1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年三月二十日(土曜日)
午後一時五十四分開議
出席委員
委員長 川島正次郎君
理事 赤城 宗徳君 理事 田中 好君
理事 永田 亮一君 理事 山口 好一君
理事 櫻井 奎夫君 理事 池田 禎治君
荒舩清十郎君 小山倉之助君
石山 權作君 加賀田 進君
森 三樹二君 受田 新吉君
出席国務大臣
文 部 大 臣 大達 茂雄君
出席政府委員
人事院総裁 浅井 清君
文部政務次官 福井 勇君
文部事務官
(初等中等教育
局長) 緒方 信一君
委員外の出席者
文部事務官
(初等中等教育
局地方課長) 斎藤 正君
専 門 員 安倍 三郎君
専 門 員 遠山信一郎君
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三月十九日
岡山県鉾立村の地域給引上げに関する陳情書(第二〇五七号)
学校教職員給与法改正に関する陳情書(第二〇八六号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
教育公務員の政治活動の制限等に関する説明聴取
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/0
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001・川島正次郎
○川島委員長 これより開会いたします。
前会に引続き、教育公務員の政治活動の制限等に関して質疑を行います。受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/1
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002・受田新吉
○受田委員 政府提出二法案について種々検討が続けられ、審査が続行されて来ておるのですが、この法案に関して、特に教育公務員特例法の改正案なるものは国家公務員法に関連を持つて参りまするので、きわめて重要な関連の諸点について、政府委員に政府の意図するところをただしたいと思います。
まずこの二つの法案を出したこと、特に教育公務員特例法の改正案は、地方公務員たる教育職員の政治的活動の制限については、いわゆる国家公務員たる教育職員の規定を準用するということなつておる。それをわざわざ法文に書き立てて、国立学校の職員にならつて罰則を規定して、政治活動の制服をするということにされた政府の意図は、地方公務員ではあるが、教育は中正でなければならぬので、その偏向を認めることができない、従つてその制限を破るものについては、国立学校の職員と同じ立場に置かなければならぬという意味以外に、何か意図するところがありますかどうか。すなわち地方公務員たる教育公務員に対し、国立学校の公務員と同じような立場で政治活動の制限をした意図を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/2
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003・緒方信一
○緒方政府委員 ただいまお話になりましたように、教育というものの性格から申しまして、これは一地方に限られる関係だけでなくて、全国的な関係からいたしまして、教育という職務の内容には特色がございまして、政治活動の制限につきましても、地方公務員並に扱わないで、国家公務員と同様の制限まで持つて来る、これは、今お話のあつた通りであります。政治活動の制限につきまして、公務員法ですでに規定されております趣旨は、この委員会では申し上げませんでしたが、提案理由等でたびたび申し上げましたように、政治活動の制限をいたすことによりまして、一般公務員であれば、その公務員の職務の内容であります行政事務、教育公務員であれば、その職務の内容であります教育の中正な運営が保てるようにするということに趣旨がございます。そこで教員に対しては、政治活動に深入りすれば、教員の職務内容でありまする教育がその影響を受けて、勢い政治的に影響を受ける、そういうことのないようにいたしたいということで、地方の公立学校の教育公務員を国立学校の教育公務員と同じ扱いにしたいという趣旨で、提案いたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/3
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004・受田新吉
○受田委員 文部大臣には連日御苦労をいただきまして、ずいぶんお疲れであろうと思います。しかしこうした重大事態に立ち至つて、本日運命を決せられるような不信任案を出されるというような立場になつておられて、お疲れのところお気の毒であり、相済まぬところもある程度あるのでありますが、少くともこういう世界にも例を見ないような教育弾圧法規をお出しになられた文部大臣は、きわめて責任のある立場にあられますから、その御苦労を超越して、きようはこの人事委員会において、われわれの質問を受けていただきたいのであります。
実は、私は、この法案が提出されたときにはなはだ不可解に思つたことは、教育公務員特別法が出た当時の立法理由、あるいは地方公務員法が制定され、その三十六条の但書に、地方公共団体に属する教職員の政治活動の範囲を規定したときの事情をよく知つておる一人として、地方公務員である教育職員は、その身分は地方公共団体に属しておるのに、しかも政治活動の制限規定だけは国立学校の職員と同等にしたという、このちぐはぐな立法技術というものが、まず私たちにとつてははなはだ納得が行かなかつのです。何となれば、大臣はしばしばあれゆる委員会で御説明になつておられますが、教育者はその教える教育の内容、職務の内容において、中正であらねばならない。それが侵されることは、将来の国家を背負う国民が偏狭になり、片寄つたものになるというような立場で、教育の中立性を侵させないためと、それからその教育に従事する教職員をその中立性から逸脱させないために二法案を出したと御説明しておられるのですが、地方公務員法の三十六条の但書が出れた当時、地方公務員たる教育職員は、その身分は市町村の教育委員会に属しまして、その市町村に対して身分の範囲が限定されておりまして、そのほかの地域には、その教職員たる地位を利用して弊害を与えることがきわめて少い、またそういうことは基本的人権や自由を重んずる民主主義国家としてはけしからぬことであるということで、その属する市町村のみを政治活動制限の対象としての地域として指定した。ところがその後事情がかわつて、その属する地域だけではどうもいかぬようになつたというその大きな事情はどういうところからお考えになられ、そして国立学校の職員と同じ立場になされたのですか。ここをひとつお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/4
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005・大達茂雄
○大達国務大臣 現在の地方公務員たる教育公務員に対する制限は、地方公務員であるという点に重点を置いて定められておると思います。それは現行法の建前でありますから、大体その趣旨は今お述べになつた通りと思います。今回の法律案はそれを改正して、国家公務員並にしようというのであります。従つて現行法規の趣旨とは違つた趣旨に立脚するものであります。それでありますから、当然その点においては、現行法が制定せられたときの考え方と矛盾するといか、違つた立場をとつておるわけであります。そうすることが適当である、こういうふうに考えて提案したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/5
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006・受田新吉
○受田委員 そういうことが適当であるという状況の変化を確認されて提案されたというのでありますが、昨年解散の当時国会に提出されておりました義務教育学校職員法案なるものがありました。これは教員の身分を、義務教育学校に関する限り国家公務員にするという建前で、政府が、あなたの前任者が中心でお出しになられたのでありますが、これは身分を国家公務員とし、そして国家公務員たる立場において政治活動の制限も国家公務員並に準じて国家公務員としてやるわけでありますから、この点では、身分が国家公務員にかわつておりますから筋が通ります。ところが、その義務教育学校の職員を地方公務員の身分のままに置いておいて、一方では地方の公共団体の制約を受けながら、その政治活動のみは国家公務員と同じにするということは、今あなたもお触れになりましたが、立法技術、あるいは立法理論から言いましたならば、はなはだしく矛盾したものであるということは、大臣も再確認されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/6
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007・大達茂雄
○大達国務大臣 地方公務員のままの身分に置いて、その政治活動の制限を国家公務員並にする、これは立法論として、何も矛盾するといいますか、不都合といいますか、法理に反するというか、さようなことはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/7
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008・受田新吉
○受田委員 地方公務員である教育職員が国家公務員法の百二条の政治活動の制限規定を受け、またその百二条によりまして人事院に委任されたる規則によつて具体的に制約を受けるわけでありますが、あの規則には、きのう櫻井君も指摘しましたように、第百二条第一項の規定する政治的行為の定義のうち第四号の「政治的目的をもつて、前号に定める金品を国家公務員に与え又は支払うこと。」、あるいは第十二号の「政治的目的を有する文書又は図画を国の庁舎、施設等に掲示し又は掲示させ」云々というこの国と書いてある規定がありますね。この規定は国家公務員を対象にして考えたものというふうに私は考える。これは人事院総裁にちよつとだけ説明していただかないと、大臣の御見解と比較検討できませんので、人事院総裁にちよつとお伺いしますが、人事院規則は、国家公務員法に基く国の法律の委任による規則であつて、三年以下の懲役などという重罰を科するような重大な規則であります。これは国家公務員を対象に考えたのであつて、地方公務員を含むようなことは当時想定しておられなかつたと思います。ところがこれに対して、地方公務員である教育職員がこの規定を適用されることになることは、本質論から行つて妥当であるかどうか。またこのように、国の施設とか、あるいは国家公務員とかいう規定があるが、これは地方公務員たるものに、国とか、国家公務員とかいうようなものを当てはめることは非常に不適当である。むしろこの際は教育公務員特例法の中に政治的目的とその行為が一致したときに罰する規定をはつきり設けて、そういう関係の条文をちやんとつくつてこの法律を出すべきが本筋であると私は思いますが、これに対する人事院総裁の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/8
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009・浅井清
○浅井政府委員 これは私がお答えいたしますが、この人事院規則をつくりました当時は、これは国家公務員だけを対象としたことは言うまでもないのであります。今回初めてこの法案が——これはまだ国会を通過しておらぬのでありますが、国会を通過して、国会の御意思がきまるならば、この法律によつて地方公務員にもこの規則が当てはまつて来る、こういうことになるわけであります。その点はもう御指摘の通りであります。そこでこの規則を、例によるというのをやめて、付か特例法の方でそれにふさわしきものを書いた方がいいのか、それともこのままでもいいのかということは、これはこの法案に対する立法技術の問題でありまして、これは人事院の方からすべき筋合いではないと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/9
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010・受田新吉
○受田委員 この国の施設を地方公務員たる教職員が利用したような場合に処罰されるという規定でありますが、実際は地方公務員たる教職員というものは、その属する市町村、府県というようなものに制約されているのであつて、国の施設というものに対しては関連はきわめて薄いことは、大臣御承知だろうと思う。それを国家公務員を対象としたこの政治的行為の規定を、地方公務員たる教育職員に当てはめようとして、今申し上げましたような項目にわたつてはなはだ不適当な条項が生じた、こういうことに、継ぎはぎだらけの着物を着たと同じような形に、この法律がなつて来るという結果になるのでありますが、立法技術の点においてはつきりと、こういう国家公務員を対象にした、地方公務員には不適当である規定を十分地方公務員に適応するような規定に改めて、すなわち教育公務員特例法の改正案の中へこれを織り込んで、はつきりと列挙した規定を織り込んでお出しになることが本筋ではなかつたか、この点について、大臣として、その立法技術の点における意見を聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/10
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011・大達茂雄
○大達国務大臣 これは昨日も同様な御質問があつたように思うのでありますが、そのとき申し上げましたように、国家公務員と同じことにする、ここに重点があるのであります。従つて教育公務員として地方公務員に特別な列挙したものをつくつて、そうしてこれを実質的にはこの人事院規則とまつたく同じものをかりにつくる、そうすれば現状においては結果は同じことであります。しかしこれは地方公務員たる教育職員についてその規定をつくつたのであつて、国家公務員並にするということとは違うのであります。例によるということは国家公務員と同様にする、そこに重点がある。なぜそうするかというと、教育というその公務の内容から見て、国の公務員と地方の公務員とを区別する理由がない、同等に取扱うべきものである、こういう考え方であります。従つてかりに将来国家公務員に関する規定が改正されるとすれば、地方公務員についても、この特例法によるものについても、自動的にかわつて来る、要するに国家公務員と同じにするということが眼目であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/11
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012・受田新吉
○受田委員 この点について問題点は、地方公務員である教職員だけを抜き出して、国家公務員の罰則規定に当てはめようとしておる、この問題はこういう矛盾が生ずるわけです。大臣は教育基本法に基いて、教育という仕事は国全体に影響を及ぼす問題であるから、従つてそれにはきわめて中正を保たなければならないという御所見であり、またそれに従事する職員が国家公務員と同じ立場で職務の内容を持つものであるという御所見でありまするが、しからば地方公務員である教職員を国家公務員にすればいいじやないですか、これはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/12
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013・大達茂雄
○大達国務大臣 公務員の身分の所属は、その公務員の個人に課せられる政治的行為の制限によつて、その身分に変更を起すものではありません。これは直接身分とは関係ないことである。そういう身分を持つておる人に対する政治行為の制限であります。その制限が同じであるからといつて、これを国家公務員にすぐする、これこそ妙な話であつて、公務員の身分の所属は任命により、あるいは給与がどこから出るか、あるいはだれが任命するか、そういうことによつてきまるものでありまして、その公務員に課せられる何らかの法律的な制限が国家公務員と同じであつても、それがために国家公務員にするというりくつは立ちません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/13
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014・受田新吉
○受田委員 文部大臣は今はなはだふしぎな御発言をされたわけですが、文部大臣のあなたの前任者の岡野さんは、教員は国家公務員でなければならぬのだとして、国家公務員にするという義務教育学校職員法をお出しになつた。あなたはそういうことをするのは妙な話だ——妙なという、前の文部大臣の出されたのは妙なと御断定なされた、そういうふうに了承してよろしいか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/14
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015・大達茂雄
○大達国務大臣 この特例法案は、岡野さんが出した義務教育学校職員法とは全然内容が違うのであります。あの法律は給与を全額国が負担する、そうしてその任命権も基本的には国に存する、こういうことを規定した、従つてこれは国家公務員になる。何もあの法律は政治行為の制限とかなんとか言つているのではない。これは教職員の身分そのものを、給与の点においても、任命の点においても国に移す、だから国家公務員になる。それとこれとは別問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/15
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016・受田新吉
