1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月六日(木曜日)
午前十一時三十五分開議
地方行政委員会
出席委員
委員長 中井 一夫君
理事 加藤 精三君 理事 佐藤 親弘君
理事 灘尾 弘吉君 理事 吉田 重延君
理事 鈴木 幹雄君 理事 西村 力弥君
理事 門司 亮君
尾関 義一君 熊谷 憲一君
西村 直己君 床次 徳二君
藤田 義光君 阿部 五郎君
石村 英雄君 伊瀬幸太郎君
大石ヨシエ君 大矢 省三君
中井徳次郎君 松永 東君
人事委員会
出席委員
委員長 川島正次郎君
理事 赤城 宗徳君 理事 田中 好君
理事 舘林三喜男君 理事 櫻井 奎夫君
荒舩清十郎君 池田 清志君
小山倉之助君 石山 權作君
加賀田 進君 森 三樹二君
池田 禎治君 受田 新吉君
法務委員会
出席委員
委員長 小林かなえ君
理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
理事 田嶋 好文君 理事 林 信雄君
理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君
理事 井伊 誠一君
押谷 富三君 花村 四郎君
中村三之丞君 猪俣 浩三君
神近 市子君 佐竹 晴記君
出席国務大臣
国 務 大 臣 小坂善太郎君
出席政府委員
人 事 官 入江誠一郎君
国家地方警察本
部長官 斎藤 昇君
国家地方警察本
部次長 谷口 寛君
国家地方警察本
部警視長
(総務部長) 柴田 達夫君
国家地方警察本
川部警視長
(刑事部長) 中川 董治君
国家地方警察本
部警視長
(警備部長) 山口 喜雄君
委員外の出席者
地方行政委員会
専門員 有松 昇君
地方行政委員会
専門員 長橋 茂男君
人事委員会専門
員 安倍 三郎君
人事委員会専門
員 遠山信一郎君
法務委員会専門
員 村 教三君
法務委員会専門
員 小木 貞一君
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本日の会議に付した事件
警察法案(内閣提出第三一号)
警察法の施行に伴う関係法令の整理に関する法
律案(内閣提出第三二号)
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〔中井地方行政委員長委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/0
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001・中井一夫
○中井委員長 これより地方行政委員会、人事委員会、法務委員会連合審査会を開会いたします。
先例によりまして私が委員長の職務を行いますから、何とぞよろしくお願いをいたします。
それでは警察法案及び警察法の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案の両案を一括して議題といたします。まず政府より両案の趣旨について説明を聴取いたします。
説明に先だちまして、委員各位にお諮りいたしたいことがございます。本日のこの連合審査会につきましては、各党派より多数の質疑の通告がございます。つきましては、この際各委員諸君の御質疑は一人につき三十分といたすということに御決定を願いたいのでありますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/1
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002・中井一夫
○中井委員長 それではさように決定をいたしました。
それでは説明をお願いいたします。小坂国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/2
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003・小坂善太郎
○小坂国務大臣 今回提出いたしました警察法案につきまして、提案の理由並びにその内容の概略を御説明いたします。
現行の警察法は、戦後早々にして占領政策の一環として施行せられたものでありまして、戦前のわが警察制度を根本的に改革して民主警察の理想を高揚した点においては、確かに画期的な意義を有してはおりますが、何分にも勿忙の間に当時の国際事情を反映しつつ制定せられましたため、わが国情に適しないところが多く、その運用の結果に徴しても非能率にして不経済の欠陥を免れず、しこうしてかかる欠陥を是正するために早晩抜本的な改正の肝要であることは、つとに世人の広く認めているところでありました。すなわち、現在の警察制度は、国家地方警察と市町村自治体警察との二本建となつておりますが、町村を管轄する国家地方警察は国家的性格に過ぎて自治的要素を欠除し、都市を管轄する自治体警察は完全自治に過ぎて国家的性格に欠くるところがあり、これを要するに都市と町村において性格の異なる警察が存在するという結果になつているのであります。しこうしてこのことは、元来国家的性格と地方的性格とを兼ね有すべき近代警察事務の運営にとつて適合せざるものを内蔵している結果となつているのであります。さらに、市町村自治体警察は、治安の対象地域が近時とみに広くなりつつあるにかかわらず、おのおのの市町村単位において独立しているのでありまして、この細分化された警察組織のもとにおいては、警察運営の責任もまた多数に分割され、従つてその有機的活動は著しく阻害されているのであります。もちろん従来といえどもこれらの警察相互間においては、あるいは人事の交流によつて意思の疏通をはかり、あるいは援助の協定を行つて連絡調整を密にする等それぞれ努めて参つたのではありますが、何と申しても制度自体が内蔵する欠陥の前には、運用の妙にも限界がありまして、ために警察単位の分割より生ずる盲点の存在が、警察の効率的運営をみずから傷つけて参つた次第であります。かつこの欠陥は、国の治安に対する責任の不明確という点にも大きく影響しておりますことは、近年頻発する種々の事件に関連して国民の記憶の新たなところであると存じます。さらに一方、行財政改革の見地に立ちますならば、国家地方警察と市町村自治体警察との施設及び人員が互いに重複していることは、国民にとつてはいたずらに複雑、かつ、不経済な負担となつているのでありまして、この面よりするも制度の根本的刷新の要は今や社会の与論であると申しても過言ではありません。
しかしながら現行制度における叙上の弊を改めるにあたり、警察の民主的な運営、言いかえれば国民の警察運営に対する干与はこれを依然として保障すべきはもちろんのことでありまして、この民主的な保障の基盤の上に、治安任務遂行の能率化と責任の明確化との二つの懸案の解決をはかつたものが今般のこの法律案の骨子となつている次第であります。
まずこの法律案の内容について主要な点を申し上げますならば、第一に公安委員会制度を存置したことであります。すなわち、警察の管理と運営の民主的保障を確保するため、中央、地方を通じて公安委員会制度を置き、警察を管理せしめることといたしたのであります。すなわち、中央においては、内閣総理大臣の所轄のもとに国家公安委員会を、また地方においては都道府県知事の所轄のもとに都道府県会安委員会を置き、それぞれ、国民を代表する委員からなる合議体の機関によつて警察庁、または都道府県警察を管理せしめることといたし、もつて警察の民主的な管理運営を確保し、かつ、警察の政治的中立性を維持することといたしたのであります。なおこの際公安委員に広く有為の人材を得るため、その資格の制限を大幅に緩和し、その制限は警察と検察の職業的前歴者のみに限ることといたしました。
第二には、警察を府県警察に一本化したことであります。すなわち、警察の能率的運営を保持するため、現在の国家地方警察及び市町村自治体警察はともにこれを廃止して、新たに都道府県警察を置くこととしたのであります。この理由については冒頭に詳しく述べましたので省略することといたしますが、ここに一言申し加えたいのは大都市の警察についての処置であります。大都市警察につきましては従来から種々議論の存するところでありますが、結論において、これを府県と併立させることは、大都市とその周辺地区とを遮断せしめ、このために警察対象としての両地区の一体性を阻害し、警察運営の有機的活動に著しき障害を来すのみならず、財政的にもきわめて不経済な結果となりますので、これを府県警察に一元化する必要を認めた次第であります。
第三に府県警察の内容であります。すなわち、都道府県警察については、国家的要請に基く最小限の制約を除いて、あとう限りこれに自治体警察としての性格を具備せしめることとしたのであります。すなわち、都道府県警察の性格は申すまでもなく地方公共団体たる都道府県の機関としての警察であり、言いかえればこれは府県自治体警察でありまして、知事の所轄のもとにある都道府県公安委員会が全面的にこれを管理いたし、その管理のもとに警察本部長が職務を行うのであります。従つてその職員は原則として地方公務員の身分を有するものでありまして、かつ、警察に要する経費については、一定の国家的警察活動に必要な経費を国が支弁するほかは、原則として府県の負担といたすのであります。また都道府県警察の諸般の組織や職員の人事管理その他の行政管理事項は、いずれも都道府県の条例で定めることといたし、これらの警察行政は都道府県議会における審議を通じて常に住民の公然たる批判の前に置かれ、しこうして住民の批判に制約せられる次第でありまして、この作用によつて自治体警察の特長と美点とを具備せしめたのであります。しこうしてこの精神に立脚しまして、都道府県警察は国家的な警察事務に限つて中央の警察庁の指揮監督を受けるものといたし、その事項は法律に明記して、警察の中央集権化のことなきよう十分の配慮をいたしたのであります。しこうしてこれがため警察本部長とごく少数の警視正以上の首脳職員は国家公務員といたし、これらは警察庁長官が国家公安委員会の意見を聞いて任免することとし、他面、この任免に対して管理者たる都道府県公安委員会は懲戒罷免に関する勧告権を行使し得ることといたし、もつて両者の権能につき均衡あらしめたものであります。なお、都の警視総監の任免は特にその地位の重要性にかんがみ、内閣総理大臣が国家公安委員会の意見を聞いて任命することとし、これに対する懲戒罷免の勧告権の所在は他の道府県の場合と同様にいたしたのであります。
第四には、中央の警察機構のことであります。すなわち、中央の警察管理機関たる国家公安委員会の委員長は国務大臣をもつて充てることとし、国家公安委員会はその管理のもとに警察庁を置いて国の公安にかかる警察運営をつかさどり警察の教養、通信、鑑識、統計及び装備に関する事項を統轄し、並びに警察行政に関する調整を行わしめることにいたしたのであります。さらに、国家公安委員会は、委員長及び五人の委員をもつて組織することとし、委員長は国務大臣をもつてこれに充てることといたしましたが、この委員長は会議に際して表決には加わらず、従つて国家公安委員会が政治的中立性を保つところの会議機関である現在の性格は今般の改正によつてもこれを一貫して堅持せしめているのであります。同時に委員長として新たに国務大臣が加わることにより政府の治安に対する国家的な考え方が国家公安委員会の中正な判断によつて濾過せられた上、警察運営の上に具現せられるようにいたしました。かくのごとくにして政府の治安責任と警察の政治的中立性との調和をはかつたものであります。また警察庁は国家公安委員会の管理のもとに、きわめて特定の国家的な警察事務を所掌し、これに関しては都道府県警察を指揮監督することといたしましたが、その事務の範囲は上述のごとく最小限の列挙事項のみに限定したのであります。従つて個々の一般犯罪の捜査のごときはこれを中央の権限より除去いたしたのであります。なお、警察庁長官は政府の治安責任を明確にするため、内閣総理大臣が国家公安委員会の意見を聞いて、任免することといたしましたが、他面これに対しては国家公安委員会が、長官の懲戒罷免に関する勧告権を行使し得ることは、道府県公安委員会の権限の場合と同様であります。
なお、この改正が実施せられます場合は、機構の簡素化により警察職員の数において三万人、経費において約九十億円を減少し得る予定であります。またこの改正の実施に伴い、国家地方警察職員も市町村自治体警察職員もともにその身分に変更を生ずる結果となりますが、この場合もつとめて新機構への受入れを円滑にいたしますため、職員の身分を保障するとともに、俸給の減額となるものについては、その差額について調整の措置を講じ、かつ、恩給、退職手当についても従来の在職年数はすべて通算することといたし、これらの誠実な職員の生活に不安を与えざるよう万全の配慮を払つております。しこうして従来の国家地方警察と自治体警察とがその用に供して参りました財産の移転につきましても、制度の切りかえに伴い支障を来すことのないよう、すべて国と都道府県、市町村との当事者相互間の協議により譲渡を行うものとし、特別の事情あるものについては債務を継承しまたはこれを有償とする等の措置を講じ得ることといたしました。なお、本法案が幸いにして成立いたしました上は、これを来る七月一日に施行する所存でおります。
以上本法案提出の理由及びその内容の概要を申し上げた次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
次に今般提案いたしました「警察法の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案」の提案の理由を申し上げます。
本法律案提案の理由は、今般提案いたしました警察法案と関連いたしまして、関係法令の規定を整理し、これに伴い所要の経過措置を定わる必要があるためであります。
この整理の方針といたしましては、関係法令中の関係事項について、警察法案の規定上当然に整理改正を要するものを改めることといたしました。経過措置につきましては、警察法案の規定及び本法律案による整理に対応して必要な規定を設けることといたした次第であります。
何とぞ御審議のほどをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/3
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004・中井一夫
○中井委員長 これより質疑を進めます。すでに各位の御決定をいただきました通り、各委員諸君の持時間は三十分であります。願わくは政府の答弁におきましても、簡明にその答弁を進められんことを願います。質疑は通告順によつてこれを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/4
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005・門司亮
○門司委員 審議に入ります前に、現在の治安状況についてちよつと緊急に大臣に意見を求めたいと思います。それは大臣の方がよくご存知でございましようが、総理大臣のところにかつてダイナマイトが送られた事実があります。それから、ごく最近にまた大磯の総理大臣の私邸に一人の若い者があばれ込んで、ジヤツクナイフで警戒の警察官に切りつけたという事実があるのであります。従つてこれらの問題は国内の治安状況から考えてみますると、きわめて険悪な様相を示しておるのでございまするが、これに対して、こういう総理大臣のところに物騒なダイナマイトが贈られたり、あるいはこの暴漢が襲撃するというような事案について大臣は一体どういうふうにお考えになるか、もし大臣の所信が聞かれるならこの際ひとつお聞きしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/5
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006・小坂善太郎
○小坂国務大臣 お答えを申し上げます。新聞等で御承知のように、先般のダイナマイトを贈つた事件に続きまして、葛原何がしという一人の若者が総理の大磯の私邸に参つたようであります。お話のように、ジヤツクナイフを持つていたのは事実でありまするが、殺意があつたのかどうか、またかりに殺意を持つておつたにしましても、アドルムを飲んでおるというふうな点からいたしまして、非常に計画的な、また目的を完遂せずんばやまずというようなそういう考えもなさそうに思えるのであります。往々にして陽気のかわり目などにはそういう者が出ることもあるのであります。私どもといたしましては、そういうことのございませんように十分に注意をいたす考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/6
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007・門司亮
○門司委員 どうも今の答弁ははなはだつじつまの合わない答弁であります。大臣は、陽気のかげんでそういう者が出る、それを出ないように警戒しあるいは処置するというお話でありますけれども、これはどうも陽気のかげんで出る者を国、政令で、あるいは法律で、あるいは力で抑圧しようといいましてもこれはできない問題でございます。だから、そういう答弁はひとつたな上げしておいてもらつて、なお、今のような状態については私ども安心ができませんので、さらに突き進んで大臣に聞いておきたいと思いますことは、ダイナマイトを贈つたということと今度の事件とについて、もう少し詳細にその原因その他がもうわかつていると私は思いますので、わかつておるといたしますならばその真相をこの際一応発表しておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/7
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008・小坂善太郎
○小坂国務大臣 真相を発表しろということでございますから、国警長官から御答弁申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/8
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009・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 ダイナマイトを贈りました事件につきましては、ただいま東京の警視庁が中心になつて克明に調べておりますが、まだ何者がやつたのか、よく判明をいたしません。また今度の葛原某の大磯の吉田総理私邸に侵入いたしました事件につきましては、新聞等で御承知のように去る三日の午後七時二十分ごろ、雨の土砂降りの中に本人が総理の私邸の、正面の入口でない、横の方から入りまして、そうして警戒中の巡査に発見されて、そこで巡査と押問答をし、巡査にジヤツクナイフをもつて切りつけて参りました。そこで格闘になつたのでありますが、巡査がジヤツクナイフで切りつけられて若干ひるんだところを、吉田総理の私邸の勝手口から中に侵入をいたしましたときに、護衛の警察官がこれを逮捕いたしたのでございます。その侵入の理由は、本人は総理を殺害する意思があつた、かように申しておるのでありますが、侵入前十分にアドルム三十錠を飲んで入つたということも事実でありまして、これは逮捕後、医者の手当によつて吐瀉をせしめたのであります。従いましてただいま大臣もおつしやいましたように、はたして殺意を持つている者が侵入前に睡眠剤を飲んで、一体殺害ができるものと思つておつたかどうか、この点若干まだ疑問に思つておる点があるのであります。本人は思想的な背景と申しまするか、いわゆる右翼、いわゆる左翼というものには全然関係がない模様でございます。文学を愛好しておる青年でありまして、二日に大阪から出て参りまして、東京に一旦参り、総理か大磯におられるということを目黒の官邸の近くで聞きまして大磯の方へ向つた、かようなことに相なつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/9
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010・門司亮
○門司委員 大体ごく概略の御報告でございましたので、なお詳細については明日の委員会までくらいに書類でひとつ出してもらいたいと思いますが、私が聞きたいと思いますことは、思想的の背景がない、こういう御答弁でございました。思想的に背景がなくて——さきにはダイナマイト事件はまだ十分調査ができていないようなお話でありますが、思想的の背景があればこれはあるいは示唆されたとか扇動されたとかいうような事実が出て参るのであります。従つて本人自身の意思であるか、あるいは所属している団体から、そういう角度で犯罪の行為に出たかというようなことは一応わかるのであります。しかし思想的な背景も何もない若い者が、わざわざ大阪から東京に出て来て、首相の所在を突きとめて犯行をするということは、アドルムを飲んでおつたから殺意がなかつたとかあつたとかいうことを申されておりますが、事実の経過からいえば、私ははつきりとした殺意があつたものだというふうに考えざるを得ないのであります。ただ殺意があつて、凶行後における自分の身の処置を少し早まつた行為をしたというだけで、私にはそういう今までの経過から見れば、はつきりさつき申し上げましたように殺意があつたものと言える。従つてこの世間の風潮というものは、私は端的に現在の日本の政界の様相というものを映し出した一つの現われだと考える。従つて大臣に聞いておきたいと思いますことは、さつきのような御答弁でなくして、一体そういう事犯がどうして起るのか。このことはこの警察法を審議いたします上において非常に重大な問題であります。ただ政府は警察法を審議して力だけを強くすれば、それで一切の国の治安が保てると考えているところに私は非常に大きな間違いがあると思う。従つてどうして一体そういう事犯が起らなければならぬのか。大臣はさつき気違いだと言われましたが、気違いがわざわざ大阪から出て来て、首相の所在まで突きとめて私はなかなかやらないと思う。これは私は気違いの所作にしては少し念が入り過ぎていると思う。われわれは陽気のせいと考えられない。従つて大臣は、こういうことを申し上げるのもいかがかと思うのでありますが、陽気のせいということにしないで、真剣にそういうもののよつて来た原因は、一体当局としてはどういうところにあるかということを、もう少し率直にお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/10
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011・小坂善太郎
○小坂国務大臣 お答えいたします。私がああいう御答弁を申し上げましたのは、こういう一人の若者が出たということを、非常に大きな問題にされるということが、次に何となくそういう英雄心理を満足させるような気分を起すことを恐れたので、そう申し上げたのであります。本人の所持品につきまして国警長官からもお話がございましたが、週刊読売の一人一殺というのと、ステイーヴンソンの「若い人々のために」という本を二冊持つております。その他エロ小説的なものを四、五枚原稿用紙に書いて持つている。本人は二年前から総理の身辺をねらつておつたのだ、こういうことを言つておるという話でございますが、いまだその真相につきましては十分調査いたしておりません。いずれ後ほどまた御報告いたす機会もあるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/11
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012・門司亮
