1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月七日(金曜日)
午前十時四十六分開議
出席委員
委員長 上塚 司君
理事 富田 健治君 理事 福田 篤泰君
理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君
大橋 忠一君 北 れい吉君
佐々木盛雄君 福井 勇君
上林與市郎君 福田 昌子君
細迫 兼光君 河野 密君
出席国務大臣
国 務 大 臣 木村篤太郎君
出席政府委員
法制局長官 佐藤 達夫君
法制局参事官
(第一部長) 高辻 正巳君
保安政務次官 前田 正男君
保安庁次長 増原 恵吉君
保安庁長官官
房長 上村健太郎君
委員外の出席者
議 員 猪俣 浩三君
検 事
(刑事局公安課
長) 桃沢 全司君
専 門 員 佐藤 敏人君
専 門 員 村瀬 忠夫君
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本日の会議に付した事件
日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案(
内閣提出第一一四号)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/0
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001・上塚司
○上塚委員長 これより会議を開きます。
日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を議題といたします。質疑を許します。並木芳雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/1
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002・並木芳雄
○並木委員 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案につきまして、最後の質問をいたしたいと思います。
MSAは五月一日に効力を発生したのでございます。それで保安庁として第一に何を着手されましたでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/2
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003・木村篤太郎
○木村国務大臣 まず一番必要なことは、秘密保護法の成立であります。(笑声)これによりましてアメリカからおそらく兵器が供与されるものと考えております。従いまして、何よりもまず秘密保護法の成立を希望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/3
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004・並木芳雄
○並木委員 昨日外務当局とアメリカ大使館の要員との間で、例の艦艇供与に対する協定の話合いを行つた模様でございますが、それは保安庁長官も御存じのはずであります。これはいつごろ協定が成立する見込みでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/4
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005・木村篤太郎
○木村国務大臣 着々話は進めておりますが、まだ最終結論には到達いたしておらないようであります。しかしわれわれといたしましては、この協定が一日も早く成立することを希望しておるのであります。おそらく十日以内くらいにおいて協定が成立するものと見込んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/5
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006・並木芳雄
○並木委員 長官は、まず秘密保護法の成立が第一であると言われましたけれども、結局この協定ができ上つてアメリカからの装備品などが来るのでございますから、かなり先になるのではないかと思います。それとも、この協定以外の兵器で、MSA協定自体からただちに引渡さるべきものはさまつておりますでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/6
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007・木村篤太郎
○木村国務大臣 まだきまるところまでは行きませんが、船舶貸与協定ができますと、船舶が日本に来ることと考えます。その船舶には、おそらくフリゲートと同様に、秘密に属する部分があろうとわれわれは推察をしておるのであります。一日もすみやかに本法案の成立を期待しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/7
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008・並木芳雄
○並木委員 船舶貸与協定を待たずして、MSA協定から直接供与を受くる装備品等があるはずでございます。それには機密が伴うかどうかということはわかつていませんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/8
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009・木村篤太郎
○木村国務大臣 どういうものを供与を受けるかということについて今折衝中であります。秘密に属する部分がどの部分であるかということについては、まだきまつておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/9
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010・並木芳雄
○並木委員 船舶貸与に関して、もし秘密保護法が成立しなければ引渡しを先に延ばすというようなことは、アメリカの方から話がありましたでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/10
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011・木村篤太郎
○木村国務大臣 そういう話はありません。しかしアメリカといたしましても、おそらくその以前に保護法案が成立することを期待しておるのじやないか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/11
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012・並木芳雄
○並木委員 MsAが発効いたしまして着手すべきものには、顧問団という問題があると思います。顧問団は即日でも、現在保安庁に配属されておるものがMSA協定に切りかえられて、MSAの顧問団になることと思いますが、その資格変更は行われましたでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/12
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013・上村健太郎
○上村政府委員 顧問団の資格変更につきましては、私どもの方に通知も何もございませんが、条約発効と同時に、身分が軍からアメリカ大使館の方に籍は移つておると存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/13
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014・並木芳雄
○並木委員 第一回に顧問団の一部ができ上るのは、何回ごろになる予定でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/14
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015・木村篤太郎
○木村国務大臣 まだその点については、アメリカの出先官憲との間に話が進んでおりません。従いまして、いつになるか今のところはわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/15
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016・並木芳雄
○並木委員 MSA及び新たにできる艦艇協定によつて日本に引渡さるべきものの、今回現在において内定した艦種、隻数、トン数などをこの際承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/16
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017・木村篤太郎
○木村国務大臣 大体千六百トン級二隻と千四百トン級二隻、都合四隻であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/17
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018・並木芳雄
○並木委員 そうすると、千五百トンを超過するものは、千六百トン級二隻たけでございますか。まだほかにも千五百トン級以上のもので、日本から申請しているものはかなり多いと思います。それは二十九年度内に日本に引渡されるという見通しはついておりますでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/18
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019・木村篤太郎
○木村国務大臣 第一回目は今申し上げた遮りであります。その後さらにアメリカから供与を受けられるものと、われわれは期待しおるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/19
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020・並木芳雄
○並木委員 先般長官は、自衛隊は軍隊と思うと内閣委員会で答弁をされておるのであります。但しこれは私見であるということでございました。ここまで一歩前進されたことに対しては、私どもの方の立場からいうと慶賀にたえないわけであります。それには間違いありませんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/20
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021・木村篤太郎
○木村国務大臣 間違いがありません。いわゆる軍隊とは何ぞやという定義については、しばしば繰返した通り、まだ定説はないのでありますが、外部からの不当侵略に対して対処し得るものを軍隊ということであれば、まさしく自衛隊は軍隊であるのであります。その定義いかんによります。われわれはこれは軍隊と見てさしつかえなかろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/21
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022・並木芳雄
○並木委員 それはもう私見ではないのでありませんか。内閣の公見、公の見解としてわれわれ受取つてよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/22
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023・木村篤太郎
○木村国務大臣 内閣の定見といたしましては、今申し上げる通り、外部からの不当侵略に対して対処し得る実力部隊をもつて軍隊というならば、軍隊と言つてもよかろう。しかし日本においてはまだ交戦権を否定されておるのであるから、それの交戦権を含めてまでのものを軍隊と言うことであれば、真正の意味における軍隊とは言い得ないのじやないかということは、しばしば政府の見解として申したところであります。しかし私は実力部隊が世間普通に、外部の侵略に対するものをもつて軍隊であるという解釈をとるならば、軍隊と言つてしかるべきだ、私はこう考えると申したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/23
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024・並木芳雄
○並木委員 ただいまの交戦権の問題につきましては、しからば長官としてはできるだけ早い機会に織法を改正して交戦権を持たしたい、こういう御意向がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/24
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025・木村篤太郎
○木村国務大臣 憲法の改正については、これは国民の判断にまたなくちやならぬのであります。国民が全面的に憲法を改正して、そうして第九条も改正するという意向があるならば、その時期においておそらく憲法は改正されるものと考えております。一に国民の意思にかかるものとわれわれは考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/25
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026・並木芳雄
○並木委員 それでは先日内閣委員会における長行の答弁と少し違うのではないのでしようか。長官はできればすみやかに憲法を改正したいと発言をされておつたはずでございますが、その点はいかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/26
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027・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は憲法をすみやかに改正したいと申したのじやありません。憲法の論議は近く来るものと考えておる、こう申しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/27
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028・並木芳雄
○並木委員 それでは長官の私見でもけつこうでございますが、長官としては憲法改正についてはどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/28
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029・木村篤太郎
○木村国務大臣 憲法改正問題についての私見は、私はこの際差控えたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/29
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030・並木芳雄
○並木委員 それですと少し違つて来たのでございますが、吉田総理からおしかりでも受けたのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/30
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031・木村篤太郎
○木村国務大臣 吉田総理からおしかりを受けるなんて、そんなばかなことは毛頭ありません。さようなことについては、いささかも制肘を受けないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/31
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032・並木芳雄
○並木委員 それじやきよう私見を遠慮された理由はどこにあるのですか。私見ならば堂々と長官は発表されていいわけであります。さつきここでの座談のうちにも、場合によつたら木村保安庁長官を新党の総裁にしようという話が出たくらいでありますから、(笑声)はつきりおつしやつたらいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/32
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033・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は個人の資格であればどこまでも自分の意見を率直に申し上げる。私は公の一員として、国際的にどういう影響があるかということは、おそらくあなたも御承知であろうと思います。この際私はそういうことは差控えたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/33
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034・並木芳雄
○並木委員 そうすると、自衛隊と軍隊と思うという私見を先ほど長官が述べられたのと歩調が合いませんけれども、自衛隊を軍隊と思うという場合においては私見を述べても、今度の憲法の問題については私見が述べられないというのは、片ちんばでございますが、これはどういうわけでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/34
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035・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は決して片ちんばじやないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/35
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036・並木芳雄
○並木委員 やはり憲法の改正の問題でございますけれども、もし長官が発表はできなくとも、心の中で憲法を改正した方がよいとお考えになつておるのだといたしますれば、自衛隊というものが質的にいわゆる憲法九条の戦力に達しつつあるということをお感じになつておるのでありましようか。それとも量的に戦力に達しつつあるものとお考えになつているのでしようか。質的にと申し上げますのは、直接侵略に当るということを私申し上げたわけですが、どちらでありましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/36
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037・木村篤太郎
○木村国務大臣 われわれは自衛隊法案が通過いたしまして、自衛隊ができたとしても、これはいまだ憲法九条第二項の戦力に至らぬものであるという、われわれ客観説をとつて申しております。主観説はとつておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/37
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038・並木芳雄
○並木委員 なお憲法の問題でございますが、つい一両日前私は新聞の広告で、保安隊員二万八千人募葉、締切りは五月十一日と書いてあるのを見て覚えております。今ごろになつて、締切りまぎわになつて、まだああいう広告を出さなければならないということになると、かなり応募者が少いのじやないかと感じたのであります。もしそういうことになりますと、長官がこの前答弁されたように、保安隊員希果者は大丈夫であるという言明と違つて参るのでありますけれども、そういうふうになつて来ると、やはり職業選択の自由を掲げておる憲法のうちで、これからできる自衛隊員になるような者に対しては、場合によつては、これを改正しておいた方がいいのではないかという問題も出て来るわけでございますが、その点どうお考えになりましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/38
