1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月七日(金曜日)
午前十時三十八分開議
出席委員
委員長代理 理事 内藤 友明君
理事 淺香 忠雄君 理事 黒金 泰美君
理事 坊 秀男君 理事 山本 勝市君
理事 久保田鶴松君 理事 井上 良二君
宇都宮徳馬君 大上 司君
大平 正芳君 小西 寅松君
苫米地英俊君 福田 赳夫君
藤枝 泉介君 福田 繁芳君
小川 豊明君 柴田 義男君
春日 一幸君 平岡忠次郎君
出席政府委員
大蔵事務官
(銀行局長) 河野 通一君
委員外の出席者
議 員 井手 以誠君
検 事
(刑事局総務課
長) 津田 實君
専 門 員 椎木 文也君
専 門 員 黒田 久太君
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五月七日
委員大上司君辞任につき、その補欠として岡崎
勝男君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
参考人招致の件
出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する
法律案(内閣提出第八一号)
証券取引法の一部を改正する法律案(内閣提出
第八八号)
外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する
法律案(阿部五郎君外百三十四名提出、衆法第
二〇号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/0
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001・内藤友明
○内藤委員長代理 これより会議を開きます。
まず参考人招致の件についてお諮りいたします。当委員会で審査中の接収貴金属等の処理に関する法律案及び接収解除ダイヤモンドの処理等に関する法律案の両案につきましては、学識経験者を参考人として当委員会に出席を求めて意見を聴取いたしたいと存知ますが、これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/1
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002・内藤友明
○内藤委員長代理 御異議なしと認めます。よつてさように決しました。
なお参考人の選定及び日時等につきましては委員長に御一任を願います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/2
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003・内藤友明
○内藤委員長代理 次に出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律案、証券取引法の一部を改正する法律案の両案を一括議題として質疑を続行いたします。質疑は通告順によりこれを許します。黒金君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/3
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004・黒金泰美
○黒金委員 出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律案についていささか伺いたいと思うのであります。
この法案に関しまして、銀行局長並びに司法御当局におかれましては、テイピカルな、たとえば今までの匿名組合によるべきか、あるいはまた株主相互金融機関というものは、との法律の範囲内におきましては今後ともに適法に仕事ができるというようにお考えになつていらつしやるのかどうか、この点をまず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/4
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005・河野通一
○河野政府委員 お答え申し上げます。この法案は、第一条にいたしましても第二条にいたしましても、これを通ずる思想は、出資そのものを禁止するというふうな趣旨ではないのでありまして、出資そのものを不特定多数の者から集めます場合において、その出資の本質と矛盾するようなことを約束する、そういうことによつて、あたか竜それが出資であるにもかかわらず、元本の返還を保証されておるといつた誤解を起させるような形で出資を募集することを禁じたいというのであります。従いまして、出資をそのままの形で不特定多数の者から集めることは、これはそれぞれ商法その他の法律の規定に従つてなされる限りにおいては、適法であると私は考えておるのであります。従いまして、典型的な形における株主相互金融の仕組みというものは、先般来申し上げております通り、この法律の第一条に反しない限りにおいては、今後といえどもその仕事を進めて行くということはさしつかえない、またできると私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/5
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006・津田實
○津田説明員 ただいま銀行局長も申しました通り、出資そのものについては何ら禁止規定はない。問題は出資の受入れの際の、俗に申しますれば誇大広告的なものを禁止するという趣旨にすぎませんのですから、本来出資を、こういう結果になるということを示しながら受入れるということについては、何らの規制はないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/6
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007・黒金泰美
○黒金委員 今の御答弁は、普通の商法なり何なりの適用によつて出資を受入れるという形におきまして、株主相互金融が今後とも行われる、あるいはまた匿名組合の形によりまして利殖が行われるということは、格別奨励もしないし、保護もしないけれども、貸金業法なり、あるいはこの法律の適用のもとにこれを認めて行く、かように承つたわけでありますが、そういたしますと、まずこの法律の条文の中でひとつ伺いたいと思います。この第一条の「何人も、不特定且つ多数の者に対し、」とあります不特定多数という場合におきましては、これに関連して、これは法務省の方に伺つた方がいいかと思いますが、いわゆる株式会社の株主は特定でございましようか、不特定でありましようか。その点についての御見解をまず承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/7
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008・津田實
○津田説明員 この第一条について申し上げますならば、この「不特定且つ多数の者に対し、」というのは、あとに出て参ります出資の受入れの相手方を一応さしております。従いまして抽象的に株式会社の株主が不特定かつ多数であるとかないとかいうことは申し上げにくいのであります。しかしながら一般論といたしましては、株式会社の株主と申しますものは、株式を譲り受けることによつて株主自由になり得るわけであります。これはやはりその他の経済社会事象と関連しての事柄でありますが、今日の株式と申しますものに、企業との結びつきが非常に弱いものでありますから、株主となつたというだけにおいてただちに特定するということは、一般論として申し上げかねる、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/8
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009・黒金泰美
○黒金委員 そういたしますれば、たとえば株主相互金融というものが、千人か千五百人かわかりませんが、ある程度の縁故者をたどつて、そこから出資を求めます場合には、特定者といつていいのであり額しようか。その点について承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/9
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010・津田實
○津田説明員 との不特定と申しますのは、定型的の形というものは考えない、個々のつながりというものをさすというふうに解釈いたしておるのであります。ですから定型的のつながりであつて、何でも特定の金円を出して株主となればなれるというようなつながりをさすのではなく、個々的なつながりをさす、かように考えておるのであります。それなら具体的にいかなる場合がそれに当るかということは、個々の事案について決する以外はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/10
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011・黒金泰美
○黒金委員 今の点が少しあいまいに思うのであります。このあとの罰則規定におきまして、何条でありましたか、いかなる名義をもつていたしましても、こういう脱法的なことを一切禁止しておるのであります。こういうような点から申しまして、第一条の「不特定且つ多数」というものが非常に問題になつて来ると思うのであります。従いまして普通の株式会社のごとくに広告を出しまして、一般的に公募するという場合に、かりに不特定であるにいたしましても、縁故者をまず百人なら百人集める。またその百人の紹介によつて資金を集めて行くという場合をかりに想定いたしますれば、これは不特定と言えましようか、特定と言えましようか。大体の御見解を承つて置きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/11
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012・津田實
○津田説明員 脱法禁止の規定につきましては、脱法行為というものは、あらかじめ本来の禁止について禁止の目的を達するための行為であるが、類型そのものは本来の禁止に当らない。しかし目的は本来の禁止をくぐることにあるものを取締るという趣旨でありまして、あらかじめ構成要件をきめておくことができない性質のものであります。そういう意味におきまして脱法行為を禁止しておるわけでありますが、脱法行為の規定は、本来の規定を拡張解釈するものでは全然なく、脱法行為禁止自体によつて構成要件が抽象的にきまつておる、こういうような考え方になるわけでございます。
今のある縁故者をたどつて——まず縁故者という意味が非常に問題になるので、個々的のつながりを必要とするという意味で、過去において一回会つたということも縁故者というような意味において使いますならば、必ずしも個々のつながりとは言い得ないと思います。そういうわけでございまして、縁故者からさらにたどつて集めるような場合というお考えになるかと思いますが、この縁故者がかりに特定の人であるというような場合でありまするならば、むろんここに言う不特定多数に該当いたしません。しかしながら縁故者から伝達された第三者が不特定者に及ぶということを認識しながら、こういう第一条にあげたようなことを明示いたしまして、その結果に基いて出資を受入れたならば、やはり第一条に該当するというふうに解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/12
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013・黒金泰美
