1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十九年五月十一日(火曜日)
午前二時十六分開議
出席委員
委員長 井出一太郎君
理事 小枝 一雄君 理事 佐藤洋之助君
理事 綱島 正興君 理事 福田 喜東君
理事 金子與重郎君 理事 芳賀 貢君
理事 川俣 清音君
足立 篤郎言 遠藤 三郎君
寺島隆太郎君 松山 義雄君
神戸 眞君 吉川 久衛君
井谷 正吉君 中澤 茂一君
中村 時雄君 安藤 覺君
河野 一郎君
出席国務大臣
農 林 大 臣 保利 茂君
出席政府委員
農林政務次官 平野 三郎君
農林事務官
(大臣官房長) 渡部 伍良君
農林事務官
(畜産局長) 大坪 藤市君
農林事務官
(蚕糸局長) 寺内 祥一君
委員外の出席者
農林事務官
(畜産局畜政課
長) 鵜川 益男君
農林事務官
(畜産局経済課
長) 昌谷 孝君
農 林 技 官
(農業改良局農
産課長) 岩永 達夫君
専 門 員 難波 理平君
専 門 員 岩隈 博君
専 門 員 藤井 信君
—————————————
五月八日
委員中村時雄君辞任につき、その補欠として杉
村沖治郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月十一日
委員杉村沖治郎君辞任につき、その補欠として
中村時雄君が議長の指名で委員に選任された。
—————————————
五月十日
岩木川取入えん堤工事施行に関する請願(淡谷
悠藏君紹介)(第一五六三号)
国営芦田川ダム建設工事費認可に関する請願
(高橋禎一君紹介)(第二二七五号)
玉糸の政府買上げに関する請願外一件(園田直
君紹介)(第四七六二号)
同外二件(並木芳雄君紹介)(第四八一二号)
同外一件(八木一郎君紹介)(第四八一三号)
木炭公営検査強化に関する請願(白浜仁吉君紹
介)(第四七六三号)
保温折衷苗代設置に要する温床紙購入費国庫補
助に関する請願(原茂君紹介)(第四七六四
号)
長崎県全地域を畑地域に指定の請願(白浜仁吉
君紹介)(第四七六五号)
月泊山国有林野払下げに関する請願(松浦周太
郎君紹介)(第四七六六号)
下原保安林解除に関する請願(松井政吉君紹
介)(第四七六七号)
氷上郡を集約酪農地区に指定の請願(佐々木盛
雄君紹介)(第四七六八号)
同(有田喜一君紹介)(第四八一六号)
農地改革による犠牲者救済に関する請願(小笠
公韶君紹介)(第四七九八号)
戸倉村地内国有林野払下げに関する請願(佐々
木更三君紹介)(第四七九九号)
昭和二十九年度林道開設事業予算増額に関する
請願(足鹿覺君紹介)(第四八〇〇号)
国民食糧自給確保国民運動実施に関する請願
(坂田英一君紹介)(第四八一四号)
酪農振興法制定に関する請願(尾関義一君紹介
)(第四八一五号)
同(阿部五郎君紹介)(第四八二三号)
同外四件(西村力弥君紹介)(第四八五三号)
同外四件(池田正之輔君紹介)(第四八五四
号)
同(稲富稜人君紹介)(第四八五五号)
林業試験所移転に関する請願(宇都宮徳馬君紹
介)(第四八二二号)
東富士演習場土地接収農家の救済に関する請願
(勝間田清一君紹介)(第四八二四号)
輸入外米中砕米の輸入分量に関する請願(田中
萬逸君紹介)(第四八四四号)
蜜蜂腐そ病予防措置に関する請願(森清君紹
介)(第四八五六号)
の審査を本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した事件
酪農振興法案(内閣提出第一五四号)
凍霜及び暴風雪による農作物の被害に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/0
-
001・井出一太郎
○井出委員長 これより会議を開きます。
去る四月の降霜による農作物被害に関しまして調査を進めます。先般の蚕糸小委員会におきまして今次の凍霜害対策を推進するため、被害の実情を現地について調査しようとのことでありましたが、事急を要する問題であり、かつ委員会として多数重要法案もかかえておることでありますので、成規の手続によることなく、一応非公式ではありましたが、昨日埼玉、群馬両県下の視察を煩わしましたので、この際その報告を承ることにいたします。まず佐藤洋之助君より埼玉県下の状況を御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/1
-
002・佐藤洋之助
○佐藤(洋)委員 私はこの際第一班といたしまして埼玉県下の被害状況を調査して参りましたので御報告を申し上げたいと思います。
調査に参りました一行は、松山委員、神戸委員、杉村委員、私に藤井専門員と寺内蚕糸局長、これが一行でございました。
昨十日に非公式でありましたが、埼玉県におきます今般の凍霜害の被害がどんなものであるかというので、まず県庁を訪れまして、県庁において関係各係員より一応の説明を承つたのであります。今度の被害の状況のかわつておりますことは、昨年は非常に広範囲にわたつて全面的な被害が生じたのでありますが、今度の場合は部分的なのです。ところ貧乏と申しましようか、通り魔のようにある一定の部分だけ深刻な影響を受けて、すぐその隣の畑は何でもないというような状況に置かれてありますのが、いわゆるかわつた被害の状況であるということを、まず前提に申し上げておきたいと思うのであります。
県の調査による被害の状況は、桑葉について見ると、全桑園面積が一万五千五百五十五町歩あります中で、今般凍霜による被害の面積は四千九百四十三町五反歩で、これを収穫皆無面積に換算いたしますと千五百八十三町五反歩となりまして、全桑園面積の一割二厘に当るわけでございます。また桑葉の被害によつて蚕繭の減収は十五万八千三百五十貫と推定されております。これを金額に直しますと約三億八千六万五千円となるのであります。さらにこの被害は農林省埼玉統計調査事務所の調査でもほぼ同様で、大きな開きはありません。すなわち統計調査事務所によりますと、桑園面積は一万五千四百二十町歩、被害面積四千七百六十五町八反、収穫皆無換算面積千四百七十六町二反であります。また繭減収量見込みを十三万一千六十四貫と推定いたしておりまして、いずれも大差がないのであります。この被害は昨年のそれに比べると、大体四分の一程度でありますが。地域的に見ますと、人間、秩父、大里、児玉郡が著しく、部分的には、昨年の被害にまさるとも劣らぬものがあります。
次に茶について見ますと、県の調査によりますれば、本年一月二十三日の大降雪に引続き、低温の連続により寒害をこうむつていた上、さらに過般の凍霜害を受け、被害を加重したのであります。すなわち茶園面積一千六百五十六町二反歩中、被害面積一千四百七町八反歩で、被害率八五%に当る。なおこれを収穫皆無換算面積として見ますと、四百九十九町九反で、その被害金額は九千九百九十八万円と推定されるのであります。茶について統計調査事務所のそれを見ますと、作付面積千五百四十町、被害面積千三百八町七反、収穫皆無換算面積三百十九町五反となりまして、茶については、桑の場合よりも差が大きくなつております。これは当地の茶は主として畦畔栽培が多く、調査しにくい点も差を生じた一原因と思われます。本年における被害が昨年に比して比較的軽かつたゆえんは、昨年の経験にかんがみ、防除対策が積極的に行われたためであります。
その対策について申し上げますと、県に凍霜害防除督励本部を置き、各地方事務所に支部、各町村に分団、部落に班を置きまして、熊谷測候所と連絡をとり、凍霜害予報または警報をラジオ、電話等により速報いたし、危険があると認められる場合は、桑葉をわらで覆蓋または包被するとか、桑園に撒水するとか、また重油あるいは薪、わら等を燃焼する。さらに火焔筒によつて煙幕を張る等、適宜各種の方法を用いて防除に努めているのであります。但し、これらの対策は非常に労力を要し、または費用も相当にかさみ、たとえば重油の場合、大体反当二千円程度を要するといわれ、またわらは飼料、堆肥の材料でもあり、これらの防除用にのみ用いるわけにも行かず、特に相当広範囲にわたる場合は労力的にも不可能であると思われます。