○門司委員 大臣の答弁は私の質問とはピントがはずれていると思う。私は今取締りの内容とか経過を聞いておるわけではありませんで、こういう物騒な世の中になるということは、一体どういうことでこういう物騒な世の中になるということの大臣の所信を伺つておるのであります。ただ単にやつた者がこういう性格を持つていたとかどうとか言うのじやない。私は一つのダイナマイト事件だけのことならそういうことは考えませんが、すでに殺意を持つた者が首相の私邸にあばれ込んでおることは間違いがないのであります。従つてこれらの世相というものは、あまりいい社会にこういうものが起るはずはないのでありまして、従つて今日の治安の状況から見て、大臣は世相を一体どういうようにお考えになつておるか。一体いい世相とお考えになるのか悪い世相とお考えになるのか。悪い世相とお考えになつているのなら、どうして悪いということを率直にひとつお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/12
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013・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私の答弁の趣旨を御理解願えないのかとも思いますけれども、御承知のように敗戦によりまして非常な打撃を受けて、その後の建直しを以来八箇年日本国として努力して来ておるわけであります。この間非常に経済状態がいいということは申し上げられない。何とか経済状態をよくして、そうして民心を安定させたい、こういう気持ちで八年間いろいろ政府がかわりましたが、どの政府もそういうことを念願してやつておつたということは言えると思います。今私が申し上げたのは、所持品について暗示的に申し上げたのですが、ちよつとかわつたかつこうの性格の者ではないかと思うのでありまして、気違いであるとも断定もいたしませんし否定もいたしません。ただそういう者が出たということを非常に大きな問題としてお取上げになるということは、かえつて人心の不安を招く、こういうことを恐れまして、そういう心境を申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/13
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014・門司亮
○門司委員 どうも大臣からあまり政治的にそういう答弁をしてもらうと、だんだん話が長くなります。日本の国で総理大臣が暗殺され、あるいは暗殺されようとした事件はたくさんあります。歴代の総理大臣で現職中暗殺された人はたくさんあります。それらの諸君については、いずれもやはり社会的のかなり大きな影響がそういう事態を引起したということは大臣もよくおわかりだと私は思う。従つて今度の事件も、総理の身辺については相当な警戒をされておつたにもかかわらず、ああいう事件が実際に総理の私邸で起り、しかも大臣は今それは単に陽気のせいではないかというようなことで、あまり大きくしてもらいたくないというような御答弁でありましたけれども、私は少くとも一国の総理大臣が暗殺をされるというようなことは、こまかい事件としてこれを一笑に付するわけには行かない。しかもそれが一回でなく二度であります。さつきも申しましたように、今までも総理大臣の暗殺事件あるいは傷害事件というものは社会的に大きな原因があつたと思う。今度の場合も、われわれに言わしめてもらいますならば、こういういろいろな原因を持つておると思う。従つてそのこと自体を、警察を担当されておる大臣から率直に聞いておきたいと思うから私は申し上げたのであります。
それなら最後にはつきり私は聞いておきますが、歴代の総理大臣の暗殺事事件と今度の事件とについて小坂さんは、そういう切迫した事態ではないのだ、単に今までの議会の答弁のように、あるいは多少気の狂つた者が気まぐれにやつたのだというような答弁のように聞えるのでありますが、私は決してそうではないと思う。一人の人間が一人の人を殺そうという殺意を持つて、しかも自分がその凶行を行つた後においては自分の命を絶とうとするものの考え方というものは、単に一種の気違いとしてこれを片づける筋合いではないと私は思う。従つて今のような答弁でなくして、率直にもう一度、歴代の大臣の暗殺された事件と関連して、今度の事件はそう簡単に見のがすべきものでないと私は考えておりますが、大臣はあくまでもこういう事件は大きくしない方がいい、さつきの答弁でいいというようにお考えになつておるのであるかどうか、この点もう一度はつきり聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/14
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015・小坂善太郎
○小坂国務大臣 門司さんにもう御理解願えるかと思うのでありますが、最近、人を殺すということを非常に簡単にやるような、一種の変質的な風潮があるということは認めざるを得ない。たとえば七歳の子供を便所の中で殺す、こんなことは今までもなかつたことで、非常にそういうことを手軽にやる、あるいは行きずりの妙齢の女の乳を刺して殺してしまつた、こういうようなことが最近非常に行われて、まことに困つたことであると思わざるを得ない。そういうものの一環として、あるいはそういうものの対象が総理の私邸に向うということもあるかもしれぬ。しかしそれをもつてあなたのおつしやるように、非常に危機的な人心であるというふうには判断いたしておりません。従つて全般的に、総合的にお考え願いたい。しかしてその所持品も、あるいはエロ小説を書いておつた、そういうようなちよつと変質的なところがある人だと思える。しかしそういう者はあることはあるのでありますか一ら、それに対してはそういうことのないように十分心がけたい、こういう気持を申し上げておる次第であります。
〔「委員長、関連して」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/15
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016・中井一夫
○中井委員長 ひとつこの程度で緊急質問はやめていただきたいと思います。そして本来の質疑に入りたいと思います。理事会の申合せもそうなつておるのでありますから、緊急質問につきましてはこの程度にいたしたいと思います。
〔「異議なし」「治安に関係しておるのに関連質問をやらせないのか」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/16
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017・中井一夫
○中井委員長 田嶋好文君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/17
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018・田嶋好文
○田嶋委員 私は警察法案につきまして質問をいたすのでございますが、実査はこれはたいへんな法律でございまして、われわれ法務委員会の立場から申し上げますと、皆さんのお言葉を聞いておりましても、やはり一人について一日くらいな余裕をもらわないと、とてもだめじやないかということが言われております。しかし相当警察法案も大詰めになつて参つておるのでございまして、かえつてそれによつて審議が延びるということになれば、その趣旨にも沿いませんので、この地方行政委員会の御希望によりましてわれわれもそうしたことを遠慮申し上げて、きように臨んでおるのであります。特に時間が三十分に制限されておりますので、微に入り、細に入りこれを確かめることができませんことを、非常に遺憾に存じております。そこで私は申し上げますが、実はこの法案はわれわれ自由党の立場からいたしましても、党内で十分論議を尽し得なかつた法案でございまして、この点遺憾ながら、やはり委員会においてその内容をつまびらかにする以外に道がございません。その趣旨に従つて質問を展開するのでございます。実はこの法案につきましては、去る十五国会で国会解散のために審議未了に陥つたような先例を持ち、このとき私は法務委員長といたしまして政府に質疑をいたしたことがございます。従つてその当時の質疑の信念というものは、いまだ私はかえておりません。しかし今回提出されました警察法案というものは、その当時の法案とは非常に趣を異にしておりまして、内容的にも相当かわつておるのであります。まず私たちが知りたいと思いますことは、十五国会以来、国会は解散になりましたが、自由党の政府というものはいまだにその形をくずしてない、総理大臣もその当時の状態から今日まで続いておるのでございまして、十五国会に提案された法案が、どうして今回の法案のように変化された形において、国会に提案されなければならないようになつたのか、この事情をまず承つておきたいと思うのであります。私の質問は時間に制限されておりますから詳しく聞けませんので、この点は少し詳しく、ひとつつつ込んで御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/18
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019・小坂善太郎
○小坂国務大臣 お答え申し上げます。十五国会において警察法案を種々御審議をいただきまして、その審議の過程を通しまして国民の代表としての議員の皆様方の意のあるところを、十分私どもといたしましても承つたのであります。またその後において行われた選挙に際しましても、一層身近に、国民大衆の考えるところのものに触れて来られた皆様方の御意思を十分に承りました。その結果によりまして今回の警察法を立案いたした。かような点がその主たる、よつて来るゆえんであります。当時公安委員会というものにつきましては、現在よりも少しその性格が落ちておつたかと思うのであります。やはり民主的管理を表面に強く打出す、こういう点が今回の法案に盛られておりますように、公安委員会を非常に前面に押し出したゆえんであるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/19
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020・田嶋好文
○田嶋委員 答弁が抽象的で非常に残念に存じますが、時間がありませんのであまりつつ込んで聞きません。一つ聞きますが、当時法案を提出いたしまして、それに対しては改進党方面から府県単位の自治体警察という線が非常に打出されておる。そこで当時の空気としては、これに対して自由党も耳をかさなければならないというような空気であつたことを、私は委員長といたしまして十分知つておるから質問するのでございますが、そうした改進党の党内事情を考慮し、この法案が改進党との妥協案によつて成立する可能性を持つという線を打出して、今日提案されたのではないかどうか、この点を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/20
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021・小坂善太郎
○小坂国務大臣 そうした点も相当に考慮されておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/21
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022・田嶋好文
○田嶋委員 そうして今日の段階におきましては、改進党の意見と自由党の意見とが相当食い違つておるように考えられるのでありますが、この点政府はいかような御処置で臨むつもりか。原案をそのままの形において押し通さなければならぬと考えておるのか。大いに考慮する意思のもとに本日臨んでおるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/22
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023・小坂善太郎
○小坂国務大臣 ただいま申し上げましたように、選挙を通しての考え方にもいろいろ聞くべき点があると存じまして原案を作成いたしたような次第でございます。政府といたしましては原案を最良のものと考えて御審議を願い、御可決あらんことを熱望いたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/23
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024・田嶋好文
○田嶋委員 大臣も御承知でございましようが、この警察改正法案が国会に提出いたされまして以来、日本の新聞という新聞がみな論説を掲げまして、この警察法案に対して反対の論法を展開いたしたことは、これは御記憶に新たなところだと思います。ここに新聞の切抜きがございますので、その日にち、論説すべてを説明してよいのでありますが、遺憾ながら時間がございませんから、説明できません。この新聞の掲げておりますところの論説について、政府はいかなるお考えをお持ちでございましようか。新聞の論説は少し耳をかすべきものだとお考えになつておりますか。一顧だにする必要のない世間の単なる一つの意思表示であつて、尊重すべき必要はないというお考えのもとに進んでおられるのでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/24
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025・小坂善太郎
○小坂国務大臣 新聞の論説等も私も非常に気をつけて拝見いたしておるつもりでございますが、概観的に申しまして、十五国会の際におきまする新聞の論調に比較いたしまして、今回の場合はやや緩和されておるように心得ております。やはり民主的管理ということが前面に打出されておる点につきましては、新聞論調もよほど好感を持つておるのじやないかと思いますが、何と申しましても警察の権能というか、職能と申しますか、国家的性格を強く必要とする面もありますし、一方民衆によく理解せられ、親しまれる自治体的要素を表面に打出しておる点もあります。その相互の調整が非常に問題でございます。新聞の論調も、公安委員会を表面に出すことはよいが、これが運営についていわゆる国家的存在というようなことを懸念するあまりの論調でございまして、私どもといたしましては十分耳をかしますが、新聞論調をベターなものとするということは例がないことでございますので、御意見はつつしんで承る考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/25
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026・田嶋好文
○田嶋委員 新聞の論調を見て参りますと、今回の法案は口をそろえて国家警察的色彩が多いのだ、こういうことを言つております。私たちもやはり国家警察的の色彩が濃いということになれば、これは当然考えなければならぬものだと、こう考えるのであります。民主警察的の色彩を持つておるという説明は、提案理由の説明でよくわかりますが、民主警察としての自治体警察的の性格を持つておるという説明でなしに、国家警察的色彩が濃くないという論拠はどういうところに政府は求められるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/26
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027・小坂善太郎
○小坂国務大臣 警察を非常に国家的な必要の面を強く打出しますために、むしろ公安委員会というものを抜きにいたすというのでありますが、そういうことではいけませんので、公安委員会を強く前面に打出しまして、長官の懲戒罷免勧告権を与えるというふうにいたしまして、民主的の管理ということを前回に比しまして非常に強く出しておる点、御了承いただけるかと思うのであります。
さらに自治体は現在は府県も自治体でございますし、町村も自治体である。町村別に全部警察を置いて現在までやつて参りましたところ非常に重複する、国民の租税を非常に不経済、非能率に使う面もございます。これは自治体警察自体の運営がよいとか悪いとかいうことではなくて、制度から来るものでございますが、そういう点もございますし、また広域犯罪というものに対しましても盲点が出て来るという面もありますので、それを総合調整して府県自治体警察、こういう考え方をしております。府県におきまして行います公共事務というものと警察事務はちよつと違うと思いますが、府県の自治体にこの警察の行政事務を団体委任する、こういう形が今回の警察法改正の論拠になつておる、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/27
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028・田嶋好文
○田嶋委員 実はこれは大臣御承知だろうと思うのでありますが、現在の府県の公安委員会というものは、実際のところは公安委員会といつても何ら権限のない公安委員会、飾り物のようになつていることは御承知だろうと思う。なぜ府県の公安委員会が飾り物になつているかと言えば、国警長官が隊長の任命権を持つて、隊長の直接の指揮権を持つているものですから、府県に公安委員会というような名前の委員会がございましても、それが活動しようとしても活動できない、だからこれが飾り物になつている。この今日の府県の公安委員会というものに対しては、これはだれしも否定する人はないと思います。実際上これは何ら機能を発揮しているものではございません。この原案を見ますと、その公安委員会のような行き方、しかも任命権はやはり長官が持つということになりますと、公安委員会というものをつくつても、それは名のみであつて、現在の公安委員会が隊長の任命権を持たない公安委員会であるために機構として死んでおるということになれば、やはり任命権を持たない公安委員会が府県に置かれたところで、現在の公安委員会と何ら変化はないのでございまして、それでは国家警察としての色彩をより一層強くするという見方しか生れないものだと私は考えるのでございますが、この点いかがでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/28
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029・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私の言葉が足りなかつたと存じますが、現在のいわゆる府県の警察隊長というものは、国が任命しておりまして、それが府県の管理を何ら受けないわけでございますが、今回の改正案によりますと、まずその地方の本部長を任命いたします場合には、やはり国家公安委員会の意見を聞いて任命をいたします。また意に反するときには懲戒罷免の勧告権を持つわけであります。なお地方に参ります。と、いわゆる警視正以上が国家公務員でありますが、全体の警察官が十三万、今度整理いたしまして十一万程度になりますが、そのうちいわゆる国家公務員というものは、隊長を除きまして二百名、隊長を入れて二百五十名程度でございます。非常にわずかな人数の者が府県の中に参りまして、一方府県の公安委員会が罷免勧告権を持つているということになりますと、実際上現在とはまるで違つて参りまして、結局公安委員会というものの比重が重くなつて参るかと存ずるのでございます。なお一般の日常の経費等につきましても、府県議会の予算審議を経るわけでありますから、現在は、府県というものとはちよつと離れた形で国家地方警察の隊長が行つておるというかつこうで、公安委員会は非常に浮いてしまうということもあるかと存じますが、今度の改正案によりますれば、その点は非常に是正されることと存じます。
なお国家公安委員会の資格でございますが、従来はあらゆる官職にあつた者はいかぬ、こういうことになつております。そういたしますと大学教授で非常にりつぱな方であるとか、あるいは外国に使いして非常に世界的の知識を持つているという人も、すべてなれぬということになりますのでこの制限は、検察と警察の専門家以外はいいというふうに、大幅にゆるめることにいたしております。そうすると実際職能から見ましても、また運営する能力といいますか——現在の方にも十分それはおありになると思いますが、抽象的に見ましても、そうした運営をする母体の力はよほどかわつて来るのではないか、かように考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/29
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030・田嶋好文
○田嶋委員 任免権を持つた地方の自治体公安委員会ですら、今日その職能が十分発揮されていないという非難をわれわれは聞いているのであります。現職の警視総監を任命される立場にある人の権限が、非常に強いということをいわれている今日でございましても、そうした任命権を持つた機構ですら弱いのに、その任命権をただ同意くらいで済ます公安委員会では、これは公安委員会としての職責の十分なる執行、また民主警察としての職責の執行は不可能じやないか。むしろもう少し強い権限を与えてもいいんじやないか。要するに強い権限を与えておいても弱くなるところの傾向にある公安委員会であるから、強い権限を与えたところでちようどよいのではないか、均衡がとれるのではないか、こういうふうにわれわれは考えるのであります。もう一度申しますが、強い権限を与えているものですら公安委員会は弱くなる。そのものに対して弱い権限を与えれば、なお一層機能の発揮ができないで、飾り物になつてしまうということを考えなければならない。こういうものに対してはやはりある程度強い権限、要するに地方の公安委査員会に任命権を持たすということで、ちようどいいところにおちつくのではないかという考えを持つのでありますが、この点いかようにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/30
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031・小坂善太郎
○小坂国務大臣 公安委員会を尊重するという考え方については、私もまつたく田嶋さんと同意見でございますが、ただ地方の公安委員会が人を選びます場合に、その範囲が非常に限定せられやしないかということを考えるのであります。やはり警察事務というようなものについて非常に達識の士というものは、中央におきまして全国的規模においてにらみ合せて考えるという方が、よりよき人材を得られやしないかというように思いますので、委員会を尊重するという御意見はまことに同感でございますが、私どもの提案の程度がいわゆるチエツク・アンド・バランスういう点から行くと妥当ではないか、かように考えているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/31
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032・田嶋好文
○田嶋委員 次に私は人権の立場から少しお尋ねしてみたい。私は実は人権の尊重ということを中心にしていつも国会に臨んでおります。そこで最近の疑獄事件なんかでもそうしたことを中心にながめているのでございまして、そうした事件を中心にして検察庁のやり方をながめておりますと、非常に危険な線もたくさん出ているようであります。それから最近新聞紙上をにぎわしている、たとえば東大の某助教授の家に警察官が知らぬ間に入つて行つて本を調べておつた。それから高知県の某所で郵便が秘密的に警察によつて調べられた。今国会が始まつて以来、新聞紙上に出たものだけでも、もう六件以上を数えておると思うのでありますが、こうした点に対して、これは地方の警察官が自由におやりになつておるのであつて、別にその背後関係はちつとも御心配がないのだ、国家としてこれらに対して目を向ける必要はないのだというふうに、担当大臣としてお考えでございましようか、この点を伺つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/32