○黒金委員 端的に伺いたいと思いますが、ここで「不特定且つ多数の者に対し、」とあるのを逆に申せば、特定であるか、あるいは少数かということになりましようが、そういうテイピカルなものとしてお考えになつておりますのはどういう場合をおさしになるのか、ひとつ具体的にお教え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/13
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014・津田實
○津田説明員 ここに申しまする多数というのは、通常多数と申しまするのは、二以上の複数と解釈するのが法律用語では普通でありますが、この場合はこの規定の趣旨から申しまして、さように二人というような人数は考えておりません。ある程度以上の複数ということを考えておりますが、これは何人以上であるかということは、必ずしもあらかじめ申し上げられません。そこでしからば特定とは何ぞや。特定とは先ほど来申し上げましたように、個々のつながりということで、だれでもということを考えていない。たとえば懇意な友人であるとか、知己であるとか、親族であるとかいうようなものをさすわけであります。ところがそれがだんだん範囲が広がりまして、同期生であるとかいうようなことになりますと、これは同期に学校を出たものというだけのつながりにすぎませんので、そういうものはここに言う特定に該当しないと考えております。しかし同期生でも個々のつながりを持つておる人は、この特定の中に入ると思います。同期生と申しましても、かりに数名のクラスというようなことになりますれば、当然それは特定して参る結果になると思います。そういう点で考えておるわけですが、いずれにいたしましても、個々の事業に該当して最終的には裁判所が判定するということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/14
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015・黒金泰美
○黒金委員 ただいまの御説明で法務御当局の御意見は大体わかつたのでありますが、このような特定の者で出資を集めて、それで貸金業が営めるというふうに銀行局長はお考えになるのでありますか。いやしくも貸金業を営む以上は、ある程度の金が集まらなければいけないのであります、親類同士、あるいはごく知り合つた仲間だけからが集まるものか。同期生だから特定人だと言えない、不特定人だ、こういうところからいつて、このテイピカルな株主相互金融が成り立つというのは一体どういうふうにしたら成り立つのでしようか、その御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/15
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016・河野通一
○河野政府委員 第一条は先ほども申し上げましたように、不特定かつ多数の者から出資を受入れる、これは証券取引法の改正案でも同じでありますが、不特定多数の者から出資を集めること自体は何ら禁止していない。ただ出資を集める場合に、誇大宣伝と申しますか、一種の詐欺に近いような、事実に反することをいろいろ言つたり、あるいは表示をして出資を集める、そういう仕方を禁止しようというのであります。従いまして本来の商法なりその他の規定に従つて、不特定多数の者から出資を集める、株を募集すること自体は、何らこの法は禁止していない。従つて株主相互金融なりあるいは匿名組合のやり方というものは、それ自体としては成立し得る、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/16
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017・黒金泰美
○黒金委員 今の点はわかりましたが、関連して第二段の質問をいたしたいと思います一それならばいろいろな株式会社が創立します場合に、この会社の将来の収益はどれぐらいある、従つて同割の配当をする見込みであるということを言つて株を募集しておるのでありますが、かりに一割なら一割の配当があるという見込みが立ちます以上は、その株価というものは少くとも額面程度では将来売れるであろうということが言外に当然におわされておるということは、考え得ることだと思います。もちろん将来の業績につきましていろいろな問題もありましようし、株価の変動もありましようが、しかしながら将来の収益、あるいはまた配当の見込みというものを公示しております場合には、これはおそらくしろうとの人ならば、この程度のもうけがある会社ならば当然いつでも元本ぐらいには売れるものであろうというように思つて投資される。これが将来半値になりゼロになると思つて投資される方はないと思う。またそういうことをにおわすような株の申込みの広告をする会社は一つもないと思います。こういうものが一体第一条の制限を受けるものでありましようか。(「それは非常識だ」と呼ぶ者あり)この第一条の中には何人もと書いてあつて、しかもこういう規定があります。第八条の第二号には、何らの名義をもつてするを問わず、またいかなる方法をもつてするを問わず、第一条の禁止を免れる行為をした者は罰せられることになつております。今いかにも非常識だというお話もございましたけれども、この法文の上から見まして、いかにもそれがひつかかるような規定になつて来ます。この法律の解釈上から申しますと、そういう場合はどうなりますか、その点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/17
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018・河野通一
○河野政府委員 お尋ねの点は、むしろ証券取引法の一部を改正する法律案の方の問題だと思います。と申しますのは、株式会社組織で株を募集いたします場合に、一定の期間を限つてその間に一定の配当をするといつたようなことを表示することを禁止するのが、証券取引法の規定であります。それにおそらく御関係の問題であろうと思うのでありますが、この点につきましては、取締りの難易の問題は、これはいろいろ問題があると思います。従つてこの点については、なお取締り当局からのお答えもお聞き願いたいと思うのでありますが、今お話のように、普通の正常なる株式会社において増資をいたします場合においては、おそらくその社長は株主総会において、増資後においてこの会社の収益は大体のこの程度が予想される、従つて配当も大体この程度が予想されるとこういうを申して増資の総会に臨むというのが、大体の状態だと思います。しかもこの限りにおいては何ら弊害はないと思います。ところがこれが同じようなことを言いながら、一方ではこれが非常な詐欺的な行為になつて弊害を持つ場合がある。その場合に、取締りの限界というものは非常にむずかしいのであります。証券取引法の一部を改正する法律案においては、その第百九十一条の四というのがございますが、それの第二項に、前項の規定、つまり今申し上げたように、月何分配当するという約束をするわけでありますが、その前項の規定によつて表示をするものが予想に基くものであることがはつきりしておるならば、それは第一項の禁止の規定を適用しないということにいたしておるのであります。ただ実際問題として取締りの立場から言いますと、この二項と一項の関係をどういうふうに仕訳をするかということが非常にむずかしいと思います。そこあたりの問題につきましては、むしろ取締り当局の方のお立場から説明を聞かれる方がいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/18
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019・津田實
○津田説明員 単なる将来の予想として述べる、しかも経済常識として当然認められる範囲の事柄については、何らこの法律の規定の範囲内に入らないということでありまして、その点は、ただいま銀行局長が申し上げました証券取引法の一部を改正する法律案の中にも盛り込まれておる次第でございます。もちろんその限界は非常にむずかしいということは当然わかる次第でありますが、今日といえども、一般の取締りの権限を運用いたします場合に、あらゆる点にやはり正常な常識が働かなければとうていできないのでありまして、その常識と申しますか、良識を中心にして判断をする以外に最後は手はないと言わざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/19
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020・黒金泰美
○黒金委員 ただいまの御説明では、結局はその良識の判断に逃げておられるのであります。個々具体的な場合の適用によつてそれは判断する以外にないかと思いますが、かなりこの法律の規定はきびしい、あるいはこの法律の適用次第によつてはかなりひどい結果になるのじやないか、かように思われるのでありますが、もう一言ここで承つておきたいのは、この法律の第一条の「何人も」、という「何人も、」ということは、これはあえて金融関係に限らずに、あらゆる法人に関係があるのでありますか、この点を承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/20
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021・津田實
○津田説明員 その点はただいま御指摘の通り「何人も、」というのはいかなる人も含んでおります。個人及び法人のいずれも含んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/21
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022・黒金泰美
○黒金委員 次に第二条の点で承りたいと思いますが、この業として預かり金をする、同時に第二項で、預かり金というものはいろいろな金銭の受入れを言うのだ、こう言つておりますが、この場合のこの業は、貸金業に限つておるものでないというように考えられるものでありましようか、と申しますことは、たとえば日本電建会社のごとき、あるいはまたいろいろ観光旅行団のようなものが、これは積み金をする、積み金をいたしまして、そうしてその上で一年後に旅行をさせるというような場合におきましてもこの第一条の適用を受けるものでありましようか、この点を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/22
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023・河野通一
○河野政府委員 これは第二条の後段に書いてございますように、「何人も業として預り金をしてはならない。」「何人も」ということは単に貸金業者に限りません。何人もしてはならない、こういう趣旨であります。ただここに一つの制限がついておりますのは、他の法律によつて特別にそういう預り金ができるようになつておるものは除く、こういう趣旨でありまして、単に貸金業者だけを対象としておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/23
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024・黒金泰美
○黒金委員 そうすると、今伺いました観光旅行団のごときも、これは当然禁止になるわけでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/24
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025・河野通一
