1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月十八日(土曜日)
午前十時五十六分開議
出席委員
委員長 小林かなえ君
理事 佐瀬 昌三君 理事 田嶋 好文君
理事 吉田 安君 理事 猪俣 浩三君
理事 井伊 誠一君
大橋 武夫君 押谷 富三君
林 信雄君 星島 二郎君
鈴木 幹雄君 高橋 禎一君
細迫 兼光君 木下 郁君
佐竹 晴記君 岡田 春夫君
出席国務大臣
法 務 大 臣 犬養 健君
出席政府委員
国家地方警察本
部長官 斎藤 昇君
警 視 長
(国家地方警察
本部刑事部長) 中川 董治君
検 事
(法務省刑事局
長) 岡原 昌男君
委員外の出席者
参 考 人
(警視総監) 田中 榮一君
検 事
(法務省刑事局
参事官) 横井 大三君
検 事 総 長 佐藤 藤佐君
判 事
(最高裁判所事
務総局刑事局
長) 岸 盛一君
日本国有鉄道公
安本部部長 久留 義恭君
専 門 員 村 教三君
専 門 員 小林 貞一君
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七月十七日
札幌地方裁判所室蘭支部を甲号支部に昇格の請
願(山中日露史君紹介)(第四五三二号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一四六号)
法務行政に関する件
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/0
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001・小林錡
○小林委員長 これより会議を開きます。
刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際お諮りいたします。本案審議中最高裁判所長官またはその指定する代理者より出席説明したいとの要求がある場合には、国会法第七十二条第二項によりこれを承認したいと存じますが、御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/1
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002・小林錡
○小林委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。
これより本案の質疑を続行いたします。大橋武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/2
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003・大橋武夫
○大橋(武)委員 今回の刑事訴訟法の改正案につきまして、人権擁護の必要から、この改正を企図されておるということにつきましては、まことにけつこうだと存ずるのでございます。しかしながら現行刑事訴訟法の旧刑事訴訟法とかわつておりまする一つのおもな点といたしまして、特に捜査手続におきますところの警察官と検察官の関係という点を指摘することができると思うのでございますが、まず従来の旧刑事訴訟法時代におきまして、捜査においては検察官が全般的な主導的な役割をとつておつた。これに対しまして今回の新刑事訴訟法においては、捜査責任者と公訴の責任者とを分離して行く。そうして検察官は主として原則的に公判におきまする原告官としての地位を与える。または捜査におきましては、司法警察職員というものが捜査の原則的な主導的な役割を持つようになつておる。そういう方向にこの刑事訴訟法の改正が行われておる。こういうふうにわれわれも見、また学界においても定説化されておるのでございますが、この点につきまして、法務大臣はそういうふうな傾向に向つてこの改正が行われたということをお認めになりますかどうか、この点をまずお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/3
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004・犬養健
○犬養国務大臣 お答えを申し上げます。ちよつと係の者が前に立ちふさがつておりまして、あるいは聞き漏らした点があればまたお答えいたします。御心配の点ごもつともでありまして、旧刑訴におきましては、司法警察官の捜査にあたつては検察官が全面的に指揮をした。新刑訴においてはこの点非常に大きな変化があつた。御心配の点もそこにあると思うのでございますが、世間でも今度の刑事訴訟法の改正にあたりまして、検察官側が旧刑訴にあこがれを感じて、だんだんなしくずしにそつちにもどして行きたいという気持から、こういうことをしているのとはないかというような御心配もあるようであります。一、二の新聞の論説にもそういうことを警告しておるところを見ますと、社会が心配していることを謙虚に当局がとるのが至当であろうと思います。大橋さんに対しては釈迦に説法でございますが、その点を十月頭に置きまして、刑事訴訟法の改正がいわゆる逆コースをとるというようなことがあつてはまことに相済まぬことであります。しかし改正のやむなきに至つた理由はこういうことでございます。大体御承知のように公訴の遂行と全からしむるためには、どうしても搜査の適正ということを望んでおり、その捜査の適正に対して何かの連関性があつた方がよい、あながち指揮監督とは言いませんが、何か連関性を持ちたいと思つております。何となれば、公訴の遂行ということは、そもそも一つの犯罪というものが生じましたならば、同時にそこに生れるのでありまして、両者は不可分であります。しかし一方何といつても捜査の第一次的責任者は警察官であります。これは新刑事訴訟法にはつきりうたつているところであります。個々の事件を直接の目的として、一々検察官が司法警察官に捜査について差出がましいことをするようであつては、これは旧刑訴への逆もどりであります。そういうことにさわらない範囲で公訴の遂行を全からしむる第一歩としての捜査の適正ということに、お互いに連関を持ちたい、そういう意味からこういう事件はこういうふうに捜査してもらいたいということを一般的準則で示して、これは大橋さんに逆に伺つた方がいいと思いますが、おそらく現実的には警察側はこれを捜査規範とかなんとかいうものに自分で書き入れることになると思います。従つて大きな準則を投げかけて、一々の個々のケースの扱いはそれを承知してもらつた警察官が自分の捜査規範に書き入れて行く、この程度ならばあながち検事の指揮権を復活して失地回復をするというようなことにならないのじやないか、この程度の考えでこの扱いをして、その精神によつてひとつ厳正に御審議を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/4
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005・大橋武夫
○大橋(武)委員 大臣の御趣旨はよくわかりましたが、そういたしますと、回意図されております改正案におきましても、捜査官と公訴官とを原則的に分立する、これによつて手続ごとに別個の規範を設けて、人権擁護の全きを期するという点においては、どうも現行法を改正しようという意味ではない、こういうふうに伺つてよろしいかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/5
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006・犬養健
○犬養国務大臣 仰せの通りでございまして、別の言葉で申し上げますならば、新刑事訴訟法のこの条文が、条文のせいもあると思うのですが、一部において私どもから申しますと読み違いをしておられる向きもありまして、捜査はもう絶対に警察官がするものであつて、検察官は一指も触れちやならない、起訴のとたんに検察官の受持つ範囲に移送するのだ、こういうことになると非常にきゆうくつだろうと思います。しかしながらまた一部で言いますように、公訴の遂行ということは捜査の適正がなくてはならぬので、両者はまつたく一つの物質みたいなものである、だから初めから何でもかんでも指揮するのが一番安全だという考え方も行き過ぎであつて、これも新刑事訴訟法の精神を多少読み違えておるものだ、こう私は思いますので、その間の調和をはかつた考えで行きたいと思つております。従つてさらに言葉をかえて申し上げますならば、今の刑事訴訟法のこの条文をとかく一部で読み違えるのは条文のせいもあると考えまして、この不明確な読み方をされる向きに対して、ほんとうの精神を再確認する解釈規定のようなふうに、今度字を入れてみたわけでございます。さように御承知願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/6
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007・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうしますと、今回のこの捜査についての検察官の指示に関する条文の改正というものは、現在の法律の趣旨を明らかにするのである、従つて現在の法律に何ものをも附加するものではない、こういう意味で規定をしたい、こういう趣旨のように伺つたわけであります。そうなりますと現行法というものはこれでいいんだ、ただこの現行法を解釈するについて正しからざる解釈が行われやすい、従つてこれを避ける、こういう意味であると伺つてよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/7
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008・犬養健
○犬養国務大臣 まさにさようでございます。先日もここで公聴会が開かれまして、刑事訴訟法の権威である団藤教授のお話を私も伺つたのでありますが、この条文の改正全体については、団藤教授は結論においては御反対のようでありますが、こういうことを先に申されておつたのであります。公訴の実行を全からしめる範囲において捜査の適正について検察官の意思を反映するというのならこれは弊害がないだろう、しかしそうでなくて公訴の実行を全からしめるために捜査の適正まで一歩前進するのだというのでは、これは新刑事訴訟法の読み違いであつて、自分は反対だ、こう述べられた。新聞にはあとの半分だけ出たのでありますが、前の半分の薀蓄の深いお話にまつたく私は同感でありまして、それこそ当局の考え方と同じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/8
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009・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうしますと、大臣とせられましては現在の刑事訴訟法の解釈として捜査手続においては第一次的な責任者はあくまでも警察官である、これが原則であるということはお認めになるわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/9
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010・犬養健
○犬養国務大臣 これは本委員会においてたびたび私が明言しておるところでありまして、何といつでも捜査の第一次的責任者は警察官でなくてはならない。それではなぜ「その他」などという字を入れて、率直に申し上げまして警察側の議論を相当わかすようなことをあえてしたかと申しますと、捜査はこつちがやる、起訴のとたんに君の方へ移す、それまでは全部まかせてくれ、知らないでもいいんだというふうに読まれるとまたそこに調和を欠く。そうかといつて初めから干渉しますよという考え方も行き過ぎであるので、その調和をはかる、こういうふうに御解釈願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/10
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011・大橋武夫
○大橋(武)委員 そこで捜査手続におきまする司法警察職員の機関としての性質を伺いたいのですが、これは旧刑事訴訟法におきましては検事の補助機関であつたことは御承知の通りであります。しかし現在の法律におきましては、これは検察官の補助機関にあらずして、一つの捜査機関として司法警察職員は独立機関である、こういうふうに考えられるのでありますが、この点はいかにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/11
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012・犬養健
○犬養国務大臣 私もさように考えます。同時に検察官も捜査を認められておりまして、二人並行して両方から手を差延ばして接触するということがないと、どうせ一つ犯罪についてしまいには起訴のときに一緒になるわけですから、そうかたくならずに初めから大よその検察側の意思を警察側に反映して行く、一々個々のケースに当つてやるのでは、警察官もこれは足手まといでめいわくでありましようから、原則を大よそお示しする、こういう程度であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/12
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013・大橋武夫
○大橋(武)委員 そこで捜査機関として司法警察職員が一つの独立機関であるということになりますと、この機関の行動が違法であり、かつ適正であるということは、国家のために必要なことでございます。これを適正ならしめるために監督して行く、それではいかなる機関がそれにあたるべきであるか。すなわち、警察機関内部における監督者が、その監督権として捜査手続の適正を期するのであるか。それともまた、他の機関がそれを監督するというふうなあり方と考えてよいか。これについて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/13
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014・犬養健
○犬養国務大臣 今申し上げましたように、警察官は捜査に関する第一次的責任者でありますし、独立して捜査権を持つているものでありますから、ほかからとやかく監督されるというのは、まことに話が違うのであります。御承知のように、これは例が悪いかもしれませんが、スト規制法をつくる際に、労働省がもちろん主になつてやりますが、罰則あるいは違法のわくなどについては、法務省も意思の反映をしなければならぬというような場合に、やはり法務省側の意見を申し上げる。たとえば今度のスト規制法に、現行法の罰則を使おうというような意思の反映をして、幸いにそれを労働省に受けてもらつたのであります。それは何も法務省が労働問題について労働省を指揮しているとか、間接に締め上げているということにはならないと思います。スト規制法の遂行を全からしめる意味で、法務省の意思の反映をする。大体そういうような気持で、私は警官の捜査権に検査官の意思の反映をお願いする、こういう気持でおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/14
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015・大橋武夫
○大橋(武)委員 そこで現行法で一般的指示を検事がする、こういう規定がございますが、この一般的指示というのは、どういうことを一般的指示とお考えになつておりますか。つまり、どういう意味においてそれが一般的であるか。一般的指示という用語は、おそらく何かに対して一般的であるという点に、意味があると思うのであります。いかなる意味において、一般的でなければならぬとお考えになつておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/15
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016・犬養健
○犬養国務大臣 こまかいことはここに専門家がおりますが、私がこれを勉強し、また改正案を自分の考えで練つてみたときの率直なところを申し上げてみたいと思います。一般的指示といいますのは、たとえば選挙違反のときに、大体こういう程度のことはこうしたらどうか、戸別訪問だつて、一軒行つても戸別訪問というような、大体のわくを申すのだと思います。大橋武夫君が選挙に立つたらこうしろとか、ああしろとか、これは個々のことに関係するのであります。これは大禁物だと思います。もう一つ、これに非常に必要だと思いましたのは、例の本委員会をお騒がせした英濠兵の事件であります。大体こういう場合にこうしたらどうかというようなことを、大きなわくを示す。英兵のウィリアムが何がしをこうしろというようなことは、警察にまかしてよい、こういう意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/16
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017・大橋武夫
○大橋(武)委員 それらの一般的指示は、現行法の解釈といたしましては、むろん公訴を実行するに必要な犯罪捜査の重要な事項に限られることは、法律の規定しておる通りであります。そこで公訴を実行するに必要な捜査に関する事項の範囲ということは、今一つの具体的な例として、ある種の事案については、この程度以上の重大性を持つ事件を捜査しなければならぬ、そういうような例を今おあげになりました。現在そういう指示が、各警察官に対して、いかなる形で、またどういう内容のものが指示されておりますか。その例を事務当局から伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/17
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018・犬養健
○犬養国務大臣 これはいよいよ専門的になりましたので、政府委員からお答えいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/18
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019・横井大三
○横井説明員 現在までこれを出しておりますのは、一つは訴訟書類の様式を定める一般準則でございます。それから、問題になりました破防法事件の捜査の着手について、検事正の承認を得るよう指示したのが出ております。その他、たとえば刑訴法第二百四十六条にありますが、微罪処分の基準でございます。これは各地の事情によつて違いますので、各地の検事正がおそらく出しておられると存ずるのであります。それ以外には、現在まで出しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/19
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020・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうすると、次の事項をお伺いして、これらが一般的指示権の範囲内に属する事項かどうかということを、お答え願いたいと思います。逮捕状に関する同意権を、検察官が警察官に対して保留する。つまり、すべての事件に一般的に逮捕状を請求する場合においては、必ず検察官の同意を受けろ、あるいは検察官に連絡しろ、こういう指示をすることが、この一般的指示権の範囲内に属するか。それから第二は、捜査着手前において、ある種の犯罪については、事案の内容、概要について報告をしろ、こういう指示をすることが、この範囲に含まれるかどうか。それからある種の事件について、捜査に着手することについては、事前に検察官の同意なり許可を受けろ、こういう指示をする。捜査の着手についての許可権と申しますか。それから第四は、差押え捜索、検証に関しては、事前に検察官と協議しろ、打合せしろ、こういう指示をする。これらの指示をすることが、この一般的指示権の範囲内に入るというお考えですか。それとも、それは入らないというお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/20
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021・横井大三
○横井説明員 四点でございますので、順次申し上げます。ある種の事件について、逮捕状を請求する前に、検察官の同意を受けろという問題でございますが、今度の改正法が通りますと、一般的に同意を要する。しかし例外的に、はずすという形になつて参ります。従いまして、はずす例外を、どういう場合にはずすかということをきめますのは、やはり一般的な指示と申しまして……大橋(武)委員「現行法の解釈を伺つているのですと呼ぶ」)現行法におきましては、今の同意という点がございませんので、百九十三条の公訴遂行のために必要な限度におきましては、特定の事件ではいけませんけれども、一般的なと言われる限度の事件について、同意を要するようにというようなことを言います点は、百九十三条だけの解釈から言いますと、あるいはできるように思えるのでありますが、一方百九十九条がございまして、これは直接検察官を経由しないで請求できるとなつておりますので、相当問題がある点ではないだろうか、こう思われるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/21
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022・大橋武夫
○大橋(武)委員 問題があるから、聞いているので、問題のあることはわかつているのです。問題として提出しているのですから、問題に対する解答をお願いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/22
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023・横井大三
○横井説明員 現行法の解釈としては、困難であろう、こう思われます。
その次の、ある種の事件について報告をしてもらいたい、これもまた、ある種の事件という範囲が問題でございますが、一般的にこういうような種類の事件については、報告をしてもらいたい、それが公訴を遂行するためにどうしても必要であるという限度におきましては、百九十三条の指示としてできるように考えております。
それから、その次の捜査に着手する前には、事前に検察官の許可を経なければならない。こういう指示は百九十三条としてできるかどうか、こういう問題でございますが、これは例の破防法のときに問題になつた点でございまして、われわれとしましてはやはり一般的な形で行う限度においては百九十三条の指示としてできるという解釈をとつております。
第四番目の差押え、捜索、検証について事前に検察官の了解を得なければやつてはならない、こういうことは百九十三条でできるかどうか、こういう問題でございますが、一般的に差押え、捜索、検証について全部検察官の同意を得なければやれないということは、おそらく公訴の遂行のために必要な事項といえるかどうか、相当疑問がございます。もしその限度で必要な範囲内ならば百九十三条の解釈としてはできるように思われる問題がございますが、先ほどの逮捕状の場合と同じように、令状請求につきましては別個の規定がございますので、この点も消極に解さざるを得ないのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/23
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024・大橋武夫
○大橋(武)委員 今のお答えでは着手前に事案の概要を報告されること、あるいは着手に移るについてあらかじめ検事の同意を受けさせる、こういうことを指示することは法的に可能であるけれども、逮捕状あるいは押収、捜索、差押え、これらについて事前に同意を受けさせることは困難でできない、こういうようにいわれておる。しかしその理由として御説明になりましたところは、これらについては他の法規があつて、同意を受けさせることにしたいところで、その同意は法的根拠がないからそれでできないだろう、こういう理由で御説明になつておる。これはしかし理由にはならないのであつて、むろんいかなる指示がありましてもその指示を無視して警察官が行動する場合があります。しかしそれは指示に反して行動したのであつて、その行動の法的効果につきましては、それぞれ逮捕状については逮捕状、検証、捜索についてはそれぞれの条文で、それは法的には有効である、こうなつておる。だから法的に有効であるという理由をもつて指示権がないのだという御解釈をされるということは、ちよつと理由にならぬと思うのですが、いかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/24
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025・横井大三
○横井説明員 説明の方法があるいはまずかつたと思いますが、私の申し上げましたのは、たとえば逮捕あるいは押収、捜索等の令状請求につきましては特別規定がございますので、百九十三条の解釈としてそこまで検察官が踏み込めるという解釈は困難であろう、こう申し上げたのでありまして、法律効果の問題としてではなかつたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/25
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026・大橋武夫
○大橋(武)委員 困難ということは非常にあいまいなので、法的に、それが指示権に含まれていると解釈することは困難だ、従つて含まれない、こういう御解釈と承るのですが、一体逮捕状とかあるいは差押え、捜索、検証というものはこれは犯人の身柄保全、あるいは証拠保全ということで、本来これは公訴をやるということになれば当然そういうことが必要になる。であるからこれをやれという指示はできるかもしれませんが、これをやるなということは、公訴を実行するために必要なことではなくて、公訴を実行する上からいつて捜査を遅らせる、あるいは不便にするという意味においてむしろ逆の効果を生ずるから、それでは当然にそういうことが入るはずはないのだ、こういうふうに解釈するべきものではないかと思うのですが、いかがでございますか。
それからも一つ、同様に、かりにそういう解釈が可能であるといたしまするならば、着手以前において事案の概要を報告しなければならぬ、あるいは着手前において検察官の同意を受けなければならぬ、こういうようなことは捜査を進めることではなくてチェックすることになるわけであつて、それが何ゆえに公訴の実行に必要であるかということについては、これは理論的に大いに検討を要するのであつて、ただ、ああそうかといつて承るわけに行かないので、これらについて重ねて承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/26
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027・横井大三
○横井説明員 捜査をチェックすることは、公訴の実行に必ずしも必要でない事柄ではないか、こういうお尋ねと承つたのであります。問題は、公訴の遂行ということは、単に起訴するだけではありませんで、起訴、不起訴を決定し、さらに起訴した場合には公判におきましてその起訴を維持する、こういう全体を総合いたしまして公訴の実行と申すのであります。従いまして、現在この程度の段階で逮捕するということは、事件の実体を見きわめる上において、ことに起訴、不起訴を決定するにおいて適当でないという場合がおそらくあり得ると思う。今ここで捜索をやりますとほかの証拠が散逸してしまうという場合もあり得ると思いますので、それらを総合して考えます場合には、やはり現在の段階では、これをチェックするということも結局は適正な公訴を行わせる上に必要な場合があるのではないかと考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/27
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028・大橋武夫
○大橋(武)委員 よくわかりました。今の御説明によりますと、捜査には時機がある、時機の熟したときに捜査を開始するということでなければ証拠が散逸して適正な公訴ができなくなる、こういう意味でこれをチェックする場合もあるんだ、こう承つたがそれでよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/28
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029・横井大三
○横井説明員 大体私の申し上げた通りであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/29
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030・大橋武夫
○大橋(武)委員 大臣もそれでよろしゆうございますか。――そういたしますと、ただいまの御説明を承つたところによると、検察官が捜査手続について一般的な指示をする、これは捜査のやり方がまずいと公訴を適正に実行することが不可能になる、こういう点からチェックする場合がある、あるいは指示する場合がある、こういうお考えのようでございます。そうしますと捜査の適正ということは、これによつて人権を擁護する、あるいはまた不当に逮捕されないとかいう立場から一般的指示をするのではなく、まつたく後日公訴を実行する際の証拠の保全という意味で指示をするんだ、こう承らざるを得ないのですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/30
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031・横井大三
○横井説明員 百九十三条は「公訴を実行するため必要な」となつておりますので、それ自体から人権擁護といつた面は直接には出にくいと思います。しかし公訴が適正に行われるかどうかは結局するところ裁判が適正に行われるかどうかということになるのでありまして、たとえばある面の被疑者だけを調べて他の面の被疑者を調べない、そしてその末端の被疑者だけを起訴するということになりました場合には、結局するところ裁判所の裁判全体としては公正を欠くことになりますので、間接的にはもちろん人権の擁護というか正義の維持といいますか、そういう面に影響して来ると思いますが、直接にそれ自体が人権擁護を目的として発動するということは、百九十三条の現行の規定の解釈からは困難であろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/31
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032・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうしますと捜査の適正というのはもつぱら公訴のために広く資料を収集するということなのであつて、捜査の内容が被疑者の権利を不当に侵害しやしないか。そういう意味においてこの捜査の適正ということを言うのではないのだ、こう理解してよろしいわけでありますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/32
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033・横井大三
○横井説明員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/33
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034・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうしますと捜査そのものが適法であり遠正である。公訴の実行に関係なく捜査それ自体が適正であるのだということを保証する方法としては、まつたくこれは司法警察職員にゆだねられている。自律的行為あるいは内部的監督というものによつて保証されるのであつて、検察官はそこまではタッチしないのである、こういう意味でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/34
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035・横井大三
○横井説明員 その場合問題になりますのは、公訴の適正な遂行に関係のない捜査の適正ということが、具体的にどういうことを言うのが非常に問題になる点であろうと思うのです。しかしながらもし公訴の遂行に関係のない捜査の適正というものが実際にあり得るといたしますならば、それはもちろん検察官の指示の範囲外でありまして、警察の自主的な粛正と申しますか、それにまつことになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/35
