1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年三月十日(水曜日)
午前十時四十六分開議
出席委員
委員長 葉梨新五郎君
理事 岡村利右衞門君 理事 川村善八郎君
理事 羽田武嗣郎君 理事 吉川 久衛君
理事 井手 以誠君 理事 杉山元治郎君
小枝 一雄君 鈴木 善幸君
田嶋 好文君 綱島 正興君
松田 鐵藏君 山本 友一君
山下 春江君 楯 兼次郎君
長谷川 保君 川俣 清音君
川上 貫一君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君
出席政府委員
法制局長官 佐藤 達夫君
法制局次長 林 修三君
大蔵事務官
(主計局総務課
長) 佐藤 一郎君
厚生事務官
(児童局長) 大宰 博邦君
厚 生 技 官
(公衆衛生局環
境衛生部長) 楠本 正康君
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三月八日
委員木下郁君及び小平忠君辞任につき、その補
欠として平岡忠次郎君及び松平忠久君が議長の
指名で委員に選任された。
同月九日
委員田中久雄君辞任につき、その補欠として柳
原三郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月十日
委員中村英男君辞任につき、その補欠として川
上貫一君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
補助金等の臨時特例等に関する法律案(内閣提
出第四九号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/0
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001・葉梨新五郎
○葉梨委員長 これより会議を開きます。
補助金等の臨時特例等に関する法律案を議題といたします。政府の補足説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/1
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002・佐藤一郎
○佐藤(一)政府委員 補助金等の臨時特例等に関する法律案につきまして、私から最初にごく概括的なる御説明を申し上げたいと思います。
この臨時特例等に関する法律案の対象になっております法律の数は二十三本ございます。そのうちで、文部関係が六本、厚生関係が五本、農林関係が五本、通産関係が二本、運輸関係が四本、建設関係が一本、こういうことになつております。それで、多分お手元にお配りしてあると思うのでございますが、この法律の関係で一体どのくらいの予算の減額が行われるかと申しますと、大体三十三億円でございます。但しこれは、あとで御説明いたしますように、保健所の関係が予算が修正になりましたから、三十億足らずということに終局的にはなると思うのでありますが、大体そういう見当になつております。
そこで、この法案の大体のごく大ざつぱな説明を申し上げますと、御承知のように、地方制度の調査会で政府に対して答申がなされたわけであります。地方財政制度を改革する際に、いわゆる地方自治の原則を貫徹する意味において、どうしてもこまごまとした補助金というものは極力これを整理して本来の地方財源に組み入れるべきであるという、地方自治の観点からする強い要望がありますことは、すでに御存じの通りと思うのであります。今回一兆予算を編成いたします際に、われわれは、地方制度調査会のその気持をやはり反映させたいと思いまして、まず補助金をできるだけ整理して参りたい、こういう方針を立てたわけであります。もちろん、各省の立場からいたしますと、できるだけ補助金等をひもつきにいたしまして、そうして中央の行政力を地方に浸透させたいという強い希望が反面にあることもよく承知いたしております。それで、各省の立場からして、ある程度の補助金をぜひ置きたいという強い希望と、地方自治の観点からしてこれを整理したいという希望を十分参酌いたしまして、各省とも十分話合いをいたしました上、まあこの程度のものであるならばよろしいだろうという各省側との話をつけまして、ここにお出ししたようなわけであります。
それを大体大ざつぱにわけますと、まず、職員の設置関係の経費であります。地方の吏員になつておりますところの職員の設置のための給与の補助金、こういうものは、できるだけ、身分もすでに地方吏員でありますししますから、極力地方の財源の方に組み入れまして、いわゆる補助金という形は必要ないものがあるという見地から、その職員の経費の補助金を全部やめまして、そのかわりに地方の財源に組み入れる、あるいは補助率、負担率を引下げまして、地方の財源にできるだけまわすというふうに、一部分を削つたのであります。
全部を一応廃止いたしましたものには、たとえば社会教育法に基きますところの公民館の職員でありますとか、あるいは図書館の職員でありますとか、あるいは博物館の職員でありますとか、こういうようなものにつきましては、その給与に関する補助金を廃止いたしまして、これを全部地方財政計画の財源の中に織り込むということにいたしたのであります。
それから、保健所、性病予防あるいは精神衛生に関する診療所や相談所の職員、あるいは農業改良の普及職員、あるいは漁業調整委員会の職員、こういうものにつきましては、その一部分を地方の財源で持つてもらうという形にいたすために、補助率なり負担率を引下げたのでございます。
それから今度は、職員の設置の費用ではございませんが、ややそれに準ずるような維持、運営の費用、こういうようなものは、やはり地方団体の財源に組み入れるのが適当ではなかろうか、こういうことで、今申し上げました公民館や図書館や博物館などには、それぞれ維持運営のための経費がやはり補助金の対象になつております。それらも同様に地方の財源でまかなつてほしいということで、地方財政計画に組み入れたわけであります。また、会額ではございませんが、一部分補助率を低下するというような形にいたしたものもございます。たとえば水産資源保護法に基くもの、あるいは公営住宅、こういうようなものにつきましては、一部分地方に持つてもらうということで、補助率を引下げるというようなことをいたしております。
それから、民間団体に対する補助金、これは今回の補助金支出におき出しても、できるだけ整理して参りたいという大きな方針が立てられておるのでありますが、そのうちで、産業教育振興法におきまして、理科関係の回書の発行について、それを発行する教科書会社に対する補助金がございますが、これをやめたい。それから競輪等におきまして、御承知のように国へ競輪の施行者が納付いたします納付金の三分の一に該当する金額に見合うものを自転車の振興等に出すという規定がございますが、それらの支出もこれを全部削る、従つて、それに関連してこの法律案においても停止する、こういうふうな措置を講じております。
それから、全額やめたわけではございませんが、民間等に対する一種の補助を低減したものに、漁船損害補償件の関係、地方鉄道軌道整備法関係のものがございます。これらはいずれも、法律において、たとえば漁船保険の場合でありますと、漁船保険の範囲を百トンまで拡げようとしておるのでありますが、それを以前のように二十トン未満に下げるということで予算に組んであります。地方鉄道軌道の整備につきましても、いわゆる大改良をいたします際に、固定資産の六分の相当額までは補助しろということになつておりますが、会社の経理の状況等を見まして、必ずしも一率に六分までやつておりません。あるところは三分、四分程度の補助の予算を計上しておるところもございますので、それに見合う意味におきまして、六分を限度とするというふうに改めた次第でございます。それから、これは歳入でございますが、すでに、地方競馬法におきましては、地方の財源として地力競馬の収入が上つておるわけでありますが、競輪あるいは小型自動車、モーター・ボート、こういうようなものはしいて国の納付金としてとる必要はないのじやないか、むしろこれらは地方にまかすのが適当ではないかということで、これらのいわゆる国庫納付の規定というものを停止したのであります。
大体ごく大ざつぱにわけますと以上のようなことになります。なお詳しいことにつきましては、またあとの御質問の際にお答えしたいと思います。
なお、今補足説明を申し上げましたが、そのうちで、保健所の問題につきましては、御存じのように予算の修正がございました。それでこの部分につきましては、政府が修正して出すかどうか、あるいは委員会の方で御修正願うか、いずれかの方法があるわけでありますが、予算もすでに国会において修正されましたことでもありますので、すでに提案も済んでおりますから、予算に合せる意味におきまして、保健所の分につきましては、この原案を修正していただくようにあとからお願いしよう、こう思つております。それだけちよつとつけ加えておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/2
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003・葉梨新五郎
○葉梨委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/3
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004・葉梨新五郎
○葉梨委員長 速記を始めてください。
これより質疑に入ることとなりますが、前回の委員会において申し上げました通り、総括質問は本日と明後十二日の二日間に行うことになつておりますので、発言の御通告はなるべく本日のうちに御通告をお願いしておきます。
それではこれから質疑に入ります。質疑は通告順によりまして順次これを許すことといたします。綱島正興君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/4
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005・綱島正興
○綱島委員 ただいま議題となつております本法案の本質についての疑いを実は持つのでございまして、そのために総括的な質問をいたしておきたいと考えるわけであります。と申しますのは、この法律案は、実はひとり財政上の関係からだけ重要であるだけではなく、実は国会の職能、もつと言うならば民主主義政治の基本に関する問題であると思いますので、特に質問を進めておきたいと存ずる次第で、本員が考えますことは、少くともこの法案のようなものが特殊なる事情として認定いたされるとしても、これが先例となることを厳に防がねばならぬという考えから、特に質問をいたすのであります。
この法案で一番問題になりますのは、政府の持つておる予算編成権というものと、国会が持つておりまする立法権という問題と、それから政府に義務づけられておりまするところの、憲法七十三条による、誠実に法律を執行しなければならないという、この義務との兼合いがいかになるか、もつと進めますれば、憲法第四十一条の、国会が最高の国権の機関として持つておる唯一の立法権と、それから財政処理権、国会と内閣法の、政府が法案を提出することができ得るという、この内閣法の規定なるものが一体両立する規定であるか、こういうことが基本的の問題になるのであります。この点については、前回の理事会において申し合せました通り、専門家の意見も徴さなければならぬと思うのでありますが、本委員会において特に学者によつて意見を聞かなければこういうことの確定がしにくいというような事情が、わが国の民主主義というものがいかようなものであるかを証拠づけるような気がいたしまして、それであるから、なおさらこの質問は厳粛なる意味においていたさねばならぬ事情に相なつて参るのであります。
まず第一番目にお尋ねをいたしますことは、法制局長官にお尋ねをいたしたい。憲法と内閣法と矛盾をいたす場合、内閣法はもちろん憲法にその席を譲らなければならぬとお考えであるかどうであるかという御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/5
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006・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 理論上の問題としては、まさにおつしやる通りであります。憲法の方はあらゆる法律にうちかつという立場にあると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/6
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007・綱島正興
○綱島委員 そこで伺いたいのでありますが、憲法四十一条の国会の立法権、しかも唯一の立法機関であると本憲法においてうたわれておる立法権、この立法権の中には、立法ということは特殊の——真実においては立法権を持たない国会を持つておるところの特別なる事情である君主主権国における憲法の場合を除けば、すなわちただいまの日本のごとき民主主義国における立法権というものの解釈といたしましては、立案、提案、審議の三要素をもつて立法行為と見なしておると本員は存じておりますが、これに対する法制局長官の御見解はいかがでございましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/7
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008・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 立法の手続という面から、これを段階をわけて考えますれば、ただいまのお言葉にもありました通り、立案し、提案し、そして審議されて可決されるという段階がそこに考えられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/8
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009・綱島正興
○綱島委員 ただいまの段階からというお言葉でなく、これを明確にいたしておきたいと思うのでありますが、立法行為というものの中に、立案、提案、審議の三要素を含んでおるということは、これはほとんど学説でも世界的に一致しておるところで、特殊な立法権というものを君主が持つておる憲法、たとえば旧憲法のごとく、明らかに君主だけが立法権を持つておつて、が立法権がない。国会においては格別な解釈も許されるのでございましようが、いやしくも国会がすべての立法権を持つておる、いわゆる民主国会においては、これは世界のいずれの国においても、立案、提案、審議という三要素をもつて立法行為であるとする学説は、私は動かない学説だと存じておりますが、これに対する学問上の御見解を伺つておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/9
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010・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これはなかなか尾を引く御質問だと思いますから、用心をしてお答えをしておるわけでありますが、立法行為というものを客観的にながめました場合には、先ほどお答えした通り、また今のお言葉にもありました通りに、私は、立案から審議、可決成立というところまでは立法作用と考えてよろしい、これはその通りであると思います。残る問題としては、その関係の仕事をだれが受持つかという問題が裏になつて、これからおそらくその方のお尋ねに入られると思いますが、そういう問題が残つておる、そういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/10
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011・綱島正興
○綱島委員 そこで、問題となりますのは、民主主義の本質というものがどういうものであるかということが主たる要素になつて参ると存ずるのでありますが、世界の民主主義確立の歴史を見ますると、国会に立法の全権を収むる。そしてこのことはたまたま憲法に書かれておるというような偶発的な、ごく軽い意味ではなくて、これは実に世界における大きな社会運動、政治運動を通じての流れと、文化上の非常に重い意味を持つてこのことが行われて来たということは、おそらく法制局長官においてもお争いにならぬ事柄と存ずるのであります。それで、ただ、たまたまわが国におきましては、旧憲法時代は国会に立法権がなかつた。明らかに旧憲法の第五条に、「天皇ハ帝囲議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ」と規定してあつて、立法権のない——議会と名はつくが、実は立法府ではなかつたのであります。これを日本があたかも立法府であるかのごくに誤解をいたしておつたものだから、そうしてこのぬえ的存在の憲法であり、ぬえ的存在の国会でありましたために、いろいろな錯綜した歴史が出て参る。法制局等も国会になくて行政府にある。これは世界で摩呵ふしぎな法制局でございましようが、一体立法手続を主としてつかさどる役所が国会になくて行政府にある、こういうような歴史を持つておりましたことは、旧憲法を見れば明らかに立法権のない国会でございますので、旧憲法の時代ならば国会になくて行政府に法制局があることが妥当な構成でございましようし、もちろんその通りでありましたが、ただいまといたしましては、実は国会が唯一の立法機関であり、しかも国権の最高機関である憲法が明記しており、たまたま内閣法の中にこれを阻害するような規定——民主憲法においては立案、提案、審議の三要素をもつて立法の内容を構成するという世界の学説であり、ただいま法制局長官もこれをお認めになつた。このことはひとり何らかの学者が抽象的に考え出したということではなくて、世界の民族が血のあがないをもつてかち得たる、とうとい法則なんです。これは、一人の人が考え出すとかいうことより、もつと重い、実に二百年にわたる血のあがないをもつて世界の民族がかち得た法則でございます。この憲法の基本的事情と相反する内閣法において、たまたま内閣は法律案を提出するという摩呵ふしぎな規定をいたしましたるところから、実は今日非常な錯綜が国会内において具体的に起つておりますので、この点については特にひとつ、日本の民主政治というものを内外に明らかにする意味において、忠実なる国民の代表の義務といたして、この点は明らかにいたしておかねばならぬ。私はこの点は第一回国会のときより強く主張いたしたのでありましたが、そのときはほんとうの輿論を呼び起さなかつたのであります。けれども、この際は、世界が持つておるとうといこの法則に、日本の民主主義もまた沿うて行く妥当な時期に参つたと存じておりますので、特にこの点を明らかにいたしておかなければならないと思うのであります。ここで、先ほど御意見を伺いました、内閣法というものは憲法に従わなければならない、矛盾したところがあれば席を譲らなければならない、こういう法則がある。これはもとより当然のことでありますが、法制局長官も御同意であるということがはつきりいたしました以上は、法制局長官のお手元で大体作成されるであろうと想像されるこのたびの立案、提案、内閣からなされたこのたびの補助率等の引下げに対する法案の取扱いについては、どういう事情でこれを御提出になりましたか、その妥当性はいずれの辺にございますかを伺つておきたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/11
