1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年四月一日(木曜日)
午前十時三十一分開議
出席委員
委員長 千葉 三郎君
理事 淺香 忠雄君 理事 黒金 泰美君
理事 坊 秀男君 理事 山本 勝市君
理事 内藤 友明君 理事 久保田鶴松君
理事 井上 良二君
宇都宮徳馬君 大上 司君
大平 正芳君 苫米地英俊君
福田 赳夫君 藤枝 泉介君
堀川 恭平君 池田 清志君
福田 繁芳君 小川 豊明君
柴田 義男君 春日 一幸君
平岡忠次郎君
委員外の出席者
参 考 人
(朝日新聞論説
委員) 土屋 清君
参 考 人
(一橋大学教
授) 山口 茂君
参 考 人
(岩井産業株式
会社社長) 岩井雄二郎君
専 門 員 椎木 文也君
専 門 員 黒田 久太君
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四月一日
委員三和精一君辞任につき、その補欠として山
村新治郎君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
参考人より意見聴取の件
外国為替銀行法案(内閣提出第七三号)(参議
院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/0
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001・千葉三郎
○千葉委員長 これより会議を開きます。
まず外国為替銀行法案を議題といたします。本案につきましては参考人の御出席を求めておりますので、これより参考人の方々から御意見を拝聴いたしたいと存じます。
参考人の方々におかせられましては、本案に対する忌憚のない御意見の開陳をお願いいたしたいと存じます。それから発言の時間はお一人で大体二十分くらいでお願いいたしたいと思いますので、さよう御了承願います。
なお、本日御出席の参考人の方々は、お手元に配付いたしてあります印刷物の通りでありまして、参考人の御意見に対する質疑は、最後に一括して行いたいと存じますので、さよう御了承願います。
それでは、まず第一に朝日新聞の論説委員であられる土屋清さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/1
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002・土屋清
○土屋参考人 私はこの法案に賛成いたします。以下その理由を申し上げます。
現在為替業務は、いわゆる十二の甲種為替銀行を指定いたしまして、それを通じて行われております。しかし実際このうち海外に支店を出してやつているのは五、六行の程度であります。その間には別にそれほどの差別はつけられておりません。今度の為替銀行法案が成立いたしますと、それら為替銀行のうち、特にこの法案に準拠して為替銀行となるものを選んで、為替銀行となることを許可するという建前になつております。現在のままの、つまり数行が一般の市中銀行として為替業務を営む態勢でいいではないかという議論もあるのでありますが、私はこの際わが国としては、やはり専門の為替銀行というものを持つことが望ましい。それは明治以来、日本の為替銀行のあり方を考えてみると、やはり基本的には事情が同じではないかと思います。御承知の通り戦前は正金銀行というものが、いわゆる特殊銀行として政府の特殊の庇護のもとに、為替業務を営んでおりました。この正金銀行を政府が特に庇護して強力なものに育て上げましたということは、日本の商圏を発達させる上だけの実力を持つたりつばな為替銀行を持たなければならないという必要によるものでありまして、そのためには実に数十年間にわたる政府の強力な育成と、金融界の協力とが背後にあつたのであります。今日におきまして、この状態はどうかと申しますと、なるほど一応現在、今の市中銀行の為替業務でもつて大過なくやつているように見えますけれども、しかし外国の為替銀行と対抗して堂々と業務をやつて行けるような、いわゆる一本立ちの、一人前の為替銀行というものは、実はおはずかしい次第ですがないと言つてもよろしいと思います。いずれもどんぐりの背比べの程度でありまして、その間また国家が特殊なフエーヴアを与えることもできませんので、お互いに牽制し合つているようなかつこうでやつておるというような状態であることは、まことに遺憾というほかはないのであります。今日、日本の外貨が数億ドルございますが、これなども日本の銀行に預託させて利用したらならば、相当の為替銀行の強化にも役立つし、また、この外貨運用益というものも上るものと考えられるにもかかわらず、これを少数の為替銀行がめいめいわけどりの形でもつて少しずつ与えられて、それを預託されておるというようなことで、一本になつてまとまつて運用すれば、相当為替銀行も強化されるのに、それがばらばらであるために、思つたほども効果が上がらないといううらみがある。これなども集中的に為替専門銀行ができて、そこにある程度優先的に外貨を預託して運用するようにすれば、やはり外国銀行に対する競争にも有利になることでありましようし、またその運用による利益というものも期待させるのではないかと考えられる。どうしても日本の貿易をほんとうに発展させて、商圏を確保して行くという建前に立つて考えるならば、今までのようなどんぐりの背比べの市中銀行の為替業務というようなことではなくて、特定の、一定の基準に基づいた為替銀行をつくりまして、それを育成強化して、日本の立場をいうものを有利に持つて行くことが必要じやないか、これが第一の理由であります。
それから第二には、輸出を促進する上におきまして、現在の為替銀行のあり方では非常に不便だということが考えられる。と申しますのは、いずれも 現在ロンドンとかニユーヨークとかいうところに支店を出したがつて、ここであればある程度の利益が上げられるのですけれども、ほかの地点、特に日本が必要とする東南アジアであるとか、あるいは将来の南米、アフリカといつたような地域に対しては、なかなか利益も上る見込みが少いので支店を出したがらない、こういう傾向が見られます。しかし日本の輸出を伸ばして行くためには、どうしても日本の市場に対して相当広汎な為替銀行の支店網がしかれなければいけないことは言うまでもないところであります。戦前も正金が世界数十箇所に支店を出して、これが日本の輸出を促進する上にかなり有効であつたのでありますが、今の状態では、数行がめいめいわずかの仕事をせり合うというような状態でありますので、とうてい損をしてまで広汎な世界各地に支店を出すというような状態にはなつておりません。実は正金の当時におきましても、利益を上げていたのは、必ずしもその数十の支店のうち多くはないのです。その数箇の支店で利益を上げて、ほかの支店のマイナスをカバーする。こういうやり方をしてそれが全体の日本の貿易の上に役立つていたと考えられる。今後におきましても、やはり強力な為替専門銀行をつくつて、その支店を各地に出させなければなりませんが、それには今のように漫然と市中銀行に為替業務をゆだねるということでは、犠牲を払つてまで支店網をしくということはとうてい考えられない。またそのロンドン、ニユーヨークにいたしましても、数行同じような形でもつて店を出してやつておれば、おのずから利益もめいめいとしては少くなつているし、それほど有利にもならないし、またむだな費用も出るのであります。そういう点から考えまして、日本の輸出促進のための為替金融網の設置ということを考えますと、やはり一つあるいは二つの強力な専用銀行をつくつて、これにある程度フエーヴアを与えて育成強化をはかり、その負担において営業網を広げて行くというやり方をとらなければ、なかなか思うような活動はできないというふうに考えられます。
第三に、この為替専門銀行が必要であるゆえんは、為替業務というものが特殊の技能、経験、人材を必要とするという問題であります。もちろんこれは市中銀行の業務の一環として為替業務というものが存在するのでありましようから、市中銀行においても何ほどかの経験と、あるいは知識、人材がないとは申しません。しかしこれから日本が世界の為替市場の中に進出して、堂々ほかの国の為替銀行と対抗して、その中で有利なわが国にとつての活動を行うということになりますとどうしてもそういう片手間の仕事ではやつて行けない。それほどの専門的な熟練と技能が私は必要ではないかというように考えます。特に今日では、為替相場の変動に伴うリスクというものは、大体国家が負担する建前になつておりまして、為替銀行は別にその変動のリスクは負担していないのでありますが、しかし世界の為替の態勢を見ましても、だんだん為替の自由化の方向に向つておるこの今の情勢が非常に重要だろうと思います。たとえばポンドは近く自由交換をするというようなことを、英国の責任当局が述べておる。それから西独のマルクにしても、あるいはポンドよりももつと早く自由交換の態勢に入るかもしれないような情勢である。そうしてみますと、自由取引の余地というものが非常にふえて来る。わが国ではもとより公定であり、くぎづけであつて、そういう態勢にはないのでありますが、これもやはり世界の態勢に呼応して、多少弾力的な為替レートの運営という方向に次第に行くものと私は考える。その方がまた利益が多いと思う。今はすぐに行く時期ではありませんが、次第にそういう方向になると見なければならない。そうしますと、この為替変動のリスクというものは非常に大きなものがあるのでありまして、それを、曲りなりにもマイナスにならないようにうまくその間を泳いで行く、しかも国家のために利益をあげるということにするためには、これは相当専門的な知識を持つた人材を養成し、そして専門的な情報を収集し、その知能、経験というものを生かして行くことがどうしても必要ではないかと考えます。今日の市中銀行に、実はそれほどの知識、経験、人材があるとは私には思われない。ごく少数のものを除いては、残念ながらそう言わざるを得ない。ほんとうの為替業務のできる人が何人いるかということを考えますと、すこぶる疑わしい現状であります。もちろんこれからも勉強して行けばだんだん熟達するでありましようけれども、やはり一般の業務のほかに片手間に為替業務をやる場合と、為替業務でその銀行が食つて行くのだという建前をとる場合とは、おのずからその努力においても差があるのでありまして、違いが出て来ると思われる。そういう為替業務が特別の熟練度を必要とする仕事だということを考えますと、この際やはり為替専門銀行の設置ということが非常に望ましいのではないかと思うのであります。
