1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月十一日(土曜日)
午前十一時九分開議
出席委員
委員長 赤松 勇君
理事 倉石 忠雄君 理事 丹羽喬四郎君
理事 持永 義夫君 理事 高橋 禎一君
理事 山花 秀雄君 理事 矢尾喜三郎君
理事 山村新治郎君
池田 清君 尾関 義一君
鈴木 正文君 田渕 光一君
野田 卯一君 三和 精一君
山中 貞則君 岡部 得三君
佐藤 芳男君 町村 金五君
黒澤 幸一君 多賀谷真稔君
井堀 繁雄君 熊本 虎三君
中澤 茂一君 中原 健次君
出席国務大臣
労 働 大 臣 小坂善太郎君
出席政府委員
労働事務官
(労政局長) 中西 實君
委員外の出席者
労働事務次官 齋藤 邦吉君
専 門 員 濱口金一郎君
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七月十一日
委員田中伊三次君及び川崎秀二君辞任につき、
その補欠として尾関義一君及び岡部得三君が議
長の指名で委員に選任された。
同日
委員岡部得三君辞任につき、その補欠として川
崎秀二君が議長の指名で委員に選任された。
七月十日
電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法
の規制に関する陳情書
(第七八四号)
電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法
の規制に関する法律案反対の陳情書外一件
(第七八五号)
同外六件
(第七八六号)
同外四件
(第七八七号)
失業対策事業費に関する陳情書
(第七八八号)
電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法
の規制に関する法律案反対の陳情書外一件
(第八一三号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法
の規制に関する法律案(内閣提出第二一号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/0
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001・赤松勇
○赤松委員長 これより会議を開きます。
電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案を議題といたします。
本案につきましては、昨日質疑を終了いたしておりますが、山村新治郎君より修正案が提出されておりますから、まずその趣旨弁明を許します。山村新治郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/1
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002・山村新治郎
○山村委員 私はわが党より提出いたしました修正案の趣旨弁明をいたしたいと存じます。
まず案文でございますが、簡単でございまして、附則二項中「三年」とございますのを「一年」に改めるというのでございます。
その理由は、本法はあくまでも暫定立法でございまして、かつ労働者側のみを規制する一方的な法律案である感がございます。従いまして、早急に健全なる労働立法の樹立されることが望ましいのでございますが、とりあえず第二項中の「三年」を「一年」に改めることを提案するものでございます。以上。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/2
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003・赤松勇
○赤松委員長 これにて修正案の趣旨弁明は終了いたしました。
これより電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案及び本案に対する山村新治郎君提出の修正案を一括議題といたしまして、討論に入ります。議論は通告順により、順次これを許します。持永義夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/3
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004・持永義夫
○持永委員 私は自由党を代表いたしまして、ただいま上程されております電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案につきまして、賛成の意を表し、また、ただいま山村新治郎君から提出されました修正案に対しまして、反対の意を表明するものであります。
昨年の秋行われました電産及び炭労ストは、その規模が大きく、期間が長く、かつ被害がはなはだしいことにおきまして、わが国未曽有の労働争議でありまして、わが国の産業経並びに国民生活に与えました脅威及び損害が非常に深刻でありましたことは、今なおわれわれの記憶に新たなところでおります。本法律案は、この苦い経験にかんがみまして、再びかくのごとき争議の発生を未然に防止せんとするために提案されたものでありまして、その内容とするところは、わが国の基本産業ともいうべき電気事業及び石炭鉱業における労働争議の違法性の限界を明確に規定せんとするものであります。しかして本法律案は、御承知の通り去る第十五国会におきまして提案され、衆議院を通過したのでありますが、不幸にして参議院において審議中に、解散のために不成立に相なつたものであります。
わが憲法によりますれば、労働争議権は、いわゆる基本的人権として保障されておるところでありますから、できますならば、この争議権を法律をもつて制限をしない方がいい、争議にあたりましては、できる限り労使双方の自主的解決にまかせるということがいいのでございます。しかしながら、昨年行われましたようなあの争議は、戦後その自由と権利を保障された労働組合が、敗戦によつて底の浅くなつたわが国の経済を無視して、いたずらに階級的利害のみにとらわれ、はなはだしく政治闘争的となり、産業経済の復興と国民生活の安定はもちろんのこと、遂には治安の確保さえ危殆に瀕せしめましたあの無謀なる争議行為に対しましては、断固その反省と自粛を求めざるを得ないのであります。今回政府が本法律案を提出しましたのは、従来とかく疑義を生じ、明瞭を欠いておつた公共事業令あるいは鉱山保安法の禁止しておつた停電ストや、あるいは保安要員の引揚げを、労働争議としてもこれを禁止するという旨を明らかに規定しまして、違法性の範囲を明確にし、一般公衆の利益を擁護するために提出したのでありまして、このことは憲法の許すところであり、また当然過ぎるほど当然の措置といわなければならぬと思います。しかしてこのことは、現在の日本の大多数の国民が熱望し、歓迎しているところであると私は信じます。
昨年の労働争議におきます争議行為が行き過まであつたということは、常識ある大部分の国民がこれを認めるところでありまして、社会党右派の支持されている民労連自体におきましても、最近配布されましたその機関紙の臨時増刊にむいてこういうことを言つておられます。炭労、電産の昨年末のストは、確かに非常識な行き過ぎの傾向を示したと言つているくらいであります。私は、およそ民主主義国家におきまして、従来わが国に発生したような停電ストあるいは炭労ストがあるかどうかということを調べてみましたが、かくのごとき労働行為は、発見しようとしましても容易に発見し得ないのが他の民主主義国の実信であります。もう少し詳しく申上げますれば、停電ストは、イギリスにおきましては特別の法律をもつて禁止されております。また西ドイツにおきましては、最近停電ストに対しましては刑法をもつて、懲役罪としてこれを禁止しておる。またアメリカにおきましては、これは州によつてその規制が違うのでありますが、州によつて停電ストを禁止し、また禁止していない州におきましても、社会常識がこれを許さないということでありまして、この各国の実情を見、また日本の現状をこれら各国の状況と比べまして、日本において平然としてこういう国民大衆に迷惑をかけるような争議が行われるというこの事実は、われわれはまことに概嘆にたえない次第であります。英国におきましては、かつて一九二六年のあの石炭の大争議の直後、いわゆる労働組合の弾圧法とも称すべき法律が制定されまして、政治目的を持つたゼネストはこれを禁止しました。これは時の保守党内閣のボールドウインが断行したものであります。これが約十九年間実施されまして、ようやく労働党のアトリー内閣によつて廃止されたという事例がございますが、この事例は、まさしく現在の日本の実態に当てはまるのではないか。そういう意味におきまして、われわれは英国の実例を他山の石としてならいたいというのが、私の考えであります。
