1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月二十一日(火曜日)
午前十時三十四分開会
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出席者は左の通り。
委員長 堂森 芳夫君
理事
大谷 瑩潤君
藤原 道子君
委員
榊原 亨君
高野 一夫君
中山 壽彦君
谷口弥三郎君
横山 フク君
林 了君
廣瀬 久忠君
山下 義信君
事務局側
常任委員会専門
員 草間 弘司君
常任委員会専門
員 多田 仁已君
参考人
大浜 文子君
東京大学教授 北村 包彦君
元敬愛園医務課
長岐阜県予防課
長 北野 博一君
藤楓協会常務理
事 浜野規矩雄君
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本日の会議に付した事件
○らい予防法案(内閣提出・衆議院送
付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/0
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001・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 只今から厚生委員会を開会いたします。
らい予防法案を議題といたします。本日は本法案の審査上の参考に資するため、荒垣秀雄君、大浜文子君、北村包彦君、北野博一君、綱脇龍妙君、浜野規矩雄の六氏を参考人に御出席を願つておるのであります。なお綱脇龍妙君は痛気のため出席できないとの返事を頂いております。又荒垣秀雄君は後ほど参られるかと思うのでありますが、各参考人のかたがたにはあらかじめ手紙で照会申上げておきました各事項につきまして、およそ二十分程度の御意見を御発表願いたいと存じます。
なお参考人のかたがたの御意見を全部拝聴しました後、一括して各委員のかたがたから御質疑願いたいと存ずるのであります。暑い中、而も御多忙の中を各参考人のかたがたの御出席を願いまして厚く御礼を申上げるものでございます。では最初に大浜文子君からお願い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/1
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002・大浜文子
○参考人(大浜文子君) 私はらい患者の仕事に携つて二十一年というものを暮して参りました。その最初の八年間は大島青松園という国立の癩療養所に未感染児童の保護として勤務いたしました。その後子供の将来やら、らいの家族のことたちを考えまして大阪府に職を転じまして、癩予防係として満十三年間を働いて参りまして、最近大阪府を退職いたしましたものであります。で、その間に約千人ほどの患者を療養所に護送いたしまして、患者護送に伴いまして、家族の結婚の相談であるとか、就職の斡旋であるとか、又貧苦の状態のかたのいろいろな相談相手としてあらゆるものを引受けて参りまして、殆んど患者家族の苦悩なり、患者の窮状などを肉身的な気持で見て参つたものでございます。で、自分が未感染児童を育てて見まして、その子供たちの将来を思い、大阪府に職を転じましてからも、かたわら未感染児童たちを養育いたしながら今日に至りましたが、その子供たちが長じまして結婚というような年齢に達しまして、やはり私は患者家族と同じ悩みに立至りまして、そうしてらいの啓蒙運動の必要なことや、それから長い間食い込んだ因習的なものに患者の家族と同様な苦しみを抱いて今日に至つておるのでございます。で、ただ私はその患者家族と違うということは、最後の段階に至つて、私は患者の家族じやなかつた、幾ら患者の苦悩なり患者の家族の苦悩の中で日夜苦しまれていても、最後の段階になつては、大らかさがあるということだけは私の相違でございまして、結局私自身にもその社会というものを卑下するような気持がしみ込んでいたり、又日々の貧乏な人たちとか、苦しい人たちの気持というものがしよつ中こびり付いていて、どうして朗らかに生きて行こうとかいうようなことを真剣に考えたようなこともございまして、このたび感ずるところがありまして退職いたしましたのも、そういうふうな気持の中から、一度大きな社会というものを見直す必要があるんだというようなことを感じまして退職したのでございます。
私は大阪府におりました間には、弱い立場において仕事をして参りました。女という弱さの面においてこのらい予防の仕事をして参りました。それは患者の家族たちに折衝します立場においても、又療養所に患者を連れて行く場合においても、又刑務所であるとか、それから検察庁であるとか、警察においての対外的の交渉においても、絶えず弱い立場においてそれを進行して行かなければならないことが私の特徴でございました。言換えれば、結局それらの世界、自分の所属しております大阪府庁においてさえも、やはり弱い立場であり、言換えれば関係当局者の我がままを黙つて聞かされ、黙つてそれを押付けられて来たというのが、私の或いは立場であつたかも知れません。随分患者たちには苦労もいたしましたけれども、そして又この二十年間というものを、そういうふうな仕事に推し進められて来られたのも、やはりそこに愛情的なものがあり、患者たちの心の中心になつて今日まで案外意思強く来られたものと信じております。このたびこの参考人として呼び出されるに至りまして、患者たちが我らの利益代表としてしつかり頼むというような激励の電報を頂きまして、私自身も又静かに考えて見ましたときに、あの人たちに対しては最も肉親的な気持で以て患者の家族の窮乏なり、あの人たちの気の毒な立場を訴えてやるべきであると存じております。私は大阪府に職を奉じましたときは、大阪には約六百人の登録患者がおりまして、それらに対して大阪府はすべて強制収容の方法をとつておりました。強制収容と申しますのは、新らしく発見された患者或いは登録されている患者に対しまして、官庁の係員が何月何日に療養所へ行くからという電話を警察にかけますと、警察の衛生係が電話或いは又派出所を通しまして患者に呼び出しをかけます。そして何月何日の朝警察まで出て来い、患者は何の用かと思いまして出て参りますと、この自動車に乗れと言つて、そしてそのまま大阪駅を連れて行かれまして、大阪駅から癩療養所に送られるというような方法をとつておりました。初めて大阪府でその仕事を与えられましたときに、これが一人娘として、社会に愛の働きによつて尽したいという者がしなければならない道か、そんなものであればやめてしまうべきである。若しこれを人間的な方、法によつて取返すことができるのであれば、この仕事に働いて見ようという気持で当つたのであります。或いはその間、係員が遠いところに出張したいというような場合には、その護送患者に赤いインクで、この患者は非常に悪い患者であるから、草津の療養所に送らなければならないというようなことを書いて、課長の決裁を得まして、そしてそれを草津に送つて行つたり、或いは又いつもよく働らく、いわゆるやり手である、人情を無視した警官たちの護送、慰安旅行のような気持で、警官一人附添いを要するというようなことも書いて、患者に附添わしておりまして、自宅にいる患者をも、或いは身寄りのない労働者をも、そういうふうな扱いを受けて療養所に放り込まれていたのでございますから、一年間に二百人近い患者を護送いたしましても、その中へとどまり得るものは僅かに三分の一にも達しなかつたのでございます。そういうふうなことを繰返しながら、幾らしていてもこれは実績の上るものではなく、又人情的に考えまして、そうしたことができ得るものでもございませんので、それを役人である私たちは、いわゆる警官たちから取戻す方法を考えておりまして、そうして漸く終戦後ああいうふうな段階になりまして、役人、而も女の役人が出てその仕事を処理して行くようになつたのでございますが、果して女である私の手で十分な働きができたかどうかということはいつも疑問でございました。大過なく来られた、大きな悪いこともせず、又無慈悲なこともしないで来たというだけのことであつて、その間にたくさんある不行届な行為もございました。それで因習のために私の目の前で自殺をした人たち、或いは療養所に行くことを非常に苦しんで自殺をした人たちも十人に及んでおります。又は私の目の前において、その結婚していた主人の弟がらいになつたという件において、目の前で結婚の破約をされたような場合もございました。それに対しては私が秘密を漏洩したのでもなく、不用意にらいというものが何であつたか、知らずしてその弟がえらいことだ、どこか病院に行かなければならない、どこの病院に行くのだ、岡山の病院に行かなければならないと言つたときに、その嫂である嫁さんが逸早くらいであるということを知つて、そして弟の入院よりも早く破談にして帰つてしまつたというような事例も目の前で見て参りました。その償いのために嫁さんを探してやらなければ、どうにも良心の治まりようのないというような場面にも会つて参りました。とにかくらいは考えて見れば一番気の毒なお仕事でございまして、そしてその間に患者たちは、自分たちは法律で以てこうしていつも縛られている。らいになれば、いつも警察官が一年に二度か、三度入院せよ、入院せよと、病状の如何にかかわらず来るものであるという信念や、それから自分が病気であるためによくなつて帰ることができないというように、非常に脅やかされた生活をしているのでございますが、又大阪府が心なく送りましたらい患者の十幾人の人が、あの先年問題を起しました草津の重病室で、大阪府から送つた人が十人余りもあの特別室に呻吟しているというようなことを考えまして、本当に人間と人間が互いに行い得る行為であり、そうして又行われ得るものであるかというような、殊に弱い女の身として神経衰弱になつたことさえございました。ところが私たち役人の立場からのいろいろな不行届もございましたが、今度は又患者方の行為の上において、終戦後の混乱時代には二十幾人、一年間に護送した患者の中に十七人以上の犯罪者とか、浮浪者を見るようなことさえ起きまして、そしてその患者たちをやはり療養所に送らなければならない事態になりましても、療養所の中では犯罪者とか、浮浪者を連れて来られては困る。大阪市はいつも浮浪者、犯罪者ばかりを連れて来ると言つて非常に患者さんたちから入院を拒否されるようなことに立至つたこともございました。二十五年の一月でございましたが、大阪府が送りましたらい患者が草津の虐殺事件の一人であつた、そのために私は大阪府に座り込んだ患者を草津に送らなければならない事態になつたのでございましたが、不幸にしてその患者の行為がああいうふうな虐殺事件を起すことになりまして、それと同時に、私は日本中の、らい護送官として非常に女という身で以て大それたことをしたと、各癩療養所の人たちからも非常に非難攻撃をされまして、一人の犯罪者、一人の迷つておるかたたちを、そこに置くことのできないらい病患者であれば、療養所に送られるよりほかはないのでありまして、殊に御存じのように家庭のあるものよりも、犯罪行為を犯すもの、浮浪するものを主として出かけて、それを療養所に収めるために努力して来たものにとつては、あらゆる罪悪を犯すものも、刑務所を出て来るものも、それを改心させて行くのであるから、療養所に対していい患者である。今度はこの患者はどうぞいい患者として収めてやつて下さいと頼むことよりやはりいたしかたがない立場もございまして、誠に関係者として申訳のないことであつたのでございますが、やむを得ないと思つております。今日患者のかたが、あるらい予防法を見まして、そして非常に強制権を必配いたしましたり、或いはいろいろならい予防法の改正に伴いまして、改正じやない、改悪だなどといろいろ心配いたしておりが、私の公平な立場から考えまして、そして又癩療養所に本当に患者の立場として、私はいつも患者の苦しみを以つて尽して参りましたが、やはり最低の規則としては、この程度の法律が必要ではないかと思うのでございます。全患者に対してあの法律を課せようとするのでなく、最悪の一人か二人かのためにやはり法律というものがなければならないものであり、どうしても入院しないものに対しては何とか強制の方法でも用いてあげるべきではないか、先年でございましたか、大阪においてどうしても療養所に入らない男がございました。それは父がらい病で死にまして、弟がらい病で療養所に入りまして、戦争中の窮乏時代であつたので、しよつちゆう食物が欲しい、何々が欲しい言つていましたがとうとう療養所へ入つて死んでしまつた。自分が療養所へ行つたつて治るものではないから入らないと言つて、そうして駄々をこねまわして三年も四年も自宅におりまして、遂に病気が重くなりまして、そうして行つて見ましたら丹毒症状を起しまして、盲になつてもう二日と見られないような症状で寝ておりました。そのときに私の感じましたことは、これは護送官として不親切であつた。如何に患者が拒もうと、引摺つて行つてでも連れて行つてあげれば、この進んだ医療も受けさしあげることができるし、こうした見舞う人一人もなく、薬一服盛つてやれない、二階の隅つこで死なせることもなかつたと思いましたら、その患者の枕許に座りまして、ただ許してくれという言葉よりはかなかつたのでございます。又患者はわしも我がままを言て済まなかつた、どうするか、今からでも遅くないから入ろうじやないか、こんな体ではいけない、でも背負つてでも行つてやろう、抱いてでもいつてやろう、行く気持さえ持つていたら……。最後にこの気の毒な姿を、死顔を子に見せたくないという親の慈悲によつて、入院するかしないかということはあなたの最後の決心なんだからと申しましたときに、患者はわしが悪かつた、今からでもいい、連れて行つてくれ、そうしてその患者は遂に療養所に行くことなく、そのまま私の目の前で息を引取つたのでございますが、そうしたことを見ましたときに、やはり患者にとつて強制とか、強制収容をするとかいう法律は恐怖なものでありましようけれども、これはすべての患者に課する法律ではなくて、そうした迷妄な患者、今なお医薬を信ずることなしに穴蔵に潜んでいるような患者に対してだけは必要じやないかと思うのでございます。で、患者は家族の秘密漏洩をどうするかというようなことや、それからその他の所内検束においてどうするかということを一番恐れている様子でございますが、所内における秩序如何というようなことは私たちの余り云々することのできないものでございますが、そうした私の今までの立場を通しまして、この質問事項に対して多少の意見を述べさして頂きたいと思うのでございますが、この第一の、国の責任において実施させることがいいか、地方公共団体にその責任において実施させることがいいかという問題でありますが、これに対しては私は地方公共団体の責任は極く僅かなものであつて、やはり国の責任を大いなるものとしなければならないのではないかと思うのであります。で、らいの護送に対しましても、私は過去十三年の間そうした変遷を越えまして、先ず不合理な行いはして来なかつたと思うのでございますが、先年或る県の患者収容を目撃いたしましたが、戸板に乗せた患者をホームにながながと伸べまして、そこに大勢の人が人だかりをして、そうしてお祭り騒ぎをしております。そうして護送車に乗り込ませた患者のあとから護送官が一升瓶を下げて入つて来るというようなことを目撃いたしました。これではやはりこんな目に逢つて来た患者たちは、この法律を非常に心配するものであり、又患者という立場を未だに以て、何だか犬猫扱いにされているというような気持を持つであろうと存じます。ですから、この国において責任を持つ、費用の点についても府県のこうした私のようならい専任の係員がいつも国と直接密接な関係を持ちまして、そうして費用の点についても、或いは又その行動においても、やはり十分国から守られながら、このむずかしい仕事を遂行させて行くように援助さるべきではないかと存じます。又そうした仕事をする係員というものをときどき、一度か二度本省なんかに集めまして、そうしてこうした家族の問題はどういうふうな方法をとつて処理すべきか、ケース・ワークの研究などもいたすべきではないかと思います。地方に任され切つて、そうしてその地方の上の役人たちがわからない場合には、どんな羽目においてらい患者が扱われておるかということは、私たちが想像のほかにあるのではないかと思う点もございます。