こういう為替専門銀行の設置に対して、いろいろの反対論があることは周知の通りであります。金融制度懇談会においても反対論がかなりあつた今日、金融界においても相当反対論があることは、私もよく承知いたしております。しかしその反対論を、いろいろ資料を取寄せて検討いたしてみますと、どうもその立場が自己の銀行の利益ということを守るに急であつて、日本の国として、一体為替業務というものをどうしたら一番利益になるのだという国家的観点からの議論が非常に少い。要するに、今われわれ市中銀行がやつてりつぱにもうけて何の不都合もないじやないか、だからこのままでどんどん発展させて自然にやればそれでいいので、別に何も新しいことをやる必要がないという、つまり現状是認論であります。ところが現状が是認できないからこういう為替専門銀行が必要になつて来るのでありまして、今日では市中銀行と外国銀行との関係がうまく行つて、何らマイナスの事態が起らぬように見えておりますけれども、このままで将来も行けるとは必ずしも断定できない。今まで外国銀行は日本政府から莫大な預託金を受けておりますから、従つてある程度日本の市中銀行に対しても好意を持つて対処するでありましようが、いつまでもそういうことで外国の銀行にもうけさせるということはできない。そういうことはやめなければならぬ。その場合に、現在うまく行つておるからこのままずつと行くのだ、何も新しいことをする必要はないのだというような言い方がはたして許されるかどうかということについては、私は非常に疑問があるように思うのであります。さらに打明けて申しますと、市中銀行が現在為替業務でもうかつておると言うけれども、はたして将来ほんとうにもうけて行く自信があるのかどうか、私は非常に疑わしいと思います。というのは、戦前日本の市中銀行が為替業務をやつておりましたが、大体三井にしてもその他の銀行にしても、特殊のものを除いては、外国部というものは赤字なんです。もうけていた例があまりないのです。つまり外国部というのは、絶えず白い目でもつて内部から見られておる。しかし銀行の看板であるから、一応海外に対しても通りがよいので為替業務をやつていたというのが実情ではないかと思われる。今日もうかつておるからといつて、今後もずつとそのままもうかつて行くという保証もあり得ないと私は思います。むしろ相当苦難な事態というものをこれから考えなければいけない。特に世界の為替の自由化の方向を考えますと、なかなかたいへんだろうと思うのであります。こういうときに、今何とかうまくもうかつておるのだからこのままでよいのじやないかという議論は、あまりに目先の自己の利害だけにとらわれた見解であつて、大局的な国家的な見地に立つた議論では決してないというふうに私は考えるのであります。
それからもう一つの反対論は、専門銀行をつくれば外国銀行との競争が激化する、そうすると外国銀行が今まで比較的好意を持ち、信用を与え、取引に便宜をはかつてくれた、その関係というものが円滑を欠くようなことになるのではないか、こういう懸念が一つの反対論になつておるように思います。しかしこれは、もともと外国銀行が日本の金を相当預かつて有利に運用しておる、そこから来ておることが多いのでありまして、この状態をいつまでも続けるならば問題はないのですが、そういう状態は日本としては続けられない。やはり日本の外貨というものの大部分を日本の銀行が有利と運用することが望ましいのでありまして、そうすると、外国銀行との間に多少の摩擦が出ることは当然覚悟してかからなければならないことなんです。またその場合に、その競争に打勝つて行くだけの強い力を持つた銀行ができれば、それは普通の商業的の競争行為なんですから、問題とするところはないように思います。今日の状態がこのままいつまでも続くのじやないということを考えれば、外国銀行との競争関係ということをあまり懸念する必要はないように思うのであります。この二つの見地から、この反対論はあまり根拠があるとは思わないのであります。
最後に、この為替専門銀行の前途について希望を申し述べることが許されるならば、この法案を拝見しますと、非常に抽象的な規定が多くて、一体為替銀行にどれだけのフェーヴアを与えて育成をして行くのだというようなことは何ら書かれていない。そういうふうになつたいきさつについては私も多少承知しておりますが、しかしもともと一つの強い国家的の意思でもつて日本が対外的に通用し得るりつぱな為替銀行をつくろうというのであれば、市中銀行の片々たる反対を顧慮することなく、この程度の利益を与えるなら与えるということをはつきり打出して、同時にこの為替銀行に対する監督を国家が強化する、こういう態勢の方が私は望ましいのじやないかというように思われる。運用によつてフェーヴアを与えるのだ、それも外貨の預託であるとか、あるいは海外支店の認可の場合に手心を加えるとかいうようなことでなくて、やはり根本は、この低利の円資金を為替銀行にどうして供給するかという問題になつて来ると私は思います。これは過去の正金の例を見ましても、正金があれだけの活動をなし得ましたのは、当時の日本の金融界に非常に大きなコール市場がありまして、そのコール市場から厖大なコールをとつて、それでもつてやつておつた。今日コール市場はお話にならないくらい貧弱なものであつて、かつ金利も高い、こういうときにコール市場を利用できない。しかもこの専門銀行法によつて支店の設置は制限され、貸出し業務は制約を受けるということになりますと、一体専門銀行のどこから資金が出て来るのかという疑問に当然ぶつかつて来る。この法案には何らの解決策が示されておらないので、その運用ということにおいて、やはり為替銀行の前遂に対して多少の不安を抱かざるを得ない。もちろん国家がいいと認めてやつたことをつぶすようなはめには陥らないと思いますが、やはりこの法案において国内における支店業務を制限し、貸出し業務を制約するというようなことをはつきり打出しているならば、同時に、一体預金の吸収が少いときに、どうしてこの業務をまかなう資金を得るのだということについての多少の規定というものも、あつた方がいいのじやないかというように考えます。
第二に、この為替専門銀行の発足した場合に、国内の今為替業務を担当しておる銀行との間の摩擦が起ることが憂慮されます。つまり現在自分たちの仕事は非常にうまく行つている、それに何も専門銀行をつくる必要はないじやないか、こういう建前になつておりますから、その間協力関係が設定されないというきらいがあると思う。特に市中銀行方面の反対論を聞いてみますと、その主たる理由は、いわゆる金融の縦割と申しますか、対外金融から、つまり貿易金融から国内の生産金融まで一貫して金融をずつとつなげて来るのが理想的なんだ、それをなし得るのは市中銀行で、為替銀行は貿易金融、市中銀行は国内金融、これを横割と申しますか、横割になると、金融が切断されて、貿易金融と国内金融とのつながりにおいて非常な困難を感ずる、商社も困るだろう、こういうおためごかしの議論をしておるのが市中銀行の反対論の根拠になつております。しかしこれは非常におかしな話で、縦割がよいか、横割がよいか、もつともつと議論を尽さなければならないと思います。簡単に申しますと、それは縦割であつても横割であつても、市中銀行がどういう態度をとるかによつて円滑にも行くし、不円滑にも行くのだと思う。たとえば貿易金融を専門銀行がやり、市中銀行がそれに協力しないというならば、これは貿易が遮断されて、非常にぐあいの悪い事態が起る。それではいけないので、骨の正金銀行でも、貿易金融を市中銀行にもやらして来たのです。そういうふうに気持を広げて、専門銀行はいわば為替に関するわれわれのチヤンピヨンだという気持に立つて、市中銀行が国内金融について協力して行けば、別に縦割、横割という議論は、そう本質的に問題になるはずはないと思う。しかしこの点は、ただそういう道徳論を説いてもしかたがないので、できるならば為替専門銀行が発足する際において、何らか機構上あるいは人的関係の配慮を市中銀行との間にとることが必要ではないかと思う。たとえば、おそらく為替専門銀行は増資をしなければならぬという事態になると思います。その場合に、市中銀行がそれに出資する、また必要ならばそれに重役を派遣するという形において、市中銀行と為替銀行とが対立関係にならない、協力して行くのだ、自分たちも為替業務をやる、しかしチヤンピヨンは為替専門銀行だというぐあいにして協力関係をつくる、そういう仕組みを考えて行けないものか、これは法案において規定することは必ずしも要しないと思いますが、運用においてできるだけ市中銀行と為替銀行との対立、摩擦関係がないようにして行くことが必要だと考えます。同様なことが日本銀行との関係についても言えるのでありまして日本銀行がこの法案について必ずしも賛成でなかつたということは、大体明らかであります。総裁は正面切つて反対は唱えていないのでありますが、事務当局においては、かなり反対論が強かつた。その反対論を追究して行くと、つまりかつての正金銀行のようなものに発展してそのために中央銀行の金融の主導権というものが害されやしないか、つまりそういう危惧によるものであります。なるほど中央銀行というものは、国内国外を通ずる金融の主導権を握るのが建前でありますから、正金のような形で非常に強力なものができて日銀の権限を侵すというようなことになつてはこれは問題だと思う。事務当局にこういう不安が現に存在しておることは事実でありますが、それが、先ほど申しました円資金の確保という問題について障害にならないとは言えない。またなつては困る。そうしますと、やはり日本銀行と為替専門銀行との関係においても、何らかその間円滑な関係を確立するような考慮が望ましい。かつて日本銀行から正金銀行に副総裁を出すことがずつと続けられておりましたように、そういう人的な関係でやるのもいいでしようし、何らかこの間、専門銀行と日本銀行との関係の円滑化をはかるような措置を考えて、対立関係に置くのではなく、要するに問題は、日本の国家的利益を海外に対して延ばして行くということでありますから、市中銀行とも、日本銀行とも対立関係にならないような配慮をして行くことが必要ではないかと考えます。
これをもつて終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/2
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003・千葉三郎
○千葉委員長 次に一橋大学の教授山口茂さんにお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/3
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004・山口茂
○山口参考人 ただいま土屋さんのお話を伺いますと、ほとんど私が言おうとするところを言われてしまつたような気がします。その意味におきまして、為替専門銀行の必要、すなわちこの法案に対する賛成、もう一つは、為替技術の面について土屋さんの言われたことに対して全面的に賛成を申し上げます。そういう意味で、今まで言われたことは、同時に私が言つたことと同じように解釈していただいてけつこうだと思います。そこで私は、為替専門銀行が日本の現状においても必要であるということを、もう少し広い立場に立つて申し上げたいと思います。
少し学校の講義くさくなつてたいへん失礼でありますけれども、十九世紀の国際金融と二十世紀の国際金融を比較してみまして、日本においては十九世紀においても為替専門銀行が必要であつたのであるが、二十世紀、ことに第一次大戦以後におきましては、より以上に強力なる為替銀行を育成発展せしめることが必要であるという根拠を少しお話申し上げたいと思います。
