1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年十一月一日(日曜日)
午前十一時八分開議
出席委員
委員長 小林かなえ君
理事 鍛冶 良作君 理事 田嶋 好文君
理事 吉田 安君 理事 古屋 貞雄君
理事 井伊 誠一君
大橋 武夫君 押谷 富三君
林 信雄君 飛鳥田一雄君
木下 郁君 佐竹 晴記君
中村 梅吉君
出席国務大臣
法 務 大 臣 犬養 健君
出席政府委員
法務政務次官 三浦寅之助君
検 事
(刑事局長) 岡原 昌男君
検 事
(検事局総務課
長) 津田 実君
外務事務官
(条約局長) 下田 武三君
委員外の出席者
国家地方警察本
部長官 斎藤 昇君
大蔵事務官
(銀行局長) 河野 通一君
専 門 員 村 教三君
専 門 員 小木 貞一君
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十月三十一日
日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁
判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特
別法案(内閣提出第一一号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約
第三条に基づく行政協定に伴う刑事特別法の一
部を改正する法律案(内閣提出第五号)
日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁
判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特
別法案(内閣提出第一一号)
法務行政に関連する保全経済会等特殊利殖機関
の調査に関する件
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/0
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001・小林錡
○小林委員長 これより会議を開きます。
本日はまず日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特別法案を議題とし、政府より提案の理由を御説明願います。犬養法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/1
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002・犬養健
○犬養国務大臣 ただいま議題となりました日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特別法案につき提案の理由を御説明申し上げます。
日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の発効に伴いまして、一九五〇年六月二十五日、六月二七日及び七月七日の国際連合安全保障理事会決議並びに一九五一年二月一日の国際連合総会決議に従つて朝鮮に軍隊を派遣したアメリカ合衆国以外の国で日本国との間に右議定書の効力が発生した国が右の諸決議に従つて朝鮮に派遣した陸軍、海軍及び空軍の日本国にある間におけるものに関しまして、右議定苦の趣旨にのつとり、刑事上の手続法につきまして若干の特別規定を設ける必要が生じましたため、この法律案を提出することといたしたものであります。
申すまでもなく、これらの軍隊の構成員、軍属または家族に対しましても、わが国既存の法令は、原則としてその適用を見るのでありますが、右議定書の附属書の条項により刑事手続関係の法令について若干の特別措置を必要といたしますので、その必要最少限度の規定をこの法律案に取入れた次第であります。従いまして、この法律案に特別に規定していない事項につきましては、原則として既存の各法令が適用されることと相なるわけであります。この法律案は、第一章総則、第二章刑事手続の二章十二箇条と附則からなつておるのでありますが、ここにこの法律案の主要点を申し上げます。
まず、第一章総則の章は、一箇条でありまして、この法律において使用する語の定義を定めたのであります。
この定義は、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定第一条に定められている定義に準じたものであります。次に、第二章刑事手続の章は十一箇条よりなり、国際連合の軍隊の構成員または軍属が国際連合の軍当局において裁判権を行使する第一次の権利を有する罪を犯した場合における同軍隊への身柄の引渡し、国際連合の軍隊がその権限に基いて警備している国際連合の使用する施設内における逮捕その他人身を拘束する処分及び差押え、捜索等の処分の執行、同施設内等において逮捕された者に対する日本側の受領手続、派遣国の軍事裁判所または国際連合の軍隊の当局の刑事手続に対するわが国側の協力及び派遣国の軍事裁判所または国際連合の軍隊による抑留または拘禁についての刑事補償法の適用等いずれも刑事手続に関する現行の法令をもつてしては処置し得ない問題を取り上げて特別の規定を置いたものであります。これを要するに、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の場合とほとんど同趣旨の刑事手続を規定したものであります。
以上この法律案につきまして概略御説明申し上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/2
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003・小林錡
○小林委員長 これにて提案理由の説明は終りました。
次に、本案並びに昨日提案理由の説明を聴取いたしました、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案の両案を一括いたしまして、政府から補足説明を求めたいと思います。岡原刑事局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/3
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004・岡原昌男
○岡原政府委員 御審議の便宜にと思いまして、別途法案の解説書をお手元にお配りしたはずでございます。先にアメリカ関係行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案の方から御説明申し上げたいと思います。
御承知の通り行政協定の第十七条におきまして、いわゆる刑事裁判権の行使に関する規定が置かれたわけでございます。これに基きまして刑事特別法が制定せられ、これが従来動いて参つたのでございます。ところがこの行政協定の十七条につきましては、その立て方がわが方に不利であるということからいたしまして、かなり各方面の批判の的となつておつた次第でございます。そこで私どもは、十七条第一項に、基き、これがNATO協定がアメリカについて発効した場合に、これと同一の歩調をとるようにという方針のもとに、まず本年四月十四日アメリカ側に対しましてその改訂を申し入れたのでございます。ところが当時アメリカにおきましては、この北大西洋条約、NATO協定を批准するかどうかという国内問題が紛糾いたしておりまして、結局講和一周年の四月二十九日までにはそれが見通しがつかなかつたのでございます。その後もアメリカの上院において、このNATO協定の批准問題をめぐりましてかなりはげしい論争が展開されたやに聞き及んでおるのでございますが、それが本年七月二十三日通過いたしまして、八月の二十三日からアメリカについて発効する。ここにアメリカ、フランス、ベルジツク並びにノールウエーの四箇国についてNATO協定が相互に効力を発する、さようなことになつたわけでございます。そこで私どもといたしましてはこれに伴い、前に申し入れました線に沿いましてさらにアメリカ側と交渉いたしました結果、約一月たちまして、九月の二十九日にその間の協定ができたわけでございます。これが今回の日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定第十七条を改正する議定書というものでございます。なおこの署名、調印を見ると同時に、これが十月二十九日から発効することになりますので、この議定書に基く公式議事録並びにこれに伴うこまかい問題等につきましても協議をいたしました結果、この細目につきましてもいろいろ話合いが進んで参つたわけでございます。今回はこのNATO協定に準じて改訂せられましたこの協定第十七条に基きまして、わが国の今まで動いて参りました刑事特別法のそれに抵触する部分を改正しようとするのが、今回の法律案であります。
今回の法律案の主要なる点は割合に簡単でございますが、従来の十七条の扱い方とがらつとかわりました、最近の国際公法のいわばモデル的なものといわれるNATO協定をそのままこちらに取入れたものでございますからして、その線に基いて、身柄のやりとりその他の問題もかわつて来たわけでございます。
簡単にNATO協定の骨子をお話いたしますと、いわゆる裁判権の所在について専属的裁判権、それから裁判権が競合する場合の第一次裁判権、それから第二次裁判権、こういう観念が入つて来たわけでございます。いわゆる専属的裁判権と申しますのは、甲の国において処罰できるけれども乙の国では全然処罰ができないというものは、甲の国において裁判権を行使する。逆の場合においては乙の国において行使する、これはきわめてはつきりいたしております。次に、甲の国の法律によつてこれを処罰することができ、同時に乙の国においてもこれを処罰することができるという場合にはどうするか。これが大部分の場合でございますが、その場合にはどうするか。そこで裁判権の競合という問題が生じて来るわけでございます。専属的裁判権につきましては、新たなる十七条の第二項にその規定がございますが、競合する場合の規定は第三項にございます。第一次裁判権をアメリカの方で行使する場合は、次の場合に限られます。これは行政協定十七条を改正する議定書のプリントの附属書のところをごらんになりますとよくわかるのでございますが、もつぱら当該国の財産若しくは安全のみに対する罪又はもつぱら合衆国軍隊の他の構成員若しくは軍属若しくは合衆国軍隊の構成員若しくは軍属の家族の身体若しくは財産のみに対する罪」いわば向うだけの関係の罪というふうなものについで犯罪が犯された場合、それからもう一つは「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」これは、従来国際公法上公務中の犯罪は軍隊側において専属的に処罰するという考え方がございましたものですから、それを第一次裁判権として取入れて規定してあるわけであります。その他の一切の場合はこちら側に第一次裁判権がある、かようにきめて参つたわけであります。そこで第一次裁判権と第二、次裁判権を同時に行使してもらつては困るので、最初に第一次裁判権を行使する国がその放棄の意思表示をやつた場合において、相手側においてその第二次裁判権を行使するということになるのでありますから、そこで三項のCというところで第一次裁判権を有する国が他方の申出によつてこれを放棄する規定を置いたわけであります。さような関係からいたしまして、今回の刑事特別法の改正もその線に沿うて諸般の改正が加えられたわけであります。解説書の第七ページに逐条解説というところがございますが、これをちよつと読み上げます。
最初は第十条関係でございますが、合衆国軍隊の使用する施設又は区域を「合衆国軍隊がその権限に基いて警備している合衆国軍隊の使用する施設又は区域」に、「承認を受けて」を「同意を得て」に改め、「検察官若しくは司法警察職員から」を削り、同条に次の一項を加える。」この第一項から申し上げます。
第一項は従来「施設又は区域」というふうに野放しに規定しておりましたものを、「合衆国軍隊がその権限に基いて警備している合衆国軍隊の使用する施設又は区域」というふうに限定いたしましたのは、第十月a及びbに関する公式議事録にその旨の規定がされたからであります。議定書のプリントの十三ページの1というところに、「合衆国の軍当局は、通常、合衆国軍隊が使用し、且つ、その権限に基いて警備している施設及び区域内ですべて逮捕を行うものとする。このことは、合衆国軍隊の権限のある当局が同意する場合又は重大な罪を犯した現行犯人を追跡している場合において日本国の当局が前記の施設又は区域内において逮捕を行うことを妨げるものではない。」と規定してございまして、合衆国の軍当局の警察権というものの行使する範囲はきわめて限定されて参つたわけであります。それに伴いまして、今回の改正で、この権限に基いて警備している場合だけを向うがやれる。その他の場合は一切日本側でやるというふうに改まつて来たのに伴いまして、かような改正をいたした次第でございます。
次の「承認を受けて」を「同意を得て」というふうに改めましたのは前の文字がアプルーヴという文字を使つてめりましたのがコンセントという文字にかわりましたので、語の調子から来る響きが若干違つて来るだけで、実質的にはさほど違つておりません。
次の「検察官又は司法警察職員から」という字を削りましたのは、従来の用語例に従いますと、検察事務官はどうなるのか、鉄道公安官はどうなるのかというような問題になりまして、権限を持ちながらこれに乗つかつて来ない場合も考えられますので、いつそのことそれらの疑念をなくすためにこれを除いておいた方がよかろう。かような趣旨であります。
第二項を追加いたしまして、「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる罪に係る現行犯人を追跡して前項の施設又は区域内において逮捕する場合には、同項の同意を得ることを要しない。」ということにいたしましたのは、比較的重い現行犯人が逃走する場合にこれを追跡してその施設内に入る場合には同意もいらない、引続きおつかけて行つてつかまえてよろしい。かような趣旨であります。この点は従来もアメリカ側との合同委員会のとりきめによりまして、内容はそのまま認められておつたのであります。これが今回先ほど申し上げました通り公式議事録の中に入つて参りましたので、それをそのまま今回取入れまして、同意なしに向うの施設内に入つてつかまえることができる、かようにいたした次第でございます。
次は第十一条でございます。「第十一条の見出し中「施設又は区域外で」を削り、「合衆国軍隊要員」を「合衆国軍隊の構成員又は軍属」に改め、同条第二項中「合衆国軍隊の使用する施設又は区域外で」を削り、「合衆国軍隊の構成員、軍属又は家族(以下「合衆国軍隊要員」という。)であることを確認したときは、」を「合衆国軍隊の構成員文は軍属であり、且つ、その者の犯した罪が行政協定第十七条つ第三項aに掲げる罪のいずれかに該当すると明らかに認めたときは、「一に改める。一この「合衆国軍隊の使用する施設又は区域外で」ということを削りつまして、そして「軍属又は家族」としたのは、この、合衆国軍隊要員」という従来は広い概念でこの引渡しの義務を認められておつたのでございまするが、今回の立て方は家族でございますと、先ほど申し上げました通り十七条三千項の第一次裁判権を向う側で持つという場合がないわけでございます。そこでさような関係から今回はこれがなくなつて参ります。同時にこの十七条三項aに掲げる、つまり軍人軍属で第一次裁判権を向う側で持つておる場合には、とこういうふうになつて来るわけでありまして、この場合には刑事訴証法の規定にかかわらず、ただちに向う側に引渡す、かような私趣旨にかわつて来たわけでございます。
次は第十二条関係でございます。「第十二条第一項中「行政協定第十七条第三項b又はcによる引渡の通知があつた場合」を「合衆国軍隊から日本国の法令による罪を犯した者を引き渡す旨の通知があつた場合にさ改める。」これは御承知の通り十七条全体の方から全部かわつて参つりまして十七条三項のbまたはcという引渡しはなくなつて参りました。さようなことから今回は合衆国軍隊から日本国の法令による罪を犯した場合に引渡しの通知があつた場合として、広くあらゆる場合を入れる、かような趣旨でございます。次は「第十三条第一項中「合衆国軍隊の使用する施設若しくは区域」を「合衆国軍隊がその権限に基づいて警備している合衆国軍隊の使用する施設若しくは区域」に改め、「以下同じ。」を削り、「承認を受けて」を「同意を得て」に改め、同条第二項を削る。」これはまつたく先ほど申したと同じ理由に基きまして、差押え、捜索、検証等をなす場合に、従来は施設区域内には原則として入れないという建前がとられておりましたのを、同じ施設区域でございましても、現に警備しておるという場合に限定いたしまして、その他の場合は、すべてこちらで自由にやれる。「承認を受けて」というのを「同意を得て」に改めましたのも、先ほど申したのとまつたく同一でございます。それから第二項は、従来かつような規定がございます。「合衆国軍隊の使用する施設又は区域外にある合衆国軍隊要員の身体又は財産についても、前項と同様である。但し、被疑者を逮捕するため捜索する場合、逮捕の現場で差押、捜索若しくは検証をする場合、又は行政協定第十七条第三項aに従つて逮捕することができる「合衆国軍隊要員についてその事件の証拠を収集するための差押、捜索若しくは検証をする場合は、この限りでない。」かような規定があつたわけでございます。しかし今回はすべて普通の刑事訴訟法の手続でこれがやれるということになりましたので削除いたしたわけでございます。
