1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月二十九日(水曜日)
午前十時四十八分開会
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委員の異動
本日委員加藤武徳君辞任につき、その
補欠として吉野信次君を議長において
指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 郡 祐一君
理事
小野 義夫君
宮城タマヨ君
亀田 得治君
委員
大達 茂雄君
中川 幸平君
吉野 信次君
楠見 義男君
中山 福藏君
三橋八次郎君
赤松 常子君
棚橋 小虎君
一松 定吉君
国務大臣
法 務 大 臣 犬養 健君
政府委員
国家地方警察本
部長官 斎藤 昇君
国家地方警察本
部刑事部長 中川 董治君
法務政務次官 三浦寅之助君
法務省刑事局長 岡原 昌男君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 堀 真道君
説明員
最高裁判所長官
代理者事務総局
(刑事局長) 岸 盛一君
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本日の会議に付した事件
○理事の補欠選任の件
○刑事訴訟法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/0
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001・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 只今から委員会を開きます。
理事加藤武徳君が委員を辞任されましたので、理事に一名欠員を生じましたので、この際理事の補欠互選を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/1
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002・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めます。互選の方法は成規の手続を省略して、便宜その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、さよういたして御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/2
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003・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めます。理事に小野義夫君を指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/3
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004・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 次に、刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題に供します。速記をとめて下さい。
午前十時四十九分速記中止
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午後零時二十分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/4
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005・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて下さい。午前はこの程度で休憩いたします。
午後零時二十一分休憩
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午後六時五十一分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/5
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006・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 只今から委員会を再開いたします。
本案につきまして質疑は終局いたしておりますが、楠見君から発言を求められておりますので、発言を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/6
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007・楠見義男
○楠見義男君 私は法務大臣に一点だけ御所見をお伺いしておきたいのでありますが、それは百九十三条の規定に関連しての問題でございますが、この問題は検察官と警察との相互協力、又その協力の下における運営を円滑にして行くという趣旨から、衆議院においても又当院においてもこの問題については相当論議を重ねた問題でありホす。ところが衆議院でこの改正法案を可決するに当りまして附帯決議がせられました。その附帯決議として私ども承知いたしましたところと、それからその附帯決議ができるまでの間において衆議院の委員長或いは理事のかたがお見えになりまして、その原案と申しますか、ともおぼしきものを前以て頂いたのを文句が違つておりましたので、その点について衆議院のほうのかたにお伺いし、又最終的にできた附帯決議について政府側の受入れ態度について実は先般お伺いしたのであります。ところが私の聞いたところでは、大体同じような意味ではなかつたかと思つたのでが、なお念を押して検察側及び警察側の意見を聞きましたところ、必ずしも意見は釈然と一致しておらないように看取せられました。