1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年六月二十三日(火曜日)
議事日程 第十一号
午後一時開議
一 公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案(山花秀雄君外六名提出)の趣旨説明
二 地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案(山花秀雄君外六名提出)の趣旨説明
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第一 民生委員法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 千九百五十二年七月十一日にブラッセルで締結された万国郵便条約及び関係諸約定の批准について承認を求めるの件
第三 千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にへーグで、及び千九百三十四年六月二日にロンドンで修正された貨物の原産地虚偽表示の防止に関する千八百九十一年四月十四日のマドリッド協定への加入について承認を求めるの件
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●本日の会議に付した事件
公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案(山花秀雄君外六名提出)の趣旨説明
地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案(山花秀雄君外六名提出)の趣旨説明
右の趣旨説明に対する質疑
日程第一 民生委員法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 千九百五十二年七月十一日にブラッセルで締結された万国郵便条約及び関係諸約定の批准について承認を求めるの件
日程第三 千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にへーグで、及び千九百三十四年六月二日にロンドンで修正された貨物の原産地虚偽表示の防止に関する千八百九十一年四月十四日のマドリッド協定への加入について承認を求めるの件
午後二時九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/0
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001・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/1
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002・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案の趣旨説明を求めます。多賀谷真稔君。
〔多賀谷真稔君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/2
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003・多賀谷真稔
○多賀谷真稔君 私は、ただいま議題となりました公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表し、その提案理由及び改正せんとする主要な点について説明申し上げます。(拍手)
終戦後、わが国の公務員は、労働三法の適用を受けて、いわゆる現業公務員はすべて争議権を持つていたのであります。ところが、昭和二十三年七月二十二日、マツカーサー元帥の書簡を契機としてつくられた政令二百一号、国家公務員法、公共企業体等労働関係法により、公務員は憲法の保障する労働者の基本的権利の大半を喪失したのであります。これらは占領治下という特殊の事精のもとにおいてなされたものであり、講和発効後の第十三回国会においてなされた公共企業体等労働関係法の改正の際には、われわれは、その基本的権利の全面的復活を主張いたしたのでありますけれども、(拍手)その改正は、遂に現業公務員の一部を適用範囲に入れたにすぎなかつたのであります。国の行政に携わる権力行使に関係のない、いわゆる現業公務員に対し、公務員であるというだけの理由のもとに、労働基本権の制限または剥奪をなすがごときは、まつたく当を得ない処置と言わざるを得ないのであります。(拍手)
本法第二条に掲げる公共企業体の職員及び現業公務員のごときは、公務員本来の行政活動とは区別されるべき産業経済活動であつて、その特色といえば、公益性及び独占性にあると思うのであります。企業の公益性ということから言いますならば、その企業主体が公法人である公社であるか、あるいは私法人である会社であるかということは、労働関係には何ら影響のない問題であると思うのであります。(拍手)企業そのものが国民の日常生活に密接な関係のある、いわゆる公益性を持つている点においては、私企業も公益性を持つているのであります。国鉄と私鉄との間に差があるべきはずは絶対にないのであります。(拍手)さらに、独占性というものは、専売のごとく、むしろ財政経済上の目的からなされたものであり、これが労働関係に制約を与えるということは全然理由がないと思うのであります。(拍手)要するに、公共企業体は、労働関係の実態上、労働関係調整法に掲げる民間の公益事業と何ら差異を見つけることは困難であります。生存権を保障し、団結権、団体交渉権及び団体行動権の労働基本権を保障しておる日本国憲法のもとにおいては、占領治下の特殊事情により制定された法律の改正こそは最も急務なりと考えるものであります。(拍手)
さらに、争議権の全面的禁止をなした代償として制定されました仲裁裁定制度の運用処理状況を見ますると、まつたく立法の精神は蹂躙されているものと言わざるを得ないのであります。(拍手)公労法施行最初の昭和二十四年十二月二日の国鉄職員の給与裁定を初めといたしましてその後の国鉄、専売の裁定中、予算上、資金上不可能な資金の支出を内容とする裁定につきましては、一つとして完全に履行されたものはないのであります。さらに、遺憾と考えますることは、支出可能な額が、公社の算定した額と、政府の認定した額が異なり、いまだ裁判所に係争中であるがごとき、まつたく公労法の精神は無視されて来たのであります。(拍手)このことは、本年三月二十三日、公共企業体等仲裁委員会委員長、中央調停委員会委員長を初め、全国の調停委員長が、連署をもつて、政府に対し、公共企業体等労働関係法の遵守についてという要望書を出しているのであります。これがそのことを雄弁に物語つていると思うのであります。(拍手)すなわち、それによると、今日までの推移と実情を見ますると、仲裁裁定が当事者以外の関係によつて必ずしも遵守されていない場合にたびたび出会つたのであります。このことは、ひいては調停案の権威を軽視する風を生み、調停仲裁制度に対する労使双方の信頼感を薄からしめ、公労法のもとにおける労使問題の解決に重大なる支障を生ずるのではないかと懸念しております。(拍手)仲裁裁定が遵守され、調停等に悪影響の及ばないように、その運用に十全を期せられたいという、まことに労働行政担当の任にある政府をして赤面せしめるごとき要望書が来ておるのであります。(拍手)ゆえに、われわれは、遵守されない制度にたよるよりは、むしろ争議権を与えることにより、労使の公正な競争によつてすみやかに紛争を解決すべきであると考え、改正案を提案いたしたのであります。(拍手)
以下、改正の要点について述べます。
改正の第一点は、団結権の問題であります。公労法第四条が、「職員は、組合を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。」としてオープン・シヨツプ制を強制し、しかも公共企業体等の職員でなければ、その公共企業体等の職員の組合員またはその役員になることができないとして、逆締めつけの規定を規定しているのであります。これは明らかに、公共企業体における労働組合運動を歓迎しないどころか、弱体化を来すものであると考えられる点からいたしまして、一般民間労組同様、労働組合法を適用することにいたしたのであります。(拍手)さらに、専従職員につきましては企業体側の許可制でありますが、これら職員は、給与を受けないものであり、組合の自主的決定にまつべきものでありますので、公共企業体側の一方的に干渉すべきものでないと考え、改正をいたしました。(拍手)
改正の第二点は、団体交渉の問題であります。交渉単位制度は、わが国労働法上、本法だけに設定されたものであり、労働組合法はもちろん、地方公営企業労働関係法にも全然規定されていないのであります。慣行のないところにアメリカのこの制度を直輸入し、しかも本法だけに設定するということは、日本の労組の実態を無視したものであると考えるのであります。(拍手)よつて、交渉単位制及び交渉委員制を廃して、労働組合法の適用を受けることといたしたのであります。団体交渉の対象につきましても極度に制限せず、労働条件その他待遇に関する事項は全部団体交渉の対象となるごとく改正いたしたのであります。
改正の第三点は、予算上不可能な資金の支出を内容とする協定または裁定における政府の処置に関する問題であります。この場合における予算案を提出すべき義務については、われわれは、法施行以来、当然義務ありと主張して来たのでありますけれども、政府はこれを一向に履行しようとせず、その点、法解釈上もしばしば論議がありましたので、これを明確化するために、いやしくも協定しまたは裁定された以上、政府は当然拘束を受け、必要な予算処置を講じて国会に提出しなければならない義務を規定したのであります。(拍手)
改正の第四点は、争議行為についてであります。前述のごとき理由により、争議行為の禁止条項を廃止し、運輸、電気、水道、ガス等の労働関係調整法の公益事業と同様な取扱いにいたしたのであります。ゆえに、もちろん予告義務はあり、緊急調整制度の適用を受けることになるわけであります。
改正の第五点は、仲裁制度及び調停委員会、仲裁委員会の機関の問題でございます。争議権を認めた結果、強制仲裁制度を設けることは不適当を考え、これを廃止して、任意仲裁制度に改めたのであります。調停委員会、仲裁委員会等、別個の機関を廃して、公共企業体等労働委員会をつくり、労働組合法の労働委員会と同様な機構にいたしたのでございます。
改正の第六点は、争議権を持つこれらの現業公務員を、現在の国家会務員法の規定を受けさすことは不適当であると考えますので、特別職としてこれを取扱い、身分取扱いにつきましては別に法律を制定することとし、制定までの間は、経過処置といたしまして、現行法第四十条の規定によることにいたしたのであります。
本法の改正の諸点につきましては、第十三回国会における改進党の修正案、なかんずく、不可能な資金の支出を内容とする協定の場合における政府の予算提出義務及び交渉単位制の廃止等を十分参考にし、起案いたしましたので、賛意をいただけるものと確信し、提案した次第でございます。
何とぞ、議員各位におかれましては、御審議の上、すみやかに可決されんことを望みます。(拍手)
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二 地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案(山花秀雄君外六名提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/3
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004・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案の趣旨説明を求めます。井堀繁雄君。