次は二十一ページの第十八条関係でございます。「第十八条第一項、第三項及び第四項中「合衆国軍隊要員」を「合衆国軍隊の構成員、軍属又は合衆国の軍法に服する家族」に改める。」これは日本国の法令によつて処罰し得ない事件、簡単に申しますと、向うだけでやれる事件、この事件について共助の規定が従来あつたわけでございます。ただ従来は「合衆国軍隊要員」ということで、軍人、軍族、それからあらゆる豪族がこれに入つて来ておつたわけでございますが、今回は行政協定の改訂に伴いまして、同じ家族でもいわゆる軍法に服する者というものだけが行政協定の対象になつて来るもの、あとはすべて普通の人と同じように取扱う、かようなことになつて参りましたので、それに伴いまして「軍法に服する家族」というふうに狭めた表現が使つてあるわけでございます。
それから附則でございますが、二十四ページ附則第一項は、「この法律は、公布の日から施行する。」第三項は「検察官又は司法警察員は、逮捕された者が合衆国軍隊の構成員、軍属又は家族であり、且つ、その者の犯した罪が昭和二十八年十月一十九日前の行為に係るものであることを確認したときは、この法律による改正後の第十一条第一項の規定により引渡をなすべき場合に該当しない場合においても、刑事訴訟法の規定にかかわらず、直ちに被疑者を合衆国軍隊に引き渡さなければならない。」この点は、われわれが従来訴訟法の立て方として考えておりました、ことに刑事訴訟法につきましては、法律の改正がありました場合には、罪の犯された日のいかんを問わず、現にその手続をする際の法律によつて、これを規定するというのが大体の立て方であつたわけでございます。ただこの立て方、一種の法制につきましては、まつたく反対の法制が一つございます。従来のわれのなれておる今の立て方は、いわば大陸法系の考え方でございます。しかるに英米法系におきましては、むしろ罪を犯したときを標準にしてそのときの手続法規に従つて事を律するというのが一般でございます。アメリカの諸州における立法例ならびに裁判例もそれに従つておるのでございます。さような根本的の法制の違いからいたしまして、この点につきましては、アメリカ側と最後まで論争があつたのでございますが、私どもとしてこの問題についての資料を集めてみましたところ、現在に至つて、つまりこの条約が発効して後に、さかのぼつて前の犯罪を取立てて、これを検挙処罰する実益のある犯罪というものはほとんど見当らない。つまりさかのぼつて一年前の事件を検挙しようというふうな事実はほとんど見当らない。そこでわれわれといたしまては、われわれのなれた法制に従わせるのがいいという主張を最後までいたしましたが、最後にその実益がない、むしろ向うでやるなら向うでつやつたらよかろうというところから、議定書の最後の適用条文で、「この議定書の規定は、議定書の効力発生前に犯されたいかなる罪にも適用されない。それらの事件に対しては、この議定書の効力発生前に存在した行政協定第十七条の規定が適用されるものとする。」つまり従前の例で行くというような建前をとつたわけでございます。それに伴いまして、ただいまのような経過規定になつたわけでございます。
それから第三項は、「司法警察員は、前項の規定により被疑者を合衆国軍隊に引き渡した場合においても、必要な捜査を行い、すみやかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。」これは要するに前項の規定によつて捜査をいたした場合の事件送致の規定でございます。
第四項は、「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う国税犯則取締法等の臨時特例に関する法律の一部を次のように改正する。第三条第一項中合衆国軍隊の使用する施設及び区域」を「合衆国軍隊がその権限に基いて警備している合衆国軍隊の使用する施設及び区域」に改める。」、この改正の趣旨は、今まで十条、十三条関係で申し上げたのとまつたく同趣旨でございます。
次は国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特別法案の解説をいたします。ただいま大臣からの提案理由にもありました通り、今回国際連合の軍隊の地位に関しまして、刑事裁判権の行使に関する新たなるとりきめが成立したわけでございます。その考え方は、今までございました安全保障条約第三条に基づく行政協定とこれに準じた扱いをしようということなのでございます。そこでそれに基くアメリカ以外の、国際連合の軍隊についての刑事裁判の手続をいかようにすべきかという点につきまして、わが国において現在あります刑事特別法、この法律と準じた法律をつくらなければいけない、かようになつて参つたわけでございます。立法の経過におきましては、刑事特別法の規定を何か簡単に準用するようなことはできないだろうかというふうなことを考えましたけれども、簡単にこれを準用するということでは、間違いが起きてもいけませんし、そこでほとんど全部同文でございますが、ただ最初の定義と、それからその後の合衆国軍隊というふうな文字を国連の軍隊というふうに書きかえるというような程度において、全部書き直したわけでございます。御承知の通り、行政協定に伴う刑事特別法におきましては、第一章において定義を掲げ、第二章、第二条から第九条までは罰則がございました。ところが国連関係ではそのような罰則の点は全然不要でございますので、これを落しました。行政協定に伴う特別法の第三章の第十条、刑事手続の移行の規定をそつくりそのまま今回の法案に、第二条以下として取入れて参つたわけでございます。でございますからその内容は、従来の刑事特別法とほとんど同一というふうに御承知願つてけつこうだと思います。第一章第一条の定義を読みますと、「第一条この法律において「議定書」とは、日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書をいう。」これは簡単でございます。
第二項は、「この法律において「派遣国」とは、千九百五十年六月二十五日、六月二十七日及び七月七日の国際連合安全保障理事会決議並びに千九百五十一年二月一日の国際連合総会決議に従つて朝鮮に軍隊を派遣したアメリカ合衆国以外の国であつて、議定書に署名し、且つ、日本国との間に議定書の効力が発生したものをいう。」この派遣国と申しますのは、現在までに署名いたしましたイギリス、カナダ、オーストラリア、ニユージーランド及び南アフリカ連邦、かようになつておるわけでございます。
次に第三項の、「この法律において「国際連合の軍隊」とは、派遣国が前項に規定する諸決議に従つて朝鮮に派遣した陸軍、海軍及び空軍であつて、日本国内にある間におけるものをいう。」先ほど読み上げましたような諸決議に従つて派遣国が朝鮮に軍隊を派遣しておるわけでございますが、それが日本国内における間のみを言うのでございます。日本国内というのは、もちろん日本国の行政権の及ぶ範囲ということでございます。単純に朝鮮に派遣された、向うにあるというものはもちろん入つておらないのであります。次に第四項、「この法律において、「国際連合の軍隊の構成員」とは国際連合の軍隊に属する人員で、現に服役中のものをいう。」これはいわゆる簡単に軍人という者でございます。
次に第五項、「この法律において「軍属」とは、派遣国の国籍を有する文民(派遣国及び日本国の二重国籍者については、当該派遣国が日本国内に入れた者に限る。)で、当該国際連合の軍隊に雇傭され、これに勤務し、又はこれに随伴するもの(通常日本国内に在留する者を除く。)をいう。」これは行政協定の際において問題になりましたと同様に、派遣国の国籍を有する者であつて、二重国籍の場合には、向うがこちらに連れて来た者という場合だけに限るわけでございますが、それで軍隊との関係は、雇用、勤務、随伴というふうな関係がなければいかぬということであります。
第六項は、「この法律において「家族」とは、左に掲げる者(日本国の国籍のみを有する者を除く。)をいう。一、国際連合の軍隊の構成員又は軍属の配偶者及び二十一歳未満の子 二、国際連合の軍隊の構成員又は軍属の父、母及び二十一歳以上の子で、その生計費の半額以上を当該国際連合の軍隊の構成員又は軍属に依存するもの――これも前に刑事特別法の際に申し上げた通り、行政協定の第一条に掲げたと同じ形でございます。
次に、第二章の刑事手続でございますが、五ページに第二条がございます。「第二条国際連合の軍隊がその権限に基いて警備している国際連合の軍隊の使用する施設内における逮捕、勾引状又は勾留状の執行その他人身を拘束する処分は、当該国際連合の軍隊の権限ある者の同意を得て行い、又は白該国際連合の軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。2 死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しては禁こにあたる罪に係る現行犯人を追跡して前項の施設内で逮捕する場合には、同項の同意を得ることを要しない。」これは先ほど十条の改正について申し上げました通り、国際連合につきましても、その軍隊がその権限に基いて警備しておる施設内におけるという場合だけに限つております。
それからなおこれに入る場合は同意を得て行う、あるいは嘱託を要する。第二項は、現行犯人を追いかけた場合には、その同意もいらない、かような趣旨であります。
次は第三条、第八ページでございまして、「検察官又は司法警察員は、逮捕された者が国際連合の軍隊の構成員又は軍属であり、且つ、その者の犯した罪が議定書の附属書第三項aに掲げる罪のいずれかに該当すると明らかに認めたときは、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定にかかわらず、直ちに被疑者を当該国際連合の軍隊に引き渡さなければならない。2 司法警察員は、前項の規定により被疑者を国際連合の軍隊に引き渡した場合においても、必要な捜査を行い、すみやかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。」これも先ほど行政協定の第十一条について御説明いたしましたとまつたく同一でございます。ただ今回の「議定書の付属書第三項aに掲げる罪」というふうに文字がかわつておりますが、内容的には先ほど申し上げました行政協定の第十七条の改まつた第三項のaと同様であります。
次は第四条、第十一ページでございます。「検察官又は司法警察員は、国際連合の軍隊から日本国の法令による罪を犯した者を引き渡す旨の通知があつた場合には、裁判官の発する逮捕状を示して被疑者の引渡を受け、又は検察事務官若しくは司法警察職員にその引渡を受けさせなければならない。2 検察官又は司法警察員は、引き渡されるべき者が日本国の法令による罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があつて、急速を要し、あらかじめ裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げてその者の引渡を受け、又は受けさせなければならない。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。3 前二項の場合を除く外、検察官又は司法警察員は、引き渡される者を受け取つた後、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。4第一項又は第二項の規定による引渡があつた場合には、刑事訴訟法第百九十九条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。但し、同法第二百三条、第二百四条及び第二百五条第二項に規定する時間は、引渡があつた時から起算する。」これは行政協定に伴う刑事特別法の第十二条に相応するという規定でございます。国際連合の軍隊が日本の法令による罪を犯した者をつかまえて、こちらに引渡すという知らせがあつたという場合におきましてこれをどういうふうにわが国の訴訟法とつなげるかという問題でございます。これを簡単に受取りに行つてもらつて来るわけに行きませんので、身柄拘束の根拠規定であるところの逮捕状の発行を受けてこれを連れに行くというような原則が第一項でございます。その急速を要して逮捕状を求めることができない場合の緊急の手配が第二項でございます。それ以外の場合におきましてはこれを釈放するということになりますが、なおこちらに身柄の引渡しがあつた場合の時間の起算点が逮捕のときからといたしますと、刑事訴訟法の規定の四十八時間、あるいは二十四時間、合計七十二時間という時間が非常に制限を受けて参りますので、これはわが方に身柄が来たときから起算するというようにいたした次第でございます。すべて行政協定に伴う刑事特別法の第十二条と同趣旨でございます。
次は十六ページ、第五条関係、「国際連合の軍隊がその権限に基いて警備している国際連合の軍隊の使用する施設内における、又は国際連合の軍隊の財産についての捜索(捜索状の執行を含む。)、差押(差押状の執行を含む。)又は検証は、当該国際連合の軍隊の権限ある者の同意を得て行い、又は検察官若しくは司法警察員から当該国際連合の軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。但し、裁判所又は裁判官が必要とする検証の嘱託は、その裁判所又はり裁判官からするものとする。」これは行政協定に伴う刑事特別法の第十三条に相応する規定でございます。先ほども申し上げました通り、施設内の差押え捜索等につきましてはそれが国連の軍隊の権限に基いて警備されておるというものでなければいかぬわけであります。それからそれに看守する場合の同意あるいは嘱託を得て行うこと、これも先ほど第十条あるいは今回の第二条について御説明いたしたと同じでございます。
次は第十七ページの第六条関係でございます。「第六条議定書により派遣国の軍事裁判所が裁判権を行使する事件であつても、日本国の法令による罪に係る事件については、検察官、検察事務官又は司法警察職員(鉄道公安職員を含む。)は捜査をすることができる。2 前項の捜査に関しては、裁判所又は裁判官は、令状の発付その他刑事訴訟に関する法令に定める権限を行使することができる。」これは行政協定に伴う刑事特別法の第十四条に相応する規定でございます。向うで裁判権を行使する事件であつても、日本の法令に違反する限り、日本の捜査官においても捜査の権限を持つておるということを明らかにした。これはもう当然のことだと思いますけれども、念のために明らかにした次第でございます。これは従来の第十四条関係とまつたく同じでございます。
次は十九ページの第七条、「第七条派遣国の軍事裁判所の嘱託により、裁判官から派遣国の軍事裁判所に証人として出頭すべき旨を命せられ又は派遣国の軍事裁判所において宣誓若しくは証言を求められた者は、これに応じなければならない。2 前項の者が、正当な理由がないのに、出頭せず、又は宣誓若しくは証言を拒んだときは、一万円以下の過料に処する。」これは行政協定に伴う刑事特別法の第十五条に相応する規定でございます。向うの軍事裁判所からある人間を証人として調べる必要があつて呼出しをかける場合がございます。ところが、かんじんの証人が言うことを聞かない。従つてそれについての裁判が適正に、あるいは迅速に進行しないということがありましては困るのでありまして行政協定の際と同様に、今回も国連協定の六項のaにあります趣旨をそのまま取り入れたものであります。
次は第二十ページの第八条関係でございます。「第八条正当な理由がないのに、前条第一項の規定による裁判つ官の出頭命令に応じない証人について派遣国の軍事裁判所から嘱託があつたときは、裁判官は、その証人に対して勾引状を発して、これを、派遣国の軍事裁判所に勾引することができる。2 前項の勾引状には、派遣国の軍事裁判所の嘱託の趣旨を記載しなければならない。3 第一項の勾引状は、検察官の指揮により、司法警察職員が執行する。4 刑事訴訟法第七十一条及び第七十三条第一項前段の規定は、第一項の規定による勾引に準用する。」これも行政協定に伴う刑事特別法の第十六条にまつたく相応する規定でございます。これは何としても出て来ない、しかしその事件の証人として一度はぜひ調べなければいかぬというような場合には、日本の裁判所において、証人について特別な条件のもとに勾引状を発するのと同様に、この際も勾引状を発して証人を連れて行つて証言させるという趣旨でございます。2項、3項、4項はいずれもそれの手続でございますが、これもまつたく前の刑事特別法と同じ趣旨でございます。
第二十二ページの第九条、「第九条裁判所、検察官又は司法警察員は、その保管する書類又は証拠物について派遣国の軍事裁判所又は国際連合の軍隊から、刑事事件の審判又は捜査のため必要があるものとして申出があつたときは、その閲覧若しくは謄写を許し、謄本を作成して交付し、又はこれを一時貸与し、若しくは引き渡すことができる。」これは先ほど申したと同じ協力義務の一つの面でございまして、裁判所、検察官もしくは司法警察員は、その保管する書類、証拠物を、向うの裁判所の捜査のためあるいは審判のために必要であるから貸してくれと言われた場合、これに応じて向うに貸し出すという趣旨でございます。これは行政協定に伴う刑事特別法の第十七条と同じ規定でございます。
次は二十四ページの第十条でございます。「第十条検察官又は司法警察員は国際連合の軍隊から、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、当該国際連合の軍隊の構成員、軍属又は当該派遣国の軍法に服する家族の逮捕の要請を受けたときは、これを逮捕し、又は検察事務官若しくは司法警察職員に逮捕させることができる。2 国際連合の軍隊から逮捕の要請があつた者が、人の住居は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内にいることを疑うに足りる相当な理由かあるときは、裁判官の許可を得て、その場所に入りその者を捜索することができる。但し、追跡されている者がその場所に入つたことが明らかであつて、急速を要し裁判官の許可を得ることができないときは、その許可を得ることを要しない。3 第一項の規定により国際連合の厚生員、軍隊の構成員、軍属又は当該派遣い国の軍法に服する家族を逮捕したときは、直ちに検察官又は司法警察員から、その者を当該国際連合の軍隊に引き渡さなければならない。4 司法警察員は、前項の規定により国際連合の軍隊の構成員、軍属又は当該派遣国の軍法に服する家族を引き渡したときは、その旨を検察官に通報しなければならない。」これは行政協定に伴う刑事特別法の第十八条とまつたく同趣旨で、向うの刑事事件であつて日本国の法令にはひつかからぬ事件、さような場合の共助的な規定でございます。一項は向うの要請がありました場合の逮捕の手続、二項は捜索を例外的にできるという規定でございます。三項は引渡しの規定、つまり向うからの要請に基いてつかまえたのを、うまく手に入つたからというので引渡す際の規定、四項は引渡した場合の通報の規定でございます。
