1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月十日(金曜日)
午前十一時三十一分開議
出席委員
委員長 赤松 勇君
理事 倉石 忠雄君 理事 丹羽喬四郎君
理事 持永 義夫君 理事 高橋 禎一君
理事 山花 秀雄君 理事 矢尾喜三郎君
理事 山村新治郎君 池田 清君
鈴木 正文君 田中伊三次君
田渕 光一君 野田 卯一君
三和 精一君 山中 貞則君
吉武 惠市君 佐藤 芳男君
町村 金五君 多賀谷真稔君
井堀 繁雄君 熊本 虎三君
中澤 茂一君 中原 健次君
出席国務大臣
法 務 大 臣 犬養 健君
通商産業大臣 岡野 清豪君
労 働 大 臣 小坂善太郎君
出席政府委員
検 事
(刑事局長) 岡原 昌男君
通商産業事務官
(鉱山保安局
長) 吉岡千代三君
通商産業事務官
(公益事業局
長) 中島 征帆君
労働事務官
(労政局長) 中西 實君
委員外の出席者
議 員 田島 好文君
議 員 永井勝次郎君
議 員 古屋 貞雄君
議 員 井伊 誠一君
議 員 伊藤卯四郎君
議 員 花村 四郎君
議 員 岡田 春夫君
議 員 川上 貫一君
通商産業事務官
(公益事業局次
長) 森 誓夫君
労働事務官
(労政局労働組
合課長) 山崎 五郎君
専 門 員 濱口金一郎君
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七月十日
委員荒舩清十郎君辞任につき、その補欠として
吉武惠市君が議長の指名で委員に選任された。
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七月九日
失業対策事業就労労務者の待遇改善に関する請
願(井堀繁雄君紹介)(第三二二三号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
電気事業及び石炭鉱業における争議
行為の方法の規制に関する法律案(内閣提出第
二一号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/0
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001・赤松勇
○赤松委員長 これより会議を開きます。
電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案を議題といたします。質疑を許します。
この際お諮りいたします。本案につきまして委員外の永井勝次郎君、伊藤卯四郎君、川上貫一君より発言の申出があります。これを許すに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/1
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002・赤松勇
○赤松委員長 御異議がなければ順次これを許すことといたしますが、割当時間が各自二十分になつておりますので、御協力をお願いいたします。それでは永井勝次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/2
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003・永井勝次郎
○永井勝次郎君 労働大臣にお尋ねをいたしたいと思います。時間が制約されておりますから、要約して簡単に御答弁を願いたいと思います。
石炭、電気の企業が、公共性を持つておりますことは、何人も疑義のないところであろうと思いますが、労働大臣は、石炭、電気の企業の公共性をどういう方向に発展させようと考えておられるのか。今回のスト規制にいたしましても、総合的な構想の上に立つて、その一環として出て来たものと考えますので、石炭、電気の公共企業性の発展をどういうふうに持つて行くか、その構想を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/3
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004・小坂善太郎
○小坂国務大臣 電気事業及び石炭鉱業というものの持つ公益性については、私から繰返して申し上げる必要もないと思いますが、そうした非常なエネルギーの根源であり、また基礎産業中の基礎産業ともいうべきこの二大産業の発展をはかり、その公益性をいよいよ公衆のために最も有効に発揮してもらいたい。日本産業を振興し、国民生活の安定に十分寄与せしめたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/4
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005・永井勝次郎
○永井勝次郎君 企業の公共性を発展させるためには、企業の社会化の方向をとらなければならないと考えるのでありますが、労働大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/5
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006・小坂善太郎
○小坂国務大臣 そうした石炭なり電気なりというものが、広く社会の全般の役に立ち、公共性を十分に発揮することを期待いたしております。社会化の方式といいますと、これは企業経営それ自身になりますので、私といたしましては、現在の方式がよい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/6
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007・永井勝次郎
○永井勝次郎君 たとえば、石炭国管を廃止した、あるいは電気における日発を九分割した、こういうことは、こういう企業の公共性に対する社会化の方向、少くも公益性を発展させるという方向をとつておるのか、あるいはこれに逆行しておるのか、これに対しての見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/7
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008・小坂善太郎
○小坂国務大臣 こうした基礎産業中の基礎産業ともいうべきもののコストが、できるだけ低廉に生産されるということは、結局社会公衆のためになる、こう思うのであります。そうした目的からいたしまして、企業に従事する者、そこに全般に働く人々の間に、できるだけ創意くふうというものを生かして行きたい。そうした活発なイニシアチーヴというものが、そうしたものを発展させる原動力になると考える、その方向がよいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/8
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009・永井勝次郎
○永井勝次郎君 私の質問に対する答弁にはなつていないと思いますが、石炭国管を廃止したことは、石炭企業の社会化の逆行か、発展か。あるいは電気企業をああいうふうに分割したことは、企業の公益性を発展させる真の社会化になるのか、それに逆行するのか、この点をイエスかノーか、はつきり言つていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/9
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010・小坂善太郎
○小坂国務大臣 その企業の国有的な形態、あるいは私企業の形態というような、その形態自身が社会化の方向であるかどうかということよりも、私としましては、むしろそれに携わる者自身の心組みが、そうしたものを社会的に有効に使わせるような方向に向いておるかどうかということが問題であろうと思いますので、私の答えはイエスであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/10
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011・永井勝次郎
○永井勝次郎君 石炭のコストの引下げにどれほど役に立つているか。たとえば、終戦後何千億という金を投資していると思います。あるいは炭住その他についても、相当の投資をしておる。それがみんな金利を負けてやらなければならない、あるいは貸した金がたな上げになつておる。こういうような状態であり、石炭の単価高ということが、現在日本の貿易産業における大きなマイナスの条件になつておる。ただいま石炭国管を廃止したことが、少しもプラスの条件に動いていないではないか。あるいは電気の方面においても、九分割されたことによつて、水火調整その他が非常に困難な状態になつて来ておる。こういう点を、労働大臣はどういうふうに考えるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/11
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012・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私の申し上げております趣旨は、たとえば石炭が、国家管理中においての採炭の一人当りの量というものは、国管廃止以後において、個人的なイニシアというものが認められて来た点も、相当大きな部分かとも思いますが、ただいま十二トン程度になつておると思います。そうしたことは、結局そうしたもののコストを引下げることになる、こう思つております。ただ全体といたしまして、日本の物価それ自身が、国際的な水準から見て割高にあるという事実は、認めなければならぬと思いますが、それは今御指摘の点だけが原因とは考えておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/12
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013・永井勝次郎
○永井勝次郎君 それならば、二十七年度における日本の長者番付の二十番までのうち、十七名が石炭業者である。こういうような非常な利潤をこれらの業者が得ておる。これに準じた利益というものは相当にあると思うのでありますが、業者個人は非常な利益をあげていて、炭価そのものは下らない、個人の労働生産性は非常に上つておるが、単価は下らないというのは、どういうところに原因があるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/13
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014・小坂善太郎
○小坂国務大臣 長者番付において炭鉱を経営する方が上位におかれるということは、私も実は承知しております。これは私の専門外でありますが、やはり会社として見た場合は、そう高位にはないのではないか。そういう石炭業というものが、個人によつて営まれるために収益が多い、こういうふうに結果が出ておるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/14
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015・永井勝次郎
○永井勝次郎君 たとえば、肥料の値段が非常に高くて、輸出の面においては出血をしなければ出せない。国内には、輸出価格から見れば一俵三百円もの高い価格で売つておる。こういうようなことで、肥料の価格問題が非常にやかましくなつて、昨年から政府においても審議会を特設して、これらの問題に対処いたしております。ところが、いまだに生産原価というものがはつきりいたさない。高い、安いということは、結局水かけ論である。突つ込んで行けば、どういう法的根拠によつて私企業の内容にまで立ち入つて、そういうことを調査しなければならないかという反撃が、業者から起つておるという状況であります。そうして業者の方からは、こういう出血分については、何らかの財政的な補助を待たなければやつて行けないという要求がなされておる。われわれはこういう生産原価の問題を、肥料の場合に例をとつて考えてみましても、業態が違うわけでありますから、金利がどういうふうになつておるのか、あるいは入手しておる原料炭の価格はどうなつておるのか、こういうことがいまだにはつきりいたさないのであれます。われわれの調べるところによりますと、ガス法による肥料会社におきましては、燃料炭としては一トン七千円内外である、あるいはコークス炭においては九千五百円から一万円というような高価のものを入手しております。またこれらの工場は、三菱であるとか、三井であるとか、住友であるとか、炭鉱を経営しているものが、その原料を肥料の方面に向けて生産しておる。肥料会社に高い価格でこれを売つて、そこから超過利潤を炭鉱の業種が吸い上げておる。こういうような事実も、われわれは明らかにすることができると思うのでありますが、こういうふうに、現在赤字である、どうであるというふうな、肥料のようにはつきりと出ている問題においても、たとえば輸出して砂糖をバーターで入れて、砂糖について肥料一俵あたり百二十二円というような利潤をあげておるのであるが、これを肥料の計算の中に入れないとか、いろいろなごまかしておる点がある。そういう問題が、これほどやかましくなつて審議会を設けて、議会でもこれだけ問題になつておる肥料の価格原価が、いまだにはつきりとしないような私企業の現状であります。そういうような問題の中で、石炭なり電気なり、公益性のあるこれらの企業をどういう状態において政府がその企業の中において公益性を発展させることが可能であるという御見解を持つのであるか、その根拠を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/15
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016・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私の専門外の、担当以外の問題でございまして、私がこういうことを詳しく申し上げることは、いかがかと思いますけれども、せつかくの御質問でございますから申し上げます。ただいま肥料の問題を例にあげてのお話でございますが、肥料というような化学工業になりますと、非常に複雑化しておると思います。政府は肥料審議会等を設けまして、このコストについて妥当なものを見つけたいということで鋭意努力いたしておりますけれども、これは石炭や電気の場合ですと、原価構成はよほど簡単になるのではないかと思います。従つて、こういう問題についての適正なる原価が那辺にあるかということを見ますことは、ただいま御指摘の化学工業の場合と比べますと、はるかに容易ではないかと思います。そこで電気に関しましては、通産省におきまして公益事業局がありまして、これを十分な管理をしておるものと考えております。石炭につきましても、やはり鉱山監督局等においていろいろ折衝しておりますれば、その間におのずからなるものはわかつて来ると考えるのであります。一般の問題といたしまして、日本の物価が国際的に比して非常に割高であるという事実、これをいかにすべきかということは、ただいまの御指摘のこととやや違うのでありますけれども、私どもとして、非常に大きく取上げなければならぬ問題と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/16
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017・永井勝次郎
○永井勝次郎君 こういう問題を労働大臣にお尋ねするのは、お門違いのように考えられますけれども、少くも労働行政を扱い、しかも石炭、電気というような基幹産業に対するスト規制を行おうとするこの前提は、やはり石炭電気に対する企業全体の考え方から出発しているものでありますから、単に労働行政の部分だけを答えればいいという関係ではないと、私は考えるのであります。先般通産大臣に、輸出入貿易におけるアンバランスの八億を、今後どういうふうにして埋めて行つたらいいか、コスト引下げをどうしたらいいか。こういう通産委員会の質問に対して通産大臣は、金利の引下げ及び税金の減免によつて当面八%内外のコスト引下げは可能である、こういう答弁でありました。これに対してわれわれは、それならば企業の合理化はどういうふうにしてはかるのか。企業の合理化は非常に時間がかかる問題であり、四年か五年の間企業が持てるかどうか、心配な状態で、速効薬はこういう方向でやらなければいけない、こういうようなお答えでありました。そういたしますと速効薬的な基本的な企業の合理化というもので盛り上げて、国際市場における競争力を培養して行くという方向をとらないと、ただ税金を下げる、金利を下げる、それで八%——これはばかでもやれることである。またこういう企業の合理化の方向を労働者の首切りに持つて行く、あるいは賃下げに持つて行く、こういう形で合理化をはかつて行く、あるいはコストの引下げをはかつて行く、こういう方向をとりますならば、これはばかでもやれることでありまして、そういうことが妥当か妥当でないかということが、ここに論議になるわけであります。従いまして、スト規制の問題を論議いたしますためには、それの基本となるこれらの問題の原因を明らかにして行かなければならないと考えるわけであります。そこで、労働大臣に重ねてお尋ねをいたすわけでありますが、たとえば電気の問題であります。現在九分割されましたために、水火調整が非常にむずかしくなつて参りました。漸次それぞれの独立した企業採算制をとつて行く方向にある。そういたしますと、四国であるとか九州であるとか、あるいは北海道であるとか、こういうところは電気料金が非常に高くなる。あるいは中部、東京、東北、こういつたところは電気料金が非常に安い。そうしますと、こういう配分による電気料金によつて、企業の立地条件というものは、もう固定した条件ができてしまいます。どのような企業計画をもちましても、北海道には電力を使う企業は成り立ちません、四国には成り立ちません。こういう電気の公益性といいますか、そういうものを九分割によつて非常に阻害をしておる。積極的な発展を阻害しておる。こういう問題について、労働大臣はどういうふうに考えるか。あなたのお父さんは、この電気の企業の面においてこれを取扱つた。あなたはこの労働者の弾圧の方を取扱う。親子手わけしてこういう企業の合理化をはかるということに対しては、われわれは断じて許容できないのであつて、この点に対する大臣の御所見を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/17
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018・小坂善太郎
○小坂国務大臣 企業形態をどうするかという問題につきまして、永井さんの御主張の裏には、国家管理、国家による強制的な統制というものがあるように伺われますが、私は個人のイニシアチーヴというものをできるだけ活発に働かして行く方がいい、こういうふうに考えております。通産大臣が言われました金利の引下げ、あるいは税金の減免によつて、企業をできるだけ助成するという考え方は、これは競争力といいますか、個人のくふう創意を重く見させる考え方でありまして、そうした面だけにおいて保護されながら、企業界の荒波の中にはうり出されるということは、ばかではできないのであります。非常な困難が伴う。反面国家の管理によつてやります場合には、国家の助成保護がございますから、割合に手をこまねいていても、企業の経営というものは心配ない。そこで全体としてコストは一定でありまして、それを安くするためには別に補給金を出す。その補給金は何かというと、結局国民の税金になるのでありまして、そうした面からいつて、日本経済全体の復興のためには、そういう補給金制度をとらない方がよかろう。国家統制というものは、現在の段階においてあまり有効な働きをしない、こういうような考え方を私どもは持つておる次第でございます。
ただいま御指摘の九分割の結果といたしまして、地域的に電力事業の立地性というものが非常に固定化してしまつておるのではないか、こういうお話は、私も一面においてそういう点があると思います。しかしながら、御承知のように、現在におきましても、九州等においても、あるいは四国においても、それぞれ非常に活発な創意くふうによつて新しい電源の開発がなされていることは、御承知の通りであります。そういう点からいたしまして、国家の金融による助成あるいは税制の面による助成、そうした面において私はその間に電力事業というものは発展し得る素地を十分持つておると思います。他面私どもの郷里のようなところにおりますと、これは立地条件が非常によろしいのであります。よろしいのでありますが、ああいう統制時代には、発電所に近い場所におりましても、十分にその電気の恩恵に浴することができない立場にあつたのでございます。しかし現在は、その地方においては、この九分割によるところのそうした事業の活発化が促進せられておりましてこれは全体として総合的に見れば、私は現在の方がよろしいのではないか、こういうふうに思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/18
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019・永井勝次郎
○永井勝次郎君 時間がありませんから終りますが、今、日本の国の独立、民族の独立の基盤となるものは、経済の自立である。その経済の自立をどういうふうにやるかということは、朝鮮特需なり、そういうもののなくなつた今日、大きな転換を要するのであります。その転換の方向を、今通産大臣は、税の減免と金利の引下げ、それで足りなかつたら補助金を出してやろう、こういう形によつてこれを穴埋めして行こう、一面労働大臣は、労働者の首切り、それから労働者の弾圧、賃金の引下げ、こういうことによつて合理化をはかつて行こうとする。それぞれ手わけをしたやり方によつて大衆を弾圧し、大衆を搾取する形によつて、少数の独占企業の利益をはかろうとするその立場はわかるのでありますが、われわれは大衆の立場において、こういうものを粉砕して行かなければならない。手取り早くMSAにぶら下つて、日本の青年を外国に身売りさせて青年を売込んでやろうとするようなやり方は、われわれは断じて賛成しがたいのでありまして、時間がありませんからこれで終りますが、これが吉田自由党内閣の経済政策の一つの具体的な、端的な表現であることを了承しまして、私はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/19
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020・赤松勇
○赤松委員長 伊藤卯四郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/20
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021・伊藤卯四郎
○伊藤卯四郎君 労働大臣にお尋ねをいたしますが、このスト規制法をもつて、日本の産業平和維持に最善なものと、今なおお考えになつておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/21
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022・小坂善太郎
○小坂国務大臣 スト規制と今俗にいわれておりますが、ここに議題になつてります法律案は、本来社会通念上非である、あるいはまた争議行為として不当であると考えられるものをここに明確化する、こういう考え方であるわけでございます。伊藤さん御承知のように、炭鉱の保安要員の引揚げということは、今後とも行わるべきものではないという考え方が、もうすでに成熟しておると思います。あるいは炭鉱の温水あるいは有毒ガスの充満、そうしたようなことを来しますれば、これは労調法三十六条におきましても禁ぜられておる行為でございますし、また炭鉱が荒廃に帰するということは、争議が解決したあとに勤労者が入つて行く職場を失うことでございますから、これは労組法第一条第二項によつて明確にせられております。正当ならざる争議と考えられます。それがいけないのだ、こういうことを申すのでございまして、私どもは決して正当な争議権を弾圧し、争議権を奪うというようなことは、毛頭考えておりませんから、どうぞ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/22
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023・伊藤卯四郎
○伊藤卯四郎君 坑内保安を維持するために、これをつくらなければならぬということをおつしやつておりますが、そういう事実がございますか。その事実があつたら、ひとつお聞かせ願いたい。おそらく昨年のあのストの当時のことをお考えになつておられると思うのであるが、別段に保安を放棄したという事実はございません。ただ準備行為を指令したというだけでございます。しかも、それを拒否したのはだれか。それは山元で話ができないから、鉱業連盟に相談をした。連盟が、相談することを拒否しておる。事実その保安自体を放棄した事実はないが、仮定の上に立つてこの法律をおつくりになるという御意思ですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/23
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024・小坂善太郎
○小坂国務大臣 昨年の実績は、お話のように準備指令が出た。しかし、準備指令が出るということは、やるという前提がなければ、準備指令は出ないと思うのであります。現在もなお、そういうことはやらないのだというお話は聞きませんので、やはりこうした法律を出しますことは、現実の必要がありましよう、こう考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/24
