1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年十月三十一日(土曜日)
午前十時五十一分開議
出席委員
委員長 中井 一夫君
理事 加藤 精三君 理事 佐藤 親弘君
理事 灘尾 弘吉君 理事 床次 徳二君
理事 西村 力弥君 理事 門司 亮君
理事 松永 東君
生田 宏一君 河原田稼吉君
熊谷 憲一君 山中 貞則君
山本 友一君 吉田 重延君
鈴木 幹雄君 北山 愛郎君
滝井 義高君 伊瀬幸太郎君
大矢 省三君
出席国務大臣
国 務 大 臣 塚田十一郎君
出席政府委員
法制局次長 林 修三君
総理府事務官
(南方連絡事務
局長) 石井 通則君
委員外の出席者
参 考 人
(奄美群島復興
促進会総本部
長) 奥山 八郎君
参 考 人
(名瀬市長) 泉 芳朗君
専 門 員 有松 昇君
専 門 員 長橋 茂男君
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十月二十八日
委員竹谷源太郎君辞任につき、その補欠として
三宅正一君が議長の指名で委員に選任された。
同月三十一日
委員吉田重延君辞任につき、その補欠として山
中貞則君が議長の指名で委員に選任された。
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十月二十九日
地方自治法の一部を改正する法律案(門司亮君
外七名提出、第十六回国会衆法第七七号)
地方財政再建整備法案(床次徳二君外三名提出、
第十六回国会衆法第八七号)
同月三十日
奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等
に関する法律案(内閣提出第四号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
国政調査承認要求の件
奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等
に関する法律案(内閣提出第四号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/0
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001・中井一夫
○中井委員長 これより会議を開きます。
まず国政調査承認要求に関する件について、お諮りをいたします。すなわち本国会におきましても、地方行政の実情を調査し、その健全なる発達に費せるために、地方自治、地方財政、警察、消防及び選挙に関する事項につきまして調査をいたしたいと思います。この旨議長に承認を求めたいと思いますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/1
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002・中井一夫
○中井委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/2
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003・中井一夫
○中井委員長 次に昨三十日、本委員会に付託されました奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案を議題といたします。まず政府よりその提案理由の説明を聴取いたします。塚田国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/3
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004・塚田十一郎
○塚田国務大臣 ただいま議題となりました奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案について、その提案の理由を御説明いたします。
去る八月八日のダレス声明によりまして、待望の奄美群島の復帰が約束されましたことは、御承知の通りであります。復帰の時期は、まだ確定いたしませんが、目下アメリカ合衆国政府との間に交渉中でありますので、近く実現の運びに至るものと考えられるのであります。
同地域が復帰いたしました場合におきましては、法制の切りかえ、制度の改編等による混乱をなるべく回避し、円滑にその引継ぎを完了する必要があることは申すまでもないところであります。従いまして、同地域の復帰に伴いきて、法令の上でもいろいろのの経過措置、暫定措置を必要とするわけでありますが、何分まだ復帰の時期も確定いたしておりませんし、アメリカ合衆国政府との間の交渉も完了しておりませんので、この際今後の事態に即応し、機動的に必要な処置をなし得るような態勢を整えておく必要があるのであります。
そこでその法律案では、さしあたり奄美群島に施行される法令に関する措置、復帰に伴う暫定的な衆議院議員の定数及びその選挙、奄美群島における市町村の機関及び職員の引継ぎ、現地裁判所における民事訴訟の引継ぎの方法等に関し規定し、その他同地域の復帰に伴いまして必要とされる事項は、ある程度政令等に委任することにいたしてあるのであります。
なお、詳しいことは政府委員より説明いたさせます。
何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/4
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005・林修三
○林政府委員 では、私からこの法律案につまして、逐条的に細部の御説明をいたします。ただいま自治庁長官から、この法律案の提案理由につきまして御説明がございましたが、さらに多少詳しく内容に入りまして、御説明を申し上げたいと存じます。
まず第一条でございますが、第一条は一般の法律の形式に従いまして、この法律の趣旨を規定いたしたものであります。なおこの条文の中で今回復帰の行われる地域は鹿児島県大島郡の地域、すなわち奄美群島の地域と予定をいたしておるわけでございます。
第二条は、本邦の法令の施行に関して定めたものでございます。奄美群島が本邦に復帰いたしますとともに、現在の本邦の法令は一応すべて同地域に施行されることになるわけでありますが、法令によりましてはただちにこれを施行いたしますときは、かえつて現地に混乱を招くおそれのあるものもございますので、第一条第一項各号に掲げましたようないろいろな法令、その大部分はごらんの通り租税関係の法令でございますが、これだけは別にそれぞれ政令で定める日までは同地域には施行しないことといたしたわけでございます。同条の第二項では、かように暫定的に施行を停止いたしました法令につきましては、特別の事情のある場合を除きまして、遅くともこの法律施行の日から起算して六箇月以内には、この法令を同地域に施行しなければならないということを定めておるわけでございます。第三項ではこれまで奄美群島に適用されておりました従前の法令、つまり従前沖繩、琉球政府のもとにおいて適用されておりました法令で、第一項の規定によりまして施行を停止されました本邦の法令に相当する事項を定めております。たとえば税法等でございますが、こういうもの、及び本邦の法令がまつたく何らの規定をしておらない事項について定めております法令のうち、政令で定めるものにつきましては政令で定める日、これは大体において、事項別に第一項によつて施行を停止されております法令が、実際に施行される日が政令で定める日になると思いますけれども、その日までは奄美群島においては法律としての効力を有するものと定めました。これによつて施行を停止されます法令の空白を埋め、法制の急激な切りかえを避けたわけでございます。なおこれらの従前の法令を適用する場合におきましては、奄美群島の復帰に伴いまして、当然その法令の実施に当る行政機関等につきましての読みかえが必要でございまして、また事情によりましては、これらの法令の内容を実質的に改廃することも必要である場合がございましようと考えられますので、これらを政令で措置し得ることといたしておるのでございます。ただ事柄の性質上、新たに罰則を設けたり、刑や過料を加重することはできないことを明らかにしております。これが第四項の規定であります。
第三条は、衆議院議員の選挙について規定いたしております。奄美群島の人口は、現在の議員定数配当の基礎数には入つておりませんが、二十万をこえる状況でございます。人口比例から申しましても、同地区から衆議院議員一名を選出する必要があると考えられますが、さしあたりはただちに鹿児島県のみの選挙区なり定数を改めるわけにも参りませんので、この際は、暫定的に、公職選挙法の別表第一がこの法律施行政最初に更正されますまでの間、衆議院議員の定数を一人増加して四百六十七人とし、奄美群島の区域をもつて一つの選挙区といたしまして、この選挙区から一名の衆議員議員を選出させることとしたわけであります。なお、その選挙は、復帰後なるべくすみやかに行わるべきものと考えられますので、この法律の日から起算して二月をこえない範囲において、政令で定める期日に選挙を施行することとしたのであります。そしてこの場合、選挙された議員の任期は、補欠選挙の場合に準じてその選挙の際、現に在職する他の議員の任期によることとしたわけでございます。
