑事訴訟法が出て来て今審議されております。そこでこの刑事訴訟法の改正がかりにこの議会で成つたといたしましても、警察法というものもまた出て来るのでありますから、でき得ることならば警察法の改正の提案があつたときに、それと一緒ににらみ合せて国会で審議するということも一つの適切な方法じやないかと私は考えるのでありますが、その点についての大臣の御所見を承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/62
-
063・犬養健
○犬養国務大臣 これもあからさまに申し上げます。その場合も大分考えてみましたが、その方が妥当で、そのことがまるく行くのじやないかというような立場からいろいろ考えてみましたが、どうも大体法律を改正したり、法律をつくるということは当該省だけで独断でやつてはならぬのであつて、社会の感情、社会通念というようなものがバツクになければ、これは何もならないのでありますから、その意味でいろいろ各方面に聞いてみましたが、今度刑事訴訟法の改正の審議をお願いする以上、この問題も同時にしていいのであつて、そうしてただ審議をお願いする心構えとして、警察法の改正の場合に、またあわててそこだけ直すというようなことではなく、警察法の改正が他日ある場合も予想して、それとバランスのとれた警察官対司法警察官の関係をわれわれはここで明らかにしなければならぬという心構えでやるという意見がどうも大多数であつたように感じます。私の政治判断の責任において今回これをまげて審議をお願いするここになつた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/63
-
064・吉田安
○吉田(安)委員 私はこれで打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/64
-
065・小林錡
○小林委員長 田嶋好文君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/65
-
066・田嶋好文
○田嶋委員 質問の順序が私の方へまわりましたので、御質問を申し上げたいと思います。実は質問する前にお断りを申しておきますが、私たち自由党の議員としいたしましては、政府を出しておるわけでございまして、法案の作成に対しましても、政府提出法案であります以上は、陰に陽にその内容を検討し、心構えも実のところ本日までにできておるわけであります。そのできておりますところの私たちが、犬養法務大臣に対しまして、あまりにも極端な質問をするということは礼を失するということになるかもしれませんが、この点は国民を代表した代議士の立場で遠慮ないところで聞いているということで、こちらも思い切つた質問をいたしますので、思い切つた御答弁をしていただきたいと思つておるわけでございます。いろいろこまかいことはあらためた日にちにお聞きいたしますが、この法案の大綱として率直に私の認めたいと思いますことは、いろいろ国会に出まする法案には利益関係その他で反対が出ます。一番この法務委員会で取扱つて問題になりました、悪法だと言つて世間から非常な非難を受けました破防法、これもつくり、なお今回の国会で審議されておりますストライキ禁止法等に対しても、非常な反対が出、世論も反対でございますが、私はこの反対の世論の強いストライキ禁止法や破防法と本刑事訴訟法の改正案と比べて、一体どれが悪法だろうということを考えますと、私は率直に言つて、今度の刑事訴訟法の改正くらい世間から見て悪法はないのではないかというくらいに考えておる一人であります。ストライキ禁止法や破防法というのは、反対する人は限られておるのであります。この反面限られた反対者に対しまして、限られた多くの支持者を持つて、この国会で審議された法案であります。ところがこの刑事訴訟法改正案は限られた反対者がないと同時に限られた賛成者もない。いわば改正案一つ一つを見て参りますと、一つ一つのすべてに対して各人ともに疑問を持つて、各階層が疑問を持つている、こういう法案のような形を構成しております。そこで私この国会の初めに、今日の内閣におきまして、これは大臣をおだてるわけではないのでありますが、一番常識にたけて、一番人気のある犬養大臣、この犬養大臣の人気、名声を落したくない、何とかいい方法はないものか、落したくないとすれば、犬養大臣御賢明であれば、この法案は今国会には提出されないのじやないかということすら期待を申し上げた一人であります。大臣のときばかりでなしに、この法案には二回も法務大臣の先例がございまして、大橋法務総裁の当時に出ましてこれがつぶれ、木村法務総裁の当時に出まして、これまたつぶれ、そうして今回三代目の犬養大臣のときにこの法案をつくろうというのでありますから、私は歴史から考えてもこの法案に対して大臣としても相当お考えを願つておかなくちやいかぬ問題がある。こういうふうに考えてみまするときに、これだけの悪法を絶対今国会で成立させなくちやならぬという気概に燃えました大臣の急迫した気持というものは、どこから一体現われて来たか。この二回もつぶれている法案をまたむし返して、しかもこの騒々しい国会でどうしてもつくらなければならぬのか、それだけの緊急性があるのかないのか、これをひとつ率直に承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/66
-
067・犬養健
