1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年十一月三日(火曜日)
議事日程 第六号
午後一時開議
第一 社会保険審査会委員長及び同委員任命につき事後承認の件
第二 市町村農業委員会の委員及び都道府県農業委員会の委員の任期延長に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
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●本日の会議に付した事件
日韓問題解決促進に関する決議案(佐藤榮作君外六十二名提出)
日程第二 市町村農業委員会の委員及び都道府県農業委員会の委員の任期延長に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の締結について承認を求めるの件
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特別法案(内閣提出)
昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
昭和二十八年六月及び七月における水害による被害たばこ耕作者に対する資金の融通に関する特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
昭和二十八年六月及び七月における大水害に伴う中小企業信用保険法の特例に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
昭和二十八年台風第十三号による被害農地の除塩事業に対する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
昭和二十八年六月から九月までの風水害地域におけるモーターボート競走法の特例に関する法律案(水害地緊急対策特別委員長提出)
奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案(内閣提出)
昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)
昭和二十八年度特別会計予算補正(特第1号)
午後四時十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/0
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001・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これより会議を開きます。
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日韓問題解決促進に関する決議案
(佐藤榮作君外六十二名提出)
(委員会審査省略要求事件)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/1
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002・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、佐藤榮作君外六十二名提出、日韓問題解決促進に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/2
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003・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒舩君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/3
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004・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
日韓問題解決促進に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。田口長治郎君。
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〔田口長治郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/4
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005・田口長治郎
○田口長治郎君 ただいま議題となりました日韓問題解決促進に関する決議案提出の趣旨につきまして各党を代表いたしまして簡単に御説明いたします。
まず決議案を朗読いたします。
日韓問題解決促進に関する決議案
大韓民国政府は、昨年一月大統領宣言を以て所謂李承晩ラインなる一線を画し、領海を不当に拡張し歴史上明白に日本領土たる竹島をも恰かも韓国領土なるが如ぐ強弁し、更に本年九月以来公海において漁撈する日本漁船を所謂李承晩ライン侵入の理由をもつてこれを拿捕するの暴挙に出て、その数は今日まで政府公船を含めて四十一隻乗組員四百八十四名に達し、直接被害者たる、被抑留者、出漁不能に焦慮する漁業者並びにその家族の心情を思うとき、真に同情に堪えなついものがある。
依つて、本院は所謂李承晩ラインが国際法上わが国漁民が当然保有する権益を侵害するものなることを確認し、その主張を堅持すると同時に、差当り早急を要する被抑留者の釈放、漁船の返還及び留守家族の援護処置を講じ、盛漁期を控えて待機する多数漁業者の出漁を可能ならしめるため、政府は、この未曽有の暴挙に対し世界の輿論を喚起するとともに急速且つ適切なる外交的措置を講ずることを要望する。
右決議する。
そもそも日韓漁業紛争の問題は、昨二十七年一月十九日、突如として李承晩大統領が海洋主権宣言なるものを発し、朝鮮半島周辺の公海に、日本領土竹島を含む広大なる海域に一線を画して国家の主権を行使するといういわゆる李承晩ラインなるものを設定し、日本漁船の操業を禁止したことに始まつたのであります。日本政府は、ただちにこの不当なる措置に抗議して反省を促し、その撤回を求めたのでありますが、韓国政府は、ごうもその態度を改めようとせず、多くの漁船の拿捕抑留を繰返し、遂に去る九月七日には二十四時を期して同水域内全日本漁船の退去を通告して来たのであります。しかして、なお退去しないものには、韓国政府は海軍艦艇の実力行使をもあえてしその目的を達せんとする峻烈な措置の強行を声明するとともに、ただちにこれを実行に移したのであります。現在まで、これが犠牲となり、拿捕抑留されておる漁船及び乗組員、四十一隻、五百数名に上つております。しかも、これら拿捕船員中六十九名はいまだその所在不明のため、郷土にありては、その家族が生きていることだけでも何とか調査してくださいと合掌する姿を見ては、まことに涙なきを得ないのであります。仄聞するところによれば、抑留された乗組員は、一方的裁判によつて例外なく体刑を科され、獄舎に投ぜられ、人道上許されないような悲惨なる環境に置かれているのであります。また、漁船漁具はもちろん、漁獲物の一切は没収するとの判決を下しているのであります。
そもそも当漁場は明治時代から日本漁業者が営々として開発した漁場でありまして、千葉県以西の太平洋岸の各府県はもとより、石川県以西の日本海岸各県の漁船が競つて出漁している好漁場でありまして、毎年二千隻の漁船と四万人の漁業者の職場であり、その漁獲高は年間二十数万トン、金額にして百三十億円に及ぶ大衆魚を水揚げして、大阪、京都、神戸を初め、西日本一帯にわたり、約四千万人の国民に対し低廉なる動物蛋白を提供いたしておる次第であります。従つて、本漁場に出漁することができなくなれば、ひとり漁業者にとつて死活問題であるばかりでなく、国民の保健上、はたまた日本食糧問題にもゆゆしき関係を有する次第でありまして、まことに重大視せざるを得ないのであります。
本来、公海の魚族は人類共有のもので、万人が公平に利用し得べきものであります。いな、公海の天然資源の保護増殖をはかり、これを最大限に利用することこそ、われわれの理想であり、また水産日本に課せられた使命と言わなければなりません。この意味におきまして、われわれは、国際公法を無視する韓国の一方的措置については、断じてこれを排撃せざるを得ないのであります。
しかしながら、韓国は、独立後日なお浅く、朝鮮事変になり国土は極度に荒廃している現状であり、民心の安定を欠いていることも想像にかたくないのであります。従つて、われわれといたしましても、両国関係の改善に努力し、日韓両国民相携えて水産資源を保護し、両国の発展と共存共栄に資すべきことを念願として参つたのであります。この意味において、政府をして外交交渉による早期解決をはかるべく日韓会談を再開せしめ、誠意ある交渉を始めたのでありますが、韓国側は、会談の本筋に入らず、わずかに二回の交渉をもつて、去る十月二十一日遂に会談を決裂に至らしめたことは、われわれの遺憾とするところであります。しかしながら、本問題は国家の自立上きわめて重大でありますから、理由のいかんを問わず、現下の事態を一日も放任できないのであります。ことに、近づく厳寒期を控えまして、罪なき多数の抑留漁民の安否はもとより、その家族の焦慮のほどは察するに余りあるものがあります。一面、同海区は以西底びき網漁業及びトロール漁業の最盛期を控え、これが漁獲の激減が国民生活に直接重大なる影響を及ぼす事実を考えますれば、いかにしても漫然として時日を費すことを許さないのであります。
よつて、われわれは、いわゆる李承晩ラインが国際法上確立されたる公海自由の原則に違反するものなることを確認し、その主張を堅持するとともに、さしあたり早急を要する抑留者の釈放、漁船の返還及び留守家族の援護措置並びに盛漁期を控えて待機する多数漁業者の出漁を可能ならしめるため、政府に対し適切かつ急速なる措置を要望するものであります。何とぞ各位の御賛同をお願いする次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/5
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006・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/6
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007・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 起立総員。よつて本案は全会一致可決いたしました。(拍手)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/7
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008・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 日程第一は延期されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/8
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009・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒舩君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/9
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010・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程第一は延期するに決しました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/10
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011・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 日程第二、市町村農業委員会の委員及び都道府県農業委員会の委員の任期延長に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。農林委員長井出一太郎君。
〔井出一太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/11
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012・井出一太郎
○井出一太郎君 ただいま議題と相なりました、内閣提出、市町村農業委員会の委員及び都道府県農業委員会の委員の任期延長に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、農林委員会におきまする審議の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。
過ぐる第十六回国会におきまして農業委員会制度の根本的改正に関連し延期せられておりました市町村農業委員会及び都道府県農業委員会の委員の任期は、それぞれ来年一月十九日及び二月二十日に満了し、法律上、任期満了前三十日以内に選挙を行わなければならないのであります。しかるに、今年は凍霜害、水害、風水害、冷害等相次ぐ天候不順のため稲の成育が遅れ、収穫も激減いたしますので、米穀の供出割当及び集荷は相当遅延と困難が予想されるのであります。従いまして、これが衝に当る農業委員が本年産米の供出事務の中途において交代いたしますことは、食糧確保上種々支障を来すおそれがございますので、この際その任期をそれぞれ六箇月延長することにより、本年産米供出の円滑なる遂行に資する目的をもちまして、ここに本法案を提出されることとなつたのであります。
本法案は十月三十一日本農林委員会に付託となり、同日篠田農林政務次官より提案理由の説明を聴取いたしました上、十一月二日質疑に入り、その際、川俣、足鹿、金子、芳賀の各委員から御発言がありました。特に川俣委員から、農業委員会法等が現行法のまま運営されるにおいては、当然これに伴う予算の補正をなすべきではないかとの意見が開陳され、これに対し政府委員より、検討の上補正を行うとの答弁がありました。
同日質疑を終了後、討論を省略し採決を行いましたところ、全会一致をもつて原案の通り可決いたしました。
以上御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/12
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013・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/13
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014・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/14
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015・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の締結について承認を求めるの件を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/15
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016・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒舩君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/16
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017・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長上塚司君。