○受田委員 大臣は先ほど教員の身分を国家公務員にするということは、これははなはだ妙なことであるという御意見を吐かれたのです。そうしますると、岡野さんの考えられた——給与の問題は当然でありまするが、少くとも身分は市町村の所属の方へ置き、またあつせんは都道府県の教育委員会がし、最終的に文部大臣が任命をする場合もあるというあの昨年出された法律案なるものは、文部大臣現在のあなたの立場では、前任者の出されたこの法律案ははなはだ不適当なものである、地方公務員である教員を国家公務員にすることは不適当な妙なことであると、今でもお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/16
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017・大達茂雄
○大達国務大臣 私はこの前の案が不適当だから、そのかわりにこれを出したのではありません。この前の案は、御承知の通り国庫において全額を負担するということが主眼の案であります。そうして任命権も基本的には国が持つ、こういうことであるから、これは、当然に公務員というものが地方公務員から国家公務員に移つて来るでありましよう。私はこの法律がいけないなんと言つた覚えはない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/17
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018・受田新吉
○受田委員 妙なとおつしやつた。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/18
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019・大達茂雄
○大達国務大臣 妙だなんと言つたことはない。私は決してこの岡野さんの去年の法律について何らの批判はいたしません。ただこの法律は、公務員の身分に触れる問題でなくて、そういう公務員に対する政治行為の制限であります。これは内容が違うのでありますから、これを出したからといつて、国家公務員にしては悪いんだとか、あるいはそういうものを出されたこの前の法律案が不適当だとか、そういうことは私は一言も言つたことはない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/19
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020・受田新吉
○受田委員 私が今お尋ねしたのは、この政治行為の制限をするというようなことになつて、はなはだちぐはぐのような法律になるよりは、あなたの意図されるところが、教員の立場はこれは国全体の奉仕者としての立場、教育の中正を重んずる立場からは、やはりこの罰則などを適用する場合にも、国家公務員と同じ立場でなければならぬと思うので、それを適用するのだとおつしやつた。しからばそれに対して私は、あなた御自身がそういう継ぎはぎのような法律案を出されなくても、教員をはつきりと義務教育学校職員法を昨年岡野さんが出されたような意味の国家公務員にしてやれば、その矛盾がなくなるのじやないかとお尋ねしたら、あなたは国家公務員にするとは妙な話だとこうおつしやつたのです。(「その通り」)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/20
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021・大達茂雄
○大達国務大臣 これはあとで速記録をごらんになれば、あなたが聞き違いであります。あなたがおつしやつたのは、こういう行為を制限して国家公務員並の制限をするのに、なぜ国家公務員としないのか、こういうことをおつしやつた。そこで私は、これは政治行為の制限であつて、これをしたからといつて、それを国家公務員に引直すということが妙だと言つたのです。国家公務員であるか、地方公務員であるかということは、給与なり任命なり、そういう関係からきまるものであつて、政治行為の制限をするという一事によつて、だから国家公務員にするということは妙である、こういう意味で言うたのであります。あなたが今言われるように、国家公務員にほかの関係は改めて、これを国家公務員にすること自身が妙だなんと言つたことはありません。これは速記録をごらんになればよくわかります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/21
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022・受田新吉
○受田委員 あなたのおつしやることと私の言うことは同じ結果になるのです。あなたは今この政治行為の制限の規定から、これに触れることは妙だとおつしやつたわけですが、私としては、結局あなたの意図されるような継ぎはぎだらけの法案よりは、はつきりと国家公務員にして、身分も国家公務員にし、政治活動制限規定の罰則も国家公務員並にするというなら筋が通ると言う。あなたの見解にすれば、それでいいのじやないかと私はお尋ねした。そうしたらあなたが——結論からは同じ御答弁になつておるわけですが、岡野さんの出されたああいう義務教育学校職員法案のごときを、大臣は今でもその考え方はよろしいし、また機会があればそういうふうにしようという御意図を持つておられるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/22
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023・大達茂雄
○大達国務大臣 義務教育教職員の給与を全額国が負担するがいいか、あるいは何らかの割合でもつて地方と国が負担するがいいか、これはそのときの財政の事情もありましようし、いろいろな点が考えられて決定せらるべき問題で、全部国で負担しなければならぬという客観的な理論は私はないと思う。そうかといつて、それをやつて悪いということはない。国の事務であります。国の大切な事務だから、その見地から言えば、国が負担することは当然であります。しかしながら地方団体はよその県の子供、あるいはよその町村の子供を預かつておるのじやない、やはりその地域社会の子供をそこで教育をする、であるから、その点において地方団体が全然負担をしないというりくつも成り立たない。現在の法制では、これを半額負担ということにきめてある。しかし半額がいいにか、四分六でいいのか、七三がいいのか、あるいは全額を国が持つた方がいいのか、これはそのときの財政事情なりそのときの教育に関する各般の情勢から判断して決定せらるべきものである。従つて私は全額負担がいけない、そういうことをすべきものじやないなんと思つておりません。思つ ていやせぬが、あなたは、何かこの前岡野さんが出した案とこの法案が同じところをねらつておるということを前提にして話をしておられるから、そこで話が間違つて来るのである。この前の法律案は、これは人の出した案で、私は当時政府にいないから、権威を持つて申し上げられませんけれども、当時の案は、国が全額負担するという非常に大きな問題が中心の目的であつて、国家公務員並の政治行為の制限をする、こういうことが表面の目的であつたとは私は思つておりません。結果においてそうなるかもしれぬが、そう 思つておりません。私の方の案は、政治行為の制限を国家公務員並とする、これだけなんです。何もそこへ持つて行つて任命権をどうするとか、あるいは負担をどうするということじやない。前の一番大きな国が全部持つということは入つてないのです。政治行為制限の関係においては結局同じことになるかもしれぬが、しかし、であるからというてこの法律案と前の法律案が同じことであるということにはならない。前の法律案が不都合だ、あるいは不適当だからこの法律案にかえたということはありません。内容が違うのです。詳しいことは岡野さんに聞いてみなければわかりませんが、私は法律案そのものの持つ内容から客観的に見てそう解釈するほかないと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/23
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024・受田新吉
○受田委員 自由党内閣は過去満五年以上にわたり継続し、文教行政も歴代自由党党員である、あるいは自由党に好意を持つた大臣が就任されて来たわけです。あなたの前任者の岡野さんとあなたとでは、文教政策の上においても、今御答弁になつたような大きな変化があるのです。私は文教というものは国策として中立を保たなければならぬと思う。文部省自身が、前の大臣が何したか聞いてみなければわからぬ、今度の大臣は前のとはよく似たところもあるが、違つたような法案を出すとか、こういう支離滅裂な文教政策では日本の将来は心配にたえない。そのときの文教の最高責任者によつて国の文教行政が左右されるということは恐るべきことだ。国の将来を憂えて寒心にたえない。従つて岡野さんの跡を継承された大達さんは、少くとも岡野さんの意図するところは自由党の党員である文部大臣として十分継承し、前の法律案がどういうことを意図したか、今あなたはただ義務教育の国庫負担のことだけを御答弁になつたが、実はあの法案の内容においては、われわれが十分追究した基本的な問題として、教員の身分の問題があつた。この教員の身分の問題は、最終において文部大臣が任免権を持つとおつしやつたが、この文部大臣の権限はきわめて特例の場合にこれを持つのであつて、任免権はその市町村の教育委員会に所属しておつた。またあの義務教育学校職員法に伴う予算措置においても、国が負担しない、地方だけが負担しなければならない部分がたくさんあつたことも御承知でありましよう。結局全額負担になつていない。だから全額負担をするといふわけにいかぬから、義務教育学校職員法案というようなおかしな名前をつけて出された。こういうところからあの法律案を御研究されて、大臣もあのときの立場とこの立場を研究されてこの法案を出されたならば筋が通りますが、岡野さんのお考えを十分にお考えに入れないで、そのときの大臣によつて文部行政を自由に変更されるということは、私はほんとうに憂慮にたえないと思う。この点において文教の中立性ということを考える立場から、あなたのおとりになつた文教政策は、祖国の将来にとつてはなはだ憂慮すべきものがあると思うので、私の見解に対する所見をお尋ねしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/24
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025・大達茂雄
○大達国務大臣 文教の中立性ということを言われるが、これは私には何のことかよくわからぬ。何か岡野さんのされたこととすぐ直後のやはり自由党内閣の自由党の大臣がまつたく矛盾し相反するようなことをやれば、これはなるほど朝令暮改というか、一貫しないというか、そういうそしりをいただく場合もあり得ましよう。事情が違つてかわつた政策をとられ、前任者と矛盾した行動をとられれば、これをおただしになることは当然です。この法律案は、何も前任者の出した法律案と矛盾するものでない。ただ全額国庫負担という点は、財政の関係やらいろいろな関係でなお検討しなければならぬと私は思うけれども、前任者の出した法案と今度の法律案とどこに矛盾したことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/25
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026・受田新吉
○受田委員 これはあなたのおつしやつた、教員の身分を国家公務員にしないで地方公務員でやろうというところは大きな矛盾です。この点をお答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/26
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027・大達茂雄
○大達国務大臣 前の案は、私の解するところによれば、政治行為の制限ということを目的とした案ではない。これは法律案をごらんになればよくわかる。国家公務員になる結果そうなるだけの話なんです。何もそれを目的にしていない。もしあなたの論法をもつてすれば、県立大学を国立大学に移管することは、県立学校の職員たる地方公務員を国家公務員並の政治制限に服せしめるために国立学校に移管をした、こういう論法も成り立つわけです。まともなことでお話願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/27
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028・受田新吉
○受田委員 あなたの論法をもつてすれば、国家公務員は国全体の奉仕者である。教育は国全体に奉仕するものでなければならない。従つてその教育に従事する地方公務員は、これまた国全体の奉仕者でなければならない。従つてその政治活動は公務員と同じにしなければならぬという論法も成り立つわけです。こういうところを、あなたは今申したような筋でお考えになられたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/28
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029・大達茂雄
○大達国務大臣 先ほど私が言うたのは、前の全額負担に関する法律案について、あなたは、これが国家公務員同様の政治行為の制限をそこにすることが目的だとおつしやるから、そういうふうにごらんになるのは別ですが、しかしその意見は、客観的に何人も承服しなければならぬとおつしやつても、それはおかしいそれはあたかも県立学校を国立学校に移管する処置が、その学校の先生の政治行為の制限をするための処置であるというのと同じことだということを申し上げたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/29
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030・受田新吉
○受田委員 時間をうしろで秘書官が盛んに見て、たいへんお急ぎのようでありますから、私も時間の関係で、質問しながらはなはだあせつておるわけです。しかし人事委員会は、国家公務員を担当しておるのです。従つてこの国家公務員と同じ適用を受けるような内容のこの法案は、人事委員会としてはなはだ重大であるから、文部委員会に連合審査を申し入れた。ところが委員長の努力足りずして連合審査会ができない。はなはだ遺憾なことでここ に大臣に御足労を願つておるのでありますから、大臣の連日の御苦労はよく わかりますが、あなたの生涯を通じての大きな問題ですから、ごしんぼう願いたい。
もうつ、今のを繰返さないで他に参りますが、地方公務員法の第三十条には服務の根本基準として「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」と書いてある。従つて地方公務員全部が公共の全体の奉仕者なんです。別に教員だけが奉仕者じやない。この地方公務員法の精神から言うならば、教員だけ地方公務員から抜き出して国家公務員の罰則を適用することは不当じやないですか。いわんやその問題とあわせて、府県の教育委員会に職員がおりますが、府県の教育委員会の職員で、校長などをやつた優秀なのが地方の教育委員会の指導主事とへ管理主事になるわけです。それが 各地方事務所に所属して、各郡市を担当している。その郡市担当の教員出身であつた現在の教育庁の職員は、これは地方公務員法の一般の適用を受ける ので、その属する郡市以外では何をや つてもいい、演説をしてもいいし、政 治活動をしてもいいわけです。ところ が教員だけはこれができないということになつて来ると、そういう指導階級 になつている人は、その区域以外では いかなる政治活動もできるが、その指 導監督を受けているところの教員の方は、何らそういう活動ができないということは、これははなはだちぐはぐであると思いますが、今申し上げた地方 公務員法の精神から見ると、この教員 を分離するというあなたの御意見と、そして都道府県庁の教育庁の職員は、の県全体では政治活動ができないが、隣の県ではよろしい。それから属する地 方事務所の所在地の職員は、その区域 以外では政治活動ができるということ になつておりますが、この矛盾をいか に解決するつもりでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/30
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031・大達茂雄
○大達国務大臣 別に私は矛盾をして、いる点はないと思います。教育という ことと、教育に関する事務、あるいは教育行政に関する事務というものとは違います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/31
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032・受田新吉
○受田委員 そういう考え方があなたのはなはだ専制的な考え方なんであつて、指導的立場に立つ人は、命令によつてその教員の活動を押えることも今までできたわけです。それが今度は命令をする方の側は政治的な活動の自由が確保され、命令をされる方はいよいよ手も足も出ない。国家公務員並の取扱いを受ける。これははなはだしい矛盾であつて、あなたの論法をもつてすれば、そういう教育事務に携わり、またただちに現場に帰る立場の人々です。あなたは視学という事例はよく御存じだろうと思いますが、そういう各地方の指導主事、管理主事という人々は、そういう意味で常に現場と共通している。相通じている。その相通じている人々が、その事務にいるときだけ自由に活動できるということになつたら、これははなはだ不適当であつて、そういう立場の人も、教育職員と同じように制限を加えるのが筋としては正しいのではないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/32
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033・大達茂雄
○大達国務大臣 私は、教育というものは教育それ自身というものを見なければならぬ、こう思うのです。教育ということについては、いろいろそれに付随する事務がありましよう。学校の建築をするということもそれの付随事務に違いありません。しかしその場合に、教育基本法なりその他において教育といつてあるものは、そういう事務まで含めたものじやない、私はそう思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/33
