1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月十七日(金曜日)
午前十時三十四分開議
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議事日程 第二十二号
昭和二十八年七月十七日
午前十時開議
第一 労働金庫法案(栗山良夫君外十三名発議)(委員長報告)
第二 農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第三 地方公共団体の負担金の納付の特例に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第四 木船再保険特別会計法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第五 漁船再保険特別会計における漁船再保険事業について生じた損失を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第六 印刷局特別会計法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第七 消防施設強化促進法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第八 司法試験法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第九 少年法及び少年院法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第一〇 逃亡犯罪人引渡法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第一一 海上運送法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第一二 輸出信用保険法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/0
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001・河井彌八
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
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002・河井彌八
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
この際お諮りをいたします。北村一男君、片岡文重君から、病気のため会期中それぞれ請暇の申出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/2
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003・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつていずれも許可することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/3
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004・河井彌八
○議長(河井彌八君) この際お諮りをいたします。労働委員長から、電気事業施設及び炭鉱の坑内事情について実地調査するため、北海道に伊能芳雄君、阿具根登君、吉田法晴君、市川房枝君を、福島県に井上清一君、田村文吉君、梶原茂嘉君、上條愛一君を、福岡県に栗山良夫君、田中啓一君、寺本広作君、堀眞琴君を、本月十八日から二十一日までの四日間の日程を以て派遣されたい旨の要求書が提出されております。委員長要求の通り議員を派遣することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/4
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005・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて委員長要求の通り議員を派遣することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/5
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006・河井彌八
○議長(河井彌八君) この際、日程に追加して特需工場労働者等の地位改善に関する決議案(栗山良夫君外十四名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/6
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007・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。本決議案につきましては、栗山良夫君ほか十四名より委員会審査省略の要求書が提出されております。発議者要求の通り委員会審査を省略し、直ちに本決議案の審議に入ることに御異議、ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/7
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008・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発議者に対し趣旨説明の発言を許します、栗山良夫君。
〔栗山良夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/8
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009・栗山良夫
○栗山良夫君 先ず、只今議題となりました特需工場労働者等の地位改善に関する決議案文を朗読いたします。
特需工場労働者等の地位改善に関する決議
特需工場労働者及び駐留軍労働者は、所謂「人事条項」等により労働法の適用が事実上不明確になり、その地位は不安定であるが、労使関係における問題は、労使の完全な自主性により解決するのが妥当であるから、政府は、これが改善のため、速やかに適切な措置を講ず必要がある。
右決議する。
というのでございます。只今朗読いたしました決議案につきまして発議者を代表いたしまして私より提案の理由並びにその趣旨を御説明申上げます。
本決議案は、米軍から注文を受けて兵器等の修理並びに生産を行なつておる民間会社における労働者及び政府が雇用して米軍に提供しておる日本人労働者の労働法上の地位を確立するため、直接間接に労使関係に不明朗な影響を与えている労務に関する契約条項即ちいわゆる人事条項の改善について、政府に対し、直ちに米国側に折衝をし、善処すると共に、行政協定の規定に基く施設内の労働者に名実共に労働法が適用されるよう、その善処方を要望いたしたものでございます。
今ここに問題となつておりまする人事条項について御説明を申上げますると、米軍側の調達要請に応えて兵器等の生産修理の請負契約を締結するためには、次のような人事条項に請負業者が同意しなくては契約が成立しないことになつておるのでございます。即ち「契約担当官が契約業者に対し次に述べるような者の雇傭を中止し若しくは拒否することを書面を以て通告した後は、この契約に基く事業若しくは作業の遂行のために契約者によつて任用せられた雇傭人、使用人、又は職員の何人をも、当該契約者に属する事業場の如何なる場所においても雇傭してはならないし、又既に雇傭した者と雖も解雇しなければならない」となつておるので。ございます。又、米軍と日本政府との間に締結せられました労務基本契約中には、人事条項といたしまして、第七条に次のように調われておるのでございます。「契約に基いて契約者が提供する人員は、契約担当官の監督指揮管理並びに承認を受ける。契約担当官において契約者が提供した、ある人物を引続き雇用することが、米国政府の利益に反すると認める場合には、即時その職を免じ、その雇用を終止する」というのであります。
この人事条項の改訂については、米軍と日本政府間の労務基本契約は昨年六月に失効しておりまするが、改訂について日米の協議が調わないために、今日まで従前のまま一ヵ月ごとに更新しているのでございます。
今後の見通しについて申上げますると、去る七月七日富士自動車株式会社の追浜工場を視察し、米軍側と懇談をいたしました際、労働顧問ドウテイ氏が個人の見解として語つたところによりますと、「労務基本契約は未だ協議中であること、人事条項に関する草案は外務省の係官に渡してあること、又それは労働政策訓令五項目からなつており、そのうち二項目は保安解雇についてであること、その二項目のうち一つは解雇、他は苦情処理であり、解雇については例を挙げて示し、苦情処理については特別な機関を設ける」ということでございました。が併し、一方、米国と日本政府との間の労務基本契約は以上の通りでありますが、民間特需会社については米国側から次のように人事条項を強化したいとの強い要請がありましてすでに大多数が契約を更改している模様であります。
