1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年三月四日(木曜日)
午前十一時五十四分開議
出席委員
委員長 中井 一夫君
理事 加藤 精三君 理事 佐藤 親弘君
理事 灘尾 弘吉君 理事 吉田 重延君
理事 藤田 義光君 理事 西村 力弥君
理事 門司 亮君
生田 宏一君 尾関 義一君
木村 武雄君 濱地 文平君
山本 友一君 鈴木 幹雄君
橋本 清吉君 阿部 五郎君
石村 英雄君 北山 愛郎君
伊瀬幸太郎君 大石ヨシエ君
大矢 省三君 松永 東君
出席政府委員
国家地方警察本
部長官 斎藤 昇君
国家地方警察本
部次長 谷口 寛君
国家地方警察本
部警視長
(総務部長) 柴田 達夫君
国家地方警察本
部警視長
(警備部長) 山口 喜雄君
自治政務次官 青木 正君
委員外の出席者
専 門 員 有松 昇君
専 門 員 長橋 茂男君
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三月三日
時計修理販売業者に対する事業税軽減に関する
請願(宇都宮徳馬君紹介)(第二八〇〇号)
事業税軽減に関する請願(只野直三郎君紹介)
(第二八〇一号)
同(原茂君紹介)(第二八〇二号)
乗合自動車税軽減に関する請願(田子一民君紹
介)(第二八〇三号)
同(細迫兼光君紹介)(第一八〇四号)
同(伊東岩男君紹介)(第一八〇五号)
同(鈴木正文君紹介)(第一八〇六号)
同(高橋禎一君紹介)(第一九二五号)
同(安井大吉君紹介)(第一九二六号)
乗合自動車事業税の外形標準課税廃止に関する
請願(田子一民君紹介)(第二八〇七号)
同(細迫兼光君紹介)(第一八〇八号)
同(伊東岩男君紹介)(第一八〇九号)
同(鈴木正文君紹介)(第一八一〇号)
同(高橋禎一君紹介)(第一九一七号)
建築板金業者に対する事業税軽減に関する請願
(三輪壽壯君紹介)(第二八七三号)
同(八百板正君紹介)(第二八七四号)
尼崎市の自治体警察存続に関する請願(山下榮
二君紹介)(第二八七五号)
地方税法の一部改正に関する請願(濱田幸雄君
紹介)(第二九〇九号)
すし業者に対する遊興飲食税の免税点設定に関
する請願(宇都宮徳馬君紹介)(第二九一〇
号)
都市警察存置に関する請願(岡部得三君紹介)
(第二九一二号)
貨物自動車運送事業に対する事業税の外形標準
課税廃止に関する請願外六件(田口長治郎君紹
介)(第二九一三号)
同(大村清一君紹介)(第二九一四号)
同(辻文雄君紹介)(第二九一五号)
同外四件(木原津與志君紹介)(第二九一六
号)
営業用トラックに対する自動車税軽減に関する
請願外六件(田口長治郎君紹介)(第二九一八
号)
同(中村時雄君紹介)(第二九一九号)
同(福田喜東君紹介)(第二九二〇号)
同(大村清一君紹介)(第二九二一号)
同(辻文雄君紹介)(第二九二二号)
同(高橋禎一君紹介)(第二九二三号)
同外五件(木原津與志君紹介)(第二九二四
号)
の審査を本委員会に付託された。
同日
消防機構改革に関する陳情書
(第
一三二四号)
地方制度の改革等に関する陳情書
(第一三五九号)
昭和二十九年度地方財政計画策定に関する陳情
書(第一三六〇号)
事業税の撤廃等に関する陳情書
(第一三六二号)
商工団体所有不動産に対する固定資産税免除等
に関する陳情書
(第一三六三号)
地方議会の権限縮小反対に関する陳情書
(第一三
六五号)
市町村に監査委員を必置機関とすることの陳情
書
(第一三六六号)
地方公務員の停年制法定に関する陳情書
(第一三
六七号)
警察制度の改革に関する陳情書外一件
(第一三六八号)
を本委員会に送付された。
―――――――――――――
本日の会議に付した事件
公聴会開会に関する件
警察法案(内閣提出第三一号)
警察法の施行に伴う関係法令の整理に関する法
律案(内閣提出第三二号)
小委員長より中間報告聴取
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/0
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001・中井一夫
○中井委員長 これより会議を開きます。
この際公聴会開会に関する件についてのお諮りをいたします。去る二日議長に対し、警察法案及び同整理法案についての公聴会開会の承認を求めておりましたところ、昨日その承認を得ましたので、これよりその開会の日時等につきまして決定し、その旨議長に報告いたしたいと思います。つきましては先ほど理事会において決定せられました通り、来る十六日火曜日及び十七口水曜日、各午前十時より警察法案等について公聴会を開くことにいたしたいと思いますが、これに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/1
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002・中井一夫