○犬養国務大臣 ただいまのおしかりは非常に心に響いて拝聴いたしました。悪法という言葉の気持はわかるのでありますが、なぜそうおつしやるかといえば、人権擁護の立場におられます在野法曹中の錚々たる田嶋委員がおつしやるという気持もわかるのでありまして、しばしば私が申し上げまするように、今度の刑事訴訟法の一部改正という法律案の中で、田嶋さんのような、人民をかばうことで一生を貫こうという立場の方から見て、これはいいとおつしやる条項は結局控訴審で、事実取調べの範囲を広げる、事後審から覆審的な要素を取入れる、そのほかは全部人民の人権を拘束しているごとばかり書いているじやないか、一体これでお前文化人なのかというようなことだろうと思うのであります。この点は、理由は何であれ、日本国民の人権を少しずつナイフで削るように拘束する条項をたくさん固めてここで御審議を願うというのは、よくよくの必要でなければならぬ、こういうことで、決して私は意気揚々と出しておるのではないのでありますが、やはり法というものは社会にどうしても必要だ、法のないような理想的な世の中をつくるようにお互いに一生努力するのでありますが、悲しいかな、どうも私の目の黒いうちは法というものが厳然となければ人間はうまく行かないというような意味において、やむを得ざる必要として出しているという謙虚な気持になつているわけでございます。御承知のようにこの法の専門家にも十分意見を聞かなければなりませんので、先ほど検事総長も言われましたように、法制審議会にたびたび熱心かつ長時間の御審議を願いまして、その中には一色の委員ではいけないと存じまして、学者もいれば実業家もいれば、在野法曹もおられる、国警の代表もおられるというところでしばしば審議をしていただきまして、これもごく率直なお話でありますが、弁護士連合会の代表の方が最近、裁判所における勾留理由の開示の問題はまだ弁護士会として意見がまとまつていないけれども、あとの問題は大体まあこの辺だろうと思うから賛意を表するというようなことで、私のような学問のない者はほつとしたようなわけであります。政府としてこれが当然なんだというようなおごつた気持で出すようなことであつては、この運用はとんでもないことになるのではないか、これはまことにやむを得ないことで、人民にとつてはお気の毒なんだが、これくらいのやむを得ないことはひとつ国民の代表が審議してもらいたい、こういう謙虚な気持でやつているわけでございます。従つて私はここに問題になつております、今朝の猪俣委員の二百十九条の二に関する御議論も、なるほどそういう御心配もあろう、これはよくよく大臣の通牒とか検事総長の訓令で厳重なものを出して弊害が起らないようにしなかつたら、まつたく見張り番に立たれた店やなんかはたまつたものじやない、こういうような気持になつておるのでありまして、この条文について十分御叱正を願うと同時に、条文について読み違えが、数多くの第一線の職員の中にありそうなことについては、厳重に大臣通牒あるいは検事総長の訓令でもつて補うよう、ほんとうにへりくだつた気持で御審議を願つておるのでありまして、悪法だというお言葉は、決して不愉快に感じておりません。またそのくらいの意気込みで在野法曹がいなければ、なかなか人権は擁護できないのであります。このくらいの意気込みの方がおられるということには、むしろ敬意を表しておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/67
-
068・田嶋好文
○田嶋委員 よくわかりましたが、実は私の聞いておることは、その点ももちろんお答え願つて納得したのでございますが、それ以外にあるのでございます。法制審議会で審議をされ、法務省の刑事局で研究をし、法案もつくつて国会に出したというのでは、私たちは満足できないのでございまして、結局大臣もお認めになり、各省の関係当局もお認めになつておりますように、人権の侵害を防ぐ意味においても、これが非常に危険性がある、大いに注意しなければならぬということが肯定せられ、人権擁護の立場においてこの問題が取上げられ、――この法案をつくると、消極的な人権擁護になりましよう。その人権擁護の立場においてこの法案がつくられるということになりますと、事人権に関する以上は、ただ法制審議会が答申をしたから、法務省が立案をしたからというのでは通らないのでございまして、その背後には、要するに人権を擁護するために、この法律の改正を絶対しなければならぬ、今日の国家機構で国の秩序を守るためには絶対これだけのことは必要だ、という理由が認められ、その緊急性がなければ、人権に関係した法案をそう軽々に出すべきものじやない。これは慎んでもらわなければならぬと思う。その甘味において、要するに国家秩序を守り、人権を擁護する立場から、どうしても最小限度ここまでは必要だという緊急性を、私は法務大臣にお尋ねをいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/68
-
069・犬養健
○犬養国務大臣 御丁重な御質問に対して答弁が半分くらい落ちてしまいまして、まことに失礼いたしました。どうしても出さなければならぬという理由は、あからさまに申し上げれば、結局外国的な刑事訴訟法に対して、日本人の伝統、習慣、感情から是正し直すという問題であります。これは英語で書いたんじやないと思いますけれども、どうもバター臭いところがありまして、実際運用がむずかしい。それもこういう刑事手続の基本法でありますから、ちよつと不便だからといつてすぐ直すのでは軽率でございまして、さればこそ、四年半というものは見守つて来たわけでございますが、どうもうまく行かない。ただ戒心しなければならないことは、占領政策の是正といつて、非常に都合のいいことばかりやりかねない。国民感情というものは、占領政策がどいたあと反動的になる。