1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月十九日(水曜日)
午後二時五十八分開議
出席委員
委員長 稻村 順三君
理事 江藤 夏雄君 理事 平井 義一君
理事 高瀬 傳君 理事 下川儀太郎君
理事 鈴木 義男君
逢澤 寛君 高橋 等君
永田 良吉君 八木 一郎君
山崎 巖君 山下 春江君
早稻田柳右エ門君 飛鳥田一雄君
田中 稔君 中村 高一君
辻 政信君
出席国務大臣
国 務 大 臣 加藤鐐五郎君
出席政府委員
総理府事務官
(恩給局長) 三橋 則雄君
総理府事務官
(南方連絡事務
局長) 石井 通則君
科学技術行政協
議会事務局長
(厚生事務官) 千秋 邦夫君
引揚援護局長 田辺 繁雄君
委員外の出席者
専 門 員 亀卦山 浩君
専 門 員 小門 紹夫君
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五月十八日
委員山下春江君辞任につき、その補欠として中
曾根康弘君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員中曽根康弘君辞任につき、その補欠として
山下春江君が議長の指名で委員に選任された。
同月十九日
委員大村清一君及び松前重義君辞任につき、そ
の補欠として逢澤寛君及び冨吉榮二君が議長の
指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
総理府設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第一七一号)
恩給法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
七二号)
元南西諸島官公署職員等の身分、恩給等の特別
措置に関する法律の一部を改正する法律案(内
閣提出第一七三号)
内閣及び総理府関係法令の整理に関する法律案
(内閣提出第一七六号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/0
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001・稻村順三
○稻村委員長 これより開会いたします。
まず恩給法の一部を改正する法律案を議題といたし、質疑を続行いたします。質疑の通告がありますからこれを許します。山下春江君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/1
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002・山下春江
○山下(春)委員 私は今回改正されます恩給法の中の、巣鴨の戦犯に関する問題で大臣から政府の御責任ある御答弁を承つておきたいと思うのであります。
それは今回の改正によりまして巣鴨に拘禁中の人の中でその一部分の人、百七十五名は恩給を支給することを停止されておつたことを解除されることによつて恩給をもらうことができるようになりまして、これを留守家族に渡すという非常に温情ある、私どもが長い間待望し、その家族もまた貧苦と闘いながらも今日のあることを期待しておつたことが実現を見たのであります。ところが現在巣鴨には八百人ばかりまだ拘禁中でございまして、この百七十五名を除きましたあとの人もやはり人間の最大の宝である自由を奪われております。ひそかに承りますれば、多少外に出て労働などをしておる人もあるかに聞いておりますけれども、それは家族の苦痛を聞くにたえず、見るにたえず、やむなくやつておるとは思いますけれども、それでもなお普通人とは違いまして、常に何かそのついておるひもにおののきながら働いておるのでございまして、これらの者に対しまして政府は、もはや十年になんなんとする歳月を経過したのでございますから、何らかの措置を講じていただかなければ、とうていこの苦痛を今後しいる元気が私どもには出ないのでございます。そこで政府におかれましては、この残りました人に対しまして、たとえばこの百七十五名のうちには、普通恩給のうちのいわゆる一時恩給に相当する人もあろうと思いますが、その一時恩給の措置でもよろしゆうございますから、拘禁中の年限を最低の恩給に到達すべく通算して、一時恩給を支給しようというお考えがあるかどうかをまず承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/2
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003・加藤鐐五郎
○加藤国務大臣 巣鴨に拘禁中の諸君に対しましては、いろいろお気の毒な点もありますゆえに、今度の改正案におきましてはただいまお述べになりましたごとく、これは留守家族に支給することにいたしたのでございますが、なお拘禁中の年限に対してこれを加えるということに関しましては、政府におきましてはしばらく研究させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/3
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004・山下春江
○山下(春)委員 もちろん御研究をお願いいたさなければならないと思いますが、この問題は、日本国民全体が考えなければならない問題でございまして、大臣は、もちろんこれらの刑を受けて拘禁されております人々の一人一人のケースをよく御存じだと思いますけれども、もしこれを国内犯として再審査をいたしましても、刑罰に値するケースは一つもないと私は考えております。そういうふうな、実に責任罰のようなものであつて、しかもなお国内刑法によつての犯罪人ではございません。大げさな言い方かもしれませんが、考えてみますれば、占領治下あるいは今日平和条約締結後、日本がとにもかくにもこうして徐々に再建の道をたどりつつある裏には、あの人々の大きな犠牲がそれを助けておるという面は、いろいろの施策上、そうでないと言い切ることは私はとうていできないと思うのでございます。そういうことに関しまして、法律上の恩給ということが、諸般の情勢上言いにくいいろいろな点がございますならば、恩給と申さなくてもよろしゆうございます。この法律が国会を出てしまいまして、あの人たちにもう一ぺんがつかりさせることは国民として忍びないと思うのでございますが、恩給と大ぴらに言うことが諸般の情勢上困難ないろいろな問題がございますれば、他の方法でもけつこうでございますから、できるだけすみやかな機会に、何らかの手をお打ちいただくことができましようか、どうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/4
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005・加藤鐐五郎
○加藤国務大臣 拘禁中の戦犯者の諸君が国家の戦争のための犠牲者であるという、ただいまの御質疑の御趣旨はよくわかります。ただ今回の恩給なるものは、一面において国の財政の範囲において考えなければならぬことでありますと同時に、一面におきまして、多数出征いたしました者の均衡を得るということが必要であるのでありまして、拘禁中の戦犯の諸君に対して、私どもは冷やかな態度を持つというつもりはないのでありますが、一は財政上の問題、一はあらゆる出征した人の均衡を保つという点におきまして、これを考慮いたしたい、こう思つておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/5
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006・山下春江