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036・大橋武夫
○大橋(武)委員 そこでこの公訴の実行のために検察官が必要な事項を指示する、これはまつたく公訴のために必要である。この公訴の実行ということになりますと、公訴を提起しこれを裁判において維持するということであつて、そのためにはできるだけ公正な資料が多ければますます適正を期し得るわけである。そこで逮捕とか差押えあるいは捜索検証、こういうことはすべて証拠保全の手続でありますから、証拠は多ければ多いほど公訴が適正に維持され得る。ですからこれをチエツクするということは検事が公訴を適正にする上からいつて必要である。このチェックが必要であるという理論的根拠は非常に無理じやないのかと思うですが、その点はどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/36
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037・横井大三
○横井説明員 ただいま仰せられました押収捜索検証というのは行政処分でございます。捜査全般としましては任意処分というものも十分行われるわけでございます。こういうような場合には任意処分でやる方がいいとか、あるいはさらに進みまして現在この段階で捜索をいたしますと、それが現在捜査線上に現われていない面にも響きまして、もし現在やらなくて最後に一括してやれば全体の証拠が全部手に入る。それが今いたしますと、少し時間を置けば全部入る証拠が一部分しか入らないといつた場合も考えられ得るのではないか、こう思うのでございます。従いましてチェックすることは常に証拠の収集を消極的にしてしまうというふうにはならないのでありまして、なるほどその具体的な証拠については現在押えられないかもしれません。しかし全体としての証拠の集まりがかえつていい場合もあり得るのではないかと考えられるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/37
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038・犬養健
○犬養国務大臣 横井参事官は法律家として法律的な立場においてお答えしているわけで、それが一番正確を期するゆえんではありますが、その法律論を厳密に小刻みに申し上げる結果、あるいは私どもの大きいねらいについて誤解があるかと思いまして、ひとつ蛇足を加えますがお許しを願つて御回答申し上げます。
つまり公訴の遂行ということから切り離して、切り離せるかどうかという法律論は別にございますが、かりに切り離して捜査の適正にのみ検察官が興味を持つて、その興味の上に立つて一応警察官の行います捜査に一々口出しをするという考えは毛頭ございません。それははつきり申し上げておきたいと存じます。ただ平たい言葉で言つて、公訴の遂行がこじれるような捜査については、それも個々のケースでなく一般的準則において、検察官の意思の反映を、捜査という公訴の遂行のスタートを切つてくださる専門係官に対して意思の反映をしたい、こういう気持でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/38
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039・大橋忠一
○大橋国務大臣 今大体承りました説明員からの御説明によりますと、捜査の適正ということでなるべく資料や証拠をたくさん収集する。それには時期的にいつがいいかということは非常に問題である。そこでそういつた技術的な面から捜査の適正ということをお考えになつているように受取れます。しかし普通に捜査の適正という言葉を、字を見まして私どもが考えます観念といたしましては、捜査が法的に完全であるばかりでなく、社会的にもまた被疑者の権利の保護という点から見ても非難がないこと、これが普通の捜査の適正という字から受ける感じなんです。今そういうふうに私どもは考えておりましたら、捜査の適正というのはそういううのではないのだ。捜査が適法であるとかむろん適法は必要でしようが、社会的にあるいは被疑者の権利、保護という意味において非難せらるべき点がないという意味ではなくして、いつ捜査をやれば犯罪検挙の上から有力な証拠がたくさん集まるかどうか、こういう技術的意味からいつて適正ということを理解すべきである、こういう御答弁に伺つたので非常に字の与えている感じと今の御答弁とわれわれの常識からいつて食い違いがあるように思いますが、その点を再度確かめていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/39
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040・横井大三
○横井説明員 捜査の着手の時期と申しますか、押収、捜索の時期と申しますか、そういう点が例に出ましたので、これを申し上げたのでありますが、公訴が適正に行われるということは技術的に証拠がたくさん集まるということだけで行くのではなかろうかと思うのであります。もちろん捜査全体がいろいろな意味において適正に行われませんというと、いよいよこれを起訴いたしまして検察官が公判廷で公訴を維持する場合にし、あの場合のあの捜査は間違つておつた、従つて検事の公訴は不適当である、というような法廷における被告人の意見陳述が最近の法廷においてはしばしばありますことは御承知の通りであります。従いましてあらゆる意味においてその具体的事件の捜査が公正であると同時に、他の事件とも比較いたしましてしかも均衡を失しない、結局裁判所が最後に判断いたします場合に正義の維持のできるような、そういう判断が下せるように公訴はやはり行わなければならない。そういう意味におきまして単に技術的という、言葉の用い方でございますが、技術的という言葉だけに限局して考えますことは、私の申し上げた趣旨を少し狭くお聞取りいただいたことになりまして、私の説明があるいは悪かつたのかと思いますが、もう少し広い意味であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/40
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041・大橋武夫
○大橋(武)委員 承るとだんだんわからなくなります。それでは一体「捜査を適正にし、」その他公訴の遂行を全うせしめる上からも一般的指示をするのだ、「この捜査を適正にし」というのは、社会的に見て、あるいは被疑者の権利保護という上から見ても、何ら非難されないというところまで検事が責任を持つて指示して行く、こういう意味であるのですか。それともそうではない、公訴を提起し、これを維持するに必要な技術面から見て、捜査に対して検事が希望を述べるのか、その範囲内において一般的指示をするのですか、どつちなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/41
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042・横井大三
○横井説明員 やはり検察官は公訴官でございますから、この条文にもございますように、公訴の遂行を全うするために必要な限度において指示するのでございまして、ただ単に直接捜査の適正ということだけを取上げてかれこれ言うのではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/42
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043・犬養健
○犬養国務大臣 補足いたします。今度の改正案の条文に「捜査を適正にし、」その他公訴の遂行を全からしめる。「捜査の適正」ということを平たい言葉で言いますならば、検察官が気にするのは、公訴の遂行に関係ある意味で捜査の適正に意思を反映をしたい、こういうことでありまして、先ほどお尋ねのように、司法警察官が捜査に当つて被疑者の人格をどうしたこうしたということは、まつたく警察官の自律にまつことであります。それまで干渉するようなことがあつては改正案は改悪だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/43
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044・大橋武夫
○大橋(武)委員 大体御趣旨はわかりました。そこでこの改正の理由に関連して承つておきたい点は、警察官の捜査が適正でなければ検察官の公訴がなかなか適正にならない。それだから公訴を適正にするためには、どうしても警察官の捜査についてまでタッチして行かなければならぬ、指示して行かなければならぬ、こういうような御趣旨だと思いますが、それはそれでよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/44
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045・横井大三
○横井説明員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/45
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046・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうすると、検察官というものは、警察官の捜査が悪いと、どうしても適正な公訴はできない、こういうことになる。私どもは一応警察官の捜査が悪ければ、検察官はあらためて自分のところで責任を持つて捜査をして、そして適正な公訴をやつて行く、それが検察官の仕事じやないかと思うのです。警察官に捜査だけさして、それが適正ならうまく公訴ができるし、それが悪ければ公訴はうまく行かないのだ、こういうことになれば、何のために警察官があるかということになる。これは言うまでもないことだと思うのです。そうなつて来ますと、検事は警察官の捜査が不適当な場合には、自分があらためてその事件を捜査して、そして適正な捜査を行うべき能力があるんだ、まずその能力があるとお考えですか、ないとお考えですか。あるとすれば、何もそう指示のことまでやかましく言わなくとも、悪ければ自分のところで事件をとつて捜査をすればいい、こうも言えるわけですが、その点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/46
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047・横井大三
○横井説明員 確かに多くの場合は、警察から送られた事件につきまして足りないところを、補充するなり、どうしてもできなければ事件はそれでおしまいにするということも考えられます。しかしながら、警察から送られた事件を検事が補充する段階では、もうすでにどうにもならない。しかし事件の実態をどうしても相当つつ込んで調べ上りて起訴しなければならないような事件でありましても、もうその段階ではおそいといつたような場合も考えられます。従いまして、どうしても捜査の段階あるいは押収捜索をいたします段階等におきまして、検察官の公訴官としての立場からこうやつてもらいたいということを警察の方にお伝えするということも必要になつて来るのではないか、こう思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/47
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048・大橋武夫
○大橋(武)委員 この問題はこの程度にします。そこで先ほど大臣からも、側々の事件については検事がこの事件はこうしろとかああしろというような指示をすべきものではないというお答えをいただきまして、そうあるべきことだと敬意を表したのでありますが、先ほど説明員からの御説明を承りますと、事件の着手前についてある種の事案について個々のケースごとにその事案の概要を報告して検事と打合せをする、あるいはまた個々の事件に着手する前に検事の同意を受けろ、こういうような指示をすることは、一般的指示の範囲内に入つているのだ、こういう御回答があつたわけであります。そういたしますと、これは大臣の意図せられておりますところを越えまして、明らかに個々のケースについて検察官が内容にタッチして指示をするような結果になる、こう思うのでありまして、この点は大臣のお考えと説明員のお考えとの間に多少喰い違いがあるのじやなかろうかと思いますが、その点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/48
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049・犬養健
○犬養国務大臣 そのことはいい折に申し上げようと思つておつたのでありますが、ここにおられる政府委員は、私と違いまして専門家でありますから、専門家は一つの例外があつても、それはやはり範囲に入るという緊張した心持になるのでありますが、私は大綱から申し上げるのであります。個々の事件の捜査に先立つて連絡してもらいたいということがもしあれば、非常に特殊なものだろうと思います。何と何かということは、私専門家でありませんから、午後早々お答えしてもいいのでありますが、これはきわめて例外であります。破防法のいきさつは私の就任前でございますが、破防法などは特殊の事案でちりまして、破防法がそうであるからといつて、この刑事訴訟法のこの条文も、同じように何でもかんでも捜査の前に連絡しなければ困るという気持は、責任大臣として持つておりません。これは食い違いでなくう私がしろうとでごく大ざつぱに言つた言い方と、法律家が、一つの例外でもこぼしては法律家として恥になるという答弁の仕方の味の相違だろうと思います。私の方針をほんとうの方針とお思い願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/49
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050・大橋武夫
○大橋(武)委員 私どもは、今大臣の御方針をここで審議しておるのではなくて、法律案を審議いたしておるのであります。法律案に書いてある字句がいかなる内容を含んでおるかという、ての内容についての解釈を承つて、これがいいか悪いかについてわれわれの態度をきめなければならない、そういう意味で伺つておるのであります。今の大臣のお話と説明員のお話とを両方総合して判断をいたし、ますると、大臣は、一般的指示権によつて、個々の事件について検察官が警察に干渉するようなことはやりたくないんだ、こういうお考えをもつてこの改正をなすつておられる。しかるに現われた字句は、守門家たる法律家が指摘するところによりますと、場合によつては個々の事件について干渉することも法的に可能である、そういう内容を持つておるというわけなのであります。そうしますと、ここに出ておる法律案の内容は、大臣のお考えになつておる以上に非常にドラスティックなものである、こういわざるを得ないのでありまして、その点において、法務大臣は、はたして大臣のお考えになつておる内容と、この法案の法文を専門家が解釈するところ、それとの食い違いが非常に大きいということにお気づきになつたろうと思う。それではたして適当であるかどうか、この点についての大臣のお考えを承ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/50
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051・犬養健
○犬養国務大臣 お答え申し上げます。それはこういうことになると思うのであります。捜査を適正にし、その他公訴の遂行を全からしむるという法律語からは一々のケースに干渉いたしませんという意味合にはすぐ出て来ない、それが参事官の言い方であります。従つて大橋さんの御心配はそこにあると思う。これは結局こういうことになると思います。一般的準則においてどういうことを一般に指示するかということの内容に触れて来ると思います。従つてその内容をこしらえるときは先ほどのような心持でこしらえたいと思いますが、その点もおそらく御心配であろうと思いますから十分国会の意思の反映を尊重いたしましてつくりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/51
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052・大橋忠一
○大橋(忠)委員 私は個々の事案の着手前に検察官が着手していいとか悪いとかいうことをきめるということは非常な行き過ぎではないかと思う。そういうことになりますと新刑事訴訟法が企図いたしておりまする独立機関としての司法警察機関というものがまつたく根本的に害されてしまう、これは新刑事訴訟法の精神をまつたく殺すことになるのではないかと思うわけであります。そういう意味において先ほど説明員からお答えになりました着手前に事案の報告をさせることができる、着手前に着手についての同意を検察官から受けさせることができる、そういうことをも指示できるような法文であるということになりますと、これはわれわれとしても大いに考えなければならぬ、こう思うのであります。そこで大臣とされましては個々の事件に入らないという法的な保証をこの法文の中にお与えになるということについては御賛成でございますか、どうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/52
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053・犬養健
○犬養国務大臣 もう一つ御参考までに申し上げたいと思います。それは大橋委員の御欠席のときに二、三回答弁いたしておりますことで、この答弁は私がノートに書いて横井参事官の上官である刑事局長に見せたところ、この通りでまつたく同感であるという上で申し上げておるのであります。一般的指示というのは、個々の事件を直接の目的として指示はしない、一般的準則によつて一般的に指示しようとするのだ、こういう答弁をいたしたのであります。従つて一つ一つの事件の捜査以前に検察官が警察官との連絡ですか、そういうものを要求するというのはよくよくの例外でなくてはならぬと思いますが、その例外ということの御不安であろう、こう私は責任を持つて答弁しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/53
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054・大橋忠一
○大橋(忠)委員 大臣はそう言われますけれども、先ほど来説明員からの説明されたところで明らかなるごとく、一般的準則という形をもつて検察官が個々の事件にタッチするような内容を含んだところの一般的な準則が出し得ることになつておる、ここに問題があるわけでありまして、なるほど一般的準則として指示されるところは一般的なものでありましようが、これを援用すれば当然に個々の事件の内容を検察官が支配するという結果にならざるを得ない、そうした一般的指示が出て来る、またそれは法的に解釈上当然出て来る、こういう御説明なんです。この点についてはどういうふうにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/54
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055・犬養健
○犬養国務大臣 詳しくはまた政府委員から答弁をさせたいと思いますが、結局一般的準則というものはいかにも鷹揚であつて、これなら一般的準則だ、しかしこれを個々に当てはめるとあにはからんや一々警察官の捜索行動を締め上げる、そういう書き方もあり得ると思います。そういう書き方をしませんという法文はここに書いてありませんから、大橋委員の御指摘の通りだと思います。その点は、もしそういうことをすれば新刑訴改正の精神をあやまつことでありまして、国会の厳正な御批判を仰がなければならぬ、私としましても政治責任としてそういう一般的準則は出さない、こういう考えを持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/55
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056・大橋忠一
○大橋(忠)委員 私どもは国会で再び改正されるまでは有効であるところの法律を今つくろうとしておるのでありまして、行政当局としての大臣の御方針が適当かどうか、そういうことは法案の審議でなく、国政調査なり何なりまた別の機会に申し上げ得ると思うのです。ここで私のお尋ねいたしておりますのは、この法案において大臣が個個のケースに入らないと言つておられるその気持をいかなる措置によつて御保証なさるか、その保証の法律的な形式を承りたいと思うのです。どういうふうにすれば大臣のお気持がはつきりと現実に行われることが保証されるか、大臣がかわつたらばやり方がすつかりかわるというようなものでは、結局われわれとしては白紙委任状を出すようなことになります。ただいまの大臣の御答弁にわれわれは非常に議事を表して、まことにそうあるべきものと考えておるが、願わくばそれが常にこの改正法律の実行の方針として行われるということについて法的な保証なり、あるいはこれをある一定の手続によつてきめるなり、あるいは一部の解釈規定を補充することによつてできるなり、大臣のお考えの御方針がほんとうに具体化するような措置をとり得ればたいへんけつこうなことだと思いますので、それについてなお法務当局としてこういうふうにすれば大臣のお気持が具体化されるであろうということにつきまして、何かお考えがありましたらお答えを願えればたいへん幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/56
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057・犬養健
○犬養国務大臣 御心配は重々ごもつともでありまして、大橋委員その他国会の議員は苦い経験がおありだと思います。そこで私の考えは準則をつくるときに厳正に国会の意思を反映したいと思うのでありますが、もう一つは今非公式に部内で相談しておりますのは警察当局に国際間の交換公文みたいなものを出してもいいのではないか、こういうように考えております。どういうふうに書いていいかなかなかむずかしいのでありますが、結局私の心持はこうであります。準則というものは準則である本質上、間接的には個々の場合に影響がある、また影響がなければ準則なんか書かない方がいいのであります、個々の事件を直接の目的として一々指示をしない、何かこういう意味のものが書けたら書いて行きたいと思つております。そして警察側に公文として届けたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/57
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058・大橋忠一
○大橋(忠)委員 もしそういう資料がおありでしたらなるべく早く御提出を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/58
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059・小林錡
○小林委員長 ちよつと私からも政府に要望したいのですが、今の一般的な指示、一般的な準則を定めるというような抽象論で議論を戦わしておると、大橋君の言われるように大臣の言明されたことが法律解釈に影響はありましようけれども、永久に残つて行く法律としてはそういう政治的の考えというものは入りませんが、政府のこの点に関する説明が非常に不十分であり、不明確と私は思います。一般的な準則を定めるというのは一体どういうことであるのか、たとえば賭博とか窃盗とかいうような簡単なものに対してはどうである、複雑なものに対してはこうであると、もう少し政府の考えておる具体的の実例について材料を示してもらいたい、そしてその上で説明を聞くとわかると思いますから、委員諸君もおそらくこの点に対しては政府の考えられるところはよくわからないと思います。もう少し親切な説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/59
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060・犬養健
○犬養国務大臣 ごもつともであります。これはまつたく委員長のおつしやる通りでありまして、非常に軽い犯罪などは一般的準則にももう必要がないものもあると思います。もちろん必要があるものがありますればこそこういう問題が起つておるのですが、どういう指示をしてどういうことをしたい上か、できるだけ詳しく書いて委員会へ御報告申し上げることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/60
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061・大橋武夫
○大橋(武)委員 そこで一般的指示権というものが、こうして捜査について公訴に関連あるものとして与えられた。これに関連して当然考えなければならぬ問題は、警察機関内部における監督権の問題でございます。そこで監督権と一般的指示権というものはいずれが優先するものであるか。あるいはどういうふうな関係に立つものであろか。また監督権と一般的指示権の指示の内容がそれぞれ矛盾した場合においては、警察官としてはどれに従えばいいか、この問題についてお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/61
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062・横井大三
○横井説明員 内部的な監督権と刑事訴訟法上の一般的指示権とどちらが優先ずるか、こういうお話でございます。刑事訴訟法上は法律的に申しますとやはり一般指示の方が優先するものではないかと思います。もちろん内部的な指示に反して一般指示が出されました場合には、その出しました検察官に対しまして懲戒その他の問題が起つて来る、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/62
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063・大橋武夫
○大橋(武)委員 刑事訴訟法上においては優先するというのは一体どういう意味ですか。優先という以上はいかなる法律の運用においても優先でなければならぬと思う。法律というものは、何の法律についてはこれが優先である、何の法律についてはこれが優先である、人の行動を規律するものであるから、その行動を別個の法律の角度から見たことに優先だ、優先でないということは、結局具体的に警察官はどつちの指示に従えばいいかということについての回答を得たいというわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/63
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064・横井大三
○横井説明員 おそらく検察官は、内部的な指示がございました場合にはそれに反する一般指示は出さないと思いますけれども、もし出しました場合には、その指示に警察官は従わなければならない。こういうことになろうかと思います。内部的な統制は検察官の方には及ばないわけでございますけれども、やはり警察官にあてて出しました一般指示の方が法律的に優先する。従いまして警察官はその一般指示に従わなければならない。これが法律解釈としてはそうならざるを得ない。こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/64
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065・大橋武夫
○大橋(武)委員 これは非常にむずかしい問題なんですが、一体検察官が警察機関内部の監督権以上の効果ある指示をなすということになりますと、警察の捜査行動については監督者に指揮権があることはむろん申すまでもない。権事には指揮権がない。そうするとこれが二元的になつてしまうおそれがある。今の説明員の御説明を承つておりますと、明らかに二元的になるのだというような印象を受けるのです。はたしてそれでよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/65
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066・横井大三
○横井説明員 私の御説明があるいは悪かつたかと思いますが、二元的になると申すのではなくて、私が今予想いたしましたのは、たとえばこういう事件を起訴してはならないというような内部的な基準でございます。それに反しまして検察官がその事件を起訴いたしたといたしましても、裁判所はこれを適法な起訴として扱つて行く。裁判所は適法な起訴として扱わざるを得ない。そういう意味におきましてその公訴の提起は有効と考えられ、適法な有効なものなりと考えられるということを実は題に描きまして、今おつしやいました内部的なこういう準則は出してはならぬというのが出ました場合に、おそらく検察官としましてはそれに庁するような準則を出すことは絶対にないと存じます。しかし万が一間違つて出ました場合にはそれに対して警察官は従うべきかどうか。こういう問題があろうと思います。それでは内部的な準則とそれが反して外部に出た場合の効果の点につきましてどう考えるかという問題になつて来ると思います。今の具体的な場合におきましては、おそらく検察官の一般指示がもしそういう場合に出ましたならば、やはり指示としては有効でありまして、それに従わざるを得ないと思う。ただその場合に検察官が何らかの処分を受けるということは、これは当然であろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/66
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067・大橋武夫
○大橋(武)委員 大体説明員の説明されようとする内容がわかつたような気持がします。それはおそらくは警察官は行政法上の地位、身分から見て、監督者の監督権に従属させられる、そういう本来の行政的な地位を持つておる。従つてこれに対しては、監督者の指示というものに第一次的に服従しなければならぬものである。従つて監督者にあらざる他の機関である検事から指示が出される場合においては、一応監督者の出しておる指揮命令と矛盾するかどうか、矛盾しないということを一応確かめて出すべきものである。従つて矛盾した指示は出されないのが普通だろう。しかしかりに出された場合においてどうなるか。かりに出された場合において、検事としては自分の指示を出してある以上は自分の指示に従つた書類をつくつて来てもらわなくては困るであろう。こういうことを言われるであろうと思う。それで私が承つておるのはそうした問題ではなく、普通そういうふうになつておる場合において、検察官のお出しになる指示というものが不幸にしてこの警察の監督者の命令と矛盾するという場合においては、警察官としては非常に困難なる地位に立つわけです。行政法的にはあくまでも上司の命令に従わなければならぬ。上司の命令に従つてとつた行動は訴訟法上はどうも不完全なる行為とされるおそれがある、あるいは無効の行為とされるおそれがある、そういう状態になるわけです。そこでかような状態はできる限りこれを予防し救済することが必要なんであつて、その方法としては検察官の指示が常に上司の命令に矛盾しない、また上司の命令が常に検察官の既存の指示に矛盾しないのだ、こういうことが必要なわけでありまして、それが法的にも保証されるということが、そういう困難な事態を予防し、問題の発生を未然に防止する方法ではなかろうか。こう思いましたので、その点についてそうした予防措置をお考えになつておられるかどうか、これを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/67
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068・横井大三
○横井説明員 非常にむずかしい問題でありまして、現行法においても検察官と公安委員あるいは司法警察職員は相互に協力いたしまして、その間に矛盾がないように捜査を行つて行くということが建前であります。しかけながら一面におきまして百九十三条という規定がございまして、これをいかに狭く解釈いたしましても検察官は公訴の維持に必要な限度で現行法でも指示を出せるわけであります。その指示と、狭い意味のかりに出ました指示と、それから警察内部における上官の命令とが矛盾する場合も現行法上考えられないことはない。しかしながらそれはおそらく法律は、その指示を出します検察官とそれから警察の上司との間の協力関係によつて円満にやつてもらいたいということを希望しておるのではないか、こう考えるのでありまして、この問題は、新しく「適正に」という言葉が入るといなとにかかわらず、現行法上から存する問題でありまして、われわれといたしましてもそういう点に矛盾がないように今まではずつとやつて来ておるわけでありまして、この問題は、今度の改正によつて新しく生ずる問題ではございせん。従来のように、協力関係において、そういう矛盾のないようにやつて行きたい、こう考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/68