これはどこの国でもそうなんでありまして、政治家にとつて大事なのは、この反動のぶらんこの返つて来る勢いに乗つてやり過ぎをやつてはいかぬということであります。この点は私も十分注意したつもりでありますけれども、しかし何といつても人間のやることでありまして、疎漏な点があれば、ことにこういう専門家のおられる委員会で御叱正を願いたい。根本は、どうも日本人と風俗習慣の違つた、そうして英米法には私は非常に敬意を表しておる一人でありますが、英米法的なもので割切れないものがある。日本は明治十四年以来ドイツ法的なものがあらゆる方面にしみ渡つて来ておりまして、それとの食い違いがよほどある、こういうふうに考えます。運用の妙で行けばいいということは、イギリス人のような訓練を経、伝統を持つておる国ならば、条文の文章と文章の間を読むということができるのでありますが、日本人は美点もたくさんありますが、はつきり書かないと承知ができないという伝統を持つておる国民でありまして、この伝統のよしあしは別として、直すには日がかかる。その間の過渡期は、やはり少しくどいようでも法文で示す、こういう国民性だと思うのでありまして、その意味で、アメリカ占領軍が残して行つた影響の多い新刑事訴訟法の改正の時期が来たんじやないか。かつ前吉田内閣におきましては、重要国策の一つとして、占領時代の行き過ぎを反省し是正するということをうたつて施政方針の演説にも入れておりましたので、その方針に順応したという意味もあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/69
-
070・田嶋好文
○田嶋委員 だんだんわかつて来ました。ありがとうございました。私も多分そうだろうと考えておつたのでありますが、そういたしますと、今度の改正法案は、占領政策の行き過ぎの是正ということが中心になつておりますようでありますが、刑事訴訟法全体の改正自体をここでもくろまなきやならぬのであつて、そのほんのちよつぴりと申しますか、しかも人権の制限になると非難を受けるようなことをなぜ求めてやらなきやならぬだろうかという疑問が生れて来るわけであります。その点政府としては、刑事訴訟法の行き過ぎに対して抜本的な改正の用意があるのかどうか、今日どうしてもそうなつて来なければいかぬのに、特にこの一部だけを出したという理由は、行き過ぎに付加して何か理由がありましたらひとつお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/70
-
071・犬養健
○犬養国務大臣 これもまことにごもつともな御質問でありまして、風俗習頂の違う英米法的な影響を強く受け過ぎたような刑事訴訟法の基本観念から打直すような根本的改正、改正でなく新々刑事訴訟法というようなこととなぜ勇気を持つて取組まぬかというおしかりであります。ごもつともと思います。これは事実問題として非常に時間がかかりますし、そういう大方針、刑事手続の基本法をなるべく早くなんといつたら、たいへんなことでありますので、その間どうも不便でたまらぬ、運用の妙味をもつてもすべからざる点があるということで、とりあえず運用で早急にため直せる点はどこであろうかというのが、法制審議会に出した法務大臣の諮問事項であります。それに答えてくれたのが、運用をこれくらいかえれば当座何とかしのげるんじやないかという答申の精神であります。もちろんこれは大きく改正といいますか、ほんとうに新しい刑事訴訟法を打立てなければなりませんが、それには御承知のように、第一審、第二審をどういうふうにするか、証拠をどういう観念で扱うか、根本問題になつて来るのでありまして、それじや大分先になつてしまう、こういう苦衷からとりあえず運用の非常な不便な点だけ直す、こう出たわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/71
-
072・田嶋好文
○田嶋委員 そういたしますと、刑事訴訟法の抜本的な改正に対しては、大臣としてはしなければならぬというお気持を持つており、今回からでも研究を開始していい、こう承つてよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/72
-
073・犬養健
○犬養国務大臣 さようでございます。時期はどういうことになりますか、刑事訴訟法の根本的な考え方について、広く在野の知識も承りたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/73
-
074・田嶋好文
○田嶋委員 そうすると、今度はこまかくなるわけでありますが、実は先ほども申し上げましたように、大橋法務総裁時代に刑事訴訟法の改正が出まして、これは十三国会と思いますが、われわれ委員会で審議したのでございますが、どうもこれは人権の侵害になるおそれがあるということから審議未了になつております。そうして本国会の前の前の木村法務大臣時代にも川まして、これが審議未了の形になり、今回の国会に本格的に審議されているわけでございますが、今回の国会の審議にあたつて特に叫ばれておりますのは、昨年の宮城前のメーデー擾乱事件を契機として各地に起りました集団犯罪がわれわれの頭にすぐ浮かんで参りますし、改正の理由としてはそういうりくつが通るようにも聞いております。ところがこの集団犯罪より前に、結局前々国会からこの改正案をもくろまれておるのでありまして、集団犯罪として特に前々国会と違つた取扱いをこの法案として出しておる点はどの点です参か。集団犯罪の生れない前から計画された刑事訴訟法と、集団犯罪後に立案された刑事訴訟法は、どの点に改正点が置かれているか、この点と、なお前々国会においても集団犯罪に対するお考えがあつたかどうか、これもお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/74