○中井委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。よつてただちに委員長よりその旨議長に報告いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/2
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003・中井一夫
○中井委員長 なおこの際申上げますが、警察法案等の審議に先立ちまして、昨日開かれました町村合併促進に関する小委員会の経過について、北山小委員長より中間報告をしたい旨の発言がありましたから、これを許します。北山小委員長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/3
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004・北山愛郎
○北山委員 昨日委員会の散会のあとで、この場所で第一回の小委員会を開いたわけであります。自治庁から小林行政部長に来ていただきまして、現在進行中の町村合併の実情について、いろいろ聴取をしたわけであります。ところがその際に床吹委員から御発言がありまして、現在地方では三月の末までということを目標にして、たくさんの新しい市ができつつある。これは今度政府が出すと予想せられます地方自治法の改正によりまして、市の人口の要件が三万から五万に上る。そこで今のうちならば、人口三万でよろしいからということで、自治庁の方でも多少そのような指導をいたしておるようであります。また地方の実情から見ましても、早いうちにバスに乗らないと乗り遅れてしまう、来年度になれば人口の制限が五万になつてやりにくくなるということから、住民の意思を十分に聞くことなく、短期達成に市ができるというような傾向があつて、いろいろこれには批判もあり、また実際上悪い結果が生ずるおそれもある。そこで床次さんの御意見では、ひとつ自治庁の力で、その人口五万という要件の実施時期を延期するというような意見の表明がほしい、というような御意見でございましたが、小委員会といたしましては、自治庁としても、そのようなことを外部に表明するということは、形式的に見ましてむずかしい点もあるだろうと思うから、ひとつこの委員会でこの町村合併の問題につきまして、塚田長官の出席も願い、そうして質疑の形において、そのような結論に到達をしたい、こういうことに昨日の小委員会ではきまつたわけであります。従いまして来週なるべく早い時期に時間をいただきまして、この現在の全国的に重大な問題になつております町村合併、並びに新しい市の続出という問題について御審議をいただいて、その際にただいまの床次委員の希望せられる点について、もし自治庁からそのような意見が表明されるならば、それができるような機会を与えていただきたい、かような結論に達したわけであります。なおその際には、自治庁の方から、町村合併の進行についてのいろいろな資料も出していただきたい、かように考えておりますので、まだ第一回の小委員会を開いたばかりでありますが、何しろ三月末というような、時間的にも迫つておる、相当微妙な、しかも重要な問題でございますので、委員会におきましてなるべく早くその機会を与えられるように、私から委員長並びに委員会の各位にお願いを申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/4
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005・中井一夫
○中井委員長 ただいま北山小委員長から御報告のありました通り、これを委員会として承認するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/5
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006・中井一夫
○中井委員長 御異議なしと認め、さように決定いたします。北山小委員長の御報告の趣旨に沿うようとりはからたいたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/6
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007・中井一夫
○中井委員長 これより警察法案及び警察法の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案の両案を一括して議題といたします。本日は開会前の理事会の決定に基きまして逐条説明を聴取することになりましたので、これより政府より説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/7