次は第二十六ページの第十一条、「第十一条 検察官又は司法警察員は、派遣国の軍事裁判所又は国際連合の軍隊から、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、協力の要請を受けたときは、参考人を取り調べ、実況見分をし、又は書類その他の物の所有者、所持者、若しくは保管者にその物の提出を求めることができる。2 検察官又は司法警察員は、検察事務官又は司法警察職員に前項の処分をさるせことができる。3 前二項の処分に際しては、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、その処分を受ける者に対して派遣国の軍事裁判所又は国際連合の軍隊の要請による旨を明らかにしなければならない。4 正当な理由がないのに、第一項又は第二項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の処分を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一万円以下の過料に処する。」これはやはり先ほどと同じように、日本の法令による罪にかかる事件以外の刑事事件、向うの犯罪の事件について協力の要請を受けた場合に、参考人を取調べたりあるいは実況見分をしたり、その他任意の提出を求めることができるという、いわゆる任意捜査の根拠規定でございます。二項は司法警察員、検察官、検察事務官なり、司法警察職員に関する規定でございます。三項は、その処分をする際には、国際連合の軍隊の要請によるものだという趣旨を明らかにしてやるということでございます。四項は、それらの処分を妨害したり忌避した者に対する行政的な過料でございます。これは行政協定に伴う刑事特別法の第十九条にこれと相応する規定がございます。
次は二十九ページ、刑事補償に関する第十二条の規定でございます。「刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)の適用については、派遣国の軍事裁判所又は国際連合の軍隊による抑留又は拘禁は、刑事訴訟法による抑留又は拘禁とみなす。」御承知の通り刑事補償法におきましては、刑事訴訟法による抑留または拘禁でなければ補償の規定が働いて参りません。そこで今回の国連との協定に基きまして、向うで身柄を逮捕してこちらによこすといつたような場合、向うにある期間はこちらの刑事補償法には乗つて来ないわけでございますが、その期間をこの規定によつて刑事補償の対象に入れるという趣旨の規定でございまして、これはやはり行政協定に伴う刑事特別法の第二十条と相応する規定でございます。
附則は、公布の日から施行するということでございます。
以上簡単でございますが、詳細は解説書に述べてある通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/4
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005・小林錡
○小林委員長 これをもつて政府の説明は全部終了いたしました。
本会議における採決がありますので、午前中の会議はこの程度にとどめ、午後一時三十分より再開して両案に対する質疑に入りたいと思います。それまで休憩いたします。
午後雰時三分休憩
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午後二時二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/5
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006・小林錡
○小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
午前中政府の説明を聴取した日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案及び日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特別法案を一括して質疑に入ります。質疑の通告がありますから、順次これを許します。林信雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/6
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007・林信雄
○林(信)委員 当局より説明せられましたそれぞれの法案について簡単な質疑を試みたいと思うのであります。まず前提といたしまして、この議定書に現われて参りましたいわゆる裁判権の問題がかような段階に到達いたしましたことは、国家として大きな慶祝すべきことであろうと思うのであります。われわれといたしましても国民の一人として深く喜びの意を表するものであります。治外法権的な裁判の姿であつたということで強い憤懣の意を漏らしておつた諸君におきましても、さだめし満足の意を表しておることであろうと思うのであります。かような意味をもちまして、外務及び法務の御当局の格段の御努力に対して、ここにまた深い敬意を表する次第であります。かような意味をもちまして、究極いたしまするところ、われわれはこの法案を通過せしめることにやぶさかなものではありません。いな賛意を表するものであります。従いまして、私の御質問申し上げますることも、さような根本的な問題ではないことをまず御了承くだすつてけつこうであります。言いかえますれば、用語の概念等の二、三、あるいは実施上の面について心得ておらなければならないのではないかと思うような諸点についての質疑なんであります。
まず両法案のうち、これはたいへん長いので略称いたしますが、連合国軍の刑事裁判権に関する刑事特別法関係において、いわゆる対象と相なりまする軍隊あるいはその他の人々に対する前提であるべきところの派遣国の範囲の問題なんですが、われわれの聞くところでは、結局それは十六箇国とか聞いておるのであります。しかるに、そのうちすでに議定書に調印せられておりまするのは、説明書によりますれば、アメリカを加えて五箇国程度のごとくでありますが、これはいかなる事情でかように目下のところ少いのでございますか。あるいはこの文書以後において、着々累加されておるものなんでございましようか。あるいはそれは非常にうるさい、やつかい、めんどうな問題で、その余の派遣国の調印は遅れるものなんでしようか。かりにそういうものであつたとすれば、それら派遣国の国々はこの議定関係についてどういう感じを持つて対処しているのか、あるいは憂慮すべきものがあるように思うのでありますが、これらの点を簡単に御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/7
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008・津田実
○津田政府委員 現在国連の決議によりまして朝鮮へ今まで派遣しました国一は、連合王国、カナダ、オーストラリーア、ニユージーランド、南ア連邦、デンマーク、スエーデン、ベルギー、ルクセンベルグ、コロンビア、エチオピア、フランス、ギリシア、インド、イタリア、オランダ、ノールウエー、フイリピン、タイ、トルコ、こういうことになつております。このうち現在まで署名いたしましたものは、米国を除きましたイギリス、カナダ、オーストラリア、ニユージーランド、南ア連邦、これだけになつております。これだけにつきましては、直接この議定書の効力が及んでいるわけであります。南ア連邦につきましては、当初の署名国でありませんで、二十九日に初めて署名をいたして加盟いたした、かように相なつております。これら署しております以外の国が加入を申し込みました場合におきまして日本側がこれに同意をし得るならば同意いたします。同意いたしますれば、署名ができるわけでありまして、それによりまして、この議定書の効力を受けることができるわけであります。現在日本に駐留いたしまする軍隊は、ただいま署名いたしている国が大部分でありまして、あとの諸国はほとんど言うに足らない、数名あるいは十数名というような程度の数でございます。従いまして、本国における手続等の関係もありまして、急に署名ができないというような事情もあるようでございまして、署名が遅れている次第であります。しからば、署名をしていない国の軍隊の構成員、軍属等が犯罪を犯しました場合はいかなる法規によるかということに相なると思いますが、これはすでに御承知の通り、北大西洋条約当事国間の協定はすでに十四箇国において結ばれており、その上今回日米におきましてこれと同じ方式の条約が結ばれた次第であります。さらに今回日本と、ただいま申し上げましたカナダ、オーストラリア、ニユージーランド、イギリス、南阿連邦とも同じNATO方式によつて結ばれたわけでありまして、もはやかような条約は国際法の水準に達しておるということがいえる、かように考える次第であります。大体におきまして従来の国際法の線と相違がないわけでありますので、これらの加入いたしていません諸国に対しましても、この議定書の趣旨に従つて運用することは当然さしつかえないことと思われるのであります。のみならずこれらの諸国は、先ほど申しました五箇国が調印いたします調印式にも異議なく参列いたしておりますので、その意味におきましても、もはや日本がこの議定書の趣旨に従つて運用することに、何ら異議はないものと認め得る次第であります。さような方針で参ることになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/8
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009・林信雄
○林(信)委員 あまり憂慮すべき状況もうかがわれないと思うのであります。一応納得申し上げる次第であります。
次に日米行政協定に伴う刑事特別法の一部改正法案の第十条あるいは十三条に現われて参ります「合衆国軍隊がその権限に基いて警備している合衆国軍隊の使用する施設又は区域」云々という、軍が警備しておる施設、こういうことが新しく現われて参りました。従いまして警備してない施設との間に適用程度を異にしておる、こういうことでありますと、具体的にそういう警備しておる施設もしくは区域、しからざるもの、こういうことが実務執行上におきまして問題ないことに今日より予定されなければ、執行者においては多大の不便があると思うのであります。概念的な説明は一応説明書に見えておつたようであります。この点をやや詳細にあるいは具体的に御説明を願いたい、こう思うのであります。
これと牽連いたしまして、かような軍隊の権限に基いて警備しておる区域は、施設及び区域内のうちどの程度のものであるか、その比率が高いのか、すなわち広さ等において広いのかあるいは狭いのかといつたようなこと、なかんずく大衆に最も関係を持つものとして具体的の例として私は一つ頭に浮んで参りまするのは、国際空港として最も親しまれておる羽田の空港のごとき、すでに軍自体の専用を解かれて現に使用しておるとはいいながら、まだこれに接続いたします地域あるいはそのうちに軍要員等の配置があるのではないか、かような点も思いまして、一つの具体的な場所としましてそういうものはこの法案の実施上においてはいずれの地域であると考えてよろしいのかといつたような点をひつくるめまして御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/9
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010・津田実
○津田政府委員 「合衆国軍隊がその権限に基いて警備している合衆国軍隊の使用する施設又は区域」、かような表現をしておりますのは、念的にはすでに説明書に書いてある通りでございますが、実質的に申しますと大体どういうものが当るかと申すわけでありますが、逆に警備していないものをあげて申し上げつる方がよろしいかと思います。
まず全国にあります飛行場のうち不時着飛行場等はふだんは要求がないわけでありまして、全然警備員等を置いておりません。そういうところはもちろんこれに入るわけであります。それから演習場、射撃場等につきましても、平常使用しない場合は全然合衆国軍隊がおりません。従つてそこは警備されておりません。さような場所が全国に相当散在しております。大体そういうような場所をさしておるのでありまして、常駐しておる場合は軍隊の本質から申しまして、歩哨を立て、あるいはその他の方法によつて警備をいたしておる場合が大部分でございますので、常駐いたしておる場合はこの警備しておる施設または区域というようになると大体考えてよろしいと思います。もとよりただいま申し上げました不時着飛行場あるいは射撃場、演習場等におきましても、演習期間あるいは使用期間は大体において警備しておるようでございます。
それから空港の問題でございますが、羽田は私はちよつとつまびらかにはいたしませんが、大体聞いておるところによりますと、日本側の専用区域と、それから合衆国軍隊との共用区域と、合衆国軍隊の専用区域の三つにわかれておるように聞いております。従いまして専用区域はもちろん日本側でありますが、共用区域も大体において日本の警察官とアメリカ側の警備員とが警備しておるようでありましてこの場合共用部分につきましては、従来ともこれは日本側の自由にいたしておりますので、共用部分は大体問題がないというふうに考えております。従いまして羽田のうちの専用分につきましては大体においてアメリカが警備しておるようでありますので、これは警備しておる施設に入る、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/10
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011・林信雄
○林(信)委員 結局説明書に現われました概括的な説明多く出ないようでありますが、具体的に言つて、たとえば常駐の見まわりをしておればこれは警備といつた程度になると思うのでありますが、随時の見張り程度のものあるいは臨時的の見まわり程度のもの、そんなものがどんなふうに解釈せられるのか、あるいは場所によつては一定の区画をなしておつて、外の自由の出入りはもちろん禁止してあるし、特にその上に警戒を厳重にする意味におきまして警戒電鈴等をつけてその旨を強調しているといつたようなものが警備区域と見られるかどうかというような点で、私はかなりきわどい部分があると思うのです。全国的な一切の土地ではないので、限られた施設区域なのですから、これはあらかじめ協定いたしまして、これに関係を持ちまする官憲その他において万一必要といたします場合に戸い惑しないように、具体的な協定がなごされておることが一番便利じやないか。そういうものをまた変更することもございましようから、そういう変更に従つて随時その地域を協定しておくということが、実際の場面にぶつかりました場合にまことに適当じやないかと思うのでありますか、そういう必要はないのございましようか。そのときどきだということになりますと、一体だれがその地域の区別を判定するのか、双万てんではてんやわんやになつてしまう等々の関係から、その辺の措置が考えられておりましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/11
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012・津田実
○津田政府委員 この点でございますが、従来演習場射撃場等におきまして年間引続いて使用しないような場所、すなわち随時期間を区切つて使用するような場所につきましては、その使用開始前にこれを日本側の関係当局すなわち関係の市町村長及び関係地区の警察機関に、アメリカ側の部隊長から通知して来るというふうに合同委員会でとりきめができております。それ以外に事実の問題といたしまして現地の警察機関あるいは検察機関と、部隊長あるいは憲兵司令官との間に随時連絡がございまして、どのような状況において使用しておるかということは、日本側に相当了知されておるような実情にあつたわけであります。従いまして今後におきましても、警備しておるかどうかという問題につきましては、日本側の捜査機関には当然はつきりわかるわけでありまして、その点におきましてアメリカ側とトラブルが起るということは、ほとんど考えられないのではないかというふうに考えております。この警備しておるかどうかの判定の問題で必要な点は、日本側といたしましては捜査機関が知つておればいいわけでございまして、その辺は大体それでまかなえるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/12
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013・林信雄
○林(信)委員 その点はその程度で一応了承しておきましよう。