-
075・犬養健
○犬養国務大臣 これはやはり率直にお答えいたしますが、私が就任いたしましたのは集団犯罪的騒擾事件が頻発したあとでありましたので、それ以前の当局の心構えとの比較ということになりますと、どうも人に聞いたことを自分が知つているような顔をして答弁するのでは真実味がこもりませんから、そのごろから就任しております者から答弁させることにいたします、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/75
-
076・岡原昌男
○岡原政府委員 この刑事訴訟法の改正にとりかかりましたのは、先ほど申し上げました通り一昨年の春、諮問が出て来てからでございます。春から夏にかけて準備をいたしまして、秋から実際に動き出したということになるのでございます。当時の事態は御承知の煙りいわゆる集団犯罪が各地にいろいろな形で出て参りまして、それが次々とひどい形をとつて参つて、遂に昨年の四月、五月の騒ぎあるいは七月の各員屋の事件というふうなところに発展して参つたわけでございます。その当時の考え方といたしましては、これは容易ならざることである、しかしこの集団犯罪がかように頻発し、現行法規ではその扱いがまかなえないからといつて、ただちにあわてて、ある表現で言いますといかにも逆コース的な行き方に行くのは、これは刑事訴訟法とい、根本法規に対する態度ではない、やはり刑事訴訟法としては長い間の事件の全部の見通しをして、そうしてその方向づけをそう現象的な観点からいたしてはならない、さようなことから当時の法制審議会におきましても、いつでもその点を振り返りつつ審議をいたした次第でございます。ただその期間はその点に関するいろいろな事件が割合にございまして、ともすれば議論がき過ぎになりかねないという点もございましたので、在野法曹並びに私どもの方も、実は法制審議会は表立つては小委員会が十数回、部会が十回ほど、総会が五、六回になつておりますが、そのほかに幹事会みたいなものをしよつちゆうやつておりました。そしてその点絶えず戒めながらこの立案を継続して参つたわけでございます。従つてその当時実はある方面からはこんななまぬるい改正ではとても当面の事態を収拾することはできないのじやないかというふうなことも言われましたけれども、結局それは刑事訴訟法である限りいろいろな事件にすべて適用されるので、当面のその事件だけを見てというわけには行かないのであるという観点から、いろいろな資料を全部まとめまして、ただいまのような方向に持つて参つたわけでございます。その後、それでは昨年の七、八月から漸次事態が平穏に帰したのではないかという点は、確かに一応表面的には見られるわけでございます。しかしながら私ども実際に事件の奥底にひそむいろいろな内在する犯罪の起り方、これを見ておりますと、それはそう簡単な世間の状況ではないように看取されるのでありまして、これは一部の過激分子のいわゆる方向転換の具体的な現われでございまして、時あらば何どきたりともこの間隙を縫うて前にも増しての大きな事態に立ち至らしめ、もつて社会化の革命を一挙にして完成せしめるということが、単に情報へ出て来るのみならず、実際問題として事件の中にぼつぼつと出て来るようになつて参つたのであります。今は大丈夫だからといつてほつておいて、その場合になつてあわてて、あわてたあまりに行き過ぎがあつてもいかぬし、またあわてたために今までと違つた態度をすぐにとるということもどうかと思いまして、従来はずつといわば内輪々々と、要するに刑事訴訟に関する基本的な法規であつた刑事訴訟法に対して行き過ぎないようにといつて戒心しつつ改正の方向を定めた、この方向はそのまま踏襲した方がいいのではないか、かような点から実はこの案も従来の通り踏襲した、かような関係になるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/76
-
077・田嶋好文
○田嶋委員 そこで矛盾を感ずるような気がするのでございますが、集団犯罪が起きて確かにそういう観念が起きた、こういうお答えなのですが、前々々国会あたりから出ております改正案というものは、集団犯罪が現実に起らないときの改正案であり、そのときはかえつて勾留期間の検討は今日よりきつかつた。たしか七日、今回は二日減して五日、集団犯罪が出て特に必要だといえば、むしろその七日を十日に増してもこの犯罪を解決しなければならぬという要求が出て来るわけですが、集団犯罪が出てなおさら現実に社会の輿論としてその必要性を唱え、まただれが見てもその必要があるのではないかと思う。法案にもその趣旨が現われておる。法案において前の事件当時よりも短かい期間をきめてやつて行こうという腹をきめてここへ出した。これはどういうことになるでしようか。そんなことになればむしろ改正しなくてもいいのを無理に改正をしているのだというようにとられても私はいたし方ないという気がするのですが、その点をお伺いして瞬きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/77
-
078・岡原昌男
