1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年八月七日(金曜日)
午前十一時二十六分開議
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議事日程 第三十五号
昭和二十八年八月七日
午前十時開議
第一 日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約の批准について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第二 第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権の保護に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の批准について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第三 第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権の保護に関する日本国とスイス連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第四 国際民間航空条約への加入について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第五 国際航空業務通過協定の受諾について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第六 国際電気通信条約の批准について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第七 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う国有の財産の管理に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
第八 信用保証協会法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第九 災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告
第一〇 高等学校の定時制教育及び通信教育振興法案(衆議院提出)(委員長報告)
第一一 財団法人労働科学研究所に対する国有財産の譲与に関する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
第一二 青年学級振興法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第一三 社会福祉事業振興会法案(衆議院提出)(委員長報告)
第一四 日雇労働者健康保険法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第一五 畑地農業改良促進法案(衆議院提出)(委員長報告)
第一六 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
第一七 昭和二十八年度における国会議員の秘書の期末手当の支給の特例に関する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
第一八 国会職員法等の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
第一九 失業対策事業費増額等に関する請願(委員長報告)
第二〇 けい肺特別法制定に関する請願(委員長報告)
第二一 失業対策事業労働者の賃金引上げ等に関する請願(委員長報告)
第二二 失業対策事業労働者の対策に関する請願(委員長報告)
第二三 日雇労働者の賃金増額等に関する請願(委員長報告)
第二四 けい肺病療養補償期間延長に関する請願(委員長報告)
第二五 北海道美唄市に労災病院設置の請願(委員長報告)
第二六 失業対策事業のわく拡大等に関する請願(委員長報告)
第二七 職業安定法中一部改正等に関する請願(委員長報告)
第二八 日雇労働者の賃金引上げ等に関する陳情(委員長報告)
第二九 北海道失業対策事業労務者に対する冬期加給金の陳情(委員長報告)
第三〇 失業対策事業労働者の賃金引上げ等に関する陳情(委員長報告)
第三一 失業対策事業の改革促進に関する陳情(委員長報告)
第三二 けい肺特別法制定に関する陳情(委員長報告)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/0
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001・河井彌八
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/1
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002・河井彌八
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
この際、日程に追加して、国会法第二十九条但書の規定による国会の議決に関する件(国際連合捕虜特別委員会第四会期日本政府代表)を議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/2
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003・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。去る四日、内閣総理大臣から、国際連合捕虜特別委員会第四会期日本政府代表に衆議院議員有田八郎君を任命することについて本院の議決を求めて参りました。同君が国際連合捕虜特別委員会第四会期日本政府代表に就くことに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/3
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004・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本件は、全会一致を以て同君が国際連合捕虜特別委員会第四会期日本政府代表に就くことができると議決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/4
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005・河井彌八
○議長(河井彌八君) この際、日程に追加して、
昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例に関する法律案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害による私立学校施設の災害の復旧に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害による社会福祉事業施設の災害の復旧に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域において行う母子福祉資金の貸付に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月における大水害による病院及び診療所の災害の復旧に関する特別措置法案(いずれも矢嶋三義君外十四名発議)、
昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた公務員等に対する国家公務員共済組合の給付の特例等に関する法律案(矢嶋三義君外十三名発議)、
昭和二十八年六月及び七月の水害による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する特別措置法案、
農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害農家に対する米麦の売渡の特例に関する法律案、
昭和二十八年六月及び七月における水害による被害たばこ耕作者に対する資金の融通に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月における大水害による被害小企業者に対する資金の融通に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害による公共土木施設等についての災害の復旧等に関する特別措置法案(いずれも衆議院提出)、
以上十二案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/5
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006・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。水害地緊急対策特別委員長矢嶋三義君。
〔矢嶋三義君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/6
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007・矢嶋三義
○矢嶋三義君 御報告申上げます。
昭和二十八年六月及び七月の大水害による災害復旧対策に関する立法につきましては、衆参両院の当該委員会で数次に亘り協議いたしまして、そうして衆参特別委員会の完全に意見の一致いたしたものを或いは衆議院側から、或いは当参議院側から、議員立法の形で国会に提案、審議されたものでございます。これから只今議題となつておりまする十二案件について、やや具体的に審議の経過並びに結果を御報告申上げまするが、水害関係で、すでに本院で可決されたものが、御承知のごとく公立教育施設に関する法律案ほか一件、合計二件でございます。本日ここに御報告申上げるのは、衆議院から本院に回付されて参りましてこれを修正可決したものが二件と、衆議院から回付されて参りまして、それを本院で可決するものが四件、本院の議員立法で、本日、本議場に、諮り、衆議院に回付すべきものが六件、合計十二件と直成つておる次第でございます。
先ず昭和二十八年六月及び七月の大水害による公共土木施設等についての災害の復旧等に関する特別措置法案について、水害地緊急対策特別委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
本案は、災害の復旧等を促進するため、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法その他の法律について特例を設ける等の措置を講じ、以て公共の福祉を確保し、併せて民生の安定に寄与せんとするものであります。本案の骨子とするところは次の通りであります。
即ち第一は、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の特例を設けたことでありまして、国の負担率を現行法よりも高率とし、地方公共団体の標準税収入の二分の一に相当する額については十分の八、二分の一を超え、標準税収入に達する額までは十分の九、それ以上は金額とし、又応急工事費は現行法においては特別の事由のない限り国庫負担の対象とならなかつたものを災害復旧工事費中に明確にしようとするものであります。第二は、水防法の特例であります。現行法においては水防に要する費用は、水防管理団体の負担となつておりますが、被災市町村の財政事情に鑑み、水防に要した費用のうち、資材についてのみ全額国が負担することとしております。第三は、道路の修繕に関する法令の特例であります。今回の災害により必要を生じた国道、地方道の修繕に対して、現行法による国の補助率三分の一を今年度に限り二分の一とするものであります。
第四は、地すべり等の防止施設に対する補助規定であります。今回により地すべり、山崩れ、土砂の崩壊等の現象が生じ危険な状態となつている個所の防止事業に対して、砂防事業と同様に国が事業費の三分の二を補助することとしております。
第五は、土木機械の貸付についての特例であります。今回の災害復旧事業を施行するために建設省等が地方公共団体に貸付ける土木機械については、従来の法律の規定にかかわらず無償又は時価より低い対価で貸すことができるようにしております。
第六は、住宅対策でありまして、現行の公営住宅法でありますと、災害に際して建てられる第二種公営住宅は、滅失戸数の三割までであるのを五割まで範囲を拡大し、更にこれに対する国の補助率も現行法三分の二に対して四分の三としております。又、住宅金融公庫の貸付については、現行法の規定にかかわらず貸付期間を三年間延長し、貸付の日から三年間は据置期間として借受金の償還を容易にしております。
以上、法案の骨子を申述べましたが、これに附帯して次の要望事項が決定しております。
第一に、地方公共団体の長が、法第五条に規定する地すべり等により、緊急避難をする必要があると認めた地域に居住する住民に対しては、その住居の移築又は新築に要する費用について、当該地方公共団体はその全額を貸付けることができる。この場合における貸付金の全額について、地方財政法第五条第一項第二号に規定する起債を認めること。
第二に、法第七条に規定する第二種公営住宅の建設に要する費用についての事業主体の負担分に関しては、地方財政法第五条第一項第四号の規定により全額起債を認めること。
第三に、本法により建設する公営住宅及び住宅金融公庫から貸付を受けて建設する住宅の標準建設費を現行より三割増額すること。
第四に、著しく損傷した住宅の補修に必要な費用について当該地方公共団体は、その費用の全額を貸付けることができることとし、この場合における貸付金の金額について、地方財政法第五条第一項第二号に規定する起債を認めること。なお当該貸付金及び起債の償還については、三年間据置とすること。本委員会におきましては、八月三日、提案者より提案理由の説明を聞き審議を行うと共に、更に建設委員会との連合委員会を開催する等、慎重なる審議を重ねた次第であります。その質疑の主なる点について申述べますと、第二条の政令で指定する地域とは如何なるものか、本特別措置によれば、公共土木施設災害復旧に要する国費の支出は、現行法によるよりもどの程度増額する見込か、又十五万円及び十万円以下の単独工事費に対して如何なる措置を考えているか、その他地すべり等の防止施設に対する補助規定等についてでありまして、これに対しては提案者又は政府委員より、政令で指定する地域については、特別委員会で更に審議を進め、検討協議した後に政府に申入れる考えであること、公共土木施設の復旧に関して特別措置による場合の国費支出の増加は約四十七億円程度となる見込であること並びに単独工事費については、すでに大蔵、建設両大臣及び地方自治庁長官の間で協議が行われ、且つ建設大臣は衆議院における委員会の席上、特別平衡交付金を以て救済する旨を言明しているので、特に本法の規定より除外していること、更に地すべり等の防止施設の補助規定については、これを適用するのは、取りあえず今回の災害によつて必要となつた緊急止むを得ない工事のみを考えているのであつて、相当年月を経過した後工事の必要を生じたものについては、治山治水の恒久対策として措置されるのが妥当であると考えていること並びに本規定は建設、農林両省の工事について適用される旨の答弁があつた次第であります。その他質疑応答の詳細については、速記録によつて御覧を願いたいと存じます。かくて質疑を打切り、討論に入りましたところ、永井委員から、「第五条に規定する地すべり等の防止施設に対する補助率三分の二を十分の九にあらためる」との修正案が提案されました。かくて討論を打切り、採決に入り、修正案並びに修正部分を除く衆議院送付案について、全会一致、可決すべきものと決定した次第であります。右御報告申上げます。次に、昭和二十八年六月及び七月における大水害による被害小企業者に対する資金の融通に関する特別措置法案について申上げます。本案は小規模の事業者が、水害復旧のために事業資金を借りた場合、その利子負担を幾分でも軽減してやろうとする法案でありまして、その借受額は一人二十万円まで、利子の補給額は年五分に当る金額とし、これを県で補給した場合、国庫でその半分を補助しようとするものであります。本委員会では、すでにこの問題については検討済でありましたので、別に質疑なく、討論の場合に武藤委員より、法文の不明瞭な点その他について修正案が出ました。かくて採決をいたしましたところ、修正案並びに修正部分を除く原案、いずれも全会一致、可決すべきものと決定し、衆議院送付案は、修正議決すべきものと決定した次第であります。右御報告申上げます。次に、昭和二十八年六月及び七月における水害による被害たばこ耕作者に対する資金の融通に関する特別措置法案について、水害地緊急対策特別委員会における審議の経過及びその結果について御報告申上げます。この法律案は、昭和二十八年六月から七月までの間における水害によつて損失を受けたたばこ耕作者に対する資金の融通を円滑にする措置を講じて、たばこ耕作者の経営の安定を図ろうとするものであります。即ち日本専売公社が、農林中央金庫その他の政令で定める金融機関と契約することによつて、たばこ耕作者又はその加入しておる農業協同組合に貸付けた資金に対して利子補給及び損失の補償をできることとしたのであります。資金の種類は、たばこ乾燥室の復旧に要する資金及び肥料、薬品等の購入、その他たばこ耕作上、必要な資金であります。これら資金が指定地域内の者を対象とするときは年三分五厘以内の利率で、その他の地域の者を対象とするときは年六分五厘以内の利率で耕作者に貸付け、公社は、金融機関に対して八分又は五分の利子補給及び融資総額の四割までの損失の補償をするのであります。又これらの資金は、昭和二十九年三月三十一日までに貸付けられることを条件とし、償還は、昭和三十四年三月三十一日までとする。且つ融資の総額は二億円に限度を設けてあります。以上が、本法案の概要であります。委員会におきましては、水害対策の一環としてかねて研究中のことでもあり、又一般農林水産業の被災者に対する例もあり、大体同様なことなのでありますから、質疑もなく、可決すべきものと決定いたしました。右御報告いたします。次に、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案について、水害地緊急対策特別委員会における審議の経過及びその結果について御報告いたします。この法律は、農林水産業施設が災害を受けたとき、これを復旧するための経費の一部を国が補助することを定めたものでありますが、昭和二十八年六月下旬から七月までの間に起つた豪雨による被害は曾つて見ざる大被害で、その範囲も広大なので、これを復旧するに莫大な経費を要するのみならず、被害者には経費の負担能力がないので、今次水害に限つて補助率を上げ、国が十分の九を負担することを定めようとしたものであります。又補助の対象として、農林水産協同組合の所有する施設、開拓地における農業経営に必要なる施設等を附加えられております。又金額十万円に満たない少額工事については、従来国の補助を与えられていませんでしたが、本改正案においては三万円以上十万円未満のものについては、府県が事業費の九割を補助した場合に、その補助の全額を国から補助することにしようとするものであります。委員会におきましては、本件についても事前研究もされていましたので、格別の質疑もなく、全会一致を以て可一決すべきものと議決いたしました。右御報告いたします。続いて、昭和二十八年六月及び七月の水害による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する特別措置法案について、審議の経過及びその結果について御報告いたします。本法律案は、去る六月下旬から七月までの間に生じた、西日本その他を襲つた異常な降雨によつて受けた被害の復旧対策の一環として、損失を受けた農林漁業者及びそれらの組織する法人に対して、その経営及び施設の復旧等に必要な資金の融通を円滑にする措置を講じ、その経営の安定に資することを目的として提出されたものでありまして、その骨子とするところは大要次の通りであります。融通資金の種類を三つに区分してございます。その一は、農林漁業者に対する経営資金ございまして、種苗、肥料、薬剤、薪炭原木、稚魚、稚貝等の購入その他農林漁業の経営に必要な資金であります。その二は、施設復旧資金であつて、農林漁業者又はこれらの組織する法人に対して融資するもので、農林漁業用施設の災害復旧に必要な資金を、農林漁業金融公庫から借入ができるまでの間のつなぎ融資等であります。その三は、事業資金で、被害組合の運営に要する資金であります。経営資金は政令の定める指定地域のものに対しては年三分五厘以内、開拓地における農業経営に必要な資金は年五分五厘以内、その他の場合は年六分六厘以内の利率で、償還五年以内で貸付け、市町村長が認定する損失額を基準として政令で定める額、又は十五万円を限度としております。施設復旧資金は一千万円の範囲で指定地域は年三分五厘、その他は六分五厘の利率で、償還五年以内及び二年以内、公庫資金を借りた場合に返済することを条件としものであります。事業資金は一千万円の範囲で、年六分五厘の利率で償還五カ年以内を条件としたものであります。これらの資金の貸出総額は百億円を限度とし、昭和二十九年三月三十一耳までに貸付けるものと、期間を限定しております。これらの融通資金に対して、都道府県が負担する利子補給及び損失補償に対して、国は都道府県へ補助金を交付しようとするものでありまして、国の負担する割合は二分の一と定めていますが、利率が年三分五厘の場合は五分玉厘を負担し、損失補償額は百分の二十を限度としております。又農業共済組合連合会に貸付けられた建物共済資金についても、利子補給及び損失補償の途が開かれています。本委員会におきましては、水害地緊急措置として研究済であり、提案者と共に事前協議も進めていましたので、質疑もなく、全会一致を以て、可決すべきものと議決いたしました。右御報告申上げます。続いて、昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害農家に対する米麦の売渡の特例に関する法律案について、審議の経過並びにその結果について御報告いたします。本法律案は、首題の大水害地における被害農家の食糧に供するため必要とする米麦のうち、米穀については玄米一石につき七千五百円の価格で、大麦、小麦及び裸麦については、政府が買入れる価格とほぼ同一になるよな価格で被害農家に供給して、その食糧に対する不安をなからしめよとするのが、その目的であります。その売渡の方法は、食糧管理法の特例として、政府は県に売渡すのでありまして、県は市町村を通じて、被害農家に対し、自家消費量を基準として損害の程度を参酌して、その数量を定め売払のであります。委員会における審議は、水害地対策の緊急措置として妥当なるものと認め、左の附帯決議を附し、他に発言もなく、全会一致を以て、可決すべきものと議決いたしました。附帯決議を朗読いたします。この法律の目的とする水害による被災農家に対する米麦の特別価格による売却措置は、国の水害地に対する諸政策の一環として行うものであるので、この措置による損失を、食糧管理特別会計の負担とすることは、当該会計の性質として不適当であるから、政府において、なるべく早い機会において一般会計からの繰、入によつてこの損失を補てんする措置を講ずべきである。これが附帯決議でございます。以上、御報告申上げます。これから御報告申上げまする六件は、冒頭に申上げましたよに、衆参の特別委員会の連合打合会で、全会一致で意見がまとまり、参議院先議で、参議院議員の発議で提案されたものであるといことを申しそえて御報告いたします。先ず第一番に、昭和二十八年六月及び七月の大水害による私立学校施設の災害の復旧に関する特別措置法案につきまして、水害地緊急対策特別委員会における審査の経過並びに結果を御報告申上げます。
先ず本法案の提案の趣旨について申上げます。私立学校は、従来、戦災その他によりまして極めて甚大な被害をこうむつておりますが、その復旧は、未だ漸くその緒についた程度でございます。即ち昨年制定施行されました私立学校振興会法によりまして、私立学校は、振興会より援助を受けることになつておりますが、その援助の程度は未だ十分とは言えない状況でございます。然るに今次の大水害によりまして、私立学校のこうむりました災害は、公立の諸学校と同様、極めて著しいものがございまして、私立学校振興会の援助のみを以てしては、その復旧を図ることは至難でございますから、次に述べますよな内容の特別立法措置をいたしまして、私立学校の教育を速かに円滑ならしめようとするものでございます。次に本法案の内容の概略を申上げます。第一に、本法案は、昭和二十八年六月及び七月の大水害によつて生じた私立学校施設の災害復旧について、国は、当該私立学校を設置する学校法人に対し、これに要する費用の二分の一を補助することを規定し、国の補助の対象となる私立学校施設は、私立学校の用に供せられる建物、建物以外の工作物、土地及び設備を含めることにいたしております。第二に、私立学校振興会は右の災害復旧事業に要する費用の二分の一に相当する額を、優先的に貸付けなければならないことを規定いたしております。その他に、事業費の範囲決定、成功認定、補助金の返還、都道府県知事の事務等、所要の規定を設けております。本法律案は、水害地緊急対策特別委員会におきまして、慎重に審議を重ねました上、衆議院の当該委員会とも連絡いたしまして、双方の意見が全く一致いたしました結果、立案されたものでございますので、委員会におきましては、質疑討論を省略いたし、直ちに採決に入りましたところ、全会一致を以て、可決すべきものと決定いたしました。以上御報告申上げます。次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例に関する法律案につきまして、委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。先ず本法律案の提案趣旨につきまして御説明申上げます。去る六月及び七月に亘りまして、西日本その他の地域を襲いました豪雨は、実に未曾有のものでありまして、その被害は甚大な額に上るのであります。これを地方公共団体について見ますならば、土木、農林、文教、厚生等の諸公共用施設の災害復旧及び罹災救助、防疫対策その他の災害対策のために、緊急を要する経費の増加並びに地方税、使用料等の減免のための財政収入の減少等、本年度において地方公共団体の財政負担の増加は、実に二百余億円の巨額に達するのであります。伏るに御承知のごとく、地方財政の逼迫は今日より甚だしきはなく、戦災や災害の復旧、公共施設の建設事業その他国の施策に応じて措置しなければならない経費は、年々膨脹の一途を辿り、地方財政はひとしく赤字経済に呻吟いたしております。かかる状況にあります際に、今次の大災害をこうむりました地方公共団体は、その財政力のみを以てしては、到底この大災害に対処することは不可能でありまして、従来の観念を放擲した施策を講ずるのでなければ、民主政治の基盤たる地方自治は危殆に瀕すると言うも、あえて過言ではなく、本法案によつてこれら罹災地方公共団体を救済せんとするものであります。以下本法案の骨子について申上げます。
この法律案は、昭和二十八年六月及び七月の大水害による災害を受けた地方公共団体に対し、災害によつて生じた財政収入の減少や諸災害対策費等の財政需要の増加で、現在の体系では、国の補助金や交付金等の支出により救済されがたい分野の財政の不足を補うため、特に政府資金引受による地方債を、昭和二十八年度限り起すことを認め、その元利償還について、補給金を国庫より支出することを規定いたしたものであります。
次に、本法案による地方債を起すことのできる場合としては、当該水害によつて生じました財政収入の減少、即ち地方税、使用料、手数料その他の徴収金で、災害の状況に照し相当と認められる程度の減免による財政収入の不足を補う場合及び緊急応急土木、災害救助対策、伝染病予防対策、苗代対策、病虫害駆除対策、農器具対策その他四十数項目に亘る災害対策事業で、命令で定めるものの実施に通常必要と認められる費用のうち、地方公共団体の負担となるものの財源とする場合であります。次に、本法案を適用する地方公共団体は、政令で指定することと規定されております。委員会におきましては、長期に亘る論議の結果得ました成案でありますので、質疑及び討論を省略して、直ちに採決に入りましたところ、全会一致を以て、原案通り可決すべきものと決定いたしました。右御報告申上げます。次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた公務員等に対する国家公務員共済組合の給付の特例等に関する法律案について、審査の経過及び結果を御報告申上げます。先ず本法案の提案趣旨を御説明申上げます。今次の大水害のため、国家公務員及び地方公務員等で、住居又は家財に損害をこうむつたものが相当少くないのであります。国はこの水害による被害の状況に鑑み、各般の事項について諸多の特別措置を講じようとしておるのでありますが、公務員等に対しても、何らかの措置を講ずべきであるとして、特別委員会において、鋭意検討を加え、これも又、衆議院側と打合せの上、昨日私ほか十三名の発議を以て提案した次第であります。国家公務員等につきましては、国家公務員共済組合法第五十四条の特例を設けまして、政令で定める一定の被害地域内にある住居又は家財について損害を受けた者に対しては、同法が規定する本来の給付額に、そのものの俸給月額に二カ月の範囲で所属共済組合の運営規則で定める月数を乗じて得た額に相当する金額を加えて支給することとし、又共済組合員以外の常勤の地方公務員につきましては、当該職員の給料の月額に一カ月の範囲内で、政令で定める月数を乗じて得た金額に相当する額の特別給付金を支給することにしたのであります。而して地方公務員に対する特別給付金に要する費用は、国と当該地方公共団体が、それぞれ二分の一ずつを負担し合うことといたしたのであります。本特別委員会におきましては、質疑、討論を省略し、直ちに採決に入りましたところ、全会一致を以て、可決すべきものと決定した次第であります。以上御報告申上げます。次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域において行う母子福祉資金の貸付に関する特別措置法案について、提案理由を御説明申上げます。本年六月及び七月の大水害による被害者のうちで、特に配偶者がなく子供を抱えて独力で生活しております母親が、物心両面で受けます苦労は一層大きいものがあろうかと存じます。すでに、これらの母子家庭に対しましては、前国会で成立をみました母子福祉資金の貸付等に関する法律が、保護の手を差延べておるわけでありますが、今回の異常な大災害に際しまして、更にこれに若干の特例を設けまして、これら母子世帯の困窮を救い、その福祉を増進することは喫緊の要務かと思われます。本法委は、この趣旨に従いまして、母子福祉資金の貸付条件のうち、生業資金につきましては、その据置期間を一年延長いたしまして二年間とし、事業継続資金につきましては、新たに一年間の据置期間を定めまして、その返還時期を延ばすことといたしてあります。又この福祉資金は、県の特別会計に計上される資金と、これと同額の国からの貸付金を財源として賄われておりますが、今次水害による地方財政の疲弊を考えますと、本年度及び明年度におきましては、その財源が極めて乏しくなるであろうと思われるのであります。従いましても、明年度におきまして、国が県に対して貸付ける金額は、県が特別会計に繰入れた額の三倍とすることが最小限度の措置として、是非とも必要なことと思われるのであります。本法案は以上の二点につきまして、母子福祉資金の貸付等に関する法律の特例を設けようとするものであります。本委員会におきましては、この特別措置は、極めて適切と認め、質疑並びに討論を省略の上、直ちに採決いたしました結果、全会一致を以ちまして、原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害による社会福祉事業施設の災害の復旧に関する特別措置法案について、御説明申上げます。本年六月及び七月の大水害によりまして、保護施設、児童福祉施設及び公益質屋の受けました被害額は、総計約一億二百万円と見込まれております。而してこれらの施設の復旧は、収容者又は利用者にとりまして、一刻の猶予も許さないのでありますが、これら施設の復旧整備には多額の費用を要しますので、これら施設の設置者のみの力を以てしては、到底不可能なことであります。そこでこれらの施設の復旧のために、国又は地方公共団体の負担又は補助に関して特例を設け、以てこれらの施設設置者の負担を軽減しようというのが、本法案提出の趣旨であります。次に、本法案の要点を申上げますと、第一に、生活保護法の規定により設置された保護施設におきましては、現行法の規定では、県立の施設にいては、国が二分の一、県が四分の一の負担となつており、市町村立の施設については、国が二分の一、県が四分の一、市町村が四分の一であり、又公立以外の施設の整備費等については、国が二分の一、県が四分の一、施設の設置者が四分の一の負担となつておるのでございますが、これを今回の災害復旧につきましては、県立の施設については、国が三分の二、県が三分の一、市町村立の施設については、国が三分の二、県が六分の一、市町村が六分の一の負担区分とし、公立以外の施設の整備費等については、国が三分の二、県が六分の一、施設の設置者が六分の一の負担区分といたしてあります。第二に、児童福祉施設におきましては、現行法の規定では、県立の施設については、国が二分の一、県が二分の一、市町村立の施設については、原則として国が二分の一、県が四分の一、市町村が四分の一の負担となつておりますが、これを今回の災害復旧につきましては、県立の施設については、国が三分の二、県が三分の一の負担率とし、市町村立の施設については、国が三分の二、県が六分の一、市町村が六分の一の負担率といたしてあります。次に、法人の設立にかかる施設の整備等に関しましては、現行法の規定では国が二分の一、県が四分の一、その法人が四分の一の負担率となつておりますのを、今回の特別措置として国が三分の二、県及び当該法人がそれぞれ六分の一の負担率といたしてあるのであります。又、社会福祉法人等以外の私立の施設の復旧につきましては、現行法の規定では、補助又は国庫負担を行うことができませんが、今回の特別措置といたしまして、このような私立の施設につきましても、法人設立の施設に対すると同様の補助又は負担率を適用しようとするものであります。第三の公益質屋につきましては、現行法による国の補助率の二分の一を三分の二に高めると共に、質物の流失、毀損により当該質物で担保される債権を失つた市町村に対しまして、国は、その損失額の十分の八に相当する額の交付金を交付する旨の規定を設けてあるのであります。以上が、本法案の提案理由並びにその骨子でありますが、本委員会におきましては、質疑並びに討論を省略の上、直ちに採決いたしました結果、全会一致を以ちまして、原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害による病院及び診療所の災害の復旧に関する特別措置法案につきまして、提案理由を御説明申上げます。本年六月及び七月の水害による医療施設の災害は、早急に復旧を必要とする病院が約百二十、診療所が約一千五百二十に及んでいるのであります。この事態をこのままに放置しておきますると、被害地域の住民の医療を確保することができなくなる虞れがあるのであります。従いまして、かような医療施設に対しまして、その水害によつて生じた災害に必要な復旧費について、一定の金融機関から特別に資金の貸付ができるようにすると共に、この金融機関に対して、国は、通常の条件よりも有利な条件を以て資金を貸付け、以て被害地域の医療面の早急な復旧を促進する必要があるとの趣旨から、本法案の提出を見た次第であります。
本法案につきましても、本委員会におきましては、質疑並びに討論を省略の上、直ちに採決いたしました結果、全会一致を以て、原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/7
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008・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
先ず昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例に関する法律案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害により私立学校施設の災害の復旧に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害による社会福祉事業施設の災害の復旧に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域において行う母子福祉資金の貸付に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月における大水害による病院及び診療所の災害の復旧に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する特別措置法案、
農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害農家に対する米麦の売渡の特例に関する法律案、
昭和二十八年六月及び七月における水害による被害たばこ耕作者に対する資金の融通に関する特別措置法案、
以上九案全部を問題に供します。九案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/8
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009・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて九案は、全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/9
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010・河井彌八
○議長(河井彌八君) 次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた公務員等に対する国家公務員共済組合の給付の特例等に関する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/10
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011・河井彌八
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/11
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012・河井彌八
○議長(河井彌八君) 次に、昭和二十八年六月及び七月における大水害による被害小企業者に対する資金の融通に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害による公共土木施設等についての災害の復旧等に関する特別措置法案、
以上、両案全部を問題に供します。委員長の報告は、いずれも修正議決報告でございます。委員長報告の通り、修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/12
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013・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて両案は、全会一致を以て、委員会修正通り議決せられました。
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〔松浦定義君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/13
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014・松浦定義
○松浦定義君 私はこの際、先般北海道を襲つた豪雨による被害に対する緊急対策樹立に資するための調査を水害地緊急対策特別委員会に併せ付託することの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/14
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015・小笠原二三男
○小笠原二三男君 私は、只今の松浦君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/15
