1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年三月十七日(水曜日)
午前十時十九分開議
出席委員
委員長 關内 正一君
理事 鈴木 仙八君 理事 關谷 勝利君
理事 松井 豊吉君 理事 山崎 岩男君
理事 山口丈太郎君 理事 竹谷源太郎君
天野 公義君 岡田 五郎君
岡本 忠雄君 徳安 實藏君
南條 徳男君 有田 喜一君
伊東 岩男君 臼井 莊一君
青野 武一君 正木 清君
中居英太郎君 吉川 兼光君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 石井光次郎君
出席政府委員
運輸事務官
(海運局長) 岡田 修一君
運 輸 技 官
(船舶局長) 甘利 昂一君
委員外の出席者
議 員 庄司 一郎君
専 門 員 岩村 勝君
専 門 員 堤 正威君
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三月十日
委員加藤勘十君辞任につき、その補欠として吉川
衆光君が議長の指名で委員に選任された。
同月十一日
委員臼井莊一君辞任につき、その補欠として田中
久雄君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員田中久雄君辞任につき、その補欠として臼井
旺一君が議長の指名で委員に選任された。
同月十二日
委員青野武一君、楯兼次郎君、山口丈太郎君及
び館俊三君辞任につき、その補欠として島上善
五郎君、黒澤幸一君、多賀谷真稔君及び中原健
次君が議長の指名で委員に選任された。
同月十三日
委員南條徳男君及び中原健次君辞任につき、そ
の補欠として小笠原三九郎君及び館俊三君が議
長の指名で委員に選任された。
同月十七日
委員小笠原三九郎君、加藤鐐五郎君、黒澤幸一
君及び多賀谷真稔君辞任につき、その補欠として
南條徳男君岡田五郎君、青野武一君及び山口丈
太郎君が議長の指名で委員に選任された。
同日
山口丈太郎君が理事に補欠当選した。
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三月十六日
航空法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
〇三号)
三月五日
土讃線高知、佐川駅間にガソリンカー運転の請
願(長野長廣君紹介)(第三〇三五号)
松島空港使用促進に関する請願(内海安吉君紹
介)(第三〇三六号)
自動車運送事業の免許制度廃止反対に関する請
願(菅家喜六君紹介)(第三一一四号)
大糸線開通促進に関する請願(塚田十一郎君紹
介)(第三一七二号)
同(田中彰治君紹介)(第三一七三号)
同月十日
木造船事業の保護育成に関する請願(佐竹新市
君紹介)(第三二〇三号)
二俣佐久間に鉄道敷設の請願(戸塚九一郎君外
十三名紹介)(第三二〇四号)
三陸沖定点観測再開に関する請願(鈴木善幸君
紹介)(第三二〇五号)
元地港工事施行に関する請願(玉置信一君紹
介)(第三二〇六号)
香深港修築工事施行に関する請願(玉置信一君
紹介)(第三二〇七号)
戦傷病者に国鉄無賃乗車復活に関する請願(只
野直三郎君紹介)(第三二九一号)
国鉄岩日線敷設の請願(高橋圓三郎君紹介)(
第三三三一号)
荒海、矢板間に鉄道敷設の請願(佐藤親弘君紹
介)(第三三三二号)
同月十二日
木造船事業の保護育成に関する請願(高津正道
君紹介)(第三三六八号)
中村、上ノ山間に鉄道敷設の請願(佐々木更三
君紹介)(第三三六九号)
戦傷病者に国鉄無賃乗車復活に関する請願(中
澤茂一君紹介)(第三三七〇号)
同(松平忠久君紹介)(第三三七一号)
同(降旗徳弥君紹介)(第三三七二号)
同(羽田武嗣郎君紹介)(第三四〇四号)
同(小川平二君紹介)(第三四八五号)
上越西線敷設の請願(鍛冶良作君外名紹介)(
第三三七八号)
同(喜多壯一郎君外一名紹介)(第三四八七
号)
自動車運送事業の免許制度廃止反対に関する請
願(助川良平君紹介)(第三四〇二号)
同(濱田幸雄君紹介)(第三四〇三号)
同(中村庸一郎君紹介)(第三四八六号)
国鉄日田線敷設工事継続施行に関する請願(廣
瀬正雄君紹介)(第三四〇八号)
同月十六日
戦傷病者に国鉄無賃乗車復活に関する請願(池
田清君紹介)(第三五三二号)
同(赤路友藏君紹介)(第三五三三号)
日南鉄道敷設工事継続施行に関する請願(伊東
岩男君紹介)(第三五八一号)
の審査を本委員会に付託された。
三月十日
日豊本線にディーゼル列車運行等に関する陳情
書(第二八三八
号)
定点観測存置に関する陳情書
(第一六三九号)
同
(第一六四〇号)
同月十三日
京都、草津間国鉄電車運転促進に関する陳情書
(第一七九四号)
国鉄吉備線を矢掛、井原、神辺を経て福山市ま
で延長敷設促進の陳情書
(第一七九五号)
自動車賠償保障制度実施促進等に関する陳情書
(第一七九六号)
宮崎港修築工事促進に関する陳情書
(第一七九七号)
宮崎県延岡港修築工事促進に関する陳情書
(第一七九八号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
理事の互選
航空法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
〇三号)運輸行政に関する件
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/0
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001・關内正一
○關内委員長 これより開会いたします。
航空法の一部を改正する法律案を議題とし、まず政府より提案理由の説明を求めます。石井運輸大臣。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/1
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002・石井光次郎
○石井国務大臣 ただいま上程されました航空法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明いたします。
航空法は戦後七年有余の空白期間を経て、一昨年七月に制定公布された法律でありますが、その後一年有半の間における同法運用の実績に徴し、航空機の耐空証明、航空従事者、飛行場、外国人国際航空運送事業等に関する規定につき、それぞれ実体に適合するよう所要の改正をする必要が生じたのであります。なかんずく外国人国際航空運送事業につきましては、各国との航空協定の内容が明らかとなつた今日、相互主義の原則に従い、これに対し適当かつ十分な規制を加える必要が痛感されるに至つたのであります。以上がこの法律案を提案いたす理由でありますが、主要な改正点につきまして御説明いたします。
第一は、運輸省令で定める資格及び経験を有することについて運輸大臣の認定を受けた者は、運輸省令で定める滑空機について、耐空証明及び修理改造検査を行うことができることとして、滑空機の検査の簡易化をはかつたことであります。
第二は、耐空検査、修理改造検査等の検査の結果、航空機の安全性が確保されないと認めるときには、当該航空機または当該型式の航空機全般の耐空証明の効力を停止し、または有効期間を短縮することができることとして、航空事故を事前に防止する措置を講じたのであります。
第三は、公衆の利便を増進するため必要があると認めるときは、保安庁の設置する飛行場についてその着陸帯その他の施設を公共の用に供すべき施設として指定することができることとして、これを民間航空機が使用し得る措置を講じたのであります。
第四は、航空機は、計器飛行状態のみならず、有視界飛行状態において飛行する場合にも、運輸大臣に飛行計画を通報することとし、航空の安全性の確保を期した次第であります。
第五は、外国人国際航空運送事業者の運賃または事業計画は、運輸大臣の認可を受けなければならないこととしたことであります。
第六は、運輸大臣は、必要があると認める場合には、外国人国際航空運送事業者に対して、運賃または事業計画の変更を命じ、また所定の場合には、事業の停止を命じ、または許可を取消すことができることとして、公共の利益を保護することとしたことであります。
第七は、外国航空機が本邦外から本邦内に到着し、また本邦内から本邦外に発する旅客または貨物の有償の運送を行う場合には、特に事業の許可を受けている外国人国際航空運送事業者の航空機を除き、運輸大臣の許可を必要とすることといたしたことであります。
以上、この法案の提案理由及び主要な改正点について御説明いたしました。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/2
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003・關内正一
○關内委員長 本法案に対する質疑は、次会に行うことといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/3