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025・伊藤卯四郎
○伊藤卯四郎君 そういう指令を出した、あるいはこういうことをしやべつたというようなことで、一々法律をつくるということになつたら、これは大よそいかなる独裁専制国にも例を見ないことだと私は思う。世界的にも、こういう法律はございません。それからまた事実を大臣も指摘されることはございません。ただいまおつしやつたように、準備指令を基礎として、今後やるであろうという想像、仮定の上に立つてこういう法律をつくられるということは、憲法との関係において、この憲法をはなはだ無視するというか、労働者の自由と尊厳を尊重しない行為であると思うが、この点に対してどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/25
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026・小坂善太郎
○小坂国務大臣 そうしたことは世界中にないとおつしやいますけれども、世界中に、現実にこうした指令を出すおそれのあるような争議行為というものは、ないのではないかと思つておるのであります。そこで、そうした内容を持つものがあれば、これは困るのだ、こういうことを確認しておきたいという次第でございます。
なお、憲法との話がございましたが、私どもの解釈では、憲法第二十八条の労働基本権というものは、やはり十二条、十三条を前提としてつくられておる。すなわち、公共の福祉を阻害してはならない、公共の福祉のために労働基本権というものは使われなければならないのだ、こういうことを予想されてできておるものだ、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/26
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027・伊藤卯四郎
○伊藤卯四郎君 公共々々と、政府はよくおつしやるが、公共福祉ということは、国民のうちの大多数ともいうべき働く者も、その公共の福祉を受ける一人であると私は思うがどうか。しかも、その上に立つて労働者が自分の職場、自分の生活、自分の幸福を守ろうとするものである。これを公共の名においてその自由、尊厳を剥奪するがごとき世界に類例のない法律を、仮定の上に立つてつくられるということ、これは何人といえども新しい憲法の上に立つては承服できないものであると私は考える。しかし、そういうことは見解の相違ということになるであろうから、私はさらにそうしたりくつは申さないが、この法律をおつくりになつても意味がないということを、私は申し上げる。これについて労働大臣の見解を聞くのであるが、かりに組合側で、この争議が長引いて行つて、いよいよ重大な決意を持つて断行しなければならないということになつた場合には、この法律があつてもやります。この法律がなくても、それをやる場合には、保安法によつてこれは犯罪になるのでございます。これを突破すれば、この法律にかからなくても保安法にひつかかるのに、何のために、ことさらに第一次陣営、第二次陣営というようなことで、こういう陣営をつくらなければならぬか。これこそが経営者側を擁護するところの一つの防波堤としてつくられるもの以外の何ものでもないということを考えるのであるが、そういう点についてどのようにお考えになつておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/27
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028・小坂善太郎
○小坂国務大臣 昨年の苦い経験でございますが、あのときは緊急調整が出まして、保安要員の引揚げというものも同時にやまつたのでございますけれども、私どもとしましては、ああしたことがなされるのは、やはり法律の解釈が明確でなかつたということが、一つの原因にあるのではないかと思つております。従いまして、法律解釈を明確にしておくということによつて、かえつてそうした危険を冒す方の少くなることを期待しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/28
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029・伊藤卯四郎
○伊藤卯四郎君 そうすると、あの保安法というものは、政府の中でどのように保安を維持するということについて、解釈がいまだに明らかになつておらぬものですか、この点も伺いたい。さらにあの争議が長期化したということは、いわゆる労働者側、ストライキ行為をとつた者のみが悪いとお考えになつておるかどうか、この点も伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/29
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030・小坂善太郎
○小坂国務大臣 昨年の場合は、御承知のように政府声明を出したのであります。しかし、あえてああいう指令を出したのでありまして、こうした法律を出すことによつて明確化しておくことが、ぜひ必要であろう、こういうふうに考えておるのであります。争議の原因その他につきましては、ここでもいろいろお話が出たのでありますが、やはり経済的な要求、あるいはいわゆるノルマでございますか、そうしたものの考え方が、労使双方において大きく食い違つたものであると思いますけれども、やはり私ども政府としては、そういう問題に介入しないで、労使双方の良識の慣行の成熟にまつという態度をとつて参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/30
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031・伊藤卯四郎
○伊藤卯四郎君 政府は、いまだかつてないというほどのあの大きな長期の争議を解決し得なかつた。遂にああいうような非常処置ともいうべき汚点を残す措置をとつた政府は、あの争議をあすこまで長期化させ、ああいう手段をとつたということに対して、みずからの無策、無能というか、そういうことに対して、いささかも責任をお感じになつておられぬかどうか。政府は最善の処置をとつておつたとお考えになつておるかどうか、この点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/31
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032・小坂善太郎
○小坂国務大臣 昨年の争議に際しましては、政府としては、あるいは勧告により、あるいは話合いを進めることによつて、できるだけの努力をしたものと心得ております。ただああした争議というものは、国民全体に対して非常な災厄と申しますか、非常な被害を与えるものでございますから、今後はああいうことのないように、あるいはここにありますような法律によつて、これを御遠慮願いたいということを明らかにいたしまして、一方において、できるだけ労使間の円満なる話合いのできるような場をつくるということに努力して参りたいと思います。繰返して申しますが、この法律は、決して従来あるところの争議権を剥奪するものではなくて、社会通念上不当であると考えられるものを明確にするということに考えておるのでありますから、さよう御了承を願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/32
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033・伊藤卯四郎
○伊藤卯四郎君 政府が、あの長期化した争議中においても、今労働大臣がおつしやるような努力をされた跡を、私どもは知りません。最後の最後まで絶えず言われておつたことは、当事者双方の自主的解決を期待する、期待するとおつしやつておりました、私は今、時間もありませんから、どのような努力をされたかということをここで追究はいたしません。小坂労働大臣は若くてわれわれは将来を期待する良心的な人であると考えております。そういう点から、おそらく胸に手を置かれると、こういう法律を出すことは、あまりに残酷であるというお考えをお持ちになつておると私は思つておる。しかし、そういうことは見解の問題になりますから、私は申しません。それで時間の関係で多くを申しませんが、私がなぜ炭鉱経営者のみを有利とするということを申すかというと、あのストライキが長期化することに、炭鉱経営者は苦痛を感じておりませんでした。ちようどあの当時は、石炭炭価の改訂期でありました。トン当り少くとも三百円から五百円、六百円、炭価値下り契約をしなければならなかつたということは、あの当時の実情でした。そこへあのストライキが長引いて来ましたので、貯炭がなくなつて来る。そういうところから、値下げ契約をしなければならぬものが、従来通りの契約ができました。逆に値上げ契約ができました。そのために炭鉱経営者は一月、二月、三月、この間でストライキ中の損害を完全にとりもどしました。通産大臣もおられるが、おそらく通産省では、こういうことはおわかりになつておると思う。労働大臣も、おそらくそういう点は閣議においても御承知になる点があろうと思う。そういう状態のところにおいて起つたストライキを理由として、この法律をつくられるということは、何といつても片手落ちであるということは、政府は弁明の余地はございません。
そこで、私は最後にお伺いしようと思うのは、こういう処置をとる前に、敗戦日本の復興をし、産業、経済を再建し、国際的に取組んで闘い、勝つためには、心からなる労働者、労働組合の協力に期待しなければならぬ。私はそう思う。ところが労働大臣は、そういうことではだめだ、やはり法律をもつて規制し取締るところに能率化の問題、生産費を下げる問題が解決できるのだ、そういうことをお考えになつてこの法律を出されたのかどうかを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/33
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034・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私は民主的な労働組合が、自主的にわれわれの国土、われわれの産業を興して行く気持を衷心から奮い立てて持つていただきたいと考えております。政府の施策も、そういうものの方向に沿うごとく、ことに労働省といたしましては、できる限りその方向を助長するようにしなければならぬと考えているのであります。しかしこの法律は、実はそうしたものを阻害するという意図は毛頭ないのでありまして、昨年の経験にかんがみて、本来不当である、あるいは社会通念上非であるというものを確認するものでありますから、これはこれでひとつ御承認を願つて、一つのルールの上に立つた労使対等の立場において十分にその間に主張を述べられる、その主張の話合いを通じて日本の発展に御努力をこいねがいたい、こう思つているのであります。
余談でありますけれども、先般来労働問題協議会というものを提唱しておりましてこの国会でも終りましたころには、ただちにそうしたものをつくりまして、自由にものを言える方々に、労使双方にも御出席を願つて日本の現状、経済の現状、世界全体の動きとにらみ合せながら日本をどう持つて行くか、その中における労働問題はどうあるべきかということについて、隔意ない話合いをしながら、日本の発展を進めていただくような場をつくりたい、こういうように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/34
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035・伊藤卯四郎
○伊藤卯四郎君 今労働大臣は、労使の協力ということをおつしやいましたが、これは私どもも考えるところであります。そこでこの協力ということをお考えになつておるならば、西ドイツの政府が敗戦ドイツを再建するために、共同決定法と申しますか、そういう法律をもつてして、特に石炭、鉄においては経営の互角な態勢というか、つまり労働と資本と対等の資格で経営をしておる。たとえば重役も五分々々に出す。これに自信を得た西ドイツ政府は、さらに全産業の労働者に経営権の三分の一を許したということをその後発表している。労働大臣は、労働者の協力ということをお考えになつておるなら、この法律を出される前に、そういうことをお考えになる余地はなかつたのか。さらにこの法律とともに、また並行して、労働者の経営参加の問題、労働者に責任性と協力との態勢をつくり上げるということをお考えになられなかつたかどうか。どういう点で、協力の真に具体的なそういうものを落されたのか。この協力ということは、単なるゼスチユアにすぎないということをいわざるを得ないから、こういう点を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/35
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036・小坂善太郎
○小坂国務大臣 この法律案を提案いたしましたのは、本会議でも申し上げましたが、前国会におきまして本院を通過しておりまして、参議院において審議中に解散になつたのでございます。私は院議尊重の建前からも、またただいま申し上げましたような、決して労働者の争議権を剥奪するものではない、本来の当然のことを明確化する趣旨のものであるという立場から、これを提案いたして御審議を願つておる次第でございます。ただいまお話のありました西ドイツ等におきまする同意決定法と申しますか、企業経営参加法というようなものにつきまして、最近いろいろな人がレポートを送つて来ております。四、五日前に、産経に経済同友会の郷司浩平君が論文を載せておりましたし、世界週報の七月一日号に、稻葉秀三君がやはりこれについての意見を述べておられる。この二つの意見を通して私に感得せられるものは、この法律自体はそれほど重要なものではないのだ。西ドイツの産業復興がいろいろ言われますけれども、その復興の推進力になつているものは、むしろそうした法律ではなくして、ドイツ労働者自身の愛国心であるというようなことを強調しておられるようでございます。しかし、重要な問題でございますから、私も今後この問題はいろいろ研究させていただきたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/36
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037・伊藤卯四郎
○伊藤卯四郎君 愛国心ということを言われますが、私は日本の労働者は、愛国心の点においては、世界各国の中においても、歴史的な民族であつたといえると思うのであります。そういうことは、もうここで申し上げる必要もないが、今おつしやつたようなことでこの法律をおつくりになるということになりますと、日本の労働者には、国家再建に対し愛国的な精神が欠けているから、こういう法律をつくつて規制せなければならぬというお考えに立つてやられているようにも考えられる。そういうことであるとするのなら、この法律をつくつたために、逆に電気なり炭鉱の労働者側から大きな反響が起ることを、予想されなければなりません。そういうことが起るならば、かえつて日本産業の復興再建の上に、また社会問題の上に、非常な危惧すべき事態を考慮せなければならぬ。この法律をつくつてどこに益するところがあるかということを、具体的におつしやるなら、承りたい。私はこの法律をつくつて、労働者が、電気においても炭鉱においても、協力精神とは逆に、反撃的な状態が感情的にも起つて来ることを知つている。この法律をつくつて益するところはありません。もし、この法律をつくつて、かえつて炭鉱なり電気なりに平和があるのだ、能率が上るのだ、国家の興隆になるのだということをお考えになつているのだとするなら、それは資本家的であるし、それごそ自由党吉田内閣の反動性を暴露する以外に何ものもないと思う。こういう点につきまして、私は時間がありませんからこれ以上申しませんが、今後の労働政策の問題は、この法律を通じてずいぶん長く議論されているから、もう耳にたこができるほど、慢性になるほど大臣はお聞きになつていると思うが、一体そういう考え方だけで今後の労働政策をやつて行こうとされるのか。この法律は益するところはなくて、かえつて逆な結果が起るから、むしろこれは労働組合側の協力を得るために撤回した方がいいという明るい気持になつてこれを撤回されるようなお考えがあるかどうか、最後にその点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/37
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038・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私は、西ドイツの同意決定法に関連しまして、そのレポートを送つて来ているものの二人の意見を総合すると、法律よりも、やはり自分の国を復興させようという愛国心の方が、ドイツにおいては重く見られているということを申したので、日本の労働者諸君に愛国心がないなどということを、言つた覚えはもちろんございませんし、そういうことは毛頭考えもいたしませんことを、明らかにしておきたいと存じます。
この法律は、ただいまも繰返して申し上げた通り、決して労働者の争議権を剥奪するものではなくて、昨年の苦い経験にかんがみて争議権と公益との調和をはかろうというものでございます。伊藤さんも御承知のように、イギリスの例の三角同盟ストのあつたあと等におきましては、これをやはり禁止する法律をつくつておりますが、そういう法律ができたからといつて、労働者諸君がそつぽを向いたわけではないので、その一つのわくの中において祖国を愛し、自分の国を繁栄させようという熱意に燃えて、非常な苦心をされて、そうして今日のイギリス労働組合の発展の基礎をつくつて来られたのでございます。二七年にできたこの法律は、四六年に廃止せられたのでございますが、私としましては、これを三箇年提案いたしまして、その間に完全な労使の良識ある慣行の成熟を待つ、こういう態度に出ておりますので、何かと今後においても労働組合員諸君の御協力を得る施策を、できる限り講じたいと思いますので、御協力を煩わしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/38
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039・伊藤卯四郎
○伊藤卯四郎君 時間がございませんから、私はこれで申し上げることはできませんが、私はおそらくは、労働大臣もほんとうの腹は、出したくないのだというようにお考えになつておると信じておる。そこで、できるならこの際労働大臣は、大いに将来のある人だから、あまり日本の財閥やら資本家に拘束されないで、また党内にも拘束されないで、良心的に労働者の協力の上に日本再建をはかるという考え方に立つて、勇気を奮つて、むしろ労働大臣がこの法案を自分の首にかけてもひつ込めてしまうというように奮起されることを要望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/39
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040・赤松勇
○赤松委員長 川上貫一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/40
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041・川上貫一
○川上貫一君 労働大臣は、スト権を剥奪するようなことは考えておらぬ、こういうような答弁を今されておるのですが、それはうそです。どういう形においても、こういう法律をつくることは、これはスト権の剥奪です。国家公務員法が、スト権の剥奪でないとはいえない。もしスト権を剥奪する意思が政府にないのなら、国家公務員法をすつかりやめてしまつたらよろしい。問題はそこではないのです。私の聞きたいと思うことは約三点ほどしかないのですが、政府はいつもこのスト権の剥奪を公共の福祉、公共の利益ということでごまかして来ておる。今回もそう言うておる。そこで、その問題についてちよつとお聞きしたい。
日鋼赤羽の労働者は、先日ストライキをやりました。あのストライキは、アメリカが発砲しておる前に、これに抵抗しながら勇敢にストライキをやつておる。そうしてこのストライキの結果、大幅な値上げを獲得したし、組合活動の自由を獲得しております。これは公共の福祉に合うと思うか、合わぬと思うか、このお考えをまず聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/41
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042・小坂善太郎
○小坂国務大臣 お答えをいたします。御質問の趣旨が、あまりはつきりいたしませんが、あるいはその意味で答えが違つておれば御訂正願います……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/42
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043・川上貫一
○川上貫一君 それでは困る。わからぬのに答えてもらつたら時間をとるだけだ。赤羽のストライキが公共の利益に反するかどうかという、これだけだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/43
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044・小坂善太郎
○小坂国務大臣 正当なる争議行為は、当然であると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/44
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045・川上貫一
○川上貫一君 赤羽を正当と思うかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/45
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046・小坂善太郎
○小坂国務大臣 正当であり、合法的であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/46
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047・川上貫一
○川上貫一君 京都の島津の労働者が、過般三菱系の金融資本が会社を乗つ取つて、この島津を軍事工場にしようという隠謀をたくらんだときに、賃金の値上げとともに、島津を軍需工場にすることに反対し、三菱系の金融資本が島津を乗つ取ろうとすることに反対し、島津本来の平和産業を守れというストライキをやつた。こうして勝利を得ておる。このストライキは、公共の利益に合致すると考えるかどうか。
同じようなストライキを大同鋼板の労働者がやつておる。これも公共の利益に反すると考えないかどうか。
さらに今日北陸鉄道の労働者は、内灘へ送る鉄砲だま、軍需品を輸送することを拒否して闘つておる。しかし、そのほかの輸送については、全力をあげてこれを完遂することをやつている。明らかにこれはストライキである。このストライキは公共の福祉に合うと考えるかどうか、これを簡単にひとつ答えてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/47
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048・小坂善太郎
○小坂国務大臣 正当な経済要求を中心として行われる争議行為というものは、当然合法であり、妥当である、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/48
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049・川上貫一
○川上貫一君 そういういいくらいなことを返事をしてはいけない。正当なというが、そういうことじやない。北陸鉄道は内灘向けの軍需品を全部とめているということなんです。これは公共の福祉に反するか、反せぬか、これを聞いている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/49
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050・小坂善太郎
○小坂国務大臣 具体的に調べてみないと、何とも言えないと思います。
〔「時間だ」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/50
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051・川上貫一