〔上塚司君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/17
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018・上塚司
○上塚司君 ただいま上程になりました日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の締結について承認を求めるの件に関し、外務委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。
国際連合軍のわが国における地位を規定する全般的協定を締結するために、昨年七月以降、わが政府は極力努力して参つたのでありまするが、刑事裁判権問題及び若干の財政経済問題等につきまして双方の意見が対立し、いまだ妥結を見るに至らなかつたのであります。幸いにして、NATOの協定が本年八月二十三日に発効いたし、これに伴つて日米行政協定の刑事裁判権条項がNATO方式に改訂されましたので、国連軍協定のうち刑事裁判権条項の問題につきましては、かねてのわが方の主張通り、NATOの方式の採用により解決したい旨をわが方より国連軍側に申し入れたのであります。すなわち、国連軍の地位に関する全般的な協定の妥結にはなお多少の時日を要する見込みでありまするが、日米行政協定の刑事裁判権条項の改訂は十月二十九日から実施されますので、この条項のもとにおけると同様の刑事裁判権を国連軍についてもすみやかに獲得し、かつ米軍の取扱いと国連軍の取扱いとの間に不均衡の生ずることのないように、他の懸案とは切り離しまして、刑事裁判権に関する議定書を締結いたし、これを日米行政協定の改訂実施と同時に発効させることとし、後日全般的な協定の妥結を見た場合これに包含させるというわが方の申出を国連軍側も同意いたしたのであります。すなわち、国際連合の軍隊の構成員または軍属が、一、派遣国の財産もしくは安全のみに対する罪、二、派遣国の軍隊の他の構成員、軍属もしくは家族の身体または財産に対する罪、三、公務執行中の作為または不作為から生じた罪を除き、日本国の当局が第一次の裁判権を有する、という原則が確立されるに至つたのであります。かくて、十月二十六日、わが国と統一司令部としての米国政府並びにイギリス、カナダ、濠州及びニュージーランドの四箇国政府との間で本議定書に署名が行われたものであります。政府側の説明によりますと、右五箇国のほかに、去る十月二十九日には南アフリカ連邦が署名いたしておるのであります。
本件は、十月三十一日に本委員会に付託されましたので、同日及び十一月一日、二日、三日にわたり慎重に審議を行いました。その詳細なる経過につきましては委員会議録に譲ることといたします。質疑応答を終りまして討論を行いましたところ、社会党の穗積委員はこれに反対せられ、自由党の福田委員、改進党の須磨委員、自由党の北委員は本件に賛成せられ、社会党の加藤委員は、本議定書発効後に事後承認を求められるのは憲法の濫用となるおそれがあるから、今後これを前例としないことを希望して賛成せられました。
かくて討論を終結、採決の結果、本委員会は多数をもつて本件を承認することに決定いたしたのであります。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/18
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019・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。穗積七郎君。
〔穗積七郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/19
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020・穗積七郎
○穗積七郎君 私は、日本社会党を代表しましてただいま議題となつております国連軍に対する刑事裁判権行使に関する協定に対して反対の意を表明せんとするものであります。(拍手)簡潔にその理由を申し述べます。
まずわれわれは、本協定の国会承認の手続において重大なる欠陥のあることを指摘しなければなりません。本協定は、政府提案の説明にもありますように、去る八月NATO協定が発効し、続いて日米間の行政協定における刑事裁判権に関する改訂が行われたので、これにならつて今まで無協定状態にあつた国連軍との間にも、まず刑事裁判権に関する大体同様の内容の議定書だけを先んじて締結し、しかも日米間と同様、すでに去る十月二十九日から効力を発生せしめるように決定して、しかる後に事後にただいま国会の承認を求められておるものであります。一般国内法に優先する国際条約の締結には、事前に国会の承認を求むべきことは、わが国憲法の基本的なる建前であるのであります。(拍手)この建前を無視して事前に国会を開くべきであり、しかもまた開き得る状態に十分あつたにかかわらず、恬然として事後に国会の承認を求むることは、ここにおいても、現政府の憲法を無視した、国会を軽視する非民主主義的な独善の態度を露呈されておるのであります。(拍手)かかる悪い実績を次々につくり上げて行こうとする悪意ある政府の態度に対しては、われわれは断じてこれを容認することはできないのであります。
さらに、ここに内容的にもわれわれの見のがすことのできないことは、この協定はただに刑事裁判権のみのとりきめに終るものではありません。この議定書の締結は、当然国連軍のわが国における駐屯を認め、その地位を規定する、いわば日米間における安全保障条約並びに行政協定に相当するような一般的な親条約の締結が予想されておるのであります。現に議定書第十一項には、日米行政協定と本協定が自動的に結びつけられて国連軍に対して行政協定並の地位を与えておるのであります。そうであるなら、派生したこの子供の条約の是非の審議は、当然親条約の内容との関連においてのみ初めてその審議が可能なのであります。政府は、ただいま交渉を進めておる親条約の締結とともに、このたびの協定の基準ともなりました日米行政協定の改訂の内容をも説明いたしましてそれらを同時に国会の審議にかけるのが当然であります。しかるに、これをやつていない。われわれは、ただ政府に反対するためではないのであります。国会の良心と責任においてこのような独善的な、かたわな条約の提案には賛成するわけには行かないのであります。(拍手)しかも、政府の交渉の経過の説明を聞くならば、この協定を相手方に承認させるためには、相手方の要求である財政経済上の負担をわが方が承認することを親条約に入れて結ばなければならないようなはめに陥つておるのであります。従つて、なおさら、この場合におきましては、親条約を見ずして審議することはとうていできないのであります。
次に、われわれは、現在の国連軍軍隊がわが国に駐屯するそのことについて政府のように、むやみにありがたがつてうのみにすることはできないのであります。もとより、われわれは、国連に協力することにごうもやぶさかなるものではありません。また、一般的にその集団安全保障に反対するというような考え方を毛頭持つておるものではありません。しかし、現在わが国に国連軍の駐屯いたしますことは、さきの吉田・アチソン書簡によりまして、一九五〇年の夏以来朝鮮戦争に参加いたしました国連関係各国の軍隊の駐屯を許し、これに協力する義務を負つておるのでありますが、この出兵は、国連を一方的に利用せんとするアメリカの、しかも愚劣きわまるマッカーサーの武力作戦の要請によつて出兵せしめられたものであります。出兵いたしました国連加盟各国も迷惑がつて来ましたが、近隣国であるわが国にとりましては、まつたく迷惑しごくな、招かざるお客様であつたのであります。(拍手)
岡崎外務大臣は、先般の外務委員会におきましてわが国に国連が駐屯しておる、そのために朝鮮戦争の波及を防いでくれた、防波堤になつたと、驚くべきことを言つておられますが、われわれの認識によりますならば、朝鮮の戦火がわが国の国民生活に飛火をすることを防いでくれたのは、日本の政府の力でもない、国連軍の力でもないのであります。それはまさに、マッカーサーを首にいたしまして、その無謀なる作戦を停止せしめました英国労働党内閣の平和外交政策がこれをなさしめたのであります。(拍手)このようなことは、日本の吉田政府以外の世界各国の間におきまして衆目の見る事実であります。朝鮮戦争の停止いたしました今日、われわれは一日も早く国連軍の諸君が日本から引揚げられることをこいねがつておるのであります。(拍手)このような国連軍に、いまさらながら長期の駐屯を許し、また必要あらばいつでもやつて来ることのできるような道を開くおそれのある本格的な条約を結ぶこと自身に、われわれは反対せざるを得ないのであります。(拍手)政府並びに保守党の諸君の冷静なる御再考をお願いいたしたいのであります。いまだ国連に加盟せざる日本が、国連に対する本格的な権利の主張をなし得ない前に、それに対する義務のみをみずかも好んで負う必要はないではありませんか。
最後に、たとい短期暫定でありましても、現に駐屯する国連軍五、六千名の兵隊の月平均三十件内外の犯罪に対する裁判権の問題があります。これは、政府の態度にしてもし独立の精神だにあるならば、何ら心配するところはいらないのであります。無協定の場合におきましては、言うまでもなく一般国際法に準拠すべきものであり、独立後でありますならば、属地主義によりまして、日本領土内の犯罪は、たとえば先般の神戸におきます水兵事件にいたしましても、いずれにいたしましても、当然日本の裁判権の及ぶべきことは明白なるところでございます。(拍手)これを先方の言いがかりに対して譲らなければならないような錯覚を起しますことは、政府がいまだアメリカや欧州からは精神的にすら独立していない証拠であり、当然の国際法上の権利の上に眠るものとわれわれは断ぜざるを得ないのであります。(拍手)政府は、韓国にばかり強がりを言わないで、少し朝鮮人を見習つて、かつてのアジアの侵略者に向つて、もう少し強がりを言つてみてはどうでありましようか。それのみならず、今日までの国連側の主張は、すべてその待遇を米軍並にしろということでありました、今日それらの国々のみずからも結んだNATO協定が発効し、また日米間にも当然なる改訂が行われて、わが方に裁判権があることが確認されました以上、これらの基準にしてわが国の裁判権を行使することに何ら反対する必要はないのでございます。従つて、現実問題の処理のために利害得失の判断からいたしましても、何ら現状のままで困ることはありません。われわれは、本協定をありがたがつて宣伝いたしておりまする政府の言に、いささかも迷わされる必要を発見することができないのであります。
以上をもつて反対の趣旨といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/20
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021・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 並木芳雄君。
〔並木芳雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/21
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022・並木芳雄
○並木芳雄君 私は、ただいま社会党左派の討論を聞いておりまして、こんな、だれでも、赤ん坊でもわかるような、当然賛成すべき本議案に対して反対の討論をしたので、(「がつかりした」と呼ぶ者あり)がつかりしたというよりも、あきれてしまつたのであります。討論する気持はなかつたのでありますが、今の討論を聞いておりますと、知らない人は本気にしますから、この際私は、わが改進党を代表いたしまして、はつきりと賛成の意を表明するのであります。(拍手)
最初に反対の理由にあげられた中に、憲法違反であるという言葉がありましたけれども、これは憲法の勉強が足らない人が言うことであります。万やむを得ざる場合には、事前でなくても、事後に国会の承認を求めてもよいことになつておりますので、どうか、ただいま憲法違反であるという討論をされた以上、その点はもう一度再検討を願いたいと思います。
第二に、国際連合の裁判管轄権について、親条約ができていないのに、これだけが先に生れてしまつたのはかたわである、このようなことを強調されておりましたけれども、これもまた少し勉強が足らないと思います。吉田・アチソン交換公文に、親条約に相当するものがあるのであります。もちろん、私どもは、吉田・アチソン交換公文だけで一般協定に代行せしめるという姑息な政府のやり方に対して満足はいたしておりません。満足はいたしておりませんけれども、親条約に相当するものはないというように強弁し、断言することが、社会党左派独特の一方的な独断である。それを私は憎むがゆえに、あえてここで反駁しておく次第であります。決してこれはかたわでもなければ私生児でもないのであります。吉田・アチソン交換公文でちやんと母体があるのであつて、それから生れて来ておる今度の議定書でありますから、この点も、私は、反対の論拠としては全然間違つておる、こういうふうに反駁する次第であります。
第三の反対の理由にあげられた、国際連合の軍隊の朝鮮における行動について、国連軍というものは、まるで招かれざる客であつて、私ども日本としては非常に迷惑だ、こういうふうな討論をなされましたけれども、これは社会党左派とわれわれとは認識を異にしますから、世界情勢の認識あるいはイデオロギーを異にしますから、あるいはここで討論をすることは水かけ論になるかもしれませんけれども、私どもは、国際連合六十数箇国が、北鮮からの南鮮への侵入を、あれは侵略である。こういう断言をして、そうして警察行動として国連軍の発動になつたということは、やはり率直にこれを認めて行かなければならないことであろうと思うのであります。(拍手)これをしもあえて北鮮軍の行動が侵略でないと擁護する必要はないと思う。そこまで擁護して、今の国連軍というものは、あたかも、日本は歓迎しないのに、とんでもないお客さんがやつて来ているというふうに説いてまわることが、すなわち日本の国民を惑わすゆえんのものである。(拍手)私どもにおいては、その認識を異にするものであります。朝鮮の動乱というものはまことに不幸でございますが、国連の六十数箇国の決議に基いて、国連軍は多大の犠牲を払つてあそこで戦つており、防戦をしておるがために、わが日本は安泰である、こういうふうに私どもは考えざるを得ないのであります。
以上三つの点をあげて社会党左派は反対をせられましたけれども、私どもは、日米行政協定を論議するときにおいて、日米の間とともに、国際連合軍の間の裁判管轄権についても、つとに属人主義から属地主義へということを強く政府に要望しておつたのであります。われわれの要望にもかかわらず、残念ながら治外法権的な属人主義が採用せられたことは、御同様遺憾であります。それがようやく、今日われわれ待望の属地主義が採用せられたということは、とにもかくにも日本の主権というものがそれだけ完全に近くなつて来た、こういうことが言えるのであります。これに社会党左派は反対をするというのはわからない。現にあなた方の兄弟分である社会党右派は賛成しているのです。(拍手)このごろ社会党の左と右は統一論などということを論じ合つておりますけれども、とんでもない間違いであります。社会党左派のよつてもつて立つ認識と、右派が、今日悩みつつも、とにもかくにもこの裁判管轄権について条件をつけながら賛成したとついうことは、同じ社会党と名乗つておる二つの党でありながら、やはり右派の方はややおとなになつたのではないか。左派の方は依然子供であつて、一向に伸びない。まことに私どもは残念に思うのであります。(拍手)それに比べれば、わが改進党は良識をもつて、(発言する者多し)わが改進党は良識をもつて、政府に強く行政協定というものの改訂を要望しつつ、(「どういうことを言つた」と呼ぶ者あり)政府に強く行政協定の他の部分についても改訂を要望しつつ、今日喜んでこの裁判管轄権に関する議定書に賛成をしておるものであります。(拍手)
思えば、本日は文化の日でありまして、この記念すべき文化の日に、われわれは、独立主権を回復する一里塚とも申すべきこの議定書が本院において可決されることは、まことに欣快にたえないところでありまして、ただいまの反対討論が、本日の文化の日を残念ながら汚す、根拠なき論拠であるということを、私は聞いておりまして、歯がゆくもあり、残念に思いましたので、ここに立ち上つて、あえてこれを反駁した次第であります。