○山下(春)委員 大臣の意のあるところはわからないではございませんけれども、一は財政の面からと仰せられますが、今日巣鴨のあの戦犯者たちをまかないますために日本国が負担しておりますものは、二億円余りでございます。今日改正されようとする、百七十五人に対してお考えになりました恩給の額は千七百八十四万円余りでございます。そういたしますと、最低の一時恩給に到達するまで加算すると申しましても、それは金額から申して、巣鴨を経営しておる二億円に比べればほんのわずかのものであると存ずるのでございます。この二億円を投じながら、なおかつ巣鴨にいる人たちが、この法律を唯一の頼りにしたにもかかわらず、それがまた裏切られたというときに、もはや巣鴨の拘禁生活はがまんができないということで、残りました七百二十五人の方が一曹にあそこを出てしまうようなことがもしありました場合に、日本国の受けます損害を考えると、今仰せられた財政上の問題ということは、とても私どもにはのみ込めないのでありまして、一時恩給という言葉が悪ければ、何らかの方法——援護法もございましようし、いろいろな方法がございますが、それは人数が限られておりますので、一時恩給等でございますれば、それはもうそのとき一時でございます。決してあとを引くものではございませんので、何とか一時恩給的措置をおとりくださいまして、政府とされましては、非常に御苦労をかけていて済まなかつたが、まあひとつこの程度に扱つたのだから諸外国から釈放の手続が来るまでしんぼうしてもらいたいということの措置をおとりになることが、いろいろな面で御賢明であろうと思うし、国民もまたそのことを悲願といたしておるようでございます。聞くところによれば、まあA級その他に対しては多少の御異論もあるかと思いますが、あとのB、C級の方々に対しては、もはや今日いかなる国民層もこれに対して異論を申される方はないと思いますので、重ねて恐縮でありますけれども、加藤大臣は、さような金はないからしんぼうしてくれというような冷やかなお気持の大臣とは私は受取りません。それはいろいろな御都合があつてそう仰せられていると思いますけれども、どうかこれらの人々の苦衷、家族のみじめな姿をお察し願いたいと思います。のみならずこの戦犯というものは、ドイツと違いまして、日本では非常な大犯罪人、大悪人のような風潮が終戦後みなぎり渡りましたため、留守を守つております子供たちも、つい最近まで何ともいえない肩身の狭い思いをして、非常な苦痛に耐えております姿は、もはや国民も今日ではほんとうに申訳なかつたと思つておるくらいでございますので、どうか加藤大臣のほんとうの持味で、法律やその他のものにこだわることなく、ひとつ御言明を賜わりたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/6
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007・加藤鐐五郎
○加藤国務大臣 ただいま山下さんは、もしこれが実行されなかつたならば残つておる諸君が一齊に出るなどというようなお話がいろいろありましたが、私は、戦犯の諸君はさようなことはない、自重しておられるのだと思います。ことに私はそれらの方々に対して、ただ戦犯者とか戦争犯罪などということは毛頭考えておらないのでございまするが、いろいろ他の出征いたしました者の均衡の上から見まして、私は御同情は申し上げるが、ただちに御期待に応ずるということを言明し切れないのをまことに遺憾といたす次第でございまするが、できるだけの措置は講じてみたいと思います。これを恩給とするかどうかということにつきましては議論がありまするが、一応できるだけ考慮いたしてみます。ここにただちにどうするということにつきましては、私言明しかねるのでありますが、十分御趣旨の趣は承つて検討してみたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/7
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008・山下春江
○山下(春)委員 そのお答えで不満足ながら大臣の意中はよくわかります。いろいろ御責任の地位にあられるので、軽率なことは言えないという御苦慮のほどよくわかります。どうか大臣の心の底にあるほんとうはどうにかしてやらなければいけないのだというお気持を、すみやかな機会に実現されんことを心から念願するものであります。今お話の均衡がとれない——なるほど、私ども恩給局長はかたきでも何でもないのに、どうしてこんなにいじめなければならないのかと思うほど、扶助料に対しましては、すでに老いて命が何年もなさそうな年寄りや女のか細い腕で苦労しておる国民の苦脳の姿は見るにたえないものでありますから、どうしてもその衝にあられる三橋恩給局長をいじめるよりしかたがないので、毎度いじめて恐縮でありますけれども、しかしその方々の裁定が済んでおらないことはたいへんなことでございまして、それがまだであるのに戦犯の人だけということでございますが、私も昨年の夏関係各国をまわりまして、その関係各国から受けました印象からいたしましても、なかなかこの問題はただちに解決することは容易ではない。今回吉田さんが外遊されるかに聞いておりますが、吉田総理にでも四つに組んでやつていただけばこれはよほど違うだろうと思いますが、そうでない限りなかなかこれは簡単に行かない。行かないがゆえにここでひとつ何とかお考えを願いたいというのでございます。重ねて大臣の御答弁は必要ございません。私は大臣の意のあるところはくみとりましたが、どうかそのお気持をどんな形でもけつこうでございますから、すみやかな機会にお考えをおまとめくださいまして、これらの人々を慰安させ、家族を安心させていただきたいということを心から念願いたしまして、大臣に対する質問を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/8
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009・稻村順三
○稻村委員長 辻政信君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/9
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010・辻政信
○辻(政)委員 私はこの委員会におきまして、しばしば事務当局に、恩給交付の手続を迅速にして、わずかに二千円や三千円の恩給を旱天の慈雨のような気持で待ち焦がれておる遺族の人た知の心を心として、一日も早く支給されるということを強調して参りましたが、その答弁に政府は常に善処するとか考えるとかいう抽象論ばかりを述べて、現状の欠陥を具体的にいかに修正し改善するかということを一回も承つておらぬのであります。中央と地方を通じまして迅速に事務を処理するという点につきまして、加藤大臣から責任ある具体的な手段について御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/10
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011・加藤鐐五郎
○加藤国務大臣 恩給事務が遅滞いたしておりますることは、まことに申訳ないと思います。恩給法が昨年の八月改正されまして、九月末になりましていろいろ手続、細則などを規定いたしまして、実際始まりましたのは十一月末が十二月の初めであるかと思います。そこで恩給局といたしましては、いずれ説明いたしたことであろうと思いますが、ただいま約千三百人ほどの人間が集まりまして、私も実際その現場を見ましたが、鋭意努力をしておるような次第でございまして、一日五千件、多い日は七千件も八千件も決定をいたしておりますが、なおただいままでに予想いたしておりまするものはまだ百何十万件あるのでございまして、これらをいつまでもほうつておくということはできないのでございます。ただ目を通すだけということになりますと、恩給局といたしましては仕事は早く済みますが、実際支給されたものにつきまして、それが間違いがありますと、おれのところの子供はこうであるが、あそこの子供はこういうわけじやないかという具体的の実例につきまして恩給局に抗議が出ます。何とも申訳ないことでございますが、できるだけ御趣意に沿うように督励も私いたしますし、全勢力をあげておりますので、ことし中もかかりますれば大部分は解決いたすだろうと思つております。この点につきまして、せつかく恩給をもらえるそうだが、いまだに手にせぬ、何しているかということでございますが、各関係官庁を督励いたしましてひとつやりたいと思つております。また記載の点につきまして、申請書と申しまするか、これもごく簡単なるものでございまするが、まことに不備をきわめておる点もあるのであります。ことに辻君御承知のごとく、当時陸軍におきましては、いろいろ兵籍名簿と申しまするか、そういう記録が一切焼失いたしております。しかしながらそういう形式的な条件がことごとく備わつておらなくても、明白な証明がありますれば、できるだけ便宜をはからい、できるだけ恩給の恩典を与えるというようにいたしております。まことに遅れまして相済みませんが、今後もできるだけ努力をいたしますから、さよう御承知を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/11