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008・門司亮
○門司委員 きようの理事会の決定は別に異議はありませんが、議事の進行上絶えず審議の時間が非常に短くなつているということは、主として法務大民の出席がないからだ思います。従つて委員長は大臣にぜひ出席をしてもらうように要請をしてもらいたい。委員会のあるたびに大臣が出て来ないことのために、委員会自体としてちよつとも進んでおらない。委員会の進行をはかられようとするなら、やはり委員長としては責任を持つて大臣に出てもらうということにしなければ、委員会はいつまでたつても進行しないと思います。従つて委員会の総意として大臣の出席を私は委員長にお願いしたいと思いますが、この点をひとつ委員各位にお諮りを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/8
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009・中井一夫
○中井委員長 門司君の御発議につき、実はお諮りするまでもなく当然の御発議だと思いますが、特に皆さんの御意見を聞きますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/9
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010・中井一夫
○中井委員長 ただいまの門司君の御発言の趣旨了承いたしてよろしゆうございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/10
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011・中井一夫
○中井委員長 それではさように決定いたしました。法務大臣の出席を強く要求いたすことにいたします。なお法務大臣が先日来本委員会に出席の数少かつたのは、政治的な特殊の関係等もあつたようなものでありますが、本日を過ぎますれば、引続き出席可能と存じます。但しただいまのお申出につきましては、特に委員長より法務大臣にその旨を伝え、勉強して出られることにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/11
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012・西村力弥
○西村(力)委員 ただいまの議事進行の発言に関連しまして、それ以前に委員会では総理大臣の出席を要求したが、その件に関する努力がなされていたか、具体的にいつ出席せられるのか、見通しをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/12
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013・中井一夫
○中井委員長 お答えをいたしますが、先般総理大臣出席の御要求がありましたので、その旨内閣の方へ委員長から申し出ておきましたのでありますが、ちようど総理大臣病気で相当長い間欠席をしておられました。それが今日まで出席をなされかつた理由だと存ずるのであります。なおあらためて出席の要求をいたすことにいたします。柴田国警総務部長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/13
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014・柴田達夫
○柴田(達)政府委員 命によりまして私から法案の逐条の御説明を申し上げたいと思います。
委員会の初頭にあたりまして長官から政府委員としての概略の御説明を申し上げてございますが、私からは各条文を追いまして、おおむねその条文の趣旨の存するところと、それから当然に疑問を生ずるようなところにつきまして、概略の御説明を申し上げます。さらに御審議の際に御質疑によりまして解明をいたしたいと存じます。
この法案は七章、七十八箇条の本文と附則の二十八項から成り立つております。
まず第一章は総則でございます。総則の第一条から御説明を申し上げます。
