1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年三月三日(水曜日)
午前十時五十七分開議
出席委員
委員長 小林かなえ君
理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
理事 田嶋 好文君 理事 吉田 安君
理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君
林 信雄君 牧野 寛索君
高橋 禎一君 神近 市子君
木原津與志君 木下 郁君
出席政府委員
法務政務次官 三浦寅之助君
委員外の出席者
検 事
(刑事局参事
官) 下牧 武君
判 事
(最高裁判所事
務総局刑事局
長) 江里口清雄君
専 門 員 村 教三君
専 門 員 小木 貞一君
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三月二日
刑事訴訟法第百九十四条に基く懲戒処分に関す
る法律案(内閣提出第七〇号)
同 日
仙台法務局津谷出張所存置に関する請願(佐々
木更三君紹介)(第二六七〇号)
松山法務局大洲支局等存置に関する請願(井谷
正吉君外二名紹介)(第二六七一号)
広島法務局津田出張所存置に関する請願(灘尾
弘吉君紹介)(第二七四六号)
詐欺横領事件に関する請願(古屋貞雄君紹介)
(第二七八三号)
戦犯者釈放に関する請願(大村清一君紹介)(
第二七八六号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
連合審査会開会申入れの件
交通事件即決裁判手続法案(内閣提出第二七
号)(予)
刑事訴訟法第百九十四条に基く懲戒処分に関す
る法律案(内閣提出第七〇号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/0
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001・小林錡
○小林委員長 これより会議を開きます。
交通事件即決裁判手続法案を議題とし、質疑を続けます。質疑の通告がありますから、これを許します。林信雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/1
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002・林信雄
○林(信)委員 昨日に引続きまして、同様条文の順序に従いましてお尋ねをしたいと存じます。昨日は九条まで行つたと存じておりますから、本日は第十条からお尋ねしたいと思うのです。
いわゆる期日における裁判所の取調べの関係であります。まず裁判長は、被告人に対し、被告事件の要旨及び自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げることについては、当然であり、異存がないのでありますが、第三項の、「裁判所は、必要と認めるときは、適当と認める方法により被告人又は参考人の陳述を聴き、書類及び証拠物を取り調べ、その他事実の取調をすることができる。」というこの項目についてでありますが、この項がある程度裁判所の職権主義を加味したものであることはわかるのであります。そのことは、この法案の文字に見えまする「必要と認めるときは、」ということによつて示されておりまするが、この字句をすらりと読んでみますると、必要がないと考えれば被告人の陳述すら聴く必要がないもののようにもとれるのでありますが、本来この裁判手続は口頭の略式命令手続とでも申すようなものであつて、被告人の陳述は原則としてこれを聞かなければならないものであるにかかわらず、それすら聞かなくていいのではないかと受取れないこともないと思われるが、いかがなものでありますか。
それは当然やるべきものとしましても、裁判所が被告人や参考人の陳述を聞き、あるいは書類、あるいは証拠物を取調べ、その他事実の取調べをすることができるということになりますと、これはただちに取調べない検証のことを含むのでありますか。これが第二点であります。
第三点には、この期日における審理にあたりましては、被告人あるいは弁護人より適当なる書類その他証拠物を取調べることの申立て、あるいは検証の申立て等が可能であり、法廷あるいは――この場合は法廷より予想されておらないようですが、法廷外において取調べをなす場合がありといたしますれば、それらの場合を含んで被告人及び弁護人は、裁判所の取調べと並行いたしまして、参考人あるいは証人あるいは場合により鑑定人等に対する尋問が可能であるかいなか。これらの点について御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/2
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003・下牧武
○下牧説明員 まず第一点の被告人の陳述を聞く点でございますが、この点は第二項におきまして「被告事件について陳述する機会を与えなければならない。」という点で保障しているわけでございます。それで被告人の期日における出願を要件といたしました場合は、被告人に直接裁判官が弁解の機会を与えるというのが主でございまして、その弁解についてこれは自由に被告人が陳述する権利を持つておるわけでございます。しかしその被告人の弁解が何もないような場合、それからその弁解が裁判官のふに落ちないような場合に、裁判官は場合によつては被告人に質問をいたしまして、その陳述を聞くことができるというのが、この第三項の趣旨でございます。初めから被告人を取調べの対象といたしまして、質問に真正面から答える義務を負わせるということになると行き過ぎでございますので、立て方といたしまして必ず出頭して来て、そして自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げられ、その上で弁解するとあれば、自由に弁解できる。しかもそれでなお不十分であります場合には、裁判所は適当な方法で質問をして、そしてまたその後において開くことができる、こういうような立て方にいたしたわけであります。
それから次は検証の点でございますが、法廷における簡単な検証というものは当然事実の取調べとしてできると思います。法廷外においてなす検証、あるいはその他鑑定といつたような大がかりな、しかも迅速に処理のできない手続は、この法律では予想いたしておりません。それで場合によりましてあるいはこういうことは考えられるかと思います。たとえば裁判所の構内に現に違反を起した自動車を持つて来ておる。その事件が構造装置に関する違反であるという場合に、ちよつと見てくれというようなことを被告人から申し出た場合に、裁判官がちよつと表に出て行つて見て来るということは許されると思いますが、それはしかし期日における取調べではないのでありまして、その結果はあくまでも表現された期日においてこういうことになつておるということを法廷に出さない以上は、これは証拠とすることはできないということになろうかと思います。