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039・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は現段階においては、やはり募集制で行つてよかろうかと考えております。御承知の通り徴兵制をとるにつきましては、憲法改正を要するのであります。しこうして募集の点でありますが、募集は決して悲観すべき状態でないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/39
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040・並木芳雄
○並木委員 悲観すべき状態でないとおつしやるのならば、現在どれくらいの応募の数が来ておるとか、実際の数字その他についてお知らせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/40
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041・増原恵吉
○増原政府委員 今ちよつと正確な数字を持つておりませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/41
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042・並木芳雄
○並木委員 大体でいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/42
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043・増原恵吉
○増原政府委員 四日に一応こちらにまとまつた数字として参りましたのは、たしかまだ五千くらいであつたと思います。御承知のようにいつも応募者は締切りまぎわに、がつと、しり上りに来るのであります。最初の方はいつも少いのであります。最初のカーブは、大体匹敵するものは二十七年の大募集のときと似たようなカーブであります。ただ二十七年の際は全力をあげて募集に従事するという態勢をとりました。今度は訓練関係の必要とにらみ合せて、訓練を中止して募集に従事しろという命令をまだ出しておりません。事情によりましてはそういうことで、募集にうんと力を入れるという措置をとりたいというふうに考えております。現在までのところは、応募して来るカーブはさして悲観すべきものではないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/43
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044・並木芳雄
○並木委員 私ども自衛隊を希望する若い人々から聞かれるので、そのためにお尋ねをしておきたいと思いますが、自衛隊法が成立いたしまして、本年度中にいろいろの種類の隊員を募集することになると思います。陸上、海上、航空別に、また幹部及び一般隊員別に、何名、何月ごろ募集、そういう計画ができておると思いますので、この際お伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/44
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045・増原恵吉
○増原政府委員 仰せの通り何月同名募集という計画を立てておりますが、実はそれを今持つて来ておりません。最初立てましたのは、大体三月中に両法案が国会を通過するという予定で立てましたので、これを今少しずらして行かなければならぬということで、最初の計画を期日的には少し変更しなければならないということに今なつております。数は御承知の通り陸が二万、海が五千足らずで、空が五千を少々越すという数であります。それを期をわけて募集をするということに相なるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/45
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046・並木芳雄
○並木委員 それではその明細は後刻プリントでも何でもけつこうですから、お知らせ願いたいと思います。
それから長官にお尋ねいたしますが、仏印の情勢がかなり悪化して来ておるのでございます。それでこの前私は自衛隊に対して、海外派兵の問題を長官にお尋ねをいたしました。太平洋同盟というようなもの、あるいは東南アジア集団安全保障機構というようなものが今論議されておりますから、もしこの種の機構に日本が入るように求められたような場合に、いかなる態度をもつて臨むべきであるか、こういうことをお尋ねしたのであります。そのとき長官は、外国から守つてもらうには、やはり自分の方だけ守つてもらえば事足れりという考え方はかつてに過ぎる。場合によつては応分の負担をしなければならないというふうに答弁されておるのでございます。このことは、場合によつてはこの機構に入つて、そのとりきめができたあかつきにおいては、自衛隊員というものが、海外に派兵することもあり得るということを示唆されたものと私どもは了解したのでございますが、そういうふうに今でも了解しておいてよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/46
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047・木村篤太郎
○木村国務大臣 さようじやないのであります。わが自衛隊は外部からの不当なる武力攻撃に対して対処することを任務とする性格を持つております。従いまして自衛隊を外国のために派兵をするというようなことはわれわれ考えておりません。今太平洋機構のお話を承つたのでありますが、この機構もどういう性格を有し、どういう内容を持つているかということは、われわれはごうも存知しないのであります。そういう機構ができて日本へ参加を求められた場合においては、日本は主としてわが国の利害得失を十分考慮の上に、これに参加すべきかどうかということを決定すべきであろうと考えております。私はかりにさような機構に参加した場合を仮定いたしましても、必ずしも派兵ということが主目的じやないのであります。さような機構へ入りましても、日本はその機構上、参加の条件としていろいろの面から外国のいわゆる平和機構に寄与することはできるわけであります。必ずしも派兵が目的ではなかろうと考えております。従いましてわが自衛隊を、その性格任務上からいつて外国へ派兵するということは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/47
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048・並木芳雄
○並木委員 ただいまの長官の答弁は、先日私どもが聞いたのと大分調子が違つて来ております。あのときは私どもは、さすがに木村長官であると思つたのです。自分の方だけが守つてもらつて、人の場合には知らないというのは自分かつてに過ぎる、これは当を得た発言だつたと思います。おそらく長官はそういうつもりだつたと思うのです。きのう内閣委員会におきまして吉田首相の答弁を聞いておりますと、首相は自分では答えないで、かたわらの木村長官に答弁をしてもらつております。あとから首相が答弁を促された場合に、首相は非常に丁寧な言葉を使つて、ただいま木村長官のおつしやられた通りでございますとかなんとか言つております。普通ならば自分の閣僚の一人ですから、何もおつしやつたというような丁寧な言葉を使わなくてもいいのですが、何か私どもは異様に響いたのです。あるいはこれは木村長官も首相からおしかりを受けたのではないですか。この前外務委員会で答弁したのは行き過ぎである、訂正しておけと言われて、きのうすなおに自衛隊は海外に派兵いたしませんと答えたので、吉田首相のごきげんがよくなつて丁寧な言葉を使つたのではないか、こんなふうに私どもは思つたのです。せつかくこの聞長官が一歩前進したのに、きようは二歩後退するというのは、いかに兵法を知る長官といえども私どもは迷わざるを得ないわけです。長官は、もし日本の利益になるようならばこういう集団機構に入る。その場合派兵しなくても他の方法で寄与できるとお思いであるならば、他の方法とはどういう方法でございましようか、お尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/48
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049・木村篤太郎
○木村国務大臣 全然並木委員が邪推をされているのであります。私がこの前に申し上げたのも今日申し上げたのも決してかわつていないのであります。この前も、太平洋機構というものについての性格、内容がわかつていない。わかつた以上において、これに参加を求められた場合、日本の利益になるかどうか、まず日本国自体のことを考えてこれを判断した上で参加の可否を決定するであろう。しかし参加した以上は日本も自由国家群の一員として犠牲を払わなければいかぬのだ、日本だけがいい子になつてはいけない、こう申したことは確かでございます。ちつともその趣旨はかわりません。それと派兵とは別個の問題で、参加して援助すべきことはほかにいくらも方法がある。日本で物資の供給をする、あるいは武器の供給をする等、いろいろな面において援助の方法はあるのであります。必ずしも派兵が唯一の援助方法ではないとわれわれは考える。繰返して申しますが、日本の自衛隊というのは、外部からの不当な武力侵略に対してこれに対処することの目的を持つておるのであります。任務、性格がそこにある。従いまして外国のために派兵するということは考えていない、こう私は申しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/49
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050・並木芳雄
○並木委員 外電によりますと、東南アジア集団保障機構あるいは太平洋同盟等の問題につきましては、すでに非公式の間に日本の政府とも話合いが行われておるということが報ぜられておるのです。長官は非公式にこういう話が行われておることを御存じでしようか。またみずからその話合いの中に入つておられますでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/50
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051・木村篤太郎
○木村国務大臣 われわれはまだ何らの話も承つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/51
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052・並木芳雄
○並木委員 念のため聞いておきますけれども、ただいまの長官の答弁ですと、自衛隊は海外に派兵しないという。これは主観的な意思を表明されております。そう承りました。しかし今までの政府の答弁では、理論的には、また法的には派兵はあり得る、またできるということであつたのです。そこで自衛隊は、派兵しないということと、理論的、法的にはできるということとは別でありますので、その点においては依然違つて来ておらないということを断言していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/52
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053・木村篤太郎
○木村国務大臣 前から申し上げておるように、日本の自衛隊の任務、性格から見て外国派兵はあり得ないと考えておるのであります。この筋は通つておると考えております。ただこの間、いろいろの具体的な作成問題が出て来た場合に、外部から船でもつて攻撃される、あるいは飛行機で攻撃される、それを迎え撃つために領海以外に進んだ場合にどうなるかという御質問があつたから、それは日本の国を呼るためにすなわち外部からの不当侵略が現実にあつたのであるから、領海外に出てこれを迎え撃つようなことはあり得る、こう申しておるのでおります。これをもつてただちに、派兵と見られることは、われわれは少し行過ぎじやないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/53
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054・並木芳雄
○並木委員 先般の閣議において吉田首相から、東支那海方面において中共その他の国々による日本漁船拿捕の事態がひんぴんとして起つておる。これに対して適当な措置をとるようにという申渡しがあつたかに聞いております。長官もその閣議に出ておられますが、この点について保安庁としては海上保安庁のみならず海上警備隊などを出動せしめてこれに当らせる用意がありますかどうか。あるいは今度自衛隊法が設立いたしましたならば、海上自衛隊をもつてこれが対抗措置に出るお考えがありますかどうか、この際はつきり承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/54
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055・木村篤太郎
○木村国務大臣 海岸警備については、まず海上保安庁においてこれが処置をすることを第一の段階としております。海上保安庁の船舶が相当強化されておりますから、この警備の問題については、相当力を増しておるものと私は考えております。しごうして日本の漁民の生命財産が危機に瀕して、どうしても海上保安庁で処置することができぬというような場合におきましては、人命救助の点からして、われわれは当然海上の警備船がこれに出動し得ることはあり得ると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/55
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056・並木芳雄
○並木委員 それでは大分時間をいただきましたから、私質問を終りたいと思いますが、最後にお尋ねいたしておきたいのは、先週でありましたが、長官がちようど出席できませんでしたので、前田政務次官に、私から本秘密保護法案に対する私の方の改進党の態度を申し上げておいたのでございます。そうしてこの法案を撤回してもらつて、改進党の方できめた趣旨に沿う新しい日本式の法案をお出しくださるようにと要望をしておいたのでございます。そのとき前田政務次序からは、政府としてはそういう考えはないけれども、重要な事項でありますから、いずれ党の方とも相談をして態度をきめるようにいたしたいという趣旨の答弁があつたのでございます。いよいよきようでこの質問も終りになりますので、念のためこの際伺つておきたい。政府及び与党たる自由党の方でどういうふうに話をされましたか、どのように態度を御決定になりましたか、あるいはなお態度がきまつておらないか、それらの点につきまして長官から答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/56
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057・木村篤太郎
○木村国務大臣 党にはまさに連絡はとつてあるのでありますが、政府といたしましては、ただいま提出いたしておりますこの法案をどこまでも維持したいと考えております。並木委員がこの前申されたことは、党の決定とは私は承知していなかつたのでありますが、日本も独立国家たる以上は日本独自の、いわゆる秘密保持に関してのいろいろの問題があるから、従つてこの法案の対象事項をもう少し広げてやつたらどうかという御議論は承つておるのであります。われわれといたしましては、まずMSA協定成立後ただちにこの法案を通過せしめて、このMSA協定の遂行に遺憾なきを期することを目途としておるのでありまして、これを広げてやるということについては、慎重によく考慮しなければならぬと考えております。まずもつてわれわれといたしましては、この法案の通過をどこまでも期しておるのでありますが、並木委員におかれましてもMSA協定が成立した今日において、この法案にはぜひ御賛成を願いたいと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/57
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058・並木芳雄
○並木委員 長官に前田次官からどういう御報告があつたか知りませんが、少し誤解の点があるようであります。私の方ではこの法案を日本の自衛隊の秘密保護法案にしてもらいたいということは、アメリカから来た装備品などは、自衛隊の手に渡つたとたんに自衛隊の装備品になるべきだ。だからその中に盛られておる装備品は自衛隊の装備品であり、すなわち自衛隊の秘密である。これがアメリカの秘密だという色彩の強いこの法案はおもしろくない。これでは私ども日本人として、いかにもアメリカから借りて来た自衛隊、あるいはアメリカの下請自衛隊というような印象を強く受けますので感心しない。こういう点であります。従つてまずいれものと申しますか、わくと申しますか、そういう衣をかえてもらいたい。ですから自衛隊として、今秘密がなければ、ただちに適用される対象がないだけにすぎないのであります。たまたまそういうものができたところへ入つて来る秘密は、アメリカから借りて来た、あるいはもらつた、供与された装備品だけにすぎないという結果になりますので、私どものねらいとするところは、幅をずつと広げたのにしろということでは必ずしもないのです。いれものをかえて、もし自衛隊自体の秘密があるならば、そのわくの中へ入つて来ればいいじやないかという趣旨であります。従つてその点多少長官の方に誤解があるのではないかと思いますけれども、念のため申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/58
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059・木村篤太郎
○木村国務大臣 それならば少しもかわりはないのであります。この法案の趣旨は結局するところ日本の自衛隊の持つべき装備品の秘密の保護であります。何もかわつておりません。中身はそうなのであります。その保護の対象となるものはアメリカから供与を受くべきものになつております。そのアメリカの供与を受けることが日本の自衛隊の防衛の手段なのです。従いましてその内容においては決してあなたの申されるところとかわりはないのであります。ゆえにこれは日本のための秘密保護法です。アメリカのための秘密保護法ではありません。この法案が通過いたしますと、まず第一の目的とするところはそれで事足りるのであります。それが同時にまたアメリカの兵器の秘密の保持にもなるのであります。アメリカのためにやつておるわけではございません。アメリカから供与を受くべきものを日本で使うのでありますから、その秘密を保護するということでありますから、あなたの考え方とは少しもかわつていないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/59
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060・並木芳雄
○並木委員 しかし自衛隊に現在秘密がなくても将来は秘密が出て来るかも上れません。また先ほど私が申したような意味においても、アメリカから供与されて来た装備品等は、ただちにこれが自衛隊自身の秘密である、こうとらなければいけないと思うのです。ですから私どもが考えておるような新しい別のわくをつくつておきませんと、また自衛隊の秘密保護法というものを別途につくらなければならないということが起り得るのと、千五百トンの艦艇の協定ができますと、それに対するまた秘密保護法、これが修正になるかもしれませんけれども、その都度つくらなければならないというようなことは、かえつてじわりじわりとわくを広げて行くのみならず、秘密をわざわざ知らせるような愚かさというものも伴うのであります。ですからただいまの長官の御了解は、私どもの念願としておるところとは、やはり多少違うのでありますから、ぜひひとつ政府としてもわれわれの意のあるところを取上げていただいて、この法案を直していただくように切に要望して私は質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/60
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061・木村篤太郎