今後の対策といたしまして、まず被害地帯の病害虫の防除と樹勢回復に万万の策を講ずることであります。次に今般行われた防除対策は、いずれも有効な措置であり、今後これを一段と組織化して計画的、総合的に行う必要がありますが、わらによる覆蓋、包被等は非常に労力を要するものであるから、部落または適宜単位数の農家による共同作業を行う必要があり、また重油等を用いた場合は、できれば助成措置が望ましい。以上は応急対策であるが、恒久的対策としては、耐寒性の強い新品種を改良すること、また特に地力を培養することが必要であります。一般に地力の高い所は被害が少い事例に、今は、今般の調査で明白になつたのであります。私どもつぶさに土壌の跋渉をしてみますると、いかにも地力の衰えた、肥料のくれてないような所が被害を受けておるというような実情が、ありありと見えるのであります。こういう点は特に今後指導して行きたいと思うのであります。特に豊岡茶業試験場の茶はまつたく害がなく、防除対策も一般農家よりも行き届いた点もありますが、特に地力が高いこと、優良品種が栽培されていることが大きな原因と考えられます。たとえばヤブキタのごときも、あるいは特殊狭山式のごとき強靱な品種の改良の結果がこの原因であろうと思われます。さらに経営的立場から見た改善の対策として、稚蚕飼育用の早生桑を、凍霜にかかる危険性の比較的少い家屋敷のまわり、地力の高い所または防除措置を容易に行い得る所に植え、他の桑はできるだけ晩生種に転換して行くことも必要であります。
また畑地灌漑施設を行いますことももちろん必要でありますが、さらに近代化学を取入れた対策について、もつとつつこんだ手段が検討さるべきだと思います。たとえば、ヘリコプターまたは飛行機によつて風を起すことなど研究さるべき方法ではないかと存じます。要するに、気象関係、農業関係一体となつて総合的な対策の樹立をはかるべきであります。
次に、現地側の要望としましては、第一は蚕繭共済保険金の緊急概算払いの実施、第二は稚蚕児配給施設費、掃立不能蚕種代金に対する助成、第三は凍効性窒素肥料の無償配布、第四は営農長期低利資金の優先貸出し、第五は凍霜防除施設費に対する助成等であります。
なお統計調査事務所が県下百六十農家を対象とした農家経済事情調査によりますと、昨年は一昨昭和二十七年に比較して、現金収入におきまして大差はありませんが、現金支出が増加いたし、結局二十七年の収支差引三万九千二百十一円の黒字は、昨年は約四〇%を減じ、二万三千四百三円となり、それだけ農家経済事情は悪化して来たものと見られますが、これには昨年の凍霜害及び冷害が大きく作用しているものと考えられますので、この点今後の災害対策上留意すべきものと存じます。
要するに昨年被害を受けまして、またまた今年重ねての被害を受けて、まことに再生産にも支障を来すような実情にありますので、こういう重ねての災害については、特段の政府の御考慮を願いたいと思うのであります。以上概要を御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/2
-
003・井出一太郎
○井出委員長 次に井谷正吉君より群馬県下の状況を御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/3
-
004・井谷正吉
○井谷委員 私は本年四月の凍霜害による群馬県下の被害状況を、昨五月十日に視察して参りましたので、その概要を御報告いたします。
参加者は、綱島正興、金子与重郎、小平忠、五十嵐吉藏、井谷正吉の各議員でありまして、農林省蚕糸局より小林蚕業課長、事務局より高木、工藤両君が同行いたしました。
まず佐波郡に入り、勢多郡、前橋市、群馬郡、碓氷郡、甘楽郡の順に実地調査を行つたのでありますが、沿道における被害状況はもちろん、要所に車をとめて、桑、麦等を手にとりその惨状を見聞するとともに、地元各位の要望を聞いたのであります。
県下の被害状況を申し上げますと、去る四月二十一日及び二十八日両度の降霜が今回の被害の原因でありまして、二十八日には特に気温が低く、所により結氷を見たほどでありますので、これによつて農作物が決定的な打撃を受けたのであります。元来、凍霜害は割合に地域的に起るのでありますが、今回も霜道に当る地域が甚大な被害を受け、これらの地域の農家は、今年で三年連続の凍霜害にあつて、その経済的打撃はまさに深刻なものがあるのであります。また本年は霜道以外の地域にも被害箇所が多く、隣接地区でありながら被害の所もあり、これらは気温、露点等の関係によるものと思われますので、今後の恒久的対策が望ましいと思うのでございます。
被害面積につきましては、県側の調査によれば、桑園の被害面積は約一万八千町歩、これを収穫皆無に換算した面積は約八千五百町歩でありまして、これは全桑園面積の約三五%に当つております。昨年の大凍霜害が約一万九千余町歩でありますから、本年はこれと大差のない広範囲の被害であることがわかるのであります。なお地区別の被害程度は、県と統計調査事務所との調査は若干の相違はありますが、大体において一致しておりまして、調査の数字は決して誇大なものではないことが思えるのであります。県下の繭の生産量は、平年約四百五十万貫、本年の目標は五百万貫でありますが、今回の桑の減収により、約五十六万貫の繭の減収となる計算であります。
麦類につきましては、被害面積は約一万三千町歩で、被害程度に現在判然とはいたしませんが、低温による生長、稔実の阻害で今後被害は増大するものと見られます。
次に、ばれいしよは被害面積約二千七百町歩、菜種は約四百町歩、果樹は約百七十町歩でありまして、農家の現金収入減による打撃は非常なものであると思われました。
以上の被害総額は合計約七億円と現在推定されておりますが、麦類の被害増加により、さらに被害額は増大する予想であります。全般に、本年の凍霜害は、昨年のそれと重なつた地区が多く、局部的に甚大な被害を受けておりますので、国においても早急に救助の方策を講ずることが必要であると考えられるのであります。
次に、現地側の要望としましては、一、共済保険金の即時仮払いの実施、二、営農資金償還延期、三、桑樹勢回復速効性肥料購入費助成、四、桑樹病害虫防除薬剤購入助成、それから一般農作物に対する病虫害予防費助成、営農資金の特別融資、課税の減免の処置を講ぜられたいとの要求がございました。なおこれらの詳細は県調査事務所その他の書類をごらん願うことといたしまして説明は省略をいたしますが、当局においても十分この点を御検討になりまして、この際特別の努力をいたされんことを要請いたしまして、私の報告にかえる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/4
-
005・井出一太郎
○井出委員長 次に去る九日の北海道地方における暴風雨雪による農作物被害に関して、芳賀貢君より発言の申出があります。これを許します。芳賀貢君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/5
-
006・芳賀貢
○芳賀委員 私はこの機会に農林大臣並びに渡部官房長も出席されておるので、北海道の暴風雨雪災害に関する問題に関して若干発言いたしたいと思います。
五月九日の夜半に、日本海を横断して北海道の西海岸に上陸した九六〇ミリバールの低気圧は、昭和九年以来の最低気圧でありまして、最大瞬間風速は浦河で三十六、留萌で三十二、小樽、函館二十七、札幌二十一メートルに達する旋風を交えた大暴風雨雪となつて、これによる被害は北海道全地域にわたりまして、しかも十日午後七時現在におきましても、なお北海道各地は平均風速二十メートルの強風を伴う猛吹雪となりまして、特に後志、空知、上川支庁管内におきましては、一尺余の積雪を見まして、かつ札幌地方のごときは実に大正二年以来の異常降雪となつたのであります。さらに網走、釧路、十勝の一部地域におきましては、いまだに交通、通信が杜絶の状態にあるのであります。このために北海道各地域におきましては、人的被害といたしましては、相当数の死者あるいは負傷者を出したのを初めといたしまして、家屋の倒壊あるいは漁船の沈没、漁網の流失そのほか道路、河川、橋梁、港湾、漁港、山林等の被害は、実に甚大かつ広汎にわたつているということが確認されるのであります。特に北海道最大の穀倉地帯であるところの石狩、空知、上川支庁管内におきましては、温冷床苗しろの成育の一番重要な時期にあたつておりまして、これらの温冷床苗しろの被害は想像に絶するものがあるのであります。北海道におきましては、今年度約四百三十一万坪の温冷床の設置を行いまして、特に二十八年度の冷害対策の一環といたしまして、この設置された温冷床苗しろに対しては、政府の助成等も一億一千余万円が交付されるようなことが約束されておるわけでありますが、これらの施設は実に二百四十万坪程度全滅の危機に瀕しておるというような状態であります。さらに判明した被害の具体的内容等に対しましては、幸い本日北海道の田中知事が当委員会に参つておりますので、委員長におかれてこのことを十分考慮されて、もし本委員会において田中知事からの陳情等を聴取することのお手配が願えれば、非常に幸甚と考えておるわけであります。特に北海道におきましては、昨年の凍霜害並びに冷水害等によつて、農業関係においても非常に甚大な被害を受けまして、これが復旧というような意味において、今年度の食糧増産に対しましては、水稲等におきましては、特に温冷床苗しろを中心にして耐冷、耐病等の品種を選んで設置をしようというようなときに至つて、このような予期せざる被害を受けたのでありまして、この点に対しては、後刻知事から具体的な陳情等を聴取されると同時に、農林大臣等からも、この緊急対策に対して、特に好意のある、しかも熱意のある善処方の意思表示を願いたいというふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/6
