1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年四月二日(金曜日)
午前十時五十三分開議
出席委員
委員長 小島 徹三君
理事 青柳 一郎君 理事 中川 俊思君
理事 中川源一郎君 理事 松永 佛骨君
理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君
越智 茂君 高橋 等君
降旗 徳弥君 安井 大吉君
山下 春江君 滝井 義高君
萩元たけ子君 福田 昌子君
杉山元治郎君 山口シヅエ君
出席政府委員
厚生事務官
(薬務局長) 高田 正巳君
厚生事務官
(社会局長) 安田 巌君
厚 生 技 官
(公衆衛生局環
境衛生部長) 楠本 正康君
厚 生 技 官
(医務局長) 曽田 長宗君
委員外の出席者
厚生事務官
(大臣官房総務
課長) 小山進次郎君
厚生事務官
(医務局次長) 高田 浩運君
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
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四月二日
委員三浦寅之助君辞任につき、その補欠として
降旗徳弥君が議長の指名で委員に選任された。
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四月一日
医薬分業法の撤廃に関する陳情書
(第二六〇五号)
保育所措置費増額に関する陳情書
(第二六〇六号)
未帰還者留守家族等援護法による療養給付期間
の延長に関する陳情書
(第二六〇七号)
国民健康保険の国庫助成増額に関する陳情書
(第二六
三〇号)
医薬分業法の撤廃に関する陳情書
(
第二六六二号)
同
(第二六六三号)
未帰還者留守家族等援護法による療養給付期間
の延長に関する陳情書
(第二六六四
号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
小委員の補欠選任
医薬関係審議会設置法案(内閣提出第八二号)
厚生行政に関する件
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/0
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001・小島徹三
○小島委員長 これより会議を開きます。
まず審議の都合上日程にある諸案より先に、まずビキニ環礁付近における爆発実験による日本漁船の被害事件について、長谷川委員より発言を求められておりますので、これを許可いたします。長谷川委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/1
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002・長谷川保
○長谷川(保)委員 ビキニの被爆事件によります漁夫の被害、漁船の被害のその後の事情を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/2
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003・楠本正康
○楠本政府委員 主として経済的な損害について申し上げますと、福竜丸の魚類二千二百九十貫は全部廃棄処分に付されております。但しそのうち約百貫以内があるいは市販にまわつたかもわかりません、しかしいまだ追究ができないで悩んでおりますが、大体全部廃棄に付せられたと考えております。
次に過日三時に入港いたしました第十三光栄丸のまぐろ九千貫その他の雑魚一千貫、合計一万貫が全部廃棄処分に付されております。これだけでありまして、その他はすべて検査の結果何ら支障なく水揚げされ市販に供されております。従つて以上の一万三千貫程度のものが直接損害と相なつております。なお船体の損害につきましてはすべて支障なく、ただ御承知のごとく福竜丸だけが放射能その他の関係で廃棄と申しましようか、再び漁船として使えない運命にございます。この損害が見積られておるわけでございます。なお魚価の値下り等の経費につきましては、きわめて厖大なものに及ぶと思いますが、しかしこれは直接的な被害という意味にはとれないものと考えております。なお検査その他のために船が若干期間停留いたしまして、そのために常時の活動ができなかつた点につきましては、特別なる支障のあつたもの、たとえば第十三光栄丸とか、先日釜石に入りました明神丸等が検査その他の結果時間がかかり、多少常時の活動に支障を来したかと存じますが、これに若干の損害が見積られるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/3
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004・長谷川保
○長谷川(保)委員 それらの魚、船あるいは間接的な魚価の値下り、船の碇泊によります損害等についての補償の関係はその後どのようになつておりましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/4
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005・楠本正康
○楠本政府委員 これは私ども、水産庁がかような損害を正しく積算するに最も適当と考えまして、水産庁と相談の上、目下水産庁におきましてこれらの損害を逐一調査いたしまして、これを外務省に提出いたしておるのであります。なお賠償関係につきましては目下外務省において各種の資料をまとめておりまして、遠からず正式に申入れをいたすことに相なつております。しかしながらこれらの損害の補償につきましては、そのやり方、金額等につきましてはいまだ決定いたしておりませんが、外務省の言明するところによりますと、すでにおおむね米国側の了解を得ているというふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/5
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006・長谷川保
○長谷川(保)委員 何分にも一般の漁業家はそう十分な資本があつてやつているわけではないのでありますから、その補償がすみやかになされるかいなかによつては重大な生活上の脅威を受けると思うのでありますが、これらに対する補償がいつなされるかという見通しにつきましてはどのようになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/6
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007・楠本正康
○楠本政府委員 御指摘の通りでありまして、私どもも絶えず外務省と連絡をいたしておりますが、外務省の言明いたしておるところによりますと、中間支出という制度があるそうでありまして、決定を待たなくても中間的に一部支払いをいたしたいというのがアメリカ政府の意思だそうであります。しかしこの中間的な支出もいつ、幾らという点はまだきまつておりません。しかしながらただいまもお話のありましたように相当な損害を現に受けつつありますので、これらにつきましては災害に準じましてつなぎ融資その他の措置を講じたいと考えておりますが、すでに神奈川県三崎の損失等につきましては、とりあえず県を通じまして約三千万円のつなぎ融資が支出されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/7
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008・長谷川保
○長谷川(保)委員 今の三崎の第十三光栄丸の件でありますが、新聞紙の報ずるところ、また三崎から直接陳情に参りましたところによりますと、入つて参りました光栄丸は魚、船体ともに相当ひどい放射能を持つておつたということで、魚につきましては沖合いに持つて参りまして廃棄処分にするということでございました。新聞によりますと昨日それをしたかたに伝えられておりますけれども、この十三光栄丸はどの程度の放射能を持つておつたのでしようか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/8
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009・楠本正康
○楠本政府委員 魚類につきましては、特にこの検査は慎重にいたしました。まず最初に船体をすつかり洗い落してから魚類の水揚げをいたしました。その結果検査をいたしましたところ、大体一〇%が百カウント以上の反応を示しました。なお個々のものにつきましても、他日賠償の関係等もありますので、すべて検査の結果は逐一資料として精査してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/9
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010・長谷川保
○長谷川(保)委員 船体も相当ひどい放射能を持つておつたということでありますが、その光栄丸でもつて魚を沖合いに捨てに行くということにつきまして、その船員諸君は非常に不安であつたようであります。これにつきまして人体に対します放射能の影響はそういう不安がない程度であつたかどうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/10
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011・楠本正康
○楠本政府委員 船員はただちに久里浜の国立病院に依頼をいたしまして健康診断を実施いたしております。第一回の検査によりますと、数名血液に若干心配される点があるということの報告を受けておりますが、なおこれらの点につきましては、さらに精密な検査を目下実施中であります。なおこれに関係いたしました医師の言によりますと、精密検査の結果はおそらく支障はあるまいということを申しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/11
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012・長谷川保