請負業者の従業員に関しましては、A、請負業者は次の事項に同意する。
(1)スパイ行為、怠業若しくは破壊活動が現に行われているか又はその虞れがある場合には、速やかに右に関して入手している情報の一切を完全な秘密報告書にしたためて契約担当官に提出すること、
(2)文書による要求があつた場合、本契約による業務を実施中の工場、製作所若しくは作業場勤務するいずれかの請負業者従業員について入手している一切の情報を契約担当官に提出すること、
(3)保安維持上、契約担当官又は同官の正式代理者が書類を以て指名するものを、本契約による業務を実施中の工場、製作所、作業場或いはこれらの一部から追放し、又は右のものの追放に当つて政府を援助すること、
B、請負業者が本契約による業務の遂行又は役務の提供の目的で配員する従業員、使用人若しくは役員について、契約担当官がその採用を拒否するよう又は解雇するよう書類をもつて請負業者に通告したのちは、請負業者はその組織内の如何なる部分にもこれらのものを採用したり或いは雇つておいたりすることはできない。
又、請負業者従業員の識別につきましては、
請負業者は各従業員にそれぞれ適切な識別用バツジを支給するものとする。
各従業員は、職場において就業中又は識別を必要とするその他の時期並びに場所において、常時バツジを着用するものとし、而も識別目的に副うよう、はつきり見えるところにこれを着用しなければならない。
請負業者は、契約担当官若しくは同官の正式代理者が要求する場合、提供した人員すべての指紋、写真或いは個人の識別に役立つその他のものは、人員が引続いて契約業務に従事し得るための必要条件としてとるものとする。
以上によつて、強化を要請されている人事条項の内容について御了解を願えたことと存じまするが、この人事条項を含む契約の性格についに次に申上げます。
米軍と日本政府との労務基本契約は、日本政府が労働者を雇用して米軍に提供するものであり、米軍と特需会社との請負契約も、米軍の注文を受けて兵器等の修理生産を行うものでありまして、契約の性格は全く私契約でありまするが、この私契約は、第三者たる労働三法の保護下にある日本の労働者を何ら拘束するものではないということが明かに認められております。かように法律論としては人事条項が労働者を拘束しない建前になつているにもかかわらず、実際には次のように好ましくない点がございます。
労働者側についてみますると、
一、人事条項があるために、職場の空気が不明朗となり、自由なるべき労働組合活動を制限することになること、
二、人事条項中の解雇の規定は解雇約款とは解されていないのでありまするけれども、実際には理由不明の解雇を強制されること、
三、指紋を取られることによつて、犯罪人視され、名誉を傷けられることになること、又、経営者にとつても次のような好ましくない点がございます。
一、情報提供の義務を怠つたという理由を以て請負契約を解除される虞れがあること、
二、スパイ行為、怠業、破壊活動などについて情報を入手するため、非常に困難な私警察的な活動を強制されること、
三、経営者は契約担当官の指示に従わなければならないため、労務管理の自主性を失うこと、
以上のように、人事条項は好ましくない点がありまするので、私どもが人事条項に関する見解を各界について調査いたしましたところ、次のようでございました。
労働委員会において、三回に亘り、関係の労働組合及び関東特需労働組合協議会の代表者の意見を聞き、又、特需会社の責任者及び日本経済団体連盟の担当部長の意見をも徴したのでございますが、いずれも全員口を揃えて本条項の撤廃又は緩和を要望いたしたのでございます。又、更に慎重を期するため専門の労働法学者諸氏を招いて問題を法律的に検討したのでありまするが、その表明された意見は、只今私が述べたところと全く一致しておるのでございます。
なお米国人の見解を参考までに申しますると、極東軍事裁判の弁護人でありましたプレークニー氏の著書でありまする「特需契約の理論と実際」の中には、人事条項について次のように述べております。「一般に特需工場労働者の雇用及び労働条件、労働者の保護のための条件、並びに労働関係に関する労働者の権利は、日本人の法令の定めるところによることが規定されているにもかかわらず、この条項のため、特需工場自体が法令に従つて従業員に対する適切な労務管理を実施することを妨げられ、その自主的な業務経営を侵害されるのみならず、労働者もその理由が発表せられないため安んじて働くことができず、労使関係の不安定を招来する慮れがあるのである」云々でございます。なお、ほかにもございますが、米国人であるプレークニー氏ですら、人事条項が日本の労働法の施行を妨げ、正常なる労使関係を不安定ならしむるものであることを認めているわけでございます。人事条項とはかようなものでございます。
かかることでは労使とも到底安んじて仕事に励むことができないのは当然でございます。従つて、七月一日より改訂を前に、労使とも極力米軍の新規契約条項に反対して来たのでございますが、結局個4の企業体やその連合体の力を以てしましては如何ともしがたく、業者や労働組合の一致した反対にもかかわらず、遂に一部には改訂新案の締結実施をみるに至つておるのでございます。ここで遺憾に思いますことは、前述のドウテイ氏の言葉によりますと、労務基本契約中の人事条項はきまつておりませんが、若し日米間に協議が調えば、特需契約の場合におきましても労務基本契約に準じて同様にやつて行きたいと思うということでございましたが、かような事情でありまするから、政府を相手とした労務基本契約の改訂に先んじて民間の特需工場の人事条項を強化いたしたことは、誠に理解に苦しむところであります。
申すまでもなく、個々の事件についての人事条項に対する法律解釈の最終的判断は裁判所が行うものであり、これによつて法律関係は現実に確定いたすものであります。併し、かような段階に至りまするためには、種々なる事情によつて長い期間を要するのでありまして、而もこの間、労働者は日々その地位の不安定に脅かされていなくてはならないのでございます。政府は法律の施行の責任を有するのでありまするから、労働法を完全に実施する建前に立つて、これら労働者の不安を除き、その地位の安定を図ることが必要でございます。
繰返し申上げまするならば、決議案の主たる趣旨は、特需工場労働者及び駐留軍労働者の現状を的確に把握し、労働法の完全な実施のため、政府は米国側と交渉し、速やかに特需工場の請負契約並びに労務基本契約中の人事条項を実情に即するよう改善することを要望いたしておるのでございます。
以上は、特需工場が行政協定の規定に基く施設に指定された場合と否とにかかわらず、人事条項を含む私契約を結んだ会社の労働者及び駐留軍労働者のすべてに共通した問題でありますが、更に提案趣旨の次の点について申上げますと、それは米軍の施設として指定を受けた工場又は施設内の軍管理工場における問題でありますが、これらの工場に働く日本人労働者に対する労働法の適用は、日米行政協定第三条第一項の規定による米軍の施設管理権、防衛権等に関する規定と、同協定第十二条第五項との関係が不明確でありますので、労働法は完全には適用されておらず、従つて労働者の保護もこの点で十分ではない状態であります。併し協定第三条第一項は一般的原則規定でありまして、第十二条第五項はその特則でありますから、施設内に労働法が完全に適用されることは言うまでもないと考えられるのであります。政府も又かかる立場に立つて、施設内労働者の実情を十分に考慮して、日米合同委員会等において米国側に強力に申入れ、それらの労働者の地位の安定を確保するよう努力する必要があると思います。
以上、決議案の提案の理由並びにその趣旨について簡単に御説明申上げましたが、何とぞ本決議案に御賛同あらんことを切望いたしますと共に、政府においても決議案の趣旨を尊重せられ、速やかに善処されるようお願いをするものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/9
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010・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本決議案の採決をいたします。本決議案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/10
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011・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本決議案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/11
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012・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第一、労働金庫法案(栗山良夫君外十三名発議)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。労働委員長栗山良夫君。
〔栗山良夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/12