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069・大橋武夫
○大橋(武)委員 従来のようにやつて行つて、うまく円満に行つておれば問題はないのでして、先ほども大臣が言われましたように、昨年の七月に破防法関係の捜査手続について、通牒を検事総長が出されたことがある。これについて具体的に問題が発生して、いまだにお互いに論争しておられることは明らかであります。こうした問題が現実にあるわけですから、今まで通りうまくやつて行くでは、説明はつかないのです。それならば、結局この問題は、どういうふうに結末をおつけになるお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/69
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070・横井大三
○横井説明員 従来から法律上空白になつております問題を、この際に一挙に解決するというには、なお相当研究を要する問題でありますので、従来通り、両者の協力によつてやつて行きたい。それをこの際一挙に解決するというところまでは、考えておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/70
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071・大橋武夫
○大橋(武)委員 従来通り両者の協力でやつて行ければいいけれども、従来はあまり協力でなかつたからあなたのお答えによると、従来通りにどちらもけんかしながらやつて行くつもりだ、こういう結論になるわけです。それならそれで承つておきますが、何とかそういう問題についても、法的に措置されないとしても、行政的に措置するとか、そういうようなことも、現実の問題としてはおとりになることが、むしろいいのじやなかろうか。そうした問題についても、また後に御相談くださいまして、何かのお考えがありましたら、適当な機会にお答えを願いたいと思います。
それからやはり警察官と検察官との関係なんでありますが、もう一つ問題は、逮捕状が問題になつております。逮捕状の問題につきましては、逮捕状の発付が濫に流れておる、こういうことを改善したいから、改正をお考えになつた、こういうふうに承つておりますが、一体逮捕状濫発の実情は、法務省としてはどういうふうにこれを把握しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/71
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072・横井大三
○横井説明員 われわれが耳にいたしますのは、かなり逮捕状濫発があるという声であります。私どもといたしまして、はたしてあるかどうかという点を調査してみたわけでございますが、それを具体的に一つ一つの事件について調査するということは、非常に困難であります。全体としてどういう問題があるかということを、私ども検察庁に聞いてみたのであります。その中で一番大きいのが、民事くずれの事件について逮捕状が出るという声であります。それ以外に、たとえば告訴人だけの供述をとつて、被告人の供述といいますか、それに当りませんでいきなり逮捕状を請求するというような事例もあるという報告があります。問題は、逮捕状の濫用というのは一体どういうことか。逮捕の職権がないのに逮捕状を出すというのは、明らかに違法でございます。おそらくそういう場合は非常に少いし、裁判所も逮捕状の請求を却下するということになろうと思います。一応犯罪の嫌疑はある、しかし逮捕するまでの必要がないといつたような者に、逮捕状が出ているというのが、逮捕状濫用の問題の実態であろうかと思うのであります。これは数字的には非常に出しにくいのであります。お手元に配付してあります、人権擁護局が中心になりまして、国家地方警察本部の協力を得まして、つくり上げました逮捕状に関する調査をごらんになりますと、わかるのでありますが、逮捕状の請求が却下されるといつた例は非常に少いのであります。逮捕された者が、その後身柄はどうなるであろうかという点をずつと追つて参りますと、起訴の段階まで身柄拘束が継続されておるという人数は、初めの逮捕人数に比べまして、かなり減少して参つております。このすべてが逮捕が不当であつたということは、もちろん言えないわけでありまして、逮捕の段階においてはその必要があり、適法であつたと思われるのでありますが、その減少率がかなり高いということは、あるいは初めから逮捕の必要がなかつた者について逮捕状が出されたというような場合が、この中に含まれているのではないだろうかということを数字の上から推測するわけであります。具体的事件としては、民事事件が多い。数字の上ではそういうような推測ができはしないかという数字がある。これらと、それから在野法曹の方々から耳にいたします点とを総合いたしまして、逮捕状の濫用というものはある、こうい憩うにわれわれは考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/72
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073・犬養健
○犬養国務大臣 追加して、蛇足ながら申し上げます。逮捕状の濫用ということで、いろいろ世間がやかましいのでありますが、警察官全体の比率からいえば、ごく少数のものであろうと思います。しかし世間が非常に心配しておるということは、見のがすべからざる社会現象として、当局はこれに注意しなければならぬという意味において、私どもはこれを重く取上げておるのであります。私どものよく耳にいたしておりますのは、今説明員の申しましたいわゆる民事くずれの事件であります。今説明員が申されたことについて、たまたま先日猪俣委員から御質疑がありましたが、時間が何か切れて、そのままになつていることがございますから、お許しを得て、あわせて御報告いたしたいと存じます。それは、逮捕状の請求を受けた裁判官が、適法かどうかということはただちに判断することはできる。しかし妥当性があるかどうか、違法ではあるが、今すぐにやつた方がいいか、違法性ではあるが、このくらいはいいのじやないかという問題について、裁判官がその判断ができると思うかどうかという御質疑が、この前猪俣委員からあつたのでございます。それはできるという学者もおられますが、大体それが少し困難ではないかという考え方も多いようであります。そこでこの面からしても、逮捕状の請求が警察官から裁判官に対してあつた場合に、犯罪事件の問題について、逮捕状が妥当であるかどうか。多少体験も持つており、法律知識も持つておる検察官の意思反映、検察官の意見が裁判官に向つて加わる方が、事柄の処理としてはいいのではないか、こういう考え方を私どもは持つている次第であります。先ほど説明員から、警察官と検察官との間は、一時には解決しないけれども、だんだんやつて行くと申しましたが、これでは、さぞかしお聞きになつて心細くお感じになつたでありましよう。しかし説明員の立場上、そう政治的なことも言えないで、ああいう御答弁になつたかと思いますが、私は全力をあげてやつておるつもりでございます。たとえば百九十九条の逮捕状の請求は、検察官の承認が必要だというのが、この前の国会に出ます前に原案でありました。それでは今お話のあつたような、長年にわたる事情の解決になりませんし、承認までの必要はないと考えまして、私の判断において実は検察官の同意だというふうに直したわけでございます。しかしたびたび本委員会で申し上げましたが、同意という字が世界で一番適当な字かどうかというお尋ねがありますと、大丈夫そうだと言う自信がありません。要は逮捕の必要があるかどうか、違法性のみならず妥当性があるかどうか、裁判官に少し困難な場合があるのじやないかと思う。それに対して経験あり、法律知識ある検察官の意見が裁判官の耳に届く、こういう心持が私の真意であると御承知願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/73
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074・大橋武夫
○大橋(武)委員 ただいまの大臣の御説明を承りますると判事が本来逮捕状を出すべきものかどうかということについて判断すべきものである、また法的に判断上得る立場にある。しかし現実の問題として具体的に判断することが困難である。そこで検事の知識経験に基く意見を判事に到達させる、その一つの方法としてその同意という制度によつて逮捕状をチェックすることが適当だ、こういうふうな御説明でございますが、それでよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/74
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075・犬養健
○犬養国務大臣 大体さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/75
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076・大橋武夫
○大橋(武)委員 それではその場合においていろいろ問題を生ずると思いますが、まず検事が個々のケースについて逮捕状を請求する事件であるかどうか判断するに適当な立場にある、その意見を聞くことがよろしいと認められる理由は、まず第一にどういうことでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/76
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077・横井大三
○横井説明員 検察官は公訴官であつて、起訴、不起訴を決定し、公判において公訴を維持するという立場にございます。捜査というのは公訴を提起するかどうか、それからまた公訴を提起した場合の証拠の収集というものを中心として動く公訴手続でございます。従いまして検察官が公訴官として証拠がいかに法廷に現われるか、またそれが裁判官によつていかに扱われるかということを一番よく知つております。また同時に捜査についても、必要がある場合には捜査をするととができるという規定がありますので、捜査の面においても一応の経験を持つておる。従いましてこの場合に逮捕状についてその意見を裁判所に表わすと申しますか、今大臣のお話のような意味におきまして検察官が動くというのは、検察官の地位として適当でないだろうか、こう考えたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/77
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078・大橋武夫
○大橋(武)委員 そういう理由でありましたならば、むしろ徹底的に逮捕状の請求は検事でなければできないというふうになすつたらいいように思うのですが、そうされない理由はまたどういう点にあるのですか。公訴官たる検察官が具体的によりよい判断をなし得るということでありましたならば、むしろ百尺竿頭一歩を進められまして、この際逮捕状の請求は検事以外にはできない、警察官は逮捕状の請求はできないという昔の法律に帰されたらいいと思いますが、それをそうされない理由はどういうところにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/78
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079・犬養健
○犬養国務大臣 これは法律的なことはまた説明員から申し上げますが、私がしばしば申し上げておりますように、捜査の第一次的責任者という警察官の地位をそこねることになると思われる、それが一番の主たる理由であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/79
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080・大橋武夫
○大橋(武)委員 しかし捜査の第一次的責任者として認めることは認めても、現実において逮捕状請求について能力がないとすれば、これは国民の人権を尊重する上からいつて、能力がない警察官に逮捕状の請求権を与えておくということは、非常に危険千万であると言わざるを得ないわけであります。それをあえて残しておかれる理由は、まことにどうも人権尊重の点において欠くるところがありはしないか、逆にこういうりくつも立つわけですが、もう少し徹底した理由を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/80
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081・犬養健
○犬養国務大臣 私どもの答弁が悪いのでありましようが、能力がないということはまだ申し上げてないと思います。第一次捜査の責任者たる警察官の能力に万全を期する裏打ちをする。何となれば公訴の維持が困難であるということや、問題はこれまた検察官の一つの職責の領分であると同時に経験も持つておりますので、検察官の考え方をここにあわせて反映させるということが、現実的にも世間の今の心配を解消させると思うのであります。能力がないということは決して考えておらない次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/81
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082・大橋武夫
○大橋(武)委員 しかし能力がないと言われないだけであつて、およそある法律行為することについて他人の同意が必要であるということは、法律的にはこれは行為能力がないといわざるを得ない。たとえば、今の民法ではどうなつておるか知りませんが、親権者の同意を受けなければ未成年者は法律行為ができない、妻が贈与をなすには夫の同意を要するというように、すべて同意というものは不完全意思表示にその効力を補完するために与える付随的な意思表示なんです。だから同意を要する法律行為というものは、本人からいえば行為能力を制限されるということになる。これは法律家として理論構成上当然なことだ。またそういう意味ですべての法律で同意という言葉が使われておる。ただ意見を聞くことを同意ということに使つておるのではありません。外交文書なんかの儀礼的なものならともかく、きわめて厳格な法律用語をもつて規定される訴訟法において、法律行為あるものに対して同意なんという言葉を使うことは専門家として――大臣は非常に推奨しておられるから専門家として特に敬意を表しますが、あまり専門的でわれわれしろうとにはよくわからないのですが、その点どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/82
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083・横井大三
○横井説明員 民法上の同意というのとこの場合の同意というのとはたして同じかどうか相当問題のある点でありまして、私どもの考えますのは、逮捕状濫用の非難がある、そこで検察官もそれを拝見いたしまして、この場合はたして逮捕状を出すのが相当かどうかという点について意見を述べるというだけでありまして、民法上の同意と必ずしも同じように考えなくてもよろしいのじやないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/83
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084・犬養健
○犬養国務大臣 蛇足ですが申し上げておきます。それだからけしからぬといつて追いかけてしかられるかもしれませんが、あらかじめ御了承願います。先ほども例に引きましたように外交文書でも同意をとりつけるし、最近の実例でありますが、スト規制法で罰則その他で法務省の同意をとりつけるということが頭に浮んだのでありますが、これは何も労働大臣が能力がないという意味でなく、多少専門的な方から裏打ちをお手伝いするという意味でやつたのでありまして、本条文における同意というのも未能力者であるから監督してやるという意味では毛頭ありません。それではどうもこの字句がけしからぬということならば、私の気持はそういうことであるということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/84
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085・大橋武夫
○大橋(武)委員 未能力者というか毎能力者というか、それは別としまして、少くともある法律行為について他人の同意を要するということは、その法律行為についての能力が不完全であるということを法的には意味する。それについて民法であろうが何法であろうが、ある法律行為について他人の同意を受けなければ有効な法律行為ができないといえば、これは不完全能力者と言わざるを得ないわけであります。ですからそれは法的には不完全能力者と法務省でお認めになつての御提案である。こういうことを前提として今後御質問を申し上げなければならぬ。もしそうでないとするならばもう少し法的に御説明を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/85
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086・犬養健
○犬養国務大臣 どもう専門家を煩わすのも何ですからお答えいたしますが、無能力者とは思つておりませんが、さるも木から落ちるということもありまして、完全であるべき警察も、民事くずれや何かで不完全行為をすることはある。現にありますので、全部が全部不完全行為とは思いませんが、たまにある不完全行為も人権侵害になるので、そういう場合でのお手伝いもできたら、こういう心持で検察側の意思反映を、逮捕状請求の場合にいたしたい。こういう心持であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/86
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087・大橋武夫
○大橋(武)委員 この問題は法律的な問題でございますから、ひとつ専門家の意見を十分お聞きなされまして、法律的に御答弁をいただきたいと思います。私どもは法案の審議をしておるのでありまして、大臣の常識のテストをしておるわけではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/87
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088・横井大三
○横井説明員 不完全能力という言葉を使われましたが、たとえば民法のお話で、転貸しをする場合に同意がいるというようなことになります。そういう意味で不完全能力ということは言えるのだと思います。つまり同意がなければ請求ができない。そういう意味で同意が要件となるので、その限度で言葉としては適当でないかとも思いますけれども、不完全能力と申しますか、そういう意味には考えられます。しかしどうも不完全能力という言葉の与える意味が非常に強いように思いますので、それがなければそういうことができない。そういう権限しか持たない、こういうふうに考えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/88
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089・大橋武夫
○大橋(武)委員 現にこの同意を欠いた法律行為は、二項か三項か、それによつて裁判所に対して不完全である。逮捕状請求としての意思表示の効力を生じない。それだけ不完全な法律効果しか生じない。これは法律的には明らかに不完全能力と言わざるを得ないのです。私は何もりくつを言つておるのではない。解釈上当然にこうなる。あなた方がこれを書かれるとき不完全能力という言葉を意識されたか、意識されないかは私は知らない。しかしこれは法的に見れば不完全能力としての取扱いを完全にしておられるわけです。その点はどうでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/89
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090・犬養健
○犬養国務大臣 またおしかりを受けるかもしれませんが、不完全能力かいなか、その言葉以外で返事をしてはならぬ。法律的に返事をしろ、お前の常蔵テストをしておるのではないというのならば、これは不完全行為というもりを頭に置いて、無意識でなく、意識して書きました。ただそう申し上げると、国務大臣が警察を不完全行為と認めたというあと味が非常に悪いので遠慮しておつただけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/90
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091・大橋武夫
○大橋(武)委員 私は大臣のお気持もよくわかるので別に揶揄するわけではないのですが、まず大臣に伺う前に不完全能力者として警察官を扱つたのだ、法的にはそうなるのだと言わざるを得ない、ただいまそういう専門家として御回答をせられました。
そこでなお大臣に承りたいのは、おそらくこういう結果になるとすれば、これは大臣のお考えとしては、もともと大臣のお気持からは意外のところまで発展し過ぎているような気がされるのではないかと思うのです。それでそうかといつて現実に検察官の逮捕状の発付、あるいはこれを発付すべからずということについての意見が逮捕状の裁判に反映するということは、ほんとうにけつこうなことであり、大臣も言われるようにそうしたより高い見地からの意見が反映するということが、人権保障の上からいつて望ましい、これも私はまつたく同感であります。大臣のお気持を法律的に生かすといたしましたならば、結局その検察官の意見が裁判にあたつて必ず遅滞なく裁判所に到達する。そして裁判官は警察官の逮捕状の請求と同時にあわせて検察官の同意であるか、不同意であるかという意見を見る、それに基いて裁判を決定するというような手続になる、それが非常にいいし、そういうふうにしたいという、その方法としてどういう方法がよかろうか、いろいろ御研究になりました結果、それでは一応事前に同意ということにしたらどうであろう、こういうことでこれを何げなくお認めになつたのではなかろうか。しかしこれを同意ということで法的に構成いたして参りますならば、逮捕状請求については警察官に完全能力を認めないという行き方であつて、その点はあるいは今後警察官を捜査に協力せしめる上からいつても政治的におもしろくないのではないか。そうなれば弊害を伴わずしてしかも実効をあげ得る方法があれば一番いいわけでありまして、それには逮捕状の裁判にあたつては判事に検事の意見が反映するような措置、それだけが大臣として望ましい点である。それ以上のものを望んでおられるのではないのではないか、こういうように考えて承りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/91
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092・犬養健
○犬養国務大臣 大体御同感でありまして、逮捕状の請求を受けた場合の裁判官が時宜に適した措置ができるということが最終目的でありまして、検察官が警察官の上に君臨する、あるいは検察官が警察官を不完全行為者と認めることはこの条文の重点でありません。従つて大体において大橋委員のこの条文の御解釈の仕方には賛成であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/92
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093・大橋武夫
○大橋(武)委員 もしそうであるといたしましたならば、この点についても大臣のお考えを必要にして十分なる範囲において表現するのには、いかなる表現方法が適当であるかということについて、なお法務省でも御研究いただきたいと存じます。むろんこれは法務当局とせられましては、法制審議会で審議せられたのでありまして、法務当局としてそれ以外の意見はない、こう言われる場合もあろうかもしれませんが、ほんとうから言うとわれわれの側で趣旨を体してさらに字句を検討すれば一番いいわけでありますが、皆様の専門的な高い御経験なり御能力を信じまして、はなはだお手数ではありますが、そうした表現がいかにすれば可能であるかということについてなお御研究いただきまして、適当な機会に資料として御提出いただいたらたいへん仕合せであると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/93
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094・犬養健
○犬養国務大臣 十分御趣旨を尊重いたしまして考えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/94
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095・大橋武夫
○大橋(武)委員 大体二、三の資料を要求しておきますから、その御提出をしていただきましたあとに伺うことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/95
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096・小林錡
○小林委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時半より再度することとし、これにて休憩いたします。
午後零時三十九分休憩
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午後二時二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/96
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097・小林錡
○小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
昨日細迫兼光君より発言のありました松本三盆君に関する件について、この際法務大臣より説明を聴取いたします。犬養法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/97
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098・犬養健
○犬養国務大臣 昨日細迫委員より松本三盆氏が拘置所の中で毒を飲まされたのじやないかというような松本三盆氏の陳述について、真偽をお確かめになつた御質問がございました。さつそく調査いたしまして、ただいままで判明した点を御報告申し上げたいと存じます。
七月十二日の朝に係員が松本三盆氏を運動に連れ出しましたときに、ハトロン紙の紙きれの上にすずめの死体がある。そのそばに魚の骨が落ちていることを係員が発見いたしました。それを係員が拾いまして、ダリヤの根のところに埋めたわけでありまして、松本氏はそれを見ていたそうでございます。その前に松本氏がその朝窓からすずめの死んでいるのを見まして、衛生夫にどういうわけですずめが死んでいるのだと聞かれたそうであります。衛生夫がいろいろ調べました結果、松本氏のところへもどつて来まして、だれもすずめを殺した者はないようですと答えましたら、松本氏は、いやありがとう、何しろ縁起が悪いからねというような話があつたということでございます。前の晩の夕食の副食物はいかにも魚でありました。これは調べた結果、あじであつたということでございます。すずめはどうしてそこへ落ちていたのかどうもいまだにわからないのでございます。次に松本氏は前からおなかをこわしていたということでございます。従つて前の晩の魚で下痢をしたという考え方は、どうも結論が出ておりません。それから松本氏は十五日に拘置所長に面会しまして三時間ほどいろいろな話をして、その場合種々の要求をしたそうでありますが、このすずめのことや魚のために下痢したお話は出なかつた。もう一つ、これは係官の想像になるのでありますが、もしもすずめが毒のために死んだならば、松本氏はそこへ埋めつばなしにはさせなくて、証拠物とじてただちに保管するように主張されたのではないか、こういうようなことを言つて参つている次第でございます。以上御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/98
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099・細迫兼光
○細迫委員 さつそく御調査くださいまして感謝いたしますが、当時松本氏からこれに関する調査の要求がなかつたといたしましても、今や新聞紙も伝えるような公な事実になつておりますから、当局としても徹底的に解明なさることがよろしいと思う。なお進んですずめの死骸などがまだあるかどうか。あれば毒物を飲んだ形跡があるかどうか、鑑定というようなところまでお調べなさつた方がいいと思いますが、大臣の御意見はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/99
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100・犬養健
○犬養国務大臣 率直にお答え申し上げます。実はすずめの死体の毒物検査をやつた方がいいのじやないかという話を昨日夜でしたか政府委員室で私は自分の意見として申したのであります。まだそれを実行しろということを通達してございません。それが可能ならばたいへん有意義なことと思いますから、さつそくとりはからつてみたいと存じまん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/100
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101・細迫兼光
○細迫委員 ああいうふうに新聞の記事にもなつたことですから、徹底的にお調べなさつた方がよろしいと思います。今後でさましたらまた御報告をお願いいたしたいと思います。それを聴取することを留保いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/101
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102・犬養健
○犬養国務大臣 ただいまのお話はいさい承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/102
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103・岡田春夫
○岡田(春)委員 関連して。ちよつと遅れて参りましたので前後の事情はあるいは聞き漏らしておるかもしれませんが、すずめが死んでおつたのはどの辺だという報告がありましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/103
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104・犬養健
○犬養国務大臣 私図面を取寄せたのですが、あとで岡田委員のみならず図面を見ていただきたい。松本氏が今入つておられる房の前が運動場になつておりまして、房の前ですずめが死んでいたわけであります。従つて房の中から窓を通してながめられる地であります。運動するときはちようど房の窓の前を行つたり来たりするのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/104
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105・岡田春夫
○岡田(春)委員 私の聞きたいのはそうではない。その場所もありますが、新聞等では、魚の中に頭をつつ込んですずめが死んでいたということですが、そうなつて来ると今考えられる事件としてはきわめて具体的な結びつきが出て来るわけです。魚がこちらの方にあつて、すずめはどこかほかの方で死んでいたというのなら、今のあなたの御報告の点からも理解できる点もありますが、やはり結びつけて考えて行かないとわからないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/105
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106・犬養健
○犬養国務大臣 私の考えでは、毒殺ということは全然ないと申しては無責任ですから申しませんが、どうも考えられない部分が多いので、私の心配しいとあたる魚を夕食に配したということを心配した。献立を取寄せたのでありますが、あじであります。問題の中心点でありますが、報告ですと魚の骨がすずめの死んでおるそばにあつて、魚の中に首をつつ込んでいたという報告はないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/106