○河野政府委員 事柄が非常に具体的な問題になりますが、これらは先ほど来お話に出ておりますように、個々についてやはり判断をして参らなければならぬ。たとえばその条件としては、その二項にありますように、不特定かつ多数ということの観念に入るか入らぬか、あるいはその資金の受入れ方が二項に書いてありますようないわゆる預かり金に該当するものであるかないかということを個々に判断してみなければ何とも言えませんので、今観光旅行会のやつておりますものが即この規定に違反しておるということは申しかねると思います。個々の事例によつて違反するものもあろうし、また違反しないものもあろう、こう考えざるを得ないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/25
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026・黒金泰美
○黒金委員 ただいまのお話でありますが、先ほど来不特定の解釈について御説明があり、またこの特別の法律があるようにも思われませんので、今おつしやることは個々の事例について考えるまでもないのじやないか、かように考えます。こういたしますと、どうもこの法律というものもかなり当初の目的より広汎に及ぶおそれが多分にあるのじやないか、こういう点まで十分に御調査の上で、なおかつそういうものまで禁止しなければならない、こういう確信を持つておつくりになつたかどうか、はなはだ疑わしいような気がするのであります。匿名組合なりあるいは株主相互金融の行き過ぎた広告を押えたいというような趣旨はよくわかるのでございますが、そのとばつちりを食つている点がこの法律の中には各所に出て来る。少くとも網を張ることが急であつて、はなはだずさんじやないかという点の一つの事例として私は今申し上げておるのであります。こういう点につきまして、確信を持つて十分な御検討の上でこの第二条ができているものか、もう一ぺん承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/26
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027・河野通一
○河野政府委員 お答えを申し上げます。預かり金禁止の規定の問題は、これは御承知のように長い間の問題で、私どももこの問題は二年以上実は検討いたしました。解釈論としても立法論としてもあらゆる意味から検討いたしたのであります。決して私どもとしてはずさんな、軽率な立場でこういう立案をいたしたとは考えておりません。できるだけ慎重に扱つたと思い示す。ただ問題は、今もお話がありましたように、社会の事象というものはいろいろな形のものがたくさんある。従つてそれらすべてをはつきり割切つて、これはこうなります、これはこうなりますということを言えるほど、すべての事象というものははつきり割切れるようなものばかりではないわけであります。たとえば旅行会を一つとつてみましても、その旅行会というものの性質にもいろいろよりましようし、場合によつてはごくまわりの特定の人だけで集まつてひとつやろうといつたような旅行会もありましよう。そういつたふうなことで、私はこの問題についてはやはり結局個々の事例に当つてみて、その法条に当るかどうかをきめて行くよりしかたがない、最後はどうしてもそうなる、そういうふうに考えております。ただ問題は、この規定が広過ぎるという御意見も実はあるかと思うのでありますが、そのうちの一番大きな問題は、たとえば貸金業者等に限つて預かり金を禁止すればいいではないかといつたような議論も確かにあると思います。これは部内でも、いろいろ検討の途中におきましてもそういう議論がは実あつたのでありますが、やはり私どもは、何も貸金業者に限つて預かり金をしてはいけないというのは理論的にもおかしいし、実際的にもおかしいのであります。従いまして、何人といえども業として預かり金をしてはならぬというふうな規定にいたしたのであります。そのほかこの条文自体については、解釈自体の問題は、これは理論的には私ははつきり割切れると思うのでありますけれども、実際の事例に当つてこれを具体的に適用する場合におきましては、やはり個々の事態というものをよく見て個々に適用して行かなければならぬ、こう考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/27
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028・黒金泰美
○黒金委員 今の点につきましては非常にあいまいなお答えであり、私は納得できないのでありますが、さてその次に最後に一点伺いたいと思いますが、この附則の第一項に「この法律の施行期日は、公布の日から六月をこえない範囲内において政令で定める。」この必要なり、あるいはまた六箇月という目途をおつけになつた理由について承りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/28
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029・河野通一
○河野政府委員 これは、この法律が通過いたしまして成立いたしましてから施行されます間に、やはりある一定の経過期間を置かなければならぬ事柄が相当ある。具体的に申し上げますと、たとえばこの法律の中の第五条あたりでありますが、貸金の金利について最高限度を押える、ところが現在すでにある一定の契約に基いて貸金をやつておる者がある、しかもこの法律の規定を越えて金利を現にとつておる者がある。それらを適当な方法で切りかえさせるというためには、やはりある程度の猶予期間がいるという問題もあるかと思います。それから第一条の規定について申し上げましても、宣伝ポスター、そういつたものがこの法律が施行される当時にすでに配られておる。ところがそれを回収したり、いろいろなことをしなければならぬ、そうして新しいものを刷りかえなければならぬといつたようなこともあり得るかと思う。そういつたことを考えて、そのためにここにどの程度の日数の猶予る置けばいいかということは、これから実は実情に即して考えて行かなければならぬと思いますけれども、ある程度の猶予期間を置いて、こういう法律に反してはいけませんぞということを出した後において、その法律に合うようにいろいろな施設なりポスターなり宣伝文書等を直して行かなければならぬ。それから場合によつては総会を開いて、そういう経営方針をかえて行かなければならぬという問題も起つて来るだろう。それらのための猶予期間を置くために、六箇月間くらい置けばいいだろう。しかもそれはすべて六箇月置くという意味ではありませんで、場合によつては三箇月くらいで施行できるものもありましよう、あるいは即日施行してもいいものもありましよう。そういつた点を十分考えて行きたいという意味で、猶予期間を置きたいということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/29
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030・黒金泰美
○黒金委員 ただいまの御説明で、大体そういうことであろうと思いますが、特に第一条の規定、それからまた証券取引法もこの点に関連いたしますが、こういうような点について、今御懸念になつております経過期間というものがはたして半年で済みますものかどうか。ここでもつてわれわれが一番望ましい形は、今いろいろと浮動いたしておりますいわゆる不特定な株主、これを確定した株主にして参りたい。そうしてでき得る限り特定多数の者から株式による出資によつて金が入る、そういう方法で今後安定した形で貸金業を営まして行くということになりますれば、よほどよいのじやないか。もしこういうことに切りかえて行くといたしますれば、今おつしやるような印刷物の刷りかえというような期間のみならず、そういつた出資者を求めて行き、そうして正常な安定した形に持つて行くというためには、半年ではいささか期間が足りないのじやないかというように私どもは思うのでありますが、このテイピカルな株主相互なり、あるいは匿名組合なりというものは、零細な庶民金融の機構が今不十分な場合には、まあ御当局としては不満足であろうけれども、これを育成はしないまでも、あまりいじめずに十分活用して行こう、こういうことになりますなら、でき得る限り時間もかして、そうして望ましい形に移行させたい、かように思うのであります。この点につきまして半年で十分だというようにお考えになつておりますかどうか、はなはだ恐縮でありますが、もう一ぺんお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/30
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031・河野通一
○河野政府委員 半年という点につきましては、私どもは株主総会を開いたり、いろいろな処置をいたしますために、半年もあればまずできるあろうということが一つと、それから支障のない限りなるべくすみやかにこの法律が施行されることが望ましいということが一つ、この二つの点から考えまして、万全を期すればあるいは一年くらい置いた方がいいという議論もあるかと思いますが、支障のない限りなるべく最短期間内に施行したいという配慮のもとにおいて考えますならば、まず半年も置けばさしつかえないのじやないか、かように考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/31
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032・内藤友明
○内藤委員長代理 春日一幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/32
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033・春日一幸
○春日委員 それではまず第一問でありますが、この法律の第一条の中には、何々の旨の誤解を生じさせるような仕方を用いて云々、こういう誤解という言葉がこの法律の条文に使つてあるわけであります。これは私は非常に危険ではないかと思うのであります。由来人間は、きわめて誤解しやすいのでありまして、一つの物事を提唱いたします。そういたしますと、その話を正確に理解する人と、それから話してもこんでわからない人と、それから誤解する人と、三つあるわけであります。そこで私の心配になつて来るのは、たとえば百人なら百人の人に同じことを話して、その中で六十人くらいが理解し、三十人くらいがてんでわからない、あとの十人くらいが誤解するという場合があると思います。そこでこの誤解というのは、たつた一人でも誤解するようなことを言つたら承知できないのか、これはやはり懲役三年以下に処せられるのか。あるいはまた相手の中には六十九才くらいのおばあさんもおるわけであります。あるいは中には大学を卒業した人もあるだろうし、それから無学文盲の人もあるだろう。あるいは北海道と九州との間ではその言葉が全然わからない。ずうずう弁でやりますためにてんでわからない人がある。しかし同じ日本国のこの法律のもとにおいて一定のことについて相手が誤解した、そうすると本人は結局三年以下の懲役になる、こういうばかげた法律というものは日本にはあり得ないし、どこの世界だつてこんなばかげた法律はあつてはならないと思います。