第二の患者及び親族に関する秘密を如何にして保持すべきかということでございますが、私の場合は大阪府においてただ一人のらいの予防係としてありましたから、秘密を漏洩させたというようなことは一度も起りませんでした。で、一家族においても親と私以外、私と本人以外知らないままに、兄弟たちにも知らせず、嫂たちにも知らせないで患者を入院させている。而もその後の問題も起さずに患者を入院させているというような話はたくさんございます。近親者にも知らせず、又親類にも知らせないで行く、その嘘のつき方までも教えなければならないのが私の仕事の任務でございます。必ず人のために嘘のつき方を教え、一日に二つか三つどうしたらいいかということに立至りまして、患者の御家族のかたたちと一緒に、そうした方便までも考えて来たのでございました。ですから係員を十分監督し、係員の人格を厳選の上でこうした係りを作り、それを行わしめるのでございましたら、秘密漏洩というようなことは先ずなかろうと存じます。保健所に扱わせるとか、村の役場がじやんじやん鐘を鳴らして入院に干渉して来るということは、一面結構なことでございますが、それは却つてあとあとまでの患者の一族を苦しめるものではないかと存じます。家族の生活保護を如何にして保障すべきであるかということについて申上げますが、大阪府には元生活特別措置がございましたす。らい予防法による特別措置を以てらい患者の家族の保護をいたしておりました。それはらい予防法の生活救護法によるものでございまして、入院患者の収入によつて家族の生活を保持して行つた場合、その患者が入院に至つたときには翌日から支給するのがらい予防法の特徴でございました。そんな場合に地方の民生委員の手を経ることもしなければ、まあ私一人の手でその実情を調査し、窮状を調査しまして支給することができました。最初のうちは警察を経由して家族の者が一日職業を休んでその書類を作つて警察に提出し、府庁から金が支給される場合には、一日休んで府庁の金庫に金をとるというようなこともいたしておりましたが、私の委任状をとりまして、すべて委任状一本でそれらの金を請求もし、又支出を受けまして、為替で送るというような方法もとつて参りましたが、そんな際には家族の者にも知られなければ、誰にも知られないで行つたのでございますが、今は終戦後生活保護法によつてこれを処理して行けるということで、大阪府にあつては、その特別の措置を取払われてしまいました。保護法による場合、民生安定所に参りまして、こうした窮状を訴えて、特別のことだからと言つてお頼みをいたしましても、生活保護法は最も困つた人たちを標準とするのだから、ラジオのある間はやれないとか、一枚の着替を持つている間は支給することができない。誠にまじめな熱心な態度によつて扱われるのでございますが、その中には昔の癩予防法にあつたような患者たちのための法でなくして、非常な僅かな金をもらうために却つて秘密をばらしてしまつたり、子供が大きくなつて来た場合は困るような方法が生まれるのだつたら、何とか我慢してほかの方法をとつて行くよりほかないというような事態にばかり立至つて参りました。ですから、私はらいの場合においては、旧来の癩予防法による生活保護法の特別措置が望ましいのでございます。
それから次の所内の秩序を如何にして維持すべきかということは、私は療養所の中に住んでいたのではございませんから、それについては意見というものは持つておりませんが、ただ患者さんたちが昔と違つて非常にむずかしくなつて来ております。そのむずかしさというものは、社会の生活の苦しみとか、或いはその社会生活にあるいろいろな事実というものに縁遠く、ただ精神的の苦悩一つによつて生きて行く、その場合にそうしたものが生ずるのではなかろうかということを考えるのでございます。ですから、成るべくよくなつて来た患者さんたち、伝染の虞れなしと決定された人たちは、社会に出してあげて、そうして働かせ、それから社会の新らしいいろいろな知識なり、苦悩なり、あらゆる人間生活の現象をその人たちの口からもう少し聞かしてあげることが、所内の気分をも、或いは秩序なんというのが、頭の上で考えるものだけでなく、あらゆる人間の苦悩万般の上にまで、私たちが説明するのと違つた意味において了解できるのではなかろうかと思うのでございます。
検診、収容についてどの程度の規定を必要とするかということにつきましては、大阪府におきましては係員が専任に一人おりましたから、検診に対しても、収容に対しても、係員を根本といたしまして、そうして秘密を厳守するということを以ていたしましたから、私たちはいつもふだんの服装をしてただ黙つてお勝手から入つて行くこともあれば、或いは裏口から物売りのような声をかけて入つて行くこともあるというような、あらゆるそのときどきに違つた方法をとりまして、決して御近所の人に触れるとか、さわるとかいうようなことなく参りましたのであります。そうして又検診ということが、強制検診が必要であるか否かは御一考願わなければならないものであると存じますが、検診は是非必要であると私は存じます。で、私が十三年間大阪府に勤めまして、らい患者の発生した地区というものは或る特定の場所にきまつておりまして、あすこの地区に最もああした結節らいの重症者がいたと、誰か不幸に発生する人でもありそうだというようなことを考えましたときに、ぽこつとその地区から生れて来る。そうして又あすこの親が非常に重症な結節らいで長年あの奥に呻吟していた、親は重症で死んでしまつたけれども、ああした子供に病気なんか起きないであろうかということをふつと仕事の途上に思いまして、行つて見ましたら、不幸に発病しておるということがありました。だかららいの場合において強制検診であるとか、表立つたそうしたものは別としまして、やはり長らく知つた係員とか、役場の吏員であるとか何とかいう冷たい気持ではなくして、どなたか一人が見守つてやつて、その家族の不幸を未然に防いでやる、発見した当初において治療してやるというようにしてやれば必ず治るのでございますから、私は脅かすのではなくして、検診の方法というものはもつと緩和された状況においてとつてやるべきであると存じます。或る府県なんかでは、よく療養所に行つていることは秘密にしていたけれども、役場かららいの家族検診をするという命令が来た。あそこの人も呼び出されていたから、あそこの人も療養所に行つていたに違いない、そういうことを聞くことがたびたびございます。何年も前に戦死したとか何とか言つてごまかしていた患者の家族をかき乱している不幸な事実もございますので、そうしたことを考慮して、検診だけはやはりやつて頂きたいと思います。これは患者の要求は、自分たちの家族は自分たちの家族で気を付けるから、府県においてそういうことを表立つてやつてくれるなということは聞いております。これは尤もなことでございますし、患者が生きておれば、その人たちに対するいろいろ注意を絶えず療養所から起きるでありましようが、そうした親たちが死んでしまい、らいに関係なく死んだ人たちが、らいということを何も知らずに重症になつて慌てるようなことがあつては気の毒であると存じます。
患者の作業関係並びにその報酬関係をどうして行くかということは、私にはわかりませんけれども、癩療養所が手狭な職員であれほど秩序正しく、あれほど弱い者を救済保護した美しい世界であるということを信ずることによつて、私は今まで二十年間もらいのお仕事が続けて来られたのでございます。患者さんたちのそうした本当に弱い者同士の助け合いの生活がなくなつてしまえば、或いは癩療養所というものも非常に無味乾燥な、普通の世界にあるような冷たさに変るのではなかろうか。法律であるとか、又規則であるとかでなくして、弱い者の助け合いの世界が私は癩療養所の中に繰り広げられて行くことを祈るものでございます。
現在の療養所における運営及び設備についての完全を要するもの、これは私などの関係したことではございませんでした。けれども、施設の長によつてあらゆることが真剣に考えられ、患者自身も又人格により、そこに働く人たちも最善の人格を尽して、この療養所の運営が円満に行き、世界のどこにも見ることのできないような療養所であつてくれることを望んでおるのでございます。
患者に希望を持たせ、安んじて療養に専念せしむるにはどうしたらよいかということでございまするが、やはり初期のうちに病人の発見をいたしまして、そうしてそれを療養所に送り、初期のうちの治療で完全に治りました場合は、希望を持つて退院させてやるということが大切であると思います。らい患者の中には、入つた以上は出られないなんという信念をたくさん持つておりまして、そうしてどうしても行かない。そんな療養所に行くくらいならば死んでしまうのだというようなことを考えております。療養所の中の人たちでも、新らしい患者が入院して来ました場合に、お前たちはどうせ治らないのだ、治つて帰るなどと府庁から送られて来ておるのは欺されておるのだ、そんな注射をしたところで何にもならんのだというようなことを指導する人もおります。これはどこの社会も同じでございますが、やはり療養所を明るいものにし、療養者に希望を持たせるためには、軽症者に対する面がもつともつと考えられなければならんのではないか。よくなつた人たちは、社会の篤志家によつてでも職業につけるとか、或いは保護される機関が考えられ、そうして又療養所の中の軽症者は軽症者として、社会に関連を持つようなお仕事ができるのであつたらば、そう陰影なものばかり、苦悩の世界というようなものばかりでなく、もつと明朗なものになるのではなかろうかと思います。三十年もの間、或いは四十年もの間治らない、而もあの醜くなつた体をひつさげて、そうして又肉身から一本の便りもなく、ただ療養所から支給されるその日の糧にのみ満足しておるというときにおいて、誰しもあれくらいの不平を言い、あれくらいのことを言うのは当り前であると思います。私はその面もつと地方の各団体などの慰問、それから又根本的な福祉面が考えられまして、家族の生活に憂えなく患者を療養さしてやることができるのであるならば、この面も幾分か緩和されるのではなかろうかと存じます。昔と違いまして、只今新らしいお薬ができておりまして、非常にらいはよくなるものであるという信念を私たちも持たされます。私たちが療養所に患者を送る場合に、決して治らないのではない、重くなつてみつともなくなつた人は別であるが、必ず治つて来るものであるということは私自身も捨てておりません。又患者さんたちにも最後までその努力を失わさせないように患者たちを導いて行こう。そうして入院したあとあとまでも、一つの兄弟として、或いは母のような気持で以てその人たちを導いて行かなかつたならば、ただそのときの口先だけでは、患者護送であるとか、或いは患者の仕事に対する重要な職務というものは遂行できないのであります。
大変不備な参考でございますが、こうした私の体験を通じましての中から患者のために又家族たちのために最もよい方法が考えられまして、療養所を楽園としてこの少数な気の毒な患者たちが幸福になつてゆけますように皆さんのお取計らいを願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/2
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003・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 次に北村包彦君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/3
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004・北村包彦
○参考人(北村包彦君) お送り頂きました書類を拝見いたしまして、次に検診収容についてどの程度の規定を必要とするかという点についてお答え申上げたいと思います。多少専門的なことになりまするので御容謝願います。
御承知のようにらいの検診或いは収容の基準でありますが、らいというものは御承知のように非常に永い、そうしてその経過の間に所見から申しまして臨床所見乃至検査所見から申しまして治癒の決定というものを早急にきめることができないということになつております。それから只今もお話がございましたが、治療の点でも非常に最近希望は持たれておりますが、併しながら非常に急速にらいを全く根治するという手段は遺憾ながらないようであります。それから又らいと申しますものが、これまで御承知のように菌の培養、動物実験ということがまだ不可能でありまして、従いまして感染の機序とか病理というものについて明確なことを実験の結果から得たものに照らして窺うことができないというような点がこの問題をきめるのに非常に困難であるということであると思いますが、併しながら私次のようなところがこの法案の中にありますらいを伝染させる虞れのある患者というようなことの内容になるのじやないかと思います。つまりそれは恐らく大別して二つの途があると思います。第一はらい菌の証明でありまして、第二に臨床の所見であります。勿論この両者は互いに関連いたしておりまして、お互いに或る程度一致するところがあるのでありますが、例えば菌の所見について申しますと、鼻汁、或る場合には尿とか糞便、痰、これらは特殊の場合でありますが、こういうものに菌を証明するような場合、併しこれは大概結節らいのときが主のことであります。それから第二は皮膚の組織片の塗抹標本のうちにらい菌を証明する場合、これも結節らいには主でありまして斑紋らい、つまり結核様らいではときに陽性のことがあります。なお血液中に証明する場合それから睾丸穿刺液に証明する場合、これらのことが菌を証明する遂になつておりますが、このうちの鼻汁に証明するような場合には当然それはその菌が体外へ撒布されるという危険が大きいのであります。それから皮膚の組織片というもののうちに証明されるような場合は成るほど皮膚の表面には一応いないということになりますが、併しながらそれは非常に浅いところでありますし、容易にらいの病変が自分から破潰することもあります。従いまして又ときに外へ出る可能性が多いのでありまして、従つて菌の証明ができるという場合には当然これは伝染の虞れがあると考えていいと思うのであります。
それからその問題と関連いたしますが、臨床所見について申しますならば、らいの発診がある、例えば斑紋、丘疹とか結節、浸潤或いは水疱、潰瘍というような種類のものが現在体表に存在する場合、それから又神経の肥厚がある場合、知覚の異常がある場合、筋の萎縮がある場合、こういうような場合に勿論それぞれ鑑別診断の結果臨床的にらいと考えられる場合でありますが、こういうふうな場合いずれも最初に申上げましたいろいろの現在まだ検索上不備な点があることと睨み合せましてやはり感染、伝染を危険はある、こういうふうに言えるのじやないかと思います。ただ併しそれには又次のようなことを当然考慮に入れるわけでありまして、即ち病型から言えば結節らい、斑紋らい、或いは結核様らい、これらは当然伝染の虞れはある、神経らいになりますと伝染の虞れは少いと考えていいと思いますが、併しながらこの場合でも経過ということを又現在の症状等個々のケース、ケースによりまして当然考えを考慮しなくちやならんと思いまして、例えば神経らいで非常に数年間その症状が安定しておる。而もその病変の範囲は極く限局されておる、数年間の間症状が安定しており光田反応等も安定がしておる、こういつたようなものならば先ず伝染の虞れは少いと言つていいのではないかと思います。勿論そういう神経らいから結節らいに行く、又神経らいから斑紋らいに、或いは斑紋から結節にというふうに病型の間にはお互いに移行変化することがございますから、そういうことを頭に入れて考える必要がありますが、大体神経らいの限局されたようなもの、そうして症状が安定しておるもの、こういつた場合には伝染の危険が少いと考えてよろしい、この伝染の虞れという字について以上申上げました又何か後刻質問がありましたら申上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/4
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005・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 次に北野博一君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/5
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006・北野博一
○参考人(北野博一君) 私は敬愛園に昭和十五年から二十三年までその間六年間の応召期間がございますが、おりましたし、現在は岐阜県で予防課長をやつております。相変らずらいの検診業務に携わつておりますが、その経験から御質問の事項にお答えいたしたいと思つております。