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013・栗山良夫
○栗山良夫君 只今議題となりました労働金庫法案に関しまして、提案の理由、法案の趣旨並びに委員会の審議の経過について御報告をいたします。
先ず提案の理由について申上げますと、我が国のいわゆる労働金庫は、昭和二十五年に岡山県において岡山県勤労者信用協同組合として初めて設立されたものでありますが、現在では、北海道、東京、神奈川、大阪、兵庫等、すでに二十九の都道府県において三十の労働金庫が設立されておるのでございます。これらの労働金庫は、労働組合、消費生活協同組合その他の労働者の団体と、労働者を構成員とする協同組織でありまして、その事業は、一方において、労働者を中心に組織する団体の資金及びその団体の構成員たる労働者の手持金を広汎に吸収し、而も他方において、その資金をこれら団体の行う福利共済活動の資金として貸出すると共に、その団体の構成員たる労働者に対し生活資金として融資しておるのであります。これは、労働者が自主的組織によりその遊休資金を集めて、従来の金融体系において全く等閑に付せられていた労働者の生活資金金融の遂に活用するものでありまして、社会的にも大きな意義を有するのであります。然るに労働金庫は、これまで独自の法律がなかつたため、中小企業等協同組合法に基いてその信用協同組合として設立運営されて来ましたが、中小企業等協同組合法の規定するところは、本来の労働金庫とは、目的、構成組織、金融の性質等すべて異なり、そのため事業の運営にも幾多の不便を感じて来たのでありまして今後の労働金庫の健全な発達のためには、その本来の性格等を明確にすると共に、監督の適正を期することが是非とも必要であります。これが提案の理由であります。
次に本案の内容について主要な点を御説明いたします。
先ず第一に、本法案では、労働金庫の構成及び運営の主体を労働者を以て組織する団体に置き、個々の労働者は、会員となる資格は持ちますが、会員としての議決権の行使、役員の選任等、労働金庫の運営については、団体会員によつて行うように規定いたしております。労働金庫が労働組合運動の一環として行われておる経緯及び労働金庫の預金の吸収、貸付金回収の確保、事務費の節約等から考えまして、労働者を団体として把握することが労働金庫業務運営を円滑ならしめるゆえんであり、団体構成の建前を貫くことが好ましいのでありますが、未組織の労働者が相当多く存在する現状におきましては、会員資格を与えないことによつて金庫を利用する機会を閉ざすことは妥当ではございません。そこで、業務運営上、団体会員との差異を設けた上、個々の労働者についても会員となり得る途を開くことによつて、労働金庫の理念を現実に即するようにしておるのであります。
第二に、労働金庫の運営については、非営利の原則、直接奉仕の原則及び政治的中立の原則を定め、労働金庫の性格を明確にしております。即ち、労働金庫の事業の運営につきましては、労働金庫は、それ自体の利潤の追求を目的とせず、その事業の効果が直接に会員の利益として実を結ぶように運営されなければならないのであります。更に労働金庫は、労働者の団体の行う福利共済活動及びそれらを構成する労働者のために金融を行うものでありますから、労働金庫が政治的色彩を帯び、それによつて会員に損害を与えるようなことがあつてはならないというので、その趣旨を明確にいたしております。この点は第十五国会において参議院で可決を見た労働金庫法案と著しく相違しておる点であります。
第三に、本法案では、労働金庫の組織運営については、金融機関たる性格に反しない限り協同組織の原則を固くとつているのでありまして、この建前より、預貯金の受入れ、資金の貸付等の労働金庫の業務も、専ら会員たる団体と、これに加入する労働者及び会員たる労働者、これらの親族のみを対象としております。これは労働金庫が会員たる団体を構成する労働者及び個人会員たる労働者の相互扶助の組織である以上当然のことであり、又それによつて初めて労働金庫の民主的な健全な運営が期待できるという趣旨に基くものでございます。
第四に、本法案は、労働金庫が多数の労働者の零細な預金やその他労働者の福祉のための貴重な資金を預かる金融機関でありまするから、そのためには行政官庁の監督についても極力その適正化を図つております。
第五に、この法律を施行する行政官庁といたしましては大蔵大臣及び労働大臣といたしてありますが、労働金庫が広く労働者の福祉の増進と労働組合の運営とに密接な関連を有するものでありまするので、労働行政上の必要から、これを労働大臣に所管せしめると共に、労働金庫は一種の金融機関でありまするので、金融行政上の面からは大蔵大臣の所管といたした次第でございます。
以上、本法案の要旨でございまするが、次に委員会の経過等について簡単に御報告をいたします。
本法案は去る七月十四日労働委員会に付託されたのでありますが、十五日に委員会を開き審査をいたしました。法案の内容に関しましては、労働委員の殆んど全員が発議者でありまするので、特に質疑はなかつたのでございますが、この法律案がまとまつて発議されるまでの経緯に鑑みまして特に各委員において強く希望せられた点がございます。それは、労働金庫法の円滑な運営による金庫の健全な発達を図るため、労働金庫法の執行の任に当る労働省本省関係の職員を増員する必要があるということであります。行政機関の職員を殖やすことは一般的に言つて望ましいことではございませんが、必要な個所に必要な人員を配置することは、法の円滑な運営のため是非とも行わなくてはなりません。併しながら、この問題は国の基本政策に関する重要問題でありまするので、慎重を期する意味におきまして、本法案におきましてはこれに触れなかつたのであります。併しながら、各委員から労働省本省関係職員を増員することについての強い希望と政府への要望があつたことを重ねて御報告を申上げておきます。かくて採決に入りましたところ、全会一致を以て可決すべきものと決定されたのでございます。
以上簡単でございますが御報告といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/13
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014・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/14
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015・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/15
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016・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第二、農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。農林委員長片柳眞吉君。
〔片柳眞吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/16
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017・片柳眞吉
○片柳眞吉君 只今議題となりました農業災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、農林委員会におきまする審査の経過及び結果を御報告いたします。
本法律案は農業災害補償制度実施五カ年の経験に徴し、制度の円滑な運営に資せんとする趣旨を以て提案されたものでありまして、その骨子といたしますところは、先に成立いたしました農業災害補償法の臨時特例に関する法律と類似重複するものがありまするが、大要次のごとくであります。
第一は、農作物共済及び蚕繭共済について共済掛金の国庫負担を増額して農家負担を軽減せんとするものでありまして、即ち、従来、通常共済掛金標準率が全国を通じて最低となる県の通常共済掛金標準率部分は全国共通に全額農家負担となつておりましたが、これを改めまして、通常共済掛金標準率のうち、いわゆる安全割増率を差引いた率について、全国を通じて最低のものの三分の一の部分とその最低県の安全割増部分の二分の一の部分とを、全国共通に新たに国庫が負担することとなし、同時に、蚕繭共済の共済掛金につきましても農作物共済の場合と同様となさんとするものでありまして、この結果、共済掛金の農家負担と国庫負担の割合は、従来は、農作物共済につきましては、農家四六・六%、国庫五三・四%のものが、農家四〇・四%、国庫五九・六%となり、蚕繭共済につきましては、農家五三%、国庫四七%のものが、農家四八・一%、国庫五一・九%となると言われ、一般的に農家の負担が軽減せられ、更に、とかく問題となつておりました被害程度の低い地域につきましての共済掛金の合理化が前進することとなります。
第二は、農作物共済及び蚕繭共済の共済金額の選択についてでありまして、従来は共済金額は収穫量別に一律に定めることになつておりましたが、これを改めまして、被害の危険階級ごとに選択することができることとなさんとするものであります。
第三は、蚕繭共済の共済目的の改正でありまして、現行法では全蚕期を通ずる保険の建前になつておりましたが、これを春蚕繭と夏秋蚕繭の各蚕期別に改めんとするものであります。