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016・河井彌八
○議長(河井彌八君) 松浦君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/16
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017・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて松浦君の動議は、可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/17
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018・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第一、日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約の批准について承認を求めるの件、
日程第二、第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権の保護に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の批准について承認を求めるの件、
日程第三、第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権の保護に関する日本国とスイス連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件、
日程第四、国際民間航空条約への加入について承認を求めるの件、
日程第五、国際航空業務通過協定の受諾について承認を求めるの件、
日程第六、国際電気通信条約の批准について承認を求めるの件、(いずれも衆議院送付)
以上、六件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/18
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019・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。外務委員長佐藤尚武君。
〔佐藤尚武君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/19
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020・佐藤尚武
○佐藤尚武君 只今議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約の批准について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
先ず、本条約に関する政府の説明を要約いたしますと、左の通りであります。
先ず、日米両国間の通商航海関係は、明治四十四年に締結された旧日米通商航海条約が、昭和十五年一月に失効して以来、十二年余の間、無条約の状態となつていたのでありますが、サンフランシスコ平和条約の発効後、両国の通商関係は、同条約第十二条の規定によつて規律されているのであります。併しこの規定は暫定的性質のものでありまして、この規定によつて我が国は、連合国が特定の事項について内国民待遇又は最恵国待遇を我が国に与える限度においてのみではありますが、当該連合国に、内国民待遇又は最恵国待遇を与える義務を負つておるのでありまして、連合国側に対しましては、我がほうとして、何ら積極的な待遇保障を要求する権利がなく、又我が国民の入国、旅行、滞在、居住等につきましては、何らの保障も与えられておらないのが現状であります。そこで政府は、先ず米国との間に平等互恵の立場に立ち、且つ包括的な待遇保障を含む新らしい通商航海条約をできる限り早い機会に締結せんといたしまして、一昨年末から、在京米国政府代表との間に非公式な折衝を始めたのであります。我が国にとりましては、戦後始めて結ばんとする通商条約のことでありますので、その交渉には慎重の上にも槙重を期しまして、その結果、漸く本年二月下旬に至り、我が国の主張を十分に取入れ、且つ両国間に完全に意見の一致した条約案の作成をみ、次いで四月二日に、外務大臣とマーフイー駐日米国大使との間に署名調印を了した次第であります。
この条約の内容を要約して申上げますと、本条約は、前文、本文二十五カ条、末文及び十五項目の議定書から成つておりまして、前文には、条約締結の目的が、両国間の平和、友好関係の強化、経済的、文化的関係の促進、通商関係の助長及び有益な投資の促進にあることを述べ、そのため無条件最恵国待遇及び内国民待遇の原則を基礎とすることを明らかにしております。
次に、本文におきましては、
一、入国、居住及び滞在の条件、
二、身体の保護及び保障、
三、社会保障制度に関する内国民待遇、
四、出訴権に関する内国民待遇と最恵国待遇の保障並びに仲裁判断の執行、
五、資本、技能及び技術の交流の促進、
六、財産の保護に関する基本的待遇、
七、営利事業活動に関する待遇、
八、雇用、自由職業及び非営利活動に関する事項、
九、財産権の取得処分に関する待遇、
十、工業所有権に関する内国民待遇と最恵国待遇の保障、
十一、内国課税についての基本的待遇、
十二、為替管理に関する事項、
十三、商業旅行者に対する最恵国待遇の保障、
十四、関税事項に関する最恵国待遇と、輸出入の禁止制限に関する事項、
十五、税関行政に関する事項、
十六、輸入産品等の国内における取扱、
十七、国家貿易乃至国家商業に関する事項、
十八、競争を制限する商慣行の排除に関する事項、
十九、船舶、海運及び航海に関する基本的待遇の保障、
二十、人及び物の相手国の領域通過の自由に関する保障、
二十一、本条約の規定の適用を排除する一般的例外、なかんずく関税に関する最恵国待遇と、ガット税率との関係
等について規定しておるのであります。
そして本条約は、批准書交換の日の後一カ月で效力を生じ、十年間效力を有し、一年前の予告によつて、最初の十年の期間満了の際又はその後いつでもこの条約を終了させることができる旨を定めておる云々、以上が政府説明の要点であります。委員会は、七月十六日以降、予備審査を行うこと六回、同月三十一日、衆議院よりの送付を待つて更に四回、都合十回に亘つて慎重審議を行いました。この条約は、内容の重要性に鑑み、委員会におきましては、羽生、佐多、杉原、高良、加藤、中田、亀田各委員より外務大臣並びに政府委員に対し活發なる質疑が行われました。その詳細については速記録により御承知願いたいのでありますが、次にその主要なものをかい摘んで御報告いたします。
先ず総括的質疑におきまして、第一に、「この条約は、文面では平等互恵だと言うが、日米両国に経済力の差があることから、実際上は不平等なものにならんか」との質問に対し、「その点はあり得ると思うが、例えば第七条第二項において公益事業を行う企業若しくは造船、航空運送、水上運送、銀行業務若しくは土地その他の天然資源の開発を行う企業等を制限業種として除外することによつてかかることを防止する措置をとつている」との答弁があり、次に、「この条約が、旧日米通商航海条約復活の形をとらなかつた理由はどうか、米国側からの強い申出があつたためではないか」との質問に対しましては、「最近米国上院が承認した日本以外の数カ国との通商条約は、日米条約と同様の条件のものである。又本条約の内容は、米・コロンビア国間の条約と大差はないが、これに比べるとむしろ日本のほうから多くの制限を附したくらいである、今回の条約が、旧日米条約復活の形をとらなかつたのは、時代の変遷と共に新らしい事態が生じたことを考慮したためであつて、その結果、例えば第四条の仲裁判断、第十二条の為替管理に関する規定、第十五条の税関行政、第十七条の国家貿易乃至国家商業に関する規定、第十八条の競争制限的商慣行の排除に関するものなど、新らしい規定が加えられた。新旧条約の重要な相違点を挙げると、最恵国待遇が無条件均霑となつたこと、民間の外資導入に対する保護の事項が大きく取上げられたこと、資本、技能及び技術の交流を促進するための規定が設けられたことなどである」との説明があり、又「この日米通商条約は、日本が今後諸外国と締結する通商条約のモデルとなるというわけであるか」との質問に対し、「この条約は、慎重に研究したもので、条約の形式としてはよく整つていると思うので、大体この形で行くことが望ましい。ただ各国それぞれ異なつた事情があるので、必ずしも同じ形のものを締結し得るとは限らぬ」との答弁がありました。
又第二に、第七条第二項の包括的内国民待遇を留保する制限業種の規定に関連する質疑におきましては、先ず、「第七条第二項に掲げる制限業種以外にも、重要産業があるが、この点を考慮したか」との質問に対し、「制限業種を広くすることを研究したが、第七条第二項に列記したものを以てマキシマムと考えた。というのは、製鉄業、自動車工業等、これ以上制限を強めると、外資が入りにくくなるからである。なお、これらの業種を制限業種の中に加えなくとも、議定書第十五項において、外国人が円貨を以て日本企業の発行済の株式を取得することを条約の効力発生後三年間制限することを規定しておる。」又第十二条第二項には、為替管理を行い得るのは、通貨準備の合理的水準を維持するために必要な場合に限る旨を規定しておるのでありますが、外資導入についてこの通貨準備の保護のため必要な制限をなし得る旨を議定書第六項において定めておりますので、「これらの分野に対する外資の流入も十分規制し得る余地がある」との答弁があり、次いで「外資は欲しいし、外資の圧迫は困るというのは矛盾ではないか」との質問に対し、「外国人は本国への送金の保証を欲しているが、送金は、我が外資法で規制されておる。現在日本における株式投資の総額は約五千億円であるが、このうち外国人の所有に属するものは百億円程度で、その約十三%が発行済の株式であり、その大部分は送金の自由を要請しているものである。これによつても送金の保証のない場合には、外国人はそう多額の投資を行うとは考えられない。」なお、「日本の資本は弱体なので、外資が必要であり、今後は、技術導入に伴つて外資が必要となる。この条約ができても、我が外資法は三年間変更する必要はなく、必要な所に外資を入れるのが、この法律の目的であつて、その運用によつて巧みにやつて行けるわけである」との答弁でありました。
第三に、第七条第二項の但書において、制限業種に対する留保を適用しないと規定しておる既得権に関する質疑におき」まして「制限業種に対する制限実施の際、既得権として認められるものにはどんなものがあるか」との質問に対し、「米国側が、日本で持つているもので、既得権として認められるものには、ナシヨナル・シティ・バンク、バンク・オブ・アメリカ及びチエース・ナシヨナル・バンクの三つの銀行があるが、その預金総額は八十億円程度に過ぎず、而もこれが既得権として最も大きなもので、且つ、殆んど唯一のものである。そしてこれらは、我が経済に貢献するところが少くなかつたし、殊にそのうちナシヨナル・シティ・バンクは、戦前から日本に存在しているもの であることから考えると、この規定 は、占領治下において米国が得たもの を既得権としてリーガライズせんとす るものだとの説は、実際上必ずしも当 つておるとは考えられない。又この三銀行のほか、米国の持つ既得権としては、鉱業即ちマイニング、運輸業及び その他の企業において約二百三十五万株、金額として二億八千五百万円程度の株式があるだけである。」次に、「日本側が米国で持つておるもので既得権として認められるものには、約五万人の邦人が彼の地で農業に従事する権利がある」との説明がありました。この第七条は、日米両国内に実質上平等の関係が貫かれているかどうかの観点から、最も熱心に質疑が行われたものの一つでありました。
次に第四に、関税事項に関する質疑におきまして、「ガット、即ち関税及び貿易に関する一般協定加入の見通しは如何、第二十一条第三項によれば、日本がガットの利益を受けるという点は未確定ではないか」との質問に対し、「米国の方針として関税交渉は当分の間行わないことになつていますので日本のガット加入の問題の見通しは、はつきりしない。第二十一条第三項の「いずれの一方の締約国も、その意思によつてガット協定の当事国となつていない国に対しては、同協定に基いて取り極めた利益を与えなくてもよい。」との規定は、厳密に法律的な意味で、ガツト税率の適用を保証しているとは言えないが、日本の場合、加入の希望を持つているにもかかわらず、まだ加入が許されないのであるから、ガット税率を適用してもよいことになるという解釈から、日本もガットの利益を受けることになると思う、」との答弁があり、又、「まぐろ関税の引上げ等はこの条約によつてどうなるか、」との質問に対し、「この条約では米国がまぐろ関税を引上げることができないという保証はない。ただ、日本がガットに入る場合は、関税交渉が行われて関税率がきまるので、米国が一方的に引上げることはできなくなる」旨の答弁がありました。第五に、「この条約が締結されると、日本人の米国への入国、居住、滞在が容易になるのか」との質問に対し、「現在米国に入国し滞在する者は、旅行者として三カ月間の滞在が許される。滞在期間の延長は僅か一回、即ち三カ月間だけ認められるが、これでさえかなり困難な状態である。このために商社の派遣員は甚だしく困つているのであるが、この条約が発効すれば、第一条の規定により、入国、居住及び滞在が極めて容易になる」との答弁がありました。なお、右総括的質疑の際、七月二十三日の委員会において政府の説明するところによりますと、米国では本条約はすでに八十六票対一票の多数を以て上院を通過し、あとは大統領の批准を待つばかりになつておりますが、上院はこの条約の承認に際して条約第八条第二項に掲げられた職業中、米国の各州において米国人に対してのみ就業を許しているものについては、これを引続き米国人のみに許すことを可能ならしめようとする趣旨の附帯決議を行いました。米国大統領が、この点を留保して批准を行うことになるかどうか、目下のところまだ不明であるとのことでありました。
次いで、逐条審議に入りましたが、同じく熱心な質疑が行われました。
委員会は八月六日質疑を了し、引続いて討論に入りましたところ、先ず自由党を代表して徳川委員より、「この条約は、我が国経済の自立化を図り、各種重要産業の合理化に役立ち、資本及び技術の導入促進を図ることを目的としているものである。一部において外資の活動に危惧の念を抱き、又既得権を認めた条項は不平等である等との説もあるが、政府の説明によれば、その心配はないのである。本条約の発効により、我が国の対米関係は、戦後初めて平等互恵の原則の下に我が国に有利になるのであるから、これに賛成でおる」、との意見が述べられ、且つ、「本条約第八条二項に関する留保が、米国政府より正式に申出た場合は、我が政府もこれに対応して相互的の措置をとる権利を我が国のため留保する手続をとることを希望する」旨を附言せられました。
次に、日本社会党を代表し中田委員は、「この条約には反対である。この条約には日米両国の国力の差が織込まれていない。講和条約、安保条約並びに行政協定と揆を一にし、互恵平等と言うも、不平等の関係を招くものである。又この条約は、米国とコロンビア国間の条約を範としたと言うが、コロンビアは、曾つてはスペインの植民地たりし小国である。その輸出入の八割は米国に依存し、米国の隷属下にある国である。これを以てしても本条約の全貌を窺い知るに足る。次に、非難すべき二、三の点を指摘すれば、第一は、米国側に占領中に得た既得権を認めた点である。一方的に取得したこの権利を援護するため、政府は在米二世の土地所有をこれと引替えにしている。日本はこれによつて何らの利益をも得ないのである。第二は、蓄積円による米国人の旧株取得の権利を三年間に限定した点である。我が国産業のごとく、外部の資本に対する依存度の大なるものにあつては、僅かな外資を以てしても容易にその経営が左右される危険があるのである。第三は、鉄鋼、金属、化学工業等に対し、制限業種を拡大するの措置を講じていない点である。これを拡大することは、必要であると考える。然らざれば外資によるこの種産業に対する支配は免れないところである。更に、この条約の有効期間を十年とした点に、問題を含むと言わざるを得ない。十年は長きに失する。これを要するに本条約は、外資の導入と、その擁護に急なるの余り、国内産業の保全に対する配慮が不十分である。本条約が日本にとり如何なる利益ありやと探して見るに、旅行者に対し居住者としての利益が与えられるのみにして、失うところ多く、得るところなし」との意見を述べられ、次いで、杉原委員は、「この条約には、政府側の主張するごとく、我がほうの当然要求すべきものが十分取入れられているとは思えない。規定の内容には不備不満の点があり、いま一段努力すれば避け得られたであろう不備の点も、若干残つている。併し相当努力の跡のあることを認めるにはやぶさかではないし、又この条約の不成立の場合に起る広汎な影響を考え、これに賛成しようと思う。ただ今後の運営については十分留意すべきである。最後に強い要望を付したいのは、かかる条約は、国民に対し秘密にすべきでないことである。国民の輿論に聞いてやつてもらいたかつた。交渉の過程においても、国会には十分説明すべきである。更に一つの要望として言いたいことは、政府は、先には資本導入を唱え、昨今は東南アジアの経済開発を提唱するなど、現実と余りに懸け離れた問題を掲げて国民に淡い幻想を抱かせておるが、かかることはよくないことである、もつと地道にやつてもらいたい」と述べられ、最後に加藤委員より、「本条約の締結それ自身は結構であり、その苦心は多とする。併し互恵平等とは称しても、両国の経済力の差の大きいことから見て、導入される外資が果して我が国の国民生活と経済に寄与するのか、或いは又逆に我が国産業が、米国資本の隷属下に置かれるのかは大きな問題である。政府は、この両者の妥協点を求め、外資による悪影響を最小限度にとどめるため、制限業種を設定する等の措置を講じておると言うが、名に背かぬためには、一にかかつて外交方針如何にあると考える。然るに吉田内閣には、米国に対し対等の外交を進めた実績がない。その軟弱外交を以てしては我が国に対する悪影響が考えられる故本条約には反対である。」なお、「本条約がいわゆる選挙管理内閣の下に締結され、国民に十分知らされなかつたことは不満である」との意見を述べられました。
以上で討論は終結し、次いで採決に入りましたところ、多数を以て、本件は承認すべきものと決定いたした次第であります。
以上御報告申上げます。
次に、議題となりました五件の条約につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
先ず、第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権の保護に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の批准について承認を求めるの件及び第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権の保護に関する日本国とスイス連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件、以上二件について御報告いたします。
政府の説明によりますると、日独間及び日本・スイス間におきましては、第二次世界大戦と、これに次ぐ日独両国の占領のため、約十年間は、通信連絡が異常な状態に置かれましたので、工業所有権関係の出願書類を相手国に郵送し、又は特許料、登録料等を相手国に納付することが極めて困難でありましたし、又連合国の占領政策による影響もありまして、互いに相手国民の工業所有権を保護する措置をとることができなかつたのであります。そこでドイツ政府から昨年八月に、又スイス政府からは一昨年十一月に、それぞれこれらの権利を救済するための協定を締結したい旨の申入れがあり、次いで交渉が進められました結果、相互の間に完全に意見の一致した協定案の作成を見ましたので、本年五月八日にドイツとの間に、又六月二十五日にスイスとの間に、東京において、それぞれ協定の署名が行われた次第であります。
この両協定は、いずれも工業所有権の特許、又は登録の出願のための優先期間の延長、遡及効を伴う商標権の存続期間の更新を内容といたしております。ただスイスは、占領されたドイツと異なり、工業所有権が一旦消滅したという関係にありますので、スイスとの間の協定には、このほかに消滅した工業所有権の回復措置について規定されております。そうしてドイツとの協定は、批准書交換後十五日目に効力を生じ、スイスとの協定は、それぞれの国内法の規定に従つて行われた承認を通知する公文の交換後十五日目に効力を発する旨を定めております。「これらの協定は、我が国が独立回復後、両国との間に締結いたします最初の正式協定であり、日本とドイツ並びにスイスとの間の伝統的な技術提携の再建に役立つものと考える」との説明でありました。なお、詳細はお手許の資料により、御承知願いたいと存じます。
次に、国際民間航空条約への加入について承認を求めるの件と国際航空業務通過協定の受諾について承認を求めるの件について、御報告いたします。
政府の説明によりますると、国際民間航空条約は、第二次大戦中、航空技術が著しく発達いたしたのに鑑みまして民間航空運送の規律に対する国際的統一を確立し、且つこのため国際民間航空を指導する国際機関を設立する目的を以て、一九四四年にシカゴで開催された国際民間航空会議において作成されたものでありまして、一九四七年四月四日に効力を生じ、その当事国は本年六月末現在、六十カ国に上つております。我が国がこの条約に加入いたしますためには、条約への加入に先立つて、加入承認の申請を行い、その申請が、国際連合総会により承認され、国際民間航空機関総会の五分の四の賛成投票及び第二次大戦中に我が国によつて侵略され、又は攻撃されたすべての国の同意によつて承認されることが必要とされておるのであります。而して我が国は、平和条約の署名に際して発した宣言において、平和条約の最初の効力発生の後、六カ月以内にこの条約への加入承認を申請する意思を明らかにいたしておりまして、昨年八月に加入承認の申請を行いましたところ、国連総会及び国際民間航空機関総会によつてこれが承認され、又すべての被侵略国の同意が得られ、ここに我が国の加入申請は承認されるに至つた次第であります。本条約は、国際民間航空及び国際航空運送の一般的原則を定めるほか、国際民間航空機関を設立することをその内容としておりましてこの条約への加入は、米国政府に宛てた通告によつて行い、その通告が同国政府により受領された後三十日で、我が国は正式に同条約の当事国となるわけであるとの説明でありました。
次に、国際航空業務通過協定は、政府の説明によりますと、只今の国際民間航空条約と共に一九四四年シカゴで作成されたものでありまして、同条約の補足的協定ともいうべきものであります。この協定は、国際民間航空条約と相待つて民間航空の運営を円滑にするため、国際航空の原則の一つであるいわゆる空の自由、即ち他国の領域における無着陸横断権及び他国の領域での運輸以外の目的での着陸権を相互に保障することを目的としたものでありまして、一九四五年一月三十日に効力を生じ、その締約国は、本年六月末現在四十一カ国に達しております。我が国は平和条約署名の際の宣言において、国際民間航空条約の当事国となつた後、成るべく速かにこの協定を受諾する旨の意思を明らかにいたしたのでありますが、協定の受諾は、米国政府に宛てた受諾の通告によつて行い、その受諾は、同政府がその通告を受領した目に効力を生ずる旨定められておるとの説明でありました。なお、右条約並びに協定に関する詳細は、お手許の資料により御承知願いたいと存じます。
最後に、国際電気通信条約の批准について承認を求めるの件について御報告いたします。
政府の説明によりますると、この条約は、現行の国際電気通信条約を改正するため、昨年十月からアルゼンチンのブエノスアイレスで開催された会議において作成されたものでありまして、我が国は、全権を派遣し、改正の審議に参加せしめ、諸国の代表と共に昨年十二月二十二日に署名いたしたのであります。現在署名国は、八十カ国に上つております。
本条約は、現行の条約と同様、国際電気通信連合の機構と組織を定め、又電気通信に関する一般規定及び無線通信に関する特別規定等を掲げておりまして現行条約実施の経験に鑑み、今日の事態に適応した改善が加えられておるのであります。この条約は、明年一月一日から実施されることになつておりますので、我が国といたしましても、この条約を批准し、諸国との間の国際電気通信業務の円滑化を図り、併せて国際協力の実を挙げたいとのことでありました。その詳細はお手許の資料により、御承知願いたいと存じます。
委員会は二回に亘つて、以上五件の条約を審議いたしましたところ、別段の質疑なく、討論を了し、八月六日の委員会において採決に入りましたところ、以上の五件は、いずれも全会一致を以て承認すべきものと、決定いたした次第でございます。
以上御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/20
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021・河井彌八
○議長(河井彌八君) 暫時、休憩いたします。
午後一時二分休憩
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午後二時四十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/21
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022・河井彌八
○議長(河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。
日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約の批准について承認を求めるの件に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。中田吉雄君。
〔中田吉雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/22
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023・中田吉雄
○中田吉雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、只今議題となりました日米友好通商航海条約に反対の意思を表明するものであります。
先ず第一に指摘いたさなくてはなりません点は、本条約が、衆議院解散下の吉田内閣の手によつて調印せられた点であります。言うまでもなく本条約は、外交、通商、経済、文化等の広汎な関係を律しまするところの基本的な条約であります。又講和発効後結ばれましたところの最も重要な条約であり、而も今後有効期間は十カ年の長きに亘るものであります。このように重要なる条約が、時あたかも、衆議院は解散せられ、全くの選挙管理内閣に過ぎない吉田内閣の下に、この四月二日調印されましたことは、越権行為も甚だしいと言わなければなりません。勿論このような措置も憲法第七十三条によつては可能であります。併し可能であるということと、やつてもよいということとは全く別個の問題であり、政治道徳の上からは、断じて許されないことであります。選挙管理内閣といたしましては、その行政権の行使は飽くまで事務的なものに限定するのが憲法政治の基本的なルールであります。然るに、国会において不信任の決議を受けた当の吉田内閣が、而もとかくの風評があり、アチソン国務長官から罷免が内定いたしておりましたマーフイー大使との間に、本条約が結ばれ、同大使帰国の手みやげといたしまして、而も特需二カ年保証という空手形によりまして、アメリカ応援の下に選挙戦を有利に展開せんといたしましたところの心事や、誠に柄劣と称すべく、本条約が、依然として改まりません吉田内閣の対米追随外交の所産である点は、誠に遺憾とするところであります。
第二に、本条約は、その範をアメリカとコロンビアとの間に結ばれましたるこの種条約にとつたことであります。申すまでもなくコロンビアは、南米の一小国であり、而も曾つてスペインの植民地でありました。現在同国の輸出入貿易の八割はアメリカによつて独占され、コーヒーと共に同国における主要産業であります石油産業は、七割以上もアメリカ資本が投下され、コロンビア全産業は、まさにアメリカの従属下にあると言つても決して過言ではないわけであります。そのコロンビアとアメリカとの間に、一九五一年四月に結ばれました条約をモデルケースとして結ばれました一点を指摘いたしましただけで、およそ本条約の全貌を察知いたしまするにかたくないわけであります。而もこの条約は、コロンビア国がなかなか受諾せず、交渉が難航いたしまして、ニカ年もかかつてやつとできた条約であります。然るにさして主張すべき点も主張いたさずいたしまして調印いたしました本条約を見ますると、吉田内閣の対米外交の交渉能力はコロンビア以下であるといつても過言ではないわけであります。占領七カ年の追随外交が習い性となつたのでありましようか。対米外交に全く腰のないこと夥しい吉田、岡崎外交は、危なくて見ておられないというのが現状であります。我が国の昭和二十七年度の貿易実績は、輸出が十一億六千八百万ドル、輸入が十七億九千万ドルと、著しい入超を示しています。このアンバランスは、対米関係におきまして特に著しく、昨年一月から十二月までの満一カ年間におきまして、アメリカからの輸入は七億六千八百万ドルの多きに達していますが、我が国の対米輸出は僅かに一億二千九百万ドルと、三分の一以下に過ぎないのであります。この貿易の逆調を是正いたしますことこそ、我が国朝野の最大の関心事でありますが、本条約はこれに対しまして、あとにも述べるように何の役にも立ちません。むしろこの貿易の対米依存を恒久にいたします以外の作物でもございません。我が国といたしましては、得るこころ極めて少く、余りにも多くの特権をアメリカに与えたと言わなくてはなりません。その証拠には、アメリカは恥大西洋、即ちNATO駐兵協定は、長くその批准を拒み続け、渋々ながらこの七月十五日、批准いたしましたが、これに反しまして日米通商航海条約は、七月二十一日、我が国よりも一足先に、いち早く可決いたしました点を以てみましても、この間の消息を知り得るわけであります。講和条約発効後においても、このような条約を結ばなければならないということでは、吉田内閣は、経済自立達成という国民的課題を解く資格がないと言わなくてはならないのであります。政府は、本条約は今後我が国が他国との間に結ばれるであろうこの種条約の雛形と自画自讃されていますが、そのようなことは断じてあり得ません。それは我が国の従属国は、世界中どこを探してもないからであります。
第三に、外資導入と国内産業との調整が不十分な点であります。勿論我が党も、一概に外資の導入に反対するものではございません。併し、さりとて無条件にこれを歓迎するものではありません。それは国民経済の基礎を危くしないところの性格と、その限度のものでなくてはなりません。又或る種の産業は、これを外国の支配に委ねますならば、その国の死命を制せられまして経済の自立と政治的の独立を失う業種があります。従つてこのような基幹産業は、十分に外国資本から擁護できるような措置がなされなくてはなりません。この点から、先ず本条約に異論がありますのは、銀行におきます貸出業務に制限を加えなかつた点であります。金融を握る者は産業を支配すると言われていますが、日米両国の銀行業者の桁はずれな力関係の相違を思いますならば、貸付競争が今後行われ、且つ貸付を通じまして、やがて経営支配が起らないと誰が保証できましようか。貸付業務は、外国為替業務関係だけに限定すべきであるという金融業者の主張は、傾聴に値する見解であると思いますが、これが外交交渉において、貫き得ませなんだことは遺憾と言わなくてはなりません。次に、公益事業や基幹産業を外国資本から保護するための制限措置が極めてあいまいである点であります。本条約第七条第二項には、「当該企業を営むことができる限度を定める権利を留保する」とありますが、我が国政府の従来の経緯からいたしましてこの権利を行使し得るものでありましようか。私たちは不安なきを得ないわけであります。なお制限業種に機械、化学、銑鋼、石油、鉱山業等が加えられなかつた点は、安全なる措置ということはできません。而もこれらの制限業種七種に対しまして、二百三十四万九千九百二十株、二億八千五百五十九万七千四百七十円の少額投資であるとは言え、既得権を認めている点であります。特に銀行業におきましては、制限業務でありますところの預金並びに信託業務が既得権といたしまして、在日のナシヨナル・シティ・バンク、チエーズ・ナシヨナル、バンク・オブ・アメリカ、アメリカンエクスプレスの米国の四銀行に許された点であります。なおこれらの既得権は、占領という特殊事情の下にあつて、一方的に取得された権益でありますから、これをそのまま認めますことは、断じて妥当な措置ということはできません。このようなていたらくで、どこに独立外交の面目があると言うことができましよう。(「その通り」と呼ぶ者あり)これに反しまして、我が国の銀行がアメリカに支店を設けます場合には、アメリカの法人としてでなくては設立できないわけであります。この二月カリフォルニアに設置されました東京銀行並びに住友銀行は、現地の法人といたしましてやつと設立されたものであります。吉田内閣の言う互恵平等とは、まさにこのようなものであります。又株式の取得に対しましても、制限業種以外の自由企業にあつては、三年後には蓄積した円を以て旧株を取得することができるという重大なる譲歩をいたした点であります。果してこのようなことで、国内産業擁護の意思があるか、疑いなきを得ないわけであります。若し日本経済の回復並びに第三次資産再評価等が順調に進みません場合には、自己資本よりも他人資本の多い資本構成の我が国においては、僅かの外資を以て容易に経営が支配されることが予想され、アメリカ資本から決して安泰ではないわけであります。(「外務大臣目を醒ませ」と呼ぶ者あり)紛争が起きました際には、双方好意を以て協議するようになつていますが、財界筋でも、この協議は容易にまとまらないであろうということで憂慮を以て迎えられておるわけであります。勿論吉田内閣は、今後三年は絶対続かないことは明白でありますが(「その通り」と呼ぶ者あり)問題を将来に残した責任は重大であると言わなければなりません。いずれにいたしましても、外資の導入を急ぎます余り、国民経済保護の立場を忘れたと言わなくてはなりません。この徹底いたしました外資の保護と、導入外資に対する門戸の開放を主としておるところの本条約は、アメリカ投下資本の保護法とすら酷評しておる向きもあるわけであります。全く理由のないわけではございません。
第四に、本条約によつては、アメリカとの貿易の最大の難関でありますところの関税障壁の除去に対しましては、いささかの貢献もいたさない点であります。最近世界各国とも援助より貿易をと、アメリカの高関税政策に対して、鋭い批判を向けておるわけであります。然るにアメリカにおきましては、この傾向は一向に改まりそうにもございません。先般のアメリカ議会においては、互恵通商法を一年延期にいたしまして今後一カ年間は、関税引下げの問題を棚上げいたしてしまいました。それどころではなく、米国品を買えという運動が、ますく広汎に行われておりまして、吉田内閣の外交政策とは全く逆な保護政策の傾向を強くしておるわけであります。特に我が国のように、アメリカから七億七千万ドルも輸入しておるのに、対米輸出がたつた二億三千万ドルに過ぎません。而もこの三分の一にも足りない我が国の輸出に対しまして、まぐろの関税に対しましてとつたアメリカの制限措置、更に絹スカーフに対しましてとらんとする関税引上の運動のごときは、唾棄すべき一方的な貿易政策と言わなくてはなりません。併しこのような、日本の商品は買わないが、日本はアメリカの商品を輸入せよというような、全く得手勝手な対日貿易政策をアメリカがとるようになつたのは、全く積年に亘るところの吉田内閣の対米追随外交の産物以外の何物でもないわけであります。中共貿易を過大に評価してはいけないと、まるでアメリカ人が言うようなことを吉田内閣みずから言つて、アメリカの意を忖度いたしますような政策をとつています限り、このアメリカの高関税灰策は断じて改まらないでございましよう。中共貿易を開始いたしますことこそ、アメリカの高関税政策をコントロールするところの最良の通商航海条約と言わなくてはなりません。吉田、岡崎外交にその勇断のない点を誠に遺憾とするものであります。
以上のごとく本条約は、実に数多くの特権をアメリカに許したものであります。これに反しまして我が国の獲得いたしました利点は、この全条文を目を皿のように大きくいたしまして探しましても、ただ一つ、これまで旅行者といたしまして滞在が認められなかつた商社などの駐在員が、居住者といたしまして安定する資格が与えられ、且つ三カ月以上になりますと、二重課税を避けますため一旦アメリカ以外に出ることが必要であつたのが、それがなくなつた。たつたこれだけであります。このような条約でありますから、吉田内閣ただ一つの頼みといたします財界からさえ、この条約は日本にとつてプラスになる何物もないという、きついお叱りを受けているのは当然と言わなくてはなりません。而もこの国際情勢の激変してやみません現段階において、本条約の有効期間を十年の長期といたしましたことは、いよいよ以て失敗に失敗を重ねたものと言わなくてはなりません。アメリカは冷戦の緩和に備えまして、一九五三年五百六億ドルにも達しました軍事予算を、一九二四年の会計年度には三百四十三億と、実に一百六十億以上も軍事予算を大削減いたしております。必ずやアメリカは投資市場と商品市場を求めまして一大進出を予想されます際に、我が国産業を裸のままアメリカ資本の脅威の前にさらすことは、全く当を得た政策であると言うことはできないわけであります。又我が国は講和、安保両条約、行政協定並びに特別立法によりましてアメリカに対して広汎な特権を与えています。例えば造船業は制限業種であると言いながら、横尾議員が曾つて関係しておりました呉の工廠のドツクは、ナシヨナル・バルク・キャリヤーコーポレーシヨンに十カ年も貸与しています。同社はここで、世界最大のタンカーを建造いたしております。造船業は多々益々弁ずるのに、この状態であります。全く制限措置底ぬけの状態であります。従つて、通商航海条約を価値あらしめるためには、これらとの広汎な関連において取上げなくては、この条約だけでは、全く一方的に特権をアメリカだけに与えることになつてしまうわけであります。アメリカの駐兵下に結ばれました本条約は、あたかもペルリ来寇の下に安政元年に締結されました日米和親条約に匹敵するものと言わなくてはなりません。治外法権を撤廃し、関税自主権を闘い取るために、我々の先輩は殆ど半世紀の長きに亘つて苦闘を続けたわけであります。然るにそれに劣らない不平等条約を結ばれたわけであり、御存じのように吉田総理のお父さん竹内先生は、明治の先覚者といたしまして、不平等条約改訂のために闘つて二カ年半獄舎に繋がれたことがございます。その父の闘われた不平等条約に匹敵いたしますところの取極めを、吉田総理自身がされましたということは、不肖の子ができたものと墓標の下で慟哭久しいものがあろうかと存じます。(笑声、拍手)他党に憐れみを乞わなくしては国会が乗り切れないというのは、正に外交上のかかる失敗の当然の帰結と言わなくてはなりません。我が日本社会党は、日本経済の自立と発展のために、本条約に強く反対するものであります。
特に私は、自由党、改進党、緑風会のかたがたに申上げて深甚なる御考慮をお願いしたいと思います。先にこの国会を通りましたストライキ制限法は、労働者と資本家階級との所得の配分についての闘いであります。併しながら日米通商航海条約は、働くところの勤労大衆と経営者とが、共に外国資本とどのように対決するかというところの大切な条約であります。名前を挙げることを憚りますが、自由党の財界とも関係のあります某有力者の人が、内閣できまつたから、公然と反対することができないが、この条約は、我が国の運命にとつて極めて重大であるから、日本民族の立場から、強くこの点を指摘して闘つてもらいたいということを私に言われたわけであります。
実に本条約は、このような内容と性格を包含するものであることを申上げまして我が党の反対討論に代えるわけであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/23
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024・河井彌八
○議長(河井彌八君) 石原幹市郎君。
〔石原幹市郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/24
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025・石原幹市郎
○石原幹市郎君 只今、議題と相成つております日米友好通商航海条約の批准について承認を与える件に対しまして私は自由党を代表し賛成の意を表せんとするものであります。