-
007・井出一太郎
○井出委員長 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/7
-
008・井出一太郎
○井出委員長 速記を始めて。引続きこれより酪農振興法案を議題といたし、審査を進めます。前会に引続き質疑を行います。芳賀貢君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/8
-
009・芳賀貢
○芳賀委員 私は前回の委員会において、第三節まで一応質疑を進めたわけでありますが、本日は残余の点に対しまして、当局から具体的な御答弁を願いたいと思うのであります。
第三章の生乳等の取引の問題でありますが、この法案によりますと、契約等の文書化を行つて、そうして一応乳価の安定をはかるということがねらいでありますが、具体的には価格のとりきめ、あるいは文書化を行う場合において一番問題になる点は、酪農民の生産するところの乳価の安定というものがどのような意味において表現せられるかということであります。これは単に乳価を安定させるということでなくて、この乳価の中に包含されるところのいわゆる生産者のコスト、こういうものがどのような具体的な算定方針において、この契約の基本的なものとしてこれを算出することができるかという点に対しては、明確にこの法律の中においてはうたわれておらないわけでありますが、この点に対して局長はどのように考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/9
-
010・大坪藤市
○大坪政府委員 酪農を振興させまして、しかもその上に国民大多数が安い値段で牛乳を飲み得るということは、わが国の食糧問題解決の上からも、農家の生活安定の上からも一番必要なものであろうと思うのであります。できるだけ乳価を安くするということが国民食生活の改善の上から必要であるのでありますが、安くしました結果が農家にだけ背負わせられるということは、これは酪農振興上からもとるべき措置ではないのでありまして、価格引下げの努力の結果というものは、農民側も、製造する側も両方がおのおの努力をされまして、引上げをするということでなければならぬと思うのであります。生産費の問題になりますと、これはきわめて困難な問題であるのでありまして、農家個々によりまして、また地方々々によりまして非常に違うと思うのでありますが、いずれにいたしましても、少くとも再生産に間に合うというような価格でなければ、農家にとりましても非常に酷でありますし、農家が安んじて乳牛を飼育いたしまして、しかもそれによつて決して欠損を生ずるというようなことがないというような程度には、少くとも維持しなければならぬ、こういうように考えるのであります。そこいらの問題が個々の場合にきわめて困難ではないかと思うのでありますが、少くとも再生産を維持するに必要な価格は維持して参りたい、かように存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/10
-
011・芳賀貢
○芳賀委員 再生産を維持する価格といいますと、たとえば一例をとつて、現在の全国的な乳価というものは、非常に画一的ではないわけでありますが、少くとも最低一升四十五、六円から五十五、六円までの、これくらいの幅であるというように考えるわけです。特に局長の御答弁の中においても、先般来乳価を引下げるということを非常に強く主張されておるわけでありますが、現在の乳価から見て、この法律の持つ効果というものは、これ以上にこれを引下げることになるか。再生産を保障することのできるような正当価格を設定するということになると、現在の線から上まわるということになるか、その推定はどちらになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/11
-
012・大坪藤市
○大坪政府委員 原価採算と申しますか再生産費と申しますか、その点につきましては、乳牛の飼育がどういうような状態のもとに行われているか、これれによつて非常に違うと思うのであります。たとえて申し上げますと、大部分を草その他自給飼料でまかなつているか、あるいはその多くの部分を購入飼料によつてまかなつておるか、こういうような条件によつて非常に違うと思うのでありますが、私どもといたしましてはその点につきまして、できるだけ自給飼料、特に濃厚な蛋白質源を持つております草資源、こういうものによつて飼育して参る、そういたしますと濃厚飼料の価格の影響を受けることもきわめて少いのでありまして、しかも購買したものでないのでありますから、その点につきまして非常に有利な状態になるのでありまして、そういうような飼育状態が一般化して参りますと、それだけ牛乳の価格は全体的に見まして下げてもよろしい。もちろん個々の場合に当てはめて参りますと、ほとんど大部分を濃厚飼料によつてまかなつている場合には、その生産費が自然高くつく、こういうようなことになるのではないかと思うのでありますが、少くとも私ども意図しております、特に集約酪農地帯のような所で飼育いたしましたものにつきましては、相当引下げ得るんじやなかろうか、かように考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/12
-
013・芳賀貢
○芳賀委員 飼育している乳牛から乳量の増加を期待する場合においては、もちろん濃厚飼料をあてがわなければならぬわけですが、最近における飼料の価格は、酪農振興法等が、ある意味において影響しておるのか、非常に高いわけであります。こういう点に対しては、たとえば飼料自給安定法等においてもふすま等、そういうような飼料に対するある程度の価格の高騰の抑圧ができるような法的措置もとられるわけでありますが、現在においては、飼料の価格も一応最高の限界まで来ているように見えるわけです。そういうような飼料の価格の場合——特に最近における乳牛そのものの価格が非常に高いわけですね。少くとも相当の乳量を出す牛は、三十万円以上を出さなければ購入できないということになりますと、乳価をきめる場合においても、飼料の価格あるいは乳牛の償却等を考えた場合においては、非常にこれは浮動性が出て来ると思うわけです。その中において一つの価格の安定をねらうということは非常に困難なことであると思いますけれども、これらの困難を克服するためには、どのような具体的方法によつて調節されるお考えであるか、その点をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/13
-
014・大坪藤市
○大坪政府委員 牛乳の価格の安定の問題でございますが、御承知のように牛乳は季節によりまして、生産の方面にある程度の週期的変動がありますと同時に、消費の方におきましても週期的な変動があるのであります。その結果価格面におきましても、ある程度の季節的な、週期的な変動が生れて来ているのが通例でありますが、しかしこれは大体そういう傾向があるということであるのでありまして、もちろん飼料の価格等の関係で、年間におけるそういうような価格の季節的な変動が、必ずしもぴつたりとそういうふうに来ているとは限らないと思うのであります。私どもといたしましては、できるだけ購入すべき飼料の範囲を少くするように努力をいたして参りたいと思うのであります。現在飼料、特にこれは糟糖類と申しますか、かす類が非常に高くなつておるのでありますが、この点につきましては、いろいろと、外国からのふすまの輸入、代替的飼料の供給という点を考慮いたしておるのでありますが、いずれにいたしましても乳価が相当の価格に相なりますので、濃厚飼料をよけいにやるという傾向にあるんじやないかと思うのであります。私どもといたしましては、農業とはつきり結びつきました酪農を振興させまして、乳牛の飼育が濃厚飼料にたよるということは、少しでも割合を少くいたしたいと考えておるわけであります。濃厚飼料に全面的にたよつております酪農が一般的であります場合には、飼料の価格の変動が非常に激しいとき、特に価格の著しい高騰の場合には、乳牛の再生産というものが逆生産になるというようなこともあり得るのであります。そうなつて参りますと、日本の酪農振興はきわめて基盤が弱いということに相なるのではなかろうかと思うのであります。できるだけ農業に溶け込み、かつ自給飼料というものと溶け込んだ酪農の振興ということを私ども考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/14
