1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年四月二日(金曜日)
午前十時四十二分開議
出席委員
委員長 井出一太郎君
理事 佐藤洋之助君 理事 綱島 正興君
理事 福田 喜東君 理事 吉川 久衛君
理事 川俣 清音君
秋山 利恭君 小枝 一雄君
佐藤善一郎君 寺島隆太郎君
松山 義雄君 神戸 眞君
松浦周太郎君 井谷 正吉君
井手 以誠君 中澤 茂一君
中村 時雄君 安藤 覺君
出席政府委員
農林事務官
(畜産局長) 大坪 藤市君
林野庁長官 柴田 栄君
委員外の出席者
農林事務官
(畜産局畜政課
長) 鵜川 益男君
農林事務官
(林野庁林政部
林政課長) 臼井 俊郎君
農 林 技 官
(畜産局競馬部
長) 井上 綱雄君
農 林 技 官
(林野庁指導部
長) 藤村 重任君
通商産業事務官
(鉱山局鉱政課
長) 村田 繁君
専 門 員 難波 理平君
専 門 員 岩隈 博君
専 門 員 藤井 信君
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四月二日
委員降旗徳弥君辞任につき、その補欠として佐
々木盛雄君が議長の指名で委員に選任された。
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四月一日
農業改良普及事業に対する補助金に関する陳情
書(第二六〇八
号)
農林漁業金融公庫政府出資金のわく拡大と利子
の補給に関する陳情書
(第二六〇九号)
米価凶作加算金の予算化等に関する陳情書
(第二六一〇号)
農業改良普及事業に関する陳情書
(第二六三一号)
同
(第二六三二号)
同外七件
(第二六三三号)
同外三十六件
(第二六三四号)
同
(第二六三五号)
同外三件
(第二六三六号)
同外四件
(第二六三七号)
同外二十一件
(第二六三八号)
家畜保健衛生所廃止反対に関する陳情書外一件
(第二六六五号)
同(第二六六
六号)
同
(第二六六七号)
同
(第二六六八号)
同(第
二六六九号)
同(第二六
七〇号)
同
(第二六七一号)
同
(第二六七二号)
同
(第二六七三号)
同
(第二六七四号)
同
(第二六七五号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
日本中央競馬会法案(内閣提出第一二六号)
保安林整備臨時措置法案(内閣提出第一一〇
号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/0
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001・吉川久衛
○吉川委員長代理 これより会議を開きます。
委員長が所要のため少しく遅れますので、暫時私が委員長の職務を行います。日本中央競馬会法案を議題といたし、審査を進めます。本案につきましては去る三月三十一日提案理由の説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。寺島隆太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/1
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002・寺島隆太郎
○寺島委員 国営競馬をいうところの民営競馬に移行すべしという所論並びに要望は久しきにわたつたものでございます。すでに競馬制度審議会におきまして慎重その議が練られ、この委員会においては最終的結論は出なかつたのでありますが、大体競馬界における大方の権威者の要望が明らかに相なつたのであります。本案はかかる時代の趨勢を背景といたしまして立法せられたものでありますことは、立法者当局に対しまして多大の敬意を払うのでございます。
第一点にお伺い申し上げたいと存じますることは、法第一条におきまして、「競馬の健全な発展を図つて馬の改良増殖その他畜産の振興に寄与する」云云という法律の目的が掲げられておるのでございますが、かかる法律の目的に対しましては、わが国競馬法の沿革から考えてみまして、多くこれは当時の軍部、すなわち陸軍の所要に基く馬匹の品質改良ということを背景とせられ、かかる要望に鼓舞激励せられて競馬が殷賑をきわめたと考えるのでありますが、競馬審議会におきます所論の中におきましても、たとえば松村眞一郎氏所論のごときにおきましては、競馬は賭博であるのだ、こういうような定義を下しておる。賭博ということが、人間が神と悪魔との中間にあつて、できるだけ神ならんとすることが人間生活の規範である、かように考える、そうすれば最も弊害のない競馬というものは、かかる人間世界において存在する所要の理由があろうではなかろうかという議論も競馬審議会の中に成り立つておる。また長谷川前畜産局長は、そうではないのだ、競馬というのは健全スポーツなんだ、ところが健全スポーツとなりますと、私は競馬は前後二回ほどしか見ておりませんで、あとはテレビで見る程度ですからわかりませんが、実は馬のスポーツである、哺乳動物のスポーツを人間が鑑賞するという定義に相なるものであろうか。
それからもう一つ、競馬審議会においては、これは小笠原八十美委員の所論でありますが、やはり日本の農村、農家の労働力の生産性を向上させるために、やはり馬というものがどうしても必要なのだ、日本の農村農家の労働の生産性向上のために所要するために、やはり競馬というものの背景下に一種の労働供給源としての役馬が必要なのである。大体競馬審議会においてでは、他にあろうかと存じますが、以上三つのものがあるのでございまするが、本法におきましては「競馬の健全な発展を図つて馬の改良増殖その他畜産の振興に寄与する」云々と、第一目的は馬の品種改良増殖にあり、しこうして馬の品種改良増殖がさらに演繹するところ畜産の振興に寄与するのであるという二段の書き方に相なつておるのでありまするが、第一点としてお尋ね申し上げたい点は、本法がいわゆる民営競馬という輿論の背景下に登場いたしましたる法律の目的に対しまして、御見解をお教え願いたいと存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/2
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003・大坪藤市
○大坪政府委員 本法の目的及び競馬の目的等に関連いたしまして、寺島委員よりいろいろ御意見があつたのでありまするが、競馬の目的に関しましては、ただいま御意見のありました通り、政府といたしましては、大正十二年に競馬法が制定せられまして以来、競馬の目的は、いわゆる馬事思想と申しますか、馬の改良増殖を主眼といたしまして、それを主力といたしまして畜産の振興をはかる、こういうことが競馬の本来の目的であるのであります。この考え方は従来から現在に至るまで少しもかわつていないのでありまするが、その間競馬を執行しまするに際しまして発行いたしまする勝馬投票券というようなものに関連いたしまして、あるいは健全なるスポーツであるという考え方、あるいはその収益というものを、畜産その他いろいろその目的を考えることによつて財政的な面を考える考え方もいろいろあるのでありまするが、私どもといたしましては、あくまで競馬本来の目的は馬産振興、特に畜産の振興であるとかたく信じておるのであります。従いまして今回現行競馬法中国営競馬と民営競馬のうち国営競馬に関しまして、日本中央競馬会というものを創設いたしまして、この日本中央競馬会に現行の競馬を施行せしめることにいたしたのでありますが、本競馬会の目的は、ただいま御指摘のように第一条に規定しておりますが、「この法律は、競馬の健全な発展を図つて馬の改良増殖その他畜産の振興に寄与するため」「日本中央競馬会の組織及び運営について定めるものとする。」こう規定しておりますが、本会の目的はあくまで競馬を施行することによりまして、馬の改良増殖並びに畜産の振興に寄与するということを目的としておる、かように信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/3
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004・寺島隆太郎
○寺島委員 私の目的は、御意見をお伺いするだけであり、私の方からは別にデイスカツシヨンで議論を申し上げませんから、どうぞフランクな気持でお答え願いたいのですが、しからば法律第百五十八号の第一条第二項、競馬を行う団体として本法ができるのであつて、法律第百五十八号による競馬の施行団体としての本法適用を受けるのである。しからばもとより法律第百五十八号によらざるものの競馬というものも存在するのでありますが、この法律百五十八号の競馬並びに残余の競馬を一括いたしまして、この競馬をいわゆる時局即応の民営態勢に移行いたしますならば、本法の規範となりますところの、ここに私どもちようだいいたしております競馬法そのものの基本的構想について考慮を加えるという措置がなされるということも一つの方法であろうかと思うのでありますが、かかる方法を廃して、百五十八号による競馬を行うというものを目的として本法を提出せられたる所見いかん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/4
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005・大坪藤市
○大坪政府委員 昭和二十三年に制定されました現行競馬法におきましては、競馬の施行主体は第一条に規定しておりますが、国と都道府県または市町村、こういう二つの段階にわかれておりまして、いわゆる国のやつております競馬を国営競馬と言い、都道府県及び市町村のやつております競馬を地方競馬と申しておりますが、今回現行競馬法中のこの二つのグループのうち、国営の競馬についてのみいわゆる民営に移すということにいたしたのでありますが、その理由といたしますところは、地方競馬につきましては、先般開催されましたところの競馬審議会におきましても、いろいろ論議があり、ほとんどその帰趨するところを知らなかつたような状況でございますし、また競馬の施行主体及び競馬の内容につきましていろいろ複雑な点があるのでありまして、これをどういう方向に持つて行こうかということにつきまして、私どもといたしましては、審議会の経過等にもかんがみいろいろ検討いたしたのでありますが、地方競馬に関しましては、現在までその結論を見出せなかつたのであります。国営競馬につきましては、競馬制度審議会の委員も、おおむね民営に移すのが至当であるというような、大体の御意向でありましたし、その後いろいろ検討いたしまして今回の行政機構の簡素化と申しますか、その線等もにらみ合せまして、今回提出いたしましたような法案を検討いたしまして、御提出申し上げまして御審議をお願いするこういうことに相なつております。
〔吉川委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/5
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006・寺島隆太郎
○寺島委員 法第一条の表から見ました御当局の御見解は承つたのでありますが、もとより法第一条に関連をいたしまして、やはり法第一条を前面に押し出しております関連事項について若干伺いたいのでありますが、いわゆる競馬法第二条に、「国営競馬の競馬場は、札幌、函館、福島、新潟、中山、東京、横浜、中京、京都、阪神、小倉及び宮崎の十二箇所とする。」とあるが、審議会の速記録を拝見いたしてみますと、その中において横浜はスリーピングの状態である。それから新潟と宮崎とは現に使つておらない。実は私は議論は申し上げませんが、死文に帰しておるのでありますが、本法につきましては、本法第四条の規定に基きまして、この十二箇所がそのまま営業せられるものなりと考えられるのでありますが、さよう了承してよろしいかどうかという点が私のお伺いいたしたい第一点第一項であります。
第二項といたしましては、どうもこのいろいろなプロパー・ナウンが出ておりますが、これはどういう御見識によつて——たとえば東京競馬と申しましても、実は東京郊外府中にあるのだ。実は私は千葉県人でありますが、中山という行政区画の地名はないのであります。しかしこれは行政区画の地名がなくて中山ということを申しても一向さしつかえないのだ、こういうこと等から考えまして、第二は、この地名の読みかえに対しましてどういう——たとえば中京等のこともございますので、現に競馬を東京において二箇所の競馬場をもつて、三つの競馬場の分を開催をいたしておるというような事態からかんがみて、すでにそれが馬場その他が非常につかれておりはしないかというようなことを、第一条の関連事項としてあわせ伺いたいと存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/6
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007・大坪藤市
○大坪政府委員 現在国営競馬につきましては、ただいま御指摘の通り第二条によりまして札幌、函館を初めといたしまして、宮崎まで十二の競馬場が法律をもつて特定されておるのであります。そのうちただいま御指摘の通り三箇所が休場をいたしておるのであります。今回いわゆる民営に切りかえます場合におきましては、概略的に申し上げまして、考え方といたしましては、政府がやつておる通りの競馬を一応日本中央競馬会に移譲すると申しますか、引継いで行わしめる。従つて内容につきましては、当面の問題といたしましてはさしたる変更はない、かように存ずるのであります。なおただいま御指摘の名前の変更ということになりますと、これは法律に規定をいたしておりますから、法律を改正する必要があるのではなかろうか、かように存ずるのであります。政府の権限で名前をかえるというようなわけに参らぬのではなかろうか、少くとも第二条の法律そのものをかえなくちやならぬのじやないか。かように存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/7
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008・寺島隆太郎
○寺島委員 どうも畜産局長は非常に御聰明な方なんですが、私がちよつと頭が悪いために、私の主観的認識と客観的認識がずれておるのですが、そういう意味で私は申し上げておるのじやないのです。それは中京というプロパー・ナウンの地区というものがあるのかどうか、阪神という地区があるのかどうか。府中という市において東京競馬という名の競馬が行われておる。これは目黒の競馬を府中に移して東京競馬と称した沿革がある。その土地は東京都と離れた府中市にある。これは行政区画の基準をとつてやつたものであるかどうか。これはやはり漠然として過去の因習と申しますか、過去のよき習慣に従つてかかる名称を付したものであると本員は了承いたしたいのだ。これはたとえば文部省所管でありますが、委員長に最も御関係の深い養蚕のことでありますが、養蚕関係で東京高等蚕糸学校という学校がある。農林省においては駒場と札幌が上の方を押えておつて、農学士ではなかなか伸びられない。事蚕糸に関しては、高等蚕糸をもつて当時は最高学府とした。その最高学府たる東京高等蚕糸学校の学閥を称して、その地名一帯の西ケ原と称した。これは西ケ原から出たのです。たまたま同じく小金井地先に移つたときはその地先をもつて西ケ原と読みかえたというような好個の事例もある。農林省なんかに比べればよつぽど門のとびらのきちんとした時代の文部省によつても、かかる読みかえを行つておるという事態等にかんがみまして、本法第二条のたとえば中京であるとか、阪神とかあるいは東京というような問題は、事態の推移にかんがみて法律を改正せよと申し上げるのではない、断じてさようなやぼなことを言うのではない。今この際そういうことを言うのではありませんが、若干の読みかえというようなこともすつきりと法律を了解する上においては必要なのではなかろうかどうか、かかる点について伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/8
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009・大坪藤市
○大坪政府委員 名前はなかなかつけにくいでありましようし、また本法成立の場合にどういうふうな意味で、たとえば中京というような名前をつけたかという点につきましては、私案は詳しく伺つておらぬのでありますが、そういう読みかえというような問題につきましては、法律上はつきり中山なら中山ということになつておりますので、法律上の読みかえということはできないと思うのでありますが、いわゆる通称というような点になつて参りますと、どちらが世の中に通りがいいかという常識的な問題になつて来るのじやなかろうか、かように存ずるのでありまして、法律の第二条に名前をきちんと書いてあるのでありますから、正規の呼名としてはその名前を呼んで行かなければしかたがないのじやないか、かように存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/9
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010・安藤覺
○安藤(覺)委員 ただいまの寺島委員からの質問に関連いたしまして、私もちよつとお尋ねいたしておきたいのでありますが、第二条に「国営競馬の競馬場は、札幌、函館、福島、新潟、中山、東京、横浜、中京、京都、阪神、小倉及び宮崎の十二箇所とする。」とありますが、先ほどの局長のお答えによりますと、新たなる中央競馬会法によりまして、この開催場はそのまま存置されて継続経営されるであろうという御答弁でありました。私神奈川県でありますが、横浜は進駐軍に競馬場を接収せられて以来、現在引続き駐留軍になりましてからも継続使用されております関係上か、開催されておらないように思うのでありますが、この競馬場は近く神奈川県に返還されるような御用意か御意図かがあられるのでありましようか、その点を承つておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/10
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011・大坪藤市
○大坪政府委員 ただいま御指摘の点は横浜の競馬場の問題じやないかと思うのでありますが、横浜の競馬場につきましては、戦時中元の日本競馬会から海軍にその土地を売却いたしたのであります。終戦になりましてその土地は大蔵省の所管ということになつておりますが、進駐軍に接収されておるのでありまして、従つて競馬を施行するということは実際問題として不可能になつておりますが、私どものいろいろな関係方面との折衝の結果によりますと、ここ数年間は駐留軍の方でその土地を返還するというような見込みはないじやなかろうか、かように一応存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/11
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012・安藤覺
○安藤(覺)委員 そういたしますと、この横浜という文字は死文にひとしい姿になつておるのでありますが、こうした中央競馬の開催されるということが、その土地における大きな繁栄の基礎をなすことは言うまでもありません。この意味において、ここ数箇年間返還される目標がないということであるとしますれば、まことに横浜といたしましても、神奈川県といたしましても、さびしい以上のものがあると思うのであります。つきましては、他にこれの替地を求めて開催せられる、たとえば川崎に競馬場がありますが、あれらを置きかえて横浜の替地としての競馬場になさるというような御意図はお持ちになつておられましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/12
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013・大坪藤市
○大坪政府委員 横浜の競馬場というのは一応いわゆる根岸の競馬場を目標にいたしておるのでありまして、現在根岸の競馬場がここ数年間返つて来るような見通しもありませんので、現在のところ根岸の競馬場につきましては、ただちにどうこうするというような考え方は持つておりません。と同時に、他にこの替地を求めるというような点につきましても、現在のところ私どもといたしましては、そういうような考え方は持つていない状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/13
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014・安藤覺
○安藤(覺)委員 それでは地元等におきまして、たとえば川崎の競馬場等が中央競馬を開催するにふさわしい施設、準備等をもつて申請する等のことが行われました場合においては、これに対して許可をせらるる御用意は、お気持の上においておありになりますかどうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/14
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015・大坪藤市
○大坪政府委員 この問題につきましてはいろいろと検討を要すると思うのでありますが、この競馬法第二条のいわゆる横浜の競馬というものが何をさしておるかということが法律から引出される議論の一つでありましようし、また実際問題としても、ほかの地に求めるということになりますれば、そこにいろんな問題が起きて来ると思うのであります。現在横浜の競馬は、そういうような事情によつて中止になつておるのでありますが、これが返還になつたような場合にどうするかという問題も自然と起きて来ると思うのであります。ただ現在が施行不能の状態にあるから、ただちにほかに替地を求めることになりますと、この二条による横浜とは何ぞやという法律上の問題も起きて来ましようし、経済上あるいは社会上の問題も起きて来るのでございますから、その点については慎重に検討を要する問題じやなかろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/15
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016・安藤覺
○安藤(覺)委員 お言葉ではありますが、そうなりますと、先ほど寺島君が申し述べました中京とか中山とか、漠たる名称のものがやはり非常に厳密に吟味されて来なければならなくなると思います。横浜と川崎といいましても、見ようによりましては隣接しているのでありまして、こういつた問題にとらわれることなく、もう少し視野を拡大されてお考えになる必要があるのではないかと思うのですが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/16
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017・大坪藤市
○大坪政府委員 中京あるいは中山と、名前は一応御指摘のように漠といたしておりますが、しからば中京の競馬というのはどこかということになりますと、具体的に鳴海のどこどこということがはつきりいたしまして、そのはつきりしている場所を一応中京という名前で現わしている。名前が先じやなしに場所の方が先に特定いたしておりまして、その特定している場所について中京という名前を冠していると存じているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/17
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018・寺島隆太郎