〔井堀繁雄君登壇)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/4
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005・井堀繁雄
○井堀繁雄君 ただいま議題となりました地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げたいと思います。
本改正案は、その内容におきまして、ただいま多賀谷議員から提案の御説明がありましたところの公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案と、その提案の趣旨がほぼ同様でございまするので、重複を避け、きわめて重要な点だけについて若干説明を加えたいと思います。
御承知の通り、地方公営企業労働関係法は前国会におきまして成立いたしたものでありまするが、せつかく成立いたしました本法律は、その目的でありまする労働関係の安定、地方住民の公共の福祉擁護という重大使命を果しまするには、不十分な、しかも重大な欠陥を持つておりまする法律であります。この欠陥を是正し、地方公営企業をして真の民主的な使命を達成いたしまするためのものに改めたいというのが改正の根本的な目的でありますことを御了承願いたいと思います。
まず第一にあげまするのは、公営企業でありまするといなとにかかわりまぜず、これに従事する職員、労働者、これが産業、企業を通じまして、国家の実力を充実し、国民生活の安定向上に貢献いたしまするためには、労働関係法を、これに沿わしめる最も適切なものにしなけらねばならぬことは申すまでもありません。言いかえますと、産業平和を確立して労働の生産性を高め、能率を増進するというところにその法律の精神が置かれなければならないのでございます。
御案内のように、近代産業は労働の組織的人格化を尊重することによつて推進されるのでありまして、これはいずれの先進諸国におきましても、労働関係に示されておりまする実際の姿であります。この労働組織の人格化は、封建的な雇用観念の中にあつては、とうてい望まれないのでありまして、封建的な雇用関係を払拭することがまず第一であります。組織の自主性を尊重し、信頼するということを前提として、初めて育成されるものであります。このためには、労働者の権利を剥奪いたしましたり、あるいは制限を加えたりしてはならないことは申すまでもありません。公共の福祉に名をかりて労働者の当然の権利を制限いたしますことは、企業の推進力である労働を差別待遇いたしましたり、またこれを萎縮せしめる結果となるのであります。
公共企業体は、従来労働関係にも見られまする団体交渉権あるいは調停、苦情処理機関等がありまするけれども、争議権がありませんために、常に企業者のために一方的な屈従をしいられているのであります。争議権のない団体交渉というものは、ただ形式をとどめるのみでありまして、労働組合の健全化及び産業の平和を望むことはとうていできません。このことは今までもしばしば実例に明らかなところでありまして、真の産業平和は、経営と労働の力の均衡の上にのみ築かれるということを力説せねばなりません。(拍手)ししと、うさぎが、いかに平和協定を結んだところで、ししの一方的な意欲下にこれが蹂躙されますことは申すまでもありません。このような平和協定というものは、労働関係の安定をなし得ないのみでなく、争議権にかわる不当な武器を求めても、なおかつこれに拮抗しようとするところの破壊的な考え方というものがややもすれば起るのは、弱者心理の必然的なものと考慮されなければならないのであります。労働組合の健全化に名をかりまして、その権利に種々の制限を加えることは、力関係の均衡を破るだけでなく、企業の労働生活安定に対する努力を低下さすのであります。労働組合の闘争性をいたずらに刺激する結果となるのでありまして、このような現行法は、今日の労働組合に争議権を与えることは何か絶えず労働争議権を行使して産業平和を乱すものかのごとく錯覚した前提のみに立つて立案されておるということを喝破しなければならぬのであります。(拍手)
たとえて申しますならば、警察官にピストルを持たしておるのでありますが、これは、発砲をして、むやみと人命を傷つけるようにということでないことは申すまでもありません。これによつて、みずからを守り、さらに犯罪を防止し、治安を維持することが目的でありますることは、何人も疑わないところであります。争議権もまたこれと同じものであります。企業の管理者による不当な制圧を抑制し、あるいはみずからの生活を守りますために企業の公共性を推進し、進んで国民の福利に寄与いたしますためには、どうしてもわれわれは罷業権、争議権を持たなければ、その実質を発揮することができないのであります。(拍手)このような精神からいたしまして、どうしても本法の改正をわれわれは必要といたすのであります。
次に第二の目的でありまするが、それは、企業の公共性の推進と、労働組織の自主性についてであります。現行法は、企業の公共性擁護に名をかりまして地方公営事業の労働者にいろいろと規制を加えておるのでありますが、これは企業の近代化を理解していないところに出発することはもちろんであります。労働組合の本質が賃金闘争だけにその機能を発揮すると考えておる人々の企画するものでありまして、労働組合というものは、決して賃金闘争や労働者の一方的な利益のみを追求する機関ではありません。労働組合の公共性を深く理解することができまするならば、かかる法律を提案するに至らなかつたと確信するのであります。(拍手)
企業の公共性を推進いたしまするためには、直接公共の事業に携わつておりまする職員、労働者はもちろん、その個々の職員、労働者だけに期待することは、今日の場合においては不可能であります。どうしても、これらの人々の組織を尊重することなくいたしましては、個々の人々がいかにその職務に忠実でありましても、総合的な成果というものはとうてい発揮できないのであります。(拍手)でありまするから、個々の労働者の人格を尊重するとともに、その組織が、同様に、それ以上に尊重されなければならないのであります。この法律は、この点をまつたく無視いたしております。でありまするからそこには、どうしても企業の管理者あるいは責任当局でありまする人々が労働組織を無視し、あるいは信頼いたしませんから、ここには絶えず紛争が起るのみでなく、これらの人々の専制のもとに、これらの従業員が屈従をしいられておるというのが実際の姿であります。こういう状態にありましては、とうてい健康な労使関係というものは望めないのみならず、公共性を推進するなどとは思いも寄らぬことであります。現行法は、労働組合の自主性を阻害し、労働の一番大切な点である創意くふうを圧迫する点があります。御案内のように、労働者の創意くふうこそが、あらゆる産業、企業にとりまして重要であり、ことに公共性を尊重されなければならぬ地方の公共事業にとりましては、これが最も重視されなければならないのであります。この点におきましても、まつたく無視されております。
第三の点につきましては、労働組合の健全な発達を意図しようという立場から考えますと、この法律はまた、はなはだしく不合理に満ちております。御案内のように、労働組合の健全化につきましては、前にもちよつと触れましたが、単に労働組合をして穏健化すればよろしいという考え方は誤つておるのでありまして、わが国の労働組合の実情を見ますると、一部にはかなり尖鋭な傾向も見られまするが、それはそれぞれの理由のあることでありまして、政府なり資本家の、民主主義に対する——先ほど述べられましたあらゆる点におきまして逆行するところの反動的な施策や対策というものが、労働不安を惹起し、労働組合をして焦慮せしめるところに、この事態の中に平和を乱すことと相なつておるのであります。(拍手)いわば、政府なり資本家の挑戦に応戦するところの態勢を余儀なくされておると言つても決してあやまちではないと思うのであります。もし労働組合の尖鋭化を非難する者があるとするならば、その原因を除去するということに留意しなければならぬのであります。(拍手)
地方の公営企業は、民主的な発展と共同の福祉増進のために、それぞれ労働関係を調整して模範的なものにするということでなければならぬのであります。このことなくして、一般の労働組合運動の健全化は許されぬのでありまして、その模範となるべき地方の公共企業のもとにおける労働関係の調整をこの法律に求めておるのでありますが、この法律の内容につきましては、先ほど多賀谷君から具体的に批判され、指摘されておりまするから、重複を避けます。
労働組合の本来の使命に徹しまするためには、どうしても産業の民主化を行わなければなりません。産業の民主化は、労働者の人格はもちろん、その資格をも組織として認めて行くということが根本をなすのでありまして、労働者並びに労働組織を否認いたしましたり、軽視いたしましたり、無視するようなことがありまするならば、それは根本的に労使関係というものを知らない、否定した、無知な労働行政に基くものでありますから、この点を掘り下げて参りますると、この法律の全面に流れておりまする思想というものが、ここに依存しておるのであります。まじめに労働者の立場、労働者の地位を理解することができまするならば、このような法律は生れなかつたと思うのであります。
われわれは、先ほども多賀谷君から指摘されましたように、この法律の誕生した歴史を調べれば、ただちにわかることでありまして、占領下における占領政策を多分に含むところの労働規制であります。もちろんこの法律は、マツカーサーの書簡に基いて起案され、あるいはそれぞれの説明が行われておるのでありまするが、マツカーサー書簡の内容につきまして一々述べるまでもありませんが、その説くところは、公正なる労使関係を基本にいたしまして——ことに公務員に対する主張でありまするが、公務員が一般の労働者とその立場を異にすることを主張されまして、公務員に対しては、罷業権あるいは団体交渉権に対して著しく制限を加えるけれども、これと同様に、それ以上に、使用者である政府は、これらの職員、労働者に対しましては、生活の安定なり、その福祉に対して保障する責めを強く主長しておりまする点を、一向に理解していないようであります。(拍手)すなわち、このように、一方におきましては労使関係の平和を維持し、あるいは公務員の政府職員としての地位を高く評価し、その使命を強く要望する反面におきましては、その生活権なり、あるいはその労働基本権でありまする団結権、団体交渉権に劣らない、すなわちその権利を行使すると同様の価値を発揮し得るところの措置を講ずることを命じておるのであります。たとえば、人事院の制度のごとき、あるいは調停仲裁委員会の制度のごときものは、これにこたえて制度化されたものではありまするけれども、皆様も御案内のように、今日吉田政府が、せつかく調停仲裁がなされましても、あるいは人事院の裁定が行われましても、これを軽視し、無視する、一方には労働階級を圧迫し、その権利を剥奪するために、マツカーサー命令を巧みに利用して、自分の責任を果す面におきましては、ほおかむりをするという、きわめて非民主的な、反動的な態度が、この法律を制定せしめた大きな動機であり態度でありますることは、見落せないのであります。(拍手)このようなマツカーサー書簡を悪用して労働者の基本権を奪い取つた法律を、今日独立いたしましたこの議会において改正し、民主的な労働立法としなければならぬことは、強調するまでもありません。私は、この法律の改正に対しまして、具体的なそれぞれの内容は重複を避ける意味で述べませんが、大体公労法とこの法律はほぼ同一の趣旨に基くものでありまして、ほとんどいずれの点においても異なる部分はないと言つてもさしつかえのないほど類似した姉妹法であります。