併しこの問題は事柄が非常に重要なデリケートの問題であつただけに、あいまい模糊のうちにこの法律が通つて、そして我々が一番懸念しておる相互間の堅密な連絡にこと欠き、或いは運営上不円滑というようなことになれば、折角衆議院及び参議院で心配いたしました点が杞憂に終らずに済んでしまう、こういうことになるわけであります。そこで問題は両者間において事前に十分の協議連絡を遂げるということ、それから又個々の事件についてこれを指揮するというような事柄がないこと、との点について一番問題になりましたのは破防法の関係でございましたが、この点は先般大臣が、この委員会でもお述べになりましたように、真に止むを得ざる措置としてああいうことをやつたんで必ずしも前例にするものではないと、こういう御発言もあつて、私どもはそれを了承いたしました。ところが、事務当局の間で今申しますように、必ずしもその意見の釈然たる一致は私はないように看取されたので、この点は法務大臣からお伺いしたい。結論は衆議院のあの附帯決議を受入れる大臣としての立場と申しますか、御所見をお伺いしておきたいと思います。それだけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/7
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008・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 楠見さんの御心配御尤もでございまして、十分もうすでに御承知のような長年のいきさつがございます。私の在任中にこの問題はもう心魂を傾けて一つ解決したい、こういうことで、私の承知しておる範囲では両方ともその趣旨には賛成をしておるわけであります。ただ個々の事務的な答弁を委員がお求めになりますと、丁度朝鮮休戦の最後で、弾丸撃ち合いになるわけでございまして、もう話がついたから急に折れるということもできにくい。それも私は面白くないと思いますが、併し私はその意味において附帯決議を付けて頂くことをいとわないのみならず、或る点でこれで叱つて頂く、こういう意味で喜んで附帯決議を、楠見さんの御質問に対しても、むしろ富んで私はお受けしたいように申上げておるのはそれなんであります。今お話がありましたように、一般的指示をする場合は決して抜打ちにしない、これはこ上におります清原次官もはつきり認めておる次第でございます。相互に協力して行く、そうしなければ一体物事はうまく参りません。これも十分確認さしたところでございます。一般的指示によつて個々の事件を直接指揮しない、捜査に直接指揮をしない。これも実はここにおります清原次官と国警長官と立会わせまして、国警長官と更に警視総監とも連絡をしたわけであります。最初は直接目的として指揮をしないと書いたところが、目的は、志はよかつたが影響のほうはおれの知つたことじやないと検察側の言われるのを、警察側は非常に恐れましたので、それも尤もだ。結果のほうから今度は書いて見たのですが、どうもうまく書けないのであります。そこで目的、結果、皆抜きにして、一番さつぱりしていいじやないかというので、これを書いたのであります。そこまで両方で苦心し合いましただけの努力が必ずあとに残つて、今後とも直接指揮を検察官が警察官に個々にしないということをここで確認をせられたものと考えるのであります。大体お打明け申上げますと、警察側は一般的指示はいい、現行法でも一般的指示は書いてある。問題はどんな立法的措置が、もつと突つ込んで言えば、破防法的な捜査線に検事の承認を得るという強いものがたびたび出るのだが、初めはそれは違法ではないかという疑いさえ持つたようでありますが、ここに法制局の野木第二部長が見えまして違法ではない、併し一般的指示の限界点に達しておる措置だと思う。私どもとしましては、政治的に、一般的指示の限界点に達しておるのは適法だと言つて、指令を出すには実際上適宜な措置だとは思いません。それで国警側に対して、あれは特殊事情による、と申しますのは、あのときは国警側で大分御要請がありまして特殊事情による止むを得ざる措置だ、これは必ずしも前例としない、絶対に前例としないというふうに書ければ善きたいのでありますが、これは法律屋の立場から言いますと、将来絶無とも言えませんので、絶対という字は避けたのでありまして、必ずしも前例としない。そうして特殊事情による例外的措置だ、この二つの制限をいたしておるのでありまして、めつたにないことだというふうに、呑込んでもらうことにいたしたわけであります。さようないきさつから申しまして、この附帯決議を空文化する心持は毛頭ないと思います。警察側も、検察側も最後まで事務的な意見はどうかと言えば、これまでの立場の意見を申すでしよう。このように国の最高機関から附帯決議を以つて制約せられました以上は、私は日本国憲法の建前から申して、これに背くということはあり得べからざることと考えております。今後理窟は抜きにして、感情を和らげて本当に協力するように、私はときどき両方会つて飯でも食つて見たいと思つております。私の衷情は一つ御諒察願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/8
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009・楠見義男
○楠見義男君 了承いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/9
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010・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/10
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011・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。これより直ちに討論採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんが。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/11