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034・受田新吉
○受田委員 その事務を含めない。しかし教育を担当して、そしてその選ばれた立場からその事務を引受けるようになつたその事務を引受けている人は、また間もなく現場に帰つて教育を担当する、こういう立場に置かれている人なんです。しかもその教育を指導する立場にある指導主事というものは、行政と同時に教育の指導をするのです。その指導をする人がそういう政治的な行動をすることができるとするなら、これははなはだ不穏当であると思うが、これはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/34
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035・大達茂雄
○大達国務大臣 そういう特定の場合があるかもしれません。しかしこれはあくまでも教育をするのでありまして、指導主事といつても教育者ではいのですから、自分の考えでもつて教育をこうせいああせいと言うのではない。これはちやんと客観的な基準がありますから、それによつてその仕事を行うのであつて、とにかく教育というものと教育事務というものは、これは区別しなければならぬ。実際の仕事の場合には、その間に非常にまぎらわしい場合があるかもしれぬが、しかし大きな筋としては、教育と事務とはこれは違うものです。だから事務の職員というものを国家公務員並に制限することはおかしい。指導主事がまた他にかわつて先生になれば、そのときに国家公務員並の規定の適用を受ける。どうせこれは先々また先生になる人間だから、とにかくそうめんどうなことをしないで、初めから国家公務員並にしておいた方がいい、こういうわけには参らぬと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/35
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036・受田新吉
○受田委員 私は国家公務員並にせよという立場から申し上げているのではなくして、国家公務員の立場に置かされている教育職員の立場と、それから地方公務員のままでそのままになつている指導主事のような現場にすぐ帰るような職員とが、この法的基礎が異なつているということがはなはだおかしいと言うのです。こういうところに大きな矛盾が生ずるのです。従つて地方公務員として今まで共に生きて来た人人は、その立場に置くべきであつて、これをいまさら義務教育学校だけをずつと抜き出して国家公務員並にする、高等学校のような立場の者は義務教育でないから、これはそのままでいいというような、まつたく支離滅裂な立場の立法技術というものがはなはだおかしいと私は申し上げているのです。従つて大臣のこの法案の意図するところは、結局教育の偏向性を是正しようというところにおありであるとともに、小中学校の教員の政治的な動きを封鎖しようという意図、しかもそれが帰するところは日教組を目標にしているということも、今までいろいろな委員会で委員の各位から出されているところですが、大臣としてはそうした感情による政治をおやめになられて、これははつきり申し上げますが、大臣は感情によつて政治をされていると私は一応考えておりますが、政治は常に冷静に、そうして国の過去と将来と世界的な動きとをじつとにらんでおやりになるべきであります。文教の政策の中立性を要望するゆえんもそこにあるのです。自由党の内閣の文部大臣と、やがて自由党も凋落して社会党の内閣ができた場合には、社会党の文部大臣と、あたかもたなごころを返すごとくに政策が転換することは国の不幸です。やはり文教政策だけはある程度普遍性と妥当性と、そうして世界各国にもある程度信用を持つた、国際的にも信頼をされる文教行政でなければならぬと思います。この点におきまして、大臣はいかがお考えでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/36
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037・大達茂雄
○大達国務大臣 初めにちよつと誤解がありますようですから、前提に申し上げておきますが、この法律案は、ごらんの通り、公立学校の地方公務員たる教職員を対象にしておりますから、何も小学校と中学校の先生だけに限つているわけではありません。高等学校の先生もあるし、公立大学の先生も全部入ります。小中学だけを対象にして、高等学校以上の先生を入れない、こういうものではありませんから、その点は、その意味でこの法律案を御了解願いたい。
それから私は何も感情によつてこういう法律案を出してみたり、また感情に訴えて文部行政を担当する、こういうことは私としては絶対にないつもりであります。私としては、むしろこの法律案に反対する人こそ、感情によつて反対する。その証拠には、今のように法律もろくに見ないでおつてただ反対反対。反対するなら法律の内容をまず見きわめなければいけない。それすら見わけずに反対々々と言うのは、りくつを離れた感情ではないかというように逆に思つているのであつて、私自身は、絶対に感情によつて仕事をするというような気持は毛頭ございません。これはほんとうにそうですから、その点は間違えないようにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/37
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038・受田新吉
○受田委員 結局この教育公務員特例法の改正によつて打撃を受けるのは小中学の先生です。何となれば、その属する市町村の教育委員会に属する人々は、国全体の立場から動けなくなる。実際に政治活動の制限を与えられるのは先生であるからです。従つてほんとうに打撃を受ける者は小中学の先生であることは、大臣法律をよく勉強されたのならば、はつきりわかるわけです。ほんとうにこの法律の真意が結局小中学校に重点を置かれているのです。高等学校は、府県単位では政治活動の制限はできないのであつて、今までだつて打撃を受けなかつた。ほんとうに打撃を受けるのは小中学校の人が基本的人権と自由とを束縛された。この点は、この法律の精神なりをおくみとりなられたならば、だれが一番打撃を受けるか、目標はどこに置いてあるかということは、よくおわかりになつていると思う。
もう一つは、地方公務員法の三十六条を制定する当時の立法事情をよくお考えいただかなければならぬ。あの当時どういう気持でこの法律をつくつたかは大臣も検討してもらつて、当時党派を越えて、各党の話合いで妥協案が出て、こうしてその属する公共団体の地域だけ政治活動を制限しよう、そのほかに影響するところはないからという立場であの三十六条の但書ができたのですよ。これもひとつ大臣は御承知なければならぬ。そういう意味で地方公務員法の制定当時の事情、地方公務員法の三十六条の職務の内容に対する見解、つまり全体の奉仕者であるという立場は、地方公務員も教育公務員も同じだ。教育に携わる者だけが抜き出されておるのではないかということはよくおわかりでなければならぬ。いろいろな点から考えたら、結局今度お出しになつたこの教育公務員特例法の改正案も、いわゆる政治的中立法案も、これは両方とも、大臣としては偏狭な立場で出されたという結論になるのです。私は特に大達さんの手腕、力倆、頭のよさという点においては、かねて戦時中よりその鋭いお力にひそかに敬意を表しておつたものですが、しかし大臣は戦時中は、内務大臣として、あるいは昭南市長として、あらゆる角度から内地において、あるいは大陸において、時局の先頭に立つて軍国主義の手先に使われた最高幹部です。従つて今のような民主主義の時期になつて、なお今日昔流に自分の考えで何でもできるという、岡崎さんとかわつた立場の文部大臣となられて、岡野さんのときどういう意味でこの法律ができたのか知つちやおらぬというような立場でこの法案を出された。関連は全然ありません。この法律をつくるときに参画した首脳部というのは、あなたが最近御登用なさつた人々であつて、前の行きがかりを知つておる者は人もおりません。今までの行きがかりを知つておる人がこれに参画するととんでもない結果になるからというので、みんな陣容をかえて、これをお取上げにならない。そうして目標は共産主義を押えようとしたのであるが、結果的に見たら、その共産主義の立場の人々は押えれば押えるほど新しい立場で盛り上るでありましよう。由来世界歴史をひもといてみても、弾圧を加え独裁をやつたあとには、必ず反動が来ております。自由を束縛したあとには必ず革命が起つております。フランス革命のごときその一例であり、また大東亜戦争を指導された大臣御自身が、日本の運命をここに陥れたあの当時のお立場もお考えでございましようか。民主的な立場と民主的な教育を尊重する意味から、願わくば文教政策だけははつきりした国民人々々の人権を重んじ、その自由を束縛しない立場を守つていただきたいのです。この点において、大臣はあまりに自信があり過ぎます。日本の現状を無視して——国際的なあらゆる立場の人々の声にも静かに耳を傾けていただかなければならぬと思うのです。いわんや、大臣はきのうの櫻井君の質問に対して、世界各国に罰則を設けたかかる強行法規はないのだ、しかし日本独自の立場で私はやるのだ、まさにフアシズムの典型的なものではありませんか。世界にそういう実例もないことをここで堂々とおやりになり、文明諸国家においては、人権の尊重と自由の束縛をしない立場で立つているときに、日本だけが、しかも文教の最高の責任者であるあなたがそれをなさるということに対しては、はなはだ悲しむものです。あの大東亜戦争であやまられ、これから民主的に文化国家としてスタートしようする日本の前途に暗影を投じていただきたくないのです。こういう重大なときに立たれた文部大臣として、一部の極左的人々の扇動を押えるのだという意味から、結局まつすぐ歩む日本の立場を踏みにじつたとしたならば、悔いを千載に残すのです。この法律は日本の国全体の運命に関するのです。私はそういう意味で、教育の中立性というものはあくまでも尊重する人です。そうして教員の組合活動に対しても、常にそのあり方に対しては健全な歩み方を待望している人です。しかしそのきわめて正しくまつすぐにものを願つている私の目から見ても、この法律案がはなはだ牽強附会であつて、継ぎはぎだらけの、何とかして教員の政治的偏向を押えようとする無理をなさつた法律案であつて、国際的に見ても——きようの朝日の記事に出ておりましたね。日本の教育の反動化を恐れるというボーレー氏の、あの国際公務員組合の書記長の彼の談話を見ても、あの穏健中正な組合の指導者が、世界各国に例のないこの日本の反動教育二法案に対して厳正な批判をしております。文部大臣、どうかあなたは、今からでもおそくないんです、こういう日本の将来にとつてはなはだ汚点を残すおそれが多分にある、共産主義がかえつて地下にあつて、あなたが恐れる以上の大きな危惧を招来する危険がある、こういう人権を無視した自由の束縛、そのあとに続く恐るべき反動をお考えいただかないと、大臣の意図とは逆の結果が起ります。この点について、ほんとうに日本の将来と国際的に置かれておる日本の立場をお考えになられて、少くとも日本の文教を握つておられる大臣の今のいいお立場をどうか十分再認識いただきまして、この法案についての再検討及びこの法案についての修正、あるいはそのほか撤回というような措置をおとりになるとかいう何かの勇気をここで振つて、新しく日本をつくる為政者としての真面目を発揮していただけませんか。私はこの点は大臣に特に要望いたしまして、今申し上げましたような諸点について大臣から御見解を承りまして、私の時間が来ておりますので質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/38
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039・大達茂雄
○大達国務大臣 私は受田君の気持はよくわかるのです。お気持はまつたく私も同感の点が多いのです。ただこれを非常に何といいますか、弾圧法である、こういうふうに思い込んでおられるのであります。これは何か画期的な、非常な弾圧な、いわゆるフアツシヨともいうべきようなものだ、こういう前提でお話になつた。またさらにその前提としては、私が何か軍国主義の手先として戦争を指導した、指導したという意味はどういう意味か知りませんが、これは私自身に対する御批判ですから、これをかれこれ申し上げません。申し上げる必要はないけれども、ただ私の過去の経歴だけをごらんになつて、そうして私を軍国主義の手先である、こう断ぜられることは、私ははなはだ心外です。また、それだけならよし、それを前提として、私の提案した法律案をフアツシヨである、弾圧法である、そういうふうにおきめになるということ、これは私は、あなたが故意にそういうふうに思つておられるとは言いませんよ。言いませんけれども、しかしそれはもう少し慎重にお考え願いたい。この法律案というものは、しよつちゆう説明しております通り、何も今あらためてこういう法律案が新しい立法論として出て来たわけではないのです。現に教員はもちろんのこと、全国何十万人のいわゆる国家公務員がおるか知りませんが、これに対して課せられておるところの制限であります。もしこれが非常な弾圧であり、人権の躁躍であり、これがフアツシヨであるというならば、現行法がすでにそうであるはずです。何も今特に……。それならばなぜこれを廃止することに今まで御努力になりませんか。私はいまさらになつてこの人事院規則がいいとか悪いとか、この論議はいたしません。しかしこの公立学校の教育職員を国家公務員並にするということが、なぜそれほどあなたが御心配になるほど人権を蹂躙して、いわゆる弾圧、逆コースのものだ、こういうふうにお考えになりますか。私はそういうことはないと思う。今日全国に何十万人おるか何百万人おるか知らぬけれども、国家公務員がこの弾圧のために、その桎梏のもとに呻吟しておるということは、私はそうは思いません。これがために国家公務員が日常その明朗さを失つて、屠所の羊のような生活をしておるとは思いません。これはただあなたが心配するのあまり、そういうふうに思い詰めておいでになるのではありませんか。私はそう思う。それの前提になつていることは反動であり、フアツシヨであり——私は本来ならばそういう言葉はほんとうは取消していただきたいのです。何をもつて私を軍国主義々々々々とおつしやるか。それはなるほど戦争中、勝つために協力はしました。日本人の一員として、日本の国が危急存亡の危機に立つたときに、手をつかねて見ておる方がいいのか、少しでもわが民族、わが国家を防衛するために働く方がいいのか、これは御批判にまかせます。しかしながらそれをしたからといつて私を軍国主義の手先とは、どういう根拠によつて御断定になりますか。私はそんなことを言われるわけはありません。しかしそれは何とおつしやつてもかまわない。しかし、ただそういう前提に立つて、こういう法律案に対して、あなた は非常な心配を持たれるというか、思い過しのことを言つておられる。私はそうは思わないのです。あなたの御心配になるような、この法律なり特例法ができたからといつて、逆に学校の先生がみな赤になるとか、共産党が非常に危険な様相を呈するとか、そういうことは私は思いません。論理上そういうことはあり得ないと思う。私はそう思つておる。今日どんな法律ができようができまいが、共産党は現に山の中で演習しておると言つておる。それとこれとは別問題であつて、そこまで御心配になることはないと私は思います。私はあるところでボーレー氏と会いました。二時間も話をしました。ボーレー氏は、少くとも私の気持には共鳴して帰つた。これはほんとうです。行つて聞いてごらんになればわかる。自分は、四谷の公園にきよう来てくれというから行つて話をします。話をしますが、その内容が新聞に出た場合に、どうぞ大臣、感情を害することのないようにお願いしたい、こう言つて行つたのです。(「やみ取引じやないか」と呼ぶ者あり)やみ取引じやない。人に会うことがやみ取引とは何です。ボーレー氏は、日本に国家公務員法としてこういう規定があるということを知らないのです。それからまた、日本の実情について、も知らないのです。ただボーレー氏の言うのは、国家公務員にこういう非常な政治行為の制限をするということは、私は日本の事情はわからないけれども、一般的に考えて適当でないと思う。とかく思想を弾圧するとか、政治行為を規制すると、かえつてそれが危険な状態に入つて来ると思うという一般論は言われました。日本の実情については了としてお帰りになつた。しかしボーレー氏が賛成しようがしまいが、その人の意見として一応聞きます。けれどもボーレー氏が言うたから、あるいは何とかいう教育第二次使節団が来て言うたということは、日本の政治を左右する力はありません。参考にはなるけれども、外国人が言うたからこうじやないか、こういう議論が日本の国会においてあたりまえのこととして主張せられることは、私はおかしいと思う。外国人がどう言おうがいいじやありませんか。外国の制度をやつておるのじやありません。日本の法律を審議しておるのです。だから一応おつしやることはいいが、金科玉条のように——これはあなたが言つておると言うのではありません。今までは私は黙つておつたが、日本の法律があたかも外国から支配されるのがあたりまえだという考え方がどうもある。ロバートソンに関係があるのだろうとか、やれMSAの関係でこういうことをやらされているのだろうとか、あるいはボーレー氏がどう言うた、第二次使節団がこう言うておるじやないかというような力んだような話もあります。これはまた言つて問題になると悪いが、私がこの前法務委員会で言つたことをえらく心配しておられる。その心配はどこにあるかといえば、外国が感情を害しては困る、こういうことらしい。日本の国会というものは、それほど外国の鼻息を一々うかがいながら物を言わなければならぬものとは私は思わないのです。私は弾圧するとか、そういう気持は毛頭ありません。今私は軍国主義の手先だなんとおつしやつたけれども、私の過去をほんとうに調べていただけばわかる。私は自由主義者として一貫して来たつもりです。戦前右翼の盛んなときには、私は右翼と闘つて来たつもりです。今日は左翼が出て、それが国をめちやくちやにしそうだから、やはりそれを押えるだけのことであつて、それを軍国主義の手先だとか——おつしやつてもかまわないが、そういう前提でこの法律をごらんになることはやめていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/39