○岡原政府委員 この法案を最初に提出いたしましたのはたしか昨年の四月であつたと思います。法制審議会の答申が三月の二十二日かにございまして、それで四月の上旬であつたと思いますがこれを提出いたしたのでございます。その当時はちようど二月二十一日の事件あるいは四月二十六日の事件、それから五月十日の事件が間もなく起るということでございましたが、法制審議会の審議の進んでおる最中におきましてもやはり同様な事件が各地に起つておつたのでございます。たとえば山口県の下関の集団騒擾の事件あるいは宇部でございますか、あの日鋼の事件、あるいは神戸の朝鮮人の集団暴行の事件あるいは平の騒擾事件、そのような形のものがたくさんございました。そういつたようなものを実は頭に入れつつ審議を進めて行つたわけでございます。昨年のこの法案を出します際に七日といたしまして、その後にこれを五日と変更いたしました関係は、先般大臣からもお答えがあつたわけでございますが、諸般の政治情勢その他も勘案いたしまして、今回は人権を拘束する面と、それから社会のかような犯罪の取締りに対する必要性の認識との調和点、これを大体五日というふうにまとめ上げた、かように私ども理解しておるわけでございまして、なるほどおつしやる通り、わずか五日くらいならどうでもいいじやないかという御議論も確かにございます。ただ従来のさような事件の取調べの結果等をいろいろ聞いてみますと、あと一、二日あるいは二、三日で事件の起訴、不起訴が決する、本人の罪状がどつちかにはつきりするという場合に、ほんとうに残念ながら、それをたとえば釈放しなければならない、あるいはこの辺で起訴してよかろうといつたような、少し乱暴な処理をしないとも限らぬ。そういうことを第一線の捜査官からいろいろな事例をあげて説明されたわけでございまして、従つてわずか五日といえども大いに意義がある。ただその濫用はどこまでも慎まなければならぬ。かようなことで私どもはこの案に最終的におちついた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/78
-
079・田嶋好文
○田嶋委員 先ほど大臣から、この法案の改正は占領政策の是正だ、占領政策の現われによつて生れた刑事訴訟法の是正だということを承りまして、私はその点ある程度納得するのでございますし、刑事訴訟法全般の改正ということも納得するわけであります。そういたしてみまして考えますことは、やはり臨時的な立法ということになりましようが、臨時的な立法として立法するということは、現実に不便を感じておつたという事実が国会に証明されないと困る。そこでこれは刑事局長にお聞きした方がよいと思うのですが、実際事件を取扱つておる検事総長として、今日までこの法律がないために支障が起きたような事件があるのかないのか。小さな事件ではなく、大きな事件で、代表的なものであるのかないのか。あるとすればどういう点において非常に困つておるかということをお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/79
-
080・佐藤藤佐
○佐藤説明員 ただいま問題になつておるのは、起訴前の勾留期間の延長の問題のように承つておるのであります。その点の実例といたしましては、主として集団的な多数の被疑者を持つておる事件、あるいは被疑者は一人あるいは二人であつても、関係人が非常に多い、つまり参考人となり証人となるべき者の数がたくさんある、被害者が非常に多くて、証拠品がたくさんあつて、なかなか十日や二十日では調べきれない、調べ切れないから、それじや釈放して調べを続けるかというと、釈放して調べたのでは、なかなか捜査の適正を期しがたいという例がよくあるのであります。昨日以来法務大臣が例として述べられましたが、たとえば集団的な暴力事犯、これは被疑者の多数の場合であります。それから被害者がたくさんある詐欺事件、また偽造関係の事件、証拠書類がたくさんあるというような事件は、これまでもしばしば例があつたのでありますが、とうてい十日や二十日の勾留期間では、十分な調べができない。調べができないからそれでは釈放するかというと釈放もできない。まだ少し証拠の調べは足りないが、とうていこれは放せない、起訴すべき事件だというので起訴した例もあるのであります。もしこういうことがたびたび行われるとなりますと、かえつて調べが十分つけば、あとになつてからそれが起訴しなくても済むんだという例もあつたのであります。そういうような人権擁護の立場から考えても、捜査を適正にするためには、特定の事件については、勾留期間を延長しても調べを続ける方が、かえつて人権擁護になりやしないかというような考えが起きたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/80
-
081・田嶋好文
○田嶋委員 その説明は抽象的な説明としては納得できますが、私が実務に携わつておる検事総長にお尋ねをいたしておりますのは、その意味ではないのでおります。大臣からのお答えをいただきますとそれで納得できるのでありますが、検事総長のお答えとしてはちよつと納得できない。私の申しますのは、ただ理論としてはそれが正しいことであり、納得できるのでございますが、現実の問題として、勾留期間が二十日であつたために、とうとう起訴ができなかつた、それから無理をして起訴したために無罪になつてしまつた、これは適当な勾留期間がないためにこうなつた、こういうふうに現実にどういう支障が起きた例があるか、現実の例をあげて御説明を願いたい、こう思うわけであります。改正案にあたつて私たちが議論をいたしておりますのは、この法の運営上、実際の具体的な問題を中心にして考えて行つているわけです。たとえばこの権利保釈の制限等のことは、具体的に例があるわけであります。お礼まわりをしたということは、現実にわれわれ知つているから納得できる、それから逮捕状に対して同意を求めよというような法の改正も、例があつて、その例を中心にしてわれわれは論じておる。勾留期間の延長だけは、具体的な例を聞かない。支障が起きたという、そこをひとつ承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/81