次に、第四条は、復帰後現地において国の行政事務を執行する機関のあり方について定めております。現在わが国の複雑多岐な行政・組織に基きまして、国の行政機関をただちに個々に奄美群島に設けますことは、現地の振興行政を強力に行う上からもいかがと考えられるばかりでなく、行政簡素化の趣旨にも合致しませんので、さしあたりは、政令で定める特殊なものを除きまして、国の行政事務は、原則として鹿児島県知事またはその下に設けられることを予想される大島支庁の長等に行わせるものとしたのであります。なお、この場合、主務大臣またはその委任を受けた職員がその所掌事務について、鹿児島県知事または大島支庁長等の機関を指揮監督することができることを明らかにしております。
第五条は、簡易裁判所の設立について規定したものでございます。すなわち、当分の間名瀬市及び徳之島亀津町に簡易裁判所を設けることとしたわけでございます。
第六条は、奄美群島の地域に設置されます裁判所の職員につきましては、予算の範囲内で最高裁判所規則で臨時に定員を定めることができることを定めております。
第七条は、民事訴訟等に関する経過措置を定めたものでございます。昭和二十一年一月の行政分離後現地裁判所でなされた訴訟行為、裁判、処分その他の手続上の行為は、刑事に関するものを除きまして、本邦の裁判所で本邦の法令の相当規定によつてなされたものとみなすこととしまして、その効力を有するものと認めることといたしました。しかし、現地裁判所の確定の裁判でも公序良俗に反するものは、外国裁判所の判決に対する民事訴訟等法上の取扱に準じまして、効力を有しないことといたしました。
なお、刑事事件に関しては、現地裁判所のした裁判等の効果は認めないことといたし、また、奄美群島に適用されていた従前の法令に対する違反行為にも、当然には従前の罰則を適用しないことにいたしましたが、もちろん、刑法その他の本邦の法令に従つて、あらためて訴追できるものについて訴追することを妨げる趣旨ではありません。
第八条は、従前の市町村及びその機関の引継ぎ等に関する規定であります。従前の奄美群島の市町地につきましては、現地にも本邦の地方自治法と同様の立法がありまして、大体本邦の市町村と同様の組織になつておりますので、そのまま、これを地方自治法上の市町村として認めることとし、議会の議員、長、助役、収入役その他の職員も、引続いて市町村の議会の議員、長、助役、収入役その他の相当の職員となるものといたしました、ただ、従前の法令の規定によつて任期が定められており、地方自治法の規定によつても任期の定められているものの任期は、地方自治法の規定によることといたします。その任期の起算点は、従前の法令の規定によつて選挙され、または選任された日とすることといたしました。
次に奄美群島におきましては、市町村の区域に教育区という法人が設けられ、区教育委員会が設置され、市町村立中小学校の管理、教職員の人事等の事務を取扱つておつたわけでありますが、教育区というような法人組織は、本邦にはありませんので、復帰に伴い当然これを消滅させることといたしました。その財産その他の権利義務及び教職員の引継ぎ等については、政令で定めることといたしました。
また、従前の市町村は、条例、規則その他の規程を制定していたのでありますが、これらのものは、本邦の法令なり鹿児島県の条例、規則その他の規程に抵触しない限り、引続いてそれぞれその市町村の条例、規則その他の規程として効力を有することとしたわけであります。
次に第九条でありますが、奄美群島地区には、復帰に伴つて強力な振興対策を講ずる必要があるわけであります。それがためには、国庫負担あるいは国庫補助等につきまして、他の法律の規定にかかわらず、特例を設ける必要があると考えられますので、政令でそのような特例が定められることといたしたわけであります。
最後の第十条は、奄美群島の復帰に伴う必要な経過措置等の政令等への委任規定であります。以上御説明申し上げました選挙、市町村の基本組織、民事訴訟等の引継ぎ等に関する事項のほか、なお、通貨の交換及び債権債務の単位の切りかえに関する事項、本邦の法令の奄美群島における適用についての経過措置に関する事項、その他同地区の復帰に伴い必要とされるいろいろな事項は相当広汎多岐にわたるものと予想されますが、現在なお確定し得ない事項がたくさんありますので、今後復帰の日の確定するまでの事態等に即応し、機動的な処理ができるように、これらの事項は、政令で規定できることといたしたのであります。ただ、訴訟手続等憲法第七十七条第一項によりまして最高裁判所規則で規定する事項につきましては、最高裁判所規則で定めることといたしたのであります。
附則は、この法律の施行期日を定めたものでありまして、政令で定める日から施行することといたしました。政令では、復帰の日が決定いたしますれば、その日を定めることとなるものと考えます。
以上でこの法律案の逐条にわたつての細目説明を終ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/5
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006・中井一夫
○中井委員長 床次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/6
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007・床次徳二
○床次委員 この法案に対しましては長官あるいは外務大臣から御説明いただき、総括的な概念を得たいと思つておりますが、なお関連いたしまして、大臣が帰つて来られまするまでの間、本法の裏とも申すべき予算問題が今日提案されておりますから、政府委員からこの予算の概況について御説明いただきまして、大臣の出席を待ちまして、総括質問に入りたいと思います。そうおはからい願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/7
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008・中井一夫
○中井委員長 了承いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/8
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009・石井通則
○石井(通)政府委員 予算に関しましては十億、本年度の分として計上されておりまして、その内訳に関しましては、現在復帰の期日、また日米間のとりきめ等の問題もはつきりいたしておりませんので、細部にわたつて決定はいたしていないようでございます。私、大蔵省から聞きましたところによりますと、現在のところおおむねその目標として考えておりまするところは、政府機関関係に対しまして一億円、支庁関係に対しまして一億円、市町村関係に対しまして七千万円、教職員の経費に関しまして四千万円、その他生活保護、学校校舎の建築あるいは現地におきまする基幹産業の開発、公共土木事業等に対しまして大体六億九千万円程度を目標といたしておるのでございます。今後さらに復帰の時期が決定し、また細部のとりきめが決定される段階になりますれば、この目標額もあるいは若干かわつて行くようなことがあるかと存じております。ただいま大蔵省の関係の人が見えませんが、大蔵省から聞いた程度のことを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/9
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010・床次徳二
○床次委員 皆さんにちよつとお諮り願いたいのですが、まだ大臣が見えませんものですから、その前に、順序が逆になりますが、現地からせつかく代表といたしましてかねがね復帰促進運動につきまして、非常に努力せられました名瀬市長泉氏が見えておりますので、地元の意見をしばらく聞いていただけましたら幸いと思います。なおあわせましてお手元に要望書が出ておりますが、その群島復興促進本部の本部長を勤めております奥山氏も見えておりますので、両氏の陳情、要望を、適当なときにひとつお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/10
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011・中井一夫
○中井委員長 お諮りいたします。ただいま床次委員より御発言のありました件につきましては、泉名瀬市長、奥山復興促進本部長を正式に参考人として、この際お聞きしたいということに決定いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/11
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012・中井一夫