それから第三点の証拠の申出の点でありますが、これは当然できることを予想いたしておりまして、第四項に「検察官及び弁護人は、意見を述べることができる。」というのは、そういう証拠の申出が当然できることを予想いたしまして書いてございますので、その点は決して否定する趣旨ではございません。それから第三項の趣旨でありますが、これは「裁判所は、必要と認めるときは、」というので、必要がないと認めれば事実の取調べをする必要はございません。というのは、たとえば本人の弁解を聞きまして、その弁解と、検察官から差出された現認報告書、そういうものとあわせて、そうして心証がとれればそれでもう有罪の宣告をしてよいわけであります。ただその場合に、その現認報告書はどうもちよつとおかしいという場合には、裁判所が必要と認めて本人にそれを示して、現場はこういうふうになつておるが、どういうふうにしたかということを尋ねて、お前はこういうふうにして来たところが、ここで違反を犯したというようにして、その書類を調べて事実の取調べをすることができる。こういう関係が第三項にある趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/3
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004・林信雄
○林(信)委員 いつも同じようなことを言つておりますが、あらためて公開の法廷でやるという裁判手続でありますので、まつたく略式手続とかわらないような、わずかに被告人の弁解を聞くだけの手続であるとしますれば、どうもあらたまつて一つの裁判手続というほどのものに形をつくりますよりは、略式手続をさらに一層迅速簡易にするという方の考え方に形を合せて、むしろ略式裁判手続に、裁判官は被告人の弁解の機会を与えるための適当な手続をつくればよろしいのではないかと思われる、こういうことはいわゆる通常の裁判手続に近似した手続において、実際はまつたく書画審理も同様な裁判手続をするということが、どうも私にはぴつたり来ないのであります。さような感じが常にするのであります。立法の形式ですからいろいろにできると思うのですが、今当局のねらつておりまするようなものならば、略式裁判手続の中に適当な条項をつくりまして、それによつて実際の取扱いを、今当局の考えておられまするような警察より書類が来て、検察庁がこれを取上げ、すぐに裁判所にまわす。裁判所はすぐに略式裁判手続により特別の規定が設けられて、裁判官は被告人の弁解をその場所において聞く、こういう立法形式の万がまず無難ではないかと思われるのでありますが、そういうことはお考えになつたことはないものでありましようか。なお今日においても考えてみられる余地はないとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/4
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005・下牧武
○下牧説明員 ただいま仰せになりましたような考え方も一つの考え方かと存じます。ただこの交通事件につきましてそういう手続をとりますと書類の簡易化という面においては、これは従来通りですが、その上にもう一つ本人の弁解を聞くという点がプラスになりまして、手続の簡素化という面の目的がどうも十分達せられないということになろうと存じます。そこでいらない書類は一切廃するかわりに、今度は本人の出頭を――これは任意じやなくて、あくまで要件として、実体的な真実の点はその点で保障したいというのがこの法律の目的でございます。その意味におきまして、ただいま仰せになりましたような方法をとらずに、この法律に定めたような方法をとつたわけでございます。それともう一つは、本人を出頭せしめるといつた場合も、この第十条第三項で書いておきましたように、とにかく格式張つた証拠調べをするのじやなくして、砕けたところでちよつと尋ねてみるというふうに――これは考え方によれば非常にルーズということになるかもしれませんが、実体的な真実発見の面においては、非常になごやかな気持で調べてみるということを予想いたしておりますので、かえつてその面で被告人の保護のため・にも権利が担保されるのではないかというふうに考えまして、実はかような規定をいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/5
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006・林信雄
○林(信)委員 被告人の出頭を要件としておるということは、こういうあらたまつた形式にしなくても――やはり略式裁判の場合におきましても、現在の略式裁判は略式命令を送達しておるかと存じますが、あるいは出頭を原則としておつたかと思いますが、もし原則としておらないならば、この略式命令を受取るために出頭を要件とする考え方も考えられるくらいですから略式裁判を受けるための出頭を要件とする旨の規定に改め、しこうしてその弁解を聞く機会をつくることに改めますれば、大体この法案の目的が達しられるのではないかと思いますが、御考慮の余地があるならば考慮していただきましようし、私も研究することにして、第十条の関係は一応この程度にとどめたいと存じます。
続いて第十一条。裁判の資料となるもの、証拠の関係の規定であります。裁判所が裁判手続に現われました書類、証拠物等を裁判の資料としますことは刑事訴訟法の本則であり、かつての証拠関係において、それが憲法上の被告人の権利擁護よりして、証拠にすべからざるものを証拠にしないということも当然であります。従つて、この法文に現われております「被告人の憲法上の権利を侵さない限り」それぞれの証拠資料を裁判の基本にするという説明は蛇足の規定のようにも考えられるのでありますが、特にこの十一条は何をねらつておると心得たらよろしいのでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/6
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007・下牧武
○下牧説明員 ごもつともなお尋ねだと存じます。現在の略式手続におきましても、逐条説明書に書いておきましたように、強制、拷問もしくわ脅迫による自白または不当に長く抑留とか拘禁された後の自白、これはやはり実体の証拠とすることはできない、かように存ずるのであります。その意味におきまして、こういうような規定を置かなくても、また被告人の憲法上の権利を侵さないというようなしぼりをかけなくても、当然のことじやないかという議論が出るかと存じます。しかしながら、一応被告人が裁判官の面前に出まして、たとえば現認報告書について異議を述べて、それに反対尋問の機会も与えられていないということを申し出たような場合におきましては、それを押し切つて証拠とするのは憲法上疑義がございます。むしろそういう場合は憲法の建前を尊重いたしまして、原則として反対尋問の機会を与えておらないことについて本人が異議を言つたような、そういう書面は証拠になし得ないということを明らかにする意味におきまして「憲法上の権利を侵さない限り」ということを注意的に規定いたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/7