そこで私の伺わなければならないのは、これは法務当局からでもけつこうでありますが、誤解ということの法律上の定義、これは大審院の判例か何かで今まであるとすれば、誤解というものは一体どういうものであるか。そして誤解を生ずることの責任は、誤解させた人がどういう客観的、主観的条件下において相手に誤解をさせた場合はその誤解の責任を負うとかなんとかいうようなものがあるのかないのか。この機会にあなたに伺つておきたいと思いますのは、現実の問題として、これは全国民を対象にする法律なんでありますから、北海道と九州ではひどく言葉に懸隔があり、誤解する場合もあるだろうし、一つのことを話しても、音はわかるが言語のあやで誤解する場合もあるだろうと思います。ところが一旦誤解してしまつた以上は、誤解をした人は無罪だが、誤解させた相手は懲役に行かなければならない、こんなむちやくちやなことは私はないと思う。しいてこういう法律をつくるならば、百人を相手にして話をして、その中の何パーセント以上が誤解したとか、あるいは大学卒業程度の教育を受けた者が誤解するとか、少くとも何かそこに線を引かなければいけないだろうと思います。八十九歳のおばあさんにわれわれが現代語で話をしてとんでもない誤解をする場合もあるだろうと思います。そんなときにいきなり懲役にやつてしまうということははなはだ迷惑なことだと思うのであります。一体誤解ということは法律上どういう場合か、誤解させた場合、相手が責任を負わなければならない場合の法律上の大体のケースというものがあるであろうと思いますが、この法律にこういう条文をうたつておられる当局は、どういうことを心の中に考えてこういう表現をされたのであるか、この点を明確にお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/33
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034・津田實
○津田説明員 その点でございますが、この「誤解を生じさせるような仕方」といいますのは、この場合「何人も、」に当る人、つまりかような行為をする人は、出資の受入れをしようとする相手方、つまり相手方の出資層を一応頭の中に描いておるわけであります。主としてその出資層を対象として、それらの出資層に当る人がおおむねさような解釈をする、本来言つておるものはそういう趣旨を言つておるのじやないが、それを違つた趣旨に誤解をする、すなわち後日出資の払いもどしとして出資金の金額、あるいはそれを越んる金額の支払いがあるというふうにあやまつて解釈してしまうというようなやり方を用いてやることを禁止するわけであります。これは具体的な例がございます。たとえばどこにもその出資の金額あるいはそれを越える金額を返すとは書いてない。しかしながらパンフレツトのたとえば出資証券の模型とか、カタログのようなものを出すわけです。ところがその裏面に出資金額を右五百円なり、五千円なりまさに受取り候、甲野太郎というふうに将来出すべき受取書のサンプルを書いて、そういう宣伝文書を出す。そうしますと、やはり相手の出資層は、ああ五千円返つて来るのだなというふうに思うわけです。そういうふうなやり方は、それは故意なくしてやつておるとは言えない。あるいはそれはプラス六千円というふうな書き方もございましよう。そういうふうな書き方を用いるやり方が現にあるわけであります。そういうようなものであるとか、あるいはこれは口頭で言つておる例でありますが、まさかのときには何々銀行が援助してくれることになつておりますというようなことを言つておる。援助してくれるということは、何も全額払うということを言つておるわけではないのでありますが、何々銀行というような信用を背景にすれば、やはり全額払いもとしてくれるように思う。こういうようなことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/34
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035・春日一幸
○春日委員 この問題はきわめて重大な問題であり、私はもう少上厳粛に考えてもらわなければならぬと思う。ところが今二つの事例を話されたけれども、世の中には誤解というようなことは、これは広大無辺なものなんです。それは二つや三百や六百の事例ではない。法律というものはそのものずばりで、はつきりとその事柄を指摘してこれを規定するか、あるいは制限列挙して、数多い場合はこの場合場合というふうにはつきり書かなければならない。そういう誤解を生ずるような第一条違反の事柄が起きれば、おそらく警察の問題になるであろうか、そうすればまず巡査が調べて行く、それから検事局へ送られる。検事が調べれば裁判という形になるのだが、少くともこの事業を行おうとする発起人は、おそらくまずもつて株の募集をする。そのときには事業計画を示すでありましよう。そしてその事業の有利性を高調するでありましよう。そうして出資したところの株券が確実であるということをまずうたうということは、これは当然普通の事柄であります。これは別にこの本条に抵触する事柄ではないと思う。ところがそれは人によつて受取り方がいろいろ違う。一つのボーダー・ラインといいましようか、すれすれの線まで法律で禁止すれば、そのすれすれの線まで人にはその努力を試みて行くことは、この法律といわずどの法律でも同じことなんです。たとえば今あなたのおつしやるように、この会社は確実であろう——確実であろうということは、必ず出資しても損はないであろう、売ろうと思えばどこかへ売れるというような認定を持つわけだが、そういうような仕方を講ずる場合において、相手によつて印象と判断が違うわけです。たとえば町の相当教養のある人のところへ行つて、この事業を始めます、これは間違いなく有利でありまして、相当の配当もありましようどいうようなことを言つて行つたとする。その人はいろいろと判断をして、今その人がかりにりつぱな洋服を着て、銀側の時計でも持つて、りつぱなパツカードででも乗りつけて行つても、これはインチキだ、あまりにりつぱな風をしていやがる、しかもその会社はどこそこにあつて、その発起人たちはどういう経歴の持主だ、そんなことを言つたつてだめだと言つて、その人は見破つて誤解をしない。いろいろなことを言つたところで、相手は正確に判断をして相手に誤解を与えないのだから、結局その人は相手に対しては無罪です。ところが、たとえばいなかのとても無知蒙昧なところへ行つて、きらびやかな服装をした堂々たるタイプの男が、しかつめらしい口上を述べて行く、態度もりつばだし、風采もりつぱだし、どうもあの人の言葉が何となくりつぱだから、これは間違いないであろう、こういうふうに思い込んでしまう。そこで出資をして、後日これがつぶれた場合がありましよう。そうすると、この人はまず被害を訴えざるを得ないでありましよう。絶対に間違いないということを言つておるものだから、それで私はその株を買つたのだ、ところがこれは私の大きな誤解だつたのだ、誤解を与えるようなことを言つて、そうして株を買わしておいて、その会社はつぶれた、出資は無効になつた、おれは重大な被害を受けた、これはこの法律の第一条に抵触するのだから、三年の懲役に入れてくれということを言つて来る。そうすると裁判になる。同じことを言うても、町ではだれも誤解しないでだめだというのではねつけてしまつた。いなかへ行くとみんな誤解して、これはよろしかろうというのでその株を買つた。こういうときには実際問題として判決は一体どうなるかということです。それだから実際国民の多数を相手に、しかもそれは九十くらいの無知蒙昧な人から、それから大学を卒業した教養のある人まで、だれがこの法律を見ても、これはやつてはいけないんだ、この程度まではやつてもいいんだということを規制しなければだめじやありませんか。現実の問題として、人を殺すべからず、物を盗むべからず、人を強姦すべからず、きちつとそういうことをやつたらいかぬことはだれが見てもわかる。法律はそれだけの体をなしたものでなければならない。読めばだれでもわかるようなものでなければならぬ。私がこれを読んだつて、誤解を与えるようねといつても、相手が誤解したものをこちらが責任を負うことは困つたことだ、こういうことになるじやありませんか。現在資本主義と共産主義とがある。大学を卒業した諸君でも、今後の国家の経営は資本主義でなければならないと考えておる者があるし、同時に共産主義的経済でなければとても国の繁栄はもたらされないと考えておる人がある。片方がアメリカで繁栄し、片方がロシヤで繁栄しておる。この誤解と正解ということはなかなかむづかしい。勝てば官軍負ければ賊軍です。たとえば中国なんかでもそうでしよう。毛沢東政権と蒋介石政権が思想的に争つた。それはいろいろなプロパガンダが行われ、いろいろな提唱が行われたが、蒋介石政権のもとにおいては、毛沢東の提唱に賛同しておつた者は誤解しておる、それで法律によつて処分されたものだ。ところが今や国民党のあの思想を持つておる人は、毛沢東の政権下において投獄されておる。こういうことで、誤解ということはなかなかむづかしい。さらにまた最近の問題になつて来るんだが、特に吉田総理と木村保安庁長官どの誤解に関する物語りをここで申し述べて、あわせて本法律案の条文に対する検討を願うわけである。かつて吉田さんは、警察予備隊が保安隊になるときにこういうことを言つた。いくら七万五千の予備隊が十一万五千の保安隊になつたところで、これは陸海空の均整のとれた三軍を持たなければ戦力ではない、こういうことを言つた。ところが今度は保安隊が自衛隊になり、今やここに陸海空の三軍を持つから戦力じやないか、昔陸海空の三軍を持つたら戦力だと言つたんだが、今度自衛隊法によつて三軍を持つから戦力じやないか、こういうことを質問すると、今度吉田さんは、陸海空の三軍を持つてもそれは戦力じやない、原子爆弾を持たなければ戦力じやない、こういうことを言つておられる。すなわち近代戦においては原子爆弾が相当の威力を持つておるので、原子爆弾を持たない陸海空の三軍は戦力じやないと言われた。そうして今度は、日米安全保障条約その他いろいろな協定によつて、日本の一角に原子爆弾がたくわえられるようなけはいがある。そうすると、いよいよ日本はこの安保条約によつて原子爆弾を保有する形になるが、さすればこれはもはや戦力を持つ形になるじやないかという質問に対して、今度吉田総理大臣は、たとい原子爆弾を国内に保有したとしても、これを自分の力によつて外地へ輸送し、投下するところの機動力を持たなければ、これは戦力ではない、こういうふうに言つて来ておる。かつて三軍を持たなければ戦力ではないと言つた。その次には、三軍を持つても原子爆弾を持たなければ戦力ではないと言つた。原子爆弾を持つても、これを輸送投下する機動力を持たなければ戦力ではないと言つた。こういうふうですよ。すなわち、その場における客観的情勢と、その男の判断の主観的な立場において誤解と正解というものはどうともなつて行く。いいですか、レーニンは、真理というものは可動的で条件付であると言つておる。すなわち、きよう正解であつたことはあしたは誤解になるということは、これはレーニンも喝被しておる。ぼくは相当な学者だからいろいろのことを知つているんだが、(笑声)そういうようなぐあいで、こういう乱暴な法律をつくると、相手が誤解してということだけで、しかもこの法律では何パーセント以上誤解するとか、あるいはどの程度以上の教育のある者が誤解するとかいうことは何も書いていない。だから博士が正解することでも、無知蒙昧な山の中の人は誤解する場合もあるだろう。大体解釈できない場合もある。だからこういう法律は乱暴な法律というものなんだ。しかもこれに触れれば、何人といえども私が誤解したんだといつて被害を訴えて行けば、結局本人は、誤解さすつもりではないのです、ほかの人は誤解なさつておりません、あなただけですと言つたところで、ここでは一人でも誤解したら、一人や二人、あるいは一〇%や一五%の誤解する者とかいうことは書いていない。たつた一人でも誤解した以上は承知しないぞという法律なんだ。だからこういう法律はむちやくちやな法律といわなければならぬ。たとえば東条の政策なんかは、国民の大多数が当時は誤解をして、東条の政策を支持しているならば、われわれはとにもかくにもABCDラインのわくを断ち切つて生きて行ける道があるであろうなどと考えてあの戦争に突入したんだが、負ければ誤解であつたということになつて来ている。こういうぐあいで、可動的で条件付なのだ。この正解と誤解ということは、特に人間は誤解しやすい、まつたく誤解しやすいのです。だから誤解というようなことは頭の判断と感情の流れによつて、これは生理学的なものなんだ。だから医学と法律がこんがらがるようなことはいけません。こういう法律で無実の者をつくることなく、公正にこの法律の目的とすることがあやまつことなく運営できるかどうか、あなた確信がありますか。私の今申し上げたいろいろな事例等をよくお考え願つて、この法律にみな一つ一つあてはめてみて御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/35
