1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年二月十七日(水曜日)
午前十時五十分開議
出席委員
委員長 千葉 三郎君
理事 淺香 忠雄君 理事 黒金 泰美君
理事 坊 秀男君 理事 山本 勝市君
理事 内藤 友明君 理事 久保田鶴松君
理事 井上 良二君
小西 寅松君 高橋 英吉君
苫米地英俊君 藤枝 泉介君
福田 繁芳君 柴田 義男君
春日 一幸君 平岡忠次郎君
出席政府委員
大蔵政務次官 植木庚子郎君
大蔵事務官
(主税局長) 渡辺喜久造君
委員外の出席者
大蔵事務官
(主税局税制第
一課長) 白石 正雄君
大蔵事務官
(主税局税制第
二課長) 塩崎 潤君
専 門 員 椎木 文也君
専 門 員 黒田 久太君
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二月十一日
委員三和精一君辞任につき、その補欠として高
橋英吉君が議長の指名で委員に選任された。
同月十二日
委員内藤友明君辞任につき、その補欠として加
藤高藏君が議長の指名で委員に選任された。
同月十三日
委員加藤高藏君辞任につき、その補欠として内
藤友明君が議長の指名で委員に選任された。
同月十七日
内藤友明君が理事に補欠当選した。
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二月十一日
昭和二十八年の風水害及び冷害による被害農家
等に対して米麦を特別価格で売り渡したことに
より食糧管理特別会計に生ずる損失を補てんす
るための一般会計からする繰入金に関する法律
案(内閣提出第二六号)
同月十五日
物品税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
二九号)
入場税法案(内閣提出第三〇号)
同月十六日
国民金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣
提出第三三号)
財政法第四十二条の特例に関する法律案(内閣
提出第三四号)
日本銀行券預入令等を廃止する法律案(内閣提
出第三五号)(予)
当せん金附証票法の一部を改正する法律案(内
閣提出第三六号)(予)
同月十一日
税理士無試験登録に関する特例延長の請願(堀
川恭平君紹介)(第一〇八四号)
生糸に対する原糸課税反対に関する請願(助川
良平君紹介)(第一〇八五号)
同(粟山博君紹介)(第一〇八六号)
葉たばこの冷害対策確立に関する請願(助川良
平君紹介)(第一一〇一号)
同月十二日
揮発油税軽減に関する請願(廣瀬正雄君紹介)
(第一一七七号)
同(古井喜實君紹介)(第一一七八号)
同(黒金泰美君紹介)(第一二五八号)
同(西村力弥君紹介)(第一二五九号)
同(前田正男君紹介)(第一三〇二号)
東南アジア諸国における水産物輸入関税の軽減
に関する請願(椎熊三郎君紹介)(第一二〇〇
号)
生糸に対する原糸課税反対に関する請願(山下
春江君紹介)(第一二五六号)
家具に対する物品税軽減に関する請願(坊秀男
君紹介)(第一二五七号)
葉たばこの冷害対策確立に関する請願(山下春
江君紹介)(第一二六六号)
所得税制度改正に関する請願(田嶋好文君紹
介)(第一三〇三号)
砂糖消費税引上げ反対に関する請願(田嶋好文
君紹介)(第一三〇四号)
同月十三日
揮発油税軽減に関する請願外一件(小林かなえ
君紹介)(第一三五九号)
同(舘林三喜男君紹介)(第一三六〇号)
同(赤澤正道君紹介)(第一三六一号)
同(辻寛一君紹介)(第一三九五号)
同(勝間田清一君紹介)(第一四四四号)
同外一件(小林かなえ君紹介)(第一四四五
号)
同(岡村利右衞門君紹介)(第一四四六号)
同外一件(楯兼次郎君紹介)(第一四九六号)
同(坊秀男君紹介)(第一四九七号)
生糸消費税創設反対に関する請願(高橋圓三郎
君紹介)(第一三六三号)
商工中央金庫等による政府資金融資に関する請
願(高橋圓三郎君紹介)(第一三六四号)
生糸に対する原糸課税反対に関する請願(井出
一太郎君紹介)(第一三九四号)
同(牧野寛索君紹介)(第一四九四号)
保全経済会出資者救済に関する請願(柴田義男
君紹介)(第一四九五号)
化粧品に対する物品税軽減に関する請願(島村
一郎君外一名紹介)(第一四九八号)
麻製品に対する消費税課税反対に関する請願(
片島港君紹介)(第一四九九号)
同月十五日
所得税制度改正に関する請願(灘尾弘吉君紹
介)(第一六〇一号)
同(大平正芳君紹介)(第一六〇二号)
生糸に対する原糸課税反対に関する請願外二件
(大石ヨシエ君紹介)(第一六〇七号)
同(大石ヨシエ君紹介)(第一七五一号)
揮発油税軽減に関する請願(佐竹新市君紹介)
(第一六〇八号)
同(岡村利右衞門君紹介)(第一六〇九号)
同(青柳一郎君紹介)(第一六一〇号)
同(春日一幸君紹介)(第一七五二号)
同外一件(岡本忠雄君紹介)(第一七五三号)
同(船越弘君紹介)(第一七五四号)
同(福井勇君紹介)(第一七五五号)
同(河野密君外一名紹介)(第一七五六号)
同(坊秀男君紹介)(第一七五七号)
同(高木松吉君紹介)(第一七五八号)
同(岸田正記君紹介)(第一七五九号)
同(伊瀬幸太郎君紹介)(第一七六〇号)
同(木下郁君紹介)(第一七六一号)
麻製品に対する消費税課税反対に関する請願(
伊東岩男君紹介)(第一六一三号)
砂糖消費税引上げ反対に関する請願(灘尾弘吉
君紹介)(第一六一六号)
同(大平正芳君紹介)(第一六一七号)
の審査を本委員会に付託された。
同月十三日
大衆保護のため保全経済会の立法化に関する陳
情書
(第五三二号)
同
(第五三三号)
同
(第五三四号)
同
(第五三五
号)
同外一件
(第五三六号)
同
(第五三七号)
国家予算編成に関する陳情書
(第五六六号)
議員立法に対する予算的措置に関する陳情書
(第五六七号)
企業の資本蓄積促進対策に関する陳情書
(第五六
八号)
会計年度の改正に関する陳情書
(第五六九号)
織物消費税復活反対の陳情書
(第五七〇号)
林業関係税制改正に関する陳情書
(第五七一号)
中小企業の金融対策に関する陳情書
(第五七二号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
理事の互選
所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一五号)
法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一六号)
相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一七号)
酒税法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
八号)
印紙税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一九号)
砂糖消費税法の一部を改正する法律案(内閣提
出第二〇号)
骨牌税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
二一号)
酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一
部を改正する法律案(内閣提出第二二号)
物品税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
二九号)
入場税法案(内閣提出第三〇号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/0
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001・千葉三郎
○千葉委員長 これより会議を開きます。
議案の審査に入ります前に、理事の補欠選任に関する件についてお諮りいたします。それは去る十二日、理事内藤友明君が都合により委員を辞任されましたので、理事一名が欠員となつておりますが、内藤君が十三日再び本委員になりましたので、同君を再び理事に指名いたしたいと存じますが、この点に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/1
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002・千葉三郎
○千葉委員長 御異議ないようでありますから、内藤君を理事に指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/2
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003・千葉三郎
○千葉委員長 これより税法案を一括議題として質疑に入りたいと存じますが、その前に一昨十五日、本委員会に付託されました物品税法の一部を改正する法律案及び入場税法案の両案を一括議題として、政府当局より提案趣旨の説明を聴取いたします。
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発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/3
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004・植木庚子郎
○植木政府委員 ただいま議題となりました物品税法の一部を改正する法律案及び入場税法案について、提案の理由を説明いたします。
政府は、さきに所得税法の一部を改正する法律案外七法律案を提出いたしまして御審議を願つているのでありますが、今次の税制改正の一環をなすものといたしまして、ここに物品税法の一部を改正する法律案及び入場税法案を提出した次第であります。
以下順次この二法律案について、その大要を申し上げます。第一に、物品税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
物品税につきましては、まず、奢侈的消費の抑制等の見地から、奢侈品、高級品ないし嗜好品に対して増徴をはかることを目途とし、輪距が百二十インチを越えるか、または気筒容積が四千立方センチメートルを越える高級大型乗用車、高級時計、高級電気冷蔵庫等に対する税率を引上げ、テレビジヨン受像機に対して新たに百分の三十の税率により物品税を課することとする等、税率の引上げないし新規課税を行うことといたしているのであります。しかし一方、小型乗用自動車の普及をはかることによつて国際収支の改善に資する等のため、輪距が百インチ以下で気筒容積が千五百立方センチメートル以下のような小型乗用自動車については、その税率を若干引下げて負担の調整を行うとともに、テレビジヨン受像機につきましては、その育成の見地から昭和三十年三月三十一日までの間は、十四インチ以下のブラウン管を使用するものの税率は、特に百分の十五の軽減税率とすることといたしているのであります。
次に、従来製造課税を行つていた高級毛皮製品につきましては、取引の時期に制約されることによる納税の不便等を除くために、これを小売課税に改めることとしておるのであります。
第二に入場税法案について申し上げます。入場税につきましては、現在地方税として都道府県においてこれを徴収しているのでありますが、その収入が少数府県に偏在していることに顧み、地方財源の偏在を是正する等のため、今回これを国において徴収することといたしました。しかしておおむね現行地方税法の建前を踏襲しつつ、課税範囲の合理化、税率の引下げ等を行うこととしておるのであります。
まず入場税の課税範囲につきましては、現行の地方税法においては、映画館等への入場のほかに、舞踏場、玉突き場等の施設の利用についても入場税を課することとしているのでありますが、これらの施設の利用につきましては、国税として課税することが必ずしも適当でないこと等を考えまして、これらに対する課税を地方団体の選択にまかせておくことがむしろ実情に即するものと認められますので、入場税の課税範囲から除外することとしたのであります。
次に、入場税の税率は、映画館等については、現行地方税法におきましては、一率に入場料金の百分の五十となつているのでありますが、大衆的娯楽の負担の軽減をはかるため、この際入場料金を四十円から百五十円まで四段階に区分し、この区分に応じまして、それぞれ最低百分の二十から最高百分の五十までの段階税率といたし、展覧会場等につきましても、現行百分の二十を百分の十に引下げることとしているのであります。
なお、純音楽、純オペラ等の催しもの、またはスポーツを催す場所につきましては、現行地方税法通り百分の二十の軽減税率を適用することとしているのでありますが、入場料金が著しく高いものについても一率に軽減税率を適用することは、権衡上必ずしも適当でないと認められますので、入場料金が七百円を越えるものについては、百分の四十の税率によることとしているのであります。
次に、免税点につきましては、現行地方税法にはその定めがないのでありますが、入場料金が二十円以下である場合には一般的に課税しないこととし、さらに小学校等の生徒、児童等が教育的目的をもつて団体入場する場合には、入場料金が三十円以下であるときは課税しないことといたして、低額料金を利用する大衆の負担の軽減等をはかることとしているのであります。また教育関係団体、社会福祉関係団体等が社会事業等の目的をもつて主催する催しもの等には、現行地方税法の通り、免税の取扱いをすることといたしております。
なお入場税は、百九十二億円の収入を予定しているのでありますが、別途関係法案を提出して新しく設けることとなつておりまする交付税及び譲与税配付金特別会計においてこれを収納し、その百分の九十に相当する額を都道府県の人口を基準として配分することといたして、地方財源の確保をはかることとしているのであります。
以上二法律案につきまして、提案の理由と内容の概略を申し上げたのでありますが、何とぞ御審議の上、すみやかに賛成せられまするよう切望いたす次第であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/4
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005・千葉三郎
○千葉委員長 次に、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、相続税法の一部を改正する法律案、酒税法の一部を改正する法律案、印紙税法の一部を改正する法律案、砂糖消費税法の一部を改正する法律案、骨牌税法の一部を改正する法律案、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案の税法八件を一括議題として、質疑に入ります。質疑は通告順によつてこれを許します。春日一幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/5
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006・春日一幸