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107・岡田春夫
○岡田(春)委員 というと魚ではなくて骨があつたというのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/107
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108・犬養健
○犬養国務大臣 そうです。魚の形があつたような報告でなく、魚の骨があつてそのそばにすずめが死んでいた。もう一度申し上げますが、松本氏を一緒に散歩させていた係員がすずめをダリヤのそばに埋めたわけです。その朝だれよりも早く松本氏が窓からすずめの死んでおるのを見て、衛生夫に、あのすずめは何で死んだんだと尋ねられ、衛生夫は実直な男と見えて、すぐ引返して方々を聞いて、どうもだれも殺したようなことはないと言つてまたもどつて行つたが、いやありがとう、とにかく縁起が悪いからね、こう答えられた。おれはゆうべ下痢した、それとあれと関係があるというようなお話はそのときもなかつたし、所長と十五日に三時間ほどいろいろ要求をされる意味で会談されたそうですが、そのときにもそんな話は出なかつた。それから重要証拠品としてこのすずめを掘り返して保官しておけというようなお話も出なかつたので、この報告を真実といたしますならば、すずめの死んだのと松本さんの下痢とは、松本さんは前から下痢していたということですから、どうも今のところ関係がないのではないか。しかし私は、この前も申しましたように、こういう事件は、日本の法務省の名誉に関係もありますので、真剣に調べているつもりでございます。
なお蛇足になりますが、この間の姫路少年刑務所においても、ふだんから飯が悪いのではないかという御注意はしごくごもつともな御疑問だと思いまして、相当部分の期間にわたる献立表を今取寄せております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/108
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109・岡田春夫
○岡田(春)委員 今の問題は重大な問題ですから、慎重にお調べを願いたいのですが、それに関連して私ぜひ申し上げておきたいと思います。松本三盆氏が公判廷で述べたところによると、私の聞いている限りにおいては、その魚の下半身を食べている。そうしてはらわたと頭がそのまま残つておるはずだ。とするとあなたの言われたように骨だけがあるわけではないのです。しかもすずめはどこにあつたかというと、すずめはその食い残したハトロン紙の中の魚の頭にすずめの頭をつつ込んだまま死んでおつた、こういうことになつておる。ただいまの御報告を伺つておると必ずしもこれと一致しませんが、何せ刑務所の中のことでありますから、これはその人の報告だけを聞いておればそれでよいということで、外からどの程度の信憑性があるかどうかということはもちろん判断ができないわけであります。それだけに今松本三盆氏は、公判廷においては証拠の保全をはかるために、この食い残した物を置いた場所は言わないということをあらためてはつきり言つておる。ですからそのはらわた並びに頭のついた証拠品とも考えられるべきものは、はたしてその骨と同一物であるかどうかについてもわれわれ疑問がある。こういう点ももつと徹底的に責任をもつて調べていただかないと、何かすずめが死んでおつて付近に骨があつた、だから埋めたのだというようなことで簡単にお済ましになると、今の御答弁は事重大であると言いながら、その事重大の根本になるべき証拠品をそういうようにそまつに扱われると、あなたの主観的な意図にもかかわらずあいまいにされる危険性が非常にある。こういう点についても、もつと詳細な御調査を願いたいと思います。この点を要望しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/109
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110・犬養健
○犬養国務大臣 いさい承知いたしました。これは一ぺんそう言つたからあとに引かないというような態度はとりません。また諸外国から見て、日本の刑務所は、どうも政府と反対の意見の方が入るとすずめの死ぬくらいの毒をいつ飲ませられるかもしれないということになれば、よほど文化国家の名にもかかわりますから、私も真剣に調べたいと思います。御注意ありがとうございました。
また細迫委員に申し上げたのを聞いておられたかどうか知りませんが、法医学というのですか何か知りませんが、もしその法医学上可能ならば、すずめの死体の毒物検査もやりたいと存じております。どうぞさよう御承知を願います――また細迫委員に申し上げたのを聞いておられたかどうか知りませんが、法医学というのですか何か知りませんが、もしその法医学上可能ならば、すずめの死体の毒物検査もやりたいと存じております。どうぞさよう御承知を願います発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/110
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111・小林錡
○小林委員長 他に御発言がなければ、本件についてはこの程度にして次に進みます。
刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。こり際お諮りいたします。本案につきまして、警視総監田中榮一君に参考人として発言を願うことに御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/111
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112・小林錡
○小林委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。
これより本案の質疑を続行いたします。猪俣浩三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/112
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113・猪俣浩三
○猪俣委員 先般当法務委員会の公聴会におきまして、検事総長の説明を承れば、捜査事務に携わる者は普通の警察のみならず、鉄道公安官その他の者もあるので、これを統一調整する必要があり、検事がその中心であらねばならないという説明をされたかと思うのであります。そこに出て参りました鉄道公安職員の職務に関する法律、これは当法務委員会が中心となりましてつくつた法律でありまして、当法務委員会は鉄道公安職員の生みの親みたいな形になつております。私どもは検事と公安官とが十分に協力することには反対ではございませんが、どうも私どもがこの法律をつくりました当時の考え方と違つているような動きを、この公安官がしているのではないかと思われる節があります。そこでこれはやはり本刑事訴訟法改正に関する法律案の論議に際しまして、一応政府委員の説明を聴取したいと思うのであります。
まず第一に承りたいことは、昭和二十七年の一月以来今日に至るまで、鉄道公安職員の業績と申しますか、どの程度のどんなふうな犯罪があつて、それはどういうふうに始末されておるか、その概略を承りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/113
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114・久留義恭
○久留説明員 御質問の鉄道公安職員の取扱いにかかりまする犯罪その他実績について、昭和二十七年度について述べよということでございますが、大体におきまして私どもの統計的にもまた注目しておりまする種別といたしまして、一応われわれが事務的に刑法の違反を初といたしまする法令違反等中心といたしまする鉄道犯罪の発生及び検挙状況というような点を一つ調べております。さらにある意味でこれと重複するものでございますが、鉄道の運営の性質上、鉄道そのものを妨害する事犯の成績と、それからさらに鉄道の車両に伴いまするいろいろの部品の盗難というような面、それから第四といたしまして、鉄道で託送にかかわりまする貨物、小荷物等、荷物につきましての事故関係の成績と、こういうような点をとつておるのであります。御質問なさいました点はそのすべてであろうかとは存じますが、一応一般的利用者の方々に影響の多いことといましまして、鉄道犯罪と申しまするか、鉄道もしくは鉄道用地において発生いたしまする犯罪等についての二十七年度の実情を簡単に申し上げたいと思います。
先ほど申し上げましたような四種類のうちの一つとしましての鉄道犯罪というものの発生につきましては、概略年間約四十七万件ぐらいあるのでございます。これには非常に件数が多いようでございますが、鉄道営業法違反といつたような、切符を持たずに乗るとかあるいは改札口を通らずに入るとか、こういう社会的には軽微ではありますが、鉄道の営業をいたします上には、営業法に違反するのみならず、運営上さしつかえがあるという、そういう件数も入つておりますので発生は昭和二十七年度におきまして四十七万件ございます。そのうち刑法犯罪と申しますと、強盗、窃盗その他の刑法犯罪といたしましては、四十七万件のうちに約六万五千ございます。この六万五千の刑法犯罪というのは、それ以前と比較いたしますと総数においては二十六年が六万六千件でございますので、二十七年はごくわずかではございますが、六万五千件というふうに一千件ばかり減少したのであります。すなわち刑法犯罪等につきましては、一般的な社会秩序の安定とともに、鉄道の分野におきますところの刑法犯罪も一般的には総数としては減つておる。しかしながら内容を見ますと、強盗あるいは暴行、傷害というような面は減つておりますが、詐欺的なあるいは横領そういうふうなやや知能的なものはふえておるのであります。鉄道営業法違反につきましては、先ほど申しました四十七万件のうちのほとんど大分部、三十六万九千件を占めておるのでございます。このことは鉄道としては営業上関心は持つておりまするが、社会的全般としてと申しますか、ある意味では軽微な鉄道の運輸規則に違反してやるという程度のものでございますが、件数といたしましては総件数の七、八割を占める三十六万件という数を示しております。これも先ほど申しましたように、総数としては逐年減つております。以上が刑法犯初めその他経済的な法令の違反、鉄道営業法違反等を含みました、私どもの申しております鉄道犯罪の発生の状況であります。これにつきまして検挙件数と申しますものは、特に刑法犯罪について見ておりますが、先ほど申しました二十七年度六万五千件のうち一万四千件ばかり検挙いたしております。約二割五分ということだと思いますが、こういう状況を示しております。先ほど申しましたようにそのほかに公安職員の関与いたしますいろいろの取締りといたしましては、鉄道犯罪というような点のほかに鉄道の妨害でありますとか、あるいは客車の部分品の盗難でありますとか、あるいは鉄道の荷物の事故というものもございますが、それは数字の羅列にもなりますので、もし御要求がありますれば、こういうこまごましたものも御説明申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/114
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115・猪俣浩三
○猪俣委員 公安官なる者は今総数は何人おりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/115
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116・久留義恭
○久留説明員 現在現場職員と管理部門とそれぞれありますが、現場の職員といたしましては三千二百名おります。それから管理部門と申しますか、事務的な上級機関に事務をとつておる者が約五百名。合計して三千七百名であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/116
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117・猪俣浩三
○猪俣委員 今あなたが御説明されました鉄道犯罪その他の公安官が関係すべき調査、あるいは捜査の対象となるべき事案の中にはない事案が起るので私は質問する気になつたのであります。それは六月三十日新潟市にあります新潟鉄道監理局の総務部長に対しまして、国鉄労働組合の新潟支部の人たちが交渉に行つた。ところがその監理局におきまして、新潟の公安官が労働組合とそこに乱闘を起して、双方に負傷者を出した。こういう新聞記事が全部の新聞に載つているのであります。これが新潟のみならず名古屋にも各地にも起つているので、ただいま国鉄労働組合総本部の大会でこれが協議事項に相なりまして、私たちのところに質問して参つて来たのであります。私どもがこれをつくりましたのは昭和二十五年です。その以前は相当凶悪なる鉄道犯罪がありましたので、これは議員立法としてこの法律ができた。当時今の局長は関係しておられないから、この法律の精神をあるいは理解しておられないかもしれませんが、この法律につきましては警察側からも非常に反対があつた。また当時の駐留軍からも相当いろいろの制限を付された、しかしどうしてもこういう鉄道犯罪に関します専門の捜査官が必要なりとして、当法務委員会が再三再四非常な苦労をしてこの法律はでき上つたと考えます。当時の公安局長はその都度出て来て、その立法の経過並びに精神はよく体しておつたはずでありますが、問題になつたことは、この公安官なるものの職権の範囲は鉄道犯罪に限るということ、またほかの一般の警察官との職権の範囲に関する調整等でありまして、そこに非常に議論が集中されたことは、当時立法に参画した者の知つているところであります。練りに練つてこの法案ができ上つた。そこでこの法文を見ますればあなたもよくおわかりの通り、労働組合の弾圧などに公安官が出動することは一つも書いてない。私どもこの法律の審議に際しまして一等憂え、かつ非常に執拗だと思われるくらい所管大臣その他の政府委員に質問しましたゆえんのものは、一旦法ができますとそれを執行する連中は非常に無限に拡張解釈をいたしまして、とんでもない方向に動いて行く。このために私どもが政府委員から見ると意地悪く思われるくらい質問を集中するのであります。この鉄道公安官職員の職務に関する法律は、議員立法でありましたがために法務委員会における速記にはあまり詳しいことが載つておらないのであります。しかしこれは非常に長い間かかつて専門員が苦労をして原案ができております。そのときの公安局長にお聞きくださるならばそれははつきりわかるはずであります。いやしくも公安官なるものがその職権を濫用して人権蹂躙その他の本来の目的以外に出動してはならぬということは、警察側も強く要望されたのであります。警察官とわれわれとの間のたびたびの懇談会にもその意見が中心であつた。しかるに何ぞや労働組合の弾圧に使うということがこの法律のどこから出て来るか、あなたそれを知つているか知らないのか知らぬが、公安官からも負傷者が出ている。あなたも新潟においでになつたそうであるから、局長も御存じでありましようが、駅から相当、五百メートルくらい離れているところにある監理局の事務のところです。そこに交渉に行くのに公安官が何がゆえにそんなところに行つて労働組合ともみ合うのか。この点について、もしそういう職権が公安官にあるとするならば、いかなる法規に基き、いかなる根拠から出動したのであるか。またもしさような根拠がないものだとするならば、この公安官たちのやつた行為を監督官としてどういうふうにごらんになるか。それを御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/117
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118・久留義恭
○久留説明員 具体的には、六月三十日新潟鉄道監理局におきます組合側の監理局長に対する交渉に際して、廊下付近で起りました騒擾的なことから、いろいろ根本的な御議論が出ていると思うのでございます。そこで三十日の、私どもが報告を受けました実情はこういうことか、ごく簡単に申し上げますると、実は六月二十九日、すなわちその前日から組合側としましては、局長室の廊下にすわり込みをいたしておつたようでございます。六月二十九日にはもちろん公安職員は出ておりませんが、六月三十日また局長室の廊下付近を占拠するという態勢でございまして、これに対しまして、鉄道監理局長は、執務時間中は業務の妨害になるし、またえてしていろいろ交渉に際しまして、部外の方が乱雑に入る、こういうような観点から、局長室の付近でのりまする第二廊下その他を守衛、文書課員その他をもちまして、警備と申しますか、注意をして番をする、こういうことにいたしておつたのでございます。従いまして公安の方は、監理局又におきましては、当日の状況からいんしまして、第二廊下その他局の首脳部の事務に支障があるということを認めまして、無用な者は入つてはいけない、特に第二廊下は困る、こういうふうに申し立てており、かつまた組合にも通告をしたのでございます。また他方守衛をもつてしてはちよつと警備に支障がある。従つて、何らか不測の事態と申しますか、いろいろ乱雑なことになると困りますので、公安職員に応援と申しますか、出動の要請をいたしたのでございます。と同時に当日やはり部外の方に対しても、部外からも入つて来る者があるのではないかというような観点から、鉄道監理局長におきましては、市警その他に一応の連絡があつたものと認められます。かように六月三十日の事例について申しますると、まず第一に、鉄道監理局長が、その管理権と申しますか、庁舎の重要部分についての秩序を維持する。またそれに専門に当ります本局の職員並びに守衛等では何としても手が薄いということで、公安職員に応援を依頼したということであります。また業務命令といたしましては、組合の方々に対しても、そういう入つてはならぬというところでは騒がないでくれ、また無用の者は入らないでくれ、こういうような業務命令を発しておるのでございます。ところが先ほどお話のございましたように、途中の経過におきましては、多少もみ合いがございまして、組合側の方にはあまりけがはなかつたようでありますが、公安職員の方には五名ばかりけがした者ができまして、重い者は三週間、軽い者も一週間あるいは十日、合計五名ばかりけがをしておるのであります。もとよりこれはなぐられてけがをしたとか、あるいはいろいろもみ合ううちにガラスの破片等でけがをしたというものもあると思いますが、とにかく公安職員がけがをしておるのであります。以上が三十日の私どもが聞きました事実に対する報告であります。
御質問の公安職員の職務に関します法律、すなわち昭和二十五年八月の法律二百四十一号は、法務委員の先生方、そのほか議員立法でもございまして、非常なお骨折りをいただいて、運用についての御注意もあつたことと思うのでありますが、これとの関係はどうかということですが、この法律というものは、そういうことを予想してつくつた法律でないはずじやないか、こういうお説でございますが、私もそれには賛成なのでございます。しかしながら今度の、つまり六月三十日におきまするこの警戒あるいは警備と申しますか、庁舎内の秩序維持ということにつきましては、これはこの法律とは無関係と私は解釈しておるのでございます。すなわち官庁、会社におきましても、それぞれ守衛のような方がおられるとか、あるいは消防要員の方がおられるとか、あるいは防犯の方々がおられる。こういうようなことは、業務運営の責任の秩序維持という観点、あるいは庁舎の管理維持という観点から自律的に――特別にその身体を拘束するとかあるいは義務を課するというものでない以上は、特定の管理者が管理権をもつてその内部における秩序なり財産の保持に当ることは、ひとり官庁のみならず、公共企業体においてももとよりでありますが、会社においてもこれはおのずからあるものと思うのであります。すなわち公の権力をもつて防備するとかしないとかいう問題ではなくて、庁舎あるいは業務運営の秩序維持として、その間常識的な警備あるいは監視、見張り、防犯ということは、これは許されておると思うのでございます。従いまして守衛等につきましては、各官庁はもとよりだと思うのでございますが、法律の根拠がいらないことはもちろんと思います。鉄道監理局においても、二十数名の守衛がおりまして、これは何らの法律に基かずと申しますか、必要によつて置いておるのでございます。公安職員との関係でございますが、公安職員はこの法律によりまして司法警察権を付与されておるのでございますが、公安職員がどういう仕事をするかということは、この法律によつてきまるのではないと私は解釈しております。公共企業体日本国有鉄道の職員というものにつきましては、特に権限を要すること以外は、総裁の達をもつて職員にそれぞれの職務を課することができると思うのでございます。従いましてこの鉄道公安職員がどういう仕事をするかということは、法律には何も書いてございません。法律に書いてあるのは、司法警察権の件だけでございまして、公安職員本来の仕事というものは、この法律より約一年前にできておりますが、日本国有鉄道の公安職員基本規程というものによりまして、公安職員に次のような職務があるのだということを列挙しておりますし、またどういう場合にいかなる仕事をするか、これは公権力に関係のない限りいろいろな仕事を課しておるのでございます。代表的に申しますと、施設の警備でありますとか、旅客輸送の秩序あるいは運輸に対する防犯、営業事故の防止及び調査、このようなことがこの基本規程という総裁達に規定されておりまして、なおそのほかの条文といたしまして、公安職員は特に上長の命ぜられた緊急な仕事ができるというような条文もございます。また緊急必要な場合には他の業務を代行できる代行権というものがあるのでございます。国有鉄道に数百種類の職種がございまして、機関車乗務員とか、あるいは駅員についてそれぞれの資格があるのでございますが、非常の場合には、鉄道としてきめました機関車の免状がなくても機関士になることもできるし、あるいは線路工事の資格経験がなくても、ある程度やれることはやらせる、こういうふうな職務の代行権もございます。このようにこの公安職員というものは、法律二百四十一号で職分がきまつておるとお考えかもしれませんが、われわれは断じてそうは考えておりません。われわれは、公安職員というものは田本国有鉄道の職員でありまして、特別に人の権限を拘束するというようなことをしない限り、運輸営業の必要といたしまする職分の何分の一かを、総裁が特別の法令の制限がない限り、これは課してさしつかえないのだというふうに見ておるのでございます。ただこれらの秩序維持的な部分の仕事の効果を期する上におきまして、あるいはまた万一違反があつた場合に、これを適正な公訴と申しますか、司法的な処分に移すためには、捜査の権限というようなものが必要でありまして、これがために司法警察権、特別司法警察職員としての御指名を受ける、あるいは権限を与えられるということが必要だということで、現在二百四十一号の点でその効用をはかつておるのでございます。このように私どもの考えますとろでは、公安職員は総裁の命ずる基本規程に書かれてありますこと、なかんずくその弾力的な運用条項、それから先ほど申し上げましたその場におきます監理局長の補助せよという業務命令、このような観点からいたしまして、六月三十日守衛の手伝いをするために、常識的妥当な範囲における一般的な警備と申しまするか、防衛と申しまするか、そのようなこと、あるいは守衛の手伝いということは何ら特別な司法警察権限の行為でもなければ、法律を要する行為ではない。ただ問題はすわり込みその他交渉も一つの労働行為でもありますので、この労働行為を頭から非難するというような態度では毛頭ないのでありまして、妥当な交渉が行われるのをただ見守り、その間器物の損壊であるとか、あるいは騒擾をして他の業務の運営を阻害するというようなことを防衛するということは、当然職務として考えていいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/118
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119・猪俣浩三
○猪俣委員 そういう通らない考えを持つているから、あなたは法律の精神を知らぬという。もしあなたの説明する通りとするなら、この法律を廃止しましよう。だから役所の人間というものは油断ならない。われわれはこの法律をつくるときに、鉄道公安職員基本規程というものは一向に出なかつた。これはとうに、昭和二十四年十一月十八日につくつてある。これを黙つて伏せておいて、こういうものをわれわれにつくらせた。あなたの説明だと、ぼくら一ぱい食わされた。そんな鉄道の職員の身辺を護衛するようなものをわれわれは苦労してつくつたのではありません。何というそれは答弁だ。そんなことでこの法律を苦労してつくつたのじやない。警察官からこれは相当苦情が出たのです。それを押し切つたゆえんのものは、鉄道犯罪という特別な技術を要する犯罪について、ことに鉄道の職員から出ている公安官が他の一般の職員の協力を求めるにも、外部から警察官が乗り込んで来るよりいろいろな連絡が便利でもあり、鉄道の技術にも通じておる。当時鉄道犯罪の激増したときでありますがゆえに、治安確保のために適当なりとしてわれわれこの法律をつくつた。労働組合運動なんかに真正面に立つような法律としてこれをつくつたのじやないです。ことにこの新潟の騒擾のごときは、監理局の総務部長はなるべく円満に話合いたいと思つて、労働組合の人たちと――お互いにけがしたことも、あなたは公安官だけ負傷したと言うけれども、そうじやない。組合にも多数の負傷者ができておる。組合員は一々上司に報告するあれがないから、みな幹部が行つておるから、その前に診断書をつくつたりなんか手続をしなかつたから、これはあなたが勘定に入れなかつたかしらぬが、両方けがしている。とにかくそのあれについて、労働組合と監理局の総務部長とは示談解決することに話がついた。その示談の条件までここにあります。しかるに新潟の公安課長なるものがどなり込んで来て、自分の子分をけがなんかさせるようなやつは絶対示談まかりならぬ、こういうて示談をぶちこわした。大体公安職員なるものが警察権のあることをはなにかけて、駅長でも、場合によりましてはまた監理局の役人諸君に対しましても、相当のわがままをし、にらみをきかしているという弊害が出ておる。われわれは非常にそれをおそれた。くれぐれもそういうことのないように、この法律をつくるときには、時の公安局長と話し会つた。そういうことをあなたは一つも引継いでおらない。それがそもそも間違いだ。そうして当法務委員会に対しては、ときどき連絡をとつて、人権蹂躪その他の非難を受けないように、われわれが生みの親みたいな立場なんだからということをくれぐれも申し合せ、前の公安局長の時分は、しよつちゆうそれをやつた。われわれも地方に出た際には、公安局に行つては模様を聞いて歩いておりました。あなたになつてからさつぱり連絡がない。そこでこういうことが起る。そうしてこれは当然のごときことを答弁しておる。それならこんな法律は廃棄します。そんなばかなことがどこにあるか。まつたく法律の精神を蹂躪しておる。それは公安官といえども、鉄道職員でありましよう。しかしその鉄道職員の中のある者について特別の権限を持たしておる。それは鉄道犯罪を捜査することであります。それに専念しなければならない。ところが近来鉄道犯罪が非常に数が減つて来てひまらしい。それだからぼくはあなたたに件数を聞いたのです。そこでいろいろほかの方を手がけておる。これは今にして停止しなければたいへんな問題を起します。ことに、実は私ども相当責任があることは、いつだつたか忘れましたが、この法律ができましてから、私は当法務委員会の派遣に基きまして、新潟の検察庁、裁判所視察に参りました。そのときの判事、検事、おもだつた人たちの会合で、この刑事訴訟法の改正点などについて皆さんの意見を聞いた。そのときに新潟の鉄道公安諸君から臨席させてもらいたいという要求があつたので、私は、異例でありますが、特に自分たちの手がけました法律から生れた公安官でありますがゆえに、臨席していただくことにいたしました。そうして私は検事に紹介し、どうかあなた方専門家であるから、間違いなく活動ができるようにときどき指導してくれと特に検事にお頼みしました。検事も快くそれを受けて、ときどきいろいろの講習的なことをやつておられたようでありますが、さてこれがまた、どうも今になつてみると、はなはだ都合の悪いことになつたことは、今度は検事と公安官が仲よくなり過ぎて、検事の手先みたいになつて、労働組合弾圧に活躍しておる。たいへんなことになつてしまつた。これは親の心子知らずと申しますか、まるでわれわれの予期せざる方向に発展してしまう。これだから法律というものは重要なんです。ある一つを与えると、それを橋頭堡として、とんでもない方に拡張する。いくら看守は鉄道だからといつて、一体公安官を看守や番人の身がわりにさせるというようなことがこの法律から出て来ますか。とんでもない間違いだ。夜番や看守人の身がわりに公安官を使うということは、もしそういう規定が鉄道公安職員基本規程にありますならば、この法律の精神、範囲において、その規程は効力を失つたはずである。ある規程と法律とが精神上齟齬する際には、法律が優先することは、言わずと知れたことである。公安職員基本規程なるものはこの法律のできる前にできておるが、この法律ができたから、この法律の精神に矛盾するような規定というものは効力を失つたと見なければならない。それを何ぞや、われわれにはこの規定なんか何も見せないで法律をつくらしておいて、今になつてこの規定があると出て来る、そんなことは許されません。一体公安官を番人のかわりにしていいということはどこから出て来るか、それを承りましよう。公安官を看守のかわりに使つていいということはどこから出て来るか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/119
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120・久留義恭
○久留説明員 この公安職員の法律と総裁達によります基本規程との関係でございますが、これはおしかりを受けるかと思うのでございますが、私どもの解釈といたしましては、国有鉄道職員のうちの公安職員としての任務は、特に権利を制限するとかあるいは義務を課する、いわば公権力というようなものに関係のない限り、広い意味の運輸営業の遂行者として、あるいは庁舎の中におる職員といたしまして、妥当と認められる範囲がきめられる、これは他の車掌や何かと同様に総裁達できめられる、こういうふうにわれわれは考えております。そこでこのような職務に当つておる者について、司法的な手続を進めて行くために、特別司法警察職員としての権限が与えられる、あるいは与えられることが望ましい、こういうような司法警察職員というふうに考えておるのでありまして、鉄道用地内、列車内におきましても、これはもとより警察関係の方々の当然の管轄区域でもございますが、鉄道の公安だけをやつておるのではなくて、先ほど言いましたように営業的な取締りなり一般的な財産の保持、そういうこともいたしております。またこれはそのほかにいろいろ本務があるのでありますが、鉄道という特殊な業務をやることによつて犯罪の発見が容易であるというような点で、特別司法警察職員としてお認めを願つたのが、この法案ではなかろうかというふうに私は解釈しておるのでございます。従いまして鉄道防犯と申しますか、司法警察権の運用、捜査の実施というような面について厳としてこの法律を遵守しておるつもりでございます。そこで、それでは労働組合の労働行為等について態度がおかしい、あるいは財産の保護とか、夜警、番人のようなことはおかしい、こうおつしやるのでございますが、考え方によりますと、夜警あるいは番人にひとしいようなことも、一般的な警備係的な職務にはあり得るかと思います。私どもは、おかしいと思われるかしれませんが、特殊な施設を警備するなり庁舎を警備するなり、あるいは駅舎を警備するということは、番人と言われようとも夜番と言われようとも、必要なところはするのが、総裁によつて命ぜられた公安職員の職務の一つであるというふうに理解しております。
次に労働問題でございますが、これはもとよりお説のように、単に公安職員のみならず、一般の管理者といえども、組合側からいたしますいろいろの交渉等に際して、いたずらに緊張し過ぎる、あるいは危険なような予感を抱くということは、これはまつたくやるべからざることでありまして、公安職員も従来からの例によりますと、まま例外はあるかと思うのでございますが、このような交渉の機会、争議の機会に能動的に活躍したことはないと思つております。今回も局長の切なる業務命令あるいは局長の異様な者が入つてはいけないという業務命令の実際的な裏づけのために、いわば守衛その他文書課員のお手伝いをしたというだけでございまして、積極的に何かあつたので飛んで行つたというようなことは、私の調査によりましては断じて見当らないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/120
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121・猪俣浩三