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012・辻政信
○辻(政)委員 加藤新大臣から非常に真心のある御答弁をいただきましたが、常にできるだけという答弁で今日まで来ておるのであります。これを具体的に申しますと、そういう書類の裁定等にあたつて、恩給局の役人が法規の正しと実施をやるために、たとえば援護庁におきまして調べたものもしくは世話課において調べたものをさらに再審査するという過程をとつておる。私はこれを簡単に言いますと、県の世話課というものが各家庭について詳しい資料を集めて、最も責任のある一つの調査ができるのでありますが、県の世話課が全責任を持つてこれはよろしいと言つたものはそれを無条件で通し、怪しいものだけを審査するという一つの方法をとる。あるいは中央においても地方においても、人員の手不足、居残り料の予算がないために夜業をやりたくてもできないという問題があれば、そうした予算を増加してさらに促進をするとか、そういう事務渋滞の険路がどこにあるかということを具体的におつかみになつてこれをひとつ是正していただかないと、せつかく大臣が熱を持つてやつていただきましても、大臣の下の事務当局というものは頭の切りかえがなかなかできないで、そうして非常に遅くなるということを憂えるのであります。今までのようなスピードで行きますと、今年末までに百数十万の人たちに支給することはとうてい望み得ない、おそらく来年末になるのではないか。こういうことさえも考えられているのでありますから、どうかひとつその熱情をもつて具体的にぴしぴし現場を指導なさつて、悪いところは、予算なり人の面なり、あるいは事務手続なりを本気になつて改めていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/12
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013・加藤鐐五郎
○加藤国務大臣 ごもつともな御注意でございます。ただ一言御了解願いたいのは、援護法によつてすでに与えられたものは無条件に許したらいいじやないかということでありまするが、できるだけ大目に無条件に近きくらいの気持でやつておりますけれども、はなはだしき間違いがありました場合に、末梢に至りまして、先刻申し上げたように、具体的に、おれのところはこうであるが、あれのうちはこうであるのは何事だということが参りますものですから、むずかしい枝葉末節にとらわれず、できるだけ御趣旨に沿うようにいたします。これは抽象的にその場限りに私は言うつもりはないのでありまして、先日も私どもはあそこを見て皆さんを激励いたし、御努力を願つたような次第でございまして、恩給局の立場もひとつ御了察願います。できるだけすみやかに処理いたしますようにいたすつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/13
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014・辻政信
○辻(政)委員 ただいまの御答弁に信頼いたしまして、しばらくその成行きを見さしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/14
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015・平井義一
○平井委員 ちよつと恩給局にお尋ね申し上げますが、実は戦後軍人軍属に援護の手を延べるということになりまして、復員局が陸海軍ともに名簿をつくつた。そこでそれは非常な間違いも多うございましよう。間違つてもやるということになれば別でございますが、われわれが聞いた範囲だけでも、ある人が、おれの友達は戦死したのであるから証明してくれといつたらばんと判をついた、こういうことで、証明者もないのにとにかく行きさえすれば証明をしてくれたというのが当時の援護庁の状況でありますから、相当な間違いもあると思います。その点で、どういう間違いが多いか。あるいはどのくらいの件数が間違つておるか。間違つても何でもいいから恩給局は素通りに行つてやるというなら別であります。少々間違つてやつてもいいと思いますけれども、やはり国家の金でありますので、公平に厳格にすみやかにやるということが建前であろうと思いますが、この点をひとつ恩給局長でもよろしゆうございます、大臣でもよろしゆうございますが、お尋ね申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/15
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016・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今まで恩給局に進達されました書類の中におきまして、今平井委員の仰せられましたようなものがあるかどうかということだろうと思いますが、実は、御承知の通り、恩給局に進達されて参りまする書類の中には、一度普通恩給なりあるいはまた普通の扶助料、あるいは戦死者としての扶助料をもらつておられた方も相当あるわけでありまして、そういうような方のものに対しましては、恩給局におきましては無条件に普通恩給なり扶助料なりを給するように法令がなつておるわけでありす。ところで、いわゆる援護法におきましては、遺族年金をもらわれる方の中におきましては、従来戦死者としての扶助料を給された方でございますならばただその扶助料の証書を持つておられたというだけでもつて、公務のためになくなられたということがはつきりしているわけでございますから、それだけの事実によつて遺族年金が出されておつたのでございます。しかしながら、普通の扶助料、平病死をされたというような場合におきましては、遺族年金は出せないことになつておつたわけでございますが、実際の問題といたしまして、戦死者としての遺族の扶助料をもらつておつたというような理由をもつて遺族年金をもらつておつたということで扶助料を請求して来られた中には、そういうことのなかつたすなわちそういう戦死者としての扶助料をもらつておらなかつた方もかなりあるようでございます。また増加恩給をもらつておられた方、すなわち公務のための傷痍疾病にかかられまして、そうして今度はその傷痍疾病がもとでなくなられた方に対しましては、戦死者と同じように扶助料が給せられることになつておるわけでありますから、そういうような方に対しましては、増加恩給をもらつておられて、そうしてそのためになくなられたというその証明がつきますなら、遺族年金はもちろん行つているはずなんでございます。そういうようなことで、恩給局にある書類を中心といたしまして、今度請求されて来ましたところの扶助料の書類を見てみますと、これはたくさんの書類を処理される中でございますから、若干の間違いがあるのもやむを得ないことかと思いますが、遺族年金を給すべくして給されていなかつたり、あるいは給すべからざるものに給されておつたということも若干あるようでございます。それから今度は、まだ一度も恩給局の裁定を得たことのない、すなわち扶助料も普通恩給ももらつたことのない方につきましては、今申し上げますような扶助料を給すべし、あるいは給すべからざるものであるというはつきりとした資料を持ち合せておりませんから、今申し上げたような、恩給を給すべきものに給しない、あるいはまたその逆のような場合は、実ははつきりつかみにくいところでございます。しかして今私が申し上げましたような件数はかなりの件数で、数百件ぐらいあるだろうかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/16