○木村国務大臣 繰返して申し上げますが、どうか並木委員もわれわれの意のあるところを十分御了承くださつて、この法案に賛成をしていただきない。と申しますのは、繰返すようでありますが、何もアメリカのために秘密を保護するというわけではないのであります。それは結果からいつて、アメリカのための秘密も保護されることになる。これはアメリカからもらい受ける装備品が日本の自衛隊で使うものなのです。これは日本のものとなつて秘密を保護しようとするのであります。これが保護されないとアメリカから今後重要な装備品というものは、おそらくもらい受けることはできないことになるわけであります。そうすると日本の自衛隊活動の分野は非常に狭くなる。ぜひとも自衛隊のために本法案の通過をこいねがうものであります。その趣旨を十分御了解願いたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/61
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062・上塚司
○上塚委員長 穗積七郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/62
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063・穗積七郎
○穗積委員 私はメーデーの前後にちよつと欠席したことがございますほかは熱心に出ておりました。従つて欠席いたしましたときに質問が出て、答弁がありましたことがありましたら、時間の都合上重複いたしますから、結論だけでけつこうでありますから御注意していただきたいと思います。
最初にお尋ねしたいのは、この法案は言うまでもなく、MSA協定第三条を受けての一つの措置だと存じます。長官も今日みずからおつしやつたように、MSA発効後まつ先にすべきことは、この秘密保持の受入れ態勢である。またそのほか本法案審議にあたりましての参考人の意見の中にもそういうことが出て参りました。そこで問題になりますのは、秘密保持の限界並びに方法等につきましては、アメリカに安心を与えなければならないということが一つの条件となると思うのです。そうしますと、この法案は秘密保持の措置の一つであると理解されるわけでございますが、まず第一、その一つの措置であるこの法案の内容並びに手段等につきまして、もとより法的には国会の承認を必要といたしますが、条約上の関係から行きますと、アメリカの秘密保持を必要と考えておる、当局は安心を与えなければならないと思いますが、そういうことについては、もうすでにお打合せが済んでおりますかどうか。この法案をもつて十分なりというアメリカ側の理解ができておりますかどうか。その点お尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/63
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064・木村篤太郎
○木村国務大臣 これは外務省を通じまして、この法案でさしつかえないという意向のようにわれわれは聞いておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/64
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065・穗積七郎
○穗積委員 そうなりますと、この法案の作成の過程において、すでに交渉をなすつたことだと思いますが、さよう心得てよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/65
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066・木村篤太郎
○木村国務大臣 われわれといたしましては、この法案の作成に関与したのであります。アメリカとの交渉については直接関与しておりません。すべて外務省を通じてやつておるのでありますが、この法案でもつてアメリカ側も同意を表しておるように聞いておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/66
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067・穗積七郎
○穗積委員 そうしますと、この法案が作成される過程において、すでに外務省を通じてアメリカ側との打合せがなされたと理解してよろしいと思いますが、その場合に向う側から何らかのアドヴアイスがございましたでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/67
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068・木村篤太郎
○木村国務大臣 法案の作成については、アメリカと何らの打合せはありません。われわれの方で作成したのであります。従つてアドヴアイスも受けておるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/68
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069・穗積七郎
○穗積委員 おそらくはそうなりますと、アメリカが期待いたしました秘密保持のための措置のわくよりは、さらに用意周倒というか、ある意味からいうと、国民からいうと、厳格なる規定ができておつたので、そこでアメリカ側は安心をして、これならよかろう、これならアドヴアイスする必要はなかろうという趣旨であつたと思うのです。しかしいずれにいたしましても、この法案が先に言いましたようにアメリカから武器を受けます受入れ態勢が必要条件になつておることは事実だと思うのです。条約上もそうでございますし、長官その他の御説明もそうでございましたから。従つてそうなりますと、この法案の作成そのものにやはりアメリカの意思が加わつておると見なければならないし、そういう意味では、そういう内容そのものについて、何らかのアプリケーシヨンを負つておると見なければなりません。また将来必要を生じました場合には、アメリカからこういう秘密保持の態勢を強化拡大すべきであるという趣旨がありましたときには、第三条によりまして当然それの趣旨に沿う措置をとる必要があろうと思いますが、その間のアメリカとの関係について長官は一体どういう御理解を持つておられるか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/69
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070・木村篤太郎
○木村国務大臣 MSA協定第三条によつて、いかなる措置をとるかということは、日本政府において独自に判断すべきであります。日本政府がこれを法律でもつて規定しようというのがこの法案であります。それでこの法案を作成して、アメリカの一応の了解を求めておるのであります。作成自体については、アメリカから何らのアドヴアイスを受けた事実はありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/70
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071・穗積七郎
○穗積委員 私は今日条文を持つて来ませんでしたが、私の記憶によれば、合意によるという言葉が使つてあつて、従つてその措置につきましては、当然「両政府の間で合意する秘密保持の措置を執するものとする。」と明記してあります。従つてアメリカ側がだんだんと機密を要する高度の武器を日本に送りつけて参ります場合に、この法案が実施された後の秘密保持の状況も判断して、これでは困るというような場合におきましては、当然これ以上しない、または拡大解釈をしないという趣旨でありましても、拡大解釈どころか、拡大して、もつと厳重なる取締りをする法案の改正をしなければならない、われわれに言わせれば、改悪でございますが、そういうことになろうと思うのですが、その間のところははつきりしておきませんと、これからいろいろな情勢、または武器の内審等が逐次そういう危険を生ずることが推測されます。
そこで私はお尋ねしておくのですが、その間のアメリカとの関係につきましては、これは受入れ態勢である保安庁の責任長官として、やはりはつきりしたものを持つておつていただかぬと、これからいろいろな誤解、思い違いが出て来ようかと思いますので、アメリカ側のその要求に対しましては、私どもの条約上の判断によれば、両政府の間で合意するということになつておりますから、向うからそれに対して発言権が当然あるとアメリカ側は条約文上理解するであろうと思いますが、いかがなものでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/71
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072・木村篤太郎
○木村国務大臣 どういう処置をすべきかということについては、アメリカの同意を要します。日本では法律を作成いたして、これを保持して行こうということの見解のもとに、この法案を作成しておるのであります。アメリカもこれで秘密を保持するにさしつかえない、同意すると言えば、それでいいのであります。法律の内容については、ごうもアメリカの干与を必要とするわけではありません。われわれ独自で法律を作成し、また今後ももしも改正を要するという点がありとすれば、日本独自でもつてこれはやるべきだ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/72
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073・穗積七郎
○穗積委員 木村長官はすぐれた法律家でおありになるにかかわらず、このMSA協定第三条には、「両政府の間で合意する秘密保持の措置」とございます。この「合意」というのは、「措置」にかかつておる言葉です。その場合において、協議または合意といいます以上は、アメリカ側が、日本国内においてとります秘密保持の措置について、アメリカ側の意思を日本に発表し、そうしてそこで合意されなければもとよりできませんが、合意でございますから、意思を日本に申し入れる、それを求める、そういう権利は明らかに留保されておると思いますが、佐藤法制局長官はどう御解釈になりましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/73
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074・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 「合意」という文字がありますからして、その文字の結果としては、お互いの了解が一致しておらなければならぬということは申すまでもないことであります。ただ今のこの法案につきましては、ただいま保安庁長官からお答えしましたように、事前の了解がついておるということでありまして、それ以上のことを申し添える必要はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/74
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075・穗積七郎
○穗積委員 すなわち秘密保持のための措置について、すでにアメリカの意思が加わつておると見るべきは当然でございます。それがたまたま日本側の意思と合致した。合意でございますから、一方的にアメリカ側の意思がプレスされ、強要されはしません。しかしながらその合意の中には、アメリカの意思も入つておることは当然だと思いますが、そう理解してよろしゆうございましようね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/75
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076・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 合意と申します以上は、その間に食い違いがあつては合意になりませんから、食い違いのない場合ということに尽きると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/76
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077・穗積七郎
○穗積委員 食い違いがあるない、私はそんなことを言つておるのではなくて、アメリカ側の意思があると言うのです。従つて私がここで問題にいたしておりますのは、これから日本が今のような誤つた政策でアジアの戦争に巻き込まれるような結果になり、そういう戦時体制になりますと、秘密保持の限度または秘密保持の状況を一層厳格にしなければならない。もう一つは、アメリカが日本に送りつけて参ります武器が漸次機密を要するものになつて参りますと、それの秘密を維持いたしますためには、この秘密保持の措置を一層厳格にしなければならない、そういう必要が生じて来る。そこでアメリカ側が将来――現在は今予定しております武器あるいは国際状況であるならこの秘密保護法の程度でよろしいが、そういう今申しましたような情勢になり、武器の内容もそういうふうになつて参りますと、これでは足りない。これ以上の、もつと厳格にして広汎なる秘密保持の措置をとるべきであるということを、アメリカ側が日本政府に求める当然の権利が第三条によつて留保されておる。われわれはこのMSA協定を審議いたします場合には、そういう理解に立つてこの条文を審議または理解したわけでございますが、そのことを私は言つておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/77
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078・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 いずれにいたしましても、日本の意思に反して相手国に引きずられるということはあり得るはずはないと思いますからして、日本の意思としてどの程度のものが必要であるか、どの程度のもので行きたいということがきまつておるはずであります。でありますからして、今日の段階においてはこれでよろしいと考えて向うも大体了解しておるということで、今後の問題になりますれば、今後の問題として、日本がやはりかくあるべきだということで意思を貫いて行くほかないので、相手が同意するかしないか、それよりも前に、日本の意思として自主性のある考え方というものが先に立つものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/78
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079・穗積七郎
○穗積委員 そこで問題が出て来るわけでございますが、日本の場合におまましてそういう必要が出て参ります、そういうアメリカ側の要求が出て参ります場合は、今までの実績上多少秘密が漏洩しておる事実を認める。すなわち第三条に規定いたしてあります「安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」そういう犯意をもつて、または方法におきましては、「不当な方法で、」こういう二つのことがこの犯罪を構成いたします条件になつておるわけでございますが、それでなくても、そういう目的を持たず、不当なる方法によらずして、いずれでも法律上は犯罪を構成しない行為によりましても、機密が客観的に漏洩されたというような場合が出ましたときに、今の拡大改悪が向うから出て来ることは当然予測されるわけでございますので、従つてそういう事実があつた場合には、これは日本側としては第三条をたてにとつてそういう措置をとらなければならない。日本の政府当局といたしましても、明らかに秘密保持が厳格にされることが、武器受入れの必要条件であるということは、長官もちやんと言つておられるわけでありますから、そうなりますれば、アメリカ側から、日本では犯罪を構成していない、第三条にぶつからぬ、抵触しない行為によりましても、事実上この秘密が漏洩しておる場合には、その場合にはこういう事実があるから、犯意はなく、また不当な方法によらざるルートによつて出たものであつても、これは客観的に秘密がとにかく結果として出ないことを希望するから、そういうものに拡大すべきだということを要求する権利が留保されておるということだけは認めておる。それを日本が不当なりと認めたものを、合意によらずして一方的に押しつけられか押しつけられぬかということを私は聞いておるのではない。アメリカ側が合意を条件として日本にそういうことを求める権利が保留されておる。すなわち秘密保持の具体的内容等について、アメリカ側の了解を求め、アメリカ側の承諾を求めることがこの条件になつておるということを私は言つておるのでございまして、その点は長官いかがにお考えでございますか、もう一度明らかにしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/79
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080・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 きわめて観念的に考えますれば、とにかくよそから物をもらうのでありますからして、物をくれる方の側でいろいろ条件をつけるのは当然のことで、観念上はお話のようなことももちろん考えられないことはありません。ありませんけれども、私が先ほど来述べておりますのは、先ほど木村長官から並木委員にお答えいたされましたように、それはともかくとして、これは日本の国防上漏れては困るのだ、日本の国防のためにどうしてもこれだけのことは必要なんだということが、第一に考えられて立案されておるわけであります。われわれとしてはこういう立法の形において日本のの国防上不安はない。すなわち秘密の漏れるという心配はないという確信で来ておるわけでありますから、それ以上に観念上の問題としていろいろな話が出て来ましても、それはそれとして、わが方としてはこれで十分だという話合いができるはずであります。いわんや今のおの話ような、これを拡張しなければならぬという場合になりますれば、もちろん法律の改正を要することで、これを単なるいわゆる拡張解釈によつてまかなうのだということは、われわれはとうてい考えられないことであり、またできないことであり、どうしても国会の問題にもなります。話はそれだけの簡単なことじやないかというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/80
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081・穗積七郎
○穗積委員 佐藤長官もすぐれた頭を持つておられながら、わざと問題をそらされておる。私は日本の合意なくして、または国会の承認を求めずして、そういうことがアメリカ側からなされる義務があるということを言つているのではない。そうでなくて第三条によつて明らかにこの法案が出て来たのだし、その措置の一つとして、その措置はアメリカとの合意によるものであることが条件になつている。しかも政治的に判断いたしますれば、先ほど長官もみずからの口で言われたように、秘密保持の受入れ態勢ができることが、武器をもらうことの必要な条件であると言つているわけです。従つて私の言うのは、秘密保持につきましては、アメリカ側から日本政府に対して要求する、その要求を受ける受けぬは別ですが、アメリカ側必要と認める措置を求める権利があるということを、認めるか認めないかということです。当然あると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/81
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082・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 措置を求める権利と申しますか、日本としては兵器をくれという権利があるわけです。向うとしてはやることはやるが、やるについてはこうしてもらわなければ則るという権利がある。そこの話合いの問題であつて、今の御質問の趣旨をもう少しこまかく伺いませんと……。筋はそういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/82
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083・穗積七郎