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036・津田實
○津田説明員 ただいまの誤解の点でございますが、「後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金額の支払がある旨の誤解」、誤解が非常に具体的でございます。その意味におきまして、漠然たる考え方というものは当然入らないことはもちろんでございます。ただいま御指摘のように、かような法律の規定というものは抽象的に失する、何パーセント誤解すればというようなことを書けばよろしいという御意見もございますが、元来法律と申すものは抽象的なものでございまして、具体的に適用する場合におきましても、適用の間に、すなわち最終は裁判所の決するところに従わなければならぬ、こういうことに相なるわけであります。もとよりこの法律をつくりますゆえんは、本来いえば既存の法律で十分目的を達し得るはずのものなのでありますが、現在の社会事情におきましては、既存の合法の線と違法の線とすれすれの上をみな走つて行くというようなことになるわけです。そういたしますと、そのうちに弊害を生ずるものと弊害を生じないものとわけなければならぬ。結局一線をさらに二つにわけるという法律をつくるということがこの法律だと思うのであります。従いまして、さような意味におきまして、どちらか少し入り込めば合法の線に入る、あるいは非合法の線に入つてしまうというところを二つにわけようという目的がこの法律なんでありまして、既存の法律概念において明確にしろというようなことはなかなかこの法律においては実現しがたいという困難性があるわけであります。でありまするから、できるだけこの条文を具体化いたしたいと考えております。さらにその上につきましては、先ほども申し上げましたように、適用する者の良識、最後は裁判所の判断によつて決定する、かようなところをよりどころとする以外にないでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/36
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037・福田繁芳
○福田(繁)委員 関連質問。この法案の罰則に関しての法務当局のただいまの御答弁でありまするが、その御答弁の中に、最後は裁判所の判断にまつという言葉を至つて軽率に言われているが、私は、そういう罰則に関する問題については、もう少し敬虔な態度であなたに質問をし、また要望しておきたいと思うのであります。なるほどあなたがおつしやる通り、最後は裁判所の決定をまてばよいが、裁判所の決定をまつということは、その前に少くとも検察庁が起訴しているはずである。検察庁が起訴するということは、少くともその前に検察官なりあるいは警察官が相当本人を取調べておるわけです。最後は裁判所の判定というけれども、その以前にこうむるところの大衆の犠牲はたいへんである。少くとも法律をつくつて罰則をつけるということは、決して罪人をつくるための罰則であつてはならない。罪人をつくるために罰則をもたらすということならば、ほんとうの法の運営なり政治の運用よろしきを得ないという結果になると考える。そこで、この罰則に関しては最後に裁判所の判定をまてばよいのだというお言葉、その御趣旨をもう少し冷静にお考えなさつて、御自分も御反省されて、そうしてこの問題に対する御答弁をしてもらわないと、思いもよらないところで——前の当委員会では、法務大臣を招致して、疑獄事件に対する捜査費用に関連して相当質問をいたしたわけで、そういうことをあなたも御承知であろうと思うのでありますから、ひとりこの法案に限らず、残余の法案に対しても、もし罰則問題があつたときには勢いあなたの所管でありまするから質問いたすのでありますが、そういうお言葉は慎んでもらいたい。裁判所の判定をまつまでの犠牲というものがある。もちろん法務省なりあるいは検察庁は、法の力によつて、法を使つてやつておられるのであろうけれども、一歩誤れば法の濫用になつて、一般国民は非常な犠牲をこうむるわけなんだから、そういうことを予期してこういう法案をつくり、あるいはこういう法案の説明に当るということは、今日の事態として非常に当を欠いているのではなかいしらと私は思うのでありまするが、一応あなたの御見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/37
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038・津田實
○津田説明員 先ほど来、裁判所が最後を決すると申しましたのは、あらためて申し上げるまでもなく、法の最終の解釈は裁判所が決するという趣旨を申し上げたのであります。もとより検察権もしくは警察権の発動につきましては慎重を要し、かつ良識をもつて、個人の人権を侵害しない方法をもつて発動すべきて廃り、しかも社会の秩序あるいは経済秩序を維持するために発動すべきであるということは重々承知しておりますし、その前提のもとに申し上げておると私は確信しておるのであります。ただ問題は、先般来、あるいは一般的に、あるいは国会におきます御論議によりまして、何ゆえに保全経済会等のものを取締られないのか、何ゆえに株主相互金融の弊害を生ずるものを取締られないのかというような御意見がしばしば出ましたが、一般的に申しましても、社会的にもそういう議論はたくさん出ております。しかしながら私ども法律のその方面の運用をしておりますものといたしましては、従前の、つまり現在存しておる法律におきましては、少くとも保全経済会についてやりましたように詐欺罪でやるとかいうような場合以外には方法はないのであります。そういう意味におきまして、今度の法律はかような弊害を是正するということを目的にいたしておるのでありまして、昨日の委員会でも申し上げましたが、やむを得ない処置である。かような法律は、なきにまさるということを言つておりますが、やむを得ない処置である。そういう意味におきまして、この法律の御審議を願い御可決を願う上におきましては、これを運用するものの現在の状態というものをよく御理解を願わなければとうていできないことではないかと思うのであります。私ども検察権の運用なり警察権の運用につきましては、慎重を期し過ぎたというむしろ御非難があつたのじやないか、つまり保全経済会等につきましては、何ゆえああいうようなことをやつておるのかという御疑問があつたのでありますが、要するにさようなものに手をつけるということは、非常に人権——ことに相手方になつている人、つまり多数の投資者に影響を与える点もたくさんありますので、慎重に慎重を重ねた結果、あのような摘発ということになつた次第でございます。将来とも警察権あるいは検察権の信用の方面におきまして慎重を欠くということはないと私は信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/38
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039・春日一幸
○春日委員 ただいまあなたの御答弁を伺つておりましても、ただいま福田繁芳さんが尋ねられました事柄は、問題はそこにもあります。これは言われる通り全部裁判所へ関係者を送り込んでしまつてそうして白、黒ということを区別すればわかるということなんだが、問題はそこだけではない。送り込まれた裁判所が、これを白にしようか、黒にしようか、この法律ではわからない。なぜかなれば「誤解を生じさせるような仕方を用いて、」とここには書いてあるけれども、それはだれに、どの程度ということが書いてない。だから一人でも誤解する——誤解するということは、これは文字通り解釈してもらわなければならぬが、誤解するということは、正解しないことです。正当に理解しないことは誤解することなんです。だから誤解するということは、やはり誤解する方が悪いのだ。重複いたしますけれども、たとえば百人の中で、ほんとうに物事の事理というものを正解する人と、誤解する人と、理解しない人と必ずある。どんなことでも、われわれはあらゆる会議においてあらゆる提唱を行つておるが、その通り理解をしてくださる人と、理解の上に立つて反対をする人もあり、賛成してくれる人もあるが、物事を正当に理解する人と、それから言うた通りに理解しないで誤解する人がある。どんな会議でも、どんな提唱を行つても誤解する人がある。それから全然わからない人がむろんある。いわんや、この法律は日本国民八千四百万を対象とするのであるから、何を言うてもわからぬ人がある。何を言うてもわからぬ人は誤解しやすい人である。そういう人々を対象とするのであるから、こんな法律ではとてもあぶない。やはりこういう株式の募集をするような場合においては、募集の形式を届け出て、この程度は誤解でないなら誤解でないとかなんとかいうことにするためには、銀行局百長なり、あるいは適当な地方の財務局長なりが募集方式の届出の書類を見て、それを認定して、この程度ならよろしいとかなんとかいうことにしなければ、その発起人が思い思いの事業計画書やいろんな表現を行つてやつて行く、そうしたならば、誤解しない人も九十九人ある。ところが一人でも誤解したならば、この法律は、一人でも誤解さした限りにおいては、その提唱者を懲役三年に処せなければならぬ法律なんだ。これは今福田さんが言われるように、裁判所に送り込んで、裁判所でこれが白か黒か明確にできる問題でない。裁判所自体でわからない。一人くらいいいだろうと言うたところで、法律では一人でもいかぬということになつておりますから、私は誤解しましたから、この相手をひどい目にあわしてください、そうして私の受けた損害を暗償してもらいたい、被害者は当然そういう要求をいたします。そんなむちやくちやはありませんぞ。
さらに私は関連して申し上げたいが、河野さん、これはこういうような抽象的文字で、裁判官もわからぬし、いわんやわれわれだつて相当の常識も、法律についてはいささかの素地もあると思うのであるが、われわれもわからぬような法律を出せば、地方の巡査や刑事や検事は大体わかりませんよ。そういうような判断をせなければならぬ、まるで判じもののような法律を出すということは、これは乱暴です。申し上げるまでもなく、昔から法は三条をもつて足りるといい、法律は少ければ少いほどよい。法律は簡素でなければならぬ。ところが、誤解であつたか正解であつたか判断をせなければならぬ。そうして一人でも誤解をした以上は、被害者は自分の受けた被害が大きかつたから、この法律の救済を受けようと思つて、そうして加害者に対して処罰を望むことは当然のことである。そういう法律は、法律として体をなしていない。だから第一条の制限をしようと思えば、不特定多数のものに対してその株の出資金の受入れをなさんとする場合においては、その株式募集に関するいろいろな文書は、すべて監督官庁の事前の認証を得なければならないとかなんとかいうことにしておけば、これはちよつと相手に誤解を与えやすいから、ここの文章は削除しろとかなんとかいうことになつて来るんじやありませんか。だからこういうような法律は、あなたが保全経済会や殖産金庫なんかを二、三年間見のがしておいて——どういうわけで見のがしておいたのか私は知らないけれども、二年間ずいぶん考えたと言つておられるが、大体二年間も考えるなんてばかなことがありますか。へびだつて半年しか眠りません。実際に二年間も惰眠をむさぼつておつて、目をさましたら気違いみたいな法律を出す。足元から鳥が立つというが、まるで足元でガソリンが爆発したようにあわてふためて、むちやくちやに書いた法律の文章がこれです。知性の高い河野さんとしてはうなずけない。総務課長は初対面で、私はあなたを知らないけれども、少くともこんな条文に対して承認を与えているというようなことは、私は国民の側として、どうもあなたは危険な人のように思われる。少くとも取締りをせなければならないのは、河野銀行局長とあなたではないかと思う。この三年以下の懲役に処せられてしまつては——あなたの方は法律を出しておいて、こういう金融をやる気はないから関係はないからいいようなものであるが、国民はいつ何どきこういう商売をやろうと思うかもしれない。そんなときに、全部裁判所に送り込まなければならない。一人でも、おれは誤解したのだと言つて、裁判所に恐れながらと訴え出れば、裁判所はこの法律の第一条に基いて調べて行つてみると、なるほど、あなたは誤解しましたか、それじや起訴しましよう。裁判所に行つてみると、なるほど誤解したという形になつて、本人はその損失の補償が受けられるであろうし、その一人のために提唱者は懲役に行つて三年間飯を食つて来なければならぬ。今あなたがおつしやるように、法律が規定されると、すれすれの線までやる。ボーダー・ラインまでやる。佐藤幹事長がやつているし、池田勇人さんもおやりになつている。ところがその人たちは、逮捕しようと思うと、拒否権によつて、ある場合には検察庁法第十四条によつて指揮命令ができるが、その法律の保護を受けない人々は、指揮権によつて保護が受けられないから、これは保護を受けなくても大体危険はそこに及ばない、こういうだけのやはり親切な法律でなければならぬ。私どもは、もとより悪いものは取締らなければならぬし、保全経済会や殖産金庫や、ああいうちやらんぽらんやつているものは禁止しろ、そういうものは規制しろということは、十五国会以来われわれが声をからしてここで叫んでおつた。それをほつておいたのはあなた方の責任である。だからといつて、そちらをとにかく直さなければならぬということで、堅実にやつているものでも何でも懲役に行かなければならぬような乱暴な法律を出してはいけません。