第一番の国の責任において実施することがいいかどうかという御質問でございますが、そういうような御質問を受ければ当然国の責任においてやるべきものであると私は申上げたいと思います。併し実際問題としては国だけでできるものではないと私は考えます。当然都道府県のほうにおいて相当の実際に第一線勤務をやらなければ万全なことは不可能だと存じております。併しその際に経費面においては当然全額国費で以て負担さるべき性質のものではないかと私は考えております。又従来のらい予防では建前からいけば、そういう第一線勤務を保健所の職員にやらせなければならないことになつております。私たちはその点において大変いつも苦労しているわけですが、十分らいに関する知識のないものも多うございますので、それに対していろいろな間違いを起さないように指導するために随分苦労するわけでございます。それでこれは都道府県に一人の専門の係官を置きまして、その者にやらせることによつて次の事項の秘密の保持というような点においても完全を期することができると思います。そこで是非保健所は使わないで、国と県だけでやるという立場で、この仕事を進めたらよろしいかと考えております。
第二項の秘密保持の程度でございますが、これはどんなに注意を払いましても、都会のようなところではこれは或いは可能かもわかりませんが、我々農村をたくさん持つておるような府県では、なかなか不可能なことでございまして、ちよつと変つたことがあれば、県庁の役人でもですが、余ほど変装でもしなければ見立つてしまいます。或いは又我々のところに報告の来る大部分は、感染してその町村ですでに評判になつたという人が我々のところに報告が来るという場合が多いのでありまして、その秘密保持ということに責任を持てと言われましても、なかなか困難でございますので、故意に秘密を暴露するということは当然慎しまなければなりませんが、なかなか患者側からしてみれば、我々が検診に行つたとか、家庭訪問をしにいつたようなところから秘密が暴露をしたというような言い分があるかと思います。それはお互いが、両方が注意しあつて、患者の秘密保持に協力して、患者と職員とが協力してやらなければならん点があろうと存じております。
次に第三番目の家族の生活保護の問題でございますが、私はこれは当然に特別の措置をらい予防法なり何なりできめて頂いて、それとも全額国費でやつて頂くことが望ましいと思つております。何故なら現在の生活保護法の最底基準というものは実に薄弱なものでありまして、確かにそういう人たちと同じ程度にするか、或いはそれ以上にらい患者を待遇するかという問題については、いろいろ議論があるかと思いますが、私は極く少数になりましたこの日本のらい患者を、この際早くなくすをために、又かかつたかたが療養所に入所するために、安心させるためにも、少くとも一般の生活保護以上の何らかの特別な措置をして頂くことが大変結構だと思つております。又生活保護法なりいろいろな点において、何といいますか、面倒な事例がございます。先ほど大阪についての例を申されましたが、あのようなことができるならば大変結構だと思います。併しその程度というものは、どの程度であるということを私はこの際はつきり申上げることができないのを残念に思います。
次に四番目の所内の秩序維持についての問題でございますが、これは今の案に出ております程度の罰則程度ならば、あつてもなくても変らないじやないかと思います。どちらでもいいと思つております。刑事事件に関しましては当然この法律が適用されて、癩刑務所に送られるべきだと考えております。
次に第五番目の検診、収容についての問題でありますが、これは現在の現行法規は、やはり同じように伝染の危険のあるものは入所させなければならんように、強制命令で出せることになつておりますが、実際に検診業務に当つております、或いは収容業務に当つておりまする人としましては、もつぱら勧奨に意をそそぎまして、又最近私は岐阜へ参りましてから五年目にやつと一人、これは一度戦時中に入所しておつて逃走して来た患者でございますが、いろいろ説明しましても、なかなかその点を理解してくれませんでしたが、やつと納得させることができまして、駿河の療養所に送りましたが、その患者が入つてからの手紙に、本当に今まで、我儘を言つて申訳なかつた、こんなに立派な療養所になつているとは夢にも思わなかつた、今までの我儘は許してくれということを申しております。やはりその点において、強制権を後ろに或る程度持つてはおりますが、特に勧奨を重点において仕事を進めて行きたいと思つております。併し完全に命令権がなくなつてしまつたときに、その勧奨に或る程度の重みがつき得るかどうかということは、私自身今までの経験からはちよつと困難ではないかと思います。いずれにいたしましてもその法律を運用する者、或いはその勧奨に当る者の人格によつて、私はこの問題は解決し得るのであつて、やはり納得の上で入所させなければ、やはり逃走ということはどんな刑務所でさへときどきあるくらいなことでございますすから、ああいうような垣根の程度の療養所において、逃走を防ぐことは不可能でありますから、やはり納得させることに重点をおいてやつて行きたいと思つております。
それから次に、患者の作業関係と報奨関係でございますが、現在の療養所の人的な方面を見まするならば、職員の面を見まするならば、確かに手不足でございます。それを補う意味において、患者に働かせなければならないということは、誠に残念なことだと私は思います。何とかしてそういうことのないように、国のほうで、人を増すようにしてやつて頂きたいと思います。例えば看護婦についてでございますが、私が敬愛園におりましたときには、お蔭様であの地方は看護婦の志願者が割と多うございましたので、相当数の看護婦を養成いたしまして、そうして療養所としては初めてやつたと思いますが、病室に二十四時間、ずつと三交代で勤務させることが、一病棟でございますけれどもできまして、大変に患者から喜ばれました。併し相変らず患者の治療手伝いというものは、看護職員というのか、患者といいますか、そういうものを使わなければ、食事の運搬その他は不可能でございましたが、そうういことをやつて喜ばれました。言いうことがだんだんと、現在の敬愛園でも続いて行われているように聞いておりますが、何とかして看護婦の数を増す、或いはその他の職員を増しまして、患者の手を煩らわさないでも、その療養所の運営の大きな部門は職員の手で行われる、そうして極く軽症の患者の自発的な意思によつて奉仕が行われて、人手の足りない分を補うとか、或いは患者同志が十分に療養できるように、一層の充実をさせることができたならばいいかと思つております。そういう関係でございます。からして、その報奨の関係でございますが、現在の状態を続けるとするならば、もう少し作業賃というものは、患者のために値上げをしてやらなければならないのじやないかと私は考えます。併し患者が又一般労働者と同じような作業賃を高額のものを要求するというところに間違いがあるので、その中間をとつて頂きたいと思つております。
もう一つ七番目の療養所の運営或いは設備についてでございますが、これはやはり先ほど申上げました人員の増加、職員の増加ということと関連があると思いますが、私の個人的な考えでございますけれども、療養所の中には、本当にベッドで寝ていなければならないような患者、或いは不自由なものがおります。そのほかに元気で働ける者もいるわけでございますから、本来ならば同じ組織の中に、そういう患者を置くことがいいのか悪いのかと思うのであります、できるならば、病院的なものとコロニイ的なものと二つ合せて置くというようなやり方をしたならば、或いはその間全然別なところにあつては意味がないと思いますので、よく相通ずる場合があるかと思うのであります。現在の組織でも、そういうことは実際に行われ得るものであると考えております。
次に八番目の、患者に希望を持たせて療養に専念させるにはどうしたらいいかという問題でありますが、これはやはり今までの経験から申しまして、残された家族の生活の保障ということに重点をおいたならば、患者は安心して療養所に入り、療養するのではないかと思つております。又その半面入所しました患者に対しましては、十分に文化活動なんかできるようにして、そういう方面の助成をしてやつて頂きまして一彼らはなかなか学識のあるかたも入つておりますけれども、そうでないかたのほうが割と多うございますから、社会教育を大いに周知しまして、もう少し一般教養を高めるというようなことに努力して行つたならば、秩序その他についても、いい結果をもたらすのではないかと思つております。
そのほかには外出の制限ということは、これは必要な問題ではないかと考えております。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/6
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007・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 次に浜野規矩雄君に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/7
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008・浜野規矩雄
○参考人(浜野規矩雄君) 私お呼び出しにあずかりましたが、考えて見まするに、現在藤楓協会の常務理事をいたしております。そういう点でお呼び出しになつたものと存ずるのでありますが、約二十何年間らいの患者さんとは一緒に暮して来たわけであります。そこにお坐りの草間専門員さんが主任で私がその下で働いておつた時代もございましたが、そういう時分には先ほどお話のように、かなり癩療養所は暗いものが多分にございました。私どもも患者を見舞に参りますれば、裸になりまして、一緒にベース・ボール、今言う野球をいたしたりして半日遊んだりいろいろなことをいたしまして、お慰め申上げ、激励して来たのでありますが、自分たちは結核の予防のほうを主に担当いたしておりました。そんな関係で戦争になりまして、傷痍軍人のらいの患者が出た。この方々の様子を見ておりますと、軍隊が極めて早く見付けられた患者さんでありまして、これは本当にこの人がらいかと思うようなかたであります。こういうかたがたが長島に相当、それから邑久の光明園に、七、八十名もおられましたので、そこへ参りまして、失礼でありますが、写真をとりました。私がその真中に坐りまして、傷痍軍人さんに皆僕の所へ来いよと言つて、私が真中へ坐つて、全部で写真をとつて、それを持つて帰つて患者に見せますというと、その中のらい病患者は私でありまして、他の者は皆元気溌剌たる顔をしておるのであります。四十幾つかの私がぼやけて写真がとれるのは当然であります。二十歳台の人たちの中で、目、顔から言うならば、みずから疑うほど私自身がらい病であるかのようであつたのであります。その患者さんを早く御治療することによつて治るということは、結核が早期診断によつて早く治るということと同じであります。こういう意味におきまして、極力そうふう方面に努力をいたしまして、傷痍軍人専門の駿河療養所が設けられるようになり、同時にその患者さんは必ず治つて、表へ出て行くのだ、所内で妻帯なんかさせないで、妻帯すると、ついそのまま永引いてしまうというので、女の患者さんを一切中へ入れない。そしてどんどん治つて一先ほどお話がありましたように、作業をして、そして表へ出されております。こういうことがうまく統率されますれば、かくのごとき問題が簡単に行われ、そしてここにあるようないろいろな問題がなくて済むのじやないかと思います。そんな意味合いで、又絶えず皆さんおいでになりましたが、白衣をまとつて療養所にお入りになつたと思うのでありますが、昔私が参りましたときには、帽子をかぶり、マスクをし、白衣をまとい、長靴を履いて中へ入つたのでありますが、考えて見ればその必要はないのでありまして、朝香宮を療養所へお連れしましてからは全部白衣をとりまして、素面、素手で入るようになりました。そうして私どもは患者さんのお気持を少しでも明るくし、そうして治るという希望を持つて頂きたく進みました。たまたま役所に在中、このプロミンが非常に有効であるということを聞きましたので、これを一手にまとめて、癩療養所に送りましたことがありました。今たまたま藤楓協会のほうに参りましておすがりいたしまして、各療養所を見て参りましたが、昭和七、八年頃に初めて癩療養所へ行つたときと今とは大変差のあることを見て非常に愉快になりました。ただ重症の患者さんは治つても、よくなつても表に出かねるということで、非常に暗いものを感ずるのであります。そんなような意味で、ここでお示しの一、二、三に関しましては、これはなかなかむずかしい問題であります。金の方面から言えば国が全額持つてくれたほうが地方庁では一番便利であります。こういう自治体の性格から見ますれば、地方庁が若干負担して、国がそのうちの大半を持つというのが大体のならわしのようであります。こういうことは皆さんにおいていずれ御討議されると思いますが、仕事の上で私たち申しますならば、患者の所在をよく知つておられますのが地方の公共団体である。本当に専門家が控えておりますのが国の療養所であります。これが結び繋れますことが一番いいのでありますが、先ほどからお話のように地方におきましては、なかなかその人を得ない点が明らかであります。ここに大浜さんその他のかたが来ておられますが、こういうかたが癩療養所におられて、温い気持でいろいろなことを努力して頂いたならば一番いいのじやないか。現在まだ患者さんが五千名内外あつて、療養所ではかなりベットが空いております。又藤楓協会の一つの仕事としては、この患者さんたちが喜んで中にお入りになれますように、私どもが外で援助ができればこれに越したことはないのでありまして、どうしても相当の予算がかかりますし、又予算化が必要であります。こういう意味でありまして、先般藤楓協会の年次の予算を作りましたときに、理事、幹事からお話が出まして、一つテスト・ケースとして、モデルに一つこうやつたらうまく入るのじやないか、長年やつておられる方々の御意見を聞いて、その人がやりいいように一つやつて見たらどうかということを、鹿児島、宮崎、熊本、大阪、愛知、この五つが現状においてはらいの多い所であります。そういう所の専門の方々にお集まりを願いまして、要するに係のかた並びにその上の方々にお集まりを願つて、いろいろ懇談をいたしました。そしてやつて見たい方法でやる。それで必ずそのときには保健所を使わないで、その人たち自身が療養所と連絡をとつてやると、こういう形で一時いろいろとやりました。
それにつきましては、ここに問題となつておりますか、先ず療養所を知らせる意味におきまして、家族がらいの療養所があるか知らないときは、町の役場の人たちに患者としてよくわかつている人があります。そういうようようなときには役場の人が行つて療養所を知らせてやる。又患者さんが入所されますときに、着物その他が非常にお粗末で入りにくい人があれば、鹿児島県は三千三百円の金を与えて一つそれでということならば、我々も三千三百円内外の金を上げて着物を作つてやりたい。見舞に行くときには何かしら持つて行く、お薬でも何かを持つて行つて患者さんたちを安心させて行く。こういうような皆さんから出ました苦心談を率直に聞いて取り入れまして、先般藤楓協会のものを一部割きまして、そういうことをするべく今計画を進めておるのであります。そういうような点から言いますれば、一、二、三の問題はおのずから解決して行く問題であると思うのであります。
機密保持の問題も一人の人が専心努力をいたしまして、その人自体が呑み込んで、そして国立の療養所と連絡をとつていろいろなされますのが、これが一番理想案であると思います。そういう人が各県にあられまして、専心献身的に努力されますならば、こういう問題は速かに解決する問題であると思うのでおります。ただ問題は、家族の生活費の保護でありますが、これもいろいろと御意見ありましたが、要は先ほど大阪の大浜さんからもお話がありましたような措置が講ぜられれば結構でありますが、現状においてはそれが不可能であるならば、その係官のかたが極秘のうちにむずかしくなく県の社会課のほうによくお話して、社会課と衛生課で前以て話をして、そしてこれが簡単に行くのじやないか。これを思い出しますときに、昔軍事扶助法がございまして、そして今の国立療養所のはしりであります晴嵐荘ができまして、その頃私どももその衝に当つておつたのでありますが、大蔵省は軍事扶助法で出すが、入院料はもともと国に返つて来るのだというわけで、殆んど軍事扶助法で皆賄い得るのだと、こういうような観念の上から行くとそういうことになるのでありますが、どのお話のように、地面は少くとも、納屋を持つていると、軍事扶助法では、これを全部売らなければ、軍事扶助法にかかれない。だから一つの大隊で一名か、二名、聯隊で三、四名の人しか軍事扶助法にかかる人がなかつたのですが、それではこういうものを作りましても、仏作つて魂入れずでありまして、我々は人を走らせまして、そういうところの杓子定規をやめてもらいまして、極力治療ができますようにお願いした経験を持つておるものであります。戦争になりましてからはかれこれ八、九百の人が軍事扶助法を適用されておるというように聞いておるのであります。そういうことも国費に、そういうことに努力すれば現行法でも私はやつてやれないではない。これはもつと以上、皆さんがたの御努力によればこれに越したことはないが、今の法によつてやつてやれないことはない。これに対して是非皆さん努力してもらいたい。これが一番の重大な問題であるということをお互いに申合せて別れた次第であります。