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012・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 綱島委員のお考えは、今お言葉にもありましたように、第一回国会の本会議における御質問の趣旨が、そのままずつと堅持されておるように伺うわけであります。要は、内閣法で政府に法案の提案権を認めておるということは、憲法で国会をもつて唯一の立法機関と定めておるという、その憲法の条文に抵触するではないか、従つて政府に提案権があると考えているのは間違つているという御趣旨であると思います。そこで、先ほど来いろいろ尋ねがありまして、立法作用の手続の面を、立案あるいは提案、審議というようにわけて申し上げましたが、この際そういう問題に照してこれを正確に申しますならば、そもそも立法行為の核心というものはどこにあるかということは、言うまでもなく制定行為そのものであると思います。すなわち案であるものを本物の法律にしてしまう。法律案というものの案というしつぽをとつて、法律という形に仕上げるという作用が立法行為の核心であると思います。先ほどのお言葉にもありましたように、民主主義の本質という面からこれを見ましても、法律というものを最終的に決定する、成立させるという行為そのものが立法の核心であると言わなければならないと思います。従いまして、そういう角度から、先ほど来の法律ができ上るまでの手続をずつとながめてみますと、まず書きおろしの草案をつくるという段階、あるいはそれをある期間審議のために付議する行為というものは、立法そのものというよりも、それの準備行為であるのでありまして、その案なるものを本物にするという最終の段階が、いわゆる立法の本格的な核心をなすものというふうに考えるわけであります。そういう意味から申しますと、先ほど旧憲法の例をお出しになりました。すなわち、旧憲法においては天皇が法律の制定権者であられたわけでありますが、今日においてはそれが唯一の立法機関たる国会の権限になつておる。国会が法律の制定権者であるということ、これはおつしやる通りと思います。しかしながら、旧憲法時代、天白露が制定権者であられる場合におきましても、その草案はどこから出したかというと、もちろん政府なり、あるいは内閣提出のものが多くはございましたけれども、議員立法、議員の方からその提案がされるという場合もあつたのであります。従いまして、最終の制定行為と、その制定の種になるもの、その草案というものをだれが出すかということは、私は本質的な問題ではないと考えるわけであります。そこで、この憲法の建前を見ますと、確かに唯一の立法機関ということになつておりますけれども、これが全体の憲法の仕組みというものから照してみまするというと、アメリカ流のいわゆる大統領主義と申しますか、厳格なる三権分立の立場をとつておるという憲法でありまするならば、これは立法機関以外のものが、ちよつかいをかけるということは、その厳格なる三権分立に抵触するということが言えようと思います。ところが、この日本国憲法の場合におきましては、御承知のようにそういう建前ではなくて、議院内閣制の制度をとる、すなわち国会と内閣は親子の関係にあつて、純然たる他人ではないという立場をとつておるわけであります。そこで、その唯一の立法機関において最終的に制定せらるべき法律案の種というものを内閣が出し得ないということは、アメリカ式の三権分立の場合に比べてみますと、そういう結論にはただちにならないのじやないかということを大前提として考えるわけであります。そこで、憲法の他の条文に照して、七十二条でありますが、内閣総理大臣は内閣を代表して議案を国会に提出することができるということがうたわれておるのであります。そこで、ここに内閣総理大臣が議案を出せる。この議案は何かということが第二の問題になりまして、憲法をいろいろ条文をくつてみますと、内閣がはつきり出せるというものとしては、七十三条に第五号というのがございまして、予算を作成して国会に提出するということ、これだけは提出権が内閣のものとしてはつきり書いてある。そこで、先ほど申しました七十二条にいう議案というのは、予算というようにはつきり憲法で内閣の提出権としてきまつたものだけを言つているのか、あるいはその他のものを含むのか、率直に言うと疑問があります。これが綱島先生あたりの御議論の種になつておると思いますが、私ども、わざわざ予算その他の列挙をいたしませんで、ただ議案と書いたということは、先ほど申し上げました通り、大きな建前から見まして、内閣は国会から見てよそ者ではない、従つて国会に対する御審議の種というものは内閣から出し得る、予算はもちろんはつきりしておりますが、予算以外にもこの中には入つているという建前でずつと来ております。この帝国憲法の改正、すなわち新憲法成立当時の第九十回の帝国議会におきまして、貴族院の特別委員会において、牧野英一博士が、当時貴族院議員として、先ほど申し上げました七十三条第五号に関連して、ここには予算を作成して国会に提出するということが内閣の権限になつておりますが、なぜ予算その他法律案ということをはつきり書かないのかという質問が金森国務大臣になされております。金森国務大臣のこれに対しての答えとしては、内閣が予算のほかに法律案を提案することは当然のことである。しかしながら、予算については、これは内閣の独自の権限である、国会の提案権はないという意味でここにはつきり書いてある。かりに予算以外にも内閣の提案し得る事項というものをここに列挙するのは、法律案の場合ももちろんでありますが、その他条約の承認の問題、ここにも出ておるかもしれませんけれども、それ以外に皇室関係の議決を求める件だとか、いろいろな関係をここに製しなければならぬ。従つて、最も顕著なるものとして、内閣独自の提案権として、予算としてここに掲げたというようなお答えをしておるわけであります。帝国憲法改正の際、この新憲法の審議においても、そういうことを政府でお答えしておりますし、先ほどまた綱島委員のお言葉にありましたように、第九十回帝国議会で憲法を審議したその議会が、例の内閣法をまた審議なさる。そうして内閣法の中に予算案、法律案というようなことをはつきりお入れになつたということから見ますと、憲法を制定したこの帝国議会の同じメンバーが内閣法をやはり審議しておるのでありますからして、制定者の意思というものは、内閣にやはり提案権があるものと見て内閣法をつくられたということは、われわれとして十分推測ができるわけであります。その意味で今日までずつと、いろいろ議論はございますが、学者の中にも綱島委員の仰せられるような強い意見をとつておる人もありますけれども、大体学説は内閣にも提案権があるということが通説となつておるのでありますから、われわれとしては内閣にも提案権があるというふうにずつと今日まで考え、しかもたくさんの法律案を御審議願つて来ておるわけです。これも一つということに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/12
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013・綱島正興
○綱島委員 ただいま御説明になりました七十三条というのは、内閣の職能は全部書き上げてございます。第一項の中に「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行う。」としてございまして、一般行政事務は全部内閣がやることになつておりまして、そのほかには何をやるかというと、法律を執行する、国務を総理する、外交関係を処理すること、条約を締結すること、但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする、法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること、予算を作成して国会に提出すること、この憲法及び法律の規定を実施するために政令を制定すること、但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない、第七は大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定することとございますが、ここで問題になりますのは、七十二条の議案を提出するという文句でございます。その中には、内閣を代表してという規定があるのです。総理大臣の職能の法案を提出するという権限は、内閣を代表しての資格で出せるのであります。従つて、内閣が持つておる職能を越えては出せないのであります。内閣が持つていない職能に基いて総理大臣が法案を出せば、これではその法案は根拠なき法案と言わねばならない。そこで七十三条において列記してありますもののうち法案となり得るものは、条約に対する事前、事後の承認、及び予算案、そのほか大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権、これは必ずしも法案として出すことを必要としないでしようが、これは国会の承認を求めても別段違法ではございますまい。つまり外交に関すること、予算に関すること、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除、復権に関すること、こういうことに関するものに大体限定してあると見なければ、七十二条と七十三条の憲法の合理解釈はできないのであります。実は、立法の手続上からいえば、最終の審議が一番大切なものであるということについては異論はございません。しかし、何ゆえに民主主義が生れて来たかと申しますと、由来官僚組織というものがございまして、人民が知らないうちに人民の利益に反することがしばくございましたことを、世界の民衆が経験をいたしまして、それこそ血のあがないをもつて、アメリカの独立、あるいはフランスの大革命を通じ、その他もろくの意さんたんをいたし、そしてかち得たるものが、立法の完全なる権利を国会に収めるという事柄でございます。そこで、この提案は単なる手続にすぎないということと、手続にすぎないのじやない、立案、提案というものの中に重大な実は歴史的意義を持ち、行政法から見てもこれは非常な大切な意味を持つか持たぬかという解釈、それがすなわち民主的解釈であるか、官僚的解釈であるかということのわかれ目に相なるのであります。言いかえれば、世界の歴史に沿うた考え方をするか、人類の文化史に沿うた、肉づけのある、歴史の経験にかんがみた、人類の歴史を尊重した意味においての解釈になるか、一片の文字上の構成についての単なる一つの思いつきの解釈になるかのわかれ目である。このことこそは、われわれが国会議員としてこれをいかように守るかという重大なる義務を痛感するものでございますから、これはさような答えでわれわれは承服できないのであります。この点は非常に重い意味であるということを御了承賜わらねばならぬ。これを軽く扱うならば、これはやはり官僚国であつて民主国ではございません。官僚国というものと民主組織というものは非常に截然たる区別を持つている。特に立法手続において截然たる区別を持ち、その核心というものは、立案、提案という線において截然たる区別が生じており、この点が実は文化史上重大なる意義を有する、こういうことを御了承賜わらねば、実はこの憲法は空文に帰するのであります。この憲法がほんとうの意味があるかどうか。なるほど、先ほどお話のように、内閣というものと国会はあかの他人じやない。日本の憲法は英国の多数党制の内閣制と米国の立法府、行政府の截然たる区別をなすものとのあいのこでございます。あいのこでございますけれども、そのあいのこたるものは、実は核心はどこにあるかというと、憲法がとつて参りましたものは、アメリカの憲法制度の基礎をとつて参つておるのであります。そしてこのことは、民主主義確立の上において、実は重大なる意義を持つ。決してこれは漫然と持つたものではなくて、金森氏がそういう答えをしたと言つたつて、それは金森氏の一つの考え方であり、そういう立法当時の議員の応答は、文化のおもなる意味や憲法の文理上の解釈の妥当なる線を越えて、たまたまの政府の説明であるとか、たまたまの二、三の議員の応答とかがこの成文のおもなるものを、左右する力のないことは、これは解釈上当然なことでございまして、さようなことは単なる一つの補足的解釈の事情を構成するにとどまるのであります。決して主要なものではなくて、この日本の憲法の本核、人類文化の本核というものの線から考えた解釈でなければ、それは人民の基本法たる憲法としての解釈には値しない、こういう考えを持つておるのであります。これに対する御意見を伺つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/13
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014・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 おつしやる通りに、きわめて重大な問題でございますから、先ほど来少し言葉数を多くお答えを申し上げておるのでございますが、ただいまのお尋ねもごもつともには拝聴いたします。しかしながら、最初にちよつとお触れになりました七十三条の一、二、三、四、五、六、七の中には全然出ておらぬじやないかということについて、まず御説明を申し上げておきます。この御疑問は非常にごもつともだと思いますけれども、まず第一に考えなければなりませんことは、この国権というものの作用、これは綱島先生に講釈を申し上げることになつてたいへん恐縮でございますけれども、言うまでもなく、立法、司法、行政と三つにわかれておるわけであります。立法というものはこういうもの、司法というものはこういうものということはわかりますけれども、行政というものは何かということになりますと、たいていの学者は、御承知の通りに、国権の作用の中から立法作用、司法作用を除いた残りのもの、これをみな行政作用と言つております。私は、その考え方が正しいと申しますか、そういう考え方をとるほかには方法はないと思いますから、その前提で物を考えておるのでございますが、そういうところから申しますと、先ほど来のお言葉にも出ました憲法七十三条の最初に、「他の一般行政事務の外、」ということがございまして、純粋の立法作用、純粋の司法作用、立法権、司法権、それを除いたすべてのものを他の一般行政事務ということで表わしておると思いますから、その意味で、法律の種をつくる、その草案の準備作業は、先ほど来の私の前提から申しますと、立法行為そのもの、狭い意味の立法行為そのものとは違つた性質のものであるということから、ここに言う他の一般行政事務の中に入つて来ます。このことは、あたかも、衆議院に対して解散をするということは、常識で言うと、行政作用に入るかどうかという議論はございますけれども、三権分立から申しますと、これはどうも行政作用に入らざるを得ない。国会の召集を決定する、これは行政作用と見ざるを得ない。あるいはまた、参議院の緊急集会でできた法律を今度は衆議院の御同意を求めるために提案しなければならぬ。その仕事はどういうことかというと、これはやはり行政の受持ちとして、内閣はこの間もその手続をとつておるわけでございます。そういう意味で、ここに言う他の一般行政事務というものは広いものと考えざるを得ないのでありますから、法律案の準備作業というものはこの一、二、三、四の中には入りませんでも、本文の他の一般行政事務ということの中に考えなければ、どうしても筋が通らぬという建前で申し上げておるのであります。それから、そのあとでお言葉に出て参りましたことでございますが、官僚組織というようなことにも触れてのお言葉ですが、法律の種をだれがつくつてお出しするかということは、私は、その法律の成立そのものに対して何らの影響力、あるいは迫力を持つものではないと思います。国会が最終の制定権者として自由に御審議になりまして、その種に対して、これを捨てようが、お直しになろうが、あるいはお取上げになろうが、全部煮ても焼いても国会としては御自由なわけでありますから、その種をだれが出したから、それが不当な力をもつて国会を突破するというようなことには全然なり得ないのであります。そういう意味からして、その極をだれがつくるかということについては、法律的に考えましても、政治的に考えましても、民主主義という根本原則には全然影響のないことじやないかというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/14
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015・綱島正興
○綱島委員 そこに問題があるのであります。実は準備して参りませんでしたので、はつきりした記憶が薄らいでおりますけれども、たしか一二一五年であつたと思いますけれども、大憲章——マグナカルタが制定されまして以来、いろいろなことをやって参りましたが、結局、立案というものが政府の手に握られておれば、どうしても実際にほんとうの民主主義の政治はできないのだという考えから、だんだん変化して参つて、一体立法権というものはどういうものかという考え方から、立法権というものは、立案、提案、審議、この三つを構成するのだということにだんだん学説も一致してき、国民の確信も一致して参りまして、それに沿う国会というものをつくり上げて参つたのであります。それがこのたびのわれわれが持っておるこの憲法の条章でございまして、種をどつちが出そうかという、種を出すというところに、実は文化史上に残つておるこの民主主義建設の歴史がある。種をどちらから出すという、そこに実は問題があるのであります。種が出て来た以上、瞥見したようなことで審議をいたしましても、実はわからなくなるという経過を経まして、立案はやはり立法行為の重要要素でなければならないということに到達して、このたびのような憲法をこしらえたのである。それから「他の一般行政事務の外」という行政事務に立案というものが入るので、立法行為ではない、こういうことになれば、先ほど最初にあなたに念を押して、どういち考えをしておられるか、立法行為というものは立案、提案、審議の三要素よりなるということは、学説上もそうであるし、この学説が生れて来るに至る重要なる意味が民主主義建設の上にあるんだということには御同意を願つて、その旨のお答えを願つたと私は思つておるのですが、そうすると、まつたくその点が異なつて参りまして、私どもこの法案をつぶそうとか、そういうことよりも、憲法をないがしろにしないということを、われわれある意味においては憲法の番人であるほどの国会議員は、これを重く考えなければならない。そこでこのことに触れました以上は、私どもは一時の便宜のためにこれをないがしろにしてはならないという義務を痛感して、特にこういうことを申しておるのであります。この法案は、特殊な事情で、このときだけは特別例だということならば、必ずしもこれに対して同意することにやさぶかではない。問題は、これが先例になつて、たびたびこういうことがありますならば、立法行為なんというものは、あげて無意味に帰するおそれがありますので、特にこの点を申し上げておるわけであります。そこで、この点は見解の相違でありますから、私はひとまずこの程度にいたしておきたいと思います。