ただ、最後につけ加えたいと思いますることは、この法律の扱い方でありまするが、私どもの考え方といたしましては、独立いたしました今日におきまする労働立法は、日本の労働運動に見合うような、日本の産業構造に見合うようなものに改めなければならぬことは申すまでもありません。そのためには、政府の立案いたしました当時と今日の状態とは非常に異なつております。にもかかわらず、依然としてその当時の考え方を踏襲しておるのでありますが、私は、ぜひこの機会に、日本の労働法というものは、近代的な産業を一方に要求すると同じ熱意において、労働法も新しい考えの上に整理統合をすべきであると思います。いずれの国におきましても、最近労働法というものは統一されたものを希望し、実施される傾向が著しくなつております。労働法がばらばらであるということは、申すまでもなく、その解釈運営の上におきまして、とかく多数の労働者がその保護を受け、権利を主張する上について不便を来しまする反面に、この法を運営いたしまする、ことに官庁の場合におきましてはその支配的地位を握る人々の一方的な解釈によつて区々まちまちな運営を行うことになりまして、思いもうけない、労働法が労働者の権利を奪うような結果をたびたび招来いたしておるのであります。でありまするから、このように労使関係の調整をはかるといつたような法律は、できるだけ早く統一的な労働法にいたさなければならないのであります。統一的な労働法にいたしまするためにも、まずこのようなマ書簡の一方的な、部分的な解釈による便宜的な法律というものは一日も早く改正いたしたいと考えるのであります。
最後に、先ほど多賀谷君からも説明がございましたように、政府が従来仲裁調停の権威を尊重しませんために起りました問題が数々ございます。こういうような問題に対して、ぜひこの際、私はその責任を政府に明らかにしてもらいたいと思うのであります。たとえば人事院の構成でありますが、人事院の構成は、マ書簡の趣旨からいたしますと、きわめて変則なものに堕しておりますが、少くとも罷業権を奪い、団体交渉権を制約する以上におきましては、それにかわるべき政府職員の意思なり要求なり、労働条件の改善に関する万般の要求というものが正しく反映されて、それがただちに反対給付になつて来るという答申案にならなければならぬのでありますが、人事院の人事構成その他に対する政府の強い干渉は見落すことのできないところであります。さらに、人事院の答申案が軽視されましたり無視されました事実、さらに、仲裁調停の政府に対する警告がありましても、この権威をまつたく傷つけるような政府の一方的な態度というものは、このような法律を立案する資格すら与えることのできないものであるということを言わなければなりません。(拍手)このような資格を有しない政府が、きわめて便宜的にマ書簡に便乗をして、どさくさまぎれにつくり上げた立法でありますから、これはただちに改めなければならないということは多く申し上げる必要もございません。私どもは、このような法律を、ぜひこの機会に、この国会におきまして訂正ができますることを念願してやまないものであります。
以上述べましたが、内容のそれぞれにつきましては、いずれ委員会におきましてそれぞれ御討議をお願いすることといたしまして、この機会に、ぜひ皆さんがこの法律の提案されました動機、あるいは運営上における種々の欠点等を十分御認識のことと存じますので、ぜひ慎重御審議の上、この法案がただちに御協賛、御決定願えまするよう希望いたしまして、私の趣旨説明を終りたいと思います。(拍手)
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公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案(山花秀雄君外六名提出)外一件の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/5
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006・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これよりただいまの趣旨説明に対する質疑に入ります。細迫兼光君。
〔細迫兼光君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/6
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007・細迫兼光
○細迫兼光君 私は、日本社会党を代表いたしましてここに上程せられました公労法の一部改正案などの審議にあたりまして、その関連問題について、緒方副総理並びに小坂労働大臣に対しまして若干の質疑を試みようとするものであります。(拍手)
すなわち、われわれは今ここに公労法における労働者の失地回復を試みようとしておりまするが、これに対しまして、政府は、いわゆるスト規制法をもつて逆襲して参つております。従つて、私は、ここにいわゆるスト規制法の問題について触れることの御了解をお願いいたしたいと思います。
緒方副総理も御承知の通り、労働者の団体行動権、すなわちストライキ権は、憲法がおごそかに保障しておるところであります。しかるに、数次にわたる吉田内閣のやり来つたところを見て参りますと、まず公務員からストライキの基本権を奪い、さらに政治活動の基本権を奪い、また公共企業体の労働者あるいは地方公営企業の労働者からその基本権を奪いました。また緊急調整によりまして、さらに広く労働者の基本権を奪い去つたのであります。かくして、朝に一城、タペに一城、一歩一歩労働者の基本権を侵害して参つたのが、吉田内閣の歴史であります。(拍手)しこうして、今やその毒牙をまた一歩進めまして、いわゆるスト規制法によりまして、一般営利会社の労働者からその基本権を奪い去ろうとしておるのでございます。その理由として持ち出しまするところは、相かわらずの公共の福祉であります。もとより公共の福祉は最も大切なことでございまして、われわれ社会主義を奉ずる者こそ、これを最も重視しておるのであります。(拍手)
ところで、この公共の福祉と国民の基本権、この関係につきましては、いろいろ議論のあることは御承知の通りでございます。いろいろ御用学者の反対論もありまするが、傾聽すべき正しい議論は、要するに、公共の福祉云々の問題は、自由や権利を濫用してはいけないというモラルの問題であつて、これをもつて各種の基本権を奪うことはできない、こういうことに帰すると思うのであります。二十五年の二月二十九日の東京地方裁判所の判例も次のように言つております。国民は憲法第二十五条によつてその生存権を保障せられておるのであるから、公共の福祉をもつてしても、生存権の保障なくしては労働基本権を奪い、または制限し得ない、かように断じておるのであります。(拍手)ほんとうの意味の公共の福祉にいたしましてすでにしかり、いわんや吉田内閣がここに擁護せんとするものは、実は公共の福祉ではなくて実に独占資本の利益にほかならないのであります。(拍手)
今や、日本の独占資本は、朝鮮戦争の特需経済の足を奪われまして、MSAの援助にたより、また産業合理化によりまして、労働者に襲いかかつておる。これに対しまして、労働者は、首切りや労働強化に死力を尽して対抗しておる。この階級的な対立の中に立ちまして吉田政府が資本家の利益に奉仕し、憲法を犯してまでも労働者の基本権を奪おうとするのがこの法案であります。(拍手)憲法違反たることは、今や疑問の余地がありません。緒方副総理は、以上の私の所論に対しまして、いかに考えられるか。もし私の論ずるところが間違いでありまするならば、その論拠を示していただきたいのであります。(拍手)
次に、かのストライキ規制法案は、わが国の重要基礎産業を特定外国の独占資本に売り渡さんとする地ならしの陰謀であります。(拍手)さきに、吉田内閣が、電力を九分割いたしました。これがそもそも陰謀の第一歩であります。ごらんなさい、もうたちまち八千万ドル契約のお客がついたじやありませんか。あるいはまた、政府は、莫大な国家資本を投入しまして、お座敷を飾つて、さらに労働者のストライキ権を奪つて、まくらを高うして、うまい酒を飲むための準備に汲々としておるのであります。(拍手)石油産業におきましては、すでに御承知のように、日本石油などはすでにその五〇%の資本を握られてしまつておる。おそらくは実際には八〇%を越えておるだらうと言われておる。これによりまして、もう日本石油の、あのこうもりのマークは、一人で独立して飛ぶことはできない。アメリカのカルテックスの星のマークに、いつもくつつかれておる。(拍手)この日本石油の運命が、あしたの日本の電気産業の運命でないと、だれが断言し得ましようか。(拍手)かの日本製鋼の赤羽の工場における、外国軍人の日本労働者に対するところの、あの国辱的な発砲事件、こういうものも、この吉田内閣の外国資本に対する奉仕的な態度が誘発したものであります。(「じようだん言うな」と呼ぶ者あり、拍手)かのストライキ規制法が、わが国重要産業を外国資本に売り渡すところの地ならしであると私が憂うるのは、はたして無理でございましようか。緒方副総理にして、さような心配がないと考えられるならば、その御論拠を伺いましよう。
次に、小坂労働大臣、あなたは、かのストライキ規制法案は、ストライキ権の全面的な剥奪ではない、その部分的な制限であるという御説明でございまするが、少くとも電気事業におきましては、これはもう実質的な全面的な禁止である。今、電気事業におきまして、いわゆる停電ストの方法を封じてしまいましたならば、あとに一体どんな有効な方法が残りましようか。事務ストあるいは検針ストなどが残つておると言われるかもしれませんが、そんなものは資本家も笑つて見ております。電源スト権を抜かれました争議権、そんなものは火薬を抜かれた爆弾にひとしい。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり、拍手)これがスト権の全面的な剥奪でなくて何でございましよう。
スト権を奪われました労働者が、いかにみじめなものであるか。夏季手当のわずかばかりの増額を要求しまして、あの雨の中にすわり込んでおる官公労、これがスト権を奪われました労働者の現実の姿であります。(拍手)相手は、官庁の奥深くすわつて、ふんぞり返つておる。あるいは高級自動車で、すわり込みの労働者をしり目にかけて飛び去つておる。これでは、けんかにならぬのであります。これでは勝負になりません。縛られた腕を解き放し、奪われた武器を奪回する、それでこそ初めて労使対等の立場が保たれて闘い得るのであります。部分的な制限だということは、あなたの御持論でございまするが、しからば、あらためてお聞きいたしましよう。労働大臣は、これは争議権の部分的な制限にとどまるのだから、憲法違反ではないと主張しておられる。言葉をかえて言うならば、全面的なスト禁止であるならばいけない、かような意味に受取れるのであります。もう一度言葉をかえて言いまするならば、公共の福祉をもつてしても全面的にはスト権を奪うことはできない、こういう御所論だと理解してよろしいのでございましようか、明確なる御答弁をお願いいたしたい。(拍手)
第二点としましては、かのストライキ規制法案は、やがて他の産業の労働者のストライキ権を全面的に奪い夫らんとするところの橋頭堡であると私は見ておるのであります。吉田内閣のいわゆる公共の福祉という観点、すなわち、第三者が少し迷惑すれば、たちまち公共の福祉になるのでありますが、この観点から申しますれば、ほとんど重要産業のストがみな含まれてしまうのであります。たとえば、石油産業はどうか、交通産業はどうか、運送、鉄鋼産業、化学産業、肥料産業、いずれとして社会生活に密接なる関係のないものは一としてないのであります。(拍手)吉田内閣の行き方をもつてすれば、鉄鋼業に長期のストライキが出て参りますと、また鋼鉄業におけるストライキ規制法を立案なさるのでありましよう。とめどがございません。特殊性といつても、どの産業にも特殊性はあるのであります。ここに、電産のみならず、炭労のみならず、全労働者が、危急存亡な重大事としてその阻止紛砕に立ち上つておるのは無理でございましようか。(拍手)張る十九日、日比谷における労働組合大会で非常時宣言をしたのも当然なことでございます。すべての自由を守ろうとする者、電気の消えるのがいやであるにかかわらず、民主主義の危機だとして、こぞつて非難の声をあげておるのが、はたして思い過しでありましようか。労働大臣の個人的な、主観的な意思いかんにかかわらず、これが一般産業労働者のスト権剥奪の橋頭塗になるものだという、右の私の見解についての御所見を承りましよう。