なお将来の秩序を如何に保持するやというこの問題は、ここの席にたくさんのお医者さんの関係のかたがおられるのでわかります通り、患者には患者の道徳があり、道がある。医者には医者としてある。日進月歩して、きまつて行く問題であります。それが十分に行われますならば、何らここに問題はないと思うのであります。そこに間違いが起きまして、先ほどの大阪のかたのお話のように、いろいろな問題が起きる。同時にもう一つそこに問題が起きますのは、警察関係が昔から、我々も困つたのですが、犯罪者を速かに、調べもせずすぐ療養所の方に送つちまうのであります。今日のうちに送つちまえ。すぐ調べないで県のほうに送つて参りますれば、療養所も、一人の犯罪者があることにより、先ほど大浜さんがお話になりましたように、療養所の患者さんその他のかたがこれについていろいろと問題が出て来る。こういう一番の根本を解決されますならば、秩序維持という問題は、患者とここに勤務するお医者さん、職員のおのずからの徳義心によつてこれはいろいろ守られるものだと思うのでありますが、併しながら、ただ多人数の方々がそこに生活される以上、若干の規律維持に対して御考慮があつて然るべきじやないかと思うのであります。結核その他の療養所だと、ほかの療養所に転所するとか、乃至は退所を願うことがありますが、らいにおいてはそれができないのであります。又長くそこで生活をされます以上、患者さん同士がお互いに信頼し合つて安心できますことが一番望ましいのであります。それが、先ほど私が申しておりましたのですが、若し困る問題があれば、お互いに考えて見る必要もそこにあるのじやないかということも考えるのでございます。検診や診療については、先ほどもお話がありましたのと大体同じ程度であります。
それから患者の作業並びにその報償関係でございますが、これはもう私たち昔から、しよつちゆうこの問題について頭を悩ましておる問題であります。患者さんたちが所内できめられた作業、並びにあとその余暇を似て自分たちが作業されまして、それで或る意味における生活費を得られる。又重症患者に対するお小遣いを上げたい、又上げたらどうだという考えがお互いにあるのでありますが、実際問題になりますとなかなかこの点困難であります。先般藤楓協会でこれをいち早く取上げまして、患者にどれだけの施設をしたらばいいいかということを率直にこちらへ言つて来てくれと言つてお願いをいたしましたところが、集まつたその設備費だけで約数億円であります。藤楓協会の財産は二億円でございますが、三億何がしの金が参つたのであります。現状におきましても、患者各位とお話をいたしまして、所内で使う材料を作りまして、そうしてそれを国の費用なり又ほかの費用で買つてもらたらいいのじやないかと思います。そういうような方面につきましては、今後患者さんととくとお互いに話合いまして、一番いい方法をやつて、常に面倒見て上げたい。ただ患者さんたちが療養所の職員の仕事を若干お手伝いされております問題がこれに残されるのでありますが、これは予算面その他においておのずから解決されるものじやないかと思うのであります。昔患者の御飯代が十七銭、結核患者の御飯代が五十五銭、余りひどいじやないかというので聞いて見れば、所内でできるもので全部食べられるからこれは安い。こういう点について見ればそういうことも考えますが、療養所へ行つてみますというと、患者さんがにこにこして炊事をやつておられる。今日は何ですかということで聞いて見ると、これです。大きな肉が入つておる。肉、結構ですねと言うと、それは馬肉なんでありまして、馬肉じやしようがないなという気がしましたが、現状におきましては、結核と同じになりました。側面的にこの問題について努力して来たのでありますが、そんなような意味におきまして所内もだんだんと改善はされて来ておりますが、作業におきましても、秩序維そういう意味におきまして、物の中で、買うものが安いように、賃金が安いものも中にありましようし、又余りにお金をたくさん持つことは、所内の秩序維持というものが困難になる点があるやに患者さんそれ自身から聞いておりますから、こういう点は現実に則した点におきまして十分考慮され、実施されますことが一番望ましいのであります。厚生局並びに各位におかれまして十分一つ御研究をして頂くことが結構だと思うのであります。
それから現在の療養所における運営及び設備について改善を要するものという点でありますが、これは私たちから見ますれば、国でされるものは全部国でして頂いて、それでできないものを私たち藤楓協会のほうでお手伝をするという方針で進んでおりますが、いろいろの点がなり進んおりますが、らいの面が如何にも暗いのでありますからして、これを国民に正しく認識させる、又明るい希望を持たすという意味におきまして、三百万円の金を投じまして「希望への泉」という映画を作り、各療養所隈なく歩いて、当議会へも持つて参りまして、皆さん方の御高覧を頂きましたし、又発表会のときにわざわざ議員のかたもその会においで頂きまして御覧を頂いたのでありますが、これを患者さんの所へ持つて行つて見せますというと、療養所の中に余りに甲乙丙丁があるというのであります。非常に立派な療養所から、非常に貧弱な療養所があります。こういう点につきましては、患者さんに済んでからどうだということを聞きますと、そういうことを申します。乃至は、患者さんたちの出て来る映画の中に揃つて「ええ」という、何といいますか溜息をつくのでありますが、そういうのが余り立派な施設のところに来ると出て来る。釣堀なんかで魚を釣つている風景が出て来ると「こんちくしよう」と言うのです。実際その療養所に釣堀がないのであります。実際においては作れないのであります。これは入つておる人たちが、そういう意味におきまして、種々雑多な観点からいろいろな問題があると思いますが、治療その他におきましては、私たち見ましてかなり完備しておると見るものでございます。
それからその次に、患者に希望を持たす最後でありますが、安んじて療養に専念せしめるということは、先ほど家族の生活を保障するということが重点だと申されておりましたが、私たちはこれを今一番必要である。できれば先ほど申しましたように、早期に患者を発見いたしまして、そして早く治療されますれば、必ずや表に皆出て、お帰りになる。これが結核が同じでございまして、らいがそういうものであるということを何とかして認識して頂きますことが一番望ましいのであります。これに対しましては、是非結核と同じように、らいの知識を十分に普及いたしまして、同時に今あります、昔は大楓子を使つておりましたが、この頃はプロミンを使つております。その他いろいろ研究されておりますが、この間、ウッド・メモリアルの方々も来られて、日本で研究されましたが、やはり或る一定した薬しか効かないようでありますが、こんなような治療薬を早くに何とかして研究をいたしまして、希望を持つて行きますならば、結核療養所になかなか入つて来られなかつた方々が、ストレプトマイシン、パス、その他で飛びつくようにしてお入りになつた。らいにおいてもそのきらいが若干あります。こういうような治療薬を何とかして一歩でも二歩でも前進しますことについて努力して上げますことが希望をより以上持たせることじやないかと思うのであります。そのような関係で、是非患者に希望を持たせますこと、金のみならず、そういう物質的のものでなく、療養所が明るくなりますことのためには、そういう治療の面においてそれが早くできますことは、より以上明るくする点でございますので、そういう意味合いにおきまして、そういうものに努力して行きますことが、安んじて皆行く。先般私の友人が患者を一人診ました。診たのは高等学校へ行つているお嬢さんでありまして、このお嬢さんを診た先生が、あなた、ちよつとこの病気は私にわかりませんから、こうこうこういう療養所においで下さい。そこに非常にうまい先生がおりますからといつて、紹介状を書いて療養所に送つたのであります。ところが療養所で拝見すると、立派な御家庭のお嬢さんですが、らいであります。療養所の職員はあれはらいだ、いやらいでないというので、議論が二つに分れたくらい、極めて初期のらいであります。そのかたの標本をとつて見ますと、立派にらいの菌があります。そこでお母さんによく話をし、娘さんによく話をして、名前から何から全部隠して、三カ月何がしそこに入つておられましたが、跡かたなくなつてお治りになつて家にお帰りになつて、あとときどきそれお互いに連絡をとつて心配すればいいというくらいであります。こういうような点で、開業医各位におかれましても、又それに関係しておられるかたがたでも、そういうふうにして診て頂きますれば、これは本当に早期診断でわかります。ただ今問題になつておりますのは、重症患者で皆にうつす危険のある人をどういうふうにしたらいいかというのが表面的に出ておる問題ですが、実際的にはそういう患者さんの道に迫る前の人を、是非あらゆる方法におきましてやりたい。今、北村教授が来ております。大学その他におきましても、国費その他を以ちまして、そういう講習会をやる。又同時にそういう秘密にしてうまくしてあげるということも、併せて御指導申上げて、そしてたまたまそういう人々がありますれば、要領よくわからずにやつて来て、わからずに治つて行つて、どんどん心配なく懸念なくやつて行く、そういうところにらいの明るさが出て来るのではないかと思います。
そういう意味におきまして、将来いろいろな問題がありますが、要は患者さんたちが明るく又早くお治りになつて、そうして表に出る。駿河療養所の場合は、軽症患者のために土地をわざわざとりまして、そこで治つたら相当の療養をして丈夫になつて表に出る。昔計画を立てたものがございます。まだ現在空地になつておりますが、そんなような関係でございますが、ただ問題は、そこに残された若干の患者さんたちのいろんな問題がいろいろらい予防法に対する一つの暗礁になつているやに思うのであります。これにつきましては、とくと御審議頂きまして、全部の患者の幸福がもたらされますように、数人の患者さんのためにいろいろ摩擦のできますことを除去いたしまして、全部の患者さんが円満になつて行かれますように、私たち委員の各位にお願いいたしまして、藤楓協会も側面におきまして十分これに対して努力して行きたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/8
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009・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) それでは荒垣秀雄君が未だに御出席になりませんので、一応これで各参考人諸君の意見の御発表を願いまして終りましたので、各委員から、各参考人に対して御質疑がございましたならば御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/9
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010・榊原亨
○榊原亨君 大浜さんにお聞きしたいと思うのでありますが、先ほどそのほうの、らい係りというような、特殊な係りに非常に精通しておられるかたが都道府県におられて、そうして国と連絡の上でやつたほうが非常にいいと話を承わつたのでありますが、その場合にその練達なる係官が都道府県の係員として従事されるほうがよろしうございますか、或いは国の係員として都道府県におられるというほうがいろいろ連絡の上から申しましても、教育の上から申しましてもいいんでございましようか、今までの経験上どちらのほうがいいというお考えでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/10
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011・大浜文子
○参考人(大浜文子君) やはり国の職員でありたいということを考えます。都道府県の職員でなければならないのでございますが、やつぱり一人でやつておりますと、係の上のかたが変られましたり、いろんな関係でどうしても女一人に任されきつてしまうというような混乱がございまして、やつぱりこれはもつとどこか強いものとか、大きなものの理解を以て絶えず励まされて行かなければならないのじやないかとも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/11
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012・榊原亨
○榊原亨君 その場合に、国の係員であつて、地方の都道府県におられるというために、地方の実情がはつきりしないというようなことで御不便をお感じになつたこと、或いは又患者収容等のために、そういうふうな場合に都道府県の協力が少くなるのではないだろうかというような点に多少の心配があるのでありますが、その点は御経験上どんなふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/12
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013・大浜文子
○参考人(大浜文子君) その点もいろいろ考慮いたしましたし、突き当つた問題でございまして、まあ大阪府におりましたものですから、その地方に精通した、殊に不自由は感じなかつたのでございますが、やはりその点府県の役人であるがために困難でもあり、又これが国の役人であつた場合には、もつとおいてきぼりにされる面があるのじやないかという面もあるのではないかと考えます。で、先ほど北野先生ともお話をいたしましたが、防疫駐在官のような立場においてあつたほうがいいんではないかというふうに話もあつたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/13
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014・榊原亨
○榊原亨君 先ほど生活保護法でなしに、らいには特別な、まあそういうふうな保障をするということがいいというお話がありましたのでございますが、その場合に何か委任状を取つて送るとかいうお話がございましたが、その辺の手続の詳細をもう少しはつきり承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/14
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015・大浜文子
○参考人(大浜文子君) あれは警察が衛生を持つておりましたときのことでございましたが、その月の初めに、三日以内に、その月の、八月であれば、八月の生活費を、家族一人に対して四十円、そして何人以上は何ぼに打切るという規定によつて請求を警察に出しました場合、その場合にそのあとの家族が、残留家族の長が勤めておりましたようなときには、仕事を一日休んで警察にその書類を持つて行く、金が出るという場合には、やつぱり仕事を一日休んで、らいということを知られてはいけないからというのでお金を取りに行くという不便がございました。そのことなどを全部、私、係の委任状によりまして、私の名義で知事に請求し、私の名義で金を受取つて、そして為替で家族に送つてやるという方法をとつておりました。ですかららいであるということは、誰でも知られずにやつておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/15
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016・榊原亨