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017・平井義一
○平井委員 大体援護料から恩給扶助料に切りかえるときに、主としてあなたの方で調べられるときにはどの程度の証明がいるのでありますか、それをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/17
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018・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今の平井委員の御質問は、戦死者の遺族に給せられるところの扶助料は普通の一般の者に給する扶助料より割のよい扶助料でございますので、その割のよい扶助料を給するために、法律で要求されておりますところの、公務のためにけがをして死んだということの証明書類、こういうことだろうと思いますが、この証明書類につきましては、今度の戦争におきましては、昔の戦争と違いまして、かりにいろいろな書類がきちつと整つておつたものがあつたといたしましても、あるいは亡失したものもほとんど大部分であろうと思われます。それからまた、つくられたものがあるといたしましても、戦場倥偬の間につくられたものにつきましては、昔のような整つたことを求めるというようなことは事実不可能であると私は思つております。もしもそういう何かの書類がどこどこにあるということでございますならば、もちろんそれでけつこうでありますが、そういうものがない場合につきましては、ごく簡単なものでよいことにしております。遺族年金が給せられる以上は、遺族年金を給せられる人は、戦死なら戦死で、公務のために死亡したということが明らかに確認されて給されておると思うのでありますが、その確認されたところの内容はいろいろだろうと思います。詳しいものもあれば簡単のものもある、いろいろあるだろうと思いますが、そう詳しく書いたものを恩給局に出すということもむずかしいと思いますから、そういう部厚い詳しいものがあるときでもない場合でも、ごく簡単なものでけつこうでございます。でございますが、証明書類につきましては、いずれにいたしましても、遺族年金を給せられるにあたつて、公務と認められたところの資料、その資料を平易な言葉で言いますならば、写真のネガといいますか、そういうようなものがあるはずでありますから、それを証明書類として考えています、ごく簡単なものでさしつかえない、こう私どもは考えておるのでございます。そこで、実際問題としてそれがどうなつておるかということが問題となるのでございますが、実際の問題といたしましては、御承知の通りに戦死者の死亡の確認につきましては、あるいは留守業務部長において確認されて、死亡者連名簿に載せられて確認されている、こういうようなこともありますし、またほかにもいろいろあるのでございますが、そういう場合におきましては、何々の死亡者の連名簿によつて死亡と確認されているということでありますなら、ただそれだけのことを一行か二行書くだけで証明に足りる、そういうふうに考えて措置しております。ところが実際におきましては、各府県に対しまするところの私どもの方の事務の指導といいますか、連絡といいますか、そういうようなことの行き届かない点も多分にあるだろうと思います。そういうような点からいたしまして、必要以上に大きいものを要求している、求めておるかのごとくに考えられている向きもあるようでございますが、決してそうでないのでございます。ごく簡単な、証明の資料といたしましては、今大臣が仰せられましたごとく、最小限度の証明でさしつかえない、こういうふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/18
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019・平井義一
○平井委員 その証明というものが、県なら県の世話課に、実はいつどこで公務で死んだということを、たとえばその隊の責任のある中隊長とか、部隊長ならなおいいが、全然関係のない者が、これは死んだんだと言えば、それでもよろしゆうございますか。ある程度関係のある責任のある人が、この人は確かに公務でなくなつたのであるということを証明すればいいが、だれでもいいから、ちよつと簡単に二、三行ほどという、そんんふうなことでは、恩給法というものはあまりに軽々しくなることになる。いなかなら間違いありません。いなかなら、どこどこのむすこは確かに戦争に行つておつたということがわかるが、大都会になつて来ると、そういうこともありますまいけれども、ちよつとお前証明してくれぬか、それではおれがしてやろうかというようなことで、書類が通るかどうか。その辺の範囲をひとつお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/19
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020・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今の平井委員の御質問もつともだと思います。私今ちよつと申し上げたのでございまするが、戦死につきまして、はつきりしない、そういうような方があつたと思います。終戦後におきまして、ニユーギニアとかあるいはその他の土地から引揚げて来た部隊につきまして、いろいろ今申し上げるようなことがあつたと思いますが、そういうような場合におきまして、結局いろいろな方面の軍について責任者をきめていろいろと調査されておりますし、また留守業務部においていろいろ調査されて、責任ある措置が講ぜられているのでございます。その責任ある措置の講ぜられたものを私たちは信じておるのでございます。今仰せられまするがごとくに、戦死なら戦死と確認する責任者でない人が戦死としたようなものは、証明の書類としては出されておりません。今の戦死公報につきましては、すべて責任のある方の確認書類によつて公報が出されておると思つておるのでございまして、その公報が出される至つたそのもとになる責任者の死亡確認の書類を私たちは証明の書類と思つているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/20
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021・平井義一
○平井委員 府県の世話課なり援護庁なりを信頼されるならば、そう二度も三度も調べぬでも私はいいと思う。世話課あるいは援護庁でも間違いが多い——それは私も知つておるが、それで国民の税金をそうはやれぬとおつしやれば、これは別ですが、あなたがおつしやるように、世話課から出て来た書類、援護庁から出て来た書類を信じますというなら、そう調べ直さなくても私はよいのではないかと思う。そこのところの御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/21
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022・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 私の局におきましては、今申し上げるように、証明の書類については責任ある人の証明ということに重きを置いておりますので、今仰せられるように、かりに責任のない者の証明がつけられて来た場合におきましては、これは何かの間違いではないかということで、もう一ぺん調べてもらうことにいたしております。そうしてその間違いなら間違いということを究明して、きちつとされるべきものだろうと思つているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/22
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023・平井義一