そこで河野さん、第一条のこういう表現では——これは私が詭弁を弄したり、あるいはむちやくちやを言つているわけじやない。現実の問題として裁判官が事件を扱う場合において、やはり被告か弁護士が出て来て、誤解だと本人は言つているけれども、しかし大多数の諸君がみな正解をして、あそこにも募集に行つたけれども、そんなことはあるまいと言うてこの人も拒絶しました。この人も募集しましたけれども、拒絶しました。ただこの人だけがそういう錯覚をしたので、こちらの責任ではございません。こう言うたところで、裁判官は、この法律第一条を文字通り解釈すれば、一人でも誤解なさつた以上は、やはりあなたが懲役に行つていただかなければならぬ、こういうことになる。それから無知蒙昧なおばあさん、あるいは北海道の人が九州に行つて勧誘した場合に、舌がまわらなくて意味が通じませんでした、こういうような場合でも、いや、それは免許も何らの制限もないのだから、誤解をしたという以上、あらゆる誤解は全部第一条の違反でございます、どうぞ刑務所へ、こういうことになります。だからこういうめちやくちやな法律の表現はしないで、もう少し危険が及ばないように、すなわちこうした貸金業を行う者が出資の募集を行う場合においては、その文書についてすべて事前の認証を受けるとか、検査を受けて承認を受けるとか、そういうような方法にすべきだと思うが、これは一体あなたはどう考えていますか、この際あなたの見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/39
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040・河野通一
○河野政府委員 第一条の「誤解を生じさせるような仕方」という意味は、今お話がありました、たまたま何人か一人の人が現実に誤解したということを言つているじやない。ということは、これは先ほど津田総務課長からも申し上げた通り、この相手方になる層と申しますか、要するに出資をしようと思う一つの対象、これらの方々が概して、つまり平均的に、普通の水準的な知識なり経験なり、あるいは判断力なりを持つておる人がやはり誤解を起すであろうような仕方、現実にどこかの何千人のうちの一人が誤解をしたということでなくて、そういう平均的な人が誤解をする、そういうふうに考えられるような仕方でもつてやることを押えようというのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/40
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041・春日一幸
○春日委員 それは中学卒程度とか、あるいは大学卒程度の学識経験のある者が誤解するとか、はつきりしておかないといけないですよ。あなたは今普通のレベルの人と言つているけれども、普通のレベルの人だけに適用する法律なんてばかなことがありますか。普通のレベルだろうと、普通以下のレベルだろうと、国民である限りこの法律の保護を受けなければならぬ。それをもつとはつきりしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/41
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042・河野通一
○河野政府委員 法律の対象になる人は普通のレベルの人だけが対象になるわけではございません。しかしここに書いてある「誤解を生じさせるような仕方」という意味は、普通の知識なり経験なり判断力を持つておる人でも誤解をする、しかもその対象になるような層の人は、普通の状況、普通の知識を持つている、特にすぐれた知識を持つ必要はないが、その普通の状態において、誤解をするのがもつともだと思われるような仕方を用いて出資の受入れをしてはならない、こういう意味であります。従いましてこの規定は、必ずしも今お話のように八十数才のおばあさんが北海道から鹿児島へ行つて、そのために誤解を起したというようなことを何も言つているのではない。現実の問題としてではなく、そういう仕方がいけない、こういうことを言つているわけであります。私はこの規定によつて、おそらく大部分のやり方というものがこの法律に該当するかしないかということはわかると思います。大部分のものは常識的に判断ができると思います。ただ御指摘のように、境のところはなかなかお話のようにむずかしい点がある。しかし私は、少くとも判断がつかないわけじやないと思います。いわんや大部分のものについてははつきりしている。この規定がない場合に比べて、これがあることによつて大部分のケースがはつきりするということは、私ははつきり言えると思う。その意味において、私はこの規定があることは非常に意味があると考えます。
なお条文につきましては、今御指摘のように、この書き方は非常にはつきりしているとは言えません。私は長い間法務省とも相談しまして条文の書き方について研究いたしたのでありますけれども、どうもこれ以上に、あらゆる方面から見て最も適当な書き方というものがどうしても頭に浮んで参りません。従いましてこういうことになつておりますけれども、その規定の書き方が十分でないからというので、この規定をやめてしまうということは私は適当でないと考えております。
なお最後に御指摘の、何かそういう宣伝文書等について政府のどこか関係のところで認証する、あるいはこれは配布してよろしいというようなことをしてはどうかという御意見でありますが、そういう御意見はもつともな点があるのでありますけれども、私どもはそういつたことまでこれらの問題についてやる必要はないと思いますし、大部分のものは今のケースによつてはつきりするというふうに私どもは考えますので、今御提案のようなやり方については私どもは考慮いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/42
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043・春日一幸
○春日委員 一層わからなくなるばかりです。そこでもう一ぺん伺うのだが、大部分ということを言つておられるが、法律というものは大部分ということではいけないのです。法律によつて一人でもとにかくわからないとか、誤解するとかいうようなことがあつてはいけない。何人といえども人を殺すことがいけないということははつきりわかるんですよ。強姦したらいけない、どろぼうしたらいけないということははつきりしておる。だからこれもやはりはつきりしておかなければいけない。法律というものは大部分の者が正解するような表現ならばよいということだけれども、法律をそのまま読んでこちらが誤解してしまつた以上はしかたがないんですよ。大部分が正解をしたところで、一人の者でも誤解している以上法律に触れるんですよ。私はあげ足をとつておるわけではない。総務課長も法律専門家だろうからもつと御検討願いたいと思いますが、あなたは大部分の者が正解できるような方法ならばよいと言つておるが、大部分ではいけない。百パーセントが正解できるような方法で行かなければいけないのだが、ただそういうことがはたして望み得るかどうかということです。人を殺したり、どろぼうをしたり、火つけをやつたりすることが百パーセントいけないことはみなわかるんですよ。火つけをしたり、人をこん棒でなぐつたり、井上良二君の頭をなぐることがいけないことは百パーセントわかつておる。(笑声)百人のうち百人、千人のうち千人がはつきりわかります。だから一人でも誤解した以上は法律に触れるのだから、そういう乱暴な法律があつてはならない。ですから実際問題として、この法律に反対するとか賛成するとかいうことは私はらち外に置いて、法律そのもののよつてもたらす影響というものを考えますときに、これははねはだしく社会混乱を生ずる。いわんやその業者に対しては、はなはだこわくて、ちよつとした文書も書くことができないととになる。やはり堅実なものをやつて行とうど思えば、安心をして、こそこそしたり、おどおどしたり、びくびくしたりするころなく、堂々とやつて行きたい。こういう制限の規定があるが、許可を求めるとか、認証を求めるとか、届出をするとか、万事堂々とやつて行けるような法律をつくらなければいけないと考えるわけであります。従いまして第一条は、てんでこれは問題にならないし、国民の側においては重大な悪い影響をもたらす事柄であろうと思いますから、これはいずれ後刻懇談会において、この条文が全面的に削除されることを期待しておりますが、これは後日に譲ります。
他の委員会から井手さんがいらしておりますから、私の質問はあと三十入残つておりますが、また来週に譲りまして、一まず私の質問は留保いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/43
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044・内藤友明
○内藤委員長代理 次に、張る四月十四日当委員会に審査を付託されました外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案を議題として提出者より趣旨弁明を聴取いたします。井手以誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/44
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045・井手以誠
○井手以誠君 社会党両流から提案いたしました外貨予算のことにつきまして御説明を申し上げたいと存じますが、実は印刷する時間がございませんので、ひとつお許しを得まして、後刻印刷物をお手元に配付するようにいたしたいと思います。
外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明いたします。
輸入予算といわれる外貨予算が、国の予算と表裏一体の重要性を持つことは申すまでもございません。また経済自立を急がねばならない今日、輸入の統制のために厳格な為替管理を行うことは当然でございます。
〔内藤委員長代理退席、淺香委員長代理着席〕