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008・林信雄
○林(信)委員 「期日において取調をしたすべての資料」といいますのは、具体的にどういうものでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/8
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009・下牧武
○下牧説明員 この「期日において取調をしたすべての資料」と申しますのは、第十条第三項とうらはらをなす規定でございまして、裁判官がその期日において事実の取調べをして、それによつて得た資料すべてをさすわけでありまして、検察官があらかじめ出した書類はもちろん、法廷におきまして被告あるいは弁護人から差出された書類、そういうようなものは全部これに含むわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/9
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010・林信雄
○林(信)委員 次へ移ります。第十二条。裁判官の宣告の法文であります。この法案によりますと、裁判の宣誓に、罪となるべき事実と適条を示し、刑の言い渡しその他付随の処分を申し渡すかのようになつております。従いまして刑事訴訟法三百三十五条に対比いたしまして特例をなすもののようであります。その対照の結果は証拠の標目をあげなくてもよろしいあるいは三百三十五条第二項に示されまする「法律上犯罪の成立を妨げる理由又は刑の加重減免の理由となる事実が主張されたときは、これに対する判断を示さなければならない。」ということが除外されておるかのごとく見えるのであります。すなわち三百三十五条の第二項のような場合は、やはりこの裁判手続においてもあり得ると思うのであります。従いましてこの裁判の言い渡しに証拠の標目を上げず、また刑事訴訟法第三百三十五条第二項の関係が予定されておらないのは、どういう理由によるものなのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/10
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011・下牧武
○下牧説明員 お説の通り、いわゆる証拠説明、これは告げなくてもよろしい。それから刑事訴訟法の三百三十五条第二項の「法律上犯罪の成立を妨げる理由又は刑の加重減免の理由となる事実が主張された」場合の判断、これも示さなくてもいいという趣旨にいたしてございます。それは、この証拠の標目あるいは証拠説明といつたようなことは、この手続の本質からいたしまして、略式手続と同様の点を宣告すればいいだろうということで、そこまで詳細なことをやる必要がないと存じましたので、省いたわけでございます。また一々証拠説明を言うということになりますと、その手続等の性質とも合わないということになつて参ります。
それから正当防衛とか緊急避難といつたようないろいろな主張があつたような場合、これはもう事実そのもの、罪跡を争つている場合になりますので、そういう場合はこの手続によらないで、むしろこれは正式裁判にまわすべき性質のものであるということで、三百三十五条第二項という点も問題にいたさなかつた、こういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/11
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012・林信雄
○林(信)委員 そういう審理にあたつて、こうなつた場合はこうなるものだときめて考えられておりますことが、その通りに行くかどうか、これは考えものじやないか。罪の成否あるいは刑の減免等のことが問題になる場合があり得るということを前提としておられるようですが、そうだといたしますると、それが問題になりました場合、予定の通りに裁判官がこの法案の第六条によつて、この裁判手続によることは相当でないと信じて、通常の裁判手続に引直せば、それは裁判の宣告の場合においても、この十三条の予定しておる通りでよろしいかと存じますけれども、裁判官が、少しめんどうにはなるが、通常の裁判手続によるほどでもないということで、この裁判手続をそのまま続けて行つたといたしますると、実際はその裁判の場合において、その理由も示さず、その判断の結果も示さないことになつて来る。裁判手続において、審理の過程において取上げられた問題の判断が与えられないということは、どうかと思う。証拠説明の関係においてもそうです。すべて現われましたものをこまかく説明はしないまでも、あの証拠は見てくれたんだろうか、考えてくれたんだろうかということすらも、結論においては示されないということは、これもたびたび申し上げますように、公開の法廷において通常の裁判に近似している裁判手続において、そういう表現でよろしいかどうか、こう思われるのであります。すなわち裁判所の裁判官は、立法をされましたあなた方の考えとは別の考えをもつてなす場合もあり得ると思う。そういう場合にこの第十二条のこれだけをやればいい、しかもこれだけでなければできないかのような、局限せられたような裁判の宣告の事柄が定められておりますることは、不自由があるのではないか。そういう場合にはそういうものも表わしてよろしいということになれば格別でありまするけれども、そこまでの解釈がこの十二条において許されるかどうか、疑問である。これらの関係について重ねて御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/12
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013・下牧武
○下牧説明員 まず証拠説明の点でございますが、この法律は公判手続を簡略化するという頭でできておるのではございませんで、何回も申し上げております通り、公判前の手続として略式命令をいたします場合に、その事実関係を本人に確かめた上で慎重な態度でやろうという頭でできておるのでございます。そこで略式手続でございますれば、書面審理でやる。それに不服がある場合には、正式裁判の申立てができて、三審制度による訴訟の利益を受けるようになつておるのでございますから、略式命令におきましても、この証拠の標目は掲げてございません。ただ今度の手続では、やみで全然本人に当らずにやるのを、本人を直接呼んで事実を確かめてやるという点だけをかえたのでありまして、その意味においては、これは本人のそういう手続をとることによつて十分実体的な判断ができる。そこで通常の公判手続によるがごとく証拠説明まではする必要はないのではないかというふうに考えるわけでございます。