第四は、蚕繭共済の共済金の支払の対象となる被害の範囲の拡大でありまして、現行法では、共済事故による減収が平年における当該組合員の単位当り収繭量の百分の四十を超えた場合、共済金が支払われることになつておるのでありまするが、ことを引下げまして、百分の三十を超えた場合に支払われることとなさんとするものであります。
第五は、共済団体の運営の改善についてでありまして、共済団体に対して公益的見地から適正な監督を行い得ることとすると共に、役員の責任を明確にせんとするもの等であります。
かかる政府原案に対して衆議院において、先に成立いたしました農業災害補償法の臨時特例に関する法律と関連して、改正規定の麦及び蚕繭共済に対する適用時期を昭和二十九年産のものからとし、又、共済団体の役員の責任の明確化並びに監督の適正化に関する改正規定を削除修正して議決し、当院に送付されたものであります。
なお、衆議院農林委員会においては、本法律案の採決に当りまして「現行農業災害補償制度の基本的性格に対する批判は無視できない。然るに今回政府から提出せられた改正法案は根本的な検討を加えたものでないことは甚だ遺憾である。改府は這般の事情を認識して速かに制度の根本的改廃の措置を講ずべきことの必要を認める」との趣旨の附帯決議が行われておることを申添えておきます。
委員会におきましては、農林当局との間に、本法律案に関する予算的措置、本法律案の実施に伴う農家負担軽減の程度、凍霜害及び雨水害に対する共済金の支払い状況、衆議院における修正、特に共済団体の役員の責任の明確化並びに監督の適正化に関する規定の削除に関する理由及びその当否、共済団体の事務、人件費等に対する国庫補助の是正、共済組合の賦課金の現状及びその当否、共済団体の運営及びその当否並びにこれが監督、延いては現行農業共済制度に関する根本的な批判等、諸般の事項に亘つて清澄な質疑が行われ、更に、衆議院の修正にかかる農業共済団体の役員の責任の明確化並びに監督の適正化の規定の削除に関する衆議院の趣意について、特に衆議院の代表の出席を求めて、その理由が質されたのでありまして、これが詳細につきましては会議録に譲ることを御了承願いたいのでありまするが、
そのうち主なものの一、二についてその大要を御紹介いたしますならば、「政府は農業共済制度の運用を適正ならしめるため共済団体の役員の責任を明確にし、その監督の適正を期してこれがため必要な規定の改正を企図したものであるにもかかわらず、これらの改正規定を衆議院において削除修正されたのであるが、かかる修正が加えられても政府において制度運営上差支えがないか」との趣旨の質問に対しまして農林当局から「現在の法制では不十分であつて改正する必要がある。衆議院においても改正の必要は了解されていると思われるが、早い機会において制度の根本的な改正がもくろまれているようであつて、それを前提として、より完全を期するため、今回は、差当つて、本年産水稲及び陸稲の共済の引受けを目睫の間に控えて、この点に関する改正にとどめ、その他の問題をそのときまで持越されたものと考えられるが、このまま放置されては責任が持てない」旨の答弁があり、又、衆議院を代表して衆議院議員金子與重郎君から、「衆議院において、政府原案にある農業共済団体の役員の責任の明確化に関する規定を削除いたしました理由は、現行農業災害補償制度の従来の経緯を思い、その今後を考えるとき、すでに根本的な検討を加えなければならない時期が到来している。差当つて本年産水稲及び陸稲に対する共済の引受に当面して、今回はこれら共済掛金に関する規定の改正にとどめ、末梢的改正によつて大局を誤まることを避けるために、役員の責任の明確化等の修正は根本的な検討の際に譲ることとなし、農林委員会に専門的な小委員会を設けて慎重に研究中である。併し今国会中にその結論を得ることは困難である。なお農林委員会において研究すると共に、政府における根本的研究を促進するために附帯決議を行なつた」旨の答弁があり、この答弁を中心に、役員の責任の明確化の規定を削除することの当否につきまして質疑が繰返され、討議が軍ねられたのであります。又共済団体の監督に関しては、共済団体は強制加入の団体であり、国庫からも少からぬ経費が支出されているので、これが監督については須臾もゆるがせにしてはならない。特に共済団体に関する批判は厳しいものがあり、又醜聞が伝えられているが、これらの事項に関する当局の方針及び措置が質されたのに対しまして、農林当局から、「共済団体に対してはすでに検査を行なつて、これが監督に遺憾なきを期しているのであるが、現在においては手不足等のために十分を欠いていることは遺憾であるが、今後一層の努力を払つて善処したい」旨答えられ、又、現行共済制度にはいろいろな欠陥があるが、そのうち被害調査の方法に制度として根本的な問題があるとして、これに対する当局の所見が質されたのに対しまして、「欠陥については気づいている。その抜本的是正は直ちには困難であるが、今後、損害補償の方法、農家単位共済、無事戻等、各般の事項に亘つて検討して、農家の要望に副うよう努力することを念願している」旨答えられました。
かくして質疑を終り、討論に入りましたところ、森田委員から提案者を代表して、「政府は今回農業災害補償法の改正を企図して、今国会に農業災害補償法の一部を改正する法律案を提案し、而して改正事項の一つとして、農業共済団体の運営について、「農業災害補償制度の一環としての特殊な性格に鑑み、公益的見地からの適正なる監督を行い得ることとし、又役員の責任を明確ならしめることとしたい」との趣旨を以て、これに必要な規定を新たに設けることとしてある。然るに、かかる改正に対して衆議院においては、農業災害補償法については抜本的改正を行う必要があるので、この際は小規模なる改正は見送るべきであるとの趣旨を以て、役員の責任の明確化に関する規定を削除修正して議決し、本院に送付して来た。而して衆議院のいわゆる抜本的改正は、今国会においては実現がむずかしいようである、政府がこの際、新らしく規定を設けて共済団体の役員の責任を明確化する必要を認めているのに、これらの規定を削除し、而も抜本的改正が直ちに間に合わないとすれば、その間の期間を空白にして、おくことは、誠に不合理且つ無責任と言わなければならない。しかのみならず、農民の間には共済団体及びその役員のあり方についてとかくの批判を耳にするのであつて、かかる状況下において、たとえ抜本的改正のときまでと言つても、国会が政府の原案から共済団体の役員の責任の明確化に関する規定を削除するときは、農民の間に誤解を招く虞れが多分にある。よつてこの際、衆議院の修正を改めて、農業共済団体の役員の責任の明確化に関して政府原案の通り規定すべきであると思われる」という理由を以て衆議院送付案に共済団体の役員の責任の明確化に関する規定を復活する修正を加え、同時に、「現行農業災害補償制度について、政府は、衆議院の附帯決議の趣旨に従い、速かに根本的改廃の措置を講ずべきである」という附帯決議を行うべきである旨の動議が提出せられ、又、河野委員は、現行制度を否定するものであり、今次の九州の水害についてみても現行制度は実情に副わないことを体験した。附帯決議を尊重し、次国会において制度の根本的改廃を実現すべきであるとの意見を付して賛成され、更に佐藤委員から、農民が低米価等その犠牲において国策たる食糧増産に邁進しておるとき、農業災害補償制度の強化を図り、これが監督の適正を期し、農民をして安んじて家業に精励せしむべきである」旨の要望を付して賛成があり、続いて採決の結果、全会一致を以て、衆議院送付案に森田委員が代表して提案せられた修正を加え、併せて同じく附帯決議と共に可決すべきものと決定いたしました。
なお当農林委員会においては、右の附帯決議の趣旨に則り、農業災害補償制度に根本的な検討を加えるため、特に小委員を設けることを決議いたしましたことを申添えておきます。
以上御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/17
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018・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/18
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019・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て委員会修正通り議決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/19
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020・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第三、地方公共団体の負担金の納付の特例に関する法律案、
日程第四、木船再保険特別会計法案、
日程第五、漁船再保険特別会計における漁船再保険事業について生じた損失を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律の一部を改正する法律案、
日程第六、印刷局特別会計法等の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上四案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/20