○穗積委員 それでけつこうです。そこで私が一つ申し上げますが、佐藤法制局長官は法律解釈をされるについては、事実関係を正確に認識していただかなければ困る。われわれが危惧いたします点は、アメリカとの関係において、ということは長官も幾たびも言われ、岡崎さんも言われ、政府当局の判断として言われておられるのは、日本の自衛を、日本の武力だけで、自衛隊だけでやれるものではない。新しい第三次戦争の一つの防御体制というものは、地域集団保障によるものであるということを主張しておられます。その相手国はどこかというならば、アメリカを初めとする自由主義諸国、資本主義諸国であるということを言明しておられる。すなわち日本の軍隊の作戦方針というものは、当然アメリカとの共同作戦を予定いたしております。これはMSA協定によりますと規格統一のところでもはつきりその趣旨が現われておりますし、のみならず今言われた通り、政府自身もそういうふうに言つておられるわけですから、共同作戦をとる場合が非常に多いわけであります。そうなりますと日本だけの秘密というものはない。アメリカと日本と一緒になつて、しかもおそらく事実上はイニシアはアメリカがとりましよう。法律上は対等であつても、事実上は作戦のイニシアはアメリカ側がとる。そうなりますと、この武器についてアメリカ側からながめてアメリカ側で秘密が保持されている。ところが日本に渡した同じ武器について、秘密が保持されておらぬということになれば、日本政府は日本の自衛のためにはこの程度でさしつかえないという判断をしましても、アメリカから見れば、共同作戦全体の判断からいたしまして、それでは困る。困るから当然アメリカ側の作戦に従つて、アメリカの求める秘密保持の推置をとらなければならない。それがないならば武器を貸与するわけには行かない、ないしはそれを拒否するならば、その他の経済的な圧迫もするというような、外交手段をも加えてやつて来るというふうな事実関係を、われわれは正確に認識しておかなければならぬ。ですから私が言いますことは、この秘密保護法というものは、いまだこれはほんの一部にすぎないということを言つておられるごとく、だんだん拡大される。それは日本のためであるか、アメリカのためであるか、あるいは自由諸国全体の作戦のためであるか、その解釈は別といたしまして、アメリカとの制において共同でなくてはならない。秘密保持の程度は同じでなければならない。そういう事実関係をよく認識されるならば、この第三条はどういうふうに使われるか。さつき日本独自の判断でやる、あるいは日本の自衛のためであるということを盛んに言われておつたが、日本のこの武力というものは、当然集団安全保障体制の中においてのみ持つということを一方において言つておられるのですから、そしてまた受入れ態勢のためには秘密保持の受入れ態勢がなくてはもらえないということを言つておる。これは必要条件であると言つておられるのですから、当然この第三条というものはそういう情勢の中で発動して、その場合においてあなたの御解釈の通りに合意されないものを無理じいされるということは書いてないが、アメリカ側がそういう要求を日本政府に向つて法律上の根拠をもつてする権限が留保されておる。確保されておる。こう解釈すべきだと私は思う。しかもそのことは措置をとるその措置の内容について合意する。この合意ということは秘密保持の措置にかかつておると思う。そこで私がお尋ねするのは、今度の法案については、今の段階においてはこの程度でよろしいという了承があつて、了承を得て出しておるから、国会が了承すれば向うも了承するにきまつておるということですが、国会がここで了承いたしましても、アメリカ側からこんなものでは困るから、もつときびしいものでやつてくれなければ困るというので第三条によつて要求して来れば、自由党の諸君が一生懸命説明し、あなた方がこの程度で拡大解釈はしないとか、何のかんのと言つても、もう一ぺんやらなくてはならない。そこで私は第三条との関係を問題にしておるわけなのです。これは現在でもそうですし、将来もそうですが、現在は合意がついておるが、収来のそういう情勢を判断するならば、日本の秘密保持の措置の内容について、アメリカの意思の加わることを認めておられると解釈いたしますが、それでよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/83
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084・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 今のお言葉にもありましたように、アメリカの秘密にしておるものが日本で漏れては観るということは、前回御審議をいただきました附属書のBの中におつしやる通りに占いてあります。アメリカの秘密保護の等級と同等のものを確保するということは、これは当然のことであります。アメリカでさえ秘密にしておるようなものが、日本がもらつて、日本で漏れたということになれば、日本も困るということは当然でありますから、私はその辺のことを申し上げたわけであります。その形で今日これでおちついたものが法案として出ておる。今後の問題、これはもらう方とくれる方との関係で、そうしてくれる方はこういう条件でぜひもらつてくれということを申しましよう。権利は持つておりませんから、これはお互いに自生性のある外交なり、折衝なりで問題になるわけであります。それはそのときの問題だと考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/84
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085・穗積七郎
○穗積委員 長官にもう一ぺん確かめておきます。すなわち日本の政府の合意を条件として、アメリカ側が日本における秘密保持の措置について発言する権利があるという解釈でございますが、政府としてはそれでさしつかえないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/85
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086・木村篤太郎
○木村国務大臣 お互いに自主性を持つて、その間に合意が成立するのであります。アメリカが何と言おうと、日本でそれを受入れることができなければ、これを拒めばいいわけであります。しかして本件については日本でこの法案を独自に作成する。そしてこれでよろしいということになつておるのでありますから毛頭さしつかえないと考えております。なおここにつけ加えて申しておきたいことは、将来これをどう取扱うかということについては、われわれといたしまして十分考慮を払い、アメリカから供与を受けるものであつても、そのうちにイ、ロ、ハ、ニと限定いたしておるのであります。これでもつて十分にわれわれは秘密の保護ができるという解釈のもとに立つておるのであります。このうちにどういうものが事実上アメリカから供与を受けるかどりかということは今後の問題であります。しかし、それもこの法案によつて対象物は限定いたしております。その点からいつて、われわれは日本独自の考えをもつて将来も取扱つて行きたいと考えておるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/86
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087・穗積七郎
○穗積委員 問題が明らかになりました。すなわち日本の独自の判断による合意なくしては、一方的に強要されるものでないが、アメリカ側の意思がこの措置の内容について加わる性質のものであり、現に加わつておるという事実をわれわれは認識いたしまして、この法案に対して態度をきめて行きたいと思つております。
次に長官にお尋ねいたしますが、現在の日本国内におきます法律をもつていたしましては、アメリカから供与された武器、それが秘密武器で、これからこの秘密保護法にいいます秘密の三等級のどれかに入る武器を持つておつたと仮定いたします。またはこれから入つたと仮定いたします。そうしましたときに、その部隊の所在、その部隊の移動、その部隊の演習の実情等を事こまかに報道いたしましても、これは現在の国内におきます法律によつては罪を構成しないというふうに理解いたしますが、それでよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/87
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088・木村篤太郎
○木村国務大臣 その通りであります。つまり、かりに秘密兵器を持つておる部隊がどこであるか、あるいはその部隊の移動はどこへされたかということについての報道等については、この法案の対象とはなつておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/88
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089・穗積七郎
○穗積委員 そこでこの第一条のイ、ロ、ハ、ニのところでございますが、すなわち「構造又は性能」「製作、保管、又は修理」云々と書いてございます。これはたとえばジエツト機で、またはレーダーあるいはロケット等で――これはあとでこの秘密保護法案による三等級のどこかに当るか当らぬかお尋ねいたしますが、先にお尋ねいたしますのは、もしそのどれかが秘密の武器になつておりました場合に、ジエツト様何台がどこそこにある、どこそこの基地にある。日本全国にはかくかくだということを申すと、これはこの法律に触れるわけでございますか、どちらで、ございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/89
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090・増原恵吉
○増原政府委員 このイ、ロ、ハ、ニと区わけがありまして、ジエツト機などは、おそらく「構造又は性能」それと「製作、保管又は修理に関する技術」というふうなことが、秘密区分になりはしないかと一応想定されます。ジエツト機等については「品目及び数量」というこのイ、ロ、ハ、ニのニというところに該当しないものと想像されます。そういう場合にはジエツト機が何機どこにあるかということはこの法律には触れません。しかしながら、もし「品目及び数量」を秘密区分されておるものが来ますと、それが何であるか今は簡単に想像できませんが、そういう武器が何機どこにあるかということを言われると、この法律に該当するということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/90
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091・穗積七郎
○穗積委員 そこで今度は長官にお尋ないたしますか、およそ部隊というものは、秘密になつていないものでございましても戦闘力を持つておるわけであります。バズーカ砲を持つた歩兵でも戦闘力を持つております。それが北海道にどれだけの部隊がある、それが何月何日九州へ移動した、あるいは今どういう訓練をしておる、あるいはまた小牧の飛行場においてはどういう訓練をしておる、どういう飛機とどういう飛行機があり、整備員は何人おるというようなこと、つまりその所在、移動、訓練、こういうようなものは、おそらくこの法案にいいます共与された武器の、ここに掲げましたイからニまでの秘密を保持するだけが目的を達するのではなくて、その戦闘力を敵方に知らせないというのが目的だと広く解釈すべきだと思うのです。そうなりますと今の日本の国内におきましては――今度の自衛隊法案が通つたと仮定いたします、通らないと思うけれども……。保安隊は国内におきます治安維持のためだけだと申すならば、お互いに相手は日本人同士でございますから、あえてその必要がない。ところが今度は自衛隊に性格を切りかえまして、根本的に軍隊の性格を持つ、そうなりますと対外的な関係が強くなつて参ります。そこで、そうなりますと一層その所在、移動、訓練等は、これを相手国、仮想敵国に対して知らしめてはさしつかえができる、これは武器だけではございませんでしよう。そういう。ふうに考えますが、これは一体どういうふうにしてお取締りになるつもりであるのか、まずその点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/91
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092・木村篤太郎
○木村国務大臣 現在この法案の対象になるものは、繰返し申した通り、アメリカから供与を受ける共備品に関するものでございます。今あなたのおつしやつたような部隊の移動、兵員その他については現在対象になつておりません。従つて、それらのことについていろいろな報道をされても、これは現在のこの法律の対象ではございませんから、犯罪を構成しないことはもとよりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/92
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093・穗積七郎
○穗積委員 私がお尋ねいたしたのはそのことではございません。それらはこの法案の取締り対象になつていないと思うが、いよいよ自衛隊を対外戦争に使うということになりますと、仮想敵国があるわけで、その仮想敵国に対してもし交戦状態になつたとすれば、交戦権の発動による交戦であつてもなくても戦闘行為に入つたとすれば、その部隊の移動、訓練、数量等は機密にすべきものだと私は考えますが、長官はどう考えますかということなのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/93
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094・木村篤太郎
○木村国務大臣 もとよりそういうことは、ある点は外部に漏れてはならぬことは今あなたの仰せの通りであります。しかしそれらの点についての保護をどうするかということは今後の問題であります。さしあたりわれわれは、MSA協定によつてもらい受ける装備品について秘密を保護することが先決問題だと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/94
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095・穗積七郎
○穗積委員 そうなりますというと、この法案は日本におきます言論取締りの最後の法案ではないのでございまして、これが第一階梯になつて、第三階梯、第三階梯と、軍隊の成長、武器の高度化並びに国際情勢の変化によりまして、かつての戦時中のようにだんだんと拡大して行くべきものになろうと思います。その場合に、私が特に長官にお尋ねいたしたいのは、先ほども申しましたように、問題はその範囲ではない、結果でございます。軍隊並びに武器というものの秘密というものは結果主義によるべきものであつて、従つて、漏れたものはすべて取締るということにどうこういう範囲はなく、方法は正当でも漏れるものはすべて取締らなければならない。日本の今の憲法におきます基本的人権があまりに広過ぎるから、少し制限しておかぬと国内における言論の規律が保てないという目的でやるのではなくて、軍隊の秘密を相手国に知らせないというのが目的でございますから、従つて、目的のためにとる措置が基本的人権を侵しましても、国家の安全ということと、作戦の遂行の必要ということが、それほど基本的人権よりは高度のものと理解されておるなら、この第三条に言いますような安全を害するという範囲がなく、また、その発表と収集または発表の方法において不当な方法でなくても、結果として出たものは、国の安全並びに作戦に阻害を来すことにおいては同じでございます。すなわち結果主義になるので、すべてのものを取締らなければならなくなるが、そこのところ、すなわち、基本的人権とその結果作戦の要求します結果主義との調和は、一体どういうふうにお考えになつておられるのか。今私がお尋ねいたしますと、軍隊の移動、訓練、数量等についても、機密を要しない武器を持つている部隊についても、将来それを取締る措置をとるつもりであるということをほのめかされておるわけでありますが、そうなりますと今度は取締り措置、方法について結、果主義に立つてどんどん拡大される危険がございますが、それはどういうお考えですか。犯意なく不当な方法でないものは、それが漏れて作戦上支障を来してもやむを得ぬというお考えでおられるか、どちらでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/95
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096・木村篤太郎
○木村国務大臣 穂積君がいろいろ先走つて御意見がありましたが、もとより独立国家として国家機密を保持すべきは当然であろうと考えております。しかしながらわれわれはどこまでも人権を尊重するという建前から、その調和をいかにすべきかということを終始考えなくちやいかぬと考えます。将来今穗積君が言われましたように、さような高度の機密を広範囲に守つて行くという場合の処置ということについては、われわれは十分に人権の尊重とにらみ合せてやるべきであろうと考えております。しかしその段階がいつ来るかということは、私は今ここで申すことはできません。穗積君は早急にでも来るように言われましたが、われわれといたしましては、事きわめて国民の利害に関係があるから、十分慎重にとりはからつて行かなければならぬという建前からいたしまして、さようなときに参りましても、国民の自由、ことに言論、出版の自由を尊重する見地から慎重に取扱いたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/96
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097・穗積七郎
○穗積委員 その点ちよつとはなはだ不明確なお答えで、軍隊の秘密を保つ必要も十分、先のお言葉では強く感じておられる。その立場に立つて一方基本的人権を制限する、これもやむを得ないと思つておられるが、基本的人権についての認識を伺うというと、基本的人権は尊重する範囲内においてということで、これは言葉の上で非常に不明確なものでございます。従つてこのことは、私としては今おつしやつたような結果主義というか、軍隊の機密は結果主義に立つて取締るということは、かつての例から見まして、非常に基本的人権を害するおそれがございますので、この点は十分注意していただきたいと思うのです。
さらに申し上げておきますが、私が先走つたことを申す申すとおつしやいますが、今までわれわれはそういうことをしないしないと言いながら、MSA協定一つとつてみましても、九月二日までは兵力はふやさない、軍事予算はふやさないと言つて断言しておきながら、それでわれわれがそんなことはないだろうと言うと、先走つたことを言うなとこう言う。そうして昨年の十月でございましたか、外交方針についてアメリカの憲法改正の意図や太平洋同盟条約の意図を指摘すると、そんなことを何を材料にして言うのだ、妄想しては困るというようなことを言われておる。現に四月にダレスかニクソンとかなんとかいう男が来ると、こつちが頼んで言つたか、向うがかつてに言つたかわかりませんが、軍法改正をしなければならぬというようなことを言つておるじやありませんか。先走つても何もおりやしません。日本の軍隊というものは、アメリカの腹は――あなたの腹はどうかわかりませんが、アメリカの腹は必ず外地に使うということを目的としてつくつておるのでありまして、外地に使えない軍隊なんというものをアメリカがつくることは毛頭ありませんから、先走るのじやなくて、あなた方の無知かずるさのために申し上げるのでありますから、この際念のためにお教え申し上げておきます。
次にお尋ねいたしたいと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/97
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098・上塚司
○上塚委員長 穗積君にお諮りしますが、もう約四十分を許しております。次の質問者もある次第でありますから、この際まだ残りがありましようと思いますが、一応中断して、河野君に譲つていただいたらいかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/98
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099・穗積七郎
○穗積委員 河野さんに譲ることはまことにけつこうで、お急ぎでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/99
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100・上塚司
○上塚委員長 もう待つておりますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/100