○猪俣委員 この法案をつくるときに、実は共産党の法務委員諸君は反対をしました。必ずやこれは今に労働運動を弾圧する道具に使うのだ、手兵を養成するのだ、こういう議論があつた。私はそれはとつぴな議論だと思つた。但しその点についても、われわれはくれぐれも間違いないように念を押したはずであります。しかるに今その心配が出て来ておる。われわれは共産党に先見の明を誇られるような立場に落ち込んだ。容易ならざることです。あなたはそんな簡単なことを考えておるけれども、警察署にわざわざ申請しないでよいのだから、自分の持つている兵隊を出すのだから、便利でしよう、便利だから何かにつけてこれを使うに違いない。それで国鉄労組という大きな労働組合と対決した。その非難の対象になる公安官はいかなる働きができるか、公安官の制度の妙味は、同じ仲間から出て、駅長でも車掌でも連絡がスムースにできるということにある。一般の警察官よりはなお捜査上便利な点が多いというところもこういう法律のできた原因の一つだ。そして今聞けば鉄道の犯罪も相当数あるはずだ。それに全力をあげなければならない。そのためにわざわざこういう特殊な司法警察官をもつて鉄道職員をつくつたわけなのです。それをそういう目的に使わずして、自分たちの便利な、番人や看守の方向にこれを使う。それならばこんな法律はやめて、一般の犯罪は警察官にお願いして、あなた方は番人をたくさんふやし、看守をたくさんふやした方がよい。そうすれば便利になるに違いない。両刀使いは困るのだ。ある場合には鉄道の便利に従つて門番や番人の働きをさせる、ある場合においては司法警察官として人を逮捕することができる、そういう便利なことでは困る。それは目的がこの法律の趣旨とまつたく違う。この法律は、職務をちやんと限定しておる。「日本国有鉄道の列車、停車場その他輸送に直接必要な鉄道施設内における犯罪並びに日本国有鉄道の運輸業務に対する犯罪について捜査する」。捜査の場所もちやんと制限されていて、「前条の捜査は、日本国有鉄道の列車、停車場その他輸送に直接必要な鉄道施設以外の場所においては、行うことができない。」となつている。この法律の精神からいつて、公安官というものはいかなる職務があり、いかなることを主なる目的として活動しなければならないものであるかは明々白々ではありませんか。もしこの法律の要求することと鉄道公安職員基本規程なるものが矛盾する箇所があるならば、私は基本規程全部を廃止しろというのではありませんが、矛盾するところについては、この法律の精神を尊重すべきものではないか。先ほども話が出たが、上からの服務命令と法律の規定の違つた場合、これは問題がありましよう。しかしこの法律は実にはつきりしている。なぜはつきりしているか、いやしくも濫用されてはいかぬということで、あつちからもこつちからも問題が提出されて、練りに練つてつくつたものですから、公安官の働く場所、目的、一切明白になつておる。それはあなた方は部内の人間であるから、上の役人が自分の護衛として使うには便利でしよう、警察官から護衛を頼むよりは便利であろうが、さようなことに使われるために捜査権なんか持たしてはないのです。ですから、もし鉄道公安職員基本規程によつて何をやつてもよろしいというならそれでよろしい、それは純然たる鉄道の一般職員にしなさい。そのかわりこの法律は廃止した方がよろしい、一般警察官にまかせた方がよい。あなたはそれに対してどう思うか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/121
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122・久留義恭
○久留説明員 この鉄道公安職員の法律によつても、あるいは総裁達の基本規程によつても、御懸念になりました組合交渉の際における理事者側の手兵のような役割をするようなことは決してございませんので、鉄道公安職員は、旅客、貨物輸送の確保というような観点から、財産なり施設なりあるいは輸送秩序なり、荷物事故の防止なり、各種事犯の防犯に当る、こういうことを任務としております。組合活動についても、ほとんど能動的に警備というような役割はしたことがないのでありまして、常に部外の警察等に何か要請をされるというようなきみが多いと思いますが、そんなような時期には公安職員にも連絡があり、ひとつ守衛の補助をしてくれぬかというようなことも間々あつたのでございます。しかし指導方針といたしましては、部内職員の相互間におきまする組合交渉の現場等にこういうものが出て行くということが建前ではないのでありまして、従来からもそのつもりでございますが、今後もかような誤解のないように留意したいと思うのでございます。しかしながら何か公安職員の目的というものが、非常に誤られたように観察せられておるようでございますが、これは先ほども申しましたような輸送秩序の保持、広い意味の国民から付託せられました輸送の円滑完遂という面から、警備的な面、秩序維持的な面がいろいろ出て来るのでありまして、当局側の手兵というようなことは毛頭いたしてないつもりでございます。なおまた今後誤解のないように指導上留意いたしたいと思うのでございます。なおまた法律の精神でございますが、法律の精神につきましては、先生方の御注意のように、特別司法警察職員として業務を遂行する場合には、列車、停車場用地内に限り、また犯罪はこういう犯罪を主とするというような点等法律に示してあります各種の制限、あるいはまたいろいろの論議からうかがわれます法制定の精神ということを、特別司法警察職員としての職権を行使する場合には常に厳守するように指導しております。また今後その方向にますます進むべきだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/122
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123・小林錡
○小林委員長 猪俣君、ちよつと質問の通告がたくさんありますから、できるだけ簡単に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/123
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124・猪俣浩三
○猪俣委員 もう一点にいたしますが、昭和二十五年十月五日、政令三百四号でもつて鉄道公安職員所管区域外職務執行令というものができておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/124
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125・久留義恭
○久留説明員 できております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/125
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126・猪俣浩三
○猪俣委員 私はもつとこれを中心にして質問したいと思つたけれども、今委員長の御注意がありましたので他日にいたします。ただこれはこの法律ができてからの政令なんであつて、もちろん政令は内閣がつくるのでありまして、われわれの関知せざるところでありますけれども、これは儀礼としても、人情としても、当法務委員会に一応の報告なり相談があつてしかるべきものだと思つたのでありますが、法律をつくるときは一生懸命でお通いになるが、できてしまえばあとは知らぬ顔の半兵衛、こういうことではわれわれは責任が持てない。そうして今言つたようなあとからの説明は、私了としました。最初の説明のように、当然のことをやつたんじやないか、何が悪いかというような、そんな指導精神でどうするんだ、とんでもない話だ。そういうことをされてはわれわれは立つ瀬がありません。これは例外として、何かの事情でほんとうに特例としてあつたというようなことで、そういうことは今後十分戒めるというのならわかりますけれども、こういう労働争議なんかに顔を出してなぐり合いを公安官がやるなどそういうようなことは、この法の精神に背馳することで、それを基本規程にあるから、鉄道職員であるからかつてである、そんな論法は許されません。そうすれば先ほど言つた私の論法が出て来る。運輸省なりあるいは日本国有鉄道なりの手兵をつくつたことになる、兵隊をつくつたことになる、そんなことは許されません。国家のために、鉄道犯罪なる特別の犯罪を検挙させて、一般大衆の旅行を愉快にさせるための治安上の目的でこれはできておるものだ。それをとんでもないことに誤解して、それが当然なるがごとく考えているようなことは、実に許すべからざる態度だと私は思うのです。どうぞかようなことのないように、できてしまつたことはしかたがありません。ただあなたに要求することは、今あなたの報告は真相をうがたぬ報告をされておる。これは総務部長が、どうしても示談にしようと思つて一生懸命示談条項までつくつたやつを、公安課長がぶちこわしたのです。その点はもう少しお調べになつて、この法律の精神に沿わざる公安課長であるならば、よろしい。あなたは適当な処置をとつていただきたい。さようなことではないのです。これはあなた方部内の問題としても困るじやないですか。総務部長なりその他の者が治めようとすることを、こういう警察権を持つておる者がぶちこわす。それで私が言うことは、警察権を持たし、ある強制権を持たせたということは、これは容易ならざることなんだから、一般の鉄道職員のように、基本規程なんというもので、総裁なり上官の命令でどういう方向に使つてもいい、鉄道職員じやないのだからという頭は根本的に間違いだと思うのです。捜査権、強制権を持つておるものはそれだけ自重しなければならぬのです。現に鉄道公安官は、事務系統の人たちに相当脅威を与えております。これは事実なんです。権力を持つとそうなりがちなんです。それだからその人たちが、今度は労働運動にまで乗り出した。これではまるでこの法律の破壊になります。そうして本家本元の目的が達せられないで、そういう方向にばかり今度は使いやすいのだ、あそこへ行つてやつてくれ、これは警察にお願いするより使いやすいのです。それは非常に危険でありますから、あなたから厳重に戒告をしていただきたい、それだけを申し上げまして、なお私はお尋ねしたいことは多々ありますが、今後あなたが、一体部下に対していかなる統制をなさるか、それを見ておいてなお一質問をいたします。これで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/126
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127・久留義恭
○久留説明員 今後鉄道公安職員の司法警察職員としての権限行使等につきましては、さらに一層留意いたしますが、のみならずそのほかの一般鉄道公安職員としての服務、職務につきましても、本来の使命に即して誤解のないよう、本来の使命を遂行いたしますよう努力いたしたいと思うのであります。なおまたお話の中に、総務部長云云という話もございましたが、私どもまた後日総務部長、あるいは公安課長その他について、当時の状況につきまして、さらに実情を調べたい、こういうふうに考えておりますので御了承をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/127
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128・小林錡
○小林委員長 佐竹晴記君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/128
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129・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 まず第一に、法務大臣に対して、本案の提出についての熱意に関し承りたいと存じます。すなわち、本案の成否は国会の批判にまつという程度のものでありますか。それとも、本案は今期国会にどうしても出さなければならないものであつて、また何としても通過せしめなければならないとの切実なる要求に基いたものであるか。申するまでもなく、今期国会は解散後の特別国会であります。特別国会としての特別の任務がある。その会おられないのであるのみならず、本案の内容についても、人権に関する重大な問題を含んでおりますために、国会においても、そうたやすくうのみにすることのできるものではないことは、多く申し上げるまでもありません。その審議には相当の時間を要し、はたして今期国会に提出して通過をはかり得るかどうかということについては、十分に事前において見通しをおつけになつたはずであると思うのであります。本案はすでに二回も不成立になつておりますのに、またもや今期国会において審議未了になるといつたようなことがありといたしますならば、この案は腐つてしまうおそれがあります。従いまして、本案提出については、内には一致の態勢を整え、外には熾烈なる政府案を審議するという空気をつくり上げるために、十分なる準備と用意がなければならなかつたはずでありますが、大臣ははたして熱意を十分に傾倒し、必ず通さなければならぬという信念に燃えて御提出をなさつたものであるかどうか、この点を承りたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/129
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130・犬養健
○犬養国務大臣 お答えを申し上げます。ごもつともな御質問だと思います。御質問の御趣旨の、本国会は特別国会で短かいので、こういうものを出したのは見きわめがついての上であるか、委員としても相当議論があつてうのみにできないのだ、それについてあらかじめ十分の打診をするとか、研究をするとかいうことをした上かということは、まことにごもつともなことと存じます。御承知のように、本改正案の緊急性については、さきの国会でも御了解を得たようなわけでありまして、勅刑事訴訟法が発布せられまして四年有半でありますが、佐竹委員も御痛感になつておられることと思いますが、どうもわが国の実情に適さないところがあります。しかし、事いやしくも刑事手続の基本法でありますから、そう感じたからといつてすぐかえるというのは、軽率のそしりを免れません。従つて、御承知のようにしばしば法制審議会を開きまして、各界の権威についてその意見を徴した結果一応こういうものをまとめたわけでございます。法制審議会にかけて、大体結論は出たからいいというのではどうも不十分に思いましたので、佐竹さんも御関係になつております日本弁護士連合会あるいはそれぞれの弁護士会の権威の人たちにも親しく私も意見を徴しまして、また弁護士会の役員も私の部屋を訪問してくださいまして、その間いろいろ経緯もありましたが、大体勾留理由開示のことは、最近急に法制審議会で議題に上つて改正案に挿入した部分であるから、これについてはにわかに意見が言えないけれども、あとの、先の国会に提出した部分については、個々いろいろ注文はあるけれども、大体こういうものを提出されることは政府としてはそう大いに不当だとは言えないだろうというようなお考えを承りまして、私どもも一安心をいたしたわけでございます。また学界の方々も個々の問題についていろいろ御議論はありますが、甲の教授が反対しているところは乙の教授はまあよかろうと言い、乙の教授がここはどうかと言われるところは甲の教授はいいと言われる部分もありまして、学者の厳密な学問的立場からはいろいろ御注文もあるようでありますが、中には学者としても、これはりくつはりくつであつて、実際の必要性からいえばまあこんなところであろうというような御批評も個人的に承つたようなわけでございます。ことに率直に申し上げますと、検察官と警察官の関係については特に心を砕きまして、従来ともすれば見解の違いがあるように伝えられましたし、また多少あつたことでございましよう。それで本法案を出しますときも、検察側の率直な意見を徴し、警察側のまたこれも歯にきぬを着せぬ意見を徴しまして、大体のねらいをつけまして、提出して御審議を願つているようなわけでございます。御承知のように政治的にいいまして、二度も審議未了になりまして、三度繰返すことはほとんど致命的のことでございますので、そういう重大な提案については、委員諸公にもあまり御不便のないことで出さなければ礼を失すると考えたのでありますが、以上の次第で本国会にお願いしてもそう御無理をお願いするのではないのではないか、これは私の独断といえば独断でございますが、政治的判断におきまして、さように考えて御審議を願うことこいたしたのでございます。御了承願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/130
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131・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 この案を審議するにあたりまして最も重大なことは、この束の通過をはばんでおる重大なる障害かあることを感ずることであります。それは何か、申すまでもなく検察と警察の摩擦であります。本案が当委員会にかかつてわれわれ委員に最も強く迫つて来たのは、自治警察の反対要望でございます。さらに当委員会が開かれて最も奇異に感じたのは政府委員の間において意見の不一致、いな政府委員みずからこの法案の第百九十三条、第百九十九条の改正に絶対反対の意見を表示され、かつ堂々と内部よりその不成立を要望いたじておりますることを露骨に認めざるを得ないことは、まことに不思議にたえません。過日の公聴会において警視総監と国警長官はこもごも立つて、もし第百九十三条、第百九十九条が成立するに至れば、将来ゆゆしき禍根を残すと悲痛なる訴えをなさいました。大臣は一体これを何と見られておりますか。このような状態で本案がスムーズに通過できるとお考えでございましようか。また通過さしてみても円滑なる運営ができるものであるという確信がございましようか。何ゆえに大臣は、本案提案以前に、まずもつて内部の調整と統一のために努力をされなかつたか、仮面をかぶつて、今回の改正はほんの字句の修正で、解釈の誤解を解く程度のものであるとかようにおつしやつておられるし、また現在警察と検察の間はまつたくうまく行つておるとおつしやつておりながら、過日の公聴会のごときあの態度は何という状態でありましよう。いわばびん筋を立てて声は大にしないけれども、心を鬼にいたしまして悲痛なる絶叫をいたしておりましたことは、速記録を通じても大臣はこれを看取するにかたくないと思います。この委員会の席上でも、露骨に言えば、きばをむいて政府内部が対立し、異なつた意見をわれわれに訴えておる。これではわれわれ委員会は去就に迷わざるを得ないではないでしようか。内輪けんかをしながら外部に対抗できようはずはございません。内部の調整をはかるだけの政治力なくして反対党を網羅いたしまするこの委員会をまるく説得せしめ得ることができるでございましようか。大臣は何ゆえにまず内部の調整をした上でこの案を提案せられなかつたか。ただいまのお話の中にも手を尽した旨のお言葉はございますが、当委員会に現れておる姿はこれに反しておる。政府委員の内部において異なつた意見をここに発表するというがごときは、これはとうてい私ども受取ることができません。たとえば政党の内部においても、総裁がこうだというと幹事長がそれに反対の意見を述べる、党員はこれに対しましていかに決定をすべきか。おおよそこの席に臨むならば臨むだけの、皆さんの内部の意思の疏通をはかり、しこうしてぴつたり合つた気持でもつてこの委員会へ出て来なければ、われわれ委員を押えることができぬことはこれは当然のことでございます。大臣がその手を十分尽し得なかつたことが当委員会へ現れておるものといたしまするならば、大臣が今日までずいぶん御心配はなさいましたでございましようが、しかしその効を奏しておりません。そういう状態のもとにこの法案を審議するということは、この法案審議における重大なる障害であると考えまするが、大臣は何がゆえにいま少しくそれについて手を尽されて当委員会でかようなみつともない姿を現わさないだけの政治力を発揮することができなかつたのか、いま少しくここを掘り下げて承りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/131
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132・犬養健
○犬養国務大臣 ただいまのお話もごもつともと存じます。これも飾つて申し上げてもせんないことでございますから、ごく率直に申し上げますが、国警は私の担当しておるところでございますが、警視庁その他自治警察については、直接の監督権も指示権もございません。これは別問題でございまして、これは国警の方から意思表示を通達して参つたような次第でございますから、国警に関する限り、ほとんど連日連夜打合せをしてございまして、あまり手の内を申し上げるのもどうかと思いますが、ある了解点がございます。従つて国警に関する限り審議未了をねらつているとは考えませんし、もしねらつていれば私に対する食言でございます。まさかそういうことはないと思います。それでは何で公聴会や委員会でもつて個々に違う意見を述べるか。これはおのおの部下もありますことですから、委員諸公に申し上げるのが半分、部下に聞かせるのが半分というところが……。(「そんなばかな。」と呼ぶ者あり。「笑声」)やつぱり苦心の存するところだと思います。これは人を使つてごらんになつた佐竹委員も十分に御承知のことと思います。私はある程度意見は相違は言つてかまわない。むしろ言うだけのことは言つてもよろしいが結論は忘れるな、こう言つてある次第でございます。ときたまそれも度を過ぎていると思います。それは私の政治力の不足でありまして、そのほかの何ものでもないと存じておりますが、私は結論はまとめるつもりでいるのでございます。結論をまとめる前提におきまして、それぞれの言い分を言うときの言葉がどうも強いなと思うようなことはございます。一つ一つ注意をするときもありますし、この間注意してあるからそうたびたび言つてはよくないと思われることもございますけれども、結論は私と国警長官との間には出ているのでございます。総裁と幹事長の例をお引きくださいましたが、幹事長は党務から言つて、政調会長は政務調査会から言つて、最後に総裁がまとめるという手もありますので、私にはそれほどの手腕があるかどうかこれは疑問でございますが、その故智をならつてみたいという熱意をもつてやつている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/132
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133・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 将来に対してなお調整のできる見込みがあるとおつしやつておられますことは、その御熱意その通りでありましよう。それだけのことをこの法律案を出す前に何がゆえにおやりにならなかつたかという点であります。熱意が足らないと思うのであります。過日の公聴会で斎藤国警長官がかように公述をいたしました。百九十三条の一般的指示権を検察官側に認めることになると禍根を残す、と言明いたしました、しこうして語を継いで曰く。昨年破壊活動防止法が施行せられることになつて、検察官の一般的指示内容にこれが入るかどうかということになつたが、それがどうも入るということになつたので、それではさらに今後涜職もいけない何もいけないと、だんだんそのうちに加えられることになると、根本的にたいへんなことになる。国警としては協議の上に願いたいということを当時の清原次官に申し入れたところ、いよいよ最後に大臣決裁となつた。翌日検事総長が決裁をとつたということを聞いたので、警察側としては斎藤は反対であるということを伝えてもらいたかつたのであるが、それを伝えていただいたであろうかと聞いてみたところ、その話はもうついている、と答えられたので実は驚いた。さて遂に指示は出された。その施行内容を見ると破防法関係の事案は捜査に着手する前に検事正の承認を得なければならないということになつている。当時の花井公安委員も、これは現在の東京高等検察庁の検事長であるが、そのときの公安委員として、このようなことは警察が検察に従属しているようになつていけない、と反対されている。その旨を検事総長に回答したはずであるが、警察としてはいまだかつて独断でやつたことはなくすべて協議をしてやつている。今年になつて刑訴の追加改正が行われるということを聞いた。そして今回案が出された。しかし提案前何の相談も受けなかつた。この辺悲痛に述べておられます。このような重大なる法律案を、しかもその実行の衝に当るところの警察に何の協議をすることもなくして提案された、ということを国警長官ははつきりと申しておられるのであります。なるほど破防法施行当時は、これは木村大臣の時代。ただいまの大臣はお知りになつていないかもわかりません。しかし破防法に関する指示その他をめぐつて、警察と検察との間に解釈上の相違があつて、このことが今回の百九十三条の改正となつていることは申し上げるまでもないことであります。しかももちろん解釈の相違は単なる意見の相違だけであるということでなしに、斎藤長官の公述するがごとくに将来禍根を残すという程度のものの、すなわち深刻なる対立を見せているものであります。この問題の解決なしに本案を提出したということはとうてい理解することができません。大臣はただいま十分手を尽したとおつしやるけれども、国警長官はただいまのごとく何も相談も受けなければ、協議をしたいと次官にすがつたのにはねられて、検事長がすでにその決裁を受けたということを聞いて、私の反対のことを告げてもらつたろうかと言つたところが、いやもうその話ならついていると蹴られた。実に恨みをのんだ公述であつたことは傍聴人各位もよく知つている。こういう状態でもつてなおかつ大臣は十分警察して納得せしめるだけの手を尽したかどうかということについては、私どもとうていただいまのお言葉によつて信頼することができません。よつてまず斎藤長官よりただいま援用をいたしたこの間の公聴会における公述内容について、私の言つたことに間違いがあるかどうかということをひとつ述べていただきました上に、大臣の御所見を承りたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/133
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134・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 先般の公聴会で申しました点にいささかのうそ偽りもございません。ただいま佐竹委員のお述べになりました点はその点を抜萃せられたのだろうと思います。大体その通りであります。何の相談もなしに提案をされたと申しますのは、あるいは私そのとき用語が不足であつたかも存じませんが、法制審議会の刑事部会に提案をせられる案を事前に協議をいたしたいと申したので、何の相談もなしに法制審議会の刑事部会に提案をせられたという点を申し上げた次第でございます。他は間違つておりません。ただ私が反対をしているということを大臣に申し上げて、そして決裁をされたのでしようかということを私が大臣に伺いましたら、大臣はこれは警察と話合いがついているということだつたから、自分は決裁をされたもの、こう伺つたということを申し上げたのでありますが、先般の公聴会の際に申し上げたのはその通りでございます。少し御省略になつているようでありますが、間違いがあるといけませんからはつきり申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/134
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135・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 それについて大臣の御所見を承りたいのでありますが、関連いたしておりますから次にお答え願いましてけつこうであります。
元来このような摩擦の起りますゆえんのものは、検察側と警察側との間において、捜査に関する見解において根本的な法律上の見解を異にするものがあるためではないかと考えます。これをきわめるということは、本案審議の上においてきわめて重要であります。この解決なしには、この案に対する賛否を私は決しかねます。今政府の説明書によると、百九十三条の改正は、解釈上捜査と公訴とを概念的に区別し、司法警察員の捜査が適正に行われるよう、検察官において必要事項を指示することは、一般的指示権の範囲外ではないかという疑問が提起されたので、範囲外ではないという解釈を明確にしたにすぎない旨を書かれております。本委員会における検事総長の説明によれば、公訴権は刑罰権の遂行であり、公訴のために捜査が行われるものである。ところが公訴権のほかに捜査権があるかのように誤解したのではないかと思うが、捜査権は犯罪の発生と同時に生れる。判決があり、それが執行に至るまで検事の手によつて行われるところの、本来一つのものであるというのであります。この政府の説明書並びに検事総長の説明の中には、一貫して流れているものがあります。公訴と捜査は本来一つのものである。捜査と公訴を概念的に区別し、別に捜査権といつたものがあると考えるのは間違いである。かつ公訴の実行者は検事であるから、捜査の遂行に関する一般指示や逮捕状請求に対する検事の同意は、法律上当然そうあるべきであり、理論上かくあるべきであるという見地に立つておるものと解せられます。政府の御所見はどうでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/135
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136・犬養健
○犬養国務大臣 前の御質問とこのたびの御質問をあわせてお答えいたしたいと思います。
私も、就任のときに破防法のいきさつを聞きまして、過去の恨みの数々と言つてもいいような、ごく砕いた話を聞かせてもらいました。これは私は、斎藤君が友人として親しんでくれた意味もあつたろうと思つて、喜んで過去のいきさつを聞いたわけでありますが、私の在任中に関する限り、国警長官たる者があとで知つてほぞをかむというような処置は絶対にとらないつもりであります。それでは円満に行くはずがございません。従つて私の就任以後は、検察側にも不満なことがあり、警察側にも不満なことがあつて、率直に申すと、両方が百パーセント喜ぶということはなかなかない関係に長年ありますけれども、私の誠意と、それから親しむ感情をもつて双方にごく率直に話をし合いながら、この両者の調和をはかつておる次第でございます。これは国家のためにもほんとうに必要だと思つてやつているのでございます。法制審議会にかけるときの斎藤長官の不満もあとで聞きましたので、その埋め合せという意味もあり、これは上官としてでもあり、友人としてでもあり、できるだけそこにおいて、ことに警察に関する条文については私は相談をし合つておりまして、今立場上ちよつと内容を申し上げることはできかねる点もありますが、斎藤君との間にはある結論を持つているわけでございます。ところがこうやつて公の公聴会や委員会になりますと、やはり本来の筋を通しておきたい、あるいは再びこういう危惧もあるのではないかという心理も双方にありましよう。それだけに透徹した双方の立場を御説明申し上げる。そうなると聞いている方の検察側なり警察側は、その言葉のちよつとした行き過ぎでも、立場上非常に神経質になつておりますから、それに反駁を加えるということになるのでありますが、私が両者の間に立つております方針と立場は、実は一度もかえておりません。また斎藤君も、私個人についてはそれだけの信頼を持つてくれているといううぬぼれを私は抱いている次第でございます。
そこでただいまの一般指示の問題でございますが、御承知のように、一つの犯罪というものが生じますれば、これは公訴の実行ということが同時的に起るものでございます。旧刑訴においてはその意味から捜査を適正ならしむるために、すべて検事が指揮に当つたのでありますが、新刑訴においてはその考え方を否定しているのでございます。しかし公訴を全からしむるためには、捜査が適正であれかしとこいねがう検察側の心持は、これは当然でありますために、このたび御審議を願つております百九十三条の条文のように、搜査を適正にし、その他の公訴の遂行を全からしめるために、捜査を適正にしてくれという検察側の注文は、公訴を完遂する意味においてである。こういうふうにわくを明らかにしたわけでございます。従来この点の解釈が、ともすれば一部に違つた、と検事総長が言われたのは、その点であろうと思うのでございます。従つて捜査の適正について検察側は警察側に対して公訴を全からしむる意味において、何らかの意思表示を必要とすると考えているのであります。しかし捜査の一つ一つの事件を直接目的として一々干渉する考えは、破防法の問題は過去のことで、別でありますが、現在御審議を願つております犯罪の対象を頭に浮べますときには、これは考えておりません。もつとも準則というものを示すのでありまして、準則というのは間接的には一般の個々の事件に影響があります。また影響させなければ、準則など書かない方がよいのであります。準則を書く以上、間接的には影響がありますが、個々の事件を一つ一つ直接の目的として指揮をするとかなんとかいう気持は毛頭ありません。あればそれは行き過きだ、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/136
