1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年四月二十八日(水曜日)
午前十一時十五分開議
出席委員
委員長 稻村 順三君
理事 江藤 夏雄君 理事 大村 清一君
理事 平井 義一君 理事 山本 正一君
理事 高瀬 傳君 理事 下川儀太郎君
理事 鈴木 義男君
永田 良吉君 長野 長廣君
八木 一郎君 山崎 巖君
須磨彌吉郎君 粟山 博君
田中 稔男君 川島 金次君
小林 進君 辻 政信君
出席国務大臣
国 務 大 臣 木村篤太郎君
出席政府委員
法制局長官 佐藤 達夫君
保安政務次官 前田 正男君
保安庁次長 増原 恵吉君
保安庁局長
(人事局長) 加藤 陽三君
委員外の出席者
専 門 員 龜卦川 浩君
専 門 員 小關 紹夫君
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四月二十八日
委員早稻田柳右エ門君及び中村高一君辞任につ
き、その補欠として須磨彌吉郎君及び小林進君
が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員須磨彌吉郎君辞任につき、その補欠として
早稻田柳右エ門君が議長の指名で委員に選任さ
れた。
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本日の会議に付した事件
防衛庁設置法案(内閣提出第九四号)
自衛隊法案(内閣提出第九五号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/0
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001・稻村順三
○稻村委員長 これより会議を開きます。
防衛庁設置法案及び自衛隊法案を一括議題とし、質疑を続行いたします。須磨彌吉郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/1
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002・須磨彌吉郎
○須磨委員 防衛二法案の質疑応答が本委員会で相当長く行われておるのでありまして、それを聞いておりますと、この二法案に関しまするいろいろの点についてまだ明瞭を欠くような点がございまするために、私は本日さような点と思われる若干の問題を申し上げまして、当局からきわめて明白な御答弁をいただきたいと思います。従つてきよう御質疑をいたしまする諸点にによりまして、この二法案の適用の基礎について私は一つのきまつた点を確めてみたいと思うのでございます。
まず第一にお伺いいたしたいことは、防衛庁の内部の内局の任用資格の制限についてでございますが、今度の法案によりますると、いわゆる文官優位というような原則の緩和がきわめて判然ときめられておりまして、防衛庁の幹部職員の任用資格制限は、局長及び課長のうち職務上必要あるものについてはこれを緩和することにきまつておるのであります。しかるに四月上旬に発表されました、これは保安庁の方でお書きになつたものだと思いますが、「時の法令」というものがございますが、それによりますると官房各局はもつばら非制服職員だけで構成されるとはつきり書いてあるのでございます。かようになりますると、これは防衛庁法でせつかくきまつております原則をくつがえすのみならずいろいろこれからの原則がきまつて参ります今日において、かようなあいまいなことでは私はこの趣旨を没却することになりはしないかと思うのであります。例をあげて申しまするならば、教育局でございまするとか装備局でございますとか、かような局課におきまする職員につきましては、その職掌の上から申しましても、むしろ自衛官すなわち制服の者が当らなければ責任の地位につくことができないようなことになるのでありまして、ことに教育局におきまして、これからの自衛隊の諸般の教育をあずかりまするためには、どうしても制服の者が能率からいたしましてもこれは最も必要な点だと思うのであります。この「時の法令」に解説をお書きになりまして、どういう御趣旨でありましたのか存じませんが、これをあいまいにいたしておりまする点をまず御指摘申し上げまして、この点に関する見解はその通りでよろしいのでありますか、政府の御所存をまず承りたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/2
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003・木村篤太郎
○木村国務大臣 私はしばしば申し上げておりまするように、今後の行き方は、いわゆるシヴイリアン・コントロールである。シヴイリアン・シユープレマシーとは私は違うと思う。いわゆる政治が支配する、政治が優先である。シヴイリアン・シユープレマシーというような観念を植えつけますと、いわゆる制服と非制服者との間の融和親愛の基礎がくずれて来る。一たび制服を着た場合でありましても、適材であれば内局に勤めるということはさしつかえないのだという建前をとるがよかろう、私はこう考えております。今度の法案において御審議願つておる点もひとえにそこにあるのであります。
そこで今仰せになりました教育局とか、あるいは装備局とかいうことについて、むしろ制服を着た者がいいのではないかというような御議論でありますが、もちろん制服を着ておつた人でりつぱな人であるならば、その任につかすことは当然であろう、私は適材であれば制服者をその任につかせるということについては決してさしつかえない、こう考えております。まつたく同感であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/3
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004・須磨彌吉郎
○須磨委員 ただいまの点ははつきりいたしたのでありますが、これとほとんど軌を一にする問題でございますが、防衛庁設置法案の第十九条によりますと、「長官は、必要があると認めるときは、陸上幕僚監部、海上幕僚監部若しくは航空幕僚監部又は第二十九条に規定する部隊若しくは機関に所属する自衛官を内部部局において勤務させることができる。」と、内部部局と自衛官との両方が交互にかわり得ることをはつきり規定しておるのでございますから、この十九条の規定によりまして陸上、海上、航空幕僚監部の三者の自衛官は、その階級のまま、つまり制服を着ておる陸佐でありますとか、そういうような階級のまま内部部局の局課長に任用され得るものと解されることが当然でございますが、念のためこれもはつきりここで伺つておきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/4
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005・木村篤太郎
○木村国務大臣 ただいま仰せになりましたように、適材であれば制服のまま転任させてもさしつかえないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/5
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006・須磨彌吉郎
○須磨委員 次に伺いたいことは、これはいろいろな場合に問題になつておりましたことでございますが、長期防衛計画についてでございます。政府はこの長期防衛計画の樹立は困難であるというようなお答えが常に支配しておつたと思うのでございますが、ただ困難ということではどうも了解に苦しむのでありまして、昨年の九月二十七日のいわゆるこの防衛に関しまする会談におきましては、「現在の国際情勢及び国内に起りつつある民族独立の情勢にかんがみ、この際自衛力を増強する方針を明らかにし、駐留軍の漸減に即応し国力に応じた長期防衛計画を樹立する。」と申合せが成立しておるのでございます。この結果といたしまして、いわゆる三党折衝と称せられるものができたのでございますから、この計画の誓いうことは、そもそも自衛隊のこれからできますことについては、必要欠くべからざるものであることは申すまでもないと思うのであります。また一方これからMSAというものが――来年もどういう形で続けられるかはもちろんわからないのでございますが、これが継続されるような空気は、もうすでに察知されておるのでありますから、さようなものとのにらみ合せをいたしまして、来年度におきまする、またその次の年度におきます計画を持つておりませんならば、かような国際的な面においても、いろいろ不便が起ることは申すまでもないのでございます。すでに本年度におきましては、自衛隊法によつて四万名の増員がなされることになつており、経費におきましても二百余億円の増額が見込まれておる次第で、ございますから、かようなことからいたしましても、単に次年度のみならず、将来の防衛計画を立ててこれを国民の前に示しますることは、政府の責任であろうかと思うのでございます。これを進んでお示しになりませんことは、まことに私は政府としての責任を尽さないものであるというように思うのでございます。もつとも他面武器の発達と申しまするか、変転と申しますか、さようなことの現状を考えますと、長期の計画を立てますことは容易ならぬわざでありますことは申すまでもないのでありますけれども、そうかと申しまして大体のもくろみ、これから来るべき五箇年くらいに対して持つておりませんならば、いろいろな場合において非常なる不便をかもすのみならず、きわめて最近の事態でございまするが、インドシナその他の方面におきまする情勢にかんがみましても、どうしてもこれから将来に対しまする、きわめて骨格だけであつても大きな計画を持ちませんと、日本があらゆる点において危険を感じなければならぬと思うのでございます。かような意味をもちまして、本日はこの重要なる二法案われわれは論議しておる際でございますから、政府のきわめて虚心坦懐なるそのお考えを国民の前にお示しを願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/6
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007・木村篤太郎