-
082・岡原昌男
○岡原政府委員 具体的な例は、いずれ明日でも検事正が見えたときに、第一線でありますから一番よく御存じと思いますが、私の聞いておりますところでは、たしか三千何百枚という手形か何かの偽造事件で、しかもそれが転転して次々と流しておつたために、これを三日や十日ではまとめることができなかつた。しかし非常に努力して、検事その他を集めて整理ができてしまつたそうでございますが、あとわずかというところで二十日になりかかつて、それでいいかげん――いいかげんと言つちやおかしいのですが、大体まとめて起訴した。その結果無罪にはおそらくならぬと思いますけれども、それはしかしほんとうの起訴の仕方ではないということを具体的に聞いております。それからもう一つは、メーデー事件の際に、御承知の通り、あのときに一度にほとんど現行犯的にあるいは準現行犯的につかまつて参りましたので、いかんともし得なくて、次々と動買いたして検事が各地から応援に参りましたけれども、しかも警察官も最大限に働いてくれたのでございます。それでもなおかつ一人の被疑者について、大体四、五人から七、八人程度まで証人を調べたそうでございます。そういう関係で、一度につかまつた者が、確か一番多いときで四、五百名程度に達したと考えます。それに対する関係人が四、五人としましても、莫大なる数になるわけでございまして、各検事手わけしていろいろやつたけれども、もうわずかというところで、結局証拠の確定ができなくて、中にはやむを得ず放した者もあるということがございました。たとえば証人のうちのある者が会社に勤めておつてなかなか出て来ない。無理に関係人を呼ぶわけにも行かぬので、次々とはがきを出しておつたけれども、結局だめだつたというような例も具体的にちよつと聞いておりますが、これは実際の第一線に働いておる人が、あの当時非常に苦労したそうでございまして、そういうような点もこの立案の一つの動機になつたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/82
-
083・田嶋好文
○田嶋委員 その点は今ここでお示し願うのも無理だろうと思いますが、できるだけひとつ資料をお集め願つて本委員会に御提出を願いたいと思います。
そこでその点に関連して、私もう一、二質問をいたします。実は私はおととい名古屋から帰つて参りました。それは名古屋の弁護士会から言葉がかかりまして行つて参つたのでありますが、今日鉄道の収賄事件で被疑者が勾留せられておるが、その勾留がどうも長過ぎる、しかもその長いのもいいのだが、本へどもは否認していない、面会してみるとみな自白しているのに検察官が調書をとりに来ない、これでは勾留期間をむだにするのではないか、警察に聞いてみると、まだあと十日間あるじやないか、十日たつてもまだあと十日間あるから急ぐに及ばぬと言う、これをひとつ交渉してくれぬかというお言葉がかかりましたので私は行つてみたのであります。行つてみると、じようだんに言うのですが、そのじようだんが大事だと思うのです。田嶋さん、それもそうだが、収賄事件なんというのはとめた方がいいのですよ、簡単に出してはいけませんよと言うのです。しかし私は心やすい中にもそのじようだんがぴんと来たのです。収賄事件なんか二十日とめるのは当然だというようなことを言つたのですよ。懇意な人が言つたので、怒ることもできないし、反駁もできないので、しかしそれはいかぬぞ、国会で今大事な法案が出されているのじやないか、そのときに収賄事件であるから長くとめるのは当然だということは、じようだんでも言つてもらつては困るぞと、実は笑いながら言つたのです。ところがつけ加えた言葉が、東京なんかもう二十日というのは今日常識になりましたよ、十日でなしに二十日が一般常識になつていますから、ほんとうは二十日ですね、こういうことなのです。これはじようだんの中に言われたのですが、私はこのじようだんが現実じやないかと考えるのです。懇意な中の人のことを国会で攻撃するわけではないのですが、言つてさしさわりがあるかもしれませんけれども、こうしたことが今日の常識になつておるとすれば、勾留期間の十日間というのは空文になつておる。実際は二十日ということになつておるのだから、ここではつきりした方がいい。二十日なら二十日であと十日間延ばすか、あるいは二十日はよくないから十日というなら、やはり収賄だから長くとめておくとか、何々犯罪だからどうだということがないように、この法律を守るために解釈が一貫しなければいけないと思いますが、この点はどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/83
-
084・岡原昌男
○岡原政府委員 ただいまのようなことはたいへんおもしろくないことでありまして、私どもといたしましては、事が収賄事件だから、さような悪いことをした者であるから、二十日入るのは当然であるというような考え方はもつてのほかだと思います。それはたといじようだんにいたしましてもゆゆしきことだろうと思います。これはまつたく田嶋先生のおつしやる通りでございます。それが東京においても常識であるというようにじようだんにしても言うに至つては、これまたますます大問題であります。さような点につきまして、実は私ども常々次席検事、検事正会同、その他の会同の際に申しておることでありますが、つかまつて入つておる者の身になつて調べてやれ、決して不当に一日でも二日でも延ばしてはならないということを強く申しておるわけであります。もちろんたとえば傍証の調べのために、あるいは記録の整理のために、三日、四日本人に全然調べをしなかつたという場合もあり得ることでございまして、それを私の方で責めるのも実際第一線の人に対しては酷だと思いますが、さようでなしに、ただ慢然とあるいは半ば懲戒的にさような長い期間入れておくということはほんとうにもつてのほかなのでございます。さようなことは、ただいまのお言葉もございますし、十分私どもも今後さらに声を大にして強く戒めたいと存じます。