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040・森三樹二
○森(三)委員 今国会でわれわれは外国のことなんか気にしないで論議すべきだ、外国に一々気がねして論議するのはおかしいと言われましたが、それが私は民主主義の非常な逆行だと思うのです。やはり日本は世界の一員なのだから、世界がどうであろうと、おれは日本人としてかつてなことを言うというのは、一般民間であれば別ですが、文部大臣の地位にあつたらもつてのほかです。もつと系統立てて初めから言おうと思つたが、ピック・アップして申上げます。あなたはこの間戦犯裁判は野蛮人の首祭りだと言つたでしよう。これが世界に電報が行つて、釈放問題にどんな影響を与えたか。あの巣鴨に何人おるか知つておりますか。陸軍大将、それからたくさんの人がいる。私もお見舞に行つて来ました。あなたは行つたかどうか知らないが、私は行つて来た。あなたの一言一句というものが世界の輿論に大きな影響があるということをあなたはお考えになつておりますか。そういう考えを持つておること自体が反動であり、軍国主義の手先だと言われる確固たる証拠ではないですか。あなたがああいうことを言つたので、ソ連やその他におるところの抑留者が非常に憤慨しておりますよ。自分たちが帰りたいと思つても、日本の、わが祖国の文部大臣がああいうことを言つておる。何ら反省がない。あなたの今の言葉で、外国に対して気がねしないでわれわれは検討しなければならないということを言つておるでしよう。これ自体私は許すことのできない暴言だと思います。取消してください。これに対してどういう所見を持つておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/40
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041・大達茂雄
○大達国務大臣 私は日本の国会における論議が、一々外国の鼻息を考えながら言わなければならぬということはないと思う、こういうことを申し上げた。さつきの答弁で少しいらぬことをしやべつり過ぎましたが、しかしあなたは、外国がこれに対して非常に腹を立てて、戦犯の釈放までもこれがために悪い影響を受けた、こういうふうにお考えですが、世界というものは、それほど狭量なものではありません。私はそれほど狭量なものとは思つて、いない。それを一々心配せぬでもいい。たとえば外務省の情報文化局長でしたか、この前報告されたところによると、オランダではこの点についてはノーコメントである。申し添えておくけれども、最近何十人か釈放する予定になつております。あれに関連してオランダ政府は、こういうことを言つておる。私はあれを言うたから、外国人がすぐそれで今までの政策をかえるとか、そんな感情的な、狭量なものとは思いません。しかしそれははなはだ不謹慎なことである、ああいうことは言わない方がいいということから、そういう御意見も間違つておるとかなんとかは言いません。それは銘々の考えです。けれどもあのために外国を非常に刺激して、戦犯釈放もするものか、こういつた事実がお調べになつた結果、もしあるということならばお聞かせを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/41
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042・森三樹二
○森(三)委員 ただいまあなたの話を聞いておると、あなたはあくまでもわれわれは気がねをしないで発言していいということを言つておられますが、世界の一員として、ここに五十六の国の代表かかりにおるとすれば、われわれもまた世界の一員として生活しなければならぬ。これは経済的にも学問的にも、すべての点において世界と交流しなければならない。思想の交流も、物資の交流もしなければならない。われわれ一人でいくらいばつてみたつて、われわれは文化生活をすることはできないのです。しからばあなたは世界の一員として、やはりそれだけの叡知を持つて、良識ある判断のもとに発言しなければならないのです。しかるにあなたが何ら影響するところはないと言うのは、暴言ではないでしようか。絶えず世界の一員としての良識を持つて、その判断の上に立つてわれわれは発言しなければならない。あなたは日本の国会はどこにも気がねはない、世界に気がねしなくてもいいというようなことを言つているが、これは一国の文部大臣としてあるまじき言葉だと私は思う。しかもたとえばフイリピンにしてもオランダにしても、あるいは南方のオーストラリアあたりにしても、日本が戦争誘発、あるいは軍国主義的な気分を捨て去つたということに対してはまだ信用してない。日本がほんとうに平和主義の国家になり、日本人が平和主義の国民になつたというだけの気持がまだできていない。移民をするにいたしましても、現にフイリピンやボルネオ、ジヤワ、スマトラ、それからオーストラリアあたりは反対している。わずかに南米だけが移民を受入れている。そういうさ中にあつて、戦犯者もまだ全部は釈放されていない、ソ連からもまだ多くの同胞が帰還していない現実において、あなたがああいう言葉を言うということは慎まなければならない。われわれは自己の良識に基いて、世界の一員として常に発言しなければならぬと思うのですが、あなたの御所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/42
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043・川島正次郎
○川島委員長 大臣にも質問者にも申し上げますが、なるべく質問も答弁も簡明にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/43
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044・大達茂雄
○大達国務大臣 御意見は聞いておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/44
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045・森三樹二
○森(三)委員 それでは話はだんだん転換して行きますが、先般来文部委員会その他において、この二法案に対するところの公聴会が行われた。それからまた日本の全文化人、教育者その他からいろいろ新聞雑誌等においてこの法案に対する所見が述べられているが、まず大体九九%といつていいくらい反対しているという事実について、あなたは何とお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/45
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046・大達茂雄
○大達国務大臣 私は何%反対しているか、その辺はよくわかりません。ただよく新聞の社説その他の論調においても、それから一般の何といいますか、私どものところへ聞えて来る声としても、強い反対がある、これはよくわかつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/46
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047・受田新吉
○受田委員 大達さん、あなたはほんとうに生一本で正直ないい人だと私思つているのです。戦時中から生一本な純情なところを私は敬愛しておつた。ところがあなたの考え方は、今申し上げたように、軍国時代にあなたは政府の重要なるポストにおられて、その国策遂行の責任者だつたのです。これは日本を誤らせる結果になつたのだから、はつきりと反省されなければなりません。それをあなたは反省の色がなくて、当時その衝にあつた者はすべてそうなるのがあたりまえだ、こうさつき仰せられた。新しい日本をつくる文部大臣として、過去の誤つた日本の軍国時代の政策は、過去の悪夢として消え去らしめて、涜罪の意味で、自分は民主日本の文部大臣として文教行政をつかさどろうという御信念であなたは文部大臣になつていただいたと私は思つたのです。ところがあなたの今のお言葉ではそうでなくて、軍国時代にやつた自分の行為は正当な行為である。そして今文部大臣として外国のことなど全然考える必要がなし、世界の声も聞く必要がなし、国際親善の社会通念も考える必要がなし、少くとも独自の見解で日本の文教行政を握つて行くのだ、国家公務員にして何が悪いか。そういうお言葉があり、またそれは私が考え違いをしているので、みな国家公務員になつたのを喜んでその職務に専念しているではないか、地方公務員の者が国家公務員並に取扱いを受けても一つも弊害はないはずだ。こういうお言葉があつたのですが、国家公務員になつている国立学校の先生たちが、その点においては一方的なこういう法律に対してはなはだ不愉快な見解を持つておられることは、御承知の通り、この間から大学の先生たちが大挙してわれわれに陳情されたり、あるいは東京教育大学の文科の先生だちが、それぞれ署名して二法案反対の運動をされたり、全国の国立大学の先生御自身がほとんど各府県にわたつてこの二法案に反対の声明をしておられます。これは厳密にいうたならば、あなたの御見解で行くならば、国家公務員法違反である、政治的目的を持つてその政党の政策に反対し、あるいはその政策に対していろいろな角度からの批判を加えるということは違反になると言うかもしれませんが、それほど大学の先生御自身がそういう声を多数持つておいでになるということをお考えいただくならば、今まで済んでおつた地方公務員を教員だけ抜き出してやるところに私は弊害があると申し上げたのであつて、地方公務員並の制約を受けた——今でも地方公務員法に規定する制約はちやんとあるのですから、その法律に基いて律せらるべき事項について、教職員に今までに多少行き過ぎがあれば、その行き過ぎを是正して世の批判にこたえようじやないかという誠意を持つて、組合運動に対してもまつすぐ正しく、そして行き過ぎに対しても常に反省と努力を傾けるという態度でやつて行くならば 私は何ら誤りがないと思つていた。その点において、あなたの今の御答弁によりますと、自分の言つていることは金科玉条だ、お前の心配するようなことにはなりわせぬのだ、国家公務員は安んじて職にあるではないかというお言葉がありましたので、私は申し上げます。どうか大臣は軍国時代のあの夢はお忘れくださいませ。あなたはあの時代の夢をまだ持つておいでになるおそれが多分にある。おれはあれは正しいやり方だと思つている、あの時代にあなたは正しい政治をやつたのだ、内務大臣として正当な行いをしたのだとおつしやつておられる、私はこれを悲しむのです。あの当時の為政者として、あれは誤つた点があるのだという反省の色が見えません。日本は少くも敗戦のうき目を見て、こういう悲惨な状態になつているのです。これがやつと民主主義の力によつて立ち上ろうとしているときに、この過去のあやまちを、誤つたことしてわびるのは、これはお互いに罪を犯した場合には、改めるにはばかるなかれで、これを改めた場合にはわれわれは罪を責めません。今文部大臣としてその任にあられる大達さんに、過去の誤られたことを反省して、あの罪の償いとして、自分は文教行政をやるのだという考えがあつたならば、私は大臣に深く敬意を表します。ところがその前非を悔いるといいますか、つまり自分がその立場にあつて、犯した罪けがれを全部払いのけて、新しい気持で民主日本を建設するのだという御情熱がないのです。文部大臣、どうか過去の夢を忘れてくれませんか。そして少くとも日本は生れかわつているということを考えて、大きな国際的な流れ、国際的な道義の基準も十分に尊重され、国際平和社会に奉仕して行くところの大国民らしい文教行政をどうか建設していただきたいものです。この点を私はお願いし、せつかくのあなたの明晰なる頭脳と断固として所信に邁進される熱情、これをまつすぐにいい方向へ持つて行つていただいたならば、日本の将来はまことに刮目して見るべきものがあると思うのです。実はあなたは、私の軍国時代のやり方についての批判について、それを取消してもらおうと思つたが、まあそれはいいとおつしやつたのですが、私は大臣の人格を傷つける意思は全然ないのですから、それが誤つておれば取消しますが、大臣に過去の夢を忘れ、新しい日本の建設者として立つていただきたいと熱願して申し上げたのです。この点を誤り解釈されないようにお願い申し上げて私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/47
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048・森三樹二
○森(三)委員 私の質問に対して、すなわち日本全国の教育者、文化人、その他評論家あげて新聞雑誌等に、あるいは当衆議院の文部委員会の公聴会において意見を発表されましたが、だれ一人といつていいぐらい、この二法案に対しては賛成している者はない。そういう輿論を知つているかと私は文部大臣に質問した。ところが、私はそういうことをあまりよく知らぬと言つておられる。あなたは日本ばかりでなく、世界の輿論を無視するぐらいの人だから、日本の国の輿論なんかはまつたく問題視していないかもしれない。しかしながら東大の矢内原教授をして言わしめるならば、これは文明国の恥辱の法案だということである。まさにその通りだ。先ほど来受田君も言つた通り、世界各国中にもこういう教育に罰則をつけたところの法案というものはないのである。日本がまつ先にこういう文明国の恥辱の法案をつくつている。あなたは戦争中東条軍閥内閣の片棒をかついで、そうして一生懸命やつて戦犯に問われた。先般解除になつてほつとしたあげく参議院議員に当選して来て、またまたこういう悪法を提案している。今度はいよいよあなたは棺を負うべき年齢が来ている。しかるにこの悪法を行うことは、これは徳川幕府の封建時代以上だ。東条軍閥以上に、徳川幕府のあのいわゆる言わず、聞かず、見ざる、もう国民をしてほんとうにおりの中に入れてしまつて、何事も言えない。私どもは言つてはいけない、言つたならば——あの政治の中立性の法律によつて、何人も学校の教員、児童、生徒を一方的な政治的な偏向に導くような教育をしてはならない。われわれがが学校から頼まれても、学校の先生、生徒の前では、講演も何もできないというような実情になる。われわれはいやしくも政党人として、やはり自由党の政策その他について、あらゆる場所において国民にこれを浸透させなければならぬという考えを持つておる。しかるにあの法案から行くならば、われわれが学校へ行きまして、先生や生徒の前で講演をする、日本の憲法は世界に冠たるところの平和的な憲法であるというような講演をする、そういうことをやれないのだ。(「簡単にやれ」と呼ぶ者あり)」ここが一番大事なところなんだ。(「時間の約束がある」「だめじやないか、約束を守らなくちや……」と呼び、その他発言する者あり)もう二、三分でやめる。そこで私は封建時代の徳川幕府時代のあり弾圧、ほんとうに切捨て御免の法案だ。学校の先生が何か政治的な話をすれば、すぐに刀で首を切られるという法律案だ。われわれは学校から講演なんか頼まれても行きません、もしこの法案が通るならば。今度は警察官が学校へしよつちゆうスパイになつて行きます。どの先生がどういうことを言つておる。社会党のどの代議士がいつ行つてどういうことを言つた。警察からちよつと来い。この法案ぐらい悪法はないと私は思う。いわゆる憲法に保障されたところの言論や出版の自由というものも抹殺されてしまう。あなたがこういうような悪法をつくることは、戦犯にかかつた以上の、日本の教育を破壊し、あなたが死んで後悪名を永久に残さなければならぬ法案だと私は思う。この点について、あなたはどう思つておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/48
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049・大達茂雄
○大達国務大臣 あなた方が学校に行かれて、演説もできぬようになるという、(「そういうことになるよ」と呼ぶ者あり)これは決して御心配いりませんから……。どうぞ、演説でも何でもやつていただいてけつこうです。この法律は何もそれには関係はありません。ただその場合に、子供を集めて社会党左派を応援せねばいかぬということは、ひとつ言わぬでおいていただきたい。それから学校の先生に、われわれの政党を支持するように、ひとつ子供に教えてくれ、そういうことだけをやめていただけば、あとは何をおやりになつても、この法律案に関係はありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/49
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050・森三樹二
○森(三)委員 もちろんこの法律が通れば、だれも処罰されたい者はいないから、警察官が調べに来て、ひつぱつて行かれるようなつまらぬことは、あなたが教えなくてもやりません。ほんとうは学校へでもどこへでも行つて、社会党の政策がいいとか、悪いとか、自由党の政策がいいとか、悪いとか、お互いに国民が議論しあつてやるのが民主主義の政治だと思う。それが学校へ行つてわれわれ講演もできない、先生と政治的な話もできない。自由党の代議士が期限付で逮捕された、あれは法律無視だ、自由党もずいぶん無理な決議をしたもんだというようなことさえも、われわれが言えないじやないだすか、法律違反のことをやつている政党の悪口さえも言えないということでは、日本の国は政治から没落したんだ、私どもはそういう国にしてはならない。自由党の人が行つたならば自由党の政策がいいんだ、自由党は今こういうことをやろうとしているんだ、社会党はだめなんだというようなはつきりした線を述べて、国民の教育をしなければならぬ。そうして学校の子供たちが、どの政党がいいかということを熱心に研究をして、将来日本の国の政治というものについてはつきりと認識を持つような日本の政治のあり方、あるいはまた教育のあり方にしなければならない。しかるに今あなたが言つたように、学校へ行つて社会党の政策が一番いいんだ、社会党を支持してくれというようなことは言わぬようにしてくれ。そんなことを言つたら、すぐひつぱられる。そんなあぶない法律をつくつて、社会党だけがひつぱられるならいいけれども、自由党の諸君だつて、学校へ行つて講演を頼まれる。文部大臣がおいでになつたときに講演を頼まれる。文部大臣がちよつと口をすべらせて——あなたのような生一本の人は、あるいは失言するかもしれない。せんだつてのようなああいう話をされるかもしれない。あなたが自分でこの法律をつくつて一番先にひつぱられるかもしれない。そういうあぶない法律をつくつて、われわれみずからこの憲法に違反して、われわれ国民がものを言えないところの教育や政治にしてはならないと思つているのですが、そこをあなたはどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/50