もう一つ問題になるのは、憲法七十三条の一号の「法律を誠実に執行し、国務を総理すること。」という内閣が連帯して持つておる責任であります。これと予算編成権を内閣が持つておることは明らかでありますが、予算編成にあたつては、法律を誠実に執行する線に沿うて予算は編成されなければならぬかどうかということについて、御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/15
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016・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 このことにつきましては、大前提を申し上げておかなければならないと思います。予算というものと法律というものとの性格の違いということになるわけでありますが、御承知の通りに、この憲法におきましては、よその国とは違いまして、法律と予算とをはつきり区別しておるわけであります。形式として違うものとして立てておるわけであります。そこで予参をどういう性格のものとして考えておるかと申しますと、申すまでもなく、これはその次の年度における財政計画と申しますか、歳入歳出の見積りというような予定の計画的性格を持つておるものであります。従いまして、ただいまのお尋ねに出て参りました法律との関係におきましても、その予算の実施せらるべき来年度の事態を常に念頭に置いて考えないと、結論が出て参りません。現実にある法律ということとあわせて、これが来年度において改めらるべき形というものの予想は、予算の内容に入つて来るわけでありますから、そういう前提に立つて参りますと、今お話に出たようなことに対しましては、もう少し御質問をいただきませんと、ただちにお答えはできないということに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/16
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017・綱島正興
○綱島委員 そうすれば、具体的に申し上げます。大体予算編成は、準備といたしましては八、九月から始まつて、少くとも十二月の末には終るの下あります。おおむね暦年度内に予算を提出いたしますことは間違いないことでございます。そしてその予算編成行為というものは、その性質がたとい目積りであろうと何であろうと、少くとも予算の見積書をかりに暫くといたしましても、これにも異論がございますけれども、これを見積書として書くといたしましそも、その見積書をつくることは法律に準じてつくらねばならぬ。ない法律に準じて見積書をつくるということが許されるかどうか、こよいう点に対して御意見を伺つておきたいのであります。もつと言いかえれば、今制定されていない——ちようどこういうふうにして今出て参ります法律に、およそ見当つけて予算を組むしいうことが、これと違う法律が現存しておる当時につくるということが、一体法律違反でないかどうか。もつと言いかえれば、憲法違反でないか、七十三条第一号の違反でないかどうか、こういうことを伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/17
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018・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 先ほど触れましたように、予算は見積りでございますから、予算そのものが、収入についててこれこれの収入をせよとか、あるいは収入する権能が政府にあるとかいうことを認めたことにはなりませんし、また歳出の面におきましても、法律的にこれを支出せよということには、必然的には法律的に出て来ない、そういう性格のものであると思います。従いまして、法律ができなければ、その執行ができなくなるという場面も当然予想されるわけで、これは切り離して考えざるを得ないと思います。ただいまのお話の、現在ある法律と、今御審議を願つておる予算との関係をそれに当てはめて考えてみますと、結局予算が見積りであるという前提から申しますと、その予算に即応して改めらるべきことを考慮しての予算ということになるわけでありますから、法律の形から見ましても、現在あるがままの法律ということ、及びその法律がこう改められるということの予定を、そこに含んでおるということであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/18
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019・綱島正興
○綱島委員 たとえば、二十九年度予算を決定いたしまして、大蔵省でこれを査定いたしたりして出しますことも、予算編成行為の一部を形成いたしますし、特には最後に閣議で二十九年度予算といたしてその収入支出を決定いたしますことは、国会で予算として財政上の処置としてこれが認証を受くる以前といえども、そのことは内閣が閣議で決定する義務を有する。すでに予算案として、憲法の七十三条第五号の「予算を作成して国会に提出すること。」というこの予算を作成する行為、この行為については、法律に順応せずしてつくることは私は憲法違反であると思う。これはそうじやないんだ、大体通るだろうと思うからつくるんで、準備だけだからこれは法律行為でもなければ何でもない、内閣が閣議で決定しようと、印刷して国会に提出して、議長をして国会に配付せしめる、審議案として提出せしめる行為を内閣がなすことは、何にも行為でも何でもない、夢物語りのようなものだ、こういたして、何らの効果も何にもないものだ、こう考えるか。これはやはり内閣の持つ職能に基く一つの職能行為である、こう解釈したら、第一号の「法律を誠実に執行し」ということに抵触しはしないか、こういうことを伺つておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/19
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020・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 先ほども触れましたように、すべて予算というものは条件的のものでございますから、今のように予定しておる法律ができなければ、あるいは支出ができなくなつてしまう、あるいはお金が足りなくなつて来るという逆な場面も出て来るだろうと思います。それは予算そのものの持つ宿命であつて、法律的性格が違う以上はやむを得ない。但し、今お話に出ましたように、夢物語りということから考えてみますと、実は夢物語りとまでは申しませんけれども、種を出すのは、もちろん予算といえども原案は、提案権は政府にあることは憲法ではつきりしておりますけれども、その予算といえども、制定者はだれかということになりますと、これはやはり唯一の立法機関、国権の最高機関としての国会が予算を御制定になる、こう私どもは考えております。法律もやはり国会が御制定になる。その意味において制定者は一つでありますから、その間に意思の分裂というものが前提とされない限りにおいては、予算と法律とが矛盾した形のものが最終的に制定になることはあり得ない。ただその種の出し方の前後の問題ということは、適当であるか不適当であるか、なるべく予算の御審議中に関係のある法律案の方も種を出して、それを見せてもらうのが審議上都合がいいのではないかという適当、不適当の問題はございますけれども、りくつで割切つてしまうと、先ほど触れましたようなことにどうもならざるを得ないと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/20
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021・綱島正興
○綱島委員 この議論は、どこまで行つても、およそ見当がついておりますので、私が先ほどから申し上げましたこと、この予算編成行為というものが、内閣の持つ重要なる責務でございまして、この行為についても、法律を厳重に守つて、これによつて予算を編成しなければならないということの二つ、それから、立法権というものは国会にあるのであつて、内閣が立案をなす、提案をなすことは、これは憲法の違反であるということを私は主張いたして、その点だけは今まで伺いましたけれども、どうしても納得できない御説明で、この点は間違いないこととして一応質問を打切ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/21
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022・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは山下春江君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/22
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023・山下春江
○山下(春)委員 ただいま綱島委員から非常に重大な御、質問がございまして、それに対して綱島委員が御答弁は納得が行かないと言われる段階におきましては、私が小さないろいろな問題を御質問申し上げることも、その納得の行かない上に立つての質問になると思うのでございますが、ここに出て来ます多くのいろいろな問題が、すでに制定された法律に基いて、あるいはその法律に基く政令による施行がすでに何年間か経過しております。その経過しておるものに対して、あらためてまた法律をここで制定する権利ありやいなやということを、今伺つていても、私にもよくわからないので、ただどうしようとされるかということを、法制局長官でなしに、当該官庁の方々が、今回ここで提案された法律がかりに完成したときに、これを施行するにあたつて、政府がどういう考えをもつて施行されようとするかということを伺つておきたいのであります。たくさん例がありますけれども、たとえば教育の問題などでは、公民館に対する費用が削減されておる。あるいは厚生省関係でも、非常にたくさんの削減されておるものが出も来ておるのでありますが、それは昭和二十三年ごろできました非常に古い法律に基いて、たとえば性病予防法あたりにいたしましても、二十三年にできております。その後政令によつてそれが執行されて来ておりまして、相当長い間年限がたつております。それを執行しておりますものに向つて、ここで法律をこしらえまして、この補助金を打切るということになりますと、そこに起つて来る問題は、だれがどういうふうに責任を持てばいいかということなんでありますが、それに対して政府では対案をもつて臨まれておるものかどうか。たとえば、厚生省関係のことに対してたくさんございますけれども、厚生省は、それに対して、たとえば母子手帳の費用なんかも廃止になつておるし、性病予防法その他がたくさんございます。公民館の問題なんかも、今公民館の社会教育に関する関心というものは、全国津々浦々非常に高まつておるときに、それに今までさえ非常にわずかな費用であつたものが、全部打切られるものということになれば、一体それによつて起つて来る国民の災難、国民の不利益をどう償おうとしておられるのか、お尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/23
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024・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 どうも私は法律屋でございまして、今の実体の問題については、実は責任ある御答弁をする地位にもございませんし、また能力も持ち合せておりませんので、主管の得所の方からお聞きとり願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/24
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025・佐藤一郎
○佐藤(一)政府委員 それでは私から申し上げますが、今山下委員がおつしやいました点は、総体といたしましては、この法律の補助率、負担率を引下げました今は、一応予算の上といたしましては、それだけの財源を今回地方財政の方で見合いの財源を見ております。そういう意味で、いわば地方の土に財源負担の率をよけいにかぶせた、そのかわり、今回に限つては、それだけの財源を見ておるということになつておりますが、今の御質問の模様ですと、厚生関係とかあるいは文部関係、具体的に何か一つの事例をとつて、一体どういうふうな実行をするか、こういう御質問のようでありますから、具体的な点は厚生省の方からお答えしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/25
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026・楠本正康
○楠本政府委員 お答えを申し上げます。私どもは、法律できめられました範囲を忠実に実行いたしまして、法律に示す成果を上げることに努力するのが建前でございます。従いまして、ここで補助率云々の問題をあらためてかれこれ言う筋合いのものじやなかろうかと存じます。もちろん、率直に申し上げますれば、補助率の高い方が、現在においてはおおむね仕事がやりいいんじやなかろうかと考えてさしつかえなかろうと存じます。しかしながら、たとい補助率が低くなりましても、他方に財源の裏づけもあることだから、私どもといたしましては、その範囲内において、できるだけ成果を納めて行く。もちろん高い補助率で実施をいたしますことは、これはある意味で役人といたしましてはイージー・ゴーイングであります。むしろ低い補助率、あるいは平衡交付金というようなもので仕事をすることは、それだけ困難が伴いますが、その困難のところにまた私どもの仕事の楽しみと申しましようか、努力のしがいがあるとも考えられるのでありまして、さような決心で、若干の補助率の減少がありましても、より一層仕事が徹底いたしますように努力いたしたい所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/26
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027・山下春江
○山下(春)委員 補助の問題は、それはそういう解釈もございましようが、補助の問題は、大体国会が修正いたしまして、補助することができるという法律では、あまりにあいまいであるので、議院の方でこれを修正して、補助を行うと直しましたのを、今回再び補助を行うことができると直そうと企てられておるようでございますが、それは国会軽視と言いましようか、国会の侮辱にならないかどうか、法制局長官にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/27
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028・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 先ほど来のお答えにも申しました通りに、御審議の種と申しますか、材料としてお出しをしておるのであつて、これに対する国会の御見解というものは、また独自の見地から現われて来るものと考えております。従いまして、僭越な気持で、今お言葉に触れられましたような僭越な気持で、これを押しつけようという気持で政府が出すはずもないわけでございます。ただ、なぜ、こうしなければならないかということについては、できるだけ政府側として御納得の行くような御説明はいたします。いたしますけれども、最終の御判定はもちろん国会にまつほかはないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/28
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029・山下春江
○山下(春)委員 そういたしますと、法制局長官は、これをお出しになりますときに今のようなお気持でお出しになつたとすれば、この委員会は補助を行うときめることがあり得ることも予想してお出しになりましたでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/29
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030・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 私は理詰めで申しておりますから、理詰めで申し上げますというと、先ほどのお答えにも出しましたように、最終の制定者は国会であらせられますから、煮ても焼いても御自由に国会がおきめになることは、これはわれわれが泣いてもわめいてもいたし方がないことであります。それを申し上げておるのです。しかし、われわれとしては、政府として、この行き方が今日の時局に対拠する上で必要だ、こうやつていただかないと政府の責任が果せないという信念を持つて御提案申し上げておりますから、提案の趣旨については、ぜひこれでお通しくださいという説明を申し上げてお願いをいたしまして、御納得の行くような御説明は申し上げますけれども、法律的にこれを申し上げますならば、最終的には国会の御判定にまつほかはない、こういう趣旨で申し上げたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/30
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031・山下春江