次に、本法案の審議の過程におきまして、最も問題になりました二、三の点を申し上げたいと思います。第一は、本法は憲法第二十八條によつて保障されておる争議権を規制するのであるから、憲法違反であるという議論であります。第二は、本法の規制によつて、両産業については今後労働争議が相当制限をされるから、実は争議権を剥奪するのではないかという議論と、第三は、本法は一方的に労働者の争議権を制約して、事業主に対しましては、形式上はともかくとして、実質上何らの制約を加えてない、いわば片手落ちの立法であるから、公労法の場合のごとく、何らか労働者に対する救済の方法を規定する必要があるではないかという意見であります。私が承知しておる範囲におきましては、この三点が最も重要な点であつたかと存じます。
第一点の、憲法第二十八條に規定されておる争議権は、もちろん新憲法によつて保障されておるのでありますが、この権利は絶対自由のものでないことは、ひとりわれわれのみの解釈ではございません。当然憲法の第十二條及び第十三條の規定によつて、公共の福祉に反せざる範囲においてこれが認められておるということは、一部学者の意見もそうであります。また最高裁判所の判決におきましてもこれを認めておる。従つて私どもは、この争議権に対する公共の福祉を守るための抑制というものは、絶対に憲法に背反しないということを信ずるものであります。もちろん、これに対しましては、一部の学者が反対をいたしておりますが、この意見は、われわれの考えをもつてするならば、これは国民全体の利益を顧みないで、いわば一部の利益にとらわれた偏見による学説であるとわれわれは断ずるものであります。もとより争議権は、憲法の保障しておるところでありますから、でき得るならば、これをできるだけ尊重いたしまして、みだりにこれに対して制限を加えることのできないことは、申すまでもないところであります。もとよりわれわれはこの点につきましては、十分に認識しておるところでありますが、昨年秋のごときあのストライキに対しましては、第三者たる国民大衆の利益を擁護するために、これを違法行為として断固禁止することは、現行憲法のもとより許容するところであつて、当然の措置であると信じます。しかも停電等については公共事業令において、また保安要員の引揚げにつきましては鉱山保安法において、従来から規定をもつて禁止しておるのでありまして、今回の法律案は、この違法性をただ明確に宣言し、あるいは確認するにすぎないのであつて、決して新たに違法行為としてプラスしたものではありません。そういう意味におきまして、この第一点の憲法違反の問題は、絶対に憲法違反にならないというのが、われわれの解釈であります。詳しいことは、なお学説を申し上げたいのでありますが、時間の関係上省きます。
第二点につきましては、反対派の人はこの両産業においては、停電及び保安要員の引揚げを争議行為として禁止すれば、残された争議方法はなくなるのではないか。従つて、名前は規制といいながら、実は争議権の剥奪ではないかと主張するのでありますが、われらはつぶさに両産業につきまして、その残された争議行為について検討いしますときに、まだたくさん争議行為が残つておる。従つて、労使間の対等のバランスというものは、絶対にこの法律によつて破れない、いわゆるアンバランスは来されないものと信ずるものであります。そういう意味におきまして、この説に対しましては、絶対に承服することはできません。
また第三点の、本法は公労法の場合のごとく、争議権を全然剥奪するのではないのであります。従つて、公労法の場合のように、これに対する仲裁制度のごとき特別なる法制を考える必要はない。また、かつて主張されたような強制仲裁制度というようなことは、われわれはこの制度につきましては、本質的に賛成しがたいものであります。労働争議の解決につきましては、でき得る限り労使が自主的に解決するというのが理想でありまして、これに対して強制的に仲裁するということは、われわれは賛成できません。従つてこの三点につきましても、われわれは反対の主張を承服することができないのでありまして、これに対しましては、当然特別な規定はいらないと思うのがわれわれの考えであります。
以上反対の主要なる点に対するわれわれの考えを申し上げたのでありますが、そういう意味におきまして、われわれは本法に対しまして賛成の意を表明するものであります。ただ、私が特にこの際政府に対しまして要望しておきたいことは、本法律案は、立法技術の見地からいいまして、必ずしも完全なものとはいえません。このことは本委員会における審議の過程におきまして、政府当局がよく御了解に相なつたことと思います。また朝鮮事変の解決に伴いまして、日本の経済事情が激変されることが予想されます。それに伴いまして、わが国の労働事情も相当変化いたします。複雑困難化する懸念がないでもありません。従つて政府は、現行の労働法制全般について慎重に御検討願いまして、もし改正を加える点があるならば改正を加えて、あるいは追加すべきものがあれば追加する等の方法を講じまして、ここに確固たる日本の現在の民主主義に適合したところの労働法制を確立されんことをこいねがうものであります。労働大臣が委員会におきまして申されました労使一本とする懇談会、これにつきましては、具体的なお示しはなかつたのでありますが、私はこれも一つの考えかと思います。しかしながら、これはよほど慎重に計画されなければ、その実効があがらないのじやないかということを私は懸念するものであります。ともあれ、若くかつ聰明なる労働大臣が、この困難なる現在の労働行政に対しまして、りつぱな労働法制をつくられんことを念願してやみません。独立した日本が産業の平和をはかり、経済的に自立することこそ、今日の急務であると私は信じます政府は、かりに本法案が成立いたしましたとしましても、どうか安易に流るることなく、よろしく争議の根本的原因を探究されまして、その調整に努められるとともに一方適切なる方途を講ぜられまして、労使の現在のような敵対感情を緩和され、労使相協力してわが国産業の振興と国家再建に邁進するよう努力していただきたいと思います。もし労使が自己本位の打算追求を捨てて、またこれに伴う態勢ができますならば、本法のごときは無用の長物となるでありましよう。かかる法令を必要としない労使関係こそ、われわれの最も望むところでありまして本法案には、三年の期限がついておりますが、いわゆる法は法なきを期するのであります。どうか三年をまたずとも、一日も早く本法の必要のない日の来らんことを待望してやみません。
最後に重ねて私は、わが党は、自己の利益のみを追求して、国家大衆の利益を犠牲にせんとする行為は、断じて許すことのできないものであることを信じますから、本法案の成立を期待し、これに賛同しまして、私の賛成の意見を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/4
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005・赤松勇
○赤松委員長 高橋禎一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/5
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006・高橋禎一
○高橋(禎)委員 私はただいま議題となつております法律案について改進党を代表して簡単に討論をいたしたいと思うものであります。
憲法の保障する勤労者の団結権ないし団体行動権は、もとより立法その他国政の上において尊重されなければならないことは、申すまでもないところであります。勤労者の労働條件を適正に保持し、かつこれを改善いたしますことは、勤労者自身の生活権の擁護でありますばかりでなく、勤労者が勤労に対する意欲を高め、もつて日本産業の興隆に寄与するゆえんでございます。