○平井委員 あれだけのひどい戦争をやつたのですから、そして何百万人という数に上りますから、多少の間違いはあると思います。多少の間違いはあつても、わかつたときに直す、間違いがあつてもいいじやないかという腹組みで扶助料を差上ぐるならば、お忙しいのにあまり書類を詳しく見られぬでもよかろうと思いますし、厳格にやらなければならぬということならば、やはり恩給局の主張するように、さらに緻密に調べるべきである。この点多少の間違いはあろう。その間違いの比率が、たとえば百人に何人くらい間違えるか、あるいは千人に何人くらい間違えるか、少しはあるかもしれませんが、あまり多ければ私もいいとは言わない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/23
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024・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 実はどのくらいの間違いがあるかという比率は、ちよつとはつきり私は申し上げかねるのでございまして、そういう統計はとつておりませんが、私事務当局の責任者といたしまして、また局員全体について考えましても同じでありますが、一方におきましては、国民の税金からまかなわれるところの恩給の使途についてできる限りの慎重を期する、また一面におきましては、先ほどから御要望がございますように、恩給の事務が促進されて、一日も早く恩給受給者の手に恩給が渡るようにする、この両方の調節のために苦慮しているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/24
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025・平井義一
○平井委員 大臣にお尋ねいたしますが、間違いもあると言えばかなりあるのでしようが、比率からすれば少い。もし間違いがあつた場合は、恩給局長が言われたように、取消すということになれば、厚生大臣を信じて、厚生大臣が認めたものは扶助料に切りかえてやる、こういうふうに大臣がなされば、非常に早いと思いますが、どうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/25
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026・加藤鐐五郎
○加藤国務大臣 恩給局といたしましては、初めから間違つておるとわかつておるようなものには出したくないのでありまして、正確を期したいのでございます。しかしこれは人間の認定でございますので、御趣旨もありますけれども、恩給局としては正確を期して支給したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/26
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027・山下春江
○山下(春)委員 この間私は恩給局長にこの問題について次の委員会に関係各省とお折合せの上御回答をいただきたいという一つの具体案を申し上げておきましたが、まだ御返事を承つておりません。ただいま平井委員の質御問がそれに関連しておりますので、この際承りたいと思います。
援護庁及び復員局は敗戦の結果初めて生れた日本の官庁でございます。しかしながらこの官庁は初めてですから、最初は非常な御苦労をなされたのでありますけれども、その後援護庁は援護局となつておりますが、これが調べましたものはすべて今度の戦争の跡始末の基本資料となつております。たとえて申しますれば、戦犯の処刑者が一体何人あるか、獄死者が何人あるかというようなことを外務省の戦犯室に聞きましても、はつきりわからない。恩給局に聞いても、はつきりわからない。結局とどのつまりは援護局へ行つて調べなければ、その的確な数字が得られないという状態でございます。援護局は日本で戦後最初の役所ではございましたけれども、なれないこれらのことに対して八年間まつたくよく職員たちはやつて来てくれて、日本のこの悲しみを受けている人々に対する非常なともし火であつたと私は確信しておる。
そこでこの役所は進達官庁ではございますけれども、この役所から出て恩給局に移送されましたものは恩給にかわるんだということを意識されつつ調査したのでございますから、まさかとんでもない間違いはないと思う。今平井委員の質問に対して局長は、多少間違いもあつたと仰せられましたが、それは間違いは起つたであろうと思うのです。私はそういう意味でこの間この進達官庁から出たものの正確を期せられたものに対しては、もう一度御審査願いますと、——何としても二百万に近い人々の審査でございますから、容易ならざることと思いますが、関係各庁と御相談の上、ここから来たものは大部分無審査で裁定するということに御相談をまとめて御答弁をいただきたい、こうお願いしておきましたが、まだ局長かち御答弁をいただかないのでございますが、その後どういうふうになりましたか。
それからもう一つ、恩給局の過去をさかのぼつてたいへん恐縮なんですが、恩給の裁定にあたりまして、非常にまごついている、手間がかかつておるということの一つの原因に、未亡人たちに払います公務扶助料を二十九年一月一日より兵長に上げるなどというのを、私どもは八月一日に同時に兵長に上げてもらいたいとたつて懇願いたしましたにもかかわらず、公務扶助料に関する問題だけが二十九年一月一日より兵長に引上げるということに昨年の八月一日にきまりましたこと、これもこの計算上非常に事務が渋滞しているもとであろうと思いますが、そういうことで事務上の渋滞の原因になつているものかどうかということと、二点だけ御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/27
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028・加藤鐐五郎
○加藤国務大臣 私はたびたび申すようでございますが、ただいま無審査でということでありましたが、恩給局としては無審査ということは許しませんのであります。しかしながらすみやかに御期待に沿うように努力して審査をいたします。さように御承知を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/28
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029・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 今山下委員から御質問のありました後段の問題でございますが、昨日高瀬委員から御質問がございまして私がお答えしましたし、また辻委員からも御質問のございました例の兵長のところの扶助料の金額と、それから遺族年金の金額とがふつり合いである、こういうことの問題でございましようか。ちよつと私はつきり受取れませんでしたが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/29
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030・山下春江
○山下(春)委員 そうじやないのです。これは裁定なさるときの計算上のほんとうの事務の問題なんですが、昨年八月一日恩給法が改正されて出ますときに、二等兵、一等兵その他の者の最低を兵長に引上げました。ところがそのときに、恩給法をもらう方に対しては兵長に引上げたが、未亡人、すなわち扶助料をもらう人の場合は、二十九年一月一日まで引上げられぬということにきまつたのです。これは恩給局長であらせられるあなたが一番御存じのはずです。こういう済んだこと言つてもしかたがないから私はそのままにしておきましたが、この段があることは、臨時に雇つたなれない人たちのために事務が非常に渋滞しておるのではないかと私ひそかに思つたので今承つたのですが、そういう傾向がなければけつこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/30