-
015・芳賀貢
○芳賀委員 私の疑問とするところは、局長はただいま価格決定をやる場合においては、再生産を可能ならしめる価格を一応の限界にするというお話でありましたけれども、現在の経済状態の中において—特にこれは価格面においては自由な取引なんですね。しかもこの法律においては、あるいは最低価格を支持するとか、最高価格を押えるとか、そういうような有権的な措置は全然とられることになつておらぬわけです。そういうような状態の中において、その一つのねらいである価格維持をやることが可能であるか不可能であるかということが問題になつて来ると思うわけですが、局長はこの程度の法律をつくることによつて、価格の維持はある程度期待に沿える線において、いわゆる生産者的な価格が維持されるというようにお考えになつているかどうかということなんです。価格を引下げるという安定法であれば別ですけれども、少くとも生産者の立場の上に立つた乳価を維持するという上においては、この法律に対する期待はあまり持てぬのじやないかというように考えるわけですが、その点は自信を持つておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/15
-
016・大坪藤市
○大坪政府委員 ただいま御指摘の通り、私どもといたしましても、本法が成立いたしましたあかつきには、生産者の地位が全面的に擁護され得るとは考えておりません。この法律もきわめて初歩的な制度でありまして、規定の形式、内容その他すべての物事を強く全面的に解決して行こうというような建前のもとにできておるものではないのでありまして、生乳の取引につきましても、できるだけ生産者の地位を擁護して参りたい、こういうような考え方からもちろんスタートいたしておるのでありまするが、本法によりまして全面的に生産者の地位が保護できるというふうには私どもも考えていないのであります。ただ常時生乳の生産者、供給者としての地位を持つておりますので、不当に製造業者の方から買いたたかれるというようなことがないように、文書契約の内容等につきましても、明朗に白日のもとにすべてのことをやつて参り、そうして内容につきまして少くとも不当な点がないように、内容を明らかにしまして取引させて参りたい。それによりまして社会的な批判と申しますか、そういう爼上に乗せることにいたしまして、不当な搾取と申しますか、買いたたかれするというようなことのないようにして参りたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/16
-
017・芳賀貢
○芳賀委員 この文書契約の場合の当事者というのは、もちろん乳業を行う者と生産者の場合をさすものと考えますが、特に集乳事業というものを一つの事業の中にうたつておるわけでありまするが、今の段階におきましては、牛乳を集めるというような形は、これはやはりほとんどが協同組合等を通じて、そこに一応集乳されるというようなことであつて、これは明確に乳業とか企業というところから来るところの一つの集乳事業としての企業的なものと解釈する場合においては、相当時代的なずれが出て来るのじやないかというふうに考えるわけでありますが、この集乳等はむしろ生産者側の行う仕事であるというふうに判断してさしつかえないんじやないかというふうに私は考えるわけであります。特にこの文書協定を行うような場合においては、当事者という生産者側の立場は、これは個人あるいは生産者団体等をさすというように考えますけれども、少くとも一つの乳業を行う企業に対して、生産者側が契約を結ぶという場合においては、その人格の単位というものは、でき得るならば農業協同組合と業者間において契約を締結するというようなところまで、地位を高めておく必要があるのじやないかというふうに考えるわけですが、その点はどのように考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/17
-
018・大坪藤市
○大坪政府委員 牛乳の取引につきましては、いろいろな形態があると思うのでありまするが、私どもといたしましては、法律を制定と申しまするか、書きまする以上、あらゆる場合を想定いたしまして、一応それを対象にいたしまして処理して参る、こういうようなつもり一応集乳事業というような形態を考えたのであります。ただいま御指摘の通り、農業協同組合が組合員の生産いたしましたところの牛乳を共同販売する場合に、これをいわゆる集乳事業というようなものと観念していいかどうかにつきましては、非常に問題があろうかと思うのでありまして、これは農業協同組合の本来の事業であるのでありまして、これらの点につきましては、本法におきてましても、組合と組合員の売買の場合との間の関係につきましては、当然法律の対象外にいたしておるのであります。われわれといたしましては、集乳事業というものを書いておきませんと、乳業者が陰の者を仕立てて、それによつて取引をするというようなことも考えられますので、一応集乳事業という範疇を立てたのでありまするが、協同組合のような場合におきましては、そういうふうに観念する必要もないのじやなかろうか、かように考えております。
それから契約につきましては、当然協同組合が組合員を代表してと申しまするか、組合員の名におきまして乳業者と取引をする、こういうことになると思うのでありまして、少くとも集約酪農地帯、特に牛乳を集中的に生産して行こうというような場合におきましては、最小限度といたしまして、組合系統によつて集乳方面だけは少くともやつて行くということがぜひ必要じやなかろうか、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/18
-
019・芳賀貢
○芳賀委員 次にこの文書の契約ですが、これを知事に提出して、知事は内容を検討して、改善する必要がある場合においては勧告を行うということが規定されておりますが、どのような場合において知事は勧告をするかということ、たとえば不当に安過ぎるとか、不当に高過ぎるとかいうようなことが、経済的な画においては一番重要な点になるわけでありますが、この勧告する場合はどのようなことを想定しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/19
-
020・大坪藤市
○大坪政府委員 ただいま御指摘の勧告の内容でありまするが、これにつきましては、もちろん価格等の点につきましても勧告し得ると考えるのでありますが、すでにこれは私が申し上げるまでもないことでありますが、売買契約につきましては、当事者に意思の合致があつてのことでありますので、価格等の問題につきましては、まず当事者の意思に従うべきものでありますから、当事者がそれを納得いたしまして契約いたす場合に、その価格が高い安いということを知事が軽々に言うべきものじやなかろうと思うのであります。しかし非常識に安いというような場合になつて参りますと、それは何らかの事由によりましてそういうふうになつているということが社会通念として考えられまするので、そういうような場合においては、もちろん勧告し得るのじやなかろうかと考えるのであります。勧告の内容につきましては、価格ということよりも、ほかの取引方法なりその他の附帯的な契約の場合が多かろうかと考えるのでありまするが、どういう場合にどういうふうな勧告になるかということは、これは一々具体的の場合に処して、いわゆる社会的な通念として、それはおかしい、そういうような取引のやり方をやつておつたのでは、とうてい酪農振興はできないというふうに判断されるような場合には、そのとりきめの内容につきまして勧告をする、こういうようなかつこうに相なるであろう、かように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/20
-
021・芳賀貢
○芳賀委員 そういたしますと、価格の面に対しては、当事者相互間の合意によつてこれをきめるのだから、それは勧告の対象にならぬということになると、ただ単にこれは体裁上の非常に抽象的な力しか持つておらぬということが考えられるわけです。これに関連して、取引上について紛争が生じた場合における規定が出ておるわけでありますが、この場合に、まずあつせんを申請する場合におきましては、手数料を都道府県に納付しなければならぬというふうに出ておりますが、こういうあつせんの場合において当事者から手数料を徴収しなければならぬという理由が、どうも了承できないわけでありますが、これはどのような意図によつて手数料を徴収するということをお考えになつておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/21
-
022・大坪藤市
