1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月十六日(木曜日)
午前十時三十三分開会
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出席者は左の通り。
委員長 郡 祐一君
理事
宮城タマヨ君
亀田 得治君
委員
青木 一男君
小野 義夫君
楠見 義男君
赤松 常子君
棚橋 小虎君
一松 定吉君
木村篤太郎君
政府委員
法務政務次官 三浦寅之助君
法務省刑事局長 岡原 昌男君
法務省保護局長 斎藤 三郎君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 堀 真道君
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本日の会議に付した事件
○刑法等の一部を改正する法律案(内
閣送付)
○逃亡犯罪人引渡法案(内閣提出、衆
議院送付)
○小委員の選任の件
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001・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 只今より本日の会議を開きます。
先ず刑法等の一部を改正する法律案につき質疑を続行いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/1
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002・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 刑法等の一部を改正する法律案によりまして、私どもが長い間待ち願つておりました成人保護観察制度が確立しようとしておりますので、非常に喜んでおります。従来ならば実刑を科されておりました者が、裁判所は安心して刑の執行猶予をし、そして保護観察を附するということは、この被告人の非常に有利になることでございます。その点を有難く思つておるのでございますが、ここに少しの疑問を持つておりますから保護局長にお伺いしたいと思います。この改正法案によりますれば、裁判所は刑執行猶予を言い渡すときに判事の裁量によりまして保護観察に付することができることになつておりますが、その判事の裁量によりということが判決の前の調査制度といいますか、その特別の従前よりも念の入つた何かの調査によりまして、されることでございましようかどうでしようかということでございます。今までのように執行猶予をつけつばなしにして野放しのままの者もあり、又プロベーシヨンを付けられる者もあるというその裁量をいたしますその備えはどういうことでございましようかという点をお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/2
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003・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 執行猶予に付する場合、更に今回のように執行猶予の条件を緩和いたしまして、執行猶予に伴う保護観察を付ける、或いは必要的に付けるという場合に、裁判所がその事案が果してさような処置が適当かどうかということについて判決する前に、十分それを検討しそれによつてきめなければならんという点は正しくその通りと存じます。この法案を研究立案いたします際にもその点をいろいろと考慮いたして、場合によつては他の国において行なつておるような裁判所に調査官というようなものを置きまして、判決前に十分本人の性格なり環境なりを調査するというようなことが望ましいのではないかという意見もございました。理論としてはさようかと私どもも存じております。但し現在の刑事訴訟法におきまして原告側である検事、被告側である被告及び弁護人というものは、さような点において争うことができるかできないかという点が問題になりますので、現在のようにアメリカ等におきまして有罪無罪までは当事者間で争うが、それ以上のことはいくら刑を見るか、それを執行猶予とするかどうかということは、裁判所は専ら調査するという制度になつております。調査官を設けましてその間を十分調査してそれによつて執行猶予なり保護観察を付けるということが可能でございますが、現在では執行猶予にするかしないかということについて、被告なり或いは検察官なりかお互いに争う、それを裁判所が判定をする。こういう建前でございますので、最後の情状につきまして裁判所が独自でそれを調査するということが現在の刑事訴訟法の建前ではとりがたい、又とることができないという点からいたしましてさような制度を設けることは、現在の刑事訴訟法を相当大幅に改正しなければできないという結論になりまして、只今宮城委員の仰せられました裁判に当つて、そういう点を重点を置くということは、今後の運用につきまして是非ともやらなければならんことではあると思いますが、調査官を置くということは現在ではそれはできないという結論になりました。従いまして裁判所が審理の際に検事なり或いは弁護人側から十分そういう資料を出させまして、それを裁判所が判定をされる。こういうことになりまして、自分の手足として調査する者を置くということは不可能である。現在の制度ではそういう点から実際上において検察官或いは被告側から十分資料を出しまして、お互いに有利な資料を出し合つて、そしてそれを裁判所が判定をする。こういうことでこの制度がいい結果を招来する、こういうことにいたしたいとかように存じております。従いましてこの法案が成立いたしました暁においては、裁判所におきましてルールを作りまして、これについて適当な手続をきめる、こういうことに相成ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/3
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004・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 その点は了解できました。ただ、どうしても本当の意味に保護観察を付けるということになれば、専門の調査官を置いて、刑事訴訟法を大幅に改革いたしましても付けるのが本体であろうかと思いますが、一層の御研究を願いたいと思います。
それからこの現行の少年法によりますと、少年審判について家庭裁判所におきましては、少年調査官が調査することになつておりますのでございますが、そこでこの審判の結果、決定によつて保護処分をされ、或いは仮出獄仮退院ということがございますようなときに付せられます保護観察、いわゆるこの保護観察の中のパロールに当る場合でございますが、それはこの法務省の管轄になつております。保護観察のこの所管でございます。ところがこの成人の保護観察制度でございますというと、これはいわゆるパロールでなくてプロベーシヨンになるのでございますが、少年法におきましても、昨日もちよつと申しましたけれども、この保護制度についての一貫性がないというように考えておりますが、殊に今度は本当の意味の保護観察、プロベーシヨンでございますから、やはり裁判の判決の前に何とかして保護司をして調査させるというような一貫性を持つという意味から言つても、その調査制度ということが非常にむずかしいのならば、何とかその保護司を関係させるというようなことはできないものでございましようか。その点何か考えられたようなことございますでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/4
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005・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 只今仰せの通りに、少年事件におきましても少年審判と執行とが別の機関になつておるという点において、連絡が不十分な場合には肝心の少年の保護に支障があるということはもう御指摘の通りでございまして、私どももさような意味合から家庭裁判所と少年院保護観察所が絶えず十分な連絡をとつてやらなければならんと存じております。従いまして今回のこの法案が実際に施行になりまする際には、地方裁判所と保護観察所が十分に連絡をとる必要があると存じまするし、又その審判に当つて実際に保護観察に担当されるかたの意見を聞くというようなこともこれ又有意義なことだと存じます。ただ刑事訴訟法という手続がございますので、その枠の中でどういうふうにしてそれを裁判所に連絡するかということについては、最高裁判所といろいろ連絡をとりまして、可能なる限りそういうことをいたしたい、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/5
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006・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 この改正法案によりますれば、この刑の執行を猶予されました者は、その猶予の期間中保護観察に付せられることになつております。でございまするが、従つてその猶予期間が終了前にすでに改俊の情が顕著だというような者に対しましても、猶予期間中これはプロベーシヨンが付くわけなんでございます。そういたしますと、すでにもう猶予期間が満了する前、満了するまで必要のないというような者に対する保護観察というようなことが、実はその保護観察という事柄の妙味といいますか、効果に、どうでございましようかというように思うのでございますが、その点はこの満了するまでどうでもこうでも付けなければならないというわけは、どういうわけでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/6
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007・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) その点は御指摘の通りだと存じております。執行猶予の期間中に保護観察をいたしておりまして、本人がちやんとした正業について、誰から見ても再犯の慮れないし、保護観察の必要がないというような場合を招来することが望ましいのでございまして、そういうことに努力いたすつもりでございますが、その場合にその保護観察を執行猶予の期間中でも解除するというような制度を考えたいと存じておりましたが、この法案ではそこまでは行つておりませんのでございます。ただ保護観察というものが御承知のように或るきまり切つた形式でやるということではございませんで、いわゆるケース・ワーク、本人の態様によつて千種万様、本人のそのとき、その場所で必要な指導なり保護を加えるということでございまするから、実際問題といたしましては本当に必要がなくなれば事実上の停止と申しますか、そういうこともいたしたらいいんじやないかと存じておりまするが、又先般の立太子恩赦の際に本ございましたが、観察所で仮出獄中の者につきましても保護観察を現在いたしておりまするが、只今申上げましたような非常に本人がよくなりまして、もうその必要がなくなつたというような場合には、観察所から特別減刑の上申をいたしまして、特別減刑をいたしまして期間を早く終了させるということもいたしておりますので、さようなことも今後十分活用いたしまして、実際上不都合のないようにいたしたい、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/7
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008・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 本法案の刑法第二十六条ノ二の第二号の規定のこの「遵守ス可キ事項」ということは、犯罪者予防更生法第三十四条第二項に掲げてございます四つの事項を指すものであるという説明がこの間ございましたと思つております。そうすると同法の同条同項によりますと、監獄法又は少年法の保護処分による保護観察の場合には、この四つの事項以外になお特別の遵守事項を定め、その遵守を守らせるということが建前になつておりますのでございますが、この本法案によりまして、刑の執行猶予の場合におきます保護観察においても裁判所がその裁量によつて本人のために必要と認めますところの特別の遵守事項を定めることができるということにいたしましたらどんなものでございましようか。先ほどおつしやつたような、やはりこのプロベーシヨンはケース・ワークでございますから、一律に取扱うということ、つまり四つの遵守事項を掲げるという点が、私に十分納得できないのでございますが、如何でしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/8