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051・大達茂雄
○大達国務大臣 私はこの学校ができてもできなくても、学校へ行つて子供に自由党の宣伝なんかは絶対にいたしませんから、その点はこの法律ができてもできなくても心配はありません。ただいまお述べになつたようなことは、おやりになつてもけつこうだと言つている。この法律には関係ありません。ただ子供にやらぬようにしていただきたいということと、それからこれは子供におつしやつても、直接あなた方は何にもこの法律に関係はありませんが、これはまあ、法律の話は別として、子供にひとつわが党を支持せよなんということは、できればおつしやらぬようにしていただきたい。それから学校の先生に対して、党活動として政治演説をなさること、これは一向さしつかえありません。あたりまえのことなんです。それでなかつたら、学校の先生はもう政治演説も聞きに行けなくなるということになるのでございまして、それは何らさしつかえない。ただ学校の先生に、わが党を支持するように子供に教えろ、これは言つていただきたくない。これから何にも言えなくなるというお言葉でありますが、従来とも、まさかそういうことを学校へ行つてお話になつてはいないと思います。そういうことをお話になつているとすれば、これはやめていただかなければならない。しかし党活動としていろいろ演説される。これは何にもさしつかえないのですから、その点はひとつ誤解のないように願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/51
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052・川島正次郎
○川島委員長 文部大臣に対する質疑はこれで打切りまして、理事会の申合せ通り、政府委員が残つておりますから、受田君、先ほどの質疑を継続願います。受田新吉君。
〔発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/52
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053・受田新吉
○受田委員 それでは政務次官、初等中等教育局長御両氏並びに人事院総裁にお尋ねいたします。これは文部大臣にかわつて政務次官から責任ある答弁をお願いいたしたいと思います。
まず冒頭にお尋ねいたしたいことは、今回各地方の公共団体、あるいはPTA等に対して、自由党報が発送されておるそうでありますが、何部くらい発送されておるか、文部省の御調査の結果を御報告願いたいのであります、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/53
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054・福井勇
○福井(勇)政府委員 冒頭受田委員よりの御指名がありましたので、私から答弁させていただきますが、PTAに対して、自由党報が届いているということは、私も聞いておりますが、直接これに私タッチしておりませんので、局長の方から答弁させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/54
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055・緒方信一
○緒方政府委員 実は文部省といたしましては、自由党報のことを、今お話のように何部行つたというようなことは調べておりませんので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/55
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056・受田新吉
○受田委員 社会教育上の重大な問題でもありますし、またPTA、学校等を所管される文部省としても、こういうものが現地に流れていることについて御承知でないはずはありません。どういうような形でこの自由党報が配付されたか、部数はお尋ねしませんが、その配付の実態について、文部省が各末端機関を動員して調べられたその様子をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/56
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057・緒方信一
○緒方政府委員 自由党報が何回か最近配付されたという話は聞きましたし、文部委員会等でそういう話が出たということを私は承つております。しかし調査をいたしておりませんので、その実際のことについてはまだ知りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/57
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058・受田新吉
○受田委員 調査局その他社会教育局関係を担当する人々によつて、少くとも一党の党報が、しかも一方的に、教育二法案を成立させるために、法案の内容を説明したものが流されておるということは、これははなはだ重大な問題であつて、自由党が流しておるならば、これはまたほかの政党も流してもいいということにはなりまするけれども、今までそういうことがなかつたのに、急に自由党がぱあつとこういう党報を流したということは、これは政治的意図をもつて法案成立のために学校——PTAはすなわち学校と、それから父兄と両方含みますが、そういうものへこれが大量に発送されるということは、これはその影響するところははなはだ重大な問題がある。この点文部省が御調査になつておらぬということ、これだけ文部委員会その他で問題になつておりながら、何ら調査されてないということは、はなはだおかしいことでありますが、その調査の必要なしというふうにお考えになつて調査なさらないのでありますか、あるいはまだほかに何か意図するところがありますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/58
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059・緒方信一
○緒方政府委員 私の担当の関係におきましては、調査いたしておらぬわけであります。ほかの方で調査しておるかどうかは私たちは存じません。ただ、この自由党報の問題でございますが、今の御質問の趣旨は、これが政治的な意図で配られた、こういうふうなお話でございますが、今度の提出いたしました法案との関係につきましては、先ほど問題になりました教育の中立の確保の法案、この問題との関係は私はないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/59
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060・受田新吉
○受田委員 私先ほどちよつとこの問題に触れて文部大臣にお尋ねしたのですが、大学の先生たちが、この二法案の成立は国の不幸であるという立場から、国会に陳情その他の意思表示をなさる場合は、これは国家公務員法の第百二条に基く人事院規則に照して、一党の政策に反対する、そのときの国の政策その他に反対するものとして、これは処罰の対象になりますかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/60
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061・緒方信一
○緒方政府委員 これは人事院規則の解釈の問題になつて来ると思いますが、人事院の政府委員の方が見えておらないようですから、私が申し上げる方が適当であるかどうかとも思いますけれども、一応私の方の考え方を申し上げますと、この人事院規則は、ごらんいただきますとわかりますように、一定の政治的目的を持ち、そうしてここに掲げられておりますような具体的な行為をした場合に、それが禁止されるという趣旨でございます。そうでございますから、今お述べになりました国立学校の先生たち、これはまあ国家公務員でありますが、その人たちが、その法案の反対の運動をされる、これがどういう態様になりますか、まあこの行為の態様の問題もあろうと思いますが、それよりもまず第一に、この目的の問題でありまして、どういう目的に触れるかという点が問題になると思います。それでこの問題は、たとえば人事院規則第五項の目的の第六号に、国の機関の決定した政策の実施を妨害することとございますが、こういう目的を持つて何かやるという場合は、あるいは問題になる。しかしこれは国の機関の決定した政策でございますから、まだ法案の段階におきましては、決定した政策にはならぬと思います。それに対しまして反対の意見を述べることは、かりにこの実施の妨害ということに該当するとしましても、これは当らぬ、かように考えます。さらにまた実施の方法等につきましては、いろいろと解釈の問題があるようでありますが、大体当らぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/61
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062・受田新吉
○受田委員 初等中等教育局長とずいぶん長い名の局長さんでいらつしやいますが、あなたの御所管なさつておられる高等学校、中小学校、ここの職員は、従来は地方公務員として、小中学校は市町村の教育委員会に所属しておりまするし、また県立の中学校、高等学校、これは大部分の高等学校は府県立でありますが、それは府県の教育委員会に属しておられますが、そういう人々が、今度この法律の実施とともに、国家公務員の政治活動制限の規定の適用を受けるわけになります。その場合に、ちよつと先ほど大臣に質問したのでありまするが、教育庁の職員というものと、それから教育の実際の場におる人々との差等を設けることについては、事務と教育の直接の担当者とに区別をつける必要があるという御答弁があつたのですが、私が先ほど指摘した指導主事というものは、これは御承知の通り直接教育の内容を指導するわけです。この教育の内容を指導する人が政治的行為の自由を認められておりながら、その指導を受ける方がその自由を失われておるということは、はなはだ矛盾すると思いますが、あなたは直接の事務的担当者でいらつしやいますので、政治的な御答弁でなくて、はつきりした御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/62
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063・緒方信一
○緒方政府委員 特に公立学校の教育公務員の政治的制限を、国家公務員である国立学校の教育公務員の制限と同じようにしようというのがこの趣旨でございます。お説のように、指導主事は校長あるいは教員に対して指導助言をいたします。この指導助言の内容はいろいろございますが、しかしながら、私どもこのたび国立学校の教育公務員と同じような制限をしたいというのは、公立学校の教育公務員、実際に教壇に立つて教育を行う公務員、これに限つて国立学校と同じような制限を設けたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/63
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064・受田新吉
○受田委員 これははなはだ事務的な御答弁でありますが、こういう場合がまた一つ起ります。国家公務員であるところの教職員と、地方公務員の教職一員との比較において、国家公務員の方は国家公務員法に基いて制約を受けますが、地方公務員は、地方公務員法の立場からその行動が規制されておる。その地方公務員法の適用を受ける中に、教育公務員というものが一つあつて、その教育公務員の方は、国の権力者としての権力行使の立場から見たならば、これははなはだ弱い権力行使者です。教育そのものの担当者でありますが、権力を行使する人ではない。だから、公権の発動をする立場の国民全体の奉仕者としての、あるいは公共の全体の奉仕費しての立場の地方公務員の方が、影響力を与えることは特に大であると思う。普通の公務員、たとえば県庁の職員、地方事務所の職員のごとき、これは訓辞を与え、あるいは町村長を集め、社会教育機関の責任者などになり、また政治的意図をもつてその担当区域外で行動を自由にとられておる。ところが、実際の教育という仕事だけを担当しておる教員というものは、そうした対外的に影響を与える力は少いものです。その少い人たちが政治的行為の自由を束縛されて、そうして、影響力を大きく与えるところの県の職員とか、あるいは教育庁の職員とかいうものが、行為の自由を与えられているということは、影響力の上からいつたらはるかに大きい地方公務員が、今後引続き基本的人権である政治活動の展開の自由権を尊重されておるという結果になると思いますが、この点いかがお考えでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/64
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065・緒方信一
○緒方政府委員 教育公務員以外の公務員につきまして、政治的行為の制限をした方がいいかということは、別の観点から論ぜられる問題だと考えます。私どもこのたび提案いたしました法案につきましては、教育公務員につきまして、教育公務員の職務の内容であります教育の性格から申しまして、その内容の特殊性から申しまして、この制限を国家公務員と同じようにしたい、かような観点からいたしておる次第でございまして、今お話のような、それ以外の公務員の政治的行為の制限につきましては、また別の観点から考えられると思います。政府といたしましては、それ以外の公務員の政治的行為の制限につきましては、現在のままでいいという判断で、それについては触れておらない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/65
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066・受田新吉
○受田委員 今私が申し上げたような、権力行使の及ぶ範囲が教育公務員よりもはなはだ大きい普通の地方公務員が、そのままでいいというふうに判定されたようでありますが、私の今申し上げた論点から見ての御答弁を願いたい。なぜ普通の地方公務員を除外したか、なぜ普通の地方公務員の影響力は薄いと判定したかということを私はお尋ねしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/66
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067・緒方信一
○緒方政府委員 今申しましたように、教育公務員の職務の内容であります教育というものを取上げてやつて、おるのでありまして、この教育というものが特に児童生徒等に与えます影響は非常に大きいわけでありまして、そういう特別な職務を持つておりますので、その教育公務員が政治的な紛争に深入りをするとか、政治的行為に深入りをしまして、そのために教育公務員の職務の内容であります教育に影響を及ぼしてはいけない、この点を重視いたしまして、特に国家公務員と同等の制限を加えたい、かような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/67
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068・受田新吉
○受田委員 教育の内容において影響を及ぼす、子供の教育に影響を及ぼすという意味で政治行為が影響するのですか、教員が自分の地域以外、子供がおらぬ地域ですよ。自分の勤務しておる市町村ではなく、よその郡市に行つてある特定の人の推薦をやつたとかいうようなことは、その地域の子供に何ら影響しません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/68
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069・緒方信一
○緒方政府委員 今私が申し上げましたのは職務の内容であります。教育の特殊性に基きまして、教育公務員自身の行為を制限いたしました。そうして、それによつてその職務の内容であります教育の公正なる運営を期す、この点に重点を置いて考えた、かように申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/69
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070・受田新吉
○受田委員 私ははなはだあやしい御答弁だと思います。普通の地方公務員の場合は、たとえばこの地方事務所所管の職員が次の地方事務所所管の管内に行つて政治的行為をやつた、これは県庁の役員がおつしやるのです。県の教育庁の指導主事だそうです。そうすると、教員よりももつと大きな影響があります。それを抜きにして、影響力の少い先生だけを指摘するのはどうも今あなたが御説明になつたのでは、教育の内容によつて子供に影響を与えるということのみで教育の重要性を説いておられるが、対外的な政治的影響力は、権力者の権力行使が強大なる普通の地方公務員の方がはるかに大きいじやありませんか。この観点をどういうふうに論破されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/70
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071・緒方信一