今回締結せられました日米友好通商航海条約は、日米の間において一昨年以来一年有半に亘つて折衝を続けたものでありまして、我が国にとりましては、戦後初めて締結する通商航海条約でありますから、慎重の上にも慎重を期し、而も我が方の主張を十分に取り入れしむるよう、最善の努力をなし、漸く本年二月下旬、条約案の妥結を見たものであります。
申すまでもなく日米両国間の通商関係は、太平洋戦争発生の直前、即ち昭和十五年一月に廃棄されましてから今日まで、実に十三年間の久しきに亘りまして無条約の状態に置かれていたのであります。尤も平和条約の効力発生後におきましては、同条約第十二条の規定によりまして規律されておるわけでありまするが、この規定は暫定的な性質のものであるばかりでなく、我が国にとりまして十分な待遇保障を規定しているとは申せません。今回の条約締結により、日米両国が完全なる平等互恵の立場に立ち、日米相互の国民が戦前に比し、遥かに安定した保障の下において、経済的、文化的、その他各般の活動を自由に行うことができるように取極められたものでありまして、日米経済関係の緊密化と、両国友好親善関係の増進に寄与するところ、極めて甚大なものがあるのでありまして、現下諸般の情勢に鑑み、誠に欣快に堪えないところであります。(「おやおや」と呼ぶ者あり)そもそも日本の当面せる最大課題は、内においては経済自立の基盤を強化せしめ、外に対しては列国との通商経済関係を緊密化し、以て国民生活の安定と向上を図ることにあることは、今更申上げるまでもないところであります。(「何を言つているんだ」と呼ぶ者あり)而してこれがためには、輸出産業を中心とする重要産業の合理化及び発達を通じて、本邦輸出品の国際競争力を強化し、貿易の進展を図ることが、刻下の急務であると言わなければなりません。これがために本条約におきましては、日本産業の発達に寄与する優良なる外資並びに技術の導入に対しては、十分なる保護と保障を与えているのであります。他方又、我が国経済の健全なる発達に役立たない外資の流入及び活動を制限することとしております。即ち日本にとつて好ましき外資の導入については、十分なる保護を与えると共に、他方好ましからざる外資に対しましては、種々なる制限規定を設けているのであります。一部野党諸君においては、不当なる外資の支配を危惧し、(「その通り」と呼ぶ者あり)進んでは日本経済を外国資本の支配下に置くがごとき不安を宣伝されるかたもあるやに見受けられまするが、本条約は、前にも述べましたごとく、我が国経済の健全な発達に必要な優良外資導入を促進し、(「甘いですよ」と呼ぶ者あり)及び保護する半面、好ましくない外資の活動を制限する措置を十分に講じており、外資の選択の規制について最も適切なる調整を図つているものと考えるのであります。(「石原さん、それは甘いぜ」と呼ぶ者あり)即ち右に対応して事業活動の面におきましても、原則として外国人の活動に対し、広く内国民待遇を保障することとしている反面、電気、ガス等の公益事業、水陸の運送業、鉱業、銀行業等の国民経済上重要なる業務につきましては、外国人の支配又は参加を制限できることとなつております。更に将来両国協議の上で、制限業種の枠拡大もできることとなつております。
次に、対外通商貿易活動の面におきましては、通商貿易の活動の発展に不可欠なる相手国における各般の通商上の対等の待遇が、本条約によつて保障されることになつております。通商上の待遇として第一に挙げるべきものは、入国、滞在及び居住の保障であります。米国におきましては、昨年末新入国法が制定されまして以来、通商航海条約を締結しておる国の国民でなければ、通商貿易活動を行うための入国及び滞在は保障されないこととなり、現に本邦商社員は、このために極めて困難な事態に置かれておるのであります。本条約が発効いたしますれば、米国との間の通商貿易及び投資活動に関しまして、入国滞在及び居住に関する待遇が、完全に保障されることになるのであります。右の待遇が確保されることにより、本邦商社の支店活動も、初めて本格的に発展することが可能となるわけであります。右に伴い身体、財産の保護、課税、訴権等について、広く内国民待遇が保障されることは申すまでもありません。殊に社会保障制度に関する内国民待遇を規定しておることなどは、旧条約にもなかつた新らしい規定であります。私は本条約に反対される人々は、何故に日本をいつまでも不平等な不利益な立場に置かんとするのか、その真意奈辺にあるのか、私は了解に苦しむものであります。(拍手)
通商工の待遇として第二に挙げるべきは、本邦輸出品に対する関税上の待遇であります。我が国は、目下関税及び貿易に関する一般協定、いわゆるガツトヘの早期加入の実現を望みつつ、未だ実現を見るに至つておりません。本条約におきましては、米国は本邦輸出品に対し、我が国がガツトヘの加入を認められる以前においても、ガット上の税率を適用する用意があることが明かにされております。このことは、我が国の通商貿易の発展にとつて誠に重要な利益をもたらすものと考えます。関税上の待遇のほか、本条約は、海運その他通商貿易に関する各般の事項について、相手国及び第三国と平等の待遇を保障しております。更に一部には、既得権条項が、不平等であり、占領中の既得権を正当化するものであるとの論難があるのでありまするが、中田君の討論にも先ほどあつたのでありまするが、既得権については、これを尊重することは、文明国の法制の基本的原則であります。(笑声)又本条約の既得権尊重の規定の対象となるものは、我が国では銀行のみであります。而もこれらの銀行は、すでに戦前から預金業務を行なつていたのであります。この意味におきまして、本条約の既得権尊重の規定は、占領中の既得権を正当化するものであり、不平等であるとの論難は、これ又一つも当らないのであります。(「戦前からあつたのはただ一つしかない」と呼ぶ者あり)以上申述べましたごとく、本条約は、我が国の現状に照らし極めて切実なる多くの利益をもたらすものであります。一部野党の諸君は、本条約は失うところ多く得るところが少いと述べておりますが、本条約は、米国に対する利益よりはむしろ日本に対する利益のほうが大きいとも考えられるのでありまして、(「わからんね」と呼ぶ者あり)野党諸君の論難は、全く当らないものと考えるのであります。(拍手)
以上の理由により、私は議員各位の良識に訴え、本院が速かに本条約の批准を承認されることを希望するものであります。
なお政府の説明によれば、米国上院は、本条約を可決する際、本条約第八条第二項に規定する自由職業に関し、州法による制限を存続させるという趣旨の条件を付した由でありますが、米国政府が本条約の批准に当り、右上院の付した条件を留保する場合には、日本政府においても批准に当り、米国側の留保の限度において我が国も自由職業に関し相互的に留保を行うよう要望いたしまして、私の討論を終る次第であります。(拍手、「石原外務大臣」と呼ぶ者あり)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/25
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026・河井彌八
○議長(河井彌八君) 加藤シヅエ君。
〔加藤シヅエ君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/26
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027・加藤シヅエ
○加藤シヅエ君 私は、日本社会党を代表いたしまして、只今上程されました日米友好通商航海条約の批准について承認を与える件に、以下述べますところの理由によりまして、反対の立場を表明いたすものでございます。
今年は、日米両国にとりまして、はかのペルリ提督の日本訪問後百年を記念ずる年に相当いたし、太平洋我争によつて一たび破れましたところの両国間の親善関係を、相互の政府及び国民の努力によりまして再び取戻そうとすゆときに、ここに友好的な通商航海条約が結ばれようとするそのこと自体は、喜びでこそあれ、決して反対すべきことではないのでございます。然るに今問題になつておりますこの条約につきましては、残念ながら手放しで賛意を表しかねる数々の問題点を含んでいるのでございます。先ず第一に、この条約は、前文と二十五カ条に上る本文及び議定書から成る正式な国際条約で、今後十年間の長きに亘つて関係両国の経済交流を基本的に規定いたし、又あらゆる国内法に優先するものでございます。従つて目先の利害関係に囚われることなく、相当長期な見通しと、広い範囲の民間の意見をも十分に聴取した上で慎重に締結すべきであると思われますのに、政村は、去る三月十四日の衆議院解散によりまして、次期如何なる内閣が成立するかわからんというような特殊な事情下にあるあの四月の二日、国民にその信任を問いつつある選挙管理内閣の手によつて調印したのであります。吉田首相、岡崎外相は、如何なる理由があつて、この大切な条約を調印するのに、世を挙げて衆議院の総選挙、参議院の半数改選と選挙騒ぎに気を奪われておりますその時を選んだのでございましようか。臆測を逞ましくすれば、際限もないこのような明朗性を欠くところの調印の仕方を私は真に遺憾に思うのでございます。(拍手、「そうだ」と呼ぶ者あり)
次に、この条約の全体を通じて流れておりますところの精神、即ち日米両国間に平和と友好の関係を強化すること、両国の国民の間を一層緊密化して、よりよい経済的、文化的関係を促進すること、その目的達成に寄与することを信じて両国民は互いに相手国を自由に旅行をしたり、居住し得ることを定め、更に相互の有利な通商、投資等の権利を規定し、無条件に与えられる最恵国及び内国民待遇の原則を基礎とする等々と、いろいろのことが書いてございますが、この耳に聞えのよい友好精神と、相互平等に基く互恵的経済関係確立の理想が、一たび現実の具体的事象に触れますときには、そこには途方もない大きな国力の差異と多種多様な相異なる国内事情がございますから、条約の内容に一歩足を踏み込んで見ますと、そこには、必ずしも平等でも互恵でもない点を幾つか発見せざるを得ないのでございます。その代表的なものは、占領中のアメリカ既得権を日本が認めて、占領下に開業したアメリカの銀行が、日本の銀行と全く同等の立場で預金、信託を含む銀行業務を営んでいることを許していることは、前の中田同僚議員からも指摘されている通りでございます。こうした大きな平等ならざる譲歩をしたことに対しまして政府の弁明は、「加州における日本人の農業を営む権利を得ているのではないか」というふうに申すのでありますが、三十年、五十年、あらゆる迫害と闘いつつアメリカの人々に食糧を供給し、その食糧政策に貢献をなして来たところの加州日本人の農業権を、僅か五、六年の間に占領行政という絶対有利な条件の下に開業したアメリカの銀行の既得権と、暗黙のうちに引換えにするような条約は、この一点で、すでに真の平等精神を放棄しているものであると指摘しなければならないのでございます。(拍手)
次に、この条約中、日本人にとつてたつた一つ何か喜ばしい希望を与えてくれるような条項と考えられていたところの、あの第八条の自由職業による活動について、つまり日本で資格を取つているところの弁護士、医師、教師などが、米国に行つて雇われたり、自由開業したりすることができるとあるこのことは、日本の知識階級の活動範囲の拡大として魅力的なものだと考えられましたが、これが先月末米国議会の上院で、米国の一部の州の法律に抵触するとの理由で留保になつたことは、連邦政府と各州と二つの法律を持つ米国の国情とは言いながら、大きな失望を感じないわけには行かないのでございます。
次に、この条約の最も大きな部分を占めているところの両国間の通商関係でございますが、一体、自由なる通商の理想とは、具体的にどのようなことを意味するのか。ここに大きな問題点がございます。即ち今日世界の金の七割を保有すると言われているアメリカ、飽くなき自由競争を許すことを以て発達して来たところのアメリカの資本主義経済、これがこの瀕死の重病からやつと回復期に向つたかのごとき脆弱な日本経済と相対峙して、自由なる通商関係に入るというそのことは、将来どんな形に発展して行くでございましようか。政府は無制限なる外資の導入は阻止しなければならないと考えて、条約第七条においては、国際的に外国人に許容しない習慣となつている公益事業を初め、造船、航空、運輸、通信、預金及び信託の銀行業務等を制限業種として定めていると申しますけれども、基幹産業の一つとして重要性のある鉄鋼業や、戦争と関係の深い兵器産業、銀行の貸付業務等が制限業種から漏れている点は、将来に大きな問題を起す危険を感ずるものとして強く一部の輿論を刺激いたしております。殊にこの条約は、吉田内閣の一枚看板であつた外資導入を招くために、より広き門戸を開放して三年間の猶予期間付ではございますが、米国の民間資本による、既発行株式の自由なる取得を許しております。御承知の通り自由主義経済の下にあつては、有利な事業には、砂糖に群がる蟻のごとく資本は集中するでございましようから、こうした株式取得の自由を、対等に、互恵的に許すということは、日本資本が出掛けて米国の産業支配を行うというような力が全く欠けているこのに際、米国の経済力が、日本における競争事業などに対して、株式の買占を通じて、容易に統制の威力を揮うことができることになりますから、将来外国資本による日本産業支配の虞れなしとは断言できないのでございます。(拍手)又このような資本主義経済の本質から来る当然の帰結によつて、実際アメリカ資本が、日本産業界に君臨するような事態があり得ることを食いとめるために、政府が考えたところの三年間の猶予期間というのは、一体何を根拠に見通を立てたのでございましようか。今後三年間で日本経済が或る程度外国資本と競争できるよう成長できるかどうかは、吉田内閣が独立後の唯一の日本政局の担当者として過去一年有余の間、日本の自立経済確立のためにどれだけのことをなさいましたか。又どのような企画を立てていらつしやいますか。どれだけが実行に移されておりますか。これを見れば想像がつくのでございます。即ち、すべては無計画であり、無気力であり、頼みの綱は、朝鮮の戦争であつたり、MSAの援助であつたりという状態では、全く心細い限りでございます。政府は又申します。こうした悪影響を最小限度にとどめるために、制限業種の規定と為替管理の綱が張つてあると弁明されます。併しあの巨大な資本と生産力を持つアメリカの経済力は、海外市場を求めてやまないのが本質でございますから、制限業種、為替管理等の防波堤は、容易に突破されて、日本市場にアメリカ資本が流れ込んで来るであろうことは、今日すでに始まつているアメリカ映画の日本進出の一事を見てもわかるのでございます。今日、すでにアメリカの映画会社は、年間十五億を円貯金として積上げ、その総額は、すでに八十五億円に上つておると聞きます。外貨送金の保証されていないこうした円の預金は、勢いそのはけ口を内地産業支配に求めざるを得ないでありましようから、この条約発効後、日本の経済界の情勢は、いよいよ弱肉強食の舞台が提供されるのではないかと私どもは憂慮せざるを得ないのでございます。(拍手)要するに、この条約の問題点は、条約によつて招来ざれると考えられる外資導入によつて日本経済が受けるであろう利益と、又外資導入によつて脆弱な日本経済が外国資本に支配されるであろう危険性とが天秤にかけられた姿でございます。言葉を換えて言えば、「ふぐ」は食べたし命は惜しいと国民は箸を取りかねている状態であります。「ふぐ」料理を安心して食べるためには、腕のよい板前を必要といたします。日米通商条約を真に両国間の平和と友好関係促進の目的にかなうようにするには、日本と米国とが通商いたしますときに、先ず日本経済の自主性確立のための確固たるプランと、強力な政治力とを必要といたします。更に、今後直面するでございましよう多くの矛盾を、率直に勇気を持つて相手国を説得し、理解させ、解決して行くところの努力が必要でございます。岡崎外交、果してその手腕がありますでしようか。残念ながら秘密と追随とを以て名を売つていらつしやる岡崎外交の過去の実績に照らして見ても、私は深い危惧の念を禁じ得ないのであります。(拍手)不幸にしてこの条約が、日本の経済の自主性を喪失せしめるがごとき事態を招来いたしますならば、そのことは、日本国民にとつて不幸であるばかりでなぐ、日米両国の親善関係そのものにさえ禍根を残す結果となるで、ございましよう。
以上のような理由を以ちまして、私は、本条約批准に承認を与える件に反対せざるを得ないのでございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/27
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028・河井彌八
○議長(河井彌八君) 須藤五郎君。
〔須藤五郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/28
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029・須藤五郎
○須藤五郎君 私は、日本共産党を代表して、只今上程されている日米通商航海条約の批准に反対するものであります。なぜならば、この条約は、一見友好平等の言葉を以て飾られておりますが、これはまさに狼と羊との間の自由平等であつて実質的には羊の狼に対する絶対的隷属を意味するものであります。条文の五条、七条に言う資本投下及び事業活動について見れば、アメリカは日本に対して、資本投下に名を借りて、株式会社の株券を何の制約もなく、自由且つ無制限に取得できることになつております。若しもこのようだことを許せば、現在優良株一株が米貨三十セントから五十セントで買うことができる実情から推して、未だ十分なる資産再評価をしていない会社の支配権は、僅かなドル資本によつて完全に握ることができるのであります。あまつさえ技術導入によつて、アメリカの会社より派遣された重役によつて会社の経営権をさえ握られたり、アメリカでは使いものにならぬ機械類を高い値段で売り付けられ、その上製品の売上金の二〇%にも上る使用料を取らるのであります。
次に、事業活動の面から見れば、日本の基本産業である鉄鋼、機械、車両、土建のごときに対しても、何ら制限のない結果、今でさえ只見川電源開発に際しては、自由党の諸君もお困りになつたはずでありますが、更にアメリカ土建業者の無法なる進出を許し、アメリカの専横を公然と許さなければならなくなるのであります。その上貿易商社の横行を許し、更に金融においては日本の銀行の二十倍の資本を持つナシヨナル・シティ・バンク等四銀行は、日本の貿易金融に対して決定的な支配権を握つておるのであります。即ち輸入のための信用状は、外銀の許可なしには出せない状態であり、又日本が輸出で稼いだ外貨は、外銀に無利子又は年二分の低利で預けられ、彼らの自由に任せられているのであります。これらの既得権がこの条約によつて公然と認められるのであります。
更に鉱業権、租鉱権、借地権、土地建物の占有も認め、その上アメリカ人の税金は所得の半分を控除するのであります。輸入に関しては、アメリカからの食糧品や、綿花や、鉄鉱石などの輸入制限を行おうとすれば、パキスタンの綿花も、東南アジアの米も、中国の石炭、鉄鉱石も、同様に制限しなければならないのであります。又この逆に、中国から安いコークスや石災の買入量を殖やす場合には、アメリカから高いこれらの物を輸入する量も殖やさなければならなくなります。従つてアメリカ以外の国との貿易が非常に制約されることとなるのであります。若しもこの条約が批准されるならば、我が国の資源は、アメリカ資本の毒牙にかかり、日本の労働者はもとより民族資本家さえも、アメリカ独占資本の奴隷とならざるを得ないのであります。
諸君、吉田内閣は、アメリカの永久占領を認め、全国七百余カ所の軍事基地を提供いたしたばかりではありません、特需によつて日本産業の自主性を奪われ、法的根拠なくして中国やソ同盟との貿易をさえ制限されておるのであります。あまつさえ、吉田内閣は、今回MSA援助を哀願しておりますが、その結果は、再軍備を押しつけられ、遂には太平洋同盟への参加をさえ強制されようとしておる。であります。このような条件の下において、更に本条約を批准するようなことになれば、日本の政治、経済、貿易、労働、文化、その他国民生活のあらゆる分野に亘り、アメリカの完全なる支配を受けることは明らかなことであります。これら一連の講和条約、安保条約、行政協定、MSA等を総合するならば、一九一五年一月十八日に天皇制軍閥が中国に押しつけた、かの悪名高き二十一カ条と、その本質を同じくするのであります。この条約の名は、友好平等の言葉に飾られておりますが、実質的には、これほど不平等な条約は、世界中どこの独立国にもありません。東南アジアにもないが、ただ一カ国ある。それは南米のコロンビアであります。コロンビアはアメリカの植民地であります。日本はまさにアメリカの植民地以下なのであります。さきに日本が二十一カ条を中国に押しつけたときに、中国はどうしたか。中国人民は、この日を国辱の日として立ち上り、これが中国革命への導火線となつたのであります。二十一カ条は、世界中の指弾に会い、さすがの天皇制軍閥も引つ込めたのでありますが、このときヴエルサイユ会議で、最も強く反対したのは実にアメリカだつたのであります。驚くべきことにはそのアメリカが、今日、日本にそれと同じものを、否、それ以上のものを押しつけて来ており、又吉田政府は、それを全部鵜呑みにしようとしておることであります。ここに植民地的隷属国日本の姿があるのであります。中国の人民は、国辱の日としてこの日を闘いました。我々日本人も、この日をひとしく国辱の日として闘うのを忘れないでありましよう。我々日本共産党は、その闘いの先頭に立つことを国民に誓うものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/29
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030・河井彌八
○議長(河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
これより六件の採決をいたします。先ず日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約の批准について承認を求めるの件を問題に供します。本件の表決は記名投票を以て行います。委員長報告の通り本件を承認することに賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
〔議場閉鎖〕
〔参事氏名を点呼〕
〔投票執行〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/30
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031・河井彌八
○議長(河井彌八君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。
これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開頭を命じます。
〔議場開鎖]
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/31
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032・河井彌八
○議長(河井彌八君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数百二票。
白色票七十一票。
青色票三十一票。
よつて本件は、承認することに決しました。(拍手)
—————・—————
〔参照〕
賛成者(白色票)氏名 七十一票
佐藤 尚武君 小林 武治君
小林 政夫君 楠見 義男君
岸 良一君 梶原 茂嘉君
柏木 庫治君 加賀山之雄君
井野 碩哉君 赤木 正雄君
山川 良一君 村上 義一君
三木與吉郎君 野田 俊作君
中山 福藏君 豊田 雅孝君
土田國太郎君 田村 文吉君
竹下 豐次君 杉山 昌作君
新谷寅三郎君 深水 六郎君
横川 信夫君 伊能 芳雄君
青柳 秀夫君 西川彌平治君
石井 桂君 井上 清一君
川口爲之助君 酒井 利雄君
剱木 亨弘君 瀧井治三郎君
田中 啓一君 大矢半次郎君
石原幹市郎君 岡田 信次君
一松 政二君 中川 幸平君
左藤 義詮君 中川 以良君
重宗 雄三君 大屋 晋三君
津島 壽一君 青木 一男君
大野木秀次郎君 愛知 揆一君
宮澤 喜一君 鹿島守之助君
秋山俊一郎君 松平 勇雄君
上原 正吉君 郡 祐一君
山本 米治君 小野 義夫君
徳川 頼貞君 川村 松助君
白波瀬米吉君 松野 鶴平君
小林 英三君 黒川 武雄君
石坂 豊一君 木島 虎藏君
野本 品吉君 三浦 義男君
寺本 広作君 杉原 荒太君
八木 幸吉君 堀木 鎌三君
菊田 七平君 鶴見 祐輔君
松原 一彦君
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反対者(青色票)氏名 三十一票
近藤 信一君 栗山 良夫君
秋山 長造君 阿具根 登君
海野 三朗君 大倉 精一君
成瀬 幡治君 小林 亦治君
小酒井義男君 江田 三郎君
久保 等君 松澤 兼人君
森崎 隆君 岡田 宗司君
吉田 法晴君 中田 吉雄君
小笠原二三男君 菊川 孝夫君
若木 勝藏君 内村 清次君
三橋八次郎君 荒木正三郎君
三木 治朗君 加藤シヅエ君
市川 房枝君 須藤 五郎君
赤松 常子君 長谷部ひろ君
上條 愛一君 棚橋 小虎君
堀 眞琴君
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/32
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033・河井彌八
○議長(河井彌八君) 次に、第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権の保護に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の批准について承認を求めるの件、
第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権の保護に関する日本国とスイス連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件、
国際民間航空条約への加入について承認を求めるの件、
国際航空業務通過協定の受諾について承認を求めるの件、
国際電気通信条約の批准について承認を求めるの件、
以上、五件全部を問題に供します。委員長報告の通り五件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/33
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034・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて五件は、全会一致を以て承認することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/34
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035・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第七、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う国有の財産の管理に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)、
日程第八、信用保証協会法案、
日程第九、災害被害者に対する租税の減免、徴收猶予等に関する法律の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出、衆議院送付)、
以上、三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/35
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036・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員長大矢半次郎君。
〔大矢半次郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/36
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037・大矢半次郎
○大矢半次郎君 只今議題となりました三つの法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。先ず日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う国有財産の管理に関する法律の一部を改正する法律案について申上げます。
本案は、衆議院議員岡良一君外二十六名の提出にかかるものでありまして、国が、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う国有の財産の管理に関する法律の規定により、合衆国の軍隊の用に供するため、国有の財産の使用を許そうとするときは、内閣総理大臣は、あらかじめ関係行政機関の長、関係ある都道府県及び市町村の長並びに学識経験を有する者の意見を聞かなければならないこととしようとするものでありますが、衆議院においては、政令で定める国有の財産に限り意見を聞くことに、修正議決せられたのであります。本法案の審議においては、格別の質疑もなく、討論採決の結果、全会一致を以て衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。次に、信用保証協会法案について申上げます。信用保証協会は、現在各都道府県に、その出資又は寄附金を中心として民法による公益法人として設立せられており、その数は五十一に上つており、中小企業者等が金融機関から資金を借入れる場合に、その債務を保証する業務を行なつているのでありますか、これに関する法制化が行われていないために、その基礎が不安定であり、保証業務の円滑化を欠く憾みがなしとしないのであります。本案は、このような実情に鑑みまして、この際、信用保証協会法を制定、これが法制化により、基礎の強化を図り、その業務の一層の発展を図ることとしようとするものであります。
本案の主要点について申上げますと、第一に信用保証協会を法人としたことであります。第二に、協会は、中小企業者等が、金融機関から資金の融通を受けること等により、金融機関に対して負担する債務の保証を行うことを主たる業務としたことであります。第三に、本法における主務大臣は、大蔵大臣及び通商産業大臣とし、主務大臣は設立の認可その他所要の監督を行うほか、その権限の一部を地方公共団体の長に委任することができることとしたことであります。第四に、民法法人たる現在の協会は、本法施行後二年間に、本法による協会に転換することができることとしたことであります。なお、協会に対しては、民法の公益法人と大体同様な税法上の優遇措置を講ずることとなつております。
本案の審議に当りまして、信用保証協会の運営方針、保証手続の簡素化等の諸点について質疑応答が交わされましたが、その詳細は、速記録によつて御承知願いたいと存じます。
質疑を終了し、討論に入り、採決の結果、全会一致を以て、原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
次に、災害被害者に対する租税の減免、徴收猶予等に関する法律の一部を改正する法律案について申上げます。
本案は、最近における風水害の災害状況に鑑みまして、酒税、砂糖消費税、物品税等について、災害による被害者の救済措置を講じようとするものであります。即ち、酒税、砂糖消費税、物品税、揮発油税、又は骨ぱい税が課せられた物品で、販売業者等の所持するものが災害を受けた場合には、災害を受けた販売業者等の損失を、その物品の製造業者が補償した限度内において、災害を受けた物品に課せられた酒税等に相当する金額を、その製造業者が災害のあつた日以後に納付する酒税等の税額から控除することといたそうとするものであります。
なお、この法律は、昭和二十八年六月二十日以降の災害を受けた酒類等に適用いたそうとするものであります。本案審議の詳細は、速記録によつて御承知願いたいと存じます。
質疑を終了し、討論に入り、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/37
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038・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/38
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039・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて三案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/39
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040・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第十、高等学校の定時制教育及び通信教育振興法案、
日程第十一、財団法人労働科学研究所に対する国有財産の譲与に関する法律案、(いずれも衆議院提出)、
日程第十二、青年学級振興法案(内閣提出、衆議院送付)、
以上、三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/40
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041・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。文部委員長川村松助君。
〔川村松助君登壇拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/41
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042・川村松助
○川村松助君 只今議題となりました三法案につきまして、文部委員会におきまする審査の経過並びに結果を御報告申上げます。先ず高等学校の定時制教育及び通信教育振興法案について、御報告申上げます。本法律案は、今日、勤労青年のための学校教育施設として、重要な役割を果している高等学校の定時制教育並びに通信教育の振興を図らんとするものであります。これらの教育が、働きながら学ぶ勤労青年に対し特に重要であることは、その生徒数が年々著しく増加しつつあるのを見てもわかるのでありますが、一方これらの教育は、財政の窮迫している地方公共団体に殆んど任せられておりますため、一般に極めて貧弱でありまして勤労青年の期待に副いがたい現状でありますので、これが振興策といたしまして、本案は、公、私立の高等学校定時制教育の設備費、並びに公立高等学校の通信教育の運営費等について、国庫補助の途を開かんとするものであります。本案に対しまする委員会の質疑応答の主なる点は、第一に、「この種の設備費等の国庫補助のみによつて、これらの教育が振興できるのか」との質問に対し、提案者より、「本案は、必要最低限のものであり、従つて、今後、国家財政が許せば、更に補助対象を拡大したい」旨の答弁がありました。又、本案による予算措置についての質問に対しては、「国庫補助率を必要額の三分の一として、明年度より年間約十一億円を支出いたし、十カ年計画を以て設備等を充実するよう努力したい」旨の答弁がございました。
次に、討論におきましては、高橋、深川、成瀬、劔木、長谷部の各委員より、賛成討論があり、須藤委員よりは、本案は、勤労青年教育の振興措置としては不十分である旨の反対討論がございまして採決の結果、本案は、多数を以て可決すべきものと決定いたしました。
なお、高橋委員より、
一、高等学校の定時制教育及び通信教育の施設についても速かに国庫補助の措置が講ぜられるよう考慮すること。
二、公立高等学校の定時制教育及び通信教育に従事する校長、教諭、養護教諭、助教諭、養護助教諭、講師及び事務職員に対する給料その他の給与に対しても、速かに国庫負担の措置が講ぜられるよう考慮すること。
三、高等学校の定時制課程に通学する生徒の雇傭主が、生徒の修学を積極的に援助するように政府において奨励する措置を講ずべきこと。
という附帯決議を附すべき旨の提案があり、多数を以てこれを可決いたしました。
次に、財団法人労働科学研究所に対する国有財産の譲与に関する法律案につきまして、御報告いたします。
財団法人労働科学研究所は、社会問題、労働問題の科学的基礎を打ち立てるため、大正十年、故大原孫三郎氏により倉敷において創立されたものでありましたが、後に日本学術振興会に提供され、東京に移転いたしました。移転後も、労働条件の規正に関する研究と、その科学的資料作成に活躍して参りましたが、大戦中、政府の勧奨によつて大日本産業報国会の傘下に統合させられましたため、終戦後、連合軍の、解散団体の資産処分に関する政令の該当団体として、この財団の資産全部が国に没收されて今日に至りました。ただ幸いに、研究所並びに没收財産は、現在の姿のままにおいて研究所に使用を特に許されましたため、研究は、その後引続いて進展いたしておりますが、施設、設備等が国の財産に属しておりますことは、運営上幾多の障害がありますため、この際国は、その没收した研究所の全財産を無償で払下げ、以てその研究の進展に便宜を与えるよう法的措置をいたすのが、衆議院議員橋本龍伍君外七名の発議にかかる本法案の提案の理由であります。
なお本法案は、附則におきまして、これらの施設及び動産で、国が無償払下げをいたす場合、国が使用いたしておりますものは、必要ある場合、なお当分の間、国は、引続き当該財産を無償で使用できる旨を規定いたしております。
委員会におきましては、本研究所の経理状態等につきまして提案者に対して質疑があり、次いで討論を省略いたし、全会一致を以て、本法案を可決すべきものと決定いたしました。
次に、青年学級振興法案につきまして、御報告申上げます。
本法案は、勤労青年に対し実際生活に必要な職業又は家事に関する知識、技能を修得させますと共に、一般的教養の向上を図ることを目的として、現在広く開設されております青年学級について必要な規定を設けますと共に、更にその助成及び振興の措置を講ずることを目的といたしております。戦後、青年学級は、いずれもいわば自然発生的に成立発展いたして参つたのでありますが、約一万一千学級、受講生数約百万人に達しました現段階におきましては、その開設運営につきまして、或る程度法的に明確化いたす必要が生ずるに至りましたのみならず、その運営に要する経費については、地方団体の財政的事情に鑑み、国の補助が是非とも必要となつて参りましたため、政府は本案を提出いたした次第であります。
委員会におきましては、勤労青年教育の振興を何故学校教育とは別に社会教育事業としての青年学級に求めるのであるか。青年学級の振興は曾つての青年学校或いは青年訓練所の復活となる虞れはないか。青年学級の振興よりもむしろ義務教育の未就学児童の問題が先ず解決さるべきではないか。青年学級については、何らの規格を作らず野放しにするのは不適当ではないか。又本法案には罰則規定があるが、その運用に不安がないか等の諸点につきまして、各委員から質疑がありましたが、これらに対する政府の答弁その仕質疑応答の詳細は会議録に譲りたいと存じます。
次に、討論に入りましたところ、須藤、相馬、安部の各委員から、それぞれ現段階においては未だ法制化の必要なく、勤労青年教育の振興はむしろ高等学校定時制教育等の拡充によるべきである等の趣旨による反対の討論があり、深川、高橋、劔木の各委員からは、賛成の意見が述べられ、結局委員会は、本案を多数を以て可決すべきものと決定いたしました。
以上を以て御報告といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/42
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043・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。
先ず高等学校の定時制教育及び通信教育振興法案、全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/43
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044・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/44
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045・河井彌八