十九世紀の国際金融の情勢は、御承知のようにイギリスを中心とする国際経済というような構造を持つておつた。すなわち、いわゆるポンド・スタンダード、各国それぞれ独立の貨幣制度を持つておりましたけれども、世界のいかなる貨幣制度も、多かれ少かれイギリスのポンドにリンクして、それとの関係において国際金融が営まれておつたわけであります。それが今日におきましては、御承知のようにだんだんとダラ・スタンダードにかわつて参りまして、アメリカを中心とする国際経済というものがまだ完成はしておりませんけれども、これから漸次完成の域に達するのではないかと思うのであります。この二つの違い。もう一つ加えますと、十九世紀のイギリスを中心とした場合には国際金本位制でありましたけれども、二十世紀になつてからはいわゆる管理通貨でありまして、その点がはなはだしく違うのであります。そういう十九世紀と二十世紀と比較しまして、その間日本の国際金融上における地位はどうであつたか、今日どういうふうにかわつて来たか、そういうことから、為替専門銀行の強力なる発展育成がどうしても必要であることを申し上げたいと思います。
十九世紀のイギリスを中心とする国際金融、あるいは国際経済は、イギリスが御承知のように産業革命を早く始め、自由貿易を必要として十九世紀の初めから世界帝国として七つの海を支配し、世界中に属領並びに植民地が散らばつておりましたので、そういう関係から、イギリスの金本位制というのは国際主義的な金本位制で、自分だけの利益を直接に追求するというようなものではなかつたわけであります。これはどういうことによつてできたかと申しますれば、英蘭銀行を中心とする普通銀行がそこに一つのコンストラクシヨンを持つわけでありますが、それに付属したデイスカウント・マーケツト、割引市場というものの存在、発達並びにその育成がイギリスをして世界金融の中心たらしめて、イギリスをしてそういうような国際金本位制というものの中心たらしめ得たわけであります。もう一つは、同時にイギリスに、御承知のようなインヴエストメント・トラスト、投資信託というものがありまして、これは日本の投資信託とはまつたく違つたものでありますが、それによつて海外投資を十九世紀の前半ごろから徐々に始めて、海外の証券に投資を下る、そういう形を持つておりました。この英蘭銀行を中心とする銀行の構造と、それにくつついた短期割引市場、もう一つそれにくつついた海外投資をするインヴエストメント・トラスト、この三つが共同することによつて、イギリスの金本位制というものができたわけであります。そういうようにイギリスの金本位制が国際主義的な金本位制、直接的な自己保存でなしに、迂回的自己保存と申しますか、国際経済の安定した中で自分を生かすというやり方、それは同時に先ほど申したように、世界的な植民帝国であるから、自国を中心とするやり方が同時に国際的であるような構造をイギリスは持つておるわけですから、そういう意味で、国際主義的なやり方が容易にやり得たのではないかと思うのであります。そういうように、割引市場と英蘭銀行を中心とする銀行組織制度と、それからもう一つはインヴエストメント・トラスト、この三つが一緒になつて、イギリスの金本位制というものが一八四四年に英蘭銀行法ができると同時に完成したわけでありますが、そういうイギリスが他国本位、あるいは国際本位ということに相対しまして、他のドイツであるとか、フランスであるとか、あるいは日本であるとかいう国々は、自国本位たることが許されておつたのであります。すなわちイギリスが他国本位でやつてくれるから、ドイツもフランスも日本も自国本位でやり得た。すなわち日本やドイツ、フランスも、中央銀行を頭に置いた一つのヒエラルヒー的な銀行組織を持つておるわけであります。そしてどちらかというと、自国の生産並びに価格というものに即応するような通貨の供給、そういうふうなことを比較的容易にやり得たわけであります。そういう意味におきまして十九世紀の金本位制というものは、イギリスの金本位制と他の大陸諸国、あるいは日本の金本位制とは、同じ金本位制でありますが性質が違う。イギリス以外の国は自国本位でやり得た。それはイギリスが他国本位でやつてくれたからであります。すなわち金本位制が成立しましても、イギリスは十九世紀においてはいつも輸出超過であります。輸出超過ならば、金が流入して来るわけであります。ところが金を流入さしてよその国から金を奪つてしまつたならば、イギリスのその当時の金本位制というものも成り立たない。それでインヴエストメント・トラストが海外投資を引続いてやることによつて、流入すべき金を流入しないで外国に置いておくことができた。こういうような三つのイギリスにおける金融組織というものにささえられて十九世紀の国際金融というものは成り立つておつた。そして日本やフランスやドイツは、ほとんど自国本位でもつてやつている、自国の生産並びに価格というものに即応した通貨供給が行い得る、そういう状態がそこにできたわけであります。イギリスの英蘭銀行をお考えになつてみますと、英蘭銀行は、これはむろん中央銀行であり、いわゆるバンカース・バンクでありますけれども、同時にそれは為替銀行であつたのであります。これは為替業務をした為替銀行でなしに、実際イギリスの金本位を維持するとか、あるいは為替の動きによつて割引歩合をいろいろに動かして、そうしてイギリスの金本位制を維持し、イギリスの外国貿易を維持し、イギリスの世界金融における決済市場としての地位を保たしめたのである。英蘭銀行は、御承知のように、一八四四年以後からこの割引歩合を動かし、最も多いときには一年に二十四、五回も動かしております。最も少くても十回以上は必ず動かしておる。そういうふうに金利を始終動かすことによつて、為替と金との関係、貿易の方向、そういうふうなものをすべて調節しておつたわけであります。ところがヨーロツパ大陸における中央銀行、ドイツチエ・ライヒス・バンクもフランス銀行も、日本銀行も為替の割引歩合はそんなに動かしておりません。また動かす必要もない。それは、金がよそへあまり流れていないからです。もちろんこれはヨーロツパ大陸や日本では——日本はそんなではありませんが、イギリスが外国貿易依存度が非常に大きくて、その他の国が外国貿易依存度が少いという面もありますけれども、同時に今申し上げたように、凹凸に相応ずるような十九世紀の国際金本位制というようなものが、イギリスの助けによつてそういうことができたのであります。そういう意味で、十九世紀におけるこの英蘭銀行は、バンカース・バンクであると同時に為替銀行であつた。
それが二十世紀になりましてどうなるかと申しますと、これは、先ほど申し上げたように管理通貨であります。それからイギリスの地位にかわつたところのアメリカがどうであるかというと、貿易依存度は御承知の通り非常に少い。そうして孤立派というような政党関係もあるようでありますが、とにかくアメリカは独立して自分だけで暮して行ける、そういう国柄であります。それで、その他の日本とかほかの国はいわゆる弱小国家、ことに日本の場合には貿易依存度が非常に大きいのであります。それで、これからだんだんと育成されて行くであろう二十世紀の国際管理通貨制度というようなものがどういう形になるだろうかということは、これは予測みたいなことにもなりますけれども、少くとも十九世紀の場合と比べると非常に違つたものになるのであります。アメリカの場合にはイギリスとは違つて、国内本位でいいのである。今日世界が二つにわかれているとかなんとかという関係から、国際本位というような面が出て来ているのでしようけれども、流通経済の根本的な関係からは、アメリカは国内本位でやれる国であるし、やるだろう。第一次大戦後における金の不胎化政策、すなわちケンタツキーの山の中に金を埋めてしまつたというようなこと、これはまつたく国際本位のやり方でなくて、非常に利己的な国内本位のやり方なんです。あのために二十世紀の世界経済機構というものはこわれてしまつた。そういうわけでありますので、これからも、アメリカが中心となつた場合には、経済的に見るならばどこまでも国内本位に行くと見なければならないのであります。アメリカが世界経済の中心であり、ダラ・スタンダードの元締めであるところのアメリカが国内本位になれば、よその国はいやでもおうでも国際本位にならざるを得ない。そういう意味におきまして、日本は今まではイギリスの助けによつて国内本位でやれておつたものが、これからは国際本位でやらざるを得ないような流通経済的関係が潜在しておる。私は潜在とは言いません、顕在しておると思うのでありますが、そういう違つた状況になるのであります。そうなつて来ると、十九世紀の場合には、イギリスの国際本位というものは、英蘭銀行が為替銀行の本質を持つておつたということを申しましたが、今度は国際本位に動かなければならないところの、たとえば日本の中央銀行は、為替銀行たる性質を持たなければならないのであります。それは為替業務、為替の売買をするとか、そういうことをするわけじやないのです。始終国内経済における通貨供給の状況、金融の繁閑というものと、ダラ・スタンダードに結びついておる日本の国際為替の面、この二つを常に調和させなければならない。国内的には弾力性のある通貨供給をしなければならないが、同時にその弾力性が、国際通貨としての日本の円がドルその他に結びついた上において、その間に矛盾撞着があつてはならないわけであります。これを適当に処理する役目がどの役目であるかといえば、これは日本銀行にあるのであります。すなわち日本銀行はバンカース・バンクとして市中銀行の元締めであると同時に、国内金融で働く為替銀行の元締めでもなければならない。そしてバンカース・バンクとして国内金融に弾力性のある適正な通貨供給をなす日本銀行と、為替銀行とタイアツプしてそして国際金融的に矛盾撞着のないようなことをしなければならない日本銀行と、この二つの面を日本銀行は持つて行かなければならないのであります。その場合に、それでは先ほど土屋さんがおつしやつたように、市中銀行が同時に為替銀行としてやつて行つたらいいじやないか。そういうことはできないのです。そういうことはとてもできません。いわんや先ほどおつしやつたように損が行く、あまりもうからないということになれば、なおそうなんです。どうしてもこれを二つにわけなければならない。アメリカが日本の銀行分業を破壊してしまいました。私はそれに対してたびたびプロテストいたしておりますが、ほかの勧業銀行とか、あるいは興業銀行の場合にはそれほどではないのですけれども、為替銀行だけは、日本は貿易立国で、どうしても日本は貿易をやらなければならない。そのときにいわゆる機会均等とか公平の原則とかいつたところで、能率の上らないような多数為替銀行制度というようなものは、これはとんでもない話だと私は思う。それと同時に貿易商社の再編育成、これは絶対に必要なんです。これは国策です。あの会社がもうかるとかなんとか、補助してはいかぬとかいうようなそんな問題ではない。貿易商社の再編育成、それにタイアツプする為替銀行というようなものを強力にして、世界的な支店網を持つた強力なるもの——この資料にありますけれども、これは土屋さんがおつしやつたように、前から支店をほかの市中銀行は持つておるでしよう。しかしながらそれは微々たるものである。やはりみな正金銀行に負いかかつてやつておつたと思う。やはり元のような、こういうたくさんの世界中の支店網を持つことです。そして強力なる為替専門銀行をどうしてもこしらえなければならない。私はそう思つておるわけでございます。