○春日委員 最初にお伺いをいたしたいと思いますが、今次のこの一連の改正法律案は、その基準となすところのものが、かの税制調査会の答申書に依存するところが多いと思いますが、この税制調査会なるものは、一体いかなる基準によつて選任をされたものであるか、またその持つておるところの身分権限というようなものは、どのように規定されておつたものであるか、さらにまたこの調査会が任命されてから、その答申を提出されたまでにおける所要経費は、何ほどのものであつたのであるか、さらにはまた税制調査会がその答申を政府に対して行つた後、現在どういうような状態になつておるものであるか、これらの諸点について御答弁を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/6
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007・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 お答えいたします。税制調査会は昭和二十八年八月七日の閣議決定に基きまして、国税及び地方税を通じて、わが国現下の実情に即し、合理的な租税制度の確立を期するとともに、税制及び税務行政の簡素、能率化をはかるためにはどんなことをやつたらいいか、そのために必要と認められる改善事項を調査審議するということを目的といたしまして、広く民間の意見を聞いてみたい、こういう意味において組織されたものでございまして、この閣議決定に基きまして内閣に設けられております。従いまして、特に法律的にどうこうといつた関係で設けられたものではございません。考え方としましては、広く一般の民間の方々の意見を伺いまして、その意見のいいところはできるだけ尊重することによつて、税制あるいは税務行政の改善をはかつて行きたい、こういう趣旨のものでございます。
委員の選択につきましては、そうした趣旨に基きまして、できるだけ広く民間の方の御意見を伺いたい、こういう基準に基きまして、政府の方で人選いたしましてお願いした。
権限といたしましては、今申しましたような関係でございまして、政府の諮問に答えて一応答申をお出し願つた。政府といたしましては、その答申を受けまして、いれるべきものはいれ、いれられないものはいれられない、こういつた意味におきまして、できるだけ尊重する趣旨ではございますが、いろいろな事情をも考えまして、政府としては独自の立場で必要な税制改正案を提案する。とにかくその前提としまして、民間の方の御意見をできるだけ伺いたい、こういう意味でできたものでございます。
どれくらいの経費を使つたかということにつきましては、今詳細な資料を持つておりませんので、あとでお答えいたしたいと思いますが、大体所要の経費といたしましては紙代、印刷費といつたようなものが主なるものでございまして、そのほかには、一番最後でございましたが、一回、手当として一万円程度ずつ一応の謝金を出しております。なおかなり頻繁に御会合願いましたので、その間昼食等を提供しております。午前から午後にわたつて引続き会議が行われた場合だけでございますが、昼食、あるいは夜遅くまでかかつたときもございますので、そういうときは簡単な晩食も提供したことがあつたと思います。なお遠隔の地からおいでになる方が数名、主として名古屋、大阪でございまして、その方には所要の旅費を差上げております。大体かかりました経費はその程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/7
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008・春日一幸
○春日委員 そういたしますと、この税制調査会なるものは、広く民間の意見を徴するという意味で持たれたものであるということは了承いたしましたが、いずれにしても、この選定された委員各位が、何の資料も持たないで、漫然とこれに対して検討を加えるということはできないでありましようから、従つて政府が選任をしてつくつたこの調査会なる機関は、いずれにしても相当資料を収集して、その上に立つての検討が加えられたと思うのですが、その資料は一体政府から提出をされたものであるか、それとも民間の諸君が思い思いに持ち寄つて検討を加えたものであるか、この点についてお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/8
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009・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 委員の方から政府の方へ御要求になりまして、政府の方で調達した資料がございます。その前に一般的な参考資料といたしまして、広く一般的に参考となられるであろうという資料は、開会の冒頭にわれわれの方から提供いたしました。それで、その後に委員の方からこういう資料がほしい、ああいう資料がほしいという御要求がございまして、その分につきましては、これは政府の方で調達した資料がございます。それからなお民間各位の中で、それぞれの方が御意見をお立てになるにつきまして、御自分が御自分のいろいろな関係から資料をお集めになつたということもあつたと思いますが、それは、特にその資料が広く配付されたというほどのものは割合に少かつたと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/9
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010・春日一幸
○春日委員 そこでお伺いをいたしたいのでありますが、この昭和二十九年度予算の説明によりますと、二十九年度租税及び印紙収入見込額調というのがございまして、そこの中に、所得税は二十九年度において、現行法によつて徴収する場合のその見込額といたしまして三千百五十一億五千七百万円、こういうぐあいに計上してあると思うのであります。しかるところ、ほぼ同じような資料によつて、ただいま渡辺局長の御答弁のごとく、政府の一般的な資料として提出されたその資料に基く同様の見込額なるものは、実に三千二百五十六億八千五百万円、実に基準においてすでに一百億ここに相違を来しておるが、これはどういう理由か、この税制調査会なるものが、政府の資料並びに一般の資料を持ち寄つて、その推定を算出したものが三千二百五十何億、こちらはやはり政府が同様の資料によつて推定した見込額が三千百五十億、実に百億を越えるところのここに相違をもたらしておる。このことは繊維消費税そのものの額を越えることはるかなものであるが、こういう厖大な相違を来しておるという理由について、渡辺局長は一体これをどういうふうにお考えになつておるか、お伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/10
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011・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 税制調査会の審議の過程におきまして、二十九年度の歳入の見通しがどうなるかということにつきまして、われわれに資料を提供するようにというお話が再々ございました。実はわれわれといたしましては、何と申しましてもまだ時期が早うございまして、なかなかその推定がむずかしいということをるる御説明いたしました。しかし何かの数字がなければならないというので、税制調査会で、今春日委員のおつしやいましたような数字はおつくりになりましたが、ついにわれわれの方としましては、委員会の方に、この程度になるだろうという数字は提供できませんでした。委員会の方としていろいろ御相談になりまして、まあこの程度でもつて数字を組んだらよかろうという結論で出された数字が、一応答申の基礎になつておる数字でございます。その後われわれの方といたしましては、今度の予算の基本ともにらみ合せまして計数を整理して参りまして、われわれが現在予算に見積つております歳入の数字が出て来たわけでございまして、委員会の当時におきましては、いわゆる一兆億円という緊縮予算の声も、まだほんとうにはつきり一般的な輿論として出ておりませんでございましたし、従いまして片方では、歳出をできるだけ一兆円に切るべきであるという意見はございましたが、その場合、ほんとうにこうなるといつた的確な見通しを組み入れて、委員会の歳入見積りが出ているという事情のものではないのじやないかとわれわれは思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/11
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012・春日一幸
○春日委員 これは政府が閣議の決定によつて、しかも内閣総理大臣の委嘱によつて、日本の今後の税制がいかにあるべきかという実に重大な諮問を出しておると思う。そして八千四百万の国民の中からわずか二十四名の諸君が選ばれて、その答申案によれば、実に数箇月にわたつてあらゆる角度から鋭意検討を加えたということが述べられておる。政府はそういう重要な問題を委嘱した権威ある機関に対して、税制の根幹ともなるべき国民収入の資料を何ら提供しなかつたということであり、しかもその提供された資料たるや、彼らがかつてにつくつたもので、政府は関知しないと言つておる。そういうでたらめな尺度を基準としてそこからいろいろと算出された答申案であれば、これは全然権威のないものといわざるを得ない。政府は、むろんこの通りではないが、この答申案を尊重して税制改革の中に多くの意見を取入れられておると思う。そうすると、ここに答申されておるいろいろな提唱は、今おつしやるように、かんじんの国民所得というものが、これは彼らがかつてに想定した何ら権威のないものであるという形になつて来るので、その答申するところはおのずから権威のない、思いつきのものであるということになつて来るが、われわれはこの答申案をこういうふうに解釈してよいのかどうか、渡辺局長から重ねて答弁を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/12
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013・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 考え方によりますと、今春日委員のおつしやつたような考え方が出て来るのかもしれませんが、正直に申しまして、十一月の上旬にどうしても答申案をまとめなければならないという場合におきまして、二十九年度における歳入がどうなる——御承知のように現在の国民経済において、国家財政の占める役割が非常に大きい現状におきまして、その国家財政、たとえば一兆円のわくで組まれるのか、一兆五百億円程度、あるいは一兆一千億程度のわくで組まれるのか——当時は役人のベース・アツプ問題もまだはつきりした結論を得ていなかつた時代だと思いますが、そういう時期でございますので、われわれに、正確な判断をして二十九年度の今予算として提案しているような意味の数字を出せと言われましても、われわれとしては、責任を持つた数字はなかなか出しにくい事情にあるわけでありまして、できるだけ委員会の運営に支障のないように資料は提供するつもりでおりましたが、どうしても責任を持つた数字が出せない事情にあるものでございますから、その辺を調査会の方にも御了解願いまして、では、調査会は調査会として大体この辺だと思う数字を基礎にして答申を出して行こう、こういう結論が出たわけでございます。その後事情の変化もございまして、調査会の出された数字と、われわれのこれが的確であると見積つている現在の数字とにある程度の開きがあるのはやむを得ないことじやないだろうかと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/13
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014・春日一幸
○春日委員 それはまさしく詭弁であります。しかもそれは事実を曲げた答弁であります。今渡辺局長の御答弁によりますと、二十九年度の予算が一兆円で組まれるものやら、一兆一千億で組まれるものやらわからなかつた、従つてこの調査会は、結局その辺を大体想定しつつ国民所得を腰だめ的にきめたかもしれないというニユアンスのある御答弁であつたが、この答申案の本文の中に、彼らはこういうことを答申しておる。すなわち、当調査会は昭和二十九年度において国の財政規模を一兆円に押える。すなわちこの答申案は、本年度の財政規模が一兆円の範囲内、すなわち現在政府が別途組んでおるこの九千九百九十五億の予算を想定しつつ国民の所得を考えておる。その国民の所得から算出をした所得税は、現行税法によると二十九年度は三千二百五十億がとれるということを答申に言つておる。しかるに政府の予算案は三千百五十億というぐあいにここに計数を出しておるわけであつて、明らかに、これだけでもつて税額において百億円という相違を来してきておる。このことはこの税制調査会の検討がずさんであるか、あるいは政府のこの予算の立て方がずさんであるか、あるいはまた故意にここに隠し財源をひそめておるか、その二つに一つでなければならぬと思う。大体渡辺局長は今そういうような答弁をされたけれども、われわれは、政府が立てたこの資料の権威と同じような権威をやはり税制調査会も持つておつたのではないかと考えらられる。閣議決定によつて持たれたその委員会が、検討する資料に事欠くはずはない。従つて大蔵省は相当の規模によつてこの検討に参画されておつたに相違ないのであつて、従つて同一人が算出をしたこの所得税収入見込額が当初から百億円——しかもそれが半年も三月もかかるというのではない、わずか一箇月か一箇月半を置かずして百億円という差額を生ずるようなこういう財政の立て方というものがあるであろうか。こんなものはほんとうに権威のないものであつて、こういう資料を国会に提出されてわれわれの審議を煩わすというのであるならば、もう少し権威のある——少くとも二つの機関が百億を越える齟齬を来すような、こういう資料を提出すべきではないと思う。
そこで私は渡辺さんにお伺いをいたしたいのでありますが、答申案は三千二百五十億ということを答申しておるのであるが、あなたの方がこれをできるだけ過小に見積つて、三千百五十億と、百億も控え目にここに予算を立てられた。従つてこの予算から見るとなお相当増徴あるいは自然の増収がここにあるというふうに期待をされておるかどうか。すなわちこの予算の収入見込額の中に相当の自然増収というものを考え得るとお考えになつておるかどうか。これはひとつ局長の御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/14