これをもつて私の賛成討論を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/22
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023・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本件は委員長報告の通り承認するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/23
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024・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 起立多数。よつて本件は委員長報告の通り承認するに決しました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/24
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025・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案、日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特別法案、右両案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/25
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026・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒舩君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/26
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027・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案、日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特別法案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。法務委員長小林かなえ君。
―――――――――――――
〔小林かなえ君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/27
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028・小林錡
○小林かなえ君 ただいま議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案並びに日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特別法案について、提案の要旨並びに法務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案について申し上げます。
御承知の通り、今般、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定第十七条の刑事裁判権に関する条項がNATO協定と同様のものに改訂され、いわゆる属人主義から属地主義に改められ、十月二十九日から実施されることになりましたので、これに伴い、現行刑事特別法に必要な改正を施そうとするものでございます。
法案の内容を簡単に申し上げますと、第一は、施設または区域内の逮捕、捜査、差押え等について、先方の同意または嘱託を要する場合を、合衆国軍隊がその権限に基いて警備しておる施設または区域内に限ることとする等であり、第二は、逮捕された合衆国軍隊の構成員または軍属を引渡すのは、公務執行中に行われた場合等合衆国が第一次裁判権を行使する罪にあたる場合に限ることとする等でございます。
委員会における質疑のおもなものを申し上げますと、公務執行中かどうかという場合の判定その他の点について、各委員から詳細な質問がありましたが、公務執行中というのは、公務執行の過程においてという意味であつて、執務時間中ということとは異なるものである、日本側捜査機関と米国軍当局との間に公務執行中であるかいなかについて意見の一致を見なかつた場合には、日米合同委員会の討論に付するが、終局的には第一次裁判権を持つと考えておる国の当該機関が判断して処置する、なお米軍指揮官等が発する公務執行中の行為であるという証明書は、一応十分な証拠とはなるが、わが裁判所の自由心証を妨げるものではないという政府の答弁がありました。
次に、日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特別法案について申し上げます。
本法案の内容は、日米間の場合とまつたく同様でありまして、ただ、第一条において、国連軍の軍隊、家族等について定義をしたところが違うだけでございます。
委員会においては、派遣国十六箇国中調印した五箇国以外の軍隊はいかにするやとの質問がございました。これに対して、残り十一箇国の代表者は条約の調印式に異議なく出席をしているし、内容は近時認められておる国際条約の一般原則に合致しておるものでありまするから、それらの国の軍隊に準用とてさしさわりないとの答弁がありました。
かくて、質疑を終了し、以上二法案を一括いたしまして討論に付しましたところ、左派社会党を代表いたしまして古屋貞雄君より反対の意見が述べられました。次いで採決いたしました結果、二法案ともそれぞれ多数をもつて原案の通り可決いたした次第でございます。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/28
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029・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 討論の通告があります。これを許します。古屋貞雄君。
〔古屋貞雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/29
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030・古屋貞雄
○古屋貞雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました二法案に対しまして反対するものでございます。
便宜上、前の法案をAといたしまして、これに対する反対の理由を開陳いたします。
わが党は、わが国の完全独立と国民生活の安定を確保するために、さきに講和条約並びに安保条約に極力反対をして参つたのでありますが、右条約が施行されまする結果といたしまして、わが国はアメリカの従属国と化し、国民は窮乏と隷属をしいられ、かつての植民地民族の味わつた、さんたんたる生活に苦しまなければならぬことをおそれたからでございました。しかるに、吉田内閣は、国民の強い反対を押し切りまして両条約を締結したのでございます。かくして、安保条約第三条による日米行政協定によりまして無期限に米軍が日本に駐留することが行われ、しかも無期限の軍事基地提供は、すでに数十万町歩の農地を農民から奪う結果となり、農民を苦しめたばかりでなく、莫大な駐留費は諸外国にその例を見ない重税の苛斂誅求となつて現われ、はたせるかな、勤労大衆の生活は極度に窮乏のどん底に陥れられたのでございます。従いまして、吉田内閣に対する怨嗟の声は全国にほうはいとして沸き起つたのであります。かかる悲惨な苦杯を身をもつて体験いたしました国民大衆は、駐留軍の即時帰還と軍事基地撤廃の運動となつて、今やまさに全国津々浦々にその声が盛り上つて参つたのであります。すなわち、講和条約の五条、六条並びに安保条約と、それに伴う日米行政協定の即時撤廃を希求する声は、暴風のごとき勢いをもつて、特に将来わが国をになう青年諸君の輿論となつて全国を風靡しつつあるのであります。本法案は、右両条約の存続を是認し、これが実在の永久化を承認することを前提とするものでありますので、その内容がその性格を承認の上に立つているのでありまするから、これは絶対に反対をしなければならぬのでございます。
第二点は、本法案は、日米行政協定にその基底を置くものでありまするが、該行政協定は、皆さん御承知の通り、条約として当然国会の承認を得なければならぬ筋合いのものであります。しかるに、これが承認を得ておりません。従いまして、該行政協定は違法であり違憲であると、かたく信ずるものであります。はたしてしからば、右行政協定を基本とする本法案は、これまた不法であると言わざるを得ないのであります。(拍手)いたずらに不当の隷属関係を承認し、現状より、よりよき法案なるがゆえにこれに賛成するがごとき、軽挙かつ卑屈な思想は厳に排撃しなければならない。(拍手)日本民族の限りなき発展と永遠の幸福をこいねがう一念より、われわれはここに屈辱的本法案に対して断固反対するものでございます。(拍手)
B案に対する反対の理由を申し上げます。
わが国は、いまだに国際連合に加入しておりません。従つて、国連軍の地位につきまして協定が行われておりません。でありまするから、基本的な条約が成立しておらないのにかかわらず、特に本法案のみを抽出してこれを審議するというようなことは、審議の原則に反するばかりでなく――、外務大臣の説明によりますると、国連軍と称するものは、近く朝鮮休戦の政治会議が終りますと、わが国から撤退をすることになつております臨時的なものであるということを、本日答弁しております。確認しております。しからば、さような臨時的なものであるのに、何を好んで、わが国が進んで恒久的、屈辱的な刑事特別法を制定する必要があるか、われわれはこれ承服できないのであります。(拍手)従つて、本法案の制定によりまして、国連軍の日本に駐留する既成事実を是認するがごとき結果となるばかりでなく、本法案の制定によりまして、わが国の有しておりますところの――これは自由党の諸君もよく御存じだと思うが、わが国の持つているところの刑罰権のいわゆる属地主義の原則を放棄することになるのでありますから、われわれは絶対に承服できないのであります。(拍手)
第二点は、吉田内閣はアメリカ一辺倒の外交に終始して参りました。秘密外交ということは、どうもお手のものらしい。いつも常習的にやつている。この議定書の承認につきましても、本十七国会が十月二十九日には召集されることがすでにはつきりきまつておりました去る十月二十六日にこの議定書に調印しておるという事実、これは自由党吉田内閣のやつておりますところの常套の秘密外交であり、アメリカ一辺倒の外交であつて、しかも国民をつんぼさじきに置き、国会をつんぼさじきに置いて条約を結んで、効力が発生した後に、国民に対して申訳的に、本日のようにこういう法案を提案したのでありまして、これは国会を軽視することはなはだしいものであります。(拍子)われわれは断じて承服ができません。かるがゆえに、この法案に対しましても、われわれは、国民の輿論によるところの民主的な国会の運営の立場から、絶対に反対をする次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/30
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031・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これにて討論は終局いたしました。両案を一括して採決いたします。両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/31
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032・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 起立多数。よつて両案とも委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/32
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033・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例に関する法律案の一部を改正する法律案、昭和二十八年六月及び七月における水害による被害たばこ耕作者に対する資金の融通に関する特別措置法の一部を改正する法律案、昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法等の一部を改正する法律案、昭和二十八年六月及び七月における大水害に伴う中小企業信用保険法の特例に関する法律等の一部を改正する法律案、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律等の一部を改正する法律案の五案とともに、水害地緊急対策特別委員長提出、昭和二十八年台風第十三号による被害農地の除塩事業に対する特別措置法案及び昭和二十八年六月から九月までの風水害地域におけるモーターボート競走法の特例に関する法律案の両案については委員会の審査を省略し、右七案を一括議題となし、この際委員長の報告及び趣旨弁明を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/33
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034・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒舩君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/34
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035・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例に関する法律等の一部を改正する法律案、昭和二十八年六月及び七月における水害による被害たばこ耕作者に対する資金の融通に関する特別措置法等の一部を改正する法律案、昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法等の一部を改正する法律案、昭和二十八年六月及び七月における大水害に伴う中小企業信用保険法の特例に関する法律等の一部を改正する法律案、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律等の一部を改正する法律案、昭和二十八年台風第十三号による被害農地の除塩事業に対する特別措置法案、昭和二十八年六月から九月までの風水害地域におけるモーターボート競走法の特例に関する法律案、右七案を一括して議題といたします。委員長の報告及び趣旨弁明を求めます。水害地緊急対策特別委員長村上勇君。
―――――――――――――
〔村上勇君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/35
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036・村上勇
○村上勇君 ただいま上程されました七案のうち、まず内閣提出の風水害関係法律案五件につきまして、水害地緊急対策特別委員会における審議の経過並びに結果について簡単に御報告申し上げます。
去る六月及び七月の大水害に対しましては、前国会におきまして、その復旧の促進と民生の安定をはかるため、両院の水害地緊急対策特別委員会の起草提出によりまして、二十四件の特別措置法が制定されたのでありますが、その後さらに、八月には京都、三重、滋賀等に豪雨による大水害が発生し、また九月には近畿、中部地方を中心とする多数の府県にわたり台風第十三号による風水害が発生いたしました結果、これら八月及び九月の風水害につきましても、六月及び七月の大水害に対する二十四件の特別措置法を適用し、六月及び七月の大水害の場合と同様の特別措置を行わんとするのが、名案の主たる目的とするところであります。なお、これ以外に若干の現行法に対する改正点がありますので、以下これについて簡単に申し上げます。