○大坪政府委員 ただいま御指摘の通り、あつせんの申請をしまする場合には手数料を納付するということに相なつておるのでありまするが、これはきわめて観念論的と申しますか、そういうようなきらいがあるのでありますが、手数料を徴収するようにいたしましたゆえんのものは、一つはあつせんをしてもらうということは申請をする側の利益になるのではないか。従つて受益を伴うので、そういうような行政行為を申請する場合には、それに必要な経費を納付するのが当然ではないかという形式論と、もう一つは、手数料をとらないでやりました場合には、そのあつせんをむりやりに申請をするというような事態を惹起するのではなかろうかというような取越し苦労的な考え方、つまり二つの観念論的と申しますか、そういうような理論の上に手数料を徴収するということに相なつておるのでありまするが、しかしこれはあくまでもそういう理論でありますので、とるといたしましても、私どもといたしましては、あつせんの申請を妨げるような額の金をとるということにつきましては厳に慎しみたい、かように考えておりますが、とること自体につきましては、ただいま申し上げましたような理論の上から、こういうような規定を設けておるということに相なつたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/22
-
023・芳賀貢
○芳賀委員 どうもその点が明確でないのですが、今の御答弁によると、この紛争を持ち出す場合においては、それは利益を追求するための意図があるから当然受益者がその手数料を払うべしという点が一点、もう一つは、無手数料であるとあまり紛争を持ち込まれるので、それを制禦するためにこういう手数料制度をとる、どちらもこれは条理が立たぬように考えるわけです。特にこういうような酪農振興法というものをつくる意図は、これは一面で食生活の改善に寄与するとか、あるいはわが国の農業の生産性を高めるとか、あるいはまた豊富低廉な牛乳あるいは製品を提供するとか、これはことごとくが社会性を持つておることなんです。そういう場合においては、当然これは一つの行政の範囲において当然処理してやらなければならぬ問題であるというふうに考えるわけでありますが、おそらくこの紛争処理を提起する場合においては、生産者側からの提起が多いのじやないかというふうに思うわけであります。特に牛乳等の処理に対しては生鮮度との関係があつて、長期にそれを持ちこたえて紛争に備えるということはなかなかできないわけです。だからどうしても乳業資本に押し切られるような場合が非常に多いと思う。その場合においてこの紛争処理を提起して来るというような事案が非常に多いのではないかと考えるわけであります。こういう場合においては、むしろ生産者の抑圧されようとする立場を守つてやるというような意図もこれに加えて、この処理に行政上の配慮を加えるようなことも必要になつて来ると思うわけでありますが、これらの点に対して手数料を徴収するということは、どうも正当性に欠けていると思いますし、しかもその紛争処理がやはり裁定的な性格を持つてやつておるとすれば、なおさらそのことが言えると思うわけでありますが、こういう点に対しては、やはり十分再検討の余地があるんじやないかというふうに考えられるわけであります。
もう一つは、この法律によりますと、最終的にあつせんをするだけの力を持つておるわけですね、ただ紛争ができて、それが持ち込まれた場合において、両当事者の側を代表するあつせん委員の手によつてできるだけ善意なる解決をはかろうとしても、それが妥結できなかつた場合においてはやむを得ぬというようなことがこの法律の一つの欠陥であります。それから最終的に信頼する妥結に至らぬような場合が非常に多いということも考えなきやならぬわけでありますが、そのような十分最終的な信を置くことのできない調停あつせんに対して、しかも手数料を納めなければならぬというようなことはどうも了承できないわけでありますが、これに対してはもう一考の余地があると思いますが、局長はどう思つておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/23
-
024・大坪藤市
○大坪政府委員 あつせんの申請に対しまして手数料を納付するということにつきまして御意見があつたのでありますが、私どもといたしましても、御意見の通りそこになかなかすつきりした理由のつけにくいというような点も見受けるのでありまするが、先ほども申し上げましたように、一応行政行為を求め、しかもそれによつて利益を受ける。ただいま御指摘の通り、申請をするのは大部分の場合に生産者側の方じやなかろうかと思うのであります。従つてこの手数料等につきましては、私どもといたしましては、許す限り低い金額に持つて参りたい、かように考えておるのでありまするが、一応最低限あつせん料を納付してもらうということで御納得をお願いしたい、かように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/24
-
025・芳賀貢
○芳賀委員 その点は、たとえば調停委員会あるいは仲裁裁定委員会等とまつたく同じであるということは言えませんけれども、ある程度紛争を正しく処理するという場合においては、そういうような性格というものは公益的な立場において持たれる必要があるというふうに私は考えるわけであります。それから特に紛争の処理に対しましても、やはり何かきめ手がなければならぬと思うわけでありますが、これに対しては、やはりある程度有権的に紛争の処理が最終的には可能であるというようなあつせん委員会ならあつせん委員会の構成というものは、どうしても必要になるんじやないかというふうに考えられますけれども、この点が非常に欠けておると思うわけであります。それで都道府県単位におきましても、各当事者の推薦した者あるいは学識経験を有する者の中からあつせん委員候補を委嘱しておくというような形でありますが、この紛争を処理する場合においては、当然各当事者の側を代表する者は必要でありますし、それ以外の学識経験者というような委員はむしろ中立的な、公益的な立場を代表する委員等がこれに加わる必要があるんじやないかと考えますが、この学識経験者という表現は、かかる中立的な、公益的な立場を代表する者としてこのような表現を使われておるのか、
〔委員長退席、金子委員長代理着席〕
まつたく学識経験を有すればどちらの利害に偏してもかまわぬというようなお考えでこの二号の委員は考えておられるか、これは紛争処理にあたつても非常に重大な影響があると思いますので、その点を具体的に御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/25
-
026・大坪藤市
○大坪政府委員 当事者を代表する委員といわゆる学識経験者という二本建になつておるのでありますが、いろいろ紛争がありまして、その紛争を処理いたします場合に、当事者の利益も十分に主張いたしまして、そして十分に述べ尽して行くことも必要でありますので、当事者委員というものも認めておるわけでありますが、第二号の方の委員の方は、いわゆる中立委員というふうに観念いたしておるのでありますが、ただいま御指摘の通り、どちらの当事者の利益の観点にも立たない、まつたく公益と申しますか、公益を代表した第三者としての中立的立場に立つての委員、かように考えておるのであります。従つてどちらかの側に立つような事情のもとにあるような方は、もちろんその場合には不適当じやないか、かように考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/26
-
027・芳賀貢
○芳賀委員 次に、あつせんが成功しなかつた場合においては、経緯を公表することができるということをうたつておりますが、その場合において特に「当事者の秘密を除き」ということになつておるわけであります。このあつせん委員会等に持ち出したその紛争の内容というものは、もちろん一つの公的な機関にそれを持ち込んであつせんを申請している場合において、その場合においてもなお経過の中に秘密を要するような点があるかないかということは、これは非常に問題になると思いますけれども、このように最終的なきめ手を持たないで不調に終つたような場合においては、一つの方法としては、これを社会的な判断にまかせるというようなことも、これは間接的な広い意味における紛争の処理の方法である。これは非常に微温的な抽象的な方法ではあるけれども、そういうことも一応考えられるわけであります。その場合においては、あつせんの経緯の全内容を公表するということは必ず必要になつて来る。にもかかわらず秘密の部分を除くということになると、公表された経過の内容というものは、まつたく骨抜きのものにしかなつておらぬというふうに考えられますが、何ゆえに「秘密を除き」ということを特に明記されたか、その点であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/27