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012・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めまして、これより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/12
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013・一松定吉
○一松定吉君 私はこの政府の御提出になりました原案のうち、衆議院で修正せられまして、当院に送付せられたるところの衆議院の修正案は大体において賛成でございますが、そのうち二、三カ所なお修正を加えたいと考えられますから、その点を申上げて、然るのちに態度を明らかにしたいと思います。
先ず、衆議院から送付せられました修正案のうちで、第百九十九条第二項を次のように改めるというこの一項目であります。この項目の本文において私は賛成でありますが、但書の「明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、」云々とありまするが、このいわゆる「明らかに」という四字を削るのです。四字を削りまして、「但し、逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。」そうしてその次に「裁判官は、司法警察員から第一項の逮捕状の請求のあつた場合において必要があると認めるときは、検察官の意見を聴くことができる。」という一項を加えたいのであります。而してそのあと百九十九条の第三項の衆議院から送付せられました修正案には、それ以外の分は賛成であります。
次に衆議院より送付せられました修正案のうちの二百八条の二の改正規定に対しまして、少しく修正意見を述べたいのでありますが、この二百八条の二の改正規定のうちで、「事件については、」と、「裁判官は、刑法第二編第二章乃至第四章又は第八章の罪にあたる事件については」とありまするのを、「事件で禁錮以上の刑に処すべきものと思われる被疑者にかかるものにつき、犯罪の証明に欠くことのできない共犯その他の関係人又は証拠物が多数であるため警察官が前条の期間内にその取調を終ることができないと認めるときは、その取調が被疑者の釈放後では、甚しく困難になると認められる場合に限り、」とかよう改めて、「認められる場合に限り、検察官の請求により、前条第二項の規定により延長された期間を更に延長することができる。この期間の延長は、通じて五日を超えることができない。」かように修正をいたしたいのでございます。
次にこの衆議院から送付せられました修正案のうちの、二百九十一条の二の改正規定、これは、原案は二百九十一条の二、「被告人が、前条第二項の手続に際し、起訴状に記載された訴因について有罪である旨を陳述したときは、裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人」、こうありますのを、衆議院では「検察官、被告人及び弁護人」と、こういうふうに修正をしておりまするが、その上に私は、「弁護人の同意あるときは」、この「意見を聴き」というのを、「同意あるときは」と、こういうふうに修正をいたしたいのであります。それ以外は衆議院より送付せられました修正案に全部賛成し、それ以外は政府原案に全部賛成をいたしたいのであります。
そこで衆議院から送付せられました、この附帯決議の「警察官の定める一般的指示を行う場合には、検察と警察とが、あらかじめ、緊密に連絡し相互に協力すみことを政府は建前とせられたい。右の一般的指示により個々の事件の捜査を直接指揮しないよう留意されたい。」この附帯決議は、只今楠見君より法務大臣にお伺いいたしまして、法務大臣が熱心に検察官並びに警察官の間において相剋摩擦の起らないように、円満に刑事事件の捜査に当りたいということについて、熱心なる努力を以てこの附帯決議の趣旨を奉じて相剋摩擦なからしめる、円満に捜査の目的に努力するという御発言に対しまして、私は敬意を表します。この附帯決議はそのまま私は賛成いたします。
これと同時に当院におきましてなお一つの附帯決議を提案をいたしたいと思うのでございます。それは今回の必要的保釈の除外事由の範囲が相当拡大せられました。そこでこの法律の運用に当りまして裁判所のかたが保釈の範囲を十分に考慮せられ、我々立法者の意思を尊重せられまして、この保釈の制度の運用に当りましては慎重に御注意せられまして、保釈を余り制限することのないように十分に考慮して、法務大臣が検察、警察の円満な事件の運用に当らせるというその御趣旨のあるように、範囲が拡大せられましたけれども、それに拘泥して保釈をしぶるというようなことのないように、当該関係人は注意すべきものであるという決議案を附けたいのであります。これを読上げますと、
附帯決議案
この法律案は、必要的保釈の除外事由の範囲を相当拡張することにしているのであるが、その実施については、慎重を期するよう充分に注意すべきものである。
右決議する。
これを附帯決議として附けられることを希望いたしまして私の修正意見を申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/13
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014・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/14
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015・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて……、どうぞ他に御発言がありますれば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/15
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016・楠見義男
○楠見義男君 私は緑風会を代表しまして、本改正案について、只今一松委員からお述べになつた修正案を含めまして、賛成をいたしたいと思います。