まず、災害救助に関する特別措置法につきましては、応急仮設住宅供与費及び救助事務費等についての国庫補助の措置が、本年八月三日に公布されました災害救助法の一部改正法に規定されるに至りましたので、これとの調整をはかることとし、次に母子福祉資金の貸付に関する特別措置法につきましては、現行の規定では、この特別措置が水害による被害を受けない者にまで及ぶおそれなしとしないので、その対象を風水害等により被害を受けた者に限定するとともに、特別措置の実施範囲を風水害を受けた全地域に及ぼし得るようにいたしております。次に、被害小企業者に対する資金の融通に関する特別措置法につきましては、六月及び七月の大水害と八月及び九月の風水害との再度にわたる被害をこうむつた者に対しては利子補給の優遇措置を受け得る復旧事業資金の限度額を引上げる措置を講ずるとともに、利子補給にかかる復旧事業資金の総額を、十五億円増額して三十五億円といたしております。次に、被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する特別措置法につきましては、前回の大水害及び今回の風水害の双方によつて損失を受けた者に対しましては、国庫補助にかかる融資の貸付額の限定を引上げるとともに、融資総額を百億円増額して三百億円といたしております。
以上、各案の内容の骨子とするところを申し上げましたが、これら五法案は十月三十一日に提出され、即日特別委員会に付託せられたのでありますが、特別委員会における審査の詳細につきましては委員会会議録によつて御承知を願うことといたし、以下、重要な点について申し上げます。
まず、昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例に関する法律等の一部を改正する法律案につきましては、八木一郎君及び柳田秀一君よりそれぞれ修正案が提出されたのであります。八木一郎君の修正案の要旨は、本案中の公共土木施設等についての災害の復旧等に関する特別措置法の改正規定に、さらに高潮等により生ずる災害を防止するために必要な事業費に対する補助の規定を加えんとするものでありまして、これは、海岸及びこれと接続する湖岸におきまして、暴風、洪水、高潮その他地震等による地盤沈下等異常な天然現象によつて生ずる災害を防止するため必要な事業を施行する場合に、国がその事業費の十分の八を補助することとし、なお政府はこれらの復旧事業が昭和二十九年度までに完成するように必要な措置を講ずることに努めねばならないと規定するものであります。柳田秀一君提出の修正案の要旨は、本案中の災害地域内のたい積土砂の排除に関する特別措置法の改正規定に、新たに災害地域内に存する農地に水害等のため停滞している滞水の排除事業を施行する場合にも国がその事業費の全額を補助することとし、これに必要な改正規定を加え、あわせて本改正案中の附則に所要の改正を加えんとするものであります。
採決の結果、両修正案はいずれも全会一致をもつて可決され、修正部分を除いては原案の通り決したのであります。
次に、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律等の一部を改正する法律案につきましては、綱島正興君及び井手以誠君よりそれぞれ修正案が提出されたのでありますが、綱島君の修正案の要旨は、本案中の農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の改正規定中の「六月下旬から七月まで」を「六月から七月まで」と改め、六月上旬に西日本一帯を襲いました台風第二号にも本法を適用しようとするものであります。また、井手以誠君の修正案の要旨は、補助を受ける災害復旧事業の農業用施設の中に、開拓地以外における農舎及び畜舎をも加えんとするものであります。
採決の結果、綱島正興君提出の修正案は全会一致をもつて可決され、井手以誠君提出の修正案は少数をもつて否決され、修正部分を除いては原案の通り決したのであります。
なお、残余の三案はいずれも全会一致をもつて政府原案の通り可決いたした次第であります。
以上、簡単でありますが、内閣提出の五法律案についての御報告といたします。(拍手)
次に、昭和二十八年台風第十三号による被害農地の除塩事業に対する特別措置法案について、提案の理由を簡単に御説明申し上げます。
去る九月近畿、東海地方を中心として各地を襲いました台風第十三号による被害は激甚をきわめたのでありますが、そのうち静岡、愛知、三重、和歌山及びそれらの海岸地方におきまして海水の浸入のために生じた農地の被害は甚大なものがありますので、水害地緊急対策特別委員会におきましては、派遣委員による実地調査及び慎重審議の結果、これら被害農地の除塩事業をすみやかに行い、もつて農業経営の維持安定をはかる必要を認め、全会一致をもつて委員会提出の法律案としてここに本案を提出いたした次第であります。
本案の内容について簡単に申し上げますと、第一に、除塩事業の定義につきましては、台風第十三号によつて生じた農地の塩害を除去するために行う灌漑排水施設の設置及び管理、客土または石灰等の施用の事業といたしております。第二に、国の補助につきましては、政令で指定する地域内の除塩事業を施行する地方公共団体または土地改良区に対し、予算の範囲内で、灌漑、排水施設の設置に要する経費、揚排水機に必要なる動力費、客土に要する経費、石灰等の施用に要する経費等を補助することとし、その補助の比率は十分の九といたしております。第三に、除塩事業に対する政府の措置につきましては、昭和三十年度中に完成することができるように必要な措置を講じなければならないことといたしております。その他、事業計画の承認、監督、補助金の返還等、所要の規定を設ける、とともに、本法施行前に行つた除塩事業についても本法を適用することといたしております。
以上、簡単でありますが、本案の提案理由並びにその要旨を御説明申し上げました。何とぞ満場一致御賛成あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
次に、昭和二十八年六月から九月までの風水害地域におけるモーターボート競走法の特例に関する法律案について、提案の理由を簡単に御説明申し上げます。
本案は、本年六月から九月までの風水害をこうむつた地域内にあつて政令で定める地方公共団体が昭和二十九年三月三十一日までに開催するモーターボート競走につきまして、前国会で成立いたしました大水害地域における自転車競技法の特例に関する法律の例にならい、最初の十二日間に限つて当該競走にかかる納付金を免除し、もつて風水害によつて被害を受けた地方公共団体の財政の窮迫を緩和するとともに、復旧の促進をはからんとするものであります。本案は、水害地緊急対策特別委員会において、全会一致をもつて委員会提出の法律案としてここに提出いたした次第であります。何とぞ満場一致の御賛成あらんことをお願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/36
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037・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) まず、内閣から提出された五案を一括して採決いたします。五案中、昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例に関する法律等の一部を改正する法律案及び農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律等の一部を改正する法律案の両案の委員長報告は修正でありまして、その他の三案の委員長報告はいずれも可決であります。五案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/37
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038・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて五案は委員長報告の通り決しました。
次に、水害地緊急対策特別委員長から提出された両案を一括して採決いたします。両案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/38
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039・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて両案はいずれも可決いたしました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/39
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040・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/40
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041・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒舩君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/41
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042・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。地方行政委員長中井一夫君。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/42
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043・中井一夫
○中井一夫君 ただいま議題となりました奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案につき、地方行政委員会における審議の経過及び結果の概要を御報告申し上げます。
わが鹿児島県下奄美大島群島が昭和二十一年正月母国日本より分離せしめられて以来今日に至りますまで八年間、母国復帰の絶叫の続けられて参りましたことは、まことに日本民族の悲劇でございました。しかるに、去る八月八日ダレス声明によりましてその復帰が約束せられ、永年の悲願がここに成就せんとするに至りましたことは、御同慶にたえないところでございます。しこうして、復帰の時期につきましては、いまだ確定には至らないのでありますが、目下政府は鋭意アメリカ合衆国政府との間に交渉中でありまして、近く実現の運びと相なつたのであります。同地域が復帰いたしましたあかつきにおきましては、法制の切りかえ、制度の改編等による混乱を回避し、円滑にその引継ぎを完了する必要があり、これに備えるためには、法令その他の事項の上において、いろいろの経過措置、暫定措置をなさねばならぬわけでありますから、来るべき事態に即応して、機動的に必要な処置をなし得るような態勢を整えておく必要がありますため、本法案が提出されたのであります。すなわち本案におきましては、復帰に伴い、奄美群島に施行せられる法令に関する措置、暫定的な衆議院議員の定数及びその選挙、同島における市町村の機関及び職員の処置、現地裁判所における訴訟問題等に関して規定をいたしておるのでありますが、その他、同地域の復帰に伴いまして必要とせられる事項は、多くは政令等に委任することといたしてあるのであります。
本委員会におきましては、委員会を開きますこと三回、ことに本日は法務常任委員会、公職選挙特別委員会との連合審査会を開き、慎重に審議を遂げました上、討論採決、全会一致をもつて原案の通り可決すべきものと議決いたしました。
なおその際、次のごとき附帯決議が各派一致をもつてなされましたことをあわせて御報告いたします。
附帯決議
奄美群島の復帰に関し、政府は左の事項につきその実現に万全を期せられたい。
一、奄美群島の復帰を速かに実現すべく、更に対米交渉に於て努力すると共に、其の復帰予定の期日を可及的速かに発表して民心の安定を図ること。
二、復帰が予想せられた日より遅延することに伴う影響を可及的軽減するため、対米交渉に於て、特に失業対策、旱害対策、食糧対策、金融対策等につき遺憾なく措置を打合せ実施すると共に、今回の補正予算に計上せられた奄美群島復帰善後処理費はかかる緊要な支出に適切に使用し得るよう処置を講ずること。
三、今回計上せられた善後処理費が不足する場合は、第二次補正予算にて追加計上すること。
四、各種法律の施行日はその円滑なる実施特に住民の生活と民心の安定を図るため、現地の事情を充分に考慮して決定すること。
五、奄美群島の特殊性に鑑みその地方の振興を図るため速かにその振興計画を樹立し右に関する特別法を提案すること。以上でございます。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/43
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044・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/44
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045・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
この際暫時休憩いたします。
午後五時三十六分休憩
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午後九時十分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/45
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046・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 休憩前に引続き会議を開きます。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/46
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047・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)、昭和二十八年度特別会計予算補正(特第1号)、右両件を一括して議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/47
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048・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒舩君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/48
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049・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)、昭和二十八年度特別会計予算補正(特第1号)、右両件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。予算委員長倉石忠雄君。
〔倉石忠雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/49
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050・倉石忠雄
○倉石忠雄君 ただいま議題となりました昭和二十八年度予算補正(第1号)について、予算委員会における審議の経過及び結果について御報告申し上げます。