続いて第十八条に見えます関係でありますが、「日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件とよつて来るところの議定書の第二項aその他にも及ぶのでありますが、この関係について「日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件」ということでありますれば、大体その範囲はどんな範囲であるのか、そでの具体的な全部について調査がおできにをなつておるか――おそらくできておるんじやないかと思いますが、その範囲とその罪の成立要件など御調査になつております範囲について伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/13
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014・津田実
○津田政府委員 「日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件」の例といたしましては、今ほど御指摘にありました議定書の2項のaに当る場合でありまして、たとえば合衆国に対する叛乱罪でありますとか、あるいは軍人に関しましては逃亡罪ということが普通考えられるのでありますが、そのほか合衆国には構成要件があるのに日本には構成要件が示されてないというような犯罪が考えられるわけであります。これらの内容につきましては、合同委員会の話合いによりまして随時アメリカ側からその法令並びにその内容を知らして参ることに相なつておりますが、ただいまはまだできたばかりでありますのみならず、新しいものにつきましてはまだ通告がございません。従来のものにいたしましても大体は日本側で犯罪であるというふうに思われる事件が大部分でありますので、十八条を働かして要請があつた事件は実績においてはほとんどなかつたようでございます。これはもとより日本側ではアメリカの法律に詳しくないわけでありますが、少くともアメリカの当局からかような構成要件に当る刑事事件として要請がありました場合には、十八条によりまして一応行使するということになろうと思いますが、しかしさような構成要件がないと判明いたしておる場合には当然これに応ずべきでないというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/14
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015・林信雄
○林(信)委員 ただいまの場面はいずれにしましても専属管轄関係で多くの適用例も見ないかと思うのでありますが、続いて一般的であります裁判権を行使する権利が競合する場合、この場合について議定書におきましても3項aⅲとありまして、その除外例が規定せられております。その中のⅰにおきましてはこれはいわば外地同様のものでありますから、特に疑義はないのであります。ⅱに掲げられまする合衆国軍隊の構成員または軍属の「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」これについては私かなり疑義を持つのであります。単に「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」と書いてあるのみでありますが、これは当然被害法域はいわゆる日本人あるいはその他の第三国人を含むかどうか、日本人に加えられたる犯罪行為であろうと思うのです、この点も伺つておきたのいのですが、最も重要でありますものは公務執行中というその事柄、これは具体的な場合になりますとかなりはつきりしないものができて来るのじやないか、これは日本の刑法の解釈の場合におきましても具体的な場合としてあいまいなものができて来ると同様のことであろうと思う。この公務執行中の行為であるということは起訴になつた場合は別に何か議定されたものがあつたようであります、起訴前におきましては何人がこれを判定し、それによつて行動して行くのか、やや漠然としたお尋ねでありますが、要はそれらに関する一般の持ちそうな疑義の一斑について御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/15
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016・津田実
○津田政府委員 この条約の日本文によりますると「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」とあります。英文によりますと公務執行中と申しますのは、「イン・ザ・パフオーマンス・オブ・オフイシヤル・デユーテイ」という表現になつておりますが、公務執行中と申しますのは概念的にはかなり狭い意味でありまして、公務執行時間中という意味ではないのであります。公務の過程においてということであります、公務の過程において行われる行為から必然的に生じて来るような犯罪、かように考えるわけでありまして、たとえば軍といたしまして戦車を運転中に、過失によりまして人に傷害を与えたというような場合、これは典型的な場合であります。それからまたアメリカ軍の歩哨が立つておりまして、歩哨の準則に従いまして人を誰何した、その場合に相手が逃げ出したので、それを停止せしめるために威嚇射撃をした、空へ向けて発砲した、こういうような場合に、誤つて第三者を傷つけたというような場合、こういうような場合は明らかに公務執行の過程におきまして必然的に起る犯罪である。従いまして、そういうものをさすのであります。これに反しまして、公務時間中に起つた犯罪、たとえば公務執行中と申しますか、公務時間中に、タバコの吸がらを不用意に捨てたために火事を起した、こういうようなのは、公務時間中でありましても、「公務執行中の作為又は不作為から生じた犯罪」というふうには言えないというふうに考える次第でございます。この公務執行中の犯罪は、そういう概念でございますから、被害者が日本人その他日本に一般に居住する外国人である場合は、当然あり得るわけであります。なおこの公務執行中の罪につきまして、軍隊派遣国が第一次の裁判権を持つ。第一次と申しますか、あるいは裁判権を持つということは、これは長く国際法上認められた原則であります。大体それをそのまま表現されているところでございます。この点をつけ加えて申し上げます。
なお、しからば起訴前におきまするところの公務であるかどうかの判断はいかにするかという問題でございますが、公務執行中の犯罪であるかどうか、すなわちそのことが犯罪であれば、公務執行中のものであるということにつきましては、アメリカ側の指揮官が、あるいは指揮官にかわるべき者が証明書を出すということになつております。日本側の捜査機関がこの点につきまして疑いを持つ場合は、当然証明書を要求するということに相なつております。しかしながら、疑いを全然持ち得ない場合があり得ます。たとえばMPが、巡回中にもかかわらず、料理店等に入り込みまして、酒を飲んで人に傷害を与えたり、けんかをしたというような場合に起ります犯罪は、これは犯罪そのものから見て、すでにもう公務と言えない。その点につきましては、もはや公務であるかどうかということを議論する余地がほとんどない。このような場合には、日本の捜査機関はもとより証明書を要求しませんが、ただ戦車を運転中である、あるいは自助車を運転中であるという場合には、それがはたして公務として行われたかどうかという点に疑念がある場合があります。その場合は証明書を要求することになります。また積極的にアメリカ側から、これは公務に当るとして証明書を出して来る場合もあり得ると考えます。さような場合に、日本の捜査機関が判断をいたしまして、アメリカ側の証明書に対して同意をいたしますといいますか、証明書と同意見であります場合には、問題はないのでありますが、証明書と異なつた意見を持ち、異なつた判断をいたしたというような場合にはいかがいたすかと申しますと、これは合同委員会におきますところの話合いによりまして、一応合同委員会において議論をする、こういうことにいたしております。大体議論をいたしますれば、何らかの結論が得られるということになるわけでありますが、これは議論をいたすわけでありまして、合同委員会が最終決定をするということにはならないと思います。でありますから、結局最終決定は、それを起訴する権限のある日本側の当局にある、日本側で、検挙した事件については、日本側の当局にある。しかしながら、アメリカ側で検挙しておる事件につきましては、それはアメリカ側がそれを判断いたしまして、アメリカ側において第一次裁判権がありとして起訴する場合もあり得ると思いますが、しかしさような両方の争いが最後まで解決がつかないということは、予想されないのでありまして合同委員会で議論をいたしますれば、何らかの結論を得られるというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/16
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017・林信雄
○林(信)委員 常識的にもそういうことであろうかと思つたのでありますけれども、資料として渡されました議定書並びにその公式議事録では、特に合衆国軍隊または軍属が起訴せられた場合という場合の措置が記載されております。その程度の公式議事録にすぎないのでありまして、事前の点はまことに不明瞭であると思うのであります。そこで起訴された場合云々のこの場合に、その旨の証明書すなわち「公務執行中の作為又は不作為から生じたものである旨を記載した証明書」、それが適当な者より発行せられる、それが非常に重要なものとして扱われる意味に定められておるようであります。すなわち言葉をかえて申し上げますならば、「反証がない限り、刑事手続のいかなる段階においてもその事実の充分な証拠資料となる。」これだけ権威づけられておるのであります。もつとも言訳のように、それはわが国の刑事訴訟法第三百十八条すなわち自由心証に関する規定を害するものではない、こんなふうの意味も付されておるのでありますけれども、あくまで自由心証そのものであればけつこうですけれども、これに対して反証のない限りは、段階を問わずに事実の十分な証拠資料となる、それだけの力が与えられました以上、それだけやはり日本の刑事訴訟法第三百十八条は制約せられ、言葉は適当でないかもしれませんが、ある意味では侵犯せられておる、こうも考えられなければならない。画龍点睛を欠くとまでは行かないかもしれませんが、せつかく国民が歓喜して受入れつつあるこの改正にあたりまして、さような点があるということは、どうも不愉快に思われるのであります。外務当局も来ておられるようですが、これらに対する実際上の折衝関係はどうであつたでありましようか。これも先例か何かで、それきり簡単に取扱われたものなんでありましようか。あるいは今後に残された折衝でもあるのでありましようか。この辺について重ねて伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/17
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018・津田実
○津田政府委員 その点でございますが、公務執行中であるかどうかということは、これは軍隊の内部の問題であります。一応考え方といたしましては、指揮官がその者にいかなる公務を命じたかということは、第三者はうかがい知ることができないということが一応考えられるわけであります。従いまして、かりに自助車を運転して、甲地から乙地まで行けという命令があつたかなかつたかということは、当該指揮官以外は一応知らないといわざるを得ない。従いまして、日本側がかりに裁判をいたします場合におきましても、当該指揮官を証人として呼ぶか何かいたさなければならぬということは当然だと思います。そこでこの証明書にかような一応の十分な証拠資料という力を与えるわけでありますか、これはイギリスにおきましても、イギリスにありますところの外国軍隊の指揮官の証明書は、プライマ・フエイシーである、一応十分な証拠と見るというような国内法ができております。そのように考えると、今申しましたように、当該行為をした者に与えた命令の内容は、指揮官のみしか知らないという軍隊特有の機構から来る必然的な結果だろうというふうに考えられるわけであります。しかしながらイギリスにおきましては、判事の自由心証を害してはならないという規定は全然なく、裸でこれになつておる。しかしながら私どもとアメリカとの交捗の経過におきましては、日本におきましては少くとも裁判官についてはこれが証拠法上何らかの意味を持つというふうに約束することはできないという意味におきまして、この公式議事録には、わざわざ解釈してはならないという規定が入つたわけであります。そういう経過になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/18
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019・鍛冶良作
○鍛冶委員 関連して。どうも今の説明を聞いておると、公務執行中という言葉がよくないのじやないですか。「中」といえばどうしても時間的というふうに見られます。今の説明から言うなら、むしろ公務執行上の作為または不作為ということが新しく考えられる。「中」では時間的のことなんですから、公務に当つておつた時間ということになる。私が今言うように執行上の作為、不作為といえば、原文と何か相反するようなことになりますか。その点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/19
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020・津田実
○津田政府委員 その点でありますが、これは日本語の表現といたしましては、若干そういう表現上の問題はあるとも考え得るわけでありますが、従来の国際法における日本におきまする表現は、全部公務執行中という表現になつております。そこでこれをここで改めまして他の表現にいたしますことは、従来の国際法と違つた表現であるかのごとき印象を与えますので、このままを踏襲いたしましたわけでありますが、国際法の解釈といたしましては、その点はほとんど疑いのないところというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/20
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021・林信雄
○林(信)委員 ただいまの点と関連して、この際特に承り、要望しておきたいことは、ただいまの公務執行中云々にしましても、指揮官のほとんど専断、専権できまるかのごとく相なる危険を感じます。そうなりますと、せつかく裁判権を回復したといいますが、そのさ中におきまして、向うが自分のやり得る裁判権の範囲を自由にきめ得る範囲が非常に広いということであれば、いかにもたよりなくなる。だからこれらの点については、十分実際面においてこちらからの意見が入つて、彼らの専断的な意見のみでなくて、こうあらねばならぬという議定書の解釈について、強い発言権を持ち得るようにしておらなければ、実際問題において骨抜きになつてしまう、このことはこの面のみにとどまらず、一切の実施面におきまして、今より十分な措置がなされていないと、条約改訂のその趣旨を没却することが最も大きいのでありますが、それ以外の面において、趣旨の不徹底、解釈の相違等からいたしまして、そこに彼我の摩擦が生じて来る。この特別刑事訴訟法の改正が見られるに至つたその経緯についてわれわれに慶賀しておる一面、彼においては、国といわないまでも、その二部の外国人の中においては、何らか掌中の玉をとられたような誤れる考えを持たないとも限らない。一つのならされたる風潮の結果としましてそういうこともある。そういうさ中に、日本の官憲の力が伸びて行つたということで、非常に不愉快な気持を――誤れる不愉快なんですが、持つことによつて摩擦を生じないとも限らない。そういうところから、実施面において十分なる準備態勢が施されていなければ、大へんなことになる場合も私は想像し得るのであります。当然のことだとして考慮なされておるかとも存じますが、しからばどのような措置がなされておるか。措置なしといたしまして今後にやるとすれば、どういうふうにやられるか、れをくくりに伺いましこて私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/21
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022・津田実
○津田政府委員 この協定をいたします段階におきましては、先ほど申し上げましたような経過によりまして、後段第二項の規定、つまり三百十八条を害してはならないという規定が入つたわけであります。この協定ができまして以後、ほとんど隔日くらいにアメリカ側と日米合同委員会の刑事裁判権分科会を開いておりまして、そこで起り得ることが予想される諸般の問題を論議いたしました。そのときもこの問題が出ておりまして、今ここで御説明申し上げましたような具体的例についてもやりとりがあつた次第であります。先ほども申し上げましたように、この点につきましてアメリカ側の証明書に納得できない場合は、当然日本の捜査機関におきまして、これを合同委員会に持ち上げる、またアメリカ側におきましても、日本側の判断に異議がある場合には、合同委員会に持ち上げる、かように相なるわけでありまして、合同委員会あるいはその分科会におきまして十分討議を遂げまするならば、アメリカ側におきましても、この刑事裁判権分科委員会に出ておりまする委員は、ほとんど法律家でありますので、彼我の主張に非常な開きを生ずるということはおよそ考えられません。従いまして個々の運用によりますれば何らトラブルなく処理して行けるというふうに確信しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/22
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023・小林錡