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009・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) この案によりますると、いわゆる一般の遵守事項だけで、特別な遵守事項というものを裁判所が定めない、定められない建前になつております。この点につきましては、いろいろと考慮をいたしましたのでございます。遵守事項は特別、殊に一般遵守事項は一般の善良なる市民生活を守るためには必要なる事項を概括的に掲げてございますので、これは万人に共通することでございますし、特別にその本人にとつて必要な事項というものも考えられます。例えば競馬、競輪等に余りこつた挙げ句に犯罪を犯したというような人については、競輪、競馬にこるなとか、或いは酒を飲み過ぎて問題を起したという人には深酒をするなというようなことを遵守事項といたしておりまするが、今までの経験によりましても絶対に酒を飲むなということもなかなか言いにくい一お正月に酒を飲んではいけないとか、非常なめでたいときに酒を飲んでもいけないということになりますと、結局やはり特別遵守事項といつても精神的なものにならざるを得ないという点がございまするのと、それから特別遵守事項というのは時期によつて変つて来なければならないという点でございまして、裁判所には裁判の際に特別遵守事項を付けて、その期間中変えることができないということは、まだケースワークとして不十分な点もございます。そういたしますと望ましいのは、保護観察を行う者がこの特別遵守事項をきめる。丁度現在少年のプロベーシヨンの場合がそうなつておりまするから、そういうふうなことを考えたのでございまするが、そういたしますると、特別遵守事項を行政機関である観察所が定める。そしてそれが遵守事項違反として、執行猶予を取消されて、実刑に行かなければならないというような大事なことを行政機関に定めさせる。それも適当な枠を作つて、少年みたいに適当な枠を作つてやらせるということになりますが、併しそれにしても相当考慮を要する点があるのではなかろうか。又更に行政処分となれば、行政訴訟を起すということにもなる。結局、実際におきましては、一つの善行を保たなければいけないという一般遵守事項の特別事項がございまして、実際に取消しということを考えますると、単に映画に余り行くなと言つたのを一回行つたから取消すというのでなくて、映画、競輪、競馬に行つて妻子をおつぽらかして家がめちやめちやになつてしまい、裁判の一歩手前だという場合に初めて取消すということになりますので、結局取消すという場合を考えますと、一般遵守事項に違反するというような場合に、初めて取消すという点を考えますると、付けたほうが私どももいろんな点解決ができて、付けることが望ましいと思います。いろいろ研究いたしましたが、さような点、いろんな支障の点がございますので、まあ発足の際に当つては、一応この程度で発足させて、そして今後の推移によりまして、一つのその点の補足といいまするか、更によい方法を考慮いたしたい。かような考えでこの案ができた次第でございます。この案全体が、この案を法務省が立案に当りまして、法制、審議会に当時の法務総裁から諮問をされまして、各方面の在朝在野の法曹、学界そういつた保護観察の専門家、そういうかたの御意見などもいろいろ伺つて、いろんな意見が出まして、その理想案を全部取るということは非常に困難である、全体の意見も結局この案によつて、先ず橋頭堡を築いて、そして新らしい制度であるから一応の線で発足して、今後の、将来の大成を期したほうがいいんじやなかろうか。こういう結論になりまして、総裁に答申もあつたような事情もございますので、先ほど御指摘の、判決前の調査の問題にいたしましても、特別遵守事項にいたしましても、プロベーシヨンとしての理想の形から言いますると、更に進んだ方法を考えなければならんということが言われますが、まあ漸進的といいまするか、そういう形で行つたほうがよかろうという答申もございまして、部分的に見ればまだ足りない点もございます。御指摘の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/9
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010・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そういたしますと、この立法の上では、四つの遵守事項ということになつておりまするが、取扱いの上では、少年法による保護観察と余り精神は変らないということで取扱つてもいいと解釈してよろしいのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/10
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011・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 実際に、保護観察に当る保護司のかたがたが適当な指導、適切な指導をなさいまして、その指導に従つてやつて行く、こういうことになつておりまして、現在と変らん精神で行われるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/11
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012・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 いま一つ、刑の執行猶予は、刑の言渡しをされましてから、有罪の決定があつたあとに言渡される建前でございましようが、この期間中無事に、執行猶予期間中無事に経過しますれば、その法律上では、刑の言渡は効力を失うことになつていると思つておりますが、社会的にもやつぱり一旦受けました有罪の判決というものは、なかなか消えるものはないというように思います。そこで折角このアダプト・プロベーシヨンの制度を確立するのなら、いつそのこと被告人の更生保護に最も効果的と思われます宣告猶予の制度をどうしておとりにならなかつたかということを、そのほうが刑事政策の上から考えて見ましても、非常に効果的で本人のためにもなるのじやないかというように考えておりますが、この点如何でございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/12
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013・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 只今の仰せの通りでございまして、執行猶予ということに保護観察を結び付けてあるというプロベーシヨン制度をとつておりますので、御指摘の通りに、宣告猶予に結び付けて保護観察制度から比べますると、一旦は、裁判所から何々罪について懲役何年というような言渡しを受けまして、而も受けるだけではなくして、関係者なり、或いは場合によつては新聞紙等にも出る場合もございましようし、一種の烙印を押されるということになりまして、本人の更生を図る上において相当の不利益を免かれないと存じておりまして、できまするならば、宣告猶予を採用したいと存じていろいろと研究いたしました。宣告猶予をとると仮にいたしました場合に、どういう難点があるかということを現在の刑事手続を一応の前提といたしまして考えた場合に、二年なり、三年なり、四年なり経つた後に、若し本人が裁判所に誓約したことに反して、相変らず不良行為をやつておる。場合によつてはどんな犯罪を犯すか知れないといつたような場合には、当然この制度の何といいまするか、建前上、それを取消しをしなければならない、その場合の裁判判決をどういうふうにしてやるか、仮に裁判官が、判決書を作つて、金庫の中にしまつておいたというふうにいたしましても、判事が変つたというふうな場合に、その独立不覊の判事が他の判事の判決を言渡すということが果してできるかどうか、自分の良心にない、良心に反するような判決を言渡すことができるか。判決書を作つておかないということにいたしますと、もう一遍裁判手続をやり直さなければならない。そうすると証拠書類、関係者等も散逸いたしまして、果して裁判ができるかどうかという点を考えますると、非常な難点がございます。これは訴訟手続を有罪と、それから情状というふうに、刑事訴訟法を二段階にいたしまして、一応有罪だけは確定しておく、そして刑は裁判所がいろいろな事情からきめるというふうな制度をとつておれば、有罪という一応の段階まで進めておいて、あとは刑期を言渡さないで宣告を猶予して、そして保護観察にする。そして若し、稀ではございましようが、不良な成績を示した場合には、裁判所が自由に適当と思われる裁判ができる、判決を言渡されるという制度ができなければちよつととりにくい。現在の刑事訴訟法は、それとは非常に違うことになつておりますので、私どもの立場から言うと、宣告猶予をとりたいという気持ちでございましたが、さような事情から一応執行猶予の現在の制度ということを建前とすれば、決してこれで理想ではないとは思いまするが、併し一歩前進という意味合で、執行猶予に保護観察を付けるという制度でこの制度を発足させたい。こういうつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/13
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014・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 現在これを一段と進めて宣告猶予に行くべきだという当局の考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/14
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015・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) その点は、私どもとしても、是非早くそういたしたいと存じておりまするし、又法務総裁から諮問をされました。在朝在野の法曹の代表のかた、学界、知識経験者の審議会におきましても、それが理想である。従つて今後それを研究して、そういうふうに進むべきだということを附加して意見を述べておられるわけでございまして、私どもとしても、できるだけ早くそういうことに持つて行きたいと、そのために努力いたしたい。かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/15
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016・一松定吉
○一松定吉君 刑の宣告猶予の制度は、すでに外国にも行われているのでございまして、現に私が衆議院議員であつたときに、何回もこれを、議員提出法律案として出して、そして衆議院は二回通過した。あなたは御承知でしよう。それが未だ我が国には実現せられないことを私は遺憾に思つているんですが、今あなたの御説明によると、宣告をしなくて、そのままに数年経過した後に、その宣告猶予の判決を取消すというときには、新たに裁判をするについて裁判官が変つておる、或いは証拠書類等が散逸しておるというような弊害がある、又判決文を作つておいたとすれば、人の作つた判決文を取消をするときに、関係のない裁判官がそれを言渡しをするという不都合がある、こういうようなことで、宣告猶予という制度はいいけれども、未だこれを実行せずにそのままになつておるが、但し我々もその実現に努力したい、こういう御意見でありましたね。ところがそれは私は理由にならんと思うのですがね。宣告猶予の言渡しをするということは、事実の審理を終り、検事の論告を済まし、弁護士が弁論をし、そうしてこれから会議して判決しようという前に裁判所のほうが刑の宣告猶予という言渡しをするということにすれば、すでに証拠もすべて揃つてしまつて本当に判決を言い渡ずことだけが残つておるということであれば、判決を仮に書いてあつても、その書いてある判決を後の判事が言い渡すと言つて、後の判事は法の命ずるところによつて先の判事が認定をしてそうして判決に書いてあるのを国家の命令によつて言渡すというのは何も不都合なことはない。それから判決を書いておかなくて、宣告猶予を取消さなきやならんというときに、更に裁判をするということは、更に裁判をずることが必要であれば、そういう明文を置けばいいわけだ。要は刑の宣告猶予というのは、今お話のありましたように、いわゆる勧善懲悪で、本当にその人の改過遷善を国家が手を引いてやつて、再びかくのごとき罪を犯さないというようにその人を指導するという重大なる力を与えることなんだ。執行猶予ということになると、執行猶予の期間満了するまでは一つの前科者だ、犯罪者だ。だからしてすべての公権行使はできない。宣告猶予であると、前科者でも何でもない。体はきれいなんだ。だからしてそのきれいな体を保持して再び過ちを犯さないようにしようということによつて、その人物を立派に導くことができ、再び罪を犯さんことができるという偉大なる効力をそこに持つ。ですからして私はどうしてもこの刑法の改正のときには、その犯罪の種別を限つてでもよければ、条件を厳重にしてもいいが、刑の宣告猶予という制度は設けたほうがいいと、こう思つているのですが、あなたの御意見をもう一度伺つてみたい。但しこれはこういうような刑の最も重要なことだから、あなたの御意見としては今確定の意見は述べられまいが、あなた御自身の私見であるということでも結構ですから、一つ遠慮なく述べて頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/16
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017・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 刑事手続のことにつきましては、所管も違いますので、私から責任のあることは申上げかねます。ただ私は犯罪をした人の改善更生といいますか、そういうことの仕事を命ぜられておりまして、その立場から言いますると、もう御指摘の通りでございまして、宣告猶予が執行猶予に勝ること万々でございます。私としましてもできるだけそれを早く実現させたいと思つております。本来大体この制度を私どもが考えましたのは、全国にたくさんおられる保護司のかたが現在成人については仮出獄中の者の改善更生を図つておられるのでございますが、一遍刑務所に入つた人の改善更生を図るということが非常に困難である、これを刑務所に入らんでするならば自分たちが非常に仕事がしやすいという非常な熱願から、私どももそれに御尤もと思いましてこれをやりましたいきさつでございまして、宣告猶予に進みたい。又それが各国でも最も進んだ方向であるというふうに言われておるのでございまして、一日も早くこれを宣告猶予まで進みたい、こういうふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/17