○寺島委員 私は実は質疑の用意をしたわけではなく、第一通告者である河野一郎さんがお見えにならないので、いわばエキストラとしての役割を果したのであります。幸いに私の先輩である川俣先生が質疑を継続してくださるそうですから、次会にチャンスがあればやることにして、ただ一つ伺つておきたいのは、実は安藤先生の御質問の要旨でございますが、現に死文に化しているんだ。しかし横浜は生きるかもしれぬ。生きたときには横浜に生かすがよろしかろう。現在中山と府中の両者を使つておつて、使い過ぎるために馬場が非常に荒れている。私は競馬なんてやつたことがないんだからしろうとですよ。しろうとの寺島さんが方々から聞くに至つては、やはり三箇所ぐらいあつた方がよろしいのじやなかろうか。しこうして根岸がどうしてもできないとすれば、仮定の問題ですが、暫定的に川崎の満点の設備を生かす。その期限は立法上根岸が生きるまでの期間としてやつた方が、本法施行上、売上金がふえる意味において当然なさるべきであろう。こういうのが安藤先生のきわめて卓抜してお話のように承つたのですが、この点は大坪さんひとつさようでございますと言えませんか。ここでピリオドを打つていただいて、先輩であり、専門家である川俣先生にお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/18
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019・大坪藤市
○大坪政府委員 第二条に競馬場の施行場所は十二箇所と特定をいたしているのであります。従いまして横浜の競馬場が進駐軍から返つて参りまして、しかもそれが競馬を施行し得るような状態になつて参ります場合においては、政府といたしましては法律に明定をしてありますから、当然その場所において競馬を施行すべき義務があることになると私は思いますが、その他の場所におきましては、法律に規定をしてないのでありますから、その他の場所において施行することは法律に違反するというような疑いを起しはしなかろうかと存じておりまして、他の場所において行うことについては、法律上も、あるいは実際上の問題についても、困難ではなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/19
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020・寺島隆太郎
○寺島委員 どうもさざえのつぼの中に固まつているような気がする。もつと法制局と打合せられて、読みかえの範囲というものが過去の立法例にあるのですから、そういうことについて、この次まで御研究願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/20
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021・井出一太郎
○井出委員長 川俣清音君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/21
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022・川俣清音
○川俣委員 国営競馬につきましては、いろいろこれに対する問題点が多かつたために、今度新しく日本中央競馬会法案という形で出て参つておりますが、一体国営競馬を廃して特殊法人による経営に移さなければならないという理由が、十分納得させるような説明になつていないように思うのです。一応政府の提案理由によりますと、国営競馬のような形式は世界でもほとんど類例のない形態であるから、これを改正しようとするのが第一点のようであります。二点は、行政の簡素化の線とにらみ合せて行かなければならないからというだけでありまして、今までの国営競馬に対するいろいろな批判を十分受入れて改正せられたとは思われないのであります。大蔵大臣は先般の他の委員会において、競輪であるとかあるいはオートレースであるとかいうようなものは、どうも国でそういう競技によるてら銭をとるようなことは好ましくないので、これを地方に委譲した。競馬はどうかと言つたら、競馬はそれほどてら銭をとるというような考え方じやない、こういうことを言つておりましたが、いずれにしても、てら銭をとるようなかつこうでやることが好ましくないというような理由よりも、その他にもつと明確な理由があつてかえられたかどうか。この改正せられなければならなかつた急所というか、その理由を明かにしていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/22
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023・大坪藤市
○大坪政府委員 今度の日本中央競馬会法によりまして、競馬を民営に移す根拠につきましては、提案理由によりまして、その理由を申し上げておりますが、ただいま御指摘の通り、第一点といたしましては、国が国みずからの事業として競馬を施行するということは適当ではないと申しますのは、一つはよく言われるのでございますが、国自身が競馬を実施いたしておりますから、従つて会計の問題あるいは予算の問題あるいは人事管理の問題というような点につきまして、非常にきゆうくつな制限があるのでございます。ところが競馬は御承知のように、ある程度弾力性のある運営が必要であるのでありまして、ただいま申し上げましたような、経理でありますとかあるいは予算でありますとかいう点につきまして、非常にきゆうくつなわくをはめられますと、そこに経営の円滑なる運営を期しがたいという点が生ずる、これが一つの問題であります。もう一つは、競馬は富くじ的な行為を伴いますので、こういうようなものにつきましては、国自身が行うよりも、国は監督者の立場に立つて監督し、施行主体は別に設けるということが、実際問題としても、あるいはそのやり方の問題としても、適切ではなかろうか、かように存ずるのであります。なお競馬のいわゆる民営移管の問題につきましては、世界各国にもその類例を見ませんし、またわが国の歴史から申しても、ずつと民営で発達して参りましたのを途中から切りかえたということに相なるのでございますが、国営でやつてみました結果、やはり国は監督者の立場に立つてやつた方がいいじやなかろうか、かような観点から今回競馬政策審議会の意見も参酌いたしまして、民営に切りかえるということにいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/23
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024・川俣清音
○川俣委員 まだその趣旨が徹底を欠くのじやないかと思うのです。国営競馬が弊害があるとしますならば、府県営競馬にいたしましてもあるいは市町村営競馬にいたしましても同様な弊害が当然起つて来ると見なければならない。ただ弊害の程度が、たとえば府県営の場合が国の場合より少いかということは考えられますけれども、やはり同様な弊害が伴うのではなかろうか。そこで国営競馬をやめるといたしまして、特殊法人にその経営をゆだねるということになりますならば、やはり府県営競馬も同様な考えで法律を立て直して行かなければならないじやないかと思いますが、その点について、国営競馬はやめるが府県営競馬はそのままに残すというような考え方でおられますかどうか、その点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/24
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025・大坪藤市
○大坪政府委員 府県営競馬の今後の行き方と申しますか、大体の方向といたしましては、中央競馬同様に、いろいろな点を参酌いたしまして、国の競馬に準ずるような形で持つて行つた方が、地方競馬につきましても妥当ではないか、かように一応は存ずるのでありますが、地方競馬につきましては、現在施行主体が非常に複雑でありますし、また事業の内容につきましてもいろいろ複雑多岐にわたつておりますので、これをただちにどういうふうな形に持つて行くか、つまり国営競馬の民営移管と同じような方向に持つて行けるかどうかということにつきまして、地方の事情がいろいろ複雑でありますので、ただちにそういうような結論に到達し得なかつたのであります。地方競馬の問題につきましては、国営競馬の民営切りかえの趣旨ともにらみ合せまして、今後各方面の意見を参酌いたしまして決定をいたして参りたいと思うのであります。地方競馬につきましては、その精神といたしましては、いわゆる地方自身がやつて行くという形ではなしに、やはり地方庁はあくまでも監督の立場に立つて、施行主体は別にあるというような形の方が望ましい形ではなかろうか、かように思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/25
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026・川俣清音
○川俣委員 次にお尋ねいたしたいのは、現段階においては競馬競技そのものが行き詰まつておるから、これを特殊法人に移すのだという考え方が一つあるのじやないかと思うのです。もう一つの点は、一体国が相当犠牲を払つてもなお競馬競技を進めて馬匹の改良をはかつた時代は、軍馬の奨励を考えて、一般的な馬匹の向上を主点に置いて、そのためには少々の犠牲もあえて辞せないというところに競馬の本質があつたと思われるのであります。それが最近、こういう特殊馬匹の向上を期待する産業上の業態がかわつて参りましたために、従つて競馬競技そのものも行き詰まつて来たのではないか。もつと露骨に申し上げますと、今日においては、非常に貴重な外貨を支払つて単に優良な競走馬を輸入するだけに終つて参りまして、それが日本の産業界に何らの益するところがないばかりでなく、むしろ特殊馬匹の向上のみに多大の経費を払われておるというようなことで、競技のための馬匹の改良というようなことになつて参りましたために、畜産奨励あるいは畜産振興という建前をすつかり没却せざるを得ない状態になつて、国営競馬をやめなければならなくなつて来た理由がそこにもあるのじやないかと思われますが、この点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/26
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027・大坪藤市
○大坪政府委員 今回のいわゆる民営競馬の形態につきましては、現在の国営競馬が行き詰まつておるから民営の方に切りかえるというような考え方ではないのでありまして、先ほど申し上げましたように、本来競馬の健全な発達をはかりますためには、競馬の施行主体は別にあつて、国はそれに適当なる指導監督を行う、こういうシステムの方が、競馬の健全な発達のためにはよりよろしいシステムであるという信念に立つておるのであります。従いまして、国営競馬が行き詰まつたから民営に移管するというふうな考え方ではなしに、競馬をいわゆる畜産振興の一つの基盤としてやつて行きますために、その健全な発達をはかるために民営に移管した方がよろしいという観点に立つておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/27
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028・川俣清音
○川俣委員 お聞きしておりますと、名前は畜産振興といわれますけれども、国営にまさる形として特殊法人による経営を考えたということは、それが競馬競技という事業体からして適当な形態である、こういうふうにお考えになつた理由はよくわかるのです。しかしながらもう一点であります、一体馬の改良増殖、産畜振興と競馬競技というものは、過去においては一致いたしたのでありますけれども、将来なお一致するというような考えでは、これは行き詰まるのではないか。現に国営競馬自体においても、畜産奨励の意味を十分果し得ない点が国営競馬の非難の存する点であつたど思う。従つて畜産奨励であるとか畜産振興または馬の改良増殖というようなことと、競馬競技自体の経営とは一応切り離す段階に来ているのではないか。その点を切り離しできないということになると、国営競馬から特殊法人に移したという意味が徹底しないと思うんです。どうも競馬という競技自体から見て国営でやるべきではない。また競技自体が今日国民の一部の非常な興味の的になつておる。それを発展させることのよしあしは別にいたしまして、そういうところに興味を持つておる事態においては、国でやるべきではなくして、むしろ経営自体からいつても、その競技自体は特殊法人がやるべきだ。これはわかると思うのです。従つてそれと畜産奨励と一緒に考えるというところに、また行き詰まる問題点を含んでおるのではないかと思いますが、この点についての御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/28
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029・大坪藤市
○大坪政府委員 これは競馬の目的とも関連して来ると思うのでありますが、競馬はいわゆる馬の改良増殖ということを一つの大きな眼目といたしておるのでありまして、これを具体的に申し上げますれば、競馬を実施いたします場合には、その競走馬が決定的な要素をなすのでありますが、競走馬の飼育というものは畜産の中で最も高度の技術を要するのでありまして、そういうような技術の普及が畜産に非常な貢献をするということは、すでに私が申し上げるまでもないと思うのであります。と同時に馬につきましては、いわゆる競走馬の競走を実行いたしまして、最も優秀なる馬を摘出いたしまして、それを元として馬の改良をはかるということは、馬の改良増殖ということからきわめて重要な問題でありまして、いやしくも競馬を実施いたします限りにおきましては、その競馬の目的が馬産の振興、畜産の振興であるというような基本的な考え方は、私どもとしてはどうしても貫いて行かなければならぬ問題ではなかろうかと存ずるのであります。なおそのほかに競馬につきましては、見る人によりましてはいろいろ御意見もあるのでありますが、私どもとしては、その精神におきましてはかわりはないと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/29
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030・川俣清音
○川俣委員 大分どうも苦しい弁解だと思うのです。今日本で馬の増殖をさらに進めて行かなければならないという産業上の要請はあまりないのです。かつて軍馬であつた場合には、馬の普及と全体の馬の質の向上という点からいたしまして、競走馬にならないで脱落する馬を軍馬に仕立てて行くという使命を持つておつたが、今のように、役馬の需要がまだ残つているといいながら、もう役牛にかわりつつあるときにおいて、競走馬にも脱落したような馬をもつて役馬にすることが不適当であることは、これは私が申し上げるまでもないのです。従つてそういう馬の増殖をはからなければならないというような日本の産業構造でないし、産業情勢でないと私は見るのです。従つてここに増殖をはかるんだというようなことは、てら銭をとつて来て、今まで使い道に苦しんだために書いたというような結果に陥るのではないか。むしろ畜産奨励という観点から見まして、こういうところから入つて来るものと畜産奨励というものとは別個に考えて行くべきではないか。たとえば最近起つて来ておる馬の伝染病等から見まして、これはこういう面から捻出することよりも、むしろこれは税として、またその他の方法として国に吸収し、国の支出としては、別個に畜産対策として考えるという情勢になつて来たと思います。そこで国営競馬を民営の特殊法人に移すのだということになると思うが、それを密接に関係させておくことになれば、あえて民営に移すことの意味が徹底しないことになるのではないか。これから上つて来たものをすぐ優良馬の増殖または畜産振興にあまりにも結びつけて行かなければならないというと、国営競馬でよいのではないかと思う。なしろこの際はこれを切り離して行かなければならぬ。産業構造、経済情勢においてこれを切り離すべきではないかと思いますが、この点についての御見解をもう一度伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/30
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031・大坪藤市
○大坪政府委員 馬が重要であるという点につきましては、程度の差はあると思いますが、今後といえども、農業の一環として、適地主義によりましてどうしても使わなければならぬ地帯も存するのであります。そういう意味合いにおきまして、私どもといたしましては、馬の資源の増殖という点につきましては、大いにこれを振興して参りたいと思つておるのであります。なお競馬と畜産を切り離すべきではないかというような話でありますが、その点についても、もちろん畜産振興、馬産振興は各般の施設を要するのでありまして、この競馬を通じての畜産振興というものは、あるいは全体から見れば非常にわずかな部分ではなかろうかと思いますけれども、日本中央競馬会が競馬を実施する限りは、これは畜産に貢献することを一つの大きな目的として持つておるということは、どうしても必要ではなかろうかと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/31
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032・川俣清音
○川俣委員 そこにねらいを置き過ぎると、もう一度行き詰まるのではないかという懸念を持つ。競輪を国から切り離して行つたのはどこにあつたかというと、国として最初は国内産業としての自転車製造の改良発達に非常に役立つということで考えられたのでありますが、今日における競輪は、競輪競技としては大いに発展したが、いわゆる自転車工業の上に何らの力も今は与えていない。むしろ最近の通産省のあり方を見ますと、他の機械工業に多額の金を向けて行くような情勢であります。従つて自転車そのものの改良発達と申しますか、その進展に寄与するという最初の目的から遠ざかつて来ておる。オートバイにつきましても同様であります。あるいはその他のレースにつきましても同様であります。むしろ競技本位になつて来たと思う。競馬も競技本位だと割切つて考えて行かなければならない時代ではないか。それをまだ割切らないで中途半端にしておくことは、再び行き詰まることになりはせぬか、この点をもう一つ明らかにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/32
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033・大坪藤市
○大坪政府委員 私、自転車競走あるいは自転車工業というような点につきましてはまつたくしろうとでありますので、これにつきましては何とも御返答ができないのでありますが、競馬に関しましては、いわゆる競馬の目的はいろいろほかにもありましようが、馬産の振興というようなことが競馬会の一つの大きな目的である、こういうような点については、その信念にはかわりない、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/33
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034・川俣清音
○川俣委員 特殊馬匹の向上であつて、日本で今産業上必要とするような馬の増殖または改良には、この競技は役立たない段階に来ているのじやないか。従つてもつと露骨に申し上げますと、競走馬になるような馬を輸入することが畜産奨励だというような考え方は、もはや是正しなければならぬ段階に来ている。国が国費をもつて買い入れるというような時代は過ぎ去つて来た。今後もしも輸入されるならば、この特殊法人がみずからの出資において買い入れなければならない段階に来ておるのじやないか。一つの例をもつて申しますならば、従つてそういう段階に来ておるから国営競馬から特殊法人の民営に移すのだ、これなら話の筋がよく通るのです。畜産局の中においてこれを監督するならまだいいのです。これを牛耳るというような考え方で行くことは——私は監督を決して否定するのじやない。これは特殊法人に特別な利便を与えているのですから、会計検査院といい、畜産局といい、大いにこれを監督をしなければならぬということを否定するのではない、むしろ強化しなければならぬと思いますが、その中にごつちやに入つて行く、関与することが畜産の奨励だというような考え方は、もうやめる時期じやないか。国営競馬を民営に切りかえて行つた理由がそこにあるのじやないか、こう聞いているのです。あなたの答弁は、どうもまだ切りかえるのは早いというような意味にも聞こえる、そうすると法案の提出とあなたの考えとは矛盾したことになるのじやないですか。この点もう少し明確にしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/34
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035・大坪藤市
○大坪政府委員 競馬の施行主体を国からこの日本中央競馬会に切りかえましたという理由につきましては、あるいは競馬が国営競馬として行き詰まつているか、あるいは競馬と畜産と関係がないからというような意味合いじやなしに、先ほど来申し上げましたように、行政簡素化あるいは競馬そのものを国自身で施行するということは必ずしも好ましくない、こういうような根本的な理由から発足いたしておるのでありまして、そつくりそのままの状態で現在の国営競馬をこの日本中央競馬会に引継ぎを行わしめる、こういうのが趣旨であると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/35
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036・中村時雄
○中村(時)委員 関連して。局長の話を聞いておると、さつぱり川俣委員の言つていることとちぐはぐの点が多い。川俣委員の言つていらつしやることは、すでに競馬としての、一つの競技体の問題として取上げるべきであつて、畜産振興という面からの目的とはほど遠い現状になつているのじやないかという質問をしているのです。私もその通りだと思う。そこでそれでもやはり畜産振興だ、何のことやらわからないけれども畜産振興だといつているだけだ。もう一つ上につつ込んで行くと、その裏に何かがあるのじやないかという感じか起つて来る。そうすると小笠原さんから二、三年前に一応民営論というのが出ているのです。民営論を出そうとしてこの中央競馬会の機構の問題で握りつぶしになつた。それは何かといつたら理事の問題です。理事を当時十数名にしようとしておつたのを二十数名に打込んで来て、そういうボスの跳梁にまかすことはいけないというので、この問題が破棄になつておる。それを再びここに持ち出して来たところに裏に何か問題があるのじやないかと思う。そこで私はひとつあなたに資料の提出をお願いしたい。この中央競馬競技会ですか、これの人的機構、それから組織並びに人員、並びに政府がこの民間に貸与するというところの評価、それをひとつ至急にまとめて提出していただきたい。それから今川俣先生の言つていらつしやることとおたくの言つていることの食い違いという点ははつきりしたわけなんだから、その点に関してあなたがどういう見解を持つていらつしやるか。ただ単に畜産振興であるならば、馬匹の改良と競馬と一体どういう関係になつて畜産振興ができ上つて来るのか、そういうはつきりした答弁をしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/36
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037・大坪藤市
○大坪政府委員 資料の点についてでございますが、たとえば人的機構というような問題につきましては、この法律が御審議の上通過いたしました場合には、この法律の規定に基きまして実行して参りますので、今ただちにどういう人的機構であるかという点につきましては、資料を提出するというふうには参らぬと思いますが、その他の資料につきましては検討いたしまして提出をいたしたいと存じます。