○木村国務大臣 お答えいたします。長期防衛計画の樹立でありますが、しばしば申し上げました通り、長期の防衛計画を立てるにつきましては、いろいろな観点からこれを研究検討する必要があることは論をまたないのであります。すなわち今仰せになりましたように、将来における兵器の進歩あるいは一面において財政力、負担能力、あるいは輸送の能力、あるいは兵器生産の能力、各般の事情を総合いたしましてこれを検討すべきであろうと考えます。私は常々申し上げている通り、かような長期防衛計画はなかなか容易には立ち得ない、こう申しているのでありまして、これは私率直に申し上げます。しかしながら今仰せになつたように、それかといつてそのまま放置するがいいかというと、あえてしからず、必ずやわれわれといたしましては長期防衛計画は立つべきが筋道だろう、ただ困難であるということであります。そこでわれわれ当局といたしましては、しきりにその点を今研究中であります。まずさしあたり三十年度ということを目標にしてやつております。今MSAの意見などもありましたが、しからばそれはどうかということについて実は検討中でありまして、まだ結論に至つおりません。われわれといたしましては全力をあげまして、できる限りの計画を立てて、これを国民の前にお示しいたしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/7
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008・須磨彌吉郎
○須磨委員 ただいまお答えがございましたが、御考究中であり、鋭意これを立案中であると仰せでございますが、それはやつぱり私どもが申しましたような、五箇年計画というような一つの大体のめどをお持ちでございましようか。ただ漠然と伺つておりますと、国民も非常に不安と思いますから、この大体の時の見通し、めどというものをちよつと伺つておきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/8
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009・木村篤太郎
○木村国務大臣 お答えいたします。この長期防衛計画を立てるについて何年度を適当とするか、あるいは五年度を適当とするか、七年度を適当とするか、十年度を適当とするかということについては、いろいろ議論がございます。しかし私はまず五年くらいの程度において計画を立てることがよい、こう考えております。その方針のもとに今研究を進めている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/9
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010・須磨彌吉郎
○須磨委員 次に私はこの防衛法案の問題と憲法との関係につきまして伺つ
ておきたいと思うのでございます。この点も何回か問題になつたのでござい
ますが、実を申しますとこの二法案のもととなりました、いわゆる防衛折衝
というものをやつておりました当時には、憲法という問題は除外をいたして
参つたのでございます。ということは、憲法に関しまする解釈、取扱いにつき
ましては、各党にはそれぞれの趣旨がありまして、それを一々問題にしてお
りましたのでは、防衛庁法並びに自衛隊法の内容に入ることはできませんか
ら、これを便宜除外をしてやつて来たのでございますが、いよいよかような
二つの法案となつて現われて参りますと、ここに私は実情をありのまま申さ
なければならぬと思うのでございます。この自衛軍につきましては、私ど
もの改進党という党におきましては、数年来自衛軍の創設を提唱して参つた
のでございまして、きわめてはつきりと憲法問題を割切つておるのでござい
ます。自衛軍は憲法九条に違反することなく持てる、すなわち自衛隊法とい
うものは憲法の条章に合うものである、合憲であるということを、はつき
り割切つておりまするから、あの十九回の防衛折衝を通じまして私どもは、
俗な申し方てはございますが、自衛隊というものは灘の生一本のごとく軍隊
というようなものにはつきりしなければならぬじやないかということをだん
だんと主張して参つた次第であります。しかるにこの二法案がいよいよで
きた今日でございますから、かような経過を率直に申し述べまして、これに
対する政府の憲法の解釈を持ち出さなければならぬのであります。このわれ
われの割切つた態度に対しまして、政府といたしましては、戦力に至るよう
なことになりますならば、憲法九条に違反することになる、かような態度を
きわめてはつきりとおとりになつておる次第でございます。従いまして、こ
の自衛隊法をこのままほんとうに通しまするためには、政府においてはわれ
われのごときはつきりした、憲法を割切つた解釈に同調されるか、しからず
ん憲法改正を要するぎりぎりの線まで来ているということをお認めになり
ませなんだならば、これを通すことはできないと思うのでございます。外敵
の直接侵略に対抗する自衛隊を保持するということになりますると、これは明瞭なる事実でございまして、ここが私は憲法に対する関係をはつきり伺つておきたいと思つたゆえんであります。二法案の審議の経過によりますと、だんだんこの変化をお認めになりましてか、なりませんでか、政府は依然として警察予備隊、保安隊同時と同様の憲法論や戦力論をお繰返しになりまして、直接侵略に対抗しても戦力ではないと仰せになつたり、あるいは戦力とは他国を侵略する程度の実力であると御答弁があつたり、あるいは自衛隊が戦力たるに至つて初めて憲法を改正するのであるというような言い方をなさつたのであります。さらに進みまして、先般MSA協定審議中に、外務委員会におきまして――きようは御不在でございますが、緒方副総理が答弁された中には、もはや憲法改正というものは時間の問題であると繰返されたのでありますが、これもわかつたようなわからないような表現でございますが、ともかくこの憲法と自衛隊との関係についてはつきりした、きわめてすつきりした解釈、御態度をお示しくださいませんと、これからも申し上げたいと思いますが、この両法案が通りましても、これの実施にあたつて円滑を欠く場合が起つて来ると思いますから、この際あらためて憲法との関係について保安庁長官のきわめて率直な御意見を承りたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/10
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011・木村篤太郎
○木村国務大臣 いつも申し上げる通りでありますが、憲法は自衛力を持つことを否定しておるわけではありません。この自衛隊はいわゆる国家の自衛力の一部をなすものとわれわれは考えております。そこで、これは常に問題になるのでありますが、自衛隊となつた以上は、これは軍隊と称していいじやないかということであります。さようにならないと、自衛隊員の志気も上らぬのじやないか、私はそれはごもつともだと考えております。そこでわが憲法下においても軍隊を持つて悪いとは言つていないのであります。戦力は禁止されておりますが、軍隊という文字については一向使つていないのであります。陸海軍という文字だけであります。そこで私は常に申しておるのでありますが、軍隊という定義というものはいまだ確定したものはないと了承しております。そこで通常外敵に対して対処する実力部隊を軍隊と称するかということであれば、自衛隊法によつて、今度自衛隊はまさしく外国の武力攻撃に対してこれに対処する実力部隊でありますから、私はこれを軍隊と称してさしつかえないと考えているのであります。これをとやかく御論議される向きもありまするが、いまだ定義のはつきりしない際におきましても、外敵に対して対処する実力部隊を軍隊と言うという定義でありますれば、まさしく自衛隊は軍隊と称してさしつかえない、私はこう考えております。
なお憲法改正問題についてでありまするが、率直に言つて、これは私見でございますが、憲法は一国の基本法でございますから、容易に改正することは論議すべきではないとは思いまするが、しかし現在の国際情勢、あるいは日本の置かれた立場、日本が独立国家として将来処すべき状態、かたがた種種の点から考えまして、憲法の改正を論議されるということは近きにあるじやないか、私はこう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/11
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012・須磨彌吉郎
○須磨委員 憲法改正が近きにありと申されましたが、私の伺いたいことは、もうこの憲法を改正するにあらずんば解釈のつかないぎりぎりのところまでこの自衛隊二法案というものが来ていることをお認めになつた上でのお言葉だと私は聞きたいのであります。すなわち、この次には憲法改正という一歩を踏み出すのであるというように解釈をいたしてよろしゆうございましようか。もう一ぺん向いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/12
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013・木村篤太郎
○木村国務大臣 自衛隊がどこまでこれを漸増すべきかということは、これは国会において今後論議されるとき重要問題であろうと考えております。しかしこの自衛隊が今後漸増する程度につきましては、私は憲法を改正すべき時期が来るじやないか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/13
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014・須磨彌吉郎
○須磨委員 ただいまお答えの中にもございましたが、重要な問題でございますから、念のためいま一ぺんあらためてお伺いをいたしたいと思います。今も、長官のお言葉の中に軍隊と称してもよろしいということがございますが、この称してもよろしいというのでは、これは私が先ほど申した灘の生一