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018・一松定吉
○一松定吉君 只今政府委員の御答弁によりますると、所管も違うようですから、これ以上政府委員を問い詰める必要もありませんが、いずれこれは法務大臣でも御出席を願いましたときに私から更に質問を継続することにいたしまして、関連質問はこれでやめます。どうぞ宮城さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/18
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019・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 私いま一つ心配いたしておりますのは、裁判で以て刑の執行猶予があり、それに保護観察制度が付きますということになると、自然に今までよりも刑の執行猶予者が多くなると思つております。それが又私ども願いたいところなんでございますが、そうなりますというと、今度は検察官の起訴が、起訴猶予にしておくところを、どうせこれは裁判所において執行猶予の恩典にあずかられるかも知れないから、まあろうというようなことで簡単に取扱われて送り込まれるというようなことがございませんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/19
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020・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) その点は私も心配いたしております。日本の現在から言うと、起訴をされたということで非常なまあ本人が社会的に不利益といいまするか、変な眼で見られるというのが実際でございますので、若し保護観察が付いて執行猶予の条件が緩和されたということによつて、従来と違つて、必要なくして……、必要なくしてというのは語弊がございまするが、簡略に起訴するというようなことがあつてはならないとつておりまして、これにつきましては所管の刑事局長ともいろいろと話をいたしておりまして、実施の暁におきましてはさようなことのないようにいたしたいと、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/20
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021・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 まだ数点ございますが、後の機会に譲りまして、最後に保護司の問題で少し伺いたいと思つております。この改正法案によりますると、第一回目に刑の執行猶予を受けて、これにプロベーシヨンが付かなかつた場合は、第二回目の刑の執行猶予はできるのでございますね。第一回目の執行猶予にプロベーシヨンが付けば、第二回目は刑の執行猶予が付かないことになつているのでございますね。そういたしますと、非常にプロベーシヨンの役割は大したものでございまして、又言つてみますというと、或る人にはプロベーシヨンが付かなかつたほうがよかつたというような結果にもなるのじやないかと考えられるのでございます。そこで保護観察の当を得なかつたというような場合には、第二回目は刑の執行猶予が付かないで実刑になる、プロベーシヨンが付きましたときには、第二回目は刑の執行猶予が付かないことになりますというと、この遵守事項に違反いたしましたような場合には、刑の執行猶予が取消されるのでございますね。そうすると、この二つの場合を考えますというと、悪く行きますというと、実刑が科せられ、そうして溯つて、科せられた刑が又加えられるというような場合も出て来ると思うのでございますが、そこで私はこの重大な結果を生みます保護司の任務というものは、非常に大したものだというように考えておりますが、これにつきまして保護司の増員或いは保護司の質というようなものに対して、何か特別な新らしい制度が加わりますことについて新らしく考えられております点がございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/21
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022・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 現在保護司は保護司法によりまして定員が五万二千五百ということに相成つておりまするが、この選考につきましては各県の各界の代表のかた十数名からなる選考委員会を設けまして、そこの御意見を伺つて法務大臣が委嘱をするということにいたしております。又さような制度上十分慎重な態度で選考いたしまするが、更に選考した結果、若しそれでも適当でないというようなかたがあつた場合のことを恐れまして、期間等も短期間の期間をおきまして、期間中にやめて頂くと、又不必要な摩擦を生ずるわけでございますから、短い期間、二年という期間をおきまして、絶えず適当な人で以て構成するように考えております。今回のこの法案の実施によりますると、保護観察が非常な責任を負うことに相成りまして、単なる名目的だけの保護観察というようなことであつては誠に申訳ないということになりますので、この保護観察の実施に当りましては、十分に対象者の適切な保護と指導とが行われるようにいたさなければならないと存じております。従来からさような方針でございまして、特にこの制度によつて保護司のかたがたに対してどういうことをするかというようなことまで、現在まだそういうことは考えておりませんですが、従来から毎月一回、昨日も申上げましたが、保護司の地区の二、三十名、四、五十名くらいの少数の単位の保護司会を開催して、そこに担当の保護司なり、場合によつては観察所長が出かけまして、そうして適切な指導を行い、そうして事件についての報告を受け、又指示をするということにいたしておりましたが、それを今後も励行し、場合によつてはもつと頻繁にやるというようなことも考えなければいかんと思います。又この制度の実施によりまして、御指摘のように事件の殖えるということを想像しなければならない。又それであつて初めて効果が上るわけでございますが、それで本年度は大蔵省と折衝いたしまして、保護司の数は殖やしておりませんですが、それは現在五万二千五百でございまして、実際には適当な人を得るというようなことのために、はつきりした数字はわかりませんですけれども、四万四、五千くらいの保護司がおられると思います。従いまして全国の市町村に、大抵の村には一人以上はおられるということに相成つておりますが、さような関係で、若し件数が殖え、足らなくなつたという場合には、保護司の増員を考えなければならんと思いますが、現在では法律改正までは行かないと思いまするが、保護観察官が現在六百人足らず観察所におります。その人々が現在七万人くらいの件数を持つていて、結局自分では直接全部をやるということは到底できませんので、四万四、五千の実在する保護司に何件かずつ事件を担当してもらいまして、そうして保護司と観察官とが一緒に保護観察をいたしておりまして、その間の連絡を緊密にするということを今後も考える。
それから観察官の数を今度のこの制度の実施に備えまして、今年度九十三名増員を考えております。これは四月の一日から増員の予算を頂戴いたしておりまして、現在着々増員をいたしております。そうして本年度はこの観察官につきましてもこの制度、かような刑事手続上の重要な一環を持つことになりますので、従来のようなケース・ワーカー、ソシアル・ワーカーの面だけでなくして、やはり刑事手続のことについても観察官が了知しておるということが必要だと思いまして、今度の新規に採用した者、又既存の観察官のうち適当な人を選びまして、新規採用の九十三名全部、そのほか前からおる観察官のうちからでも適当な人を選びまして二・三カ月、検察庁なり、裁判所なり、観察所の実際の実務を研修する、その上で観察所に配置する、こういうことをいたしたいと存じております。
それから保護司の問題につきまして今考えておりまするのは、大要は従来の通りの方針でございまするが、今後いたさなければならんと思つておりますのは一現在保護司がいろいろな関係から件数を不均衡に担当しておられる向きがございます。これは是非均衡して事件を担当してもらうようにいたしたい。それによつて数は殖やさなくても実際には殖えたような効果を上げ得るのではないか。誰でもお願いできる仕事ではございませんし、本当に手銭、手弁当でやつてやろうというかたで、而も人格なり、熱意なりをお持ちのかた、こういうことになりますると、数だけ殖やしてもなかなか実際の人を得るということは困難でございます。勿論そういつた適当な人を殖やすということには努力いたしたいと思いますが、急いで、ただ数だけを殖やすというようなことは十分慎重にしなければならん、かように考えまして保護観察の重要な責任を負うことになりますのに対処いたしたい、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/22
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023・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 この専門家でございます観察官は増員が九十三名だけだという、そうしてそれに十分な研修をさせなければならんということなのでございますが、まあ数も全国で僅かに九十三名の増員では甚だ心細いことでございましようと思います。けれども、まあ今のところ仕方がないと思いますが、大部分の問題は専門家でない、保護司法による保護司のかたが主に問題になると思つております。従来はやつぱり特別な、まあ篤志家のようなかたを選び、それから期間も短くというような、今の御説明にございましたが、それは余り迷惑がかかるから、長くは御迷惑だという意味も私あるだろうかと思います。けれども、今度この大事な、つまり刑をきないでもいい者がやりそこなつたから実刑に科せられるというような瀬戸際の鍵を握つております保護司でございますから、むしろ期間を短くするというような考え方でなしに、もつと専門的な者を、できますなら少し長く、半役人のような形ででも採用するというような方法を考えたらどうだろうかというように思つております。そうしてただ月に一回の、いわゆる保護司の会合でケース研究を持ち寄つてやつて行きましようというようなそんななまぬるいことでなくて、もつと専門的な知識を得るような研修の機会を与えて頂いて、そうしてそれにも十分な予算を取らなければ、これは大変な大きい問題が、むしろこのプロベーシヨン・システムができたために大変なことが起るのではないかと、私実は心配しておるのでございます。それでまあ要は昨日からも問題になつておりますように、かかつてこれは予算の問題でございまして、又予算のほうの問題は国会のほうでも大いに押しますけれども、実際は今伺えば五万人はいないというお話でございますが、四万四千人にいたしましても、その人たちがこんな割の悪い仕事は縁の下の力持ち御免だと言つて、一遍ストライキをやつてみたら、国民の人たちは枕を高くして眠ることができないので、これはこういう隠れた仕事を黙々と仕事をしていらつしやるかたが四万人以上もありますということは、これは有難いことだと思つておるのでございます。そこで今までの保護司にいたしましても、保護司の優遇問題があのように皆さんが心配して、国会議員といたしまして本心配いたしていらつしやるようなわけなのでございますが、今度はもつともつとこれは重大問題が起りますから、十分に予算を取つて、そうして十分に働いて頂く、まあ半専門家になつて頂いて、片手間仕事でないかたも中には起つて来るといつたような私結果になることを願つておるのでございますが、その辺についての一つ保護局長のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/23
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024・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 只今宮城委員の仰せられた通りでございまして、その通りに考えております。私どもがいろいろな関係からではありましようが、一つには私どものまあ努力の足らない点も大いにあると思つております。保護司に対する十分な活動資金を現在差し上げておらないという点は誠に申訳ないと、残念だと存じております。昨日、本委員会で非常にそれについて同情的な関心のほどをお示し頂きまして、私ども本当に心から感謝をいたしております。非常に心強さを感じておりますし、今後できるだけ努力をいたしたいと、かように思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/24
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025・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 今日はこれで私はよろしうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/25
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026・赤松常子
○赤松常子君 今度期間が七年から五年に縮められますと、どのくらいのかたがそれに属されますでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/26