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033・小坂善太郎
○小坂国務大臣 人権の尊重ということは、私は民主主義の根本であると考えております。
〔委員長退席、加藤(精)委員長代理着席〕
従いまして、いわゆる官憲であろうと民間側であろうと、人権尊重という点について、いやしくもこれを軽く見ることがあつてはならぬと考えております。ただお示しのようなことにつきましては、私も着任後まだ日が浅いのですが、なお十分検討さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/33
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034・田嶋好文
○田嶋委員 そこで私は国家警察のことからこれを心配するのですが、かりに国家警察的機能においてこうしたことを訓練し、こうしたことを使嗾しておるというようなことがあつたとしたならば、大臣はこの責任などこににあるとお考えになるでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/34
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035・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私もそういう仮定のことはよく存じませんが、なおよく研究さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/35
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036・田嶋好文
○田嶋委員 国警長官にお尋ねいたしますが、これはどこまでも仮定論になります。仮定論であるから、答えなと言えば答えないでけつこうであります。かりに国警がそうしたことを使嗾して、国警の警察官がこれをやつておるということになれば、責任はどこにあるのでしようか。国警長官でしようか。国家公安委員会でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/36
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037・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 私といたしましては、人権の尊重というものに最も深い注意を払いまして、あらゆる捜査につきましても人権の尊重を基底に置くように教養訓練等においてもいたしておるのでございます。それを逆に、さような人権蹂躙をあえてするような示唆をいたしておる者があるといたしますれば、監督の責任は私及び私を監督しておられる公安委員会にあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/37
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038・田嶋好文
○田嶋委員 私はこの問題は、仮定論でございますからそれ以上追究いたしません。そこで私はやはり人権の立場から論ずるのですが、実際かどうかわからぬのですから、これも仮定論になるかもわかりませんが、こうしたことが現実に行われた結果、そういうことが行われたということです。こういうことが行われた結果そういうことが行われたのではおかしいのですが、もつと具体的に言いますと、そうしたことを国警内において訓練をし、しかもまたその訓練に基いて責任ある人がああせよこうせよと言つたということになつて来ると、これは国家警察的な色彩の濃い制度のもとにおいて考えますと、非常に懐然たるものがあるのでございますが、こうした方面に対して担当大臣責任が持てるでございましようか。この点を伺つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/38
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039・小坂善太郎
○小坂国務大臣 今度の御審議いただいておりまする警察法案におきましては、政府の責任をより明確化するという趣旨で、担当大臣が公安委員会に出るようになつております。そうした趣旨は、よい意味での政府の意図を十分委員会に反映するということでありまして、何も委員会を指導するとかいうような考え方は毛頭持つておりません。責任をより明確にするということであります。なお私どもの意図いたしますところは、府県自治体警察を原則的に一本にするということでございまして、非常に国家的に色彩が強くなるということではないので、より能率的な警察運営にしようということでございまして、ただいまの御懸念につきましては、そういうことがないように心得ておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/39
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040・田嶋好文
○田嶋委員 私たちもないことを希望するのでありますが、もしも今夜あたりの新聞にそれが事実として具体的な事実を指摘して、しかもこういうことをやつておるというようなことが青天の霹靂のごとく出て来た場合はたいへんだと思いますが、これは仮定論ですからおそらく出て来ることはないと思いますが、もし出て来たような場合そういう事実が具体的になつても、なおかつこの法案を政府の金科玉条の法案として絶対通して行つて、あえて世間に対しても恥じないということになりましようか。仮定論でございますので、私の質問も非常にむずかしいし、お答えもむずかしいと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/40
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041・小坂善太郎
○小坂国務大臣 現在の制度は、政府の責任というものが警察に関しましては非常にあいまいであると思うのであります。これは国家行政組織法上の建前からいたしますと、国家公安委員会というものが総理大臣のもとにあつて総理がそれをやつておる。しかし総理がその方面ばかり担当できぬので担当大臣を置いておる。今度の警察法はそういう場合の責任を明確にするということが、その根本の趣旨になつておるのであります。私の今の立場ですと、国会において御答弁申し上げる、あるいは予算編成の場合、これについて発言するとか、あるいは執行上の監督をするとか、こういう程度に限られておりまして、むしろそういう場合に政府で責任をとるかと言われますと、より一層責任が明確になりまして、そういうことがないようになるのではないか。これは決して国警中心の法案の改正ではないのでありまして、いわゆる府県自治体警察、私どもはこういうふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/41
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042・田嶋好文
○田嶋委員 それはわかります。府県自治体警察については、私どももこの趣旨に別に反対するものではございません。むしろ賛成するのでありますが、府県自治体警察ということが根本になりますれば、先ほどから質問しておりますように、やはり府県自治体警察が根本になるような法案、要するに府県自治体が実権を握れるような法案の形に持つて行つた方が一番理想的な形としていいのであつて、それを新聞の論調のごとく世論のごとく国家中心の警察だというように持つて行くことはまずいのではないか。そういうことが府県自治体警察ということになれば、現在の法案の形はまずいのではないか。むしろ府県自治体警察で世論も支持し、国会の審議でもなるほど改進党あたりの言つておりますように、またわれわれの考えもある程度述べておりますように、そうした線へ持つて行く。要するに政府の答弁しておるような府県自治体中心の機構に、府県自治体中心の法案の形に持つて行く方がいいのではないかと思うから、重ねて何回も質問しておるのでありますが、その点もう一度お答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/42
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043・小坂善太郎
○小坂国務大臣 私は府県自治体警察というものは、こういう形がよかろうかと考えておるのであります。と申しますのは、警察事務は今御承知のように国家的色彩の強いものと、自治体自体でやり得るものと二本建になつておる。どちらを立てましても——あまり国家的性格のみを強く出しますといわゆる角が立つようであります。自治体性格のものばかりをあまり表面に出すことにいたしますれば、いわゆる情に流される。その中間をとりまして、国家的な犯罪にも対処する、あるいは国家的な事務を処理する面をあわせ出して、しかも府県中心の自治体警察、こういう考え方で両方の折衷案としてこれを考えておる次第であります。自治体ばかりということになりますと、またそこにそれ相応の弊害が出て来る。かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/43
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044・田嶋好文
○田嶋委員 そこで今度は自治体の方へ少し移りますが、アメリカが日本を占領いたしまして、そのもとにできた警察制度に私は決して満足しておりません。これは十五国会でも申し上げております。警察法案に対してはぜひ改正しなければならぬという考えで進んでおる一人なんですが、私どもの考えとしては、警察が国会に対して責任が負えないというような制度では困る。どこまでも国会に対しての責任が負えるような警察制度に改正しなければならぬ。こう私は考える。その点政府の考えと私の考えは一致するところが多々あると思うのだが、それと同時に
一方では、民主的な警察というものはぜひ必要である。警察法の改正にあたつてはこの二本を、国会に対して責任の負えるような警察制度、その一方において自治体の精神を生かして、かつての日本の警察のように世間から非難を受けないような警察この線もぜひ生かして、この両線をうまく調節してつくつて行くのが警察法の改正でなければならぬ、こういうような信念で今日まで私は臨んで参つております。それが今度の法案だといえばそれまでのことでございますが、そこで私たちは、この意味においてはやはり上から下へ通す線があると同時に、その線に沿うたところの、現在ある自治体警察の機構というものも、ある程度生かしていいんじやないか、というのは自治体警察が今日まで七年続いて参りましたが、この間に世間から相当批判もされたわけですが、批判をされますと同時に、自治体警察のいい面、要するに民衆に親しまれて、そうして警察官が民主的になつて来たというように世間からよく言われている面もあるのでありまして、このよく言われた面までもなくして、そして再びわれわれが非難を受けたような警察の線に近いような警察を生かす必要はないじやないか、こういうように考えるのであります。実は具体的に例を引きますと、私はおととい岐阜県の大井というところへ行つて参りました。そこであの木曽川を船で下ろうというので船を用意しようとしたところが、雨は降つて来るし、なかなか用意ができない。頼むところがないものですから、警察に参りまして、私の身分を明かして、今、非常に困つているんだ、交通機関も何もない、雨は降つている、何とかあなたの方のお力添えによつて、船を一そう用意していただけないだろうか、こう頼みましたところが、そこの署長さんがいませんで、部下の人でしたが、こう言うのです。警察はそういうことに対して、めんどうを見るところじやございません。それはお門が違うでしよう。まあいくらあなたが国会議員か何か知らぬが、警察にそんなこと頼んで来たつて、めんどうは見れませんよ。警察は犯罪をあげればいいんだ。こういう御答弁でございまして、私も意外千万びつくりいたしまして、とにかく少し気分を悪くしたわけでございますが、こうした面が私は国家警察に相当あるんじやないかと思う。こういうことはおそらく皆さんも御経験されていると思いますが、こういう面から考えます。と、自治体の方がいいんじやないかと思います。それは私が船を世話してくれと言つたことは、警察の職務じやございませんが、そういう困つておる人が頼むというんですから、そうすれば電話一本くらいかけて船場へ世話をして、そんなに困つておるのだから、めんどうを見るというのが、民主警察じやないかと思う。私は署長に手紙をしたためて、あなたはどういう訓練を部下にしていますかということを聞きたくなつたくらいですが、こうした私たちの体験から申しますと、自治体の方がピンと来るのでございますが、こういう面はどういうものでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/44
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045・小坂善太郎
○小坂国務大臣 まことに体験談をあげてのお話はごもつともであると考えます。私も警察はそういうようなことであつてはならぬのではないか、できるだけ民衆のために働くのが本義であろうと思います。ただこの法案は、大部分が地方公務員でございまして、いわゆる府県の自治体なんでございます。なお国家公務員になると、いばるのがあるというような話が、一般的に言われるのでありますが、私は結局これは教養の問題であつて、国家公務員であるか、地方公務員であるかということは、その警官の態度そのものをかえるものではないと思つております。現にイギリスのスコツトランド・ヤードというのは国の警察でありますが、非常に民主的で、民衆に親しまれているというふうに聞いておる次第ございます。私どもといたしましては、警察がアメリカによつて制度をかえられ、非常に国情の違う、また地域も違うアメリカの制度をそのまま御教示にあずかつて七年間やつてみて、いかにも非能率であるし、全体の公益的な処理すべき問題と、それを細分化している制度から来る点を、もう少し合理的にしようと考えておるので、できるだけ民衆に親しまれる警察をつくりたいという念願は少しも違わないつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/45
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046・田嶋好文
○田嶋委員 そこで私は国家警察的なものになると、そうした面が今ですらそうなんだから、ますます濃くなるのではないかということを心配し、なお自治体警察の線は相当政府で御研究を願つた方がいいんじやないかと思うのでございます。地方制度調査会の答申、これは重ねて申し上げるまでもないと思いますが、ぜひとも自治体警察は残してほしいというような答申が出ているようごでざいます。政府は今度の法案の立案にあたりまして、地方制度調査会の答申というものをどの程度加味して、どの程度尊重しておやりになつたんでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/46
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047・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 このたびの警察法案の立案につきましては、地方制度調査会の答申を十分敬意をもつて参酌をいたしたのでございます。ただ一点違つておりますのは、大都市を府県よリ別にするという点でございますが、この点は地方制度調査会におきましてもいろいろ論葉ございました。その論議の内容等も十分参酌をいたしました上、大都市につきましてはその周辺と大都市の中心というものの警察の一体性というものが非常に肝要であるということから、これは全部府県に一本と言うように決定をいたしました。その他の点を除きましては答申案の線をほとんど全部取入れたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/47
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048・田嶋好文
○田嶋委員 地方制度調査会では大都市ということでなしに、自治警というようなことになつているように私は見受けるのですが、あなたたちが地方制度調査会の自治体警察の答申を無視してしまつたという根本の原因、根本の考え、これはどこにありましようか、提案理由にも書いてはございますが、それよりももう少しつつ込んで国警長官からお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/48
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049・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 地方制度調査会の答申は府県自治体警察を設けるということがまず主眼になつております。しかし府県警察の警察官については、警察の特殊性にかんがみて、国家的な要請にも適合し得るように例外を設けることができるということになつていると思つております。従いまして今度の法案もわれわれ府県の自治体警察だ、かように考えておるのでございますが、ただ府県の警察本部長及び警視正以上、全国で二百名でございますが、その者だけは国家公務員にいたしまして、任免は中央からいたしますが、これは特殊性に基いてという点であると考えております。他の点はすべて地方公務員といたしまして、府県の自治体警察にふさわしいようにいたしておるのであります。だからそれらの点につきましてはまつたく考え方は一致をいたしておる、こう思つておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/49
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050・田嶋好文
○田嶋委員 考え方が一致しておると言われましても、これは抽象的になつているからわかりませんが、とにかく自治体の存置ということを根本に地方制度調査会は打出しております。あなたの方は自治体の存置ということを根本的に抹殺しているようにわれわれは考える。
そこでお聞きをするのでございますが、これは時間もございませんからそれでいいといたしまして、一昨日の新聞でございましたか、官房長官の談話によりますと、警察法の改正については自由党と改進党の会議のもとにこの法案がつくられたんだというようなことが言われておりますが、自由党と改進党のそうした会議のもとに、この法案が立案されたものでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/50
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051・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 これは田嶋委員十分御承知のように、新警察法案は改進党と事前の会議の上にできたものではございません。改進党の方々の御意向はこの前の十五国会でいろいろ承つております。そういう点も参酌いたしましたけれども、法案の作成につきましては、何ら改進党と会議の上でつくつたものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/51
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052・田嶋好文
○田嶋委員 それではちようど時間も来たようですから、私はこれで終ります。しかしお願いしておきますが、私以外の方で質問されない方がございましたら、時間がありましたら、そのときはなおお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/52
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053・加藤精三
○加藤(精)委員長代理 了解いたしました。受田委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/53
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054・受田新吉
○受田委員 人事委員会の委員といたしまして、この警察法案の審査にあたつては、国家公務員及び地方公務員に及びまする重大なる法案でありまするので、特にその身分関係については政府の真意を十分ただしておいて、その誤りなきを期したい、こう考えております。最初にこの法案をお出しになつた政府の御意図は、警察庁の職員と府県警察の職員と二つの立場に置いておられるのでありますが、警察庁の関係職員と都道府県警察関係の職員との身分において、国家公務員たる地方警務官と国家公務員でない、すなわち地方公務員である地方警察職員とをわけております。この点、国家公務員法の精神と地方公務員法の精神をつまびらかに政府が御研究なさつたならば、特に府県警察の職員の場合に、国家公務員である職員と地方公務員である職員を分離して考えるということははなはだ当を欠いておる。国家的な警察事務の一部が地方警察に委譲せられるので、そういうふうな形をとるのだというようなりくつを述べられておりまするが、国家公務員である府県警察職員を置いた真意、国家公務員法の精神と地方公務員法の精神を比較検討していかように御解釈なさつておるのか、大臣及び斎藤長官より御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/54
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055・小坂善太郎
○小坂国務大臣 お答え申し上げます。警察事務の特殊性と申しますか、国家的性格を要する面とまた地方的性格を必要とする面とあるわけでございます。そこで私どもの考えをもつていたしますれば、国家的な要請にこたえる面はやはり国家公務員として、全国的に人事交流その他の必要もあろうというふうに考えるのでございます。なお国警長官から御説明申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/55
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056・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 ただいま大臣からお述べになりましたように、府県の自治体警察ということでありますれば、これは原則といたしまして府県の地方公務員というのが当然でございます。しかし大臣がお述べになりましたように、警察事務は非常に国家性も持つておりまするので、自治体の警察の仕事をいたしまする者のうちに、国家公務員を一部入れるということがこの警察の仕事の運営が最もうまく行く。地方的な性格、国家的な性格とを持つている警察事務を執行するにつきましては、地方公務員だけでは十分職責を果せないというところから、一部国家公務員を入れたわけであります。現在府県の自治体の仕事をいたしまする中にも、国家公務員が府県の知事のもとに入つているという例もあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/56