第三に、右申し上げましたように、電気産業及び石炭鉱業と他の産業の間に区別は立て得られません。しかるに、ここに特に電気産業及び石炭鉱業を取り上げられたものは何であるか。電産、炭労、この強い労働組合を弾圧して骨を抜かうというのでありましよう。(拍手)決して私の邪推ではございません。これは、この提案の動機を察すれば明白なことでございます。あしたの日程は、全日通か、あるいは私鉄総連か、はたまた合成化学か、いずれとして安心して眠つておることはできません。かくして、労働戦線を分裂せしめ、順次全労働組合の骨を抜きまして、これを産報化しようとする隠謀の第一歩であります。(拍手)かくのごときことを希望する思想は、これは労使協調、産業報国の思想でございまして、東条大将の思想に通ずるものでございます。明らかに逆コース、反動思想でございます。ごらんなさい、超国家主義者たちが、この国会議事堂の周辺にストを禁止せよというビラを張りめぐらしておるではありませんか。同じことであります。よろしく、こういう反動立法にくみすることなく、民主主義のためにこの法案を撤回する意思はないか。(拍手)小坂労働大臣は、池の底に沈む小さい真珠のように、ほのかに知性の光を漂わしておる存在だと見ております。なお春秋に富む君であります。自重自愛せられんことを希望してやみません。(拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/7
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008・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) 細迫君の私への質問の第一は、政府が今回国会に提案しておりますスト規制法は憲法違反ではないかという質問のように伺つたのでありますが、日本国憲法が国民のもろもろの基本的人権を保障していることにつきましては、あらためて申し上げるまでもないところでありますが、これは無制限に行使し得るのではなく、公共の福祉に反しないようにという限界があるのであります。争議権と公共の福祉との調和ということは憲法の当然に予想しているところでありまして、争議行為が公共の福祉を侵害するような場合には、争議行為の方法につき必要な限界を確立して公共の福祉を擁護することは、何ら憲法に違反するものではないという見解を政府ではとつております。
次に、第二のお尋ねは、スト規制法は結局わが国の重要産業を外国資本に売り渡すその地ならしではないかということを言つておられますが、そうではありません。いわゆるスト規制法案は、昨年の電産、炭労の二大争議の苦い経験にかんがみまして、国民一般の輿論にこたえ、争議権と公共の福祉との調和をはかろうとするものでありまして、従来とも社会通念上不当または妥当ならざるものと考えられておりました争議行為の方法の範囲を明らかにするだけのものであるのであります。従いまして、御説のごとき御心配は本法案とはまつたく無関係な事柄であることをお答えいたします。
〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/8
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009・小坂善太郎
○国務大臣(小坂善太郎君) お答えを申し上げます。
私に対する質問の第一点は、スト規制法は、争議行為の範囲について若干の制限を課するもので、公共の福祉の見地から憲法違反でないという見解をとつているようであるけれども、しからば争議権を全面的に否定する場合には憲法違反になるという前提を認めるかどうか、こういう御質問でございました。争議権と公共の福祉の調和ということは、当然現憲法の予想しておるところであるということは、ただいま副総理からお答えの通りでございまするが、この見地から、争議行為が公共の福祉を侵害する場合には、争議行為の方法について必要な限界を確定して公共の福祉を擁護することは、何ら憲法に違反するところではないと考えております。政府といたしましては、一般企業については争議行為を全面的に禁止するごときことは全然考えておらないのでございます。但し、公務員あるいは国鉄、電電公社の職員のごとく、高度の公共性が要求せられ、その争議行為がただちに公共の福祉を侵害するようなものにつきましては、争議行為を全面的に禁止いたしておるのでありまして、公共の福祉を擁護するためにこのような措置をとることは憲法違反ではない、かように考えておる次第でございます。
第二の御質問は、スト規制法案は電気事業及び石炭鉱業を対象としておるものであるけれども、国民経済、国民生活に深い関連を持つ産業は他にも多いのであるけれども、今回この二つに限るという理由はどういうことであるか、これはあるいはあらゆるスト規制の橋頭堡をなすものではないか、こういう御質問であつたと考えます。今回のいわゆるスト規制法案は、昨年の電産、炭労の二大争議の経験にかんがみまして、ただいま副総理からも言われましたように、社会通念上不当あるいは妥当ならざるものと解せられておつたところの争議行為の方法の範囲を明確に確定しようというものでございまして、政府は、これによつて正当なる争議行為を仰圧する意図は毛頭ありません。従いまして、この法律を石炭、電気以外の諾産業に拡大するということは、今のところまつたく考えておりません。
第三の御質問は、本法案は労働組合運動の骨を抜こうとするもので、はなはだ好ましくないから、この法案を撤回する意思はないか、こういう御質問でございました。政府は、従来とも、労使の関係の問題につきましては、でき得る限りその良識にまちまして自主的な解決にゆだねるという基本的態度をとつて来ておるのでございますが、労使の紛争が公共の福祉を侵害するような場合には、争議権と公共の福祉との調和をはかるために何らかの措置を講ぜざるを得ないのであります。従いまして、さきの衆議院の本会議におきましてもこの法案は議決せられており、その後参議院において審議中解散になつたのでございますが、政府といたしましては、院議を尊重いたす建前からも、再びここに提案して院の御意向を伺うということは、きわあて当然のことと考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/9
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010・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 熊本虎三君。
〔熊本虎三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/10
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011・熊本虎三
○熊本虎三君 私は、日本社会党を代表いたしまして先ほど上程されました公共企業体等労働関係法並びにこれに関連いたしまする労働問題について、数項目にわたつて政府に質問を試みんとするものでございます。
私は、先ほどからいろいろ議論がございますけれども、単なる理念や理想を説いて政府に質問をしようとはいたしません。より具体的な事例をひつさげて政府の正確なる答弁を求めようといたしておりますことを、まず政府みずから御了承を願つておきたいと存じます。なお、本日の答弁は吉田総理に求めるつもりでありましたが、予算委員会の関係によつて御出席がないそうでありますから、緒方副総理が吉田総理の心構えをもつて御答弁あらんことを、前もつてお願い申し上げておきます。
質問の第一は、ただいま趣旨説明がありましたように、労働者の基本権としての罷業権は、憲法二十八条の精神に基いて当然認めらるべきであると考えるが、総理、すなわち現内閣のこれに対する意見を伺いたい。先ほど両大臣から御答弁がございましたが、私これから具体的な説明をいたしますから、それによつて、もう一考の上御答弁を願います。理由といたしましては、先ほど趣旨説明がございましたので、多くは申し上げませんが、官公吏で直接国家公共の議決を執行する任にある者は別といたしましても、現業員、すなわち製作及び運輸等の職場に従事する労働者は、いかに公営企業といえども、一般労働者と何らかわるところはないのであります。これらの諸君は、いずれも権力を持つて直接法の執行をする者ではありません。たとえば、専売局の労働者は、単にタバコの製造と販売の業務に働くものであり、国鉄の諸君もまた他の私鉄会社の労働者と同様に、運転、輸送及び販売の業務に従事するにすぎないのであります。極端な例は、東京都電の労働者はスト権がないのでありますが、京成、東武その他のものにはスト権があるのであります。特にはなはだしき事例は、大阪の地下鉄にはスト権がないのであつて、東京の地下鉄にはスト権があるという事実、これらの矛盾を見れば、まことにこつけいしごくと言わなければなりません。(拍手)従つて、公共企業関係の諸君は、法の許す最大の方策を敢行して、時間外勤務の拒否、一斉賜暇申請等の手段をもつて、事実上のストに類似の方法を講ずるのであります。かくのごときことは、法の精神、すなわち労働者の生活向上と保護のために規制されたるものを根本的にくつがえすものでありまするが、しかし、あえてこの挙をとらざるを得ない現状は、文化国家として、また民主主義国家として、断じてこのまま放置すべきではないと存じます。この意味において、緒方副総理は、本問題に関する私の考え方に対してあらためて御答弁を願いたいと存じます。
次に、本問題と表裏一体の関係にあるスト規制に関する法律案についてお尋ねをいたします。
政府は、過ぐる十五国会に提出し、こうごうたる世論の反対にあい、労働者の最大の反撃を買つた法案を、再びそのままの原案を本国会に提出しておるのでありますが、これは時代を知らざるもはなはだしく、また民主主義の根本的破壊ともいうべき反動行為であると言わざるを得ないのでございます。(拍手)
そこで、第一にお尋ねいたしたいことは、吉田総理は、労働争議の発生及びその悪化の責任は、単に労働者のみにあつて、資本家にはないというような考え方であるかどうかということであります。共産党のごとく、社会不安を誘導し、その混乱の中に急速なる暴力革命を断行せんとするものは別といたしまして、少くとも民主主義をもつて社会の革新を志す労働組合がやむなく行う争議行為は、その責任のことごとくが反動資本家の無理解と圧迫にあるとわれわれは信ずるのでありまするが、副総理の所見はいかがでございましよう。たとえば、昨年行われました電産、炭労の争議といえども、その行動や方法には多少の行き過ぎがあつたといたしましても、その発生の動機については、資本家の暴逆不当なる態度に原因するということを断じて否定することはできません。