○山下(春)委員 今の法制局長官の御答弁の通りに御実行願いたいと思います。綱島委員が御質問になつた点に対しては納得が行かないと言われましたが、少くともこのことを本委員会に御提案になることにあたりましては、納得の行くまで親切に丁寧に答弁をする、お願いをするという形でなければ、本委員会はなかなか無事に運営できないと思いますので、今後の質問に対しましては、そのようにお考えをいただきたいことを要望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/31
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032・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは午後一時より再開することとしまし、暫時休憩いたします。
午後零時七分休憩
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午後一時五十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/32
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033・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは再開いたします。
午前に引続き質疑を継続いたします。川俣清音君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/33
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034・川俣清音
○川俣委員 午前中に綱島委員から憲法に対しての見解をただしておられますが、大蔵大臣または副総理から今般提案になりました法案の提案説明を承りたいと思つておつたのでありますが、お見えになりませんので、二、三疑義のある点を法制局長官からお聞きしておきたいと思うのであります。もちろん私は、この法律が違憲であるとの理由で、院外においてあえて提訴しようというような考え方はございませんけれども、問題はさらに発展をするおそれがありますので、ここで明らかにしていただきたいと思うのであります。
一は、この法案を出されます最初におきまして、補助金等の整理に関する法律案といたしまして起案せられまして、各省に配付になつておるようであります。この法案のもとになつております補助金等の整理に関する法律案によりますと、かなり違憲の問題が出て来るという見解から、補助金等の臨時特例等に関する法律案となつてかわつて来たようでありますが、原案について法制局はどの程度関与されておりますか、この点を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/34
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035・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 私どもの仕事は、各省大臣の方で一応立案されましたものを、閣議に提出されます前に審査をするという段階の受持ちになつておるわけであります。従いまして、大蔵省で一応成案を得られましたものを、われわれの手元で拝見をして、いろいろ意見を申し上げ、審査をしたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/35
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036・川俣清音
○川俣委員 おそらく審査の結果不適当だということで改正せられたと思いますが、不適当と認められた箇所並びに不適当だという考え方に立ちました基礎を、この際明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/36
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037・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 私はある機会に川俣さんのおつしやるものも見たのですが、おそらく、最初の案とおつしやいますのは、現法律の一部を改正するという形の案のことをおつしやつているのではないかと思います。それが今度はそういう形でなくなつているということを頭に置いてのお尋ねだと思います。実はそこまで申し上げる必要は何もないのでありますが、率直に申し上げておいた方がいいと思いますので、率直に申し上げるわけですが、憲法論といいますか、そういう法理上の問題としては、今の一部改正の形になつておりましても、あるいは今度御提案申し上げておるような形になつておりましても、私は大してかわりがないと思いますから、その点に関連しての法律上の疑義というものには、別に私の方から強く異議を申し立てるという立場にはなかつたということを申し上げた方が、話がすつきりすると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/37
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038・川俣清音
○川俣委員 それでは、第一条が、最初の草案によりますと、廃止するということになつておりますが、新しく提案されたところによると、その施行を停止するということになつている。それは同じ意味を理解されておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/38
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039・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 それは絶対に違います。廃止すると申しますれば、その法律がなくなつてしまいます。停止すると申しますれば、ただしばらく活動をとめておくだけでありまして、いつでもまた復活し得るという形でございます。はつきり違います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/39
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040・川俣清音
○川俣委員 おそらくこれは、普通の常識から持つて参りますならば、明らかに違う。しかし、先ほどのあなたの答弁によりますと、原案とこれとはかわりがないということであつたのです。かわりがないという御答弁だから私はお聞きしたのです。決して言葉じりをとらえておるのじやないのです。だから、こういうようにかえられなければならなかつたという説明を私は求めておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/40
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041・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 あまり率直に申し上げると、そういうことになつて話がだんだんこんがらかつ集ることになるので、実は後悔しておるのでございますが、私の率直に申しました意味は、廃止するということと停止するということとは、今申し上げたようにはつきり違いますけれども、廃止するという形の場合にこれが憲法に違反するかどうか、停止するということならば違反しないのかというような法律的の角度からこれを照しますと、廃止の場合でも停止の場合でも、どちらでも憲法問題にはなりませんという意味で先ほど申し上げたのであります。要は試験の答案の下書きを見て御採点をいただいては非常に困るので、今度正式の答案としてお出ししましたこの法案についていろいろお教えを受けたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/41
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042・川俣清音
○川俣委員 私は憲法論からお尋ねしたのではなくて最初原案を出されたのを修正せられたといいますか、審査された結果本提案となつた。審査せられた場合に欠陥を指摘されて、または不適当と考えられて、改めてこの法案となつたのであろうと思いますので、そこで、その審査過程において、なぜ変更しなければならなかつたかという根拠をお示し願いたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/42
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043・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 それではいよいよ切り口上を申しますが、その審査過程の段階については申し上げかねます。この成案についてひとつ十分御審議をいただきたいということに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/43
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044・川俣清音
○川俣委員 あなたは、先ほどの綱島委員に対する御答弁で、現憲法を起草されました起草者の意思またはその当時の状況をもつて有力な法律解釈の根拠にされております。これは通例だと思います。そうして、出て参りました原案は、やはり一つの思想を持つておるものだと見なければならぬ。そこでお尋ねしておるのです。審査の過程だから答弁できないと言えばそれは一応ごもつともだと思いますが、本案を審議する上において、その基礎でありましたものに対する見解をお聞きするとともに、それが審査修正せられた経過をやはり明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/44
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045・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 言葉を返して恐縮でありますが、当時の帝国議会という公の場においての審議の過程というものは、速記録にもちやんと出ておりますし、国民に知らしむべき状態のもとにおいて行われておる公の働きでございますから、これと法制局のごく内部の事務的な審議の手続というものとは性格が全然違うと思います。その意味で、実はもうそろそろごめんをこうむりたいということで、お答えしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/45
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046・川俣清音
○川俣委員 第一条は、廃止することは不適当であるというお考え方で、当分の間停止するということになつたと思うのですが、不適当だというふうにお考えにならなかつたか、なつたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/46
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047・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これは、先ほど触れましたように、法律論としては、廃止するとしたところがあるいは停止するとしたところが、どちらも憲法違反でないという結論は同じことなんであります。ただ、その方が政治の扱い方としてどちらが望ましいか、政治的な観点からどちらが望ましいかという問題でございますが、私どもの仕事から申しますと、政治的に望ましいか、望ましくないかということは本来の職責ではございませんので、実はあまり深くそこまで論じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/47
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048・川俣清音
○川俣委員 廃止するか停止するかということは政治的な見解に基くことになりますが、これは審査の範囲以外だというのがあなたの御答弁です。そうすると、審査の結果かえられたのではなくして、政治的配慮でかえられたのだ、こういうふうに理解してよろしいのでありますか。その点はもつと率直に答弁してくださいよ。これは確かにあなたの方で審査された結果不適当だということになつたという一応の説明ができておるわけですね。これは私どもの審査以外だということになれば、これは政治的配慮でこうなつたということになれば、また別問題です、問題をあらためて発展させるなら別ですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/48
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049・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これは私をつかまえてお聞きになるより、やはり大臣級の人にお尋ねになるべきことかと思いますけれども、まず仕事の方の御理解をいただく上で申し上げますと、私どもの方の立場は、先ほども触れましたように、ある法案が出た場合に、これが憲法に違反するかどうか、また他の法律との関係において矛盾関係はどうか、あるいは字句の表現等においてどうかということが中心になりますけれども、しかしこれは、極力憲法の精神に近づけたい、かりにそのままで憲法違反でなくても、なおさらに憲法の精神に近づける方法はどうかという角度からもちろんやつております。やつておりますが、その段階になつて参りますと、実は政治そのものとのつながりがすぐ出て来るわけであります。ですから、極力忠告すべき点は忠告し、助言すべき点は助言する、こういう角度からいたしておりまするけれども、やはりそこに何らか限界があるということ、これは謙虚なと申し上げた方がいいと思いますが、謙虚な気持で取扱つておるわけです。その根本の立場を申し上げて御理解いただいて、見解の方は、あとで大臣級の方がおいでになりましてから、その方からお聞きとりを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/49
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050・川俣清音
○川俣委員 そういたしますると、できるだけ憲法に違反しないように審査することがあなたの職務であるという見解に立つて助言せられたというふうに一応理解いたします。ほんとうはそう理解したくないのでありますけれども、一応そういう理解の上に立つて次の問題をお尋ね申したい。
綱島委員から明らかにされたところでありますが、憲法の第四十一条に国会は国権の最高権関であると定めてあるのは、これは、実質的な意味における立法と、形式的な意味における立法とを可能な限り一致さすべきであるという要請から出ておるものであるという見解を憲法学者はとられておるようであります。これはもちろん妥当な見解であろうと思うのであります。従いまして、法の規範は、可能な限り法律として、国民の代表機関であるところの国会の議決をまつて提出すべきものであるという見解も、これはまつたく正しいと思うのです。そこで問題は、できるだけ民主主義の原則に従つて、立法権、行政権、司法権等の、いわゆる三権分立の考え方が出て来ておると思うのです。そこでこれらの条項、憲法の精神から見まして、行政権または司法権による立法は可能な限りこれを排除して行くということが必要ではないか、こういう見解を持つのですが、できるだけ行政権または司法権による立法を排除するということが民主主義の原則に近づけしめることだ、こういうふうに御理解になれませんかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/50
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051・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 大筋の議論としてはおつしやる通りだと思います。唯一の立法機関として国会が立てられている以上は、およそ立法というものは国会が一元的におあずかりになるということ、これは当然であります。憲法の上から見ましても、例外として衆議院規則、参議院規則、それから裁判所の規則あるいは政令というようなものは、実質的には立法でございますけれども、これは憲法自身が他の機関にゆだねておるわけであります。それ以外のものについては、立法というものけ国会が一手にお握りになるべきものだと思います。ただ、先ほど来申し上げました通り、この立法というものはぎりぎり結着のところ何かということになりますと、法律制定行為そのものというように私は考えておりますから、その意味で、先ほど来の種をたれが出すかということは直接の問題にはならない。たれが出そうと制定者はあくまでも国会であらせられるという原則が確立されていれば、憲法上問題はないと考えているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/51
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052・川俣清音
○川俣委員 そこで私は問題が出て来たと思うのです。あなたに問うまでもなく、現憲法では、独裁への移行を極力排除するという考え方が四十一条に出ていると私は理解するのですが、この点は綱島委員も同様であります。日本の、再び独裁への移行を防ぐということが憲法に盛られた根本思想であるというふうに私は理解するのです。現憲法の中心主体には、この民主主義政治の原則を打立てようとする努力が払われていると思うのです。そういうところから見まして、民主主義がゆがめられるのを断固排除して行くことが私は法制局の任務でなければならないと思うのです。ところが、先ほど、綱島委員に、最終的には国会の議決を得ればそれで民主主義の原則が立てられておるのだというような御答弁があつたことは、非常に遺憾とするのです。なぜかと申しますと、どんな独裁国においても、形式的には最終的にある機関の決定をまつというような方式をとつております。形式をもつて民主主義が守られておるのだということになると、独裁と民主主義との差異がなくなつて参ります。また、最終決定を国会の審議にゆだねることだけで国会の立法権を尊重しておるのだというような御見解を述べられておりますけれども、最終決定だけをもつて国会の立法権を尊重したということにはならないと思うのです。今申し上げましたように、独裁国においてすら、形式的には何らかの機関で最終決定を行うという方法をとつておるわけです。また最終決定は多数決で行われるのであるからして、民主主義の原則が立てられてあるのだというような見解をとつて参りまするならば、独裁と民主主義との相違が出て参りません。おそらく日本の憲法はそれを極力防ごうとするところにあつたと思う。従いまして、綱島委員の説明されたことく、もし今日社会の秩序を失いまするならば、本質的には価値のない憲法と相なるおそれが出て参ります。諸外国は多く民主憲法を流血の騒動を起して獲得いたしておりまするから、その点は明瞭になつて来ております。日本また、敗戦という大きな犠牲の上に、これらの憲法が築かれておるのでありまするから、再び流血をもつてこれらの憲法を改正することは好ましくないという立場からいたしましても、四十一条というものは民主主義の原則にのつとつて解釈すべきものだという綱島委員の解釈は、私は妥当だと思う。それを、学者にもいろいろな説があるのだからと言つて、あえて曲げた見解をとつておられるというようなことになりまするならば、将来の日本の政治の上に大きな汚点を残すことになりはしないか、こう思いますが、この点についての御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/52