それから次の刑事訴訟法の三百三十五条の第二項のような場合の関係でございますが、これは理論的に申しますと、今度のこの即決裁判手続は本人に異議がある場合はこの手続によらない、手続のいかなる段階にあるとを問わず、本人が異議を述べれば裁判所としてはこの手続を進めるわけには行かなくなるようになつているわけであります。そこで、この三百三十五条第二項の場合を押し切るというのはどういう場合が考えられるかと申しますと、本人が即決裁判手続でやられることについては自分は、異議がない、異議はないけれども、しかし実は私は、たとえば信号無視ならこの信号無視をなるほどいたしましたが、それはほかの自動車との衝突を避けるためにやむなくやつたことです、こういうふうに罪跡を否認している場合であります。そういう場合に、即決裁判手続でやられることには異議はないと言いながら、片一方においてその罪跡を否認するという形になつておりますので、そういう場合に裁判所としてはどういたしますかと申しますと、それは釈明いたしまして、一体この手続に乗ることを争うのか、その点の本人の真意を確かめて行くわけであります。そうなれば、当然あくまでそれを争うということになりますれば、この手続に乗つて処罰されることは困るという結論が出て参ります。それは裁判所の従来の審理の手続もその通り行われております。それが行われないということはわれわれとしては予想できないところであります。でありまするから、そういう場合には、この釈明権の行使によつて、結局この手続を進めるか進めないかということの結論に達するだろうと思います。またかりに本人が明らかにこの手続でやられることは異議がないと言いながら、なおこの辺がもやもやしている、しかも裁判所の心証といたしまして、どうもこれは一度調べてみなければその点の判断ができないという場合には、もうこの手続で進めることが不相当な場合でありまして、こういう場合は、従来の裁判の経験から徴しましても、必ずこれは、正式裁判にまわるべき性質のものであります。その点は十分裁判所を信頼していいのだろう、私どもは実務の経験を通してかように考えるわけでございまして、御心配のような点は実際の運用としてはないと、かように確信しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/13
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014・林信雄
○林(信)委員 まだ少し納得が行きませんが、三百三十五条の第二項の場合は非常に審理の過程において複雑多岐にわたつて、この簡易な裁判手続では不適当であるという場合は、それは常識としても裁判官は多くは通常の裁判手続にまわすだろうと思うのですけれども、中にはずいぶん簡単なそれらの問題の場合があるだろうと思う。たとえば前科は明白にされていると思つている被告人が、ことさらにこれを否認するような場合、検事の方では簡単に前科の調書かなんかをつけておる、しかるに被告人はそれに覚えがないと言う、そういつて反証も出さないというような場合であるとか、あるいは法律の改廃の問題のごとき顕著な問題であるのだが、何かの事情でこれを争われるといつたような場合、結論は裁判官としては容易に出し得ると思うもの等の場合に、わざわざこれを通常裁判手続に引直すまでもない、その基本としては、被告人はさような点を争つてはおりまするけれども、この即決裁判手続によることはあえて異存はないというような場合で、やはり実際の場面としてわざわざ通常裁判手続に引直さなくてもいい場合があり得ると思う。それをしも十二条の関係において、そういうものはこの裁判手続の裁判の宣告の中には包含しないのだからという裏の解釈よりして、裁判官は、さような場合は、むしろ本法案の第六条の、実質的にこの裁判手続を不相当として普通の裁判手続に引直さなければならぬものと常に解釈さるべきであるというのは、少し解釈に無理があると思うので、やはりそういう範囲まで裁判をなすことができ、及びその裁判はやはり宣告の場合に判断した旨を明らかにすることが適当ではないか、こう思われるのでありますが、なお御説明があれば伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/14
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015・下牧武
○下牧説明員 まあ、私どもの実務を通して考えますところでお説のような混乱が生ずることは、ちよつと想像いたしかねるのでございますが、たとえば三百三十五条第二項を、どういう場合にこれが予想されるかと申しますと、先ほど申し上げましたような緊急避難のような弁解があつた場合、それから本人が心神耗弱者といつたような主張があつた場合に、こういう問題が起きるのではないかと存じます。前科の点は、これは累犯加重の問題にもなりませんし、ちよつと問題が考えられないかと思いますが、そういう場合に裁判所といたしまして、先ほども申し上げましたように、本人がとにかくこの手続に乗ることについて異議がない場合、しかも片一方において緊急避難の主張をしておるということになりますと、これは本人の真意といたしまして、はたしてこの手続で裁判を受けることを実際承知しておるのかどうか、その点がわからなくなるのが普通じやないかと思います。そういう場合に、裁判所の常識といたしまして、必ず本人にどういうつもりだということを釈明するのが当然の結果になりまして、その点は必ず裁判所の釈明権の行使によつて問題か解決するのではないかと存じます。
それからたとえば心神耗弱の主張があつたような場合に、はたして本人を目の前においただけで裁判所が判断できるかというと、とうてい判断できない。やはり平素の言動、そういうものから調べて行きませんと判断ができない。そうなると、これは簡単な事実の取調べというようなやり方ではできない。やはり本格的な証拠調べの手続に乗せなければその判断ができないことになります。そうなれば必然的にこれは正式裁判の方に持つて行く運命になるのは、私どもの常識から申しますと、断然そうなつて行くように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/15
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016・林信雄
○林(信)委員 即決裁判手続による意思を他の面から推定して云々ということは、そのままではもちろん不可能な問題だと思います。釈明云々と言われますが、それは何か裁判官が被告の意思を干渉または抑制するような方法をもつて釈明を求むるにあらざれば、必ずしも明確になつて来ないと思うので、明確に示された意思というものは、一応そのまま受取らなければならぬものであろうと思うのであります。どうもこれらの関係が不明確でありますことはなお不適当だとは存じますが、これも一応その程度にとどめます。
この条分の関係において考えられますことは、正式裁判の請求が適当な日にち以内になし得る旨の告示をなさなければならないとあるのですが、その正式裁判を必要としないと考える者はただちに放棄をなし得るかいなか。通常の裁判手続においてはその放棄は適当でないとしておつたのでありますが、さらに改正によつてその放棄も認められました。今日この簡易の裁判手続においてその放棄を認めることは適当ではないかと存じますが、できないのでございましようか。できないとしますればどういう理由によつてでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/16
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017・下牧武