次に競馬と畜産という問題でありますが、競馬につきましてはあるいはスポーツであるとか、大衆的な娯楽であるとか、こういうような考え方を強く持つていられる方もあるのでありますが、私どもといたしましては、競馬のほんとうの目的は、やはり馬の改良、増殖、畜産の振興、こういうような点を一つの基盤としておる、かように信じておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/37
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038・中村時雄
○中村(時)委員 畜産の振興、改良ということは、その意味はよくわかる。但し今の産業機構とそれとが違つておるのじやないかという機構上のことを言つておるのです。それに対してあなたはどう考えておるか。やはり競馬というものを通じて、畜産の振興なり、そういう改良というものをはかる方にウエートを持つておるのか。あるいは今はそうじやなくして、一般の畜産という意味におけるところの馬の価値、農家に対するところの農耕馬としての考え方を中心にしていらつしやるのか。その問題を川俣委員は聞いているはずです。それに対する答弁が非常に明確を欠いておるので再質問をしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/38
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039・大坪藤市
○大坪政府委員 その点は昔の軍馬資源というような考え方でなしに、今の馬産は農耕馬を中心といたしておるのでございますから、もちろん畜産振興という意味の馬産振興は、農耕馬を中心としたものであるのであります。しかしながら農耕馬といたしましても、その原々種といたしましては、最も優秀なる馬、サラブレツトにいたしましてもあるいはアラブにいたしましても、そういうような原々種というものが必要であるという点につきましては、これはもちろん程度の差はありまするが、必要であるということについては間違いないのであります。その意味合いにおきまして畜産振興という一つの面を持つておる、かように存じておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/39
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040・川俣清音
○川俣委員 大分畜産局長苦しい答弁をしておるようです。今競走用馬として入れております馬系と、日本の農耕用に必要な馬系と異なることは、これは私が申し上げるまでもなく、畜産局伝統的に十分知つておる点なんです。そこまでつつ込んでお尋ねしないでも、すでにその点は理解されておるものとして私は話を進めておるわけです。従いまして今ここで関連して参りまする、いわゆる改良といわれるもの、増殖といわれるものは、今日の日本の農業状態からいたしまして、これは農耕用の馬である。しかも農耕用の馬も漸時減つて参りまして、役牛にかわりつつあるような状態である。それにかわるにいわゆる競走馬から脱落して来たものをもつて、さらに品種を改良して行くのだというような考え方は、かつての軍馬の時代と異なる情勢である。これはもう私が申し上げるまでもなく十分知つておられなければならない。その状態の中に、もう一度引継ぐんだからして、同じような法律で同じような内容で、馬の改良増殖、または畜産の振興、これは民間に移すならば、畜産の振興というようなものと切り離れて来なければならない。日本の畜産振興となれば、近く出されるでありましようところの酪農というものが、日本の畜産の中心になつて来なければならぬ。おそらく酪農と競馬とおよそかけ離れておる。所管が畜産局だということだけでありまして、およそ離れたことなのであります。それをいまだに混同しておられるけれども、競技形態から生れて来たところの金を畜産奨励に向けるといつた時代と今とはもう違つて来たんです。そこに国営競走の行き詰まりが来ている。畜産振興と国営競馬とが両立しないということが明らかになつて来たという段階から、特殊法人が生れざるを得なかつた理由もそこにあるのじやないかと思うんです。特殊法人は特殊法人として、事業を完全に執行して、それから上つて来るところ税なり、一つの負担金なりをもつて、別個な、競馬というものから離れた立場から、畜産振興を考えて行かなければならないという段階である。それをどうも競馬とにらみ合した、関連のある馬の改良だというようなことをまだ続けて行かれるとすれば、これは大きなあやまちが来るのではないかと思いますが、この点を答えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/40
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041・大坪藤市
○大坪政府委員 ただいま御指摘の通り、畜産振興というものは非常に大きな面、しかも各般の施策を必要とするのでありまして、それにつきまして競馬が占めるところの割合というものはきわめて少いということは、御指摘の通りと思うのであります。しかしながらいかに少いと申しましても、競馬そのものの目的が畜産振興にあるということにつきましては、これもまた間違いない問題じやないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/41
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042・寺島隆太郎
○寺島委員 関連して……。私はさつききわめてソフト・フオーカスに局長にお尋ねをして、了承したようなしないようなかつこうなんですが、川俣さんからお話が出て、大分表現がかわつて来ていると思う。過般松本楼において行われた審議会の速記録の全般を局長お読みになつたでしようね。あの結論から演繹されるものは、人間と哺乳動物の違いというものは、哺乳動物には神というものはない。いみじくも局長は川俣答弁において、競馬は富くじに類するものであるということを言つた。よつて競馬というものは富くじに類するようなものである。人間は神ではないんだ。私はさつき上品に言つたつもりですが、神と悪魔の中間にある人間なるのゆえをもつて、ばくち、いわゆるかけごとというものがどうしても抜くことができないとすれば、残余のばくち、今日問題になつておりますドツグ・レースとか、ハイアライというものに比べて、長き、久しき伝統を持つているのが競馬である。しかもこの競馬は勝馬投票券に対して、どれが勝つのだ、負けるのだということは、長き、久しきにわたる研究と努力をもつてすれば、大体わかるんだという比較的非科学的なものではないんだ。まつたく射倖的なものではなくて、科学的なデータによつてこれは抽出することができる問題である。こういうことが議論の問題になつて来る。そういうことであるならば、同じ残余のばくちの中で、最も上品である競馬を振興させるために、農林省の畜産局が監督の立場に立つて、この民営競馬を行う。ここに利益があるんだ。しかも上つた利益について、あなたの畜産局は馬政局以来牛と馬のけんかだと言われている。馬でもうけたと言つては悪いですが、大坪さんが持つておられる乏しき国庫予算の中から、さらに売得金の利益の中から、これを足しまえして、残余の畜産奨励にお向けになるんだ、さらに今日問題になつておる社会事業にもお向けになるんだということによつて、競馬の公共性というものが認められる。ほかのかけごとよりも競馬の方が健全であるのだ。こういうふうに了解すれば筋が通ると考えるし、また川俣委員もそういう線に沿つての御質問であろうと存ずるのであります。御参考までに……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/42
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043・大坪藤市
○大坪政府委員 寺島委員の参考御意見でありますが、競馬がいわゆる富くじ的な行為を伴うということにつきましては、ただいま御指摘の通りであります。しかも私どもといたしましては、競馬そのものが厳正公平に行われまする限りにおきましては、国民の中の一つの娯楽であるという面も見のがし得ないのではないか、かように存ずるのでありますが、競馬本来の目的は再々申し上げました通り、いわゆる競走を実施することによりまして、優秀な競走馬を抽出し、それを基礎にして馬産の振興をはかつて行くということが基本的な線である、かように存じておるのであります。なおその点につきまして、これは技術上の問題にわたりますので、お許しを得ますれば、井上部長より説明さしてもさしつかえないじやないか、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/43
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044・川俣清音
○川俣委員 どうも畜産局長まだ割切つておられないようです。どうしても畜産奨励との関係を含めて行くということになりまするならば、これはあえて国営を民営に移さなければならないという根拠が薄らいで来ると思う。どうもその点は非常に中途半端にしておられると思うんです。馬産奨励ということが考えられた時代の、犠牲を払つてもなお他の目的いわゆる戦争という目的のために、これらの国費が競馬益金よりもさらに増加してもよろしいという時代と今日では異つておる。従いまして競馬の益金だけで、あるいはその範囲内において畜産振興を考えて行くという時代から離れて来た。そこに国営競馬を民営に切りかえなければならない根拠が出て来たのではないか。将来あなた方は畜産振興法を出されるであろう、酪農振興法を出されるであろうと思う。かつての考え方でありまするならば、これらの益金のうちで畜産振興を考え、酪農振興を考えるという時代もあつたと思うんです。あるいはその他伝染病の予防の経費等をこれから捻出するというような考え方もかつてはあり得たと思う。しかし今日の段階は、これらのいわゆる富くじ的な競技から生れて来るものと、ともども、犠牲にならなければならないというような酪農振興では、もはや行き詰まるのではないか、こう言つておる。競技の興廃といわゆる畜産振興とがともどもに歩まなければならないという段階は、もはや打切らなければならぬ段階ではないか。それをわざわざまだ関連さしておくという考え方でありまするならば、畜産局というものの考え方を競馬局というふうに考え直さなければならぬ。どうしてもこの競馬から切り離すことができないという考え方でありまするならば、やはり国営競馬として、畜産局でなく、馬産局とかあるいは競馬局というものを畜産局と別にこしらえなければならない結果になるのではないか。こういうことが考えられますがゆえにお尋ねしておる。これ以上はまた時間がかかりますから、この点はこれだけにいたしますが、これに対する御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/44
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045・大坪藤市
○大坪政府委員 競馬を民営に切りかえますにつきましては、御指摘のような、あるいは競馬が国営として行き詰まつておるとか、あるいは競馬と畜産というものは全然切り離すべきである、そういうような理論的な根拠というような問題じやなしに、つまり先ほど来申し上げましたように、国として競馬を実施いたしますよりも、適当なる団体をして行わしめることが、沿革的にもあるいは実際問題としてもよろしいという点が一点、行政簡素化の線に沿うという点が一点、こういうような各般の点をにらみ合せましてやるのがその目的であるのでありまして、何もただいま御指摘のような点から、競馬を民営に切りかえるというような理由ではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/45
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046・川俣清音
○川俣委員 そういう説明を聞くといよいよ国営競馬を民営に移さなければならない根拠が薄らいで来るのではないかと思うが、それはあとでいたします。
次に別な点を質問いたします。今度特殊法人に委譲されます国有財産の各競馬場ごとの現在高調べが出ておりますが、これは帳簿価格によつております。これらの土地価格等を見まして、あるいは立木竹、建物、工作物から見まして、帳簿価格ではもちろん現状に即した価格とは言えないことは明らかでありますが、すべての会社でも再評価をしなければならない経済情勢の中において、やはり帳簿価格によるという考え方を今もなお持ち続けられますか、一般の経済情勢とにらみ合わした再評価ということが考慮の中にあるかどうか、再評価するということになりますれば、価格はどの程度のものであるかということは、これはあとで資料でよろしゆうございますが、お示し願いたいと思う。前段の分は御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/46
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047・大坪藤市
○大坪政府委員 現在競馬場は、国といたしまして九箇所持つております。他の二競馬場におきましては、民営の競馬場を借上げの形式で競馬を実行しておるのでありますが、これらの財産はすべて競馬特別会計に帰属をいたしておるのであります。今回切りかえます場合におきましては、この競馬特別会計に属しております財産を、日本中央競馬会に出資をいたすのでありますが、それらの帳簿価格につきましては、お手元に差上げてある資料の通りであります。この実際の価格はどうかという点につきましては、これは非常に問題であるのでありますが、相当帳簿価格を上まわるのじやなかろうか、かように存じておりますが、それが現在どのくらいになるかという点につきましては、今後厳密に調査をする必要がある、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/47
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048・川俣清音
○川俣委員 そういたしますと、帳簿価格による出資でなくて、時価による出資になるというふうに理解してよろしいのですか。それとも帳簿価格を再評価した価格、こういうことになるのでありますか。時価になるのでありますか。出資額が帳簿価格から見て、どのような形態をとるというお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/48
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049・大坪藤市
○大坪政府委員 御提出申し上げております法案の第四条の第二項に、「前項の財産の評価については、政令で定める。」こういうふうなことになつておりまして、この政令につきまして、目下関係方面と折衝しておるのでありますが、これにつきましては、いわゆる時価と申しますか、適当な時価に相当するような額を評価いたしまして、それが出資財産の価格ということになると存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/49
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050・川俣清音
○川俣委員 局長は、私の質問を十分理解されない御答弁であります。私のお尋ねしているのは、時価か帳簿価格か、またはいわゆる再評価基準による再評価をするのか、これをお尋ねしている。時価と評価基準による再評価とは異なることは、私が説明するまでもない。従つてこの三つの中でどの方向をとるのか、こうお尋ねしているのです。今時価だとおつしやるのですけれども、それでもいいのです。悪いと言うのじやないが、ただそこを明確にしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/50
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051・大坪藤市
○大坪政府委員 その点につきてましては、管財局とも目下折衝をいたしているのでありますが、適当な価格を評価いたしまして、それを出資の価格にする、かようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/51
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052・川俣清音
○川俣委員 ますますおかしい。再評価した額か、時価か、どつちで管財局と交渉されているか、その建前を聞いているのです。これは局長でなくても課長でもけつこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/52
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053・鵜川益男
○鵜川説明員 四条第二項によりまして、政令の内容といたしまして、評価員なら評価員というものを選びまして、それは勧銀の方とかいろいろ適当な方、それに官の人も加わりまして、そういう評価員が、こういう基準で評価するというようなことで、適正に基準を設けまして評価して参る、こういうことでございます。それが時価として通用するのじやないか、こういう意味で局長も答弁されたと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/53
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054・川俣清音
○川俣委員 私は時価かまたはある基準を設けた再評価額か、こう申し上げたのです。それは時価というものでも人によつて見方が違う。これはあり得ることです。そこで時価というものの認定は、これは畜産局ばかりでなく、いろいろな関係者によつて判定されることは法文上明らかですが、しかし根本を時価に置くのか、一般にいわれる再評価基準に置くのか、どつちの方向かということをお尋ねしているのです。この点をあいまいにしないで、どつちに基準を置くのか、その基準がなければ、評価員だつて評価できませんよ。時価というものの考え方を中心に評価するのか、あるいは一般並の、いわゆる再評価基準がありますから、それによつて基準を割出すのか、それがはつきりしなければ評価員でも評価できないじやありませんか。そこを私はお尋ねしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/54
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055・鵜川益男
○鵜川説明員 競馬財産と申しますか、競馬施設といたしましての効用の点は、非常にむずかしいものでありまして、いかように時価を見るということにつきましては、その効用の点等もございますし、それから不動産等の関係もございますので、学識経験者の意見は十分参酌して、なるべく基準により得るものは基準により、特殊目的に使用する効用の点も十分勘案してもらつて評価して参る、かようなことを政令でもつてきめました方針でやりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/55
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056・川俣清音
○川俣委員 畜産局は、まだ十分検討されないからそういう結果が生れて来るのじやないかと思う。私はこの評価の基準を時価に置くのか、あるいは一般の再評価額に置くのか、どつちを基準としてあなた方は判定を求めるのかと聞いているのです。判定の結果がいい悪いの問題じやない、そのどつちを基準にして一体あなた方は考えておられるのかということを聞いておる。時価だつていろいろあるから、その時価を決定するための評価員を設けなければならぬ。そのことを聞いているのではない。時価を基準に評価員を選ぶのか、あるいは資産再評価で帳簿価格を基準にしてやるのか。一体どこを基準にしてやるのか。基準がなければならぬはずじやないか。今評価額を聞きたいと言つているのではない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/56
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057・大坪藤市
○大坪政府委員 時価で行くのか、再評価基準によつて算出した価格を基準にして行くのかという問題でありますが、この問題については、管財局の方とまだはつきりした打合せが済んでおりませんので、はつきりした打合せをいたしまして、次の委員会に御答弁を申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/57
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058・川俣清音
○川俣委員 協議中であるということは、説明でお聞きしたのです。あなたの方の態度は、どちらで臨んでおられるかということをお尋ねしておるのです。評価の考えがなければないでいいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/58
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059・大坪藤市
○大坪政府委員 その点につきましては、できるだけ時価に近い価格をもつて出資価格になるように考えて参りたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/59
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060・松山義雄
○松山委員 関連して……。一言お伺いしたいのですが、二十三年に民営が廃止されて、国営あるいは都道府県の競馬になつたようでありますが、またただちに民営にする、これでは朝令暮改のそしりを免れないというようなことが考えられるのでございますが、これによりますと、国営を民営にするということであります。そうすると、方針として今後都道府県の競馬についてはどういうお考えを持つておられるか。それを伺いたいと思います。すなわち一応国営を民営にしておいて、その次にはまた都道府県の競馬も民営にするという方針であられるのかどうかという点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/60
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061・大坪藤市
○大坪政府委員 今回は現行の競馬中、国営の競馬のみを取上げまして、これを日本中央競馬会に引続き施行せしめるということにいたしたのでありますが、いわゆる地方競馬の問題については、いろいろな問題がたくさん伏在いたしておりますので、今後各方面の意見をお伺いいたしまして、どういうふうにやつて行くかということについて検討して参りたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/61
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062・松山義雄
○松山委員 検討して、また民営にして行きたいというお考えはお持ちなのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/62
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063・大坪藤市
○大坪政府委員 現行の競馬主体であります都道府県あるいは市町村が、直接みずから競馬を行うというようなことは、国がみずから行うと同じように、あるいは適切じやないのじやなかろうかと存じます。従つてこれをある形に持つて行きたいという希望は持つております。しからばどういう形に持つて行つた方がよいか。ただちに国がやつたような形に持つて行くことは、地方のいろいろな事情が異なつておりますから、現在のところ国のようにはつきり割り切つたような形に持つて行きかねます。従つてどういう形に持つて行くかという点については、今後慎重に検討して参りたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/63