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031・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 私はたいへんうかつなことを御返事するようですが、今山下委員が仰せられるようなことは、恩給局は関係がなかつたのじやないかと思います。ちよつと私は御質問の趣旨がつかみにくいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/31
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032・山下春江
○山下(春)委員 それではあとであなたに御説明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/32
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033・辻政信
○辻(政)委員 今の平井委員の質問はきわめて重大でありますから、それに関連しまして簡単に申し上げます。二百万に近い処理件数において百件の間違いがあつた。これは数学的には誤りでありますが、私は政治的には誤りではないと思う。この数というものは、日本の役人の汚職、収賄の数よりははるかに少い。遺族はうそを言わない。その意味において、あなた方は遺族の心を心とされてほんとうにやつていただかなければ、そういう気持ではいつまでたつてもできませんよ。その点を加藤大臣に特に申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/33
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034・稻村順三
○稻村委員長 早稻田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/34
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035・早稻田柳右エ門
○早稻田委員 恩給や扶助料、年金が事務上の手続で渋滞しておることは天下周知の事実で、いまさら申し上げるまでもありません。その原因はいろいろありまするが、私の特に気づきます点は、ここでこうして論議をしておりますとなかなか御親切な御答弁をちようだいいたして、やれやれと思つて、国に帰る、ところがこれが周知徹底いたしませんで、末端に行くほど事務ははかどりません。そこで私はお尋ねしたいのですが、一体恩給局と、県と町村への事務連絡等はどんな方法をとつておられるか、一応ここで承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/35
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036・三橋則雄
○三橋(則)政府委員 県の仕事と市町村の仕事につきましては、これは主として厚生省のいわゆる恩給申請書の進達に関する事務でございますので、厚生省において主としていろいろの連絡なり指導をしていただくようにいたしております。従つてその方面のこまかいことにつきましては、今関係局長がここに来られておりますので、その関係局長からお答えしていただくようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/36
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037・早稻田柳右エ門
○早稻田委員 わからなければけつこうですが、私の思うには、どうも事務連絡が悪いようであります。この間私の同僚山下委員から年金未裁定の分に対しての資料を要求せられたが、いまだに出て来ない。この一事をもつていたしましても、いかに事務が渋滞しているというか、不熱心というかをはつきり裏書きしていると思います。私どもが地方へ行つて聞きますと、地方では大体書類を出しつぱなし、そして何も通知がない、返事がないというのが相当数あります。私ども推定で全国に十万くらいあると思つております。たとえて申しますと、先ほど恩給局長さんの答弁だと、その資料のごとき、死亡確認にあたつては簡単な証明書でけつこうだとおつしやる。ところが地方へ行きますと、まず県の世話課が簡単な友人の証明ぐらいでは許さない、むずかしいことを言つておる。だから、そんなものは今日とり得るすべがあるわけのものじやありませんので、結局そのまま事務が渋滞する結果になります。それからもう一つは、あの戦後の混乱時代にいろいろな資料が家庭の手元にあつたにかかわらず、あるいは役場へ持つて来いと言うから役場へ持つて行く、さらに県へ出せと言うから県へ出す、ところがそれが出したままで紛失してしまつたものが多い。これは私の取扱つた最近の事例なんですが、当時申請書につけて県へ出したと言う、県へ行つて調べてみると、ただいまは係の者がかわつてしまつてわかりやしない。結局どうにもならないという現実の問題があつて困つておるのですが、そんなものが多いと思います。そこでせつかくの国家の恩恵に浴したいと待ち焦がれている人々ですし、もう残りは、町村など小さいところは十人か十五人、多い町村で三十人か五十人だと思いますが、そういうものについては、町村の係官なりあるいは県の係官なりを全国数ブロツクにわけて、ブロツク別に、こういう程度のものはこういう取扱いでけつこうだ、こういうものはこういう指導をやつていただきたいということで、好意ある御配慮を願いますならば、ある程度のものは解決できると私は思うのです。これは私どもそれを聞いて来て、援護局なり恩給局なりでお話しますとたいがい解決できるのですから、できぬのは、これは人手の足りぬ関係もございましようが、ほつてあるというのが、今日国民怨嗟の的になつているわけです。そこでそんなような県並びに町村との連絡講習会と申しますか、何か適当な方途を講じていただく意思がおありかどうか、その点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/37
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038・田辺繁雄
○田辺政府委員 援護法の事務処理につきましては、現在百九十五万の進達の中で百八十九万を裁定しておりますので、お話のごとく大部分が済んでおります。
〔発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/38
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039・稻村順三
○稻村委員長 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/39
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040・田辺繁雄
○田辺政府委員 その中で今日保留になつているものにつきましては、目下慎重に検討いたしまして、個々に裁定を急いでいるわけでございます。今日残つておりますのはいずれも困難なケースでございますので、いろいろ資料等も必要でございますが、中にはお話の通り資料のないものがあります。しかしこれはあとで遺族が不服の申請をいたします際に、持つている資料を出していただくわけでございますが、それもある場合は出していただくというので、ない場合にもわれわれそれを要求しているわけではございません。その場合にはすみやかに本省の方に進達するように伝えてございます。その点もし世話課等で不十分な点がございますれば、さらに徹底させまして、十分な資料を集めることができない場合にはそのまま中央に資料を出すようにいたしておりますが、御注意もございますので、今後その趣旨は十分徹底させたいと思います。なお恩給の問題は去年やつたやつをもう一ぺん恩給の方に出すわけでございます。実質的には審査が重複する面があると思いまするが、これはできるだけ審査を省略いたしまして、援護法で準ずるものは極力簡素化して、やるように、こういう気持で恩給局と打合せて進みたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/40