○下牧説明員 正式裁判の放棄はできないという解釈をいたしております。と申しますのは、この法律の第十三条の四項によりまして、刑事訴訟法の四百六十七条が準用されております。この刑事訴訟法の四百六十七条で、上訴放棄の規定の三百五十九条というのがこの中に引かれておりますが、この規定が準用される範囲は、正式裁判の請求またはこの取下げについてこれを準用するというので、請求と取下げについてのみ準用されておるわけでございます。それでありますからその四百六十七条の規定が今度のこの法律の十三条四項によつて、この法律にまた準用されておるという関係にございますので、正式裁判の放棄ということについては四百六十七条自体、言いかえますれば略式命令のときから略式命令に対する正式裁判の放棄ということが許されていない、その許されていないままの形でこの十三条によつてこちらに準用されているという形になりますので、この場合も正式裁判の請求権の放棄ということは、法律上認められないということになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/17
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018・林信雄
○林(信)委員 しばしば説明に出て来ましたけれども、私もそれに触れてみたのですが、また本日も略式手続においてさような規定がなされておるからということで、その手続の規定を非常に、尊重された御説明がなされるのであります。昨日も申し上げましたように、別の裁判手続を考慮いたします場合に、従来の規定が適当でないともし考えるものがありましたならば、これにかような機会に改めてこそ訴訟手続の信頼を招くゆえんではないかと思うのです。ただいまも申し上げたように、放棄を認めましても何らさしつかえがないように思われてならない、かつこの法案におきまして、第十四条の二項において示されますように、正式裁判を取下げることが予定せられ、それは有効と認められておるのです。一応正式裁判を請求してその取下げが可能であるということ、すなわち被告人の権利を放棄することは同様であるのであります。一応申立てをして、その後に放棄するという観念と、その手続はなさないが、当初においてこれを放棄する観念とこれはどれだけ違うのでありましようか。悪い場合を想像しますと、ま正面からは正式裁判の放棄はあり得ないからやれない、しかし一応申立てをしてすぐ取下げれば同じ効果になる、そういう苦肉の策まで講じて放棄を急がなければならない場合があり得るかどうかは、私はただちに説明できませんけれども、本質的に考えてどうも差別をつける理由がわからない。あるいは具体的な場合において確定を急ぐ場合もあり得ると思うのです。そうしますと、考えられておりますることがこの法案自体においても矛盾するものが見えるようでもあるし、この法案の対象上の関係ともあわせて、正式裁判のあらかじめの放棄をお認めにならないか、あらかじめといいましても裁判の宣告のあとでいかがか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/18
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019・下牧武
○下牧説明員 これは本来この手続の趣旨を通す意味から申しますと、第十五条に規定してございますように、仮納付というなことをいたしませずに、異議のない者は裁判を受けたらその場ですぐ正式裁判の請求権を放棄いたしまして、そうしてその裁判を確定せしめて即座にその裁判を執行して行くという考え方、これも一つの筋の通つた考え方かと存じます。ただ私どもの心配いたしましたのは、何分手続を簡易化いたしておりますので、本人は異議がないということで裁判を受けたものの、早まつて放棄してあと確定しちやつてどうにもならぬというようなことがあつては困ります、またちよつと想像ができかねることでございますが、わきの方から正式裁判の放棄を慫慂されて心ならずもそれを放棄する、しかも一たん放棄しちやつて裁判確定したあとはどうにもならぬということが出て参りますと、本人の保護の点においても欠けて参りますので、即座に確定させるという方法をとりませず、裁判は簡単にといつてやるものの、裁判を受けたあとにおいては十分弁護士にも相談する余裕を与え、不服があれば十四日の間は正式裁判の請求ができる、そのかわり刑の執行の面においては、これは確定した裁判の刑の執行ということではなくして、かりにそれを納付しておいて、その裁判が確定した後にそれを埋め合して行くというような考え方にいたしたわけでありまして、あまりドラステイツクに行きますと、かえつて、本人が早まつて放棄いたしたような場合に、あとでどうにも救済の道がないということになつては困るという点をおそれたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/19
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020・林信雄
○林(信)委員 今御説明になつた理由は私もよくわかるのです。しからばあらためてお尋ねしますが、通常の裁判手続において判決の言い渡しを受けてその放棄を認められなかつたものを、放棄を認める制度に改められた理由はどこにあるとお考えになるでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/20
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021・下牧武
○下牧説明員 これはいわゆる自由刑の場合でございますと、本人が言い渡された裁判に不服がない場合に、一日も早く務めて一日も早く出たい、こういう被告人がたくさんあるわけでございます。それをとにかく十四日の間は、裁判は確定させて刑の執行に着手することができないということにいたしておきますと、早く務めたいと望んでいる本人が気分的に、何となくもう不服がないのだから早くやつてもらいたいというその気持にそぐわないものがございます。そういう場合は本人の希望通りやつてやろう、こういうわけでございます。ところがそういう自由刑につきましては、かりに執行などということは考えられません。やはり執行する以上は裁判を確定さした上で、刑を確定さした上でそれを執行するという観念でなければならぬ。ところが罰金刑につきましては、それと違いまして、しかも手続が、簡単に進めて行く手続でございますから、一応判決を言い渡される。それで十分再考の期間があり、不服がないと思えば、かりに納めて行く。あとから弁護士その他の専門家に相談してみたところが、これはおかしいじやないかというので不服を申し立てろという余裕も認めていいのじやないかということで、この場合と自由刑の執行の場合のやり方を違えている、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/21
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022・林信雄