ただ、この機会に希望を付しておきたいのでありますが、それはこの改正案は、新刑事訴訟法実施の経緯に鑑みまして、実際上従来不利不便とした点を改正する点にあるのでありますが、それが同時に又他面、人権擁護の立場からいたしまする見解との相剋を如何に調整するかということが最も大きな問題となり、その故をもつて衆議院の法務委員会においても、又当院のこの委員会におきましても、かくそれぞれ慎重に審議を尽しておるところでございます。その結果只今一松さんかにもお述べになりましたような修正意見もできまして、万全ではございませんが、或る程度各委員のかたがたの苦慮せられておりましたところが、補正されたと私は信じます。その故に冒頭に申上げましたように賛成をする者であります。ただこの法案の成立後における運営につきましては、政府委員の方方も、問題の所在点は十二分に御承知のはずでございますから、委員会において心配をいたしておりました運堂上の問題については、どうぞ万全を期して頂きたいと思うのであります。
なお、運営の問題に関連いたしまして、最後に、先ほど法務大臣に私御質問いたしました、検察側と警察側における従来のいざこざの点でございます。この点については只今も一松さんからお述べになりましたと同様に、私は法務大臣が、この問題に関しての円満なる、又円滑な運営を今後図つて行かれようとするその御努力の存する御所見については、私も一松委員と同様に敬意を以て拝聴いたしました。どうか御所見としてお述べになりました通り、今後この運営については、特段の御配慮をわずらわしたいと思います。このことを申し添えまして賛成いたします。
なお、一松委員の御提案になりました附帯決議についても、同様に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/16
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017・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/17
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018・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/18
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019・亀田得治
○亀田得治君 私は今回の刑事訴訟法の一部改正に、結論として反対をいたします。でその理由といたしましては、大きく申上げて二つのことを申上げたいと考えておるのです。
でその一つは手続上の問題になろうかと思いますが、今回の改正案が出されるに当りまして、成るほど政府は法制審議会をはじめ、いろんな関係方面の意見を徴されたこういうふうに私ども承わつておりましたが、併しそれらの意見が十分に調整されておらない。そういう状態でこれが出されて来たことは、もう審議の経過を見ても極めて明白だと考えております。でそういうことの結果が、私は今までの法律案で殆んど前例を見ないような大修正を国会で行わなければならないような結果になつたものと実は考えております。でこういう刑事訴訟法というものは、これは誰が考えましてもそう簡単に手を加えていいような法律ではございません。非常に基本的な法律でございます。国家の裁判権とか、捜査権とか、或いは国民の基本的な人権、こういつたようなものがここに集約されて来ておるような極めて大事な法律なんですね。そういう法律の改正に対しまして、非常に意見が統一されないままに、そうして又いろんな考え方が余り消化されないままに提案をされて来た。私はまあこのことだけから見ても随分遺憾であると実は考えておるのです。而も審議の経過においてこれだけの大修正があつたということになりますと、政府が当初意図しておりましたところの目的、考え、これは何かあつたと思うのです。それが殆んどずたずたに切られたような恰好に実はなつておるのです。で私はこういう刑事訴訟法の改正というようなものは、決して一日を争うような問題ではございません。どこかに水害があつて、すぐ補助金を持つて行かなければ大変なことになる、そんな問題では決してございません。私はそういう意味から言いましても、こういう審議の経過を辿つて来た場合には、賛成、反対、内容に対する賛成、反対といつたようなことは少し第二段といたしまして、政府が法律の取扱いについて慎重に考え直す、これが私当然ではないかと考えておるのです。こういう刑事訴訟法というような法律は、やはり各方面の御意見が消化されて、よく一つになつておらなければ、これはもう成立したのちにおきましても、非常な無理が出て参ります。私はそういう意味からも、どうもこの急いで無理やりにこれを通してしまうというふうな、実は感じがしてならないわけです。そういうふうな立場から、内容の問題を一応離れましても、もう少しこれは慎重におやりになつて、いろいろな方面の意見を調整されてからで十分結構ではないか。こういうふうな考え、これが第一の反対の理由でございます。
それから第二の問題は、この法案の内容でございますが、随分必要以上に国民の人権を拘束するような規定がたくさん生れて参つております。これは当面のいろいろな必要というふうなことが、絶えずそういう場合に政府側から説明をされて来ておりますけれども、国家というものはもう少し大きな立場でいろいろ問題に臨んで行く必要があろうかと実は考えておるのです。そういたしませんと、当面の現象にとらわれまして、結局は何といいますか、それ以外の一般の国民大衆にも迷惑を及ぼすような事態が、少し時世が違つた場合には出て参ることを、私どもはより一層実は心配をいたしております。そんな、現象的に、こういう問題があつたからこうだとか、そんなことで、めつたにこういう大事な基本的な法律に手をつけてはならない、こういうふうに実は考えておる次第でございます。でそういう立場から見ますと、例えばこの本院においては修正案が出ておるのでございますが、二百八条の二の規定ですね。これはまあ原案と、衆議院の修正案と、それに対して更に参議院で出されておる再修正案、これらを比較いたしますると、その間にいろいろ長所欠点はございます。併しながら衆議院が通り、更に参議院をも通ろうとしておる案を見ましても、明らかにこれは特定の被疑者に対しまして差別待遇をやつておる。私はこれは大変重要な問題だと考えております。そういう差別待遇という点だけを取上げて考えてみますると、むしろ政府原案のほうがよほど立法者としての筋が通つているのじやないかというくらいに実は考えるのでございます。まあこれは一つの例でございます。
