1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月二十七日(月曜日)
午後一時三十五分開会
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委員氏名
厚生委員
委員長 堂森 芳夫君
理事
大谷 瑩潤君
常岡 一郎君
藤原 道子君
委員
榊原 亨君
高野 一夫君
中山 壽彦君
西岡 ハル君
横山 フク君
林 了君
廣瀬 久忠君
竹中 勝男君
湯山 勇君
山下 義信君
有馬 英二君
中共地域からの帰還者援護に関す
る特別委員
委員長 常岡 一郎君
理事
西岡 ハル君
飯島連次郎君
三橋八次郎君
山下 義信君
千田 正君
委員
大谷 瑩潤君
榊原 亨君
長島 銀藏君
横山 フク君
林 了君
竹中 勝男君
藤原 道子君
赤松 常子君
紅露 みつ君
白川 一雄君
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出席者は左の通り
厚生委員
委員長 堂森 芳夫君
理事
常岡 一郎君
藤原 道子君
委員
榊原 亨君
高野 一夫君
中山 壽彦君
西岡 ハル君
横山 フク君
林 了君
湯山 勇君
有馬 英二君
中共地域からの帰還者援護に関す
る特別委員
理事
三橋八次郎君
千田 正君
委員
紅露 みつ君
政府委員
引揚援護庁次長 田邊 繁雄君
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本日の会議に付した事件
○未帰還者留守家族等援護法案(内閣
提出、衆議院送付)
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〔厚生委員長堂森芳夫君委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614232X00119530727/0
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001・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 只今から厚生委員会、中共地域からの帰還者援護に関する特別委員会連合委員会を開会いします。未帰還者留守家族等援護法案を議題といたします。先ず政府委員から本案の内容及び衆議院の修正の要点などを説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614232X00119530727/1
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002・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) 未帰還者留守家族等援護法案の内容につきまして簡単に御説明申上げます。
第一条は本法の目的を語つたものでございます。衆議院において改正せられました点は、未帰還者が置かれている特別の状態にかんがみ、国の責任において、援護を行うという字句を挿入せられたのでありますが、これは戦没者遺族援護法と同じように、国家全体の責任に基いて援護するという字句を入れてほしいという一部議員の提案に対しまして、そこまで謳うことはどうかという御意見が出まして、検討せられました結果、未帰還者という状態におかれておるという状態において、国がその遺族を援護するということは、国家の責任である、かような精神からかような字句を挿入せられた次第でございます。実は戦没者遺族援護法の場合におきましては、すでに恩給法において、軍人の戦死者、軍人の遺族に対して扶助料を支給するという法律上の原則が確立しておるのでありますが、この留守家族を援護するというその場合の理念につきましては、そこまではつきりした理念があるわけではございません。これはいろいろ私のほうでも検討したのでございますが、一つには、従来ありました未復員者給与法であるとか、或いは特別未帰還者給与法という体系を以てしては、到底今後の援護という点で不都合が生ずる、従つて留守家族を援護するというそういう見地から立法することが妥当であるという考え方が一つと、それからもう一つは、今日中共、ソ連に未帰還の状態に置かれておるかたがたというものの特別の状態を考えまして、彼らのかような点は国がやはり或る程度責任を持たなければならない、引揚促進に努めると同時に、その引揚の問題を解決するまでの間、未帰還の状態に置かれておるかたがたの家族を援護するという立法があつても、この際国家国民といたしまして納得できる線まではなかろうかと考えまして、かような立法をいたしたのであります。生活保護法だけでいいじやないかという議論も一方にありますが、併し他方、単なる生活保護以上の国としての責任をなし、援護をなすべきではないかと、かような考え方から立法したのであります。この点は未帰還者援護という状態が曾つてなかつた状態でありますので、かような事態に対処する意味の立法の原理というものは、今日までなかつた次第でございます。今日までは復員者給与法であるとか、特別未帰還者給与法であるとか、給与という、俸給という観念で処理しておりましたが、それを切替えて、かような新らしい理念に立つた法律の体系にいたした次第でございます。