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015・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 いろいろお話がございましたが、事情は先ほど申した通りでございまして、確かに、答申案といいますか、調査会の空気といたしましては、予算を一兆円程度に組むべきであるという強い意見は、ございましたが、同時にこれは、私そういう調査会の委員の方々に常に接触していたので、非常に臆測めいたものでございますが、その一兆円の予算と結びつけまして、この歳入見積りを、たとえばその場合における物価の動きがどうなるかといつた厳密な検討の上に調査会が九百億といつたような自然増収の数字を出したというわけのものであるとは実は思つておりません。と申しますのは、当時の一般の空気といたしましては、一兆円の予算を組むということはなかなか困難であろうという空気が多分にありまして、その辺が調査会の全体を通じまして最後まで割切れていなかつたのではなかつたかということを、私今になつて考えますと感じますし、同時にその当時も、はたしてこれがほんとうにつじつまが合つておるかという点については、多分に疑いを持つておりましたが、われわれの方にはそういうような経緯もございますので、歳入見積りを何とか至急つくれという御要求ではございましたが、事情をるるお話ししまして、われわれの方としてはちよつと責任のある歳入見積りはできないということをお断りして、調査会の方でもそれを御了承願いまして、それでは一応調査会の責任において何か計数的なものをそろえようというところで出した数字が、調査会の答申案の基礎になつておる数字でございますので、われわれの方といたしましては、まず最初にそういう数字を出したあとでこう出した、そういう性格のものでないということを御了承願いたいと思います。
同時に、たしか調査会の答申案が出たのが十一月の上旬であり、計数を集めたのが十一月の上旬であり、予算がほんとうに固まりましたのが十二月の終りから一月の初めでありまして、その間の期間はあまり長いとは申しかねますが、同時に緊縮財政といつた旗がはつきりして参りましたのは、その割合に短かい期間の間のことでございまして、時間的には必ずしも長くありませんが、たとえばここで今問題になつておるようなものを議論する場合には、かなり重大な転換があつた時期であるということは、私は言い得るのじやないかというふうに思つております。
なお最後にお尋ねのありました現在の歳入見積りでございますが、われわれといたしましては、いろいろな資料に基きまして、現在の見通しとしましては、この程度の見積りをするのが適当であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/15
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016・春日一幸
○春日委員 渡辺さんの御答弁は、なお私を満足させるわけには参りません。渡辺さんの御答弁によると、税制調査会は昨年の十一月初頭において、この計数がややまとまらんとしておる当時において、はたして一兆円予算が組めるかどうか確信を持つていなかつたようにごそんたくなさつておるのでありますけれども、調査会の答申案は一兆円に押えて、その押えることを経済自立の絶対的条件と考え、そしてかくのごとく書いてはどうか、こういう答申をしておる。
〔委員長退席、内藤委員長代理着席〕
これは絶対的条件という大確信の上に立つてこの予算を組んでおる。しかもその大確信たるや、その後政府がその意見を踏襲するところとなつて、現に一兆円予算というものが組まれておる。従つて調査会の調査検討したところと、政府の本年度予算の組み方とは、ここにぴたつと合致しておる。従つて国民所得の見込み額の中に百億円という差が生ずるはずは断じてない。それだのに、あなたの方の今回の予算に百億円少く計上されておるということは、これはかねがね国会の本会議においても多くの党から質問されたところであるけれども、まさしくここの中に隠し財源があるのではないか、このことが強く主張されておるので、この点私の満足できるようにひとつ御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/16
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017・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 私はこういうふうに見ております。と申しますのは、一応調査会は、減税そのものを要請する声が非常に強かつたのでありますが、その場合の姿におきましても、自然増収を九百億円に押え、タバコ等の増収を百三十億円に押え、結局千三十億円を一応自然増収的なものと考えまして、それから間接税でもつて片方で増税し、直接税でもつて片方で減税する、この自然増収によつてまかなう分を七百億減税に充てる、差引三百三十億というものが国の方の財政として必要ではないかというふうに考えていたという前提から出発しております。当時の予算が、その三百二十億円のほかに地方財政の自然増収を三百億円ほど見込んでおりまして、結局六百三十億円という数字が中央地方を通じての自然増収、それに対しまして、一応片方では国の財政を一兆円に押える、地方財政は現状よりもふくらませない、こういう答申を出しております。そうしますと、中央地方を通じての自然増収は六百三十億円、これのもとになつておりまする数字は、去年の当初予算の九千六百何十億という数字でありまして、一兆二百何十億円という数字になるわけでございますが、しかし一応そういう数字を出して全体の締めくくりをつけて行くということにおいて、まあ調査会のいろいろな計数のやり方などについてとやかく申すのは失礼ではありますが、ほんとうの意味で一兆円の予算が踏襲でき、同時にそれに全体が押え得るという数字的確信のもとに、全部の計数が整理されておるというわけのものになつていないというような点などから考えまして、先ほど私が御説明申し上げたようなふうに、片方では一兆円に押えるという強い要請はございましたが、その計数において、一兆円予算というものを実現した場合の数字をもとにして全体の計数が出てきたというふうには、私は思つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/17
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018・春日一幸
○春日委員 それはとてもわれわれふしぎなことなんで、税制調査会がこの本文の中に、一兆円に押える、しかもこの押えること自体が、経済自立の絶対的条件と考えてかくかくのことをといつているのだが、それに対して渡辺主税局長は、口ではそう言つているけれども、実際はそうなつていないのだから、こんな答申案を出したところの計数は信憑性がない、こういうような御答弁であるけれども、そういうことならば、もうてんであなたの考えておられること以外のことは全部ぺけ。(笑声)こういう形になるのであつて、それに対してわれわれはあげる反証というものは何もない。少くともこの二十四名の調査会委員の諸君が、政府の資料や、しかも四箇月間にわたる日時を費して出たところの答申案が、あなたがこんなものはぺけだ、言うていることとやしていることとはうそだ、こういう御答弁をされれば、まるでこれはきつねだましみたいなことになつてしまつて、そうではないといつて私が論証するという資料は私にはない。けれどもただあなたにこの機会に申し上げたいことと、なお国会の各機関において疑問を持たれていることは、この税の中に相当の隠し財源がありはしないか。現実に答申案もそれを指摘しており、答申したところは、この所得税一項目だけでも百億円——相当これも押え目に見て、答申案自体もこのインフレーシヨンを克服することのためには、財政規模を圧縮しなければならぬ。圧縮すればデフレが来るが、これはしかし国民経済を破綻から救うためにはやむを得ないといつて、そういう緊縮予算の中から抽出したところのこの所得税の歳入見積り額というものは、あなた方よりも百億円多く見ておる。われわれはこの中にも相当隠し財源があると見ておる、自然増収がありと見ておるのだが、しかしながらいずれにしても、この百億ないと仮定しても、これとあなたの方の予算との中には、現に百億円という相違が出て来るのである。従つて私はこのあなたの方の所得税の歳入見積り額の中には、相当の余裕を生じ得る見通しがあるのではないかという一つの疑義を持つておるのであります。従つてこの疑義こそは、以下いろいろとここに並べられているところの税法で、あるいは砂糖が上る、タバコが上る、いろいろなものが値上げされつつあるのだが、わけて今回国民多数の反対を押し切つて繊維消費税を新しく創設されようとしているが、この分だけでも、百億という財源をまかなおうとすればまかなえないことはない、こういう数字的基礎の上に立つて私はお伺いをしているのだが、しかしこの権威ある答申書も、大した権威はないというあなたの一方的宣言によつて、何となく価値のないものに堕し去ろうとしておるが、この問題はいずれこの調査会の責任者に聞いて、はたしてあなたのおつしやるような立場においてこれが答申されておるかを問いただした後、あなた方にいろいろとその資料に立つてお伺いをしたいと思う。
そこで質問のタイトルをかえますが、この答申書の中には、現在国民の負担能力がもうすでにその限界に達した、そこで所得税については、一年の勤労所得二十四万円程度までを無税とすることはすでに常識化し、決して過大の要求とはいえない、こういうことが述べられておると思うのであります。このことは、多年にわたるわが党の政策をこの調査会によりはからずも明確に裏づけされたことになるのでありますが、そこでお伺いしたいのは、この答申書によると、所得税における基礎控除、現行は六万円であるが、これを八万円にしなければならない、このことを強く第一項目に指摘いたしております。それから三項目においては、給与所得の控除を現行四万五千円から七万五千円に引上げることを強調いたしております。しかるところ、今次提出された政府の改正案によりますと、この八万円に引上げろというやつが七万円になつており、給与所得の控除限度額を七万五千円に引上げろというやつがそのまますえ置かれておると思うのであるが、この答申の骨子としこれが答申されておる立場にかんがみまして、政府は一体これに対してどういう見解のもとにこういう中途半端な、あるいは一部を無視したこの税制改革案を上程するに至つたのであるか、この点の御見解を承りたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/18
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019・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 最初にお話になりましたように、私が税制調査会の答申が非常に権威がないと申し上げたというようにとられますと、実は私の本意ではございませんので、言葉が非常に足らなかつたと思うので、つけ加えさせていただきたいと思います。御承知のように、今次税制調査会の答申が出ましたのは、十一月の上旬でありまして、その当時において二十九年度の歳入の見通しをするということは——最近の見通しは二十九年度に組まるべき予算と非常に緊密な関係があり、単に一般会計だけでございませんで、財政資金のわく、たとえば政府機関の予算の問題でありますとか、特別会計の問題でありますとか、財政投資の問題でありますとか、そういうものがどうきまるかということが歳入見積り全体を大きく左右するわけでございまして、一般会計一兆円だけが全体をきめるわけでもございませんし、そのようなわけで非常に困難であるということのゆえに、われわれの方としては遂に税制調査会に歳入見積りの資料を提供できなかつた。同時に当時のいろいろな空気を察知してみますと、税制調査会といたしましても、なかなか資料が得にくい、確信が得にくいというので、一応この辺の数字ということで最後の結論を出さざるを得なかつたというわけでございまして、これは、こういうなかなか権威ある方々にお集まり願いましたが、非常に困難な問題であつたというところに、ある程度の誤差が出て来ることはやむを得ないのではないか、調査委員の方の能力がどうこうという問題とはかけ離れている問題ではないか、同時に先ほど申し上げましたのは、税制調査会の答申の内容自体にこうした意味のものがございまして、税制調査会としても、当時そこをはつきり割切つていなかつたのじやないかというように察知されるということを申し上げているわけでございまして、頭からこれはだめだというふうに申し上げているものではないということを御了承願いたいと思います。税制調査会の方々について意見をただされるというのはけつこうでございまして、その辺の事情をよくお聞き願つたら、私も幸いではないかというふうに思つております。
それから第二に御質問になりました基礎控除の問題、勤労控除の問題、これは扶養控除の問題も同じでございますが、税制調査会の答申通りこれを実行するということにつきましては、政府としてもできるだけ考えてみたわけでございますが、現在の財政規模等から考えまして、さらに一兆円の予算を実行した後の姿というものまで考えまして、どうも税制調査会の答申通りそのまま実行することは非常に困難である。同時に間接税の面におきましても、税制調査会の場合におきましては、たとえばたばこについてピースを十円上げ、ひかりを五円上げるとか、いろいろな案があるわけであります。繊維消費税の案も出ておるのでありますが、こうした間接税の増徴につきましても、この一兆円の予算を実行している現在といたしまして、そのまま実行することは非常にむずかしいのではないか、先ほど言いましたように、税制調査会の答申が出た時期とその後の様子が相当かわつておりますので、その辺を考慮して参りますと、非常に不十分ではありますが、現在御提案申し上げている程度の基礎控除、扶養控除の引上げで、現在のところはまあやむを得ない事情にあるのではないか、こういう結論に達したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/19
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020・春日一幸
○春日委員 そこでその調査会の問題が弁護されているように承りましたが、けなしてみたり弁護されてみたり、どうも私には合点が行かない。少くともその調査会というものが、閣議の決定によつて、今後の日本の税制の大体の方向を具申せしめるというものであるならば、向うから出せと言つて来た資料は万難を排して提出する義務が政府にあると思う。むずかしいから国民所得の推定資料が出せなかつたというふうなことであるけれども、そんなことでどうして調査会がその答申案をまとめることができ得ましよう。それはまつたくむちやくちやな話なんです。しこうしてそういうむちやくちやな立場においてここに答申をして来たのだから、あそこもここも食い違つて来るのはやむを得ないというふうにも聞き取れたりするのでありますが、そのような権威のない答申書であるならば、そんな答申をした諸君に一万円ずつもお礼をやつてもらつては困るのではないか。現実の問題として私は相当な費用がこれにかけられていると思うのです。国民の血税を一厘一毛たりともそのようにおろそかに使われてはならない。少くとも閣議決定の権威ある過程をふんで、そうして二十数氏のこの知名の氏が選ばれて、その諸君の答申されたものが、今のあなたの説のままであるとするならば、それのために相当の経費が支出されたというようなことは、われわれ国民としても納得の行かないものばかりである。
それはそれといたしまして、私はこの機会に委員長に希望を申し述べておきます。本朝の理事会のお話合いによるならば、近くこの税制改正法律案全般について学識経験者の意見を公聴されるとの趣でありますが、その機会にぜひともこの税制調査会の責任者の御意見を聞く機会を与えられたいことを強く要望いたしておきます。