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137・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 検事総長の御解釈はきわめて法律的なのです。大臣のお答えは、いわゆる政治家として、そして円満に発達された常識を中心としたところの政治的な御解釈が多分に入つてわります。そのかわり不明確な点が多いのであります。このぼんやりしたところで頭をなでて行くところにたいへんいいところがございましよう。しかしほんとうに検察当局が裁判所へ行つて争うとなると、大臣がどのようにたいこ判をつかれましようとも、有罪は有罪、無罪は無罪としてきちつやられるのであります。従いましてこういつたときの解釈は、やつぱり検事総長がおとりになつておるように、捜査と公訴というものを概念的にわけて考えることがそもそも間違いである。本来刑罰権の遂行ではないか。刑罰権の遂行だから、これは本来一本である。わけて概念的に考えることも間違いなんだ。だから検察当局に対して、もし逮捕状を請求する際においても、同意を求めるないしは一般指揮権を検察当局に与えるのも当然である。まことにこれは筋が立つております。筋が立つておりますけれども、そんな筋が立ちますと、今度は警察側で青筋を立てます。どうも検察当局が少し赤筋を立て過ぎて、警察側が青筋を立て過ぎておりはしないかと思う。私は捜査、公訴、裁判、執行、これは本来一つのものだと思つております。いずれも刑罰権の一つの作用でございます。刑罰権実行の一態様であります。犯罪が起る、よつて捜査する、よつて公訴する、よつて裁判する、よつて執行いたします。検事総長はその捜査と公訴と執行だけはおつしやいましたが、それなら裁判をどうするか。裁判は検事がおやりになるのじやない。裁判は裁判官がやる。本来一本のものならば、何ゆえに裁判も検察官がならないか。本来一本のものならば、裁判所が検察当局へ付置されたらいい。ところが概念上はどうでございましようとも、法律上も検察と裁判とは別個にいたしております。従いまして今回の警察法の見地から、私どもが常に確信いたしているところの民主的な警察といたしまして、しかも捜査については第一線におけるところの責任者として、民主警察においては捜査は警察の責任においてやらせる。公訴は検事の手によつてやる。裁判は裁判官がやる。執行は検察官に返る。概念的のことではございません。法律的に根本的にさように区別をいたしましてさしつかえない。しかもそれは刑罰権の実行の一つであります。本来二つじやありません。一個のものであります。一個のものでも、これを実際に国家権力によつて処理する上においては、かように分割をいたしましてさしつかえないし、また実際分割をいたしております。しこうしておのおの侵されないように、しこうして権限争いなどをしないように適当にやつて行くところに私はこの妙味があると思いますが、この法案提出について、あにはからんや百九十三条、百九十九条をめぐつて、非常にそこに論争を続けている。部下をなだめんがためにはこちらに行く、委員会においてはこう言うということで、そんなに私どもを二、三に取扱われてはたいへんに困ります。私どもが困るのじやない、背後の国民が困ります。一体こういつたことについて概念的に区別をいたしまして、かように互いに独立性を認めてさしつかえないものであろうかどうか、本来一本だから一本で行かなければならぬという御見解に基くのであろうか、この点検事総長、田中警視総監及び斎藤国警長官の御意見を聞いておきたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/137
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138・佐藤藤佐
○佐藤説明員 ただいま佐竹委員の御質問にお答えいたしたいと思いますが、佐竹委員のお言葉の中に、先般私の答弁のうちで、公訴の遂行と捜査ということが概念的に区別はできないというようなことを言つたように申されましたが、もしもそうだとすればそれはまことに私の舌の足りないところでありまして、私は捜査と公訴の遂行とは、概念はそれは違いますが、ただ百九十三条の第一項を否定する論者の考えは、公訴の遂行と離れて全然別な捜査権があるように考えているところに、解釈の誤解が生ずるのではないかというふうに申し上げたつもりであります。警察の職務権限としては、申し上げるまでもなく犯罪捜査のほかに犯罪の予防、治安の警備等、その他いろいろな広汎な職務を持つておられるのであります。それらの行政警察に属する分は、もちろん検察と何らかかわりはないのでありますが、そのうちの一つの犯罪捜査ということは刑罰権実行の一つの段階として持つておる職務権限であり、また検察官も犯罪の発生と同時に、公訴の遂行についてすべての段階において、厚薄はあるけれども、関心を持たなければならぬ。それぞれの段階においてそれぞれの職務権限を持つておるのであるから、警察官の捜査は、新刑事訴訟法において第一次責任者としての犯罪捜査の権限は持つておるけれども、普通の警察官の犯罪捜査ばかりではない、特別司法警察官の犯罪捜査、また一般の司法警察の犯罪捜査についても、国家地方警察の犯罪捜査、各都市の自治体警察の犯罪搜査、こういうばらばらの犯罪捜査がそれぞれ独立して行われましても、結局その犯罪捜査は何のためにやるのかというと、公訴を遂行するための一つの段階としてなす犯罪捜査であるから、その犯罪捜査の結果、検察官が公訴の提起をするかあるいは不起訴にするかを決定し起訴したものについては公訴維持について努力をしなければならぬし、有罪の判決についてはその執行を指揮監督しなければならぬ、こういうふうに刑罰権の発生から刑罰権の終了に至るまでの職務をそれぞれの段階において検察官は持つておるのであるから、ばらばらに行われる犯罪捜査について、調整をとり、統一をとる上において、検察官がその調整機関、統一機関に当る方が捜査を適正するために必要であるという考えから現行百九十三条第一項を設けられたのである、こういう趣旨で御説明申し上げたのであります。百九十三条第一項の改正について反対される向きは、おそらく現行刑訴の百九十三条第一項の立法趣旨について、すでにそこに誤解を 持つておられるのではないかというふうに思うのであります。私どもその誤解を見ますると、いかにも現行刑訴百九十三条第一項を設けた趣旨を誤解されあるいは曲解されて、一般的指示とはいうけれども、個々の事件も指示し、あるいは指揮するのではないかという杞憂がそこに生じて来ているのではないかと思うのであります。法律解釈としては私はそういう解釈をとつておるのであります。現実に捜査権の実行について検察と警察との間で考え方で根本的に違うのではないかという佐竹委員の御心配でありますが、先般来当委員会に現われました法務省の見解あるいは検察当局の見解と警察当局の見解との間にいろいろ違いがありますので、さような佐竹委員の御心配もごもつともと存じますが、私の見るところでは捜査について警察と検察との間に根本的な違いは一つもないというふうに考えておるのであります。ただ捜査検を行使する上においての方法と申しますか、その手続においてこういう手続をした方が人権擁護になるのではないか、国民が納得して捜査に服するようになるのではないかというところの見方が、その方法論においてやや違いがあるのであつて、捜査の根本において考えが食い違つておる、あるいは対立しておるというふうには考えておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/138
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139・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 犯罪の捜査、公訴、この間におきまして、私は今日の刑事訴訟法におきましては、旧刑訴と違いまして、捜査に当る警察は検事から独立した形において捜査をするというのが原則の建前になつたと思つております。私はこれは警察と検察の捜査について画期的な改正であつたと思う。これは捜査の適正、人権の擁護という意味から権力を分散をするという一つの建前から出て来た原則だと考えておるのであります。もちろん検事総長のおつしやいますように、捜査と公訴これは引続いております。しかしながらその引続いた段階において、ある段階は警察が検事の指揮監督を離れて、独自の立場でやるというのが建前で、次の段階であるいは検事が調べられるというときにはあるいは検事の補助となつて、その指揮のもとに働く、言いは捜査の統制をする必要があるという場合には、百九十三条の第二項でそれができるようになつております。原則は、以前は御承知のように、警察は検事の指揮監督下に捜査を警察官が行つたのでありますが、この原則がいけないというので、ただいま申し上げたようにかわつたのであります。ただ捜査と公訴の間の連絡を緊密にしなければならない、あるいは検事の行う捜査、警察の行う捜査の間に調整をとらなければならない、これらの場合の規定を百九十三条において例外として明記されておるのであります。原則は百九十二条が原則だと私は考えております。従いまして百九十三条の例外規定は例外でありまするから、できるだけ厳格に解釈をしなければならぬ、かように承知をいたしておるのであります。第一項の一般的準則におきまして、ある種の犯罪については捜査着手前に検事の指揮を受けなければならない、あるいは令状を請求する際には必ず検事と協議をし、それが整わなければいけないということがこの百九十三条の第一項の一般的指示でなされるということであるならば、これは非常識な一般的指示はしないということでありましても、法律解釈といたしましては、どんなことでもできるという解釈であります。さように私は例外規定を広く解釈をすべきではない、かように考えておるのであります。この点の見解が非常に相違をいたしておるのであります。それをただ捜査は警察の独占であつて、検事は捜査をすべきでないとか、あるいは捜査について検事は一言も口ばしを入れるべきでないというような見解は、私は毛頭持つておりません。検事も捜査する権限を持つておる、ただ検事と警察との間の調整なり連絡というものは、百九十三条であつて、しかもこれは例外規定である、これは厳格に解さなければならない、かような意味から先般申し上げました破防法に対する指示というのも、これは私はあまり広く読み過ぎた、これを正当な解釈と考えるならば、警察があらゆる捜査について検事の指揮監督のもとにしなければならないという結果になつてしまうということを憂えるということを申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/139
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140・田中榮一
○田中参考人 ただいま斎藤国警長官から申しました通りでありまして、さらにつけ加えて申し上げる必要はないと思いまするし、もう佐竹委員も十分御承知のことと存じておりまするが、現行刑事訴訟法の百八十九条第二項、「司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。」という規定になつております。またこれによつて司法警察職員を第一次捜査責任の有する捜査機関と新刑事訴訟法は定めておるものと考えております。同じく第百九十一条によりまして、「検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができる。」と例外的に検察官も必要があれば犯罪の捜査ができるという規定によりまして、検察官を第二次的に補充的責任を有する捜査機関と定めておるものと考えるのであります。従いまして検察官は、本来公訴機関が原則であつて、捜査機関は従たる性格になるものと考えておるのであります。さらに警察法の第一条には、「警察は、国民の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の捜査、被疑者の逮捕及び公安の維持に当ることを以てその責務とする。」警察法の第一条の最初に犯罪の捜査、被疑者の逮捕ということが警察の責務であるということをまず警察法の第一条にうたつてあるのであります。従いまして司法警察職員といたしまして、犯罪の捜査というものは当然独立してなすべきが本来の姿であろうと考えております。現在の憲法は民主主義のもとに基本原則によつて権力の集中を排除いたしております。現在警察におきましても、一元的な国家的警察を排除いたしまして、国家地方警察、自治体警察にわけまして、警察の地方分権化をはかつております。他面におきまして現在検察官には、検察官一体の原則の支配がございます。この検察官一体の原則の支配からできるだけ警察を排除いたしまして、これから遠ざける。そうして統一的国家機関である検察官が警察の上に来て警察を全面的に指揮命令するという建前を排除するのが現行の刑事訴訟法の建前でございます。従いまして検察官はあくまで公訴機関であり、また司法警察職員はあくまで捜査機関である、この建前を貫くことが現在のいわゆる人権擁護の現行刑事訴訟法の精神であろうと考えております。しかしながら検察官といえどもこれまた犯罪の捜査に従事することは当然でございます。従いまして例外的に検察官といえども独自の立場において犯罪捜査に従事されることは、これはもとより必要であろうと私は考えておるのであります。今回の刑事訴訟法の改正におきまして、特に百九十九条の、司法警察職員の令状請求に際しまして検察官の同意を得るということは、手続の上におきましてはあるいはきわめて簡単なことであるかもしれませんが、建前といたしまして、同意を得るということは、要するに検察官が司法警察職員の上にすわるということでありまして、われわれはあくまでその点につきまして反対の意思表示をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/140
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141・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 検事総長の先ほどの御説明一応了承したのでありますが、はたして御説明のごとくであるかどうかということについて、私どもはなお疑問を持たざるを得ないのであります。過日の公聴会における斎藤国警長官の公述によれば、今回刑訴法について追加改正をするということを聞いたが、それについて相談を受けなかつたということを述べておられましたが、この点については先ほど斎藤長官から少々違う点があると申し述べられましたのでまあそれはそれでよいとして、その言葉についで、改正案の中には一般指的のほかに検察官が個々の具体的指示ができるような規定を設け、また捜査の中止をも命ずる規定まで設けていた、さらにまた実務の指導や修習に至るまでできるような規定を設けていた旨を述べておりました。はたしてさようでございましようか。そういう原案をおつくりになつたでありましようか。もしつくつていたものとするならば、政府の腹は一般的指示のほかに、進んで具体的指示についてまで立ち入ろうとする熱望のあつたことは間違いありません。さらにまた斎藤長官はその後段の言葉を継いで、法務省は百九十三条の改正はその解釈を明確にしただけだというているが、一般的指示の中にも、個々の捜査についてその指揮をすることまで入つておりはしないかと疑問を抱いて、入らないのならば解釈規定を設けていただきたいということを要望しておつた。ところが入らないという回答であつた。そこで文書をもつて政府に確かめたがいまだに返事がない、そして口頭ではすこぶるあいまいであると述べておりました。法務大臣並びに検事総長が口をすつぱくしてこの席でさようにおつしやるといたしますならば、個々の捜査に立ち入るなど毛頭考えておりませんということを、ここで百回答弁をなさるよりも、個々の捜査に立ち入らないということを文書一本大臣の判をぽかんとついて明確に国警長官に御回答になつたならば、それで済んでいたはずです。それがだんだん誤解に誤解を生んで、私どもが曲解をしておるかどうかわかりませんが、私どもの方では政府が誤解をして曲解をしているのではないかと考える。かように個々の捜査にまで立ち入ろうというような熱望のもとに、いろいろな規定を設けておつたが、やんや言われるのでひつ込めてしまつた。そこで回答を求めたところ、口頭では入つておらないと返事をする。が文書で御回答をというとしない。これでは疑わざるを得ません。もし政府にして真に大臣並びに検事総長の言明のごとく、個々の捜査について何ら立ち入ろうとする考えはない、またこの法案の解釈上かように改正をすれば、その解釈上の疑義は一切とれてしまうというのであつたならば、何がゆえにその旨をはつきりと明示されないか、私はこの点を承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/141
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142・岡原昌男
○岡原政府委員 その間の事情は私が一番知つておるんじやないかと思いますので御説明申し上げます。法制審議会に対しまして案を提出いたしました際の記録、各委員に差上げるほどたくさんございませんでしたが、一部の方に差上げました議事録によつて明らかでございます。これによりますと、第百九十三条の第一項の一般的指示の点、これはただいまの案と若干違いますが、その原案が一つ、それからもう一つはただいま佐竹さんのおつしやつた国警長官が具体的な事件の中止を命ずることができる、この点は若干事情が違うのでありまして、それを全文初めから読みます。「違法又は不当の疑のある捜査を抑制するための検察官による具体的指示」として、「検察官は、捜査が違法又は不当であると疑うに足りる相当の理由があるときは、その管轄区域により、司法警察職員に対し、事件を指定して、捜査に関する報告を求め、捜査の着手につき検察官の承認を要するものとし、又はすでに着手した捜査の中止を指示することができるものとすること(第一九三条の次に新たに一条を加える)。」というのがその関係の案でございます。その考え方と申しますのは、その際ちようど警察法の改正が審議せられておりまして、警察の権限が相当大きくなるということが予想せられておりました。それが大きくなるのはある意味ではけつこうであるけれども、その反面何か行き過ぎがあつた場合に、一体これをだれが見るか、しかも捜査の面から違法または不当の疑いがきわめて濃厚である事件を、捜査官が、たとえば在野法曹からの申出があつて、今現にこういう事件をやつておりますがいかがでしようと言われたときに、おれは知らぬと言うよりも、人権尊重の意味から言えばこの程度で許せ、あるいは身柄は釈放してやれ、そういう具体的な指示をすることができるというふうに、違法または不当の捜査ということを前提に置いてそれを考えたのでございます。あらゆる事件について具体的に指示する、あるいは指揮するという案ではないのでございます。この点は議事録にもございますので、後ほどお手元まで差上げることにいたします。
なおもう一つ、今回の法案を提出する際に百九十三条の第一項の解釈について国警長官は、法務省においては個個の具体的な事件を指揮することを全然目的としていないという解釈であるというふうに了承されたと言われておる由でございますが、これは事実と相違いたしております。この間の事情は次のごとくでございます。この点について国警におきましては、かねて百九十三条の第一項はかような具体的な事件に及んで来るというふうなことはできないのではないか、いわゆる準則という形で個々の事件を押えることはできないのではないかということを強く主張せられておりました。そこで私どもといたしましては、個々の具体的な事件を目的といたしまして、つまり具体的に目の前にこういう事件がある、その事件を押えるために一般的指示の百九十三条一項を動かしてこれをどうこうするということはもちろん考えていない、さようなことをその当時あるいは人を介し、あるいは直接お話したことはございます。しかしそれ以上に破防法の当時とつた解釈が間違つておるといつたように、ただいま御指摘のような点について私どもの方から何ら了承をいたしたことはございません。従いましてその後法案が提出された直後でございましたか、閣議決定になる前後でございましたか、国警の方から、自分の方はこういうふうに解釈するがという非公式な書面が参りました。それで私どもは、一体これはどういうことを意味しておるのだろうか、この点については全然話合いができてないので、こういう書面をよこす真意は一体那辺にあるだろうか、これはざつくばらんに申しますと果し状かなというようなことを言つて笑つたようなわけでございます。その点につきまして国警長官と会いました際に、あの返事ちつとも来ないねと言いますから、いやこれは全然話が違う、あなたと私とこの点について話し合つたことがございますか、こちらで了承したことがございますかと言つたら、それでは話が違うのかね、こういう話でございました。ちつとも私どもは話をいたしておりません。従つて返事を出すべき筋ではないと私は存じておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/142
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143・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 おりこうな人は私みたいな大きな声を出さなくてもいい。ぼそぼそとけんかをされますが、それはなかなか深刻です。声を細うして、ああそうかねと言つて廊下でわかれるが、なかなかこれは深刻な争いだと私は見ております。今の岡原さんの御答弁も、きわめてあつさりした、夫婦げんかの話のようにちよつと聞えますけれども、なかなかもつて内輪はとても深刻です。あんなことを言われたら私どもは腹が立つ。私は斎藤国警長官に質問してはいないが、ぐつと腰を上げて何か言いたげなかつこうをなさる。私はもうその内部のけんかのことは何も聞かぬでよろしゆうございます。進んでお尋ねいたしましよう。いわゆる一般的指示権というものは一体どんな範囲のものか、これを具体的にひとつ示してもらいたい。単に具体的に示せなどと言つたら、それはまた一般的に対して具体的な指示権の内容を示せなどといつたように誤解されるといけませんから、そうではありませずに、一般的指示とは具体的に言えばどんなものか、これを聞きたい。それでまずその御回答を得るために、ここに例示をしてお尋ねいたしたいのであります。
たとえば桐山隆彦氏の刑事訴訟法解説七十五ページ以下によればこういうことが書いてあります。一般指示権の及ぶ範囲は、直接公訴の実行に特に必要なものに限らるべきであり、具体的には、公訴を実行するに必要な書類作成の一般的基準(書類の種類、様式、部数、作成要領等)及び公訴を実行するため必要な証拠の収集保全に関する一般的基準等が該当する、と主張して、最も狭義に解釈いたしております。ところが宮下明義氏の刑事訴訟法逐条解説三十六ページ以下によりますと、犯罪捜査を公正適正に遂行せしむる諸注意をも含む、と広義に解釈いたしております。東大の団藤教授も、「公訴を実行するため必要な」というのは相当に広汎な内容を持つている、と広義に解釈しております。しこうして平場助教授は刑訴講義八十五べージ以下において、やはり広義に解釈をいたしておりますが、しかし、特に本項の一般的指示が限定せられている趣旨、及び司法警察職員の捜査の主体性を認めている現行法の立場から見れば、司法警察職員の職務規範のごときを指すというのは疑問である、むしろ直接公訴の提起、維持に必要な捜査事項、たとえば証人尋問請求、検察官に事件の送致を必要としない範囲、告訴告発、自首事件の書類、証拠物の送付等に関する事項についての細則を規定するものに限ると解する、そう言つておる。
かように具体的に検討して参りますと、そう簡単なものではございません。今回の改正案が通つてみても、その具体的面においては必ず解釈がわかれるおそれがあろうと私は信じます。現に斎藤国警長官も田中警視総監も、過日の公聴会において公述をなさつておりますが、そのとき、いわゆる公訴権実行のための指示が、警察の一般的行動を侵犯するに至る危惧をるる訴えており、本日もその気持いつぱいでお述べになつておる。本委員会の審議に現われたところによりましても、先ほど前司法大臣が大臣にお聞きいたしましたところによつても、きわめて不明確なものであることは明らかであります。しこうして委員長よりこの点を明確にせよとおつしやつておりましたが、単にこういう問題を明確にしろと言つてみても、これはとりとめないとお考えになるかもしれませんので、ここに私は参考のために二、三の学説をただいま御紹介いたしました。これにヒントを得て、一般的指示というものはどういつた性質を特つておるものか、そういう意味におけるところの具体的標準をここにお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/143
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144・岡原昌男
○岡原政府委員 百九十二条の第一項に書いてございます一般的指示、これは先ほど検事総長から述べられましたように、いろいろな司法警察職員が独自の立場でいろいろな捜査をいたします。その事件がまとまつて、あらゆる方面から検察庁に送られて参ります。検察庁がそれを見て、あるものは起訴し、あるものは不起訴にする。この公訴の実行と申しますものは、公訴の意思というものとは、字が違つておるし、内容も違つておるのでございます。いわゆる具体的公訴権の遂行ということになるわけでございます。具体明公訴権と申しますと、これはもとより犯罪が発生し、あるいは犯罪がありと思料する場合に、検察官あるいは捜査官が動き出すものでございます。その公訴権を、ある段階においては捜査を中心にしてこれを実行し、ある段階においては起訴し、あるいは公訴の維持というふうなところでこれを実行して参るわけであります。その公訴の実行という面から、捜査はどういうふうであらねばならないか、要するにあとで事件になりました際に、最初の捜査がまずく行つておれば、あとあとまでその禍根が残つて、事件がうまく行かない、あるいは正しい方向に行かずに、曲つた事件の裁定が出て来るといつたようなことが、非常に心配されるわけでございます。それを最後にあらゆる事件をまとめて処理するところの検察官が、全体を見て、この種の事件はこういうふうな心構えでやつたらよかろう、あるいは先ほどお話の通り、書類はこういうふうにして全国的に統一した方がよかろうというふうなものが、この一般的指示になるわけでございます。従つてその範囲、内容と申しますものは、結局警察における捜査に関し、公訴の維持上必要なというのみならず、公訴の実行に必要な、つまり公訴権の実行――具体的公訴権の確定と申していいと思いますが、実際どういう事件があるか、具体的公訴権の確定するために必要な事項は全部含まれるわけでございます。これをやや具体的に申しますと、ただいまお話のありましたような司法警察職員規範といつたものが前にございましたが、さようなものがちようどそれに当るであろうと思いますし、また先ほどお話の、たとえば告訴事件についての処理の方法、あるいは傷害事件についての処理の方法、これは学説が、あるものは具体的にあげておりますし、あるものは具体的にあげずに、全般的にあげておりますが、そういうものも入つて来る、かように考えておるわけでございます。百九十三条の第一項は、現在でも、一般的指示権という文字を使つておりまして、これがさらに具体的に事件が進展して参りますと、第二項の一般的指揮権、それから第三項の具体的事件の指揮権、かようになつて参るのでございます。これはすべて一連の関係をもつて動いて来なければならない。でなければこの捜査権はそれぞればらばらになつておる。これをどこで統一するかというと、横の段階の統一、つまり自治警同士の事件の統一、あるいは自治警と国警の事件の統一、あるいは特別司法警察職員との統一、この横の関係の統一が一つ。それから縦に行つて、事件が捜査の最初からだんだんと検察庁に送られて参りますが、この縦の段階においても事件は一貫して動いて来なければならぬ。それは結局終局の公訴権の実行のために、一つの関連したといいますか、一貫した思想のもとに動いて来なければいかぬという規則と申しますか、その方針と申しますか、目じるしをつくるのが、この一般的指示である、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/144
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145・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 せつかくの御説明でありますが、やはりそれだけでは、将来の私どもの疑問を全部氷解し得るとは考えられません。先ほど申し上げましたように、平場教授の刑訴講義等においては、これは非常に広義に解釈いたしておりながら、司法警察職員の職務規範のごときはこの範囲に入ると解釈することに疑問があると言つて、否定的な態度をとつておる。ところがただいまの岡原政府委員の御説明によると、そういつたものに当るであろうと言つておられる。従つて解釈上の相違は、早晩法律になつたら必ず生ずる。そのときにおいては、警察は警察なりに自分の都合のいいように解釈し、検察は検察として都合のいいように解釈するでありましよう。私はそういつたようなことを防ぐために、ここにできるだけひとつ内容を確定いたしておきたいと考えます。
角度をかえてここにひとつ考えてみたいのは、詐欺事件についてはどういうふうにしなさい、窃盗事件についてはこういうふうに取扱いなさいといつたようなことを一般的に指示することは、この一般的指示権の範囲に属するものと解釈できましようか。ここに最も問題となつておりますのは、例の破防法の事案でありますが、昨年七月の二十一日付の検事総長より警察側に対して出した通牒によれば、破防法事案については、捜査に着手する前に検事正の承認を得なければならないということになつておりますが、これは現行法における一般指示権に基く指示でございましようか。また改正案によります一般指示権の範囲内にも入るものと認め得られましようか。もしこれも一般的指示だということになりますならば、それでは涜職事件についてはどうか、あるいは暴行一殺人事件についてはどうなのであるか、あるいは窃盗、詐欺事件についてはどうだろうか。先ほど設例いたしましたそういうすべての犯罪について、ことごとく着手前に捜査につき検事正の承認を受けなければならぬような指示が一般的に出されはしないか。そこでもしかような具体的な個々の事実でなくして、窃盗案件であるという抽象的な一般的な事案に対して、あるいは多衆暴行に対する案件であるとか、あるいは大がかりな詐欺事件であるとか、こういつた犯罪の種別を抽象的に例示いたしまして、そしてこういう事件に対する取扱い方について一般的な指示をすることができるという見解のもとに、これは一般的指示権の範囲内に属するものといたしまして、将来本件改正が行われましたならばそういう指示ができるという見地に立つて改正を企てられておるかどうか、これをひとつ承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/145
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146・岡原昌男
○岡原政府委員 破防法の指示の問題が出たのでございますが、あれは御承知の通り、たしか昨年の七月の十九日前後であつたと思いますが、総長から各検事正に訓令が参りまして、各検事正からそのころの日付をもつて各管内の警察に出されたものでございます。その根拠法規は百九十三条の第一項でございます。この出されましたいきさつは、簡単に申し上げますと、国会における破防法の審議の経過にかんがみまして、かような重要な法律で、しかもその濫用のおそれのきわめて多い法律で、警察官の単純なる判断によつてすぐにこともなげに着手されてはたいへんである、これを全部法務大臣の責任において着手させるという考えのもとにいたしたもので、警察における捜査権というものを根本的に否定するということに出たものではないのでございます。従いまして、あの際の指示も、事前に連絡をして、検事正から中央に伺いが来て、法務大臣がよいという場合にはすぐにその返事が現地に参りまして、それですぐに着手ができる、その間間違いの起らないようにというふうに、いろいろとその当時運用について通牒を出した次第でございます。
しからばこれが改正になつた場合にこの点はどうかというお話でございますが、これは私ども当初から申し上げておりますように、この百九十三条の改正というものは、もつぱら字句を明らかにし、趣旨を明瞭ならしめ、かつその趣旨を確認するというにとどまるのでありまして、この点については従前通りかように考えておるわけでございます。それではなぜかような改正を企てたか、これは破防法制定に伴う一般的指示を出します際に、警察においては、検察官は公訴の維持を中心にして考えればよろしい、捜査まで手を出すのは間違いである、百九十三条の第一項はさような趣旨ではないというふうなことを申されましたので、それはさようなことはないということで、つまり先ほど申した理論の争いから、これはむしろ一応法制審議会の御意見も聞いてみようじやないかということから、法制審議会の御意見も承りまして、われわれの解釈の正しいということが確定して国会の御審議をいただいておるようなわけであります。
なお御質問のうち、たとえば窃盗あるいは涜職あるいは詐欺、一つ一つの事件をとつて、みんな一般的指示ということでやつて来るのじやないかというようなお話でございますが、さようなことはもちろん考えておりませんし、この百九十三条の趣旨とは全然相いれないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/146