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064・松山義雄
○松山委員 全部一本にするのはいろいろ煩瑣でもあるし、抵抗も強いというようなところから、一応国営だけを取上げられたというような意味じやないのですか。この点はつきりお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/64
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065・大坪藤市
○大坪政府委員 煩瑣であるとか抵抗が強いというようなことではありませんので、結局地方競馬については、どういう形に持つて行つた方が適切であろうかということについて、はつきりした最終の結論に到達し得なかつたという次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/65
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066・松山義雄
○松山委員 そうすると、都道府県その他にやらしている地方競馬というものは、現在は適切であるかどうか相当問題があるから、なお根本方針にさかのぼつて検討をしてきめるというわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/66
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067・大坪藤市
○大坪政府委員 お説の通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/67
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068・松山義雄
○松山委員 それではやはり、場合によつては民営に移行されることもなきにしもあらずというように伺つておいてもいいわけでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/68
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069・大坪藤市
○大坪政府委員 十分に各方面の御意見を参考にいたしまして、そういうことが適切であるということになりますれば、御意見の通りに相なるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/69
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070・川俣清音
○川俣委員 午前中の時間が大分切迫しておりますので、もう一点だけお伺いして、あとは保留しておきたいと思います。
ちよつとさかのぼりますが、先ほど言つたように、目的に「馬の改良増殖その他畜産の振興に寄与するため、」ということになつております。こういう趣旨と、日本中央競馬会の事業とは、必ずしも一致していない。むしろ表題のような目的だとするならば、草競馬に主力を置かなければならぬことになるのじやないか。こうなると思うのです。そこで私は先ほどから、これは畜産奨励ということと切り離して考えるべきではないかと言つておるのです。しかしあなたがあくまでもそうだとすれば、草競馬に対して日本中央競馬会がもつと力を入れることが業務になければならないはずだ。日本中央競馬会は、競走馬を育成する、騎手を養成する、または訓練する、いわゆる馬産の中心地に草競馬を大いに奨励するのだということが一つも出て来ない。これは羊頭を掲げて狗肉を売るという結果になりはしませんか。この点お尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/70
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071・大坪藤市
○大坪政府委員 御意見の草競馬といいますのは、いわゆる地方競馬のことではないかと拝察いたしますが、地方競馬はもちろん畜産の振興あるいは馬産の振興をその中心的な課題として実行いたしております。従つて地方競馬の振興をはかりますことは、当然必要であると思いますが、地方競馬をどうするかという問題については、今日まで結論を得なかつたことは再々申し上げた通りであります。中央競馬については、幸いに結論を得ましたので、本法案を提案いたしたのであります。もちろん競馬会の直接の事業の内容は、あるいは競馬を実施するとか、あるいは騎手を養成するとか、そういうような項目に限定をされておりますが、その競馬を施行することによつて畜産の振興がそれに関連して起きて来るという立場をとつております。もちろんその事業の内容おのおのが直接畜産振興に役立つておりませんが、その全体をやることによりまして、いわゆる馬産の振興が全体として生れて来るというような考え方をとつておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/71
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072・川俣清音
○川俣委員 私は先ほどから、競馬を行う団体として国営である方がいいか、こういう特殊の法人の方がいいかということについて検討せられた。このことはよく理解できるのです。ところが先ほど来言つた通り、その目的を馬の改良、増殖、その他畜産の振興というところに置いて行くならば、いわゆる草競馬と言われる農民が持つている役馬をもつて競走させるような形態が本体でなければならない。この法文から行けばそれが本体でなければならないというふうに解釈せざるを得ない。つまりあなたの説明のように馬の増殖をはかる、改良をはかるということになれば、農民の役馬競走というものに主点が置かれなければならぬはずである。それを、その方はまだ研究はしてない、こちらは研究をしたということになれば、それはやはり競技体としてのものの対象たということになるのです。だからそれはそれとして、競技体としてこれは適当だという説明なら、私は了承すると言つておるのです。ところがあくまでも畜産の奨励だということになれば、——これは決して言葉じりを捕えるものではないが、目的はそこにあるのだということになれば、いわゆるいなかの方で、町村がやるばかりでなく、百姓が寄り集まつてやるような、もつと原始的な競馬、しかも自分らの持つている役馬を中心とした競馬に主力を置かなければならない、こうなるのじやないかと私は思う。これを忠実に考えれば、あなたの説明をもつてすればそこに中心がある、こうならなければならぬじやないか。そつちはまだ研究をしていない。ということになるとこの法案はまだ早いということになりはしませんか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/72
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073・大坪藤市
○大坪政府委員 地方競馬が必要であるということにつきましては、これはお説の通りでありまするが、この中央競馬をやりまする日本中央競馬会の特殊法人としての目的は、あくまで本法の第一条に書いてありますように、競馬を施行することによりまして馬の改良増殖その他畜産の振興というような目的を持つておる、かように存じておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/73
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074・川俣清音
○川俣委員 私の質問は午前中はこれで終りまして、さらに当局の御勉強を願つて、次に質問を続行いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/74
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075・井出一太郎
○井出委員長 午前中の質疑はこの程度をもつて打切り、暫時休憩いたします。
午後零時二十三分休憩
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午後一時五十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/75
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076・井出一太郎
○井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
保安林整備臨時措置法案を議題といたし審査を進めます。前会に引続き質疑を行います。福田喜東君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/76
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077・福田喜東
○福田(喜)委員 それでは保安林整備臨時措置に関し、前会に引続いて当局にお尋ねいたしたいと思います。
私は決していじめるような意味でなくして、将来これは非常に重要な法案でございまして、運用についていろいろの疑義が出る。委員における質疑応答というものはこの解釈の基本になるものでございますし、わが国森林のあり方につきまして国家の方針を定めるわけでございますので、ここにおいて相ともに研究する態度で質問を進めたいと思いますから、御了承願いたいと思います。
第一に、わが国の森林は年々一千億に達する損害というものがあるわけでありますが、これを軽減しようという目的をもつて本法案が提出されるものであることは間違いないところであつて、端的に言うならば、過般の治山治水に関する根本対策に盛られた思想の一つの現われであると私どもは存じておるわけであります。これによりまして出た本法案というものは、保安林整備計画は十箇年五十万町歩の買取りを予想いたしまして、二十九年度におきまして買取費は十五億円、治水事業費が十五億円、調査費二億円と予定しておるわけでありますが、先ほど、昨日でございますか、長官の御説明によりますと、大体今予定が五万六千町歩ということでございました。こういうふうな国有林野事業にとつては非常に重要な使命を課せられておるわけであります。こういう事実に基きましてまず第一にお尋ねいたしたいのは、これによつて国有林野特別会計が買い取る保安林は、大部分が不採算林、不経済林地を主とすると思うのでありますが、この点林野庁は、一体根本方針としてどうお考えであるか。これはまた一面から申しますならば、国有林野事業の独立採算制度を建前とするところの経済事業的な性格からいつたならば、今後の国有林野事業に対して、いわば一種の革命的な性格を与えるものであると思いますが、この点の調節はどういうふうにお考えになりますか。この点についてまず第一に御意向を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/77
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078・柴田栄
○柴田政府委員 お答えいたします。その前にちよつとただいまのお尋ねに対しまして、もし誤解があるといけませんから訂正させていただきたいと思いますのは、来年度買上げを、一応予算におきましては五万町歩予定いたしておりますのを、昨日私の申し上げましたのは、一応五万町歩という予定に対しまして、現在までにほぼ見当のついておるのが五万六千町歩ということでございまして、これらも価額その他の関係から、はたしてこれだけ買えるかどうかという問題も今後の問題でございますし、あるいはさらにもつと進展できるかもしれませんが、なおその対象は、今後の調査によりまして増加して参ることはあり得るというふうに御了承願いたいと思います。そこでただいまお尋ねの二点についてお答え申し上げたいのでありますが、今度の買上げ対象は主として不採算の林分ではないかというお尋ねでございますが、採算的にはあまり有利でない地域の保安林ということになるのは、おそらく原則だと存じまするので、対象は不採算林分の買上げという考え方ではないのでございまするが、おそらく経済林として採算の困難な対象が多くなるであろうということは申し上げ得ると存じます。
そこで第二の問題でございまするが、現在国有林野事業の対象になつておりまする国有林は、現在の状態でおそらく五〇%近いものはなかなか採算の困難な林を持つておりまするが、五〇%以上は相当採算点以上の経済林を取扱つておる。これによりまして国有林が国土保全と資源の維持、培養、増殖という目的を企業的に経営いたしておるという形になつておりまするが、今後買い入れまする保安林は、主として採算点以下の対象林分であるということになりますると、かようなものを抱え込んで、従来の考え方では国有林の経営は困難になるのじやないか、これはまことに仰せの通り、さような問題は当然起つて参る、かように考えられるのでありますが、ただしかしながら、今後保安林を保安林臨時整備措置法によりまして買い上げまする場合には、計画的にこれを実施する建前上、予算は一応別途に考えるという考え方でございますので、二十九年度こそ国有林の特別会計の利益をそちらへ振り向けてやるということになつておりまするが、今後におきましては、買入れ並びにその買い入れました林地に対しまする保全に要する事業費というものは、不足の場合には、一般会計から繰入れるという手段をとつて、計画的に行うということになつておりまするが、これをひつくるめて経営する際に、おそらく国有林の性格というものが、相当変革いたして参るということは想像されるのでございます。はたして五十万町歩を実施いたしました結果、現在の七百五十万町歩余の国有林と合計いたしまして、その程度の経営が可能か不可能かという問題は、さらに進展によつて検討しなければならぬという問題はあると存じます。ただ性格論という問題になりますると、さらに国有林という性格から、はつきり割切る方がいいという議論も出て参るのではないかと存じまするが、これらは進展とあわせまして、国有林の性格を私どもも真剣に検討いたしたいと存じまするが、国会等においても御審議をいただく時期が参るのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/78
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079・福田喜東
○福田(喜)委員 大体これによりまして、国有林野事業に相当性格の変貌があるということははつきりいたしたのでございまするが、本法は以上の意味からいたしまして、国有林野事業にその性格上の変更を予定するものと見てよろしいでございましようか。その点もはつきりさせていただきたいと思います。その点について相当の変貌があると見てよろしゆうございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/79
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080・柴田栄
○柴田政府委員 お答えいたします。現在におきましても、御承知の通り国有林は国土保全という公用公益経済の面と、独立採算による経営という経済性の面とを総合いたしました性格において経営いたしておりまするので、当面はこの買上げだけをもつて、ただちに性格をかえなければならないというふうには考えておらないのでございまするが、国有林の現在の実体というものと性格の問題とは、今後あるいは切り離して考える必要が出て参りはしないかということだけを考えておるというように御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/80
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081・福田喜東
○福田(喜)委員 そういたしますると、本法案というものは国有林野整備法の改正並びに国有林野法の改正と、一連の関係があるということが明確になつたわけであります。現に近く政府より提出予定の法案の中にも、これに関連いたしまして、二つの法案つまり国有林野整備法の改正並びに国有林野法の改正が、予定表の中に載つておるわけでございまして、これら三つの法案を一括して審議を進め、国有林野事業全体の今後いかにあるべきかというあり方について、検討を進むべきものであると思いまするが、長官いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/81
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082・柴田栄
○柴田政府委員 お尋ねでございますが、将来の性格を確定いたしました際におきましては、さらに国有林野の整備という問題がその角度から強く出て来るという場合もあり得る、かように考えますが、今国会において御審議をお願い申し上げたいと存じまする現在の国有林野整備臨時措置法と、今回の保安林整備措置とは、実は直接に関連はないというふうに私どもは考えておるのでございます。国有林野法の一部改正という問題と、国有林野整備臨時措置という問題とは、直接関係があるとも申し上げにくいのでありまするが、結果におきましては、地元施設あるいは林業行政という結びつき等から考えまして、全然関係がないということもないと存じまするので、この問題は、現在の国有林を地元で直接御経営を願うか、あるいは現在の国有林を国有林として、しかしながら利用権益を拡張していただく、さらにこれが使用に関しまして有機的な関連性をもつて、有利に便宜に御利用願うという方向に持つて行くというような点がございますので、この二つはやや密接な関連があると存じまするが、保安林整備臨時措置とこれらの関係とは、現在においては直接の関連はあまり見出し得ない、かように考えております。将来起つて来る問題の処理に際しては、ただいま施行されておりまする国有林野整備臨時措置法ではとうてい解決できない問題で、これはあるいは性格、方針等が確立いたしますれば、また別途の措置を考えなければならないであろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/82
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083・福田喜東
○福田(喜)委員 ただいまの長官のお言葉にありましたが、あとの二つの法案にもやはり相当の関係があるのはいなめない事実でありまして、たとえば国有林野法改正の内容いかんというものは、これは私は非常に重要なる問題であろうと思います。この保安林の買入れに関する臨時立法の進展につれまして、現在われわれが農山村におきまして、最も痛切に感ずるところのものは何であるかと申しますと、山村経済の窮乏ということでございます。山村経済の窮乏につれまして、農山村の方方の国有林野に対する依存関係というものはますます深まりつつある。この際におきまして、国有林野に対する利用関係を根本的に検討する必要が、われわれ当面の急務として迫られつつあるのではあるまいか。改正法案はこの間の事情を十分に参酌することが必要であるし、これが現在の山村経済の窮乏に対処するゆえんであろうと私は思いますが、この三つの法案が保安林の買入れとからんで非常に大きな影響を持つておるのはこの点でありまして、この点に関する長官の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/83
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084・柴田栄
○柴田政府委員 御説のような観点からいたしまして、なるほど現状におきましては、農村あるいは山村の経済的な窮乏というものと林野行政、林野の経済的な利用という問題とは、きわめて密接な関連があるということは十分了承いたしておるところでございますが、それと国有林の経営というものと、これまたきわめて密接な関連のあるということも十分了承せられますので、ただいまのお話のごとく、山村経済との関連におきまして、国有林野の利用権益の拡張ということによる経営の有機性という関連から、国有林野法の一部改正を企図いたしておるということは、先生のお考えとまつたく一致しておる、かように考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/84
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085・福田喜東
○福田(喜)委員 ただいまの長官の御答弁は、まことにわれわれの意を強うするものでございまして、私はこれに関連して二つ、三つの事項をさらに進めてお伺いいたしたいと存じますが、今日までの国有林野の払下げの状況はどういう状況になつておりますか、これについて資料の御提出をお願い申し上げたいのであります。これは国有林野法の審議の際に、当時の横川長官は、予定面積を二十四万町歩と答弁しておるのでございます。これは議事録にもはつきり出ておるわけでございますが、実際は現在、この払下げというものは十五万町歩以下と考えられますが、これはいかなる事情によるものか。
それから過般の冷害対策として、薪炭原木三百五十万石の増伐計画を立てたが、その後の実績はどういうふうになつておるのか、この点についてただいま御答弁いただけますならば、御答弁いただきたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/85
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086・柴田栄
○柴田政府委員 国有林野整備の進捗状況につきましては、詳細資料を提出いたしたいと存じますが、整備法の法案の御審議の際に、当時の林野当局からいたしまして、目標二十三万余町歩と申し上げたのはその通りでございますが、この際には、実に特に東北地方を主体といたします当時の普通委託林は、一応相当強い利用の権益を持つております縁故の林野であるということで、これらを一応払下げの対象にするという考えで数字を算出いたしたものでございますが、実行にあたりましては、相当強い利用の権益が設定せられておりますものを、特に地元がこれを買収する必要もないというような実情、あるいは地域的に、それらの森林が売り払われた場合には、かえつて今後の境界その他からいたしまして、国有林の管理が非常に錯雑多岐になるというような実情等も出まして、地元と具体的に御相談をいたしました結果、原則として委託林の売払いは一応見合わすべきであるという結論になつたのが、一番大きな相違なんでございまして、その結果といたしまして、現在目標といたしておりますのは十五万八千町歩程度でございますが、これを目標として進歩しておるどいうふうに御了承願いたいのでございます。
なお冷害対策といたしまして、追加三百五十万石を一応予定いたしまして、それぞれ売払いをいたしたのでございますが、ただいま各局別に明確な数字を持つておりませんので、後刻資料をもつて提出いたしたいと存じますが、合計いたしまして大体目標量を売り払い得た、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/86
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087・福田喜東
○福田(喜)委員 ただいまの長官の御答弁に関連して伺いますが、本法に基くところの保安林の買入れに対応いたしまして、国有林野の特別会計のあり方、さらにまた国有林野の性格等も、私は相当かわつて来るものと思いますが、この買入れに対応して、一方においては、黒山と申しますか、平地林の開放ということを、国有林野当局においてはお考えであるのかどうか、私はこれを相当お考えいただかなければいけないじやないかと思いますが、この点に関する長官の御意見を承りたいのでございます。それと関連して、長官御承知のごとく、ただいま町村合併促進法第十七条の規定に基くところの、町村の基本財産の造成として、この国有林の払下げということが非常に論議になつておりますが、これが現在どの程度に進んでおつて、どの程度払下げが行われているか、これが国有林に及ぼしている影響はどの程度かということを、まず御報告願いたいのであります。私はこの点について一つ憂慮にたえない事柄は、この町村合併促進法の規定に基く国有林の払下げ、従つてこれを具体的に申しますと、営林局管内あるいは営林署管内におきまして、相当団地の払下げも行われるわけでございますが、営林局署の担当面積というものが、これによつていかにも失われたごとく感じまして、失地回復の思想というものが、相当営林局なり営林署に出ているのは、いなめない事実であります。こういう考え方等について、長官はどういうふうにお考えになつているか。