第一条は、この法律の目的を規定したものでございまして、「個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持するため、」これは警察の目的でございまして、第二条に警察の責務といたしまして、さらにこの目的ははつきりと出ているのでございます。個人の権利と自由を保護すること、公共の安全と秩序を維持するということが、民主警察の大目的なのであります。この目的を十分達成することができますように、民主的な理念を基調とする警察の管理と運営を保障することが一つ、かつ能率的にその任務を遂行するに足ることが一つ、その何方の要請に沿うような警察の組織を定めることを目的といたしているのであります。すなわちこの法律はまず警察の組織を定めるのでございまして、いわば警察の組織法でございます。警察の職権を行使することにつきましては、別に警察官等職務執行法でございますとか、あるいは司法警察職員として職務を執行するにつきましては、御承知の通り刑事訴訟法というような職権行使に関する法律が別にあるのでございます。警察の管理と運営を保障するということを、特に二重に規定いたしましたのは、警察の管理というのは警察というものを内面的にコントロールするあり方を指標するものでありまして、運営の方は警察の働きが外に向つて執行される、その両方の面から民主警察を理念とするところの警察のあり方というものを、あくまで保障しなければならないという考え方に立つものでございます。これらの考え方につきましては、現行法におきましてはしばしば御指摘になつておりますように警察法の前文に民主警察のあり方について詳細な規定があるのでございますが、これも大臣その他からしばしば御答弁がりましたように前文を残すことも考えられるのでございますけれども、最近の法律の形式といたしまして、普通の法律には前文はあまり設けないという形になつておりますので、前文にこの字句を盛ることをやめまして、一にこの法律の第一条に集約的に現行法の前文にあるような民主警察の精神をそのままにうたうことにいたしたのでございます。現行法の前文の精神は、やはり民主的な警察の基本的な観念、それからまた同時に警察の職務の執行についての能率的な面もうたわれているのであります。なおいま一つ、地方自治を推進するという言葉が現行法の前文にあるのでございますが、この法律の一条には特に自治という言葉を用いてはございませんけれども、これは民主的な理念を基調とする警察の管理と運営を保障するという事柄の中に、自治を尊重するという観念もあわせて包摂しているつもりでございます。
次に第二条を御説明いたします。第二条は警察の責務でございます。これは現行法の第一条にも、ほとんどこれと同様の規定があるのでございます。さらに現行法の第二条におきましては、警察の行政管理ということと運営管理ということをわけまして、運営管理はどういう事項だということを列挙いたしてあるのであります。この法案の二条の方は、現行法の一条々規定するにあたりましてあわせて二条の方をも勘案いたしまして、警察の責務を明確ならしめたものでございます。大別いたしまして警察の責務は、個人の生命、身体及び財産の保護、それから犯罪の予防、鎮圧、捜査、被疑者の逮捕、交通の取締り、その他公共の安全と秩序の維持ということでありまして、犯罪の予防、鎮圧、捜査、被疑者の逮捕、交通の取締りまでは、その他公共の安全と秩序の維持の主要なる事項を例示したものとお考えいただきたいと思うのであります。二項は警察の責務というものが第一項に掲げるものに厳格に限定されなければならないという精神でございまして、これは現行法にあるままでございます。但しその中に今回は「不偏不党且つ公平中正を旨とし、」という字句を入れまして、警庭のあり方が、さらに不偏不党かつ公平中正でなければならないということを加えたのでございます。
第三条は、服務の宣誓の内容でございます。これまた現行法の第三条には、それと同様の規定があるのでございます。これはただ書き方を多少改めましたことと、その内容に、やはり第二条を受けまして、不偏不党かつ公平中正に職務を行うという趣旨が、警察職員の服務の宣誓の内容に入らなければならないということを、ことさらに加えたわけでございます。警察職員が服務の宣誓をしなければならないということは、それぞれの警察職員を律しております人事管理に関する法律、すなわち国家公務員の場合には国家公務員法、今度は地方公務員が大多数になるわけでございますが、地方公務員につきましては地方公務員法によりまして、人事院規則あるいは条例の定むるところによつて、それぞれ宣誓をしなければならないという規定があるのでございます。宣誓の義務は、それぞれの人事管理を律する法律によつてきまつているのでございます。この第三条におきましては、その宣誓の内容に、警察職員でございますから、特に一般の職員とは違つて、厳軍にこういう内容の宣誓が、その内容に含まれていなければならないという趣旨をうたつたのが、この三条の規定であると存ずるのであります。「この法律により警察の職務を行うすべての職員」の中には、公安委員も含まれております。ただ警察の職務を行うというところは、大体警察官、事務官、技官、公安委員、そういうところまでを含めまして、ただ機械的な労務に従事するような雇用人の類は、含まれないという解釈でございます。
次は第二章の国家公安委員会でございます。