しかしながら、勤労者がいかにその労働條件を適正に保持改善しようといたしましても、各個別にその使用者である企業者に対立しておりましたのでは、一般に相手方たる企業者の経済的炭力に圧倒せられまして、労使対等の立場においてその利益を主張し、これを貫徹することは困難であります。従つて、勤労者に多数団結し、その団体の威力を利用し、必要なる団体行動をなすことによつて、適正な労働條件の保持改善をはからなければならない必要が生れて参りますことは、当然であります。憲法はここに着眼し、勤労者の団結権ないし団体行動権を保障し、その精神を基調として労働法がその促進助成をはかるため生れたことも、まことに明白でございます。
しかしながら、この勤労者の権利といえども、絶無制限のものであるわけはないのでありまして、憲法のいわゆる公共の福祉に反せざる限度においてのみ認められ、かつ尊重されるものなのであります。このことは、学説として有力であり、最高裁判所の判例も、明らかにこれを示しているところであります。日本国民は、公共の福祉に反する内容の権利を有することはございません。またすべて権利は、その濫用が許されないのみでなく、公共の福祉のためにこれを利用するの義務をさえ伴つているものでありまして、このことは財産権においてしかり、勤労者の団結権ないし団体行動権においても、またしかりであると思うのであります。
労働組合法について見ましても、その保護するところは、どこまでも公共の福祉に反せざる、正当なる団体行動にとどまりまして、しからざるものには、もちろん及んでおらないのであります。もし憲法第二十八條により保障せられました勤労者の権利が絶対無制限のものであるといたしますれば、ときにはかえつて逆に使用者の自由を侵害するだけでなく、国家の公益を害し、国民全体に不幸を害し、自民全体に不幸を与えるに至りますことは、容易に首肯し得るところでありまして、勤労者自身社会構成の一部で、それは全体社会の中に合一して生存し、社会との調和において幸福を追求すべきものものとするのが、憲法の精神であると思うのであります。国家社会の不幸は、決して勤労者に幸いをもたらすものではございません。そこに、国民共同の利益としての公共の福祉は、勤労者を含めての国民全体が協同して守らなければならぬゆえんがあるのであります。私は、この勤労者の憲法上の団体行動権の限界を、電気事業、石炭鉱業について明らかにせんとするものが、本法案であると解するのであります。
すべて争議行為の正当性を維持いたしますことは、憲法の精神であり、従つてこれは憲法の遵守であるとさえ思われるのであります。しかるに、争議行為が正当なるかいなかを判定いたしますことは、きわめて困難であり、この点について成文的に確立を見ない今日におきまして、労働法制としていかなる方法をとるべきであるかということを、考究しなければならぬのであります。私どもは、この問題を政治的対立の関係として、労働法を対立抗争ないし階級闘争の具と考えるべきでなくして、冷静に、真に屡質的に契約自由の原則を守るため、労使関係の均衡保持の問題、社会調和の問題として取扱うべきであると考えるものでございます。
争議行為の正当性について考えますとき、その主体についての正当性、目的についての正当性、手段についての正当性等が問題となるわけでありますが、本法案は、その手段についての問題であることは申し上げるまでもありません。争議行為の手段の正当性を明確にいたしますために、これを法文化したものに、現行法のもとにおいても、すでに二、三の例があるのであります。外国においても、この種の立法例を見るのでございます。私は、かように法律をもつて争議行為の正当性の限度を明確にするの態度は、必ずしも排斥すべきものではなく、むしろかえて、事情のいかんによりましては、それが必要であることを認むるものであります。世に、それは裁判所の判例の集積により、自然にその限界は定まるをもつて、これを待つべきであるとの説もあります。これに臓首肯すべき点もあるのでありますが、しかし判例をつくる勤労者を法廷に立たしむるという勤労者の犠牲があるのでありまして、これは私どものとうてい忍び得ざるところであります。また、この法律が経営者の個人財産を保護することとなるという非難もあるのでありますが、財産権は公共の福祉に沿うようにその内容が定められ、また公共のためには一定の補償をもつてこれを公に利用するということを、憲法が規定いたしておるのでございますから、やはりある特別なる公共的なものについては、個人の財産をも保護しなければならない関係があるということは、これは憲法の認めておるところであると思うのであります。
本法案は、昨冬行われました電産、炭労の二大ストにより得た経験に基いて、電気事業、石炭鉱業に関するある特殊の争議行為が国民経済の運行著しく阻害し、また国民の日常生活をはなはだしく危うくし、国家公共の利益を害することあるに思いをいたして、この際その争議行為の手段に関する限界を定め置かんとするものでありまして、私はそのやむを得ざることを是認し、国民の良識ないて社会通念は、本法案の内容を支持するものであることを考えまして、適用に誤りなきを期待しつつ原案に賛意を表するものでございます。修正案に対しては反対でございます。
最後に、私は政府当局に強く要望いたしたいのであります。第一は、本法案が三年間の臨時法であることの意義は、きわめて重大であるという点であります。これは、政府にゆたかなる労働政策を要請し、かつ法律がこれを鞭撻するの意味があるのでありまして、産業平和招来の期限を定めたものとも解すべきであるということであります。しからば政府は労働行政に対する責任が、本法の成立によつてますます重きを加えましたことを痛感し、国民の期待に沿わなければならぬと思うのであります。
第二には、運用の問題でありますが、この法律の運用の責任は政府にあるのであります。法の生命はその運用にあるのでありまして、もし本法が公共の福祉を守るの精神を忘れて、勤労者の一方的制圧に悪用されるようなことがございましたら、それは宝刀を血ぬらすにひとしきものでございまして、それは調和でなく、闘争であり法の蹂躪であると思われるのであります。それはすなわち労働問題解決の禍根を残すこととなりまして、日本経済再建を阻害するものであるということを銘記されたいということを特につけ加えまして、討論を終る次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/6
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007・赤松勇
○赤松委員長 黒澤幸一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/7
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008・黒澤幸一
○黒澤委員 私は日本社会党を代表いたしまして、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規正に関する法律案に対しまして、全面的に反対を表明するとともに、山村新治郎君から提出されました修正案に対しましても反対するものであります。
私の反対の第一の理由は、本法律案が日本の民主主義に逆行する吉田内閣の反動的労働政策の点であります。申し上げるまでもなく、新日本の建設の基調は、民主主義の徹底であります。すなわち日本を無謀なる戦争に追い込み、この破局的敗戦に導いたところの反動的封建的残滓を一掃いたしまして、民主的政治、経済、文化、社会を建設することでなければならないのであります。労働運動の健全なる発展こそは、日本の民主化の大きな支柱であり、中核体であると考えるのであります。日本の新憲法は、民主主義こそ日本の国本であることを厳として国民に明示しておるところであります。終戦以来わが国の民主主義は、国民の思想の中に、国家の制度施策の中に取入れられまして、発展の一途をたどつて参つたのであります。しかるに吉田内閣はこの成長しつつある民主主義の枝を折り、芽をつむところの民主主義に逆行する反動立法を濫発いたしまして、民主主義を蹂躙しつつあるのであります。そのことは、特に労働運動の断圧法の制定の中に見ることができるのであります。すなわち過去数回にわたる労働法規の改悪、公務員法、公共企業体等労働関係法、地方公営企業労働関係法、破壊活動防止法等を制定いたし、なおこれにあきたらずして、今またスト規制法を制定して、労働階級の自由と権利に一大制約を加えんとしておるのであります。
