1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月三十日(木曜日)
午前十時五十九分開会
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委員の異動
本日委員竹中勝男君辞任につき、その
補欠として江田三郎君を議長において
指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 堂森 芳夫君
理事
大谷 瑩潤君
常岡 一郎君
藤原 道子君
委員
榊原 亨君
中山 壽彦君
西岡 ハル君
横山 フク君
林 了君
廣瀬 久忠君
湯山 勇君
山下 義信君
有馬 英二君
衆議院議員
青柳 一郎君
政府委員
厚生省社会局長 安田 巖君
厚生省保険局長 久下 勝次君
引揚援護庁次長 田辺 繁雄君
事務局側
常任委員会専門
員 草間 引司君
常任委員会専門
員 多田 仁己君
法制局側
参 事
(第一部長) 今枝 常男君
衆議院事務局側
常任委員会専門
員 川井 章知君
衆議院法制局側
参 事
(第二部長) 鮫島 真男君
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本日の会議に付した事件
○小委員長の報告
○らい予防法案反対に関する陳情(第
三四二号)
○鹿児島県国立療養所星塚敬愛園の病
床増設等に関する請願(第九一四
号)
○群馬県国立療養所栗生楽泉園整備に
関する請願(第一二二三号)
○香川県国立療養所大島青松園病床増
設整備費助成等に関する請願(第二
四七九号)
○らい療養所改善に関する請願(第二
二八九号)
○国立らい療養所職員の定員増加に関
する請願(第二七九一号)
○国立らい療養所職員の定員増加等に
関する請願(第二八六六号)
○戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部
を改正する法律案(内閣提出、衆議
院送付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/0
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001・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 只今から厚生委員会を開会いたします。
この際お諮りいたします。日程に追加いたしまして、らいに関する小委員長から昨日審査をお願いいたしました請願及び陳情の報告を受けたいと存じますが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/1
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002・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。それでは廣瀬小委員長から御報告を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/2
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003・廣瀬久忠
○廣瀬久忠君 らいに関する小委員会における請願及び陳情につきましての審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
昨二十九日の厚生委員会におきまして小委員会に付託されました請願、陳情は七件でありまして、同日の小委員会において審議いたしましたのでございますが、そのうち陳情第二百四十二号は、らい予防法案反対に関するものであります。目下小委員会におきまして法案審議中でありますので留保をいたしました。他の請願第九百十四号、第千二百二十三号、第二千四百七十九号、第二千二百八十九号、第二千七百九十一号及び第二千八百六十六号の六件は、らい療養所の施設整備充実、病床の増設及び療養所職員の定員増加、待遇改善等に関するものでありまするので、小委員会といたしましては、議院の会議に付して内閣へ送付すべきものと決定いたしました次第でございます。以上御報告を申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/3
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004・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 只今のらいに関する小委員長報告の通り、請願及び陳情を決定することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/4
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005・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。
らいに関する小委員長報告の通り決定いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/5
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006・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/6
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007・山下義信
○山下義信君 衆議院の修正点について一、二伺いたいと思うのでありますが、御説明を受けましたのでございますが、なお不明の点伺いたいと思う。
この第一点は、遺族年金の金額を二万七千六百円に増額下すつたのであります。これは恩給法とバランスをとつて増額相成つたという御説明でございまして、私ども大変結構に思いまして、了承いたすのでございますが、この支給はいつから二万七千六百円の支給をなさろうとされるのでございましようか、その点伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/7
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008・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 只今のお尋ねの点、政府の提案よりも増額いたしたものにつきましては二十九年の一月一日より実施せんとするものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/8
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009・山下義信
○山下義信君 どういうわけで明年の一月一日からの実施になさつたのでございましようか、と申しますのは、自他周知のごとく、今回の恩給法の改正によりましては、只今参議院本会議で上程、すでに可決されようとされておりまする恩給法の改正によりますると、恩給法の増額につきましては、これは遡及して施行されるということになります。今回援護法におきまする金額の改訂にのみ限りまして明年の一月一日から支給されるということは、金額だけバランスはとられておりまするが、実際におきましては差別的なお取扱いになると考えますが如何でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/9
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010・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) お答えいたします。この点につきましては、恩給法におきまして仮定俸給の欄において、二等兵、一等兵、上等兵をすべて兵長に合わす、お尋ねの中にございましたように、それは本年の四月に遡つて支給することに改訂いたしたのでございますが、これに要する金額は約三億円でございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/10
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011・山下義信
○山下義信君 この援護法のですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/11
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012・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 恩給でございます。それはもう先生御存じのように、本年の予算には軍人恩給に要する費用を四百五十億円計上しております。そのうちから三億円の増額でございまして、何とか予算で間に合うということであつたのであります。これに関連いたしまして、政府の援護法における原案におきましては、遺族年金を二万五千二百円にいたしております。これは丁度二等兵と一等兵との中間の遺族扶助料に当るのでございます。恩給法が只今申上げましたように増額になりましたのに伴いまして、この金額をやはり兵長並みに上げるべきであるという議論が衆議院において行われました。これはまあ考えようでございまして恩給法において増額せられたから、この援護法における年金も増額すべきであるという議論も勿論立ちます。これは強い議論でございました。然るに一方におきましては、恩給法と援護法とは建前が少し違うのじやないか。殊に援護法におきまして二万五千二百円というものが、二等兵であるとか、或いは一等兵であるとか、ぴつたりと、こうきまつたものであるならば、恩給法の増額に伴つて兵長並みになるのも当然であろうけれども、これは何と言つても腰だめみたいに二万五千二百円というものをきめたのだから、関係がないのだからこのままでいいという議論もございました。然かいたしまして、この援護法を増額いたしますにつきましての必要な費用は、これを八月の一日からにいたしますると一億円以上要するのでございます。これを四月に遡りますとどうなりますか、今の計算でいたしますと二億近いものになります。結局予算の面におきまして、この援護法につきましては御存じのように本年度五十億円でございます。五十億円のうちから操作をするのには、高い増額を行うことはなかなか操作がむずかしい。実は予算の範囲内でいろいろ操作をしようとしたものでございますから、そういう議論が出て参りました。いろいろ論議を闘わしました結果、この援護法施行の八月一日からすると、一億数千万円か、何千万円かかります。となりますと、予算の範囲内で賄い切れるかどうかわからんということでございまして、結局のところ、それならば中間を取りまして一月一日から施行しよう、そういうふうにきまつた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/12
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013・山下義信