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021・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員長大矢半次郎君。
〔大矢半次郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/21
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022・大矢半次郎
○大矢半次郎君 只今議題となりました四つの法案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
先ず地方公共団体の負担金の納付の特例に関する法律案について申上げます。
本案は、最近の地方の状況に鑑みまして、国の行う直轄事業につき、道路法、河川法、土地改良法及び港湾法等の規定による地方公共団体の負担する負担金につきまして、昭和二十八年度以降の国の行う事業分から、当分の間、当該地方公共団体の発行する地方債の証券を以て納付させることができる特例を設けることとし、利率、償還方法、収納価格等については政令で定めようとするものであります。なお納付期日までに納付されなかつた昭和二十七年度以前の負担金につきましては、納付の促進を図り、且つ滞納を防止するため、延滞利子を付することができることとしようとするものであります。
本案の審議中、質疑の主なるものを申上げますと、「この法律によつて地方公共団体が発行することを予定される地方債は、只今審議中の昭和二十八年度予算案には如何に予定されているか」との質疑に対し、「昭和二十八年度財政投資資金計画で予定されている地方債は、公募地方債、資金運用部引受等一千六十五億円であるが、この法律による地方公共団体の起債は、これらとは別個に九十八億円が予定されている」との答弁がありました。又「この法律の趣旨は地方財政の窮乏を緩和することであるが、地方公共団体の未納付金に対して延滞利子を付することは、却つて地方公共団体の負担を増大することになるのではないか」との質疑に対し、「昭和二十七年度以前の負担金で未納付額は百十四億七千八百八十万三千円であるが、昭和二十八年度分から発行されることとなる地方債の利子との権衡等を勘案し、延滞利子を付することができることにしようとするのであつて、昭和二十七年度以前の未納付金については、納付計画を立てさせて納付の促進を図り、而も滞納となるものについては延滞利子を付することとするので、納付計画を立てるに当り十分調整するようにしたい」と答弁がありました。その他の詳細は速記録によつて御承知願います。
かくて質疑を終了し、討論採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
次に木船再保険特別会計法案について申上げます。
今国会において、先に可決されました木船再保険法案によりますと、現在船主相互保険組合法に基いて行われております木船相互保険組合の、木船保険の健全な発達を図るために、政府の木船再保険事業を規定しておりますが、本案はこの法律が施行された場合、木船再保険事業に関する経理を明確にいたしますために、一般会計と区分して経理することとし、新たに木船再保険等特別会計を設置しようとするものであります。
内容の概略を申上げますと、この特別会計は、再保険料、再保険金の支払を受けた組合が委付等によつて取得した権利の行使によつて得る金額の一定割合の納付金、一般会計から繰入れる業務執行経費の相当額、借入金及び附属雑収入を以て歳入とし、再保険金、再保険料の払戻金、借入金の償還金及び利子、一時借入金の利子、事務取扱費等を以て歳出とし、損益計算上、利益を生じた場合の積立金への組入れ、損出を生じた場合の積立金による整理及び繰越、歳入歳出決算上剰余を生じた場合の翌年度の歳入への繰入れ、余裕金の資金運用部への預託、再保険金等の払戻金の支弁上必要ある場合の借入金等について規定するほか、予算、決算の作成及び提出等について、特別会計に必要な規定を設けようとするものであります。
委員会における審議の詳細は速記録によつて御承知願いたいと存じます。かくて質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
次に、漁船再保険特別会計における漁船再保険事業について生じた損失を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律の一部を改正する法律案について申上げます。
漁船損害補償法の規定に基く特殊保険につきましては、最近、拿捕、抑留等の保険事故が異常に発生し、昭和二十七年四月一日から同年十一月三十日の間におきましても、かかる保険事故の発生のため、漁船再保険特別会計の特殊保険勘定における再保険金の支払いが増加し、損失を生じましたので、先般第十五国会において成立いたしました昭和二十八年法律第二十九号によりまして、昭和二十八年度において一般会計から五千万円を限り繰入金をなし、この損失を補填する措置を講じたのであります。而して、その後、本年三月までの期間に、引続いて特殊保険の保険事故が発生し、損失を生ずるに至りましたので、本案は、その補填のため、昭和二十八年度において一般会計から更に二千八百万円を限り繰入金をすることとし、前回の繰入限度額五千万円を七千八百万円に改めようとするものであります。
本案の審議の詳細につきましては速記録に譲ることを御了承願います。かくて質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
次に印刷局特別会計法等の一部を改正する法律案について申上げます。
印刷局「造幣局、国有林野事業、アルコール専売事業及び郵政事業の各特別会計に所属する職員で、公共企業体等労働関係法の適用を受ける者の給与は、その総額が予算総則に定める給与の総額を超えてはならないこととなつているのでありますが、本案は、この給与の総額に弾力性を持たしめるために、職員の能率の向上により、収入を予定より増加し得た場合、又は経費を予定より節減し得た場合においては、その増加額又は節減額の一部を、予算の定めるところにより、大蔵大臣の承認を受けて、特別の給与として支給することができることとしようとするものであります。
委員会の審議における主な質疑を申上げますと、「およそ企業努力による経理内容の上昇と給与水準の決定とは別個のものとも考えられるのであるが、本案に規定する特別の給与の基準は如何に決定されるか」との質疑に対し、「昭和二十七年度における日本専売公社に対する公共企業体等仲裁委員会の裁定の趣旨に則り、五つの特別会計に所属する職員に対しても、かかる措置を講じようとするものであるが、特別の給与の基準の決定に当つては民間の給与水準の実態との権衡等について十分検討すべきであり、なかなか困難であつて、現在のところ決定していない」との答弁がありました。その他詳細は速記録によつて御承知願いたいと存じます。
かくて質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/22
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023・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより四案の採決をいたします。四案全部を問題に供します。四案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/23
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024・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて四案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/24
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025・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第七、消防施設強化促進法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。地方行政委員長内村清次君。
〔内村清次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/25
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026・内村清次
○内村清次君 只今議題となりました消防施設強化促進法案について、地方行政委員会における審議の経過並びに結果について御報告いたします。
本法案は、市町村の消防施設の強化を促進するために、市町村が消防施設を購入又は設置しようとする場合に、国は予算の範囲内で基準額の三分の一以内を補助することを大体の内容といたしておりまして、本年度予算には二億五千万円余を計上されております。