○川上貫一君 時間でも何でもない。一体政府は委員会でいいくらいなことを言つて、それで済めばいいという態度をとつている。一体この法律はどうです。今日総評が大会をやつているが、全国三百万の労働者がこのスト規制法に反対している。そればかりではない、ほかの愛国者はみな反対している。ここでいいくらいなことを言つて、法律を通ぜばいい、こういう根性を持つているから、吉田内閣はだめなんだ。これは国民が知つている。(笑声)これを笑うているような委員がいるから、国を愛する人間でないと言われるのだ。私はこういう点については労働大臣ははつきりとした答弁をする義務があると思う。いいくらいなことを言つてはいけない。今日労働者は、私が言うたようなストライキしかやつておりません。これが今日の労働者の考え方で、今日の労働階級に対する賢明なる指導者は、この方針によつて指導している。これは決して公共の福祉に反するのでなくして、公共の利益に合致している。政府はストライキ権を剥奪するつもりはないと言つているけれども、剥奪しようとしている。それを公共の利益ということによつて合理化しようとしている。
そこで、次に聞きたいのですが、今日政府あるいは日本の資本家の一部でも、平和不況と言つて騒いでいる。毒まんじゆうのようなMSAを、たつた一億ドル受けるために哀訴嘆願しようとしているのが政府なんだ。こうして日本を再軍備に引きずり込もうとしていることは明らかなんです。全国七百五十箇所の軍事基地を、アメリカに差出して平然としている。中国とソ同盟に対する貿易は、すつかりとめるような考えでおる。その結果、日本の経済も産業も通商も、その支配をアメリカ帝国主義に売り渡してしもうて、国民の生活は破壊されて行くということが目の前に見えている。これは公共の福祉に反しているのではないか。これに労働者は抵抗しているのです。これに反対してストライキをしている。どつちが一体公共の福祉に反するのであるか、これを労働大臣にひとつ考えを聞きたい。労働大臣の考えは政府の考えだと思うから、問題はストライキ権の剥奪ということと公共の福祉ということに関係がありますから、いいくらいなことじやなく、まじめにひとつ答弁してもらいたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/51
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052・小坂善太郎
○小坂国務大臣 公共の福祉ということは、簡単に申しますれば、部分の利益に対する全体の利益、部分の利益権利というものは、社会全般の秩序利益を不当に侵さない、部分の利益、権利の主張というものは、社会全般の利益なり秩序の調和を破らない上になされるということであろうと思います。繰返して申すように、この法律案に盛られておりますところの内容は、労働者の争議権の剥奪ではない、本来社会通念上非であると、こういうふうに考えられているものの確認でございます。そういう趣旨でございますから、どうぞ御了承願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/52
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053・川上貫一
○川上貫一君 争議権の剥奪ではない、あたりまえのことを筋合いをつけるための法律をつくるので、争議権を剥奪する意思はないというのなら、公労法なんかは、すぐやめてしまうのがあたりまえなんだ。争議権を剥奪する意思を持つている。
そこで、時間がありませんから、これを議論はしませんが、次にこういうことをひとつ聞いてみたい。日本の産業を保護するということについては、ほんとうに心を寄せていると大蔵大臣は答弁があつた。労働大臣は、ほんとうに日本の平和産業の資本家を守る気があるのかどうか、中小企業の資本家などを守る気があるのかどうか。今、日本の平和産業や民族産業が、あの情ない状態になつているのはどういうわけなんだ。これはアメリカの全一支配に陥り、占領制度が続けられ、全日本が軍事基地化されて、日本が植民地的従属国となつているからこそ、民族産業、平和産業、中小企業は、あの悲惨な状態に陥つているのです。もしもこういう場合に労働の基本的権利を削り、労働者のストライキ権をなくしたらどうなるか。だれがアメリカに抵抗するか、だれが日本の自由独立のために闘う中心棒になるのですか。これを闘い取るものは、労働階級がその先頭に立たなければならぬ。もしも日本の労働階級のこの基本的権利を無視し、ストライキ権をとめて、民族の背骨を折つてしまつたならば、日本の民族産業はどうして利益をはかることができるのです。これは私は重大な問題だと思う。大きい事件があつた場合に、世界的に、勝利した民族は労働者に自由を与えている。これなくしては、国の独立自由というものはできぬと同時に、当面のような日本では、民族産業、平和産業、中小企業の利益をはかることはできない。もしもこのことを大臣が考えるならば、労働階級の基本的権利を絶対に剥奪してはならぬ。こう考えなければならぬと思うが、これを労働大臣はどういうお考えを持つておられるか、この点をお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/53
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054・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私は日本の完全なる独立というものを、心から祈念いたしております。そのように努力しているつもりであります。中小企業をどうするかというお話ですが、これについては、私の力の及ぶ限りそういうものを守るということを考えております。まじめな勤労者の争議権をどうするか、私はこれは徹底的に守りたい、こう思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/54
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055・川上貫一
○川上貫一君 政府はそういうことしか、よう言わぬかもしらぬけれども、まじめな争議は守るということを言うておるが、この法律は、これは全体の労働者の権利を剥奪する第一歩なんだ。これは官公労働者のストライキを最初にとめた、その次には、今電産と炭労に来ている。小品に来ている。公共の福祉ということを言い出すならば、今度は肥料の産業の労働者がしても農民の利益に反する、私鉄の労働者がストライキをするのは公共の利益に反すると言うに違いない。これはさまつたことなんだ。だから、全労働者はこれを知つている。それゆえに、この基本的権利を守るということのために、このスト規制法に反対しているのだ。私の聞いたのは、日本の産業、平和産業と民族資本家をほんとうに守ろうという時分に、労働階級のアメリカに対する抵抗権を奪つて、それで日本の平和産業の資本あるいは民族産業の資本の利益が守れるかどうか、その考えを聞いている。
(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/55
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056・赤松勇
○赤松委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/56
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057・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私どもの考えは、国内に敵を求めるという考えではございません。同じ民族が相提携してわが国を守り立てよう、そういうことしか考えておりません。御質問のようなことは、私どもといたしましては、当然国内の民族資本を守る。国内のあらゆる階級をゆたかにし、あらゆる国民に平和な、ゆたかな生活を享受させるということ以外にございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/57
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058・川上貫一
○川上貫一君 それはまつたく答弁にならぬ。答弁ができぬはずなんです。私の聞いているのはこうなんだ。日本の自由と独立を守らなければ、日本の平和産業自身も、中小企業も生きて行けぬじやないか。これを守るためには、国民の抵抗がなければ守れぬのだ。国民の抵抗の背骨は、労働階級だ。この労働階級の基本的の権利を蹂躪して、日本の国民の背骨を折つてしもうて、しかして日本の愛国的な産業その他の利益が守れるかということを聞いている。これは簡単だ。それに対してよう答えない、ほかのことをぐずぐず言うている。時間がないという話でありますから、私は長く述べられませんが、労働大臣はまだ年も若いし、前途ありということを言われているそうです。吉田総理や岡崎君のように、アメリカしかよう見ない人間と違うかと思うたところが、労働大臣の言うことも同じらしい。私は日本の実際の独立のためにこれを悲しむ。願わくは労働大臣は、もう少し日本人らしい根性になる必要がある。労働大臣は労働者の弾圧をする大臣と違う。労働者の基本的権利を擁護し、日本の産業の発展を考えるのが、労働大臣の仕事なんです。国内に敵をつくらぬというが、明らかにこの法律をつくつて労働者を敵にまわそうとしている。
時間がありませんから、これ以上私は言いませんけれども、この答弁によつて、私は吉田内閣なりその吉田内閣のもとにいる若いと言われる労働大臣が、どういう考えを持つているかということが、およそ明かになつたと同時に、われわれの愛国的な見地から聞く質問に対しては答えることができないという点を明かにしたと思う。
委員長、私の質問は時間がありませんから、これで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/58
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059・赤松勇
○赤松委員長 暫時休憩いたします。
午後零時三十二分休憩
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午後零時四十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/59
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060・赤松勇
○赤松委員長 休憩前に引続き会議を開きます。多賀谷真稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/60
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061・多賀谷真稔
○多賀谷委員 通産大臣に対して、二点お尋ねをいたします。昨年の電産の争議の際の停電ストが違法であるかどうかという問題に関連してお尋ねをいたしたいのですが、十一月八日の岩木哲夫氏の質問に対して——その質問は池田通産大臣に質問しております。その際に池田通産大臣は、正当な争議行為による場合は損害賠償の請求権はないのである、これは不可抗力であるから労使双方の責めでないという答弁をしておるのであります。そこで、その答弁から見れば、明らかに政府は、当時は停電ストというものは違法であると考えてはいなかつたと私は断定するのでありますが、それに対する答弁をお願いいたしたいのであります。
次いで、さらに現在の民法で行きますならば、定額燈の場合に停電をし、電力を供給しなかつた分については、反対給付の請求権はない。すなわち電気料金を払わなくてもいいというのが民法の一般規定であります。ところが、公共事業令によりまして電気供給規程がつくられております。これは当然通産大臣の認可を必要としております。その電気料金規程の中に制限があるわけで、その制限によつて若干の分しか払いもどしをしないということになつております。でありますから、もし供給規程さえなければ、電力を送らなかつた分は、要するに支払いをしなくてもいいということになるわけでありますから、むしろこういう規定はなかつた方が、よりいいと考えるが、その点に対する御所見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/61
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062・岡野清豪
○岡野国務大臣 お答え申し上げます。昨年池田通商産業大臣がそういうような答弁をしたということは聞いておりましたが、その当時はまだ停電ストなんというものは、社会通念上違法であるか違法でないかということは、決定していなかつたようであります。しかしながら、その後に情勢がかわりまして御承知の通りに、ただいまでは違法ということになつておるように伺つておりますが、しかし、その辺のいきさつは、当時の政府委員がよく知つておりますから、政府委員に御答弁させます。
それから、次に供給規程でございますが、これは民法の五百三十六条だつたと思うのでありますが、その点において考えて行けば、需用者は相当利益があるのであります。しかし供給規程によりますと、やはり一部の割りもどしはできますけれども、払わなければならないということはありません。そこで私の法律解釈でございますが、民法の規定は供給規定でございませんから、もし特約してございますならば、特約に従わなければならぬということは、私は確かだと思います。もしこれもまた社会通念がかわれば——そういうことははなはだけしからぬじやないかという通念がかわりまして、民法の規定に従つた方がいいということになれば、私はその供給規程なんというものは、相当考え直していいのじやないか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/62
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063・多賀谷真稔
○多賀谷委員 第一問につきまして、あとで労働大臣にお尋ねいたしますが、通産大臣の御答弁はよくわかりました。なるほど民法の規定は、供給規定ではありません。そこで、もし特約がなければ、私は民法の規定が適用されるのだと考えております。現在のような電気料金の契約は、これは契約の自由と申しましても、実際は需用者側は、その契約に対して異議をはさむ自由はまだないわけであります。そこでこういう規定は、当然需用者側を代表する者の意見を十分聞いて行うのが、政府の認可であると思います。でありますから、政府は当然社会通念——民法の方がむしろ社会通念ですから、そういうように改められる意思はないか、もう一度お尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/63
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064・岡野清豪
○岡野国務大臣 これは昨年非常にひどい停電ストがございましたので、需用者の方が非常に迷惑をしておりまして、迷惑しているにかかわらず相当の金を払わなければならぬという事態が起りましたから、これは再検討を要するものと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/64
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065・赤松勇
○赤松委員長 熊本君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/65
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066・熊本虎三
○熊本委員 時間がありませんから、簡単に通産大臣にお尋ねいたします。日本の経済再建を背負つて立つて行くといつても過言でない通産大臣といたしましては、その事に没頭されていると思うのでありますが、日本経済再建の基礎は、日本の生産力をいかに拡充強化するかということであろうと考えております。その生産拡充のためには、まず第一に、日本の労働者がみずから希望と期待を持つてこれに従事するその態勢の確立こそ、必要であると思うが、通産大臣はどうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/66
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067・岡野清豪
○岡野国務大臣 お答え申し上げます。お説しごくごもつともでございまして、今何をいたしましても、これは経営者といわず、労働者といわず、それに従事する人の心構えでございます。これが熱意と努力をもつて当らなければならぬことは当然でございます。従つて労働者に非常な生産意欲に燃えて働いてもらうということは、これは必要な条件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/67
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068・熊本虎三
○熊本委員 しからば、労働者が自発的に希望と期待を持つて生産にいそしむ方法、手段としては、どうすればよろしいとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/68
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069・岡野清豪
○岡野国務大臣 お答え申し上げます。これはやはりいろいろな条件があろうと思います。と申しますことは、少くとも日本の現下の情勢といたしまして、いくら働いても役に立たないというような絶望感があるのではないかということが、一部にあるようでございます。しかし、独立以後だんだんそういう気分がなくなりまして、働けばその効果がやはり上るのだということになつて来ております。そこでわれわれといたしましては、労働者が一生懸命働いて、そして生活水準も上り、また自分自身のレクリェーシヨンもできるというような幸福な時代を来させるためには、どうしたらいいかということを、労働者自身も考えておられることでありましようし、われわれといたしましては、そういうふうな状況に持つて行くように、あらゆる施策を講じている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/69
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070・熊本虎三
○熊本委員 労働者が自発的に生産力強化に努力するためには、第一には、労働者に対して生活の安定が基礎である。それから労働者の基本権を守ることである。そして進んで、できるならばドイツあたりのように、労働者もまたみずから手を下して、その一挙手一投足がその産業の中にいかなる重要な役割を果し、それがいかに国家の産業発展、経済再建のために寄与しつつあるかということ、並びに産業合理化や経営のむだ排除等に関し、労働者がみずから持てる施策をまた取入れるがごとき、人格の尊重と経営への発言権が与えられることをもつて、最大の労働意欲の完成であると考えるがどうか、はたしてその点いかがでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/70
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071・岡野清豪
○岡野国務大臣 率直に申し上げますれば、私自身といたしましては、日本の現段階におきまして、労働者が経営に参加することが、はたしてよいか悪いかということにつきましては、多少の疑問を持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/71
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072・熊本虎三
○熊本委員 それはいろいろの角度であろうと思います。少くとも人として自分の希望と期待とみずからの行動が、いかに社会的に影響し、これが国家再建に寄与するかという、抱負を実現に移し得ざる者は、これは人間としての価値はないのであります。従つて、まず労働者のまじめなる育成と、これらの持てる抱負と経論をこれに加え、さらに進んではみずからその責任を感ずるがごとき態勢こそ最も重要だと私は考えておる。しかるに今回のスト規制法がいろいろ議論されておりますが、今日の公務員がやつておりますように、どんな法律をもつてどう強制しても、労働者の納得し得ざる方法をもつてするならば、あるいは一齊賜暇もとるでありましよう、あるいは時間外拒否もするでありましよう。そういう形において日本の産業の発展があり得るとお考えであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/72
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073・岡野清豪
○岡野国務大臣 むろん私はときどき、こういうことでは日本の産業の発展はないというようなことを考える次第であります。しかし一面われわれが考えますことは、多分今回のスト制限法で、お説が出たのだと思いますが、これはまあ労働者の側から見ましても、鉱山あたりがちやんと完全に保全されてストライキはストライキでやつておりますけれども、もしこれが解決すればすぐその炭鉱で働ける、こういうふうになるのが、労働者のためにもなるのではないかと思います。それを一時の激情にまかせて、そうして自分たちの職場が壊滅してもかまわないというようなことを考えるのは、これは私は行き過ぎだと思います。そういうことがあつてはならぬから、精神的にそういうことをしてもらつては困るという意味においても、今回の法案がよいだろう、私はこう考えております。ただ私はいつも考えておるのでございますが、いろいろ刑法がありますし刑罰がございますが、しかし刑法とか刑罰というものを何も知らない人間でも、知らないがために牢屋に入る人はいないのです。と申しますことは、自分が良心的に行動しておれば、刑法は知らなくても、その刑罰に触れることはないと思います。でございますから、私といたしまして労働者がほんとうに国を愛し、職場を愛し、自分を愛し、国の平和を愛しということになれば、自分の職場がこわれるようなことになることは、お気づきになる点じやないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/73
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074・熊本虎三
○熊本委員 これははなはだ一方的偏見であるといわなければならぬ。たとえば今度の炭鉱争議の労組を考えても、そういう戦略的な決議はしたけれども、実際において保安要員引揚げはやつておりません。やらざるものを、やるかもしれないという仮定の上に立つてこれを規制する。お前はどろぼうをするかもしれぬからということで、まずその人を規制してかかるというがごとき態度は、労働者を信頼する態度ではないのであつて、信頼されざる労働者に、日本再建に心からなる協力をせよということは無理である。これは、ひとり労働者ばかりではありません。大臣にしても、あらかじめあやまちを犯すであろうという前提の上に立つて、まかされた場合における国家の政務に対する態度というものは、おのずから制約される。このことが通産大臣におわかりにならないはずはないと考えますが、もう一ぺん御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/74
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075・岡野清豪
○岡野国務大臣 お答え申し上げます。なるほど保安要員の引揚げというものは、実現はしなかつたのであります。労働大臣をしておりませんでしたから、その間の事情はよく存じませんけれども、私が確かに承つておりますことは、保安要員の引揚げを指令された事実はあるらしいのでございます。保安要員を引揚げるという指令が出て、これがいろいろの事情でやまつたのでありましようけれども、これが出たということそのもので、私は社会不安を起したのではないかと思います。と申しますことは、非常に激しておる労働者諸君は、自分でそういうことを決議してやつたかもしれない。その労働者の家族は、そのときに一体どんな感じがしたであろうと思うのであります。もし事情がわかつておりますならば、うちのおやじはあんなことを激情にまかせてやつておるが、それをつぶしてしまつたならば、そのためにおやじの職場がなくなつて、われわれは一体食わしてもらえるかどうかという心配を起したのではないかと思います。そういたしますと、世間一般の人もやはりそういう心配を起すのではないか。そういたしますならば、そういうことはせぬ方がいいのだということをはつきりしておいた方がいいのではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/75
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076・熊本虎三
○熊本委員 時間がないから、簡単に申し上げますが、われわれは逸脱したたる争議行為を肯定しておるものではありません。しかしながら、先ほどから言うように、まじめなる労働者がやはりみずからの産業に対する責任を感じながら、喜んでこれに参画するという労働行政があつてしかるべきである、逸脱したる者は法の命ずるところでやつたらいいであろう。何回か労働大臣は、これは元からあるもので、あらためて規制するものではないと言つておる。それならば、それでやつたらよろしい。われわれは、逸脱したる争議行為であつても何でもよろしいという立場において、ものを言つておるのではなくて、少くとも国家を愛し、国を愛し、労働者の本分をまじめに尽しながら、そこからいかにして妥当なる待遇を受けるかというこれらの労働者をも含めて、逆に圧迫するがごとき行為は、得策ではないではないかということを言つておるのであります。この点について、直接この法が通過すれば、通産大臣にも影響甚大であろうと思うから、お尋ねをいたしておるのであつて、その点もう一度御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/76