○林(信)委員 今御説明のありましたものは、刑事訟訴法改正の場合、自由刑の言い渡しを受けて、一日も早く刑の執行を始めてもらつて、早く刑を終了したい、大体こういう意味だと受取れるといたしますと、従前の規定は、放棄しなくても、言い渡しがあれば当然不服申立て期間も刑期に算入される、こういうことであつたと思う。従いまして、なるほど作業その他には従事しないかもしれません。そういう意味の便宜、やりたいと思うのがやれるというのは一種の便宜かもしれませんが、刑期を早く終らせるという点においては影響はなかつた。それよりもむしろ考え方としては、あとにちよつと触れたような気持の点において、ここできめてしまつたと考える、それの心理的な影響を取上げられたのじやないか。しかしこれは本質的に被告人の広い意味の上訴権といいますか、被告人の権利であります。これを放棄させるということも、これはその人の持つ権利でありますから、これはさしつかえないというようなことで、そうなつたのじやないかと思うのであります。簡易なこの裁判手続によつて、不服申立てをしないという意思をすみやかに表現せしめることもやはり心理的な影響において、また実際の罰金等の納付においても、やはりそれだけの利益面があると思われるのです。ですからこれをそうしなかつたのは、いつもいわれまするような略式手続においては、どうしても十四日の経過を必要としておるのじやないか。それとの比較上、この手続も放棄を認めず、一応置くのだ、しかし正式の裁判を取下げてまで置くというのはどうかと思うということで、大体こんな法案が予定されておるのではないかと思うのですが、そういうことじやないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/22
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023・下牧武
○下牧説明員 通常手続における上訴権の場合でございますが、先ほど気分的にと申し上げましたのは、刑の執行の期間の面ではお説の通りであります。気分的にと申し上げましたけれども、法律上意味が全然ないわけではございません。仮出獄の期間の計算におきまして、幾分有利になる計算が法律上出て参ります。その点が法律的に意味があると申せば意味があるわけでございますが、これは大した問題じやなくて、やはり本人といたしましては、早く刑が確定して、早く刑の執行に移るというその面の希望を入れるのが大きな理由でございます。ところが今度の手続におきましては、早く罰金を納めてすつとしいたという場合には、仮納付をしておきますれば、それで本人の気分は収まるのでございまして、特に通常の公判手続における場合と同じように、正式の裁判の請求権の放棄を認めなければならぬということにはならないと思います。むしろ私どもは、本人があまり早まつて軽率に放棄するようなことがあつてはあとが困るだろうということで、そこはやはり略式の場合と同様にゆるめて置こうというのが、こういうふうにいたした真意でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/23
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024・林信雄
○林(信)委員 続いて第十三条に移ります。法案十三条は正式裁判の請求に、関する法文であります。明らかにしてありますように、「被告人又は検察官は、その宣告があつた日から十四日以内に、正式裁判の請求をすることができる。」その他はその手続の方法及びその後の手続にあると思いますので、私がお尋ねしてみようと思いますることは、正式裁判を請求するものの範囲について、及び被告人、検察官でありますれば、被告人に正式裁判の申出を認めることは、これはもう法律常識として当然のことでありますが、検察官に正式裁判を認めることについては、なお考慮の余地があるのではないかと考えます。しばしば説明の中に出て参りまするように、この即決裁判手続は、口頭による略式手続ともいうべきものであると、大まかに考えまして考えられることが一つ、その手続の実際におきましても、略式手続を求める場合の検察官のなす量刑の点、いわゆる、求刑意見と申しております。そういうものまで表示せられて出しております。略式手続の場合は、多くは検察官の要求の通りの裁判がなされる。簡易裁判手続においても大体同様ではないか。気休めとは言いませんが、被告人の言うことを聞くだけは聞いてみよう。うつかりすると、被告人が弁解しているのだが、そのときは裁判官は弁解をやつているなということを思いながら、実は書類ばかり見ておつて、もう言うことはそれだけか、じやあというので結論を出してしまわれないとも限らないと予想される程度の裁判手続の制度であるとも思われます。そうであるとしますれば、略式手続において、およそ検察官の意向の現われておりますようなものに、不服の申立ても必要がない。と同様にこの裁判手続においても必要がないのじやないか。また別の面から考えましても、いやしくも専門家である検察官は、国家を代表しての職務を扱つておる。個人的に見れば専門家であり、職務の立場から言えば国家、すなわち国家の相手は国民である。そういう大きいものと小さいものといいますか、親と子供といいますか、何かそういう立場から参りましても、あまりに厳格にその裁判の結果に対してまで不服を言う、裁判手続を終らせないという、これはやはり考えさせられるものがあるように思うのです。それも通常の裁判手続のような場合は別であります。これは除外して考えておりますが、軽微なる刑事事件、しこうして簡易なる裁判手続を相互に理解し合つてやりましたその裁判の結果、なかんずく無罪の裁判の宣告のありましたこときものにおきましても、なお検察官にその不服を申し立てしめるということは、どうもこの裁判手続の本旨に照しまして似つかわしくないもののように思われますが、これはお考えになる余地があるのではないか、御当局のお考えを承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/24
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025・下牧武
○下牧説明員 この手続で無罪の裁判が言い渡せるかどうかという問題でございますが、これは私どもといたしましては、こういう手続に乗せることが不相当の場合で、そういう裁判手続はできないというふうに考えております。ただそういう場合もなきにしもあらず。それからまた予想いたされますことは、量刑に関する意見が違う場合でございます。そういう場合は現在の略式手続におきましても、検察官と違つた罰金額が定められたという事例がしばしばございます。そういう場合にやはり一応検察官が意見をつけておりますので、それならそういうふうに刑を軽減した理由というものを正式の手続に乗せて、本格的に調べて、はたしてそれが妥当であるかどうかということの判断を仰ぐという手続が許されてしかるべきものと存じます。昔の略式手続におきましても議論のございましたところですが、検察官の求刑意見と違うようなそういう略式が出せるかどうかというので、理論的には一応出せるというふうになつていたものの、なかなかそれに争いがございまして、実際の運用はほとんど検察官の意見通りということで略式の手続がなされておつた。今度の新しい訴訟手続になりましてからその点を踏み切りまして、また解釈上も検察官と違つた罰金の額を定めることができるというふうにしたかわりに、検察官にも不服の申立ての道を開いたというわけでございます。この手続におきましても同様に考えてしかるべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/25