○小林委員長 それではこの両案に対する質疑はこの程度にとどめます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/23
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024・小林錡
○小林委員長 次に、法務行政に関連する保全経済会等特殊利殖機関に関し調査を進めます。質疑の通告がありますから、これを許します。田嶋好文君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/24
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025・田嶋好文
○田嶋委員 きようは大蔵省の銀行局長がおいでになつておりますから、今議題となりました保全経済会の問題についてお尋ねを申し上げたいと存じます。
昨日当委員会におきまして、捜査関係、法務関係の御出席を願いまして、われわれから保全経済会問題に対する質疑があり、その御答弁があつたことに対しましてはおそらく御承知のことだと思います。従つてきのうの質問とあまり重複することをお尋ねすることは省かしていただきたいと思いますが、きのうの委員会において結局問題として残されました問題は、この保全経済会に対して大蔵省がいかなる態度で臨んでおつたか。大蔵省がいかようにこの保全経済会に対しての監督権と申しますか、監督の対象になるかならないかということに対して調査をしておつたかということが残された問題でございます。特に私たちの今日耳に残つておる問題は、ことしの二月でしたか、日にちは速記記録を見ないとわかりませんが、最高検察庁におきまして大蔵当局、法務当局、それから警察関係者、主としてそういう方々がお集りになりまして、保全経済会を具体的に取上げたのではないが、これと同種類の行動をしておるものに対して、一つの話合いが進められた。そのときに警視庁、法務当局からは、これは明らかに違反行為だということが出たのにかかわらず、これに対して大蔵当局の意見は、非常に消極的であつたというように私たちは伺つておるのであります。この点前もつていかようであつたか、お伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/25
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026・河野通一
○河野説明員 お答え申し上げます。問題になつております保全経済会につきましては、過去二年間にわたりましていろいろ私どもの方といたしましても調査をして参りました。特に一番関係の深い法務省当局とは長い間累次にわたりましてお打合せをして参つたのであります。その累次のお打合せをいたしました中に、今お話がありましたような二月でありますか、各関係の方々のお集まりの席上で議論されたこともたしかあつたやに私は記憶いたしております。しかしその内容につきましてどこがどう言つたかということは、この際としては私から申し上げることは差控えたい。ただいろいろお打せをいたしました結論といたしまして、私が皆さんにかわつてことしの三月四日に衆議院の大蔵委員会においてこれらの利殖機関でありますとか、あるいは貸金業者でありますとか、いわゆる金融法規と関係があるかないか、つまりその関係が非常にデリケートな各種のこういつた類似の機関につきまして、各関係当局とお打合せをいたしました結果を私から説明いたしたことがあるのであります。これは速記録で御承知いただいておると思いますが、その趣旨はあるいは必要がございましたら概略申し上げていいと思いますが、その中に私から説明申し上げました限りにおきましては、これは各関係当局、特に法務省当局とは十分に事前のお打合せをしてできたものであります。ただこれはたとえば個々の保全経済会自体がどういう形になつておるかということは、私どもはもちろん、法務省におかれましても十分に具体的な調査はされていない。一つのそういつたやり方自体がどういうふうな法律的な解釈になるかということだけを私からは答弁いたしております。しかしその御答弁を申し上げるにあたりまして、いろいろ研究をいたした過程におきましては、いわゆる匿名組合方式あるいはこれに準ずる無名契約方式の出資を受入れた形、特にその当時は具体的に保全経済会を対象としてデータをとつたということは申しませんでしたが、実際は保全経済会についてわれわれが手に入れ得るたとえば事業案内書でありますとか、あるいはいろいろな契約書の写しでありますとか、あるいは出資証券のひな型でありますとか、手に入れ得るものをあらゆる方法で手に入れまして、その限りにおいては実はこれを具体的に対象として、その結果が先ほど申し上げましたように、三月四日、主として金融法規の関係が問題になつておつたところでありますから、私が各省にかわりまして御答弁申し上げた次第であります。その内容につきましてもし必要がありましたら後ほど御説明いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/26
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027・田嶋好文
○田嶋委員 内容はある程度新聞で報道されておりましたので、ほかの委員からお聞きがありましたらお答えを願い、私は聞かないことにいたしますが、新聞の報道によりますと、何か保全経済会の問題に対しましては、大蔵当局では匿名契約方式による組合であつて、これは現在取締の対象にならないというような御解釈を述べておるかのごとく私は見受けたのでありますが、この点はいかようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/27
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028・河野通一
○河野説明員 この点も先般来他の委員会においてたびたび御質問を受けておる次第でありますが、私は実は商法、そういう方の専門家でございませんので、はたしてこの保全経済会というものが現実に匿名組合そのものであるか、あるいは匿名組合に準ずる、何というか、無名契約であるか、その点につきましては私としてはつきりした調べをしたことはございませんのでわかりませんが、この点はむしろ法務省の方が専門の方々がたくさんおられるのでありまして、そちらの御見解に私は従うよりしかたがないと思いますが、ただ私どもが関心を持ちましたのは、ああいう形のものがはたして匿名組合であるか、――もちろん匿名組合と称しておりますが、あるいは匿名組合に準ずる無各契約であるか、ということよりも、ああいう形で金を集めておるやり方が出資なのか、預金行為であるかというところに問題があると思うのであります。私どもはやはりこれは預金行為とは言いがたいというのが結論であります。これは法務省とも打合せた結論がそうなつておるのであります。先ほどお断り申しましたように、私ども自分たちが直接検査をしたことはない、検査をする権限はございませんから、現実にその実態を正確に完全に調べ上げた結果ではございませんが、今申しましたように、私どもが入手し得た資料に基いて出した結論でありますから、それ以上のことは私どもとしてもなかなか最終的結論をはつきり申し上げることはむずかしいと思いますけれども、私どもが関心を持ちましたのは、これが匿名組合であるか、あるいは匿名組合に準ずるものであるか、その点ではなくして、むしろそういう形で不特定多数の者から出資を受ける形が一体預金行為であるかどうか、こういう点に実は私どもとしては関心を持つておつたのであります。これは金融法規に言つておる預かり金禁止の規定に違反するとは言い得ないというのが去る三月四日に私から皆様にかわつて御答弁申し上げた趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/28
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029・田嶋好文
○田嶋委員 預金行為であるということになればこれは問題はございませんが、預金行為でないと認められたというお言葉ですが、預金行為でないとすればこれは当然あなたの方で監督権を行使して、また検察庁なり捜査機関に連絡して、あなたの方自体から乗り出すべき必要があつたのではないかと思いますが、預金行為だとお認めになつたとおつしやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/29
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030・河野通一
○河野説明員 その点今お答え申し上げましたように、私ども預金行為と認めがたいということで、金融法規の立場から私金融行政の責任者として少くとも現行法の建前におきまして――私の関知する、しないとこう申し上げることは非常に行き過ぎと思いますが、むしろ出資一般に対する問題としてこれを考えたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/30
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031・田嶋好文
○田嶋委員 預金行為でないということになれば、これは一体大蔵当局がまた調査して、ほかの関係においてこれを監督して行く、また法規に照して処罰する方法が考えられなかつたのでしようか発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/31
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032・河野通一
○河野説明員 いわゆる今言われております保全経済会的な利殖機関と申しますか投資機関につきましては、いろいろな形態が実はあるのでありまして、これは二つにわけて考えて参りたいと思います。
第一は、どういう形で資金を受入れておるか、その受入れの面についてが一つと、もう一つはその受入れた資金をどういうところに融資しておるか、この二面が問題になると思います。前者につきましてはただいま申し上げました通りであります。もちろんこれは非常に失礼な言い分でありますがわかりやすく申し上げたいと思うのであります。たとえば匿名組合方式であるかどうか、これはいろいろ議論があると思います。かりに匿名組合方式によるものが金融法規に違反はしないと認めました場合におきましても、個個のものにつきましてはこれは金融法規に違反しておるものがあり得る。これはそのとき、三月四日に私もはつきり答弁しておる。これは株主相互金融につきまして特に問題があるのでありますが、株主相互金融そのものはこれは出資の受入れであつて決して預金行為ではない。しかし株主相互金融自体が金融法規にあらゆる場合において違反しないかというとそうではなくて、現に私どもは検査の結果相当数金融法規に違反した株主相互金融を摘発しておるのであります。そういつたものにつきましては、これは具体的に見なければわからないと思います。資金の受入れの面は今申し上げたような通りであります。
それからそれを運用いたしておる方面はどういうものかと申しますと、これは不動産投資と有価証券投資、大体それがおもなもののように聞いております。貸金業をやつているかやつていないかの問題でありますが、これは貸金業の届出はいたしておりません。それから私どもが調べました範囲においては、貸金業と称するようなところまで貸金をやつておるとは認めがたいわけであります。この点は私もまだ調査が不十分でありますから確信の持てるところまで行つておりませんが、貸金業をやつているというところまで行つていない。そういたしますと不動産の投資と有価証券の投資――一般の人が資金を集めて、あるいは一人の金持ちがおつて、自分の金を不動産投資に充てる、あるいは有価証券を買う、その有価証券を持つておること自体、これは金融行政からいつて私ども直接には関係はない。ただもちろんこれが資金量が大きくなりますと、金融界全体に、あるいは証券界に対して相当影響力を実質的に持つのでありますが、制度としては有価証券投資をしようとあるいは不動産投資をしようと、これは私ども金融行政の立場からは、制度としては関係のないことであるというのが私どもの考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/32
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033・田嶋好文
○田嶋委員 河野さん私よく存じ上げておりますので、あまり露骨な質問はしたくないと思うのでありますが、とにかく大蔵省というのは今日銀行の設立その他に対しては日本の金融の円滑化を期するというので、非常に厳重な行き方をして、主として銀行からむしろ大蔵省に対して、一つの非難すら放たれておる。これは私から申し上げるまでもない。この保全経済会類似の事業というのは、地方銀行に匹敵するような資金を集めておる。これではあなた方がいくら銀行に対して強制的な行動をとつても、これは経済安定のためには無意味だと思います。むしろそういうことが見られれば積極的に私はこれに対して手をつけるべきだという理論が常識的に、専門家でなくても生れると思うのですが、そうした点に対するお考えはいかがなものでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/33
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034・河野通一
○河野説明員 先ほど申し上げましたように非常に大きな資金量を持つていることは事実であります。それが金融に対して影響を持つことは事実でありますが、私どもといたしましては法律の制度としては、これは今申し上げました与信の面からいいましても受信の面からいいましても、一種の金融の対象ではないと考えております。しかしながらこれが非常に大きな事業になり、かつ何と申しますか、それが一たび不幸にして破綻する。という場合におきましては、その数多い出資者に対して相当な迷惑を及ぼすおそれがあるという危険が痛感される現在におきまして、何かそういつた面からこれらの問題について取締りと申しますか、そういつた善意の出資者を保護する――保護ということは非常に語弊がありますが、善意の出資者が不当に損失を受けることを防止するような措置があるいは必要ではないのだろうか。しかしこれは完全に私だけの所管の問題ではございませんので、十分法務省の方々ともお打合せした上でなければ、私としては公式な見解として表明するだけの自信はございませんが、私見としてはそういつた措置をとらなければいけないじやないかということはかねがね考えて参つておつたのであります。そういつた意味でこのまま放置していいかどうかの問題については、現在のような社会に対する影響が大きくなつて来ている現実を前提にいたします限りにおいて何かこの措置がいるじやないかという気はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/34
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035・田嶋好文
○田嶋委員 この点ほかの委員からおそらく追究があるじやないかと思うのですが、私もあまり納得できませんが、とにかくこの匿名組合形式で行けば、営業をして利潤を与えるということが前提である。ところがこの保全経済会というのは利潤だけでなくしてこれだけの配当をするということがある。二分から八分の配当、そして三月後には現金を返すというのです。利益があつて利益の分配をしてやるのが匿名組合である。ところが利益があるないにかかわらずこの匿名組合は、営業してこれだけの配当をするというのですから、これは預金の利子に匹敵するわけです。結局銀行業に対して世の中の低金利政策とか高金利政策とか、とにかく利息政策に対して第一に挑戦をしかけている。それから次に利殖関係になるとどうかといいますと、あなたから今おつしやつたように株式投資の形をとり、日本の有価証券業界、日本の経済の心臓部ともいうべきこれに対する一つの大なる挑戦をしておる。利息の点に対して大なる挑戦をし、そして投資関係に対して大なる挑戦をして、要するに日本経済に第三国人が挑戦している。日本の経済を破壊しようと考えておつたのではないかと思えば思われないことはない。行動をとつておつたと見れば見られないことはない。そこに私は非常な関心を持つたのであります。日本人ならそこまでやれるか。第三国人だから日本人なんかどうでもいいじやないかということは思わぬでしようが、悪く考えればそこまで考えなければならぬことになる。大きな日本の心臓部に対して挑戦して来るような、要するに心臓に対して短刀をつつ込んだのです。突きつけようとしたのではなくて完全に心臓部に突きつけていると見られぬことはないでしよう。これはいろいろな見解の相違もございましようが、見られないことはない。その点に対してあまりにお考えが単純じやなかつたのでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/35
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036・河野通一