なお起訴前の勾留期間の資料が、調べの日にちがちよつと古いのでありますが、お手元にお配りしてございます。これによると、大体のパーセンテージで申し上げますと、三日以内の勾留で釈放しましたのが八・八%、五日以内が一〇・四%、七日以内が一四・六%、十日以内が四七・八%、つまり合計して十日以内が約八〇%ということになるわけであります。それから十五日以内が六・六%、十六日以上は一一・八%、これはそのときによつて若干ずつパーセンテージが違つておりますが、大体十日までに一応の調べかきまりましたものが大体八〇%前後で、あとの約二割というものが十五日から二十日というように統計上はなつておるのでございます。それにいたしましても、具体的の事案としてただいまのようなことがあるということは許すべからざることでありまして、私どもも十分その点は下部へ話合いで通告したいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/84
-
085・田嶋好文
○田嶋委員 大臣がお見えになりましたので、大臣に最後に一、二点お尋ねをして私の質問を終ります。
この法案について私こういうことを申し上げますことは、あるいは当つていないかもしれませんが、実は今度の法案の内容の中で、法務省側、それから検察庁側と警察側との間に、形の上においては意見の調整ができておるのだが、実際上は率直に申し上げて意見の調整ができていないのじやないか、そこでわれわれも今日この問題に苦心しておるのでございますが、私から申し上げることは釈迦に説法で失礼ということになるかもしれませんが、とにかく日本の国の治安を守り、犯罪をよりスムーズにこなして行くためには検察側のみではできない。また警察側のみでもできない。結局警察と検察とが一体となれば、治安を守り、犯罪に対する百パーセントの検挙率を上げることができると思います。そこで警察と検察庁側との連帯ということが絶対的のものであると考えますときに、これを絶対づけるものは法律によるところのつながりか、それとも機関によるところの人間的なつながりか、こういうことが考えられて来るわけであります。やはり今日の日本の治安を守るということにおいては、検察庁もひとしく考えておる点でございますし、これにまさるとも劣らずに考えておるのが警察だと思います。そこで両方が同一またはそれ以上の考えで国の治安確保のためを考えておるとすれば、この関係を法律によつて結びつけようとすることは、かえつてその関係を断つことになつて無理を生むことになる。むしろこの関係は法規によらなくて機構と機構のつながりにおいて、人と人の接触においてつながりを持たしたいと考える。さもなければ第三者の正しい目によつてこれのつながりを持たして行くというようなことにおいて処理されることが、国の治安を守る上から考えてかえつてスムーズに行つていいことじやないか。法律でつなごうとすると、正しい考えであつても相手に邪推され、せつかくうまく行つておつたものがそこに疑念が起ることによつて破壊されるということになる。私はこの点を非常に憂えておる次第でございます。実は齋藤国警長官のお言葉を聞いておりまして、率直な意見で改進党の吉田さんは喜んでおつたようではございますが、聞いておるわれわれとしてはいい感じはいたしません。齋藤国警長官の上長官は犬養大臣であります。大臣が法案をつくるには、もちろん私は齋藤国警長官のお言葉をお聞きし、十分御検討した上でこの法案を出されたと思い、また私はそういう意味においてお答えを願つて、むしろ率直なお答えでわれわれとしてはいいことであると信ずる反面に、聞いておつていい感じはしない。何か齋藤国警長官と大臣との間において法律をつくることに表面はまとまつたが、内心まとまつていない。それが露骨に国会でも現われておる。われわれ聞いておつてもあまりいい感じはしないのであります。こうしたこと自体が今後の警察と検察との連帯に対して、かえつて水をさすことになり、うまく行つておるのがまずくなるということを憂えるものであります。そうしたことがあるようにお見受けするが、今日あるかないかの点をひとつ承りたい。
そうしてあるということを仮定論としてもけつこうでありますが、仮定論として考えますときに、そうしたことがあれば検察側として考えようという気持になつていただけることになるか、それともあくまでも検察側はこれを強引につつぱるか、これは今後の最高方針になるのでしようが、われわれとして齋藤国警長官のお言葉の出たところについて率直に承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/85
-
086・犬養健