それから第二条は、未帰還者の範囲をきめたものでございます。第一号は未復員者でございます。現在未復員者給与法によつて対象といたしております未帰還者をそのまま本法における未帰還者といたしたのであります。第一号は一般邦人であつてソ連、中共地域内に残留しておるかたがたで、自己の意思によつて帰還しないという人々を除いたかたがたであります。この中で特別の未帰還者、今までは一般邦人の中でソ連における未復員者と同じ状態にあつた人たちだけが、特別の未帰還者として給与の対象になつておつたわけでありますが、今度はその特別未帰還者という制限をはずしましてすべての一般邦人である未帰還者にこれを適用しようとするものでございます。第二項は戦犯として拘禁されているかたがたを本法において未帰還者とみなして援護の対象としようとしておるのであります。これも現特別未帰還者援護法によつて特別未帰還者とみなされて援護の対象になつているかたがたをそのまま踏襲したのでございます。
第三条から第四条は帰還という言葉、留守家族というものの範囲の定義を書いたものでございます。留守家族の範囲は戦没者遺族援護法における遺族の範囲と合せてございます。
第五条は未帰還者の留守家族には留守家族手当を支給する、当の本人の申請に基いて行うという申請主義の原則をとつたのでございます。
第六条は留守家族手当を受ける留守家族の順位でございまするが、戦没者遺族援護法の場合と合せて、弔慰金を受ける場合と合せてございます。現在の俸給及び扶養手当としての前渡しを受ける場合におきましては、順位をきめてございますが、おおむねその順位に合せてございます。
それから第七条は留守家族の手当を支給する場合の支給条件でございますが、その条件につきましては戦没者遺族援護法における遺族年金の支給条件と合せてございます。ただ本法におきましては主として本人の収入によつて生計を維持するという条件が付けてございます。現在におきましても俸給及び扶養手当を家族に前渡しする場合におきましては、すべての家族に俸給扶養手当を前渡しするのではございませんで、本人の収入によつて生計を維持していると認められる家族に限定してあるので、そのやり方をそのまま踏襲いたしたのでございます。なお衆議院におきましては、夫というところに括弧を付けまして、事実上の婚姻をしておつた夫も含むというふうに訂正になつたわけでございますが、これは、それは妻の場合と均衡を合せとるためにかような訂正がなされたのでございます。
第八条は手当の額でございまするが、政府原案におきましては二千百円でありましたが、衆議院において恩給法における兵に対する公務扶助料が兵長並みに引上げられました結果、それと権衡をとるために二千三百円とする訂正がせられたのでございます。但し諸般の事情からその実施は昭和二十九年一月一日から二千三百円とすることに相成りましてそれまでは政府原案の通り二千百円ということに相成つておるわけでございます。
それから第九条は留守家族手当を受けるべき同順位者が数人ある場合、一人をその代表者として申請をするということを規定したわけでございます。
第十条は毎月支払いということを規定したのでございます。
それから第十一条は留守家族手当を支給する始期と終期を書いたのでございますが、特に終期につきましては未帰還者が帰つたとき、未帰還者が自己の意思によつて帰らないということが判明したとき、未帰還者の死亡の事実が判明するに至つたとき及び留守家族が留守家族手当を受けるべき条件を喪失するに至つたとき、これだけを終期の条件といたしております。なお本人が死亡した場合におきましても、知らずに留守家族手当を支給するという場合があるのでございますが、さような場合におきましては、本人から悪意があつて届け出なかつた場合は別といたしまして善意で支給を受けておつた場合におきましては、これを返させるということをしないという規定を設けております。
それから第十二条は留守家族手当の額の改訂でございまして、これは留守家族の数が殖えたり減つたりする場合におきまして、留守家族の金額を改訂することを規定したものでございます。
それから十三条はこの留守家族手当を支給しない場合でございますが、この法律施行後三年間は、無条件にすべての未帰還者の留守家族に対して手当を支給するのでございまするが、三年経過後におきまして、状況不明の期間か七年を経過した者につきましては、この手当を打切ることにいたしておるわけでございます。これは非常に我々も考えた条文でございまするが、大臣の提案理由の説明にもありました通り、未帰還者の留守家族に対しまして、無期限に手当を支給するということも当を失し、当を得ません。特に今回未帰還者の範囲を拡張いたしました結果、終戦直後において、更に進んでは開戦当時において生存しておつたという資料があるけれども、その後は沓として消息が不明であるというかたがたも今度未帰還者の範囲に入れたわけであります。従いまして、この未帰還者の中には終戦直後の混乱等によつて死亡したかわからないかたも相当数含まれておるわけでございまして、その状況がわからないために、今日未帰還者となつているかたが相当あると考えられるわけであります。従つて何か留守家族手当を適当な時期において打切るというと語弊がありますが、期限を付けることが必要だろうと考えたわけであります。この法文のあとのほうにもありますが、国は調査究明に努めなければならんという規定がありますが、三年間の間、政府といたしましては、あらゆる機関を動員いたしまして、調査究明に全力を尽したいと思うのであります。三年もいろいろと手を尽しまして調査いたしますれば、少くとも生存者につきましてはその消息を把握することができるのではないかと考えておる次第であります。