○長谷川(保)委員 船体の放射能については危険がない程度でしようか。その船でもつて捨てにやらされるということで、非常に不満であつたように現地の者から伺つておりますが、いかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/12
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013・楠本正康
○楠本政府委員 船体につきましては、船体の甲板等主として表面に位する部分につきましては、百五十あるいは三百というようなかなり強い放射能を示しました。しかしながらこれらはすべてよく水で洗うことによつてこれをなくすることができる見通しがつきました。そこでただちにこれらの船体は十分に洗滌をいたしまして、現在はすでに普通に使える船になつておるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/13
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014・長谷川保
○長谷川(保)委員 船室はどうでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/14
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015・楠本正康
○楠本政府委員 船室につきましては、これまた御指摘のように私どもが環境として許される限度以上の反応を示しました。そこで私どもといたしましては、ただちに久里浜病院にお願いして船員の健康診断を実施したわけでありますが、その結果は、幸いにも大した支障もないのではなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/15
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016・長谷川保
○長谷川(保)委員 船体にそういうような人体に悪影響のあります程度の危険な放射能があつたとすれば、それに対します十分な消毒がなされないならば、魚を沖合いに持つて行つて捨てるということは不可能であろうと思うのでありますが、それに対する処置は十分できておつたのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/16
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017・楠本正康
○楠本政府委員 これはただいまも申し上げましたように、洗滌を十分にすることによりまして、すでに現在支障のない程度に至つておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/17
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018・長谷川保
○長谷川(保)委員 地元の光栄丸関係、魚業協同組合関係の諸君に言わせますと、これが非常に不満であつたようであります。非常に心配をしておられたようであります。今後もこういう問題が起つて来るかと思いますが、これにつきましてはこの関係者が十分納得の行けるような親切な取扱いを深く望むものであります。
住吉丸という船がやはり何か被害があつたように新聞で伺つておりますが、これはいかがでありましようか。またこの第十三光栄丸及び住吉丸等は、新聞等によりますと、ビキニから一千マイルも雑れておるところにおつたようでありますが、さようでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/18
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019・楠本正康
○楠本政府委員 住吉丸はさらに検査を続けておりますが、今のところは、船体の外側に反能を示したのみと報告を受けております。なおしかし中の積荷その他につきましては目下検査を続けております。なおこれらの船の位置でありますが、これは海上保安庁の方とも連絡をいたしまして、どの辺の場所を通つたものか、目下いろいろ調査をいたしておりますが、実はいまだ確たる根拠を得ておりません。これは一千マイルといいあるいは五千マイルといい、その辺はいろいろでありますが、近日中に海上保安庁の方におきまして明らかにいたしたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/19
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020・長谷川保
○長谷川(保)委員 新聞紙の報ずるところによりましても、第五福竜丸の乗組船員のうち相当重態に陥つた者があるということでありますし、また私どもに直接東大の病院からのお話でありますと、白血球が二千になつた、非常に心配である、発表は、患者及びその家族のシヨツクを考えて、三千という数字を出しておるけれども、事実は二千になつた、非常に心配であるということを私ども伺つておるのでありますけれども、このことにつきまして、当局はどういうようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/20
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021・曽田長宗
○曽田政府委員 病人の症状につきましては、これの担当医としては、外部に発表することは非常にはばかる次第でございます。ただ概括的に申し上げますれば、一時白血球の減少がとどまる傾向を示したというような事実がございましたが、その後またさらに減少が進んでおる、こういうようなことで、この診療担当医は今非常に心配をしておるということは事実でございます。しかしこれが決定的に不幸な転帰をたどるかどうかということについては、主治医としては最善の処置をとつておりまして、一時的に減少を来しても、体内に侵入いたしました放射能あるいは放射性物質というようなものは幾分ずつは今のところ減少しておるわけでありますから、この白血球の減少がこの程度でとどまつて、すなわち今日の状況が最悪であつて、逐次回復に向うという見込みがないわけでもない。しかしながら今までの状況ではよほど注意をしなければならぬ状況にあるということは申し上げられるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/21
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022・長谷川保
○長谷川(保)委員 先般の都築博士の参考意見によりましても、白血球二千ということは死を意味するというようにお話があつたのであります。この事件によつてわれわれの同胞数名の者がもしそういうような運命に万一にもなりますならば、これは重大限りなき問題であります。私はもちろん米国の政府当局の責任も追究し、責任者の責任も十分に追究しなければなりませんけれども、しかし当面の問題として、われわれとしましてはこの同胞を救うということが大問題であります。今まで聞いたところによりますと、都築博士の意見から申しましても、研究と治療と相応じて交互に進ませて行かなければ完全な治療はできないというようなお話でありましたが、今まで私どもが委員会等で伺つたところによりますと、研究費は文部省で出しておるというようなお話もございましたが、文部省で出す研究費だけでは万全の治療はできないのではないか。そういう意味では、厚生省当局においても、その治療費等について船員保険以外に十分に処置しなければならぬ、こう思うのであります。あるいは研究費自体も厚生省で出さなければならぬのではないか。ことに予研等の関係もございますので、この方面の研究費を相当出さなければならぬのではないかと思います。先ごろの厚生大臣の御答弁にも、万全を期するというお話がありましたが、現在のところその研究費、治療費等を十分出されておるのでありましようか、また文部省の方からも出しておるのでしようか。承つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/22
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023・楠本正康
○楠本政府委員 最初に私から研究費の点を申し上げますが、研究費は東大病院あるいは国立病院関係等にも及んでおりますが、これらはすべて一括いたしまして原爆症調査研究協議会の予算として計上すべく目下準備を進めております。さしあたりは約五十万円の研究費を原爆症調査研究協議会に予備費として支出いたしまして、これをもつて研究を進めておる次第でであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/23
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024・長谷川保
○長谷川(保)委員 きわめて重大な段階に来ているようでありますから、万全の処置をゆるめることなくおとりいただきまして、この被災漁夫の諸君の生命を救い、またその損害等につきましてもすみやかなる対策を立てられてこの諸君が生活に困窮することのないように、これは国家の責任に当然帰すべきものであり、あるいはアメリカの責任に帰すべきものと思いますから、十分なる対策を進められるよう切望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/24
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025・福田昌子
○福田(昌)委員 関連してちよつと。
この被災されました漁夫の治療及び生活の保障の点でありますが、聞くところによりますと、治療においても船員保険を適用するということでありますが、ほんとうであるかどうか、伺つておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/25
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026・曽田長宗