次に渡辺局長にお伺いをいたしたいことは、これは重要な問題でありますが、あなたの方の予算説明書によりますと、間接税の方においてずつと増徴がはかられております。酒税において三十七億、砂糖におきまして五十七億、揮発油税において三十一億、繊維品消費税において八十五億、累計がどの程度のものになりましようか、いずれにしてもこれは相当の金額になると思うのであるが、これは現実に国民にそれだけ負担を加えることになるのであります。その実額だけ国民に負担を加えることになるのであつて、そうしてその額を、あなたの方はこの直接税で減税を行うということを麗々しく誇大に宣伝されておる。ここに問題があると思うのであります。たとえば来年度の日本の経済がどういう方向をたどるかということは、これは国民ひとしく憂え、案じておるところであるけれども、いい景気がやつて来ようなどと期待をする人はおそらくだれもないと思います。輸出は現在ほとんど行き詰まつておる状態でありまして、これが近い将来において挽回ができる、あるいは中共貿易ができるとか、あるいは朝鮮との貿易ができるとかいうような、外交を通じての景気挽回の施策というものは何一つ講ぜられてはいない。従つて輸出は行き詰まる。そうして国内の生活はどういうぐあいになつて来るかというと、現実にここに何百億かの、間接税による間接の負担が国民に加えられようとしておる。なるほど昨年度において一部賃金ベースが上げられはいたしましたけれども、これは、それ以上にすでに昨年度において生活費が上つておるからである。そのことは人事院の勧告書の中に明確に指摘されておるところであります。さらに本年度おいてはどういう状態になるか。まず砂糖が上るであろう。さらにここに掲げてあるタバコや酒の問題は別といたしまして、一番重要な問題は電力料金の値上げの問題がある。この電力料金の値上げは、黙つていれば家計費をかさめて来るし、あるいは工場における生産コストを高めて来る。生産コストが高まれば物価が高くなり、物価が高くなれば、またお互いの消費生活のコストをおのずから循環的に高めて参ります。電力が上れば硫安は三割上るといわれているが、硫安が上ればやはり米の値段が高まつて来る。来年度においては勤労大衆、あるいは庶民大衆の生活は、生活コストが高まることによつて苦しみが非常に加わつて来るという想定をすることが大体経済常識であろうと思う。そういう状況下において、あなた方の予算の組み方によると、本年度において二千八百七十六億三千二百万円、これは昨年度よりもふえることおそらく二百億を越えるであろうと思うが、これは間接税の数百億の増税のほかに、消費大衆、勤労大衆に現実に二百億の実額だけの負担を直接税においてさらに加える結果になると思うのであります。このことは、すなわち間接税を増徴するけれども、別に直接税で相当の減税をして、そうして今や現行税制によると国民の負担は負担の限界に達しておるので、これを減税するのだというあなた方の発表とは全然違つた結果がここに現われようとしておる。これに対して、主税局長は一体いかなる見解をお持ちになつておるのであるか、御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/20
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021・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 われわれの方で考えておりますのは、御説のように、片方で間接税を増徴しまして、同時に片方で直接税を軽減して行きたい、こういう考え方で全体の改正案を組んでおります。間接税をふやし直接税を減税する、これは税制調査会の考え方にも一応そういう考え方が基礎にあるわけでございまして、われわれといたしましても、現在の直接税の負担の重さというものを軽減する意味におきまして、あるいは奢侈的な消費とか、特にそういつたものを中心とした間接税の増徴をやつて行くのが適当である、こういうような結論を出しまして、直接税と間接税の関係の調整を行うことがこの際としては適当ではないか、これが今度御提案を申し上げました全体の措置であります。春日委員の御説によりますと、とにかく一応直接税を減税したといつても、直接税の収入全体はふえておるではないか、従つてその意味から、国民負担の限界を越えておるというのに増徴になつておるのではないか、こういう御説のように拝聴いたしますが、われわれは、一応税制というものが動かない姿におりまして、そしてそこに経済が発展しており、そこにおのずから自然増収が出て来る、そういうものは増税とか減税とかいつたような性格のものとは違うのではないかというふうに考えております。結局現行税制のままで、あるときにおきましてどういう姿のものになり、それに対して新しい税を起す、あるいは減税するということによりまして、おのずから増減税の問題が出て来るのではないか、こういうふうに考えております。従いまして、現在のままでほうつてあつた場合におきましては、この程度の自然増収が出て来るのだが、しかし基礎控除を上げ、扶養控除を上げることによりまして、この程度の税収が減るのだということは、やはりこれは減税と考えていいのではないか、こういうふうに考えておりまして、そういつた意味におきまして、この改正が行われれば、直接税においては三百二十億程度の減税がなされるのだということを申し上げて別にさしつかえないのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/21
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022・春日一幸
○春日委員 関連事項として、この際植木次官にお伺いをしたいのでありますが、いずれにしても来年度はいろいろ物価が上るであろう、一撃にいろいろ公益事業の料金も上つて来るわけなんだが、わけて電力料金一割四分四厘の値上げということが、大衆生活に大きな重圧を加えて来ると思うのであります。ところがこの電気料金は、先般日本国政府がその保証人になつて、アメリカの世界銀行ですか、これとの間に火力借款の契約を取結んだ際において、その特約条項の第三項の中に、電力会社が合理的な経営によつてこの借りた借款を払うことができるような、そういう経理状態を確保するために電力料金を値上げしろ、こういうことをアメリカ側によつて強要されている向きがあると思われる。従つてやがて行われるであろうところのこの電力料金の値上げたるや、これは先般本委員会が承認を与えたあの火力借款の中には、われわれが承認を与えた当時には、日本の電気会社の電力料金を値上げするというようなことは一言一句も書いてなかつた、だからわれわれはこれに承認を与えた。その後池田特使がアメリカへ行つて最終的協約を取結ぶ際に、日本の自治団体、日本銀行、いろいろなものをアメリカの世界銀行に担保に入れたのだが、それは一つの形式的な措置として看過するとしても、電気料金を値上げして、それでもつて電気会社が長期借款返済の道を確保しろということが条件になつておつたとするならば、このことは、いよいよもつて日本の経済がアメリカの植民地経済にまさしく堕し去ろうとする重大な問題だと思うが、次官はこれに対してどういうような理解をしておられるか、この機会に御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/22
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023・植木庚子郎
○植木政府委員 電力料金の値上げの問題につきましては、なるべくこれを避けて行きたい、あるいは値上げをしない方が、当然国民大衆にかかる負担も少いし、ぜひともそうありたいものだという前提での御質問であろうかと考えます。われわれ政府当局といたしましても、電力料金の値上げにつきましては、関係電力会社の内容その他十分に説明を聞きまして、何とかしてこれを避けて行きたい。近い将来に電力料金を引上げることはなるべく避けて行きたいという方針で、目下せつかく審議、審査中でございます。
ただいまの御質問の電力借款のお話の点でございますが、これについては、金を貸す側といたしましては、電力会社の返済能力を確保する意味から、電力料金の値上げ等の問題についても言及しておるものと思いますが、われわれ政府といたしましては、会社の借款の返済能力を確保しつつ、しかも電力料金は上げないようにして行きたい、かような念願のもとに今日おる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/23
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024・春日一幸
○春日委員 電力料金を値上げしないように政府がベストを尽すということであるならば、さしつかえはないと思うが、しかしながら巷間に伝えられておるように、もしこの電力料金値上げの問題が、やはり許可認可の具体的な問題となつて、政治問題となつた場合においては、この保証条項は重大な問題となつて、政府の責任を追究する場合があろうと思われますので、ぜひとも値上げにならないように、事前の措置を十分尽されたいことを強く要望するものであります。
それからまだこのふろしきに二倍も三倍もあるんだが、時間がありませんので、ただ一つ、入場税と遊興飲食税との関連についてお伺いをいたしたい。税制調査会の答申によりますると、この入場税と遊興飲食税とはこれを国家に移すということが書かれておる。われわれはもとよりこれはもつてのほかだと考えております。民主政治の確立は地方自治の浸透にある。地方自治の独自性を確保するためには、独自の財源を付与しなければならないことは、ずつと以前からの定説である。われわれは地方の自治を確保するために、地方の行財政が入場税、事業税、遊興飲食税、この三本を支柱としておることは、これは申すまでもないところである。そこで税制調査会が、遊興飲食税と入場税と二つのものを国税に移管しろという答申をして、当初新聞の発表によると、政府当局はこの二つのものを、その答申の主張を尊重して、国税に移管しようとしたのであるが、その後料飲店たちの猛烈な反対、伝うるところによると、政府閣僚並びに与党幹部の中には、みずから料亭を営む諸君がたくさんあつて、そういうような人々が、その脱税を困難ならしめるような国税移管については断じて反対であるということで、遊興飲食税については、国税移管の問題がさたやみになつた。しかるところ入場税については、あいにくと閣僚や与党領袖の中には、映画館のおやじなる者がいなかつた。従つて入場税だけが国税に移管されようとしておるのであるというようなぐあいに、風説ふんぷんたるものがある。この二つのものの一つだけ切り離して、国税に移管した理由はいかん。その理由をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/24
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025・植木庚子郎
○植木政府委員 政府当局といたしましては、今回の税制改正案を立案するにあたりまして、入場税も遊興飲食税も、これを国税に移管することが適切なりと考えておつたのであります。しかしその計画をだんだんと具体化しまする際にあたりまして、諸般の情勢、ことに輿論の趨向等を考えてみますと、まだ時期が熟しておらない。この際二十九年度としては、一回見送つて行こう、かような考えのもとに思いとどまつたのであります。両税とも御承知のように非常に偏在する税でありまして、これをでき得るならば国家に移管をいたしまして、国でこれを全国の各府県に適切な基準をもつて配分するのが、地方に財源を確保する最もいい道だと考えたのでありますけれども、この際はやむを得ず、一方だけを移管するにとどめたのであります。大体の趣旨は今申し上げた通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/25
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026・春日一幸
○春日委員 機が熟さないとか、輿論の趨向とか言われるが、その輿論たるや、ただいま平岡君が、それは閣内輿論であろうと言つておられる。まつたく入場税だけを国税に移管しろなどという輿論はどこにもない。特に税制調査会の答申案なるものは、いずれにしても、遊興飲食税と入場税を一体のものとして取扱つておるわけである。このことは、いかに次官がどのような詭弁を弄されようとも、真実はこれはおおうべくもないのであります。
さらにまたわれわれが指摘しなければならないことは、吉田内閣は今や占領政策の行き過ぎを是正するなどという美名を語つて、いろいろな中央集権的な官僚国家の造成に狂奔しておるのであるが、昨日はあの警察法の反動立法を出した。そこで塚田長官の答弁によると、知事はやがて官選にしようとしておる。そうして政府のねらつておることは、まず税制財源を地方で握つて、この政治を、あるいは財政を、一切の権力を中央に集中することによつて、中央集権的官僚国家をつくり上げようとしておるのである。このことは、昨日貴殿の方の塚田長官が答弁しておることであつて、知事も官選にした方がよいと私は思つておるということを、明らかに本会議で答弁しておる。自由党の一議員は、われわれはずいぶんでたらめな政治もやつて来たが、しかしながらこのでたらめな政治の中に、知事官選から守つて来たことは、自由党の政治の中のたつた一つの善である、こういうことすら言つておつたのであるが、塚田というやつはとんでもないことを言いやがつた、ばかやろうだ、こう言つて、自由党内部の議員自体が口をきわめて私に怒つておつた。それは余談であるが、いずれにしても、警察を握り、知事を官選にして、今や地方の入場税、遊興飲食税、事業税というような財源を中央に握つて、そうして権力国家の造成を、ここに陰謀をたくらんでおる。このことは特に看過すべきことでないと思う。一体あなたは、日本の憲法が地方分権のことを強く、厳粛に規定しておるということは御承知であるか。いずれにいたしましても、今やこの入場税の中央移管が、——このことは、あの遊興飲食税のいきさつと関連して、はなはだ不潔な径路をたどつておるということは、国民だれも知らぬ者はない。さらには繊維消費税の問題等もありますが、これはいずれ同僚議員によつて論議されるでありましようが、少くとも政治だけは筋を通さなければならぬ。道義と条理を貫いたものでなければ、だれ一人そのものに敬意を払う者はないと思う。少くとも閣内の輿論、━━━━━━━━━━━━━━━━、それだけを地方税に残しで、入場税だけを国家に移して、それでもつて天下の信をつなぎ得ると思うのであるか。いずれこの問題は本会議の問題となりましようし、本日を皮切りとして二箇月間論議すべき機会があろうと思いますので、私は時間も参つたので、一応井上先輩にかわります。どうかこれらの問題について十分努力を尽されて、もつと誠意ある税制の改革案を上程されんことを強く要望いたしまして、ひとまず私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/26