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077・岡野清豪
○岡野国務大臣 お答え申し上げます。先ほども申し上げましたように、国家を愛し、また家庭を愛し、社会の平和を愛するという人ならば、炭鉱がつぶれたり、自分の職場がなくなつたりすることはまつたく逆な事態でありますから、そういうことをしてはならぬということを言うことは、あなたのお説の通りに国家を愛し、社会を愛し、家庭を愛するという主義にも一致するのではないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/77
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078・熊本虎三
○熊本委員 やつておらないことを、やつたならばという仮定がいけない。どろぼうするであろうという建前で、あるいは通産大臣はおおむね失敗するであろうという建前で大臣の職責をまかされたら、一体どうしますか、そういうことをわれわれは注意すべきではないかということを言つておるのでありますが、もうこれから先は言いません、時間もありませんから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/78
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079・赤松勇
○赤松委員長 暫時休憩いたします。
午後零時五十九分休憩
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午後二時五十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/79
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080・赤松勇
○赤松委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。高橋禎一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/80
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081・高橋禎一
○高橋(禎)委員 私は法務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。その第一は、今、審議中の法案について考えてみまするのに、私は勤労者の団結権、団体交渉権、団体行動権は、公共の福祉に反する内容を持つておるべきものではないと思いますし、またそれらの権利は、公共の福祉に沿うように利用されなければならないものであると考えておるのであります。しかしながら、公共の福祉という観念をもつて、ここにそれに反するか反しないかという限界を定めることは、これはきわめて困難なことであると思うのでありまして、私どもはこの法案審議にあたつては、非常に慎重な態度をとつて参つたわけであります。この際お伺いいたしたいことは、主としてその運用の面に関する点でありますが、本法案が従来不当とされておつたものを確認するということにありましても、あるいはまた創設的なものでありましようとも、今それを問題にしようとするものではありません。こういうふうに勤労者の争議権というものは一つの限界がありますので、その限界を守ります場合に、労使双方の均衡が破れるというようなこともあるのではないかということが、私どもの頭に浮んで参るわけであります。争議権を公共の福祉という線でもつて制限を加えますと、その制限外の行為は不正のものとして、労働組合法第七条不当労働行為に関する問題として、勤労者が不利益を受ける、あるいはまた第八条の規定に従つて損害の賠償を請求される、こういうこともありますが、私の最も憂えますことは、犯罪に関連する問題として、もしも法務大臣の所管であるところの検察権の運用という点において誤つておれば——かりにこの法律が正しく運用される場合において、労使双方の均衡を破るものでないというふうな御説明が、労働大臣からはあつたわけでありますが、また労働行政として、かりにこの法律は実施することによつて両者の均衡を破るというような場合には、これは経営者側に対して適当なる措置を講じて、両者の均衡を保つようにされるはずなのであります。ところが、そういう労働政策が行われて参りましても、検察権の誤つた行使があると、これもその均衡を破るということになります。もしも犯罪の捜査の段階において、あるいはそれを起訴にする、不起訴にするという公訴権行使の段階において、もしも労働者側に不利益な取扱いが行われるということになると、検察権の行使によつで労使の均衡を破るということになるのです。私はその点を思いまして、もしも検察当局の行動によつて、せつかくの労働政策も、あるいはまた労働法規の理想としておるところも、踏み破られるということがあつては相ならぬと思いますので、その点は十分法務大臣において考えられなければならぬと思う。すなわち労使双方の協調を破つて——憲法が理想としておるところの労使双方の均衡を保ちつつ契約自由の原則を守つて行こうということ、この憲法の精神を、法務省がまた人権を擁護しなければならぬ立場にある検察当局が、これを破つて、そして憲法の精神が蹂躪されるというようなことがあつてはならないと思います。従つてこういう勤労者の争議権の行使、団体行動に関する事案について、一体どういう取扱い上の根本的なお考えをお持ちになつておるのであるか。少くとも検察当局においては、労使双方の均衡を保つことは憲法の精神であるということは、これはお考えになつておられなければなりませんが、その捜査権及び公訴権の行使にあたつて、どういうお考えでこれに処せられようとするのか。これは前回にも多少触れたところでございますけれども、この際法務大臣の明確な御所信を伺つておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/81
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082・犬養健
○犬養国務大臣 ただいまの、高橋君の御意見は、重々ごもつともでございまして、憲法において労働者の団体交渉権、争議権というものが認められている。また最高裁の大法廷におきましても、弱者の立場にある勤労者が生きて行くために行使し得る権利として、争議権を認めているということを認めておる。とかく他の中の議論は、公共の福祉というものは、勤労者の福祉のほかに、別に公共の福祉があるような議論がありますが、私どもはこれはあやまつておると思います。しかし、一方同じ憲法の中で、何ゆえに何箇所にもわたつて公共の福祉のわくに入れて勤労者の権利を認めさせようとしているか。ここに憲法の深い精神があると思います。私どもはこの憲法の精神に基いて、違法行為のわくから出た範囲を処理するという厳正な立場に立つているのでありまして、健全な争議行為に関しましては、労使双方に対して、御承知のように原則的に不介入の態度をとつているわけであります。高橋さんの御心配は、私ごもつともだと思うのであります。従来日本人は、りつぱな法律でも、法の運用が世界の中ではあまりうまい民族でないということにされておりますので、私どもは、ことにこういう微妙な法律の運用に対しては、十分に注意して、かかる批評の汚名をそそがなければならぬと存じております。いやしくも違法争議の取締りに名をかりて健全なる労働争議を圧迫するというようなことがあつては、今たびたび繰返しお話がありましたように、憲法の精神にももとることであります。そこで検察庁といたしましては、本法案に盛られている内容のような労働争議に関しましては、ことに注意をいたしまして、各検察庁から起訴、不起訴の問題について意見を問うて参りましたときには、非常に用意周到な態度をとろうとしているのでありまして、私もしろうとではありますが、就任以来この種の労働争議に関する事案については、みずからも必ず目を通すようにいたし、現に私自身疑わしい問題、疑点とするところも検事総長を通じてただし、直してもらつて、繰返し正してもらうというような態度をとつているのでありまして、あらゆる誠意を尽して今の高橋君の御心配などのないようにして行きたいと考えております。これは特に御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/82
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083・高橋禎一
○高橋(禎)委員 次に法務大臣にお尋ねいたしたいのは、刑罰をもつて禁止することによつて、スト行為がほんとうになくなるかどうか。すなわち、勤労者の争議権の行使という問題と刑罰権ないし刑罰の効果という点について、お伺いをいたしたいのであります。スト行為を規制すればストはなくなる、刑罰をもつて臨めば、それは取締りによつて十分防止し得る、こういう簡単な考えであつてはならないと思うのです。刑罰の効力というものは、申し上げるまでもなく、限界があるわけでありまして、もしも刑罰権行使にのみ依存したような考えであるならば、私は将来日本に革命が起る危険を感じている。すなわち政治が貧困であつて、それから起つて来るいろいろの問題、政治の貧困を原因として起つて来る事象を、刑罰をもつて押えて行こうという行き方は、われわれの人類歴史において、古くすでに失敗をしたという経験を持つておるわけであります。あまりにも刑罰に依存するということは、慎まなければならないことであります。ところが、終戦後今日までの立法の傾向を見ますと、もうすべて刑罰々々で、どの法律にも刑罰をもうて臨んで、そして国民の行動を押えて行こう。あまりにも刑罰にたより過ぎておるということを、私ははなはだ遺憾に思つておるわけであります。スト規制に関する問題につきましても、刑罰に依存してこの問題を解決しようとするのであれば、これはとんでもないことであります。私は刑罰の規定のある法律を考えますときに、あまりにも法務当局は重荷を背負い過ぎるのではないかと思うのです。いろいろの施策がまずいために、国民のいろいろな不平なり不満なりというものが爆発して、それが犯罪現象となつて現われて来る。それを法務省が全部背負い込んで行かれるという行き方は、実に危険なことであると考えるのであります。そういう点について法務大臣は、一体その犯罪現象がいかなる原因において起つて来るかということを考えて、その原因の除去ということを政治の一般にわたつて考慮しなければならないのでありますが、単に刑罰権を行使して国民を犯罪人として押さえるごとによつて、一体国家の秩序が維持できるかどうか、こういう根本問題についてどのようにお考えになつておるか、これをまずお伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/83
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084・犬養健
○犬養国務大臣 お答えを申し上げます。これも高橋委員のお尋ねになるお心持は、私よくわかります。刑罰だけで労働争議が片がつくものではございません。これはやはり長い年月を経た労使双方の自覚と、お互いを尊敬する伝統的精神というものが生れたときに、もつと日本の労働問題というものはうまく行くと思います。そういうことが根本でありまして、ことに私ども検察の仕事をあずかる者といたしましては、検察庁の働きが労働争議において非常に大きな役割だなどと思い上つた気持になつたら、お話のように社会は不安になると思います。私どもは不幸な違反行為のあるストが起つたときに、その一つ一つのストの中にある違法行為の違法の性質を区別して処分するという、大きい労使問題の世界から見れば、非常に小さなすみつこにいる仕事だという謙虚な気持でかからぬと、聞違いが起ると思います。しかしながら、御承知のように不法行為を取締る刑罰が全然ない社会というものは、今の日本の現状においては現実に当てはまりませんので、よくよくの違法行為のぎりぎりのわくにおいて、私どもは違法行為を摘発する役目を引受けているのでありますが、これがどこの国においても行われている労働争議の大きい役割を検察庁が持つているなどというような、大それた思い上つたことは少しも思つておりません。この点十分御了解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/84
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085・高橋禎一
○高橋(禎)委員 勤労者の生活権との関連において、法務大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、これは最高裁判所の判例によりましても、あるいは有力なる学者の見解によりましても、勤労者の労働条件を適正に保持し、かつこれを改善することは、勤労者自身に対する生活権の擁護であるばかりでなく、勤労意欲を高め、一国産業の興隆に寄与するゆえんである。すなわち勤労者の労働条件を適正に保持するということも、公共の福祉——これは憲法の精神、国家目的の一つなのだということを思いますときに、この勤労者の生活権ということを考えないで、刑罰権の運用ということがあつてはならないと思うのであります。この刑罰法規の運用について考えてみますと、いわゆる期待可能性の理論が生れて来る。あまりにも勤労者の力が弱くて、経営者関係の力が強くて、憲法の精神としているところの労使双方の力の均衡を保つことができない、契約自由の原則を保つことができない。それが勤労者の生活権を守ることのできないというような限界に達してこのスト行為に出ました場合には、私はいわゆるそれら勤労者に対して、法律を正しく守つて行くということを期待することができない条件があり得ると思うのであります。そういうことを十分考慮に入れて、この検察権の運用がなされなければならず、また何と申しましても犯罪捜査の段階においてそういつた勤労者の苦しい生活問題については、詳細にこの事情を、しかも正確に知り得る立場にあるわけであります。そういう生活権擁護という問題と刑罰権行使という問題とについて、一体どういうふうなお考えをお持ちになるか。特に刑罰権運用との関係において、その点を明らかにしていただきたいと考えるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/85
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086・犬養健
○犬養国務大臣 お答えを申し上げます。これは個々の事案について現実的に触れてみないと、現実的に申し上げるのは少し危険なところもございますが、しかし法理論的にいえば、おつしやるように自分や同僚の勤労者の身体生命に、すぐにもさわるというような場合、刑法第三十七条の緊急避難行為というようなものに準ずるような場合には、あり得ると思います。御指摘の期待可能性の議論が援用される場合が、法理論的にいえば、あり得るのであります。そこで、御参考までにこれまでそういう問題が起つたかどうかというので、ちよつと調べてみたのでありますが、違法争議行為について、正当防衛とか百緊急避難を主張した弁護人の抗弁は、従来相当数多くあつたようでございますが、これを認めた裁判例はまだございません。期待可能性によつて無罪を言い渡された裁判例としましては、一つあるのであります。それは昭和二十四年三月に三友炭鉱争議事件というのが九州にありまして、福岡の高等裁判所の判決で、これはどうしても、何人がその立場にいても、これ以外のことはできなかつたという期待可能性の議論を援用した判決がありました。これは私どもは最終的な法律解釈を求めるというので、今最高裁に上告中の事件でございます。従つて、法理論的には、高橋さんの御指摘になるような事実があり得ると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/86
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087・高橋禎一
○高橋(禎)委員 法務当局においては、政治ストはこれは違法行為である、こういうお考えをお持ちになつていると思うのでありますが、ところが、実際の争議行為がいわゆる政治ストであるかないかということについては、これは見わけがはなはだ困難なので、そこで政治ストの事件を検挙するために、便宜のために今提出されているような法律を設けておけば、これは捜査上、取締り上非常に都合がいい、こういうふうなお気持がおありになるかどうか、そこのところもひとつお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/87
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088・犬養健
○犬養国務大臣 それは御心配よくわかりますが、そういう気は全然ございません。それで私どもとしては、本法案を法務省の立場から見れば、たびたび申し上げますように現行法、既存法の違法性の範囲をはつきりさせて確認する解釈法規といいますか、そういうものであります。従つて本法案に罰則をつけるべきかどうか、法務省としてだけで研究したことはございますが、そういう解釈からして、罰則は現行法の罰則を使つた方がいい、現行法の罰則のわく以上に出ない。国民ことに勤労者の不安を解消する意味からいつても、政治的措置としてもその方がいい、こういうふうに考えております。ところが、政治ストというのは、御承知のように既存法の、ことに労働法上の保護を受けない行為でありますから、りくつからいつても、私どもは本法案によつて政治ストをどうしようというような気は全然ございません。政治ストという認定がある場合、なかなかむずかしいこともございますけれども、また経済問題に名をかりて、実質は政治ストという場合がありますが、これは個々のストライキについて、私どもが冷静に常識をもつて判断いたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/88
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089・高橋禎一
○高橋(禎)委員 私の心配いたしますことは、これは過去においても例があり、法務大臣のごときも十分御存じだと思いますが、いわゆる治安維持法関係の法規の運用等にあたつても、いろいろ反省をしなければならない問題があると思うのです。本法案について考えてみましても、政治ストであるかないかということを捜査上認定することは、非常に困難なのです。そこで経済ストも政治ストも含めて、こういうことはいかぬのだということをはつきりしておけば、簡単に政治ストを取締まることができるのだというようなお考えであつたのでは、これはたいへんなことになると思います。それは経済上の立場から、いわゆる正当な意味における争議行為というものが、ややともすると争議行為としての保護を受けない、政治ストと同様に簡単に取扱われるようなことになる危険を私は感ずるわけであります。そこで、公聴会における公述人の意見等を考えてみましても、どうも今までの本法案に関連する基本的な刑罰法規の範囲よりは、少し拡張されておるように思う、こういう意見が相当あるわけであります。こういうことを思い合せまして、捜査、検挙というものを非常に楽にしようというところに、正しいものがその中に含まれて起訴をされ、あるいは刑罰を受けるというようなことになる危険を感ずるものですから、その点について、特に法務大臣はどういうお考えで対処されるのか、先ほどの御答弁に、いま少し御説明を願いたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/89
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090・犬養健
○犬養国務大臣 繰返して大体同じことを申し上げるようなことになるかも存じませんが、今のお話のように、本法案ができますと、今まで現行法できめられている違法性のわくが、知らない間にじりじり少しずつ広がつて行くのではないかという御疑念が、この委員会でもしばしばあつたようであります。これは国民の声としてそういう声があつたということを深く体しまして、私ども取締り当局は個々の具体的な事案に当りたい、こういう覚悟を持つております。非常な責任を感じております。このことは申し上げておきたいと思います。
それから一々取締るのに骨が折れるから、政治ストということで、簡単に楽にやつてしまおうというような気を起したら、これはたいへんなことであることは仰せの通りでありまして全然そういうことは考えておりませんのみならず、かりにもそういうことに近つくような措置は、みずから深く戒めておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/90
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091・高橋禎一
○高橋(禎)委員 これまで公聴会で公述人の意見を聞きましたときに、判例の集積によつて、正当、不正当ということの限界を明らかにして行くことが、より望ましいというような意見がしばしば出ました。私はこれに対しては、そういう道もやむを得ない場合もあるかもしれませんけれども、判例の集積という前には、刑事事件について考えますと、勤労者の一部の人が、勤労者が起訴されて、刑事被告人になつて裁判を受けて、そうして判例ができ上るわけであります。争議行為をしたところの勤労者が試験台になつて、そしてそこに判例か出て、それによつてこの争議行為の正当、不正当の道をそこに見出そうというようなやり方は、勤労者の犠牲ということを思いますときに、決して望ましいものではないと私は思うのです。だからあらかじめ、もしも誤りなく限界線を定め得るならば定めて行くのが、国会の責任であるとも私は考えております。そういう考えを持つております私どもとして、法務大臣にお尋ねをいたしたいのは、何か法律上疑義のあるときに、正当か不正当かどうも不明であるときに、刑罰権の行使としては、そんなあやふやしたものを起訴すべきものでない、こう確信いたしますが、判例を待つて、ひとつこの点ははつきりさせようというような、いわゆる勤労者を犠牲にして判例に待つて、そうして道を見出すというような態度をおとりになるかどうか、その点をお伺いいたしたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/91
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092・犬養健
○犬養国務大臣 高橋さんの今の御質問は、非常にわが意を得ているのでありまして、現にこの委員会に上る面前、政府委員室で私と専門家と、それを議題にして仮の議論をしておつたような次第でありまして、私は高橋さんのような御趣旨においてこそ、今度この法案において違法性のわくをはつきりすることが——御承知のように最高裁まで上告するが、勤労者が首切られたり何かして、家族も食えなくなる、非常に苦しい、そういう犠牲のないようにしたいという趣旨が、法務省としては本法案の成立を望んでおる原因の相当大きな部分になつているわけでございます。本法案を御審議願います前には、たびたびここでも御議論がありましたように、下級裁判所が判決する、検察庁はその見解を異にして上告する。そしてこの上告ということも、だんだんけしからぬといつて、この間山花さんや何かにしかられたのでありますが、今御指摘のように、最高裁判所の最終見解というものを得てこれがやはり法治国の慣例となつて、一つの伝統をつくつて行くわけでございまして、この意味からいいますと、個々の被告人には非常に気の毒でありますが、同じような被告人が次々にできない予防の意味からいつても、そこに最高裁判所の判決というものを確定させるために検察庁が上告するという行為に出て来たわけであります。しかし、これは一方、今御指摘のように、個々の勤労者の犠牲において最終判決を何年も待つということでありまして、その間にまた学説のいかんによつては、この辺までは違法行為であるまいという争議行為があつて、これが思いに反して違法行為として摘発される。しかもそこに犠牲者も起りますので、さればこそ本法案において違法性のわくというものをはつきりさせよう、こういう考え方が法務省の考えでございまして、御指摘のようなことは、私は全然賛成であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/92
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093・高橋禎一
○高橋(禎)委員 受持ちの時間が参りましたので、ただ最後に一点お尋ねをいたしたいと思います。法務大臣は、日本の国民の人権擁護の重い責任をお持ちなわけなんであります。ところが、犯罪の捜査に関連をいたしまして、人権蹂躙ということが、日本の現実の問題として行われております。警察官の被疑者の取扱いについても、あるいは検察庁における取扱いの中にも、あるいはまた裁判の過程においても、刑務所に収容された人たちに対する刑の執行の面においても、まだまだ改めなければならない、もつと人権は擁護されなければならないという面がたくさんあることを、私は感じておるのであります。例をあげろと言われますと、これは相当例を持つていますが、しかし時間の関係上これは省略しますけれども、もうすでに御調査にもなつておいでになりますし、まだおわかりにならない隠れた面もあると思いますが、これは私は重大な面で、現在においては国民もこの程度の人権蹂躙をされることはやむを得ないというてあきらめかけたような人関すら私はあるとさえ思つておるのであります。従つて捜査の段階においてそういうことがしばしばありますことは、刑罰法規を制定することは人権蹂躙の間口を広げるような感じが私はいたす次第であります。従つて制裁法規の制定をするにあたつては、日本におけるこの捜査権検察権の運用という面において人権蹂躪というものはないのだ、これが十分守られて行くのだということの保障を得なければ、刑罰法規をほんとうは制定するのに非常に良心的に苦しい感じがいたしてならないのであります。将来犬養法務大臣がほんとうに所管の犯罪捜査、検察の面において、人権蹂躪ということがなくされて行つたというそれだけの仕事をされても、将来犬養法務大臣の銅像をつくつてもいいくらいの御功績であると私は考えるのでありますが、その点について強い御決意を持つてお当りになるかどうか。本法案に関連してそれらの点を思いますときに、私はよほど強くこの点を法務大臣に希望も要望も申し上げて、御決意のほどをこの際承つておきたい次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/93