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004・關内正一
○關内委員長 運輸行政に関し質疑の通告がありますので、これを許します。竹谷源太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/4
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005・竹谷源太郎
○竹谷委員 私は運輸大臣に対しまして、海運、造船政策に関して質問を試みたいと存じます。
海運業というものは国家の重大産業でありまして、従つてこれが保護、奨励の政策をとりますことは、諸外国においても行われ、またわが国においても行いつつあるような次第でありますが、特にわが国は戦前世界第三位の大海運国であつたのが、戦災によりまして大部分の船舶を喪失して、船はからつけつになつた。そこで船舶建造に対しまして国の助成を行つて、これが建造をはかるということは、必ずしも不当なやり方ではなかつたと思うのでありますが、しかし戦争によつてわが国のあらゆる産業が壊滅に瀕しまして、経済が不況のどん底にある。これを回復する基本的産業に対しまして助成をしなければならぬとしますならば、これは船舶関係ばかりでなくあらゆる重要な産業について総合的に振興発展の政策をとらなければならぬ。これがわが党の主張であつたのであります。しかるに、特に昭和二十八年の初めから、外航船舶建造融資利子補給法が制定されまして、他の産業に先がけて非常な国家的恩恵を受けて、造船をやることができるようになつたのであります。その上に昨年の八月制定されました利子補給並びに損失補償の改正法によりまして、著しくへんぱとも申すべき恩恵をこの造船業が受けるようになりました。しかるにこの恩恵に対しまして業界あるいは官界、財界等が、この恩恵を騙取するようなスキヤンダルを引起したのはまことに遺憾千万でありまして海運行政の総元締めである運輸大臣としましては、この責任に対しましてみずから深く期するところがあるであろうと思うのであります。
第二に、この悲しむべき事件が起きたために、わが国の海運造船政策に非常な蹉跌を来したばかりであるのみならず、この造船事業に直接従事する労働者として十万の労働者があり、なおこれに関連する産業は二百二十種類に及ぶということで、その労働者の数は三十一万に及ぶ、合計四十一万の——しかもこれは男子労働者であつて、男子労働者が四十一万も同一産業に従事するというのは、わが国においては他に例を見ないのであります。こうしたたくさんの労働者の従事するこの造船事業に非常な蹉跌を来しまして、本年もしこの造船が行われないならば、輸出船が十万トンと予想せられ、保安庁関係の船が五万トンとしますと、十五万トンから二十万トン足らずであります。しかるに造船能力は六十万トンを越える。そうしますと三分の二は失業をする。大体二十数万の男子労働者が失業のうき目を見て、重大なる社会問題が起ろう、こういうような状態であるのであります。このような事態を引起した最高の責任者である運輸大臣はみずからその責任について痛感せられ、自分の出所進退についても十分に考慮を払われておると思うのでありますが、これに対しまして運輸大臣は所管の長官として、また国務大臣として、いかなる出所進退に関する責任をとろうとするか、まず伺つておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/5
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006・石井光次郎
○石井国務大臣 船舶の問題各般にわたりましての御質問でございますが、第一に利子補給、損失補償の問題が昨年の夏きまりまして以来今日に及んだのでありますが、その間まだ利子補給もほんとうに支給の契約もできないうちに、いろいろないわゆる造船疑獄なるものが起つて世間を騒がしておることは、この席その他で私がしばしば申し上げておりますように、当該責任大臣としてははなはだ遺憾に思い、また責任の重大さを感じておるのでございます。
まず第一のお尋ねの、造船がこのまま行つたならば、非常に少くなるのじやないか、そうして六十万トン造船の能力を持つているのに、その一部分しか仕事ができないで遊休のところもできる、従つてたくさんの労務者が、関連産業も入れると、少くも二十万の人が失業するような状態になるのではないかという点でございますが、造船計画につきましては、運輸省は毎年三十万トンぐらいずつの造船を少くも四年間ぐらい続けて行きたいということを、昨年あたりからよく皆さん方にも申し上げておつたのでございますが、現在の二十八年度は大体それに近い数字が出ておりますが、二十九年度の予算には、財政資金の欠乏の影響を受けまして、約二十万トンの造船ということで、財政資金百八十五億という計画で言いました。先ごろまたいろいろこの予算の話合いが自由党その他三党間にありまして、この財政資金も一部これから減ずることになるのではないかと思う。まだはつきりいたしておりませんが、そういたしますと二十万トンの造船、それは政府の資金が七割、市中資金三割ということを頭に入れての二十万トンでありましたが、それがまた食い込むことになるだろうということが予算の上から出て参りますので、従つて造船所は、それがその通り行われましても、今年度よりは苦しい状態になると思います。それでまず国内の計画造船の問題でありますが、ここまで私どもがいろいろ折衝して来た結果から見ますと、市中銀行そのものがあまり今度の造船に乗気でないのでであります。第一は金がなくなつた、第二にはがちやがちややかましく言われて、いかにも銀行もその渦中のもののように言われるのに、そうまで進んでやらぬでもいいという、非常に退嬰的な気持も生れておると思うのでありますが、この間から市中銀行の関係者に会いますと非常に乗気でございません。できれば今度は財産資金だけで船をこしらえてもらつて、われわれの方はかんべんしてもらいたいというのが、大体の空気というふうに伝えられておるのでございます。それ以上にまだ話を進めてないのでございますが、そういう状態でございます。かりに市中が今まで通りにどんな形かで出すといたしましても、二十万トンを切る状態になるのでございますから、造船所は苦しくなつて参ります。外国からの注文はどうなるかということを一方考えますと、本年度は約十万トンと予想しておりましたが、現在は十二万トンぐらい外国の注文が出て来そうに見える。来年は十万トンぐらいと私どもは見ておりましたが、これもどうなりますか、例の暫定措置としてやつておりました鋼材の利子補給の問題が、日銀の別口貸しというものがやめになるという問題がありますと、そういたしますと鋼材に対する補給金が減るわけでございます。そういたしますとせつかく世界並の造船の単価が出ておりましたのが、また少し上る問題があるのじやないか、そうするとはたして外国の契約を十分とることができるかどうかという、なかなか困難な方向を示しておると思うのであります。こんなものを合せますと、造船界の前途は非常に悲観状態であります。私どもの一番心配いたしますのは、今竹谷さんのおつしやつたように造船所の問題でございます。造船所にたくさんのものがある。六十万トン、七十万トンをつくり得るというような施設は、今日の日本としては過ぎていると私自身も思います。この中には、外航船などをつくるような船会社、あるいは修繕等をやるもの、あるいはものによつては陸上のいろいろな仕事の方に転換するというふうな道がおのずから講ぜられなくては結局無理じやないか。三十万トンこしらえても、今の造船所を維持して行くのは無理だろうと思うのでございます。外国からの注文は何とかしてふやしたい。国内のものは三十万トン、そのほかに保安庁の船も注文が出るだろうから、私どもはできるだけ日本の非常に大きな特色である造船能力を維持して行きたいという心持でやつて来ました。今年もそのつもりでやります。来年もできるだけ維持したいというような心持をもつて予算の編成にも当つて来たのでありますが、これはだんだん困難になると思います。そうすると何らかの方法を講じなければならなくなるのではないか。まずとりあえずの問題といたしまして、私どもは私どもの今度の予算でこしらえます船を一トンでも多く、一隻でも多くこしらえる。それには市中銀行との話合いをもう少し進めまして、造船の数を維持したい。それから外国の注文も、めちやくちやな出血にならないで受入れられるような程度までに、これは一番ブラント輸出の大きなものでございますから、これを維持するために何らかの方法を講じたいというので、先ごろ大蔵大臣ともいろいろ話をしておる途中なのでございますが、そういうことにいたしまして、何とかしてできるだけの造船を来年は、今年より減つても、維持したいということを考えております。それから利子補給とか損失補償とか、ほかの仕事よりも大きな援助をしておきながら、そこにスキヤンダルが起り、そのために造船の問題について、造船所などが冷遇されるような形にだんだんなつて行くことについて、大臣はどういう責任をとるかというお話でございますが、私といたしましては、造船の必要を力説し、またそれをかたく信じておる一人でございます。またそれのために利子補給だとか損失補償とかいうようなことをして、そうして世界の海運界の競争に負けないようにして行つてもらいたいということを念願して、今日に及んでおるわけでございます。今日造船疑獄の声におびえて、海運界そのもの、造船界そのものが、何となくいじけてしまつておるような状態でありますことを遺憾に思い、私は先ごろから、関係方面のいろいろな人たちと絶えず会いまして、次の造船、次の海運、来年度の海運界をどうするかという問題について、一生懸命今話を進めておるところでございます。来年度についてどういう成案をというところまでまだ至つていませんが、計画造船の行き方並びに海運界の来年度からの行き方についてしつかりした形を築き上げることが、私のこういう場合における一番大きな責任だと思つておりますが、そういうことに努力をいたすつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/6