本の軍隊ということとは、非常な距離があるのであります。一九二七年のジユネーヴにおきまする軍縮会議におきまして、いやしくも外敵に対抗することを任務とするものは軍隊であるという定義が、一応国際関係として認められているのでございます。今回の自衛隊の任務によりますと、「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対してわが国を防衛することを主たる任務とし、」というのが自衛隊でございますから、これは国際的通念といたしまして、まさしく軍隊に当るわけでございます。私はかような学者のような議論をするつもりはございませんが、ただ、ただいまの長官のお言葉にもございましたが、これから自衛隊の志気をどうするか、この問題について考えまするときに、この二法案が通りまする契機におきまして、政府はどういう心構えを持つべきかということが、はしなくも軍隊問題によつて明らかになつて来るのではなかろうかと思うのであります。ただ単に軍隊と称してもよろしいとか、軍隊的性格を持つものだ、軍隊だが交戦権がないから、完全な軍隊ではないとか、軍隊でも警察でもない、自衛隊という特殊な存在である。私が今まで拾つてみました御答弁では、かような区々たる御応答がございますけれども、私はどうしても平和及び秩序をただ守つておつた従来の保安隊とはまつたく違つて、性格を新たにした百尺竿
頭一歩を進めた存在であるということは御認識になると思います。せつかくかようなところまで参つたのにいまなおこのようなお言葉をもつて濁されて、日陰者同然のような保安隊当時のような取扱いをしますならば、自分たちの血税をもつて保持して参ります国民の感情にも沿わないことはもちろんでありますのみならず、私は先般来自衛隊の諸君と話す機会があつてその諸君から直接聞いたことでございますが、今度自衛隊となつてもひとつもわれわれの身分はかわらないと政府がおつしやることは、われわれの志気を沮喪させるものであると告白をいたしておる次第でありますから、かようなことを思い合せまして、ここに私が伺いたいのはかような二法案の通ります経緯におきまして、どうしても軍隊としての認識をはつきりさせていただきたいと思うのであります。これはこの二法案に賛成する者も反対する人も、広く国民がこのことを要望してやまない点だと思いますから、あらためて長官に対して、この軍隊の認識についてもう一ぺんはつきり御所見を承つておきたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/14
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015・木村篤太郎
○木村国務大臣 お答えいたします。幸いに自衛隊法が国会を通過いたしますと、いわゆる現在の保安隊とは、その性格、任務は大幅にかわつて来るのであります。すなわち不当な外部の侵略に対処する、これはこの法案が通過いたしましたあかつきにおいて隊員に対して十分理解せしめ、またあらためて宣誓の制度をとることになる、隊員もここにおいてその任務、性格がかわつたことがはつきりいたしまして十分な理解を持つと私は確信して疑いません。そこの点において隊員の志気がどうのこうのという問題はおそらく解消するのではなかろうかと信じておる次第であります。
しこうしてこれは軍隊なりやいなやこれは先刻申し上げたように、外部からの不当攻撃に対して防禦する実力部隊をもつて軍隊なりと解すならば軍隊と称してよろしい。これははつきり言つておきます。これはただ名の問題であります。自衛隊員すなわち外敵の侵略に対して敢然として当る任務を持つ者である、この自覚を持つことが一番急務であると思います。世間でこれを軍隊と称するなら軍隊でよろしい。われわれは自衛隊というこの任務を持つておるものだここにおいてわれわれははつきりした性格が打出されるもの、こう考えておる次第であります。軍隊と称するなら軍隊でよろしい、これであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/15
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016・須磨彌吉郎
○須磨委員 ただいまの御答弁は私の申しておるところをそのまま御承引になつたものとは受取れない点が多少あるのであります。軍隊と称するなら軍隊でよろしいと言われるが、私の伺いたいのは長官のごときこの自衛隊を率いられます最高の地位にある方が、これは軍隊だるという御認識を持つか
どうかということであります。人が言う言わないということを、どう受入れられるかということを聞いておるのではありません。長官自身がこれはほんとうに軍隊という認識を持つて、御指揮なさいませなんだならば、せつかくのこの二法案が通りましても実効を上げることは非常に少いと私は思いますために伺つておるのでありますから、はなはだ煩項でありますが、もう一ぺん長官から長官の御認識としてこれはほんとうの軍隊――私は先ほど生一本の軍隊ということを申しましたが、さようなことを申す必要はないかもしれませんが、そういう私の申しておる意味を御そんたくくださいまして、もう一度長官の御認識をはつきりと承つておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/16
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017・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は実質上から今申し上げたのであります。外敵の不当な攻撃に対して対処する実力部隊、これが軍隊と私見としては考えております。従いまして私見によれば自衛隊は軍隊なりと私は考えております。しかし世間がこれをどう考えるかは別問題であります。これを軍隊なりと考えるなら軍隊と称してよろしい。ただ私の意見としては外敵からの不当な侵略に対処する実力部隊は軍隊なりと確信いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/17
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018・須磨彌吉郎
○須磨委員 これはこの上続けましてもかわらないと思いますし、私は長官の意のあるところは、そういうような自信を持つておられるということを了承いたしまして、次の問題に移りたいと思うのであります。
次に伺いたいのは、国防会議についてでありますが、この国防会議が設けられました趣旨は、今までのどこの国の法制にもない一つの特別なる機構として設けられたわけてごさします。総理大臣が自衛隊を統御、統制いたしますための補佐機関と申しますか、ある意味においては諮問機関としてこの国防会議が設けられたわけでございますが、そのねらいといたしましては、米国にあります国家安全保障会議、ナショナル・セキユリテイ・カウンシルというようなものでありますとか、あるいは英国のミリタリー・コミテイー、軍事審議会と申しますか、さようなものとは違つて、軍人ばかりではなく、その機構の中には国防のみならず学識経験のある者を若干名加えまして、この国家の最も重要なる国防の一貫した永続性と申しますか、そういうものを保つことが必要であるという見解に立つておるのであります。また国防ということは一貫性のみならず高度の機密保持が必要であります。従つて国防、軍事に対しまして練達堪能な人士が若干名入つて、内閣の運命と関係なく、恒久性を持つた資格を持ちまして、たとえば往年わが日本にありましたような制度から考えますと、枢密顧問官でございますとか、さような一つの恒久性を持つた資格を有して加わつたものがおりまして、恒久性、永続性を持つた国防のごとき重要なるものに参画させることが必要であるという考えから出たわけであります。従つてたとえば国防会議はこれから構成法ができ、構成員がきまるわけでありましようが、私のここにお伺いいたしたいのは、政府がこれから構成法をおつくりになる場合において、私どもが考えました当初におきましては、内閣総理大臣、国防大臣と申しますか今の保安長官、防衛長官、外務大臣、大蔵大臣、経済審議長官という五名の閣僚はもちろんこれに加えなければいかぬのでありますが、かようなものでは、これは米英等の現在の制度そのままでありますから、それに恒久性のある学識経験のある者を六名ぐらい加えるというような制度にいたしておつたのであります。やがてこの構成法を御立案なさると思いますが、さような立案の場合におい
て、ただいま私の申しましたような考え方を実現なさるおつもりでありまするかどうか、これをこの際伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/18
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019・木村篤太郎
○木村国務大臣 お答えいたします。将来制定を予想されております国防会議の構成、内容等については、私はただいまはつきりした結論をまだ持つておりません。今お説のことはきわめて重大であろうと考えます。私はこれを資料といたしまして十分検討して国会の御審議を得たい、こう考えておりま
す。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/19
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020・須磨彌吉郎
○須磨委員 次に最も重要なものの一つでございまするが、しかもこのことは非常に軽視されておるような状態でありますが、それはすなわち防衛生産に関してでございます。この防衛生産に関しても有効適切な施設をすみやかに立てますることが、肝要であることは言うまでもないのでございます。私はきようは三つばかりの点を拾いまして御所見を承つておきたいと思うのであります。
二十六日、経団連が小笠原蔵相を招きまして、日本の防衛生産というものは、日本の輸出貿易の中で実に重要なる部面を占めるものであるから、今後政府としては、これには助成金、あるいは補助金と申しますか、さようなものを出すようなことをも考慮して、大いに海外貿易の一つの部面として研究しなければならぬということを申し入れたことが伝えられておるのでありますが、この防衛生産について、第一に伺いたいことは、かような防衛生産というものは、これは経団連が申したことでございますが、一つの役所とか、一つの委員会がする問題でございませんので、まさにこの二法案ができる機会だから申し上げたいと思いますが、国防という国家の最高の事務に関連をいたしておるものでありますから、これに対して保安庁長官は、まず第一に、この経団連のことに関連しまして、何かお考えをお持ちでありまするか、また私が知つておりまする以外の情報等がございまするならば、まずそれから伺つておきたいと思うものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/20
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021・木村篤太郎