○犬養国務大臣 これはまことに簡明率直な御質問を受けまして、私も飾らずにお答えする義務を感ずるものであります。率直に申し上げまして、検察庁と国警とは伝統も異なり、それぞれの誇りもあります。従つて私事にわたつて恐縮でございますが、両方の伝統の調和ということを私が一つの奉仕として在任中やるという気持がなければ、二つの役所の仕事というものは人間には無理でありまして、どつちかごめんをこうむりたいのです。私もできるだけ両者の調和をはかつて、ともに日本の治安を守るために虚心坦懐にいやが上にもなつてもらう意味から言うと、両方の役所を兼任する大臣になつて御奉公して何か残したい、こういう気持でごらんのようなまるで才もないものでありますけれどもやつておるわけであります。ただいまのお話の逮捕状の請求に検事の承認を必要とするという字を私の就任以来「同意」と改めて、両者同等であるというような感じを社会に表明したわけでありますけれども、これをごく率直に申し上げれば、先ほどの齋藤国警長官の答弁は、国警長官としては、まことにさもあらんということで答弁それ自体はまことに非の打ちどころのないものだと思います。それは立場上私でもああいう場合ああ言う。それでどういうことになるかと言いますと、具体的なお話が国警側は同意ということでなく、何かこういうことに逮捕状を出すという事実を検察庁側に知つてもらうという程度の適当な字はないだろうか、そういうことであります。私の想像でありますが、検察庁としては、率直な話をしてくれと言えば、おそらく同意より承認の方が手がたいと言うでしよう。何となれば私の就任前は承認という字で規定したわけでありますから。
そこで私は別の立場から考えますのに、逮捕状の請求を受けた裁判官が、どのくらいの能力があられるかという問題であります。先ほども触れたのでありますが、逮捕状の請求の内容が適当であるかいなかは、これは御商売であるからすぐ判断ができる。しかし今逮捕状の請求を許した方がいいか、ちよつと待つた方がいいか、あるいは厳密には違法であるか、見のがした方がいいかという判定になりますと、学説には裁判官が妥当性を判断する力があるという説と、ないという説と両方ありまして、ないという方の学者の方が多いと承つております。そこでもししかりとすれば、裁判官が逮捕状の請求に最後的な判断をする上においては、捜査の第一次的責任者である司法警察官の意見のほかに、公訴官である検察官の意見を聞くということは、いよいよ十全な措置ということになる。従つて国警側の御希望のように、ただ事実を知つてもらう以外に、検察官がそれについてどういう考えを持つているかという意思の反映が逮捕状の請求を受取つた裁判官にあつた方がいいのではないか。ただ旧刑事訴訟法の精神のように、何でも検察官が指揮するのだ、その権限においておれは逮捕状の請求の内容をまず知るのだというのは私は行き過ぎだと思うのであります。
そこで私がしばしば申し上げましたように、同意という字が今比較的一番いい字だと思つておりますが、世界一いい字かとお尋ねを受けると、私自信はない、もつといい字があれば喜んで承りたい。そういう自信がないものではだめじやないかというおしかりを長ければ、まさにその通りでありますか、とにかく豊富な内容を漢字の二字につづめることはなかなかむずかしいのでありまして、比較的無難な同意という字を選んだのであります。しかし今申し上げたような内容にはこういう字の方がいいじやないかという御意見かあれば、私は謙虚な気持でそれを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/86
-
087・田嶋好文
○田嶋委員 私の質問はこれで終ります。あとは逐条質問のときにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/87
-
088・犬養健
○犬養国務大臣 それからちよつとつけ加えて申し上げますが、私はこの刑事訴訟法改正案の委員会の始まる前に、国警長官に、君は君の立場があるから、ぼく遠慮なくなるべく率直に委員諸公に国警の気持と立場を述べてくれということを、むしろ私は希望しておいたのであります。その方が飾つた委員会でなく、ほんとうに人の本音を開き合つて、そして直すべきところは直す、あるいはこういう注意をした方がいいというならば注意をした方が、生きた委員会になる。あまり言つてくれるなということは言つていないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/88
-
089・田嶋好文
○田嶋委員 わかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/89
-
090・小林錡
○小林委員長 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめておきます。明日は午前十時より開会し、刑事訴訟法の一部を改正する法律案について参考人より意見を聴取することにいたします。
なお刑事訴訟法の一部を改正する法律案に関する参考人につきましては、各委員の御意見を取入れて人選を進めて参つたのでありますが、あと若干名交渉中の者を除きまして大体決定を見ましたので、御報告申し上げておきます。すなわち、裁判所、自治体警察側からは、東京地方裁判所刑事第六部長小林健治君、警視総監田中榮一君、警視庁捜査第二課第一係長警部岡本常太郎君、上野警察署警部補佐々木庄次郎君が、弁護士側からは、日本弁護士連合会の島田武夫君が、学者、評論家としては、東大教授団藤重光君、元早大教授戒能通孝君、評論家中島健蔵君が、それぞれ出席されることになつております。また検察庁からは佐藤検事総長及び馬場検事正が出席されます。その他国家地方警察本部、自治体警察、公安委員及び学者、評論家のうちから若干名を予定しております。以上の通りでありますから、さよう御了承願います。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01419530715/90
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。