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007・竹谷源太郎
○竹谷委員 運輸大臣の今の御答弁を聞きますと、海運助成政策は今後も従前通りやつて行くということを頭からきめてかかつているようでありますけれども、こうした事態の起きた機会をもちまして、根本的な海運政策を、慎重に検討してみたらどうかと思いますが、それをお聞きしたいのであります。先ほどわれわれは国家の産業全般にわたつて総合的な観点から、海運政策も考えなければならないということを申し上げたのでありますが、運輸省当局として、あるいは海運業者から要請があるからというようなそういう立場、すなわち運輸省の大臣としての立場からでなく、政府として、国務大臣として日本の海運政策を、他の日本のあらゆる産業と照し合せてどのようにやつたらいいか、そういう国家全体の経済政策の立場に立つて、莫大な国家資金を投入し、あるいは利子補給、損失補償までして非常な援助を与えるということが、国家的な経済の立場から見て有利であるかどうか。また外貨を獲得したり、その他国家の財政経済に資するために、一体こういうようなたくさんの金を海運だけに使うよりも、他の有利な外貨獲得の産業に投資してやつた方がいいか、あるいはその他の方法で日本全体としての経済の発展をはかる方がいいのじやないか、そういう広い観点から、海運政策を十分に検討した結果、どうしても今後も従来のように海運政策、造船政策をやつて行かなければならない、さような結論に到達した上に立つて、従来の海運政策を進めて行くという考えであるかどうか、その点をはつきり御答弁願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/7
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008・石井光次郎
○石井国務大臣 海運政策を、日本の全体の総合的なる経済政策から考えて、今の行き方が妥当かいなやというお尋ねでございますが、私ども運輸省だけを預かつておりますから、つい運輸行政の必要性ということを力説する立場にもなるわけでありますが、全体の国家の政策という立場から、当然いろいろ検討を加えなくちやならぬということも、御説の通りに考えております。日本の今の海運に対する政策は、昨年から利子補給、損失補償というような問題等も取上げられ、また計画造船が、ずつと長い間多額の国家資金を投じられて来たということから考えまして、そのほかのものとのアンバランスはないかという問題は、これは当然考えなくちやならぬ問題だと私ども思います。海運が日本経済の中でどういう立場にあるかと申しますと、これはいまさらいろいろ申し上げるまでもなく御承知だと思いますが、日本の海運が戦後非常にさんたんたる状態に陥りましたが、どうしてもこれを復興しなくちやならぬ。さつきあなたもおつしやつたように、世界の第三位を占めていた海運からこんなになつている云々というようなお話がありましたが、その気持が、この海運の復興ということに非常に力を入れる気持があつたもとだと思うのでございます。私どもサンフランシスコの講和会議がある前に、ダレス氏が来ていろいろ日本との条約問題を話したときにも、この海運問題を非常に渋つておつて、それまでも、日本の海運の復興を阻害するような行き方ばかり占領中行われておりました。講和条約ができたら、自由に伸びるだけ伸ばさしてもらいたいという私どもの気持であつたが、これが最後まで問題であつたのでありますが、幸いにいたしまして自由に、日本の思うように、日本の力でできるだけ伸ばしていいことになりましてとられた政策が、順に積み重なつて今日に及んで来ているわけで、ようやくにして現在三百万トンの船を回復することができたという状態になつているわけでございますが、特に外航船に力を入れまして、現在は総計二百三十万トン近くのものを持つているわけでございますが、これによりまして——日本はどうしても貿易で立てなくちやならぬので、輸出入の品物のできるだけ多くを日本の船で動かしたい。戦争前には、六十何パーセントでありましたか、相当大きな輸出入量を日本の船で運んでおつた。ところが今日では、まだ四十何パーセントしか日本の船で運ばれていないということでございますが、これが船が増せば増すだけ、明らかに外貨の収入がふえて来ていることは御承知の通りでございます。不在はだんだん積りまして、外貨払いと外貨獲得という両方合せまして、約一億ドルというものが日本に入つているということになつているわけでございます。いわゆる貿易外収入での海運が働いて日本に入れますウエートというものは、私は戦争前よりはるかにこの海運のウエートというものが大きくなつていると思うのであります。戦争前におきまして、外国に商社を持ち、あるいはいろいろの事業を持ち、あるいは個人でいろいろやつておられたその送金というものは、貿易外の収入の非常に大きな部分を占めておつたと思うのでありますが、今ではそういうふうなものがなくて、貿易外ではこの船の収入以外にはほとんどないと言つていい今日の状態でございますから、これを少しずつでも増さないと、貿易のアンバランスというものはどうにもならないということを考えますと、つくつて動き出せばもうすぐ日本の外貨獲得というものができるのでございますから、これはどうしてもこの海運に力を入れざるを得ないということになるわけだと思うのでございます。そういう意味からいたしまして、その心持が政府全体の心持ということになりまして、苦しい中でもやはり造船はまだ当分続けて行かなくちやならない。外航船二百三十万トンと申しますけれども、その中の七十万トン余りでございましたか、これはいわゆる戦標船とか何とかいうあまりよくない船でございます。これを普通の計算法による命からいたしましても、その入れかえだけでも年にどうしても十万トンぐらいはつくつて行かなければ、現在の力を維持することはできないというような状態に追い込まれているわけでございますから、ぜひこの造船はやつて行かなくちやならない。そうして海運による収益を上げて行かなければならない。そのほかいろいろな仕事に、あれだけの国家資金を投ずればもつと収益のあるようなものがあるかどうか、私はつきりは知りませんが、今申し上げました例だけでも、日本の今の海運業を援助して、世界的な競争の中に立つて行けるようにしてやらなければならないと思うのでございます。
それから利子補給等、これほどまでせぬでもいいじやないかというようなことが問題になると思うのでございますが、これは国内のいろいろなほかのものと違いまして、御承知のように世界的競争状態に置かれているのであります。この世界の海運界のマーケットに対処しますのに、日本の海運会社というものは、戦時補償打切りのために、ほとんどすつからかんで、何でもかでも借金ばかりでやつておるということが一つ問題になつておりますが、この借金でやつておりますために、かりに三分五厘にしても五分にしても、そこに使います資金の全部にかかる利子なんです。外国の例をとりますと、イギリス等におきましては、自己資金が大部分で、わずかの部分が低利の借入金で、ちようど日本の戦前の状態がそうであつたと思います。そういたしますと、かりに五分のものであつても、半分が借入金でありましても、全体にしてみれば二分五厘になる。ところが日本のものは、五分なら五分、三分五厘なら三分五厘という状態でありますために、ノミナルの三分五厘が標準の利子だけではまかない切れないという実際上の問題がある。そのために利子補給、損失補償等の問題が起きて来ておるわけでございます。そういうようなわけで、私どもはなお今日の日本の海運を維持すること、またできればその力を増すことが、ぜひ必要であるというふうに考えております。政府も大体その線に沿うて考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/8
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009・竹谷源太郎