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053・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 くれぐれも申し上げておきますけれども、私の言つておるのは純粋の憲法論の立場から申し上げておるので、内閣から法律を出すのがいいことである、一生懸命にこれから出しますよというような趣旨で申し上げておるわけでは決してございません。内閣も出し得るという理由を申し上げておるつもりでございますから、そのつもりでお聞きとり願いたいと思います。
ただいま川俣委員から民主主義の観点からの御批判がありまして、ごもつともと承りましたが、ただ、その観点から先ほども少し触れたのでありますけれども、大体立法機関として国会の構成員であらせられる議員が法案をお出しになる、これは当然のことでございましよう。そのほかには、内閣がまた法案をお出しする、これが民主主義の原則からどうかということを考えてみますと、内閣が提案した場合については、その法律というものは御審議の過程においてどのくらいの迫力を持ち、あるいは拘束力を持つかということになりますと、これは全然ゼロでございます。ただ極力御説明申し上げます。内閣としては正しいと信じてお出ししたわけでございますから、口をきわめて、石にかじりついてもそれは通していただきたいということは、あるいは御説明するかもしれません。けれども、それをお取上げになろうとなるまいと、先ほど触れられましたように全然国会の御自由でありまして、内閣は泣いてもわめいても通らぬものは通らないというのがこの憲法の建前でございますから、その意味で、何ら国会の審議権、自主的な法律制定権というものに対する制約にはなるはずがないということが一つであります。
もう一つは、さらに、通過されました立法について、内閣が同意見を持つとかあるいは拒否権を持つとか、昔のように裁可権を持つとかということであれば、その機会に内閣が大きな発言力を持ちますから、大きな迫力になりましよう。ところが、現在の憲法のもとにおいては、国会が御制定になつて両院で可決されれば、もうそれで自然に自動的に成立してしまう。こういう制度は世界を通じましてソ連と日本だけでございます。政府側は拒否権も何も持つていない。これはその面から見ましても非常にまた民主的な形になつておるので、そういう観点からの御批判は、にわかに私としては納得申し上げることはできないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/53
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054・川俣清音
○川俣委員 ソ連もまた民衆の国であるというお考えの上に立つての御説明としては、それもまた一つの解釈かと思います。その議論はそれじや抜きます。問題は、あなたの言うように、最終的に国会が議決するのであるからさしつかえないという見解でありますならば、こういうふうに法案を一本にまとめて出すようなことをしないでもいいはずなんです。なぜそれではこんなにまとめて来たか。本来、常任委員会制度がありまして、おのおの常任委員会で決定せられた法案でありますから、おのおのその法案の修正としてるのが妥当な形ではないか。これは内閣の便宜、予算の便宜のために一本にせられたということは否定することはできない。もしも多数党内閣で内閣をとつておるのであるから、うらはらであるからという見解に立つならば、やはり、正常な形でおのおの法案の提出または廃止という形で出て来るべきものじやないか。それが妥当であるというふうになるのじやないか。あなたの見解からすればそうなるのじやないか。どつちでも同じだということを言えないことはないけれども、それは内閣の便宜ということをあなたは念頭に置いての解釈であつて、もしもあなたの言うように、ほんとうに国会が煮て食つても焼いて食つてもいいという見解でありますならば、大臣自体も議員でありますので発案権を持つておりますから、みずから議員として発案を上——この間議員として発案し、投票権を実行したこともあるのでありますから、みずからの議員の権限において繰出されることが最も妥当だというふうにあなたはお考えになりませんか。政府の見解ではない。あなたの具体的な見解です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/54
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055・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 おつしやる通りでありまして、このことは実は目にかどを立てて議論することは実益がないかもしれない。ちようど今のお言葉にありましたように、議院内閣制をとつておるならば、大部分の大臣は議員なんだから、その資格において出せばいいではないか。それはおつしやる通りで、実はイギリスあたりでも議員たる大臣の名において提案申し上げておるのです。その議案はだれがやつておるかというと、政府部内の法制局が立案に当つておる。それを議会のメンバーたる大臣がメンバーたる名において提案しておるということをやつておる国もあるのでありますから、憲法運用の一つの形として私は否定するようなつもりは全然ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/55
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056・川俣清音
○川俣委員 大体法律案の起草は立法手続上重要な意味を持つのです。これが独裁と民主主義のわかれ道だと思うのです。強力な発言権が起草、起案になつて現われる。最終決定ではなくて起案権と申しますか、起草権と申しますか、そこに問題の起りがあると思うのです。それを種がどこへ出されたつていいではないかという見解が、そもそも独裁と民主主義とのわかれ道である。そのよしあしは別として、そういう点から、一方の憲法学者といえども、現在の政治の情勢から見まして、法律案の起草は立法手続上重要な意味を持つということは何人もいなめないと思う。従いまして、かりに多くの修正を加えましても、原案は少からず影響を持つて来るわけです。また、法律の執行にあたりましても、原案の意思が相当盛り込まれて執行に移されることになると思う。これは通例だと思うのです。また、原案の意思を盛つていわゆる政令等が出て参りますことも、問題として相当残されて来る点です。今日、多くの法律に基いた政令等は、最初の起案者の意思を相当盛り込んで、あえて法律を侵すのではないかという懸念であなた方も審査されておる例がたくさんあると思う。こういう例はあるでしよう。法律の成文の解釈よりも起案者の意思に基いた政令がつくられて、あなたの審査のもとにまわつたことは多々例があると思う。それらの点については審査上拒否された点もありましよう。あるいは助言された点も今まであるはずであります。そのように、起草というものが相当重要な位置を占めておるものであるという見解をあなたはお持ちにならぬかどうか、この点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/56
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057・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 結局起案者の立場がおのずから強力なる発言力を持つというお話でありますけれども、実際問題として多少はそういうことはあるかもしれません。けれども、われわれの仕事の場合においては、そういう観点からは全然無視してやつております。と申しますのは、実はえこじになつてわれわれの仕事の段階においてとことんまでやる必要はないので、もう一つ閣議決定という段階がありますから、今度は閣議の方に言いつけて閣議できめてもらうという段階があるのであります。その点からかもしれませんが、われわれとしては起案についての力はそう認めておらないわけであります。国会に出ました場合の原案の力については、私が先ほど申しましたように、政府案であろうと議員立法であろうと、その点について原案の迫力は少しも違いはない。むしろ、法案の成立の過程を見ておりますと、政府案はずいぶんいじめられて、委員会を何回も何回も開かれて、やつとこさ本会議にかけられておるというのが政府案のたどつておる運命であります。ところが、議員立法の場合でありますと、委員会にかけてすぐ本会議にぽんと出される、そうして簡単にきまつてしまうという例が多いと思います。むしろ議員立法の方がよほどの迫力を持つというふうにも言えるのではないか、そういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/57
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058・川俣清音
○川俣委員 どうも法制局長官はときどき詭弁を弄すると思うのです。というのは、先ほどからの御説明の中に、政府と国会とは今の憲法のもとにおいてはうらはらであるから、多数が持つておる意見というものは、内閣の意見と国会の意見の意見とはあまり相違していないのだという純粋の立場をとつておられるが、どうもその立場と今の御説明とは非常な食い違いがあるのではないか。その食い違いはどこから出て来るのですか。あなたの答弁ではない。現実に食い違うのはどこから出て来るかということを、どういうふうに御認識になつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/58
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059・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 私が先ほど申しましたのは、議院内閣制という言葉を確かに使ましたけれども、それは議会の多数党をもつて構成されておる内閣であるから、その内閣で立案されたものはおのずから議会の多数の人の意向に沿つているというようなところまで実は言つたつもりではなかつたのであります。ただ、私の言わんと欲したのは、アメリカのような大統領のもとにおける厳格なる三権分立と、日本の憲法のとつている議院内閣制とを比べた場合に、アメリカのごとき場合においては、政府提案というものは一切認めておらない。これは、厳格なる三権分立の建前から、政府と国会とは他人であるということから、そういう結論が出ていると思いますが、日本の場合においては、議院内閣制ということは何かというと、国会と内閣とは親子関係に立つておつてあかの他人ではない、従つてあかの他人でない内閣が提案権を持つてもおかしいとは思えないじやございませんかという趣旨から申し上げたのでありまして、その内閣の意向が国会の多数の意向とつながつているとかおらぬとか、これは全然触れたつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/59
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060・川俣清音
○川俣委員 そこになつて来るとまたもう一度憲法論にもどりますけれども、これはもしもそういう見解でございまするならば、あるいは内閣に提案権を認めるというように憲法を解釈して行かないと、やはり正当に解釈して行つても効果は同じだという見解に立つのではないか。それならば、やはり四十一条というものを正解をして行くことの方が、運用の上においても妙味が出て来るのではないかと思いますが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/60
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061・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 先ほどのお言葉に同感の意を表しましたように、運用の面においてしかるべき方法が行われるということは、私としては、異存もないどころか、大賛成でございます。しかし、この憲法論としてお前の良心的の考えはどうかと聞かれた場合に、いや内閣には提案権はございませんと言い切るだけのどうも自信がないわけであります。これは、くどくど御説明しているのも、そういう趣旨から申し上げているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/61
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062・川俣清音
○川俣委員 自信がないというのは、いろいろの学説があるのでありまして、むしろあなたのとつておられる学説は少数学説をとつておられると思いますが、これはあらためて参考人を呼んで明らかになりますが、何ゆえに少数意見をとらなければならないか。あなたは少数意見だというふうにお考えになつておられぬのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/62
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063・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 少数、多数は国会のように表決の方法はございませんから、何をもつて少数といい多数というかということはわかりませんし、また学説も、その質の問題であつて、量の問題によつて解決はできないと思います。しかしながら、遺憾ながら先生のお話とは逆なんで、私どもの了解しているところは、むしろ私どもの考えているところが多数説であつて、反対の意向を表明されている人々の顔ぶれとしては、京大の佐々木惣一先生——綱島先生が第一でありますが、(笑声)佐々木先生、それから最高裁判所の河村又介さん、まあこのくらいじやないかと思うのでありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/63
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064・川俣清音
○川俣委員 そういう学説論を今ここでとりかわしてもむだでありますが、やはり佐々木惣一博士の流れをくむところの大石博士、また鈴木安蔵君なども大体こんな見解をとつておられるように思う。これについてはいずれ参考人を呼んで明らかにいたしますが、問題は、憲法論を私は今ここで問題にしようとしているのではない。綱島君が大体述べましたから、問題はこういう法案の提出の仕方についてさらに憲法について疑義が生じて来た、こういうことになると思うのです。
そこで、それではもつと具体的にひとつお尋ねしますが、今度の改正の中にもあるが、農業改良助長法の第二条の第一項の一号に「国及び地方の農業事情からみて緊要と認められる」、この認められるというのは、行政府であるところの内閣または政府が必要と認めるというふうに解釈すべきじやな…かと思いますが、この点はいかがですか。現行法を聞いているのです。改印しようとする法律を見るからいかぬ。われわれは現行法をもとにしている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/64
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065・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これはすべての場合に共通の原理でございますけれども、第一に、法律の執行を担任する永のは言うまでもなく政府でございますから、それが緊要と認めるかどうかということがもちろん最初に来ることでございます。ただ、その判定が間違つているかどうかということを批判されるのは、国会そのほか裁判所と、ずつとこうあるというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/65
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066・川俣清音
○川俣委員 そうしますと、内閣が、財政事情から、「国及び地方の農業事情からみて緊要と認め」というのは、いろいろな財政面、行政面から見て必要と認められた、こういうように理解してよろしいのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/66
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067・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これは、現行法を改正する点になりますと、国及び地力の農業事情という見地から見て国家的に緊要と認められるというふうに読むべきであろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/67
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068・川俣清音
○川俣委員 この判定は政府が判定すると理解してよろしいかどうか、こういうふうにお尋ねしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/68