ところが国の予算は、国会において慎重審議されておりますのに反して、外貨予算は、閣僚審議会において作成、決定され、国会はただ外国為替資金特別会計の歳入歳出予定額とその予定損益計算を承知するにすぎないのであります。従いまして今日半期ごとの外貨予算ありとは申しましても、その作成と外貨割当は放漫に流れ、近時思惑輸入はますますはげしくなり、不急品やぜいたく品はどしどし輸入され、率直に申しまして輸入は野放しの体でございます。そのために昭和二十七年夏十一億ドルを越えました外貨保有高は、この三月末八億二百万ドルに激減し、実質的には七億ドルを割つて外貨の危機が叫ばれておるのであります。このように無計画にひとしい輸入の増大は、国内の消費景気をあおり、インフレを進め国際物価に比して割高を生じ、同時に国内の金融は極寒されて、中小企業は行き詰まり、勢い輸出は伸び悩み、国際収支悪化の悪循環を招きまして、二十八年度は実質的に三億九千万ドルの赤字となり、為替レートに大きな暗影を与えるに至つておるのであります。従いまして国民に耐乏生活をしている一兆円緊縮予算も、とのような自由放任の輸入状況ではほとんどその効果を抹殺されることになるのであります。
もちろん政府は、最近この輸入に若干の調整措置を講じてはおりますが、なおきわめて不十分のうらみがございます。貿易の前途を思いますときに、予算の一切を今日の行政機関にゆだねることのできない憂うべき事態に立ち至つておるのであります。
また国の財政経済政策に至大の関係を及ぼす外貨予算に国会が関与することは、財政監督の権限から申しましても当然のことと存ずるのであります。ここに外貨予算を国の予算と関連して国会の番一議にかけ、輸入を計画化して、わが国経済の自立をはかろうとするのが本案を提出した基本的理由でございます。すなわち現在外貨予算を決定しておりまする閣僚審議会を廃止、し、外国為替予算は国会の議決を要することをいたしたのであります。
次に、内容の概略を御説明申し上げます。第一に予算期を一箇年といたし策した。昭和二十五年民間貿易再当開時の外貨予算は、四半期制度であり、次いで二十七年から半期予算となつて今日に至つておりまするが、輸入の計画化をはかるには長期予算が必要であり、現在でも年間計画のわく内で半期予算が決定されておりまするし、国会の会期の都合もあり、取引上の機動性を失わないためにも長期予算をきめ、弾力性を持たせておくことがむしろ商取引の機をつかむに利便であると存ずるのであります。
第二に、外国為替予算の議決は、国の予算の例にならうことにいたしておりまするが、その性格を考え、内閣は二月末までに予算を提出し、国会は大体三月一ぱいで議決するようにいたしました。
第三に、輸入物資は、経済自立に必要な最小限度に押える必要があり、物資別金額を明らかにする方針でありまするが、使用細目の公開は取引に不利を生じますので、時期別、積出地別の細目はいらないことにいたしたのであります。
第四に、この予算の変更は輸入統制の重要性を考え、国会の議決を必要とすることとし、輸入実績についても、国会に対し早期に報告せしめることにいたしました。
以上が本法律案を提出いたしました理由と、そのおもなる内容であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御協賛くださいますよう、切にお願いを申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/45
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046・淺香忠雄
○淺香委員長代理 これにて提案趣旨の説明は終りました。本案に対する質疑は次会に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/46
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047・淺香忠雄
○淺香委員長代理 引続き出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律案、証券取引法の一部を改正する法律案の両案について質疑を続行いたします。小川豊明君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/47
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048・小川豊明
○小川(豊)委員 河野銀行局長にお尋ねいたします。銀行局長は日本の金融の大元締めであり、金融を円滑に推進する立場でありますから、私はいろいろな疑問の点をお尋ねするわけですが、大臣のその場しのぎの答弁というようなことでなく、ほんとうの真実の点をお聞かせ願いたいと思います。そういう点からこういうような法案を出さなければならない現状とでもいいますか、そういうような国の経済事情をどういうふうにお考えになつておるか、金融事情をどうお考えになつておるかという点を伺いたいのです。そこで今の政府の経済政策は、インフレの収束、これが根幹をなしておるものでありまして、従つて通貨の安定とか、物価の引下げとかいうものはここから出て来る、そのために打たれる手が予算の緊縮であり、あるいは金融の引締めであり、また耐乏生活の運動になり、行政整理の問題が出て来る、全企業の再建整備を唱道しなければならない、こういう結果になつて現われて来るのであります。こうした一連の政策が、一方においては官庁や会社や工場等から行政整理あるいは企業の再建整備等によつて退職者を相当大量に出して行くようになるわけであります。こういう人たちは退職金をもつて生活設計をしなければならなくなつて来るというようなことから、危険をあえて冒しても高利の預金に飛びつかざるを得ない情勢が出て来る。一方、金融引締めから中小企業の金融難は非常にはなはだしくなつて来る。大企業の手形等の引延ばし等がほとんど中小企業にしわ寄せされて来るわけです。こういうところから、あるいは手形のつなぎ融資というような形で盛んに中小企業に行われて来ると三十銭の日歩であろうが、四十銭の日歩であろうが、それは十日か十五日、あるいは三十日程度のものを借りるとするならば、これはそいうものを論じないでもそこに飛びつくような情勢が出て来る。こういうふうに一方においては危険だとは思いつつも、高利まわりに飛びついて行くようなものを輩出し、一方においては金融難から高金利であろうが何であろうがそのつなぎ融資を求めなければならないというような階層がどんどん激増して行くのです、こういうことは、たとえばこの法案を見ますときに、保全の問題や日殖の問題、いろいろな問題、弊害が出て来た、従つてこれを取締る方法を講じなければならぬといつてこういうものをつくつて来ておるわけです。たとえば町の相互金融組織のあれがいいとか悪いとかいう議論を別にしてもこういうものが出て来る要因というものをはつきりつかまなければいけない、そうしてその要因に対する対策がもしなくしてこれを単に取締つても、それはちようど菌に対して湿度と温度を十分に与えるならば菌はいくらでも繁殖して行くわけなんで、これを撲滅しようとしたつて、それに湿度と温度が十分に与えてあるならばこれはなくなりつこはないと同じように、こういうような情勢の中では、こういう金融機関というものが生れて行く湿度と温度というものは十分与えられているからわれわれは出て来るのではないか、こう思う。そこでこういう立法をして行くことは、先ほどのあなたの答弁を聞いていると、これは単なる禁止立法じやないんだとおつしやつておられるけれども、私どもどう考えましても、これはやはり禁止立法と同様のものになつて来るのじやないか、こう思う。その是非は別としてこれに対する対策を立てておかなかつたら、これは形をかえてやはり幾つも幾つも出て来る、これは形をかえても出て来る。そういうところからわれわれはこの対策というものを立てられなければいけないと思う。ところが今日において、国民金融公庫の制度があり、中小企業に対する商工中金もあり、金融公庫もあるけれども、こういうところの資金というものは遺憾ながらそう充足されてはいない。さらにその手数は煩瑣である。ここにどうしてもあさつてかやのあさつて五十万なり六十万なり金がいるといつて、国民金融公庫や商工中金へ行つても資金計画を出せと言う。こういう中小企業は四箇月も半年も前に資金計画というものはなかなか立てられないのが今日の中小企業の現状なんですが、そういうような制約がある。銀行へ行つて金を借りたとしても、あなたは御承知かどうか知らぬが、今日ほとんど両建金融なんで、百万円の金額に対して二十万円というものを預金しておかなければならぬし、それでやはり高金利である。そういう点を考えるならば、ここから借しても、金利においてはまずある程度は違うけれども急場をしのげるというところから、こういうものがどんどん利用されて行く結果が出て来る。それをもしこういうことに対する弊害が黙過できないのだ、こういうことならば、あなたの立場から言うならば、その弊害をとりのけるには、ただ単なる法律をつくつてそれを取締ることによつて弊害がとりのけられるのではなくして、これに対する根本的な対策というものが立てられて初めて弊害というものはとりのけ得ると思う。もしそれが商工中金なり国民金融公庫、あるいは銀行等でもいいですが、そういうところが簡便に——野放図という意味じやありません、もつと簡便に中小企業の要求を充足することができたら、そうしてその金利が高くなかつたとするなら、いかにあなたの方で奨励しても今の町の相互金融とか株主相互金融とかいうものは私はできないし、また発展するような要因はないと思うが、それが発展する要因というものをどういうふうにお考えになるか、またそれに対する対策というものをどうお立てになるかということ、この見解を私はお聞きしておきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/48
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049・河野通一
○河野政府委員 非常に重大な大きな問題でありますとともに、これに対する解決の方法は非常に困難な問題だと私は思います。今御指摘のありましたように、この法案が原案通り通過いたしました場合におきましても、必ずしも今ありまする株主相互金融あるいは貸金業自体、これらのものが、この法律ができたことによつてすべてそういうものがつぶれてしまうといつたことは全然私どもは予想もしておりません。従いまして、今後におきましてもこの法律に沿つてこの法律に違反するような状態さえ起らなければ貸金業者どいうものは従来通りの仕事を続けて行かれるものであります。かつこれらの貸金業というものが、今御指摘もございましたように、社会的にそういうものに対する需要がある、その需要に対して応ずるということについては、やはりそれ自体の社会的必要性ということが十分あるということも認めなければならぬと思うのであります。その限りにおいては、私どもはそれらがそういつた面において金融の道をつけて行くということについては、これが満たされることは決して悪いことではないと考えております。ただそれが度を踏みはずすことによつて公衆に非常な迷惑を及ぼすということだけを私どもはとめて行かなければならぬと考えておるのであります。お話のように、一般の零細金融に対する政府の施設が十分でない、これらに対する施設がもつと充実するならば、こういつた弊害が起る心配もないではないかという御指摘でありますが、この点はまつたく御指摘の通りだと思います。私どもも零細の金融といたしましては、政府の機関等に、国民金融公庫を初めとして、できるだけ財政の許します限りにおいてこれらの資金源の充実をはかり、かつその金融の仕方をできるだけ簡易迅速に行うように努力はいたさせて参つておりますけれども、何分にも需要の面が非常に大きいために、これに適合するだけの資金源の充実ということもいまだなしかねておるような事態でありますとまた中小企業の金融にいたしましても、いろいろ政府の機関もつくり、また一般の中小金融の正規の金融機関の活動についても、できるだけこれが活動の拡充をはかつて参りますために、あるいは保険制度、あるいは信用保証協会の制度等の充実をはかつて参つておるのでありますけれども、これらについては、御指摘のように十分にその目的を達しておるとは言いがたいと思うのであります。今後におきましても、こういつた方面についてはできるだけ充実をはかつて、必要なる金融の道について支障のないように努めて参りたいと考えておる次第であります。しかしながらこれらの零細金融と申しましても、これがやはり預金者を持ち、あるいは政府の資金から出て参りますということになりますと、どうしてもやはり納税者に対する損失をできるだけ少くする、あるいは預金者に対する保護に欠けてはならぬというような点から、やはり金融というもののらち内においてこれらの問題を処理して行かなければならぬと思います。そういつた点から、おのずから全然調査もしないで零細な金融に対する要求に対してただちに応ずるということは、今申し上げましたような施設からいつてなかなか困難である。さればといつて何箇月かかつてもやむを得ぬと申しておるのではありません。できるだけ簡易かつ迅速に取行えるように今後とも努力いたして参りたい、かように考えておる次第であります。いろいろ中小金融全般の問題についての打開策について御指摘もあつたのでありますが、今後においてもさらに一層これらの点については努力をいたしたい、これは私心からそう考えておる次第でございます。努力して参りたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/49