○山下義信君 先ほど御説明に恩給法のほうで金額を兵長の線に引上げた改訂に要するところの増加の予算をおよそ三億というふうな御説明がありましたが、まあ数字のことは私も調べてみなければわからんのでありますが、只今の提案者の御説明では、この援護法は恩給法の建前とは元来違うのだという御説明であつたのでありますが、私ども援護法を審議いたしまするときには、恩給法の建前を尊重するのだ、恩給法の線をはずれないようにするのだ、援護法だからもつと自由に一つやろうじやないかという御覧がいろいろあつたのでありますが、併しそれは困る。先で恩給法とのバランスがとれんようになつては困るのだから、多少恩給法では措置し得ない部分、或いは多少のそこに扱い方の違いはあつても、大体恩給法の建前を崩さんように行かなくちやならんというので、名前は援護法であつても、恩給法の改正ができるまでの措置、又恩給法と決して齟齬する建前のものではないということで、或いは受給資格の点から行きましても、その他の諸般の規定等が元来恩給法の変形的建前で来ておる。又そうでなくては当時の遺族諸君も許さなかつた。で、いわゆる国家補償的な性格ということが当時の輿論でありまして、それに順応せられまして、あの援護法が生まれ出ずるまでの経過は提案者の御承知の通りであります。従つて今日恩給法の改正によつて軌道に乗つて来る場合におきましては、援護法を手直しいたしまする場合も、私どもがすべて恩給法のその線に沿うて、逸脱しないように、相反しないようにして行かなくちやならんのが建前ではないかと思う。殊に軍属とは言いながら、その扱い方は全く軍人同様の建前をとる。ただそれが当然恩給法によつて恩給法の対象になつていない人でありまするから、援護法でこれをやろうというのです。それで彼此相通ずるものがありまするが故に、便法としては、或いは援護法をとりたいものはとれ、援護法によりたいものはよれというような、非常に融通の、気のきいた措置もとつてあるわけであります。従いまして年金額を改訂するという場合になつて来て、而も何百円という端数に至るまで恩給法の金額とぴたつと符節を合するということになりますれば、理論上、一方は四月に遡及して支給するにかかわらず、この援護法におきましては、明年の一月からでなければ支給が許されないということは、私は道理上納得しがたいように思うのであります。それでそれが財政の都合だけでは私はどうかと思いますので、道理は道理なんであります。道理は道理でありまして、出すべき建前ならば出さなくちやならない。で、金があるのかないのかということは詮議してみなければならん。本年度の予算をまだ使つていないのでありますから、その予算の中で果して賄い得られないのかどうかということであります。而も今提案者の御説明では、十分に見積つてみても二億か、内外のことと言われるのでありますが、賄い得られるかどうかということも検討してみなければならん。又よしんば、その財源の不足を来たすということならば、当然法律によつて規定せられました支出は、この法律が通りました以上は、政府も支出する義務があるのであります。次の補正予算の機会におきましてもやつてよろしいのでありまして、私は所要の財源が足りないからといつてこの不合理な措置をいたしますということは、どうしても納得をいたしがたい。軍人に関する限りは四月に遡つてこれを支給するという。四月に遡るにつきましても、恩給関係では御議論があつたろうと思いまするけれども、四月に遡る。而してこの援護法関係の軍属においては一月一日からという、そこに非常な差等をつけますことは、全くこれは不平等な、不公平な扱い方になるのではないかと思うのでありますが、その辺提案者にはどう考えられるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/13
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014・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 一々御尤もなお話でございます。衆議院におきましては、先ほどもお答え申上げましたように、援護法における遺族年金を、恩給法の遺族扶助料と合わすべきであるという議論と、援護法と恩給法とは違うのだという議論と両論ございました。結局のところ、多数の帰するところは、やはり恩給法と合わすべきであるというふうにきまつたのであります。その点を先ず御了承願いたいと思います。然かいたしまして、これをいろいろ議論もございました。現実の問題といたしまして、予算の問題が遺憾ながら非常に強い分子となりまして論議を闘わされたのでありますが、来年の四月から行うという議論もございました。勿論先生の御指摘のように、本年の四月に遡るべきであるという議論もありました。又本年のこの法律施行を目指しておりまする八月の一日から行なつたらどうかというような実際的な議論もあつたのであります。実情を申しますと、先ほどもお話いたしましたように、それらの論議が闘わされた結果、妥協点といたしまして来年の一月からということがきまつた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/14
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015・山下義信
○山下義信君 私は再度申上げますように、これが何百億、何十億という予算ならともかくも、いや何百億、何十億の予算ですらも今回は大修正が行われた。議会史あつて以来の予算の大修正が行われたのであります。僅か一億、二億の予算のために、不合理ということがわかると、而も御答弁の前段には、恩給法に出すべきだというお説で、衆議院が折角の金額を御決定に相成りまして、支給が不公平ということは私は遺憾に存ずるのであります。議論はいたしませんが、遺憾に存ずるのであります。この点私は政府の当局にお尋ねいたしますが、この遺族年金のこの援護法関係の予算におきまして、その予算関係につきましての見通しはどういう見通しを持つておられますか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/15
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016・田辺繁雄
○政府委員(田辺繁雄君) 遺族年金の二十八年度の予算額は、二十六億と相成つております。人数にいたしまして、全部で約十万人と見込んでおります。この金額が余るか余らないかという問題につきましては、これからの裁定を要するものもございまするので、今予測することが、はつきり予測して申上げることはできない状況にあるわけでございます。或いは余るかも知れませんが、その点は必らず余るというふうには我々の立場として申上げられない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/16
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017・山下義信
○山下義信君 政府の答弁非常にあいまいでありまして、本法の実施はすでにもうやつておるのであります。今年度の予算も、今までの実績によつて予算が要求してある。で、今回この改正に伴うところの予算の、ただ計算を再度やり直して二十八年度の予算が計上してある。従来の実績等から打算して、この予算において二万七千六百円に改訂せられて賄い得られるかどうか、というところの予算の見通しが私はつかないということはないと思う。極めて只今の御答弁はあいまいなんです。もう少しはつきりとした御答弁願いたいと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/17
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018・田辺繁雄
○政府委員(田辺繁雄君) 実は遺族年金の裁定につきましては、軍人のほうが、実情といたしまして先に裁定になつておりまして、軍属のほうが若干遅れている状況でございます。先ほど約十万人と申上げましたのは、実績だけで推算いたしますことが、裁定が遅れている関係から申しまして実情に即しませんので、一昨年調査いたしました戦没者調査の中から軍属の分を抽出いたしまして、内地及び沖繩の分を総計いたしました分が約十万人と相成つた次第でございます。実は現在軍属の中で、裁定しておりませんものの中に乙船員がございます。乙船員は船員保険のほうで年金を支給したものもありまするので、それとの調整を図る点から申しまして、若干この法律を今度改正いたしておりまして、船員保険の遺族年金と援護法による遺族年金の調整を図つているような点を設けた次第でございます。今後C船員に加えまして乙船員も裁定されるという状況でございます。又軍属には御承知の通り法律で戦時災害という条件がつけてございますが、戦時災害と申しますというと、普通は空襲であるとか、敵の砲撃によつて災害を受けたということを国の場合の戦時災害の解釈でとられておりますが、我々といたしましてはそれよりももう少し拡げまして、戦時に特有な、又戦争に特有ないろいろな災害、従つてそれには病気も含めておきたい。かようなものが裁定が遅れておりますので、今後その裁定が逐次進むに連れまして数字が増加すると思つております。そういう次第でございますので、十万人の範囲内の中でどれほどまででやれるか、どれほどまでにとどまるかという問題が、今直ちに正確に申上げかねるということを申上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/18
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019・山下義信
○山下義信君 政府当局の予算の過不足についての見通しははつきり言えないということについての御説明はわかります。で、結論的に申しますというと、この改正等々を見込んでの予算が組んであるわけなんでありますが、いよいよ裁定してみなければ確定数がわからんからということであるわけでありますが、結局結論的に申しますと、足らんかもわからんし、余るかもわからんということになる。それで今提案者の御説明では、予算がないからと、こういうことなんです。そういうことになりますと、私は言葉尻をつかまえるわけじやないのでありますが、予算があればやつてもよろしいと、こういうことになる。その点は提案者においても御異議はないだろうと思う。今予算がないからいたしかたなくこうして一月一日からの支給にしたのだ、現在の予算の中で金が余つて賄い得られるならば、何ぞそれを四月に遡及することを惜しむものではない、こういう御趣旨でそういうことは御異存はないと思う。やつぱりこれは一つ先になりまして、若し昭和二十八年度内の援護法関係の予算において、これを十分賄い得るだけの予算の余剰がありますれば、当然この不合理はもう一遍再検討をしてみるべきではないかと考えられますが、提案者のお考えは如何でございましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/19
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020・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 先ほども申上げましたように、恩給につきましては、四百五十億円、そのうちからの三億円でございます。この遺族年金につきましては、五十億円、まあそのうちの二十六億円のうちから引つ張り出すということでございまして、予算が余るといたしましても、やはり予算の枠の大きいほうが余りやすいというような感じがありまして、予算の枠の狭いほうがなかなか余りにくいだろうというような通常の考え方から、実は衆議院の厚生委員会におきましては、最後にこれは残された問題であります。最後の折衝におきましてこういうふうに相成つた次第でございます。只今御指摘のように、予算があるならばなお遡らしたい気持に変りはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/20
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021・山下義信