労働大臣は、本法案立案の理由といたしまして、国民経済、国民の日常生活の擁護、争議権と公益の調和、公共の福祉のために等、かような抽象的美辞麗句を羅列いたしまして合理化しようとしておりまするが、本法案立案の動機原因は、昨年行われました電産、炭労の争議一つをとらえまして、これを違法化せんとする以外の何ものでもないのであります。歴史の浅い、経験に乏しい、慣行のいまだ累積せざる日本の労働運動の民主的健全な発展の途上にあるわが国労働運動において、たとい一時的行き過ぎがあつたといたしましても、これをとらえて不当であり違法であると断じて、法律をもつて律するがごときは、日本の労働運動の正常な発展を求むる政府のなすべき方法ではないと私は考えております。政府は、品を開けば、労働争議は労使の自主的解決が好ましいとか、あるいは良識ある慣行の形成することを希望するとか言つておりますけれども、事実においては自主的解決を抑圧し、妨害するところの取締り法規を次から次へとつくつている。こんなことでは、日本の労働運動の慣行などはできる道理がありません。労働運動の正常な発展は、弾圧法の濫発によつては断じて期することはできないのであります。かくのごとき民主主義に逆行する反動立法に対しましては、わが党は断固として反対せざるを得ないのであります。
反対の第二点は、本法案が労使対等の原則を無視し、労働者のみに犠牲をしいる使用者の保護法であるという点であります。労働争議は、労使の相対的の問題であります。求むる者と求められる者との間に起る利害の激突であります。これより起る諸問題については、問題発生の根源がいずこにありやを厳密慎重に探究しなければ、適正なる解決は見出し得ないのであります。現象をとらえて判断し、処置するがごときは、特に労働運動においては危険きわまることであり、それはひつきよう労働者の責任のみが加重される結果となるのであります。政府は、昨年の電産、炭労の争議についても、その真相を究明せず、ストライキという現象をとらえて、その責任を労働者のみ帰するところの本法を立案するに至つたのであります。政府は、電産、炭労の争議が、何ゆえかくのごとき長期深刻なる事態に立ち至つたかに対しましては、何ら真相を探究し把握しないのであります。昨年の電産、炭労の争議が、電産においては八十日を超過し、炭労においては六十三日の長期にわたり深刻なる闘争が行われましたことは、決して偶然ではないのであります。電産、炭労の諸君が正当なる要求を掲げ、使用者側の善処を要望したにもかかわらず、何ら考慮するところなく、がんとして一蹴して参つたのであります。労働協約の締結の問題、賃金値上げの問題にしても、使用者にとつて決して不可能の問題ではないとわれわれは考える。当時炭鉱資本家のごときは、莫大な利益を得ておつたということは、万人ひとしく認めるところであるにもかかわらず、最低賃金にくぎづけにしておくばかりではなく、逆に労働強化による実質的な賃金引下げや、待遇の改悪さえ強行しようとしたのであります。彼ら資本家は公益事業による政府の保護を受け、また電気事業のごとく独占事業であることによつて、国家権力を背景として暴利をむさぼり、横暴の限りを尽して参つたのであります。電産、炭労の争議が長期化し、深刻化することは、かえつて電気、炭鉱資本家とその政府の案は望んでおつたことが、真相ではないかとさえ思われるのであります。すなわち彼ら資本家は、電産、炭労を苦境に追い込み、その要求を一蹴し、労働組合の分裂をはかり、ストライキを非合法化せんとする陰謀の含まれていたことを否定し得ないのであります。政府またこれを傍観して、争議の解決に対し、何らの措置も講じようとはしなかつたのであります。この争議が長期深刻化した責任は、資本家の頑迷と陰謀と政府の無為無能のしからしむるところであるにもかかわらず、かえつて労働組合のみに責任を転嫁し、憲法に保障されている労働基本権までも剥奪する本法案を立案するに至つたのであります。
労働大臣は、本法案は電産、炭労の一部分のスト禁止であるといつているが、それを奪われた後の争議行為は何ら威力を持たず、資本家に対する圧力とはならないのであります。申し上ぐるまでもなく、争議行為は、業務の正常なる運営を阻害する行為をいうのでありまして、労使双方の総力をあげての対決戦であります。ゆえに争議における力の発揮を阻害し弱化させるごとき政府の権力的干渉介入を絶対排除しなければならないのであります。されば労働組合法第一條の冒頭において、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを明示しているのであります
本法案において電産、炭労の労働組合は、償い得ない争議の弱体化不利益を招来することは、断じて否定できないのであります。しかも政府は、本法案により、かくのごとく労働者の基本権を剥奪し、今後の闘争に重大なる不利益をもたらすにもかかわらず、当該資本家に対しては、何らその責任を追究せず、放置して、あえて省みようとはしないのであります。昨年の電産のストにおいて、電産は中小企業、一般消費者の迷惑を考慮し、大口消費者のみの送電を停止せんとしたにもかかわらず、会社は、逆に大口消費者に重点的に送電して、中小企業、一般消費者の送電を停止したのであります。かくのごとく公益事業であり、独占事業であることのため、横暴の限りを尽しているのであるが、監督権を持つ政府は、会社の横暴をあえて見のがして省みないがごとくであります。
政府が公正なる態度をもつて臨むならば、資本家に対しても、その責任を追究し、その横暴を抑圧するところの措置が、当然とられねばならないはずであり、本法案の被害者たる労働者に対しては、かような争議行為など必要としないところの分配の公平が期され生活安定の道が講ぜられねばならないのであります。しかるにこれをあえてなさず、労働組合の責任のみを問い憲法の保障する労働者の基本権まで蹂躙する吉田内閣は、資本家の擁護政府であり、労働階級の敵であることを、われわれに表明するものであります。
第三の反対の理由は、本法案は違憲立法である点であります。労働大臣は、本法案説明の中で、争議行為と公益の調和をはかり、もつて公共の福祉を擁護するためと言われている。すなわち本法案は、憲法第二十八條の団体行動権と憲法第十二條及び憲法第十三條の公共の福祉との調整をはからんとする趣旨において提案されているものであります。この労働大臣の立論から言いますと、憲法上労働者の生活を擁護するために規定された団体行動権は、公共の福祉から除外されて取扱われているごとく思われているのであります。しかし、全国数千万の労働者の憲法で保障される基本的権利でありまする団体行動権もまた、公共の福祉に含まれるものでなければならないと考えておるのであります。(拍手)労働組合が使用者との闘争における唯一の武器は、団体行動であり、その中核をなすものは争議権であり、この争議権を失うことは、団体行動権の圧殺であるとわれわれは考えておる。ストライキは、労働者がみずからの生活権擁護の要求を貫徹せんがために、職場を一時休むことであります。憲法に保障されておる団体行動権に基いて行うストライキは、何ものにも拘束されるものではなく、労務に服することを強要することはできないのであります。憲法第十八條は「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」と明示している。本法案は、憲法第十八條を蹂躪して、電産、炭労の労働者諸君に、強制労働をもつて臨まんとする奴隷立法といわなければならない。以上のごとく憲法上より見ましても、これに基いて制定せられたる労働組合法との関連から見ましても、団体行動権がいかに重視され擁護されているか明瞭であります。まさに本法案は違憲立法の労働者新庄法であることをいわざるを得ないのであります。