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101・穗積七郎
○穗積委員 もうちよつとさしていただきたい。並木君にはさつきあなたは何分許しておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/101
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102・上塚司
○上塚委員長 並木君には三十分……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/102
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103・穗積七郎
○穗積委員 三十分じやありません。四十八分から三十二分までやつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/103
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104・上塚司
○上塚委員長 三十分許しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/104
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105・穗積七郎
○穗積委員 次にお尋ねいたしますが、第二条に「標記を附し」その他の必要な措置とございますね。それからわれわれにお渡しになりました四月二十日付の施行令案でございます。これによりましても、第二においてそのことをうたつておられますが、これがなされなかつたために、防衛秘密でないと理解してやつた場合の責任はどちらが負うことになりますか、この点あるいは今まで質問があつたかもしれませんが、増原次長にちよつとお尋ねいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/105
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106・増原恵吉
○増原政府委員 防備秘密は、今まで長官その他から説明をしておりますように、平易な言葉でいえば、いわゆる高度なものでありまして、形式的に指定をして初めて秘密になるという性質のものではないという基本的な立場をとつております。そうしてこの標記をいたしますのは、そういうものを目に触れた者が、一目瞭然と防衛秘密であることを知得させるための一つの予防措置に当るわけであります。そこで標記がないものでありましても、これを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/106
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107・穗積七郎
○穗積委員 標記だけでなしに、施行令の第二の「標記、通知及び掲示」のすべてを含んで言つていただきたい。それが懈怠されまたは忘れられた場合ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/107
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108・増原恵吉
○増原政府委員 懈怠され忘れられたような場合には、これを懈怠し忘れました係官といいますか、公務員は、それぞれ公務員の職務関係に某く法律その他によりまして、懲戒を受けるとかなんとかいうような措置があるのであります。これはこの法律とは別個の関係になります。そうしてそういうものが懈怠されておつた、たとえば標記が懈怠されておつた文書を見て、これを他に漏らしたというふうな場合は、その人がその文書を見て、文書の内容によなて、これはいわゆる防衛秘密に属するという認識を持つたならば、標記がなくとも、この法律に該当いたします。しかし標記がないために、常識的に判断しても善意に、これは防御秘密に属するものではないという認識のもとに、犯した場合には、いわゆる犯意はない行為でありまして、罰せられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/108
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109・穗積七郎
○穗積委員 そういうことは、たとえば国会議員でありますとか、報道関係の方であるとか、評論家であるとかにそういう場合が多かろうと思いますが、その場合に、秘密の認識があつたかなかつたかが犯罪構成のわかれ目になるわけでございますが、その場合に秘密の認識があつたかなかつたかを挙証する責任はどちら側にございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/109
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110・桃沢全司
○桃沢説明員 ただいまの問題は、挙証責任は検察官の方にあると増えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/110
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111・穗積七郎
○穗積委員 そうしますと、疑いを持つて調べられましたその発表者が、自分は秘密の認識がなかつたと口頭をもつて答えればそれで足りるので四つて、そうしてそれが認識があつたかどうかは、あつたと疑いをかけた場合においては、検察当局がそのことを物的証拠をもつて挙証をする責任があると理解してよろしゆうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/111
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112・桃沢全司
○桃沢説明員 必ずしも物的証拠のみには限りませんので、いろいろな状況証拠によつて、その認識があるということがうかがい知られる場合には、それは本法の違反として取扱うことになつております。ただただいまの穗積委員の仰せられました、標記をすべきものを標記してはなかつたという場合には、一応の推定としては、これは秘密であるということを知らなかつたという弁解がいれられる余地が多くなるのではなかろうか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/112
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113・穗積七郎
○穗積委員 この席上ではそういうふうにお答えになりますが、実際問題になりますと、たとえば報道の常識から見れば、大体こういう内容のものはもかつていそうなものだというようなことを類推して、そうして本人の主観は否定されるという危険はございませんか。今おつしやつた点によるとちよつとあいまいになつて参りますが、その点はどうなりますが。たとえば報道人、新聞関係の方が役所なら役所で書類をもらつた、そのもらつたのは機密に属しておるのだが秘の判が押してなかつた、こういう場合にこれを発表する、そして疑いをもつてひつばられ、調べられる、調べられたとき、この内容を読んでみて防衛秘密の内容のものではないと私は認識しました、こう言う。そうすると今度はそちらで、挙証責任は検察側にございますが、そのときに物的証拠やそういうことを収集しました不当な方法という第三条の径路でなくて、新聞関係の報道に従事する者の一般常識としては、すでにBの報道人が見ればあるいはこれは秘密であるかもしれぬという認識を持ち、Cの者が見ればこれは明らかに秘密だということを知つておるかもしれぬ、ところがそうでない若い記者とかなんとかの方、あるいはそういうことを知らない方が、報道人の一般のそういう秘密の限界についての常識よりは、いささかそのAという記者が遅れておつたというような場合は、挙証の場合に一般的水準をもつて類推いたしますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/113
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114・桃沢全司
○桃沢説明員 ただいまの場合は一般的水準というだけできまりませんので、種々の状況証拠をすべて判断してきまるべき問題であろうと思います。それで御設例の保安庁におきましてたとえば記者との会見が行われるその場合に資料として書類が渡された。その中に誤つて本年来標記すべきものを標記せずにある秘書の文書が手渡された。こういう状況でありますと、この状況は犯意がないという上において非常に大きなウエートを持つと私は考えます。この犯意がないと一応推定されるものをなお犯意があるとするには、さらに相当の状況証拠がなければ、これを有罪と認定することはなかろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/114
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115・穗積七郎
○穗積委員 それでは時間が何ですから私は一応ここで休止をいたしますが、その前にもう一点だけついでですからお尋ねしておきたい。科学者または評論家あるいは報道人がいろいろの他の材料をもつて推理いたします。たとえば私の理解によれば、原子兵器はおそらく機密保持の中へ入ると思いますが、そういう場合にそのものについていろいろな科学的な推理をもつて発表いたします。その場合には第三条にいうように、日本の安全を害する犯意もありませんし、不当な方法によつてこれを入手したのでもありません。しかしそのことがたまたま実際と的中しておる、性能、製造方法あるいはその技術等について同じようなことを言つたとします。そうすると、これは犯罪を構成しないとお答えになつたようでございますが、そういうふうに理解してよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/115
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116・増原恵吉
○増原政府委員 御設例のような場合は犯罪は構成いたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/116
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117・穗積七郎
○穗積委員 ところで問題は、MSA協定を審議いたします場合に、その衝に当りました外務省の当局並びに条約局長が、特にその条約の解釈として私はその場合にお尋ねいたしましたら、その場合にはすべて必ず犯罪を構成しないとは限らないという答弁をなさいました。そうするとその間どちらをとつてよろしいか、同じ政府の方の御答弁でございますが、どういうふうにとつたらよろしゆうございますか。その間のことをどなたにお尋ねしたらいいのかわかりませんが、御協議の上で政府の責任ある御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/117
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118・増原恵吉
○増原政府委員 御設例の場合は、政府の責任において、犯罪を構成いたしません。ただどういうふうな場合にどういう説明をされたか知りませんが、一応推察いたしますと、単にそういうふうに学理的推定によつて出したものが、偶然一致したという申立てがあつただけで罪にならぬということではないのでありまして、そのことが事実であるということでなければならぬということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/118
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119・穗積七郎
○穗積委員 ついでに念のためにお尋ねいたしますが、その場合に挙証責任はどちらにございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/119
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120・桃沢全司
○桃沢説明員 もちろん検察官の方にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/120
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121・穗積七郎
○穗積委員 それと関連してもう一点だけお尋ねいたしておきますが、ただいま原子兵器がもうすでに来ているかおらぬか知りません。アメリカの軍隊が使うものとしては来ておるやにも伺つておりますが、MSA協定によつて日本の部隊が使用するために供与されるものの中には、原子兵器はきつとまだ入つておらぬでしよう。おそらく近くは人らぬだろうという御答弁を、どなたでしたかMSA協定の場合にお答えをいただきました。しかし将来入つたと仮定いたします。その場合に、その兵器は機密であることを存じております学者が――あるいはわれわれも知つている。原子力は武器としても使えますし、同時に発電その他の平和利用もできます。そういう場合に、その性能、製造、保管等の技術等につきましては、おそらくはあるところまでは平和利用の製造方法と武器としての製造方法と性能とはずつと一緒に来ると思うのです。あるところから武器になるものと平和利用のものとは製造方法その他は違いましようが、性能につきましても、製造方法につきましても、あるいは保管の方法、修理等につきましても、その平和利用のための原子力の技術と、原子兵器の最大機密である原子兵器の性能、製造、保管、修理に関する技術、これらのものが一致しました場合には犯罪を構成いたしますかどうですか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/121
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122・増原恵吉
○増原政府委員 この法律は何度も御説明をいたしましたように、日米相互防衛援助協定等に基き――等というのは今のところは船舶貸借協定だけでありますが、アメリカ合衆国政府から供与される装備品等について、左に掲げる事項イ、ロ、ハ、ニについて申しているのでありまして、これと関係なく学者が勉強をし、発明発見をして、たとえば原子力についての構造なり性能を発見をし、それを発表しましても、この法律には該当をいたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/122
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123・穗積七郎
○穗積委員 そこでその武器が日本に供与された場合――事実MSA協定によつて供与されておる。それと性能、実は原子核の性能については、原子兵器の場合でも平和利用の場合でも同じ性能を持つているのだ、従つて原子核を使えばこういうような性能を持つてこういう偉大な力を持つ、これを平和利用すれば一グラムが何千キロという発電力を持つという説明をずつとして来るわけでございますね、それはいかがですか。
もう一つは、具体的例をとれば、たとえばこの間アメリカが実験をいたしました水爆、あれが日本にもこのMSA協定によつて供与されたといたします。そのときにビキニならビキニにおいてこの実験がまた行われた。その実験の行われた水素爆弾は、物そのものは違いますが、性能その他においては日本に供与されておる水素爆弾と同じだつたと仮定いたします。そのときにあの被害の実情をずつと説明する。この放射能がどういう性能のものでありこういうものを受けたときはこういう治療をしなければならない、これは不治の病であるというようなことを、物理学者または医学者がずつと説明してやつて来た場合はどうなりますか。その同じ武器が日本にも供与されているのですよ、その場合はどうなりますか。供与されたものであるならば、それが秘密であることを知つておる場合には、ビキニにおいて実験が行われて、そのために被害をこうむつた、その原子爆弾の被害というものはこういうものだ、ケロイド症状を起すのはこういうわけで起して来るのであつて、今度はこういう被害を受けたこれに対する対症治療はこうでなければならぬというようなことを医学者が発表することはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/123
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124・増原恵吉
○増原政府委員 大体この秘密保護法案で水素爆弾とか原子爆弾をもらうということが今のところ想像されておりませんので、そういうような論議をすることが正確を欠きますので、想定に基く論議というように御承知を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/124
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125・穗積七郎
○穗積委員 想定ではありません。法律解釈として……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/125
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126・増原恵吉
○増原政府委員 法律の解釈としては、くどく申し上げましたように日米防衛相互援助協定等に基きアメリカ合衆国政府から供与される装備品等について、構造または性能、製作、保管または修理に関する技術、使用の方法、品目及び数量、そういうものについて秘密を漏洩した場合に、この法律に該当するわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/126
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127・上塚司
○上塚委員長 穗積君、君の質問は想定に基いてずつとやられるので、いつまでたつても限りがないから、この際河野密君に発言を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/127
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128・穗積七郎
○穗積委員 法律解釈でございますから私はお尋ねしたいので、重要な点でございますからまた続けてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/128
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129・河野密
○河野(密)委員 私はこの法律についての根本的な問題について一つ二つお尋ねしたいと思います。
この法律につきまして立法上一番大きな問題は一つあると思うのであります。一つは、この法律が拡大解釈されいろいろ範囲が広げられて、言論、集会、結社の自由という基本的な人権を阻害するのではないか、こういう問題が一つ。もう一つは、MSA協定の際に一般に危惧されましたように内政干渉になるのではないか、こういう問題がこの法律に具体化されているのではないか、こういう点が私は最も重要な点だと思うのであります。そこで具体的にお尋ねをしたいのでありますが、この法律と憲法との関係につきまして、先般私がこの法律に規定されておりますことを、かりに国会において憲法第五十七条によつて秘密会を開いて国会議員が要求した場合においては、この憲法の規定に基いて、当然の議員の権利として開かれた秘密会においては、一切のこういう秘密はあり得ないものだとわれわれは解釈するが、この法律によつていわゆる防衛秘密なりと称せられておるものであつても、国会が秘密会において要求した場合には、政府はそれを明らかにすべきものである、こういうふうに考えてよろしいかどうか。この問題について木村保安庁長官並びに佐藤法制局長官から明快なる御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/129
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130・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 国会の正当なる御審議権の発動である限りは、当然できるだけの御説明をすることは申すまでもないことだと思います。ただ観念論として申しますと、御承知のように刑事訴訟法あるいは議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律等の場合におきまして、国に重大なる利害があるというような問題については、特にこれを拒む道が設けられているわけであります。そういう場合が観念上ありとしますれば、あるいはそれらと同じ趣旨のことで、理論上は、これ以上は申し上げられませんということはあり得るかと思いますけれども、普通の国会の審議の都合から申しますと、そういうことは通常は想像されないことであろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/130