○曽田政府委員 患者の診療費及び治療費、特に治療費でございますが、その経費及び被爆者及び被爆者の家族に対する生活費の補助でございます。この生活費補助の全般ということには当らないかもしれませんが、一応船員保険の傷病手当金というものに該当する。かようなものは一応船員保険から支出するということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/26
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027・福田昌子
○福田(昌)委員 実は私は、船員保険の傷病手当金に該当しないというお答えをお聞きいたしたかつたのでありますが、船員保険の適用ということをお伺いして、非常に遺憾に存じます。こういつた原爆によりまする症状というものは御承知のように、今日なお研究の課題であります。これは日本政府といたしましても、大きな観点から被災されました方々の治療費の補償というものは考えていただかなければならない問題であると思います。それを局部的な船員保険の適用をなさろうというそのお考えに対しまして、大きな御反省をお願いするのであります。今日研究の課題でもあり、そしてまたどのように新しい科学的な知識と大きな経費を要するかもしれない治療を控えている原爆症に対する治療でありまするから、これは大きな別の角度からお取上げ願うようこの際御反省願いたいと思います。
それから重ねてお伺いいたしたい点でありますが、広島の原爆に対しましてつくられましたアメリカ側のABCC研究所にかつて都築博士が日本側の代表として研究機関におられたわけであります。その当時はもちろん占領治下であつたためもありましたが、都築博士の貴重な原爆症に対しまする世界的な発表というものは、封鎖された状態にあつたわけであります。今日は一応ともかく独立国という形になつておりますから、今度ジユネーヴで開かれまする国際赤十字にも都築博士がお出かけになられて、この原爆症、ことにビキニの原爆症を取上げて御発表になるということを聞き及んでおります。私どもはこういう原爆症が政党的にあるいはまた思想的にまがつて利用されるということは、これは厳に慎まなければならないと思うのであります。しかし世界に類のない原爆症を受けた日本国民の生命肉体の保障の意味におきましても、私たちは医学的見地からこの原爆症なるものがいかに恐ろしいものであるかということを世界に訴える義務があると思います。これに対して厚生省の今日までの御態度というものは非常に消極的であつた。学問的な見地において世界に発表する上においても消極的であつたということにおいて、非常に遺憾に存じておつたわけであります。今後厚生当局におかれましては、こういつた学問的な研究を世界に向つて発表される機会に対して特別な御援助をいただきたいと思うのでありますが、これに対する心構えというものを承らしていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/27
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028・楠本正康
○楠本政府委員 占領下におきまするABCCの研究につきましては、若干御指摘のような点もあつたかに聞いております。しかしながら今回は日本の学者が自主的に研究する。これに対して米国側が協力をする。かような態勢を整えておりますので、御心配のような点はなかろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/28
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029・福田昌子
○福田(昌)委員 私ども御心配の点があつてはならないと思つて御質問申し上げたのでありますが、どうかこの点厳に御注意いただきまして、何も医学に国境があるわけじやありませんから、大きな見地に立つて原爆症を正々堂々の立場から、学問的な見地においてその実情を訴えるということは当然なさなければならない責務と思います。従つてこの点に対し、政府当局が卑屈でないように今後厳にお考え願いたいと思うわけであります。先ほど補償の問題をお伺いいたしましたが、治療に対しまする補償というものに対して、私は別の観点から、この原爆症に対する治療の補償というものを取上げていただきたいということを要望いたしましたが、重ねて船員の家族に対する補償は現実ただいまのところどういう形になつているか、この点承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/29
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030・楠本正康
○楠本政府委員 先ほど医務局長からもお答えを申し上げましたように、当初四箇月間は船員保険から生活費がまるまる支出いたされますので、とりあえずはこれによつて補償をいたして行く。ただしかしこれらはあくまでとりあえずの暫定的な措置でございまして、これらの家族援護等の問題に関しましては、目下先ほどもお答えいたしましたように、外務省の方におきまして資料をとりまとめております。私どもはこれらに関しましては手厚い何らかの形によるところのアメリカ側の支出がなされることを期待いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/30
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031・福田昌子
○福田(昌)委員 四箇月という期間は長いようでたちまちたつてしまいますが、大体その後の補償の概略はどういう見当がついておられるか。日米合同委員会もできているわけでありますから、それに対してどういうただいま申入れをしておつてどういう見当にあるかということをお知らせを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/31
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032・楠本正康
○楠本政府委員 これは四箇月間たちますれば当然何らか補償関係につきましては結論を得るものと期待をいたしております。もちろん全部の補償は先になるといたしましても、これは応急に二段構えで支出する予定でありますので、四箇月以内において何らか中間的な措置が講じられるものと期待いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/32
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033・福田昌子
○福田(昌)委員 この原爆症の起つて参りました原因は、何と申しましても今回の場合におきましては特にアメリカ側に大きな責任があるということを感ずるのであります。アメリカ側では第五福竜丸は危険区域内にあつたというような御発表もあつたように聞きますが、これに対しましては外務当局の厳重な、そしてまた強硬な態度をもつての交渉申入れというものを私どもは要望いたすわけでありますが、厚生省当局におきましてもどうか日本の立場というものを正々堂々と御主張いただきたいと思います。また一つには正しく日本の立場を主張することが、つまらない反米思想をあほらない一つの予防線にもなるわけでありますから、この点よくお考えになつて、卑屈にならない交渉というものでアメリカ側に折衝されることを要望いたします。
次に重ねてお伺いいたしたいのでありますが、放射能を受けましたまぐろその他の魚獲品を全部埋められてしまつたというふうに伺うのでありますが、なぜこれを研究機関においてお使いにならなかつたか。この点承らしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/33
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034・楠本正康
○楠本政府委員 これはサンプルとして研究材料は十分にとつてございます。何分にも何千貫何万貫というものでございますから、全部をとるわけに参りません。研究に支障ないだけの材料は十分にとつてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/34
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035・福田昌子
○福田(昌)委員 それでは補償の点なんかのこまかい点はもつとつつ込んでお伺いしたいと思いますが、私は関連質問ですから、あとに時間を保留さしていただき、いずれ機会をあらためてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/35
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036・小島徹三
○小島委員長 福田さんに申し上げますが、補償関係につきましては委員会でしばしば質疑がございましたから、委員会の記録をごらん願いたいと思います。
本日に予定されました消費生活協同組合法の一部を改正する法律案の討論及び採決は都合により次会に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/36
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037・小島徹三
○小島委員長 次に医薬関係審議会設置法案を議題とし、前会に引続き質疑を続行いたします。滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/37
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038・滝井義高
○滝井委員 一昨日以来の質問に引続いてやりたいと思います。