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094・犬養健
○犬養国務大臣 お答えを申し上げます。銅像は御辞退するわけでございますが、私は人権擁護というのは、非常に大切なものだと存じます。本法案を関係省として携わつて調べておりますときも、勤労者のされるスト行為のいろいろなこまかい場合について、私は自分で質問をして、違法行為の範囲というものをできるだけ冷静に厳正にして行きたいと努力しているわけでございます。人権擁護につきましては、御承知のように人権擁護局がありますが、これはある意味では、検察庁に対して相当煙い存在にならなければならぬと存じます。このたびの選挙違反の問題でも、人権擁護局の活動を私どもは大いに活用いたしまして、いやしくもちよつとでも妙なうわさが入りましたときは、すぐ人権擁護局に出張を命じておるような次第でございます。お話のように、刑罰法規というものは、他の面から見ればやむを得ないとはいえ、人権を狭めるものでありましてよほど注意しなければならぬと存じます。
この際ごめんをこうむつて私の心持を申し上げますならば、私は就任早早、刑事訴訟法の改正にぶつかりまして、就任前の速記録をつぶさに拝見したときに、花村四郎委員が、一体これは、人権を狭める条文ばかりではないかという発言をしておられる、その簡明な質問に、非常に胸を打たれまして今度勾留期間の延長などを少くする場合も、こういう発言を常に念頭に置いてやつたつもりでございます。法務当局のする仕事は、やむを得ざるとはいえ、人権を狭める活動のようなものが多いのでありまして、これを得意になつてやるようでは、ほんとうの法務当局ではないと存じております。ことに憲法でもいわれておる通り、また過ぐる最高裁の大法廷でも判決の中に書かれたように、勤労者というものは弱い立場のものでありまして、その人たちの争議行為については、法務当局はよほど厳正な気持で判断しなければならぬと考えております。この心持を申し上げて、御了解を得たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/94
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095・赤松勇
○赤松委員長 この際お諮りいたします。ただいま議題となつております本案につきまして、委員外の古屋貞雄君、井伊誠一君、花村四郎君、岡田春夫君、田嶋好文君より、それぞれ発言の申出がありますが。これを許すに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/95
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096・赤松勇
○赤松委員長 御異議なければ、順次これを許すことといたします。
古屋貞雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/96
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097・古屋貞雄
○古屋貞雄君 私は労働大臣にお尋ねしたいのですが、本法案による法益は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/97
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098・小坂善太郎
○小坂国務大臣 公共の福祉と考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/98
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099・古屋貞雄
○古屋貞雄君 電気事業と石炭鉱業に対してのみ本案が規制されているという理由は、どういう理由ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/99
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100・小坂善太郎
○小坂国務大臣 申すまでもなくこの二つの事業は、基礎産業中の基礎産業でありますし、重要なエネルギー源でございますし、ことに電気におきましては、生産即消費であるという関係もありまして、昨年の二大争議の苦い経験にかんがみまして、この法案を提出した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/100
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101・古屋貞雄
○古屋貞雄君 三箇年というような臨時的な立法になつておるようですが、そのようなことで目的を達せられるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/101
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102・小坂善太郎
○小坂国務大臣 この法律は、ただいま法務大臣からも申しあげたのでありますが、本来不当であるし、また社会通念上非であると考えられるものの範囲を明確に確認しようということでございますので、その三年の間におきまして、そうしたものを確認する社会的な慣行の成熟が期待される、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/102
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103・古屋貞雄
○古屋貞雄君 ただいまの三年というのは、何か基準でもあつてきめたものですか、その理由を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/103
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104・小坂善太郎
○小坂国務大臣 昨年の争議の経験にかんがみまして古屋議員御承知のように、去る十五国会におきましてこの法案が提案されましたときに、三年という期間を定めて本院を通過いたしたのであります。従いまして、その院議を尊重いたしまして、この法律案をここにまた御審議を願つているわけでございます。三年の間にこうした苦い争議の経験を反省して、こうしたものの不当であり、あるいは社会通念上非であるということの認識が確定せられ、そういうものの不当であるということが明瞭に認識せらるるに至る、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/104
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105・古屋貞雄
○古屋貞雄君 労働大臣は、違法性の問題を、三年によつて確認するというような御答弁ですが、そうすると、本法案を提出しました目的は、昨年の電産並びに炭労の争議の苦い経験に基いて、正当なる争議行為であるかないかということについて、明確にそれを織り込んで、こういう場合は違法であるということの、いわゆる阻却性をなくするための一つの目的によつて、本案は提出されたように承つておりますが、そういうように承つていいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/105
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106・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私ども、法律案の内容に掲げてあるようなことは、社会通念上非であるという認識が、昨年の争議の経験にかんがみて、そうした社会通念の成熟があつた、こういうふうに考えております。従つて、この法律案を提出することによつて、その範囲を明確化するということでございまして、三年の間にそうした慣行が十分に認識せられ、理解せられる、こう考えておるのでありますが、三年たちました際に、この法案をさらに延長するかどうかということについては、院議の御決議を問う、こういう立場に立つている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/106
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107・古屋貞雄
○古屋貞雄君 今までの問題は、つけたりですから、あとにして本論に入りますが、そうすると、公共の福祉を守るのだということになりますと、ただいま昨年の争議の苦い経験にというような御発言がございましたが、さようにいたしますと、昨年の二つの争議は、労働争議の行き過ぎであつて、違法である、かようなお考えのもとに本法案を提出されたのであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/107
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108・小坂善太郎
○小坂国務大臣 昨年の経験にかんがみまして、公共の福祉と争議権の調和をはかろう、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/108
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109・古屋貞雄
○古屋貞雄君 公共の福祉と争議権の調和と申しているようですが、一体昨年の争議は違法であるかないかの決定権は、かつてに政府が、かようであつては困るとかなんとかいうことを決定すベき問題ではないので、ことに公共の福祉に反するか反しないかという問題は、これはやはり国民大衆が決定すべき問題であると思う。従つて、この点一方において、憲法によつて保障された基本人権並びに争議権、この基本人権と争議権は、勤労大衆においては生命線であります。従つて、かような憲法が保障した自由権、あるいは基本人権、争議権に制限を受けます場合には、相当なる理由と大きな目的が明確にならなければならぬ。ただいま御答案を承りますと、さようなものをきめておくのだというような軽い意味の、経過法的なものでは、私ども納得行かないし、国民も納得行かないと思います。特に憲法二十五条におきましては、国民の最低生活は国家が保障しなければならぬということがはつきりしている。これと二十八条の争議権の問題、十八条あるいは十一条の基本人権の問題、この三つの中心となるべき大黒柱を、ただいま御答弁のような理由で、昨年の単なる一現象的なできごとによつて、これを変更したり、あるいはこれに制限を加えるということは、私ども立法の趣旨から申しましても、納得が行かないのであります。従いまして労働大臣に承りたいことは、この基本人権に対する保障、争議権に対する保障、並びに国が国民に対して最低生活を保障しております、この精神を中心に考えますときに、労働大臣がおつしやるような、ただいまのような軽い意味の経過法というようなことでは、私ども納得が行かない。むしろかような公共の福祉という問題でございますならば、電気事業並びに石炭鉱業のみならず、あらゆる社会における公共福祉を守るべき問題を、総合的に、恒久的な法律として立法するのが本筋だと思いますが、その点はいかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/109
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110・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私ども憲法二十八条に規定しております労働基本権の問題というものは、十二条、十三条にありますように、基本的人権は公共の福祉を守るために用いられなければならないし、またそれを阻害することをやつてはならないという、当然そうした制限を予想してつくられたものである、こういう解釈をいたしております。ただいま議題になつておりますこの電産並びに炭労の争議の場合の規制されることになつている争議方法につきましては、保安要員の引揚げというようなことは、御承知のごとく労調法三十六条におきましても、あるいは労組法一条二項におきましても、不当であるということがすでに確定いたしております。また電気産業の場合でスイツチ・オフということも、これは違法であると考えられております。ただ電源並びに給電指令所の職場放棄、そういつたものの場合でございますが、これは昨年の経験にかんがみまして、これは公益との関係において違法である、行き過ぎの争議行為であるという社会通念の成熟を見た、かように考えております。すでにそうした経験があり、また今後において現実の必要が感ぜられますので、この二つの争議行為に依つて、その争議方法の一部規制の法案を提案いたしておる次第でございます。本会議においても申し上げましたように、政府といたしまして、これを他産業に拡大するという意思は持つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/110
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111・古屋貞雄
○古屋貞雄君 ただいま、違法であつて成熟しているというお言葉がございましたが、昨年の争議と同じような事案で、従来の日本の裁判所の裁判は、いずれも正当なる争議行為だということの判決になつているように、私どもは聞いておるのであります。きようなお考えを持つこと自体は、政府がかつてにさようなことをお考えになるのであつて、国民はおそらくこれが正当な争議行為であつて、行き過ぎでない、違法性はないというような輿論であります。それは公述人あるいはあらゆる学者、文化人の御意見が、これは当然なる争議行為であるというふうに考えられまして、今提案になつております法案に対しては、これはあまりにも国民の団結権、争議権を、権力をもつて規制するものである、かような輿論が相当大きいのであります。従つて、特に現在のような社会情勢において、苦しい場面に追い込まれましたところの勤労大衆諸君が、あげてこの立法に反対をしております。この現実を、一体労働大臣はお認めになるかならないか。どういうところに、そういうような大きな反対の意見が起つているかということについては、労働大臣よく御存じのはずでありますが、それでも、しいてかような立法をやらなければならぬという理由はどこにあるか、かような点を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/111
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112・小坂善太郎
○小坂国務大臣 この法律案が前国会に提出されたときも、本案は可決をいたしておりますが、その際の公聴会におきまして、労働組合側は反対でございました、使用者側は賛成でございました、消費者代表は全部賛成であつたのであります。なお、このほども、いわゆる労働法関係の学者について御意見を聞いたのでありますが、この多数の者は、やはりこうした争議がいいということは言つておらなかつたと思います。なお、この社会通念の成熟ということでありますが、われわれが終戦以来体験いたして来たところをもつてみましても、私ども初めて国会へ出て参りましたころは、いわゆる生産管理というものは違法であるかないかということにつきましても、いろいろな意見があつたのでありますが、その後の社会通念の成熟によりまして、生産管理は違法であるということは、だれしも疑わないところであります。また専従者の給与の支払い、あるいは争議中の賃金の支払い、こうしたことも種々論議があつたのでありますが、これまた二十四年の労組法の改正の際には、はつきりそういうことは違法であるということが確認されておるのでありまして、私どもが新しく便宜的にそういうものをつくつたということではなく、社会的な通念としてこれが成熟しておる、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/112
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113・古屋貞雄
○古屋貞雄君 これは他の委員からお尋ねしたようでありますが、労働大臣は成熟したくとおつしやいますが、三年間試験して一つの既成事実をつくつて、それを前提にしてこれは違法なりと決定する、さようなところに目的があるようにわれわれには考えられる。さような目的は考えておられないかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/113
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114・小坂善太郎
○小坂国務大臣 目的とおつしやいますが、私どもは、こうした争議というものは行き過ぎであるという社会通念が成熟しておるという考え方を持つておるのでございまして、何もこれによつて労働組合側の争議権を剥奪しようというような考え方は持つておらないのであります。本来違法であり、あるいは社会通念上非であるものを確認するという考え方に立つておるのでありまして、イギリスにおいても、三角同盟ストのあとにはこれを禁止する規定ができておりますが、これがいろいろ貴重な経験を経て廃止せられておることは、御存じの通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/114
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115・古屋貞雄
○古屋貞雄君 私どもは、かように考えておる。さように違法性はこれこれであるということで規制するよりも、むしろ労働行政においては、争議を未然に防ぐことにお力を願いたい。そうして昨年のような争議を起さないように努力していただきたい。それに対する政策をお持ちになるかどうか、これを承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/115
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116・小坂善太郎
○小坂国務大臣 この問題については、まことに同感でございまして、私どもは、こういう法律案を出して、これによつて行き過ぎの争議行為の範囲を明らかにはいたしますが、他面において、でき得る限り労働行政の面において、労働者の納得と理解と協力を得る施策を打出して参りたいと考えております。その面におきまして、種々の努力をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/116
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117・古屋貞雄
○古屋貞雄君 その具体的な御努力をお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/117
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118・小坂善太郎
○小坂国務大臣 つい五日ぐらい前だつたと思いますが、労働者住宅の資金融通法も本院を通過しておる次第であります。私はできるだけそうした厚生的なものに力を注ぐことをまずやりたいと思つておりますが、大きな問題といたしまして、過般も発表いたしましたが、この国会でも終りましたころには、ひとつ本格的に踏み出したいと思つておりますが、労働問題協議会というものの構想を考えておるのであります。今の労使間は、いかにも対立的であり、その相互の話合いの機会すらないという状態でございますから、その間の風通しというか、相互に十分話し合える機会を提供し、その間にいわゆる良識を持つた自由にものの言える人たちがそこに入つて、そうして全般の世界情勢なり、またわが国の産業の実態なり、そうしたものについて話し合つて問題を解決して行く、そうしたことをいたしたいとも思いますし、また昨年の労働争議にかんがみまして、中労委に対してもう少し信頼し、そのあつせん、調停あるいはやむを得ざれば仲裁ということによつて争議を解決するというよき慣行をつくつて参りたいと考えております。それにいたしましても、何にしても正確な資料を提供するということが必要でございますので、その方面の労働省の活動を活発化するように、ただいまいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/118
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119・古屋貞雄
○古屋貞雄君 私が承りたいのは、昨年の炭労並びに電産の争議について、十分なる御調査をしたかどうか、またその調査に基いて、ああした争議を未然に防ぐようなお考えを持たれたかどうかを承りたかつたのである。従つて、昨年の争議の原因、争議が長引いた理由、さような点について綿密な御調査をなされた事実があるかどうか。ありましたならば、その具体的な調査の結果を御報告願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/119
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120・小坂善太郎
○小坂国務大臣 この問題は、しばしば本委員会において御説明申し上げ、あるいは御質問にお答えしたのでございますが、労働省として刊行しておるものがございますので、もし御必要があれば、あとでお手元にお届けいたします。要するに、民主主義的な自由社会におきまして、労使双方の意見が経済的に食い違う場合には、ストライキが起るのは、やむを得ないというか、勤労者の団結権によつて、争議行為を通じてその主張を貫徹せられるということは、むしろ当然のことでありまして、政府としては、そうしたものがあつたから特にどうということではなくて、それが行き過ぎでない正当なるルールを守りながら行われるということについては、もちろんこれに対して何ら反対をする意思はありません。政府として労使間に介入するというよりは、その間に良識をもつて問題を解決するというよい慣行をつくられることを、期待いたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/120
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121・古屋貞雄
○古屋貞雄君 私どもが考えますと、あの争議があんなに長くなつてもつれてなかなか解決がつかなかつ原因は、むしろ経営者側が攻勢に出られて、その当時出さぬでもよい条件を出している。たとえば電産の争議については、労働時間の延長、重労働の条件をつけている。当時の社会情勢、経済事情から申しましたならば、ある程度のベース・アツプは当然に行わるべきである。しかるに、これに対する協定なり交渉を誠実に続けずに、経営者の方から労働時間を延長するという条件を反対に持ち出しておつた。それから炭労におきましては、生産標準を高めまして、かえつて労働者諸君の収入を減らさせるような条件を出して、そして争議がもつれて来た、かように私どもは承知しておる。かように考えますならば、何も労働者の行き過ぎの問題は、問題にならず、その根本原因は経営者側からけんかを売つて来た、こういう姿がわれわれには反映しておるとさえ考えられる。この点についての御調査が行われたかどうか。さような条件を経営者側から出された態度は、はたして正当であるかどうか、かような点を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/121
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122・小坂善太郎
○小坂国務大臣 事案については、非常に詳しく調査いたしております。それぞれ労使双方の側にその主張があつたということでございますから、私どもといたしましては、よいとか悪いとかいう批判は、むしろ避けたいと思つておるのであります。ただ、その争議を通じて見られた保安要員の引揚げとか、あるいは電源スト、停電スト、または給電指令所の職場放棄、こうしたものは、すべて社会通念上行き過ぎであるから御遠慮願いたい、こういうことなのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/122
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123・古屋貞雄
○古屋貞雄君 私の承りたいのは、この提案された法案を拝見いたしますと、経営者側に対する関係はほとんどない、大部分が労働組合の労働争議を制限するということに規定されておる。特に第三条のごとき問題につきましては、むしろかようなことを明確にすることは、労働者諸君に脅威と不安を与える。これは精神的、経済的不安を与える面においては、非常に役立つであろう。しかし、三条などはなくても、従来の法律によつてこれだけの目的は達し得られると思うのです。鉱山保安法によつて、大体これは目的を達せられると思うのに、あえてこれを出さなければならなかつた理由を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/123