この政府原案に対しまして衆議院において一部修正が加えられております。その要点は、(一)、第六条、即ち、内閣総理大臣が、市町村に対して補助金を交付する場合において、当該市町村に対して補助金の全部若しくは一部の交付を取消し、その交付を停止し、又は交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる事由のうち、三号の「内閣総理大臣の指示に違反したと認められるとき」を削除することであり、(二)、第七条、即ち、補助金の交付を受ける市町村の長に対する内閣総理大臣の監督的権限のうち「消防施設の購入若しくは設置について必要な指示を行い」とあるのを削除し、なお同条の見出しの「指示監督」を「監督」に改めることであります。
地方行政委員会におきましては、本法案の付託以来、七月八日政府側より提案理由の説明を聞いたのち、数回の委員会において政府当局との間に質疑応答を重ねましたが、その詳細については会議録によつて御承知をお願いいたします。
かくて七月十五日討論に入り、秋山委員より、(一)、政府は補助金の増額、起債の枠の拡大、予算の立て方の改善等によつて、消防強化の財政的裏付けを十分にすること。(二)、補助金の配分等を通じて地方に対する中央の圧力が強くなるようなことがあつてはならぬ。政府はよろしく、この種補助金の配分に当つては、一定の基準によつて自動的に公平適切な配分ができるような方途を講ずべきであること。(三)、政府は火災保険会社その他消防の強化によつて利益を受ける向きをして消防強化に積極的に協力せしめるような方途を考うべきである。以上三つの希望条項を付して本法案に賛成する旨を述べられました。
かくて採決の結果、全会一致を以て本法案は衆議院送付の原案の通り可決すべきものと決定いたしました次第であります。
以上御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/26
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027・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/27
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028・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/28
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029・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第八、司法試験法の一部を改正する法律案、
日程第九、少年法及び少年院法の一部を改正する法律案、
日程第十、逃亡犯罪人引渡法案、(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/29
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030・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。法務委員長郡祐一君。
〔郡祐一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/30
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031・郡祐一
○郡祐一君 只今上程の三法律案につき、委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
先ず司法試験法の一部を改正する法律案につき御報告いたします。
本法案は、司法試験の第二次試験科目のうち、商法を必須科目といたし、これに伴い試験科目の調整をなすこと、及び受験手数料を増額することの二点を主眼とする改正であります。従来、商法は選択科目となつておりますが、実際に商法を選択する者は受験者の半数に満たない有様でありまして、裁判官、検察官、弁護士にして、商法の学識に欠ける者が増加する実情にあります。この点に鑑み、商法を必須科目とすると共に、物価事情に対応して、受験手数料を、第一次試験を五百円に、第二次試験を千円に改正せんとするのであります。
委員会におきましては慎重且つ熱心に審議し、各委員より、高等試験行政科に合格した者の受験科目、司法試験管理委員、司法試験考査委員の任命の方式、特に不適任者の推薦があつた場合や推薦が拒否された場合に関する措置、受験手数料の行政法上の性質及び受験料の改訂が高きに失するのではないか等の諸点について質疑がなされました。討論におきましては、赤松委員より、本法案に賛成だが、受験料については貧困者に対する考慮が払われることを希望する旨の発言がありました。
かくて討論を終り、採決いたしましたところ、本法案は全会一致可決すべきものと決定いたした次第であります。
次に、少年法及び少年院法の一部を改正する法律案につき報告いたします。
第一に、少年法の改正の要点を御説明いたします。
家庭裁判所におきましては、保護少年の審判について必要があるときには、その資質を鑑別させるために、少年鑑別所にこれを送致することができることになつておるのでありますが、この少年鑑別所の施設が不足であるために、少年院法によつて、暫定的措置として、少年院又は拘置監の特に区別した場所を代用少年鑑別所として使用することができることといたし、これを補つて来たのであります。この暫定的措置の期限が来たる七月三十一日となつておるのでありまして、それ以後はこの代用少年鑑別所は廃止されることとなるわけであります。一方、予算関係その他の事情により、新しい少年鑑別所の設置もはかぐしくなく、現在のところ少年保護事件を取扱う家庭裁判所支部の所在地には殆んど少年鑑別所が設けられておらないのが実情であります。従つて、これらの家庭裁判所支部において保護少年を少年鑑別所に送致する決定をした場合におきまして、少年鑑別所の所在地が離れているために、直ちにそこに収容することが不可能であるか又は著しく困難である場合が少からず生ずるものと予想されるのであります。そこで、このような場合には、家庭裁判所が決定を以て、少年を最寄りの少年院又は拘置監の特に区別した場所に七十二時間以内に限り仮収容の措置をとることができることにいたし、同時に、この仮収容の期間は、本人の利益のために、少年鑑別所に収容した期間として計算することにいたそうとするものでのります。
第二に、少年院法の改正について御説明いたします。
改正の一つの点は、医療少年院の施設についてでありますが、現行法上、少年院は原則として男女それぞれ別個にこれを設ける建前になつておるのでありますが、医療少年院に限り、暫定的措置として、男子の医療少年院の一部を特に区別して女子をも併せて収容することができることとしているのであります。この暫定的措置の期限も又来たる七月三十一日となつておるのでありますが、これまでの医療少年院運営の実際に徴しますると、男女別にそれぞれ独立の施設を設ける必要性も少く、且つ同一施設内であつても男女を分けることができれば十分であることがわかりましたので、この際、医療少年院に限り、男女を分けて収容する施設がある場合は、必ずしも別々に設置する必要がないものと改めようとするものであります。改正の他の点は、前述の少年法の改正に対応するものでありまして、代用少年鑑別所の廃止に伴い、来る八月一日以降は、現在これらの施設に収容されているような少年はすべて本来の少年鑑別所に収容されることになります。ところが、家庭裁判所の支部は、おおむね、少年鑑別所の所在地からは遠隔の地にありますので、審判等のため少年を家庭裁判所支部に同行した際、交通事情その他のため、その日のうちに鑑別所に連れ戻すことができないよらな場合も生ずるわけであります。そこで、このような場合には、これを最寄りの少年院又は拘置監の特に区別した場所に一時仮に宿泊させることができることにすると共に、又、少年院に収容中の者の移送の場合につきましても同様のことが考えられますので、少年鑑別所に収容中の者についてと同様の措置をすることができるようにする旨の規定を設けんとするものであります。
委員会におきましては、慎重に審議いたし、各委員より適切な質疑が行われたのでありますが、その詳細は速記録によつて御了承願うことといたし、説明は省略いたします。
討論に入りまして、宮城委員より、「本案に賛成はするが、併し、少年法及び少年院法の改正は毎国会に行われているような有様であり、これは法の運用に伴う予算措置が不十分なことにもよるのであるが、なお、少年保護制度の運営に一貫性を欠く欠陥に原因があることも否定できないところである。よつて政府は、今後十分研究し、完全なものとするために努力を払うべきである」という趣旨の意見が述べられたのであります。
かくて本改正案について採決の結果は、全会一致を以てこれを可決すべきものと決定した次第であります。
次に逃亡犯罪人引渡法案につき御報告いたします。
日本国との平和条約第七条(a)に基き、アメリカ合衆国は、本年四月二十二日、我が国に対しまして、日米犯罪人引渡条約を、同日より三カ月後に当る本年七月二十二日から引続いて有効とする旨を通告して参つたのであります。条約に基いて外国より犯罪人引渡しの請求があつた場合において、その引渡しに関する国内手続を定めた立法として、我が国におきましては、明治二十年八月十日に制定された逃亡犯罪人引渡条例が現存しているのであります。併しながら、この条例は、制定以来、長年月を経過し、その間、殆んど改正も行われず、従つて、その規定のうちには現在の社会情勢に適合しないものも多々あるのであります。そこで、今回日米犯罪人引渡条約が引続いて効力を有することとなるのを機会に、最近の諸外国の立法例を参酌いたしまして、新たに本法律案を立案し右の条例を廃止することとした次第でございます。