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027・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 今春日委員のお話の中で、入場税を移管することによりまして、中央集権を大いに強化しようというような意図に立つているのじやないかという御意見がございましたが、われわれは決してそういうつもりでこの案を考えているわけではございません。御承知のように、とにかく現在各地方自治団体の持つております独立財源というものが、非常に偏在しておりまして、それこそ幾つかの大きな府県におきましては、確かに入場税、遊興飲食税を中心とし、さらに事業税も加わりまして、地方自治の裏づけになるような姿になつて来ておりますが、多数の府県におきましては、それぞれの独立財源が非常に乏しい。地方自治は、ほんとうにその姿をはつきりさせるためには、やはりどうしても財政的な裏づけがなければできないのじやないか。これは春日委員の御意見もおそらくそうだろうと思います。そういうふうに考えて参ります場合におきまして、たとえば今度新しくタバコ消費税を地方税として創設しようという案を出しておりますが、そういう案を出す場合におきましても、ある府県においては、現在与えられております地方財源においてすでに大体十分なところへ来ている。そこへさらにそのタバコ消費税を与えるとしますと、そこの府県においてはむしろ財源は余分目になつて来る。これは片方で、国がそれだけタバコの値上げをする考えはございませんから、財源を与えるわけでございますが、比較的貧弱な府県の独立財源を確保するためには、やはり現在偏在しております税を何とか調整に使うべきじやないか。そういう意味におきまして、とりあえず入場税をとりまして、これを人口割でもつて確保する。現在平衡交付金法においてやつておりますように、基準財政需要、基準財政収入からわけることになりますと、かなり中央にロスが出ますので、人口割でもつてはつきり確保するという考え方に出ております。決して地方の独立財源をちびろうという考えでなくて、むしろできるだけ地方の独立財源を確保したい、そういう意図に出ているものであることだけを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/27
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028・内藤友明
○内藤委員長代理 先ほどの春日委員の発言中、不穏当と認められる言辞があるやに見受けられましたので、後刻速記録を取調べた上、委員会において善処いたしたいと思います。——井上良二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/28
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029・井上良二
○井上委員 ただいま議題になりました税制改革全般に対しての総括的な質問をいたしたいと思いますが、いずれ後刻大蔵大臣が本委員会へ出席されるそうでありますから、そのときに伺いたいと思いますけれども、その前提として、政府の方で資料を御調査の上提出を願いたいと思いますので、その点を一応申し上げてみたいと思います。
御存じの通り、税の徴収の重大な要素は、二十九年度は国民所得がどうなるかということであろうと思う。政府の本年の予算編成の説明においては、二十九年度の国民所得は五兆九千八百億、昨年度よりは三百億ふえる、こういうことでございます。その三百億しかふえないという根拠はどういう根拠に立つておるか、その具体的な資料を提出願いたい。これが提出されませんと、所得税の増減及び間接税の増徴、新設等にも重大な関係を持つて来ますから、その根拠を明らかにされたい。大蔵大臣が本委員会に出席されるまでにぜひ資料の提出を願いたいと思います。
それからいま一つ重要な問題は、政府みずから緊縮予算を組み、国民には耐乏生活を要望しておるときに、一方間接税を増徴し、さらに新税を創設する、そういうものの考え方というものは、政府の基本的な財政方針と相矛盾するのではないかという点でございます。これに対して一体政府はどうお考えになつておるか。全体的に国の財政規模を縮小して効率的な財政の使途を行おうとするとき、また耐乏生活に対して国民の協力を要望するとき、所得税の減税に見かわる間接税を増徴するということ、なるほどその中には、奢侈的なぜいたく品に課税するのだから国民全般にはそう大きな影響はない、こういうお考えのようでございます。他方また今問題になりました入場税の国税移管の問題、さらにまた新しく出て参りますいわゆる奢侈的織物消費税の問題、こういう新税の設定というものは、政府が緊縮予算を組み国民に耐乏生活を要望する、そういうきわめて厳粛な日本経済再建への大きな地歩を踏み出そうとするときに、そういう税のとり方というものは一体妥当なやり方かどうか。わずか三百億足らずのものを穴埋めするために新しく増徴をいたし、さらにまた新税を設けなければやらないような財政の仕組みであるかどうか。また税の徴収の内容であるかどうかという点を私どもは伺わなければなりません。これに対して政務次官はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/29
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030・植木庚子郎
○植木政府委員 直接税の方で三百二十数億の減税をいたしまして、間接税で二百七十数億の増税をする、あるいは新税を起す、それは政府の将来に対する財政経済の政策全般の面から見て矛盾ではないかという御質問のように伺いますが、われわれといたしましては、現在の直接税の負担がまだ相当重いので、できればもつともつと下げたいのであります。しかしながら財政全体の需要の面からいたしまして、本年度としては三百二十数億程度にとどめたのであります。ことにこの減税をいたします面が零細なる低額所得者のところでなるべく減税をして、すなわち扶養家族の控除の問題でありますとか、あるいは基礎控除の問題でありますとか、こういう面におきましてこの際減税をし、そうして一方間接税で増、新税を起す。これはいかにも大衆負担になるように一応見えますが、その内容をしさいに御検討いただきますと、間接税における増税におきましても新税におきましても、なるべく奢侈的なもの、あるいは高級品というようなものについて税率を引上げ、あるいは新税を起す、こういうふうに考えておるのであります。従つて間接税のこうした高級品、奢侈的な品物につきましては、消費者においてこれを消費するかせぬか、その自由を確保しておる。もしそれをいろいろな事情からどうしても買わなければならぬものは、ひとつ負担をしていただきたい。そうでなくて、その負担の力のないものはひとつがまんをして、しばらく耐乏の生活をしていただきたい、こうした方針に出ておるのであります。かようなわけでございますから、高級品、奢侈的なものについての増、新税として考えれば、これは必ずしも大衆の負担になるものではなくして、それを消費する能力のあるもの、こうした方々にしばらくがまんをしていただこう、こういう趣旨であります。従つて財政経済政策全体から考えましても、この際矛盾はない。今回の税制改正によつていわゆる低額のものは若干軽減されるし、間接税の方においての増新税も、またこれはおのずから消費の抑制、あるいは輸出の奨励という方に向つて行くように、それがさらに進んでは国際収支の改善に寄与するようにという趣旨からの税制改正を試みておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/30
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031・井上良二
○井上委員 何か間接税を増徴し、新税を設けることは、政府の新しい財政計画と矛盾はない、こういうはなはだ抽象的な御答弁でございましたが、あなたみずから税務行政の責任者として、現に二十八年度末においては四百二十数億の滞納があります。税金の未納があります。さらにまたこの未納が完全に納税をされますならば、全然新税を設ける必要もなければ、間接税の増徴の必要もなくなります。さらにあなたのお説によると、何かぜいたく品だけに課税をして、一般消費者大衆にはそんなに大きな負担にはならないというようなお考えのようですけれども、一体砂糖を二割値上げをするということは、これはどういうことになるのですか。現実に砂糖を食わぬでおれるのですか。現実にそういうことがあるじやありませんか。あるいはまた他の消費物資にいたしましても、それはなるほどいろいろりくつはありましよう。ありましようけれども、それが一体国民にどういう影響を与えるかということをわれわれは考えねばなりません。そういう面から、特に非常にぜいたくぜいたくと言うて、ぜいたくを追求して、いかにも鬼の首でもとつたような宣伝を盛んにあなた方はおやりになるが、それならさきにも問題になりました地方税の国税移管のうちの遊興飲食税等を一体何ゆえにはずしたのですか。現に二十八年度の税徴収の中においても、いろいろの会社の交際費というものは全然税の対象にはされてないのですぞ。いたずらに勤労所得に大きな税をかけるために、会社においていわゆる交際費その他の名目で社内保留金がどんどん使われておるということは、もう周知の事実です。この入場税を国税に移管するならば、またあなた方が奢侈的なそういう不要不急のものに税をかけるというならば、当然遊興飲食税を取上げるべきなんだ。それをどういうわけで取上げないのですか。諸般の事情ということをさきに説明されておつたが、諸般の事情とは一体何をさしておるのですか。入場税の場合は諸般の事情なしに、遊興飲食税の場合は諸般の事情があるということは、一体どういうことですか。それを一ぺん説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/31
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032・植木庚子郎
○植木政府委員 砂糖消費税の問題につきましては、なるほどごもつともな点もございますが、これは輸入品でございますし、できるだけ輸入を抑制して行きたい。従つて砂糖も必要最小限度のものはなるほどやむを得ませんが、できるだけひとつ節約していただきたいという趣旨もあるのであります。あるいはまた次の御質問の、遊興飲食税と先ほどの入場税の問題でありますが、遊興飲食税の国税移管の問題も、先ほども申し上げました通り、われわれ当局といたしましては、でき得るならばこれは昭和二十九年度から国に移して、そして税源の偏在を是正する一つの手段にしたい、かように考えたのであります。しかしながら先ほど諸般の情勢と申し上げましたが、それはやはり輿論の状況、あるいは議員の多数の方々の御意向、あるいは閣内の閣僚の方々の御意見等もそれぞれ参酌いたしまして、そしてこの際二十九年度から実行することはしばらく見合せ、さらに研究を続けて行こう、かような次第でこの際見合せたようなことに相なつているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/32
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033・福田繁芳
○福田(繁)委員 関連して。ただいまさすが政務次官だけあられて、実に御名答されまして、われわれ野党にいる者も非常に心強くいたすわけなんであります。今の遊興飲食税も、各般の事情、言いかえれば、輿論並びに国会の模様、及び閣議の模様、こういう点を十分お考えになられてごしんしやくされたというところに、いわゆる実績をお示しになられたわけなんでありますが、ここに問題になつておりますところの各法案に関連するこの項目が、いわゆる輿論と、われわれ議員と、閣内の空気がさような実績の通りに行くとするならば、入場税、遊興飲食税のごとくに、根本的に是正される御意図があるかどうかということをあらためて伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/33
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034・植木庚子郎
○植木政府委員 ただいま政府の提案いたしておりまする税制改正の諸案につきましては、われわれといたしましては、今日の国家財政の状況、あるいは国家経済の状況から考えまして、必要最小限度の改正であり、これはおそらくは多数の心ある方々の御支持を得られるものというふうに確信をいたしているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/34
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035・井上良二
○井上委員 さらに進んで、問題の入場税でございますが、これはさきの主税局長の説明によると、地方財源が偏在している、だから、できるだけこれを独立財源の少い貧弱府県に公正にわける建前から新しく国税に移すことにした、こういう説明でございます。ところが、御存じの通り地方団体の現在の歳入は約九千億、この九千億の中で地方財源の重要な税収入は三千億円でありまして、あと六千億は平衡交付金と起債によつてまかのうているのであります。かくのごとき貧弱な地方財源をもつて、あとはほとんど国の力にたよらなければならないような現実の地方財政の現状を放任しておいて、単に遊興飲食税と入場税だけを取上げて、それでいかにも全体をカバーするがごとき、あるいはタバコ消費税のごときものを設けてカバーするがごとき行き方は、およそ九牛の一毛にもすぎぬやり方であつて、政府は一体地方自治というものを根本的にどうお考えになつているのですか。地方自治を確立するということの見地から考えるならば、地方財政を確立することは当然であります。地方財政をどう確立するかという全体的な計画体系を立てずに、入場税や遊興飲食税だけを移管をして、それでお茶を濁すという行き方は、われわれは賛成できません。だから、この際大蔵当局、特に政務次官及び主税局長は、国の税制の確立も必要でありましようが、地方税制の確立をどうお考えになつているか。一体九千億を依然として平衡交付金や、あるいは配付税や、あるいはまた起債によつて大部分を穴埋めをしておくことになつて地方自治が確立されるとお考えでございますか。基本的に一体地方財政をどうお考えになつておりますか。この問題を解決せずに、体裁のいいようなことによつて入場税を国税に移管するということはもつてのほかです。基本的にどう地方民を納得させ、地方団体を納得させるのですか、それをひとつ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/35
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036・植木庚子郎