この補正予算の内容については、本院における大蔵大臣の財政演説及び政府提出の補正予算説明書において明らかでありまするので、詳細に申し述べることを省略いたします。しかしながら、本補正予算の特色は、さきに提出されました補正予算を、両自由党及び改進党の三党協定の趣旨に基き、政府が修正提出いたしたことであります。
予算総額は、災害対策費五百億円、奄美群島復帰善後処理費十億円を合して五百十億円でありまするが、この修正は、前案に比して、歳出中の冷水害対策費を四十五億円増加いたし、農業保険費不足補填を四十五億円減額し、さらに風水害対策費として最高限度百五十七億円を資金運用部等の融資によつてまかなうことといたしております。さらに、この補正予算は、昭和二十九年度予算において予想される諸経費を念頭に置き、次期国会に提出されるはずの予算補正第二号をも勘案いたしまして作成されたものとのことであります。また、わが国現下の経済情勢と国際経済の現勢にかんがみて通貨価値の安定維持をはかることを目的とし、それがために国際収支の改善と国家予算の均衡を保とうとする考えのもとに、インフレーションの抑制策を強くこの補正予算編成の上に織り込んでおるとも申されておるのであります。
以上のごとき諸性格を持つている補正予算は、その追加経費として前述のごとく五百十億円を計上いたし、財源といたしましては租税の自然増及び雑収入の増加三百四十四億円、公共事業費その他既定経費の節約百六十六億円を引当てているのであります。これによりまして、当初予算と合計いたしました本年度の予算総額は九千九百九十九億円となり、災害に対する緊急の支出をまかないながら、なおかつ政府がインフレ抑制の目的を達成せんとする意図が十分見受けられたのであります。しかしながら、国土の荒廃、農業諸施設の破壊、これによる農業生産力の減退と農村購買力の減少は、政治的にも、経済的にも、はたまた社会的にも多くの問題を惹起せしめ、自立経済を確立しなければならぬわが国の現在及び将来にとつて、きわめて重大なる影響を及ぼすものと申さざるを得ないのであります。従いまして、予算委員会における審議もきわめて熱心かつ慎重に行われ、救農国会及び救農予算と称されるわく内に限られることなく、広汎なる見地から補正予算を審議いたしたのであります。質疑応答の詳細は速記録をごらん願うことといたしまして、論議せられましたる問題点の若干について御紹介を申し上げることといたします。
第一の論点は災害査定額と融資の問題及び予算内容の問題であります。質問者の論旨、当初災害査定額を一千八百億円としたのに、何ゆえにこの予算では一千五百六十五億円としたか、何かそこに政治的手心を加えたのではないか、また三百億円の風水害対策費のほかに百五十七億円を資金運用部等の融資によつて支出し、これについては政府が利子補給することになつておるが、その実施については確信があるのか、利子補給額は幾らであるか、修正補正予算では、前補正予算に比して、農業保険費不足補填を四十五億円減額し、また既定経費のうち、食糧増産対策費を二十億円、公共事業費を三十八億円それぞれ減額して、風水害や冷害対策費の財源の一部に充当しているが、これは本末転倒ではないかというのであります。これに対して、政府側の説明は次の通りであります。災害査定額を当初一千八百億円としたのは、まだ資料が整わなかつたからである。その後過去三箇年間の実績、業種別報告などを考慮した結果、一千五百六十五億と査定した。政治的考慮などのない客観的査定額である。また、百五十七億円の資金運用部等による融資額は最高限度額であつて、復旧事業の進行に伴つて、精密に調査して融資する予定であるから、何ほどが融資されるかは今日では明言できない。従つて利子補給額もわからない。公共事業費、食糧増産対策費の減額は、本予算の成立が遅れたために、事業の進捗が当初の予定通りに行かなかつたからである。農業保険費の繰入れは、四十五億円を減額しても支障がないと思う。政府側のかかる説明に関連いたしまして、災害地の学童給食及び米食を麦食に転換する問題等が論議せられました。
第二の問題点は、災害復旧の地方財政負担の問題であります。国庫負担の問題はこの補正予算によつて解決されても、地方財政にしわ寄せするのではないかという疑念が表明されたのであります。これにつきましては、政府側の説明と資料によれば、大要次のことが明らかとなりました。すなわち、国の交付する補助金のつなぎ融資として、資金運用部から百十八億円を今日まで支出しているが、これには利子補給はしない。地方財政の災害関係予算は、災害復旧費二十一億円、冷害対策費十三億円、単独事業費の増百十八億円、地方税の災害減收三十五億円、災害関係融資利子四億円、その他災害対策費十五億円、合計二百八億円であるが、これに対して公共事業費節約による負担減二十一億円を差引いた百八十六億円が処理すべき問題となる。これについては、地方財政の節約五十八億円、政府資金による地方債の引受八十三億円、老朽校舎分の公募地方債を廃して資金運用部の融資に振りかえた額二十五億円、公募地方債の増加二十億円、合計百八十六億円によつてまかなうはずである。かかる政府側の方針によりますれば、地方財政もまた国の節約方針に準じて相当程度の節約を行わねばならぬわけであります。
第三は、インフレーシヨンと災害予算の問題であります。質問者の意見を総合いたしますと、災害対策費を実情に即して支出することはインフレーシヨンを激成することとはならない。むしろ、災害によつて打撃を受た生産力を回復し、食糧増産に資することになる。従つて、災害対策のためには十分に経費を計上すべきである。財源がないと言うが、防衛費こそインフレーシヨンの根源であるから、これを削減して、災害対策費を増額せよ。インフレーシヨン抑制のために災害費を圧縮するのは不当ではないかというのであります。政府側の答弁といたしましては、災害対策費は、正確な根拠によつて査定し、明年度予算や、これからの補正予算等を考えて計上したのである。防衛費を削減して災害対策費にまわすということは、国家の自衛上防衛費は欠くべからざるものでありますから、さような考えはありませんという説明がございました。これに関連して、現在はむしろデフレ的であるという意見もありましたが、政府側から、通貨価値の安定のために財政の均衡をはかつて、極力インフレーシヨン抑制策を進めざるを得ない旨の説明があつたのであります。
次に、防衛問題、池田・ロバートソン会談等についても熱心な論議が行われ、その他中小企業対策、年末金融対策等についても質疑がありましたが、それらの詳細は会議録に譲ることにいたします。
予算委員会の質疑は十一月三日をもつて終了し、各党の討論と採決に入りましたが、社会党両派からは昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)の編成がえを求める動議が提出されました。これは少数をもつて否決、政府提出の補正予算案が多数をもつて可決された次第であります。
以上をもつて委員長としての報告といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/50
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051・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)に対しては八百板正君外十四名から編成がえを求めるの動議が提出されております。この際その趣旨弁明を許します。小平忠君。
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〔小平忠君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/51
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052・小平忠
○小平忠君 私は、両派社会党を代表いたしまして、ただいま提出されました両派社会党の補正予算に関する組みかえの動議の趣旨を御説明申し上げます。
政府は、今回の補正予算を提出するにあたりまして、この予算は災害予算であると呼称いたしたのであります。しかるに、インフレ傾向の抑制と通貨安定を理由に、災害、冷害の国庫負担分を不当に圧縮いたしたのであります。災害予算と呼びながら、災害に関する予算の計上は実に僅少をきわめ、窮乏にあえぐ罹災者に何ら十分の救済をなさなかつたのであります。
次には、このたびの補正予算が災害予算として十分でないことはもちろん、その緊急性の認識においても、政府はわれわれと根本的に相違いたしておるのであります。その証拠には、この災害予算を計上するにあたつて、吉田内閣の一枚看板であるところの公共事業費あるいは食糧増産費の削減をもつてこれに充てたのであります。長期的災害費を削つて短期的災害に充てるしとは、続いて大いなる災害を引起す遠因になることは必至であります。(拍手)政府、災害予算の不十分はもちろん、その上に補正予算を第一次、第二次に分割し、労働者の給与ベース引上げ、仲裁裁定の実施、年末手当、中小企業に対する年末融資など重要なる政治問題を含む予算を次年度に繰越したのであります。かくして表面を糊塗し、重大なるわが国内外の緊急なる事態に対処する決意も勇気も持たなかつた予算が本補正予算であるということをわれわれは断言できるのであります。(拍手)
また、本臨時国会開会の日補正予算案を提出いたしまして、三日もたたずに、保守三党が三派協定を行うや、政府はみずから進んでこの本補正予算を修正したのでありますが、かくのごときはまつたく予算委員会での審議権を無視した暴挙であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)予算の審議は決して党利党略のためにやつているのではありません。われわれは真に窮乏にあえぐ災害者を一刻も早く救済せんとしておるのに、政府は、補正予算を党利党略のために利用し、農民を利用して、弱小内閣の政治的無能をカバーせんとしたのであります。かくのごとく憲法の精神を無視した補正予算修正の挙に対する政府の政治的責任は、一体いかにして国民に謝すべきでありましようか。われわれの断じて許し得ないところであります。(拍手)
われわれは、以上の観点から、政府の補正予算には断じて反対であり、次のごとき組みかえ動議を提出いたしたのであります。
すなわち、第一に、本補正予算が災害中心の予算でありますがゆえに、われわれは、衆参両院に設置されました水害地緊急対策特別委員会の、あの超党派的な決定の線でありまする損害総額一千八百億円の三割、すなわち五百四十億円に、その緊急性を加味した六十億円を合計いたしました六百億円を計上せんことを要求いたしたのであります。
次に、冷害対策費につきましては、農林委員会がこれまた超党派的に決定いたしました百三十億を計上し、この金額については自由党の諸君も賛成した額なのであります。(拍手)
また、低米価にあえぐ農民を救済し、凶作による食糧集荷の困難性を痛感いたしまして、米価すなわち生産者価格一万二千円、消費者価格はすえ置き、すなわち二重米価制の実施費用といたしまして食管特別会計の繰入金を三百億円計上いたしたのであります。
また次には、秋季労働攻勢に呼応いたしまして、人事院勧告による国家公務員、地方公務員のペース・アップを八月より実施する費用を計上し、公共企業体に対する仲裁裁定の完全実施を行い、期末手当一箇月半を計上いたしたのであります。
また、不況にあえぐ中小企業者を救済するための年末融資といたしまして、国民金融公庫出資増三十億円、中小企業金融公庫出資増七十億円、計百億円を計上いたしたのであります。
かくのごとく、われわれは、きわめて良心的な予算を計上し、歳出を最低限に圧縮いたしまして、インフレを抑制せんとしたのであります。すなわち、防衛関係費の七月残は千八百四十億に上つておるのでありますが、この分を財源と見て、財政規模を極力圧縮いたしたのであります。大衆政党として再軍備の費用を国民生活の安定にまわすという基本的な立場に立つたのであります。さらに、既定経費の節減については、政府案の公共事業、食糧増産費の五十九億円の削減を返上いたしまして、われわれは、この打続く災害に対しまする当然の応急処置として、既定経費中、物件費、事務旅費の一割削減、すなわち半年分を計上いたしたのであります。
以上は、組みかえのおもな点につきましてその概要を御説明申し上げたのでありますが、最後に、この予算は実際に行い得る最高の施策を織り込んだ補正予算の組みかえであり、かつ実際に実行しなければならないものであります。政府は一刻も早くもわれわれの組みかえの趣旨を了とせられ、この組みかえの趣旨に沿われんことを希望いたすものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/52
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053・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これより討論に入ります。葉梨新五郎君。
〔葉梨新五郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/53
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054・葉梨新五郎
○葉梨新五郎君 ただいま議題となりました昭和二十八年度一般会計及び特別会計の補正予算案に対し、自由党を代表し、政府原案に賛成の意を表し、左右両派社会党提出の組みかえ案に反対いたすものであります。(拍手)
あらためて申し上げるまでもなく今回の補正予算は、本年六月の西日本の水害を初め全国的に相次いで起つた風水害に対する復旧、東日本を襲つた冷害に対する救済等のため、急速に国家が支出を必要とするところから提案されたものであります。この天災による被害は、わが国未曽有の規模及び深刻なものであり、罹災者に対し深く御同情にたえないものであります。一日も早く物心ともに立ち直られ、家業にいそしまれるよう祈つてやまないものであります。今回政府が急遽臨時国会を開き、追加予算計上の緊急処置をとられたことは、もとより当然のこととは申しながら、まことに適切な処置であると存じます。
今回の補正予算に対し賛成いたす最も大きな理由は、罹災地国民を水害、冷害等による生活不安より救うとともに、次年度増産に安心して対処し得ることを眼目としておる反面、わが国におけるインフレ進行の抑制に対するきわめて深い考慮が払われていることであります。わが国の経済は、ドツジ方式採用後、通貨安定を根本方針として進んで参りました。政府の財政もいわゆる健全財政の強い線をたどつて参つたのであります。それが、朝鮮動乱以後、いわゆる特需による需要の増大のために物価の上昇を来し、インフレ的傾向の発生を否定することができなかつたのであります。この傾向は、休戦協定成立後もかわることがなかつたのでありますが、特に本年の風水害、冷害等のため、食糧、建築資材その他かなり高騰を見ておるのであります。世界における物価水準はおおむね下落の傾向をたどつている際に、ひとりわが国のみ物価高を示しておりますことは、国民の消費生活を脅かすのみならず、国際市場における輸出競争にも不利を招き、国際収支を悪化させることになるのであり、インフレの進行は厳にこれを戒めなければならないのであります。今回の災害はまれに見る深刻なものでありますだけに、もし災害復旧のために短期間に巨額の支出を行いますならば、勢い国庫資金の流出によるインフレが激化いたしましてその災いを受けるものは特に農村においてはなはだしくなるおそれがあるのであります。政府が災害復旧に必要な追加予算額を五百億円に押えて、当初予算との合計額を一兆億円以内に食いとめることができましたことは、諸般の情勢を勘案いたしますれば大体妥当な線ではないかと考えられるのであります。もつとも、復旧に要する国庫支出は、災害の現況にかんがみまして多いに越したことはないのでありますが、今も申しまするような財政インフレ抑止の見地からいたしますれば、この程度にとどめるのが適当であると認められるのであります。