○中井委員長 さようにいたします。それでは名瀬市長泉芳朗君、それから奥六郎君、どうぞこちらへおいでください。奥山参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/12
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013・奥山八郎
○奥山参考人 私奥六郎でありまして、奄美群島復興促進会総本部長をしております。この席においてわれわれのお願いをお聞きくださることを非常に光栄に存じます。現地の要望は泉市長から申し上げることにいたしまして、私はただいま御提案になつておられます法案につきましての要望を、まとめて申し上げたいと思います。
その第一は法案の第二条であります。第二条の第一項本文のうちの「それぞれ政令で定める日までは施行しない。」とある箇所を、「そそぞれ政令で定める日まで」を削りまして、これを「当分の間」と御訂正を願いたいのであります。従いまして第二項に参りまして、二項を次のようにお改めを願いたいのであります。「前項の法律施行の日は、事情に応じそれぞれ政令で定める。」かようにしていただきたいのであります。しこうして第一項の二十五の次に二十六といたしまして食糧管理法を挿入していただきたいと思います。先ほど訂正をお願いしました理由は、この諸法律は六箇月経過後ただちにこれを施行することが適当でないということを現地の方で強く考えておるのであります。それでこの第二項に「特別の事情のある場合を際く外、」とありますからして、特別の事情があればその日を延べることはできますが、それよりも第一項におきまして当分の間として、第二項におきまして政令で定める日からそれぞれの事情に応じて施行して行くというふうに、おきめを願う方がはつきりしてよかろうと思うからであります。二十五の次に二十六を加えていただく食糧管理法の施行は、やはりこれをただちに施行されまして供出等をいたされますことは、現地の事情に即しないからであります。
次に第三条につきましてこれは希望でありまして、この法令を動かすのではありませんが、第三条の第二項に同法別表第一が「この法律施行後最初に更正されるまでの間、」とありまするが、その別表第一が最初に更正されるときにおきましては、公職選挙法別表第一においてぜひもとのごとく奄美大島を鹿児島県大島郡といたしまして、これを従来の別表第三区となつておりました通り第三区とし、定員を四人にふやす方針をとつていただきたいということを、今から希望申し上げておくのであります。
それから第四条につきまして、四条の第一項の冒頭の方にあります「国の行政事務は、政令で定めるものを除く外、」とありまするが、これはどれだけのものを除くのか、その除く範囲をなるだけ大きくし、しこうして知事または県の機関に行わせる行政事務の範囲を、なるたけ狭くしてもらいたい。直接政府と現地との間の連絡を、なるたけ大きくとつてもらいたいという希望であります。
それから第五条につきまして、これは「当分の間、」とありますが、支部の設置をなるたけ本法施行と同時にしてもらいたいというのが希望であります。なお当分の間が過ぎましたならば、島が五つありますが、各島にそれぞれ簡易裁判所を置いていただきたいというのが希望であります。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/13
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014・中井一夫
○中井委員長 次は泉名瀬市長から陳情を承ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/14
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015・泉芳朗
○泉参考人 私ただいま御紹介をいただきました奄美大島日本復帰競技会議長、名瀬市長の泉でございます。先般上京いたしまして、はからずも今日この貴重な委員会の時間をおさきくださいまして、私ども現地の声をお聞き取り願う時間を拝借できましたことを、まことに光栄に存じて厚く感謝申し上げる次第でございます。
おかげによりまして現地では去る八月八日のダレス朗報以来、郡民あげて帰る日をもつぱら待ちこがれて、それぞれ帰り支度を急いでおるわけでございますが、この現地の軍あるいは政府の当初の復旧朗報直後の話では、十一月一日を復帰の日取りというように大きめまして、八月下旬にアメリカの体現地軍は一応奄美関係の予算は十月末で打切る、こういう声明を発しております。従いまして九月下旬に琉球政府の予算がきまつたわけでございますが、九箇月分の決定を見まして、いよいよ執行の段階に至つておりますけれども、大島郡関係の予算は十月末で打切られております関係で、郡の行政運営費が、大体私が出発する十月の末ごろに令達が参りましたが、これは人件費のみでありまして、他の事業費はすべて令達をしておりません。従つて大島関係の諸事業、政府補助事業は一々費目ごとに軍の検討と認可を要するということで、今もつて事業費は令達を受けておらぬのでございます。こういうような関係で町村のごときは、まず本土に復帰いたしましても、当然徴集しなければならない土地家屋税というようなものを、とりあえず十月までのつなぎ資金として回収する。一方琉球政府に対しては市町村の財政交付金を要望いたしまして、大体奄美の分三百九万をようやく認めてもらいまして、これの令達を近いうちに見るわけでございますが、両方合せても奄美群島の各町村の一般予算の大体三〇%から三十四、五パーセント程度のまかないしかできぬのであります。なお、事業費がストツプになつております関係で、結局民間の諸事業というものが、すべて停止状態にありますために、失業者が非常に増加いたしまして、名瀬のごとき労働者の多い所では、一日三十円の賃金でもいいから、何か仕事を与えてくれというのがございますけれども、何しろ事業が起りませんために、これらの労働者を救済する処置が、政府としても、町村自体の立場からも、全然講ずることができぬといつたような実情にありますし、なお大島つむぎとかその他の産業方面の運転資金が全然ありませんために、つむぎ業者等が非常に困つているのでございます。一方十一月復帰をめどにいたしまして、銀行あたりでは貸出しをしぶるのでございます。さらに民間のいろいろな金融機関においても整理を急いでおりまして、通貨がここに極度に収縮されて、民間の金融というものは杜絶しておる。従つて年末を控え、お正月を控え、しかも復帰の喜びを迎えるに、郡民は何らこれを祝うところの資金がないというようなきわめて悲惨な状況が、日々深刻化しつつあるのでございます。
十一月復帰がいよいよこういうように立消えになりました関係で、現地の町村の自治団体とか、あるいは各事業団体、さらに金融関係等の事業の衰微は、大体以上申上げた通りでございますが、一方日常必需品の商取引などは、外国貿易、LC貿易で取引しておりますために、これがまたいろいろな思惑がございまして、銀行がこのLCの契約をやつてくれないために、民間の商品も日に日に枯渇いたしまして、正月を迎えて島内においては、いろいろな日常品の取引が停止されて、ここにインフレが生ずるのではないか、こういつたような点も懸念されております。
そこで私ども現地におきましては、市町村の各議会、あるいは市町村長会、あるいは各種の奄美大島復帰協議会とか対策委員会とか、そういつたありとあらゆる団体、代表が、この十一月復帰が一応立消えになつたことについて非常な不安と心配を抱きまして、政府御当局あるいは国会その他の機関に向いまして、ぜひともこの復帰を一日もすみやかになし遂げていただきたい。こういつたような陳情を展開しているわけでございまして、その趣旨を体しまして、とりあえず私どもが派遣されて参つたのでございます。
なおたまたま上りまして、今度の国会では、水害とかあるいは風害とか冷害など、農村問題等について、いろいろな緊急の問題をとらえまして、臨時国会を開いていただきましたそのついでに、奄美大島の復帰善後処理費として十億を計上していただいておりますが、これはとりあえず今年度のつなぎ資金程度の意味で組まれたものという、一応の予算計上の御趣旨は十分承つているのでございますが、われわれ現地におきましては、当初市町村長あるいは市町村の議会代表、さらに政府関係者一般を網羅いたします対策委員会において、約四十億程度来年の三月までのとりあえずの費用として、予定し、これを県にお願いしたのでございます。ところが県に参りまして、これが二十六億にしぼられている。この二十六億は、県においても最低限の線であるというような御説明を承りまして、われわれは東京に参つたのでありますが、国会の劈頭において、これがさらに十億に圧縮されているということを承りまして、非常に失望したわけであります。この二十六億の内容につきましては、県からすでに政府に対して資料が出ておりますので、私は詳しく申し上げませんが、とにかく最低限われわれとしては、県の要望している二十六億に接近させていただきますよう、今からでも皆様方にお願い申し上げたいと思う次第でございます。