この法律案は、外国の請求により、我が国から逃亡犯罪人を引渡す場合における国内手続についての入規定したものでありまして、逆に、我が国が外国に対し逃亡犯罪人の引渡しを請求する場合の手続については、別に規定を設けておりません。それは現行刑事訴訟法に規定する手続によつて処理することができるからであります。
次に、この法律案の骨子について簡単に御説明いたします。先ず逃亡犯罪人の引渡しにつきましては、国際法又は国際慣行上認められる範囲内において一定の制限を設けております。即ち、逃亡犯罪人の犯した引渡犯罪が政治犯罪であるとき、その犯罪が我が国の法令によつて刑罰を科し又はこれを執行することができないと認められるとき、犯罪の嫌疑について相当な理由を欠くとき、引渡犯罪にかかる事件が我が国の裁判所に係属中又はすでに判決があつてそれが確定したときなどの場合には、引渡しを拒否するものとしてあります。
又、逃亡犯罪人が引渡犯罪以外の罪を犯し、その事件が我が国の裁判所に係属中であるとき、又は刑に処せられたが執行を終つていないとき及び逃亡犯罪人が日本国民であるときなどの場合には、引渡条約にこれと異なる定めがあるときに限り引渡することができるものとしているのであります。
引渡しの手続につきましては、締約国から逃亡犯罪人引渡しの請求があつた場合において、その引渡しの許否の決定及び執行は、行政措置として法務大臣の権限に属するものとし、ただ当該逃亡犯罪人が引渡しの要件に合致するや否やの判断についてのみ、東京高等裁判所の専属管轄に属するものとして、その審査に委ねることといたしておるのであります。この場合において、逃亡犯罪人を引渡すことができないものと認める旨の決定があつたときは、法務大臣は引渡しを拒否しなければならないのですが、反対に引渡すことができるものと認める旨の決定があつたときは、法務大臣は必ずしもこの決定に拘束されるものではなく、なお、その行政上の、裁量によつて引渡しを拒合することができるのであります。又逃亡犯罪人の身柄を確保するために、これを拘禁する場合におきましても、その慎重を期するために、東京高等裁判所の裁判官が発する許可状によつて拘束することになつております。以上が本法案の大体の要旨であります。
なお衆議院におきましては若干の修正を加えたのでありますが、その一は、逃亡犯罪人は、東京高等裁判所における審査に関し、弁護士の補佐を受けることができるものとしたこと、その二は、この審査の結果、逃亡犯罪人を引渡すことができるものとする旨の決定があつた場合における法務大臣の裁量権について明確を欠く二、三の字句を削除したこと、以上の二点であります。
委員会におきましては、各委員より熱心な質疑が行われ、慎重に審議を重ねたのでありますが、その詳細は速記録によつて御了承願いたいと存じます。討論におきましては別に発言もありませんでしたので、終結の上、衆議院の修正部分を含む原案について採決いたしましたところ、全会一致を以て可決すべきものと決定いたした次第でございます。
右御報告いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/31
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032・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/32
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033・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつ三二案は全会一致を以て町決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/33
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034・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第十一、海上運送法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。運輸委員長前田穰君。
〔前田穰君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/34
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035・前田穰
○前田穰君 只今議題となりました海上運送法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
先ずこの法案の要点を申上げますと、第一は、旅客定期航路事業者に対して、事故発生の場合における旅客に対する損害賠償のために保険契約の締結を命じ得る権限を運輸大臣に与えることであります。第二は、五トン未満の船舶のみを以て営む旅客定期航路事業についても海上運送法を適用するとともに、これに対応いたしまして、船舶の航行の安全を確保いたしますために、五トン未満の船舶でも旅客を運送する船舶については船舶安全法及び船舶職員法を適用することであります。
この法案は政府提出にかかるものでありますが、衆議院において修正を加えられ、殊に只今申上げました第二の点は衆議院の修正において新らしく加えられたのであります。
本委員会におきましては熱心な質疑が行われたのでありますが、主なるものにつきまして申上げますと、
第一は「運輸大臣が旅客に対する損害賠償のために定期航路事業者に対し保険契約の締結を命ずるのは如何なる場合か」との質疑でありまして、衆議院における修正案の提案者である關谷勝利君及び政府委員の答弁を総合いたしますと、「この命令規定は伝家の宝刀とし、できるだけ行政指導で目的を達したい。近距離の航路や従来の経験上安全な航路については命令はしないし、又、五トン未満の小型船に対しても命令することは殆んどないと思う。命令する場合は、従来の事故統計等より判断して危険の発生が予想される場合と思う」とのことでありました。又これに関連いたしまして一委員は、「事故は予想しないときに起る。又、船舶に運航上の安全性があつても、例えば乗客過剰の場合などは、よく事故は起るものなのである。従つて、運輸大臣が必要と認めるときに保険契約の締結を命ずるといつても、必要と認める基準は極めて困難であり、かかる規定の仕方は妥当でない、一方、五トン未満の小型船にまで法の適用範囲を拡張したのであるから、むしろ全国の定期船をプールして保険にかけ、以て保険料の低兼化を図り、定期船業者及び旅客の負担を軽くすべきではないか」と質しましたが、これに対し提案者は、「理想としてはその通りであり、可及的その方向に持つて行くよう政府の行政指導に期待したい。又、保険料は運賃の概ね二・五%なので、特に業者を経済的に圧迫するとは思われない。むしろ保険にかけることによつて、事故発生の場合においても事業を潰すことなく損害を賠償することが可能となるとともに、旅客の利益を保護することになる」と答弁いたしました、
第二は、「定期船会社の経理内容は、減価償却をしてなお利益あるものは先ずないのが実情である。従つて、将来生ずるかも知れない賠償責任のために保険をかけることは業者としては苦しい。よつて定期船の旅客運賃認可の際は保険料を運賃コストとして認めるべきであると思うが如何」との質疑でありまして、政府委員は、「運賃改訂の際は保険料を原価構成要素として織り込みだい」と答弁いたしました。
第三は、「五トン未満の小型船のみによる旅客定期航路事業についても海上運送法が適用され、航路ごとに免許を要することとなるが、免許方針如何」との質疑に対し、政府委員は、「現在の事業者が申請して来た場合は、使用船舶に運航上の安全性が認められない場合のみが免許されないこととなると思う」と答弁いたしました。
第四は、「いやしくも旅客輸送の用に供される船舶は、旅客定員の如何を問わず、五トン未満のものも船舶安全法の適用を受けることとなり、この結果、船舶検査事務量は著しく増大することと思われるが、政府は、現在の予算や定員の範囲内で円滑に実施し得る自信があるか。又、検査方法については「主務大臣二於テ必要ト認ムル時二随時之ヲ行フ」とあるが、この随時検査の腹案如何」との質疑に対しまして、政府当局は「理想的に船舶検査を実施すれば船舶検査官の増員が必要と推定されるが、随時検査制なので、現在の予算や定員で賄い得るよう、検査の時期、方法について十分研究したい。又、随時検査制度の運用については、船舶の航行の安全を図るため、最低限度の基準を設けることとし、船主がそれを自主的に維持し、安全性の確保に努めることを期待するが、できれ場ば年一回くらい検査を施行したい」と答弁いたしました。その他詳細は速記録について御承知を願います。
討論に入りましたところ、一委員より、「旅客の利益の保護及び船舶の航行の安全の確保という面で本案に賛成するが、現に事業を営んでいる小規模事業者を保護するため、次の決議を付せられるよう要望する」との趣旨の賛成意見が述べられました。次にその決議案を申上げますと、