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069・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これは「政府」とありまして、こういう各号の定めるところによりまして補助金を交付するという建前にもなつておりますし、先ほど申しましたように、そこまで書いてなくても、もちろん第一の執行責任者である政府が判定すべきものというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/69
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070・川俣清音
○川俣委員 そうすると、今度改正せられる中に、「予算の範囲内において、」をあえてまたつけなければならぬ理由が出て来ないのじやないか。予算の範囲内にということによつて第一項がかわつて参りますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/70
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071・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これはまあデリケートな問題になりますけれども、こういうふうに条文に「予算の範囲内において、」と書いてあるその意味といたしまして私どもが考えておりますのは、予算を組むときにはもちろんその率の示すところに従つて組みましよう。組みましようけれども、物価の変動その他によつて、あるいは後にはそれでまかなえなくなることもあり得るという場合には、予算上の制約がそこに出て来て、この明文の率の通りにあるいは行かなくてもそれはよろしいというお許しがここに出ている、というふうにまあ考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/71
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072・川俣清音
○川俣委員 私が先ほど来お尋ねしている緊要と認められるという国の認定は、政府が財政事情その他国の総合計画の上から必要と認められるというように理解してよろしいかと言つたら、あなたはその通りに理解してよろしいという御答弁だつた、そうすると、また財政事情ということを言う必要はないじやないか、こういうお尋ねをしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/72
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073・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 私の申し上げるのは、政府は予算の範囲内において左の各号に定めるところによつて補助金を交付するというので、まず左の各号に乗るか乗らぬかを考えないことには、補助金をやるかやらぬかもきまらぬわけでございますから、平たく考えまして、まず各号をながめて、そうして地方の農業事情から見てどうかということは、第一の判定になりましよう。その次に、さて補助金を交付する段になつて、それでは予算があるかという話になつて来るのが普通の考え方の筋だと思います。その意味にひつからめて、「予算の範囲内において、」という言葉のあるとなしとのお尋ねのように思いましたから、さつきのようなことをお答え申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/73
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074・川俣清音
○川俣委員 すると、「予算の範囲内に」ということを入れることによつて一項がかなり制約されて来るというようにお考えかどうか。今までの説明だというと、あまり制約を受けないというふうに理解しているのですが、あなたのお考えによると、一項に「予算の範囲内」という条項を入れることによつて一項が制約を受ける、こういうふうに理解されているのでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/74
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075・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これはあるとないのとはやはり違う、従つてあれば制約の形になつて来る、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/75
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076・川俣清音
○川俣委員 そうすると、あつてもなくてもよろしいのだけれども、ほかの法律にそういう条項があるから、こう書いておくことが適当だという見解とは非常に違うということになりますが、それでよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/76
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077・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 法律論から私は申しますが、実行の問題は全然別にこれは大蔵省に聞いていただきたいのですが、法律論からいえば、「予算の範囲内において、」という言路がある場合とない場合は違います。これは、「予算の範囲内において、」とあれば、多少の制約があるという意味において違うというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/77
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078・川俣清音
○川俣委員 これは各論に行つた場合に大蔵省に見解を聞くことにいたしますが、法制局長官はどのような見解を持つておられるか知りませんが、この提案理由から見ますと、予算の編成の上からそれに即応して法律的な改正を必要とするという見解をとつておられます。そうすると、あなたの今までの憲法論からこれを考えてみましても、こういう提案理由は不適当だという見解をお持ちになりませんかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/78
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079・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 提案理由の説明には私参画しておりませんから、何ですが、むしろその方が公平な判断ができるかと思いますが、ここで今お言葉にありました言葉の趣旨は、要するに補助金整理という大方針を打立てて、そうしてそれが今度の予算編成の根本方針だつた。それとにらみ合せて法律の方の調整をはかるという気持のように受取るわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/79
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080・川俣清音
○川俣委員 これは綱島委員からもずいぶん質問があり、そのあなたの答弁、また私の質問に対するあなたの答弁から申しまして、予算の編成権を第一に置き、法律の改正といいますか、立法を第二に置く、こういう考え方がここに出て来ておると思うのです。問題はここなんです。政府に発案権があるという解釈をとつて参りますると、こういう説明になつて参りますので危険があるということを綱島委員が指摘し、私もこれを指摘したのです。この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/80
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081・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、法律論としては予算と法律の性格が違いますからして、あまり深刻な問題はないと思いますけれども、これは、実際論から申し上げますと、大体政治の方針と申しますか、施政方針と申しますか、そういうものは予算を離れて立てることができない性質のものであります。従つて常に、予算編成というものは、来年度における政策の編成と言つてもいいくらいな私は重要なものだと思います。従いまして、来年度における諸般の政府の計画というものは、実は予算と並行して考えられ、しかも予算の裏づけにおいて行われておるというのが事実でありまして、従いまして、この予算を計画として先に考えて、それを並行してあるいはそれよりもむしろあとにその実施についての法律的の手当をどうする、行政の方式をどうするというような問題が出て来るというのが、あるいは普通であろうと思います。これは平たく言えばそういうことだろうと思いますが、なおお尋ねによつていろいろお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/81
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082・川俣清音
○川俣委員 そういう答弁は私は非常に遺憾だと思うのです。それは、政府はいろいろな行政上または今後の政策を打立てるということは必要でありましよう。まず、政策を打立てるなら、政策に必要な法律というものが考えられて来なければならぬ。その法律を先にしないで予算が重要だという考え方が憲法違反になる考え方ではないかということがたびたび指摘されおる。この点を指摘しているのです。政府が政策を立てる。政策というものは空じやないのですよ。それに伴う法律というものが当然考えられなければならぬ。それと予算ということになり、法律によらない予算の仕方をするから問題が起きて来るのです。そういう見解をお持ちにならないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/82
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083・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 おつしやることはよくわかるのでありまして、私の言うのは、とにかく予算というものは、政府側から見ますと、今申しましたようなことになりましよう。ただ、それと国会との関係をお考え願わなければならないのは、一体予算の制定者はどなたであるかといえば、唯一の立法機関である、もう一つの上の国権の最高機関たる国会が予算を御制定になつておるわけであります。ただ政府がこの金を出すということが憲法にきまつているだけで、制定者が国会であるということをよく念頭に置いていただきますれば、私の申し上げる趣旨はよくおわかり願える。たとえば総予算を出さないで施政方針の演説をするのはおかしいじやないかということを常識的に言いますが、そういう面からも私は推測できると思います。なお、今の予算と法律の関係において、現行法がそのままになつておつて、それに違反するような予算を組むというようなことは不心得じやないかというようなお言葉が出て来たわけです。これは私は、また純理論からいえば、先ほど来のように予算と法律は別個なものです。しかも、予算の制定者も国会、法律の制定者も国会であらせられるからして、唯一の国会という機関に意見の分裂というものがあるはずはないということで、公式論として私は申し上げますけれども、実際論として考えましても、これは補助金を削る方の法律ですから、これで私どもはしかられているのですけれども、かりに補助金を増す方の法律案を予算よりも先に御提出申し上げた場合を考えてみますと、予算の制定権者は国会ではないか、予算を出さないのに予算をふやすことを国会がのむことを前提にして、そういう増額の法律案を出すことは何だという逆のおしかりを受ける場合もあり、常に弱いのは政府でありまして、どつちからもしかられる方なのでございますが、そういう理論も出て来るのでありまして、やはりこれは法形式としては予算と法律とはどうしても違う。しかしその御審議はなるべく並行してやつていただくのが望ましい。これは私は政治論としては確かに申し上げ得ることだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/83
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084・川俣清音
○川俣委員 法制局長官の答弁のように、分裂した考え方を特に国会が持つわけはないと同じように、行政権を持つております内閣もまた分裂した考え方があるわけではないと思う。それはいいでしよう。国会だけがいわゆる精神分裂的な考え方を持たない。同じように内閣自体も持たないはずなんです。そういう見解でしよう。そういたしますと、政策を立てるということは、当然その政策の執行に必要な法律的な要素も考慮に上らなければならぬ。その考慮と同時に、予算の編成についても考慮に上る。これの全体が政策になつて来る。法律の伴わない予算はあり得ない。予算が伴わない政策もあり得ないと同じように、法律の伴わない予算というものもまたないはずです。そこで、当然に内閣は、予算の編成と同時に、法律案を持たなければならないというあなたの見解でありまするならば、これはあなたのいわゆる七十三条の点はもう一項発案権もあるのだという意味も、そういう見解からならまだ妥当だとされると思うのです。それならばまだ妥当でしよう。ところが、一々発案権は分離し、予算の発案権は分離し、内閣というものは一つだ、こういう見解をお述べになるところに、あなたの思想の分裂もあるのではないかというふうに反問せざるを得ない。どうです、この点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/84
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085・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 議論になるかもしれませんが、私どもとしてはまた私どもの言い分がございます。それは、おつしやる通り現に、内閣としては、一つの機関である以上は、意思の分裂なんかあるはずがないと思います。従いまして、現実の問題として申しますと、内閣が予算を審議する場合には、予算でこれだけの補助金をこう手当をするならば、これについてはこういう法律の手当がいるなということは当然頭に置きながら予算を審議しているわけです。ただ、現実にその法律の立案にいつ着手するかということになりますと、それは一日、二日、場合によつてもつと着手するのが遅れます。しかし、その予算を閣議決定をしておきながら、その予算に反するような法律を閣議決定するということは、まさにこれは分裂であります。そういうことは絶対にあり得ない。この補助金の例で言えば、補助金のこれこれを減額するという予算をきめておきながら、増額の方の法律案を閣議できめたということになればまさに意思の分裂でありますけれども、そういうことはいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/85
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086・川俣清音
○川俣委員 これ以上あなたと議論することはやめますが、問題は私はそこにはないと思うのです。今日のような情勢の中において、これは、何と言いましても、少数で多数を支配しようとする思想があるといわれておるところに、こういう議案の提出の仕方が出て来ると思う。これは少数内閣のときにおいて一番やりいい手です。少数内閣が独裁を振う場合に、もしも今後こういうことが許されるとするならば、少数で多数を支配するという方向が出て来るのです。解散でおどかし、予算修正を通し、次に予算の修正が通つたから法律案を通せということになつて参りますと、これは少数内閣でもできます。これは私は恐ろしい方向に行くと思う。あなたはそういう懸念がないとお考えになりますか。もしも将来懸念ができた場合に、あなたの責任はどこまで追究されるとお考えになつておるか。今日限り追究がないというふうにお考えになつておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/86
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087・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 どうも職掌柄政治のことにたいへんうとうございまして、ただいまのような高度の政治性のある御質問にお答え申し上げる能力はないわけでございます。とにかく憲法の命ずるままに事が動いて行けば、それで私の責任は果されたと思いますが、安心感は得られるというふうな立場におるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/87
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088・川俣清音
○川俣委員 もしあなたのような見解をもつて憲法を解釈して行くということになりますと、そういうおそれの出て来ることを私は非常に憂慮している。これは少数党内閣で解散をもつておどかす、そして予算を通す、予算を通した上に予算に伴う法律案ということで強要して参るというような結果が今後出て来るということは、非常に恐るべき事態だと思います。あなたは首を振つておられますけれども、単にこの憲法の解釈が将来の政治の上に重大な影響を及ぼすことを、もう一度御研究になる必要があるだろうということを申し上げておきます。
もう一つお聞きしますが、今までは、これは臨時立法で、時限立法というような説明を一部の大臣がしておられます。時限立法だとすると、これは当然法律的期限がなければならぬと思うのてす。臨時的な便宜的な法律だ、いわゆる時限的な法律だ、こういうふうに説明しておられるのです。その説明の通りだとすれば、本来の法律からいつて、やはり時限立法としての期間がなければならないと思うのです。これは臨時とか当分とか言いますけれども、当分ということで将来もずつと継続しようとすることが可能な法律であります。当分というものはただ言葉だけでありますか。この見解はどうですか。時限立法でありますならば、当然期限を付すべきだと思います。臨時立法といえども、おおむね期限を付すべきものじやないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/88