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027・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 大体この制度が実施されました際に、どの程度の人がこの制度の適用を受けるかということを覧て、今までいろいろな準備をいたして参つた次第でございまするが、その一部がございますので、それを申上げまするが、昭和二十三年から二十五年度まで執行猶予中に再犯を犯した人の数、これが先ず必要になるのではないか。その数が一年間に八千五百三十三人ということに相成つております。次に今度の執行猶予の、この法案によりまする執行猶予要件が七年から五年に短縮されます。その関係で対象者としてその短縮された人がどのくらいあるかということになりますると、結局私どもその数と、もう一つの数があるのでございますが、全然初犯で入つているという人が先ず対象者になり得るわけでございます。それから初犯ではないけれども、前に一遍処分を受けたけれども、五年以上を経過しておる人、七年じやなくて五年になつたという人がどのくらいあるかと言いますと、結局刑務所に入つておる人のうちから前に処分を受けて五年経つていないという人を引けば、初犯の人とそれから五年以上経過した人、これが出るわけでございます。そういつた勘定をいたしました結果によりますと、これも年度末の平均数だろうと思いますが、入監しておる人の数が六万二千、刑務所に入つておる人の数が大体六万二千ということになりまして、その中から二万一千人を引いた残り、結局四万一千人の人が、初犯の人と前に処分を受けたけれども五年を経過しておる人ということになります。これが今度の制度が実施された際に執行猶予になり得る人であります。現在刑務所に入つておる人のうちから、先ず何割程度が裁判所が果して引渡すかどうかということは、これは全く一つ一つの事件について裁判官が調査の結果おきめになることで、見当のつけようがありませんが、まあ今までの長年の勘から言いまして、大体三割くらいはなるのじやないかというのが最高裁判所あたりの専門家の推測といいますか、腰だめ的な計算でございますが、そういたしますと、それで一万一千人程度の人がこの対象になりはしないか。そうすると前の八千人と一万一千幾ら、結局二方人程度が今年の四月からこの制度を実施しておれば刑務所に現在入つておる人のうちから保護観察のほうに廻つて来るという数になりはしないか。こういうふうな計算をいたしたのでございます、現在刑務所に入つておるわけではございませんが……。執行猶予を受けておる人で現在まで執行猶予になつておつたのだけれども失敗した人の数ですね、その程度の人は保護観察を受けるのではないか、初回であつても……。現在二八・七%くらい執行猶予中に再犯を犯して取消しになつておりますから、その人の数くらいは裁判所が初度目にしわしないか、それが約八千人。それから刑務所に入つておる人のうちで、今度資格が緩和して執行猶予可能になつた人の三割程度というものを足しまして、結局二万人という程度、というのが本年四月年度初めから実施しておればこの一年の間にこの程度の人が保護観察に新たに廻つて来る、こういうふうに計算いたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/27
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028・赤松常子
○赤松常子君 これが毎年実施されましてもその程度の数字、予想と見てよろしうございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/28
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029・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) これは執行猶予の期間というものが一年から五年ということになつております。裁判所から言渡される執行猶予の期間というものが一年から五年ということになつておりますから、一年目に二万人ありますと、まあ一年から五年まで裁判所がやられるので仮に三年が平均だということにいたしますと、三年経つたのちは最初の一年間に入る人の三倍というものが常時保護観察のほうに廻つて来る。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/29
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030・赤松常子
○赤松常子君 殖えるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/30
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031・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 保護観察に溜つておるのが一年間二万人でも、三年ということになれば、常時この制度によつて保護観察に附されておる人が六万人ということに相成るかと、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/31
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032・赤松常子
○赤松常子君 だんだん植えて参りますわけで、それが大変うまく行けば非常に喜ばしいことであるが、宮城委員もおつしやつたように、これほどの大きな改革が行われて、それを受入れる態勢というものが非常に、先ほどから伺いましたところ貧弱だと感ずるわけでございます。それで私ちよつと素人でよくわからないので伺いますが、今現在全国には保護観察所が幾らで、保護観察官は幾らで、その養成というものはどういうふうになされておりますか、簡単に御明示を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/32
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033・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 保護観察所は現在各都道府県に一カ所づつございます。先ほど申上げましたように裁判所が支部を設けております。丁度家庭裁判所から、少年は支部からも参ります。又この条文ができますると地方裁判所の支部からも大人についての保護観察の事件が参ります。こういうことになりますので、将来としましては私は是非裁判所に対応する必要だけの支部は設けなければならないとかように存じてその方面に努力しておるわけでございます。
それから観察官の数は現在観察所に五百五十九名、委員会に観察官が八十八名ございます。委員会と申上げまするのは各高等裁判所、検察庁管轄の下に東京、大阪、名古屋、福岡、仙台、そういつたふうに八カ所委員会がございまして、この委員会が中間の監督機関をいたしておる、又固有の権限としてその管轄区域内の刑務所、少年院から条件付で釈放の決定をいたしております。その委員会に八十八名、合せまして六百四十七名というような観察官の数に相成つております。
それから保護司の数は現在五万二千五百まで委嘱ができることに相成つております。それからそれでも足りませんし、又もつと徹底するためにこれは制度上は何もそういうことの根拠はございませんが、全国の学生、或いは若い、学生から出たばかりのような人に働きかけまして、少年事件を手伝つてもらつております。これは全く制度ではございませんで、友だちになり兄になり姉になつてもらうということで保護司や保護観察官の援助者といいますか、アメリカでやつておりますビツグブラザーズ・アンド・シスターズ・ムーブメントというようなことをやつております。現在そういつた男女青年でございますが、全国で一万人くらいございまして、学業の余暇、或いはケース・ワーク、グループ・ワークで夏休にキヤンプを作つて対象少年を連れて行く、そういうようなことをやつております。そういういろいろな面から援助を受けて資金面を賄つてやつております。単なる制度だけでも、又役人だけでもこれは解決しない問題でございまして、そういつた各方面の御協力と申しますか、そういう方面の協力を得て初めて効果を生む、かように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/33
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034・赤松常子
○赤松常子君 保護観察官のその資格というようなものはございますのですか。又その養成などはどうしておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/34
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035・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) いろいろと研究案といたしましては、保護観察官、或いは副保護観察官といいますか、監督官というようなもりを作りまして、観察官としては旧制大学卒業以上というようなことも考えておりましたけれども、現状においてそういつたことにこだわつて適当な人を得られないということでもならんと思いまして、できるだけいい人を採るということに専念いたしまして、殊に最近では学生時代からそういつたビツグブラザース・アンド・シスターズ・ムーブメントに入つてこの事業に関係を持つておる人の中から採用をするというようなことをいたしております。
それから研修につきましても、今できるだけ研修をいたしたいと存じて、昭和二十五年度に観察官の幹部の職員を約二割程度東京に集め一週間程度研修いたしました。そのほか地方で研修をいたしました。それから二十六年度、二十七年度、それから本年度は五十七名づついたしております。
殊に昨年度からは機構の改正によりまして、外局から内局に入りましたので、法務省の大きな研修所で二十日間づつ幹部の観察に当る職員を六十名程度、五十七名研修いたしましたが、関係法律、或いはいろいろな社会事業方面のこと、そういつたようなことについても権威者の話を聞き、或いは座談会というようなことをいたして努力をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/35
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036・赤松常子
○赤松常子君 非常に話を伺つてみますと無理もないことではございますけれども、思いつき程度のことにずつとやつて来たように思うのでございますが、社会事業者を養成いたしますのに、今厚生省が、三年前から社会事業学校を経営いたしまして、非常に計画的に十分なる資格を持たせて、立派な指導者を作つているのでございますが、こういう保護観察や保護司に関して法務省はそういうお気持で以て立派な指導者をお作りになるようなお考えをお持ちになつていらつしやつたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/36
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037・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) できるだけそういつた広く人材を集めて、将来の職員の養成といいますか、そういうことをいたしたいと存じております。又極く小規模ではございまするが、全国的な保護事業の推准機関でございまする協会がございますので、その協会の主催で保護司なり、或いは保護観察の職員を毎年五十名程度中央で研修いたしております。それは大分前からいたしております。そのうちから保護事業界に入つて来るというかたが相当ございます。できますればもつと大きなものでいたしたいと存じ、おりますが、さような余裕がございませんので、現在ではまだ小規模のことしかいたしておらないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/37
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038・赤松常子
○赤松常子君 それから折角そういう制度が改革的に行われようとしているのですから、本当にそれがよき実を結びますように併行いたしまして、そういう観察制度、又観察官なり、保護司の質の向上を図つて、タイアツプしていい制度をお作りになつて行く誠意をお持ちになられますように……。それから出たかた、或いは観察中のかたに技術指導であるとか、或いは技術補導、生産技術を与えるというようなことはございませんでしようか、わからないのでその点伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/38
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039・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 刑務所から出た人につきましては、現在生活保護法なり、職業安定法がございまして、国民に無害別平等でそういつた保護をするという建前になつておりますので、私どもの立場といたしましては、刑務所から出て社会に馴じみが足らないし、自分でひけ目を感じておる人の親代り、或いは兄弟代りになつてそういつた公共の機関を利用してそこへ斡旋をして、そうして職業なり技術をつけるということに努力するというのが先ず第一の建前でございます。併しこういつた特殊のかたがたであり、人々でありまするから、それで間に合わないという場合に、はじめて法務省が自分の予算でそういつた人の保護を直接いたします。こういうことに現在厚生省なり、労働省との仕事の割振りがきまつておりますので、そういつたことで進んでおるわけでございまして、従いまして法務省で刑務所から出た人は、末代、一生その人を面倒を見るというようなことは、却つてその人がいつまでも犯罪者という特殊扱いを受けることになりますので、私といたしましてはできるだけ一般人と同じようにして、一般人と同じように作り上げるというようにいたしたい。そのためには或る期間だけ法務省で、どうしても生活保護法の適用を受けさせる。併し行くところがないというような人については、法務省の監督いたしております保護会に収容する、そこに又会によりましては授産施設を持つておりまして、そこで就業を与えるというようなことをいたしております。さような保護会が現在百六十数個ございまして、五千人くらいの人を収容いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/39