それから、昨日でございますか一昨日でございますか、長官の御答弁の中に、これは東京以西——東北には非常に国有林が多いせいでもございましようが、そこに本法に基く保安林の買上げの重点が置かれるような答弁があつたわけでございますが、この点は、一面からすれば、いわゆる営林局なりあるいは営林署なりの、失地回復の一つの現われではないかと私たちは思うが、この点について長官の御意見を承りたいのであります。たとえばさつき松岡委員から、この保安林の買上げ費用でございますか、結局三十二億円の配分につきまして、青森が一億円、秋田が一億円、あるいは大阪の営林局に十億円の割当をやつた、これは正式に割当てていることは私は十分知つておりますが、この買入れにあたりまして、結局営林局署ごとに割当等の問題を生ずるおそれがないか。私は現実の保安林の性格、その必要性というものから出発すべきものであつて、いやしくもこういう割当ということが起つたならば、これはある意味において憲法上の問題になると思います。こういう点につきまして、われわれが想起いたしますのは、終戦後間もないころに、徴税の分担額と称して、各税務署ごとに、お前のところの管轄は何億円集めろ、お前のところは何ぼ集めろ、こういうふうな割当みたいなことをやつて、これは国会の問題になつたことがあるわけであります。あらかじめ予定して買入れの分量を各営林署あるいは営林局等に予算を配分して割当てるということは、これは厳に慎んでいただきたいのでございますが、こういうことが現実にあるわけでありまして、この点について長官の御意見を承つておきたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/87
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088・柴田栄
○柴田政府委員 第一点にお答えいたしますが、現在国有林になつております里山、いわゆる平地林の開放の意思ありやいなやというお尋ねだと存じます。この問題は、性格の問題とも関連いたして参りますが、当然経済林は、森林法に規定いたします森林計画を守つていただくことによりまして、民間経営に移すことが妥当な場合が多いということも考えておりますので、必ずしも国有林で管理しなければならないというふうには考えておらないのでございます。将来において性格が明確になりました場合には、いかなる方法によつてこれを開放するかという問題は、当然検討せられる問題と考えております。当面としても将来の国有林の性格を想定いたしまして、できる限り土地の開放をいたすか、あるいは利用の開放をいたすか、いずれにしても森林行政の一環としてさしつかえない最大限度において、地元の御利用を願うという方向に参りたいと考えております。次の問題でございます町村合併促進法の第十七条の規定によります基本財産造成のために、国有林経営上必要のない国有林を合併町村に売り払うという問題は、私どもは、町村合併の手みやげとして国有林を要望されるという場合に、なかなか問題は多いと考えますが、国有林の解放可能な林地については、積極的にこれが開放を進めて参りたいという考えでおります。しかし先日も申し上げましたように、現在においては合併予定の町村内においても、旧町村と新規の合併町村との間に、必ずしも考え方が一致しない場合が多い。そこで合併後に合併町村における基本財産造成のために持ちたいという希望よりも、合併前に旧所在町村において払下げを受けたいというような希望が多いということで、この点はやや私どもの所期に反する点が多いのでございます。申込量あるいは現実に売払いを予定しております量等詳細の点は、後刻調査の上申し上げたいと存じますが、やや予想に反しておるという点だけを御了承願いたいと思います。
次に今度の保安林整備臨時措置法案に伴いまして、保安林を国有林として買い上げるという場合に、関東以西を重点として買い上げるというように申し上げたいというお話でございます。これはさように解釈されるとすれば私の申し上げようが悪かつたと存じますが、実際問題として関東以西が買上げ対象が多くなるであろうと申し上げたのであります。と申しますのは、現在の国有林の所在は、北海道、東北あるいは関東北部等に集中されておりまして、従つて脊梁地域の重要水源地域は、現在すでに東北、北海道、関東以北におきましては、国有林が管理経営をいたしておる。ところが関東以西においては、比較的荒廃した民有の保安林あるいは保安林予定地域が多いという関係から、対象はおそらく関東以西が中心になるであろう、かように申し上げたわけであります。従つて東北あるいは北関東におきましても、必要な地域の保安林は当然買上げ対象として御相談をするということにはかわりはない、統一した考え方で保安林の整備をいたして参りたいというふうに考えておりますので、その点は誤解のないように御了承願いたいのであります。従つてその問題と関連いたしまして、あるいは現在の林野整備によつての売払い、あるいは今後平地林を売り払う、これを保安林で買つて失地回復するという言葉は、私どもまことに残念な言葉でありまして、おもしろくないのであります。そんな考えは毛頭ないのでございます。必要のないところに国家機関を置く必要もございませんので、必要のなくなつたような営林署あるいは局、その他の機関にしても、これを縮小整備することは全然当然のことだと思つております。従つてそれを維持するがためにこの制度を利用しようなどということは全然考えておりません。その際に何か買上げ費を割当てて、無理無理に計画的に失地を回復するというような御懸念はまつたく誤解であると存じます。御懸念なくひとつ御了承願いたいのであります。現在は調査費として各局に平等に百万円ずつを配付いたしておりますが、その調査結果によつて妥当な買上げ対象が決定いたしたものについて、順次必要経費を配分して行く、かような方法をとつております。その点は絶対に失地回復などという考えはないということを、くれぐれも申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/88
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089・福田喜東
○福田(喜)委員 私は決していや味を言つたり、そういう気持は毛頭ございません。その点は御安心願いたいのでございますが、現実において、行政整理が中央地方を通じて進行しておるわけであります。ときたまこういう法案が出たので、営林局長の方々がいきり立つておるのは事実なのでございます。こういう点につきまして、私はこう考えるのでございます。東北地方は松岡委員がいつも言われるように、国有林が非常に多い。国有林の収奪ということを松岡委員が言つておられますが、これがつまり関東、東京以西に重点が置かれるということではないかと思います。ただいま長官の答弁によつて、こういう点も心配した、運営もそういうふうにやらないということでございますので、われわれはそれを信頼して行きたいと思うわけでございます。行きまするが、現実の形におきまして、青森に一億円、秋田に一億円とか、大阪に十億円という、疑いを起させるものが非常に多いわけでございます。たとえば徴税の割当を、昔税務署にやらせたという考え方と似たような考え方でございまして、この点は私は十分注意をいただきたいと思うのでございます。これは治山治水対策という国策の一つの現われなのでございまして、必要なところにこの法律を適用するというのでなければいけない。初めからこれを割当てるという考え方は、私は非常に誤つておるだろうと思うのでございます。
それから公有林の場合は、本法の適用上一体どういうことに相なるか。その取扱いはどういうふうになりますか。公有林の場合についての保安林買上げに対する措置についてお考えを承りたいのでございます。これに伴いまして、公有林も含めて保安林買上げの対象林分の選定の具体的基準は、一体どういうことになつておりますか。抽象的でなく、全国予定地と申しますか、対象林分の具体的の選定の基準は、一体どういうところに目安を置いておるか。どういうものを選ぶか。その対象林分選定の具体的な基準を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/89
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090・柴田栄
○柴田政府委員 お答えいたします。御注意のありました経費割当等によりまして、無理な一方的な計画に基く買上げ等を絶対に避けよというお話は、私どもまつたくさような考えでおるのであります。経費を割当てたということでたいへん誤解を受けておるようでありますが、割当てた事実は全然ないのでございまして、今後もさような誤解の起らないように十分に注意をいたす考えでおります。
なお公有林の場合はどうするかというお話でございますが、公有林につきましても民有林と同じ考え方で、買上げを相談いたして参る、かように考えております。買上げを予定いたしております地域は、各地方別に大体水系を主体といたしまして、その重要水源地域全体を考えまして、それに必要な保安林の整備計画を立てる。そのほかに地域的な特殊の事情によります保安林の整備を考える、そういたしまして一応買上げ対象地域と——これは昨日も申し上げましたが、森林法の改正によりまして、保安林の管理責任を国の責任にいたすものと、地方長官の責任にいたすものと二分いたしたい、かように考えておりますが、その国の管理責任にいたそうという地域の保安林についてのみ買上げを相談いたして参る。かような考え方で、整備後におきます保安林の各県別の地域別予想をいたしておるわけでございます。これは後刻資料として表を提出いたしたいと存じますが、それが現在のところの見込みでは百十一万余町歩ということになつておりますので、そのうちでさらに御相談を進めまして、国で買い上げて国有林として経営した方がよろしいと思われるものを約半分というふうに見当をつけまして、五十万町歩という想定をいたしておるわけでございます。この問題は昨日もお話がありましたが、徹底的に計画的に行うということであれば、あるいは保安林、特にその重要水源、国土保全のための保安林は、全部国営にするという考え方もあると思うのでございますが、現段階におきましては、民有林といたしまして国の指定いたします条項を十分厳守していただいて、りつぱな経営が可能な場合には、必ずしも国が買わなければならぬという場合ばかりではないと思われますので、一応の想定をいたしておりますが、必ずしも五十万町歩全部が買えなくとも、りつぱな管理ができればいいという考え方を持つておりますので、具体的に一応対象地域は、地域を定めました保安林百十一万町歩という考え方を持つております。具体的には現在その買い上げる場所が特定に決定できない、こういう実情にあることだけは御了承願いたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/90
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091・福田喜東
○福田(喜)委員 それではそういう予定地と申しますか、買上げの対象林分の箇所、区域等を、あとからひとつ資料として御提出いただきたいと思います。
それから川俣委員から途中で質問をしたいからというお話でございますので、基本原理につきましてもう一点お伺いしておぎますが、大体本法は十年を経過したときには失効することになつております。これは臨時立法である。保安林の指定を要するものは天災地変によつても発生するものであるから、当初より十年に限るということは少し無理じやないか、森林法の規定だけでは不十分な規定があるばかりではなくて、保安林指定に伴う補償の問題も、森林法等で規定しながら施行せられておらぬ点があるのは長官御承知の通りだと思うのであります。この際何らかの措置を、この補償の問題等について講ずべきであるにもかかわらず、この点に触れておらぬのは一体どういうわけでございましようか。もし法の不備によるものであれば、これらの点を是正すべきものではないかと思いますが、これは長官、どうでございましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/91
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092・柴田栄
○柴田政府委員 一応十箇年の臨時措置法を進めていただくことにいたしましたのは、整備の問題は一応臨時の問題でございますが、整備が完了いたしまして、その後災害の状況あるいは時代の変遷等によりまして修正を要する点は、森林法によつてこれが修正可能であるという考えで、一応整備の臨時措置が完了いたしますれば、全部森林法に乗り移れるというように、森林法の改正をいたして森林法に乗り移りたい、かような考えで進めておりますので、一応十年と定めたのでございますが、この法律にも補償の問題を触れていないのはけしからぬではないか、これはまことにごもつともでございまして、さらに保安林を整備し、あるいは施業内容を強化する。施業を強化するという場合には当然補償の問題が出て参るのであります。現森林法におきましても、三十五条におきまして補償の規定はあるのでございますが、今日まで実際に補償いたしたという例は、禁伐林を除いてはないのであります。今後におきましてはさような問題は当然起つて参る。しかしこれをいかなる基準で規定すべきかという問題は、非常にその制限の度合いによりまして多岐にわたりますので、二十九年度一箇年に施業の整備、あるいは基準の設定をいたしまして、補償の問題は三十年度から出発するということで、一応予算等についても了承を願つておる。なお現在のままでは出発できないということで一年間の調査研究期間を置いていただく、こういうことになつておるという点を御了承を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/92
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093・福田喜東
○福田(喜)委員 これは、御承知のごとく森林法第三十五条に基く損失補償の額とか、いろいろな規定があるわけでございます。あと払いの方法でありますとか、いろいろな規定がありますが、この補償の問題は国民の権利義務に関する問題であるわけであります。実際こういう国がいろいろな行為をなす場合におきましては、個人の権利義務というものが非常にそこなわれる場合があるわけであります。実際の問題として損失補償あたりもその確知が非常に困難な場合があるわけであります。現実におきましては、申請を待つて初めて損失を補償するというふうなことが大分あるわけでございます。これは国が当然補償すべきであるにかかわらず、その申請を待つて行われるというやり方になつておりますが、こういう点につきまして、将来森林法に乗り移る場合あるいはまた国民の権利義務というものが失われる、傷つけられることを補償する意味において、この損失補償の規定を十分考慮していただきたいのであります。これを私は希望として申し上げまして、一応ここで川俣委員に質問を譲りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/93
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094・井出一太郎
○井出委員長 川俣清音君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/94
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095・川俣清音
○川俣委員 福田委員の御了解を得まして、通産当局がおいでになりましたので、二、三点本法案に関係する部分についてお尋ねいたしたいと思うのであります。御承知のように昨年の風水害から急に治山治水の問題が高く世論にのぼりまして、国の施策といたしまして、治山治水対策要綱なるものが発表せられまして、政府は着々とその方針のもとに施策を練り、実行に移しつつあるようであります。それに伴いまして、保安林の整備臨時措置法が生れたのでありますが、これと鉱業法との競合する部面をどのように調整して行くであろうかという問題が起るわけであります。この点は一方において、日本の国土保安の上から、また森林培養の上から、あるいは水源地培養の上からその障害を除こう、こういうことでございます。障害を除き得ない民有林については、これを国が施策をすると同時に、それを買い上げて保安林に指定して参りたい、保安林に指定するために、事業を阻止する結果になるために、これは国が責任をもつてこの民有林を買い上げて行こう、こういう考え方であります。これと現在の鉱業法がいろいろ衝突するのじやないか、御承知のように、旧鉱業法の時代には主として地下資源であつた、もちろん地上に近いものもないわけではありません、金鉱等はかなり表面に出た土砂の中から掘つて来るということもありましたけれども、大体地下資源であつた。新しい鉱業法になりまして、御承知のように法定鉱物が大部ふえて参りました。いわゆる八種ふえたといわれております。この中でも石灰石でありますとか、珪石、長石あるいは耐火度の高いいわゆる耐火粘土というようなものになりますると、もう地上の物質、土質ということになります。こうなつて参りますと、それらを採取しよう、あるいは採鉱しようということと、国土を保安するということとの衝突が起るのではないか、今山くずれが起る、あるいは土砂の崩壊が起るということは、一つは森林がないためもありまするけれども、一面は鉱業権者の措置のよろしくなかつたところからも起つて来ておることは、これはまぬがれないのでありまして、そういうところから法定鉱物がふえて参りますると、これからさらにふえるかどうかわかりませんが、現在のところでも、もう地上土質を採取するということになつて参りますると、新しく保安林に指定する地域にすでに鉱業権が設定せられたもの、これが試掘権程度であればだよろしいのですか、現に鉱業を営んでおらないのであるにかかわらず、採掘権が設定されて、相当の年月を鉱業権として確定いたしておる所もあるようであります。そうして参りますと、そういう点について将来どのような調整をして行かれようとするのか、通産省の御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/95
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096・村田繁
○村田説明員 治山治水の見地からいたしまして、保安林の必要なことは申すまでもございません。私たち鉱山を担当するものといたしまして、十分保安林というものをば考慮に入れながら、地下資源の開発をやつて行かなければならないというふうにも考えております。しかも地下資源は川俣先生御承知のように、比較的日本は恵まれてない、こういう観点からもできるだけこれを生かすような方向に持つて行きたい。そういう意味からわれわれといたしましては、保安林の必要な点はあくまでも保安林としての立場を尊重しつつも、なおかつそういう地区に地下資源がある場合、これまた同時にこれを利用して行きたいということが理想の建前でございます。ただときとしまして、どうしても両立し得ないというようなことが具体的な個々の場合にはできて行くのじやないか、そういうときに両者の調整をどういうふうにしてやつて行つておるのかということが、ただいまの御質問の要点だと存ずる次第でございます。この点森林法、鉱業法それぞれの建前からいろいろの規定を設けまして調整しておるわけでございますが、今かりにある一定の地域におきまして、すでに何がしかの鉱物を採掘しておる、ところがその地区がたまたま治山治水の面から保安林として指定して、むしろ森林資源の保護育成をして行くことに重点を置かなければいけない、こういうときには当然森林法で保安林の指定がされる、こういうことになると思います。そういたしますと、指定の結果が森林法の規定によりまして、そこで鉱物を掘つておる、その掘り方の状態が勢い土地の形質を変更する、こういうことになり、しかもこれが保安林にも影響するということになれば、当然掘れないじやないか、こういうことになるわけでございますが、そのときに両立するような方法があるかどうかということは、一応保安林に指定したことによつて掘れなくなる、それに対して掘るがためには森林法の三十四条でございますが、掘らしていただきたいということを鉱業権者からその地区の都道府県知事に許可の申請をする、その許可の申請のあつた場合に、知事としてさしつかえないと思えば許可してやる、いけない場合には、どうしても両立しないということになれば許可しない、それがためにこうむる損害については何か森林法で損失を国が補償する、こういう建前で行きまして、一応衝突を避ける、こういうような建前をとつております。但し両立しない、こういうふうに考える、その考え方をとつた。それに対しましてまたその許可、不許可をきめるに当りまして、知事といたしましては当然その関係の通産局にも御相談があることと存じます。ところがその相談の結果がまとまらぬ、また鉱業権者としても不許可にされたことが非常に不服である、困るという場合には、森林法の規定の中にも、総理府に土地調整委員会というものがございまして、それに対しまして不服の申立てができるんじやないか、そこで両方の立場をよく考慮した上で、どちらにするのが妥当であるかということをはつきりきめる、こういうような考え方でもつて調整をいたしておるというふうな建前になつておるわけであります。逆にすでに保安林に指定されている地域には新たに鉱業権の出願をしよう、こういうときには、私の方の鉱業法の立場では、必ずあらかじめ許可不許をきめる前に、やはりその土地の府県知事に相談をいたすということになつております。そうして保安林の見地からの必要性というようなことについて十分その知事の意見を聞いて、それを尊重して許可すべきかどうか、許可するにしましても何らかの条件をつける、あるいは施業の内容について、いろいろとこういうやり方によつて保安林の保存に支障ないようにというような観点を考慮に入れて許可する、こういうようなやり方をやるということになつております。その結果そのやり方が不十分な場合には、やはりその許可不許可の処分につきまして、やはり土地調整委員会に対しまして、鉱業法で裁定の申請ができるということになります。どちらから行つた処分につきましても、ともに政府といたしましては、土地調整委員会において両方の調整をやる、そういう建前をとつております。その運営によりまして、ただいまのような点は十分調整されて行くのではないか、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/96
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097・川俣清音