○木村国務大臣 防衛生産に関しましては、将来日本がいわゆる自主的自衛力を持つことになりますと、相当考慮しなければならぬ大きな問題であろうと考えております。特にこの兵器の生産につきましては、工場一つ建てるにいたしましても、非常に莫大な固定資本がかかる。従いましてこれを恒久性を持たせなければ、会社の経営というものは不能に終る。そこに大きな問題点があろうと私は考えております。従いまして普通の営利会社的の経営では、これはとうてい不可能であろう。一つの国家的見地に立つた企業体をここにつくり上げることが必要ではないか、こう考えております。それにいたしましても、国家の補助金とか、制度とかいうようなことは、なかなか将来は問題であろうと考えております。要に真剣に日本の国防産業はどうあるべきかという考えのもとに出発した人にその経営の任に当つてもらわなければならぬのではないか、私はこう考えております。一面考えられることは、旧
軍需工廠の活用の問題が起つて来るのであります。これは将来国家の手においてさような軍需産業を経営して行つていいのか、民間企業にゆだねていいのかというような大きな問題も考えさせられるのであります。私はまずかような論点から出発いたしまして検討する必要があろうと考えております。こ
れは私見でありますが、これはやはり民間において経営させることがいいのではないか、こう私はただいまのところは考えております。しかしこれは将来日本の国防上あるべき姿として真剣に考えなければならぬので、なかなか容易に結論を出し得ないという状態にあることを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/21
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022・須磨彌吉郎
○須磨委員 ただいまの御意見を承りまして、ここに思い出されまする重要ばことが一つあるわけでございますか、ただいま本院の通商産業委員会で審議中になつておりまする航空機製造広の一部を改正する法律案というものが出ておるわけでございます。これは重要な法律案であるわけでございますが、これによりますと、通商産業大臣は、武器を装備し、または搭載する構造を有する航空機の製造または修理について、防衛庁長官の意見を聞いてこれをきめる、こうなつておるのでございます。これは明らかに、「武器を装備し、又はとう載する構造を有する航空機」というのは、軍用飛行機のことでごいましよう。さようなものは通産省の大臣が主管をいたしておるようにこの法律の改正案に出ておるのでございますが、今伺いますと、防衛生産は、長官の御意見では、民間に移したらどうかというような重要な御発言があつたのでございますが、かようなことから考えまして、今この法律を改正まで
して、かようなところまで持つて行つしおくというようなことにおきめになりましたことは、少くとも早計に属するのではなかろうか。あるいはまたこれを統制する。――統制と申しますのは悪い意味ではありません。重要な防衛生産というものを一つのところへ集めるということをおきめにならぬうちに、区区たるかような措置をとることは私は好ましくないと思いますから、この通産省の問題について、航空機製造法の一部を改正する法律案に関連いたしまして長官の御所見を承つておきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/22
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023・木村篤太郎
○木村国務大臣 お答えいたします。私はその法案に対する批判は避けたいと考えておりまするが、私はこう考えております。将来の航空機製造は主として自衛隊、いわゆる航空自衛隊で使うべき航空機に関するものが多かろうと考えております。民間に使いまする航空機との割合は、おそらく八対二ぐらいの関係じやないかと考えられます。これも正確なことはわかりません。ことほどさように、私は将来の航空機といえばいわゆる自衛隊において使う航空機と称してよかろうかと思います。その航空機がどうあるべきかということは、十分に保安庁の実際扱う者の経験あるいは指導等によらなければむずかしかろうと私は考えております。ただ通産省だけに指導をさせてやるということでは、円満な運営は私はできなかろうと考えております。もちろんこの航空機については、御承知の通り精密機械でありますから、あらゆる点からこれを研究して行かなくてはなりません。率直に申しますと、従来は発動機一つにいたしましても、この素材ということについての考えがあまりなかつた。この素材についての研究をどうして行くか、総合研究はこれは必要でありますから、各技術者があらゆる部面から寄り集まつて研究すべきであつて、ただ機体をつくる部面、あるいは発動機製作の部面というものを切り離して考うべきではない。これを使うべき資材の面から、あるいは油の面から、いろいろな面からこれを研究して行かなくてはならぬ総合研究であります。それらの点については、私は将来やはり自衛隊で使うべきが主でありますから、その方の力によらなければ運営の全きを期することはできぬ、こう考えております。しかしわれわれといたしましては、虚心坦懐にあらゆる面からこれを考えて、その発達を期さなければならぬと考えております。それをどうして一体やるかということについては、私はまだ成案を持つておりません。なかなかこれも大きな問題でありますから、十分に検討しなければならぬ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/23
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024・須磨彌吉郎
○須磨委員 もう一つ、この防衛生産に関連をいたすのでございますが、今回のMSA四協定中に、余剰農産物の購入資金に関する協定があるわけでございまして、そのうち五千万ドルのうちの二割に当りまする千万ドルは邦貨として日本に贈与される、これを主としてわが国の防衛等に、三十六億円になるわけでございますが、これを使い得るようなことにもなつておるようでございますが、これについての処理方法はどうすればいいのか、こういうような場合においては、よく聞くことでございますが、各官庁等に非常な取合いが始まるというようなことがあるやにも聞いておるのでございますが、私はきようは、この防衛庁、ただいまの保安庁の長官はこれに対しての確たる一定の方針をおきめになりませんといかぬと思いますので、まずこの状態についての御所見を承りたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/24
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025・木村篤太郎
○木村国務大臣 この一千万ドル、すなわち三十六億の使い方につきましては、これは非常に慎重を要すると考えております。ただいま関係各省の事務当局において、せつかくこれを検討中であります。しかし私らの面から考えますると、将来日本の防衛のあり方としては、なるたけ金のかからぬ、また人員のかからぬものでやつて行くことが本筋じやなかろうかと考えております。それには何としても将来は電波兵器、これに研究を注がなくちやいかぬと私は考えております。それについてわれわれといたしましては、それの研究に要する費用というものはなかなか国家としても出し得ない。こういうときを機会にその方面に金をまわして将来の研究の端緒を開かせるような方法をとるべきであろうと私は考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/25
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026・須磨彌吉郎
○須磨委員 この防衛生産に関して三つの点をお伺いしましたが、もう一つ私はここに思い起しますことは、先般私どもが事実見学に行つたことでございますが、極東軍の中にあります、成増でございますか、あすこにあります修理工場を見てかつその製品で日本の防衛隊に使われるものなどが陳列してあつて見せてくれたのでありますが、その中には日本製鋼とか神戸製鋼、いろいろの会社がありました。そういうところでつくりますいろいろな武器が保安隊の方に与えられておることも、その場で承つたのでありますが、かようなこともあると思います。今あげましたこの四つばかりの点から考えましても、この重要な防衛生産というものについて、統一した政府の方針を早くお立てになりませんと、きわめて混雑な問題が起つて、そのために防衛生産がだめになる。防衛生産が日本でできなくなつたら、自衛隊なんかこしらえたつて何にもならぬという事態にさえ陥る場合があり得ると思うのでありますから、この際政府に対しまして、早くさような機関を私は何とかしなければいかぬということを今申すのではありませんが、今お伺いいたしました四つの点だけでもまちまちであるということを暴露しておる次第でございますから、これを一つのことにおまとめになつて、有効なる、有能なるエフイシエンシーの上りますようなものをおつくりになるということの必要を強調して、それに対しまする長官の御覚悟のほどをこの際伺つておきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/26
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027・木村篤太郎
○木村国務大臣 ただいまの御発言、まことに同感であります。これはどうしても一つの大きな見地から考究すべき機関でもつくり上げて、わが国の防衛生産のあり方を十分に検討し、またこれの能率の上るようにすることが妥当であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/27
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028・須磨彌吉郎
○須磨委員 次に私はこれから自衛隊となりますものの最高の教育機関でありまする保安大学について、ちよつと伺つておきたいと思うのであります。これはこれから防衛大学となるのでありますかしれませんが、保安大学校要覧というものがありますが、この要覧によりますると、本校は元の陸軍士官学校、海軍兵学校の復活でもなければまた一般の理工科大学でもない、特別の目的のためにつくられた独特のものであると書いてあるのであります。第一ページでございます。この特別の目的のためにつくられた独特のものという表現は、いかように解釈をいたすべきものでございましようか、伺いたいものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/28