政府のインフレ回避の財政方針は、ただいま述べました通り、財政規模を最小限度に食いとめたばかりでなくその財源措置においてもこれを明瞭に見ることができるのであります。すなわち、今回の追加予算の財源を見まするに、三百億円はこれを租税及び印紙收入の増收、すなわち租税の自然増に求めておるのであります。この三百億円は、補正総額五百十億円の約六割、また補正歳入総額の約九割に当るものであります。最近の物価上昇傾向、消費の増大、給与の改善等から見て、この程度の租税の増收は決して不当でないと思うのであります。今回政府が剰余金に全然手をつけませず、かえつて経費の節約百六十六億円をもつてこれに充てておることは、きわめて歓迎すベき財政措置であります。
次に、補正予算の支出の時期的順序あるいは会計技術的面から見ましても、政府の措置はまことに適切であると存じます。元来、継続的経費としての災害予算は、通例当該年度内に二、次年度五、第三年度三の比率をもつて支出される慣例であります。しかし、これは、災害の発生が多くは大体九月、十月のころになりますので、かかる比率が出たものであります。今回の水害は例年よりはるかに早く、六月ごろより発生いたしましたため、政府が今回この比率を変更して三・五・二としたことは、今回の災害復旧の現実と合致したものと認められるのであります。しかし、実際にあたつては、地域により、被害の性質、程度等により、相当弾力性あるものとするとのことでございますので、この点からも政府の予算措置に賛意を表するものであります。今回の冷害対策費として計上されておりますものは百十五億でありますが、もとよりこれは多くは事後における善後措置でありまして、当面の回復対策にすぎないのであります。根本的には耕土の培養、耕種の改善、自給肥料の対策等の諸施策をとるほかに、広く国民食生活改善の対策をさらに積極的に講ずる必要があると思うのであります。これについては、さらに次期予算において、財源の許す限り十分考慮されることを期待しておるものであります。
以上のごとき見地から、自由党といたしましては政府提出の補正予算原案に賛成いたすものであります。
なお、両派社会党からは政府原案に対する組みかえ要求の動議が出ておりますが、国の自衛権を放棄するにひとしい財源措置を基幹とした組みかえ案であるばかりでなく、さらに左右両派社会党間における根本的食い違いを調整するいとまもなく編成提案せられたものであります。すなわち、組みかえ要綱歳入の部を拝見いたしますと、第八項に保安庁経費の削減四百四十億の残額百七十億におきまして、この削減残を左派の諸君は保安隊解散に伴う善後処理費に使うと言います。右派の諸君は旧警察予備隊程度の経費として留保すると明記してあります。左右両派社会党は、かかる矛盾撞着せる、実行不可能なる組みかえ案を提出しておるのであります。(拍手)先ほど予算委員会におきまして討論に立ちましたわが党の西村理事は、社会党の諸君は、かような案を出すことは精神分裂症に陥つているのではないかという断定を下したのであります。(拍手)これでは、公党の面目はどこにあるのか。われわれは、社会党両派の諸君が、もつと真剣に、よく財政の基本にかんがみ、かつよくその両派間の調整をとつて、真に実行し得る見込みを立ててから提案されんことを要望するものであります。(拍手)すなわち、私どもはかような組みかえ案には賛成するわけには参らないのであります。(拍手)
以上、私は政府提案の補正予算案に賛成いたし、左右両派社会党の組みかえ案に反対いたすものでありますが、最後に一言政府に希望を申し述べておきたいと思うのであります。
罹災地の救援は一日もゆるがせにすることを許さないのであります。よつて、政府の支出はすみやかに実現するよう留意せられると同時に、なお実際の支出使用にあたつては、あくまでも、いわゆる乏しきをわかつの精神に徹底して、効率的な使用に心がけられんことを希望するものであります。
以上をもつて私の討論を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/54
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055・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 伊藤好道君。
〔伊藤好道君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/55
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056・伊藤好道
○伊藤好道君 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府提出の一般会計予算補正(第1号)に反対し、社会党共同提出の組みかえ要求の動議に賛成の討論を申し上げたいと存じます。(拍手)
政府、与党を初め、改進党などの諸君は、口を開けば救農々々と叫んでおられるようでありますが、はたして政府提出のこの補正予算案は救農のための予算であると呼ばれ得るでありましようか。私は、災害対策費の規模からいたしましても、その内容から見ましても、救農どころか、農民生活をますます窮乏せしめるものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
政府の補正予算は、申し上げるまでもなく、風水害対策費として三百億円を計上しておるにすぎませず、最低限に見積られた政府査定の災害対策に要する経費一千八百億円に対し一割七分にも足りません。しかも、大蔵省は、かつてにこの千八百億円の金額を千五百六十五億円に削減し、三百億円はその二割に当ると称しておられるようでありますが、この種予算の通常の建前である初年三割計上の原則をわざわざ二割に引下げるほど、本年度のたび重なる災害は軽微なものでございましようか。政府及び保守党の諸君は、本年度は異常な災害であると称しておられますが、その意味、われわれの常識と違いまして、異常に軽微なものとでも解されているのでございましようか。われわれは諸君の頭脳が少からず変調を来しておるのではないかと疑わざるを得ません。(拍手)
社会党の共同組みかえ案は、これに対しまして、政府の正式に認めておる千八百億円は過少であると思うのでございますが、一応これを承認し、災害対策費支出の慣例である三・五・二の原則にのつとつて五百四十億円の所要経費を算出し、さらに本年の異常災害たる特質を、変調を来さない冷静な頭脳で勘案いたしまして、一割程度、六十億円を加えて、すなわち六百億円、すなわち政府案の二倍を計上した次第でございます。また、冷害対策費にいたしましても、政府及び保守三党の諸君の承認される予算案は、農業保険費の四十五億円を削つて百十五億円にしたにすぎず、両者を合せてわずか二百億円にすぎませんが、共同組みかえ案は、冷害対策費百二十億円、農業共済保険繰入れ百五十億円、合せて二百八十億円を計上いたしております。従いまして、政府補正案の救農費はわずかに五百億円でありますが、共同組みかえ案は八百八十億円を計上しております。どちらが災害に悩む農民と農業を救わんとする熱意に燃えておるかは、これによつて明白であると私は信じます。(拍手)
しかも、この点に関して見のがすことのできないのは、政府の原案における既定経費削減の内容でありまして、政府案には、公共事業費三十九億円、食糧増産対策費二十億円、合せて五十九億円が削減されておるのであります。従つて、政府案の災害対策費の実体といたしましては、この分だけ三百億から差引かなければならないのでありまして、そうすれば、政府の対策費の総計はわずかに二百四十一億円とかります。(拍手)これは千八百億円の、政府の正式に認めた災害対策費に対しまして、実に一割三分にすぎないのでありまして、これをもつて災害対策費として間に合うなどと言われましては、これは欺瞞と申さなければならないと思うのであります。(拍手)
政府は、その後、これに対しまして、保守三党の協定により、復旧事業の進行に伴つてその必要に応じ、事情調査の上、資金運用部資金等より融資すると称しておりますし、つなぎ融資の利子補給についても同様な態度をとつておられるようでありますが、成行きまかせの、このような不確定なやり方によりましては、とうてい満足な災害対策にならないことは申し上げるまでもないと私は信じます。(拍手)大蔵大臣の郷里におきましては、いまなお朝夕二回ずつ海水に襲われておる罹災農民が多数あるのでございますが、大臣ははたしてこんなすずめの涙ほどの予算をお出しになりまして、これで罹災農民に合せるお顔があるのでありましようかと私は申さざるを得ません。(拍手)これに対しまして、社会党の共同組みかえ案は、前に申しました災害対策費、冷害対策費、農業共済保険繰入れ、合計八百八十億円に加えまして、農林金融公庫出資の増加や、つなぎ融資の利子補給金をも計上しておる次第でありまして、これらを合計すれば実に九百一億円の財政支出を行わんとするものでありまして、文字通り救農の名に値する予算であると申し上げる次第でございます。(拍手)
さらに、われわれの持論であります米の生産者価格一万二千円、消費者価格すえ置き等、さらに現在政府が糊塗されておる食管特別会計の赤字百余億円を埋めますために、共同組みかえ案は食管特別会計繰入金を三百億円計上しております。これこそは、本年わが国の直面する重大な課題である食糧不足に対しまして、生産者の立場からも、消費者の立場からも、最大の対策でなければならないと信じます。(拍手)政府の補正予算が、この点につきまして、いまだ何の対策をも予算上講じておらない点につきましては、われわれの案との間にはまさに雲泥の差があると私は申したいのであります。(拍手)
次に、政府の補正予算案は、名を救農にかりまして、その実質はただいま申し上げた次第でございますが、その他の国民のことは全然考慮しておりません。すなわち、政府は、公務員に対する人事院のベース・アツプの勧告に対しまして、法律を蹂躪して、いまだに予算措置を講じておりません。この勧告は、申すまでもなく、すでに四箇月以前に行われておるのでありまして、政府の態度は、怠慢どころか、無法しごくのやり方であると申さなければなりません。(拍手)また国鉄、全逓、全電通、全専売、全農林、全印刷、造幣、アルコールの八つの分野に対しまして仲裁裁定がつとに行われておりますが、これに対しましても、政府の補正予算は一文も計上しておりません。これら公務員や公共企業体の諸君は、憲法に保障されたストライキ権を剥奪されたかわりに、勧告や裁定によつて生活の不安と悪化を幾らかでも防止することに法律上きまつておるのでありまして、それにもかかわらず、政府がこのように勧告や裁定を無視して予算措置を講じないといたしますならば、それが法律を蹂躙する態度であるのはもちろんのこと、低賃金下に苦悩しておる労働者諸君の生活を無視いたしまして、苦しければやつて来いという挑戦的な態度とも言わなければならないと思うのであります。(拍手)ことに、政府は、補正予算におきまして、その財源において二百億円もの源泉所得税の自然増收を求めておりまして、勤労者の生活はますます困難とならざるを得ません。これに対しまして、共同組みかえ案が、仲裁裁定をそのまま実施いたしまするとともに、勧告に対しましても本年八月よりこれを実施するよう予算措置を講じておりますことは当然のことでございますが、政府、保守党に対決いたしまて、われわれの大いに誇りとするところであります。(拍手)そのほか、苦しい年の瀬を迎えまして、期末手当一箇月半分の支給、地域給、寒冷地手当の是正をわれわれが行つておることは、見のがされてはならないと信じます。
第三に、政府は、最近における日本経済の不況の深刻化、また日本銀行を中心とする金融の引締め政策によりまして、年末を控えてどうして経営難や生活難を切り抜けようかと頭痛はち巻の中小商工業者のことについても何ら考慮しておりません。これは、死んでしまえの放言居士を与党の政調会長に持つ政府の補正予算案としては当然のことかもしれませんが、(拍手)われわれ国民の利害をみずからの利害と考える政治家にとつては、とうてい考えられない冷酷な態度であると私は申さなければならぬと信じます。(拍手)これに対し、社会党の共同組みかえ案は、中小企業金融公庫、国民金融公庫の出資増といたしまして合計百億円を計上しておりますことは、もちろん十分ではございませんが、真に国民のためにある政治家の態度であると申さなければならぬと信じます。(拍手)そのほか、社会党の共同組みかえ案は、災害のために財政難に陥つている地方自治体を救うために平衡交付金を計上しております。目下各地方で推進されている町村合併についても考慮して予算措置を講じております。問題の李ラインの件につきましても、被害救済費の利子補給等の関係費を計上しておりますことは、まことにかゆいところに手の届いた措置であるとわれわれは信ずる次第でございます。(拍手)
政府は、財源がない、財源がないと称しておられますが、財源はないのではありません。探せば幾らでもあると私は信じます。それは申すまでもなく、防衛関係の諸費用を削ることであります。すなわち、社会党の共同組みかえ案は、平和回復善後処理費、保安庁費、防衛支出金、安全保障諸費、連合国財産補償費に対しまして、その未使用分一千百七十億円と想定されるものを削減しておるのでありまして、このような非生産的な経費を切りとりまして、すでに申し上げましたように、国民生活の安定と日本経済再建のための緊要不可欠な経費に充てましたことは、社会党共同組みかえ案の全体を貫く基本的建前でございまして、政府の補正予算案及びこれに賛成される保守党の諸君に対しまして、われわれ社会党が正面から大いに対決したいところであります。(拍手)今や未曽有ともいうべき全日本を襲つた災害の中において、われわれは大砲かバターかそのいずれをとるかの重大なる岐路に立たされていると信じます。そうして、われわれは、断固として国民大衆とともにバターの道を選ぶことによつて生活の安定と経済の再建をはかりたいと信じます。
なお、共同組みかえ案は、政府補正予算とは違いまして、公共事業費や食糧増産費の削減をいたしませんかわりに、ともすれば濫費されやすい物件費、旅費を一割削減して財源に充当しております。また政府案のように、住宅金融公庫の出資を減らして、たださえ困難な住宅問題を悪化させるような大衆生活圧迫の態度をとつておりません。
皆さん、われわれは、日本の経済と財政の現状及び前途に対しまして、今日重大なる危惧の念を禁じ得ないものがあります。その中心的な問題は、申すまでもなくインフレーシヨンの危険であります。政府の補正予算案は、一兆円をわずかに九千二百四十四万一千円下まわる数字を掲げることによりましてあたかもこのインフレーシヨンの危機を押えようとするかのようでございます。しかしながら、インフレーシヨンがこのような児戯に類した措置によつて抑止することができるものでありますならば、われわれは何も危険だの危機だのと申す必要はございません。インフレーシヨンの危機は、生産に役立たないどころか、それをむしろ阻害する防衛関係費、われわれの言う実質上の再軍備費が、現在すでに財政の中において巨額に上つております上に、今後さらにそれが急速に膨脹せんとするところに根本的な原因があるのでございます。
吉田内閣が今全力を傾けて獲得しようとするいわゆるMSAの援助は、日本の財政にとりましては、従つて経済にとりましても、何らの援助ではありません。MSAによる援助は、完成兵器の供与と兵員の訓練費にすぎません。が、それも手ぶらではもらえないのであります。われわれがその兵器を使い、訓練を受ける兵員を増加することを条件とし、その度合い、程度に応じまして、あるいは若干の経済援助、それも特需的性質の援助が与えられることもあるというにすぎないのでありありまして、他方における兵員の増加に伴う日本財政の膨脹、それを負担する日本の経済のマイナス、輸出貿易の対米一辺倒のための不振、従つて生ずべき国民生活の悪化をとうていカバーできるものではございません。(拍手)従いまして、われわれは、今日MSAの援助を受けることによつて、さらに増税を強化されるか、公債を発行されるか、それとも両者が並行的に行われるかという重大な局面に直面しているのであります。(拍手)しかも、自衛隊とか自衛軍とかいう言葉をもつてそうした軍事費を制限できるもののように、政府与党や保守党の諸君は考えておられるようでございますが、相手に対してみずからを軍事力によつて守ろうとする以上、軍事費が相手次第で無制限に増加するであろうことは、その本質上当然でありますし、また古今の歴史がこれを証明しております。(拍手)