○河野説明員 この問題を検討いたします過程におきましては、私どもはそんなに単純にこの問題を割切つておりません。そのために非常に皆様からはおしかりを受けるだけの実は値打ちがあると思うのでありますけれども、法務省その他とお打合せをいたしますために一年以上かかつている。どうしてそんなに時間を要したかというと、事柄が非常に簡単でないからでありまして私どもそう簡単に――結論は今申し上げたような結論でありますけれども、この結論を出しますまでにはいろいろな見地から内部にはいろいろ意見もございまして、その過程を経て、結論は今申し上げました簡単な結論ではありますけれども、経過から申し上げましてそう簡単に問題を割切つてしまつておつたのではございません。それから今お話のように個々の個人が一体いいか悪いか。その業者がどういう気持で仕事をいたしておるかということでありますが、私どもが金融制度なり金融に準ずるような制度を考える場合には、これはやはり制度のことと、その個々の一つの問題は、また別に考えなければならぬ。私どもは先ほど来申しましたような意味で、確かに保全経済会というものは、出資は三箇月たつて、もし申入れがあれば払いもどすということもあるし、明らかに二分とか三分とかいう利益の配当を約束するようなことになつておるというようなことは、私どもは今申しましたような三月四日に結論を出しますまでの過程において、ちやんとわかつておつた。それらをいろいろ分析し、研究各方面よりしていただきました結果が、今申し上げましたような結果になつたわけであります。しからばこれは非常に営業が大きくなつたので、金融界に対して非常に大きな影響力を持つておるのを放置しておくのはいけないじやないかという議論があるかと思うのでありますが、この点は結局これらの業態を法律制度としてどういうふうにコントロールして行くのがいいかという問題になると思います。資金を集める形態にはいろいろな形がある思いますが、これらの資金を集める形態を、全部不特定多数から出資を集めるのはそれは株式会社組織に限つて認めるという議論とか、あるいは株式会社組織に準ずるようなこれらのものを認める以上は、出資者にある程度その経営自体に対する監視権と申しますか、そういつた制度を加えて出資者が十分にその営業自体に監視をして行く道を開くべきではないかといつたような議論もあるのであります。今の制度といたしましてこれは何か金融行政の対象として取上げるということにつきましては、私は今まで申し上げましたような観点から、私どもはこれは適当でないという結論に到達しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/36
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037・田嶋好文
○田嶋委員 それではあと二、三点でほかの委員にかわつていただきますが、かいつまんで申し上げますと、結局大蔵省の今日の見解は、匿名組合であるかないかの解釈は、自分の方では法務省の意見に味方する、その解釈に従うということであるか、ひとつお確かめいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/37
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038・河野通一
○河野説明員 誤解のございませんように、ひとつ三月四日にその問題について私からお答え申し上げました点を読ましていただく方がいいと思います。匿名組合契約による資金の受入方式はどう考えたらいいかという問題で、その業態には匿名組合契約による金銭出資を広範囲につのつて金銭を受入れ、これに対しては特定利息をする形態がある。その出資された資金は通常株式、不動産投資を目的としておる、こういう業態である。これに対して金融法規との関係はどうかという問題につきましては、この方式については、商法に規定する匿名組合契約でないと言い切るだけの根拠がない。従つてこの方式による出資は、預かり金に準ずる資金の受入れとは言いがたい。つまり預金とは言いがたい。こういうのが先般申し上げました三月四日の答弁でございます。従いまして今日言つております匿名組合契約そのものであるかどうかにつきましては、実は私ども専門家でありませんので、はつきりしたことを申し上げることはできませんが、法務省の御見解に従つてさしつかえないと思ついます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/38
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039・田嶋好文
○田嶋委員 そうすると、昨日お聞でございましようが、法務省は見解をここで述べました。保全経済会は商法のいう匿名組合形式とは認めがたい、こうおつしやつておりますが、これは御納得できるでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/39
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040・河野通一
○河野説明員 私は先ほど申し上げましたように、おそらく法務省当局におきましても保全経済会の実態を十分にお調べになつておるかどうか存じません。ただ問題を研究いたしますのに私どもが手に入れた資料として調査のデータといたしましたものは保全経済会であつたのであります。しかもその結果ここにもちろん具体的に保全経済会とは申しておりません。ごく抽象的には申しておりますが、その結論が今申しましたように商法に規定する匿名組合契約でないと言い切るだけの根拠がないという結論にそのときなつたのだと思います。しかもそれは十分完全なる資料ではございません。私どもが手に入れ得る資料だけでありますし、検査をいたしたことがございませんから、その限りおいてはつきりしたことは私ども申し上げられませんが、少くとも保全経済会の入手し得るデータをすべて検討の対象にいたした結果、こういう結論が出ておるということだけは申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/40
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041・田嶋好文
○田嶋委員 そこで私は聞いておるわけなんですが、昨日そういう意見が出たのです。そうすると意見の調整ができておらない、こう解釈する以外にないと思いますが、これはぜひとも至急に意見の調整をはかつていただきたいと思います。それに関連して今日の日本経済新聞に「利殖金融の弊害一掃へ、匿名組合の悪用禁止、単独法制定に乗出す」大蔵省として、今後法務省と連絡して、こうしたことをやりたいということがここに書いてございます。これが一体現在の大蔵省のお考えでございましようか。それとも単なる新聞の想像記事でございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/41
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042・河野通一
○河野説明員 この点は先ほど申し上げましたように、大蔵省全体としての意見として申し上げる段階にまだ至つておらないのであります。と申しますのは、この問題は、これは非常に誤解を起しますので言いたくないのでありますが、法務省の所管の問題ではないかと思つております。何か職務的に権限争いをしておるような印象が皆さん方におありになるのではないかと思いますので、そういうことを言いたくないのですが、そういうように私は考えております。それでありますから、先般大蔵委員会でこの問題が出されたときに、私は私見としてはそういうふうなことをやるべきではないかということを申し上げたのでありますが、しかし、政府の一省としての大蔵省全体としてそういう意見にまとまつたと申し上げる段階にはまだないのであります。私といたしましては、今後法務省当局とこれらの問題について十分にお打合せをいたして参りたい。そうして私ども専門でありませんので、商法のそういつた方の専門家の御意見を伺いながら、どういうふうにしたらいいかということを研究して参りたい。私個人としては何らかそういう手を打つべきではないかと固く信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/42
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043・田嶋好文
○田嶋委員 非常に私たちもこの記事を見て、敬意を表して今日局長がおいでになつたらそういうことをやるという御答弁がいただけると期待しておつたのですが、多少期待はずれになつたのですが、これはぜひ局長個人の御意見でなくして大蔵省全体の意見としてもちろん局長の意見は大蔵省全体の意見になると思うのです。だから早急におはかりが願いたい。それから法務省との意見の調整、これはまことに遺憾な点で、これはここで聞いたことによつて生れたことですから、私たちも考えなくちやならないのですが、とにかく意見調整ができておらないということが、はつきり現われたような形になりました。昨日法務省では、保全経済会は匿名組合とは認めがたいとはつきり確認してお答えになつております。それに対して大蔵省が承服しておらないということは意見の調整ができておらないということである。国家の大事な政治をやる大蔵省と法務省との意見が調整できていないということは、保全経済会の弊害、組合員に与えた損害それから国の経済に与えた大きなマイナス、これらを今後急速に解決するために非常に障害がはつきりと現われておると思うこの点は今日でもひとつおはかりになつていただいてただちに意見調整をしてさつそく解決をするようにお願いしたいと思います。
最後に保全経済会の方では、聞くところによりますと、大蔵省が助けてくれるから心配はいらぬ、国が助けてくれるから待てこういうことを言うので、結局各会員がそれにたよつてやつてくれるであろうということで安易な気持を抱いて今日なお財産保全だとか、持つておるものの隠匿を防止するとかいうようなことに対して消極的であるということが伝えられておるのですが、一体大蔵省はそうしたお考え、要するに援助をしてやろうとか、救済策を講じようとかいうようなお考えをお持ちでございましようか。ひとつこの点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/43
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044・河野通一
○河野説明員 私も新聞でそういうことを、伊藤さんと言われましたか、理事長が政府に対して救済融資を申入れてあるという話をされているように見ております。しかし私ども大蔵省といたしましては、大蔵大臣はもちろん、私ども一切そういう申入れを受けたことはございませんし、またかりに申入れがありましても、そういつたことを保全経済会についてとるべき何らの理由はない、私ははつきり申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/44
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045・田嶋好文
○田嶋委員 私はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/45
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046・小林錡
○小林委員長 古屋貞雄君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/46
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047・古屋貞雄
○古屋(貞)委員 ただいま田嶋委員に、入手した材料によつて預金でないという結論が出たという御説明がございましたが、特に保全経済会からとつて来た材料、これはどんな材料でございますか。その材料と、それからもつと具体的にこういう事実だから預金でないという御説明をいただきたいと思うのです。どうも納得が行きません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/47
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048・河野通一
○河野説明員 材料は、たとえば営業案内、それから出資証書の写しと申しますか、見本、それからその裏に書いてあります契約と、いろいろございますが、そういつたパンフレツトとか、あるいは印刷物等手に入りますものをできるだけ入手いたしました。これは保全経済会から直接とつたものは、ほとんどないと思います。全部間接に手に入るものを集めたということでございます。これが一番問題になりましたのは、やはり今お話のように、こういう形で出資の受入れをいたしますことが一体預金であるかどうかという点にあつたわけであります。しかもその出資には確定率の配当を約束するようなことまで実はやつておる。そういつた点は、形式は出資といつておるけれども、実際は預金ではないかという議論が相当内部でもありましてこれらの点で見解の調整をはかつて参るために、実は非常に時間を要したわけでありますが、やはりいろいろな資料から研究いたしました結果、これは出資でないとは言えない。従つて今申し上げましたように、出資であるとすれば、それは預金でないわけであります。これは私がここで諸先生に申し上げるまでもなく、出資と言えばこれは自己資本を構成するものであるし、預金と言えば他への資金といいますか、そういうことになるわけであります。これはやはり両方の性質を持つということはあり得ないわけであります。これが出資である以上は、やはり預金行為とは言えない、こういうふうな結論に私どもは到達いたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/48
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049・古屋貞雄
○古屋(貞)委員 保全経済会の契約の内容並びに定款などから見ますると、こういう点が匿名組合でないことは明確になると思うのですが、まず第一に利益があつた場合以外に損失をした場合でも――損をした場合には損失を補填しなければ利益の配当をすることができないのは匿名組合の性質でありますが、初めから利益の有無にかかわらず、損害がございましても補填をせずに、一定の利益を交付する契約が一つある。従いまして銀行に預金して預金に対する、預金利子を定期的にもらえると同じ結果になる。
もう一つは、出資とするならば、営業主に対する出資でございまするから、その営業自身の問題があるわけでございます。ところが保全経済会では三箇月ということに契約ができておる。でございますから、その三箇月以内に営業の利潤の有無というようなものは結論が出て来ない。さような短期間に営業が行われている営業い。ではな不動産の売買であり、株の投資ということになりますると、どうも三箇月の期限を切られておりまするというに、いわゆる出資の性格がなくなつて来る。それからもう一つは、匿名組合は御承知の通り、営業主に対する信頼ということが前提になるわけであります。保全経済会のように、不特定多数の全国の者の理事長の伊藤そのものに対する信頼の観念、さような観念は出資の条件にはならない。いわゆる金を出しておりまするものの条件になつていない。とにかく出しさえすれば一定の契約上の利潤がもらえる。しかもその利潤が非常に莫大に、現在の社会通念から考えましても、さような営業による利潤というものは考えられない。言いかえますならば、株式の売買並びに不動産に対する投資が、三箇月の間に保全経済会の場合では最低月二分でございます。年に二割四分という莫大な利潤が得られる。さような営業に対する利潤の有無にかかわらず出資者は出資をしている。従いましてこ回は出資にあらずして預金であるというように考えられるのであります。かような点から考えますならば、どう解釈いたしましても、匿名組合契約にならないと考えます。法務省の解釈も昨日さような結論を出されたのでございますが、大蔵省といたしましては、そういう点はどう考えられますか。たとえば保全経済会の契約の当事者が、社会通念上考えられる原則に立脚いたしましてのただいまの結論を得たかどうか、その点の御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/49
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050・河野通一
○河野説明員 保全経済会が匿名組合そのものであるかどうかにつきましては、先ほどから御説明申し上げましたように、私としても的確に申し上げる自信はございません。しかし少くも私どもは匿名組合そのものであるか、あるいは匿名組合に準ずる無名契約ではないかと考えております。それで今お話のように匿名組合そのものは立法の趣旨から言いますれば、やはり少数の人々の対人信頼関係というものがあつておそらくそこに営業主を信頼して初めて匿名組合というものが成り立つということであろうと思うのであります。その辺から言いますと、顔を見たこともないような不特定多数の人が出資をするという形は、あるいは本来の匿名組合そのものではないという議論も当然成り立つと思うのであります。しかしながら少くとも私どもが関心を持つておりますのは、その出資の形が一体出資であるか、あるいは預金であるかというところに実は問題がある。その点は先ほど来いろいろお話がありました、見解も実はわれわれ検討しております過程におきましてはございましたが、それらをいろいろ研究した結果、先ほど来申し上げておりますような結論を出したわけであります。しかしそれは私どもの手に入れた材料に関する限りでありましてさらにこれを詳細に内容を調べた場合におきましては、違つた結論が出ることもあり得ないとは保しがたいのでありますけれども、少くも今お示しになりましたような程度のデータは、大体私ども研究いたします過程におきまして入手をいたしております。それを前提にしていろいろ研究をいたして参つた結果が先ほど来申し上げましたような結論になつたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/50
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051・古屋貞雄