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029・木村篤太郎
○木村国務大臣 保安大学校の性格と申しますると、これは将来自衛官の幹部たる者を養成する機関であります。御承知の通り、昔の兵学校あるいは士官学校、これは初めから陸軍に勤める、あるいは海軍に勤めるとはつきりした区別をつけて養成しておるのであります。今度の保安大学校はさような区別はございません。いわゆる自衛官の幹部たる者を養成する。従いましてこの四箇年の課程において、将来海上自衛隊あるいは陸上自衛隊、航空自衛隊に勤める者も一緒にそこで学問をさせる、しかも主として理工科系の技術的の面に重きを置いてありますが、それとともに一面においては、社会人として教護のある人材をつくりたいという教育方針のもとにやつておる次第であります。今兵学校にあらず、また昔の士官学校にあらずという表現を用いたのは、そういう意味合いからであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/29
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030・須磨彌吉郎
○須磨委員 この特別の目的のためにつくられた独特のものであるということについての御説明は、私にはふに落ちない点がございますが、これを論議いたしてもいたし方がございませんが、私は最近きわめて重要なることを聞きましたために、それをここに御披露いたしまして、この特別というようなものや、独特というようなもので、何と申しますか私にも意味のわからないことを書いておるために生ずる欠陥の一つではなかろうかと思います老婆心から、御指摘申し上げたいと思うのであります。先般座談会が開かれまして、この座談会において、きようは名前は申し上げませんが、ある評論家が保安大学の学生諸氏がおられるところで、諸君はいざ鎌倉ということになつたら命を捨てるだろうねと聞いたそうであります。すると、ふふんと言つたそうです。どうもふに落ちないから、君たちふふんと言つてどうするんだと言つたところが、一人の学生が勇敢にこう申したそうであります。私どもはさようなことは思つておりません。そうしていわく、政府は戦力なき軍隊と申しておりまするから、戦力のない保安大学生くらいあつてもいいでしようと答えたそうであります。これは笑い話としてはそれまででございまするが、私は何も皮肉を言うのではありませんが、特別の目的のためにつくられた独特のものであるなどという、あい
まいなる大学の趣旨を持つておることが災いしておるのではないか、これを私はほんとうの意味で御指摘を申し上げたいのでございまするが、長官のそれに対する御所見を承つておきたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/30
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031・木村篤太郎
○木村国務大臣 お答えいたしまするが、私は今お述べになつた評論家、これははなはだ失礼でございまするが、笑い話じやないと思います。その評論家がどういうつもりでそれを書かれたか、これを検討する必要があろうと考えております。はたして保安大学生なる者がさようなことを言つたかどうか、私はここではつきり申し上げることはできませんが、保安大学生に対する指導精神は私ははつきりしております。私もたびたび学生と接触しております。中には間違つた考えを持つておる者がないとは限りません。一々当つてみるわけではありませんが、しかし大体においてはつきりした自覚を持つております。初めから割切つて、とにかくわれわれは将来日本の国防の第一線の幹部になるんだ、しかも大多数の子弟はー父兄も相当これに共鳴してやつている人が多いようであります。私は保安大学校の学生の大部分は十分なる自覚を持つて入校したものと考えております。しかし教育というものはなかなかむずかしいものでありまして、誤つた教育をしてはいけないのであります。われわれといたしましては細心の注意をもちまして、この学生を誤らざるように育成して行くことに一段の努力を払いたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/31
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032・須磨彌吉郎
○須磨委員 私はただいまの御答弁を了解いたしますが、次いで私は最も大きな問題に移りたいと思うのであります。
最近の政府の御答弁ぶりでは、今まで政府は、自衛力の漸増の方針はまだかわつていないと申されたり、独立国家となつた以上みずから守るのは当然であるというような御答弁も私は拾つたのでありますが、自衛力は憲法でも否定してないというようなことも答えておられるのであります。ところが顧みまするに、わずか半年前には、吉田首相はわが党の芦田均氏の質問に対しまして、直接侵略には日米安保条約によつて米国駐留軍がこれに当り、保安隊は国内の治安に当るのだというお答えがあつたのでございます。また自衛軍備を持つことは国家の再建のためにはよろしくないというようなお答えもあつたのでございます。ところが今度は直接侵略に対する軍隊を持つことになるわけでございます。そうしますると、ここで明白な変化を見たことに関連しまして、政府の態度も実は豹変を来しておるとも見られないわけではないのでございます。かようなる大きな変化を同じ政府が半年以内に来しておりますることは、私は否定のできないことだと思うのでありまするが、これは普通の常識から申しましても、かようなる変化については何がしかの御理由あるいは御説明の材料もおありでございましようし、そうでなければ私は政府としての政治的責任は決して否認し得ないものだと思うのでございます
から、この際長官から率直に、この変化に関しまする政治的責任ありやいなや、なしとすれば、いかなる点においてこの変化が来たかということについての御所見を承つておきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/32
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033・木村篤太郎
○木村国務大臣 お答えいたします。私は時代は進展して一ときもやまないものと考えております。政治も生きものであります。政治は固定いたしておりません。時の情勢に従いまして変化すべきものと利は考えております。そこで総理が前に申された言葉を私ははつきり覚えてはおりませんが、さような言葉があつたといたしましても、それはそのときの判断によつて申されたものと私は了承いたしております。現在におきましては、御承知の通り国際情勢、国内情勢その他いろいろな点から勘案し、ことに自衛隊の現状に至りましては、御承知の通りアメリカ駐留軍においても地上部隊の一部を早急に撤退する希望を有しておるのであります。これらとにらみ合せましてわれわれはいかにすればいいか。自衛力の漸増方式によりましてこれに対処して行く、これが政府の考え方であります。私は政治責任というよりか、むしろ時勢に応じて政治を行うべきだという観点に立ちまして、当然あるべき姿であろう、こう考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/33
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034・須磨彌吉郎
○須磨委員 最近政府がこの二法案をお出しになつて、これが通ると実施されるわけでございまするが、これが実施されることになりまするときにおいて、いかなる方策をお持ちになるかという点について、ここでもう一つおただしを申しておかなければならぬと思うのであります。いかなる法律もさよ
うでございまするが、ことに終戦後初めてれつきとした自衛隊ができるのでありまするから、これに対しまして国民全与の十分なる理解と協力がなければ、この円満なる実施は期待できないのであります。従来首相及び政府が、防衛問題についてはきわめてあいまいな態度を続けて来たことは、ただいま申した通りでございます。その憲法の解釈についても、戦力問答等においても、あるいはジエツト機、原子爆弾その他を装備しなければ戦力というものではないというようなお答えもあつたことは、ただいまも指摘をいたした次第でございますが、航空自衛隊があるいは本年内にもジエツト機を持つようにならないとも限りません。それでも戦力でないというような詭弁はもう改めなければならぬ時期にだんだん到達すると思うのでございますが、この二法案がいよいよ実施に近づくというこの際におきまして、政府は国民の疑惑を深めるような、あるいは誤解を増すようなこの種の言辞は一掃されて、まず虚心坦懐に、進んで政府は国民に体当りをいたしまして、この両法案の内容について理解及び協力を求めるの態度に出なければ、どうしてもこの円満な日本国土の防衛は実現しないものと思うのでございますから、かような意味合いにおきまして、政府はこの二法案について国民の理解及び協力につい
て何らかの定見をお持ちでございますか、これを伺いたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/34
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035・木村篤太郎
○木村国務大臣 二法案が通過いたしましても、これの運営について国民の協力を得なければ円満に遂行することは、できないということは、論をまたない、仰せの通りであります。従いましてわれわれは、幸いにこの二法案が成立いたしますると、この自衛隊の将来のあり方その他各般の事情を国民に十分徹底するように努力いたしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/35
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036・須磨彌吉郎