本法案に対する第四の反対理由は、客観的社会的見地からの反対であります。労働大臣は提案理由の説明の中で、また本委員会における本法案審議の過程におきましても、本法案の禁止事項は、今まで違法として取扱われて来たもの、社会通念上不当であるものを、労働法上明確化させた確認法である旨を繰返し述べられている。なるほど鉱山保安法、電気ガス臨時措置法において制限禁止されているが、これは争議行為の制限禁止ではなく、操業を前提とする規定であります。昨年の電産、炭労の争議が、国民各方面に迷惑や不便を与えたことは、われわれも認める。しかし、単なる公衆の便宜のために制限するということになれば、全産業の争議権は、全部禁止しなければならない結果になるのであります。争議権の行使による国民の影響性において、かりに本法案のごとくスト禁止の問題となるには、国民大衆の生命が脅かされるような状態が、現実に明白になつた場合に考慮さるべき問題であつて、ただ単なる不便や迷惑の程度によつて論議されるべき事態ではないのであります。昨年の電産、炭労の争議に大衆のこうむつた影響は、決して生命を危殆に瀕せしめるがごときことは、絶対あり得なかつたと思うのであります。しかるに労働大臣が本法案の禁止事項であるスト行為は、社会通念上不当であることを特に強調することは、電産ストのため不便をごうむつた大衆の不平不満の一時的感情を極度に悪用し、社会通念と称してスト規制法制定の理由とする陰険悪辣なる謀略といわなければならないのであります。
労働大臣は、一方にスト規制法を提案しながら、その瞬間突如として労働問題協議会設置を声明せられたのであります。まことにけつこうな構想でありまして、われわれもその趣旨にはあえて反対するものではありません。しかし、私は労働大臣が、この労働問題協議会をどこまで真剣にお考えになつておるのか、疑わざるを得ない。労働大臣は、何ゆえスト規制の問題をこの協議会にはかつて、もつと慎重に取扱わなかつたのか、労働大臣のために衷心より惜しむものであります。(拍手)それをなさざるところに、スト規制の問題と労働問題協議会設置を対照してみるときに、そこにわれわれは不可解な問題が考えられるのであります。すなわち労働大臣は、一方において労働者に対して拳銃をつきつけ、他方においては労働者に握手を求める懐柔的な二つの立場をとつておるがごとく、われわれは考えるのであります。労働大臣の労働政策がジギルとハイドでなけば、私は幸いであると考える。(拍手)若年に似ず、労働大臣は見えすいた味な手を使うだけ、本法案に対する悩み果てなき労働大臣の真の心境でもあろうと推察して、一掬の涙をもつて、御同情を申し上げる次第であります。
反対の第五の理由は、本法案が成立すれば、スト規制が他産業に拡大される危険性が予想せられる点であります。政府は、電産、炭労以外には、スト規制は拡大しないと言明されておりますけれども、いかなる法律が制定される場合におきましても、立法者はかような常套語を使うのであります。しかるに、日時の経過するにつれまして、いよいよ本性を現わして、拡大強化されるということは、過去の歴史の中に見ることができるのであります。戦争前の治安警察法、暴力行為等取締法、あるいは治安維持法等も、労働運動には適用しないといわれながら、遂に労働運動の弾圧法として、公然と登場して参りまして、多くの労働運動者る投獄した過去の事実があるのであります。スト規制を電産、炭労だけに限定する理論的根拠はないのであつて、たまたま昨年電産、炭労のストが起つた事実問題から、本法案が立案されたのであります。本法案が成立すれば、これがスト規制の橋頭堡となりまして、重要産業と思われるところの私鉄、日通、鉱山、鉄鋼、肥料その他の産業にも拡大される公算が大きいことを、われわれは考えなければならないのであります。
本法案は、吉田内閣の計画的労働運動弾圧の意図のもとに立案されたものであつて、わが党はこれに対して絶対反対を表明するとともに、山村新治郎君提出の修正案に対しましても、反対を表明するものであります。今や全国六百万の組織労働者を中心といたしまして、本案の反対闘争は、全国津々浦々に展開されている。この光景を吉田内閣は何と見るか、労働大臣は何とお考えになられるか。保守党の諸君は、数を頼んで本案を国会を通過させることは可能でありましよう。しかし時代の進運は、やがて崩壊せんとする支配階級の最後のあがきを冷厳に見守りながら、やがて過去に押し流さずにはやまないでありましよう。天が照々としてまことを照らす限りにおきまして、本案を提案する吉田内閣とこれを支持する諸君は、この弱者を弾圧する暴逆なる法案であつたことを、やがて認識し、悔い改めるときが来るでありましよう。そのときこそは、時代は逆転して諸君が弱者の立場に立つでありましよう。
以上をもつて、私の本案に対する反対討論を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/8
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009・赤松勇
○赤松委員長 熊本虎三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/9
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010・熊本虎三
○熊本委員 ただいま上程されております電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案に対しまして……(発言する者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/10
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011・赤松勇
○赤松委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/11
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012・熊本虎三
○熊本委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、反対の意見を述べようといたすものでございます。
まず第一、本法はことさらに問題の根本の探求に目をおおい、単に結果論として現われた現象のみを理由に、労働者を弾圧せんとするものであります。すべての社会現象は、それぞれの原因があるのであつて、その対策樹立は、あくまでもその根源の究明こそ肝要なことといわなければなりません。特に労働行政には、その点が重要でありまして、争議発生の動機については、格段の配慮が大切であります。要するに、営利資本の利益追求は無制限でありまして、そのために多くの社会不安を惹起し、公益を蹂躪して社会人類に害毒を流すことは、いまさらマルクス経済学や資本論を引用するまでもなく、弱肉強食を原則とする資本主義経済の必然性であるといわなければなりません。さればこそ、民主憲法二十八條及び労組法第一條において、労働者の基本権が確立されておるのであつて、この原則は、常に最大限に実現されるよう心がけなければ、労使対等の地位は断じて守ることはできないのであります。しかるにもかかわらず、あえて本法はこの原則を無視し、争議の原因をきわむることなく、単に争議行為の多少の行き過ぎを理由に、労働者の基本権抑圧をはからんとする、かくのごとき法案は、断じて承認できないのであります。
第二に、日本経済再建の方途を誤るものでありまして、ここに重大性があるものといわなければなりません。日本再建の方途は、言うまでもなく生産力拡充である。生産力の拡充は、これは言をまつまでもなく、労働者が明るい希望のもとに、義務と権利を思案に遂行するごとによつて始まるのであります。従つて、労働政策の基本は、それが公営であろうと、また民間事業であろうと、そこに従事する職員及び労働者がその職場を通じて、国力の充実と国民生活の安定向上に進んで貢献し得るようにすることが、労働法規の大原則でなければなりません。もし本法を実施するならば、残念ながら、健全なる労働慣行も、労働組合の推進また発展も、これをはばみ、将来に禍根を残すことであろうことを忘れてはなりません。先ほど持永君から、英国炭鉱争議後の弾圧法を云々されたのでありますが、そのことが、英国において逆作用となつて、多くの悔いを残して、今日のごとく改善されたることは、何人も知れる事実である。わが国において、またぞろこの轍を繰返さんとするがごときは、愚の骨頂であると断言してもはばからない次第であります。(拍手)