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131・河野密
○河野(密)委員 重ねて明確にしていただきたいと思うのでありますが、国会が秘密会を開いて、その国会の中の秘密会において要求した場合においては、この防御秘密というものは拠り得ない、それを明らかにしなければならない、こういうことは当然のことだ、こういうふうにわれわれは理解するが、それでよろしいか、もう一ぺん明確に御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/131
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132・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 国会の御審議上の必要ということから考えますと、先ほどお答えいたしましたように、その御審議にさしつかえの生じるようなことはあり得ないと考えるのが常識であります。しかしこれは具体的のものについて考えませんと、そういうことでは法律的の答弁にはなりませんから、特に法律的にお答えすれば、先ほど申しましたような他の例から申しまして、そういう場合も観念上はあり得るであろう、あるいはお断りしなければならぬことも、観念上はあり得ましようということを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/132
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133・河野密
○河野(密)委員 私は観念上もあり得ないと思います。国権の最高機関である国会が、その審議のために秘密会を開いて要求した場合において、観念上も私はあり得ないと思います。木村保安庁長官も今佐藤法制局長官の御答弁になつたことと同じようにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/133
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134・木村篤太郎
○木村国務大臣 私も同じように考えております。国権の最高機関たることは尊重しなければならぬことはもとよりであります。従いまして秘密会において国字に関する都合上、さようなことについて秘密の対象物を知らせるということは、これは当然のことであると考えます。しかし観念上は、今法制局長官の言われたように、それに対するある程度の制約はあるということを、私どもも認めておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/134
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135・河野密
○河野(密)委員 ある程度の制約があるということは、私はあり得ないと思います。現在の憲法のもとにおいては、国権の最高機関は国会である。そういう場合に、その国会も知り得ない秘密が国家の中にある、こういうことが許されるとするならば、これは私は民主主義でないと思うのであります。そこが一番重要な要点であると思うのであります。この国会においては秘密はあり得ない。それは、かりに国会議員が秘密会において知り得たものを漏らしたとか、そういうようなことがあつた場合においては、それは適当な処罰ができ得ると思いますけれども、しかし国会に対しての秘密はあり得ない。この点は私は確認してもらわなければならぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/135
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136・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 先ほどいろいろな例をあげましたが、国会も裁判所もいずれもとにかく国のためにある機関でありますから、国会なり裁判所が国のためにならぬということを要求なさるはずもないのでありましようし、すべて大局的見地から行動していただけるものと思いますから、そういうことは普通の場合にはあり得ないと考える。しかし観念上の問題としては、たとえば刑事訴訟法で裁判所が裁判をなさるについて、証人に対してそれを拒み得る場合を設けておる。あるいは国会自身でいえば、証人の宣誓についてそういう例外も認められておる。これは観念上の問題としてお取上げになつておられると思いますので、それと同じように観念上の問題としてお答えした方が、法律上はどうも良心的なお答えになりそうに思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/136
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137・河野密
○河野(密)委員 私は議論はしませんが、証人その他の場合は個人的な、憲法で保障されている基本的人権の問題と関連をして規定してあるのであつて、今私が問題にしておる国家の最高機密といえども国会に対してはあり得ないのだ、この点ははつきりしてもらわなければ、民主主義の制度というものは空文に帰する。この点ははつきりしていただきたい。
そこで次にお尋ね申し上げたいのは、日米相互防衛協定の附属書Bにこういうことが書いてある。「日本国が受領する秘密の物件、役務又は情報については、アメリカ合衆国政府の事前の同意を得ないで、日本国政府の職員又は委託を受けた者以外の者にその秘密を漏らしてはならない。」これは日本の憲法の重大なる侵犯であると私は思うのであります。秘密会をわれわれが要求した場合においてこの防衛秘密はあり得ない。しかるに政府の事前の同意を得なければ漏らすことができない。これは私は憲法の重大なる侵犯であると考えるのでありますが、木村保安庁長官はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/137
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138・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は憲法の侵犯ではないと考えております。秘密会を要求せられますとわれわれといたしましてそれを尊重いたしまして、当然秘密物件について明らかにすべきであろうと考えております。しこうしてこの附属書Bにおいて「アメリカ合衆国政府の事前の同意を得ないで、日本国政府の職員又は委託を受けた者以外の者にその秘密を漏らしてはならない。」という規定はありますが、われわれは憲法の関係上において、かような規定がありましても、アメリカにおいてはその事事情を十分に了承し、またわれわれは了承せしめて、国会議員の議会活動に遺憾のないように期して行くことは当然であろうと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/138
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139・河野密
○河野(密)委員 アメリカが了承するであろうとか、そういうことを私は聞いておるのではないのでありまして、そうすれば附属書Bにはこういうことは規定してあるけれども、国会が秘密会において要求した場合においては、その条項にはこれは当てはまらぬのだ、こういうふうに政府も解釈なさつて、十分その点も考えてこの協定をお結びになつたとわれわれは了解してよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/139
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140・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これは条約御審議の際にたびたびお話が出ましたように、この条約は何ら日本の憲法を侵害し、あるいは憲法を超越するというようなものではないのであります。もちろんお話は憲法のわく内でのお話であるわけです。その意味で私の先ほどのお答えも、日本国憲法下における秩序の問題としてお話申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/140
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141・河野密
○河野(密)委員 そこで私はお尋なをしたいのでありますが、憲法の条項に決して触れることは考えていないので、明確にアメリカの事前の了解がかりにあるなしにかかわらず、国会が秘密会において要求をした場合においては、防備秘密といえどもこれは当然明らかにすべき義務を負うものである。私はむしろこの法律の中に、アメリカの法律のように、この法律は、国会が憲法に基いて要求するところのものに対しては、適用されるものではないというような、明快なる規定を置かるべき筋合いのものだと思うのであります。私が政府からいただきました資料によりますと、アメリカの法律にはちやんとそういうことが規定してあるのでございます。アメリカの法律には、本法のいかなる規定も、適法な要求に基きアメリカ合衆国の上院もしくは下院の常任委員会またはそれらの連合委員会に情報を提供することを禁止するものではない、こういう明快なる規定があるのですが、私はこの法律のどこかにこういうことを明快に規定しておくべきものだ。それでなければ協定、条約と憲法との関係、その他について私は疑義を免ずる場合があり得ると思うのです。政府はこういう規定があるなしにかかわらず、これと同じ精神である、こういうふうに確認してよろしいか。またこういう規定を置く意思があるかないかという点を重ねてお尋ねいたします。
〔委員長退席、福田(篤)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/141
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142・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 問題は条約、協定と憲法との関係ということが一つあるわけですが、これについては条約御審議の際に申し上げたように、また先ほども申し述べましたようにこの条約自身は何ら憲法に抵触するものでないということでその話は済むわけであります。そうすると今度は今御審議になつております法律案と憲法との関係ということになるのでありますが、この法律案がいくらさか立ちいたしましても、上位にある憲法に刃向うことは当然できないわけであります。またそれに抵触するということになれば、断然無効であるということは、わが憲法自身が立言しておるところでありますし、裁判所もおそらく無効の裁判をされるであろう。それはそつちの方の一般理論で片づくことであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/142
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143・河野密
○河野(密)委員 この点は政府の一応の明言があつたものとして私たちは話を進めて参ります。
その次に私はお尋ねを申し上げたいのは、さつき読み上げました附属書Bにおいて「秘密保持の措置においては、アメリカ合衆国において定められている秘密保護の等級と同等のもの」というのがありますが、この等級と同等のものということを広く解釈いたしますれば、アメリカ合衆国の法律の精神と、日本のこれからつくられる秘密保護法の精神というものは、同じものでなければならないと私は思うのであります。ところがこの秘密保護法は、アメリカ合衆国のこの同じ種類の法律とは非常に違つておるのであります。どこが違つておるかというと、この法律で取組ろうとしておる、あるいは対象とするところの犯罪行為そのものが、アメリカの方は非常に限定をされておる。日本の方においてはこれが非常に広くなつておるのであります。そこでこれが基本的な人権と関係があるのでありますが、アメリカの法律は「何人と雖も合衆国に損害を与え若しくは外国に利益を与えるため使用する意図を有して、又は使用すると信ずるに足る理由を有して、」こういう条件が入つておるのであります。これは法律の三条に「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」ということとは同じように読めると思う。大体間牒行為を取締る、こういうのであります。そのあとに「又は不当な方法で、」というのがつけ加えられておる。これはアメリカの法律に全然ない要件でありますが、アメリカと同じ等級のものを取締ると言いながら、なぜ日本だけこういう「不当な方法で、」というのをつけ加えているのであるか、何の必要があつてこういうものをつけ加えておるのか、これが私のまず第一にお尋ねしたい点であります。
それからその第三条の秘密を漏らした相手方の場合について「他人に」と書いてあります。ところがアメリカの法律においてはそういうことは書いてないのであります。アメリカの法律には相手方をこういうふうに規定しているのであります。「本法の規定に違反する者によつて入手され、取得され作成され若しくは処分され又はされるであろうことを知り、又は信ずるに足る理由を有して」とあつて、不特定のだれにでも秘密を漏らしたからといつてこれを取締るというのではないのでありまして、これがいわゆるアメリカの利益を阻害するというふうに使われる場合、使おうとしておる者あるいは使おうとしていると信ずるに足るような者にこれを漏らした場合においてのみこの法律に触れる、こういうことになつておるのであります。しかるに日本の法律は不特定の他人に、だれであろうとかまわない。何の目的に使われようとそういうことは意図するに足らない、他人にこれを漏らした場合に処罰する。まつたくアメリカの法律とは似ても似つかない広範囲な取締りの規定をしておるのであります。アメリカと同等級の取締りをすると称して、その条約に基いてつくつた法律を、なぜかよう・に広範囲なものを規定されたのか、明確にひとつ御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/143
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144・上村健太郎
○上村政府委員 等級はこの附属書Bによりまして、日本側におきましても、先方の「機密」「極秘」「秘」の三段階に扱つて、政令の上で区分をいたそうと考えております。しかしこの区分と刑罰関係とはこの法律においては関連を持たせておりません。なおアメリカの法律におきましては、この三つのほかに「部外秘」というのがたしか入つていると思いますが、現在「部外秘」は米国におきまして削除になりまして、三段階になつておりますので、こちらも「機密」「極秘」及び「秘」の三段階にわけて政令に規定いたそう、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/144
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145・河野密
○河野(密)委員 私はそういう「機密」とか「極秘」とか「秘」とかいうようなそういうことをお尋ねしておるのではないのです。この等級というのは少くともそういう「機密」「極秘」「秘」とかいうようなものではなくて、そういうものを漏洩した場合に対する処罰の問題も、私は当然この中には入つておると思うのであります。何となれば先ほど来問題となつております日米相互防衛援助協定の第三条を受けてこの附属協定はできておるものであります。そうすると両方の合意によつてできる措置の中に当然入るべきものなのでありまして、これは等級と誤いてありますが、等級はなるほどあなたのおつしやるように「機密」「極秘」「秘」というようなそういう三段階はあるに違いないと思いますけれども、そればかりでなく、それを漏らした場合におけるところのため処罰というものも、この等級という中には私は当然含まれておると思う。アメリカの法律においてはさつき私が読み上げ・ましたように、間牒を取締る、自国に不利益を与え外国を利するそういう犯罪を犯した者に対して制限を置いておる。それからそれを漏らした相手方についても、間牒という言葉ではないけれども、間牒と信ずるに足るようなそういう言葉を使つておるわけなのであります。しかるに日本だけは「不当な行為」という広い文字を使い、一般的な、「他人」というような不特定な人間をあげておる。これではアメリカの法律とマッチしないじやないか、こういうのが私の尋ねておる趣旨なのでありまして、これは条約の協定の箱柳にも反するし、なぜそういう法律をおつくりになつたか。日本独自の見解でおつくりになつたとするならば、一体政府はどういう考え方でこういう広い範囲にせられたのであるか、そのことを私は承つたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/145
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146・桃沢全司
○桃沢説明員 附属書Bに規定しておりますのは、これは私の方とは関係ないわけでございます。私どもはこの秘密保護と同等のものを確保するということは、保護法の刑罰規定とは関係ないと了解しておるのでございます。この点はさきに岡崎国務大臣、下田条約局長からも同様の趣旨の答弁があつたと私は存じております。
次に日本の秘密保護法案がアメリカの軍機保護法よりも、非常に範囲が広くなつておるではないか、かようなお問いでございますが、この点は必ずしもさようには考えておりません。たとえば先ほど河野委員は漏らした相手方、これが非常に限定されておるのではないかということで、ございましたが、第一条のdあるいはe、これには「これらを受領する権限を有しない者に通報し、交付し、若しくは伝達し」た行為もやはり処罰されているのでございまして、その点秘密保護法とかわりはないと存ずるのであります。なお第一女木の……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/146
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147・河野密
○河野(密)委員 その伝達し、通報しというのは政府の役人じやないか。その権限を持たないというのは一般人を言うのじやなくて、政府の役人のうちのそういう権限を有しない者……。私の言つたこととは違う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/147
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148・桃沢全司
○桃沢説明員 この場合には、許可を得ないでもつて、これを受領する権限を有しない者にこれを通報し、交付した場合の規定でございまして、この権限を有しない者というのは、これは役人には限らないと存じます。
〔福田(篤)委員長代理退席、委員長着席〕
それから本法案の第三条の「安全を啓すべき用途に供する目的をもつて、」これはお話のようにアメリカのいわゆる軍機保護法のこの目的とよく似ているのでございますが、なおアメリカの法律には「使用すると信ずるに足る理由を有して、」こういうような言葉があります。これは相当広範囲であろうと思います。今度の法案の「不当な方法で」というふうな場合も、これとちようど同等の意味を有すると考えております。
なお第三条の規定は、第三号の「業務により知得し、又は領有した防衛秘密を他人に漏らした者」、これが新たに加わつたのでございますが、そのほかのものは大体いわゆる刑事特別法で規定しているところでござい観して、特に今度に限つて非常に広くしたというようなことはないのでございます。以上私の方の関連する事柄をお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/148
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149・河野密