御承知のごとく、戦後わが国の生産力は戦前の一四〇%に上昇し、その努力はことごとく労働者の犠牲の上に打立てられておるのであります。しかるに、労働者の生活はいまだ戦前の七〇%に至らざる今日、労働者が最低の生活を求めてこれを要求するのは当然と言わなければなりません。(拍手)これに対する資本家の態度はまつたく冷血そのものであり、長期にわたる労働者の隠忍自重にもかかわらず、一考だにすることなく、単に経営困難を理由にこれを一蹴したのであります。しかるに、電気事業九会社の決算書を見まするに、二十七年の九月、本年の三月におきまする利益配当は、いずれも一割五分を配当し、加えて相当高額な重役賞与をとつておるのであります。さらに炭鉱業者に至つては、二十七年度個人所得の最高順位を見るに、第一位より第八位までのうち、一名を除く七名はことごとく炭鉱業者が占めておるのであります。(拍手)その最高利得者は三億一千五百万円という暴利をむさぼつておるのであつて、しかもこの数字は、現吉田内閣のもとにおける国税庁の三月二十日現在の調査であるということを特にこの際付言をいたしておきます。かくのごとく、電気産業においても、あるいは炭鉱事業においても、国家の庇護と労働者の汗とあぶらの結晶によつて暴利をむさぼりながら、その労働者に報ゆるに前述のごとき暴圧をもつて臨む彼らのその態度にこそ、労働者の憤激は起るのであつて、同時に、争議の全責任は反動資本家こそこれを背負うべきであると断言したいのでありまするが、一体副総理は何とお考えになるか。これでもなお争議をやつた労働者が悪いというのであるかどうかを御答弁願いたいと存じます。
第二にお尋ねいたしたい点は、本規制法と鉱山保安法との関連についてであります。特に、労働者に同一事案に対し二重、三重の責任を課せんとする極端な反動弾圧法と断ぜざるを得ないと思うが、副総理はいかなる考え方であるかを伺いたい。昨日、労働委員会において、小坂労働大臣は、提案理由の説明中、鉱山保安法に規定しております保安業務の正常な運営を停廃する行為云々と言つております。さらに、昨十五国会における持永義夫君の質問に答えて、当時の戸塚労相は、鉱山保安法、電気ガス臨時措置法及び公共事業令等の規定に反し云々と答弁しておるのであります。御承知のごとく、鉱山保安法第三条におきましては、四項目にわたつて義務条文があり、第五条においては、「鉱山労働者は、鉱山においては、保安のため必要な事項を守らなければならない。」と義務づけておるのであります。さらに十二条及び十七条において、法及び規定を守るべきを明示し、五十六条第一項において、違反者に対しては、「六箇月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」との罰則が明記されておるのであります。従つて、以上のような行為は、争議行為とは別個にこれらの法を適用すればよいのであつて、あらためて二重処罰の必要はないと言わなければなりません。さらに労調法三十六条においても、安全保持に対しては明確なる規定があつて、これを犯せば労働法違反によつて罰せられることになつておるのであります。かかる観点から、政府が、既存の法律に加えて、新たに簡便にして労働者弾圧をより強化せんとする本法を提案するがごときは、言語道断と言わなければならないと考えるのでありまして、政府の所信をあらためてお尋ねいたしたいと存じます。(拍手)
次に、第三の質問は、労調法三十五条の緊急調整との関連であります。政府は、十三国会において、われわれが国民大衆とともに猛烈なる反対をいたしたにもかかわらず、これを押し切つて改悪を実施したのであるが、本法三十八条によれば、緊急調整発効と同時に五十日間の争議行為は禁止されるのであります。従つて、本条実施を見れば、いかなる深刻な争議といえども、その期間において平和解決は可能である。論より証拠、さすがに世間を騒がせました炭労の大争議も、この発効により、労働者は涙をのんでこれに服して解決した事実を政府は一体何と見るのであるか。さらに、その後組合の内部には深刻な自己批判が行われ、今や一歩々々と健全にして民主的なる真の労働組合主義が浸透しつつあるではないか。労働者の、かかる自重と忍従に対しても、なおかつこれに追討ちをかけんとする政府の意図であるかどうかをお尋ねいたしたいと存じます。(拍手)
第四の質問は、労働大臣の提案説明中、法をもつてこれを抑制規律することは、できる限り最小限とし云々、といかにももつともらしき説明をするかと思いますと、その反面、公益的性質を有する産業は、ひとり電気産業及び石炭鉱業に限るものでないことは申すまでもないが、種々検討の結果、今回は云々と言つておるのであります。しからば、今回は電気と石炭に限るのであるが、将来はまだまだなそうとするの野望が伏在することが、明確に説明の中に盛られておるのであります。もう一度、労働大臣は、さようなことはないというならば、明確に御答弁を願いたいと存じます。
第五は、政府、特に私は吉田総理に答弁を願いたいと思つたのでありますが、副総理にお願いをいたします。それは、現政府の根本的政治理念についてこの際伺つておきたいと存じます。世界の歴史を見ても、また現実を見てもわかるように、すべて社会の不安と動揺は、政治の腐敗堕落と権力者の暴圧により起るのであつて、善政のしかれるところに混乱はないということを、われわれは断じて見のがしてはなりません。遠くの事例は別として、たとえばロシヤ革命におきましても、あるいは中国の共産革命におきましても、また現在拡大しつつある仏印におけるホーチミン軍の動乱にいたしましても、その国のことごとくは、その国民の生活水準が世界水準に遠く離れて低位にあり、そうして生活の困窮のどん底にあるところにこそ初めてかような不安が起るということを御存じであるかどうかをお尋ねいたしたいと存じます。吉田内閣が長きにわたり一部特権階級の走狗となつて勤労階級を圧迫する限り、政治も経済も断じて安定しないのであります。(拍手)しかるに、政府は、この上権力を拡大し、スト規制法を初め、警察法その他の反動諸立法の制定実施により弾圧することによつて一時をのがれんとするがごときは、政治の根本要諦を蹂躙する行為であると思うが、一体副総理は何とお考えでございましよう。この際、副総理は、意を決して、憲法に抵触する防衛費のごとき、国民の膏血をしぼる非生産的方針を改訂し、さらに労働者の人権を剥奪するスト規制法等を撤回し、政治の常道に帰り、民生の安定と向上をはかる御意思があるかないかをお尋ねいたしたいと存じます。(拍手)
最後に、必ずしも財政ゆたかならざる英国における二十八年度予算を見るに、社会保障費は総予算の二五%を計上し、主食の調整に一億二千万ポンドを計上しておるのでありまするが、これを邦貨で換算すれば二千二百五十億円と相なりまして、総予算の六%強を計上している事実を、少しは、いかに反動であつても、吉田内閣は見ならう御意思があるかないかということをお尋ねいたしたいと存じます。(拍手)
私は以上で質問は終るのでありますが、政府の答弁は、言を左右にして、その中心をはずし、はなはだもつてごまかし的な答弁はうまいのでありますが、この機会におきましては、さようなことのないように、誠実をもつて私の尋ねに御答弁あらんことをお願いいたしまして、質問を終りといたします。(拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/11
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012・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
同じ労働者でありながら、公企労法の適用、不適用によつて、一方はストライキ権があり、一方は奪われておるのは矛盾ではないかということによりまして、政府の公企労法の適用を受けておる労働者に対するストライキ権を認めるかどうかということのようでありまするが、公共企業体等は、公共の福祉を擁護し、増進することを目的として経営するものでありまして、公共企業体等の職員が争議行為を行うことは、国民の信託による業務を著しく阻害し、ひいては国民全体の利益に直接障害を与えることになりまするので、公共の福祉の擁護の観点から、公共企業体等の職員に争議権を認めることは、とうてい許されないとい見解を政府といたしては持つております。
それから、今回の公企労法改正案について、政府はどういう考えを持つておるかというお尋ねであります。今回の議員立法として提案されておりまする公企労法改正案は、公共企業体等の職員に対する争議権を認めること等を骨子とするものでありますので、国民の信託を受けておる事業を行つておる公共企業体の性格及び公共の福祉の見地から、これは政府といたしては賛成いたしがたいものと考えております。
それから、ストライキ規制と緊急調整制度との関係はどういうものであるか、これは重複するきらいはないかというお尋ねのようでありますが、緊急調整制度は、争議行為の規模が拡大して、あるいは長期にわたる等のために、国民経済、国民生活に重大な危険を及ぼしました場合に、早急にこれが解決をはかり、もつて公共福祉を擁護しようとするものでありまして、スト規制法は、従来から社会通念上不当または妥当ならざるものと認められておりますもの、また争議行為の範囲を明確にし、もつて公共の福祉と争議権の調整をはかろうとするものでありまして、両者の問にその趣旨目的を異にしていると考えております。
それから、先ほど昨年の炭労、電産のストの場合に緊急調整法が十分に有効であつたということによりまして、政府の提案いたしておりますスト規制法の不必要性を申されましたけれども、昨年の炭労ストライキの妥結に至りましたことは緊急調整の発出前でございまして、緊急調整が幸いにその発出をまたずして炭労ストが解決いたしましたことは、政府といたしましても当時仕合せであつたと考えておつたところであります。
それから、過般の炭労ストにおいては、労働者のみに責任を負わされ、資本家は何ら犠牲を負わないじやないか、これは不都合じやないかということから、政治の貧困または政治の腐敗の社会上に及ぼす影響をお述べになりましたが、その点につきましては、政府もまつたく同じ感想を持つております。しかし、昨年の炭労ストの責任が労使いずれにあるかということにつきましては、いろいろ意見がありますが、政府が今回スト規制法を提出いたしましたのは、ストライキの責任の所在がどこにあるかということをただそうするのではありませんで、もつぱら公共の福祉と争議権との調和をはかるものでありますことは、たびたび申し上げた通りであります。
以上お答えを申し上げます。(拍手)
〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/12
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013・小坂善太郎
○国務大臣(小坂善太郎君) ただいま緒方副総理から御答弁がありましたが、補足してお答えをいたします。
まず第一に、鉱山保安法、公共事業令、電気ガス臨時措置法があり、また労調法第三十六条がありながら、ここにいわゆるスト規制法案を出すということは、二重の制限を課すことではないか、こういうことでございまするが、繰返して申し上げますように、私は、この法案を出すことによりまして、ストライキ権を弾圧するというような意思は毛頭持つておりません。本案は、従来とも社会通念上不当または妥当ならずと考えられていた争議行為の範囲を明らかにしようとするものでありまして、従つて、お説のように、本法案の定むるところは、鉱山保安法、旧公共事業令、労調法等に触れる行為がここまでであるという範囲を明らかに確定するものでありまして、このような法律関係は一部の人々の間には必ずしも明確になつておりませんから、これを今回明らかにしようというのであります。(拍手)
さらに、その後の組合等の情勢をどう判断するかということでございましたが、組合の情勢等に関する私の個人的な意見は、この場においては差控えたいと思います。