ほかの各条についてこれは時間の都合もございますから一々触れるようなことはいたしません。勿論この内容的に見ましても、まあ中には私どもとして非常にいい改正だ、こういうふうに実は考えておるものもあるのでございます。それの最たるものは、百九十九条の第二項これが衆議院で適当な修正案が出されまして、そうして本院に廻つて来て、更にそれに対してよりよい意見が附加されようとしておりますが、これなんかは、従来の逮捕状の濫用の問題に対しまして随分憲法の精神にふさわしいところのいい考え方をここに打出して来た。私はこの点の改正は、これは随分画期的な改正だと実は考えている、このためには最高裁なり関係者が今までとは違つた一つ考え方を持つて、そうしてこの新らしく生れて参りました逮捕状の必要性に対する裁判官の判断、この問題に対して一つ大いに取つ組んでもらいたい。そのためには来年度の裁判所関係の予算案を作られる際には、予算面からもその裏付けをしてやるように、それぐらいの一つ積極的な態度を以つて臨んでもらいたいと考えておるのでございます。
まあそのほかにもいろいろございますが、悪いところを代表的に申上げた関係上、これはいいところも一つだけ申上げる程度にいたしておきたいと思うのです。ただ全体を比較してみますると、現行法に比較いたしましてやはり政府の原案が一番悪かつた。それに対して国会で加えたところの修正、これは政府の原案に比較いたしますならば随分よくなつたと私どもは確信をいたしますが、併し現行法に比較いたしますると、相当悪くなつておると実ぱ感じておるのでございます。併し内容の点の評価につき本じては、これはいろいろものの見方もあろうかと存じますけれども、最初に申上げましたように、その内容の問題と同時に、余り、にも意見が調整されないままにある現状におきまして、そうしてこれを通し行こうという、そういう手続的な、非常な、何といいますか聞違つた点、そういう点も併せ考えますると、この現行法の改正につきましては、我々左派社会党といたしましては反対せざるを得ないと、こういうふうな結論に相成るわけでございます。(「進行」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/19
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020・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 他に御発言ございませんか……。御発言がないようでございますから、討論は終局したものと認めて、直ちに採決に入ります。
なお念のために申上げますが、本案につきましては、衆議院において修正されておりまするので、この衆議院修正をも含めましたものが原案でございます。
先ず一松君提出の修正案を議題に供します。本修正案に賛成の諸君の御挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/20
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021・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 多数と認めます。よつて一松君提出の修正案は可決されました。
次に只今可決されました修正部分を除く原案全部を問題に供します。修正部分を除く、原案に賛成の諸君の御挙手に願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/21
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022・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 多数と認めます。よつて本案は多数を以て修正議決すべきものと決定いたしました。
次に、討論中一松委員よの提出されました附帯決議案を議題に供します。本附帯決議案を委員会の決議とするごとに賛成の諸君の御挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/22
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023・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 多数と認めます。よつて一松君提出の附帯決議を委員会の附帯決議とすることに決定いたしました。
なお、例によりまして、本会議における委員長の口頭報告の内容等事後の手続は、例によつて委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/23
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024・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めます。
次に、本案に賛成の諸君の御署名を願います。
多数意見者署名
吉野 信次 楠見 義男
小野 義夫 中山 福藏
赤松 常子 中川 幸平
宮城タマヨ 一松 定吉
棚橋 小虎 大達 茂雄発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/24
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025・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 本日はこれを以て散会いたします。
午後七時三十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615206X02519530729/25
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