-
028・大坪藤市
○大坪政府委員 これは売買当事者の紛争につきまして双方をあつせんいたします場合に、その当事者のいろいろな申立ての内容等につきまして、それがいよいよ不調に終りましてその内容を公表する場合に、多くとられている一つの例であるのでありまして、たとえ申し上げますれば、いろいろあつせんをしておる間に、業者の生産コストと申しますか、製造工程と申しますか、おのずからそういうような事業上の機密の点に触れて参る場合があるのであります。この点につきまして商業上の機密と申しますか、そういうような点はいわゆる私権の擁護と申しますか、そういうような点から擁護して参らなければならぬのでありますから、こういうような場合におきましては、おおむねそういう特別機密の事項は除外する。それは秘密のままにして特に公表しないというような措置を多くの場合とられておるのでありますから、この場合におきましてもその例にならいまして、一応機密の事項につきましてはこれを公表しない、かようなかつこうに相なつておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/28
-
029・芳賀貢
○芳賀委員 そういたしますと、この秘密という場合は、おそらく企業者側でとられる秘密ということになると思います。そうすると、秘密というような申出に対しては、それが非常に解釈が拡大されるようなおそれがあるということが一点と、特にこの紛争のあつせんというものは、各都道府県単位に行われるということになるわけであります。でありますと、府県によつては、場合によつては生産者側の正当な主張が通る場合もある。場合によつては生産者側の主張というものが非常に圧迫されて行く場合もあつて、結局でこぼこが出て来るわけです。そういう場合において、その生産者の立場が正しく認められない、処理されないような紛争等が、あまりに秘密事項だけが多くて残余の点が公表されたというときと、それからその経緯の内容がことごとく公表されたという場合において、社会的に、全国的に、特定な不当なとりきめをしようとするような紛争に対しては、それを指摘されることができるわけです。そういう場合においても、やはり全体の関連性の上に立つて、このあつせんの経緯を全面的に公表させるということの方が正しいのじやないかと私は考えている。特に最終的なきめ手がないというような、こういう骨抜きの法律をつくる場合においては、やはり何か社会的な批判のもとにおいても、正当性がそこから生れて来るようなことにしないと、これはどういう場合においても完全に骨抜きにするということにしかならぬと思いますが、局長はそういうような欠陥というものは、はたしてどこで補うお考えでこの法案をつくつたか、その点もあわせてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/29
-
030・大坪藤市
○大坪政府委員 生乳の取引の紛争の場合におけるあつせんの機密事項の問題でありますが、これは機密事項に触れるといたしますれば、ただいま御指摘の通り、工場側と申しますか、乳業者の場合にそういうことが多かろうと思うのであります。しかしながら乳業の現段階におきまして、いわゆる機密事項として公表しては困るというような点があるかどうかにつきましては、これは実は私もその方の専門ではないのでありますから、詳しくは知り得ないのでありますが、おそらく特定の機密的な事項というものは、具体的な場合あまりないのじやなかろうか、かように考えるのでありますが、もしそういうような場合がありましたときには、これは保護しなくちやならぬというような、そういうような制度的な問題といたしまして、一応ここにそういう保護をいたしているわけであります。しかし具体的な場合にはそういうようなことはなかろう、かように考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/30
-
031・芳賀貢
○芳賀委員 次に紛争処理の場合は、都道府県段階でありますが、こういうような不調に終るような紛争がもし非常に多い場合においては、これを何か全国的な規模のもとにおいて、ある程度調整するというようなことも必要になつて来るのじやないかと考えますが、この法案によりますと、中央段階において、たとえば農林大臣等の立場において、これらの紛争に対する善意なる、あるいは助言とか監督とか、紛争の処理とか、そういうことはいささかも表現されておらぬわけでありますが、もとよりこの乳価の決定等にあたりましても、全国的に価格を一本にするなんというようなことはとうていできませんが、当然地方の特殊性とか実情等に即応した乳価の決定というものが必要になるわけであります。これが一つの行政的な面から見ても、この法律を正しく運用する場合においては、都道府県段階において紛争処理ができなかつたというような事案に対しましては、中央の何らかの機関等によつて、これが最終的に処理できるようなことにまで持つて行く必要があるのじやないかというふうに考えますが、そういう点に対しては、どのような配慮を持たれようとするか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/31
-
032・大坪藤市
○大坪政府委員 本法が制定せられましたあかつきに、生乳の取引に関連いたしまして紛争がどういうふうな状態で発生し、また処理されるだろうか、この問題はきわめて大きな問題であるのであります。私どもといたしましては、牛乳の消流関係は日々生産し、日日これを供給し、かつ非常に腐敗性の強い商品でありますので、その取引が円滑に行われるということが絶対必要じやなかろうかと思うのであります。しかしそれかというて、生産者側がそういうような必然的な関係のもとにありますので、それをいい材料にして不当に買いたたくというようなことは、これは厳に慎まなければならぬ問題ではなかろうかと思うのであります。紛争の処理につきましては、今後全国的な関連におきましてどういうふうに動いて行くか、これは非常に大きな問題であると思うのでございます。もちろん地方々々によりまして、価格その他の取引条件につきましてはその特殊的な事情もあるのでありますが、乳価というものの全国的な価格構成、これは中央から押しつけるというような段階にはなかなか行きかねると思うのであります。各地々々におきましてその地方の事情に基きます文書的な長期契約というものを下から積み上げて来る価格構成と、中央から一般的な価格水準と申しますか、そういうものとの相関関係におきましておのずから一定の線が出て来るのじやなかろうか、かように思うのであります。この生乳の取引関係につきましてあつせん制度を設けておるのでありますが、もちろんこの制度によりまして取引の問題が全部片づくというふうに考えていないのでありまして、これにつきましては牛乳関係業者、もちろんこれは生産者も製造業者も、日本の酪農を振興して参りますために協同的な協力一致の態勢をとつてもらうことが絶対に必要じやなかろうか、かように存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/32
-
033・芳賀貢
○芳賀委員 これで一応法律の全体にわたつた質問を大体したわけでありますが、さらに都道府県知事が酪農振興計画等を策定し、あるいは地域指定等を行う場合において、一つの考え方としては、府県単位に審議会的なものを設置して、これに対する答申を受けるとか、あるいは献策をさせるとかいうようなことも、その地域の都道府県の内部におけるところの酪農振興を全体的に推進させるために必要であるし、特に心配になる点は、集約地区の指定を受けることのできなかつた地域の酪農振興というものを、決して差別的に放置することはできないと思うわけであります。そういう広い意味における酪農振興の事業を推進し、あるいは樹立するというような場合においても、それらの功力の機関が必要でないかというふうに考えるわけでありますが、この点に対しては、当初のお考えの中にはそういう構想もあつたように承つておるわけであります。たとえばこのような審議会というものは、都道府県の条例等においても設置することが可能でありますけれども、こういう点に対しては、積極的にそういう指導を行うようなお考えであるかどうか、その点をお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/33
-
034・大坪藤市