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040・赤松常子
○赤松常子君 昨日来保護司の試験が問題になつておりますが、保護観察官の待遇はどういうふうになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/40
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041・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) これは一般の役人と同じでございまして、いろいろなその人の経歴なり資格なり、それによつて地位がきまつております。若干刑務職員と違いまするが、特殊な危険といいますか、そういう意味で僅かの調整号俸といいますか、加俸といいますか、そういうものが若干ございます。極く僅かでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/41
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042・赤松常子
○赤松常子君 ちよつとどのくらいでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/42
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043・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) これはすべての公務員が原則的にそうでございますが、学歴であるとか、社会的な経歴であるとか、そういうところから号俸をきめることになつております。一般的に観察官たけといいますか、その他いろいろなほかにも刑務官であるとか消防警察官であるとか、そういつた危険的な仕事に携わる者は調整号俸として一般のレベルよりも若干そこに加えるということになつておりまして、観察官は一号だけ、普通の物差しで計つた俸給が決つておつて、それより一号だけ上げる、こういうふうに相成つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/43
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044・一松定吉
○一松定吉君 二十五条の二の二項、「保護観察ニ付テハ別二法律ヲ以テ之ヲ定ム」とあるが、「別二法律ヲ以テ定ム」その法律の草案はできたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/44
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045・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) これは「保護観察ニ付テハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム」とこうございまして、この保護観察は遵守事項を定め、そうしてそれの取消順位ということは、特別法律で以て厳格にきめるという意味で、こういう規定を入れたわけでございまして、この法律というのは、この法案の六頁の犯罪者予防更生法の一部改正の第三十三条四号におきまして「刑法第二十五条ノ二第一項の規定により保護観察に付された者」、これが犯罪者予防更生法によつて保護観察を受ける、こういう前の改正されない条文と相待つて、そうして保護観察の実態なり組織なり、或いは遵守事項なり、それを犯罪者予防更生法が定めておるのでありますということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/45
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046・一松定吉
○一松定吉君 それならばそういうようなことを明確にしたほうがいいのではないか、「別ニ法律ヲ以テ定ム」、保護観察について別にどの法律を以て定めるということであるが、これを準用することになるのです、あなたのおつしやるところによれば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/46
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047・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) この法案全体が刑法等の一部改正ということになつておりまして、その内容は刑法の改正と、刑事訴訟法の改正と、犯罪者予防更生法と、更生緊急保護法の改正、この四つの項目に分れておりまして、この今御指摘になりました二十五条というものは刑法の改正でございまして、この改正された結果は、こういう条文が刑法というものの中に、二十五条の次に新たに入るわけでございまして、そうして別の法律というのは結局犯罪者予防更生法で定めている、そうしてそれを受取つて犯罪者予防更生法で、刑法第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付された者、犯罪者予防更生法によつて保護観察に付せられる、こういうふうに相成つているのであります。御指摘のように別に法律を定めるということをもつとわかりやすく申上げますれば、保護観察について犯罪者予防更生法の定めるところによりということでございますが、刑法では余りそういう他の法律を引張つてくるということは例がないというようなことで、こういうふうに相成つているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/47
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048・一松定吉
○一松定吉君 それはどうもわからんね。今私が疑問を持つたのは、つまり犯罪者予防更正法の保護観察に付された者云々ということならば、これは犯罪者予防更正法のほうの保護観察に関する規定を準用し、とこう書けばいい、別に法律を以て定めるとあるものだから、別にこういう法律を運用するについて新たな法律を設ける……もうすでにあるのですから、別に法律を以て定めたところによる、定めてあるのですから、定めるのじやない、これは言葉が悪いようですから考えて下さい、小さいことですが……。私の伺つた要点は、御承知の通り昔監視規則というものがあつたね。前科者の監視規則によつて警察官が、始終監視に付された者のところを訪問し、それから必ず月に一遍ぐらい何か手帳を持つて警察に出るというようなことがあつた。改心しようと思うと、あれは前科者だ、警察が来るというので非常に困つた、それであの制度を廃止したことは御承知の通りであります。そこで問題は、保護観察のやり方がお聞きしたい。それで今どういうような観察の仕方をするのか、それを明らかにしたい。どういう法律で定めるのか。定めるならばその保護観察の内容はどうだということを聞きたかつたからそれを質問したのだが、昔の監視規則のようなことをやられるならば、折角今更生しようと思つたような者が、又どうもやけを起すということになつて来ると、折角執行猶予なんか与えても効果がなくなる。それが非常に我々にとつては心配だから伺つた、その保護観察の仕方を具体的に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/48
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049・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 犯罪者予防更生法でその保護観察の方法等も、方針だけは法律で定めております。犯罪者予防更生法の三十五条、三十六条において、「保護観察において行う指導監督は、左に掲げる方法による。」そうして指導監督ということは、保護観察に付されている者に適当な接触を保つて、常にその行状を見守る、保護観察に付されている者に対して前条第二項、前条第二項というのは遵守事項でございます。その遵守事項を遵守させるため、必要且つ適切と認められる指示を与える、三が本人が社会の順良な一員となるように必要な措置を採ること、これが指導監督の方針でございまして、保護観察する消極面であると存じます。三十六条は保護観察における補導援護という積極面でございまして、この面におきましては教養訓練の手段を助ける、医療及び保養を得ることを助け、宿所を得ることを助け、職業を補導し、就職を助けること、環境を改善し、調整すること、更生を遂げるため適切と思われる所への帰住を助けること、その他本人の更生を完成させるために必要な措置を採ること、こういうふうにまあ法律では文字として書いております。実際にはどういうふうにいたしておりますかといいますと、先ず刑務所に入つた場合の対象者のことを申上げますと、現在は刑務所に入りますると、できるだけ早く刑務所から本人の家のある観察所に、こうこういう者がこうこういうようなことをしてこの刑務所に入つておるというようなことを通知をしてもらいまして、それによつてその近隣にある最も適当と思われる保護司を指定いたしまして、その人にその家庭の調査書の調成をお願いいたしております。そしてその家庭の環境の調査書の調成の結果を観察所と刑務所に通知をしてもらいまして、そして刑務所におきましてはそれを本人の矯正教育の一つの資料といたしております。そして観察所におきましては、当初におきましては本人に教唆を奨め、本人の責任を自覚させる、そして本人を激励するというようなことに努める、保護司が場合によつては刑務所に面会を求めに行きまして、本人にさような激励をするなり、適当な話をするというようなことをいたし、さようなことで矯正教育が進み、家庭の環境が改善されて参りますと、観察所のほうにございまする地方委員会が本人に面接をいたしまして、刑期三分の一を達して、そして刑務所においてももう仮釈放にしてよろしいというふうな申請がございますると、地方委員会の委員の一人がその施設に出向きまして、そして本人に面接をいたしまして、そのとき参考といたしまするものは、その家庭の環境がどういうふうになつておるか、この受入態勢ができておるかどうかというようなこと、本人の受入態勢ができていなければ、親に代る親戚知人等があるかどうかということを十分に調査した資料とそれから刑務所内における本人の成績等を刑務所側から取りまして、それを資料といたしまして本人に面接をいたしまして、そして果して本人を出すのがいいかどうか。出すとすれば、如何なる時期がよろしいかということを調査をいたしまして、そして仮釈放を決定いたしまして、そしてすぐ決定いたしますると、それを担当する保護司に連絡を、通知をいたしまして、そして保護観察を委嘱する。さような関係で、保護司は、保護観察の担当者は民間人でございまして、民間の篤志家でございまして、その指導方針も、積極、消極両面がございますけれども、保護司という民間人のかたは主として積極面を担当してもらいまして、本人の改善更生を図つておりまするので、少くとも曾つての警察監視というようなことの弊には陥らないように、又現在もそういうことはないと存じておりまするが、陥らないように努めておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/49
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050・郡祐一
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/50
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051・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。……では私からちよつと先ほどの宮城委員の御質疑と関連したようなことになるのですが、再度の執行猶予を付せない判決に対する控訴申立の範囲が拡大される、そのために控訴事件が増加して訴訟遅延の結果が起るというようなことはないだろうか、そういう点についてはお考え如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/51
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052・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 再度の執行猶予を希望して控訴をする事例が殖えやしないか。刑事局なり私どもの局なりで若干殖えるかも知れませんが、そのために訴訟遅延というふうなことになつて非常に御迷惑をかけるということにまではならないのじやないか、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/52
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053・郡祐一
○委員長(郡祐一君) それから、再度の執行猶予を与えることがいいとしたらば、それを軽微の犯罪に限らずに、罪状は重罪でも酌量減刑して再猶予を付するほうが適当だというような場合、例えば嬰児殺しであるとか、知恵が浅いために放火をいたすとか、こういうようことで、たまたま前に軽微の犯罪ですでに執行猶予の言渡を受けている者でも、これに再び執行猶予を付するほうが結果がいいのじやないかというようなことは考えられないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/53