第四条は、国家公安委員会の設置と組織を定めております。「内閣総理大臣の所轄の下に、国家公安委員会を置く。」国家公安委員会の行政組織法上に占める地位につきましては、現行法と本質的に何らかわりがございませんで、内閣総理大臣の所轄のもとに置かれるのでございます。この所轄というのは、御承知の通り国家公安委員会が、どこに所属しておるかということを示すものでございまして、指揮監督というような関係は含まれないきわめて弱い関係であつた、国家公安委員会は内閣総理大臣のところに属しておるのである。こういう解釈でございます。
二項は、国家公安委員会の組織でございまして、委員長と五人の委員をも
つて組織することといたしております。これもしばしば御幕の間において出ておりますように、今回は国家公安委員会の委員長に国務大臣を充てることにいたしたのでありますが、国務大臣を委員長に加えましても、委員長は会議の主宰者たることが主たる任務でございまして、残りのいわゆるほんとうに民間を代表する公安委員の表決によりまして、国家公安委員会の合議機関である性格というものが一貫して保たれ、その合議によりまして議事がきまつて参るということをいたしますために、委員長を加えましても、特に奇数でありますところの五人の委員を構成分子といたしまして、現行法通り五人の公安委員というものがある上に、さらにその議長であり、代表者であるところの委員長を加えて、委員長と委員で国家公安委員会が構成されるという仕組みにいたしたわけであります。
五条は、国家公安委員会の任務と権限を規定いたしておるのでございます。これも先般来御質疑がございまして、長官等から御答弁がございましたように、任務と権限というのは、最近におきまして、ことに戦後の法制におきましては、各省庁の設置法等におきまして、任務と権限をわけて規定いたしておるのでございます。任務の方は、大体抽象的なその官庁の使命、責務というようなものでございまして権限の方は、さらに具体的に厳密な意味の権限を規定いたしておるものと考えるのでございます。その抽象的な国家公安委員会の一般的任務といたしましては、三つの事項があるのであります。その第一は国の公安にかかる警察運営をつかさどるということ、第二は警察教養、通信、鑑識、統計、装備等に関する事項を統轄すること、第三には警察行政に関する調整を行うことといたしておるのであります。このような任務を遂行いたしますために、具体的な権限を第二項において限定をいたしまして、列挙いたしておるのでございます。第二項の各号列挙の事項は、特別な事項を除きましては、現行法の国家公安委員会の権限に、そのままのものがあるのであります。もちろん警察組織全体の変更によりまして、公安委員会の仕事の対象というものはふえて参つておりますけれども、この中の警察に関する諸制度の企画及び調査、それから国の予算、これは行政管理的な事項として、現行法も認めるところであります。それから第七十条の緊急事態、これは現行法では国家非常事態とある名前を改めたものでございますが、同じ趣旨のものでございます。次の皇宮警察に関すること、それから教養、通信、鑑識、統計ここまでは、いずれも現行法の国家公安委員会の権限の中に入つておるのでございます。そこで今回新たに規定いたしました公安委員会の権限といたしましては、第三号のイ、ロに列挙いたしました事案に関するもので、国の公安にかかるものについての警察運営ということ、それから十一号に掲げてございます「警察職員の任用、勤務及び活動の基準に関すること。」それから十二号の「前号に掲げるものの外、警察行政に関する調整に関すること。」それから十号の「警察装備に関すること。」でございます。警察装備に関することは、現行法には特にございませんけれども、やはり行政管理に関する事項といたしまして、国家地方警察については、実際問題として、国家公安委員会がやつておることでございますので、これは新たに加えたのでございまして、警察が府県警察にわかれましても、装備につきましては、やはり全体的な立場で統制をとる必要があるだろうという見地に基くものであります。任用、勤務、活動の基準、その他警察行政に関する調整につきましても、この法律におきましては、行政管理、運営管理という区別はいたしておりませんけれども、具体的な事件の指揮でありますとか、具体的な警察の執行面を直接統轄することではございませんので、単なる任用、勤務、活動のものさしであるところの基準を、示す必要がある限度において示す、また調整も、この前も御質疑がございました際にお答えがありましたように、本来府県警察が自由に活動する部面であるけれども、一つの国家的な目的であるとか、特別な目的から、どうしてもそれに対し最小限度の規制を加える必要があるものについての調整というふうに考えるのでございます。それから第三号のイ、ロに掲げますところの、国の公安にかかる警察運営に関することが、従来の法律に照し合せますときには、一つの運営管理事項とも称すべき事項として、この国家公安委員会の権限に新しく加わつておるのでございます。すなわち「民心に不安を生ずべき大規模な災害に係る事案「地方の静穏を害するおそれのある騒乱に係る事案」この二つの事案につきましてだけは、この法律の目的といたしておりますところの国がその治安責任を明らかにする。