○植木政府委員 私の足りませんところは、また政府委員の専門家から説明いたしますが、政府当局の考え方の基本を申し上げますと、仰せの通り、地方自治涵養のためにでき得る限り独立の財源を与えたいという気持はもちろん持つております。持つておりますが、日本の国税、地方税を通じての諸般の租税の状態を考えてみますと、適切ないい税を、もつと地方に独立の税として与えることができるようなうまい種目がない。そのために、やむを得ず現行の状態におきましては、仰せの通り約九千億のうち三分の一見当しか地方の独立固有の財源がないということに相なつております。しかしわれわれといたしましては、それぞれの地方に確実にして、しかも各府県の間に公平に財源が行き渡るようにするという目的のためには、今回考えておりますような、あるいは従来からやつておりますような交付税、あるいは平衡交付金の制度、これによつて地方に財源を確実に与えるということがいいと考えるのであります。入場税あるいは先ほど出ましたタバコの消費税というような問題につきましても、同様な趣旨で、地方に確実な財源を与えて行く、そうしてなお足りないところについては、財政経済計画全体の面から最小限度のいわゆる起債はこれを認めて行く、かようにして地方財政に対するはつきりした、しかもなるべく公平な配分の計画のもとに地方自治の基本を守つて行きたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/36
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037・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 多少補足的な説明をさせていただきたいと思いますが、井上委員のおつしやいますように、昭和二十八年の事例をとつてみますと、地方団体の歳入は総額で約九千百四十九億、その中で地方税として収入されておりますのが三千百二億、それから地方財政平衡交付金として出ておりますのが千三百七十六億、義務教育費国庫負担金とか、その他の補助金、あるいは公共事業の補助金といつたようなかつこうで出ておりますのが二千七百十四億、地方債が千九十六億、そのほか雑収入が八百九十六億、それに災害による減収が三十五億、こういう一応の内訳になつております。独立財源としてまず考えられますのが地方税の三千百二億と財政雑収入の八百九十六億、その他はお話のように国の義務教育費の負担金といつたような一つのはつきりした費目と結びついた補助金、それから、さらに補足するのに平衡交付金及び地方債でまかなわれる、これが現況でございます。とにかく地方自治というものが確立する上におきましては、はつきりした独立財源の裏づけがなければ、これは有名無実なものである、何とかしてそこにはつきりした財源を持つべきじやないか、この御意見はわれわれも全然同感であるのでございますが、これは経済の実態といいますか、その国の富、あるいは国民所得の地方と都市とにおける配分の状況というものを見て参りますと、おのずから一つの限界にぶつからざるを得ないように思うのであります。府県なら府県を一つ例にとつてみまして、ある貧弱府県でございますと、国がとつております所得税なり、あるいはその府県に酒の製造がありますために、そこの酒屋さんから徴収しております酒の税金なり、そういつたものを全部たとえば独立財源としてその府県に与えたという姿を想定してみましても、なおその府県の歳出には足りないという姿になつておることが現実の状況でございます。従いまして、どうしても貧弱な県では貧弱ななりに一応の府県財政をまかなつて行くべきであり、同時に富裕なところでは富裕ななりにその財政をまかなつて行くべきであるという考え方もできますが、しかし義務教育とかいうものは、府県あるいは都市など地方団体が貧弱でありましても、これはどうしてもやつて行かなければならない、こういう歳出の面においての拘束が出て参りますので、どうしても独立財源を与えようとしましても、そこに与え切れないものがある。それではその貧弱な府県を中心として、その貧弱府県が何とかやつて行けるような独立財源を、あるいは独立税を持つということにしますと、富裕府県の方は多分に行き過ぎになるといいますか、国の方の財政収入そのものが欠けて来てしまう。やむを得ざる手段といたしまして、できるだけの独立財源は与えたい。そのために富裕府県と貧弱府県との間におけるいわゆる偏在の程度が最小のものを、できるだけこれに与えることが適当じやないか。たとえば今度タバコの消費税を一応選択いたしましたのも、他の税に比べてタバコの消費税の偏在の程度が一番少い。従つてこういうものを地方団体の独立財源にするのが一番適当ではないか、こういうふうに考えた結論にほかならないのであります。同時に、他面入場税のようなものにおきまして、これは確かに地方税としての適格性が、性格からいいますと出て参りますが、しかしそれを地方税に置いておきますと、どうしても富裕府県の方にその財源が偏在して来る。そこで国税として国で徴収はいたしますが、しかしこれを平衡交付金とか、そういう性格のものに入れてしまいますと、やはり先ほども御指摘がありましたように、中央集権的な方向に向うのではないか、こういうような御批判もございますので、一応国で徴収はいたしますが、これを人口割りでもつてその大部分は府県の方へ配付する、こういうふうな調整をやりまして、初めて地方自治体が自分の動いて行ける財源が確保できる。このような問題につきましては、税制調査会と並びまして地方制度調査会というのがございまして、ここでずいぶん議論されましたが、結局現在の段階におきましては、一応政府が当初考えたような程度の調整が、やむを得ない結論じやないかというふうな答申が出ておる次第でありまして、非常にむずかしい問題でありますが、ただ片方でもつて歳出の要請が、これは富裕府県でも貧弱府県でも同じように相当ありながら、しかもその裏づけとなる歳入のための国富なり、あるいは国民所得の配分が、地方によつて非常にアンバランスになつておる、こういう事情があるということのゆえに、どうしても独立財源だけで各府県が自分の必要な歳入をまかなうということにはなかなか行きにくい。もし貧弱府県の人は非常に高い税金を負担するということがもし容認されるならばこれは別でございますが、これもちよつと考えられない状態であります。できるだけ独立財源を付与しながら、なおかつ片方で調整して行くという考え方をとらざるを得ないのではないか、かように考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/37
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038・井上良二
○井上委員 地方財政の確立についての考え方というものがはなはだ刹那的な考え方であつて、たとえば国から地方団体に対していろいろ必要な委任事務がされておるのであるが、これらに対しても平衡交付金その他でまかなうという建前に一応はなつておるけれども、実際はその通り金は出ていない。そういうことからして、地方財政は年々膨脹するのみであつて、この裏づけの財政というものがほとんど確立されておらぬというところに問題があるのであります。この問題を解決せずに、単に入場税を国税に移管して、その九割を地方に分配してやる。貧弱府県はそれで助かるであろう。こういうまるで二階から目薬のような政策をやることによつて、この法案がいかにも貧弱府県を助けるようなつもりで、貧弱府県の選出代議士を喜ばすつもりでおるかしらぬけれども、これはもつてのほかだ。そういうものの考え方は目先の欲にとらわれた考え方で、基本的に地方自治を確立するということであるならば、地方自治を確立するに必要な財政の裏づけをどうするかという問題と取組まなければ、問題の解決はあり得ない。また現実にそういうものが偏在しておるというが、御存じの通り、たとえば東京、大阪、名古屋等の大都市は、遊興飲食税の収入も多いのですが、多ければ多いほどに、当該地方はそれだけの地方財政費の支出というものがふえるのですから、人口が百万か二百万の府県と四百万も五百万もある府県とは、同じようには行きません。世帯が大きければそれだけよけいかかることは当然であります。ただそこへ集中して、よけい金が入るからという名目だけで国へ移管するという行き方は、何としてもわれわれはその点で納得ができないから、もしこれを国に移管するというのならば、少くとも政府は地方財政の確立に対して必要な方針、中央集権的な今のようなやり方でなしに、少くとも地方自治体がみずからまかない得るような税制を中心にした財政確立についての必要な方針というものを、ひとつ本委員会に示してもらいたい。これが示されぬ限りにおいては、これはそれをねらつてやつておることですから、そういうわずか二百億足らずの金を、いかにももつたいなさそうにわけてやるような顔をするなんということは、もつてのほかだ。
それからいま一つ、税のうちでわれわれ非常に遺憾に存じておりますのは、政府が今度扱おうとするものは第一種、映画館、演劇場、第二種、博覧会、展覧会、これに限つておる。その他ややこしいものは地方府県でやれ、こういうことになつておる。政府がやろうとするものと地方府県がやろうとするものと、どういうわけで区分をするのですか。特にパチンコに対しては一体どういうお考えをお持ちですか。あれは全然入場税をとらぬつもりですか。そういう点で、政府はとりやすいものだけをとつて、あとのややこしいものは地方府県でやれ、早く言えばそういうことです。一体それでいいのですか。現実に入場税というものに対する政府の考え方はどういうお考えですか。一方政府は、本税の面においてはできるだけ低額所得者の所得税は軽減をし、また消費大衆にもできるだけ一般化される間接税はこれをやめて、できるだけぜいたく品にかけて行こうという方向をとつておる。ところが入場税ではそれがないじやないですか。入場税では四十円からとろう、こういうのでしよう。一体今日映画を見に行つたり芝居を見に行つたりして、四十円や五十円の観覧税で安う見せるのがありますか。どこへ行つたつて、今日では現実に百円前後——もちろんその中には税が含まれておりましようけれども、これほど大きな大衆課税はございません。そういう大衆課税とあなたはお考えになりませんか。それを伺いたい。つまりあなた方が中央に都合のいいやつだけを国税に移して、徴収のややこしいやつは地方でやれ。それから特にパチンコに対する課税はどう考えておられるか。それはとらなくてもいいとお考えになつておるか。その他にも入場税をとるべきものがたくさんあるが、そういうものは全然対象にされぬのか、それからこれを大衆課税とは考えていないのか、この三つについて伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/38
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039・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 今度国の方で徴収します入場税を、いわゆる第一種、第二種に限定しまして、第三種のいわゆる設備利用の分は、これは地方税として、地方の法定外特別税として徴収していただくつもりでおりますが、どうしてそういうことをしたかという点につきましては、結局現在第三種に属しておりますものは、麻雀料、それから玉突き税、つり堀、貸船、舞踏場——舞踏場もキヤバレーは、これは遊興飲食税の対象でございまして、昔ありまして、今東京などにはほとんどございませんが、いわゆるチケツトをとつての舞踏場、それからゴルフ場、こういうものが主たるもので、そのほかに今おつしやつたパチンコ屋が入つております。これは入場料について云々というもので課税するのがいいものもございますが、大部分は設備使用といいますか、麻雀でございますれば、麻雀の遊び代、それから舞踏場でございますと、これは入場料をとつておる場合もございますが、同時にダンサーと踊る場合のチケツト代、それからゴルフ場でございますと、グリーン・フイーなどがそれに含まれております。それからパチンコの場合におきましては、地方としてかなり複雑な課税をしておるようでございます。そういつたようなものでございまして、それぞれその種類に応じまして、適切な課税をするという場合におきましては、国で一率に課税するよりも、むしろ地方の法定外特別税といたしまして、それぞれの実情に応じた課税をしていただく方が適当ではないか。こういうような意味におきまして、われわれの方といたしましては、比較的単純な一種、二種のものだけを国で徴収して、そうして九割を人口割で配付する。パチンコにつきましては、現在も課税しておりますし、将来におきましても課税があつていいものと私は思つておりますが、しかしその場合におきましても、そのパチンコの玉代に課税するというのはなかなか困難な問題もございまして、まあ一番簡単な課税といえば、一応考えられるものとしましては、東京都内でいえば銀座とか新宿を一級地にし、場末を二級地、三級地にわけて、パチンコ一台について幾らといつたような課税方式をとるのが割合に困難も少いし、比較的納得の行く行き方ではないか、そういうような考え方をして参りますと、これは国税として徴収するよりも地方税の法定外特別税として課税して行くのが一番適当な方法ではないか、こういう考え方に基きまして、一応一種、二種だけをこちらへ取入れる、こういうような結論に考えたわけでございます。
それから第二の問題といたしまして、入場税は大衆課税ではないか。従つて政府は奢侈課税、奢侈課税というが、これを大衆課税と思わないか。この点につきましては、われわれも入場税がかなり大衆の負担になつておるということはそのように思つております。ただ一応既存の税であり、しかもそれが地方の大きな財源になつておりますので、そう簡単にこれを廃止するわけにも行かない。そこで現在におきましては、御承知のように免税点も全然ございませんし、同時に通常の場合でございますと、全部五割の税率で課税しておるのでございます。それで実態を見て参りますと、執行の面などにおきまして、相当適正化をはかる余地があるというふうに思われますので、その辺を、国税に移す機会におきましてはつきりさせる場合に、その二十円の——これは税の入らないところで二十円でございます。従いまして、現在東京都などでやつておりますニユース映画は三十円でございますから、五割の税金がかかつて三十円。ですからニユース映画が現在のままで料金をすえ置かれれば、これは税金がかからぬということになります。それから四十円になりますと、現在でございますと税込み六十円、七十円の場合におきましては税込み百円を越えるというのが、現在の料金との対比でございます。いろいろ調べてみますと、東京のまん中ですと、どうしても税込みで百円以上になつておりますが、場末に行きますと、百円を切つたところもございますし、いなかへ行きますと、税込みでやはり六、七十円というところも相当多いようでございます。従いましてそういつたような点におきまして、われわれの方としましては、税率を料金の低い場合には二割、三割、四割というふうに下げることによりまして、国税に移す機会にできるだけ大衆の負担は低める、こういうふうな考え方を取入れる方がいいのじやないか、こういうような考え方で全体の案をつくつておりますので、いわゆる大衆的な課税を全体に廃止できるという事情にあれば幸いなんですが、そこまで行きかねるという事情である限りにおきまして、現在の財政とかそういう点をにらみ合せまして、できるだけの配慮をしたということだけは御了承願いたいというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/39
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040・井上良二