○議長(河井彌八君) 次に、財団法人労働科学研究所に対する国有財産の譲与に関する法律案、全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/45
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046・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/46
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047・河井彌八
○議長(河井彌八君) 次に、青年学級振興法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/47
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048・河井彌八
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よつて本案は、可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/48
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049・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第十三、社会福祉事業振興会法案(衆議院提出)、
日程第十四、日雇労働者健康保険法案(内閣提出、衆議院送付)、
以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/49
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050・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。厚生委員長堂森芳夫君。
〔堂森芳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/50
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051・堂森芳夫
○堂森芳夫君 只今上程せられました社会福祉事業振興会法案及び日雇労働者健康保険法案につきましての厚生委員会における審議の経過並びに結果について御報告いたします。
先ず、社会事業振興会法案について申上げますならば、我が国の民間社会福祉事業は、終戦後ますますその重要性を加えて参りましたが、補助金についての厳重な制限、物価の高騰等によりまして、施設の修理、改造等に困難を来たし、昭和二十二年以降共同募金運動の展開を見ましたが、配分対象の増加により、実質的配分額は減少する状況でありますので、社会福祉事業振興のためには、長期低利の資金融通を図る必要性が強く要望されて来たのでありまして、この要望に副い社会福祉事業の振興に資するため、今回衆議院においてこの法案が議員発議として提案されたのであります。
次に、この法案の概要を申上げますと、第一に、社会福祉事業振興会の目的、性格、役員の任免、資本金等について規定してあります。即ちこの振興会は、社会福祉法人その他社会福祉を目的とする施設を経営する者に対し、その経営上必要な資金を融通し、その他必要な助成を行い、以て社会福祉事業の振興を図ることを目的とするものでありまして、特殊法人とし、役員は、厚生大臣の任命又は承認を受けて任命するものとし、資本金はその全額を、政府が予算に定める金額の範囲内で出資するものといたしてあります。第二に、振興会の業務といたしましては、「社会福祉施設の修理、改造、拡張、整備、災害復旧に要する資金、又は経営に必要なその他の資金を貸付けること、」「施設職員の研修、福利厚生その他福祉事業振興上必要と認められる事業を行う者に対し、必要な資金の貸付、又は助成を行うこと」等でありまして、これらの業務を行うについては、業務方法書に貸付限度、利率、期限、元利金回収の事項、担保等の事項及び助成の限度、目的等を記載し、厚生大臣の認可を受けしめるのであります。又毎年度事業計画及び収入支出の予算を定め、厚生大臣の認可を受けることとし、更に財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作成し、決算報告書と共に厚生大臣に提出して、その承認を受けしめることとし、文剰余金の処分、余裕金の運用等についても制限を加えているのであります。
第三に、振興会の監督は、厚生大臣がこれに当るのでありまして、必要な命令をすることは勿論、必要な報告を徴し、立入検査をなすことを得、役職員に対しては、一定の事由があるときは、これが解任をなし得るよう規定してあるのであります。
第四に、この振興会は、昭和二十九年四月から発足することができるよう、厚生大臣が設立委員を任命し、設立の事務を処理させるこどとし、又免税の特典等を規定してあるのであります。
以上が本法案の大要でありますが、本委員会におきましては、先ず提案者を代表して衆議院議員青柳一郎君より提案理由の説明が行われました後、各委員及び衆議院議員及び政府委員との間に熱心なる質疑応答が重ねられたのでありますが、その詳細は速記録により御承知願いたいと存じます。
かくて質疑を終了し、討論を省略して、採決いたしましたところ、全会一致を以て、衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。
次に、日雇労働者健康保険法案について申上げます。
御承知のごとく健康保険制度は広く一般被用者を対象としているものでありまして、被用者全部に本制度を適用することが望ましいのであります。政府におきましては、今回健康保険法の一部改正法案を別途提案いたしまして、その適用範囲を拡張することに相成つたのでありまするが、日雇労働者につきましては、その就労の実態に昭らしまして、健康保険の制度と同一の運営を図ることが困難であるとの見地から、本案の提出を見た次第であります。
次に、この法案の要点について申上げますと、第一に、適用の対象といたしましては、先ず健康保険の適用事業所に使用される日雇労働者を被保険者として、健康保険との制度的均衡を図ると共に、失業対策事業又は公共事業に就労する者を被保険者として日雇労働者の生活実態に即するように配慮いたしてあります。第二に、保険給付につきましては、保険料負担の点を考慮して、被保険者及び被扶養者に対し、健康保険に準じて療養の給付及び家族療養費を支給することとし、その期間は三カ月といたしてあります。なお療養の給付又は家族療養費を初めて受けようとする目の属する月の前二カ月間に、通算して二十八日分以上の保険料が納付されていることを受給要件として、日雇労働者の就労の実態と日雇労働者に対する失業保険との調整を考慮することといたしてあります。第三に、保険料につきましては、日覆労働者に対する失業保険の方法を取入れ、一級と二級に区分して、事業主に印紙を以て納付させることといたしてあるのであります。以上が、本法律案の要点でございます。
本委員会におきましては、先ず政府当局から、提案理由並びに法案の大要について説明を聴取いたしました後、慎重審議の過程におきまして、委員と厚生省並びに労働省当局との間に熱心なる質疑応答が交わされたのでありまするが、その詳細は、速記録によりまして御承知願いたいと存じます。
かくて質疑を打切り、討論に入りましたところ、社会党第二控室を代表して山下委員より、「本法律案はその内容が極めて不備であり、全く審議の価値なく、百害あつて一利なきものである。国民がひとしく社会保障制度の整備拡充を念願する今日、かかる法案を提出する背後的思想に対しても疑問を抱かざるを得ない」との理由を以て原案に反対せられ、林委員より、「検討すべき点が多々あるが、将来改正に努力するという政府当局の言に信頼して原案に賛成する」旨を述べられ、湯山委員は、社会党第四控室を代表して「本案は将来の社会保障制度の発展を妨害するものであり、労働者の利益を無視し、日雇労働者の特徴を活かすことなく、他の健康保険法、国民健康保険法、生活保護法、失業保険法との関係も不明確である」ことを理由として反対の意を表され、大谷委員は自由党を代表して、「内容においては十分とは言えないが、日雇労働者に関する最初の法律案であり、その実施により日雇労働者が救われることを念願し、将来の改正についても当局の熱意に期待して原案に賛成する」旨を述べられたのであります。かくて討論を終り、採決いたしましたところ、多数を以て、衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
次いで、大谷委員より、「本法による給付の内容充実と、他の保険給付との均衡を図り、更に被保険者の範囲を拡大し、以て全日雇労働者の福祉と生活安定を期するため国庫負担の実施を希望する」との附帯決議を付する動議が提出せられ、右附帯決議案を採決いたしましたところ、全会一致を以てこれを承認することに決定いたしたのであります。
以上を以ちまして御報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/51
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052・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日雇労働者健康保険法案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。湯山勇君。
〔湯山勇君登壇、拍手]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/52
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053・湯山勇
○湯山勇君 私は社会党第四控室を代表いたしまして、只今議題となつております日雇労働者健康保険法案に対し反対をするものでございます。
日雇労働者は、御承知の通り極めて不安定な条件の下に働いているものでございます。その生活は、憲法にも調われております健康にして文化的な生活とはおよそ縁遠いものがある人々でございます。この恵まれざる労働者諸君に対して、健康保険を実施すべしという声は、随分前からあつたものでございます。なお又日雇労働者自身も、速かに健康保険を実施してもらいたい。こういう熱望は常々示されておつたわけでございますけれども、政府は、この輿論や或いは又労働者の切実な声に耳を貸すことなく、今日までこれを放置して参つたのでございます。このような中にありまして、今回漸く政府が提出して参つた日雇労働者健康保険法案なるものは、全く保険法とは言えないような、内容の貧弱な極めてお粗末なものに過ぎないのでございます。私は以下この法案が、如何に貧弱な、如何に矛盾に充ちた法案であるかについて申述べたいと存じます。
日雇労働者が一日に得るところの賃金は通常二百円となつております。その中から、本法によりますと、毎日二百円の中から八円を保険料として納めなくてはならない。この率は二百円に対する八円は一千分の四十という高い率になるわけでございます。これは余りにも高率でないかということを質したのに対して、政府は、他の保険が大体同じような料率だからと、こういう答弁をいたしております。併しながら一日二百円の賃金で一カ月二十日かそこいらしか働かない人々、即ち一カ月の収入が僅かに四千円乃至五千円の人々が、一カ月に二百円の保険料を持つということは、極めて困難なことであると言わなければならないわけでございます。而も日雇労働者の生活は殆んど切詰められるだけ切詰められた生活をしている。この切詰められた生活の中から更に二百円を出すということになれば、一体どこから出したらいいのでしようか。結局これは生きて行く最低のもの、即ち食べるものを倹約するほかはないわけでございます。食生活を切詰めて行くことがどのような影響を労働者、人間に与えるかは申すまでもないことでございまして、健康保険法案は病気をなおす法案だと言われながら、この法案の実体は、食生活を切詰めて病気にかからせるような法案であると考えられるのでございます。(拍手)
更に又、この法律は、医療費については負担をするけれども、傷病手当、即ち病気にかかつて休んでいる人々の生活については何ら保障を与えていないのでございます。一般公務員は、病気で休みましても有給、つまり給料がもらえます。又工場、会社等普通労働組合を持つている健康保険の組合員は、これ又有給休暇を与えられ、或いは又傷病手当が支給されます。更に又海員つまり船に乗つている人たちに対しましても、病気になつたときの生活を保障する傷病手当が与えられるのでございます。然るにその日その日を不安定な条件の下に働いている日雇の労働者が、病気で休んだときには、一文の収入もない状態でございます。その生活を保障してあげることをしないで、どうしてこの人たちが安心して療養することができるでしようか。この人たちは生きて行くためには、少々体が悪くても無理をして仕事に出て行かなければならない状態になつているのでございます。そういう生きて行くための無理が累積して参りました場合には、結局みずからの生命をすり減らす以外の何ものでもありません。これが本法案の趣旨でございます。傷病手当のない健康保険法案というものは、結局保仏本来の目的に反するばかりでなくて、非常に悪い言葉で言えば、むしろ殺人的な保険である。こういうことさえよ言えるの評はないかと思うのでございます。
更に保険の適用を受ける条件といたしまして、只今委員長の報告にもありました通りに、二カ月間に二十八日間の実労働をすることが条件となつております。従つて若し、いま一カ月間よ大病した人は、次の一カ月間に二十八日無理をしてでも働かなくちやならない。併しこれは不可能でございます。従つて大きい病気をした者は、みすみすこの保険を見送らなければならない。これがこの保険の実体でございます。
更に私が指摘いたしたい点は、婦人が出産した場合におきましては、公務員におきましても産前産後の有給休暇が認められておりますし、又日雇でない他の労働者につきましては、健康保険におきまして有給休暇が認められております。然るに日雇労働者におきましては、何らそのような考慮が払われておりません。このような人たちが二カ月間に二十八日の実労働を如何にして確保できると政府はお考えになつていらつしやるのでしようか。一体政府は、日雇労働者の婦人は子供を産まなくてもいい。子供を産む権利がない。こういうふうにお考えになつているのでしようか。私はこのことは、人権を無視した、憲法の精神に反した全く無謀な法律である。こう断ぜざるを得ないのでございます。
更に申述べたいことは、日雇労働者がこの保険を受けるための条件として、その事業場は五人以上作業する所と指定されております。一体その日その日の生活に追われて、今日は仕事があるか、明日は仕事があるか、こういう生活をしている人たちに、五人以上の仕事場でなければならないとか、三人ではいけないとか、そういうことを言う自由が果して許されているかどうか。更に又政府が五人以上の所は信用できるけれども、四人以下の所では信用できない。こういう根拠は、一体どこから出て来たのか。私はこれらの点について、極めて大きな疑問を持つものでございます。中小企業振興に力を入れなければならないと、こう政府は言つておりますけれども、政府は、一体四人以下の事業場は、中小企業の小企業にも入らない。こう考えていらつしやるのかどうか。日雇労働者の特色といたしましては、むしろこういう所をこそ対象とすべきではないか。更に又サービス業或いは映画、演劇等で働いている人たち、こういう人たちに対してもこの保険は適用されません。その理由は、サービス業等は、チツプが賃金の代りになつていて、その額を決定することが極めて困難だ。これが唯一の理由でございます。併しながら憲法第二十七条には「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」と明記されております。賃金が確定していないということは、決して働いている人の責任でなくて、この憲法を忠実に守つていない政府の責任であると断ぜざるを得ない。こう私は思うのでございます。職安の窓口に毎日並んで、而も職がなくて憤然と帰つて来る人たちが、サービス業であろうが興行であろうが、或いは四人以下の作業場であろうが、そういうことを一々吟味することはできないのです。こういう人たちのことを本当に考えるならば、私はこのような法律は絶対できて来ないと思うのでございます。
更に、この法律は健康保険と比較されまして、健保にないからというので、国庫負担も削られております。更に五人以下の事業場については失業保険が適用されてないからというので削られております。更に又傷病手当等についても、他の保険との関連において、これは削るというようなことが言われております。結局これは、他の保険の悪いところばかりを、この日雇労働者の保険に寄せ集めた。こういう感じが深いのです。にもかかわらず政府は、それでもないよりましだと、こういうことを言つておられますけれども、むしろ私は、このような残飯のような保険は、残飯でも食べたほうがいいという言い方よりも、この残飯を食へることによつて腹下しをしたり、下痢をしたりする可能性の多い法律であと思うのでございます。
更に私が心配いたしておりますことは、政府の政策は、産業の合理化という名の下に、各種産業の整理を意図いたしまして、大幅の人員削減を意図いたしております。炭鉱におきましては、すでに三万乃至七万の人がその対象に上つております。他の産業においても同様のことが考えられます。若しそのようなことがあつた場合に、労働大臣は、大きな土木事業にこれを転換すると申しておりますけれども、併し現在健康保険の対象になつているこれらの人を、若し土木事業に転換して日雇健康保険を適用しだ場合、保険の面からだけでも、随分不利益な扱いを受けることになるわけでございます。そうなつた場合には、労使の争議をこのことだけからも、更に深刻化させる要素を持つております。このような不当な法律を出し、更に人員整理を強行し、あまつさえストライキの規制を以て臨んで行く。これが現在の吉田内閣の実体であり、吉田内閣の社会保障制度、或いは労働政策の実体でございます。内閣の、吉田総理大臣の直轄に九かる社会保障制度審議会におきましても、この法案に対しまして答申をいたしまして、「今かかる内容の制度を実施することは、将来社会保障制度を確立するに当つて、却つてその妨げとなるやの懸念さえもないではない」と申しておるのでございます。言い換えれば、このような法律は、あるよりはないほうがましだ。こう断じておるのでございます。私はこのような観点から、この法案に対して絶対反対を表明するものでございます。
最後に私は、この法案が委員会において議決された後に、大谷委員提案によりまして先ほどの委員長報告の附帯決議がなされました。この附帯決議に対しましては、これを支持するにやぶさかなものではございません。
以上を以て討論を終ります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/53
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054・河井彌八
○議長(河井彌八君) 赤松常子君。
〔赤松常子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/54
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055・赤松常子
○赤松常子君 私は、日本社会党第二控室を代表いたしまして只今上程になつております政府提案の日雇労働者健康保険法案に反対の意を表明せんとするものでございます。
日雇労働者健康保険法案に関しまして、今国会において、両社会党案と政参府案が提出されておることは、皆様御承知の通りでございます。然るに政府案よりも遥かに優れており、且つ長い間日雇労働者によつて要望され続けておる両社会党案が審議せられずに、内容的には極めて粗雑な政府案が、厚生委員会によつて可決すべきものと決定を見たことに対しまして、心から遺憾に存ずるのでございます。
元来日雇労働者の層がどういう理由でできたかと申しますと、農村の不況から故郷をあとにして生きる途を求めて都市へ流れ出る就職者や、又都市における工場閉鎖、企業整備などによつて、巷に吐き出された失業者や、又子供を抱えた戦争未亡人、
〔議長退席、副議長着席〕
及び一般未亡人など、およそ政治の貧困並びに社会的原因によつて産み出された犠牲者と言わねばなりません。こういう犠牲者は、当然国家が責任を持つて、その生活を保障すべき義務があると信じます。然るに政府は、本法案の審議に際しましても、日雇労働者には、この程度のものをあてがつておけば十分であるというような、恩恵的な考えを一歩も出てはいなかつたのでございまして、飽くまで労働者蔑視の資本家的特権思想を露骨に現わしていたものであります。昨日の「らい」予防法に対する態度と言い、今日は又、この日雇労働者に関する本法案と言い、吉田政府は、社会の下積みになつておるもの、発言力弱きものに対しては、飽くまで冷酷無情、一片の愛情すら持合わせず、他方、一昨日はスト規制法を急いで作つて、電気と炭鉱業者には、労働者の人権を圧迫する強権を与え、昨日は又、独占禁止法を緩和して財閥の利潤追求の途を大きく開いて、財閥に奉仕しようといたしております。かかる意図によつて作られた政府案は、粗雑であり、貧弱であることは、政府自身、又与党議員の中にも認めておられるかたがあるのでございます。その内容が不完全で、殆んど保険としての実体を成しておらないということは、この法案が国会に提出される前に諮問されました社会保障制度審議会の答申には、「本案の内容は、先に本審議会が社会保障制度に関して勧告した趣旨と隔たるところが余りにも大きい、これを健康保険法と切り離して立法化しようとしておる点もそうであるが、特に、その給付内容が貧弱であるのは遺憾と言うほかはない、極言すれば、今日かかる内容の制度を実施することは、将来一貫した社会保障制度を確立するに当つて、却つてその妨げとなるやの懸念さえもないではない」と述べてございます。
私は政府案に反対する理由を明らかにするために、政府案と両社会党案についていささか比較いたしまして申上げたいのでございますが、先ず第一は、国庫負担の問題でございます。政府原案の根本的な欠陥は、国庫負担の全然ないということでございます。国庫負担の有無は、被保険者の負担に影響するところが極めて大きいのであります。即ち政府案では、被保険者が一日の賃金百六十円以上の者を一級として、一日につき八円を負担し、百六十円以下の者を第二級として、一日につき五円を負担することになつておるのでございます。第一級の一日百六十円以上の者が一日八円の保険料を支払いますことは、収入の約五%に当ります。若し二百四十円といたしましても、三%に当るのでありまして、これを健康保険の場合と比較すれば、約二倍の高率となつておるのでございます。特に経済力の弱い日雇労働者が、三%乃至五%の健康保険の負担をいたしますことは、生活を圧迫することになるでございましよう。例えば失業保険においては、保険金三分の一を国庫が負担しており、又国民健康保険においては、医療給付の二割も国庫負担をしておきながら、経済力の最も弱い日雇労働者の健康保険に対して、何ら、一銭の国庫負担がなされていないのは、どうしても納得の行かない点でございます。政府案のごとく保険給付に対する国庫負担を認めない場合、保険給付の内容が貧弱低率になるのは、保険経済上当然でございましよう。社会党案のごとく、保険給付の二分の一国庫負担が必要となるゆえんでございます。
第二は、給付内容でございますが、政府案は、僅かに療養の給付、療養費の支給、家族療養費の支給を三カ月に限つて行うのみであり、健康保険法や社会党案にありますいろいろな給付、例えば傷病手当金、埋葬料、分娩費、出産手当金、保育手当金、家族埋葬料、配偶者分娩費、配偶者保育手当金などの支給については、全然給付内容に取上げられておりません。傷病手当金のないということは、常雇い労働者と異なり、日雇労働者の場合は、病気で休むといたしました場合、忽ち生活ができなくなるのでございまして、この傷病手当金がない場合、恐らく本人は幼い子供たちを食べさせるために、無理を推して劇しい労働をすることがございまして、折角の療養給付を認めても無駄になり、役に立たないことになるのではないでしようか。更に分娩費、出産手当金等のない政府案は、約百万を数える日雇労働者のうち、少くとも五割に近い婦人日雇労働者がおることを全然顧慮しておらないので、ございまして、甚だしく片手落ちであると言わざるを得ません。而も僅かに療養関係の給付が行われておるが、その期間は、最初に診療を受けた日から三カ月を経過すれば、療養給付を打切られるというのでございます。そのために結核その他の慢性病や重病には、殆んど役に立たないことになるのでございます。あらゆる社会保険が、本国会におきまして改正され、給付年限が二カ年であつたものが三カ年に延長されたことは、御承知の通りでございます。然るに政府案では、僅かに、三ケ月で打切つておる。全く社会保険と言い得たいものであると言つても、あえて過言ではございません。
更に第三は、保険給付を受ける要件でございます。政府案では、日雇労働者が保険給付を受けるのには、受けようとする日から計算いたしまして前二カ月間に二十八日以上保険料が支払われていなければならないのでございます。政府の調査したところによりますと、就労日数は全国平均二十日になつておるから、二カ月間に二十八日、即ち一カ月に十四日であるならば大丈夫であるというのでございますが、併し天気が悪かつたり、或いは病気や悪条件が重なつたりいたしますときは、一カ月十四日も稼げないことは往々ございます。折角保険料を支払いながら、一日或いは二日欠けたことによりまして、給付を受けることができないとするならば、余りに気の毒な状態ではございませんでしようか。社会党案におきましては、前二カ月間に二十四日以上保険料を支払つておる者か、前六カ月間に六十日分支払つておる者は、給付を受けられるようにいたしておるのでございます。
第四は、適用範囲の問題でございます。政府案によりますと、適用事業所の規模と職種におきまして、多くの制限がございます。百万を優に超える推定される日雇労働者の半数に満たない数しか、その対象になつておらないのでございまして、一人々々で個々に働いております附添婦、看護婦、山林労働者などのごとき人々は、適用されないのでございます。社会党案においては、適用事業所の規模と職種を最大限に拡張し、更に労働組合員が認可を受けて被保険者となり得る途を開き、以て現行諸法律の欠陥のために、健康保険の恩恵を受け得ない人が、一人でも少くなるように配慮いたしておるのでございます。
以上申述べましたように、社会党案と政府案とを比較してみまするならば政府案が、如何に内容が粗雑であり、不完全であり、保険の名に恥じる致命的な欠陥のあるものであることが、おわかり頂けたと存じます。
私はかかる収奪的性格を持つた本法案に反対を表明し、討論を終る次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/55
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056・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) これにて、討論の通告書の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
〔菊川孝夫君「議長、定足数が欠けておると思いますので、暫時休憩願いたいと存じます。六十名よりありません。」と述ぶ〕
[「ある」「進行々々」「休憩々々」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/56
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057・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 暫時、休憩いたします。
午後四時五十六分休憩
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午後六時二十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/57
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058・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。
日程第十三、社会福祉事業振興会法案、(衆議院提出)日程第十四、日雇労働者健康保険法案(内閣提出、衆議院送付)の採決をいたします。
先ず、社会福祉事業振興会法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/58
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059・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/59
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060・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 次に日雇労働者健康保険法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/60
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061・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/61
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062・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 日程第十五、畑地農業改良促進法案(衆議院提出)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。農林委員長片柳眞吉君。
〔片柳眞吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/62
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063・片柳眞吉
○片柳眞吉君 只今議題となりました畑地農業改良促進法案につきまして、農林委員会における審査の経過及び結果を報告いたします。
この法律案は、総合的な計画に基いて畑地地域における畑地の改良及び農業技術の改善を行い、以て農産物の急速な増産を図ることを目的としたものでありまして、その内容は大要次のようであります。
第一は、畑地地域及び畑地地区の指定でありまして、畑地地域は農林大臣が畑地農業改良促進対策審議会の意見を聞いてこれを指定し、畑地地区は知事が農林大臣の定める基準に従つて指定するのであります。第二は、農業改良計画の策定についてでありまして、市町村長は所定の手続を経て当該地区の農業改良計画を定め、都道府県知事に提出し、都道府県知事はこれを参酌して都道府県の農業改良計画を定めて農林大臣に提出し、農林大臣はこれを参酌して畑地農業改良促進対策審議会の意見を聞いて国の計画を定め、当該都道府県知事に通知しなければならないこととなし、第三は、経費等についてでありまして、政府は農業改良計画の実施に必要な予算的及び資金的措置を講じなければならないこととなし、第四は、畑地農業改良促進対策審議会についてでありまして、本法の運用に関して農林省にかかる審議会を設置することになつております。
委員会におきましては、提案者代表及び農林当局との間に、本法律案の目的とするような畑地の改良は、現行土地改良法によつて行うことができるのではないか等、かかる特殊立法を必要とする理由、本法も含めてすでに制定されております各種特殊地帯立法の取扱方、本法律案の予算的裏付け、食糧増産基本政策と本法案との関係、畑地改良の技術等、諸般の事項について質疑が行われたのでありまして、これが詳細は会議録によつて御了承願いたいのであります。
かくして質疑を終り、討論に入りましたところ、白井委員から、提案者が確認されたように、本法案の施行によつて急速且つ確実に農業生産が増強されることを期待すると述べて賛成せられ、続いて雨森委員から、本法成立の上は、政府においてこれが実施のため必要な予算的裏付けに遺憾なからしめることを希望して賛成があり、続いて採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。
右御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/63
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064・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/64
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065・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/65
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066・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 日程第十六、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。水産委員長森崎隆君。
〔森崎隆君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/66
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067・森崎隆
○森崎隆君 只今議題となりました農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案につきまして、水産委員会における審議の経過並びにその結果を御報告申上げます。
本案は衆議院水産委員会によりまして提出されたので、ございまして、先ずその提案理由について申上げます。我が国現下の水産業の実態は、多年に亘る戦時中の混乱と、戦後、被占領下において制約された狭小な漁場内の操業の拘束等から漸く解放され、漁業の重点は沿岸から沖合へ、沖合漁業から更に遠洋漁業並びに国際的公海漁業へと躍進の途を辿りつつあり、今後ますます国民食生活の改善と漁獲物の輸出振興による外貨の獲得に資すべき誠に重大な時期になつているのでございます。
然るにこれらの沖合、遠洋に従事するこの漁船の状態は、遺憾ながらその大半は非能率的な老朽船でございまして、他面においては、漁場の拡大による適正船型への大型化が強く要望され、これら代船の建造は業界の切実な問題となつておるのであります。ところが、従来、かかる場合の施策、特に長期融資の途は、とかく等閑に付されがちでございまして現状のままでは漁業発展の上に重大な支障を来たす虞れがあるのでございます。
ここで多少時間を頂きまして、水産金融につきまして一応実情を申上げたいと思います。水産金融は他産業に比しまして甚だしく貧弱でございます。水産金融について、政府の予算措置も財政措置も殆んど見るべきものがなかつたのでございまして、最近になりまして、左の三つの立法措置によりまして、形式だけは一応整つて来ましたが、その実質においては今なお非常に貧弱なものでございます。
その第一は、農林漁業金融公庫法、これは第十五国会で制定されまして、昭和二十七年十二月二十九日、法律第三百五十五号で実施されたものでございます。これによる金融でございまするが、これは主として漁港等公共事業に必要な資金の貸出、共同施設に必要な資金の貸出、災害復旧に必要な資金の貸出、更に漁業協同組合の自営の漁船の建造に必要な資金の貸出をする金融機関でございます。
第二は日本開発銀行法、これは昭和二十六年三月三十一日、法律第百号で実施されたものでございまするが、これで実施されました金融機関では、大資本漁業者を融資の客体とする金融機関でございます。
第三は中小漁業融資保証法、これは第十五国会で制定されまして、昭和二十七年十二月十八日、法律第三百四十六号となつておりますけれども、これにより、各都道府県に設立する漁業信用基金協会の保証と、その保証について政府が保険を行うことにより、中小漁業者の一般金融機関からの借入れを容易にするということになつております。
以上三つの金融制度について簡単に御説明を加えることも必要だと思いますので、この際申上げたいと思います。
第一は農林漁業金融公庫法でございまするが、これは、さつき申しました第十五国会で制定されましたのでございます。この法律の目的は、農林漁業者に対し、農林漁業の生産力の維持増進に必要な長期且つ低利の資金で、農林中央金庫その他一般金融機関が融資することを困難とするものを融通するとなつております。その資本金は、政府の一般会計からの出資金と農林漁業資金融通特別会計の廃止の際におけるその資産の価額から負債の金額を差引いた額と、政府の米国対日援助見返資金特別会計からの出資があつたものとされた金額の合計額になつておりまして、現在の資本金の合計額は百八十億九千三百万円となつております。昭和二十八年度の運用金は、貸付のできる金額は、政府出資である百八十億九千三百万円と資金部からの借入金五十億円と、回収金が十億円ございます。その合計金二百四十億九千三百万円でございます。業務の範囲といたしまして、水産に関係のある分は次の通りでございます。第一は、漁港施設の改良、造成、復旧又は取得に必要な資金、第二は、共同利用に供する施設の改良、造成、復旧又は取得に必要な資金、第三は、農林漁業の生産力の維持増進に必要な施設の災害復旧に必要な資金であつて、主務大臣の指定するもの、その次は、漁船の改良、建造又は取得に必要な資金であります。このうち最後の、漁船の改良、建造又は取得に必要な資金の分は、今度の一部改正で附け加えたものでございます。
次に、貸付金の種類、利率の最高、償還期限、据置期間等について触れてみたいと思いまするが、これは左の通りでございます。貸付金の種類としましては、漁港施設関係が一つ、共同施設関係が一つ、災害復旧関係が一つ、漁船関係が一つ、その利率の最高は、最初の漁港施設関係が年七分、共同施設関係が年八分、災害復旧関係が年七分、漁船関係は年八分となつて、償還期限がおのおの全部十五カ年、それから据置期間は、漁港施設のほうが三年、共同施設のほうが一年、災害復旧関係が一年、最後の漁船関係が三年となつております。
特別融資、これは公庫が継承するものでございまするが、そのうち水産関係に貸付けた資金は、これは読むと大変でございまするが、必要な点だけ申上げたいと思います。二十七年度だけ申上げます。漁港関係で、基本及び機能といたしまして二十七年度は四億五百九十六万八千円となつております。それから共同利用施設のほうが十九億二千五百六十九万八千円となつております。その内訳を言えば限りございませんが、これがおのおの製氷冷凍関係、水産物増殖施設関係、組合の自営漁船、その他と、四つに分れておりますが、その点は省略をいたします。
開発銀行から公庫に継承された水産関係の債権、これは左の通りになつております。継承債権の水産関係としさしては、開発資金としまして、製氷冷凍は一件でございまして、当初は四百五十万でございます。残高が四百五万円となつております。復金資金は、漁田開発六件、これが六百五十万で、残高が五百九十二万八千円、それから製氷冷凍、これが三件で千五百万円、残高が千百六十五万一千円となつております。その他としまして三件、これが千九百万円で、残高が千九百万円であつて、小計としまして十二件、四千五十万円、残高が三千六百五十七万九千円となつております。見返資金のほうは、漁田開発が二十件ございまして、これは当初は四千六百八十万円でございましたが、そのうち残高が二千三百六十九万三千九百三十一円となつて玄ります。それから水産物高度利用のほうは、これは三件でございまするが、金額が多うございまして一億一千四百五十万円、残高は一億一千四百五十五円、その通り残つております。全体の合計といたしまして三十六件、全体で二億六百三十万円残高は全体で一億七千八百八十二万二千九百三十一円となつております。
それから昭和二十八年度資金貸付要望を受理した金額は非常に多うございます。二百十八件、二十一億二千余万円となつております。これを読み上げると相当時間がかかりますので、(「簡単に願います。」と呼ぶ者あり)大急ぎで……非常にこういう点が重要でございますので、簡単に申上げたいと思いまするが、事業別では基本施設と機能施設と両方に分れて、その中が更に一般修築、災害復旧、そうして基本施設ではおのおの受理件数は四十一件並びに五十五件、計九十六件となりまして受理金額は合計だけ申上げますると二億五千三百六十一万円となつております、それから機能施設のほうは、一般並びに災害復旧、小計だけ申上げますと、これは一億百三十万円、この全体の合計が件数としまして百三件、それから受理金額が三億五千四百九十一万円、それから魚田開発、製氷冷凍、自営漁船が、これが共同というところで、件数はおのおの魚田開発が一件、製氷冷凍が四十七件、自営漁船が四十一件、おのおの受理金額は最初の魚田開発が四百万円、それから製氷冷凍が十二億二千八百三十九万円、自営漁船が四億四千三百十七万円となつております。それから最後に利用施勢のほうが、水産物増殖施設が十二件ございまして、これが二千三百五十七万円、水産その他が十四件で六千六百八十二万円、計百十五件、それで全体が十七億六千五百九十五万円、こういうようになつております。