なおこの点につきましては、衆議院におきまして希望条件が付けられまして、政府は調査究明に全力を尽すと同時に、その結果とも睨み合せて生存者である未帰還者の手当が打切られることがないように十分注意してほしいという希望条件が付けられたのであります。我々といたしましてもさようなことのないよう今後とも調査究明に十分の努力を払いたいと考えておる次第であります。
第十四条は、恩給法との調整でございますが、今度恩給法の改正に伴いまして私のほうから恩給局に希望を出しまして、未帰還の状態にある公務員、例えばソ連に抑留されておるとこうの元の軍人のかたがたですでに恩給年限に到達しておられるかたがたがおられるわけでありますが、こういうかたがたは従来の恩給法の原則から申しますと普通恩給は請求することができないことになつております。そこで私のほうから特に恩給局のほうに頼みまして、家族が代つて本人の普通恩給を代理で請求して支給を受けることができるようにして頂いたわけであります。そうなりますと、この留守家族手当よりももつと高額の普通恩給の支給を受けることができますので、それをダブつて支給する必要はないと考えまして、その調整を規定したのでございます。つまり普通恩給を受ける権利の裁定があつた場合には、未帰還者の留守家族にはその恩給の範囲において留守家族には恩給を支給しないということを規定しております。従つて例えば山田大将の御家族はその恩給法による普通恩給の支給を受けることに相成るわけであります。
それから十五条から以下は現在未復員者給与法において規定せられております帰郷旅費、これは未帰還者が帰還した際に支給する旅費であります。この帰郷旅費は遺骨埋葬経費、遺骨引取経費、療養とか、こういうことについて現在規定しておりますものをそのまま踏襲いたしまして規定したのでございます。ただ衆議院において改正せられました点は、従来の未復員者給与法におきましては未復員者が復員したあとで未復員期間中、自己を責めることができない事由によつて疾病に罹つておる場合は三年又は六年療養の給付をすることに相成つておるわけでありますが、それには制限がございまして恩給法による増加恩給又はこの法律による障害一時金を受けた場合におきましては、本法による療養は行わないということが規定されておるわけであります。そこで、現在療養されておるかたがたは、恩給を受けた場合には療養はストップする。療養を受けておる間は、恩給法による傷病恩給をもらうことができないという結果に相成つておつたわけであります。その点を改正せられまして、療養と恩給法とによる傷病恩給とが併給できるように改正いたしたわけであります。但し、療養に要する費用の実費の一部を徴収すると、こういうふうに改められたわけであります。従つて、今までありましたいわゆる特例患者と称する者が、実はそれに全部右へならえしたわけでありますが、従来、特例患者と称して、恩給を受けながら療養しておる患者が一部おりましたが、それが原則に相成りまして、少くとも傷病恩給を受ける者は、恩給をもらいながら療養するということに相成るわけであります。この点は、従来復員患者からたびたび要望せられた点でございまするが、その要望の一部が達成されたと見られるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614232X00119530727/2
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003・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) その根拠は何条……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614232X00119530727/3
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004・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) それは、この法律の併給するという根拠は、第二十七条の第二項でございます。「同一の事由について、他の法令の規定により障害一時金に相当する給付を受けることができる者には、この法律による療養の給付を行わず、又は障害一時金を支給しない。」というのは、恩給法によつて傷病恩給を受けた者には、この法律による療養が行えないのが原則でありますが、但書をつけまして、厚生大臣が必要と認める場合には療養の給付を行うことができるというようにいたしまして、その代り、第二十条の第二項に持つて来まして、その場合に、実費の一部に相当する額を一部負担金として徴収するということを規定したわけでございます。