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057・受田新吉
○受田委員 国家公務員の身分にある地方警務官が地方公務員である地方警察職員を任免するということは、国家公務員法と地方公務員法の分離されている精神に相反すると思われないかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/57
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058・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 地方公務員を国家公務員が任免をいたすということは例外ではございます。しかし一つの警察という組織の中でその部下として働きまする者は、やはり警察長が任免権を持つということであるのが望ましいと考えているわけでございます。なお警察本部長が地方公務員たる部下を任命いたします場合、その資格は国家公務員ではありますが、しかしこれは府県の自治体警察、府県のいわゆる機関として入つているわけであります。国の仕事としてやつているのではなく、府県に委任された警察事務を執行するその職員であります。国家公務員といえどもやはり地方の職員ということであるわけでございまするから、この間に齟齬は来さない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/58
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059・受田新吉
○受田委員 しからば国家的な警察事務を地方へ委任して、この地方警察の事務において国家公務員たる職員と地方公務員たる職員の限界をその長と一部の警視正だけに限定した理由、すなわち少数の最高幹部だけに限定をして、それに限界線を引いた理由を特に明瞭にしていただきたいということ。
もう一つは、いかに身分関係があろうとも、国家公務員が地方公務員を任免するという形がとられておることは事実である。印象の上からいつて国家公務員は地方公務員より上位であるという印象を与える。国家公務員法及び地方公務員法には上下関係はない。同じく全体の奉仕者としての立場である。一方は国家全体の奉仕者であり、また地方公務員法には全体の奉仕者の規定が掲げてあるので、その点においては上下関係、指揮監督的な印象を与えるようなかかる分離した法案の精神ははなはだ了解に苦しむのであるが、長官はいかようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/59
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060・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 ただいまも申し上げました通り、警察事務は地方的な色彩と国家的な色彩両面を持つておるのでございまして、これを職員組織にどう当てはめるか。もし警察の仕事を、非常に国家的な仕事とそうでない地方的な仕事と截然とわけられるのでありまするならば、国家的な仕事については上から下までずつと巡査に至るまで国家公務員を置く、なお地方的な仕事は地方公務員が行うというようにいたすのが理論的であろうと思うのでありますが、しかし警察の仕事は截然と国家的な性格、地方的な性格と両者にわけることができ得ないのであります。と同時に、しかしできるだけ地方的な色彩を発揮いたすことが望ましいのであります。昨年の案におきましては警視以上を国家公務員にいたしましたが、できるだけ最小限度に限るのがよろしいというので、警視正以上ということにいたしまして、警察本部長のほかに、先ほど申しました二百名——現在は十三万人、整理をいたしまして十一万人のうちで、本部長を入れて二百五十名を国家公務員に限つたわけであります。これが限り得る最小限度であろうと思うのであります。そこで警察長を国家公務員にいたしました以上は、その部下を任免いたしますのは警察長の職責でございますから、何も国家公務員が地方公務員の上位に立つという考え方は毛頭ないのでございます。さような意味から、国家公務員にいたします者はごく少数の最高幹部ということにいたしました。従つてその部下の任免はその長が任免をするということでございまして、何も地方公務員と国家公務員の間に上下の区別があるということから発しておるのではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/60
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061・受田新吉
○受田委員 一例を政治活動の制限規定にとりますが、国家公務員たる地方警務官は、その政治活動において、国家公務員法第百二条の制約を受ける、それから一般の地方公務員である地方警察職員はその制約を受けないということになると、警視正を境としてその上下にはなはだ厳重なわくがはめられると思うのであるが、この点についていかようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/61
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062・小坂善太郎
○小坂国務大臣 国家公務員と地方公務員のこの法律による政治活動のわくの相違は確かにございますが、警察職員の本質からいたしまして、政治的に中立であるべきものでありますので、今御指摘のような懸念は、実際問題において起らぬ、かように考えております。
なお国家公務員、地方公務員のまじり合う例でございますが、例の職業安定関係、全体の雇用、失業の関係をあんばいするということは、地方的にもヂ筆あるし国国家的にも大事であるというので、現在地方の安定所長は国家公務員でありまして、県の安定課長は地方公務員であります。この場合は逆でございまして、この安定課長が安定所長を指揮する、こういうかつこうになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/62
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063・受田新吉
○受田委員 教育二法案によつて教員の政治活動の制限を国家公務員並にするように目下政府は国会にお諮りになつております。この点警察官の職務は教員の職務と比較してその影響するところが薄くて、地方公務員たる教員は非常に影響するところが大きいからこれを法律で制約し、警察官の場合、地方警察関係の職員は大した影響がないから地方公務員の制約でいい。ただ警察官に関するそうした特別の服務規程については国家公安委員会規則などでややわくをはめてはおりますけれども、しかし基本的なわくになつていない。こう考えますと、地方公務員である教職員と警察官を比較して、教員の場合に対する重圧を特に警察官に加えなかつた理由を大臣として御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/63
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064・小坂善太郎
○小坂国務大臣 地方公務員法並びに教育公務員特例法でもつて教員の政治的な活動の制限をするということは考えておりますが、これは行政地域外に出た場合は、教育者の国家公務員的な性格から見まして、そういつた政治活動は国家公務員と同一にしたらよかろう、こういう趣旨で制限を加えたのであります。なぜそういうことにいたしたかというと、現実にそうした例があるのでありまして、現に政治活動を行つているという声が非常に多いものでありますから、その声に聴従してさ一ような規定を設けたわけでございます。警察官の場合は、これは本来的にそういうことをすべきでないのでありまするし、また現に行つてもいない。現に警察官の職員組合的なものも、そういつた団体として政治活動を現に行つている事例は実は聞いたこともございません。もしそういうことがございますれば、教員の政治活動を制限したと同様に、当分の間禁止するという暫定立法をつくつてもよろしいかと思いますが、現実にそういうことを聞いておりませんので、そういう必要はないと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/64
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065・受田新吉
○受田委員 私はここでさらに大臣を追究したいのですが、警察官が教室へ入り込んだり、あるいは子供を取調べたりする場合に、今度新たにできた法律の真の精神を具現させようとして忠実な形をとろうとして、警察官がどんどん入つてそういう調査などをすることは、明らかに一方的な政治活動と同等の効果を現わすと思う。そういうことを考えると、教員がよその府県あるいは他町村へ行つて、政治活動をした例がたくさんあるから取締る、警察官はそういう例がなかつたと仰せられるのでありますが、警察官として、特に人民の生命、財産、身体の保護をする重責にあり、犯罪の防止をする立場の人が政治活動をよそへ行つてどんどんやるということは、教育者がやるよりもより以上の影響があると思う。こういう点で、地方公務員である教員と警察官とのそうした意味における政府の取締りの態度の異なることに了解に苦しむわけです。その点いかがお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/65
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066・小坂善太郎
○小坂国務大臣 本来教育、ことに義務教育の場合中立を厳守すべきものであると考えておりますが、警察も同様であります。私が先ほど申し上げましたのは、そうした輿論もありますので、制限を設けたらどうか、こういうことであります。警察官がそういうことをいたしますれば、本来的に罷免さるべきものであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/66
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067・受田新吉
○受田委員 これは閣僚として、教育二法案の政府提出の一員として小坂さんは十分御研究していただいておると思います。今おつしやつたような軽い御答弁ではこの問題は解決しないのです。結局政府の意図はこうだと私は思うのです。すなわち、すでに法律となつているあの破防法、スト規正法、今度できる教育一法案、こういうように国民の権利を奪い去るような、民主的な運営をさせないようないろいろな制約を設ける法規をつくつて、その法律をりつぱに適用させるために警察の中央集権化をはかつて、そして言うことをきかない者をどんどん取調べ、それを拘束するという形に持つて行こうとする意図で、この法案を出されたような気がしてならないのです。これは私どもとしては政府の意図がはなはだ不愉快きわまるものであつて、結局今申し上げましたような、警察の中央集権化により全国民の権利を抑圧するところの一翼がここに現われたものだと考えるのであります。この点について、この疑惑を一掃するような答弁ができるかどうか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/67
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068・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 この法案は、大臣から提案の趣旨としてご説明になりましたように、民主的な警察の管理と運営を保障すると言うことに非常に大きな重点をおいているのでございます。なるほどただいまおつしやいますように、任免権は中央が持つているように見えるかもしれませんが、国家公安委員会それから都道府県の公安委員会が、この警察の管理の主体でござい
ます。また長官の任命にいたしましても、府県の警察長の任命にいたしましても、国家公安委員会の意見を聞いてやるわけであります。また府県の警察長が警察署長やその他の部下を任免いたします際にも、府県の公安委員会の意見を聞いて任免いたすのであります。また中央地方の公安委員会はそれぞれ懲戒羅免の勧告権も持つているのでございます。これらの公安委員の方方、ことに各府県におかれましては、いろいろな政治的立場を持たれた方が公安委員に任命せられておるのでありまして、ただいまおつしやいましたように中央から一元的に、何らかの政治的意図を持つて、この警察を運営しようということをたとい考えようといたしましても、さような運営ができないという仕組みになつておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/68
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069・受田新吉
○受田委員 斎藤さんはかつて吉田総理から罷免されようとして、いろいろと工作をされたことを御承知だろうと思いますが、国家公安委員会があなたの首を守つてくれました。(「その通り」)あのときの御記憶を新たにされるならば、あのときに内閣総理大臣のもとにおける警察庁長官というような形になつておつて、そうして内閣総理大臣があなたの首を切ることができるような形に置かれて、国家公安委員会はただ御意見を承りおくという程度であつたならば、あなたはとつくに首がもげていただろうと思うがいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/69
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070・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 私は今度の新法案が実施されましてもその関係は同様である、そういう事態になりましても同じである、かように考えております。と申しまするのは、今新しい警察法にまりましても、五名の国家公安委員がおられるわけでございます。この国家公安委員が警察を管理いたすわけであります。また任免の際には、総理大臣が国家公安委員会の意見を聞くとなつておりますが、これは意見を聞くだけで聞きつぱなしでやれるじやないかとおつしやいましようが、しかし五名の国家公安委員が反対であるという強い意思表明があつた場合に、その反対の者を新しく警察庁長官に任命いたしましても、その長官は仕事をやつて行くすべはございません。すぐただちに罷免あるいは懲戒の勧告も下されるでありましようし、そういうことがありませんでも、日常警察を管理しておられる公安委員から非常に気持の悪い目でにらまれるということでは、その警察庁長官は仕事をやつて参れませんし、のみならずその五名の公安委員が、あるいは連袂辞職をするというような強い意向をもつて反対意向を表明されました場合には、この意見をただ承つておくということでは、これが政治的に実行できない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/70
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071・受田新吉
○受田委員 斎藤さんは今、国家公安委員会が意見を出したならばそれを聞くようになると仰せられましたが、この総理の警察庁長官任命権なるものは、意見を聞かなくて発動できる可能性はないか。それをしなくても法的に何ら制裁を受けるものではないと思うが、特に先般以来こういうような勧告的なものを簡単に処理して、御意見を承りおくというような程度にとどめておる事例は、人事院勧告などを平気でほうりつぱなしにしておる事例が幾つもある。これとまつたく同じで、意見を聞くだけで、その意見を聞くということが必須条件として、この任免権に影響するような形に法律の案文がなつておりません。この点について意見を聞くと同時にその意見を守らなければならない、その意見の通りに従わなければならないというような形にこの法文がなつていません。これをいかが御解釈になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/71
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072・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 意見を聞かなければならぬのは必須要件でございます。もし意見を聞かずにやれば法律違反でございます。ただ意見を聞いて意見に従わない、意見通りにしないということは法律上はできることになつておりますが、先ほど申しますように、政治的な状態を考えまするならば、さようなことでただいま人事院の勧告を無視しているとおつしやいますが、そういつた関係とはそれは非常に違うのであります。と申しまするのは、絶えず指揮監督をしておるその機関と意思がまつたく背反をする者を任命いすということは、その任命された者の仕事が将来やつて行けない、こういうことになるわけでありますから、従つて人事についての監督権者の意見というものは、ただ単に聞きつぱなしというだけでは私は正常の運営ができない、かように考えておるものであります。ただいまのお言葉でございまするが、国家公安委員が連袂辞職をしてしまつてでも、それでもなおかつやるというようなことになるならば、それはやれるかもしれません。公安委員を全部罷免してしまつてやれば……。しかし国会の同意を得て五名を罷免するとか、あるいは五名選任がえをしなければならなくなつたというときには、これは私は警察運営としては、将来内閣としてはやつて行けなくなる、かように考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/72
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073・受田新吉
○受田委員 いま一つ、この国家公安委員会の委員長は国務大臣をもつて充てることになつておるのです。つまり政府の中におるお先棒をかつぐ人物がなるわけなんです。それが委員長としてその委員の間を納得さして歩いて、その調整をとるということはこれまた火を見るより明らかな話です。そうすると時の政府の鼻息をうかがつて委員が動くように事実なります。あなたが首にならなかつたのは、あの国家公安委員の諸君がほんとうに国家の大局的見地に立つて、この男を罷免してはならぬという立場でがんばつてくれたのであつて、あのときにこのような法律ができていたら、吉田ワ、ン・マンさんはただちにあなたを首にしていたのです。(「その通り」)私はあなた自身が首をつながれて、今日この法案提出の重要なる政府委員となつておるときに、かつてみずからがなめようとして救われた体験によつて、この民主警察の真意を——今日国警長官として反動的に吉田政府にくみし、もつて警察の中央集権化をはかろうとするに至つたのはまことは言語道断だと私は思います。私はあなた御自身の過去のとうとい体験によつて民主警察の真意を十分御体得なさつておられると思う。あなたが今日みずから救われた法律を踏みにじつて、ここにこうした新しい法律をお出しになつてこれを拘束しようということに対して、あなたの御心境はいかほど苦しいものがあろうかと思うが、その点をもう一度御説明願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/73
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074・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 私はこの点は私の信念として申し上げます。私は過去六年余りの体験から、国家公安委員会のあり方、都道府県公安委員会のあり方ということを身にしみて体験をいたしております。この体験上から、今度の新警察法案が出ましても、決してただいまおつしやるような御心配はない、こういう確信に立つておるのでございます。国務大臣が公安委員長に入られたならば、あるいは委員長が他の委員をうまく説得するのであろうというお話でございますが、これは今の担当大臣でありましても、あるいは総理大臣でありましても、うまく説得をするというなら、何も中に入つておられなくても説得はできるわけであります。五人の公安委員がすべて政府の説得によつて正しいことでないことでもみな聞いてしまわれるというならば、今の制度だつてそういう危険があるわけであります。私は過去六年の経験に照して、しかも今の公安委員が——たびたび申しておりますように、毎年毎年一人ずつ選任がえになつておりますが、ほとんど各党満場一致で選任されるというような仕組みが事実上の慣例になつております。この慣例は将来も続くであろう、この点から考えまするならば、これは国務大臣が委員長になられましても、あるいは総理大臣が説得をしようとされましても、この慣例で運営をされる以上は、その心配はありません。もしこの慣例が打ちこわされてしまうということであるならば、制度は現在の制度でありましても、今おつしやるようなことに相なるわけであります。従いまして私は過去六年の間国家公安委員会の運営、それから都道府県の公安委員会——都道府県の公安委員会は先ほども田嶋委員から飾り物のようにおつしやいましたが、少くともただいまおつしやいますような中央から何か特殊な意図を持つて警察を動かそうというような場合には、私は非常に大きな力を発揮するものであると考えます。今日無言のごく仰せられても、それは事実上無言の大きな防波堤になつているということを、私の体験から申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/74
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075・受田新吉
○受田委員 小坂労相は国警担当になられたのでありますから、この際一言あなたの御心中を伺つておきます。
従来の国警、自治警を廃止して新しい警察体制をしくということに、この法律案の精神はなつておるのです。そうなると自治警が廃止されて国警に吸収されたような印象が多分にある。この法律案においてはなはだ私が不安を抱くのは、国警長官である斎藤さんがこの法律の実施とともに新しく警察庁の責任者になられて、あたかも斎藤国警長官に自治警が吸収されたような印象を与えるおそれはないかと心配するのです。こういうことに対して小坂さんは仮定のもとの質問にはお答えできないとおつしやるかもしれませんが、あなたが国警、自治警を廃止するという形で、新しい警察体制をしこうとするこの警察法の審議をわれわれにお求めになつておられるその心中に、齋藤さんの人事についていかようにお考えになつておられるか、御答弁願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/75
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076・小坂善太郎
○小坂国務大臣 この法律案は、先ほどからも申し上げておりますように、警察の国家的な面と自治体的な面とを調整する、そして現在二本建になつておりますむだを省く、こういうことなのでありまして、この法案自体についての御審議を煩わしたいと考えます。
人事の問題等につきましては、この席におきましてはちよつと申し上げるのをはばかりたいと思いますが、私としてはおつき合いいたしまして、有能にしてかつ常識も円満に発達しておる非常にりつぱな方だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/76