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026・林信雄
○林(信)委員 全部了承しかねるのでありますが、一応質疑はその程度にとどめます。しかし、ついででありますから、第二項の関係においても一言意見的に述べて御説明を願いたいと思います。これで見ますれば、明らかに正式裁判の請求は、その裁判所に書面でしなければならないことになつておりますが、簡易の裁判手続であるこの即決裁判手続において、特に書面で出させるということにいたしまするよりは、不服がありましたならば、その場合でこれを調書その他の方法で明らかにすれば足りるのではなかろうか。検事は出頭しない場合がありますから、書面ですれば便宜な場合があるかもしれません。なかんずく職務として専門的にやつておりますから、大した手間はないと思つておられるかもしれませんが、被告人の方は簡単であると考えられますことも、いわゆるしろうととしてなかなかやつかいです。そのあたりの司法書士に飛び込んで、お客さんか多ければ長い時間待つて書いてもらつたが、判がないとか、ああだ、こうたということになりますと、また出かけて行かなければならない場合もありましようし、これは被告人の立場に同情しまするならば、もつと簡単な方法でいいことにいたしましても、この法案のねらつておりますることに同調するとしても、決して相反するものではないと思うのですが、これはどうにもならないものとしてのお考えなんですか、特殊の理由よりこういうことに定められたのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/26
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027・下牧武
○下牧説明員 もともとこの手続は、本人がこの手続に乗せることについて異議のない場合にのみ行われるわけでございます。本人がこの手続でやられることによつて異議がないということでずつと行つていまして、裁判を受けて、すぐその場で口頭で正式裁判の請求をすることを認めること自体、考え方に根本的に反して参ります。実際本人としては、大体これで異議がないというそういう事件について、事実関係についても争いがない。罰金が極度に不当の額であるという場合は別でございますけれども、事案に応じて適当な量刑をいたしております、そういう関係でございまして、あまりひどい求刑を検察官がすれば、そこを裁判官が調整するということも考えられますので、考え方自体といたしまして、その場で裁判の宣告を受けながら、すぐ不服を申し立てる、ということ自体非常におかしいと思います。しかも通常の公判手続における上訴すら書面でなければならないことになつております。それとの均衡も考えまして、やはりこの場合は書面でさせるというふうな建前をとるのがいいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/27
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028・林信雄
○林(信)委員 この裁判手続に同意しておつて、裁判を受けて、その裁判に不服を言うのはけしからんとまでは言われませんが、これはあくまでも手続に同意したのであつて、どう出るかわからないものもありましようし、ある程度の見当をつけましたところで、非常に見当違いという場合もありますから、その場合に非常に見当違いである、非常に不利益な裁判を受けたと思うものは、即刻正式裁判を申し立てるという気持にたつてよろしい。その点からは私は何も出て来ないと思う。何か手続上の記録の上に別紙書類があることが一見して明瞭になるとか何とかいうことなら別ですが、通常の裁判手続における場合の申立てが書面で出さなければならないという場合とは、これは簡素の手続ですから、おのずから違つていいのではないかと思うので、私はなお考慮の余地があると思うのでありまするが、特殊の御意見がなければ、この程度にとどめます。
第十四条は先刻申し上げましたように即決裁判効力の関係、つまり第十四条二項にあります請求取下げができる関係から、効力の問題をどうするかというような点が関連した質疑事項でありましたが、これは先刻申し述べましたから除外いたしまして第十五条に移ります。
これも私は怠慢かも存じませんが、正式の法案と対照いたしておりませんが、示されております逐条説明書によりますと、「裁判所は、即決裁判の請求をする場合において」という文字になつておりますが、どうもこれでは意味がわからないのですが、おそらく「宣告をする場合」のプリント間違いだろうと存じますが、そうでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/28
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029・下牧武
○下牧説明員 これは「宣告」の間違いでございます。法案の方は「宣告」というふうになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/29
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030・林信雄
○林(信)委員 十六条については特段の質疑はありせんので十七条ですが、これは親切な規定であるとは存じます。すなわちこの「裁判手続については、この法律に特別の規定があるものの外、その性質に反しない限り、刑事訴訟法による。」いわゆる特例の手続でありますからことごとくあげることは不必要であり、不体裁である、それらのものを本法であります刑事訟訴法によるということは適当であり、いわば当然であるのであります。その当然な意味から行きまして、むしろこれは蛇足規定になるのではないか、親切ではあるがある意味においては蛇足と考えられるのです。この条文を設けられましたその心持だけをお聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/30
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031・下牧武
○下牧説明員 厳密に申しますと刑事訟訴法の特別であるということを法文上はつきりさせておきませんと、やはり疑問が残りますので、この点をはつきりさせる意味で、この十七条を置いたわけであります。ただ「性質に反しない限り、」というのははなはだ漠然といたしておりますが、この説明書に書いておきました通りに、検察官が出席した場合の冒頭陳述とか、証拠調べの順序、それから起訴状に予備的または択一的訴因を掲げることができるかどうかやはり疑問が残りますので、この程度のところを排除する意味ではなはだ漠然といたしますが、そのほかの一般的な総則規定は乗つて来るというふうに考えます。特例という点をはつきりさせる点と、ある軽度事柄の性質上排除される面もあるという三つの面をはつきりさせるという意味でこの条項を置いたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/31