○山下義信君 大変明快な御答弁を頂きまして私は満足いたすものでございます。これは先で予算を執行してみまして、剰余がありましたら、当然この不合理は是正すべきであると存じまして、提案者のそのお心持には深く同意を表するばかりでなく、そのお気持には敬意を表する次第であります。
最後に伺いますのは、今回特に御考慮になりまして、この平和条約第十一条によつて拘禁せられたものが、その拘禁中に死亡した場合に遺族年金、弔慰金が出るということになつておるのであります。これは大変お考え下すつて本法の適用を拡張して頂いたわけなんでありますが、大体これはどういう御趣旨でお取扱いになつたのでありましようか、この御趣旨は明確にいたしておかなければならんと思いますので、一応この御趣旨を承わつておきたいと思う。私どもはこの援護法にかかわらず、恩給法にかかわらず、戦争被害者に対しまする援護給付につきましては、その死亡の原因というものに非常な厳密な制約を加えておるのである。もろもろの問題は、皆この一点に集中いたしておるのであります。或いは公務によつて死亡したと考えられるものが、実際の裁定がそうなつていなくて、或いは恩給法に洩れ、援護法に洩れいたして来ておるのであります。そういうようなことが未だにあとを絶たない、問題になつておるのでありますが、この拘禁中に死亡した場合という中にはいろいろな死亡の原因があろうかと思う。引つ括めて今回これをお取上げになりました御趣旨はどういう御趣旨でございましようか、承わつておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/21
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022・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 戦犯の実態につきましては、もう先生がた御存じの通りでございますので、私はここに述べることは必要ないと存じます。ところで、いわゆる恩給年限に達した人、即ち将校において十三年、兵隊において十二年在職をすでにした人が、戦犯として拘禁中に刑死、獄死せられた場合には、恩給法におきまして、今回の恩給法の改正におきまして、只今申上げましたように、恩給年限に達しておるものが、その後において刑死、獄死したかたにつきましては、そのかたが得られる普通恩給、これが亡くなられたのでございまするから、遺族扶助料と相成りまして、その恩給の半額が遺族に支給せられることに恩給法の今回の改正で相成つております。而して現在も拘禁中のかたがたにつきましては、御存じのように未帰還者留守家族援護法によりまして援護を受けるということに相成つております。その中間にあるもの、と言いますると、ちよつと語弊があるようでありまするが、恩給年限に達しないうちに刑死、獄死した人がここに残るわけでございます。これらのかたがたにつきましては、恩給年限の如何にかかわらず、ここにこの戦傷病者戦没者遺族等援護法におきまして、援護をする必要が痛感せられましたので、かかる修正を行なつた次第でございます。
〔委員長退席、理事大谷瑩潤君着席〕
なお只今御指摘の中にございました、これらのかたがたを公務死として取扱うべきであるというような議論が非常に闘わされました。我々の国民感情としては、或いは公務死として取扱うことが公正を得たことであろうかと存じまするが、幸いにして、最近マヌス島或いはモンテインルパのかたがたのように、関係各国の理解を得られつつあるこの際に、これを公務死として扱つて行くことは、まだまだ、もう少し十分考えたがよかろうということで、この点につきましては、今回は触れないことにいたしたので、こういう結論に相成つた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/22
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023・山下義信
○山下義信君 私はこの取扱い、その考え方が非常に不都合であると言つておるのではないのであります。国民感情の立場から申しますと、私どもといたしましてもこの種のお扱いにつきましては異議をとなえるものじやない。のみならず、当初から援護法はできるだけ広く適用して行こう、ただ軍人軍属、厳格な意味のそういうような範囲内にとどめずして、ひとしく戦争被害者に、軍人軍属に準ずる者にまでもできるだけ公平に適用して行こうじやないかという考え方は首尾一貫しておりまするので、従つて少しでも適用する理由がある場合にはこうしてお取上げになり、この適用範囲を拡大いたしますることが私どもが進んで積極的に賛同いたすわけなんであります。併しながら同情は同情、筋は筋であります。従いましてこのかたがたの拘禁中の死亡というものが、その死亡の原因にはいろいろある。併しながらここではすべてその死亡の原因を問わない。或いは刑死した場合もある、病死した人もある、或いは自殺したのも、いろいろな不幸な状態で死亡せられておる。それをすべて引つ括めてこれの適用をしようとするのです。これを或いは公務による死亡としてすべて一括して扱うということになれば、言うまでもなく、これは恩給法に属する問題なのであります。援護法におきましてこの種のヒとを取扱うということになりますると、こういうケースは他に同等に扱わなければならんケースがあるわけなんです。従つてこの戦争裁判によつて拘禁されたかたがたの問題が今、今日の問題であるからと言つて、すぐにそれに対して特別の殊遇をする。而してこれと同じようなケースにある人たちに対しては一向顧みない。時の脚光を浴びてそうして世間の視聴を集めておる問題はすぐ取上げて、少々法規の上においてはどうかと考えられるものもすぐにこうして取扱うが、併しながら多くの国民から忘れられておる病死いたしました軍人、軍属、而もそれが公務か非公務かということの裁定の非常にきわどい微妙なものですらも峻厳なる裁定を行わんとしつつある幾多の類似ケースがあるのであります。私はそれらに対しても公平に取扱うという、今後十分御考慮になるという提案者のお考えならば首尾一貫する。併しながらいつでもその時のジャーナリズムに乗り、その時の時代の、何と申しますか、世間の関心を集めるような問題には少々不平等であつても特別の待遇を与えて行くということは、政治的には、何らかの意味があるかわかりませんが、国の制度の建前といたしましては、私は十分考えて行かなければならんと思う。このことが不都合とは私は言うのじやない。こういうかたがたも皆ことごとく加えたいというのが我々の念願としておることでありますから、若しこれを恩給法によらない、或いは公務として扱えば恩給法によるべきであるが、そう扱わないで、特に援護法において我々は特別に考えてこういう規定にしたのだというならば、提案者におかれましては公平の原則に基いて、その他この種の対象に向いましても十分考慮する意思があるかないかということも、私は承わつておかなければならんと思うのであります。御見解を承わりたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/23
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024・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 御尤もなお尋ねであります。殊に病気で戦没したかたがたのその病気が公務によるものであるか、非公務によるものであるかという点につきましていろいろ遺族さんの中には悲しい立場に追い込まれておるかたがたが多数におられるということもよく存じております。この点につきましても衆議院の厚生委員会におきまして相当大きく取上げられて論議が行われたのであります。公平の原則から申しますならば、これらの戦病死者につきましても援護法において恩給法で取上げられないならば、せめて援護法において考うるべきであるということは我々も考えております。従いましてこの問題につきましても将来十分に検討いたしたいということを厚生委員会におきましても各委員が揃つて考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/24
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025・山下義信
○山下義信君 提案者の御答弁は私どもと全く同意見でありまして、私は今後とも是非そういう方面に努力いたしたいと考えるのでありますが、なおこの際政府当局に私は伺つておきますが、今回いわゆるC船員というものの適用について御考慮になつた。従来の懸案が解決せられまして私ども非常に結構に思うのでありますが、なお関連いたしまして、これはその当時大変御無理を申上げたわけであるのでありますが、提案者等におきましても非常に心配下すつて、第三十四条の第二項の御規定を給つたのでありますが、この今回のC船員の扱い方その他に関連いたしまして、政府はこの第三十四条の第二項のこれらの対象に対しまする年金その他について研究せられたことがありますかどうか。どういう考えを持つておられるかということは承わりません。その検討をせられたことがありますかどうか、又研究してみるお考えがありますかどうかということを私はこの際政府に伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/25
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026・田辺繁雄
○政府委員(田辺繁雄君) 御質問の御趣旨は、三十四条に規定せられておる戦争犠牲者のかたがたをも軍人、軍属と同様に年金支給の対象とすることについて研究したことがあるか、こういう御質問と承わつたのでございます。これはこの援護法を立案する当初から我々としては研究したことであります。いろいろ研究の結果、昨年軍人、軍属の範囲を一定の範囲にきめまして提案したような次第であります。而して昨年国会におきまして衆参両院においてこの問題が大きく取上げられまして、又それが参議院において一時金、弔慰金の支給対象となつたということも十分その御趣旨を了承しておるわけでございます。その後我々といたしましては軍人、軍属の範囲を拡張するかどうか、拡張するとすればどの範囲にとどむべきかという点につきまして慎重に検討を加えまして、そこでこの際C船員だけを取上げましたのは、C船員と他の民間の徴用工との間には一線を画し得るのではないかと、こう考えたわけでございます。詳しくは説明申上げませんが、その船舶運営会の性格、或いは船員が船舶運営会に所属するに至つたいろいろの法律的な経緯、C船員の任務とか、C船員と乙船員との関係等を総合的に考えますときに、C船員は軍人軍属と同様に取扱うべきであるという結論に到達いたしたわけであります。民間の徴用工であるとか、或いは学徒であるとか、或いはその他三十四条に上げられてありまするもろもろのかたにつきましては、やはり軍人軍属とは多少性質を異にするのではなかろうか。戦時中における取扱いは勿論のこと、その後におけるところのいろいろの制度上におきましても軍人、軍属と一線を画することが理論的にも可能であり、又実際問題としてもそれが適当なのではないか、こう考えまして今回軍人、軍属の対象に加えることをいたさなかつた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/26
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027・山下義信