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077・受田新吉
○受田委員 人格円満にして、手腕力量が非常にたけたりつぱな方であるという御確認をしておられるので、多分それが人事の上に影響するということの伏線があるのではないかと思います。私はここではなはだ遺憾なのは、国警側の政府委員のみが出て、この警察法の審査がされつつあるということ、自治警側にも自公連もあるし、あるいは自治体警察の側の委員会もある。こういうような形をとられておるのであるから、これは政府委員でないといたしましても、この委員会の運営の上にそうした方面の代表者が常にここに何らかの形で出て質問に応ぜられるような措置を委員長としてとるべきではなかつたか。結局齋藤さんの手元で立案されたこの法案が自治警を吸収するような印象で審査される。印象ではない、事実そうなつて来るのです。最後には齋藤さんが警察長官になる。筋書き通りものが運びそうです。しかも私は大臣の齋藤長官礼讃論をお聞きして、一層その感を強くしたわけです。私たちはこの法案の審査をもつと慎重にゆつくり時をかせいで、政府がやろうとする気持があればある程度これに協力してもいいと思つておつたのですが、実は非常にお急ぎになつておるようである。そこに何か裏にひそむものがあるという不安を抱き始めたのです。私も人事委員としてこの委員会に出て、公平にこの警察法案の審査を、田嶋さん」からお話があつたのを聞いておつて、実に政府の一方的な中央集権的なにおいがふんぷんとするのを感じたのです。従つて公正に、大局的見地から民主的日本の国家のといわざるを得ないその警察の本質が民衆と離れない立場から、この法案の骨子であるところの国の公安委員会、府県の公安委員会というものの権限があまりにも弱小化し、そうして骨抜きにされておるということに対して、一方政府は反省してもらわなければいかぬ。先ほど公安委員会の意見を聞かなければならないようにできておつて、そうして公安委員の各自と意見が違うような本部長やら警察長官がおつたのではもう勤まらぬから、事実は結局委員会と同じ意思になるんだ、こう仰せられました。これははなはだ便宜的な御解釈であつて、事態は至るところで矛盾しております。犬養法務大臣の指揮権発動のようなことも勇敢に出されておるような事情であつて、常識にはずれた行動をこの政府はするおそれがある。その点齋藤さんはそういう心配はないと軽くお考えになつて、ごまかしのうちに自治警の骨を抜こうというように美辞麗句をも
つて仰せられておる。少くとも府県の警察の国家公務員である立場の上級警察官は、中央の命令一下でいつでも首をもがれる形になる、事実そうなる。そうなると警察庁の長官の命令一下で政府の意図を浸透させるような指令を出して、それにそむく忠実なる警察官は罷免をされるおそれがある。選挙干渉でりつぱにその例が見られる。反対党の候補者の違反はどんどん摘発する、自党の候補者については手心を加える、それは実に明瞭です。こういう点において府県の警察にいたしましても、中央の命令一下でもがれたりつけられたりするのであつては、中央の鼻息をうかがわなければ仕事ができません。その鼻息をうかがう地方の高級警察官によつて任免される末端の警察官の存在はまつたく哀れといわなければならない。民主警察とはどんどん逆の方向へ動いて行くわけです。こういう警察法をこんなに急いで改正しなければならない理由は、さつきから事務の簡素化とかいろいろ便宜的な言葉が出ておるのですが、今これをおやりにならなければならないような事態になつておりましようか、むしろさつき小坂さんが御答弁になつたような、大阪の一青年が大磯の私邸に吉田さんを襲うた、こういう事態はどこからその原因が出ておるかをお考えでしようか。政治の反動化、つまり上級の者は悪いことをして大ぬすつとしておつても、それを縛ることができないような指揮権を発動し、末端では一升、二升の米をかついで病院の息子のところへ見舞に行こうとする親を、食糧管理法違反で駅頭でつかまえておるじやないか、こういうところに今の政治の大きな欠陥があつて、ごく一部の資本家、特に政府の要路の人々を金銭の上においても権力の上においてもこれを守り抜き、そういうものに恵まれない大衆を犠牲にしようとしておる。それに対する憤激というものが何らかの形で現われて来る、こういうふうにはお考えになりませんか、小坂さん、御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/77
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078・小坂善太郎
○小坂国務大臣 先ほどのことでありますが、新たに警察庁長官を任命するのは、これは御承知のように国家公安委員会の意見を聞かなければなりませんので、そのことを申し上げたのであります。
それからただいまのことでございますが、私は先ほど御答弁申し上げましたように、現在の事態が非常によろしいというふうには思つていない。何とかしてよくしたいとは思つておる。ただテロを奨励するようなことになりますと、これはたいへんなことになりますから、左右両翼に対して民主主義を守るように皆さんも御協力願いたい、私も及ばずながらできるだけその線に沿つて努力して行きたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/78
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079・受田新吉
○受田委員 ただいまの御答弁で、先ほどの門司君からのお尋ねに対する補足的説明になつたとは解釈しません。これは後ほどまた機会を得てお尋ねすることにいたします。
政府は最近陽気のさたと仰せられるが、どうも最近犬養さんがウイスキーをがぶ飲みにして指揮権を発動してみたり、吉田さんが四月十九日になると急に神経痛が直つて東京に出て来たり、こういうことを見ると陽気の沙汰で政府が何かちよつと常識はずれの行動をしているように思われるのです。この点は国民でなくて政府の吉田さんや犬養さんだと思うのです、陽気の沙汰でちよつとおかしくなつているのは。国民の意思とは離れたことをやつているじやないですか。小坂さんは指揮権発動について、犬養さんのなさつた行動については、政府としては連帯責任として御納得なさつているのでありましようが、国民に及ぼす影響はただごとじやないのです。こういう点について国民の内部に憤りが何らかの形で爆発しようとする。右翼にせよ左翼にせよ、テロははなはだ警戒しなければならぬ。御協力願いたいとおつしやるのですが、私たちはもちろんテロを警戒することには協力します。これはもちろん国民の生命財産身体を保護するの大事なわれわれの仕事ですから。けれどそれを誘発しないような社会情勢をつくるのは政治の力です。この政治の力が最後に警察法を通すことによつて、今申し上げたスト規制法、破防法、教育二法案、こういうものによつて、締めくくりを、警察法を実施することによつて実現させようとする。こういう意図が明瞭に国民にはわかつております。少くとも民主主義はこれで破壊されようとしているのです。国民の一人心々の権利を尊重する民主警察は失われようとしているのです。大臣、この国民の声を静かにお聞きになつておりますかどうか。この輿論がごく一部で、大勢ではないとお考えになつているのでありましようか。この点をいま一度大臣に確かめておきたい点であります。
もう一つこの法律を実施することによつて、三万の警察職員を整理することになるのであるが、この三万の職員の整理は国警自治警おのおのどれどれになるのかということと、そしていろいろな立場に置かれている中央、地方の公安委員会の委員の任期がどうなるのか、これを国警長官から御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/79
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080・小坂善太郎
○小坂国務大臣 破防法、スト規制法、教育二法案云々とおつしやいましたが、まず私自身スト規制法を立案し、国会で御審議を願つた立場でありますが、これは何回も申し上げておりますように、争議行為としてこれは不当であるという限界をきめたのであります。たとえば石炭の場合、保安要員の引揚げ、これは保安要員を引揚げれば炭坑が水没してしまう。本来職場に帰るということを前提とする争議行為自身が、職場復帰を不可能ならしめる、こういうことであるからいけないのだ、こういういわゆる解釈法規なんでありまして、何も一般を弾圧するとかそうしたことはないのであります。この警察法案を頭から弾圧法規だとおつしやいますが、私どもは信念として申し上げます。決してそういうことは考えておらない。ただ申し上げたように、メード・イン・USAの法律を、制度を、そうまで金科玉条として、これをかえるということは反動である、あるいは弾圧である、こういうふうには私は考えないのでありまして、日本には日本のやはりものの考え方もあり、また地理的な条件もあり、しかもそれを日本的にふさわしいものにする、自治体の本義に照してふさわしいものにするということによつて、多くの国民のむだも省けるのであります。そういう考え方でありますので、どうかひとつ頭からそうおきめにならないで、この法案自体について十分御審議を賜わりたいと思うのであります。なおテロ云々のことについては、先ほどの考えを繰返す以外に方法がございませんが、二・二六あるいは五・一五というような場合にも、お互いに国民はみなあのテロを憎んだ。これはつまり一方において政治が悪いからテロが出るということでこれを是認した。ましてやただいまの事例につきましては、ほんとうに所持品等につきましても何ともちよつといかがわしい精神的状態にあるとも考えられるような一青年なんでして、その行動をもつてこういうことの出たのは非常に政府が悪いというふうにおつしやいますことが、私はその行動をきつかけとするものを誘発するおそれなしとしない。こういうふうに考えているので先ほどのように申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/80
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081・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 職員の整理の仕方でございますが、三万人はこれを四箇年にわたつていたす計画にいたしております。初年度は一万人、あとの二年度は七千五百人、あと五千人、こういう形になつております。自警、国警を通じまして大体年間七千人くらいの減粍があるわけであります。従つて減粍補充をいたさないということで大体この整理はできると考えます。しかし四箇年間減粍補充を一人もしないというわけには参らないだろうと思いますが、若干は新らしい者を入れなれけばならないかと考えておりますが、しかしながら積極的に整理をするという面は、そう多い数ではないと考えております。しかし若干でも積極的に整理するという場合に、自警国警の割合いかんというお話でありますが、この新法案が成立いたしますと、都道府県内の自治体警察と府県警察、これがすべて府県の警察職員になつてしまうわけでありまして、そこでかつて自治警におつた者、かつて国家地方警察におつた者というわけへだての考えをなくいたしまして、まず自発的にこの際待命制度を希望する者があるなら、その者を優先的に許可して行く。おそらく待命の希望者で私は十分この制度はまかない得るであろうと考えているのであります。初年度は一万人でございますが、将来この警察法が通ることを前提といたしまして、減粍補充も非常に差控えているという面もございまして、現に約三千人ぐらいはすでに欠員になつているのでございますから、実際の出血という面におきましてはさように御心配をかける必要がないであろう、こう考えております。
それから公安委員の任期でございますが、本法案が成立をいたしますと国家公安委員会も都道府県の公安委員会も、すべに新らしく任命がえになるわけであります。そこで新らしく任命された公安委員の任期は、国家公安委員につきましてはこの当初だけは一年二年三年四年五年ときめるわけであります。都道府県におきましては一年二年三年と各委員についてきめるわけでございます。これはおそらく国会に御同意を求める場合、あるいは都道府県議会に御同意を求める際に、この方は何年でいい、この方は何年でいいという説明をもつて同意を求めるはずだと考えておりします。もし現在の公安委員を再び任命しようという場合には、おそらく今の国家公安委員、都道府県公安委員を通じましてそれぞれの方の残つている任期を今度の新しい任期ということで、政府あるいは都道府県でおきめになるものであろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/81
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082・受田新吉
○受田委員 人員整理についての構想で犠牲は出さぬであろうというお話でありますが、これは事実そう御期待に沿うような筋書に行きません。例外なしに出血を見るおそれがある。そうして自警、国警のバランスがとれないような結果が起りやしないかという不安もあるのです。
もう一つは今の公安委員の任期でありますが、教育委員会あるいはそのほかの町村農業委員会の委員とかいうようなものは、今度町村合併をやつてもそれは現在の委員の残存任期間をそのまま続けるようになつており、そうして選ばれたときの約束は残任期間を全部全うすることを選んだ人が期待してそうなつているのです。従つて今また政府や府県がこれから何とかするだろう、今の選ばれている人の残存期間を認めようとするのには、政府は何とかするだろうということだつたのです。その政府は何とかするであろうといつても、また用意がされていない今日、われわれははなはだ不安であるが、小坂さん、この残任期間を奪い去るということは人権に影響しますが、これは政府はどういう腹を持つているのですか。この点ひとつ政府が閣議としてお出しになる意図をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/82
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083・小坂善太郎
○小坂国務大臣 残存期間につきましては大体さような考えでおるわけであります。しかし委員自身のお考えもありましようから、いずれ法案通過の見通でもつきました際には御相談いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/83
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084・受田新吉
○受田委員 そのことはこの法律にも何とかうたうべきではなかつたでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/84
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085・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 法律作成の際にさような点も考えて見たのであります。しかしただいま例にあげられましたような委員の方、これは選挙でございますから、選挙のやり直しというのもなかなかたいへんでもございましようから、大体こういつた新しくつくります際には、新しく任命をされるのが普通でございまするから、この一般原則に従つたのでありまして、現在選任せられておりまする公安委員の方が、新警察法においても適当な方だと認められれば、おそらく再任命される方が多いであろう、こういう前提で考えておるのであります。また現在の国家公安委員会それから今度の国家公安委員会というものは御承知のように実態がかわつて来るわけであります。都道府県の公安委員会も同じでございます。実態がかわつて参りますから、やはりその形あるいは名前が同じだからということでは立法論としてはおかしい、やはり再任命が適当であろう、またそれと同じように、先ほど警察庁長官のお話が出ましたが、警察庁長官も新しく任命されるべきものだというわけでございますので、現在の国警長官がそのまますべり込むというような経過規のも設けておりません。新しくできた公安委員会で新しく再任命をせらるべきだ、かように考えております。それは実態がかわつて来るからでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/85
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086・受田新吉
○受田委員 入江人事官にお尋ねし、あわせて斎藤国警長官と小坂労相にお尋ねするのですが、この法律案の中身をいろいろ調べてみると、職員の人事管理、五十五条などを中心として人事委員会規則、条例等によつて定めるという規定が出て来ております。この人事委員会規則で定めるということになつている以上は、人事院としても御相談を受けたはずです。どういう点を人事委員会規則で定めるかということについて、斎藤国警長官は人事院に御相談をなさつたかどうか、まず斎藤国警長官にその専門的立場で人事院がどういう献策をしたかについて御答弁願いたい。入江人事官はこの御相談を受けたか受けないかの斎藤国警長官の御答弁によつて、受けている場合といない場合との両方の場合について、受けている場合はどういう考えてこれを御了承なさつたか、それから受けていない場合はこの人事院規則にはどういう案を盛ろうとするのか、経過的規定の細則のようなものだつたら別ですが、規則というものになりますと、これは法律にかわる相当重要な性格を持つものもあるということになるのですが、勤務条件、服務というような重要な事項でありますので、給与、服務、こういうことについての人事院としての御見解をお伺いしたい。
そしていま一点、第十条に国家公安委員の身分の取扱い、職務の取扱いについて規定が掲げてあります。第十条に国家公務員法の規定を委員の服務について準用するとありますが、この委員の身分について国家公務員法の規定を準用するという精神は斎藤長官はどこからお出しになつたか。これは小坂労相から御答弁いただけるならばなおいいのです。国家公安委員の身分は、国家公務員法のこの規定の適用を受ける部分があるということになると——服務だけでもその点で適用を受けるということになると、どういう性格を持つたものになるのか。この第十条には、人事院規則で宣誓などをすると国家公務員法にあるわけですが、ここではそれを総理府令で宣誓されるということになつているのです。だから人事院規則の例外的規定をここに設けているわけですが、こういう規定をなぜお設けになつたのか。別に総理府令でやらぬでも、人事院が全部統轄しているのならその線でおやりになつたらいいのではないのですか。同じく国家機関である人事院におまかせになつてもいいではありませんか。こういう点について政府の御所見を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/86
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087・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 法案の五十五条で都道府県警察の職員の任用、給与、勤務時間、その他の勤務条件、服務云云に関して「地方公務員法の規定により条例又は人事委員会規則で定めることをされている事項については、第三十四条第一項に規定する職員の例を基準として当該条例又は人事委員会規則を定めるものとする。」こうございますが、これは同じ警察活動に従事する警察職員でございますから、従つてこういつた任用、給与、それから勤務時間とか勤務条件、服務というようなものにつきましては、大体国家公務員と同じようにこれに準じて条例、または人事委員会規則できめるものは人事委員会規則できめてもらいたい、かように考えまして人事院と協議をいたした次第でございます。
それから第十条の点は、国家公安委員は、これは特別職ではございますが、しかしこの委員の服務等につきましては一般職に対して規定をいたしております点を準用いたした方がよろしいというものを、各条項ごとにここにあげまして準用をいたしました。本質は特別職ではございますが、しかし服務等につきましては一般職の規定を準用いたします。しかるに人事院規則とあるのを総理府令と読みかえているのはどういうわけかということでございますが、これもまさしく一般職ではなくて、特別職でありますから、人事院は一般職の職員を扱われる、特別職は人事院では扱いませんので、総理府令ということにいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/87
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088・入江誠一郎
○入江政府委員 ただいま国警長官から申しました通り、五十五条の問題につきましては、人事院としましては国家公務員たる警察官につきましては、もとよりこれは国家公務員でございますから、国家公務員法並びにこれに基く人事院規則の大体の条項が適用されると思います。そこで第二項の地方警察職員でございますが、これは実は正確に申せば地方公務員でございまして、地方人事委員会の規則並びに地方の条例が適用があるということになつておりまして、人事院の規則あるいは国家公務員法とは別個の問題でございまするけれども、これは今回政府でおつくりになつておる案は、そういうものにつきましても、警察官の特殊性に基きまして、国家公務員に準じた勤務その他の条件を条例あるいは人事委員会規則で、適用制定さるべきものだというような建前になつておるようでございます。この点は人事院としてももちろん異議がないことでございまして、警察の特殊性から申しまして、一つの考え方だと思つております。
次に法の第十条でございます。国家公安委員の服務の関係でございますが、これについてちよつと補足さしていただきますると、御意見の通り、特別職はたとえば国務大臣でございますとか、政務次官、あるいは大使、公使、その他国会職員というふうに、全体として特別職につきましては、政治的理由でございますとか、あるいは広く一般の社会から人材を吸収する必要上、国家公務員法の条項が適用されておりません。従つて服務につきましても、特殊なもの以外は、むしろ自由と申しますか、全然国家公務員法が適用されておりませんために、前の官吏服務規律が適用されておるという状況でございます。そこでその特別職の中でも特に服務関係上一般職公務員と同様に服務をしてもらいたいというものがございます。たとえば私らのごとき人事官というものは、やはり特別職ではございますけれども職責上こまかいところまで一般職公務員と服務関係について、厳重にこの規則を適用する必要があるという場合とか、あるいは国家公安委員のごとく特別職であつて一般の政務次官、国務大臣のごとく自由にはできない、やはり警察の管理をされる上から、ある程度の服務規律を適用するという点から、おそらく今回一定の国家公務員法の条項を準用したんだろうと思います。そこで今の受田さんのお疑いになる問題もそうであるが、その大体の基本は、国家公務員法の服務規定を準用するとして、こまかいところも人事院規則できめたらいいじやないか、何もそれと別に総理府令できめる必要はないではないかということではないかと存じますけれども、これは今後国家公安委員というものを政府が任用される一つの条件と申しますか、やはり国家公安委員に要請する一つの服務の状況によりまして、いかようにも考えられる問題で、一般職とは違いますから必ずしもその人事院規則——こまかいところまで人事院規則そのものを適用いたしませんでも、たとえばお話のように宣誓のごとき問題は、やはり特別職の性質上総理府令によるということも考え得る問題でありまして、人事院といたしましてもこの問題は別段国家公務員法の趣旨に反するものではないと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/88