政府は、この法律の施行に伴い、小型船舶による旅客定期航路事業で、新たに法の適用を受けるものについては、原則として従来の事業が継続して憎み得るよう特段の意を用いられんことを望む。
右決議する。
というのであります。
又、一委員より、「本法案には賛成するが、若干の疑義乃至不十分な点がある。即ちその一は、商法に規定する船舶所有者の免責委付の制度と本法案に規定する責任保険との関係に疑義のあることであり、その二は、保険を命令する場合、保険金額については命令しないという不徹底さであり、その三は、単独で任意に保険契約を結べば高い保険料を払うことになるので、結局は現在実施されている定期船協会と特定の数箇の保険会社との団体保険に加入せざるを得ないこととなり、この点からして定期船協会への加入が事実上強制されるようになる。従つて、政府は、強制保険の命令を出す場合は、これらの事情を十分検討することが必要であり、又運賃認可の際は運賃原価としての保険料について特段の考慮をすべきである。こうした意味において、この法案は必ずしも完璧のものとは思わないが(漸を追うて改善すべきことを期待する」との意見を述べられました。
採決に入りましたところ、本法案は衆議院送付の原案通り可決すべきものと全会一致を以て決定いたしました。
続いて附帯決議案につきまして採決いたしましたところ、これ又全会一致を以て可決されました。
以上御報告を申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/35
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036・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/36
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037・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/37
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038・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第十二、輸出信用保険法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。通商産業委員長中川以良君。
〔中川以良君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/38
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039・中川以良
○中川以良君 只今議題となりました輸出信用保険法の一部を改正する法律案につきまして、通商産業委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。
御承知の通り、輸出信用保険法は、輸出振興を目的として昭和二十五年に制定せられ、その後、改正を重ねて来たものでありますが、念のために現行制度を申上げますると、次の四種類の保険から成つております。先ず甲種即ち非常の際の危険を担保する保険、乙種即ちプラント輸出の代金回収に対する保険、次に丙種として輸出前貸金の回収に対する保険及び丁種といたしまして海外広告費の損失をカバーする保険、以上でございます。然るところ、最近のような国際競争の激化に対処いたしまして、海外市場の開拓と輸出の一般的な増進を図りますため輸出取引の実情を検討いたしました結果、現行制度に追加し且つ改良して制度全般の利用度を高める必要を生じて参つたので、ここに本改正法案の提出を見るに至つた次第であります。
さて本改正の第一点は、輸出手形保険の新設であります。これは戦前の輸出保証制度を改善して法文化したものとも言えるのであります。即ち、外国為替銀行が信用状のない手形を買取ることによつて生じまする危険を担保する制度であります。即ち、戦後の我が輸出取引の決済は信用状に基くことを原則としておりますが、最近、貿易取引のルートが正常化し、且つ外国との競争もありまして、市場拡大のため、政府当局では、信用状のない取引でも弊害のない向きは標準外決済として許可して行く方針をとつているのが実情であります。併し、かかる信用状なしの輸出取引が多くなりますると、代金回収に振出された為替手形が不渡りとなり、銀行が損失をこうむる危険を生じます。かくては銀行がかかる手形の買取りを拒む虞れがあり、従つて輸出不能をも招くに至ることがあるのであります。よつて今回、外国為替銀行がかかる輸出手形を買取つたことによつて受ける損失を填補するため、この輸出手形保険を創設いたした次第であります。なお、この保険において銀行に対する填補率はその実損害額の八割となつており、同時に又、手形の不渡りが輸出者の責に帰さない場合は、銀行は政府から填補を受けた限度におきまして振出人に遡及しないこととして、輸出者の保護を図つておるのであります。第二点は、法律の題名を輸出保険に改め、且つ甲乙丙丁という各種保険の名称を前述のような実体に即したものにそれぞれ改めたことであります。
第三点は、政府が一会計年度内に締結をする保険契約につき、各種保険を通じて保険金額の総額のみを制限して支払うべき保険金の総額は制限をしないことにしております。
第四点は、政府による填補率をそれぞれ引上げたことであります。即ち、普通輸出保険は現行の八割から九割に、輸出代金保険はその最高限度を同じく八割から九割に、又輸出金融保険は七割五分から八割にそれぞれ引上げることにいたしております。
第五点として、輸出代金保険の填補範囲を拡大して、輸出に伴つて提供される技術の代価についても付保できることにいたしております。
最後に第六点といたしまして輸出金融保険及び海外広告保険の適用地域についての政令による制限を撤廃いたすことにいたしております。
以上が本改正法案の要点でありますが、本委員会では、審議に当りまして、先ず各種保険の運営実績を検討いたし、利用率を高めるための保険料の低下や周知徹底方などの問題を取上げまして、逐次質疑を重ねて参つたのでありまするが、
その主なる点を申上げますると、即ち「諸外国の制度と比べてどうであるか」との問に対しまして、政府当局より、「最も進んだ英国では十七種類の輸出保険制度を有しているが、主なものは今回の我が制度と同様なる四乃至五種類であり、保険料金は英国が高目である」との答弁がありました。次に「いわゆるキヤンセルに対するカバーや調査費用に対するカバーの制度はとれないか」との問に対しましては、「市場の実況の把握が困難な事情にある等の理由によりましてまだ実現を見ないが、怠らず研究をし、条件などが明らかになつた上で設けることにしたい」との答弁がありました。又「政府の本保険事業に赤字を生じた場合の処理はどうするか」との間に対しましては、「最近は収入が支出より上廻つており、とにかく長い目で見れば収支は均衡する」との答弁がございました。その他詳細は速記録によつて御承知を願いたいと存じます。
かくて討論に入り、次いで採決に入りましたところ、本改正案は全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告を申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/39
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040・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/40
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041・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時十二分散会
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○本日の会議に付した事件
一、議員の請暇
一、議員派遣の件
一、特需工場労働者等の地位改善に関する決議案
一、日程第一 労働金庫法案
一、日程第二 農業災害補償法の一部を改正する法律案
一、日程第三 地方公共団体の負担金の納付の特例に関する法律案
一、日程第四 木船再保険特別会計法案
一、日程第五 漁船再保険特別会計における漁船再保険事業について生じた損失を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律の一部を改正する法律案
一、日程第六 印刷局特別会計法等の一部を改正する法律案
一、日程第七 消防施設強化促進法案
一、日程第八 司法試験法の一部を改正する法律案
一、日程第九 少年法及び少年院法の一部を改正する法律案
一、日程第十 逃亡犯罪人引渡法案
一、日程第十一 海上運送法の一部を改正する法律案
一、日程第十二 輸出信用保険法の一部を改正する法律案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X02319530717/41
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