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041・早稻田柳右エ門
○早稻田委員 もう一言申し上げたいと思います。今お説のように御配慮願うことができればたいへんけつこうだと思いますが、今恩給の話が出たが、恩給のごときでも地方町村役場等においては、年金の下付を受けた者だけしか進達しない、年金をもらつていない者は申請するのも進達しないという方法をとつているところが相当ある、けしからぬ話でして、これは年金のいかんにかかわらず恩給進達してしかるべきであるのにかかわらず、そういうようなことを言つているところが少くございません。こういう事例から申しましても中央の気持を地方ではよく知らない、周知徹底していないということは、これは申すまでもございませんので、今援護局長のお言葉もありますが、ひとつこれは大臣あたりから特に各町村へ通達を出してもらうなり、この程度のものはこういうように処理しようとか、処理要項ですね、出したか、あるいは先ほど申し上げたように全国ブロツク別に一ぺん講習会でもやつていただいて、そうして一日もすみやかに処理裁定のできるように格段の御配慮あらんことを要望いたしまして打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/41
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042・高橋等
○高橋(等)委員 ただいまの御質問、御要望に関連いたしまして、特に大臣及び厚生当局にお願いいたしておきたいのです。それはこの援護法の年金の裁定にいたしましても、戦病死その他のものはたいへんに遅れております。これらにつきまして私は山縣厚生大臣の時代だつたと思いますが、府政からあなたの書類は確かに受理いたしておるが、こういう事情で遅れておるのだということを一本出してやつていただけば、どれだけ遺族たちがそれで力強く思うか、そういう意味でこのことをぜひやつてもらいたいというこをお願いたいしておるのですが、数としては大したものじやないのです。ところがいまだにその実現がされておらぬことははなはだ遺憾でございます。ぜひともこれお願いいたしたい。ことに恩給も方も同じように、ことに傷痍は人その他のものは私はたいへんに遅れておることを承知いたしております。それらにつきましては親切にそうした通知を出して、今どういうわけで遅れているのかということを知らしてやつていただきたい。これははがきに印刷すればわけはない、どうぞひとつその点をつけ加えてお願いいたしておきます。それについて大臣やつていただけますですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/42
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043・加藤鐐五郎
○加藤国務大臣 一応そういう手続を今までもいたしておりまするけれども、何分人が足りませんもので手遅れがあるので、今後も御注意に基きましてできるだけそういう方法をとりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/43
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044・高橋等
○高橋(等)委員 これは今の御答弁のようなことでなしに、これは善政なんです。ですから人の数なんか、一日に何百枚でも書けるのですから、どうぞやるという踏切りをつけていただきたいと思います。厚生大臣にもそのようにお伝えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/44
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045・加藤鐐五郎
○加藤国務大臣 ただいまの御趣旨に沿うようにいたすつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/45
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046・平井義一
○平井委員 援護局の田辺さんにお尋ねいたしますが、非常に書類上扶助料が遅れて行く、何回言うても早くならぬという建前から、厚生大臣が認めたものは、これは恩給局で再調べをせぬで扶助料を出すということに法律を直さなくてもあなたの方で恩給局と相談をして、こういう方法なら早く行けるのだという方法があるかどうか、ひと津お聞きしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/46
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047・田辺繁雄
○田辺政府委員 これはりくつを申しますとなかなかむずかしいのであります。従来ともわれわれの方では、常識でございますので援護法でいろいろ苦労をいたして裁定をしていたのでございます。その結果は二十九年度も尊重して行きたい、またその結果を活用して事務簡素化をはかりたいという趣旨で恩給局長に御相談を申し上げ、そういう線で事務簡素化をはかる点について意見の一致を見ておるわけであります、あとは具体的な案をどうするか、こういうことにつきましてもわれわれの方から具体案を出しまして御相談を申し上げておるのであります。ただ、恩給というものは恩給局長が御裁定になりますので、そのためには必要な書類というものがやはり整理されなければならない。そうなつて参りますと、どの程度まで書類を簡素化するかということが問題になるわけでございます。現実には世話課ではそういう必要な書類をつくる、地方ではそれをよく見て進達をして審査願うという点に実は遅れている原因があるわけであります。法律的な措置を講ずれば一番簡単でございます。またこれは道もあると思います。すでに援護法というものが恩給法の暫定措置法として立法されたということは、政治的にはつきりしているわけでございますので、そういうものである以上、恩給でもそのままのむということは一応可能性として考えられると思います。いろいろの考え方で従来は恩給局に御相談申し上げておりますが、立法措置がどうなりますか、すでに政府の原案が出ておりますので——そうならない場合におきましてはどうするかということもいろいろ考えなければならぬと思いますが、極力従来の線をさらに一層強化推進して事務の簡素化ということに努力したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/47
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048・平井義一
○平井委員 援護法は御承知のごとく軍人恩給が復活しない前にできたのでありますので大急ぎで書類をつくつたということもわかりますが、そこで書きますがそこで書類をあなたの方がつくつて、これは修正を加えぬでもう大体うのみにしようということならば、修正はせぬでも、私は恩給局長としてはいいと思いますが、恩給局では詳しく調べたい、援護局ではわれわれが調べたのだからもうよろしゆうござんしよう、こういうことになれば、そこは相談で早く行かぬものですか、行かぬとすれば、やはりこれは修正をしなければならぬという結論になりますので、その点両者で御相談をして、仲よく意見を——あまりどちらの意見も主張すると遅れてしまう。そこで修正の処置を加えぬでも必ずできます、こういうふうにすればできる、あるいは将来は非常に早くなるという案がなくて、それは加藤さんが認めればそれでいいように修正してくださいと田辺さんがおつしやれば、われわれとして喜んでいたしますが、そうまでしなくてもできるのだということになれば、恩給局と相談の上そうしてもらいたいし、恩給局長も修正まで加えぬでも私の方ではこういう方法でやりますということが法律にうたわぬでできるかどうか、お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/48
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049・田辺繁雄