なお、今回の臨時国会は、奄美問題について力強くお取上げいただいて、主務大臣の方からも御説明をいただいて、われわれは非常に感謝申し上げている次第でございますが、実は私ども現地の気持から申しますと、もう少し力強く国会が奄美問題を取上げていただきたい。これは失地回復の点から見て、将来の沖繩問題、さらに小笠原問題、千島問題、そういつたような方向に向つて、奄美をいかに取入れるか、いかに奄美問題に対して国会が慎重な態度を持しているかということは、国際的に大きな反響を持ち、意義を持つものだと思いますので、奄美をいかに受入れるかという一つの基本線が、今後のわが国のそういう外交問題に向つての、一つのモデル・ケースになるように、ぜひともこの臨時国会において、重要な一つの案件として御討議をいただきたいと思う次第でございます。
現地のわれわれの事情から申しますと、以上三点が、とりあえず今後の国会に対して、皆様方にお願い申し上げたい点でございます。あとこまかい問題がありますが、これはそれぞれ各方面に向つて陳情申し上げたいと思いますので、何とぞ皆様方の御高配を切にお願い申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/15
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016・中井一夫
○中井委員長 本会議は、ただいま休憩になつたそうでございます。従つてこの委員会は、このまま引続き進行したいと思います。
この際、参考人に対して御質疑があれば、御質疑いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/16
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017・床次徳二
○床次委員 参考人の泉市長さんにひとつお尋ねいたしたいのですが、この復帰の時期が遅れて参りますと、地元に相当の影響が生ずるように承つたわけでありますが、これは政府の今後の予算の編成の処置に対しましても、相当影響があるものと思います。地元といたしまして、この復帰の時間がずれる場合にいろいろ生ずることのあるべき支障その他につきまして、実情をお話いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/17
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018・泉芳朗
○泉参考人 先ほど簡単に申上げたのでございますが、この十月末をもつて一応政府予算を打切る。さらに民間においては、そのつもりで、いろいろな金融の措置をいたしますために、通貨が完全に枯渇、収縮いたしますために、民間では手持金がおそらく全部吸い上げられるような状態に置かれるものが多くなると思います。従つて第一に私どもがお願い申し上げたいことは、この空白期間における金融措置であります。これは今の場合何とも方法がつかぬと思いますけれども、何らかの方法でこれを県あたりに措置を講じてもらつて、国家にこれを保証してもらえるような金融措置などが、事前にできて、復帰直後の空白をふさいでいただきたいと思うのでございます。なお町村ではいろいろな行政運営資金がありませんので、四、五箇月くらい俸給が払われないといつたような村が多くなつて来ております。またつむぎ業者その他の事業方面の運営資金が枯渇するために、これも完全に機能停止といつたような状態に置かれます。また商取引は、LC貿易の為替の取扱いを銀行においてしぶるので、商品の輸入が非常に狭められて、おそらくこの年末あたりの状況は、まつたく言語に絶する状態になりはしないか、こういうことが一般に予想されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/18
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019・大矢省三
○大矢委員 先ほどの陳情の中に、この復帰に関してどうしても必要欠くべからざるものとして四十億円は必要だ、それを県が二十六億に圧縮し、さらに今度十億円になつたということですが、これに関する数字を資料としていただけるかどうか。それをわれわれは参考にしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/19
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020・泉芳朗
○泉参考人 私今一部しか持つておりませんが、こちらに県の出張事務所がございまして、そこにありますので、あとで差上げることにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/20
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021・床次徳二
○床次委員 先ほど奥山参考人からお話がありましたが、法律の適用を相当延ばすようにという要望があつたのでございまして、本来から申し上げますならば、できるだけすみやかに内地同様にいたしたいということを、われわれも考えておるわけでございますが、地元においてはこれがいろいろな関係上困難なように見受けるのであります。この点地元としてどの程度お考えになりまして、そういう御意見になつたのか。これを地元の方から承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/21
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022・泉芳朗
○泉参考人 実は、現地においてまだ一般庶民の間に税法が徹底しておらぬ、法に対する認識が欠除していて、まつたく無知であるというような点もありますけれども、もつと大事なことは、まだ生活が復興していないのであります。つまり八年間の空白が取返されて、一般国民生活の水準まで復帰安定した場合は、この法が正常に運営されていいと思いますけれども、何分にも現在の郡民の生活では、国内法を一般的に適用することによつて、そこにいろいろの障害ができて来ますし、民間の生活、消費力といつたようなものが、まだ水準をはかるに下まわつている。結局は個人経済の貧困ということから、こうした税の措置を特別にお願い申し上げたいというのが根本的な趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/22
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023・床次徳二
○床次委員 なおさらに適当な機会に詳しく伺いたいとは思いますが、大体一括的に現地の御意向としてお尋ねいたしたいと思うのです。占領行政以後日本におきましても、いろいろと新しい法律ができ、これが実施せられておりますが、今回これを新しく適用するにつきまして、いろいろと地元といたしましては、法そのものの適用についてあるいは喜ばないものもあるかもしれない。単に時間的にずれるという問題、すぐ施行することが困難であるということ以外に、あるいはこういうものは好ましくないというものがあるかもしれぬと思うのでありますが、さような感想を持たれる日本において戦後新しくできました法律――現行法に対しまして、いろいろと御意見がおありになるものもあるのじやないかと思いますが、そういうものについて御意見があればお述べいただきたい。一例を申し上げますと、あるいは農地の問題とか、その他日本におきまして相当根本的なものがあつたわけでありますが、どんなふうにお考えになつておられたか、地方の気持を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/23
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024・泉芳朗
○泉参考人 われわれといたしましては、復帰は即時復興であり、同時に奄美の維新である。こういう意味において、まず基本的には人心を新たにする意味で諸制度、諸法規の即時実施を郡民全部がお願いしたいのであります。しかしながら、最初申し上げました通り新しい法に対する何らの素地がない。しかも新憲法による基本的な生活が保障されておらぬといつたような、いわば現在軍政下における植民地的な生活をして来ております関係で、新しい法律が復帰と同時に適用されることは好ましいことでありますけれども、そこに八年間の惰性から来るいろいろな矛盾が生ずることを心配するのであります。今先生からお聞きしましたような農地法のごときは、向うでは全然この法の趣旨を知らぬのでございます。従つて、八五%以上の農民、しかもその郡内の約三百名以上は、この法の適用を受けなければならないような状況下にあると大体想像されますが、これらの自作農あるいは不在地主たちは、ちよつとそこに経過期間を置いていただかぬと頓坐するのじやないか。またその他の間接税などの問題にいたしましても、われわれと一緒に陳情に上つておりますが、酒税のごときもいろいろと隘路があるわけでございます。まずわれわれの現地の気持としては、端的に申し上げますと、この八年間のわれわれの空白分離措置に対する一つの徳政として免税をしていただきたい、こういうのがわれわれのほんとうの気持でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/24