それから第二十九条、調査究明という章でございまするが、「国は、未帰還者の状況について調査究明に努めなければならない。」と規定されておつたのを、衆議院においては、更に「帰還の促進」という字句を入れまして、国は帰還促進に努めなければならないということを附加えたわけでございます。
次に、附則でございまするが、これはまあ非常に複雑に相成つておりまするが、まあ現在未復員者給与法によつて給与を受けておるかたがたは、あえて申請しなくてもこの法律の対象とするというような簡便な規定を設けましたのと、それからもう一つは、未復員者給与法、特別未帰還者給与法を廃止いたしましたと歩調を合せまして、未帰還公務員、未帰還政府職員として現在俸給を受けておるかたにつきましても、文官でございますけれども、未帰還者と同様に、未帰還中の給与は停止するということにいたしたわけであります。その結果、従来、未復員者給与法であるとか、或いは未帰還政府職員として給与の前渡しを受けておつた人が、この法律における留守家族の範囲から除外されるかたができて来るわけでございまして、例えば、未復員者給与法におきましては、六十才未満の父母が俸給千円だけの前渡しを受ける場合があるわけであります。又その他留守家族援護法でもらう金額よりも多額である場合があるわけであります。例えば、未帰還職員のごときは、未復員者と違いまして、俸給は高いのでございます結果、この差額をどうするかという問題が出て来るわけでございます。従いまして、この法律におきましては、従来の実績はすべて保障するという建前をとりまして、本法の対象外にあつたかたがた及び従来の金額より余計もらつておつたかたがたにつきましては、従来の規定を保障するという規定を設けたわけであります。これが特別手当という特例であります。それから差額支給というものは、先ほど申しましたような精神で規定しておるわけでございます。
それから、附則の十九項に、扶養手当の額の改訂という事項が衆議院で挿入せられましたが、これは、この法律の建前として、新らしい立法であり、経済的な扶助援助を目的とする法律でございますので、建前から申しましても、技術的な点から申しましても、この法律自体を過去に遡及するということは理論上も実際上も非常に困難でございましたのでありますが、当時四月一日から実施するということになつておつたのが、国会が解散になりましたために、四月から七月分まではもらえないという結果になつた。そこで何とかその間を調整したいと思いまして、いろいろ検討いたされました結果、少くとも四月から七月までの間は、特別未帰還者給与法、未復員者給与法というものが生きておつたわけでありまするから、それをベースアツプしたと同様の結果となるようということでこの十九項が挿入されたわけであります。大部分のかたは、大部分のかたと申しますか、現在未復員者給与法になり、特別未帰還者給与法によつて扶養手当の前渡しを受けたかたがたが、今度この新しい法律の対象の大部分でございますので、これによつて四月から実施した場合と近い結果を来すことができるのではないか、こう考えておるわけでございます。なお、未帰還者の中の公務員の今後の取扱いについてでありますが、恩給局とよく打合せをいたしまして、次のような取扱いをいたすことになつたのでございます。先ほど申上げましたように、未帰還公務員で、すでに恩給年限に到達しておるかたにつきましては、その家族が代つて恩給を受けることができるようにするという点が一点でございます。恩給年限に到達しないかたにつきましては、恩給年限に到達するまで退職とみなさないということといたしたのであります。
それからすでに恩給年限に到達した場合におきましても、普通でございますれば、そのかたは、公務員としての扱いはしないわけでございますが、未帰還という特別の状態でございますので、年限到達後における災害につきましては、公務員として受けた災害と同じ処遇をする、こういう特別の処遇をして頂くようにお願いをいたしまして、さような規定を設けたのでございます。
大変大急きで概要を御説明申上げました次第でございまするが、御質問によりまして御説明、お答えを申上げたいと思います。これで一応私の説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614232X00119530727/4
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005・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) ちよつと速記をやめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614232X00119530727/5
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006・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 速記を始めて。
本法案の質疑は明日に譲りまして、連合委員会はこれで閉じます。
午後二時三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614232X00119530727/6
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