さらに、本法の提案理由もまことに薄弱でありまして、その前提條件に誤謬があるのであり、率直に言えば、労働者の当然の要求権を圧迫して、資本家に奉仕せんとする以外の何ものでもありません。提案理由中、労使間の問題は、法をもつて抑制することはできる限り最小限とし、労使の良識と健全なる慣行の成熟にゆだねることが望ましい云々と言つておるが、はたしてその真意があるならば、本法案はただちに撤回すべきであると信じます。
本法提出の直接理由として、昨年末の争議を対象としておるのでありますが、その後の労働関係の動向を見るに、十分に自己批判が行われ、両関係組合ともに、健全なる労働組合主義のもとに、その確立が進められつつあることは御承知の通りである。政府はこの点をいかに考えておるのであるか。ことさらにこれを知りつつ、この正常に向いつつある動向に追い討ちをかけんとするがごときことは、われわれが断じて了解に苦しむところであります。
要するに政府が真に労使対等の精神、すなわち憲法二十八條を遵法するならば、先ほど言いますように、本案は撤回することこそが私は当然であると断言してはばかりません。政府があえて本法案通過を強行せんとすることは、労使対等の言葉は、単に詭弁にすぎず、本質的には営利資本の傀儡たるを遺憾なく暴露するものであつて、われわれの断じで許すべからざることと絶叫せざるを得ないのでありす。
また政府は、口を開けば公益や公共福祉を云々するのであります。しからば公共の福祉とはいかなるものであるか。憲法の二十八條において、労働者の団結権、団体交渉権及び団体行動権を保障し、労組法第一條第二項において、刑法第三十五條の免責規定の適用を挿入した事実は、いかに労働者が不利な社会的立場にあるかを前提として、これを労使対等の地位に引上げることを考慮しておることを知らなければならない。逆に憲法二十九條において「財産権は、これを侵してはならない。」と保障しているが、しかし第二項において「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」第三項においては「私有財産は、正常な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」と義務規定が設けられておるであります。これは言うまでもなく、前述いたしましたように、自由経済が営利追求のもとにあり、その経営が弱肉強食の弊害を伴い、そのために公共福祉を守るものではないということから、これを規制しておることは多くの言を要しません。たとえば、本法案に関係ある電気事業の経営を見ましても、公益を阻害する停電は、単に争議の場合のみではありません。しかるに、その責任を果したことは何一つないのである。逆に、臆面もなく停電のありたる場合といえども、その料金の全額を国民より取上げ、さらに支払い延期に対しては、一割の延滞金を強要し、あるいは緊急の場合の一時的な無断使用についても、一方的推計によつて不当な高額な罰金を要求するという、どこに公共性があるかを、われわれは追究しなければなりません。かれらは、何ら公共性や、自家、国民の利害関係等を一考だにせず、ただただ利益追求に狂奔しておる現状であります。また炭鉱業については、日本全国の高額所得の調査表を見てもわかりますように、炭鉱業者が三億一千五百万円の巨額に及び、第一位であります。これに続いて七人までがごとごとく炭鉱業者が列記されておる。
かくのごとく営利追求を事として、他に何ものをも考えておらない営利資本に向つて、一つだにこれを制約することなく、単に一つの現象をつかまえて、あえて労働者を弾圧せんとする意図は、われわれは断じて承服できざる次第であります。労働者の最低賃金の要求はすべて拒否され、そこに労働争議の発端の原因がひそんでいるのである。かかる現状を、政府はことさらに歪曲して、一方的解釈のもとに提出した本法案は、資本家の独善的横暴に対しては何らの規制も行わず、一切の責任を労働者に転嫁し、国民を欺瞞して労働者を圧迫し、反動資本家の傀儡たらんとする悪法といわなければならない。私は党を代表し、全労働者の名において本性案の即時撤回を要求する次第であります。
なお、先ほど山村君から提案されました修正案もありますが、これは原則的に労働者の争議権に関してこれを否認するごとと同じであります。単なる期間の問題ではありません。残念ながらわれわれは、この問題につきましても賛成ができないのであります。
以上で反対の討論を終りといたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/12
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013・赤松勇
○赤松委員長 山一村新治郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/13
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014・山村新治郎
○山村委員 私は自由党を代表いたしまして、本法に対するわが党の修正案につきまして、賛成の討論を行わんとするものであります。
そもそも民主主義体制下におきましては、憲法に規定されましたる労働者の団結権及び罷業権問題は、新時代の日本を民主化せしめる一大要因であります。しかしながら、敗戦の混迷の中に芽ばえた日本の労働運動は、必ずしも正しい成長をして参つたとは言いがたきものがあると思うのであります。もちろん、日本経済の復興を促すためには、何としても労働者諸君の旺盛なる勤労にまたねばなりません。しかし、敗戦の痛手と、世界の不況のあらしの中にあえぐ日本経済の姿は、あたかも瀕死の重病人の姿にほうふつたるものがあるのであります。瀕死の重病人に対しまして、いかに効力ある薬であるからといつて、劇薬をたびたび服用せしめることは許されません。ストライキが、いかに労働者のみを守るところの妙薬であるといたしましても、かかる劇薬をたびたび用いるということは、労働者諸君の自身のためにもならないということを、銘記しなければならないと思うのであります。日本再建のためには、あの西ドイツにおける労働者と資本家のごとくに、お互いに手を携え合つて、ここしばらくの間は労働休戦をなして、祖国再建に尽さなければならないと思うのであります。しかるに、昨年の電産並びに炭労の争議が、国家国民に多大の迷惑を及ぼしたることは、今なお記憶になまなましいものがあるのであります。この二つのストライキは、今までかつてない長期かつ大規模なるものであつたのでありまして、炭労ストの長期化によりまして、列車は削減を来し、いろいろの産業並びに消費者に対しまして、重大なる影響を与え、遂には保安要員の引揚げという非常手段をもあえてせんとするに至つたのであります。一方電産のストライキにつきましては、いろいろの産業、特に中小企業に対し甚大なる打撃を与えまして、停電のストライキは、消費者から光明を奪い取り、社会全般に対する影響はまことに莫大なるものがあつたのであります。すなわちかかる罷業権行使のために、国家公共に好ましからざる影響を与えるがごときストライキは、今日の段階におきましては、一般大衆はもとより、心ある労働者諸君の絶対にとらざるところであると私は信ずるものであります。
また反面におきまして、昨年のストライキの実情を詳しく検討いたしまするときに、その一半の責任は、何としても、政府並びに資本家側においてこれを負わなければならないと思われる点が多々あるのであります。