○大坪政府委員 酪農の振興、特に集約酪農地域の指定あるいは集約酪農地域におきます酪農振興計画の計画策定並びにその実行というものに関連いたしまして、広く学識経験ある者の意見を聞くというような意味合いにおきまして、都道府県等におきましてそういうような審議会をつくることにつきましては、私どももまつたく賛成であるのであります。私どもといたしましても、できるだけそういうものを制度化して参りたい。従つて法律上の一つの制度にして参りたい、かように一応考えておつたのでありますが、行政機構の簡素化等の点もありまして、制度上の問題として、当然に審議会をつくるということにつきましては、差控えたような次第であるのであります。しかしながらただいま御指摘のような点は、きわめて重要なことでありますし、また大切なことでありますので、今後特に酪農振興を強力にはかつて参りたいというような府県等につきましては、ぜひそういうようなふうにやつてもらう方がよかろうというふうに考えておるのでありまして、指導の面といたしましては、できるだけそういうふうな審議会等をつくりまして、酪農地域の指定あるいは酪農地域に指定されなかつた地帯の一般的な酪農の振興というような点につきましても、県内の各方面の意見を聞いて実行して参るというふうにやつて参りたい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/34
-
035・芳賀貢
○芳賀委員 次にこの法律に付随する問題でありますが、酪農振興が行われて、わが国においては牛乳の生産量が高まつて来るというと、結局それを消費面において、どのように有効に消費するかということが出て来るわけであります。需給関係のバランスを欠くと、結局酪農を振興したことによつて乳価が安くなつて、結局農地民は苦労だけしたことに終つてしまうという事例が今までも多いわけでありますが、このような牛乳の消費の促進というような点に対しては、これはむしろ大臣あるいは次官から直接お伺いした方がいい問題であるかもしれませんけれども、関連事項として局長のお考えを聞いておきたいのと、もう一つは、MSA協定によるところのアメリカの余剰農産物の買付の中で、二百万ポンド程度のバターを輸入するということが、巷間伝わつておるわけでありますが、こういうことになりますと、これはただちにわが国の酪農の面に対して影響を及ぼして来るわけでありますが、先日はそういうことは具体的でないということで局長も否定しておられたようでありますが、もしも協定の中においてかかる余剰バターが輸入されたような場合においては、これをどういうふうに処理して、現在の国内におけるところの乳価の維持に当るかというような、——これは一つの予測される事態であると思いますが、それに対しての対策を持つておられると思いますので、そういう点に関しても、参考的にお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/35
-
036・大坪藤市
○大坪政府委員 第一点の問題でありますが、酪農の振興に伴つて消費が伴わなければならない、これはまさに御指摘の通りであるのであります。御承知の通りに、わが国は諸外国と比べまして食慣行の相違もありますが、とにかくわが国の牛乳、乳製品等の消費量は、一般諸外国に比べまして、比較にならぬ数字であるのであります。従いまして一般的な問題といたしましては、わが国の消費というものは、今後乳製品等につきましては、増加するという傾向にあるということが考えられますので、一般的な問題につきましては、大体生産増くらいのものは、消費増として当然くつついて行くということは、一般論としては言い得るのではないか、かように存ずるのでありますが、もちろん個々具体的の場合におきまして、必ずそうでき得るかということは問題であると思うのであります。そこで学校給食の奨励あるいは牛乳等の生消費等につきましては、できるだけ容易に処理いたしまして、たやすく飲み得るというような方法を奨励するとか、そういうふうな牛乳及び乳製品の処理につきましては、適切な処置をとりまして、消費増の対策を樹立して参らなければならぬものではなかろうか、かように考えておるのであります。
第二点の問題でありますが、MSAとの関連でありまして、外国の余剰乳製品の問題であるのでありますが、私どもといたしましては、外国から乳製品を一時に多量に輸入いたしますことは、わが国の酪農業の振興と非常に緊密な、デリケートな関係がありますので、それらの輸入の点につきましては、特にわが国の酪農振興との相関関係におきまして、常時適切な措置を誤らないようにやつて参りたい、かように考えておるのであります。本年度のMSAの問題につきましては、全然きまつていないのであります。来年度の問題につきましても、目下二百万ポンドという点はペンデイングであるのでありまして、全然輸入しないということはもちろん申し上げないのでありますが、それかといつて、わが国の酪農の振興に支障のない場合には、やはりわれわれといたしましては、ある程度のものもしかたがない、かように考えておるのであります。しかし少くともわが国の酪農業振興に影響のあるような入れ方につきましては、そういうようなものは必ず差控えたい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/36
-
037・芳賀貢
○芳賀委員 この問題は、たとえばMSAの小麦を六十万トン入れる場合においても、わが国の国内の食糧というものは絶対量が不足しておるのだから、どういう形の余剰農産物を入れても、別にわが国の農業を圧迫することにはならないということを言つておるわけで、今の局長の御答弁も、大体類似の御答弁のように考えます。そういうことを言いながら、実際具体的には農業あるいは酪農を圧迫するような結果が必ず生ずるわけです。そういうことになりますと、酪農振興法をつくつても、結局それは所期の目的を達成することができない。先日川俣委員が言われたように、ただ単に牛乳処理法案ぐらいに終るおそれが多分にあることを指摘したいわけであります。
最後に一点お伺いしますが、この法律案が成立したような場合においては、当然集約酪農地区の指定等を行うことになるわけであります。こういう点に対しましては、本年度の予算との関連等もありますので、時期的にそれほど遅延するようなことはないというふうに私は考えるわけでありますが、この法案が成立した後において、大体どのくらいの時間的将来に地域指定等をやるお考えであるか。さらに地域指定の場合においては、ジヤージー地区を除いたホルスタイン地区に対しては、本年度、明年度二箇年にわたつて、大体全国的な地域指定を了したいというような点もありましたので、これもあわせて確認する意味において質問しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/37
-
038・大坪藤市
○大坪政府委員 ただいまの地域指定の問題でありますが、これにつきましては、目下なお各府県からいろいろ地域指定の陳情と申しますか、申出があつてやつておるのであります。今後もおそらくこの情勢は持続されるのではなかろうか。もちろん県によりましては、提出されました地域申請につきまして、あるいはそれを取消したり、あるいはそれに変更を加えたりされているような場合もあるのでありますが、法律の内容がはつきりし、しかもこれが地方に行きわたりますに従つて、その申請の数あるいはその度合い等も多くなるのじやなかろうか、かように考えておるのであります。どのくらいの数字になるか、従つて最終のめどにつきましては、まだ的確なる結論を下していないのでありますが、二年あるいは少くとも三年くらいまでの間には、この関係の地域指定を全部完了いたしたいと考えておるのであります。ジヤージーとジヤージー以外のホルスタインとの区別の点につきましても、まだ的確にジヤージー種について何箇所、ホルスタイン種について何箇所というような結論に到達しておりません。ジヤージー種につきましては、御承知の通り外国から輸入して参ります関係上、予算の面と同時に輸送その他外国との取引に伴ういろいろのの制約もあり、また地方のジヤージー種に適している地域の問題もあるのでありまして、いろいろな面から、なかなかそうたくさんの数を指定するというわけには参らないのじやなかろうか、かように考えておるのであります。ホルスタイン種につきましては、私どもといたしましては、できるだけ地方の要望に沿い得ますように、予算その他につきましてできるだけの措置をいたしまして、でき得るならば適格地につきましては、すべて地方の希望に応じるように努力して参りたい。もちろんこれにつきましては、予算あるいは資金等の問題につきましてわくがあるのでありまして、全面的にやりましても、ただ総花式に終るということになりますれば、かえつて迷惑にもなるのでありまするから、その点の勘案が非常に問題かと思うのでありますが、できるだけ努力をいたしまして、御期待に沿うようにいたして参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/38