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089・加藤精三
○加藤(精)委員長代理 受田委員に申し上げますが、次々と御熱心な、非常に実のある御質問でございまして、また政府側の答弁も実に懇切で、またりつぱな御答弁でございまして、引続き傾聴いたしたのでありますが、すでに相当長期間お約束の時間を超過しておりますし、次々とたくさんの質問者が控えておりますのでこの辺で休憩をして……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/89
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090・受田新吉
○受田委員 もう一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/90
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091・加藤精三
○加藤(精)委員長代理 それでは簡単にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/91
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092・受田新吉
○受田委員 ちよつとお尋ねいたしますが、私の質問した時間の三十分だけを計算していただいたでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/92
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093・加藤精三
○加藤(精)委員長代理 両方合せてすでに一時間十分になつております。御質問だけの時間もすでに経過しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/93
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094・受田新吉
○受田委員 それではもう一点お願いいたします。今御答弁いただいたお言葉の中で、いろいろな国家公務員法の規定を適用する場合があり得ていいんだ、また除外規定を設けていいんだというお言葉がありました。この国家公務員法の服務規定などをこういうふうにどんどん準用しておるような職種があるかどうか、それから特別職の職員とするならば特別職の職員としての扱いに統一したらどうか、警察官の特殊任務とかいうようなことで地方公務員たる警察官に特別の例外規定を設けたり、あるいは保安庁の職員に特別規定を設けたりするような、こういうことを改めて何かここに公務員に対しては、国家公務員的性格を持つものはすべてそれに統合するような基本的な規定をつくつた方がいい。このようなばらばらの準用とか何とか言つてかつてなことをやつて、国家公務員法を悪用されてはたいへんだと思うのです。この点でも人事院としては襟度をもつて国家公務員の統制ある法の適用を要望する御意思はないか。と思うがとかいうようなお話であつたので、あなたにあまり御相談がなかつたと思うのですが。そういうことで政府としてはその間によく人事院との意見の調整をされて、国家公務員の身分関係をはつきりさせるようになさる用意はないか。
それからもう一つ、斎藤国警長官でも小坂さんでもいいのですが、条例にまかしてある場合に、この法律の精神の通りに条例をつくらなかつたらどうしますか。つくらなかつたときに法の制裁を受ける規定は私はないと思うのですが、これに対してはどうお考えになるか、これをお伺いしてこの悪法警察法に対する私の質問を一応終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/94
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095・入江誠一郎
○入江政府委員 お答え申し上げます。ただいまの公務員とある以上、いかなる公務員でございましてもこれを総括的に統合した法律を制定すべきものじやないかということは学者何かにもいろいろ御覧がございまして、私はこれは一つの御意見だと思います。ただ実際問題といたしまして、やはりあるとすれば外交官でございますとあるいは外務公務員法がございますし、教育職員については教育職員の特殊性に基きまして特例法がございますとか、大きなわくはありながらそこに若干の例外が設けられることはやむを得ないのではないかと思つております。次に先ほどお話のありました特別職でありながら服務規律を準用しておるという例はきわめてわずかであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/95
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096・受田新吉
○受田委員 何がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/96
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097・入江誠一郎
○入江政府委員 人事官は一般的に適用いたしますが、国家公安委員のほかはほとんどないのじやないかと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/97
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098・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 府県でつくるべき条例をつくらなかつた場合にどうするかということでございますが、御所見のようにこれには制裁規定はございません。しかし現在都道府県あるいは市町村等におきまして、こういう事柄は条例できめるという場合に、特に故意につくらないというような事例もございませんし、現に現在の警察法によりましても、市町村警察につきましてはいろいろ条例で定めるようになつておりますがみなつくつておられる、この法案が通りますならばこの法案の通り条例をつくつてもらえる、かように確信をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/98
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099・加藤精三
○加藤(精)委員長代理 暫時休憩いたします。
午後二時半より再開いたします。
午後一時五十八分休憩
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午後三時八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/99
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100・中井一夫
○中井委員長 これより開会いたします。
休憩前に引続いて警察法関係二案を議題として質疑を続行するわけでありますが、本日の予定としては法務委員の諸君からその質疑を進めていただくことになつておりましたけれども、法務委員会が開けたというような事情もありますので、人事委員会の委員の各位からの質疑を繰上げ進めたいと思います。加賀田進君
なお加賀田君に申し上げますが、人事院の当事者はただいま来つつありますから、もしできまするならば、警察関係の当事者に御質疑をお進めいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/100
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101・加賀田進
○加賀田委員 私は人事委員としてこの新警察法案に対しての基本的な問題の質疑は他の委員に譲りまして、特に給与の問題に対して御質問いたしたいと思います。
今提案理由の説明の中でもこの警察の機構の改革に基いていろいろ勤務条件その他給与の問題に対して、警察職員に不安のないように善処いたしたいという説明がありました。
そこで御質問いたしたいと思うのは、この新しく出されました警察法案に対していろいろ給与その他の勤務条件に対して不利な状態が起ると思いますが、この点に対しては全般的に不利な条件を起さないように考慮されておるのかどうか、また政府として考慮する意思があるのかどうかを御質問いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/101
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102・小坂善太郎
○小坂国務大臣 給与に関しましては附則の十五項に給与に関する経過規定を置いておるのでありまして、都道府県警察の職員のうち地方公務員法の適用を受ける者の俸給は、都道府県がそれらの職員の職務の特殊性と当該都道府県吏員の給与水準を考慮いたしまして、国家公務員の例を基準として条例で定めることとなるのでございますが、その際新しい俸給月額が従前受けていた俸給に達しないことになります場合は、その調整のために、政令で定める基準に従いまして条例で定めるところによつて手当を支給する、こういうようにいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/102
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103・加賀田進
○加賀田委員 附則の十五項で調整の特別の手当を支給して当面の俸給に対する減額を補給しようという法案ではございますが、これは暫定的な措置であつて、将来これらが定期的にあるいは臨時的にベース・アップ等が行われた場合に、こういう調整手当というものが将来永続的につくのかどうか、もしつかないとするならば、あるいはその増額に基いて手当が減額されるということになるならば、実質的に当面俸給袋の中の額がストップされるという状態が起るが、このことは、実質的に労働賃金の低下をもたらす結果になると思うのですが、その点に対して大臣の御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/103
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104・小坂善太郎
○小坂国務大臣 政府委員より御答弁申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/104
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105・柴田達夫
○柴田(達)政府委員 私からかわつてお答え申し上げます。
法案の五十五条におきまして、今度府県警察の職員となる者は、原則として地方公務員でありますので、その給与につきましては、地方公務員法によりまして新しく条例できまることになつております。従来市町村の自治体警察の職員であつた者も、府県におりますところの国家地方警察の職員であつた者も、今度新たに府県警察の職員として、条例によつて新しく給与を受ける、こういうことに相なるのであります。そこでその条例によつてきめる際のきめ方でございますが、それは五十五条におきまして国家公務員の給与というものがあるわけでありますから、この国家公務員の給与の例を基準といたしまして、条例に基きましてそれぞれの府県が独自の立場できめるわけであります。それに対しまするところの必要な財源措置を、政府側といたしましては地方財政計画の中に組んであるわけで、新しい府県警察の職員として出発いたしましてから後は、同じような一つのバランスのとれた給与として出発するわけであります。ただ過去の給与が、お話にございましたように非常に開きがございますので、その間の調整だけを、先ほど大臣がお答えになりましたような方法で手当として支給する、かように相なつておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/105
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106・加賀田進
○加賀田委員 それは大体法案に載つておりますから私も承知しておるわけでりあますが、将来こういう調整の特別手当というものがずつと継続される意思を持つておるのか、それともどういう事情が起つた場合にこの手当が減額されるか、あるいは削除されるか、その見通しに対しての御質問をいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/106
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107・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 調整額の手当は、将来事情によつてこれを減額するとか、なくするとかいう考え方は持つておりません。本俸が上つて参りまして元の給与に復するまでは差額の給与はずつと続けるというのが趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/107
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108・加賀田進
○加賀田委員 どうもその点不明確な点があると思うのです。調整額は、事情によつて減額あるいは削除する意思がないという御答弁と同時に、俸給が増額された、いわゆる自治体警察から地方警察の職員になつた場合に差額を補償して、そして編入された場合に受ける金額にまで俸給が上つた場合にはそれを下げる、こういうお話だろうと思うのですが、俸給というものは一度に上るのではなくて、逐次上昇して参るわけてあります。この調整額が同額ずつと支給されて来るということになれば、一挙にそれが削除されて来るということになるのですか。その点に対して御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/108
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109・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 たとえば差額が二千円ございまして、最初二千円の差額の給与をやる、ところが本俸がさらに千円上つたということになりますと、その差額だけですから、差額は自動的に千円減つて、千円になる。だんだん減つて行くわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/109
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110・加賀田進
○加賀田委員 その点は政府として非常に巧妙な方法だと思うのです。国家警察の職員が地方警察の職員になつたということで俸給に差額がつく、そして一時手当によつて支給されるが、本俸が上昇するに従つてその金額が下つて来るということになる。そういたしますと、当面この身分変更あるいは編入に基いて、俸給は下らなくとも、長期にわたつて実質的に下つて来る状態が起つて来るじやないかと思います。もし現在の警察の機構のままで自治体警察の中で勤務しているとすれば、現在の基準に基いてずつと俸給が上つて来るにもかかわらず、それが地方警察に編入された場合におきまして、その一時手当によつて総額としてはかわらないけれども、将来においては実質的に下つて来るということが起つて来る。これは実際に俸給の減少を長期にわたつてもたらす結果になると思いますが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/110
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111・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 将来下るわけではなくて、将来若干期間の間は昇給しない、こういう結果になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/111
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112・加賀田進
○加賀田委員 警察機構の改革はやはりその能率化を基本としているわけで、警察官の勤務条件、特に俸給に対しては非常に微妙な関係を持つと思うのです。だからこういう警察機構の改革に基いて、たとい期間があろうとも、実質的に賃金が下つて来るということは、これら勤務者の士気に大きな影響をする、こういう立場から、これは何か方法を講じて、将来ともこういう機構の改革に基いて実質的に給与の下らないようにするのが妥当ではないかと私は思うのです。それと同時にもう一つ、この附則十五項に基きますと、国家地方警察あるいは自治体警察の職員が、地方警察職員になつた場合、俸給が実質的に下つた場合にカバーするということになつております。ところが、この逆の場合がわれわれには考えられるわけです。自治体警察の職員が、この機構改革に基いて国家公務員たる警察職員になつた場合にもそういう問題が起ると思うのですが、そういうことが起つた場合の調整の手当というものが規定してないのです。これはどういう意味で規定してないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/112
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113・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 自治体警察の職員で高い俸給をもらつておられた人が、今度国家公務員になるという場合には、国家公務員の給与水準に引下げられる結果に相なります。この点は都道府県の地方公務員になられた人と扱いが異なるわけであります。国家公務員になりまする者は、警視正以上の職員でありまして、その数はそう多くはございません。——数が多い少いによつて差別をつけては相ならぬと考えますが、高級幹部になりますると、やはり職務給という形に相なるわけでありますから、この点はやむを得ないのじやないか。これを国の給与法に何か例外を設けまして、さような者も救済できまするならば非常にいいと思うわけでありますが、これは国家公務員といたしましてはきわめて困難でありますので、国家公務員の給与規定に照しましてなるべくその規定の許す限りの高い給与で国家公務員に迎えたい、かように考えますが、この一般の規定の最高限度をさらに上まわつてというわけには参りません。この点はまことにやむを得ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/113
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114・加賀田進
○加賀田委員 そうすると、私の考えました現実が起るということを御承認の上で、数が少いからそういう特別の調整手当というものを支給しない、こういうことになると思いますが、そうしますと、今度機構改革によつて国家公務員の警察職員になつた方は、実質俸給の低下があつてもやむを得ない。ところが逆に地方警察職員になつた場合には生活費が保障される、こういう「ことになつて非常に矛盾が起つて来るのではないかと思います。ただ退職金については双方とも勤続年数については保障されておりますけれども、当面の俸給に対しては大きな相違が起つて来るのではないかと思います。もちろんそれは地方公務員との給与の均衡も考慮しなくちやならない問題が起るでしようけれども、しかし警察の中で身分の転換によつて条件が保障されている人と、逆に低下される問題が起つて来るということは、これは私は行政関係から考えても、ゆゆしき問題だと思いますが、法案ではこういう矛盾があるので、できれば政府としてもこういう問題に対してはかかる矛盾のないように善処してもらいたいと思います。
さらに地方警察職員の中で、新しく条例に基いて俸給が決定されるわけですが、それで各自治体警察から編入されて参ります地方警察職員でAは二千円の手当をもらう、Bは千円の手当をもらう、あるいはCは全然もらわない、こういう状態が起つて、同一労働に対する同一賃金の原則というものがくずれてしまうのではないかと思います。しかもそのことが同じ職場にある警察職員の中で、給与問題としておもしろからぬ現象が起つて来るのではないか。この点に対してどうお考えになり、どう善処されるおつもりであるか承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/114
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115・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 ただいまのお尋ねはまことにごもつともな点でございまして、政府といたしましても、その調整には最も苦慮したところでございます。現在の国家地方警察の職員と自治体警察ことに大都市の警察の職員とは、給与が非常に開いていることから問題でございまして、現在におきましても大体それは同一勤務内容、同一職種であるにもかかわらず、ただ国家公務員であると自治体の警察職員であるという身分の違いで、さように非常な開きが起つておりますることは、今日においても運営上非常に支障を来しているのでございます。それが今後同一の府県警察になつた場合にその違いを持ち込むということは、これは人事管理上おもしろからぬ事柄ではございますが、しかしさりとてこれを当該府県の最も高い給与水準にまで全部引上げるということは、財政その他の関係からもなかなか許しません。従つて現在高い給与をもらつている方々の手取りは減らないように、給与差だけは別の手当として給与をいたし、それが現俸がずつと引上げられて来るということで逐次にその差が少くなつてしまいにはなくなる。従つて二、三年あるいは数年後にはそういう形が全部なくなつてしまつて、同一収入になると思います。それまでの間はただいまおつしやるような不均衡が事実上起りますことは、これはまことにやむを得ないことだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/115
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116・加賀田進
○加賀田委員 やむを得ないということで政府としては逃げているわけですが、給与問題というものはやむを得ないという状態で解決できる問題でないと思う。やはり警察官の士気にも影響するし、政府としてこの原案を出すためにはやはりできるだけそういう矛盾のないように考慮して出さなければならぬと思う。自警の本部の方から出されたこの資料の中でも、自治体警察では大体巡査の方が平均一万一千七百五十八円になつております。国警の方では九千五百八十五円。すでに二千百七十三円という平均の差額が出ております。もし現在の国警の警察官と同じような給与の条例が出たとするならばずつと二千百七十三円という平均の金額を特別手当として支給しなければならない。将来の経済状態あるいわ定期昇給その他考えると、この二千百七十三円というものはそう短期間にぼくはカバーできるものでないと思う。こういうことを考えると、この法案の機構改革に対して大きな矛盾が給与の中からも暴露されて来るのじやないかと思う。だからこの点はやはり給与の問題として単に考えるのでなくして、警察機構の根本的な改革の中で、警察官の士気と職務を十分遂行するためにも給与という問題が、さらに政府としては検討されて来なくちやならないと思う。私としては給与の問題の今指摘した点に対しては、さらに政府の御検討をお願いしたいと思う。