○山下義信君 私は只今の政府の見解には同意いたしかねるのであります。C船員のお取扱い方につきましては異議ない、御尤もであります。私どもも賛成であります。これは前回よく論ぜられまして実は洩れたといいますか、その点が研究が尽されていませんで残つたということでありましたので、今回これが取上げられましたことは当然でありまして私ども賛成するのであります。関連いたしまして私は第三十四条の対象者につきましても十分一つ検討してみる必要があると思うのであります。私は船と陸と差はないと思う。船なれば非常に軍人に似ておる、陸なれば軍人、軍属に似てないということは言い得られないと思う。船舶運営会の性格も、或いは陸上の工場の、軍管理工場の扱い方も深く検討して実態その他いろいろ関係法規等を検討して行くならば余り本質的な差はないのであります。ただ犠牲状態が、この損害を受けました状態がはつきりしておるか、或いは又対象者が多いか少いかでありまして、私は非常に類似しておると思う。余りかけ離れてその差違が私は著しくないという感じがするのであります。この点は提案者におかれましても十分御検討下さつたことであろうと思いますが、これは私どもといたしましても機会があるごとに、未だ援護法のその適用そのものの裁定すらも全部終了したという段階ではございませんので、今日直ちに私はこの問題の解決を求むる意思はございませんけれども、すべて一般国民の中にも洩れのないという趣旨の下に立法されましたこれらの対象者につきましても、将来機会あるごとに十分御検討下さるお考えがありますかどうかということを提案者に私は伺つておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/27
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028・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 率直に申上げますると、今回の衆議院の厚生委員会におきましてはこの論議は実は行われませんでした。併し先生御指摘のように、個人の意見としては私は思つております。十分検討を要すべきことであると、こう思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/28
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029・山下義信
○山下義信君 私の質疑は終りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/29
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030・常岡一郎
○常岡一郎君 只今の山下委員の御発言の中にありましたように、時代の脚光を浴びたものが非常に優遇される道に出ておりますが、時すでに過ぎて忘れられた人々の中に気の毒な人があるというのに非常に強く打たれたのであります。その点でお尋ね申上げたいのですが、満州軍に従軍したり、又満州国の官吏になつたり、満州国の警察官などになりまして、日本軍人と行動を共にして戦死も同じ状態で亡くなられた人、又ソ連と単独で交戦して死亡した人などが随分あると思いますが、こういう人に対して政府のほうは大体概略でいいのですが、数はわかつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/30
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031・田辺繁雄
○政府委員(田辺繁雄君) 只今のお尋ねの数字でございまするが、的確な数字は今のところ持つておらないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/31
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032・常岡一郎
○常岡一郎君 これらの人々は何しろああいう際でありましたからこの数字はわかりかねると思いますが、当然公務死として援護法による遺族年金を支給すべき範囲に入るべきではなかろうかということを考えますが、その点はどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/32
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033・田辺繁雄
○政府委員(田辺繁雄君) 戦没者遺族援護法の最初からの建前が恩給法の対象である軍人に一応限定する。従つてその点については先ほど山下委員のお話の通り、軍人恩給が復活するまでの間、暫定的な措置として援護法によつて年金、弔慰金を支給する、こういうような建前をとつたわけでございます。それ以外のかたがたにつきましては、我々は戦地における雇用人たる軍属に範囲を限定いたしたのでございます。それは内地における雇用人は終戦まぎわにおきまして共済組合、当時の陸軍共済組合或いは海軍共済組合の制度を借りまして、空襲等によりまして戦死されました雇用人に対しまして年金が支給される途が開かれたのでございます。これは御承知の通りの、主として当時の陸海軍工廠等に勤務しておりました雇用人軍属の勤務を援護したい、かような精神からそういう立法がなされたわけでございます。これはたしか陸海軍の共済組合の規則を改正してそういうことをされたわけでございます。これは今日大蔵省所管の旧令による共済組合におきまして旧令共済組合からの債務を引継いだ形において今日やつておるのであります。而して当時戦地における雇用人につきましても理論上当然にそういう恩典を及ぼすべきであつたのでありますが、これは共済組合というものの性質上戦地にまで対象を拡張することができませんでしたので、別途御当局において研究手続を進めておられたのが間に合わずに終戦になつてしまつたという経緯があるのであります。これは当時当然そういう恩典を与うべくして与え得なかつたかたがたであつたと考えられるわけでありますが、援護法制定に際しましては、恩給法対象の軍人の場合と同様にこれを対象に加えたわけでございます。御指摘のように、この対象以外、軍需工場に徴用せられたかたがたであるとか、或いは学徒動員であるとか、或いは只今御指摘がありましたようないろいろの対象のかたがたがありまするが、これをどの範囲にとどめたらいいかということは非常にむずかしい問題でございます。内地の一般戦災によつて死亡されたかたがたの問題もあり、その間どこで線を引くかということが非常にむずかしい問題でございますので、慎重に我々が従来とも検討を加えておるわけでございます。一応我々といたしましては、軍人恩給その他過去において当然国家補償の精神に基いて措置すべきであつたかたがた、又措置されておつたかたがた、こういうかたに限定いたしましてこの援護法の対象をきめておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/33
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034・常岡一郎
○常岡一郎君 もう一点お尋ねいたしますが、朝鮮人で軍に従軍いたしまして傷を受けました人が約二十人ぐらいあると聞いておりますがその人たちは外国人なるがために、当時は日本国民としてですけれども、只今は外国人の意味で恩給法の改正にはすでに恩典に浴するという途はないものでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/34
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035・田辺繁雄
○政府委員(田辺繁雄君) 講和条約が成立するまでは朝鮮のかたがたでも日本の国籍を一応持つておられましたので、恩給法上増加恩給の対象として少額ながら増加恩給を受けておられたのでありますが、講和発効と同時に日本国籍を離脱されましたので、恩給法では受給権を失うこととなつておるわけでございます。その点は実情誠にお気の毒でございまして、我々といたしましても何とかこういうかたがたにして上げたいと思いまして、若干恩給審議会或いは恩給当局にも御相談申上げたことがあるわけであります。ただ戦傷病者或いは傷痍軍人以外のかたで朝鮮人のかたであつて、恩給法上のむずかしい問題があるそうでありまして、これらと睨み合せて検討しなければならない、こういうお話でございました。ただこれはひとり朝鮮人だけでなく、台湾のかたもおられます。内地におられるそういう人以外に、現に先方の地におられる御遺族のかたがたおられるわけであります。こういつたかたがたに対しましてどうして酬いるかという問題につきましてはいろいろ賠償との関係もありますので、目下この点については日韓会談も開かれておるという経緯もございますので、総合的に外務省の立場、或いは大蔵省の立場、或いは厚生省の援護という立場から関係がありますので、今後連絡をとりながら何とかして上げたいというように考えております。日韓会談の経緯乃至結果とも睨み合せまして適当な措置がとれるように我々としても努力いたしたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/35
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036・常岡一郎
○常岡一郎君 恩典に浴することができますように一つお骨折り願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/36
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037・湯山勇
○湯山勇君 陸海軍の共済の旧令によつてはどれくらい出しておつたか、おわかりでしたら……金額です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/37
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038・榊原亨
○榊原亨君 議事進行について。議員のかたの御意見に対する当局の御答弁が要領よく、簡潔に、且つ御親切になさることをお願い申上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/38
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039・田辺繁雄
○政府委員(田辺繁雄君) 只今詳細な資料を持つて来ておりませんが、旧令による共済組合の殉職年金と申しておりますが、殉職年金の額は亡くなられたかたの死亡当時の俸給に比例しておると思います。平均をとりますと約年額三万五千円程度ではなかつたかと記憶いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/39
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040・湯山勇
○湯山勇君 次に父母、祖父母が婚姻した場合、従来は対象にならなかつた。これが婚姻しておつたのが離婚した場合は対象になるようになつておつたのでしようか、どうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/40
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041・田辺繁雄
○政府委員(田辺繁雄君) その場合は受給権は失わないことになつておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/41
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042・湯山勇