○榊原亨君 北村先生にお承わりいたしたいのでございますが、現在の医療制度におきまして、三年以上らいの診察並びに治療に経験のある医師が大体先生の御関係の御教室で何人くらいおいでになりますのでございましようか。これは法律でお読みになりましたように、三年以上経験ある医師を各都道府県に指定するということになつているんでございますが、果してそれが先生のお考えでできることでございましようか。承わりさせて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/16
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017・北村包彦
○参考人(北村包彦君) その前にちよつと持つて参りましたから、どのくらい、それじや今の我々の教室のお話がございましたので、そのらい患者が来るかという話を申上げたいと思います。一年に一番多いときで、二十二人から三十九名、昨年は十三名、非常に減つて参りましたが、このくらい参つております。それを教室において診る、三年以上診療というのでございますが、大学の教室で或る程度勉強しているものならば、卒業してから医者として三年ぐらいあれば相当診る機会があると思いますが、そういう人が幾人ぐらいあるかということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/17
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018・榊原亨
○榊原亨君 それは三年間のうちに御診察なさるということだろうと私は思うのでありますが、御承知のように、らいで感染の虞れのあるものは殆んど全部療養所に入れなければならんことになりますと、大学の教室において治療はできないと私は思うのでございますが、それで三年以上の治療の御経験の医者が教室で養成されることができるかどうか、或いは各都道県府にそれだけの医者を指定することができるかどうかということを承わらさして頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/18
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019・北村包彦
○参考人(北村包彦君) 診療と申しますのは、大学で申しますのは診察のことでございますね。治療については、それは立場が違うと思いますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/19
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020・榊原亨
○榊原亨君 それがそういう人数を整えることができるかどうかということを私は承わりたいと思います。国立の療養所において御経験はあると思うのでありますが、大学の教室におきまして三年以上経験あるらいの治療をするかたが、果して各都道府県でできるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/20
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021・北村包彦
○参考人(北村包彦君) ただこの法案で拝見しますと、「必要があると認めるときは、指定する医師をして、」その指定する医師が診察させるのでありますから、診察についてはこの経験は大学においてできると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/21
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022・榊原亨
○榊原亨君 くどいようですが、この法律には診療と書いてあるのですが……ですから治療の御経験はできないと私は思うのでありますが、御意見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/22
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023・北村包彦
○参考人(北村包彦君) その点はさつき申上げましたように、できないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/23
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024・榊原亨
○榊原亨君 次に、この患者のほうから、らいという病名をやめてもらいたい、違う病名にしてもらいたい。例えばハンゼン氏病というようなことでありますが……ところがまあそれにつきまして、例えば第二抗酸菌病というようなのも一つの方法かと思いますが、そのハンゼン氏病ということがいいか否や。というのは、学界的に、細菌を発見した人の名前を病気の名前につけたものはない。例えばワイルス氏病でございますならその細菌の名前、細菌を発見した人の名前を病気の名前につけてはいけないというようなことがあるから、そのハンゼン氏病がいけないという説をするかたがあるのでございますが、その点について先生の御見解を承わらせて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/24
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025・北村包彦
○参考人(北村包彦君) 細菌を発見した人の名前を病名にしてはいけないということがあるということでございますか。併しハンゼン氏病という名前が一般に学界で行われておるかという点でございますか。どちらですか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/25
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026・榊原亨
○榊原亨君 ちよつと私の問が悪いかも知れませんが、ハンゼン氏病という名前をつけたいという希望があるわけなんです、患者の中には。ところがその名前は、御承知のようにらい菌を発見した人がハンゼン氏であるから、学界においてはその病気を発見した人の名前をつけることがある。例えばバセドー氏病とか……ところがその病気を起す細菌を発見した人の名前を直接病気の名前につけるということは学界的に不穏当であるかどうかということで、ハンゼン氏病はいけないという説をする人があるのでございます。その点についてこの先生の御見解を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/26
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027・北村包彦
○参考人(北村包彦君) そのでございますね、それと同じような場合でございますね。細菌の発見者の名前を病名に謳つておるような例はすぐ頭に浮いて来ませんし、又……そういうことがいけないというのですね。そういう点でそういうことがいけないと言つている人があるかないか、ちよつと私存じませんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/27
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028・榊原亨
○榊原亨君 先生のお考えは、そういう名前をつけてはいけない、学界的におかしいという御意見でございましようか、或いは、それはまあそういうことであればそれでもよろしいというような……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/28
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029・北村包彦
○参考人(北村包彦君) 今最初にお尋ねになりましたそういう細菌の発見者の名前を使つてその病名を呼ぶような場合、ハンゼン氏病というようなのは学界の通念として行われてないのじやないか、こうおつしやつた。それについては私存じませんです。今すぐには申上げられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/29
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030・榊原亨
○榊原亨君 らい菌が器物につきますというと、何時間ぐらいで死滅いたしますものでございましようか。患者のほうの主張は、物にらい菌がつけばすぐ死ぬのだから、患者が触つた物を捨てるとか、特別に消毒する必要はないのだという主張をする患者のかたがあるのでありますが、専門の御見解は如何でございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/30
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031・北村包彦
○参考人(北村包彦君) それは最初申上げましたように、らい菌についてはそれが培養でございますね、それから動物実験というようなものはまだ成功しておりませんから、従いましてこれだけ消毒したものが何分で菌が死んでおる、或いは又生きておるということは、はつきり申上げられないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/31
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032・榊原亨
○榊原亨君 先ほど参考人のかたがたの中にも、全治々々という言葉があります。又参考としてお求めになりました資料の中にも全治ということが書いてあるのでございますが、先生のお考えでは全治はない、又全治を確認することができんというお話でございますが、さようでございますか。又或いは伝染の虞れがなくなつたような場合でも、時間の経過と共に再び伝染の虞れが出て来るようなものがあるのでございましようか。それは何%ぐらいの割合に出て来るものでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/32
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033・北村包彦
○参考人(北村包彦君) 先ず最初の、全治があるかないかということでございますね。それにつきましては、全治というふうの解釈が、これも最初に申上げました厳密な意味では、確かにその人がかかつていないということを、特にらいの場合では、いろいろのことから見て判断するのは、結核におけるほどやさしくないという点で、この全治ということはむずかしい。又最近プロミンといつた、いろんな薬が発見されまして、非常にいい成績でありますけれども、使用されました人は数年ぐらいでありますから、その患者が本当に治つて再発しないかどうかということはわからないのですが、全治しないということは言いにくいのでありまして、絶対に全治しないとは言えないと思います。
それから第二の問題は、何%と申しますか、ちよつと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/33
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034・榊原亨
○榊原亨君 一応感染の虞れがないとして、まあ例えば療養所なら療養所を退院させることができたような程度の患者でございまして、その患者が時間の経過と共に再び伝染の虞れが出て来ることがあるでございましようか。又出て来ることがあれば、そういうふうな症状がなくなり感染の虞れがない、伝染の虞れがないと言われた患者のうちの何%が何年間ごうちにどういうふうな伝染の虞れがあるものになつて来るかということの大体の数字を承わらさして頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/34
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035・北村包彦
○参考人(北村包彦君) その点について、私只今遺憾ながらちよつとお答えできるものを持つておりませんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/35
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036・榊原亨
○榊原亨君 そういう御研究もありませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/36
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037・北村包彦
○参考人(北村包彦君) それはあると思います。只今ちよつとここに持つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/37
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038・榊原亨
○榊原亨君 最後に承わりたいのでありますが、若しも患者の希望を満たすようなことから、又らいの予防の上から、国立の研究所というようなものを今の患者の数において作ろうということが実現いたします場合におきましては、全国に幾カ所ぐらいのことでよろしいでございましようか、或いは一カ所でよろしいといたしますならば、その規模は大体どのくらいのことが先生のお立場から、理想と言つちやおかしいのでございますが、大体その要望に応えることができましようかということ、これはむずかしいことだと思いますが、何とも言えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/38
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039・北村包彦
○参考人(北村包彦君) むずかしいことでございますね。私の考えでは、やはり何カ所に分けるということも規模の問題に関連いたしますから何とも言えませんが、併し只今の患者の数からいいますと、研究所としては一カ所でいいと思いますね。規模にもよりますでしようが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/39
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040・榊原亨
○榊原亨君 北野さんにお聞きいたしますが、先ほど患者の作業ということについてお話になりましたのでありますが、今までの御経験から申しますというと、今現在療養所に収容されております患者の何%が果してこの作業に従事し得るとお考えになりますか。或いは又その作業の中でどういうふうな作業に従事させてもいいとお考えになるでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/40
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041・北野博一
○参考人(北野博一君) これは療養所における作業ということを基準に考えるわけでありまして、一般社会の作業とは異なりまして、一日の労働時間はせいぜい三時間乃至四時間程度のものが適当だと考えて申上げるわけでありますが、現在のプロミンを使い出してからの症状その他についてはつきりしたことを存じませんので、療養所におりました当時の記憶といいますか経験でございますが、大体六割乃至七割程度は、或る程度の作業につき得る能力を持つておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/41
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042・榊原亨
○榊原亨君 その作業のときの報酬が今のは安いが、純粋の労働のは安くてもいいというお考えでございますか。今例えば患者に附添いました者が一日二十円ということになつているようでございますが、大体それをどのくらいに具体的に上げたらあなたのお考えになつていらつしやる線に沿うことができるのでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/42
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043・北野博一