○川俣委員 今鉱政課長からるる説明がありました。それは確かに法規的にもその通りになつておるのです。問題は、日本の恵まれない地下資源でありながら、保安林の中に鉱業権を設定する場合には、相当困難な事態を克服して鉱業権が設定されているような状態です。そこに大きな制約があることは事実です。問題はそういうことでなく、その前にもどりますが、いわゆる探鉱して歩く者から見ますれば、ことにインフレ時代でありますとまだしもでありますが、デフレになりますると、失業坑夫、あるいは探鉱に興味のある者が山を探鉱して歩きます。山を探鉱して歩くときに、どこを一番目当てにするかということになりますと、これは私よりもあなたの方がよく御存じだと思いますが、たいてい沢を登つて参りまして、いわゆる山くずれがあるところに鉱脈を発見する。だから土砂の崩壊のある所をねらつて行く。あるいは落葉が埋まつておりますとだめですから、春のいわゆる土砂の崩壊期に沢に登つて行つて探鉱することになる。結局崩壊した所を目当てにすることが、探鉱の唯一の方法だということになる。そこに設定をするわけです。そういうところは、おもに深山のかなりの傾斜地です。傾斜地でなければなだれもありませんし、または崩壊もいたしておりません。結局渓谷の急傾斜の所——急傾斜の所というと、おもに保安林に指定されなければならないような所なんです。今後探鉱されるといたしますれば、単なる人的な探鉱をするということになりますと、そういう所をねらわれることになる。ところがそういう所にのみ日本の鉱物があるかと言えば必ずしもそうではない。鉱物のある所を別個の方法で科学的な調査をしておられれば、そういう弊害が除かれて、真の鉱物資源の開発ができると思うのです。その方に手落ちがありますために、人的な探鉱の方法というと、自然的な条件から来る探鉱よりほかはないということになるそこに私は問題が一つあると思うのです。
もう一つは、これを許可するときには非常にやかましく言われておりますけれども、その後の管理に至りましてはまつたく放任です。鉱業権を取得したときにはこれは非常にやかましい。林野庁とも打合せをする。特に保安林になりますとなかなかむずかしい。あるいは調整委員会にもなかなかかからないのですが、試掘権の場合は二年で終る。また延長するといたしましても、さらに試掘権が消えたという場合には、何らの報告もなければそのあとの調査もされていない。問題はそこにあるのです。むしろ地下資源を開発するために、ある部分国土が荒れてもという犠牲を払わなければならぬ場合も起きて来るでしよう。それは私も認めていいと思うのです。ところが掘りつぱなしにしておいて、試掘もしないで投げるようなことになつて、しかも国土を荒しているということになると事は重大なんです。真に地下資源といいますか、鉱物を採取するのが目的であつて、国土を荒すことが目的でないことは明瞭だと思うのです。しかも新しい鉱業法は私が説明するまでもなく、前の鉱業法と違いまして、公共の福祉の増進ということを目的に明らかにしておる。これは一大進歩を遂げているわけです。従いまして単に濫掘をするというようなことで、一攫千金で国土を荒しているということになりますと、事重大になる。また真に鉱物資源が発見されて、相当な防備をしながら、害毒を押えながら資源を開発することになりますれば、これはまた一つの国策として、国の産業発展に資することだと思うのですが、あなた方は鉱業権の取得の場合にのみ力を入れておいて、その後の管理についてはすこぶる怠慢と申しますか、調査が不十分じやないか。現にあなたの手元で鉱業権の取得者の名前はわかりましようが、どのような状態で放棄されておるかという調査はないはずです。問題はそこなんです。鉱業権の取得については、出願まで厳格にし非常な手数をかけていますけれども、取得した以後の状態に対して監督が十分でなければ何も効果はない。私も今あなたの言われた法規のことを知らぬわけじやない、知つております。そこまで手数をかけたならば、それ以上の手数をかけて国土を守らなければならぬじやないか。さらに有望でありますならば、なおそれらの荒廃をもあえて犠牲にしてまでもやらなければならぬが、それはそれでよろしいのです。私はそれを悪いと言うのじやない、ただ途中半端に終つておりますならば、害毒を流すだけじやないか、この点なんです。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/97
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098・村田繁
○村田説明員 ただいまの御意見一々ごもつともでございます。確かに従来そういうきらいがないでもなかつた、これは否定できないことと思う次第でございます。ただわれわれの方といたしまして、先ほど御指摘のように、鉱業法で許可をする場合に、公共的見地という点を非常に強く押し出しておりまして、ただ従来のごとく何がしかのものがあるというようなことだけでむやみに掘つてよろしいという建前は、特に最近土地の利用の問題を中心にいたしまして、いろいろの利害関係が錯綜するという状態のもとにおきましては、そういう点に特に注意をしなければならないと考えておるのでございます。従いまして新鉱業法の施行以来は、われわれといたしましても、地方の通産局で個々の具体的な処分をするにあたりまして、特にそういう公共の福祉という観点から見て、許可すべきかどうかということを考慮するように、絶えず強く指導をいたして来ておるような次第でございます。また一旦許可になりましたものにつきましても、先生十二分に御承知のように、鉱山保安法が実施されまして、特にこの点については戦前に数倍する監督の面を中央、地方とも強化いたしまして、予算の許す限りにおきまして、やりつ放しにならないように指導を絶えずやつております。特に問題になるようなところを重点的に、絶えず現地指導をすることも今日までやつて来ております。ただ残念なことには予算の制約があるものでありますから、なかなか十二分というところまでは参りません。まことに申訳ないと思います。今後ともそういう点は引続き努力いたしまして、御指摘のような点のないように努力して行きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/98
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099・川俣清音
○川俣委員 鉱業権の取得についてはいろいろ厳重な制約がありまして、鉱物資源の開発にむしろ不便を感ずるほどやかましい規定があることは認めます。しかしながら鉱政課長も言われた通り、現在そこまではやかましいけれども、その後における放任の弊害の方が大きくなつて来ておる。この点は予算上制約を受けておられることも私知らざる者ではありません。しかしながらそれによる荒廃の結果、さらにもつと大きな国費を使つてそれを防止しなければならないということになりますと、まことに嘆かわしいことになるわけであります。その意味において注意を喚起いたしたいということなんであります。
もう一つお尋ねいたしたいのですが、現在の保安林の指定地内にどれだけの鉱業権並びに採石権が指定されておるかということになりますと、これはなかなか統計をお持ちにならないようです。これはないのがほんとうじやないかと思うのです。なぜかというと、林野庁でおわかりになる面積と鉱業権設定の面積の調査の方法が違うわけです。林野庁の方はおそらく山でも傾斜面でも一つの面積に入れられるでしようが、一方の鉱業権の方は、山をつぶして坪にいたしますために面積が違うのです。従つて保安林の中に鉱業権がどのくらい設定されておるかということは、今の調査では出て来ないと思うのです。しかしながら基本的にはそういうものの調査が出ていなければ計画が成り立たないのではないか、こう思つておるのです。この前の委員会でその資料を出してくださいといつたら、あなたの方でお出しになるといつたけれども、面積のはかり方が違うのだから、出て来るわけがない。これは全然違うのです。従つてあなたの方の面積の中に鉱業権が設定されていると言いましても、おそらく保安林を越えた面積が、坪は小さくなつても大きな面積で鉱業権が設定されております。そういうことになるので出て来ないのがほんとうなんだ。おそらく出て来ないという御返事になるだろうと思つておつたのですが、そういうふうに林野庁の計画と通産省の計画はまつたく食い違つているのです。これは意識的に食い違つたのじやない、過去の歴史がそうさせておるのであります。従つて保安林を設定する場合において障害になる部分が、一体どこにあるのだというようなことについての見当がまだついていないのじやないか。これはやはり保安林を設定する上に十分考慮されなければならぬ点ではないか。
さらに通産省にもう一つ私は御考慮願いたいと思いますのは、先ほど申し上げたように、不景気になつて参りますと、人的な探鉱ということがかなり行われて来る、これはいつも同様なんです。何も仕事がないからひとつ山でも探しに行つて鉱脈でも当てようか、こういうことになつて金のかからない方法で歩く。こういうことで日本の少い鉱山資源が開発されるわけはないと思うのです。過去においては、徳川時代のごときは関所ごめんのような手札を与えて、失業坑夫を全国にばらまいて探鉱させたということはありますが、今ではそういうことによるところの探鉱はやめられるべきではないか。しかしながらこれは民間のことでありますから、制約はないにいたしましても、もつと積極的に地質調査というようなものをやつて参られますならば、そうしたむだな表土をかき集めるとか、地下資源のはつきりしないものを開坑するというような弊害は除けるのではないか。あるものでありますならば、これはやはり経費をかけて、どうしても日本の鉱物資源を開発しなければならないのたから、それには幾分犠牲があつてもやらなければならないし、ただむだに表土を荒すようなことは避けて行かなければならないのではないかと思うのです。それについてはどうしてもやはり科学的な探鉱ということを一方に進めて提示してやらないと、むだに表土を荒すという結果になるのではないか。これはもちろん予算の制約があるといつても、一方には治山治水というものがもつと高く問題になつておるときですから、これらとやはり関連して来なければならないと思うのですが、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/99
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100・村田繁
○村田説明員 ただいまお話のありました、鉱業権を設定する建前は、ただいまの鉱業法では先願主義というのをとつております。それに対しまして外国の例なんかを見ましても、そういう先願主義ということでなくて、能力主義と申しましようか、そういう考え方をとつておるところもございます。先ほどの先生のお言葉のように、今の人的な、いわゆる昔の山師がぼろいもうけをするというような形での発展ということはだんだんむずかしくなつて、科学的な探査に期待しなければならない、こういうことになつた場合に、当然今の先願主義でいいのか、能力主義でいいのかということは、根本的に大きな問題になつて来るというふうにわれわれ考えるわけでございます。御承知のように現在の鉱業法は二十六年から施行せられておりまして、そのときにも多少そういうことが問題になつたのでありますが、日本の現段階では、やはり先願主義を一応踏襲する、こういうことになつて、今日でもその方法を続けておるということになるのでありますが、御指摘のそういう点について、今後根本的に再検討しなければいかぬのではないかということはごもつともだと思います。しかし何と申しましても非常に問題が大きく、根本的な考え方の問題になるわけでありますので、われわれ慎重に検討して行きたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/100
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101・川俣清音
○川俣委員 慎重に研究されるということで、私もそれでけつこうだと思います。一方において保安林というものを、緊急の要務として多大の国費をもつて買い上げなければならない事態ということになれば、鉱業法もおのずから先願主義ということを是正して参らなければならないという方向に行かなければならぬ。今すぐただちにということまで私は申し上げませんが、一方これは時限法だというので十箇年計画でやつておりますが、それよりも早い期間にそれをやつて参りませんならば、保安林整備をもう十年延ばさなければならぬ、二十年続けなければならぬという結果に陥るであろうことを私は憂えるのです。すみやかにその方面からの代案も考えられて行かなければ、せつかく政府で出されました治山治水対策要綱というものが、その方からくずされて行くのではないか。なるべくならば両立させて行きたいと思う。両立させるには一方だけがまだ研究が足りないということでは両立しないと思う。時期がいくら遅れましても、研究が遅れましても、あわせて行かなければならぬのではないか。本来の鉱物開発という大眼目を達成するには、その目的を私は必要だと思うから、それと国土保安というものをいかにうまく組み合せて行くかということに重点を置かなければいかぬのではないか。単なる先願主義によつて国土の荒廃を来すようなことは、この際考慮されるべきではないか、こう申し上げておるのでありますから、御研究ということでけつこうです。
私の鉱山局に対する質問は大体この程度にしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/101
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102・福田喜東
○福田(喜)委員 それでは前に引続いて質問を続行します。この法案が出るということが新聞紙上に発表になりましてから、これが森林所有者と申しますか、農山村に非常なシヨツクを与えたのは事実であります。治山治水対策要綱の現われといたしまして、こういう法律が出るのは当然であるわけでありまして、国土保全上この法律の趣旨はよくわかるのでございますが、しかしながらこの法案自体を詳細に検討いたしますと、非常に欠陥の多い法律であるわけでありまして、委員会におきましても、この将来の運用という点を法律的に検討をする必要があるわけであります。そこでまず問題になつて来るのは、法案自体が世間の声と申しますか、森林所有者、農山村の声におびえておる部面があつて、治山治水対策要綱というものをほんとうに筋を通してどこまでも貫くということに躊躇しておる部面があると同時に、もし治山治水対策という国策の線をどこまでもぶつ通して行くならば、この法律はもう少し筋金入りのものであつてしかるべきであると思いますが、一方においてこの法律は、強制買上げという点につきまして、農山村の批判と申しますか、シヨツクに対して相当気がねしておる部分かあるわけであります。それに影響を受けて非常に遠慮しておる部面もあるわけであります。そこでこの法律が相当シヨツクを与えておるということにつきまして、まず現実の実例といたしまして私は、新聞記事を林野当局のお目に入れたいと思いますが、これは私の郷土の新聞でございます。民有林の強制買入れという大きな見出しのもとに、保安林整備臨時措置法案きまる、こういう新聞記事が私の方の地方紙に出たわけであります。私の郷里は林業地帯であるので、これによつて相当の質問が殺到したわけでありまして、重要なところをちよつと読んでみますと、政府は三月十九日の閣議で保安林整備臨時措置法案をきめた、これは保安林整備のために国が保安林整備計画をきめ、これに基く森林計画の変更や保安林として指定された民有林の強制買入れなどの措置をとれるようにしたもので、昨年の異常災害対策の一環として生れたものである、こういうふうな書き出しで、現在この指定されておる地域は全国で百九十八を予定され、うち七十八が重要河川流域にあるはずでありまして、重要河川流域にある民有林五十万町歩を十箇年計画で買い上げられるははずであるが、この流域にある国有林七十七万町歩、民有林百四十五万町歩、計二百二十二万町歩をさらに国有二十万町歩、民有六十三万町歩、計九十二万町歩をふやし、保安林面積の最終目標を三百十五万町歩とすることになつておる。それから先の方に行きまして、民有買上げ価格をどうするかについてはなお評価基準をめぐつて庁内に種々の論議があるが、政府としては一町歩あたり三万円で、総額十五億円の予算を特別会計に計上しておるほか、治山、治水事業費として十五億円計上しておるが、場合によつてはこの保安林買上げ費で足りない部分は、治山、治水事業費の分をさいても一部買上げ資金に充てることも考慮しておるようである。こういうふうなことで、新聞を見ると相当の恐慌を来しておるわけであります。こういうふうな、いかにも強制買上げということが主眼であるような書き方であるわけでございまして、そういうふうに相当おびえておるということも事実でありますが、しかながらこれはどこから来ておるかと申しますと、一つは、過般の農地法による場合とかあるいは開墾建設の場合の未墾地買収のときのような行き過ぎを生ずるおそれがないか、こういうのが農山村の方々に与えるところの影響であり、心配であるわけでございます。未墾地買収のときのような行き過ぎをとかく生じやすい、生ずるようなおそれはないか、こういうのでありますが、この点については私は林野当局の御注意を煩わしたいと思います。こういう点について無用な恐怖感と申しますか、不安を森林所有者、さらに農山村に醸成させないように、特にお願いしたいのであります。そこで私が先ほど申しました保安林の予定地の強制的な割当買上げということが行われるのではないかということも、ときどき手紙で言つて来るのでありますが、この点につきましては、長官からそういうことは絶対ないという確言をいただいておるわけでありまして、こういう事実があるということを林野当局もよく承知しておいていただきたいのでございます。そこでしからば、これを治山治水対策の上から見て、こういう重要な法案については、さらにつつ込んでもう少し立法というものを完備する必要があるのではないか、こういうふうに考えてみますと、この点については相当の不備も見受けられるわけであります。それからちよつと申し落しましたが、この法律は保安林に指定される民有林の買入れ並びに強制買上げの臨時措置法でありますが、強制買上げの森林が将来保安林解除となつた場合には原所有者に返還される約束があるのかどうか、その点を保証しておるのかどうか、従つてもしそういうことが考えられるならばそれに伴う条項を設ける必要があるのではないか。この点については私はこの保安林買上げの法律が臨時立法である点にかんがみますと、当然考えてしかるべきものではないか。長官は先ほどこの点については、臨時立法とは言いながら将来は森林法の中に繰入れるのだということを言つておりますが、これは森林法自体の中におきましても、二十六条でその旨の規定があるわけです。ことに先ほど申しましたように、未墾地買収のような行き過ぎが現実に行われる心配があるのではないかという危惧が農村の間に広まつておるのであります。そういう危惧の念、不安の念があれば、なおさら強制買上げの森林を将来保安林解除となつた場合には原所有者へ返還する保証について、一項設けるべきではないかと思いますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/102
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103・柴田栄
○柴田政府委員 何か地方にこの法案内容が誤り伝えられて、さきのことに懲りて、今回もまた同じようなことをするのではないかというような誤解があるようでありまして、この点は非常に残念でございますが、何回も申し上げております通り、保安林整備の臨時措置というものはあくまでも国土保全を確保するという見地から、しかも現状においては不備であるそれを是正しようという考え方でございますので、現在の情勢におきましてはすべてを強力に、強制的に国家が担当するという考えでなくても、民間の協力によつて可能な場合には、必ずしもそんなに強力な措置をとることだけがこの目的を達するものではない、かように考えております。何か地方民が声におびえておずおずしておるのではないかというようなお話でありますが、私どもにはそういう考えは毛頭ないのでございまして、十分御相談もし、善意に協力を求めてやつて行ける面は、極力その筋で参りたい。御協力願えない場合にのみ強制の措置をとりたい、こういう考えで進めておりますので、これはあるいは多少見解の相違が出て来るかも存じませんが、現状におきましてはこの手段で妥当であると考えておるということを、一応申し上げたいのであります。従いましてそれと、強制という言葉に対しまして、農地法あるいは未墾地買収法等との関係で誤り解釈して、おびえておられるという点に関しましては、なお今後指導を徹底いたしまして、さような誤解のないように十分了解を願つて進みたい、かような考えをいたしておりますが、未墾地買収等の強制買上げとは全然行き方が違つておるということは、御説明いたせば御了解願えることである、かように存じております。なおそれと関連して、現実の取扱いとして予算単価を一町歩三万円で強制買上げをするというような、きわめて単純な御解釈での御不安のようでありますが、あくまでも基準は時価によるとこういうことで、公正な取引価格によつて御相談をするということでありまして、このことは決して予算単価が拘束する問題ではないのでございます。基準単価、評定基準の問題で御了承を願えることであると存じますが、これらの誤解も十分も十分に説明をいたしますれば、了解を願い得る問題であると考えております。実は私どもにも、さような一方的な解釈による不安から、問い合せ等もありまして、それぞれ地方にも連絡をいたしておるという筋でございます。そこでまあ不備が非常に多いという御指摘でございまして、非常に恐縮に存じておりますが、私どもは極力無理をしないで、円滑に、しかも目的を達するという、現在の情勢に合わして行くという考え方でおりまするので、昨日も御指摘がありましたが、一方的な国土保全という問題だけを取上げるということになると、多少手ぬるいという御非難も出て参るかと存じまするが、私どもは、各方面が総合されてその目的を達するという方向に進むべきである、最近の行き方において、行き過ぎによるマイナスの多い行き方が必ずしも少くはないということを考えますので、この際さようなむだをいたしたくないという一つの考え方で進めておるということは、御了承願いたいのであります。
なお強制買上げに対しまして、保安林の必要がなくなつた場合に原所有者に売りもどすという規定をなぜ設けないかというお話でございますが、買います際の対価は妥当な対価で取引きするわけでございまして、必ずしも対価までを一定の、一方的な決定によつて行うというわけではないのでございます。この点は善良な取引である、かように考えておりますし、しかもこの強制の場合には、国に対します完全な義務を果していただけない場合にのみ強制するということでございますので、さような場合に保安林の目的を達しなくなつたから返さなければならぬということを、この際規定する必要はないのではないか、かように考えております。なお保安林というものは十箇年間で一応保安林としての整備をいたすわけで、ただちにそれによつて保安林の必要がなくなつたから解除するということでは全然ないのでございますので、さような問題は実際問題としては、そんなに起らないということも考えられますが、かりに起つたといたしましても、それを原所有者に、完全な目的を果した後においては返さなければならぬというほどの負担をかけて買上げるものではないと考えておりますので、現在さような条項をつける考え方は持つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/103
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104・福田喜東
○福田(喜)委員 将来においては、保安林解除となる現実の場合がそう考えられない、そういう場合がきわめて少いというようなお話ですが、これは少し行き過ぎではなかろうかと思います。強制買上げであろうと、任意の場合であうと、保安林解除となる場合は、国土保全の必要というものは府県によつて違うわけでございますから、これは相当起るのじやないか、その場合におきまして、原所有者に返還するという保障というものが必要であるかないかという問題、これは十分考えていただきたいのであります。私はそういうことはないというなら、なぜこの森林法二十六条にこの規定があるか、この点の御意見をもう一ぺん承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/104
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105・柴田栄
○柴田政府委員 絶対にないとは申し上げないのでございますが、特に重要な地域を買上げの対象とする場合に、きわめて短期間に保安林を解除するというようなところを、この買上げ対象とするということ自身、すでに疑義があるのではないかと私どもは考えておりますので、さように短期間に保安の目的を達して解除されるというようなところは、すでに買上げの対象外であるという概念を持つておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/105