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050・小川豊明
○小川(豊)委員 これはもう細目なんですが、この法案が通つても、銀行局長はまじめに適法にやつておられる方々はさしつかえないのだ、こういう答弁なんですが、まさにその通りだと思うのです。しかしこの法案が通ると、勢い一つの情勢というものから、それらの方々までもつぶれざるを得ない結果になるのではないかと考える。これはあなたの見解と違つて来るかもしれない。そこで問題は、一つの社会悪的なものを是正するという建前でこの法律を立案されたのか、それともこれは禁止すべきだという建前に立つて立案されたのか、ここはやはり重夫な要素になつて来る。あなたの答弁で行くと禁止立法ではなく、やはり是正するような建前をとつてやつて行く、こういうふうに私は了承しておる。そうだとすると、この法案の中に、先ほど春日君も該博な意見を述べられたが、解釈の仕方によつてここにかなりの矛盾が出て来る。この解釈の仕方によつてある地域においてはやつて行ける、ある地域ではこれが摘発され、検挙されるというような問題が出て来るのではないか。そういうことはやはり法としてはなるべくなからしめるようにすべきである。従つてこの見解というものを私はどうしてももう少し統一できるような、商売をなさる方、これに加盟する多数の人たちが、これに対する見解をもつと率直に、スムーズな形で受入れられるようにしなければ、ちよつと危険が出て来るのではないか、こういうことも考えられる。どうもこの点、私はそういう意見から見そと、大分弊害が現われて来たから急遽立案したというところに、においとしてやはり弾圧立法的なにおいがせないでもない、こう思われる。これは銀行局長としては、そういう点から、もつと前に注意する方法もあつたろう、警告する方法もあつたろう、あるいは法律がなくとも指導する方法もあつたのではないか。そういうことが欠けておつて、急にここで権力だけで臨むということに対するこの考え方、従つて個々の条文については、私はきようは時間がありませんから避けますけれども、こういうことについて、今までこういうものがたいへん大きな弊害がもう出て来ておることも事実だと思つております。保全経済会や日殖等、これと類似のいろいろなものが出ておる。これらが町の預金者、しかも零細な預金者に及ぼした弊害は、保全経済会や日殖を取上げただけでも少くとも数十億、あるいは百数十億と思われる。そういうような弊害が国民の中に出て来ておるのだ。それはわかつておるんだから、むしろここはあなたの方で勇気をもつて、そういうものの弊害を除去するためにも、もつと公的な金融面に対して勇気をもつて臨めば、その弊害はもつと早く除去されたのではないか、こういうふうに私には考えられるのだが、これに対してあなたはどういうふうにお考えになられるか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/50
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051・河野通一
○河野政府委員 この点は私どもは非常に慎重には検討いたしましたけれども、決して臆病であつたわけではありません。特にこの第二条の規定等につきましては、貸金業者に対しては常常——これは貸金業等の取締に関する法律の第七条にも現にあるわけでありますが、預かり金をしてはならぬということはございます。これらの点は検査をしたりいたしまして、貸金業者が預かり金をしてはならぬということはたびたび申しております。具体的に、こういう事例は預かり金の禁止の規定に反する、従つてこれをすみやかに整理をしろ、もし整理ができなくてさらに違反の行為が続くならば、業務停止をするというようなことまでもたびたび私どもは警告を発して参つております。これらの点からだんだん改善もされて来ておる部面もあるように認めております。
それから第一条の出資の関係でありますが、この関係は主として問題になりました例の保全経済会その他の問題とも関連いたしまして、私どもも法務当局と長い間にわたつて検討いたしましたが、これが刑法各条に言つておる詐欺罪その他の条規に当ります場合を除きましては、これを取締る方法がない。現在少くとも法律的にはないというのが結論になつておるわけであります。従いまして保全経済会等につきましては、詐欺罪でこれは検挙されたのでありますけれども、そういう詐欺罪までは行かない。少くとも取締りの面から見まして、詐欺罪をもつてこれを取扱うところまでは行かないけれども、しかし詐欺に類する行為であつて、社会的に非常な弊害を及ぼすおそれがあるという行為をはつきり法律でもつて禁止することが必要であろうということで、この条文ができたのであります。との条文がない場合と、この条文がある場合と、実際の取締り上どの程度の相違があるか等につきましては、これは取締り当局の方からのお話をお聞き願いたいと思うのでありますけれども、少くとも現在この条文がございません場合におきましては、その取締りにあたつて非常に取扱いがむずかしいということは事実であろうと思います。この条文ができれば、その辺の取締りが非常にやりやすくなるということは現実の問題として言い得ると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/51
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052・小川豊明
○小川(豊)委員 もう一点。私は詐欺罪であるというならば、これは法務当局が取締るべきことだと思うのですが、銀行局長として考えなければならぬのは、詐欺罪であるとかないとかの問題でなくて、そういう形が多数の零細金融者に何千億という迷惑を及ぼしておる事実、これが銀行局長に対しては問題になつて来ると思うのですが、その点はあとにしまして、そこで先ほど私の聞き違いであるかどうかわかりませんが、もし聞き違いであつたらお許し願いたい。先ほどあなたの御答弁で、不特定多数から出資を求めるのが悪いのではなくて、ただそこで誇大宣伝等によつて誤解を生ぜしめるような行為がいけないのだ。こういうことになつて来ると、不特定多数から出資を求めるということは、これは問題でなくなつて来る。そうすると、今度は誇大な宣伝あるいはまた誤解を生ぜしめるような行為、さつき春日さんが言つたようなものだが、そこでそういう一つの尺度といいますか、こういうものが当局によつて拡大解釈されたりあるいは縮小解釈されたりすることが出て来ると、ただ単に通念とかなんとかいうことだけではこれはやり得ない問題が出て来ると私は思う。この点をこの法案でもつとはつきり打出すことが必要になつて来る。ただそういうものを打出す文章なり技術なりがあるかということになると、これはあなたの方の問題になるのだが、私はそれを打出す必要があると考えるのであるが、そういう点について、あなたの方ではどうお考えになつておるか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/52
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053・津田實
○津田説明員 その点でございますが、これは先ほど銀行局長が申し上げましたように、長い期間にわたりまして大蔵省当局と協議の上でき上つた条文なんであります。最終的には、要するに出資というものはまかり間違えぱ出資全額がなくなることがあるということを誤解させないようにしなさいというところが目的なんで、出資は出資であります。事業がもうかればいくらでも配当ができ、元も返ります。しかしながら間違えば配当もできないし元も返りませんということははつきりして出資を受けるのならば、いかに不特定多数の人から受けてもさしつかえない。そこを禁止しておるのではありません。でありますから、出資を本来の姿で受け入れなさいということがこの第一条の目的でありますから、その趣旨からはずれてはいけないということを中心にこれを解釈いたしますならば、表現の点につきましては、とれ以上こまかくすることは、必要性の問題でありまして、できるだけこまかくすることは適当だと思いますけれども、しかしながら個々の事象をとらえて全部にわたつて規定するということは、これは煩雑のみならず、とうてい網羅し得るものではありませんので、やはり法律の解釈論、これはもちろん一般大衆が知つていただかなければならぬのですが、法律の解釈論として、論理的に出て来る範囲によつて運用する以外にはないと思います。私どもは立案にあたりまして、少くともこれ以上の表現方法は今のところは考え得られないというところでこの法案を提出した、かように御了解願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/53
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054・福田繁芳
○福田(繁)委員 議事進行についてちよつと一言。この法案に関しての質問は、自由党並びに社会党両派には大体一段落ついたのではないかと私は思う。ただ残されるのは、改進党の私の質問が残つておるにすぎないと思うのであります。かねて私は委員長に申し上げてありますように、この法案に関しては、いささか銀行局長なり法務当局の御意見を伺いたい点があるわけなんだが、本日は不幸にして時間がありませんから、本日はとれで散会されて、次回の委員会の勢頭に改進党の福田繁芳に質問を許されることをなされるならば、大体要点のみ約一時間ないし二時間くらいで終えます。それを終えますれば大体質疑は済むと思いますから、ただちに各党の打合会を開かれて、そこでこの問題をいかに上程するかということを円満裡に協議されんことを動議として提出します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/54
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055・淺香忠雄
○淺香委員長代理 ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/55
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056・淺香忠雄
○淺香委員長代理 速記を始めてください。
次会は来る十一日火曜日午前十時より開会し、出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律案並びに証券取引法の一部を改正する法律案の両案の取扱いについて協議懇談をいたしたいと存じます。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X05119540507/56
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