○参考人(北野博一君) 私は、一日二十円としますと一カ月六百円でございますが、少くとも倍近く、たばこ一日一箇すう程度のことは当然に報酬としてあつてもいいことだと考えております。
それから看護婦の作業でございますが、二十四時間とは申しますけれども、一人が二十四時間働いているわけじやなしに、実際に見ておりますれば、各療養所によつて違うかとも思いますけれども、実際の実動時間というものはそんなに大きな時間じやないと思います。だからして私は大体現在の倍額程度、それぞれ経済状況に応じて変つて行くと思いますが、現在の段階においては倍額程度のこがと必要ではないかと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/43
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044・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 只今北野さんのお話によると、いわゆる作業を患者の軽症者にはお願いしている。従つて少しは報酬もやらなければならん。併しできるならば職員を増してそういうことはやはり療養所は療養所らしくやらせたほうがよかろうというようなお話に聞いたのでありますが、そういうような場合には、例えば看護婦にいたしましても、大体今のお話を聞きますと四割くらいがかなり重症な患者であるからして、それで重症者には相当、言い換えるならば結核療養所などで扱つているような看護婦数を基準とすることが必要である。それから又軽症者にはそうは要らんが、極く僅かの看護数が要る。或いは食糧運搬などにもやはり一定の従業員を置くことが必要だというようなことをよく聞いておりますが、どのくらい看護婦を増し、又はかの従業員を増せば都合よく行くものでございましよか。そういうことについて御経験かございませんか、或いはお考えがございませか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/44
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045・北野博一
○参考人(北野博一君) はつきりとその数字を患者何名について幾らということを申上げにくいのでございますが、いろいろと医療法その他でそういう職員のきめ方があるのでございますが、その通り結核療養所並でなくてはならないと申上げません、重症者及び軽症者に対しましても。それはやはり私は患者さんに或る程度の軽作業を期待するからそういうことを申上げるのですが、全然ないとすれば、やはり結核療養所並に同じ職員を揃えなければ、到底同じような看護治療ということはできないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/45
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046・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 それから北村教授にお伺いしますが、只今のお話に、国立の研究所を作るとすれば一カ所くらいでよかろうというお話でございましたが、私ども聞いているところでは、らいはだんだんと寒い地方は少くなつてそうして最後に残る所は暑い地方である。従つて患者あたりも、或いはできるだけ南の方に収容させる施設を大きくする、或いは研究所などもそういう所に置くようにしようというようなことでやつたというので、実はこの前、方々の療養所、各方面の方々を参考人としてお喚びしたことがあるのでございますが、そのときに、やはり将来残りそうな地方に研究所を置くほうがよかろうというような話があつたのですが、北村先生は一カ所というのはどういう所に置いたらいいというお考えでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/46
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047・北村包彦
○参考人(北村包彦君) それは先ほどの御質問に設備とか規模の問題もあるけれども、大体考えていると申上げましたが、らい患者の数でございますね、それかららいというものの研究の方針からいつて、やはり一カ所でいい、こう申上げたのですね。そういうところからどこがいいかとおつしやる。それはいろいろあると思いますが、成るほどらいも多少暖い方に残るということもあるかも知れませんが、併し東北地方にも相当らい患者はある、数ははつきりしませんけれどもある。併し又そういう研究所であるならば、私の考えではやはりいろいろ何と申しますからいの研究だけが独立するものでもないし、一般の研究そのほかの施設というようなことの関係から、やはりあれば中央にあつたほうがいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/47
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048・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 北村教授に続けてお伺いしますが、このらいの研究所はやはりらい患者のおる所でないと、先刻来のようにまだ純粋培養もできんというような事態であるからして、らい患者そのものがおるような所でないといけない。併しその療養所が完全な研究ができないだろうから、その周囲にらいに関して特に関心を持つている大学とか或いは研究所とかあれば、必ずしも中央という必要はないということをこの前お話があつたのですが、それに対して如何お考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/48
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049・北村包彦
○参考人(北村包彦君) そうですね、それはいろいろ考えることができると思いますが、つまりらい研究所として新らしく発足するならば、それは独立したものでありますから、そういう意味でほかの例えば大学の施設とか、或いはこの大学に特にらいに興味を持つている人がいるということは別問題として、らい研究所として一本として行くならば、やはり中央に一カ所あつたほうがいいと思います。こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/49
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050・廣瀬久忠
○廣瀬久忠君 家族の生活の保護のことをお伺いしますが、北野さんにお伺いしたい。今現行法の六条で、昔、敗戦前は大体府県でもつて生活の保護をやるとすれば、それの半分は国で負担するという規定になつておりますね、前はそうですね。あなたがたおやりになつておつた頃は恐らくそうだと思う。ところが終戦後において生活保護法によるということに大体なつた。そこで大浜さんの御経験は、その前のですね、つまり大阪府庁で負担をしてそれを国が半分補助する、そうして警察を通じてやる、こういう順序であつた。今は変りまして生活保護法で補助をする、こういうことになつている。そこで実際のところ今生活保護法がなかなからい患者のために、家族のためにうまく行つていないような我々感じがする。それはなぜそううまく行かないのだろう、これは秘密を保持するというようなために患者さんの家族のほうから申出るのを嫌だと、又いろいろなやかましいことを言われるし、秘密がばれるから嫌だと、こういうのが生活保護法がうまく行われない原因の一番大きい点であると御覧になるか。或いは何ですか、生活保護法の適用というものは、国民の間にやはりむやみに金をやつては大変だからというので、地方庁はなかなか厳重な態度を以て生活保護法の適用をやるという態度で大体おる。そのために金をみだりに、みだりという言葉にいろいろ意味があると思うが、金は余りみだりになつてはならん、できるだけ引締めなければならんというような観念から、余り運用がうまく行ておらんというように見るのがいいかという、まあ先ずその二点についてどういうふうにお考いになるか。北野さんどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/50
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051・北野博一
○参考人(北野博一君) 私は現在やつておりまして、患者自体が生活保護法の適用を受けることを余り好みませんので、それを押してまで生活保護法に持つて行くことを実際にはやつておりません。併し又半面何とかしなければならん場合には、地方事務所その他福祉事務所へ参りましてその点について成るべく円滑に進むように仕事を進むるように仕事を進める場合もありますが、その際に一番困りますことは、確かに秘密の保持からは、まあ係官に洩らすわけでございます、本当の実情を言わなければ、普通の生活保護法の基準で行けば余り適用を受ける者はおらなくなつて、極く貧困な家庭はそれは当然受けるのですが、併し一般の患者が申出て来る場合はそんなにまでどん底に陥つていない場合も言つて参ります。いわゆる自分が入院したために家族の生活が、自宅におつたときよりも困難になつたということを申して来るわけです。それに対して何とか方法を講じてくれという、場合が多うございますので、なかなかその点は普通の生活保護法を適用するようなやり方では、らい患者に満足を与えることができないと思いますので、生活保護法に持つて行かないで、何らかの方法でということで、別な意味での、いわゆる家族の就職の問題だとかその他についていろいろと頼んであるというようなことで、少しでも収入が殖えるということを私たちはやつておりますが、余り完全に実行できておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/51
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052・廣瀬久忠
○廣瀬久忠君 そうするとなお北野さんにお伺いしますが、あなたのお考えでは、まあ今のように職業の斡旋であるとかその他のことは無論結構ですが、制度として考えるとすれば、生活保護法の今のような制度よりも特別なやはり制度を作るほうが、まあもう少し保護が手厚いということになりますか。それからそういう制度のほうがどうも運用上いいのじやないかというお考えに近いのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/52
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053・北野博一
○参考人(北野博一君) 私はそう思つております。特にらい患者だけに余計な恩典をあずからしめなければならんという理由はないかもわかりませんけれども、極く少数のらい患者でございますので、一般の貧困家庭よりも特にやつて頂くことによつて、極く少しでも患者の数が減るのじやないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/53
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054・廣瀬久忠
○廣瀬久忠君 そこでお伺いしますが、特別な制度を設けますと、やはり秘密というものは保てないという結果になりそうなんですが、そこはどうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/54
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055・北野博一
○参考人(北野博一君) それは先ほどから申上げておりますように、県に一人の専任の係官を置いて、大浜さんがやつておられましたような方法と同じような方法で仕事を進めることによつて私は可能であると思つております。それは上司には報告しなければなりませんけれども、関係の所に通報しなくてもすみますから、それだけ秘密の保持は完全にできると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/55
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056・廣瀬久忠
○廣瀬久忠君 そうすると、やはり先ほど浜野さんがお話になつたような、要するに人の問題というお話もありまして、大浜さんの場合も恐らくそうだつたと思うのですが、適当な人が各府県にあるならば、特別制度によつてそうしてこれを運営することが、秘密の点からもそれから家族の生活保護の点からも妥当であると、こういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/56
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057・北野博一
○参考人(北野博一君) そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/57
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058・廣瀬久忠
○廣瀬久忠君 大浜さんの御意見はどうなんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/58
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059・大浜文子
○参考人(大浜文子君) 私のほうもほぼ同じでございます。特別に只今の生活保護法にお願いに行きましても会社から退職金が幾らあつたはずだ、これで家族が何ぼ生活できるはずだ、だから出せないという面に突当ります。らい患者を療養所に入れる場合、成るほど治療その他は無料でやつても、行くためには行李の一つも買わなければいけない、或いは衣類の準備もしなければならないというような実情を説明して、そうしてやつとのことで一月半ののちにもらえるというような運びに至るのでございまして、或る時代に、終戦直後でございましたか、私が民生委員に特別の計らいでして頂いたこともございました。ところがやはり地区の民生委員に連絡をとつてどうこうしなければいけないということになりまして、結局煩わしさが一緒になつてしまいまして、そうしてやはり北野先生がおつしやつたように、そんなことで僅かのお金をもらつてそうしてばれるんだつたら、子供を夜間に入れて昼働かせるような方法をとるより仕方がなかろうというような便宜的な方法をやつて参ります。生活保護法は子供を高等学校に入れている場合にはやれないとか、原則がきびしうございますので非常に気の毒であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/59
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060・廣瀬久忠
○廣瀬久忠君 浜野さんのお考えはどうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/60
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061・浜野規矩雄
○参考人(浜野規矩雄君) 私は、らいのほうは極く少数になつておりますが、こういう患者さんたちがすべてを犠牲にして療養所に入つて自分がなめた苦痛を第三者に負わさせないことが一番根本問題だろうと思う。そういうふうな犠牲的な精神からお入り願う人にはどんなことでもして、その家族に対しては国民がいろいろなことお礼をするのもいいのではないか。
併し私たちが痛切に考えますのは、皆さんがたのほうで問題になつております戦争未亡人であるとかいろいろな人の問題が社会に幾つもある。それとこれをどこの点で割切つて行くかという問題がありますば、今すぐできるのは、先ほど言つた運営方法で昔の軍人扶助と同じことができるのじやないか。県にそういう熱心な人がいてうまくやつて下されば現行法でもやつて行けるのじやないか。そういうことで藤楓協会でそういうことをやつてみよう、現行法でできることをやつて行こう、こういうことをさつき申上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/61
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062・廣瀬久忠