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025・西村力弥
○西村(力)委員 奄美大島の皆さんの血の叫びを毎回お聞きしておりますので、八年間人さらいにあつた子供たちといいますか、そういう人が帰られるような、私たちもほんとうに民族的な立場からそういう気持になるのでございますが、信託統治になつてアメリカが唯一の施政機関として、今までやつて来たその結果が、お話の通り、あるいは資料を拝見し、あるいは写真を拝見したようなぐあいにまつたく困窮そのもので、わが祖国に帰つて来る状況にある。この点についてははなはだ私は疑問にたえない。このたびのダレス声明を見ましても、奄美大島を日本に返すのだ、しかしそのほかの、平和条約の第三条に規定する諸島については、まだ必要があるから返さないのだ、返さないけれども、その住民の生活、そういうものについてはなお一段の恩恵を与えるであろうということをダレスが言つておる。そういうぐあいに言つておるこの心の底が現実に現われるならば、大島が今のようなボロをまとつた姿で疲れ果てて日本に帰るなどということがあるべきはずがない、こういうことが考えられる。事実上その通りの状況であるのでございまして、それがために皆さんのその熱意も一段と加わり、われわれのそれに対する熱意も加わるわけなんですが、八年間の間そういう状態に放棄されながら、住民の皆さんが復帰を叫びつつ、なおかつ復帰までのこの住民の民生安定を中心とした施策について、どういう方法でアメリカ当局に当られましたか、またそれに対して、実際にその効果が現われなかつたその障害は那辺にあつたのか、こういう点について実情をひとつざつくばらんにお話が願いたいわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/25
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026・泉芳朗
○泉参考人 御承知の通り、米軍は沖繩本島にいわゆる太平洋のジブラルタルを建設しております。沖繩本島は、いろいろお聞き及びと思いますが、この厖大な軍事施設、完全な軍の装備を中心として周辺の都市も発展しており、またいろいろな労務者の仕事なども相当あるわけでございますが、これに反しまして、他の地区、奄美地区、宮古、八重山等の離島地区には、何らこの軍事施設が行われないために、アメリカの資金が投ぜられないのであります。しかも沖繩本島が那覇を中心に、こういつたような厖大な近代都市を完備すればするほど、農村態様をもつてその存在を維持しているところの離島などは、ますますそれに反比例いたしまして衰微して行く一方でございます。現在琉球には大体十五億の通貨があると概算推定されますが、そのうちの約一億内外が奄美地区、そうしてさらに一億程度が南地区つまり宮古、八重山群島地区、あとの十二、三億程度は沖繩本島の通貨であり、しかもこの半額が那覇市を中心として回転しているのでございます。御承知の通り、那覇市は東洋一の大都市であります。東洋一と申しますのは、この消費力であります。東京から飛行機でうなぎをとつて消費する力を彼らは持つている。まぐろずしなども東京から飛行機で空輸して、彼らはこれを卓上に上らせる消費力を持つている。しかも一方には、軍の労務作業者たちがおるという皮肉な現象を呈してはおりますが、そうしたような近代資本主義、いわゆる基地景気で沖繩は栄えております。ただわれわれがアメリカに対して終戦以来ずつと要望したことは、アメリカは一応琉球地区に資本主義を与え、近代都市を形成してくれたが、一つだけアメリカが与えてくれなかつたものがある、それはこれらの近代資本主義の発展の過程において転落し逸脱して行くところの一般大衆を救済する社会制度、社会立法がないことである。実にアメリカはいろいろな資本主義的な近代文明を与えたが、大事な社会制度を一つも与えておらぬのであります。こういつた意味で、いよいよ農村の転落業者というものは非常に多くなり、特に奄美地区などは耕地が非常に狭小でありますために、農村の青年子女の失業者が続出し、これらが島内では何としてもその職がないので、沖繩に転落して行つて、いろいろパンパンになるとか、あるいは町の不良になるとか、実にゆゆしい社会問題を形成しているわけでございます。そういつたことがずつと現在まで続いておりますために、奄美地区、あるいはまた宮古、八重山地区はますます衰微して、せつかくのアメリカの援助が十分にその成果を発揮し得ないというような現状であります。たいへんずさんでございまいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/26
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027・西村力弥
○西村(力)委員 実情その通りで、必要な軍事基地もつくらずに、それによる都市経済的な恩恵も受けずに、いらないものを押えておられた。しかもこれに対して、転落して行く者に対する社会制度的な対策も行われていない。そういうことをお聞きしてよくわかりましたが、それに対して大島の住民がどういう立場でアメリカと交渉をせられたか。占領軍当局と交渉せられて、自分たちもその苦境から脱却するように努力せられたか。そうして、そうやつたけれどもこういう事情でそのことが実現せられなかつたとうよいうなことがおありでありましたならば、お教えを願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/27
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028・泉芳朗
○泉参考人 私は財政面に非常に暗いので、いろいろ数字的なことを申し上げることができぬのは非常に遺憾に思いますが、大体アメリカのガリオア資金による住民の援助は、沖繩本島に対して、これは一昨年でございますが、三億、宮古、八重山群島に対して一億六千万程度、奄美群島に対して八千万程度だつたことを記憶しております。人口は奄美群島が二十万、沖繩本島が六十万、宮古八重山が大体十万大島の半分でございますが、このようなところから見ましても、奄美大島はなまじつか基本産業の大島つむぎとか、あるいは黒砂糖を持つているために、中央政府あるいは軍から非常に経済力があるというような見方をされて参つたのであります。ところが現実においては、この基本産業である黒砂糖にしても大島つむぎにいたしましても、三十九度線でぶつた切られて本土との交流ができない限り、絶対にこれは成立しない産業であります。従つてその生産においても、その輸出においても、すべてが盲生産であり、盲貿易であつた。それで、非常に価格が不定で、市場が非常に狭められるといつたようなことで、この二つの基本産業――その他にも漁業とかかつをぶし、あるいはまくら木というような産業がありますけれども、これがすべて本土が市場であります。これが分離によつて閉鎖されたために、この基本産業が完全に崩壊した。そういうことでわれわれとしては、この分離のまま経済自立を中央政府から要求されるには、あまりにわれわれの素地が貧弱であるので、軍に対して別わくの補助をお願いしようというので、一昨年の暮れから去年の当初にかけまして、奄美大島経済振興緊急三箇年計画というものを立てましたが、これは地方庁、琉球政府の出先と市町村長、民間の関係業者有識者といつたような人が経済審議会というものをつくりまして、これに大体十二億の予算を計上し、それを三年間で特別援助してもらいたいということを、軍に嘆願したのでございます。この嘆願は軍としても取上げたのでありますけれども、遺憾ながらガリオア資金は年々琉球政府に対しては減らされる。一九五四年度から打切られるということになりました関係で、この問題は今日まで琉球軍においても取上げられる機会が与えられず、あるいは政府においても特別な措置が講ぜられず、遂にわれわれは八月八日のダレス朗報を聞いて、いよいよ復帰してからすべてを祖国にお願いするほかはない、日本政府にお願いするほかはないということで、今日に至つているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/28
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029・門司亮
○門司委員 この機会に、今大矢さんからお聞きになつたことと同じようなことですが、数字の開きが少しありますので、念のために確かめておきたいと思います。今の二十六億あるいは四十億と言われておりますのは、私はこれは非常に島にとつて重大な問題だと思いますので、一応念のために聞いておきたいと思います。島では四十億くらい必要だという、県は二十六億にしぼつたというし、政府はさらにこれを十億にしぼつたという。このことは島から考えれば、四分の一に減らされておるということであります。しかしわれわれとしては、このこと自体は現地の人には非常に大きな問題として考えられなければならぬ問題でありますので、念のためにこの機会にはつきり聞いておきたいと思います。