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054・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 最初の執行猶予が現在三年以下ということに相成つております。従いまして、二度目の場合に三年よりも低い期間でなければ工合が悪いのじやないかということが一応常識的に考えられまして、どの程度のことがよかろうかという点をいろいろと考慮いたしまして、結局どの程度にラインを引くかということにいろいろ考慮いたしまして、一年或いは一年半というようなことを考慮いたしましたが一年半にいたしましても三年にいたしましても、仮に今三年にいたしましても、強盗傷人というこの事犯によりましては、何の気なしに、何の気なしというわけではないけれども、強盗するつもりでなしに入つた、だが最初でおつかなくて、追つかけられてついその辺にあつたものを振廻したということでは強盗傷人七年以上ということになりまして、これは現在でも初度目の執行猶予も付かない、こういうようなことになつて、どの程度にラインを引くかということについて、何年という認定をしなければならないというラインは、実は発見できないのでございます。従いまして、あれこれ考えまして、考えました線は、今度の刑訴の改正におきましても権利保釈の中からいわゆる重罪と言われておる一年以上のものは権利保釈の中から除外するというような改正案もできておりまして、一応二度目の場合であるから従来程度に考えたらどうかということで一年以下ということを考えましたが、更にこの案におきましては言渡し刑の一年ということにいたしましたから、事情か再度の執行猶予に値するというような場合は、情状酌量の場合であろうと思います。従つて半分まで下げることができまするから二年、実際法定刑は二年以上のものまで可能であるということに相成る。いわゆる重罪中でも相当程度の者が二度目でも賄えるということを一応いたしたらどうか。これは現在の治安状況等もございまして、ただまあ犯罪者の改善、更生というラインだけからも考慮できない問題でございますから、あれこれと考慮いたしまして、重罪中でも相当程度のものは酌量すれば一年になるということに拘泥しまして一年以下ということにいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/54
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055・赤松常子
○赤松常子君 最初、さつき保護会のお話がございましたけれども、あそこに国家的に何か財政の補助がございますのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/55
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056・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 保護会は、現在更生緊急保護法という法律によりまして法務大臣が認可をいたしましてそうして監督をいたしております。そうして刑務所を出て本当に行く所のないというような人、或いは家庭裁判所から廻つて来た少年で本当に行く所がない、どうしても保護する必要があるというような人を国が委託をして保護を頼んでおります。従いまして例えば宿泊を委託した場合には宿泊に要する費用を国が支給いたしております。大体生活保護法とほぼ同程度のものをいたしております。そのほかに補導費として月に百円でございますか、それからそのほかに建物の腐朽するものを補修するような費用とか、或いは人件費の若干とか、或いは事務費の若干を補助いたしております。併しながらこれも保護費と同様に、まだ私どもからいうともつと充実したことをしなければいけないんじやないかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/56
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057・赤松常子
○赤松常子君 承われば承わるほど本当にお気の毒になつて、そうして今さまざまの受入態勢の不備、貧困さというものがはつきりわかつて参りましたのですが、どうぞこういう点本当にお願いいたしたいと思います。私も実は保護会を一つ知つておりまして、非常にお困りになつておるんです。その実情をよく存じておりますので、是非々々お願いいたしたいと思つております。
それから民生委員と保護司及び保護観察官との連絡というようなものは、只今制度としてございますのですか。それを一つお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/57
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058・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 制度としては直接的な繋りはございませんが、対象者が、対象者の関係で必然的に関係を生じて参ります。例えば対象者で生活に困窮しておるというような場合には民生委員にお願いする。それから就職先がないという場合には職業安定所に連絡をする、そのために中央におきましても社会局なり職安定局と連絡をとつております。地方の第一線におきましてもそれぞれの出先機関と絶えず連絡会議を開くようにいたしております。それから保護司さんは保護司さんとしてまあ民生委員のかたがたと連絡をとるようにいたしておりますし、又実際問題といたしましては保護司さんの中の何割かは民生委員を兼ねておられます。又調停委員を兼ねておられますというかたがございまして、制度的には直接でなくても実際には緊密な連絡があるものと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/58
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059・郡祐一
○委員長(郡祐一君) この程度で午後一時半まで休憩をいたします。
午後零時六分休憩
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午後一時三十九分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/59
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060・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 只今から午前に引続き開会いたします。
逃亡犯罪人引渡法についての質疑に入ります。御質疑のおありのかたは順次御発言を願います。……私から今伺います点は、前に中山さんからもお尋ねのあつた点でありますが、更に刑事局長のお考えを承わりたいと思います。九条の東京高等裁判所の審査について二箇月以内というのがありますが、訓示的なものと読むべきでございましようか、義務的なものと見るべきでございましようか。義務的といたしますならば、二カ月以内に決定がなかつた場合にはどのように相成るものでございましようか。又この審査は公開されるものでありましようか。それらの点について御返事を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/60
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061・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) 第九条の東京高等裁判所における審査の期間が遅くとも「拘束を受けた日から二箇月以内に決定をするものとする。」という書き方をしてございますのは、かような事件は、大体においてその材料がおおむね当該締約国のほうから提供されて来る場合が多いのでございまして、それらを審査して更にそれに関連する若干の事項をこちらで調べればいい。従つてそう長い時間は要るまいということから一応二箇月ということを予定いたしたわけでございます。ただ例えばそれが非常に困難であるというふうな事件がないとも限りませんので、これはいわば今のお言葉によりますると訓示的なことになるのでございますが、「ものとする。」と、これは御承知の公職選挙法にいわゆる百日内に判決するように努めなければならない、あれよりは相当拘束力を持つた、つまり強い意味の訓示規定、かまうに理解しておるわけでございます。従いまして若しどうしても二箇月がちよつとでもはみ出るという場合がございますと、これは止むを得ずそのまま続くということでございまして、その間成るべく早く審査をするという趣旨になつております。なお、手続の公開するかどうかという点につきましては、裁判所の規則の中にこの点が出て参りまして、現在の案では、その第二十条に、「審問期日の手続は公開の法廷において行う。但し逃亡犯罪人の請求があるとき又は裁判所が公けの秩序若しくは善良の風俗を害する虞れありとみるときは、これを公開しないで行う。」ということに規則を定めるごとに予定いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/61
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062・郡祐一
○委員長(郡祐一君) なお十条の東京高等裁判所の決定について不服申立の途を開くというようなことは必要ないとお考えでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/62
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063・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) この点についてもいろいろ考えてみたのでございますが、東京高等裁判所にこの事件を管轄させたのは、いわば事実審的な傾向を持つた事件であると同時に、これは全国的にまたがるものでなければいかん、この二つを東京高等裁判所ということで結び付けてみたわけでございます。これを全国的な管轄で見ますると、最高裁判所ということが本当は一番いいのではないだろうか。併し最高裁判所に事実の審理をさせるというのも、これは如何なものであろうか、むしろそういうふうな事実の審理に最も適する高等裁判所にやらしたほうがよかろう、而もそれは全国であちこちばらばらにやるようなことでは、手続がむずかしくなりますので、東京一カ所でやつたらどうか。これが東京高等裁判所という考え方でございまして、すでにその手続について、さような割合に慎重な手続でやる以上は、これに対しては上訴を認める必要はなかろう。ただその決定に基いて法務大臣が決定をした場合に、その行政処分に対しては一般の例に従つて行政措置をなし得る、これは不服の申立の途を残したほうがよかろう、かような考え方に基いて立案したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/63
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064・郡祐一
○委員長(郡祐一君) なお二十二条の拘禁の停止についてちよつと伺いたいのですが、検察官の自由な拘禁の取消及び停止ということは、裁判所の審査の妨害となるというような場合がありはせんだろうか。裁判所に取消又は停止を求めるとか、裁判所の許可を受けるごとにしたほうがよろしいのじやないか。こういう点についてお考えを伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/64
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065・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) 大体拘禁の停止の場合は、おおむね拘禁の事由がなくなつたという場合でございます。例えば完全に外交機関が身柄を引受けるとか、或いは大使館員であるということがわかつたので、大使館の中にこれを受取る者ができたというような場合が考えられるわけでございますが、その他の場合におきましても、一般に拘禁を必要としないという事由が生じました場合に、これ以上不必要に本人の身柄を拘禁するのは、人権擁護の建前から如何なものであろうかということで、何時でも住居の制限等の手続をいたし、或いは身柄を委託して拘禁の停止をすることができるということにいたしたのでございます。それと同時にルールにおきまして、さような手続をする場合には、全部裁判所に通知をするという規定を置いて頂きまして、横の繋りも付けた、かようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/65
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066・郡祐一
○委員長(郡祐一君) それからなお法案の五条の逃亡犯罪人の拘禁の点について、この点を総務課長から一応の御答弁を得てあるのでありますが、刑事局長からはつきりと伺いたいと思うのであります。それは第五条に、東京高等検察庁検事長が逃亡する虞れがあると認めるときは、その判断は裁判官を拘束する、裁判官は拘禁許可状を発付しなければならないことになつておりますが、これと新憲法の令状主義の精神、従つて人権擁護の立場からのお考えというものを承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/66