○廣瀬久忠君 そうすると、現行法でというと、生活保護法でやつて行くのだという意味ですか。今伺つておるのは、国家の制度に対する考えを伺つておるので、あなたのほうでお考えになるのは、それにプラスする場合、国家の制度については、生活保護法で行くのがいいのか、或いは特別のらい患者に対する制度を設けるのがいいのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/62
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063・浜野規矩雄
○参考人(浜野規矩雄君) 個人的にはもつと厚くしてやるのが最もいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/63
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064・廣瀬久忠
○廣瀬久忠君 その理由は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/64
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065・浜野規矩雄
○参考人(浜野規矩雄君) それには当初申上げた極く少数の方々が、一番の要点は接触感染でありますから、そういう人たちが犠牲を忍んで率先して入つて来る。同時に第三者に及ぼす影響がなくなつて来る。それに対して国民全体が税金その他の場合において厚くして上げたらどうか、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/65
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066・廣瀬久忠
○廣瀬久忠君 それで特別の保護をみてもいいのじないかという理由。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/66
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067・浜野規矩雄
○参考人(浜野規矩雄君) ただその場合には、先ほど申しました靖国の未亡人、遺族という問題がどう議会で問題になつておるかということは我々としては深く考えますということを申上げた。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/67
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068・廣瀬久忠
○廣瀬久忠君 それからもう一つ伺いたいのですが、まあ特別制度を設けるとしても或いは生活保護法によるにしても、やはり相当秘密が洩れる虞れがある。それに対してはやはり府県庁に適当な人を入れるほか道がないというわけなんですが、やはり秘密のためにやるべきことがやり得ないでおるというような実情に今あるわけなんですね。秘密を守るために生活保護法が適用できんということ。今度特別制度を設ければうまく行くかも知れませんが、余りに秘密々々と言うためにらいに関する行政が非常に臆病になつてうまく行かないのじやないか。こういう感じが非常に強いのですが、どうですか、そういう点についての考えは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/68
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069・浜野規矩雄
○参考人(浜野規矩雄君) らいは、昔から言う伝染病で遺伝病でない、これは周知の事実です。伝染病と言えば結核と同じ伝染病です。これを周知徹底させればそういう問題はおのずから消えて行くのじやないか。昔結核というと大変なことで丁度ここで議論しているより以上の問題が昔あつた。この頃は全然そういうものがなくなつた。そんなような関係で、伝染病である、決してその人たちがそういうものでないということをはつきりすれば、……伝染病だから早く療養所に入つて皆さんにうつらないようにしてくれ、こういうことであります。それを徹底しなければいけない。それから中に入つておる人はこの通り立派で、この通りほがらかに生活しておる、それは全部国民の税金でなされておるというふうに……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/69
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070・藤原道子
○藤原道子君 私は水野さんにちよつとお伺いしたいのですが、先ほど生活保護法は患者が受けたがらないから余りこれはやらない。そういうふうなお話ですが、患者が受けたがらんという理由は、やはり生活保護法を受ける場合にいろいろうるさいものがある、僅かなものを持つておつてもこれは駄目だというような妙なことがあるから、同時に秘密が漏洩するというようなことから受けたがらないのじやないかと思うのですが、北野さんどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/70
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071・北野博一
○参考人(北野博一君) 私もその通りだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/71
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072・藤原道子
○藤原道子君 それではこれは参考人のかた全部にお伺いしたいのですが、これは先ほど榊原先生からお話がございましたが、病名変更のことです。らい者の気持にならなければこの問題はわからないのじやないか。らい者なるが故に不当な扱いを受けておる、時には生活権さえ奪われておる。こういう場合に、是非とも、今日ではらい病は治るのだ、昔は療養所に収容された者は出て来られなかつた、この頃では退所もできるというようになつておるのだから、こうした意味から言つても心のうずきに絶えず触れられるようなこのらい病という名前を一つ変えて欲しい、こういうようなことを非常に願つておるわけなんです。私は是非期待に副つてやりたいと思うのですが、中には、名前を変えたつてその病気というものはどういう病気だと言われれば、結局らい病だと言わなければならないから同じじやないかと、こう言われる。ところが昔はらい病は遺伝病である、こういうことだつた。ところが今日では伝染病ということは明らかになつたのですから、そういうときに、なぜ名前を変えたのだというときにはそういうことを説明してやるというようなことによつて、一層国民に対する啓蒙というようなことも前進するのではないかというように考えて、是非の名前は変えてやりたい。それからハンゼン氏病と言うことがいけないならば、昨日も話合つたことでございますが、ハンゼン氏菌病というのもよかろうし、或いは第二抗酸菌病というのもよかろうし、まあいろいろあろうと思います。こういうことを検討して名前を変えた方がいいと私は考えておるのでございますが、皆さんはどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/72
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073・北村包彦
○参考人(北村包彦君) 先ほど榊原さんからの御質問でも申上げましたのですが、ハンゼン氏病という名前が今問題になつておるのでありまするが、まあ只今の御質問のような立場からは別といたしまして昨年日本癩学会総会が岡山でございまして、そのときに評議員会がございまして、厚生省から諮問がございました。ハンゼン氏病という言葉があるが、それについてらいという名前を変えるというようなことについて、日本癩学会の意向はどうかという諮問が出ておりました。これにつきましてはたしか学会といたしましては、特に学会の立場で学術的には改称する必要はない、ただ併し今後その必要が起つたならば、……現在としては特に改称する必要はない、大体そういうような意味のことを厚生省に答申しております。
それからその問題と関連いたしますかどうかわかりませんが、厚生省から文部省に参つた通牒というものを各大学の学会のほうに廻されたものがございます。これは厚生省のほうで或いはお話があるかとも思いますが、要点は、厚生省から文部省に参つて、それから各大学に参つた通知、これはMAの西太平洋地域局長から厚生省に通知があつたと思つておりますが、要するにらい患者に対してレーバーという字があるが、それを使うことを全面的にやめて、今度はレプロシー・ペイシェントという字を使用する。それからもう一つらい病という言葉に対してはレプロシーという言葉を学術用語とするという通知が厚生省から出されております。その問題に直接は関係ないと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/73
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074・大浜文子
○参考人(大浜文子君) 私は素人でございますから、このことについて先生方のような意見を持たないのでございますが、私たちはあらゆる機会においてらいの啓蒙宣伝をいたして参りました。でその際大きな写真入りで、そうして又大きな宣伝で、らいは決して遺伝ではありません。伝染であるということを前提にして展覧会をいたします。その展覧会を眺めながら結局半数以上七分までの人が、これはなあ、血統というてなあと言つて写真を見て通ります。そういうふうなことを見ておりますと、如何にらいという言葉の裏には困襲付けられたものがあるか、いくら伝染病だと言つても結局一時代生れ変らなければ、らいは伝染であるという思想が行き渡らないのだということをいつも痛感しております。そうした場合に国民というものは大多数の人たちがそういうふうにらいは伝染病であると信じておりません。法律でもできて生れ変るときにすべてのらい患者の扱いも又そうした名前も何かすかつと変つてしまつたものになつて、そうしてらいに関係なくこれは皮膚病であつて、というように新しく出発ができないものかというようなことを素人の考えとして思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/74
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075・北野博一
○参考人(北野博一君) 学術名とこの法案の名前と違つておるのは、トラコーマをトラホーム予防法とそのままなつておるのがありますが、私はらい予防法におきまして、学会におきましてレプロシーをらいとやはり日本語で言う限りにおいては、らい予防法と言つたほうが私は正しいのじやないかと思います。それからたとえハンゼン氏病と直しましても症状を国民はよく知つておるわけでございますから、本当に軽い人でわからないような人のときにそれをらいだと言つた場合には問題があるかも知れませんが、大部分の場合は殆んど国民がよく知つておりますから、如何に名前を変えようが、病名を変えようが、それはやはり国民はらい病だというにきまつておると私は思うので、余り効果はないのじやないか。それは気分的な問題であつて、実質的な効果は私は余り上るとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/75
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076・藤原道子
○藤原道子君 私に実質的に変りがないというならば、この際あれだけ熱望しておるものなら変えてやつてもいい。これはまあ討論じやありませんから、御意見を伺うだけですから。
次にお伺いしたいのでございますが、先ほど来参考人の皆様のお話にもらいはやはり納得、勧奨で入所させなければならないと、とにかく強制で入れた場合には多くの者が逃走する、その他の問題が起きるというような御意見が多かつたのでございますが、伝染病であるからまあ最終的には止むを得ないという御意見が、厚生当局には強いわけなんです。これに対してあなたがたが今日までお扱いになりまして、強制収容をして、もう一遍くどいようでございますが、大浜さんにお伺いしたい。強制収容をして成功されたというような例がおありでございましようか。私はまあ先ほど来、お説のようにできる限り納得励奨で入所さしたい、こういうふうに考えておるわけでございます発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/76
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077・大浜文子
○参考人(大浜文子君) 私が責任を以つてやり出しましてからは強制収容いたしておりません。で、全部納得、たとえ浮浪者であつても犯罪者であつても、それは納得をさせます。ですからその際には、たとえ出て来る人がありましても、強制はいたしておりません。で、昔の強制と申しますのは非常にむごたらしい——本当に患者たちが、人権を無視したというような言葉を使います。現在においてはあのようなことは想像も付かないようなことをあえてやつて来たのでありますから、それに脅えて今度の法律に対しても、ああしたことを言うんであろうと思います。で、或いは療養所から逃走して来た患者を、療養所の職員の手伝いを受けて、蛙のように手と足を四つにくくつて田んぼの中を下げて自動車に乗せて行つたということも聞いております。そういうふうなことが今日においては決してできるものではないと思います。で、衆人環視の中で人権を尊重して行くのであれば、ああしたことは決してあり得ない。そして又そんなことをやつてのける役人も私はないだろうと思つております。で、やはり患者はその暴力に負けてというのか、権力に負けて、二度目の収容には落ちついて、療養所の中で死んで行つたという例はございますが、その患者たちに流布された思想が、やはり療養所を恐れさせたり或いはらいというものを非常に死以上の宣告を受けたと恐ろしがつたりしている原因になつているんだと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/77
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078・藤原道子
○藤原道子君 私北野さんにお伺いしたい。先ほどの所内の秩序維持の点ですね。秩序維持の点についてこの程度のものならば、あつてもなくても同じだというようなお考えだつたと思うんですが、これがなくても刑法的なものは法で罰すればいい。若しなくても所内の秩序は維持できるというようなお考えでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/78
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079・北野博一
○参考人(北野博一君) 私はこれは患者対職員といいますか、或いは患者同士のお互いの間の道徳観念を高めることによつてできるし、又それはお互いの愛情の問題によつて解決できる、こう思うのでありまして、併し一般的な意見からいえば、或る程度の秩序を守るような規定が必要だ、そのために法律があるのじやないかというふうに思いますけれども、療養所という所はやはり家族的な生活をする所であると、私は考えるが故に、そういうことは明文化しなくても、お互いの間でそれと同じようなことも、或いはできるだろうと私は考えて、そう申上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/79
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080・山下義信
○山下義信君 浜野さんにちよつと伺いたい。先ほど例の患者の家族の生活援護のことについていろいろ御意見が出て拝聴しておつたんですが、そのときにあなたのお言葉の中に、藤楓協会のほうでも、一つ今後患者の家族の生活援護の面については、何らか一つ考えてみたいというお言葉があつた。どういうような計画を持つておいでになるでしようかということをあなたに伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/80