それから農林漁業資金貸付決定者の水産関係、二十六年度、二十七年度は別冊がありますが、これは水産庁のほうに、できますならば是非、水産関係に熱意を持たれるかたは、こういうプリントがございますから、これを取つて来て頂きまして見て頂きたい。非常にこれは長いものでございますから、この際は、省きたいと思います。
第二は、日本開発銀行法による融資でございます。目的は日本開発銀行法にございまして、長期資金の供給を行うことにより経済の再建及び産業の開発を促進するため、一般金融機関が行う金融を補完し又は奨励することを目的とする、これが第一条でございます。現在の資本金は、政府の米国対日援助見返資金特別会計からの出資金と、政府の一般会計から出資のあつたものとされた金額の合計額で、現在左の通りであります。一般会計からの出資が二百億、それから法定の見返資金が千三百十億、復金引受が八百五十二億二千万円、合計が二千四百六十二億二千万円となつております。
融資の対象となる産業、非常にこの点が重要で、ございまして特にお聞き頂きたいのでございますが、融資の対参となる産業は、電力、海運、鉄鋼石炭、自家発電、合成繊維、その他となつております。
二十八年度の収支見込、これは経済審議庁の調査でございまするが、収入で、繰越が三十億、それから回収が百九十億、利息が六十億、政府借入が六百億、合計で八百八十億円となつております。これがどのように支出されたか、特にこれをお聞き頂きたいのでございまするが、このうち電力関係に出されましたのが実に四百億でございまして、四五%でございます。海運関係は二百二十億で、これは二三%になつております。鉄鋼関係が六十億でございまして、これは六・五%、石炭関係が四十億円でございまして、これが四・五%、自家発電が三十億円で三・三%、合成繊維、その中には漁網とかそういう関係もございましようが、その方面は二十五億、その他としまして四十五億円になつておりまするが、その他の中に水産が含まれまして、水産は一体どれだけかと申しますと、僅か一・五%にしかなつていない。この点が非常に重要だと私たちは考えておるわけであります。
昭和二十七年度の水産への貸出の実績は、捕鯨船方面が三件で、これが六億六百五十万円、それから「かつお」「まぐろ」船が十件でございまして三億百十万円、それから鮭鱒母船、これは一件で一億円、それから製氷冷凍が十六件ございまして、これが二億七千五百五十万円、合計が三十件で十二億八千三百十万円となつております。
昭和二十八年度水産関係で関発銀行融資の要望は実にたくさんございまして、第一には南氷洋大型捕鯨船の建造、第二は南氷洋大型冷凍船の建造、第三は遠洋かつお・まぐろ漁船建造、第四は以西底曳トロール漁船建造、第五は真珠養殖事業の開発、第六が漁網綱に繋がりまするところの合成繊維生産設備の強化拡充、第七が製氷冷凍施設の整備拡充こういうものが要望されておるわけでございます。
その次に中小企業金融公庫法の制定と開発銀行について申上げますと、第十六国会で中小企業金融公庫法の制定に伴い、開発銀行の中小事業部は自然廃止となりまして、中小企業者への貸出は開発銀行から中小企業金融公庫のほうへ移ることになりました。そして中小企業金融公庫のいわゆる中小企業者とは、資本の額、出資の総額でございますが、それが一千万円以下の会社、並びに常時使用する従業員の数が三百人(そのうち特に商業又はサービス業を主たる事業とする事業者は三十人で、鉱業を主たる事業とする事業者につきましては千人となつております)以下の会社及び個人であつて、政令で定める特定事業を行うものが対象となつております。そして政令の特定事業には原始産業は含まれないことになつているから、中小企業者の漁船の建造資金の貸出は開発銀行から除かれると同時に、中小企業金融公庫からも締出しを食つてしまつたことになつております。農林漁業金融公庫法を改正しすして、中小企業者の漁船建造の資金貸出の途を開く必要がここに生じて来たわけでございます。
第三は、中小漁業融資保証法でございまするが、目的は、中小漁業者の漁業経営に必要な資金の融通を円滑にするため、金融機関の中小漁業者等に対する貸付について、漁業信用基金協会がその債務を保証し、且つその保証につき政府が保険を行う制度を確立し、以て中小漁業の振興を図ることを目的とする。こういうふうになつております。
それから漁業信用基金協会の設立については、都道府県ごとに中小漁業者の出資により設立されておるところの北海道ほか十六府県の出資総額は七債九千六百三十五万円でございまして、その他の府県も目下設立中でございます。この模様を申上げると、これはちよつと長くなりますが、一、二の例だけをとつて申上げます。都道府県別漁業信用基金の概要、これは二十八年六月二十三日現在で水産庁協同組合課で調べたものでございます。そのうち北海道を一つ申上げますと、設立認可年月日が二十八年三月十二日、登記完了年月日二十八年三月三十一日、出資金、設立当初は一億四千三百六十万円、二十八年度末の出資見込は十五億になつております。会員数は百八十二、役員数は、理事が三十五、監事が五、それから保証は大体五倍になりますので、運転資金関係が五十四億、それから設備資金のほうが六億、計六十億、保証料その他、これは略します。もう一つの小さな例をとつて見ますと、小さなということに当るかどうかわかりませんが、香川の例をとつて見ますと、これは二十八年四月三十日の設立認可で、この登記完了が同年五月二十五日、出資はこれは千四百十五万円で、二十八年度末の出資見込は三千六百万円となつておる。会員数が三十七、それから二十八年度末保証累計見込領が一億三千万円、これが運転資金でございまして、設備資金のほうがこれが三千万円、合計一億六千万円、こういうようになつております。そのほか十六都道府県もありまするが、時間の関係で省略いたしたいと思います。
業務は、左に掲げる資金の借入による金融機関に対する会員の債務を保証するということが一つあるわけでございまして、そのうち、一としまして、漁業組合が組合員たる中小漁業者に対し漁業経営に必要な資金を貸付けるために必要な資金、第二が、会員たる中小漁業者がその漁業を経営するために必要な資金、第三が、会員たる水産業協同組合がその事業を行うに必要な資金となつております。
会員は、漁業協同組合、漁業生産組合、漁業協同組合連合会、又、一年を通して九十日以上漁業を営む個人、漁業を営む法人、こういうふうになつております。
出資と借入の保証について申述べますが、会員は一口五万円のものを一口以上出資する場合、その出資金の五倍までの借入金ができまして信用基金協会の保証がこれで得られることになつております。即ち、百万円出資したものにつきましては、五百万円までの借入に対し保証がなされることになつております。
問題になりますのは、その次の金利の問題で、これがもう最後でございまするから、お聞き頂きたいと思うのでありますが、非常にこの点も水産関係に不利になつております。金利関係は、保証料、それから保険料等も含んでおりまして、金利は一般金融機関の貸出金利でありまするから、運転資金が二銭四厘、設備資金のほうは二銭七厘程度でありまするが、ところが問題は、これに対しまして政府へ納付する保険料と基金協会の事務費がこれに加わつて参りまして、これを合せて保証料としまして実に七厘五毛乃至八厘がこの上に附加されます。そういうようなことになつておりますので、その結果、実際的な金利は、運転資金におきましては三銭一厘五毛、相当これは高利になります。設備資金が三銭四厘九毛、こういうような大きなものに実はなつておるわけでございます。以上のような現況でございます。
こういう関係から、農林漁業金融公庫法を改正して、漁船の建造等に対しまして資金融通の措置を講じようとしたものでございます。なお、先に中小企業金融公庫ができまして、従来、漁船に対して貸出の業務を扱つていた開発銀行の中小事業部が解消いたしまして、そのほうへ吸収されることになつたのでありますが、この中小企業金融公庫では水産のほうの扱いはいたしませんし、農林漁業金融公庫のほうでも漁船の取扱はないことは、さつき申した通りでございます。従来やつておつた漁船に対する開発銀行の貸出が宙に浮くことになつてしまいましたので、特に本法案の提出を急いでなされたものでございます。
次に、法案の内容について申上げますと、その第一点は、農林漁業金融公庫法第十八条、(業務の範囲)第一項に、五の二として「漁船の改造、建造又は取得に必要な資金」の一号を加えまして、漁業者に対するこれが融資の途を開くことにいたしております。第二は、別表に五の二として一号を加え、利率の最高年八分、償還期限十五年、据置期間三年と新たに規定いたしておるわけでございます。
水産委員会におきましては、八月六日、農林委員会と連台委員会を開催いたしまして、提案者との間に質疑応答を重ねまして、慎重に審議をいたしたのでございまするが、その際、農林委員長片柳眞吉君から次のような質疑がありました。即ち附則に「この法律は、公布の日から施行する。」とありまするが、農林漁業金融公庫の枠はきまつていて、枠はほかにないはずだが、中小企業金融公庫の一部の切替えができるか。又公布されても予算の関係もあるから施行期日は政令で定めるようにしたらどうかという御質問があつたのであります。これに対しまして提案者側からは、二十八年度の枠はございません。併し、開発銀行の中小事業部のうち、水産関係のもので、大資本漁業へ融資する以外のもののうち漁船の分が約一億程度ございます。これは大蔵省とも打合せて農林漁業金融公庫の枠に入れ得る予定でございます。そして二十九年度において、是非、枠をとる考えである。なお施行期日については、政府が予算的措置を講ずる上においても、是非公布の日から施行するようにいたしたい」等の回答が、ございました。
次に、水産委員会単独の審議に移りました際、秋山委員から、二十八年度の農林漁業金融公庫の運用資金の枠は二百四十億円であるが、このほかに漁船の分として枠があるのかとの質問に対しまして、提案者から、連合委員会の際の片柳委員の質問に対するのと同様の回答がありました。又二十九年度ではどのくらいの枠を要求するつもりかとの政府委員への質疑に対しまして、係官から、目下研究中で、はつきりと決定したものは言えませんが、大体その額は五十億乃至六十億を要求する必要があるのではないかと思つておりますとの答弁がございました。
かくて質疑を終了いたしまして、討論に入りましたところ、秋山委員から、「大きな業者には金融の措置が開発銀行等によつて付けられていたが、今まで金融の途が十分でなかつた中堅漁業者にその途が開かれることになるので、誠に結構な改正であり、賛意を表する。ただ資金の裏付けが貧弱では困るのであつて、二十八年度には一億ぐらい見込まれているというが、先般立法化された漁業許可の特例による以西底曳網漁船及び「かつお」「まぐろ」漁船は、いずれも、増トン、改造に迫られているので、二十九年度には予算の増大を図り、必要な枠を獲得できるよう大蔵省へ交渉するよう努力されたいとの希望条件を附して賛成する」という意見の発表がありました。よつて討論を終結し、採決をいたしました結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告いたします。長い時間をかけまして恐れ入りました。(「議長、定足数がないじやないか」と呼ぶ者あり、拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/67
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068・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/68
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069・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/69
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070・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 日程第十七、昭和二十八年度における国会議員の秘書の期末手当の支給の特例に関する法律案、
日程第十八、国会職員法等の一部を改正する法律案、(いずれも衆議院提出)
以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/70
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071・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。議院運営委員長草葉隆圓君。
〔草葉隆圓君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/71
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072・草葉隆圓
○草葉隆圓君 只今議題となりました昭和二十八年度における国会議員の秘書の期末手当の支給の特例に関する法律案につきまして、その内容及び議院運営委員会におきまする審査の経過並びに結果を御報告申上げます。
本法律案は、先般成立いたしました昭和二十八年度における期末手当の支給の特例に関する法律に準じまして、国会議員の秘書に対しても、最近における諸般の情勢に鑑みまして年末に支給すべき期末手当に相当する額の一部を繰上げ支給するための措置として衆議院から提出されたものでありまして、その骨子とするところは、大体、先の昭和二十八年度における期末手当の支給の特例に関する法律と同様であります。
議院運営委員会といたしましては、
庶務関係小委員会等におきまして、あらかじめ衆議院側と連絡をとり、本法律案の内容につきまして検討いたしておりましたが、このたび正式の提出を待つて、改めて提案者側に対し本案提出の経緯等について質疑を行い、これを審査いたしました結果、全会一致を以て可決すべきものと決定いたしました次第であります。
以上を以て御報告といたします。
次に、只今議題となりました国会職員法等の一部を改正する法律案につきましてその内容の概略及びこれが議院運営委員会におきまする審議の経過並びに結果について御報告を申上げます。
本法律案は、今回、議長並びに副議長の地位に鑑み、その秘書事務を掌る参事を新たに設けることとし、それに伴い、先ず国会職員法におきましては、議長又は副議長の秘重量務を掌る参事の職務の特殊性を考慮いたしまして、一般国会職員が受けまする分限、保障、服務、懲戒等の規定の適用を除外することとし、又、議院事務局法におきましては、新たにこれが任免に関する規定を設けようとするものであります。
本法律案につきましては、あらかじめ庶務関係小委員会におきまして、その内容を検討の上、議院運営委員会において慎重審議の結果、全会一致を以て可決すべきものと決定いたしました次第であります。
以上御報告を申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/72
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073・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 別に御発言なければ、これより両案の採決をいたします。
先ず昭和二十八年度における国会議員の秘書の期末手当の支給の特例に関する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/73
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074・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/74
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075・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 次に、国会職員法等の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/75
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076・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/76
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077・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) この際、参議院事務局職員定員規程の一部改正に関する件についてお諮りいたします。
本件につきまして、議長は、参議院事務局職員定員規程の一部を改正する規程案を立案いたしまして、あらかじめ議院運営委員会に付議いたしましたころ、同委員会においては異議がない旨の決定がございました。この規程案は議席に配付いたしました通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/77
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078・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより本規程案の採決をいたします。本規程案全部を問題に供します。本規程案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/78
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079・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よつて本規程案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/79
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080・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 外務大臣から、相互安全保障計画参加に関する日米交渉経過について発言を求められました。この際、発言を許します。
〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/80
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081・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) いわゆるMSA援助の日本に対する適用に関し、政府が確かめようとした点及び疑問とする点については、去る六月二十四日当方から、二十六日アメリカ大使からの書簡交換がありまして、政府はこの回答を研究いたしました結果、日本としてはMSA援助を受けることについてアメリカ側との交渉をすることが望ましいとの結論に達し、三十日、本援助に関する協定交渉を提議いたし、必要の準備を整えた上、去る七月十五日に外務省で第一回会談を開催する運びとなつたのであります。
第一回会談開始に当り、私とアメリカ大使の陳述したことは、大体、先の交換文書の趣旨に則つたものでありますが、これは、双方が交渉に臨むに当り、その根本態度なり構想なりを率直に披瀝したものでありますから、念のため先ずこれにつき簡単に申述べます。
我がほうとしては、第一に、我々の任務は世界の平和の確保を助長するために相互の努力を一層有効に連結し得る取極を成立せしむることにあり、第二に相互安全保障計画の主要な目的は、日本の国内の治安維持と防衛を確保し、自由世界の安全保障の維持と増進に寄与するものであると考える。第三には、相互安全保障計画の下においては、日本は自国の政治的及び経済的な安定を害することなしに、自国の防衛力と自由世界の防衛力のために、自国の一般的経済条件の許容する限度において寄与をなすつもりである。又、第四に、防衛力は安定した経済的基礎の上に築かれなければならないということが認識されている以上、日本の防衛能力の増進も、日本の経済の安定と発展の上にその基礎を置くものでなければならないものであることを強調いたし、なお、いわゆる軍事的義務の履行とは、日本の場合には、日米安全保障条約に基き、すでに日本が引受けた義務履行により充足されるものであると解すると述べ、
これに対してアリソン大使は、主として日本が引受けるべき義務について解釈を加え、MSAの援助に関する根本理念について述べたのであります。その要点は、相互安全保障の協定を締結することによつて日米双方にもたらされる利益は相互的なものであり、MSA援助を受けると、日本は相互安全保障法第五百十一条(a)項に列挙してある六つの義務を引受けなければならないと述べ、右の六つの義務のうち「国際間の緊迫の原因を除去するため、相互に合意する行動をとること」とあるのは、本条項に基く行動は、相互の合意により、又双方の利益であると合意されて初めて履行されるもので、強要されるものではないこと。又日本が受諾するいわゆる「軍事的義務」とは、日米安全保障条約に基いて、自由に且つ自発的に日本がすでに引受けた義務の履行であること、日本が「自国の防衛力及び自由世界の防衛力の発展及び維持のために、全面的寄与を行うこと」とは、先ず日本が自国を強化して、入ずからを防衛し得るようになることであること、更に、日本が「その防衛能力の発展に必要なあらゆる合理的な措置をとること」とは、日本がその経済的能力を超えて、直ちに治安維持の部隊を増強することを意味するものではなく、防衛力の増強の速度と態様は、日本政府によつてのみ決定されるべきものであるということを指摘したのであります。又これらの安全保障法第五百十一条(a)項に規定する六条件は、相互安全保障計画に基いてすでに援助を受けているすべての国が、自由に且つ自発的に引受けている義務であること、更に、合衆国は、自国の部隊を無期限に駐在させることを欲せず、日本の防衛力増進に従つて日本にある合衆国の部隊を漸減することができるというのが、アメリカ政府の期待であり、両国政府の希望はここに合致し得るものであると信ずる旨を述べたのであります。続いて、MSAに関する双方の会談は、七月二十二日、二十四日、二十七日、三十一日と回を重ね、協定文案、援助の内容などにつキ交渉をいたして参りました。先ず協定案について申しますと、交渉の進捗を図る意味で、双方の事務当局草案とも称すべきものを交換し、意見の開陳と、これに基く討議を続けて参りました。現在までの進捗状態の概略を申上げますと、一、援助の供与、二、日本の原材料及び半製品の売渡し、三、広報活動に関する措置、四、機密の保持、五、援助資材に対する免税措置、六、協定事項の協議及び検討、七、本協定と安保条約との関係、入、協定の発効、廃止などに関する最終条項、九、装備の標準化などの諸点につきましては、大体において双方意見の一致を見つつあるのであります。尤も顧問団の性格及び取扱、及び相互安全保障法第五百十一条(a)項に掲げた六つの要件を如何に協定文に盛るかという点、更に、MSA援助と経済安定との関連性についての考え方などの二、三の問題につきましては、まだ更に意見を交換する必要がありますので、今後の会談において十分に話合つてみるつもりであります。但し、アメリカのMSA援助はすでに世界の五十数カ国に供与され、従つてMASの協定もおのずから雛型のようなものができておりますから、今回の日米間の協定も、この範疇を多く出でぬものであることは当然であります。併し、協定案自体は、今後会談を重ねた上、決定せられるもので、今日はまだこれを具体的に申上げる段階に達しておりません。次に、援助の内容につき申しますと、MASの援助の種類は、相互防衛資材及び訓練に関する援助、相互防衛支持援助、相互特別武器計画、経済技術援助、その他多数国間機構に対する援助等があるわけでありますが、日本に対する援助といたしましては、一九五三年度より五四年度に至るアメリカのMSA予算を見まするに、相互防衛資材及び訓練と呼ばれるもののうち、中国一般地域という項目に該当するものが主であると考えられ、これは一般に軍事援助と通称されるところのものであります。我々といたしましては、このいわゆる軍事援助の内容は、完成兵器のみに限られるか、又、完成兵器である場合、どの程度我が国に発注することが可能であるかなどの点につき、十分アメリカ側の意向を質すと共に、日本の経済への貢献をなし得る援助であるよろ話合いを進めて行きたいと考えております。又、初年度において、いわゆる軍事援助以外に、防衛支持援助、即ち通称経済援助なるものが我が国にも可能であるかどうか、若し初年度不可能にしても、次年度以降可能であるかどうかについても、十分話合いを行うつもりであります。なお、今後アメリカの日本に対する特需、域外買付などは、今回の対自援助と深い関連を以て日本の経済に影響するわけでありますから、今回の交渉においても、できるだけこれらの点を明確にして、それによつて日本の経済が当面する貿易の不均衡に対処する方途を講ずると共に、将来の健全なる発達に資したいと考えておる次第でございます。又、MSA援助のうちの経済技術援助については、アメリカ政府は、一九五三五四年度相互安全保障計画の中で次のように述べております。
〔副議長退席、議長着席]即ち「アジア及び太平洋地域の諸国は、その貿易及び他の自由諸国との間の貿易を拡大することによつて中国市場の喪失を補填し、お互いの発展に貢献し得る。特に日本は必要な物資及び市場を東南アジア等に依存しており、その代り、東南アジア等の開発に必要な資本的施設と技術を供給し得る。日本の将来における経済力はアジアの供給源の開発に依存するところ大である。アメリカは地域計画の進展を支持する用意があり、これら諸国に対するアメリカの双務的援助は、地域的発展のための必要条件と機会をそれぞれ考慮に入れるであろう。」と述べております。この思想はいわゆるポイント・フォアと称せられる経済開発に日本の担い得る役割を示唆しているものと考えられます。最後に、MSA援助の性格につきまして検討を加えてみまするに、主として次の諸点が特に注意を要するものと考えられるのでありまして、これらにつきましては、今国会における議員各位よりの質疑を通じ、国民の関心も又やはり同様の点にあるように考えられます。即ち、第一は憲法上の疑点、特にMSA援助により海外派兵の義務を生ずるか、又、援助により戦力を保持することとなるかどうか。第二、援助を受けることにより我が国の自主性を喪失する憂いはないか。第三、何らか新たなる義務を受諾することになるのではないか。第四、機密保持を要する関係上、我が国が戦時中の治安維持法のごときものを再現することになりはしないか。第五、共産圏諸君との貿易に対し新たなる制限を課せられることになりはしないか。第六、援助を受けることにより不必要に他国を刺激し、国際緊張の種を作ることになりはしないか等の諸点でありますが、政府といたしましても、これらの諸問題につきましては、もとより慎重に対処すべきものと考えております。これにつき私の見解を簡単に申述べますならば、第憲法上の疑義につきましては、政府として、形式上はもとより、実質的にも憲法に違反するがごとき協定を作る考えのないことは申すまでもありません。又実際上もかかることは杞憂に属するものと信じます。第二の我が国の自主性の問題でありますが、これは援助自体が内政干渉等の危険を孕むというよりは、むしろ被援助国が如何なる態度でこれを受けるかとの点が問題であつて、我が国に関する限り自主性喪失の懸念は根拠なきものと考えるのであります。第三の新たなる義務の点につきましては、MSAの援助を受ける以上、相互安全保障法に規定せられている諸義務を新たに負うことは事実でありますが、種々検討の結果、この新たなる義務はこれを受諾するも差支えない種類のものと考えている次第であります。第四の機密保持につきましては、援助の種類によりまして、機密保持の措置をとるため新たなる法律を要する場合も想像し得るのでありますが、これは機密保持の必要な限度に限ること勿論でふりまして、戦時中の治安維持法のような、国民の権利を不当に制限するがごとき法律を制定する考えのないことは申すまでもありません。第五の共産圏諸国との貿易制限の問題につきましては、我が国はすでに自由諸国と協力する意味でこれを実施しているところでありまして、現在以上に制限する必要はないものと考えるのであります。又、事実、朝鮮休戦に伴い、この制限も将来はむしろ緩和の方向に進むものではないかと予測するのであります。第六の、不必要に他国を刺激し、国際緊張の種を作りはしないかとの懸念は、我が国の現在置かれた国際上の立場、又この立場に基く我が国の政策等の点から見て、かかる緊張の種を作らぬよろ努力すべきは勿論でありまするから、政府としては、このような誤解を生ぜぬよう十分の措置をいたす所存であります。併しMSA援助はいろいろの形ですでに世界五十数カ国が受けているのでありまして、我が国のみがこれを受けることにより国際緊張の原因を作ると解さるべきではないと確信いたしております。以上、問題として特に注意を要する諸点につき私の見解を述べましたが、今後、交渉に当り、これらの諸点を十分考慮に入れて万遺漏なきを期する所存であります。なお、以上の諸点のろち、特に我が国として重要と考えられるもので、而も協定中に規定を設けることが適当でないと認められる場合におきましては、必要に応じ正式議事録或いは議定書その他適当なる方法により、これを記録にとどめ、我が国の立場を明確化する考えであります。以上MSA交渉の現段階につき所見を申述べましたが、政府としましては、速かに両国の満足し得るがごとき協定に到達したいとの希望を以て今後とも交渉を進める所存であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/81
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082・河井彌八
○議長(河井彌八君) 只今の外務大臣の演説に対し質疑の通告がございます。順次質疑を許します。羽生三七君。
〔羽生三七君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/82
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083・羽生三七
○羽生三七君 私は日本社会党の立場から、只今の外務大臣のMSAに関する中間報告について若干のお尋ねをいたしたいと思います。
先に外務大臣とアリソン大使との交換文書によつて、或いは又、日米合同会議における外務大臣並びにアリソン大使の挨拶によつて、大よそ問題の所在は明らかにはなつて参りましたが、更に重ねて今の外務大臣の中間報告によりまして、更に漸次問題の幅はせばめられて来たように感ぜられます。併し、なお私どもはこれに関して相当な疑点を持つているのでありますが、先ず朝鮮休戦協定が成立ちまして世界の緊張が緩和せられたことは、我々隣国として誠に同慶に堪えないのであります。併しこれによつて世界の平和が確立されたものでないことは言うまでもないので、今後なお暫らく世界の緊張は続くものと考えなければなりません。そういう国際的な背景のもとにおいて、今MSAの協議が進められておるわけでありますが、併しこのMSA援助の意味するものは、今、外務大臣は、世界の五十数カ国が参加しておるから、我が国のみがひとり危険な道を歩むことと考えることは必ずしも適当でないと言われましたが、或いはそうかも知れません。併しこの日本の特殊な国際的地位或いは環境或いは日本の置かれておるこの客観的な条件下の諸問題、そういうものを考えますというと、今外務大臣の言われたように、必ずしも世界各国の多数がこれに参加しておるからといつて、この問題を軽く扱うことはできないと思います。これにつきましては、国会の内外を通じて随分論議され、又、問題の焦点が、今外務大臣が言われた憲法に対する疑点、或いは海外派兵に対する疑念、それらの問題等を通じて随分活発に論議されたところでありますが、この問題については、更に今の外務大臣の中間報告では、私どもとしては納得しかねるものがありますので、この際、数個の点についてお尋ねをいたしたいと思います。
先ず第一は憲法上の疑義についてでありますが、只今外務大臣は、憲法上の疑義については、政府としては、形式的にも実質的にも憲法に違反するような協定を作る考えはないと言明されております。又あつては困りますから、そうなければなりませんが、この疑義は、先ほども申上げましたように国会の内外を通じて議論の焦点になつておりますが、特に戦力等の問題について、政府が若し一方的な解釈を進めて行く限りにおいて、戦力に至らないという断定を政府が無限に続けて行けば、保安隊の増強はどこまでも続けられるという、そういう可能性を含むこととなると思いますが、これに対する政府の見解がどうでありますか。これが第一点であります。そうして又、若し政府が変つた場合、これは戦力である、そういう断定をすれば、途端にそれは戦力になるのか、誰が最終的な戦力の判定者であるのか、これは全然明らかにされておりません。若し吉田内閣が、無限に、これは戦力ではないのだ、憲法には違反しないのだ、そういう立場を三年でも四年でも続けておるならば、いつまでたつても、これは保安隊を増強して行くことは、政府の言葉をかりて言うならば、我が国の経済の許す範囲内において漸増の形で保安隊の増強を進めて行くことは不可能ではないことになる。およそ近代的な常識においてそれが戦力である、而もそれが客観的に見て戦力であると考えられる限度に到達いたしましても、政府が主観的にそれは戦力ではないと判断するならば、無限にこの処置は進められるのかどうか、これがお尋ねの第一点であります。
第二のお尋ねは、相互安全保障法に規定されている諸義務を負うことは、今も外務大臣の中間報告によつて明らかにされました。特に相互安全保障法五百十一条(a)項の六条件は、これは全部恐らく今度の協定の中に盛り込まれる性質のものと思いますが、その際、外務大臣は、今の中間報告では、これを盛り込んでも差支えないという、そういう解釈に立つた、こういう御報告と私どもは今了承いたしました。併しこの問題は、私どものよろな素人でなく、専門の方々が随分いろいろな点から御研究になつて、非常に多くの疑点を持つておることは、すでに周知の事実であります。例えば、その(a)項の六条件の(2)の、国際間の緊迫の原因を除去するために相互に合意されることのある行動をとること、或いは又(3)の、米国が一方の当事国である多数国間、又は二国間の協定、又は条約に基いて自国が受諾した軍事的義務を履行すること、或いは(4)の、自国の防衛力及び自由世界の防衛力の発展及び維持のために、自国の政治的及び経済的安定を阻むことなくして、自国の人力、資源、施設及び一般的経済状態が許す限りの全面的寄与を行うこと、(5)の、自国の防衛能力を発展させるために必要たすべての妥当な措置をとること、(5)もありますが、これらの点はそれぞれ問題を孕んでおります。
この中の(2)については、今外務大臣は、これは国際緊迫の原因を除去するために相互に合意される行動をとるという場合には、合意であるから決して強制されるものではないと言われました。又(3)の、いわゆる自国が受諾した軍事的義務の履行につきましては、これは日米安全保障条約によつて負わされておる軍事的義務を以て足りると言われたことは、これはまあずつと前から一貫しておられる立場であります。併し私どもの考えなければならないことは、日本の保安隊の増強が進められ、アメリカ軍が引揚げたあとの軍事的義務はどういうものになるのか。日本の保安隊が増強されて行つて、その結果、もうアメリカは日本に駐屯する必要がなくなつた場合の、そのあとの日本の軍事的義務の履行というものは一体どうなるのか。今はアメリカ部隊の駐屯或いは軍事基地の提供或いは施設等によつて負おされておる義務を負えばそれでいいわけであります。併しそれが帰つたあとにおいては今のこの条件というものはなくなるのでありますから、そのあとの日本の軍事的義務の履行とはそもそも何を意味するのであるか、これをお尋ねいたしたい。次には、在日来車が引揚げる程度になつた場合の保安隊、これはまあ言葉の問題でなく、実際的な問題として、当然戦力を持つた軍隊となることは自明の理であります。今のアメリカ軍は当然戦力である。これは衆議院でもどなたかがお尋ねになつたようでありますが、それが引揚げて行つた後の、つまりそれに交替し得る程度に成長した日本の保安隊は、当然これは戦力を持つものと考えますが、これに関する御見解を承わりたいと思います。
三は、これは木村保安庁長官にお尋ねすることになりますが、MSAの交渉において、同法の性格が、只今外務大臣の中間報告にもありましたように、軍事援助、経済援助或いは枝術援助等、各種の援助形式がありますが、日本の場合においては、これは当然軍事援助であるということが、今外務大臣みずからの言葉によつても表明されたわけであります。この軍事援助の前に仮に防衛計画の提示が日米交渉の必須条件ではないにいたしましても、我我の常識上の判断から、何らかの計画を提示すべき必要に迫られるものと思います。これは常識上の判断であります。アメリカの相互安全保障計画の年次計画にいろいろな変更があると思いますから、当然長い計画を我が方としても立てるわけには参らないでしようが、併し他面、一年間の防衛計画或いは兵器の使用計画でも、或いはその他直接の数カ年計画でなくてもよろしいのですが、使用計画なり実施計画というものが当然明示されなければならない。この点は、前に木村保安庁長官が九州旅行の際、記者団との会見でしばしば論議の対象にされたことがあるのじやないか、私はそのことはここで論じません。ただ少くとも我々が常識上の判断からいたしまして、何も計画がない、そんなものはございません、それをアメリカが、ああそうか、併し援助はしてやろう、そんなことで済ますでしようか。アメリカの議会における政府のいろいろな発言或いは声明等を通じてみましても、明らかにアメリカ政府は或いはダレス氏も、MSAの援助は慈善事業ではない、恐らくこれはギブ・アンド・テークという立場をとるのだろうと思いますが、こちらが持つ一つの防衛計画というものが、向うにとつては、それが与える立場の者にとつては主要なる条件になると思います。だから私は、ここで、五年、八年の長期国防計画というようなものがあるかないか、そういう論議はいたしません。併し当面一年程度の計画なくして会談が進められるはずがない。必須条件ではないにいたしましても、それはもう誰が考えてもわかる、全く常識上の判断であります。だからそういろ意味で、当然これはアメリカに話さなければならないことでありますから、近く明らかになるのは当り前でありますから、もう国会も閉会になる段階に来ておりますから、お差支えのない範囲でここで一つ明らかにして頂きたい。これは是非希望をいたします。
次に、総体的に見まして、日本側の解釈は相当安易に過ぎるのではないかと考えます。これは今私が申上げましたように、アメリカ政府のMSAに関する基本方針といろものが、慈善事業でないということを繰り返し繰り返し声明しておる。アメリカが多額の援助を外国に与えるのは、アメリカ国民から多額の税金一取立てるのは、この金を慈善事業に使うのではないということを繰返しアメリカ政府は声明しておる。そういう意味で、この被援助国となる日本が負う義務は私は相当に制約があると思う。差支えのない範囲のものだと今外務大臣はおつしやいました。併しこの一から六までの条件を個別に掘り下げて考えてみまするならば、そこに内在する問題は私は相当広範にして且つ深刻なものがあると思います。併し今はそれは別といたしまして、そういう場合に、只今は差支えのない範囲においてと、こう外務大臣は解釈されましても、将来国際情勢の進展如何によつて同法の解釈上の相違が生じた場合、その場合に、双方の合意とか、或いは日本国の憲法に規定があるということでは済まされないような事態が生ずる虞れはないか。今この協定を進める過程におきましては、合意、これは成り立つと思います。又、今、政府は憲法上の何らの疑点がないという立場をおとりになることも場合によつては可能でありましよう。併し国際情勢の変化によつて、その間、或いは自衛とか或いは防衛とかいう用語上の解釈のみならず、各条文についてそれぞれの解釈上の疑義が生じたような場合に、果して双方の合意或いは憲法の規定ということで済まされないような事態が起らないでありましようか。その意味で、今外務大臣みずからも御報告がありましたが、懸念される海外派兵等の疑念をなくするために、協定中に何らかの方法でこれを明らかにすることができないかどうか。併しそれは技術上非常に困難であるという場合には、大臣は、今、必要に応じて正式議事録或いは議定書等によつて記録にとどめたいと言われましたが、今の海外派兵の問題を、外務大臣の言われた、必要に応じ、正式議事録、議定書等により記録にとどめるという範疇に入れようとお考えになつておるかどうか。この点をお伺いいたしたいのであります。