○緒方政府委員 先ほども申し上げましたように、教育公務員以外の公務員につきましては、別の観点から検討されると考えます。ただ私どもがこのたびの改正事案として出しましたのは、教育公務員につきまして、国家公務員と同じような制限をする必要があるものという観点で行いました。それから対外的な影響というお話でございますが、その公務員の政治的行為の制限の趣旨は、私が申し上げるまでもございませんが、その公務員の政治的行為が行き過ぎまして、その結果いろいろと職務の内容に影響が及びはしないかということを考慮いたしまして、そうしてその行為に一定の制限を与えまして、その職務の内容であります公務が公正に行くようにするということが趣旨なのです。これは地方公務員法等にもすでに明記してある通りです。その観点からこの問題を考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/71
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072・受田新吉
○受田委員 緒方さん、あなたの今の御答弁では、他の公務員の方は別の観点からこれを考えるというのですか、別の観点から考えらるべき他の公務員の方が重要な影響力を持つておるのに、影響力の少い方を先に取上げて、影響力の大きい方をなぜおやめになられたか、そこの論点を究明願いたいと私は申し上げておつた。お預けしちやいけません。他の公務員です。他の公務員の立場を申していたたきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/72
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073・緒方信一
○緒方政府委員 私どもがこのたび提案いたしましたのは、教育公務員についてでございますから、教育公務員について、地方の公立学校の教育公務員も国家公務員と同じ程度に制限する、これは教育という事柄の性質が、先ほど申しましたように、地方と国と区別する理由が少いというところからいたしまして、本案を提案いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/73
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074・受田新吉
○受田委員 先ほどあなたは、答弁でこうおつしやいましたね。教育の内容について子供に影響力があるというお言葉があつたのです。それだから教員を抜き出したのだ、こういうことがあつたのですが、直接教える先生は、今の法律でも、地方公務員法の三十六条の但書で、その地域では政治活動ができないようになつておるのです。私もこの立法の担当者の一人でありましたから、よくそのときの立法事情を知つておりまするが、教員がその地域で自分の教える子供や父兄に影響を与えるような行き方はいけないというので、われわれは、進んで市町村の所属の教職員はその地域内の政治活動を禁止するという法律をつくつたわけです。だから直接影響を及ぼすところの教育の範囲内においては、何らその先生の政治活動はできないようになつて、おるのです。あなたのおつしやるような影響力がないわけです。これはいかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/74
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075・緒方信一
○緒方政府委員 教育の関係は、自分の勤務する学校における教師と児童生徒との関係だと思います。しかしながら政治的行為をその地域だけに限らないで制限することが必要である、それはなぜかと申しますと、特に教育というものが事常に重要な公務でありますので、それに従事しまする教育公務員は、その地域に限らず、国家公務員と同じような制限を与えたい、かような趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/75
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076・受田新吉
○受田委員 これはだめですよ。そういう地域で何ら影響を受ける人でない人が、たとえば東京の先生がいなかの方に行つて、ちよつと政治行為をしたのが何が影響しますか。それともう一つは、さつき申し上げたような、むしろ指導主事のような立場にある人が——あれは学校の先生を監督する責任者だそうです。その先生がここでお話するんだそうだ、その人が他の地域に行つて、ある特定の政党の支持をやる、または反対をした方がはるかに影響力が大きいのですよ。ここをひとつお考え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/76
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077・緒方信一
○緒方政府委員 それは、今国家公務員が全国的に政治的行為の制限をされております。従つて国立学校の先生も全国的に政治行為の制限をされております。しかし勤務する学校というものは一つの学校であります。今のお話でありますと、国家公務員である国立学校の先生につきましても、地域だけの制限でよろしいということになりはしないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/77
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078・受田新吉
○受田委員 あなたは国立学校の財政的な基盤の立つ範囲と、それから市町村の学校に所属する財政基盤とを混同しておられまするが、国立学校というのは国全体の費用で建てているものです。山口県へ行つても広島県へ行つても、青森へ行つても北海道へ行つても、国立学校は、その地域の人が自分の税の負担によつてその先生を雇うておるのと同じことです。これはどの地域に行つても、全国共通にわれらの費用によつてその先生は先生になつている。ところが市町村の教員というのは、その市町村の所属の身分しかないわけです。国全体の所属の身分じやない、身分の帰するところが違う。財政的基盤が違う。山口県、広島県、あるいは青森県、北海道と、国のすみずみまで、それぞれの所属の府県の教員は、その府県から費用をもらつて、義務教育学校では国の半額負担によつて職務を遂行している。国立学校の先生は、国費の全般のまかないによつて運営されている。従つて、私立の学校の先生の政治行為の制限の規定はない、この私立学校の教員の制限をしないこととの比較は、あなたはいかが御答弁なさいますか発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/78
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079・緒方信一
○緒方政府委員 私立学校の先生に対する問題は別な観点から考えなければならぬと思います。と申しますのは、このたびの法案は、すでに公務員に対しましては政治的行為の制限が課せられております。その課せられております公務員につきまして、そのうちの公立学校の教育公務員を国立学校の教育公務員と同じようにしたいという観点から提案しておる次第でございますが、私立学校の教員に対しましては、これはまた新たな制限になつて来るわけでございます。そういう新たな制度をつくるということになりますので、公務員という基盤の上に立つ問題に限つて、このたびは提案をいたした、かような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/79
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080・受田新吉
○受田委員 教育の重要性の点からいつたら、国立も公立も私立もないはずです。教育の重要性を考えて行くということになるならば、私立学校の先生のその教育の影響するところは、これまた同等に大きなものがある。私は私立学校も制限してくれという意味で言つているのではないか、あなたの論法をもつてすれば、私立学校との関連において支離滅裂な結論が出る。また国立と市町村立との学校の関係において混同していらつしやる。国立と市町村立との関係を同じような基盤で御解釈されておるということを私は、ふしぎに思う。この点教育の内容という点からいうたならば、私立学校の先生が政治活動をすることは、その地域の人がさらに大きな影響を受ける、そういうことを私お尋ねしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/80
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081・緒方信一
○緒方政府委員 私は財政的な基礎の問題じやなくて、教育の内容から申し上げておるのでありまして、その観点におきましては、公立学校の教育も国立学校の教育も内容は同じであります。ただ私立学校につきましては、私立学校の教員は、今申し上げましたように公務員じやないのでございますから、公務員じやない私立学校の教員に新たに政治的行為の制限をしますことは、現在の法体系として問題がございますので、公務員である公立学校の教育公務員に限つて改正をしたい、かような考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/81
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082・受田新吉
○受田委員 教育の内容については公立も国立も私立も同じだ、ところが私立の先生は公務員でないからこれは制限しないんだという今の御解釈は、教育の内容という点を重点におつしやるならば、はなはだ矛盾した御回答です。教育の影響するところは、国立であろうと私立であろうと市町村立であろうと同様なはずです。私立の学校の先生が、一方の政党の支持を子供に教えた場合、あるいはその町村でどんどん政治活動をやつた場合、これは全然見のがしておいて、市町村立の先生だけを縛るというのは、教育の内容を中心としていうならば、はなはだ矛盾したことであると思いますが、この点いかがでございましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/82
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083・緒方信一
○緒方政府委員 もちろん教育の内容は公立も私立もかわりはありませんので、その教師が政治的行為に巻き込まれまして、その影響が職務の内容であります教育に及ぶことは避けなければならぬと考えます。しかしながら、これはただいま申し上げましたように、公務員じやないのでございまして、国立、公立の学校の教育は、ただいまお話のありましたように、公務としての公の性質を多分に持つております。私立の学校の教育とは、その点において多分に差別があると思います。従いまして、私立の先生につきましては、もちろん政治行為に深入りしないような配慮がなされなければなりませんけれども、この法律は、公立の公の性質を持つと申しますか、公務員である教育公務員について改正をいたした、先ほどから申します通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/83
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084・受田新吉
○受田委員 局長の答弁は答弁にならないのです。それは国立の学校と同じにするというだけの御説明であつて、ほかのものは別の関連において、別の機会においてということになつたのでは、はなはだおかしいと思う。私立学校法によつて学校法人の設立をお認めになり、その学校へ子供の教育を一任するという態度を文部省がとられておりながら、文部省は公立の学校の先生の方の取締りをやつて、私立学校の先生はどういうことをやつてもいいんだというような、思想の自由、政治行為の自由をお認めになつておる。これは大きな矛盾です。教育の内容からいつたら同じことじやないですか。しかも私立学校法によつて、文部大臣は私立大学その他の私立学校の指導監督の任にも当つておられる。それを私立学校は天下晴れての政治活動の自由、公立学校は市町村に至るまで手も足も縛るという大きな矛盾は、いかが解決なさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/84
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085・斎藤正
○斎藤説明員 先ほど局長から申し上げましたように、政治的行為の制限というものは、公務員に対して公務員個人の——これは勤務の内外を問わず、その個人的な政治行為を制限する、この一定の行為を制限いたしますことは、極端な政治的な活動に巻き込まれることによつて、同じ人間でございますから、おのずからにして公務に政治的な影響をもたらす。こういう趣旨において、現在の公務員は、国家公務員であると地方公務員であるとを問わず、制限があるものと考えます。従いまして、今お話のように私立学校の先生の場合に、同じ関係において、教育の政治的中立を確保するために、その個人的な行為についても制限を加えるべきだという御議論はあるかと思います。しかしながら現在の制度におきましては、公務員という特別の権力関係に立つておる者に対しまして、その個人の政治的な活動を制限するという趣旨でございますので、こちらはまつたく現在の制度上とられてない考え方であります。しかしながら教育が政治的に中立でなければならない、こういう考え方につきましては、基本法八条に法律に定める学校云々とあります。その他教育内容につきましては、もちろん学校教育法以下の規定を守り、あるいは私立学校における所轄庁たる都道府県知事の監督あるいは認可の取消し、そういうような事柄で、もちろんその中立を守るべき要請は、私立学校に対してもあるのでございますけれども、現在教員個人の政治的な活動という観点から規制するものといたしましては、現在の公務員法の考えからは、公務員についてだけしか制限できないのではないか、こういうことを局長から申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/85
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086・受田新吉
○受田委員 今の課長の御説明では、権力関係において制約する必要があるということでありましたが、市町村の学校の先生が市町村の区域外、自分の権力関係のないところで政治行為の自由を認められていることに対して、なぜ束縛されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/86
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087・斎藤正
○斎藤説明員 一応身分ということは離れて、どの範囲に規制することが妥当かということで地方公務員法もできておると思います。それから御承知のように但書におきましても、たとい都道府県の職員でありましても、地方事務所等におる者は、その範囲でいいというのが現行法の建前でございます。身分というものと政治的行為の制限の範囲というものは必ずしも一致しているものではございません。このたびの改正におきましては、教員の政治活動の直接の影響力ということではございません。そのなすべき公務たる教育がいかなる影響を児童、生徒に対して持つか。そして結局教育というものは、一地方の利害に関するものではなくして、これは国民全体に対する影響力があるのだ、児童に対する教育が影響を持つのだ、こういう観点から、国立学校の教育公務員と同様の制限をする、こういう趣旨でございますので、必ずしも身分ということとその範囲ということは一致するものではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/87
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088・受田新吉
○受田委員 はなはだあなたの御答弁もおかしな御答弁になつておると思います。それは当時の地方公務員法の精神からいいましても、先ほど私が読み上げましたように、三十条にある服務の規定のちやんとしたところに、全体の奉仕者としての地方公務員の立場がうたつてあります。その立場も考えて行かなければならぬ。教育公務員だけが抜き出される理由はさつぱりありません。教育基本法による教員は、国全体の影響を持つのだという言葉を今お叫びになつておるわけですが、教員の身分は市町村に属しておる。市町村の教職員として立つておる人がその地域以外で行動することは、府県の職員である地方事務所の職員が、その地域外で行動することと何ら矛盾するものではない。府県の職員は、その地方事務所の管轄を担当する職員です。身分が府県にあるだけで、実際は職務の及ぶ範囲は、その地方事務所の所管であります。しかもその所管内だけに影響を及ぼさせないように、地方公務員法は制約をしているのです。また市町村の教員も、その及ぶ範囲は市町村内だけであるから、市町村の内部においては政治活動をしてはならない。すなわちそ、の影響力の及ぶ範囲を現行法ははつきり規定しておる。それをわざわざ何を好んで国全体に影響を及ぼすのか。影響を及ぼす、影響を及ぼすというけれども、甲の村の先生が他群に行つて、学校の先生であるからといつて、その村の子供に影響を及ぼすということは、何の観点でそれがおわかりになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/88
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089・斎藤正
○斎藤説明員 地方公務員が全体の奉仕者という観点は、地方公務員法第一条の精神から参りますれば、住民に対する奉仕者ということに相なるだろうと思います。これに反しまして教育公務員特例法第一条は、特に地方公務員たると国家公務員たるとを問わず、教育を通じて国民全体に奉仕するというために、その任用、分限、服務等に特例を定める、こういうことをきめております。従いまして基本法の教育に対する規定の仕方、あるいは特例法の第一条の規定から考えまして、地方公務員の全体の奉仕者という考え方と、教育公務員の全体の奉仕者という考え方は差があろうかと思います。それから影響力の点でございますけれども、それはその教員個人がかりに選挙活動をなす、こういうようなことの影響力、その行為自体の影響力ではなくして、その行為をなすことによつて、そのみずから担当する公務がいかように政治的に片寄るか、こういう影響力を問題にするわけでございますので、その観点から考えました場合には、その教育は、これは児童生徒の教育ということを通じまして国全体に影響を及ぼす、こういうふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/89