加うるに、国の財政は、今日、増税ではなくて、逆に減税を強く要求されております。特に所得税その他直接税がしかりでございまして、政府は、従つて間接税、消費税の増徴に手を染めようとしているように見られますが、それは大衆生活の重大な圧迫であることは申すまでもありませんし、それにはおのずから限度があります。また、特にこの際われわれは、それが物価を引上げるものであるということを強調しなければなりません。(拍手)日本財政は、次第に無制限に増加するであろう公債発行と、さらに輸出貿易の不振による為替の低落という根本的なインフレーシヨンの原因に加えまして、この増税面もまたインフレーシヨンの原因を持つものでありまして、われわれは、政府補正案に対しましては、インフレーシヨンを招来するものであるという点から、強くこれに反対しなければならないのであります。(拍手)
これに対しまして、社会党の共同組みかえ案は、働く者の生活を安定させ、その基礎の上に直接生産の増加、特に食糧の増産をはかり、進んでは経済再建をはからんとするものでありまして、まさにインフレーシヨンの危機を打開し得る唯一の道であると信じて疑いません。どうか御賛成を希望いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/56
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057・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 赤澤正道君。
〔赤澤正道君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/57
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058・赤澤正道
○赤澤正道君 私は、改進党を代表いたしまして、今回政府提出の補正予算案に、しぶしぶではありまするけれども同意をいたし、社会党両派の共同組みかえ案に反対をいたすものであります。
去る六月三十日災害対策特別委員会が設置せられまして以来、六、七月の西日本災害の救済と復旧を中心に、夜に日を継いで特別立法の起案に着手いたしたのであります。災害地出身の議員はもちろん、あの悲惨なる実情をまのあたり調査したわれわれは、その復旧の一日もすみやかならんことを心に念じながら、文字通り寝食を忘れて努力を傾注いたしたのであります。その成果は日ならずして実を結び、災害関係二十四の法律は、八月七日、満場の拍手をもつて両院を通過いたしました。打ちひしがれた罹災者の諸君が、困難のうちにも一縷の希望を見出し、地獄に仏と喜ぶ姿をまぶたに浮べ、われわれもまた党派を越えて、適用地域の指定に、あるいはこれが予算措置の万全について誓つたのであります。しかるに、天はわが民族にいかなる試練を与えようとしてか、八月に入つてさらに災害が起り、九月には、とどめをさすかのごとく、中部日本に十三号台風が荒れ狂つたのであります。その結果、公共施設はもちろん、数千町歩の田畑はいまなお波浪のもとにさらされ、これが復旧には二百億円の巨費を必要とする現状であります。また一方、災害の少かつた東日本は時ならぬ冷害に襲われ、收穫皆無の地方は随所にあり、ここにもまたどん底生活が展開されている。われわれは、この試練に耐え、刻々増大する被害の実情を調ベて、特別法の予算化に党をあげて懸命の努力を払つたのであります。被害総額のうち国庫負担となるもの、当初水害にあつては一千八百億円と予定し、冷害にあつては百三十億円と算定したのであります。しかして、わが党としては、水害の復旧についてはこれを三年間に完成するものとし、その比率を三・五・二として、これが財政措置を政府に要求する決意をいたしたのであります。この基本となる一千八百一億円については、しさいに検討いたしましたところ、文教、厚生関係の諸費並びに将来の見込額等を含んでおりますので、こを控除いたしまして十月五日現在千五百六十五億という数字を確定した次第であります。しかるに、政府は、これに対し、初年度三百億円を補正予算に計上する意図を明らかにいたしました。これに冷害対策費のうち建設関係を加えると三百十二億円、この数字は千五百六十五億円の二割に相当いたします。初年度二割の予算をもつてしては、とうてい三年間で復旧事業を完遂することができません。そこで、他の一割百五十七億円について強力に政府に申入れをした結果、運用部資金その他からこれを融資する、但し、本件に限り例外的に、復旧事業の進行に伴い、その必要に応じ、実情調査の上、年度末までに利子補給あるいは免除の措置を講ずるという政府の譲歩となつたのであります。わが党としては、目下の政局並びに財政事情をも考慮し、党の基本方針三・五・二の割合は実質的には必ず貫徹するという決意のもとに、不満足ながらこれを了承いたした次第であります。
そこで、私は、政府に対し若干の希望を申し述べたい。もちろん、事業の進行に必要以上の予算を計上する必要はありません。しかし復旧の進行にブレーキをかけるようなことがあつては、悔いを千載に残す結果となるのであります。従つて、まず第一に、政府当局においては、かかる複雑な表現はともかく、今年度は万難を排して三割以上の復旧を敢行せらるるよう特に切望いたす次第であります。
第二に、災害のためのつなぎ融資は現在すでに百十七億円に上り、今回の予算面における災害対策費に比較し、あまりに巨大であります。つなぎ融資である限り、もちろん年度内に引揚げられるべき性質のものではありますが、これを無計画に補助金から差引くときは、事業継続に重大なる支障を来すことは明らかであります。かかる場合は、事業主体に適切な指導を行い、復旧を頓挫ぜしめることがないように十分注意していただきたい。
第三には、小災害の国庫補助についてであります。本件については、災害対策特別委員会において超党派的に政府と折衝し、公共施設被害総額の五%をこれが引当てとして支出することについて明確な了解があるはずであります。ただいま、自治庁並びに大蔵当局において、一応起債で処置し、爾後元利を補給するよう考慮中であると承如しております。これまた一日もすみやかにその処置を明らかにせらるるよう切望する次第であります。
次に、冷害対策費については、これまた現下の財政事情より百十五億円に切り縮める政府案を了承せざるを得なかつたことをはなはだ残念とするものであります。政治は常に弱者を保護するために行われるものであると思う。今日新聞の報ずるところによれば、東北地方には再び人買いのブローカーが暗躍し、凶作農家の弱点につけ入つて、わずかな手数料で子弟を集めておるということであります。食糧確保にどんぐりやくりを集め、弁当なくして登校する小学校の生徒があると聞く。身売りの悲劇は例年よりずつと深刻になるだろうと言われております。かような事実が文明国に許されてよいわけのものではない。冷害地救済のため百十五億円あればとりあえず十分であるとする政府の見解を一応了承はいたしまするけれども、各般の措置をあわせて、窮乏のどん底にある凶作地の農民を一日もすみやかに救済せられるよう切望する次第であります。
今回の災害は天災にあらずして人災と言われている。二十三年以来八百億円に上る過年度災害がいまだに復旧されていない現在、かかる大災害が今日起つても決してふしぎではない。しかも、これにこりないで、その復旧をさらに怠る場合においては、民族の破滅を来すような大災害が起ることは必然であります。今日の政治には確かに欠陥がある。大産業のみ栄え、大都会は幾らでも膨脹する。町には高級自動車があふれ、高級料飲店は超満員であります。しかも、災害、冷害引当ての財源を探す努力もしないで、単にインフレの名に恐れて財政措置を渋る。かようなことでは、わが国はいつまでたつても災害からのがれることはできないと思う。ただ、社会党両派の修正案のように、その財源を単に防衛関係諸費との組みかえに求める方法については反対をいたします。その理由は、われわれは、民族の独立と自由はみずからの手で守るべきものであるという観点に立ち、これに要する予算の最小限は独立国として絶対必要であると確信をいたすからでございます。(拍手)今日内閣には治山治水協議会が設置され、対策要綱をわれわれはもらつた。なるほど、りつぱな意見が箇条書きにしてたくさん書いてあります。しかし、いざとなつて大蔵官僚にけ飛ばされて実行できないような計画なら、最初からつくらぬ方がよろしい。私は、今回の災害、冷害を、ゆるみ切つたわが国の政治に天が与えた鉄槌であると考えておるのであります。私は、政府に対し、わが党の主張並びに特別委員会の悲願を十分に受入れられることを切望いたしまして、本案に賛成の意を表するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/58
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059・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 稲富稜人君。
〔稲富稜人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/59
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060・稲富稜人
○稲富稜人君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました政府提出の昭和二十八年度補正予算案に対し反対し、両社会党共同の予算組みかえの動議に賛成のための討論を行わんとするものであります。(拍手)
政府は、本臨時国会を救農国会と称し、ただいま提案になりました補正予算を災害予算と称しておられるのでございます。しかるにもかかわらず、補正予算に計上されました予算は、風水害対策費わずか三百億円、冷害対策費わずか百十五億円のみでございます。(拍手)これは、罹災者及び被害者とともに私たちの最も期待しておりましたそれに反した、実に僅少なる予算であると言わなければならないのであります。(拍手)何となれば、本年六月から九月にわたつて、西日本、近畿地方及び北海道を襲いました大水害と、さらに九月に近畿及び中部日本に来襲いたしました台風第十三号による災害と、東日本一帯を襲いました冷害は、その損失総額実に数千億という厖大なる数字に上つておるのであります。まして、かくのごとき大災害に対して、政府がかくも僅少なる予算を計上し、災害地の声を馬耳東風と聞き流したことは、私たちの最も遺憾とするところでございます。(拍手)
政府は、今次の風水害並びに冷害に対して、これが国民生活やわが国経済に与える影響をあまりに過少に評価し、国家非常時であるという認識がきわめて稀薄であると言わなければならないと思うのであります。(拍手)これがゆえに、小笠原大蔵大臣は、災害予算を多く支出することはインフレを助長することになり、通貨安定のためにおもしろくないと言つておるのでございます。その結果は、大蔵大臣がいわゆる一兆億円予算を固執し、いたずらに一兆億円内の予算編成にとらわれ過ぎておつて、一切の災害対策をこの範囲内でやらんとしておるところに、予算編成上の大きなる矛盾があると言わなければならないのであります。(拍手)すなわち、さきの第十六特別国会において災害に対する二十四の特例法が成立したのでありまするが、これに対して、一部の官僚の中には、この特別立法を選挙区のために議員が立法したのであると非難しておる者もあるのでございます。しかしながら、これは災害の実情を知らざる者の言でありまして、私たちの最も遺憾とするところでございます。私たち議員は、いやしくも、かくのごとく多くの国民が悲惨のどん底にあえいでおるとき、この災害を利用して政争の具に供しようとか、あるいはまた選挙かせぎをやろうというような、かような狭小なる考えは毛頭持ち合せないことを、われわれは同僚各位とともに明言申し上げたいと思うのであります。(拍手)あの、食うに食なく、住むに家なく、耕すに土地なく、ただ茫然自失の状態にある罹災国民を見るとき、だれが涙なくしてこれを黙過することができましようか。君たちは、一刻も早くこの窮状から国民を救い、これらの罹災者を一日も早くこの不安から解放し、希望を与え、次の生産に挺身させることこそ、最も国家的見地から必要であると痛感したのでございます。(拍手)この結果が、すなわち超党派的議員立法として成立したものでございます。
しかるに、政府は、その当時、災害当初は、大野国務大臣を現地に派して、その現地の中間報告において特別立法措置の必要なることを力説せしめたのでございまするが、その後政府は、この立法化には一つも熱意なく、怠慢に怠慢を重ねた結果、われわれはこの緊急性と非常性とを痛感いたしましてこの特別立法の成立を見たことは、政府もまさか否定はなさらないだろうと存ずるのであります。(拍手)しかるにもかかしらず、政府は、一旦この特別立法なるものができまするや、行政措置である政令の範囲を縮小せんとし、あるいは被害実地査定においてこれを圧縮し、一兆億内の予算を目標にその損害額を不当に圧縮したごときは、私たちの断固として排撃しなければならないところであります。(拍手)
さらに、政府は、水害地対策特別委員会が超党派的に決定いたしました災害復旧に対する国庫負担分を千八百億円とし、三箇年に三・五・二の割合において支出せんとする真に適切なる処置を無視しまして、国庫負担額を千五百六十五億円に押えて、三百億円の計上をあえてしたというのであります。この災害に対する政府の処置に対しましては、良心ある者でありましたならば、おそらく反対でありましよう。ただ、これに対しましては、政府と大蔵省の官僚のみが喜んでおるだろうと言つても過言ではないと思うのであります。(拍手)
一国の政治をつかさどる政府としてなすべきことは、まず第一に、悲痛に泣きあえいで何らの希望も生くる力も持たないところの罹災者に生きる力を与え、暗黒の生活に一条の光明を呼び起すことであると思うのであります。かくのごとき基本問題を忘れ、災害を無視し、いたずらに臨時国会開会を遅延させ、口にのみ救農国会を唱えてその実なき国会を召集して不正なる予算の上程を見たるがごときは、私たちの断じて承服できないところでございます。(拍手)かくのごとく、あらゆる見地から超党派で決議した災害救済のすべての措置は、政府の予算によつて完全に無視せられたのであります。
しかるに、保守三党がいわゆる三派協定と称するものを発表しまするや、政府はただちにこれに賛成し、政府と大蔵大臣とが全責任を持つと言つた予算をわずか三日で修正し、国会にある予算の審議権と修正権を無視するという態度に出て来たのでありまして、これは、さきにわが党の中井君が指摘しましたごとく、実に憲法の精神を蹂躪し、民主主義政治を破壊するものであることは、いまさら言うをまたないのであります。(拍手)さらに、保守三党の協定の予算に対しまして政府の答弁を要約いたしますならば、国庫負担額は政府の主張する一千五百六十五億円とし、本年度に三割を支出しますが、予算面は依然として三百億円を計上し、残額百五十七億円は、やみ予算として資金運用部資金よりこれを融資するが、目下資金運用部には十分なる財源はないから、貯蓄奨励により財源を求めんとするのであると、かように言うのでございます。(拍手)さらに、事業の進捗状態に応じて支出するから、百五十七億は最高額である、あるいは支出しないで済むかもわからないとのことであり、これは明らかにやみ予算であり、欺瞞予算であると称することができるのでございます。私は、かくのごとき欺瞞予算に対しまして、よくも改進、分自両党の方々が御賛成をなされたかに驚くものでありまして、(拍手)私たちは断固としてこれに対しては賛成するわけには参らないのであります。
かくのごとく、政府の災害の実情を無視した態度こそ、本補正予算に対して私たちが反対する第一の理由でございます。
次に、政府は災害の認識において基本的に違つておるのであります。本予算の作成にあたりまして、財源がないということを理由に、災害予算を不当に圧縮しておるのでありますが、政府は、財源をつくるにあたつて、公共事業費、食糧増産費の削減をやつたのであります。かくのごとき既定経費の節約を災害予算に振り向けることは、明らかに大きなる矛盾であるのであります。何となれば、恒久的な公共事業費、治山治水対策費の多年の圧迫が今次の災害を招来したことをまじめに反省するならば、今次の災害が人為的災害であつたとさえ言われる根本原因を熟知することができるのでありまして、かような公共事業費の圧縮をもつて災害予算の財源にするがごときは、最も遺憾であり、誤謬と言わなければならないのであります。(拍手)これすなわち、私たちが第二の反対の理由とするところであります。