○河野(密)委員 私は今の御答弁ではとうてい満足することができません。そこでこの当の責任者である木村保安庁長官から明快にひとつ御答弁が願いたいのでありますが、アメリカの法律よりもなぜ広い範囲に日本では取締らなければならないか、アメリカの法律の件き方は、さつき私が申し上げましたように、間牒行為を取締るということが、法律の条文のはしはしに明らかにわかつておる、明確に現われておる群き方をしておるのであります。しかるに日本のこの秘密保護法ではそういう間牒行為を取締るというばかりでなく、一般に「不当な方法で」とかあるいは「他人に」とか、非常な広範囲な苦き方をしておるのであります。今刑事特別法がと言うが、刑卒特別法は占領治下においてできた法律でありますから、その占領治下にできた法律を独立後においてもなおかつ継続しなければならないと、こうおつしやるならば、それは木村長官の頭の切りかえをしてもらわなければならない。そういう長官はすみやかに退陣をしてもらわなければならぬと思うのでありますが、いかなる理由でもつて――私すらこのあなた方からいただいたアメリカの法律を勉強しているのに、長官がそれを見ないでこういう法律を出されるはずはないと思うのでありますが、どういう理由でアメリカよりも広範囲な取締り方をしなければならないのか、その理由を、信念をひとつ承りたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/149
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150・木村篤太郎
○木村国務大臣 われわれは日本の国情その他万般の情勢から判断して法律を作成しているものでありまして、むろんアメリカの法律も参酌いたします。しこうして今仰せになりましたように、やはり一番危険なことはスパイ行為であろうと思います。そこでこの法案第三条において「わが国の安全を害すべき用途に供する目的」これが第一であります。しこうして「不当な方法で、防衛秘密を探知し、又は収集した者」不当な方法で探知するような者は、おそらく前項の安全を害すべき用途に供する目的を持つておる者と推定してよかろうと考えております。しかしこれは、さような目的を持つておるかどうかということは、実際においてなかなか責任上明らかにすることは私は困難であろうと思います。従いまして妥当な方法でない、いわゆる不当な方法で防衛秘密を探知し、または収集した者を罰せないと、これは実質上においてわが国の安全が保てないという結果を生ずるおそれがあるのであります。従いまして前項においてはわが国の安全を害することを目的としてやつた、いわゆる目的であります。次に後段においては、いわゆる不当な方法で秘密を探知し、またはこれを収集するということを二段構えにして、われわれとしては秘密防衛の全きか期して行こうと考えたのであります。要はこれはスパイ行為をどこまでも取締つて行きたいという精神にほかならないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/150
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151・河野密
○河野(密)委員 今木村さんの話を聞けば聞くほど、私はこの「不当な方法で」というのは不当だと思うのであります。もしお話のようにスパイの目的を持つているものを取締るというならば、まず「国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて」という目的で縛る、これはわかるのです。しかしそれだけでは縛り切れないというならば、それはアメリカで考えておるように、スパイであると信ずるに足るような行為というような一項があるにしても、少くとも国の安全を害する、外国を利する、そういう意図を持つものでなければ、これは取締りの対象とすべきではないと思うのであります。もし「不当な方法で」というと、これは方法なのでありまして、目的のいかんにかかわらない。これは法律家である木村さんに私が御説教するまでもなく、これは方法なのであります。不当な方法は不当な方法なので、その目的のいかんは問わないのであります。前段において目的を縛つておる。目的を縛るだけで足りるのであつて、この「不当な方法で」という広いものをやる必要はない。もしこれがかりに木村さんの言われるように前段だけでは足らないとしても、不当な方法でやつた者は刑罰が軽くなるというならば、私はこれはまだその立法の趣旨が一応わかると思うのであります。そうじやない、間諜行為をする目的でやつた者も不当な方法でやつた者も刑罰は同じなのでありまして、そういうことは私はあり得ない、こう思うのであります。そういう考え方をもつてこの法律をつくつたとするならば、私はすみやかにこの法律は改めらるべきものである、「不当な方法」というようなものはまず削らなければならないものだと思うのであります。それから「他人」ということは、さつき私が申し上げたように、間諜行為に使われるであろうと諸般の情勢上信ずるに足る者に漏らした場合においてのみ、この法律を適用するというふうに改めなければ、これは無事の良民を縛る、あるいは業務上こういうことに携わつておる者を縛るもつてのほかな法律になると思うのでありまして、この点は私は断じて今のあれでは承服することができません。この二点は今政府が立法された趣旨というものをわれわれとしては了解することができません。単なるこれは意見の違いではない。私は日本の国会の名誉にかけても、こういうことはできないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/151
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152・木村篤太郎
○木村国務大臣 重ねて申し上げますが、不当な方法で防衛秘密を探知収集するということは、おそらくこれは何かの意図を持つてやることは当然であろうと思います。普通の方法でさようなことを探知収集しようとする者はまずないと思つてよかろうと思います。少くとも……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/152
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153・河野密
○河野(密)委員 まずないとかそういうようなあいまいなことで法律をつくられては困る。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/153
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154・木村篤太郎
○木村国務大臣 そこでわれわれといたしましては、不当な方法で探知収集しようという者は、まず国の安全を害する目的を持つと見てよかろうと思いますが、そこの区別がなかなか困難であります。従つて前段だけではこの法律の目的は十分に達することができない。少くとも不当な方法でやろうということは、これは取締つて行く上においては私は必要なことであろうと思います。妥当な方法で何するのは一向かまわないのであります。不当な方法でやるというところに大きな実害がそこに伴つておるとわれわれは見てよかろうと考えております。また他人に漏らしていけない、これはあまり広過ぎるではないかという御議論でございますが、いやしくも業務に関係して秘密を何しておるものを、何人たるとを問わず他人にこれを漏洩するということは危険しごくなことなのであります。対象物のいかんにかかわらず、すでに他に漏らすということ自体が、私は国家の安全上非常に危険であろうと考えるのであります。そういう漏らしてならぬものを漏らすのでありますから、その相手の対象いかんを問わず、これは取締りの対象となつてよかろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/154
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155・河野密
○河野(密)委員 そういたしますと、この第三の「業務により知得し、又は云々という中の「他人」というものは、一般人と広く解釈できてもいいと思うのですが、二の点は私は今の長官の意見は当らないと思うのであります。「防衛秘密で、通常不当な方法によらなければ探知し、又は収棄することができないようなものを他人に漏らした者、」こういうので拠りますが、これは一体だれが他人に漏らすのですか。他人に漏らすということはまず第一漏らす人がどういう人かもはなはだ漠然としており、それから漏らされる相手も一般人というのみで非常に漠然としております。これは私はあえてアメリカ側のことを言うわけではないのですが、アメリカの法律のようにこれははつきりと間牒を取締る、「何人といえども合衆国に損害を与え若しくは外国に利益を与えるため使用する意図を有して、又は使用すると信ずるに足る理由を期して、」こういうふうに限定して――もし政府の考えるようなものであるとするならば、そういう明確なものにして、間牒を取締るのである、スパイ行為を取締る、こういうことにしなければ、私はこの法律というものは非常に濫用される危険性がある、こう思うのであります。重ねて長官の意見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/155
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156・木村篤太郎
○木村国務大臣 この法案のねらいとするところは、もとより今河野委員の仰せになつたように、まず第一にはスパイ行為、これは一番危険なことであるのであります。これは当然で言うをまちません。そのことにおいてはこの秘密の防衛というものは何人に漏らされても困るのです。その他人からまたさらにいろいろなところへ向いて漏れることは当然であります。一たび漏れれば、これはさらに拡大して所々に漏れるということは言うをまたないところであります。かような意味において、国家防衛秘密を他人に漏らすということを防ぐためには、私はこの法案としましては最小限度にしぼつてやつたつもりであります。要は日本の防衛、安全のためにこの程度のことはやむを得ないのではないか、私はこう考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/156
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157・河野密
○河野(密)委員 私が質問をいたしました要点のアメリカよりも広くなつている、それから日本でなぜこれをやつたかという理由は、どうも私には納得が参りませんので、もう一つ別の角度からお尋ねしてみたいと思うのであります。この前もお尋ねしたのでありますが、この法律は日米防衛協定――MSA協定というものに当然に伴う法律であります。これは日米防衛協定が効力を発生すると申しますか、実質的にアメリカが日米防衛協定に基いていろいろな処置をする要件に当然なつていると思うのですが、これは当然要件になつていると考えてよろしいのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/157
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158・増原恵吉
○増原政府委員 ちよつと御質問の趣旨がのみ込めなかつたので、済みませんがもう一度……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/158
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159・河野密
○河野(密)委員 日米防衛協定は条約でありますから、批准をすればむろ効力を発生するわけですが、アメリカが日米防衛協定によつていろいろな具体的な処置をするについては、この法案というものがその条件になつているとわれわれは解釈するのだが、そう解釈してよろしいか、こういうのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/159
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160・増原恵吉
○増原政府委員 条件ということをどういう意味でお使いになりましたか少しわかりかねますが、防衛協定の中に三条なり附属書Bなりというものがありまして、そこで合意するような秘密保持の措置をとるとか、米国におけると同様の等級を設けるとかいうことが書いてあるわけでありまして、従いましてこれが批准されて施行になるということになりますれば、これに基いた措置を日本としてもとるということが当然の義務になつて来る、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/160
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161・河野密
○河野(密)委員 私の言わんとするところは、この法律をつくらなければ、武器供与あるいは船舶貸与というようなものの具体的な交渉は始まらないのかどうか、この法律をつくつておかなければ、そういうことの交渉には入り得ないのだ、そういうふうに解釈してよろしいのか、こういう意味です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/161
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162・増原恵吉
○増原政府委員 武器貸与につきましては、事実上の話合いは批准前でも行つておりましたが、現在は批准がされまして話合いをいたしております。その場合に法律をつくることが義務であるかどうかという意味のお言葉がありましたが、これは外務大臣等からたびたび申しておりますように、秘密保護の法律をつくることは条約上の義務ではございません。両国が合意するような秘密保護の措置をとることは義務でありますが、法律をつくることは条約上の義務ではありません。但し日本政府におきましては独自の見解として、この条約に定めた秘密保護の措置をとるためには、日本の国においてはこの防衛秘密保護法というような法律をつくることが適当であると考えまして、国会に御審議をお願いをしているわけであります。この法律をつくりませんければ、他に何らかの方法で適当な措置はとらなければならない、これは条約上の義務であります。そうしてその措置が米国として適当であると認めるならば武器を供与してくれる。日本政府が独自の見解で秘密保護法をつくろうと考えまして御審議を願つておりますが、この秘密保護法が成立をすれば、これをもつて米国としては第三条にある適当な処置と認めるということには相なつている、こういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/162
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163・河野密
○河野(密)委員 今この法律には船舶貸与協定までしか入つておりませんが、きようの新聞にも出ております日米艦船貸与協定ですか、この問題、これはこの法律に当然入り得るものと思うのでありますが、これはどういうふうに処置されるものでありますか、それから現在進んでいる日米艦船貸与協定というものはどういうものであるか、どの程度に進行しているか、これをひとつ御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/163
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164・増原恵吉
○増原政府委員 現在艦船の貸借について話合いをしておりますのは、何と申しますか下相談の程度であります。そうして大体千六百トン級の駆逐艦二隻、千四百トン級の駆逐艦二隻というものが実際に貸与される船という見通しをつけているわけであります。そうしたものを借りる協定をつくろう、協定の内容は大体において船舶貸借協定と実質の内容は似たようなものであります。そういう新しい艦船貸借協定というようなものができ上りますと、おそらくこれは船舶貸借協定にありますと、同じような秘密保護の規定が中に入る見込みであります。そうしてこれは防衛秘密保護法の一部改正を行いまして、現在の第一条に「この法律において「日米相互防衛援助協定等」とは、日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定及び日本国とアメリカ合衆国との間の船舶貸借協定をいう。」というところにもう一つつけ加えまして、艦船貸借協定といいますか、そういうものをいう、というふうにつけ加えるための法律改正が必要となります。そういうことをまた国会にお願いをしなければならないという見通しであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/164
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165・河野密
○河野(密)委員 私はこの冒頭に申し上げましたように、この法律で一番重要な点は、今御質問した点ではないかと思うのであります。いわゆるこの拡大解釈がだんだんだんだん広くなつて、国民の権利義務を侵害するようになつて行くということと、もう一つは内政干渉になる、こういう点とこの二つの問題についてでありますが、先ほど国会の権限というものに対して、この協定のいかなるものもこの侵害を与えるものではない。こういうことは政府全体として確認をされたと思うのであります。この点はわれわれとしてはやや当然のことではあるけれども、政府の考え方を一応その文字通りに受取つておきたい、こう思うのでありますが、あとで質問をいたしましたアメリカの等級というものと、それから日本の法律の規定の問題、この問題は私は政府の御答弁では納得することができません。「機密」とか「極秘」とか「秘」とかいうような等級をかりにつけたとしても、等級それ自身に意味があるものでなくして、それが漏洩された場合における、これがどういうふうに保護されているかということが問題なのであります。その保護の範囲がアメリカ側におけるよりも日本の方がはるかに広くなつている。こういう点が私は非常に重要な問題だと思うのでありまして、先般改進党の並木君が修正案を提出されたのでありますが、何ゆえか、この修正案をひつ込めてしまわれたのであります。並木君ももう一ぺん考え画して修正案を出し直したらどうか、その方がああいうわからないような動議を提出されるよりもよほど意義のあることだと思うのですが、私はこの点については政府の考え方に満足することはできないということを申し上げまして、なおこまかい点についての質問は私なりあるいはその他の者から質問するということを留保いたしまして、一応質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/165
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166・並木芳雄
○並木委員 ただいま河野委員から私の名前が出てお話がございましたから私は申し上げておきますが、あの最初の修正案をやめて後の撤回の要求、そうして出直してもらいたいというように改進党の最終決定がなされたときに、私はその中に今河野委員のあげられた点をちやんと説明してあるのです。そのときにおそらく河野委員はおらなかつたのだろうと思います。私はこの中には新聞協会から出されているあの三つの修正案というものはどうしても必要であるから、それを織り込んでそうして改進党の言うように新らしいものを出して来てくれ、こういうように言つてあるのです。あるいは河野委員は聞いていなかつたために今のような発言があつたと思いますが、どうぞ誤解のないようにお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/166
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167・上塚司
○上塚委員長 ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/167
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168・上塚司
○上塚委員長 速記を始めて。
この際暫時休想いたします。
午後一時二十分休憩
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午後一時二十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/168
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169・上塚司
○上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
この際お諮りいたします。法務委員猪俣浩三君より本案について発言を求められておりますので、これを許可いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/169