○竹谷委員 今大臣の御答弁を聞きますと、日本全体の経済政策の観点から、あるいは国際収支、貿易の問題等からも、海運保護政策を続けて行かなければならないという結論に達したということであります。私も海運に対しまして、今のような厚いものが適当であるかどうかは別として、何らかの保護政策が必要であることは、同様に感じておるのでございます。最近新聞紙の報道するところによると、造船資金の三割を負担しなければならない市中銀行側の全国銀行協会の理事会が開かれまして、そこで貸出を拒否するような意見がもつぱら有力であるということが報道されておりますし、また銀行の元締めであります一万田日銀総裁は、世界的に船腹が過剰であるから、わが国が不足だとしても、当分は差控えた方がよかろうという意見を公然と発表しておる。それから資金の七割を負担すべき日本開発銀行の総裁もまた非常に消極的であつて、海運業の整理統合が十分行われた上でなければ貸し出せない、こういう意見を述べておるのであります。また財界の長老なんかを大臣が招集してその意見を聞いたら、その意見もまた差控えろという意見が非常に有力である。かように各方面から、昭和二十九年度の造船に関しては異論が出ておるのみならず、かんじんの資本主が、市中銀行は全面的に拒否しようとしまするし、開発銀行も非常に消極的である。こういうようなことでは、政府が従来のような海運保護政策を遂行し、計画造船をやろうとしても、資金面から不可能になるのではないか。それに対しましては、大臣はどうしても市中銀行が出さないということであれば、そして一方においては海運業の整理統合が行われない、業者が積極的でないというならば、運輸省独自の造船計画案をもつてこれに望みたいということを、新聞に話しておるようであります。独自の海運業の再編成計画はどういうものであるか、その構想をお話願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/9
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010・石井光次郎
○石井国務大臣 市銀が出し渋つているのは、先ほど私が申し上げた通りであります。あなたのおつしやる通りでございます。昨年の暮れでございましたか、市銀の方からは担保の問題に関連いたしまして、もう少し市銀側に担保を有利にまわすようにしてもらいたいということで、開銀側よりも先にと申しますか、市銀の方によけい担保を与えてもらいたい、それから九次のときは市中が三割の融資をしたが、金もだんだん詰まつて来ておるから、もう少し少くしてもらいたいという希望の書面が出ております。ところが最近になつて市銀の連中に会いますと、今あなたのおつしやつたように何とかひとつ今年はかんべんしてもらえぬかというような——実際金のないことも事実でございますが、造船疑獄云々でおびえておるというのか、そんなもうかりもせぬところに何で金を貸すのかという問題等でいろいろ声が上りますので、何となく心持が進まぬというのが現実のようでございます。それに対して私はどうしよう、こうしようということはまだ考えておりません。ただ各方面の意見をずつと聞いておる最中でございます。日本銀行の方は総裁がそういう話をしておるということが一ぺんならず出ましたから、これは大体同じだろうと思います。この間日銀の総裁と会つて話をいたしました。日銀の総裁に対しましては、私はあなたのお話の第一段では、もう三百万トンもあればたくさんじやないか、一応そこらでいいじやないかということを言つておられることには反対である。次の船会社も大いに整理統合をやらないといかぬ、貿易商社と同じような心持でやらなければならぬと言うておられるのは、その趣旨は賛成でありますが、どうですかという話をいろいろしました。ところが一万田君の話は、必ずしも反対ではない、船をつくるのに反対ではないが、オペレーターをやるとかオーナーをやるとかなんとかは別問題だが、少くともいろいろなところで日本人同士のむだな競争をやめて行かなければならぬ。貿易商社が日本人同士でむだな競争をしておると同じような状態が各地で行われておるようだから、そういうものをしつかりしないで、ただ船をつくらせよう、つくらせようというのはおかしいという意味でありました。それはぼくと同じ考えである、こういうようなことを話し合つたのであります。開銀総裁とは私はまだ話し合つておりませんが、開銀総裁の言うのも、今竹谷君もおつしやつたように、この前の九次後期の造船の済んだときもそうでありまして、何とかして船会社を、オペレーターなりあるいは会社そのものなり、一緒になつて強力にしなければいけない、だんだん担保力も衰えて来るのだから、これをひとつよくしなければならない、そうしなければなかなか貸せないような状態にあるということで、船会社を少しそういう方向に進めようじやないか。これは私も全然賛成で、その旨はその後船会社を集めて言つたこともあるのでございますが、それが実際の状況でございます。市銀、開銀、日銀、こういうものを通すということは、第一番には、金を貸すには担保がしつかりしていないと貸せない、そうしなければ不良貸しということを言われる。担保力のある限りにおいては、国策の線に沿つて海運助長で貸してもいいけれども、担保力のないものは自分たちの仕事の範囲を逸脱するというような心持で話が出ておるわけであります。この間市銀の方に集まつてもらつたときにおきましても、この問題で担保力の問題もどうもだんだん苦しい状態にあるが、一個々々の問題はまだ詳しく自分たちの方も調べていないが、それをしらべるが、担保力がなくては、いずれにしても貸すことはできないのだというお話でありました。それはもつともだと私どもは思うのであります。そういうふうな状態でございまして、さてどういうふうにしたならば、財政資金を出すにしても財政資金外の市銀の融資を求めるにしても、一応の担保力その他のいろいろな問題で、調べがちやんとできなければならないと思うのでございますが、それには開銀、日銀なんかの言われております整理統合の問題につきまして、話をどういうふうに持つて行くかということになりますと、なかなか業者自身では整理統合などというものはできにくい状況ですし、その線に沿うて少しずつ個々のケースでは動いておるものもあるように聞いておるのであります。これをどういうふうに運んで行くかという問題等につきまして、近く開銀の総裁の総裁とまた私どもの方と話合いを進めたいと思つております。資金がなければ運輸省独自の方策ありということを書いてあるということでございますが、独自の方策というものをまだ立ててはおりません。今各方面からのお話を聞いておりまして、どうしても今の政府資金七割、市中の資金三割ということが確保できるかどうかということが前提で、そができるにしても今のようないろいろな条件がいるのでありますから、そういう前提条件が整つて出せるかどうか、かりに前提条件が整うても市銀等が出せないとするならば、どの程度に納めてどういう方法でやるかということ等はこれからの相談で、そこで独自の案ができ上らざるを得ぬことになるだろうと思うのでありますが、私どもといたしまして今考えておるのは、できるだけ七割、三割の線は守りたい、そうしなければ造船の量が減るだけで、かりに市中の銀行が二割しか持てぬ、あるいは一割五分しか持てぬというようなことになりまして、それでは政府資金の限度がきまつてからトン数を減らすということになると、それだけこれからの海運収入にも影響するばかりでなく、さらに造船所の問題として、一ぱいでも非常に大事にしたいと思うのでありますから、そこらの問題をせつかくいろいろ相談しておる途中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/10
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011・竹谷源太郎
○竹谷委員 海運業に対して国家があまりに厚過ぎる、援助、保護、恩恵を与え、しかもそれを総花的にやるものですから、もらつたようなつもりでただの金を使いますので、ふまじめな業者が盛んに悪いことをして、無理やりに計画造船の割当を受けようというようことが、今度の問題を起しておる重要な中心点ではないか、かように思うのでありまするが、どうしてもこれはやるとすれば、そうしたふまじめな業者を排除して、資力もあり、信用もあり、またまじめな仕事をする業者を選ぶ、まずそのためには整理統合等も必要になつて来ると思うのでありますが、これをやるなるならばぜひ必要なことではないか、なお聞くところによると、第九次の後期造船とそれから輸出向けの船舶建造に対しましては、これに使う鋼材トン当り約七千五百円くらいの補給金があるということです。この七千五百円の補給金の出どころは、日銀の別品貸しあるいは開銀の貸金の操作等から出来るということでありますが、ひとつその内容と経緯をお話願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/11
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012・石井光次郎
○石井国務大臣 詳しくは船舶局長から御説明いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/12