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089・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 お尋ねの通りだと思います。ただ、大臣がどういうことを言いましたか、大臣のことを批判してはよくないとは存じますが、しろうとというか、それに近いようなお方は、いわゆる臨時法というものと時限法というものとそう精密に使いわけて発言はされておらないんじやないか。おそらく時限法で言われたとすれば、臨時法という意味でおつしやつたのじやないかと思いますけれども、お言葉の通りに、時限法とわれわれが厳格意味で使つております場合は、何年間効力を有する、いつくまで効力を有するというような日にちのはつきりしているものを時限法と言つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/89
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090・川俣清音
○川俣委員 当分というのは一年か二年、せいぜい三年だという見解は誤りでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/90
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091・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これは今までの例で当分という言葉を使つた法令のいろいろのものがございまして、ものによつて違います。一年あるいはもつと短かいものもございますし、相当長いものもまれにはございます。これは一概にどのくらいの期間を当分と称するかという定義は下しかねるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/91
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092・川俣清音
○川俣委員 この法律で当分というのはおよそ何年くらいを考えて当分とつけられたのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/92
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093・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これは大蔵大臣なり、その方の実質的の責任をお持ちの方からお答え願つた方がよいと思いますが、私どもは、今申し上げたような趣旨の意味での当分ということで、別に何年というような、私の立場から言うと僭越なことになりますが、そういうことは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/93
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094・川俣清音
○川俣委員 法律解釈として、それでは当分というのは、およそどのくらいの期間を当分というのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/94
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095・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これは確答しない方がよいと思います。はつきり一年、二年という言明はできません。というのは、先ほど触れましたように、当分というのはあくまで当分という言葉であつて、それ以外にはつきり日限を切つたような意味を申すものではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/95
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096・川俣清音
○川俣委員 当分という言葉というものは非常にあいまいな言葉である、そういうことになりますが、あいまいな言葉はできるだけ法律から避くべきではないかという御見解をお持ちになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/96
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097・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これは、あいまいとは申しますけれども、法律論から申しますと、この実施がどうも長くなつて、一向当分の切れ目が来ないという場合においては、これは唯一の立法機関としての国会の御判断もございますし、あるいは内閣そのものの御判断もありまして、要するに、当分というのはこういう措置を続けて行く必要がある間ということで、客観的な当分の認定問題だと思います。これは、国会が御認定になれば、そのときに元へもどす立法措置をおとりになりましよう。内閣がその認定をとるならば、あるいは内閣の責任において御提案申し上げる形で、実際の動きによつて解決されるものであろうと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/97
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098・川俣清音
○川俣委員 この当分という問題もよく憲法に関連して来る問題になつて参りますので、私はこの点はこれ以上追究いたしません。所管大臣または内閣の代表の方が見えられたときに、これ以上の質問をして参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/98
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099・葉梨新五郎
○葉梨委員長 ちつと速記を待つてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/99
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100・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは大蔵大臣が見えましたから、川俣委員に質疑の継続をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/100
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101・川俣清音
○川俣委員 補助金等の臨時特例等に関する法案の提案理由をお聞きしたのでありますが、この提案の理由だけでは、なぜ法律を一本にまとめて提案しなければならなかつたのかという理由が明らかではありません。特に、最初の原案を見ますると、補助金等の臨時特例という言葉よりも、むしろ補助金の整理に関する法律案ということで、大蔵省で原案を練つておられたようでありますが、その法案が、法制局の審査の結果、違法的な違憲的な条項もあるということで、法制局の助言に基いて改正せられておるようであります。何ゆえ原案を修正しなければならなかつたか。この二点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/101
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102・小笠原三九郎
○小笠原国務大臣 お出ししたものが実は原案なのでございまして、それまでの行き道にいろいろ内部で相談し合うことは、これは川俣委員御承知の通りであります。ただこの法というものは、私どもの根本の考え方を申しますると、議員の方々がおつくりになつたものが大部分を占めておりますが、今日のような非常な緊縮財政をやるときは、一時こういうものは国の財政上やむを得ぬけれども、しかしまた事情が許すようになれば、そういうこともまたひとつ御意向を体してもいいんじやないか、こういうふうな考え方がありますので、二、三年国の財政の建直しをする期間というのに実は重きを置いて考えたような次第であります。従いまして、一時停止するというのが実は私どもの考え方であります。
それでは何でこんなふうに各省の分をみんなとりまとめたかと申しますと、やはり審議をお願いするのに便宜であろう、審議の便に資するというのが私どもの主とした考え方であつたのであります。法制局は専門のことでございまして、こういうことでは字句が穏当でないということがありましたので、もちろんそれに従つたわけです。法律案をお出しするときは、川俣さんも御承知のように、大蔵省にも法律をやる者がおりますけれども、どうも法制局ほどくろうとではございませんので、すべて法制局の方にまわして、法制局の意見でまとまつたものを政府原案として閣議決定に持ち出す次第でありますので、一番最初のものはどうだつたと言われると、法制局から見て足らぬ点があつた、こう言つていいんじやないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/102
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103・川俣清音
○川俣委員 そういたしますと、この提案説明の中にもあります通り、政府が予算を組んで国会に出す、その結果に基いて、それに即応して法律を改正して行こうというのがやはりほんとうのねらいじやないのですか。大蔵大臣は、予算編成の上から、この予算編成にじやまになるような法律はかえて行こうという考え方じやないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/103
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104・小笠原三九郎
○小笠原国務大臣 私どもとすると、一番根本は、国の財政を健全化するまで、当分の間こういうふうに、たとえば補助金の率等について忍んでいただく、こういうことを考えたことが一つでありますが、もう一つは、実は遊興飲食税は御意向もあつてやりませんでしたが、入場税等につきましては、やはり中央地方を通ずる一つの財源の調整をやらなければいかぬ、こういう考え方で、本年はタバコなどについても初めてああいうものを地方に交付することにしました。ガソリン税について一部地方に交付するとか、そういうことをいろいろやりましたので、今事の制度をかえて、中央地方を通ずる財政の調整といいますか、こういうことに役立てる、こういう意味が強かつたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/104
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105・川俣清音
○川俣委員 国の健全な発展をはかるということになりますと、何といつても憲法に基いて国の基礎を確立して行かなければならぬ。それが一番優先だと思う。国の基礎を確立する上から憲法が基礎になり、その条項に基いて、日本の発展をはかるために予算上のことや財政上のことが考慮されなければならない。国が不安定でありますならば、財政がいかにうまく行つてもそれはくずれて行くと思うのです。そこでやはり憲法が基礎にならなければならない、こういうふうにお考えになつておると思うのです。また憲法に基いて小笠原三九郎氏も大臣になつておられると思う。従つてやはりそこが基礎にならなければならない。基礎になつて参りますと、議員立法であるから、むちやをやつて予算を出したのだからかえて行かなければならないということになると、議員であります小笠原三九郎自身を否定するということになりはせぬかと思う。またこの内閣は多数をもつて総理大臣を持つておるのでありますが、みずから多数を持つたからには、この補助金政策で多数をとり得た点も多々あると思うのです。この補助金がみな悪いのだ、議員立法がみな悪いのだということになりますと、もう一度多数党内閣も解散して出直さなければならない。みずから解散して出直すなら別であります。これは政治論になりますけれども、その出て来た補助金だけが悪いのだ、議員立法だけが悪いのだというお考えの方がどこから出て来るのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/105
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106・小笠原三九郎
○小笠原国務大臣 憲法が基礎となり及び憲法に基いて諸般のことをやるべきことは川俣さんの仰せの通りで、小笠原三九郎も決してこの点については人後に落ちるものではありません。しかしながら、今度は憲法の中での財政的なものから見ますと、ことしのごとく緊縮予算をとにかくやらなければ日本がどうなつて行くかわからぬという情勢下に置かれているときに、財政の見地から見てこの程度は少しがまんしてもらつたらどうだろうという考え方において、これは議員立法だから議員立法でないからという区別は私どもいたしておりません。たまたま議員立法の分が非常に急にふえて来た点があるものですから、今のようなお話の点もでますが、議員立法を尊重することは当然だと思います。私どもは議員立法を軽んずる意思はないので、ただ、ここ当分の間、財政上の健全化のためと、中央地方の財政の調整ができるまで、少し忍んでおつていただこう、こういう意味でいわゆる停止という言葉を言つておるのであります。
なお、このうちに議員立法が仰せの通り多いことは多いのですが、二十三のうちで十三だけが議員立法にかかるもので、あとの十の方は政府の分でありますので、別に、あなたの仰せのように、君は自分が議員でありながら議員を軽くするというおしかりは受けないで済むのではないかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/106
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107・川俣清音
○川俣委員 大臣はうかつに予算がふえるのは議員立法だとお考えになつておるから、今度できた二十三の中にも議員立法が多いのではないかと判断をされるのではないかと思います。それは議員立法だけが多いのではありません。当時内閣を組織する上から、多数を得る上から、選挙の便宜の上から、選挙に勝つためにはこれらの方法を講じて多数を得ておられると思う。何といつてもこれは査定できないと思う。従つて多数を持つておられるというその裏づけの中には、これらの法律が有効に働いておつたということも否定できないと思う。もしこれらの法律を有効に使つておらなければ、多数だつて内閣をとり得なかつたと思う。これらの恩恵のもとにこの内閣が成立しておるのだというふうにはお考えになりませんかどうか、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/107
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108・小笠原三九郎
○小笠原国務大臣 私は仰せのごとくそれのみでこの内閣が成立したとは毛頭考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/108
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109・川俣清音
○川俣委員 それのみでということはもちろん思いませんが、それも大いに有力なものであつた。というのは、八〇%、九〇%、おそらく選挙中の宣伝文書を見ますとそれがおもなんです。それ以外には、緊縮財政で、予算の上から、日本の財政の上から緊縮して行かなければならないというようなことは一つも宣伝しておられません。この内閣がつくるならばこれだけの補助金をやる、これもやる、あれもやるというのが大体自由党の宣伝です。政治的な質問をしようとは思いませんが、たまたまそこに出たものですから……。しかしながら、大臣は先ほどから議員立法を尊重するとか、できるだけ軽視しないとか言つておられますが、これは、午前中綱島委員から法律案の提出というものは、憲法四十一条に基いて、または七十二条に基いて、国会が発案権を持つておるのだ、政府が出すのは違法ではないかという議論が行われておる。小笠原さんは話が大分違う。議員立法だから尊重するの、あるいは決して軽視しないのと言う。それが本来だという主張が行われておる。軽視や尊重どころではありませんよ。もしもほんとうに憲法を尊重するというなら、政府が発案権を持たないということが適当ではないかと思うのですが、この点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/109
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110・小笠原三九郎
○小笠原国務大臣 今のようなお話も一部の議論としてあることは聞いておりますが、もちろん予算の編成権を政府が持つておりますので、その予算の編成権に触れるような立法がいろいろ出て来れば、これは予算の編成権を侵害することになるので、これは穏当を欠くことはどなたがお考えになつてもよくわかると思うのであります。従いまして、これもやはり川俣さん、大体ものは程度の問題ではないですかね、公平に考えてみて。私はそう思う。それは議員立法よろしきを得るときには、ひとり尊重されるばかりでない、国民から歓迎をされると思いますが、しかしもし程度を越しておるということになれば、やはりこれは世間でかれこれ批判を受けることにもなる。それからまた今のような御意見、議員のみが提案権があるのだという御意見を聞いたこともありますが、これは政府はさようにも解釈しておらず、また大勢の人はさように解釈しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/110
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111・川俣清音
○川俣委員 大蔵大臣とここで憲法論をやろうとは思いません。しかしながら、小笠原さんの中に一番重大なことは、内閣に予算の編成権があるのだという説明は今までなされておりません。提案権があるのだという説明はありますが、編成権があつて、これで拘束するような編成権を持つておるのだという説明がなされておりませんですが、あなたはそういう解釈をしておりますかどうか、この点を明らかにしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/111
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112・小笠原三九郎