また国家的な非常に重しても、限定された範囲においての指揮監督権を持つという趣旨からいたしまして、最小限度に国が直接にその運営自体について関心を持たざるを得ないであろうものといたしまして、この大規模な災害と騒乱にかかる事案についての警察運営については、国家公安委員会の権限といたしたのでございます。この中で、騒乱ということにつきまして一応の御疑念があろうかと思いますが、この騒乱は、大体におきまして厳密な犯罪の名前としてのものではございません。地方の静穏を害するようなおそれのあるところの内乱あるいは騒乱、それに準ずるような事案、地方の静穏を害するところの事案、多衆の暴力破壊活動等によりまして、騒乱に準ずるような事態が現出された場合、また現出されるおそれがある場合、これに関連いたしまするところの事案につきまして、国が、この事項が公安という見地から黙つておれない、つまり必要がありと、認める事柄につきましての警察運営についての権限を持つのでございます。なおこの三号の内容につきましては、現行法と対応いたしますと、現行法におきましては、国家公安委員会の権限としてもちろんございませんけれども、二十七年の警察法の一部改正によりまして、六十一条の二に、内閣総理大臣が特に必要があると認める場合におきまして、指示権を府県ないし市町村の公安委員会に対しまして持つ規定があるのでございます。この場合は、公安維持上必要な事項について指示することができるということになつておるのでありまして、この公安維持上必要な事項というものに対しての指示権は、国会において御審議になりました際に、具体的に、「民心に不安を生ずべき大規模な災害」それから「地方の静穏を害するおそれのある騒乱に係る事案」それからいま一つ、「国の利害に係り、又は国内全般に関係若しくは影響のある事案」について、この指示権を発動し得るということになつておるのであります。今回の法律におきましては、この指示権の方は規定を撤廃いたしまして、国家公安委員会が常時権限を持ち得るものの中に三号として加えました。その半面におきまして、ただいま御説明いたしました指示権の場合にも発動があるものとして考えられております。ハの「国の利害に係り、又は国内全般に関係若しくは影響のある事案」という事柄につきましては、ハの内容が限定的でございませんので、読み方によりまして非常に広汎にも読まれるおそれがある。また今回の法案で、中央が指揮監督権を持つ場合におきましても、直接に常時運営そのものに権限を持つものはやはり府県警察で、府県警察が一般的に責任を負う。平時的な仕事については、これがことごとく負うという体制で参りますために、最小限度のものにいたそうという考え方からいたしまして、先般御説明いたしましたように、ハの事項は削除いたしたのでございます。そう
いうような事案につきましては、直接に運営そのものについてどうしろこうしろというような指揮をいたさなくても、先ほど申しました最小限必要なものさしとしての活動の基準でございますとか、教義でございますとか、あるいはまた警察行政に関する最小限必要な調整は、各地方が自由に行動できるけれども、それに対する一つの規制という点から調整することで何とかやつて行けるだろうという趣旨から出ているものでございます。第三項は、「国家公安委員会は、都道府県公安委員会と常に緊密な連絡を保たなければならない。」これは公安委員会同士が緊密な連絡を保つことは、警察相互の連絡をはかる上において、どうしても重要な事項だと思いまして規定をいたしてあるのでございます。
次は第六条で、国家公安委員会の委員長の規定でございます。委員長は御承知の通り国務大臣をもつて充てることにいたしました。委員長の職務は公安委員会の会務を総理し、国家公安委員会を代表することでございます。会の事務を総括いたしまして、かつ外部に対しましてこれを代表するものでございます。しかし委員会自体は、第四条にございますように、委員長及び五人の委員をもつて組織しておるところの合議機関でございますので、これの意思の決定ということは別問題でございまして、これは後の方に会議のやり方として十一条に規定をいたしております。委員長に事故がある場合でございますので、第三項は、あらかじめ委員の互選によつて、委員の中から委員長が故障ある場合においてこれを代現する者を定めておかなければならない旨を規定いたしました。