○湯山勇君 続いて、これは提案者のほうにお尋ねいたします。あの修正案についてでございます。今回の修正におきまして、父母、祖父母が氏を改めないで婚姻したときは失格しないというような御改正があつたわけですが、この氏を改めないということに限定された理由はどういうところにおありになるのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/42
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043・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 私は民法の親族法によく通じておらないのでございますが、私どもの気持といたしましては、もうすでに御存じのように、ここに戦没者があつてそれに父母があつた。母が亡くなつた。そうしますと、その戦没者と同じ家におつた父が後添いをもらいます際には、戦没者と同じ家におつた父も援護を受ける権利を失うという規定であつたのであります。同じ家に残る父……。逆の場合もございます、父が亡くなつて母だけ残る場合もございますが、同じ家に残つた母、それについてはこの援護法の適用を受けさせようという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/43
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044・湯山勇
○湯山勇君 これは私が参議院のほうの法制関係でもお尋ねしたのですが、民事局の第二課のほうで説明を聞きますと、姓を変える変えないということは婚姻のときに当事者の意思によるわけでございまして、双方が婚姻届けのときにこちらを使わうということになりさえすれば、それはどちらでも使つていい。而もそのことによつて差別待遇を受けるということは、大きく言えば憲法の精神に反すると、つまり男女同権の原則に反すると、こういう御説明があつたわけです。これがもつと申上げれば、離婚したときには今のように対象になるということですから、現在失格しているものが一応離婚して、そうして又姓を変えないというような婚姻の仕方をし直すという手続さえ経れば自動的に対象になるという矛盾もあるわけです。そうして又もつと申せば、実質的には婚姻しておりながら内縁のような関係でおれば両方もらえるからというような関係で、両方と言いますか、これがもらえるからというので、そういう不明朗なと言いますか、正しくない婚姻を奨める道にもなると思う。これは父母、祖父母というのは皆年をとつたかたが多いわけなので、仮にこういうような規定を設けたところで結局今のようなことを知つて自動手続をとりさえすれば自動的に対象になるわけでございまして、予算の面から考慮するということも考えられないことだし、かたがた今言つたような男女同権の原則、それから憲法の条文に反するというわけではありませんが、あの定められた趣旨、そうして民法において姓は双方合意の上でどちらかを任意に届けてそのことがその二人の姓になると、こういう趣旨との関連もありますので、この点について更に御考慮願うとか、或いは別に何か特にお考えがございますれば御説明頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/44
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045・青柳一郎
○衆議院議員(青柳一郎君) 只今の姓と氏との関係につきましては実は私よく存じません。従いまして法制局方面を呼んでお答えいたさせようと存じます。男女平等の問題につきましては、これはいろいろむずかしい議論があると思うのでございますが、私どもの考えは、只今申上げましたように、父だけ残つておつて後添いをもらつたときもその父に与える。同じように母だけ残つておつてその後夫たる人を入夫婚姻する場合には母だけ与えると、そういうふうな意味で男女平等の思想はこれによつて崩れておらんと、こういうように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/45
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046・湯山勇
○湯山勇君 今おつしやつた点においてはそういうことは勿論あるわけですけれども、もつと大きい立場で、その狭いところだけ見ればおつしやる通りなんです。併し今のように、そのことは実際はおつしやるようなふうにならないで、婚姻したものが両方取る途があるわけです、今申上げましたように姓を変えなければ。仮に両方とも該当者である場合に、そういう途もあるわけだし、それから又かたがた併給ということもお認めになつたということはこれもこの制度が単に生活を保障するというのに十分な額でないということの一つの証拠になると思うのです。そういう点から併せまして如何にも改正はよくなつておることは認めますけれども、この点だけではよくなつておりますけれども、大きい日本の民主化の線に沿つて考えた場合、憲法の精神に沿つて考えた場合には大きい問題が残ると思いますので、その点についてこれは実際予算とも関係ない問題なんです。手続だけの問題なんですから、御考慮願える余地はございませんでしようか。今の問い方が悪かつたのでお答えできにくいと思います。近い将来において改正の御意図は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/46
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047・大谷瑩潤
○理事(大谷瑩潤君) 今法制局のほうから答弁するそうでございますから、ちよつとお待ちになつて、そのほかのことについて御質疑がありましたら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/47
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048・湯山勇
○湯山勇君 私この法案につきましては、それだけお聞きいたしておきたいと思つておりましたので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/48
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049・大谷瑩潤
○理事(大谷瑩潤君) 他に御質疑ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/49
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050・山下義信
○山下義信君 先ほど湯山委員の質問に、婚姻しておつた父母が離婚しておつても氏を改めていなければもらえるのだという、受給権があるかという御質問があつた。ところが政府はそれは受給権があるという、こういう答弁があつた。私は奇異に感じたのです。それでこれは婚姻をした場合を認めておつて、その婚姻をした場合を認めるのに氏に条件をつけておるという後段の湯山君の質問が出ていたのですが、前段に離婚の場合の質問が出たときに、離婚しておつても依然として氏を称しておれば受給権があるということは、一体どこに筋を引いて、仮に受給権を認めるとしても、その離婚が本法施行前に離婚しておつてもなお且つその権利を認めるかどうかということですね。その点について私は疑義があるので、当局は明快に答弁しておいて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/50
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051・田辺繁雄
○政府委員(田辺繁雄君) 私は先ほど受給権は失わないというふうにお答えしたのでありますが、戦没者が死亡当時戦没者と生計を共にしておつた父母でございまするならば援護法上権利が発生するわけでございます。その後父母が離婚いたしましても権利は失わないということを申上げたわけでございます。戦死当時においてすでに離婚しておつた場合におきましては、恐らくは父か母かどちらかは戦死者と生計を同一にしておつたとは言えないと思うのでございますから、生計を一にしておらなければこの場合は権利は発生しないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/51
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052・湯山勇
○湯山勇君 前の質問に対するお答えと違つて来たわけです。私のお尋ねするのは、婚姻によつて、つまり受給資格を持つておる者が婚姻によつて受給資格を失つた。その者が今度は受給資格を失つた条件である婚姻という条件が解消した場合には再び受ける権利が復活するか、こういう質問なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/52
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053・田辺繁雄
○政府委員(田辺繁雄君) 大抵現在の法律では一旦権利を失いました場合におきましては復活するということがないわけであります。あと添いをもらつてそうして権利を失つた。あと添いと離婚したからといつて権利が復活するということはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/53
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054・湯山勇
○湯山勇君 そういうふうな扱いがあるとすればますますこの第一項の修正点が不備になつて来るわけです。つまり今までの人はそういうことを知つておれば、当然姓は任意にできることなんで、自由なんですから変える変えないは。だからこういうことがあれば当然姓を変えないで済んだわけです。それがこういうのが出たために、そういう人もそういうことになるということは非常にそこに不合理が今度はできて来る。こういうことにもなると思うのですが、如何でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/54
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055・大谷瑩潤
○理事(大谷瑩潤君) 先の御質問に対する今枝法制局第一部長が参りましたから、どうぞもう一度御質問を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/55
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056・湯山勇
○湯山勇君 それではお尋ね申上げます。この修正点の説明の第一項の遺族のうち祖父又は祖母が氏を改めないで婚姻したときは遺族年金の失格及び失権の事由としないという点があるわけです。この中で、氏を改めないでという条件でございますが、氏を改める改めないということは、新らしい民法によれば、婚姻のときに双方が協議してどちらを使うということを決定して、それを使うということは自由であるということになつておつて、その姓をどのようにきめるかということは何らその人の身分とか或いはそのほかのことに関しての差別待遇にはならない変える変えないということは。こういうことを私は承つておるわけです。ところが今回においてはその氏を改めるということが年金を受けることができるかできないかの非常に大きな差別待遇の要素になる。このことは、今の民法の精神、更に大きく言えば憲法の精神でございますね、それと矛盾して来る。こういうことになるのではないかということをお尋ねしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/56