あなた方の要求されておりますものは、大体概算されたものであつて年度にかかわりのない、それだけのものが必要だというようにお考えになつているのかどうかということであります。これは予算の上で非常に問題でありまして、いくら金がありましても、それがその年度内に消費ができないということになれば、これはただ置いておくだけであつてどうにもならない。しかし本年度内にどうしてもこれだけのものは必要だというのなら、それはまた計上しないわけには参りません。従つてあなた方の要求されておりますものというものは、そういう意味で来年の、というかあるいはさしあたりの年度内の必要であるのか、あるいはたとえば学校全体を建てかえるにはこれだけの金がいる、あるいは道路を直すのには、これだけの金がいるというようなことが、この中に含まれておるのかどうか、それを明確にひとつ説明をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/29
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030・泉芳朗
○泉参考人 当初私どもが現地で町村長会議並びに各業者関係で、寄り合つて調整した約四十億という予算は、大体五箇月間の緊急の事業、あるいは教育復興、社会施設、失業対策、その他の事業といつたようなもの一切を含めて、年度内にこれが執行できる可能性のあるものだけを取上げて計上した数字でございます。さらに二十九年度以降のいわゆる恒久的な復興計画に基く資料は、また別に用意してあるのでごいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/30
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031・門司亮
○門司委員 問題はだからそこにあるのでありまするが、そういたしますと、約四十億くらいのものがなければ、さしあたりの問題としてまかなえないということ、それから同時にこれだけのものは大体五箇月間くらいで十分にこなし得るといいまするか、仕事のできる範囲であるということに解釈してもよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/31
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032・泉芳朗
○泉参考人 この資金をそのまま送つては仕事にはならぬのであります。結局は資材と技術を送つていただきたいのであります。われわれは全面的にこれを資金でいただく、しかもそれはただ補助金でなくてもいいのであります。いろいろな融資の道でも開いていただけたら幸いであると思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/32
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033・門司亮
○門司委員 そういうことだと実は問題になるのでありますが、たとえば学校を建てるにいたしましても、いろいろな資材もいるでしようし、それからいろいろの問題がやはり起つて来ると思います。従つて今のお話では大体四十億というものは、そういう意味で各般のものが計画的にといいますか、順調に運べば大体このくらいの仕事がなし得るのではないかというように、私ども今の御答弁で大体解釈していいと思います。従つて十億ということにこれがなつて参りますと、一体それがどの辺まで仕事をされて来るかということが、非常に大きな問題になると思います。数字の関連としてお聞きしておきたいと思いますが、もしこれがかりに十億ということになりますと、学校の改築その他というようなものには――政府はどういうふうな内容かわかりません。今ちよつと説明がありましたけれども、あの内容を聞いてみますと、大部分が人件費に使われるようなことが書いてありまして、従つて施設費にはきわめて少いものがまわるであろうと思いますが、十億ぐらいのものでは、政府の説明を聞きましても、施設費には全然まわらないと考えてもさしつかえないと思います。そういうことではむろん悪いのでありましようが、もしそういうことになつて参りますと、どの程度の支障ができて来るかというようなことで、もし具体的にお話ができるものでもございましたら、この機会にお聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/33
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034・泉芳朗
○泉参考人 こまかに資料は県のものに出ておりますので、あとでごらんいただきたいと思いますが、要するにこの十億では、八年の痛手を受けて、そのままの、現在あるがままの状態を、一応来年の三月までカンフル注射でもして、一時これを糊塗しておくというような、きわめて消極的な措置しかできぬと思います。たとえば校舎のごとき、雨漏り教室がざらにあるのでございますが、これを速急に改築するということなど、とうてい不可能であると思います。だからこれを修繕するといつたようなこと、あるいは社会事業等にいたしましても、道路の開通とかあるいは林道の開通とか、その他港湾の事業とかいうようなものを積極的に打出して、失業者の吸収というような措置も講じられるのでありますが、積極的にそういつた社会全般の総合的な事業の計画運営というのが、この予算ではとうてい不可能だと思います。さらに地方の町村の財政交付金などにいたしましても、私どもといたしましては、現在人口割からしても、いろいろな面において交付金は琉球政府からはきわめて微々たるものでございますが、現在の大島の市町村の運営は、戦前の、昭和十二年ごろの四分の一の費用で、町村の運営ができておるのでございます。また宮崎県とか鹿児島県のモデル農村などの一般歳費と比べまして、約その四分の一に該当しておるのでございます。ですから町村の行政機構というものも、非常に戦前のあの翼賛体制時代の収縮された形で、人員なども町村平均十二、三名程度でございまして、これはさしあたり復帰と同時に国家事務、あるいは県の事務などが相当たてこもうと思いますが、今の町村の吏員組織では、とうていそういつたような国家事務などを受入れる機能はないし、当然増員しなくちやならぬと思うのであります。そういつたようなところが、ちつともこれには考慮されておらぬ。従つて交付金なども、われわれから言うならば非常に少いと思うのであります。なおこの事業費も沖繩政府の今年度分である予算が、ほぼ盛られておるようでありますが、これはほんとうに最小限度郡内のあちら、こちらの――微々たるものでありまして、もつとわれわれとしてはやりたい仕事が残されてある。大体琉球予算のわく内においてわれわれがつくつた、あるいは琉球政府が計上したのを、ただ日本円に換算してある、こういつた程度であるので、そこにわれわれとしては心細いものを感じるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/34
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035・灘尾弘吉
○灘尾委員 ただいまのお答えで考えたのでありますが、アメリカが依然として統治をするとせば、今年度内にどのくらいの経費が盛られる予定でありますか、この点ひとつ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/35
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036・泉芳朗
○泉参考人 アメリカの統治を受けておれば、年度内に大島郡の予算は大体二億二、三千万くらいになると思います。全琉の予算は十五億程度であります。そのうちの二億くらいは軍が援助しますが、あとは租税によるということで、大島郡から大体一億二、三千万程度の税が行き、大島に対する二億ちよつとくらいのいろいろな費用が来るわけでございます。その程度のことしか答えられませんが、あしからず……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/36
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037・石井通則
○石井(通)政府委員 ただいまの灘尾委員の御質問に対しましてお答え申し上げます。琉球政府の一九五四年度予算は本年の七月から来年の六月になつておるのでございますが、これが七月、八月、九月ごろまで暫定予算でございましたが、九月の末ごろ本予算が確定したと聞いております。その予算によりますと、全琉の本年度予算は、B円にいたしまして約十七億余であります。そのうち奄美群島に交付せらるる予定として考えられておりまする総金額が、B円にいたしまして二億八千万余りでございます。日本円にしますと一年間八億四千万円、こういうような金額が予定されておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/37