○古屋(貞)委員 ただ私どもがしつこく御説明を願つておりますゆえんは、あんなに大きな資金が集まり、そうして日本の経済界に相当な影響を及ぼす結果が生じ得ることは、私ども大体社会通念上考えられる。従いまして金融政策の大御所である大蔵省、ことに金融に対する監督権をお持ちになつている大蔵省当局がもつとつつ込んで、ぽんとうにどういう気持であの出資をしておつたかという点、さらに承りますと、どうも自分たちの入手した程度の材料で判断をしたのだというようなお答えでございまするが、私どもから申しまするならば、少くとも預金の類似行為ではないかという疑いだけはお持ちになつたらしい。さような疑いをお持ちあそばすならば、具体的な事実に対するもつとつつ込んだ御調査というものが行われなければならぬじやないか。その御調査をする権限は、監督官庁でございますから、おそらくあると私は思う。犯罪の捜査ではございませんが、取引の内容に関する問題であります。預金の類似行為である疑いがあるという点について本件についても、もう少し親切に十分なる御審査を願つた具体的事実において御判断が願えるのではないか、かように思うことが一つ。それから三月の各関係省の会合席上で仄聞するところによりますと、警視庁あたりでは相当積極的な意見を持たれて、これは預金類似行為であるかどうか知りませんが、いずれにいたしましても、大蔵省の態度いかんでは手をつけられる状態に置かれておつたように聞き及んでおるのでありますが、さような点について大蔵省は非常に消極的であり、責任回避をするような態度をとられておる点について私どもどうしても納得が行かない。その点についてもつと積極的な事実調査をされなかつたという理由を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/51
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052・河野通一
○河野説明員 最初に第一点のお尋ねであります。少くとも預金行為としての疑いかあつた、それについてつさらに積極的に調査をすべきではなかつたかというお話でございます。これは私ども任意調査の形でできるだけ調査をいたしたいと思いましたけれども、法的にいかなる権限に基いてこれを調査するかという点で、結局私どもといたしましては、法的な権限がないという結論に到達いたしたのであります。たしか保全経済会そのものでありましたか、あるいは同種の投資機関でありましたか、私ども任意に調査をいたしたいと思いまして申し入れた場合に、これを断られた事実がございます。これはどういう意味かと申しますと、銀行法の解解釈につきまて、いろいろ法務省、法制局ともお打合せをいたしたのでありますが、預金を預かることは銀行法等によつて免許を受けなければならぬ、禁止をされておる。しからば預金行為の疑いのあつたものに対してそれを検査したり調べたりする権限が、銀行法上あるいは金融行政の立場から法的に根拠があるのかという点につきましては、ないということが法律の解釈としてきまつております。しかしながら、私は別に法律根拠がないのでやむを得ぬじやないかということでほうつておいたつもりはございません。そういう直接な検査によつて調べる以外の方法でできるだけの材料は集めたのでありますけれども、乗り込んで行つて検査をするということには、私ども法的に根拠を持つておらぬ、こういう事態であつたわけであります。
それから三月でありましたか二月でありましたか、各関係当局の方の会合がありました席においてだれがどう言つたということはお互いに差控えるべき問題ではないかと思うのであります。経過を申し上げれば、それは私どもといたしましても、その一年の間に法務省その他とも見解についていろいろお打合せをして来て参つております。私どもは、何か自分たちだけが事なかれ主義の非常に弱い立場をとつて参つたとは決して考えておりません。各関係の当局のこの問題を預金行為として取上げなければならぬという説に対して大蔵省だけがそれに反対してつ参つた結果そういう結論になつたとは、私は毛頭考えておらぬのであります。しかしそういう政府部内の会同においてどこがどう言つたということは、私はあまり申し上げることは適当でないと思いますから、私からはお答え申し上げることを差控えさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/52
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053・古屋貞雄
○古屋(貞)委員 かようなことを申してよいかどうかはわかりませんが、私直接本人から承つたので一応お尋ねしたいのであります。今の大蔵省の消極的な態度をとるに至つた原因があつたかどうか。たとえば十三国会のときに、大蔵委員会で保全経済会から委員が招待を受けたときに、莫大な現金をおみやげにもらつて持つて帰つた。そのときの委員の一人から名前を言いませんが、ある私の友人の委員から、そういう事実があつたかどうか知りませんが承つた。そうして保全経済会から大蔵省その他に相当金をばらまいている、なおその他関係方面に相当資金をばらまいているということを聞いたのであります。しかも昨日か一昨日、委員のどなたかからもお尋ねがあつたように、伊藤さんは新聞記者に向つてかようなことのあることを予想して問題の起きたときに金をばらまくわけに行かない、従いまして普段まいておくのだが、これは何とか回収がつくと言つたということを新聞で承つたのでありますが、ある上からとか、あるいは大きな力によつて今の御判断をする場合、あるいは消極的な態度をとらなければならぬような状況に置かれた事実がございましたかございませんか、それを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/53
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054・河野通一
○河野説明員 はつきり申し上げておきます。そういつた事実はございません。それから大蔵省が、一係に至るまで保全経済会から、いやしくも一銭でも金をもらつたということは全然ございませんから、もしそういうお疑いがございますならば、はつきりここで、そういうことの事実はないということを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/54
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055・古屋貞雄
○古屋(貞)委員 これだけは大蔵省の銀行局長といたしまして本件は相当大きな社会問題であり、日本の経済界に相当いろいろな影響を及ぼすのみならず、ややもすると治安が非常に危険な状態に置かれることになるについて、金融行政をつかさどつているあなた方の立場からいかにお考えになりますか、その点を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/55
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056・河野通一
○河野説明員 保全経済界に対しましては、十五万あるいは二十万近くの零細なる出資者があつて、かりに払いもどしを受けられないという事態に相なりましたならば非常にお気の毒であるので、私どもとしてはできるだけこれらの方々に迷惑がかからないことを心から願う次第であります。しかしながら、これはるる申し上げましたように、金融全体に間接的な影響のあることはもちろん認めますが、保全経済会のやつておりますこと自体は、先ほど来申し上げておりますような観点から、与信の面におきましても受信の面におきましても、これは金融業務でないという考え方に私ども立つておるのであります。従いましてそれ自体金融の立場からいろいろ処置をとらなければならぬということには相ならぬと考えております。その限りにおきましては、従来からとつております態度をかえるつもりはないのであります。ただ問題は、先ほど来申し上げましたように、それ自体が金融業務でないからといつても、金融に対して相当影響のある問題でありますから、私どもは非常に強い関心を持つており、それらが金融全体の安定と言いますか、そういつたことに悪い影響を持たないように、今後金融全体に対する影響の波及をできるだけ押えて行く、少くとも正規の金融機関についてこれらの影響が及ぶということは、いかなる方法をとつてでも全力を尽してこれを防止いたして行くつもりで大蔵省としては努力をいたしたいと考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/56
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057・古屋貞雄
○古屋(貞)委員 済みました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/57
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058・小林錡
○小林委員長 押谷富三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/58
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059・押谷富三
○押谷委員 保全経済会の実態については、いまだ大蔵省当局におかれても把握しておられないらしい。真相はおわかりでないらしいのでありますが、しかし保全経済会が十五、六万という不特定多数の大衆から零細な資金を集めて、その総額が四十五、六億にも達して、いるというこの事実は御承知でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/59
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060・河野通一
○河野説明員 これも私は、実は直接に確信を持つてその程度あるということはなかなか申し上げかねます。しかし私どもの手に入り得るいろいろの調査及び情報等からしまして、今お話のような程度の加入者及び資金量を持つておるのじやないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/60
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061・押谷富三
○押谷委員 そこで十五、六万という大勢の人から四十五、六億というたくさんな金を集める。これが投資であるかあるいは預金であるかという問題になるのですが、現実は十数万である。集まつたものは五十億にも近いものである。この事実と、そうしてその金は一定の利潤――利益配当という言葉は使われているかもわかりませんが、一定の金額を利潤という名前で渡されて行くということと、その金にはいわゆる弁済の期限といいますか、言葉はいろいろカモフラージユされていましようが、結局は利息と期限、こういうものがついておる。そうして大衆から四十数億を集めている、こう考えたときに、今日のあなたの考えとして前の協議をせられた当時の考えは別として、今日ただいまやはり預金行為とは見られないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/61
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062・河野通一
○河野説明員 お話の点は先ほど来他の委員にお答え申し上げました通りであります。実は協議を進めて参りました間に御承知のように保全経済会の資金量が急激にふえたのであります。しかし私どもがこれらの問題について結論をこの三月に出しました当時においては、大体その程度の資金量及び加入者数はあつたと私は思います。これは先ほど申しましたように的確にはわかりませんが、むしろ今よりも多かつたのじやなかろうかという気もいたしておるくらいでありまして、その当時から出資者の数にいたしましても、その集めた出資の総額にいたしましても、相当多額に上つております。相当多数の人がこれに加入いたしておるという現実は、研究いたしておりました当時にも大体私どもは想定できたのであります。その後、去る三月以降においてそれが非常に資金量もふえ、加入者もふえたというような事実は私はないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/62
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063・押谷富三
○押谷委員 こういう機構の利殖機関といいますか、あるいは金融機関ともいうべきものが、これは預金行為ではないという考え方を今なお持つておられるとすると、今後もこういう機構のものができて来るというときには、今日の状況ではよいといわなければならぬと思うのであります。端的にいえば、この保全経済会の組織機構は今日
大蔵省がお考えになつて、これは違法ないしは脱法のもので、よくないというお考えか、あるいはこれは日本の法制のもとにおいては適法のものである、こうお考えになつているか、結論的に御意見を求めるのはどうかと思いますが、一応参考の意見をひとつ聞かしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/63
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064・河野通一
○河野説明員 私はこれが何か特別な法律のもとにおいて認められておるということに必ずしもなるとは思いませんが、少くともこれを取締りの対象とすべき法律がないか、あるいは何らか法律に基いて適法にやつておるか、どつちかではないか。従いましてその点につきましては先ほど来ちよつと申し上げましたように、こういうふうな不特定多数の人から資金を集めるという形態で何ら出資の保護の規定もない。その営業に対する監視の規定もないような状態がいいか、悪いかにつきましては、これは相当私は考えなければならぬと思う。そのためにどういう立法がいいかという点につきましては、これはやはり専門の方々とも十分に御相談しなければならないと思いますが、何かそういつた立法措置がいるのではないかということを私は申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/64
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065・押谷富三
○押谷委員 私のお尋ねをいたしておるところは今のお答えのところではないのであります。これから立法をしてかようなものを取締ろう、またかようなものは日本の国内において金融行政の面からは害毒が多いからやめてもらおうというこの考え方は一応うなずけるのですが、今日の日本の法制のもとにおいて、かようなことは私どもの常識から行くと許されない、これは預金行為ではない、これは匿名組合の契約であると考えられるような御意見でありますが、しかしそれは匿名組合と考られるような言葉は文書の上に現わし得るのです。いろいろなことばをもつてカモフラージユする、脱法的な言葉をいろいろと営業案内なり、あるいは約款なりに書き得ると思いますが、しかしその実態は何であるか、われわれは政府に要求いたしておりますのは、常に文書に現われた営業案内であるとか、あるいは契約書であるとかいうその文面の字句ではなくして実際にやつておることは大衆から預金を集めておるのだ、大勢の勧誘員を使つて集めておる。であるからわずかの期間の間に十数万という者から数十億つのものが集まつて来る、これは私ははつきり預金だと言い得ると思う。あなたの考えは預金ではないという、預金でないということを建前にすれば、今日の日本の法制においてはこれは自由であつて、あるいは適法であるというお言葉ができて来るかもしれぬと思う私の考えをもつてすればさようなものではない、実態は一々文書を調べられればいろいろな脱法、逃げ道はつくつておられるでしようが、何ぼいかなる逃げ道をつくつておつても、実態というものは、厳然と動かし得ないものは、十数万の人から数十億のものを集めておる。そうしてそれは事業というものはどんな事業をやるかということを知らないのです。匿名組合員が営業者が何をやるかということを実際に知らない。また文書の定款の上からもいかなることをやつておるかということもはつきりしてはおらぬ。ただ利殖に眼がくらんで、利益だけに眼がくらんで金を渡して行く、これは投資と言われましよう。けれども投資ということと預金ということとは、まことに紙一重なのです。預金という気持で預金している人はその十数万の人の大多数だと思いますが、投資したという人、預けたという人、そういうように紙一重で利ざやもとれるというときには、それは大蔵当局が日本の金融行政の元締めである、いやしくも日本の経済に重大な影響を与えるようなこの金融機構あるいは利殖機構については相当しつかりした態度をもつて取締つてもらわなければならぬと私は考えておるのです。そういうようなしつかりした態度をもつて臨んでもりらわなければならぬ大蔵当局が文書に表われた字句にこだわつてどうも匿名組合でないとは言いかねるというような――ないとは言いかねるというような言葉をもつてこれが預金でないと断言せられるようなことは、私はどうも受取れないと思うのですが、この点は十分御再考願いたいと思うのであります。日本の国内において現在この種の機構を持つておる利殖機関あるいは株主相互金融の機構をもつてやつている金融機関あるいはこれに類するようなものが、ずいぶん私承知しておるのですが、大蔵省も日本の金融行政の元締めで十分調査されていると思うが、一体どれくらいあつて、そうしてその扱つている資金量は何千億くらいか御承知でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/65