元来労働問題の解決のためには、労使双方が満足をするごとこそ最も望ましく、かりに不満足であるといたしましても、不満足の中にも納得の行く点を見出さなければならないのでございます。しかるに今回の法律案につきましては、労働者の権利は規制されておりまするが、資本家側に対する規制の規定は、全然設けられておらないのであります。また労働者の権利の侵害に対する何の補償もなされておらないのであります。かくのごとき処置は、労働者諸君に対する吉田内閣の、血も涙もなき労働行政の現われといわなければならないのであります。(拍手)これがすなわち公聴会におけるところの学者の方々が、一人としてこの法案に賛成をされなかつた大きな原因であるということを忘れてはならないと思うのでございます。また吉田自由党の持永委員それ自身が、この法案につきまして、間に合せのずさんな法案であるということを指摘される点を考えましても、この法案がいかに不備であるかのよき証拠であるといわざるを得ないのであります。すなわちこの法案は、あくまでも暫定立法であらねばならないのであります。私どもは、公共の福祉を守らんがためには、本法の対象となる争議行為については、やむなくこれを禁止するといえども、これが代償として、労働者の利益を守り、労働者の勤労意欲を高揚せしめるがごとき、抜本的労働政策を樹立すべきことを、強く政府に要望するものであります。すなわち暫定立法が三年の長きにわたるということは、いろいろの弊害をかもしやすく、特に政府の労働行政に対する抜本的政策樹立の熱意を遅延せしむるおそれが多分にあるのであります。わが党が三年を一年に修正せんとする根本の理由は、ここにありますることを御了承を願いたいのであります。何とぞわが党の正論に耳を傾けていただきたいのであります。あるいはわが党の主張は、残念ながら少数なるをもつて否決されるかもしれません。その場合におきましては、一応次善の策といたしまして、やむなく原案に賛成する場合があるかもしれません。政府におきましては、たといその場合におきましても、わが党の意のあるところを体しまして、抜本的な労働行政を一日も早く樹立せられんことを、ここに要望してやみません。
私は全日本の労働運動の健全なる発達をこいねがい、また労働者諸君の幸福をここに祈りつつ、本討論を終る次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/14
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015・赤松勇
○赤松委員長 中原健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/15
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016・中原健次
○中原委員 私は労働者農民党を代表いたしまして、ここに議題となつておりまする、いわゆるストライキ規制法案に対し、絶対に反対をするものであります。
なお山村君の修正案に対しましては、その本質が本法案の承認であるために、遺憾ながら賛成いたしかねるのであります。
〔委員長退席、山花委員長代理着席〕
しかしながら、ここに注目を要すべきことは、同じ保守派の立場にあられながら、政府の提出原案に対し、その思想的、政策的立場の対立を持つておいでになるという事実であります。これはまさしく保守政党内部における分裂の実態を立証するものと考えるわけでありまして、このことは、政府がこの提案にさすがに最初から確信が見受けられなかつたことを、みずから立証するものとして、私はここに山村君の正義に対する至情の修正案に対しまして、その御配慮に対しまして、感謝をささげるのであります。
政府は、この法律によりまして、公共の福祉と争議権との調和をはかることに求めたいと説明しておるようでありますが、これはまことにもつてのほかの欺瞞であります。政府の言うところの公共の福祉とは、ほかならぬ独占資本家の福祉である。そのためにこそ、争議権との調和ならぬ争議権の剥奪をはからんとしているのであります。さらに政府は、この立法措置によつて、争議行為の正当性の範囲を必要な限度で明確にせんと言うておりまするが、その正当性の範囲を、独古資本の要請にこたえてきめようとしておることは、まことに危険千万であります。
〔山花委員長代理退席、委員長着席〕
かかる独断によつて、神聖なる争議権を蹂躪せんとたくらんでおることが、ここにいよいよ明白となつて参つておるのであります。本来争議権は、労働者階級にとりましては、かえがたい生存権である。この基本的人権を、単なる法解釈をもつて奪い取らんとするがごときは、断じて許されることではございません。わが日本の憲法が、その十一條において、基本的人権は、侵すことのできない永久の権利であると宣言し、さらにまた第十二條では、不断の努力によつて、これを保持しなければならないと規定いたしたのは、まさにそのときの支配者どもの身都合から、独断でこの基本的人権を侵害することのあるのをおそれ、気づかうたがためでありました。なおさらに、以下数條項にわたりまして、念入りにもこの基本的人権を保障することを規定し、ことに最終のくだりにおきましては、第九十七條をもつて自由人権獲得の歴史的積み重ねの経過を指摘いたし、「過去幾多の試錬に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」と、その不可侵性を強調しておるのは、これぞまさしく国の繁栄共存の大原則をかかる磐石の基礎の上に打立てたいものと考えたからにほかなりません。労働三権はこの大原則の上に保障されて参つたものであります。しかるに政府は、その権利を一つ一つはぎとつて行こうといたしております。そして本法案では、奪うものは容赦なくこれを奪いとるが、いささかの救済措置も考えておらない。かかる一方的な規制法は、一体世界のいずこの国に発見されるだろう。まことに憎むべし、最悪の立法といわなければなりません。
政府は、本法律案を提出するにあたりまして、昨冬行われた電産並びに炭労ストの苦い経験にかんがみてと言うて曲るが、この二大ストライキが長期にわたらざるを得なかつたのは、一体だれの責任であつたのであろう。電産の場合、その団体交渉を言葉を左右にしながら拒み続け、労働組合の分裂を策したのは、ほかならぬ電気産業独占資本家ではなかつたか。炭労の場合にいたしましても、逆にまた実質賃金の引下げをもつて臨み、労働強化を押しつけて参つた炭鉱資本家の責めではなかつたか。このことは、その争議経過を見れば、おのずから明瞭なことだつたのでありますが、政府はこの苦い経験から、労働者側の法益の限界を圧縮して、さなきだに対等性を持ち合わさない労働者の手足を奪い、行動力を弱めて、あたかもいのししのきばを抜いて豚の弱き群れの中に追い込まんとするごときに似ておるのであります。そればかりではない。資本家側に対しては何らの規制をも加えない、責任の追究もなされておらないのであります。かくのごときは片手落ちもはなはだしい。不平等なる條件のもとに、政府のいわゆる社会通念の成熟によつて健全な労働慣行をつくるという、ここに一つの大きな基盤を占めておることも指摘しなければならぬのであります。
公共の福祉を守るためと前提しながら、争議手段としての停電スト、電源ストを禁圧せんとしておるが、もしそのようなことになつた場合に、電気産業の労働者の立場は一体どうなるのか。労働のほんとうの価値を示すべき方法手段を失い、これでもつて労使の対等の均衡が保てると考えるのか。断じて保ち得ないのであります。独占企業である電気産業の、公共の福祉に奉仕するというの義務は経営者自身の当然負うべき事柄であることは言うまでもない。独占企業たるの特権の保障は、公益にこたえる義務とその責任が先行するはずであるが、現実にはその反対に、独占資本の立場は、その利潤の追求が優先し、公共の福祉を阻害することをしばしばいたしておるのでおります。炭鉱企業にいたしましても、鉱山保安法の拘束を受けるのは経営者自身のはずなのである。だから、争議行為としての保安要員の引揚げは、あくまで合法であります。いささかも規制を加えらるべき理由はございません。もちろん人命に危害を及ぼす状態のもとにおきましては、温水その他の起る行為を良識をもつて避けつつ参つたことは言うまでもない。そのことはまた別に、引揚げのために起るかもしれない炭坑の自然の破壊や資源の滅失までも、労働者にその責任を負わしめようとすることは、あまりにも虫のよ過ぎる話である。争議行為は、経営者側に打撃を与えないのでは意味がございません。これらについては労働大臣もあえて否定はせられないであろうと考える。