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090・受田新吉
○受田委員 事務的な立場から、いろいろとこじつけの研究をされておるようでありますが、この問題については、少くとも一事務官がこういうことをいろいろと研究して、いかにこの法律の説明をするのにごまかしているかということについていろいろな努力をされたつて、それはあなたの担当の責任者である局長が理解しておられぬということでは、ほんとうに話になりません。事務官が事務的の立場でく今のように地方公務員法の一条、あるいは教育公務員特例法の全体の奉仕者、あるいは私がさつきから指摘した三十条の全体の奉仕者という、その言葉のあやだけをつかんで行くならば、つまり一番幅の広いところからとつて行つて、そうして一番影響力の少いところの分は忘れた工作であると私は断定します。県庁の職員で地方事務所におる者が、その地方事務所の所管以外の県内の市町村において政治活動をするというような場合には、これは県庁の役人であるというので、相当に影響力を持つのであります。地方事務所長についても同じことが言えます。そういう者の行為は全然これをほおかむりして、教員だけそういう影響力があるという。これはそういう影響力はほとんど教員にはありません。他の町村に行つて教員が発言してどこに影響力がありますか。先ほど申し上げたように、むしろ社会的な地位を持ち、教員を指導する責任のある教育長、そういつた幹部の方がよほど影響力があるじやありませんか。こういうところはいろいろの法律の一番広いところを何かこじつけて、そうして他の法律と比べたらまるで話にならぬところをそのまま忘れておいてこの法律をつくろうとなさることは、これはこじつけです。この点については、もう事務官の御答弁ではあまりにもこじつけであるので、私は納得できません。少くとも地方自治法及び地方公務員法、あるいは国家公務員法制定の趣旨というものをよく考えなけらばならぬ。地方公務員としての立場で今まで生きて来た人々に、ここで国家公務員並の罰則を適用しようというのは、これはよほど無理をしなければならぬ。その無理をあえて押すところに私立学校との関係が起つて来る。教育というものが国民全体に影響するものであるならば、私立学校の教育だつて、やはり国民全体に影響する教育でなければいけないじやありませんか。日本中の私立学校の先生はかつてなことをしてもいい。これは国民全体の奉仕者としての公務員じやないけれども、しかし実質的には国民全体の奉仕をするわけであります。教育公務員特例法と同じように、私立学校の先生もその線で同じように動かなければならぬ。だからこういう点で私立学校との関連、国立学校との関連、それから市町村立学校との関連というものにおいて、文部省は何らかのこじつけをされているということがはつきりわかる。そういう意味で私は、少くとも法律ができたときはよほど苦労して制定されておると思う。あの地方公務員法などは非常な苦難の後に現われた法律で、三十六条の規定なんかも、連日連夜検討を加え、苦労を重ねてできた法律であることは御承知の通りです。教育公務員特例法なども、その制定の事情をよく御承知いただいておると思うが、決して簡単にできたものではない。けれども法律を改正しようというときには、よほど外部の事情が大きな変化を来しておることを考えなければならぬ。ただ今申し上げたようなごく簡単な理由でこれをこじつけようとすることに対しては、文部省当局としてははなはだけしかつぬ。特に責任者の局長そのものが御理解なさつておられないというようなことでは、この法案制定の将来にも、あのきのこ雲のような暗影が襲いかかる心配をせざるを得ない。不用意のうちに、何とかしてこの法案をどうこじつけて行つたらいいかという説明のこりくつを事務当局では考えられているとしか思えない。今の事務官の御説明を聞いておると、私は当時の立法者の一人としてまことにけげんに考えます。
そこで人事院総裁にお尋ね申し上げたいのでありますが、人事院総裁は人事院規則を制定され、人事院規則の中に政治行為の制限、政治活動の制限をされて、政治的目的とその行為との関連において、いろいろ公務員の政治活動を制限する規定をされておりますが、この人事院規則は三年以下の懲役、十万円以下の罰金という重大な罰則です。この重罰をもつて律するという人事院規則、これを国家公務員が人事院規則にゆだねた当時の事情において、人事院はよほど慎重に考えなければならぬと思うのでありますが、人事院規則によるところの政治活動制限の意図はどこにあるか、これを総裁にお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/90
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091・浅井清
○浅井政府委員 それはあらためて受田さんに申し上げる必要もないくらいなことでありますが、やはり国家公務員が全体の奉仕者として中立性を持たなければならぬ、そこから出ておるように思つております。そういう意味でこの百二条が制定されておるように記憶しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/91
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092・受田新吉
○受田委員 それで人事院規則に基く政治的目的の定義のところの第七、八の両号でありますが、こここ「地方自治法に基く地方公共団体の条例の制定若しくは改廃又は事務監査の請求に関する署名を成立させ又は成立させないこと。」、その次にやはり「地方自治法に基く地方公共団体の議会の解散」云々がありまするが、これらは国全体の奉任者としてどういう関係があるわけですが、国家公務員としての関係を御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/92
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093・浅井清
○浅井政府委員 やはりそこに出ておりまする部分は、一地方自治団体の問題についてでありまして、やはり国全体の奉仕者としてそういうことに政治的目的を持つて関係するということがよくない、こういう立場から来ておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/93
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094・受田新吉
○受田委員 地方公務員がそれをやることを制約するなら筋は通りまするが、国家公務員まで、そこまで制約する理由は、私としてはよほど重大な理由がなければいかぬと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/94
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095・浅井清
○浅井政府委員 たとえばある地方に勤務して、河川工事をつかさどつておるものがあるといたします。これはその地方の住民の利益に非常に大きな影響を及ぼす。またある地方に税務署があるといたします。これは国家公務員でありまするけれども、その税務署の職員の一挙手一投足というものは、その地方の住民にいろいろ影響があるでございましよう。そういう影響力を持つているものは、たといその地方だけに関する条例その他の問題にしても、やはりそこに政治的行為があつてはならぬ、そういうことがねらいであつたように記憶しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/95
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096・川島正次郎
○川島委員長 加賀田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/96
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097・加賀田進
○加賀田委員 内容に関してはいろいろ説明もありましたが、まず局長にお尋ねいたします。人事院は、御承知のように国家公務員法に基いて公務員の労働条件その他が適正であるかないかということを審議するわけですけれども、突如地方公務員である教育職員の政治活動に対しては国家公務員法を適用することになつたのですが、この法案を提出する前に人事院と相談なされて了解を得たか得なかつたかということを一応聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/97
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098・緒方信一
○緒方政府委員 御相談申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/98
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099・加賀田進
○加賀田委員 では人事院総裁にお伺いします。大体この法案を提出する前に相談があつて了解されて、それに基くいろいろ人事院としてなさなければならない問題の考慮の上に立つて了解されたのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/99
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100・浅井清
○浅井政府委員 その了解ということ でございますけれども、人事院といたしましては、何も文教政策に関する権限は持たないのでございます。従いまして、こういう法律案を国会に出すとか出さぬとか、こういつたことが文教政策上いいとか悪いとかということについては、了解するとかしないとかいう問題ではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/100
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101・加賀田進
○加賀田委員 じやどういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/101
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102・浅井清
○浅井政府委員 すなわち了解というのは、こういう形でもつて人事院規則が地方公務員の上に適用されるということに結論としてはなるわけでありますから、それに対する了解ということであります。つまりこれを逆に申しますれば、国家公務員について人事院がつくつておりまするところの人事院規則が、この法案が成立すれば地方公務員の上にも適用せられるであろう、こういうことを了承したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/102
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103・加賀田進
○加賀田委員 そういたしますると、大体人事院としては、国家公務員に対するあらゆる行政面に対しての調査あるいは擁護をしなければならない立場ですが、これが適用されて参りますと、五十万の教職員に対して、やはり人事院としては執務は多くなるという点があると思いますが、その点に対して御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/103
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104・浅井清
○浅井政府委員 執務は多くならぬと思つております。つまり人事院がつくつた人事院規則が地方公務員の上に働くだけでありますが、その地方公務員の身分はそのままでありますから、これに対して、人事院が何も任命権者でもなければ主管官庁でもないのでありますから、執務は多くならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/104
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105・加賀田進
○加賀田委員 公務員法の百二条に基いて、人事院規則に政治的行為に関する規定が出ておるわけであります。これの第八項だと思いますが、これを見てもらえばはつきりすると思います。各省各庁の長は、法または規則に定める政治的行為の禁止または制限に違反する行為または事実があつたことを知つたときは、ただちに人事院に通知せねばならない、なおこれに対する適切な手段を講ぜなければならないということが載つております。従つて人事院としては、従来国家公務員がこうした政治的な禁止並びに制限に対して違反した場合には通告を受け、しかもそれが適正な措置が行われたかいなかということを人事院としては絶えず検討していただかなければならぬと私は考えます。この人事院規則に基いて、今後五十万の教職員がこれに違反したという場合も、やはり人事院に報告しなければならないという義務が起つて来る。従つて報告を受けたら、報告をたなにあげて置くのでなしに、五十万に対して適正な措置が講ぜられているかいなかということをやはり検討する必要が生れて来る。それで執務の増大になつて来ると思うが、この点は、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/105
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106・浅井清
○浅井政府委員 その点について申し上げたいことがあるのであります。それは、先日櫻井さんからもお尋ねがありましたが、いわゆる国の調査の問題、あるいは国家公務員に云々というような問題、これらの点につきましては、人事院といたしまして将来少しく考えなければならぬことがあるのではないかと考えております。それは、つまりこの人事院規則をあるいは幾分変更しなければならぬ必要が生ずるかとも思つております。しかしそれを私どもが今日まで一言も申しませんのは、まだこの法律に対する国会の御意思等がちつともきまつていないのでありますから、それはこの法律が成立いたしました後におきまして支障ないようにいたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/106
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107・加賀田進
○加賀田委員 大体そういうことで、教職員の問題に対しては、人事院としてはさらに作業量がふえて来るということを認めたわけです。そこでこれが通過すれば、これに基いてこの問題に対してさらに検討しなければならないという答弁がございましたが、次に局長にお尋ねいたします。この問題は、いわゆる人事院の了解を得て出されたと思いますけれども、この法案の問題は、教職員の政治活動の問題に対してこういう違反並びに禁止が犯された場合には、現在の地方に制定されている教育委員会の発議によつてこれが審議されることになるわけです。従つて人事院に報告しなければならないと義務づけられたことは、どこから人事院に報告すると考えられているのか、その点説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/107
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108・緒方信一
○緒方政府委員 この八項の規定は、地方公務員でありまする公立学校の教育公務員の場合は、実体的に関係がございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/108
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109・加賀田進
○加賀田委員 これはゆゆしき問題だと思うのです。「百二条第一項に規定する政治的行為の制限に違反した者は、同法第百十条第一項の例によるものとする。」しかも公立学校の教員は国立学校の教員の例によるということになつております。国立学校の教員は国家公務員法の百二条を適用されるとするならば、百二条には「人事院規則で定める」云々ということが載つております。従つて人事院規則に定めた問題は、いわゆる政治的行為に関する規定として出ております。この規定は第一項から第八項まであるわけです。これが全部適用されるということになるわけですが、それで第八項だけは適用する必要がないということは、法理的には成り立たないと思いますがどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/109
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110・浅井清
○浅井政府委員 その点は私がさいぜんお答えしたことに触れるわけであります。つまりこれは、読みかえの規定というものがこの法律の中に入つておりませんために、そういう点が問題になる。たとえば文書図画を国の庁舎に掲げるとある。ところが地方公務員がかりに政治活動いたしました場合に、自分の答を捨ててわざわざ国の庁舎まで文書図画を張りに来るばかはいないだろうと思うのであります。そういたしますと、国の庁舎という言葉は、これは将来あるいは変更しなければならないように思つております。それからまた今の報告の義務は、事務量がふえないようにするためには、これは厳正にそのまま解釈して行かなければならぬと思つております。すなわち国家公務員の場合だけは報告の義務がある。つまり各省各庁の長というものは国家機関の長というのであつて、何も地方公務員に関する事例は一々人事院まで報告して来なくてもいいと、こうする方が適当であろうかとも考えております。そこで、そういつたように、この規則がそもそも地方公務員を通してできていないために、この点は将来人事院としても考慮する必要があるかと思つております。従いまして、将来これを変更いたします場合は、人事院は公正な独自の見解でこれを変更したします。決してだれの意見も聞きません。われわれといたしましては、最も公正な立場からこの規則をかえる必要があると認めたらかえる、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/110