それから第三に、スト規制法の提案理由中に、本来労働問題は労使双方において自主的に解決すべきものであると言いながら、電気事業、石炭鉱業等の特殊性にかんがみて、いわゆるスト規制法案を出すと言つておるが、その真意はどうであるかという趣旨の御質問であります。これは、提案理由にも昨日申し上げましたのでございますが、労働関係の事項については、ただいまも熊本さんからお言葉がありましたように、法をもつてこれを規制するというよりは、労使間の良識をもつて労使が自主的に解決するということが望ましいことは申すまでもございませんので、政府といたしましても、この基本原則を認めて参りまするが、ただいたずらに手をこまぬいて、当面の緊急の問題に対して対策を怠るということは、これは許されないことだと考えております。従いまして、依然として、昨年の争議以後も、こうしたストライキが正当であると主張する者がありまして、こういう争議が行われますと、公共の福祉が阻害される現実の危険がありますから、本法案を提出した次第でございます。
なお、今後において、こうした名分のもとに他産業に及ぼすかどうかということを、もう一度明らかにしろという御意見がございました。私に関する限り、これは絶対にいたしません。
以上をもつてお答えといたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/13
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014・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 中村梅吉君。
〔中村梅吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/14
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015・中村梅吉
○中村梅吉君 私は、社会党両派の提案にかかる公労法改正案並びに政府より提案されておりますスト規制法案に関連いたしまして、ごく簡潔に二、三の点について政府に質疑を試みたいと思うのであります。
まず第一に、政府にただしたいことは、従来公労法の運用については、政府の施策に遺憾の点があつたのではないだろうかという点についてであります。元来、公労法による仲裁委員会の裁定は、その裁定が下りますと、法制上労使間に労働協約としての効果を自動的に発生するものであると思うのであります。しかるに、この仲裁裁定が下りましても、政府は容易にそれを受入れようとされないのであります。あるいは、政府の説明によれば、従来九回にわたる仲裁裁定が行われたけれども、その大部分は実行しておる、こう一応弁明されますが、その大部分が実行に移されておるというのは非常に時期がずれて参りまして、その給与を受けておる勤労階級にして見ますると、まつたく物価水準がかわり、生活の水準がかわつてから実行に移されるのでありまして、これでは、真に仲裁裁定が労働協約たるの法制上の自動的効果をもたらすこの制度に反するものであると私は思うのであります。(拍手)この点については、よろしく政府の従来の態度を改善すべきであると思うのであります。この点について、政府は、従来の態度を思い切つて改善し、この仲裁裁定が下りましたならば、ただちにもつてその裁定を実行に移す用意とその決心があるかどうか。この点を承りたいと思うのであります。(拍手)
次に私は、政府がただいま衆議院に提案されておりまする電気事業及び石炭鉱業に関するスト規制法案についてただしたいのであります。本法案は、同一の目的を果すといたしましても、立法技術としては非常に議論のあるところであると思うのであります。本法案について、まず第一に政府にただしたいと思いますのは、本法案と労働関係調整案、公共事業令、鉱山保安法との関係についてでございます。この点についてはすでに論議が闘わされておるのでございますが、しかしながら、労調法においては、その第三十六条において「工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことはできない。」と、はつきり規定いたしておるのであります。さらに鉱山保安法には、その第五条に鉱山労働者の義務を規定いたしまして「鉱山労働者は、鉱山においては、保安のため必要な事項を守らなければならない。」、さらに鉱山保安監督官は、鉱山保安のために必要な措置を命ずることができるという明文があるのであります。また公共事業令におきましても、何人も電気の供給または使用を妨害してはならない、及び公益事業に従事する者が、電気またはガスの供給を、正当な事由がないのに取扱わず、または不当な取扱いをするようなことがあつてはならないということを規定いたしておるのでありまして、しかも公共事業令及び鉱山保安法においては、これらの違反行為をあえてした者に対しては五年以下の懲役または罰金の厳罰規定を設けておるのであります。
以上、各法令の定めるところを見ますと、今回政府が提案されました電産並びに炭労のスト規制法というのは、すでに定められておるこれら既設法令の趣旨とまつたく同じでございます。しかるにかかわらず、何ゆえ政府はかかる屋上屋を重ねるがごとき新規立法をなさなければならないか、まことに私ども了解に苦しむのでございます。(拍手)しかも、既設法令には罰則規定が設けられておるのでありますが、今回のスト規制法案には何らの処罰規定が明記されていないのであります。この点について政府の意向をほのかにうかがいますると、この法律には処罰規定がないけれども、これに違反する行為を犯した場合には、公共事業令あるいは炭鉱に関するこれらの法規の処罰規定が自然的に運用されるんだ、こういう説明をしておるようでございますが、これは立法技術としても許されないところであります。しかりとするならば、なぜこのスト規制法に附則を設けてその旨を明らかにいたさないか。この点は、私は、立法技術論としてあくまで政府のこの処置を追究し、この点に対する政府の明快な答弁を煩わさなければならない次第でございます。察するに、政府は、昨年の電産並びに炭労の争議に際しまして、りつぱにこれを規制し得るところの既設法令が現存するにもかかわらず、何ら適切な処置を講ずるところもなくして、無為無策で、その結果国民大衆に多大なる迷惑を及ぼしたこのみずからの失態を、隠蔽糊塗せんがために、この法案を出したものであると言わなければならないと思います。(拍手)
次に、政府にたださなければならないことは、争議行為の規制を余儀なくされる労働者に対しては、争議行為の規制に伴うところの代償と申しますか、それに反射的の処置を考慮せられるのが私は当然であろうと思うのであります。公労法においても、争議行為の規制をいたしておりまするかわりに、仲裁裁定の制度を確立いたしまして一たび仲裁裁定が下れば労働協約と同一の効果が発生する、こういう制度をとつておるのでございます。本法案においては、憲法上労働者に当然認められたところの争議行為の一部を規制するのでございますから、当然これに対して何らかの反射的措置を考慮すべきが私は至当であると思うのでございます。政府はこの点について何ら本案には触れていないのでございますが、政府のこの点に対する所見を承りたいと思うのでございます。
最後に、私が政府にただしたいと思いますことは、労使の協調に関してでございます。労使協調の問題は、実に国民全体の利害に及ぼすところが大きいのみならず、ことに産業の盛衰に重大な関係を持つておるものでございます。西ドイツにおいては戦後いまだ一回も労働争議を惹起していないということを承り、われわれはまことに羨望にたえないのでございますが、これには、ドイツ人自体の良識と、またおのずからよつて来る政府の施策が存すると思うのでございます。しかしながら、従来わが国政府の労政当局は、労使協調についてきわめて消極的であります。何ら施策の見るべきものがないことは、われわれはなはだ遺憾とするところでございます。私は、この機会に、政府の労使協調の方策について積極的な施策を要望いたしますと同時に、労働政策に関する政府の根本的な態度の説明を要求いたしまして、この質問を終る次第でございます。(拍手)
〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/15
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016・小坂善太郎
○国務大臣(小坂善太郎君) お答えをいたします。
公労法の運用に関しまして、政府は、従来仲裁裁定を尊重していないが、今後かかる態度を根本的に改善する必要がある、その意思ありやということが第一点だと思います。仲裁裁定につきましては、政府といたしましても、従来とも公共企業体等に仲裁制度が設けられておる趣旨にかんがみまして、でき得る限り尊重して来たのでありまして、現在までに仲裁裁定は九回あるのでありますが、そのうち完全に実施されたものが五件、若干遅れて裁定通りに実施されましたものが二件、一部について実施されたものが二件という状況になつておりまして、全然実施されなかつたというような話はないのであります。このように、大体において実施しておるのでありまして、政府が仲裁裁定を尊重しているということは、今申したように事実でありますけれども、将来ともその実施の時期がずれないような点を考慮いたしまして、でき得る限り連絡等を緊密にさせて遺憾なきを期したいと考えております。
第二の御質問は、停電スト、保安要員スト、いずれも労調法、旧公共事業令、鉱山保安法等で今禁止されているものであるから、ここにいわゆるスト規制法を出すことは屋上屋を重ねるものであるというふうな御意見でございました。これはすでに熊本議員にもお答えいたした通りでありますが、スト規制法は、従来とも社会通念上不当または妥当ならざるものと考えられていた争議行為の方法の範囲を明らかにしたものでありまして、お説のように、停電スト、保安要員総引揚げのような争議行為の方法は、鉱山保安法あるいは旧公共事業令、あるいは電気、ガス等の法律において禁止されている事項でございます。しかし、最近の情勢を見ますると、このような法律関係は、一部の人々には必ずしも理解されておりませんので、今回これを明らかにいたしまして、公共の福祉を擁護せんとするものであります。それから罰則を書けという御意見でございます。罰則が、今までの労調法三十六条あるいは鉱山保安法、旧公共事業令等の定めまする罰則よりも拡大せられるならば、これを書く必要があるかもしれませんが、これはここまでは適用されるという範囲を明確にするものでございますから、その必要はないと考えております。なお、労調法三十六条もそうした規定でございます。御承知のように、保安に触れる場合、違法性の阻却されない範囲というものを明確にしておるのでございますが、これも同様に罰則が書いてございません。そのような趣旨で、政府といたしましてはこの法案を取扱つている次第でございます。
さらに、昨年の電産、炭労ストに際しまして、政府は無為無策に終始したと思うが、感想いかんというような趣旨でございましたのでありますが、政府は、労働関係の事柄につきましては、先ほども申し上げたように、当事者間の良識にまつという態度をとつておるのでございます。昨年の電産、炭労のストライキは、御承知のように占領終結以来初のストライキでもありまして、特に実質的に円満な解決をすることを望みまして、そこによき慣行の先例をつくることを期待いたしておつたのでございます。しかしながら、ストライキの長期化は、国民経済、国民生活に重大なる障害を与えるに至りましたので、炭労争議につきましては、十二月十七日に緊急調整を発動いたしまして、中労委のあつせんと努力と相まつて解決を見た次第でございます。電産につきましても、緊急調整発動の準備はいたしたのでございますが、解決の見通しの関係からこれを差控えておりましたけれども、御承知のようにこれまた十二月十八日に解決を見た次第でございます。
最後に、労使協調に言及され、政府の根本的な労働対策についてお尋ねでございましたが、これは、私も今の御答弁の中に申しておりましたように、労使間の良識にまちまして、実質的に産業平和を確立するということに労使双方が努力してくれることを望んでおります。と同時に、労働問題というものを一部の労使間の問題だけにしないで、この影響するところは国民経済、日本経済の自立とも関連するもので、非常に重要なものでございますから、国民全体の問題としてこれを取扱うべく、労働問題協議会を提唱している次第でございます。