先ほど日本銀行と為替専門銀行とのさや当てというような話をちよつと伺いましたが、とんでもない話で、日本銀行が上にあつて、その一面は国内金融を指導するバンカース・バンクである。他の一面は為替銀行を指導するバンカース・バンクでなければならないのです。それがけんかしたという話は、馬の前足とあと足がけんかするようなもので、それはばかな話です。
少し話がはずみましたが、一体日本の金融制度というものは、明治初年以来の金融制度の建設、そういうようなときたは、考えてみるともつと私はまじめであつたと思う。これは野つ原に都市計画をやるような意味であつたからまじめに考えられたのでしようけれども、今はいつでも利害関係のぶつかり合いでもつて、問題がどこへ行くかわからない。これはまことに遺憾である。それから金融三法の改正とか、いろいろな問題があるようですが、ほんとうに国策の線に沿つて、日本をどうするかというまじめなことで私は考えていただきたいと思う。衆議院や参議院の方にもむろんそうでありますが、財界の人でも何でもみなそうでなくちや困る。
それでこの法案を見まして、私はいろいろのことをよく知らないのですが、土屋さんの意見に賛成すると同時に、今言つた意見もつけ加えたわけであります。学者は学者らしい意見の方がいいと思うのでそう言うわけでありますが、この法案を見ますと、実は非常によくわからない。これで為替専門銀行なんだろうかというような感じが実はするのです。いわゆる経済的民主主義だとか、あるいは集中排除だとか、アンチ・トラスト・ムーヴメントだとか、そういう意味において、いろいろな困難があるでしようけれども、しかしながら資本主義経済というようなものは集中です。集中するごとによつて能率が高くなる。その能率を高めることなしに、初めから集中しないで、金融ができなければどうして一体今日の国際経済の中で日本が生きて行くことができますか。悪かつたならそれをレミデイいていろいろな修正をすればいい。私はこの法案は非常にぼんやりしたものではなはだ不満なんです。実際には、先ほど土屋さんがおつしやつたような線に沿つて育成して行かなければ——これは国策なんです。あの銀行に対してフェーヴアするとか、この銀行に対してフェーヴアするとかいう問題ではない。これは国家の国策なんです。私はそういうふうに思う。これで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/4
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005・千葉三郎
○千葉委員長 最後に岩井産業株式会社の社長であらせられる岩井雄二郎さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/5
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006・岩井雄二郎
○岩井参考人 最初に申し上げますが、私はこの法案に賛成であります。ごの法案に賛成でありまする理由は、ただいま土屋さん並びに山口先生から詳しいお話がありまして、私はほとんどそれに補足する必要がないのでありますが、一言貿易業者の立場から、この法案に対する私の考えを申し上げたいと思うのであります。
日本の貿易が明治以来ここまで進歩いたしましたことにつきまして、横浜正金銀行がそれに寄与された程度は非常に大きなものであります。実は自分のことを申し上げてはなはだ失礼でありますが、私ども祖父の時分から、ちようど八十年ばかり大阪でちつぽけな貿易屋をやつておりました。八十年間貿易をやるということはどういうふうにお考えになるか、ことに波風の荒いところでつぶれずに八十年もやるということは並たいていのことではありません。生きておつただけでも、よう生きておつたと思う。これにつきましても、横浜正金銀行に非常にごやつかいになりました。それはどういうことかといいますと、つまらぬ話ですが、私は、横浜正金銀行の小さな歴史なんか、正金銀行の先輩などよく知つておる。なぜよく知つておるかと申しますと、母親とおやじが話をして、今度支店長がかわられたらどうなるかというようなことが子供心に耳に入つている。ちようど正金銀行と貿易業者の立場というものは、おやじと女房、もしくは親と子みたいな、どつちが親かということは問題なんですが、そういう考え方なんです。そのことで何から何まで非常に世話を受けて、ともに大きくなつておる。女房に言えぬようなことまでも銀行には言つて大きくなつて来たのであります。ところが戦後は御承知のように、今度の法案ではどんぐりの背比べはやめて、一つのチヤンピオンをつくる、こういうように考えておりますが、私はどつちかというと、ものの考えが自由競争の考え方で、なるべく競争さした方がいいという考えがあるのですが、為替銀行というものは、今の日本の非常によくなつた国力から見ましても、どんぐりの背比べではどうしてもぐあいが悪い、これはやはり一つのチヤンピオンだと思うのです。そのチヤヤンピオンにモノポリーをやらせるということは、これはいけません。何も戦前でも横浜正金銀行がモノポリーをやつておつたわけじやない。今度の法案でやられておることも、その当時の正金銀行の形で復活するのではないのでありまして、何か一つのチヤンピオンをつくつてこれを育成強化して行く、こういうものだと思います。これは私は日本の現状から見まして、貿易の発展のためにきわめて適切な措置だと考えております。
先ほど土屋さんのおつしやられたことで尽きておると思うのですが、一つ抜けておつたことがあるのです。それはよく言われたことですが、採算のとれぬところをそういう一つのチヤンピオンをこしらえて引合うところべ持つて行く、チヤンピオンに幾分かサービスをやつて引合わぬところに無理にやる、採算の合わぬ地域に支店を出すということを言われましたが、これももちろん必要なことですけれども、正金銀行時代、為替専門銀行で、われわれのようなどつちかと申しますとちつぽけな貿易会社によかつたのは、非常に大きな貿易会社がありました中で、私らのような何も大きなグループに属せぬ貿易業者に対して、横浜正金為替専門銀行は、はつきりした言葉で言えませんが、中立的であつた。これはただいまどんぐりの背比べの銀行には、多少色のついたような、いろいろ大きな一家眷族のようなものがありまして、それを幾分大事にされるようなことがないか、そこへ行くと何か一つチヤンピオンがおられる、そのチヤンピオンはわれわれのような大きくない貿易業者に対してイコールなチヤンスを与えるようなものがあつたじやないか、そういうこともかえつてチヤンピオンをつくられることには都合がよくはないか、こう思うのであります。
最後に、為替専門銀行をつくられることにつきまして先ほど土屋さんからいろいろお話がございましたが、私は今のエクスチエンジ・コントロールと申しますが、為替の管理ということは、これは今度の法案から全然別になつておりますが、この制度が長く続くとは思いません。こんなことをしておつたら非常に弊害が起るから、やがては為替の自由化というところに来る。今の世間一般の考えでは、そういうものは二度と来ない、十九世紀ばすでに去つてしまつたんだと言われるかもしれないが、私は十九世紀のいいところは持つて行かなければならぬと思う。十九世紀が完全に抹殺されたためにこういうふうに不都合な世の中が出て来た部分もあると思う。イギリスもきつと自由交換制をやるでしようし、ドイツもやるでしよう。そうなると、日本ばかりががんばつてみてもがんばれぬような時代が来る。必ず世界の圧力でそういうところに私は追い込まれて行くだろうと思います。これがいいことか悪いことか、すべての場合にこういう問題はプラスの部面もあるしマイナスの部面もあるが、私は相当プラスの部面も出るのじやないか、そういう時代が来るとますますそういうチヤンピオン銀行が必要じやないかと考えております。
もう一つ申し上げたいのは、大体為替専門銀行の必要なるゆえんに対する私の考えを申し上げたのですが、一番大事なことは、生みつばなしではいかぬということです。もしもそういう銀行ができたならば、政府が多少助けてやる、そう目立つた特別扱いもできぬでしようが、やはり長男扱いというか、チヤンピオン扱いをやつて、あちらこちらの料理屋行くけれども、ここの料理屋だけはよそへ一ぺん行くところを三べん行くとか五へん行くとかいう程度のことをやつてやらぬといかぬじやないか、こう思うのです。これは、外貨の預託というようなことに対してもちよつと余分に助けてやるということ、それから金融のことなんかの話を聞いてみると、何か意地悪をするというようなことを言うておられるが、これは大きな間違いで、できるだけもり立てて行く、そういうことをしていただくと、私ども貿易会社の立場からも非常に働きやすいのじやないか、こう思うのです。私の考えはどつちかといいますと、保守的な、相当長い間貿易業をやつておりますので、昔の古い時代を思い出しているようですが、ちようど八十年前に私の祖父が貿易をやりましたときの資本金なんかを考えて入ますと、このごろは三百六十円というややこしいものがあるが、これで割つてみると同じことです。ちつとも進歩しなかつたことははなはだ情ないような気がする。結局日本銀行も実際外貨で計算をしたら、おそらく明治初年くらいのものではないかと思う。そういうときですから、もう一ぺん今までの悪いところは訂正して、いいところはこれを取入れて再出発するのが日本の進むべき道じやないかと思います。どうも商売柄はなはだまとまらぬことになりましたが、私の意のあるところは御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/6
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007・千葉三郎
○千葉委員長 これにて三人の参考人の御意見の御開陳は終りました。非常に御多忙でしようが、もう少しお残りくださいまして、質問をお受け願いたいと思います。
参考人に対して質疑の通告があります。まず第一に平岡忠次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/7
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008・平岡忠次郎
○平岡委員 土屋清先生にお伺いします。御三方とも積極的な賛成でございます。私どももこれに対しましてもちろん外国貿易に依存度の強い日本の現状におきまして、当然このことが強力に進めらるべしという観点に立つております。ただ今回の法律案がわれわれの期待するものよりあまりにもなまぬるいような感じがしておるので、不満があるのです。そういう点から質問申し上げたいのであります。