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067・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) 逃亡犯罪人の引渡しに関する手続が、憲法の上からどういう意味を持つて来るかという点につきまして、私どももいろいろ研究を重ねたのでございます。憲法に国民の権利義務ということが書いてございますのは、これは日本国民の権利義務であるということが一般の通例でございまして、さような説から申しますと、この国民の権利義務というからには、外国人が身柄の引渡し要求を受けて向うに連れて行かれる場合には、この憲法の保護を受けないという議論さえ一応立つわけでございます。併しながらそれは憲法の建前といいますか、如何に外国人であれ、一応日本に住む以上は、日本の憲法は、やはりその精神が外国人まで及ぶといつたような考え方がむしろ妥当ではないかというふうな考えから、実は割合に慎重な手続をとつたような次第でございます。そこでこの東京高等検察庁が逃亡犯罪人が逃亡する虞れがあると認めるか、或いはないと認めるかということでございますが、この場合は虞れがないと認める場合でございまして、つまり拘禁をさせない場合でございまして、いわば人権を拘束しない面、つまり消極的な保護の面でございますが、この点については裁判所でそのような判断に基いてやりましても、人権の侵害というふうな問題は起きない、かように理解しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/67
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068・亀田得治
○亀田得治君 第九条の二箇月という問題ですが、これは先ほど訓示規定であるという御答弁でありましたが、こういう訓示規定的なものをこういう法律の中に設けるのはどうかと考えるのですが、この通り守らなくても仕方がないのだということを初めから予定されておるようなものを書くことは非常に考えものじやないか。やはりそういう意味のものであれば、裁判所の規則の中に判事に対する一つの指示として書く、そういうことのほうが適当ではなかろうかと思うのです。やはり法律を作つた以上は、それを守らなければいけないし、ただそれが守られない場合には、これは相手方を拘束しておるわけですから、拘束されておるほうからやはり我々の常識と違つた一つの異議なりそのようなものが予想されるのじやないかと考えるのですが、如何でしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/68
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069・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) 御尤もの御質問でございまして、私どもといたしましてもこの審査の期間をどれくらいにして、そうして身柄をどういうふうにその間取扱つたらよかろうかという問題につきましては、いろいろな角度から実は検討いたしたわけでございます。その考える要素と言いますと、先ほど申した通り、先方から引渡される資料が大体どれぐらいあるものであろうか、つまりこういう事件について引渡を要求する、その書面でずつと資料が廻つて来るわけであります。その資料を裁判所において検討いたしまして、それは法律に該当するかしないか、それからその人間が人違いがあるかないか、或いは条約に該当するかしないかというような問題を少し検討するわけでございます。それに関連して若干補充的な事項を内地では調査するわけでございますが、恐らくそういう事項は余りないだろう。大体外国において犯された犯罪でございますので、こちらでそう新らしく証拠を調べてどうこうということは余りないだろう。従つて二箇月もあつたら大抵いいだろうというのが二箇月の根拠でございます。ただ二箇月内にどうしても調がつかない、例えば何かどうしてもこれは外国から誰かを呼んでこうこうこういう点についてちよつと聞いてみなければ、いずれとも判断ができない、ところがそれがその召喚の手続の関係で例えば一週間乃至十日遅れるということも予想されるわけでございます。その一人だけ調べれば大体わかる、併しそれが来なければ判断ができないという場合に、それをなお且つどちらかにきめてしまうというのもこれはどういうものであろうか。現在の実は公職選挙法の二百五十三条の二でございますか、御承知の百日内に裁判しなければならない、あの裁判につきましても実は丁度同じような問題が起きたことがございます。出納責任者とか或いは総括主宰者とか或いは候補者自身が犯罪を犯しました候補者につきましては、自分の買収なら買収事犯が発覚して、それが問題になつておる、出納責任者については連座規定の働くような違反があつたという場合には、その事実関係を早く確定させるために百日内にやれということを書いてございますけれども、さてそれではその事件を実際にやつて百日内にどうしてもまとめあげなければいかんかというと、これを裁判所は今度はいい加減に裁判しろというふうに、逆から申しますと、そういうふうなことになりますので、それもいかんというので「努めなければならない。」という表現になつたわけなのでございます。今度の場合は恐らく「努めなければならない。」という程度ではなくて二カ月内にこれをきめてしまえ、きめ得るだろうという予想の下に「ものとする」という表現、それが原則だ、そうしなければいかんということが出ておるわけでございます。併しこれを以て裁判所の審理権をこの点から侵害するというのも言えませんことでありますからして、それは法律で、ルールで書くよりも法律で明らかにはつきりこういうことでなければいかんという建前を明らかにする。先ほど訓示規定と申しましたのはまあお尋ねも訓示規定とございましたので、一応訓示規定と申上げたわけでございますが、いわゆる法律的に申せば厳格規定と対比すれば、訓示規定でございますけれども、その意味は相当強いものである。かように我々は考えておるのでございまして、ルールにはこの点は特に触れてないわけでございますが、法律にこれが書いてございますから、むしろそのほうが強いのじやないかと、かように感ずるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/69
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070・亀田得治
○亀田得治君 こういう場合こそこれは速かにとかそういうふうにやつておきませんと非常に困る場合があるのじやないかと考えるのです。私まあ一般的には、できるだけ具体的に書くことが望ましいと思うのですが、この場合は随分これは他国人相手ですし、簡単には考えてはおりますが、相当複雑な問題も予想されるのじやないか、判断に……。殊にこの日本と朝鮮、中国、ソ連、これは現在では国の政治形態が違います。従つてこの政治犯人であるかどうかということの考え方が、随分違う場合が出て来るだろうと思うのですね。そうすると一方的な資料だけでいかないというふうなこともあるのじやないか。そうなりますと、隣りの裁判所から記録を取寄せるというふうな簡単なわけにも行かないでしようし、両方の国の刑法の建前が違つている点がありますから、そういう点で困るようなことができて来ないかと心配するのですが、その辺自信があれば結構なんですが、どんなものなんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/70
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071・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) 御心配誠に御尤もでございます。で一応第九条といたしましては「審査の請求を受けたときは、すみやかに、審査を開始し、決定をするものとする。」一応速かにという文字を入れまして、更に身柄が拘束されておる場合には「おそくとも、拘束を受けた日から二箇月以内に決定をするものとする。」こういうふうに二段に抑えてあるわけでございます。ですからもう事件が来たらすぐやんなさいよ、そうして身柄拘束されない事件はいつまででもいいがとは書いてございませんが、それは人身を拘束しておりませんから、いわゆる人権保障の面について欠くるところはない。ただ対外的にお前のほうに請求したのがなかなか来ないじやないかという外交的な問題は生じましても、本人に対する身柄の保障の問題はこれはなくなるわけでございます。併し身柄がもう現に拘束されておる場合には、本人に迷惑をいつまでもかけるというのは本意ではございませんし、これは遅くも二カ月以内に決定をするものとする、こういうことで抑えてあるわけでございます。で御心配の例えば事実の認定等についていろいろ問題が起こり得るだろうということは、これは私どもも予想いたしております。そういう場合は、従来外交史上にもいろいろあるようでございまして、政治犯と認定するかしないかによつて戦争状態まで陥つた前例等もあるそうでございますが、それは結局そういう決定をする際に、これを政治犯と認定するかどうかという微妙な点で争いが出て来る場合があろうと思うのであります。その場合におきまして、東京高等裁判所はやはりその与えられた資料を基にいたしまして、それから諸般の事情を斟酌してきめることになるわけでございますが、お話のように例えば二カ月経つても、それの判断がつかないという場合は確かにあり得るわけでございまして、さような場合には止むを得ずして若干の延長をする、これは本人には大変気の毒ではあるけれども、重大なる事項を決定するわけでございますから、これも止むを得ないではないだろうか、かような大体の考え方に基いたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/71
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072・亀田得治
○亀田得治君 日本の裁判所で本当にこの判断がつかないために二箇月以上かかつておる、こういう場合に要求しておるほうは或いは故意に延ばしておるのである、これはやはりそういう問題の起るのは、やはり政治犯について起ると思うのです。そういうのはあちらとしても特に要求したいわけですね。普通犯罪だと自国の建前からは普通犯罪であるから渡せ、こう強硬に言つて来ているわけだと思うのです。そういう場合にこちらが判断つきかねるためにいろいろ調べて二曹以上かかつて、何かこういうつまらないところで感情的な問題に発展するということは非常にまずいと思うのですね。君のほうの法律にちやんと二箇月と書いてあるじやないか、それ以上延ばすのだつたら、身柄だけでも一つ釈放したらどうかというようなふうなことを言われた場合困るのじやないか。だから初めのほうは成るべく速かに審査を開始すると書いてある。あとのほうの拘禁されておる者については普通よりももつと速かに処理するようにするというふうな書き方のほうが、まあそのために裁判所が審査をするのをルーズにやつていいという意味ではないのですよ、そういう意味ではないのですが、法律そのものはその程度にして、そうしてどうしてもこういうことを書いて置く必要があるということなら規則でも私は十分じやないかと思うのですが、国際関係のことがありますので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/72
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073・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) そういうふうな逃亡犯罪人を要求する場合は、向うではどうしてもその人間が欲しいと言つてまあ強硬に主張するわけであります。従つてさような場合に、それをそのまま或いは政治犯でないという主張をして実際は政治犯を向うでとりたがるという場合もあり得ることはお話の通りだろうと思います。さような場合一なかなか判断がつかなくて二月延びた、それで東京高等裁判所でまだ決定がつかないから身柄を放せということには私はならんと思います。と申しますのは、向うでは是非身柄が欲しいのですが、それを内地で放しますとどこに行くかわからん。向うでは是非それを抑えてもらつて、そうしてこれを引渡してくれという、こういうのが要求でございますから、そういう問題は起きないと思うのでございます。我我のほうといたしましては、主として問題を如何に引渡しを受けた人間の人権を保障するかという面と、それから東京高等裁判所においての審理の実際の形態においてどれくらいが一番妥当であろうかというようなところで組合せたのが二箇月という考え方でございますが、なおそれでも只今御心配のような国際紛争というか、いろいろな外交折衝が非常にとんがつて参ることがこれはあり得ると思います。さような場合には、現在の国際法の建前では、国際司法裁判所というものにどちらかが提訴をいたします。それによつて事を平和的に処理するかようなことにまあ大体なつておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/73
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074・亀田得治
○亀田得治君 まあ私が放せと言つたのは、つまり俺のほうへ引渡せ、そういう意味での放せですね、そういうことが強硬に言われて来た場合に困るのじやないか。これは日本では訓示的規定であつて、大した重要性はないので、そんなことを言つてもちよつと承知しないのじやないかと思いますね。それで私はそういう問題になつて来たら二月や三月じきに経つと思うのです。というのは要求しておるほうは、日本政府に持つて来る資料としては普通犯罪としての資料しか持つて来んのです。そうすると日本の裁判所でその人を調べた場合にはそういうことに関係ないので俺のほうはこうこういう政治的な関係なんだというふうに申立する、全然資料が整わないからそう私は簡単には判断がつかないのだろうと思うのですね。だからこれは極めて良心的に書かれた二箇月でしようが、却つてこういうことが何かのはずみに非常なマイナスになることがないかどうか。これは本当に心配になるのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/74