昨日医者の一箇月の平均的な稼働点数四千九百点ということについて久下局長に確認を求めたのでありますが、ちようどいなかつたので、速記を見たら大体はつきりいたしました。大体四千九百点の答弁をしているようでございます。すなわち総経費は医者が一箇月に通常の場合働くであろうといういわゆる稼働点数というもの、これが四千九百点ほどでございますが、それの四千九百点で除して得ましたものが平均の単価になつているわけでございます、とあります答弁を岡委員の質問に対してやつておりますが、大体四千九百点間違いないようでございます。そこで昨日からの質問を続行いたしますが、一昨日の医務局長の御答弁で大体四万ないし五万が医者の収入である、こういうことでございました。そこで問題は、四万ないし五万というこの現実の数字というものが医薬分業を実施した場合に、医務局長は上ると思うか、下ると思うか、あるいは意識的にこれから上げないでやつて行くつむりであるか、こういうことなんです。それで昨日以来福田さんと局長との間の問答を客観的に観察しておりますと、どうも厚生当局においては、国民的な重大な問題であるこの医薬分業を、真摯な態度で解決しようとする迫力に欠けておるきらいがあります。従つて私は熱心にいろいろ研究した結果の御質問をいたすのでありますから、局長の方におかれても、ほんとうに国民的な医療を厚生当局が責任をもつて解決するのだという真摯な態度でお答えをしていただきたいことを前もつてお願いして、今の御答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/38
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039・曽田長宗
○曽田政府委員 前にも再々お話を申し上げましたように、私どもは現状の把握にまず努めておるわけでありまして、現状につきましても今いろいろ詳細な分析を進めておる最中でございますけれども
、大体の見当としてはどれくらいの額が今日の開業医師の平均収入と考えられるかということで申し上げたのであります。私ども、医薬分業をいたしました後にどういう姿が現われて来るかということにつきましては、一応医薬分業をやつたことそれ自身では、医療費の増額、変化はあまり生じないような姿に持つて行き得るものというふうに考えておるのでありまして、昨日もいろいろ御質問がございました、いわゆる医師の今日の収入がこれで妥当であるかどうか、あるいはこれを幾分なり増額する要があるのではないかというようなことにつきましては、これはまた医薬分業の問題それ自身とは別個の問題として考えて参る、医薬分業としては大体現状に変化を来さないで分業ということができる。そうして医師は診療に従い、薬剤師は調剤に当るという原則を実施することが可能であるというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/39
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040・滝井義高
○滝井委員 そうなりますと、先般来続けて来た論議とは大分また的がはずれて来た。この前は、千五百億の国民医療費、これを一応確認して、その土台の上に立つて議論を進めて来ておるわけです。ところがその千五百億から出て来たものが四万ないし五万、こういうことなんです。大体医薬分業というものは、国民所得を基礎にしてやることが、あくまでも医薬分業の基本的な線でなくちやならぬ。ところがその国民所得を基礎にしてだんだん積み上げて来た数字として、医者の実収入四万ないし五万というものが出ておるわけです。従つて局長は医薬分業とそれとはまつたく別個でございますということになれば、一体この医薬分業は何を基礎としてやられるつもりなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/40
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041・曽田長宗
○曽田政府委員 国民の医療費負担はどの程度が限度か、あるいは一応の目標としていかようなものを予想するかということについては、前に御質問があり、それに対して御答弁申し上げた通りであります。もちろんこの国民所得というものも年々増額しておるのであります。そういうような意味から、この実際の金額は当然動いて行くのであります。また今日でも、御承知のように社会保険に対する範囲の拡張とふ、あるいは国庫からの補助とかいうような方策がいろいろとられておるのでありまして、この医療費は、医薬分業とは無関係といたしましても、幾分ずつは増額をしておるわけであります。この点は先般も一応お答え申し上げました通り、大体三%程度を目標としておるというふうに申し上げたのでありますが、これがさらに若干の増額と申しましても、これは三・〇一になるか、三・一になるかというようなところは、今まで申し上げた通り三%というのが大体の基準というふうに考えてわるのでありますから、そこにはかなりな弾力性と申しますか、そういうものはあると私ども考えておるのであります。今申し上げましたように、医薬分業それ自身というものは、医薬費の国民負担というものに大きな影響はない、また影響のないように分離することが可能であるという考え方を持つておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/41
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042・滝井義高
○滝井委員 医薬分業によつて医療費の増額なり、あるいは変化がないということが、これが今も大前提になつた。そうしますと、分業によつて医療費に変化がないということになりますならば、一応その前提に立つた場合に、今度は四万ないし五万の現実というものはどうなるのかということです。それでは実収入の四万ないし五万というものは上るのか下るのか、上りも下りもしないならば、そのままあくまでも力でもつてすえ置くつもりなのか、そのうちの三つのどれかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/42
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043・曽田長宗
○曽田政府委員 医薬分業をした場合に医師の収入がふえるか減るかということのお尋ねだと思うのでありますが、この問題につきましては今検討いたしておるわけであります。私どもとしましては大きな影響はないのではないかというふうに考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/43
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044・滝井義高
○滝井委員 大きな影響がないということ、これは現実論です。そうしますと、今度は専門技術者としての生活をするためには、四万ないし五万というものが適当であるかどうかということが第二の問題になつて来るわけです。現在は医者は薬を売つているから専門技術者の立場ではない。歯科医師は金を売つているから専門技術者の立場ではない。薬剤師は熊の胆を売つておるから専門技術者の立場ではない。従つてこれは医薬分業をして専門技術者の立場を確保してやらなければならない。そのために現在の状態ではいかぬというのだから、当然収入は減るかふえるかして行かなければならない。現状のままではおかしなことになる。現状のままならばやる必要はない。これでいい。ところが専門技術者として尊重されていないというので、サムスがやつて来たときに、日本はおかしな国だ、歯医者は金を売つているし、薬剤師は小間物屋の番頭のように熊の胆を売つておる。一般国民から見て専門技術者として尊重される必要がある。あまりぐずぐずしておると、第三者が医薬分業をやりますぞとサムスから短刀を突きつけられて、お互いがあわててやつたわけです。だから専門技術者として尊重されるならば、四万ないし五万から幾分上るか下るか、そこに変化が来るのが当然です。それがサムスの言葉の中には前提としてあるわけです。従つて専門技術者としてはどうなるかということです。これが一番ポイントです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/44
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045・曽田長宗
○曽田政府委員 専門技術者として世間から尊重されるということは、全然無関係とは申しませんけれども、その仕事に対する報酬が上るということとは、必ずしも関係づけられなければならぬという筋でもないのではないかと思うのであります。むしろ医薬分業のねらいますところは、別に医師の収入が上るということが目標となつているわけではないと思うのであります。あくまでも、医師が自分の専門とする診療以外にいろいろな雑務をやつているというようなことから解放されて、ほんとうに自分の担当する診療業務に専念できるというようなことにおいてよりよき診療ができる、従つてまた国民の信望も集め、また十分に尊敬されることになるというのでありまして、それに伴つて待遇等も改善されますればけつこうなことでありますけれども、これは必ずしも物質的に待遇の改善が行われるということと同意義のものではないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/45
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046・滝井義高
○滝井委員 筋はその通りでございますが、しからばなぜ検討中と言わずに、われわれは四ないし五万の線でやりますと——もう十箇月しかないのですから、これは医者にしても歯科医師にしても薬剤師にしても国民にしても、われわれにすれば何も医者や薬剤師はどうでもいいのです、今の段階では、これは国民の段階に来ているわけです。医者なり薬剤師の収入が上るということになるならば、われわれ国民の負担がふえるということですから、だからそれなら四万ないし五万で行きます、これによつて専門技術者の立場が尊重されると、検討中なんというあいまいなことでなく、今の言葉でけつこうだと思いますが断定したらどうですか。断定できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/46
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047・曽田長宗
○曽田政府委員 今までの予備的な計数の整理ということをやつております限りにおきましては、この影響はきわめてわずかなものというふうに考えております。ほとんど影響がないというふうに申し上げてもいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/47