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038・山中貞則
○山中(貞)委員 二、三参考までにお尋ねをしておきたいと思うのであります。これは参考人よりもむしろ連絡事務局長の方がいいかと思いますが、十一月一日から琉球政府の大島群島に対する予算の配付が打切られたというような具体的な話を承つておつたのでありますが、復帰がかように十一月一日のめどがおくれまして、具体的にその間に実際上必要な予算のブランクが現実において生ずるといたしますと、非常に問題があるのではないかと考える次第であります。従つてその問題の解決を、返還を目前にした日本政府がすべきものか、あるいは琉球の現在までの責任行政府が負つて行くべきものか、そこらのところもまた新しく考えなければならぬ問題だろうと思うのであります。そこでその間についての事情がブランクを生じるか、生じないか等についておわかりであれば御説明を願いたい。まずそれからお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/38
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039・石井通則
○石井(通)政府委員 私どもの聞いておりまする範囲におきましては、琉球政府の予算は、奄美群島が復帰するまで予定せられておりまする二億八千万B円から各月割により支出される、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/39
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040・山中貞則
○山中(貞)委員 そういうふうに配分されておつたものが、十一月一日の復帰が確定しない前において、一方的に琉球軍政府の方から十一月一日以降の予算の配賦についてはこれを行わないという通達が、現地にあつた、こういうことが明らかにされたが、そういう事実があつたかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/40
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041・石井通則
○石井(通)政府委員 その十一月一日というのはただ希望的観測でございまして、十一月一日で打切るというような公式の指令とでも申しますか、通告というのは聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/41
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042・山中貞則
○山中(貞)委員 そうすると実際上は日本政府が引取るまでは、月ごとの予算の配分が行われる。従つてその間のブランクというものは実際上生じないと解釈してよろしいでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/42
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043・石井通則
○石井(通)政府委員 細部にわたりましての予算の配当の方法につきましては詳細わかつておりませんが、各月にそれぞれ必要な経費は復帰の日まで、琉球政府で交付するということになつておりますので、その間の支障がどの程度起るかということは、現在のところははつきりいたす段階になつていないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/43
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044・泉芳朗
○泉参考人 今の局長の御説明につけ加えて申し上げます。今山中先生の御質問では、その間ブランクを生じないかというようなお尋ねでございますが、これは政府職員、学校の教職員の人件費あるいは政府の運営費はブランクを生じません。しかしながらその他の事業費が全部停止されておりますので、それは大きなブランクであります。むしろそれこそほんとうのブランクでありまして、民間の、町村の運営なども、さつき説明した通り困難が生ずるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/44
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045・山中貞則
○山中(貞)委員 そういたしますと、日本にほんとうに見られなかつた教育税ですね。これは市町村単位で教育税を徴収するようになつておると思うのですが、しかしそれの実施については町村法によらずして、民政府が直接税法でもつて取立てるようになつおるわけです。そういうものも打切られるとわれわれは考えてよろしいのですか。そういう状態が来るということを心配しておるのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/45
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046・泉芳朗
○泉参考人 教育税の問題は、七月の予算編成期において、たいていの村が編成だけをして、まだ執行をしておりません。つまり復帰が十一月というので、これがまたがりますと、そこに通貨の切りかえだとかいろいろ錯綜して納める側でも非常に困るということで、一応私の名瀬市の場合を申し上げますと、とりあえず七、八、九、十の四箇月分を市議会の議決によりまして信用組合からB円で三十万円だけ借りて、まず十月までのつなぎ資金をこれでやる、あとは復帰すれば何とかこの道も生じようということで、実質的には教育税は成立してもこれを執行しておらぬ、教育の運営は空白であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/46
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047・山中貞則
○山中(貞)委員 次に現在この暫定措置に関する諸法律とともに、予算額が十億計上してあるわけでありますが、これは先ほど他の議員の質問に対して、現在の琉球軍政府下において、日本円に直した場合に年間八億前後であるという答弁があつたようでありますが、しかしながら先ほどどななたかのお話にもあつたごとく、これは決して大島の群島の住民を主にして考えたアメリカの行政のあり方でなかつたわけでありまして、ただ細々ながら機構を維持し、人間が生きて行くにようやく足りる程度の予算措置であつたと、私どもは考えざるを得ないのであります。というのは戦前において大島には、鹿児島県の特別会計において、国の特殊補助による大島振興計画が与えられておつたわけでありまして、そういう予算を現在の日本円の金額に直したら、適用されておつた琉球軍政の予算というものはまつたく問題にならない金だと思う。そこで今回の十億というものが、それに比べたら与えているじやないかという議論もあるいは生ずるかもしれませんが、われわれから考えるならば、これは御説明にもあつたそうでありますが、まつたく引継ぐためのいわゆる事務的な引継ぎの混乱を起さない程度の最低の費用だというふうに考えるわけであります。そうすると、八年間の苦労――敗戦国民でありますからみんな苦労したのでありますが、その中でも特別の、理由のない犠牲のもとにあえいでおつた人々が帰つて来た、その迎えるための予算としては、これは何らの配慮もなされていないと私は考えるわけであります。今年度補正が再度行われるといたしますならば、その機会に、今年度から日本に迎えたいわゆる旧領土である奄美大島というものに対する振興費の計上というものが、当然なされなければならぬと思うわけであります。そうすると、もちろん泉市長あたりにおかれても、現地でいろいろの研究をされておると思うのですが、鹿児島県においても委員会が正式につくられておるようであります。そういうところでさしあたり本年度必要とする経費というものをもう一ぺん研究されて、県段階を通じて本委員会等に、あるいは政府に正式な折衝をなされる必要があるのではないか、こう考えるわけであります。さらにまた今後の問題につきましては、ことしは御承知のように押し詰まつておりますので、二十九年度あたりを第一年度といたしまして、何箇年かの計画的な予算を現地自体においても、直接つくつてみられる必要がある、こういうことを考えるわけであります。そういう問題について御意見をお聞かせ願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/47
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048・泉芳朗