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075・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) 御心配御尤もでございます。ただ各国とも同じような問題がこれは起り得るわけでありまして、裁判所の判断を仰いだ上で、その判断の上に立つて行政処分があるという各国の立法例を見ましても、その点の配慮はやはり一応しているようであります。中には明確に二箇月更新の手続というようなことを書いたところもございます。それから期間を変更し得るということを書いたところもあるようでございますが、ただそれを表面から出しておきますと、如何にも延びるのは勝手放題、延ばし得るんだからまあよかろうというふうな気持が自然動くわけでございます。さようなことがあつては、本人の身柄を保護するゆえんではない、やはり両方の調和点をこの辺で書いておくのが一番妥当であろうというので、二箇月内に判断をするものとするという表現を使つたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/75
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076・亀田得治
○亀田得治君 私この場合の拘束されておる被疑者といいますか、この人の人権の尊重は一箇月や二箇月の拘束の問題じやなかろうと思う。そういう場合におけるその人の最も重要なことは、どちらに一体判断されるか、その正確な判断を少々延びてもいいから正確にやつてもらいたい、そういうことが中心であろうと思うのですね。だから普通の被疑者、被告人の場合の拘束という問題を一日でも早く解決してやりたい、出してやりたい、そういう観点と少し違つた立場で一つ考えて行かんといかんじやないかと思うのです。そういう立場から特に書く必要はないじやないか。書かんでも済むことじやないですか、二箇月ということは……。そう思うんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/76
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077・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) 御尤もでございます。ただやはりこういう審問手続というものは、殊に対外的な関係もございますし、それから今の身柄の点についても日本国の大体の、何といいますか、かような身柄に対する配慮といつたようなものでございますね、そういうようなものが法文に現われておるほうが、いわゆる文明国的であろう、これは各国似たような形をとつておりますので参照したわけでありますが、これと一応参酌されるのは、例の勾留期間の二箇月ということも考えられるわけであります。それはとにかくといたしまして、東京高等裁判所においての実際の取扱いを想像いたしますのに、大体二箇月あればこれは丁度いいあんばいじやなかろうか、むしろ中には一箇月くらいで済むのもありましようし、そういうのはすぐ引渡なり、どちらかの決定をすればいいわけです。ただ身柄の尊重の意味から言つて、二箇月は越さんようにというふうな心がまえを裁判官にも持たしておく必要があろう。かような点を重視いたしまして立案したものでございます。国際関係の点もいろいろ顧慮いたしまして、ただ各国同じような立法でありますと、これはいわばお互い様でございまして、そういう問題はお前のほうの法律もそうなつておるじやないかというようなことで、一応は逃げられるわけでございまして、実際は大抵そういう事件は起るまいと実は確信しておるわけでございます。紛争は余り起るまいと思つておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/77
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078・亀田得治
○亀田得治君 いやこれは必ず今後起りますよ。私はそういう見通しを持つております。それでお尋ねしたいのは、各国によつて幾らか違うのでしようが、大体こういう趣旨の規定は置かれているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/78
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079・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) さようでございます。先ほどちよつと申上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/79
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080・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 他に御質疑ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/80
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081・楠見義男
○楠見義男君 私は極く簡単なことで二点だけ伺いたいのですが、それは逃亡犯罪人引渡条例と、それから今度の法律との内容的に違つた点で一、二伺いたいのであります。それは第一点は、今亀田さんから御質問のあつた、二箇月以内の問題と関連することなんですが、旧条例の十七条では、二箇月以上留置せらるることなかるべし、こういうふうになつておりますね。そこで、その二箇月経てば釈放といいますか、身柄を自由にさせられる、今度はその行き方を変えて、今問題になつておるような訓示規定ではありまするけれども、二箇月以内に決定を下す、こういうふうに新らしく法律にはなつておる。この相違はどういうような理由から来ておるのか、これを先ず一点伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/81
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082・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) 前の条例におきまして、そういう点が問題になつたのでございます。で、二箇月経つたら必ず身柄を放さなければいかんということに例えばいたしておきますと、審理がもうちよつと経てば、あと二週間或いはあと一週間で完全にどちらか判定がつくという場合にも、一応身柄を放さなければいかんというような問題が出来て来るわけでございます。併し若しそれが一週間経つたあとで、調べて見たらやはり引渡すべき事件であつたということになりました場合に、それから又追かけてどこか探して歩くということになるわけでございまして、これは手続としても非常に困難であるのみならず、いわば裁判所の審理権というものをその面から制約するというふうなことにもなりまして、問題が紛糾する余地が非常に多くなる。そこで「ものとする」という面で、若干の弾力性を持たせつつ、何と申しますか、成るべく早くやれという趣旨をそこに入れた、かようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/82
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083・楠見義男
○楠見義男君 二箇月以内に決定をするものとするという強い訓示的な規定とすれば、旧条例でも私はよかつたのじやないかと思うのですが、そこで具体的に今おつしやつたような、もう少しすれば事件が解決する、判定がついたというような具体的の事例はあつたのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/83
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084・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) 実はこの逃亡犯罪人引渡条例関係の資料を私ども相当あちらこちら探しまして、主として学説方面の資料は大分集まりましたのですが、実例のあれは、この前の空襲で全部焼失いたしましたのでございます。それで数学やなんか、文献その他に残つているのをこちらにまとめまして、資料に差上げたのでございます。具体的な事例としてはちよつとないのでございます。ただ観念的にはそういうことはあり得るし、各国の立法例もそうなつておるのであるから、これは恐らくはかでも問題になつたからそうなつたのだろうというような観点から立案したのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/84
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085・楠見義男
○楠見義男君 それからもう一点、十五条なんですが、新らしい法律の十五条によると、引渡命令があつてから三十日目の日とするとありますね。それからこれに該当する旧条例においては、そういうような規定なしに、すぐにでも引渡ができるようなふうになつて、ただ或る期間内に向うから引取がなかつた場合の規定が置いてありますね。これは旧条例と新らしい法律との相違は、どういう理由に基いてこういうような三十日目の目というような限定をやつているのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/85
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086・岡原昌男
○政府委員(岡原昌男君) 今度の十五条は、趣旨としては前と違つておらないつもりでございます。と申しますのは、「前条第一項の引渡の命令による逃亡犯罪人の引渡の場所は、逃亡犯罪人が拘禁許可状により拘禁されている監獄とし、引渡の期限は、」ということで、最終期限は、「引渡命令の日の翌日から起算して三十日目の日とする。」但し、拘禁されていないときは云々ということになりまして、いつでもすぐに渡せる。併しいつまでも取りに来ないならば放してしまいますよ、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/86
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087・楠見義男
○楠見義男君 わかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/87
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088・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 他に御質疑ございませんか。御質疑がないようでありますから、質疑は終局したものと認めて、これより討論採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/88
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089・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 御異議ないものと認めてこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。別に御発言もないようでありまするから、討論は終局したものと認めて直ちに採決に入ります。
なお、念のため申上げますが、本案につきましては、説明を聴取いたしました通り、衆議院において修正されましたので、この修正点をも合せたものが原案でございます。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/89
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090・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 全会一致と認めます。よつて本案は全会一致を以て原案通り可決すべきものと疾走いたしました。
なお、例によりまして、委員長の本会議における口頭報告の内容その他は、便宜委員長に御一任願います。
本案に賛成の諸君の御署名を願います。
多数意見者署名
宮城タマヨ 楠見 義男
亀田 得治 木村篤太郎
青木 一男 棚橋 小虎
小野 義夫
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/90
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091・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 次に、先般設置されました売春対策に関する小委員についてでございますが、この小委員の人選は委員長に御一任願つておりました。その後委員各位の御希望を伺いました結果に基きまして、次のかたがたを小委員に指名いたしたいと存じます。
加藤武徳君、小野義夫君、宮城タマヨ君、楠見義男君、亀田得治君、赤松常子君、棚橋小虎君、一松定吉君、及び私、郡祐一の九名でございます。
本日はこれを以て散会いたします。次回は明十七日午前十時から開会いたします。
午後二時二十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X01419530716/91
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