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048・滝井義高
○滝井委員 しからばお尋ねしますが、最初に申しましたように大体稼動点数が四千九百点ですね。サムスはあの医薬分業を勧告するときに、重大な発言をしている。少くとも医者の報酬というものは、いろいろの資料に基いて彼がやつた結諭ですが、少くとも勤労者の標準報酬の五倍が妥当だろう、こう言つたわけです。それは局長、その通りお認めになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/48
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049・曽田長宗
○曽田政府委員 これはサムスが言うたということは認めるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/49
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050・滝井義高
○滝井委員 まあサムスが言つたことが妥当かどうかということはなお検討いたしますが、一応サムスの言つたことが妥当であろうという認定は立ちましてちよつと議論を進めてみますと、昭和二十七年を基礎にされたと思いますが、このときの平均労働賃金というものは、一番確実なものをとれば人事院の勧告だと思いますが、その人事院の勧告に基いて国会の決定したものをとれば、議論をするのに一番わかりやすいと思う。そうすると昭和二十七年の国会の人事院勧告に対する決定は一万二千八百二十円です。一万二千八百二十円の五倍というと六万四千百円、これが大体医者の実収入——サムスは実収入を五倍と見ておるわけですから、これが医者の実収入ということになる。そうしますと、これから今度は局長の言われた数字で、医者のいわゆる収入——実収入に経費を加えたものですね、その収入に逆算をしてみますと、これはさいぜん私から念を押しましたように、いわゆる千五百億の内訳が大事になつて来るのです。千五百億の中の六割というものが社会保険を含む公的なもの、それから四割は一般的なものだ、こういう形なんですから、社会保険は四千九百点、すなわち五万六千三百五十円ですから、これから逆算をして行きますと医者の総収入は、昭和二十七年では大体九万三千円となる。九万三千円を、六〇%の五万六千円の公的な社会保険等の収入と、四割の一般収入三万七千円と、こうわける。これを今度は、いわゆる実質的な医者の収入というものは、税金が一番現在この実質収入を見るのに確実な資料だと思いますが、そうすると社会保険が二十七年は総収入に対して三割を所得と見、一般診療は大体五割を所得と見ています。それを見て行きますと、五万六千円の社会保険が一万六千八百円、それから一般収入の三万七千円が一万八千五百円、合せますと三万五千三百円というのが医者の実収入になるのです。そうしますと、サムスの言つた五倍、六万四千百円に比べて約半分だということになつてしまう。サムスは専門技術者としては勤労者の標準労働賃金の五倍ぐらいだと言つている。ところがあなたの方は大体四万、五万ぐらいでいいだろう。これは非常に大きな開きが出て来ると思うのです。
もう一つ、これはマクロスコーピツシユに話して来たのですが、今度はミクロスコーピツシユに入つて行きますが、こういうように非常な開きがある。医薬分業はサムスの力によつてできたということは、何人も否定することはできない。サムスは全日本の資料を一手に握つて結論を出しているのだから、その前に有無を言わさずにその結論に基いてやつているということは現実なんです。だからサムスの発言の資料というものは、日本の医薬分業制度を論議する上においては、絶対見のがしてはならない重要な資料なんです。あれを無視して日本の医薬分業は論議することができないというくらい重要な資料だ。そうしますと、この開きがあまりに大きいようでありますが、こういうことで局長はちつともさしつかえない、やはり四ないし五でわれわれは勇往邁進せんとするという決意があるのか、その点をひとつ御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/50
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051・曽田長宗
○曽田政府委員 今しきりにサムスの言あるいはサムスの資料ということを言われますが、私どもといたしましては、サムスから基本的な方針というものは授けられたと思いますけれども、さような個々の点についてまでサムスの意見に従つたものというふうには、私今日においても了解しておらぬのであります。サムスは五倍ぐらいに持つて行けたら適当でないかという意見を述べたかとも思いますけれども、しかしそれは日本の現状としては、必ずしもさように行つておらない。もちろん日本の現状というものが好もしい姿であるかどうかということについては、また別個の問題と思いますけれども、さような意味で、しからば日本の医師の実収入というものをどの辺に持つて行くかというようなことにつきましては、これはあくまでも国民の経済状態というものとにらみ合せて決定されて行くべきものだと思うのであります。従つて私は、サムスが一般の勤労収入の五倍だということを言つたといいましても、私どもは必ずしもそれにとらわれる必要はないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/51
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052・滝井義高
○滝井委員 とらわれる必要はないが、重要な参考資料であるということを私は申している。従つてサムスの言つた重要な参考資料と——あなたの方もこれはあくまで四万ないし五万というのも、非常に不確定な要素に立つている、私が調べたところでは医者の所得というものは、産婆、あんまも入れて二百十二億しかない。これは私は国税庁へ行つて調査して来た。あなたの方と相当開きがある。同じ政府の中の厚生省の認定で行けばこれは七百億ないし七百五十億の四割とすれば三百億ないし三百五十億、ところが大蔵省の国税庁に行つてみると、あんまと産婆さんの収入を入れて二百十二億、すなわちあなたの方は五万、これは六万五千六百八十一人、だから百五十億違うのです。こういう一つの政府の中の大蔵省と厚生省の資料でも、百億ないし百五十億の開きがあるのだから、きわめて不確定な要素の上に立つているわけです。だからこれはあなたの方も私は参考にし、サムスの方も参考として話を進めておる。従つてこの二つの、一方は倍、一方はその半分というような、こういうものは一体どういうところに折合えばいいのか。あなたの方は検討中だと言うけれども、絶対に四ないし五を動かぬというのか、それともサムスの方ももう少し検討の余地があつて上る可能性があるというのか、もう少しその点について具体的に説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/52
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053・曽田長宗
○曽田政府委員 こんなことを申し上げるのはどうかと思うのでございますけれども、税金の基礎になります収入というようなものは、なかなか実情を反映しかねる事情があるのではないかというふうに思うのでありまして、むしろその意味におきましては、私どもは国税庁の算定よりはむしろ私どもの方がより真実に近いというふうに考えておるのでありますけれども、しかしもつと収入があるはずだから、税金をもつととるべきだというふうには必ずしも言えないかもしれませんけれども、むしろその辺のところは皆様方もよく御事情おわかりだと思うのでありまして、その食い違いは私はそういうふうなところから出ておるものと思つております。それからもう一つ、私どもの方の数字も、これは必ずしも確実とは言えないと申しましたのは、一つの計算方法としてかような数字が出て来るということを申しましたので、あるいは次にいろいろ御質問があるのかもしれませんけれども、別の方法で大体の医師が何人くらい患者を見て、どれくらいの、保険でいいますならば稼働点数を得ておるかというようなことから逆に計算して行きますと、また幾分別の数字が出て来るのであります。さような計算で行きますと、四万ないし五万と申しましたよりもちよつと下まわるかと思うのでありますが、それを両方考えますれば、大体四万程度というふうに見られるのではないか、かようないろいろな計算を引比べ、またそのおのおのの計算の違います基礎の資料をさらに検討してみるということを、今やつておるのであります。大体初めに四、五万というふうに申し上げたのは、一応の考え方を整理してみる数字としては、事実からそれほど遠いものではないというふうに私どもは考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/53
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054・滝井義高
○滝井委員 それならば、あなたの方のこの四万というものを一応私は認めて論を進めますが、この四万というのが一箇月における医師一人の技術報酬だ、こういうふうに考えてさしつかえありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/54
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055・曽田長宗
○曽田政府委員 二十七年度の現状としてはさようであるというふうな考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/55
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056・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、この臨時診療報酬調査会の答申における総技術報酬すなわちシグマGというのは、これは四万かけるの医師の数、これが総技術報酬、こう考えてさしつかえありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/56