次に、政府は財源がないと幾たびか明言されました。ここに一例をあげると、防衛関係費の七月の残りは、防衛支出金、安全保障費、保安庁費、平和回復善後処理費、連合国財産補償費等、合計一千八百九十五億にも上つておるという事実を指摘することができるのであります。すなわち、保安庁費に至りましては、当初予算で組まれました八百億円のうち、六百十五億円は未使用の状態にあるのでありまして、かくのごとき予算を財源に見てこそ、初めてまじめな災害予算であると言うことができるのであります。この財源を政府は何ゆえに使用しなかつたか。(拍手)かくしてこそ、国民も真に祖国再建のために尽さんとする気構えが生じて来るものであると存ずるゆえんであります。ここに私たちが再軍備よりも国民生活の安定を主張するゆえんがあるのであります。かくのごとく財源は十二分にあるのでありまして、財源がないという理由でこれを葬らんとすることは、これまた国民のひとしく承服できないところであります。私たちが第三に反対する理由であります。
次に、政府は、災害予算を少額に圧迫したる理由として、インフレ傾向の抑制と通貨の安定のためであると叫んでおるのでございます。しかるに、災害、冷害関係費は、これを短期的に見るならば、あるいは資金の散布となり、インフレ傾向を助長するかのごとく見えるかもしれないが、これは長期的に見、かつわが国経済の食糧増産による経済自立の立場から見るならば、決して資金の散布ではなく、かえつて資金の蓄積になるのでありまして(拍手)私は、今日窮乏に泣き、災害に苦しんでおる農民を救済することこそ、わが国経済自立の緊急事であると信ずるのでございます。資金の散布が農業生産の増強と結合するとき、これはインフレと何らの関係がないのであることが明らかになるのでありまして、政府の予算編成に対する私たちの第四の反対理由はここにあるのであります。(拍手)
次に、政府は、このたびの補正予算を第一次、第二次と称して、第一次を災害関係予算にのみ限定し、あらゆる政治的に問題を含んでいる予算を第二次にまわしているのでございます。すなわち、人事院勧告の完全実施、仲裁裁定の完全実施、国家公務員、地方公務員の年末手当の支給、また窮乏にあえぎ崩壊寸前にある零細中小企業者に対する切実なる年末融資の問題、あるいはまた農民の言う米価の二重価格制度の実施等、災害、冷害にひとしきこれらの予算を第二次という名目で、見通しもなく、ただ将来に持ち越したのでありまして、これはひとえに吉田内閣がかくのごとき問題に対する誠意と決意を持たないことを証明しているものでありまして、その政治的怠慢を如実に示しております。吉田内閣はこの政治的責任を国民の前に謝さなければならないと思うのであります。われわれは、組みかえ動議によつてその趣旨を明確にしたごとく、災害を中心として、さらに労働対策、中小企業対策を追加し、迫り来る深刻なる不況を克服せんとするものでございます。かくすることによつてのみ、大蔵大臣の言うインフレを抑制し、通貨の安定を期待することができ、さらにわが国の経済自立に寄与せんとする補正予算となることができるのであります。
最後に私は申し上げたいのであります。現下わが国は内外ともに重大なる時期であるのであります。すなわち、内には、まれに見る風水害、さらに冷害等によつて大凶作となり、農民は耕すに土地なく、労働者は働くに職なく、食するに物なく、中小企業者は不況のどん底にあえぎ、いわゆる災害に加えて平和不況が到来しているのであります。外には、池田・ロバートソン会談を中心とするMSAの交渉が進展し、一方国際的には、共産党の平和攻勢のあらしが吹きまくつているのであります。かくのごとき重大なる時期に対処して、政府は、名ばかりの救農国会を開き、名ばかりの災害予算を計上して、あらゆる重大なる問題を日一日と遅延せしめているのであります。災害予算はきわめて不誠実であり、重要問題は未確定のまま見送られているのであります。思うに、政府は災害予算の美名のもとに、あらゆる政治問題をカバーして、欺瞞政治を行わんとするために、一切をカモフラージュするために、この災害予算を国会に提出せしめたのであると言つても決して過言でないと思うのであります。(拍手)救農国会は、かくして農民を利用し、災害を利用して、政府がその政治的危機を切り抜けるために行つたのであると言つても決して言い過ぎの言葉ではないと思うのであります。(拍手)かくのごとき吉田内閣の政治が行われますならば、わが国はもはや亡国あるのみという言葉も過ぎたものではないと存ずるのであります。
私は、以上の見地から、非常緊急の問題であり、わが国人口の約半数を占める農村を救済する意味から、災害予算の増額を要求し、あわせて公務員給与、年末手当、仲裁裁定の実施を要求し、政府案に反対し、組みかえ案に賛成をいたしまして私の討論を終るものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/60
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061・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 森幸太郎君。
〔森幸太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/61
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062・森幸太郎
○森幸太郎君 私は、自由党鳩山派を代表いたしまして、ただいま議題になつておりまする補正予算両案の委員長報告に対して、若干の意見を付して賛成の意を表するものであります。
本年の風水害及び冷害が未曽有の大災害でありましたことは、いまさら申上げるまでもないのであります。これが災害復旧及び冷害対策は国政上最も重大な問題でありまして、急速に万全の措置を講じなければならないところであります。今回政府が国会に提出されたところの補正予算は、われわれとして必ずしも満足すべきものではありませんが、ただ、われわれは、この問題がとうてい遷延を許さない、きわめて焦眉の急務でありまするがゆえに、災害対策特別委員会及び農林委員会において超党派的に検討を加え、その結果得られた目標の線に沿つて政府の善処を求めて参つたのでありますが、大体において政府もこの要望をいれて予算の組みかえ修正を行われましたので、結論として本案に賛成の意を表するものであります。
すなわち、災害対策につきましては、災害対策特別委員会において特例法適用地域指定の問題及び災害復旧事業の年度割について、初年度三、次年度五、三年度を二とすることに結論を得またので、そこわれわれはこの線に沿つて政府にその実現方を迫つたのであります。その結果は、まず以上の点に関する原則についてはこれを承認し、その実行方法として本補正予算に計上せられた以外の不足額百五十七億円につきましては、資金運用部資金の融通その他によつてこれをまかなうものであることを言明されたので、一応この政府の言明を信頼するものでありますが、この点についてはかねてよりわが党が強く主張したごとく、この機会に重ねて政府の言明に万違算なきを要求しておく次第であります。また、冷害対策につきましても、今日までの審議を通じて政府が約束づけられた諸点について、絶対に信義に基いて逐一実行に移されることをここに強く要望いたします。
右のような次第で、われわれといたしましては、災害、冷害対策はきわめて刻下の急務であることにかんがみ、これが実施上については政府において万全を期せられんことを要望いたします。そして本案に賛成の意を表するものであります。
なお、社会党両派の提出にかかる組みかえ動議に対しましては、その御努力に対しては敬意を払いまするが、遺憾ながら反対を表明する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/62
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063・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 館俊三君。
〔館俊三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/63
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064・館俊三
○館俊三君 ただいま議題になりました二十八年度補正予算の政府原案並びに両社会党の同組みかえ案の双方に対し、私どもは反対をいたすものであります。
私どもは、国民各層の現在望んでいる緊急諸要求をあくまで守り、これを貫徹することを私どもの基本態度といたしております。すなわち、災害、冷害緊急対策費三千億円、米の二重価格による食管会計への繰入れ三百三十億円、公務員給与要求一万八千八百円、年末手当二箇月、国鉄等八公企の仲裁裁定の完全実施、失業対策費の増額、生活保護費の増額、住宅対策費及び住宅金融公庫への出資の増額、中小企業金融強化のため国民金融公庫及び中小企業金融公庫への出資増加などでありますが、これらの国民の緊急要求は、直接及び間接の軍事費を中心とする財源措置によつて可能であるのであります。
すなわち、直接軍事費の本年度予算額及び昨年度からの繰越額は、防衛支出金予算額が六百二十億円、その繰越額九十一億円、保安庁費の予算額六百十三億円、繰越額二百八十一億円、安全保障諸費の繰越額五百三十一億円で、合計二千百三十六億円であるのであります。この支出実績は、第一・四半期及び第二・四半期で合計四百五億九千二百万円でありまして、この差引が十月一日現在千七百三十億円であると私たちは計算しております。第二番目には、平和回復善後処理費のいまだ支払われざる金、これを私たちは百二十九億円と推定いたしておりますが、もちろんこれには繰越金五十九億円を含んでおるのであります。さらに連合国の財産補償諸費が約七十億円、旧軍人等恩給費のいまだ支払つていないものの推定額が約四百億円あるのであります。次に言いたいことは道路費、港湾費を中心とする公共事業費中の軍事的、植民地的経費の推定額約二百億円と見ております。次に警察機構及びその人員の大幅縮減、徴税費の削減等で約百億円を勘定いたしております。さらに資金運用部資金、開発銀行等政府関係機関資金初め国家資金の軍事的使用の停止をすることであります。これによつて国鉄等公社への融資ないし起債が可能であると見当をつけております。第六番目には、外国為替特別会計の蓄積ドルのうちから少くとも三億ドル、すなわち千八十億円くらいは見てよいのではありませんか。さらに七番目には、軍需利得と独占利潤に対する高率累進特別課税をする。法人超過利得税の復活をやる。さらに個人所得の高給所得に対する累進率の強化をやる。あるいは外資への特別高率課税等を内容とする税制の改正をやらなければなりません。八番目には、国費を濫費する者、国費を不正に使う者に対して厳罰、粛正し、会計規律を確立しなければなりません。
以上のような基本的態度から、当然われわれは政府提出案に反対するものである。
この臨時国会に対する米日独占資本のねらい、従つてこれに仕える吉田政府の任務は、冷害水害対策費を初め国民の諸要求を徹底的に押えつけることにあるのである。そのために、救農国会という美名をつけて労働者と農民とを切り離すために、臨時国会を七日間で切り上げようとしておるのである。MSA施行下における救農政策というものがどんなものであるかということは、政府提出の予算案の内容を見れば明らかになるのである。冷水害の被害総額は、とうてい調べ尽すことはできないほど大きいのでありますが、まず民主団体水害対策協議会や全国知事会議及び各府県による調査分だけでも、優に一兆億を超過しておるのであります。しかるに、政府各省の被害報告額はわずか二千六百二十億円である。これに対する大蔵省の査定額は、さらに下つて千七百七十五億円にすぎないではないか。大蔵省の査定作業、何ら合理的な調査を基礎としておるのではなく、官僚の大まかな目見当で各省予算を天引きしておると私は言いたいのである。大蔵省被害査定額千七百七十五億円のうち、国庫負担分は千五百六十五億円となつておるのでありますが、これを従来の目安に従つて初年度分十分の三とすれば、本年度は四百七十億円になる。しかるに、政府の予算では、災害復旧と冷害対策合せてたつた四百十五億円にすぎないではないか。しかもこの間、被害数字も査定額もだんだんと切り下げられてかわつて来ているではないか。かかるでたらめな各省要求に始まり、これが大蔵省の査定を経てさらに一層でたらめな初年度の予算化が行われているのであります。しかも、過去の災害の実績のまだ復旧されない分は、治山関係で一千五百億円、治水関係では二千億円の巨額に上つておるのであり、さらに農地関係のいまだ復旧せざる分を年度別に見ますと、二十四年度においては二四%、二十五年度も二四%、二十六年度には七二%という驚くべき状態で、これらの上にさらに本年の災害がのしかかつておるのであります。
次に、政府は官公庁労働者及び国鉄等八公社の給与改訂についてはまつたく無視しておる。給与改訂のこの無視は、従来の例を破つたものであり、これは既得権を蹂躪し剥奪しておるものであると言わなければならない。すなわち、MSA現段階における公然たる賃金ストップを意味し、いわゆる特別待命制度の実施に現われた天引き首切り政策に対応するものであると言わなければならない。
さらに、補正予算案の財源はどうか。周知のように租税の自然増収のほとんどは勤労源泉所得税の増収によつてでき上つておるではないか。物価の上昇を追いかけて、しかも小刻みにしか上らない賃金の名目額は、はげしい労働強化の汗を条件としておるのであります。この汗への課税こそ自然増収の源泉であります。専売益金の増収はもちろん、いわゆる雑収入の増加もまた同様に国民収奪の強化を意味するものである。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/64
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065・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 館君に申し上げます。小会派の代表として館君に発言を許しましたが、小会派代表の意見ではないとのことでありますから、これにて発言を遠慮願います。――館君に申し上げます。あなたの御意見は小会派代表の意見でありますか。
〔館俊三君降壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/65
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066・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これより採決に入ります。
まず、八百板正君外十四名提出、昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)の編成替を求めるの動議を採決いたします。八百板正君外十四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/66
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067・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 起立少数。よつて八百板正君外十四名提出の動議は否決されました。
次に、昭和二十八年度一般会計予算補正(第1号)外一件を一括して採決いたします。両件の委員長の報告はいずれも可決であります。両件を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/67
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068・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 起立多数。よつて両件とも委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
明四日は定刻より本会議を開きます。
本日はこれにて散会いたします。
午後十時五十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101705254X00619531103/68
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