○田辺政府委員 率直に申しましてわれわれ今日まで十分努力して参つたのであります。しかし法律があります以上は恩給局長は裁定せざるを得ない。裁定する以上は書類を必要とする、それは当然かと思います。そうするとわれわれの方でいくら簡単にしていただきたいと申しましても、恩給法の建前上簡素化することはできないということになりますれば、一方さらにさかのぼつて根本に立ち帰らざるを得ないという点になるのであります。これは恩給法というもののわくに入つて考える以上、当然そういう疑問が出て来ると思います。そこで援護法をつくつた当時の趣旨というものをよく考えてみますと、これは先ほど申し上げましたように国家が法をもつて公務死亡として認めたものにやるという趣旨でございますので、そこはやはり一体性を持たなければならぬ。そうしますと、やはり法律でもつて書くということも十分筋の通つたことではないかと思われます。われわれはいろいろの点から先ほど申し上げたように努力して参りましたが、なかなかそこは恩給法という一つのわくにおきましてはいろいろ議論がある点でありますが、法律でやれということも筋の通つた話ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/49
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050・平井義一
○平井委員 そこであなた方がそう役所争いをせぬでやる方法として、恩給法に基いて調べるという建前にして、調べぬということにした方がよくはないか。これは調べちやならぬという法律をつくれば問題は何もないのでありますが、建前は調べるということにして、調べぬということはできませんか。恩給法に基いてあなた方が調べなければならぬということは、職務に忠実なるゆえんであります。それはしかたがないが、建前は恩給法に基いて調べるということにして、調べぬでやつて行けないか。これを調べてはならぬと法律にうたうということは、ほんとうを言えばわれわれは残念なのです。そこで恩給法の建前からは調べなければならぬと思う。ならぬが調べてはいかぬということで縛るか、調べるのが建前であるが、われわれは調べぬということにできないか、その点ひとつ御見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/50
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051・加藤鐐五郎
○加藤国務大臣 先刻来しばしば申した通り、無審査でやれということは恩給局としてはできません。こう申しておるのであります。しかし皆さんの御希望もあることでございますから、すみやかに審査を済ますようにとりはからいます。これでよくおわかりのことと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/51
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052・平井義一
○平井委員 よくわかりましたが、大臣が恩給局長にあれは無審査でやれと口頭で言つただけでそれが通るかどうか。法律でうたわなければ、——そう言つても局長も聞かぬし、事務員も聞かぬということになればうたわなければなりませんが、担当の恩給局長はどう思われるか。調べるという建前にしておいて、これは調べぬというのが、日本人としてはすつきりと行くのですが、いや恩給法に基いて厳格にやりますぞということになれば、調べぬでよいような法律に直さなければならぬ。これはやはり法律を修正するのだから重大ですよ。ただ簡単に行くわけではない。そこで修正やむなしとか、あるいは修正しなくてもやれますとか、ひとつ御見解をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/52
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053・加藤鐐五郎
○加藤国務大臣 私はこの答弁で尽きておると思いますが、審査はしなければならないと思います。その意味はおわかりになるだろうと思います。すみやかに寛大な態度をもつて審査を命じ、審査は厳重にいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/53
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054・稻村順三
○稻村委員長 本案に対する審議は明二十日午前十時より続行することとし、本日はこの程度にいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/54
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055・稻村順三
○稻村委員長 元南西諸島官公署職員等の身分、恩給等の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑はありませんか。——別に御質疑もないようですから、これより討論に入りますが、討論はこれを省略し、ただちに採決に入りたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/55
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056・稻村順三
○稻村委員長 御異議なければ、討論はこれを省略し、ただちに採決に入ります。本案に賛成の方の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/56
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057・稻村順三
○稻村委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決、確定いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/57
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058・稻村順三
○稻村委員長 総理府設置法の一部を改正する法律案及び内閣及び総理府関係法令の整理に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
別に質疑の通告もありませんので、これより討論採決に入りたいと存じますが、討論はこれを省略いたし、ただちに採決に入るに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/58
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059・稻村順三
○稻村委員長 御異議なければ、これより採決に入ります。両案に賛成の方の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/59
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060・稻村順三
○稻村委員長 起立総員。よつて両案は原案の通り可決いたしました。
この際お諮りいたします。本日議決いたしました議案に関する委員会報告書の作成に関しましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/60
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061・稻村順三
○稻村委員長 御異議なければさようとりはからいます。
本日はこの程度にいたし、次会は明日午前十時より開会いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午従四時五分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X03519540519/61
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