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057・今枝常男
○法制局参事(今枝常男君) 氏によつて扱いを異にしますことが差別待遇になりはしないかどうかということの御疑問のようでございますが、差別待遇になるかどうかということは、結局その差別の基礎にしておることと、それからこの法で扱われておる事柄との間に合理的な関連なしに或る事項だけをとらえて差別すれば、これは法律の精神から差別待遇ということになるのではないかと思いますが、氏と合理的な何らかの繋がりのあることについて、氏を標準として何らかの差別扱いをしたというような場合でしたら、これは仰せのように民法或いは更に憲法の精神から言つても差別待遇には必ずしもならないと考えていいのじやないか、一般的にはこのように考えられるのだと思うのであります。それで氏を変えた場合には年金の資格を失わせる、こういうようなことがそれでは差別待遇になるかどうかでございますが、今回のこの年金というものが戦傷病者との或る関連を持つた、或る特定の繋がりを持つた者に対して与える年金である、こういうことから考えますと、その繋がりを判断する一つの基準として、戦傷病者の曾ての氏をそのまま持つておるのか、或いはそれと違つたものにするかということは、民法上は自由な選択に任されてはおりましようけれども、それにもかかわらず、戦傷病者とは別個の或る氏に変つたということの中には、やはりその戦傷病者との繋がりを何らかの意味において変えたということになるのではないか。つまり氏の選択は自由に任されておりましても、あえて氏を変えるというところに戦傷病者との間の撃がりを薄くしたというようなことが社会観念上考えられるのではないか、こういう考えが若し成立ちますならば、氏を変えたことによつて資格を失わせますということは、本来年金が戦傷病者との間の特定な関係に着眼して与えられる性質のものでありますからして、それに対する一つの判断基準として氏を持つて来るということは必ずしも差別待遇にならない、こう考える余地があるのではないかと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/57
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058・湯山勇
○湯山勇君 今の御説明は非常にあいまいなんです。ああいうふうに仮定仮定を設けられて、勿論法理論の解釈ですから、そういう面もあるかと思いますけれども、端的におつしやつて頂きたいのです。つまりただ氏を変えるということが今のような現在の日本の情勢におきまして、そういうふうな、一々利害得失を判断して氏を変えているかどうか。遺家族である母親というものはとにかく生活力の弱い者なんです。これが婚姻する場合には、やはり旧来の習慣に従うと思うのです。今あなたがおつしやつたように、一々これはこうすればこうだというような、そういうことではなくて、それが実情だと思うのです。
〔理事大谷瑩潤君退席、委員長着席〕
そしてそういう実情を破つて行こう、こういうことが民法の趣旨であり、又憲法の趣旨なんで、そう考えて行けば当然現実の事態に立つて見ましても、或いは又この憲法の趣旨、或いは又民法の趣旨から言つても、そういう扱いをするということがやはり今言つたような趣旨に反して来るという判断は、これは当然できると思うのですが、如何でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/58
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059・今枝常男
○法制局参事(今枝常男君) 事柄が法律上の問題といたしましては、いずれにしても限界点にある事柄であろうということは申上げられるのじやないかと思います。従いまして先ほど申上げましたことも、あいまいとおつしやいましたのも、そういうことから来るのでございますけれども、併しやはりこの氏を変えないでいるかどうかということが、この年金の基礎になつておりますところの戦傷病者との繋がりの関係を従来のままで保つているのか、或いはそこに何らかの意味の稀薄なものができて来たかということにおいては、稀薄なものになつて来ておるということが言えるのじやないかと思います。従つてそういう意味から申しまして、これを一つの区別の基準にして年金資格をきめることが必ずしも差別待遇にはならないのだという余地があるのであろう、こういうふうに考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/59
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060・湯山勇
○湯山勇君 専門家のあなたがそういうことをおつしやるのは実に私心外です。つまり旧憲法の精神と新らしいものと混同されてお答えになつておるのじやないかと思います。そういうこと、今あなたのおつしやつたことをなくするためにできた民法であり憲法である。そうでなければ夫婦が結婚したときにどちらの牲を任意に名乗つてもいいというような法律は出て来ない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/60
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061・今枝常男
○法制局参事(今枝常男君) 御指摘の点はその通りと思います。ただその点は、新らしい夫婦関係を設定するについては自由意思によつて氏などに拘束されないようにという趣旨でできておるのが新らしい民法の制度であり、只今お話の点であろうと思います。それからここで問題になつておりますのは、そうではなくて、古い関係において、与えられる一つの権利として、古い関係との繋がりがどの程度に現存しているかの問題でありまして、そこに少し問題の違つた点があるのではないかというふうに考えるのでございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/61
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062・湯山勇
○湯山勇君 この趣旨はあなたおつしやつたように繋がりとか何とかという問題ではなしに、姓を変えた場合には当然生活上の一方において援助が得られるだろうというような推定に立つておる法だと思うのです。そこであなたがおつしやつたような意味合いで行けば、当然新らしい民法、憲法の趣旨とは変つて来るわけなんで、そういうものではなくて、これはやはり援護法なんですから、援護という立場に立つて考えた場合には、おつしやるような解釈は成立しないと思うのですが、如何でしようか、実質がそこにあるということなんですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/62
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063・今枝常男
○法制局参事(今枝常男君) これは援護金が今仰せのように純粋に現在の状態に立つての援護であるというだけの関係であるということになりますれば、関係の性質を持つものであるということになりますれば、お話のようなことになるかと思います。そこでこの法律で与えられますところの援護金の性質が本来どういうものであるかということによつて事が変つて行くのではないかと思いますが、そこで従来との関係ということは全然無視されて、純粋に現状だけに立つての援護だという性質のものとして考えることができるかどうかということにかかるのじやないかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/63
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064・湯山勇
○湯山勇君 折角おいで願つたのですけれども、どうもはつきりしないのですが、もう少し、おつしやろうとすることもわかるのですけれども、いざ大事なところへ来るとぽつとぼけるのです。非常に失礼な申分ですけれども、若しもつと端的に、これは憲法、民法の精神から言つて工合が悪いなら悪い、これでよろしいならよろしいときちつと、この法の精神も御存じだろうと思いますし、従来の適用も御存じなんですから、而も今度は併給というようなことを認められておるということなどの関連もあるし、一つ明快な、さつき榊原先生もそういう意味をおつしやつたわけなんで、折角会期ぎりぎりになつておるわけですから、こういうことで又別な人に来て頂くというようなこともしないように、別にそのことが遠慮しておつしやつたからどうとか、おつしやらないからどうとかいうことではありませんから、どうか一つ端的に簡潔に一つお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/64
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065・今枝常男
○法制局参事(今枝常男君) 申上げた結果があいまいのように響きましたとすれば誠に恐縮ですが、実は強いてあいまいに申上げた趣旨でもございませんが、一般的にこの氏というものを取上げて、理由なしにそれを法律上の扱いで区別する基準にいたしますれば、これは確かに平等原則なり、個人尊重の原則なりに反すると思います。ただ先ほど来申しますように、今回の援護金の性質が何であるか、過去との関係を引離して、もう純然たる、過去との関係はないものとして考えていいものかどうかということについて私自身が実は必ずしも断定しかねておるものですからそういうことになるのでございます。過去との関係は全然離れたものだと言い切つてしまうことができないのじやないか、従つてこの性質なんでございますが、だから、これは過去との関係を全然離れて与えるものだということが言い切つてしまえるならばここの問題としてはこれは根本原則に反することになつて来るのじやないかと、こういうふうに思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/65
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066・山下義信