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013・甘利昂一
○甘利政府委員 わが国の造船用の鋼材が外国に比べて非常に高いということは御存じのことと思いますが、大体イギリスに比べまして当時で約一万七千五百円くらい高いのであります。その高い理由として鉄鉱石あるいはその他の原料を向うから運ぶことも一つでありましようが、最も大きな原因は日本の製鉄所の設備なり技術なりが非常に劣つておる。従つて特殊の鋼材、たとえば船に使うような大きな幅、あるいは長さ、あるいは特に質を選ぶものについては特殊規格料、あるいは割増料として相当多額の金をとられておるのであります。当時で約一万円近くの金をとられております。従つてこれらを早急になくすることは、現在の製鉄設備においては非常に困難である。従つてそれを待つこともできないというので、さしあたつて何らかの方法でこれを援助したいという気持で、政府としては当時予算を出したのでありますが、その必要性は認められたのでありますが、いろいろな補給金という形で出すことについていろいろ異論がありましたので、別途考えるということで、最後に今お話のありましたように、製鉄業者が日銀から開発銀行を通じて借りておりますいわゆる別口外貨の金利五分を二分五厘に減らす、あるいは製鉄業者が開発銀行からいろいろな設備資金として借りております金利一割を二分五厘減らして七分五厘にする。両方の金利を二分五厘ずつ減らして、それから浮いた金を造船所が輸出船あるいは内地の鋼船をつくつた場合に、トン当り約七千五百円ずつ補給する、こういうことになつたのであります。当時その方法が行われます前までは、今年度は非常に輸出船も少かつたのでありますが、その方法が行われてから現在までに当初の予定の十万トンをはるかに上まわり、約十二万トンくらいの契約ができつつあるわけであります。従つてこれが非常に船の輸出に役立つたということも言われますし、また内地船もそれを元にしまして、鉄鋼業者あるいは造船業者の努力によつて、約割一分ないし一割六分の船価を下げておりますので、これらも日本の海運業の経営力に非常に大きなプラスになつているというふうに考えられます。従つてわれわれとしてもこれだけ効果のあるものを今後続けて行きたいという気持を持つておりますが、さつき大臣からお話のように、一番元であるところの別口外貨がこの三月十日以後打切られることになつたので、今のところ非常に苦しい立場に立つておるのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/13
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014・竹谷源太郎
○竹谷委員 そうしますと、今のトン当り七千五百円という補給金は、第九次後期の計画造船と二十八年度中の輸出船に対する分であつて、今後やる分についてはなくなる計算になりますかどうか。なお財政投資が六百二十億円くらいのところを三十四億円くらい減るということであります。それは電源開発その他からも引くかもしれませんが、百八十五億の計画造船の投資の中から切る可能性があるということでありますが、この点はどうなつておるか。それからもう一つ、輸出の仮契約が十一万トンできたということであるが、これが高値時代に比較して六割程度の非常に安い出血輸出をしなければならぬという、こういう情勢になつているということを新聞が報じております。これに対しては何かキユーバ糖をもうけて売りますような、そういうリンク制をとるというような報道もあるのでありますが、これらについてお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/14
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015・石井光次郎
○石井国務大臣 財政資金が減るかどうかという問題について私からお答えして、あとは関係局長からお答え申し上げますが、百八十五億と一応きめられましたものが、この間財政資金を社会事業その他の方面に少しまわすことになりましたために、今お話のように三十数億足りなくなるのでございます。これを総わくは増さないのでありまして、中のどこかから削らなければならないということになつておりまして、初め海運関係からみんな減らしたらどうだという声まで出たそうでありますが、それは非常におかしな話だというので、だんだん今話を進めております。まだはつきりいたしませんが、ほかとの比例上、ある程度の減額はやむを得ぬことだと存じておりまして、目下折衝中であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/15
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016・甘利昂一
○甘利政府委員 キユーバ糖のリンクによつて輸出船をやるというお話でございますが、現在契約がまとまりそうなもので一隻当り三万五千重量トンくらいの船が七隻くらいございます。従来造船の方は、ほかのものに比べて相当合理化もできておりますので、国際物価に比べてあまり差がなかつたのであります。それで非常に順調に輸出が伸びておりましたが、最近海運市場の非常な圧縮に伴いまして、輸出価格もだんだん減つて来るようになりまして、従つて現在外国から注文のある船は、非常に安いものであればこの際買つておこうというふうな船が多いのでありまして、従つてトン当りの価格も減つております。これを一昨年あたりの非常に安かつたときに比べれば相当減つておりますが、現在われわれの考えておりますコストに比べて、一体どのくらい減つておるかと申しますと、大体重量トン三万五千トン程度の大型のタンカーにつきまして、七%ないし八%くらい低くなつております。実例を申し上げますと、われわれとして大体トン当り百三十ドルあるいは百三十五ドルというのがコストでありますが、今の引合いのあるのは百二十五、六ドルというのが実情でございます。従つてこの十ドル内外の差をどうして詰めるか。これはたとえばそういう程度の船を三、四はい一緒にとれば操業度も相当上りますし、合理化もできますので、おそらく赤字も出さずにやつて行けるのじやないか。ただこれを一ぱい一ぱいとつた場合にどうなるかと申しますと、十ドル程度の開きをいろいろな合理化によつてやつて行くということは相当困難だろうと思います。従つてトン当り七ドルとかあるいは六ドル程度のコンベンセーシヨンが、砂糖のリンクでできれば、十分それで輸出が立つて行くというふうな現状であります。この問題については、われわれとしましては、ほかの輸出が非常に困難なものについて、こういう砂糖とリンクで一時的に出すということについてはさしつかえないでしようが、船のようにある程度連続して従来もされておつたものを、こういうものに急にリンクしてやらせたために、売値が非常に下つて来るということは、今後の輸出を継続する場合において外国から非常にたたかれるという心配もありますので、こういう制度を持続してやることがいいかどうかということは、相当検討を要すると思います。従つてさしあたつて契約あるいは仮契約のできておるような船については、こういう措置をとるのもやむを得ないかと思いますが、今後の長い輸出を考えますと、むしろこういうものよりも従来とつておりましたように、外国に比べて非常に高い鋼材等についてある程度のめんどうを見てやるという堅実な方法によつて、輸出を伸ばすのが妥当ではないか、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/16
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017・竹谷源太郎
○竹谷委員 そこで大臣にお伺いしたいのでありますが、計画造船の大部分を国家が資金を投入をしても、残りの三割もなかなか市銀が出さないという現状です。そうすると大部分の資金を国家が出す、あるいは全部出さなければならぬことも起つて来る。なおまた利子補給もやり、鋼材の補給金も出す。輸出船の場合には砂糖のリンク制というような、国民に負担を増すような出血輸出をしなければならない。かような造船業に対しまして、民間に補助したり保護したりして、今日起つておるスキヤンダルを見るようなへまなことをやるよりも、むしろ国家の資金で造船業をやつて、それを運航業者にチヤーターさすというような、船舶の国営という方向に進む方が妥当適切な海運政策が行えるのではないか、かように考えられるのであります。こうした段階になつたときに、十分これを研究してみる必要があると思います。大臣はこれをいかようにお考えになりますか、お尋ねしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/17
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018・石井光次郎