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081・浜野規矩雄
○参考人(浜野規矩雄君) お答えいたします。藤楓協会が御承知の通り、集まりました金が二億二千八百万円、事務費は一割かかりませんでございまして、結局二億千万円近くの金が残りました。それでまあ募金のときに議論になりましたようなことも一応考えますので、山下議員のお話のような点も……一番問題になつておりますのは、療養所へ入つた方々がいろいろ作業能力の点で困るから、農繁期に人を頼んであげてそれで何と言いますか、仕事を見てあげる、こういうのが一番手つ取り早い話です。まあ生活保護法は遵奉されたものと一つ仮定いたしまして、それでまだその辺まで不足なんです。いわゆる法外援護でございますか、そういうもので計算をしてみますというと、癩療養所の患者のまあ二割がそういう人じやないかしらと、これは一つの推定でありますが、その方々に月々職人を何人雇う、早い話がまあ千五百円づつ月々みるというと、三百円の日当として五日間、若し五百円であれば三人ということになります。まあ月千五百円ぐらいで、ちよつと忙しいときもありましようから、二万円と、こうしてみますと、一万人の入所者のうち二千人に対して二万円払うと四千万円であります。そうすると、今基金が二億円というと、すぐなくなつてしまうのでございまして、何でもかんでも申訳ないのでありまして、併しその気持は私たち何とか受け継ぎまして、募金のとき、そういうことがあるのでございますから、努力してみたいと思います。先ほどちよつと申しましたが、何とか一つ無理しないでよく理解して頂いて、今皆もこうやつたら入つて頂けるだろうという調査を各県において、今言つた人たちが苦心惨胆、その通りにやつてみて、その中へやはり今のものが入つて来ている。それでそれを一つ実行してみるというと、併しその場合には、ここで問題になつておりますように、現行法であります生活扶助法を有意義に一つ扱つてもらうように、県内その他で努力してみる、それからそのあと困れば一つ、してみようじやないか、これはのほほんとやりますと非常に金がかかりますから、予備費として分けてありますが、研究しますというと、患者の家族に、療養所に行つて見舞つたり、いろいろなことをしまして一人の患者に丁度六百五十円、今私が申しました鹿児島県、宮崎県、それが六百五十円かかる。それを一年……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/81
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082・山下義信
○山下義信君 それは単価が……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/82
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083・浜野規矩雄
○参考人(浜野規矩雄君) 単価がかかるのでございます。一年ずつみますと、一人の患者について一年間に七千八、九百円、その中にいろいろなものが入つて来るわけです。ですからこれを、それだけのものを今度やつたことになりますと、私たちが先にやりますから、そのうちで一番いいものを国がおとり下さつて、そうして一つ予算化して、これが一番いいという方法でやつたらいいじやないかということになつてもらえば、私たちとしては非常に結構じやないか。それはどのくらいかかるか、患者の一人が七千九百円、大きな県、例えば大阪あたりは長島まで見に行きますから汽車賃がかかる。熊本県は地元で汽車賃が安くなります。それを、ひつくるめますれば、今言いました七千八百円も九百円も金がかかる結果が出て来る。その中に、お困りのときには、いささか足りないということになれば、若干金を預けるから呼んで見たらいい、こういうふうにしていたしておりますから、一人七百円になる。結論は今言いましたように、二割としてみますと、法外援護は、藤楓協会は数年経てば手を上げて、今皆様方御希望の、そういう国、県がなさいます。今それに代つたそういう指導、いろいろなことをして、皆さんにわからせることをやつて参りますが、そういう費用が皆目なくなつてしまうことになる。それから又もう一つ、今入つている五千名の患者さんたちは、即座に入つてもうことが一つの方法として、そうしてあと手厚い方法を皆様に講じてもらつたらどうかと思いますが、そうすると一人について四万円くらいとすれば、二億円すぐ出てしまいますから、それですつと入つてもらえば、一番簡単な藤楓協会の仕事じやないか、いろいろな方々のいろいろな御意見が出ましたが、現場におきましては理事並びに皆さんの衆知を集めまして、これも役人さんよりも主に実業実、そういう人たちが多うございます。そういう人たちのいろいろの衆知を集めて、つつましやかな努力をいたしております。そういう意味で先ほど申上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/83
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084・山下義信
○山下義信君 それで生活上の福祉について今いろいろお話のあつたように、まあサービスの面と、それから金銭というか現物支給もあるわけです。まあサービスをやることそれ自体が社会事業で、非常にまあ御事業にふさわしくいいのですけれども、派手ですね、大変派手ですね。大変、派手になるのですね、サービスをやると……。あなたのほうのおもくろみの法外援護を実施することになりますと、地方では誰にやらせることになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/84
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085・浜野規矩雄
○参考人(浜野規矩雄君) 法外援護をするとすれば、やはりその療養所長とそれから県の担当官ですね。そういう人がおればそういう人たちの意見を聞いて面倒を見てあげなければいけないのですが、これは法外援護ではとても今の皆さんの御意見をとらなければできないので、募金のときにそういう趣旨が盛られておりますので、しておりますが、いざとなればなかなか実行は困難であると私は思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/85
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086・山下義信
○山下義信君 私は只今藤楓協会の御方針としては重大なことをおつしやつたと思うのです。同時に私は賛成です。その法外援護を療養所長若しくは専任担当官に頼むということは是非願いたい。それが民生部関係でやられたのでは私は非常は弊害があつて心配だ、それで是非その方針がいいと思うのですが、今藤楓協会は最近の事業年度で事業費はどのくらい予算を持つておられるでしようか。事務費を除いて純然たる事業費はどのくらいでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/86
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087・浜野規矩雄
○参考人(浜野規矩雄君) 二億円と一応しまして、そのうち一億五千万円を基金にいたしまして、それを金利にいたしますと年額千二百万円であります。それから指導宣伝で国からの委託費が百万円で千三百万円、それから今のけました五千万円のうち二千八百万円で建物を買いまして、そうしてこれはいろいろ問題が出ておりますが、ばつと金が一遍でなくなつてしまいますから、建物を持つことで……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/87
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088・山下義信
○山下義信君 それは協会の本部ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/88
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089・浜野規矩雄
○参考人(浜野規矩雄君) いや、そうじやありません。先般も申上げましたが、私のほうでらいの治療にいい薬がでなることはなつております。研究ということは国がされればいいのでありまして、いい薬を作ることは作る努力をする、その治療的な研究と申しますか、いろいろなことを療養所とタイアップしているわけです。そういう意味の研究でございます。それを一つ是非する。それでよければ、非常に変な話でございますが、その薬が非常にいいのができますれば、その製造をしていけば、その金だけで藤楓協会は患者の福祉の面ができるのであります。同時に皆さんがた患者さんたちのお声もありますが、日本のらいが済んだら、戦争で迷惑をかけた支那、それから南方のインドその他の地帯の方々も面倒を見てあげて欲しい、そういうような薬が世界中に行くことも望ましいのでありますから、何とかいろいろな薬を研究してみて、そうしてそれができれば、そこで製造してはどうか、こういう問題がおのずから起きて参ります。その建物を、丁度手頃な建物でありましたので、それを求めまして二千八百万円、それを修理いたしまして、いろいろなことをして約千万円使いました、昨年は……、その暫定のあれと利子と、それから今の千万円、患者の慰安費として約三百万円、それから今いろいろなもので百万円贈つて来ました。そんなような関係で千万円ほど使いまして、本当の事務費は百五十万円ばかりで切上げております。今年も今申しました金利千二百万円、それから政府からの委託費百万円、この千三百万円、それで今その建物をなんとか有効に使つて、家賃でも取つて、それで一つ研究費のほうを是非なんとか援助していきたい、ちようど四千万円ほどそれだけのものを、金利だけの家賃をもらいたいというので、只今努力しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/89
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090・山下義信
○山下義信君 大体事務費を除いて純然たる事業費は一千万円ぐらい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/90
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091・浜野規矩雄
○参考人(浜野規矩雄君) 千二百万円ぐらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/91
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092・山下義信
○山下義信君 月に百万円お使いになる。その中で今の主として患者の家族の生活の援護、直接間接に今言つたようなお仕事に投ぜられるという御予算はどのくらい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/92
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093・浜野規矩雄
○参考人(浜野規矩雄君) これは昨年も百万円、今年も百万円組んであります。患者のほうの今文化費とか娯楽費に約三百万円を各療養所に配つております。昨年はそれを約束してあるものですから、百万円組みました。そういう事例は今のところありませんので、今年も百万円組んでありますが、今度先ほど申しました鹿児島、宮崎といつたような五つの県といたしまして基金五百万円を殖しまして、その中にも組んでおる。これもそういうような関係で、そういういろんなものが多くて、せつぱつまつたときに、一つそういう所長なり係官で使つてもらいたい。こういうので渡すことにいたしました。同時に本部のほうにも百万円だけとつてありまして、本当に困つたとき、若しありとすればしようじやないか、すぐ法外援助をやつてしまうと藤楓協会もつぶれてしまうことになりますので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/93
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094・山下義信
○山下義信君 よくわかりました。あなたのほうで療養所内にいろいろ文化慰安的なそういう施設面に寄与して頂くことはうすうす仄聞しております。誠に有難いと思うのです。今私が伺いましたその患者の家族に対する生活援護というふうな面については御予算もあまりないし、又これからというところで、只今のところでは別段の御計画はない。結論はそういうことになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/94
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095・浜野規矩雄
○参考人(浜野規矩雄君) 希望があつて申出があれば予算だけはとつて置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/95
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096・藤原道子
○藤原道子君 北野さんにお伺いしたいのですが、罰則の規定です。そういうことに対してどういうふうにお考えですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/96
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097・北野博一
○参考人(北野博一君) どちらの罰則でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/97
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098・藤原道子
○藤原道子君 患者の診察を拒んだとき……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/98
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099・北野博一
○参考人(北野博一君) こういう罰則を適用しなくても済むように私は県で仕事を進めたいと思うのでありますが、本当に若しもいるならば止むを得ない場合もあるかと思いますが、何ともこの点に関してはあまりはつきりしたことは申上げかねるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/99
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100・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) それでは大体質疑も尽きたようでございますから、参考人の御意見をお聞きすることはこの程度にいたしたいと思います。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/100
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101・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。
参考人の方々には大変お忙しいところを、而も酷暑の中を長時間極めて有意義な御意見を発表下さいまして、らい予防法案の審議上参考になります点が非常に多かつたと存ずるのでございます。誠に長時間有難うございました。この機会に厚くお礼申上げます。
それでは午前中の会議はこれくらいで休憩いたしまして午後二時に再開いたしたいと存じます。
午後零時五十八分休憩
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〔休憩後開会に至らなかつた〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X01819530721/101
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