第七条は、委員の任命に関する規定でございます。まず委員の任命の資格でございますが、これは従前の資格制限を若干緩和いたしまして、現行法におきましては、官公庁における職業的公務員の経歴のある者は、これはことごとく資格がなかつたのでございますが、今度は警察と検察の職務を行う職務的公務員の前歴者だけを制限いたすことにいたしまして、それ以外の者は制限を撤廃いたすことにいたしたのであります。警察または検察の職務を行う職業的公務員の前歴者だけを制限いたしましたのは、公安委員会が職業的に運営されない、民間の良識と一般の良識というものによつて運営されるという精神からいたしまして、特に警察または検察の前歴者だけは制限をいたしておるのであります。委員の任命方式が両議院の同意を得て任命されること、そのほかこれに関する四項にございますところの欠格事由、それから委員の同一政党所属者の制限、同一政党所属者が過半数を占めないように、二人まででなければならないということにつきましては、全部現行法通りでございます。ただこの中において、現行法におきましては、委員の任命にあたりまして、衆議院が同意して参議院が同意しない場合においては、衆議院の同意をもつて両議院の同意とするという衆議院優先の規定があるのでございますが、これはやはり公安委員の任務の重要性にかんがみまして、両議院が同意をするということを必須の要件といたすために、この規定は削除いたしたのであります。その半面におきまして、公安委員に欠員を生じたままでおくということについての補充の規定がございませんので、三項におきまして両議院の事後の承認を得なければならないという規定を加えたのでございます。
第八条は、委員の任期でございまして、これは五年であり、現行法の規定通りでございます。
第九条は、委員の失職及び罷免に関する規定でございまして、これまた現行法の通りでございます。全然差異がございません。
第十条は、委員の服務等に関する規定でございます。国家公安委員は、これは特別職でございまして、黙つておりますれば国家公務員法によるところの諸般の服務の制限はないのでございますが、国家公安委員が公務員としての公平中正な立場になければならないという職責を持つ関係上、特に現行法におきましても国家公務員法の服務に関する諸規定を準用いたしておるのでございます。ただ現行法制定後、国家公務員法の方におきましてのいろいろの服務に関する規定がこまかくなつておりまして、国家公安委員の職責に適合するものと、少し無理だというものも生じておりますので、今回は、第十条におきまして、国家公安委員が国家公務員法の服務に関する規定を準用すべき事項を、その職責からして当然に準用する必要があると思われる事項に限定して、これを準用いたすことにいたしたのであります。その個々のものにつきましては、あまりに詳細になりますので、またお尋ねによつてお答えいたしたいと存じます。その限りにおきましての当然の読みかえを、その後段においていたしているのでございます。二項の、委員は常勤の職員と兼ねることができないというのも、現行法通りでございます。それから「委員は、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。」という趣旨も、おおむね現行法通りでございます。ただ書き方といたしまして、国家公務員法のその後の改正等によつて適当な整理をいたした次第であります。それから委員の給与は国務大臣と同じ報酬を受けなければならないという規定がございますが、給与につきましては、その後一般職の職員の給与に関する法律あるいは公安委員の場合は特別職の職員の給与に関する法律によりまして、現実に給与額がきまつておりますので、法律にそのことをうたうことはやめまして、「委員の給与は、別に法律で定める。」——別に定める法律の名前は特別職の職員の給与に関する法律であります。
それから第十一条は、国家公安委員会の会議に関する規定であります。現行法におきましては、特に公安委員会の会議のやり方につきましての規定はございません。公安委員会みずからが自分でその運営の規則を定めるということの中に含まれているわけでございますが、今回は、先ほど来申し上げましたように国家公安委員長に国務大臣を充てて、委員会が委員長と委員の両方から構成されるということになりましたので、黙つておきますと、会議の表決の上から、この会議機関としての性格について、いろいろ疑問を生ずるおそれがございます。そういう意味からいたしまして、特に十一条に会議の招集、それから会議の開催、議事につきましての規定を設けたのでございます。国家公安委員会は委員長が召集をいたしまして、委員長と三人以上の委員の出席すなわち過半数の委員の出席がなければ、会議を開いて議決することができないというようにいたしましたのが一つ、それから議事は、二項において出席委員の過半数でこれを決することといたしまして、委員長には表決権を認めないようにいたしております。そうして過半数の場合だけ委員長の決するところによることにいたしているのであります。また委員長に故障がありました場合に、いろいろの疑問が起り得る場合があることを念のために規定いたしましたのが三項の規定でございまして、委員長を代理する者は、その場合においては委員長の職務を行うのでありますけれども、議決に際しましては委員としての表決を失うものではない。委員としての定足数の計算についてはやはり委員であるものとする、こういうことにいたしたのでございます。委員長に表決権を与えないことにいたしまして、国家公安委員会の会議機関としての性格——中立性を保つことにいたしました趣旨につきましては、たびたび出ていることでございますので、詳細は省略いたしたいと思います。