○井上委員 なかなか今のあなたの答弁は、まつたく苦しい答弁だろうと思います。といいますのは、所得税の面におきましては、低額所得者を減税を、してやらなければいかぬという線を、政府は苦しい財源の中から考慮されておるわけです。それからまた織物消費税の場合においても、できるだけ大衆的な繊維品にはこれを課税をしないという線を打出しておるわけであります。さらにまたそれが高級品でありましても、昨日から本日にかけての新聞を見ましても、大体一割五分の課税をしよう、こういう考え方らしい。また物品税で出て参ります今度の税目を見ても、大体最高三割くらいのものです。それとこれと比べて、ごらんなさい。わずかに四十円から百五十円までのところへ二〇%から五〇%までかけるという、一体こういうむちやな税がありますか。これで大衆負担を軽減するの、いや大衆には迷惑をかけぬのと、どうして言えるのです。片方じやうまいこと言うておいて、片方でごそつととろうとしておるのじやないか。現実にそうなるじやないか。だからこれはやはり三百円、五百円、八百円、千円というような、いわゆる高額の入場料にかけるなら、私らもまた考え方がありますけれども、一箇月に一回、二回休んで、どこへも行くところがないから、映画か芝居へ三十円か五十円持つて行くやつを待ち受けて税をとろうというのは、むちやくちやや。そんなむちやな話はない。これはあなたの税の徴収の考え方が根本的に間違うておる。だからこれを国税としてやります場合には、他の税との比率均衡ということを考えた場合、いかにこれが無辜の大衆をねらつた悪税であるかということが明らかになりますよ。地方でやつております場合は、またいろいろりくつもつきましようし、いろいろまた方法もありましようが、国税としてやります場合は、所得税の関係、他の物品税の関係、他の消費税との関係を勘案いたしまして、われわれは均衡的に考えて行かなければならぬ。そうしますならば、織物消費税は二万円から二万五千円くらいの繊維品に課そうという場合に、しかもたつた一五%で済ましているじやありませんか。片方四十円持つて行つたら二〇%とられちやう、こんなむちやな話あるまいが。こんなむちやな税の立て方というものはありませんぞ。この矛盾はお考えなりませんか。政務次官、これは政治的に及ぼす影響が大きい。あなたひとつとくとお考え願いたい。それから主税局長から伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/40
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041・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 政務次官からあとで御答弁願いますが、私の方から最初にまず申し上げておきたいと思います。今度の入場税を国で徴収いたしますのは、国で徴収いたしますから国税というふうな名前でお呼びになつてもさしつかえございませんが、税そのものは、当初申し上げておりますように特別会計に入れまして、その九割は地方に還元する、そういう意味におきまして、主たる目的は地方の財源偏在を是正するということにあるわけでございまして、国で徴収することによりまして突然に性格がかわつたというほどには、われわれ考えておりません。ただ現在地方で徴収しております入場税が、免税点もなしに一率に五割になつているという点につきましては、これはお説のようなことも考えられますので、歳入が確保できる限りにおきまして、できるだけ低い方の料率につきましては、免税するなりあるいは税率を下げるなり、こういうような措置でもつてまかなつて行きたい。従いまして、この税がすぐ国税の一つであつて、しかも他の国税と権衡を得ていないというおしかりでございますが、入場税を今度国で徴収いたしますのは、目的としますのは、今申しましたように、地方の財源の偏在是正をしたい、こういう本質的なところに出発しておりますので、地方税としてならいろいろなジヤステイフイケーシヨンがある、地方税としてならいろいろこれも正当化され得るかもしれないかというお話のようでございますが、そういつたものをやはり国で徴収しましても、一応の説明の材料になつて行き得るものじやないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/41
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042・井上良二
○井上委員 はなはだどうも答弁がなつていないと思う。つまりこれは国税としてとるんじやけれども、その金は国の経費には使わないのじや。だから少々高うしてもかまやへんのじや、こういうインチキきわまる、むちやくちやな説明はありませんよ。現実になるほど税目としては十一項目で、入場税として、はつきり国税としてとることに建前はなつておる。それであなた、一割を政府が頭はねてじやね、雑収入にこれをほうり込んどるのや。なるほど二十九年度の税の全体のわくの中には姿を出さずにだ、どこに入場税の収入金額が出とるやろう思うて一生懸命探したが、どこにもあらへん。よう調べてみよつたところが、雑収入に入つとる。実にごまかしもはなはだしい。そうしてあとは地方へ還元するよつて、国のふところはかわらぬから少々高うてもかまわぬ、そこまであなた方が地方財政に親心を持つてるなら、最初申したように、地方財政に対するもつと根本的な対策を考えるべきだ。その方は一向努力せずに、そうしてこれをいかにも鬼の首でもとつたように振りまわすということは、私はけしからぬと思うておる。この際伺いますが、一体元のままの、つまり現在の地方税としてとつております入場税の総額、それからこれによりますものは、二百二十億ほど全体見とるんじやないか、それが実際は百九十八億になつておるが、その開きはどのくらいになつておりますか。
それからいま一つは、これがたとえばフランス、イギリス、アメリカではどうなつているか、どのくらいの比率の税金が入場税としてとられているか、あわせて説明を願いたい。なおこれを国に移管をするということによります徴税費その他はどのくらいその中で見込まれておるか。それを御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/42
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043・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 入場税がどこへ入つているかということでたいへん御迷惑をかけておるようでございますが、これは交付税及び譲与税配付金特別会計へ歳入しまして、そして九割はこの特別会計から地方の方へ配付いたします。一割は国の方へ繰入れる。その一割分だけが雑収入として載つているわけでございます。
それから地方税で置いた場合と中央でとつた場合とどれだけ歳入が違うか、この点につきましては、地方制度調査会、あるいは税制調査会でも同じような意見でございますが、大体現在地方税でとつておりますその収入金額を目途にしまして、課税範囲なり税率を調整して、そして国の方で徴収しろ、こういうふうな意見でございまして、本年度歳入になりますものとして百九十二億を見込んでおりますが、これは初年度、平年度というような意味の相違はございます。ことしのたとえば三月なら三月の分は、地方へ置いておきますればそのまま四月の歳入になります。これは国税へ移しましても、一応四月一日から施行と考えておりますので、ことしの三月の分は、中央へ移しましても地方へ一日だけ残る。国の分としましては四月の分が五月に入つて来る。それが初年度、平年度の違いでございます。初年度、平年度の違いはございますが、中央で徴収した場合と地方で徴収した場合とにおきまして、大体歳入金額はそう違わない、こういうことを目途にしまして、課税範囲なり、税率を調整したわけでございます。どういうわけでそういうことになつて来るかということは、入場税につきましては、われわれもいろいろ調べてみましたが、割合によく徴収されている部面と、比較的ルーズに徴収されている部面とございます。ルーズに徴収されている部面におきましては、特別に入場料金が低い。従つてなかなか五割とり切れないという原因が主たるものじやないかと思つております。その点は税率を調整し、下げますと、大体税法通り徴収すれば、結果としては同じような歳入になつて来るのではないか、こういうような配慮のもとに全体を構成しております。地方で、徴収した場合と国で徴収した場合との税収入、これは地方の場合、大体現在通りの徴収のやり方であるとすれば、同時に中央における徴収が今言つたような考え方で的確にできるとすれば、この歳入の額はかわらないという前提に立つているということを申し上げておきたいと思います。
それから各国の事例でございますが、アメリカの場合におきましては、一般入場料が五セントまたはその端数ごとに一セントと書いてあります。そうしますとちようど二割に当ります。五セントまたはその端数ごとに一セントですから、ちようど五セントの場合に二割で、四セントとか三セントの場合になると二割を越えるわけでございます。ボツクス——座席の借料の場合は料金の二割といいますから、結局二割を標準に課税しております、映画、演劇、スポーツ、音楽会等の入場料または座席料に対して、こういう程度の課税をしております。それからイギリスにおいても、娯楽税という名前で一応入場料に課税しておりますが、入場料金が一シリング以下の場合には課税しておりません。一シリングを越え、一シリング一ペンス五以下の場合におきましては一ペンス五、一シリング一ペンス五を越ゆる場合におきましては、最初の一シリング一ペンス五について一ペンス五、大体一シリング一ペンス五を越える一ペンスまたはその端数ごとに〇・五ペンスという程度の課税をしております。それからイタリアにおきましては、入場料の金額につきまして一割五分から最高五割まで、これは映画館ですが、その程度の課税をしております。あとソビエト、アイルランドオーストラリア、ギリシヤ、スエーデンというような国もそれぞれこの種の課税をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/43
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044・山本勝市
○山本(勝)委員 ちよつと関連して資料を要求いたしておきます。従来の地方税のままのときと今回税制改正した場合と、その入場税の徴収の総額は大体かわらない、こういうことでございますが、しかし従来の地方税のままでは、御承知の通り五割となつておりましても、土地によつては七割も納税しておるところもあるし、それから五割のところもあるし、ひどいところでは、私の調べましたところでは一割くらいしか納税していない。そこで、それならば一割という納税率の悪いところでは非常に利益が多いのかというと、そういうわけではなくて、やはり精一ぱいどうにかこうにかやつておる映画館もある。四割脱税という言葉は当るか当らないかわかりませんが、とにかく納税は一割よりしていない。あるいは七割までしておるところもあるわけでありますが、もしそれが総額においてこの前と同じ程度とるということになりました場合に、税率はおそらく映画館ごとにかえるということはできない、一率の税率でとるほかないと思います。そうなつて参りますと、従来納税の率の非常によかつたものは非常に利益が出て来る半面、従来あまりたくさん納めたのではとうていやつて行けないという理由でわずかより納めておらなかつたような映画館は手をあげるというようなことになると私は思う。手をあげてもよいというような腹をきめるのも一つの考え方でありましようが、しかし、ある映画館が手をあげてしまつた場合に、そこに入つておつた連中が今度はほかのところに行つて見られるかというと、農村地方の映画館のような場合には、三里も五里も向うの方にあるのですから、そこに行くわけにも行かないし、また収容能力もそうないというふうなわけで、平均してというか、トータルで同じであるのだから、別に前とあととは大して変化はないのだというふうには、私は実際問題として考えられない。ことに国民生活という点からは考えられない。ですから私は、今すぐに資料を要求いたしませんけれども、この次まででけつこうですから、今予定しておられるような税率をはるかに下げて、今まで最も納税率の悪かつた、しかもそれでどうにかこうにか維持しておつたというようなところがこれまでと同じような納税額で済むような点まで下げてしまえば、ほかのそれよりも納めておつたところは有利になるだけの話でいいのですけれども、しかしそこまで下げないと仮定いたしますと——必ず平均あるいはトータルで同じだということになると、現実問題として有利になる映画館と手をあげる映画館ができる。そこでもし税率を提案のままと仮定いたしました場合に、大体どのくらいの映画館が所得がなくて手をあげると予想されるか。もし上げてもいいと仮定した場合にですよ。もし上げさせないと、これはもうほかへ行つて見るわけにいかぬのだし、映画を見る人の便宜から申しましても、また営業者の立場から申しましても、手をあげるようなことにはさせない。とにかく利益のうちで、税がガラス張りの中で納められる程度にやつて行こうという腹でありましたら、税率をどれくらいまで下げたらやつて行かれるか、この辺のところをひとつ資料を出してもらいたい。むずかしい問題ですけれども、これは非常に重大な問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/44
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045・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 井上委員の御質問で、まだお答えが残つておりました分を申し上げます。入場税を国で徴収するための国税庁における増加人員は、四百七十人と予定いたしまして、これは別途法案を提案することになつております。それから予算に組んであります徴収費は二億三千八百万円であります。
それから山本委員の御質問でございますが、実はこれは、計数的に出す問題としましては非常にむずかしい問題だと思つております。と申しますのは、御承知のように、税法は五割ということになつております。従いまして、現実にそれの何掛しか納めていないということは、いろいろ事情はあると思いますが、少くとも法律の面からいいますと、税金を誤脱したということになるわけであります。従いまして、その人員がどれくらいあつて、しかもそれがどの程度だということは、なかなか実際問題として調べようとしましても困難ではないか。ただわれわれの方として一応調べてみましたところでは、今お話のように一割しか納めていないという極端な事例は、これはわれわれの調査の不行届きかもしれませんが、まあそういつた極端な例がはたしてあるだろうか、どうだろうかと疑問を持つております。いなかの映画館におきましては、経営がなかなか立つて行かないという理由もあると思いますが、みんな百が百まで納めていない分が相当あるようにわれわれの調査でも出て来ております。そこでその原因を順々に探求して参りますと、今お話になりましたように、大体いなかは徴収のぐあいが悪いのであります。東京のまん中は、割合に東京都もやかましくやつておりまして、かなり徴収はうまく行つておりますが、どうもいなかの方が悪いようです。その原因は、やはり料金を高くしてはお客が入りにくい。そこで何とかかんとか映画館が立つて行くために、税金を徴収しないで済ましておくという結論になつているんじやないか、裏はそうじやないかと思います。そこでわれわれが案をつくりますときに考えました線は、そういう事情があるならば、結局料金の低いところは税率を低くしておく。そうすれば現在納めている額に、それがそのままとは言いかねますが、かなり近いものになつて行くことができるんじやないか、東京のまん中といなかと同じように五割の税率というと、結局いなかの方が料金が安いんですから、そこに無理があるじやないかということも考えて、ある程度の段階税率をつくつて行けば相当是正ができるじやないか。ただあなたの言われました、現在納めていないものに全体の頭をそろえて行つたらどうかということになりますと、これはわかりませんが、おそらく現在地方財政が確保している数字、あるいはわれわれが確保しようとしている数字にとても及ばない。そこで結局そこに二つの妥協的な考え方が出て来るわけですが、現在納めていない人の中にも、税金の関係からどうしてもお客からとり切れないという場合もありましようし、あるいはもう少し違つた角度で、お客からはとつても、納めるのはそれほど納めていないという場合もあるかと思いますが、数の多い中ですから私もわかりません。そういうような意味におきまして、こういうふうに税率を考えて行きますと、大体おつしやつたような無理はなくなつて行くんじやないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/45