○須磨委員 最後に私は、今まで触れましたことにも関連はいたしまするが、今成立せんとしておるMSA四協定に関連しまして秘密保護法というものが出ておるわけであります、これは私もその一人でございまするが、外務委員会に付託をされておるのでございます。これはMSAの基本協定におきましてMSA法による軍事協定の内容について日本は秘密を浴洩しないようにこれを保持するの義務があるという規定があるのでございます。しかしながら必ずしもそれは法律によつてこれを規定する必要があるとは書いておりません。また外務大臣におかれましても、法律をつくる義務はないとはつきり仰せになつておりますから、その通りでございますが、防衛関係の秘密保持ということは日本の防衛全体について講ぜられなけばならぬ次第でありまして、日本に贈与された米国の武器についてだけの秘密保持ではないのであります。今後できます自衛隊というものにつきましても、多くの秘密がだんだん生じて来ることは、これは論をまたないところだと思うのであります。その使用します暗号もありましよう。その機器についての秘密もありましよう。武器についての秘密もございましよう。かようなものをまず守ることが必要でなかろうかと思うのでありますが、あたかもこのMSA協定の実施とこの両法案の実施とは時を同じゆうして相前後して実施されるわけでございますから、私はこの際、MSA協定に基くアメリカの武器の秘密を保護するという意味における小さな協定を
持ちまするよりは、一歩進めまして、私が今御質問いたしました日本全体の国民の理解と協力を求めるという一つの方法といたしましても、日本全体の防衛に関する法律をおつくりになつて、そのうちにこのMSA法による秘密に関するものをも加えることが必要でなかろうかと思うのでございます。そう申しますることは、アメリカから受けまする武器の援助は今回によつて完成しておるわけではございません。承るところによりましても、今後近いうちに艦艇あるいま飛行機の引渡しもある。そうするとさようなものが逐次参りまするたびごとにこの法律を改正しなければならぬというようなことでは、煩雑きわまりなきのみならず、もしそれ防諜の施設からいたしまするならば、かえつてさようなことによつて機密を漏洩せしめる手段ともなる次第でございまするから、かような意味合いからいたしまして、一旦お出しになつておりまする秘密保護法というものをおとりやめになつて、広く日本の独立精神にも合し、日本人が日本を守るという精神にも合するがごとき大きな法律案をお立てになる御計画はないのでございましようか、これを私は伺つておきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/36
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037・木村篤太郎
○木村国務大臣 申すまでもなく一国が独立国家たる以上は国家の機密を保持する必要があることは論をまたないところであります。自衛隊が将来できまして、この自衛隊の出動時における行動の他いろいろの点について、秘密を保持しなければならぬ点が十分あることはわれわれは了承いたしております。しかしそれらの各般の国家機密について保護法を制定するということは、国民の権利義務に関して重大なる影響を与えますので、十分慎重に取扱わなくちやならぬと考えております。われわれは率直に申しますると、研究は進めて参つたのであります。しかしこれはなかなか容易じやありません。これは相当慎重に検討する必要を生じたのであります。そこで今度のMSA援助に基きましてアメリカから供与を受けまする装備のうち、アメリカで秘密になつておるものを、日本においてもこれが秘密を保持しなければならぬということになりますると、さしあたりこれをどうするかという問題にぶつつかつたのであります。そこでわれわれはアメリカからの秘密兵器を供与を受けるさしあたりの一つの手段として、まずこれを制定したわけであります。これが制定せられませんと、アメリカからの供与は受けられません。従いましてわれわれの防衛の任務はそれだけで非常に減殺されるわけであります。ぜひともわれわれはこの御審議を願つておりまする秘密保護法の一日もすみやかに通過せられることを念願しておるのでございます。そういたしまして、アメリカからの秘密の装備を日本がもらい受けて大いに研究したい、こう考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/37
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038・須磨彌吉郎
○須磨委員 今の長官のお言葉の中に重要な御発言が、ございました――アメリカから、この秘密保護法をつくらなければ援助が受けられませんという言葉がございましたが、さような事実があるのでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/38
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039・木村篤太郎
○木村国務大臣 アメリカで秘密になつておるものを日本で秘密にしないと、そういう秘密のものはアメリカからもらえぬということは当然であろうと思います。そうでないと、アメリカの秘密のものは筒抜けになる心配があります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/39
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040・須磨彌吉郎
○須磨委員 そういう言明をしておりますか、向うで……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/40
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041・木村篤太郎
○木村国務大臣 言明はしておりません。私には言明をしておりません。私はこれは常識上当然なことであろうと思います。アメリカで秘密にしておるものを日本で秘密の保護もされずにおいて、これを持つて来るということは、われわれは想像がつかぬのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/41
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042・須磨彌吉郎
○須磨委員 いま一つ最後に非常に緊切な問題でございますが、ただいまの情勢として、ジユネーヴの会議ほど重安な問題を議しておるところはないと思われるのでございますが、特に私がこの際長官に申し上げて御所見を承つておきたいことは、二十七日のアイゼンハウアー大統領の発言でございます。その発言の中には、どうしてもこのインドシナというものは死力を賭して守らなければならぬという一言があるのでございます。これに先立つ約数時間前に、マレンコフ・ソ連首相の演説の中には、もし戦争が起つて、ソ連に原子力を持つて来るならば、ソ連もこれに原子力をもつてこたえるの用意かある、またこれをミコヤンという商相がさらに繰返して重大問題の波紋を描いておるようでございますが、この会議の際でありまするから、特にさようなことが目立つわけであつて、実際私はさような波立つようなことがすぐ起ろうとは思いません。思いませんが、そのアイゼンハウアー元帥の当言の中に、東南アジアというものは日本にとつて非常に重要な地域である。日本の八千五百万の人民がここと通商貿易を行うことができなくなつたならばたいへんであるから、これはどうしても守らなければならぬ、この一言でございます。これはさきに東南アジア地域防衛機構、SEATOというような名前が出ておるようでございますが、さようなものをこしらえるというようなことがいずれからともなく沸き立つて参りまして、ことにダレス国務長官がこれを大いに推進しておるという話があるのであります。これに関連して考えてみますると、ただいまのアイゼンハウアー元帥の言われるがごとく、日本に関連して――はつきり言つております、日本に関連してここをよく守らなければならぬ、東南アジアというものに関連して、さような重大発言をいたしておるのでございます。それに関連して私も、これはもちろん将来の問題でございまするが、将来どうもこのSEATO、東南アジア防衛機構というようなものがつくられる形勢は明りかではないかと思うのでございます。あたかも本日四つの国の首相会議かまたコロンボかどこかで開かれるよりでございまするが、そこにおいても同様な問題が取上げられることが放送されておるのでございます。そうしてみますると、われわれはこの自衛というものができるときにあたつて思い起されることは、われわれの防衛についてのこの関係でございます。かようなことをも、遠い考えではございまするけれども、長い目で見ておりませんと、防衛ということは一朝一夕にして容易にできるものではないのでございまするから、長官のお心構えとしましては、かような東南アジア防衛機構というようなものに発展するがごとき現実の事態、ことにインドシナにおける事態というものは、三日間においてデイエンビエンフーの攻防戦が行われておる事態を見ますると、私はこれは決して楽観はできないということを思うものでございまするから、さようなことを考え合せまして、この東南アジア防衛機構というようなものができるかもしれないというような気構えを持ちまして、わが国の自衛隊の防衛力についても手かげんをして行かなければならないというようなことは、私は自然の心構えではなかろうかと思うのでございますが、さようなことについてのお心構えを最後にお尋ねをいたして、私の質問を打切りたいと思うものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/42
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043・木村篤太郎
○木村国務大臣 お答えいたします。東南アジア防衛機構が将来できるかできぬか、これは予測はできません。あるいはできるかもしれません。さような機構に日本が入るかどうか、これはそのときになつてみないとわかりませんが、日本国民としては十分に考えて、その方向をきめなくちやならぬと考えます。しこうしてこれと自衛隊との関係でありますが、御承知の通り自衛隊ははつきりわが国の外部からの不当な武力攻撃に対してこれに対処するということの性格と任務を与えております。それ以上に出ないのであります。われわれといたしましては、日本の旧を守るということをはつきりさせておいたのであります。さような場合におきましても、私は日本の自衛隊がそれらに対処してどうするかというようなことは、ここでもう言うまでもなく、任務性格からいつて、私は軽々に動くものでないということを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/43