結局為替専門銀行ができましても、市中銀行への気がねから、特にフエーヴアを与えぬということを政府は答弁しておる。ただそこで画然として、歯にきぬを着せずして言うておることは、支店網に対しては十五、六店出させる、あるいは外貨の預託の集中的と申しましようか、かなり多くの分量は配慮する、このことだけ言うておる。ところが為替銀行ができるということになると、旧横浜正金銀行——今の東京銀行を予定しておりますが、そのウイーク・ポイントであります円資金の問題に対して、今のところ政府からこれに積極的な支持を与えるという言質をわれわれはとつておらぬのです。私が想像しますと、輸出と輸入で大体日本で大まかに四十億ドルと考えます。そうしますと、これが三回転いたしますとすれば、十三億ドルを要する。この十三億ドルを円資金に換算しまして、約四千五百億円になります。これは四千五百億円でなしに、あるいは三千億円であるというりくつも立ちましようが、当らずといえども遠からずという数字はこの辺であろうと思います。この円資金を、実際に専門銀行が設立された場合に行政的の措置のらち内で調達し得る道があるかどうかにつきまして、ひとつお教え願いたいのであります。もちろんこのためには、コール市場で求め得られるところのものも多少ありましよう。あるいは金融債とかいうものを——これはもつとも今度の法律ではうたつておりませんから、改訂しなければなりませんが、金融債を発行した場合に求め得られる大体の限度、あるいは資金コストが高くては困るという問題もからんでおります。そういうふうな点から申しまして行政的な措置内でこの円資金がまかなえると思えないのです。その点から日銀のこれに対するてこ入れとか、そういう点が当然考えられなければならぬ。しかもこの点を行政措置でというふうにぼやかしておるのですけれども、問題はこの点が重大だと思うのです。この法律案が出て来るにあたつて、いろいろな今言つた懇談会ですか、そういうふうな意見、答申を見ますと、足をひつぱつているような傾向が多分に見られると思います。いわゆる企業の縦の構成として、戦前におきましても今の財閥銀行というものが企業と結びついて、そこに特殊な一つの世界をつくつておる。これが戦後におきまして特にその傾向を強めていまして、いわゆる縦割融資の問題でこの点をこずいている傾向があります。こういう現状を、この委員会のこういう雰囲気では為替専門銀行をチヤンピオンとすべしということを打出していますが、現実の問題としてこのことは解消しておらぬのです。ですから、こうした悪意と言わぬまでも一つの無視に対しまして、為替銀行を発足せしめて行く上に最小限度やはり明確な一つの国家的な配慮を必要とするように思うので、そういう点から、今言いました仮定の数字である四千五百億の円資金の調達につきましての何か名案とか、お考えがございましたらお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/8
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009・土屋清
○土屋参考人 お答えいたします。先ほども申しましたように、私は実は、この法案ではそういう点については一切ぼかされておる点が非常に不満であります。これは金額は覚えておりませんが、たしか正金銀行当時も二千五百万円ぐらいを限度として日銀から低利融通したというような先例がございます。それが四千五百億円になるかどうかわかりませんが、為替専門銀行に対してはやはり特殊の低利の円資金を供給することが当然必要になる。それはりくつからいつても当然でありまして、今度の法案を見てみますと、国内における支店設置を非常に制限しております。これは幾つにするのですか、二十以下にするとか、幾つ以下というふうなお話がございますけれども、支店が国内で制限されれば預金は当然減つて来る。今銀行が非常に支店を出したがるのは、預金を集めるための支店を設置しているのです。そこで預金がふえない、しかも国内の貸出し業務を制限している。預金は、貸出しをするから預金がふえる。実はそれに伴う弊害も顕著ですけれども、実際に預金を貸出しすから預金がふえる。ところが国内における支店設置を制限し、貸出し業務を制限して来ますと、預金の吸収ということが非常に困難になつて、自分の金というものが非常に足りないということは、これはあたりまえのことなんです。それを補う何らかの措置を考えるのは、一方において制限する以上は当然なんで、その当然のことをなぜはつきり言えないのか私にはわからない。実はこれはわかり過ぎるくらいわかつているのですが、非常にそこが問題であつて、やはりこういう点は初めから遠慮気がねをしないで、片一方で制限すれば片一方ではフエーヴアを与えることが当然だし、その点についての反対論というのは、私はりくつとして成立しないというふうに思つています。
それからだんだんこれからコール市場が発展して来るでありましよう。今日ではこういう金融情勢ですから、逆に縮まつていますけれども、しかしある段階がくればコール市場もだんだん発展して来て、金利もそう著しく高くないという程度になれば、そこからも昔のように多少資金の獲得もできましようし、それからユーザンス制度にしても、やはり私はこれから積極的に考えて行く必要があると思う。これまではポンド関係のユーザンスは認められていたけれども、それほど利用していない、ドルの方のユーザンスはほとんど認めていない、こういうふうになつておりまして、これにはそれだけの理由があつたと思います。これからははりだんだん正常化して行くにつれて、ユーザンス制度も活用して、その面からの円資金の節約をはかつて行くというような考慮も必要だと思うのです。要するに一方において制限を加える以上は、何かそれを補うような方策を考えなければいかぬ、それの資金が幾らになるか、それはこれから専門銀行がどの程度発展して、どの程度為替業務というものを引受けるかということによつてもきまるので、はつきり申し上げられませんが、そういうことはやはりはつきりしておかないと、後になつてまた市中銀行からそんな約束ではなかつたというような非難が出て混乱が起るのではないかということを懸念しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/9
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010・平岡忠次郎
○平岡委員 そうしますと、今の仮定の数字の四千五百億円、これの円資金の充足のためには、輸入ユーザンスの正常化によりましてかなりまで行ける、それからコール市場で多少は求め得られるであろう、しかし大半はこの点に対して危惧なきを得ない、従つて政府はこれに対して気がねせずにこのことを打出さなければいけない、こういうふうに了解してよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/10
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011・土屋清
○土屋参考人 そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/11
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012・千葉三郎
○千葉委員長 春日君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/12
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013・春日一幸
○春日委員 山口教授にお伺いをいたしたいのでありますが、私どもは大体計画経済を経済の基本的な考え方に置こうと主張しておる党の立場において、こういうふうな方向に向いて行くということについては、基本的には賛成であのますけれども、しかし問題が重大であるから、未熟な法案をつくつて貿易金融が混乱を起すようなことがあつてはならないということでいろいろ批判的な面を抱いておるわけであります。そこで現在日本の経済が貿易に依存をしておるということ、これが非常に高いことは認めるのでありますが、同時に現実の問題として、外国の援助というものにも現実に依存しておると思うのであります。そうしますと、この日本の経済の実態を分析いたしますと、為替に関する面で、貿易金融の面と同時に、また外交金融ということもあわせて現実の問題として考えるべきではないかと思うのであります。たとえばそこの中にはMSAの援助もありましようし、あるいは域外買付の問題、あるいは特需の問題等、いろいろな外貨がこのコマーシヤル・ベース以外のルートから入つて来る。そういうような外貨は、しよせんは、これはありのままに言えば産業金融につながる濃度が非常に高い。そうすると、この二十億ドル程度の経済の規模において、現実には八億ドルないし九億ドル程度のものがこの貿易金融によらないで、外交金融によつて日本の経済が維持されており、しかもその程度のものは結局産業金融とつながるものであつて、そういうような産業金融と貿易金融とが分担される形において、今後経済的にいろいろな支障を来たして来る面が生じやしないか、こういうことを考えておるのでありますが、この点はどういうふうに理解をすべきものであるか、ひとつお伺いをいたしたい。
それからもう一つお伺いしたいことは、先生の今の御供述の中で、将来の中央銀行は為替銀行的な色彩を持たなければならぬというようなことが述べられておりますが、それが最終的な理想であり、かつて英蘭銀行がそういうふうな機能を果しておつた、すなわち国内金融と貿易金融をともにハンドルして来た、こういう歴史があつたといたしますれば、最終的な理想ということを考えますと、円資金の供給の能力その他から考えて、しよせんは日本銀行にそういうよう機能をもあわせて付与する、こういうようなことも考えて考えられないことはないと思うのでありますが、こういうことは絶対不可能であるのか、あるいは可能とすればどういうような方法でそれをやることができるのであるか、この点ひとつ先生の御見解を承りたいと思います。