なお、このほか個々の問題については随分お尋ねいたしたい点がありますが、大体以上の四点について、副総理、外務大臣、保安庁長官等、それぞれの御答弁を煩わしたいと思います。
以上を以て私の質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/83
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084・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。政府といたしましては、国には固有の自衛権がある。これは国を立てました以上、憲法にむしろ先立つて一つの自衛権がある。その自衛権を裏付けまするところの自衛力は、これは独立国でありまする以上当然に持ち得るものである。ただ日本の憲法におきましては戦力を持つことを禁止いたしております。その戦力を然らば如何に解釈しておるかということは、本議場におきましてもたびたび申上げたところでありまするので、ここに繰返しませんが、その政府のとつておりまする解釈が正しいか正しくないかということは、国会の批判を受けることによりまして、客観的の妥当性を持つものであると考えております。それからアメリカ軍が引揚げましたのちに、防衛力の性格は変るのではないかという御質問のように承おつたのでありますが、アメリカ軍が引揚げを可能とする事態になればそれは変つて参ります。その際には、憲法の問題につきましても、自衛力の問題につきましても、改めて考えなければならぬ時期になると考えております。
〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/84
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085・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 米軍撤退後において如何なる軍事的義務を負うかということにつきましては、只今副総理からお答えがあつたのでありますが、更に敷衍して申しますと、日本が自衛力を漸増して行くということにつきましては、勿論、経済上、政治上の安定を害さないようにして、而も日本の資源なり設備なりの許す範囲で行うということになりますから、なかなか急にはアメリカ軍と交代し得るようには残念ながら至らないのじやないかと考えられるのでありまして、従つて大分これは先の先のことになりはしないかと思うのであります。従いまして、その際のことはそのときの情勢により決定するほか仕方がないと考えております。なお、MSAの援助は慈善事業じやないのだというお話でありますが、その通りでありまして、日本としても、慈善事業であるならば、独立国がこれを受けるということは躊躇せざるを得ないだろうと考えます。このMSAの援助というものは、日本がこれを受けるのでありますが、アメリカの利益にもなり、同時に日本の利益にもなりまするから、これを受け得るものであろうと思つております。そこで、国際情勢の変化によつて条文解釈に疑義が生じたときは、場合によつて憲法違反のような結果になりはしないかというお話でありますが、これは甚だ抽象的なお話で、どういう具体的な憲法違反のような心配ができるのかわかりませんが、ただ若し、それが、例えば海外派兵とか、その他の、私が申しました、又、今お話になつたような点がありますならば、これは十分に考慮をする必要のある問題でありますので、更によく研究を重ねまして、必要があれば適当の措置をとりたいということは、先ほど申した通りであります。
〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/85
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086・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 防衛計画につきましては、MSA援助に関係なく一応これは研究する必要は私はあると考えております。併しながら、この計画を立てるにつきましては、一国の財政状態、或いは技術の面、その他、人員の面、各種の面から十分にこれを検討する必要のあることは言を待たないところであります。従いまして、関係各省と十分の連絡を付けて、立案すべきものであるのでありますが、只今はその段階に至つていないのであります。ただ保安庁といたしましては、それに関係なく、一応の警備計画としては立てたい、こういう考えで、只今あらゆる資料を収集して検討中でありますが、未だ成案を得るに至つていないのであります。
〔羽生三七君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/86
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087・河井彌八
○議長(河井彌八君) 羽生三七君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/87
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088・羽生三七
○羽生三七君 僅かな時間ですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/88
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089・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御登壇を願います。
〔羽生三七君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/89
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090・羽生三七
○羽生三七君 今の御答弁に関連して、重ねて簡単にお尋ねいたします。それは外務大臣に申上げたいことは、抽象的でわからないと申しましたが、私が一番あとに言いました海外派兵等の疑念について言つたことであります。そこで今大臣が、そういうことが必要であれば考えてみなければならんと言つておりますが、先ほど私が申上げましたように、そういう心配がある場合の問題については、議定書なり或いは議事録なりにとどめて記録に残したい、こういうお話の範疇に今の海外派兵の問題が入るかどうか。従つて若し外務大臣が非常に重要な問題とお考えになるならばその範疇に入るわけであります。だから私はそれを具体的に伺いたい。これが再質問の第一点であります。
それから木村保安庁長官にもう一言お尋ねしますのは、この段階に来てまだ今のような御答弁を承わるとは誠に意外な話でありまして、それが九州へ旅行された当時ならいざ知らず、今、協議が進められておる過程に、どうなるかわからんというようなことでございますが、私は、どう考えても、この計画が必須条件ではないにしても、少くとも一年の計画がなければそれは協議の対象にならんのじやないか。それも必要がないというほどの性質のものでMSA援助というものがあるとするならば、これは私たちも解釈を少し変えなければならんと思うのでありますが、そういうことはないと思う。(「そんなに甘くないぞ」と呼ぶ者あり)そんなに甘いものではないと思いますが、何も保安庁長官、そんなに慎重にお考えにならなくとも国会は今日で終りになるか、数日間の会期延長になるか知りませんが、暫らく秋の臨時国会まではないと思いますから、この機会に、而も今や秋の臨時国会の始まるまでには協議が成り立つでしよう。だから、それ前に、いやしくも日本の国会に差支えのない範囲をお示しなさるということは、決して私の過大な要求ではないと思います。その程度はお示しあつて然るべきだと思います。常識上の判断であります。無理な議論じや全然ありません。これは重ねてお伺いいたします。
それからもう一つ外務大臣に、これは先ほどお尋ねしようと思いまして落したごく小さい問題でありますが、今度のこの協議の過程において、日米双方が広報活動を行うということが先ほどの中間報告の中にもございましたが、広報活動とは具体的にどういうことを意味するのでありましようか。これを更に承わりたいのであります。一番最後にもう一度質したいことは、緒方副総理に対してでありますが、先ほどの憲法の問題に関連して、或いは戦力の問題に関連して、その最終的な決定は国会の判断であると言われたことは、これは或る意味においては非常に正当な立場とも解されまするが、そこで、在日米軍が若し日本の保安隊と交代し得る程度の段階に立ち至つた場合についてはこれは確かに大きな問題となるから、憲法上の疑点にも立ち至るから、これは改めて考えなければならんと言われたわけでありますが、これも私は或る程度正当だと思います。併し仮に交代をしなくとも、又交代する瞬間に戦力になるわけじやないのでありますから、すでに漸次成長して行き、又その援助計画を受けて、年次計画を以て漸次伸ばされて行く保安隊が、明らかに我々はもう戦力を持つもの、そういう解釈をせざるを得ないのでありますが、私はその点について、何も在日米軍と交代するその瞬間にそれが戦力になるというようなことを意味するものではない。これも全く常識的に、先ほど外務大臣は、それはずつと先の話だとおつしやいましたが、併し漸次その方向に行くことは確実でありますから、これはもう当然、いや、今直ちにという意味でもありません。又交代し得るその瞬間という意味でもありません。これは漸次戦力になる性格を持ち、又戦力となりつつある。この私の判断がど二いうものでありましようか。もう一度重ねて御回答を得たいと思います。以上を以て再質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/90
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091・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたしますが、今日の兵器の非常に進歩しました時代におきましては、攻撃も集団的であり、従いまして防衛も集団的である。そこで、将来日本の防衛につきましては、やはり集団安全保障の考えの下に、現実の問題としては、恐らくアメリカと日本を中心にして一つの防衛の態勢ができるのであると考えておりまするが、従いまして、その情勢がだんだん進んで行く際に、無論今お話になりました、急に戦力でないものが戦力に変る、一日にして変るというような時代ではなくて、そのアメリカの駐留しておりまする今の性格の駐留軍が撤退する場合には、その前に多少の予備期間があることは勿論であろうと考えます。
〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/91
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092・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 只今海外派兵のことについてのお尋ねでありますが、この日本の防衛の部隊を海外に派兵するかどうかということは、これは日本のみが決定する問題でありまして、米国等によつて、派兵しないのであるとか、するのであるというふうに保障さるべきものではないと考えております。従いまして、協定の中に、或いは議定書の中にこういうものを入れるということは、それ自体がおかしいように思うのでありますが、同時に、政府の只今の考え方は、十分アメリカ側にも徹底させるつもりでおります。
なお広報活動につきましては、MSAの内容について、特に兵器の秘密等のあるものは除きますが、それ以外に、でき得る限り国民に知らせる、こういう意味であります。
〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/92
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093・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 重ねてお答えいたします。警備計画につきましては、先ほど申上げました通り、只今保安庁において各方面から慎重に検討中であります。未だ成案を得るに至らないことは事実であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/93
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094・河井彌八
○議長(河井彌八君) 山田節男君。
〔山田節男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/94
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095・山田節男
○山田節男君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、只今行われました岡崎外務大臣のMSA交渉の中間報告に対しまして質疑をいたしたいと存じます。
岡崎外務大臣から、目下行われておりますアメリカとのMSAの交渉の経過を聞きまして、率直に申上げまする私の感じは、非常にアメリカが日本に対して甘いということであります。これは私は、果してそのように甘いかどうか、これに非常な疑点を持つのでありますが、御承知のようにこのMSAの性格というものも非常に近来変つております。トルーマン大統領の外交政策の基調、殊に対共産主義諸国に対しましては、いわゆる封じ込め政策、コンテインメント・ポリシイ、そして少くともこの一九五〇年の朝鮮事変が起るまでにおきましては、このMSAは、主として経済或いは技術援助、又ポイント・フォアによつて示されました後進国開発、専ら社会の不安を除去して、そうして平和に寄与せんとする、そういうように使われておつたのでありまするが、御承知のように、アイゼンハワー大統領が今年の一月就任するに当りまして、国民に発しました一般ステートメント、メッセージを見ましても、アイゼンハワー大統領は、ダレス国務長官とコンビの下に、いわゆる共和党の対共産主義の強硬な外交政策をするということを言明いたしました。トルーマンの消極的ないわゆる封じ込め政策に換えるのに、アイゼンハワー大統領の外交方針の基調は、飽くまで、力に応ずるに力を以てする、即ちロール・バツク・ポリシイ、巻き返し政策、これを外交の基調としておるのであります。従いまして、このMSAの基本をなしまするアメリカの相互安全保障法の前文を見ますと、国際平和及び安全保障のために友好国に援助を与えて平和と安全を維持するというのであります。そうして、外交政策を促進し、一般の福祉を図ることを目的とする。これがアメリカの相互安全保障の根本理念であります。ましてや、アイゼンハワー大統領がダレス国務長官とのコンこの下に行いまする外交政策、先ほど申上げましたように、又大統領が就任りときの国民に対するメッセージに申しましたがごとく、新らしく積極的な外交政策をやるということを聞明しておる。そうしてこのアメリカの外交の推進力になるのがこのMSAであります。安全保障法の示しておりまする通り、アメリカの積極外交政策の基本になつておる。こういう点から見まして、換言いたしまするならば、或いは極言いたしまするならば、このMSAというものは、アメリカのいわゆる新らしい形、もつと具体的に申しますならば、これは武装をした一つのドル外交の表現であると申しても過言ではないのであります。殊に私は岡崎外相のお話を聞いておりますると、最初に申上げましたように非常に甘い。このことは、我々日本人はとかく情に流される性格を持つております。併し、殊にアングロサクソンの性格を持つているアメリカ、イギリスにおきましては、非常に合理主義でありまして、情実とか、少くとも外交の基本におきまして、愛情というような、そういうものは決して基本にするものではないということは、これは歴史の証明するところであり、今日の事実の証明するところである。かような見地から見まして、私は、何としても今の岡崎外務大臣のおつしやいましたアメリカの日本に対するMSAの態度というものが非常に甘過ぎる。これは先ほど羽生議員も指摘されましたが、先月の十五日でありまするか、第一回のMSAに関しまする協議会が開かれましたときに、日本の政府、これは岡崎外務大臣だと思いまするが、MSAのフイロソフィーという言葉を使つております。これは恐らく構想とか理念というのでありましようが、これは一体どうなるのだということを、あなたはあの日米の協議会で盛んに尋ねている。このことを以てしても、あなたは少くとも多年外交官でおられて、アメリカ、少くともアングロサクソンの気質をよく知つておられる。であるからこそ、このMSAに関しての協議会の第一回からいたしまして、MSAの性格構想というものを非常に探究しておられることは、これけ事実であります。そこで私もう一遍ね尋ねいたしまするが、先ほどMSAの性格について申されたことは、これけ全く事実に相違ないか。私は重ねて岡崎外相の御答弁をお願いしたいと思うのであります。次に、日本で受託するといたしまするならば、このMSAの制度はもつぱらこれは軍事援助である。これはワシントンでも盛んに放送されておりまするし、又外務大臣もそのことを申しておられます。殊にこの安全保障法の例の第五百十一条の(a)項、これを土台といたしまするならば、これも事実上、軍事援助であります。こういうようなことになりまするならば、勿論、安全保障法のMSAの援助を受けることを受諾いたしますることになりますれば、アメリカと相互防衛保障条約を結ばなくてはならない。この安全保障法の第五百十一条を内容といたしましたMSAを受諾いたしますことになれば、これは必然的に、これは新聞に伝えるところでよくわかりませんが、一億五千万ドル或いは二億ドルもらうといたしましても、あとは例えば、今年で言えば二十八年度のあの防衛費と言いますか、千八百億円の金で何ら殖やす必要はない、かように私は外務大臣のお言葉から察して感ずるのでありまするけれども、そんな虫のいいことは少くともアングロサクソンの血を継ぐアメリカとして、そんな甘いことをするものではありません。必ずやアメリカが、二億ドル、七百二十億の援助をいたしますれば、これは当然日本の防衛力を強化します。ダレスが今日まで三回参つておりまするけれども、常に日本の実際できない限度の保安隊の拡充を要求しておるではありませんか。かような点からみまして、どうしてもこれはMSAの援助を受けることによりまして、一応日本の予算上の防衛費はますます殖えて行く。若しこのMSAの援助をこのニカ月の間に受諾するということになりますならば、必ずや補正予算におきまして数百億の防衛費の増加を来たすのじやないか。これは私は単なる想像ではなくいたしましてこのMSAによる軍事援助だけを受けるということになりますれば、日本の持ちまする義務からいたしましても、当然これはそういうことになるのじやないかと思うのでありますが、これに対する外務大臣の見解をお開きしたい。
なお、これは相互安全保障法の中にありまするが、防衛費援助法でございます。これによりますると、若し援助を受けて、そうして防衛力、軍備を非常に拡張いたしました場合、財政上の赤字が出て困るという場合には、防衛費の援助法によりまして財政上の赤字を補展する、こういう一つの法律があります。先ほど岡崎外務大臣のお話の中に私は伺つたのでありまするが、まあこの一年、二年、今年はこれだけにしておいても、二年三年たつて来て、そうして若し赤字になつた場合には、又そのときにはこのMSAによつて、その財政上の赤字をカバーして呉れるのじやないかというような感じを私は持つたのでありまするが、そのことは、日本の財政上に、このMSA援助を受けまして、日本の防衛費が非常に殖えて、財政上の赤字を生ずるという場合には、アメリカから防衛費の援助法によりまして、赤字補填の財政上の援助があると期待しておられるのか。又さように期待し得るのかどうか。このことについて私は外務大臣の御答弁をお聞きしたいと存じます。もう一つ、私は、政府がアメリカとMSAの交渉協議をいたしているときの過程におきまして、日本の政府はアメリカに対しまして、これは恐らくアリソン大使を通じてでありましようが、とにかく軍事援助の額を幾らもらえるのかと、軍事援助の額を盛んに聞いている。これはニユーヨークタイムスに数度出ておりましたが、日本は非常に軍事援助の金を幾らくれるのだということを盛んに聞いている。これらに対しまして、果してはつきりした答えがあつたのかどうか。このことは先ほど羽生議員も触れられましたが、この安全保障法の第五百十一条の第三項でありまするが、この中に、援助はこの法律の目的達成のためになされた進歩の度合に相当する程度のものが与えられるものとする、こういうことになつている。日本に対する場合におきましても、これを除外するということは私は考えられない。そこで先ほど羽生議員も質問されましたが、日本がMSAの援助を幾ら受けるかということのためには、日本は一体どういう計画を立てているのか。これがなけらねば、これは金を出そうにも出すめどがない。この点から、私は、少くともこの協議の過程におきまして、日本の防衛五ヶ年計画或いは若しそれができない場合には、初年度の計画でもはつきり出しまして、そうしてそれを真剣に熱意を以てやるということをアメリカに示さない限りにおきましては、そう岡崎外務大臣がおつしやるように、この米国民の尊い血税の結晶でありますところのMSA援助をいたすものではないと思うのであります。
これに関連しまして、先ほど羽生議員から質問されましたことに更に私が重ねて質問申上げるようでありますが、木村長官におかれましては、去る三月だつたと思いますが、九州福岡において、例の日本の防衛計画、保安隊の増強計画の試案をお示しになつたということ、その後のことにつきましては、もう周知のことでありますから繰返しませんが、私は、木村長官のような極めて慎重な性格のかたが、ああして軽率に保安隊の将来の防衛計画というものを発表される理由はないと思う。そこに私は何か理由があつたのじやないか。或いは、この国会が始まりますからして、一つのアドバルーンとして揚げて見られたのか。或いは例の吉田内閣の秘密外交のやり口からいたしまして、これを立派な案を作つておられるにかかわらず、国会におきましては絶対に示さない。この吉田秘密外交の故にこれを発表しない。或いはもう一つ、これは少し意地曲りの解釈でありますけれども、この案を、まああの時じやありますまいけれども、このMSAの問題がそろそろ起きたときに、アメリカに木村長官が発表された案を示したときに、ダレス長官のように、日本の地上軍は三十万にしろ、こういうようなことを、常に吉田さんにも、まあ前に来たときも申しておるのでありますからして、あの木村試案というものがアメリカさんから見れば非常に不満足だ、ああいうものはもう引つ状めてしまえ、こういうようなことでもあつたのじやないかと私は想像するのでありますが、とにかく今日このMSAの援助額が決定するためには、安全保障法から申しましても、計画がなくして日本に金を貸せということはこれは絶対にない。私は甚だくどいようでありまするけれども、余りに非常識なお答えを外務大臣並びに木村長官から伺いましたので、重ねて私は岡崎外相並びに木村長官からこの点に関するお答えを期待するものであります。
それから、日本が若し受諾いたすといたしますならば、この安全保障法の五百十一条の(a)項を土台といたしまする軍事援助でございまするが、併し先ほど岡崎外相も申されましたごとく、それは経済援助或いは技術援助、これは五百十一条の(b)項で、(a)項並びに(b)項でございまするが、この軍事援助が、これは今回の上院の歳出委員会において遂に査定いたしましたが、MSA援助の額というものが決定いたしましたが一その七〇%は、これはもう完全な軍事援助であります。あとの二〇%が軍事援助の実質を持つた経済援助である、あとの一〇%がいわゆるポイント・フオア的なものであります。そういうことになりますれば、勿論アメリカも繰返して申しておりますように、日本に対してはミリタリー・エイド、軍事援助である、こう申しましたが、併し私は、例えば二億ドルもらうにしても、二億ドル全部が軍事援助じやない、その中には、やはりこの経済援助と称すべきものがあると思うのでありますが、その比率は、軍事援助に対する比率というものはどのくらいなものになる見込みであるか、その点を一つ外務大臣から御明示願いたいと存じます。
それから次には、例の域外買付、これはオフ・シヨア・パーチエスということを申しておりますが、海外調達、アメリカが自国じやなくて外国においていろいろなもの買付け、調達する、この可能性の問題でありますが、今回のこのMSAに対しまして専ら大きな期待を持つておりまするのは、これは殊に防衛産業に関係する資本家の連中であります。殊に朝鮮戦争が終結いたしまして、特需がなくなつて来た。又、昨年度以来の輸出入の貿易バランスが悪化した、こういう面からいたしまして、この域外買付、海外調達、アメリカ軍のいわゆる域外買付、これによつて日本の経済を潤おそうという気分が非常に強いのでありますが、併しこれは、若し防衛産業的な兵器等を日本の工場に発注いたしまして、これを日本に更に無償で貸付けるという場合は、これはなんでありまするけれども、これを大量に外国のために、例えば朝鮮であるとか或いはフイリツピンであるとか、台湾、こういうような方面に、若しうまく行きまして、このオフ・シヨア・パーチエス、この軍事的なものがどんぞれ注文が来るということになりますれば、このことによりまして、日本の産業経済の構造というものが非常に変つて来るのじやないか。言葉を換えて申しますならば、これは一種の軍需動員の産業の一つの偏向、かたよつた傾向を示すものじやないかと思う。このことは却つて将来の経済の安定を阻害する危険が大なりと思うのでありますが、このオフ・シヨア・パーチェスの可能性はどのくらいのものであるかということを、今日の日米交渉の過程において外務大臣として御判断なさるか。この点をお伺いいたしたいと思います。
次はバトル法でありますが、御承知のように日本がMSAの援助を受けるということになりますれば、バトル法を、これを厳重に遵守しなくちやならん義務が発生するのであります。今日におきましても、日本はMSAの援助を正式に受けておりませんけれども、占領軍政下以来、独立になりましても、このバトル法を厳重に守つておる。厳重に守つておるということは、例えば中共に対する貿易の現状でありまするけれども、日本が占領軍政下におきまして非常に厳重なバトル法を適用されまして、中共に対しては、戦略物資、軍需資材というものにつきましては、釘一本でも輸出することができないというような制限を受けておる。然るに、イギリスであるとか、フランスであるとか、或いはイタリアであるとかいう国におきましては、このバトル法というものの適用が非常に寛大である。こういう差別待遇を今日受けることは事実でありまするが、このMSAの軍事援助を受けるということになれば、バトル法を厳重に遵守しなくちやならんという義務が発生するのは当然でありますが、この義務の緩和をするということにつきまして、今日の交渉過程において、果して日本の政府の発言通り向うは聞くのであるか。このことは、なぜ聞くかと申しますならば、過日、衆議院におきまして、対中共貿易に関する決議案が全会一致を以て可決された。かような博期におきまして、私は、バトル法の義務ということにつきまして外務大臣は如何なる努力をしておるかということをお聞きしたいのであります。
それから次には、アリソン大使が、このMSAを日本が受諾いたしまして日本と締結すべき防衛保障条約の案をワシントンから持つて来た、こういう情報がアメリカに数度ならず出ております。そうしてこれを日本の政府に提出したということを申しておる。若しそれが事実であるといたしますれば、又MSA援助の岡崎外相の報告によりますと、MSA援助を受諾する協議、協定が何も成立しておらない。協議が成立しておらんのに、アリソン大使が最初からこういう一つの防衛保障条約の案をここに持つて来て日本政府へ出すということが事実であるとするならば、援助はアメリカの全く天下り的と申しますか、強制的な性質を持つMSA援助じやないかということが疑われるのでありますが、これが事実であるかどうかということについて外相のお答えを伺いたいと存じます。
それから、これは総理がいらつしやいませんから、緒方副総理或いは外務大臣でもよろしうございますが、新聞の報ずるところによりますと、ダレス国務長官が明日韓国から日本へ来ることになつている。今朝のニッポン・タイムスを見ますというと、吉田総理かこのダレス国務長官と会見する内容は次のようなものであることを報じております。先ず第一に、この日本の防衛力を増強するということは、戦争を放棄した憲法の建前上非常にむずかしい問題になつている。であるから、これを一つ極めて注意深く取扱つてもらうようにダレスさんにお願いする。若しそうでない場合には、経済或いは政治上におきましての安定に対して非常に重大な支障を生ずるということを強調するのだということを申しております。その次には、この軍事援助によりまして防衛力を増強して行くその形をどういうふうにするかということについて、ダレスさんと話をするのだということを申しております。こういうようなことが出ていることから見ましても、先ほど岡崎外相が中間報告なさいました今の交渉の過程を見ましても、やや私はこの事実が、今岡崎外相のおつしやつたように甘くないのではないか。この記事を若し信じて申しますならば、私は、岡崎外相はこの議場において真実をお述べになつていないような気がするのでありますが、この点を私は再確認いたしたいと存じます。更に明日のダレス国務長官と総理との会見におきまして対中共貿易問題についても一つ話をするということになつておりますが、果してこれが事実であろかどうか。若し事実でありますならば、このことについては、先ほど申上げましたハトル法適用の緩和を要求する建前で対中共貿易問題をダレスさんに提案して、これを協議されるのかどうか。この点をお聞きしたいと思います。
それから最後でありますが、御承知のようにMSA本部、スタツセンが大部長官でありますMSA本部が、今度対外活動本部ということに名前が変つて来たわけです。このことは、アメリカの将来のMSAということに対しすして、性格を或いは本質を変更し得るものであるかどうか。この点は一つ外務大臣から明らかにして頂きたいと存じます。(拍手)
〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/95
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096・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) MSAの援助を受けると非常に経済的な負担が多くなりはしないかというお話でありますが、これは先ほど申しました通り、政治上、経済上の安定を害さない範囲で、又、防衛力の増強の速度と態様は日本政府が決定するということになりますから、そこで、それほど経済の安定を害するようなことは政府としてもいたさない考えでおります。
それから、防衛支持援助ということについてのお考えでありますが、私の了解するところでは、防衛支持援助というのは、被援助国の防衛生産等に特に弱点がある場合に、生産に必要不可欠な工作機械とか技術、或いは財政上の援助を与えることを目途としておるのでありまして、いわばマーシャル・プランのようなものであると考えておりますので、お話のような筋とは少し違うのではないかと思つております。
なお防衛計画についてでありますが、このMSAの交渉においては必ずしもこれは要件ということではないように考えております。
それから軍事援助という中にどのくらい経済的な援助があるのかというお話でありますが、これは先ほども申しました通り今後の交渉によるのでありまして、只今申上げるところに行つておりません。
域外買付等につきましては、日本の経済機構を変更する、つまり軍需生産中心になりはしないかというお話でありますが、この点は政府としても十分考慮をいたしまして、バランスの取れないような経済機構にはいたしたくないと考えております。
それから中共貿易につきましては、先般の本院の御決議もありますので、今後、朝鮮休戦の成行きとか或いは国連決議の取扱とか、こういう点をよく見極めながら、関係国と協議の上、適当な措置をとるつもりでおります。
なお、ダレス国務長官につきましては、アメリカ側としては、セキユリテイの理由によりましようが、まだ何ら発表をいたしておりません。そこで、どういうことを話すかというようなことにつきましては、まだここで申上げるような段階に至つておりません。
私の先ほどの報告は非常に甘いということをしばしばおつしやいましたが、私は特にそういう意味で申したのではないのでありまして、全くこれは事実を事実として報告いたしておるのであります。
更に、アリソン大使が日本との防衛条約案を提示したというようなことをおつしやつたのでありますが、このような事実は全然ありません。何かお間違いであろうと思います。
MSA本部が今度対外活動本部となつたということについて、性格が変るかというお話でありまするが、私としては、まだこれは極く最近のことでありますので、十分に研究をする材料もまだ来ておりませんが、少くとも差当りMSA援助の性格が変更されるものとは考えられないのであります。(拍手)
〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/96
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097・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
先刻羽生さんにお答え申上げました通り、私といたしましては、MSA援助に関係なく、一応の警備計画を立てる必要ありと考えまして、木村試案なるものを作つたことは事実であります。併しこれに何ら庁議を経たものではないのであります。一個の試案に過ぎないのであります。ただ、今折角保安庁においてあらゆる資料を求めまして研究中であります。その上におきまして更に関係各省と十分協議をした上で成案を得たいと、こう考えておる次第であります。(拍手、「いつ頃得られるのです」と呼ぶ者あり)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/97
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098・河井彌八
○議長(河井彌八君) 笹森順造君。
〔笹森順造君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/98
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099・笹森順造
○笹森順造君 先刻来、岡崎外務大臣からMSA援助の中間報告があり、又同僚両議員からのお尋ねにお答えがございましたが、若干なお不明の点がありますので、お尋ねを申上げたいと思います。
最初にお尋ねを申上げたいと思いましたのは、先ほど緒方創総理が相当量大なる御発言をなされたことを伺つたのであります。つまりMSA援助を受ける段階において、日米安全保障条約がいずれ廃棄せられる、そういう段階に進むであろう、そういうような過程において、どういう工合にして日本の国の安全保障が守られるかということに対して、それは集団安全保障というものが日米を中心として行われる段階があるがごとき御発言をなされたのであります。このことが今度のMSAを受諾する上において重大なる関係を持つことと言わなければならない。御承知の通りに、集団安全保障条約の内容は、軍事的にこれを受けた国が責任を負わなければならないのが通念であります。そういたしまするならば、先ほど来、外務大臣がお述べになりましたようなことに非常な矛盾を来たすということになりはしないかという、この点であります。この点に対して明確なる御答弁を願いたい。私たちは、最初に外務大臣がお述べになりましたように、MSAの援助を受諾するということは、これは日本の平和安全と世界の平和安全とに関係さるべきものであるから、そういう方針の下に両方でお話をしたということを述べておられるのでありまするが、このことが逆な結果を来たす虞れを感ぜずにおられないのであります。そこで、このMSA援助を受けることが、先ほど外務大臣がお述べになりましたように、私どもが日米安全保障条約において漸増的に自衛力を強めて行かなければならない、こういう期待をせられておるわけであります。従いましてこの期待が具体的自衛軍となりまして、こういうように設定せられるという結果になりますならば、先ほどのお話のような、この駐留軍というものが漸減せられるという結果を持ち来たすことでございましよう。私どもは、このことを、最初から、日米安全保障条約が国会において審議された当時から、このことはいろいろと予想しておつたことであります。にもかかわらず、政府は依然として、軍備はやらない、軍は設けないということを言つておつたのでありまするが、図らずも今、緒方副総理がこの集団安全保障条約に加わるという意味のことを話されたことにおいて、このことが明白になつたのか、一歩前進されたのか、この辺について私は、はつきり伺つておかなければならない。而も、そういう段階になりましたことを予期してのこれはMSAでありまするならば、依然として憲法違反というような問題もこれに伏在することも同時に考えられまするので、先ずこの点について緒方副総理の明快なる御答弁を伺いたいと思う次第であります。
更に又、先ほど来お話のありましことについて、海外に派兵するかという問題に関しましては、まだ明確なる答弁が出ておりません。私たちは、自衛のことであるならば、MSAの援助を受諾することによつてこれが自衛力を強め、或いは仮に自衛軍を創設或いは設定するということが許されるとしても、これが全く自衛であつて、国家の防衛の範疇を出ずるものではないはずでございます。そうするならば、それが海外に派兵するということになると、更に一歩を進めたこれは他の問題まで進んで参りまするので、私どもの立場といたしましては、海外派兵は、はつきりと憲法違反なりという考えを持つておる次第であります。従いまして、これを単に、その進んだ段階において、岡崎外務大臣が議定書その他の記録において残すというようなことでは、私どもは満足はできない。明確に海外派兵をしないということで、このMSAの条件として受けるか否か。この点をもう一度明確に御答弁を願いたいのであります。
次の問題は、MSA援助と安全保障条約の内容に関する二、三の点であります。つまり日米安全保障条約では、保安隊は国内の秩序の保持と間接の侵略に備えるものでありますが、日本がMSAの援助を受けると、直接侵略に対しても漸増的に軍事的な防衛の責任を負うということになる。つまり自衛力の漸増の期待ではなくて、今度は軍事的な義務を負わせられるということにならなければならない。その際でも依然として保安隊というものが直接侵略に対する防衛軍とならざるを得ないという解釈を持たないのかどうか。これを明確にしておかなければ依然としてごまかしのような感じがいたしまするから、これを明確にして頂きたい。若しもMSA軍事援助を軍隊ならざる警察保安隊が受けるとしたならば、そこに矛盾を感じないのか。これを受けることによつて警察隊は軍隊に変貌してしまうのではないか。先ほど来、この警備計画というものをMSAの条件として出すか出さないかというお尋ねに対して、はつきりとした納得の行くような御答弁はまだないのであります。そうしてこれは警備計画があると木村大臣は言われる。又岡崎外務大臣は、この計画のようなものは出さなくてもよいのだということを言つておられる。そうすると、全く無計画でMSAを受けるということであるならば、何か知らんけれども、そのあとに、裏に、私どもが納得しないものが残つて行く。そういうことがないように、ごまかしのないように、はつきりとその点をここで明確にして頂かなければ、私どもは満足することができないのであります。これが私どもの賛否を決する鍵でありまするから、どうぞ納得の行くような御答弁を願いたいと思います。
そこで、先ほど来、又もう一つお話のありましたことは、マッカーサー元帥が米国の国会でいろいろと尋ねられて証言しておることは、皆様方御承知の通り。つまり、マッカーサー元帥が占領中に日本に警察予備隊なるものを作つた。これは、彼の言葉に従うと、米国の陸軍の師団に似せた組織においてこれは作つたものであると言つておる。而もこれを拡大することによつて優秀なる地上部隊を作り得ることが容易であると、こういう答弁をしておるのであります。そうして、空軍、海軍等においては、米国が日本を防衛することのための力になろう、併しこの地上部隊においては、こうしたことによつて独立国たる日本が当然自分の国を守るべきだと思うと、こういうことを証言しておる。このことがMSAのこのたびの援助と一連の思想的な繋がりがなければならんと思う。そういうことに対して、今までの各大臣の御答弁は、何だか知らないけれども、何か隠しておるような感じがして、私どもは納得できない。この点につきまして、今、米国が、例えばこのMSAの援助においても、やはりはつきりと、日本に或る軍事的なる責任を負わしめるということについて、正直にこれを進めて行くのか、どこまで隠して行つて、いつ、それが発表されるのか。私どもは非常な不安を感じます。こういうような意味で、もつと率直にこれを述べて頂きたい。