以上をもちまして御答弁といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/16
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017・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 中原健次君。
〔中原健次君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/17
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018・中原健次
○中原健次君 私は、労働者農民党を代表いたしまして、ただいま議題になつております公労法並びに地方公営企業労働関係法のそれぞれ一部改正に関する法律案に関連しまして、いわゆるスト禁止法について三、四の…を政府にただしておきたいと考えるのであります。主として副総理並びに労働大臣から御答弁を願いたい。
本来、わが日本の労働法規は、戦後におきまして、やや進歩性を見せて参りました。しかしながら、その後占領支配の目的からこれに従属させられるために、超憲法的な意味から、漸次これが改悪されて参りました。あるいはまた制限され、だんだん労働基本権が弱められて参つたのであります。しかしながら、政府の言葉をかりて申しますと、わが日本国はここに独立国家になつたはずであります。そうでありますならば、独立国家日本の労働行政は、その失われて参りました労働基本権をだんだんに今度は取返すために、すなわち憲法が保障いたします労働基本権の回復の方向に向つて、これを進めて行こうとする努力が当然払われなければならぬと考えるのであります。しかるにかかわりませず、政府は、いわゆる労働者の権利総引揚げ法という言葉をもつて、さきの国会におけるスト禁止法に関連する公聴会の席上、公益代表をしてこのように言わしめるような立法措置、すなわちスト禁止法をここにまた重ねて持ち出すに至つたことは、これまことに逆コースの最たるものをみずから暴露するものであり、まさしく反動政治への転落であると言わなければならぬと思うのであります。
政府が前国会のものとその内容を同じゆうするスト規制法を提案するにあたつて、その審議の過程について特に顧みて注目しなければならぬことがあると思うのであります。それは、前国会におきまして、第三者側の公述人、すなわち公益代表の諸君が、ほとんど口をそろえまして、この法律案に対して反対を表明しておるという一点であります。この公益代表の見解がそうであつてみれば、スト規制法を再提出するにあたつて、政府はきわめて慎重なる態度をとるべきであつて、当然輿論に注意を傾けなければならない。初の民主議会の政府として、この公益代表のほとんどが口をそろえて指摘いたしましたスト規制法の反動性について、もう一度顧みるの必要はなかつたろうか、このことについて特に副総理の御見解を求めておきたいと思うのであります。
さらに、最近、日経連がきわめて一方的な立場から、就業規則にすりかえを策する労働協約基準案なるものを発表いたしております。さらにまた、憲法や労働法の精神を無視する、いわゆる労働七原則なるものを同様発表いたしておるのでありますが、その日経連は、このような基本的な労働政策を打出すことによりまして、全資本家の労働対策をこれに統一強行せしめんとはかつておるのであります。このことは、明らかに労働組合の分裂を策し、その御用化をねらつて、労働攻勢の力を弱めながら、当面の日本独占企業の重大課題を、労働階級を思うままに駆使することによつて解決しようとするたくらみをはらんでおるわけでありまして、だからこそ、経済同友会は、この日経連の恐るべき反勤労働政策に対しまして強く批判を与えております。もちろん、全国民大衆は、さらにこのような許しがたき労働政策に対しまて、口をそろえて痛撃を加えておることは申すまでもございません。しかるに、政府は、この日経連の方針にまつたく忠実に、その方針のままに労働政策を強行しているという、その否定すべからざる事実を、ここにまた、はしなくも暴露したものと言わなければなりません。
先にも質問者の御指摘がございましたように、労働者の労働権主張確保の行動を拘束するためには、おのずから一方にこれにかわるべき社会保障制度の決定的な充実を用意することが、しばしば世界各国の資本主義国において見られておるところであります。しかるに、わが日本におきましては、その件に関しましてもきわめて冷淡であります。いな、むしろ、社会保障制度審議会の答申案のごときは、まつたくたなに置きざらしにされておるという現状でありまして、ここに現吉田内閣のまことに誠意なき態度が遺憾ながら暴露されておると言わなければなりません。これらの点に関しまして、副総理はどのようにお考えになつておいでになるか、あわせて御答弁を求めておきたいと考えるものであります。
なお、スト規制法の提案の動機といわれておる、すなわち電気並びに炭鉱ストの責任の所在の問題に関しまして、これはしばしば言われるところでありますが、先ほど副総理は、そのことにかかわりがないかのような御答弁もあつたようでありますけれども、やはりこれはそうではなくて、その責任の所在があたかも労働者の争議行為の中にあるかのような印象を流布宣伝いたしまして、この規制法の必要を力説強調いたしておるというのが、偽りなき政府の実際の姿であります。私は、ここに、なぜ政府が、その逆の面の、資本家側のとつた態度についての糾明をしようとせぬのか、まことに不可解しごくなことだと考えるものでありますが、ここに重大な問題点を一つ二つ拾つてみましよう。
中労委が調停案を出しました場合に、電気の事業者連合は、これに対しましてどのような態度をとつたか。これに対しましては、いささかも顧みることをしないで、まつたくほごのようにその調停案をほうつたではなかつたか。さらに炭鉱資本はどうであつたか。炭鉱資本は、労働者の賃上げ要求に対しまして、まつたく逆に実質的賃下げを画する能率引上げの方針を打出して参りました。これは、考えようでは、労働者をばかにした、労働者を食つた態度と言わなければなりません。(拍手)このようなことが、だからこそ、この両すトライキをさらにますます解決困難の状態に追い込むに至つたことは、いまさら指摘を要しないところでありまして、このような実情から考えまするときに、この二大ストライキの責任の所在は、むしろ両資本家階級の中に厳存することを、われわれは見落すわけには参らないのであります。(拍手)従つて、その観点から考えますならば、政府がしばしば口をきわめて釈明いたしまする公共の福祉、この問題も、この両争議が国民生活に脅威を与え、公共の福祉を阻害したといたしますならば、むしろその阻害の責任はかかつてこの二大資本家階級にあることを、われわれは強く指摘しなければなりません。これに関する政府の所見を問う。
私どもは、このような政府の見解に対しまして、政府が、今資本家階級が企図いたしております企業合理化に備える地ならしを促進するために、まず最初の手初めとして、基礎産業中の基幹をなす炭鉱並びに電気事業のストライキ規制に手をつけたということを明らかに見破ることができるわけでありまするが、政府は一体、このストライキ規制法につきましての、これらの国民的な批判に対して、どのようにこたえようとするか、その所見をただしておきたいと考えるものであります。
さらに、このような不合理なる政策を強要するのは、その政府の意図するところは、労働組合運動の力を分散させるために、そうしてこれをばらばらに引離して、実質上労働組合運動を困難に陥れようとすることをねらつてのことではなかつただろうか。このような疑問が当然起つて参るわけであります。昨年の第十三回国会におきまして、争議の不当干渉を容易にするためにできた緊急調整法の措置の件でありますが、この法律案を提出するいわれを、この緊急調整の措置と関連して考えますならば、政府はいま少し……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/18
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019・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 中原君、申合せの時間が過ぎておりますから、簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/19
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020・中原健次
○中原健次君(続) 慎重でなければならぬと考えておるのでありますが、これに対する政府の所見を労働大臣の口から承つておきたいと考えるのであります。
その他数個についての質問点を持つておりまするが、与えられた時間がないとのことでありますから、私は最後にもう一点だけ触れまして質問を終ることにいたします。
この法律案が本来違憲の立法であるという点につきましては、もはや何人もがこれを指摘しておるところでありまするが、しかしながら、政府は、これに対していろいろな説明をいたしておるのであります。そこで、私が最後に追究しておかなければならぬと考えまするのは、このスト規制法が扱おうとしておりまするその措置は、労働組合を憲法が承認する労働基本権から切り離し、しかも鉱山労働の場合で申しますと、鉱山保安法の規定をして労働基本権に優先せしめようとするたくらみがあることであります。このことは、労働組合運動の合憲性に対する認識を、もはやたなざらしにして置き忘れているということを、みずから暴露するものでなければならぬと考えまするが、この点について政府はどのように説明をなし得るのか。その政府の説明点を聞いておきたいと考えるのであります。政府がほんとうに国の平和と繁栄をこいねがうものでありまするならば、基本的人権に対する明確なる認識を深めながら政策を行つて行くということに心がけなければならぬことを最後につけ加えまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/20
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021・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
政府が基本人権としての労働争議権を尊重いたしますることは、たびたび繰返して申し述べておる通りでございます。また争議の場合、双方の良識の上に、その互譲によつて妥結に至らしめたいという考えでありますことも、先ほど来労働大臣から繰返しお答えした通りであります。今回政府が提案しておりまするスト規制法は、従来から社会通念として不当であり、また妥当でないとされておりまする争議行為の範囲をさらに明確にして、いわゆる公共の福祉と労働争議権の間の調和をはかりたい。申しますれば、最小限度に争議権を規制いたしたいという考えにほかなりません。
その他のことは主管大臣からお答えいたします。(拍手)
〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/21
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022・小坂善太郎
○国務大臣(小坂善太郎君) お答え申し上げます。