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147・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 破防法につきまして、第百九十三条一項を適用してその指示ができたといたしますれば、この法律を適用して、たとえば常習窃盗についてはこうする、あるいは常習賭博についてはこうする、あるいは多衆暴行によるところの一案件はこうするとか、あるいは殺人はこうする、交通往来の妨害、汽車の転覆、その他一般の公共危険罪はどうするとかいうふうなことを一般的に指示することも可能であるとお認めになりますか。また昨年七月二十一日に検事総長より警察に出されましたところの通牒に対して、国家公安委員会委員長の青木均一名義をもつて同年七月二十三日検事総長あてに、そのような通牒は了承いたしかねるという返事を出しておるのでありますが、これは法律違反と解釈してよいでしようか、この点を聞いておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/147
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148・岡原昌男
○岡原政府委員 たとえば常習窃盗、涜職その他を順次やれるのではないか、すでに破防法について可能であればほかも可能ではないかというような御議論でございますが、この百九十三条というものは、その趣旨にのつとつて運用しなければならないのであつて、決して警察における独自の捜査権を妨げるものではないのでありまして、検事の捜査、あるいは検事が公訴権を実行するについて、警察との間の調整をどうとるかという問題なのでございます。従つて百九十三条を運用するにあたりましては、常に検事が公訴を実行するという建前に立つて、一般の犯罪をいかに適正になすべきかという点を中心にして考えるべきでございます。そこで窃盗もいけない、詐欺もいけないというふうなことは、本来の趣旨に反して来るわけでございます。さような建前にはなつていないと私どもは理解しております。なお昨年の七月この一般的指示が出されました際に、かようなものは受取れないと言つて事実上突き返したところ、あるいは突き返したあとで受取つたところ、いろいろありました。全国的に四、五箇所問題になつたところが当時ございましたが、それはおそらく、その法律の百九十三条の解釈について当時誤解があつたためにさような挙に出たのではないかと私は考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/148
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149・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 かような摩擦のあることがその一事によつても知れます。それで法務大臣に聞いておきたいのでありますが、そういつたようなことでほんとうに有機的な警察活動というものが行われるでありましようか。私が冒頭から非常に心配いたしておりますのは、単にこの法案を円滑に審議し通過せしむるのみではありません。この法案が通過いたしました後における運営の上において及ぼす影響の重大なることを考えるからであります。百九十三条一項について解釈上大小はないようにおつしやつておるけれども、これは重大なる解釈の相違を来しておる。そうして破防法について検事総長がこうせいというと、そんなものは受取らぬといつて返した、これは小さなことと思われましようか。たつた一人の犯人がお上にそむいて反抗いたしましても重大であります。いわんや一つの国家機構に対し他の機関が反撥するなんていうことは、解釈上の相違もあるかもしれません。しかも今回の改正によつてそれがとまるかといえば、おそらくとまりませんでしよう。今度の改正によつても、やはり先ほど私の述べております通り、解釈を別にするものにおいては、これは解釈上私は受取れませんとおそらく言うでありましよう。こういつたときは、法律の解釈問題よりはやはり政治力です。政治力によつてそれが統一いたしておりません限り、うまく行くものではございません。いわんや警察権濫用などということについては、あとで私は申し上げたいのでありますが、そういつた面もあるけれども、しかしまた過般大臣もおつしやつておりました通り、警察はまた強くなくてはならぬ。やはり警察が弱いようではわれわれ全体の公安が保たれません。生命、財産、名誉その他自由を安全に守つていただくわけには参りません。従つて一方に権力を持つているものが一方のものを押えようとし、一方がそれに反撃して受取れませんなどといつて内部抗争をいたしておりますが、いわゆる内部抗争のために権力が弱められて、国民の公安が侵害されるということになるかもしれぬ。これは重大なる問題であります。従いましてこの問題については私は根幹の立つ必要があると思う。根幹の立つのはどうすればいいか。法が命じております。日九十三条第一項には何と書いてあるか。「この場合における一般的指示は、公訴を実行するため必要な犯罪捜査の重要な事項に関する準則を定めるものに限られる。」とあります。準則を定めることによつて一般の指示を行うとなつておる。それならば、準則に何と書いてあるか。準則に書いてあればはつきりするじやありませんか。準則をここでお見せを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/149
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150・犬養健
○犬養国務大臣 この問題について率直に経過を申し述べます。まず破防法の関係のことを御答弁申し上げたいと思います。これは私の就任前のことでございますが、破防法についての検察官対警察官の扱いをきめることについては手続に遺憾なものがあつたと、あとから私聞きまして、そう思つております。しかし手続について遺憾な点があるというのは、政府の立場からの考え方でありまして、私の前任者でありますが、内閣の承認を得た破防法については個々の事件について検事が関与する、検察官が関与するというふうになりますので、同じ総理大臣が今日また第五次吉田内閣の主管であります以上、私はこの問題については過去のこととして、今過去の大臣がとつた処置を容認している立場にあるのでございます。過去にその手続についてまことに遺憾なこともあり、国警長官もまことに不本意であつたと率直に私に言う心理は、私も同情しておるのでありますが、そういう経験がある国警側がまたもやこの準則による一般指示に名をかりて、今佐竹委員も御心配になり、田原政府委員もそういうことはないと甘えたのでございますが、またもや一一大がかりの詐欺事件はこうである、窃盗事件はこうであるといつて、捜査に際して個々の場合に立ち入つて来るのではないか、この心配も国警の気持になつてみるとあながちむだな心配だとも言えないのであります。その点ははつきり今岡原政府委員が述べたよう心意味合いを、私の名において国警に書きものにして渡したいと思つていることは、午前申し上げた通りでございます。準則の内容というものはいろいろ伸び縮みがある、弾力があるのじやないかという御心配は、おそらく佐竹委員のみならず、大部分の委員諸公のお気持ではないか。準則をどういうふうにつくるかということは、なるべく火急皆様に率直簡明に申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/150
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151・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 それでは伺つておきますが、法律は準則を定めて、一般指示をしなければならぬとある。ところが今まで準則をつくらなかつたとおつしやるのですか。先ほども猪俣委員が鉄道公安官で質疑応答しているところを聞いてみると、何かしらそういつたときにこういうものがあるだろうという、ないといつて法律をつくらしておいて、あとで何か事件があると、いやこれはこうだつた、そういう手口を始終おやりになるのです。準則というもりがあるじやないですか。もしもなしに、法律が準則をつくらなければなりぬことを命じ、その準則によつて指託しなければならぬことを命じているにかかわらず、準則なしに検事総長がこうやつて通牒でどんどんやるなんぞということは、この通牒自体が間違つておりはしませんか。何がゆえに根底的な準則を、規則的なものをおつくりになりませんか。いわんや岡原政府委員はあの警察規範のごときものが該当するとおつしやつておる。どんなものをおつくりになつているかお見せを願いたい。もしつくらずにこういうものをやつたとすれば、これは重大なる責任じやありませんか。もし準則をつくらないで、こんな一度限りの各事案ごとにどんどんやつて、これが準則だといつたような――本来この百九十三条の精神はそんな精神ですか。警察の規範のごとき総般的な規則をつくるというお考えではなかつたのですか。今後の事案についてこういう通牒を発することがいわゆる規則をつくり準則をつくるというお考えであつたのですか。もしも前の刑事訴訟法改正において、こんな通牒で、これがいわゆる準則をつくるものだという御趣旨であつたといたしましたら、法務委員会は明らかにだまされておりました。われわれは総般的、抽象的な規則をつくるものと考えていた。もしこういう規則がないとするならば、今日まで規則なしにやつて、何もここに弊害がないとするなれば、これから先も準則なんぞつくらぬでもいいでしよう。準則の必要があるということになつて、もしそういう争いになることがあるとするなれば、何ゆえに今日までおつくりにならなかつたか、責任を感じないのですか承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/151
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152・岡原昌男
○岡原政府委員 いわゆる準則というものがどういう形で出されるかと申しますと、準則という言葉がどういうふうにとられるか私も詳しいことはわかりませんが、要するにある事件が出た場合に、これに従う規則というふうなことだろうと思います。いわゆる準則なるものが現在までどういう形で出ているか、これは大きいものも小さいものもあるだろうと思いますが、私どもでわかつております準則といたしましては、書式例が一つございます。それから一つは微罪処分の限界に関する準則というものがあるように報告を受けております。この書式の方は最高検察庁、それから微罪処分の方は各検事正において出されたものでございます。その準則というものは佐竹先生のお話ですと、いかにも本になつた厚い警察の捜査規範みたいな大きなものを何かお考えのようでございますが、私どもは必ずしもそうは考えていないのでございまして、一つ一つの事件を目当にするのではなくて、全般的に準則として、つまり何かが発生すれば当つて来るという意味において、準則というむのが考えられておるのでございます。従つて紙ぺら二、三枚の場合でもやはり準則と言い得るのでございます。制定の経過を申し上げますと、私この当時関係しておりませんので詳しく存じませんが、新刑訴施行直後に最高検と国警との間に準則をつくることについて話会いがあつたのでございます。その内容についてもいろいろ打合せをいたしまして、そうして最後にそれを最高検でどういう形で出そうかというお話のときに何か横やりが入つたらしく、結局その内容はそのまま国警で出されたことになつたものでございます。国警で出されたのは国警管内だけのものでございますが、なおそれを受継いで各自治警もそれに類するものをおつくりになつておられるように聞いております。これはいわゆる犯罪捜査規範と申すものでございます。そのほか検察庁におきまして何か準則をということは、その当時国警においてつくられた規範なるものが大体最高検と打合せして、準則の形式が違うというだけで内容的には異存はないものでございましたから、それはそれとして了承いたした、かようなことなんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/152
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153・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 書式例、微罪処分に関する準則等は昔からあるものであります。今回の二十七年七月二十一日に出された破防法に関する通牒といつたものが、準則のむしろ通例なものであるというように御解釈になりますと、それこそ国警並びに自治警のおそれております個々の事態が起きた場合においてこれが一般的準則なりと称して指示をされる。これではほとんど具体的な指示と一般的指示との間に区別がないことになりはせぬか、だんだん問うに落ちず語るに落ちるの類で、最初のうちは警察における職務規範のようなものである、相当部厚いああいつたものに該当する。それは警察とも相談の上で、両者が互いに協議し会つた上で適当な準則を定めて行くというふうに私も受取つたのでありますが、何らそうでなしにある具体的事案が起ると検察当局だけが一方的にこういつたものを出す、一方では返上、こういつた返上せられるような一般基準が出て一体何になるか。かりにそれが基準だといつてみてもおそらくそんなことを避けてしまう。これではほんとうに完全な警察というものの職務を遂行することは困難であろうと私も思われます。私が常に考えますことは、こういつた法律というものはある意味におけるところの委任命令であります。法律の条文によつて、他の準則によつてこれを定めるとある。だから準則でこの意味を出しております。従つてこういう条文を出しますときには、この条文を出すときの実在の状態において必ずその準則案というものを持つのであります。私どもも委任命令を審議する場合においては、委任されるべき事項の要綱というものを必ず政府に迫る。政府といたしましてもその委任事項についての要綱を必ず委員会なり、本会議なりに示すことが例であります。これは大臣におかれましては十分御理解願えることであろうと存じますが、一般準則を定めることによつてやることとお書きになつておるならば、その準則の要綱を何かお示し願えませんと、私どもはこれを審議することができない。この点大臣より御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/153
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154・犬養健
○犬養国務大臣 時たまありますように、法律案を通していただいて、いずれ近いうちに準則をといつてごまかすやり方もありますが、私はそういうやり方は最もけしからぬやり方だと思うのであります。従つて準則は可及的に、ということは、法律案が通つてからという意味ではございません。御審議と併行的に、できるだけ御了解を得るような具体的なものをお示しいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/154
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155・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 大臣のそのお言葉には満足いたします。ぜひともこの法律審案中に、ある程度の要綱をお示し願いたいと思います。
次いでこの際その具体案を出しますまでの間に警察との間におけるもやもやを解消いたしまして、警察と協調いたしまして、警察も心からそれに心服して、それを実行に移すことができる態勢を整えることのできる準則をひとつおつくり願いたいものと熱望いたします。
ついでお尋ねいたしたいのは、警察法改正との関係でございます。法務省当局が法制審議会のために用意されました法律案要綱の説明書によりますと、かように書いてあります。この改正は「今次の警察制度改革並びに最近における刑事裁判の実績にかんがみ」て企図されたものであること、第一点は「今次の警察制度改革に伴い司法警察職員の捜査の行き過ぎを防止する」ためであることが明らかにされております。さて警察制度の改正とはどんなものかと言えば、それはさきに企てられました警察制度の改正要綱に示しているところによれば、現在国警と自治警にわかれておりますが、これを都道府県自治警にまとめる。のみならず全国的な組織として総理府に警察庁を外局として置き、国務大臣をその長官にすえるというのであります。そこでかように警察を集中化いたしますことになると、終戦後民主化のため地方分権化した制度が昔の国家警察に逆もどりいたしますおそれがありますので、これを少々チエツクするために、今回の百九十九条三項、四項のような案が考えられるようになつたというのほかはないのであります。はたしてしかりといたしますならば、今回は法務大臣の言明通り警察法の改正は企てないのでありますから、これとにらみ合せて考えられておりました百九十九条の三項、四項などはひつ込めてもいいわけではないかと考えますがいかがでございましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/155
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156・犬養健
○犬養国務大臣 警察法の改正は率直に申し上げましてこのたびの総選挙の国会における勢力分野もかわりました。これは国民がかえた勢力分野でございますから、私ども議会主議者もこれを尊重しなければならぬ。さらに率直に申し上げまして政府与党は予算案においてごらんくださつたように少数党と申しますか、絶対多数をとつておりません、従つて一つの重要な法律案――重要でなくてももちろんそうでありますが、通すには与党以外の考え方というものを虚心坦懐にくみとる、これが一つの政治的な必要行為と思われて来ておるのでございます。この意味で私は警察制度改正も、自分たちの考え以外にいい考えはもう一度ないものかと調べる、また前国会におきまして一箇月有余の議論の間に、他党の方も私たちの主張について当初よりはああそういう意味だつたかとお考えになる点もあるから、これを慎重にひとつやりたい、こういうわけで警察法の改正を延ばしたわけでございます。
そこで問題は、今の点でございます。まず百九十九条について率直な御説明を申し上げたいと思います。百九十九条の司法警察官が裁判所に対して逮捕状の請求をするときは、検察官の同意を要する、もとは承認であつたのを、私の政治的判断において同意にいたしまして、これは法務次官と、ここにおられます国警長官を院内の大臣室に足労を願いまして、そこでこの文字を私が考えまして、おのおのこれはかけひきなしに両方同意をせられたわけでございます。ところが先ほどの佐竹さんの御質疑のうちにこの話を忘れていて、今思い出したのでありますが、法制審議会にかけるときに法務次官にはこういう思い方があつた、それが国警長官の思い方と違つた点も行き違いの一つじやないかと思います。というのは、院内の大臣室で、私の前で、同意ならばこの際よかろうということになつたことだけを法務次官ははつきり覚えていたのであります。国警側とすれば、あのときには警察法を改正して、佐竹さんの先刻言われたように一段と強化せられた警察になるので、強化せられた警察の行き過ぎがあつてはならぬというので、特に同意という字を私の方ものんだのだ、今度警察法の改正を出さないのに同意という字だけが同じ階段で足踏みされては困る、こういう話になつて来て双方思い違いがあつたと思うのであります。私も差迫りまして国警長官からその話がありましたときに、警察側としてはもつともな言い分だからひとつよく考慮しようという考えになりまして、真剣に考えたわけであります。ところが、何でもお打明けするようで恐縮でございますが、これは法制審議会の議を通りました同意という字でございますので、また法制審議会をやり直して、ちようど妥当な字になればよろしいが、なお強い字になんかなるとなおさら私の不本意にもなりますし、審議会は御承知のように法務大臣のあごで動くような生やさしいものではございませんので、かたがた時日の切迫も関連いたしまして、同意という字のまま出したわけでございます。従つて現在御審議を願つているわけでございますが、今朝佐竹委員もお聞取りくださつたことと思いますが、私の検察官対警察官の関係についての百九十九条の説明は、各方面から十分尽きておりますから、これは省略することといたしまして、逮捕状の請求を受けた裁判官の立場が、猪俣委員の御質問のごとく、はたして適法かいなかは、裁判官の職掌柄すぐ判断がつくであろうが、妥当性についての判断が困難である場合があるのじやないか、つまり違法であるが、この程度は縛らないでもいいのじやないか、いわゆる救済処分の除外というか、あるいは違法であるが、今やつていいか、こういう判断はあげて裁判官に一任して困難な場合があるのじやないか、そのときにどうしても検察官の考え方が裁判官に届くということが必要なのではないか、これが私の考え方でございます。
はなはだ時間をとつて恐縮でございますが、私勉強してみまして、団藤教授の新刑事訴訟法綱要にこういうことが書いてあるので、大体私はこの考え方を支持しているものでございます。というのは「司法警察職員が実質的にもつとも重要な捜査活動を行うのは人的陣容からも物的施設からも合理的なことであるが、これに対して二つの点を注意しておかなければならない。第一に、捜査そのものが法律的手続である以上、捜査の合目的性の追求のほかに、つねに手続法的規制が要求され、また、被疑事件の法律的構成が必要である。第二に、捜査が公正に行われるためには、政治的ことに政党的色彩が極力排除されなくてはならない。これはごもつともでございます。この二つの点を捜査の法的安全性と団藤教授は呼んでいるのであります。「前者は捜査の内容的、事実的な方面であり、後者は捜査の形式的、法律的な方面である。」その次に大事なことが書いてあります。「捜査が実質的に司法警察職員の手によつて行われることは、捜査の合目的性の見地から正当である。しかし、捜査の法的安全性の見地からは、さらに、検察官による積極的および消極的な控制が行われるのが適当である。けだし、検察官はひとしく行政官でも、法律的素養の点および職務の公正が保障されている点では、裁判官に近い性格をもつものだからである」大体私はこの程度の考え方がおおむね妥当なのではないか、今度の改正案について、法務大臣としてこの百九十九条を扱う、あるいは百九十三条を扱う場合に、この程度の考え方が一番私の本来の考え方に近いと思うのでございます。従つて午前にも申し上げたのでありますが、司法警察官が逮捕状の請求を裁判所に向つてするときは、検察官の同意を得るというこの同意が、世の中で一番適当な字かどうか、法務大臣即答しろというお話があれば、これはほかにかけがえのない字だと申し上げる勇気はないのでありまして、比較的穏やかな字だという意味でここに使つたわけでございます。要は逮捕状の請求を裁判官がされたときに、違法性のみならず、妥当性を判断するには検察官の意見の反映が裁判所に届くということが最も好ましい、こういう心持であるということを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/156
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157・岡原昌男
○岡原政府委員 警察法と今度の一般的指示、その他の法制審議会に出した関係でございますが、これは議事録の三十八ページに、私が団藤委員からの質問に答えておる点がございます。簡単でございますから、読み上げます。「その点は、実は冒頭にも簡単に申し上げたのでございますが、特に今度の警察法との関係において考えたのは、行過ぎ防止についての要綱第一の(二)の点でございます。」これは違法不当の捜査に関する具体的なことをチエツクする、こういう面でございます。「と申しますのは、昨日会長である法務大臣の説明にもございました通り、今回の警察法の改正によりまして、警察が具体的な権限の問題より行動単位としての大きさが従来より増して大きくなつてくる結果、その力が全般的に大きくなる。そこで、一般世人に、さようなことによつてまた力の行き過ぎがでてまいるのではないかという懸念がある。その懸念を解消する意味で、こういう防止の措置を併せて考えるのが常道であるという風な趣旨の発言がございましたが、私どもとしてはさような趣旨に考えているのでございます。その他第百九十三条の一項とか、あるいはその他の条文は、大体従来警察法の改正の議がのぼる前からすでに法制審議会におきましても、国会におきましても、特に強い要望のあつた点でございますので、これは警察法の改正の運命の如何にかかわらず、必要な条項であると、かように考えております。」かようにその当時申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/157
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158・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 大臣が百十九条に進んで触れられましたから、私はちようどいいところでございますから、その点に進んで質問をいたしてみたいと考えます。
今回の逮捕状の濫発が非難されるのはひとり警察のみではないと考えます。簡易裁判所の副検事や若い検察官などの中にはひつぱるのがおもしろくておもしろくてならぬ連中があります。ひつぱつておいて、何と申しますか法律を無視いたして何か人間でもないように威圧をかけて調べようとする連中がずいぶんたくさんあります。このことは本年の五月の三十日に日本弁護士連合会理事会において決定をいたしまして、法務大臣並びに検事総長にこの旨を要請しております。最近検事が拘禁中の被疑者の取調べにあたり、刑事訴訟法三十九条を不当に解釈して被疑者と弁護人の接見を阻止し、起訴前の防禦権を不法に制限し、人権蹂躪を行つている事件が頻発している。このような措置は断じて看過できない。すみやかに厳重な警告を発せられんことを要望する。こういうのを大臣のお手元に差出したはずであります。その三十九条は私が申し上げるまでもなく、身体の拘束を受けている被告人または被疑者は、立会人なくして弁護人と接見し、または書類もしくは物の授受をすることができる。第三項には、第一項の接見または授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。これほど明確な規定はありません。ところがこの規定に基いてわれわれが接見をしようといたしますると、なかなか会わせません。十日に一回くらいです。これはひとつ大臣も私どもの連合会へ一度来ていただきまして議論が沸騰しておる状態をお聞き願いたいと思うのでございますが、たいがい面会時間は五分ないし十分に限られております。しかも二分ないし三分というのもあります。これでどうして防禦権を行使することができましようか。被疑者が防禦に必要な準備をする権利を不当に制限しておるわけです。そうして十日に一ぺんしか会わさない。検事勾留が十日だからたつた一回しか会わせない。しかも二分しか会わせない。多くて十分、二十分、これではとてもどうにもなりません。そこでこの問題については弁護士連中も相当やかましく言つて参りましたが、第一線の検察官と衝突になつて、いわゆるけんかざたになつて、しかしてこの法律がなんだというくらいの態度です。こういうような状態にありますから、今日検事フアッシヨンの色彩が濃厚になつたと言われましても、これは否定できない。こういう状態のもとにおいて逮捕状の請求をするのでありますから、逮捕状の請求についてもこれは警察ばかり非難しておられません。検察官も相当やつておるのです。これを適当に濫用せしめないようにするには、判事をして抑制せしむる以外にはありません。ところで岡原政府委員には、過日この席において、その令状請求について適式なりやいなやを判断できるのはもちろんであるが、逮捕することの妥当性があるかどうかということについては、その権限がないと旧来一般に解せられて来たと言つて、これを否定しようといたしました。一体それは何の根拠によるものであるか。大臣もこの点をさつきおつしやつておられたのであります。そうしてどうやらけさの答弁の中にこれが少々ばかり現われておるのでありますが、裁判官がそういう妥当性、適法性について審判をする権利がないというのは一体どこから出て来るのか、根拠をお示し願いたい。令状の請求を裁判官にせよと言う、裁判官は判断をする権利が与えられておる。しかして適式であるかどうかということを調べる以外に判断権がない。こうなれば結局適式な、様式にかなつた請求ならば、検察官及び警察員が請求をすれば判事は無条件にこれに従わなければならぬ。これをひつくり返して言うならば、判事は検察官及び警察員の請求に服従しなければならぬということになります。そんなばかげたことがどこにありましようか。いやしくも裁判をする権利のある者が、妥当性ありやいなやということを審判することができないようで、一体令状請求に対するところの審判権を与えた趣旨というものがいずこにございましよう。私はその根拠をお示し願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/158
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159・犬養健
○犬養国務大臣 二つにわけてお答えを申し上げます。最初の検察官が弁護人の被害者に対する面接をはばんだという事件、これは私が法務大臣に再任いたしまして、日本弁護士連合会にあいさつに行きましたら、いずれ書きもので君に通知するけれども、実はこういう事件があつた。二分という話は初めてですが、そのとき三分しか会わせなかつた事件があるというので、私は驚きまして、さつそくもどりまして、そして検事総長を通じて調べてもらいましたところが、ややそのきらいがある。ただちにこれは、そういうことは良識を欠いておる、適宜でないという通達をいたしまして、弁護士連合会にまた御返事をしたようなわけであります。三分だけで限るということは私は非良識と考えて、今後この点は誠意をもつて改善をいたしたいと思います。
それから岡原政府委員からもお答えがあると思いますけれども、逮捕状請求を受けた裁判官が適法性のみならず、妥当性に関しては能力がないとか権利がないとかいうことは申し上げてないと思います。いろいろの説を聞きまして、裁判官も逮捕状請求の内容について妥当性の判断は、やはりいろいろな角度から意見を聞く方がやりいいと裁判官の中にも言つておる人がございますので、従つて検察官は検察官としてのこの逮捕状請求の可否について、あるいは妥当性について意思を裁判官に反映させて、判断の御便宜をはかり協力する、こういうことはきわめて適切だと私どもは考えておるのであります。決して権利がないとか能力がないとかは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/159
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160・岡原昌男
○岡原政府委員 ただいまの佐竹さんのお読みになりましたのは、速記録の写しであろうと存ずるのでございますが、私はもしそうだとすれば、それほど強い意味で申したような記憶は実はないのでございます。と申しますのは従来逮捕状の要求を受けた裁判官がどういうことをやつたらいいのかという点について学説上の争いがありまして、ある者はこれは適法性のみならず、妥当性をも判断すべきであるという学説の方もございます。それから中には妥当性は判断すべからずというふうな意見もございます。折衷的な意見といたしまして権限の問題は別といたしまして、実際問題として、それははなはだしく困難であるというふうな意見が、これはそういう意味では非常に多いわけでございます。実際の運用も御承知の通りさような線に大体沿うたような運用がされておるように聞いておるわけでございます。根拠はどこかと言われますと、それはいろいろな学説がそういうふうにわかれておつて、実際の扱いがそういうふうになつておるというようなことでございまして、あるいはこの点につきまして、ちようど裁判所の岸刑事局長も見えておりますので、実際の運用等について、もしお聞き願えれば一番いいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/160
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161・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 次に伺います。全国刑事裁判官合同議事録第十八ページを見てみますると、この刑訴百九十九条に関して和歌山地方裁判所からの照会がある。その問いは、刑訴八十九条の保釈を許した途端に、これを不満とする検察官から、さらに余罪について逮捕状の請求があつた場合、刑訴百九十九条の条件を備える以上、その請求を却下することができないかというのに対し、答え、形式的にはやむを得ないものと思う。もつともそれが権利の濫用(これはその判断の標準がむずかしいと思うが)と認められる場合は却下してもよいと思う。これはまたはなはだあいまいな回答ではありますが、これによると百九十九条の条件を備えておれば、一応逮捕令状を出さねばならぬかに見える。しかし権利濫用について判断をするの事由を認めていることがよくわかるのでございます。してみれば逮捕令状の請求があつた、形式的には欠けるところがない。しかしこれを在宅で調べていいのか、それともほうり込んで調べるのがいいのか、その妥当性、必要性については判断権がないというがごときは、これは私はいかなる根拠に基くものであるか。ないと言うなら、その根拠を私は聞かぬ限り、裁判官が一般的に判断権を持つておることはこれは当然なことでありまして、この回答等によつても、形式的にそういう要件を側えておるならば、これは一応どうにもならぬ。ならぬか、しかしそれが妥当なものであるか、正当なものであるか、その他権利濫用と言えば、これは不当、不正の意味も含んでおりましよう。相当これはむずかしい問題を、括弧に書いてある通り、含んではおりましようが、そういつたような権利濫用を認められるかどうかによつて、判断をすることができるというならば――それでなければ判断権を持つておる者が、どうして妥当性、必要性について判断ができないのか、私どもはこれを解するに苦しむ。もしそういつた判断権がないものとするならば、これは判事に対する令状請求のこの規定は、この際おかえになるがよろしい。かえなかつたら、それは意味をなしません。従つてこの点についての最高裁判所の御見解を承りました上に、もしも判断権なしということであつたならば、これはもちろん最高裁判所の御意見は判例になるわけではありませんし、これについて刑事局長の御意見だけのことでありましようから、法的に規範力を持つわけではもちろんありませんが、参考に供しまして、最高裁判所あたりでもこういうふうに考えておるということであつたならば、もしその見解が妥当性、必要性について判断権がないということになるといたしまするならば、法務当局はすみやかにこの規定を改正いたしまして、その必要性、妥当性についても裁判官の判断にゆだねる旨の規定に改正をすると同時に、このいわゆる逮捕状の濫発に関する弊害を救うことを裁判官に一任いたしますことが、むしろ公正であると考えますが、これに対するところの法務当局の御意見を承つておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/161