それからもう一つ伺つておきたいことは、現在政府の手持ち外貨が二十八年十二月末で九億七千万ドル、そのうちの八八・八%が外国銀行に預託されて、内国銀行は一一・二%しかない。巨額の外貨が現在外国銀行に預託されておるということは、やはりそれだけの理由がなければならないことであるのでありまして、これは現在の三百六十円の法定レートを維持する立場において、日本の信用を海外に表明するとか、あるいは海外のいろいろな、たとえば現実的には五百円の価値しかないものを三百六十円に維持するとか、いろいろな外交政策的な内容も加味されて外貨そのものの預託が外国銀行に集中的に行われておるのではないかと思うのであります。これの指数を考えてみましても、昭和二十七年の年末には、この外国銀行の預託と内国銀行の預託の比率は、九五・一%対内国銀行の四・九%、これが逐次その開きが調整されつつある傾向はありますけれども、そのテンポは非常ににぶいものでありまして、二十八年三月において、あるいは六月において、四・九%が八・八%になり、さらに三箇月を経て九・九%になり、ようやく外国銀行と内国銀行との預託の対比率が四、五%の調整が見られたというだけで、結局その大多数のものは外国銀行に預託せざるを得ないという状況下にあるわけであります。従つて将来為替業務を専門銀行をして当らしめるということは、しよせんはその対抗として政府手持ちの外貨を外銀から吸収して、そうしてこれを専門銀行に預託させねばならないであろうが、そういうことがはたしていつごろ可能であるか、この法案が現実に上程されておりますから、やはり相前後してそういうようなことができるかできないかの見通しも、客観情勢として考慮しなければならぬでありましようし、それを引揚げる場合、現行法定為替レートの三百六十円に何らかの大きな影響を与えるような条件がそこから新しく引出されて来るような心配はないかどうか、この三つの点について先生の御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/13
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014・山口茂
○山口参考人 最初の御質問をもう一ぺん簡単に申していただきたいのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/14
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015・春日一幸
○春日委員 最初の質問は、現在貿易金融以外に日本が当面しておる現実の問題として外交的な金融というものがある。たとえばMSA援助で受ける金融もあろうし、さらには先般火力借款のときに四千二十万ドルのああいう世界銀行からの融資を受けたわけなんだが、特需の発注もあろうし、さらにはエカフエ、ポイント・フオア計画、コロンボ計画等、日本が現実には受けておりませんけれども将来受けるようなことがあるかもしれません。現実には今二十億ドルの輸入をして十億ドルかれこれの輸出しかしないので、この八億ドル程度のものはいずれにしても貿易外収入によつてまかなわなければならないわけでありますが、それをエクスチエンジして、その外貨を円に換算して日本国内で消費する場合は、やはりそれは産業資金へのつながりを持つものである。従つてごの為替業務と国内金融との密接な連繋なくしては、この貿易外の収入に対する資金操作が非常に困難ではないかと思われる節がある。このことをどういうふうにお考えになつておるか、お伺いしておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/15
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016・山口茂
○山口参考人 お答えいたします。第一の問題は、国際金融の面に動く金融機関と国内金融の面に動く金融機関とが一つでもつてつながつておる場合の方が、両方の調節作用がうまく行くのではないか、こういう御質問になりますですね。そうですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/16
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017・春日一幸
○春日委員 まあ大体そんなものです。そのものずばりというわけではないが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/17
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018・山口茂
○山口参考人 これはお話が、引用が豊富なものですから、ちよつとポイントをとらえにくかつたのですが、それは先ほど土屋さんのお話ですと、そういう意味の為替専門銀行に対する反対意見があるということを伺いましたが、多分その問題だろうと思うのです。私はむしろそうでなしに二つにわけなくてはならない、国内金融の面と国際金融の面とを一緒にやりましても、それは相当単純な為替の技術的な面ということばかりでなしに、為替の乗務を扱うところの銀行員は、いわゆゆ世界的な識見を持つてやる人物を養成することによつて初めてできるのじやないかと思う。国内金融の面の方がもつと視野は狭くてもいいわけです。そういう意味でも二つはわけた方がほんとうはいいのでありますが、これは先ほど申し上げたように、日本銀行が為替銀行としての面を前よりもよけい——前にも持つておつたのですが、持たざるを得ないだろう。左の手の方に市中銀行を掌握して、右の手の方で為替銀行を掌握して、それで一元的につなげるというのでなければ、私はむしろうまく行かないのじやないかと思つております。それは要するに銀行分業というふうなものは、本来一つの銀行で全部をまかなつてしまう、発券銀行も為替銀行も市中銀行も不動産銀行もみんな一つである、こういうようなことではとてもやり切れない、日本が負けて、アメリカが日本の銀行分業を完全にこわしてしまつたのですけれども、負けた国といえどもそれでとてもやつて行けるものではなく、いつかは復活しなければならない。そして国際金融の面と国内金融の面とを一つの銀行でやるということは、私は不可能じやないかと思つております。また先ほど土屋さんがおつしやつたように、戦前から市中銀行が外国為替業務をむろんやつておるわけでありますが、しかしその持つておる支店の数なんというものはごくわずかなものです。私はとてもあれだけでは外国為替業務を、国際金融を適当にやつて行くというわけには参らないと思います。戦前においても戦時中においても、正金銀行の世界における支店網の上に実は乗つかつて、そうしてその助けを借りながら市中銀行が為替業務をやつておつたのだと思つております。ですから、そういう意味においては、市中銀行から見まして為替銀行のあの支店網というふうなものは助け船であつて、決してそれは排撃すべきものじやないと私は思うのです。それがなかつたら、ほんとうの市中銀行だけの為替業務なんというものはろくなものができないのじやないか。ちようど戦時中軍票なり儲備券、あるいは北支の日系通貨でも、法幣を圧迫するというのでありますけれども、それは圧迫すれば自分も沈んでしまう。法幣の上に乗つかつている円系通貨であつたと同じように、私は為替専門銀行のりつぱな支店網をちやんと築いて、その上に乗つかつて市中銀行が為替銀行の業務を初めて営める。そういう意味においては、有力なる為替専門銀行というものをこしらえるということはどうしても必要じやないか。そうしてその国内金融と国際金融との間のつながりは日銀が間に入つて、両方を、右の手と左の手なのですから、適当に情勢に応じて臨んで行けばいいのじやないかと思うのであります。
それから二番目は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/18
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019・春日一幸
○春日委員 中央銀行が為替銀行的色彩を持つということが本来の理想だ、英蘭銀行がこれをやつて来たのだ、こういうお話なんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/19
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020・山口茂
○山口参考人 お答えいたします。英蘭銀行は十九世紀において為替銀行の役目をしておつたと申しましても、これは決して為替業務をしたわけではないのです。イギリスの金準備を保護して、国際金本位制というものの円滑なる運営が行われるために、常にイギリスのいわゆるバンク・レートを頻繁に動かしまして、そして為替を、自由為替ではありましたが、それに対してある種の為替管理を加えておつたわけです。そういう意味においては、十九世紀において英蘭銀行はそうであつた。ところが今度は二十世紀になつて参りますと、いわゆる国際主義的な金融制度としてのロンドン市場、それが今度はアメリカの場合にはそうはならなくて、経済的な関係としては——政治的関係は別ですよ。政治的関係においては、今日のようにMSAとかマーシヤル・プランとかいろいろなものが出て来て、それによつて世界を援助しているのですけれども、流通経済的な関係においては、アメリカは外国貿易にあまり依存しないでも独自的にやつて行ける。いわゆる自国直接の中心主義でもつてやれる国であるし、やるであろう。そうすると、それをめぐつておるところの他の国々、たとえば日本のごときは、今度はこつちが国際主義にならなければならない。中心が国内主義なんだから、まわりのやつは国際主義にならなければならない。十九世紀の場合は、イギリスが国際主義であつたから、まわりのやつは国内本位、自己本位ということが出たわけです。いわゆる凹凸相応ずるという場合に、中心にあるものは、十九世紀にはへこんでおつたのです。二十世紀においてはアメリカはでこです。ですからよそのやつはぼこにならざるを得ない。そういう意味において日本銀行は為替銀行としての性格——これは業務を営むのではないですよ。為替の動きに前よりももつと着目してやらなければならない立場にだんだんなつて来る。すなわち国内金融と国際金融を日本銀行が間に立つて、片方は為替銀行、片方は市中銀行、そういうふうなものを適当に指導して、そして両方の調和をはからなければならない。国際金融にあまりに支配されてしまつたために、国内に非常なアンエンプロイメントをこしらえても困りますし、国内本位でやつてみたらば、国際関係において橋が渡れないで、橋がはずれてしまつたというのでは困るのであります。そういう意味の役目を日本銀行はするようになるだろう。これは決して中央銀行としての理想とかなんとかいうのではありません。日本銀行がそうなることが望ましいというようなことはひとつも考えない。もつと独立して、外国貿易依存でなくて、国際経済に対する依存度が少くて、自国中心でもつてりつぱに食つて行けるようになりたいのは、これはどなたも御希望なさるところだと思うのであります。それはそうなんですが、そうなつた場合には、必ずしも日本銀行が為替銀行の役目をせよとは申しませんが、今日においては、あるいは将来においてそういう傾向にあるのではないか。そういう問題も為替専門銀行を問題にするときには考えるべき一つのポイントではなかろうか。これは非常に天井から目薬式の学者の議論でありますが、そういう議論もたまにはお考えになつた方がよくはないか、こういう意味であります。
それから第三は何でしたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/20
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021・春日一幸
○春日委員 外貨をいかにして引揚げるか、外国銀行から回収できるかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/21