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066・河野通一
○河野説明員 お答え申し上げ上ます。これもはなはだ私ども一々について具体的に調査をいたしておりませんで、相当推定が入つておることを御了承いただきたいと思います。
第一に、今お話の投資利殖機関、つまり簡単に言えば保全経済会式のもの、これは二つのやり方があると思います。一つは株式会社組織でやる、株式会社で株式を集めて来て、それを不動産とか有価証券に投資するという仕組と、それから今のように、匿名組合かあるいはそれに準ずるような一つの出資形式をとつておるもの、この両者がある。大体数は後者の方が若干多いのではないかと思いますが、両者で大体五十社程度と私は踏んでおります。その資金量は保全経済会をへ含めて百億から百五十億程度だろうと思います。それから、貸金業者は、これは今申し上げた利殖機関とまるでカテゴリーの違うものでありますが、貸金業者は大体全国に一万程度ある。そのうち法人と個人が大体半々程度とお考え願えればいいと思います。法人というのは具体的に申し上げれば、大体株式会社組織でやつておる。株式会社組織でやつておる貸金業の一つの形体がいわゆる株主相互金融で、これは私どもに届け出られておる文書の表面から言いますならば、これは株式会社組織による貸金業の一つの形体であろう、その株式相互金融という形体をとつておりますものがどの程度あるか私どもにははつきりわかりませんが、大体全国に二百から三百程度であろうと思います。この資金量は大体二百億前後と私は思つております。貸金業者全体の資金量が大体四百億程度ではないかと思いますので、大体その半額程度が株主相互金融によつてその資金が占められておる、大体こういうふうに思つております。この両者、貸金業者と今の利殖機関的なものとを合せて、資金量は大体五百から六百億程度のところではないか。ただこれは今申し上げましたように、一万から貸金業者がございますので、私どもは一々の資金をどのくらい持つておるかということはとうてい調べる能力を持つておりません。相当な推定が入つていることは御了承願いたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/66
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067・押谷富三
○押谷委員 全国における貸金業者あるいは株主相互金融の金融機関、こういうようなものは大体許可を受けておるものですか、今言われました数字は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/67
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068・河野通一
○河野説明員 貸金業者というものに対しては、実は許可とかそういうことはやつておりません。ただ届出の制度があります。届出制度をさしておりますのはどういう意味かといいますと、これは公の金融機関としてどうするという問題ではないので、貸金業というのは私どもは本来自由経営業だと考えております。言葉は非常に悪いのですが、貸金法というのは昔からあつた。自分の金を貸すということは自由な営業であつたのであります。現在においても私はその本来の趣旨はいいと思つております。ただなぜ届出をさせ、これに対して特別な法律があるかと申しますと、これはやはり法律違反をしてはいかぬ。その法律違反ということはどういう点かと申しますと、それは二つあると思います。一つは弱者保護の見地から、不当に反社会的な暴利と申しますか、高利をとることを取締らなければならないということが一点。それからもう一点は、これらの貸金業者というものは自己資本でやれ、自己資本で貸金業をやることはこれは本来自由である。ところが本来えてして預金を受入たりするような、いわゆる法律違反行為があるから、これらの点についてやはり取締りを必要とする、つまり貸金業等の取締に関する法律というのは取締り法規である。そういう法律違反とか弱者保護に欠けるような高利暴利をとるといつたようなこの二点を取締るためにできておる法律だと私は考えております。従つて免許するとか、認可するといつたような種類の業態ではない、こう私どもははつきり割切つて考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/68
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069・押谷富三
○押谷委員 一般の問題はこれくらいにして私はこの保全経済会の扱つている資金の集め方その他につきましては、相当疑義があると思いますから、今の局長の御答弁をもつてしては実は満足をいたしません。私の考え方と相当距離がありますし、また昨日法務当局から伺いました御意見とも大分食い違つておりますから、そこでわれわれはこの実体をいま少し調査をいたしたいと思いますので、先ほども御答弁の中にいろいろな資料をお持ちになつているようであります。保全経済会の実つ態を調査するに必要な資料を現在お持ちであると思いますから、そこでこれは委員長から言つてもらうのが正しいと思いますが、私からも要請をいたしますことは、保全経済会の定款あるいは営業案内、出資関係を明らかにするもの、あるいは資産関係が明らかになるもの、配当利益、かような関係に関する説明の書類、その他保全経済会の組織、営業、あるいは契約者との間における契約内容を知り得るような一切の書類、かようなものがありましたならばぜひ当委員会に御提供を願いたいと思います。委員長からも特にその点御配慮をお願いいたしまして私の質問を打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/69
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070・小林錡
○小林委員長 ありましたら次会までに御提出を願います。なおそのほかにも参考になるものがありましたらお願いいたします。木下郁君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/70
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071・木下郁
○木下委員 私は国税庁の長官にひとつ聞きたいと思つておつたのですが、銀行局長が見えておりますから……。銀行局長は御勉強なさつて日曜にお出になつて国税庁長官は日曜だからどこへ行つたかわからぬ。国会は今休日も休まぬでやつていることは御承知のはずだ。はなはだ遺憾に思つておるが、あなたはお出になつているからその点だけ満足いたします。
ただ先ほど以来繰返された御答弁で、なおきわめてふに落ちぬ点があるのですが、今取扱つた金額の総額というものが大体五百億くらいということを伺いました。こういうえたいの知れない――まあどうも匿名組合の疑いがあるとかいうような判断で取扱われて来た、そういうえたいの知れない金融機関が出て来て五百億の金を動かしておる。これはどうかしなければ、日本の経済界、ことに金融の面に非常に危険なことになりはしないかということは、やはりその一年前、御相談があつたころからお考えにはなつておりましたか。お考えになつておつたならば、その点についてただこの保全経済会のいろいろな資料で、そこ確信を持つた銀行法上の、あるいにその他の金融の取締りの規則で手を入れることができないのか、どうかしなければならぬということで、いろいろの手はお考えになりましたかどうか、その点をちよつと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/71
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072・河野通一
○河野説明員 今お話のような観点からも、この問題についてはいろいろ考えました。ことにこういつたいわゆる利殖機関とか正規の金融機関以外に、相当資金が集まつて来るという事態、そういう原因等は、やはり私どもとしては相当いろいろな観点から研究して参つたわけであります。ただ問題は、金融全体の立場に対してどの程度の影響を持つておるかという問題につきましては、私が先ほど来申し上げておりますように、資金量全体が大体五百億程度でありまして資金量は決して小さくありませんが、金融全体を撹乱するというほどの問題ではない。むしろ問題があるとすれば、自分のなけなしの資金を出資しておるこれらの加入者の方々が、万一の場合にはそれがとれなくなるかもしれぬといつたような危険にさらされておつてその最悪の事一態においてそれがとれないという場合には、相当社会的に問題を起すということが非常に心配される問題であるのであります。それが金融全体の大きな動きに非常に大きな撹乱を起すということは、私はその当時からもないと考えておりましたし、またそういうことをあらしめるべきではないという建前において考えて参りました。今御指摘のように、これらの影響を無視して参つてもいいというふうなルーズな考え方には、私どもは決して立つておらぬのであります。さればいかなる方法がそれに対して講じられるかという点につきましては、先ほど来申し上げましたように、結局これは各出資者が出資をするという形において加入して行く。従つてその形では、いわば非常に例が悪いのでありますが、一般の事業会社、株式会社等の株を引受けて行くというふうな法律関係とかわりはない。従つてそれに対しては、預金者に対すると同じような保護は与えられない、こういうことをはつきりわかつていただいて、その上でこれらの出資なりあるいは投資なりをしていただくことが望ましいということで、私どももいろいろな観点から、そういつた事実を、新聞社にもお願いして新聞紙等を通じましてできるだけ皆さん方にわかつていただくような措置は講じて参つたつもりでありますけれども、不幸にしてそういうことが十分に徹底しなかつたといううらみが、あるいはあるかもしれませんが、できるだけそういうことはやつて参つたつもりでございます。ただ問題は、かりにこれらの業態というものが相当危険なものであるとしても、私どもとしてはこれが危険なものであるということは言うことはできないと思います。また危険であるかどうかはやつてみなければわからぬという問題でもありますし、言葉は非常に悪いのでありますけれども、場合によつては一種の営業妨害行為になるかもしれない。そういう点も十分私どもとして考えて参らなければならないということで、これらの言動については相当私どもは慎重を期さなければならないという問題があると思います。従いましてその出資者には、それは出資という形であつて、決して預金でないということをよくわかつてこれに加入していただきたいということも、できるだけ徹底するように私どもは努力をして参りました。それよりほかあの際私どもとしては方法はなかつた、このように私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/72
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073・木下郁
○木下委員 こういうことになつたから私は言うのではありませんけれども、私どもみたいな金融のことになると縁のない者でも、月二分、はなはだしいのは八分という配当をするようなばかげたことが行き詰まるということは、常識的にわかつておる。それを今、万一の場合には零細な何万、何十万の出資者に迷惑をかけるから――万一ではありません。万に万、いつ来るかが問題だ。そういうような態度がはなはだ今日をあらしめている。一年前その方のくろうとの法務省と金融面の大蔵省が集まつて相談して、結局わけのわからぬような結論になつてこういう次第になつておるわけであります。その点をここでやかましく言つてもしようがないので、これ以上言いませんが、直接いろいろの資料を持つて来いと言つてやるだけの権能がないから、間接に集めてお調べになつたというが、便利なことに大蔵省には国税庁がある。一体この伊藤なにがしという名も知れぬ人間が一人で、そうして月二分、はなはだしいのは八分という高率な配当をして行く。匿名組合ではなくて、匿名組合に準ずる一種の無名契約という御解釈にはなつているのですが、それならその配当たるや、伊藤なにがしの営業による利益の配当であることは間違いない。そうしたならば、伊藤なにがしが、日本国中に大きなビルデイングを建て、二百箇所の出張所、支応を設けておるという点について、税金は十分おとりになつていると思います。零細な親兄弟そろつて働いておるようなしがない、店には税務署の署員が三日も四日も来て帳簿の端から端まで調べております。それが現実であります。一年前からそれほどに疑問をお持ちになつておつたならば、この点については必ずお調べになつておると思いますが、一体国税庁とその点についてお打合せになりましたかどうか。そうしてこれからどのくらいの利益をあげているということはお知りになつておりますか。お知りになつておるならば伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/73
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074・河野通一
○河野説明員 私は国税庁におきまして、保全経済会と申しますか、伊藤斗福個人の営業になつておりますから、おそらく個人の問題だと思いますが、その税金の問題で現在調査を進めておる段階だと聞いております。それでいろいろ経過的に話を聞かないでもありませんけれども、今おしかりを受けてはなはだ恐縮でありますが、国税庁長官から直接お聞取り願うべきであろうと思いますので、私からお答え申し上げることは差控えたいと考えております。あしたでもお呼出し願いまして御質問願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/74
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075・木下郁
○木下委員 国税庁に聞いた方がなおはつきりするわけでありますから、銀行局長にはもうこれ以上聞きません。ただ一言、ほかの委員からも希望が述べられましたが、事実を調べるには、複雑した事実だから相当時間がかかるということは了承されます。しかしこの問題は、匿名組合であるやいなや、あるいはこれが準匿名組合の無名契約であるかどうか。それからそれに対する態度も、常識的に考えて、このものがいつかしつぽを出すことはわかつているのに、それに対して、大蔵省の重要な職にある人なのですから、やはり考えるにも程度がありまして、裁判をして結審した事実について法律の判断をするのに、最高裁判所が三年も四年も考えておるが、しかし考えるにも程度がある。そういう点が国民には納得が行きません。事なかれ主義だというので、いつまでも結論を出さないでじつとしておるなら、御本人はそれでいいかもしれませんが、国民はたまりません。かような意味で、どうかはつきりした、そうして高い政治的観点から善処されんことを希望いたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/75
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076・押谷富三
○押谷委員 ちよつと一点聞き漏らしましたので伺います。保全経済会の問題について、重要な事後処理といいますか、途方に暮れております十数万の資投者に対して一つの利益を擁護せんければ重大な社会問題にもなつて来るわけですが、それがためには、この保全経済会の伊藤が持つておる財産の散逸を防がなければならぬのです。特に新聞に伝えられたところでは、伊藤はこの金を外国へ持つて行つて分散するという計画があるがごとく言われているのです。何でも二十六年の秋アメリカに行つた際に、二箇月間に、当時の金で七千万円使つて来た、どこかへ分散しているのだろう、こう新聞に書いてあるのです。実際はわかりませんが、今日の事態からはさようなことも考えられます。外国へ金を持ち出すことは、もちろんいろいろな法規上の手続があり、それは大蔵省所管の事務でありますから、そういうことにつきましても御警戒を願わなければならないことだと思いますが、そういうことはお考えになりましたか。またそれに対して将来御警戒を願いたいと思いますが、御意見を一口でいいから伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/76
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077・河野通一
○河野説明員 押谷さんからの御質問の点は私もうわさで聞かないではございませんが、真相については、私まだはつきりしたことを申し上げるわけに行きません。ただ今お話もありましたように、最悪の場合において出資者の保護に欠けるということは、これは非常に困つたことでありますから、そういつた財産の保全という見地から、彼が外国へ投資する等のことがもしかりにありとすれば、大蔵省としては為替管理法その他の規定によつてこれらの点は十分に監視ができるわけであります。これらの法律の運用によりまして万全を期したい、かように考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/77
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078・小林錡
○小林委員長 本日はこの程度にとどめまして、明日午前十時から開会することにいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705206X00219531101/78
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