そうして最後に、経済上のことでお話がありましたが、これは又私ども非常に気になる。この前、日米安全保障条約が国会で審議されましたときに、第三条の行政協定の内容が全く発表せられていない。まだそれが両方で相談の過程にあるが、そういうものを含んだ日米安全保障条約を国会において承認を求むるということを政府が言われましたときに、国会におきましては、御記憶の通りに、そういう内容のわからないものを審議することは非常に困る。併し条件がある。少くとも国民の権利義務と予算に関係した問題は、あらかじめこれは国会に諮るべきだ。国民の前にこれは明確にすべきだ。その後にその各協議を進むべきだとということに対して、吉田総理も、又関係大臣も、そういたしますということを明確に答えているにもかかわらず、後に至りまして、この日米安全保障条約が通つたから、国会はその第三条の行政協定が如何にきめられても、あらかじめそれを承諾したじやないかという議論で、これが国会の大きな問題になつたことも、これも御承知の通り。そこで、先ほど来のこのMSAの援助を受けることによつて、日本が条件として是非負わなければならないところの予算その他の責任義務があるとするならば、これ又あらかじめ国会の審議に付すべき性質のものと私は考える。近頃、行政の府が国会を軽視することを言われておるのでありますが、こういうことによつて、我々国民を代表する者が納得のできないようなことが行われることであつては、私どもこれは困るのであります。そういう点について、政府のはつきりした良心的なる態度を明確にしておいて頂きたい。国会もやがてこの会期を今日で終るでありましよう。併し、その間に、或いは臨時国会に至る前にに、いろいろと政府当局がこのMSA援助の受入態勢についての話を進めるでありましよう。進める段階になつて後に、きめてから、こういうようなことがきまつたからということを再び国会にそういうことの承認を求められたときに、若しもそれが我々の自主的な日本の立場を阻害し、或いは又正当なる日本の主張に反することであり、或いは、真に私どもが希望しますところの、最初にお話のあつた日本の安全保障、世界の平和とに矛盾するような内容が盛られたと我々が判断するならば、遺憾ながら反対せざるを得なくなりましよう。そういうことのないように、今日明確に私ども納得の行くように、今まで折角の両議員のお尋ねに対しても、私ども納得が行かない点がありますので、何だか知らんけれども、私どもをして、真に政府、の答弁が良心的であり、これならばよろしいと言うことのできるような明快な御答弁を望む次第であります。(拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/99
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100・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。
先ほど羽生君の、戦力であるアメリカの駐留軍が急に撤退した場合、日本の保安隊の性格がどうなるかというような意味の仮定の御質問がありましたのにお答えいたしたのでありまするが、私は、その場合には変つた事態になるのであるから変つた考え方をしなければなるまいということを申上げたのでありまして今日第二次世界大戦を経まして、主として兵器の飛躍的な進歩の結果、国の防衛についての考え方も一変して参りまして、一国で一国の防衛はできない時代になつておると考えるのであります。その意味におきまして、必ずしも軍事同盟と申しませんが、この防衛につきましては、やはり集団の安全保障が必要である。(「どことどこと結ぶのか」と呼ぶ者あり)そういうことから、今日の日米安全保障も起つておると考えるのでありまするが、それと同じような意味におきましても、将来においてもやはり集団的な攻撃には集団的の安全保障が必要である、さように想像いたします。ただ、その相互安全保障がどういう形で成るかということは、これはやはり独立した国と独立した国との間に自主的におのおの考えるべきものでありまして、それが今日からどういうものになるであろうということは、仮定の御質問に対しまして仮定のお答えをしたのでありまして、私は軍事同盟というようなことを断言したわけではございません。
〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/100
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101・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) お答えをいたします。
保安隊等を海外に派遣しないということは、この国会におきましても政府はしばく申し申しておるのでありまして、この点は笹森さんと全く同じ考えであります。(「それが第一番の眼目だ」と呼ぶ者あり)ただこれは政府自体が決定する問題であろうと思つておりまして、アメリカにそういうことがないということを保障してもらうというのはおかしな話じやないかというのが私の考えておるところであります。(「こつちから要求するのだよ」と呼ぶ者あり)但し、先ほども申しました通り、(「はつきりさせておくのだ」と呼ぶ者あり)まだ研究中でありまして、若し必要とあれば、こういう点は、日本の態度をはつきりする意味で、何らかの形で記録に残すということもあり得るであろう、こういう意味で申上げておるのであります。(「海外へ出すか出さないかを研究中なのか」と呼ぶ者あり)
なお笹森さんは軍事援助という名前に非常にこだわつておられるように思うのでありますが、アメリカのMSAの法律は、世界の五十数ヵ国に、とにかくいろいろな名義ではありますが、適用いたしております。世界中どの国も実は軍隊を持つておるのでありまするから、一般的にアメリカが法律を作りまするときは、どうしてもこれは軍事援助という名前で法律を作るのは、これは当然であります。(「日本にも当てはめて作るのか」と呼ぶ者あり)日本の場合に、日本は特に、この憲法が特に軍備を持たないということになつておりまするから、この一般的な規定を日本に適用する場合、特殊のこの日本の関係からしまして、言葉の問題については、これは適当に直すわけでありまするが、(「直したつてしようがないじやないか」と呼ぶ者あり)更に言葉だけで十分でない場合もありまするからしてその点、日本の憲法に、形式的には勿論でありまするが、実質的にも違反しないような措置を講ずるという剛旨で我々は交渉いたしております。なお防衛計画につきましては、先ほど私が申しましたことは、これは必ずしもMSAの交渉の要件にはならないであろうというだけでありまして、まあ、これをわかりやすく申しますれば、例えば、現在でも、保安隊なり、警備隊なりの現状においても、すでにまだ必要とするものはたくさんあるであろうと思いまするからして、計画というようなものがなくて、やはり必要なものは、かなりあるはずである。こう私は思つておるのでありまするが、これを先ほどのように、木村保安庁長官のお考えのように、これも交渉と別個に考えられるということは、これは又、日本政府として当然やるべきことはやるはずであろと思ういます。
なお保安隊が直接侵略に対処するかどうか。これは御承知のように、安全保障条約の前文におきましても、直接及び間接の侵略とに対処し得るように自衛力を漸増するということがありまするから、いずれはそういうことにならなければならんはずだと考えておる。(「いつなんです」と呼ぶ者あり)但しこれをいつやるかということは、これはMSAの交渉と直接に(「不可分だよ」と呼ぶ者あり)連関はない。と申しますのは、先ほども報告しました通り、日本の防衛力の増強の速度と態様を、先方もはつきり言つておりますら、これは政府の決定する問題になります。いずれ保安庁等で研究されることと考えております。
なお最後に、予算等の必要とするものは国会の承認を得るかというお話でありますが、これは勿論そのようにいたします。(拍手)
〔「明快々々」「よくわからない」「答弁ができないところに真相があるのだ」と呼ぶ者あり]
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/101
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102・河井彌八
○議長(河井彌八君) 杉原荒太君。
〔杉原荒太君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/102
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103・杉原荒太
○杉原荒太君 只今外務大臣から中間報告がございましたが、その中で我々が一番深い関心を持つておりまする、この日本の引受けなくちやならん六つの義務については、御報告がなかつた。いろいろと重要な点について明らかにして頂きたい点が多々あるのでありまするけれども、私は今日は質問の範囲を極く限定いたしまして、ただ一つの問題についてお尋ねしたいと思います。
MSAの協定によつて、日本側が防衛力の増強の義務を負うことは明らかである。先ほど外務大臣は防衛力の発展という言葉を使われましたが、同じ意味に私は、つまりデヴエロプする、つまり防衛を増強しなければならん、こういう義務を負うことは明らかである。そこで、その防衛力増強の義務の中には、軍、軍隊、軍備の軍、この軍並びに戦力はこれを含めるか又はこれを除外するかという問題、この軍並びに戦力を含めるようにするか除外するようにするかということは、これは条約作成の問題である。つまり日米間の合意の内容としてそれをどちらにきめるかという問題、これは憲法解釈の問題とは別個の問題である。そこで私がお尋ねいたしたいと思いますことは、
第一に、政府は、軍並びに戦力はその防衛力増強の義務の中からはこれを除外するというはつきりした日米間の合意を作るという、そういう条約作成の方針をとつておられるかどうかということ。これに対する答えは、とつておられるなら、とつておる、とつていないなら、とつていないという、簡単でよろしうございます。却つて又私の質問に対して、私の質問の言葉を受けないことを申されるというと、私の質問に対する答えにならないので、今申しましたように、そういう方針をとつておるならとつておる、とつていないならとつていない、それだけを一つ簡単にお答え願いたい。
それからもう一つは、今までの日米間の話合いによつて今申しました軍並びに戦力はこれを除外するという、そういう日米間の了解がすでにでき上つておるかどうか。これもできておるならできておる、できていないならできていないということだけ御答弁願いたい。勿論まだ、これを条約化する、条文化するというところまで行つていないということは、これは当り前であるけれども、すでにそういう日米間の了解ができ上つておるのかどうかということをお尋ねしたい。私の今お尋ねしておりますることは、実はMSA協定の全体の構造の土台であり、基礎をなすものである。この土台、基礎をはつきりと確立するかどうかということは、これはMSA協定の全体を決定する鍵になつておる。それだから一つ、日本国民に対しては勿論、アメリカ側に聞えても責任を持ち得る明確な御答弁をお願いいたします。(拍手)
〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/103
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104・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 御注文でありまするから、簡単にお答えいたします。
第一は、防衛力を増強する中に軍及び戦力を含めるか含めないかという御質問でありますが、政府としては軍及び戦力は防衛力増強の中に含めない方針をとつております。なお、この軍及び戦力を含めないという、つまり除外するということについて、今度の交渉でどこまで話しているのか、こういうのが第二の御質問の趣旨だつたと思います。これは只今のところは一般的な話合いとしての程度でありまして、今後話合いを進めるにつきまして、漸次はつきりと具体的にいたす考えであります。(拍手)
〔杉原荒太君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/104
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105・河井彌八
○議長(河井彌八君) 杉原荒太君。
〔杉原荒太君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/105
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106・杉原荒太
○杉原荒太君 今外務大臣から御答弁頂きましたが、非常に大事なことは、そういうことを、今申しましたこの軍並びに戦力をその義務の中に含めるかどうかということは、これは日本側一方だけでやつてもだめですね。どうしてもこれは、それが今度は防衛力の義務を規定するこれは条約なんだから、それだから日本側の意思表示と向うの意思が合致して初めて成るのだから、(「そこだよ」と呼ぶ者あり)それだから、これを除外するかせぬかということも、そこに合意が成立しなくちやいかんですね。私は、それが合意を作るという、そういう方針でやつているかどうか聞いているのですよ。そこのところを一つはつきりして下さい。(拍手、「やるだけの肚があるかどうかだ」「言葉でごまかしたつてだめだ」と呼ぶ者あり)
〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/106
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107・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) お答えいたします。
私の説明が十分でなかつたかも知れませんが、申上げようとしたことは、今杉原君のおつしやつた通りの趣旨であります。(笑声「質問者が答弁している」と呼ぶ者あり)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/107
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108・河井彌八
○議長(河井彌八君) 須藤五郎君。
〔須藤五郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/108
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109・須藤五郎
○須藤五郎君 私には五分しか時間が与えられないので、質問らしい質問ができません。一、二点、質問をしたいと思うのでありますが、この前、MSAに関しまして質問をいたしましたときに、アチソンとあなたとの手紙の交換によつて、如何にもこのMSA援助が日本においては軍事援助でないような匂いをさせるように努力して、故意に努力して、そうして日本の国民を、ごまかそうとしている。(「そうだ」と呼ぶ者あり)その点を私が追及しましたときに、あなたは、このアチソンの言うことが正しいのだ、こういうふうに言つた。それで私は、そうじやないだろう、このMSAの性格というものは、アメリカ国会が決定するもので、一出先機関の大使などの決定するものじやないのだ、そう言つて私が再質問しますと、あなたは又立つて、御存じのように三権分立だと、だから国会が如何に決定していようとも、行政官として又自由な解釈ができるのだというような答弁をして、須藤君の意見よりもアチソンの意見のほうが信頼できるではないかとあなたは言つた。そのとき私はもう一遍立つて、あなたを一つどなりつけたいと思つたのです。というのは、恐らくアメリカの議会の決定を、それを踏みにじるような行政官は、アメリカにはないと思うのです。そういう行政官は官僚主義の日本にしかないと思う。(「そうだ」と呼ぶ者あり)そういう答弁をすることは、最も官僚主義の見本であるあなたでなければ、ああいう馬鹿げた答弁はできないと思う。ところが驚くことには、それから数日経つて、アメリカ国会は又明らかに宣言しておる。MSAは軍事援助以外の何ものでもないということをアメリカ国会がはつきり言つておる。今日になつても、あなたは、なおアメリカ議会の決定と行政官の勝手にやることとは別個だというような見解を持つているのか。そうして、そういうばかげたことで国民を、ごまかそうとしているのか。その点をはつきりしてもらいたい。あなたの私に対する答弁が間違つていたならば、ここではつきり間違つていましたと頭を下げるべきである。
それから、まだ時間がちよつとあります。もう一つ、他国を刺激しないように努力するという言葉がありましたが、どういうふうにこの他国を刺激ないようにあなたは努力しているか。この前に私はこの問題で、中国やソヴイエトを刺激するようなことになりはしないか、あなたは一体、中国やソヴイエトに対して親善関係を結ぶというようなことを品に言つているが、どういうことを具体的に指しているのかと言つて質問した。そうすると、サンフランシスコ条約を受諾して下さいということを言つておる。こういう答弁である。ところがサンフランシスコの条約、即ちあの平和条約というものの本質は何でありますか。その結果、アメリカの駐留軍は日本に平和条約後も駐屯している。何のために駐屯しているのか。決して日本の国内の防衛のためじやない。国内治安のためじやないでしよう。アメリカが日本に駐屯しているのは何か目的がある。いわゆる何かの仮想敵国というものを持つて、そうして駐屯しているということは明らかであります。そういうことを規定している。即ち、アメリカの仮想敵国と言えば中国やソヴィエトであるということは、これは世界周知のことである。即ち、アメリカがそういう中国やソヴイエトを仮想敵国として日本に駐屯するというような内容を持つた、そういう講和条約、安保条約を、ソヴイエトや中国に押しつけて、これを呑みなさい、これをあなたたちが承認するなら私はあなたたちと講和条約を結ぼう。これは、あいくちを突きつけておいて、どうだ、これで言うことを聞くなら手を握る。全くばかげた話じやないですか。そういうことをあなたは言つて国民をだまかそうとしている。そういうことで本当に中国やソヴイエトと親善関係を結ぶように努力しているというような口幅つたいことが言えるかどうか。この点もう一度詳しく答弁してもらいたいと思う。
それから先ほど日本に防衛力が増加したならばアメリカの駐留軍は減らす、こう言つておる。そういうことです。併しその際の日本にできた防衛力というものは、私はアメリカの駐留軍と同じ内容を持つたものだと思うのです。即ち駐留軍と同じ内容を持つた防衛力というものは、即ち戦力を備えた軍隊ではないかということです。これでもあなたたちは、日本のいわゆるあなたたちが計画しているところの防衛力というものが軍隊でないということが言い切れるのかどうか。この点もはつきり答弁してもらいたい。このことにつきましては先ほど同僚の羽生君が質問したようでありますが、はつきりとした答弁がなかつたように思うので、もう少しわかり易く明快に答弁をしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/109
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110・河井彌八
○議長(河井彌八君) 須藤君、時間が来ました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/110
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111・須藤五郎
○須藤五郎君(続) 一点だけ、三十秒。MSAの五百十六条でしたか、はつきりいたしませんが、その辺に、自由なる労働組合の育成という言葉があると思うのです。この自由なる労働組合の育成ということは具体的に言つたらはどういうことなのか。即ち、国際自由労連へ日本の労働組合を強制的に加盟させようということを意味しているのではないだろうか、どうだろうか。この点もお答えを願いたい。以上。(拍手)
〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/111
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112・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 須藤君にお答えしますが、須藤君は。立場が違うせいか、事ごとに私の言うことを誤解しておられるようでありますが、今のお答えもちぐはぐになるかも知れません。
第一に申上げておきますが、須藤君はアチソン大使と言われましたが、これはアリソン大使のことだろうと思います。(「よう教えておけ」と呼ぶ者あり)私の方で質問したのはアリソン大使の個人的意見を聞いたのではなくして、二十四日の質問書にもあります通り、米国政府の公式の見解を求めたのであります。従つてアリソン大使は米国政府の公式な見解を日本政府に伝えたのでありまして、米国の議会のいろいろの見解は、勿論、米国政府としてはこれを参酌して回答をいたしておるはずであります。
又、日本としては、米国の解釈というものは、米国の行政府から聞くのが正式なものと考えております。
桑港条約とかその他自由なる労働組合の育成というような問題につきましては、大体御宣伝が半ばのようでありますから、先ほど繰返したことに尽きておりますので、お答えを省略いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/112
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113・河井彌八
○議長(河井彌八君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/113
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114・河井彌八
○議長(河井彌八君) 参事に報告いたさせます。
〔参事朗読〕
本日委員長から左の報告書を提出した。
昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における災害救助に関する特別措置法案可決報告書
昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法案可決報告書
昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域に行われる国民健康保険事業に対する資金の貸付及び補助に関する特別措置法案可決報告書
昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域にある事業所に雇用されている労働者に対する失業保険法の適用の特例に関する法律案可決報告書
昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害地域における失業対策事業に関する特別措置法案可決報告書
昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた学校給食用の小麦粉等の損失補償に関する特別措置法案可決報告書
昭和二十八年六月及び七月における大水害に伴う中小企業信用保険法の特例に関する法律案可決報告書
昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害中小企業者に対する国有の機械等の譲渡等に関する特別措置法案可決報告書
昭和二十八年六月及び七月の大水害地域における自転車競技法の特例に関する法律案可決報告書
昭和二十八年六月及び七月における大水害による地方鉄道等の災害の復旧のための特別措置に関する法律案可決報告書
本日委員長から左の報告書を提出した。
地方自治法の一部を改正する法律案可決報告書
地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案可決報告書
地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案可決報告書
本日委員長から左の報告書を提出した。
引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案可決報告書
財団法人日本遺族会に対する国有財産の無償貸付に関する法律案可決報告書
地方税法の一部を改正する法律案修正議決報告書
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/114
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115・河井彌八
○議長(河井彌八君) この際、日程に追加して、
昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における災害救助に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域に行われる国民健康保険事業に対する資金の貸付及び補助に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域にある事業所に雇用されている労働者に対する失業保険法の適用の特例に関する法律案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害地域における失業対策事業に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた学校給食用の小麦粉等の損失補償に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月における大水害に伴う中小企業信用保険法の特例に関する法律案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害中小企業者に対する国有の機械等の譲渡等に関する特別措置法案、
昭和二十八年六月及び七月の大水害地域における自転車競技法の特例に関する法律案、
昭和二十八年六月及び七月における大水害による地方鉄道等の災害の復旧のための特別措置に関する法律案、(いずれも衆議院提出)
以上十案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/115
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116・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。水害地緊急対策特別委員長矢嶋三義君。
〔矢嶋三義君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/116
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117・矢嶋三義
○矢嶋三義君 昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害地域の災害復旧に関する法律案件は、すでに本院において可決されたるものが十五件、それにこれから御報告申上げる十案件を加えまして、合計二十五件でございます。これらの法律案件を当本会議に御報告するに至りましたる一般的な経過を先ず以て簡単に御報告申上げたいと存じます。
実は水害地緊急対策特別委員会といたしましては、委員会の審議の経過を中間報告する予定でございましたが、特別委員会の法律案件の審議の都合上、本会議における中間報告の機会を逸した次第でございます。
このたびの西日本並びに南近畿を襲いました大水害の結果といいまするものが、死者千四百三十三名、国警調査によるところの損害が実に二千七百八十四億円の数字の示すごとく、極めて甚大なものであつたわけでございます。従いまして水害対策委員会といたしましては、先ず緊急対策といたしまして、取りあえず繋ぎ融資の問題を解決すべく全力を注いだ次第でございます。次の段階において余りにも損害か大きいので、この復興を図るために、特別立法をなさなければならないという結論に達しました。その過程において、中央本部長であるところの緒方副総理は、このたびの災害は曾つての関東大震災に次ぐところの大災害であると委員会で述べられ、又、西日本災害対策本部長である大野国務相は、議員諸君は、立法権を発動して、このたびの災害復旧には議員立法をなしてほしいという、強力なる国務相としての発言もあつた次第でございます。
そこで我々特別委員会におきましては、四つの小委員会に分れまして、鋭意研究をいたしました。そうして七月一十日に一草稿をまとめました。これを七月二十二日、その法律案要綱を一切印刷いたしまして、全議員諸君にその印刷物を配付して、皆様方の御意見の反映を待つた次第でございます。然るのちに、各会派から持ち寄りました結論を委員会としてまとめ、この法律案件の成立のために、衆議院と連絡することの必要を感じ、我が特別委員会から衆議院の特別委員会に対しまして、委員長、理事並びに小委員長の合同打合会の開催を要求いたしました。七月二十七日、二十八日、二十九日と、連続三回、両院特別委員会の合同打合会を開催いたしました。そうして先ず以て確認いたしたことは、このたびの災害復旧を図るためには、特別立法並びに現行法律の改正を図ることが是非とも必要であるということ、更に、この法の改正並びに特別立法は、両院の特別委員会においてこれを扱うこと、従つて両院のそれぞれの常任委員会と緊密なる連絡をとつて作業を進めて行くこと、最後に、このたび行うところの法の改正並びに新しい立法というものは、例年に見ないところの大災害に襲われた限定された地域にのみ、これを適用するものであるという大前提の下に、両院の特別委員会は作業を進めた次第でございます。而してこれらの作業に当りましては、それぞれの各省間のバランスをとるということに最も苦心いたしました。然るのちにも、両院の依然として一致しないものがあつたわけでございましてその問題を解決するために、最後の合同打合会といたしまして、八月六日、第四回目の合同打合会を開いて、そうして最終的結論に達した次第でございます。
以下十法律案件について簡単に御報告を申上げますが、この十案件は、当初から衆参両特別委員会で完全に一致したものと、それから我が参議院と衆議院側と当初から意見が一致しなかつたが、最後の段階において我が参議院が譲つて一致したものとがありまするので、その点は報告のときに明確にいたしておきたいと思います。なお、これら二十五法律並びに法律案件は相当の予算を伴いまするが、衆議院対策特別委員長村上勇君が衆議院側の発議にかかる提案理由の説明のときに、当特別委員会の委員諸君の質問に対しまして、次のごとく答弁いたしたことも、この際、御報告申上げておきます。即ち、これら法律案件の予算問題については、自由党政調会並びに総務会を全会一致で通過承認されたものであると答弁いたしておる次第でございます。
なお、これらの法律案の本会議場に報告するに至ります過程において川合課長並びに畑課長補佐を中心とするところの参議院事務局の諸君並びに各常任委員会の専門員諸君が、それぞれの業務を持ちながら、この特別委員会の業務を兼職して、過去一カ月間懸命の努力をし、当特別委員会の審議調査に大変貢献することのあつたことを、特別委員長として皆様方に御報告を申上げておく次第でございます。
以下十法律案件について具体的に御報告を申上げます。
先ず昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における災害救助に関する特別措置法案について御説明申上げます。
今国会におきまして災害救助法の一部を改正する法律案が両院を通過いたしたのでありまするが、特に、今次の大水害を受けた県に対する災害救助に関しては、本年六月一日より前述の一部改正法の施行の日の前日までの間、特別の措置を講じて、被害地域の早急なる民生の安定と復興に寄与せんとするのが本法律案の目的とするところであります。本案の骨子を申上げますと、第一に、現行の災害救助法(昭和二十二年法律第百十八号)の救助の種類を増加充実し、救助内容を整備すると共に、その適正化を期することといたしてあるのであります。即ち、救助の種類中にある収容施設の中に応急仮設住宅を含めると共に、飲料水の供給及び災害にかかつた者の救出を含めることといたしてあります。第二に、この法律の救助事務の円滑を期するために、国庫負担の対象額中に、救助の事務を行うのに必要な費用を含めることにいたしてあります。第三に、救助の種類のうち、現行の災害救助法第二十三条に規定するもの及び第一で追加したものを除いて政令で定めるものについては、救助のために必要な施設又は設備に要する費用を国庫負担の対象とすることといたしてあります。第四に、現行法及び一部改正法の国庫負担の対象額の基礎額と、その国庫負担の割合とを改めたことであります。即ち、現行法では、当該都道府県の普通税収入見込額の百分の一を超える場合に初めてその超えた金額が国庫負担の対象となることとなつており、又一部改正法におきましては、千分の二を超える金額と改めてあるのでありまするが、これを更に本案におきましては千分の一と読み替えて適用することといたしてあります。以上が本案提出の趣旨並びにその骨子でありますが、本案につきましては、その提案に先立ち衆議院側水害対策委員と十分打合せを行い、完全に意見の一致を見ておりますので、本委員会におきましては別に質疑も行われず、討論省略の上、採決いたしました結果、全会一致を以ちまして原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法案について申上げます。今回の大水害は、公衆衛生諸施設等に多大の損害を与えており、水害後の伝染病発生の増大は特に憂慮されるところであります。従いまして、伝染病の予防並びに伝染病院及び隔離病舎等の災宝石旧、簡易水道の災害復旧及び布設並びに汚物の処理等に関し特別の措置を講じ、公衆衛生の保持に資する必要があるのでありまして、これが本法案の目的とするところであります。本案の骨子を申上げますと、第一に、伝染病予防法の特例といたしまして市町村が支弁した予防費に対し、県が支出する率を三分の二から全額に引上げ、そのうち伝染病院、隔離病舎、隔離所及び消毒所に関する災害の復旧に要する費用は六分の五とし、又、県が市町村に対し支弁した予防費等に対し国庫が負担する率を二分の一から三分の二に引上げ、そのうち伝染病院等の復旧費用については五分の四とし、而して県が水害のため直接支弁した費用及び保健所法に基く政令で定める市が文介した費用については四分の三に引上げる規定を設けてあります。第二には、市町村が行なつた簡易水道の復旧及び布設に要した費用に対し、国がその二分の一を予算の範囲内で補助することができる規定を設けてあります。第三は、市町村が行なつた屎尿の処理に要した費用、屎尿貯溜槽等の屎尿処理施設の設置に要する費用、塵芥焼却場又は火葬場の災害復旧に要する費用に対し、国がその三分の二を予算の範囲内で補助することができる規定を設けてあるのであります。本法案も、あらかじめ衆議院側と十分打合せを行い、了解済みの法案でありますので、本委員会におきましては、質疑並びに討論を省略いたしまして、直ちに採決いたしました結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域に行われる国民健康保険事業に対する資金の貸付及び補助に関する特別措置法案について申上げます。
本案は、今次の大水害で被害を受けた地域におきまして国民健康保険を行う保険者に対しまして貸付金の貸付及び補助金の交付を行うことにより、被害地域の国民健康保険事業の運営を円滑且つ健全ならしめることを目的とするものであります。
本案の骨子は、第一に、国民健康保険を行う保険者であつて、六月一日から六カ月間に保険料又は一部負担金を減免したものが、災害救助法の適用を受けた市町村に被保険者を有し、更に、減免した保険料の領が、その年度の保険料の領の百分の十以上で、且つ二十万円以上であるものに対し、国が予算の範囲内で貸付金を貸付けることができるようにいたしてあります。第二に、貸付金の額はその減免額の百分の八十以内とし、残りの百分の二十以内については補助金として交付することができることといたしてあります。第三に、貸付の条件といたしまして貸付金の償還期限は、翌年度の初日から五年間の据置期間を含み十五年以内とし、年利五分五厘の元利均等年賦の方法によつて償還することにいたしてあります。なお貸付を受けた年度の貸付期間及び翌年度初日から五年間を据置期間とし、この期間中は無利子といたしてあります。その他、年賦金の支払猶予、貸付金の一時償還、報告及び検査、知事に対する権限の委任等について規定を設けてあるのであります。
本法案も、衆議院側水害対策委員と十分打合せを行い、検討済みの法案でありまして、本委員会におきましては、一委員から、政府委員に対し、本法案施行の際の問題点について二、三所見を質し、答弁があつたのでありますが、その詳細は速記録により御了承を願います。かくて討論を省略し、採決いたしました結果、これ又全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました次第であります。
次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害中小企業者に対する国有の機械等の譲渡等に関する特別措置法案について審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
本法律案は、今回の西日本水害による被害中小企業者に対し、旧陸軍省、海軍省及び軍需省の所管していた機械又は器具を特別に安い対価で活用させることを目的として、衆議院議員村上勇君により提案されたものであります。御承知の通り、第十三国会で通過した国有財産特別措置法は、中小企業者に対し右に掲げた機械又は器具を業者の保有する古い機械と交換してやり、中小企業の合理化促進の一助にしようとするものでありまして、月下その交換を実施中なのであります。本法律案では、この趣旨を体し、これを拡充して、被害中小企業者に対し、機械を交換するばかりでなく、譲渡或いは貸付を行い得るようにし、その価格も時価より五割以内を減額した価格とし、又納付すべき交換差金又は売払代金について十カ年以内の延納を認め、以て被害者の負担を軽減しようとするものであります。本法案については、すでに立案の過程において、水害地緊急対策特別委員会において慎重に検討を重ねたものでありますから、委員会においては格別の質疑もなく、討論を省略して採決の結果、全会一致を以て可決すべきものと決定した次第であります。右御報告申上げます。
次に、昭和二十八年六月及び七月における大水害に伴う中小企業信用保険法の特例に関する法律案について、審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
先般の西日本の水害に際し、工場、鉱山、商業等で、中小規模のいわゆる中小企業者の受けた被害は思いのほか多く、その総額三百二億円の約九割と推定されております。これに対し政府も各般の措置を講じておりまするが、何分、中小企業者はその信男において欠けるところが多く、金融機関から融資を受けるにも困難を感じております。御承知の通り、中小企業信用保険制度は、中小企業者の信用力を補強し、中小企業をして金融機関より資金の融通を受けやすくするための制度でありますので、今回この制度に特例を設けて、被害中小企業者に対する再建融資を一層容易ならしめようとするために、本法律案が衆議院議員村上勇君により提案されたものであります。
この保険制度では、金融機関は、中小企業者に六カ月以上の長期資金を融通した場合、少額の保険料を政府に納付すれば、若し貸倒れを生じたような場合、その損失領の八割まで填補してもらえる仕組みになつております。今回の特例では、この填補率を百分の八十から百分の九十に引上げました。又、保険料も、普通の場合では保険金額に対し年三分以内とあるのを年二分以内とし、而もその半分は地方公共団体の負担としたのでありますから、半分は業者に転嫁されるとして業者の負担は年一分五厘から年五厘の保険料ということになるわけでありますが、このほかに、いわゆる信用保証協会というものが中小企業者の信用保証をした場合、これを政府に再保険する制度があるのでありますが、この場合の填補率も、普通の場合は保証額の百分の六十であるのを、特例では百分の七十とし、この場合の保険料も先の場合と同様に軽減したのであります。かくして填補率を引上げて他方、保険料を引下げますと、元来独立採算制をとつておる信用保険特別会計には恐らく穴があくことになると思われるのですが、若しこのため特別会計に赤字が出る場合は、毎年一般会計から補填してやることにしております。