○石井国務大臣 国有論がこのごろぼちぼちあちこちに聞かれるような状態になつておりますが、二十九年度は、予算の編成から今日まで来た心持では、政府の財政融資七割、民間資本三割という線で、できるだけ多く船をつくりたいということが私どもの念願でございます。ところが一般の銀行側から見ますると、これは開銀も、同じことに見ており、市銀はもちろんでありますが、担保力がないところに融資するわけに行かないという問題からいたしますると、運輸省の計算では、担保力のないところは造船ができないわけでありますが、ことしまでは担保力はあるはずだ。しかし担保力はあつても金がないという根本の話でありますと、市銀などでそれを言つておりますように、どうなるかわからないのでありますが、そういたしまして二十九年は過ぎ、三十年を通じて、私どもは造船をしなければならぬと思つておるのでありますが、三十年の造船になりますと、いやであつても国家資金造船というところに入つて行くおそれが非常に多い。そのときにはどうするかという問題もあらかじめのこととして話しておつたわけでありますが、そのときになつたらそのときの問題としてやはり数は少くなり、トン数は減つても、国家造船でもつないで行きたいという気持は強いのであります。今日の場合はできるだけ民間の資金を出させまして、トン数を一ぱいでも多く船をこしらえるという線に進めたい、そうして外貨獲得を少しでも多くやらなければ、日本の根本の経済が持つて行けないというのが私どもの考え方でありまして、二十九年度の問題で国有ということは私どもとしてはやらずに、何とかして市中の金を出させたい、そのために努力するということを考えておるのでございます。そのときにできなかつたらどうするという御質問があるかもしれません。で逆なかつたら、国がここで百七、八十億それにまわす金ばかりにあるとしても、それをやめて、ことしは休業だというわけには行かない。そのときになりますればまた別な方法を考えなければならぬかとも思うのでありますが、私どもとして今のところ、既定の方針にできるだけ近いような造船の線で進んで行くことが好ましいのじやないか、こういうふうに思つております。
それからもう一つ、国家の造船の方がスキヤンダルなどの問題は起らずに、かえつてはつきりしていいじやないか、リベートの問題とかいろいろ起つておるのでありますから、そういう問題は国家造船になればなくなつて、きれいじやないかというようなことも一応考えられるのでありますが、さて国家造船を実際に扱うということでひとつお考え願いますると、国家がきめて注文をする、またでき上つた船をどこに貸すかというような問題等になりますると、なかなかむずかしい問題である。そうなりますと、今竹谷君も述べました国有国営という問題もそこに出て来るかと思いますが、そこまで行くのはどうかしらんと私は思う。今まで船舶運営会の時代等々の実際を考えますと、私はあまりうまく行つていないと思うのです。やはりもち屋はもち屋でやらした方が、結局大きい目から見るといいのじやないか。いろいろな問題が起つておるのは、今後の厳重な監査その他の方法によつて取締りまして、そして日本の船舶は一ぱいでも多く、いい状態に早く持つて行くために船を増すということが根本ではないか、こういうふうに思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/18
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019・竹谷源太郎
○竹谷委員 市銀から金は出ないし、ほとんど全部国家融資の場合には、国営造船も考えなければならないというお話でありますが、これは十分研究してもらいたいと思います。なおもしそうした国営造船でなしに、従来のようなやり方で行く場合に、先ほど海運業の整理統合の問題についてはまだ具体案がないというお話でありますが、しかし問題は差迫つておるのであつて、さような安閑としたことであつてはならない怠慢は許されないと思う。なお計画造船の適正な割当をするという問題も当然起つて来る、これをどうするか、また船舶建造に関する監査制度をどんな方法で行こうとするお考えなのか、これらについて案も何もなしに、早く計画造船をやりたいとおつしやつても、これは不可能の問題であります。五十九台の大型船台の大部分が、四、五月ごろからからになるという情勢にあるのでございまして、差迫つた焦眉の問題でございます。この適正な計画造船の割出の方法、あるいは造船の監査の方法等につきましては、すでに案ができておると思うのだが、それを発表してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/19
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020・石井光次郎
○石井国務大臣 第十次造船の割当方法をきめるために、先ほど申し上げましたように、各方面の人たちの意見を徴しておる途中でございますが、今までやつて来た方法も、毎次いろいろ研究しながら、たびたびかわつて来ております。昨年の制度をやるときには、昨年の方法が一番いいと思うてやつたのでありますが、さらにもつとよくするような方法はないか、この割当の方法について今しきりに意見を徴しながら考えておるところでございます。それができますれば、すぐにもできるわけでございますが、みんなの意見を聞くまで、どうするこうするということは、まだ発表もいたしていないわけであります。
それから監査の問題でございまするが、これは昨年の八月に利子補給がきまりまして以来、監査をすることができることになつたわけでございます。まずとりあえずはいろいろな報告を受けて、その報告を今調べておるところでございます。進んでは今度は現地監査をやるというようなことになつて行くわけでございます。これの行き方につきましては、局長から御答弁させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/20
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021・竹谷源太郎
○竹谷委員 計画造船の割当の問題はやろうと思えばいつでもやれるというお話ですが、大体構想だけでも承りたい。すぐやれるとすれば構想があるはずであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/21
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022・石井光次郎
○石井国務大臣 それは私の言葉がちよつと足りなかつたか、聞き方が違うかだと思います。きめますれば、もうその日でもこういうふうな方法だと発表できるわけであるから、今は各方面の意見を聞いて一番いいところにおちつけようと思つて、今聞いておるところであるという意味でございまして、今私がここにこういう案を持つておるというわけではございません。案としては、まず順序といたしまして、計画造船をやる場合の造船合理化審議会にかけまして方針をきめる。この造船合理化審議会にかける問題の範囲につきましても、いろいろ意見が各方面にあるのであります。少し漠とし過ぎている、あるいはもう少し具体的にそこにかけたらどうかというような問題等があります。そういう問題につきまして、今あれこれとだんだんまとめつつあるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/22
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023・竹谷源太郎
○竹谷委員 従来の造船合理化審議会のような、関係官僚と業者と一部金融業者と、内輪だけのまるで酒飲み話のようなかつこうで計画造船の割当をやつたから、今大問題になつているようなスキヤンダルを起したのだろうと思う。たとえば合理化審議会のメンバーにしましても、画期的な考え方をしなければならぬ。そういうものにはどういうメンバーを入れなければならないか、それらについては抽象的でも構想があろうと思う。それをひとつお話願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/23
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024・石井光次郎
○石井国務大臣 造船合理化審議会の顔ぶれには、造船業者とかあるいは海運業者とか、金融業者というものももちろん入ります。これは船の方に学識、経験ある人というような意味でありまして、その意味において業務関係の代表者の人も入つてもらい、船の方に全然関係のない人——全然とは申しませんが、関係の薄い人も入つてもらつておるわけでございまして、顔ぶれは私はそう偏していないと思うのであります。ただ大きい造船所と小さい造船所、あるいは大きい船会社とそうでない人というので、相制し合つておる状態でございますが、それで決して片方に偏するというような行き方等はなかつたと思うのであります。なおこの人たちをどうするかという問題になりますると、私どもは、その人の問題よりは、そこで議する問題をもう少し——この間も私はその関係の人に話したのですが、もつとフリー・トーキングをよけいやつて、そうしてだんだんと固めて行つた方がいいだろうとか、会議の方法等についていろいろ意見があつたわけでございます。これらにつきまして皆様方の御意見がありますれば、なお聞かしていただきまして、私どもの参考にさしていただければ、たいへんけつこうだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/24