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170・上塚司
○上塚委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。猪俣浩三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/170
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171・猪俣浩三
○猪俣浩三君 私は今までの委員諸君の質疑応答をあまり聞いておりませんので、多少重複するような点があるかも存じませんが、あらかじめ御了承願いたいと思います。ただ純法律問題について、わずかな時間をおさきいただいて、お尋ねさせていただきたいと思います。それは本委員会の速記録というものは、実は私ども弁護士として、裁判上非常に絶大な効果のある、最も重要な文献でありますので、(「何だ商売か」と呼ぶ者あり)そこで将来かような人権問題が起りましたときにも、この擁護のためにも、この委員会の応答の記録というものを正確に残しておかぬといかぬ。私は戦時中委員会の速記録のために、軍機保護法違反事件が無罪になつた例がありまして、それが実は代議士になろうと考えた動機なのです。(笑声)そんなことはまあいいとして、その意味において、並木君なんかが考えるような、そんなうわついた考えではいけないというのだ。そんなふざけたことを言うからいけない。
第一点は、この法律を見ますと、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法と相なつておりますので、日米相互防衛援助協定というものが前提になりまして、この法律ができておる。そこでもし日米相互防衛援助協定なるものが廃止になりましたら、この法律はどういうことに相なりますか、それをまずお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/171
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172・木村篤太郎
○木村国務大臣 日米相互防衛援助協定に基きまして、日本がアメリカから供与を受けました物件でこれこれ、こういうことになつております。すでにその協定に基いて供与を受けたものについては、たとい日米相互防衛援助協定が廃止になりましても、それについてはかわりはなかろうと考えております。将来については、むろん廃止になつた以上は、アメリカからは供与を受けられませんので、問題は起る余地はなかろうと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/172
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173・猪俣浩三
○猪俣浩三君 そこで日米相互防衛援助協定が廃止になつた際には、この法律はとにかく廃止の運命になると思いますし、われわれ社会党が政権をとつたような場合には、こんな法律は廃止してしまいます。そこで私がお尋ねすることは、これは一体法学者の言う限時治であるのか、永久法であるのか、この問題はすでに法務委員会で私が一ペん質問しておりますが、あまり満足できる答弁はなつた。これは申すまでもなく、刑法第六条を見ましても、「犯罪後ノ法律二因リ刑ノ変更アリタルトキハ其軽キモノヲ適用ス」、なおまた刑事訴訟法三百三十七条、三百八十三条、四百十一条、これに関係があります。そこで限時法であるかどうか。つまり臨時法、限時法と学者が唱える法律であるのかどうか。日米相互防衛援助協定というものを前提にしてできた法律でありますがゆえに、いつかは廃止の運命にある。そうすると、臨時の法律であるということになりますかどうか。つまり私がお尋ねせんとするところは、刑法の六条、刑事訴訟法三百三十七条、すなわち刑の廃止のあつた際には、免訴の言渡しをなすべきものであるが、限時法だというと、そういうことにならないことが起る。そこで実際の処罰問題につきまして重要な問題が起つて来ると思うのです。そこでこの法律は、日米相互防衛援助協定なんというものの存在する間存続すべき限時法的性格のものであるか、あるいはこれは永久法であるかということが、刑法の六条、刑事訴訟法の三百三十七条、三百八十三条、四百十一条、申すまでもなく四百十一条はこれは控訴上告の場合でありますが、いずれにいたしましても、この法律が廃止されて刑罰というものがなくなつた場合に、廃止以前に行われました行為をいかに取扱うか、普通の法律でありますならば刑事訴訟法のこの適用があるのでありますが、これは限時法だということになるとそうでなくなつて来る。これは重大なわれわれの人権に関係があるのでありますから、明確にしておいていただきたい。この法律と刑法その他刑事訴訟法、今私が読み上げました条文との関係について御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/173
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174・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 限時法の根本理論については、猪俣議員と太刀打ちをするだけの資格はありませんけれども、今のお尋ねの趣旨に従つて現実的にお答えをすれば、援助協定とこの法律との関係は、実質的の関係はございますけれども、かりに援助協定が廃棄されたという場合を考えましたときにおいて、この法律がその援助協定の廃止によつて当然失効するということには、必然的にならないわけであります。これは社会党内閣ができました際において、あるいは廃止の措置をおとりになるという段取りになるわけであります。従いまして法律の措置といたしましては、普通われわれ廃止をいたします場合には、従前の違反行為については、従前の例によるというようなことを書いておりますが、いずれにせよ、そういう意味では当然失効ということになりませんから、おつしやる意味の限時法には当らないと申し上げざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/174
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175・猪俣浩三
○猪俣浩三君 そうすると、これは限時法でないということになりますと、これが廃止になりました際には、従つて三百三十七条、三百八十三条、四百十一条の適用があるということに相なりますか。条文を見てお答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/175
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176・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 私が先ほど例に引きましたように、従前の例によるというような特別の経過規定を設けずに、ただ廃止するという法律が通りました場合は、ただいま御引例の一般の原則によつて律せられるものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/176
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177・猪俣浩三
○猪俣浩三君 それでそれはわかりました。ただ限時法でないというあなたの解釈に対しては、学問上私は議論するところ多々ありますが、ここはそういう場所でありませんから、一応あなたの説明を聞いておきます。
それから犯罪の構成要件についてお尋ねしたいことが多々あるのでありますが、法益の問題、それから犯意の問題、行為の問題。法益の問題については先般ちよつとお尋ねいたしました。アメリカの軍の秘密と日本の防衛の秘密と両方建の御答弁。もちろん法益は一つでなければならぬという原則はありませんから、その答弁も必ずしも間違いだとは思いませんが、ただ一国の刑罰法規が他国の法益なんかを含むということは非常に違例だと思う。だがこの法律をまつすぐに読みますと、日本の防御なんかより、アメリカから供与されたいろいろの兵器の秘密を守るという趣旨のようでありますから、どうもアメリカの兵器の秘密を守ることが第一の法益たる日本の防衛のための法規なら、もつとこのほかに、アメリカから供与された兵器のほかにいろいろ秘密がありそうなものだが、それは一切触れておらぬ。そうするとこれはアメリカのための法律だということに解釈されるのでありますが、それも一応意見でありますからやめておきまして、犯意につきまして二、三気のついたことをお尋ねしたいと思います。一つは本法の第一条の三項であります。「この法律において「防衛秘密」とは、左に掲げる事項及びこれらの事項に係る文書、図画又は物件で、公になつていないものをいう。」、こうありますが、そうするとこの違反者の犯意は公になつていないということの認識が必要だということになるのでありますかどうか、そこをお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/177
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178・増原恵吉
○増原政府委員 公になつていないという認識が必要であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/178
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179・猪俣浩三
○猪俣浩三君 そうすると語をかえて言えば、これは公になつておるものだと思つた場合には犯意がないということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/179
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180・桃沢全司
○桃沢説明員 その場合は一般の刑法理論の錯誤が問題になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/180
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181・猪俣浩三
○猪俣浩三君 そうすると結局公になつているかいないかという問題については、立証責任はどちらにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/181
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182・桃沢全司
○桃沢説明員 そのお答えの前にこのような立法になつた気持を申し上げたいのでございますが、防衛秘密と申しますのは、これは前々から当委員会その他で申し上げておりますように自然秘と考えております。そうして相当高度な秘密をいうというふうに考えておるのでございます。「公になつていないものをいう。」というような用語は他の立法例には見受けられないのでございますが、前に通過いたしました刑事特別法でこの言葉が最初に使われた、かように存じております。この用語を用いました趣旨は、日本におきましても戦時中官報その他で有権的に公にしたもの、これが免責の事由になつております。しかしながらたとえばソ連ですでに日本の秘密を知つている、あるいはアメリカですでに日本の秘密を知つているという場合も、日本では有権的にこれを公にしていないために処分されたという事例があつたかに聞いておりますので、アメリカから供与を受ける兵器の秘密についても、すでに外国などで知られているものを、日本ではまだ秘密にされているということで処罰を受けるというのでは、非常におもしろくないではないかというところを心配いたしまして、この「公になつていないものをいう。」というところでしぼつたつもりなのでございます。それで先ほどの猪俣委員の仰せになられましたこの立証責任の問題でございますが、これはやはり検察官にあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/182
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183・猪俣浩三
○猪俣浩三君 なお念を押しておきますが、真実は公になつていないものであつたが、被疑者は公になつているものと思つたということになるならば、これは刑法上の錯誤の問題として処理する、これは間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/183
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184・桃沢全司
○桃沢説明員 そのほかにいろいろ法律論があると思います。たとえば期待可能性の問題とかいろいろあると思いますが、猪俣委員の仰せられました趣旨でけつこうだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/184
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185・猪俣浩三
○猪俣浩三君 それだけ承つておきます。
それから第一条三項の「日米相互防衛援助協定等に基き、アメリカ合衆国政府から供与される装備品等について左に掲げる事項」とありますが、アメリカ合衆国政府から供与された装備品等であることの認識が犯意論として必要であるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/185
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186・桃沢全司
○桃沢説明員 お説の通りと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/186
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187・猪俣浩三
○猪俣浩三君 それからやはり第一条の三項の二号になりますが、「日米相互防衛援助協定等に基き、アメリカ合衆国政府から供与される情報で、装備品等に関する前号イからハまでに掲げる事項に関するもの」とあります。アメリカ合衆国政府から供与される情報、これがどうもはなはだ明確を欠くのですが、このアメリカ合衆国政府から供与される情報であることの認識が必要でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/187
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188・桃沢全司
○桃沢説明員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/188
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189・猪俣浩三
○猪俣浩三君 これは具体的に言うとどういうことなのですか。アメリカ合衆国政府から供与される情報、イからハに関する供与される情報と言うと、たとえばどんなことですか。あなた方はどんなことを想定されてこういう文句をお使いになりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/189
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190・増原恵吉
○増原政府委員 どういう情報が来るかという御質問であつたように思いますが、装備品等に関するイからハまで、すなわち「構造又は性能、」「製作、保管又は修理に関する技術、」「使用の方法、」装備品のこの三つの情報――情報というのはいわゆる知識情報といいますか、インフォーメーシヨンといいますか、そういう意味のものでございまして、よく情報局とかいうような言葉でいわれるあの情報というような意味とはちよつと違う。インフオーメーシヨンという意味の情報であります。そういうものをわれわれの方がもらいまして、場合によつてはそういう情報、すなわち青写真等があると存じますが、そういうものに基いて日本で兵器を製造するというようなことが考えられる、そういうふうなもとになる情報でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/190
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191・猪俣浩三
○猪俣浩三君 これは言論出版等に影響のある文句だと思うのですが、どうもはつきり私どもにはわからないのだ。構造または性能に関する情報、そのものの構造と言えばわかります、性能と言えばわかるが、それに関する情報ということは、たとえば何々の兵器はこういう構造であつて、これはこういう性能があるというふうなアメリカからのつまり通知のことをいうのですか、あるいはこれはどういう場合に使うものであるというような、あるいは何か作戦用兵に関するいろいろ注意とか、その兵器を使つて戦いをする場合のいろいろな注意とかなんとか、そういうことまで含むのか。どうもここがはつきりしないのです。あなた方はこれをつくりなさるときに想定したのでしよう。大体さつきの言葉にあつたのですか、穗積君の質問に対して、あまりいろいろの仮定での質問が多過ぎると言つた。そんなばかなことはない。法律解釈はすべて仮定で行くのです。あらゆる場合を想定して、それに対する解釈をちやんとして法律はできておるのです。あらゆる具体的事実をあげて、そうしてその場合にはどうなるということにならなければ法律の解釈はできないのです。そこであなた方は、一体どういう具体的事実を想定して「アメリカ合衆国政府から供与される情報で、」といつたような文章をお書きになつたか、それを私はお聞きしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/191
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192・桃沢全司
○桃沢説明員 確かに情報という言葉が、これまで使われていた意味から申しますと、非常に広くなるように解せられるおそれがあるのでございますが、この立案にあたりましては、さような広い意味でこの情報という言葉を使つたつもりはないのでございます。あるいはただいま増原次長からのお言葉にもありましたように知識というふうに読んでいただいてもいいのじやないか、そういう趣旨でございまして、構造または性能そのものはまだ日本が供与を受けていない、その構造についての知識あるいは性能についての知識これが供与をされておるのでございます。その具体的な例といたしましては、先ほどから例にも出ましたように先方から青写真が来るとか、あるいは今度供与する物件の性能はこういうものである、これは防衛秘密に当るということで内容が通知された場合に、第一条第三項第二号に該当する、こういうふうに私ども解釈いたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/192
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193・上塚司
○上塚委員長 猪俣君にお諮りいたします。本会議は一時四十分に開会する予定なのですが、質問はまだ大分ございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/193
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194・猪俣浩三
○猪俣浩三君 私はまだ序の口だつたのです。重要な問題についてもうちよつとお尋ねしたいと思いますが、実は私自身もおなかがすきましたし、この辺で休憩していただいて、あと続行していただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/194
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195・上塚司
○上塚委員長 暫時休憩いたします。なお本会議における防衛関係二法案採決終了後再開いたしますから、さよう御承知を願います。
午後一時四十三分休憩
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〔休憩後は開会に至らなかつた〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101903968X04619540507/195
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