なお五十五条末尾の方に「第三十四条第一項に規定する職員の例を基準として当該条例又は人事委員会規則を定める」、こういうようになつておりますが、この三十四条一項の指摘は一般職の職員の給与に関する法律の俸給表の別表第三を指摘していると思うのですが、大体政府としてはこの三に準じて今度の新らしくできる自治体警察に対する俸給表をつくろうとしているのかどうかということを、一応御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/116
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117・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 給与の点につきましてはただいま例に引かれました巡査において約二千円の相違がございます。これは実際問題といたしましては今度は府県条例で給与規定をつくります。そこでその場合にこの五十五条の規定で、ただいま御指摘になりました通り国家公務員たる警察官の給与規定、これに準じてするようにということでございます。しかし現在の市町村等の給与の規定も、これは国家公務員の給与その他に準じてつくるようにという法令になつておりますものが、今日あれだけの相違を来しておりますので、この条例もはたして——国家公務員の給与もまつたく同一に、ぴしやりときめられた現在の府県の給与水準というものにむしろ準じて実際はきめられるのだ、きめられる場合はそうだと考えております。従つて実際のものといたしましては今日の国家地方警察の警察官の給与水準よりも、若干上まわつたところに条例としてはきめられるであろう、こう考えております。
それから先ほど御指摘になりました自警国警の給与の給与表でございますが、それは総給与額を総人数で割つた一人当りが出ておりますが、巡査、巡査部長等におきましてはあるいはその上の方の階級もそうでありますが、大体自治体警察の警察官の方が勤務年限も長い人が多うございます。従つてその表に二千という開きが出ておりますが、これを今度新しく格付いたしまする際には、今日の高い給与をもらつておるということを考えなくても、現在の国家地方警察の警察官の一人平均の給与よりも高いところに格付せられる、というのは勤務年限が長いのでありますから、そういうことになるであろう、従つてほんとうの開きというものはそこに出ておるほどはない、こう思つております。さよう御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/117
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118・加賀田進
○加賀田委員 大体地方自治体の条例に基いて地方公務員との均衡の上に立つて警察職員の俸給が決定される、これは従来と大体同じだと思うのです。しかし同じであるにもかかわらず、現在国家警察の職員と自治体警察の職員との給与の差というものは、相当各所に上下が現われております。もし従来と同じような方法でそれに準じて条例に基いて実施するということになれば、将来とも地方自治体の経済情勢あるいは財政状態その他地方公務員の給与状態等とにらみ合せて決定されるとするならば、各所にそういうアンバランスが将来起ると思うのですが、そういう場合に起るということを前提に、あるいは承認されてこういう法案が出ているのですか。
それと同時に、こういうことがもし行われるとするならば、一つの例として現在の五現業の中で、管理監督は別としても、秘密の事項に携わる人はやはり五現業の仲裁裁定をはずされているわけです。そういうわけで五現業の給与と秘密の事項に携わる人との給与差——秘密の事項に携わる人は国家公務員法に基いて給与が支給されており、五現業の方はいわゆる団体交渉によつて実質的に決定されておるというところから、給与に対するいろいろな矛盾が現在起つているのです。それと同じような現象が今後国家公務員であり地方公務員であるという形から起るのではないか。現在の人事院でもその問題が論議されて、それを調整する特別の特例法が出されて今審議されておりますけれども、それにもかかわらずその法案の中でいろいろ矛盾が起つております。今後もやはり同じ地方警察、自治体警察の中にあつて、地方公務員であるあるいは国家公務員であるというところから、警視正を中心として給与が交叉するような点が将来起る懸念があると思うのですが、その点に対してどう処理するか、どう考えているか、御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/118
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119・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 地方公務員たる警察職員の給与は府県の条例できめられるわけでございまするから、御指摘のように各府県ごとにおいて若干相違を来すことがあるだろうということは、これまた地方公務員の性質上やむを得ないことである。現在各府県間において給与の水準が違つておりまするがごとく、警察職員も違つて来るだろう、これは自治体の性質上防ぎ得ないものである、かように考えております。望ましいとは考えておりませんが、やむを得ないことと考えております。
それから府県に勤務をいたしまする一般の地方公務員たる警察職員と警視正以上の職員との給与に交叉を来すような場合がありはしないか、これまたあり得ると考えておるのであります。しかし警視正以上は、警察本部長を除きましては、小さな府県では一名か二名、大府県でも十数名というわけで、総体で警察本部長を入れて二百五十名であります。従いましてその警視正以上の者と警視で非常に古い方という者との間には、むしろ警視の方が俸給が高いということはあり得ると思います。現在におきましても、階級の上の者は一般の水準としては高うございますが、個々の例をとりますると、巡査部長よりも巡査の方が給与が高くなつているという者があるわけでありますから、これも当然のことだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/119
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120・加賀田進
○加賀田委員 相当給与問題に対して具体的に質問をいたしましたが、このことは矛盾だらけです。この改正に関して重要なる給与の諸条件に対してはやむを得ないという形で政府としては逃げているのですが、私は非常に大きな矛盾を来していると思うのです。そのためにこの機構改革に基いていろいろ問題が起つて来るのではないかと思うのです。こういう問題は少数だからしんぼうしろという形ではなくして、給与問題というのは根本的に不均衡を来さないような処置を講ずべきが妥当だと私は思うのです。単に二百五十名だ、あるいは都道府県に対して四、五名だということでしんぼうしてもらいたいということは、私はやはり政府としてのこの問題に対する反省を促したいと思うのです。だから人事院としても当然冒頭に申し上げた通り、同一労働同一賃金の原則をくずさないように、この改正案の中でも給与問題を検討していただきたい、そして修正していただかなければならないと思うのです。
なおもう一点として、今申し上げたような編入に基いて俸給表が低下する場合に、俸給の月額に対しては調整手当が支給されますけれども、それに基いて、長期間勤務してその後日ならずして退職する場合に、これは退職金その他恩給に大きな影響をもたらして来ると思うのです。たとえば自治体警察でずつと職員として勤務し、今後一、二年勤務してやめた場合には、その当時の高い自治体警察の職員としての俸給表から恩給並びに退職金というものが算定されるにもかかわらず、今度府県警察職員になつた場合にそれが低下され、俸給では手当をもらつておりますけれども、やはり退職金並びに恩給となれば、その俸給の金額に基いて算定されるので、実質的に恩給並びに退職金が低下する事態が起つてくると私は思いますが、そういう事態が起るかどうか、起るとすればそれに対してどう対処する意思を持つているか、御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/120
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121・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 この点も御指摘の通りでございます。ございますが、先ほども申し上げましたように、府県の条例によつて実際格付をいたします際に、できるだけ自治体の高い給与をもらつている方は、その条例の許す限り高いところに格付をされる——実際においても勤務年限も長いというようなところから当然高いところに格付されるでありましようし、従いましてその間に差額が生じましても、その差額は一、二年あるいは長くても三、四年ぐらいの間には埋まつてしまうだろうと思います。その間におやめになる人が出て参りますと、一時退職金及び恩給の算定のもとになる本俸は少し下つたところにありますので、これは不足になることはやむを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/121
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122・加賀田進
○加賀田委員 やむを得ない話ばかりであります。実際問題としてこの新しく出された警察法に対して、そのために編入されるいろいろの警察職員は、ほとんど賃金問題を中心として勤務条件が実質的に低下する状態が起つて来る。今申し上げたように私が質問するとただこれはやむを得ない、事実そういうことが起るということだけで、政府はこれに対して何ら誠意のある回答がないのでありますが、こういう内容を含んだ給与問題に対しては、政府としては根本的にこういう矛盾が起らないようなことを審議され、研究されてこの法案というものを提出されることが正しいと私は思うのです。人事院としてはこの退職金問題あるいは恩給の問題、さらに給与の問題等にわたつていろいろ条件の低下に対しては、われわれ国家公務員の一員としても、現在の国家地方警察の職員を擁護する義務があるわけです。だから、どうしてもこれは是正し、何とかそういう実質的な低下を防ぐように政府としては考えてもらわなくてはならないのではないかと思います。今申し上げたように、この法案の中でそういう矛盾が起るがそれはやむを得ないということで、そのままほおかむりするようなことでは、政府としても新しい機構改革に基いて、警察の機構の能率化をはかろうとして出されたと思うのですが、そういうことが給与の問題あるいは勤務の条件の中から崩壊するおそれがあると私は思うのです。まずそういう警察職員の実質的な勤務諸条件が低下しないということを前提にして、あらゆる問題を検討しなければならない。暫定措置としてこという調整手当を支給する、しかしそれは昇給されればだんだん金額が減つて来る、それは一時にその俸給の低下をとつてしまうか、あるいは巧妙に数箇月、数年かかつてとつてしまうかということで、実質的には機構改革に基いての俸給の低下を政府は認めているのだと思う。もしこのままの機構で自治体警察の職員で行けば、手当でなくして現在もらつている俸給を基準として、ずつと増額されて行くにもかかわらず、一時に下つて、そして同額の手当をもらう、数箇月あるいは数年かかつて今度俸給が上つて来た場合には手当が逆に下つて行く、俸給袋は数年間ずつとストップ状態です。ところが定期昇給にいたしましても、勤務年限並びに熟練度を考慮してなされて行く、あるいは経済状勢に基いて臨時的にベース・アツプが行われるという場合には、実質的な生活条件を下げないために上げるわけです。そういう内容を含んだ昇給の時期を、この調整額によつて削られて来るとするならば、いかなる定期昇給の時期が来ようとも、あるいはいかなる経済情勢に基いてベース・アツブをしなければならないという状態が起つてもこの手当が削られてしまえばストップ状態であつて、結局実質的な賃金の低下をもたらして来る。そういう矛盾が含まれていると同時に、今指摘した通りに、臨時手当でこれをカバーするとすれば、同じ職場におつて、国家警察におつたから手当がもらえない、自治体警察におつたから月二千円ほど手当がもらえる、こういうことによつて、同じ仕事をし同じ職場におつて、俸給袋に差が生れて来るという矛盾も起つて来る。退職金においても同じです。ですから、やはりこういう法案を提出するときには、十分検討されて、そういう実質的な賃金の低下をもたらさないことを基本にして出してもらわなくちやならぬと思う。今自治体警察ではほんとうに生活苦にあえぎながらも職務を遂行している警察職員が相当いる。それにもかかわらず今度この警察法の改正がなされた場合には、実質的には賃金が低下して来るという状態が起つて来る。だから自治体警察の職員においても、現在の法案に対しては相当反対しております。それは国家警察に変更される懸念があるという面だけでなくして、当面のわれわれの生活にも大きな脅威をもたらして来るので、そういう見地に立つても政府としては考慮してもらうように、われわれは要請されております。今申し上げたように、基本的な問題は別といたしましても、給与の体制は矛盾だらけです。現在の警察職員は非常に動揺している。だから単にやむを得ないということだけではなくして、もつと深く検討されるように、こういう諸条件に対する改正を強く要望いたします。
私の質問はこれをもつて終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/122
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123・中井一夫
○中井委員長 加賀田進君の御質疑は終りました。次は石山權作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/123
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124・石山權作
○石山委員 私は、数字的なことあるいは条文的なことは時間がかかりますので努めて省きたいと思います。行政措置といたしましては常に常識的であることが、一番大切だと思うのでありまして、この常識を逸脱した場合、横暴という言葉も出ますし、独裁という言葉も出るようでございます。私は人事委員として国家公務員の個人の身分を擁護するという一つの建前と同時に、公に奉仕しなければならない公務員の立場というものをば常に考えている者の一人でございます。そうした立場において今回の警察法案をばながめた場合、どうひいき目に見ましてもいささか行き過ぎがあるのじやないかというふうに考えられるのでございます。提案の説明の中には、占領当時であつたためにいささか国際的な立場もあつて、行き過ぎの警察法であつた、自治警察であつたというふうなことを言つていられますが、今度出されたこの法案は、逆に国家警察の面が多く出ているのじやないかと思う。警察の問題も人事院の改組の問題も、全部の行政機構の中から押し出して、人事院もこうでなければならない、警察もこうでなければならないとなれば、これは一応納得する分野も出るかもしれない。それが、今回のように特に人事院と警察だけに主力を注いで機構改革をやつた原因の一つとして、行革本部では、他に累を及ぼさないで単独になし得る分野から占領政策の是正をしたいのであるから、そのために、まずこの二つだけを他に累を及ぼさないからやりたいというようなことを言つております。しかし、これも前に申し上げた通り、公のために奉仕する公務員の立場を警察の場合には多く考えないで、むしろ一般民に対して強い発言権を持つ、行政権以上の何かを持つような印象を与えている点が一つ、逆に人事院の場合には、公務員として公に奉仕するあまりに、自己の持つている既得権をば失うような場面が出て来た、これを二つ比べてみますと、政府のとつているものの考え方は、非常にジグザグして迷つているように見える。これは私に言わせるならば、便宜主義ではないか、政府の行政措置上の便宜主義のために、こういうことが出ているのではないか、人事院をば改正する場合には、行政上の一つの機構としての半司法権、半立法権を持つような人事院は、行政機関の中に押し込めなければならないと言いながら、片一方においては地方自治をばぶち破るような、たとえば知事の権限などは無視できるような今回の警察法案を立案されている。こういう点を見ますと、どうしても御都合主義のように見えます。この御都合主義は、ある期間においては時の政府が今持つている権力の強化にはなるでしよう。しかし逆にいうならば、その次に来た権力はもつと強い権力を持つという結果になるのではないか。私は警察のようなものは人民の一人一人に与えるものでありますから、簡単に一人の人をつかまえるというようなことのできないような措置こそ一番大切だと思うのでございますが、今回の法律全般を見てみまして、特に人事権を中央で把握するという点を見てみますと、非常に憂うべきものがあると思つております。特に国務大臣にお聞きしたいのは、ほんとうに県を主体にした自治というものを認めるのであるかどうか。そうした場合における知事と地方警察本部長の立場というものは、どういうふうに調整をとつて行くのであるか。地方自治においては大きな委員会が二つ——これは一番大きいと思いますが、教育委員会と今の警察の方の関係、そのほかに農地あるいは労働委員会等がありますけれども、直接多数の人に与える影響の大きいのは二つの委員会であります。それらに関しては、県の委員会はほとんど無力だということは前々からの委員の方々から再々言われておる通りで、非常に今度は中央集権的にならざるを得ないと思う。どうして中央集権的でないということを言い得ることができるのか。どの条文によつて地方の自治団体が守られるというのか、そういう条文は探してもなかなか見えないのであつて、探して目につくのは中央集権的な人事権の掌握の条文のみ多いのでございまして、そういう点でひとつ概括的にもう一ぺん提案の説明をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/124
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125・小坂善太郎
○小坂国務大臣 お答え申し上げます。人事権を中央が持つ点が非常に中央集権的なにおいがするという御意見でございますが、これはやはり警察の特殊性と申しますか、国家的な業務の範囲並びに地方的な業務の範囲と相交錯した警察事務というその本来の性格から、そうする方がよかろう、こういうことなんで、ただその間に公安委員会というものがなければ、おつしやる通りになるものと思うのでありますが、法案にございますように、各都道府県公安委員会は懲戒、罷免の勧告権を持つているのであります。先ほどから申し上げますように、小県においては非常に少数の、一人か二人の国家公務員が、全然関係のない県に参りまして事務をいたすわけでありますから、しかもそれが懲戒罷免の勧告権を持つている公安委員というものがございますので、当然地方の状況というものを十分判断し、民意に沿うた警察行政をやらなければやつて行かれない。こういうところに、私は地方の民心を非常に尊重いたしたる警察行政が行われるであろう、こう期待いたします根拠があると考えているのであります。なお警察法第五条には、国家公安委員会の職能が書いてございますが、第五条二項に、公安委員会の任務を遂行するため警察庁を管理する範囲が書いてございます。こういうことも、範囲以外には国から直接地方の警察行政に対しての指示というものは、他の緊急事態を除きましてはない、地方自治にまかせる、こういう建前になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/125
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126・石山權作
○石山委員 先ほど大臣の説明の中に、今回の措置は能率化をはかるためだというふうに言われておりました。私はもちろん能率化は賛成でございます。しかし能率化をはかるあまりに、一般の庶民大衆に権力をもつて臨むというような態勢がとられたとするならば、これは大いなる誤りではないかと思つております。
それからもう一つ、政府の責任の所在を明らかにするために云々というような御答弁がございました。私はこの責任の所在を明確にするという点が政府の持つ行政権の強化に終るとするならば、これもはなはだもつて行き過ぎだと思います。こういう点では何らさしつかえないかどうか、私は能率をあげるために一般の庶民階級がおいこらという一喝のもとに縮んでしまつて画一的な、いわゆる圧迫された民衆と申しますか、そういうふうなものの上に立つた見方の能率化をはかろうとするならば、これは当然皆さんが警察フアツシヨといわれてもやむを得ないのではないか。つまり私に言わせるならば、政府が治安維持、国民の安寧秩序ということを口にしながらも、逆に裏には政治的な何かを考えてこの法案をつくつたんじやないかと言われはしないか。能率という問題と政府の責任の所在を明らかにするという美名に隠れて政治的な意図を陰に含んでいるのではないかということを再々言われている。私も全般を見てみますと、そういうような印象を強く受ける一人でございますが、その点は何でもないのでございましようか、ひとつ御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/126
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127・小坂善太郎
○小坂国務大臣 政府といたしましては、常に国民のための政府であるという考え方を持つべきものと考え、また持つているつもりでございますが、そのためにはまず国民の税金をむだに使わぬということが非常に必要であろうと思うのであります。現在の警察制度全般を通観いたしますのに、非常に地方の民衆に親しまれるというよい点も確かにあるのでありますけれども、警察事務というような、非常に広域にわたりまた国家的性格の強いものの面から見ますと、制度自体からして国警自警二本相存しておりますということは、非常にその間にむだな事務の重複があるということで、そうしたものを排除して、府県の自治体一本にしようというのがこの法案の意図するところでございまして、決して政治的に中央で何か一本の意思によつて、警察行政を民衆の意思に反してまで運営しようというような意図は毛頭ないのでございます。ただ政府の責任を明確化するということでありますが、政府は申すまでもなく国会に対して連帯して責任を持つているわけでありますが、現在の制度でございますと、国家行政組織法上総理大臣が国家公安委員会の所轄大臣ということになつているのでありますが、またその総理大臣がそのことに専念できないというゆえをもちまして、担当大臣を置いているわけであります。この関係が非常に明確を欠いていると申しますか、政府が責任を持つという態勢にはなつておらないと思うのであります。そこでこの法案におきましては、国務大臣が国家公安委員会の委員長になるということにいたしております。しかし委員会は御承知のように五人で、奇数委員会でございます。そこで委員自身は表決権を持つておりますが、委員長は表決権を持たない、ただ採決権を行使するということになつているわけであります。従つて国務大臣である委員長の意思というものは、国家公安委員会を拘束するというようなことにはならない。委員自身がその判断と責任において警察業務を管理運営する。こういうことになつております。そこで、そういう建前でございますので、やはり国会の同意を得て任命されました国家公安委員各位が十分その責任とその判断によつて民主的に警察を運営する。一方政府としてはこれを管理運営するというような気持は毛頭ありませんが、よい意味において政府の意図するところを十分に連絡してよく地方に伝える、こういうことによつて政府の責任も明らかにして、国会に対する御答弁等も疎漏のないようにしたい、こういうことなのでありまして、この間に公安委員会というものが入つておりませんと、御質問のような御疑念もあるいは出て来るかとも存じますけれども、私どもはただいま御審議いただいております新警察法において、能率化と政府の責任を明確化、こういうことと、御疑念のような独裁的運営ということとの関連はない、こういうように考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/127