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044・稻村順三
○稻村委員長 粟山君及び田中君、両君から関連質問の申出がありますので、これを許します。粟山博君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/44
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045・粟山博
○粟山委員 私はこの機会に保安庁長官に伺つておきたいことは、ただいま須磨委員からの質問に対して、この自衛隊を軍隊と言つてもよろしい、さらに進んで、重ねての質問に対して軍隊であるというところまで長官が強い信念を漏らされたように私は承つたのですが、その通りと承つてしよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/45
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046・木村篤太郎
○木村国務大臣 私個人の考えでありまするが、外部からの侵略に対して対処し得るものを軍隊と称しておるのであります。そういう観念から行けばそれは軍隊と称してよろしい、こう申しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/46
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047・粟山博
○粟山委員 かりそめにもこの委員会はこの防衛二法案を決定する重要な権限を持つておるのでありまして、この委員会は仮定的なものでは審議を進行するわけに行かない。要は木村長官の強いはつきりした信念は吉田内閣の意思であるかどうか、これは私は非常に重要な問題だと思うのであります。そこでひとつ木村長官に伺つておきたいのは、木村長官はこの二法案をあずかつておる直属の長官といたしまして、内閣においてその総意を長官の意思のごとく決定するとりはからいをされて、そうして閣議における総意をもつてこの法案の審議の最終段階に至る間に政府の意思を発表せられる機会を与えてくださることができるかどうか、それを伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/47
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048・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は須磨委員にも申し上げたように、私の考え方を述べたわけであります。政府といたしましては初めから申し上げておる通り、外部からの不当侵略に対して対処し得るものを軍隊なりと称すれば称してもよろしい、こう申し上げておる。これは政府の意見であります。しかして結局は軍隊の定義に関するものであるということを政府は表明しておるのであります。私はそれに従つて自己の信念としてもうすでに軍隊といつてよろしい、こう申しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/48
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049・粟山博
○粟山委員 私不敏ながら、内閣委員といたしましては当選以来各位の非常な御研究になる所論をつつしんで承る機会を得ておるのでありまして、すでに二年の間たび重なるこの委員会においてあるいは本会議において、あるいは外務委員会、予算委員会等において十分繰返されたる御論議を拝聴して参りました。要は現実に軍隊であるものをこれは軍隊ではない、戦力のない軍隊というならそれでもよろしいというようなことを繰返して、いわば白馬、馬にあらず、堅白異同の弁を繰返しておる。きわめて簡単なことなんです。そういうことが内閣の方々の言葉がことごとくこの形をもつて、真剣なる議員の質問に答えておられるわけでありますから、いくら質問をしてもこれは割切つたお返事を伺うことができないのであります。われわれはこの審議の内容からいつて、政府はこういう気持であるが、やむを得ずこういうことを言つておるのだというような推測は、好意を持つ人によつては割切ることもできるのでありますけれども、この議会を通じて聞いておる一般国民は、聞けば聞くほど迷路に陥つておるのでございます。私はこの事実がこの二年来どんなに世想に反映しておるかということを考えますときに、これはまことに悲むべき事態を招来しておる。国民は非常な迷いのうちに割切れない気持で紡律をさせられておる。そういうことでこの非常時局である日本の国情に対処して国民の行くべきはつきりした方向を示す政治を実現できるかどうかということには多大の疑いを持つておるのであります。そこで私の願うことは、今こそ政府は軍隊である、軍隊であるということには憲法を改正するのたということをはつきりなさる最も大切な、非常にいいチヤンスである。私かさらに申し上げたいことは、内閣の閣僚のうちで非常に有力な人ないしは自由党を指導しているところのリーダーシツプの中のすぐれた人々が進んで新党運動をしている、合同運動をしている。すなわち自由党を解消してもよろしいということを裏づけているよりな運動に携わつているときに、今のような曖昧模糊なる態度をもつてこの内閣が政治をして行くことが許されるでありましようかどうでありましようか。そこに非常に疑いを持ち、かつ国家のために私たちは深憂を禁じ得ないものがあるのでございます。そこで私は保安長官の、いろいろな法案のうちで最も重要な日本の国の運命を決すべきこの二法案に対する態度が、かくのごとき曖昧模糊なる状態において何の新党ぞや、何の合同ぞや、私は何ものも言い得るところの資格がないと断定しなければならぬのである。よつて私は真に木村長官が国を養うるがためにこの二法案をどうしても通さなければならぬという御決意があるならば、この際職を賭しても軍隊なりというあなたの御信念を閣議において徹底させることが、これは長官の御職掌からいつても適当なことであると考えますので、その点お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/49
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050・木村篤太郎
○木村国務大臣 私はこう考えます。一体日本人は言葉にとらわれ過ぎるのではないか。軍隊自衛隊と言つたつて私はさしつかえないと思う。自衛隊の性格はもうはつきりしております。常々申し上げますように外部からの不当侵略に対してこれに対処し得る、わが国の防衛の任に当るものである。その性格と任務ははつきりしている。そこに私は自衛隊員も任務の自覚というものが出て来ると思う。そこでそれを軍隊という、軍隊という定義はいまだ固まつておりません。軍隊とは何ぞやというはつきりした定義はないと思う。外部からの侵略に対して対処し得る実力部隊を軍隊であるというならば、これは軍隊であつてよろしい、さしつかえはごうもありません。軍隊とお言いなさい。この考え方なんです。そこで私は須磨君に対して、君はどう考えるかと言うから、私は定義はないと考えるが、外部からの不当侵略に対してこれに対処し得る実力部隊を軍隊と言うのなら軍隊と言つてさしつかえない、私は軍隊と思う、私はこう言つているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/50
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051・粟山博
○粟山委員 よく承りました。そこで私は長官に伺いたい。須磨さんは国際法の上から軍隊の定義を述べられた。長官は軍隊の定義がないと言われる。もしそれ軍隊の定義がないならば、日本が今この国際的な複雑なる状況において日本は日本国として国を守り、日本国民として生きる道を考えなければならぬ。これはいかにイデオロギーが違つても、やはり切磋琢磨して、論議を尽して最大公約数というものを出して、それによつて日本の行くべき道をきめなければならぬ。それが今日は議会だと思う。その議会の中で日本における軍隊の定義を承ることができないといたしまするならば、これは重大な問題だ。日本の国のこの議会において、軍隊はかくのごときものであるという定義を政府ははつきりと国民に示すことがなくして、この多大なる経費と運命を決するような重大なるものを負担して行けと言われても、やみ夜に道を尋ねる状態においては、国の総意というものは結集することができぬと思う。私はこれに対して長官にお答えを求めるとは申し上げません。
私は長官にもう一つ申し上げたいことは、私どもは子供の時代に軍隊というものは非常に大切な、とうといものだと考えておつた。ところが軸重輸卒も兵隊ならばようようとんぼも鳥かいなというようなことわざが宣伝されておつて、非常に寸が短かいとかあるいは体格が均整がとれていないというので、せつかく兵隊になろうと思つて勇んで行つて、そうして軍医さんの診断によつて輜重兵にされた、そのために自殺した人まである。おかしな話なのですけれども、それくらいに張り切つて軍人になろう、軍人になることの名誉を考えたものなのです。そういうことが今の世相から考えていいか悪いかという批評を抜きにして、そういう気持にいかにも日本人らしいものがあるところに私は郷愁を感ずる。そこで私は最近今の自衛隊、保安隊の方々に会つてみますと、まことにたよりない気持を持つておられる。一つはやはり軍隊なら軍隊、軍人なら軍人と言うてもらつた方がはつきりしていい、その信念において国を守るのだ、こういうようなはつきりした世評の上に、世の批判のうちにはつきりした姿で、はつきりした気持で国のために尽したい、こういうふうに考えておられることが私には観測される。