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106・福田喜東
○福田(喜)委員 そういう場合が起つたときには、それでは原所有者に返還するということは、林野当局は考えておらないという、こういうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/106
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107・柴田栄
○柴田政府委員 強制買上げ、あるいは妥当な買上げ等も、対価については妥当な同一評価の対価で買い上げる次第でございますから、さらに原所有者に返還しなければならないというほどの規定を設ける必要はないと考えておりますので、私どもといたしましては、さような条項をつける考え方は持つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/107
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108・福田喜東
○福田(喜)委員 私はこの点については相当疑問があると思います。未墾地買収の、手続は違つても、私はその点においていろんないざこざがある場合があつて、なるべく原所有者に返すという通牒を農林省が出しているが、この点をお考えになつて、もう一ぺん御再考を煩わしたいのです。かつまた、もし長官のおしやるように、この重要な保安林であり、従つて強制買入れという点を法律で定めようというときに、これが治山治水の対策要綱に筋金を通すという意味でこの法律を出された、こういう意味でございますならば、この保安林の整備臨時措置法の中において、特に重要な保安林については特別の保護、たとえば土地収用法第三条第三号の場合とか、あるいは土地収用法第三条第五号の国などの行う防風林施設とか、あるいは第二十九号の国立公園法による国立公園事業等、こういうふうな、あの土地収用法に基くところの権利というものを、たとい臨時立法であろうとも、なぜこの法律の中にお書きにならなかつたか。たとい臨時立法であろうとも、治山治水対策というこの国家の要請に筋金を通すというならば、こういう特別の保護を土地収用法において与えても決して不当ではないと思います。両者の取扱いの上において差異があるというならば、その異る点、取扱いを異にする理由を承りたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/108
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109・柴田栄
○柴田政府委員 土地収用法の場合には、事業を実施しようという場合に、一方的な必要によつて公共、公益性のために行うわけでございます。私どもが考えておりますのは、保安林の整備をいたしまして、これの経営に対しまして国が強力な制限を加えて参り、それを善良に守つていただくということによつて、これが守られるならば目的を達するということなのでございますから、強制と申しましても、それを守つていただけないという場合にのみ初めて発動されるものでございまして、収用法による収用の意味とは、私どもの考え方ではたいへん相違があるというふうに考えておりますので、必ずしも全部を収用しなければできないというふうにきめてかかる必要はないのじやないか、こういう考え方でこれを進めているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/109
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110・福田喜東
○福田(喜)委員 それは大いなる違いでございます。あなたの御研究が不足でございます。土地収用法に基く保護ということを私は言つているのです。これは保安林の指定をいたしまして、保安林の地区内における林業施業に関するいろんな事項を命ずることになつております。保安施設事業に関する事項、つまり治山とか、こういうものについていろんな事業をすることになつております。目的はどこが違うのでございますか。収用法に基いていろんな事項が書いてあります。この事業は国家の事業であります。土地収用法は個人の企業に対してそれだけやつている。国家がこれだけ施業を行う場合において、この収用法に基く保護というものを本法の場合、与えて悪いという理由はいささかもないのであります。この点、もう少し御研究を煩わしたいのであります。私は大いなる見解の相違があると思います。もう少し研究していただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/110
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111・臼井俊郎
○臼井説明員 今御質問になつておりますことを、ちよつと了解が間違つておるかと思うのでありますが、森林法におきましても、治山事業をやります場合の規定もございますが、この場合にはやはり経営者の受忍義務を規定しておりまして、そこに治山事業をやりまして、造林行為をやつて、その後の管理の期間まで受忍義務を設けておるのであります。このたびの保安林の買入れにつきましても、森林の所有者に施業上のいろいろな義務を森林法に基いて課するわけであります。その関係で森林所有者が損失をこうむることになりますと、先ほど来お話がございます三十五条による補償という問題にもなつて参ります。そのような手続によりましても、なお森林所有者が義務を履行しない場合にだけこのたびの強制買入のことを考えよう、こういう考え方なのでありまして、土地収用法等が考えておりますものと非常に懸隔があつて、所有者の権利をひどく侵害しているというふうには考えられないのじやないかというような考えを、われわれの方は持つておるのであります。なお私の申し上げておりますことがピントがはずれておりましてあれでございましたら、もう一度御趣旨をよく承つてお答えいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/111
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112・福田喜東
○福田(喜)委員 問題の要点を要約いたしましよう。これは今申し上げましたように、治山治水上特に重要なる事項であるからこういう法律をお出しになつた、国家の治山治水の要請に対して筋金を通す、これはごもつともでございます。もしそうであるならば、何ゆえに重要な保安林については特別な保護、つまり土地収用法——これは例を申し上げるのですが、第三条第三号のようなもので規定してある。あるいは土地収用法第三条第五号は国等の行う防風林施設となつております。二十九号は国立公園法により、国立公園事業というものが指定されておりますが、こういうふうな一連の法律上の特別の保護を与えても、私は当然行過ぎではない、不当ではないと思われるのでありますが、一体これをこういうふうにわける取扱い上の違いというのはどこにあるのか、その異なる点、取扱いを異にする理由があるなら承つておきたい、こういうのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/112
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113・臼井俊郎
○臼井説明員 福田先生の御指摘の土地収用法の第三条第三号は砂防の問題でありますし、ただいまのお話で国立公園の事業その他を御指摘でありますが、これは御承知のように、第二条でその土地を国なりあるいは公共事業をやります者が収用いたしまして、その土地の上にある種の事業をやろう、こういう考え方なのであります。ところがわれわれの方でこの法律で強制収用を考えておりますのは、ある種の事業をやることが面接の目的ではないのでありまして、森林を森林としてうまく保護して参りますことによつて国土の保全の目的を達したい、こういうのであります。従いましてここに書いてありますのは、森林法の義務に違反しまして、森林法による命令を出してそれに従わない場合、こういうふうになつておりますが、その種の事業をやることが目的ではないのでありまして、保全上必要な森林に仕立てるというだけなのであります。従つて収用法とは大分性格が違つており、同時にまたこの法律は土地収用審査会というものがこういう事業をやる必要があるかどうかという判定をいたすことになつておりますが、そういう審査会のような機構が強制買収をするがいいか悪いかというような判定をすることにも疑義を持つておりますし、やはり別建ての考え方で国土保全という見地から森林法の計画の機関にも諮る、さような手続でやつて参るのが妥当なのじやなかろうか、こういうふうに考えまして、土地収用法との関連は、中でもいろいろ立法の過程で議論もいたしたのでありますが、その方が妥当だろうというのがわれわれの方の考え方だつたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/113
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114・福田喜東
○福田(喜)委員 第二条に書いてありまする「保安林の区域内における森林施業に関する事項」「保安施設事業に関する事項」というのは、一体事業というものを動体的に見また静体的に見るならば、静体的な形における国の事業であります。これをしも事業でないとおつしやるならば、その事業でないという理由を承りたいのでございまするし、この保安林整備臨時措置法案に関する提案理由の説明におきまして、長官はいろいろな施業を命ずるということをはつきりこの中に言われておるわけであります。これが事業でない——たといそれが個人の事業でなかろうとも、国の事業であることは間違いありません。かつまたこういうものを土地収用法の中に私は書けと言うんじやございませんが、これに類する保護、この程度の保護規定を、本法が真に重要ならば、国家の保全目的のため、国土の保全目的のため必要であるならば設けてもしかるべきではないかということを、私はお尋ねしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/114
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115・臼井俊郎
○臼井説明員 私の了解も非常に悪うございましたのと、この法律の第二条の御説明も非常に不備でございまして御了解いただけなかつたのかと思いますが、第二条の整備計画のところで書いております事項は、農林大臣が保安林整備計画として定めます対象を第二条の第二項が書いておるのでございます。従いましてここに書いております。今御指摘の、たとえば「保安施設事業に関する事項」でありますとか、「保安林の区域内における森林施業に関する事項」と書いておりますのは、計画の中にこういう事柄を盛り込んで、一つ一つの流域につきまして流域保全の全体計画を立てる、こういうところまでなのであります。それを今度森林所有者にどのようにして履行させるかという問題になつて参りますと、第三条の森林計画の変更という条文を通しまして森林法の森林計画を変更することになります。そのようなふうにいたしまして変更されました森林計画を森林所有者に守つていただく、こういう仕組みを考えておるのでありまして、どこまでも森林所有者を拘束して参りますのは森林法それ自体であるという点をひとつ御了承いただきたいのであります。
なお保安施設事業の問題でありますが、この保安施設事業も、御承知のように現在ございます数十万町歩に上ります荒廃林地を中心といたしまして、いろいろ治山事業をやつて参ります年次計画を中心にしましたものを、この流域についてはどの程度どういう地帯でやらなきやならないかという一応の見積りとしての計画をこの整備計画の中に規定いたすのでありまして、さらにそれを実行いたしますのには、予算をとり、しかも森林法の規定によりまして、一定の森林所有者なりあるいは関係者なりの異議の申立てその他一連の保護手続によりまして保安施設地区の指定をいたし、そこに事業をやつて行こう、こういう考え方なのでありまして、この整備法だけで全部足りておる、こういう考え方はいたしておらないのでございます。どこまでも対国民の関係で森林施業上の問題、また保安施設事業の問題は、森林法を通して拘束して行く。ただ買入れの点だけは森林法にございません。この中で書いておる、こういうふうに御了承いただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/115
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116・福田喜東
○福田(喜)委員 長官は先ほどの説明で、強制の点は非常に注意して御発言なさいましたことは、その趣旨はよくわかります。私は決してここで林野当局に対して、法の欠陥を突いてどうのこうのというのではありません。私はこの運営のために議事録を残して、将来の運営に過誤なからしめるためにお尋ねしておるのでありますが、そういうふうにして強制の点について、審議の過程において非常に十分なる御検討を加えられたということを聞いておる。私たちはこれに対して、その御労苦に対してまことに謝意を表するのであります。がもし臼井さんの言われたようなそういうことであるならば、この強制買入れの点を除いて森林法第三十八条だけでこの目的は達成できるのではないか、臨時措置法というような、こういうものをお出しになる必要はほとんどないのではないかと私は思うのでありますが、この三十八条によりますと、およそここに書いてある強制買入れ以外の点は、ほとんど目的の達成ができるわけであります。造林に必要な行為、この中に造林そのもの、すなわち人工植栽、天然下種及び萠芽更新の作業のみならず、その準備作業としての地ごしらえ及び造林後の補植並びに一定期間の除伐等をも含むとは林野庁より刊行された森林法解説にも記載されており、この点は明らかであります。それからまた森林法には一連の規定がございます。この一連の規定の運用によつてほぼ本法に書いてあるような問題は、強制買入れの点を除いたらほとんど目的の達成が可能じやないか、私はそういうふうに考えられます。この特別な法律を特につくるならば、私の言わんとするのは、もう少し端的に言うならば、土地収用法の保護というものを、こういう保安林の強制買入れの場合にその必要があるとするならば、なぜお考えにならなかつたか、私の質問の要点はそこに尽きるのであります。この点について私はもう少し御検討を煩わして、御意見を承つておきたいのでございます。森林法にはここに書いておるような事柄は、大体その目的は達成できるのではないかと思うのでありまして、土地収用法は法律の趣旨が違うとかなんとかそういうことは私は百も知つております。知つておりますが、この程度の法文もないということは中途半端ではないか、問題となつたときにおいてどうするのだろうということを、私はお尋ねしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/116
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117・臼井俊郎
○臼井説明員 この法律の全体の仕組みにも関係いたす問題でございますが、実は戦争中から戦後にかけまして、日本の森林が非常に濫伐をされましたことは先生御承知の通りでございます。それで保安林として現実に指定しておりました森林についても、相当無理な伐採が行われた事実も少くないのであります。それがひいては近年における大きな災害の原因になつておるという面も見のがせないと思うのであります。そういう意味からいたしまして、そういう現実を認識した上で、保安林を緊急に整備いたしたいというのがこの主たる眼目でございます。従いまして全国の森林につきまして、先生御承知のように、森林法に基きまして森林計画を定めておるのでございますが、その森林計画の中に盛り込まれております保安林関係の事柄にはいろいろ不備な点もございます。森林計画を直します手続も書かれておりますが、ここに書いておりますような、二条のような保安林の整備に関する国家的な全体計画を立てまして、それに基いて森林計画を変更して保安林を整備して参りたいというような趣旨での森林計画の変更は、現在の森林法ではできないというふうにわれわれは存じますので、第三条でそういうことの道を開きたいというのが、法律事項としてどうしても必要であるという一点でございます。それからあとの整備計画の中で規定しておる指定解除の問題は、行政運営の問題で処理のできる問題でありますし、第三号の保安施設事業の問題も、先ほど申しました通り同じ問題でございます。これを保安林整備という全体の国家計画の中に盛り込んで、どのようにしてやれば国土の保全という点から治山の問題が解決できるかという全体の計画を立てて、それをわれわれの方としては、計画的に実施して参りたいということもございまして、第二条のような保安林整備計画を立てたいということがあるのでございます。それ以外につきましては、買入れ以下の条文になりますが、これは第四条の普通の相対で買います部分につきましても、先ほど来先生から御指摘がありましたように、国有林野事業が企業会計として運営されておりますことと関連いたしまして、このような不作為森林分と考えられるものを特別の規定も置かないで取得するということは、会計法の本質から行つて無理な点があるのではないだろうか。こういう考えをいたしまして、大蔵省ともいろいろ折衝いたしたのでありますが、第三条、第五条のような規定を設けたような次第であります。第六条の規定は、御指摘の通りこれはどうしても法律がないとできないことだと私どもは考えております。それから第六条の強制買収をいたします場合に、どうしてもつと森林所有者の保護をしないのか、その点で土地収用法と比べてみて非常に不備なんじやないか、こういう御指摘たと思うのでありますが、この点につきましては、第六条ではわれわれの方としては、その点はこの考え方で十分足りているんじやないだろうかというのが私どもの考え方なのであります。と申しますのは、対象になりますのが森林法の二十五条の一項の一号ないし三号の国土保全上非常に重要な保安林であるということ、それからその保安林の中でも特に重要な保安林である水源涵養保安林と土砂崩壊の防備、土砂流出の防備の三種類の保安林でありますが、その中で特に六条に書いておりますように、国土の保全上特に重要なものの森林所有者が、森林法にきめられておりますいろいろな命令に従わないというので、その人は国土を守るという点では相当欠けておるところがある。しかしそれだからといつてすぐは買わないで、三十八条の規定によつて、もう一度その人に対して造林命令なり復旧命令なりを出して警告を与える、その命令を出しただけでは、その人は命令を履行しない。もう一度政令で手続をきめまして、その命令を履行してもらうようにという催告までしましよう。そうしてその人が相対の売買にも応じないという場合であり、かつ中央森林審議会の意見も聞いて、中央森林審議会でもそういう山は当然買うべきだ、こういうような判定をされましたときにだけ強制買収にかけようというので、これだけの保護規定を設ければ、われわれの方としては尽したつもりなのでございますが、なお土地収用法等を比べてみると不備じやないかという先生の御指摘も、御趣旨は十分わかるように思いますが、われわれとしましては、かような考え方で立案したという点を御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/117
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118・川俣清音
○川俣委員 関連して伺いたいが、福田委員と政府当局との質疑応答で了解がつかない点がありますので、この際質問いたしたいと思います。もちろん土地収用法のねらつておりますものと、本法がねらわれております目的が違いますので、別建にいたしますことについては当然なことだと思うのです。それなら今お聞きいたしましたのは、土地収用法自体を適用できない、この法律以外に土地収用法を適用しては悪いのだ、こういうような説明がなされた。そうだとすればおかしいではないかと思うのであります。保安林を設定いたします場合に、他人の所有権を買上げいたすのでありますから、あるいは協議にしても買上げいたすのでありますから、単なる土地収用法だけではもちろんこれはできない部分がたくさんあると思うので、こういう法律になりましたことについては十分私は了承するのです。むしろ不十分ではないかという観点からお尋ねするのですが、どうもこれで足りない点は、やはり土地収用法をも利用できるのだという建前であるのじやないかと思うのです。と申しますのは、なぜそこを指摘するかというと、土地収用法の三条の五号に「国、地方公共団体、土地改良区又は鉱害復旧事業団が設置する農業、用道路、用水路、排水路、海岸堤防、かんがい用若しくは農作物の災害防止用のため池又は防風林その他これに準ずる施設」防風林の設定もこれに準ずる施設となつております。ですから、防風林などは元は保安林でありましたが、あなたの方では今度は保護林とするようにかえておられるようでありますが、こうしたことですら土地収用法の対象となるのであります。そこで土地収用法だけで十分達成できない、これは明瞭なんです。そこでいろいろ御説明になつたことは了承するのですが、この土地収用法を適用することができないという根拠がどうも明らかでないのですが、普通には土地収用法が適用できると解釈すべきではないか、この点だけなんです。議論するのじやないのですからこの点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/118
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119・臼井俊郎
○臼井説明員 土地収用をいたしますのは、今御指摘がありました第五号の場合のようなものは、地方公共団体が防風林を設定いたしますことになりますと、おそらく市町村が中心になるのだろうと思いますが、それが非常に小さい範囲の防風保安林をつくるというような場合でありますと、先生御承知の通りこの法律の起業者としての認定は建設大臣がやりまして、土地収用の具体的な手続はみな土地収用委員会にかけてやつて参るのでありまして、その程度のものでございますと、今の建設大臣とか土地収用委員会というような仕組みででも十分判定をされてけつこうなものじやないかという気はいたすのでございますが、われわれの方の考え方は、流域を中心といたしました国土の全体的な保全を考えて、山をどのようなふうに管理、経営して行く必要があるかという点に重点を置いておるのでございまして、そういう点からは土地収用法のような系統の考え方ではなしに、やはり林野庁が中心になりまして、農林大臣が山の点をうまく運営して行くという見地から判定をいたす方が適当なのじやないだろうかというような気がいたしておるのであります。それで諮問機関としての森林法の森林審議会にかけて御意見も承つて参りたい、かような考え方をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/119
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120・川俣清音
○川俣委員 私のお尋ねしておるのはそうじやないのです。土地収用法だけではとうていこれらの目的を達成できないことはよくわかる。従つて本法を出さなければならぬ根拠がそこにある。そしてその必要は認めておるのですよ。とても土地収用法などではこういう目的が達成できないということは明らかなんです。そこで本法が出て来たということも明らかなんです。土地収用法ではとてもこれだけのものがやれないことは明らかだから、わざわざ単独法を出さなければならないという必要は大いに認め、これでは不十分だという立場をとつておるのです。その不十分を補うのに、これをさらに裏づけする上に土地収用法を必要がある場合に活用できるということを考えておるのかどうか、こう聞いておるのです。これらを執行する上に土地収用法をなお準用してこれらを完璧ならしめるものとするのかどうか、こういうことを聞いておるので、土地収用法で十分だ、ほかのものはいらないのじやないかという質問じやないのです。本法を完全に実施する上に土地収用法の適用を考えられるかどうか、こうお聞きしておるのですから、誤解しないで御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/120