○小笠原国務大臣 私ちよつと条文を持ち合せませんが、政府が編成してこれを提案するということになつておりますので、はやり編成権があると私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/112
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113・川俣清音
○川俣委員 編成権があるというのと、編成して提案権があるというのとは大きな違いです。あなたは、編成権まであつて、これに議員としても拘束を受けるのだというような考え方で提案されるとすれば、これは重大なことだと思うのです。その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/113
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114・小笠原三九郎
○小笠原国務大臣 今ちつとここにもらいましたが、予算を作成して国会に提出するとありますので、予算を作成する、つまり予算を編成することは内閣の責任にあると考えます。また権限であると考えます。ただ、法律の提案というものにつきましては、私ども、憲法上は提案権があるだけだ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/114
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115・川俣清音
○川俣委員 そこでだんだん整理されて来たと思うのですが、小笠原さん、何といつても大蔵省の考え方は、最初の原案を見ましても、予算の編成上じやまになるような法律はできるだけあとでもいいから制限をして行こう、予算を第一に優先的に考えて行こうというのが大蔵省の考え方ではないんですか。しかしながら、内閣の義務としては、法律を誠実に執行するという義務を負わされておるはずなんです。私は憲法論を言うつもりじやないんですよ。内閣としては、何といいましても、憲法に基いて、法律に従つて、これを誠実に執行するということが義務づけられておるはずであります。従いまして、予算の上から不便な法律はあとでかえるんだという考え方は、そもそも間違いではないか、その点だけお聞きしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/115
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116・小笠原三九郎
○小笠原国務大臣 腹の中では実はそう考えておりません。(笑声)これはそう考えておりませんが、私ども、たとえば増税をする場合でも、減税をする場合でも、これは予算について増税を見る、あるいは減税して収入減を見ておりますけれども、これについては、どなたも、あとの法律の改正措置によつて減税案が出、あるいは増税案が出ても、不審に思われないと同じように、これは一時こういうぐあいだから忍んでいただこうということにしたのであります。最初からこれこれの中でということでありませんで、一口に言うと、元へもどしたのが多いのでございます。これも法律的な言葉にはならぬのですが、これによつて忍んでいただけるかどうかと実は考えてやつたので、最初からその腹づもりでやつたということではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/116
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117・川俣清音
○川俣委員 大蔵省の原案には、第一条は、法律第百三十四号を廃止するということだつたですね。これは、法御局から廃止するということは違憲のおそれがあるということで、こういう法案の出し方について疑義が出て参りましたので、当分の間停止するというごうに変更になり、修正せられたと考えられるのです。この大蔵省の原案は、単に予算的の便宜のためではない。予算面からいえば約三十億内外の金を節約したいということで、違憲の問題が起るような法律をあえてお出しになる点についての問題なのです。わずか三十億くらいのことで違憲問題が起るような、法律上疑義のあるような一つの問題を起すような法案の提出の仕方、または法律の内容をあえて掲げなければならない根拠をお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/117
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118・小笠原三九郎
○小笠原国務大臣 廃止とあつたのを停止とされたということですが、そういうことはどこから川俣さんのお手に入つたのか知りませんが、私ども廃止と考えたことはありません。また法制局で停止と直されたというのは、それはだれかが何かの間違いとして言つたことで、少くとも閣議では最初から停止ということになつて出ております。従いまして、これの原案は停止でございまして、決して廃止ではございません。原案がでできるまでのいろいろな道行きがあつたということはありましよう。それは、川俣さん、いろいろあることは事実でありますよ。ただ、これがきまつたということについておつしやつていただきたい。廃止ということで閣議に出したということは全然ございません。
それから、今のお話でございますが、実は、私どもは、この法律の改正を要しない補助金でも、これはいろいろな御希望もありますし、また世間の一つの輿論もありまして、相当多額の補助金の整理を行つておることは御承知の通りであります。従いまして、私どもの根本方針というものは、中央地方の財政の調整をするという根本から来ておるのであります。それで、今ここでお願いしておるのは法律の改正をするのでありますけれども、法律の改正をしない部分についても相当たくさん補助金の整理をいたしたことはよく御承知のことと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/118
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119・川俣清音
○川俣委員 小笠原大蔵大臣は、非常に重大な御発言をなさつた。廃止するというようなことは考えたことがないと言われた。もしも廃止することを大蔵省が考えたことがないのにかかわらず、こういう文書が各省にまわされ、大蔵省の新聞記者にまわつたということになりますと、これはだれが責任を負われますか。原案は大蔵省から出ておる。記者クラブにも出ております。各省にも大蔵省からまわつております。これはだれか大蔵省以外の者がやつたということになりますと、綱紀粛正の問題が起きて来ると思いますが、この点についての責任はどうしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/119
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120・小笠原三九郎
○小笠原国務大臣 最後の成案ができるまでの道行についてはいろいろありましようが、私どもは、大蔵省の案というものを閣議に出すことをもつて成案としておるのでありまして、それが閣議に出されたときに少しも直されておりません。また法制局の意見も全然出ておりません。従いまして、その前にだれがやつたか、そう一々こまかいことまで私は責任を負わすべきものではないと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/120
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121・川俣清音
○川俣委員 これはそうじやないんです。あなたがこういうことを考えたことがないと否定されたから、これを問題にしておる。そういうことも最初考えたけれども、これは訂正したんだというお考えであれば、私はあえて追究しないですよ。そんなことはなかつたと言われるから、なかつたものが流布されるということは重大だということなんです。こういうことも一応考えたけれども、しかしながら、閣議へ出すときには法制局の意見も聞いて直したというなら別です。また法制局でも、初めの原案はあまり適当でなかつたから、内閣に助言をしたということをここで明らかにしております。こういうものはなかつたということを言われることは非常に不穏当だと思うんですよ。そうすると綱紀粛正の問題が出て来ます。私はあえて追究しませんが、なぜ問題にしておるかという点について、大臣ちよつと聞いてください。私がこれを追究するのは、原案の作成者の意思というものが相当あとの政令やその他に響きを与えるからで、原案が修正されて提案されましても、原案起草者の意思に基いてとかく政令やその他の命令が出るおそれがあるので、原案起草者の意思というものを確かめたいというところから出ておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/121
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122・小笠原三九郎
○小笠原国務大臣 これは事務的にはいろいろな段階があつたかもしれませんけれども、私のところに来て、私が発議をして閣議へ出した段階では、停止となつておるのであります。従つて、その前に法制局その他と打合せることは、すべての法律はみなそうです。全部打合しておるのでありまして、その結果停止となつたかどうか、私が閣議に持つて出るときは停止となつておつたのでありますから、私としては承知していないということです。小笠原三九郎は承知していない。しかし大蔵省の何がしかは承知していたかもしれない。段階としてそういうことを書いてあつたかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/122
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123・川俣清音
○川俣委員 書いてあつたということをお認めになるなら、私は別に追究しません。しかし、そういう考え方で大蔵省の財政面だけを考えて法律を廃止するというようなことは行き過ぎじやないかということを、さつきから指摘しておるんです。現に行き過ぎがあつた。従つて、法制局ではこれを指摘して内閣に助言したということです。いわゆる内閣に助言したということを前に法制局長官は明言いたしております。行き過ぎがあつたから助言したと言われるのです。あなたは、それを閣議に出すまでには相当研鑚を積んで出されたと言う。これはあたりまえのことですよ。ときどき研鑚しないで閣議にかけるから、閣議でもう一度やり直したということが起るのです。研鑚をすることはあたりまえのことです。あたりまえのことを聞いているんじやない。前にそういうことがあるということは、法律を無視するようなこと、法律を無視してもなお財政上便宜をはかるという考え方があることについて、もう一度考え直す必要があるんじやないかという意味で質問いたしておる。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/123
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124・小笠原三九郎
○小笠原国務大臣 私はさような考えを全然持つておりません。中央地方の財政調整を行う方針からやつておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/124
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125・川俣清音
○川俣委員 補助金の使途が時には不明瞭になつたり、あるいは不正が行われたりいたしまして、大蔵省もこれに相当頭を悩ましておることは認めます。これはどこから出て来るか。やはり法律の遵法精神がないところから出て来るんです。そうじやありませんか。そうすると、法律なしに、まだ成案を得ないうちに予算をかえるというようなことが起きて参りますと、この予算についての信頼度がなくなつて来るのです。去年は補助金を出し、今年は出さない、来年はまた出すというような不安定なことだから、特に不正が行われて来るのです。あるいは使途が不明瞭になつて来るということになるのです。何と言いましても、法律を基準にして予算を編成するという考え方にならなければならないというのが、私は憲法の基本方針だと思います。その編成された予算がどのようにして正確に法律に基いて行われるかということが、大蔵省の行政上の責任だと思うのです。国の予算の切りまわしの責任を持つておられるが、それは按分が必要なんでなく、按分した金がいかに有効に使われておるかということが大蔵行政の任務でなければならぬと思いますが、その点どうですか。みずから法律を侵すようなことをやつておつて、他人を監督できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/125
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126・小笠原三九郎
○小笠原国務大臣 私どもは一つも法律を侵してはおりません。すなわち、先ほど申し上げた通り、たとえば増税するとか減税するとかいうことも結局同じことなんです。そういうものを見て予算を組んでおるのでありまして、あなたのごとく言えば、増税案も減税案も全然やりようがなくなつてしまう。翌年も同じ予算を組まなければならぬことになつてしまうので、さようなことは前例にも何にもございません。従来もこれはみんな認められておることです。もし私どもが、法の改正案を出さないで、かつてなことをしたならば、それはおしかりを受けるのは当然と思われるのでありますけれども、しかしながら、こういうふうな裏づけをやつておるので、これに対する御協賛を願つておるのですから、これは私ども当然なことと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/126
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127・葉梨新五郎
○葉梨委員長 大蔵大臣の時間がちようど経過したのですが、まだよほどかかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/127
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128・川俣清音
○川俣委員 まだほんの序論なんです。こんなことを出したくはないのですが、よけいなことを言われたものがから問題がそれて行つたので、(笑声)はつきり認められておるなら何もこんな問題はないのです。出したことはたいとか、あるいは考えたこともないというようなことを言われるから、つい議論が変な方へ行つてしまつたのです。そこで本論に入りますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/128
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129・葉梨新五郎
○葉梨委員長 そうすると、大臣はまだ必要でございますか。先ほどのお約束の時間が実は来ておるのです。これは外国使臣との関係ですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/129
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130・川俣清音
○川俣委員 それでは保留しておいてもけつこうです。——それでは、大臣に対する質問は保留いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/130
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131・葉梨新五郎
○葉梨委員長 では大蔵大臣に対する質問は保留願いまして、あとの政府委員には質問ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/131
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132・川上貫一
○川上委員 関連して一つあるのですが、大臣はまだおられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/132
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133・葉梨新五郎
○葉梨委員長 大臣は外国使臣との関係がありまして、二十分という約束であつたのが二十五分になつておりますし、川上さんの関連質問もそれでは十二日にひとつ御延期を願います。——ほかに大蔵大臣以外の政府委員には御質問ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/133
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134・川俣清音
○川俣委員 総括質問ですから、大蔵大臣でもいいし、内閣総理大臣でもいいし、あるいは副総理でもけつこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/134
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135・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それらの人は今日は出席されませんから、そこで御相談ですが、本日はあなたの質問は保留して、これ以上続行されませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/135
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136・川俣清音
○川俣委員 相手がいないのでできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/136
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137・葉梨新五郎
○葉梨委員長 そのほかの政府委員にも質問がないということに了承してよろしゆうございますか。——他の諸君も政府委員への質問は本日はございませんか。
それでは、次会は明後十二日午前十時より開会することといたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905191X00319540310/137
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