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124・小坂善太郎
○小坂国務大臣 昨年の争議の際に、保安要員の引揚げの指令が現実に出たのであります。また今後そういうことが絶対に出ないともいえないので、これはむしろ今日この際法律によつて明確化した方が、かえつて不明確な点から生ずるところの問題が起らぬ、こう考えた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/124
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125・古屋貞雄
○古屋貞雄君 その点はあえて明確にする必要はないのでありまして、ただいまお答えのような事案がございますならば、鉱山保安法によつて目的を達し得ると考えておる。あえて勤労大衆の反対を押し切つて、あるいは国民の大部分の輿論を押し切つて立法しなければならないということが、納得が行きません。この点については、水かけ論になりますから申し上げませんが、特に明確にしなければならぬことは、単なる引揚げ指令が出たという一つの理由だけでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/125
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126・小坂善太郎
○小坂国務大臣 その通りでございまして、一部には、こうしたことがなされてよろしいという考え方が現実にあることも、また御承知を願いたいのであります。なお輿論が反対しておるとおつしやいましたが、輿論は賛成し、支持しておると私は考えておりますし、労組側におきましても、現在はそう言つておられますけれども、やがてこの法案の意図するところを御了解願えるものと考えております。これはすべての労働法規の改正の場合にありましたことで、私どもさように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/126
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127・花村四郎
○花村四郎君 関連質問。私はただいまの古屋君の質疑に関連して、簡単に御質問を申し上げたいと思います。
なるほど労働大臣の言われたように、公共の福祉を守る意味において、労働争議の一部に制約を加えて、少くとも不当なる争議はこれを禁止せなければならぬということで、その法益を守つて参りますことには、私も賛成であります。そこでお尋ねしたいのは、本法案で守らんとするところの、ただいま申し上げた法益というものは、現行法ではつきりときめられておるように思う。たとえば鉱山の争議にいたしましても、労働関係調整法第三十六条以下の規定は、もつぱら公共の福祉を対象として設けられた規定である。もちろんこれは、全般的に申しますならば、労使の協調の面の精神が織り込まれておりますことは申し上げるまでもございませんが、しかしながらその反面において、少くとも公共の福祉を保護せなければならないという精神が多分に盛られておる。さらにまた、この電気事業に関する争議に関しましても、労働関係調整法第三十六条以下と公共事業令第八十五条によつて、本法律案で取締るべき法的精神というものは、すべて織り込まれておると申し上げてよろしいと思う。この現行法で、本法案に盛られている行為を取締ることはできないとおつしやるのであるか、できるのであるか、それをはつきりと承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/127
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128・小坂善太郎
○小坂国務大臣 お答えを申し上げます。申し上げるまでもなく、争議行為というものは、一般的に業務妨害を伴うものでありまして、それを普通通りに刑罰に処しますれば、争議を行う余地はなくなるわけでございます。そこで労組法第一条二項で、正当な争議行為というものは免責があるというふうになつておるわけであります。そこでそれではどういう争議が正当なる争議行為であるかということが問題になると思います。ただいまお話の鉱山保安法におきましても、あるいは旧公共事業令の八十五条におきましても、正当なる理由ということが問題になると思うのであります。正当なる争議行為であるかどうかということが問題になると思う。鉱山保安法に所定するところの問題にいたしましても、ストライキとしての保安放棄であれば、全面的に免責されるというような主張も、一部にはあるのでございます。また旧公共事業令の八十五条に示すところの電気の正常な供給を阻害するような行為、その正常な供給を阻害するというストライキ行為であれば、すべて正常であるという考え方も一部存在するのであります。そこで正当であるか正当でないかということは、あるいは法律違反である、あるいに協約違反である、あるいは法益権衡の権衡論からすれば正当性であるとか、あるいは積極的に労務の不提供の域を越えたものとか、いろいろ解釈があるわけでございますが、それをそれだけにとどまるものではございませんので、やはりもつと広義に、健全なる社会通念によつて、行き過ぎであるものは正当でないということの判定がなされると思います。そこでここに規定いたしますのは、こうした議題になつております炭鉱の保安要員の引揚げ、停電スト、電源ストあるいは給電指令所のロツク・アウト、そういうものは争議行為としても行き過であるという、この範囲を明確にすることによりまして、鉱山保安法あるいは旧公共事業令による解釈のあいまいさをなくする、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/128
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129・花村四郎
○花村四郎君 私の質問からちよつとはずれておるような観がありますが、長い御答弁はいりません。私の言うのは、現行法で本案に盛られておるがごとき争議行為は取締れるんじやないか。現行法でもし取締れぬということであれば、どこが取締れぬというのであるか、その法条を指摘して明確にお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/129
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130・小坂善太郎
○小坂国務大臣 現行法で取締れるという解釈と同時に、それは免責されるという解釈も一部にはあるので、そこでこれを明確にしておく必要があろう、こういうのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/130
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131・花村四郎
○花村四郎君 免責されるということは、これは刑法第三十五条に規定してあるので、そういう免責に関する精神は、本条の規定に何か関係がありますか。刑法第三十五条に、正当なる業務行為はこれを罰せずとあるので、この法規には免責行為は何ら関係がありはしないじやないですか、それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/131
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132・小坂善太郎
○小坂国務大臣 労組法の第一条二項で、正当なる争議行為は免責になることになつておりますので、争議行為であれば何事でもなし得るという考え方があるわけであります。そこで鉱山保安法なり旧公共事業令なりに触れる行為でも、争議行為としてであれば免責されるという考え方が一部にございますので、行き過ぎの争議行為としては免責がなされないということを明確にしておく必要がある、こう考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/132
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133・花村四郎
○花村四郎君 そうすると、争議行為に関する現行の取締り法規よりは、ただいま提案されておる法案の争議行為の方が範囲が広いというのですか、どういうのですか。現行規定に包含されておらぬというのか、現行規定よりももつと広げられた争議行為を対象としておるというのですか、どつちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/133
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134・小坂善太郎
○小坂国務大臣 現行法の通りでありまして、むしろ言葉をかえて申しますれば、解釈法規とでもいうべきものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/134
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135・花村四郎
○花村四郎君 現行法の通りでしよう。ただいまも説明を聞いておれば、罰則規定は本案には設けておらず、むしろ現行規定を罰則規定は適用しておるというのであるから、従つて現行の法規と同じものであると見るのは当然であります。はたしてしかりとするならば、同じ法律を、なおかつつくるというのは、一体どういうわけですか。現在に取締り得る法律があれば、さらにまたそれと同一なる法律をつくる必要はないように思うのであるが、そこは一体どう考えておらるるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/135
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136・小坂善太郎
○小坂国務大臣 ただいま申し上げましたように、これは現行法の解釈を明瞭にするという、いわゆる解釈法規とでもいうべきものでありまして、免責される事例が、正当なる争議行為は免責されるということを書いてあるわけで、いかなるものの範囲かということが明瞭でないわけであります。たとえて申しますれば、労組法の一条二項に「暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。」とございます。これは今にして見れば当然のことでございますが、二十四年の労組法改正の当時の実情にかんがみてこれは書く必要があろう、こう認めて書かれたものですから、それと同じような意味と御解釈いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/136
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137・花村四郎
○花村四郎君 結局こう言われるのでしよう。現行法では争議行為の限界がはつきりとしないから、その争議行為の限界をはつきりさせたものである、こう本法案の理由説明でも言われておるようですが、しかりとするならば、はたして立法的の見地から見て、そういう考え方がいいか悪いか。この争議行為の範囲並びにその不当行為の限界というようなものは、むしろこれは裁判官によつて判断させるのが適当である。と申しますのは、御承知のことぐ、法律は死物であります。社会のすべての事柄は、時々刻々に移つて行く。その死物であるところの法律を、動いて走つて行く社会に常に当てはめて行かなければならないのであるから、従つて法律の文字なども、そこに弾力性を持たせて、そうして社会がある程度までかわつて行つても、その法律で規制ができるような考えで立法して行かなければならぬことは当然である。かえつて、あるはつきりした争議行為をきめて、それに縛られて、そうして移りかわつて行く進歩した社会に当てはめられない法律がただちに出て来るような、そういう法律をつくることは、立法技術の上から言うて当を得たものではない。そういう当を得ない考えでやつておるから、ここに三年というような期限を設けてあると私は申し上げてよろしいと思う。アメリカなどでは、むしろ大審院の判例が法律になつておるではありませんか。そうして時々刻々に移つて行く社会に常に当てはめられるように、はつきりした法律をつくらずに、判例が一つの法律になつて適用されておる。これはやはり、ただいま私の申しましたような理論が採用されておる。英国にしたつて、そうじやないですか。慣習法に重きを置いておるではないですか。長い間の国民の慣習によつて、その慣習が是なりと認むる場合においては、それが法律化して行く。どこの国に参つても、慣習法というものは認められておるではありませんか。それを、ことにこういうつづめた、はつきりした法律をつくつて行くというようなことは適当でない。適当でないがゆえに、こういう三箇年というような期限を設けてあるのでありますが、もし三箇年後においてこの法律が失効したらどうでありましようか。三年の間処罰されたその行為も、三年後においては正当化されるような矛盾した問題が起きて来るのであります。そういうことをあなた方は考えずに、ただ目先のことばかり考えたのでは、これは立法の当を得たものでないと私は考えるのですが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/137
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138・小坂善太郎
○小坂国務大臣 ただいまの点については、先ほど法務大臣からもお答えがあつたのでありますが、判例によつて違法性を積み上げて行くということ自体も一つのりつぱな御見解と思いますけれども、その前に労働者が違法行為によつて裁判を受けるという事実がなければ、判例が出て来ないのであります。そうしたことについては、むしろ労働当局といたしましては、こうした行き方は不親切ではないか。判例によつて積み上げるということも、かえつてそのことが非常に罪をつくることとすれば、解釈に対して不明確な点は、そこを明確にしておいて、そうして正常なルールを争議行為というものがはずれないようにする。その一つの明確な土俵の中で、十分にお互いの対等な立場において主張をし合つて、そうして相互の間の納得した合理的な結論に到達するというよき慣習をつくりたい、こういうのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/138
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139・花村四郎
○花村四郎君 もう一点、私はそういう考えには賛成しません。それで最後にもう一言お尋ねしておきますが、しからば現行法と本法案と、その犯罪行為が競合した場合においては、いかなる法律で処断をして行かれるか、それをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/139
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140・小坂善太郎
○小坂国務大臣 競合という場合は、どういうことでございますか、——これは解釈法でございます。現行法の解釈を明確にするというのが、本法案の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/140
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141・花村四郎
○花村四郎君 ただいま労働大臣も認めておられるように、現行法と同じ規定であるが、ただ本法案はその争議行為の範囲を明確にしただけだと言われるのでしよう。そうすると、本法案に規定してある行為を行つた場合においては、罰則規定も同じなんだから、現行法に触れることも当然ではありませんか。そうすると現行法規にも触れ、かつまた本法案にも触れて、一個の行為にして二個の法律に触れるわけです。そういう場合には、一体どの法律で処断するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/141
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142・小坂善太郎
○小坂国務大臣 たとえば鉱山保安法に触れる、あるいは旧公共事業令の罰則規定に触れる、そういうことであります。これは繰返して申し上げるのでありますが、現在正当なる争議行為であれば、刑事上の免責がある。そこであらゆる争議行為に免責があるというふうに考えておる観念がありますので、これを明確にして、争議行為としてもこういうことは行き過ぎである、こういうことでありますから、その争議行為をしたことによつて適用される法規は、鉱山保安法であり、あるいは旧公共事業令の八十五条、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/142
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143・花村四郎
○花村四郎君 労働大臣は、私の質問をよく頭にのみ込まれないのだ、見当違いの答弁をなすつておるのですが、例をあげましよう。たとえば、この法案に規定しております電気の正常な供給を停止する行為、こういう行為をした場合には、現行法にも触れるわけでしよう。そうすると、現行法にも触れ、この新しくできた法律にも触れるものだ。一個の行為が二個の法律に触れるわけです。その場合には、現行法で措置して行くのか、あるいはこの法律で処断をするのかどつちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/143
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144・小坂善太郎
○小坂国務大臣 それでよくわかりました。電気の正常な供給に阻害を与えるという行為は、争議行為としてであれば、供給をストップしても正当だ、それは免責される。こういう解釈があるから、この正常な供給に阻害を与える争議行為の場合、停電スト、電源スト、職場放棄などによつて、正常な供給を阻害するということがあれば、罰則の適用がある、こういうわけであります。そういう趣旨で競合するとか、二軍になるとかいうことはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/144
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145・花村四郎
○花村四郎君 電気の正常な供給を停止する行為というものをやると、この法律にも触れますし、現行法にも触れるでしよう。労調法にも、公共事業令の八十五条にも触れるわけです。その場合に、どちらの法律をとつて、どちらの法律の罰則で処分をして行くのか、それを聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/145
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146・小坂善太郎
○小坂国務大臣 ただいまの御指摘の点は、この法律に触れるから、旧公共事業令の適用を受ける。従つて、罰則は旧公共事業令の罰則である、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/146
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147・古屋貞雄
○古屋貞雄君 ただいま解釈法規であると言われた。私はそう思うのですが、労働争議権は憲法で保障されていますから、相当な理由がなければ変更し制限を課すわけには行かない。従いまして、本法の第二条の「電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為」——この「正常な供給」というのは、どういうことでしよう。この解釈はだれがするのか、この解釈を承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/147
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148・中西實
○中西政府委員 「正常な供給」と申しますのは、停止することは、もちろん正常ではございません。さらに電圧サイクルに影響の及ぶような行為、これも正常でございません。正常といいますのは、結局旧公共事業令等によつて、業者がそれぞれ責任を持つて供給の任に当つております。従つて正常な指揮命令の系統で動いておるという場合には、これは正常な供給と言い得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/148
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149・古屋貞雄
○古屋貞雄君 この点が非常にあいまいな言葉なので、私どもは非常に心配ですが、かような言葉を類推解釈、拡張解釈をするならば争議はできない。争議というものは正常な状況ではないのです。一定の行為が停止されるということが争議です。それを制限してしまえば、争議権を根本から奪つてしまつたと同じ結果になる。従いまして、私どもは憲法で保障されています団体行動権、争議権その他の問題が本件で問題になると思うのです。正常な状態であれば争議でありません。争議の場合には、必ず正常な状態が変更されて行かなければならぬ。かようなあいまいな言葉でなくてただいま申されるような解釈ならば、何々行為は阻却しない、違法であるとか、こう明確にせられた方が、むしろ立法上からいえば、国民を惑わさせずにはつきりとするのであります。「正常な供給」というような言葉は、まことに不明確な言葉である。従いましてこれを類推解釈し、拡張解釈されますならば、争議権を奪われたという結果になりますが、この点はいかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/149
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150・中西實
○中西政府委員 「正常な」という字句はすでに労働法上、従来から使われておるのでありまして、たとえば労調法の第三十六条の保安維持の規定におきましても「正常な維持又は運行を停廃し、」というふうに規定しているのであります。従つて従来から正常なということにつきましては、すでに確立した概念があるのでありまして、これが濫用されるおそれはないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/150
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151・古屋貞雄
○古屋貞雄君 ただいまの御説明の労調法の第三十六条の、「正常な維持又は運行」——そこでこういうような不明確な字句ではなくしてもつと明確なお言葉をお使いになつたらいいと思うのですが、何かはかにいいお考えはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/151
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152・中西實
○中西政府委員 これが最も適当かと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/152
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153・古屋貞雄
○古屋貞雄君 なおしつこいようでございますが、ただいま労働大臣から御説明になりました労働組合法の第一条第二項の点、違法性阻却の点でございます。これとただいまの法案との関係から考えますと、労働大臣の御説明では、これは解釈法である、従いましてこれはどういうような事実に対する解釈であるか。要するに阻却をしないということを明確にするための解釈の法律かどうか、この点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/153
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154・中西實
○中西政府委員 正当でないもの、つまり争議行為としても違法性を阻却しないものの範囲を明確にしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/154
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155・古屋貞雄
○古屋貞雄君 それでは最後にもう一点労働大臣にお尋ねをいたしたいのでございますが、労働大臣は非常に社会は変転して停止するところを知らぬ状況だからと言われましたが、さような関係であるのに、三年までの期限を切られて、そして三年の間この解釈法を有効にする、かような御説明がございました。もしもかような問題が三年の間に社会通念上、労働大臣がお考えになつているようないわゆる違法行為である、阻却行為であるということが否定される場合には、この法律の期限を短縮規定するようなお考えはありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/155
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156・小坂善太郎
○小坂国務大臣 この問題は、正当なる争議行為、すなわち違法性を阻却される争議行為はここまでであるという範囲を明確にしたものでございますけれども、ただいまのところ、御質問であります三年以内にそうした別の社会通念が起きたらどうするかという、そうした仮定の問題は、そのときに考えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/156