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032・林信雄
○林(信)委員 私は一応質疑をこの程度にとどめておきます。従前お尋ねしました事柄等についてもいま少しくお尋ねしたい点もありますが、それは後日にいたしたいと存じます。本日はこの程度にとどめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/32
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033・小林錡
○小林委員長 それでは本案については質疑は本日はこの程度にとどめておきます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/33
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034・小林錡
○小林委員長 次に連合審査会開会申入れの件についてお諮りいたします。すなわち現在地方行政委員会において審議中の警察法案並びに警察法の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案、以上の両案はいずれも本委員会の所管事項と密接かつ重要な関係がありますから、以上両案について連合審査会を開会するよう地方行政委員会に申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/34
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035・小林錡
○小林委員長 御異議がないものと認めさよう決定いたします。
なお連合審査会開会の日時、方法等につきましては委員諸君の意向に沿うよう地方行政委員長と協議の上決定いたしたいと存じますから、その取扱いにつきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/35
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036・小林錡
○小林委員長 御異議はないものと認めさようとりはからいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/36
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037・小林錡
○小林委員長 昨二日刑事訴訟法第百九十四条に基く懲戒処分に関する法律案が付託になりましたから、この際これを議題としてその趣旨説明を聴取することといたします。三浦法務政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/37
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038・三浦寅之助
○三浦政府委員 ただいま議題に上りました刑事訴訟法第百九十四条に基く懲戒処分に関する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
犯罪捜査を担当する各種機関、ことに警察官の権限をどう調整するかという問題は、世界各国の為政者が古くからその解決に苦慮している問題であり、現在もなお真剣に検討を続けている問題であります。昨秋ローマに開かれました国際刑法会議におきましても、公判前の手続における被疑者被告人の保護の見地から、警察官と検察官との関係をどうすべきかについて、熱心に討議せられたのであります。
しかして、この点に関するわが現行刑事訴訟法の建前は、御承知の通り、司法警察関係の諸機関と検察官とは犯罪捜査に関しては互いに協力すべきものとしつつ、検察官の任務及び地位すなわち公訴官であるとともに、裁判官に準ずる身分保障を有するという検察官の特殊の立場を考え、検察官に司法警察職員の捜査に対する一定の指示、指揮の権限を与え、その裏づけとして、司法警察職員が正当な理由がなく検察官の指示または指揮に従わない場合には、一般の警察職員については公安委員会が、その他の司法警察職員についてはそれぞれの懲戒罷免権者が別に法律の定めるところにより検察庁の長の訴追に基いて懲戒または罷免すべきものとし、もつて公訴の遂行と人権の保障に遺憾のないよう配慮しているのであります。
ところが、公安委員会その他の機関が懲戒または罷免の処分をいたします場合の手続等に関し、刑事訴訟法が予定しているところの別の法律が今日まで制定がされておりませんため、重要な法の不備になつているのであります。しかしながら、司法警察職員と検察官との関係について現行刑事訴訟法のとつている建前は、ただいま国会の御審議を煩わしております警察制度の改正のいかんにかかわらず、なおこれを維持すべきものと考えますので、懲戒罷免に関する規定も当然これを整備すべきものと考え、ここに警察法案と切り離して、本法律案の御審議を煩わすこととなつたのであります。
本法律案の内容は、わずか二箇条であります。第一条は、訴追の形式及び相手方につき、刑事訴訟法第百九十四条第一項を補足する規定であり、第二条においては、右の請求を受けた公安委員会その他の者が刑事訟訴法第百九十四条第二項に基いて行う懲戒罷免の処分の種類、手続、効果等を当該司法警察職員に対する通常の懲戒処分の例によらしめることといたしているのであります。
元来、犯罪の捜査は、各捜査機関の協力によつて初めてその効果を上げることができるのであります。従つて、検察官が司法警察職員の懲戒罷免の請求をするについても、きわめて慎重でなければならないのは言うまでもありません。しかしながら、それだからといつて、司法警察職員は検察官の正当な指示、指揮に従わなくてもよいということにはならないのはもちろん、万が一検察官の正当な指示または指揮に理由なく従わない司法警察職員があつた場合には、その者に対し現実に懲戒を行い得るという法律上の建前を明らかにしておくことによつて、全体としての協力を全うするように配慮することが適当であると考えられます。以上の次第でありますので、実際問題としてこの法律の適用を見るのは、よほどの事情がある場合に限るということになると思うのであります。
何とぞ、慎重御審議を賜わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/38
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039・小林錡
○小林委員長 本日はこの程度にとどめておきます。
次会の開会日時はいずれ公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X01419540303/39
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