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121・臼井俊郎
○臼井説明員 お話の点はよくわかりました。その点では土地収用法の第三条第五号等は当然適用があるものと思つております。なお森林法の保安林、保安施設事業等に関します部分につきましては、根本的な考え方をまとめまして、長官からもお話がございましたように追つて改正案を提案いたしたいと考えておりますが、その際現在やつております治山事業の対象地につきましては、所有者に受忍の義務を負わせまして、そこで事業をやつてでき上りますと、あと管理をいたしまして所有者にもどすような仕組みになつておりますが、そういうような場合、国の大きな財政投資等と関連いたしまして、これは経常的に先生お話の通り土地収用法に準ずるような手続で国がむしろ買い取りまして、そこで事業をやつて行く必要のあるような場合も当然予想せられると思います。そのような場合には、今御指摘の通り土地収用法を準用する等の措置も考えまして、処理いたさなければならないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/121
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122・福田喜東
○福田(喜)委員 私の聞き方がまずかつたかもしれませんが、私は今川俣委員の御質問のような趣旨でお聞きしたわけであります。つまり土地収用法第三条第五号、防風保安林施設等につきましても、こういう保護と申しますか、強行規定と申しますか、第三者に対するいろんな一連の保護規定があるのです。これを必要なる場合には適用すると申しますか、援助も考えて、本法臨時措置法を運用するという考えでもつて一貫されて行つた方が適当じやないかということを私はお聞きしたわけです。私は本法案を審議して行く過程におきまして、収用令書の問題をずつと検討して参りますと、土地収用法のような完備した規定がない。それは当然こういう場合の援用と申しますか、土地収用法の一連の規定の助けがなければ本法の完璧な運用はむずかしいのじやないかというくらいに私は思つておるわけであります。たとえば第三条第五号等の防風林施設に関して、保護林程度のものに関してもこの程度の規定があるのに、さらに一般と強力なる保安林については、この程度の保護もないというようなことは、考え方としてはおかしいのじやないかというのが私の質問の趣旨であつたわけであります。これは国家自身が起業者となつて、そして収用法に基く権利というものは、必要なる場合にはどこまでもこれが追求できるようなお考え方で進んで行つてしかるべきものでないかと私は思うわけでございます。
それからただいま林政課長の御説明によりますと、こんなお話がありました。たとえば第五条の交換の場合等についても、国有財産法との関連について御説明があつたわけでございます。また中央森林審議会の議を経てとかなんとか、林野当局からそういう点について御説明があつたから、それについてさらに質問を続行いたしたいと思うわけでございます。たとえば第五条の交換について御質問いたしますが、民有林と普通財産に属する国有林野とを交換する場合においては、国有財産法第二十七条第一項但書の規定、これは皆さん御承知の通り、価額の差額がその高価なものの価額の四分の一を越えない場合において交換を認めるという規定であるわけでございます。この法律をお書きになつたのだから当然御承知のことであろうと思いますが、この規定を排除してこれを二分の一に拡張しておられます。これはある意味において恩恵でございましようが、特別会計に属する林野はほとんど企業用財産であつて、普通財産は非常に少いのであります。従つてこの規定が動く余地ははたしてあるだろうかということであります。動く余地はほとんどないのではないかと私は考えているのでありますが、この点についての御意見を第一に承りたい。もしまた企業用財産をもつて交換の用に充てるということになりますと、固有財産法との関係は一体どうするのか。おそらくこの場合におきましては、企業用財産を普通財産に落して交換の用に充てるということに相なるのでございましようが、本法によつてこの交換の要が生じた場合、本法は国有財産法に優先するという規定がいるのではないか。この場合に対する御処置はどうなさるのか、そういう点について林野当局の御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/122
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123・柴田栄
○柴田政府委員 これは国有林野整備臨時措置法においてとりましたと同様の措置でございまして、普通財産すなわち不要存置林野に移してこの規定を適用する考えでございますので、国有財産法に優先するという考えではなく、国有財産法における額の規定を二十七条の一項但書にかかわらず二分の一まで拡張するという考えだけに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/123
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124・福田喜東
○福田(喜)委員 御趣旨はよくわかりますが、そうしますと法律の規定上企業用財産をもつて普通財産、つまり不要存地として交換の用に充えるということになりますならば、この場合普通財産に落して不用存地にするんだということについて、交換の必要が生ずるわけですが、その際は国有財産に対する何らかの条文を置く必要はないんですか。その点はどうでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/124
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125・柴田栄
○柴田政府委員 国有財産を普通財産に切り替えるという措置は、大蔵省との協議によりまして、協議が整つて普通財産に組みかえた場合は、それで措置ができることになつておりまして、現在も国有林野整備の方法はこれによつて処置いたしております。この例にならつて処理できるという考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/125
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126・福田喜東
○福田(喜)委員 これは大蔵省がいつもいつも文句を言うのは長官御承知の通りでございます。私はこの場合について、これが円滑に行くように何らかの法的な御措置を煩わしていただきたい。法律の規定がいらぬならばけつこうでございますが、それにひつかかつてしまつて、につちもさつちも行かなくなるのが現実の例であります。その場合に政令なり何なりに譲つてもけつこうでございます。けつこうでございますが、国有財産を普通財産つまり不要存地に切りかえる場合において、大蔵省との話合いを事前につけられて、それに基く措置を政令等においてやられるなり、あるいは法庫の条項に一項をつけ加えるなり、この点について大蔵当局とよくやつていただかぬと、運用にひつかかりを生ずるのではないか。これは私の老婆心かもしれないが、ひとつ御意見を承つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/126
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127・柴田栄
○柴田政府委員 その点は円滑にこの事案を進めさせるという意味において、いい方法かと思うのでありますが、大蔵省が国有財産の全体の管理という点を考えております際に、一切関連なく当方だけで実施するということがはたして妥当であるかどうかというようなことを考えますと、やはり一応協議いたしまして、普通財産に切りかえて実施することが妥当ではないかと存じますし、大体それによりまして特に不都合なく実施できるということで現在整備法を実施いたしております実例からいたしまして、特に先生の御指摘のような心配は比較的少いというふうに私どもは考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/127
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128・福田喜東
○福田(喜)委員 私は長官が言われるように、林野庁の一存で行かぬ、大蔵省の協力を願わなければこの点の施行はむずかしいと思いますがゆえに、あるいは法律で縛るなり、政令でこれに関する両者の共管の省令を出すなりして、この点に関する保証をした方がいいのではないかということを、老婆心ながら申し上げたわけでございます。それから次に中央森林審議会について、今臼井さんから御発言がありましたから、それに関連して申し上げますと、現在の中央森林審議会なるものは、この法によると保安林整備計画とか強制買収の計画も付議することになつておりますが、その中央森林審議会は、その権限と機能を見れば、その陣容、その働きがこういう仕事をするのにふさわしいものでしようか。この点について御意見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/128
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129・柴田栄
○柴田政府委員 中央森林審議会の構成は、林業経営に関連する行政、あるいは経済、さらに技術、各方面のそれぞれの権威者を一応委嘱いたしておりまして、根本的な林業の政策という面に関連いたしましては、現在のところ最も権威のある諮問機関であると考えておりますので、私どもといたしましては、ここに諮問をいたし、あるいは審議議決をいただくことが一番妥当であると考えているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/129
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130・福田喜東
○福田(喜)委員 これは露骨なことを申し上げて相済みませんが、現在におきましては、中央、地方の森林審議会の状況は、まつたくおざなりの責任転嫁の諮問機関化しているような形である。実際に保安林買上げというような現業的な仕事を進めるにあたりましては、その陣容なり権能なりを見ると、非常に無理がある。実際この仕事を進めて行く場合におきまして、実際に現地調査等をやらなければならぬ。実質調査をやる場合におきまして、これには大体事務局が地方にあるかないか知りませんが、実質調査その他をなす場合に、人手も足らぬし費用もないというのが実情でございます。この予算案によりますと、保安林の買上げの費用が十五億円、治山事業が十五億円、調査費が二億円でありますが、これを実際に動かす場合において、実質調査その他費用の捻出に関しまして、この保安林買上げの場合の内容審議に役に立つようにするために、こういう金をこの方面にもお使いになる用意かあるのかどうか。またはたしてそういうふうに使われるというのであれば、この森林審議会の組織とか制度等をもう一ぺん考え直してみられる必要はあるまいか。こういう場合において調査費等の予算措置の必要をいかにお考えになつておられるのか。この点について長官の御意見を承つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/130
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131・柴田栄
○柴田政府委員 中央森林審議会の内容あるいは資格についてたいへん御不安があるようでありますが、私どもといたしましては、やはり一番信頼できる公正な機関であると考えております。しからばこれが活動のために特に保安林整備をめぐりまして、三十二億の中で経費を支出できるかというお尋ねでございますが、調査費を持つておりますので森林審議会の活動のための支出は可能である、かように考えております。
なお組織的に不備な場合にこれを強化する考え方があるかというお話でございますが、必要に応じましては専門委員を現在の専門委員以外にさらに委嘱いたしまして、特定の事項を調査するとか、あるいは検討願う組織もございますので、専門委員の以外の新規組織とこれが活動によつてやつて参りたいという考えを持つておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/131
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132・福田喜東
○福田(喜)委員 私は長官の御答弁をいただきましたが、さらにこの組織あるいは内容等について、もう一ぺん御考慮を煩わしたいのでございます。それから第二条の規定によりますと、農林大臣が保安林整備計画を定める場合には中央森林審議会の意見を聞くということになつておりますが、第六条第二項の強制買取りの手続を進める場合におきましては、中央森林審議会の議を経てとわざわざこれを書きかえておるのであります。すなわち議を経てこれを行うことになつておる、このように買取りの場合に手続を慎重ならしめるためこの法案の上に一種のニユアンスをお出しになつた御苦心の跡はよくわかるのでありますが、元来審議会は農林大臣の諮問機関であり、議決機関ではないわけであります。このようにわざわざお書きかえになつておることは、強制買取りの手続を進める場合には、農林大臣は審議会の議決に拘束されるということを意味するものでございましようか、この点について御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/132
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133・柴田栄
○柴田政府委員 本来中央森林審議会は重要な事業施策に関します農林大臣の諮問機関であるということが性格なのでございます。従いまして第二条の場合には本来の中央森林審議会の性格において意見を聞くという考え方でおるのでございますが、強制買取りの場合に一方的に農林大臣がこれを決定するということでは、客観性において不備があるということで、この限りにおきまして中央森林審議会の議決に付して、第三者的な判断を公正に執行していただく、こういう考え方で、この限りにおいて議を経るというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/133
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134・福田喜東
○福田(喜)委員 そういうふうにお書きになりますと、この審議会の性格を、この審議会の議決に拘束されるようなことは、あたかも議決機関のようにお取扱いになるように見えますが、この点は法律はどうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/134
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135・臼井俊郎
○臼井説明員 先生の御指摘の通り、強制買取りの場合に中央森林審議会の活動いたします性格は議決機関である、この限度で従来の単なる諮問機関から性格がかわるのだ、かように私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/135
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136・福田喜東
○福田(喜)委員 それから本法によつて国が買い入れる森林等は、国土保全上必要なものに限るわけでございます。これは第四条の規定にその通り書いてあるわけでございますが、この第四条の規定を読みますと私は非常に疑問に思うわけであります。「国は、第二条第一項の保安林整備計画に基き、毎年度予算の範囲内において、森林及び原野その他の土地(以下「森林等」という。)で左の各号の一に該当し、国土保全上必要なものを買い入れるものとする。」と書いてありまして「一森林法第二十五条第一項第一号から第三号までに掲げる目的を達成するため保安林として指定されている森林」これについて私はまず一つ疑問があるのであります。二には「保安施設地区の区域内の森林等」こういうことが書いてあります。ところが三に「前二号の規定により買い入れる森林等に隣接し、これをあわせて経営することを相当とする森林等」こういうふうに第三号がいつて来たので、経営上の条件が国土保全上必要ではないのではないか、こういう疑問がわきますが、この点に関する林野庁当局の御見解を承りたい。誤解があつてはいけませんからもう一度繰返しますが、買い入れる森林等は国土保全上必要なものに限るわけでありますが、第三号には「前二号の規定により買い入れる森林等に隣接し、これとあわせて経営することを相当とする森林等」ということになりますと、この中に国土保全というもの以外に経営という観念が入つて来る。経営という観念が入つて来ると、国土保全という観念はどういうふうになるのか、両者の関係はどうなるかということをお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/136
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137・柴田栄
○柴田政府委員 ただいま御指摘の一項に疑問があるというお話でございますが、一項の疑問の点をもう一度お聞かせ願いたいと思います。三号に規定しております「隣接し、これとあわせて経営することを相当とする」という考えは、あくまでも保安林あるいは保安施設地区とあわせまして、国土保全上必要なために隣接地区を含めて経営しなければ、国土保全の目的を十分に達し得ないというものに限るという考え方でございますので、たとえば保安施設を要する地区だけを施設地区として買い上げましても、その周囲の隣接しておる林野等をあわせて経営しなければ、単独では保持ができない。たとえば堰堤等を築設いたしましても、その周囲の山腹が妥当に経営されなければ、その効果を十分に発揮しないというような隣接の地区は、国土保全上必要な意味において経営することを相当とするという森林であるわけでございます。あくまでも国土保全の上から必要だということが大前提でございまして、経営というのは、その意味における経営ということで私どもは考えておることを、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/137
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138・福田喜東
○福田(喜)委員 第三号の隣接の概念でございますが、この隣接というのは客観的の標準があるのかという点と、次に第一号によりますと森林法第二十五条第一項第一号から第三号までになつておりますが、私はこれは治山治水の対策上この法律ができたということになりますと、第五号に「風害、水害、潮害、干害、雪害又は霧害の防備」ということがあります。第六号にも「なだれ又は落石の危険の防止」というのがありますが、なぜ第一号から第三号までのみをとつて、ここに第五号のごとき治山治水対策上必要なものを——これは私は特に必要だと思いますが、これを除かれたか。林野庁で出しております「森林法解説」によりますと、いろいろな説明がついておりますが、私はこれを読めば読むほど非常に疑問に思うのでありまして、この一号から三号までは、洪水その他国土の荒廃の予防が目的であり、第四号から第七号までは比較的局地的な危害予防を目的とし云々ということが書いてあります。これが治山治水対策であるならば、これは局地的な災害予防、危害予防というものが当然取入れられてしかるべきだと思うのでありますが、第一号から第三号までに限つた理由、ことに私は第五号などという、治山治水対策上から言うならば、非常に重要な意義を持つものをわざわざはずされておりますが、その点をどうお考えか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/138
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139・柴田栄
○柴田政府委員 お説の通り四号以下五号、六号等につきましても、国土保全という点には当然関連はございまするが、いずれも非常に局地的な防災的な要素の保安林でございまして、この問題は当初におきましては並行して考えるというような考え方もあつたのでございますが、一応直接流域を主体とする国土保全をめぐる治山治水の基本対策にしぼり、特に防災林の整備に関しては、別途にこれが整備を考えるということで規定されておりますので、全然これは考慮しないということではなく、別途に、たとえば海岸の飛砂防止、防潮等に関しましては、海岸砂地地帯の農業振興等と合せまして防災林の整備を考える。局地的なものにつきましても、それぞれ防災林の造成に関しまする計画を進めるということで、一まず今回の保安林整備は流域保全ということを対象として考えるというところに限定されたという点を御了承願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/139
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140・福田喜東
○福田(喜)委員 隣接の観念、それから森林審議会の活用の場合において、これは事務局がないと地方森林審議会とのつながりが、中央森林審議会だけでは百九十八、二百足らずのものの具体的の場合の判定が、地方の実情を知らないとなかなかつきかねると思うのでありますが、地方森林審議会との有機的なつながりはどういうふうにお考えになりますか。こういう点について最後に承つておきまして、まだいろいろお尋ねしたいことはございますが、本日の質問はこの程度で打切ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/140
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141・柴田栄
○柴田政府委員 隣接というのは、これは非常に幅を持たせれば広いことになりまして、それこそ失地回復というような御懸念も出て参りますが、私どもは、きわめて狭義の隣接ということで保安林の機能を主体といたしまして、あくまでも国土保全上必要な保安林並びに保安施設という程度に考えておる次第であります。
また事務局等を置かねばならぬのではないかというお話でありますが、事務局に相当するものは、林野庁においてこれを担当することになつておりますので、必要に応じて規模を拡大することは可能であると考えております。
なお指定に関しましては、もつと現実の実情にあわせて考えなければならぬのではないか、その際に地方森林審議会との関連を持つ必要があるのではないかという御質問だと思いますが、中央森林審議会は一応現地についての審議はいたさないで基本関係だけを審議するという建前でおりますし、審議会のメンバーあるいは妥当なメンバーを煩わせて判定あるいは調査に御協力を願うという考えでおりますので、特に地方森林審議会を煩わすという考え方は持つておりませんから、関連を持たす必要はないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/141
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142・井出一太郎
○井出委員長 本日はこの程度をもつて散会いたします。
午後四時二十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X02619540402/142
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