まず第一に、前国会におけるスト規制法の公聴会をした際において、大体公益側の公述人が反対をしておるのに、どうしてこういう世論に反対してまでも再びこれを提案するのかという御趣旨であつたと思いまするが、スト規制法案につきまして公聴会を開きましたるところ、消費者代表はほとんど全部が賛成をいたし、本法の一日も早き成立を切望いたしたのであります。また学識経験者も賛否両論ありましたのでありますが、本法案に定めるような争議行為が妥当でないということについては、ほとんどの人がこれを認め、また本法律案の意図につきましては、これを了とする向きが多かつたのであります。政府といたしましては、このような一般性論の動向にかんがみまして、かつまたその後の労使間の諸情勢を検討いたしてみました結果、本法案を提案した次第でございます。(拍手)
さらに、日経連の七原則とかいうお話がございましたが、私も実はよくそれを見ておりません。何ら関係はございません。
それから、他は副総理からもお答えがございましたのでありますが、昨年の電産、炭労争議の責任云々というお話がございました。しかし、昨年の暮れの争議につきましては、人々によつていろいろ意見が異なつておりまするが、本法案につきましては、さきに申し上げました通り、もつぱら公益の福祉を擁護しようとする考えに出ているのでありまして、しかも、そうした争議行為の方法の範囲を明確化するということでありまして、全然責任云々のようなことは考えておらない次第でございます。
以上をもつてお答えといたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/22
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023・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/23
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024・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 日程第一、民生委員法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。厚生委員長小島徹三君。
〔小島徹三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/24
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025・小島徹三
○小島徹三君 ただいま議題となりました民生委員法の一部を改正する法律案につきまして、厚生委員会における審議の経過並びに結果の大要を御報告申し上げます。
民生委員制度に関しましては、さきに第二回国会において民生委員法の制定を見、さらに第十回国会におきまして、生活保護法の改正に伴い、その任務について変更が加えられておるのでありますが、その後における実施の経過にかんがみまして、今回民生委員推薦会の組織その他について所要の改正を行おうとするのが本改正案提出の理由であります。
本改正案のおもなる内容について申し上げますれば、第一点は、民生委員の職務につきまして、福祉事務所その他の関係行政機関に対する協力関係を明確にしたことであります。すなわち、民生委員が福祉事務所その他の関係行政機関の業務に協力することについて、特に明文を設けることによつて、両者の職務内容と責任分野との明確化をはかろうとするものであります。
第二点は、民生委員推薦会の委員を広く社会福祉全般の代表者の中から委嘱できるように、その範囲を具体的に明示するとともに、その定数を各分野についてそれぞれ二名以内とし、民生委員推薦会の組織といたしたことであります。
第三点は、民生委員協議会の任務中に、福祉事務所その他の関係行政機関との連絡に当ることを附加するとともに、市町村の区域を単位とする社会福祉関係団体、すなわち市町村社会福祉協議会の組織に加わることができることとし、民生委員協議会が地域社会における社会福祉の積極的増進に広い視野に立つて活動することができるようにしたことであります。
第四点は、民生委員の改選が全国一斉に行われるように、補欠による民生委員の任期を前任者の残任期間とすることに改めるとともに、現在の民生委員の任期を本年十一月末日までとする経過規定を設けたこと等であります。
本改正案は、六月十三日本委員会に付託せられ、同十八日政務次官より提案理由の説明を聴取した後、二日間にわたり質疑応答を行い、同二十日質疑を終了し、討論に入つたのでありまするが、自由党を代表して青柳委員より、改進党を代表して山下委員より、社会党を代表して長谷川委員より、自由党を代表して亘委員より、同じく社会党を代表して堤委員より、それぞれ賛成の意見が述べられたのでございます。
かくて、討論を終了し、採決に入りましたところ、本改正案は全会一致をもつて可決すべきものと議決した次第でございます。
右御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/25
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026・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/26
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027・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/27
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028・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 日程第二、千九百五十二年七月十一日にブラッセルで締結された万国郵便条約及び関係諸約定の批准について承認を求めるの件、日程第三、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にへーグで、及び千九百三十四年六月二日にロンドンで修正された貨物の原産地虚偽表示の防止に関する千八百九十一年四月十四日のマドリツド協定への加入について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長上塚司君。
〔上塚司君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/28
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029・上塚司
○上塚司君 ただいま議題と相なりました二件につきまして、外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まずブラツセル万国郵便条約及び関係諸約定について御報告申し上げます。
本件は、五月二十日内閣から国会に提出され、二十五日本委員会に付託されましたので、五月二十八日、六月十七日及び二十日の三回にわたり外務委員会を開き、また六月十八日、外務郵政連合審査会を開き、審議を重ねました。
政府当局の説明によりますれば、万国郵便条約は万国郵便連合の基本的文書であつて、現在は一九四七年にパリで改正された条約が実施せられております。わが国は、一八七七年、すなわち明治十年以来万国郵便連合に加盟し、今回わが国が批准しようとする条約は、現行のパリ条約を改正補足するため、一九五二年五月からブラツセルで開かれた万国郵便連合の大会議で、同年七月十一日、八十九箇国の署名によつて締結されたものであり、わが国もこの会議に全権を派遣し、同条約に署名いたしておるのであります。
この条約は、現行条約と同様に、万国郵便連合の組織及び構成を規定するとともに、通常郵便の業務を規律し、また関係約定は、小笹郵便物、郵便為替その他の特殊業務を規律した五約定でありますが、五年前のパリ会議で採択された現行条約及び約定を実施した経験にかんがみ、今日の新事態に適応した改善を加えたものであります。しかして、この条約及び関係約定は本年七月一日から実施されることになつておりますが、わが国が国際社会への復帰以来、海外との郵便物の交換が日々増加を見つつある今日、これをすみやかに批准し、郵便連合を通じて国際協力を維持増進することは、わが国にとりきわめて有意義な措置と認めるとのことでありました。
右に対し、委員より、外務並びに郵政当局に対し活発なる質疑が行われましたが、これらの詳細は会議録によつて御了承を願います。
続いて討論に移り、日本社会党戸叶委員から希望を付して賛成の意が表明され、採決の結果、本件は本委員会においてこれを承認すべきものと全会一致議決いたしました。
次に、貨物の原産地虚偽表示の防止に関するマドリツド協定について御報告申し上げます。
本件は、五月二十日内閣から国会に提出され、二十五日本委員会に付託されましたので、五月二十八日、六月十七日及び二十日の三回にわたり外務委員会を開き、審議をいたしました。
この協定は、一八九一年四月十四日にマドリツドで最初に成立し、その後三回にわたつて修正せられ今日に至つております。今回わが国が加入いたします、ロンドンで最後に修正されたマドリツド協定は、一九三八年八月に効力を生じ、現在これに参加せる締約国は十六箇国を数えております。政府当局の説明によりますれば、この協定は、締約国の一またはその中にある場所を原産地として虚偽に表示した生産物を、その輸入に際して差押え、輸入を禁止し、または国内において差押える等の措置によつて、不正競争を防止することを目的としたものであります。すなわち、この協定は、すでに一般の通商貿易において国際的に承認せられた公正な慣行を取入れたものにほかならないのでありまして、わが国がこれに加入することは、わが国の国際信用を高め、国際通商におけるわが国の地位を向上せしむるゆえんであります。また、わが国は、一昨年九月サンフランシスコにおいて平和条約の署名に際し、平和条約の最初の効力発生の後一年以内にこの協定に加入する意思を宣言しておりますので、政府は、この協定を第十五特別国会に提出し、加入について承認を求めたのでありますが、審議半ばにして衆議院が解散せられました。従つて、右加入について事前に国会の承認を得ることができませんでしたので、やむを得ず政府の責任において平和条約付属宣言の期間内にこの協定への加入の手続をとり、国会に対しましては、今回憲法の条章に従い、事後にその承認を求めることとなつた次第であります、とのことでありました。
右に対し、委員より政府当局に対する二、三の質疑が行われましたが、これらの詳細は会議録によつて御了承をお願いいたします。
続いて討論に移り、日本社会党戸叶委員から希望を付して賛成の意が表明され、採決の結果、本件は本委員会においてこれを承認すべきものと全会一致議決いたしました。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/29
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030・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 両件を一括して採決いたします。両件は委員長報告の通り承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/30
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031・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて両件は委員長報告の通り承認するに決しました。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時三十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605254X01119530623/31
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