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162・岡原昌男
○岡原政府委員 その点につきましては、先ほども申し上げました通り、裁判所において一般の扱いがさようになつておりますので、それに伴つてわれわれの方は立案をして参つたわけでございます。ただこれを令状の発付の形式と申しますか、手続といいますか、それを根本的に再検封ずる必要があるのではないかという意味におきましては、これは確かにごもつともな御意見でございますので、もちろんこれはあらゆる角度から、単に逮捕令状のみならず、ほかの令状等につきましても、これは考える余地がもちろんあると思つておりますけれども、現在の法制の建前の上では、一応かようになろうかと存ずるわけでございます。引続きこの問題は研究さしていただくことにいたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/162
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163・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 最高裁の御意見もひとつ承つておきたいのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/163
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164・岸盛一
○岸最高裁判所説明員 ただいまの、逮捕状発付に際して、裁判官が適法性ばかりでなく、その妥当性と申しまするか、必要性あるいは相当性、そういうものの判断権があるかないかということについては、御承知のように、学説は対立いたしております。判断権があるという学説、これは団藤教授の説が代表的なものであろうと思いますが、その立場は、本法に規定します捜査に対する裁判官の司法的抑制という思想を強調する立場から、そういう結論になつておるわけでありまして、それに対しまして消極説は、これは条文の解釈から来ておるようでありまして、この百九十九条の逮捕状による逮捕の要件として、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、」というふうに規定してあります。これが六十条の規定を見ますと、「被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」のほかに、罪証の隠滅とか、逃亡のおそれとか、住居の不定というような要件が、六十条の方には規定されておるにもかかわらず、百九十九条の方には規定されていない。そういうような意味から消極説が出るわけであります。ところが積極説と消極説との対立、むしろ今日では消極説が通説かと存じますが、よく考えてみますと、この対立は必ずしも実際上そう違う結果の作用をもたらすものではないのであります。と申しますのは、判断権があるという団藤教授の積極説も、こういうふうにつけ加えるのであります。つまりしかしながら、裁判官は捜査の全貌を知ることができないのだから、逮捕の必要がある、つまりこれが妥当であるかどうかということは、捜査機関の意見を十分に尊重しなければならない、そういうふうに申されております。積極説はとるけれども、やはりそういう条件をつけて、積極説をとつておるのであります。現在の裁判所の実際を見ますと、百九十九条と六十条とを対比しますと、条文の上からは確かに無理だ、しかしながらいよいよこの逮捕状の請求権が濫用と認められるような場合、そういう場合には請求権の濫用である。先ほど合同の席で出ました意見、これが現在の裁判所の支配的な意見になつております。そういう場合には逮捕状の請求が権限の濫用であると認められる場合には、一応「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある」場合であつても、これを却下すべきである。そういう解釈をとりまして、この逮捕状の問題については裁判所の新刑訴施行以来非常に頭を悩ましまして、合同があるたびに、中央の合同はもちろん、各地方のブロック合同でも、常にこの問題を問題にして、先ほど御指摘のような会議をいたしております。どういう場合にそれでは濫用に当るかといいますと、これまでいろいろ裁判官の会同の席で論議されました例を拾いますと、最初から判明している数個の同種の犯罪がある場合に、まず一つの罪について逮捕状を請求した。その事件では被疑者が釈放される見込みが生ずると、今度は他の余罪について逮捕状を請求する。こういう例が決してまれではないようであります。こういうような場合には、事件によつては、もうそういうことは逮捕状を請求する当初から予想されることである。それを伏せておいて、そういうことを請求する、これは絶対にいかぬ。これはもう濫用として却下すべきである。そういうふうに申しております。それから次に事件がごく軽微でありまして、罪質情状にかんがみて最初からそれ自体では起訴に値しないような場合とか、あるいはそのために身柄を拘束する必要がなかろうというようなことが明らかな場合にはやはり逮捕状請求権の濫用である、刑事訴訟規則の第一条二項の規定によりましても、捜査上の権利は誠実にこれを行使しなければならないということをはつきり規定いたしておりますので、そういうような見地から濫用の法理を使つてそういう妥当性のない逮捕状は却下すべきであるということをかたく申合せしておるわけであります。従いましてこの理論としては積極説、消極説というふうにわかれておりますが、実際の解決においてはこの逮捕権の濫用の法理、そういう考えによつて不当な場合を是正いたしておるわけであります。ところで問題は相当性の判断、妥当性の判断を裁判官が持つた場合に、はたしてどの程度現状がよくなるだろうかという点でありますが、これは捜査手続の根本に触れる問題でありまして、私どもの方の裁判所のものよりもむしろ法務省、検察庁が御専門でありますが、逮捕状の制度といいますのは、これは申すまでもなくアメリカの逮捕令状の制度を受継いで来ておるものと思われます。これはやはり裁判官の令状によつての逮捕でなければ逮捕できないという憲法の趣旨とします捜査についての裁判官の抑制という思想から来ておるわけであります。しかしながら逮捕状の制度は取入れてありますが、捜査手続の仕組みそのものは英米法ではないのでありまして、やはり依然として逮捕しておいて警察で四十八時間調べて、それから検察庁で二十四時間調べて、それで検察官は勾留の請求をして勾留状が出れば原則として十日、さらに延長すれば十日というふうな仕組み、これは旧刑訴時代の捜査手続とそう大してかわらない手続じやなかろうか、特にアメリカの逮捕状の制度、捜査手続とはまつたく異なるものである、そういう制度で、つまりどこが非常に大きな違いかと申しますと、現行刑訴の捜査手続における裁判官の抑制の余地が非常に狭いのであります。ただ令状を出すだけで、そこに裁判官の抑制の作用が働くにすぎない、ところが同じ逮捕状と申しましても、アメリカの逮捕状は裁判官が被疑者を逮捕して自分の面前へ連れて来いという趣旨の命令、つまり被疑者を自分の目の前に連れて来て、そして自分の面前で、逮捕した者にちやんと被逮捕者が有罪の判決を受け得るという見込みの立つような証拠を提出しろ、そういう制度でありまして裁判官の面前で捜査官が逮捕状によつて被逮捕者が連れて来て、そこで証拠を提出する、それが場合によつては証人等を呼んで調べる、これが例の予備審問と申しております。裁判官がそれを公開の法廷でやつております。そこで逮捕者の提出した証拠が不十分であると裁判官が考えますとただちに釈放を命ずる、そういう仕組みになつております。これこそがほんとうの裁判官の捜査手続についての抑制作用であろうと思うのであります。単なる令状だけで事が定りるということはとうてい考えられないのであります。しかしこの問題は捜査手続の根源に関することでありまして、ちよつとした思いつきや何かでこれを論ずることはできませんで、法務省あたりでも十分御研究願つてしかるべき問題だと思いますが、問題は、アメリカにおいても裁判官が逮捕状を出します、マジストレートというこれは特別の裁判官ですが、アメリカにおいてこの逮捕状がしばしば濫発されるという非難があるのであります。やはりアメリカでも一応は逮捕状の要件が備わつておれば逮捕状を出しておる、その点に非常な批判が加えられまして、ある人の言葉によりますと、逮捕権の無差別な執行というものはアメリカの刑事法規の最も非難さるべき特徴の一つであるとすら申しておるのであります。捜査の手続における裁判官の地位というものはアメリカと日本とはまるで違う。裁判官は捜査の内容に立ち入つて審査することができない。公判手続で裁判官は自分で事件を審理してその事件の推移をよく承知します。従つてもうすでにこの程度調べたら勾留の必要はないというので、被告の保釈もできる、執行停止もできる、捜査手続では逮捕状を渡すだけで、あとは捜査機関の捜査にゆだねられておる、裁判のしようがない、しかも捜査の機構がまるで違う、そういう重大な差異があるということを注目しなければならないと思うのであります。
そこでアメリカで逮捕状が濫発されているという非難がありますが、それをどういうふうにして対策が考えられているか。これはほんの私だけの狭い調査でありまして、これで十分とは申されませんで、足りない点はどうぞほかから十分補つていただきたいと思いますが、さしあたり私どもの承知しております――これは私代表的文献によつて知つたことでありますが、第一の方法は逮捕状にかえて召喚状を出すという制度であります。逮捕――身柄を押えないで召喚でいいじやないかという制度であります。ところが逮捕状の性質が日本と違う。向うの逮捕状は先ほど申しましたように裁判官の面前へ、裁判所に連れて来いという逮捕状、逮捕は捜査の終りというのが英米の逮捕、新刑訴は先ほど申しました順序で逮捕して少しずつ調べて行くという仕組みになつている、そこが非常な違いであります。そこに一つの逮捕状にかわる召喚状の制度、一つの方法が考えられておりますが、そのほか第二の考え方としましては逮捕状の請求について検察官のアプルーヴアルを与えよう、そういう考え方であります。これはそのように執行している州はないか、ミゾリー州ではそういうすべての犯罪について逮捕状請求をするときは検察官のアプルーヴアルを経ている、そういうふうになつているようであります。またイリノイ州においては重罪については検察官のアプルーヴアルを経なければならない。そういうようなことを考えて、いろいろ、対策を考えているようであります。逮捕状の問題につきましてこの問題の根源に触れるような問題をつけ加えて御参考に供した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/164
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165・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 大臣お急ぎのようでございまして、これは挾んで気の毒でありますが、警視総監ちようどおいでになつておりますので、警視総監にこの際ちよつとお聞きしておきたいのでありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/165
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166・小林錡
○小林委員長 大臣の方を先に願いましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/166
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167・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 それでは大臣にごく簡単に伺います大臣はこの百九十九条の問題で、同意を得ることを要するとなさいましたことをたいへんお手柄のように申しておられるのでありますが、これは私ども法律家から見ればむしろ承認といつたようなことが、向うさんの側には自主性がある、私がこういうことを要求した、向うさんは承認を与える、私どもは筋が通る、同意ということになると、二つの意思の合致によつて効力を生ずる、それもけさほどの前大臣の質疑のようなぐあいに、二つが集まつて一個の効力を生ずる、それでなければ効力を生じないというふうに解することが普通でありまして、検察当局の意見が加わらない限り警察としては何の令状の発付もできない、つまり独立性を失う、つまり行為能力を疑うというところまで考えられるのは当然のことであると思います。しかし大臣の当委員会における精神をるる拝聴いたしておりますると、その同意というものは必ずしも民法や何かにおけるところの同意とは同様に考えていない、特殊の言葉にお用いのようであります。しかしどうも実際の問題となつて法廷や何かに現われますと、専門家の用語に従いますので、大臣が独創のお考えでこういう法をおつくりになりましても、これを解釈する側においてはやはり専門的見地に立つて専門的な解釈をいたしますから、自然けさの質疑応答のようなことになるのではないかと思うのであります。そこで私は大臣の精神を最もよく生かすには、司法警察官が第一項の逮捕状を請求するについては検察官の手を経由しなければならぬとか、あるいは一歩進んで言うならば、検察官の意見を徴しなければならぬといつたような程度になされてはどうか。大臣のお考えはそれ以上のものでないということがわかるのですから、そのお考えの趣旨に沿うにはその程度であると思う。たとえば保釈の請求については必ず相手方の意見を聞かなければならぬということになつております。被告が保釈の請求をする。そうすると検事の意見を徴さなければならぬ。検事はたいがいこれに不同意をやつて参ります。同意せず。裁判官がこれに許可を与えます。それで一向かまいませんが、しかしそれに対し意見を付する余裕を与えておりますから、それに対し積極的に何としてもいけないということになると、長々と理由を書く、直接に出かけて行つて、弁護人は請求しておりますけれども、あれは許してはいけませんよと言うと、そんなのは決して許しません。従つて検察官がもし事を構えてやろうということになれば、そのときに検察官の権利を主張する、その捜査自体に、直接に公訴権を行使する上において不同意の場合には、その権利を行使なさるのはけつこうでありましよう。それ以外は、警視総監も国警長官も、一向今日さわりはないのだ、スムーズに行つている、こうおつしやつておるのでありまして、何か特別の場合に限ると思います。従いましてそういつたような場合において検察官の意見を徴することを要するという程度になされるお考えはないでしようか。その思いつきをお答え願いたいということは無理でございますから、お考えを願つよいただけまするならば幸いと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/167
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168・犬養健
○犬養国務大臣 お答えを申し上げます。まず同意の字なんでありますが、これは決して自慢をしていないことは、私の数々の答弁で御了承願います。独創でなく、これは三者でそれならばいいだろうということになつたので、三創というのが真相でございますが、しかしいろいろうん蓄のあるお話を伺いまして、民法上の厳格な意味における同意ととる向きがあれば、これはやはり考えなければならぬと存じます。そこで経由とか意見を聞くとかいうことにしたらどうかということでありますが、実は斎藤君といろんな字を考えてみたこともあるのでありますが、経由というのはかえつて警察が非常に困る、手数がかかつてたいへんだというようなお話も非公式にあつたこともございます。意見を徴するというのは、先ほどの私の答弁の内容の線におおむね沿つて走つておるとは思いますけれども、意見は徴したが、とるに足らぬ意見だからそのままにしましたというようなことがないような意見の徴し方でありますならば、確かに一つの有力な御教示であろうと存ずるのであります。よく考えてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/168
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169・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 百九十九条の同意を御発案になりましたために、その第四項ですが、結局「裁判官は、逮捕状の請求が検察官の同意を要する場合において、その同意を得ていないことが明らかなときは、逮捕状を発付しないことができる。」その同意というのはやはり第四項にかかつて参ります。そうしたならば同意したときは裁判官が必ず逮捕状を発付しなければならないという結論が生れて参りますが、さように解していいでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/169
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170・岡原昌男
○岡原政府委員 ちよつとこまかい点でございますから、私からお答え申し上げます。さようにはならないわけでございます。同意を得ていないことが明らかな場合には発付しないことができる、それだけでございまして、あとはそれでは同意を得た場合はどうか、これには触れていないわけでございます。これは従来通りのことになつて、裁判所が自由にやる、かようなことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/170
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171・犬養健
○犬養国務大臣 その点重ねてお答え申し上げます。ただいま御審議を願つておる案文によりまして、検察官の同意を得ていないということは、必要の手順を踏んでいないという裁判官の認定の材料になるわけでありますが、同意を得たら機械的に裁判官が逮捕の請求を許すという結論にはすぐ飛躍的にはなつていない。同意を得たか得ないかは有力なる判断の資料として扱う、こういう意味に私は解釈をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/171
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172・高橋禎一
○高橋(禎)委員 法務大臣にお尋ねいたしたいと思います。これは先ほど佐竹委員から質問がありまして、大臣のお考えの傾向は大体伺えて了承しておりますが、なおその点を明確にいたしておきたいと思います。これは百九十三条の検察官の一般的指示に関する問題でありますが、私は、現行刑事訴訟法に、検察官は司法警察職員に対して一般的指示をなすことができるという規定があるわけで、そういう立場に立つて考えを進めて参りたいと思うのであります。この問題について先ほど来政府委員の方々の意見を伺つていますと、法務省側と警察当局とは何だか討論会をやつていらつしやるような感じがいたすのですが、しかしそこの問題を解決する急所といたしまして、――これは私の考えですが、非常に大切な問題があると思う。国民の立場に立つて考えますと、犯罪の捜査はどこまでも民主的に、しかも捜査経済の原則と申しますか、できるだけ時間をかけない、労力をかけない、費用をかけないでやつていただきたい、そうしてまた正確を期していただきたい、こういうわけであります。そういうことから考えますと、今の訴訟法の精神から申しますと、検事が警察職員に対して、具体的公訴権の遂行という立場から考えて、一般的な指示をするということは必要であるというふうに考えられる。ただそこに争いが起つて参りますのは、指示ということが秘密裡に行われたらたいへんだという問題だと思うのであります。国民の前に明らかにされたその一般的指示というものが、国民の保障するところのものが、警察側から見てそれが不満足だというようなことは、国民の立場から考えればあり得べきことではないと思う。正しい指示をされる場合、国民の要望するような指示がされる場合にこれに反対することがあるはずはない、こう思えるのであります。そこで先ほど佐竹委員の質問に対して法務大臣は、その一般的指示は国会、ことに法務委員会等において明らかにして行きたい、これはまことにけつこうなお考えだと思うのです。ところがそれを私がもつとつつ込んでお尋ねいたしたいのは、犯罪の捜査に関する一般的指示ですから、現在お考えになつておる一般的指示以外に新しい犯罪が生れて来ましようし、また現在予想することのできないような事態が起つて来るわけで、にの際にもやはり一般的指示を必要とすると思うのです。そういうふうな一冊の本にでも、ないし職務規範のようなものを今出しておいて、それでかわらないのでしたら今委員会に示しておいていただいて、それでいいということであればこれはいいでしようけれども、そう簡単には参らない将来の問題を考えますと、これは具体的に一枚の紙でもつて指示しなければならぬという問題も起るので、そういう一般的指示に関するものをすべて公表する、国民の前にこれを提示する、こういう方法をとられるということになればこの指示権の問題はもう解決つくと思うのです。そこで法務大臣はこれから一般的指示をなさろうとする場合に、一体どういうふうに国民に対して示される方法をお考えになつておるか、そうしてそれを間違いなく実行されるか、そこのところをひとつはつきりとお答え願いたい。きようまだそれが不十分であるということであれば御研究くださつてこういう方法でやりたいという確定的なお考えを伺いたい、かように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/172
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173・犬養健
○犬養国務大臣 お答え申し上げます。私の現在考えておりますことは、少くとも本法案を御審議願つて、御可決願つて、そのあとで要領よくさつと一般的指示を出すつもりだつたが間に合わなかつたというような、そういう政治は私は非常にきらいなのであります。できるだけ並行して一般的指示の内容をここで申し上げたいと思います。私のこの考え方を具体的に事務化した場合どういう形になるかということは、正直のところ現在ここではつきりしてない部分があるのでございます。お話のように、ついでに申し上げることになりますが、破防法についてはいろいろ議論があります。しかしかりに破防法のようなものが、将来情勢としてもう一つ生れた場合、これは観念的に言うので、生みたいなんて思つている気は毛頭ありませんが、かりにああいうものがあつた場合、一般的指示をどうやるかというような問題が残された問題でありますし、そのとき検察官警察官の関係がどうなるかというような問題は保留された問題だと思いますが、これはけさの横井説明員の場合のように専門家になりますと、一つの例外も落したらたいへんだということでかたくなることになるのでありまして、そういう意味で私は現在保留をさせていただきたいと思います。心持ちはそういう方針でやつて行きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/173
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174・高橋禎一
○高橋(禎)委員 今大臣のおつしやつた趣旨はよくわかるのです。現在法務大臣のお考えになつておる一般的指示というものはこういうものだといつて、この法案審議中にでもお示しになるであろうと私は思うのですが、将来また今委員会にお示しになる一般的指示だけでは不十分なことが起つて来るに違いないと思う。そうするとまた今後この法律がかりにできれば、できてから後に一般的指示をなさる場合、これはやはり国民の前に示していただきたい。それをどういうふうな方法をなさいますかということをひとつお考え願つて、明らかにしていただきたい。要するに問題は、捜査は秘密であるべきですけれども、一般的指示のごときは国民の前に明らかにして、検庁も警察もこういう方法で捜査をやつているのだというだけの信頼を得るような方法を十分とつていただきたいと思うのですが、それについてのお考えを、きようでなくてもようございますけれども、正確に将来実行されるであろうという案をお示し願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/174
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175・犬養健
○犬養国務大臣 これはいずれ詳しく申し上げたいと申いますが、根本方針こしては高橋さんのおつしやる通りであります。一般的指示というものは個個の秘密を要する捜査内容と別個の問題であります。できるだけ国会を通じて一般国民に知らしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/175
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176・小林錡
○小林委員長 佐竹君、続けてやりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/176
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177・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 警視総監もお見えになつておりますから、一、二点につきまして……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/177
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178・小林錡
○小林委員長 警視総監も見えておられますが、警視総監はたびたび来られませんから、なるべく簡潔に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/178
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179・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 警視総監が公述するところによりますと警察と検察庁とがまことに円満に行つておる、すべて打合せてやつて行つて、その間何のわだかまりもない、すべて警察は検察庁に御相談をして円滑にやつておる、こういうお話でありましたが、過日馬場検事正が公述人として出て参りまして供述するところによれば、警視庁では検察庁を通じて逮捕状の請求をしておる警察が五十署ある、経由しないで直接令状を請求しておる署が二十三署ある、なかんずく渋谷の警察ではその取扱い件数が最も多くて、昨年の請求件数は一千四十四件の大きに上つていると述べておつたのでありますが、こういうことが結局警察が検察当局を無視するといいますか、抜きにするといいますか、密接不可分な関係にありながら相談をしないで、おれはおれの捜査権があるのだといつて独自の立場でやる、それで検察当局においても、結局公訴と捜査とはそもそも一つなのだ、おれの方へ相談するのが当然じやないかといつたようなことが自然に出て来、これが本案改正の基本になつて現われたのではないかという感じを漂うしたのでありますが、はたしてこの馬場検事正の公述いたしておりましたような状態にございましようか、この点承つておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/179
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180・田中榮一
○田中参考人 馬場検事正は七十三の警察のうちで五十署は検察庁を経由し、二十三署は経由しない、こういうような陳述をなさつたそうであります。私の方ではその調べがどういうところから来ているか、実ははつきりいたしていないのでありますが、従来検察庁に対しましてその残りの二十三の警察署もおそらく私はあるいは電話で連絡するとかあるいは場合によつては直接に捜査主任が、ことに重要なる問題につきましては署長みずからが検察庁に出向きまして、いろいろと事前の相談をいたしました上で令状の請求をいたしておると考えております。私の考えとしましては、おそらくその二十三の警察署も大体におきまして検察庁と十分連絡をとつてやつておると考えております。ただその五十の警察というものが全部経由しておるという意味であるか、あるいはまた二十三のものが、たとえば小さな盗難で、これはもう明々白々の問題で一々検察庁の手を煩すまでもなく、直接判事さんに令状を請求しておるという具体的な例があつたか存じませんが、私どもの聞くところによりますれば、これは全部検察庁の方に一々お伺いをした上でやつておる、かように聞いておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/180
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181・佐竹晴記
○佐竹(晴)委員 警視総監はさようにおつしやる、馬場検事正に聞くと、二十三署が一向私の方に連絡をとらない、こういつて大分その間に相違がございます。こういつたことが結局相当双方の間に法案をめぐつての対立を来す原因の一つになつたのではないかということを、公述を承りながらつくづく感じたのであります。私は検察当局並びに弁護士会の考え方などについても、平素常に聞かされておると同時に、また実務の上においてもいろいろと体験をいたしております。また今回警察側のいろいろの御要望についてもつぶさにこれを承り、その資料等についても全部目を通してみたのであります。まことにごもつともな点もあると思います。これらの点についてはわれわれ委員としては公正に判断をしなければならぬと思う。私はいかにすれば一番適切であるかということで、この委員会が開かれて以来、日夜神の前に祈る気持でこの審議に当つております。ところがこういつたような事実の相違がここに出て参りますと、まつたく私どもの気持が混濁いたします。これは一つの事実でありますけれども警視総監はすべての警察において全部検察当局に連絡をとつてすべて御了解を得てやつた、まつたくきれいに行つておる、こうおつしやつておりますが、馬場検事正は、堂々と七十三の警察の中で二十三という警察は私の方に一向連絡いたしません、ことに渋谷警察のごときは一千四十四件というものを扱つておるが、全部私の方を除外いたしましたと言われた。こういうことを言われますと、やはり私どもの考えが曇つて参ります。個々の事実について今少しく資料を御提供願いたい。はたしてほんとうに了解し合つてやつているものか、あるいは馬場検事正が言つておるごとく何の了解もなしに、自分の捜査権は自分の方でやるといつてやつておるのであるか、特に渋谷警察のことをあげておる状態からいえば、できるならばこの問題等について調べてみたいほどでありますが、証人を喚問したり何かするこことも穏当でないと思いますので、できる方法で、資料を御提供願つて、その真相を明らかにされれば、われわれがこういう法案を審議するのにきわめて便利であり、好都合であると存じます。
私は本日はもつぱら百九十三条、百九十九条を中心とし、しかもなるべく大臣のおいでになる席においてお答え願わなければならぬ事項を質問したのでありますが、時間も遅くなりましたので、これ以外の面についても詳しく質疑する機会をお与えいただくことをお願いして、本日はこれで打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/181
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182・小林錡
○小林委員長 次会は明後二十日月曜日、午後一時三十分より開会することといたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後六時六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605206X01719530718/182
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