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022・山口茂
○山口参考人 そういうことはむろん政治的な関係で、今はアメリカが自国本位の経済になりがちであろうと想像いたしましても、今日の情勢においては、世界中にいろいろな資金を供給しまして助けておるわけであります。それでイロアとか、ガリオアとかいうようなことで相当日本は金が集まりまして、そうしてそれを相当外国銀行に出したわけであります。それで現在、今日の問題としていずれがテープであるかということは、これは私は現在のままの方がいいかもしれません。外国銀行の資金を使う。ニユーヨークのマージナル・マネーが余つて来たから、東京の方へ移しておいて、それで何とかしようというようなことをやれば安く上るかもしれません。けれども、日本は日本としてのこれから将来の貿易立国というふうなものを確立しなければならない。そういう意味においては、ある意味において幼稚産業保護と申しますか、たといそれが現在は負担がどうであつても、やはりある程度そういう見通しのもとに日本の将来を確立するということを考えることが必要ではなかろうか。たた外国銀行に預託しておるところの政府の手持ち外貨を引揚げるということは、今日においてはなかなかむずかしいという問題はむろんあると思います。アメリカでいろいろかつてなことをやつたつて、それに対して日本はあまり文句が言えない状況にあるようであります。水爆の問題でもあまり申入れができないというような嘆かわしい状況だと私たちは考えておるのでありますが、それにはむろん私たちの知らない深い理由があると思う。そういう問題はちよつと私にはわからないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/22
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023・春日一幸
○春日委員 だからそういう外貨をなくしても専門銀行をやつて行けますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/23
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024・山口茂
○山口参考人 それはだんだん引揚げて、そうしてそちらの方に移して行けばいいと思います。ただそれは政治的になかなかむずかしい問題はあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/24
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025・大平正芳
○大平委員 簡単にひとつ山口教授にお伺いしたいのですが、先ほど先生は、日本の金融機関の在来の組織、仕組みがアメリカ占領軍によつてめちやめちやにされた。それに対して先生自身もたびたびプロテストされて来た、こういうお話でございましたが、その後政府も開発銀行をつくり、輸銀をつくり、さらに長期信用銀行もつくつて、だんだん形をそろえて、今度また専門銀行をつくろう、こういうことになつておるのですが、ただこの法案を見ますと、先ほど春日さんの御意見、平岡さんの御意見も同様でしたが、この法案は非常になまぬるくて、金融民主化というか、経済民主化というにおいが非常に濃くて、この一定の要件を備えれば外国為替専門銀行になれるようになつておる。ところが現実に政府はどういうつもりでおるのか、これからだんだん質疑をしなければならぬと思つておりますが、一体幾らつくるつもりかということを考えた場合に、先ほどのチヤンピオンをつくることは非常に必要ですが、しかしこの法案自体で行くと、幾らでもできそうだ。今現に外国為替業務をやつておる銀行もあやかつて専門銀行になろうというようなものも中には出て来るかもしれない。おそらくないかもしれませんけれども、しかし一応いろいろな銀行が専門銀行になり得る仕組みになつておるのだから、なるほどアメリカやイギリスのように中央銀行以外の銀行が非常に強くて、力が余つて外国貿易に進出して行つてどんどん商売ができるという事情であればよろしいのですけれども、国内の金融自体も十分めんどうを見ることができないのに、貿易金融の分野にハイカラな気持で出て行くということもよくないので、問題は日本の今の金融機関の組織が一体どのようになるのが一番いいのか。日本銀行自体の中にも問題があるでありましようが今の商業銀行、シテイバンクをどういう姿に持つて行くのが一番いいのか。従つて今現に金融機関で外国為替業務をやつておるものは、どういうフイールドに納めて置くのがいいのか、この専門銀行の関連において商業銀行、商業金融機関というものはどういう姿にあるのが今の段階においていいと考えられるか、その辺われわれ一応この法案を審議する上においてどういうピクチユアを描きながらやつたらいいのかという点についてのお考えを伺うことができますれば幸いであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/25
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026・山口茂
○山口参考人 たいへんむずかしい問題で、実は私も何ら名案の持合せもございませんが、支那事変が始まつたころから後の傾向といたしまして、日本の銀行分野は、中心はどこまでも営利金融機関に置かなければならないと私は思つております。そうしてそれに相互組織の金融機関、すなわち営利原則によつて吹き飛ばされてしまうような階級の金融機関、たとえばこれは前からむろんありましたが、無尽だとか、信用組合だとか、それが今度は相互銀行というような形になつたと思いますが、とにかくああいう相互組織の、ミユーチユアル・エ−ドのシステムによるところの金融機関というものが一つ。それから戦争半ばに現われ、あるいは終戦後になお強く現われたのは、一つは国家銀行であります。いわゆる営利機関でなしに、すなわち財政膨脹ということが著しくなりまして、そうして国家投資というものが、これは世界的にどこでも強くなつておりますが、日本の場合でも同じです。そういう関係を通して投資を行うところの金融機関として、たとえば長期信用銀行というようなもの。ですから、そういう意味では組織としては三本建になる。申し上げたように、依然として営利金融機関を今日においては中心とすべきである。その営利金融機関の中心は、普通銀行としての市中銀行、これは明治二十六年から行われた例の銀行条例、あるいはもつと早いところの私立銀行の免許に関する取扱い方というような問題から見まして、あれはいわゆるイギリス流の預金銀行、デポジツト・バンクといつたようなものをまねても、日本の場合には、これは少しお膳立に過ぎてうまく行かなくて、商業金融機関、いわゆる手形割引によるところの資金供給面のみならず、産業に対して相当金を出しておる。そういうようなことが必要でもあり、またそれでなければ銀行の採算もとれないことになる。そういう意味で、明治三十年までの銀行組織というようなものは、いろいろ破綻を生じてこわれて参りましたが、やはりどこかに中心を置く、すなわち商業金融並びに産業金融、いわゆる短期手形の割引を繰返し繰返し行うことによつて、おのずから新投資金融にも触れて行くという式のところで結局は収まるのではなかろうか、理想としてどう考えましても、それが実情に合わなければしかたがない、私はそんなふうなことで行くのじやないか。とにかくその問題はなかなかむずかしくて、私どもにはちよつと手に負えないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/26
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027・福田赳夫
○福田(赳)委員 土屋さんにお伺いしますが、たいへん有益なお話を伺つたのですが、まことにお話ごもつともで、私ども参考となることが非常に大きいと思います。要するにこういう機構をつくりましてこれを円滑に動かすためには、豊富なる外貨というものが必要だろうと思う。ところが最近の情勢から見ると、外貨がだんだん減つている。乏しい外貨を有効に使うということをまず考えなければいかぬと思うのです。そう考えますと、しばらくの間問題になつている池田構想なるもの、政府手持ち外貨を日銀に売却するという考え方、その考え方にちよつと触れて来るような問題が出て来るように思うので、あなたはこの問題について何かお考えになられたことがあるかどうか、ちよつと同つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/27
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028・土屋清
○土屋参考人 あれは大蔵大臣の財政演説でも、考慮しているというお話で、あるいは法案化されるのかと私も思つておりました。あの考え方自体には私は賛成です。これはできるだけ早い機会に実行した方がいいと思います。ただ今ここでやるかどうかということになりますと、これからデフレ経済が推進されて行くその影響がどの程度経済界に出て来るか、その見きわめがつかないと、困難ではないかと思つております。と申しますのは、あのオーバー・ローン解消方策をやつたむしろあとが問題で、あの案は日銀の公定歩合を引上げて、市中銀行が日銀に常時依存するというような態勢を板本的に是正するということが大きなねらいである。それでなければ、オーバー・ローンを解消してもまたずるずるオーバー・ローンになつてかえつて逆効果になる。そうしますと、あのオーバー・ローン解消対策というものを実行するときには、市中銀行が日銀に依存しなくてもやつて行けるというある程度の、一00%でないにしても、八〇%くらいの見通しが立つていないと無理だと思う。そうでなければ、かりにオーバー・ローン解消対策だけ実行しても、結局ずるずるとまた日銀貸出しがふえて同じようなことになる危険がある。しからばいつそういう事態になるかといいますと、このデフレ経済の推進によつて、企業の市中銀行への依存度が減つて来る。つまり自己資本の充実でもつてやつて行くという態勢がある程度でき上り、同時に市中銀行がまた日銀に依存しないでも預金の範囲内でやつて行ける、こういう見通しが立たなければいけない。その見通しが立つかどうかは、実はこれからのデフレ経済の推進によつてきまる問題である。従つて今回すぐにあの案を実行することは私はまだ早いと思う。しかしこのデフレ経済というものを効果的にやり遂げて、できるだけ早い機会をとらえてその仕上げの工作としてオーバー・ローン解消対策というものは実行して行かなければいけないんじやないか。そうでなければ、いつになつても日本の金融界というものがほんとうにすつきりした形にならない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/28
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029・福田赳夫