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025・竹谷源太郎
○竹谷委員 私は第十次造船計画につきまして、いろいろな観点から、お尋ねをして、いかなる計画でこれを進ませようとするのかお尋ねしたのでありますが、ほとんど抽象的な観念的な答弁で要領を得ない。しかるにこの問題は焦眉の急に迫られております。四、五月ごろからは船台があくという状態になつております。これに対しまして運輸大臣は、ぜひ計画造船を従来通りやりたいという決意をたびたび述べられ、そのために努力しておると言われるけれども、その答弁は、今すぐやろうといつてもやれるような材料のない状態ではないかと思う。非常に怠慢もはなはだしい。またこの委員会に対し答弁を拒否するような、はなはだ不可解な態度であると思う。もし案があるとすれば、第十次造船に関する政府の今まででき上つている方針、計画あるいは構想なりとも、まとめてお話を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/25
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026・石井光次郎
○石井国務大臣 ただいま申し上げました通りに、造船をやるということは私どもの心組としてきまり、すでに皆様の審議を経た予算も参議院にまわつておるわけでございます。その線に沿うて動くことは少しもかわりないのでございます。ただどういうふうにしてやるかという問題につきましては、こういう際でありますから、特に私は慎重を要すると思うのであります。私ども昨年の第九次造船においては、この行き方がよろしいと思つて、いろいろ話し合つてこしらえたものでありまするが、今度の造船にあたりましては、まず行き方そのものを、各方面のいろいろな意見を聞いて、だんだんそれを材料にして一つの成案をこしらえるということで、何にも先入感を置かずに今話を聞いておるのでありますから、私どもの方に案があつて、それを諸君はどう思うというようなことを聞いているつもりはないのであります。こういうのがわれわれの最後案であり、ただみんなの意見を一応聞いているのだ、ということは一つもないのであります。もちろん隠しだても何もいたしておりません。ただこういうことは言えると思うのであります。今までいろいろな人の話を聞きまして、新聞等で多分ごらんになつていると思うのでありますが、大部分の意見と申しますのは、今度の造船はできるだけ慎重にやつた方がよろしい、急いでやるな、平たく言いますとそういうふうな意味なんであります。そうなると困るのは、造船所の従業員ではないかという問題になるわけであります。そこらが一番の問題でありまして、造船所方面はなるべく早くやつてくれ、今のお話のように五、六月ごろになると船台があいてすつかりからになるのだという状態であります。それゆえに私どもはほとんど毎日のようにいろいろな方面の人たちの意見を聞いて、大体今週中においてはいろいろな人たちの話も聞き、それからあるいはその全体の中から集まつてもらつて意見を聞く、そういうようなこと等もいたして、それによつて最後の方針を決定いたしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/26
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027・臼井莊一
○臼井委員 大臣がお忙しいようですから、今の竹谷委員の質問に関連して、造船審議会の問題で一点岡田さんにお伺いしたいと思うのですが、竹谷委員の御質問で、この第十次の割当をどうしたらいいかという問題、いろいろ方法等御研究中で何か意見があつたら聞きたい、こういうようなお話であつたのですが、私はもちろんその方のしろうとですからよくわかりませんが、ただこれを立法化したときに、戦時中に沈められてそれに対する補償が打切られてしまつた。ところが英国等においては国家において相当補償を与えて、すみやかに造船の立ち直りをやつたので、日本は非常に遅れた。そこで日本はかけ足でやらなければならぬというのが、立法化した大きな理由になつているのです。そこで造船を割当するときに、戦時中沈められた船を持つておる数多くの船会社があつたと思いますが、われわれの常識からすると、当然それらに補償という意味ではないけれども、優先的に割当をするというのが順序だろうと思うのですが、そういうことになつておつたのではないでしようか。その点をちよつとお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/27
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028・岡田修一
○岡田(修)政府委員 今までの造船割当におきましては、戦争中に失つた船の量その他を割当の上に考慮するということは、いたしていないのであります。これは占領軍当時からそういう考え方をとらない、こういうことがはつきりしておりました。占領がやまつた後におきましても、審議会における選考基準では、そういうものをとつておりません。選考基準としてとつておりますのは、その会社の資産、信用力と、それからその使う船の緊要性こういう点だけでございます。あるいは今後においてそういう考えを取入れるかどうかというのが一つの問題かと存じます。しかし実際問題といたしまして、かりにそういう考慮を取入れたにいたしましても、一番大きな被害を受けているのは郵商でございますから、この郵商あるいは三井においてすら、先ほど大臣が言いましたように、担保力というものがないのであります。十分甘く見ましても二倍か三倍、従いましてお説のような点を考慮に入れなくても、担保力一ぱいのところまでは行き得るわけであります。結局今後の問題は、担保力のない船会社にどういうふうにしてつくらすか、これが一番問題であります。どういうふうな割当方法をやるのだといろ御質問が先ほど出ておりましたが、この割当方法というものは、いろいろ問題を起しておりますから、非常に重要にお考えでございましようけれども、私どもの方としては、むしろその前にどうして船をつくるか、これが一番の問題である。開発銀行の融資対象として考える場合でも、非常に困難なところまでもう来ておる。ましてや市中銀行の融資対象にはほとんどならないような状態にあるということでございます。従いましてこの問題をどういうふうに解決するかというので、大臣が各方面の意見を聞いておる次第であります。割当方法その他につきましては、そういう前提問題の大体の見通しがついた上で、各方面の意見をさらに聞けば、私はそうむずかしい問題ではない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/28
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029・臼井莊一
○臼井委員 今のお話を伺うと、従来般の戦争犠牲者、戦争で一番犠牲をこうむつたものを、賠償という意味でなくても、まずある程度の恩恵を与える。これは遺族等の場合において、われわれはみなそういうふうな考えを持つているのですが、ところが船においてそういう考え方をとらなかつたというのは占領中からということですが、占領軍の政策というものは、当初において日本を弱めるという方向にあつたことはもちろんであります。従つて船の保有トン数なども非常に制限を加えた、財閥を解体した、そういう一貫性の上において、かつての日本の二大会社であつた日本郵船、大阪商船というようなものに対して、それの復活することを阻止する意味において、まずそちらに優先的にやらなかつたというふうにも考えられるのですが、その割当を今伺うと、担保力がないので、割当をそちらの方にはしなかつた。現在においては戦後アブレの会社が膨張して非常に大きくなつたものがありますから、現在においては担保力が必ずしも昔の大会社にあるとは考えられませんが、終戦時においては、必ずしも担保力はそう差異がなかつたと思うのですが、いかがなものでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/29
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030・岡田修一