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128・石山權作
○石山委員 私は治安の維持あるいは安寧秩序を守るという言葉は、やはり警察には一番大切な点だと思います。ただ私は、この警察法が何か特別に一貫したものを持たなければならないという点には、むしろかつての警察予備隊の肩がわりをしようとするような何かを持つているのではないかという懸念を持つているわけでございます。その点が私の言う政治的な考慮を背後に持つているのではないかという心配でございます。私たまたま欧米の探偵小説などを見るのでございますが、向うの方では、たとえばその地方において大きな犯罪が起きて、これが非常に完全犯罪のような場合で、地方の自治団体がどうにも手に負えない、そういうときには、優秀な本庁といいますか、あるいは日本で言つた場合には東京の方から、あるいは大阪の方から優秀な人をお手伝いに出す。こういう点で私は普通の治安の維持と安寧秩序が保てるものであると思つております。それ以上の、たとえば何かの暴動のようなものを考えられて、一本化しなければならぬというふうになれば、これは普通いわれている警察の任務を離れて、別の任務を持つものではないか。その別の任務を持つ方にのみ、今回は主力を注いだのではないかというふうに考えられるますが、それで普通新聞などは、国家警察の再現であるというふうな一つの心配を持つのではないか。たとえば選挙の場合には、安寧秩序どころではない。与党の点数読み、あるいは反対党の点数読みにうき身をやつして、それを集計して野党が何名、与党が何名と、ほとんどはずれない時代があつたのでございますが、国警、自警の間がもしこわれるとすると、ほとんど政府のために動くような警察になるのではないかという懸念がございます。そういう点が一つ。
もう一つは、現実に行われている犯罪の問題を解決するというよりも、もつと背後にある大きなもののみに心を費すのではないか。直接的には自治警察の場合には、日々われわれはひざをまじえるようにして、おまわりさんと会うことができるのでございます。そういう親しみを持つておるようでございます。そうした場合には、ささいなことであつても、犯罪の摘発をよくやつてくれるという意見が出ております。それが国家警察になりますと、選挙その他思想の探索、そういうものにおおむね勢力を費してしまつて、あき巣ねらいにオーバーをとられたとか、あるいは服をとられたとか、こういう庶務階級の日常に最も影響のあるようなものは、なおざりにされるのではないかというふうに、一般は懸念しておるのでございますが、そういう点は万万ないとは私は言い切れないと思う。これは国警長官からひとつ御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/128
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129・斎藤昇
○斎藤(昇)政府委員 今度の警察法案の改正の眼目は、大臣からけさほど提案理由の説明として申し述べられた通りでありまして、できるだけ安い経費で、そして国民の方々が満足されるような警察の任務の遂行ができるような措置、しかも民主的運営のできるような、国の見地から考えても、地方の見地から考えても、両々満足のできるようなそういう組織をつくり上げたいというのが今度の主眼でございます。ただいまおつしやいましたように、あるいは選挙の場合に、時の与党のために警察が働くおそれはないかとかいう御心配は、そういうような時代が前にあつたから御心配になるのもごもつともであろうと存じますけれども、ただいま御指摘になりましたような、たとえば選挙の場合に点数読みをするというようなことまで、はたしてこの組織でできるであろうかどうか考えてみますと、けさほども申し述べましたように、各府県にはそれぞれ政党的立場を持たれた公安委員の方々が三名ずつおられます。また中央にも国家公安委員会が中正な立場で管掌しておられますので、そういつた不当な事柄を中央から地方に命じて、しかもこれが隠密の間に行われるということはこの制度ではあり得ないと考えるわけでございます、これは御心配に過ぎるのではないか。今日の国家地方警察のもとにおきまして、国家地方警察の警察官はすべて国家公務員でございまして、それで各府県の隊長も長官が任命することになつておりますが、それでも、この制度においてはただいまおつしやいますような、そういう警察国家的の運用、あるいは政治的にこの警察を使うということは、今の府県の公安委員会の制度がある以上は、断じてなし得ないと私は思うのであります。
それから暴動その他は、これは警察のむしろ異例の仕事であつて、日常の警察はあるいは住民の保護、あるいはどろぼうが入れば検挙ができるように、国民の方々がまくらを高うして毎日休むことができるように、そういつた警察であるべきはもちろんであります。暴動はそうしよつちゆうあるわけではございません。従つて今度の警察法の改正の主眼点も、そういつた警察の日常の、地方民に最も接着したような仕事を、できるだけ費用もかさまらず、能率的に、国民の方々の御満足の行けるように、そうして人権尊重の面に立つて、人事管理も十分できるようにというのがねらいなのでありまして、暴動その他の場合に、警察法第五条によりまして国家公安委員会及びその管理のもとに警察隊長が指揮監督する場合はございますが、これはしよつちゆう発動するわけではございません。他の場合におきましては、すべて都道府県の公安委員会の管理のもとに、日常の警察業務は行われるのでございます。人事権を中央で持つておりますのは、一つは警察の国家的性格を持つておるという当然の要請と、いま一つは少くとも幹部は全国的な立場から、全国の最も有能なヴエテランを幹部に持つて行く、その方が警察の能率の向上の点から考えましても、また警察官のお互いの交流というものをよくいたしまして、沈滞をしたり、あるいはそこに停頓をしておもしろくない空気ができたりしないように、むしろその方が府県住民あるいは市町村住民に対して御満足できる警察サービスができるのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/129
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130・石山權作
○石山委員 御説明を聞いておると、なるほどという点のみが出て来るようでありますが、これは机上の一つの考え方が多いようであります。先ほどの給与の問題などもその通りでございます。われわれが一つの、机上で考えて、このくらいならば大丈夫だろうという想定は、いつでも立てなければならぬし、立つものでございますが、権力というようなことになりますと、これは机上の想定よりも、実際の面になりますと、非常に加速度的に飛躍されるようでございます。たとえば公安委員会の問題にいたしましても、公安委員独自の考え方で云々というような言葉を使われておつたと思いますが、あなた方は、たとえば提案の趣旨を見ましても、行き過ぎだ、及びもつかないというようなことも言つております。そうすると、アメリカでやつておられる、いわゆる西洋文明である民主主義というものには、日本ではまだ到達しないということにもなりはしないか。日本の土地にはアメリカ流の、西洋文明流の民主主義は育たないという一つの考え方である。これが公安委員会だけはアメリカのあるいは西洋文明の花が咲くだろうという考え方を持つとするならば、はなはだおかしい話だと思います。公安委員はやはりその町のために非常に牛耳られる面が出て来る可能性がある。そのために私らはそれを心配しております。そうしてたとえばこれが国家で一連のヴエテランを選んだために、一連の関連性を持たせてやるとするならば、地方自治に二人の知事ができかねない。特に知事よりもその方が強いのではないか。昔かつて私たちが小さいときは、知事というものより警察部長になつた方が幅がきくといわれておつた時代があります。金モールをつけて悠々としてそこら辺を闊歩していた。知事が行つて出迎えな、い官庁も警察部長が行くと出迎える。これほど何か強い実際的な権力を持つておるのが警察機構だといわれております。そうした場合において私の心配するのは、やはり国民の心配だと思います。今のような考え方でこのままこの法案が通されるとするならば地方自治は傷つけられる。そうして地方自治の下には二人の者がある。片一方は民選知事であり、片一方は官選の警察本部長というふうな形で現われておるのではないか。しかも片一方の方は選挙というある意味では非常に薄弱な点に立つておる。ある意味では警察本部長というものは人的なつながりによつて、どうしてもこれを押しとめることのできない背景を持つて登場するとするならば、地方自治の場合には完全に警察本部長の方が優位の立場をとつて現われる場面が多いのではないか。選挙の場合あるいは何かの場合、これはいろいろ言える場合だと思います。実力を背景にした、つまり人事権を中央に握られた一人の登場というものは大きいものだ、こういう点については国務大臣から御答弁いただきたいと思います。地方自治に対して二人の知事ができるような、特に民選知事よりも警察本部長の方が実際的権力を持つて民衆の前に立ち現われるというような現象が起きはしないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/130
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131・小坂善太郎
○小坂国務大臣 結論から申し上げますと、そういう懸念はないと私どもは信じております。まず最初にアメリカなどではFBIというものがある。地方自治体はそれぞれ警察を持つているということでございますが、私どもアメリカと日本の差異を見てみますと、大体土地の広さからいたしましても、ネヅダとかカリフオルニアとかいうところの大きさであるのでありまして、その中においてまた市町村というものがある。これはアメリカと非常に違うと思う。ことに市町村というものが一万有余あつて警察がそれぞれの市町村にあるという関係で、非常に種々の盲点をつくつている。あるいは二重機構によつて経費を食つておる。こういう点にかんがみまして国警もやめる。そうして市町村自治警察もやめる。そうして府県単位の自治警察にするというのが改正案であります。そこで知事の権限というものと新たにできる都道府県の警察本部長との権限についての御質問でございますが、これは知事が大体県の予算を持つておるのであります。警察の予算も県議会の審議を経て決定されるのでございますから、こういう金の面で非常に制約を受ける。それか公安委員会が都道府県におきまする場合は知事が公安委員を任命する。その知事の任命いたしました公安委員会の委員が今度の警察の本部長の監督権を持つておるわけであります。これによりまして御懸念のようなことは起らないのではないかと考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/131
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132・石山權作
○石山委員 今都市の広さの話が出たのですが、これも私常々考えておる点なんでございますが、確かに小さい町に都市警察を持つということは経済的にも、管理の上から見てもむだがあると思います。しかし最近は三万以上の場合は市制をしき始めておりますので、一応そういうのを一つの段階として、新しくしかれた市制区域くらいに対しては、自治警察は認めるという見解が成り立ち得ないかという点が一つ。
それからもう一つは、今の大臣の答弁の中に、公安委員の問題あるいは予算の問題などによつて本部長は相当制肘を受けるだろうというふうなことがありましたが、この法案の欠陥としては、県別における最高の行政官は知事であるのでございますから、やはり知事のもとにある場合は従わなければならないというふうな条項が明記されないとするならば、二人の知事がおることになるということはやむを得ない現象だと思う。片方は全然中央につながる人事権のもとにおいて動く可能性があるとするならば、特に公安委員の場合は、私、先ほど申しましたようにまだ花の咲かない委員会なのでございまして、これが十分われわれの民主的なもの、大衆のほんとうの気持をよく表わしてくれるかどうかということは相当な疑問があるのではないかと見ておる節もあるのであります。どうしても今の委員会は長いものに巻かれるというふう光景をわれわれはよく見ますので、こういう心配が起るのでありますが、今、言つたような二点に対して大臣は何か考慮を今までしておつたかどうか、そういうふうなことを研究しておつたかどうかということを御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/132
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133・小坂善太郎
○小坂国務大臣 警察を持つ単位についてでございますが、現在は御承知のように府県も自治体であり、市町村も自治体であります。そこでどの程度がよかろうかということで種々検討いたしたのですが、私どもは府県単位の警察を持つということがよかろうと考えましたその理由は今お話のように知事の権限との競合ということも考え、知事が予算権を持ち、あるいは公安委員の任命に対しての人事権を持つておるということでありますから、その範囲に置くのが最も国家性を持つ警察という要請と、自治体にふさわしい行政をされたいという警察行政の要望とをお互いにマツチせしむるに適当であろうというふうに思いましたわけであります。なお国家的な性格を強くいたしまするといかぬというお話もございましたが、けさほども申し上げたことでございますが、イギリスのロンドンのスコツトランド・ヤードというのは国の警察であります。しかしこれが非常に国の権限をかさに着て非民主的なものであるという非難は聞いておりませんので、問題は警察を運営するものの教養、警察行政に携わるものの全般の知識教養ということに帰着するのではなかろうかと考えております。そういうような点におきまして、私どもはこの警察法案の意図いたしております府県単位の自治警察という考え方が、両方の要請を満たすものとして適当であろうと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/133
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134・石山權作
○石山委員 私は警察法の改正は他に類を及ぼさないからというような提案の仕方で、行革で決定したということを実に不愉快に思うのであります。私は警察法の改正は、新しい日本の人間改造に一つの示唆を与えるものだというふうに考えておる。それほど重大なものだと考えております。なぜかと申しますと、日々一番触れるのは警察官と学校の先生です。われわれが一番行政的に触れるのは警察である。たとえば非常に国家警察になりましてフアツシヨ的な方向をとるとするならば、国民は今まで盛んに騒いでおつたのが、ぴたつと鳴りをしずめて何も騒がなくなる。ちようど昔おつかない先生がむちを持つて教室に入つて来ると、今までがやがやしてい子供たちが、とたんに声一つ立てなくなつて、いろはにほへとというように、非常に画一的な教授方法がとられたと同じように、もし万が一警察が一つの権限をつかんでそれをそのままぐつと押し出されたとするならば、大衆はたいへんな問題になるのではないかと思う。今までは自治警察でございましたからいろいろなことも自由に言えた。しかしこれが今度ずつと離れたよその警察になる。今までおまわりさんは親類であつたのでございますが、今度は日本人ではなくて、他国から輸入されたようなおまわりさんができ上るのではないか、こういう心配をわれわれは持つのです。私が先ほど言つた通り、一つの権力をうかつに与えますと、この権力はその用いる人によりまして——もちろん教養いろいろあると思いますけれども、いずれにしてもこれは用いられるのでございます。そうした場合には、権力は加速度的に大きくふくらんで行くということでございます。特に国家警察的に人事権を中央で握るとするならば、何か事あつたら、当然これはやるだろうと思う。先ほどの提案理由の中に、勧告があるから、懲戒、罷免が公安委員会でできるから、万々そんなおそれはないだろうということを言つていますが、私たち何も去年のことを言つているわけじやない、今年の春のことを言つているのではない、つい先ごろ、二週間ばかり前に如実に見せつけられておる。常軌を逸した、こんなものは勧告しなくても当然彼は引責辞職するであろう、彼はこんなことはやらないであろうというようなことを、時の政府が政権の座にすわつて簡単にやるのだ。そうした場合にこの公安委員の意見などは、ある場合には聞かないとしても通つて行ける。先ほどもどなたか委員が、聞かない場合には何か罰則規定があるかといつたら、罰則規定がないというのでありまして、斎藤国警長官は、これは大丈夫みんなが引責辞職すればそんなことにならないだろうと言われた。ところが最近私たちが受けた事例によれば、その当面の責任者はだれも辞職しないことになつている。そうしますと、それが既定の事実になつて、権力があぐらをかくということになるのでございます。でございますから、今でさえも自治警察は何も権力がないのではない、権力はあります。但しわれわれと非常に親しいということによつてそれが相殺されている。政府は能率を上げるために、政府が責任を持つためにこれを改正しようとするのでございますが、その改正の仕方、速度があまりにも早い。そうして時宜を得ていないというふうに私は考えます。先ほど受田委員からも、これは大衆から権利をば取上げるために、それの最後の仕上げをするために警察法を改正して、片つ端からびたりびたりとやつつけてしまう気持だろうというふうに言われたのでございます。あれは必ずしも受田委員一人、受田委員の周囲の少数の人たちの意見だけではないのではないか、この懸念は、われわれと反対の側にあるような商業新聞のほとんど全部がこれを裏書きをしております。私はこの権限をもつと縮小するという点を考えてもらうと同時に、もしこの法案をば修正するとするならば、やはり地方行政官としての知事に一番権限を与えるというふうな表現がなされるべきであるし、県ブロツク単位の自治警察にするには時期尚早であると考えるものの一人でございますが、この点に関しまして、大臣としては原案をば修正するというふうな、もう一ぺん考えてみようというふうな見解に立
つてはいないのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/134
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135・小坂善太郎
○小坂国務大臣 行政機構改革を種々やろうということで、行政管理庁側においても検討いたしたのでありますが、中央の出先機関あるいは地方自治体の機関との間の調整がなかなか困難でありまして、これはまだ多くの検討を要する点でございます。ただ警察の側におきましてこういう案ができましたのは、ともに警察行政であるので、国家警察も解体しよう、地方自治体警察も町村単位のものはこれを解体し、両方白紙に返して一本の府県自治体警察にしようということで案がまとまりましたので、これを切離して出したわけであります。こういういきさつであるわけであります。中央独裁ということが、中央からの任免等に関連して一部で言われていることも私聞いておりますけれども、この法律は、御承知のように組織法でございまして、警察官がどうしようこうしようといういわゆる執行面は、警察官等職務執行法であるとか、あるいは刑事訴訟法であるとかそういうものの側において十分民主的に改正せられている。警察の行いますことはいわゆる罪刑法定主義でございまして、何ら根拠のない罰則を下すことはできないのであります。しかも政治的に警察法を動かすというようなことになりますれば——これは先ほど国警長官も御答弁になりましたように、公安委員会というものは独自の権限を持つており、懲戒罷免の勧告をなすことができる。懲戒罷免の勧告を受けてまで居すわるということは、警察行政を行うという建前からいたしまして、なかなか困難なことでございまして、実際上において一種の強い人事権を持つているというふうに私どもは解釈いたしておりますので、御懸念のようなことはなかろう、こういうふうに考えているのであります。ただ法案自体の修正についてどうかということでありますが、政府は原案を最善とは考えておりません。しかし原案の修正ということは国会の権能でございますから、それについてとやかく申すことは政府として考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/135
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136・石山權作
○石山委員 この法案には抜け穴が三つ四つばかりでなく相当あるようでございます。この抜け穴が将来物を言うのではないかと私は心配しております。きようは私の持ち時間では逐条審議に入つている余地がないようでありまして、非常に残念でありますが、全般的に見て、今度の法案は少し急ぎ過ぎているのではないか、急ぎ過ぎているという印象は、逆に言えば、吉田内閣あるいは自由党の政権をば、もう少し延長さしたいというような意図が濃厚にあるのではないかと一部で言われておりますが、大臣の答弁なんぞ聞いておりますと、やはりそういうふうな印象が強いと思います。ただわれわれの懸念するのは、自由党内閣は一年、二年延長されるかもしらぬけれども、この法律のもとに自由党が百年生きることはない。次の政党が出て来たときに、この法律がどういうふうに運用されるかということもあわせて考えて、少くとも日本人の性格をも左右するくらいの影響を与える警察法なのでございますから、大所高所からこの問題を研究する必要があるのではないか。本員はいろいろお聞きしたのでありますけれども、残念ながらまだ賛成するというふうな立場はとり得ないのでございます。以上で私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/136
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137・中井一夫
○中井委員長 石山委員の御質疑は終了いたしました。高橋禎一君、古屋貞雄君、佐竹晴記君、皆さんおいでになりませんね。鍛冶良作君、吉田安君、猪俣浩三君、木下郁君、押谷富三君、すべて御出席になつておりません。ただいま名前を申し上げた諸君は、質疑の通告があつたのでありますが、御出席になりません。よつてやむを得ず連合審査会はこれをもつて散会いたします。
午後四時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904741X00119540506/137
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