なお私は、ここに注意を喚起しておきたいと考えることがある。それは先般二日間にわたりまして開かれました公聴会の席上におきまして、純粋な立場の学識経験者六名の方たちが、まつたく言葉を同じくいたしまして、本法律案に対して反対の主張をしておるという事柄であります。しかるに政府は、これは一部の学者が反対しておるにすぎないと、まことに子供だましのような苦しい説明をいたしておりますが、反対論を否認するためのそのような幼稚な説明は、これはむしろなさらぬ方がよろしいと思います。ことに労働法規に関する見解を聞かんとするときには、労働法学者の意見を重視しないで、一体だれの意見に耳を傾けようというのであるか。政府はもとより独占資本家の声にだけ耳を澄まして事をなさんとするであろうが、そういうことは断じて許されません。政府のこのような態度のその底に流れておるものは、まつたく非科学的な、非論理的な単なる独断そのものである。これは一種の暴力のさたにも似ておると私は言いたい。この傾向はそれを意識するとせざるとにかかわらず、この道はしよせんフアツシヨ反動の道であるのであります。時代逆行の方向なのであります。かつて日本帝国主義者の侵略戦争屋たちが歩いて参りましたあの暗黒の道にも通じておることを指摘しなければならぬことを残念に思います。
しかし、思えば、今や吉田政府はMSA軍事援助を受入れようといたしておるようであります。そうしてわが日本の国をしてアメリカの植民地支配のもとにつなぎ、再軍備を着々と強行して、忠良なアメリカの雇い兵をつくり、そして一旦緩急あらば外国出兵の義務を引受けるような気構えを示しておるようであります。このことは、国民全体にとつてまことに迷惑至極のことであることは申すまでもない。従つて、国民全体をあげてこのような方針に反対しておる。
ところが、このMSA法の内容を見ますると、ここでまた妙なことが出て参る。この軍事援助の受入れの條件としては、彼らの意のままに動くような、いわゆる健全御用組合の組織実態を成熟せしめることが要件になつておるようである。なるほど、政府はその要求に思案にこたえてか、このようなスト規制法を出して参つたということもまた、ふしぎでないように考えられる。スト規制法がそのようなものであつてみれば、今回はこの二産業にとどめると労働大臣が説明した、その言葉の次に続いて来るものが、さらにこれを引続き拡大して、他産業に及ぼして行く危険を多分にその中にはらんでいるということは、いなみがたいのであります。不幸にしてこの見解が当るおそれがないとはいえないのであります。もしそのようなことがありますれば、一体日本の労働事情はどうなると考えておるのか、私はこのことを特に強く主張しておきます。
今や日本の独占資本が、自己の限りなき繁栄を求めまして、その最大の期待を一時特需に寄せて参りました。そして兵器産業の拡大生産を企図して参つたのでありまするが、発注者であるアメリカ側は、緊急調整の方式によりまして、その発注はむしろ期待はずれとなつて参りまして、いわゆる出血輸出の先頭を切らされて参つたことはいまさら指摘を要せぬところであります。そのためには、おのずからそこに価格の問題に重点が寄せられて参ります。コストの引下げ等の問題に関連いたしまして、そのしわ寄せがおつかぶされて参りましたのが、ほかではありません、中小企業並びに労働者階級であつたのであります。そのしわ寄せがここにその当然の結果として、低賃金と労働強化の強制となつて現われて参つておるのであります。また企業合理化の推進は、そのような状況の中に、あえて取上げられて参つておる実情であるのでありますが、このような実態は、不可避的に労使の激突を避けることができない状況であります。一体このような責任は何人の方にあるのでありましようか。申すまでもなく、そのような政策を遂行しておるところの現吉田政府に、その全責任が負わされなければならぬということは申すまでもございません。このような状況の中におきましてか、さきに日経連が発表いたしました。労働大臣は、そのようなものに対しては知らぬと仰せられましたが、とんでもない、あなたに似合わぬ偽善的な態度である。知らぬはずはない。この労働七原則が明示しておりますように、労働組合の分裂、その弱体化と御用化をはかり、その産報化をねらいとして、政府にこれを企画せしめ、労働行政の方向をこれに集中せしめつつある現状は、だれもがこれを否定することができないであろうと考えるのであります。こうした政策が、今日吉田自由党とは切つても切れない深い関係にある電気産業、石炭鉱業の二大基幹産業そのものに向けられ、その二大産業擁護のために、ここにスト規制法案をもつて、しかも産業平和に名をかりまして、労働組合弾圧にその手を染めたのであります。
思うに不当労働行為ということは、ここに日経連や経団連を中心とする独占資本の諸君と吉田政府自身が、その張本人となるといわなければならないと私は断ずるのであります。しかし、労働階級は黙つておりません。わが労働運動の主軸である総評議会は、一昨日第四回大会におきまして、本法律案反対を決議し、粉砕を期して立ち上つております。その吉田内閣にあてました抗議文を簡単ですから読んでみます。「第十六回国会における電気石炭に対するスト規制法の提案は、まさに吉田内閣の反動性を露骨に示したものにほかならない。本法案は、憲法に制定された労働基本権を、一方的に剥奪し、基幹産業の労働者の生活権をおびやかすものであることは明らかである。政府は、経団連、日経連の指示の下に、電気石炭の独占資本を擁護し、労働者に対するファッショ的支配を企んでいる。政治権力によるかかる介入と弾圧とは、まさに時代錯誤の態度であり、政府の階級性を如実に物語つている。吾等、日本労働組合総評議会に結集する四百万の労働者は、断乎として本法案に反対し、その阻止のために、闘う決意である。吾々はここに輝ける総評第四回定期大会満場一致の決議を以て、貴内閣に対して、厳粛にこれを抗議し、ストライキ規制法を直ちに撤回する事を要求するものである。」——このような抗議文を発表しておることは、すでに御承知のことだと思うのであります。
しからば政府は、この全日本の労働階級の憤りに対して、これを何とごらんになるか、これに何とお答えになるか。わが日本の独立と平和の守り手である労働階級の抗争力を弱めんとする本法案に賛成せんとする与党の諸君は、はたして愛国者としての良識を持つておるか。国の平和的繁栄をこいねがい、民族の真の独立を望む者は、おそらくこぞつて世界無類の悪法であるストライキ規制法案に対して絶対に反対を叫び、これが粉砕を期して闘うであろうことを私は最後に宣言する。全国一千万の労働者の憤りを込めて、民族の独立と平和を希求してやまない八千万国民の愛国の至情を込めて、本法案に反対の討論を終るものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/16
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017・赤松勇
○赤松委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより採決に入ります。まず山村新治郎君提出の修正案について採決をいたします。本修正案に賛成の諸君の起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/17
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018・赤松勇
○赤松委員長 起立少数。よつて本修正案は否決せられました。
次に原案について採決いたします。本案を原案の通り決するに賛成の諸君は起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/18
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019・赤松勇
○赤松委員長 起立多数であります。よつて本案は原案の通り可決すべきものと決しました。
なお、本案に関する委員会の報告書につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101605289X01219530711/19
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020・赤松勇
○赤松委員長 御異議がなければさように決定いたします。
次会は公報をもつてお知らせいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時四十八分散会
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