○山下義信君 議事進行について。私はこの際湯山委員の質疑応答に関連して一言せざるを得ない感を持つのであります。それは私どもの責任でありまして、前回この援護法を審議いたしますときにこの氏の問題がすでに原案に、前の援護法の中にあります。今回これが父母、祖父母に適用せられて、今問題にされたのでありますが、修正以前のすでにこの援護法自体にも弔慰金の受給資格の中に氏の問題がありまして、当時今湯山委員の御質疑の通りに我々論議をしたのであります。これを氏を入れて参りましたのは、その経緯を私は申しませんが、或いは提案者が御説明になるかと思つて待つておつたのですが、それで氏を入れて来たのは衆議院である。それで氏を入れるということを拒否したのは、拒否する考え方が参議院であります。従つて率直に申しますというと、旧来の家族制度をここへ持ち込むということは、今湯山委員の指摘されましたような、新らしい民法の精神、新憲法の精神からして矛盾するではないかという議論を十分展開した次第でございます。それで従つて衆議院側が氏を入れて来ましたについて、その理由の説明には衆議院の法制局が参りまして陳弁これ努めた。湯山委員の質問に答えたのは、これは参議院の法制部長。参議院の法制局は我々の見解でありますから、氏を入れるのが不合理ではないかという見解に実は立つておる。今衆議院側の修正について参議院側の法制部長が答弁に立つのは実はおかしいのでありまして、どういうわけで答弁に立つておられるのか、今枝部長はいつ衆議院のほうへ転任されたのかわからないが、(笑声)衆議院の部長が来るのだろうと思つて待つておつたところが見えたのが参議院の部長なんです。従つてこの議論は今湯山委員の指摘された通りでありまして、当時修正された衆議院側は答弁に詰つた。結局問題はその当時弔慰金の支給、いわゆる燈明料の支給でありまして、遺族年金関係でなくして、主としてお燈明料の弔慰金の受給であるので、少しでも縁故のものにやろうじやないかという趣旨であつて、それに他へ結婚したものを認めんということになれば、範囲内が非常にせばまるので、少しでも縁故のある者に及ぼす趣旨において、私は何も衆議院の代弁をするのじやないですが、同一の氏を称しておるということは、依然として元の、亡くなつたかたのその氏を継承するというところに一抹愛情の恋々たるものが残つておるものと認めて、本人と非常に緊密な関係にあるということを認めて、そこに弔慰金を持つて行つて、そうして亡くなつた人の祭祀を、お燈明を欠かさんようにするという趣旨で範囲を広く適用しようじやないかというのが衆議院側の御趣旨であつた。情においては御尤もであるけれども、理においては今湯山委員の御指摘の通りでありまして、実にこれは論議紛糾いたしたのでありますが、強つて衆議院側の御懇請……、当時援護法をめぐつて衆参両院が幾多の双方に条件を出し合つて、両院が妥協して一致の成案を得るという段階にありましたものですから、只今の御指摘のように、問題そのものがはつきりと法理論上解決がついて、援護法の中にそれが取入れられたのではなくして、問題を、実はあと味を残しつつ現在の援護法の成立を見たというのでありまして、当時我々といたしましても問題にいたしたのでありますが、今回更にこの父母、祖父母にこの氏の問題を適用せられるということになりまして、今湯山委員が御指摘になりました問題になつたのであります。前回我々が決して問題にしなかつたのじやないということだけをこの際申上げておいて、この問題をどう取扱われるかということを委員会でおきめ願いたい。これを解決して行くということになると、実に重大な問題と私は思うのでありますが、お取扱いをどうなさるかということを一つ御協議下さつて議事の進行を一つお進め願いたいと、こう思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/66
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067・湯山勇
○湯山勇君 私がこのことを特に御質問申上げるのは、今山下さんのおつしやつたような意味も勿論ですが、それと同時にこの法律には過去において失つたものが復活するということがついておるのです。一時金ならば忍べるというわけには行きませんけれども、一時金も理論的には同じことなんですけれども、特に今回慎重にしなければならないのは、この復活の認められることにあると思うのです。こういうことから見ますと、これは極めて不合理な要素をたくさん含んでおるわけで、今お話のありましたように、もつと明確に一つして頂くようにお願いいたします、つまり第七項によりまして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/67
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068・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 実は今衆議院の法制局から来ることになつておるそうです。私は今ちよつと本会議に行つておつたものですから……、そういうことで取りあえず参議院の法制局のほうから来られたのだそうです。私ちよつと今留守にしていましたものですから……。どういうふうに扱いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/68
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069・湯山勇
○湯山勇君 保留さして頂きたいと思いますが、お見えになるまで。ちよつとほかのほうで呼び出しに来ておりますものですから、失礼ですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/69
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070・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) あなたはあとから又御質問をおやりになるのですか、このことについて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/70
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071・湯山勇
○湯山勇君 保留さして頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/71
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072・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) どういうことにいたしましようか、そういうことになればね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/72
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073・山下義信
○山下義信君 私は異議ございません。湯山委員の質問を保留されることに異議ございませんが、皆さん御了承下さるならば、昨日の議事の進行の申合せは、私の最初の質疑が時間をとりまして恐縮しておつたのでありますが、今朝はこの援護法の御採決を願うという申合せになつておつた。多少時間的のズレが出ることを同僚委員の各位が御了承ならば私どもは湯山委員の質疑の保留に異議はない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/73
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074・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 如何でございましような。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/74
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075・榊原亨
○榊原亨君 今お聞きすると、この問題は非常に重大なことだと思うのです。でございますから、申合せがあつたのでありましようが、参議院の、衆議院の法制局のかたの御答弁があるまで保留して頂いて、そうして又別の法案をお願いするということでは御異議ありませんでしようか。(「異議なし」と」呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/75
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076・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 湯山さん、今来られましたからどうですか。何か今のを願えませんですか……。それじや今のを取消しまして、只今鮫島衆議院法制局第二部長が答弁に参つておられますから、湯山さん御質疑を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/76
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077・湯山勇
○湯山勇君 重ねて御質問申上げます。恐らく衆議院でも問題になつたと思いますので、修正の重要な一点である父母或いは祖父母が氏を改めないで婚姻をしたときは遺族年金を受けることができるというこの修正でございますが、この氏を改める、改めないということは婚姻者双方の意思によつて決定することであつて、このことによつて何ら差別待遇は受けないというのが民法、憲法の精神である、こういうふうに私は承つております。それを特にこのようにして氏を改めた者を不利な取扱いをするということはどういう根拠に立つておられるのか、御説明を頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/77
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078・鮫島真男
○衆議院法制局参事(鮫島真男君) お答えいたします。このたび只今お尋ねのような点につきまして修正を加えましたその直接の動機といたしましては、恩給法の一部改正法律案がやはり今国会に提案され米のでございまするが、その中で今の氏を改めた場合と改めない場合とによつてその効果を異にするような規定が設けられましたので、それに順応する意味でこちらの法にもそういうような修正を加えたのでございます。それから法律論といたしましては、今御質問のような趣旨は誠に私もよくその点は了解できるのでございますが、ただその新憲法になりました以後におきまする日本の一般の習慣と言いますか、或いは実際に行われておりますることが、やはり氏を改めた場合と改めない場合とでは、そこにおのずから、何と言いますか、ニュアンスを異にするというのがやはり現在の日本の一般のやり方ではないかという点がございまして、そういう点から申しまして法律的にも一応説明ができるのじやないかと、そういう考えからこの修正を加えたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/78
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079・湯山勇
○湯山勇君 その答弁は全く逆だと思うのです。むしろ新憲法ができてから、だから区別してはならないのであつて、新憲法の趣旨、民法の趣旨というのは、そういうことを打破するために作られたものなんです。新憲法以前にそういう事態が起つておるならばこれは問題は別です。併しながら新憲法以後なんだから私が問題にしておるわけなので、その点大変逆な御説明があつたわけですが、如何でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/79
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080・鮫島真男
○衆議院法制局参事(鮫島真男君) 今お尋ねの通りだと思いますが、ただ日本の現状におきまして、やはり先ほども申上げたことを繰返すことになりますけれども、氏を改める場合と改めない場合とでは、やはりその人の周囲にありますところの親族或いは一般から見ましても、やはりその両者の場合に対する一般感情が異なるというのが現実の問題であるように思われますので、その現実の状態をとらえて立法するということは一応是認されるのじやないかと、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/80
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081・湯山勇
○湯山勇君 私は常識的なことをお伺いしておるのではないのです。この法律もやはり常識的な観点から出されておる。私が特に専門家においで願つた理由は、憲法、民法の精神に反するか反しないかという法的な御見解を承るためにおいで願つたわけです。厳密に法的に御説明を頂けばいいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/81