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157・古屋貞雄
○古屋貞雄君 しつこいようでございますが、最後に一点だけお尋ねいたします。労働大臣は昨年の二つの争議を、社会通念上違法行為である、労働争議の範囲を逸脱したものであるというお考えから、本案の御提出をなされているのでありますが、具体的にどういうところが違法性であるか、違法性の根拠をお示し願いまして、私どもを納得させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/157
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158・小坂善太郎
○小坂国務大臣 昨年の争議行為に関しましては、至るところで批判を聞くのであります。そうした批判というものは、社会通念上ああいう争議はむちやである、一行き過ぎである、こういうことであると考えましてこの法案を提案したのでございます。先ほども申し上げましたが、二月に行われた公聴会の際、消費者代表も全部これに賛成をいたしまして、本案の一日も早き成立を望んでいたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/158
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159・古屋貞雄
○古屋貞雄君 そうすると、社会通念上これは違法であるとお考えになつたのが根拠ということになるのでしようか、私はどうも納得が行かないのでご場ざいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/159
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160・赤松勇
○赤松委員長 古屋君、もう時間でございますから、よろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/160
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161・古屋貞雄
○古屋貞雄君 これで打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/161
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162・赤松勇
○赤松委員長 委員外発言を行う予定でありました井伊誠一君、岡田春夫君及び田嶋好文君より、ただいまそれぞれ発言を辞退する旨申出がありましたので、御了承願います。
山村新治郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/162
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163・山村新治郎
○山村委員 時間がありませんので、二、三点大臣にお伺いしたいと思います。
ただいまの各委員との応答を聞いておりましても、たびたび大臣から答えられておりますが、この法律案は、あくまでも今までの法律案の確認規定であるということを了承してさしつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/163
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164・小坂善太郎
○小坂国務大臣 従来からの法律の確認であり、また非常に不分明であつた範囲を、社会通念の成熟とともに明確化した、明確に確認した、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/164
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165・山村新治郎
○山村委員 一応確認規定であるということにつきまして、御承認があつたということになりますと、確認規定に期限のついている理由は、一体どこにありますか。たとえば、どろぼうをしてはいけないということは、社会通念上きまつている。そのどろぼうをしてはいけないということを新しく法律でつくつて、但しこの法律は三年間の有効期間だということは、三年後になつたならば、その行為を是認するような結果になるおそれが多分にあると思う。従つて、確認規定を承認なさるとすれば、それに対して期限をつけられた理由は、那辺にあるのでございましようか発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/165
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166・小坂善太郎
○小坂国務大臣 この法律案の内容は、よく御承知の通りでございますが、要するに、こうした健全な慣行が習熟する——労使間においては合意と納得の上に、社会公共の福祉という前提を頭に置いて、そうしてそのルールのもとに労使対等の立場でその主張を貫徹し合う、こうした争議行為の原則が、三年の間には十分習熟せられて、言わずもがなのことは言わぬでもよろしいという考え方になることを期待しておるのであります。もしそれ、三箇年たちましてまだこのような法案が必要であるということを国民一般が認識されるということになりますれば、この国会においてその延長の御決議があることであろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/166
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167・山村新治郎
○山村委員 お説のような、いわゆる労使間の善良なる慣行が確立されるまでの暫定立法であるといたしますれば、
〔委員長退席、山花委員長代理着席〕
この三年という期間は、あるいはこれは改進党の案を尊重されたために出された案であるかもしれませんが、実際には一番中途半端な期間じやないかと思うのでございます。この点の御見解はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/167
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168・小坂善太郎
○小坂国務大臣 これは、お話のように改進党の案が中心になつてはおりますが、私どもといたしましては、三年の期間が最も適当であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/168
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169・山村新治郎
○山村委員 そういたしますと、この確認規定という議論から出発いたしますと、この法律の期限が切れた場合におけるところの、あるいは鉱山保安法、あるいは旧公共事業令等に対する態度について政府はどういうような態度をとろうと考えておられるでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/169
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170・小坂善太郎
○小坂国務大臣 この法律案の期限が三年後に切れた場合に、刑罰法規の適用はどうするかという趣旨でございますれば、その適用は従来とかわらない、こういうふうに思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/170
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171・山村新治郎
○山村委員 大臣のお答えによりますと、この法律案の期限が切れた後におきましても、旧公共事業令や鉱山保安法等については、何ら変化を生じないというように了承してよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/171
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172・小坂善太郎
○小坂国務大臣 さように御承知を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/172
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173・山村新治郎
○山村委員 この点、ちようど中途半端な三年という期限を切られたことは、一番まぎらわしさの生ずるおそれがあるような気がするのでございます。そういう意味から、むしろこの期間をとつた方がいいじやないかという意見もりつぱに成り立つと思います。同時にまた、これをつけるならば、そしてほんとうの暫定立法であるとするならば、最低期間の一箇年程度にすべきではないかと思いますが、この点に対する大臣の御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/173
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174・小坂善太郎
○小坂国務大臣 種々の見解がございますのは、当然とは存じますが、私といたしましては、三年が適当ではなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/174
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175・山村新治郎
○山村委員 見解の相違とすればやむを得ません。
次にお尋ねいたしたい点は、少くともこの法律によりましてはつきりいたしたことは、ある程度まで憲法で保障されております労働者の権利をむげに剥奪しているということは、おおうべくもない事実でございます。ところが、これに対する補償的な規定なり、あるいは政府の労働行政面におけるその現われが何らないのでございますが、労働者の権利をとつただけで、何も補償してやるというお考えはないでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/175
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176・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私どもは、たびたび申し上げますように、これは労働者の争議権を剥奪するものではないという見解をとつております。こういうものはアウト・オブ・ルール、ルールのほかであると考えているのでありまして従つてここに議題になつておりますような、いわゆるストライキの方法の一部規制ということが行われましても、労使対等の立場において交渉ができると思います。しかし、ただこうした大産業におきましては、むしろ現在ございます中労委の、あるいはあつせん調停、必要とあれば仲裁、そういう制度によつて解決せられる慣習のできることが最も望ましい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/176
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177・山村新治郎
○山村委員 お説によりますと、これは労働者の権利を剥奪したものではないということについての力説があつたのでございますが、そういたしますと、憲法において保障されております労働者の罷業権というものについては、この電気並びに石炭の労働者は、最初からその憲法の保護を受けておらないというふうに、あなたはお考えでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/177
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178・小坂善太郎
○小坂国務大臣 憲法二十八条にございます労働基本権というものは、やはり公共の福祉というわくがあり、公共の福祉のために使わねばならぬし、公共の福祉を阻害することがあつてはならぬ、そうした前提のもとにあるものであろう、こう考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/178
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179・山村新治郎
○山村委員 そういうことは、大臣から御説明を承らなくても、われわれも当然了承いたしております。しかし、公労法等におきましても、争議権をとりましたために、これに対するいわゆる代償と申しますか、補償と申しますか、そういう意味から仲裁委員会という機関が設けられているのでございます。ところが、これら民間における企業において、一方的にスト権を規制されるということは、どういう詭弁を弄しましても、憲法で保障された労働者の権限をとられたことには間違いはないと思うのでございます。そういう意味から、私は政府としてこれら労働者に対していわゆる情ある補償的なことを何か考慮すべきではないかと思いますが、これは全然考えておられないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/179
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180・小坂善太郎
○小坂国務大臣 公労法等にございます規定は、争議権を奪つているものでございます。従つて、それに対して調停仲裁というものがございますが、しばしば申し上げましたように、これは基本権を奪うものではないという考え方であります。御承知のように、炭鉱におきまして保安要員の引揚げを行うということは、これは本来争議としてあり得べからざる形であることは、通説であろうと思います。そして、本来なら、そのようにできない、やつてはいけない、これは行き過ぎの行為であるという解釈法規を定め、これによりまして力関係が均衡を失することはないと考えております。しかし、そういうことは別といたしまして、先ほども申し上げましたように、できる限り労働者諸君の協力を得るように、その厚生福利施設なり、あるいはまた労使間の話合いの場の適当なものをつくるごとにつきまして、努力をいたす考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/180
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181・山村新治郎
○山村委員 それでは問題を転じまして、この法律で規制の面は、労働者に対する規制の面だけでございます。応形式上は使用者に対する規制のごときものも、文面には現われておりますが、これは実際は何の規制にもなつておらないと思います。従つて、この法律を使用者が非常に濫用するおそれが、私はあるのじやないかと思うのであります。たとえてみますならば、石炭山におきまして、たまたまストライキが起つた。ところが、使用者側がこの労働争議を解決するところの熱意をわさわざ欠く場合も、そのおそれなしとしないと私は思うのです。なぜならば、たとえば、石炭が非常によけいになつたために、石炭の値段が安くなつて来た。この石炭の値段を高くしようという意識的、計画的な意図から、使用者側がわざわざこの労働争議を引延ばすということも、多分に私は留意しなくちやならないと思うのでございますが、この問題に対して、政府はいかなるお考えを持たれるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/181
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182・小坂善太郎
○小坂国務大臣 そういう点に関しましては、私ども国務大臣といたしまして、労働大臣の立場を離れまして、できる限り社会的な規制を行いたい、社会的な注意をいたしたい、そうした意味におけることを考えておる次第でございます。主宰者は通産大臣でございますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/182
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183・山村新治郎
○山村委員 それではお尋ねいたしますが、その場合には、一体どういう法的根拠によつて、使用者側に制肘を加えようとするのでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/183
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184・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私は社会的な制約と申しております。何らかのそうした方法はあると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/184
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185・山村新治郎
○山村委員 ただ社会的な制約と申されても、わからないのでありますが、責任のある国務大臣としての立場で、具体的にどういう制約を加えられようとするのでございましようか。同時にまた、政府としては、それに対してはいかなる責任をとられるのでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/185
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186・小坂善太郎
○小坂国務大臣 その場合々々によるでございましようが、具体的にどういう不当なることを、いわゆる経営者と申しますか、そうした側においてするかという、そのときの事情によつて異なると存じますが、その場合々々において適切なる措置を考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/186
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187・山村新治郎
○山村委員 実はこの問題は、この法律を審議するにあたつて、一番世間からも誤解されやすい点ではないかと思うのです。そういうような点から、いわゆる世間で石炭内閣といわれる吉田内閣としては、特別私は注意をしなくちやならない点じやないかと思うのです。何としても、この法律並びにその他の法律をも一つてしても、使用者側が、これが争議の解決を遷延した場合においては、いたずらに困るのは労働者であり、同時にまた石炭を使うところの消費者の方々なんです。ところが、それに対して何も法的な根拠もなければ、ただ漠然と社会的な制約を加えようということは、そこに一抹の不安もあるし、同時にこの点は、ややもすれば吉田内閣が誤解されるおそれが多分にあるのじやないかと思うのでございますが、この点につきましては、先ほどの御答弁以上の御答弁は得られないのでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/187
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188・小坂善太郎
○小坂国務大臣 念のためにまた申し上げますが、これは保安放棄がいかぬということなんでございます。石炭山で争議をやつちやいかぬということは、全然言つておらないのでございます。保安放棄というものは、人命にも危険がございますし、また争議が解決したあと、まじめな労働者諸君が帰る職場を失つてしまうようなことになるので、本来争議行為として不適当なものであろう、これは困る、こういうことでございまして、特別そのために力のバランスを失わせるというようなことはないのでございますから、御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/188
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189・山村新治郎
○山村委員 この点は一応その程度にいたしておきましよう。
次にお尋ねをいたしたい点は、この間当委員会におきまして、参議院におけるところの大臣の石川議員に対する御答弁が、もしも両組合においてスト回避の声明等があつた場合においては、これは撤回することを考慮すべきだということについて答弁されたことにつきまして、大分この委員会でも問題になつたのでございますが、大臣としては、両組合がいかなる意思表示をされましても、この法律につきましては、撤回その他の御意思はないものでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/189
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190・小坂善太郎
○小坂国務大臣 そうした仮定の問題は、現在の審議の際に、さしひかえたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/190
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191・山村新治郎
○山村委員 これは決して仮定の問題ではないのでありまして、現に大臣も出席されておりまする予算委員会におきまして、わが党の石橋湛山君と総理との一問一答にも、この点ははつきり明らかにされておるのです。すなわち石橋湛山君がこういう質問をいたしておるのであります。「たとえば電気のストライキを禁止する、石炭の保安に対するストライキを禁止する、それを三年間やる、こういうのでありますが、それより前に話合いをして、たとえば一年なら一年の間労働休戦をするというような御努力をなさつたことがあるのでしようか、あるいはなさる御意思があるでしようか。」——ちよつと文章がわかりませんが、要点は、やはり組合側と徹底的に話合いをすべきじやないかということについて質問をされております。ところがそれに対しまして、吉田総理大臣は、はつきりとこういう答弁をいたしております。「先ほど申し上げました通り、話合いができ、また了解ができるものならば、その了解のもとに行くがいいと政府は考えており」ますという答弁をされております。しかもつけ加えて、「また労働大臣ももちろんであります」という答弁をされておるのであります。ところがあなたは、そんなことは仮定だといつて、にべもなくつつぱねられてしまうとしますと、この吉田さんの答弁というものは、死んでしまうことになるのです。一体政府としては、どちらがほんとうの答弁なんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/191
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192・小坂善太郎
○小坂国務大臣 この問題は、石橋議員と総理との質疑の際のお話でございますが、問題は労働組合側にあると思うのです。労働組合側において何も申しません際においては、仮定である、こう言つているのでございまして、その質疑が仮定の問題を前提としての御質疑応答であろうと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/192
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193・山村新治郎
○山村委員 ひとつこの問題は、単に言葉のやりとりでなく、真剣に考えていただきたいのですが、特にわれわれ保守政党に属する者が考えなくちやならない点は、労働組合というものは、全然保守党とは話合いができないのだというような考えは、労働組合にとつても悲しむべき事実であり、同時にまた、われわれ保守党にとつても悲劇だということを、お互いに考えなくちやならないと思うのです。従つて現にこの法律は——仮定々々ということを言われますが、ストライキを起した場合という仮定のもとに立たれたところの禁止法律である。その意味からいいまして、もしもそういうような誠意のある話合いができるものならば、何とかして了解のもとに行きたいということは、答弁されておるわけでございますから、やはり仮定のもとというようなつつばねた御答弁でなく、もう少しつやのある御答弁をいただきたいと思いますが、いかがでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/193
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194・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私も組合側の諸君とときどき実は話しておるのでございますが、現在のところ、さようなけぶりは毛頭ございませんので、これは仮定と言うよりしかたがないと考えております。
なお私は、こういう法律案と別個の問題といたしまして——これはぜひ御可決願いたいのでございますが、別個の問題といたしまして、労働問題協議会を提唱いたし、これには労組側も非常に賛成してくれております。現在資本側と労働側とは、まつたく対立の形になつてしまつて、これでは両方で何か話し合いたいと思うことがあつても、片一方が片一方へ行くのが、すでに屈辱であるというふうに、お互いに考えておるようなことがあつて、非常に困るという話をしてくれている人もございます。そうした両者間の風通しをよくして、話合いで行かないといけないのではないか、こんなふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/194
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195・山村新治郎