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057・曽田長宗
○曽田政府委員 これは前にも御説明申し上げましたように、大体診療所の医師の収入でございます。このほかに病院の方はいわゆる俸給生活をやつておりますために、これよりはかなり下つて来る、それをどのくらいに推定するか、これも推定の方法としていろいろございますが、私ども大体平均二万程度ではないかというふうに思つております。そういうふうに診療所と病院の方と両方から計算して参れば、今申されたいわゆる全国の医師の技術料というものが出て来ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/57
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058・滝井義高
○滝井委員 大体わかりました。それじや次は薬剤師の技術料ですが、これはどういう基礎のもとに——これは今まで全然手がかりがないわけですね、あつても社会保険のような厖大な実績がないわけです。今まで熊の胆を売つておつた薬剤師が、新しい分業の形態によつて技術料の評価をしなければならない段階が来ている。この薬剤師の技術料はどういう方法で評価せられるのか。専門技術者としての生活を営むに足る薬剤師の技術料の出し方、これをひとつ御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/58
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059・曽田長宗
○曽田政府委員 それでは私どもの方で検討いたしました限りにおいて申しますれば、私どもの資料としてはこの薬剤師の——薬剤師と申しましても全部の薬局、薬剤師をとるわけにも行きませんので、あるいは薬務局の方にさような資料があるかと思いますが、私どもとしては、病院におきましてこの薬剤の調剤数がわかつておるわけであります。それに対して薬剤師の総俸給でありますが、こういうものと引比べた場合に、一剤当りどれくらいの薬剤師の俸給になつているかということが出て参るのであります。これもいろいろ病院の種類ですとか、あるいは時期等によつてかなりな差があるのでありまして、一概には申しかねると思いますが、さような方法である程度の推定はできるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/59
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060・滝井義高
○滝井委員 私寡聞ですが、薬剤師の技術料というものは新しく観念ですね。従つて大体そういう新しい観念の技術料を今のような俸給と、それからその薬剤師が調剤をするであろう回数その他を考えて、大体どの程度——月に医者は四万、サラリーマンの医者は二万、こう出たわけですけれども、それと同じような形態で月にどのくらい見ているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/60
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061・曽田長宗
○曽田政府委員 今申し上げましたような資料しか私どもの方にございませんので、結局病院に勤めておる薬剤師の平均俸給という程度のことしかわかりません。いわゆる自分で薬局を設けております薬剤師というものをとつた場合には、少くとも私どもの方の資料としてはちよつと見当つきかねるというような状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/61
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062・滝井義高
○滝井委員 あなたの方でわかつておるそのサラリーマンの薬剤師の方でけつこうです。そのほかの一般の開業をしておる薬局の技術料というもの、これが今度の医薬分業の一番ポイントなんですから、それがどうもわからぬというのでは困る。これはぜひはつきりひとつ薬務局長から御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/62
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063・高田正巳
○高田政府委員 薬剤師の技術料についての御質問でありますが、基本的な考え方といたしましては、御引例の臨時診療報酬調査会の答申にございますように、調剤に対する技術料も専門的技術に対する報酬であるが、各調剤行為の技術指数は、便宜上一律としてもさしつかえない、こういうふうなことになつておりますので、基本的にはこの線で技術料を考えて参りたい、かように考えております。
〔委員長退席、青柳委員長代理店席〕
それで、しからば一体どのくらいに考えておるのかということでございますが、まず考え方の基本といたしましては、滝井先生しばしば御指摘のようにこの分業をやることによりまして、国民の総医療費に非常な影響を及ぼすようなことは避けなければならぬ、こういうふうな観点からものを考えて参つておるわけであります。しからば一体現在の薬剤師の技術料というふうなものがどうなつておるか、現状把握ということに相なるわけでございますが、その点につきましては、今医務局長がお話になりましたように、病院の薬剤師の技術料というものに当るべきものと思われる報酬というようなものはわかつております。しかしながら一般の開局薬剤師につきましては、御承知のように今日処方箋によつて調剤をいたしておる薬局が非常に少うございます。さような関係から、現在あります程度のものにつきまして、若干の調査を進めておりますけれども、資料的な価値が非常に少うございます。従いまして、あくまでも現在病院に働いておる薬剤師の技術師の技術料と認めらるべき性質のようなものを主たる材料にいたしまして、そうして国民の総医療費に影響を及ぼさないという大前提をその制約といたしまして、適当にきめて参りたい。その考え方としては最初申し上げましたように、臨時診療報酬審議会の答申の線を基本的に守つて参りたい、かようなつもりでおるわけでございます。
なおちようど私の発言の機会でございますので、一昨日滝井先生から医薬品の生産額についての御質問がございまして、私資料なしに答えました数字が、若干間違つておりましたので、訂正をさしていただきたいと思います。統計が昭和二十七年暦年の統計でございませんで、昭和二十七年度の統計になつておりますが、総生産高は、億以下は切り捨てて申し上げますと、六百二十八億ということになつております。内訳といたしまして、薬局方の収載医薬品が百七十三億、国民医薬品集の収載医薬品が十三億、それから公定書外の医薬品が三百二十億、それからいわゆる家庭薬と称するものが百十九億、以上六百二十八億ということに相なります。訂正させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/63
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064・滝井義高
○滝井委員 どうも今の薬務局長の御答弁も、医務局長の御答弁も——医者の方は四万、二万と出たわけなんであります。ところが医薬分業をやるのにもう一つの相手方の薬剤師の技術がどうなるかということ、これはわれわれ国民にとつては重大関心事なんです。医者の方は四万、二万と出たけれども、薬剤師の方がまるつきり出ないのでは、これから話の進めて行きようがないのです。従つて何とか腰だめ的な数字を——三日かかつて医者が四万、二万と出たのですが、また薬剤師の方が今から三日かかるのでは困るので、何とかきようあたりひとつ出してもつつて、次の議論を進めたいと思います。サラリーマンのところと開局者の方と、大よそのところでけつこうです。開局者の方は資料のないことは私もわかつておるのです。ないことがわかつているから、新しい、技術の——日本は無形の技術に対する報酬を支払つた習慣というものがないのです。今後は無形の技術を経済的な価値で見積らなければならぬところにこの問題のむずかしさがあるので、従つてこれは医者の方は何らかの形で今まで実績があるが、薬剤師の方は実蹟がない。その実績のない無形の技術に対して、ここに経済的な価値を当てはめなければならないところに、薬剤の方の技術上のむずかしさがあるということなんです。しかしむずかしいからといつて、このまま放置しておいては分業の実施がますます遅れるばかりですから、ここらあたりでおよそのものを出してもらわなければならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/64
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065・曽田長宗
○曽田政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもの資料によりまして、病院薬剤師の収入がどれくらいになつているかということは、これは資料がございますので、資料の検討ということは別問題といたしまして、今持つている資料に基いてどれくらいになつているかということはお答え申し上げられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/65
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066・滝井義高
○滝井委員 一番大事なポイントがぼやけておりますので、どうも質問がしにくいのですが、これもこの法案が現在時期尚早であるという具体的な一つの事実になつたようでありますから、先に進みましよう。
そこで今まで主として大きくマクロスコーピツシユに論議して来ましたが、今度は今までの大きな立場に立つて具体的に小さく論議を進めてみたいと思います。