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046・山本勝市
○山本(勝)委員 ちよつと今の点で……。総額で大体同じだけとりますと、今徴税率というか、納税率に差があるということはお認めになるだろうと思うのです。よく納めているところと納めていないところとある。しかもよく納めていないところが脱税した分だけ利益を余分にとつているなら問題はありません。その脱税分だけ取上げればよいのですが、そうでなくて、経営上やつて行けなくて収める率が違つているものを、総額において同じだけとるということになると、税制改正により利益の上る面が出て来ると同時に、やつて行けない分が出て来ることは子供にでもわかる算術だと思うのです。ですから、これは税率の上で今後調整されるとか、よほど考えないと、トータルや平均で同じだというような考えでやつておりますと、これはたいへんな問題が生ずる。これは時間もありませんし、ほかの方の質問もありますからやめますが、御研究を願いたいと思います。
なお一言だけ申し上げておきます。遊興飲食税と入場税は両方とも国税に移管したかつたのだけれども、諸般の情勢で一つだけ残つたという御答弁がありました。しかし私は、遊興飲食税と入場税がともに地方税であつたという点は共通しておりますけれども、具体的にその性質をつつ込んで考えてみますと、非常に違う。ですから、国税に移管した今の案でそのままでよいと申すのではありませんけれども、ただ一方はとれない——とれないということを言い切ることもできないが、消費者からとることのきわめてむずかしい税である。一方は消費者からとることだけはきわめて簡単な税で、そこに非常に違いがあることも念頭に置かれるよう。ただ諸般の情勢でとりやめるというだけの答弁では——私自身遊興飲食税を悪税なりと主張したことは御承知の通りであります。一言申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/46
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047・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 今山本委員のおつしやいましたような点につきまして、われわれとしましては一応考慮した上でございますが、たとえばそこを平均でもつて、全部現在の税収が上る程度でもつて一本の税率でやつて行くという場合でございますと、今の御批判はそのまま当ると思いますが、われわれの方では、結局そのよつて来るゆえんがどこにあるか。料金の低いところにおきましては、なかなか税金もそうたくさんとり切れないではないか。こういうことを考えまして、一応段階税率を設けたわけでございまして、これであなたの御心配が全然なくなるとはちよつと言い過ぎかもしれませんが、しかしとにかくそういう御心配の点は、われわれとしましても十分配慮したつもりであるということだけは御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/47
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048・福田繁芳
○福田(繁)委員 先ほど来入場税に関連して主税局長に対する同僚諸君の御質疑があつたのでありますが、私は最後に主税局長に強く要望いたしたいのであります。入場税の大体の骨子は、映画演劇になつておるように聞いておる。映画演劇というのは、これは一つの文化財なんです。これを根本に頭に置いてもらいたいと思う。先ほど井上君の御質問に対して、ヨーロツパ各国の税の率の例もありましたが、もしこういうことがあつたらというので、御案内のように前国会にわれわれ大蔵委員は、各国の税の調査にまわつてみた。イギリスにしましても、ドイツにしましても、アメリカにしましても、先ほどの資料に基くような税はとつておりますが、これと日本の税との比較をやる前に根本的の一般国民の文化の水準と、その設備はどうであるかということを考えなければいかぬと思う。アメリカなりヨーロツパなり、どこへ行きましても、御承知のように、テレビ、ラジオというのは、もうあの通りりつぱなものです。そこへ行くと、日本は御案内の通りに、こういつた文化水準は低うございます。そうして終戦以来は、日本はどうしても文化国家でなければいけないということになりましたが、文化国家であるならば、目で見るところの新聞、耳で聞くところのラジオ、目で見ながら耳で聞くところの映画演劇は、これを正しく育成強化してこそ、日本の文化国家としての再建強化ができるのだということが、現内閣でありまする自由党の国是であつたのです。それで二十割の税金を十割に下げて、少くとも日本が独立国家になつた場合には入場税は撤廃する。しかも国民に対して、映画演劇をもつて正しく文化国家の再建に役立たしめる、こういうことがつい最近まで主張されておつたわけなんです。私たち七、八年間野党におりますけれども、幸い自由党内閣が続く以上、いまにこの税金は撤廃されるのだ、こういうように実は心から期待しておつたわけなんです。しかるにこのたび、いずれこれは明日か明後日の議題になるのでありますが、これが国税になるという。私は税の徴収だとか税率だとか財源だとかいうことを考える前に、少くとも入場税の対象である映画演劇というものは文化財であるということを頭に置いて御答弁していただきたいと思うのであります。そこで私が委員長に要望しておきたいのは、大体きようの理事会の申合せに基いて、きよう、あす、あさつて税全般に入るのであります。きようはいわゆる枝葉末節の問題に対して、政務次官並びに局長に同僚諸君の御質疑があつたのでありますが、どうしましても税の根本問題に対して、小笠原大蔵大臣とわれわれ委員とが意見の根本について質疑をやらぬことには、私はとうていだめだろうと思う。それで私は、本日大蔵大臣の御出席を要望したのでありまするが、何だか予算委員会云々で向う三日間出られないという。そこで、でき得るならば委員長同士のお話をなすつて、一日くらい大蔵委員会に譲つてもらう方法があるかもしれぬ、こういうことを今事務当局から聞いたのでありまするが、この際大蔵委員長は即刻予算委員長に申入れいたして、明日の十時からの当大蔵委員会の理事会は変更して、明日十時定刻に大蔵委員会を開いて、午前中は大蔵大臣は当大蔵委員会に出席してもらう。そうしてあと二日間に、残されておるところの税制全般の根本問題を、われわれ委員がそれこそ政党政派を超越して大蔵大臣と詮索いたして、それから後、政務次官あるいは各局長といろいろ意見を闘わしたい、こう思いますから、大蔵委員長は格別の御配慮を賜わり、実現でき得るように格段の御努力を願いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/48
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049・井上良二
○井上委員 根本は、いずれ大蔵大臣が見えましてから、福田君が申しますような角度から質疑がされることと思いますが、ただここで問題を当局としてお考え願わなければなりませんのは、やはり主税局長としましては、国税全般の比率、按分というものの考え方を持つてもらわなければならぬ。この税はこうだからこうだという特殊なものは別としまして、少くとも大衆課税をやろうといたします場合は、全体の均等化という問題が当然起つて来るので、そこをつきますと、それは入場税は国はとるけれども、とるだけの手数であつて、金は地方にやるのだから、一向税率は高くてもかまわぬのじやないというが、そんなりくつは成り立ちません。国の税金として徴収しておる以上は、やはり他の税率がどうなつておるか、それがまた国民の生活にどう影響し、わが国のいわゆる経済自立の上にどう影響し、またわが国の文化国家としての再建にどう影響して行くかといううとを考えての質疑をわれわれはしておるのでありますから、そういう逃げ口上では問題は解決しません。だから、百円の金を握つて映画館へ飛び込めば、そこで税金が二割かかるという考え方が正しい考え方かどうかというと、片一方は二万五千円の着物を買うても一割五分しか税はかからぬという、そんなむちやくちやな考え方は一体どこにあるかということなんです。渡辺さん、一体その考え方はどういうことですか。どうしてもこの問題は解決しておいてもらわぬことには、税全体の税率体制が乱れて来ますから、これはあなたの考え方を直してもらわなければならぬ。主税局全体の考え方を直してもらわなければ、結局貧乏人はえらい目にあうのだ。そうなるでしよう、金持ちだけいいことをして、貧乏人はえらいことになつてしまう。それは目に見えぬしわをそこへ寄せて来ている。だからそういう点から、まず私はこの際その点についてはつきりした御答弁を願うとともに、福田君も申しておりましたように、他の国が一割ないし二割以上の税をとつておるからということは、一応は参考にはなるかしらぬけれども、日本ほど高い入場税をとつておるところはありませんし、また文化的に考えても非常に低いのでありますから、当然かくのごときものは撤廃すべきであるのに、新しく国税としてこれを創設するという考え方はもつてのほかだと思うが、特にここで伺いたいのは、こまかいことでありますから事務当局に聞いておきますが、ここですぐ答弁ができないかわかりませんけれども、このあなたがお出しになつておりますもののうちで、第一種、映画館及び演劇場、それから第二種、博覧会、展覧会ということが出ておりますが、この第一種の映画館及び演劇場等の前年度及びその前年度の館数及び入場人員、それにかけられいる地方税の税額、これを各県別に資料として提出を願いたい。なお第二種の博覧会及び展覧会等も、今まで年間どういうものが開催をされ、それがどういう税収入になつておるか。それから国税からはずしました第三種の分についてもお調べ願つて御提出を願いたい。なおこの提案理由には「純音楽、純オペラ等の催し物又はスポーツを催す場所」となつておりますが、この「純音楽、純オペラ」というのは一体どういうことを言うておるのですか、これを一ぺん説明を願いたい。純でないものとは一体どこで区別をするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/49
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050・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 資料の点につきましては、今の御要求の中には相当無理なものもあるのじやないかと思つております。たとえば入場人員などになりますと、結局税収の対象になつている入場人員が出て来る程度にしかおそらくわかりませんし、これもちよつと統計的には、自治庁に聞いてみないとわかりませんが、おそらくちよつと無理しやないかと思います。しかしできるだけの資料は整えて提出いたしたいと思つております。
それから、純音楽、純オペラというお言葉でございますが、これは実は地方税法の中に現在ございます言葉をそのままとつてございます。これは伺いますと、地方行政委員会で議院修正で入つたときにこの言葉をお使いになつて、これは特別税率でございますが、これをそのまま使われている。いろいろはつきりしない点があることはわれわれもその通りと思つておりますが、地方税法で多年これを使用して来ておりますので、そのままの解釈を一応とつて行きたい、かように考えております。現在のそうした解釈がどうなるかといいますと、たとえば純音楽の例をとつて申しますと、いわゆるクラシツク物といいますか——音楽を大きくわけてジヤズとクラシツクというふうにわけ得るかどうか、私しろうとですから知りませんが、ごく常識的にいえばジヤズ音楽と、オーケストラとかヴアイオリン・ソロ、あるいはピアノ・ソロ、いろいろそうしたクラシツクなものだと私思いますが、そうしたものと二つにわけておりまして、ジヤズ音楽は純音楽に入らぬという解釈で従来やつて来ております。従つてこれは普通の税率を使つている。それからオーケストラでありますとか、ヴアイオリンのソロでありますとか、ピアノのソロでありますとか、そういうようなものは純音楽として低い税率で課税しております。それを新しい条文に書き直すこともいろいろ考えてみたのでございますが、地方行政委員会の修正で入つた文句でございますし、同時に多年一応これでやつて来ておりますので、従来の解釈をそのまま使わせていただきまして、一応このままの法文で提案するのがいいのではないか、こういうつもりで実は提案したわけでございます。純オペラ、純音楽というものにいろいろ疑義があるという点はわれわれも考えますが、しかしおそらく地方行政委員会で御修正なさるときも、相当御苦心の末にこういう文句を使つたのではないか。それで自治庁といたしまして、多年一応の解釈が出ておりますので、われわれといたしましていろいろ知恵を出してみましても下手な知恵しか出ませんので、むしろそのまま法文に入れまして提案申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/50
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051・井上良二
○井上委員 いずれ他の税制改正の案件につきましても私は質疑がありますし、また入場税の問題についても相当質問したい点もございますけれども、時間もたいへん過ぎておりますから、本日はこの程度で質問を保留しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/51
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052・内藤友明
○内藤委員長代理 それでは次会は公報をもつてお知らせすることといたしまして、本日はこれをもつて散会いたします。
午後一時二十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X00819540217/52
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