○泉参考人 ただいまおつしやる通り、私どもは復帰対策委員会をつくりまして、いろいろ現地の資料の調整にあたつて参つておるのでありますが、ちようどこの復帰対策委員会が発足して二十余りの専門部門をつくつて態勢を整えているときに、国からの調査団あるいは県からの調査団、合せて三十名余りの方々をお迎えして、その当時まだ資料が完成しておらなかつたのでありますが、いろいろ各個ばらばらに陳情申し上げたのでございますが、この数字はもちろん郡全体としての決定的な数字ではなかつたのであります。従つて今おつしやる通り、われわれとしましてはどうしても大島郡復興の対策に必要な決定的な資料をつくつてかからなければならぬというので、私が出発のちよつと前から、そのつもりで現地ではその資料を予算化するために、今大わらわとなつておりますので、あるいはもうでき上つておると思います。御高説の通り現地でも極力そういつたような方法をとり、これを県あるいは国に向つて要望いたしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/48
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049・山中貞則
○山中(貞)委員 それについてはただそういう矛うに考えるだけでは、決してこの委員会にも政府にも、具体的な事実は反映しないのでありまして、県が本年度必要として算定しました二十六億は、県が今まで具体的にやつておる行政上の実際の経験から割出した具体的な数字だと思うのでありまするから、その最低必要量の数字すなわち残り十六億というものは、少くとも本年度中に何らかの形において予算化されなければならない必要経費として足がかりになると思うのです。そういう点をひとつ御研究願いたいと思うのであります。
それからもう一つ、ほんとうの参考まででありますが、お伺いしておきたいのは、今度のこの法律案の中に選挙法の特例が出ておるのでありす。これは主として国の問題で衆議院選挙だけでありますが、特例を設けまして、公職選挙法の施行後最初に更正されるまでの間、奄美群島をもつて一の選挙区とし、その選挙すべき議員の数は一人とする、こういうことになつておるわけであります。戦前は選挙地区に率いても、選出議員の数においても相当違つておりましたが、現在はとりあえず、こういう形をもつて法を施行せんとするのであります。これについて現地の皆様方はどういう受取り方をしておるか。希望があればこの際参考までにお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/49
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050・泉芳朗
○泉参考人 現地の声としては、八年間の痛手に対して、できるだけ多数の代表を国会に送り県会に送つて、緊急に国会と結び県会と結んで、これの復興に努めたい、こういうのが念願であります。従つて今回臨時措置法によつて、一人の代議士を送るということもいささか心もとないのでありますが、一人でもわれわれの代表を送り込まれる御措置をとつていていただくことについては、われわれ衷心感謝しております。そして今回は臨時措置法によつて出されても、将来はこれが国内法と一本になるときには、どうしても鹿児島県第三区と一本になりまして、戦前のような形でわれわれの代表を少しでもよけい送つて、奄美復興のために御尽力が願いたい、こういうことでありますが、さしあたりこの一人はこれも特別選挙によつて、すぐ国会に送られるようなおとりはからいを懇願申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/50
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051・山中貞則
○山中(貞)委員 打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/51
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052・滝井義高
○滝井委員 最後に一つ申し上げたい。今各委員の方といろいろ御質疑をいただいたのですが、少しわからない点がありますので、あとで資料を要求いたしたいと思うのです。今一九五四年の沖繩の関係の方の予算が大体十七億B円だ、しかも奄美群島に行くものが二億八千万B円、従つてこれは邦貨に直すと八億四千円万、こういうことでありました。同時にこれを戦前の状態に比較してみますと、一九三七年昭和十二年の奄美大島関係に行つた予算が三百十四万円になつているようであります。現在通貨を大体三百倍とみましても九億円、従つて日本を離れて沖繩の軍政下にあつた場合に八億四千万円、昭和十二年当時を現在に直して約九億円程度で、今度十億出すということになると、十億という金は荒廃した奄美群島が日本に復帰する段階では非常に少いと思う。ところがどうもいろいろ質問を聞き、計数の上から見ると、十億が妥当だというような感じが出て来る。従つて今後この法案が付託され、審議する過程において、アメリカの軍政下にあつた当時の予算の内訳、それから昭和十二年当時、比較的生活の安定しておつた当時の状態の予算の内訳、それから今度の詳しい予算の内訳、これは当然大蔵省は要求しなければなりません。そういうものも参考書類としてぜひ出していただきたいと思う。そうしないとどうもこの十億円は妥当だというようになる。今山中さんにも言いましたが、大島群島の振興事業費というのは、十二年度に九十八万円くらい出しておるようであります。こういうものを考えてみましても、三百十四万円にしかならないわけです。ぜひそこらあたりをもつと具体的にわれわれに納得の行くような数字を出していただきたいことを、最後にお願いをいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/52
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053・泉芳朗
○泉参考人 たいへん重大な御発言でありますが、実はこの県の資料の中に出ておるのは、私どもの推定では、たしか戦前鹿児島県の費用だけでも九億になつておつたかと思います。それでこの表はどういう基礎資料から出ておるのか存じませんが、あとでわれわれも調査します。ただあの場合は年々当時の三十五万以上の大島郡振興計画というものがあり、さらにその他いろいろな費用が、大蔵関係のものなんかもあつたと思います。この国費などの見積りが少いように思いますので、詳しく調査いたしましてお知らせいたしますから、どうぞ十億の妥当説は一応御考慮を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/53
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054・北山愛郎
○北山委員 その予算の問題は、おそらく当時においてはちようど戦争の初めであつて、国家予算の方が膨脹して、地方予算が非常に縮小した当時の事情もあるでしようし、また現在必要とされる予算というのは、現状において見なければならぬのですから、先ほどの県の資料も十分検討してきめなければならぬ、こう思うので、私の方から補足します。
それからなお非常に大事な点でございますが、これは外務省の方へお伺いしたいのです。要するに現在現地の方方が非常に困つておられるのは、復帰をしてやるのだという八月八日のダレスの言明、それから三月たつて、地元の人たちはもう近いうちに本国に帰れるのだというので荷物のしたくをした。ところがいつまでたつても出発にならないということで、非常に困つておられる。その間の復帰の手続が遅れている事情がどこにあるのか、また外務省は一体どういうふうな交渉を、ずつととつて来ているか、そういう交渉の経過をできるだけ具体的に話をして、現地の人たちにもまた国会に対しても納得を与えなければならぬじやないか。どういう努力をしておるか、またその障害になつている点が、一体どこにあるかということが一番かんじんの点ではないか。こんなことは簡単でありますから、ある暫定的なとりきめでもやれば、この法律が通ればすぐに金は出せるのです。十億であろうが何であろうが、とにかく金はすぐ行くというのですから。その点一番かんじんなところだ。そのかんじんの点を外務省の方から御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/54
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055・中井一夫
○中井委員長 実は今のあなたの御質問が根本問題なんです。それゆえにきようは外務大臣の出席も求めたのであります。ところが御承知のような事情で、塚田長官も閣議を今やつておるということですから、これも一括して次会にお願いいたします。
それでは本日はこの程度で散会をいたします。次会は明後日午前十時より開会をいたします。
午後零時二十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101704720X00119531031/55
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