○福田(赳)委員 その趣旨は、時期尚早というようなお話なんですが、為替銀行をつくるということによつて一つ因子が加わつて来るんじやないか、こういうような考えがするんです。というのは、日銀に売却しまして、日銀の国内、国外を通ずる通貨統制の見地から、場合によると分散のおそれがあるかもしれない。乏しい外貨でありますから、ここに集中的に生れ出る為替銀行を育成するためには、しばらく政府が持つておつて、そうして為替銀行を仕上げて、しかる後にオーバー・ローン解消問題に進むというふうな角度の考え方が必要になるんじやないかというような感じがしたので、それでちよつとお伺いしたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/29
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030・土屋清
○土屋参考人 そういう意味なら私もまつたく同感です。従つてやはりこの法案によつて専門銀行制度を確立して、その後の情勢を見るということが、やはり手順としては妥当だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/30
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031・平岡忠次郎
○平岡委員 土屋先生にお伺いいたします。今の外貨預託が、先ほど春日君が申された通り、九対一くらいの劣勢で日本の銀行に預けられており、外銀が九の割合を占めている、こういうことなんですが、外国為替銀行の成立とともに、その点の比重が逆転しなければならないというふうに考えております。偏狭なナシヨナリズムの観点ではないのですが、一国の保有外貨をその国の銀行をして運営をさせるということが、これは為替専門銀行という問題を離れても、当然の措置だろうと思います。ただその影響が春日君の言われたように、何か今の三百六十円の円レートを維持するための保証預託的な、そういうふうな点がありやせぬかどうかの問題をお聞きしたいのです。私はこの問題は、相当実際の問題として大切であろうことを予想しまして、いろいろ調べてたのですが、外銀に預託していると言うていますが、預託をしておる外銀は大体二十行です。ところが日本と相当な取引をしながらも、この預託を受けていない銀行はたくさんあります。大体今日本との取引をしている外国の銀行は一千あります。ですから一千のうち二十行だけがこのフエーヴアを受けております。それからなおこの預託関係の現況を見ますと、要するに日本側の預託と先方から受ける信用とどつちが多いかによつて、これが得か損かがわかれるのですけれども、現況におきましては、日本から預託している金の方が大きいのです。信用を付与されておるものは少いです。ですからこういう純コマーシヤル・ベースのもとにおいては論外で、ちつとも影響はないと思います。むしろこうした外銀の反撃が起るだろうということの一つの宣伝といいましようか、これは外銀と従属的コルレスにある財閥銀行のむしろためにせんとする意図か、あるいは無定見による、私はこういうふうに考えております。ただ問題は、先ほど春日君の示唆されたように、三百六十円の維持のための保証積立てというふうな意味合いがあるかどうか、この点についてお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/31
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032・土屋清
○土屋参考人 先ほどの御質問を伺つておりましても、これは非常にごもつともな懸念で、重要な問題だと感じておつたのでありますが、私は現在の三百六十円のレートが割高で、外国では五百円、あるいは最近になりますと六百円というようなことを公然と英米の一流の新聞雑誌が言つていることも承知しておりますけれども、それなのに一ドル三百六十円が維持されている。その保証に日本の外貨の預託が利用されている、使われているというふうには考えません。やはりこの日本の為替レートに対する判断というのは、外貨の保有量が幾らあるか、その外貨バランスの問題であつて、それが現実に外国の銀行に預託されているかどうかということとは、本質的な関係はないと思つております。ただ最近もずつと綿花借款を二回三回とやつておりますが、あの綿花借款なんかが割に順調に成立して、四千万ドル、あるいは八千万ドルというふうに増額になつている背後には、これは外銀に日本の外貨が相当預託されておるというような配慮があつて、その成立が容易になつているという事情は多少あるように思います。しかしこれも、それじや外銀から引揚げたら綿花借款ができないかといいますと、実はそうじやないので、アメリカは綿花が余つて困つていて、むしろ売りたがつておるという関係にあるので、必ずしも預託を引揚げたからそのために綿花借款ができないというようなことはないのじやないかというふうに思います。それで、外銀がそれを引揚げられたらば非常に日本に対して、今までそれほどとも思いませんが、ある程度のフエーヴアを与えなくなつて、非常にまずい関係になりはしないか、こういうふうなお話、私もそういう説があるということは承知しておりますが、しかしこれはもともと日本の金を外国の銀行がいつまでも独占的に預かるという事態がおかしいので、向うだつてそれを日本が引揚げたからといつて、文句を言う筋合いのものじやない。またその結果日本に対して信用を付与しないというのであれば、これはいくらもお話の通り銀行はあるのでして、必ずしもそういう銀行だけを相手にして行かなければならない問題だとは思わない。問題は日本の為替専門銀行が強力になつて、そうして自分の力で外国で短期の商業資金を獲得できるような、そういう状態に早く持つて行くということの方が本筋じやないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/32
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033・千葉三郎
○千葉委員長 この際一言参考人各位に御礼を申し上げます。本日は御多忙中のところ、貴重な時間をさかれて当委員会にご出席をいただき、外国為替銀行法案に対して長時間にわたつて熱心に、かつ貴重なご意見をお述べいただきましたことは、当委員会の審査のためにたいへん参考になりましたことを、ここに厚く御礼を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/33
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034・福田繁芳
○福田(繁)委員 私はこの際委員長に伺いたいと思います。今国会開会以来、当委員会は重要法案が山積みいたしておつたのでありますが、各党派の御理解深いところの各委員諸君のご協力と、なおまた委員長が非常に人格高潔にして公平に御運営されるところによつて、当委員会が慎重審議いたして重要法案も大半片付いたということは、ひとえに委員長の人格のたまものとして、われわれ委員は厚く敬意を表するのであります。しかるところ、最近新聞紙を見ておりますと、たまたま委員長の千葉三郎君に関する記事をちらりほらりと見受けるわけであります。なかんずく本日の新聞の記事、これは千葉三郎君個人の問題といえども、当委員会の委員長として非常に重大問題として、われわれ非常に関心を持つておるわけです。そこででき得ることならば、世間の誤解と疑惑を一掃する意味において、委員長も数回にわたるところの新聞記事を関心を持つてごらんになつておると思うから、でき得るならばこの際事の真相を一応釈明と申しまするか、千葉三郎君個人の弁解と申しますか、当委員会のために漏らしてもらうことができれば、疑惑と誤解を一掃するに役立つ、かように考えるから、委員長に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/34
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035・千葉三郎
○千葉委員長 ただいま稲田君からの御注意でありますが、さきに日殖事件に当委員会委員長並びに委員の一部が関連すような記事が出ました。そのときにおきましては、当委員会といたしまして行動いたし、その後事件はだんだん真相をついて解決したようであります。すなわち当委員会委員長並びに委員会には関係がなかつたということが漸次明確となつたようであります。ところが二、三日前に飯野海運の俣野君の自白によると、金十万円なり贈つたという記事が読売新聞に出ておりました。さらに今朝の読売新聞によりますと、鉄道会館のもみ消し運動に金二十五万円贈られたという記事が出ておつたのであります。私はもう荒唐無稽だと思つて、飯野海運のときは等閑に付しておきましたが、本日の記事を見まして驚いて、さつそく警視総監の田中氏に対しまして、電話をもつてその真相を尋ねて、ほんそうにそうであるかどうか、またわれわれにはわからないということで、調査方を依頼いたしました。それからさらに読売新聞に対しましても調査を依頼し、そうしてその真偽を明白にしてもらいたい、それによつて取消をしていただきたいということを電話をもつて申し入れたのであります。かくのごとく私は疑いを受けるようなこと、すなわちもみ消しに対して依頼を受けた事実もないし、またいわんやきようの新聞にあつたような、丸山理事から云々というようなことは絶対にない。そのことは私を御信頼くださいまして、時日とともにはつきりするであろうということは、私はこの際はつきり申し上げておきたいと思います。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/35
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036・福田繁芳
○福田(繁)委員 ただいまの委員長の御弁明によりまして、われわれ委員も一応了とするのでありますが、委員長は何さま産業界なり官界において相当経歴の深い方でありまして、勢い公私とも交際範囲が広いし、大蔵委員会には、ご承知のように官界ならびに産業界に関連の深い法案が相当蓄積いたしておりますので、より一層御自重なさり、一層御慎重なることを切望して、一応委員長の釈明を了承いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/36
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037・千葉三郎
○千葉委員長 御忠告ありがとうございました。
本日はこの程度をもつて散会いたします。
午後零時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X03319540401/37
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