まずわれわれが現在治療している患者の状態を見ると、健康保険においても一般の診療においても、大体かぜか胃病というのが多いのです。もちろん健康保険の四割というのは結核の長いもので占められておりますが、大体ありふれた治療というものが多い。ありふれた治療の場合においてわれわれの現在の治療の形態から医薬分業の形態に入つた場合に、医療費が上るか下るかということが、当面われわれがポイントを置いて論議をしなければならぬ重大なところだと思います。私は医薬分業をやれば医療費が上るという確信を持つております。サムスは一ないし三%上るということを言明していました。サムスは二十五年の二月二十七日であつたかと思いますが、彼は日本のすべての資料に基いて一ないし三%上ると言つたが、私はおそらくその一と三の下に零がつくのではないか、一〇%ないし三〇%上るじやないかと思つております。なぜ私がそのような確信を持つたかということを具体的に申し上げながらお聞きして行きます。まず私たちが現在の健康保険で、普通の軽い気管支炎で患者が来たとします。こういうものは二、三回来ればなおるわけです。従つて二、三回来た場合を具体的に考えて、現在の状態から医薬分業に変化した場合を——一応今までの局長の論議は現状を基礎にして言つたわけですから、私も現状をそのまま基礎にして考えてみます。まず患者がやつて来ますと、この患者を見て、気管支炎だというので四点の皮下注射をやつたとします。そうすると来た一日目に患者から初診療を四点もらいます。それから二日分薬をやるのが慣例でありますから、二日分の薬が四点であります。それから皮下注射、ムルチンか何か一番普通のかぜの注射を健康保険でやりますから、それで四点、第一日に十二点。第二回目に来た場合には、これは初診療はとりません、なお幾分ラツセルがあつたということで同じような投薬で四点、皮下注射が四点、これで二回目は八点、第三回目に来た場合に注射の必要はない、投薬だけして帰してやる、これが四点。これでこの患者はなおつたとします。こういう場合が大体普通の場合、またしろうとにもわかりやすい論議の仕方だと思います。そこでそういう第一回、第二回通院、第三回通院という三回を合してみると、結局第一回目に十二点、第二回目に来たときに八点、第三回目が四点、計二十四点となる。ところがこれを今度現在の状態で医薬分業をやつたとしますとどういうことになるかというと、まず初診療はそのままの現状、それから注射もこのままの現状、そうすると問題になるのは薬の四点ですが、四点の二日分で話をするとむずかしくなるので、一日分の二点でやりますが、現在の健康保険の乙地区の十一円五十銭で考えてみると、一日分が二十三円、——今までの大きな百五十億の論議を医薬分業の二十三円に限定して論議して行くと問題が割合に解明しやすいと思いますから、一日の薬代二十三円を中心にして論議をしてみますと、大体において医薬分業で薬局に行くであろう分というものは大体薬代だけだと思いますが、これで四点だけが全部薬局に行つたとします。そうすると第一回目に来たときに四点薬局に行くのであります。第二回目に来たときも四点が全部薬局に行きます。第三回目の四点も全部行つてしまう。そうすると十二点だけが薬局に行くのであります。従つて総額二十四点から十二点だけが薬局に行くから医者のところには半分の十二点が残る。ところが医薬分業をやつたために、現状のままで今度は医者の方に入つて来るものが当然出て来るわけです。どういうものが出て来るかというとまず第一日に出て来るものは処方箋を交付しますから、処方箋はおそらく第一回目に来たときに一回やつて一番最後には熱が下るであろう、こういうことが考えられますので、いわゆる処方がかわります。そうするとこの六病日に二回の処方箋が出るとすれば、それで十点ふえます。十点ふえて、一番最後の第三回目に病院に通院して来たときには投薬は薬剤師の方にやつてしまつたから、四点は医者の方に残るのは投薬も注射も何もないのですが、再診料が現在の規定で二点医者に入つて来ます。そうしますと、医者の方から薬剤師に全部投薬をそのまま四点やつて、十二点出て行つたが、処方箋二回十点と、それから再診料二点が入つて来たから、これは差引医者は損も得もない。一応あなたの言われる四万ないし五万という現状が保つているわけなのです。ところが問題は今度は薬剤師なのです。現在薬剤師の発表しておる資料によれば、調剤料は七円だ、こう言つているのです。これは薬剤師が七円なら妥当だ、こう言つているのだから間違いないと思います。そうなるとまず第一回目に、今度は患者が多く支払わなければならないものは調剤料の七円です。もう医者については差引何もないのですから、現状においては差引医者の方には二十四点入つて来ます。ところが今度は、患者が医者に二十四点だけの二百七十六円払つたが、今度は薬局に行つて金を払わなければならない場合が出て来るのです。まず第一回目の調剤料が七円、第二回目に七円出て来、第三回目に七円出て来ますが、そのほかに出て来るものはいわゆる技術料、これを七円としても、なおそのほかにいわゆる人件費と所要経費であるところのN二とM二が入つて来るわけです。従つてN二プラスM二をアルフアーならアルフアーで現わすとすれば、少くとも七円プラス、アルフアーの三倍だけの金がふえて来ることになる。これはきわめてわかりやすい現状なのです。これはおそらく局長おわかりだろうと思う。私は今のままの姿で行つて、現在の百五十億のおくから出さないとするならば、減るところはどこかというと、注射料を減らす以外にないと思うのです。こういう結論になつて来るわけです。あるいは薬剤師の中のN二、M二というものは薬剤師は今まで通り小間物屋でネクタイを売つたりおしろいを売つたりしておるからその分でやつてください。薬の方にはN二M二は持つて来てもらつては困る、人件費というものは調剤の上には持つて来てもらつては困る、いわゆる注射の方で削るか薬剤師の方の人件費、所要経費で削る以外にない、百五十億というものはどうしても外のわくになる、だからサムスでさえも一%ないし三%増加すると言つておる。これに対して私の説明ではそうでない。こういうところに何かもつとうんと減るものがある、それは間違つておるというものがあればお聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/66
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067・曽田長宗
○曽田政府委員 今のような具体的な事例についていかようなことが起るかというようなことを私どものところでも検討いたしたいというふうに考えておるのであります。的確な数字は再々申し上げましたように、私ども今後さらに検討しなければならぬわけでありますが、考え方を申し上げますならば、今先生がおあげになりましたような事例をとつて来るということになりますと、第一回目に四点の初診料、それから注射と投薬、第二回のときには初診料はなくなつて注射と投薬だけだ、三回目のときには投薬だけだつたというできるだけ簡単な例をおあげになつたのであります。
私どもの今考えております一つの案、これも一つの例としておとりを願いたいと思いますが、一番簡単なやり方を考えますれば、薬剤料の四点というのを医師に支払わるべきものと薬局へ支払わるべきものとにわけて行くという考え方なんであります。これもわかるように申しますれば、これは少し医師の方が歩が悪いかと思いますけれども、四点のうち一点を医師の診察料と申しますかあるいは——処方箋料というのは、この前にも処方箋というものではとらぬというふうに申し上げておるようでありますが、たとえば処方料というような形で残します。いずれにしても現在の薬価の中から医師の技術料の部分を抜く、そうしてあとの三点なら三点のうち二点が実際の薬の値段あるいはそれに要しますいろいろな経費、そのほかの経費、そうして一点なら一点を薬剤師の調剤技術料とするというようなぐあいにわけて行く、今は医師と薬剤師を同じに見ましたからここに不合理がございますが、その不合理があるならば医師が二点半で、薬剤師の調剤料に半点というふうにわけて行くというふうな考え方にいたしますれば、この医療費の総額というものはかわつて行かないというふうに思つております。ただ医師の診察料というものを初めからおしまいまで同じに見て行くか、あるいはこの初診料というものも中に入れて、あわせて初診料を、たとえば六点なら六点というようにし、あるいは七点なら七点というふうに見て、再診料は一点とか二点とかいうふうにきめて行くというようなところにまた次の考え方があるわけであります。簡単に考えますれば、今の薬治料を薬局で支払うべきものと医師の診療技術料として支払うものとにわける、そのわけ方をいかにしてわけるのが最も公平であるか適正であるかを吟味して行きたいという考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/67
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068・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、現在処方箋料四点というものは御破算にして、そうして処方箋料を今での四点の中に、一点として入れて行く、そういう考え方ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/68
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069・曽田長宗
○曽田政府委員 これは御承知のように、今の処方箋料と申しますか、これは保険の方で、今お尋ねがあつたのでありますが、新しい医薬分業が行われたときに、保険の点数をどういうふうにして行くかということは、これはまた保険の担当局におきましていろいろ吟味して狂かなければならぬ。従つて私は、この四点というのも、再考される余地があるのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/69
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070・滝井義高