第十二条は、国家公安委員会に規則の制定権を認めたのでございます。国家行政組織法によりますと、委員会はやはり規則を制定する権限があるのでございますが、特に国家公安委員会につきましては、その権限に属する事務につきまして、法令の特別の委任に基いて国家公安委員会規則を制定することができるという規則制定の根拠を明らかにいたしておく必要がございますので、第十二条にそのことを明記いたしたのであります。しかし規則制定権の範囲は、あくまでこの委任命令の範囲に属しているのでございます。法律か政令の委任かある事項についてだけ規則制定権があるのでございまして、もちろん一般国民に権利義務を与えるような規則制定権があるわけではございません。法規的な意味の規則制定権があるわけではございません。あくまで警察の内部的なものでございます。
それから十三条は、国家公安委員会の庶務の規定でございます。現行法は国家地方警察本部が国家公安委員会の事務部局だということになつておるのでございます。国家行政組織法上その通りのものになるわけでございますが、今回の法案におきましては、警察庁を国家公安委員会に置く、その他別な規定によりまして消防本部をまたやはり国家公安委員会に置くという規定がございますので、事務局としての重要な仕事はどちらがどういうふうにやるのか明瞭でございません。警察の仕事については、事務局的な仕事は当然警察庁がやることになり、消防の仕事については消防本部がやることになると思いますが、その共管のような事項につきましては、公安委員会の官印をどちらが持つているとか、公安委員自体についての俸給の支給その他特別なそういう庶務については、警察庁がやるのだということを明記したのが十三条の規定でございます。
十四条は、現行法にもございます通り、公安委員会の運営に関しまして、法律に掲げてございます以外のことについて、必要な事項については公安委員会自体が、自律的なものをきめて参れるという規定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/14
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015・藤田義光
○藤田委員 議事進行について。せつかく説明中でございますが、本日は本会議におきまして予算の採決が行われます。ただいま十二時から一時前後を期して、各党において両院議員総会あるいは代議士会が開催中でありまして、当委員会の委員もぜひそれに出席する必要があろうかと思いますので、最も重大な第二章の説明が終りましたから、本日はこの程度で散会せられんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/15
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016・大石ヨシエ
○大石委員 警察の人は御商売ですから、現行法も今度の改正法案もよく御承知ですが、私たちは専門家でありませんから、両方を資料として提供してください。それでないと何ぼ聞いていたつて私たちわかりませんよ。みながはつきりわかるようなものを持つて来てくださらぬとわからんじやないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/16
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017・中井一夫
○中井委員長 あなたの御趣旨は、新旧対比したものをほしい、こういうことですね。御趣旨はわかりましたから、御趣旨にかなうような資料を出すように要求いたします。政府におかれては急いでお出しになるように願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/17
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018・西村力弥
○西村(力)委員 資料をお願いしたいのですが、あとで直接お話したいと思いますから、委員会の意思として認めていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/18
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019・中井一夫
○中井委員長 心得ました。明日は午後一時、定刻より審議を進めたいと存じますから、さよう御了承願います。
本日はこれをもつて散会いたします。
午後零時四十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904720X02219540304/19
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