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082・鮫島真男
○衆議院法制局参事(鮫島真男君) 言葉を返すようで恐縮なんでございますが、法律も現実の生活を離れての法律ではないと思いまするので、やはり法律を解釈するにつきましては、現実の生活なり、現実の事態を基礎にして考えるというのでいいのじやないかというように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/82
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083・湯山勇
○湯山勇君 今この法について言つておるのではなくて、すでにできておる民法、或いはもつと大きい審法です。そのできておるものと照らしてどうなのかということをお聞きしておるので、この法律に入れるとか、そういう考え方をするとかしないとか、そういうことではないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/83
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084・鮫島真男
○衆議院法制局参事(鮫島真男君) いや、私が只今申上げましたのも、憲法に男女の平等とか、その他法の下における平等とかございまするが、そういう憲法の規定を解釈する場合におきまして、その現実の事態を基礎にして解釈することは差支えないだろう、こういう意味を申上げておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/84
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085・湯山勇
○湯山勇君 それでは現実の事態がやはり実質において男女平等を認めていない、だから憲法も男女平等を認めていないのだ、こういうことがあなたの論法からは言えるということになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/85
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086・鮫島真男
○衆議院法制局参事(鮫島真男君) 男女平等についての現実の事態については私は今申上げておるのではございませんで、氏の問題についての現実の状態を申上げたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/86
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087・湯山勇
○湯山勇君 答弁に甚だ不満足なんですが、私これはもう見解をお聞きすることはよろしうございますから、一つ参議院の厚生委員会として只今までの御意見は御意見として承つて御決定頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/87
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088・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 他に御質疑ございませんですか。ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/88
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089・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 速記を始めて。それでは暫らく休憩いたします。
午後零時三十六分休憩
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午後五時二分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/89
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090・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 只今から休憩中の委員会を再会いたします。
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案を議題といたします。
先ずこの法案の審議の経過において、湯山委員から、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案の衆議院修正案によれば、恩給法の一部を改正する法律案に準じて、父母、祖父又は祖母が氏を改めないで婚姻したときは遺族年金の失格及び失権の事由としないことになつておるが、これは氏を改めないことを条件としておるので、新憲法、新民法に照らし疑義がある、こういうような御発言でございました。従つて、上記のような事柄に関し、今後更に慎重に本問題に検討を加え、本法制定の趣旨を明瞭ならしめるように申合せをする、こういうふうに理事間で意見が一致いたしましたが、この申合せに対しまして御異議がございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/90
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091・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。
それでは戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案に対しまして、御質疑がございましたならば御発言を願います。別に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/91
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092・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/92
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093・川井章知
○衆議院専門員(川井章知君) 衆議院の修正案の三頁に誤りがございますので、ちよつと訂正さして頂きたいと存じます。修正案の三頁、「第二十六条を次のように改める。」とありまして、(遺族年金の額等)、それから三行目に、一号に「先順位者が」云々とありまして、括弧がついております。括弧の「二万五千二百円。」とあつて、その下に「以下本条において同じ。」となつておりますが、「以下本条において同じ。」という文句を削除して頂きます。それから第二号に「先順位者が二人以上ある場合においては、」とございまして、二万五千二百円となつておりますが、これは二万七千六百円の誤りでございます。その二万七千六百円のすぐ下に括弧をいたしまして(昭和二十八年十二月三十一日までは二万五千二百円。)と、こう入れて頂きたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/93
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094・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは、それぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/94
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095・常岡一郎
○常岡一郎君 討論を省略されて直ちに採決に入られんことの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/95
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096・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 只今の常岡君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/96
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097・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。それでは質疑を打切り、討論を省略して、採決をいたします。
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案を衆議院修正案の通り可決することに賛成のかたは挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/97
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098・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 全会一致でございます。よつて本案は衆議院送付案の通り可決すべきものと決定いたしました。
それから委員長が議院に提出する報告書には多数意見者の署名を付することになつておりまするから、本案を可とされたかたは順次御署名を願います。
多数意見者署名
大谷 瑩潤 榊原 亨
廣瀬 久忠 湯山 勇
横山 フク 西岡 ハル
常岡 一郎発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/98
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099・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 御署名洩れはございませんか。御署名洩れはないものと認めます。
なお本会議における委員長の口頭報告については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/99
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100・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 御異議ないものと認めます。
それでは暫時委員会を休憩いたします。
午後五時八分休憩
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午後五時五十七分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/100
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101・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 休憩中の委員会を再会いたします。では本日はこの程度で散会いたします。
午後五時五十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02419530730/101
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