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111・加賀田進
○加賀田委員 文部省と人事院とが、この問題に対して相当意見の相違があるということを見出して、これはたいへんなことだと思う。地方公務員が、こういうように政治活動の制限を受けたために、国家公務員法の百二条を適用することになつたために、人事院規則がそのために改正されるということは、ゆゆしき問題だと思う。そういうことを両方の了解なくして、こういうずさんな法案を出すということは、文部省としても私は再検討する必要があるのじやないかと思う。その点文部省はどう考えるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/111
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112・緒方信一
○緒方政府委員 これは「国立学校の教育公務員の例による。」ということでございますので、人事院規則との関係はないと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/112
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113・加賀田進
○加賀田委員 人事院規則とは関係ないとおつしやるのですか。人事院規則は関係がないのですね。もう一度確認いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/113
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114・斎藤正
○斎藤説明員 今ちよつと御質問をあれしておりまして、現在の八項の関係を申し上げたと思いますが、局長のお答えになりましたのは、「国立学校の教育公務員の例による。」ということでございますので、これは国立学校に現実に適用になる人事院規則の改正、これは将来改正されるならば、それについて行くわけでありますので、その関係は人事院だけの考えであつて、私たちの方では直接の関係はないのだ、こう申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/114
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115・加賀田進
○加賀田委員 それはもちろん人事院が独自に人事院規則をかえれば、それについて行かなければならぬことは当然です。しかし文部省として、この第八項に対しては特に影響されないのだということを言つたが、人事院としては、適用されるおそれがあるから再検討して、修正する場合にはしなくてはならないという問題が起つて来て、大きな食い違いがあると思う。お互いに話し合つて、了解の上に立つて提出されたというのに、この重大な問題を何ら話合いも終結せずして国会へ提出するという、こんなずさんなものをわれわれは審議できない。だからこれは人事院として、あるいは文部省としても、話合いがあつたら、こういう問題はどうするんだということを、やはり国会に明確に説明されて、われわれのこの審議に対して態度を決定する大きな資料にしなくてはならぬと思う。従つて五十万の教職員がこの人事院規則を適用されるということになつて、そのために、地方公務員が入つて来たために、いわゆる招かざる客が座敷へ上つてあぐらをかいたために、人事院の方として規則を変更しなければならぬ、こういう問題が起つて来るわけです。もしこれを変更されずして、このままで適用されるとすれば、文部省としては八項は適用されないのだ、人事院としては適用されるかもわからない、こういう点も調整してもらわなければならないし、もし八項が適用されるとすれば、どういう経路をたどつて人事院の方は適用されるのか、この点も明確にしてもらわなければ困る。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/115
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116・緒方信一
○緒方政府委員 これは先ほど総裁からお話のあつた通りでございますが、私ども先ほど地方公務員は関係がないと言いましたのは、先ほど総裁のお話になりましたような意味で申し上げたのでありまして、今後人事院の方で適当に御改正になる場合には、先ほど申しましたように、公立学校の教員につきましても、適用されると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/116
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117・加賀田進
○加賀田委員 時間が経過しましたけれども、もちろん改正すればそれについて行くということは当然であります。しかし現在国会でこれが通過した場合に、翌日でもこういう問題が起つた場合には、これはやはり八項に基いて報告しなければならぬ義務が起ると思う。それはどういう経路をたどつて人事院に報告されるか、その点を聞いているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/117
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118・緒方信一
○緒方政府委員 この規定の八項のままでは、地方教育委員会が報告するということはないということを先ほど申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/118
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119・加賀田進
○加賀田委員 人事院はまだこの八項に対してはつきりした見解が出ておりませんので、後刻双方話合いの上でこの問題を明確に、最終的に答弁していただきたいと思います。
もう一点だけお尋ねいたします。今政治的行為の禁止に対して、国民全体の奉仕者であるという点が非常に大きく取上げられていたと思うのです。しかし国家公務員がこの政治的行為の禁止をされているのは、国民全体の奉仕者であるという、しかも政治的行為を行つた場合には国民に大きな影響をもたらすという、この一点だけではないわけです。もつと大きなウエートがこの中に含まれているのです。それはこの政治的行為に関する人事院規則に基いて、二十四年の十月二十一日に運用方針というものが通牒として出ていると思う。これにはつきりと、なぜ公務員が政治的行為の禁止並びに制限を行わなければならないかという目的が第一項に明確になつております。それは今申し上げた国民全体の奉仕者であるということと、さらに職員の身分を守るということ、これが一番大きな目的なんです。政治勢力の影響または干渉から職員を守つて、政変が起るとか、あるいはその当時の政治勢力の変更によつてすぐ職員の身分が不安定になる、あるいは左遷されたり首を切られたり、しかも国家行政がそのために麻痺状態に陥るというようなこと、こういうこともやはり考えられてつくられたわけです。そのために地方公務員と国家公務員との政治活動の制限に対する区分ができているわけです。これが大きな目的であつたにかかわらず、国民全体の奉仕者であるという一点だけで、教育を担当する職員の政治活動を全国的に禁止するという、その目的と方法を適用するというところに大きな矛盾が来ておると思うのですが、その点文部省としていかがお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/119
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120・緒方信一
○緒方政府委員 今のお話のこの制度の趣旨は、職員を保護して行くという建前のありますことは、お話の通りであります。そこで先ほど私が申し上げましたのは、政治的行為を制限するとによりまして、職務の中立性を守る、それによつて職員の地位を保障して行く、そうして保護して行く、こういう趣旨でございます。従いまして、このたび政治的行為の制限を従来よりかえまして、国家公務員と同じようにしましても、その趣旨は一向かわらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/120
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121・加賀田進
○加賀田委員 答弁が非常にあいまいですが、いわゆる政変その他政治的な勢力のいかんによつて、地方公務員並びに国家公務員の身分というものが非常に不安だということが、政治的行為の制限の大きな理由であるわけです。現在の教職員の雇用関係と申しましようか、それはやはり地方団体だと思います。任免あるいは懲戒等は地方団体がやる。そういたしますと、国家との関係は非常に稀薄なんです。地方自治体の政治権力との雇用関係で大きな影響をもたらして来ておるわけです。そういう意味で、今申し上げたように、地方公務員は地域的に政治活動を制限せられ、国家公務員は全国的に制限せられておるという大きな問題が起つて来て、おるわけです。ここに大きな目的があるにもかかわらず、教職員だけが全国的に制限されるということにも、説明の中でも大きな矛盾があると考える。従つてこれは単なる教職員のいわゆる政治的行為を制限するという、国家公務員に準ずるという目的だけでなく、教育の中立性と表裏の関連性があると思いますので、その政治活動を制限した目的と、教職員をその中に入れようとする目的とは相反しておる。特例法においてもそうである。特例法は政治活動を制限するために設けたのではありません。これは人事制度を基本として設けられたものです。これは第一条に出ておる。そういう違つた目的の法案の中に全部巧妙に含めて、この法案を出して来ておるところに、われわれとして非常に不明朗な、陰険な法案として指摘する必要がある。しかも今申し上げたように、そのために招かれざる客が入つて来たために、人事院もさらに検討しなければならない、報告があれば調査しなければならない、こういう問題が必然的に関連して来る。これは人事院に特に注意して質問しなければならない大きな理由なんです。しかも今申し上げたように、そのことで意見がまだ最終的に決定していないというずさんな法案は、これを再検討するために撤回して、人事院とも十分審議の上に立つて自信をもつて提出していたたきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/121
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122・緒方信一
○緒方政府委員 職員の保護の問題でありますが、これは私は、政治行為のたとえば地域の制限を広げますから、そういうことによつて制限を強化いたしますけれども、教育公務員が政治に深入りすることから防いで行く、それを強くするわけでございますから、それは職員の保護については、深入りさせないで、そうして職員の地位を保障して行くという趣旨には一向さしつかえないのではないか。それから人事院の関係の八項の問題につきましては、各省の長は報告しなければならないということになつておりますので、その点につきましては、現在のままでは適用はない、かように申し上げておる次第であります。人事院と齟齬している点はないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/122
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123・石山權作
○石山委員 この法案が通つた場合、私はその処理に非常に困難を感ずるんじやないか、こういう懸念があるわけです。悪法であるとかないとかいうことは別として、通つた場合どれだけ自信のある処置がとれるか、たとえば教唆扇動、あるいは良識ある公民たるに必要なというその限度というような言葉によつて、この法律が定められておるわけですあなたの方では、たとえば教唆扇動は、こうこういう事項は教育の場においては教唆扇動になるということを、どのくらい想定しておるか、どういう事例になるか、たとえば必要な限度という言葉も、何を越えたら罰せられるというようなことであれば、必要な限度ということもわかるんですが、必要な限度が各個人によつていろいろ違つ来る、こういうような場合にこまかい細則を考えられておるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/123
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124・緒方信一
○緒方政府委員 ただいまのお話は、政治的中立の確保に関する法案の第三条の問題だと思いますが、第三条の第一項は、ただいまお話のありましたように、「特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育を行うことを教唆し、又はせん動してはならない。」第二項は「必要な政治的教養を与えるに必要な限度をこえて、特定の政党等を支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」かように規定いたしてあります。一項二項とも教唆扇動をしてはならないというその内容につきましては、確定しております。今お話の「良識ある公民たるに必要な政治的教養を与えるに必要な限度をこえて」云々ということは、これだけで判断するものではないのでありまして、この先の「特定の政党等を支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」これが教唆扇動を禁止されておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/124
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125・石山權作
○石山委員 教唆扇動という言葉は、言論界に非常に影響があるというので、以前破壊活動防止法の場合にも非常な論議をかわしたのであるが、その当時の論議のことをよく研究されてこの言葉を今回も出して来たかどうか。それで限度という言葉はいろいろ問題があると思う。あなた方が考えておるところの良識ある公民というのは、何をさして良識ある公民と言うのか、どういう基準をもつて言うのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/125
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126・緒方信一
○緒方政府委員 これは教育基本法第八条というのがございまして、その一項に「良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。」という規定がございます。これは学校教育におきまして、その児童生徒が成人のあかつきに政治的立場をきめる、そういう場合に、自分の独自の理由、独自の判断によりまして公正な態度をきめることができるように、それに必要な政治的教養を与える、こういう規定であります。一般の常識ある公民、それに必要な政治的教養、かように解釈いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/126
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127・石山權作
○石山委員 どうも答弁がよく了解できないのですが、これが地教委にもしまかされた場合の結果をおそれます。これはあなたの方でも考えられて、内容を統一して、地教委に指示か何かされるつもりであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/127
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128・緒方信一
○緒方政府委員 この点は今お話しましたように「必要な限度をこえて」ということだけじやございませんので、その先にあります「特定の政党等を支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」ここの方が構成要件として要素になつている点であります。でありますから、これはこれで確定いたしますので、これ以上にこまかく規定する考えはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/128
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129・石山權作
○石山委員 前に給与三本建の法案を人事委員会が非常に悪法として考えられた。今回のこれも悪法だろうと思うが、前の給与三本建は、これは書面でよろしゆうございますが、各県の条例によつて、給与三本建はその悪法であることをセーヴするため、ある県においては一号上げ、ある県においては二号上げというふうな措置をとつておる県もあるように聞いております。そういうのを、あとで書類でよろしゆうございますから、調査されて、当委員会に提出していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/129
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130・川島正次郎
○川島委員長 本問題に対する質疑は終了いたしました。
次会は二十二日午前十時三十分から開会いたします。なお午前十時から理事会を開きますから、御了承を願つておきます。これにて散会いたします。
午後四時三十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904548X00619540320/130
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