-
039・芳賀貢
○芳賀委員 私はもう少し具体的な点をただしておつたのであります。第一点は、この法律がこのままの形で通るかどうかは知らぬとしても、成立した場合においては、当然二十九年度の地域指定は行うことになるのです。二十九年度分を一度に全面的に指定するということは不可能かもしれませんけれども、具体的に指定に入る時期はいつごろであるかという点。
次にジヤージー地区の場合においては、現在のような貧弱な予算の面においては、二次地区を終らす場合においても相当の年月がかかるということはわかるわけであります。ホルスタイン地区の場合においては、四月二十七日の私の質問に対して、二箇年間にホルスタイン地区の指定は終らしたいということを局長は言われておるわけです。きようはまた三年ぐらいと言うので、これは一つの豹変であります。二、三日前には二箇年でやると言つたのに、きようになつてまた三年かかると言うことは、地方に対する期待を惑わすことにもなると思うわけです。特にこの問題については、法律ができない昨年あたりから、これに対する非常に大きな期待をして、地方的にも一つの政治的な動きさえもあるということは、私は避けなければならぬ動きではないかと思うわけです。だから適格条件が具備されて、都道府県知事が具体的な計画を立てて申請するような場合においては、少くとも短期間に地域指定だけは了するという考え方が、政治の上からいつても正しいというふうに考えますので、前回御答弁の二箇年というものは、あくまでも根拠があるとすれば、二箇年の範囲内において地域指定を終らすなら終らすということを、明確に表明しておいてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/39
-
040・大坪藤市
○大坪政府委員 当初の考え方といたしましては、二十九年度予算を編成いたして参ります場合に、ジヤージー種とホルスタイン種と合せまして大体五十箇所見当ぐらいにやつて参りたい、かような考え方で進んで参つたのであります。これにつきましては、自給飼料、草資源あるいは高度集約牧野というような点を考えまして、大蔵省にも一応五十箇所ぐらいというような腹づもりで交渉いたしたのであります。でありますが、本法が成立いたしました場合に、五十箇所というものを具体的に指定できるかどうかという点につきましては、これは問題じやなかろうと思いますが、私どもといたしましては、二十九年度内にできるだけ五十箇所見当ぐらいのものはやつて参りたい、かように考えておるのであります。二箇年と申しましたのは、三十年度予算との関連におきまして、私どもといたしましては、三十年度予算につきましては、相当具体的に、五十箇所以上の土地が定まるというような関係になりますので、当該地域につきまして、たとえばA地域の牧野につきてましてはどうこういうような計画で進む、こういうような具体的な計画によつて編成し得るという段階に進めて参りたい。これは当初二箇年で参りたい。かように一応考えておるのであります。もちろんこれは地方の希望もありますことでありますから、二箇年間でやり得るかどうかということにつきましては、問題じやなかろうか、あるいはそれから先を打切るということでありますれば、別の問題でありますが、二箇年を目標として参りたい。しかし最悪の場合でも三年を越えることはない、かように申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/40
-
041・金子與重郎
○金子委員長代理 川俣清音君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/41
-
042・川俣清音
○川俣委員 時間がありませんので明日質問をいたしたいと思いますが、明日この案を修正または十分な討議をする上から、この際資料を要求しておきたいと思います。その資料を要求する観点は、この法律案の二章は集約酪農地域、三章は生乳等の取引になつておるわけですが、どうも三章の生乳の取引に重点が置かれておつて、はたして集約酪農というものが完成できるかどうかということについて非常な疑問がありますので、そういう観点から資料をお出し願いたいのです。というのは、集約酪農地域を二箇年計画あるいは三箇年計画、五箇年計画で指定をされるそうでありますが、一体この集約酪農地域の面積はどの程度になるのか、またはこの集約酪農地域というものが各府県にどういうように散在するのか、また乳牛農家はどれだけ拡大されて行くのか、これらの資料を年度別にお出し願いたいと思います。と申し上げますのは、どうも乳牛を確保する方策がないようなんです。これは一般の酪農農家、乳牛農家を集めて来るというわけにはおそらく行かないのであるからして、今日散在しております乳牛所有者の牛を集めて来た地域ということになりはせぬかという懸念が出て来る。これは首をひねつておられますが、そういたしますと、輸入牛、あるいは輸入牛のほかに子牛がどのくらい出て来るのかという計算ができていないようなんです。できておればそれをお示し願いたい。それができていないということになりますと、結局散在している乳牛を集団地域へ買い集めて来るという結果になる。買い集めて来るということになると、牛の値段を高くするということになりはせぬか、一方においては有畜農家奨励だといつて各農家に乳牛を持たせようという運動をやつておりながら、一方から集めてこつちへ持つて来るというだけでは、これは酪農振興ではないと思う。そういうふうに集めて来るということは、業者の集荷といいますか、集乳に便宜を与える結果になるのじやないか、あなた方の意図は必ずしもそうじやないにいたしましても、結果的には牛を集めて来て集乳業者に便宜を与えるという結果になりはしないか、その結果牛乳の取引を円滑にやるというようなことになつて来たのじやないかと思うのです。もしも私の言う通りじやないとするならば、何年計画でどの程度牛を入れるのか、こういうことが考えられなければならない。ただ集団地をきめるというだけで、決して牛がふえるものじやない。ふやす方法が講ぜられていなければならない。方法を講じないで集団地域を設けるということになると、ただ集めて来るということになりはせぬかと思うのです。そこでそれらの計画並びに実施要領というようなものがあつたらばお示し願いたい。
並びに今度は草地の問題ですけれども、今点在しておるいわゆる乳牛所有農家との摩擦をどうするのかという問題について、何ら方策が示されておりません。草地対策を考える上において、最も効果的な集約農酪地域を指定するということは、考えとして私は決して反対じやない。けれども一般のいわれる乳牛農家との関係をどうするのだという点の検討が足りないのじやないか、それでそれらに対する施策があるならば、それを資料をもつてお出し願いたい。
それからこの法案に欠けておりますのは、必ずしも乳牛だけが生れて来ないで、廃牛としなければならない子牛が出て来ると思うのです。必ずこれは集団酪農地域になると問題が出て来る。廃牛の処理をどうするのだということについて何ら考えておられないのだが、これらに対してどうされるのかということを、明日答弁のできるように検討しておいてほしいと思います。
それから集約酪農地域ができますと、その以外の乳牛業者の持つておる乳価に非常な影響を与えると思うのです。これは当然だと思います。集約酪農地域以外の一般の乳牛所有者の乳価にどのような影響を与えるかというようなことが検討されておると思うのですが、検討されておれば、どのような結果になるかというようなことについて、あらかじめ御研究になつて答弁を願いたいと思います。ほんとうはこういう点は明日お聞きしてもいいと思つたけれども、明日でできるだけ質疑を終りたいというので、あらかじめ質問要領をお示ししておきますから、十分な答弁のできるようにしていただきたい。おそらくこれらの点について、今まで検討がされていないのじやないかと思いますので、まだありますけれども、全部材料を提供させますと不勉強の分が出て参りませんから、この程度の資料だけを要求いたしまして、あとは明日質問をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/42
-
043・金子與重郎
○金子委員長代理 それでは残余の質問は明日にいたすことといたしまして、これよりこの問題並びに災害対策に対して懇談会をいたしたいと思います。
————◇—————
〔午後三時五十九分懇談会に入る〕
〔午後五時十分懇談会を終つて散会〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904988X04019540511/43
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。