以上が本法律案の要点でありますが、本法案については、すでに立案の過程からして本委員会の委員も参加して慎重研究の上、立案したものでありますため、本委員会に付託になりましても別段の質疑もなく、討論を省略して採決の結果、全会一致を以て原条通り可決すべきものと決定した次第であります。
以上御報告申上げます。
次に昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた学校給食用の小麦粉等の損失補償に関する特別措置法案について、審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
本法案も衆議院の当該委員会において立案の上、議員発議にかかるものでございまして、その目的とするところは、今次の大水害により流失埋没等のため使用できなくなつた小学校及び盲学校、聾学校並びに養護学校の小学部における小麦粉及び乾燥脱脂ミルクに対し、府県が損失を補償し、その損失補償に要する経費について国が全額を補助することにあります。
水害地緊急対策委員会におきましては、本法律案の立案過程においてすでに衆議院側と十分な連絡をとつてありました関係上、質疑討論を省略いたしまして、全会一致可決すべきものと決定いたしました。右御報告申上げます。
次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域にある事業所に雇用されている労働者に対する失業保険法の適用の特例に関する法律案につきまして、審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
本案は失業保険法の適用を受ける事業所に雇用されておる労務者が、今回の大水害のごとき労使双方の責に帰し得ざる原因により就労不可能となつた場合、失業保険法に特例を設けて被災労働者の救済を図ろうとするものでしります。
本案の要旨を申上げますと、第一に、被害地域にある事業所が水害を受け、止むを得ずその事業の全部又は一部を停止することにより、就労することのできなくなつた労働者で、一定の基準に合致する者は、これを離職とみなして保険給付を行わんとすること。第二は、休業した者が再びその事業所に就労した場合、法第十一条の規定にかかわらず、その日を雇用された日、みなすことにすること。第三に、失業保険金の支給を受ける場合は、法第十六条の規定にかかわらず、公共職業安定所に出頭して失業の認定を受けることとし、又、待機期間は法第十九条の規定にかかわらず七日間とすること。第四に、支給する失業保険金は法第二十条に規定する百八十日分に含まれることにすること、及び本法の施行については公布の日から二週間を経過した日とし、施行前にも遡つて適用せんといたしておるのであります。委員会におきましては、本案は妥当なる措置であると認めて、質疑、討論は省略して、原案通り全会一致を以て可決すべきものと決定いたしました。
次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害地域における失業対策事業に関する特別措置法案につきまして、審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
本案は、今次大水害の被害地域における多数の失業者を失業対策事業にできるだけの多数吸収し、その生活の安定を図るため、特別の措置を講ぜんとするもので、昭和二十八年七月一日から昭和二十九年三月三十一日までの間に、被害地域において、緊急失業対策法に基き、地方公共団体等が実施する失業対策事業に要する経費について、国は、他の法令の規定にかかわらず、国の負担分を、労務費については五分の四、資材費については二分の一、事務費については五分の四にそれぞれ引上げんとするものであります。なお、本案は公布の日から施行し、被害地域においては昭和二十八年六月及び七月に実施された失業対策事業についても適用せんとするものであります。委員会におきましては、本案も妥当なる措置と認めて、質疑、討論を省略して、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定した次第であります。以上御報告申上げます。
次に、昭和二十八年六月及び七月における大水害による地方鉄道等の災害の復旧のための特別措置に関する法律案につきまして当委員会における審議の経過及び結果について御報告申上げます。
この法律案の要旨は、大水害地域における地方鉄道、軌道及びハス事業、定路線のトラック並びに郵便物を輸送する自動車に対し、災害復旧費の二割を補助するほか、所要の復旧資金について政府はその融資の斡旋に努むることを規定したものであります。当初、参議院特別委員会といたしましては、この法律案については幾多の疑義を持つておつたのでありますが、衆議院側と協議の結果、以下御報告の通りの結果と相成つた次第でございます。
審議に当りましては、専門員及び政府より、被害状況、被害額等につき説明があり、又、各委員より活譲な質疑が行われました。その主要な点を申しますと、この法律を適用すべき交通事業の範囲、これら事業者の復旧能力の有無、又、他の公共施設との振合いにつきまして熱心に質疑が重ねられまして、これらの事項につきましては、衆参両院の委員長、理事、小委員長の数次に亘る合同打合会におきましても、遂に最後まで検討された事項でありました。又、運輸委員会よりも、水害地における鉄道、軌道並びにこれと効用を同じうする事業につき、その災害復旧に関し特別の措置を講ぜられたい旨の申入れがありました。これらを検討の結果、最後の打合会におきましては、これら事業の復旧を促進することは水害地域における災害の復旧を早めることにもなりますので、公益性の強い公共事業で復旧能力の乏しいものに補助することは妥当であるとの見解に達しました。次いで当委員会における討論に当りましては、植竹委員より、およそ災害の復旧に当つては、復旧を迅速ならしめるためには交通機関を優先的に復旧せしめる要ある旨を力説せられ、殊に自力復旧、回復力の弱い被害交通機関に対しては、速かに融資の方途を講ずるの要がある旨強調せられると同時に、この法律により補助金を交付せられることは直接助成の効果あるのみならず、復旧資金の融資を受くる場合においても又効果少からざるものありとして、この法案に賛成の旨、意見の開陳がありました。なお植竹委員よりは、本法施行に当つて自力復興の可能なものには必ずしも補助するの必要はないと思われるので、左の決議案を付したい旨の提案がありました。
決議
補助金の交付に当つては、本法の趣旨に鑑み、自力復興の可能な企業を対象とすることなく、真に自力復興困難なものに重点を置くよう政府は特に考慮すること。
これにて討論を終り、採決に入りましたところ、全会一致を以て本案は可決すべきものと決定し、次いで植竹委員の提案による決議案について採決いたしましたところ、これ又全会一致を以て可決いたしました。以上御報告申上げます。
最後に、昭和二十八年六月及び七月の大水害地域における自転車競技法の特例に関する法律案について申上げます。
本法律案は、今回の大水害をこうむつた地域内における地方公共団体が昭和二十九年三月三十一日までに行う自転車競走について、車券の売上額が三千万円以上であつても、国庫に納付すべき納付金はこれを一回限り免除いたすこととし、この措置により、当該災害地の地方財政の増収を図ろうとする目的で提案せられたものであります。
本案件は最も衆参で揉まれた案件でありまして、参議院特別対策委員会といたしましては、当初から徹頭徹尾この法律案件については疑義を持つておつたのでございます。詳細報告を申上げますると限りがございませんので、時間の都合上詳細に報告することは省かして頂きます。審議に際しましては、各委員から熱心な質疑がなされましたが、その最も注目すべきものを申上げますと、「本法案の適用を受けるのは政令で指定する地域内にある地方公共団体であることが要件となつている。この場合、政令では何々県というように指定するものと考えられるが、その県内における地方公共団体は水害がない場合でも国庫納付金が免除さることになり、公平の原則に反すると思われる。こういう点について提案者はどう考えるのか」との質問に対して提案者より、「その点は政令の指定に委ねてあるが、県或いは市町村を被害の実情により指定する考えで、災害のない地方公共団体までに本法による恩典を与える考えはない」との答弁がありました。又、「国庫納付金が免除されることになれば、施行者でない者も施行者の指定を希望することとなり、このため競輪場を所有する地方公共団体との間に各種のトラブルが起ることが予想されるのではないか」との質問に対して、提案者より、そういうことも一応考えられるが、トラブルが起らぬよう円満に行けるように話合いを進めて行きたい」との答弁がありました。お、右の質問に関連して政府側からは、「政令の制定に当つては、本委員会の御意見により十分留意したいと思う。又競輪場の貸借問題によりトラブルが起ることも心配はされるが、競輪場所有者と借りたい希望者との間に当該県知事又は地方通産局長が斡旋して円満に行けるようにしたいと考えている」との答弁がなされました。その他、有意義な質疑がなされましたが、その詳細は速記録に譲りたいと存じます。かくて質疑を終了し討論に入りましたところ、三浦、永岡、重政各委員より、本法の運用に当つては万全の措置を講じ、十分監督の上、公平の原則に反しないようにすべきである。又、水害地救済に名をかりて、競輪の奨励助長にならぬよう、特に留意すべきであると強く要望して本案に賛成する旨の発言があり、討論を終つて採決の結果、本法案は全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。
右御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/117
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118・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより十案の採決をいたします。十案全部を問題に供します。十案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/118
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119・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて十案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/119
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120・河井彌八
○議長(河井彌八君) この際、日程に追加して、
地方自治法の一部を改正する法律案、
地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法令の整備に関する法律案、
地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/120
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121・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。地方行政委員長内村清次君。
〔内村清次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/121
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122・内村清次
○内村清次君 只今議題となりました地方自治法の一部を改正する法律案の地方行政委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。本法律案は、昨年末までに成立いたしました他の法律の制定及び改廃に伴い、地方自治法の別表を整備すると共に、当面技術的な整備を必要とする若干の規定を改正せんとするものでありますが、衆議院において次の点が修正になりております。即ち、原案におきましては、市町村の助役で教育長となり得る資格を有する者は、当分の間、教育長を兼ね得ることになつているのでありますが、衆議院修正送付案は、教育長となり得る資格のない市町村助役に対しましても、明年の三月末までは教育長を兼ねることができることとなつているのであります。これに対しまして、床次衆議院議員から、「自由党及び改進党の共同提案で、教育長となる資格のない市町村助役が多数教育長を兼ねておる実情に即するために修正をしたのでありまするが、自由党は、市町村教育委員会は、将来引続き存続する前提の下に立ち、改進党は廃止を予想した前提の下に立つておる」旨の説明がありました。本法律案に対しまして、秋山、若木、加瀬の各委員から、大達文部大臣及び関係政府委員に対し活発な質疑が行われましたが、その要旨は大体左の通りであります。即ち教育長の選任状況はどうなつておるのか。財政的にどういう措置をとつておるのか。市町村助役が教育長を兼任することは、不当な支配に服することなく民主的な教育が行われることを目的とする教育委員会法の精神に違反するものではないか。十分な財政的裏付けもなく、又教育長に人を得がたい現状では、地方教育委員会の存在は形式的に過ぎず、無意義ではないか。地方教育委員会の設置は国会も文部省も延期の空気であつたのが、昨年の抜打ち解散の結果、実施となつてしまつたもので、市町村長も市町村議会の議長もこぞつて反対している状況から見ても、地方教育委員会はこれを廃止すべきではないか等であります。これに対しまして、先ず政府委員から、「専任教育長を設置しておる市町村は二千二百十四、有資格助役の兼任は十七である。財政的には市町村は半数が兼任するものと見ておる」旨の説明がありました後、大運文部大臣から、「助役の兼任は不適当と認めておるが暫定措置としてやむを得ない。教育の地方分権、民主化は、教育上の根本方針できまつておることで、教育委員会は今日では不満足な点も多くあるが、制度実施後間もない今日、直ちに制度自体について可否の結論は出せない。これを育成して行くことにしたい」旨の答弁がありました。その他質疑の詳細は速記録によつて御承知願いたいと存じます。討論に入りまして、秋山委員から社会党第二控室を代表して、「衆議院修正案に反対する。地方教育委員会は、財政的にも、はた又教育長に人が得がたい点から見ても、実情に合わない。内容から見ても、地方自治法の原則を破り、助役の兼任を認めざるを得ないが、教育委員会の自主性、独立性から見て、これでは骨抜きとなる。市町村も教育委員会は廃止意見である。当分存続するとしても自治法の特例を認めることには反対である。殊に免許状のない助役まで兼任できることになるのはいけない。この修正案に対する自由、改進両党の考え方は、制度自体については逆である。地方財政の重荷となり、教育関係者に悪影響を及ぼすものである。政府としては市町村の教育委員会制度は再検討すべきである」との反対意見が開陳せられました。次いで採決の結果、多数を以て本法律案は衆議院修正送付の原案通り可決すべきものと議決いたしました。右御報告いたします。次に、地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案の御報告を申上げます。地方自治の問題の最も重要な一面が国と地方を通じましての事務配分の内容にあることは御承知の通りであります。新らしい地方制度を採用するに当りまして、地方制度を改めて、団体自治、住民自治を基本とすることとし、これを実現する方途の一端といたしまして、府県市町村を通じて、その首長と議員の直接公選制その他を採用いたしておりますることは、御承知のごとくであります。これは住民の自主的な地域的政治社会の発達を促すにつきましては中心となる制度の一つになつておることは違いないのでありまするが、実はこれと併せて、その団体における行政的権能の独立とこれを賄うに足る財源の付与ということが表裏一体の関係にあるべきものなのであります。即ち、この団体の首長と議員について、如何に直接公選の制度を採用いたしておりましても、その首長と議員が自己の責任において決定し得る行政的権能が限られているということでありましたならば、住民の意思の反映する機会は失われておるということになるのであります。これ即ち事務の配分ということでありまして、我が国の府県市町村が最近の数年を通じてこの問題に異常の熱意を示しておるのはこの理由によるものであります。現状を以ていたしますれば、地方自治と称するも地方自治の実はなく、直接公選の首長、議員と称するも、その所管する事務の多くは、国の事務を委任されたその出先機関たるの様相が強いのであります。要するに我が国におきましては、その特殊なる歴史的伝統の結果として、あらゆる分野に亘つて中央集権の傾向が強く、特に行政についてはそのすべてを国の事務と考える傾向が強いのであります。これは、新憲法による政治制度の根本的改革にかかわらず、形式のみを変更してその実質を伴つていないということを示すものでありまして、この間の事情は、警察と教育に関する制度の変更と、その他の行政事務における現行制度の実態とを比較することによりまして直ちに明瞭となることであります。要するに、我が国における地方自治体は、明治、大正を通じての国の行政機構としての府県市町村、そうしてこれに負担せしめられた国の事務としての行政権限の執行という形式が強く残つているのでありまして、これは現行地方自治法の末尾に掲げられておりまする諸別表を御一覧願うとよくわかるのであります。この別表は、第一、都道府県が処理しなければならない事務、第二、市が処理しなければならない事務、第三、都道府県知事が管理し執行しなければならない事務等、各機関の事務内容を一覧表にして掲げてあるのでありまするが、これに掲げる事務のすべてが国からの委任事務ではありませんが、その相当数がこの形式によつていることを示しているのであります。更に問題とすべきことは、国の委任事務は国の権限ということであり、国の機関は、この種の事務について、従来種々詳細に亘つて、省令、規則を定めたのであります。即ち或る特定の事務が国の事務であるとのことよりいたしまして、それに関連して数多の事項が省令或いは規則によりまして地方団体命令されることとなり、たださえ地方自治の本旨を去ること遠い我が国の地方制度は、本質的に憲法に背馳するの勢いを来たしていたのであります。
以上のごとき事情を根本的に改め、地方団体の事務について固有の権限を認めることは焦眉の急と思うのでありますが、この点につきましては、府県市町村の希望にもかかわらず、実現の機会はなかなかに訪れて来なかつたのであります。これは要するに、我が国の政治と行政をめぐる悪循環の中に府県市町村が苦悶するということなのでありまするが、何らかの対策を立てて行かなくてはならないということで、そのほんの一部の救済として、昨年九月の地方自治法の一部を改正する法律によりまして、地方公共団体及びその機関に対して事務処理を義務付けるには必ず法律又はこれに基く政令によらなければならないことにいたしたのあります。国の一部の機関の恣意によりまして、徒らに地方公共団体の事務の煩瑣を加えますることは、要するに国の委任事務の量と範囲を増加することになるからであります。そうして、この改正によりまして、従前、地方公共団体又はその機関に対して事務を委任していた省令は、本年八月三十一日までの間に限つて効力を有することとなりましたので、これらの省令の規定事項を政令により規定するための根拠規定を設けるか、又は法律で直接規定するために、関係の法律に必要な改正を加える必要が生じたのであります。而してこの種の整理を必要とする法律は、古物営業法以下七十四法律に及んでいるのでありますので、便宜一括いたしまして整理を行おうとするのが本法律案であります。従つて本法律は全文七十四条に亘る相当厖大なものでありまするが、全く技術的なものでありまして、内容に新たな変更を加えたものではありません。
以上のような点からいたしまして、本委員会におきましては格別の質疑もなく、又討論におきましても別段の発言もなく、採決に入りまして、多数を以て原案通り可決すべきものと議決した次第であります。
以上御報告いたします。
次に、議題となりました地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案の地方行改委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。
本法律案を以て現行法を改正せんとする第一点は、平衡交付金の額の算定に用いる単位費用を改訂しようとするものでありまして、主として、義務教育費国庫負担法の施行に伴い義務教育に従事する教職員の給与関係費、昨年十一月から行われました給与改訂に伴い職員の給与関係費等の関係におきまして単位費用を改訂しようとするものであります。第二点は、港湾費、社会福祉費及び公債費関係において測定単位を実情に即するように改正しようとするものであります。第三点は、道府県を通じ、義務教育費に必要な財源の保障を厚くするため、道府県基準財政収入額の算定に用いる基準税率を、地方税法で定められた標準税率の百分の七十から八十に引上げようとするものであります。第四点は、新たに個人に対する市町村民税の所得割にかかわる基準財政収入額の算定方、法に関する規定を設けようとするものであります。
本委員会におきまして、質疑の集中いたしました点は、本年度予算の修正により平衡交付金において五十億増額せられておりまするが、本年度地方財政計画は給与費その他において具体的にどう変るのか、又、単位費用も当然変更を要するのではないか、基準税率を一〇%引上げることになつておるのは府県間に意見の対立を見ておるのではないか等でありました。これに対しまして、塚田国務大臣及び政府委員の答弁の要旨は、五十億増に伴う大蔵省との数字の調整が遅れていたが、漸くまとまつたからとて、政府予算の修正に伴、地方財政計画の修正に関する資料を提出せられ、給与費において八十七億七千三百万円の増、その他内容の説明がありました。又、単位費用は理論上は変ることになるが、実際問題としては現行の単位費用でもやれると思う、又改訂する必要が生じた場合には政令で変更する方途もあるとの答弁でありました。又基準税率の引上げは今回は府県分にとどめている、地方団体間の財政の均衡化実現のためには、この程度の引上げは必要であるとの答弁でありました。その他質疑の詳細は速記録により御承知願いたいと存じます。
次いで討論に入りまして、若木委員から社会党第四控室を代表して、第一に、本法律案は平衡交付金制度の本旨に則り地方に十分な財源を与えるものでなく、単位費用も適正を失つている。第二に、予算の修正により単位費用が変更されるべきであるが改訂されていない。第三に、基準税率を百分の七十から百分の八十に引上げることは地方の自主的財源の圧迫となる。自主的財源を与える点より逆であるとの三点を挙げて反対意見を述べられました。次いで採決に入り多数を以て原案通り可決すべきものと議決いたした次第であります。
右御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/122
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123・河井彌八
○議長(河井彌八君) 討論の通告がございます。順次発言を許します。若木勝藏君。
〔若木勝藏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/123
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124・若木勝藏
○若木勝藏君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、只今議題となりました地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案に反対の意見を表明するものであります。
昭和二十五年に平衡交付金法が制定された趣旨は、御承知のごとく地方公共団体に対し適当な財源を与え、地方財政の堅実性を確保させて、地方自治の自律的な健全な発達を期するところにあつたはずであります。そのためには、この法律におきまして、交付金を算定する基礎となるところの測定単位や単位費用を実際の事業に即した適正なものを定めて地方団体の財政需要を的確に見積り、財政収入と対照して、その収入不足額を累計したものを平衡交付金総額としてこれを配分するのが本筋であるのであります。然るに、政府は常に国家財政が窮迫しているということに籍口いたして、法律の本旨を没却し、又地方団体の実情を無視し、国家予算の枠から逆算いたしまして測定単位や単位費用の見積りを極度に切下げることを常套手段としておつたのであります。ために地方団体は必要な額の交付金の配分を受けることができず、事業の縮小繰延は勿論、その上に年々三百億乃至四百億の赤字に悩みみ、最近では知事諸君の坐り込みといつたような異例の事態まで発生するに至つたのであります。更に、多くの日時と労力と多額の費用を費して、
〔議長退席、副議長着席〕
諸官庁に押寄せているあの地方団体の理事者、議員諸君の陳情の情景を併せ考えまするとき、この法律が如何に平衡交付金制度の本旨を没却しているものであるかということを考えると同時に、まさに地方自治を破滅に導く吉田内閣の悪政を糾弾せざるを得ないのであります。(拍手)この間にありまして、特に地方自治の育成に責任を持つべきはずの自治庁が大蔵省の圧力に屈し、地方財政の確立の能力を欠き、又、我が国文教の責任者である文部大臣は財政の府に対抗して教育財政の確立を図る力なく、政令第百六号のごときものまで実現させて、その縮小に拍車をかげながら、吉田首相と共に、修身、漢文等を復活させれば愛国心の養成ができるもののごとく考えるに至つては、まさに文政の本末を誤まるものであり、世の嘲笑を買うのも当然ではないかと言わざるを得ないのであります。
次に私の指摘いたします点は、二十八年度の修正予算に伴いまして地方財政計画が修正され、当初の計画よりも百三億三千八百万円の増額となつているのであります。従いまして、政府の方針によりますと、本法案の第十二条第一項の表に示される単位費用は当然改訂されなければならないのであります。即ち、政府は、修正予算の成立と共に、国会法第五十九条によつて本院の承諾を得まして、これを修正し、審議を求めなければならないのであります。然るに政府は、作業が間に合わぬとの理由の下に、これを閉会後政令によつて変更する意図を持つているようであります。単位費用の変更は、勿論、国会が閉会のときは政令を以てするもよいことは法律上明らかでありますが、今回の場合は国会開会中でありますので、当然修正して審議に付さなければならないのでありますのに、政府がその措置をとらないのは、国会を軽視するも甚だしいものであると言わなければなりません。政府は自己に都合の悪いときには多数を頼んで国会を延長し、不当な法案を通し、自己の都合の悪いときには法律事項をも政令を以てする非民主的な態度をとるのが常套手段であります。
〔副議長退席、議長着席〕
曾つての吉田内閣が、国会開会中にもかかわらず警察予備隊の創設を政令できめまして、その国会を無視したフアツシヨ的な態度に対し、国会の内外から猛烈な糾弾を受けたことは、世人の間に今なお明らかなことでありますが、今次の吉田内閣においても依然としてそのフアツシヨ的傾向が反省されておらないのでありまして、私は、かかる非民主的な意図の下に提出され、更に又当然単位費用の改訂を見なければならない確実性を欠いた権威のない法律案には、絶対反対せざるを得ないのであります。いわんや、政府並びに自由党が血道をあげているあの教育を混乱に導く教職員給与三本建の法律も、平衡交付金の算定について本法律案に関連を持つものである以上、財源的な確固たる根拠のない架空なものに終らざるを得ないのであります。更に本法律案は、第十四条の修正で、平衡交付金の算定の基礎となる税率を七〇%とするという現行法を府県に限りて八〇%に引上げようとする案でありますが、これは昭和二十六年、第十側国会における参議院地方行政委員会におきまして未熟のものであるとして修正削除したものを、今回再度提出したものでありまして、先に申上げましたような平衡交付金法の本質的な立場を逸脱するものであります。即ち、当然必要な交付金の総額を国の予算の枠から圧縮減額して、富裕府県と然らざる府県との相互間において調整させようとするもので、即ち、政府が地方財政の均衡という美名にかくれ、自分で出さなければならないところの金を出さないで、自治体同士の間でやりくりさせるという、全く交付金制度を歪曲した老獪な考え方から出ておるのでありまして、かくのごときは、地方の自主的な財源を縮小圧迫し、地方自治の自律性を弱体化すると共に、富裕府県と然らざる府県との間に対立抗争をかもす結果を招来するものであります。現にこの法案が提出されるや、府県知事の間に好ましからざる対立が見られるに至つたことは、これを証明して余りあることであります。私は、このような地方自治を混乱に導く法案には絶対賛成し得ざるものであると同時に、吉田内閣の政策が如何に的を外れたものであるかということを非難せざるを得ないのであります。
以上の理由を以て私は本案に絶対応対するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/124
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125・河井彌八
○議長(河井彌八君) 秋山長造君。
〔秋山長造君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/125
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126・秋山長造
○秋山長造君 私は日本社会党を代表いたしまして、地方自治法改正に関する衆議院修正送付案に対しまして反対をいたすものであります。
本改正案の第六条、即ち町村の助役が町村教育委員会の教育長を兼ねることができるという点でございます。この議場に昨年からおいでになつた皆さんはよく御記憶のことと存じますが、昨年の丁度今頃開かれておりました第十四国会におきまして、市町村の末端まで教育委員会を設置するということは、今日の日本の実情に全く副わないが故に、もう一年設置を延長して、その間に十分再検討をしようということで、この特例法をこの議場において可決されまして、衆議院に送付された。それがあの御承知のような吉田首相の出し抜け解散によりまして流れてしまつて、形式的にまさに死なんとする法律が生き返りまして、昨年の十一月一日から市町村教育委員会が強行されたのでございます。従いまして政府当局におきましても、又これを審議するところの国会自身におきましても、又これを受取るところの市町村におきましても、これに対する心がまえもできておらなければ、準備も何もできておらないところに、いきなり降つて湧いたように、市町村の教育委員会を強行しようというのでありますからして、これは、あの終戦後の混乱から漸くにして立直りかけたところの日本全国の教育界を再び一大混乱に陥れましたことは、皆さん御承知の通りであります。而もこの教育委員会の実質的な仕事を担当いたしますのは教育長であります。この教育長に人が得られないということで、教育委員会法、又地方自治法の原則を破つてまで、昨年の年度一ばい、三月三十一日まで、暫定的な処置として、市町村の助役に教育長を兼ねさせるという特例を認めたわけであります。従いまして本年度に入りましてからは当然速かにこういうような不規則なやり方をやめまして、そうして速かに教育長の資格を持つたいわゆる有資格者を専任の教育長として設置しなければならないということは当然でございます。にもかかわらず、今日までそういう点がうやむやになつておるのでありまして政府の原案は、これを教育長の免許状を持つた助役に限つて、当分の間、教育長の兼任を認めようという、極めて微温的な改正案であつたわけでありますが、今回我々の前に提出されておりますところの衆議院の修正案によりますと、この政府の原案を更に一層改悪をいたしまして、教育長の免許状を持つておらない一般の助役におきましても、来年の三月三十一日まで引続いて教育委員会の教育長を兼任させるという、極めて逆行的な修正になつておるのでありまして、こういう修正をいたしますならば、そうでなくても、教育委員会というものが実情に副わない上に、その実質的な仕事をやつておりますところの教育長が極めて宙ぶらりんな立場に置かれておるのが、一層そういう傾向を助長することになつてしまうわけでございます。皆さんも御承知のように、今日、政府があれほど無理をして、あらゆる団体の反対を押切つてまで強行したところの市町村の教育委員会、特に町村の教育委員会が、全国一万足らずの町村におきましてどういう立場に置かれておるかということは、皆さん御承知の通りであります。町村におきましては、財政の赤字に悩んでおる建前から、新らしくこういう制度ができたことに対しましては非常な重圧と重荷を感じておる。従いまして、全国の市長会におきましても、市議会議長会におきましても、又町村長会におきましても、町村議長会におきましても、速かにこれを廃止してもらいたいという決議をしばしばやつておるのであります。PTAその他の教育関係団体は勿論のことであります。今や町村教育委員会というものは、地方におきまして、いわば八方塞がりで、厄介者として扱われておるのでございます。而も頼りとする中央政府のやり方たるや、これに対して何らの強力な措置をとつておらない。財政的な面だけを考えましても、昨年度僅かに十一億、本年度十四億、而もその中におきまして、専任教育長のごときはその半数を予定しておるに過ぎないような財政的な裏付けでございまして、これでは地方におきましてはますく重荷となつて行きますことは理の当然であります。而も教育委員会が地方において果しておる実際の役割というものは、委員会法にきめられておるような教科内容の決定であるとか、教員の研修であるとか、教科書の選定であるとかいうような、教育の中心的な問題については、何らこれに対する能力もなければ、責任もよう果さないような弱体振りでありまして、人事の面につきましても、町村に教育委員会ができましたために、却つて人事の交流というものが非常に阻まれまして、この本年度の年度変りの人事異動等は、全国的に非常な渋滞振りを示したことは、皆さん御記憶の通りでございます。私どもは今日、町村教育委員会というものが町村の教育に対して何がプラスになつておるか、一つもプラスになつておる点はない。本日我々の委員会に大達文部大臣の御出席を願つて、その点について文部大臣の見解を質したのでありますが、文部大臣は、「地方教育委員会が極めて評判が悪い、弱体であるということは自分も認める。併しながら悪い点ばかりではない。ちつとはいい点もある。」どういう点がいいのかと聞き質しましたところが、「教員を取締るというような点は、悪い中でもまあ取上げていえば、いいほうだ」というようなお話なんです。これでは町村教育委員会というものが警察やら何やらわけがわからない。教育の指導であるとか、教科内容の指導であるとかいうような点にこそ、教育委員会の重点が向けられるべきであつて、教員の取締というようなことに教育委員会の一番大きな存在意義を見出しておられるところの大達文部大臣のような考え方で、今後この教育行政をやられ、又教育委員会を指導して行かれるといたしますならば、この教育委員会は、ただに財政的その他の面から地方自治体の大きな重荷になるばかりでなくして、漸く立直らんとするところの日本の教育の自主独立を侵すところの手かせ足かせと化し去つてしまうと思うのでございます。而も今回の修正案たるや、自由党、改進党の合作によりまして、来年の三月三十一日まで助役の兼任を認めるということでありますが、その三月三十一日という期限の背後に隠されておるところの意味たるや、それぞれにおいて全く真反対。自由党のほうは町村教育委員会をこのまま当分うやむやのうちに続けて行こうとおつしやる。改進党のほうは、そうではなくして、町村教育委員会は速やかに廃止さるべきものである、少くとも来年の年度変りまでには、何らかこれに対する具体的な措置を考えて、そうして年度変りと共に、この切替をやりたい、そういう考えのもとに、この三月三十一日という期限を切つておられるのであります。で、そういうように全く考え方の変つた自由党、改進党が合作によりまして、こういうものを作つて、そうして、これでうやむやのうちに町村におつかぶせて行こうというようなことでありますならば、町村の立場というものは誠に苦しい限りになつて参るのでございまして、私どもは、将来に対する何らの見通しも信念もなくして、一日延ばしにこういう継ぎはぎ細工を続けて行つて、日本の教育の将来が果してどういうことになるのか、誠に憂慮に堪えないのでございます。政党の面子であるか、政府の面子であるか、然らずんばこれらを支持するところの党利党略のなすわざであるか、この三つのどれかに違いないと信ずるものでございまして、私どもは、こういうような神聖な教育を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/126
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127・河井彌八
○議長(河井彌八君) 秋山君、秋山君、制限時間が参つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/127
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128・秋山長造
○秋山長造君(続) 面子や党利党略によつていい加減にやつて行くやり方には断じて反対するものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/128
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129・河井彌八
○議長(河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。これより三案の採決をいたします。先ず地方自治法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/129
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130・河井彌八
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/130
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131・河井彌八
○議長(河井彌八君) 次に、地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/131
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132・河井彌八
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/132
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133・河井彌八
○議長(河井彌八君) 次に地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/133
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134・河井彌八
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。この際、暫らく休憩いたします。
午後十時三十六分休憩
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午後十一時二十四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/134
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135・河井彌八
○議長(河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。休憩中に、衆議院から、会期を八月十日まで三日間延長することを議決した旨の通知書を受領いたしました。本日はこれにて延会いたします。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後十一時二十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615254X03619530807/135
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