○山村委員 その点まことに同感であります。両者がほんとうに真心を披瀝し合えば、私は通ずるのではないかと思うのでございます。従いまして、この吉田さんの御答弁にありますように、何とかひとつそういうような意思表示なり、そういうような表現なりを発表できるような糸口をつくつてやることこそ、労働大臣としての一つの仕事じやないかと思うのでありますが、この点はいかがでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/195
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196・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私は、労働問題というのは、やはりよき慣行の成熟を積み上げることであろうと思います。終戦以来、労働問題というと、結局労働争議の解決のあとを追つているというような印象を与えておりますが、そうしたものでなくて、もう少し良識と納得と理解と協調というものが、労働問題の本質であるというような考え方に持つて行きたい、こう思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/196
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197・山村新治郎
○山村委員 よき慣行を積み上げるということは、私は単に労使の間だけの問題ではないと思うのです。私は、政府自身、特に吉田内閣と労働組合とのよき慣行というものも、ぜひとも皆さんの努力によつて築き上げて行つてもらわなくちやならないと私は思う。ところがあなたは、何か紋切型に、よき慣行を労使間に築くことが先だというような御答弁にのみ終始されておりますが、や捻りこれに対しましては、積極的に何とかそういう、お互いの肩をたたいて話し合えるような態勢をつくるために努力してほしいと同時に、また誠意を披瀝し合うべきだろうと思いますが、この点は一応私の意見として申し上げておきます。
そこで、時間がありませんので、重要な点をもう一つお伺いしておきます。この法律の提案理由の説明を拝見いたしますと、こういうことが書いてあります。「公共的性質を有する産業は、ひとり電気事業及び石炭鉱業に限るものでないことは申すまでもないところでありますが、種々検討の結果、今回はいわゆる基礎産業中最も基幹的な重要産業であり、しかも昨年現実に問題となつた電気事業及び石炭鉱業につきまして、必要な限度の規定を設けることとした次第であります。」という説明がございますが、この「今回は」という問題を取上げますと、次回あるいは将来があるというような解釈が成り立つのでございます。一体、ほんとうにそれから範囲を拡大する御意思があるのかないのか。同時にまた、わざわざ電気事業及び石炭鉱業だけが公共的性格を有するものじやない、そのほかにもたくさん公共的性格を有するものがあるのだということを言われておりますことは、何か将来拡大するところの御意図があるという、その含みの説明ではないかという誤解を生じやすい点がございますので、この点に関するはつきりした大臣の所信を伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/197
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198・小坂善太郎
○小坂国務大臣 非常に私の言いたい点に触れていただいたわけでありますが、これは昨年の争議の経験にかんがみて出た法律でございまして、二大争議がこの法案の生みの親であるというようなことになるかと思うのであります。「今回は」という点でございますが、これはひとつ「この法律は」という意味に御解釈願いたいと思います。拡張する意思はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/198
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199・山村新治郎
○山村委員 最後に一点、われわれ保守党の立場からぜひひとつ大臣にお尋ねいたしたいと思うのでございますが、私はこの法律をわざわざこういうふうに労働組合の方々から誤解されるような、また同時に、いわゆる一つの左翼的な宣伝の具に供されるような法律体系で出すことが、保守党の立場として賢明な策であるかどうかということについては、ずいぶん疑問があると思うのです。すなわちこの法律は、何もこういう単行法で出さなくても、労調法その他の改正によつてその目的を達することが十分できると思いますが、この点は大臣はいかようにお考えでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/199
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200・小坂善太郎
○小坂国務大臣 労働法規に手をつけますたびに、山村さん御承知のように、常に非常な反撃がありまして、改正すなわち改悪なりということは、常用語になつておるようでございますが、はたしてできた法律が改悪であつたかどうかということになると、必ずしもそうはいえないと思うのでございます。ここでいろいろ学者戦線の御意見もあつたのでありますが、たとえば労調法の改正にいたしましても、緊急調整という制度をつくることには非常な反対があつた。しかし、その学者先生の言いまするには、昨年の争議の際に緊急調整が出たために、炭労は分裂しないで済んだ、こういうことまで言われておるので、非常によろしい場合もあると思うのでございます。とにかく吉田内閣ができれば、その性格も政策も見ないで、ただちに吉田内閣打倒を叫ぶ。そうした慣行が一部にある以上、これは法律の改正ということを見れば、すでに悪法である、改悪である、こういう意見があるのではなかろうかと思うのであります。ただいまの審議過程を通して、非常に明らかになつたと思いますが、この法律というものは、決して労働者諸君の争議権を奪うものではない。むしろ毎度の例からいつて、知らずしてそういう面に引込まれる人の少いようにするというのが、この法案のねらいでございまして、このねらいは、やがてまじめな諸君によつて十分に御理解をいただけるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/200
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201・山村新治郎
○山村委員 非常にけつこうな御答弁でございまして、私も満足するものでございますが、しかし、少くともいわゆる与党側の立場からいつても、この法律が不備のものであるということは認め合つておる。先ほど倉石君からお話が出ましたが、(「ノーノー」と呼び、その他発言する者あり)去年の倉石君の討論にも、この法律案というものは不備の法律だということについて、はつきり速記録に残しておるのであります。同時に、これは労働省内においても、相当疑問のある法律案であるということは、事実なのでございます。ところで、私はそういうふうな法律であるにもかかわらず、むしろそれでも、なおかつこれをスト規制法という名前のもとにこの法律をあえて通過せしめんとするところに、ややともすると労働組合のあり方というものを左へ左へと追いやるところの結果が来ることを、私は非常におそれるのであります。確かに労働組合のあり方にも、反省すべきものは多分にあると思うのであります。労働組合が一党一派の手先になるということについては、心ある世間の方々はほんとうに心配しておるのであります。しかしまた反面そういうような方向に追いやるごとき労働行政というものについて何ら反省を見ないということは、私は政治家としての責任ではないかと思うのであります。こういうような意味から、何もあえて挑発するような、あえていわゆる闘争の具を供するような投げかけ方をするということが、賢明な策であるかどうかということについては、私はほんとうに同じ保守党の立場において、非常に疑問なものがあるのであります。しかし、やはり労働大臣といたしましては、吉田内閣のもとにあつては、いわゆる吉田さんが労働者の方々を不逞のやからと呼ばれたことくに、やはり仇敵視をした考え方が、こういう法律になつて現われて来るのじやないかということを、私は心配をするのであります。そういう意味から、いつ何時皆さんと一緒になるかもしれませんけれども、ぜひともそういう意図のもとに慎重にこういうことはやつて参りたい。——私が行きたいというのではない、あなた方の方が私の方に来ると思つておる。(笑声)そういう意味からいつて、ぜひともこの労働問題は、われわれ保守党として真剣に考えなければならぬ問題であると思いまして、こういう質問をするのでございますが、聞くところによりますと、この立法は、元来が労働省の事務当局では、最初全然知らなかつたということが言われております。最初労働大臣も知らなかつた間に、当時の労働大臣——今の小坂さんではございません、当時の労働大臣が知らない間に、総理大臣が本会議でストの規制をするという演説をしてしまつて、そのつけたりに、むりやりにつくつたのがこの法律であるということが、世間ではうわさされておるのであります。そういう点では、実際に私は保守党の将来のためにも、できるだけ避くべきではないかと思うのでありますが、この点に対する大臣の御見解を承りまして、私の質問は打切りにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/201
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202・小坂善太郎
○小坂国務大臣 この法律の名前が規制法というので、非常にストライキ権を規制するという印象をことさらに与えんとする人があることは事実であります。ある人によりますと、これはスト禁と呼ばれておるそうで、スト禁とは何だと聞いたら、ストライキ禁止法だ。何のことだといえば、これのことなのであります。そういうふうに、ことさらに労働者の争議権を奪うように宣伝をされておることは事実であります。そういう宣伝に対しましては、ひとつお互い保守党議員として、そういう誤解を解くように努力をしたいと考えます。
なお、総理が不逞のやからと言つたことが問題になつておりましたが、これは決してまじめな労働者諸君を不逞のやからと言つたのではなくて、むしろそういう争議行為を運用し扇動して、大衆心理に乗じて国家革命をはかろうとするやからを不遇のやからと、こう言つたのであることは御承知の通りであります。
なお、この法律は、昨年の争議の経験にかんがみて、あれではたまらぬ、むちやくちやだ、こういうので、その規制をしようというので、非常に急速に出たことは、その通りであると思います。今の詳しいお話は私は存じませんけれども、そういう意味で、倉石委員もおそらく全体の法体系から見て整備しよう、あるいは労調法なり、鉱山保安法なり、旧公共事業令なり、そういう全体の法体系を整えるべきではないかという、これは私もまことに正論と敬服いたしております。そうした意味で、三年という期限もございますが、この三年間にお互いに努力して、この労働法規というものをさらに完璧のものにいたしたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/202
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203・多賀谷真稔
○多賀谷委員 時間もございませんので、ごく簡単に質問をいたします。その前に事実をはつきりしておきたいと思います。それは昨年の炭鉱の争議の際に、保安放棄の指令を出したということを、常にお話になつておりますが、炭労は保安放棄の指令は出しておりません。政府は資料を十分調査したということを言われておりますが、炭労では、保安放棄をするやもしらないから準備をしろという指令を出しておる。ですから、保安放棄をするときには、追つて指令をするということで、全然追つての指令が行かなかつたのであります。こういう事実についての認識が欠けておるかと思います。答弁はいりませんが、こういう点も十分調査されてからお話していただきたいと思うわけであります。それから緊急調整の問題につきましても、労働大臣は緊急調整でやめたというようにお話になつておりますが、これはともかく緊急調整であることは事実ですが、緒方副総理は、今度の本会議において、緊急調整でやめたのではなくて、あれは自主的にやめたのであつて、緊急調整の価値判断はこれではできないということを答弁されておる。この点も見解が違いますので、やはり事実をはつきりさせておく必要があると思います。かとうに政府の態度が常に行き当りばつたりの態度であつて、われわれは法案を審議する際に非常に支障になるわけでございます。この前旧公共事業令を復活する電気ガスの臨時措置法の審議の際にも、ことに野党の方から、現在電産の争議が起きておるのは、公共事業令が抜打ち解散で失効しておるから、こういう状態になつて取締りができないのじやないかと、われわれの立場から逆の質問がありましたが、その際は、いや公共事業令の失効とは関係がないのだということを盛んにおつしやつておつた。ところ、が、今度お話を聞いてみますと、いや、取締ろうにも公共事業令がなかつたので取締りができなかつたといつて、実にこの前の国会のときの答弁とは異なつた答弁をされております。そういうように、答弁が常に行き当りばつたりである。あるいは停電スト、あるいは休電ストの問題につきましても、政府の態度が一貫しておるとは、どうも考えられませんから、われわれは政府は常に一貫した態度をとつていただきたいということを要望しておきます。
解釈の問題に入りますが、電気事業の中で「一般の需用に応じ電気を供給する事業」となつておりますが、これは自家発電は当然入らないものであると私は考えております。ところが、従来自家発電でありまして、純然たる傍系会社に送つておりましたのが、御承知の通り財閥解体等で会社が別になつた。しかし一般の会社でなくて特定の一、二の会社に送つておるという場合は、一体電気事業に入りますかどうか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/203
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204・山崎五郎
○山崎説明員 緊急調整でやめたかどうかという問題は、組合の指令そのものを読みましても、十二月十七日一番方以降からストライキを中止せよという点と、それから組合の発表とこの点に非常に相違がありまして、はたして緊急調整でやめたのか、中労委の案を受けたという形において中止したのか、この点については、はなはだ明確を欠く点もありますので、必ずしも緊急調整でやめたと言い切れない点もあります。指令をそのまま読みますと、緊急調整を受けてやめたというふうに解釈もできると思います。
〔山花委員長代理退席、委員長着
席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/204
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205・森誓夫
○森説明員 ただいまの自家発電が特定のものに供給した場合に、この条文に該当するかどうかという点につきましてお答えいたします。「一般の需用に応じ電気を供給する事業」と申しますのは、いわゆる九つの電力会社と、そのほかに小さい島などで独立してその小さい島の人々に電気を供給しておるものを指すのであります。それから「電気を供給することを主たる目的とする事業」というのは、つまり電気の卸売事業であります。先ほど申しましたように、電気事業に電気をおろしておるもの、具体的に例をあげて申しますと、住友共同電力あるいは美馬水力のような会社であります。ただいま御指摘の例は、ちよつと私考えられないのでありますが、自家発電が特定のものに供給するという事例は、あまり認められないのであります。もし住友の例といたしますと、あれは四国電力の電気事業者に電気を送つておるわけであります。そういう意味で、ここでいう電気事業に電気を供給する事業ということに該当すると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/205
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206・多賀谷真稔
○多賀谷委員 次に、私が最もおそれますのは、「今回は」という言葉を使つておられます。その「今回は」というのは、この法律はという意味であると、こうおつしやつておられますが、先ほど高橋委員の御質問に対して、法務大臣も、あるいは労働大臣も、違法行為を判決でまつということは、むしろ残酷であり、親切味がない、こういう意味でつくつたと言われました。まあ法案は別として、罪刑法定主義というものは、私はいいと思うのです。ところが、このまま交通において運行を停止する、あるいはガスの供給を停止する行為に、この法律が通用される可能性があることを、私は非常に危惧するわけですが、現在の立法者である労働者としては、そういう考えはないと確信しておるわけですか、それについてお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/206
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207・小坂善太郎
○小坂国務大臣 そうした考えはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/207
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208・多賀谷真稔
○多賀谷委員 非常に安心いたしました。これはこの前レツド・パージのときに、マ書簡をもつて公益事業がされたという例をわれわれは知つておるので、非常に危惧しておつた。しかし、あれは占領下における特別の裁判として、われわれは今後そういうことは絶対ないと確信しております。
次に私が非常に危惧しております炭鉱の場合でございますが、刑事罰があつて後に、解雇とかその他の不当な行為をこうむることはやむを得ないと思いますが、刑事罰が全然まだ確定しない間に、そういう経営者が不当な行為をした場合の救済について、労働省としてはどういうふうにお考えであるか、再度お尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/208
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209・中西實
○中西政府委員 これも具体的に起りませんと、はつきり申せませんけれども、予想されますのは、やはり客観的妥当な範囲以上に管理者が保安要員の供出を要求したが、これに従わなかつたというような場合、一応はやはり労働委員会へ提訴してその判定を受け得るということは言えるのではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/209
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210・多賀谷真稔
○多賀谷委員 労働委員会へやることは、当然組合の方がやるわけですが、労働省としては行政措置として、この法の運営について十分なる監視をしていただきたい。万一通つた場合、そういうことを希望するものでございます。
次に、私はこの法に対して、不信の念を労働者は抱きはしないかということを危惧するものであります。先ほど一九二七年の英国の労働法の改悪を盛んに例を引かれましたが、一九二七年法を廃止する労働争議及び組合法案が政府より提出されました場合、すなわち一九四六年でありましたが、このときに検事総長は、次のように提案理由の説明を申しております。それは一九二七年法について見ると、この法律の効果はほとんど失敗といつてよい。罷業権の行使に対する実際的な効果はまつたくなかつた。労働大衆の間には、不正が行われているというはげしい気持、法廷は労働者大衆に対抗しているという感情、法律が労働大衆の不利益になるように復讐的につくられたという信念、そうして労働権が徐々に奪われているという感じが醸成された。この法案が提出されたのは、この不正が行われているという気持を回復し、不当に個人の利益を束縛するものを取除くためである。すなわち、一九二七年法は、いまだかつて存在しなかつたような明瞭に不正な差別的な階級立法である。かように述べておるわけでございます。英国のこういう労働事情もよく御研究になつておられます労働大臣は、この検事総長の提案理由をいかに解せられておるか、お尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/210
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211・小坂善太郎
○小坂国務大臣 その提案理由は、私も拝見しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/211
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212・多賀谷真稔
○多賀谷委員 読まれたということは、私の答えにはならぬのでありましてこれを読んでいかに解せられておるか、こういうことをお尋ねしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/212
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213・小坂善太郎
○小坂国務大臣 やはりそうした政治的なストを禁止する場合と、それからこの法律の場合とは——これはいわゆる禁止的立法というものについて申し上げたのでありまするが、この場合は、繰返して申し上げるように、従来とも不当である、あるいは社会通念上非であるというものを明確化するという、いわば解釈法規なのでございますから、この場合には、今お話がございましたような提案理由を述べてこの法案を撤回するような場合は起きないのでありまして、自然に社会の良識の中に溶け込んで行く法案であろう、ですから、場合が違うのであります。さように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/213
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214・多賀谷真稔
○多賀谷委員 時間がございませんので、私は自分の気持を述べて質疑を終りたいと思います。
電気におきましても、ことに炭鉱企業におきましては、経営努力というのは、ほとんどなされておりません。すなわち常に減産をする場合には、労働者の解雇をしている、こういうことが統計的に現われているのでございます。日露戦争当時、五百万トンでありました日本の出炭が、大正元年には千九百万トンになり、十五万人の労働者がおりました。大正八年になると三千百万トンになり、労働者は三十四万人とふえております。ところが、御存じのような非常な不況になりまして、十年になりますと二千六百万トンに減りまして、労働者がわずか十年の間に二十六万人に減つておるわけであります。こういうことが昨今の状態においては起りはしないかと思う。さらに昭和七年になりますと、十三万人にまで炭鉱労働者は減つております。昭和十五年になりますと、日本の最高の出炭でございますが、五千六百万トン、十九年になりますと四十万人に労働者がふえておる。こういう状態で、出炭の要請されるときには労働者を雇い、出炭を抑制されるときには必ず解雇している。全然企業努力が現われていない。こういう現状のもとにこういう法案ができますときは、私は非常に便乗されることを憂えるのであります。ことに電気並びに炭鉱労働者だけでなく、ほかの全産業の労働者が、これが橋頭堡ではなかろうかといつて憂えているのでございます。私はこういう法案に対しまして、すみやかに撤回されんことを望んで質疑を打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/214
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215・赤松勇
○赤松委員長 倉石忠雄君から、議事進行について発言を求められております。この際これを許します。倉石忠雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/215
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216・倉石忠雄
○倉石委員 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案の質疑は、これにて終局せられんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/216
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217・赤松勇
○赤松委員長 ただいま倉石忠雄君から、議題となつております本案について、質疑を終局すべしとの動議が提出されました。本動議は討論を用いないことになつておりますから、ただちに採決をいたします。本動議に賛成の諸君は起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/217
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218・赤松勇
○赤松委員長 起立多数。よつて動議のごとく決しました。これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
明日は午前十時より開会し、本案について討論採決を行うことといたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01119530710/218
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