私が長官にもう一つ申し上げたいのは、愛国心、国を守る、一体いかなる国を守るか、こういう点を考えれば、こういうような理念の上にこういう信念で国を守るのだということがはつきりいたしませんと、かつて陸軍大学で憲法の講義をしたときに、それが横にそれて社会科学の論議までするというようなとんでもない軍隊の指導観をつくつてしまう。それが敗戦の一つの欠点であろうと私は思う。それからまた長官御承知の通りにあの忠君愛国に固まつた軍隊が、何のことでありましようか宮中に闖入して、しかも自分の上長官たる師団長をほうる、何を考えておるか。愛国心の固まつた軍隊が宮中に闖入して、自分の長官をほうるというようなことは、どういうことからそういう間違つたことが起きたのかということを考えますと、やはり国として軍隊に対する定義があり、そうして総理大臣がまた身をもつてこれに範をたれる、木村長官しかり、長官のもとにある人もまたその通り、下々に至るところの、最低の主任、係長に至つても一貫したる思想、一貫したる信念の上に奉仕ができるということにしなければ、戦前ですらもあの状態であるから、戦後の今日においては、いかなることが勃発しやせぬかということに非常な心配を私は持つのである。この点においてどうか長官に願うところは、国を守るのはけつこうです、ゆえに愛国心とは何ぞや、大義名分とは何ぞやということのはつきりした概念、それによるところの信念を持たせるような教育があつてほしい。そこに指導精神がありますか。これなくして何の自衛隊をつくるのであるかといわなければならぬと私は思います。非常に遺憾なことであるが、日本が日本の国をもてあますときに、何か大きな国がうしろにいて押えてくれるというようなものにたよつて、そうして日本の国を守るということであるなら、もうそれは日本の国は守れないのだ、守れない国であるということを証明しておる。その点について、私は木村長官の人格と信念というものは疑いません。私は信じます。それゆえに長官に、今自衛隊を新たに創設せんとする門出にあたつて、最も重要なこの点についてお考えを願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/51
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052・木村篤太郎
○木村国務大臣 烈々たる愛国の言葉を賜わりました。われわれはともに日本の平和と独立を守つて行きたい、この信念に生きておるのであります。しこうして自衛隊もまたそれにほかなりません。自衛隊の将来の指導精神をどこに置くかというお話でありますが、これは十分に法案に織り込んでおります。あらためて私はお読みしたいと思います。第五十二条に「隊員は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、強い責任感をもつて専心その職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを期するものとする。」これに尽きるものと私は思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/52
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053・粟山博
○粟山委員 私はそれだけに尽きるということを非常に物足りなく、さびしく感じるのであります。今の世界観、われわれが日本国民としていかに生きて行かなければならぬかということを、痛切に個人の生活から、社会の状態からあるいは郡、県、国家として考えたときに、もうそれだけでは済まないのです。思想問題です。ところがこの思想問題が、遺憾ながら日本はばらばらになつておるのである。そのばらばらになつておることの現実は何によるかといえば、まことに残念ながら無益な戦争をしたために、見込みのない戦争をしたために指導者がはなはだしく誤まれるところの、国民の納得し得ないような状況において起きた戦争が負けた、負けたその結果が非常に深刻なもので、いまだに良心的に考えるならば、日本人は、これでわれわれは自分で食つて行くのだという良心的な満足を得られない状態にあると思う。いやでもおうでもアメリカの援助を受ける、いやでもおうでもアメリカの庇護のもとに、日本は世界的に安全な姿でそれを保障して行かなければならぬ、そこに宿命、運命というものがある。しかしこの宿命、運命に対して、イデオロギーが違えば、実にまつたく白と黒とのような議論が闘わされると思うのであります。私はそういう議論は、八千万という大勢の人間をかかえて、この貧乏な世帯が、賃金の少いものが、これは言葉の上で争つているときではない。支那は数千年の間弁証法論に明け暮れて、あの易世改革を重ねて、民は塗炭の苦しみに陥つたことは長官もよく御存じの通りであります。歴史は繰返す、過去における支那ばかりではありません。おそらく中共の将来も、そういうことをたどるかもしれないと私は思つておる。おそらく世界いずれの国でも、あの支那が繰返したようなことを繰返して行く国は滅びるのである。必ず滅びる。滅びざる国たらんとするならば、私は根本から考え直さなければならぬと思うのであります。日本は決して議論に明け暮れて、むだな金を使つて、むだな時間を費して、そうして論議を続けるべきではない。それを思えば私は吉田内閣に対して、もつと簡単に、平易に、そして速記録も簡単に済むようにして、国民に簡単にわかるようにして、国民を一定の方針に難くものであるという、その信念と覚悟が私はほしいのである。私は吉田内閣退陣すべしという声を問いておるが、吉田内閣が退陣しても、自由党の上に立つた吉田内閣、自由党の従来のリーダー・シツプの性格と、リーデイング・マナーというものが依然として続くならば、何もならないのである。吉田内閣は自由党のリーダーシツプと一心同体である。そういう点決心から考えますと、この日本がいかに行くべきやということを決定するときにあたつて、新党も可なり、合同も可なり、しかしながらその根本問題を改めなければ何もならないのである。この点において私は、この議会が全国民の信用を得るためには、誤まれる輿論、誤まれる学者の批評のごときは、これにこたえるだけの用意と、むしろあべこべにこれに向つて指導するだけのその叡知とその決心、その叡知を集結した正しい力によつて、この殿堂がその権威を発揚しなければならぬと私は考えておる。その、覚悟からしてこの二法案の論議の最終段階に至つて私は申し上げたいことは、どうか一事は万事であります。この二法案こそは日本の運命を決する重要法案でありますから、これを基点として、すべての問題を更始一新するの決意をもつて当られんことを私は切望いたしまして、私の所見を述べる次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/53
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054・田中稔男
○田中(稔)委員 関連いたしまして一点……。この二法案を見ますと、自衛隊といい、防衛庁とか防衛招集といい、国防会議といい、三つの言葉が使われております。自衛、防衛、国防、この三つの言葉の内容を聞きたいと思います。先ほど須磨委員、栗山委員からもお話がありましたように、自衛隊は明らかに軍隊であります。長官もこれをきようお認めになつたのであります。でありますならば、自衛隊というような名称でなく、むしろもつと積極的に、たとえば防衛庁と合せまして防衛隊とするか、あるいは進んで国防会議ということもありますから国防隊、そういうように名称を変更なさつてはどうかと思いますが、これについての御意見を伺いたい。
それから自衛隊という名称についてでありますが、これは御承知のごとく日米安全保障条約にいたしましても、日米相互防衛協定にいたしましても、それらの条約の根本を貫いている精神というものは常に日米の共同防衛体制、こういう考え方であります。そうしてこれはやがてやはり太平洋防衛体制というようなものに発展する含みを持つている。でありますから、たとえばこの自衛隊服務の規定でありますが、第五十二条に「隊員は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命」とあります。しかしこれはほんとうに事実に即して申しますならば、わが国の平和と独立を守るだけじやない。むしろこれは自由世界の平和と独立を守る、あるいはまた露骨に申しますならば、日米両国の平和と独立を守る、こういうふうにすべきだと思うのであります。世間では何かアメリカが日本を守つてくれる、日本の防衛の手助けをしてくれる、日本は自分のことだけ考えればいい、こういうふうに考えられており、長官もたびたびそう言われる。しかしながら日本がアメリカの平和と安全を守つてやるという、日本の義務が実は非常に重大であります。自衛隊は実はこういう任務を持つている。MSA協定の中だつて、自由世界の防衛力を強化することに寄与するということが日本に義務づけられております。こういうわけでありますからこれは自衛隊でない。これは他衛隊である。他衛隊と言い切らぬならば自衛他衛隊、日本を守る、アメリカを守る、自由世界を守る、その性格をはつきりさせますために、むしろ事実に即して、自衛隊と言わないで、防衛隊とか、あるいはもつと進んで国防隊とか国防軍と、今後は呼んだ方がよいだろうと思うのでありますが、どうでしようか。自衛隊ということになつておりますが、少くとも防衛隊くらいまで進んではどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/54
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055・木村篤太郎
○木村国務大臣 お答えいたします。私は防衛庁並びに自衛隊でけつこうだと思います。自衛隊が軍隊であるかどうかということでありますが、概括的に考えましてやはり自衛隊というのは具体的に日本の国防の任に当る任務を担当しているものをさしているのであります。これは私は自衛隊であつてよろしいと考えます。
なお第二の御質問に対しましては、自衛隊の任務性格にはつきりしておりますように、外部からの侵略に対して日本を守る、日本の平和と独立、安全を保つて行こうということを性格として持つているのでありまして、このこと自体がひいてはアジアの平和を招来し、アメリカの意図するところの世界平和にも寄与するということになるのであります。これは間接的の任務を持つております。直接の任務といたしましては今申し上げました通り、わが国の防衛の任務を持つものと了解しているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/55
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056・稻村順三
○稻村委員長 大分時間も経過いたしましたので、午前の会議はこの程度にし、午後二時まで休憩いたします。
午後零時五十九分休憩
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〔休憩後は開会に至らなかつた〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02919540428/56
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