○滝井委員 どうも、立論の根拠が、いよいよ大事なところに来るとあなた方はかえて行くのです。初めは国民所得を基礎に置いて、そうして国民の医療費負担能力、しかもそれは健康保険と一般収入とにわけて、こう話を進めて来て、そして日本の医療費の中で六割という過半数を占めておる保険を基礎にして論議を進めて行くと、それはまた保険はそのときは別で、保険局だと言う。大体日本の医療行政というものは、保険とあなたの方が一本になつてやるのが日本の医療行政なんです。ところがどうも大事な保険料のことになつて来ると、それは私の方は知らない、保険局長だと言う。それならば保険局長を呼んで答弁さしてください。同じ政府の中じやないですか。同じ吉田内閣のいわゆる厚生省じやないですか。吉田内閣の一貫した医薬分業の政策というものが出て来ずに、それは保険局、これは医務局の所管だと言つてちよん切つて答弁しておるから、われわれは一体どこを信ずればいいのかわからない。大蔵省の方は間違つておる、厚生省の方がほんとうでございますというのでは、われわれはどこを信頼したらいいのですか。政府の中で統一して、少くともこういう重大な、国民の生命に関する問題、あるいは国民に重大な財政的な負担を与える問題は、一本に統一してやつてもらいたいと思うのですが、委員長今のような答弁ではだめです。保険は別だからそれは保険の方にやつてくれというような答弁ではまるきりだめです。処方箋の問題だつて、一番大事なことです。それがはつきりした答弁ができずに、処方箋は医務局の方でやらずに、これは保険局でやりますということになれば、大体われわれはどこを基礎に置いて論議したらいいのですか。論議がちつともできないじやないですか。こういうことでは、こういう大事な法案は——われわれは少くとも医薬分業に反対ではありません。医薬分業をむしろわれわれが促進しておるようなものです。問題は勤労大衆、現在日本の国民のほとんど半分以上は健康保険やその他の社会保険によつて健康が守られておる。従つてこの論議の過程を通じて健康保険に重大な影響を及ぼすであろうというのが、私たち社会党の心配なんです。従つてもし医療費が上るとするならば、上つた分については——すでに厚生年金の問題についても論議済みである、労使お互いに相対立して、保険料を上げればどうにもならぬということで、社会保険審議会の答申案をけつて、厚生当局は厚案を出して来ておる。現在国民の保険料の負担というものは限界に来ておる。従つてもし医薬分業によつて、社会保険あるいは国の財政に重大な影響を及ぼす段階に来たときに、それは国民の負担でなくして、国がみずからの負担でやるかどうかうということが、私たちが最後に念を押すことなんです。ところがそういう最後にふえるかふえないかということさえわからずに、こういう大事な法案をそのままうのみにするということは、国会議員として良心的に考えてできない。もはや問題は医師と薬剤師の問題ではなくして、私たち八千六百万国民の命にかかわる、あるいは財政負担にかかおる重大な問題として登場して来ておるのですから、その観点から論議を進めるとすれば、少くとも内閣自体のうちで一本にし、統一したものがここに出て来なければならぬと私は思う。答弁が行き詰まつて苦しくなれば、お互いに薬務局と医務局が譲り合う、あるいは医務局と保険局が譲り合うという型、あるいは医務局と大蔵省が譲り合うという型ではどうにもならない。私は大蔵省に行つて日本の製薬業のいわゆる総収入が幾らあるかということを調べたけれども、大蔵省には資料はありません。製薬業に対する資料もなければ、薬局に対する課税の標準の資料もないのです。こういう状態が現在の日本の状態です。そういうあやふやな統計のもとにおいてこういう重大な問題が決定されるということは、日本の現実にとつてわれわれは悲しまなければならぬことである。あなた方はもつと真剣な、真摯な態度でこの問題を論議してもらいたいと私は思う。われわれは乏しい資料の中からできる限りつづみを合せて、あなた方に調子を合せながら論議を進めて行つておるのですが、大事なポイントになつて来ると、あなたの方から調子をそらせるという形では、とてもこの法案の審議を、いくら委員長が来週月曜日に採決しようといつても採決できません。あらためてもう一回、これは自由党の方も、よく厚生大臣に御相談をせられて、正確な資料を出してもらいたい。これはみなさんおそらく全部の委員の方がそうだと思う。こういうあやふやな今までの答弁では、とてもわれわれは審議はできません。採決をやられるのはかつてですが、ひとつ責任をもつて委員長から大臣に言つて、責任のある資料と責任のある答弁の統一ができるようにしていただきたいということを要望いたしまして私の質問はきようは打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/70
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071・青柳一郎
○青柳委員長代理 ただいまの処方箋に関する質問について政府当局から御答弁がありますれば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/71
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072・曽田長宗
○曽田政府委員 ちよつとつけ加えさせていただきたいのでありますが、私の申したことに多少誤解がありたかと思うのでありますが、医薬分業が行われた場合に、この処方箋料をどういうふうにかえて行くかということについて、これは保険局の方でまたお考え願わねばならぬ問題だということを私が申しましたのが、いかにも責任を転嫁して私は知らぬ、ただ保険局が適当にきめるのだからというふうにおとりくださつたとすれば、私の言葉が足らぬのでありまして、この問題については保険局と私どもの方も一緒になつてよく検討いたしまして、そうしてこの点は再検討を必要とするということは省内でもきまつておるのであります。まだ今のところ皆様方に申し上げるような結論を得ておらないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/72
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073・福田昌子
○福田(昌)委員 関連質問をさせていただきたい。毎日々々のらりくらりと私どもの質問に対するその場しのぎの御答弁をいただいておりますが、聞けば聞くほど厚生省は何をしておるかという疑問を持たざるを得ないのでございます。御承知のように医薬分業やるべしという議論が出されたのは昭和二十六年でございまして、それから実施の三十年一月一日までの間に新医療費体系なるものを厚生省は研究すべし、その体系をつくり上げるということが一つの条件であつた。二十六年に医薬分業の本案がきまりましたときに、この処方箋料は一体どういうような料金としてきめるべきか、社会保険の点数の上から治療費の中にどういう形で入れるべきかということは、そのときからの懸案でありました。処方箋料一つをとつて見ましても、現実の医療費の中においてどういう形で入れるか、現在の中のどの部分を処方箋料とするか、あるいはまた新しく別に処方箋料というものを取上げて入れるかどうかということはそのころからの懸案であつたわけでございます。処方箋料一つをとつて見ても、そういうわからない、まだ未決定の立場において医薬分業の本案というものが決定せられたわけです。それをここ三、四年の間に明らかにするというのが厚生省にかけられた責任であつたわけでありますが、三年四年たちました今日、なお処方箋料の点さえまだ決定していない、こういうような怠慢な状態で、あと半年に迫つた実施期間を控えまして、厚生省当局でこの新医療費体系に対する確たる体系が打出されるということは、私どもとしましては信用できないのであります。国民医療費の現実の総額千五百億なるものが医薬分業をやれば上るであろうということは識者のすべての人が言つております。サムス准将は一ないし三%上るであろうと言いますし、また医師会の調査によりますと、一二、三%以上上ることになつております。厚生省当局もその当時いささか上るであろうという言明をされておるのであります。ただ下るということを主張されたのは薬系側だけでありました。そういう混乱した、両者相対立した情勢の中にあつて、厚生省当局は行政機関としてこれに対して正しい医療費に対する確答を出すのが責任であつたと思うのでありますが、三年間一体何をしておられたか。私その点に対しまして非常な厚生省の怠慢を責めざるを得ません。こういう段階において私どもをごまかして厚生省はこの医薬分業を押し切ろうとしておられる。一体これを実施いたしましたあかつきにおいては現実においてさえ社会保険の医療体系というものは非常に混乱いたしているのでありますが、ますますこれを混乱させる結果になるのであります。そのときに医務局や保険局長、この重大なる今日の委員において保険局長はお見えになつておられませんが、一体どういう責任をおとりになるのでありますか。お二人の方がおやめになつてもそれで償いがつかないのであります。日本の国民医療の混乱を招いたら、それでお二人の方はやめたらよかろうという簡単なお気持かもしれませんが、これは重大な責任のある問題なのであります。そういう大切な問題をまことにその場しのぎの態度をもつて逃げ切ろうと思つておられます。そのお気持に対しまして、私は大きな御反省をお願いいたします。私はこういうはつきりした資料もお出しにならない段階において審議することは、いささか心外でありますから、本日は質問いたしません。委員長におかれましてもこういう重大な問題をこのまま押し切り、そしてあやふやなままに法律案を成立させるということであれば、これが施行のあかつきにおいての国民の医薬体系というものは大きな混乱を来すということは、客観的な正しい批判のまなこを持つて見れば、だれが見ても当然の結果であります。その医療体系の混乱ということに対して委員長自身も大きな責任をおとりにならなければならないと思います。かような意味で、これについてはもう少し厚生省当局のはつきりした結論が出るまで、資料が出るまで、この審議は保留にするということを委員、お諮りを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/73
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074・青柳一郎
○青柳委員長 私から政府当局に申し上げます。理事会などにおきまして、明日この問題は質疑を打切る予定に相なつております。従いまして明日の委員会には厚生大臣、医務局長、薬務局長及び保険局長もぜひ御出席をお願いいたします。
本日はこれにて散会いたします。
明日は午前十時より開会いたします。
午後零時三十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904237X02819540402/74
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