○岡田(修)政府委員 終戦時といいますが、外航船の計画建造を始めました当時における郵商、三井でございますが、御承知の通りこういう会社もほとんど船を失いまして、そういう会社の持つておる担保余力というものはそれほど十分ではありません。従いましてもし戦争中に失つた船の量に比例して、そういうところへ割当たといたしますと、そういうところの持つている担保力の限度までもうとつくに来ておりまして、二十八年度あたりには船をつくる余力が全然なくなつて、むしろ助成策が厚くなつたときにアプレの会社につくらせざるを得なくなつた、こういう状態に来ておつたかと思います。それから戦争中の被害に対しまして特に考慮をしたといいますのは、郵船の阿波丸でございますが、これは南方に俘虜の救恤品を運んで行つて、これに対して攻撃を加えないというアメリカ側の保障を持つて行つておつた。ところが帰りに台湾海峡で沈められた。これを郵船の承諾なしに国の方が、アメリカに対してそれに対する請求権を放棄してしまつた。それで郵船はわずかに二千万円足らずの見舞金しかもらえなかつた。今もしその船をつくるといたしますと二十数億かかります。それが二千万円余りの見舞金、そこで郵船はこれを不当といたしまして、政府に非常に抗議を申し込んだ。そこで政府として何とかそれを考えてやるべきじやないかというので、少くとも阿波丸の代船というとおかしいのですが、阿波丸の損失を補償する意味で貨物船一ぱいだけでも全額財政資金でつくらせたらどうだろうかということを、当時GHQのフアイナンス・セクシヨンに交渉したわけです。ところがフアイナンス・セクシヨンでは、そういう損失は一切認めないということでけられたわけです。従いまして、そういう特殊の方法ではなしに一般の計画建造の折に、その分だけ一ぱいよけい認めてやろうという程度であります。しかしその一ぱいよけい認めた融資条件も、他の貨物船の融資条件と同一の条件で認めたというのにすぎないのであります。御説の通り今後そういう戦争中の被害の点を考えるかどうかという点は、あるいは今後においてそういうことも考慮に入れるべき問題であるかと存ずるのでありますが、先ほど申し上げましたように担保力の点で、かりにそういう点を考えてもあまり効果はないということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/30
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031・臼井莊一
○臼井委員 大体わかりましたが、造船合理化審議会で審議する上において、なるべくこの基準がはつきりしていて、政治的な力に動かされる余地の少いような、ある程度事が事務的に進められるようになつておるならば、いろいろ問題を起す余地も少いし、また今回のようなそう間違いを起すあれも少かつたと思うのです。それで今言つたように、戦前において世界的に非常に信用のあつた郵船とか大阪商船とか、こういうような会社が復興することは、一応マークを世界に売つておりますから、世界的の貨客を取扱う上においてやはり有利じやないか。こういう意味においても、——これは連合軍やアメリカさんはあるいはきらつていたかもしれぬけれども、日本人の感覚においては、競争の激甚になつて来た最近のような状態においては、やはりしにせのマークというものが自力を出しつつあるので、従つてそういう会社が復興して来たならば非常に有利ではなかつたかというふうに思いますし、また世間から見ても別にそうふしぎに思われないのではないか。ところが戦後に、手腕があるからといえばそれに違いないのでしようけれども、急にアブレといわれる会社が大きくなつて来た。そこに、事実のいかんは問わず、非常に疑惑を持たれる原因があるのだ、こう考えますので、これらもひとつお考え願つて、戦時中に犠牲を受けたものを優先的にやつてやる一つの基準でもきまれば、また方針も立ちやすくなるではないかと考えますから、ちよつとお伺いしたわけです。それを、私はその方面のしろうとですからよくわかりませんが、常識的にいつて申し上げておきます。以上で終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/31
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032・關内正一
○關内委員長 庄司一郎君より委員外発言を求められております。これを許すに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/32
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033・關内正一
○關内委員長 御異議がなければ許可することにいたします。庄司一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/33
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034・庄司一郎
○庄司一郎君 ただいま格別の委員各位のお許しをいただいて、簡単な一問だけ一応海運局長に御質問申し上げる機会をいただいてありがとうございます。
お伺いの一点は、仮定の上の問題のようでございまするけれども、もはや現実化しておるいわゆるMSAの協定の問題、その協定が成立のあかつきにおいてはかなりアメリカより多くの兵器物資等がわが国に輸送されるような情勢になると思うのでありまするが、そのMSAの関係の兵器その他兵器関係の器具機械等の輸送関係において、外字新聞等を見ますと、たいがいアメリカの船でもつて運んで来る。約半分ぐらいはアメリカの船をもつて運び、あとは諸外国の船をチヤーターして運ぶというような報道が散見しておるのであります。私は日本の海運界とは何ら直接関係も何も持つておらないものでございまするが、わが国の戦後において非常に凋落したる海運界の復興のためにも、わが国の輸送船を利用してもらうならば、海運界の保護助成の見地から見てもたいへんけつこうなことである。そういう点に関して特に運輸本省並びに直接の海運局当局はどういうお考え、あるいは対策を持たれておるか。私の質問の信念は、こいねがわくはでき得るだけ輸送に当る船は、日本の船舶を使用してもらいたい。これは日本の海運界の暫定的にもせよ、復興の一助ともなるゆえんである、かように考えておりますが、海運局長はどういうお考えあるいは対策を持たれておりますか、この一点だけをお伺いしておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/34
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035・岡田修一
○岡田(修)政府委員 MSAによる日本への貸与並びに援助物資の輸送でございますが、アメリカの法律あるいは議会の決議で、対外援助物資については、その半分はアメリカ船で輸送しなければならぬ、大体こういうふうな原則で貫かれております。MSAの物資につきましても同様の原則で行くものと考えておりまして、半分はアメリカ編でやることはやむを得ないと思います。残量のものにつきまして、武器等につきましては保安庁、それから食糧につきましては食糧庁と今打合せ中でございます。お説の通り、できるだけ日本船を使うような方向に持つて参りたい、こういうことでさらに私ども保安庁、食糧庁の方とともに、打合せしておる次第でございます。まだはつきりと結論までは至つておりませんけれども、その方向に最善の努力をいたしたい、かように考えております。ちよつと少し御質問の範囲からそれますけれども、実は日本の海運に対する助成がしよつちゆう議論になるのですが、実はアメリカは、アメリカの海運には非常に手厚い直接の補助をやつております。たとえば運航費について外国と差があるときは、その差額を補助する、あるいは船の建造等について、アメリカが高い分だけ建造費の補助をする。そのほかに対外援助物資の少くとも半分は、アメリカ船で運ばなければならぬ。それから軍需品はもちろん全部アメリカ船であります。これの運賃がべらぼうにいいのです。今のマーケツトの倍くらいの値段です。従つて一般のカーゴーも、日本船がただみたいな運賃で競争しても何ら痛痒を感じない。こういう補助政策をやつている海運と、裸の日本の海運とが闘わなければならない。これが日本海運の一番苦しいところです。この点をひとつつけ加えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/35
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036・關内正一
○關内委員長 この際お諮りいたします。去る十二日山口丈太郎君が委員を辞任せられました結果、理事に欠員が生じましたので、その補欠選挙を行いたいと思いますが、委員長より指名するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/36
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037・關内正一
○關内委員長 御異議なければ、山口君を理事に指名いたします。
次会は十八日午前十時より開会いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時五十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903830X02319540317/37
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